1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年九月二十七日(金曜日)午前十一時十二分開議
出席委員
委員長代理 理事 馬越晃君
理事 岩本信行君 理事 坂本實君
理事 森幸太郎君 理事 天野久君
理事 佐竹晴記君 理事 細野三千雄君
大井直之助君 杉田一郎君
廣川弘禪君 本多花子君
森田豊壽君 八重樫利康君
苫米地義三君 吉澤仁太郎君
平野市太郎君 細田綱吉君
北政清君 米倉龍也君
野本品吉君 志賀義雄君
九月十一日委員須永好君死去に付其の補闕として佐竹晴記君を議長に於て選定した
九月二十六日委員高倉輝君辭任に付其の補闕として志賀義雄君を議長に於て選定した
九月二十七日理事須永好君の補闕として佐竹晴記君が理事に當選した
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
農林次官 楠見義男君
農林事務官 石川準吉君
商工政務次官 小林かなえ君
委員長の許可を得た出席者
農林事務官 伊東正義君
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本日の會議に付した議案
農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
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〔馬越委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=0
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001・馬越晃
○馬越委員長代理 それでは只今より會議を開きます、御諮り致します、御承知の如く去る十一日理事須永好君は逝去致されました、洵に哀悼の極みに堪へませぬ、就ては理事の補充を致したいと存じます、理事の補闕は委員長の指名と致すことに御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=1
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002・馬越晃
○馬越委員長代理 御異議ないと認め、理事に佐竹晴記氏を指名致します――細田綱吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=2
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003・細田綱吉
○細田(綱)委員 曩に農林中央金庫法の改正を圖られまして、日本の肥料不足の對策としまして、肥料會社に對する政府よりの融資を圖られたのでありまするが、之に付て尚ほ其の詳細を、即ち肥料會社に對する融資の金額、或は又貸付の條件、形式、方法、囘收の確保に對する見透しと申しませうか、御取扱等に付て、先づ御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=3
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004・石川準吉
○石川政府委員 只今の御質問に對しまして御答へ申上げます、農林中央金庫より肥料工場建設資金としまして融資されました額は、八月末現在に於きまして、硫安工場分として四億五千百十九萬三千圓、それから石灰窒素工場分として五千三百六十五萬一千圓、合計致しまして五億四百八十四萬四千圓でございます、それから貸付の形式でございますが、方法と致しましては、一應全部を日本肥料會社に對しまして手形貸付の形式を以てやつたのであります、さうして日本肥料株式會社より其の傘下の肥料會社に轉貸すると云ふ形式を取つて居ります、併し此の形式は過渡的な形式でありますので、結局斯う云ふやうな貸付は、貸付先の肥料會社が社債を發行致しまして、農林中央金庫外興銀でありますとか、勸銀でありますとか、其の他の銀行の府縣「シンジゲート」をして引受けしめ、處理すると云ふ大體見込で居るのであります、それから囘收確保の方法でございますが、先づ第一に貸付に當りましては、是等の貸付資金が工事の進行状況と照應するやうに十分な檢討を加へて、苟も無駄な貸付はなさぬ、放漫的な貸付はしないと云ふやうに、注意して居るのが第一であります、第二點は、社債は全部擔保附として發行させたい、又社債に借換へ得ないやうな部分が若干あると思ひますが、さう云ふ貸付に付きましても、之を擔保附の貸付に變更して行きたい、斯う云ふやうに考へるのであります、それから第三と致しましては、先程申上げました日本肥料株式會社は、其の肥料の販売統制をやつて居る關係から致しまして、貸付先の肥料會社の生産した肥料は、一應全部日本肥料株式會社を通じて販賣することになつて居るのであります、さう云ふ關係上、日本肥料株式會社を其の媒介と致しまして、貸付する場合に於きましては、其の販賣代金中から必要な囘收をなし得ると云ふ安定感がそこにある、斯う存じまして、一應先程のやうな形式を執つて居るのであります、尚ほ今後色々に經濟情勢が變化して行くと思ひますが、是等に付きましては、今後の貸付に付ては以上申上げたやうな諸點を考慮し、更に必要なる措置を講じたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=4
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005・馬越晃
○馬越委員長代理 佐竹君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=5
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006・佐竹晴記
○佐竹委員 只今肥料會社に對する融資の金額、貸付の形式、囘收の確保等に付て細田君から御尋ねを申上げましたが、此の融資は肥料會社を將來國營の方向に持つて行く一方法としての考慮が拂はれて居るでございませうか、此の點御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=6
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007・和田博雄
○和田國務大臣 其のやうな考慮は拂はれては居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=7
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008・佐竹晴記
○佐竹委員 第二に承りたいのは、融資の結果、肥料會社はどれ程の成果を擧げ得る見透しでございますか、現在の状態と融資後の状況とを對比致しまして、具體的に其の内容を御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=8
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009・小林かなえ
○小林政府委員 設備資金の融資は大體三月乃至五月頃から行はれて居るのでありますが、今其の成果を見ますと、四月末の生産能力は硫安に於きましては三十六萬「トン」、石灰窒素に於きましては十四萬四千「トン」でありましたが、八月末には生産能力が硫安で六十萬「トン」、石灰窒素で三十二萬「トン」に上りました、今後此の全工事が完成致しますれば、硫安では百四十三萬「トン」、石灰窒素では三十八萬六千「トン」になる豫定であります、完成期は大部分は昭和二十二年の三月になる豫定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=9
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010・佐竹晴記
○佐竹委員 私の御尋ねを申上げるのは、融資を受けたことに依つてどう云つたことをして、どう云つたやうな成果を擧げる見透しであるかと云ふのでございます、只今御答辯の四月末と八月末現在との比較、竝に完成すれば斯う云つた結果になると仰しやつたのでありますが、どう云つたやうなことをして、それが百四十萬「トン」、或は三十八萬「トン」と云つたやうな工合になるものか、其の確實なる内容を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=10
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011・和田博雄
○和田國務大臣 細かいことは又政府委員から御答へ致しますが、只今までの所で、今まで一番困りましたのは、やはり金融難でありました、それは主として復興資金であります、と云ふのは、肥料工場が非常に壞れて居りまして、例へば「パイプ」でも相當古くなつて居る、或は戰災で非常にやられて居ると云ふのを復興する資材を買ひましたり、又運輸資金として必要な金と云ふやうなものが出て行つた譯であります、隨てそれぞれの勞賃の支拂にて充てられたのでありませうし、主にさう云ふ復興關係のものに使はれて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=11
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012・石川準吉
○石川政府委員 具體的な事項に付きまして例を申上げて見たいと思ひます、大體今農林大臣から御答辯がありましたやうに、復興が主でありますが、更に色々な附屬設備と云ふものがある譯でありますから、是等の附屬設備を捕充すると云ふ用途に向けられたのであります、肥料の減産の色々な理由を見ますと、例へば建設計畫が非常に遲れて居ると云ふやうなことがあるのでありますが、是はやはり色色な資材の關係、或は資金の關係と云ふやうなことが影響して居るやうであります、又酸素發生装置でありますとか、或は合成觸煤の機械でありますとか、それ等の機械が不足の爲に思ふ通りに出來ないと云ふやうなこともあります、隨ひまして今囘の融資に依りまして、兎も角差當り必要とする所の是等の復舊や罹災の復舊、及び不足である所の設備の完全と云ふことに資して行きたい、斯う云ふやうに考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=12
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013・佐竹晴記
○佐竹委員 全く抽象的でございまして、掴み所がございませぬ、今少しく具體的に御説明願はれませぬものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=13
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014・和田博雄
○和田國務大臣 總額だけに付て一寸言ひますと、硫安と石灰窒素と憐酸の、是はやはり工場の復舊であります、工場の復舊でありますから、其の内容は、是は工場を復舊するのに色々な資材に充てましたり、色々であります、是は適當に使はれるので、それぞれの工場の經理に依るのでありますが、結局總額としては二十四億五千萬圓である譯であります、是だけの金を融通致しまして、此の復舊に依つて硫安が八十二萬「トン」、石灰窒素が十六萬「トン」、燐酸が八十五萬「トン」と云ふ増産を期待して居る、斯う云ふ譯であります、尚ほ八月末の現在の融資額は、前に政府委員が述べましたやうに五億四百萬圓、斯う云ふことに相成つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=14
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015・佐竹晴記
○佐竹委員 工場復舊の爲に二十四億五千萬圓を貸付けやう、斯う云ふことになりますれば、それを貸付けるに付ては、どの會社から如何なる復舊をしたいから、之にどのやうな費用が要るのだと云ふことの申出があつて、初めて工場復舊の爲に二十四億五千萬圓と云ふものが要るのだと云ふ結論が出て居りませう、隨て其の復舊に付ては是だけの金を貸すと云ふことになれば、其の貸さなければならぬ必要と、之を貸した結果、どう云つたやうな機械がどう云つたやうな工合に廻はることになるのだ、前の成績よりは今度はどう云ふ工合に成績が擧るのだと云ふ實體が明かにされて、初めて貸付金額と云ふものが茲に明かになつて來ることと思はれます、隨ひまして全部の工場と云ふ譯には參りませぬが、一、二に主要なる事例でも御示しを願ひまして、全部を推理するに足るだけの資料を茲に御示しを願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=15
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016・和田博雄
○和田國務大臣 全く御話の通りでありまして、やはり金を貸しますのには復興計畫を立てさせて居る譯であります、それは民間の方の硫安なら硫安の製造組合に復興委員會と云ふものを作りまして、そこで十分なる檢討を致した計畫を立て、又それを農林省、商工省で十分に檢討致しまして、其の上で貸すことになつて居ります、一々の工場は厄介でありますから、何か主な一、二の工場に付て御話致して行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=16
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017・伊東正義
○伊東説明員 私から御説明致します、今御質問がありました點は大臣から御答辯がありましたが、大體各肥料製造會社の方から復興計畫の申込を受けて居ります、此の復興計畫に付きましては、硫安でありますれば、硫安肥料の製造業組合の中に復興協議會を作りまして、其處で大體檢討を致しましたものを商工省、農林省の關係者皆が寄りまして、大體の復興計畫を作ります、是は聯合軍の方へも囘答致して居るやうな次第であります、其の際に各社別に大體の復興計畫を檢討した譯であります、先刻から問題になつて居ります資金に付きましては、其の復興計晝の數量に「マッチ」しました資金を取りまして、現在に於きましては日本肥料から繋ぎ資金の融資をして居ると云ふ形になつて居ります、例へば其の中で一、二の會社を擧げて御説明致します、川崎の昭和電工でありますが、是は復興計畫は二十五萬「トン」になつて居ります、そして大體第一期の計畫が十二萬五千「トン」、第二期の計畫が十二萬五千「トン」で、合せて二十五萬「トン」と云ふことになつて居ります、是は御承知のやうに、あの會社は大分戰災を受けたのでありますが、昨年の十二月に製品を出しまして、現在では第一期計畫はもう殆ど完成致して居ります、先般復興祭をやりまして、大體十二萬五千「トン」程度のものは復興出來るやうな形になつて居るのであります、是に要します資金は一億六千萬圓、斯う豫定して居ります、それから今後の第二期の計畫でありますが、是も御承知のやうに、彼處は電解法をやつて居るのであります、それで第二期計畫に付きましても、十二萬五千「トン」と云ふのはやはり同じ電解法で行かう、電解法で行きますれば、御承知の電槽法でありますとか、全般的な窒素分離機でありますとか、斯う云ふものは全部殆どが新設の形になつて居るのであります、あの工場に付て申しますと、増設分としまして大體四億八千萬圓――五億圓位なものを見當して居る、是は一つの昭和電工の例でありますが、第二期計畫に付きましては、前の瓦斯爐が殆ど破壞されて居りますので、電解爐と云ふ形になりまして、復舊とは云ひますものの殆ど新設の形で五億圓位のものが出ると云ふやうな恰好になつて居ります、さう云ふ風に各社一つづつ檢討致しまして、其の結果を纒めた資金が先程の答辯にありましたやうな金額になる、斯う云ふやうに御諒承願つたら結構と思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=17
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018・佐竹晴記
○佐竹委員 どうも復興計畫の實體を掴むことが出來ないのでありますが、願くは各社から出て居ります復興計畫書の寫しでも資料として出して戴きたいものと希望致します
第三に御伺ひ致したいのは、本年の一月から七月まで硫安の生産十五工場に對し、政府が要求致しましたものは五十七萬「トン」、各工場と打合せの結果割當を致しましたものが三十五萬「トン」、之に致して僅に二十二萬「トン」しか生産されて居ないと承知を致して居りますが、左樣でございますか、若しさうだと致しますと、何が故に割當數量に達する生産が出來なかつたのであるか、各工場別に其の業績の内容を明かにして戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=18
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019・伊東正義
○伊東説明員 それでは私から御答へ致します、今御質問の生産數量の點でありますが、是は大體一月から七月の生産數量は、昨年の十二月に各社から、自分の工場では是だけ出來ると云ふ所謂保證生産數量と云ふものを戴いたのでありますが、硫安、石灰窒素合せますと約四十五萬「トン」になつた譯なのであります、大體我々と致しましては、四十五萬「トン」と云ふ數字を生産の「ベース」にした譯であります、併し農林省に於きましては、配給を致します際には、生産數量其の儘を土臺に致しまして配給の基準にすると云ふことは、過去の經驗に徴しましても、若干其の生産の落ちると云うことも、色色な理由から豫想されますので、其の八掛の三十五萬「トン」と云ふものを取りまして、配給の「ベース」にしたのであります、それで實生産は一月から七月迄で三十二萬二千「トン」になつて居りますが、先程申上げました四十五萬「トン」に對比致しますと七〇%位、三十五萬「トン」に比較しますと九〇%位になります、三十五萬「トン」に比較しますれば、割合に生産は良かつたのでありますが、四十五萬「トン」の總生産計畫から致しますれば七二%か七三%にしかならぬと云ふことになつたのであります、それで配給の方から言ひますと、大體私達が豫定しました配給の三十五萬「トン」の「ベース」でありますが、例の米の報獎肥料に對して五萬七千「トン」ばかり配給致しました、それから一般配給は二十四萬二千「トン」ばかり配給致して居ります、又去年の繰越が約二萬「トン」ばかりありましたので、大體三十二萬「トン」と云ふものを一・四半期に配給致した譯であります、併し今申しました一般配給に於ては、大體二十八萬「トン」と豫定して居つたのが二十四萬「トン」に落ちた譯であります、是は生産減から來た減少なのであります、其の點に於きまして稻で段當に貫匁と云ふことを御約束したのでありますが、一般配給の面から致しますれば八割ばかりになりまして、二貫匁は實際問題として行かなかつたと云ふ結果になつたのであります、是は米と「リンク」しました報奬肥料を考へますれば、大體段當二貫は行つて居りますが、それを別にして、一般配給だけで行きますと一貫六、七百匁と云ふ結果になつたのであります
只今申上げました生産減の理由でありますが、是も全工場に付きましての資料を差上げることが宜いかと思ひますが、一、二の例を取つて行きますと、例へば北海道の東洋高壓でありますが、生産計畫に對しまして二四%の實績しか上つて居らぬのであります、是は新設の工場でありまして、初めて操業するのであります、一月から操業が出來ると云ふことで一應の數字は組んだのでありますが、色々な關係で工事が遲れて、實際の生産を始めましたのは四月からと云ふことで、一――三月の間は「ブランク」であると云ふ結果になりまして、大體二四%位の生産しか上つて居らぬのであります、それから其の初めての生産でありますが、彼處の「ウインクラ」の故障とか、或は窒素分離機の不調とか、斯う云ふやうな原因も加はりまして、二四%と云ふ惡い結果を出した譯なのであります
それから其の他の惡い所を申上げますと、九州の東洋高壓でありますが、大牟田の工場は、やはり生産目標に對しまして、實績は二七%と云ふやうな數字になつて居ります、あの工場に付きましては、是は勿論戰災も受けたのでありますが、大體別な工場から「ガス」を受けて居る、其の「ガス」を原料にして生産をして居ると云ふやうな現状でありまして、其の「ガス」が時々止ると云ふやうな現象も來したのであります、又彼處に於きましては、或は水素裝置の故障でありますとか、或は電氣の事故でありますとか、色々な事故がありまして、先程申止げましたやうに、二七%と云ふやうな實績しか示さなかつたのであります、工場に依りましては、日産の富山の工場でありますとか――是は一〇九%まで行つて居ります、それから日本窒素が一〇七%と云ふやうな非常に好い成績の工場もあるのでありますが、今申上げましたやうな、非常に二十何「パーセント」臺の工場もある、是は各社別の事故の原因等に付きましては、又先程御要求の資料と一緒に差上げて宜からうと思ひますが、大體概括して見ますと、硫安工場に付きましては、戰時中に餘り補修資材が廻らなかつた、それでさう補修が出來なかつたのであります、御承知のやうにああ云ふ工場は相當傷みますので、七、八年の間には補修々々と言つても全然新しい工場になると云ふやうな状態なのでありますが、それが戰爭中の資材不足の爲に補修が出來て居らなかつた、非常に設備が老朽化して居つた、それで之に付きまして、其の補修材料に付きまして、中々材料が廻らなかつた、是は色々な原因があるのでありますが、先程大臣から申されました資金の點も大きな原因をなして居ります、所謂金融の面に於きまして詰りまして、其の資材を買へなかつたと云ふやうなことも多々あつたのであります、それから又復舊工事が非常に遲れたのであります、是は勿論食糧の關係等もあるのではありますが、其の關聯機器の生産と云ふものが非常に遲れた、是は「パイプ」でありますとか、或は其の他の關聯機器の生産が中々思ふ通りに生産して居らぬ、是も現在さう云ふ嫌ひがあるのでありますが、さう云ふやうな關聯機器の生産が遲れたと云ふやうなことから致しまして、復舊工事が遲れて居ると云ふことが、概括的に言へるのであります、併し一般的に申しますと、非常に設備自體が老朽化して居ると云ふやうなことから、故障續出と云ふやうな現状で、大體保證生産計畫に達しなかつたと云ふやうに我々見て居るのであります、唯此の場合に能く言はれるやうに、肥料工場に生産の熱意がなかつたと云ふやうに言はれるのでありますが、我々としては、さう云ふ風に見て居らぬ、やはり設備の點、或は資金の點、色々なことから關聯しまして、生産が思ふ通り上らなかつたと云ふやうに見て居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=19
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020・佐竹晴記
○佐竹委員 設備の老朽と云ふ點が主たる原因であるかの如き御説明を承ると同時に、生産會社に於て熱意が足りなかつたなどと云ふことは認められないと云ふ御話でありまするが、併し私共の調査する所に依れば、或る會社の如きは、硫安一俵と蠶豆二俵と交換した事實がある、又或る會社では硫安を造らずに、洗顏「クリーム」を造つた事實がある、「クリーム」を造る方が硫安を造るより十倍儲かると云ふことであります、又或る會社では勞働者の勞銀の一部に生産品を與へて、是が横流しを助長し、非常な弊害を流して居る事例を私共認めて居る、斯う云つたやうな事實も所謂保證生産數量に達しない一つの原因でないかと、私共は見て居ります、若しこんな工合であつたと致しましたならば、豫定の成績を擧げ得ないのは當然のことであります、斯くの如き事態を放任して居るのは、政府の監督不行屆の結果であると言はなければならぬと存じます、肥料一元化を叫んで居られますが、商工省、農林省兩當局は、其の一方の何れかに其の監督權を纒めたと致しましても、斯う云つたやうな工合では、到底所期の目的を達することは駄目であらうと私は思ひます、政府は果して將來に向つて、其の言明の如く生産増強を確保し得る確信があるかどうか、商工當局に其の御所見を承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=20
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021・和田博雄
○和田國務大臣 今商工省の政府委員が居りませぬから、私代りまして……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=21
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022・佐竹晴記
○佐竹委員 農林大臣には、之に關聯して別個の見地で御尋ね致しますので、先づ商工當局の御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=22
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023・馬越晃
○馬越委員長代理 それでは佐竹さんに御相談致しますが、今商工省關係の政府委員が一寸缺席して居られますので、此の答辯は後程に御讓り願へませぬでせうか、それで佐竹さんに御相談ですが、膳國務大臣、それから和田農林大臣は他の委員會、貴族院等の御出席の關係がございますので、成べく其の關係の御質問を先に御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=23
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024・佐竹晴記
○佐竹委員 それでは今の第三の點は農林大臣も關係がありますけれども、後廻しに致しませう、先に進めて行きませう、一つ商工省もおいでを願ひたいと思ふのであります、第四の點は、社會黨は肥料の國營を主張致しまして、平野力三君が本會議に於て農林大臣に對し其の所見を質した際に、農林大臣は經濟安定本部が出來次第に、其の中に肥料國營準備會を作つて其の實現を期したいと答辯をせられました、又豫算總會に於て、野溝勝君が同樣の質問を致しました際にも、大臣は是れ亦同樣の答辯をせられて居ります、而も經濟安定本部は既に出來て居られます、然るに未だに其の準備會も纒らないのは洵に遺憾であると存じます、一體何時頃此の準備會が出來るでありませうか、其の構成はどう云ふ構想の下になさるるでありませうか、又經濟安定本部との間に如何なる協議がなされて參つたでありませうか、其の内容を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=24
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025・膳桂之助
○膳國務大臣 只今の御問ひは私から御答へした方が適當と思ひますから、御答へ致しますが、經濟安定本部が出來ますと、肥料に關する調査會を作りたいと考へて居りました、御承知の色色の關係から遲れて居りますので、甚だ遺憾ながらまだ正式に委員會を開くに至つて居りませぬけれども、現在安定本部内に於きましては、肥料問題に付て委員會を開く準備協議會を目下開いて、色々委員會の構成及び之に付議すべき事項等に付て準備的研究をして居ります、是も議會が終了致しますまでは、諸種の關係上まだ開くことが出來ませぬ、本議會が終了すると、軈て此の委員會を開きたいと存じて居ります、向ほ此の委員會では、單に肥料の國營問題と云ふやうなことに限定して研究するのは如何かと思つて居ります、之に付ては農林當局の御希望もあり、又商工當局の御希望もあり、安定本部の事務當局としての考へもございますが、廣く肥料問題に付ての研究をする、但し先づ最初の内は、今御尋ねになりました國營問題も――外の問題もございますけれども、其の問題を先づ取上げて研究したい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=25
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026・佐竹晴記
○佐竹委員 今一度農林大臣に承つて置きたいと思ひますが、はつきり言明せられて居りますので、農民は強く之を期待致して居ります、是が遲延を致して居ります理由に付ても、甚だ懷疑の念を持つて居ります、隨ひまして農林大臣としての御決意も此の際今一應承つて置きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=26
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027・和田博雄
○和田國務大臣 肥料の國營の問題に付ての色々な研究、其の他調査をやりまする會に付ては、只今膳さんが御答へしたのでありますが、私も是非此の肥料の國營の問題は取上げまして、調査其の他研究をすることが必要と思つて居りますので、是は安定本部の方に、十分私の方からも、是非さう云ふ委員會、調査會でやつて貰ひたいと云ふことを始終申して居る譯でありまして、只今膳さんが御答へになりましたやうな程度に進んで居る譯であります、今後と雖も十分連絡を執りまして、是は是非やつて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=27
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028・佐竹晴記
○佐竹委員 農林大臣は本會議及び豫算總會等に於て、堂々言明せられたにも拘らず、今度は是非さうしたい希望を持つて居るなどと言つて大變弱腰になつたかに見えますことを遺憾に思ひます、一つ馬力を掛けて、速かに其の言明を實現されんことを熱望致します
第五に御尋ねを致したいのは、本案審議と密接な關係を持つて居ります米價の問題に付て承つて置きたいと思ひます、政府は米價を六百圓とすることに内定して居ると云ふことが屡屡報道せられて居りますが、未だに其の確定を見ないのは、内閣内部に於て意見の一致しない點があるのではないかと存じます、果して其のやうなことがないでございませうか、農林大臣は衆議院の食糧對策委員會に對して、相當の價格でなければ供出が巧く行かないことを御認めになり、右六百圓、若しくはそれ以上たるべきものであると云ふ考慮が拂はれて居られますることを示して居りますが、一面經濟安定本部は、農家の勞銀をさう高く見る必要はないと云つた風に弱腰であることが看取されます、こんな具合であるから決まらぬのではないか、一面諒解を求める面に對しましては、經濟安定本部は少々下つても宜しいと云ふ態度を示し、農林省は恐る恐るであると云ふ具合だから、諒解も得られず、決まりもしないと云ふのが實情ではなからうかと云ふ觀察もされます、既に早場米もどしどし供出さしつつあります際、米價は速かに決定することを要するものと存じます、又將來の供出にも多大の影響のあることであり、竝に米價が他の物價に比して非常に安過ぎると云ふことに鑑みまして、農民の苦衷を十分に洞察して、政府が其の内部に於て、一致して強力に事に當れば諒解も得られ、決定も見られるのではないかと存じますが、如何でございませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=28
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029・和田博雄
○和田國務大臣 政府としましては、米價の點に付きましては、御話のやうに供出に非常に關係がありまするし、殊に本年度に於きましては、相當早く出廻つて來る關係もありますので、又現に出廻りつつありますので、米價の決定は非常に急いで居るのであります、隨て政府としましては、是と歩調を合せて向ふに交渉致して居ります、唯向ふとの關係は、やはり經濟安定本部が中心になりまして、それとの交渉と云ふことに只今なつて居りまして、經濟科學局に於きましては、何處までも經濟安定本部を中心としての交渉と云ふことになつて居りますので、膳國務大臣にも御足勞願つてやつて居る譯であります、併し政府としましては、唯それで放つて置く譯ではないのでありまして、我々としましては、やはり側面から日本の食糧の事情を愬へ、又供出との關係あることを十分に理解して戴きまするやうに致しまして、米價の決定は是非早くと云ふことを急いで、努力を致して居るのであります、隨て政府の内部で色々な點に付て差異があるから遲れて居ると云ふ點は、只今の所ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=29
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030・膳桂之助
○膳國務大臣 只今農林大臣から御答へ申上げました通りであります、別に政府部内に意見の扞格はございませぬ、又色々物價に關しまする――單に米價問題ばかりでございませぬで、他の物價に對しまする方針と一聯の關係に於きまして、相談すべき向きでは相當愼重に研究して居ります爲に、少し事態が遲れて居ります、甚だ私共殘念に思つて居りますが、是は農林當局と協力し、早急に一つ是が決まりますやうに、絶えず折衝して居ります、世間で傳へられるが如く、政府部内に何か意見の食違ひでもあつて、それが爲に交渉が遲れて居ると云ふやうなことのないことは、是は改めてはつきり申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=30
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031・佐竹晴記
○佐竹委員 意見の扞格がございませぬまでも、力強く、一致協力して物を求めると云ふ努力が足りないのではないかと觀察せられる向があります、私は米價決定も、内閣内部に於て力を揃へて、強力に速かに決定されますやうに、而も農民が非常に渇望致して居ります程度の、相當の價格に決定されますやうに希望致します
第六に承りたいのは、萬一米價が假に六百圓になつたと致しましても、決して農民は之に依つて滿足するものではありませぬ、米價を斯樣に決めるとすれば、肥料は少くとも其の半額程度に下げて欲しいと云ふことの要求は熱烈であります、硫安に致しましても、九十圓でございましたものが、本年の一月には急に千二百圓に上つて居ります、三月には二千六百圓に暴騰致して居ります、政府は之を許して居ります、而も中金から今度二十四億幾らと云ふ融資を受けて、どんどん生産しようと云ふのであります、生産増強を圖つても、他面斯うした非常に暴騰した價格を維持すると云ふことになれば、此の肥料と對比致します農民の側の苦心をも、十分御考慮を拂つて戴かなければならぬと思ひます、經濟安定本部殊に物價局に於ては、農民に安い賃銀で犠牲を拂はせることに依つて、日本の復興を圖らうとして居るのではないかと云ふ風に見えます、是は甚だしい封建的思想に胚胎するものであつて、到底承服することは出來ないと考へる、農家の賃銀を抑へ、米價も農民の希望する目標に達しないと致しますならば、肥料に付ても亦同樣に之を抑へて、之に順應すべきであると思ひます、肥料を半分に値下を致しますことを前提としないで、農民の供出の促進は無理であると私は思ふ、此の際農林大臣は、農民に對して、肥料は値下すると云ふことをはつきりと確約を御願ひしたいものと存じますが,如何でございませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=31
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032・膳桂之助
○膳國務大臣 肥料價格の問題でありますが、最近工業生産品が、勞銀――是も亦食糧問題に關係のあることでありますが、勞銀の異常な昇騰、又諸材料等の異常な昂騰に依りまして、生産費の値上りの爲に工業生産品が相當騰貴して居りますことは、大變殘念な状態であります、是は生産の増強を圖り、又一方には生活の安定を圖ることに依りまして、徒らに焦燥的に、合理的でない賃銀が決まると云ふやうなことも自然と抑制されることと存ずるのでありまして、さう云ふ點に於て生産費の低下は十分考慮せらるべきものと存じて居るのであります、具體的の肥料の問題、是は米價が如何に定まるかと云ふことに依りましては、やはり相當考慮しなければならぬ問題と存じて居りますが、單に然らば生産費の償はないものを安くすると云ふことも、人工的には出來ませぬ、或はそこに國庫の補助と云ふやうな問題も起きるかも知れませぬ、併し國庫の補給金に依りまする物價の調整と云ふやうなことも、國庫の財源にも制限がある、又全體から考へれば餘り面白いことでもありませぬ、是もさう一概にどうすると云ふことを此の際明言することは出來ないと存じます、併しながら安定本部と致しましては、米價が如何に定まるかと云ふこと、是は將來の肥料とか、或は農機具と云ふやうなものの價格と關聯して考ふべきものと存じて居ります、左樣な意味で目下考慮は致して居りますけれども、お尋のやうに、何圓なら何をどうすると云ふやうなことに付きましては、此の際何とも申上げられませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=32
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033・佐竹晴記
○佐竹委員 農林大臣は如何でございませう、曾てより農民に對しては非常な熱情を以て臨まれて居りまして、肥料値下に付ては度々其の口吻を洩らされて居るやうに承知致して居ります、私は此の法案を審議するに當つて、是非共農林大臣より農民に對してはつきりした言明を承りたいものと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=33
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034・和田博雄
○和田國務大臣 肥料を半分に値下すると云ふ言明は私としても出來ないのでありまして、是は只今安定本部長が仰せられましたやうに、斯う云ふ肥料等の生産財に付きましては、それ等のものが農業の經營方面から言ひまして、非常な負擔になりませぬやうに、我々としては出來るだけ努力すると云ふことを申上げる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=34
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035・北政清
○北(政)委員 一寸關聯して……只今の佐竹さんの御質問に對して、肥料を半分にすると云ふことは出來ぬと言はれる、假に此頃評判の、米六百圓と云ふやうな相場が決まると致しますと、それは今の硫安で出來る積りでやつたのか、私は半分にしても三分の一にしても出來ないと思ふ、又過般本會議に於きまして、膳國務大臣は、米價を決めてそれに依つて他の物價を決めるのだ、斯う言つて居られる、然らば若し米價が決まりますと、今日政府が豫算として出しました人件費を、半分にでも三分の一にでも削ると云ふことを考へて居るか、一體農民の勞銀を幾らを以て正しいと今考へて居られるか、私は何時も言つて居るやうに、給仕でさへ十圓以上だ、此の給仕と考へるならば、何にも無理な問題でない、斯う考へると分る、さうすると米が六百圓や七百圓乃至千圓のものか、分り切つた話、若し之を六百圓とか千圓にするなら、現在の給料を下げ得るか、下げ得ないならば、政府は公正な勞働賃金と云ふならば――私共は政府の豫算は、公正であらうとなからうと、之を標準にするより致し方がない、然らば、之に適應させるか、若し之に適應させないとすれば、所謂公正な價格で以て私有財産を補償しないで取ると云ふことになる、それは今度の憲法では認めない、然らば膳國務大臣は憲法を否定するのか、どつちか、又今の硫安に致しましてもさうです、硫安を一體二十六倍も一遍に上げなければならぬと云ふ、そんな産業があつたものか、此の間私は工務局長に問うたのだが、そんなことはあり得ない、今中金から五億なり七億なりの何をして、さうして斯樣な價格は下げられるか下げられぬか分らぬ、却て農民から苛斂誅求をする、農民から搾取をする、此の爲に融資をさせようと云ふならば、私共は絶對承服出來ない、ここの肚を決めたいのであるが、一つ膳國務大臣は、農民の勞働賃金は何を標準にして宜しいのか、官吏の給料は下げ得るか、農民の給料は二束三文にして、所謂公正な價格でなくても取り得るか、憲法を全く否定される肚があるのかないのか、此の點はつきり御答へを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=35
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036・膳桂之助
○膳國務大臣 農民の賃金を何處に水準を求めて置くかと云ふことは、中々是は通常の工業勞働者や、官廳或は會社に於きまする給料生活者と違ひまして、是が、農民が總て何か賃金に依りまする雇傭勞働者でありますれば問題は簡單でありますけれども、日本の農業の形態は左樣な一種の企業式のものとも存ぜられませぬので、茲に賃金に關すると言ひますか、農民の報酬に對しまする觀念は、工場に於きまする勞働者や、又官廳會社に於きまする勤勞者のものとは、少し違へて考へる必要があるのではないかと思ふのであります、それから又一方、農民がさう米價の高いことを欲するかどうか存じませぬが、假に千圓とか、千二百圓に定めて、結局其の生活費を本にしますれば、やはり工業勞働の勞銀も相當に上つて參る、隨て又工業生産品も上つて參る、是は循環的に原因が結果となつて廻るものであります、何處かに一つの水準の根本を置かなければならぬ、是は少し私の個人的の意見みたいなことになりますけれども、私は農民が米價を決める際には、要するに茲に一つの中堅のものがあつて、國民相率ゐて行くと申しますか、詰り米價と云ふものに對しまする觀念が、普通の商品に對する觀念よりも、寧ろそこに崇高なる一つの信念を盛つた價格を以て定めて、之に依つて總てのものを率ゐて行くと云ふやうな觀念が、從來も加はつて居り、又加はつて行くべきものではないかと存ぜられるのでありまして、結局農民の勞苦の對價、是は自らそこに普通の工場勞働者と違ひまして、食糧の關係等に於きましても全く違ひます、要するに何か一つの中心になるべきものがありませぬければ、循環的に物が上る譯であります、物價廳と申しますか、經濟安定本部と申しますか、一つ茲に中正な一つの米價と云ふものを定めて、之に基いて總ての一群の物價群をば規整して參りたい、斯樣に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=36
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037・北政清
○北(政)委員 只今の御答辯は洵に意外に思ふのですが、農業勞働賃金と云ふものは、他の俸給や其の他とは違ふ、言換へますれば、農民は特殊待遇だ、日本人でないのだ、洵に無禮極まる、何事であるか、官廳の給料取の收入と農民の收入となぜ差を付けなければならぬか、ここなのです、先入主が違つて居る、給仕の勞働賃金、勞働「エネルギー」とどれだけ違ふか、農民は違ふのだ、農民は憲法以外だと言はれる、私は實に憤慨に堪へない、斯樣な考へ方を以てしますならば、物價と云ふ如き決まり切つたものである、一つも誠意のないものである、農民だけは米を食つて居て宜しい、はつきりして下さい、如何に完全に出來ても、農民の勞働賃金と工場の勞働賃金と違ふ、一段歩にどれだけの勞働者が、どれだけの人間が掛つて居ると云ふことは分り切つて居る、農民は十五時間働いても、六時間より働かない女、給仕と一緒であると云ふ、そんな馬鹿なことが何處にある、今日の食糧が圓滑に行かない原因はここにある、私はすらすらと農民が喜んで食糧を出すやうにしたい、さうして是が闇値でやれぬやうになぜしてやらないか、それをやらないで經濟安定なんて絶對に出來るものではない、私共は、なぜ農民は二束三文の値で宜しい、農民の勞働賃金は他のものと比較出來ぬ、都會の者にそれだけ優越感を與へなければならぬのか、農民をそれだけ劣等に扱はなければならないか、「マッカーサー」司令部の指令でも來て居るか、奴隷的待遇から除け、勞働の成果を均等にやれと云ふ命令が來て居る、此の命令を膳國務大臣は反古にしてやらう、斯う云ふ御考へである、又米を水準として崇高な考へで他のものを決める、斯う言はれますが、今の給料は下りますか、あなた方は米を六百圓にしたら、今の給料を三分の一にするか、政府の豫算を三分の一に打切るか、政府の給料だけは其の儘取つて居る、農民だけは崇高である、何處が崇高であるか、實際人を馬鹿にして居る、あなた方が農民を斯くまで奴隷視し、斯くまで馬鹿にして居る所に、今日の日本の經濟は安定せぬ、私共は本當にさう云ふ言葉で強く言はなければならぬ、實に私は甚だ憤慨に堪へぬ、酷い、大體の考へ方がさうだから農林省と意見が一致して居るの、一致しませぬのと云はれるが、それは嘘の皮である、そんな筈はない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=37
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038・膳桂之助
○膳國務大臣 大變何か私の答辯を誤解なすつたやうでありますが、私は斯う云ふ考へで申しました、現在の米價の決定となるべき農家の勞働の代償、是は單純な工場及び官廳其の他の、所謂給料生活者とは違ふ、何となれば、一方は自ら食糧を之に依つて同時に得るものでありませぬ、是が總ての收入の源でありますけれども、農民の場合に於きましては、俸給生活者或は賃金生活者と云ふよりも、一つの企業の主體でありまして、やはり自分が一つの企業から出まする損益の計算の主體でもありますが、單純な賃金勞働者や、或は俸給生活者と云ふやうなものとは少し觀念が違ふ、一つの勞働の對價と云ふものが、農民に對して違ふ、其の違ふと云ふ意味は、優劣の違ひではありませぬ、全くの一つの、例へば茲に中小工業者が自ら企業をする場合に、自分の企業します、營業します際に、自分の商品を賣る場合に、商品の價格を決める際に、或は商品の賣買をする際に、自ら一つの賃金生活者、或は俸給生活者としての賃金を假定して、そこに計算をすべきものではなくして……(北(政)委員「それ以上計算して居ます、もつと暴利を取つて居る」と呼ぶ)それは結果に於ては利益のあることもありませう、併し私は其の點に於て、左樣に信じて居ります、是は別に農民に對する侮辱でも何でもない、寧ろ一層の尊敬を以て考へて居るのでありまして、如何樣に御解釋になるか知りませぬが、私の言ふのは左樣な意味ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=38
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039・北政清
○北(政)委員 私は今のやうに口先だけで、侮辱して居るのでない、金はやらぬが、現物は安定して居ると言はれることは、餘りに酷いと思ふ、私共は斯樣な考へ方が日本の農政の全部を誤り、今日の食糧を危胎に入れて居ると思ふ、茲に深く思ひを致す、硫安は一晩に二十六倍上げる、米は倍にさへ上げ兼ねる、二十六倍に一遍に上げなければならぬ企業が成立ちますか、そんなものが世界の何處かにありますか、それを勇敢にやつて居る、給料は今年の春から幾ら擧げて居るか、あなた方は豫算を幾ら組んだか、農民の勞働は別だ、お前方は二束三文で宜い、斯う云ふやうな考へでやつて居る、職員も勞働者も、少し騷げば其の言ふ通りにやつて居る、農民だけは二束三文で踏付けて居る、企業であるが故に、勞働收入以上でなければならぬ、それが勞働收入以下だと云ふことはどう云ふことでせう、さう云ふことは斷じてない、てんきり農民を踏付け切つて居るから、さう云ふことになる、私は是れ以上議論を言はない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=39
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040・佐竹晴記
○佐竹委員 先程私が御尋ね申上げました通り、肥料に付ては、例へば硫安では實に二十七倍と云ふ暴騰を認めて置きながら、他面に農民の米價は六百圓で抑へやう、又經濟安定本部ではそれから下つても宜しいと云つたやうな氣持の現はれて居りますことが、否定し難い事實上にあることを、國民は強い關心を持つて監視を致して居る、六百圓を割るが如き事實があつたと致しますと、重大なる問題である、更に供出に重大なる影響を及ぼすであらうと云ふことを、深く御勘考を願ひたいと同時に、他面若し不滿足ながら六百圓程度で抑へる外にないと云ふことになれば、只今申上げますが如く、肥料の如きは少くとも之を半分以下に値下をすると云ふことの、肚を決めて御掛りを願ひたいと云ふことを、特に私は此の際申上げて置きます、何か之に付て更に御意見があれば……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=40
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041・膳桂之助
○膳國務大臣 もう一應發言を求めます、賃金の問題に關聯しまして又更に御意見があられたやうでありますが、勿論物價廳でも左樣でありますが、安定本部でも、米價を或る水準に考へました其の基礎には、今私の申しますやうに、少し勞務の對價に對する觀念は精神的にも違ふ點がありますばかりでございませぬで、片一方は、自分で米作しつつ、食糧に付ては、普通の工業勞働者よりも、或は官廳會社の給料生活者よりも、計算比較すべからざる低い程度のものであると云ふ關係がありまして、そこの間に色々違ひがあります、それでも、米價を別に考へました際に、全く勞務の代償を無にして考へた譯でもありませぬ、考へやうに依りますとまだ色々の考へやうがありますが、大體一人の勞銀を、自らの耕作及び堆肥の製造等に對しまして、食糧は含まれて居るものとして一日十七圓乃至二十圓位の程度に見込まれて居るのでありまして、其の外に食糧は自ら其の中から支辨しなくても自然に主要食糧が得られると云ふやうな計算から致しますれば、是が別に工業勞働者や何かと……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=41
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042・北政清
○北(政)委員 勞働者も農民も食ふ米は一緒ぢやないか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=42
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043・膳桂之助
○膳國務大臣 いえ、さう云ふ意味ではありませぬ、相當見込まして居るのでありまして……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=43
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044・佐竹晴記
○佐竹委員 私は其の點を要求して居るのではない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=44
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045・膳桂之助
○膳國務大臣 私は御要求があつたので答辯申上げて居ります、先程の點に付て重ねて申上げて居るのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=45
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046・佐竹晴記
○佐竹委員 其の點は先程問答は濟んで居る、委員長から私に發言を許して居る、少しあなたは出過ぎて居る、問に對して答へたら宜しい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=46
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047・膳桂之助
○膳國務大臣 いや御質問があつたから御答辯を申上げて居るので……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=47
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048・佐竹晴記
○佐竹委員 私は其の點を質問しはしない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=48
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049・膳桂之助
○膳國務大臣 あなたの前の御質問に御答辯申上げて居る、あなたの質問に對して答辯を申上げて居るのではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=49
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050・佐竹晴記
○佐竹委員 其の點は打切られて居るぢやないか、私の質問に對して答辯しなさい、私の質問に對しては一言も言はずに、他のことを答へて居るぢやないか、私の質問に對して答辯しなさい、答辯があると言つてあなたは立つたぢやないか、私の質問に對して答辯はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=50
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051・馬越晃
○馬越委員長代理 御答辯はありませぬか……政府委員の方から佐竹君の質問に對する御答辯があれば……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=51
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052・膳桂之助
○膳國務大臣 それぢや私から――肥料の價格が下げられるかと云ふ御質問、是は先程申上げましたやうに、此の際肥料の價格を、米が斯く斯くであれば斯く斯くに下るかと云ふやうなことは申上げられませぬ、併し米價が如何樣に定まるかと云ふことに依りまして、肥科等の價格に付ても考慮をする必要がある、斯う考へて居ると先程申上げましたが、左樣に御諒承願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=52
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053・佐竹晴記
○佐竹委員 商工當局は御見えになりましたでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=53
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054・馬越晃
○馬越委員長代理 御見えになりました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=54
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055・佐竹晴記
○佐竹委員 それでは先程の第三の續きに付て、商工當局の御所見を承つて置きます、先程の御答辯に依りますと、政府が豫定を致しました肥料の生産數量に足りなかつたのは、結局生産設備の老朽に基因するのだ、生産者の熱意が足りなかつた譯ではないと云ふ御答辯がありました、併し私其の調査する所に依れば、或は會社の如きは、硫安一俵と蠶豆二俵とを交換して居ります、又或る會社では硫安を造らずに洗顔「クリーム」を造つて居る、「クリーム」を造る方が硫安を造るよりは十倍も儲かるのです、又或る會社では、勞働者の勞銀の一部に生産の硫安を與へまして、それが横流しを助長し、非常な弊害を流して居る事實がございます、當局が御否定なさいますならば具體的事實を私共は擧げませう、斯う云つたやうな事實に依つて之を觀察致しまするのに、こんな工合では豫定の成績を擧げ得られやう道理がございませぬ、斯くの如き事態を放任して居るのは、政府當局の監督不行屆の結果であると言はれても辯解の辭はなからうと存じます、肥料の一元化が叫ばれ、商工、農林兩當局は其の一方に監督權を纒めたいと盛んに望んで居られるやうでありますけれども、どちらに一元化されやうともこんなことでは駄目であります、今少しく根本的な決意と用意なしには到底所期の目的を達することは出來ないと考へます、政府は果して將來に向つて、其の言明の如く生産増強を確保し得る確信がございませうか、商工當局の御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=55
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056・小林かなえ
○小林政府委員 大臣が他の委員會へ出て居りまして、どうしてもこちらへ參れませぬので、私から代つて只今の御質問に御答へ致します、佐竹君の御指摘の如き、肥料會社に是まで生産に努力しないで、却て他の方面に力を入れて居ると云ふやうなことが決してないとは申されませぬ、さう云ふこともあつたであらうと思ひますが、さう云ふことは是から十分一つ注意を致したいと思ひます、今囘臨時物資需給調整法も御承知の如く近く施行されることにになると思ひます、此の中には生産命令を出すことも出來るやうに強い權力が與へられて居るのでありますから、經濟安定本部とも能く力を協せまして、何を申しましても、肥料が主要食糧品の増産に第一の重要なる問題であることは申すまでもないことであります、又農民が非常に國家の爲に努力をして居るに拘らず、増産を圖れないと云ふのも、肥料の方面に原因があると云ふことも御指摘の通りでありますから、十分一つ政府部内に於てもお互ひに、協力致しまして、佐竹委員の御指摘のやうなことのないやうに、目標通りの増産が出來るやうに十分努力して參りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=56
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057・佐竹晴記
○佐竹委員 商工大臣は屡屡肥料は豫定の通り行つて居ると言明せられて居ります、併し事實は全く之に相違致しまして、其の通り行つて居ないと云ふことを、數字が明確に之を示して居ります、政府の目論見或は割當等が實現を致しませず、只今のやうな事態を一面惹起して居ると致しまするならば、到底、私共國民はもう政府の言明を信頼することは出來ませぬ、政府は農民の米の收穫豫想は嘘であると仰しやる、併し農民は言下に政府御自身の肥料に對する言明は嘘ではないかと言うて居るのであります、こんなことで本當に旨く國家の運營が出來て參りませうか、供出不振の原因を責むる前に、肥料生産配給に關する政府監督の至らなかつたことを、先づ政府自らが省みなければなるまいと思ひます、之に對して農林大臣は一體どう御考へになるか、農林當局の御所見を承つて置きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=57
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058・和田博雄
○和田國務大臣 肥料が計畫通り行きませぬことに付きましては、私共も非常に殘念に思つて居るのでありまして、責任を痛感するのでありますが、私は此の色々の肥料工業、殊に戰後の肥料工業に付ては、色んな理由がやはりあると思ひます、只今政府委員が述べましたのも一つの理由でありますし、又石炭の炭質が下つて來まして、政府としては石炭を優先的に肥料工業の方へやつて居りまするけれども、尚且つ其の復興其の他の黠に付ての進捗が捗々しくない、又佐竹さんの御指摘のやうに、或は會社に依りましてはそれ等のこともあつたと思ひます、さう云ふ事情で旨く行かなかつた點もあると思ひますが、是は何と致しましても、肥料の生産が、丁度石炭と同じやうに、日本の經濟復興の基礎をなして居るものと私は考へて居りまするので、將來に亙つての計畫と云ふものが單なる「ペーパー・プラン」でなく、實際上それが達せられまするやうなことに付きましては、どうしても、只今商工省の政務次官が言はれました、生産命令と云ふやうなことも一つの手でありまするが、さう云つたやうな、何か一つ、生産する者の方も國冢が保護助長するのであるから、やはりそこに本當に責任を感じて、責任生産數量だけは必ず出すと云ふことに是非持つて行きたいと思ひます、監督の不行屆と云ふやうな點は、例へば同時に相當肥料が流れて居るぢやないかと云ふやうなことを能く聞くのでありまして、それは或る程度は事實であります、それ等の點に付きましては農林當局としましては、屡屡それを取締る通牒も發し、又取締の手を打つて來て居る譯でありますが、事實それの成果の擧りませなかつた點もあるかと思ひますが、さう云つたやうな點に付きましては、是は十分生産の末端から配給の何に行きまするまで、一つ是非將來さう云ふことのありませぬやうに、一元の政策と云ふものをしつかりと決めまして、やつて行きたい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=58
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059・佐竹晴記
○佐竹委員 私は此の程度で打切りまして、尚ほ只今の答辯を斟酌して私其の態度を決定したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=59
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060・馬越晃
○馬越委員長代理 それでは本日午後一時半から討論、採決を致したいと存じます、之を以て休憩致します
午後零時三十二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=60
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061・会議録情報2
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午後一時五十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=61
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062・馬越晃
○馬越委員長代理 午前中に引續きまして會議を開きます、是より農林中央金庫法の一部を改正する法律案を議題として討論に付します、討論は通告順に依り之を許します――坂本實君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=62
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063・坂本實
○坂本委員 私は日本自由黨を代表致しまして本案に贊成の意見を表明し、併せて二、三の希望を申述べて置きたいと存じます
終戰後に於ける産業界、金融界の混亂を速かに整頓して、今後の國民の鞏固なる經濟活動の基盤を確保せしむることは最も緊要なる問題であります、此の問題の解決に依つてこそ、初めて民主主義にして新たなる希望に燃える平和産業の勃興を促し、日本再建の爲の生産力を向上し得るのであります、斯かる意圖の下に今囘農林中央金庫法の一部を改正して、現在の金融事情に即應する態勢を執り、業務上の制限を緩和して、臨機に適切なる措置を講じ得ることとし、積極的活用の途を開くに至りましたことは、蓋し當然の施策と存ずる次第であります、農林中央金庫に於きましては、從來長期資金の貸出が出來なかつた爲に、例へば長期に亙ります肥料工場の設備資金や、水産業の事業資金の如きを貸出す爲には、銀行其の他の金融機關等を通じてでなければ其の目的を達成せず、其の間徒らな時間と手續の空費があつたのでありまして、今囘の改正に依つて是が救はれますならば、甚だ結構なことと申さねばなりませぬ、唯此の場合考へられますることは、農林中央金庫は其の本來の性格上、自ら一般銀行業務と當然區別すべきものでありますが故に、斯かる長期の貸出を致すことに相成りますれば、在來の金融機關とより能く協調して、相互に無用の軋轢や摩擦を生じないやうに、格別の御配意を煩はしたいと存ずるのであります、更に又長期貸出の對象となるべき農林水産業は、肥料製造を初め農村電化や工業化等の開發事業にも及び、水産業、水産加工業等相當廣汎多岐に亙るものと考へられるのでありまして、其の事業の持つ國家的意義を檢討して、特に緩嚴宜しきを得、一定の方針の下に最も愼重にせらるべきであります、隨ひまして中金は其の特質から致しまして、無定見に放漫な貸出を致しますことは嚴に警戒を致すべきでございます、隨ひまして中金の運營の衝に當ります役員は、廣く天下の人材を求め、民主的に選任されました所の、練達有能の士に依つて行はねばならないと存ずるのでありまして、當局の指導上に付きまして特別の御留意を希望するものであります
最後に、長期貸出は從來の短期貸出の場合と異りまして、其の事業の將來の見透しが非常に困難であり、少からず危險も豫想されるのでありまして、必要に應じては擔保も取り得るやうな堅實な考へ方が望ましいのではないかと思ふのであります
以上、要するに趣旨に於きましては十分贊意を表するものであります、唯此の實施に當りましては、細心の注意と周到なる用意を希望しまして、私の討論を終る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=63
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064・馬越晃
○馬越委員長代理 苫米地義三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=64
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065・苫米地義三
○苫米地(義)委員 私は日本進歩黨を代表致しまして、本法改正案に對し左の希望條件を附して贊成するものであります、即ち
一、本法第十五條の餘裕金運用に關しましては、餘裕金運用委員會の如き適當なる諮問機關を設けて資金運用の愼重を期すべきこと
二、餘裕金の運用に當り、企業投資の如き危險率の多いものは、本金庫の性格に鑑みまして成るべく之を避くべきこと
三、役員の構成を速かに民主化すべきこと
此の三箇條であります
本法第十五條は、餘裕金の運用に對しまして特に愼重を期すべき制限條項であります、然るに今囘の改正は、此の制限を緩和して資金の運用範圍を擴大するものでありますが、本金庫の資金なるものは零細なる農民の貯蓄資金の集積せるものでありますから、是が預託、運營に對しましては最も愼重に、細心の注意を拂ひ過誤なきを期さなければなりませぬ、然るに本改正案に依りますと、從來の組合金融の範圍を一歩前進して、農林、水産業に關する事業を營む凡ゆる會社に融資することが出來るのでありまして、其の經營は複雜多岐に亙ることでございまして從來の金融金庫の持つて居る知識經驗のみでは、果して適正な運用が出來るか否か懸念なきを得ないのであります、仍て斯かる方面に對する資金運用には各方面の知識、經驗を有する者及び本金庫に重大なる利害關係を有する者等を以て組織する、餘裕金運用委員會の如き諮問機關を設置し、愼重なる運營を爲すべきだと思ふのであります
第二に農林大臣は、先般第十五條第一項に依つて組合團體の關聯事業に對して企業投資を行ふことは差支へないと申されましたが、右條項は利廻、條件の判明せる有價證券の引受けを意味するものでありまして、損益不明の新企業に直接投資すると云ふ意義ではないと思はれます、のみならず本金庫の性格上から考へましても、危險率の多い企業投資の如きは成べく之を避けなければなりませぬ、尤も各種加入團體が自ら企業し、又は企業に參加する場合には、其の團體に融資することは固より當然でありますが、本金庫が直接企業投資を行ふことは愼しむべきだと思ふのであります
第三は、本金庫の運營に當る役員は、從來多く官僚出身でありますが、時代の推移に即應しまして、其の構成には民間出身者を成べく多く加へ、又前項申上げました本金庫に利害關係を持つて居るやうな方を入れまして、之を民主化せねばならぬと思ひます、今般本法の改正に依りまして其の運營の範圍が擴大されました機會に、之を斷行すべきだと存じます、以上の條件を附しまして本法改正案に贊成致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=65
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066・馬越晃
○馬越委員長代理 佐竹晴記君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=66
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067・佐竹晴記
○佐竹委員 私は社會黨を代表致しまして意見を開陳致します、政府は本案に依る融資が適正且つ最も有效的に運營されますやう十分監督を嚴重に致しますると共に、肥料の生産増強を確保し、其の言明に背かれないやう十分注意あらんことを望みます、又政府は肥料國營準備會を速かに構成し、國營の方途に向つて前進されんことを希望し、且米價を速かに決定すると共に、是れと均衝を得るやう肥料の値下を斷行せられんことを期待して、茲に本案に贊成の意を表明する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=67
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068・馬越晃
○馬越委員長 米倉龍也君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=68
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069・米倉龍也
○米倉委員 私は協同民主黨の立場から意見を申上げたいと思ひます、本案は農林中央金庫の根本的の改善を急速に實現しなければならない現状に於て、何等此の點に觸れて居ない、極めて不滿足なものではありまするが、現在我が國の金融機關が一般に非常に弱體化されて居り、資金供給力を持たない現況から見まして、日本産業經濟再建の上に、農林中央金庫の保有する大なる金融餘力を、中央金庫本來の使命から逸脱しない範圍内に於て積極的に活用することは、我が國の現段階にあつては、大局から見て已むを得ない必要な措置であると云ふ觀點から一應本案に對して贊成をするものでございます、併しながら先般來本委員會に於て當局が屡屡言明致されました如く、近く農林中央金庫法は全面的に改正をすべきものである、其の改正の企圖して居ると云ふことを申されて居りますので、其の點に私は絶大な期待を持つものであります、さうして其の改正は、何處までも農林中央金庫をして民主的な金融機關たらしめなければならないのでありまして、此の場合其の線に沿つて、當局が十分考慮を拂つて戴きたいと思ひます、私は此の點から一、二希望を申述べたいのであります
第一は、即ち中央金庫の出資金中政府出資は、今後全部他の民間團體に委譲してしまふ、全く中央金庫をして農山漁村の團體の相互組織體として、眞に民主的な機關たらしめなければならぬと存ずるのであります、此の政府が持つて居りまする出資、所謂出資をせられて居ると云ふこと、それは歴史的には必要であつたかも知れませぬが、今日は其の必要はないのでありまして、而も其のことがあるが爲に、中央金庫の總ての非民主的な事柄がそこから胚胎するものだと私は思ふのであります、此の點は今後改正の際に十分考慮をして戴きたい、是が第一點であります
第二點は、役員の選任は政府任命でありますけれども,今後は構成員の選擧に依つて選ばれると云ふことに改正をせられなければならないのでありまして、此の點が中央金庫をして民主的な機關たらしめる根本であらうと存ずるのであります、此の點も十分考慮して戴きたいと思ひます
次に、是は法律改正には直接關係はないことでありますけれども、今囘の改正に依つて、肥料企業其の他の農山漁村に關係する各種の企業に、多少長期の融資が出來ると云ふことに相成りました、現在政府の御考へになつて居る所は、肥料企業と云ふものに重點を置いて居るやうでありますが、此の場合、何處までも中央金庫の資金と云ふものは、農山漁村民の零細な資本を集めた其の集積でありますから、それの運用と云ふものは細心な注意をしなければならない、此の點が動もすれば放漫に流れ易い、さう云ふことに相成つては遺憾でありまするから、此の點は政府に於きましても十分中央金庫の業務運營に付て監督をし、又それに對する責任を御持ちにならなければならないと思ひます、尚ほ聞く所に依りますると、今囘出來まする復興金融金庫も肥料企業に融資をすると云ふやうなことでありまするが、是は本委員會で色々御尋ねをする時分には、復興金融金庫法案が提案されて居りませぬので、其のことが分りませぬでしたが、今後肥料企業に復興金融金庫も亦投資するんだと云ふことでありますれば、其の點農林當局に御尋ねしたいのでありまするが、此の際若しさうでありますれば、同じ肥料企業に對する取扱が二重になつてはどうかと思ふのであります、農林中央金庫の投資も、又復興金融金庫の投資も、同じ條件の取扱を以て、若し其の投資に依つて損害のあると云ふやうな場合には、國家はそれに對し、兩者共同じやうな補償をすると云ふやうな責任を御持ちにならなければならないのではないかと思ふのであります、斯う云ふ點を考慮せられたいのであります、以上を要望致しまして本案に贊成するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=69
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070・馬越晃
○馬越委員長代理 野本品吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=70
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071・野本品吉
○野本委員 國民黨を代表して、以下簡單に申上げて贊意を表したいと思ひます、農林中央金庫に集まる金が、勤勉純良な農山漁村民の汗の結晶であると云ふ嚴肅な事實を再確認して、特に此の二點に關しまして強い希望を附しまして、贊意の表する次第であります
其の一つは、運營の全般に亙りまして民主的方法を採用すると共に、政府は全國農山漁村民に對する重大なる責任を感じまして、管理運營の萬全を期して戴きたいと云ふことであります
第二は、農地制度の革新に伴ひまして、今後自作農の健全なる發達育成の爲に、農村の生産及び文化各方面に亙りまして、なすべき幾多の重要施策が控へて居ると思ふのであります、中央金庫は其の本來的な性格に立脚しまして、今こそ積極的に、農村の爲に活溌な運營をなすべき萬全の準備を整へて掛るべきである、以上二點の希望を附しまして本案に贊意を表します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=71
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072・馬越晃
○馬越委員長代理 北政清君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=72
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073・北政清
○北(政)委員 私は不本意ながら本案に三條件を付けて贊成しようと思ふのであります、一つは先程各派からも御話がありましたが、中央金庫の完全なる民主化を急速になすこと、それは今政府に役員の任免權があるのであります、之を完全な組織の下に於ける委員の選擧に依る役員にすること、次は今囘の主な目的であります肥料工業への貸付であります、是は中金本來の性質と非常に趣きを異にして、一つの金融機關化せんとして居るのであります、併しながら日本の現状は、肥料の急速なる増産を必要とする上に於て已むを得ず是は認められたのですが、之に付きましては、國家が必要としてなすのであるから、當然國家が補償し、其の損失を農民に負擔せしむべきものではないと云ふことが一つ、更に先程來の政府の説明に依りまして、此の資金も日本肥料統制會社をしてなさしめると云ふのは大きな誤りでありまして、是はどうしても、どうせ融通を致しますならば、工業經營者に直接貸すべきもので、又貸制度を採るべきものでは斷じてない、殊に日本肥料は御承知の通り戰時統制機關でありまして、是は一日も早く撤廢すべきものであります、是非とも廢めさせなくてはならぬ、又肥料を消費する者に對して重大な中間搾取をなして居る機關であります、それ故に之を速かに解決する上に於ては、之に貸付けて更にそれからの貸付を行はうと云ふことは全然誤りである、之を絶對的條件と致したいのであります、以上三つの條件を附しまして、不本意ながら贊成致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=73
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074・馬越晃
○馬越委員長代理 討論は終局致しました、是より採決致します、原案に贊成の諸君は御起立を願ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=74
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075・馬越晃
○馬越委員長代理 起立總員、仍て本案は原案の通り決定致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=75
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076・北政清
○北(政)委員 今の絛件に付きましてはどう云ふ御採決になるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=76
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077・馬越晃
○馬越委員長代理 それはあなたの方の黨の希望條件として取扱ひたいと思ひます、左樣御承知を願ひます
委員長に代りまして一言御挨拶を申上げたいと思ひます、曩に食糧緊急措置令承諾を求むるの件の委員會が設置せられまして以來、中央金庫法の一部を改正する法律案も亦本委員會に併託されました、八月上旬の盛夏の頃より、十八囘に亙りまして長時日の間愼重御審議下さいまして、それぞれ適當なる御採決を下さいましたことを深く感謝致します、尚ほ政府委員各位に於かれましても、常に御懇篤なる御答辯を願ひ、本委員會をして十分なる審議をなさしめられましたことを深く感謝致す次第であります、以上簡單でありますが御挨拶を申上げます、是にて散會致します
午後二時二十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01819460927&spkNum=77
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