1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
生活保護法案(政府提出)
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昭和二十一年八月一日(木曜日)午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 庄司一郎君
理事 小柳冨太郎君 理事 齊藤行藏君
理事 原捨思君 小池政恩君
富田ふさ君 山口好一君
大島定吉君 坪川信三君
中山たま君 奧村又十郎君
澤田ひさ君 松屋トシ君
松谷天光光君 東井三代次君
田中たつ君 川野芳滿君
同日委員日比野民平君及び久保猛夫君辭任に付其の補闕として竹内歌子君及び田中たつ君を議長に於て選定した
出席國務大臣
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
復員事務官 荒尾興功君
復員事務官 山本善雄君
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生事務官 勝俣稔君
厚生事務官 葛西嘉資君
引揚援護院次長 伊藤謹二君
厚生事務官 加藤清一君
農林事務官 坂田英一君
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本日の會議に付した議案
生活保護法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=0
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001・庄司一郎
○庄司委員長 是より開會致します、此の際委員長に於て厚生大臣に極めて簡單な質疑をさして戴きたいと思ひます、此の席より此の儘御許しを願ひます、本日の新聞紙上の報道に依れば、渉外局發表として、總司令部は七月三十一日日本政府に對し、米國人が日本の慈善團體、即ち各種の社會事業等に對し金品の寄附が出來得るやう特別送金等の便宜を設けた旨の通知があつたと報道されて居ります、而して此の件に關し、總司令部金融課長ウォルター・K・ルカウント氏は日本の社會事業、慈善事業宗教、教育等の諸團體に對する米國人の寄附送金の爲め、特別の便宜の措置を講ずることとなつた、さうして其の送金等の具體的便法をも發表されて居るのであります、洵に感謝に堪へぬ所でございます、是れ米國建國當初よりの「ピュータン」的信、望、愛の人道的精神の發露であり、深く米國民の厚意に深謝すると共に、速かに其の認可を與へられ、凡ゆる便法を講ぜらるる米國政府竝に總司令部に對して心からなる國民的感謝の意思を表はしたいのであります、此の際日本政府は此の厚意に對する、特に政府の厚生大臣としての御所感如何、又此の聖なる淨金等の贈物に對して、國内に於て其の受入態勢の完備等に關し、此の後公正なる傳達等の用意果して如何、此の際厚生大臣の確信と御所見を拜聽したいものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=1
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002・河合良成
○河合國務大臣 只今委員長からの御報告の通り、米國からの寄附に對しましては洵に政府としても感激して居る次第でありまして、是は國民全般と共に、米國及びG・H・Qに對して深甚なる謝意を捧げたいと思ひます、此の問題に對しては「ルカウント」氏からの發表の如く、色々適當なる金融措置などを講じて下さるさうでありまして、こちらの受入態勢としましては民間側から委員を作りまして勿論G・H・Qと緊密な聯絡の下に盛上るこちらの民間の總意に依つて之を受入れまして、完全に寄附の目的が浸透して一つの間違ひもなく行くべき所に行くと云ふことに付て萬全の措置を講ずる積りであります委員長の只今の御發言に對しまして、我々は謹んで茲に米國及び司令部に對して謝意を表する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=2
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003・庄司一郎
○庄司委員長 此の際御報告を申上げます、即ち新政會の久保君が田中たつ君と委員を御交代になられた旨の申出があり、只今事務當局より其の旨公式に通報に接しました、仍て田中君を新政會に於ける委員として御紹介申上げます、尚ほ此の際田中君の御承諾を得ましたので、本日冒頭の質問は松谷委員に御願ひすることになりました──松谷委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=3
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004・松谷天光光
○松谷委員 質問に入ります前に一言御願ひを申上げて置きます、只今までの質疑應答を拜聽致して居りますと、御當局の御答辯は洵に消極的であり、質問の焦點を外された御答辯が多々あつたやうに感ずるのでございます、又各議員の熱烈なる質問に對しましても急所に參りますとぼかしておしまひになるやうな感を多々受けたのでございます、私共の質問は單に私共委員のみの質問にあらずして今日殺人的配給と殺人的「インフレ」物價に生きることに惱んで居ります是から要保護者とならんとしまする、八百五十萬乃至千萬を超えるかと思ひまする所の所謂國民大衆の切實なる血の叫びである又大衆初め御當局の御答辯に對しましては、唯一つの命の綱と之に期待を掛けて居るのでございまするから、又現在直接社會事業の第一線に携はつて居られまする社會事業の方々に致しましても、本審議の經過を全身全靈を打込んで見守つて居るのでございまするからどうか當局の御答辯は積極的に、より具體的に、而して愛情と誠意と誠實に溢れた、私共伺ひまして納得の行く御答辯を戴きたいと御願ひを致して置きます、既に各議員に依りまして質問されました點は之を省きます、或は又見方を變へて質問させて戴きたいと考へます、尚ほ一問づつ切りまして御返答を戴いて、それに質問を申上げたいのでございますが、時間の都合もございますから、大體大きく八つに分けて質問させて戴きます
第一は、本法案に對する概觀的の點を伺はせて戴きます、過日の長谷川委員の御質問に對する厚生大臣の御答辯に依りますると、本法案の根本精神は人道主義に基いて居ると言はれたのでありまするが、本法案の字句の解釋から見ますると、過去の所謂慈善事業的、救貧的な取扱ひから一歩も出て居らぬやうに感ずるのであります、是から要保護者とならんとする八百五十萬にも垂んとする厖大な要保護者の生活困窮に陷りました其の原因を、それ等自身の責任と解されて居るのでありませうか、或は戰爭の犧牲者、又は資本主義制度機構の缺陷に因る犧牲者であり其の責任は國家が負擔すべきものであると解釋して居られるのでありませうか、此の點を今一度はつきりと伺はして戴きたいのであります、今までの御答辯に依りますると、生活の困窮者は戰爭の犧牲者であり、國家の責任義務に於て之を保護しなければならぬと云ふやうな御答辯があつたやうに覺えるのでありますが、本法案の中には、國家の責任に於て一人の國民も見殺しにはしないと云ふ熱意も又其の具體策も窺へないと感ずるのであります
次に尚ほ厚生大臣の長谷川委員への御答辯のうちに、理想は全般的國家の責任であるが、過渡期に於ては本法案となつたのである、法規の形の上では是で十分である要は運營にある、尚ほ附加へられまして、憲法二十三條にも明記してあること故心配は要らないと云ふ旨の御答辯があつたやうに覺えるのでありまするが、舊觀念を脱却致しまして、民主主義への轉換期であり、理想は全般的國家の責任であると云ふのでございまするなら此の理想的徹底せる法律の作成こそ必要であり、過渡期であると云ふ言葉の下に於て、斯かる曖昧模糊としたものに止まる必要も理由もないと信ずるのであります、尚ほ憲法二十三條に於て「法律はすべての生活部面について社會の福祉、生活の保障及び公衆衞生の向上及び増進のために立案されなければならない」此の憲法の精神を具現致しました法律をこそ作成しなければならないと信ずるのでありまするが、本法案では憲法の精神にも十分に副ふたものではないと考へるのでございます尚ほ憲法二十三條を具現致しまする法律案と致しましては、現在本法唯一つであると考へるのでありまするが、さう致しますると、其の憲法二十三條の精神をも十分に具現することが出來ない法律作成に當ると云ふことは、是は憲法違反であると言つても過言でないと考へるのであります、尚ほ是れ程重要な法律案作成に當りまして、十分なる其の具體的なる積極的なる御答辯の得られないことは洵に遺憾とする所でございます、又大臣の御言葉にも、要は運營にありと言はれたのでございますが、運營も亦本法を基礎として初めて實施されるものでありまするから、國家の責任に於て國民の生活を保障すると云ふ、其の責任感を前文の中に明記して指導性を明かにすべきであると信ずるのでありまするが、此の點如何御考へでいらつしやいますか、又本法案の如き消極的な曖昧模糊としたものでは、國民を最下低、所謂「ルンペン」にまで追込んでしまひまして、其の追込んだ「ルンペン」になつた姿をして一定の處に連れて行き、謂はば飼殺しのやうな域を脱しないと信ずるのでございます、少くとも今日まで行はれて居りました保護施設の大多數に於きましてはさうであつたと信ずるのでありまするが、一度本法案が決定されました以上は、斯かる状態を助長するのであつてはならないと信ずるのであります、其の爲にも本法案を根本的に書直し、救貧的觀念から脱却致しまして、指導性あるものとなす必要があると信ずるのでございまするが、御當局は之に對しまして如何に御考へで居られませうか、此の點を伺はせて戴きたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=4
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005・河合良成
○河合國務大臣 只今松谷君からの御質問でありまするが、私及び政府委員の答辯は如何にも誠意がない、又曖昧だと云ふ御話でありましたが、私として是れ以上出來ませぬ、一生懸命やつて居る所です、人間は人間として、是だけの人間が是だけしか言へぬのですから、其の點に於て誠意は認めて貰はなければ困ります、それから曖昧と云ふ御話ですが、是は事柄に依つてどうもはつきり言へぬことがあります、それはもう世の中のことは皆はつきりして居るものぢやありませぬ、はつきり言へぬことがあるから、其の時にははつきり言はぬのが、是が確かなことであります、總てものは理想的に考へる譯に行きませぬ、私共として斯う云ふ點に付きましては「ベスト」と盡すと云ふことで、どうか御諒承を願ひたいと思ひます
それから本案の第一條に付て色色基本方針に付ての御質問がありました、是は言ふまでもなく人間の至情から發する人道主義に基いて居ります、此の人道主義が社會共存の本であります、是が憲法にも現はれ、此の法律にも現はれて居るのであります、此の點は一點の疑ひがないと思ひます、さうして是は決して慈善的のものではありませぬ、國家が義務として、責任として、斯う云ふ方面の保護をやつて行くと云ふことが、もう度度申上げました通り、此の法律の基調になつて居ります、それをなぜ明記せぬかと云ふ御話でありまするが、是はもう既に憲法二十六條に於て、斯う云ふ最低生活を保障すべきものであると云ふことが明記されて居りまして、法律は之を受けまして、御覽の通りに此の第一條に、此の法律は、生活を、國が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して行く、是れ位明確に國がと云ふことをちやんと基礎にしまして、國家が何をなすべきかを憲法に基いてやつて居るのですから、是れ以上蛇足を附加へる必要はないと私は信ずる次第であります、明瞭に國家の精神が此處に謳はれて居ると云ふことを確信するものであります
それから運用の問題に付て、此の法律は曖昧ではないか、是では「ルンペン」が生ずるのではないかと云ふ御話でございましたが、此の法律に依つて「ルンペン」を生ずることはありませぬ、是は斯う云ふ社會事情──御承知のやうな目前の事情の爲に斯う云ふ混亂を生じます、之に對して國家は如何なる方法を執るかと云ふことに付ては、御承知の通りに、一方に於ては失業問題、一方に於ては産業の擴張、或は一方に於ては此の生活保護法と云ふことで、出來るだけの方法を講じて、其の「ルンペン」生活と云ふものがないやうにすると云ふことを目標とし、又此の法律に於ける所の生活扶助、其の他に付きましても、決して唯金を與へると云ふことだけでなく、消極的に生活をやらせると云ふことだけでなく、出來るだけ増産に導いて國家再建の目的に合致させる、又一方に於ては金を貰ふ人が金を貰つて遊んで居ると云ふのは本來の日本人の性格ではありませぬ、さう云ふことに甘んずる日本人ではありませぬ、其の點に於て大いに働いて行かうと云ふ氣分を持たせ、又それを助長して行くと云ふことが法の精神になつて居りますから、決して消極的に唯生活をさせて行くと云ふ意味とは全く違つた見地に立つて居ることを申上げて宜いと思ひます
つれから尚ほ此の問題に付て失業者なり、或は生活保護を要する人が澤山出來た原因は何處にあるかと云ふことに付きましては、是は單純ではありますけれども、言ふまでもなく敗戰と云ふ事實と直面して考へますれば、全部が解決する譯でありまして、今更是が誰の責任だと云つて見ても仕樣がない、私共は此の現實に對して、之を保護することは國家の責任である、此の一點に皆狙ひを置いて、是で萬事を解決すると云ふ考へであります、又運用の問題に付て、特に運用に重點を置くと言つたのは、今までの日本のやり方と云ふものは民主的ではない、民主的でないが故に、斯う云ふ問題の如きも動もすれば慈善的に流れる、又封建的に流れると云ふことに私共は多大の不安を感ずるものであります、そこで是は運營宜しきを得なければならぬ、運營と言ひましても、全國津々浦々の末端まで、指の先、足の先の神經までと云ふことが運營の中に包含されることでありまするから、さう云ふ點には我々は自戒自肅、どうしても此の運營と云ふことに重點を置いてやらなければならぬ、又拙く行つては困ると云ふことを私は自身で自覺して居りますから、其の點に於て運營と云ふものは大切にしなければならぬと云ふことを申上げて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=5
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006・松谷天光光
○松谷委員 厚生大臣の只今の御答辯に依りまして、少くとも國家が責任を以てやると言はれた其の御言葉を伺ひまして、一應安心するものではございますが、尚ほ御答辯の點に付きまして御伺ひ致したいこともございます、それは次次の問題と關聯しまするので先に進ませて戴きますが、尚ほ今一應伺つて置きたいのは、此の法案を書直す必要がないと御考へになつて居られるか、其の點を今一度承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=6
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007・河合良成
○河合國務大臣 此の法律は是で十分なりと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=7
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008・松谷天光光
○松谷委員 次は本法の第一條と第十條に關聯して質問させて戴きます、第一條に「生活の保護を要する状態にある者」とございますが、此の「状態にある者」と云ふのは、今日所謂闇生活の出來なくなつて居る者と解釋して宜いのでございませうか、或はもつと狹義に解しまして、家のない者、或は無一物の状態にある者と云ふ風に解するのでありませうか、斯かる「状態」の基準を何處に置くかを承りたいのであります、例へば現在職には就いて居りますが、薄給の爲に此の物價高の中に迚も生活を維持し得ないと云ふやうな場合も、其の者を要保護者となすのでありませうか、此の基準を何處に取るかと云ふことに付きまして御伺ひ致したいのでございます、尚ほ本法第十條には「生活に必要な限度を超えることが出來ない」とございますが、此の必要な限度とは何を基準になさるのでございませうか、扶助費に對しましては、固定的のものではない、時代に應じて増減は融通性があると云ふ曾ての御答辯を承りましたので、一應安心するものではありまするが、併し物價騰貴の現在に於きまして五人家族が三百三圓、一人が百八圓との御決定は何を基準にして立案なさつたものでございませうか此の點を伺ひたいのでございます
尚ほ御當局から戴いて居ります資料に依りますと、一例でありますが、大都市の野菜の配給の量を見ますと、一日約十六・一匁とあるのでございます、斯かる貧弱なる配給を基準に此の扶助料を立案されたのでございませうか、今日の配給制度に依存して居りまして生命を維持出來ると考へて居られるのでありませうか、例へば主食に付て見ましても、政府も國民も遲配十數日、或は缺配幾日と云ふことを最近平氣で口にして居るやうでありますが、少くとも御當局となされて配給制度を實施して居られまする限り、一日の遲配もあつてはならない筈でございます、今日の實情から申しましても、主食に依る完全なる配給を私共は必ずしも要求するものではないのでございます、併し何等かの代替品に依る所の完全配給を要求するものでございます、一日の遲配、一日の缺配は、金もなく資力のない者に取りましては、一日食べずに居れと云ふことではないでありませうか、遲配であるから、缺配であるから今日は食べずに居よと云ふ所の母親が一人でも居りませうか、一日の遲配、缺配に依りまして血眼になつて、氣違ひのやうになつて、家族の生命を維持する爲に食糧を漁りに駈け廻る所の其の母親の愛情が御當局にはまだ感ぜられないやうに思ふのでございます、又其の實施に付きましても誠意が足りないやうに考へるのでございます、今日闇に流れて居るものがある一面、正式な「ルート」に依る完全配給が出來ないと云ふ所に、政治力の働き得る餘地が存すると信ずるのでございます、是等から見ましても、少くとも現在餓死線上を彷徨致して居ります最下低の者及び其の方向に既に行進を始めて居ります所謂闇生活の出來ない者、是等に對しまして國家は生命の保持をなし得るだけの優先的配給を實施なさる御意思がおありになりますかどうか、是は農林大臣の御出席を戴いて大臣の御誠意を伺ひたかつたのでございますが、御出席がないので農林當局の方から伺ひたいと思ひます
尚ほ之に附加へまして一言申上げたいのは、過日私共婦人議員が「マッカーサー」元帥に御目に掛りました際、元帥の私共に向つて言はれました御言葉は、國内に今あるものを平等に分け與へなければいけないではないか、尚ほ其の平等に於ても、困窮者により優先的に之を與へなければいけないと云ふ御言葉を承りまして、私は胸の刺される思ひが致したのでございます、此の實情に對しましても御當局に此の御意思がおありになるかどうかを伺ひたいのでございます
尚ほ問題が關聯致して居りまするから、續いて質問をさせて戴きます、當局に於て優先的配給をなさる御用意がないとするならば、生きんとする爲には、此の殺人的配給に唯依存して居ることが出來ず、闇生活をやらなければならないのでございますが、此のばあいにどうして一日三圓六十錢で生きて行けるでありませうか、三圓六十錢で最低生活が維持出來ると過日の服部政府委員の御答辯にあつたやうであります、如何なる魔術的方法に依り維持出來るのでございませうか、此の三圓六十錢と云ふ扶助金は、當局は如何なる科學的根據に依り御決定になつたのでございませうか、大藏大臣は豫算總會に於かれまして、闇値と公定價の中間を以て物價水準と看做すと言はれたやうでありますが、是から見ると、三圓六十錢は現在扶助金として妥當ではないやうに考へるのでありますが、如何でございませうか、今日三圓六十錢では濟崩しに殺されて居るやうなものと考へるのでございますが、如何でございませうか、收容所に收容されて居りまする孤兒の中で、或る統計に依ると十人の中で四人は唯うつらうつらと眠つて居る、さうして遂には死んで行つて居ると云ふ状態でございます、政府は人口過剩の今日から國策に於てじり貧に國民を殺す御積りであるのかどうかと云ふことも尚ほ重ねて伺ひたいのでございます
尚ほ十三年前に制定されました母子保護法に依れば、扶助金は二十五錢と決定されました、其の二十五錢が最近まで繼續されて居つたと伺ふのでありますが、今日此の物價の變動期に於て扶助金等の決定に際しては、物價審議會のやうなものを御設置になりまして、時宜に應じて政策を御決定なさる御意思がおありでありませうか、又其の用意がおありかどうか伺ひたいのであります、尚ほ一例として附加へさせて戴きますならば、六十人を收容致して居る或る育兒園の統計でございますが、主食の配給がない爲に闇値に依つて主食を購入した、それに要した費用が昨年の十月は二千八百四十一圓となつて居ります、昨年の十二月は一萬九千八百七十九圓となつて居ります、尚ほ本年七月になりましては二萬二千九十圓とまでなつて居るのであります、此の點に關しまして、物價審議會を御設置になる御用意があるかどうか伺ひたいと思ひます
尚ほ次に母乳のない乳兒の主食即ち牛乳の問題でありますが、目下飼料の不足から致しまして、牛乳の絶對量も不足して居ると伺ひますが、其の不足量はどれ程であるか、又其の不足から參りました所の乳兒の體力低下、又は死亡率はどれ程までに行つて居るでありませうか、其の不足に對して之を補ふべく如何なる具體案を實施して居られるか、尚ほ牛乳不足に依る乳兒の生命保持に對して如何なる今後の見透しをなされて居られるでありませうか、此の不足の上に尚且つ横流れをして居る牛乳があると伺ひますが、之に對する取締を如何にして居られるか、又御當局は離乳期の幼兒の生命保持に對して如何なる具體案を持つて居られるかと云ふ點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=8
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009・河合良成
○河合國務大臣 只今各般に亙る御質問がありましたが、其の中の重要なる一、二の點に私が御答辯を致しまして、其の他は政府委員の方から答辯を致したいと思ひます
大體此の保護の状態にある者を何處に捉へるかと云ふ問題は、甚だ困難な問題でありまするが、法律の規定としては具體的に之を掲げることが出來ませぬので、やはり抽象的に保護を要する状態にある者と云ふことで押へる以外に途がないのであります、其の具體的な問題は、所謂運用方法と云ふことで行くのであります、併し是は出來るだけ具體的な説明を政府委員から致させます
それから第十條の「保護は、生活に必要な限度を超えることができない。」と云ふ、其の「必要な限度」と云ふのはどう云ふ意味かと云ふ御尋ねでありますが、此の法律は最低生活を保障して行くと云ふ所に目標を置いて居り、兎も角も生きて行くと云ふ點に重點を置いて居ります、だから是は最低限に止まるものであつて、それ以上上げると云ふ譯には行かぬのだと云ふ意味であります、と申すのは何れ此の保護費は國民全體の負擔に於て支拂はるべきものでありまするから、生活維持と云ふ點を中心にして、それ以上のことは是でやつて行く譯に行かぬと云ふことは當然のことであります
そこでそれでは何處の點に保護の限度を置いたかと云ふ問題になりますと、是も甚だ困難な問題でありまするが、最近の情勢に於て此の保護を要する家庭を大體、三十一歳の寡婦が六十歳の老父母を一人持ち、さうして六歳と三歳と一歳との三人の子供を持つ五人家族を想像致しまして、それに對する最低限の生活維持に必要な物資、住宅、衣料等を算へ、さうして其の物資、食糧に付ては最低の「カロリー」を算へて、さう云ふものを基準にして、東京都あたりでは實は二百五十圓と見たのでありますのが、其の調査後の情勢に對應して只今は三百圓と致して居る次第であります、併し是が正確なものかと御言ひになると、是は唯一つの標準でありまして、是で本當に生命が維持出來るかと云ふ問題になりますと、そこは色々な疑問も起りませう、又其の家庭生活に依つて色々事情も違ふから、多少の彈力は家庭に依つて持たせて行つて宜しいと云ふ建前で居ります、併しながら是で保護が十分かと御言ひになれば、もつと致したいと思ひます、併し國全體の豫算と云ふか、此の物資不足、「インフレ」の状態と云ふものをやはり眼中に置いて行かなければならぬ問題でありまして、是が國民全體又公共の安寧福祉維持の重要な問題になります、惡い例でありますが、「ハンガリー」の如き状態を起したなら、國は殆ど大變な状態になつて來る、其の意味に於ても是は無制限には行かず、又一面から云ふと、それに依つて濫給と云ふことになつてもいかず、何十萬人何百萬人と云ふ對象を捉へて、國家の機構が末端まで行つて、さうして市町村が之を行ひ、民生委員が保護を行ふと云ふやうに全國に網を敷く譯でありますから、其の運用の末端と、そこに保護を受ける人とがぴたりぴたりと掌を指すやうに、もう間違ひなしに是で行くと云ふことは、現在の事情に於て中々考へられぬことで、色々不滿足も起るし、不足も起ると思ひますが、大體の見當としましては、國家の法制とし又大體の政策としては大きな線を捉へて行かなければならぬ、さう云ふ意味に於て此の法律が立つて居る、又國家の現状と云ふことを土臺に考へて立つて居ると云ふことを御諒察願ひたいと思ひます
それから尚ほ主食、野菜等の配給、及び之に依つて維持が出來るかと云ふ點に付ての御質問がありましたが、是は私の所管ではありませぬ、農林大臣の所管でありまするが、私共の方に於きましても是は言ふまでもなく國民生活の維持と云ふ點に關聯を持つて居り、勿論關係のある問題でありまして御指摘の如く十分には行つて居りませぬ、只今一口に十六匁と云ふのは或は數字の間違ひかと思ひます、此の間もあれを一寸見て注意しようと思ひましたが忘れたのですが、私食糧問題を扱つた經驗から見ると十六匁と云ふのは變なことで、再調査を致します、もつと行つて居ります、私の家などの例を見ましてもさう云ふことはありませぬ、是はもう出來るだけの方策をやつて居りますけれども、中々此の問題は難かしい問題で、例へば今御話の通りに、國民全體を平均すれば宜い、農家から強制徴集をやつて、皆米を引揚げて分ければ宜いぢやないかと云ふ風に單純に考へられますけれども、併し強權發動の問題に付て一般の民意がどう云ふ風にあるかと云ふやうなことも御諒察願つて、政治の貧困と言つて御攻撃になるけれども政治の困難と云ふことを御自覺を願ひませぬと、是は中々簡單に行かぬ、私も東京市助役として皆さんの爲にも野菜行列を一晩に解消した非常な「メリツト」を持つて居ります、又農林大臣として野菜統制の撤廢をやつて、初めの中は宜かつたが、後で暴騰して困つたと云ふ「デメリツト」も持つて居ります、私もそれは大分體驗して居りますが、中々口頭で言ふやうには行きませぬ、此の點に付ては昨日も何處かで申したのだが、若し忠ならんと欲すれば考ならず、闇を取締らんと欲すれば市民に來ず、市民に來させようとすれば闇は取締れない、中々難かしいもので、是は御察しを願ひませぬと、現實の事實ですから、神樣にあらずんば此の問題の解決は百「パーセント」に行かぬと云ふことを御諒察願ひたい
それから母の愛情をお前等は解するか、私共は母ではありませぬが、父です、皆存じて居ります、さう云ふ點に於て私共に何の不足もありませぬ、十分理解した、隨て一生懸命やつて居ると云ふことで、其の點は力が足らぬと云ふことは仕方がないが誠意が缺けて居ると云ふことの御非難は絶對に私は受けませぬから、其のことだけは一つ御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=9
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010・庄司一郎
○庄司委員長 松谷君に御相談申上げますが、大臣はどうしても豫算總會で二十分程答辯しなければならぬ立場になられたさうですが寛容を以て本委員會は大臣が豫算委員會に行かれることを御承認するより外ないのでございますが、大臣に直接御答辯を得る必要の問題がございましたら保留されまして、暫く政府委員の答辯を以て御承認を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=10
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011・服部岩吉
○服部政府委員 御尋ねの牛乳の問題と育兒に關する問題に付て私より御答へを申上げます、牛乳の必要量でありますが、是は大體第一順位者に對しましては八十萬四千石と云ふものを一應謳つて居るのであります、是は母乳の不足兒に對するものであります、それから第二順位のもの、即ち二歳から以下の幼兒及び重病人に、此の分と致しましては四十七萬石と一應必要量を致して居ります、特に第一順位者たる乳幼兒は他の食糧を以て替へることが出來ないので、最必要量であるから、是だけは何としても確保して行くことに致して居るのであります、之に對しまして一方牛乳の生産量はどうか、是は農林省所管の問題でありますが、昭和十六年度に於きましては二百八十萬石を生産した、所が戰爭中色々の原因で生産は漸次低下致して參りまして、二十一年度の生産分量は八十萬石と推定されて居るのであります、其の内譯は煉乳用に二十五萬石を持つて行つて居ります、それから乳用に三十五萬石と豫定を致して居ります、其の原因は色々ありますが、其の主なるものは、生産量の不足致して參りました原因と云ふものは、飼料の不足であるとか、或は燃料の不足であるとか、或は輸送の不如意等が擧げられます、牛乳の不足が買出しの増大を促し、或は又終戰時混亂期の密殺等も非常に殖えて參りまして、色々乳牛が減つて參つた等が牛乳の生産量減退せしめたのでありますが、是が乳幼兒に及ぼします影響は實に重大でありまして、是等の牛乳の不足が乳幼兒の保健に及ぼした影響等は非常に憂ふべき結果を招來致して居るのであります、例へば乳幼兒の死亡率、是は最近石川と福井の二縣に付て調査致したのでありますが、昭和十八年の死亡率は一〇〇に對しまして、九・五八、福井が九・二、十九年には石川が九・七八福井が一〇・三、昨年は石川が一四・九に福井の方は一四・六と云ふやな率で死亡率が殖えて參つて居ります、洵に憂慮に堪へない次第であります、之に對しまして厚生省と致しましては乳幼兒のの保健の立場から致しまして、農林省と密接な關係を取りまして、一方は牛乳の生産、配給の改善に協力を致して居るのであります、御承知のやうに牛乳の生産配給は農林省の所管でありますからして、厚生省と致しましては乳幼兒の保健の爲に十分な希望を致し協力も致して、出來るだけ此の方面の必要量を確保致したいと云ふことに、努めて居るのであります、尚ほ此の外に妊産婦の榮養指導に付きましては、母乳の榮養の改善を致しまして、母乳分泌を殖やせるやうに指導を致して居る次第であります又乳幼兒の保健指導の充實を圖つて居りますが、是も中々徹底する所までは實は至難な問題であります、以上申上げましたやうな次第でありまして、厚生省と致しましては今後一層農林省方面に協力を致しまして、其の配給の適正を徹底せしめるやうに努力致して參りたいと、斯樣に存じて居りますから、どうか皆樣方の一層の御協力も願ひたいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=11
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012・葛西嘉資
○葛西政府委員 大臣の御述べになりましのに補足致しまして「生活の保護を要する状態にある者」と云ふ建前に付て一寸申上げたいと思ひます、生活の保護は種類に依りまして違ふのでございます、大臣の今仰しやいました生活保護の點に居てでありますが、其の日の生活に困つて居る、それから第二の醫療以下の助産とか何とか申しますのは、其の日の生活はどうにかやつて居るが、一たび或はお産であるとか病氣に罹るとか、或は仕事に出ようと云ふ場合に差支へると云ふ風な時に、援護して參らうと云ふ風な二通りの場合があると思ひます、それで主として御話になつて居りましたのは生活扶助の點だと思ひますが、生活扶助の點は、先程も資料として御配りを致しましたやうに、新圓生活の方の標準額と、それから生活保護の限度と致しまして、先刻大臣が仰しやいましたやうに、標準世帶に付きましては、あれにありましたやうに一應三百圓と踏んだ譯であります、御承知のやうに物價が最近大分變動を致して居りますものですから、非常に急「テンポ」に之を變へて行かなければならぬやうな状態であるのでございます先般議會の方に出まして御説明を申上げました當時は、二百五十圓と云ふことを申上げて居りましたが、此の委員會が開かれます直前之を三百圓と云ふ風に改めまして大體の標準を斯樣に致して居る譯であります、之に關聯致しまして母子保護法を御引例になりまして非常に低いぢやないかと云ふやうな御話でございまして、物價審議會的なものを作る用意があるかと云ふ風な御尋ねであつたやうでありますが、私共の方では御承知のやうに社會事業法に基きまする中央社會事業委員會と云ふのがありまして、之を大臣の御方針に依りまして充員致しまして、現在は殆ど休止の状態に相成つて居るのでありますが、ここらでさう云ふ問題を中心にし、其の他の問題もありまするが、運用の中央委員會と云ひまするか、さう云ふ風にして參らうと云ふやうな用意がございます、非常に物價が變るものでありまするから、法律とか或は制度に依つて之を決めて置くと、此の物價の變動に依つてそれに適應するやうな保護の額が決めにたいと云ふやうな譯でありまして、此の三百圓と云ふ額も、中央で一應基準として考へて居る額であるのであります、地方に依りますると可成良い所にありまするし、或は地方でも特定の市とか何とか云ふ所で非常に困つて居るやうな所もございます、斯樣な點に付きましては、地方長官に之を一任すると云ふやうな風に考へて居ります、一應の限度はこちらでありまするが地方長官か限度を又更に決め、それで運用して參る、而もそれには繰返して申上げて居りますやうに世帶に依りまして色々實情が違ふものでありますから、個々の世帶に是れ位の限度しかないからそれ以上は出さないと云ふやうなことは致しませぬ、必要な最小限度でありまする以上は、制限を設けずに支出すると云ふ建前と致して居ります、從來の保護關係の法令とは取扱に於きましても、右のやうな點が著しく違つて居る點であるのでございます、建前と致しましては一應左樣になつて居るのでありまするが、尚ほ此の機會に一寸申上げて置きたいと思ひまするのは、食生活が大分窮屈になつて參つて居ります、終戰後陸軍竝に海軍が持つて居りました食糧物資であります乾「パン」竝に缶詰、是も相當な部分を救濟用の食糧と云ふことで各府縣に貯備を致して居ります、之を乾「パン」に致しますれば、極く大雜把に申上げますると大體七百五十萬食分位全國に亙つて乾「パン」があります、缶詰も極めて多數の量で、之を各府縣に貯備致して居ります、先般東京、北海道、山梨或は神奈川、其の他三十數府縣の食糧の窮屈な縣に於きましては、聯合軍司令部の承認を得まして、之を無料で貧困者に配給すると云ふ處置を執りまして、東京、神奈川等に於きましては既に二回ばかり之を配給致して居るやうな次第であります、殘りの點に付きましても順次食糧の逼迫と同時に、貧困者に無料で此の乾「パン」竝に缶詰の非常食糧の配給を致す積りで、聯可軍司令部とも打合せを致して居るやうなことでございます、之に依りまして、要援護者の家庭の食生活の方は相當部分助かるのではないかと云ふ風に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=12
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013・坂田英一
○坂田政府委員 牛乳の絶對量の不足に對して如何なる具體案があるか、今後の見透しはどうであるかと云ふやうな點に付て御答へ致したいと思ひます、既に厚生政務次官から御話がありましたので、重複を避けまして御答へ致したいと思ひます、牛乳の生産量は全體として從來は二百萬石餘の生産があつた譯でありまするが、昨年のあの空襲の關係等、其の後終戰後に於ける混亂と云つたやうなことの爲に、昨年は大體百萬石程度に減少致した譯であります、此の減少の根本は乳を出す牛が三割ばかり減つて居ります、空襲其の他の色々の關係、社會的混亂で減つて居ります、又殘れる牛は餌の不足の爲に乳の生産量が相當大きく──平均致して見まするならば約四割の減少を來して居るのであります、今日非常な食糧難の結果と致しまして、人間と家畜が所謂食糧の爭奪をして居ると云つた結果でありますので、飼料の缺乏と云ふことが牛乳の生産に非常に大きな打撃を與へて居りますることは御諒承の通りであります、斯樣なことから致しまして、根本の見透しと致しましては、昨二十年度百萬石に對しまして、更に稍稍減少するのではないか、見透しははつきり致しませぬけれども、先づ八十萬石程度を維持出來るかどうか、極力之を押して八十萬石の維持を致したい、斯う存じて居る譯であります、勿論色々の方法に依りまして、我々の見透しとしては最小限度其の程度に押したいのでありますけれども、出來得る限り上昇せしめたいと云ふ努力を拂つて參りたいと存じて居ります、斯樣な關係から致しまして、牛乳の生産の減少と云ふことが非常に國民全體、特に育兒上の食糧、所謂赤ちやんの食糧を窮迫せしめて居る實情にある譯でありますが、之に對する具體的な方策と致しましては、一番根本的な問題はやはり主食糧の關係の緩和と相對照して來ることでありまして、非常に大きな期待は中々持ちにくいと云ふ實情にあります、併しながら極力飼料の増強を致したいと云ふ考へから致しまして、國内に於ける飼料に廻し得るものは、勿論乳牛だけにやる譯には行きませぬけれども、優先的に此の乳牛の方面に向つての飼料の配給と云ふことを考へて居ります、更にそれでは到底足らないので、聯合國に飼料の輸入を懇請致して居ります、現に若干輸入されまして、之に付きましては、優先的に乳牛の方面に重點的に配給をして居る譯であります更に尚ほ主食糧の非常に窮迫して居る時でありますけれども、何と申しましても赤ちやんの食糧を確保する重要性に鑑みまして、麥類等の供出と牛乳の供出との綜合供出制を今回開始致した譯であります、詰り一石の牛乳を供出致した者に對しまして、赤ちやん用の煉粉乳の原料となるべき牛乳の供出に對しまして麥が三斗二升程度、是は麥に限つた譯ではありませぬ色々の物を綜合してでありますがさう云ふやうな代替供出制と云ふものを、赤ちやんの牛乳に對しまして非常に苦しい主食の關係にあるに拘りませず、之を致して居ると云ふことに相成つて居る譯であります、是等の方策に依りまして大體煉粉乳の生産状況を見ますと一時非常に遞減致しました、詰り今年の一月に於きまして煉粉乳の生産高が四萬二千百九箱、それから二月には更に低下して三萬二千六百七十三箱、三月には更に低下して三萬一千五百七十五箱と云ふ風に低下致しましたけれども、其の後漸次各種の施策と關聯致しまして、四月には三萬五千、五月には六萬三千、それから六月には九萬七千と云ふ風に、段々煉粉乳の生産が上昇致して居りますることは洵に幸ひに存じて居るやうな譯であります、併しそれに致しましても尚ほ不足を致して居りまするので、此の不足量に付きましては飼料の輸入を懇請すると同時に、又當分の間と致しまして、已むを得ませぬので煉粉乳等の輸入の懇請を聯合國に致して居りまして、是も或る程度併せて配給出來る程度にまで達して參つたやうに聞いて居る譯であります、尚ほ是等の問題と關聯して申上げたい點は、煉粉乳の方は非常に配給等が簡便であり、又夏に於て赤ちやんに配るのにも便利が好いと云つたやうな關係があり、又配給は相當的確に行き得るのでありますけれども生牛乳の方は中々難かしい實情にある譯であります、隨ひまして生牛乳の配給に析きましては、此の煉粉乳と相關聯せしめて行くと云ふ方向に進まなければならぬと存じて居ります、更に生牛乳の配給は非常に困難でありまする關係から致しまして、やはり、消費者の方面或は醫療機關の關係と云つたやうなものの協力を願つて、此の配給の改善を進めて行く必要があらうかと存じて居ります、大體左樣なことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=13
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014・松谷天光光
○松谷委員 尚ほ農林當局の御方に御答辯戴きたいと御願ひしてあつた問題が、まだ御答辯戴いてないのでございます、最低生活者又はそれに向つて突進をして居る者に對しまして、生命を維持出來る配給の優先的な實施をなさる御決意があるかどうかと云ふことを伺ひたいと御願ひして居つたのでございますが、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=14
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015・坂田英一
○坂田政府委員 食糧の配給關係に付きましては、先程河合厚生大臣からも御話がありましたやうに特に生鮮食料品と云つた方面だらうと存じて居りますけれども、中々難かしい問題の一つであると存じます、是は數字に觸れますけれども、六月に於て、あれは一箇月でなしに、一日一人十六匁の配給になつて居るかと存じます、恐らくさう云ふ風に出て居るかと思ひますが、是では勿論十分と申上げ兼ねるのであります、主として生鮮食料品の配給に付ての經過を申上げまして御諒承を得たいと思ひますが、昨年の十一月二十日に統制の撤廢を致した譯であります、其の統制の撤廢を致しました時には、配給の強化を致したのでは中中數量が寄らぬ、自由にしたらどうか、斯う云ふ議論であつた、勿論自由に致しますると、又價格も上り、偏在も行はれる、買へる人は買へるけれども、大衆は中々困難であると云つた情勢を考へたのでありますが、あの當時の混亂と致しましては已むを得ず、一つ打開策として一回其の方法を執つて見よう、併し何としても是は其の儘に放置出來ない方向に進むであらうが、其の當時としては已むを得ないと云ふことを其の當時農林次官であられた現在の河合厚生大臣が決意されました、而して其の決意をされました當時に於て、是は斯う云ふことになるから斯う云ふ方法で收拾して行かなければなるまいと云ふことをも我々に示されて居つた譯でありまして、其の示された通りに大體に於て我々も實行を致して參つたと云ふ概論的なことを申上げるのであります、其の結果として、十一月、十二月に於きましては──一年の中で十一月、十二月は一番野菜が出る時でありまして、普通の年なら餘つてどうにもならぬと云つたやうな月であります、さう云ふ關係もあり、一つは枠を外したと云ふ關係もありまして、野菜は非常に──非常にと申してもそれ程でもありませぬが、相當大きく入つて參つた、所が値段は、其の代り却て物に依つては五十倍程度にまで暴騰して居る、それから値段が上つた時にどつと入りますけれども、それが永續き致しませぬ、結局どうかと申しますと、東京が上るから東京へ入つて來る、併しそれが又各地方も値段が上つて來る、全部上つてしまへば東京に入らなくなると云ふことの爲に、値段は上つたけれども、澤山寄つて來ることが長續きしない、斯う云ふことの結果として、一月にはうんと減つて、一人當り九匁程度、或は二月に行きましては更に減つて行く、斯う云ふ情勢になつたのであります、斯うなりますと、自由にすると入つて來るやうに思ふけれども中々入らない、なぜかと申しますと、それは値段がうんと上つた時にも生産がうんと上ると云ふことなら、暫く我慢しても宜いのでありますけれども、値段は上つても野菜のやうなものは中々生産が巧く行かない、それはどう云ふことに因るかと申しますと、大體主食糧が足りない、蔬菜を主として作つて居る特産地に於ては、此の主食の關係からして、野菜を止めて主食の方を作つて行く、斯う云ふ情勢であります、隨て値段が上つても中々蔬菜は殖えない、勿論生産地は減るけれども、都會の空宅地の利用とか、或は蔬菜は餘り作らない農村に於て少しづつ自家用に作る蔬菜は殖えるのでありますけれども、都會方面に對する出荷に付て重要な關係を持つ所の特産地は殖えない、斯う云ふ實態であります、一面に於ては肥料不足の爲に、やはり僅かづつ作ると云ふ所は殖えても、主産地に於ては中中殖えない、斯う云ふ關係であつて、主産地の生産減退と云ふものは、是は外で殖えるだけのものであつて、代りは中々出來ない關係がありまする所よりして、値段は上つても、それに適應して生産は中々上らないと云ふ特殊の實態情勢にある、勿論「インフレ」的な色々な社會形態、事情とも關聯することでありませうが、左樣なことから一月、二月には値段だけ上つたけれども、入つて來ない、斯う云ふ情勢になつた譯であります隨て是はどうしてもやはり再び之を統制の枠に戻す必要があると云ふことから、今度は其の方向へ進むこと、是は其の當時から豫想されて居つたことであります、さうして其の場合に於て直ちに公定價格を引下げることが出來ませぬので、御承知のやうに廉賣制度を採りまして、相當程度の價格で公定價格を決めて、消費者には消費者の生活に即應する消費者價格を決め、其の差は國庫の助成に依る、斯う云ふことに致しまして國庫の助成金を段々減らす、詰り公定價格の方を段々と減らす、現在までに三回公定價格を減らして來た譯であります、さうして消費者價格と公定價格との差を段々減らす、段々減らすに從つて國庫の助成金が減る、斯う云ふことに相成つて參つた譯であります、左樣に致しまして現在の統制に發足して來た斯う云ふ情勢であります、現在の統制に發足致しましてから日も尚ほ淺いのであります、詰り七月二十日に公定價格を改訂して行つた斯う云ふ譯であります、又各府縣に於きましては出荷團體或は荷受團體等の指定を致して居る譯であります、現在大體其の指定が終つた、此の指定は地方の實情に即應せしめる意味合に於て、地方長官に決定を願ふと云ふことでありまして、略現在此の準備が備つて參つて居ります、八月一日頃から、今日から大體軌道に乘りつつある所謂蔬菜の統制に付きましては目下軌道に乘り掛つたと云ふ段階であることを御諒承願ひたいと存ずるのであります
次に統制をやりますと、統制の一つの弊害として、統制の爲の統制に陷ると云ふ危險があるのであります、今回はさうではなく正常の「ルート」に正常の價格で正常の「ルート」の消費者に出來得る限り澤山の──是は出來得る限り可能の程度でありますが、さう云ふものを乘せ得るやうに──之を軌道に乘せて參り、澤山のものが正常「ルート」に正常の價格で乘ることを中心にしての統制でやつて戴きたいと云ふことを十分注意も致して居りまするし、目下地方廳等に於きましても其の線に沿つて準備を急ぎ、殆ど大體其の手續等が完了して目下軌道に乘らうとして居る、斯う云ふ情勢でありますので十分御諒承を願ひたいと存じます
尚ほ自由にするか、統制にするかと云ふ議論がありまするが、是は統制の爲の統制と云ふことを避けいむる意味に於て、非常に效果が大きいのでありまするけれども統制と云ふことは非常に難かしい結局難かしい時に於てこそ統制が簡單になれば、何も統制は必要がないと思はれるのであります、其の難かしい際に、自由に放任して置いて宜いぢやないか、價格は上げても宜いぢやないかと云ふ議論が出ますと、一般の生産者も亦相當自由の利く消費者も自由を好むのは人間の常でありまするので、軌道に乘り掛つた場合に於て非常な動搖を來す虞が多分にあることもありますから、我々としても其の點に付きましては十分注意を致して進んで參りたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=15
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016・松谷天光光
○松谷委員 詳細な御説明に感謝致します、尚ほ食糧問題に對しましては今少しく伺ひたい點もございますが、農林大臣の御出席もございませぬし、本法から幾らか横道に外れる點があると思ひますので、他の機會に讓ることに致します、尚ほ次の問題に移りますが、移る前に一つ委員長に御願ひ申上げたいことがございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=16
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017・庄司一郎
○庄司委員長 一寸松谷君に御注意申上げます、本委員會は質疑應答は大體一人一時間程度になつて居りますが、少々時間が經過して居るやうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=17
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018・松谷天光光
○松谷委員 あとは簡單に切上げさせて戴きます、洵に勝手でございますが、重要な問題でございますから、今少しの時間の御猶豫を戴きたいと思ひますが、如何でございませうか、あと四點でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=18
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019・庄司一郎
○庄司委員長 今まで午前中は大體三人づつ上げて來たのですが、今日はあなたお一人で午前を獨占されますと、少々當り障りもあるやうでありますから、それでは努めて簡單に御願ひ致しませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=19
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020・松谷天光光
○松谷委員 御當局の御説明も今日は非常に懇切でございましたので、此の點は非常に感謝申上げます、是は私一人の得とする所ではないと考へるのでございます、どうか此の點に付きまして、委員長には絶大なる御考慮を御願ひ致したいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=20
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021・庄司一郎
○庄司委員長 松谷君に申上げますが、委員長は極めて考慮深くやつて居る積りであります、松谷委員に於かれましても、成べく質問の爲の質問ぢやなく、あなたお一人の「プライヴェート」の御意見等は節約され、質問の要點に觸れられることを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=21
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022・松谷天光光
○松谷委員 はい、具體的に申上げます、次に闇の女に付て簡單に伺はせて戴きます、只今まで各委員から質問が出て居りますが、過日竹内委員の質問に對されます葛西政府委員の御答へに依りますと現在既に闇の女に轉落して居る者に對しましては、本法では保護をしないと言はれる御答辯がございましたし、次に松尾委員の御質問に對しましては、生活苦より轉落して居る者に對しては、闇の女に對しても保護を加へる考へであると言はれたのでありますが、、何れを採つたら宜しいのでございませうか、此の點を伺はせて戴きたうございます
尚ほ今一點は、今日闇の女に轉落して居る者は、本法に於ては保護をしないのであると云ふのでございますならば、他に別法を設けまして、何等か之に對する保護をなさる御用意があるのでございませうか、素行不良の者に對しましては、或は物心兩面の保護が必要であると考へるのでございますが其の具體的な方策を如何に御立てになつて居られるか、之をひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=22
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023・葛西嘉資
○葛西政府委員 只今松谷委員から、私が先般闇の女に對て御答へを申上げたことに付て前後食違ひがあると云ふ風な點を御指摘の御質問でございましたが、或は申上げ方が惡かつたのかも知れぬのでございますが、問題を御聽きになりました點が、素行不良なる者と云ふ點に限定して御尋ねになりましたものでありまするから、闇の女と云ふ中にも色々あるだらうと申上げ、それから私共と致しましては、闇の女にならないやうに──生活苦から闇の女にならなければならぬやうな状態は、此の生活保護法に依つて救ふべきものであつて、生活苦から闇の女にならないやうに此の法で救ふべきものだ、斯う云ふ意味で申上げたのであります、闇の女と云ふことが世間の爪彈きを受けて、公費を以て扶助するのには如何かと云ふやうな點に該當致しますものに付ては、本法の解釋としては保護することは難かしいのぢやないか、斯う申上げた積りでございます、併し此の法は委員の方々からも御話がありましたやうに、地方の第一線で働きまする市町村長或は民生委員の方々が、具體的な方に付て色々御諭しを戴きまして、さうして素行不良に該當しないことに立至りますれば、直ちに是は保護をして差支へないのであります、例へば貧困で治療費がない、病氣になつて居つて治療費がないと云ふやうなことでありますれば、本法に依る醫療費を供しまして病氣を治療すると云ふやうなことは、一向差支へないことであります、要するにあの時も申上げましたやうに、素行不良として世間の爪彈きを受けて、公費で保護をして參るのに如何かと云ふやうなことに當る場合に於ては、保護をしない解釋に相成りますと云ふことを申上げた積りでございます、尚ほ物心兩面に亙る色々な施設と云ふやうな御話もございましたが、是は社會教育の方面或は民生委員等が特に色々御指導を申上げる點もありまするし、又病氣等の點に付ては衞生施設、或は身寄りのないやうな者に付きましては收容施設其の他を用意すべきものであらうと考へて居りまして、地方廳を督勵致しまして、保護施設等に付ては遺憾なきを期する覺悟でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=23
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024・松谷天光光
○松谷委員 既に闇の女に轉落した者に對しまして、他に何か別法を御設けになる、素行不良な者に特に別法を設けて救助なさる御用意はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=24
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025・葛西嘉資
○葛西政府委員 闇の女に別法を設けて、如何なる保護施設を設けて行くかと云ふ點に付ては、只今の所では何もございませぬが、收容其の他の施設は作つて差支へないものと思ひますが、公費で今の闇の女を保護すると云ふやうな點に付ては、素行不良と云ふやうなことで如何かと──まあ同じやうなことではありますが、さう云ふやうな點で……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=25
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026・松谷天光光
○松谷委員 次は保護施設のことに付て少しく伺はせて戴きます、是も既に出ましたので簡單に伺ひますが、從來血も涙も忘れて居りました官營施設の失敗を見て來たのでございますが、是等の官營施設を健全な專門家に依る所の民間施設に委託する御意思がおありになりまするかどうかを伺ひたいのでございます、尚ほ次は民間施設と申しましても、近頃此の民間施設の中には要保護者を所謂食ひ物にする所の惡質社會事業屋が簇出して居るやうに見受けるのでございますが、是等を整理致されまして、之に放出されて居りまする所の資金を健全なる施設擴大の爲に振り向けて戴く御用意が出來て居られるかどうかと云ふことを伺ひたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=26
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027・服部岩吉
○服部政府委員 御答へ致します社會事業施設を官營にするとか或は民營にするとか云ふことは、從來も相當論議された問題であります、今日までの官營の社會事業が悉く失敗であつたと斷言することも出來ないと私は思ひます、又民營のものに於きましても、御説のやうに如何はしき問題もありました、併しながら此の社會事業と云ふものが愈愈重大なる意義を持つて參るやうになつて來たのであります、殊に先刻も委員長から御話のありましたやうに「アメリカ」の慈善家から本邦の慈善事業家、團體に向つて寄附の申出があつたと云ふやうな事態に進んで居りますから、隨て此の社會事業施設と云ふものに付きましては、出來るならば民間に高潔な理想を持つた社會事業家の出現を希望致しまするし、又民營を以て不足致しまする點に付きましては、國營で之を補ふと云ふやうなことで進んで參ることが宜いのではないか、只今の所に於きましては、官營を廢して悉く民營に移すと云ふやうな氣持も、實は政府と致しましては持つて居りませぬが、民間の良い社會事業施設に對しては、政府と致しましては益益之を助長發展せしめるやうに努力致しまして、さうして眞の事業の目的に副ふやうに致して行きたい、又官營のものに於ても或は公營のものに於ても、其の内容を一層充實させまして、さうして施設の目的を達するやうに今後一層の努力を拂つて參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=27
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028・松谷天光光
○松谷委員 次は失業保險の方に……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=28
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029・庄司一郎
○庄司委員長 一寸松谷君に御注意申上げます、物には限度があるのでありまして、大抵此の程度で一つ御謙遜を願ひたいと思ひますが、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=29
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030・松谷天光光
○松谷委員 それでは失業の保險の方は厚生大臣から御答辯を伺ひたいと思ひますので、他の機會に於きまして伺はさせて戴くことに致しまして、今一點重要な事柄がございますので、どうか御許して戴きたいのでございますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=30
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031・庄司一郎
○庄司委員長 時間はどの位掛りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=31
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032・松谷天光光
○松谷委員 五分も掛りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=32
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033・庄司一郎
○庄司委員長 それならば……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=33
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034・松谷天光光
○松谷委員 此の法案に依りますと、大事な箇所に參りますと勅令を以て之を定めると云ふことになつて居るのでございます。例へば第六條の第二項或は第十一條の如く「保護の程度及び方法は、勅令でこれを定める」と暈してあるのでございますが、是こそ共に研究をし、共に練り上げましてやらなければならない重要な問題だと考へますが、此の點一つ伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=34
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035・葛西嘉資
○葛西政府委員 此の法律に基本的なことを書きまして、細部のことに付きましては大體勅令或は命令等に讓ることに相成つて居りまして、本法案に於ては大體重要なことは本法案に入れまして、手續或は其の他大體の方針が法に決つて居りまして、後の細かい點だけを命令に讓ると云ふことに相成つて居ると思ひます、只今御指摘になりました第十一條第二項の點は先般本會議でも御質問があり、大臣から御答へを致したと思ふのでありますが、「程度」「方法」と云ふのは先程松谷委員の御質問にもありましたやうに、實は物價の變動等が非常に頻繁でありますと、之を一々法令に書いて置くと云ふことになりますと、議會の御協賛を經なければならぬやうな關係もあるのでございます、隨て本委員會においては現在考へて居ります「程度」は、先刻來申上げて居るのでありますが、物價等に依りまして、豫算の範圍内に於て運用をさして戴くと云ふ風な意味で、政府の方に御任せを願ひたいと云ふことを大臣から申されたのでございますが、「程度及び方法」は、斯樣な意味に於て機に應じ變に應じまして變へなければならぬ、現に此の決めました限度の如きも、十二月からもう一回、二回、三回も變つて居るやうな事情でございます、是はやはり何と云ひますか時宜に應じてやらなければならぬと云ふ關係がありまするから、此の點は極めて重要ではございますが、勅令で基本的なことを決めまして、一應今考へて居りますのは地方長官が大臣の承認を得て決めると云ふことを勅令で決めようと思つて居ります、地方長官が決めることを第一に持つて參る、それだけのことが勅令で決まりましてそれ以外は政府部内の手續で時々刻々變に應じてやつて行くと云ふことに相成る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=35
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036・松谷天光光
○松谷委員 長い時間を頂戴致しましたことを深く御詫び申上げます、政府御當局の懇切なる御説明に對しまして心から感謝するものであります、どうか本法を單なる法律と御考へにならずに、本法こそ、國家社會の秩序を維持する根本の鍵を握る重要な使命を持つ、憲法に次ぐ所の基本法であると信ずるのでございますが、どうぞ此の上とも尚ほ積極的なる審査を御續け致されることを念じまして御禮を申上げ、私の質問を終らせて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=36
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037・庄司一郎
○庄司委員長 田中委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=37
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038・田中たつ
○田中(た)委員 私は生活保護から見た國民優生法の運營の醫師と助産婦と保健婦との關係に付て御尋ね申上げたいと思ひます、昭和十五年五月一日法律第百七阻に於て定められました國民優生法中にある遺傳性精神病とか、遺傳性精神薄弱とか、強度且つ惡質なる遺傳性病的性格とか強度且つ惡質なる遺傳性身體疾患とか、強度な遺傳性畸形とかの疾病に罹れる者が其の社會と家庭に甚だしい負擔を掛けて居ることは私達が日常目のあたり見て居ることで、今更改めて申すまでもないことです、隨て是等の疾患をなくして優良なる國民を救ひ、家庭及び國家の負擔を輕減する爲に制定された此の國民優生法が今日殆ど活用されて居りませぬ、それは厚生省發行の資料に徴しましても明かなことであります、今日折角生活保護法が制定されやうとする時に當り、一方に斯くの如き負擔を家庭が負はなければならぬと云ふことは大きな矛盾であります、なぜ國民優生法が十分に行はれないかと云ふと、あの法文を通讀致しましても分る通り其の手術或は處置を受ける場合には、大體肉親の者が其の申請をすることになつて居りますが、凡そ世間の諺にもある通り、親程子供に對して盲目な者はなく片輪程可愛いのに身内の者が自分の親兄弟や子供に對して手術を施して戴きたいなどと云ふ申請は容易にしないのであります、詰り肉親愛が社會愛に勝つのであります、尚又此の外に醫學知識が乏しいとか、世間體が恥づかしいとか云ふことが右の優生法が今日殆ど行はれない原因であります、政府は殆ど行はれないやうなものを苦心して制定する必要はないと思ふ、制定したからにはもつと多く狙つて居た筈でございます、それで此の優生法中に新條項を挿入し、第三者、即ち醫師とか助産婦とか保健婦とか、最も患者の疾病事情に通じて居る者の申告に對して當局が考慮を拂ふやうにし、之に依つて此の手術や處置が行はれると云ふことにして戴いてはどうでせうか、此の新條項の挿入に依つて一方には生活保護が殘る隈なく行き、他方には國民優生法が其の目的をより多く達すると思ふのであります、政府は此の新條項を優生法中に挿入する御意思はありませぬか、此の點を御伺ひ致します
次に、從來あつた母子保護法は今度新たに制定される生活保護法の中に吸收されることになりました、それに付けて私の最も考ふる點は母子が此の新法令の下でどんな待遇を受けるだらうかと云ふことであります、現在の社會情勢の下に於ては、小さい子供を抱へて居る寡婦程慘めな生活をして居る者はありませぬ、次の時代を擔ふ者を紳士として教養することは、國家の責任であります、此の點に付て義務教育の年限も延長され、且つ大學教育への途も開かれようとして居る際であります、政府は新法の生活保護法に於て果して母子の保護に居て如何なる御考慮を拂つて居られるか、御所見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=38
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039・服部岩吉
○服部政府委員 田中さんの御質問に御答へ致します、傳染性精神病者の問題でありますが、優生法が施行されまして、是が相當の日子を經過して居るに拘らず極めて不徹底である、之に對して看護婦なり或は又保健婦等をしてさう云ふことをさせる條項を新しく入れたらどうかと云ふやうな御話でありますが、當局と致しましては、現在此の精神病等の傳染性疾患の者が全國に約三百萬と算へて居るやうな状態であります、是等の不健全者の爲に生活保護を受けなければならない家庭は極めて多いと思ひます、仍て今後國民優生法に依りまして、出來るだけ多數の惡質の遺傳性素質を持つて居りまする者に對しましては優生手術を積極的に實施致したい、斯樣に考へて居ります、此の場合に於きまして新しく御希望の新條項は挿入致しませぬけれども、是等の家庭に對しましては、優生に關する知識を啓發する、或は又優生手術の手續等を教へることが必要でありますので、産婆に對し或は又保健婦に對し速かに優生に關する知識を普及致しまして、是等の點に付て十分な指導に當らせるやうにして行きたい、斯くして此の惡質的な傳染性の者を救助して參るやうに致して行きたい斯樣に考へて居ります
尚ほ母子保護法が今度生活保護法の制定に依つてなくなるのでありますが、此の母子保護法と云ふのがなくなりましても、從來よりも以上に母子保護に付きましては此の生活保護法に依つて保護を加へて行くことが十分である、從來よりも一層確實に國の責任を以てやつて行くやうになりますので、決して其の點は御心配に及ばない斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=39
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040・田中たつ
○田中(た)委員 其の條項か挿入して戴けないと中々運營が出來ないと思ひますが、折角出來ました優生法が活用せられて居りませぬ爲に、精神病院は超滿員でございますし、成べく其の條項を挿入して戴くやうに御考慮を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=40
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041・服部岩吉
○服部政府委員 其の點は尚ほ一應當局と相談致して見ますが、それを挿入しなくとも現在のもので出來るだけ一つ徹底的に産婆に對し、或は保健婦に對しまして十分に指導を加へて徹底するやうに致す積りであります、尚ほ新しき條項を加へることに付きましては研究することにします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=41
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042・田中たつ
○田中(た)委員 是で私の質問は宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=42
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043・庄司一郎
○庄司委員長 一寸政府に御尋ね致しますが、只今の田中さんの質問は大變良い質問のやうでございますが、本法を特に將來市町村等の末端に於て實施する場合に於て母子部と云ふやうな部門等を市町村の任意に於て設けさせることを御考慮下さることが、大變適正だと考へて居りますが、御考慮を願つて置きたいと思ひます、どうも長い時間御忍耐下さつて有難うございました、本日は之を以て散會致します
午後零時十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00619460801&spkNum=43
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