1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
生活保護法案(政府提出)
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昭和二十一年八月八日(木曜日)午前十時二分開議
出席委員
委員長 庄司一郎君
理事 小柳富太郎君 理事 原捨思君
理事 長谷川保君
小池政恩君 冨田ふさ君
山口好一君 大島定吉君
坪川信三君 中山たま君
竹内歌子君 有馬英二君
奧村又十郎君 堂森芳夫君
山崎道子君 吉川兼光君
川越博君 平川篤雄君
松谷天光光君 東井三代次君
田中たつ君
同月六日委員澤田ひさ君及び松尾トシ君辭任に付其の補闕として堂森芳夫君及び山崎道子君を議長に於て選定した
出席國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
農林大臣 和田博雄君
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
大藏事務官 河野一之君
文部政務次官 長野長廣君
文部事務官 日高第四郎君
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生事務官 勝俣稔君
厚生事務官 葛西嘉資君
引揚援護院次長 伊藤謹二君
厚生事務官 加藤清一君
農林政務次官 大石倫治君
委員長の許可を得た出席者
議員 柄澤と志子君
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本日の會議に付した議案
生活保護法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=0
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001・庄司一郎
○庄司委員長 それでは是より開會致します、委員各位に御諒解を戴きたいと思ひますが、本日は質問の方が委員外發言の許可者を加へて八名ございます、其の中御病氣の爲に御出席がなり難いやうな情報のあります方が一、二名ありますが、幸ひに御見えになれば發言されることになるのであります、本委員會も本日を以て去月十九日第一囘の委員會開會より九囘目でございます、各政黨とも各各大體二名以上の割合で發言が終りました、仍て時間を制限せんが爲に制限するのではございませぬが、今まで十有數名の方々の御發言に依り、大部分本法の直接審議に關する範圍内に於ける御質疑は壓縮されて參つたのでございます、即ち重複質問の嫌ひある方も多少出て參りました、隨て前囘までの質問の「タイム」は平均約四十五分でございますが、本日は御諒解を戴きまして、各委員の發言の「タイム」を大體最大限度三十五分位にして、從來の平均より約十分位壓縮して戴きまして、政府よりも明瞭直截なる御答辯を願ひまして、若し願はれれば本日を以て一應各委員の質問を午後に亘りまして終へたい所存でございます、左樣な譯で、決して言論時間の壓縮等を意味して居らないのでございまして、今まで十有餘名の方々の御發言等に依り、直接本法案に關する質問の範圍内が非常に壓縮されて參りましたので、關聯の御質問等も固より御自由でございますが、大體左樣に御諒承を願ひまして、從來より約十分短縮を御願ひ申上げ、其の三十五分ある間に有效適切な御上手な御質問を御願ひ申上げたいと思ひます、甚だ得手勝手のやうでありますが、以上の理由に依つて御諒承を願つて置く次第であります
本日は社會黨委員各位の御相談の結果、第一の發言者は堂森委員の御通告がございます、仍て最初に堂森君に御願ひ致します──堂森委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=1
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002・堂森芳夫
○堂森委員 民主主義國家の建設の第一歩であります基本的人權を確立すると云ふことは申すまでもないことでありますが、此の國民の最低生活の保障と云ふことは、人權尊重の大原理である、斯う考へるのであります、今日の此の激しい世の中では、眞面目に働いて居りましてもとても生活が出來ない、即ち配給物資を闇賣りしたり、或は着物を賣つて食ふと云ふやうな状態である、所が今日働くべき仕事を持たない人、或は働けない條件にあるやうな人達が如何に生活に喘いで居るかと云ふことは想像出來るのであります、是等の多數の生活困窮者に對しまして、生活の最低保障の見地から、國家が救濟の手を差し伸べる、即ち生活保護法案を提出されたと云ふことは、洵に當然のことであると思ふのであります、特に今日生活に非常に困つて居る人達と云ふのは、國策の犧牲者であり、或は戰災者のやうな、國家的な理由で困つて居る人が非常に多い、斯う云ふ點から考へまして、此の生活保護法に付て深い考察を加へなければならぬと私は思ふのであります、生活保護法と云ふものは、生活に困つたから之を救ふと云ふ非常に消極的な意味である、政府はどうかさうした消極的なものではなくして、何とかして國民をして生活に困らしめないやうにしよう、又さうした手當制度でなくして、相互扶助的な一つの國民保險と申しますか、大きな意味の養老年金、或は健康保險とか或は教育年金とか云つたやうな、廣い意味の一つの社會保險制度を早急に採られる意思があるかないかと云ふことを御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=2
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003・河合良成
○河合國務大臣 只今の御話の通りに、此の生活保護法は性格として消極的な性格を持つて居りますが、勿論國民全體の生活保障を完全にやりまするには、消極面だけでは不足でありまして、積極的に國家の興隆と云ふことを中心に置いて行かなくちやなりませぬ、さうすれば經濟條件其の他が良くなつて、生活保護と云ふやうな消極的な働きも非常に少くなります、結局政府の目的は、生活保護の適用者が少くなつて來ることを目標とし、それを理想としてやつて行くと云ふ點に付ては、是は疑ひのない所でありまして、其の點に於て積極的施設を色々な方面に於てやつて行かなくちやならぬと存ずる次第であります、さうして大體さう云ふ經濟の興隆と云ふことを中心にしては參りますが、戰後に於ては色々都合の惡いこともありますので、其の經過としまして種種の方法を講ずると云ふ譯でありますが、今御示しの相互扶助のやうな關係に付きましては、出來るだけ其の方法を採つて行く積りで居ります、目下社會保險制度の調査會に於ても其の立案を致して居る所であります、又如何に經濟が興隆に向ひましても、經濟と云ふものは一つの線を辿つて行くと云ふ譯には行かず、必ずそこに浮沈がある、盛んな時もあれば、衰へる時もあるのでありますから、さう云ふ場合に處する爲に、ちやんと永久的の方法を立てて行かなくちやならぬと云ふことは疑ひのない所であります、其の線に沿うて政府の施策を進めて居る譯でありますが、まだ調査不十分で此の議會に間に合ひませぬ爲に、そこまで參つて居りませぬことを御諒承を願つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=3
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004・堂森芳夫
○堂森委員 本法案の該當者になるやうな人の中で、先づ我々が考へなければならぬ人達として、軍人の遺家族があると思ひます、東京都の本年五月現在の調査では、生活困難で救護を要する世帶は約七萬三千世帶であつて、其の中軍人遺族としては約八千世帶、約一二%位あると云ふ風な統計があるのでありますが、此の人達の生活の困窮は實に言語に絶するものがあるのであります、軍人の遺族は、國家の爲に最愛の夫を失ひ、或は柱と頼む所の息子を取られまして、實に悲慘な生活をして居られる人が非常に多いのであります、私は試みに東京、名古屋に於きまして約五百世帶のさう云ふ人達の實態を調査致しました所、大體其の人達の生活と云ふものは、六疊間或は八疊間を借りて非常に苦しい生活をして居る人達でも殆どが千圓或はそれ以上の生活費が要る、さうして其の非常に尨大な生活費をどうして稼いで居るかと申しますと、手内職、親戚に依る補助或は持つて居る物を賣ると云ふやうな悲慘な状態である、此の法案に依りますと、大體三百圓前後であるが、それ位の扶助では駄目である、即ち最低生活の保障と云ふものは、人間が生きて行けると云ふ條件でなくてはならぬ、所が千圓も要る所へ三百圓や二百五十圓貰つた所で、それは死ねと云ふことと同じである、斯う云ふ意味に於て、どうしても其の扶助額を殖やさなければならぬ、斯う私は考へるのでありますが、厚生大臣の御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=4
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005・庄司一郎
○庄司委員長 堂森委員に申上げます、只今の御質問は既に數名の委員より御質疑があり、それぞれ適切なる政府の答辯がありました──政府より重ねて御答辯がありますか、又簡單に御答辯がございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=5
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006・河合良成
○河合國務大臣 臨機に應じて三百圓も増加して行く積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=6
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007・堂森芳夫
○堂森委員 本法案と直接關係がないやうに一應は考へられますが、能く考へて見ますならば非常に深い關係があると思はれます所の、國民健康保險制度に付て御尋ねしたいと思ひます、現在の此の物價高の時代に於きまして、若し一人の入院患者、或は長く醫療を受けるやうな家族が出るならば、大抵の中流家庭の者では殆ど財産を蕩盡してしまふ、結局さうしたことは、生活保護法に該當するやうな人達をどんどん國家が作つて行くと云ふ風な結果になります、國家としては生活保護法に該當するやうな人を一人でも作らないと云ふのが目的である、斯う云ふ意味に於きまして、今日勤勞大衆或は中産階級の人達が唯一の頼りにして居る所の、此の醫療制度を自分達のものにすると云ふ意味に於て、國民健康保險制度と云ふものをどうしても確立して行かねばならぬと私は思ふのであります、現在全國に於きまして國民健康保險に加入して居る人達は、大體に於て四千萬人位あると言はれて居るのでありますが、此の組合の大部分が非常に困つた状態で財政難或は醫療が巧く行かぬと云ふので、開店休業或は中止と云ふやうな酷い状態にある、斯う云ふやうな今日の状勢を救ふ意味に於て、どうしても國民健康保險制度を確立して行かねばならぬ、斯う云ふ意味に於てどうしてもうんと補助を出して戴きたい、此の點に對して大藏省及び厚生省當局の御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=7
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008・河合良成
○河合國務大臣 此の問題に付きましては、只今大藏省に追加豫算を出して貰ふことを交渉して居ります、出來るだけ出して貰ひたいと云ふことで交渉して居りますが、唯一言申上げますのは、是は非常に結構な制度で巧くやつて行かねばならぬのでありますけれども、慌てて、作つた爲に運用宜しきを得ぬ組合などあります、全體旨く行つて居らぬ組合などありますので、今度の豫算は出來るだけ都合宜く行つて居る所は出す、巧く行かぬ所は一つ巧くやつて貰ふことを土臺として出さうと云ふやうな方針で、大藏省と今折衝して居る最中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=8
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009・河野一之
○河野(一)政府委員 只今厚生大臣から國民健康保險のことに付きまして御話がございましたが、此の點に付きましては厚生當局と大藏當局と色々御協議して善處致したいとは考へて居りますが、國民健康保險に對する補助の點に付きまして私共の一應の考へを申上げて見たいと存じます、國民健康保險は、御承知の通り昭和十二年に創設致されまして、それから相當の成績を擧げて參つたことは事實でございます、所が最近に至つて物價騰貴其の他で相當經營困難に至つて居ると云ふ實情も認めるのに吝かではないのであります、併しながら保險制度の意味合から言ひまして、之に國が多額の補助を與へるのはどう云ふものであらうか、と申しますのは、保險と云ふ建前を貫きます以上、其の醫療費、保險料と云ふものは、組合員被保險者自身が拂ふべきものではないか、之に國が相當の補助を與へると云ふことは、保險制度の本質と大分違つて來るのではないか、と申しますのは、一種の社會保險ではあるが、之に對して國が多少金を出して居ります、例へば健康保險法は或は勞働者の厚生年金と云ふものに付て、或る程度の事務費其の他を出して居りますが、保險料其のものに付て出すのはどう云ふものだらうかと云ふやうな考へが一つあらうかと存じます、それから是は一般の國民醫療の根本的の制度の問題になりますが、醫療國營とか何とか云ふ、そう云ふものになりますと別でありますが、一般の社會救濟的のものは、今日御審議になつて居ります生活保護法の中に醫療救護費と致しまして二億圓程度の金が入つて居るかと存じます、是は一般の醫療救濟の制度として考へられて居る譯であります、それから第三點に付て申上げますが、斯う云ふことを申上げると色々御議論があるとは存じますが、國民健康保險制度が出來ました當時、大體當時の保險料計算に於きまして、醫療費の一年の負擔が八圓程度だつたかと存じます、さうしてそれに對して或る程度の事務費の補助を出して居る譯でありますが、當時の戸數割の負擔は十四、五圓から全國平均で十六、七圓になつて居つたと思ひます、それに對する比例の程度を申す譯でありますが、其の程度になつて居ります、現在に於きましては相當物價は上りましたし、農村方面の所得も上ると云ふことで、今回地方税法の改正に於きましては、府縣民税一戸當り百圓に上つて居ります、其の負擔の權衡から見ても、どうも保險料は相當考慮の餘地があるのではないか、さう云ふ三つの點から、先程厚生大臣が言れはました點に付て相當研究を要するのではないかと、私共としては事務的に考へて居のであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=9
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010・堂森芳夫
○堂森委員 今大藏當局の御説明がございましたが、緊急を要すると云ふ風なさう云ふ生易しい次第ではないのであります、今日の農村の所得は幾らに殖えたかと云ふことも一應理由となるのでありますが、例へば小さな都會であるとか或は中都市或は農村に於ても百姓する者皆が非常に生活に困つて居る、私は國家は國民の醫療衞生に對しては絶對の責任を持つ必要があると思ひます、色々議論がありまして、補助を與へると云ふことは、保險の本旨に悖るのではないかと云ふ御話がありますが、兎に角今日では自費を以て醫療を受けることが出來ないと云ふ人達が非常に多い、或は戰後日本の結核問題或は色々な方面を考へますならば、國民健康保險を確立しまして、それに依つて國民が弘く醫療を受けられるやうな制度を作る爲に、二億や三億の補助をやられると云ふことは當然であると思ふのでありまして、私は大藏當局の再考を希望したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=10
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011・河野一之
○河野(一)政府委員 只今仰せになりました點に付ては、成べく研究致しますが、國民醫療制度の根本に付て考へ方を改めて行くと云ふ行き方ならば、相當考ふべき餘地があると思ひますけれども、現在の國民健康保險制度其のものに付きましては、御承知の通り色々なことがございます、例へば能く御存じだと思ひますが、此處に厚生當局も居られますので、私の口から申上げるのはどうかと思ひますが、國民健康保險に入ると、醫者は胸の方は診て呉れるが、背中の方は診て呉れない、又單價が、例へば手術ならば手術にしても、傷が小さい程非常にうまいにも拘らず、傷の大きさに依つて點數が決まつて居るので御承知の通り色色なことがございます、それから或る程度濫診である、隨て今までお醫者に掛つて居らない人が皆來る、是は非常に宜いことだと思ひますが、それが爲に濫診になる、是が爲には醫療費の全額をやる必要はないのではないか、七割とか八割とか、或は定額的のものでも宜しいと云ふ説もあるのであります、根本的には組合病院みたいに運營して行くのが宜いのではないか、醫療技術は中々認定の困難な問題でありまして、同じ藥を以てしても、お醫者さんの藥の盛り樣に依つて違ふ、値段も違ふと云つたやうに、今日の醫療の根本問題が色々あると思ふ、さう云つた問題に付て色々御考究願ひまして、國民健康保險制度に付て相當檢討した上に、さう云ふ必要があると云ふことでありますならば考へて見たいと思ひます、只今の所はさう云ふ風な考へでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=11
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012・堂森芳夫
○堂森委員 是れ以上は議論になりますから止めますが、現在の國民健康保險制度に付て給付が少いと云ふ意味から、醫者が經濟上非常に困ると云ふことも考へられると思ふのであります、それはなぜかと申しますと、今日非常に藥價が高い或は公定價格も物凄く上つて居る、現在では物に依りましては戰前の數十倍になつて居ると云ふことも事實であります、而もさうした値段ででも正規の「ルート」で品物が入らない、之を何とかして正規の「ルート」で公定價格で醫師の方面に藥の配給を出來るだけ多量にやつて貰ひたいのですが、之に對して御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=12
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013・勝俣稔
○勝俣政府委員 醫藥品が非常に高い、それから配給の「ルート」を良くして行つたらどうか、斯う云ふやうな御話でございましたが、醫藥品の問題に付て一言申上げたいと思ひます、御承知のやうに、醫藥品は生産面から申しますと、第二次、第三次の製品でございまして、其の基礎原料が非常に上つて來た關係もあります、例へて見ますと「ベンゾール」の如きは二一・三倍、「メタノール」は四四・六倍と云ふやうな數字に上つて來た次第で、隨て是が藥價に對する影響が非常に大きくなつた、尚ほ御承知のやうに勞務費が非常に上つて來た、斯樣な點が加はりまして、相當の價格に上つたのでございます、併し政府と致しましては、之を下げるやうに努力致したいと考へて居るやうな次第でございます、只今の實情では製藥工場等の稼働率から申しますと、約半分位しか動いて居らぬ、之に付きましてはやはり原料資材が日本に少いと云ふやうな關係もあります、尚ほ又御承知のやうに石炭等は現在の所非常に少く尚且つ非常に高價であると云ふやうなことがありますが、併し今申上げた未稼働設備等を能く勘案致しまして、業者の方に對しましては經營の合理化をするやうに進めたいと思つて、斯う云ふ點からも下げたいと思つて居る次第であります、併し經營合理化の部面になつて參りますと、ここに又大きな失業問題と云ふことにもなつて來ますので、此の點に付て出來るだけさう云ふ方面の障碍を除くやうにしながら經營の合理化をして行きたい、斯う云ふやうに考へて居るやうな次第でございます、尚ほ基礎資材の問題に付きましては、最近聯合國の方へ懇請致しまして、相當量の基礎材料が入るやうに目下進行中でございますので、之が入りましたならば相當に藥も出廻るやうになるのみならず、藥の價の方も下るやうに致したいと考へて居ります
尚ほ藥品の製劑の方も司令部の方へ懇願致しまして、先程の基礎原料と同樣な話合ひに進んで居るやうな次第でございます、尚ほ只今成べく早く成べく安く、國民醫療に支障のないやうに、藥が醫者の手に配給されるやうにと云ふ御言葉でございましたけれども、之に付きましても現在我々の方の關係者が寄りまして、色々の改善案を目下考へて居りまして、尚ほ司令部とも此の問題に對しては打合せを要するので現在打合せ中でございます、右樣な努力を致しまして御趣旨に副ふやうに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=13
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014・堂森芳夫
○堂森委員 現在司令部に對して、藥劑に付てはどう云ふ風な藥品の材料、或は製品を送られるやう懇請致して居るか、若し出來ましたならば具體的な御答辯を願ひたい、或は又、今日藥の公定價格が高い、是は結局は患者に其の負擔が掛るのでありますから、藥の價格に付ての二重價格制を執るやうな途はないかどうかと云ふやうなことも御答辯を願ひたい、斯う云ふやうに思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=14
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015・勝俣稔
○勝俣政府委員 只今司令部の方へどう云ふ藥とどう云ふ量とをと云ふやうな御話のやうに承りましたが、之に付きましては一寸まだ本格のあれがございませぬので、此の席で申上げるのも、却て進行の部面に於きまして支障を來すやうなことがあると、國民醫療の爲に如何かと思ひますから控へたいと思ひます、尚ほ藥品は患者に取りましては食糧と同じやうなものであるから、二重價格をやらないか、斯う云ふ御話でございまするが、此の問題に付きましても大藏當局との關係がございまして、我我の方としてはさう云ふやうなことも考慮は致して居りますけれども、其の實現は相當困難なものではなからうかと云ふやうに思うて居ります、尚ほ一寸附加へて申上げまするが、先程申上げました基礎原料、製劑等が入つて參りましたならば、此の下半期に於きましては、醫藥品は市場に相當出ることだらうと思ひます、私は藥の量の問題に付きましては、若しも其の許可さへあれば、樂觀のやうな考へを持つて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=15
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016・庄司一郎
○庄司委員長 一寸堂森委員に申上げます、文部省より學校教育局長が見えられました、若し御希望でありましたら、どうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=16
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017・堂森芳夫
○堂森委員 名古屋市に於て、六月の十日頃に約半月に亘り學童に付て色々調査をしましたが、特に戰災者で非常に困つた人、或は親を戰爭の爲に失つた人、或は戰災の爲に親を失つた人、さう云ふ人達の子供約九百世帶位に付て色々調査を致しました結果、今日の此の世相が學童にどんな影響を及ぼして居るかと云ふことに付て、非常な悲慘な結果を得ましたので、此の學童に對して國家としてどう云ふ風にやつて行かれるか、御尋ねしたいと思ひます、七百五十人の子供の中に、三回とも或は二回位しか御飯を食べない學童が相當ある、毎日お粥若しくは重湯しか食べてない者が七百五十人の中約四百五十人、其の次にお粥が二回御飯が一回と云ふ者が約三百人位、大體殆がお粥若しくは重湯程度である、此の人達に晝から授業をやつてどうかと聽きますと、其の殆ど九八%が晝からの授業はどうしてもいやだ、身體がだるくて腹が空いて出來ない、斯う申して居ります、又洗濯したら次に着換へる物があるかと問ひますと、約七〇%位が此の暑いのに着物が一枚切りしかない、洗濯したら着換へがないから其の儘着て居る、斯う云ふ風な状態である、又家ではどうして生活をやつて居るかと聽きますと、九五%位は大體今までの貯金或は衣類を賣つて家の人達は生活して行くと云ふ状態である、又子供に對して小遣ひを親達は呉れるかと云ふ問ひに對しまして、約半數以上、六〇%位までは小遣ひなどはとんでもない、中には學用品の金さへも呉れないと云ふ者が約二〇%位あると云ふ風な悲慘な状態にある、即ち今日食糧に非常に困つて生活が苦しい爲に、兒童が登校或は勉強が苦しくて出來ない、そんなことはいやだと云ふ状態にある、斯う云ふ風に將來の國家再建の上に由々しい状態にあるが、之に對して文部省はどう云ふ風にやつて行くか、此の生活保護法と關聯した意味に於て御尋ねを致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=17
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018・日高第四郎
○日高政府委員 今御調べのことは、恐らく誇張のない事實だらうと存じます、實は先週日曜日に、大藏省の主計局長と東京都の係りの方と一緒に、東京都で經營して居る戰災孤兒の合宿所に見に參りまして、非常に氣の毒な状態にあることを目の當り見たのであります、北久留米に東京都で經營して居ります戰災孤兒の合宿所がありまして、其處に行きました、主に東京の下町の孤兒が三十數人居りまして、挨拶をしろと言はれても、どう云ふ風に挨拶して宜いか分らない、彼等の心持を傷つけずに挨拶することが出來ない氣持で、非常に氣の毒に思ひました、其の際に實情を聽きましたのですが、大體食糧の缺配其の他で四月、五月頃には皆體重が減つて居ります、七月に入りましてから聯合軍の放出食糧が受取れるやうになりましてから、體重も少しづつ殖えて來て居るやうでありますけれども、殊に缺配の時に普通の家庭では親が無理をして、其の犧牲になつても子供を保護しようと云ふのが人情だと思ひますので、子供達は知らなくても親が困難を背負つて立つて、子供を庇つて居ると云ふ事實があると思ふのでありますが、戰災の孤兒には不幸にしてさう云ふ親がないのもでありますから、それを庇ふ爲には當事者が非常な苦心を致して居ります、實は昨年疎開をしたなり引取人のなくなつた戰災の孤兒に付きましては、約一萬人位の者に對して初めは食糧を月二十三圓の豫定で支出して居りましたが、物價も高まりますので昨年の暮からは五十四圓に引上げることに致しました、今年に入つてから七十圓と云ふ風にしてやつて來て居りますが、物價の騰貴には到底追ひ付きませぬので、先程申しました此の前の日曜日に調べました所では、大體自給の農園のやうなものを持つて居る所でも、一月に百三十圓位は掛つて居るやうであります、平均すると百五十圓内外は必要なのではないかと感ぜられます、現在の所では全國の斯う云ふ戰災孤兒の集團合宿の爲に、大體七千五百人位見積りまして、それに對して月七十圓と、一年分の衣料費を三十圓位に見積りましてやつて居るのでありますが、實情に照らして見ますと、是では到底足りませぬので、それを増加して、大藏當局にも御願ひして、出來るだけの保護を加へたいと思つて居ります、尤も食糧の遲配や何かを取返すと云ふことは、さう云ふ合宿所其の他に付ては纒めて何とか當局に掛け合ふと云ふ途もございますけれども、一般に家庭に居ります戰災の孤兒に對する特別な取計らひと云ふものは、文部省の手では非常に困難だと存じて居ります、併し是は日本人全體が飢餓に瀕して居る時でありまして、當局者も苦慮は致して居るに違ひありませぬけれども、有效適切な處置が十分に行屆いて居ないと云ふ事實は、洵に遺憾だと存じて居ります、此の上ともさう云ふ戰災の孤兒なんかに對しては、父母や父兄の保護がないのでありますからして、特別に同情をして戴き、父母に代るやうな援護を關係當局者に對しまして懇請する所存でございます、非常に詳しい御調べでございますが、さう云ふ點も我々は出來るだけ現實を調べまして、現實に即するやうな方途を以て保護を加へたいと云ふ風に感じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=18
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019・堂森芳夫
○堂森委員 重ねてもう一度國民健康保險の問題に付て、私は御尋ねしたいと思ふのであります、さつき厚生大臣は國民健康保險制度と云ふものは、戰爭中に慌てて作つたものだから非常に不備なものである、一つゆつくりと考へて、之に對してどうするかと云ふことを考へたいと云ふやうな御話でございましたが、一體厚生省は國民健康保險制度を潰す氣であるか、或は之を擁護して行くのであるか、此の點をはつきりと御答へ願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=19
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020・服部岩吉
○服部政府委員 御答へ致します、御承知の通り國民健康保險組合法は確か昭和十三年でございますか、政府の提出法案でありまして、是が決定されて實施されたのであります、此の健康保險組合は一つの醫療の社會的施設として生まれたものでありまして、政府と致しましては此の健康保險組合を最も強力に育て上げまして、さうして國民一般の醫療の社會化を強力に發展せしめて行きたいと云ふ考へを持つて居ります、其の内容に至りましては或は改善すべき點があらうとも存じますけれども、此の機關は最も必要な機關でありまするから、飽くまでも強力に堅持して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=20
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021・堂森芳夫
○堂森委員 諄いやうでありますが、現在全國の國民健康保險組合は殆ど潰滅に瀕して居る、若し今日之に對して政府に於て緊急に對策を講じないで、さうした倒れる儘にして置くならば、次に政府が如何に聲を大にして又作らうとしても、恐らく國民は相手にしまいと思ふのであります、私は福井縣の出身でありますが、福井縣の全縣下の町村長は擧つて國民健康保險組合を再興出來るやうにして欲しい、それには補助が欲しい、其後は必ず責任を持つてやる、斯う言つて居ります、私共へは全國の健康保險組合の色々な人達が毎日陳情に來られますが、今金もやらずに置いて、さうして國民健康保險組合をやれと言つても、そんなことは聽く筈がないのであります、此の大事な施療に對して二億や三億の金をやれない筈はない、厚生當局はどうか頑張つて此の立派な施設を作る爲に渾身の努力を拂つて戴きたい、斯う私は思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=21
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022・服部岩吉
○服部政府委員 先刻大臣が御答辯されましたやうに、只今關係當局と強力に折衝致して居ります、全國の一萬餘りの組合の中では、今財政關係に於きまして不振のものもありまするし、又一面醫療品の非常なる暴騰に依りまして、醫者の協力の足りない部面に於きまして、相當不振のものもありますが、要は財源の充實が此の機關をして最も有力に活動せしむるものと考へて居ります、隨ひまして是非とも此の機關を完全に育てる爲には、是等の組合に對しまして相當の補助をすべきことが必要だと考へて居ります、強力に關係方面と折衝致して見ますから、どうか皆さん方に於ても一段の御援助を仰ぎたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=22
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023・庄司一郎
○庄司委員長 山口委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=23
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024・山口好一
○山口(好)委員 私は簡單に質問させて戴きますから、適當なる、而して御熱誠なる御答辯を願ひたいと思ふのであります、生活保護法、是は規定を見ますると、極く簡單に規定がなされて居りまして、費用負擔に關する條項が多いやうであります、前回政府委員に於かれましては、本法は簡單ではあるが、之を以て十分であると思ふ、それは簡單にして結局運用に俟つものである、運用宜しきを得れば本法は簡單であつても差支へない、斯う云ふ御答辯であります、私も之を諒とするものであります、法三章を以て國家を治むることが出來るのであります、唯運用の宜しきを得れば宜いのであると云つても、末端の當局者に於ての運用を餘程愼重に考へなければならないと思ふのであります、今まで斯うした法律、斯うした事業に付きまして、末端に於きましては、色々と現實の緊急必要な場合に當面しまして、或はお互ひが責任のなすり合ひをするとか、斯う云ふことは法律に規定がないからやれないとか云ふことで、遲滯を生じたり、差支へを生ずる場合が多いのであります、本法に於ける病人の治療の如きも、一刻を爭ふと云ふやうな場合に、市町村に於て法規の解釋の點から之を直ちに救濟することが出來ないと云ふやうなことがありましたならば由々しい問題であります、是は生活保護の問題とは少しく離れますが、最近に私の郷里の刑務所内に於て起つたことでありますが、一受刑者が傳染病になりまして、發疹「チフス」か何かに感染をしたのであります、所が其の刑務所内には隔離病舍がありませぬので、之を直ちに其の町或は村の隔離病舍に移せば宜いのでありますが、囑託醫は法律に斯う云ふ時に移す規定はないと云ふので、其の儘に放置したのであります、すると現在は犯罪も非常に殖えて居りまして、受刑者及び被告人の數も殆ど超滿員の状況でありますので、同じ監房内に居りました被告人に傳染をして、忽ち擴がつたやうな事件があつたのであります、之に付きましても其の醫師が曰く、刑務所内に於て斯かる状況の場合には、其の市町村の隔離病舍に直ちに移せると云ふ法律規程を是非設けて貰はなければならないと云つて我々に話した次第であります、何でも法律がなければ出來ないと云ふ風に解釋を致すのであります、是が日本人の通弊と申しませうか、法律に對する考へ方に可なり斯う云ふ面があるのであります、故に本法に於きましても、末端の指導宜しきを得ませぬでしたならば、其の運用は決して宜しきを得ないのであります、斯う云ふ所に私は重大な點があると思ひます、殊に第一條の保護を要する人の範圍の問題とか、或は第二條の其の保護を受けられない缺格者の範圍の問題に付きましても、其の解釋に付て、末端では實際の適用の場合に相當疑義も生ずる、隨て遲滯其の他の差支へを生ずると云ふやうなこともあるのではないかと思ひます、此の點は十分此の法律の機動性を活かして、臨機應變の處置を執り得る自由裁量の餘地を大ならしむると云ふことに付て、今後此の法に基いて作らるべき細則或は命令等に付きましても、十分左樣な點を御考察を願ひたいのであります、之に付きまして政府では今後、方面委員が今度民生委員と改稱致されて此の任に當ることになりますが、此の民生委員を現在よりもどの程度に殖やすか、又此の民生委員其の他の末端の當局者に對しまして、斯かる見地からどう云ふ指導を直ちになさんとして居られるか、之を御答辯願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=24
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025・葛西嘉資
○葛西政府委員 山口委員の仰せになりました本法の運用を非常に注意してやらなければならぬ、殊に法にこだはつてしまつて、本當の精神を活かすことのないやうなことがあつては大變だと云ふことから、適切な例を御引きになつての御示しでありましたが、私共全く山口委員と同樣に考へて居る次第でございます、隨ひまして山口委員も御述べになりましたやうに、保護に關する問題の方は必要の最小限度を規定してありまして、謂はば法三章と申しますか、さう云ふやうなことになつて居ると思ひます、細則等に於きましても、法に關する部分は必要な手續等だけを規定致しまして、餘り細かいことを法で縛ると云ふやうなことは致さない積りであります、大體是が執行は地方長官の監督の下に第一線の市町村長をして運用せしめて行くと云ふ方針でございます、唯費用負擔の關係は、是は實際地方の義務負擔になる關係がありますから、殆ど此の條文の大部分を費用負擔で占めて居る、是は義務負擔の關係上已むを得ぬことではないかと考へて居るやうな次第でございます、殊に御示しになりました一條、二條等の解釋は極めて徹底する必要がある、是は仰せの通りだと思ひます、大體保護を要する者と云ふものを、地方廳に於きまして其の時々に於て決めまして、或る程度の幅を以て決めて置きまして、出來ますれば民生委員等に──「カード」階級と云ふことを言つてはいかぬと云ふ衆議院での御話でありましたが、記録を致して置きまして、さう云ふ風に致してやりますれば、是が漏れたりするやうなこともないやうにならうと思ひます、尚ほ本法が制定されましたならば、殊に第二條等の場合に於てはどう云ふ者がどうだと云ふ具體的な例を以て、地方の方に此の委員會で御話のあつたやうなことを徹底致しまして、範圍等に付ては間違ひないやうにしたいと云ふ風に考へて居る次第でございます
尚ほ民生委員の人數はどの位にするかと云ふ御尋ねでありましたが、現在七萬餘、八萬弱、方面委員があるのでありますが、先日も小柳委員に御答へ申上げたと思ひますが、大體私共は十萬乃至二十萬の所で押へて行きたい、唯併し實際適任者がないやうな場合には、無理に人を置くと云ふことはどうかと思ひまして、そこらに大分ゆとりを持つた考へ方を持つて居ります、と申しますのは、大體民生委員を何人置くかと云ふことは、市町村の意見を聽いて決めると云ふことになつて居りますから、こちらで幾らと云ふ風に規定をしてやる譯にも參らないかと考へて居ります
民生委員の指導をどう云ふ見地に立つてやるかと云ふ御話でございましたが、是は此の本法の趣旨を能く諒解して戴きまして、國の責任に於て國家が保護して行くのだと云ふ建前を徹底致しまして、一人も現に生活に困つて居る者がないと云ふ風な状態に致したいと云ふ見地から、民生委員の方々、或は市町村長の方々に一段と奮發を願ひたいと云ふやうな趣旨で指導して參りたいと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=25
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026・山口好一
○山口(好)委員 次に本法に關係して居る保護費の豫算は三十億と云ふことでありまして、對象となる人口は八百萬、其の中要保護者は六百五十萬と云ふやうな御計算でありまするが、今後の情勢を見ますると、此の要保護者の數は相當に増加するのではないかと思はれますので、此の豫算にして不足する場合に於きましては、どう云ふ方法に依つて豫算を充足されまするか、又どの程度位まで豫算は取れるものでありませうか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=26
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027・葛西嘉資
○葛西政府委員 此の八百萬の要援護者竝に三十億圓に付ての御懸念でございましたが、此の點は、愈愈不足を致しますれば、先般本會議に於て大臣から御述べになりましたやうに、豫備金或は追加豫算と云ふやうなことで、法律の執行に要する金として支出をすると云ふ譯になるのでありまするが、大體私共が現在まで此の緊急生活援護要綱に基いて實施をして參りました實績を調べて見ますると、今の所では相當餘裕があるのではないかと云ふ風に考へます、尚ほ又八百萬の數に付きましては、昨年の十二月末日に、全國の方面委員の方々から要援護者の實際の調べをして戴きましたことから見ましても、現在の状態の下に於ては若干餘裕があるのではないかと云ふ風に考へて居りまして、三十億を本年の四月一日から實施して現在に至るまでの經過を見ると、若干の餘裕があるやうに考へられます、隨ひまして此の豫算の執行に、費用がなくなつて困つて、多額の豫備金或は追加豫算を御願ひしなければならぬと云ふ状態は、餘程の事情の變化のない限り先づ今の所ないのではないかと云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=27
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028・山口好一
○山口(好)委員 次は本法の保護費に關する規定を見ますると、大體市町村で支出致しましたる費用は、市町村竝に都道府縣が各各十分の一を負擔し、國庫は十分の八を負擔する、斯う云ふ風な三本建になつて居るやうでありまするが此の規定其のものがややつこしいと同時に、又實際の取扱が非常に面倒なのではないかと思ふのでありまして、此の爲に圓滑なる實際の運用を阻碍すると云ふやうなことがありましたならば是は重大であります、寧ろ此の生活保護の義務と云ふものが、單なる慈善事業ではなしに、國家の義務だと云ふ意味を徹底しまして、更に此の運用の完璧を期する爲に、此の經費を國庫負擔一本建にすると云ふことが實際的には最も妥當ではないかと思ふのでありますが、政府は之を國庫負擔一本建に改訂する御考へはないかどうか御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=28
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029・服部岩吉
○服部政府委員 御答へ致します御説一應御尤もだと思ひます、國家が生活を保障する上から見まして、全額國庫が負擔すべきではないかと云ふことでありますが、内容に於きましては、是は國家が全部負擔する建前になるのでありますけれども、濫用と云ふことを一面防いで行くと云ふことも必要でありますし、又さう云ふ立場から一應町村にも責任を持たせる、又府縣にも責任を持たせる、斯う云ふ工合に致しまする場合に於てやはり責任を持たせますと、濫救とか、或又それに依つて過日來色々御話のありましたやうな怠惰な者を作るとか云ふやうなことを防ぐことが出來ますので、さう云ふ立場から市町村竝に都道府縣に一半を持つて貰ふことにする、但し其の都道府縣竝に市町村の是等の費用に對しましては、一面分與税の方面から其の財源を與へる、斯う云ふ建前に致して居る次第でありますから、御説は一應御尤もでありますが、法の建前と致しましてさう云ふ風な立場を取つた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=29
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030・葛西嘉資
○葛西政府委員 只今政務次官から御話になりましたやうな趣旨でございますが、尚ほ前段に、取扱上に面倒になりはせぬか、此の爲に救護が徹底しないやうなことがないかと云ふ御心配でございました、其の點に關しまして御答へを致したいと思ひます、是は先般此の委員會でも申上げたのでありますが、大體國の方から十分の八に當りますものを初めに概算渡をして置く譯でございます、分與税の方もさう云ふ風なことになりまするし、金の方は大體地方へ參つて居ります、隨ひまして是が年度末に於て決算で清算をすると云ふ風なことに相成るのでありますから、實際支給にはちつとも差支へはない、是が國庫で全部持ちましても、同じやうにやはり國費を概算渡しをして置くと云ふやうな、全く同じやうなことでありまして是が國と府縣、市町村と分れることに依りまして、救護の上に於ては御心配のやうな點はなからうと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=30
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031・山口好一
○山口(好)委員 次に御尋ねしたいのは、先程厚生大臣からも、本法の運用に當つては、單に消極的な方面ばかりを考へずに、積極的に就職の斡旋とか職業補導と云ふやうな方面も注意をしなければならないと云ふ御考へが述べられて居りまするが、之に付きまして、一般的に生活の指導或は就職の斡旋、職業補導と云ふことに付て、現在相當具體的な方策が執られて居るか、又之に對して將來どう云ふ改訂を要すると云ふ考へで居られるか、此の點を御伺ひ致します、それからもう一つ、戰災或は戰死者の遺族としまして未亡人と云ふものが相當に殖えて居るでありませう、此の點に付ても既に御質問があつたと思ひますが、未亡人及び其の家族に付きまして、やはり積極的な方面を考へてやる、職業補導と云ふやうな方面も考へてやると同時に、適當の年齡の人に付きましては、再婚の問題が起ると思ふのでありますが、日本の家族制度に於きましては、再婚問題に付ても相當困難な色々な問題を生じませう、左樣なる場合に我我はどう之を指導したら宜いか屡屡聞かされるのでありまして、是等の統計上等から見まして、未亡人と云ふものは再婚した方が先行きは幸福であり得るかどうかと云ふやうな、御研究の結果を厚生大臣に御回答を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=31
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032・河合良成
○河合國務大臣 生活保護法の性格は、一般の事業の進行とか、或は失業對策などの面から見ますると、大體消極的性質を持つて居るものと云ふことは、前にも私此の席で申上げた通りでありまするが、唯斯う云ふやうな今日の時勢でありまして、もう何でも物の増産と云ふ一點に集中しなくては國が立たぬと云ふやうな實情でありますのと、もう一つは日本人の本來の氣持としまして、唯金を貰つて行くと云ふよりも、仕事を與へて貰はなくては困ると云ふことが、只今日本全體に溢れた空氣になつて居ります、さう云ふ面を觀察しまして、生活保護法と雖も金の給與と云ふ面ばかりでなく、それを出來るだけ増産面に結びたいと云ふ考へで全般の問題を考へて居る次第であります、それで授産所なり、共同作業所なりと云ふ面のことも、此の生活保護と云ふ面で出來るだけやりますが、それは又直ちに失業救濟の問題とやはり連繋をして參ります、同じ厚生省の問題でありますから、其の間にお互ひに連繋を取つてやつて行く殊に此の間説明申上げました通りに、三億圓の金を損金と見まして庶民金融金庫に十億圓と云ふ金を融通させると云ふことを只今具體的に進行させて居りますが、是は生活保護法の面でやる仕事でありまして、勿論引揚者も非常に大きな部分だと思ひまするが、戰災者の幾らかもありませうし、又其の他に困つた御方も來ると思ひます、それは生業資金として貸すと云ふことになつて居りまして、一軒の家三千圓でやれぬ場合には、何人かで共同してやるとか、色々の方法で此の十億圓と云ふものは積極的の増産の面に向けて行きたいと云ふ考へで居りまするので、生活保護法も其の面に付てやはり重大な働きをなすものなりと云ふ考へで居ります、又さうさせなくてはいかぬと云ふ風に考へて居ります、又未亡人の結婚の問題に付きましては、只今勿論再婚なさることは、政府と雖も是は止むべきことでなく、寧ろ進んで再婚なさることを希望して居ると思ひますが、斯う云ふ面に付て何處まで只今具體的の政策を執つて行くかと云ふことに付きましては、さう思ひ切つた政策は執つて居らぬと思ひます、此の點に付ても能く研究致しまして、適當な方法がありましたらそれを執りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=32
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033・山口好一
○山口(好)委員 厚生省關係は是だけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=33
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034・庄司一郎
○庄司委員長 山口委員に御相談申上げまするが、司法大臣は先刻來數囘交渉して居るのでありますが、今行く今行くと云ふやうな返答だけで、まだ見えられませぬ、それであなたの司法省關係は司法大臣が來られるまで保留されまして後刻適當な時間に御質問を御願ひ申上げたいと思ひます──発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=34
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035・奧村又十郎
○奧村委員 厚生大臣に御伺ひ致したいのであります、生活保護法も質疑は大體今日で終るやうであります、併し遺憾なことには、非常に大事なことでどうも一つはつきりして居らないことがあるのであります、それは今日の生鮮食料品の配給に付て辯解のやうな御話がありましたが、どうも安心の行くやうな確たる御方針が聽けなかつた、是ではどうも安心して生活保護法の審議を進めることが出來ぬと思ひます、之に付ては本會議で河野密さんから、生活保護も大事だが、此の生鮮食料品の配給が配給だけでそこそこ生きて行ける程度に行かなければ、國民全體が生活保護を受けねばならぬと云ふ御言葉がありました、又此の委員會でも松谷天光光さんからも魚、野菜、或は果物、牛乳、卵其の他の配給其の問題が明かにならねば審議が出來ぬ、又其の他戰災者或は病人其の他の問題に付ても、お藥よりも今日榮養品の配給と云ふことが肝腎であると云ふ御質問がありましたにも拘らず、農林省當局の御答辯がどうも御辯解の程度であつて、我々滿足出來なかつたやうに思ひます、そこで、是等の點に付てはつきり政府の御方針を御伺ひしたいのであります、なぜなれば、せめて生鮮食料品に付て五百圓生活の枠内でやつて行ける程度、死なない程度の配給が、確保されなければ、生活保護法の目的が到底達せられぬと思ひます、特に戰災者、引揚者、或は軍人の遺家族、貧困者、是等の人々は特に生鮮食料品の配給が確立されなければ一番困る人々であります、此の人等は顏もありませぬし、交換する物もありませぬし此の人等が一番困る、もう一つは、此の保護法で以て色々な施設をおやりになる、所が病院、療養所其の他の施設に於て、どうも豫算が足りない、又援護金を貰うてもやり切れぬと云ふのは、結局適正な價格で食料品の配給が行はれて居らぬと云ふ根本の原因から發して來ると思ふのであります、先づ此の生鮮食料品の配給の根本方針をもう一つ此處で質さなくては、保護法の本當の確實な審議が得られないと思ふのであります、そこで先づ私は厚生大臣に昨年十一月に生鮮食料品の統制を撤廢された事情に付て御伺ひ致したいのであります、過ぎ去つたことをなぜ聽くかと云ふことであるかも知れませぬが、併し私は考へますのに、此の生鮮食料品の統制と云ふものは、昨年の十一月統制撤廢後根本的に情勢が變つて居ります、現在も其の變つた儘になつて居ると見て居ります、なぜならば、現在統制らしいやうなものを布いて居るやうでありますが、あの統制撤廢後と變つて居ります、現在の統制は今年三月の食糧緊急措置令の第九條に依つた根本的な統制でなく、一時間に合せの統制のやうに私共は見受けて居ります、それからもう一つの理由は、此の頃どうやら本議會内に於ても生鮮食料品の統制撤廢を論議して居る人々がある樣に思ふ、是は國民の一部にもあらうと思ひますが、斯う云ふ情勢でありまして、大體の情勢は昨年十一月統制撤廢の頃の事情と同じやうでありますから、一應統制撤廢の事情に付て御伺ひ致したいと思ひます、そこで私の考へを申上げたいと思ひます、食糧の少い、どうしても八千萬國民に對して腹の張るだけの食糧がない時には、適正な値段で等しく分け合ふと云ふことなれば配給統制は是非必要であると思ひます、昔から乏しきを憂へず、等しからざるを憂へる、是は根本の原則であらうと思ひます、食糧がもつと豐富になるまでは、國家の責任に於て配給統制をやらねばならぬ、是は當然であると思ひます、尚又「マッカーサー」司令部の方でも、食糧が不足して國民が死ぬと云ふことならば、八千萬全部が等しく分け合うて一緒に死ぬと云ふ覺悟でやつて呉れ、是は司令部から言はれぬでも、我々も其の考へでやらなければならぬと思ふ、所が統制を撤廢すると云ふことは、一部の人は食べられるが、一部の人は食べられない、特に統制撤廢の意味は、金のある人は食糧をふんだんに食べられるが金のない人、顏のない人、物のない人は食糧が食べられぬと云ふことになるのであります、さう云ふ事情であるのに、なぜ政府が昨年十一月に統制を撤廢されたか、實は私は地方の漁業會長を今日まで八年間やつて居ります、鮮魚の配給統制、延いては野菜、果物の配給に付て非常に心配を持つて居つたのであります、所が昨年十一月あの統制撤廢を聞いた時に、もう日本の國の經濟は破壊されると云ふ風な感じを持つたのであります、なぜならば、此の統制を撤廢すれば食糧が不平均になる、又通貨の膨脹して居る時に、唯統制を撤廢すれば物の暴騰は勿論である又魚や野菜ばかりでなく、是が他の物價にも影響し、他の統制にも影響する、是は申上げるまでもなく大臣御承知の通りであります、なぜ統制を撤廢なさつたか、大臣から其の時の事情を御話願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=35
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036・庄司一郎
○庄司委員長 奧村委員に一寸申上げます、只今司法大臣見えられまして又直ぐ豫算總會に御歸りにならなければなりませぬ、先程申上げたやうに山口委員が保留されて居てますので、此の際政府の便宜を圖つて上げる意味に於ても、山口委員の質問をさせて戴きましては如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=36
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037・奧村又十郎
○奧村委員 厚生大臣さへ御差支へなければ差支へありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=37
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038・庄司一郎
○庄司委員長 それでは有難うございます──山口委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=38
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039・山口好一
○山口(好)委員 司法大臣に御尋ね致します、裁判と本法とは、一寸見ますと懸け離れて居るやうでありますが、私の經驗に依りますれば、裁判の結果は之を受けまする家族に非常な影響を及ぼしますので、本日までは保護を要しないやうな家族も、刑事裁判に依つて有罪が決定されたと云ふやうな場合には、明日から保護を受けなければならない家族に變るのであります、左樣な意味合に於て、又其の他の一般的社會問題或は經濟問題から言つても非常な重要な意義を持ちます、此の裁判は、一面からは裁判其のものが一つの社會教育であると云ふ風にも考へられ、或は裁判官は、裁判をする時には病人に對するお醫者としての治療を施すと云ふやうな立場にも考へられるのであります、其の意味で本日裁判の今後の行き方に付ての御質問を簡單に致したいと思ひます、現在裁判所の状態を見ると、渉外事件と云つて、進駐軍に關係のある、或は報告をしなければならないと云ふ事件がありまして、其の取扱を見て居りますと、從來の日本の裁判の内容に比して、調べも非常に嚴格であり、期日も二十日以内に決定すると云ふ方法であり、又科刑の點に於ても非常に重いのであります、或は關係筋の指令があることとは思ひますが、必要以上に重く致すと云ふ場合があります、大體に於て檢事の求刑通りに判事の方では宣告すると云ふ形になつて居るやうであります、是は甚だ遺憾であると思ひます、辯護人、被告人、被告人の家族總てが困つて居る、又斯樣な裁判が行はれるので刑務所は實に超滿員の傾向にある、是は一般の犯罪が殖えて居ると云ふ原因もありませうが、斯樣な現下の情勢になつて居ります、司法大臣は之に對して關係當局に、日本の裁判の實情及び其の事件々々に付ての實情を諒解して貰ひ、或は報告し或は交渉致しまして、餘りに重い傾向のない裁判に是正する御努力を拂つて戴いて居りますか否や、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=39
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040・木村篤太郎
○木村國務大臣 御尤もな御議論であります、昔から、刑政の要道は刑をなからしむることにありと哲人は申して居りますが、先づ裁判で人を裁くと云ふよりも、左樣な人をなからしむることが、我々の目下の急務であると考へます、不幸にして左樣な人が出た場合は、所謂其の罪を惡んで其の人を憎まずであります、出來るだけのことをしてやらなければならぬと考へて居ります、殊に裁判官は國家の正義昂揚、秩序維持の任に當りますので、最も人格の高い、公正な人でなければなりませぬ、又裁判をするに當つては、神の心を以て裁判しなければならないと私は考へて居ります、それで現在の實情に於てはあなたの申される事例がないとは申しませぬ、率直に私はあると認めまず、左樣なことは是非是正したいと云ふことを考へて居ります、殊に只今の事情と致しましては、裁判官の不足、殊に戰災に依つて多數の裁判所が燒けまして、御覽の通り、日比谷の昔の都の清掃關係の廳舍の一角を使つて、あれを區裁判所、檢事局の法廷に使つて居りますが、實に不樣なことであります、田舍の芝居小屋以上の所で、默々として働いて居る、此處で裁かれる人も困難でありませう、裁く人も困難でありませうが、我々は一日も早く之を是正したいと云ふ熱意に燃えて居りますが、如何せん微力未だ其の域に達して居らないのでありますが、私は全力を上げて之を改善して行きたいと考へて居りまぬ、是は近く新憲法の實施に鑑みまして、司法制度は相當改正されます、今の構想に於ては、全國で千數百の治安裁判所が──名前はどうなるか分りませぬが、設けられることと思ひます、所謂簡易裁判所でありまして、是が設けられますと、極めて簡易迅速になりまして、公正に裁判され、是までの惡弊は十分に是正せられることと存じて疑ひませぬ、御議論の所は十分徹底させることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=40
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041・山口好一
○山口(好)委員 只今明快な御答辯を戴きました、是非とも左樣に御努力を御願ひ致す次第であります
次に敗戰日本は終戰後に於きまして、著しく犯罪が殖えて居ります、殊に青少年の犯罪は、統計上から申しましても、二倍乃至二倍半、場所に依りましては三倍と云ふことになつて居ります、一方刑務所の收容者數は、是れ亦少くて二倍半、多きくは五倍位で、定員を遙かに超過して居るやうな實情であります、隨て刑務所に於きます居房衞生設備其の他に付ては、隨分目を蔽はしむるやうな弊があるのであります、三疊の所へ六人とか、四疊半の所へ十人とか、殆ど寢る場所もない、此の暑さの中に、殊に水の使用も十分でなく、汗と脂と其の臭氣で非常に不衞生極まるものがあるのであります、一方刑務所内の被告人竝に受刑者は食糧も限られただけであります、社會に居る所の人のやうに、闇の物を幾分でも食することが出來、餘計なものまで食べられると云ふことはないのでありまして、此の中で病氣にでもなりましたならばどうしても死の道を辿らなければならないと云ふのが今日の情勢であります、之に對しまして醫療の方面に付きましても、食糧の方面に付きましても、十分──成程犯罪を致して居るのでありますから、一般人の苦しんで居る時に此處だけを良くすると云ふことは出來ないでありませうけれども、之に對しても只今司法大臣が神の心を以て裁く、是等に對しても人間としての慈愛を持つて居られるのでありますから、左樣な見地からやはり一般の人の食べる必要量位は食糧を給し、又一般人の普通とする生活程度まで、居房其の他も改善して戴きたいと思ひますが之に對する御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=41
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042・木村篤太郎
○木村國務大臣 御答へ致します、或は御承知ないかと存じますが、日本の刑務行政と云ふのは、從來實に行届いて居つたのであります、戰爭前に於きましては、「アメリカ」から來た人にも、日本の刑務所は實に能く出來て居ると云ふやうな、賞讚の言葉まで戴いて居つた、一例を擧げますと、府中の刑務所の如きは、設備萬端に於て列國の刑務所と決して劣らないやうな状態であるのであります、所が御承知の通り、各所の刑務所が裁判所と同樣戰災に罹りまして、實に見る影もないのであります、そこへ以て來て犯罪人が非常に増加致しましたので、御説の通り、刑務所内に於ては實に狹い所に澤山の人が居ると云ふやうな状態で氣の毒であります、それに付きましては、司法當局と致しましては一日も早く改善致したいと存じまして、十分なる努力を拂つて居ります、尚ほ此の際申上げたいのは、斯樣な既決囚でありましても、出來る限り假出獄の制度を活用致しまして、どんどん世の中に出すと云ふやうな方針で進んで居るのであります、一般の衞生設備其の他に付きましては、今折角努力中でありまして、一例を申上げますと、聯合軍の好意に依りますD・D・Tも頂戴致し、之を刑務所に撤布致して、從來のやうな南京虫とか其の他の惡虫の驅除に努めて居りますので、相當改善されたと存じて居ります、尚ほ十分に改善して行きたい積りで居ります、又食糧の點に付きましても、御説の通り、刑人であつても是は等しく人の子であります、我々もさう云ふ點から區別しては相成らぬと考へて居りますので、食糧の點に付きましても十分の注意を拂つて、此の人達の健康保全と云ふことに努力を致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=42
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043・山口好一
○山口(好)委員 時間もないやうですから簡單に質問させて戴きます、成る程御説の通り日本の刑務所は曾ては模範的なものであつたやうであります、さうして刑務所に對する一般の觀念、刑務官に對する尊敬の觀念、行刑史上に對する吾々の關心と云ふものも相當あつたのでありますが、戰爭を契機としまして此の方に於きましては、其の尊敬は觀念が非常に薄れて來たのであります、隨て行刑を掌ります所の刑務官、殊に下級官吏は其の質が非常に低下して居ると私は思ふのであります、是は俸給と昇進──昇級の點や待遇の點でやはり劣つて居る所があるやうに思はれるのであります、更に一般の人々が、あれは獄吏である、「ゼーラー」であると云ふやうなことで、一種の侮蔑の念を持つて見ます爲に、本當に良い人物が入つて來ないのではないかと思ふのであります、左樣な點を一般に尊敬を拂つて戴きますやうに仕向け、又待遇を改善致しまして、立派な人物が集まるやうに、殊に行刑局長なども生え拔きの刑務官を以てなり得まするやうに、何十年と云ふ長い間經驗を持つて携はつて居ります所の人が行刑局長にまで進み得るやうな實状を現出して戴きますことに依つて、更に一層良い人物を集めて戴きたいと思ふのでありますが、此の點に付て御所見を伺ひます、もう二つありますから一緒に御尋ね致します
今後の裁判の行き方としましては、裁判の民主化を徹底せしむると云ふ意味で、私は刑事裁判の形式を改善して戴きたいと思ふのであります、即ち只今の刑事裁判の方式は、裁判長が事件に關する事實を初めから終りまで被告に付て直接に訊くのであります、さうして檢事の方でも證據を擧げ或は訊問をし、辯護人は更に最後に補充訊問をし、更に證據を擧げると云ふことになつて居ります、之を今行はれて居る極東軍事裁判の如く、或は「アメリカ」本國に於ける裁判の如く、裁判長は終始公平なる第三者として觀察致して居つて、原告官であります檢事の方が立證をし、訊問をする、之に對して辯護人の方でも反對訊問をし、或は反證を擧げて行く、此の兩者の爭ひを見て居りまして、公平な立場から裁判をすると云ふことが最も妥當な裁判ではないかと思ふのであります、碁、將棋に見ましても、自分より技能の高い人が對局して居る場合に於きましても、岡目八目で判然と兩者の缺點其の他が分る、所謂岡目八目と云ふ言葉で言はれて居りますが、其の通りでありまして、私は本當に公平嚴重な裁判と云ふものは裁判長が終始默つて見て居る、要するに自分から訊ねますと、そこに自分の言つて居る通りに言はせたいと云ふやうな考へも働き、妙に其の場面がこぢれたりしますと、是は善からざる人間である、自分の問ふ所に乘つて來ないとつい感情を昂ぶらせて先入感を働かせると云ふやうなこともあり、結局裁判の公正を期することが出來ないのではないかと思ふのでありまして、是は私の今までの體驗から申しまして、是非とも左樣に改めて戴きたいのであります、之に付ての御所見を伺ひますもう一點は、それと同時に裁判官の採用に付ての資格條件であります、やはり裁判は民情を察し、又所謂世の中の事情の裏表を知つて裁判をしなければ、本當の裁きは出來ないと思ひまするので、其の意味で少くとも辯護士を十年以上やつた者の中で、學識、經驗及び人格の高い者を選びまして、之を裁判官に採用する、新憲法を契機と致しまして左樣な裁判官採用の制度を立てて戴きたいと思ふのであります、是は永らく全國の辯護士會でも要望して居る所であります、其の他一般人と致しましても、只今の裁判よりも斯かる裁判官に依つたならば必ず善い裁判が行はれるであらうと云ふことは一般の要望でありますので、現在の裁判の方式なり、裁判官の採用の制度を民主化する、之を徹底する、さうして對外的にも信用を博し得るやうな機構の確立を、是非とも今度の憲法改正を契機としてやつて戴きたいと思ひます、是が又同時に生活保護法とも關聯を持つと考へて居りますので、此の席で特に此の點に付ての御所見を御伺ひする次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=43
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044・木村篤太郎
○木村國務大臣 御答へ致します、先づ刑務官の生活改善の點でありますが、是は一般行政官の生活改善と共に近く其の實施の運びに至ることと存じます、尚ほ特殊の地位に鑑みまして十分なる考慮を拂つて行きたいと思ひます、又生え拔きの刑務官を重要な職に就けたらどうかと云の御説御尤もであります、其の點に付ても只今十分考究して居ります
それから裁判の方式でありまするが、是は御説のやうに現在日本で開かれて居りまする極東軍事裁判、是は非常に我々の參考に資する所が多いのであります、其の良い所を取入れまして、裁判の方式に付ての改善をして行きたいと思つて居ります、是も我々の方で今開いて居りまする司法法制審議會に於て近く十分檢討することと存じます
又裁判官の資格任用の問題でありますが、是も相當重大な問題でありまするので、只今司法法制審議會に於て熱心に研究中であります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=44
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045・庄司一郎
○庄司委員長 此の際司法大臣に極めて簡單な御伺ひを申上げたいと思ひます、生活保護法即ち本法と、あなたの直接會長として所管されて居る司法保護事業に依る、一部の不幸な國民の保護政策と本法との關聯を如何に調整されて行かれるか、如何により宜き「タイアップ」を以て運營されんとするものであるかと云ふことが第一點でございます
今一點は、今議會の建議委員會に於てはあなたの所の政務次官、請願委員會に於ては中村參與官等よりそれぞれ御答辯がございました、又本法の本會議質問に於ける最後の項目に於て、不尚私が、一定年限を經過せる適格者を選んで、前科者中より過去の前科を全面的に、大赦或は恩赦等の形式でも宜しい、又單行法律を制定されて、過去の詰り失敗者、現在に於ては更生して立派な生活に入つて居る者等の前科を、根本的に刑名簿より抹消して下さる所の左樣な法律を御制定下さる御意思なきやの質問に對し、政務次官竝に參與官等よりそれぞれ御同意の答辯があられたのであります、本會議の場合に於て、大臣直接の御答辯を本員は欲したのでございますが、御都合に依つてあなたの御臨席がございませぬでした、不肖私此の問題を提案して既に十年、毎議會に此の問題を取上げて司法省の御答辯を煩はして居るのであります、今回漸く十年目に政務次官竝に參與官の御賛同の御意見の發表がございましたが、大臣に於かれましては、此の問題に對し如何なる御見解であるか、改めて極めて簡單で宜しうございます、御答辯あられんことを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=45
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046・木村篤太郎
○木村國務大臣 委員長に御答へ致します、司法保護事業と生活保護法との關係でありますが、是は端的に申しますると、只今私案の持合せはないのであります、此の點に付きましては厚生大臣と十分協議の上で、結付きを宜くして活用致したいと存じて居ります
それから第二點の前科者の問題であります、私も洵に御尤もな御意見と思ひます、政務次官、參與官の答辯は全面的に賛成であります、私在職中是非是だけは實際に現はしたいと存じて居ります、左樣御承知願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=46
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047・庄司一郎
○庄司委員長 有難うございました──此の際河合厚生大臣の奧村君に對する御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=47
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048・河合良成
○河合國務大臣 奧村君の御質問に對して御答へ致します、私が昨年十一月頃に農林次官をやつて居りまして、其の時に生鮮食料品の統制撤廢をやつたと云ふことに對する御質問でございますが、當時私は次官でありまして、形式的には其の表面に立つた責任の衝には當つて居りませぬ、併し政治的には私はそれを主張した一人でありまするから、此の機會に其の間の事情を申上げます、當時は御承知の通りに、何年かやつて來ました生鮮食料品の統制規則が暗礁に乘上げてしまつて、あの時の新聞などを思ひ出して下さいますれば、輿論が如何にやかましかつたかと云ふことは御諒察の通りだと思ひます、それでもうあれは致し方がなくなつた、それは事實に於てどう云ふことかと言ひますと、丁度去年の今頃からでした八月、九月、十月と記憶して居りますが、八月九月の如きは、東京都民に對する毎日の配給量の一人當とは魚が一錢、野菜が一錢、是はなぜかと云ふと、複雜なことで、統制と云ふことがまづかつたのか、物が足りなかつたのか、是は單純には説明出來ませぬが、私共は其の事實を見て居ります、どうも仕樣がない、さうして今日の買出しです、あの時に皆「リユックサック」を背負つて買出しが地方に殺到したので、電車も汽車も非常な混み方で、警視廳が之を取締る取締らぬでやつて見ると云ふことで、あの間に汽車、電車で衝突を起したことは、是も皆さん御記憶のことだと思ふ、そこで何とか之を轉回しなくてはいかぬ、それで統制の規則が善いとか惡いとか云ふ考へは別として、兎に角是で行詰つてしまつた、壁に打突かつてしまつたから轉回しなくてはならぬ、それで表のものを裏に返した、是は人心の機微を捉へた政治です、是は理窟ではありませぬ、さうしてそれは勿論、關係筋とも深い諒解を遂げまして、關係筋の「ディレクティヴ」まで行きまして、私共のやらうと云ふことと全然同一の「ディレクティヴ」が出て居ります、それであれは十一月十七日でしたか十五日でしたか忘れましたが、それを撤廢した、撤廢した状況を見ますると、暫くの中は案外宜かつた、野菜の如きは十四萬貫も出ました、値段も思ふ程上らなかつた、是は結構だと思つて、實は喜んで居つた、一寸申上げて置きますけれども、此の問題は魚とは別に考へなければならぬ、今私の申して居るのは野菜の問題であります、そこで買出しも止まるし、皆胸を撫下した、所がそれから段々高くなつて、暴騰して來た、是は或る程度暴騰するのは尤もなことである、と云ふのは、あの時の我が國の野菜、魚の値段と云ふものは、數字は忘れましたが、今日から見ると驚くべき安いものである、あれでは迚もやれないので、闇の買出しになつた、何千人、何萬人と云ふ人が闇の買出しに出る、少し位高くても、坐つて居つて買へた方が宜いではないかと云ふ氣持に一般市民がなつた、そこで今度やつて見たら、果して相當寄つて來たが、段段値殖が上つて來た、是は俸給にしましても五倍も上つて居る現状ですから、野菜の値段も或る程度まで上るのも已むを得ぬ、上らなければ出て來ないのです、そこでずつと上つて、無暗に上るものだから、是は大變だと云ふことで、そこで是は相當高くせぬと出ない、當局では市民が困ると云ふので、あの時には補給政策を執つた、それは今年の春ですが、補給政策を執りました、大體あれが無理だと云ふのは、去年の冬枯れの時にやつて居る、冬枯れの時に野菜の枠を撤廢すると云ふことは無理だ、無理だけれども、一錢しか食へないと云ふ事實は如何とも仕方がないので、無理も何もない、兎も角も轉回しなければならぬと云ふので裏を返した、それで値段が上り掛けた、是はいかぬと云ふので、之を低くして抑へたのでは、農家から又持つて來ないと云ふ板挟みになつて、それで仕方がないと云ふことから、東京都が高い物を買つて、市民に安い物を供給した、併しながら冬枯れだから非常に少かつた、そこで其の供給する案を立てました時に、私が罷めたのです、さう云ふ實情から、此の野菜の問題は何處の國でも手古摺つて居る問題でありまして、中々面倒です、面倒だが、唯單に統制が宜いとか、自由が宜いとか云ふことには行きませぬ、其の時の事情に應じてやつて行かなくてはならぬと云ふことで、今回やつて居るのは、是は私がやつて居る譯ではないが、私の方の觀點からしますると、國民生活に安定を與へて欲しいから、是は出來るだけ巧くやつて、國民に野菜が餘計行つて、食へることを希望すると云ふ氣持はあります、そこで問題は、野菜だけの問題でなく、もつと重要な問題は主要食糧との關係です、主要食糧が少いから腹が減る、腹が減るから野菜を食べると云ふので、結局野菜が主要食糧の代用的性質を持つて來る、それが今日の問題の一番中心であります、さうして又作物の作り方の點もそれが中心になつて來る、そこで主要食糧の問題が弛んで來ると、野菜の問題が弛んで來る、それでもう一つ重要な問題は、季節の問題です、去年は野菜が非常に不作で、今日今頃は駄目でしたが、大體夏場は宜くて、是から大根の間位は一寸途絶えます、又大根の時節に宜くて、それから古枯れになつて來ると云ふことになります、それで今後政府がどう云ふ政策を執るかと云ふことは、私の職權でないから豫言は出來ませぬが、是から又冬の問題を眺めて行かなければならぬ、それから又主要食糧との睨み合ひをしなければならぬと云ふやうなことであります、私は決して私のやつたことを辯明して責任を免れる意味ではありませぬが、事情は正に其の通りであると云ふことを御諒承願ひたい、それから魚の點になりますと、あの時から制度を變へましたのは、撤廢と同時に油との「リンク」制を採りました、と云ふのは、主に「アメリカ」から油を供給願つて、今まで日本にあつた油は闇のもの、或は在來の「ストック」とか松根油と云ふものが中心であつた、そこで「アメリカ」から月に一萬五千「トン」位貰ふから、是と魚と「リンク」する、さうすれば相當の價格で相當のものが市民の口に入るのではないかと云ふ考への下にやつたのですが、あの當時は中々銚子邊りに反抗があつた、それは移り變りの時だから、「リンク」した魚では安いからと云ふので、色々反抗がありましたが、段々闇の油もなくなり、「ストック」もなくなり、「アメリカ」から貰ふものを「リンク」の油が殖えましたので、今日は此の問題は御承知の通りに相當安定したと云ふことで、是は此の線に沿うて行くべきものであり、是は是で宜いと私は考へて居る、勿論是で食糧が十分と云ふのではないが、先づ去年の非常に困つた時から見ると魚の分量は相當殖えて來た、此の線で行くより外はないと云ふ風に魚の問題は考へて居る、何れにしましても、生活保護法などの關聯から行きましても、金を貰つても何にもならぬ、どうしても御話の通りに、野菜とか魚とかの生鮮食料品の價格を安定して、其の供給を潤澤にすると云ふことが、金を與へるより更に重大な問題であると云ふことは十分政府も認識しまして、其の問題に對して出來るだけの手を盡して居ると云ふ實情であります、左樣御承知願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=48
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049・庄司一郎
○庄司委員長 是より一時まで休憩を致しまして、午後は一時より奧村君の再發言を願ひ、續いて平川君、東井君、柄澤君、三木君等大體四時半頃までやり通したいと考へる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=49
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050・奧村又十郎
○奧村委員 前の厚生大臣に對する問題だけ切りを付けたいのですが、もう一寸の……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=50
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051・庄司一郎
○庄司委員長 一寸と云ふのも一問位の程度なら宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=51
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052・奧村又十郎
○奧村委員 それならば一問でも結構であります、厚生大臣の率直な又一面非常に巧い御答辯を戴きましたが、實は私は之を遺憾に感じ、厚生大臣、其の當時の農林次官であらせられたあなたに──やうな形になつて居る、併し今鬪はうと云ふ積りはない、併しあの當時は、理窟よりも何よりも、どうにもやり切れぬから、實際に於て此の統制を外したと言はれる、其の當時の事情と今同じやうな事情になつて來て居る、議會に於きまして生鮮食料品統制撤廢の決議案でも出さうかと云ふ空氣にまで來て居る、同じものでありますから、特に御尋ねしたいのであります、先程厚生大臣があの當時關係方面からの「ディレクティヴ」があつた、已むを得ぬと云ふことを言はれたが、是は私は非常に不滿であります、なぜならば、あの問題は、九月の閣議に於て生鮮食料品の撤廢を決議したものであります、閣議で決定した所が、是は「マ」司令部の方から、此の食料品の統制撤廢をしたならば、金があつて買へる人は宜いけれども、金のない人は食べられるか、貧しい者はどうするか、貧しい者に等しく分け與へるやうな方法になるならば宜いが、さうでなければ是はいかぬぢやないか、斯う言はれて、あれは九月に一旦止められたものであります、私は其の時──あの閣議が決まつた時には一週間程氣違ひのやうになつた、さうして「マ」司令部からの注意に依つて閣議で止まつたと云ふことを新聞で見て、成程「アメリカ」人の方が我々より上だつたかなと云ふ風な氣がして胸を撫で下したのであります、所が十一月の二十日に於て發表した、其の時は「マ」司令部へ持込んだのは、現在の統制の状態では、是はやらぬ方が増しだから廢めさせて呉れと言うて、泣きを入れて諒解を得て、發表の時には「マ」司令部の指令に依りと、政府は殆ど責任を「マ」司令部に掛けてやられた、今の御答辯に於ても、「ディレクティヴ」があつたからやつたと云ふ、是は私は非常に殘念に思ふ、斯う云ふことは國民を愚弄し、又苟且にも「アメリカ」と日本との間の本當の温かい愛情に傷を付けると云ふ氣持を持ちます、それからそれに付て色々事情の御話がありましたけれども、其の點に付て一つ私は不思議に思ひまするのは、あの統制が何が爲にうまく行かなかつたかと云ふことに付て政府は何處まで御考へになられたか、あれに付ては、「インフレ」の問題もあり、資材の不足の問題もあり、又根本に官廳の統制に對する熱意の不足、技術の不足、無責任、取締の不徹底もあります、色々の問題があり、あの時にあれをもう一つ統制を強化すべく行くべきであつた、それを現實の事態に即してと、すぽつと其の言葉一つで逃げて行かうとする、是は非常に無責任であると思ふ、それで一つ御尋ねをしたいのは、それでは統制を撤廢せられたが、あの時に生鮮食料品ばかりでなく、凡ゆる物の統制を撤廢して自由にするが爲の最初の仕事として、生鮮食料品に先づ手を着けられたのであるか、次に御尋ね申上げたいのは、あの生鮮食料品の統制撤廢の時に、新聞には撤廢と明かに知らせて置きながら、我々地方に於て──私は福井縣でありまするが、鮮魚配給關係、漁業會の關係者を集めて、福井縣の水産業會の協議に曰く、實は撤廢と表面は發表したけれども、「マ」司令部の方から貧しい者にも等しく分け與へるやうなことをして撤廢して呉れと云ふ後からの御話があつた、丸公を撤廢し、統制を外して置いて、自由に販賣せよと表面言つて置きながら、又裏に持つて行つて、「マ」司令部が斯う言ふから、乏しき者にも等しく分け與へるやうにやつて呉れ、それならば勿論統制で持つて行かなければ貧しき者にも公平に分け與へられぬと云ふことは分り切つて居つた、表面さう云ふことを言つて置いて、裏にさう云ふ線を置く、是では業者は何のことか分らない、事實十一月の二十日に於て、それまでは鰤一本四十圓で配給して居つたが、私共入札してやりました結果、其の日から魚は皆上つた、全部一本二百圓から三百圓、而もそれが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=52
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053・庄司一郎
○庄司委員長 奧村君に御注意申上げます、一點だけと云ふことでありましたので特に御許ししたのでありますが、餘りに多岐廣汎にあなたの御意見が亘つて居るやうでありますから一應御注意申上げます、他の多くの委員の方々にも御迷惑を掛けますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=53
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054・奧村又十郎
○奧村委員 問題は一つに限られて居りますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=54
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055・河合良成
○河合國務大臣 簡單に御答へ致します、「マ」司令部に責任を掛けたと云ふ、それはとんでもないことであります、私はそんなことは申しませぬ、能く御聽き願ひたい、私は私の主なる政治的責任でやつて居ると言つて居るではありませぬか、其の點は固く御承知を願ひます、其の時に私は「マ」司令部に色々交渉しました、さうして其の撤廢と同時に、「マ」司令部からも指令が出たと云ふことを申して居る、それは事實です、其の通り申して居ります、決して「マ」司令部に責任を轉稼しては居りませぬ、私は責任を持つてやつて居ります、其の點は私固く茲にはつきり申上げて置く次第であります、それから他の商品に及ぶかと云ふことは、私は曾て農林次官として私の職責だけやつて居りまして、他のことは分りませぬ、それから福井縣に於てさう云ふ話があつたと云ふことは、私は出來るだけ貧民の方にもやらなくちやならぬと云ふ思想を持つてあの問題全體に對處して居りますから、其の意を體して福井縣で言つたのだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=55
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056・庄司一郎
○庄司委員長 午後は一時より再開致します、午後一時まで休憩致します
午後零時五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=56
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057・会議録情報2
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午後一時十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=57
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058・庄司一郎
○庄司委員長 午前に引續き再開致します、此の際午前より御熱心に奧村委員が農林當局に色々御献策やら御要請やらありまして、まだ其の御發言の繼續があります──奧村委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=58
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059・奧村又十郎
○奧村委員 生鮮食料品、魚、野菜、果物、それ等の配給統制に付て午前中河合厚生大臣から、昨年十一月是等の統制撤廢の事情を承りました、撤廢されて後は殆ど自由取引になつた譯であります、其の後今年三月から四月に掛けて再び生鮮食料品の統制が取上げられた譯でありますが私へ昨年十一月までの生鮮食料品の統制と、今年の三月以降の統制と根本的に方針が違ふやうに感じます、それは昨年十一月までの統制に付ては、生産計畫から配給に至るまで一應法的にも順序が立てられてあつたが、今回の統制に於ては、今年の二月に發布された食糧緊急措置令第九條に依つての統制で、大體末端の集荷とか或は配給とか、それらのことに付ての取極めが決められて居り、色々なことが行はれて居りますが、根本の生産計畫、又それに對する資材と云ふ風な一貫した政策が行はれて居らないし、又法にもさう云ふやうな規定が出來て居らぬと思ひますが、此の點に付て十一月までの統制と今後の統制に付て御話願ひたいと思ひます、尚ほ現在の統制は末端を押へる、例へば八月一日の禁令の如く小賣の末端を押へて居るが、生産してそれを如何に出荷に纒めるかと云ふことに付ては、如何なる計畫を持つて居られるか、御話願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=59
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060・和田博雄
○和田國務大臣 十一月以前の統制と緊急措置令に依ります統制とのやり方でありますが、十一月一日以前の統制は、生産に付ては、是は恐らく生産統制令と云ふものが總動員法に基いてあつた、それに基いて生産計畫、生産命令が出て居つたのであります、所がそれは廢止になりまして、其の點に於ては、現在は生産計畫と云ふものは、凡ゆるものに付て法律的な基礎を持つて居りませぬ、併し農林省としましては、綜合作付計畫と云ふものを立てまして、それを各府縣に示して、全體の生産をさう云ふ方向に指導して行く、斯う云ふことに致して居るのであります、戰爭中所謂綜合作付計畫と云ふものが生産統制令に依つて行はれて居つたのでありますが、事變後さう云ふものは廢止になりましたので、隨て生産に付てさう云ふものはありませぬ、併し肥料とか其の他色々な農業生産を行ふ上に必要なものが御承知のやうに足りない、足りないから、それはどうしても現在の農業生産の事情に應じて、食糧と云ふものを主にして色色な農業の分野に配給しなければならない譯でありますから、それ等のことをやります上から言ひましても、或る程度の綜合作付計畫と云ふものを立てる必要もありますので、さう云ふものを立てて居ります、隨て生産面に於てはさう云つた法律的な基礎はありませぬけれども、指導奬勵と云ふことで實際の運用はやつて行くことになつて居ります、それから緊急措置令に依る統制は配給の統制でありまして、集荷の面は、出荷組合と云ふものをどうしても助長して行かなければ實際は行けないのであります、蔬菜と云ふものは御承知のやうに特産地と云ふものがありまして、其の特産地が戰爭前は方方にあつたのであります、其處から蔬菜が大都市又中小都市に來て居つたのであります、大都市に付て言へば、近郊の蔬菜がそれを補つて居つたと云ふやうな形であつた、所が食糧事情が窮窟になつて、蔬菜の特殊地帶と云ふものは段々潰れて行つたのであります、それと同時に、從來は蔬菜に付ては出荷組合が非常に宜く發達して居つたのであります、日本に於ける蔬菜の配給が巧く行つたと云ふのは、生産地に於ける出荷組合が實に宜く出來て居りまして、それが或は農業會、元の帝國農會の斡旋に依り、或は直接消費地の荷受機關と結び付いたりして巧く行つて居つた、所が其の出荷機關が漸次崩れて來たものですから、假に生産命令と云ふものがあつても、生産量は減つて來て居るし、さう云ふ團體が崩れて來たので中々巧く行かなかつた、そこで食糧緊急措置令に依りまして統制を致します上に付て我々が最も意を注いだのは、地方のさう云ふ出荷團體の再建と云ふか、育成と云ふか、さう云ふものに手を着けたのであります、其の準備を今までやつて來て居りましたが、最近は大體準備も出來ましたので、御承知のやうに、此の八月に入りましてからは十四萬貫も東京に流れて來て居ります、十四萬貫と云ひますと、統制を撤廢した時でもそれだけの數字は東京に出廻つて居なかつたのでありまして、さう云ふ點で漸次統制が軌道に乘つて來たと言ひ得るのであります、大體さう云ふやうなことでやつて行かうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=60
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061・奧村又十郎
○奧村委員 非常に樂觀して居られるやうであります、私は實際鮮魚の集荷、配給面に携はつて居り、其の他野菜、果物の面にも始終氣を配つて居るものでありますが、野菜は拔きと致しまして、魚、果物などに付ても、大體それが手に入つて市場に廻る時に一應末端だけを押へて居るのであります、實際に指導、統制をせられると云ふことを言はれますが、根本法規に於ても唯集荷機關を決め、配給機關を決めるだけで、生産して持つて來ることに付ては何等の計畫も對策も施されて居らぬと思ふ、さう云ふやうに行はれて居らぬのに、末端の配給だけを色々論議しても、結局机上の議論になります、只今少々野菜の出廻りが宜いやうに御話があり、又新聞にも戴つて居りますが、地方の中小都市に於ては野菜、魚、果物などの配給は殆どないと言つても宜いと思ひます、又將來現在のやうな法の建前或は農林省の計畫で行けば、是は計畫だけに終るであらうと思ひます、農林大臣は生鮮食料品の價格及び配給統制は今後やつて行くとはつきり言明せられたやうでありますが、それならば之を本當に確立するだけの資材面、生産其の他凡ゆる面に於ての對策を、一つもう少し具體的に仰しやつて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=61
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062・和田博雄
○和田國務大臣 どうも御理解願へて居ないやうでありますが、私は樂觀をして居ると云ふのではなく、現状を申上げて居るのであります、生産計畫は成程是だけ作れと言つて見ても、命令を出しただけでは駄目なのであります、我々が今やらうとして居るのは、生産命令と云ふものではなくて──總動員法に基礎を置いた生産命令と云ふものは、今は法的な基礎がありませぬのでそこで計畫的に是だけのものを、例へば米なら米は是だけ、麥は是だけ、野菜は是だけと云ふ生産的な作付の計畫を縣に示しまして、縣がそれに依つて實際は指導して行くことになるのであります、是は肥料其の他の生産資材が十分であれば斯う云ふ苦心をする必要はないのであります、所が肥料は御承知のやうに非常に少い、そこで果樹などには殆ど行つて居ない、さう云ふやうに非常に肥料が少いが故に、一番必要な面に出來るだけ肥料をやつて其の生産を確保して行く、斯う云ふ状態であります、勿論肥料の生産が今後上つて參りますれば、それに伴つて從來薄かつたが、併し日本の農業の生産、又食糧の配給と云ふ點から言つても、必要なものの面にはやはり相當の肥料は廻して行くと云ふことになりませう、現在の實情に於ては一應肥料の面から言つて、米は反當幾ら、蔬菜には幾ら、果實には幾らと云ふやうな割當をやつて行つて、そこで生産的な計畫の押へを致して居る譯であります、さう云ふ形で生産されたものを、之を各中小都市なり大都市なりに統制の「ルート」に載せて持つて來る、斯う云ふことを今致して居るのでございます、それ等のやり方等に付きまして改良すべき點がありますれば、勿論我々としても十分改良致して行きたいと思つて、其の方面の色々な人達とも十分話合ひ、又意見も十分聽いて、變へるべき所はどんどん變へて行きたい、斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=62
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063・奧村又十郎
○奧村委員 一部に於ては生鮮食料品の統制を撤廢して貰ひたいと云ふ風な空氣もあるやうでありますが、此の生鮮食料品の統制を撤廢すると云ふことであれば、恐らく此の食糧の少い間に於ては非常な重大な問題が起ると思ひます、特に生活保護法に掛るやうな人人、或は病院其の他外の生活保護法の施設に於て非常に困つた問題が起ると思ひます、そこで、主食の米が三合位配給の出來る程度に至るまでは、せめて此の生鮮食料品の統制撤廢は出來ないものと私は感じまするが、御當局としては、此の統制を撤廢するかしないか、やるかと云ふことに付て如何なる御見透を持つて居られるか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=63
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064・和田博雄
○和田國務大臣 現在の生鮮食料品の統制は、奧村さん御承知のやうに、食糧緊急措置令に基いてやつて居るのであります、私共は生鮮食料品の統制は、只今の所撤廢する意思はございませぬ、併し問題は、出來るだけ多くの蔬菜又は鮮魚を都會の消費地に持つて來て、さうして消費者の生活を潤すと云ふことが眼目であります、統制も其の爲の手段でありますから、其の統制のやり方其の他に付きまして、又統制を強化することにすれば、それに伴つてどう云ふことになるかと云ふやうな點に付きましては、是は我々としても十分に凡ゆる工夫を凝してやつて行きたい、斯う思つて居ります、併し統制其のものを撤廢する意思は私持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=64
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065・奧村又十郎
○奧村委員 漁村或は農村の實情を申上げますると、最近非常に新圓が廻つて居ります、それで價格面のみで品物を都會へ引出さうと云ふことは、是は非常に無理が掛つて居ります、其の面からも、生鮮食料品の統制は生半可なことでは出來ぬのであります、其の點一つ能く考へて御處置を御願ひ致したいと思ひます、私の農林大臣に對する質問は之を以て終ります
次に厚生大臣に一寸申上げますが、先程私の發言中に──と云ふことは、是は實は冗談で申上げたのです、餘りに自分が食料品配給に眞劍になり過ぎて居りまして──實は私が此の選擧に出て來たのも、何とか地方の實情を傳へたいと云ふ趣旨で、熱心の餘りに言葉が過ぎまして、誤解を招くやうな所がありましたが、其の點は取消しまして、御詫びを申上げます、之を以て私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=65
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066・庄司一郎
○庄司委員長 此の際政府に、特に厚生大臣に御伺ひしたいことがございます、それは元軍人軍屬等に對する恩給廢止の善後措置として、政府は曩に現行厚生年金保險制度を適用する旨の新聞談話の御發表等があられました、併しながら其の後本問題に關して何等の措置も未だに講ぜられて居ない模樣でございます、本委員會の委員或は委員長に對しましても、全國より可なり多くの問合せ、或は憂慮に堪へない旨の御手紙等があるのでございます、仍て此の際軍人軍屬等の恩給廢止問題の其の後の經過がどうなつて居りまするか、又此の後如何なる措置を講ぜられる御考へであるか、政府の御對策、或は御計畫等がございますならば、本委員會を通じて、全國幾百萬の待望して居る所のそれ等の關係者に明瞭に御答辯あられんことを望む次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=66
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067・河合良成
○河合國務大臣 只今委員長より軍人恩給問題に對する政府の所見を御尋ねになりましたが、其の問題に對して御答へ致します、軍人軍屬等に對しまする恩給は、昨年の十一月二十四日附聯合國最高司令官の指令に依りまして二月一日から全面的に廢止されたのであります、然るに是等恩給を廢止されました關係者は約四百五十萬餘人に達して居りまして、就中是が遺族は八十萬人の多きに達して居ります、殊に恩給給與を生産手段として居ります者も多數に上つて居りますので、其の影響しまする所は、極めて大きいものがあるのであります、政府に於きましても、是等の方面に對し、何等かの救濟方法を講ずる必要の切なるものあるを認めまして、昨年十二月厚生省の社會保險制度審議會に於きまして、是が善後措置法を研究致しました結果、現在の生活困窮者に對しましては、一般の援護計畫に基く救濟を實施して居るのであります、更に恩給廢止に依つて影響を受けたものに對しましては其の希望に依りまして、現行の厚生年金保險制度を適用することを適當と考へまして、關係方面とも相當折衝致しまして、三月十三日に之を適用して行くと云ふ旨を一應新聞に發表した譯であります、そこで厚生省に於きましては、取急ぎ必要なる立法措置竝に豫算措置を講じて、本議會に提出致しまする準備を致したのであります、然るに四月二十日附で聯合國最高司令部から、軍人軍屬等に對して厚生年金保險制度を適用することを認めない旨の指令が交付されたのであります、政府と致しましては從來の經緯もありますので、更に司令部の了解を求むべく色々交渉を致したのでありますが、遺憾ながら遂に其の承認を得るに至らなかつたのであります、聯合國側と致しましては、軍人軍屬及び其の關係者を一般の國民と區別して、特別の取扱をすると云ふ方針は認めないので、一般の國民と同樣の立場に於きまして、此の軍人恩給廢止に依つて色々御困りの方を一般の國民と同樣の立場に於て、救濟致すことは勿論必要なことでありますので、政府と致しましては、一般の失業救濟或は職業補導、授産、就業の斡旋等は勿論のこと、只今此處で御審議を願つて居ります生活保護法に於て十分是が救濟の目的を達することに致して居る次第であります、さう云ふ經過でありまして、一時厚生年金に振替へることが可能かと云ふ見透しの下に進行して居りましたけれども、結局其の諒解を得るに至りませぬ、一般國民同樣の線に於きまして、困窮者は國家の責任として救濟をして行くと云ふ立場になつて居ることを、どうぞ御諒察願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=67
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068・庄司一郎
○庄司委員長 平川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=68
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069・平川篤雄
○平川委員 私が申上げますことに付きましては、厚生大臣の方から若し御答辯になるやうな材料がございますならば、御聽かせ願ひたいと思つて居ります、私の申上げたいと思ひますことは、戰爭中に厚生省がやつておいでになりました行政と云ふものは、戰後此の度生活保護法案なるものを提出せられましたる其のやり方とは、凡そ懸離れたものであつたと云ふことを反省を致して見たいと思ひます、例へて申しますと、體力管理法などに致しましても、是は或る種の極端な指導者の言葉に過ぎないと思ひますけれども、中には競馬馬がああ云ふすらりとした形をするのも、要するに短い「コース」を走るに適したやうな訓練をするからである、然るに戰爭中はさう云ふものよりか、力の強い、鈍い輓馬が必要なのだ、人間も同じことで、さう云ふ競馬馬のやうな身體を作ることは昔の教育である、今後の國民と云ふものは、さう云ふ能力は惡くても、馬車馬みたいな身體を作つて行かなければならない、甚だしくなりますと、中には、片目と二本程指を持つて居りさへすれば、それで宜いのだと云ふやうなことを言ふやうな亂暴な指導者もありまして、是が教育界を通じて一般の國民の體位の向上に及ぼした影響と云ふものは、實に大きなものがあると思つて居ります、それから藥品の問題や治療の問題に致しましても、是は私の個人的な經驗なのでありますが、私の母も實は戰爭中に長い病氣で亡くなつたのでありますが、其の際に、恰もそれが本省の方針であるかの如くお醫者が申しまして、實に心外に堪へなかつた事實があるのであります、是は厚生省が御存知になつて居ることではないと思ひますけれども、どう云ふことかと申しますと、只今あなたの母親のやうな、さう云ふ長い、どうせ助からない病人に藥を與へると云ふことは、是は國家として極めて不含理なことだ、幾らでも大切な向きに廻さなければならないと云ふので、現に四日分の藥も二日分しか呉れないと云ふやうな事實すらあつたのであります、其の他徴用の問題に致しましても、學徒動員の色々な勞務配置の問題に於きましても、隨分厚生省の名前にそぐはない、何と申しますか、人間を物の如く、資源の如く眺めての扱ひと云ふことが非常に強かつた、是から生じました所の犧牲者と云ふものは、私は存外に多いのではないかと思つて居るのであります、然るに其の後さう云ふ學徒其の他國民の一般的な體力に付ての御調査も聞きませず、斯うした戰爭中に起りました人間の見方から生ずる戰爭の被害状況に付て、はつきりした御調査なしに、今度はまるで反對な、愛の厚生省として再出發となさると云ふやうなことに付きましては、實際問題と致しましても、又精神的なものから言ひましても、私は中々轉換が不可能であるのではないかと云ふやうなことを惧れざるを得ないのであります、私此の點に付てはつきりした御調査があるかないか知らないのでありますけれども、御所見が若しあれば、一つ此の點に付て承りたいと思つて居ります
次に、斯樣な状態でありますけれども、思ひ切つて厚生省の新しい行政へ發足する意味に於て、只今の生活保護法が何か味はせて居りますやうな、最低の生活を保障して、やつとこさ食はす程度に生かして置くと云ふやうな氣持よりも、もう一歩進んで、新しい人間の見方を指導すると云ふ意味に於て、成程火急の問題もございませうし、怠惰者を作ると云ふやうなこともありませうけれども、思ひ切つて、國民の最小限の文化生活と云ふものはどんなものかと云ふことを一先づ御考へになりましてそれを國民の義務として享受し得ると云ふ、さう云ふ立場から御考へになるのが至當なのではないか、さう云ふやうに考へるのであります、此の點に付きましては種種あちらこちらで感ずる所があるのでありますけれども、特に一つ申したいと思ひますことは、給與額の決定の標準に致しましても、例の官吏などと同じやうに御考へになつて居ると云ふことでありますけれども、現在の勤勞者とか、或は農村に住んで居る人達とか云をものは、現在の標準を以てしては考へらるべきではないと考へて居るのであります、是はどうしてももう少し文化生活の水準を高めると云ふことの線に沿うて御考へを御願ひしたいと思つて居るのであります、戰爭中には生産者とか或は勤勞者の文化と云ふものを非常に重んぜられて居りましたけれども、是は徒らに道徳的な煽動と云ふやうな傾向が強くて、物質的な享受でありますとか、或は消費文化とか云ふやうなものに付ては考慮せられて居なかつた、隨て結果と致しましては、煽てて勞力を出させたやうな結果になつたと云ふやうなことも、大いに反省をして見なければならないと思つて居ります、斯樣なことから考へまして、先程申しますやうに、人間を新しく見直すのだと云ふやうな心持に於て、思切つて生活保護法なんかに於きましても、所謂飢餓資金と云ふやうな意味ではなしに、文化を享受させると云ふやうな氣持で、一つ御考へを願ひたいと思つて居るのであります、斯う云ふ觀點から、農村の文化とか、或は勤勞者の生活とか云ふものを考へました時に、實は私、生活扶助の問題にも新しい問題が生まれて來るやうに思ふ、詰り消費的な文化と云ふやうなものを彼等に與へると云ふことになりました時に、我我の氣付かない部面に、今日も問題になつて居りました子供を澤山連れた未亡人であるとか、或は病弱者であるとか云ふやうな、大規模な大きな勞力を必要とするやうな生産に從事することが出來ませぬ人達が、小規模の生産に從事すると云ふやうなことが可なり澤山見えて來るのではないかと思ふ、斯う云ふやうな點に付きまして、政府が屡屡仰しやつて居りますやうに、共同出資を致しますなり、或は授産所と云ふやうなものを活用せられたりして行ひますならば、一面に於ては勤勞者生活の水準と云ふものを高めると同時に、地方に即した、機動性を持つた生活扶助が出來るのではないかと考へるのであります、所が此のやうな點にきまして、從來官廳でおやりになつて居る仕事と云ふものは頗る安心が出來ない状態だと言はなければならないのであります、成程本省には大臣初め相當な方々を澤山擁しておいでになるのでありますけれども、末端の窓口の人達と云ふものは、是は實に御話にならぬ、低劣だと申しても大體のことは間違ひないと考へて居る、又方面委員の人達がどんな御苦勞をなさつて居るかと云ふことは、私も知つて居るのでありますけれども、中には十分な役割を遂げられさうもない方も隨分あるのであります、特に此の際一番心配を致しますのは、怠惰者を作らずと云ふことが因になりまして、それでなくても見解の狹い、而も名譽職として地方の立派な身分の人達が動もすると道徳的な基準を強く充がひまして、さうして個人的な感情と云ふものが強く、結局生活して行けない者までも不道徳者であると云ふ觀點から救はれないと云ふやうな事實が澤山あるのではないかと、私は實情に付て感ぜざるを得ないのであります、斯樣な點から申しまして、將來民生委員會とか或は公民館と云ふやうなものが作られるやうでありますけれども、斯う云ふものに於きましても先程御話のやうに費用負擔の點だけは非常に詳しく書いてあるが、あとはぼんやりして居ります、是は條文にして戴くことは必ずしも必要でないと思ひますけれども、其の指導に當りましては餘程愼重にやつて戴きたいと思つて居るのであります、殊に先程申しました窓口の官公吏と云ふものは、創造的な、獨創的な施設をやつて行く能力と、さうしてそれをやつて行く權限と云ふものを持たない、斯う云ふ一個の生命をも疎かにしないと云ふことが具體的に一人々々の生活に現はれなければ、其の法の精神と云ふものが現はれて來ないと云ふ此の種の仕事に對しては全く是は致命的なことと申さなければならないと思つて居ります、窓口と云ふものは、事務員ではなくて、困窮者個々人の具體的な生活の設計をする人でなければならないと思つて居るのであります、斯樣な點に於きまして、此の生活保護法はどちらに轉んでも宜いものだと思つて居りますけれども、最後の問題としまして其の點を非常に憂へて居るのであります、以上申上げましたやうに、厚生省自身の大きな轉換と云ふか、過去を如何に御反省になり、如何にそれを調査なさつて、其の上に立つて新しい厚生行政を立てて行かれようとするか、此處を一つ明かにして戴きたいと同時に、今申上げましたやうに、窓口と云ふものを一番根本に考へて、今後出て參ります色々な施設に具體的に表はして戴きたいと云ふ風に希望せざるを得ないのであります、只今申上げましたことは、厚生大臣に御所見がございましたならば一つ御伺ひを致しますし、若し適當な資料がそれに付てはないと云ふことになれば、私の希望として申述べただけで結構だと考へて居ります、以上であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=69
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070・河合良成
○河合國務大臣 只今厚生行政其の他に付ての色々示唆に富んだ御意見を承りまして有難く感謝致します、厚生行政は御承知の通りに非常に雜多な角度のものが混じつて居りまして、それで御承知の勞働問題──是は勿論勞働問題と生活問題、厚生問題とは一つの線にあるべき問題ですけれども、今日の勞働問題と云ふものは、一方に於て相當鬪爭的氣分を持つた實際の問題であります、それから生活保護法或は生活保障に關する問題是はどうかと申しますと、何と申しますか、人道的の基調は持つて居りますけれども、やはり社會の實相の生存自體と非常に關聯性の深い深刻性を持つた問題でございます、それから文化問題的の今の體方の問題、人口問題とか、さう云ふ問題になつて參りますと、茲に一つの理想を持つた問題で、さうして非常に向上的、發展的素質を持つた問題であります、斯う云ふ風に谷から段々平原、又山の頂上まである色々の層を固めて厚生省と云ふものが出來て居りますので、此の行政に付ても實は非常に困難な問題であり、そこへ内務省の行政的のものが、やはり非常に沿革的其の他の關係で入つて來て居ると云ふことで、何か一つ整理と申しますか、もう少しはつきり各各の性格を持たせなければ厚生處政と云ふものは中々旨く行かぬのではないか、其の上に、一寸落しましたが公衆衞生の問題、醫療の問題と云ふものは、又横からぐつと一つの太い線が入つて來て居る問題でありまして、複雜になつて居ります、それで御示しのやうな點、固より是は非常な大轉換を致さなければならぬ、殊に戰時中の状態から「デモクラシー」への急轉の状態に應ずる爲に、行政の組織なり機備なり或は考へ方なり、運用の方法なり、極端に申しますれば人なりと云ふものに付て、茲に何等かの轉換を試みなくてはならぬと云ふことに打當つて居ると私は確信を致します、併しながら之をどう云ふやうにどうやつて行くと云ふことは、まだ就任日淺く、直ぐ議會に掛つて居るものでありますから、實は考へる時間も持ちませぬ、是から一生懸命皆で研究しまして、さうして此の性格をはつきりしそれに對する結局進歩的、文化的の意味に於ける運用方針と云ふものを決めて行きたいと云ふ考へで居ります、幸ひにして勞働問題だけは兎も角も別になることになります、併し勞働問題は別になると致しまして、又是と今の厚生問題との間の關聯性と云ふものは切る譯に行かぬ問題で、此の點に於ても實は苦しんで居るやうな次第であります、殊に窓口の改善の如きは、さう云ふ點から勿論非常に重大な關係を持つた問題でありまして、地方廳の性格なども、或は勤勞署其の他の性格なども、之に應じた態勢を持つて貰はないといかぬと云ふことは御同感であります、出來るだけ之に付て具體的な方法を執ることに致しますから、どうぞ左樣御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=70
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071・平川篤雄
○平川委員 實は文部省の方に伺ひたい點があるのでありますが、御見えになりませぬから、御見えになるまで、一つだけ、小さい點でございますが、厚生大臣に伺ひたいと思ひます、窓口が綜合的に、獨創的に仕事が出來る爲には、例へば四、五割なら四、五割の現物を用意せられて、丁度「アメリカ」の進駐軍などが、「レッド・クロス」を持つて居りますが、ああ云ふ仕組みにでもして、機動的にぱつぱつと配給する、現物給與をやると云ふ、是も一つの生業扶助と云ふやうな觀點で御作りになると云ふやうな御計畫はありませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=71
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072・河合良成
○河合國務大臣 申すまでもなく勞働問題に付きましては、勤勞署に於てやつて居りますけれども、「ウエルフエア」の面に付きましては、末端は主として町村になつて居る關係で、今御話のやうに本部的のものからずつと一つの系統を持つた直屬的の企業體のやうなことは只今は考へて居りませぬが是は中々面白い制度であります、問題に依りましては、特に衣料問題などに對しましては斯う云ふ一つの體制を執つて見たいと云ふことで、衣料配給問題などに關聯してそれに類似の計畫は只今考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=72
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073・平川篤雄
○平川委員 それでは文部省から見えますまで私の質問は留保して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=73
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074・庄司一郎
○庄司委員長 次は東井君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=74
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075・東井三代次
○東井委員 私の御尋ね申上げたい點は、大體に於て同僚諸君から伺つて居りますので、極く殘された小さい問題に付きまして二、三御尋ねを致したいと思ひます、本法案は本會議に上程されました時に、庄司委員長の本案の指導精神は何かと云ふ質問に對しまして、河合厚生大臣は、本法案の指導精神は同胞愛と人導主義であると云ふやうに御答へになつたのでありますが、私も左樣に本法を理解するものであります、そこで本法が斯樣な高邁な人道主義的な目的を達成致します上に付きましては、官民共に總ての者が眞劍に此の法案の實施に付きまして努力しなければならぬと考へるのでございます、そこで本委員會に於きましても、其の末端機構が非常に重大だと云ふことを論議されたのであります、即ち民生委員と云ふものが非常に重要な役割を演ずるものだと云ふやうに論議を進められたのであります、之に付きまして過日河合厚生大臣は松谷委員の御質問に對しまして、民生委員と要保護者とが掌を指す如くぴつたり行くことは理想であるけれども、それは非常に困難な問題である、厚生省としては飽くまで大綱を押へて行きたい、斯う云ふ意味の御答辯があつたやうに私は拜聽したのであります、尚ほ私は大綱でなしに御困難ではありませうが、此の末端の民生委員と要保護者とがぴつたり行くやうに確信ある行政指導を御願ひ申上げたい、是は私の希望であります、洵に道義が頽廢致しまして、敗戰日本の現状と云ふものは慘めな姿を現出して居ります、此の現状に想ひ到ります時に本法が持つて居りまする所の社會的な重要性と云ふものは、目に其の重要性を増すことだらうと考へます、之に付きまして此の法案の實施に當りまする總ての者が眞劍に掛つて行かなければならぬと思ふのであります、民生委員のことに付きましては、先程來其の重要性が論ぜられたのでありますが、此の民生委員の選任に付きましては、地方の推薦委員會と云ふものがあり、それから銓衡委員會と云ふものが設けられて居りまするが是の組織性格等に付きまして御説明願へないものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=75
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076・河合良成
○河合國務大臣 只今の御尋ねの此の法案の根本思想は今御指摘の通りでありますが、一面やはり社會制度としまして現在の社會状態に於て非常に大きな役割をやつて行かうと云ふ、一つの現實的の觀念を以ちまして、只今御示しのやうな線に沿つて運用に付て餘程の決心を以て當らなければならぬと云ふことは、實は御同感に考へて居る次第であります、私はどうも相當長く實業をやつて居つたものですから、兎角物事の見當を付ける癖がありまして、それで是は何處まで行くだらうかと云ふことを心配致します、それで巧くやりたいけれども、絶對に末端まで巧くやると云ふことを申上げることが私のセンスに合はぬものですからさう云ふ性格に生れて居るものですから、兎角先には巧く行くだらうけれども、末端まではどうも責任が持てるかと云ふやうな妙な語氣を漏す癖がありまして、是は自分でも甚だ缺點と認めて居ることであります、實は私が御預りして居る内はどうしても末端まで完全にやりたい、指の先まで血液を通したいと云ふ熱を以てやる決心であります、其のことはどうぞ御諒承願ひたいのであります
それから民生委員の運用推薦會の性格に於きましては、是はもう民主的だから、出來るだけ選擧で行くのがものの本體でありますけれども、此の民生委員だけはどうも選擧で行くと云ふのは工合が惡からうと云ふことで、選擧でいかぬとすれば推薦でまあ御願ひするからと云ふ、權利義務の關係を離れまして、どうぞ一つやつて下さい、あなたは適當だ、私はどうかなあ、さう云ふことを言はんでどうか一つ御願ひすると云ふ意味で其の御方の本當の「サービス」の心を動かして來ると云ふやうな性格の方が宜からうと云ふことで、推薦會と云ふものでやると云ふ制度に考へて居ります、それで最後に又それを銓衡委員會に掛けまするのは、地方々々で色々さう云ふ風に出て參りますけれども、是はやはり大體に於て地方のは揃へなくてはなりませぬので、それから地方的にさうなりましても、やはり全體として、縣全體として見る所は見ると云ふ一つの考へを置きませぬと背が揃はぬでいかぬ、餘り茲に地方々々の事情で「ヂグザグ」のやうなものが出來ても困ると云ふやうな氣持もありまするので、之を一つ銓衡と云ふ篩に掛けると云ふ意味に於ける銓衡委員、さう云ふ二つの制度と御考へ下されば結構だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=76
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077・東井三代次
○東井委員 推薦委員會と銓衡委員會はどう云ふ人達で組織されるのでございませうか、さう云ふ具體的な何か案を御持ちでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=77
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078・葛西嘉資
○葛西政府委員 性格は只今大臣が御述べになりましたやうな性格でありまするが、それに副ひますやうに成べく地方の是等の關係の人を以て廣く構成したらどうかと云ふ風に考へて居ります、是は大體の基準を中央で決めまして、あとは大體地方へ御任せをすると云ふやうなことに相成らうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=78
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079・東井三代次
○東井委員 それから一昨日でございましたか、小柳委員から御質問がありまして、葛西政府委員から御答辯になつたのでありまするが、此の民生委員令の案の第十項でございますが、之に付て小柳委員からは何とか此の際方面委員と云ふものを全然打切つてしまつて、さうして此の民生委員と云ふやうな新しい委員に一つ切替へてしまつたらどうかと云ふやうな意味の御質問があつたやうに私は考へたのでありますが、之に付て葛西政府委員は、現在保護中の者が色々まだあるので、其の引繼ぎなどの關係で若干の不安も殘つて居る、さう云つた理由の下に、此の方面委員と云ふのは殘した方が宜いやうにも考へるがと云ふやうな御答辯であつたやうに承つたのでありまするが、私は此の民生委員と云ふものは非常に重大で、而も從來の保護法や或は救護法と云ふやうな戰時中に色々法律もありましたが、さう云つたものを今度整備統合致しまして、新しい理念の下に此の法案が現在提出され、本法が實施される、新しい理念に基いて本法が實施されると云ふ上に付きましては、從來の方面委員と云ふものに付ての一般國民の印象と申しますか、印象だけでなしに、事實も餘り好評を博して居るものではなからう、斯う云ふやうに私は考へて居るのでありまするが、何とかして本法が新しい發足をする上に付きまして、今度の民生委員には以前の方面委員を原則として全部入れると云ふやうな原則は一つ外して戴いた方が宜いやうに思ふのでございますが、如何でありませうかか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=79
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080・葛西嘉資
○葛西政府委員 東井さんから重ねての御尋ねでございますが、或は私の申上げやうが少し不十分であつたかとも存じますので、もう一遍申上げて見たいと思ふのであります、從來方面委員と云ふ印象が、如何にも救貧慈善と云ふやうな印象を兎角與へ勝ちであると云ふやうな點はあなたの御説の通りであります、さればこそ今度名前も改めて行かうと云ふことに相成つた譯でございます、民生委員も出來ますれば今東井委員御述べになりましたやるに此の際全部改選をして行くと云ふのが、筋から申せば正に其の通りである、私共も實は左樣に致すのが宜いのではないかと云ふことも、理窟の上からは一應考へられるのであります、併し實情を色々調べて見ますると、大都市等に於きましては、大體終戰後の人權尊重と云ふやうな建前から、現在の方面委員の改選等も實は行つた所がある譯であります、大阪に致しましても、東京も最近やつた譯でございます、是は民生委員令の先刻大臣が仰しやいました推薦委員會を經、詮衡委員會を經て任命されたものではありませぬけれども、大體今或る程度の線に沿つた人方が選ばれて居るものもあるやうに思ふのであります、さう云ふ所もあり、それから又今東井委員も御述べになりましたやうに、今八百萬人の要援護者を御世話すると云ふ大事な、一日も忽せに出來ないやうな仕事を抱へて居ります、方面委員制度に付て、今後全面的に、全國的に現在の七萬乃至八萬の方面委員、之をやり變へると云ふことになると、中々大變なことになつて事務的に兎角ごちやごちやしてしまつて、此の大事な方が等閑に付せられる虞がないだらうかと云ふことを心配致したのでございます、隨て斯樣なことを顧慮致しまして、一應經過的には現在の方面委員を以て民生委員とすると云ふ風に致して居るのであります、併し此處にも書いてございますやうに、原則としてでございまして地方等の實情で、此の民生委員令の公布の機會に、新しく改選しようと云ふ、本則に戻つての立場からやらうと云ふ府縣も、實は個々に伺つて居るのであります、斯樣な場合には勿論本則でありますので、是は一向差支へありませぬのでやつて戴く、そこ等の所を地方の實際に應じてやつて戴くやうに、さう云ふことなのでございます、さうなると、法令としましては一應斯う云ふ經過規定がありませぬと、厭でも應でも全部此の民生委員令の規定に依つて推薦委員會を經、更に銓衡委員會と云ふものの手續を經てやつて來なければならぬ、併しさう云ふ風なことは今申したやうに改選が或る程度出來ぬと──地方廳で認めた所は、或はそれでも宜しいと云ふやうにして置かないと、今の穴が出來ることになる、實際是が原則としてでございますが、或は地方廳等が此の際やらうと云ふ縣もありますから、さう云ふのが澤山あれば、寧ろ原則を引繰返すことになるかも知れませぬが、そこの所は民生委員令公布と同時に──先刻此の委員會で大臣が仰しやつたやうに十月一日から民生委員令を實施するのですが、全國一齊に十月一日から全部民生委員會を變へると云ふことになると、ごたごたしてしまつて、萬一大事な方が等閑になるやうなことがありはしないかと云ふ所も心配致しまして、法令の建前では何もしないで置いても一應それで行ける、併し十月一日から一月過ぎまして十一月にやらう、或は十二月にやらう、一月一日からやらうと云ふ意見が出て來ることは一向差支へないのであります、寧ろ私共と致しましては、各委員の方々の御述べになりましたやうに、變へることが本則でありまして、正に其の通りであると思ひます、併し今申上げましたやうな事情もあり、そこらの所を地方に一任して、地方に適當な時期にやつて戴くと云ふ風な指導をして、御趣旨のやうにやつて戴く、唯法令の建前から申しますと、斯う云ふ風にしないと今のごたごたが何ともならぬものですから、此の點は保護法の附則の保護施設にもあるのであります、保護施設も新しく認可をし直すのでありますが、一寸經過規定を作りまして、二箇月ばかりは認可を得たものと見做して本法の保護施設にして行くと云ふやうな規定もあります、是はほんの經過でありますが、御趣旨は洵に東井委員の仰しやいます通り、或は小柳さんの先般仰しやいました通り、私共同樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=80
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081・東井三代次
○東井委員 只今の御説明で事實問題としては已むを得ぬ點があるやうに承りますが、今朝程から承つて居りますると、大體今度の民生委員の總員は十萬から二十萬の間の數を押へて行きたいと云ふやうな御説明もありました、今度の民生委員の總數と、それから從來の方面委員の總數との比率ですが、大體今度は原則として方面委員が殘されると致しまして、其の殆ど總數が新たに加はつて來られることになるだらうと思ひます、此の想像の數は正確でないと思ひますが、大體さう想像致しまして、現在の所どうしても原則が變へられないと云ふ實情にありますることは、大體に於て今の御説明で諒承致しますが、實際に於きまして方面委員の從來の國民の間に於ける實績と云ふものに付きましては非常に疑はしいものがある、さうして國民の印象と云ふものも餘り良くないと云ふことは、既に政府御當局も御認めになつて居るのでありまするから、何とかして私は今度の民生委員に方面委員が其の儘なられましても、民生委員としての自覺の下に、本當に其の成績を擧げて戴けますやうに、切に私は希望するのであります、特に要保護者が僻みを起さないやうに御注意を願ひたい、又本當の生活の機微に徹して、さうして事實に即した指導と保護に當つて呉れますやうに、行政指導が望ましい、強く之を希望申上げて置く次第であります
それから此の間の本委員會に於きまして、葛西政府委員が各市町村に常置の事務職員を置きたいと云ふことを申されたやうに思ふのでありまするが、事實民生委員を相當増員されましても、色々庶務事務と云ふものがあると思ひますし、又益益其の庶務事務と云ふものは殖えて來るのではなからうかと想像されるのであります、それに付きまして先日專任の常置職員を置くと云ふやうな御意見を承つたのでありますが、此の專任の事務員は何れ各市町村の世帶數と云ふやうなことに按分して設けられると云ふことになりませうが、其の專任の事務職員に付て豫想されて居りまする給料などは、どう云つた支辨方法を考へておいでになりませうか、其の點を一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=81
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082・葛西嘉資
○葛西政府委員 東井委員から、方面委員が大體あの勅令に依つて其の儘殘つて、若干増員の部分だけが新顏になるのではないかと云ふやうな、御見込のやうな御意見がございましたが、私共と致しましては、必ずしもさうなるとは思つて居りませぬ、又さうなることを希望致しては居らぬのであります、當委員會に於ても御述べになりましたやうに、民生委員の方々は能くやつて戴いて居る方もありますけれども、中にはもうお年寄りで、もう仕事が出來ないとか、或は又適當でないと云ふ風な方のあることを承知致して居ります、斯樣な人は此の際一つ更迭をして戴くと云ふやうな風にやつて參りたいと思つて居ります、それから先般來大臣からも御話がありましたやうに、今度民生委員が大分寡婦とかさう云ふ人の御世話に當ることになりまするから、婦人の民生委員も相當數入れると云ふこともありましたし、旁々顏觸れに付ては大分變ることを實は希望致して居ります、又左樣に指導をして參りたいと思つて居ります、民生委員の方々に對しまする東井委員の色々な御注意に關しましては、私共洵に御同感に存ずる次第であります
次に民生委員の御世話をするやうな專任の職員を各市町村に常置すると云ふ風に御聽きのやうに存じましたが、或は是れ亦私の申上げ方が惡かつたのかも知れませぬが、大體は今度置きたいと思つて居りますのは、主として六大都市でございます、六大都市等の非常に方面委員の方が御忙しく、非常に要援護者の密集して居るやうな所に、若干の職員を置く、飽くまでも民生委員が主となつて町村長を補助して戴くと云ふ建前でありまして、ほんの事務的な者を民生委員の世話に六大都市に置くと云ふ風に考へて居ります、是はまだ俸給の單價等に付てはしつかりしたものを作つて居らないのでありますが、大體或る程度の、二分の一位の補助に致しまして、國庫が半分持ち、地方の都市で半分持つて戴くと云ふやうなことで置いて戴く、現在も現に東京などは御承知のやうに方面館と云ふのがございまして、方面委員の色々の會合をやりましたり、或は授産、授職等をやりましたり、「カード」者要援護者の「センター」みたいになつて居る所がありますが、ああ云ふ所にさう云ふ者に居つて戴きまして、其の擔當の地區の方面委員の方々の色々の御世話をするやうにして行つたならば、能率が上るのではないか、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=82
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083・庄司一郎
○庄司委員長 東井君に御相談致しますが、先程平井委員が留保されました文部關係の質問應答の爲に、長野政務次官が來られて居りますが、此の際短時間先程の平川委員の御發言に御寛容願ひたいと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=83
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084・東井三代次
○東井委員 結構でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=84
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085・庄司一郎
○庄司委員長 平川委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=85
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086・平川篤雄
○平川委員 先程公民館の具體的な姿に付きまして、文部關係の方に御話を御願ひしたいと思つて御願ひした譯でありますが、其の趣旨と申しますのは、先程厚生大臣も、實際の厚生省の仕事は非常に複雜多岐を極めると仰しやつて居るのでありますが、實際國民の具體的な生活の所まで來たら何でもさうなるのであります、それが、はつきり分らないやうな官廳の仕事であつたから、徹底をしなかつたのであります、斯う云ふ點に於きまして、公民館の仕事と云ふやうなものと、生活保護、或は厚生省で考へて居られる國民文化の問題と云ふやうなものと、非常に密接な關係を持つてやつて戴かなければ本當のものにならないのではないか、斯う考へて居ります、さう云ふ觀點から公民館では、如何なる姿に於てどう云ふ風に國民の生活文化の指導をせられるか、特に困窮者などの生活指導には、特殊な具體的な方策を御持ちになつて居るであらうか、此の點を御聽きしたい爲に御出席を煩はした次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=86
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087・長野長廣
○長野政府委員 御答へ致します、公民館のことに付きまして、特に國民の具體的生活と云ふことに入ると、厚生省の分野と文部省の分野とが非常に接觸して來て居るが、其の邊に付て特に文部省としては、一般大衆、特別に生活困窮者に對して公民館の形でどう云ふことをするかと云ふ意味の御尋ねと存じますが、先づ第一に、今までの文部省の教育方針は、學校教育に急でありまして、大衆社會教育と云ふことにはずつと力が劣つて居つたのであります、そこで是からは社會教育を徹底すると云ふことに考へを持つて居りまするが、偖て其の社會教育の徹底に付ては、從來動とも致しますと行はれて居りました、上から官の方で設けて、官の方で指導者を送つて行つて、さうして講演、講習をすると云ふやうなやり方では、本當の國民生活に徹した指導は出來ない、斯う云ふ建前から、先づ民衆の側から要望する、自覺して來る所の民衆に對して、出來る限り國家としては補助を與へ、或は其の他の方法で一つ社會教育の目的を達しようと云ふ建前から、全國約三十萬もあります所の市町村の部落、即ち今日で申しますと、一常會を範圍とする社會教育、及び市町村を單位とする社會教育と云ふ風に考へねばならぬと存じます、そこで各市町村乃至部落等に於きましては、公會堂なり或は寺院或は神社等の建物を利用して常會等が行はれて居りますが、それ等が茲に考へて居ります所の公民館と云ふ名稱を以て掩はれるものでございます、それから公民館の活動に付きましては、當時新聞紙にも公表しました如くに、公民館は常時に町村民が打集まつて談論し、讀書し、生活上産業上の指導を受け、お互ひに交遊を深める場所であつて、謂はば郷土に於ける公民學校、圖書館、博物館、公會堂、町村民集會所、産業指導所等の機關を兼ねた文化教養機關である、同時にそれは青年團、婦人會等の文化團體の本部ともなり、各團體が相提携して町村振興の底力を生み出す場所でもある、と云ふことで大體表現して居ると思ひますが、御尋ねの機構に付きましては、公民館の中には教養部、圖書部、産業部、集會部等に編成をせられて居りまして、映畫の映寫機であるとか、或は「ラジオ」受信機、各種の教養圖書、其の他場合に依つては製粉機、各種の道具類を修理する所謂修理機、さう云つたやうなものまで設置をさせまして、さうして現實の生活に極めて必要な事柄を最も民衆に接觸した形に於て行つて行かう、斯う云ふのでございます、隨ひまして生活保護、即ち生活困窮者に對する關係と云ふことになつて來ますると、凡そ御明察を願ひたいと思ひますが、生活困窮者に對しては、私は一面に於ては精神的の或は慰安、精神的な方面の開拓でありまして、此の貧窮と鬪つて新しき生活を打立てると云ふやうな問題に糧を與へること、是等は公民館の非常な大事なことと思ひます、又日常の生活に必要な粉類、詰り粉食をするやうな粉、さう云ふものを拵へたり、或は簡單な加工に依つて出來る所の「ソーセージ」であるとか云ふやうな、畜産物或は水産物の加工、斯う云ふことも公民館に依りまして其の地方地方の特色に生きた製造をすることも出來るでありませう、是等は日常の民衆生活に、殊に困窮者には非常な味方であり、又非常な便利を與へるものではないかと思ふのであります、いま一つ生活困窮者が必ず考へて居りませう所の、どうして次の自分の境涯を再建設しようかと云ふ所へ參りました時に、是が相談役となつて、或は場合に依つては職業紹介所等と連絡を取つて新しき仕事なりを世話をして上げると云ふことも出來ませうし、生活困窮者の一つの相談相手であり、場合に依つては援助者も此處から探し出して結付けて貰ひ得ることもあるであらうと思ひます、さう云つたやうなことまで行きますすると、結局厚生省等の色々の施設や農林省當局の現にやられて居る施設と重複のやうな形にもなると思ひます、そこが公民館は教育機關でありますから、それ等の各機關と十分なる折衝を致しまして、さうしてそれ等のことに付ては謂はば御手傳ひをする、厚生省なり農林省の御手傳ひをする、又こちらの講習會、傳習會等を開けば、それ等の方々に來て援助をして戴く、斯うなる所に私は今後の社會教育の行き方があるのではないか、斯樣に考へて居る次第であります、簡單な要訣を申しますると、公民館は今後に於ける社會教育の重要なる機構であります、而もそれは教育が凡そ關係をして居る所の物質生活の内面にまで滲透して、極めて十分なる連絡の下に、又出來る限りの恩情を發揮して、さうして民衆生活の指導に當るべきものである、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=87
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088・平川篤雄
○平川委員 それで結構でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=88
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089・東井三代次
○東井委員 葛西政府委員の御答辯を戴きまして、私が六大都市と云ふのを全國的と云ふやうに聽き間違へて居つたやうでありまして、此の點は私の粗漏でありますが、併し私は全國的なるが故に非常にあれを實は喜んで居つたのでありますが、私は本法を實施致しますに付きまして、相當今後は此の事務方面が繁忙になつて來るだらう、さうして是は全國歩調を同じくして、本法が良い成果を擧げられるやうに、國庫の支辨に依つて專任事務員を置いて、全國一律にやられるやうな心遣りがおありになると云ふことを實は想像致して居つたのでありますが、今の御話では六大都市に限られて居ると云ふことで、私は實は少し落膽をして居るのでありますが、私が只今申上げましたやうに、全國の市町村にさう云つた御構想を御持ちになり、更に又それを御考慮になる餘地はないものでございませうか、もう一應御尋ねを致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=89
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090・葛西嘉資
○葛西政府委員 此の民生委員制度にしましても、實は餘り事務的に面倒臭いやうなことをやることになると、又所謂惡い意味の割據的と申しますか、さう云ふ事務に堕するやうなことも亦心配されるのでございます、是はもう其の日其の日の生活に困る者に對する援護のことでありまするので、成べく迅速にどんどんやつて戴くと云ふやうなことで宜いのではないか、殊に六大都市に於きましては對象者も非常に多うございますし、それから移動等も非常に多くありますし、町會等の連絡とか、色々さう云ふ風な仕事もあるものでありますから、若干の事務職員が要ると云ふやうに考へて居るのであります、隨ひまして各市町村にまで此の民生委員の御世話をする人を置くと云ふやうなことになりますと、何と云ひますか、方面委員の善さと云ふやうなものが失はれるのではないかと云ふ心配もありますので、今の所では町村まで全部置くと云ふやうなことはどうかと云ふ心持で居ります、唯出來ますれば都市等に於きましては、敢て六大都市─六大都市と申上げましたが、六大都市としますか、或は八大都市位にしますか、まあ若干の大きい方からと云ふ意味に御諒承を戴きたいと思ひますが、段々と市部位にはさう云ふ組織も必要になるのではないかと思ひますけれども、之を全部町村までさう云ふ風にすると云ふことはどうだらうかと云ふやうな心持でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=90
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091・東井三代次
○東井委員 能く分りました、次の問題に移ります、是も先達ての御話の問題でありますが、今後中央社會事業委員會を相當運用して行きたいと云ふ御話でありましたが、承りますると、中央社會事業委員會は現在委員の詮衡中だとか云ふことであります、此の中央社會事業委員會と云ふものは以前からある譯でありますが、之を其の儘運用されますか、又人を替へるけれども、本法を實施して行く上に付ての此の委員會の地位と申しますか、さう云つた點に付て一應の御見解、御所見を承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=91
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092・河合良成
○河合國務大臣 中央社會事業委員會の委員は皆滿期になつて居りまして、只今は委員は一人もないのです、それでそれを利用すると云ふ事なのですが、是から官制を作つてやつて行くと中々手間が取れますので、それが丁度空いて居りますから、今此の生活保護法を中心にした委員會を作りたいと云ふ考へでございますから、それを利用して行かうと云ふ考へでをります、それで委員會は今までの中央社會事業委員會のやうな性格でなく、もつと現業的、と申しますと多少言葉が惡いのですが、實際政府のやつて行くことに重大な指導を其の委員會で與へて、實際斯うやつて呉れ、ああやつて呉れ、斯うもして呉れなければ困るではないかと云ふやうなものに實はしたい、隨て委員も出來るだけ民間から盛上るやうな力、さうして各方面と申しますか、特に救濟を受けなくてはならぬやうな方面の事情などを非常に能く御承知の方でさう云ふことに對してしつかり發言をして下さり、指導をして下さると云ふやうな方に依頼したいと云ふやうな考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=92
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093・東井三代次
○東井委員 能く了承致しました、次は本法の第十一條の醫療保護と助産保護に付てでありますが、之に付きましては今朝程來國民健康保險との關聯に於きまして私も大體了承致した譯であります、尚ほ國民健康保險に付きましては、大體政府の御意向も判明致しましたので、更に私は質問を繰返す煩を避けて置きたいと思ふのでありますが、今朝程大藏省の豫算課長も、從來の保險醫の態度が非常に非協力的であると、實例を二、三擧げて御話になつて居つたやうでありますが、實は此の問題に付きましては、特に闇價格の醫療費を支拂ふことが出來る階級の人は、此の醫療の恩惠に十分現在も浴して居るけれども、庶民階級、要保護者に至りましては、絶對に醫療の恩惠に浴することは現在の實情と致しましては無理な話であります、此の原因が何處にあるかと云ふことを考へて行かなければならぬのでありますが、今後本法の實施に當りましても、現在の保險醫が相變らず非協力的な態度で居るならば、本法に依つて指定された醫者も亦同じではないかと云ふやうな懸念がされるのであります、此の醫者の非協力的な態度に對して、厚生省と致しましては何等か打つ手がないでせうか、さう云つた點に付て御所見を承つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=93
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094・服部岩吉
○服部政府委員 醫療代或は又車馬賃の非常に騰貴の結果、開業醫其のものなり、他のものが多少國民健康保險組合に對する所の熱意を缺いて居ると云ふ點は少くない、御指摘の通りでありますが、最近各道府縣の醫師會に於きましては、此の際一面醫療の社會化と云ふことを相當重く考へられまして、國民健康保險組合に對しては出來るだけの協力をして行くやうに、それぞれ各縣で努力致して居ります、隨ひまして本法施行の場合に於ましても、此の道府縣の醫師會に對しまして、遺憾のないやうに協力するやうに十分に努力させて行きたい、其の爲には又一面醫療品の配給等に付きましても、出來るだけ醫師會等を通じて、各開業醫其の他に配給するやうな努力をやつて行くと云ふことでなければ、唯一方的に協力せよと云ふことだけでは、私は十分の協力を求むることは出來ないと思ひます、双方相俟つて、本法實施に際しましては主として道府縣の醫師會を通じて協力させるやうに十分の努力をして行きたい、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=94
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095・東井三代次
○東井委員 十分の努力をして戴く御答辯を戴きまして、私も安心を致すのでありますが、只今の御答辯中にも、醫療藥品や或は衞生材料なども精々潤澤に配給出來るやうに努力すると云ふ御言葉もあつたやうに拜聽致したのでありますが、左樣でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=95
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096・服部岩吉
○服部政府委員 只今御答辯申上げましたやうに、醫療竝に衞生材料等も出來るだけ醫師會を通じて、且又私達の希望して居るのは、醫者の實際の協力の實績の面を見て配給しても宜いと云ふ位に今考へて居ります、隨て斯樣致しますれば、醫師も十分に協力して呉れるだらうと云ふことを期待して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=96
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097・庄司一郎
○庄司委員長 東井委員に申上げます、只今の御質問は數回應答が行はれた問題でありまして、稍稍重複に陷つて居ります、尚ほ多分に御協定の時間が來て居りますので一應御注意を申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=97
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098・東井三代次
○東井委員 醫者の方に協力を求めると云ふことに付きましては、從來の健康保險の例を取つて申しますると、其の醫療費の支拂方法に付て非常に複雜な點があつたと云ふことを聞いて居るのでありますが、私も實は、それではないかと思はれる點もあり、それも一つの原因だと思ひますが、支拂方法の複雜と云ふことに付ては、今後一つ簡略化を御考慮願ひたいと御希望申上げて置く次第であります、尚ほ二、三點殘して居りまするが、時間も參りましたので私は是で終了致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=98
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099・庄司一郎
○庄司委員長 此の際議員柄澤とし子君の發言を御許ししたいと思ひます、柄澤君に申上げますが、御要望の農林大臣は只今本會議でどうしても此の時間に御臨席が叶はないのであります、併し農林政務次官が代つて來られて居りますから、其の意味に於て當初農林關係の御質問があられて結構であると思ひます──柄澤議員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=99
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100・柄澤と志子
○柄澤と志子君 委員外構私の質問を御許し下さつて委員の皆樣に御禮を申上げます
政府に御伺ひしたいことは、此の法案を作るに當りまして、若し此の委員會に於て此の法案を改正したいと云ふやうな要望を出しました時に、それは容れられるものであるかどうかと云ふことを御伺ひしたいのでございます、それが先づ第一の私の質問でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=100
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101・河合良成
○河合國務大臣 委員會と申すとどうかと思ひますが、議會が之を改正なさることは、是は議會の權限であります、政府がそれに賛成するかせぬかと云ふことは、其の個々の問題で決定することと御承知願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=101
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102・柄澤と志子
○柄澤と志子君 此の法案を拜見致しまして、戰前の樣々の社會政策的な法律が一切廢止され、現在有史以來ない非常な國民の生活窮乏の裡に、此の法案が國民の生活を保護すると云ふ名前で提案されて居ります以上、民主主義諸國家の仲間入りをして、侵略戰爭の日本が凡ゆる機構を乘換へて、新しく民主主義國家として仲間入り致しました時に、此の法案も當然民主主義的な形で作られ、又其の内容も人民の權利を確認するだけではなく、それを保障しなければならないものだと思ひます、さう云ふ立場から此の法案を見ます時に、戰前に作られました法律と其の構成に於て殆ど變つて居ないと云ふことが第一に考へられるのであります、例を申しますと、例へば勅令とか市町村令とか、さう云ふものがやはり以前のやうな天降り的な形で以て機構を動かすやうに出て居るのでございます、斯う云ふ點を政府が現在示して居ります所の民主主義の方針と對照致しまして、憲法すらも議會の意見で以て大修正が加へられます今日、斯う云ふやうな法案の構成なども、もつと新しい民主主義の精神に則つて當然作られなければならないと思ふのでありますが、凡ゆる面に於て現在の内閣の性格が此の法案にも能く現はれて居ると思ふのでございます、さう云ふ點で私は政府に此の法案の構成が戰前と全く變つて居ないのではないか、どう云ふ點を民主主義的な法案として出されたか、御伺ひしたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=102
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103・河合良成
○河合國務大臣 此の法案は民主化的な線に沿うて行つて居るものと私共は信じて居ります、さうして内容の點に於ては、正しく其の線に沿うて居る、形式の點に付きまして、此の外に色々の方法を考へることは可能ではありませうけれども、政府の所見は、やはり斯う云ふ形に於て實行することが適當であり、それは内容的に見て決して民主主義に反するものとは考へられませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=103
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104・柄澤と志子
○柄澤と志子君 見解の相違と云ふ點で、此の點を質疑致しましても恐らく通らないものと思ひますから、時間もございませぬので、次へ進めたいと思ひます
「マ」司令部も民生の安定こそは民主主義の根本であると云ふことをはつきり聲明されて居ると思ひます、民生の安定は、單に人民の權利を保障すると云ふだけでなく、生活が確認されるやうな具體案を政府は持つて居なければならない思ふのでございます、憲法には勤勞權と云ふことを謳はれて居ります、併し現在政府の提案されて居ります凡ゆる法案を見ましても、勤勞する權利と云ふことは保障されて居りますが、人民の生存權と云ふものはまだはつきりと確認されて居ないのでございます、政府は勤勞することに依つてのみ日本の再建が出來るのだと云ふことを、再三繰返して居らつしやるのでございますが、勤勞する權利を謳はれながら、其の勤勞する勞働力の再生産の爲の休息權或は生存權と云ふものの保障が全くなされて居ないのでございます、私は現實の此の窮乏した状態に、更に政府の發表に依れば八百五十萬から一千萬近い所の失業者が、金融資本關係の整理に依り、此の夏から冬に掛けて出る、食糧の不足、「インフレ」は新圓の發行五百億と聞いて居ります、此の生活不安の裡に一千萬の失業者を出す、而も戰災者も引揚同胞も、夫を失つた未亡人も、生活の保障が殆どなされて居らず、而も尚ほ世界の中で最も貧弱であつた日本の社會政策、母子保護法とか醫療關係の保護法とか云ふものが一切廢止され、而も勞働保護法も確立されず、其の以前に勞働調整法案が通されやうとして居ります、今日厚生大臣に於かれては、一體此の保護法案一本で、あの議會の外の大衆の勞働調整法案反對の聲を押切つて此の法案を御通しになり、さうして國民の生活を安定なさることが出來ると云ふ御確信を御持ちになられるか、此の點を御伺ひしたいのであります、尚ほ先日大臣は此の委員會で、勞働調整法案を通しても勤勞大衆は動搖しない自信があると云ふことを御申述べになつたと聞いて居ります、其の二、三日を出でないで、鐵鋼勞働組合の人々は大會を開きまして二十四時間の「ゼネスト」をやつて居ります、一日も一時間も早く物を造り出し、日本を再建しなければならない時に、大臣が動搖しないと云ふ聲明を出された二、三日後に勤勞者は「ゼネスト」をやつて居ります、是は全く政府に對する不信を勤勞者が表明して居るものだと思ふのでございます、政府の御所見竝に厚生大臣の生活安定と密接な關係を持つて居ります最近の斯う云ふ情勢に付ての御答辯を御願ひしたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=104
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105・河合良成
○河合國務大臣 御質問の趣旨が非常に多岐に亘つて居りますので、一寸どの點を御答へして宜いか困るのでありますが、大體物事の實行と云ふことはやはり時を要します、又社會の總ての状態を考へて行かなくてはなりませぬ、日本の現在の立場と云ふものも考へて行かなくてはなりませぬ、それでやりたいことは山々ありまするが、中々一時にも參りませず、一番重大な點を捉へて、一番骨となるやうな所で而も實行可能の所を捉へてやつて行くことが政治の要諦だと思ひます、それでやはり今日一番重大な問題は、民主主義國家の發程に於て困つた人を兎も角も救つて行かうではないか、是は一番大事なことだと云ふことが此の生活保護法の目指す所であります、勿論それだけではいかぬ、それで失業救濟も御承知の通りに殆ど劃期的と云ふ形に於てやつて行く、勞調法の如きも、やはり國家存立の必要上斯う云ふ所には斯う云ふことが要るだらう、又勞働保護法の如きも、實際時が間に合はなかつたけれども、今一生懸命作つて居りまして、大體小委員會も出來まして次の議會に出來るだけ出す、是は法律が大きいものですから、今日まで間に合はなかつたと云ふやうな實際の事情、又日本の立場、さう云ふものを全體綜合致しまして、重點的に、また實行可能の面から政策を實行してやつて行きたい、さう云ふ風に御承知下されば大體のことは御分り下さると思ふのであります、先程御話がありましたが、私は此の委員會か、勞調の委員會か知りませぬが、「ゼネスト」のやうなことのないことを希望すると云ふ希望を極力述べて、どうぞ勞働者諸君も御諒解になつて、勞調法と云ふものは決して勞働者彈壓でもなければ、資本家の擁護でもない、是は國民大衆の利益擁護の爲に必要缺くべからざるものである、此の點を理解して下されば、之に依つて「ストライキ」が起るなどと云ふことはあり得ないことだと申して居る次第であります、鐵鋼の方の「ゼネスト」と云ふことは、事實何處までどうだと云ふことに對しては、私はまだ細かい報告を受けて居りませぬが、官公吏の職員組合なども段々事情が御分り下さるのではないか、運輸、遞信の方の勞務者の方も、段々此の勞調法の實體が御分り下さるのではないかと云ふ風に私は存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=105
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106・柄澤と志子
○柄澤と志子君 勞働大衆が凡ゆる資材の不足や條件の惡化にも拘らず、一日も一時間も休まずに物を造り出さなければ日本は豐かにならず、再建も出來ないと云ふ意欲の下に、政府の彈壓が豫想される生産管理までも遂行致しまして現在生産を勵んで居るのでございます、それにも拘らず「ストライキ」を致しましたのは、政府に對する信任がないと云ふこと、又現在の政府の方針では我々勤勞者の生活が確保して行けないのだと云ふこと、現在でも生きて行かれないと云つて、毎日のやうに陳情に參ります官業の皆樣、私は先達て商工省へ參りましたが、商工省の廊下或は圓柱到る處に、商工省の從業員の人々が現在の儘の状態では生活して行けないと云ふことを愬へて居ります、此の生活不安が、精神如何に拘らず、見解の如何に拘らず、現在の社會状態を不安に陷れ、政府に對する信頼を失はしめて居るのだと思ふのでございます、私は厚生大臣はさう云ふ點の御認識がまだ足りないから、それで只今のやうな御答辯があるのだと思ふのでございます
それから失業對策の問題で少し御伺ひしたいのでございますが、是は政府の根本的な民生安定の方針と、それから現在やつて居られます色々の施策とが全く食ひ違つて居られると云ふ點で、私は御質問申上げて居るのでございます、八百五十萬から一千萬の失業者を抱へまして現在の豫算で──私共計算致す所に依りますと、政府の失業救濟費は一日日當十三圓と聞いて居ります、それで延人員百二三十萬人の救濟しか出來ないやうに考へられるのでございますが、其の點政府ではどのやうな救濟のはつきりした對策を御持ちになつていらつしやるか、御伺ひしたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=106
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107・河合良成
○河合國務大臣 只今失業者を八百五十萬乃至一千萬と云ふ御推定でありますが、どう云ふ根據に依つて斯う云ふ數字が出ましたか、私共の推定ではさう云ふ風には考へて居りませぬ、併し失業者に對する推定と云ふものは非常に困難なことでございまして、四月二十六日の人口調査に依りまする失業者、即ち就業して居ない者及び七日以内しか就業して居ない人の合計が二百五十五萬人であります、此の數字は一應分つて居りまするけれども、其の他に確定的に分つた數字はないのであります、其の他は色々な推定を下しまして、此の年度内に約五百萬人、其の他に潜在失業者と云ふ部類に屬するものは多少ありませうけれども、先づ五百萬人と推定して居ります、それに對しまして色々方法を只今考へまして、實は當議會にも豫算を提出して、目下具體的に計畫を立てて居る最中であります、其の計畫に依りますと、茲にまだ明白な數字を發表する時期には達しませぬが、先づ一般の産業は軍需補償の打切り等に依つて餘程整理はされます、整理されるのは勿論五百萬の中に入れて勘定して居りますが、其の整理されると同時に又相當復活して來る部面もあります其の復活の分に對して百二、三十萬人位のものは入るだらう、それから又公共事業、色々積極的にやりまする其の公共事業に二百萬人位のものは入るだらう、其の他色色と考へて、出來るだけ失業者と救濟者との間の褄を合はせる、合はない部類は生活保護其の他の關係で補つて行くと云ふやうな考へを具體的に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=107
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108・柄澤と志子
○柄澤と志子君 失業保險のみに偏つた譯でございますが、政府が國民の不安を除く徹底的な保護を致します爲には完全雇傭と働く能力を失つた者疾病傷害、或は老齡に因る所の働く能力を失つた人々さう云ふ人々に對しては、國家は之を社會保險或は物質的の補償に依つて生活を不安なく保障しなければならないと思ふのでございます、色々計畫はあると云ふやうな御答辯を先日御伺ひ致したのでございままが、どのやうな計畫を御持ちになつていらつしやるか御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=108
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109・河合良成
○河合國務大臣 完全雇傭と云ふ線に向つて勿論進みつつあるのでありまするが、御承知のやうな終戰後の混亂時代でもありまするので、中々「イギリス」や「アメリカ」のやつて居るやうな式には直ちに參りませぬ、そこで失業對策に對して色々の方法を執り、又生活保護の方法を執ると云ふやうなことで此の線に沿つて進んで行きたい、國情の許す限りは出來るだけのことをやらうではないかと云ふことであります、それで國情も治まつて行きますと、法制其の他をもう少し完全に整へまして、完全雇傭なり或は社會保險なりと云ふ制度に行くのだらうと思ひます、社會保險の制度に付きましては、目下調査會を設けて審議を續けて居りまして、まだ成案を得るには至つて居りませぬ、のみならず、是は只今直ぐ失業保險のやうな制度を實施しますれば、保險の原則としまして、保險料支拂、保險金と云ふものとの間にバランスが取れませぬ、直ちに此の状態に置くと支拂保險金ばかり多くなつて、國庫の負擔は到底堪へることが出來ないと云ふやうな情勢でもありますから、社會保險の制度、特に失業保險の制度はもう少し國情が治まつてからでなければいけまいと云ふ氣持を持つて居る次第であります、是等の方法に對しましては、總て現實に目下實行もしつつあり、又調査も進めつつあると云ふ状態であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=109
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110・柄澤と志子
○柄澤と志子君 次は此の法案の内容に亘つて少し御伺ひして見たいと思ふのでございます、第二條の「左の各號の一に該當する者」の所でございますが、「能力があるにもかかはらず勤勞の意思のない者、勤勞を怠る者その他生計の維持に努めない者」或は二の「素行不良な者」と、此の法案には此の外にも保護をなさない場合の規定があるのでございますが、此の能力があるにも拘らず勤勞の意思のない者、或は素行不良な者、是は再三各委員が政府に御質問申上げて居たやうでありますが、私は之にまだ滿足する御答辯を得て居ないのでございます、現代浮浪者と致しまして、あの働く意思を失ひ、悲慘な状態で上野や或は地下鐵のガードの中に蹲まつて居る人々、或は官立或は私立の──是は本當は極く僅かな例でございますが、其の人々の中の八割は軍需工場の徴用解除になつた人々、戰災者でございまして、二割或は二割の中の一割半が本當の先天的な浮浪者であると聞いて居ります、其のやうに浮浪者、現在働く意思を失つて居ると言はれる人々、此の人々は戰爭中に永年の稼業を奪はれたり、或は徴用工になつたり致しまして、危險な帝都から疎開することも出來ず空襲に暴されて、勞働組合を作る自由も持たず、凡ゆる政治に對する發言權を持たず、侵略戰爭の下に默々として國家の爲に働いて來た人々でございます、其の働いて來た、最も國を愛して働いて來た人々が、現在戰災者──昨日の勤勉な徴用工は戰災者になり戰災者から更に今日は浮浪者にまで轉落して居るのでございます、又素行不良の者の中に入ります所の、何遍も各委員から政府に對して御質問申上げて居ります醜業婦、あの中にも終戰と同時に職場を奪はれ、職場を放り出されて失業した勤勞婦人が多いのでございます、一番最初に政府委員から、此の法案は差別的に、又は優先的な取扱をなすことなくと云ふことを、特に筆記を止められて、さう云ふ意思で以てやられて居るのだと云ふことを示されたのでございますけれども、敗戰後の今日の状態で、日本政府が何をなさなければならないかと申します時に、私は侵略戰爭の犧牲になつた人々を一番先に救ひ上げなければならぬと思ふのでございます、働かずに人を搾取して戰爭の最中に莫大な利益を擧げた人々は、今日食ふに困らず、澤山な食糧を持ち何の不自由もなく暮して居ります、戰線に追はれ、職場で酷使され、勞働組合を作る自由も持たなかつた勤勉な人達が浮浪者になり、又餓死者を出し、斯うして居ります内にも生活の窮迫から醜業婦に落ちて行くことを決意しなければならない人も出て居るのであります、如何なる理由にも拘らず、如何なる理由を持つて居られて政府が答辯されるに致しましても、此の人々を救はないで、私共は現在の政府が救ふ人は何處に、誰があるかと思ふのであります、浮浪者に致しましても其の通りでございます、皆戰爭の前には温い家庭を持ち、優しい母親も居り、勤勉な父親も居たのでございます、政府が五百億の金を終戰後一箇月の間に何處かへ消費致しましただけの決斷を持つて居られましたなら、斯うした人々こそ先づ大決斷を以て救濟するのが當然だらうと思ふのでございます、此の點から生活保護法は、此の保護をなさない規定をする前に保護をなす規定をもつと多く具體的に細かく殖やして戴きたいのでございます
それから尚ほ時間もございませぬので、續けて民生委員のことを少し御話申上げたいと思ひます、民生委員に付ての先程から度々今日だけでなく、政府側からは何回も繰返し民生委員、方面委員の持つて居る善さを活かす爲に、是は下からの選出でなく、名譽職としての善さを持たせる爲に、政府の案を通したいと云ふやうな御意見も聽いて居ります、山崎道子さん其の他に依つて、保護を受ける人人が、齒を食ひしばつても、此の保護を受けないで置きたい、又息子の面目に係はるから、死んでも此のお上の御迷惑にだけはなりたくないと云ふやうな氣持で、從來如何に此の方面委員の保護を受けることを嫌つて居たか、樣々の弊害が多かつたのでございます、それを善さを活かしたいとかどうとか云ふ甘言的な言葉でどんなに戰爭中私共人民は苦しんだか分らないと思ひます、新しい日本の再建の第一歩に作られる法案でございますからもつと民主的に古いさう云ふ善さとか何とかと云ふ言葉に拘泥されずに、習慣に囚はれずに思ひ切つた決斷を政府に對して御願ひしたいのでございます、民生委員は、是非下から民主的な團體、或は政黨、或は地域、保護を受ける人々、さう云ふ人々の間から選擧に依つて選出され、而も惡いことをした場合には、之を罷免させるだけの權利を選出した人々が持つ、是だけの構成を此の法案に持たせて戴きたいのでございます、それに對する政府の御答辯を御願ひしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=110
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111・河合良成
○河合國務大臣 第一の御質問の此の第二條の適用を受けない素行不良の者竝に能力があるに拘らず仕事をやる意思のない者に付きましては、此の法律では保護をして行かない積りで居ります、さうして是は他の社會施設の方法で出來るだけ救濟するやうに努力をして行く積りで居ります
其の次の御質問の民生委員の問題でありまするが、是は一應やはり選擧に依つてやることも考へて見たのでありまするが、事柄が全く「サービス」を中心にした仕事でありまして、さうして地方的にそれをやりますと、中々勞力も要りますのでまあ議會の議員の如きも勿論「サービス」の點で同じやうなことにもなりまするけれども、併しながら地方的には中々面倒な仕事なものでありますから、やはり相當特殊のお方を選ばなくてはどうも工合が惡からうと云ふ實際に即した意見から、やはり推薦をして御願ひすると云ふ建前の方が實情に適し、又其の方が被擁護者に對して都合が好からうと云ふことで、斯う云ふ方法を執つたことを御諒願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=111
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112・庄司一郎
○庄司委員長 柄澤君は農林省に御質問ありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=112
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113・柄澤と志子
○柄澤と志子君 保護の種類の所でございますが生活扶助に付きまして是も再三御質問があつた譯でございますが、政府の豫算三十幾億では、政府が先程聲明されました失業者竝に生活困窮者の救濟がどの程度まで出來るかと云ふことは、全く私と致しましては、信頼を致すことが出來ない譯でございます、其の點でもう一遍御答辯が願ひたいのでございます、それから先程追加豫算、豫備費と云ふやうなもので十分保護が出來ると云ふやうな、大變御自信ある御説明があつたのでございますが、私と致しましては全く信頼が置けないのでございます、三百圓の生活費は勿論、今日五人の生活は五百圓でさへも生活出來ない状態でありますから、到底出來ないと云ふことは勿論、それから假令三百圓に致しましても、生活困窮者が現在の豫算では到底救はれないと云ふこと、更に豫備金、或は追加豫算、さう云ふものは一體今の政府の豫算構成でどう云ふ形で出て來るかと云ふこと、生活扶助は「インフレ」の問題、食糧の問題が解決されなければ、是は毎日のやうに騰貴して行く問題でございます、斯う云ふ對策が確立されない限り、又現在の豫算が膨脹し、莫大に太つて行く見透しを立てなければならない譯でございますから、さう云ふ點で全く信頼が置けない譯でございます、其の點に對する御説明を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=113
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114・庄司一郎
○庄司委員長 農林省に對する御要求はございませぬか、先程から待つて居りますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=114
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115・山崎道子
○山崎(道)委員 それでは、お金で下さいます場合には全くさうなんでございますが、私はお金で呉れますよりも物質的な保障をして戴きたいのでございます、物質的な保障がなければ、只今申しましたやうに物價はどんどん上つて行くのでございますし、保護は徹底しないのでございます、先達て私は戰災者の世田ケ谷の集團に行つて見たのでございますが、そこでは非常に悲慘な状態でございます、毎月々々二十五人づつの餓死者が出て居ると云ふことを聞きました、保險、貯金のない者が三分の二以上でございます、さうして毛布の配給があつたのでございますが、其の毛布は次の朝までにもう食糧と變つてしまふのでございます、ですから食糧の確保が出來なければ、生活の保護は絶對に保障出來ないのでございます、それから又働いて居た人々も、どうにか斯うにか職場を得て働いて居た人々も、食糧が確保されない爲に働きに行くことが出來ないでごろごろ寢轉んで居ると云ふやうな状態でございます、此の要保護者に物質的な保障がなかつたなら、絶對に生活の保護は徹底されないのでございます、毛布を配給しても、服を配給しても、皆食糧に變つて參ります、さうして政府は衣服が配給になつたと申しまして、冬になつて配給しなかつたならば、あの人達は凍えて行くのでございます、どうか官僚的な、實際の具體的な窮状を知らない所の机の上の「プラン」だけでなく、あの人々の窮迫した生活の中に立入つて、もつと眞味になつた所の具體的な方針を立てて戴きたいのでございます、でありますから民生委員のことも結局問題になつて行くのでございます、高い闇の米を買へない者、それから今日のやうな窮迫した時代の私共の苦しみを本當に知つて居る者、さう云ふ者の中から、さう云ふ人を選ばなければ、絶對に此の問題は解決出來ないのでございます、是は勿論政府の機構其のものも變へて行くことになるのでございますが、政府は其の位の決意を以て此の法案を御考へにならなければ、絶對に此の法案は一片の紙屑になつてしまふと云ふことを私は申上げたいのでございます、先程の御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=115
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116・大石倫治
○大石政府委員 只今柄澤議員からの御質問中、農林省に對しては、今審議中の生活保護法が法律として實施せられた曉に於ける三百圓の助成では、完全な生活が出來ないから、金を物に換へて、物を以てと云ふやうな御話でございます、是は單り生活保護法に關係あるばかりではありませぬ、國民全體が、若し物さへありまするならば、金はなくとも生活は出來ると云ふのでありまするし、農林省と致しましては、此の國民の最低の生活を確保したいと云ふことに依りまして、それぞれの施策を立てまして、一生懸命に其の實現に邁進をして居るのであります、然れども御承知の通り昨年の收穫の不足、それが現實的に國民生活を維持することが出來ない状態でございまして、現に聯合國側の特別の放出食糧を以て國民の生活を辛うじてやつて居る次第であります、是等に付きまして、物を以て今斯く斯くすると云ふやうな具體的な意見を申述ぶることは出來ないのであります、併し斯う云ふ保護法に依つて保護を受けねばならぬ國民をして闇の物を買つて生活をさせると云ふ建前は、私共執りたくないと思ふのであります、所謂配給に依つて公定價格の物が配給せられまするならば、三百圓でありましても決して餓死すると云ふやうな悲慘な結果には陷るまいと存じます、農林省と致しましては、此の物の増産を圖り、又供出等に於ても、眞に指導の地位にある者は、此の供出を完成せしめることに御指導を戴き、又心掛けの惡い農家の供出が出來ませぬ場合に於ては、それが出來るやうな方法を指導して戴く、或は最後には強權發動等も已むを得ないことと存ずるのであります、隨て目下問題になつて居る所謂食糧對策の緊急措置令の如きも、其の一つの反映として御取扱を願ひたいと思ひます、斯樣に致しまして、此の保護者に對して直接政府は物を以て保障すると云ふ譯には參りませぬけれども、公定價格を以て最低生活の出來る程度のものを確保致させたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=116
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117・河合良成
○河合國務大臣 先程三十一億の豫算に付て御尋ねがありましたが、是は度々申上げまする通りに、法律で保護をしなくてはならぬと云ふ建前になつて居りまするので、豫算は普通の豫算とは少し違つた、補充費と云ふ性質を持つた豫算になつて居ります、それであるから萬一是で足らぬ時には、豫備費で出さなくてはならず、又豫備費で間に合はない時には、追加豫算で出さなくてはならぬと云ふ豫算の性質になつて居りまするから、他の豫算と性質が違ふと云ふことを申上げて居るのであります、大體の見込では三十一億で、只今の所では餘ると思つて居りまするが、萬一足らぬ場合には、さう云ふ途を講ずることになつて居ると云ふことを御承知願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=117
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118・庄司一郎
○庄司委員長 吉川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=118
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119・吉川兼光
○吉川委員 私は實は社會黨の此の委員會の理事を致して居るのでありますが、大變運の惡いことには、委員會が始まつてから、ずつと色々の用事で委員會に出席する時間がなかつたのであります、質問の方は私の順番をずつと終ひの方に繰延べて貰つて居りましたが、特に最近の一週間ばかりは「プライベート」な用事で九州に行つて居りまして、今日の十一時半に東京着の汽車でやつて參つたのでありまするが、今打合せを聽いて見ますると、質問は今日一日で打切ることになつて居るさうでありまするから、殘念でありますけれども此の委員會に於ての私の質問は差控へまして、豫算委員でございますから、其の分科會でゆつくり大臣に申上げたいと思ふのであります、唯質問の資料になりますので、此の機會に一つ資料を御願ひして置きたいと思ふことがあります、それは、厚生省の給與課で本年の四月であつたと思ひますが、勤勞者生活の調査をやつて居られる筈であります、其の厚生省の給與課で調べて居られます勤勞者生活調査と云ふものの寫しを、一つ豫算分科會の始まります前に、私まで御届けを願ひたいと思ひます、先般頂戴しました資料の中には、それが見當らぬやうであります、大都市に於ける生活扶助費標準額と云ふのは頂戴して居るのでございますが、勤勞者生活の可なり詳しい表が出來て居る筈でありますから、それを是非分科會が始まるまでに御届けを願ひたいと云ふことを申上げまして、此の委員會に於ける私の質問は豫算分科會まで留保致します、さう云ふ風に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=119
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120・庄司一郎
○庄司委員長 山崎委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=120
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121・山崎道子
○山崎(道)委員 連日の委員會に於きまして……
〔委員長退席、小柳委員長代理着席〕
同僚委員から十分審議されましたので、私は委員會に於て發言をする意思を持たなかつたのでございます、所が先日相模ケ原の國立病院を視察致しまして、迚もじつとして居られない氣持になりました、それで今日質問を御願ひしたやうな譯でございます、日本に取つて最大の不幸を齎した所の今次戰爭に依る犧牲者の中特にお氣の毒な不具癈疾の人達、此の人達に對しまして、あの状態で置いて果して宜しいでございませうか、又政府當局に於かれましては、あの病院を實際に御覽になつたことがおありになるかどうか、其の點を先づ私は御伺ひ致したいのでございます、戰爭さへなかつたならば、立派に手足が揃つて居る人達でございます、兩眼を持つて居られた人達でございます、其の人達が戰爭に依りまして生れもつかない片輪になつて、而も其の治療を受けて居る病院生活に於て、一日の食費が二圓五十錢、醫療費が一圓、兩方合せて三圓五十錢と云ふやうな現状でございますので、此の食糧難の爲に寢て居てさへ腹が減つて堪らないと云ふ愬へさへございます、さうして外科患者に取つてはなくてならない筈の治療用の温泉さへ、石炭不足の爲に廢止されて居るのでございます、足の惡い方達が三十分ばかり歩いて原町田まで錢湯に入りに行つて居る現状でございます、さうして堪らなくなつた患者さん達は、貯金のある人は貯金を下して食糧の購入費に充てる、又家族のある人、私財のある人達は家からの持寄り、又食糧の持參等に依つて辛うじて生活して居りますけれども、貯金を持たざる人は軍から給與されました服を食糧に換へて居ります、又病院の入院患者がこつそり拔け出して闇商賣をして居る、又身體が少し丈夫な人が郷里から安く手に入れて來たお米を、重症患者は高いお金を出して食べて居る現状であります、さうして是等の病人に對して私が實に泣かされたことは、之に從事して居ります看護婦さん達、又雜仕婦さん達が献身的に、御國の犧牲者は私達が居なかつたらどうなるだらうと、自分達の薄い給與にも拘らず献身的に働いて居る、結核で倒れて居る看護婦さんが實に七名もある現状であります、さうして患者の中に、自分達の食糧を割いても、是非看護婦さん達の給與を何とかして差上げて欲しいと叫んで居る人もあります、斯うした状態を放置して置きまして、あの御國の犧牲者である所の傷痍の人達のあの傷が果して治るでございませうか、治つたと致しましても終生不具なのでございます、此の苦しい状態にありまする人達の給與を、何とか御考へが願へないものでございませうか、而も私はどうしても當局に御願ひ致したいことは、其の患者さん達は不自由な身體で以て内職を致して居ります、さうして闇の物を買ふことの出來ない同僚の爲に、自分達の得た收入に依つて買ひ與へて居る現状でございます、竹とんぼを作り、或は足のない人が義足で以て「ミシン」を踏んで鼻緒を作つたりして、其の費用で以て同じ入院して居る貧しい友の爲に食糧を稼いで居る現状であります、私は敢て政府を攻撃するのではございませぬけれども、總ての政策が弱い者の犧牲の上に依つてのみ打立てをれて居るやうに考へられますることに對しまして、斷じて默つて居られないのでございます、此の點に付きまして、政府は直ちにあの入院患者の人達に對して、給與の點を改正して戴きたい、それと今一つは退院後の心配を致して居ります、自分達は手がないのだ、足がないのだ、退院してから後の生活を思ふと、いつそ死んでしまひたかつたと言つて、座談會の席上で泣いて居られた患者さんがございました、政府に於かれましては、退院後の不具癈疾の人達に對して、其の生活の保障を如何にしておいでになるかを私は伺ひたいのでございます、それと職業教育の點はどう云ふ御考へを持つて居られるか、それから入院して居られまする人達に對して、生活保護法の適用と云ふやうなことも御考へを願ひ、明日と云はず、今日からでも直ちに實施して戴きたいのでございます、而も此の不具廢疾者は、全國的に實に四十六萬人居られます、兩眼を失はれました盲目の人が千二百人、片眼をなくされた人が五千人あると云ふ現状でございます、此の不幸な人達の生活を直ちに私は保障して戴きますと同時に、此の闇に閉ざされた其の心持にどうか光明を與へて戴けるやうな、はつきりした御答辯を聽かして戴きたい、病院の中で或は退院された人達が、全國でどんなにか御當局の御答辯を期待して待つて居るかと思ひますると、どうか是等の人々に御答へになる意味に於かれまして、山崎道子に答へられるのでなく、是等の人々に御答へを願ひたいと思ひます、先づ此點を第一に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=121
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122・河合良成
○河合國務大臣 只今山崎委員から、戰爭の犧牲となつた癈疾者に對する御同情の厚い御質問を受けまして、全く私共も深く感じて居る次第であります、私もまだ就任日が淺いものでありますから、一度國立病院などへも參りたいと思ひながらもまだ意に任せませぬ、議會終了後出來るだけ現地でも見しまて、適當な措置を執る積りであります、只今の所は細かい點は實はそこまで私今此處で御答へする材料と知識とを持ちませぬが、大體に於て承つて居る所に依りますと、是は醫療局の所管になつて居ると思ひます、醫療局は御承知のやうに鹽田博士を長官と致しまして、實際の知識經驗に外科に於て十分御認識のある鹽田さんに御任せして居りまして、醫療にも相當のことは行き届いて居るものと、まあ一應は拜承して居る次第であります、併しながら今御指摘のやうな事實の中にも、何とか急に改善しなければならぬと思ふものが多々あります、さうして又是は社會相としまして今日の窮乏の時代、さう云ふこともあるかなと實は思つたやうな問題もあります、今是は政府として改善し、努力に依つて出來ることは、時を移さず必ず實行致します、其の點はどうか深く御諒承を願ひたいと思つて居ります、兎も角も此の氣の毒なお方、殊に兩眼の盲になつたお方、或は手足を御失ひになつた方に對しましては、職業補導の面も相當に努力は致し得る積りであります、殊に失明の方などに對しましては、此の間沼津の光明院が燒けましたので、そこで鹽原の御用邸を拜領する手筈になつて、其處へ光明院を引越す手配も進めつつあるやうな次第であります、政府も出來るだけ色々な手配を致して居りますが、斯う云ふ際で食糧其の他にも中々手の届かない所もあると思ひます、併し出來るだけ改善を致しまして、斯う云ふ犧牲になつた方に御報いする途を考へたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=122
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123・山崎道子
○山崎(道)委員 只今大臣から出來るだけと云ふ御言葉を戴きましたけれども、最低生活は絶對に保障して戴かなければならないと存じます、是は普通の生活困窮者とは違ひまして入院患者であります、戰爭中のことを思ひましたならば、假令費用がなくても、どの面の費用を割いても保障すべきは當然であると私は考へる次第であります
それに續きまして御伺ひ致したいのは、入院患者の家族の生活の問題であります、妻子が生活苦を愬へますので、居ても立つても居られなくなつた入院患者が、闇商賣を致しまして妻子の許に其の金を置いて
〔小柳委員長代理退席、委員長着席〕
さうして入院して居ると云ふ現状であります、而も此の闇商賣を致しました患者さん自身が取締に引懸りまして、警察に擧げられたと云ふやうな現實がございます、斯うしたこは一體國家の恥辱ではないでせうか、是等の人々を斯うした状態に置くことは、國家として大いに反省しなければならぬと考へますので、此の點を至急改めて戴きたいと思ひます、入院して居る人が安心して治療を受けられますやうに、又其の家族も最低生活の保障が與へられますやうに、是非善處方を御願ひ致します、先日此のことが新聞に出ましたが、月最低三百圓なければ生活がやつて行けない、是でも私達が闇をやることに對して、世間の人に之を咎める權利があるだらうか、日常の配給品を買ふだけでも毎日五六十圓を必要とするのに、お金は一文も支給されて居ない、而も恩給は、終戰前は千九百圓幾ら戴いて居たのが、今年の六月からは六百五十圓と云ふやうな、殆ど三分の一の恩給に下げられた、私達は一體どうしたら宜いだらうか、我々の寮は燒けてしまつて、さうしてそれに代るべく御用邸を御貸下を戴いて、其處へ移ることになつて居ると云ふ話も聞いて居るが、其の實現の見込もどうか分らない、而も入院を希望して居つても早くとも三箇月、遲ければ六箇月も掛る、身に職を付けて再起すると固い決意をして居るけれども、一體どうしたら宜いだらうと云ふやうな、讀めば長くなりますが、殆ど涙なくしては讀めない文字に綴られて居るのであります、どうか政府に於かれましては、是等の人達が一日も早く安心して治療を受けられるやうにして戴きたいと同時に、職業教育は考慮して居ると云ふことでございますけれども、私共の聞く範圍内に於ては、此の盲目の人に對する職業教育は殆どなされて居ないのが現實のやうに伺ひます、此の點に對して御當局の御考へを御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=123
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124・葛西嘉資
○葛西政府委員 山崎委員から、入院者竝に其の家族の生活費を放つて置くのは怪しからぬではないかと云ふ御尋ねであります、入院者に付ては國立病院でありますので、國に於てやらなければならぬことは申上げるまでもありませぬで、只今大臣からも努力すると云ふ御話がありました、入院患者の家族の方は、現に生活に困つて居るものに付ては該當者でありまして、隨ひまして方面委員なり、或は市町村の方で當然やつて行かなければならぬことであります、さう云ふ漏救と申しますか、救護に漏れて居る方面に付ては、寧ろ患者の方から教へて下さることが非常に有難いことで、此の點に付ては私共非常に責任を感ずる譯であります、今後督勵を致しまして其のやうなことのないやうに致したいと思ひます、それから恩給が引下りまして、其の結果非常に困ると云ふ御話は御尤もに拜聽致して居つたのであります、此の關係は先程も庄司委員長の御尋ねがありまして、大臣から御話を申上げましたやうな事情でありまして、現在の我が國と致しましては何とも致し方のない殘念なことでありますけれども、私共と致しましては、之を一般と差別することなく、平等に是等のものを實情に即して保護して行くと云ふ建前で、苟くも救護に漏れることのないやうに格段の努力を致して行きたいと考へて居ります
それから眼を失つた盲人の傷痍軍人に限定しての御話だと思ひますが、盲人の保護に付ては、先般委員の御要求がありまして、若干の資料も御届けして置いたのでありますが、施設は極く僅かながらありますし、又職業教育に付ては今御話の光明寮、是は先刻大臣からも御話があり、先般此の委員會でも申上げましたが、政府部内としては内定をして、「マッカーサー」司令部の承認を得れば直ちに出來るやうに準備は致して居ります、現に栃木縣廳等にも今週中にも人を派して具體的に打合せをすることになつて居ります、それから宇奈月に居りました方々は泊る所が燒けたので、一應郷里に行つて歸りを待て、殘つて居る者も若干あるやうですが、寮長も鹽原、宇奈月と連絡を取つて居りまして、是は至急に開くことに努力致して居ります、盲人教育に付てはやはり盲學校の關係がありまして、御承知だと思ひますが、今は官立の東京盲學校の經營になつて居る譯であります、其處から先生がこつちに來て貰ふ關係等で、是も今打合せて居ります、それから入寮費が非常に高く、其の爲め寮に入つても困ると云ふことでありましたが、是は向ふに參ればさう云ふことのないやうに注意したいと思ひます、光明寮は今度恩賜財團同胞援護會をして經營させる豫定であります、隨ひまして、さう云ふ點に付きましても、私共十分監督を致して參りたいと思ひます、それから斯うした方々の職業教育に付て不熱心ではないかと云ふ御話がありましたが、御承知のやうに、現に國立の職業補導機關もある譯であります、併し是は勿論傷痍軍人の方だけではありませぬ、一般の産業の傷痍者も一緒に入れると云ふことでやつて參りますが、國立のものと私設のものと、さう云ふ團體を作ると云ふことに付ては十分力を入れて參りたいと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=124
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125・山崎道子
○山崎(道)委員 私は職業教育に對して、切斷患者、手のない人足のない人等の職業教育に付てももつと考へて戴きたいと思ひます、患者さん達の希望としては、戰爭に依る犧牲者、詰り不具者なつた傷痍軍人だけでなく、今言はれた工場に於ける爆撃等で怪我をされた不具者達の集團的に働けるやうな中小工場を特に希望して居るやうであります、私もさう云ふ人人の座談會にも行つて來たのでありますが、さう云ふ面も是非一つ考慮して上げて戴きたいと思ひます、次は待遇の點でございますが、二千名を收容すると云ふ國立病院に四名の榮養士が居りますが、豫算の關係で之を廢止すると云ふ厚生省當局の命令だと伺つて居ります、それから四十名居ります雜仕婦を、是も二十名にして、あとは看護婦にやらせる、百名の炊事を一人の割でやつて行けと云ふ風で、非常に費用を刻んで來られるので、是では到底やつて行けないと云ふ愬へでありました、それから重傷患者に對しては、四十五名の者を五人で扱ひ、普通患者に對しては、九十五名を五人で扱ふ、それで患者は看護婦が疲れるから氣の毒だと言うて、自分で氷を取替へて居る現状と聞いて居りますが、國立病院でございますから、少くとも普通の待遇が出來るやうに、さうした僅かな費用を切刻まないやうに一つして戴きたい、どうも弱い者のみをいぢめるやうな氣が致しますので、私は特に此の點を強調する次第でございます、それから患者用の温泉と云ふものは絶對に必要でありますから、若し石炭がないならば、薪でも何でも都合して、せめて足のない人達にお風呂の一つ位は何とかして戴きたいと存じますが、此の點は如何に御考へでございませうか、御伺ひを致したいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=125
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126・服部岩吉
○服部政府委員 先刻大臣が御答へになりましたやうに、洵に切實な御話でございます、早速私共も大臣と共に病院を見せて貰つて、さうしてさう云ふやうな、入院の患者に非常な苦痛を與へるやうなことのないやうに致して行きたい、斯樣に考へて居りますから、急速に大臣と共に一遍實地を見まして其の缺陷のある所を能く調べ、御話の點を能く調べて行きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=126
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127・山崎道子
○山崎(道)委員 御懇切な御答辯を伺ひまして有難うございます、全國のさうした患者さん達の爲に、私御禮を申上げます、直ちに大臣と共に實地を御見學戴きまして、私の見解は決して誇張でございませぬ、まだ言ひ足りないのでございますが、どうか實地を御覽下さつて、直ちに適切なる對策を講ぜられるやうに切に御願ひ申上げます
次に私は浮浪兒の問題に付て御伺ひ致したいのであります、各委員に依つて十分に申述べられたのに尚ほ蛇足を付けるやうでございますけれども、此の點も二、三私の感じたことを御愬へ致しまして、萬全の對策を講じて戴きたい、斯樣に存ずる次第でございます、實は昨日浮浪兒の狩出しと申しますか、狩込みと申しますか、都でやつて居りますあの「バス」を以て浮浪者を收容致します所へ連れて參りまして、風呂へ入れて着物を着換へさして收容するまで、共に行動しまして感じたことでございますが、私達が今まで感じたことと、又實地に携はりまして其の思ひを新たにした點が多々あつたのでございます、此の浮浪兒は今では家のある子供が三割位混じつて居る、本當の戰災孤兒が五割位、家出の子供が三割、感化院に入れなければならないやうな子供が一割位、其の他と云ふやうな「パーセンテージ」でございます、それで一箇月位の訓練的な暫定措置だと言はれますけれども、感化院へやらなければならない子供と、智能精神薄弱兒、それから性格異常兒、さうした者と普通の子供とを一緒にしてある現状は直ちに改めて戴かなければならないと云ふことが一つ、それから今一つ、度々逃出す子供に對しまして、私は唯設備が惡いから逃出すのだ、冷いから逃出すのだ、斯樣に考へて居りましたけれども、色色行つて實地に拜見致しまして、冷いばかりてはない、性格の破綻者と云ふやうな子供も其の中には相當あるやうに考へます、さうした子供には直ちに其の方法を講じて戴きたい、それからあの施設には餘りにも夢がない、歌がない、あれだけ大きな施設に「オルガン」一つないやうな状態では、子供は到底落着き得ないのではないかと云ふやうなことも感じさせられたのでございます、さうした點に付きまして何と申しますか、先程柄澤議員が申しましたやうに、戰災孤兒には去年までは親がございましたし、家がございました、是非それに代る父親の愛情、母親の愛情をもつともつと與へて戴くやうに考へて貰はなければならない、それともう一つ昨日感じたことでございますが、狩込んで參りまして直ぐ身元調査をする、それから精神鑑定をすると云ふやうなやり方が、非常に子供に窮屈さを與へるのではないか、二、三日位は其の儘にして置いて、落付いた所でさう云ふ事務的なことはされた方が宜いのではないかと云ふ風に私は考へたのでございます、それから此の浮浪兒の蔭に失業不良青年が付いて糸を操つて居る、十七、八から二十歳位の不良青年が上野の森あたりをうろついて居りますが、是が是等の浮浪兒を手下に使ひまして色々惡の道を教へて居る、さうしてそれ等の不良青年達が、收容された子供等に對して手下と云ふやうな關係になつて居りまして、それを引出しに來る現状でございます、是等に對して今後尚ほ失業者が殖えると云ふことは非常に由々しい問題ではないかと思ふ、彼處に働いて居る人達も、身邊に危險を感ずることがある、集團的に脅迫的の行動に出られる場合が多々あると云ふことであります、上野の森で不良青年三十名位に取圍まれて、彼處の保護の係長さんが毆られたと云ふことを聞いて居ります、さう云ふ點は十分考慮しなければならない社會問題ではないかと考へて居ります、此の子供達に關しそれぞれ私の御願ひするやうな點に付て政府では御考へが戴けるのでありませうか、年齡別とか其の他御伺ひしましたことに付ての御考へを聽かして戴きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=127
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128・葛西嘉資
○葛西政府委員 只今山崎さんから、實地に上野浮浪兒の状況を御覽になりましての大變行届いた御意見を伺ひまして、實は私も先般上野へ參つて見たのでありまして、稍稍同樣のことを感じて居つたのであります、此の浮浪兒の保護對策に付きましては、何遍か各委員からも御話があつたのでありますが、極く最近に關係方面とも相談を致しまして東京、横濱を先づ第一にやるやうにしまして、人的並に物的の施設を揃へることになつて居ります、それで今山崎委員が御述べになりましたやうに、色々な子供がありまして、之をやはり種類別に分けて保護の仕方をそれぞれ別にやらないといけないのでありまして、それでやはり保護施設の方も、私の今考へて居りますのでは、一般の何處へも行きやうのない子供の保護施設と、一時鑑別し種類分けをする爲に容れるやうな施設と云ふやうなものとが必要ではないか、今取敢ずはやはり東京では養育院をそれに利用したいと云ふ積りで居るやうであります、それから若干長く置く方とそれぞれ區分けをして分けると云ふやうに考へて居ります、相當の費用も要りますし、此の點に付ては聯合軍司令部の方でも大變熱心に考へて呉れて居りまして、少くとも或る時の如きは一週間以内に東京横濱の浮浪兒が全部街頭をうろつかないやうにと云ふやうなことを言つて來まして、本當に弱つたこともあつた位であります、それで今日あたり多分聯合軍司令部へ大體こつちで作りました資料を持つて行つて打合せをすることになつて居ります、向ふの方でも大變心配して呉れまして、本當に有形無形に色々心配をして戴いて居りますので、今山崎委員が御述べになりましたやうに、大體さう云ふやうなことで施設の方も出來、或は人的の用意も出來るのではないか、狩込みと云ふことは一寸厭な言葉でありますが、狩込みを致しましても又出て來ると云ふやうなことになりますから、或る程度常設のさう云ふ指導機關と云ふか、相談機關と云ふか、さう云ふものが要るのではないかと云ふ譯で、東京、神奈川一帶に亘りまして、東京部會、神奈川部會と云ふやうにして、主として浮浪兒の保護の對策委員會と云ふか、さう云ふ對策委員會のやうなものを作らうと云ふことになつて居ります、東京、横濱が若し是で巧く行きますれば、關西の方面に作らうと云ふやうな心組みでやつて居ります、近い内に案が出來まして、具體的に今御説のやうな風に段々行き得るやうにならうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=128
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129・山崎道子
○山崎(道)委員 私は親がありながら家出をする子供達の原因に付て當局に御質問致したいのでございます、今の浮浪兒の状態を此の儘に繰返して居りましたならば、五年位經つたならば日本は犯罪國家になるのではないかと云ふやうなことを考へまする時、是は費用が掛つてもどしどし此の方面へは思ひ切つた費用を使つて、即刻に對策を講じなければならないと考へるものであります、此の親がありながら家出をする原因には色々ございませうけれども、食糧難が重大な原因だと思ひます、食糧難から來る家庭的な不和と云ふやうなもの、それからひもじさから來る闇市場の誘惑、斯う云ふことが家出の主たる原因になつて居るやうに思ふのであります、そこで家庭の不和、家庭の冷たさ、愛情の喪失した家庭、斯う云ふことが子供を惡の道へ追ひやる大きな原因になつて居ると考へるのでございます、そこで食生活の安定なくしては絶對に根本的な解決は出來ない、而も食糧は絶對量が不足して居る、斯うした現状の時、私は出來ない相談を致さうとは思ひませぬ、どうか私は家庭の母親に暇を與へたい、其の爲には配給機構の改正を斷行して戴きたいのでございます、今の母親は餘りに忙し過ぎる、貧し過ぎる、母親に今少しく暇を與へて欲しい、其の爲には配給を現状のやうな機構でなくして、家庭配給にまで進めて戴きたいのでございます、今大森の池上でやつて居ります配給の状態を昨日聞いたのでありますが、千三百世帶位に對しまして僅か一箇所の配給所で致して居ります、六千人位の配給を一箇所の配給で致して居りまするので、もう長蛇の列で、配給日には何時間も家を留守にしなければならない、其の爲に其の留守に空巣が入つたり、家は亂脈になつても家事を顧みて居る暇がない、自分が少し家のことに係つて居れば、隣組から苦情が出ると云ふので、主婦は全く地獄の苦しみをして居ります、夕方夕食の支度に掛つて居つても配給だから來て下さいと言はれれば、家のことを放つても、子供を放置しても飛んで行かなければならないと云ふ現在の制度では、どれだけ主婦が苦しんで居るか、恐らく皆さんの奧さんも苦しい思ひをして居られると思ひます、此の主婦に時間を作り、又餘裕を與へます爲には、直ちに私は配給制度を改正して戴きたいと考へますけれども、其の點に付きまして政府の御考へは如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=129
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130・庄司一郎
○庄司委員長 山崎委員に御相談申上げますが、農林當局が居りませぬので、適當な機會がありますれば、努めてあなたに御答辯させる方法を執りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=130
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131・山崎道子
○山崎(道)委員 適當な機會と申しましても、今日で委員會はお終ひのやうに拜承致しますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=131
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132・庄司一郎
○庄司委員長 答辯は明日でも、討論の場合でも、出來る可能性があります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=132
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133・山崎道子
○山崎(道)委員 それでは農林當局に對する質問は保留致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=133
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134・庄司一郎
○庄司委員長 山崎委員の御質問は只今は其の程度で宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=134
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135・山崎道子
○山崎(道)委員 時間は如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=135
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136・庄司一郎
○庄司委員長 丁度あなたは三時四十分から御質問になつて居るやうでございます、大抵好い按配の時間のやうに思はれますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=136
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137・山崎道子
○山崎(道)委員 傷痍軍人の問題に付きまして、大變御親切な御答辯を戴きましたので、私も丁度好い所で打切ります、農林當局に對し質問は保留させて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=137
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138・長谷川保
○長谷川(保)委員 緊急動議があるのですが……此の間理事懇談會がございまして、委員長お留守でございましたけれども、其の時に都内の社會事業を一度委員で見學をさせて貰はうではないかと云ふ話がありました、それを近い内に出來るだけ委員が集まつて廻つて見たい、此のことを委員諸君に諮つて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=138
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139・庄司一郎
○庄司委員長 只今委員各位に於かれまして御聽きの通りであります、都内に於ける二、三の社會事業、收容所等を實地に我々委員に於て視察したいと云ふ議が、前會の理事會に於て──私は缺席を致して居りましたが、熟して居つたさうでございます、左樣な關係上、適當な日を選びまして、都内に於て、本法の審理上參考になり得るやうな適當な社會事業の現状を見たいと云ふ、只今の長谷川委員の御動議に關し、委員各位の御意見を問ひまして、願くは御賛成致したいと思ひますが、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=139
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140・山崎道子
○山崎(道)委員 昨日板橋の收容所の堀さんと云ふ方が、おいで戴くのもお忙しいでせうから、若し願へるならば、是非生活保護委員の方達に御目に掛つて、十分現状を御説明申上げたいと云ふやうなことを申して居られました、私は今回皆樣で視察をすることは大變好いことだと思ひます、行つて見れば本當に得る所がございます、それから是は特に浮浪兒の問題に付ての私の試案でございますけれども、今後私設の保護事業をやつて居られる方と、官立の責任者の方と、それから社會事業協會、さうして我々と、厚生省の人、斯う云ふ人達が絶えず連絡を執りまして、少くとも一箇月に一回位は其の問題に付ての協議會を持つやうにして行きたい、斯う云ふ風なことも考へて居りますけれども、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=140
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141・庄司一郎
○庄司委員長 是は全員が全員と云ふ譯には色々公私とも御多忙でいけないと思ひますが、成べく委員の各位に於かれて御都合を戴いて、行を共にして實地を適當な日に於て視察をしたいと云ふことに御賛成を戴けることが出來るでございませうか
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=141
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142・庄司一郎
○庄司委員長 滿場の御賛成を戴きました、明日午前十時より今までのやうな型に嵌まつたのではなく、折角御縁があつて此の委員になりましたお互ひでございますから、努めて此の上とも御懇談の形式で、大體正午まで位の豫定で懇談會を開催することは如何でございませうか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=142
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143・庄司一郎
○庄司委員長 御異議が滿場ないやうでございます、それでは懇談會を明日は開催を致しまして、尚ほ當局等に質したい點があれば、其の懇談會に於て十二分に御懇談を願ひたいと思ひます、それから視察の方は厚生省とも相談を申上げ、若し明日午後等に出來れば、餘り急なやうでございますが、或は明後日とか、適當な日時等にプランを立てまして、明日の懇談會の席上に於て、一應其の「プラン」を御相談申上げた上に於て、視察の日程等を決めたいと思ふのでございます、大體只今まで委員各位の質問が二十二名の多數に亘られました、此の中一名は委員外でございましたが、洵に言々句々御熱誠迸る所の御質問等があられまして、洵に有效なる委員會であつたと思ふのでございます、明日は懇談會をしてより多くの收穫ある良き懇談會たらしめたいと思ふのでございます、尚ほ其の後に於て御承知の如く討論の日程を持たなければなりませぬ、其の討論の日程の前に、各政黨は其の政黨の政務調査會、或は幹部會とか代議士會等に諮られまして、只今議題となつて居る本法に對する所の其の態度を略略決することになる順序であることは御承知の通りでございます、質問は之を以て打切りまして、明日の懇談會又討論等に於て、最も有效ならしめたいと考へるのでございます、あと何か御發言等はございませぬでせうか、議事進行其の他に付て御發議がございましたならば、此の際御願ひしたいと思ひます──それでは明日やはり委員會繼續の意味でございますが、全く懇談會の内容を以て、明日午前十時御集まりを願ひたいと思ひます、本日は之を以て散會致します
午後四時二十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00919460808&spkNum=143
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