1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年八月二十七日(火曜日)
午後一時三十八分開議
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議事日程 第三十五號
昭和二十一年八月二十七日
午後一時開議
第一 復興金融金庫法案(政府提出) 第一讀會
第二 食糧緊急措置令(承諾を求める件) (委員長報告)
第三 地方競馬法案(小笠原八十美君外四名提出) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、議員から提出された議案は次の通りである
京都、明石間省營電車の姫路迄延長速成に關する建議案
提出者
堀川恭平君 細田忠治郎君
森崎了三君 松澤兼人君
木下榮君 田中源三郎君
(以上八月二十四日提出)
鑛業陷落地復舊助成に關する建議案
提出者
石井光次郎君 山田善三君
古賀太郎君 古賀喜太郎君
松岡運君 長尾達生君
岡部得三君 森山ヨネ君
田中松月君 杉本勝次君
田原春次君 伊藤卯四郎君
森本義夫君 松本七郎君
上田清次郎君 楢橋渡君
中島茂喜君 石崎千松君
圖書館の普及擴充に關する建議案
提出者
中田榮太郎君 堤隆君
原夫次郎君 田中源三郎君
船田享二君
(以上八月二十六日提出)
一、去二十四日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
一九七 議長 山崎猛君
二四八 樋貝詮三君
一、昨二十六日次の通り特別委員の異動があつた
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)外三件委員
辭任 堤隆君 補闕 竹谷源太郎君
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より會議を開きます、吉田内閣總理大臣より詔書を傳達せられました、茲に奉讀致します、諸君の御起立を望みます
〔總員起立〕
朕は、九月二十七日まで三十日間、帝國議會の會期の延長を命ずる。
〔總員敬禮〕
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=1
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002・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第二を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=2
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003・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=3
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004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられました──日程第二、食糧緊急措置令(承諾を求める件)を議題と致します、委員長の報告を求めます──委員長成島勇君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=4
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005・会議録情報2
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第二 食糧緊急措置令(承諾を求める件)(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 食糧緊急措置令(承諾を求める件)
右は本院に於て承諾を與ふべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月二十一日
委員長 成島勇
衆議院議長樋貝詮三殿
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〔成島勇君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=5
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006・成島勇
○成島勇君 只今議題となりました食糧緊急措置令に關する特別委員會の審議の經過竝に結果を御報告致します
此の緊急措置令の内容及び是が制定を見るに至りました當時の食糧事情に付ては、既に本會議場に於ける政府の提案理由の説明に依つて明かでありますから之を省略致しまするが、敗戰のどん底にあつて未曾有の不作に見舞はれ、極度に窮迫せる本食糧年度の苦境を切拔ける爲には、緊急已むを得ざる手段として政府の執つた措置は之を承認すべきであるものと存ずるのであります、併しながら所謂強權發動の問題は、農政竝に農業經營に極めて重要な關聯を有して居りまするので、委員會に於ても凡ゆる觀點から質疑が行はれたのであります、即ち委員會は七月三日より本月二十一日に至るまで、此の間十一囘に亙つて開會し、各委員と政府との間に極めて熱心なる質疑應答が行はれ、愼重なる審議がなされたのであります、其の質疑は極めて多岐に亙り、食糧に付ては主要食糧は勿論、生鮮食料品、調味料にまで及び、生産に關しては農業經營を中樞として、水産振興、畜産振興、蠶絲業の振興、治山治水にまで及んで居り、又資材に付ても肥料問題を中心として、農機具や生活必需物資の確保に至るまで、眞劍な論議が行はれたのでありまするが、詳細は速記録に讓ることと致し、此處では強權發動を中心とする最も重要なる質疑竝に之に對する政府の答辯を御報告申上げることと致します
先づ第一に供出割當の適正と公平の問題であります、此の勅令制定の趣旨が少数の惡質農家を對象として居ることは、政府の提案理由の説明にも明かにせられて居る所でありまするが、供出割當自體が若し適正を缺き不公平であるならば、それは強權發動の妥當性を根底から覆すばかりではなく、影響する所極めて甚大でありまして、善良なる農家をして苛酷虐政の歎きを發せしむる結果となり、又食糧増産確保の上にも由々しき重大問題となる譯であります、此の點に關し多くの委員より政府の意向を質しました所、政府は供出割當の方法に付ては、從來とも其の適正を期する爲め種々努力して來たが、其の萬全を期する上に於て缺くる所があつたことは之を十分認める、隨て本年の麥、馬鈴薯の供出に當つては、相當改善を加へたが、更に徹底的に公平ならしむると共に、民主的ならしむる爲め、即ち從來の天降り的且つ祕密主義を一擲し、納得且つ公開主義に依つて行ふ、而して是が爲に市町村食糧調整委員會及び都道府縣食糧委員會を全面的に活用し、是等の委員會は之を民主的に構成することとし、前者は耕作農民を中心とし、後者は生産者、消費者其の他政黨、農民組合等の代表者をも加へ、尚ほ是等の構成に付ては法令上明かにするとの意向を表明致したのであります
次に農家の生産意欲昂揚の問題に關聯して、眞摯なる論議が交はされたのでありますが、其の最も大きな問題は農産物價、就中米價の問題であります、即ち米麥等主要食糧品の價格は、生産費を十分償ふばかりでなく、他の諸物價との均衡を保ち得るやうに改訂の必要あることは、全國農民の一致せる要望であります、隨て各委員より此の點は特に強調せられた所でありまするが、政府の答辯は、主要食糧の價格は國民經濟を左右する極めて重要の問題であり、他物價との均衡を考慮し、價格改訂を行ふ必要あることは當然で、此の線に沿つて目下經濟安定本部に於て愼重に檢討を加へて居るが、極力急いで居るので、近々の機會に於て決定し、發表の運びに致したい、斯う云ふ答辯がありました、尚ほ現在の食糧事情に鑑み、特に本年瑞境期に於ける出荷を確保する爲め、米に付ては早場米奬勵金、甘藷に付ては早掘奬勵金を相當思ひ切つて出したいとの意向を明かに致しました、更に生産意欲昂揚の問題に付て、農家の保有米を確保することの必要でありますことは申すまでもない所でありまするが、此の點に付ても政府より、新しい供出制度に於て十分考慮したいと云ふ旨の答辯がありました、同時に一般消費者に對しましても、新米穀年度より現在の配給基準量を是非とも増加致したいと考へて居る、即ち仕事を止めて闇買に焦るやうなことをさせたくない、闇買をしなくても濟むやうなことに配給をしたい、斯う云ふ御答辯がありました、其の具體的數量に付ては未だ發表する運びに至つて居ないが、關係方面とも目下緊密な連繋を執りつつありますので、一日も速かに且つ出來得るだけ多く増配する旨を表明致したのであります、是は未曾有の食糧危機に苦しみ、「マッカーサー」元帥の御理解ある御援助に依つて辛うじて飢餓を免れて居りまする我が國民に取りましては、何よりも朗かな「ニュース」であります(拍手)食糧の増配が日本再建の不可缺な條件であることを思ひます時に、政府に更に一段の努力を致し、速かに増配を斷行し、民心の安定を圖り、生産再開の基盤を確立するやう最善の努力を拂はれんことを、特に希望して已まないものであります
次に強權發動形式に付てであります、即ち強權措置其のものに付ても色色論議があつたのでありまするが、現在の如き食糧事情の下に於て供出制度を存續せしめて行く以上は、好ましいことではありませぬが、強權措置を承認せざるを得ないとの意見が委員の多數の意見でありました、其の發動形式に付ては、從來の如き官僚的な手段に依らず、供出制度の中樞的役割を擔ふこととなつた市町村食糧調整委員會、又は都道府縣食糧委員會の申請に依つてのみ發動することが最も妥當であります、政府も此の趣旨を明かに致し、食糧緊急措置令施行規則を改正し、其の第一條の二として此の旨を明記することと致したのであります、次いで強權發動の一方的に農家を責むるに急にして、肥料、農機具等に於て同樣の措置を講じないことは甚だしく片手落ではないかとの質疑に對し、政府は化學肥料に付ては、其の配給部面は、生産工場に於て生産したものは日本肥料をして一手に買取らせ、農業會を通じて配給せしめて居るから、買取專賣にも近い強度の管理形態を執つて居るが、生産部面に付ては尚ほ不十分な點があるので、是が措置に付ては目下準備中であり、又農機具に付ては、既に農機具工場に對する出荷命令を出し得る措置を講じたとの答辯がありました
而して委員會に於ける質疑應答は去る十九日を以て終了致し、二十一日討論に入り、自由黨を代表して坂本君、進歩黨を代表して馬越君、社會黨を代表して細野君、協同民主黨を代表して的場君、新政會を代表して井出君、無所屬倶樂部を代表して山脇君より、それぞれ希望條件を附した贊成の意見がありました、共産黨の高倉輝君竝に北君より反對意見が開陳され、採決の結果、委員會は多數を以て本食糧緊急措置令は承認すべきものと決定致したのであります、此の段御報告申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=6
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007・山崎猛
○議長(山崎猛君) 討論の通告があります、之を許します──北政清君
〔北政清君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=7
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008・北政清
○北政清君 私は食糧緊急措置令を承認すべからずとするものであります、其の理由は、本令は全國民に食糧を圓滑に配給する上に甚だしき障碍となり、且又農民の生産意欲を甚だしく減退せしむる重大なる結果を齎すもので、實に百害あつて一利なしと確信する故であります、食糧管理を行ふ上に於て、生産者が正しい「ルート」に出荷する意思こそ最も大切である、又喜んで生産に從事するのでなければならぬのであります、然るに非常な壓迫感と極端な壓政の下に農民に出荷を強要せんとしても、果して圓滑な出荷を期待することが出來得るか、必ず逆效果となつて現はれることは火る睹るよりも明かであります、而も尚ほ之をなし得ると考へて居ることは、甚だしき官僚思想、極端な封建思想であると斷じて憚らぬのであります(拍手)徳川三百年の封建時代でも斯樣な暴政はなかつたのであります、元來此の法令は農民だけを對象とするもので、他面農民の生産上、生活上の必需品には斯樣な法令はなく、資本家、營利業者のなすが儘に放任されてあるのであります、農民の一日十數時間、而も灼け付くあの炎天の中に、眞に血と汗の結晶、一年の苛酷な勞働の成果を、官僚の勝手氣儘に名付ける價格、二束三文の價格で強奪せんとする甚だ憎むべき法令であつて、正に農民を奴隸視する實際の證據であります、豫算委員會に於て大藏大臣は、昨年の米價算定の基礎は反當り六俵、即ち二石四斗の計算であつた、所が實收は一石四斗で、間違ひであつたと率直に答へて居られるに拘らず、農林大臣は此の生産費の大なる誤りを度外視し、國民の五百圓生活の爲には現在の三百圓の價格が當然である、即ち五百圓生活の爲に生産者たる農民を犧牲にして顧みないことを明言して居るのであります、此の事實に徴しましても、農民に對する差別待遇でないと言い得ませうか、農民を低級者扱ひにしまして、鬼面人を驚かすことを目的とした惡法であります、口を開けば横流しをする惡徳農家と言ふ、其の主導因は何れにありますか、第一に政府は、食糧が生活を超えた生存の重大問題でありまするのに、國民に安心感を與へて居らない所に根源があるのであります、是が買出部隊となり、闇商人となる、通常農民が闇値で賣り歩く者はないのであります、是等の買出人が價格を糶上げて横流しをさせることが主因であります、農民は受動的であります、其の主動力の者が罰せられず、受動的の者のみが罰せられる法令は、是れ以外にないと思ふのであります(拍手)農民を奴隸視した極端なる差別待遇は斷じて許されませぬ、又三千萬農民は斷じて承服せないのでありませう、是でも尚ほ食糧の配給が圓滑にやれると思うて居られるのであらうかどうか、而も本法令は施行令を作つて、法の執行者である行政機關自らが之を執行し得ざるものとしてまでも、尚且つ之を存續せしめんとする官僚精神、此の惡どき思想こそ、農政を根本的に誤り、農村を衰亡せしめ、食糧生産を減じ、國民生活を不安に陷れ、産業再建を困難ならしめて居ると信ずるのであります、今囘新憲法を議決せられるに當りまして、基本人權を尊重すると言はれ、「專制と隸從、壓迫と偏狹を地上から永遠に除去しよう」とある字句は、決して農民は別物だと言はれて居ないのであります、「マッカーサー」司令部は昨年十二月九日農民解放を指令せられ、一、民主主義化促進上經濟的障碍を排除し、人權の尊重を完からしめ、且つ數世紀に亙る封建的壓制の下、日本農民を奴隸化して來た經濟的桎梏を打破するが爲め、日本帝國政府は其の耕作農民に對し、其の勤勞の成果を享受する爲め、現状より以上の均等の機會を保障すべきことを指令されて居ります、それにも拘らず此の原理原則に甚だしく背反するものではないでせうか、又同時に二のE項に於きまして、農民の利害を無視せる農民乃至農村團體に對する政府の權力的統制の項に於きまして、農民の利害と懸け離れたる統制團體に依り一方的に割當られたる供出割當は、往々にして農民を飯米農乃至非協力的農家に追込んで居ると、洵に能く見拔いて指摘して居られるのであります、日本の官僚や農村の實情を知らざる人々が、農民の眞意を把握せず、今尚ほ一片の法令で脅かし、出荷せしめ得ると考へて居る證據は此の法令であります、司令部の指令の精神に全く逆行するもので、且又政府の權力統制の弊害を懇切に指示して居られるに拘らず、此の法令を實施せんとするは、三千萬農民を無視する非民主的行動と斷じて言はなければならぬのであります、斯くては順調なる出荷は望めず、再び配給の圓滑を缺くに至るのでありませう、今年は豐作型の天候で、米のみでも五千七百萬石以上の實收が豫想せられ、麥類其の他の穀物を合すれば八千萬石の生産はあるでありませう、斯くては七千五百萬の人口としまして、普通勞働者に於て新米穀年度より三合配給は穀物のみで出來なければなりませぬ、斯くすれば甘藷、馬鈴薯は大量に副食に廻るのであります、然るに此の法令を存續して出荷の圓滑を缺きますならば、消費者の迷惑此の上もないでありませう、農林大臣は本委員會に於ても豫算委員會に於ても、食糧の自給自足に自信がなく、唯自給度を高める程度位で國民を不安に陷れて居るのであります、肥料のない本年に於てすら前述の生産があります、今少し努力致しますならば、完全に食糧の自給自足は出來るのであります、而も外國との通商が再開せられた時の「ダンピング」を恐れ、食糧自給自足に本腰を入れて居りませぬ、斯くて農民には強壓の法令を課する、是では食糧増産は望み得ず、國民生活を益益不安に陷れる結果を憂へるが故であります、一九二〇年、二一年「ソ」聯が穀物專賣制を實行し、袋商人の横行となり、遂には赤衞軍までも繰出し、政府の買上に應ぜざる農民は革命裁判に付し、十年以上の懲役を科し、其の村落團體より永久に追放するの嚴罰主義を採用致しましたが、全然失敗に終り、「レーニン」及び「カウツキー」政策の大變革を行つた事實に徴しましても、嚴罰主義では成功するものではありませぬ、政府が若し眞に農民の實情を把握して、食糧問題の眞劍なる解決に當られるならば、こんな法令はなくても宜しいのであります、然るに昨年十二月までに配給すべき硫安を、三萬「トン」も一月になつてから配給し、二月になつて一躍二十六倍に値上をして、而も此の三萬「トン」の肥料をさへ遡つて農民に金を拂はした、資本家の利益を圖る爲には汲々として農民に斯くの如き莫大な損害を掛けて居るのであります、自給肥料の奬勵費五千萬圓に致しましても、之を支拂はず、報奨物資に於きましても同樣、斯くの如き欺瞞政策では農民は非協力的にならざるを得ないのであります、お互ひに信じ合ひ、眞實で融け合つて行けば、こんな法令は要りませぬ、圓滑な出荷が出來るのであります、
次いで價格の問題でありますが、曩にも述べましたやうに、農民のみに犧牲を強ひ、強權を發動しても何の役にも立たぬ、既に大藏大臣が間違ひであると言つて居るのに、間違ひの儘農民から取つて居るのではありませぬか、新憲法改正案の二十七條には、「財産權は、これを侵してはならない。」「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と議決せられましたが、農民の勤勞の成果である農産物は、是で果して正當な補償でありませうか、一般物價はどうでありませうか、どれだけの差がありませうか、他の勞働賃金と比例して居るでありませうか
〔議長退席、副議長著席〕
現に政府が提出して居る豫算に於きましても、女給仕で一日十圓以上の勞賃になるでありませう、現在の米價の基準は、農民の勞銀一日十圓と見て居るのであります、而も收獲高が一石四斗のものを二石六斗の計算にして居るのであります、農民一日の勤勞は時間的にも、力の量に於ても、併せて女給仕の十倍以上はたつぷりあると思ふのであります、單に勞賃のみから見ましても、米價を十倍にしても比例は取れる、農民はそれまでも要求せないでありませう、勞働者が其の待遇改善──怠業も罷業も是認されて居るのに、農民だけは、勤勞の成果である農産物價格に對して、即ち勞賃に對しまして官僚が勝手に定めて、私有財産の制を認められない、出荷に對する罷業も怠業も嚴罰に處せられんとして居る、こんな惡法はないでありませう、搾取と窮乏とを云々と憲法に入れろと言はれた方々もあつた位であります、世間に斯くの如き極端な搾取が何處にあるでありませうか、又大藏大臣は豫算委員會に於て、物價水準は闇値と公定價格との中間を理想にして居ると言つて居られるのである、然らば米價の水準點は驚く程高いものでないでせうか、兎に角一般物價と均衡が取れるやうにすれば斯くの如き惡法はなくても濟むのであります、現在のやうな安値で農民の勞賃を無視し、此の惡法で脅かさんとするが如きは大きな誤りである、是では決して圓滑な出荷は望み得ないのであります、最近聞く所に依れば大幅引上と言はれる、六百圓とか聞きます、一俵でなくて一石だとのことであります、是では如何にお百姓樣と口先だけで煽てて居つても、現物は政府の手に入りませぬ、又々列車はあのやうに壊れるでありませう、買出部隊、闇商人の活躍となるではなからうか、斯くては富める者は食ふことが出來ますが、然らざる者は缺配とならないでせうか、日本産業の再建が遲れるばかりです、米は安値で生産物は強制される、百二十億の消費者への補償は農民が又々負擔させられるのであります、踏んだり蹴つたりとは此のことであります
最後に農民の必需物資が一にも米、二にも米、食糧との交換でなければ手に入らぬ、金では買へぬ、此の組織を何故改められないか、農民が横流しを必要としないやうに何故出來ないのであるか、糸一把でも、釘百匁でも、毎日絶對必要な石油でも、農具でも、營利業者などに取扱はして居るからであります、是が爲に食糧は政府の手に入らぬ、此の原因を除くことをせず、強權の發動を以て強壓されても、淳良な農家でさへ已むに已まれず横流しをしなければならぬやうな結果になるのであります、要は少數營利業者を助けんが爲に、生産者の總てを苦しめ、消費大衆を苦しめ拔いて居るのであります、農民自身の組織する團體に何故一元配給をやらないのか、横流れの大半を救ふことが出來るのであります
要するに政府は農民の實際生活上に於ける眞の切實な要求と期待とを取上げず、之を悉く退けて、而も農民の最も厭な所の政策を行ひ、剩へ惡法を出しつつ食糧の増産を望むことは、拙の拙なるものと致しまして斷呼反對するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=8
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009・山崎猛
○議長(山崎猛君) 坂本實君
〔坂本實君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=9
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010・坂本實
○坂本實君 私は日本自由黨を代表致しまして若干の意見を申述べて贊成討論に代へたいと存じます
緊迫せる食糧問題の解決が、現下凡ゆる經濟政策の基盤をなし、且つ之に先行すべき緊急問題であることは今更論を俟たざる所でありまして、萬般の施策は此の一點に集中され、而も其の遂行に當つては、戰時中に見たるが如き獨善的な官治統制を廢し、飽くまで自主的且つ民主的な方法に依つて行はなければならないのであります、況んや濫りに強權發動をするが如きは、却て生産意欲を阻碍する虞あり、其の實際的效果を擧げることは至難であると存ずるのであります、其の運用宜しきを得ざる時は、寧ろ有害無益であると申上げても過言でないと信ずるのであります、只今議題となつて居ります食糧緊急措置令の内容は、強制收用處分に關する事項、生鮮食料品の統制に關する事項、所謂幽靈人口の處罰に關する事項竝に煽動防止に關する事項を主要なる内容とするものでありますが、先般來本委員會に於て各委員諸氏より御指摘に相成りました諸點には、相當強硬なる御異論があつたのであります
〔副議長退席、議長著席〕
政府の施策それ自體が兎角徹底を缺くの憾みがあり、周到なる用意と細心の注意が拂はれて居らなければならない筈であるのに、政府自ら進んで打つべき手を打たず、國民をして己の非を悟らしめ、納得せしめ得る改正の整備不十分である點は、正しく片手落な政治であり、大凡非民主的なる惡法であると非難される所以でありまして、政府の猛省を要望する所切なるものがあります、元來政府が食糧供出不振の根本的の原因を除き、適當なる施策を樹立することなく、徒らに一切の責任を農村に轉嫁せんとするが如き態度は、官僚的色彩が最も濃厚なることを如實に示したものとして忌憚されて居るのであります、生産統計を的確に掴み得ない爲に、不公平な割當が其の儘行はれて居ることや、農村に於ける食糧引出しの經濟的裏付けとなる肥料、農機具、生活必需物資等の供給が依然として不圓滑なること、供出主要食糧の價格が、一般物價との均衡に於て全く取れて居ないこと等であります、實に供出制度や統制制度が始つて以來、唯の一度でも肥料が適當な時期に必要量だけ配給された例しがありませぬ、是は假令十分でないとしても、少くとも辛抱出來る程度は之を間に合はすやうにし、而も適正なる價格で配給されなければならず、又供出割當も適切な時期に行はなければならないのであります、其の買取價格も無理のないものでなければなりませぬ、然るに是等は一向にさうされて居ないのでございます、是等は政府が國民の信頼を繋ぎ得ない大きな原因であり、政府は速かに…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=10
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011・山崎猛
○議長(山崎猛君) 坂本君、御發言中でありますが、一寸其の儘御待ち下さい
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=11
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012・山崎猛
○議長(山崎猛君) 此の際一言致します、今般來朝せられました米國下院議員團の一行が、只今傍聽席に見えられました、茲に一行の方々を御紹介致します
ペンシルバニア州選出民主黨議員
シェリダン君
〔拍 手〕
フロリダ州選出民主黨議員 サイクス君
〔拍 手〕
ミゾリー州選出共和黨議員 ショート君
〔拍 手〕
アイオワ州選出共和黨議員 マーチン君
〔拍 手〕
カリフォルニヤ州選出共和黨議員
ジョンソン君
〔拍 手〕
オハイオ州選出民主黨議員 フェイカン君
〔拍 手〕
私は諸君と共に御一行に心から歡迎の意を表しますと共に、無事其の使命を達せられんことを祈るものであります
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=12
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013・山崎猛
○議長(山崎猛君) 坂本君、發言を御續け下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=13
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014・坂本實
○坂本實君(續) 以上申上げました通り是等は政府が國民の信頼を繋ぎ得ない大きい原因であり、政府は速かに是等の不合理を是正し、誠意と熱情を傾けて萬般の措置を講ぜられんことを切望して已まないものであります、然るに飜つて我が國の食糧事情に思ひを致しまする時、我々が今直面致して居りまする食糧危機突破の大事を冷靜に考へます場合に、官民が協力して最善を盡した跡が見えませぬ、現に聯合軍側の絶大なる援助を蒙ることに依つて辛うじて其の難關の打開が出來、日本人の多くは今聯合軍の好意の食糧に依つて其の生を全うして居るのであります、全國民は少くとも此のことに關して感謝の念を持たない者は一人もありますまい(拍手)此の際我々は靜かに反省する必要があり、官民相倚り、相扶けて、眞劍に自力の限りを盡すことに依つて、初めて感謝感恩の赤誠が披瀝され得るのであります、此の意味に於て、政府も國民も眞に協力一致最善を盡してこそ、初めて誠意が通ずるのであります、敗れたりとは言へ、我々の眞に深く猛省しなければならない所であると存じます
斯かる觀點から一歩退いて考へまする時、假令民主的に納得供出が行はれた場合でも、供出制度の存續する限り、一町村内に於て、又は一部落内に於て、眞面目な農民や消費者の目から見て、農民的な責務を果して居ない農家の存在を豫測し得るのであつて、是等惡徳農家に對しては、法に根據を持つ最後的制裁の必要は必ずしも無用と斷ずるのは不用であり、是非善惡を糺明し、供米の實效を擧げることが第一義だと存ずるのであります、斯かる見地よりして、曩に我が黨に於きましては、愼重に檢討の結果、本案に對する我が黨の態度を決定する一つの成案を得たのであります、此の場合、供出制度實施上眞に已むを得ざるものと考へ、次の如き附帶條件を附して本案に承認を與へんと致して居るのであります、今御參考までに朗讀致します
世界列國の食糧事情特に我が國の緊迫せる食糧危機に鑑み食糧緊急措置令を萬已むを得ざる處置と認むるも左記必須條件を併行するに非ざれば農民をして苛酷虐政の歎を發せしめ生産意欲を阻害する恐れあるにより、政府當局の猛省を促し、之が即時實行を要求すると共に供出方法の徹底的民主化を講ずる事を條件とし、本案を承認するもの也
記
一、市町村食糧調整委員會又は都道府縣食糧委員會が申請したる場合の外強權を發動せざる事
二、自家保有公定量は生産者に確保せしむる事
三、米麥等主要食糧品の價額を諸物價と均衡を保し得る樣八月中に改訂する事
四、農村主要必需物資は政府に於て責任を以て其の生産、配給を確保する事
而して我が黨は此の方針に從つて鋭意政府を督勵し、政府も亦同感の意を表せられ、是が實現を約せられ、我が黨提案になる附帶條件の第一點は、直ちに本令施行規則の一部を改正して之を法文化する御意思のあることを明確にされたのであります、即ち政府の改正案は、食糧緊急措置令施行規則中の一部に次のやうに挿入せんとするものであります、即ち「第一條の二、令第一條の規定に依る主要食糧の收用は市區町村食糧調整委員會又は都道府縣食糧委員會が其の議決に依り申請を爲したる場合に之を行ふものとす」、而も同時に市町村食糧調整委員會の構成に付きましては、飽くまで耕作者を中心として民主的組織とすべき旨既に地方長官に通達濟であり、何れ法令上にも明文化さるる御意思のあることも承つて居るのでありまして、何れも洵に我が意を強うするものと存ずるのであります、更に又第二點、第三點、第四點の三項目に付きましては、既に和田農相より具體的な解決の確乎たる信念を披瀝せられ、是が實施を誓約致されましたので、政府の御所存は一應了承することが出來たのであります
唯此の場合特に農民の最も關心を持つて居る重大なる問題に付て一言附加へて置きたいと思ふのであります、それは米價の決定方針に付てであります、米價の改訂に付きましては、目下經濟安定本部に於て研究中であり、八月中には決定されるやう鋭意促進されて居るとのことでございますが、之に對しましては、政府側の御見解と我々の見解と、相當大幅の食違ひがあると云ふことを念の爲に申上げて置きたいのであります、政府は飽くまで農家の實生活に觸れ、農業經營の苦心を十分に酌取られ、出來得る限り他の諸物價との均衡を保ち得るやう、深き理解と温かき同情を持つて、尚ほ此の上とも公正を期せられんことを切望して已みませぬ、例へば算定の基礎となる農民勞銀の過小評價や、肥料、農機具其の他生活必需物資の入手は、必ずしも正式の「ルート」のみに依存すべからざる實情にありますので、是等の實情に應じ、其の製作、配給の問題をも併せ考慮せられんことを望みます、更に又政府の聲明は往々にして空念佛であり、一向に其の實伴はず、國民の苦心は其の頂點に達して居ります、計算されたる配給物資は、必ず時と所の按配を得て確實に實行せられたく、報奬物資の如きも必ず不渡りにならないやう、信賞必罰の實を擧げ、嚴格に實踐履行せられんことを望むものであります
以上要するに政府は其の政策の遂行に忠實であり、改正案は即時實行せられんことを前提と致しまして、本法案運營其のものの適否が此の法案の效果を擧ぐるに重大なる關係があるのでありまして、本案成立後に於ける政府は、特に此の點に深甚なる注意を拂はれて、萬遺憾なきを期せられんことを重ねて此の機會に要望致しまして、委員長報告通り原案に承認を與ふべきものと議決することに贊成の意を表するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=14
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015・山崎猛
○議長(山崎猛君) 高倉輝君
〔高倉輝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=15
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016・高倉輝
○高倉輝君 日本共産黨を代表致しまして、食糧緊急措置令に對して反對意見を申述べます
凡そ此の法令程無慈悲な、血も涙もない法令は恐らく曾つて現はれたことがないでありませう、農民が自分で作つた自分の食糧をも、不當な割當の上に立つて、天皇の名に依る強權に依つて、無理やりに取上げられたのが此の法案であります、今度の議會で此の法令と勞調法とが最も大きな問題を起して揉みに揉んだのは、取りも直さず此の二つの法律が勞働者、農民だけに對する大きな彈壓法であり、惡法であつた何よりの證據であります(拍手)固より故意に供出を怠つて横流しをして居る惡農も確かにあります、併しそれ等一部の惡農の名に於きまして、大多數の正直な農民までが大きな彈壓を受けなければならぬと云ふ所に、此の法律の惡法たる所以があるのであります、抑抑供出の成績が良くない原因は樣々ありますが、凡そ是までの農村に於きましては、供出割當に對する不平不滿と云ふことが、供出の成績の上らない根本の理由でございます、是までの農村に於きましては、何處も同樣でありますが、大體村に於ける地主と金持、是等少數の所謂有力者と言はれる階級がありまして、村役場も、農業會も、村會も、是等少數の特權を持つた人達の手に握られて居りまして、意の儘に操られて居つたのが事實であります、隨ひまして働く農民の大多數は、村の政治には殆ど參與することが出來ませぬ、隨て供出の割當も、是等特權を持つた一部の人達に依つて自由自在に決められ、殊に是までは祕密の裡に決められて居りまして、地主や富農には極めて輕く、貧農には非常に重く、極端に不公平な割當が行はれて居つたのであります、是が供出の成績の上らない根本の理由であります、而も政府は此の不公正の大部分を其の儘に殘して置いて、強權を發動し、又發動しようとして居ります、其の結果は正直な農民の多くを餓死に追込み、政府に深い恨みを抱かせ、生産の意欲を極度に減退させつつあります、其の一つの實例を申上げますと、五月三日の新聞に現はれたことでありますから御承知の方が多いと思ひますが、不當な割當の上に立つた所の強權に威かされて、無理やりに供出した爲に、四十に餘る所の夫婦が餓死致しまして、四人の子供を殘し、其の子供は貧しい親戚の下に引取られたと云ふ事實が現にあるのであります、是は極端な實例でありますけれども、之に近い實例は各地にあるのであります、是は取も直さず不當な割當と強權の發動と云ふ惡法に依つて人を殺した譯であります
〔議長退席、副議長著席〕
又此の割當に對する不平不滿と強權に對する反感から、農業會の倉庫を襲撃した實例も各地に起つて居ります、今度は食糧調整委員會の申告を俟つて強權を發動することに改めて居りますけれども、今のやうに農村の一部特權階級の支配を其の儘に殘して置きましたのでは、調整委員會はやはり少數の有力者に操られまして、是までと少しも變る所がないのは分り切つて居ります、唯其の結果は此の法案に贊成する者に、贊成する一つの口實を與へるに過ぎませぬでせう、でありますからどのやうな條件を附けませうとも、強權發動を認めます以上は、今までの官僚的な農政を認め、又農村にあります所の非民主的な要素を認める結果にならざるを得ないのであります、供出の問題は、農村を眞に民主化することに依つてのみ初めて之を完全に解決することが出來ます、即ち働く農民の民主的な組織、詰り農民組合又は農民委員會でありますが、是等の民主的な組織に依つて割當を民主的に決定すれば、強權を發動する必要は少しもないのであります、惡農や惰農も、斯う云ふ方法に依りますと根本的に取拂ふことが出來ます
實例を此處で申上げませう、丁度四、五日前に私の所に入りました「ニュース」でありますから、恐らく農林省の方でも最早手に入つておいでのことと思ひます、私共が指導して居ります一つの村に於ける出來事でありますが、今度麥の供出に付きまして、どの村よりも早く九八%の供出を致しました、所が御承知の通り今度換算率が變つたと云ふ知らせが農林省からございましたので、是は一〇〇%の完納を終つた以上の供出になつた譯であります、そこで部落民の懇談會を開きまして、此の餘つた所の供出の食糧を如何に取扱ふかと云ふこと相談をし、又未供出になつて居ります所の二%の食糧を如何に取扱ふかと云ふことに付て懇談を致しました所が、割戻しすべき筈の食糧は之を割戻さないで、共同保管をして置く、後に廻す、それから未供出の分は未供出者が之を供出して、是も一緒に共同保管をして後に廻すと云ふことになつたのであります、此の村に於きましては、働く農民の食糧の配給は二合七勺であります、それで非農民に對しても二合七勺の配給をしようと云ふので、特別供出を農民が致しまして、其の實現の方向に向けて居ります、此の事實を能く考へて戴きたい、隨ひまして此の際餘つた所の食糧を後まで殘しますことは、非農家の食糧として其の基礎をなすものであります、此のやうな村に強權の發動の必要が何處にあるのでありますか、斯くの如き民主的な組織の下に、民主的な方法に依つて供出の割當をし、供出の方法を執りますならば、是まで未だ曾て完納しなかつたことは昨年までないのであります、詰り今日のやうに供出が出來ない原因は、斯くの如き農村に於ける非民主的な現象から來て居るのであつて、農村に於ける眞に働く農民を基礎とした民主的な組織の上に、民主的な方法でやらないからであります、そこで強權發動が必要になつて來るのであります、例へば強權を發動しなければ供出が出來ない、供出の爲には強權發動が必要だと樣々な條件を付けて仰しやいますけれども、現在東京地方を中心としまして、日本各地の大都市にあの長い間に亙ります所の遲配缺配が續いて居ります、併し遲配缺配があれ程長く續いて居るにも拘らず、兎も角皆生きて居ります、是は申すまでもなく總て政府が正式の「ルート」に乘せ得ない所の食糧、詰り闇に依る食糧で生きて居るのであります、詰り強權を發動したにも拘らず、數百萬の人間がこんなに長い間生きて行かれるだけの多額の食糧を、政府は正式の「ルート」に乘せ得なかつたのであります、何より雄辯に、供出を完遂する爲に此の慘酷な法令が少しも役に立たなかつたと云ふことを物語つて居るではありませぬか、供出を完遂させるには、働く農民の民主的な組織を本とする民主的な方法に依る以外に絶對に途がないのであります、所が政府は農村に於ける反動的な一部特權階級の支配を其の儘にして置いて、此の反動勢力と官僚との握手の上に、是までの農政を少しも改めようとせず、名前だけ農村民主化と云ふことを言ひますが、事實は民主的でない所の供出方法に依つて供出させようとするものでありますから、不公正と腐敗とは一層農村に深く殘りまして、隨て供出の成績が斯くの如く好くないと云ふ結果を生んで居るのであります、隨て最後に強權を發動せざるを得ないと云ふ土壇場まで來た譯であります、畢竟するに此の食糧緊急措置令の如き惡法を實行せざるを得なくなつたのは、政府が眞に農村の民主化を實行する意思を持たざる官僚政治の本質から來たものでありまして、政府が食糧問題を解決する力を持つて居ない何よりの證據を示すものであります、眞に民主化された所の農村には、斯くの如き惡法は絶對に必要でないのであります、現に私共はそれを各地の農村の内に於て實行し、農村に新しい秩序を作り、新しい治安を生み出して居るのであります、和田農林大臣は此の保守的な政府の中で、進歩的な大臣だと云ふことを言つて居る人があります、其の和田農林大臣の責任に於きまして、斯くの如き反動的な彈壓法令が施行されるに至りましたことは、私共には非常な不思議なことであり、又實に遺憾なことであります、さう云ふ意味で此の法令に根本的に反對せざるを得ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=16
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017・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 細野三千雄君
〔細野三千雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=17
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018・細野三千雄
○細野三千雄君 私は日本社會黨を代表致しまして、我が黨の本勅令に對する態度を簡單に申上げ、委員長報告に贊成の意思を表明するものであります(拍手)
本勅令の内容に付きましては、先刻坂本議員から御説明がありましたから是は全部省略致します、初め本勅令に對しまして私共が簡單に之を承認し得なかつたのは、本勅令の中の第一條のみであります、而も本勅令は之を承諾するかしないか、二者其の一を擇ばなければならず、修正と云ふ餘地がありませぬので、本勅令の審議に非常な長い時日を要した次第であります、此の勅令の先づ制定當時の事情に遡つて見まするならば、確かに本年の一月の末から二月の初めに掛けまして、國内の供出状況は、成績が非常に不振であつたこと、一昨年の八割六分、昨年の六割九分八厘に對しまして、今年四割一分餘と云ふ面白からぬ數字を示したことは事實であります、併し斯樣な供出の不成績の原因を調べて見まするならば、委員會に於きまして各委員から指摘されました數々の原因、之を速記録に付て調べて見ますると、大きな原因が大凡七つ、小さな原因が大凡十一を數へることが出來るのであります、此の中には或は昨年の凶作であるとか、或は終戰に伴ふ農民の意氣沮喪と云つたやうな、人力を以て如何ともすべからざる原因もあるのでありまするが、其の餘の大部分の原因と云ふものは、詰り政策の貧困と云ふことに歸著するのであります、此の政策の貧困に依る供出の成績の不振と云ふことは、是は政策を以て取返すものでなければならぬ筈である、然るに當時の政府はどう云ふことをやられましたかと言ひますならば、一方に於きまして本勅令を制定し、當時議會がまだなかつたと云ふことを何か勿怪の幸ひにした形跡さへあるのであります、さうして本勅令、是は申さば農民に對する供出に取つての最後の手段であります、斯樣な最後の手段の強權發動を制定し、一方に於きまして、當時の澁澤大藏大臣は大阪へ行かれる汽車の中で、新聞記者に對し、日本には今年の四月一千萬の餓死者が出るであらうと云ふことを放言せられて居るのである、是は持つて居る米を成べく供出するなと言はんばかりの態度を一方に於て執られたのであります、食糧の供出の問題は、是は決して一農林省の問題ではない、内閣全體が心を一にして、打つて一丸となつて初めて目的を達し得るのであります、私は其の當時の斯樣な政府の態度に對しまして、甚だ遺憾とするものでありまするが、併し此の點に付きましては今多くを申上げませぬ、唯本勅令は其の目的とする所が、勿論言ふまでもなく此の乏しい食糧を公平に國民が分ち合ふと云ふ所にあるのでなくてはなりませぬ、然るに現在までの供出制度の結果と云ふものは、一方に於ては殆ど農民の米櫃の底まで浚はせて供出をさせ、私の知つて居ります農民、それは數字は覺えて居りませぬが、所謂五反百姓でありまして、收穫も少い、假に二十五俵の收穫があるとしますると、其の中の十俵を出して、殘り十五俵が手持である、其の場合に其の農家に一人病人が出ますと直ちに醫者に掛らなければなりませぬが、お醫者さんは御存じでありませうけれども、金より米を、治療代として或は診察代として請求するのであります、若し其の病人が不幸に致しまして死亡する、葬式を出すとなりますと、直ちに手持の米に不足を生じまして、勢ひ供出米の方に食込まなければならぬ、偶偶其の農民が十俵出さなければならぬ所を八俵しか供出しなかつた、あと二俵の米に對しまして強權が發動せられたやうな事例があるのであります、さうなつて參りますと、強權發動は米櫃の底の底まで洗ひ浚つて行くのであります、私共が借金をします場合に、執達吏から強制執行を受ける、此の場合は御存じの通り三箇月分の食糧と、農家でありますれば次の生産をなすに必要な種子、是だけは差押へから控除せられる、又税金を滯納致しましても、一箇月分の食糧だけは控除せられるのでありますが、本強權發動に依りましては、斯樣な除外はないのであります、
〔副議長退席、議長著席〕
然るに一方之に反しまして、同じ農民でも所謂富農、是が若し反別を標準にして供出の量が決められまする場合には、非常に大百姓でありますと、手持の米として保有を許される量が非常に多いことになる、斯う云ふ農民は供出を完全に致しまして、而も尚ほ手持に餘裕を生ずることがある、都市附近に居住して居る方から屡屡聞くことでありまするが、都民の方が近接農村においでになつて、物を持つて行けば、米を持つて居る農民があると云ふことを言はれる、恐らくそれは嘘を言つて居られるのではないと思ふ、而もさう云ふ人達に對して、多くの場合、それは供出を完遂して居られると云ふ故を以て、本法を以てしては其の手持の米に對して指一本差すことが出來ないのであります、一方に於ては明日の米さへも奪はるる農民があるのに、一方に於ては尚ほ手持の餘裕米があると云ふ此の不合理、斯樣な不合理な制度が現在までの供出制度なのであります、併しながら私共は、彼の前々内閣當時の千石さんの所謂納得づくの供出、或は前内閣の初期の松村さんの同胞愛に依る供出と云ふものが、苟くも供出制度を認めます限り、結局に於きましては斯樣な同胞愛なり、納得づくなりの供出と云ふものが、其の目的を完全に達し得ない、どうしましても凡ゆる手を打つて、尚ほ國策に協力しない農民に對しまして、甚だ好ましくはありませぬけれども、最後に強權制度と云ふものの已むを得ないことを認めるのであります、然らざれば結局是は正直な農民が馬鹿を見ると云ふ結果になるからであります(拍手)併しながら前に述べましたやうな不合理と云ふものは、現供出制度の何處に其の缺陷があるのであるかと言ひますならば、是は言ふまでもなく現在の供出制度が、所謂官僚的な、天降り的な制度であるからであります、委員會に於ける或る委員の方の言葉を藉りて言へば、所謂押付け割當であるからであります、「マッカーサー」の指摘した所の言葉を藉りますならば、所謂一方的な割當であるからであります、而も現在の供出と云ふものは、土地の生産力に對する實體と云ふものが能く分つて居ない、實體の把握なくして行はれて居る供出、斯う云ふ所にも現在の供出の不合理があるのであります、言ふまでもなく此の供出制度は普通の賣買と違ひまして、普通の賣買ならば、賣る方の人が價格を決定する、又賣るべき品物の分量も、賣手の自由に決定することが出來るのであります、然るに此の米の供出は、買ふ所の米の分量は政府が決定する、買ふ値段も政府が決定するのであります、此のことは、例へばよく地主さんに對する強權發動と云ふ俗な言葉で言はれて居りますが、昨年の暮農地調整法が改正になりまして、地主さんの土地は、平均五町歩の保有面積以外は、自作農創設の爲に買上げられることになりました、此の事實を稱して、地主に對する強權發動と言はれて居ります、併し此の場合地主さんは、先づ一應五町歩だけの土地は自分の手に保有することが許されて居る、而も政府の買ひます値段に對して不服がありますれば、或は訴願なり、或は行政訴訟なり、其の他の救濟方法が許されて居ります、然るに此の農民に對する供出に對しましては、全部政府の方が分量も價格も決定し放しでありまして、農民に對し何等之に對する救濟方法がないのであります、我々は此の點に付て現在の供出制度に對し、誤つた供出割當に對する、少くとも農民自身の訂正申立の權限を認めなければならぬと考へるのであります
以上の諸點に依りまして、私共は本勅令に對し、本勅令の供出制度を次の諸點に於て改めなければならぬと考へるのであります、即ち第一に政府は此の主要食糧に關する生産力の實體を科學的に調査して、其の實情を掴まなければならぬと云ふこと、第二に此の供出すべき分量は民主的な、働く農民に依つて組織さるる所の委員會と云ふものに於て之を決定すべきこと、第三に先づ農民に再生産に必要な米麥を保有せしめること、さうして今までの、一度全部吐き出させて、さうして後から割戻すと云ふ、所謂還元配給なる制度は之を廢止すべきこと、第四番目に、間違つた割當量に對する農民の異議申立權を認めると云ふこと、第五に強權の發動は、前に述べました市町村食糧調整委員會に於て、非協力的な農民に對して委員會の認可のあつた場合にのみ行ふべきこと、斯う云ふやうな要求を持つて居るのであります、是等の點に對しまして、政府は委員會に於て、層層此の食糧調整委員會の民主化と云ふことに付て言明せられました、併し私共は單なる政府の言明に信頼して、本勅令を簡單に鵜呑みにすることは出來なかつたのであります、と言ひますのは、今まで政府の言明を直ちに簡單に信頼すべく、餘りに歴代の政府は農民に對し嘘を言つて來たからであります(拍手)又第二に法律の生命は政府の生命より長い、隨て單に政府は之を言明するに止まらず、本當に誠意があるならば、之を何等かの形に於て法文化すべきことを要求したのであります、然るに此の委員會の相當の期間の經過の間に、政府は我等の要求する所を取上げられまして、施行規則の形に於て、強權發動は市町村食糧調整委員會の申請を俟つて行ふと云ふ趣旨の案文を作つて、我々に之を示され、尚ほ其の委員會の民主的な構成、民主的な運營、機能等に付て、言明せられる所があつたのであります、此の言明に依りまして、又既に案文までも作成せられて居ると云ふことに依りまして、私は我々の要求が法文化せらるると云ふことに付ての政府の誠意を見届けたのであります(拍手)そこで我々は本勅令に對しまして、次の四つの條件を附して、承認することにしたのであります、條件を讀上げます
一、個人に對する收用は、民主的に選ばれたる市町村食糧調整委員會の議決に依らなければなすべからざること
一、農家に公定保有量を確保せしむること
一、供出數量は科學的調査に依り正確を期し、民主的に割當を決定し、異議ある者の訂正申立權を認めること
一、主要食糧買上價格は再生産に必要なる經費に依り算定すべきこと
此の四つの條件は、主として直接供出制度に關係のある條件であります、併し私共は供出と云ふことが、此の條件だけに依つて必ずしも完全に行はれるとは思つて居ないのであります、更に根本的には土地制度の改革、或は肥料の國營、或は農家必需物資の生産を、責任を以て政府が確保すること、農家必需物資の配給を適正化すること、斯う云つた諸政策が併せ行はれなければならぬと考へて居るのであります、此の諸政策は、結局農林省だけの所管事項ではありませぬ、例へば大藏省が、農民が闇をやつて居ると云ふ推定の下に課税せられると云ふが如きは、是れ確かに供出制度に對する逆作用であります、私は食糧供出と云ふものが完全に行はれます爲には、大藏省も、商工省も、總て内閣全體が打つて一丸となつて、之に協力されなければならぬと考へるのであります(拍手)
最後に私は政府に對して駄目を押して置きたいのである、政府は最後手段である所の此の勅令が承認されたからと言つて、安心してはならぬと云ふことである、飽くまでも供出は自發的な自主的な供出を本則としなければなりませぬ、殊に本年は政府に取りまして條件が段々に良くなる、強權發動、所謂傳家の寶刀は、恐らく本會議に於きまして政府に與へられるでありませう、更に本年は豐作が豫想せられて居ります、斯樣な條件が段々良くなることに依りまして、政府が供出制度の完備と云ふことに付て、聊かでも手を緩めることがあつてはならぬと、嚴重に政府に對し警告をして置くものであります、以上を以ちまして簡單に私の本勅令承認の意思の表明に代へるものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 的場金右衞門君
〔的場金右衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=19
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020・的場金右衞門
○的場金右衞門君 私は只今議題となつて居ります食糧緊急措置令に關し、協同民主黨を代表致しまして所見を申述べ、條件を附して承認を與へることに贊成せんとするものであります(拍手)
本法案は、政府に於て食糧農産物の供出不振の責任を、一方的に善良なる農業者、淳朴なる生産者だけに負はせんとするものでありまして、愛國の至情に燃える農業者としては、承服の出來ない法律でございます(拍手)供出の振はない原因は、農業者が惡いばかりではございませぬ、政府の施策其の當を得ず、そこに不備あり、缺陷あり、其の爲に生産の面に於ては生産者の生産意欲を阻碍し、豫定の收穫量を得るに至らず、供出も亦不振たらざるを得ないのでございます、横流し、闇行爲もやりたくはないのであるが、餘儀なくなさなければならないやうな事情の下に於て、之を已むなくなす者のあるのを見て、惡農と罵り、惡徳農家と斷ずる如きは、洵に心外であり、無謀と言はざるを得ぬのでございます、何が惡農にしたか、農村の實情はどうでございますか、米がなければ鎌一本も買ふことが出來ませぬ、笊を一つ買ふことも出來ませぬ、農繁期に手傳人を一人一寸雇ふにも米がないと出來ませぬ、私の郷里で子供が病氣をしたので、醫者を呼びましたら、要求される米がないので、手當をして貰へず、遂に其の子供が死んだと云ふ悲慘なる實例さへあるのでございます、米を全部供出したら、今日の生活が困るのみならず、次の生産は全く出來ない實情にあります、闇で米を横に流し、闇の肥料を買うた人の田圃は青々と良く育ち、其の隣りの、正直に全部の米を供出した爲に肥料も買へずに作つた田圃は、赤く枯葉のやうになつて居る、又闇で賣つた農家は、地下足袋や衣料品にも事を缺かないのであるが、正直な農民は、霜柱の中で地下足袋もなく、跣足で霜の中で働いて居ると云ふのが、農村の實情であります、此の全部供出した優良農家は、隣の闇肥料の田圃や、地下足袋を履いて居る農民を見て、何と考へるでございませうか、此の秋は政府の唱へる惡農とならないと誰が保證することが出來ます、惡農、惡徳農家と云ふ言葉は、今後絶對に其の使用を禁止すべきものであると私は考へます(拍手)又供出割當にしても、其の方法宜しきを得ず、唯一方的に農業者が惡いことにして、本緊急措置令に依つて強制することは承服出來ませぬけれども、本法案を審議致しまして、其の審議が進行するに伴ひまして、政府に於ても農業者の立場を十分理解され、又政府の行ふべき施策に付ても、之を斷行するの用意と決意をなされたやうでありますし、唯徒らに農業者を苦しめることのないやうに、法の運用にも十分注意するとのことでありますので、左記五點に付き我が黨の要求する事項を條件と致しまして、承諾を與へることに贊成せんとするものであります(拍手)
其の第一、農産物價格を時機を失することなく適正に是正することであります、農産物の價格は從來常に他の物價と比較して低廉でありまして、其の均衡を失し、生産費を償はない場合が多かつたのであります、故に他の物價と均衡を保ち、生産費を償ひ得る價格にして、而も其の時機を誤ることなく、是正されなければなりませぬ、全國農業會が全國の篤農家に付て調査致しました生産費は、全國平均米一石千二百五十圓となつて居ります、普通の農家であれば篤農家よりも收穫が少うございますから、千五百圓以上となることは明白であります、今日の經濟事情の下に於て、他の物價と均衡を保ち得る價格は千五百圓を下らないのであらうと私は考へます、然るに主食の價格を引上げることは惡性「インフレーション」を助長するものとして農産物價格を抑壓し、農業者の犧牲のみに依つて惡性「インフレ」を防止せんとするが如き處置は改められなければなりませぬ(拍手)國民全體の負擔と協力に依つて、惡性「インフレ」は防止すべきものであります、故に時機を失せず、即時千二百圓以上の價格に是正されることを我々は要求するものであります(拍手)之に依つて生産も増強され、供出も完全に行はれ、配給量も増加され、消費者の生活費も闇の部分がなくなるから、安上りとなり樂となつて、消費者も喜ぶでありませう
第二、供出割當の方法及び供出量を適正になすこと、割當の方法は民主的な方法に依り之を行ひ、生産農家の納得の行く程度及び方法でなければなりませぬ、今日までの供出割當は極めて官僚的であり、祕密主義であり、押付け的でございます、其の割當の基礎は、府縣に於ては政府から押付けられました空數字に等しき増産計畫を一つの基礎にしてある、もう一つは收穫豫定量でありますが、此の收穫量の調査は、農業を全く知らない地方事務所の事務員、或は生産物の檢査を行ふ檢査員などに調査をさせた爲に、收穫豫想に大なる齟齬がありましたが、此の二つの齟齬のある收穫豫想と生産計畫と云ふ空數字と、斯かる不合理なる基礎に基いて、國全體の需給關係に於て需要量に符合するやうに、物のあるなしには關係なしに、國は縣に、縣は市町村に、市町村は部落にと、順次机の上で無謀なる割當をなし、之に依つて供出の成績の良否を論じ、洵に言語道斷の状態でありました、隨て耕作面積の多い農家及び耕地面積の多い地方は、個人的にも地方的にも非常に樂でありましたが、之に反して耕作面積の狹小なる地方、澤山作つて居ない農家は、非常に無理があり、出來たお米を全部供出しても供出割當に達せず、惡農と言はれ、而も自ら生産農家でありながら配給を受け、其の配給量たるや、重勞働である農作業には耐へられない程度の配給を受けつつあります、野菜だけ食つては農作業は耐へられないと悲鳴を上げて居る農家からの通信も、多數私共の手許にございます、之を其の儘にして本法を適用することは、絶對に承認出來ないことでありますが故に、政府は割當の基礎となる收穫量の調査に於ても、篤農家或は農業技術者など、作況を一見して其の收穫豫想を正確に掴み得る者に調査をさせ、更に又農耕地の地力をも考慮して公正なる割當をなし、自家保有米をも全部供出せしめて、逆に還元配給をなすことなく、公定保有量は確保せしめ、又其の割當方法も、耕作者を以て組織する食糧農産物の供出委員會を市町村或は部落毎に組織せしめ、之に依つて生産者の納得出來る程度に公平に割當を行ふべきであります
第三、農村必需物資の増産増配及び配給の一元化をなすことであります、農業生産の必需物資竝に生活必需物資は、平常の價格を以て購入不可能な状態にありますことは皆さん御承知の通りであります、非常な驚くべき高價であるか、又は米と交換せねば入手出來ぬ状態でありますことは、前申上げた通りであります、故に正直なる農業者も、一部の米を殘して農機具其の他の代償とせざるを得ませぬ、此の正直なる農業者を惡徳農家と呼ぶ前に、惡徳ならざるを得ぬやうにした責任を感じて、先づ農村の必需物資を増産し、増配すると共に、配給を農業團體に於て一元的に取扱はしめ、日本肥料とか藷會社とか云つたやうな中間搾取機關は之を廢止し、正常なる「ルート」を通じて、正常なる價格を以て購入出來るやうにする、是は供出を完遂せしむる必須條件であり、之をなさずして供出を強要することは片手落でございます(拍手)
第四、農産物以外の一般物資に付ても、其の生産及び配給を統制し、強權を發動すること、農業だけに強權を發動し、他に之を行はないのは片手落の處置と言はねばなりませぬ、故に政府は肥料、農機具、衣料等の生産供出に對しても強權を發動して、正常な「ルート」を通じて配給されるやうにすることを必要と致します
第五、強權發動は耕作農業者を以て組織する市町村食糧調整委員會の決議に依り、申請のありました場合の外は、之を發動しないこと
以上政府に於ては、改むべきは進んで改め、又新たに實施すべきは實施して、農業者が政府を信頼し、安心して自ら進んで、自發的に刻下の食糧危機を救はんとする態度に出でしむべきであると思ふのであります(拍手)而して生産に從事する農業者は、増産意欲を彌が上にも昂揚し、最高の能率を發揮するやうに最善を盡し、増産に萬遺憾なきを期し、情を以て供出を致し、消費者の感謝に應ふべきであると考へるのであります、私共は横車を押すのでもなければ、ひねくれを言ふのでもありませぬ、正しき要求を致すものでありますから、政府は誠意を以て之を實行されるものと信じます、故に私共協同民主黨に於ては、以上五項を實行することを前提條件とする場合、何等反對をする理由もなく、之を承認することは當然であると考へます、仍て委員長の報告に贊成を致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=20
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021・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本件に承諾を與ふるに贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=21
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022・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立多數、仍て本件は承諾を與ふるに決しました(拍手)
日程第一、復興金融金庫法案の第一讀會を開きます──石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=22
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023・会議録情報3
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第一 復興金融金庫法案(政府提出) 第一讀會
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復興金融金庫法案
復興金融金庫法
第一章 總則
第一條 復興金融金庫は、經濟の復興を促進するため必要な資金で他の金融機關等から供給を受けることが困難なものを供給することを目的とする。
復興金融金庫は、法人とする。
第二條 復興金融金庫は、主たる事務所を東京都に置く。
復興金融金庫は、復興金融委員會の承認を受けて、必要の地に從たる事務所を設置し、又は銀行その他の者に業務の一部を取り扱はせることができる。
復興金融委員會に關する規程は、勅令でこれを定める。
第三條 復興金融金庫の資本金は、百億圓とする。
第四條 政府は百億圓を復興金融金庫に出資しなければならない。
政府は、その出資額に對して、設立の當初において四十億圓を拂ひ込み、その殘餘は、復興金融委員會の定めるところにより、これを拂ひ込むものとする。
第五條 復興金融金庫は、定款を以て、左の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名稱
三 事務所の所在地
四 資本金額及び資産に關する事項
五 役員に關する事項
六 業務及びその執行に關する事項
七 復興金融債券の發行に關する事項
八 會計に關する事項
九 公告の方法
定款の變更は、復興金融委員會の承認を受けなければ、その效力を生じない。
第六條 復興金融金庫は、勅令の定めるところにより、登記しなければならない。
前項の規定により登記を必要とする事項は、登記した後でなければ、これを以て第三者に對抗することができない。
第七條 復興金融金庫には、所得税、法人税及び營業税を課さない。
都道府縣、市町村その他これに準ずるものは、復興金融金庫の事業に對しては、地方税を課することができない。但し、特別の事情に基いて内務大臣及び大藏大臣の認可を受けた場合は、この限りでない。
第八條 復興金融金庫について解散を必要とする事由が發生した場合において、その處置に關しては、別に法律でこれを定める。
第九條 復興金融金庫でない者は、復興金融金庫又はこれに類似する名稱を用ひることができない。
第二章 役員
第十條 復興金融金庫に、役員として、理事長副理事長各一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
第十一條 理事長は、復興金融金庫を代表し、その業務を總理する。
副理事長は、定款の定めるところにより、復興金融金庫を代表し、理事長を輔佐して復興金融金庫の業務を掌理し、理事長に事故のあるときはその職務を代理し、理事長が缺員のときはその職務を行ふ。
理事は、定款の定めるところにより、復興金融金庫を代表し、理事長及び副理事長を輔佐して復興金融金庫の業務を掌理し、理事長及び副理事長共に事故のあるときはその職務を代理し、理事長及び副理事長共に缺員のときはその職務を行ふ。
監事は、復興金融金庫の業務を監査する。
第十二條 理事長、副理事長、理事及び監事は、復興金融委員會の推薦に基いて、政府が、これを任命する。
理事長、副理事長、理事及び監事の任期は、復興金融委員會の定めるところによる。
第十三條 理事長、副理事長及び理事は、定款の定めるところにより、主たる事務所又は從たる事務所の業務に關し一切の裁判上又は裁判外の行爲をする權限を有する代理人を選任することができる。
第十四條 理事長、副理事長及び理事は、他の職業に從事することができない。但し、復興金融委員會の承認を受けたときは、この限りでない。
第三章 業務
第十五條 復興金融金庫は、第一條に掲げる目的を達成するため、左の業務を行ふ。
一 資金の融通
二 債務の引受又は保證
三 社債(特別の法令によつて設立された法人で會社でない者の發行する債券を含む。以下これに同じ。)の應募又は引受
四 前各號の業務に附帶する業務
前項第一號の資金の融通は、復興金融金庫を振出人とする約束手形の交付又は爲替手形の引受により、これをすることができる。
復興金融金庫は、復興金融委員會の承認を受けて、第一項の業務の外、復興金融金庫の目的達成上必要な業務を行ふことができる。
第十六條 復興金融金庫は、業務開始の際、資金の融通に關する條件その他業務の方法を定め復興金融委員會の承認を受けなければならない。これを變更しようとするときも同樣とする。
第十七條 復興金融金庫は、設立の日から三年を經過した後は、あらたに資金の融通、債務の引受若しくは保證又は社債の應募若しくは引受をすることができない。
前項の期間は、復興金融委員會の承認を受けて、これを短縮し、又は延長することができる。
第四章 復興金融債券
第十八條 復興金融金庫は、復興金融債券を發行することができる。
復興金融債券の發行額と第十五條第一項の規定により引き受け、又は保證した債務の現存額の合計額は、復興金融金庫の未拂込資本金額を超えることができない。
第十九條 復興金融金庫は、復興金融債券の借換又は第十五條第一項の規定により引き受け、又は保證した債務の履行のため、一時前條第二項の制限によらないで、復興金融債券を發行することができる。
前項の規定により復興金融債券を發行したときは、發行後一箇月以内に、その發行額面金額に相當する舊復興金融債券を償還し、又は當該債務を履行しなければならない。
第二十條 復興金融債券は、割引の方法を以てこれを發行することができる。
第二十一條 復興金融金庫は、復興金融債券を發行しようとするときは、復興金融委員會の承認を受けなければならない。
第二十二條 復興金融債券の消滅時效は、元本については十五年、利息については五年で完成する。
第二十三條 この法律に規定するものを除く外、復興金融債券に關して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第五章 會計
第二十四條 復興金融金庫の事業年度は、四月から翌年三月までとする。
第二十五條 復興金融金庫は、毎事業年度の事業計畫及び經費の豫算を定め、事業年度開始までに、これを復興金融委員會に提出して承認を受けなければならない。これらに重大な變更を加へようとするときも同樣とする。
第二十六條 復興金融金庫は、毎事業年度に財産目録、貸借對照表、損益計算書及び復興金融委員會の定める統計書類を作成し、毎事業年度經過後二箇月以内に、これを復興金融委員會に提出して承認を受けなければならない。
復興金融委員會は、前項の規定による承認をしたときは、その財産目録、貸借對照表、損益計算書及び統計書類を附して、その旨を主務大臣に報告しなければならない。
復興金融金庫は、第一項の規定による復興金融委員會の承認を受けたときは、その財産目録、貸借對照表及び損益計算書を公告し、且つこれらの書類及び第一項の統計書類を各事務所に備へ置かなければならない。
第二十七條 復興金融金庫は、剩餘金を處分しようとするときは、復興金融委員會の承認を受けなければならない。
第六章 監督
第二十八條 復興金融金庫及び復興金融委員會は、主務大臣が、これを監督する。
第二十九條 主務大臣は、必要があると認めたときは、當該官吏に復興金融金庫の業務及び財産の状況を檢査させることができる。
第三十條 政府は、復興金融金庫の役員が法令若しくは定款に違反し、又は公益を害する行爲をしたときは、これを解任することができる。
第三十一條 主務大臣は、必要があると認めたときは、勅令の定めるところにより、左の各號に掲げる者からその業務及び財産の状況に關し報告を徴し、又は當該官吏にその業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を檢査させることができる。
一 復興金融金庫から資金の融通を受けた者
二 復興金融金庫により債務を引き受けられ、又は債務を保證された債務者
三 復興金融金庫により應募され、又は引き受けられた社債の發行者
第七章 罰則
第三十二條 前條の規定に違反して報告をせず、若しくは虚僞の報告をし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを六箇月以下の懲役又は五千圓以下の罰金に處する。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に關して前項前段の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に對しても同項の罰金刑を科する。
第三十三條 左の場合においては、復興金融金庫の理事長、副理事長、理事又は監事を五千圓以下の過料に處する。
一 この法律により復興金融委員會の承認を受けなければならない場合において、その承認を受けなかつたとき。
二 この法律に規定されてゐない業務を行つたとき。
三 第十八條第二項の規定に違反して復興金融債券を發行し、又は債務の引受若しくは保證をしたとき。
四 第十九條第二項の規定に違反して復興金融債券を償還せず、又は債務の履行をしなかつたとき。
五 第二十九條の規定による當該官吏の檢査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。
第三十四條 左の場合においては、復興金融金庫の理事長、副理事長、理事又は監事を二千五百圓以下の過料に處する。
一 この法律又はこの法律に基いて發する勅令に違反して登記をすることを怠り、又は不正の登記をしたとき。
一 第二十六條第一項の規定による書類に記載すべき事項を記載せず、又は不正の記載をしたとき。
三 第二十六條第三項の規定による公告をすることを怠り、若しくは不正の公告をし、又は同項の規定による書類を備へ置かなかつたとき。
第三十五條 第九條の規定に違反して復興金融金庫又はこれに類似する名稱を用ひた者は、これを一萬圓以下の過料に處する。
附 則
第三十六條 この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
第三十七條 政府は、設立委員を命じ、復興金融金庫の設立に關する事務を處理させる。
第三十八條 設立委員は、定款を作成して復興金融委員會の承認を受けなければならない。
前項の承認があつたときは、設立委員は、遲滯なく出資の第一囘の拂込を政府に禀請しなければならない。
第三十九條 出資の第一囘の拂込があつたときは、設立委員は、遲滯なくその事務を復興金融金庫理事長に引き繼がなければならない。
理事長が前項の引繼を受けたときは、理事長、副理事長、理事及び監事の全員は、設立の登記をしなければならない。
復興金融金庫は、設立の登記をすることに因つて成立するものとする。
第四十條 復興金融金庫の初事業年度は、第二十四條の規定にかかはらず、成立の日から昭和二十二年三月までとする。
第四十一條 復興金融金庫は、日本興業銀行から第十五條の規定による資金の融通に相當する資金の融通を受けてゐる者に對して、この法律施行の際におけるその融通に因る債務の現存額と同額の資金の融通をしなければならない。
第四十二條 復興金融金庫でない者でこの法律施行の際現に復興金融金庫又はこれに類似する名稱を用ひてゐるものについては、この法律施行後六箇月を限り、第九條の規定を適用しない。
第四十三條 金融緊急措置令の一部を次のやうに改正する。
第八條中「國民更生金庫、」の下に「復興金融金庫、」を加へる。
第四十四條 登録税法の一部を次のやうに改正する。
第十九條第七號中「戰時金融金庫、」の下に「復興金融金庫、」を、「戰時金融金庫法、」の下に「復興金融金庫法、」を、同條第十八號中「庶民金庫、」の下に「復興金融金庫、」を加へる。
第四十五條 印紙税法の一部を次のやうに改正する。
第五條第六號の二の三の次に左の一號を加へる。
六の二の四 復興金融金庫の業務に關する證書帳簿及復興金融債券
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=23
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024・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題となりました復興金融金庫法案に付き提案の理由を御説明申上げます
去る八月十四日會社經理應急措置法及び金融機關經理應急措置法の兩案の御審議を煩はしました際に申述べました通り、政府は今般戰時補償問題の徹底的解決を行ふことに決しました、之に關する法案は準備の都合上提出が遲れて居りますが、其の大體の構想は當時も申上げましたやうに、課税の方式に依り大幅に各種補償の打切りを行ふのでございます、此の趣旨は申すまでもなく、是等補償に關係ある諸企業から經理上不安の要素を一掃致しまして、以て其の再興の基盤を確實にすることが目的でございます、即ち是等の企業は何れも其の經理を新舊の二つの勘定に分離致します、さうして一切の不良資産と債務とは、總て舊勘定に棚上げを致して之を整理する、企業其のものは全く舊勘定の束縛から脱しまして、堅實なる資産のみを以て構成する新勘定に依つて經營されるのであります、隨て斯樣な新勘定に依りまして經營される、謂はば更生せる企業が、金融の梗塞を來して、爲に經營の困難を生ずるが如き理由はない筈であります、併し何せよ今囘の補償整理は劃期的處置であります、且又甚だ急激に是が行はれますので、經濟界に與へる物質的及び心理的影響は相當深刻であります
〔議長退席、副議長著席〕
況して其の整理の餘波は一般金融機關にも及びますので、それ等の整理が一段落致しますまでの過渡期に於ては、或は意外な金融梗塞状態が經濟界に發生しないとも限らないのであります、のみならず今日の我が産業界は、以上申しましたやうな整理問題から離れましても、元來戰爭に依つて蒙つた打撃は甚大でありまして、謂はば灰燼の中より再出發をしなければならない状態にございます、斯樣な場合の企業は、假令平和經濟の維持に必要であり、前途有望なものでございましても、或は直ちに採算の引合はないものもありませう、或は又多額の資金を固定しなければならないものもあります、特に中小企業、或は今後大いに我が國として育成を圖らなければならない農村工業の如きに對しては、特段の注意を拂ふ必要があるのであります、斯樣な見地から、政府は豫て特殊の金融機關を設けまして、以て産業の復興を促進する意圖を抱きまして、其の研究を續けて參つたのでありますが、今囘是が成案を得ましたので、茲に御審議を煩はす次第であります
此の法案に依ります復興金融金庫は、其の第一條に記して居ります通り、「經濟の復興を促進するため必要な資金で他の金融機關等から供給を受けることが困難なものを供給する」のが目的であります、固より併しながら是は整理機關でも、又救濟機關でもございませぬ、又從來の金融機關、例へば興業銀行と云ふやうなものと競爭の立場に立つものでもございませぬ、此の金庫は飽くまで金融機關でありますと同時に、一般の金融機關ではなし得ない金融を國家的見地から之を分擔致し、企業の再建育成に努める使命を持つものでございます
此の金庫は以上申上げましたやうな性質を有しますので、其の新たな業務を行ふ期間は、設立の時から三年に限ると云ふことに致しまして、それが一時的機關であることを明かに致して居ります、而して其の資本金は取敢ず百億圓と致しまして、其の全額を政府から出資致します、さうして其の百億圓の内、四十億圓を設立と同時に政府が之を拂込を致すのであります、但し本金庫の必要と致します資金は、此の四十億圓の拂込資本の外、資本金百億圓の限度内に於きまして、復興金融債券等を發行致しまして之を賄ひます、又金庫の運營に關しましては、別に復興金融委員會を設けまして、其の基本方策を決定致しますと共に、役員の選任及び日常の金庫に對する監督等も殆ど擧げて之を此の委員會に委ね、以て本金庫の運營の民主的なることを確保せんと致すものであります
尚ほ此の法律案の提案に先だちまして、御承知の通り既に八月一日から日本興業銀行をして、本金庫が行ふのと同趣旨の特別の融資を實施させて居りますが、是は復興金融金庫が設立されました曉には、此の復興金融金庫に、現在興業銀行がやつて居ります所の機能を引繼ぐことに致します
〔副議長退席、議長著席〕
さうして日本興業銀行から既に特別融資を受けて居ります所の債務者に對しましては、復興金融金庫から其の債務の現在額と丁度同じ金額の融資を致しまして、それを以て日本興業銀行から受けて居る特別融資を辨濟させることに致すのであります
以上が復興金融金庫の大體の性格でございます、と同時に本法案の提出の理由でございます、何卒御審議の上速かに御協贊を下さらんことを御願ひする次第であります(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=24
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025・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本法案に對する質疑は他の日程と共に延期し、次會に之を繼續することとし、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=25
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026・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=26
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027・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後三時二十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X03619460827&spkNum=27
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