1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年九月五日(木曜日)
午後一時四十四分開議
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議事日程 第四十號
昭和二十一年九月五日
午後一時開議
第一 勞働關係調整法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、議員から提出された議案は次の通りである
杉安、湯前間鐵道敷設に關する建議案
提出者
鹿島透君 伊東岩男君
森由己雄君 川野芳滿君
大橋喜美君 川越博君
藤本虎喜君 山本實彦君
宮崎港修築費國庫補助に關する建議案
提出者
川野芳滿君 伊東岩男君
森由己男君 鹿島透君
大橋喜美君 川越博君
山國川改修に關する建議案
提出者
松原一彦君 八坂善一郎君
金光義邦君 長尾達生君
古賀喜太郎君 伊藤卯四郎君
森山ヨネ君 石井光次郎君
村上勇君
(以上九月四日提出)
一、昨四日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第四部選出請願委員 田中重彌君
第七部選出請願委員 松浦薫君
一、昨四日議長に於て次の委員を選定した
臨時物資需給調整法案(政府提出)委員
安部俊吾君 井田友平君
飯國莊三郎君 江藤夏雄君
小野眞次君 小野孝君
加藤一雄君 小島徹三君
田中源三郎君 田中実司君
滝澤脩作君 竹田儀一君
塚田十一郎君 山田善三君
山本正一君 馬越晃君
金光義邦君 九鬼紋十郎君
鈴木周次郎君 鈴木明良君
坪川信三君 寺田榮吉君
原健三郎君 舟崎由之君
宮前進君 加藤勘十君
金子益太郎君 田村定一君
竹谷源太郎君 中崎敏君
西村榮一君 前田榮之助君
山口靜江君 米山久君
石原登君 大宮伍三郎君
河野金昇君 三木武夫君
赤澤正道君 伊藤恭一君
池上隆祐君 疋田敏男君
戸叶里子君 布利秋君
福田繁芳君
電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
井上卓一君 伊藤郷一君
西村久之君 細田忠治郎君
水田三喜男君 綿貫佐民君
青木泰助君 天野久君
鈴木周次郎君 長尾達生君
伊藤卯四郎君 上田清次郎君
加藤鐐造君 山崎常吉君
飯田義茂君 鹿島透君
秋田大助君 福田繁芳君
一、昨四日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
食糧緊急措置令(承諾を求める件)委員
理事 天野久君(理事松岡運君昨四日委員辭任に付其の補闕)
今四日次の通り特別委員の異動があつた
食糧緊急措置令(承諾を求める件)委員
辭任 松岡運君 補闕 天野久君
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より會議を開きます、日程第一、勞働關係調整法案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長逢澤寛君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=1
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002・会議録情報2
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第一 勞働關係調整法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 勞働關係調整法案(政府提出)
右は本院に於て可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年八月十六日
委員長 逢澤寛
衆議院議長 樋貝詮三殿
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附帶決議
勞働組合運動の正常なる發達は我等の常に深く念ずるところである。平和の精神を體し過激なる階級鬪爭を却け、勞資一體、生産増強に萬進することこそ、荒廢せる日本を再建すべき必須の條件なりと確信する。
本法は右の精神に基き國家公共の福祉と國務の遂行に支障を生ずることなきを期するものにして、寧ろ勞働運動を健全に發展せしむるものと認む。
唯本法實施に當りては勞働委員會の適切なる構成運營と共に、次の三條項の實行を強く要望して本法の制定に贊成す。
一、政府は速かに勞働者の生活を深く考慮せる勞働基準法案を次期議會に提出すべし。
一、官吏の待遇改善に關し、内閣に民主的なる對策委員會を設け萬全の措置を講ずべし。
一、政府は本法施行の時日に就き、官公吏竝に一般公益事業從業員の人格を尊重し、宜しく深甚なる政治的考慮を爲すべし。
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〔逢澤寛君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=2
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003・逢澤寛
○逢澤寛君 只今議題となりました勞働關係調整法案の委員會の審議の經過竝に結果に付きまして、是から御報告を申上げたいと存じます
此の法案は、新生日本の産業再建に關しまして、基本的な重大な關係を持つて居りますることと、今一つは官公吏の爭議權禁止に關する規定がありまするので、各方面に廣汎なる範圍に亙りまして、極めて大きな關心が拂はれて居つたのであります、院外には幾千人、幾萬人と稱する大群衆が、或は議會に對しまして、或は街頭示威行進を連日に亙つて行ひまするなど、又お互ひ議員に對しまして、或は委員に對しましては、各方面の陳情團から連日に亙りまして多數の陳情を受けるなど、洵に近來稀なる光景を呈したことは皆樣の御承知の通りであります、斯くの如き環境の中で、委員會は七月十六日に法案の付託を受けまして以來、十一囘に亙りまして之を開催致したのであります、此のやうな情勢下ではありましたが、各委員とも嚴肅に致しまして、冷靜を失はず、極めて熱心に、心血を注がれました質問が續行されたのであります、政府亦極めて懇切丁寧に、厚生大臣を中心と致しまして、内務大臣、商工大臣、大藏大臣、司法大臣、運輸大臣、膳國務大臣等各大臣の間に詳細なる問答が交されたのであります、時には聲涙共に下る如き場面もありまして、問ふ人も又答へる人も一時聲をなくしたやうな場面もあつたのであります(「早く内容を言へ」と呼ぶ者あり)以下私は其の概要に付きまして簡單に申上げます
先づ第一に本法案は、現下の勞働運動の激化に對しては資本家を擁護して、或は又近く行はれる所の軍需補償の打切り等に伴ふ整理解雇を前にして、豫め爭議彈壓法ではないかと云ふ質問があつたのであります、之に對しまして政府は、本案は勞働組合の健全なる發達を圖らんとする勞働組合法と相俟つて、勞働爭議の豫防、解決に付き、當事者間の自主的努力を尊重しつつ、之に援助を與へることを本旨として居る所の手續規定と、公益を保護する爲の必要最小限度の規定とをするものであつて、何等一部階級の利益を擁護し、又一部階級を彈壓せんとするものでないと云ふやうな強い答辯があつたのであります
又現在の爭議の原因は殆ど生活問題である、勞働者の生活を保障すべき勞働基準法の制定が先決問題である、本法案は其の後に提案すべきではないかとの質問に對しましては、政府は、本法案は民主主義的に勞働爭議を處理せんとするものであり、技術的に措置を規定したものであつて、寧ろ勞働組合法と同時に制定せらるべき性質のものであつたのであるが、立案の時間がなかつた爲に今日に及んだものである、勿論勞働基準法の制定を速かに致すことの必要であることは申すまでもないのであるが、之に付ては其の内容の性質上廣範圍に亙り、且つ國際的の水準をも勘案しなければならないので、立案の技術上に長い時間を要して、本法案と共に提出することが出來なかつたことは洵に遺憾である、既に政府としては鋭意成案を得べく努力中であつて、次の議會には提案する豫定である旨を言明せられたのであります
次に、本法案に對して勞働者が全面的に反對して居り、又立案過程に於ても、勞務法制審議會に於て勞働代表が反對して居るのであるが、政府は何故に斯かる勞働者の反對を押切つて本法案を強行せんとするものであるかとの質問がなされたのであります、政府は之に對しまして、本法案の内容は、前述せる如く勞働爭議の豫防解決に關する手續規定と、公益擁護の爲に最小限度必要である爭議行爲の制限規定との二つに盡きるものである、何等勞働者を壓迫するものではないから、本法案の内容を能く理解すれば贊成して戴けると思ふ、又現に勞働者側も次第に理解しつつあると思ふ旨を答へられたのであります
次に本法の運用に關し、主として其の衝に當る勞働委員會の構成は、眞に民主的なものと思はれない故、本法の運用に付て危惧を持つて居るがどうか、又勞働省の設置の意思ありやとの質問があつたのであります、之に對しまして政府は、勞働委員會に付ては眞に民主的權威を高める爲に、近く成規の手續に依り改選することになつて居り、又勞働省の設置に付ても目下研究を進めて居る旨を答へられたのであります
最後に本法案に關聯した重要問題と致しまして、生産管理及び失業問題に付て、多數の委員から意見の開陳及び質疑がなされたのであります、先づ生産管理に付きましては、現在勞働者に取りまして生管が唯一の有效なる爭議手段であるに基きまして、曩に發表された政府の否認聲明に對し、之を撤囘乃至修正する意思なきやに付き政府の所信を質されたのでありますが、政府は之に對して、民主主義の本義に則り企業權と勞働權は相共に尊重せられなければならない、且つ相互に侵犯すべきものではない、其の間に截然たる一線を劃することが、社會秩序維持の所以である、故に從來の方針に變化はない旨を明言され、又資本家「サボ」を放任し、勞働者に對してのみ生産管理を否認することは片手落ではないかとの質問に對し、政府は、資本家「サボ」に對しては物資需給調整法案等に依り處理する旨を答へられたのであります、次に近く行はれる補償打切り、産業整理等に依りまして、大量の失業者が發生することが豫想されるが、政府の對策如何との質問に對しては、生産増強の線に沿つて失業對策に付き目下著々準備中であるとの政府の答辯があつたのであります
次に本法案の内容に關する質疑應答に付きましては、殆ど各條項に亙つて之をなされたのでありまするが、其の中極く主要な點のみに付きまして茲に御報告を致します、其の他は速記緑に依つて御覽を願ふことに致したいと存じます、其の第一は第八條第二項の公益事業の追加指定に付てでありまするが、此の規定に依りまして不當に他の業種を指定する虞はないか、又現在追加指定を豫定して居る所の業種があるかとの質問に對しまして、追加指定は關係者に取つて重大なる問題であるから、勞働委員會の決議を要することと致し、其の議事手續に付ては特に嚴重なる要件を規定して居る故に、不當に擴大される所の虞はない、又追加指定の業種に付ては、將來事情の變更に依り或は追加する場合があるかも知れぬが、現在の所豫定して居る業種はない旨を答へられたのであります、次に又他の委員から、右の指定に付きましての勞働委員會の決議方法に付て、使用者、勞働者、中立の委員の過半數の同意を要すると云ふことは、委員會の一定性を否定するものではないか、委員總員に付ての多數決にすべきものではないかとの質問がありましたが、政府は御趣旨は御尤もであるが、事柄の重要性に鑑み、愼重を期する爲に勞務法制審議會の答申を尊重し、特に異例の措置を執ることにしたのであると答へられたのであります
次に第三十七條及び第三十八條に付ては議論が最も集中された所でありますが、先づ第一に官公吏、公益事業に付き爭議行爲を禁止する、或は制限して居るが、憲法改正案第二十六條に牴觸すると思ふがどうかとの質問に對しまして、政府は、官公吏、公益事業に付ての制限は、公益擁護の爲の必要最小限度の制限である、凡そ如何なる權利と雖も、公共の福祉の爲に、又之を害しない範圍に於て行使すべきであつて、此のことは既に憲法改正案第十一條、第十二條に規定する所であるから、隨て第二十六條と牴觸するものではない旨を答辯されたのであります、又官公吏に付き爭議行爲を禁止するのは如何なる理由か、爭議權に對する不當なる彈壓ではないかとの質問に對しまして、國民の全體から見れば、其の極く少數である所の官吏の同盟罷業は、國家樞要の業務を阻碍して、國家公共の安寧福祉を紊るものであると共に、多數國民の支持を受けて居る所の政府を危殆に陷らしめる虞があることは、結局民主主義にも反するものであるから之を禁止した旨を答辯されたのであります、又官公吏等は現在十分の自覺あり、無謀なる爭議行爲等はなさないと思ふ、政府は官公吏を信頼して居ないかとの質問に對しまして、現在官公吏に對しては勿論信頼を置いて居るが、長い將來のこともあり、制度として此のやうなものを規定する必要があると答へました、更に官公吏等は一般に比べて待遇状態が極めて低い、其の上に爭議權を否定するならば、官公吏等の生活に付き之を保障する具體的の方策がなくてはならない筈であるが如何と云ふ質問に對しまして、政府は財政等の許す範圍内に於て、出來るだけ待遇改善に努めると答へました、更に此の目的の爲に、内閣等に職員組合の代表をも加へた委員會を作る意思はないかとの質問があり、政府から出來るだけ其の線に沿ふべく研究する旨の答辯があつたのであります
次に、公益事業に付ては三十日間爭議行爲を禁止して居るが、是は事實上爭議權を否定するものではないか、又三十日の期間を短縮する意思はないかとの質問に對しまして、政府は、拔打爭議の禁止は、國家公衆に爭議發生に對する餘裕を與へると共に、出來得れば此の期間内に公正な解決を圖りたい旨の趣旨であるが、調停は其の結果を強制するものではなくて、又三十日後には爭議行爲をなし得る譯であるから、爭議權の否定では決してない、又公益事業に關する斯かる規定は、外國にも數多くあり、期間に付ても、右の趣旨に依り此の程度が適當であると思ふ旨を答へられたのであります
以上が大體本法案に關する主たる質疑應答の概要でありまするが、尚ほ此の間に於きまして、委員長より本委員會の意見と致しまして、我が國再建に於ける勞働の重要性に基き、國民學校の教科書の中に勞働の重要性及び其の意欲の昂揚を圖る旨の文章、實例などを掲げて、小國民時代より、旺盛なる勞働精神と其の道義の涵養に資する教育をなすべきこと、及び勞働組合が速かに世界勞働聯合に加入することが望ましい、就ては政府は之に對して準備を進められたき旨の要望をなしたる所、政府は之に對し全面的に贊成なるに依り、要望に副ふべく實現に努力する旨を答へられたのであります
斯くて討論に入つたのでありまするが、先づ自由黨の江崎君は、後程朗讀致しまする附帶決議を提案すると共に、平和愛好、經濟再建、國家公共の福祉尊重の見地より、本案は極めて時宜に適したるものとして之に贊成し、進歩黨の川崎君亦自由黨の意見と同じく、本法は何等彈壓法にあらざる平板的な法律である、世界勞働聯合加盟準備の基礎條件であることを強調して贊成意見を開陳せられたのであります、他面に於きまして社會黨の辻井君は、爭議は生活權擁護の爲の已むを得ざるの手段にして、生活保障の措置なくしては斯かる拘束は彈壓法なりとして反對をされました、次に協同民主黨の東君は本法案は勞働基準法と共に審議せらるべきものとして反對し、新政會の野本君も、本法案は勞働者の自主的精神に「ブレーキ」を掛けるものとして反對し、最後に無所屬倶樂部の細迫君が、略略社會黨と同樣の趣旨を以て反對意見を開陳せられたのであります、
以上を以て討論を打切り採決をなしたる所、多數を以て原案及び附帶決議は可決せられたのであります、茲に附帶決議を朗讀致します
附帶決議
勞働組合運動の正常なる發達は我等の常に深く念ずるところである。平和の精神を體し過激なる階級鬪爭を却け、勞資一體、生産増強に萬進することこそ、荒廢せる日本を再建すべき必須の條件なりと確信する。
本法は右の精神に基き國家公共の福祉と國務の遂行に支障を生ずることなきを期するものにして、寧ろ勞働運動を健全に發展せしむるものと認む。
唯本法實施に當りては勞働委員會の適切なる構成運營と共に、次の三條項の實行を強く要望して本法の制定に贊成す。
一、政府は速かに勞働者の生活を深く考慮せる勞働基準法案を次期議會に提出すべし。
一、官吏の待遇改善に關し、内閣に民主的なる對策委員會を設け萬全の處置を構ずべし。
一、政府は本法施行の時日に就き、官公吏竝に一般公益事業從業員の人格を尊重し、宜しく深甚なる政治的考慮を爲すべし。
此の附帶決議に對しまして、政府を代表して河合厚生大臣より、誠意を以て實行すべき旨の言明をせられた次第であります(拍手)
以上を以ちまして委員長の報告を終るのでありまするが、最後に一言以上を要約して申上げます、元來本法案第三十八條の官公吏の爭議禁止に付ては、本年初頭に於ける一部官吏の勞働運動の其の動向が、動もすれば急激に趨り、世人の信用を得るに至らなかつたことが、此の條項の挿入を見るに至つた原因であると存じます、且つ官公吏の「ストライキ」が、經濟的原因から延いては政治的に發展し、是が爲に内閣倒壞を來すなどの不祥事を惹起すことを當局が恐れた結果であらうと想像致します、それ故に將來官公吏の勞働運動が、眞に秩序と品位を保ち、世人の信用を得るに至りまして、此の官公吏自らの信用囘復が原因となつて、第三十八條が自然と社會より不要な條項なりと認識せらるるに至る日の來らんことを、心から御祈りする次第であります(拍手)
次に本法案を一言にして申しまするならば、勞働關係調整法案は、既に施行されて居りまする所の勞働組合法と、今秋の臨時議會に提案される約束の勞働基準法案の此の三つが揃つて一組となるのであります、完備した勞働立法となるのであります、丁度勞働組合法と勞働基準法は車の兩輪のやうなものであります、其の何れがなくても運營は出來ませぬ、此の調整法は其の兩輪を支へる所の「シャフト」の役をするのであります(拍手)此の「シャフト」の作用に依つて、車の兩輪は滑かに活動することが出來るのであります(拍手)即ち此の三法律の完備することは、我が國勞働史上劃期的なものでありまして、勞働者諸君の文化と生活水準は改善され、健康と幸福の向上は蓋し大なるものがあることを信じて疑はないのであります(拍手)仍て政府は附帶決議の如く勞働基準法を次期議會に提出すると共に、本法施行の時日に付きまし、ても、官吏の人格と自尊心とを尊重し基準法の施行と相俟つて行はれるやう、深甚の考慮をなすべきであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=3
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004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 討論の通告があります、之を許します──荒畑勝三君
〔荒畑勝三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=4
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005・荒畑勝三
○荒畑勝三君 日本社會黨は本法案に全面的に反對致して居ります、私は黨を代表致しまして反對の理由を申述べたいと存じます
我々が本法案に反對致しまする理由の第一は、是が勞働運動の上に加へられんとする新しい治安維持法であるからである(拍手)而も此の法案たるや、産業平和の維持であるとか、或は經濟の興隆と云ふやうな、如何にも尤もらしい、耳障りの好い形に、甘い糖衣を以て包んだ毒藥なのである、私は社會運動に身を投じて四十餘年、未だ曾て斯くの如き勞働階級の上に加へられた皮肉な「ブルジョア」的僞善を見たことがありませぬ(拍手)反對の第二の理由は、本法案が勞働階級に對する支配階級の根強い不信と猜疑とを其の根本に藏して居ることである、即ち本法案の根柢には、勞働爭議と云ふものは勞働者が貪慾だから起るのである、或は一部少數の指導者が徒らに大衆を煽動して平地に波瀾を起させるものであると云ふ觀念が潛んで居る、思想的には、本法案は勞働組合法と竝行して、所謂企業權と勞働權との均衡を保つと云ふやうな、如何にも公正の外見を與ふるものでありますが、併し客觀的、批判的に支配階級の意圖を解剖致しまするならば、是が本質上、産業革命後に英國に行はれました團結禁止法、或は大革命の後に「フランス」に施行されました「ル・シャプリエ」法のやうな、勞働階級に對する支配階級の不信と猜疑に出でたものだと斷ぜざるを得ないのであります(拍手)第三の理由は、本法案の目的が勞働爭議の豫防に依つて産業の平和を維持するにあると言ふにも拘らず、是が啻に爭議を防止するに足りないばかりでなく、勞働者の基本的權利を抑壓し、自由を拘束するものであつて、さうして其の結果は獨り産業の平和を維持し得ざるのみでなく、却て正反對の結果を誘發するに十分なるものであると考ふるからであります(拍手)
抑抑爭議の發生を豫防せんと致しまするならば、其の原因を探求し、是が除去に努むるのでなければ、決して所期の目的を達することの出來ないことは明白な事實であります、然るに今日頻發致して居りまする勞働爭議の主因が何處にあるかと申しますならば、是は厚生省自身の調査に依つて明白でありまする通りに、生活不安と云ふことが其の根本の理由であります、例へば賃金増加と生活不安、此の要求が爭議の第一位を占めて居る、三百六十二件の中二百九十一件、殆ど八〇%を占めて居ると云ふ事實に依つて、生活不安と云ふ此の根本原因が除去されなければ、決して勞働爭議を豫防することも解決することも出來ないと云ふことは明白であります(拍手)今日のやうな「インフレーション」時代に、勞働階級及び勤勞大衆が生活不安の渦卷の中に身を曝して居つて、多少でも其の條件を緩和せんと致しますならば、勞働爭議に愬ふる外に途はないのであります、何處に愬ふることが出來ますか、何處に解決を求めることが出來ますか、資本家階級は決して道理に服して、勞働者が默つておとなしくして居ても、條件の緩和を圖つてやるやうな實例は未だ曾て見たことがないのである、現に厚生省自身が六大都市に於ける工業の男工平均賃金を調べた所に依つても、本年二月の平均賃金は、前年十月に比して約三倍、前月に比して百分の九の増加を示して居るのでありますが、併し此の増加は悉く勞働爭議の結果起つて居るものである、決して資本家が一般的に勞働者の賃金を引上げたものではありませぬ、即ち言葉を換へて申すならば、爭議を行はなければ、賃金の増加に依つて生活不安を克服することは出來ないと云ふ事實を、厚生省自らが證明して居るのである(拍手)此の勞働不安、生活不安、勞働者が爭議に依る以外に自己の生活條件を改善する途はないと云ふ此の條件は、是が今日の爭議頻發の原因でありまして、此の條件は決して一部に限られて居るのではありませぬ、全産業に亙つて普遍的に行はれて居る現象でありまして、是は決して公益事業であるから、或は官公吏であるからと云ふ除外例を見ることは出來ないのであります、本法案の眼目は、公益事業の爭議の制限、官公吏の爭議の禁止、是等が本法案の眼目でありまして、他は悉く附け足りに過ぎない、所が爭議權は勞働組合法に依つて確認された勞働者の基本權利であつて、勞働力が一箇の商品として扱はれて居ります、資本主義制度の下に於ては、爭議權の確保がなくしては、勞働者は商品である所の其の勞働力を有利に取引することは出來ないのであります、今日の社會状態の下に於ては、爭議權と勞働權とは不可分の關係にある、隨て斯くの如き状態の下に於て獨り爭議權のみを禁止すると云ふことは、延いて勞働權の禁止及び生活權の剥奪に外ならぬものと考へるのであります(拍手)若し公益事業の從業員若しくは官吏であるが故に、其の正當の權利である爭議を抑制されなければならないと致しますならば、斯かる勞働者及び勤勞階級に對しては、生活の保障が代償として與へられて居なければならない
〔「其の通りだ」「條件附だ」「風呂敷の内容が貧弱だ」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=5
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006・山崎猛
○議長(山崎猛君) 私語を禁じます──私語を禁じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=6
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007・荒畑勝三
○荒畑勝三君(續) 若し勞働者及び勤勞者が生活する上に、其の勞働權と不可分な關係にある所の爭議權を引渡さなければならないと致しまするならば、爭議する必要のない生活の保障を與へられなければならない(拍手)然るに政府の致して居りまする所は、失業に重ぬるに失業を以てして、さうして賃金の競爭、生活水準の低下を目指して居るやうな政策ばかりをやつて居るのである、斯樣な状態に勞働階級、勤勞大衆を曝して置きながら、獨り其の爭議權を制限し、或は剥奪すると云ふことは、勞働階級及び勤勞大衆の手足を縛して、之を資本家階級の足下に投出すものと言はなければならない(拍手)爭議權も──勞働爭議も勞資間に於ける戰爭である、然らば其の成否勝敗は、戰略的な時期に依る所が大であります、本法案に於て公益事業の爭議に三十日間の制限を附して居ると云ふことは、此の戰略的な時期を無效に歸せしめるものでありまして、政府は之を單に拔打爭議を豫防するものである、豫告期間に過ぎない、斯う言つて居りまするが、政府の主觀的意圖は問ふ所ではない、我々は客觀的な結果から見まして、實際上爭議權の剥奪に外ならないと感ずるのであります(拍手)況や此の三十日の期間、勞働者は何をすることも出來ないのであるが、資本家は之に反して凡ゆる自由を持つて居る、此の不利な條件に對して、勞働者に何の保障も與へられては居らないのであります、又此の規定が本當に拔打爭議を阻止すると云ふ豫告期間たるの目的以上に出ないとするならば、必ずしも法律に依るの必要はありませぬ、寧ろ勞働組合の自主的措置に委ねるに如くはないのであります、勞資間は協定せられる團體協約或は經營協議會のやうな機關は、即ち實に斯う云ふ問題の自主的解決に資すべきものであります(拍手)政府は公益事業の爭議制限を、外國でもさうである、外國の如きは六十日もやつて居るのに、日本では三十日位であるから、却て輕い條件なのであると云ふやうなことを申して居りまするが、是は勞働組合が強大な組織に發達し、其の背後に強大な政黨を有して居る外國と、日本のまだ幼弱な勞働組合とを同一視して居るものである、河合厚生大臣は、此の法律は勞働組合法と竝行して行はるべきものであると言つて居る、即ち之に依つて彼等は「バランス・オブ・パワー」──資本家と勞働者との勢力均衡を圖らうとするのが政府の意圖であることは間違ひない、併しながら是は「ライオン」も四足獸なら羊も四足獸だ、同じ平等な四足獸であると云ふやうな抽象的な觀念に過ぎないのであります、彼等は──政府は、食はれる四足獸と、食ふ四足獸との具體的な區別を無視して居るのである(拍手)
官公吏の爭議は政治運動に利用せらるる危險がある、官僚獨裁の弊を常に叫んで居る社會黨が之に反對するのは解し兼ねると云ふものがあります、併しながら我々は斯樣な見解には絶對に反對するものである、我々は斯う云ふことに戒心しなければならない、上層の支配的な少數の官僚が、此の爭議を政治運動に利用することに對しては國民は監視しなければならない、警戒しなければならない、併しながら斯くの如き弊害を豫防し、除去する爲には、官公吏の間に自由なる完全なる勞働組合の權利を與へなければならないのである(拍手)之に依り官公吏の間に「プロレタリア」的の意識を注入し、民主主義的な意識を發達させることに依つて、初めて上層の支配的な官僚の非民主主義的な行動に對して、民主主義的な一般官公吏の批判と抑制とを加へることが出來るのであります(拍手)是れ以外に官僚民主主義化の方法はあるものではないのである、現に前「ヨーロッパ」大戰の後に起りました所の「ドイツ」の官吏總同盟の如きは、社會民主黨の政權に反對して起つた「カップ」の反民主的な一揆に對して、社會民主黨及び勞働組合が一致提携して是が打倒に盡したのである、我々は官公吏が反民主主義的な陰謀に對して、之を打倒する爲に其の爭議を政治運動に利用することに對して、毫も反對すべき理由はない(拍手)寧ろ是こそ我々國民の權利であつて、民主主義を擁護する爲には、官公吏は如何なる手段に出やうとも毫も憚る所はないのであります(拍手)況や官公吏は一般企業の勞働者よりも却て劣惡な状態にあるのである、現に七月増給の如きも未だに實施されない状態にある、斯樣に一般の企業の勞働者よりも劣惡の状態に置きながら、獨り其の爭議權を否認すると云ふが如きは、啻に不合理であるばかりでなく、無慈悲な處置であると言はざるを得ない(拍手)
私共は産業復興の「テンポ」が一日遲れれば、民主主義日本建設の「テンポ」が一日遲れる所の現在の情勢下に於きまして、爭議の爲に貴重な勞働日數の空費されることを憂ふる點に於て決して人後に落ちるものではない、併しながら爭議は勞働者が好んで行ふものであるとする觀念位、事實に反する謬見はないのであります、爭議は、勞働者に取つて賃金の喪失、生活の窮迫、家族の不安、失業の危惧を意味して居る多大の困難と犧牲とを伴ふものであります、それにも拘らず、其の苦痛を忍んで爭議に出なければならない所に、政府と資本家との反省しなければならない大きな原因が存するのではないか(拍手)政府に取つて、或は資本家に取つて、爭議が命取りであるか、或は産業復興の根本條件となるかは、政府や資本家が、勞働階級及び一般勤勞大衆の生活の安定の爲に努力するか否かと云ふことに依つて決定せられるのである(拍手)
産業復興の爲には、階級鬪爭を排して勞資が協調しなければならないと云ふ連中がある(「其の通り」)勞働組合法案を毒殺した元兇として、今日尚ほ勞働階級の記憶に新たなる膳國務大臣を初めとして、さう云ふ論者は少くないのである、併しながら階級鬪爭は、論者が好むと好まざるとに拘らず、資本主義制の階級社會にあつては不可避なのを如何ともすることが出來ない(拍手)此の階級鬪爭の發展が、組織勞働者をして今日三百萬の大勢力たらしめて居るのである、社會黨をして院内に於ける一大勢力たらしめて居るのである(「嘘を言へ」と呼ぶ者あり)民主主義とは──民主主義とは、即ち此の階級鬪爭の儼然たる事實を認めて……
〔「共産黨が多いぞ」と呼び其の他發言するものあり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=7
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008・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に──諸君、靜肅に
〔「彌次が出て居る間絶對にやるな」「彌次に征服されたか」と呼び其の他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=8
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009・荒畑勝三
○荒畑勝三君(續) 彌次を默殺して居るんだ(拍手)民主主義とは、此の階級鬪爭の儼然たる事實を認めて、此の鬪爭を平和合法なる軌道の上に遂行せんとする態勢に外ならないのである、勞資協調の耳障り好き言葉を以て階級鬪爭をして來た「ブルジョアジー」と其の一黨一派こそ、日本の國情を今日の如き亡國状態に陷れた戰犯第一級者だ(「ノーノー」「社會黨で戰時中儲けた連中はどうなんだ」と呼び其の他發言する者あり、拍手)愚圖々々言ふと演説の時間が長くなる(笑聲)
日本を現在の亡國状態から建直して、七千萬同胞を塗炭の苦しみから救ふ爲に、産業を復興し、生産を再建する上には、當面勞働、資本、技術の協力が必要なることは勿論であります、併しながら終戰後滿一年の今日も、尚ほ依然として過去に於けると同じやうに、協調を紊り、協力を拒んで居るものは資本家自身ではないか(拍手)終戰と同時に倉皇として勞働者を馘首し、流石の政府をして已むを得ず警告を發せざるを得ざらしめたものは資本家ではないか(拍手)勞働階級が名目賃金の増加にも拘らず、物價の騰貴の爲に生活愈愈窮迫を告げて居る時に、獨り「インフレーション」に依る資材の値上りで巨利を博して居るのも亦資本家ではないか(拍手)是でどうして協調和合の實を擧げることが出來るのであるか、資本家の目的が利潤追求にあるに反して、勞働者は生活の爲には否でも應でも働かざるを得ないのである、此の生活の爲の勞働に、民主主義日本再建の明白なる目的と理想とを附與することが、今日政局を擔當する爲政者の第一にしなければならぬ任務である、然るに政府の致す所を見れば、勞働者の必死の要求である生産管理を否定し、已む得ざるに出でた爭議を抑制せんとして居るのである、政府に勸告するが、官公吏が全部總罷業に出でやうとも、或は公益事業の勞働者が悉く産業を麻痺させやうとも、毫も御心配には及ばない、なぜならば諸君は孜々として、鋭意努力して失業者の増大を圖つて居るではないか(拍手)官公吏と…(「馬鹿を言へ」「何を言つて居る」「何だい」と呼び其の他發言する者あり)何が何だ…
〔發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=10
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011・荒畑勝三
○荒畑勝三君(續) 默つて聽け、官公吏と公益事業の從業員を合して百五十萬と云ふぢやないか、然るに諸君は今年中には五百萬の手持の失業者を控へやうとして居るのである、それを諸君は一生懸命作りつつあるのである、さうしたならば假令全部が總罷業に出たとしても、諸君は手持の産業豫備軍に依つて之を優に埋合せることが出來るのであるから、餘り御心配はしない方が宜い
今日勞働階級が本法案に對して全面的に反對して居る所以は、現内閣の資本家的性格に對する不信任に外ならない、勞働階級が當面しつつある難問題の山積を顧みるが宜しい、企業の整備、賠償工場の撤去に因る大量失業、就職の困難と賃金の競爭、生活水準の一般低下、是等の問題が今や勞働階級を脅かしつつある、勞働階級が嘗めて居る所の此の煉獄の苦しみは誰が起したのでもない、此の無謀な戰爭を惹起し、此の戰爭に依つて利益に均霑して來た官僚と「ブルジョアジー」との責任ではないか(拍手)今勞働階級は心血を絞つて諸君に進言をして居るのである、然るに政府は此の勞働階級の犧牲、苦痛を毫も察することなくして、更に此の勞働階級を奴隸的状態に陷れんとして居るのが、即ち本法の眞目的なのである、現に膳國務大臣は、勞働者を首切る上に於て情け容赦を掛けるなと放言して居るのである、之を以て見ても、勞働階級が、此の法律の目的が表面の口實は如何ともあれ、其の實質に於て勞働階級を奴隸化せんとする治安維持法であるとの觀念を抱いて居ることは正當であると思ふのである(拍手)此處に積んである請願書を見るが宜しい(「役者のやうなことをするな」「芝居掛りは止せ」と呼ぶ者あり)何が芝居だ、是は勞働者の血だぞ、勞働者の涙だぞ(拍手)此の中には──此の中には全國官公職員勞働組合協議會約五千人の反對の署名がある、又此の中には東芝勞働組合聯合會の一萬五千名の反對の署名がある(拍手)細かく申せば、日本交通運輸勞働組合同盟、東京都從業員組合水道部、商工省職員組合、東京都職員組合、戰災復興院職員組合、全國氣象職員組合、全海事官廰從業員組合、文部省職員組合、東京都勤勞部職員組合、王子工場從業員組合、全國財務職員組合、農林省職員組合、會計檢査院職員組合、東芝勞働組合關東聯合會、其の他小さな組合の數は算ふることが出來ない程ある(「全部讀め」と呼び其の他發言する者あり)諸君法律の制定に當つて──法律の制定に當つて、曾て普通選擧法案のやうに、是非之を通過して呉れ、制定して呉れと云ふ請願署名が山積したことは聞いて居ります、併しながら或る法律の制定に對して國民の間から、全國一千萬の勞働階級が唯一人の如く結束して、組織的反對運動を起した例が曾てあつたでありませうか(拍手)産業の平和を維持する、さうして生産を復興する、民主主義日本を再建する、斯う云ふ大事業は、勞働階級の全面的な信頼と、心服と、協力なくしては不可能である(拍手)其の勞働階級の左右を問はず、「イデオロギー」を論ぜず、唯一人の如くに結束して反對して居る現在の事實を壓し殺して、本法を強制致しまして、果して本法の目的とする所が實現出來るかどうか(拍手)此の反對を無理やりに抑へ付けて、唯法律の強力に依つて之を強ひんとするのは「ファシスト」一流の壓制政治であると評する者もないとは限りませぬ(拍手)若し斯う云ふ全面的反對を押切つて本法案の實施を強行するならば、其の勞働者に及ぼす所の心理的影響の恐るべきことは、産業の復興に取返しの付かない支障を來すに違ひない(拍手)本法案の強行は、勞働階級の生産に對する熱意に、三斗の冷水を浴せ掛けるものである、さうして其の貴重なる協力と創意とを窒息せしめて、平和合法的に行はるべき爭議をして、却て非合法的な方向に已むを得ず趨らしめて、本法案の目的とする産業平和の維持とは凡そ正反對なる、憂惧すべき社會的状態を生み出すことは、火を睹るよりも明かであります(拍手)
勞働者は手段方法に富んで居る、勞働組合の武器には、謂はば火縄銃から原子爆彈までも含んで居るのである、斯樣な法律をして空文に歸せしめるが如きことなきやう政府は能く銘記して置くが宜しい(拍手)私は敢て勸告するが、政府が若し本當に産業を復興し、生産を再建して民主主義日本の建國を志すならば、直ちに斯樣な勞働運動に對する治安維持法とも言ふべき惡法案を撤囘して、信を勞働階級の腹中に置いて、勞働階級の前に誠意と熱情とを吐露して、其の全面的な協力を求むべきであります(拍手)日本の勞働階級は、其の犧牲と窮乏と努力と發奮とが、若し本當に愛すべき祖國の民主的再建に必要であるならば、之を忍ぶに決して躊躇するものではありませぬ、併しながら其の意思に反して奴隷的状態を強制せられることは、斷じて肯んずるものではないのである
私は最後に本法案に御贊成の進歩黨及び自由黨の諸君に一言する、先日の本法案委員會に於ける…………(「失敬なことを言うな」と呼び其の他發言する者多し)愚圖々々言う内は默つて居るよ(「默つてろ」と呼ぶ者あり)ああ默つてるよ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=11
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012・山崎猛
○議長(山崎猛君) 私語に應酬することはやめられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=12
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013・荒畑勝三
○荒畑勝三君(續) 言はれることが怖いのかな──過日の本法案委員會に於ける最終討議に際して、進歩黨の代表委員の方は、爭議調停法は外國にも存して居る所である、勞調法の制定は、日本の勞働組合が世界勞働組合聯合に加入し得る基礎條件であると云ふ意味を御述べになつた、然るに全世界勞働組合聯盟の、勞働者の根本權利に關する憲章が、冒頭に明記し且つ強調して居る所は、自由にして正常的な勞働組合活動を行ふ勞働者の權利と云ふことでありまして、此の勞働組合存立の根本權利の引渡しではないのであります、さうして此の權利は、特に我が國の勞働階級が當面して居るやうな、史上空前の難局に置かれました勞働者に取つて、其の生活權を擁護すべき必須不可缺のものである、營るに本法案は此の權利を實際上に勞働者から剥奪して、勞働組合法を空文に歸せしめんとするものなるが故に、我々の斷乎として反對して居る所なのである、日本の勞働階級は、民主主義とは不可分なる自主獨立の權利を保存せんことを要求するものであります、假に全世界勞働組合聯盟に加入する名譽を得る爲に、本法案のやうな不合理、不公正な奴隸的條件を甘受しなければならないとするならば、日本の勞働階級は寧ろ自由人として孤立する光榮を選ぶに違ひありませぬ(拍手)又自由黨の代表委員の方は、我が黨を目しまして、勞働階級の本法案反對論に迎合するものであつて、世論を指導するものではなくて、却て世論に指導せられるものである、斯くしては公黨たるの面目何れにありやと仰せになつた、私は敢て聲明するが、政黨とは、社會の各階級が其の利害の爲に鬪爭する爲の機關である、我が黨は勞働階級及び勤勞大衆の利害と、意思と、要求とを代表して鬪ふことを使命とするものである、無産階級政黨の指導とは、即ち此の階級的の利害意思及び要求に、理論的「ガイダンス」を與ふるものに外ならないのである、我が黨が代表する無産階級は、國民の九割を占めて居る勤勞者である、産業の基礎であり、生産の源泉であり、國家の支柱である、若し其の意思と要求とを代表することが世論に迎合し、世論に指導せられる所以であると致すならば、私は敢て御尋ねしようと思ふ、此の階級の外の、國民の一小部分に過ぎざる資本家階級及び其の家の子郎黨の意思に迎合し、彼等の利害と命令とに依つて指導せられる黨は一體何處の何黨であるか、是が私の反對論のお終ひであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=13
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014・山崎猛
○議長(山崎猛君) 江崎眞澄君
〔江崎眞澄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=14
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015・江崎眞澄
○江崎眞澄君 私は日本自由黨の立場より、只今討議に付せられましたる勞働關係調整法案に對し、贊成の意を表明致すものであります(拍手)
只今社會黨の荒畑君は、一言にして此の法案を言へば、勞働者に仕合せをせざる法案なりとして、全面的に反對をせられたのでありまするが、我が黨に於きましては、此の法案こそ眞に健全なる我が國産業の再開を促すものであり、産業の再開は即ち勞働者の仕合せを齎すものなりとの立場を持するものであります、我々の抱懷致しまする見解を率直簡明に申述べる便法と致しまして、委員會及び只今荒畑君が御指摘になりました反對の條項に對し、我々の見解を表明し、併せて所信を披瀝致したいと思ふのであります(拍手)
即ち第一に本法をして勞働者に對する一種の彈壓法なりとする見解でありまするが、勞働者の敵であり、資本家の味方であると云ふやうな、所謂一方的法案であると致しましたならば、既に本法案を審議する必要は更に我々の認めざる所であります(拍手)敗戰後の打拉がれたる日本産業起ち上りの爲に貢獻せる全國勞働者諸君の功績は、實に偉大なるものがあります、此の勤勞大衆の生活を無視する所に、斷じて政治はあり得ませぬ、曾て我が自由黨に於きましても、既に結黨當初、全國民八割の勤勞大衆を無視して政治なしと、はつきり此の點を聲明致して居るのであります(拍手)我等亦健全なる勤勞者諸君の熱誠と、心からなる支持に依つて議會に送られたと云ふ信念は、正に社會黨の諸君、其の他の諸君と同樣に固く之を持して居るのみならず(「ノーノー」)勞働者諸君の仕合せと、其の勞働者諸君唯一の據點たる、健全なる勞働組合の發展に關しましては、又其の熱意に於て斷じて人後に落ちざるものであります(拍手)
諸君、我が國産業界は、生産能率の高い施設の殆どが賠償の對象になり、殘された僅かな施設を最高度に驅使し、漸くにして八千萬同胞が、窮乏と餓死とから起ち上ることを得て居ると云ふ、極めて困難な状況にあります、今勞働者にして眞に産業復興の爲にする生産精進に進まざる限り、假令鬪爭に依つて賃金の増額を得ましても、物價は之に伴つて急騰し、依然として生活は樂になり得ないのであります、此の廢墟と窮乏の裡より起ち上り得る所のたつた一つの道は、實に協調的生産にあると云ふことであります(拍手)今日謂ふ所の經營協議會は、速かに設けられなければなりませぬ、資本に依つて無爲徒食する輩は須らく後退して、企業と云ふものは、企業の實體に觸るる者に依つて指導せらるべきであります、又勞働者の合法的經營參加に依る職場の活溌化こそは、正に今後日本産業に於ける根本の原則であります(拍手)
本法案は此の點に關しまして深く之を示唆する所あり、一般勞働者の團結權を否定するものではなく、爭議の雙方に於て諒解を得なかつた場合に、兩者の間に立つて公平に調停をし、公正に仲裁斡旋をしようと云ふのであります、斯かる公正中庸を得たる法案が何故に彈壓法であるか(拍手)曾て善法を以て惡法と化せるは所謂軍閥であり、彼等の手先であつた官僚であります、既に御承知の如く憲法も改正されんとし、我々は眞の民主主義時代に入つたのであります、今日尚ほ、法を用ふる者は之を惡法となす憂ひありと杞憂するが如きは、口に民主主義を唱へながら、尚且つ自らの眼と自らの腕とを信ずる能はざる人の舊觀念の暴露であります(拍手)
本法案を彈壓法と稱する問題に關聯致しまして、公益事業に於ける爭議開始までの三十日間の豫備期間を、やはり事前の彈壓であると荒畑君は只今稱せられました、又爭議には戰術を要し、戰術には機先を制する必要があると云ふ議論もあります、併し彼の拔打ち行爲、即ち眞珠灣爆撃の暴擧は、齊しく世界の憤激を買つたのであります、是は國際關係に於ける場合であります、國内關係に於きましても、我々の平和的日常生活に於て、公衆の利益を無視する所謂拔打爭議などは、斷じて許さるべきものではないのであります(拍手)併しながら此の物價騰貴と食糧不足の中に、生活の危機に曝された勤勞大衆の血の叫びは、やはり之を聽かなければならないのであります、此の叫びを能く聽くことは、即ち國民が最も身近に被害を被る公益事業の爭議發生を豫め知ることに依つて、沁々と知ることが出來るのであります(拍手)從業員の要求が眞に正しきものであるならば、國民の輿論は必ずや之を支持し、正義感より發する公平なる國民の公憤は、使用者の横暴を鳴らして、必ず從業員側に立つ筈であります、本法は正當な爭議への道を塞ぐものではありませぬ、若しも調停が成らなかつた時には、遂に勤勞者は爭議に入り得るのであります、國民は三十日の間に次の方法を講ずることが出來ます、例へば入院患者は他の病院に移ることも出來る、旅行者は旅程を早めて歸つて來ることも出來る、斯くの如き期日の制限は、單に勞働組合の發達の如何に拘らず、少くとも凡ゆる外國の立法例に堂々と見られる所であるのみならず、「アメリカ」に於ては、十五日間より長きは九十日間の制限期間を設けて居ると云ふことであります、斯かる條項を以て敢て不當と斥けることは、將に公衆の平和生活を脅かすものにして、我等の之を許さずとする所であります(拍手)
次に本法第三十八條に於ける、官公吏爭議禁止の問題であります、官公吏諸君の待遇は、改善せられたと言ひながら尚ほ十分ではなく、且つ行政整理の斷行を前に致しまして、大量馘首を防止せんが爲に爭議權の禁止に不滿を感ずることに付きましては、我が黨と致しましても、十分其の心事に耳を傾けるものであります、故に官公吏諸君の速かなる待遇の改善と、其の生活の保障は、我々の眞劍なる政府への熱望でもあつたのであります(拍手)爭議權を與へられながらも、尚ほ爭議に出でざるは、即ち勤勞者の信義であり、爭議權を與へながら爭議を未然に防止するは、即ち政治の政治たる所以であります、官公史諸君の爭議權が認められますると、政府顛覆の虞があり、少數過激分子の侵入に依る「クーデター」の危險があるなどと云ふことに付きましては、只今彌次諸君の言にもある如く、健全なる官公吏諸君の眞價を知るが故に、是のみを以て我々も禁止理由とは斷じて致しませぬ(拍手)我々は官公吏諸君を信ぜざるにはあらずして、苟且にも一日として澁滯を許さざる其の國務の重きを思ふが故に、即ち官公吏諸君は我々公共の福祉を握るものであります、恰も人間の身體に於ける神經系統の如き、實に重要なる役割を持つて居るが故に、敢て我々は此の禁止條項を支持せんとするものであります(拍手)修正憲法案第九十九條に見ましても、「天皇又は攝政及び國務大臣、國會議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と記してあります、新憲法を尊重擁護すべきは、當然一般國民に於ても然りであります、本條に於きまして特に公務員、即ち現在の官公吏諸君の憲法尊重と擁護の義務を、一般國民と截然之を區別した所以のものは、明かに官公吏諸君の特殊な立場を尊重したものであると私は存ずるのであります(拍手)今日官公吏諸君の爭議禁止は、此の立場の最も重要なるに基くものであります、本來爭議權と云ふものは、正當なる主張が權力に依つて不當に壓迫せられない爲に、是が擁護をせらるるのであります、今我々は、委員長報告にある通り、官公吏諸君の爭議との絶縁に當り、其の待遇改善の爲にする對策協議會の設置を要望致しましたのも、正に此の理由に基くものであります(拍手)若しも進歩的なる官公吏諸君にして、本條項を支持した我々自由黨、進歩黨の政治的責任を問はれるならば、今日、本條の削除に拘泥せらるるよりも、茲に本法を是とした所の我々の今後官公吏諸君に對する深き關心と、其の地位、待遇改善の爲にする努力と責任とを、なぜに一層強く追究せられないのでありませうか(拍手)我々は絶えざる前進を冀ふものであります、官公吏諸君と共に、最も民主的にして進歩的なる對策協議會の實現に斷乎勇敢に邁進せんとするものであります(拍手)
偖て社會黨に於きましては、今日荒畑君の演説を通じはつきりと全面的反對の態度を表明せられましたが、第八十九議會、即ち昨年十二月十一日の勞働組合法に對する此の議場に於ける社會黨の代表者、曾ての政務調査會長でありました河野密君の演説は、只今社會黨の諸君が反對をして居られる此の勞働關係調整法案の必要性に論及をして居られるのであります、此處に速記録を持參致しましたが、全部を讀んで御諒解に供すればはつきりする所でありまするが……
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=15
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016・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=16
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017・江崎眞澄
○江崎眞澄君(續) 此の一部分を抽出致しまして讀みませう、河野君は其の演説に於て斯樣に言つて居られます、河野君の言は、「團結權と、團體交渉權と、罷業權の三つが勞働權の内容をなすものでありまして、隨て勞働立法の體系は勞働組合法、團體協約法、勞働爭議調停法」(「調停法ぢやないか」と呼ぶ者あり)「の三本建で、所謂三位一體に依つて其の目的を達すべきものと信じます」、此の點河野君ははつきりと本調停法の必要性を確信を以て説いて居られます、而して尚ほ其の言葉を續けて、「今囘の勞働組合法には團結權、團體交渉權に付ては明確なる規定を設けて居るのでありまするが、勞働爭議調停法に關しては、勞働委員會を設けると云ふ以外に具體的な方向を明示して居りませぬ」、調停法のないのは一體どうしたことだと言はんばかりに、時の厚生大臣に迫つて居られるのであります(「ヒヤヒヤ」拍手)而して其の演説中に於て、官公吏の組合に於ける取扱に付てもやはり言及して居られるのであります(拍手)之に對して厚生大臣は、極めて詳細に次の如き答辯を致して居ります、「官吏の組合結成、加入は之を認めて居ります、併しながら其の他の法規に依つて種々の制約を受けることは、先程他の質問に御答へ致した通りでありまして、勅令を以て特に制約を定めることを考慮致して居ります」、此の答辯の中、他の質問に答へたと云ふ其の要旨は、官公吏が「政治運動に携らんとする時には、必要に應じて勞働委員會の決議に依り、行政官廳が其の禁止制限をなすことが出來る」と云ふことであります、又官公吏が爭議行爲をなさんとする場合は、行政官廳は之に對し、爭議行爲の中止命令其の他必要な命令を出すことが出來ると云ふことであります(發言する者多し)厚生大臣はそこで徳田君の言はれる彈壓を、勅令を以て決定しようと其の時答へました、若しも是が徳田君の言にあるが如く彈壓とすれば、河野君は斯くの如く言つて居られる、官吏に付ての特別の取扱をなすことに付ては私も了承致します(拍手)と、官公吏爭議權の認否に付ても相當考慮して居たものと認められます、此の河野君の演説は社會黨の當時の代表としてなされたものであります(拍手)
偖て一方「アメリカ」の本法案に對する見解を見まするのに、「アメリカ」の勞働諮問委員會「レーバー・アドヴァイザリー・コミッティ」の日本勞働組合に對する報告書に依れば、其の勞働關係と勞働組合と云ふ項目の中に、斯う書いてあります、日本の勞働立法中の重大なる缺陷を補ふ爲に、勞資の直接交渉に依り解決不能の爭議ある場合に、斡旋、調停、仲裁の適當なる機關が必要であると、本法案の極めて必要なることを記し、而も此の勞働關係調整法は、日本の勞務法制審議會が公聽會と云ふ新しい試みに依る援助と、加ふるに「レーバー・デヴィジョン」及び「レーバー・アドヴアイザリー・コミッティ」の各代表の深き示唆の下に、十分なる必要性と妥當性を以て作つた法案であると云ふことが明かにされて居るのであります(拍手)本法原案審議の勞務法制審議會には、社會黨の幹部數氏が參加して、審議の任に當つて居られます、然らば斯かる國際的必然性に關しましても、曾ては河野密君が勞働爭議調停に關して立法を必要とする旨を述べ、現在の幹部黨員數氏に依つて原案が審議されながら、之を惡罵することに付ては私は甚だ諒解に苦しむものであります(拍手)それは既に「マッカーサー」司令部の見解に俟つまでもなく、勞働運動指導者としての明かに適格性を缺く極端なる徒輩が、「メーデー」を契機として、明かに自らの爲にせんとした矯激なる策動に乘ぜられたるものと斷ぜざるを得ませぬ(拍手)今日社會黨にして、一部勞働者の誤解を一層深からしめるが如き擧に出たることは、世の……(發言する者多し)今日社會黨にして一部勞働者の誤解を一層深からしめるが如き擧に出でたることは、世の表面を走る人氣に拘泥するの餘り、黨自體の無性格と指導性の缺如とを明かに暴露したるものにして、天下の公黨社會黨の面目、又何れにありやと言はざるを得ませぬ(拍手)我々は民主政治の「ライヴァル」として認める社會黨の爲に、又勞働者の代辯者なりと自稱せられる社會黨の爲に、長恨久しきを禁じ得ないのであります(拍手)
私達は都下多數の勞働組合代表の訪問を受けました、又郷土より態々上京せる勞働組合の代表者達にも會つたのであります、是等一部の反對空氣を前に致しまして、其の都度私共は謬見を正すのに誠實の限りを盡したのであります、或る郷土の代表者からは、若しあなたが本法に贊成をされるならば、將來あなたには絶對投票をしないと云ふ言葉を聽きました、又或る人は「ゼネスト」を以て對抗しようとも申しました、今此の日本に──漸く起ち上りの緒に就いて、平和を愛好すると世界に宣言した日本に、誤解の激する所、「ゼネスト」の如き事態が惹起せられるとして、明日からの此の日本はどうなるでありませうか、我々を支援せる理解ある勞働者の一部が、誤解の赴く所、或は離れて行くこともあるかと思ひまする時に、一抹の寂しさを禁じ得ませぬ、併し我々は支援せられたる勞働者諸君の其の言葉を輕んずるにはあらず、政治家として我々に課せられたる此の任務の、より重大なることを感じまするが故に、敢て國民の公益擁護と、産業再建の爲に、日本全體の利益の上に立ちまして、本法案に贊成したのであります(拍手)斯くてこそ、一部勞働者諸君の誤解は必ず解き得るものと確信致します、我々の眞情の迸る所、誤れる世上の聲も必ず正さずには置かぬとの決意に燃え立つものであります
今や我が日本國は、四邊武力を擁する中に、敢然として之を抛棄、新憲法に於きましては、平和と文化を愛好する國民として、新たなる面目を整へんと致して居るのであります、外に平和愛好を言ひ、内に文化の昂揚を企圖する新生日本にして、例へば男女同權を説くの餘り、家庭に風波の絶えざることが好ましくないとすれば、職場に過激なる階級鬪爭を眺め、之をしも民主主義態勢確立への發展段階として放置すべきでありませうか、此の際階級鬪爭に乘じ、敢て國家革命を企圖せんとする輩の、斷じて侵入を許してはならないのであります
諸君、軍艦「ミゾリー」に於ける降伏調印の日より既に一箇年、過般「マッカーサー」元帥は、此の記念さるべき日に、全日本國民に、否全世界の人類に向つて聲明を發した、相剋する「イデオロギー」が再建途上の日本に大きな不安となつて被さつて居ることを指摘し、日常の民主化鬪爭に於ける「イデオロギー」のあり方を指して曰く、極端な「イデオロギー」が時に改宗者を獲得し、眞の自由主義者の支持を受けることがあるが、是は過去の潛在的な思想から生れる、總ての者を反動者として片付けるやうな歪められた宣傳や文句に依つて、誤り導かれて居る爲めであると喝破されて居ります(拍手)此の言たるや洵に肯綮に當れりと言ふべく、十分反省の必要を感ずるのであります、元帥は……(「偉い者だ、お前は」と呼ぶ者あり)尚ほ斯くの如くに(「マッカーサー」の兄弟見たいだ」と呼ぶ者あり、笑聲)言葉を續けて居る、長い間極端なる保守的右翼の哲學に依つて統制されたる國民が、再び過激派左翼の哲學に依つて統制を導く教義を課さうとする人達の絶好の餌食になつてはならないと云ふことを説いて居るのであります(拍手)諸君、我々は此點深く顧みなければなりませぬ、眞に我々の心から欲する所の道は、正に「ポツダム」宣言に意圖せられたる、偉大なる中庸の道を斷乎として驀進することであります(拍手)恰も本調整法の中庸性を故らに歪曲し、健全なる勞働者諸君を誤らしむるが如き人々の策謀日に顯著なるを眺めては、我等亦身内に馳巡る血潮の奔騰と共に、斷じて壇上に叫ばざるを得ないのであります(拍手)諸君、本法は勞働立法の完全なる體系を整へんとする公正なる調整法であります、我々は本法の飽くまでも公正なる運用を期し、健全なる勞働組合の發展と勞働者諸君の幸福を冀ひ、協調的友愛の生産態勢確立の爲に、敢て斷じて本法の必要性を認むるのであります(拍手)茲に我が黨は委員長報告の附帶決議を加へて、本案に贊成するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=17
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018・山崎猛
○議長(山崎猛君) 原國君
〔原國君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=18
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019・原國
○原國君 私は只今議題となりました勞働關係調整法案に對しまして、協同民主黨を代表致しまして、反對の意思表示をせんとするものであります(拍手)
何故ならば先に委員長報告に依りますれば、斯くあります、昨年制定になりました勞働組合を一輪とし、只今制定にならうとする勞働關係調整法案を一輪とし、勞働基準法を横に使つてやること自體が宜しいと云ふことであります、我々は其のやうな意味合に於きまして、勞働關係調整法案を勞働基準法と共に提出致さずして、單獨に今囘之を提出することに對しまして反對の意思表示をせんとするものなのであります(拍手)
其の根據をなすものは、企業形態の民主化が達成されて居りませぬ今日、本法案の如く、勞資の間を劃然と區別して、勞働爭議に對し、強制調停の方策を講じますことは、立法の精神とは反對に、却て階級鬪爭を激化し、勞働組合の健全なる發達を阻碍致すことと存じます(拍手)延いては日本再建に寧ろ有害なりと云ふ判斷に基き斷乎本案に反對するものであります(拍手)
諸君、今日慘憺たる敗戰日本を再建する爲め、殆ど唯一と申して宜しき基盤は、國民の勞働力であると信ずるものであります(拍手)此の國民の勞働力が、日本經濟の中に眞に重要なる地位と發言權を與へられずしては、日本再建は不可能であると信ずるのであります(拍手)今日の日本が關する限り、勞働は商品にあらず、企業の最も重要なる構成的要素を成すものであります、而も今後日本企業再建に關する金融的措置が、復興金融金庫の如き國家資本への依存性を増大せんと致して居ります事情を考慮し、更に殘存企業が、賠償、戰災と云ふが如き自己の意思に基かざる事實を免れたることに依ると致しますならば、企業が從來に比し著しく社會性を加へて參つたことは見逃すことの出來ない事實であります、斯く觀じますれば、資本と勞働の比重が非常な變化を來したことは率直に認めねばなりませぬ、此の觀點に立つて徹底的企業の民主化を確立致します所に、産業の平和が存すると信ずるのであります(拍手)斯くの如き勞資の均衡の取れた企業形態を先づ確立して、爭議の發生の原因を拔本塞源的に芟除せずして、爭議のみを對象として之を彈壓せんとする立法は、勤勞者の主張を甚だしく抑壓するもので、是は折角盛上りつつある勞働組合運動を、双葉にして摘み取る結果となるのであります(拍手)かるが故に我々は斷じて承認し得ざる所であります
我が黨は、階級鬪爭に對しては理想として否定的立場を取つて居りますが、さりとて往年の勞資協調的温情主義を主張するものでもございませぬ(拍手)此の際日本の企業形態を徹底的に民主化する、即ち資本的にも、經營の面にも、勞働者を積極的に參加せしめ、之に依つて、資本家も、技術者も、勞働者も、それぞれの立場から其の特質を發揮しつつ、責任を以て企業に參畫し、經濟復興の基盤たる産業秩序を確立せんとするものであります(拍手)我が黨は、斯かる秩序と安定ある協同主義に依る新しい日本を建設する爲に、理想主義的鬪爭は辭するものではありませぬ、政府は勞働基準法を立案して、數日前新聞紙上に發表致して居りますが、斯かる勤勞者の地位と生活を保障する立法こそは、先づ眞先に取上ぐべきものでありまして、之を後にして爭議の抑壓法を先にするが如きは、本末顛倒の甚だしきものと言はねばなりませぬ(拍手)勤勞者の權利を不當に壓迫するにあらずやと云ふ疑念が、全勤勞大衆に生ずることは當然なりと言はざるを得ないのであります(拍手)
我々は日本の企業體制を、勤勞を中心として徹底的に民主化すると共に、勞働基準法を設定して完全に勞働者の保護を講じ、爭議發生の原因を根本的に排除し、然る後に於て本法案を提出すると云ふのであれば、可否は又別途に考慮するかも知れないのであります、我々は又勞働者が、我が國の置かれて居る客觀的事態を冷靜に大局的に判斷せずして、徒らに自己中心的な主張をなすは、嚴に愼まねばならぬことを一言附言致すものであります、然るに其の保障の立法的措置を講ぜずして、爭議のみを抑壓せんとする所に吾人の反對理由があるのであります
本法案は、全國數百萬の官公吏を初め、勤勞大衆に非常なる衝撃を與へ、本法案の通過に對し熱烈必死なる反對運動を行ひつつあるは勿論、本議場に於ても、我が黨は固より、社會黨其の他所謂與黨にあらざるものの強く反對して居る所以であります(拍手)斯かる現状は政府も亦十分に之を認識して居ることと考へます、而も斯かる熱烈必死の反對運動を押切つて本法案を通過せしめて、國民の勤勞意欲を日本再建に結集することが可能なりや否や、敢て河合厚生大臣の御反省を促して已まぬものであります(拍手)
之に依つて生ずる紛爭混亂に對しては、政府及び本法案の通過に贊意を表する者に其の責任のあることを改めて強く表明して、私は反對の意思を表せんとするものでございます(拍手)
〔議長退席、副議長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=19
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020・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 原健三郎君
〔原健三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=20
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021・原健三郎
○原健三郎君 私は日本進歩黨を代表致しまして、只今上程になつて居りまする勞働關係調整法案に對し、是こそ我が國今日の國家組織の下に於ける勞働運動を健全に發達せしめる爲め、當然且つ不可缺の立法なりと信じ、委員長報告の原案に贊成の意を表するものであります
私は此の際政府に對しまして、只今委員長の縷縷御説明になりました所の本案の附帶決議を能く熟讀翫味し、之を誠意を以て實行せられんことを要望するものであります、と同時に特に次の一點に對する政府の善處を望みたいのであります、即ち現在の勞働爭議發生の主たる原因は、勞働者の生活不安と企業體の經營不安との噛合せから來て居るのであります、而して經營不安の最大の原因は、勞働者に對する家族手當を含めての生活給が、其の能率給を遙かに上廻はつて居り、而も其の兩者の幅を悉く企業體に負擔せしめて居る所にあるのであります(拍手)故に政府は今般斷行される一聯の經濟安定施策の上に此の點を十分考へられ、勤勞者、經營者共に手を携へて、欣然として日本復興の爲め、産業再建の爲め、勇往邁進出來るやうな特別の考慮を拂はれたく、切に要望して已まない次第であります(拍手)
偖て私は本法案に反對する方々の意見の數點に付て所見を申述べて、本案贊成の論據と致したいと思ふのであります、先づ第一に本法案の、公益事業に於ける拔打爭議の制限に關する件であります、拔打爭議の制限を捉へて、直ちに之を彈壓法なりと斷定され、只今も社會黨の荒畑君は、之を以て治安維持法の如きものであると申されたのであります、併しながら此の勞働調整法の如きものは、世界の民主主義國家に於ては、既に自明の常識たるに過ぎないのであります(拍手)然るに斯かる世界の常識的なことを、未だ日本に於ては理解することが出來なくて、彈壓法であるとか、或は治安維持法に類するものであると言ふ如き者があるに至つては、遺憾千萬なりと言はざるを得ないのであります(拍手)交通機關、通信機關の拔打爭議がどれ程一般公衆に迷惑を及ぼすか、又病院の拔打爭議の一般に及ぼす影響を考へます時に、是等は今更論ずるまでもない事柄であります、之に對して反對論者は、勞働者の人格を信頼せよ、然らば調整法の如きものは必要がないと云ふことを屡屡申されて居るのであります、併し是は元來事柄の本質を曲解せるものであると私は考へます(拍手)何故ならば此の調整法の據つて立つ所のものは、組合法の第一條及び第十二條などに於て保護されて居る爭議權の上に立ち、而も此の爭議權は飽くまでも正當であるべきことの裏付けであつて、謂はば「フェアー・プレー」を尊重する「スポーツ」に於ける「ルール」にも比すべきものなのであります(拍手)隨て勞働者の人格を尊重すべしと云ふ議論は、此の「ルール」に屬し、此の裏付けとなるべき精神上の問題でありまして、隨て自ら別個の問題に屬するのであります、反對論者は本法を以て、先刻も社會黨の方々が屡屡申されたのでありますが、彈壓法となし、勞働爭議調整法は無用なりと云ふことを申されたのであります、私は此の反對論に御答へ致したいのでありますが、斯かる規定の明文乃至不文法のある「アメリカ」、「イギリス」を初めとし、歐米の民主主義國家に於ては、果して勞働者の人格を尊重して居ないと云ふことになるのでありませうか、換言すれば「アメリカ」「イギリス」などの民主主義國家に於て、長き經驗の下に制定實施されて居りまする規定が、何故獨り我が國のみに於ては彈壓法であり、治安維持法であると斷じなければならぬのであるか(拍手)私は斯くの如き暴論に對し、之を理解するに苦しむものであります、單なる勞働者の彈壓法ならば、我々も之に反對するに決して躊躇するものではないのであります、我が黨も亦勞働者及び勤勞者の生活權を擁護し、其の生活の充實と向上とを期することに付ては、敢て他黨の人後に落ちるものでないと云ふことを、此處に明言して憚らないものであります(拍手)勞働者の人格を尊重し、生活を向上せしめることは、獨り社会黨其の他の専賣特許でないと云ふことを名言して憚らないのである(拍手)
次に第二點は官吏の爭議行爲に付てであります、我々は官吏諸君の待遇が一般諸會社に比して著しく低いものであることを十分認識して居るのであります、又國民の公僕として、其の品位を保つ上に於ても、待遇は當然改善されなければならぬと云ふことを痛感致して居ります、隨て官吏の待遇問題に付ては、其の性質上官吏の代表者と、政府竝に議會の代表者より成る委員會を作り、其の委員會に於て、國民の眼前に於て、公正に此の問題を解決することが最も望ましいと私共は思ふのであります(拍手)斯く考へて來まして、茲に官吏の同盟罷業に付て考へたいのであります、私は考へますのに、官吏の同盟罷業は、少くとも國民多數の支持を受ける政府との實力鬪爭を意味するものであると私は斷定したいのであります(拍手)而して其の待遇改善に關しては、豫算上に於て議會の協贊を要するものでありますから、窮極に於ては、國民大衆を背景とする所の議會に對する間接の實力鬪爭をも意味するものであります、更に其の爭議權を政治的に利用致しまして、曾て戰時中國民の頭上に君臨致して居りました所の上層官僚が、今日再び生活難に直面して居る少壯官吏の苦悶を利用致しまして、新たに民主主義の假面を被り、政黨を壓して其の勢力を再び擡頭せしめようと致して居るのでありまして、場合に依つては國民多數の意思に反して政府を顛覆せしめることも亦出來るのであります、現に欧洲の某大國に其の實例を見るのであります、上層官吏諸公の自重を要望する所以が茲にあるのであります、此の官僚勢力の擡頭に對しまして、常に最も痛烈なる批判をなしつつある社會黨が、此の點に對して只管目を掩はんとせられる態度は、甚だ以て奇怪千萬なりと言はざるを得ないのであります(拍手)此の官僚勢力擡頭に對し、先刻荒畑君が色々辯解されたのでありますが、其の苦しい胸中察するに餘りがあるのであります
次に第三點として、私の本法案に反對する一部指導者に申上げたいのであります、我が國の勞働組合が、此の程度の平板的なる調整法を認めずして、將來世界勞働組合に參加しようなどと云ふことは以ての外であります(拍手)先程社会黨の荒畑君は、奴隷的條件の下に於ける勞働調整法に贊成する位ならば、さう云ふやうな勞働組合には入らなくても、日本に於て孤立して居つても宜いと云ふやうなことを申されたのであります、併しながら今日の立法に於て、何處に奴隷的條項が含まれて居るかと私は問ひたいのであります、他日世界勞働組合の加盟に當つて、日本には如何なる調整法ありやと尋ねられた場合に、私の方は調整法はないが、勞働委員會を活用して然るべくやつて居るなどと言つて、涼しい顏をして濟まされるものであるかどうかを反問したいのであります(拍手)私は勞働組合法と勞働基準法に依つて、勞働者の團結權が確立し、最低生活が保障され、而して更に勞働調整法に依つて、國家公共の利益が維持されるものであると考へます、此の三法に依つて、我が國の産業の再建がなされるものであると確信するのであります、日本産業の爲にも、是非とも本調整法の通過を必要とするものであります、重ねて申します、我々は勞働者諸君を眞に愛するが故に、敢て勞働調整法を通過せしめ、以て日本の勞働運動を世界的水準に進めたいと念願するものであります(拍手)
次に勞働組合運動と政黨の關係であります、此のことに關しましては、我が黨の同僚よりも本議場に於て指摘されました如く、我が國の勞働運動は、極端なる左右何れにも偏せず、中正の道を進むべきことが絶對に必要であることは申すまでもないのであります、又此のことは、「アチソン」米國代表が屡屡指摘されて居る所でもあるのであります、是と共に組合運動が特定政黨の地盤となることの必要なることは、總同盟でも論ぜられ、現に全國炭礦組合議長の水谷孝氏は、其の所屬政黨である所の共産黨を脱黨して、組合運動の前途に大きな話題を投掛けて居ることは御承知の通りであります、組合が一黨一派に偏することは、明かに其の戰線の弱體化を意味するものであり、勞働運動は再建一箇年の經過を經て、今や次期の輝かしき發展を前にして、一轉機に立つて居ると言へるのであります、殊に「アメリカ」のA・F・L、C・I・Оの委員長からは、次のやうな熱烈なる「メッセージ」が來て居るのであります、日本を救ふものは實に勞働組合の健全なる發展のみであるとの熱烈なる「メツセージ」が送られ、其の第一に於ては、組合運動が中正に發展すること、第二に於きましては、特定政黨に利用されることを避けることの二つの點を附言せられて居るのであります(拍手)是こそ、我が國の一部の政黨に取つては、大いに傾聽すべき必要があらうと存ぜられます、要するに勞働組合運動が一部の政黨に誤られることなく、すくすくと發展せられることを私共は衷心から望むものでありまして、又其の多幸なる前途を心から祝福して已まないものであります(拍手)
次に委員會でも論議の焦點となりました所の生産管理の問題に付て、一言致したいのであります、生産管理が合法でないことは、政府が屡屡述べられた通りであります、之に對して反對論は、生産管理を全面的に否定することはいけない、個々の場合に付て判定しろ、即ち生産の能率が上り、且つ秩序のある生産管理は認めても宜いではないかと云ふのが、其の反對論の骨子であるやうに思はれるのであります、併し私は今日の國家組織の下に於て、又經濟制度の下に於ては、之を認めることは出來ないと信ずるものであります、何故ならば、企業權と勞働權とは相互に尊重され、而も相互に侵すことが許されないものであると云ふことであります(拍手)即ち企業權と勞働權との間には、はつきりと一線が引かれなければならないと信ずるものであります、昨年以來の生産管理の實績に於ては、勞働者が自覺と責任を持つて、資本家經營よりも遙かに優れたる生産成績を擧げた實例も、決して少くはないやうであります、而も尚ほ成功した數は、失敗した數に比ぶれば實に寥々たるものであります(拍手)假に成功致しましたものでも、一、二の例外を除いては、それはほんの短期間であつた場合のみのやうであります、生産管理が失敗した事例の多くの中には、洵に寒心に堪へないものがあるのであります、即ち管理中に、資本家や工場長、技師を脅迫して暴行が行はれ、甚だしきに至つては、人民裁判と稱して、尊ばるべき人權が大衆の眼前に於て蹂躙されたと云ふ、驚くべき實例があるのであります(拍手)又生産を上げる爲の粗製濫造を行つたり、炭礦の場合には濫掘を行ひ、鑛山の命脈を必要以上に縮めると云ふやうな事例も亦あるのであります、勿論私は斯く言へばとて、資本家がいきなり工場を閉鎖し、勞働者をおつぽり出して雲隱れしたなどと云ふやうなことも知つて居るのであります、斯くの如き憎むべき資本家に對しては、私は斷乎糺彈しなければならないと信ずるものであります(拍手)併しそれに對する追究や處罰は、他の法律を以て取締るべきであつて、資本家の「サボ」と、生産管理の合法非合法とは、自ら別個の問題に屬するのであります、然らば資本家が勞働者をおつぽり出した如き場合の對策如何と云ふことになるのであります、其の時は、速かに他の會社をして代位經營乃至は委任經營をなさしめ、以て一方に於ては勞働者を生活不安に陷れることなく、他方に於ては生産が「ストップ」することのないやう、十分なる措置のなさるべきことが必要であらうと考へるのであります(拍手)要するに、生産管理の問題に付ては、委員會に於て河合厚生大臣の懇切丁寧、條理整然たる答辯に接し、委員も納得し得たのであります、最早本問題に對する論議の餘地はないと私は考へるのであります(拍手)
本法案が今日に至るまでの經過に付て、私は一言致したいのであります、本法案が勞務法制審議會で答申されるまでの經緯、乃至は議會へ提出されて以來、委員會に於ける表裏を通じての社會黨の態度を冷靜に我々が今考察致します時に於て、洵に了解に苦しむものがあるのであります、何故なら、社會黨の有力幹部は、勞務法制審議會の立案に參畫した最初に於ては贊成の意を表して居つたのであります
〔「社會黨は最初から反對だ」「默つて聽け」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=21
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022・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 不規則なる發言をしないやう御注意願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=22
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023・原健三郎
○原健三郎君(續) 又社會黨の主流をなす、社會民主主義を奉ずる一聯の幹部諸公が、自己の理想を達成する爲の社會立法の構想の中には、當然此のやうな法律は考へて居られたに違ひないと私は信ずるのであります(拍手)然るに「メーデー」の宣言の中に、勞調法反對の文字が挿入されるに至つた頃から、勞働組合の反對運動に抗し切れず、其の態度をば澁々と變へ始めて來たのであります(拍手)又議會に於ても、最初は修正的な立場を仄めかしながら、最後には全面的反對の立場を執るに至つたのであります(拍手)私は此の終始曖昧なる社會黨の態度は、公黨として洵に不可解千萬なりと言はなければならないのであります(拍手)斯かるが故に…
〔「何が曖昧だ」と呼び其の他の發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=23
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024・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 靜肅に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=24
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025・原健三郎
○原健三郎君(續) 斯かるが故に社會黨とは、果して勞働階級の福祉の爲に信念に向つて一路邁進する政黨なりや(拍手)將又矯激なる言動をなす某政黨の煽動に引掛つて、それに附和雷同する自主性のない政黨なりや(拍手)我我は其の判斷に苦しむものであります、斯くの如き態度を以て、社會黨は如何にして天下の勞働者の信頼を博し得んやと言ひたいのである(拍手)
最後に一言致したいことは、法律は…(「曖昧でなくんば迎合だ」と呼び其の他發言する者あり)最後に一言致したいことは、法律は誰が誰の爲に作つたものであるかと云ふことであります、是が極めて重要なことであります、而して本法案こそは、現政府が國家公共の福祉を念じ、國民大多數の幸福の維持の爲に作つたものであることを申上げたいのである(拍手)我々は常に國民全體の幸福を念願として、其の一貫不動の信念を貫かんとするものであります(拍手)我々は社會黨の如く迷ふ所なく、一路勇往邁進、此の國民全體の福祉を實現せんとする國民政黨の態度を持して行きたいと信念して居るものである、併し果して此の我々の國民政黨の態度が是であるか、それとも一部の階級の利害を主張して、他を顧みざる階級政黨が是であるか(拍手)私は敢て此のことを指摘して、本案贊成の結論と致したいと思ふのであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=25
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026・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 野本品吉君
〔野本品吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=26
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027・野本品吉
○野本品吉君 私は新政會を代表致しまして、以下申述べる理由に依りまして、本案に反對の意を表せんとするものであります(拍手)
第一點は、本案は其の基本法とも言ふべき勞働組合法の立法精神と一致せぬものあることを指摘致したいのであります、即ち第八十九議會に於きまして、我が國民主化の魁けとして提案せられました勞働組合法提案に當りまして、時の芦田厚生大臣は提案の理由を次の如く説明されて居ります、「本法案提出の理由を一言にして申せば、時代の要求に即應して、我が國に於ける民主主義的傾向の復活強化を促進し、勞働階級の福祉を増進して、社會進歩の法則に歩調を合せんとする爲めの立法であります、曩に聯合國最高司令部より帝國政府に對し勞働組合を促進助長すべき旨の要請が發せられたのも亦右の趣旨に外ならぬものと思考致します、此の機會に於て帝國政府は、我が國産業の再建の上に重要な地位を占める勞働の統一と秩序を與へ、其の勞働條件を適正にし、勞働意欲を積極的に昂揚せんが爲め、勞働組合の健全なる結成活動を保護助成せんとする意圖を以て本法案を提出したのであります」と言はれて居ります(「其の通りぢやないか」と呼ぶ者あり)之に依つて見まするならば、從來の如く少數の企畫と支配とを以て、命令的に多數勤勞者に臨む封建的態度を一擲し、事業經營に於ける勞働の意義と價値とを確認し、勤勞者の人格を尊重し、彼等の知性と情熱とを結集して、之を事業の企畫運營に活かし、自主自律、積極的に能力の最善を國家の再建に協力せしめんとする意圖に出でて居ることは、火を睹るよりも明かであります、勞働者の正當なる發言を支持強化する爲に團結權を認め、職務に安住し得る途を開く爲に交渉權を認め、而して勤勞者の正當なる主張が阻止せられんとした場合に於て、勤勞大衆の最後にして唯一の途である爭議權を確認致しましたのも是が爲であります、斯く考へます時に、或は巧みに勞働爭議抑壓の意圖を内藏し、或は團結權、爭議權を否認するが如き内容を有する本法案は、時代の要求に即應せず、民主主義的傾向の復活強化を阻碍し、勤勞階級の福祉を害する點に於きまして、正に社會進歩の法則に逆行せんとするものでありますので(拍手)我々は斷じて之に與することが出來ないのであります
第二點は、本法案第三十七條に規定されて居ります所謂爭議三十日間の餘裕の期間の問題であります、其の點に關しまして河合厚生大臣は、是は公益事業の拔打爭議を禁止して、國家公衆に於て爭議行爲の發生に對處する爲に必要なる餘裕を與へ、且つ此の期間、輿論の批判を十分に受けることが出來るやうに致しまして云々と説明されて居りますが、是は爭議抑壓の意圖を最も巧みに擬裝隱蔽したものとして、疑ひを持たざるを得ないのであります(拍手)即ち此の三十日間は、使用者側は絶對不敗の防禦陣地を構築する期間になり、又輿論を自己に有利に誘導展開せしめんとする爲の、謂はば「スパイ」暗躍の舞薹になるのであります、我々の見解を以て致しますならば、公益事業に於ける爭議は、輿論の支持なくして成立ち得ないのが其の原則であります、萬一爲にせんとする一部指導者に依つて、好ましからざる爭議が起つたと致しましても、斯かる場合、嚴肅なる國民の輿論の批判は、必ずや彼等を反省悔悟せしむることを信じて疑はないのであります(拍手)先程私は誰方かが勤勞大衆を引摺つて云々と云ふ言葉を此處から發せられたやうに耳にして居りますが、現在の勤勞大衆は、甘い言葉で引摺られる程、其の批判力が低昧愚劣ではないと思ひます(拍手)政府は宜しく、一部策動者が假にあつたと致しましても、是等に對して兢々として恐るることなく、又之に依つて多數善良なる勤勞者を疑ひ、之を拘束するが如き消極的態度に出ることなく、寧ろ積極的に、勤勞者は勿論一般國民に對しまして、勞働立法の何ものであるかを能く知らせ、又之に對する正しき批判と態度との養成に積極的に進出すべきであると思ふのであります(拍手)
第三は、本法案第三十八條に規定されて居ります官公吏の爭議抑壓禁止に關するものであります、由來是等の人達が極めて菲薄なる待遇に耐へて、其の職責を果しつつあつたことに對しましては、萬人異論なく之を認むる所であります、而して深刻な食糧不安が昂進する、「インフレ」に依つて是等官公吏の生活は洵に脅かされて居りまして、而も日毎に増加して行きます失業者群を前にして、之を我が身に襲ひ掛かる明日の自分の姿に思ひます時に、勤勞者の生活は不安と云ふよりは、寧ろ悲痛其のものなのであります、斯かる場合團結權、爭議權こそは、彼等を精神的に安定せしむると共に、其の生活を守る爲の唯一の途なのであります、隨て法律に依る強權を以て之を抑壓せんとするが如きは、却て多數官公吏をして常に不安動搖、不平抗爭の一途を辿らしむるものでありまして、(拍手)決して賢明なる政治の道であるとは言へないのであります、若し夫れ彼等の人格を尊重し、其の責任感に期待し、信頼するの雅量を以て臨みますならば、彼等は自奮自勵、事務に、事業に、其の全力を傾倒して著しく業績を擧げるであらうことは、斷じて疑ひのない所であります(拍手)私は、士は己を知る者の爲に死すと云ふ言葉を、今の指導階級の人達が沁み沁み御考へにならんことを切望して已みませぬ、更に爭議權と爭議行爲とをはつきりと區別して居ります是等官公吏の人達は、我々は徒らに爭議行爲に出づることを考へて居るのではない、願ふ所は、與へられた職分に安住して、國民の公僕として官廳の民主化に寄與貢獻せんとして居ると云ふことを切實に物語つて居るのであります、是等の事實に徴しまして、私共は愈愈抑壓規定の無意味であることを叫ばざるを得ないのであります(拍手)
先般政府は食糧の供出に關しまして、囂々たる非難と反對とを押切りまして、政府に取つて食糧供出の爲の唯一の傳家の寶刀として、強權發動の承認を求めました、然るに今や政府の部下として最も信頼し、最も愛護すべき全國幾百萬の官公吏が、彼等の生活を護る最後にして唯一つの武器である爭議權を、傳家の寶刀として要求する、此の切なる聲に耳を傾けないのは如何なる理由でありませうか(拍手)私は茲に封建制をまざまざと見せ付けられる感なきを得ないのであります(拍手、「そんな論理があるか」と呼ぶ者あり)
次に本法案が其の提出の時期を誤つて居ることに關しましては、既に幾多述べられましたが、政府は此の點に關する輿論に應へんとしてか、最近勞働基準法其の他各種の案を提示されて居ります、(「ノーノー」「元から出來てるよ」と呼ぶ者あり)之に關しまして思ひますことは、茲にも亦所謂生活に困らない階級の錯覺が、勞働行政の眞諦を把握し得ないと云ふことを言ひたいのであります(拍手)即ち勞働者に取りましては、今日の生活が問題である、明日の生活が問題なのであります(拍手)明日の百圓よりも、今日の五十圓が彼等を助ける場合があるのであります(拍手)如何に立派な效果ある施策を示されましても、半年先に與へられるのでありましては、是は決して勞働者の生活を理解して居るものとは言へないのであります、それは恰も病人に對しまして、病篤きに及んで名醫を迎へることを豫約するの愚であるのであります(拍手)
〔副議長退席、議長著席〕
更に又私は、政府及び自由、進歩兩黨の諸君が熱心に唱へられる勞資の協調竝に産業平和の主張に付きまして、簡單に一言致します、是等の主張に對しましては、正面から反對する者の少いのは明らかであります、併しながら此の洵に綺麗な言葉は爭議原因の根本的な除去、解決に對する現實的な具體的な施策と、是が實現に對する誠意ある努力とが同時に示されなければならないと云ふことを主張するのであります、斯くして初めて勞資協調、産業平和の言葉に耳を傾けるの價値を認めるのであります、美しい言葉に依りまして我々の主張が麻醉させられるやうなことがあつてはならないのであります(拍手)尚ほ此のことに付て思ひ起しますことは、過去に於ける勞資協調の運動が、果して如何なる形式と内容と實質とに於て推進されたかと云ふことであります、さうして其の結果が勞働者、資本家の兩方に等しく幸ひを齎して來て居つたかどうかと云ふことも、嚴密に檢討さるべきことなのであります(拍手)
最後に私は、前議會に勞働組合法が提出致されました時に於ける、自由黨竝に進歩黨代表の演説の言葉を思ひ起します、それは日本産業の再出發に當りまして、勤勞者の地位を向上するに最も必要な法律の制定せられますことは洵に當を得たることでありまして云々と言ひ、更に本法の通過に依つて我が國勞働者の待遇を世界的水準に引上げたいと、絶讃の中に滿場一致可決されたのであります、然るに其の組合法が、今や本法案の通過に依りまして其の意義の大半を失ひ、而も感激に涙しつつ先日通過致しました憲法草案に示された勞働者の權利が、此の法案の通過に依りまして空文化せられんとする危機に直面して居ることを考へます時に、私は諸君と共に此の案の通過を阻止することに努めねばならないのであります(拍手)以上所感を述べまして、重ねて反對の意を明らかに致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=27
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028・山崎猛
○議長(山崎猛君) 戸叶里子君
〔戸叶里子君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=28
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029・戸叶里子
○戸叶里子君 私は勞働關係調整法案に對し、無所屬倶樂部の反對者を代表して、一言反對意見を述べさせて戴きたいと思ひます(拍手)
本法案に對し、社會黨は既に勤勞者の立場から反對意見を述べられました、私は必ずしも階級的立場に立つものではありませぬが、國民代表の一人として、結論としては反對せざるを得ないものであります(拍手)
日本の民主化は、政治的民主主義の實現と竝行して、經濟的民主主義の確立が行はれなければなりませぬ(拍手)此の趣旨の下に、人權の尊重が強調せられ、新憲法が制定せられたばかりの本議會に於きまして、此の民主憲法精神に反するとしか思はれない本法案の提出されましたことは、事の意外に驚かざるを得ないのであります(拍手)私達は平和的勤勞國家の建設に當り、國際間の戰爭を抛棄すると同じ精神の下に、國内に於ても出來るだけ國内戰爭的對立抗爭の展開を避けなければなりませぬ、併し其の結果を非難するよりも、寧ろ原因を突止め、之を取除く爲に最大の努力が拂はれなければならないと思ひます(拍手)鬪爭を囘避しても、人權が尊重せられ、生存權が保障せられるやうな社會的安定が確保されない限り、社會的矛盾と不合理を是正する合法的鬪爭を否定する譯には參りませぬ(拍手)民主主義社會の完成は、勤勞大衆の生活の保障なくして、爭議權の剥奪と云ふやうなことでは到底實現出來ないと思ひます(拍手)本法案の贊成の人達ですらも、本法案の附帶決議として、勞働基準法の制定と官公吏の待遇改善委員會の設置等を提唱せられて居りますが、それ等の實現を見ざるに先だち、本法案のみを無理押しして通過せしめんとする意圖が那邊にあるか、了解に苦しむものであります(拍手)
戰後の經濟的混亂、「インフレ」の昂進に依る生活の窮乏から、爭議が頻發し、深刻化されつつありますが、官公吏竝に一般公益事業從業員の人達は、其の生活權擁護の死物狂ひと思はれる爭議に於てすらも、特殊な異例を除いては殆ど行過ぎが行はれて居るとは思はれませぬ、假令多少の行過ぎがあつたと思はれる所に於てさへも、内部から批判がなされ、輿論が之に警告を加へ、又そこに反省が行はれて居ります、此の苦悶と此の態度こそ、民主主義發達途上に於ける正しい方向であると思ひます(拍手)勞働組合の健全な發達に努力するこそ、民主主義政府の執るべき態度ではないでせうか、先般私の郷里栃木縣に於て、教員組合の人達が、全國一の最低待遇を打開すべく、辭表を懷ろにして將に爭議に入らうとしましたが、縣當局の善處に依つて問題は解決されました、之を以てしましても、當局に誠意があるならば、爭議は未然に防げると思ひます、國鐵爭議の如きも、當局が誠意を以て交通網の擴張を圖り、人員整理を囘避するならば、「ゼネラル・ストライキ」の危機を招くことなしに問題は解決されると思ひます(拍手)
嘗て第一次歐洲大戰の後、英國で「ロイド・ジョージ」が提唱しましたやうに、鐵道事業の復興と擴張が、戰後失業救済の國策として、當然採用さるべき性質のものであります、官公吏竝に一般公益事業從業員の人達は、國民の中に於ても比較的常識と判斷力を具備した人達であると認められて居ります、是等の人々が、常軌を逸した非常識な行動を執るとは思はれませぬ、それなのに政府は、自らの部下たるそれ等の人々を信頼せずして、何人が之を信頼することが出來るでありませう(拍手)勞働調整法案は、官公吏を格子なき牢獄に封じ、之を化石化し、警戒線を張り、其の人格を無視した惡法です、斯くの如く政府と官公吏との間に相互の信頼感を失はしむるやうな法案は、宜しく即座に撤囘すべきであると思ひます(拍手)勞働組合に依る團結權を認めながら、其の爭議權を認めないと云ふ態度は、人間に生命を與へながら、人間に生命なき人形になれと云ふに等しいではありませぬか(拍手)權力的な法の抑制よりも、常識的な自省の方が、眞に社會秩序を齎すものであることを信じます、生存を保障し、人權を尊重せよとの人權擁護の建前から、新憲法の精神を身に體して、私は本案に反對する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 志賀義雄君
〔志賀義雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=30
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031・志賀義雄
○志賀義雄君 逢澤委員長は、勞働組合法と勞働基準法案とは車の兩輪をなすものであり、只今討論中の勞働關係調整法案は其の「シャフト」であると言はれましたが、是は「シャフト」ではなくて、横から突込んだ棒であります(拍手)是ではまだまだ不完全であり、又非常に不十分にしか活用されて居ない勞働組合法と、來るべき勞働基準法と云ふ二つの兩輪は、巧く動くどころか、がたがたになつてしまふのであります、是は勞働關係調整法と云ふよりも、寧ろ勞働關係調整棒と云つた方が宜いと思ひます、我々共産黨は、こんな棒に贊成することは出來ませぬ、絶對反對であります
先程江崎君は、社會黨は腕と眼に自信がないから反對するのだと言はれましたが、私は江崎君の意見とは反對に、政府に於て日本の勞働問題を正しく處理する力がない、自信がないから、こんな亂暴な法案を出すのだと言ひたいのであります(拍手)曩に政府に對して最高司令部は、日本の民衆は必ずしも吉田内閣を支持して居ないと言つて居りますが、此の點に付て先程自由黨の代表及び進歩黨の代表諸君から、頻りに社會黨に對して攻撃を加へて居たやうでありますが、それよりも政府の官僚的な政策に對し、江崎君は、國民の大多數の支持を得て居る政府だと言はれたが、關係方面では必ずしも支持を得て居ないと言ふ其の政府のやり方に對して、突込んで行くべき所はなぜ突込まないのか、更に勞務法制審議會のことを原君は引用されましたが、私は其の委員會に出て居りますから、能く知つて居りますが、討論を續けて行く内に、社會黨の委員の諸君も我々も同じく此の法案に反對したのであります、さうして私は自由黨、進歩黨の諸君に伺ひたいのでありますが、社會黨が國民主權を提唱した時之に反對して置きながら、後に委員會の途中に於て突如として國民主權と云ふ文句を入れることを言はれたのはなぜでありますか(拍手)勞働爭議を調停する法律は「アメリカ」「イギリス」「カナダ」等の民主主義國にもあるのだから、之を日本に實現するのを彈壓方と言ふのは當らないと言はれましたが、一つの法律と云ふものは、假令同じ形を取つて居ても、それが立派な文句に依つて判斷さるべきものではなくして、如何なる諸條件の下で、如何に運用されるか、即ち誰が誰に對してどうするか、之に依つてのみ正しい判斷が出來るのであります(拍手)
關係方面の昨年十二月二十五日の指令に依りますと、國民の一部には、組合運動の目的は唯産業の混亂を來すことであると誤解して居る向きがあると言つて居ります、所が此の國民の一部と云ふのが、外でもない、第一に政府の官僚であると云ふのが事實であります、吉田内閣が、勞働組合の爭議をやることは唯産業の混亂を來すことであると信じて居る證據には、本法案第一條に、「この法律は、勞働組合法と相俟つて、勞働關係の公正な調整を圖り、勞働爭議を豫防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて經濟の興隆に寄與することを目的とする。」と言つて居りますが、是は勞働爭議が産業の平和を紊し、經濟の興隆に反すると云ふ考へ方から出發して居ることを示すものであります
「ナチス」の「ドイツ」や、「ファッショ」の「イタリア」では、「ストライキ」は平和と秩序を紊すものとして、暴力を以て取締られて居りました、軍閥、官僚、財閥の支配して居た戰時中の日本でも同樣である、川崎造船所や愛知時計電氣工場に於ては、當時「ストライキ」の指導者が極刑を受けたと云ふ事實があるのであります、さうして第二次世界大戰中、「アメリカ」で炭抗に於て大「ストライキ」が行はれたことを指して、當時日本の支配者と其の代辯者は、是だから「アメリカ」の勞働者は國家を思ふ念に薄い個人主義者であり、階級的利己心に凝り固まつて居るから、戰爭は「アメリカ」の負けに終ると言つたものであります(拍手)
又第一次世界大戰の時、「イギリス」の勞働組合は、事毎に政府、資本家と爭つて、勞働者としての權利を伸暢し、戰爭の爲に其の生活が不當に押下げられることに反對したのであります、之を見て「ドイツ」の帝國主義者は、「イギリス」の敗北、「ドイツ」の勝利を得得として豫言して居ります、而も第一次、第二次大戰共に爭議を彈壓しなかつた「イギリス」、「アメリカ」側の勝利に終つたのは何故であるか、戰爭中でも、近來民主主義の原則が全面的に無視されず、勞働者が爭議權を認められて居る國では、それだけ國民の分裂が内面的に深化して居なかつたからであります、之を逆に言へば、「ドイツ」、「イタリア」、日本では、爭議を壓迫することばかりに専念して居た爲に、却て今日のやうな慘めな状態を來したと言はざるを得ないのであります(拍手)
社會的に必要な生産手段が私有せられ、勞働者が其の勞働力を賣ることに依つて生活することを餘儀なくされて居る現代の社會では、時には勞働關係が爭ひに陷り、爭議が發生するのは寧ろ當然の現象であります、それに依つて、それを巧みに解決して行くことに依つて、新しい民主主義的秩序が生れるのであります、それが民主主義のありの儘の姿であります、それを頭から産業の平和に悖るものと看做して、本法案には、爭議は社會的な犯罪であると云ふ封建的な官僚的な考へ方がこびり付いて居ることを證明するものであります(拍手)若し是が通過するならば、日本の民主主義化は促進されるどころか、却て阻止されると云ふ結果になるのであります(拍手)
現に讀賣新聞爭議に於て、警察は、「デスク」で仕事をして居る者を暴力を以て引張り、さうして(「もう聽いた、何遍目だよ、君は」と呼ぶ者あり)宜しい、新しいことを今言ひます、未決收容中の四人の社員を、檢事と巣鴨拘置所の看守とが關係方面に連れて行きまして──先程江崎君は勞働課と勞働諮問委員會のことを言はれましたから、私も敢て茲に例を引きますが、其の時に檢事と看守とは、あらうことか、關係方面の前に、編笠を冠せ、手錠を掛けた儘連れて行つたのであります、そこで向ふの主任の人が大變怒つて、「君は何だ」、看守に聽く、「看守であります」、「ゲット・アウト」「出て行け」、「君は何だ」、「私は檢事であります」、「ゲット・アウト」「君も出て行け」、日本の官憲と云ふものは、是程までして國際的な恥曝しをしながら、勞働爭議を彈壓しようとして居る、それは他でもない、實に今の吉田内閣の下に於てであります(拍手)そこで官憲の干渉が輿論の批評を浴びると、今度は會社側は暴力團を雇つて、印刷工員に暴行を加へ、爭議團の食糧品や私有物にまで手を掛けたのでありますが、是等に對して當局は何等の處置をも未だ講じて居ないのであります、然らば斯う云ふ政府に依つて勞働關係調整法が運用されたら、如何なる結果になるか、實例は是だけではない、北海道では炭礦會社側の御用暴力團が、組合の破壞や御用組合化に熱中して居るのを果して政府は取締つたことがあるか、山本弘と云ふ憲兵上りの暴力團の指導者が恣に活動して居るのを、日本の政府は取締つたことがあるか、福岡縣の寶珠山炭礦では、會社の御用暴力團の爲に勞働組合の指導者が殺された事實がある、之に對する當局の態度は洵に手温いものである、又常磐地方の高萩炭礦爭議では、組合事務所を會社暴力團が襲つた時には、正當に事務所を防衞した組合員を、傷害罪と云ふ名義で以て起訴收容して、未だに釋放しない儘で居る、爭議交渉に於ける勞働組合側の態度を云々する當局として、斯う云ふ企業者側及び其の御用團體の態度に對して、今まで、一度だつて取締つたことがないのである
故に斯う云ふ政府の下で此の勞働關係調整法が施行されるならば、それは勞働者に取つて、正に勞働關係調整法が首切りの道具に使はれることは火を睹るより明かであります(拍手)江崎君は職場の活溌化と協調とが必要であると言ひました、併し今の政府は何をやらうとして居るか、勞働關係調整法が衆議院に上程された途端に、運輸省の國鐵當局は大量の首切り計畫を發表したではないか、又全國各地で首切りが事實どしどし始まつて居ります、詰り此の勞働關係調整法と云ふものは、來るべき企業整備を法律的に正當化する爲に資本家に依つて利用されると云ふ、何よりも雄辯な證據であります(拍手)
戰後日本の勞働者が賃金を上げることの出來たのは、決して資本家のお情けに依つたものではない、それは唯爭議に依つて、賃金値上を獲得することに依つて、其の生活權を擁護し得たのであります、其の爭議と云ふものも、今は國民全體が物資に惱んで居る時であるから、生産管理と云ふ形を以てやつた、然るに吉田内閣は、社會秩序保持聲明で、生産管理を非合法だと言つて片付けて居る、さうして其の論據とする所には、爭議の手段としての一時的な生産管理、法律的に言へば事務管理、それを革命に於ける生産管理或は私有財産權、企業權の侵害破棄であるかの如く「デマ」をやつて居るのであります、然らば其の吉田内閣は、資本家の生産「サボタージュ」に對しては今まで何をやつたか、進歩黨の原君は、若しも生産「サボタージュ」をやる資本家があつたならば、斷乎として之に反對すると言はれたが、正田製作所の正田社長が、事業場を閉鎖して一切の資金を持逃げし、勞働者にも賃金を拂はなかつたことに對して、果して原君は斷乎として、攻撃されたかどうか(拍手)更に石炭業の例を採るならば、政府は日本の財閥を主とする石炭業者の生産「サボ」に對して何等「メス」を入れることなく、之に對して次々に補給金の増額を與へて居るではないか、斯う云ふ政府が、生産「サボタージュ」に對して適宜の處置を執ると言つて見た所で、日本の勞働者は誰一人としてそれを信用する者はないのであります(拍手)勞働者は何も好き好んで爭議をやるものではありませぬ、如何に爭議の巧みな共産主義者と雖も、勞働者が生活の苦しさから起ち上ると云ふ氣持がない時に、爭議を製造することは出來ないのであります、斯うして勞働者が已むを得ない理由から起す爭議を、産業の平和を紊すものと斷定するのは、政府が戰爭に負けた其の尻拭ひを、勞働者や俸給生活者だけに押付け、財閥が分け取りをすることを指して産業の平和が維持されると云ふことを言はうとして居るのであります(拍手)
殊に公益事業と稱して、其の從業員の爭議に特別の制限を設けるのは、事實上彼等の爭議權を骨拔にすることであります、公益事業、々々々々と言ふけれども、一體公益事業でない生産、交通事業が一つでもあるか、それを何故特にさう云ふ風に言ふか、是は一國の主要な點に於ける事業の爭議を抑へて置けば、全體を抑へることが出來ると云ふ魂膽から出て居るのであります(拍手)先程から拔打爭議には反對であるから、三十日の期限を設けることは正しいと云ふことでありました、今年の二月の省電爭議と云ふものも、一般には拔打爭議であるかの如く鐵道當局に依つて宣傳されましたが、實はさうではない、あれは安全運轉をやらなければ電車が燒けてしまふ、斯う云ふことを從業員の方から提唱した時に、當局はそれに反對した、あの時にやつて置けば、今になつて鐵道當局が、前の方に繃帶をし、「モーター」の心臟の燒けるのを描いた、あんな滑稽な漫畫を電車の中に發表する必要はなかつたのであります、所が鐵道當局は此の前の省電爭議にさう云ふ「デマ」をやつて居るので、今更組合に對して、あなた方の安全運轉が正しかつたら、それをやつて呉れと云ふことは頼めないので、實は四苦八苦して居ると云ふのが實情であつたのであつて、決して如何なる場合にも勞働者組合は拔打爭議をやるものではありませぬ、況して大きい事業に於ては、是は手品ではないから、全體の意思を纏める上にも、又先方と交渉する上にも、數十日の日時を要することさへあるのであつて、如何なる場合にも、拔打爭議と云ふものはあり得ない、是は勞働運動の實情を知らない方が、拔打などと言つて心配されるだけのことであります(拍手)さうして其の三十日と云ふ日は、「アメリカ」のやうに勞働組合が巨大な組織であり、多年に亙つて爭議基金を積立て、又民主主義的訓練を受けて、勞働者の基本的人權を自ら守ることに慣れて居る國であつては、是は買收と云ふことも、干渉、切崩しと云ふこともありませぬで、詰り原君の所謂「フェアー・プレー」が行はれますが、日本ではさう云ふ「フェアー・プレー」が行はれない、現在此の議場に於て我々が新憲法を審議して居る其の外で、勞働組合の「ストライキ」に對して官憲が干渉をやり、資本家側が買收をやつて居たではないか、況して第三十八條で官公吏の爭議行爲を禁止すると云ふ條項がありますが、之には二つの意義があります、第一には、官公吏と云ふものをやはり今までのやうに人民から切離して、人民に對する特權者保護の道具に使はうと云ふ意圖があるからであります、是は此の議場でも屡屡問題になりました官僚勢力温存の魂膽であります、爭議權を禁止する代りに、官公吏に對しては其の待遇を主務大臣及び代表者に於て十分考慮すると言ふけれども、是は主君に忠勤を勵めば、其の生活は保障してやると云ふ、是れ亦封建的主從關係的な考へ方から出て居るものであります、(「それは違ふ」と呼ぶ者あり)爭議を行はせることなく、唯上からのお情けに依つて待遇を改善して行くと云ふことが、果して今日まで一度だつて官公吏に對して行はれたことがありますか、官公吏の方で要求を出すことがなければ、決して政府當局は待遇改善をやつたことがないのであります(拍手)之に對して爭議權を禁止すると云ふことは、どうしても其の官公吏の待遇を一般より遲らせる、茲に今日まで日本に於て非常に忌はしい事件として頻發した、例の收賄事件と云ふものが能く起る、是は結局官吏の待遇が惡いからである、其の爲に斯う云ふ事件が起るのであります、斯う云ふ不祥事件を防ぐ爲にも、寧ろ官吏に對して爭議權を認め、其の要求する所を、獨立の人格として堂々と獲得する習慣を官吏に與へる方が、民主主義を進める上に於て最上の方法なのであります、現に主務大臣の方で待遇を改善すると言ひながら、運輸省に於ては何が行はれたか、待遇を改善する代りに、十三萬人の首切り計畫が發表されて居るではないか、是が待遇改善であるか、是ではまるで主務大臣の慈悲心と云ふものは、「イソップ」物語に出て來る狼の情と同じことであります、更に憲法審議に於て政府は、勞働者の權利、勤勞者の權利、之を別の法律で決めると言ふけれども、併し最近發表された勞働基準法に於ても、勞働憲章としての性格は少しも持たれて居ない、是は政府が、何れ勞働者の權利に屬することは他の法律でやりますと言うた約束を、みすみす反古にして居るものである、勞務法制審議會に出て來た厚生省の役人の河合大臣以下一人と雖も、憲法の論議の際に斯う云ふ約束をしましたから、之を入れて下さいと言つた者はないのであります、官公吏と云ふものは、其の社會的地位に責任を持つて居る爲に、滅多に「ストライキ」をやらないけれども、其の官吏が切實に爭議權を要求し、之を禁止しようとする政府、全體の官公吏にさへ反對される政府ならば、それは決して治安を保持する責任を持ち得ない内閣でありますから、内閣の方で寧ろ先んじて辭職する方が宜いのであります、故に官公吏と云ふものは、此の法律が出來るならば、日本で爭議權のないのは女中と子守と私共だけでありますと言つて、欺いて居るのであります、詰り官公廳勞働組合が、勞働關係調整法を彼等に對する最大の侮辱であるとして、擧つて反對して居るのも正に此の爲なのであります
膳國務大臣が、去る八月二十四日、記者會見に於て發表した所に依れば、企業者はどうしても人員整理に不徹底になり勝ちであるから、さう云ふものは認めない、經濟安定本部が認めるやうな徹底的な整理をやらせると云ふことを明言して居ります、是等は今囘の勞働關係調整法に於て、政府が決して勞働者の利益を侵害するものではない、寧ろそれを尊重し、組合の健全な發達を圖る爲にやつたと言つたことが全く嘘である、やはり眞の魂膽は、整理を徹底的にやつて、首切りをやる爲に此の法律を作る、斯う云ふ風な意圖を持つて居ることを、膳國務大臣の答辯に依つて我々は窺ひ知ることが出來るのであります、斯う云ふ風に大量首切りの爲に利用される勞働關係調整法には、共産黨は絶對に反對であります、よく…
〔「何でも反對だ」「贊成したり反對したりして居るぢやないか」と呼び其の他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=31
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032・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=32
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033・志賀義雄
○志賀義雄君(續) 原侑君が言はれるやうに、共産黨は贊成する時もあるし、反對する時もある(「何を言ふか」と呼ぶ者あり)議長は、速記録を見れば分りますが、滿場一致で採決されたと云ふことを屡屡言つて居られる、唯斯う云ふ惡法に對しては、共産黨は曖昧な態度を執らず、終始一貫反對するのであります
最後に、今日民族的危機と云ふことが言はれて居る、其の危機を防がうとして、民族「エネルギー」を適當に發散させることをせずに、蒸氣釜に入れた蒸氣の出口を塞ぐやうなことをするのが此の勞働關係調整法である、若しも、爭議をやらせる所はやらせて、堂々と是と爭ふ所は爭ひ、妥協する所は妥協してやるならば、此の民族「エネルギー」は、日本を再建する爲に大いに活用することが出來る、それをやらないやうな、塞ぐやうな、斯う云ふ勞働關係調整法に對しては、共産黨は絶對に反對することを以て私の討論を終りと致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=33
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034・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて討論は終局致しました、本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=34
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035・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
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036・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=36
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037・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=37
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038・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=38
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039・会議録情報3
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勞働關係調整法案 第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=39
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040・山崎猛
○議長(山崎猛君) 採決致します、此の採決は記名投票を以て行ひます、本案に贊成の諸君は白票、反對の諸君は青票、それぞれ持參せられんことを望みます──閉鎖──議席第一番より順投次票せられんことを望みます
〔各員投票〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=40
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041・山崎猛
○議長(山崎猛君) 投票漏はありませぬか──投票漏なしと認めます──投票函閉鎖──開匣──開鎖
〔書記官投票の數を計算〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=41
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042・山崎猛
○議長(山崎猛君) 投票の結果を書記官長より報告致させます
〔大池書記官長朗讀〕
投票總數 三百五十四
可とする者 白票 二百十三
否とする者 青票 百四十一
〔拍 手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=42
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043・山崎猛
○議長(山崎猛君) 右の結果本案は可決致しました
(拍 手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=43
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044・会議録情報4
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〔參 照〕
本案を可とする議員の氏名
安部俊吾君 芦田均君
荒船清十郎君 有田二郎君
井田友平君 井上卓一君
伊藤郷一君 飯國莊三郎君
石井光次郎君 石原團吉君
磯崎貞序君 稻田直道君
稻葉道意君 今井はつ君
岩本信行君 上塚司君
植原悦二郎君 内海安吉君
江崎眞澄君 小笠原八十美君
小川原政信君 小此木歌治君
小澤佐重喜君 小野眞次君
小野孝君 大井直之助君
大石倫治君 大内一郎君
大塚甚之助君 大野伴睦君
大久保留次郎君 加藤睦之介君
片岡伊三郎君 上林山榮吉君
神田博君 河原田巖君
川西清君 木島義夫君
木村チヨ君 木村義雄君
北れい吉君 栗山長次郎君
小池政恩君 小島徹三君
小峯柳多君 小柳冨太郎君
厚東常吉君 古賀太郎君
近藤鶴代君 佐藤義詮君
佐藤乕次郎君 齋藤行藏君
坂田道太君 坂本實君
庄司一郎君 島村一郎君
杉田一郎君 杉田馨子君
鈴木仙八君 世耕弘一君
田中源三郎君 田中重彌君
田中実司君 田中善内君
田邊讓君 高橋英吉君
瀧澤脩作君 瀧清麻吉君
竹内茂代君 竹田儀一君
武田キヨ君 武田信之助君
塚田十一郎君 辻寛一君
圓谷光衞君 寺尾豊君
苫米地英俊君 中島守利君
中野武雄君 夏堀源三郎君
西村久之君 葉梨新五郎君
花村四郎君 林讓治君
原侑君 原藤右門君
坂東幸太郎君 廿日出厖君
樋貝詮三君 廣川弘禪君
平岡良藏君 平塚常次郎君
深津玉一郎君 古島義英君
本多市郎君 本多花子君
星島二郎君 牧野寛索君
益谷秀次君 松浦薫君
三浦寅之助君 三ツ林幸三君
水田三喜男君 水口周平君
村上勇君 森幸太郎君
森曉君 森崎了三君
山口喜久一郎君 山口好一君
山田善三君 山本勝市君
山本正一君 八重樫利康君
矢野庄太郎君 藥師神岩太郎君
横田清藏君 若林義孝君
亘四郎君 綿貫佐民君
逢澤寛君 青木泰助君
天野久君 荒木武行君
有馬英二君 井上知治君
飯島祐之君 稻本早苗君
犬養健君 馬越晃君
江川爲信君 江部順治君
小川半次君 小笹耕作君
小野瀬忠兵衞君 大島定吉君
太田秋之助君 加藤高藏君
金光義邦君 神戸眞君
川崎秀二君 木村小左衞門君
五坪茂雄君 小池新太郎君
小林かなえ君 古賀喜太郎君
齋藤隆夫君 齋藤てい君
佐藤久雄君 白井秀吉君
白木一平君 柴田兵一郎君
椎熊三郎君 鈴木明良君
鈴木強平君 鈴木周次郎君
菅原エン君 菅又薫君
關根久藏君 關谷勝利君
田中萬逸君 瀧澤濱吉君
竹内歌子君 佃良一君
津島文治君 坪川信三君
寺田榮吉君 苫米地義三君
中川重春君 中山たま君
中村又一君 仲川房次郎君
中尾達生君 長野長廣君
成島勇君 西山冨佐太君
原健三郎君 原夫次郎君
林連君 日比野民平君
一松定吉君 平野増吉君
舟崎由之君 降旗徳彌君
保利茂君 星一君
細川八十八君 堀川恭平君
本名武君 松田正一君
宮原庄助君 宮前進君
宮澤才吉君 武藤嘉一君
武藤常介君 村井八郎君
村島喜代君 最上英子君
森山ヨネ君 八坂善一郎君
山口光一郎君 山崎岩男君
山下春江君 山田悟六君
吉澤仁太郎君 吉田安君
早稻田柳右衞門君 紅露みつ君
田中久雄君 東井三代次君
福田繁芳君 和崎ハル君
三木キヨ子君
否とする議員の指名
赤松勇君 荒畑勝三君
井伊誠一君 井上良次君
伊藤卯四郎君 石川金次郎君
上田清次郎君 氏原一郎君
及川規君 大澤喜代一君
大矢省三君 奥村又十郎君
加藤シヅエ君 加藤鐐造君
片山哲君 叶凸君
金子益太郎君 金井芳次君
川島金次君 黒田寿男君
佐竹晴記君 榊原千代君
澤田ひさ君 島田晋作君
須永好君 杉本勝次君
鈴木茂三郎君 田中健吉君
田中松月君 田原春次君
田万廣文君 高瀬傳君
竹内克己君 竹谷源太郎君
棚橋小虎君 辻井民之助君
土井直作君 冨吉榮二君
堂森芳夫君 中崎敏君
中原健次君 中村高一君
永江一夫君 永井勝次郎君
西尾末廣君 西村榮一君
花山秀雄君 長谷川保君
林虎雄君 林田哲雄君
原彪之助君 平野力三君
藤田榮君 細田綱吉君
細野三千雄君 松澤兼人君
松澤一君 松本七郎君
松本淳造君 松岡駒吉君
松尾トシ君 前田榮之助君
町田三郎君 水谷長三郎君
宮村又八君 森三樹二君
森戸辰男君 森本義夫君
山崎常吉君 山崎道子君
山口靜江君 山下榮二君
安平鹿一君 米窪滿亮君
米山久君 吉川兼光君
東隆君 飯田義茂君
稻田健治君 石原登君
宇田國榮君 大原博夫君
大宮伍三郎君 大橋喜美君
川越博君 川野芳滿君
鹿島透君 香川兼吉君
越原はる君 竹山祐太郎君
坪井亀藏君 原尻束君
林平馬君 原國君
橋本二郎君 平野八郎君
松本瀧藏君 松本六太郎君
的場金右衞門君 三木武夫君
山本實彦君 秋田大助君
井上赳君 伊藤幸太郎君
磯田正則君 池村平太郎君
石崎千松君 石田一松君
大谷瑩潤君 大津桂一君
小川一平君 岡田勢一君
久芳庄二郎君 小坂善太郎君
笹森順造君 鈴木憲一君
鈴木彌五郎君 田中たつ君
豊澤豊雄君 中田榮太郎君
野本品吉君 野村ミス君
疋田敏男君 穗積七郎君
松原一彦君 丸山修一郎君
増井慶太郎君 山下ツね君
吉田セイ君 柏原義則君
菊池豊君 戸叶里子君
中野四郎君 細迫兼光君
松谷天光光君 柄澤と志子君
志賀義雄君 高倉輝君
徳田球一君 中西伊之助君
野坂參三君
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=44
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045・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて本案の第二讀會は終りました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=45
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046・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第三讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=46
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047・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=47
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048・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第三讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=48
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049・会議録情報5
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勞働關係調整法案 第三讀会発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=49
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050・山崎猛
○議長(山崎猛君) 採決致します、本案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=50
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051・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立多數(拍手)仍て本案は可決確定致しました(拍手)是にて議事日程は終了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後五時十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04119460905&spkNum=51
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