1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年九月二十七日(金曜日)
午後二時十三分開議
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議事日程 第四十六號
昭和二十一年九月二十六日
午後一時開議
第一 貿易資金特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第二 林業會法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 蠶絲業法の一部を改正する法律案(森幸太郎君外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 科學技術の振興に關する決議案(磯崎貞序君外十三名提出)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、去二十三日貴族院に於て本院から送付の次の本院提出案を可決した旨、同院から通牒を受理した
地方競馬法案
一、政府から提出された議案は次の通りである
貿易資金特別會計法案
(以上九月二十日提出)
一、議員から提出された質問主意書は次の通りである
東北農民に對する不法彈壓と人權蹂躙等に關する質問主意書
提出者 大澤喜代一君
(以上九月二十五日提出)
一、去二十一日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受理した
内閣事務官 伊藤佐
第九十囘帝國議會政府委員被仰付
石炭廳長官 菅禮之助
第九十囘帝國議會商工省所管事務政府委員被仰付
一、去二十一日議長に於て次の委員を選定した
青年禁酒法案(林平馬君外十一名提出)委員
神田博君 木村義雄君
竹内茂代君 富田ふさ君
苫米地英俊君 中野寅吉君
廣川弘禪君 渕田長一郎君
本多花子君 天野久君
稻本早苗君 北村徳太郎君
古賀喜太郎君 菅原エン君
山下春江君 石川金次郎君
奧村又十郎君 澤田ひさ君
杉本勝次君 長谷川保君
松本淳造君 川野芳滿君
駒井藤平君 二階堂進君
井出一太郎君 井上赳君
伊藤實雄君
農民組合法案(野溝勝君外三名提出)委員
江崎眞澄君 加藤宗平君
木村公平君 杉田一郎君
田中善内君 三浦寅之助君
横田清藏君 若林義孝君
荒木武行君 川崎秀二君
五坪茂雄君 佐伯忠義君
寺島隆太郎君 原健三郎君
吉田安君 稻村順三君
叶凸君 菊地養之輔君
田中健吉君 田中松月君
田万廣文君 太田鐵太郎君
河野金昇君 原尻束君
伊藤幸太郎君 久芳庄二郎君
和崎ハル君
蠶絲業法の一部を改正する法律案(森幸太郎君外四名提出)委員
飯國壯三郎君 近藤鶴代君
田中実司君 塚田十一郎君
松浦東介君 三ッ林幸三君
大久保傳藏君 瀧澤濱吉君
仲川房次郎君 日比野民平君
宮澤才吉君 榊原千代君
林虎雄君 松澤一君
武藤運十郎君 香川兼吉君
米倉龍也君 小川一平君
一、去二十一日次の通り特別委員の異動があつた
臨時物資需給調整法案(政府提出)委員
辭任 小坂善太郎君 補闕 増井慶太郎君
自作農創設特別措置法案(政府提出)外一件委員
辭任 藥師神岩太郎君 補闕 松浦薫君
一、去二十三日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した
北海道廳長官 増田甲子七
第九十囘帝國議會内務省所管事務政府委員被仰付
一、去二十三日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を次の通り變更した
一三 池村平太郎君
四五 大島多藏君
一、去二十三日委員長理事互選の結果次の通り當選した
蠶絲業法の一部を改正する法律案(森幸太郎君外四名提出)委員
委員長 仲川房次郎君
理事
田中實司君 宮澤才吉君
林虎雄君
一、去二十三日次の通り特別委員の異動があつた
臨時物資需給調整法案(政府提出)委員
辭任 石原登君 補闕 東隆君
辭任 大宮伍三郎君 補闕 川野芳滿君
辭任 三木武夫君 補闕 駒井藤平君
青年禁酒法案(林平馬君外十一名提出)委員
辭任 駒井藤平君 補闕 林平馬君
辭任 井上赳君 補闕 吉田セイ君
辭任 伊藤實雄君 補闕 和崎ハル君
農民組合法案(野溝勝君外三名提出)委員
辭任 和崎ハル君 補闕 伊藤實雄君
一、去二十五日委員長理事互選の結果次の通り當選した
青年禁酒法案(林平馬君外十一名提出)
委員長 中野寅吉君
理事
神田博君 竹内茂代君
古賀喜太郎君 奧村又十郎君
農民組合法案(野溝勝君外三名提出)
委員長 加藤宗平君
理事
江崎眞澄君 木村公平君
荒木武行君 菊地養之輔君
一、去二十五日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
臨時物資需給調整法案(政府提出)委員
理事 川野芳滿君(理事 石原登君去二十三日委員辭任に付其の補闕)
電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
理事 田中源三郎君(理事 綿貫佐民君去二十五日委員辭任に付其の補闕)
一、去二十五日次の通り特別委員の異動があつた
自動車交通事業法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
辭任 川島金次君 補闕 吉川兼光君
林業會法案(政府提出)委員
辭任 的場金右衞門君 補闕 米倉龍也君
辭任 坪井亀藏君 補闕 香川兼吉君
臨時物資需給調整法案(政府提出)委員
辭任 鈴木周次郎君 補闕 早稻田柳右ェ門君
辭任 田村定一君 補闕 澤田ひさ君
電氣事業法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
辭任 綿貫佐民君 補闕 田中源三郎君
一、昨二十六日次の通り特別委員の異動があつた
食糧緊急措置令(承諾を求める件)委員
辭任 高倉輝君 補闕 志賀義雄君
自作農創設特別措置法案(政府提出)外一件委員
辭任 白木一平君 補闕 松岡運君
辭任 佐伯忠義君 補闕 荒木武行君
辭任 玉井潤次君 補闕 松澤一君
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より會議を開きます、吉田内閣總理大臣より詔書を傳達せられました、茲に捧讀致します──諸君の御起立を望みます
〔總員起立〕
朕は、十月七日まで十日間、帝國議會の會期の延長を命ずる。
〔總員敬禮〕
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=1
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002・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際大宮伍三郎君提出日本文化再建に關する緊急質問を許可せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=2
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003・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=3
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004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、政府は此の議事日程變更に同意されました、仍て日程は變更せられました、日本文化再建に關する緊急質問を許可致します──提出者大宮伍三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=4
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005・会議録情報2
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日本文化再建に關する緊急質問
(大宮伍三郎君提出)
〔大宮伍三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=5
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006・大宮伍三郎
○大宮伍三郎君 本員は協同民主黨を代表致しまして、日本文化再建に關し總理大臣竝に各大臣に對して緊急質問を致さんとするものであります
全國民が焦土の中に衣食住を求めて喘いで居る時に、文化とか藝術とかを持出すことは肝腎の事業にあらずとの感を抱かれるかも知れませぬが、人は「パン」のみに生くるにあらず、危急に際して寧ろ永遠の對策を樹立することこそ、焦眉の念ではないかと存ずるのであります(拍手)現在我が國民大衆が最も熱烈に要求、希望致して居る所のものは、我が國の獨立の囘復でございます、獨立の内容と形體を決定致すべき講和會議の開催こそは、萬民の齋しく待望致して居る所でございます(拍手)吉田内閣總理大臣は、講和會議の開催意外に近きにありと言明を致されましたので、多くの希望はそこに繋がれて居ると思ふのであります、而して私共は極めて率直に申します、此の講和會議が我が日本に於て開催せられんことを熱望致すものでございます、而して我々は我が國に於て開催せられるであらうことの期待を持つものであります、數多くの聯合國の人々が我が國に參りまして、強烈なる爆撃、燒夷攻撃、原子爆彈に打ちひしがれたる焦土の中から、雄々しくも起ち上りつつある所の我が國の國民の状態を、親しく觀察されんことを希望致すのであります(拍手)此の我が國の國民が起ち上りつつあるのは、文化的であり、平和的である、文化的にして平和的に起ち上りつつある状態を、親しく萬國の人々が觀取されんことを望むのであります、國破れて山河あり、山河の形すら變へしめたる所の大いなる戰禍の中にありまして、其の中から起上ちらんとする所に、我が日本の眞の姿があると考へるのであります(拍手)此の姿こそは、文化的なものであり、平和的なものでありまして、其の文化、平和の復興の中心となるべきものは、長き傳統に依つて鍛へられ、古き歴史に依つて守られたる我が日本の文化でなければならないと考へるのであります(拍手)文化の中心は、或は美術であり、工藝であり、繪畫であり、建築であります、世界に類ひなき能や歌舞伎や文樂の如き古典藝術までが、世界に誇るべきものなりと考へるのであります、私共は是等の日本獨特なる美しき文化が、今日も尚ほ保存せられ、軈て花を開かんとする状態を、萬國の人に見て貰ふ爲に、日本に於て講和會議の開かれることを熱望するものでありまして、總理大臣は、講和會議が我が國に於て開かれることに對して、如何なる見透しを持つて居られるか、又如何なる御努力を拂つて居られるか、是が實現せられたる場合に於て、來朝したる人々に對しまして、日本が文化國家であると云ふことを認識せしめる爲に、諸般の施設を如何になされつつありやと云ふことに對して、御尋ね致したいのであります
「ギリシャ」「ローマ」が滅びまして二千年、今尚ほ「ギリシャ」の彫刻は世界に比類なきものであり、「ローマ」の「ポンペイ」の廢墟の中の壁畫は、世界に其の比を見ざるものである、漢民族の偉大さは、今日出土する其の作品や、樂浪の文化にも見られるのであります、六朝には六朝の文字あり、唐には唐三彩を初め、優秀なる陶磁器あり、宗の徽宗皇帝の花鳥畫は、我が小林古徑と何れぞや、南宗の牧谿の水墨畫は、我が横山大觀と何れぞや、世界に於て最も古く、最も偉大なる木造建築物は、奈良の東大寺や五重塔でありまして、二月堂や法隆寺に納められたる天平、白鳳の佛像を初めとして、正倉院の古美術の如きは世界に類ひなきものであつて、是等の古き寶庫である所の、千年の都、京都や奈良や鎌倉を、爆撃の破壞より免れしめたる所の米國の空軍に對して、其の寛容と正義に感謝するものであります(拍手)此の正義と寛容に報いる爲に、如何なる措置を總理大臣は御考へになつたでありませうか、私共は此の不朽なる生命を持つ藝術を以て、日本を再建復興せしむべし、少なくとも文化の點に於きましては、日本は尚ほ一等國の面目を維持しつつありと考へるのであります、此の爲に我が國に於て最も要請せられるものは、近代美術舘であります、近代博物舘であります、今現に東京都内に於きましても、之に相應しき殘存の適當なる建物があるのであります、又新しき憲法に依つて考慮せらるべき皇室財産の中に、帝室博物舘がございます、之に對して如何なる處置を考慮せられつつあるのでありませうか、又現下の問題と致しまして、國寶、重要美術品、保護建築物などが、新圓獲得の爲に闇に流れ、又は財産税逃避の目的に供せられつつある事實を見ます時、是等の法規を改廢して、私有財産的、私的觀念から、公共人類のものであると云ふ風に考へらるるやうに、法規を改正せらるるの意思が文部大臣におありであらうかと云ふことを伺ひたいのであります
又是等の物に對する財産税を免除する意思ありや、其の點に付きまして大藏大臣の御考へを御伺ひ致したいのであります、元來美術は端的に申しまして、無から有を生み出すものでありまして、明治維新の財政を救ひたるものは日本の古美術であります、日本は此の傳統の美を守ると共に、門戸を世界に開きまして、新しき美を世界に求め、さうして貿易再開の曉には、之を以て海外進出の先驅たらしめたいと思ふのであります、是が爲には、基礎のある、寧ろ國立美術研究所竝に工藝研究所の設置を提唱致したいのであります、又現在行はれて居ります所の官設展覽會は、之を廢止して──豫算僅かに數萬圓しか持たざる文部省が官營的に展覽會を經營する日展を廢止して、民間の手に委ねて、民主的經營となすべきことをも提唱致したいと思ふのであります(拍手)
是等の造形美術のみならず、古典藝能に至つては、更に多くの保護を要すべきものありと考へます、過日文部省が行はれました藝術祭に於きましては、四百五十萬圓の税を課せられて、折角の計畫が有終の美を濟さなかつたと云ふ事實がありまするが、我々は此の際國立劇場を建て、藝能研究機關を設置すべきことを、文部當局に提唱致したいのであります
更に文藝、音樂、出版、雜誌、新聞竝に放送、是等のものは、戰時中歪められたる一元統制に依つて、今日それは開放せられたりと雖も、新しい文化國家を建設すべき熱情に缺くる所あり、寧ろ反動の反動とも見るべきもの少からざる状態であります、我々は之を先進國に學び、門戸を開放して、廣く萬國の「レベル」にまで之を推し進めて、本當の文化國家に高めたいと思ふのであります(拍手)是が爲には、内閣總理大臣に於かれまして、經濟安定本部にも比すべき文化建設本部の如き大機關の設置を考慮せられんことを望みたい、之に對する總理大臣の御所見を伺ひたいのであります、此の文化建設本部の下に、以上申上げましたやうな凡ゆる分野に亙る文化面を指導、育成、助長する爲に、文部省に一つの文化院の如き機關を設けて、學校教育、社會教育と共に三位一體となつて、寧ろ文部省をして文教省の如き性格を帶びしめると云ふことも、考慮せられて可なりと考へるのであります(拍手)戰爭を抛棄して軍備なき國が起ち上るには、道は唯一筋、文化國家あるのみであります、戰時豫算の數十分の一、戰爭軍備豫算の數百分の一を以て足れりとする文化に對して、總理大臣は大英斷を以て豫算的措置を講ぜられんことを希望致しまして、私の質問を終る次第であります(拍手)
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=6
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007・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 文化は國民の精神的糧食とも申すべきものでございまして、憲法改正案に、公共の福祉の増進と言つて居ります、其の中に於て、文化の向上が最も重要なものの一つを占めて居ることは、疑ひがないのであります、我が日本民族の歴史的遺産であります所の傳統的文化の保存、保護、又育成、更にそれを一層社會民衆に親しみ易いものと致しますことは、今後文化日本として立つて行きます上に於て、非常に必要な、又緊急なことであると云ふことを、政府に於きましても痛感致して居る次第であります、今後の文部行政の行き方と致しましては、先程御質問の中にありましたやうに、學校教育及び社會教育と共に、藝術、文化の管理、保護、育成と云ふことに大いに力を注がなければならぬのであります、今日に於きましては、傳統文化の事務は、僅かに社會教育局の一課の、其の又一部分に窒息して居るやうな情ない状態でありまして、文部省と致しましては、先程御示唆にありましたやうに、文化院と云ふやうな大規模な機關を設置するのが適當ではないかと考へまして、研究を進めて居る次第でございます、尚ほ内閣直屬の文化建設本部と云ふことに付きましては、十分研究しなければならないことだと存じて居ります
尚ほ國寶保存法は、昭和四年に制定致しましたものでありまして、現在の情勢に鑑みまして完璧のものではないので、再檢討の必要があることを考へて居ります、帝室博物舘の將來に付きましても、目下立案を急いで居る次第でございます
要しまするに、講和會議が我が國に於て開かれますと否とに拘らず、國際的、人類的の見地から見ました所の日本文化の遺産を保存し、且つ成果を發揮することは、政府と致しまして最善の努力を致し、御質疑の趣旨に副ひたいと存じて居る次第であります、之を以て私の答辯を終ります(拍手)
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=7
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008・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 講和會議が日本國内に於て開かるるやうにしたいと云ふ御希望は御尤もでありますが、今日何處の土地に於て日本に關する講和會議が開かるるかと云ふことは、聯合國に於てはまだ決定致して居らぬと私は思ひます、又決定する場合には、其の前後の事情及び聯合國内に於ける協議に依つて決定するのでありまして、今日私に於てどうと云ふ見透しがあるかと言へば、今日の所はまだ見透しの出來る時期に達して居らないのであります、其の他の問題に付ては只今文部大臣から御答へがあつた通りであります(拍手)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=8
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009・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際小柳冨太郎君提出、引揚同胞援護に關する緊急質問を許可せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=10
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011・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、政府は此の議事日程變更に同意せられました、仍て日程は變更せられました、引揚同胞援護對策に關する緊急質問を許可致します──提出者小柳冨太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=11
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012・会議録情報3
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引揚同胞援護對策に關する緊急質問
(小柳冨太郎君提出)
〔小柳冨太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=12
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013・小柳冨太郎
○小柳冨太郎君 去る六月二十九日、衆議院は、各派供同提案になる外地在留同胞引揚の促進竝外地引揚者、復員者救濟に關する決議案を上程、滿場一致を以て可決されましたことは、まだ我々の記憶に新たなる所であります、其の際各派交交御立ちになつて特に強調されましたことは、此の決議が、從來慣例的に行はれ來つた單なる「ゼスチュア」としての決議に終ることなく、殘留者、引揚者、是等の家族一千萬同胞の起死囘生の叫びを結集したるものとして、政府の深き理解を含めて、速かに而も積極的に萬全の對策を要求したものであります、之に對して總理大臣を初め關係各大臣より、其の目的達成の爲め最善の努力と方途を講ぜらるる旨、力強き御言明があり、異境萬里にある肉身の安否を氣遣ひ、日夜苦慮する留守遺家族、竝に身一つとなつて祖國に引揚げ、飢餓と窮乏に喘いで居る數百萬の同胞に一縷の光明と希望を與へ、又本決議案に贊意を表したる我々も、政府の眞劍なる施策の實現に大なる期待を懸けて參つたものであります、然るに決議に對する政府の力強き言明を拜承して既に九十日、其の間に於て政府は如何なる努力と如何なる施策を以て對處して來られたか、國家再建の爲に、事は極めて重大でありますが故に、私は僭越ながら各黨を代表致しまして、重ねて茲に吉田内閣總理大臣、幣原國務大臣、其の他關係各閣僚に對し、極めて重要なる事項に付き愚見を述べて質問を致し、更に政府の猛省と、積極果敢なる處置對策を促さんとするものであります(拍手)
それに付きましても我々が冷靜に思ひを致さなければならないことは、終戰當時を顧みまする時、日本の實状は大部分の海上輸送力を消耗し、聯合軍の好意に縋るとしても、東亞全地域に散在せる陸海將兵の復員と、在外同胞引揚の完了は、洵に前途遼遠なるものありと想像され、留守家族は勿論、國民齋しく焦慮、歎息の日を送つたのであります、然るに「ソ」聯管理地區を除き九〇%に及ぶ大量の復員が達成され、更に最近の關係筋の發表に依りますれば米軍の占領地域たる沖縄、比島、南西諸島及び太平洋諸島に於ける殘留者は、再び引揚が再開せられ、具體的配船も發表されることとなり、本年中に全部其の復員を完了する目途が付くに至りましたことは、是等の關係家族は勿論、全國民に極めて明るい希望を與へるものであり御同慶に堪へないものであります(拍手)更に過日總司令部の「ハウエル」大佐の談話に依りますれば、在滿邦人の集結状況も極めて良好で、近く一日一萬五千名位づつ胡蘆島より送り出せることとなるべしとの情報があつた旨申され、尚ほ引揚者ある限り、此の冬中も引揚を續行されるやとの當方の質問に對しては、引續き行ふ積りである、既に碎氷船二隻を同港に派遣するやう手配濟なる旨發表された由でありますことは、是れ亦感激を禁じ得ない所であります、是等一聯の事項に付き光明を得ましたことは、聯合軍、殊に「マッカーサー」司令部當局の、正義人道に基く世界平和建設の高き理想と、敗戰日本の再建に深き理解と同情を寄せられたる結果であることを確信するものであり、物心兩面に亙つて今日まで賜つたる、言ひ知れない其の同情と、限りなき好意に對して、茲に衆議院は全國民の名に於て、衷心より謹んで感謝感激の意を表明するものであります(拍手)併せて政府の所見を開陳せられんことを望みます
次に重ねて總理竝に幣原國務大臣に御伺ひ申上げたいことは、此の復員の諸君は決して自ら好んで殘留した者でなく、謂はば先發者の身代りとして殘らざるを得なかつたのであります、南方方面の如きは、優先的に復員を許可する旨を日本軍の指揮官より含められて、一日も早く歸りたい人情から、占領勞務に馳せ參ぜられた者が相當あり、而もそれ等の人が結果に於て最後まで取殘されて居ると云ふ、洵に氣の毒な人達が多數を占めて居ると聞き及んで居ります、最後まで南溟の孤島、「シベリヤ」の曠野に、連絡其の他の要務に挺身し、或は極めて困難なる條件下に、占領軍の勞働に從軍しつつある者、實に是等の人達は、敗戰日本の勞苦を一身に引受けて居ると言つても過言ではありませぬ(拍手)我々が祖國にあつて、食糧の不足や住宅難を喞つことさへ、是等の人に對しては申譯ないことと存じます、此の點に付き當局は眞劍に考慮を拂はれ、留守家族の勞苦と心境にも十分思ひを致され、格段の善處策を講ぜられんことを要望致します(拍手)
次に第三點としては、引揚者の更生策及び之に關聯して在外資産、持歸り預貯金等に對する處置に對して、此の際政府の態度を明確に示されたいことであります、冒頭に強調致したいことは、政府竝に大衆の、引揚者に對する再認識を強調致したいのであります、引揚者の苦痛と怨嗟の聲は、全國から引きも切らず連日押掛けて來る陳情や、或は路傍に彷ふ見る影もなき個々の姿に依つて、大臣各位も十分御承知の筈であります、而も十分に其の實情を把握し、深き理解と同情を有せらるる政府であるならば、其の對策の餘りに冷淡であり、不徹底なることを茲に指摘せざるを得ないのであります、敗戰に依つて内地在住者が想像以上の慘禍を被られしことも、又戰死者の遺家族、未亡人等が、一家の支柱を失つて如何に悲慘なる境遇に突落されたかと云ふことも、引揚者と雖も十分に之を認識して居るのであります、茲に於て仔細に檢討して見るならば、引揚者が自己の苦悶を愬へる前に、先づ同情を禁じ得ない幾多の悲慘なる事例は、枚擧に遑なき程であります、併し總括的に、統計的に論ずるならば、やはり引揚者は内地住民に比べて、共に同日に語るべからざる程深刻を極め、所謂祖國の懷ろに居た者よりも、外地、即ち當時の祖國の最前線に居た者が遙かに冷遇され、差別扱ひされて居ることは、嚴然たる事實であります、今更申上げるまでもなく、彼等の中には、親子二代、三代、四十年、五十年の久しきに亙り、能く國策の忠實なる實踐者として、風俗、習慣、風土、氣候等の相違、其の他凡ゆる困難を能く克服して、營々として彼の地に心血を注いで來た者は決して少くありませぬ、然るに一度敗戰となるや、土地と云はず、住宅と云はず、家財、什器と云はず、預金と云はず、現金と云はず、ありと凡ゆる資財は悉く失ひ、親子妻子が死別又は生別、流浪漂泊、漸くにして虎口を逃れて祖國に辿り著いた者も、己れの姿を振返る時、洵に孤獨同然の憐むべき境地に追詰められたのである、而も多年故山を後にして居た者程、親戚知友の縁りも薄く、再起を圖らうにも、何等の身寄り、地盤もなく、職を探さうにも、殆ど頼るべき手蔓がないと云ふ始末であります、彼等は自ら求めて祖國に歸つたのではない、而も一度歸郷の外なしと決するや、祖國再建の烈々たる決意を固めて歸つたのである(拍手)曾て祖國の繁榮の爲に、祖國の最前線に立つて身命を挺して來た彼等は、異境に屍を曝した無數の同胞を後にして、祖國の懷ろに歸る以上、如何なる艱苦、如何なる障碍をも能く之を克服しつつ、祖國を眞に典型的な平和國家たらしめ、世界恆久の文化確立に寄與貢獻せんとする不退轉の決意と信念に燃えて、憧れの祖國に歸つて來たのであります(拍手)併しながら祖國に踉蹌たる足を踏みしめた彼等の感想を率直に言はしむれば、祖國の彼等に遇する途は、祖國の子とするにあらずして、恰も一介の居候とし、若しくは放浪兒とするに外ならない、固より内地に居た我々も、連日激しい空爆の猛炎に追はれて、夥しき死傷者を出し、具さに戰爭の慘禍を味はされたことは、お互ひに生々しい體驗を持つものでありますが、彼等外地に居た者の受けた戰禍は、爆撃に依つて生命を奪はれた者は少いけれども、暴力に依つて、或は飢ヱと寒さに依つて次々と生命を奪はれ、又現に奪はれつつある生々しい事實が如何に多いか、又漸くにして祖國に辿り着いた者で、生活することが出來ない爲に泥棒をして、福岡縣筑後川の邊りで、父のない母子七人の引揚者が投水自殺を遂げたことは、今から二週間前のことであります、又數日前には、直ぐ近所の吉祥寺で、同じ引揚者の親子四人が鐵道自殺を圖つて居ります、是等の社會事象は序の口であります、諸君、國内在住の勞働者、勤務者、農民は、大部分は勞働組合を持ち、農民組合があり、職を持ち、耕作權を有して居ります、而して彼等は、法的に認められたる政治力と團結權に物を言はせて、待遇の改善を要求し、之を貫徹し得るのであります、それは又當然のことかも知れない、然るに引揚者の大部分は、第一に職を持たない、住むべき家もない、耕すべき一坪の土地もないのであります、況や政治力も爭議權もあらう筈がない、彼等が自暴自棄となり、激烈なる言辭を弄することに對して、之を敬遠し排斥することは、恰も食を與へずして泣き叫ぶ幼兒を、戸外に抛り出す無慈悲に等しく、我が子に對する愛情を持つ人であるならば、寧ろ温かい思ひやりと包容力を以て接することこそ、政治の要諦であり、國民平等の福祉を圖る爲政者の執るべき態度であると私は信じます(拍手)
今や引揚者に對する折衝、對策に漫然たる時日を空費することがあるならば、過日政府が努力と誠意を以て解決せられた國鐵や海員組合の「ゼネスト」の發生とは、性格こそ違へ、優るとも劣らざる社會問題、政治問題が發生せざるやを私は眞に憂慮するものであります、引揚者對策として、生活保護法と、庶民金庫の小口貸付と、官僚的な物資の配給のみで事足れりと考へられるならば、其の御苦心は認めまするが、それでは絶對に治まりませぬ、又左樣なことで、戰爭犧牲の國民平等化がどうして達成されませう、宜しく大所高所に御立ちになつて、一、引揚者に對する金融措置の問題、二、住宅問題、三、援護機關の民主的統一と擴充、四、引揚者の事業と經濟統制團體との調整、五、生活保護法其の他の施策の末端までの徹底化、其の他案件は山程ありますが、主として以上の五大問題を中心に、今直ちに具體策を樹立して、而も其の具體策を直ちに實行に移すべく、最善の御努力を要請するものであります(拍手)勿論政府に於て熱意と誠意を御示し下さるならば、我々も政府に劣らざる熱意を以て、與ふ限りの御協力を惜しむものではありませぬ(拍手)生活保護法、庶民金庫、小口貸付、物資の配給等に關しては、是まで十分承つて居りまするが故に、只今指摘致しました重要な諸點に付き、厚生大臣、大藏大臣の親切にして明快なる御答辯を御願ひ致します
最後に一言政府に警告を致して置きたいことがあります、總理大臣の施政方針にもありました通り、敗戰日本の再建は、如何に理想的な強力政府が出來ても、政府や官僚の力のみでは不可能である、盛り上る國民の支持と協力を得るにあらずんば、施策の徹底を期せられざること勿論であります、特に引揚者に對する問題は、國民政治でなければなりませぬ、政府は國民の協力を求められる前提として、國民の代表たる代議士と眞に一體となつて、其の對策を進める雅量をなぜ御示しにならないのか、我々は色々な具體策を持つて居ります、而も之を行ふものは政府であります、生活保護法の問題の如きも、厚生省の事務官の幾人かが説明に廻る程度では、末端の民生委員や國民に立法の眞精神を徹底せしめることは不可能だと考へます、法は飽くまで一片の文字に過ぎない、法律を民主的に活用する手段としては、其の立法審議に赤心を打込んだ議會人の協力を求めることこそ、最善の近道だと信じます(拍手)私の知る範圍に於ては、引揚者對策に付て、議會側からは絶えず政府に向つて協議や相談を持ち掛けて居りますけれども、幾多熱意を有せらるる先輩同僚議員諸君の中で、政府から誠意を以て相談を受け、或は意見を求められた議員は一人もないと斷言して憚りませぬ(拍手)斯くの如きことで、國民の協力を要求せらるる根據果してありやと言はざるを得ませぬ、之に付ては、引揚者更生に最も密接な關聯を有せらるる厚生大臣の御所見を御伺ひ致したいのであります、以上を以て私の緊急質問を終ります(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=13
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014・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今小柳議員から非常に熱烈なる御質問を受けましたが、此の引揚援護の問題に付きまして、色々國情に制せられまして思ふやうに參らぬのは、私と致しましても甚だ慚愧に堪へぬ次第であります、出來るだけ皆さんの御鞭撻よりも先に、先手々々とやりたい心は持つて居りますけれども、中々實は思ふやうに任せませぬ、併しやります、必ず心魂を籠めてやる決心を持つて居ります、それで大體此の問題に付きまして、色々關係筋からの指示もあります、全體の生活保護と云ふものに付て、平等の態度を執つて行かなくちやならぬと云ふ風の指示も受けて居ります、是は生活保護法に於ても、皆さん御承知のことと思ふのであります、併し更に考へますれば、是は生活保護と云ふことは、一通り落付いて、さうして生活が出來ぬ場合の生活保護でありますから、先づ外國から「リュックサック」一つで、子供の手を引いて歸つたと云ふ人に對しましては、先づ定著をさせると云ふことは、火事場に於て火事に遭つた人に特別のことをすると同じ意味のことであります、先づ定著をさせて、さうして其の上に於て平等と云ふことを考へなければならぬものなりと、私共は考へて居ります(拍手)其の線に沿うて、何とか一つ茲に新展開をやりたいと云ふ考へで居ります、それから色々此の實行方法──何をやるかと云ふ具體的な問題に付きまして、只今御指示もありました、又日夜私供も具體案を練つて居ります、それで一番大きい問題は、只今御指摘の預貯金等を第一封鎖にする問題であります、此の問題は何とかやつて貰ひたいものだと思ひますけれども、財政の關係もありまするし、色々協議をしなければならぬ點もあると思ひます、此の點に付きましては、何れ大藏大臣から何分の御話があることと思ひます
それから其の次に考へまするのは、越冬準備の問題であります、殊に夜具の問題でありまして、此の夜具は、只今統制會に夜具、毛布と云ふものが相當巨量にあります、是は何とか至急に廻して、越冬準備に間に合せたい、勿論數百萬と云ふものはございませぬが、せめて一家族一組なりと、何とかしてやりたいと云ふことに具體的に今考慮しつつある所であります、それから只今まで三億五千萬圓の金を以て、臺所道具、衣類と云ふものを分配して居ります、是は相當の程度に進行して居ります、是は勿論續いてやつて行く積りでありますが、此の外に越冬準備の用意をすると云ふことを只今具體的に考へて居ります
それから住宅の問題でありますが、是は私の所管ではありませぬが、どうしても引揚者に對して住宅を與へなくちや、生活保護に缺くることになりますから、是は私供から復興院に向つて、具體的方法の實行をやつて貰ふことを只今考へて居ります
其の次に第四番目としまして、隣組其の他の隣保扶助の方法に付て、特別な方法はないかと云ふことに苦慮して居ります、それから其の次の問題と致しましては、援護事業の遂行、各地の府縣が直接にやり、或は色々援護會に於てやつて居る援護事業の普及に付きましては、是非富籤制度を實行して、それに依つて資金を得て貰ふと云ふ風に進めたい積りで居ります
それから商工省方面の色々な統制問題と、引揚者の就職の問題に關聯しまして、茲に新しい何か方法を講じたいと云ふ線に沿つて考慮して居ります、尚ほ引揚團體に對する援助其の他のことに付ても考慮致します、又色々此の引揚援護事業に付ては、引揚者を中に入れて、さうして體驗を持つた人を以てやつて貰ふと云ふことを指示して居ります
其の次に申上げまするのは、此の生活保護法と庶民金融金庫と云ふやうな問題が、末端に徹底して居ないと云ふ點を御指摘になりましたが、是は中々巧く徹底しませぬので、實は苦慮して居る所でありまするが、此の點に付きましては、最近の事實を以て申しますれば、例へば内務部長の會議をやり、民生部長の會議をやり、厚生課長の會議をやり、それから各府縣の「ブロック」で寄せると云ふやうなことで、やはり地方廳を動かして行かぬと、物の根本が出來ませぬ、其の點に付て色々やり、又庶民金融金庫の主任者に集まつて貰ひ、或は其の外只今具體的に計畫して居りまするのは、厚生省の殆ど全員を擧げても宜いぢやないかと云ふことで、各地に其の状況の査察及び推進をやると云ふことを進めて居ります、又新聞廣告等を廣く利用しまして、さうして生活保護の方法が斯うなつて居る、庶民金融金庫は簡單に借りられるのだと云ふことの徹底に努めると云ふ考へで居ります、それから庶民金融金庫の問題に付きましては、御承知の通りに三億圓の金を廻しまして、さうして是は貸付金を十億圓として實行して居るのでありまするが、八月二十八日に各地に指令を出しましたので、約一箇月を經過致しましたが、まだ不徹底な點があり、殊に前からやつて居ります貸付の條件、保證人等が非常に面倒なのであります、其の面倒な名殘か、今度極く簡單に、二人か三人共同して借りる人がお互ひに保證すれば、それで宜いんだと云ふ新しい方式がまだ徹底致しませぬので、之を出來るだけ早く徹底させることを苦慮して居る次第でございます
最後に議員各位の此の問題に對する御協力は、固より是は願はなくちやならぬことでありまして、私供の方の惡かつた所は將來氣を付けまして、十分各位の御協力を得てやりたいと云ふ考へで居ります
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=14
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015・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の問題に付きましては、厚生大臣から御答へしたことで、全般的には盡きて居ると存じます、唯一、二附加へまして私から御答辯申上げます
其の一つは庶民金庫の問題でありますが、是も只今厚生大臣から大體のことは申上げました、實情左樣な譯でありますが、是は昨朝も、實は私は庶民金庫の主腦者に來て貰ひまして、十分其の打合せをし、それから從來どうして色々な苦情があるやうな結果になつて居るかと云ふ實情も確かめました、庶民金庫としては非常に苦心をしてやつて居るのでありますが、今厚生大臣から言はれたやうに、まだ新しい、今度の金融を始めましてから實は時日が比較的短かいものでありますから、十分に末端の窓口までが動いて居らぬと云ふことを確かめまして、是はもう最近に於ては相當の活動をすると云ふ見込が立つて居ることを知りましたので、左樣御諒承願ひたいのであります、先般引揚者の方々から御話がありました時に、庶民金庫の金融は、府縣の割當が非常に少額である、そんなものを借りても致し方がないから、同盟をして借りないことにしたと云ふ御話も承りましたが、是は厚生大臣からも言はれたやうに、以前の過渡的處置と致しまして、比較的少額な資金が出ました、それの誤りでありまして、今囘は全國に於ては兎に角十億圓の資金を是が爲に貸出すことになつて居りますから、相當に廻はるものと考へて居ります、尚ほ引揚者諸君等の團體に於て、何等かの事業を起すとか、或は又個人に於きましても、或る事業を起しますとか云ふ場合には、單に庶民金庫ばかりではなく、其の事業に對しては他に金融の途がある譯であります、例へば先般御決議を願ひました復興金融金庫と云ふやうなものからでも、事業に對しては金融が出來る譯でありますから、どうか然るべき事業を早く起される所まで漕ぎ付けるやうに御願ひ致し、又我々も努力致したいと考へて居ります、それから引揚者諸君の預貯金の問題でありますが、是は御承知の如き事情に依りまして、或る時期までに内地の金融機關に送金されたものは、或る程度の支拂が認められて參りまして、是は今囘金融機關の再建整備を致す場合に、一般の内地國民の預貯金と同じやうに取扱ひまして、解決致したいと考へて居ります、然るに或る時期以後に漸く内地の金融機關に到達したもの、若しくは金融機關に到達せずに途中にありましたもの、或は現地に於て日本の官憲に預けたものと云ふやうな種類のものが、未解決で殘つて居りまして、是も解決を非常に急いで居る譯で、政府としては日々それに苦心をして居る譯でありますが、遺憾ながら今日まだ種々の關係で以て解決を致し得なかつた譯であります、只今大藏省に於ては、一切のそれ等の金錢に關する引揚者の資産を調査致しまして、一括して之に解決を與へたいと存じまして、今頻りに其の方法を講じて居る次第であります、併し先般是も引揚者の團體の諸君から御話がありまやうに、相當多額の金額でありまして、假に今囘の國民の一般の預金と同じやうに、最高限一萬五千圓と云ふ所で以て處理致すと致しましても、恐らく百億圓以上、百數十億圓の財源を要するのであります、其の財源を如何にするかと云ふことも、只今政府としては苦心を致して居る次第であります、更に財源等に付ては、改めて議會の御協贊を經なければならぬ時期があらうと存ずる次第であります、其の點は今日から御含みを願ひたいのであります、斯樣な譯で極力努力を致して居りまして、厚生省とも絶えず連絡致して居ります次第でありますから、十分とは行きにくい譯ではありませうが、大體御希望の趣旨に副ひまして、近く解決の緒が開かれるものと考へて居る次第であります(拍手)
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=15
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016・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今小柳君の御質問中、私に對する部分もありましたので、一言私からも御答へ申上げます、外地よりの復員者其の他の引揚に付きましては、どうか一日も速かに其の歸國を完了し、日夜其の無事を祈願して居りまする家庭に歸つて、再び樂しい生活を營むことが出來まするやうに、我々は此の援護者のみならず、國民全體と供に之を祈つて居る次第であります(拍手)今議會に於きまして、此の問題に關する累次の論議がありまして、又今小柳君より眞情を籠めての御質問があつたのであります、洵に私は御尤もに考へて居ります、政府としては、此の國民の願意に叶ひまするやうに、聯合軍當局に對しては毎度懇請を致して居るのでありまするが、終戰の初め頃に於きましては、四箇年も掛かるであらうと豫期されて居りました復員者其の他の歸還が、一箇年を以て終了する見込が立つたのであります、又聯合軍當局者に於きましては、只今丁度御指摘になりましたる如く、沖縄、「フィリピン」竝に中部太平洋方面よりの歸還者、之を年内に引揚を了すると云ふ具體的の計畫を發表致したのであります、其の他の南方の諸地域に於きましても、是等の人々の引揚竝に其の現地に於ける待遇の改善に付きましては、聯合軍の各方面に於きまして、出來るだけ好意を表し、同情あり理解ある態度を執つて呉れて居るのであります、昨二十六日の新聞の發表に依りますと、聯合軍總司令部の發表する所に依りますれば、「ソ」聯の管轄區域、即ち千島竝に「サガレン」を含む「ソ」聯の管轄區域、竝に「ソ」聯の領土に居りまする日本人の引揚問題、是の全體に關して、直ちに聯合軍總司令部と「ソ」聯の官憲との關に交渉を開始するの用意があると云ふことを申して居ります、尚ほ是等の人々を歸還せしむる爲に東「シベリヤ」の一つの港よりは毎月一萬人乃至一萬五千人、又南「サガレン」の一つの港よりは八千人乃至一萬人と云ふものを毎月歸還せしむる準備を整へる用意があることを申して居りまして、而もそれは來月より直ちに開始をすると云ふことであります(拍手)是等の、洵に好意のある態度、聯合軍總司令部のみならず、「ソ」聯當局に於きまして、斯かる態度を執つて呉れましたことに付きましては、私は國民諸君と共に深く感謝をしなければならぬと考へるのであります(拍手)尚ほ今後是等の復員者の歸還に付きましては、之を受入れる準備に付きまして、復員廳に於きましては出來るだけの用意を致す積りであります、復員廳の是等の事務に當つて居りまする人々は、全く犧牲的の精神より、自分の昔の戰友を思ふ眞心から、實に親切丁寧に是等の業務に當つて居るのであります、是等のことは、私は毎日見て居りまして、如何にも感動せざるを得ないのであります
終りに萬里の異境に今尚ほ殘留致して居りまして、甚だ困難なる服務を致して居る人が尚ほ相當にありますることに付きまして、洵に私は心を痛めて居るのでありまするけれども、是は餘り長い間ぢやありませぬ、本年中には何れも歸つて來る譯でありまするから、此の際斯う云ふ人々も、どうか自重して其の時期の來ることを待たれんことを、私は此の席上より希望する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=16
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017・山崎猛
○議長(山崎猛君) 小柳君、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=17
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018・小柳冨太郎
○小柳冨太郎君 總理大臣の答辯を御願ひ致します
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=18
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019・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 在外同胞引揚の状況に付ては、只今幣原國務大臣から詳細説明がありましたが、それに補足致しまして、私が今日接受致しました報告に依つて附加へますが「イギリス」政府に於ては、「シンガポール」附近の日本の在住者、捕虜其の他の状況に付て、特に沼田中將を派遣して、在留民其の他の生活状況を取調べさしたさうであります、沼田中將は「ビルマ」其の他まで出張をして、巨細に日本在留民或は日本兵等の生活状況に付て取調べたさうでありますが、其報告に依りますと、生活状態は良好である、又食糧其の他の救護に至つても、相當なことを致して居つて、遺憾な點は認められない、又醫藥、病院其の他の設備に付ても、相當な設備が出來て、大體滿足すべき状況にあると認められる、又在留民等の本國への通信は、一箇月一囘許さるることになつて居り、又在留民其の他の姓名等の詳細に至つては、更に近く日本政府へ「マッカーサー」司令部を通じて報告をすると云ふことの通知に接しました、又只今御話の、海外同胞引揚者若しくは在外同胞の家族等の保護、救護等に付ては、政府も常に非常に焦慮をし、注意を拂つて居り、又適當な施策をせんとして焦つて居ることは、只今厚生大臣等から御話した通りでありますが、併し此の問題を獨り政府だけの手に於てすると云ふことは趣意が徹底しないと云ふ御意見は、御尤もであります、又政府と致しましても、近く議會、新聞其の他の機關に呼び掛けて、海外引揚同胞の救護の爲に國民運動を展開して、さうして其の趣意が國民に徹底致すやうに圖りたいと、今折角考慮致して居ります、此の段御報告致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=19
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020・小柳冨太郎
○小柳冨太郎君 總理大臣以下、洵に懇切なる御答辯に對して衷心感謝を致します、唯住宅問題に付て復興院の御説明のなかつたことを遺憾に思ひますが、之を以て質問を打切ります
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021・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程議更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第四を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=21
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022・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、政府は此の議事日程變更に同意せられました、仍て日程の順序は變更せられました──日程第四、科學技術の振興に關する決議案を議題と致します、提出者の趣旨辯明を許します──提出者有馬英二君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=23
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024・会議録情報4
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第四 科學技術の振興に關する決議案(磯崎貞序君外十三名提出)
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科學技術の振興に關する決議案
科學技術の振興に關する決議
速かに荒廢せる國土を復興し、新事態に應ずる産業を確立して國民生活を安定せしむるは、平和國家建立の先決條件である。宜しく科學技術の新たなる振興を圖り、その活用によつて國土の狹少、資源の貧困等の惡條件を克服するとともに、國民勞働生産力を飛躍的に増大せしめ、建設に、生産に、その新しき方向に副へる最高の速度と最善の能率を發揮して、内は國民をして急速に缺乏と不安より脱却せしめ、外は世界の文化と經濟に貢獻し得るの途を開き、仍つて以てわが民族が將來國際社會の一員として、猜疑なく、嫉視なく、相互の信頼と愛敬に立脚する明朗公正なる修交通商を營み得るに至らんことを期すべきである。今やわが國が産業經濟の未曾有の一大整理再編成を行はんとするに當り、萬一にもその根幹となるべき科學技術を忘れ、再び舊態依然たる低廉賃銀、過剩勞働にその基礎を求めるが如き安易に流れることありとすれば、民族の復興と、平和的高度文化國家建設の希望は、遂に失はれるであらうことを惧れるのである。然るにわが實情は如何であるか、産業の新たなる分野開拓に今こそ腕を揮はしむべき生産技術者の半は、職を失つて巷に彷徨し、科學技術教育は終戰とともに弊履の如く棄てて顧みられず、世界的科學研究機關さへ資金を斷たれてその運營に懊惱してゐるのである。政府は茲に深く思を致し、わが科學技術振興のため左の諸政策を早急に確立實踐せられんことを望んで熄まない。
一、國内各種研究所の統一的整備と劃期的充實
二、科學研究費の飛躍的増額
三、行政の合理的科學的分化と科學技術者の行政樞要面への任用
四、科學技術教育の刷新強化と國民生活科學化の促進
五、科學技術者活用の強化、特に海外歸還技術者の活用措置
六、新産業分野開拓のための綜合的科學技術知能動員
右決議する。
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〔有馬英二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=24
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025・有馬英二
○有馬英二君 只今上程されました科學技術の振興に關する決議案に付きまして、其の趣旨辯明を致します、先づ第一に決議文を朗讀致します
科學技術の振興に關する決議
速かに荒廢せる國土を復興し、新事態に應ずる産業を確立して國民生活を安定せしむるは、平和國家建立の先決條件である。宜しく科學技術の新たなる振興を圖り、その活用によつて國土の狹少、資源の貧困等の惡條件を克服するとともに、國民勞働生産力を飛躍的に増大せしめ、建設に、生産に、その新しき方向に副へる最高の速度と最善の能率を發揮して、内は國民をして急速に缺乏と不安より脱却せしめ、外は世界の文化と經濟に貢獻し得るの途を開き、仍つて以てわが民族が將來國際社會の一員として、猜疑なく、嫉視なく、相互の信頼と愛敬に立脚する明朗公正なる修交通商を營み得るに至らんことを期すべきである。今やわが國が産業經濟の未曾有の一大整理再編成を行はんとするに當り、萬一にもその根幹となるべき科學技術を忘れ、再び舊態依然たる低廉賃銀、過剩勞働にその基礎を求めるが如き安易に流れることありとすれば、民族の復興と、平和的高度文化國家建設の希望は、遂に失はれるであらうことを惧れるのである。然るにわが實情は如何であるか、産業の新たなる分野開拓に今こそ腕を揮はしむべき生産技術者の半は、職を失つて巷に彷徨し、科學技術教育は終戰とともに弊履の如く棄てて顧みられず、世界的科學研究機關さへ資金を斷たれてその運營に懊惱してゐるのである。政府は茲に深く思を致し、わが科學技術振興のため左の諸政策を早急に確立實踐せられんことを望んで熄まない。
一、國内各種研究所の統一的整備と劃期的充實
二、科學研究費の飛躍的増額
三、行政の合理的科學的分化と科學技術者の行政樞要面への任用
四、科學技術教育の刷新強化と國民生活科學化の促進
五、科學技術者活用の強化、特に海外歸還技術者の活用措置
六、新産業分野開拓のための綜合的科學技術知能動員
右決議する。
科學の振興に付きましては、曾て本議會に於きまして、文教再建に關する決議中に之を申述べてあるのでありまして、今再び茲に繰返すと云うやうなことは必要がないと思ひます、本日はもつと切實な、もつと具體的な、さうして我が産業の復興上一日も猶豫の出來ない科學技術の活用に付て、改めて政府に進言をし、且つ其の實現を望むものであります、即ち我が國民が只今直面して居ります所の重要なる諸問題は、焦土化したる所の我が國土の復興を初めと致しまして、七千萬の同胞が狹小なる島國に押込められて、食糧の缺乏に困つて起る所の飢ヱを克服しなければならない問題、又破滅に陷りましたる所の經濟の整理竝に再編成の問題、又材料を失ひまして生産難に煩悶して居りまする所の工業の再建問題等等であるのであります、是等の幾多の難問題を、何に依つて速かに解決することが出來ませうか、それは外でもありませぬ、科學技術の急速なる、さうして徹底的な活用であるのであります、是れ以外には、乏しきを變じて豐かにする途、又少きを化して多とする方法と云ふものはないのであります
諸君、我が國の科學技術は、戰前に於きまして既に世界科學の水準に達して居つたものも多いのであります、又戰時中更に一段の飛躍を逐げたものが多數にあるのであります、我が科學界は、過去半世紀の長きに亙つて、多數の世界的科學者を世界の科學界に送つた誇りを持つて居るのであります、我等は今や、此の科學知識と、此の自信のある所の技術の腕を、或は農業に、或は水産に、或は建設、土木、港灣、造船、鐵道等、ありと凡ゆる生産と工業の面に活用致しまして、其の復興を圖らなければならないのであります、例へば米の増産に致しましても、最近試驗濟である所の電熱温床を應用致しますことに依つて、二割位の増産を得ることが難しくないと言はれて居ります、又同じ技術を芋及び蔬菜に應用致しまするならば、同じく相當の増産を得まして、街に於ける食糧不足と云ふ聲がなくなるであらうと考へるのであります、又肥料の面に於きましても、我が國に絶對不足である所の加里鹽類が、温泉の利用に依りまして容易く得られ、其の年産は數千「トン」にも及ぶことが困難でないと考へられて、目下着々其の技術が進められて居ることを聞いて居ります、又水産に於きましても、從來の漁撈法に對する新式の理學的な方法を目下考案中であると聞き及んで居ります
諸君、僅かに一、二の例だけでも、科學技術の徹底化に依りまして、産業の復興に福音を齎すことが出來ると云ふことが分るのでありまして、之を凡ゆる産業面或は工業の面に活用致しまするならば、初めて我が國の戰後の經濟再建も可能であると考へられます、第一次世界大戰の直後、「ドイツ」が逸早く科學技術を廣汎に活用致しまして、外國貿易を促進し、經濟の建直しに成功したことは隱れもない事實であります、以て我々の範とするに足るであらうと考へられるのであります、然るに諸君、敗戰の結果、重要なる幾多の科學研究所が、或は戰災を被り、或は設備の撤廢を受け、或は資金難の爲め、或は材料の缺乏の爲に、今や運營を中止しなければならない状態に立至つて居るのであります、彼の我が國の産業の源泉であると考へられて居ります所の財團法人理化學研究所の如きも、大半は戰災の爲に燒失し、目下改組中でありまするが、其の復興は容易ではないらしく、洵に憂慮に堪へないものがあるのであります、又産業界所屬の有名な研究機關も、財閥の解體等の爲に、或は壞滅の状態となり、然らざるものも、資金の調達困難の爲に惱んで居るのであります、政府の本年度の計上に依る所の科學研究補助費は、僅かに三千八百萬圓餘にしか過ぎないのでありまして、之に依りますると、到底滿足な科學研究が行はれないと考へられる、更に技術者自身に付て申上げまするならば、研究所の閉鎖、戰災又は縮小に依りまして、或は海外からの歸還に依りまして、大凡二千名の技術者が手を空しくして居ると云ふことであります、又實際に失職して居る所の科學技術者の總數は、大凡一萬名に達すると云ふことであります、優秀な技術を持つて居る所の科學技術者の一部分が、平和産業に其の技術を轉用する爲に、科學技術轉用協會と云ふものを組織致しまして、其の一部は既に農村工業の方面に進出をして、著々と效果を擧げつつあることは、既に新聞紙上に報道されて居る所であります、政府は斯かる技術者の失業救濟の策として、速かに農村の工業を勃興し、又中小工業の方面に於て彼等を活用する方法を執られたいと思ふのであります、尚ほ政府は此の際内閣に、全科學技術研究機關の統率を目的とする所の科學技術院とも云ふやうな機關を設置されて、純基礎的の研究は從來の通り學術振興會に隸屬せしめ、一方産業科學に屬するものは、例へば商工省所屬の全試驗所、研究所を初めと致しまして、財團法人理化學研究所、或は三井、三菱、野口等々の財閥の作つて居りました財團法人研究機關、さう云ふもの、其の他産業會社所屬の多數の研究機關を統合されて、之に一つの聯盟を組織せしめ、年々之に約三億五千萬圓位の研究費を支出する方法を講ぜられたいと思ふのであります、但し此の費用の財源捻出に付きましては、計畫をして居りまする所もありまするけれども、時間の關係上是は省略致します
科學技術者の活用に聯關致しまして、是非とも茲に強調すべきことは、科學の重要性を鼓吹することと、科學者の尊敬を奬勵することであります、過去三分の二世紀の久しき間に於きまして、我が國の教育方針に於て、軍人崇拜第一の方針が執られて居つた爲に、遂に誤つた戰爭觀を抱き、重大なる刻下の如き災害に導いたことは、隱れもない事實であります、今や我が文部省は、初等及び中等學校の教科書に、偉大なる内外の科學者の功績を讃へ、又其の傳記を編入して、以て科學が眞理の探求を生命とするものであつて、人類の文化向上に如何に絶大なる貢獻をなすかと云ふことを教へなければならないのであります、斯く科學者尊敬の念を高めることに依りまして、官廳竝に社會に於ける科學技術者の待遇が改善せられ、彼等は甘んじて技術に専念し、以て我が國の産業囘復を促進せしめ、更に輸出貿易の進展を大ならしめるに違ひないのであります
〔議長退席、副議長著席〕
從來行政方面に於きましても、科學技術者は特殊の位置を與へられ、多年の優秀なる經驗家も、常に事務家に壓迫せられて、自由に手腕を發揮することが出來ない状態が永らく續いたのであります、今囘其の非が關係方面から指摘せられたことは、行政方面の新發足に一大飛躍を與ふるものと、慶賀に堪へない次第であります、是も結局は、技術者の技術の重要性の認識に外ならないのであります、政府當局の一段の努力を要望する次第であります
最後に、國民の科學教育刷新強化を、家庭竝に社會的施設の科學的改善に依つて圖られんこと、是は文教再建に於きましても述べた所でありまするから、茲に省略を致しまするが、此の點に付ても十分顧慮せられなければならぬと考へるのであります
以上の説明は洵に簡單でありますが、此の決議文の趣意が之に依つて能く諒解せられたことと信ずるのであります、政府は此の決議を徒らに空文に終らしめず、直ちに採擇をされ、實行に移されんことを切に要望するものであります、以上を以て終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=25
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026・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是より討論に入ります、順次發言を許します──磯崎貞序君
〔磯崎貞序君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=26
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027・磯崎貞序
○磯崎貞序君 先づ以て本案に對する贊意を表しまする前に、此の決議に對しまして重要なる御所見を伺ふのでございますから、總理大臣以下關係の閣僚の御出席置きを議長より御願ひ致します、只今提案者の極めて詳細なる御説明がありましたので、私は極めて簡潔に、日本自由黨を代表致しまして、本案に對する贊意を申上ぐる次第であります、申上ぐるまでもなく、肇國三千年の歴史を持つて居りまする日本が、一部軍閥官僚の指導に依つて無謀なる戰爭を敢てなし、遂に今日の如き慘憺たる敗戰の結果を招來致させましたことは、聖代に於ける一大痛恨事であります、而も此の辛苦の關頭に立ちまして、由つて來る敗戰の遠因を調べまするならば、そこには經濟、思想、技術各方面に對しまする日本の國力の脆弱面を包藏して居るのは勿論でありまするが、就中其の最も大いなる原因は、科學技術の缺けて居つたと云ふ一事であると言つて宜しいと思ひます(「ヒヤヒヤ」)我々は今次敗戰の慘苦の中から、此の荒涼たる廢墟の中から雄々しくも起ち上り、日本の再建は雄々しくも其の緒に就いて居るのでありまするが、之に對しまして、其の日本再建の唯一無二の進路は、正に科學技術の振興に俟たなければならぬと云ふことに盡きると思ひます、由來我が日本に於ける文化は、明治初年の當時、科學技術に於ける眞空地帶であつた我が日本に、歐米の文化が怒涛奔流の形を以て輸入吸收せられましたのは事實でありまするが、そこには日本人の缺陷としまして、一にも二にも模倣主義であり、追從主義である、さうした缺陷に依つて、多くの遺憾な點を包藏して居りまするのみならず、野に英才がありましても、其の進學の門は極めて窄く、朝に優秀なる「エキスパート」ありと雖も、そこには高文制度の楯に籠つて、法學萬能に依る行政に依りまして、我が日本に於ける科學技術の振興の上に、洵に大きな障碍を與へ、それが爲に今日の形になつたと言うても宜しいと思ふ、我々は此の觀點からしまして、凡ゆる現在の産業の面に、教育の面に、總ての觀點に、此の科學技術を導入して、提案者が申しましたる如く、青少年の胸底に燃ゆるが如き科學昂揚の信念をたぎらせ、而も眞理の追求、科學の昂揚と云ふ點に於きまして、完全なる年所を持たせて、其の教育面の改善から、各家庭の慘憺たる生活に對しましても科學技術を導入して、其の生活水準を高めるは勿論、工業、商業、農業、各面に對しまして、曾てありましたるが如き低勞働賃金、或は過剩勞働に其の生産の基礎を求むるが如きは、根底から拂拭しまして、此の科學技術を根本的に取入れて、其の生産「コスト」を下げ、飛躍的な増産運動に拍車を掛け、由て以て極めて近き將來に招來されるであらう所の世界自由經濟の興隆に棹さしまして、他の何れの國家に對しても優るとも劣らざる、優位の地位を獲得せなければならぬと考ふる者であります、此の觀點から致しまして、先に決議案に六項目の實踐要目を掲げて居りまするが、此の要目を直ちに實踐運動に取入れ、而もそこに綜合的な國家の審議委員會とも申すべき形からしまして、内閣に極めて權威のある審議委員會を取入れまして、之に依つて、爛頭焦眉の急に迫られて居りまする日本復興の爲に、科學振興の面に重大なる政府の御施策を要請する意味合からしまして、只今提案されましたる案件に贊意を表する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=27
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028・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 海野三朗君
〔海野三朗君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=28
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029・海野三朗
○海野三朗君 社會黨を代表致しまして贊成の意を表したいと思ひます、政治に未來性なく、科學性なかりし結果、我が日本は今日の如き悲慘な状態を現出したのであります、今日までの政治家は、科學技術と云ふものを戰爭方面にばかり活用して、他の方面に之を活用することを知らなかつたと申さざるを得ない、科學技術は大切であると、今日までの爲政者は口を揃へて言ふけれども、そこまでしか分つて居ないのである、然らば如何にすれば科學技術が振興するのであるか、具體的方策に付て申しますと、失禮ながら今日までの爲政者は殆ど無智であつたと申さざるを得ないと思ふのであります(拍手)
科學技術者の矜恃、氣持と云ふものが、政治の上に反映せしめられなかつた所に最大缺陷があつたと思ふのであります、曩に文教の刷新、宗教の情操教育に關する決議案が上程されました、併しながら國民が窮乏と貧困の底に落ちて居りましては、あの決議案は中々其の效果に奏することは遠いと思ふのであります、曩に我が日本に於きましては、食糧に付て非常な危機がございました、それは「マッカーサー」司令部の深甚なる御同情に依つて、此の難關を切拔けました、同時に議員は感謝決議文を贈りました、併しながら諸君、我が日本人は年々感謝決議をすることが決して能ではございませぬ(拍手)日本人自らの頭に依つて、此の途を開かなければいけないのであります(「ヒヤヒヤ」拍手)然らば日本人の頭腦はどうであるかと申しますと、其の科學性に於て、今日まで決して世界の人達に劣つて居る頭腦ではございませぬ、それは過去五十年の歴史に徴しても明かであります、世界的の一流の學者を科學界に送つて居る事實が、之を證明して居るのであります(拍手)何故に然らば此の科學が日本には行はれなかつたかと申しますと、歐米に比して水準が低い、其の低いのは何故であるか、研究の民主化、科學技術の民主化が出來て居なかつたからであります(拍手)茲に深く思ひを致しまして、科學技術者たる私供が黨派を超えて、今日の日本の現状と將來とを默視することが出來ないで、文化日本の建設には科學技術の振興以外に途は斷じてないと云ふことを茲に申すのであります、新圓の切換や札の出し方に依つて經濟は復興するものではありませぬ、産業の裏付けがなければならない、其の産業の裏付けは何にありますか、科學技術の振興以外に絶對に途はないのである、是は全國にあります所の數百萬の科學技術者の、國を思ふ熱血の迸りであります、幸ひに議員各位の御理解と御同情とに依りまして、上程するに至りましたことは、數百萬同志と供に深く感謝感激措く能はざる所であります
今日差迫りまして、此の科學技術の必要なる一、二の例を一寸申上げて置きたいと思ひます、硫安に致しましても、「トーマス」燐肥に致しましても、増産は必要でありますが、それ以上の所謂原子肥料とでも名づくべきものがないか、それの研究に向つて何が故に歩を進めないか、科學の神祕の扉を何故に開かうとしないのであるか、之を私は思ふのであります、昔花咲爺の噺がございました、灰をぱっと撒いただけで木に花が咲いたと云ふ話があります、私は此の肥料でありますが、一握りの粉をぱっと撒いただけで、今日D・D・Tのあの殺菌劑と等しく、田に向かつてぱっと風のまにまにそれを撒いただけで、それが田に入れば非常に有效なる肥料と化する、今までの肥料の數十倍、數百倍の偉力のある所の化學肥料を、なぜ科學者をして研究せしめないかと思ふのであります、又電熱でありますが、二間四方の苗代に電熱を利用致しますれば、年に二毛作が出來る地方が必ず出て來るのであります、それは雪が解ける前から苗代を温めて置くのであります、さうしますれば、苗はずんずん成長する、それを雪解けと同時に田に植付ける、さうしますると、二百十日の嵐と云ふものを巧く切拔けられるのである、尚ほそこに幾多の技巧的な技術が要りますけれども、さう致しますと同時に稻を刈つてしまふ、刈つてしまつた跡に、直ぐ又苗代にやつて置きました苗を植付けると云ふことに致しますと、年に二毛作をやれる所の地方が、日本には必ずあると云ふことを私は申上げて置きます(拍手)
皆さん、是は科學者の夢であると思ひなさるな、科學者の夢と云ふものは、必ず實現可能のものであります(拍手)皆さん、是は鐵の話でございますけれども、「ワイヤ・ロープ」に致しましても、鐵の「リクリスタリゼーション」、再結晶を使ひますと、最近の研究では在來の「ワイヤ・ロープ」の強さよりも、二十倍乃至數十倍の強さを得て居るのであります、さう致しますと、在來の「ワイヤ・ロープ」の二十分の一乃至數十分の一の材料で以て、同じ機械力を發揮せしめることが出來るのであります、私は天産に恵まれざる我が日本に於きましては、どうしても其の方面に進むべきものであると思ふのでございます、此の品質の向上に全力を注いで行く、又鐵の問題に致しましても、「マッカーサー」司令部の方から、年間三百五十萬「トン」の鋼塊の生産が許されたのでありますが、若しも生産費が高く付いたのでは、日本の製鐵界は一溜りもありませぬ、然らば如何にして此の生産費を下げるか、どうして世界の市場と競爭し得るか、其のことは、敗戰當時より只今まで悲況のどん底にある製鐵界に於きましても、此の研究のみは一日も忽せに出來ないことであると思ひます、私が政治の未來性を持つて貰ひたい、科學性を持つて貰ひたいと叫ぶのは、此處であります(拍手)皆さん、此の三千八百八十萬圓の、過日政府が計上致しました科學研究費は、日本の總豫算から見れば0.06%に當たつて居ります、0.06%と申しますと、百圓に對してたつた六錢、六錢しか此の研究費には向けて居ないのである、それでは研究と云ふものは出來つこはありませぬ、研究程有力なる資産の投資はありませぬ、若し資本を投じますならば、此の研究に向かつて莫大なる資本を投じて戴きたい
此の決議案に掲げました所の六項目、之を政府が著實に、眞心を籠めて實行して呉れるか否か、それに依つて此の日本の再建が早いか遲いか、其の岐れ目になるのであります(拍手)どうか此の科學技術者の氣持、矜持を能く諒解せられまして、科學技術者を腐らせないやうに、力が盛り上がるやうに政治をやつて戴きたい、それにはどうしても、此の掲げました所の六項目の中に盛つてありますことを著實に政府が實行して戴かれるやう御願ひ致すのでございます、同時に内閣に對しましては、速かに科學技術振興對策委員會と云ふものを設置せられんことを要望致しまして、全國民と共に、數百萬の科學技術者と共に、雙手を擧げて此の決議案に贊成の意を表する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=29
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030・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 鹿島透君
〔鹿島透君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=30
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031・鹿島透
○鹿島透君 科學技術振興に關する決議案が上程されましたことは、洵に愉快であります、終戰後多數の科學者が希望を失ひ、其の歸趨に迷うて居る、是等の人々も、定めし此の決議案上程に依つて非常な希望を懷き、且又我が國の再建復興は、科學技術の活用振興に依るにあらねば到底望めないと信じて居る國民全體の喜びであると考へるのであります、私は協同民主黨を代表致しまして、二、三の意見を述べて、極めて簡單に贊意を表したいと存じます
先程同僚議員からも御話がありましたが、現在の我が國の現實、即ち國土狹小、人口過剩竝に資源が極めて貧困である、而も戰災が極めて深刻である、此の現實の上に我が國をば再建することは非常な難かしいことでありまして、是は並大抵のことではございませぬ、それにはどうしても我々國民の頭及び腕、言換へますと、其の優れた科學技術を活用振興する以外に方法はないと信ずるのであります、戰爭中、或は其の前から、相當科學研究機關はございましたが、現在に於ては、先程も御話があつたやうに、それが或は戰爭の爲に破壞され、或は其の他の事情で殆ど半休止の状態になつて居りますが、是等の研究所を有機的、綜合的な考への下にすつかり整備致しまして、さうして今後の科學技術振興の上に之をば有效に役立てると云ふことが、第一必要であると存じます、尚又現在の科學力或は科學技術者は、支離滅裂になつて居りますが、速かに此の力をば統合集結して、之を活用することこそ、我が國再建の上に於て非常に大きな力を齎すと思ふのであります、果して此の點に付て政府に適當な御考へがあるや否や、私は心私かにそれをば危ぶんで居るものであります、尚又科學技術の振興に付ては、是から育つて行く所の青少年、之をば教育をして行くことが大事でありますが、從來の教育は、私は科學技術振興に役立たなかつた教育であることを感じます、今囘教育制度其の他の再建の爲に、文教刷新委員會が設けられて居りますが、どうか此の委員會に於ては、本當に我が國の現實を見詰めて、而も將來に對して遠大な計畫の下に、尚又此の科學技術の線を大きく考へて貰つて、此の線に沿つて、今後の教育制度なり、或は其の内容、教育方法、教員養成等のことが考へられることをば要望するものであります(拍手)
次に科學技術をば本當に活用振興する爲には、私はどうしても我が國の經濟體制をば考へて行かなければならぬと考へます、以前のやうな資本主義體制下に於ては、科學技術が、或は祕密主義、或は「セクショナリズム」と云つたやうな、偏頗な情勢の下に部分的に發達は致しますが、是が本當に民主化すると云ふことは困難であります、其の意味に於て私は、經濟體制の民主化、言換へますと資本主義體制を改めて、さうして社會主義的な協同體制に改めて行くと云ふことが大事であると考へて居ります、それと共に、今後の日本のあり方、産業文化等のあり方等に付ても考慮しなくちやならない、即ち之を放任して行けば、結局戰前のやうな、頭の大きい、手足の小さい、所謂過大都市が出來まして、農村は全く顧みられないと云ふやうな状況になりますので、此の際是非とも、新しい時代に即した國土計畫、其の計畫の下に於ける地方計畫、或は農村計畫竝に之に附帶して文化機關の地方分散、是等のことをば能く研究した上で立案しまして、今後の事態に即する體制を執らなくちやならない、さうでなくては、折角科學技術を振興致さうとしましても、本當に民主的な、或は地方的な技術の振興は出來ないと思ふのであります、私は其の意味で、國土省の設置等がどうしても必要であると考へて居るのでありますが、日本の行政機構等も色々今後變化して參りませう、どうか國土省の設置に付ても、政府に於て十分御考へをば御願ひしたいと思ふのであります
最後に、先程も同僚議員から説明がございましたが、所謂科學技術を活用振興する爲に何等かの機關が必要である、是は科學技術振興委員會でも、或は科學技術審議會でも宜しいが、さう云つたものを作つて貰つて、強力に科學技術の活用振興を圖つて貰ひたい、尚ほ最後に一言申上げたいのは、科學技術の振興は、決して上の方から之を唯指圖するのみでは振興致しませぬ、やはり國民の生活の上に立つた國民運動として起らなくてはならない、其の意味に於きまして、國民の生活を新事態に應ずるやうに合理化し、科學化する所の一大國民運動が、今囘の新憲法の趣旨普及徹底の大運動と共に行はれることを衷心から希望しまして、私の贊成演説を終りたいと思ひます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=31
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032・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 豊澤豊雄君
〔豊澤豊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=32
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033・豊澤豊雄
○豊澤豊雄君 私は今度新しく生まれました國民黨を代表致しまして、贊意を表したいと思ひます
科學技術を振興させなければならないと云ふことは、二つの面から言へると思ひます、現在の渾沌とした所の世の中を救う爲に、或は日本の將來を救う爲に、非常に大切であると思ふのであります、曾て「フランス」革命の後に、あの地方が食ふに食なく、而も彼等が食として非常に大事であると思つて居る所の牧場に於ける牛や羊が、或る得體の知れない所の病氣に斃れると云ふやうなことが起りました、或はあの地方の「ビール」、葡萄酒などが、貧すれば鈍すると云ふやうな關係か、盛んに腐つたと云ふ事實があつた、其の時に、此の場面を救つたのが、あの有名な「パスツール」であつた譯であります、又日本に於ても、徳川中期以來に於て、各大名の懷ろ具合が惡くなつたと云ふやうな場合に、佐藤信淵であるとか、或は二宮尊徳と云ふやうな人を聘して、財政の建直しをしたと云ふ記事が出て居りますが、斯う云ふやうなものは、能く仔細に研究して見ますれば、成程政治面に非常に整つた政策を立てて居つたと云ふことと、もう一つは、其の裏面に非常に科學技術を振興せしめて、それが裏付けをして居ると云ふことが、記録に殘されて居るのでございます、或は又香川縣の久米榮左衞門のことでございますが、高松藩が非常に貧乏した、さうして「インフレ」が今のやうになつて居つた、其の時に佐藤木老と云ふ人は、之を救う爲に、技術者久米榮左衞門と云ふ人を起用して、あの坂出鹽田を作り、或は牛の力に依つて田圃に水を入れると云ふやうな方法を發見して、後には、日本の大名の中では一番經濟的に豐かであつたと云ふことが殘つて居ります、斯う云ふ風に考へて見ます時に、國が亂れて忠臣が現はれると云ふ言葉がありますが、忠臣が現れると云ふことよりも、國が亂れた時に科學技術者が現はれて、さうして國を救うと云ふことが、最も大事だと思ひます(拍手)現在のやうな、食糧増産をしなければならないと云ふ時には、肥料が要る、肥料は鐵がなかつたら出來ない、鐵を造ると云つた時には、石炭がなかつたら出來ぬ、石炭を掘るには米が要ると云ふやうな、一つの循環的な、ぢり貧的なものに見られて行きますけれども、例えば鐵一「トン」造るのに、現在石炭が四「トン」要ると云ふのを、若し技術に依つて、鐵一「トン」造るのに、石炭二「トン」で宜いと云ふ技術が完成したならば、此の一聯の環状帶は、急にそこからぶつと膨れると云ふやうになると思ふのであります、だから私は、慾を申しますれば、此の際思ひ切つた救國科學技術費と云ふやうなものを計上して、さうして現在の科學者を、丁度食糧を増産する爲に肥料をやるやうに、科學者に研究をせしめると云ふことが、非常に大事であると思ひます(拍手)又將來に付て我々は考へて見ましても、國が狹く資源がない、唯あるものは動力だけである、此の動力を商品に變へて外國に出さねばならぬ日本の國に於て、其の商品がより高い價値の商品になるか、或は今までのやうな安い商品に變るか、動力を變へる場合にも、さう云ふやうな面に於て科學技術に依らなかつたならば、其の動力を商品に變へる時に、粗末な商品が出來るのであります、又資源の問題に付きましても、持たざる國から持てる國へと云ふことを、曾てどの學者かが言ひましたが、それは科學技術に依らなければならぬと思ひます、例へば日本にあり餘る所の空氣であるとか、海水であるとか、さう云ふやうなものを使ふ場合に於きましても、科學技術が非常に重要になつて來ると思ひます、例へば急坂の山、高い山がある、而も日本は世界に類のない「モンスーン」地帶である、夏は太平洋から極く激しい雨を山嶽に降らし、冬は大陸から澤山の雪を持つて來る、斯う云ふやうな國は、國全體を擧げて大きな發電工場の屋臺骨を作つて居ると言つても宜いと思ふのであります、仍て現在六百萬「キロ・ワット」を作つて居る電力、それを更に二千萬「キロ・ワット」にする、或は發電技術をもつと向上せしめますならば、恐らく非常な電力が出ると思ふのであります、其の電力を、或は殘りの電力を、電氣製鹽に使ふと云ふことになつたならば、一立方「メートル」に一俵の鹽が含まれて居る、其の鹽は闇取引で五百圓もする、さう云ふやうな鹽になる海水が、太平洋に滿々と漲つて居るのであります、或は其の殘り六百萬「キロ・ワット」の電力を以て、空中窒素を固定するとか、水を分解するとか、所謂電力であるとか、其の他の海水、空氣、斯う云ふやうなものを商品に變へると云ふのには、是は科學技術に依らなければならぬと思ひます、故に日本の將來を明るくする爲には、資源がないとか云ふことではなくして、智能がないといけない、科學技術があれば、さう云ふやうな資源が出て來るのだと私は思ひます、だから我我は極力此の科學技術振興に付て、擧つて熱意を持たなければならぬと思ひます、日本は昔から精神美を以て誇つて居つた國でありますけれども、科學技術の裏付けのない精神美、或は物の裏付けのない精神美が、如何に慘めなものであつたかと云ふことは、我々は強く味はつた譯でございます、だから此の科學技術、其の面に裏付けられた其の上にのみ、麗はしき藝術の花が咲き、旨い宗教の實が結べると私は思ふのであります、其の爲にも、どうしても擧つて科學技術を振興させなければならないと思ひます、之を以て私の贊成演説を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=33
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034・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案に贊成の諸君の起立を求めます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=34
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035・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 起立總員、仍て本案は全會一致可決致しました(拍手)
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036・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第二を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=36
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037・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=37
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038・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て日程の順序は變更せられまし──日程第二、林業會法案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長森幸太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=38
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039・会議録情報5
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第二 林業會法案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告報告書)
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一 林業會法案(政府提出)
右は本院に於て別紙の通り修正すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月二十五日
委員長 森幸太郎
衆議院議長 山崎猛殿
〔別紙〕
林業會法案の一部を次のやうに修正する。
第一條第二項中「木材」の下に「、薪炭」を加へる。
第九十一條に左の一項を加へる。
日本林業會は、前項の規定により承繼した債務については、その承繼に因つて得た財産の限度において、その辨濟の責に任ずる。
第九十八條を第九十九條とし以下順次繰り下げる。
第九十八條 森林法の一部を次のやうに改正する。
第六十二條に左の二項を加へる。
組合は前項の事業の外左の事業を行ふことを得
一 政府の指示に基く森林産物の生産及配給に關する割當
二 森林産物の價格統制に關する政府の施策に對する協力
三 政府の指示に基く森林生産に必要なる物資の割當
組合前項の事業を行ふときは命令の定むる所に依り統制規程を定むべし
第七十條第二項中「第六十二條第二項」を「第六十二條第二項及第三項」に改め、同項第二號中「必要なる」の下に「物資の供給又は」を加へる。
第七十四條の五中「第六十三條」の上に「第六十二條第三項第四項、」を加える。
附帶決議
一、戰時中非常伐採の爲、荒廢したる林地の造林を速に實行すべし
一、林業行政機構の改革、森林資源の培養、林野特別會計制度の創設等の林業國策を樹立する爲、速に官民合同の一大調査機關を設置すべし
一、林産物の價格竝に需給調整に關し、經濟安定本部は民間の學識經驗者を活用し、之が意見を採り入れ、官僚獨善の弊を除去すべし
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〔森幸太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=39
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040・森幸太郎
○森幸太郎君 只今議題となりました林業會法案に付きまして、委員會の經過竝に結果を極めて簡單に御報告申上げたいと存じます
本法案は、御承知の通り日木、地木が解散を指令されました結果、木材の需給關係上、此の際生産者である所の森林組合と、林材を生産致しまする林産組合との此の兩者を以て林業會を組織し、さうして此の時局に即應するやうな團體法を、此の林業會法として制定せられんとするものであります、即ち戰爭中に於きまして、我が國の森林は、統制機關の爲に非常なる濫伐、過伐が施行されまして、非常に荒廢に歸して居るのでありまして、今は國土の保安上、治山治水上、一日も忽せにすべからざるやうな状態になつて居るのであります、斯う云ふ時に於きまして、森林組合と、林産組合と、此の二つの團體に於て林業會を組織すると云ふ此の法案に對しまして、我々委員は十九囘に亙つて會議を開き、凡ゆる角度から、此の森林組合の立場、或は林産業者の立場、是等の立場より、此の法案の内容に付て檢討を加へたのであります、而して委員會に於きましての委員諸君の御意見は、此の林業會が、森林の所有者と、之を加工する所の業者との、所謂利害相反するものを一體として、果して政府の企圖する所の林業政策が遂行し得られるかと云ふ問題にあつたのであります、是は固より見方に依つて利害相反するやうでありますけれども、自治統制を強力に致しまして、さうして森林組合は其の使命である所の造林増植に力を入れ、又此の森林組合と協調して、林産組合は其の林材を最も合理的に加工して行く、是は決して利害相反するものではない、共に協調し得られるものであると云ふ其の氣持を、政府は強調されたのであります、而して凡ゆる角度より討議が加へられましたが、詳しくは速記録に讓りまして、其の最も重要なものの二、三に付て御報告申上げたいと存じます
此の第一條に於きましては、林産物と云ふものを特に木材に限定致しまして、其の他の林産物は主務大臣が之を指定すると云ふことになつて居るのであります、委員會に於きましては、林産物として木材に次ぐものは薪炭である、此の重要なる薪炭を林産物に何故加へないかと云ふ御意見が相當に強く出たのであります、政府は近く薪炭も林産物の中に指定する用意ありと云ふことを言明せられたのでありまするが、さう云ふ意思があるならば、此の際法文中に、木材の次に薪炭と云ふことを明記したが宜からうと云ふことに、大體意見が一致致したのであります、但し今日薪炭は、農業會と其の他各關係の團體に於て處理されてあるものでありまして、是等の團體と摩擦相剋を起さないやうに、十分なる調停を行ふと云ふことは、是は政府として當然執るべきことと考へるのであります、而して法案の一部を修正致さんとするに當りまして、林業會は、林産組合と森林組合とを併せて出來て居るものでありますが、林産組合は、政府の指定に基く林産物の生産及び配給に關する割當、林産物の價格統制に關する政府の施策に對する協力、及び政府の指示に基く林業又は林産物に必要なる物資の割當の、所謂自由統制に關する事業を行ふやうになつて居るのであります、然るに林産組合と共に林業會を構成する所の森林組合聯合會及び其の下部組織たる森林組合も、是と同樣の事業を行つて居るに拘らず、又行ふべきに拘らず、其の明文がないのであります、之に對して政府は、勅令に依つて規定するとか、或は定款に依つて同じ事業をやらせるとか云ふ意思でありましたが、是ははつきり法文に入れた方が宜い、斯う云ふことに意見が纒りました、固より此の林業會法と云ふものは、所謂森林組合と林産組合との二つの建前に依つて法の構成が出來て居りますので、此の森林組合に對して斯樣なことをなさしめんと致すならば、勢ひここに森林法の改正をしなければならないことになつたのであります、又問題となりましたのは、林業會が創立されまして、日本林業會を組織致しました時に、今日の財團法人日本林業會は解散する、さうして此の財團法人日本林業會の權利義務を、新しく出來る所の日本林業會が承繼すると云ふ法文になつて居るのであります、現在の財團法人日本林業會に對しては、兎角の批判を致されまして、其の事業の分量より見まして、或は此の財團法人日本林業會を承繼するならば、若し赤字であつた場合に、新しき日本林業會が其の赤字まで背負ひ込まなければならない、新しくここに出來るのであるから、さう云ふ風なものを承繼すると云ふことはいけないではないかと云ふやうな意見が相當あつたのであります、併し財團法人日本林業會を此の儘打切ることは、それが成立致しました沿革から考へましても、業界を混亂に陷れ、或は林業指導機構に動亂を來すと云ふやうな虞があると云ふのでありまして、結局若し赤字があつたならば、新しい日本林業會は、承繼した財産の限度に於て責任を負ふ、是は司法省、法制局等の意向を質しまして、さう云ふ風にすれば宜いではないか、斯う云ふことに結論を得たのであります
斯くして討論に入つて、先づ自由黨を代表して水口周平君より、第一條第二項中「木材」の下に「薪炭」を加へ、第九十一條に一項を加へ、第二項として「日本林業會は、前項の規定により承繼した債務については、その承繼に因つて得た財産の限度において、その辨濟の責に任する。」を加へ、第九十八條を第九十九條として、以下順次繰り下げ、第九十八條として「森林法の一部を次のやうに改正する」と云ふことに致したのであります、即ち
第六十二條に左の二項を加える。
組合は前項の事業の外左の事業を行ふことを得
一 政府の指示に基く森林産物の生産及配給に關する割當
二 森林産物の價格統制に關する政府の施策に對する協力
三 政府の指示に基く森林生産に必要なる物資の割當
組合前項の事業を行ふときは命令の定むる所に依り統制規定を定むべし第七十條第二項中「第六十二條第二項」を「第六十二條第二項及第三項」に改め、同項第二號中「必要なる」の下に「物資の供給又は」を加へる。
第七十四條の五の中に「第六十三條」の上に「第六十二條第三項第四項」を加へると云ふ修正意見、及び次の如き附帶決議を提案せられました、之に對して進歩黨の平野増吉君より、右の修正及び附帶決議に對する贊成意見を述べられ、特に附帶決議の急速なる實現を要望せられたのであります、其の附帶決議を申上げます
附帶決議
一、戰時中非常伐採の爲、荒廢したる林地の造林を速に實行すべし
一、林業行政機構の改革、森林資源の培養、林野特別會計制度の創設等の林業國策を樹立する爲、速に官民合同の一大調査機關を設置すべし
一、林産物の價格竝に需給調整に關し、經濟安定本部は民間の學識經驗者を活用し、之が意見を採り入れ、官僚獨善の弊を除去すべし
此の三つの附帶決議に對して、殊に第二、第三に對しては、其の速かなる實現を要望せられたのであります、次に氏原一郎君は、社會黨を代表して、修正意見竝に附帶決議に贊成せられました外に、更に第九條第一項第三號に、「都道府縣の區域を地區とする林業の勞働組合」を加へ、關聯條文を修正する意見が提出されました、次で協同民主黨の香川兼吉君は、第一條第二項に薪炭を加へることに反對であること、及び附帶決議に、山岳砂防、溪谷砂防を全面的に強化すべき一項を加へる意見を述べられたのであります、其の他の點に付ては贊成をせられました、無所屬の伊藤實雄君は、自由黨の修正意見及び附帶決議、更に社會黨の修正意見にも同意であると述べられて贊成せられたのであります、そこで先づ第一條第二項中の修正動議に付き採決を行ひました所、贊成者多數にて可決致し、社會黨の修正動議は少數の爲め否決、第九十一條に第二項を加へる修正、第九十八條を第九十九條として以下順次繰下げて、第九十八條として、先に述べた條文を加へる修正動議は、總員の贊成を得て可決致しました、附帶決議も大多數を以て可決、附帶決議に一項を附加する協同民主黨の動議は、少數の爲め否決になりました、更に修正部分を除く他の部分に付ては、政府原案の通り總員の贊成に依つて可決せられた次第であります
最後に私は、財産税の賦課に付て今日まだ財産税の課税法が發表されて居りませぬけれども、若し今傳へられる所の意味に於て此の財産税を林業の上に加算して參りますと、五十萬圓一時に拂込を致す場合に於ては、五十萬圓以上の課税の場合に、其の財産は「ゼロ」になるのであります、又其の都度木を賣つて納税致します場合に於ては、九十萬圓以上は「マイナス」となるのであります、詰り財産税の目的は、其の實も親も子もすつかり取上げても尚ほ足らないと云ふやうな課税とは、全然其の課税の目的が違つて居るのでありまして、此の點に付て大藏當局の意見を質したのであります、大藏當局は、財産税課税に付ては、財産税中立木に付て一項を設けて、立木を賣る場合には、財産税の多くならないやう大いに考慮を致して居る、未だ全貌を發表する時期ではないが、其の點に付ては十分に考慮して、近く財産税の中に是は發表致す、斯う云ふことを言明致したのであります、又日木、地木が、戰爭中官權、軍權を背景と致しまして、隨分亂暴狼藉を働いた部分も、場所に依つてはあるのであります、今囘の林業會法に於て、林業會を組織して居る林産組合が、日木、地木の生れ變りと同じやうなことを繰返すやうなことがあつては、森林組合と致しまして非常に迷惑するのであるから、さう云ふ風なことの絶對ないやうに、政府としては取締るやうに注意を致したのであります、又森林行政の根本を立直さなければならない、今囘の林業會法に於きましては、到底森林業の全體に亙つての行政を考へることは出來得ない程の、非常に不十分なる方策であります、所謂森林法と今囘の林業會法等に依つては、到底林業行政を全面的に考へられぬのでありまして、政府からは、本法案は暫定的である、近き將來に於て林業行政の根本的な立直しをして、議會に提案することに致したいと云ふ言明を得たのであります、又先程申しました日木、地木と同弊たらざるやう、十分なる監督指導を致したい、斯樣に政府は特に説明を加へたのであります
以上が此の林業會法案に對する委員會の經過竝に其の結果であります、どうぞ詳細に亙りましては速記録に依つて御承知を願ひたいと存じます、何卒滿場一致の御贊成を希望致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=40
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041・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 本案の委員長報告は修正でありますから、討論は便宜上第二讀會に於てなすことと致します、本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=41
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042・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決しました
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043・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=43
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044・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=44
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045・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き議案全部を議題と致します、討論に入ります──的場金右衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=45
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046・会議録情報6
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林業會法案 第二讀會
〔的場金右衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=46
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047・的場金右衞門
○的場金右衞門君 私は協同民主黨を代表致しまして、只今上程せられました林業會法案に付き、委員長の報告になりましたる第一條第二項に薪炭を加へる修正案に對しては、反對を致すものであります、即ち本法第一條に於て、政府の原案は林産物を定義して、「林産物とは、木材その他森林から産出する物で主務大臣の指定するものをいふ。」と規定して居るのであります、木材以外のものは、主務大臣の指定する場合、林産物として本法律に依り取扱はれるものであります、然るに今本法案に薪炭を挿入致しますことは、唯單に林業なる名目に拘泥致しまして、農山村の實情を無視するものでございます(拍手)木炭の生産に付きましては、八〇%は農家の副業生産であります、山村或は山邊に近き農村は、概して其の耕地が狹小であります、隨て耕作面積も亦狹いので、農耕のことばかりでは農業經營が成立致しませぬ、又單に山林の事業、即ち製炭や推葺や或は林業勞務だけでも、其の生活が出來ませぬので、農耕のことに從事しつ、山林勞務──薪炭、推葺其の他竹林、筍裁培等を併せ行ふことに依りまして、初めて其の經營が辛うじて成立つのであります、而して漸く生活が出來るのが實情であります、故に古くより農村指導の衝に携はつて居りまする農業會──從前の産業組合又は農會は、其の使命として農山村の指導に當り、農業經營の一部として製炭のことを教へ、道なき山に道路を開鑿し、山床に貯炭の小屋を作り、驛や港に倉庫を建て、原木購入代や、窯打ち其の他の資金の融通を致し、而して從來山を食ひ物にする資本家、惡商人の搾取より、農山村の人を救つて參つたのでございます(拍手)即ち農業會としましては、其の會員であります農業者の生産する薪炭に付ては、生産を指導し、奬勵を致し、保護しつつ、是が搬出のことより、積出、輸送のことまで一切のことに努力しつつあるのであります、隨て多年の經驗に依りまして、農業會が薪炭の取扱をなしますことは、増産を圖る上に於ても、又配給の圓滑を期する上からも、最も適當であり、當然のことであります、此のことは政府當局も十分に認識されて居りましたので、深く御考慮の上、此の原案の如く、薪炭は主務大臣の指定せる場合、木材と同樣に林産物として取扱を受けることとなつて居るのであります、然るに今此の原案を修正して薪炭を挿入しますことは、其の取扱が二元的となります、農業會は其の會員の生産を指導し、生産物を處理することは當然のことであり、其の任務であります、而して専業製炭者の方は、之を林業會が取扱ふことになれば、自然二元的にならざるを得ぬこととなるのであります、此のことは生産増強の上からも、配給を圓滑に行ふ上からも、甚だ宜しくない結果を齋すことは明白であります、私共は委員會に於て農山村の實情も十分に申述べ、又政府の之に對する所見を問ひ質しました所、政府當局は私共の意見と相一致致して居たのでございまして、今直ちに木炭を林業會に取扱はしむることは適當でない、適當なる時期に指定するとのことであつたのであります、若しも之を指定致します時には、今取扱を致して居る農業會の意思を尊重して、相談の上之を指定すると言明されたのであります、然るに今斯かる無暴なる修正をなすことは、生産は減産となり、配給は不圓滑となります、故に絶對に反對せざるを得ぬのであります(拍手)諸君も以上の實情を十分御考慮なさいまして、日本林業を發展向上させる爲に農山村の福利増進の爲に、又一面薪炭増産の爲に、需要者に對し配給を圓滑に致します爲に、此の修正案を取消されんことを切望するものでございます(拍手)從來相手國が實質的に其の力を増強する時に、我が國は唯徒らに形式に拘泥致しまして、名目にこだはり、構成いぢりをやつて居た、其の結果が今日の悲しむべき結果を生じたのであります、今に至るも尚ほ目覺めることなく、増産や配給に支障のあることを考慮せず、名目に因はれて斯樣なことをなすが如きは、政治家の能く能く注意せねばならぬことであると信ずるものであります、我々は斷乎反對致すものでございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=47
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048・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案の委員長報告に依る修正に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=48
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049・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 起立多數、仍て委員長の報告に係る修正は可決致しました、其の他は原案の通り御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=49
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050・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て其の他は原案の通り決しました、是にて本案の第二讀會は終了致しました
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051・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第三讀會を開かれんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=51
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052・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=52
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053・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第三讀會を開き、議案全部を課題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=53
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054・会議録情報7
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林業會法案 第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=54
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055・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 別に御發議もありませぬ、本案は第二讀會議決の通り確定致しました(拍手)
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056・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際日程第三を繰上げ上程し、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=56
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057・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=57
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058・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、政府は此の議事日程變更に同意せられました、仍て日程の順序は變更せられました──日程第三、蠶絲業法の一部を改正する法律案の第一讀會の續を開きます、委員長の報告を求めます──委員長仲川房次郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=58
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059・会議録情報8
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第三 蠶絲業法の一部を改正する法律案(森幸太郎君外四名提出)
第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 蠶絲業法の一部を改正する法律案(森幸太郎君外四名提出)
右は本院に於て別紙の通り修正すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十一年九月二十六日
委員長 仲川房次郎
衆議院議長 山崎猛殿
〔別紙〕
蠶絲業法の一部を次のやうに改正する。
第二十一條第一項中「蠶絲業者」の下に「又は其の團體」を加へる。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
この法律の施行に關し必要な規定は、勅令でこれを定める。
附帶決議
一、政府は本案成立の曉に於ては、農業團體法を適當に改正し、養蠶業に關する事業は、之を養蠶協同組合に移管するの措置を講ずべし
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〔仲川房二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=59
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060・仲川房次郎
○仲川房次郎君 只今議題となりました、蠶絲業法の一部を改正する法律案の委員會に於ける經過竝に其の結果に付て簡單に御報告を申上げます
本案は去る二十一日の本會議、第一讀會に於て、議長指名十八名の委員に付託され、二十三日委員長、理事の互選を行ひました結果、不肖私が委員長に當選致し、理事には田中実司君、宮澤才吉君、林虎雄君の三名が選任されました、尚ほ當日は散會後引續き審査方針其の他に關する協議懇談を致したのであります、次に二十六日會議を開きまして、先づ提案者は森幸太郎君より本案提出理由の説明を聽取し、引續き懇談會を開き、各委員の忌憚なき意見を聽きました所、それぞれ蠶絲業の重要性を力説されたのであります
懇談會終了後、委員會を再開し、提案者竝に政府委員に對し質疑を行ひましたが、質疑應答の主なる點を御紹介申上げますならば、蠶絲五箇年計畫の具體的方針如何との質疑に對しましては、政府委員より、目下考慮中であるが、豫算に付ては追加豫算に於て増額を要求することになつて居るとの答辯があり、更に繭價格の確定に關する質疑に關しましては、適當に決定すべく努力すると云ふ意味の應答がありました
引續き討論を行ひましたる所、進歩黨大久保傳藏君より原案に對する修正動議が提出されました、即ち修正案は次の通りであります、原案の第二十一條第一項の改正規定中「「其の」を削る。」とあるのを削らない、尚ほ二十八條の二の挿入條項は之を削除すると云ふのであります、其の理由は、第一點の「其の」を削らないと云ふのは、現行法の「其の」を生かして置いても、何等原案に對しては妨げはないと云ふのであり第二點の第二十八條の二の挿入條項を全部削除すると云ふのは、挿入しなくとも、養蠶協同組合は系統的に運用することが出來、原案の目的を達成せられると云ふのであります、續いて自由黨田中実司君、社會黨榊原千代君、協同民主黨米倉達也君、國民黨小川一平君は、それぞれ各黨を代表して、大久保君提出の修正案に贊成の旨意見を開陳せられたのであります、直ちに採決致しましたる所、滿場一致修正に決しました、續いて協同民主黨の香川兼吉君より提出の附帶決議案、即ち
政府は本案成立の曉に於ては、農業團體法案を適當に改正し、養蠶業に關する事業は、之を養蠶協同組合に移管するの措置を講ずべし
此の案に付て採決を致しましたる所、是れ亦滿場一致を以て附するに決しました、尚ほ詳細は速記録に就て御覽を戴くことと致しまして、簡單でありますが、以上を以て報告を終ること致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=60
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061・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=61
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062・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て本案の第二讀會を開くに決めました
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=62
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063・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り議決せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=63
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064・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=64
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065・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=65
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066・会議録情報9
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蠶絲業法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=66
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067・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 別に御發議もありませぬ、第三讀會を省略して委員長報告通り確定致しました(拍手)
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=67
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068・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の日程を延期し、本日は是にて散會せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=68
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069・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=69
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070・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後五時二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X04719460927&spkNum=70
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