1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年十月三日(木曜日)
午後二時一分開議
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議事日程 第四十九號
昭和二十一年十月三日
午後一時開議
第一 帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 自作農創設特別措置特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第四 私學振興に關する決議案(左藤義詮君外十名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) 諸般の報告を致させます
〔書記官朗讀〕
一、本日政府から左の議案が提出されました
競馬法の一部を改正する法律案
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〔朗讀を省略した報告〕
一、去三十日政府から受領した答辯書は次の通りである
布利秋君提出「憲法改正に關聯する再質問」に對する答辯書(吉田内閣總理大臣)
布利秋君提出「緊急事件二法案に關する質問」に對する答辯書(石橋大藏大臣)
米山文子君提出「憲法改正に伴ふ諸法規改正に關する質問」に對する答辯書(吉田内閣總理大臣、木村司法大臣)
新妻イト君提出「大日本婦人會の清算報告に關する質問」に對する答辯書(吉田内閣總理大臣)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=1
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002・会議録情報2
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憲法改正に關聯する再質問主意書
右成規に據り提出する。
昭和二十一年八月十三日
提出者 布利秋
憲法改正に關聯する再質問主意書
一 七月十六日提出の質問書に對する政府答辯書は八月六日議長宛送達のものを借讀した。憲法改正が世界監視下にあるのは勿論である。而して國家組織と國民精神に大轉換を與へる時、政府においても舊套依存は斷然放棄されると信じたのであるが、舊態依然たる答辯は官僚獨善のお座なりと言ふ外はない。右に關して、お座なりなりや否やについて政府の御意見を承りたい。
二 第一點に對する政府の答辯と、我々の考へ方とは、本質的に差異がある。即ち他議員の質問に對する答辯速記録を讀めと指示されたことは、完全に不誠意の證據であり、同時に民主主義への逆襲とも言ひ得るのである。我々としては、政府の言ひ過ぎや、不用意に對してまでも、故意にこれを追究する惡意はもたぬのである。即ち第一點の如きは、誠意さへあれば、率直に答へ得られる筈のものである。我々は已むなく、茲に第一點に對して再質問する。
三 第二十點の質問は、向後の政爭が、個人主義から發足する左翼政黨の理論と、家族主義の傳統によつて團結する右翼政黨の感情とが、互に對立して、一大鬪爭を起こすことは當然である。この場合において我が國の文教指導は時に左翼教育となり、時に右翼教育となり、國民が蒙る文教上の損失は極めて大である。故にせめて文部大臣だけでも文化各團體の公選によつて、一定の任期をもたせ、落ちついて實績を擧げ得るやう仕組むべきである。即ち、文相は内閣更迭と運命を共にしない立場に置くことである。然るに政府は、今日既に家庭内が赤旗の兒童、白旗の生徒に分れて互に反目する學校教育の惡現象さへも知らず、第二十點の質問に對しては、國會が指名する總理大臣によつて、任命される文部大臣には無理がないといふ意味の理論的答辯を行はれたのであるが、併し將來の不幸を豫言しての質問に對する第二十點の答辯は、憲法の理論が認める國會中心が、憲法の指圖に基く多數勢力による内閣に一切の權利があるといふ意味の理論面に立つ政黨的文部大臣が、國民の將來に有利な現象となるか否かは、後日に至つて明瞭となるであらう。
即ち後顧の憂なからしめるために文相を獨自の立場においては如何と質問したのである。けれども政府は憲法面の理論を武器として答へられてゐる。併し斯くも憲法の理論を尊重される政府が、第十五點においては、憲法の理論を棄てて、傳統と感情を以て答へられることは何故であらうか。即ち第十五點の質問は、憲法が個人主義の理論によつて立ち、家族制度なるものは感情依存であるが、その取扱ひ如何といふのである。然るに第十五點に對する政府の答辯は、家族主義と個人主義とが必ずしも兩立し得ないものとは考へてゐないなどと、的はづれの答辯は、理論的でなく感情まる出しである。即ち憲法が個人基盤に立つ以上、家族主義基盤は消滅してゐる。
我々の質問第二十點に對する答辯は、憲法中心に理論的解決を與へられてゐるが、第十五點に對しては、感情的に解決を與へられてゐる。これ何たる矛盾撞著であらうか。即ち第二十點は理論で割切り、第十五點は理論的に割切ることができず、感情によつて割切れと押しつけられることは、煎じ詰めると、第十五點は政府においても割切れぬのであらう。即ちこの點に關して、再質問の已むなきに至つたのである。
第二十點は憲法の理論で貫くとき、文教上に副作用が起こり、第十五點に對しては、理論沒却の感情的答辯とあつては、社會生活に副作用を起こすわけである。故に政府は質問者の眞意と熱意を汲み取り、愼重に又高邁なる識見を以て人間的に答へらるべきであらう。
以上は本會議場で、口頭により御答辯あらんことを特に要求する。
右再質問する。
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昭和二十一年九月三十日
内閣總理大臣 吉田茂
衆議院議長山崎猛殿
衆議院議員 布利秋君提出憲法改正に關聯する再質問に對し別紙答辯書を送付する。
〔別 紙〕
衆議院議員 布利秋君提出憲法改正に關聯する再質問に對する答辯書
一、七月十六日提出の質問書における諸項目の中、本會議において他議員に對し、既に答辯したところについて諒解されると思はれたものについては、當該答辯の參照を願つたのであり、その他の項目については要點を答へてゐる。何れも誠意を以て答辯したものである。
二、ボツダム宣言受諾の際における國體護持の問題について六月二十四日衆議院本會議において、松原一彦議員の質疑に對する答辯の中で言及したものであり、この機會において所見を明かにすることが最も適當と考へたのである。なほ本會議における布議員の質問に對し答辯を行はなかつたのは、既に同一問題について他議員に對して答辯したところにより明かであると考へたからである。
三、文部大臣も内閣を構成する國務大臣の一人であるから、特に他の國務大臣と異る就任の方法によることは妥當でない。すなはち萬事國民の聡明に期待する態度で行く所存である、なほ第十五條の答辯と第二十條の答辯が、態度において矛盾するとは考へてゐない。
右答辯する。
昭和二十一年九月三十日
内閣總理大臣 吉田茂
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緊急事件二法案に關する質問主意書
右成規に據り提出する。
昭和二十一年八月十五日
提出者 布利秋
緊急事件二法案に關する質問主意書
第一點
八月十三日上程の會社經理應急措置法案及び金融機關經理應急措置法案に關し、特に制限討議を議院に求め、一瞬にして法律化すべく急がれたことが、現下必要の緊急事件といふならば、何故に政府竝びに與黨の一部から、既に一箇月以前において、この機密を一部の特權階級に流傳させたのであるか、議院法第二十八條の精神は特權階級に了解を與へ、早耳をして、各金融機關に資金分匿の便宜を與へたる後において、上程すべき性質のものであつたか、これが政府から財閥筋に與へるサービスであるのか政府の所見を承りたい。
第二點
佛蘭西は第一次世界大戰の勝者でありながら、大インフレに襲はれた後始末に對し、時の藏相ポアンカレーは一九二六年の金融應急措置實行に當つて、獨立金庫政策を實施した。併し政策實施の時期を祕密に付して、閣僚にも祕書官にも知らしめず、自ら時の米國大統領に對して、祕密電話を以て了解を求むるやいなや、獨斷的に即時金融及び爲替對策を斷行した。この事は金融業者及び相場業者をして唖然たらしめ、早耳への漏電を防いだ。勿論、ポアンカレーの措置は、強權フアツショには相違ないが、特殊階級に資金隱匿の時間を與へず、公正平等に措置し得た、指導功績偉大なものであつた。而して一方敗者たるドイツのエーベルト政權は、時の藏相をして機密漏洩を行はせ、一部の資金隱蔽者をして、インフレ投機に沒頭させつつ、外交的計畫も含んで、極端な財政インフレにた陷れのである。兩者各各政治的良心に差異のあることは明白である。かかる場合に臨んで、わが政府はいづれを眞似たのであるか、政府の所見を承りたい。
第三點
今日は封鎖預金なるものが浮動して、その實體を掴むことすら不便となつた。斯くして、財産税なるものは果して計畫通りに成績を擧げ得ると考へられるか。燒けたものは燒け損、燒けないものは水ぶとりといふ不公正に對して如何なる方法をもつて、大衆の機會均等を確保される御所存であるか。更に借金帳消しの事業家が次の事業再開による新しい闇の儲に、一石二鳥の暴慾を滿足さすべく企てつつある計畫を御承知であるか。即ち借金踏倒しの會社蘇生の意義が、決して公平無私のものではない。儲けたならば舊債務者に報ゆるのが、律義ある徳操ではないか。而も小額の金を友情的に貸與して、そのために債權者は生活にも窮するといふ悲劇に對して、一蓮托生的に、又大小輕重を論じない畫一政策は、血も涙もない措置なりと御考へにならぬか。斯くして意慾沈沒、而も宿命的自暴自棄に陷らしめることが、政府の指導精神なのであるか。甲は借り倒して喜び、乙は犧牲者となつて悲しむといふ不公正が、政府の目的ではなかつた筈であらう。
斯くして、新圓の闇ブロックに機會を與へ、日本人に非らざるものを跋扈せしめることが政府の目的でもあるまい。かの軍閥官僚による獨善獨斷的總動員法の味をしめつつ、何故に特殊専屬事業家の闇屋にのみ儲けを與へんとするのか。右の第三點の質問は複雜であるが、分析しつつ答辯あらんことを待つ。
第四點
今後の國民生活は八月十三日事件によつて、益益刻々窮地に追ひ込まれるであらう。斯くして財政インフレの犧牲者は激増するであらう。
政府が一部事業家の生産を保護しても、豫定通り生産向上が望めなかつた場合、物價は更に更に暴騰するであらう。その際の大衆の損失に對して、何を以て償はんとするのか、果して政府にその用意ありや否やを質問する。
若しも企畫通りに實を結ばない場合は、再び三度び議院法第二十八條を濫發するつもりか。幾度でも總動員法に似た重壓を加へるつもりか、右の第四點について、國民向後の生活のために、我々は質問せざるを得ないのである。以上、政府の確信ある又責任ある御所見を承りたい。
右質問する。
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昭和二十一年九月三十日
内閣總理大臣 吉田茂
衆議院議長山崎猛殿
衆議院議員布利秋君提出緊急事件二法案に關する質問に對し別紙答辯書を送付する。
〔別 紙〕
衆議院議員布利秋君提出緊急事件二法案に關する質問に對する答辯書
第一點 會社經理應急措置法及び金融機關經理應急措置法はその内容から考へて金融緊急措置令施行規則の改正と同時に施行することを理想とし、若し遲れるとしてもその期間は極めて短い事が望ましいのである。その期間が一日延びれば一日延びる程金融界、經濟界に惡影響を及ぼし取引の圓滑を害するのでその施行は特に緊急を要するのみならずその内容も單に經理に關し新舊勘定を區分すると言ふに過ぎないのであるから議會に於ける審議も短時間にこれを終へるやう特に御願ひした次第である。
兩法律は文字通り應急的措置であつて根本的問題は企業再建整備法案及び金融機關再建整備法案に盛られてゐるからその審議の際に充分御審議頂く機會があると思はれたし議會に於かれてもこれを諒とせられたものと考へる。
尚兩法案の提案の直前にその内容が特に緊急を要するものであることを貴衆兩院の代表者の方々に諒解を御願ひしたのであるがこれは最も民主的方法であると確信する。右の事實の外政府に於てことさらに機密を流傳したやうな事實は全然存しない。
第二點 金融應急措置の實行方法に關して、佛蘭西及び獨逸の例を引いて御説明があつたが、御指摘の點は誠に傾聽に値すると思ふ。金融に關することは御説のやうに機密を要する場合が尠くないのであつて、機密の確保については細心の留意を拂ふ必要のあることは申すまでもない。然し一般經濟界、金融界及び國民の財産權に重大な影響を及ぼす事柄であるから政府の専斷で行ふことは適當でないのみならず、亦法律上も許されないので、議會の協贊を御願ひした次第である。若しもかかる重大問題を政府の獨斷で實行するとすれば、民主的政治の運營に反すると言ふ謗を免れないと思ふ。只特に機密を要し即時實施する必要のあるものについては適當の措置を講ずることを容認せられたいのである。
これを要するに常に政治的良心に顧みて出來得る限り民主的政治の運營を旨とし、緊急を要する事柄については、その緊急性の度合に應じて、適當善處したい考へである。
第三點 第三點の御質問の内容は多岐に亙つてゐるので分析的に御答へする。
第一に財産税の徴收に關してであるが、財産税は本年三月三日現在の財産について課税するのであつて、その後封鎖預金のみならず、不動産其の他についても財産の形態には若干異動があるであらうが、財産總額には大して變りはないと認められるから、財産税の徴收に支障を來したとは考へない。
第二に戰爭による損害、軍需補償打切りに伴ふ負擔等の均衡化については一定金額以下の戰爭保險金等の打切免除、一定金額以下の預金等の保護、財産税の徴收等によつて國民相互の間の負擔の均衡を圖る考へである。
第三に特別經理會社の舊債務の整理に關してであるが、特別經理會社については舊債務を適當處理せしめ、事業の再開の時その繼續を容易ならしめようとする趣旨であつて、一般的にはこの措置は極めて有效なものと考へる。特別經理會社の損失の負擔については企業再建整備法案に於て負擔の順序割合等を法定してゐるが、この損失は先づ株主が負擔し次で舊債權者が負擔するのであつて御質問の如く舊債權者のみがこれを負擔するのではない。
第四に闇取引については今後一層物價統制の適正を期し取締の勵行を期する等極力善處する所存である。
第四點 現下の事態に顧みて生産増強こそ最大の要請であり、インフレーション克服のためにも是非實現しなければならないところである。これが爲に政府としては萬全の措置を講じつつある次第である。從つて之と相伴つて高物價の安定を期し得ることを信じてゐる。
尚現在の物價情勢と失業者の状況を考慮して生活保護法を制定し、生活困窮者の救護を圖るため法律案及びこれに伴ふ豫算を提案した次第である。
最後に議院法第二十八條の發動に關してであるが、前にも申し上げた通り政府としては政治の民主的運營を念としてゐることは勿論であつて緊急已むを得ない事由がある場合に限つて全く例外的に緊急に御審議を御願ひしたに過ぎないのである。これが運用については政府としても充分な配慮を行ふことは言ふまでもない。これを濫用するが如きは絶對にないことを重ねて申し上げる。
右答辯する。
昭和二十一年九月三十日
大藏大臣 石橋湛山
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憲法改正に伴ふ諸法規改正に關する質問主意書
右成規に據り提出する。
昭和二十一年八月十六日
提出者 米山文子
憲法改正に伴ふ諸法規改正に關する質問主意書
第一、憲法改正草案第十二條、第二十二條により、法律は悉く個人の尊重と男女兩性の本質的平等に立脚して制定せらるべきであるが、政府は次の諸點につき如何なる改正方針を執るものなりや。
一、戸主及び戸主權、戸主の家族に對する同意權、指定權などをめぐり、家の制度に關ずる民法の規定竝びに戸籍法は如何に改正する方針か
二、妻を法律上無能力者とする民法の規定、夫婦財産制に關する民法の規定の改正方針如何
三、子に對する父母の親權に等差を設けてゐる民法の諸規定、子の婚姻に對する父母の同意に關する規定、母の子に對する親權が、女性なるが故に親族會の監督に服するものとする諸規定の改正方針如何
四、夫婦離婚原因に關する男女不平等規定、夫婦同居義務に關する男女不平等規定の改正方針如何
五、家督相續に關する規定の中特に相續順位につき、男女平等を如何に取扱ふかに關する改正方針如何
六、財産相續はこれを均分制とする方針なりや
七、姦通罪に關する男女不平等規定の改正方針如何
第二、憲法改正草案第十三條により、女子は男子に對し政治的平等、經濟的平等、社會的平等の取扱を受くべきであるが、これらの諸平等は何れも法制上の裏附けを俟つて初めて所期の目的を達成し得るものと信ずる。
よつて、政府は女性の政治的(選擧制度を除く)經濟的、社會的平等に關し、制度上如何なる點に改革をなさんとするか。
右質問する。
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昭和二十一年九月三十日
内閣總理大臣 吉田茂
衆議院議長山崎猛殿
衆議院議員米山文子君提出憲法改正に伴ふ諸法規改正に關する質問に對し別紙答辯書を送付する。
〔別 紙〕
衆議院議員米山文子君提出憲法改正に伴ふ諸法規改正に關する質問に對する答辯書
憲法改正に伴ふ諸法規の改正方針については、目下臨時法制調査會において、調査審議中である。先月二十一日及び二十二日、同會の總會において、右に關する中間的な報告があり、その内容は當時政府から發表した通りであつて、それを御參照願ひたいが、政府としては、もとより未だ成案を得てゐるのではなく、憲法改正に伴ふ諸法規改正の最終的の方針については、現在は、未だ御答辯の時期に達してゐない。要するに、婚姻及び家族に關する事項については、個人の尊嚴と兩性の本質的平等に立脚しつつ、これとわが國古來の良き傳統を調和せしめ、その他政治的、經濟的又は社會的關係においても、性別による差別を撤廢する方針の下に、廣く國民の意向をも尊重しつつ、法令を改正する所存で研究中である。
右答辯する。
昭和二十一年九月三十日
内閣總理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
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大日本婦人會の清算報告に關する質問主意書
右成規に據り提出する。
昭和二十一年八月十七日
提出者 新妻イト
大日本婦人會の清算報告に關する質問主意書
大日本婦人會は、所謂大東亞戰爭完遂のため、軍部の強壓により、愛國婦人會、國防婦人會、女子青年會等々の婦人團體を統合した團體である。即ち一定年齡に達した日本婦人は、好むと好まざるとにかかはらず強制的に入會せしめられ會費を徴收されてきたのである。會の仕事としては、將兵の見送り、遺骨の出迎へ若くは愛國貯金の徴收位のもので、その他に殆んど何等の見るべきものはなかつた。
かくの如く仕事らしき仕事を何一つしてゐない大日本婦人會は、終戰と同時に解散してしまつたが、本會には幾百萬といふ會員から強制的に徴收した會費、政府補助金、皇后陛下からの御下賜金百萬圓等莫大な資金を有してゐたのであるが、解散後數箇月を經過した今日、未だに會計の清算報告をしないのである。何時までも放置しておくことは國民に疑念を起させるに十分である。過日「會計法戰時特例廢止」の委員會で、この問題について當局の質問したのであるが、その所管が厚生省でも、内務省でも、大藏省でもないといふことで、關係官廳と思はれるどの省でも所管外と稱して答辯を與へなかつた。それ故ここに改めて總理大臣に次の各項に亙りお尋ねする。
一、大日本婦人會設立當時の資産、政府からの補助金及び會員より徴收した會費の使途及び殘額
一、解散後に清算された決算報告
一、會解散後、地方にてはなほ殘務整理と稱して職員が會の資金を消費しつつある噂があるが、その事實の有無
一、殘金は現在何處に保管されてゐるか
一、皇后陛下よりの御下賜金百萬圓は別途に保管されてゐるか
一、殘金は將來如何なる使途に用ゆるつもりか
以上明確に、速かに囘答を願ひたい。
右質問する。
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昭和二十一年九月三十日
内閣總理大臣 吉田茂
衆議院議長山崎猛殿
衆議院議員新妻イト君提出大日本婦人會の清算報告に關する質問に對し別紙答辯書を送付する。
〔別 紙〕
衆議院議員新妻イト君提出大日本婦人會の清算報告に關する質問に對する答辯書
一、資産より生じた收入、國庫補助金は大日本婦人會の事務費、勤勞動員、軍事援護、戰時生活指導、貯蓄奬勵、航空事業援護等の事業費及び都道府縣支部に對する助成と事業指導等に使用せられ、其の殘額は別項の通りである。尚會費收入は本部に歸屬せしめず専ら夫夫の地方支部の事務費及び事業費に使用せられた。
二、大日本婦人會は昭和二十年六月十三日解散し、同年十月五日本部の殘務整理を終了したる旨同會殘務整理委員長より同月八日決算書、財産目録を添えた報告書を受理した。
決算報告書に依れば、昭和二十年度の一般會計歳入歳出は歳入合計八九三、一一一圓〇三錢、歳出合計八五八、七五八圓四八錢であつて、差引殘金三四、三五二圓五五錢、特別會計の歳入歳出は歳入合計一四一、九三五圓五二錢、歳出合計一〇九、八二七圓三〇錢であつて、差引殘金三二、一〇八圓二二錢である。而して一般會計における積立金一、一五〇、九八〇圓特別會計に於ける積立金二三五、九八一圓一三錢が別に存するから此の兩積立金の合計と昭和二十年度の歳入歳出の差引殘金との合計金額一、四五三、四二一圓九〇錢が殘金となる次第である。
三、地方支部の監督官廳は地方長官、所在地陸海軍官衙の長の三者共同所管であり、支部理事會において監督官廳と協議の上、殘務整理を行ひ既に終了してゐるのである。
四、殘金は大日本婦人會殘務整理委員長の寄託を受け内閣官房において保管中である。
五、質問主意書に「皇后陛下よりの御下賜金百萬圓」とあるのは、前掲の一般會計に於ける積立金一、一五〇、九八〇圓中の一、〇〇〇、〇〇〇圓に相當するものと思料するも此れは大日本婦人會に對する支那事變行賞の賜金國庫債券額面一千圓券一千枚であつて、既に昭和二十一年法律第四號に依り無效となつたのである。
六、殘金の使途については今後關係方面とも連絡の上將來愼重に研究の上決したい。
右答辯する。
昭和二十一年九月三十日
内閣總理大臣 吉田茂
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一、政府から提出された議案は次の通りである
(改第一號)昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案
(改特第一號)昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算追加案
(改第二號)昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案
(改特第二號)昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算追加案
豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件
(以上九月三十日提出)
帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案
復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案
自作農創設特別措置特別會計法案
(以上十月二日提出)
一、本日政府から次の要求書を受領した
一、競馬法の一部を改正する法律案
右議院法第二十七條但書及び第二十八條但書によつて議定せられたく要求致します
昭和二十一年十月三日
内閣總理大臣 吉田茂
衆議院議長山崎猛殿
一、去三十日貴族院に於て、本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した
復興金融金庫法案
一、議員から提出された議案は次の通りである
私學振興に關する決議案
提出者
左藤義詮君 廣川弘禪君
笹森順造君 大久保留次郎君
松原一彦君 原彪之助君
志賀義雄君 五坪茂雄君
船田享二君 西山冨佐太君
(以上九月三十日提出)
一、議員から提出された緊急質問は次の通りである
新聞通信放送勞働組合ゼネ・ストに關する緊急質問
提出者 加藤勘十君
(以上九月三十日提出)
一、去三十日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒受領した
大藏事務官 渡邊喜久造
第九十囘帝國議會大藏省所管事務政府委員被仰付
商工事務官 和田太郎
第九十囘帝國議會商工省所管事務政府委員被仰付
一、去三十日委員長理事互選の結果次の通り當選した
戰時補償特別措置法案(政府提出)外五件委員
委員長 本多市郎君
理事
石原圓吉君 菊地長右ヱ門君
森曉君 舟崎由之君
武藤嘉一君 上田清次郎君
鈴木茂三郎君 木下榮君
久保猛夫君
一、去三十日議長に於て次の委員を選定した
貿易資金特別會計法案(政府提出)委員
飯國壯三郎君 小野孝君
栗原大島太郎君 栗山長次郎君
杉田馨子君 深津玉一郎君
森崎了三君 若林義孝君
亘四郎君 稻本早苗君
江部順治君 九鬼紋十郎君
白井秀吉君 寺田榮吉君
林田正治君 早稻田柳右エ門君
大矢省三君 加藤シヅエ君
島田晋作君 土井直作君
松永義雄君 山花秀雄君
川越博君 原尻束君
松本瀧藏君 安藤はつ君
大津桂一君
一、去三十日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
戰時補償特別措置法案(政府提出)外五件委員
理事 奧村又十郎君(鈴木茂三郎君去三十日理事辭任に付其の補闕)
一、去三十日次の通り特別委員の異動があつた
戰時補償特別措置法案(政府提出)外五件委員
辭任 鹿島透君 補闕 秋田大助君
辭任 三木武夫君 補闕 伊東岩男君
一、去一日議長に於て次の通り常任委員辭任の許可があつた
第一部選出豫算委員 早川崇君
第二部選出豫算委員 石田一松君
第二部選出豫算委員 左藤義詮君
第六部選出豫算委員 鈴木彌五郎君
一、去一日委員長理事互選の結果次の通り當選した
貿易資金特別會計法案(政府提出)委員
委員長 白井秀吉君
理事
栗山長次郎君 深津玉一郎君
寺田榮吉君 松永義雄君
一、去一日次の通り特別委員の異動があつた
自作農創設特別措置法案(政府提出)外一件委員
辭任 田邊讓君 補闕 坂田道太君
戰時補償特別措置法案(政府提出)外五件委員
辭任 苫米地義三君 補闕 武藤常介君
辭任 九鬼紋十郎君 補闕 中野四郎君
辭任 高橋英吉君 補闕 河原田巖君
貿易資金特別會計法案(政府提出)委員
辭任 九鬼紋十郎君 補闕 笠井重治君
一、昨二日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した
第一部選出
豫算委員 仲子隆君(早川崇君補闕)
第二部選出
豫算委員 米山文子君(石田一松君補闕)
第二部選出
豫算委員 稻葉道意君(左藤義詮君補闕)
第六部選出
豫算委員 大島多藏君(鈴木彌五郎君補闕)
一、昨二日常任委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した
豫算委員
理事 大島多藏君(理事石田一松君去一日委員辭任に付其の補闕)
一、昨二日次の通り特別委員の異動があつた
戰時補償特別措置法案(政府提出)外五件委員
辭任 廣川弘禪君 補闕 大石ヨシエ君
辭任 赤澤正道君 補闕 藤井正男君
─────────────────────発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=2
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003・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より會議を開きます
─────────────────────発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=3
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004・村上勇
○村上勇君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際政府提出競馬法の一部を改正する法律案を議題となし、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=4
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005・山崎猛
○議長(山崎猛君) 村上君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=5
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006・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て日程は變更せられました──競馬法の一部を改正する法律案を議題と致します──大石農林政務次官
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競馬法の一部を改正する法律案(政府提出) (緊急事件)
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競馬法の一部を改正する法律案
競馬法の一部を次のやうに改正する。
第四條第二項及び第三項を削る。
第六條第一項中「十倍」を百倍」に改める。
第三十五條第一號中「第一項又は第二項」を削る。
第三十六條第一號中「第一項又は第二項」を削り、同條中第三號を削り、第四號を第三號とする。
第三十八條第一項中「三百圓」を「二千圓」に改める。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
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〔政府委員大石倫治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=6
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007・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 只今議題となりました競馬法の一部を改正致します法律案の提案理由を簡單に御説明申上げたいと存じます
御承知の如く競馬の施行は、馬事思想の普及と共に、浮動購買力を吸收し、通貨の縮小に資する所が極めて大であります、隨て此の觀點より、殊に現下の經濟事情に鑑みまして、現行競馬法の中の馬券の發賣及び讓渡に關する制限を緩和すると共に、拂戻金の限度を擴張し、以て國家の通貨對策の一翼として競馬法を活用する爲め、今囘競馬法の一部を改正致したいと存ずるのであります
即ち改正の第一は、馬券の一人當り發賣數一枚と云ふ制限を撤廢せんとするものであります、第二は拂戻金を、從來券面金額の十倍でありましたものを、百倍に致したいと存ずるのであります、第三は、第一及び第二に關聯する罰則の廢止であります、第四は、日本競馬會の役員に對する贈賄罪の罰金三百圓以下とありまするものを、二千圓以下と改正することであります
以上が此の法案の内容でありますが、尚ほ以上の改正を要しまする關係は、過般本議會を通過致しました地方競馬法の内容と、其の歩調を一に致さなければならぬ必要からであります、地方競馬法に於きましては、枚數の制限を致しませぬ、又配當も百倍となつて居るのであります、此の關係が緊急を要する理由であります、何卒御審議の上速かに御協贊を賜はらんことを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=7
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008・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案に對しては、政府より議院法第二十七條但書竝に第二十八條但書に依る要求がありました、仍て委員に付託せず、且つ讀會の順序を省略することと致します、直ちに採決致します、本案は可決するに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=8
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009・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て本案は可決致しました(拍手)日程第一乃至第三は便宜上一括議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て日程第一、帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案、日程第二、復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案、日程第三、自作農創設特別措置特別會計法案、右三案を一括して第一讀會を開きます──上塚大藏政務次官
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第一 帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 自作農創設特別措置特別會計法案(政府提出) 第一讀會
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帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案
帝國鐵道會計收益勘定又は通信事業特別會計業務勘定における昭和二十一年度の經費支辨のため、政府は、それぞれ當該特別會計の負擔において借入金をなすことができる。但し、その金額は、帝國鐵道會計にあつては五千八百萬圓、通信事業特別會計にあつては四億四千萬圓を超過することができない。
前項の規定による借入金は、これを昭和二十四年度までに償還するものとする。
第一項の規定による借入金は、帝國鐵道會計收益勘定又は通信事業特別會計業務勘定の歳入とし、當該借入金の償還金及び利子は、それぞれ當該勘定の歳出とする。
第一項の借入金に因り、帝國鐵道會計收益勘定又は通信事業特別會計業務勘定において、昭和二十一年度の決算上歳入總額の歳出總額に超過する金額を生じたときは、帝國鐵道會計法第九條又は通信事業特別會計法第十條第一項の規定にかかはらず、これをそれぞれ當該勘定の翌年度の歳入に繰り入れるものとする。
帝國鐵道會計又は通信事業特別會計の昭和二十一年度における國債償還資金の繰入は、帝國鐵道會計法第三條第二項、通信事業特別會計法第三條第二項及び國債整理基金特別會計法第二條第一項の規定にかかはらず、これを停止することができる。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
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復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案
復興金融金庫及び産業復興營團に對する出資拂込金を支辨するため、政府は、四十二億八千六百萬圓を限り、公債を發行し、又は借入金をすることができる。
前項の規定による公債の利率は、年三分五厘、その發行價格は、額面金額百圓につき九十八圓、その償還期限は、十八年以内とする。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
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自作農創設特別措置特別會計法案
自作農創設特別措置特別會計法
第一條 自作農創設のため政府の行ふ土地、權利又は立木、工作物その他の物件(以下農地等といふ。)の買收、使用、賣渡、賃貸、交換等に關する歳入歳出は、これを一般會計と區分して特別會計を設置する。
第二條 この會計においては、農地等の賣渡代金及びその利子、農地等の賃貸料、一般會計からの繰入金、借入金竝びに附屬雜收入を以てその歳入とし、農地等の買收代金、第三條又は第四條第一項の規定による他の會計への繰入金、報償金、農地等の使用料、補償金、事務取扱費、自作農創設特別措置法に基いて政府の發行する證券(以下農地證券といふ。)及び借入金の償還金及び利子、一時借入金の利子、農地證券の發行及び償還に關する諸費その他の諸費を以てその歳出とする。
第三條 毎年度における農地等の賣渡代金及び利子の合計額に相當する金額に、當該年度までに他の會計の所屬からこの會計の所屬に移した農地等で賣り渡したものの受入價額の、當該年度までに賣り渡した農地等の受入價額に對する割合を乘じて得た額に相當する金額は、毎年度この會計から當該他會計にこれを繰り入れるものとする。
第四條 農地等でその賣渡價額がその受入價額を超えるものの、毎年度における賣渡代金及び利子の合計額に相當する金額に、當該超過額の合計額の當該賣渡價額の合計額に對する割合を乘じて得た額に相當する金額は、毎年度この會計から一般會計にこれを繰り入れるものとする。
農地等の賣渡代金は、農地等の買收代金、農地證券及び借入金の償還金竝びに前條又は前項の規定による繰入金の財源にのみこれを充てるものとする。
第五條 農地證券は、これをこの會計の負擔とする。
農地證券及び借入金の償還金及び利子、一時借入金の利子竝びに農地證券の發行及び償還に關する諸費の支出に必要な金額は、これを毎年度國債整理基金特別會計に繰り入れるものとする。
第六條 この會計において支拂上現金に餘裕があるときは、これを大藏省預金部に預け入れることができる。
第七條 この會計において支拂上現金に不足があるときは、この會計の負擔で、大藏省預金部若しくは日本銀行から一時借入金をし、又は國庫餘裕金を繰替使用することができる。
前項の規定による一時借入金又は繰替金は、當該年度の歳入を以てこれを償還しなければならない。
前項の場合において、當該年度の歳入減少のため一時借入金又は繰替金を償還することができないときは、政府は、その償還できない金額を限り、この會計の負擔で大藏省預金部又は日本銀行から借入金をすることができる。
前項の規定による借入金は、一年以内にこれを償還しなければならない。
第八條 この會計において決算上剩餘を生じたときは、これを翌年度の歳入に繰り入れるものとする。
前項の規定による繰入金は、農地等の買收代金竝びに農地證券及び借入金の償還金の財源にのみこれを充てるものとする。
この會計において、農地等の賣渡代金及び第一項の規定による繰入金を以て農地等の買收代金、農地證券及び借入金の償還金竝びに第三條又は第四條第一項の規定による繰入金を支辨するのに不足する金額と、農地等の賣渡代金、第一項の規定による繰入金及び借入金以外の收入金を以て農地等の買收代金、農地證券及び借入金の償還金竝びに第三條又は第四條第一項の規定による繰入金以外の經費を支辨するのに不足する金額との合計額に相當する金額は、豫算の定める所により、一般會計からこの會計にこれを繰り入れるものとする。
第九條 政府は、毎年この會計の歳入歳出豫算を調製して、歳入歳出の總豫算とともに、これを帝國議會に提出しなければならない。
前項の歳入歳出豫算には、當該年度及び前年度における農地等の賣渡及び買收計畫表竝びに前前年度末現在における農地證券の發行額及び償還額表を添附するものとする。
第十條 この會計の收入支出に關する規程は、勅令でこれを定める。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
─────────────────────
〔政府委員上塚司君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=10
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011・上塚司
○政府委員(上塚司君) 只今議題となりました帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案外二法律案提出の理由を御説明申上げます
先づ帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案に付て申上げます、帝國鐵道會計及び通信事業特別會計に於きましては、終戰後に於ける諸物價の昂騰に基く事業經營用品費等の増嵩、從業員に對する諸給與等の増加等、歳出面の著しい増加の實情に顧みまして、政府は極力兩事業の經營の合理化に努力致して居るのでありますが、尚ほ事業經營上缺くべからざる經費は、増嵩の傾向にありまして、今囘も官廳職員の給與制度の改正の實施に基く經費等、相當多額の追加經費を必要とするに至つたのであります、而して是等の經費の財源は、原則として事業收入を以て支辨すべきものと存ずるのでありますが、兩會計の財政運營の現状より致しましては、其の一部は借入金財源に求めるの外なき實情にあるのであります、而して右の追加經費は、兩事業の圓滑なる運行を確保する爲に缺くべからざるものであります關係上、此の措置も亦已むを得ないものと認めまして、此の法律案を提出致した次第であります
次に復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案に付て申上げます、過日帝國議會の協贊を經て成立致しました復興金融金庫法に依りまして、政府は同金庫の設立當初に四十億圓の出資拂込をなすことに相成つて居り、又目下本院に於きまして御審議を願つて居りまする産業復興營團法案に於きましては、政府は同營團に對しまして二億圓を出資致すことと相成つて居りまするが、是等の出資拂込に要する經費の財源は、一般會計收支の現状に顧みまして、之を公債財源に求めるの外途なき状況にありますので、此の法律案を提出致した次第であります
最後に自作農創設特別措置特別會計法案に付きまして御説明申上げます、目下本院に於て御審議中の自作農創設特別措置法案に關する經理上の措置と致しまして、自作農創設の爲め政府の行ひまする土地等の買收、使用、賃貸、賣渡、交換等に關する歳入歳出は、之を一般會計と區分致しまして、特別會計を設置致しまして、其の經理を明確に致すことが適當に存ぜられるのであります、是が爲には法律の制定を必要と致します關係上、此の法律案を提出致した次第であります
以上三法律案に付きまして御審議の上、何卒速かに御協贊を與へられんことを御願ひ申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=11
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012・山崎猛
○議長(山崎猛君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
─────────────────────発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=12
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013・村上勇
○村上勇君 日程第一乃至第三の三案は、一括して政府提出戰時補償特別措置法案外五件委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=13
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014・山崎猛
○議長(山崎猛君) 村上君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=14
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015・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました──日程第四、私學振興に關する決議案を議題と致します、提出者の趣旨辯明を許します──提出者廣川弘禪君
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第四 私學振興に關する決議案(左藤義詮君外十名提出)
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私學振興に關する決議案
私學振興に關する決議
わが國の私學は、高邁なる理想と、その實現に對する教育的熱情に燃えたる幾多先覺によつて創立發展したるものであつて、その自由清新の校風は、從來文化の各方面において特色ある人材を輩出せること遙かに官學を凌ぐものがある。民主日本再建の途が、個性を尊重して、その自覺と向上とを促し、確乎たる信念の下に、文化の興隆と産業の啓培を期するにあるを思へば、私學振興の要は現下において特に緊切ならざるを得ない。曩に文部當局は教權の獨立と教育優先の方針を樹て、今後の教育は寧ろ私學を中心とすべきだと述べてゐる。然るに現實においては、戰災と終戰後の經營難に喘ぐ私學に對し、殆んど具體的施策の見るべきものがないことは、甚だ遺憾とするところである。よつて政府は左記要項により私學復興の根本方策を樹立し、責任を以てその迅速なる實現を期すべきである。
一、公私立學校生徒學費負擔額の不均衡是正
二、戰災私學復興費の助成
三、戰災私學の有する特殊預金の解除
四、私學への寄附金に對する租税の減免
五、私立學校教職員待遇改善費の補助
右決議する。
─────────────────────
〔廣川弘禪君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=15
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016・廣川弘禪
○廣川弘禪君 只今上程になりました、各派共同提案になる私學振興に關する決議案の提案理由を御説明申上げます、先づ主文を朗讀致します
私學振興に關する決議
わが國の私學は、高邁なる理想と、その實現に對する教育的熱情に燃えたる幾多先覺によつて創立發展したるものであつて、その自由清新の校風は、從來文化の各方面において特色ある人材を輩出せること遙かに官學を凌ぐものがある。民主日本再建の途が、個性を尊重して、その自覺と向上とを促し、確乎たる信念の下に、文化の興隆と産業の啓培を期するにあるを思へば、私學振興の要は現下において特に緊切ならざるを得ない。曩に文部當局は教權の獨立と教育優先の方針を樹て、今後の教育は寧ろ私學を中心とすべきだと述べてゐる。然るに現實においては、戰災と終戰後の經營難に喘ぐ私學に對し、殆んど具體的施策の見るべきものがないことは、甚だ遺憾とするところである。よつて政府は左記要項により私學復興の根本方策を樹立し、責任を以てその迅速なる實現を期すべきである。
一、公私立學校生徒學費負擔額の不均衡是正
二、戰災私學復興費の助成
三、戰災私學の有する特殊預金の解除
四、私學への寄附金に對する租税の減免
五、私立學校教職員待遇改善費の補助
右決議する。
本決議案は各黨殆ど全員の贊成を得て居りまするので、説明を極く要點のみに切詰めて申上げたいと思ひます、日本の教育界に於ける私立學校の重要性は、私が茲に説明致しませぬでも、先刻既に御承知の通りであるのであります、日本の過去の文化は、殆ど私學の手に依つて建設されたと言うても過言ではないのであります、彼の明治維新の大業は、當時の所謂官學であつた所の聖堂の出身者でなく、名もなき一私塾の出身者に依つて成つたのであります、又各藩の大名の建てましたる藩校に對する寺子屋、此の寺子屋こそ、我が日本文化の生みの親であるのであります、明治大正となりまして、あの官尊民卑の風潮の中にあつてすら、私學は益益發展致しまして、世に多くの人材を送つて居るのであります、然るに昭和になり、特に最近に至りまして、私立學校に對する政府の態度は常態を失しまして、授業料の徴集を極度に限定致し、寄附金の募集を禁じ、而も高度の監督をなし、官學的主張を以て、私立學校の特色をさへ拂拭せんと致して居るのであります、一例を擧げまするならば、中等學校に於ける授業料の如きも、數ケ月前までは月僅かに六圓に限定致し、恰も私學を意識的に全滅せしめんとするやうに見えたのであります、然るに此の壓迫にも拘らず、默々として全國の學生生徒の大半を引受けて、文化國家建設に努力致して居るのであります、日本教育再建に當り、政府は私學中心で行くのか、官學一色で行くのか、其の何れを採るか、政府の根本方針は明確でないのであります、政府は、或は官學は官學の特徴を生かし、私學は私學の特徴を生かし、教育行政に萬遺憾なきを期したいと言ふかも知れませぬ、併し日本の現状は決して左樣な生易しいものではないと考へるのであります、周圍の事情は、官學の根本整理を要望致して居るのでありまして、政府は速かに根本的に官立學校を整理し、特殊のものを除き、全部私學に讓るべきであると私は考へるものであります(拍手)政府は、私學の本質から致して、私學自身の責任に於て戰災學校の復興はやるべきかのやうな言辭を弄するのでありまするが、一體戰災は好き好んで受けたのではないのでありまして、國の犧牲になつたのであります、此の間同じく戰災を受けました官公立學校は、國費を以てどしどし復興致しまするが、私立學校の戰災校は、資金の封鎖と資材難の爲に、全く復興が出來ない状態に置かれて居るのであります、聞く所に依ると、豫算面に現はれたる六十億餘圓の、所謂社會事業に使用すべき費用の中に、此の復興費が織込まれてあつたが、字句の解釋に於て厚生省との間に悶著が起きて、結局私立學校に對しましては、此の金は使用が出來なくなつたと云ふことであります、斯く致しますると、我々が此の議會を通し協贊を與へましたあの厖大なる豫算の中に、私立學校の復興費がないと云ふことになるのであります、私立學校には私立學校の自尊心があります、決して好んで國の世話になりたいとは思ふまいと思ふのであります、併し戰災は是は別でありまして、國策に依つて受けました災害は、國が之を復興するのが當然であると考へます(拍手)若し豫算面になしとするならば、政府は速かに案を立て、一刻も早く私學戰災校の復興を圖るべきであると考へるのであります、此の戰災校復興助成は、教育の使命と其の本質に鑑み、補助金亡國を叫ぶ人達も喜んで贊意を表するものであると私は考へるものであります
次に私立學校の教職員の待遇の問題でありまするが、是も世が平常の時なら、私學自體に於て立派に解決さるべき問題であるのであります、然るに現在は決して正常ではないのでありまして、戰爭中より戰後に掛けての政府の經濟政策の當を得ざるが爲に、物價は表相場と裏相場の二重相場の出現を致し、賃金は昂騰し、二重拂を餘儀なくされて居るのであります、二重拂をしたくも、私學に於きましては財源がないのであります、私學の教職員は、不當なる報酬に對し、其の聖職が學生生徒に及ぼす影響に鑑み、「ゼネスト」もせず、死に直面しながら、默々として教壇に立つて居るのであります、佛語に「法輪轉ずる處食輪轉ず」と言ふ言葉があるのでありますが、如何に法輪を轉じましても食輪の轉ぜざるは、私立學校の教職員諸君の現状であるのであります、御承知の通り既に授業料の限度は抑へられて居り、寄附金は禁ぜられて居ります、資金は封鎖されて居ります、私立學校の經營は如何樣に致すのでありませうか、實に重大關頭に立つて居るのであります、即ち例を中等學校の教員に取つて見まするならば、全國の私立中等學校教員の平均給は、月額四百餘圓となつて居るのであります、然るに政府の七月俸給令の改正に依りますれば、官立中等學校教職員の月額は、實に千五百圓の多額に上るのでありまして、此の差が千圓になるのであります、現在の世相より致しまして、私學は是れ以上父兄に學費を轉嫁することは不可能であると考へるのであります、若し父兄に轉嫁することが可能なりと致しまするならば、實に月謝は月八十圓の高額に上るのであります、政府の言ふ、所謂五百圓生活では、父兄が負擔出來るでありませうか、私は絶對に出來ないと思ふのであります、若し出來たと致しましても、それは教育の機會均等に反するものであります、官學、私學と名は別でありますが、國民教育の使命の本質には變りはないのであります、唯惧れるのは、此の教員俸給の差が學生生徒に及ぼす影響であります、之を冷たく、單に勞働問題から見ましても、實に重大なる問題なのでありまして、此の問題は、如何樣に致しましても解決せねばならぬ重大問題であると考へるのであります(拍手)私學の經濟は、人件費すら出し得ない現状であるのであります、政府は此の點に留意し、優先的に教育資材を配給し、教育に支障なきやう格段の努力を致すべきものであると考へるのであります、口を開けば文化國家の建設、戰爭なき平和日本の建設を叫びまするが、此の目的達成には、實に強力なる教育の力が必要であります、本期議會に於きましては、幾多の曲折を經て、新憲法が將に成立せんと致して居るのでありますが、併し之を活用し、之を體得せしめねば、全く死文であります、之を活かすものは實に教育であると考へるのであります(拍手)而も全國教育の三分の二を擔當して居ります私學を振興すると否とは、直ちに將來の日本を左右致すのであります、政府は速かに案を具して、私學振興の爲め努力されんことを熱望する次第であります、之を以て提案理由の説明を終ります、何卒滿場の御贊成を願ひます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=16
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017・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より討論に入ります、順次發言を許します──西山冨佐太君
〔西山冨佐太君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=17
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018・西山冨佐太
○西山冨佐太君 本日の議會に、私學振興に關する決議案が上程致されましたことは、再建日本の總ての基盤である教育の革新の爲に、洵に喜ばしいことでありまして、私は茲に贊意を表すると共に政府に對しまして、此の決議を速かに實現さるるやう強く希望を致すものであります
平和日本建設の根本理念である我が國の民主化は、主として教育の力に俟つの外はないのであります、而も民主的教育の根本的要素である所の自主獨立、個性の尊重を基礎とする人格教育は、從來私學の最も大なる特色と致して居る所であります、況んや今後に於ける民主日本の教育は、斯かる特色のある私學を中心として、初めて新日本建設の大業が成就さるべきものであると考へるのであります、然るに斯かる重責にある私立學校は、今や教員待遇の問題と、戰災學校復興の點に付きまして、實に全面的崩壞の危機に直面を致して居ります、若し夫れ一日でも之を等閑視するならば、軈て全日本の教育は一大混亂の渦中に抛り込まれる虞があるのであります、之を教員待遇の面から見ましても、全國私立中等學校教職員の待遇は、本俸に手當を含ませまして四百五十圓程度であります、之に對しまして、生活給と稱せらるる公立學校教職員の待遇は、平均千五百圓となつて居るのであります、是は専門學校、大學等に於きましても、大體同樣の状態にあるのであります、又戰災學校復興の方面に付きましても、全國私立學校中罹災を致したものは、中等學校だけでも二百七十、其の焼失面積は二十一萬坪になつて居ります、偖て公立學校に於きましては、國庫或は地方費に依りまして、逐次復興建築が進行致して居りますが、私立に於きましては、既に終戰後一箇年を經過致したにも拘らず、未だ戰災復興の計畫すら立たない、さうして多數の教職員、生徒、父兄を不安の状態に置いて居るのでありまして、洵に遺憾に堪へない所であります、政府は教育制度刷新委員會を設けて、國家百年の大計を審議する前に、先づ以て、只今存亡の關頭に立つて居る此の私學に對して、救濟の手を伸べなければならないと思ふのであります、即ち教室なきものには教室を與へ、教具、教科書のないものにはそれを與へ、食なき教師に食を與へることに、最大の努力を拂はなければならないと信ずるものであります、何となれば國家再建を急ぐ此の際、教育の空洞時代を作り、教育の足踏み時代を作る譯には行かないからであります、成程私立學校は獨立自營を建前とするものであります、隨て敢て政府の助力を仰ぐ必要はない、政府の助力を仰ぐことは、即ち政府の干渉を求めることだと非難する向きもあるのであります、然り而して私は私學は何處までも獨立自營、自尊獨往、飽くまで其の特異性を發揮致しまして、自由濶達に經營せらるべきものだと信じて居りますけれども、それは平時のことであります、戰災に因りまして、建物設備の一切を失ひ、經濟界は變調を來して居り、金融は梗塞致しまして、經濟の自由を奪はれて居る今日、若し獨立自營に名を籍りまして、救濟の緊急對策を講じないならば、私學は悉く壞滅に陷つてしまふばかりでなく、幾多の青少年をして其の希望を失はしめ、國家再建の迫力をなくし、延いては自暴自棄に陷らしむることを惧れるものであります、日本の私立の學校は、「アメリカ」の私立學校のやうな大きな基本金を持つて居るものではありませぬ、百萬圓以上の基本金を持つて居るものは極めて少數であります、恐らく中等學校には一校もないであらうと思ひます、而も此の基金、積立金、特殊預金も殆ど手の付けやうがない、寄附金の募集の問題に致しましても、或は又私學經營の唯一の財源とも言ふべき授業料の値上に致しましても、今日の經濟状態では、事實上行はれないのであります、實に私學は蟹の足をもがれたやうな八方塞がりの窮状にあるのでありまして、若し今日私學が自力を以て更生しようとするならば、是は中學に付て申しましても、臨時費として生徒一人當り三千圓、經常費と致しまして月謝八十圓を要するのでありまして、是では就學家庭の經濟は慘憺たるものがあると存ずるのであります
斯くの如くして、現在の青空教育をやつて居る多數の私立學校は、一體冬になつたらどうするのであらうか、四月に入學する生徒は、如何にして受入れられるのであらうか、又現在の生徒は如何にすべきであらうか、更に又文字通り餓死戰線にある多數の教職員はどうするのであらうか、中には思ひ餘つて學校を投出さうと云ふ校長もあるけれども、それは父兄や卒業生が承知しない、是が實情なのであります、若し此の現状の儘で推移致しますならば、私立學校は其の機能を停止し、全面的崩壞を來すことになるのでありまして、此の際國家教育の爲にどうしても此の危機を打開しなければならないと思ふのであります
私は先般各黨代表の方々と、民間情報教育部に參りまして、戰災學校の問題を一手に引受けて居らるる方に御目に掛り、此の復興の陳情を致したのであります、其の時色々と懇切なる指導があり、幾多の示唆を與へられたのでありまするが、其の時に直覺致しましたこと、竝に其の他の事情から綜合致しまして、是は文部大臣と大藏大臣に熱意と肚があるならば何とかなる、大藏大臣が本當に教育優先の原則を確認されまして、誠意を以て工夫努力をされるならば、そこには解決の途が必ず開かれると考察を致して居るものであります、即ち低利資金の融通、或は第二封鎖、特殊預金の解除、寄附金の免税、資材の優先配給等、幾多の方策が講ぜらるると思ふのであります、而も是は急ぐ問題でありまして、次の議會では間に合はない、政府は是等の措置を講ずると共に、即刻追加豫算として、私學に對する相當額の補助の途を講ぜられんことを要望して已まないものであります
又政府は、官公立學校の戰災復興事業をば、失業救濟の對象として居るにも拘らず、私立學校の戰災復興事業を、失業救濟の對策として居ないのはどう云ふ譯でありませうか、さうして又一面、過去に於きましては、私學經營を營利企業と考へたものがあつたかも知れませぬけれども、今日に於きましては、斯くの如き考へ方は許さるべきものではなく、等しく國家の爲め、公共公益の爲の私學經營であり、又さうなくてはならないと思ふのであります、隨て政府は官公立學校にのみ力を注ぐことなく、其の差別を設けないで、私立學校をも救濟すべきであると思ひます
更に又教師の思想態度が、若き學徒に大なる影響を與へることを考へる時に、今日幾千の私學の教職員達が、極めて貧弱なる俸給に依つて漸く飢を支へて居ると云ふ實情は、是は決して教職員の身體、思想を健全に致しまして、眞に教育の使命を自覺し、國家再建に全力を發揮せしめ得る所以ではないと考へられるのであります
政府は、憲法に於て教育の權利を承認し、又教育の機會均等を説き、更に自由にして民主的な教育の發展を望んで居るばかりでなく、教育の再建刷新に依つて新日本を建設しようとして居る以上、速かに私學を効濟し、私學の發展に努力する責任があると斷ずるものであります、以上述べまして、本案に贊意を表するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 高津正道君
〔高津正道君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=19
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020・高津正道
○高津正道君 私は日本社會黨を代表致しまして、本案に贊成の意思表示をしようとするものであります、私が實は數字を擧げて申上げようと思つたことを、前の同僚の二人の議員に依つて述べ盡されたので、之を私の本論と致しまして、私の結論だけを茲に申上げることに致します
結局此の第一、公私立學校生徒學費負擔額の不均衡是正、以下五項目あるのでありますが、此の五項目を實際に實現する爲には、寄附金に俟つか、或は政府の補助に依るかと云ふ問題に歸著するのであります、だが不思議なことに、私立中學、女學校、さう云ふ中等學校には、割合に大富豪や或は大官僚の子供達が入つて居ないと云ふ事實が發見されたのであります、中等學校の教職員諸君が、非常に困つた餘りに、どうにかして此の補助を得たいと云ふ運動をする爲に、政府の中に何か手蔓がないであらうかと調べて見ますと、どうも課長、局長なんと云ふ人の子供が、どの學校を調べても居ないと云ふ事實が發見されたと云ふのであります、大きな役人や、大きな金持の子供は、皆頭が揃つて良いと云ふ譯ではないのに、日本の教育界に於ては不可思議なる現象がありまして、皆良い學校に、良い學校にと入つて居るのであります(拍手)此の間も、或る相當の官僚が、官僚を辭めて述懷するのに、自分は急に碁が下手になつたし、子供も急に學校の成績が惡くなつた、貧すれば鈍すると言ふのは此のことだと云ふやうなことを言つたと云ふのであります、何と云ふ反省能力の足りない官僚であるか、それは其の人が局長或は課長の席を占めて居つたが故に、相手になる人間が敬意を表して、碁に何時も負けてやつな居つたのであります(拍手)彼が課長、局長であるが故に、彼の子供は少々頭が惡くても、優等の成績として學校の先生達も敬意を表して居つたのであります、だから局長の地位を去り、課長の地位を去れば、急に碁が弱くなり、子供の成績が惡くなると云ふ結果を來したのであります、私は日本の政治の如何なる部分を解剖し、分解して見ましても、我々の「レンズ」を向ける所、必ず其處には、默つて見て居れないやうな事實ばかりを見受けるのであります(拍手)寄附金に俟つか、政府が出すか、此の問題を解決するのに、寄附金で出させようと言つたつて、一人の父兄に三千圓もの金が出せるものですか、さうして又東京の全部の私學を言ふのではありませぬが、或る私學の如きは、早耳に依つて、特殊預金の解除を逸早く受けたと云ふ例がないではありませぬが、地方にある多くの中等學校は、さう云ふやうな早耳筋を持たないので、東京に於けると同じく、或はそれ以上に苦しんで居る事實を我々は知つて居るのであります、假に東京都の例を取るならば、私立學校が三百二十五、公立が百十一校になつて居ります、併しながら受持つて居る生徒の數は、私學が東京では二十一萬人、公立が七萬八千人を受持つて居るのであります、斯う云ふ風に厖大な、二十一萬人と云ふやうな私學の生徒を、東京の中等諸學校が受持つて居つて、先生達の待遇が非常に惡くて、復興はちつとも出來ない、官公立の中等學校の扱ひとは違ふ別の待遇を受けて居る、先生が僻むと云ふことを私は申上げるのではありませぬが、先生だつて、いらいらしようと云ふものであります、其のやうな、いらいらした生活難の状態に先生を置いて、生徒がどう云ふ影響を受けるであらうか、國民學校の、女學校或は中等學校を出たばかりの先生が、五十圓の本給で、新しい制度に依つては七百五十圓の收入があると云ふのに、中等學校教員の平均給は、同僚議員の示された數字の如く非常に少いのであります、御免を蒙りまして──「ヨーロッパ」の畫家が、富豪から依頼されて、一週間で繪を描いてやつた、而も莫大なる報酬を要求したのでありますが、其の富豪が腹を立てまして、一週間位でそんなに大きい要求をするのは怪しからぬぢやないかと言つて、裁判に持出した所が、畫家は法廷に於て、どの位の期間を以て此の繪を描き上げたかと云ふ裁判長の問に對し、三十年と一週間、斯う答へたと云ふのであります(「新聞で讀んだ」と呼ぶ者あり)其の新聞で讀んだのであります、一週間、是は實に讀み棄てることの出來ない、一つの大きな材料であると私は思ふ、一週間で出來て居ると云ふのは表面の事實であつて、裏に(「脱線々々」と呼ぶ者あり)此處が一番關係が深いのだ(拍手)裏に三十年の苦勞が籠つて居ると云ふ事實を、我々は無視することは出來ないのであります、我々は、國民學校の代用教員の人々が大いに優遇されることを望むけれども、三十年の勉強をして居る所の、中等學校の、本當の教員免状を持つて居る苦勞をした人々の生活費、待遇と云ふものが、國民學校の先生の三分の二にも足りないと云ふやうな状態であると云ふことは、許すことの出來ないことであると私は思ふ(拍手)此の問題の隘路は何處にありや、文部大臣の押しが利かないのであるか、腰の入れ方が足りないのであるか、或は大藏省に於て其の點にだけ無暗に澁るのであるか、内閣全體が教育と云ふ問題を輕く見て居ると云ふやうな、問題はさう云ふ根本の點にあるのであるか、昨年八月十五日に戰爭が濟んで以來一年以上を經過して居る今日、此のやうに教育が粗末にされて居ると云ふことは、私は歎かはしいことだと思ふのであります(拍手)
併しながら私は私學への希望がない譯ではない、其の一つは、學校株式會社と云ふやうなやり方であつては仕方がない、中等學校の學生に及ぼす影響は恐るべきものがある、それだからと言つて、私は表面的に其の部分だけを攻撃しようとするものではない、政府が無能無爲だから、さう云ふやうな學校株式會社にならなければならない事情が存するのであります、斯う云ふやうな教育界の憂ふべき現象を一掃することは、政府の責任であるが、殊に其の主務官廳である所の文部省の責任である、大臣一人を責めるのではない、五人も七人も局長があり、其の下にまだもつと多くの課長が居る、官僚は斯う云ふやうな事情に對して、己れの責任として痛烈に之を感じて此の問題に善處し、衆議院の此の決議案に盛られて居る精神を貫徹するやうに、大臣は責任を以て此の壇上に立つて御答辯あらんことを希望して、私の贊成演説を終る次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=20
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021・山崎猛
○議長(山崎猛君) 越原はる君
〔越原はる君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=21
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022・越原はる
○越原はる君 私は協同民主黨を代表致しまして、本日各派共同の下に御提案になりました私學振興の決議案に對しまして、衷心贊成の意を表するものでございます、贊成と同時に、政府に對しまして要請懇願を申上げたいのでございます
從來私學と申しますと、其の實力の如何に拘らず、其の努力の如何に拘らず、其の特長の如何に拘らず、常に官立學校の下に置かれて參りましたことは、洵に痛憤遺憾の至りに存ずるのでございます、併し民主主義の今日、此の官尊民卑の惡風は速かに拭ひ去られますこととは存じますが、今囘の戰災學校復舊に當りまして、政府は公立學校の爲には相當額の豫算を計上せられながら、私學に關しては更に顧みられないのは何故でございませうか(拍手)私學は自主獨立の精神の下に立つて居るが故に、勝手に放つて置けば宜い、勝手にするが宜いと思召しでございませうか、私學にはお金がございませぬ、而も今囘國のなした戰爭に依つて、其の一切を失ひました所の私學に對して、政府は、國家は、それを補償し、辨償すべきであると云ふことを一般大衆は考へて居りますのに、公立學校にのみ豫算を取られまして、私學の方を顧みられない爲に、私學の復舊が出來なかつた場合、どんな問題が起ることでございませうか、此の議場内に議席を持たれます議員各位の中、三分の二以上は私學御出身の方々であると存じますが、今私學は本當に立つか潰れるかの境目に立つて居ります、此の有樣をどう云ふやうに御覽になつて居られますことでございませうか、政府は、日本の復興は教育にあり、文化國家再建は教育を措いて他にあり得ないと仰せになりながら、其の職に從事致します私學に對して、又全國の學生生徒の半數以上を預つて居ります私學に對して、何等復興の爲に援助の途を講ぜられないのは何故でございませうか、最早今は豫算のあるなしを論じて居る時ではないと存じます、速かに私學復興費を追加豫算の中に繰入れられまして、一日も早く復興致しますやうに、全國の戰災私學を代表致しまして、茲に懇請致します次第でございます(拍手)
尚ほ今一つ御願ひ致したいと存じますことは、準義務教育に携はりまする所の中等教員に關する俸給の問題でございます、日本の再建が教育に依つてなさるべきものであります故に、其の教職員に對する俸給を國庫より支給されますのは、當然過ぎる程當然のことであります、若し私學にのみは國庫より俸給を支給しないと云ふことになりました場合、私學の教職員は、其の日の生活を如何に致すべきでございませうか、今囘の昇給に依りまして、公立中等學校の教職員は平均給千五百圓であると云ふのに、それに對しまして、先程からも段々御話のございましたやうに、私學の教職員俸給は四百圓に足りないのでございます、之を公立學校の教員給と同等に致します爲には、一人の月謝、授業料を八十圓徴收しなければ出來ないのでございます、私立學校の父兄にのみ、公立學校經營の爲の課税を負擔させ、其の上に私學の經營に付ての責を負はせ、二重負擔の苦しみを掛けて宜いものでございませうか、是は民主主義の許す所ではないと存じます、公立私立の區別なく、生徒も父兄も平等に、機會均等に教育を受けましてこそ、眞の教育の振興を見ることが出來ると存ずるのでございます(拍手)此の意味に於きまして、政府は豫算がどうしても今ないと云ふことでございますならば、現在の私立學校の授業料の程度まで公立學校の授業料を引上げ、其の差額に依つて私學の援助をされますのも一策かと存じます、速かに何等かの方法を講ぜられまして、私學振興の爲に御考慮あらんことを、全國の私學に代つて御願ひ申上げる次第でございます、以上二項目に付きまして贊成と同時に政府に速かな實現を御願ひ致しまして、私の演説を終りと致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 中田榮太郎君
〔中田榮太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=23
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024・中田榮太郎
○中田榮太郎君 私は國民黨を代表致しまして、本決議案に對して贊成の意を表するものであります、寧ろ此の要請の餘りに遲かりしを悔いると共に、此の際本案を頗る重大視して、其の趣旨の一日も速かに實現せられんことを熱望致すものであります、由來我が國の封建的、階級的な惡風、官僚的な積年の弊政、國民の間に深く滲み込んで尚且つ拔け難い所の官尊民卑の思想、殊に戰時中の極端なる官營統制主義は、遂に人權尊重の下に眞理の追求と人格の育成を目標とすべき學園にまで浸潤致しまして、單に官公私立の相違の故を以て、同じ學校間に大いなる差異あらしめたのであります、私は時間の都合上、之を中等學校のみに付て見ますのに、全國に於て其の三割、東京都に於て實に其の七割を占めるものが、國家から、又社會から、私學として或る意味に於ける繼子同樣な差別取扱を受けて居ることは、實に我が國教育史上の一大恥辱であると存ずるのであります、是が爲に受けた、眼に見えない我が國の損失こそ、測り知れないものがあると存じます、我が國に於ては、學校名に先づ設立體の名稱を附する事務的慣習があります、多くは其の設立體が、恰も學校の内容でも指し示すが如く、先づ官立、次は公立、之にも道都府縣市町村立の順序があります、あとは私立と云ふ風に、凡ゆる點に於て何等かの順序を附せられて居つたかの如く思はれるのであります、今日官界には官學出身が絶對に多數である、然るに先程も御話があつた通り、我が議會に於ては寧ろ私學出身者の數が絶對に多いと云ふことと、今日まで學閥打破が叫ばるることと相俟ちまして、洵に異な現象であると思はれるのであります、でありまするからして、先づ差別撤廢の爲には、我が國の現情勢に於ては、外國はいざ知らず、此の設立體の名稱を、事務上からも、國民の心の中からも、取り除くことが必要であると存ずるのであります(拍手)
次に新しき國民憲法に於きましては、基本人權の尊重と、教育の機會均等と、教育の權利と義務に付て明示せられて居るのみならず、義務教育は之を無償とする旨を特記せられてあるのであります、文化國家建設の爲には、現在の我が國に於ける青年學校を含む中等學校、中等教育は、差當りの所義務教育に準ずるものと看做すべきものであり、今後は之を改革、擴充、整備して、義務化するの必要を認めますと共に、其の可能性あることを信ずるものであります、而して一方公立學校に對しては、今や政府は教職員の待遇に於て、戰災校の復興に於て、それぞれ直接國庫より救援の手を伸ばしつつあるが、單り私立學校に對して何等の方法を講じて居ないのは、理由の如何に拘らず、民主政治下に於ける一大手落ちであると思ふのであります(拍手)
今、中等學校に付て見るに、教師の改正待遇は、公立に於て、先程も御話がありました通り、月額一千五百圓に及ばんとして居る、私立は僅かに五百圓にさへ達しない、全國二萬の私立學校教師は、最早生活苦に耐へ切れないのであります、授業料は極度に増徴せられまして、其の九割は俸給に振向けられて居り、父兄の教育二重負擔の限度は、既に盡きて居ります、是れ以上如何なる方法を講じましても、私立獨自の力を以てしては、何等施すべき術もなく、此の儘に捨置いたならば、全國千二百の私立中等學校は、齊しく閉校の已むなきに至るのであります、果敢なる五十萬の青少年學徒は、何處に於て學ばんとするのでありませうか、更に戰災學校に至りましては、洵に惨憺たるものがあります、全國燒失中等學校の四割、即ち二百七十校は私學之を占め、五千七百の教室は青空となつて、三十萬の學徒は、學ばんとして學び舍なき現状なのであります、過般の曉星中學校に於ける都下私立中等學校の父兄大會の叫び、又教育會館に於ける全國私學聯合大會の愬へ、其の他幾多の陳情、運動、或は要請など、洵に悲壯なものがあり、之を默視するに忍びないのであります、政府は教育の本義に基きまして、其の教育の實際は委員などを含む所の學校當事者に委ねるが、其の經濟に於ては國營化しつつあると言ひ得るのであります、近時自らの在り方に檢討を加へて、其の經營の合理化と、其の自肅に邁進しつつある私立學校をば、國家保障から之を除外するは何等の理由なしと信ずるのであります、此の際政府は、國民と共に民主主義の立場から、私學に對する在來の考へ方、見方の一大轉換をして、今日までの私學の功績と、今後私學に負はされた重大使命とを、篤と體得せねばならぬと思ふのであります、私學の振興と云ふことは、軈て文教の振興になるのであります、斯くて差當り教師の待遇に於て、戰災校の復興に於て、政府の彈力性ある厖大豫算を工面せられて、飽まで誠意を披瀝して助成せられることを、確實に公約せられんことを望むものであります、私は民主日本再建に當る彼の純眞敏感なる幾多の青少年學徒が、斯くの如くして救はるることを期待して本決議案を固く支持するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=24
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025・山崎猛
○議長(山崎猛君) 池村平太郎君
〔池村平太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=25
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026・池村平太郎
○池村平太郎君 無所屬倶樂部を代表致しまして、其の熱烈なる贊意を受繼いで、私は茲に此の私學振興に關する決議案に贊意を表するものでございます
御承知の通り本議會始まりましてから、既に重大なる決議案が教育上に二つ現はれて居るのでございます、第一は文教刷新に關する決議案であり、第二は科學教育振興に關する決議案でございます、而して更に茲に又私學振興に關する決議案が提出せられましたことは、如何にも新興日本が教育に重點を置いて起ち上る以外に國家再建の基盤がないと云ふ確信を私は強く持つものでございます(拍手)此の點に於きまして、新興日本の再建の基盤である教育、其の教育の中に官尊民卑的な私學、官學の區別の今尚ほ存在して居りますことは──民主議會の今日の場面に立入りまして、此の決議案は當然過ぎる程當然なる決議案であると不肖は確信を致します(拍手)御承知の通り、上は憲法改正の問題から、下は政治、生産の諸問題に至りますまで、如何に我々が此の議場に於きまして民主政策に苦心し、又其の徹底を期して參りましたか、而して民主の徹底は、獨り政治社會組織機構のみならず、其の歸する所の根本は、實に國民の一人々々が能く社會正義に自覺致しまして、歴史的、倫理的自覺に基礎を置かなければ徹底し得ないのでございます、而して又眞の民主日本の實現は、其の基礎を教育に俟つ以外に根本的對策はないと言はなければなりませぬ(拍手)然るに此の重大なる教育に於きまして、官尊民卑的な封建の殘滓今尚ほ殘り、而して私學官學の區別ありとするならば、文部當局は民主諸政策の第一先行問題として、此の區別の撤廢をいの一番に擧げなければならぬと私は思ふのでございます(拍手)此の點に於きまして、本決議案に付きましては、滿腔の誠意を披瀝致しまして、無所屬倶樂部全員の贊成の意を表する次第でございます、極めて簡單でありますが、どうか政府當局は此の決議案の趣旨を須く容れられて、一刻も早く實現するやうに希望して已まないのでございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=26
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027・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案に贊成の諸君の起立を求めます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=27
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028・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立總員、仍て本案は全會一致可決致しました(拍手)此の際文部大臣より發言を求められて居ります──田中文部大臣
〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=28
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029・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 一言所信を申述べることを御許し願ひます
凡そ教育のみに限りませず、文化一般は、本來社會自體、民間自體の溌刺たる意欲と創造力に依つてのみ向上發展致すものでありますことを、私は確信して已まないのでございます、然るに明治以來の國家萬能主義は、遺憾ながら此の民間の意欲を阻碍して參りました傾向があつたのでございます、本來教育は其の本質に於きまして、決議に述べられて居りますやうに、或は理想を同じうし、或は人格識見の高邁な先覺者の風を慕つて集まる同志の者の手に依つて行はれるのが理想でありますし、御決議の趣旨も亦そこにあると存じます、教育の本來の使命は、斯く見て參りますと、私學に存在する、教育の本來の面目は私學であると云ふことすらも申し得られるのであります、然るに從來は、先程から御指摘になりましたやうに、我が國の朝野の官尊民卑の傾向は、歐米諸國の例に比較しまして、私學尊重の念に於て不足して居るかの憾みがあつたのでございます、今後我々は私學をして其の本來の面目を發揮せしめ、其の徹底的振興に努力致すべきは勿論のこと、進んで官學にも、私學の持つ良き特長を與へることすら必要であると云ふ風に存じて居ります、斯かる趣旨を以ちまして、政府と致しましては、此の決議の精神に無條件に共鳴致すものであります(拍手)
尚ほ各項目に付きましても、一乃至四は其の實現に今日まで不斷の努力を致して參り、今後も決して諦めないで、粘り強く努力を繼續致しまする所存でございます、特に戰災學校復舊、學校金融に對する所の種々なる拘束を取除くことに付きましては、特に全努力を傾注したいと存じます、又最後の第五の私立學校教職員待遇改善の問題に付きましても、決議の御趣旨は御尤も至極でありまするから、其の點に付きましても、金融の便、或は學校に對する適當なる補助、其の他私學本來の性質を尊重致しまする方法に於て、決議の目的を達成するやう、目下研究中でございます、要しまするに政府は最大の誠意と、最大の熱意とを私學振興に集中致したく存じて居ります、何卒此の上とも御援助、御鞭撻を切望致します次第であります、之を以て私の發言を終ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是にて議事日程は議了致しました、明四日は定刻より本會議を開きます、議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後三時二十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013242X05019461003&spkNum=30
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