1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
林業會法案(政府提出)
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昭和二十一年八月二十日(火曜日)午前十時二十分開議
出席委員
委員長 森幸太郎君
理事 水口周平君 理事 綿貫佐民君
理事 平野増吉君 理事 氏原一郎君
稻田直道君 大井直之助君
木島義夫君 小柳富太郎君
武田信之助君 小笹耕作君
太田秋之助君 仲川房次郎君
武藤常介君 永井勝次郎君
林田哲雄君 松澤一君
井出一太郎君 仲子隆君
伊藤實雄君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
出席政府委員
司法事務官 佐藤藤佐君
農林參與官 鈴木強平君
農林技官 中尾勇君
農林事務官 平川守君
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本日の會議に付した議案
林業會法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=0
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001・森幸太郎
○森委員長 是より會議を開きます——稻田直道君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=1
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002・稻田直道
○稻田(直)委員 私は先づ第一に農林大臣に對しまして、林業に關する大臣の抱負經綸を伺ひまして、然る後に徐々と此の法案に付ての質疑を行はんと思つて居るのでありますが、大臣に今差支へがありまするので、順序を變更致しまして、中途から質問を始めたいと思ひますからして、委員長に於ては、大臣が見えましたならば、通告順に依らず、再び私をして發言せしめられんことを希望致しまして、此の點だけ留保して質問を始めます
本法案の目的は、民間林業の發達を圖るが爲めであると致しまするならば、林産物の種類を狹く特定をせずに、一般通念に依る林産物總てを當然羅列包含せしめて、特に明瞭を缺くもののみを大臣の指定に依り明かにするのが宜いのではないかと思ひまするが、果して政府の所見如何発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=2
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003・中尾勇
○中尾政府委員 只今の御質問御尤もと存じまするが、政府と致しましては、今回木材統制法の廢止竝に日本木材會社、地木社の解散に伴ひまして、急速に其の代りとなります所の、後繼の團體の組織を決定致した次第であります、差當り木材だけに限りましたのは、只今申上げましたやうな早急に何等かの自主的統制をやらなければならぬと云ふ關係で、木材だけに限つた次第であります、其の他の林産物に付きましても、逐次必要のものから提案を致して行く考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=3
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004・稻田直道
○稻田(直)委員 只今の局長の説明に依りますと、軈てさう云ふ風に取計らふのであるけれども、先づ差當つて準備が出來ないから、左樣決定致したと云ふやうな御答辯の如くにも受取られますが、果して然りと致しまするならば斯くの如き大いなる法案を出しますに付きまして、餘りに無準備であり、無策であると言はなければならないと思ふのでありますが、此の點に於て、只今の局長の答辯に於きましては、私は納得することが出來得ないのであります、併しながら是は是までと致しまして、次は都道府縣林業會に於きまして、賣手側は森聯が一箇であり、買手側は數箇の林業組合となると思ひます、此の場合總會或は役員會に於きまして、森聯側は定款の規定に依つて半數の表決權を持つと致しましても、事實上に於きましては、會内の空氣に壓迫されるやうな虞から致しまして、森聯に取りましては、斯樣な組織は總てに於て不利益ではあるまいかと思ふが、局長如何に思はれますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=4
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005・平川守
○平川政府委員 只今の御質問の點に付きましても、本案に於きまして十分考慮を致した積りでありまして、御話の如く、森聯側と其の他の林産業者側とを、大體に於て定款の定める所に依りまして同數の議員を選出せしめることに依りまして、林業會内の發言權を略略同等ならしめたい、尚ほ特別議員等の制度に依りまして、知識經驗者の公正の立場にある者の意見も之に加へることに依りまして、森林組合側は不當に壓迫を受けると云ふやうなことのないやうに致したいと云ふ考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=5
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006・稻田直道
○稻田(直)委員 左樣な心配のないやうにしたいと云ふ御答辯でありますけれども、委員會に於ては左樣申されましても、果して廣き全府縣に於て運用する場合に於て、爾く左樣に簡單に取扱はれるものであるかと云ふことを、私は此の委員會に於てはつきり申上げて置く次第でありますからして、其の點は特に政府は注意をせられんことを希望致す次第であります
次には又構成員の何れかの不同意に依りまして、都道府縣林業會の設立が不成立になりました場合に於て、政府は臨時物資需給調整法に依つて統制業務を行ふべき機關と致しまして、果して其の府縣に於ては何れを指定するやうになるのでありまするか、此の際に私は下手をすると、業者間に於て非常に好ましからざる混亂が惹起されはしないかと云ふことを惧れるのであるが、政府の所見は果して如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=6
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007・平川守
○平川政府委員 政府と致しましては、此の林産物の自主的なる統制と云ふことに指導を致す積りでありまするし、又概ねの地方に於ては、森林組合及び林産業者側の所謂民間の要望と云ふものも、概ね此の方向に向つて居りますので、多くの地方に於ては自發的に林業會が成立を見ることと思ふのでありますが、御話のやうな稀な場合に於きましては、是は自主的な統制機關がないと云ふことになりますので、臨時物資需給調整法が成立を見ますれば、其の法に依りまして、直接に官が統制をすると云ふことにならうかと思ふのであります、其の場合に何れか一方に偏するやうに指定を致して、混亂を生ずるやうなことはないやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=7
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008・稻田直道
○稻田(直)委員 只今の政府委員の答辯でありまするが、若し一方の機關を指定致す場合に於て、他方は種々不利益を被ることは必然となりまするから、已むなく加入するやうになるであらうと思ひます、果して然りと致すならば、本法案の自由加入とせる趣旨と云ふものは、果して如何樣になるものでありませうか、政府は羊頭を掲げて狗肉を賣ると云ふやうなことになりはしないか、自由加入と云ふ文字は甚だ宜しいが、實際に於て強制加入をしなければ立ち行かないと云ふやうなことになると致しますならば、所謂政府の此の法文の字句と云ふものは、羊頭を掲げて狗肉を賣ると云ふことになると思ふのであります、それ等に對する政府の立法の精神は果して如何発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=8
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009・平川守
○平川政府委員 任意加入と云ふ精神に於ては變りはないのでありまして、只今の御話の如く非常に自由意思に反して、事實上無理に加入を強制せられると云ふやうな虞れはないと思ふのであります、詰り森林組合及び林産組合の兩者が眞に意思が合致致しまして、林業會を設置せしむると云ふことでなければ、何れの一方に偏して統制權を與へると云ふやうなこともありませぬ譯であります、其の場合には寧ろ直接に官の方で公正に統制をすると云ふことにならうかと思ふのであります、尤も是は臨時物資需給調整法の成立を前提と致しての話であります、其の場合に於きましては、何れの一方を指定すると云ふこともございませぬのでありますから、隨て其の爲に一方が不本意ながら加入をすると云ふ心配はないであらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=9
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010・稻田直道
○稻田(直)委員 左樣な場合に於きましては、其の縣には林業會と云ふものの設立は政府としては好ましからざることとして、さうして從來の如く官僚統制と云ふやうな意味に於ておやりになると云ふやうな意向でありまするが、念の爲め能く問うて置きます、左樣でありまするか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=10
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011・平川守
○平川政府委員 政府と致しましては、飽くまでも自主的なる統制と云ふことを狙つて居るのでありまして、さう云ふ方向に向つて、指導も致す積りであります、出來る限り兩者が協調を圖り、相讓り合ひまして、自主的な統制をやつて戴くと云ふことを希望致して居るのであります、唯何れか一方がどうしても加入を肯んじない、或はそこに非常に不滿を持つて居ると云ふことで、林業會が成立を致しませぬ場合に於ては、萬已むを得ませぬから、官治統制に赴かざるを得ないのであります、左樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=11
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012・稻田直道
○稻田(直)委員 どうも事實に於て左樣に巧く運ばれれば宜いのでありますが、色々な運動や請託がありまして、偏頗な措置を講ぜられると云ふやうなことがありますと、由々しき大事でありまするから、是等の點も政府に於かれましてははつきりと、修正すべきことは修正し、直すべきことは直されまして、此の憂ひのないやうに取運ばれんことを希望して置きます
農林大臣が見えましたから、最初に返りまして農林大臣に質問を申上げます、先づ第一に農林大臣の、日本の現状に於ての林業行政に對する抱負經綸を承りたいのであります、言を換へて申しまするならば、日本の現今の林業状態に對する御所感が承りたい、先づどう云ふ點が巧く行つて居るか、どう云ふ點が思はしくないからして、思はしくない點は其う云ふ風に直したいと思ふ、と云ふやうなことに對する對策を、序に承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=12
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013・和田博雄
○和田國務大臣 御答へします、非常に大きな問題でありまするが、是は私、本會議でのどなたかの御質問に對しまして科しましたやうに、日本は土地の利用からしまして、六五%位が山林でありまするので、此の山林と云ふものが日本の國民の生活、それから文化、さう云つたものに對して持つて居りまする力と言ひますか、影響と言ひますか、それは非常に大きなものと思ふのであります、殊に日本のやうな水田の農業の國に於きましては、何と申しましても、農業の方から云つても水に支配されることが多い、而も其の水を支配するものは、やはり突詰めて行くと山林と云ふことになる譯であります、國の百年の大計から言ひますれば、山が治まつて居る、隨て水が治まつて居ると云ふことが、平野に於ける國民の生活の基本的な條件だらうと思ひます、所が戰爭中に於きまして、御承知のやうに非常に森林は濫伐されました、そこで私共の考へまするには、何としましても濫伐しました此の林野を、禿げた所がないやうに緑地化する、國土の保安と云ふことから森林の造成を行つて行くと云ふことが、私はやはり第一番だらうと思ひます、其の點に付きましては、本會議に於て御答へ致しましたやうに、造林の計畫を立てまして、本年度は四十七萬町歩、尤も天然更新を加へてでありますが、造林計畫を立てて、將來二百七十何萬町歩かに及ぶ伐採跡地を埋めて行くと云ふことであります、それともう一つは、何としましても森林と云ふもの、山林の謂はば生産力を殖やして行く、隨て山林の蓄積力と言ひますか、山に蓄積された國の富と云ふものを増大して行くと云ふことが、其の點から言つても大きな問題と思ひます、それに付きましては色々の科學的の操作をやりまして、さう云ふ山の蓄積力を殖やして行くと云ふことに致したいと考へて居るのであります、それから今度は非常に現實的な——今のも現實的でありまするが、もつと現實的なのは、是は本會議に於て平野さんだつたか、豫算總會でありましたか、御指摘になりましたやうに、又各委員も御指摘になりましたやうに、日本が再建を致しまする爲には、木材と云ふものの需要が非常に多くあります、而も其の需要を充す爲の、日本に取つてありまする所の供給力の方に於きましては、是は戰前に於きまする程の力はありませぬ、そこで現在日本の經濟の再建に必要な色々の木材、色々な用途に使はれる木材の供給を、需要と「マッチ」致しまするやうに、適正に之を配分して行くと云ふことが必要だと考へるのであります、此の點に付きましては、戰爭中に於きましては官僚的な地木、日木の方式に依りまして統制を致して行きまして、或る程度の戰時に於きまする目的は達したのでありまするが、併し今後は斯う云ふ方式に依つて統制を致し非常に高まつて居る需要に對しまして、少くなつた供給力を合はして行くと云ふことはどうかと思ひまするので、此の點に付ては今回茲に林業會法案を出しまして、林業に關係のある生産者から、末端の需要者に至るまでの人達の協力に依りまして、其の人達の自覺した力に依つて之をやつて行く、さうして唯國はそれを「バック」する、斯う云ふ考へ方で其の點に付てはやつて行きたい、斯樣に私は考へて居ります、勿論供給を殖やしまする爲には外國材の輸入等も考へられまするが、現在の所に於ては其の見込は非常に薄いのであります、隨ひまして、どうしても是は國内に於て需要を選り分け、そこで最も緊急なる需要に對して、少くなつた供給力を殖やして行く、斯う云ふことに至らなければならないと思つて居ります、それから私は、林業に於きましては、山林其のものが生産する生産物が相當あると思ふのであります、それ等のものに付ての、所謂日本の資源の利用と云ふことに付きましては、今後とも科學的な力を加へまして、十分な開發を致して行きたいと思ひます、科學的な林産物の利用と云ふ點に付ても、例へば椎茸でありますとか、其の他色々の木材其のものの纎維の利用と云ふことも考へられるのでありまして、さう云ふ點に付ても、日本の此の乏しくなつた資源を、現存致して居りまする限度に於て、最大に利用して行く新しい途を講じて行くと云ふ方向にも進んで行くべきではないか、斯樣に考へて居るのであります、山は、今言ひましたやうに、日本の國士其のものの利用の點から、又國民の生活自體に對する關係から、又國民の文化に對する關係から、或は農民自身の生活に對する關係から、色々な觀點から林政と云ふものは考察すべきものである、斯樣に私は考へて居り、それに付てのそれぞれの、只今概略申しましたやうな施設を致して進んで行きたいと思ふのであります、此の狹い國土に於きまして、山が荒れると云ふことは謂はば國が荒れることでありますので、此の點に付ては、今後とも十分なる御鞭韃に依りまして努力をして行きたい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=13
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014・稻田直道
○稻田(直)委員 只今高邁なる御經綸を聽きましたが、大體に於て了承致しました、併しながら今日の日本の林業の状態に於て、果して何が一番早く手を着けてやらなければならない急務の仕事であるかと云ふことに付て、二三を念の爲に伺つて見たいと思ひます、どう云ふ風なことが林業行政に於ての先づやらなければならない第一、第二、第三のものであるかと云ふ點に付て、如何に考へて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=14
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015・和田博雄
○和田國務大臣 私は、最初の最も根柢的な問題は造林と治水の問題である、斯樣に考へて居ります、それから今一つは、國民生活に非常に必要でありまする薪炭、其の他の燃料品の確保と云ふことであると思ひます、それから今一つは、私が只今申上げましたやうに、木材の需給の調整と言ひますか、山林の生産物である木材其のものの供給の確保と、それの適正なる配分である、斯樣に考へます、其の他林政のやり方其のものに付きましても、是は色々研究すべき點もあると思ひまするし、又今まで屡屡問題になつて居りまする林政の統一と云ふことも、必要な現在及び將來の大きな課題だらう、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=15
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016・稻田直道
○稻田(直)委員 了承致しました、次に、農林大臣は、日本の現時の林業行政を行ふに付きまして、政治の「イデオロギー」と云ふものを果してどの點に持つて居られますか、言を換へて申しますならば、社會主義的施策、或はさう云ふ施策を多分に加へてやつて行かうと思ふのであるか、或は自由民主主義的なる方法の施策を以てやつて行く積りでありますか、或は又行き當りばつたりに、適宜に善處して行くと云ふやり方でありまするか、斯う云ふ點に付きまして、農林大臣の御方針が承つて見たいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=16
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017・和田博雄
○和田國務大臣 私自身は、私の一定の人生に對する態度及び思想を持つて居ります、併し私は徒らに「イズム」に囚はれて、現實を無視した行政をやらうとは思つて居りませぬ、隨ひまして此の山と云ふものの特色、是が日本の國土に占める又、日本の國民生活に於きまする特色を十分考へまして、さうして行政の指針と致したいのであります、是は一般的な議論になつて恐れ入りますが、今の敗戰の日本に於きまして、一番缺けて居るものは廣い意味の資本だと私は思つて居ります、貨幣の形に於ける資本ではなくして、他の現物的な資本、斯う御考へ下されべ宜しいのでありますが、日本は明治以來營々として蓄積して來た資本を失つたのであります、是は國土の形に於て失ひ、或は爆撃の結果に於て失つて來たのでありますが、幸に勞力と云ふものはあるのであります、此の勞力を缺けた資本と結び合せて、それを一定の秩序の上に於て生産に向けて行くと云ふことが、現在に於ては凡ゆる「イズム」を越えた一つの基本的な共通の問題だ、斯う云ふやうに私は考へて居るのであります、私が林政をやりまする根本の考へ方もそこにあるのでありまして、何としかして國の此の資本と云ひますか、富と云ひますか、是はまあ學問的にはむづかしくなりませうが、さう云ふものを早く蓄積して國に力を持たして行く、林政に於ても私はそれが根本だと思ふのであります、さうすることに依つて、初めて日本の國民の福祉と云ふものが上つて來るのであります、其のやり方は私は「デモクラティツク」なものでなければならないと考へて居ります、民主的であると云ふことは、是はお互ひに人格を尊重し、お互ひに意見を述べ合つて「デスカッション」を試みて、或は過ちがあれば直して行く、斯う云ふ民主的な過程に依つて行政をやつて行くと云ふことが行くべき途であらう、斯う思ふのであります、唯唯觀念的な「イズム」に囚はれた行政と云ふものは、是は私は現在のやうな時に於きましては無意味であるのみならず、行政其のものとしてどはうかと思ふのでありまして、やはり一つの理想を持つことは必要でありますが、それに對しては、現實を十分認識をしまして、其の現實の正確な認識の上に、今言ひましたやうな過程に依つて行政をやつて行くと云ふことが必要だと私は思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=17
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018・稻田直道
○稻田(直)委員 只今の農林大臣の御話を承りまして、私は大體に於て了承致しました、唯農地調整法に現在現はれて居りまする條文其の他を見ますと、我々は多分に或る「イデオロギー」的な方向に、其の施策が織込まれて居るのではないかと思つて見たのでありますが、本法律案には左樣な色彩は餘り認め得られぬのであります、所が、將來の問題と致しまして、日本の森林と云ふものを如何樣に取計らつて行かれるのであらうかと私は心配をする、例へて見るならば、農地に於て自作農を作るやうに、全國の森林と云ふものを、如何に民主的な方向に持つて行かれるものであるかと云ふことを私は心配致しまして、農林大臣の「イズム」を問ひ、「イデオロギー」を問うて見たのでありますが、まだそれ等の方法に付きましては、確たる根據も御持ちにならぬやうでありますが、果してさう考へて宜しいのでありますか、農林大臣の御意向を承つて置きたいのであります、將來森林と云ふものに對しまして、如何に民主的に之を取扱つて行かれるか、例へて見るならば、田地に於ける自作農と云ふやうな方面に、此の山林と云ふものを形を變へて、或はさう云ふ風な方面に持つて行かれると云ふやうな心配、或は方策がありはしないかと云ふことを、念の爲め御聽きして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=18
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019・和田博雄
○和田國務大臣 是は將來のことですから、御答へするのもどうかと思ふのでありますが、唯山林に付て斯う云ふことは私考へられると思ひます、山は御承知のやうに、非常な奧の山と、それから山林と云ふものが農業の經營と殆ど不可分の關係にある所謂里山と、二樣にあると私は思ふのであります、隨てそれ等の里山と奧山との經營のやり方と云ふものは、是は變つて考へても宜いのぢやないかと思ふのであります、と云ふのは、里山に於て、薪炭林を取り、其の他農民の生活と不可分になつて居りまするやうなものに於きましては、是は農民の生活と切離さずに考へて行くと云ふ考へ方が出來るのではないかと思ひます、併し山林は御承知のやうに、資本を長い間寢かして、而もそれを商品化するには、奧地のやうな山に於きましては、相當の資本投下をしなければならないものであります、さう云ふものに付て農地と同じやうに考へて行くと云ふことは、是は全くの机上の空論であつて、私はさう云ふことは出來ないと思ふのであります、是は何處の國を見ましても、林政と——農地も其の歴史の點に於ては同じでありまするが、山の方と、それから所謂田畑の方とは、是は違つて居るのであります、一律に單なる觀念からは、始末することは出來ない、私は斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=19
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020・稻田直道
○稻田(直)委員 大變能く了承致しました、次は本法案の第一條には「會員が協同して、自主的に林業の改良發達竝びに林産物の生産の確保及び配給の適正を圖ることを目的とする。」と云ふことが書いてありまするが、此の林業法は、唯是だけのことを目的として立法をせられたものでありまするか、念の爲め承つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=20
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021・和田博雄
○和田國務大臣 此の林業會法制定の目的は、昨日の委員會に於きましても御説明申上げましたやうに、林業に關係致して居りまする森林組合の組合員と、それから其の他の林産物の業者が林業會と云ふ團體を作りまして、其の人達の協同の力に依つて、森林の維持造成でありまするとか、林産物の生産配給を適正ならしめる、斯う云ふ目的で作つたのであります、それを行ひまする自治的な團體の組織を書いたのが、此の林業會法と云ふことになるのでありまして、之を作りました目的は、只今申上げましたやうに、是等の自治的な團體の力に依つて、森林の維持造成でありまするとか、林産物の配給其の他を適正にしてて行く、斯う云ふことが林業會法の目的となつ居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=21
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022・稻田直道
○稻田(直)委員 森林資源を培養すると云ふことが、其の目的の一つに書いてあるやうであります、即ち森林の維持造成の事業をやると云ふことが林業になつて居りまして、此の林業の改良發達と云ふことが意味せられて居るやうでありまするが、只今農林大臣の仰せられましたやうに、國土保安上、即ち治山治水と云ふやうなことを、林業行政の第一の目的として居られ、尚ほ進みまして、日本の再興、再建に資する爲の森林の公益性と云ふやうなものを、將來考へておやりにならなければならないと同時に、さつきも申されたやうに、薪炭其の他の燃料の確保と云ふやうなことも申されて居りまするが、さう云ふことを此の林業會社の、第一條でなくても宜しいが、何處かにはつきりと書き加へて置かれる必要があるのではないか、私は森林法はまだはつきり讀んで居りませぬので、さう云ふことは森林法の御書きになつて居るかも知れませぬが、新しく出來まする所の此の林業會法に於きましても、先に私が御尋ね致しまして御答へになりました所の、林業行政の大眼目と云ふやうなものも、此の目的の中に加へて置かれなければ、果して體林の維持造成の目的が達成されますか、さう云ふ意味に於きまして、農林大臣の御所見を承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=22
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023・和田博雄
○和田國務大臣 林業會法と云ひますのは、林業會と云ふ團體に關する法律なのでありますが、今仰しやいましたやうな點は、林業會法でありますので、林業會其のものの目的と云ふ形で其の意思が出て居るのであります、さう云ふ法案提出の理由は、私が今言ひましたやうな意味に於ける森林の維持造成、或は林産物の適正なる生産配給と云ひますか、それを達成する一つの手段としての自治的な團體、それが所謂林業會法なのであります、そこで此の手段としての林業會法の目的とする所がさう云ふものだと云ふやうな形で、法律の上では現はれて居るのでございまして、只今仰せられましたやうな點に付て、それが法律に現はれて居ませぬでも、それ等の點に付きます政府の今後やるべき色々な施策とか、其の他のことに付ては、支障もございませぬし、又政府としては十分やるのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=23
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024・稻田直道
○稻田(直)委員 どうも私の御尋ねすることがはつきり御分りにならぬやうでありますが、林業會法と云ふものが唯單に林産物を取扱ふとか、或は事業者側を一致協力せしめて、配給統制、生産の奬勵をすると云ふやうなものに止まらずして、さつき農林大臣が申されましたやうな、林業行政の大眼目を先づぽーんと掲げられまして、其の方針に向つて、農林大臣が此の林業會法に目的とせられて居るやうなものをやつて行くのだと云ふやうに取扱ふて貰ひたいと云ふのであります、森林資源の維持造成と云ふものは、水源の泉のやうに、絶えざる培養を百年の大計として樹立せなければならぬと云ふことは、是は申上げるまでもない、之に對する政府の施策と云ふものが、此の林業會法には現はれて居ないやうに私は思ふのです、さう云ふ大目的を先づぽーんと現はされまして、之を基本としてやつて行くのだが、先づ配給統制とか、生産の奬勵と云ふことに付ては、之を眼目としてそれに則つてやらなければならぬと云ふやうな、大所高所より示す點がなけらねばいけないと私は思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=24
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025・和田博雄
○和田國務大臣 それは例へば農林の方から見ましても、やはり團體法と致しましては、其の團體の目的として、こつちで言へば林業の改良發達と云ふ言葉の中にそれが出て居るのであります、それを是は自治的にやるのだ、斯う云ふことになるのであります、官憲の一方的な考へでありませぬで、森林組合なら森林組合が、森林の維持造成と云ふことに付て自治的にやつて行く、それから又森林組合と林産物の業者の團體とが作つて居る林業會が、林業會としてさう云つたやうな國家の大きな目的を自治的に遂行して行く、斯う云ふことなのでありまして、法律にそれをはつきり書きませぬでも、此の法案自體の提案の理由と、法案にある主體であります團體の目的或は事業自體から、其の點は明瞭になるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=25
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026・稻田直道
○稻田(直)委員 どうも見解の相違と申しますか、私はもう少し念を入れて立法をして置いて戴いた方が宜いかと思ふのであります、どうもそれでは此の法案の運用上に於きまして、唯單に技術的な運用に走りまして、先程大臣が申されました林業行政の大綱と云ふものを、全國の林業會に携はる人に徹底的に教へて、さうして此の線に沿つて、斯う云ふやうに將來の林業會を運用しなければならぬと云ふのでなければ、ここに掲げられて居りますやうな「林業とは、森林の維持造成の事業及び林産物の生産又は販賣の事業」云々と云ふやうな目的を達成する上に於て、隔靴掻痒の感が將來あるのではないかと思ひますが、此の點農林大臣は、私の言ふことが未だ能くお分りにならないやうに思ひまするから、重ねて御尋ね致します
次は森林の七割餘を占めまする民有林を適切妥當に指導し、其の維持、培養、造成こそ、抑抑林業會の今申しましたやうな最大の目的とせられなければなりませぬ、政府は民有林對策竝に國有林竝に御料林對策に付て、各各如何なる方針を持つて居られるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=26
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027・和田博雄
○和田國務大臣 民有林、國有林に付きましても、其の所有の形態は異つて居りますが、林政として政府の考へて居る所は、私が最初に申述べましたやうに同樣でありまして、同じやうな考へで進んで居ります、國有林にしましても民有林にしましても、森林の資源は何處までも造成して行くと云ふ考へを持つて居るのでありまして、例へば國有林に付ても、民有林に付ても、伐採なんかに付ては施業案をそれぞれ計畫的にやつて行く、又民有林に付きましても、森林の資源造成に付ては、増林其の他の點に付て十分補助を致し、又指導をして居る形でありまして、其の方針に付て根本的に變つて居る點はございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=27
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028・稻田直道
○稻田(直)委員 然らば是より徐徐に御尋ねしてみたいと思ひますが、先づ第一に、政府は將來國有林を御處分なさるやうな御考へはありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=28
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029・和田博雄
○和田國務大臣 將來國有林を處分しててしまふと云ふ考へはありませぬ、唯國有林と云ふものは地元の住民の生活に、御承知のやうに密接な關係を持つて居るものでありますから、今までに於きましても、出來るだけ地元民の爲になるやうに、其の利用に供して來て居るのであります、殊に今回の開拓と云ふ緊急な仕事が起つて參りました實情に應じまして、國有林に於きましても、開拓適地として適當なるものは開拓の方に出して、そこで開拓をして自作農創定をして行く、斯う云ふやうに致す考へで居りますが、國有林其のものを將來——或はどう云ふ含みの御尋ねか分りませぬが、全部賣拂ふとか云ふ考へはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=29
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030・稻田直道
○稻田(直)委員 北海道には御料林が大變あるのでありますが、是等も將來何等手を御付けになるやうな御考へはありませぬか、是は大分前から問題になつて居る、御拂下げになるやうな意向も請願委員會等に於て洩れて居りますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=30
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031・和田博雄
○和田國務大臣 是は憲法が出來ました後、國の何に移りますれば、やはり國有林と同じやうな方針で處置して行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=31
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032・稻田直道
○稻田(直)委員 民有林の指導開發に於きまして、森林所有者に對しましては、恰も農家の農業と同じく、國家の指導保護助成が十分必要ではあるまいかと思ふ、從來日本の農家と云ふものは政府の保護を非常に受けて來たものである、同樣に森林所有者に對しましても、農家の農業が從來保護せられたと同じやうな意味に於きまして、相當保護して行く必要がありはしないかと思ふのであります、特に治水、治山、或は水力電氣と云ふやうなものを保存、是等が先申上げましたやうな、我が國の治國平天下の大國策にもなるのであります、之を單に此の林業會法に設けられてありますやうな、業者の自治經營のみに放置して置きまして、果して農林大臣の先述べられますやうな、大國策が遂行出來ると思はれるのでありませうか、繰返して問ふやうでありますが御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=32
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033・和田博雄
○和田國務大臣 御説御尤もでありまして、私も森林の所有者が十分森林を育て、且つそれを維持して行くと云ふ點に付ては、何等かの保護が要ると思ひます、それ等の點に付きましては、山林局長から現在どう云ふことをやつて居るか御説明させたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=33
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034・平川守
○平川政府委員 民有林一般に對しましては、造林の方面の助成であるとか、或は生産の爲めの維持造成でありますが、是等の助成をして居るのであります、森林組合に對しましては、先づ技術員を充實すると云ふやうなことを相當やつて居りまして、現在では助成の形を取つて居るものは、技術員の問題、其の外若干の事務費に對するものがあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=34
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035・稻田直道
○稻田(直)委員 どうも此の點に於きましては、政府の經綸が足らぬやうで遺憾でありますが、まあ止めて置きませう、次に國有林や御料林の經營を、官營の特別會計でやるが宜しいか、或は民營でやつてはどうかと云ふ點に付きまして、農林大臣の御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=35
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036・和田博雄
○和田國務大臣 それはやはり國有林は國營でやつて行つたら宜いかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=36
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037・稻田直道
○稻田(直)委員 それでは御尋ね致しますが、官營は非常に非能率的な點もあると思ひます、又伐採に際しましては、動もすると弊害、醜事が從來あつちこつちにあつたやうに思ひます、特に又從業員が配給物を分合ふ場合に於きまして、地方の山村民に非常な惡感を及ぼして居る所もあります、私が思ひまするに、將來是は徐々に民營に移されまして、地元の森林組合に是が監督經營をやらせる、即ち一番事情を能く知つて居る地元民、温い心を以て育てることの出來る地元民、朝出て夕に歸るに便利の宜い地元民に、之の經營監督を任されることが一番能率的ではないかと思ひますが、政府はさう云ふ點に付て御考へになつて居りませぬか、之に對する御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=37
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038・和田博雄
○和田國務大臣 それは實は斯う云ふやうにも考へられるのです、森林と云ふものは、御承知のやうに農業みたいに、今年播ければ長くても一年後には收穫出來ると云ふやうなものではなくて、やはり相當長い間の生産期間が要るものでありまするし、それから一つの技術指導としましても、實は直ぐ其處に結果が出ると云ふものばかりでもないのでありますので、山林に付ては、國有林に付ては、やはり國が技術陣を整へ、又人員を持つて居りますので、それ等のものを十分勵して、之を經營管理して行くと云ふことが宜いのぢやないかと思ひます、勿論あなたの仰しやいますやうに、森林は殊に山は、日本のやうな國に於きましては、大抵の農村が山なのでありまして、山に依つて生活して居る人達も非常に多いし、又山其のものが其の地元の生活に密接な關係がある譯でありますので、それ等の點に付ては、十分地元の人達の爲になるやうな工夫をして、今後とも行くと云ふのであつて、山林の經營自體は、是は國有林に付ては、やはり相當大きな力を持つて居りまする國に於て、合理的にやつて行くと云ふことが宜いのぢやないかと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=38
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039・稻田直道
○稻田(直)委員 森林の培養は申すまでもなく、農家などの如く一年に一収益をすると云ふが如く氣早いものではありませぬ、短くも二、三十年より四、五十年、長きは百年にも亙りまして、我が子、我が孫を育てるが如くに大事に培養したものでありまするが、政府は是等の森林所有者の粒粒辛苦の心理状態と云ふものも、能く御承知のことであるに違ひないと思ひます、果して然りと致しますならば、何故に斯く永年掛つて作り上げました森林を、恰も野犬が集まつて餌を荒すやうなやり方を、從來木材業者をして自由勝手にやらしたのか、是はまあ已むを得なかつたでせうけれども、それに付ての政府の所見を、念の爲に承つて置きたい、遺憾の點がありますかどうかを承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=39
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040・和田博雄
○和田國務大臣 私は戰爭中のことは余り體驗しませぬので知りませぬが、公平に見て、戰爭中はやはり相當無理をやつたと思ひます、凡ゆる面に於て、殊に森林なんかも相當の濫伐をしたことは御承知の通りでありまして、それ等のものが、是は國家的に非常に緊要な、必要に迫られてやつた譯でありますので、戰爭と云ふものをやつて居ります以上は、或る程度已むを得ないと思ひまするが、其のやり方に付きましては、是は今から見れば批判さるべきものがあると思ひます、そこで今度斯う云ふ林業會法案を作りまして、山を持つて居る森林組合、それから業者の作つて居りまする團體とが一つになつて、お互に話合つて、山を伐るにしても、木材を配給するにしても、お互にそこに話合つて自主的にやつて行く、斯う云ふ方向に導いて行くと云ふのが宜いと思ひますので、此の林業會法案と云ふものを、實は一つの案として出して居る譯なのであります、是は今後は林業に關係ある人達に、今あなたが指摘されましたやうな弊害がないやうに、やつて行つて貰はなければならないのであります、お互にそこを、戒め合ふ所は戒め合つて、山林の無駄な伐採をしないやうに、又伐採する計畫自體に付きましては、十分なる熟議を遂げてやつて行く、斯樣にしたいので實は斯う云ふやうな法律を出したのでありまして、共の點は此の方面の關係業者達、又指導の地位にあられる人は、之に關係して居る人達の氣持を十分に自覺さすやうに持つて行きまして、さう云ふ意味に於ける導きを是非御願ひしたいと、斯う思ふのでありまして、大體私は左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=40
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041・稻田直道
○稻田(直)委員 御考へはあるやうでありますけれども、さう云ふ目的が此の林業會法に依つて達せらるるや否やと云ふことは、是から私が詰寄つて見たいと思ひます、森林の所有者が其の自らの責任感を以ちまして、山林の公益性を自覺し、資源としての林産物の供出を國家國民の爲と致しまして、氣持好くさう云ふ事柄に進んで、自分の持つて居る立木を供出すると云ふやうなことになるには、餘程此の森林の持主の氣持にぴつたりと合つてやらぬと、私は出來得ないと思ひまするが、此の林業會法の何處を見れば、さう云ふ山持ちの氣持に合ふやうな條文があると、農林大臣は指摘になりますか、あれば教へて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=41
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042・和田博雄
○和田國務大臣 林業會法と云ふものは、是は森林の所有者の團體と、林産物業者の團體との協力に依つて、法律の目的を達成する爲の團體法なんであります、隨ひまして、森林業者の心理にまで立入つて、此の法律は規定致して居りませぬ、是は、法律と云ふものは人間の心理に立入るものではないのでありますので、さう云ふ點はどの法律を見ましても、私はないと思ひます、此の點はどうも何處にあると云ふことを指摘しろと言はれますれば、ないと實は御答へせざるを得ないのでありまして、そこが此の法律なのであります、人間の心理に突進んで入つて行くものは、是は或る意味に於ては文學であり、或る意味に於ては政治であるのでありまして、法律の條文其のものは、人間のさう云つた深い個人の心理にまで入り得ないのでありまして、殊に斯う云つた團體組織の法律に於きましては、到底それは不可能だと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=42
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043・稻田直道
○稻田(直)委員 どうも其の點がはつきり致しませぬのですが、斯う云ふ法律を行ひますには、人間の心理と云ふものを、實際此の法を尊重するやうな方面に持つて行かなければならぬと思ふのでありますが、團體法だからして人間の心理にまで及ぶことは考へて居らぬと云ふ風なと立法と云ふものは、半身不隨と申しても宜いと私は思ふ、重ねて申しますが、政府の御答辯は、先程の御答辯で差支ありませすか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=43
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044・和田博雄
○和田國務大臣 私は、法律を動かす者は其の法律に規定された人達が動かすのでありまして、法律自體がさう云ふ人達の心理にまで入つて規定は出來ないと云ふことを申上げて居るのでありまして、其の點は理論的にはどうもさうなるのであらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=44
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045・稻田直道
○稻田(直)委員 今までの政府當局の御答辯を綜合して見まするのに、先程局長も、林産物と云ふことに對する定義が、當分木材のみにして置きまして、あとのものはまだ能く考へて居らぬ、斯う云ふやうな御話もありまするし、今大臣の御話のやうに、どうも此の立法の精神と云ふものが、一國の林業行政の幹根に觸れて居らぬ點があると私は思ふ、要するに、私は從來ありました木材統制法を廢止して、さうして日木、地木の法等を撤廢致しました場合に於ての、一時的便法の爲に是は設けられた林業會法ではあるまいかと思ひまするが、左樣に解すると云ふことは、非常に失禮でありますが、政府當局は如何に思はれますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=45
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046・和田博雄
○和田國務大臣 私は、今あなたの最初の御質問に御答へ致した時に申上げましたやうに、日本の林政として、差迫つた此の日本の再建に必要な、例へば木材其の他の需給が圓滑に行はれると云ふことが、現實の問題として非常に必要である、而もそれ等の點に付ては、戰時中の統制の方式は最早維持されない、聯合軍方面の「ディレクティヴ」がありますることは勿論、それがなくても、さう云つた戰時中の統制では迚も圓滑に行かない、そこで從來業者の方で色色の意向があり、希望があり、又我々としましても、是等の點に付ては十分業者が協力して、自分達の力で、政府と相俟つて林産物の生産の確保とか、林業の改良發達を圖つて行くと云ふことが必要であると考へましたので、此の法律を出したのであります、勿論私は之を以て完全なるものとは、是は總會の席上でも御話致しましたやうに考へては居りませぬ、其の意味に於きましては、暫定的であると仰せられてもちよつとも構はないのでありまして、我々としましては、之を基本にしてより善きものを作ると云ふ考へも持つて居るのでございまして、其の點は慥か豫算總會の席上で、どなたかの御質問に私が御答へ致した通りであります、自治統制と云ひますることは、是は自主的に統制を致す主體である人達が本當に眞劍にやりませぬならば、中々難かしいのであります、併し此の民主化して行く日本としては、どうしても自主的な統制をやつて行くと云ふ方向に行かざるを得ないのでありまして、林業の面に於きましても、此の關係者の作ります團體に依りまして、其の目的が達せられると云ふことが實に望ましいと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=46
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047・稻田直道
○稻田(直)委員 果して然りと致しますならば、本法は永久法と致しましては不十分である、便法と思はれても差支へないと云ふのでありますならば、何を好んで不完全なものを急いで此の議會に御出しになるのであるか、假に木材統制法を止めまして、日木や地木の此の會社法に代るものを一時的に設けると云ふことが目的でありますならば、簡單な勅令でも出されまして之を處置されたならば宜しいではありませぬか、私は一時の便法の如きものを此の議會に出されまするよりは、寧ろ次の臨時議會、或は次の通常議會に於て、完全なるものを御出しになるのが、農林大臣としての大所高所よりの進退ではあるまいかと思ふ、政府は此の點に於て考慮をされる必要はないでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=47
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048・和田博雄
○和田國務大臣 團體法として、將來之を基礎にして完全なものが出來ますならば、それは宜いのであります、併しやはり行政としましては、是は一刻も放つては置けないのであります、而も此の形に於て——私は林業の團體法と云ふものは、將來どう云ふものが考へられますか分りませぬが、やはり此の林業會法と云ふものが基本になると思ひます、そこで是は暫定的であるから、將來良いものが出來た時に出したら宜いではないか、斯う言はれるのも一つの御議論でありますが、併し現實の問題として、やはり此の自主的な團體と云ふものを作りまして、木材其の他のものに付ての生産の確保、其の他を圖る必要と云ふことは、一刻も忽せに出來ないので、我々としましては、早く將來への鞏固な基礎を作つて置くと云ふ意味から云ひましても、是は必要だと考へて居るのであります、凡ゆる事柄は、其の完璧を待つてすると云ふことは中々出來にくいのでありまして、どんなものでも必ずそこに立場々々に依つては缺陷と思はれる所があるのでありまして、我我としましては、現在の實情に於きましては、此の林業會法と云ふものを以て、現在の此の森林の維持造成其の他のことを期して行く上に於ては、是は十分なし得ると考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=48
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049・稻田直道
○稻田(直)委員 是れ以上は議論になりますから、是で以て其の問題は打切りませう
次は、從來の木材統制法下に於ては、縣に依りますと、地木に對抗して尚ほ森林組合と云ふものがありました、森林組合以外の爾餘の小團體、或は個人等は悉く地木に壓迫され、自由にされたものであります、即ち縣に依ると森林組合が地木の外にあつて、多少なりとも地木と云ふものの横暴跋扈を掣肘し得たのであります、然るに此の林業會法と云ふ政府の案に依りますと、總てのものを網羅して此の林業會を作ると云ふことになります、即ち何ものも埒外に殘さぬと云ふ方針の下に立てられるのでありますが、果して然りとすれば、是が善く運用されますならば旨く行くが、惡く運用される場合に於ては、非常な改惡になりはしないかと思ふ、此の點に付て政府は何等心配がないと思はれますか、譬へて言へば、從來の地木の横暴跋扈して居つた役員が、ぞろつと又之に入る、さうして惡い村長とか、惡い縣會議員とか、さう云ふ地方の「ボス」が此の牛耳を握つて、全國に於て一本建の此の林業會を惡く運用した場合に於ては、政府はどうなさるのでありますか、さう云ふ場合に於ても、果して政府は確乎たる何か方針があるのですか、さう云ふことにしないと云ふ方針があるのですか、方針なくして斯う云ふことを決めると云ふことは非常に危險である、之に對する政府の御方針が承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=49
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050・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、どうも具體的な點がはつきりしませぬので何ですが、勿論此の材業會と云ふものは、業者と森林組合とが一緒になつて作る譯であります、さうしてそれが協力して事柄を行つて行くと云ふことにあるのであります、そこが自主的なのであります、若しそれが惡いことをすると云ふことでありますれば、是は林業會に對しまする政府の監督權はあるのでありますから、それ等の點に付ては十分監督をして行く積りであります、森林組合と云ふものは縣に存在して居るのであり、業者の組合も之に依つて作られ、其の二つが一緒になつて林業會を作つて、そこで兩方ともお互ひに平等の立場で話合つてやつて行くと云ふ建前でありますから、そこで協力してやつて行く建前であります、初めから對立してしまつて、俺はもう彼奴を相手にしないのだと云ふやうな兩方の氣持であれば、自主的な事柄と云ふものは何も出來ないのでありまして、それでは私はどうかと思ひます、恐らく是は各業者の方に於ても、斯う云ふ林業會を作つてやると云ふ要望は相當強いのでありますから、私はそれぞれの立場に於て協力してやつて行けると考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=50
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051・稻田直道
○稻田(直)委員 政府の御方針が其の通りに參りますならば洵に結構でありますが、私思ひますのに、利害の對立する二面、即ち一方は森林を育成して立木を供給する培養事業を行ふ業者、一方は立木を買受けて之を利用する事業を營む業者、即ち賣手買手を一丸として、一方は少しでも高く賣りたい、一方は少しでも安く買つて儲けようとする、賣手買手と云ふものが中に入る、それが表面は仲好くして、お互ひに相讓り合つて行かうと云ふ政府の方針であると思ひますけれども、經濟上の原則は爾く簡單に睦まじく行くものでありませうか、私は必ずや場合に依つては此の兩者が對立し、さうして混亂迷惑を釀すやうなことがありはしないかと思ふのであります、さう云ふ場合に、從來地木に立籠つて居つて旨い汁を吸ひました人々が又頭を上げまして、之を混亂に陷らしめることがありはしないか、ないと仰しやれば、是は議論でありますからそれで宜しい、さう云ふことが若しありとすれば、此の林業會法と云ふものは改惡になる、恐しいと云ふことを私は重ね重ね政府に警告し、注意をして置きます、若しもそれに對して政府が心配ないと仰しやるならば、答辯無用であります、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=51
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052・和田博雄
○和田國務大臣 戰爭中に地木社なり日木社なりが獨占的に、而も非常に官僚的にやつて居た、それがいけない、斯う云ふ譯でそれは廢めろと云ふことなんであります、廢めたらどうすれば宜いかと言へば、それは其の關係の業者が、お互ひに話合つてやつて行くと云ふことより外には方法がないのであります、さうしますれば、あなたは賣手と買手と云ふものは互ひに對立するから、色々なことが起ると云ふのでありまするが、是はもう一遍それを引繰返して考へて行けば、賣手と買手であるからお互ひにそこに「デイペンド」し合つて、それが共存共榮が出來ると云ふことが言へるのであります、所謂分業と云ふものは、利益の對立の半面に、又一面そこに協力の半面を持つて居ります、私は楯の兩面を見なければならぬと、斯樣に考へます、併し人間のことでありまするから、あなたの仰しやいますやうな場合が或は起るかも知れない、併しそれは業界其のものの一つには自肅と、又業者、業界其のものに存する所の、社會的な道徳と云ふものに依つて、そこに筋の通らないことを言ふ者があれば、私は日本の將來の社會に於ては、社會的な制裁を漸次受けて來ると思ふのであります、それが社會の進歩であり、社會の民主化であらうと思ひます、勿論政府としましては、さう云ふやうな場合に於ては公平なる立場から其のものを監督し、指導してやると云ふのは是は當然であります、併し私は、賣手と買手だから常に利益が對立して居ると云ふやうにのみは言つてしまへないのでありまして、對立の半面に、分業に依るそこに一つの、お互ひの依存し合ふ點があると云ふことを忘れたくないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=52
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053・稻田直道
○稻田(直)委員 政府は中々苦しい御答辯をなさるやうでありますが、まあそれで一つ御注意を願つて置きませう、其の注意が願へませぬければ、私は此の法律案は通すべきものでないと思ふ
次は、從來は森林組合や個人には伐採させず、地木のみに之を許して居りました、即ち伐採は地木の獨占となつて居りました、地木は全く山と云ふものの實體を知らず、或は知つて居つても無茶苦茶をやつて居つたんです、中には良い地木もありましたが、實に亂暴、横暴極まる、私利私慾の追求の集團であつたと云ふことは、私が今更申上げるまでもないことでありまして、是は今や全國津々浦浦の、國民の怨嗟の的となつて居るのであります、此處に司法當局も來られて居りまするから、一應私はそれ等の事實と稱せられるものを申上げて見ませう、譬へて見まするならば、地木の中には、戰爭中其の伐採したものの中、甚だしきに至りますると、供出したものは伐採したものの半分である、或は三分の一である、即ち其の殘りの半分若しくは三分の二と云ふものは横流しをして居るものがあつたのであります、澤山あつたと申して宜しいか、何ぼあつたと申して宜しいか、是は私は申上げませぬ、而も尚ほ甚だしきに至りましては、其の横流しを致しました木材が大陸に渡りまして、さうして日本軍にあらざる他の軍の「トーチカ」の内に於て之が認められました、それが問題となりまして、或る地方に於ては大疑獄を起しました、非常に大騷ぎをしたのです、さうして其の地木の社長は、其の縣の林務課長に三千圓、四千圓と、二回に亘つて贈賄したと云ふことも林務局長が白状致しました、さうしてそれが問題になつたのです、さうして中央の方から取調べに來る、あちこちから取調べられましたが、何時の間にか又是が雲散霧消致しました、是は其の當時、斯う云ふことが世間に暴露されると云ふことは、宜しくないと云ふ考へでありました、或は其の人の地位がさう云ふ風なことに致さしめましたかも知れませぬけれども、私は斯う云ふことは、實際世道人心を非常に害するものであらうと思ふ、斯う云ふことが今日地木が日本國民の怨嗟の的になつて居る原因であります、又、或る地方に於ては先程申しましたが、官有林と云ふものをお役所が特別會計に依つてやつて居られますと云ふと、往々にして斯う云ふことが各地に續發するのでありまするが、官有林を伐採致しました地木が、色々な名目を作りまして其の手當を貰ふのであります、多額の手數料を取る、さうして非常な利益をせしめた者もある、又、或る人が木材が欲しいによつて、或る地木に木材を呉れと言つて相當の木材を貰ひました、所が其の地木に於きましては、金は要らぬからして、あんたの山の立木を少し呉れと言うた、所が其の立木たるや、其の立木の枝だけ賣ると云ふと木材の代價は十分に取れる、殘つた幹と云ふものは何十倍と云ふ利益があるやうな方法に依つて、山持の虚に乘じまして、さう云ふ巨利を占めて居る者も澤山ある、或る地方に於ては地木が立木を買ひまして、さうして入金だけやりまして、木を伐つたあとの金を拂はず致しまして、それがごろごろ致して居る、或は又停車場まで運ばれまして、ごろごろして、それが今日では腐敗して居ると云ふのがある、斯う云ふ状態のものが全國津々浦々にあると云ふことを私は聞いて居ります、其の他木材の丸公が再度に亙り大幅に値上をせられましたことに依りまして、地木が幾層倍の巨利を占めて居ると云ふことは、是は申上げるまでもない、斯う云ふ點を政府は何とか善處せられまして、國民の地木に對する反感と云ふものを、農林省に於きましても、司法省に於きましても、或は大藏省に於きましても、斯うした暴利を取つた者に對する——戰爭中戰爭に便乘致して國賊的行爲を行つた者に對しまして、何等かの措置を講ぜられると云ふことは、今日私は當然であらうと思ふ、政治上に於て其の他に於て追放者を出しましたが、私は斯うした方面に於きましても、政府は追放者を出されまして、斯う云ふものが近く出來ます所の林業會法に便乘して、頭を突込むことを禁じられると云ふことが、實際に於て農林大臣の誠意ぢやないかと思ふ、此の林業會法を通して呉れと言はれるならば、私は其の位の誠意を示して呉れなければ、通すべきものぢやないと思ふ、之に對しまして、司法當局竝に農林大臣の御所見を承つて置きたい、好い加減な御答辯であつたならば、之を修正し、或は之を握り潰すべきものであると思ふ、之に對して司法當局の御意見を承りたい、大藏大臣は來て居られませぬが、斯う云ふものに對しまして、私は大なる戰時利得税を課けなければならぬと思ふ、他日又機會がありましたら大藏當局の意見も聽いて見たいと思ふ、先づ司法當局竝に農林大臣の、之に對して如何なる誠意と如何なる熱意を以て答へんとするかを聽いて置きたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=53
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054・佐藤藤佐
○佐藤(藤)政府委員 只今の御意見に對して、司法當局の意見を御答へ致したいと思ひます、戰時中に木材統制が非常に強く實行されて居つたのでありまするが、其の統制の網を潜ると申しませうか、其の統制を利用されて、各地に贈賄、横領等の不正事件が起つたことは、司法當局と致しましても既に承知致して居るのであります、左樣な木材統制に關聯して發生した不正事件に付て、既に刑事上の處分をしたものもありまするが、若し今後も、假令戰時中の事件であつたとは言へ、當局に發覺致しますれば嚴重に處分を致したい、斯樣な方針で居ります
尚ほ今般戰時統制を切替へて、農林當局の方で只今御提案になつて居るやうな自治的な統制に進んで行かれる御意向のやうでありますが、恐らく農林當局に於きましても、戰爭中さう云ふ統制を利用して、色々な不正行爲を行つたやうな者は、林業會から遠ざける方針で進まれることと考へられるのであります、司法當局と致しましては、今後と雖も統制を利用して不正行爲をなす者に付ては、發覚次第嚴重に取締をして行きたい、斯樣に存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=54
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055・和田博雄
○和田國務大臣 大體司法當局の御答辯で、私の言ひたいことも盡きて居るのでありますが、御話のやうに、戰時中さう云ふ不當なことを行ひました者がありますれば、是は實際上自治的な選擧でありますから、さう云ふ者は出られぬと思ひますし、又我々としても十分監督したいと思ひます、殊に地木社、日木社の財産の處分に付きましては、我々としては十分なる監督を今まで致して來て居るのでありまして、此の點に付ては將來と雖も變りはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=55
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056・稻田直道
○稻田(直)委員 只今の司法當局竝に農林大臣の御方針を承りまして、私は大體に滿足致しました、從來地木等に割據致しまして、宜しからざる振舞をなした者は追放すると云ふ意味に於きまして、將來農林省に於てもやられるであらうと云ふ司法當局の言明、竝にそれに對する農林大臣の、只今の司法當局の御意見と變る所はないと云ふ御言明に依りまして、私は大體了承致しました、冀くはさう云ふやうなことを、此の法律の中に織込む譯には行きますまいが、然るべく此の運用の際に於ては、農林省より各地方に確然たる通告を發して置かれんことを希望するものであります、是に於きまして大體の私の大きい質問は終りました
次は條文の中の不審な點を二三御尋ね致して置きたいと思ひます、本法案の目的は第一條に明示の通りに、林業の發達、林産物の生産確保及び其の配給の適正と云はれて居りますけれども、其の根本は林業の發達と治山治水にあると思ひます、抑抑林業の發達と云ふことには、基礎的な調査及び之に基く計畫が必要であると思ひます、即ち林業の用語で言ひますならば、施業案と云ふものが必要であると思ふのでありますが、事實上民有林に於きまして、現在如何程の施業案と云ふものが全國各地に於て編成濟みでありますか、恐らく極めて僅少ではあるまいかと思ふのであります、果して左樣でありますれば、斯かる實情に於きましては、政府は本法案が成立致しました後に於て、林産物の生産割當と云ふことや、或は増産計畫を策定すると云ふことは極めて困難であり、且つさう云ふ準備のないことでは危險ではあるまいかと思ひますが、之に對する政府の基礎調査と云ふものは成つて居られますか、現在の状況に於きましては、中小林業者は自己の林業を從來通りに行ふと云ふことに付きまして、さう云ふ別段な施業案と云ふものを作つてやると云ふことは、實際に於てはうるさがる、即ち拘束をされることに依りまして、さう云ふものはやりたくないと云ふやうな考へを持つて居るのではないかと思ひますが、併しながら之を最も必要とする所のものは政府ではないかと思ひます、政府が生産計畫を樹立し、森林を保持する場合に於て、治山治水の必要から考へまして、最もさう云ふ計畫を必要とするものは政府ではあるまいかと思ひます、然るが故に、政府は斯う云ふ計畫を行ふのに相當金が要るであらうと思ふ、さう云ふ金も將來此の林業會、森林の所有者なんかに負擔させることなくして、是は殆ど國家が全部負擔を致しまして、さうして急速に、短期間に、斯う云ふ施業案を全國各地に完了すると云ふ必要があるのではないかと思ひますが、政府は之に對して如何樣に考へらるるでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=56
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057・中尾勇
○中尾政府委員 御答へ致します、民有林の施業案は、昭和十四年から編成することに相成つて事業に着手したのでありますが、丁度戰時中勞務資材等の關係で、殆ど中絶の形になりました爲に、只今まで出來ましたのは大體三百八十萬町歩程度であります、全國から云ひますと、大體三割程度が今施業案の編成を見て、あと七割はまだ未編成と云ふことになつて居ります、此の點は確實なる資料を掴む上から申しまして、甚だ遺憾に存じて居る次第でありますが、差當りの植栽並に伐採量を決定する資料と致しましては、臨時植伐案と云ふものを編成致しまして、其の資料に依りまして伐採量竝に植栽面積を決定して居るやうな次第でございます
それから最後に申述べられました施業案の編成費の負擔の問題でありますが、是は御説御尤もとも思ひまするし、此の編成費の國庫金額負擔に付きましては、更に努力致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=57
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058・稻田直道
○稻田(直)委員 只今の局長の御話に付きまして、尚ほ一歩進んで申上げて置きますが、是は唯單に計畫を立てるだけのものでありますから、經費は一町歩の見積りが十圓あれば宜しいと思ふ、而して、之を今差當り森林組合結成地區内に於てのみ實施すると致しますならば、約一億一千萬圓位あれば宜いと云ふ風に私は推算して居ります、然るが故に是は今後二箇年位の間に完了して貰ひたいと思ふのであります、今年度に於きましては、さう云ふ豫算は或は難かしいかも知れませぬけれども、來年度或は來々年度等に於きましては、斯う云ふ費用を農林當局に於かれましては見積つて貰ひたいと思ひます、重ねて御伺ひ致しまするが、農林大臣に果してさう云ふ御考へがあるかどうかと云ふことを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=58
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059・中尾勇
○中尾政府委員 未編成の九百七十萬町歩の施業案の編成に付きましては、實は最初七箇年計畫を以て之を實行する計畫を樹てたのでありますが、只今の御意見がありました通りに、民有林の確實なる資料を早急に得る必要がありまするので、出來得るならば二年又は三年の内に之を完了致したいと考へまして、只今色々研究を致させて居ります、出來るだけ早く完了致すやうに致したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=59
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060・稻田直道
○稻田(直)委員 諒承致しました、次は林業の最も必然的な發達の方法と云ふものは、林業の收益率の増進であります、即ち收益率と云ふものが増進されなければ、林産物の生産と云ふものは十分に參りませぬ、林産物の生産費中に最も多額の費用を占めますものの一つは、彼の運搬費でありませう、此の運搬費と云ふものを如何にして節約するかと云ふことに付きまして、政府は此の運搬設備に付きまして別段の努力を致されまして、其の充實を御圖りにならなければなるまいと思ひます、即ち是は林道の完備と云ふ風なことになりますが、さう云ふ林道の完備と云ふことに付きまして如何なる御方針を持つて居られますか、相當是は經費が要ることであらうと思ひます、今年度さう云ふ風なものを見積つて居られないならば、來年度か來々年度にはさう云ふものを見積つて貰ひたい、と同時に林道とか、或は砂防工事とか云ふやうなことをやりますに付きまして、從來のやうなやり方を政府がやつて居られますと、是は何にもならない、と申しますのは、物資がないのに唯單に請負業者に金を渡して見られた所で、「セメント」が十樽要ります所は、十樽使つたと稱して五樽使つてしまふ、さうして用ひなければならない資材を、用ひたと稱して胡麻化してしまふ、さう云ふやうな亂暴な工事をやつて居るのであります、然るが故に、風雨が一度來ると云ふと忽ちに土崩瓦壞してしまふ、恰も賽の河原の石を積むが如き状態にあるのが今日の状態です、然るが故に政府に於かれましては、此の林道とか、或は砂防工事を行はれる場合に於きましては、唯單に計畫のみに金を御出しになつては何にもならない、さう云ふ點を綿密に御注意なさいまして、さうしてさう云ふ計畫を著々實行せられて行くと云ふことが、私は必要ぢやあるまいかと思ふが、之に對する政府の御決心を聽いて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=60
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061・中尾勇
○中尾政府委員 御答へ致します、林道の計畫に付きましては、森林の經營上から申しましても、又只今申述べられましたやうに、輸送費の輕減の點から申しましても、是は早急に林道網の完成を圖らなければならないことは、政府と致しましても痛感致して居る次第でありまして、此の林道網の計畫に付きましては、今年度國有林、民有林を通じまして、大體二億二千萬圓程度の豫算を以ちまして實行することに致して居るのであります、大體國有林林道に於きましては、千八百七十一「キロメートル」を本年度豫定を致して居ります、其の他歩道と致しまして六百十「キロメートル」、それから貯木場を四十四「ヘクタール」、是だけを國有林關係として新しく開設することに豫定を致して居ります、又民有林林道と致しましては、六千八十四「キロ」の林道を開發して居ります、勿論此の中には木材の需給上から鑑みまして、奧地林分の開發に要する奧地の林道も含んで居るのでありまして、國有林の方に於きまして、奧地の林道と致しましては五百五十九「キロメートル」含んで居りますし、民有林林道に於きましては千七百二十四「キロ」の奧地林道を含んで居るのであります、大體本年度の事業と致しましては、林道と致しましては只今申上げたやうな分量でございますが、唯先刻御話のありました、此の實行方法に付きましては、只今まで一部直營でやるのもありますけれども、大體は請負の形式になつて居るのであります、此の實行の方法に付きましては、只今申述べられたやうなこともあるかも知れませぬので、此の點に付きましては更に今後研究致しまして、仰しやるやうなことを出來るだけ防除致しまして、實行に努力致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=61
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062・稻田直道
○稻田(直)委員 諒承致しました、十二時になりましたが、殆ど終りましたから、もう五分程拜借致します
次は、薪炭を現在の特別會計に依りまして、政府は生産者より一度總てを買上げまして、而して又之を配給業者へ賣拂ふと云ふ形式を執つて、統制を行つて居られまするが、さう致しますと、第一に生産者に對する代金の支拂と云ふものが、多くは三箇月或は六箇月位遲延して居る向きもあるさうであります、左樣な意味に於きまして、手續が極めて煩雜でありまして、非常に薪炭業者は困つて居るのであります、之を是正せなければならぬと思ふが、此の點に付きまして政府は何か良い考へを持つて居られるのでありませうか、同時に又生産割當を受けました責任官廳たる各府縣と、其の各府縣に出張つて居ります山林局の木炭事務所と云ふものが對立をして居りまして、さうして命令、或は要求、或は金錢の支拂と云ふものが區々になつて居りまして、各府縣では之を非常に煩さがつて、困つて居る、付きましては斯う云ふ方面に於きましても、何等か政府は之を圓滑に行くやうに、煩雜にならないやうな方法を講ぜられると云ふやうな考へを持つて居られませぬものでありますか、一應政府の御所見が承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=62
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063・中尾勇
○中尾政府委員 只今御質問の、供出木炭を政府で全面的に買入れますことは、現在に於ける木炭の需給關係の逼迫状況から考へまして、又木炭が國民生活上極めて必要なものである點から考へましても、是は已むを得ないことと存じて居る次第でありまして、當分の間は政府の買入配給を續けて行きたいと考へて居ります、唯其の場合の代金の支拂が非常に遲延すると云ふやうな御話でありますが、此の點に付きましては、出來るだけ急速に支拂致すやうに致したいと存じます
尚ほ配給の方法に付きまして色色御意見がありましたが、此の點に付きましても、生産縣或は消費縣等に於きまして色々と問題もあるやうでありまするし、それ等の點に付きまして最も望ましい配給方法に依るやうに致したいと存じまして、只今色々と此の配給方式に付ては研究を進めて居ります、それで何れ最も良い方法だと信ずる方法に依つてやるやうになるかと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=63
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064・稻田直道
○稻田(直)委員 最後に一言申上げます、私は其の對策と致しましては、生産者より消費者、又は消費者の便宜を圖ります配給業者へ直結するが宜いと思ふ、若し又政府が補助金を支出になりますやうな場合に於きましては、代金とは別に、供出數量に應じまして、生産者へ直接に補給金を交付されるやうな方法を講ぜられなければならないと思ふのであります、是等の點に付きまして御賛成であるかどうか、一應承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=64
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065・中尾勇
○中尾政府委員 補給金の問題は昨年までは一部實行して居りましたけれども、司令部の方の都合に依りまして、本年度からは補給金は全然出來ないことになつて居りますので、又他の方途で考へて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=65
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066・稻田直道
○稻田(直)委員 大變永らく質問の時間を私一人に割愛して戴きましたことを、委員各位竝に政府に對しまして深謝して置きます、此の林業會法と云ふものは、私が只今質問致しました如く、ことに依ると改惡になる虞があると思ひますので、改惡にならぬやうな面に副ひまして、委員各位に於きましても、政府に於きましても、或は修正し、或は何等かの方法を講じて戴きまして、將來此の法律案が通過致しました場合に、圓滿なる運用が出來得ますやうに望みまして、是で私の質問を打切る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=66
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067・森幸太郎
○森委員長 本日は此の程度に致しまして、次會は明二十一日午前十時より開會致したいと思ひます、是にて散會致します
午後零時二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013719X00319460820&spkNum=67
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