1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
勞働關係調整法案(政府提出)
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昭和二十一年七月二十九日(月曜日)午前十時二十五分開議
出席委員
委員長 逢澤寛君
理事 江崎眞澄君 理事 瀧澤脩作君
理事 伊藤卯四郎君 理事 松岡駒吉君
今井はつ君 原侑君
村上勇君 川崎秀二君
橘直治君 山下春江君
赤松勇君 辻井民之助君
土井直作君 今村等君
東隆君 柏原義則君
穗積七郎君 疋田敏男君
同月二十七日委員石田一松君辭任に付其の補闕として柏原義則君を議長に於て選定した
出席國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
内務大臣 大村清一君
商工大臣 星島二郎君
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
司法事務官 佐藤藤佐君
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生事務官 吉武惠市君
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本日の會議に付した議案
勞働關係調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=0
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001・逢澤寛
○逢澤委員長 是より會議を開きます、通告順に依つて赤松勇君に之を許します──赤松君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=1
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002・赤松勇
○赤松委員 私は只今から社會黨の立場より、併せて全國の勞働階級が勞働關係調整法に非常なる關心を持つて居りまする關係上、殊に又私に對しまして、全國各地の勞働組合より百四十通も勞働關係調整法議會通過絶對反對、即時撤廢要求の電報を受取つて居りまするし、且つ各方面からやはり反對の強硬なる意思表示も出て居りまする關係上、甚だ恐縮でありまするが可なり時間を割いて戴きまして、此の問題に關する政府の根本的態度、方策に付きまして御質問して見たいと思ふのであります
私は順序と致しまして先づ第一に政府當局の考へて居られまする現下の勞働運動に對する基本的な認識に付て御尋ね申上げて見たいと思つたのでありまするが、司法大臣が特に豫算總會に御出席されまする關係がありますので、一番最後に司法大臣に御質問して見たいと思ふ點を先づ御尋ね申上げて見たいと思ふのであります、それは勞働組合法第十一條の問題であります、勞働組合法第十一條の規定に依りまするならば、「使用者は勞働者が勞働組合の組合員たるの故を以て之を解雇し其の他之に對し不利益なる取扱を爲すことを得ず、使用者は勞働者が組合に加入せざること又は組合より脱退することを雇傭條件と爲すことを得ず」と云ふ規定があることは御承知の通りであります、偖て而もそれに對しまして、若し此の規定に違反したる場合は第三十三條に於きまして「六月以下の禁錮又は五百圓以下の罰金に處す、前項の罪は勞働委員會の請求を待て之を論ず」と云ふことになつて居るのであります、隨ひまして是は請求權でありまして告訴權ではないのであります、所が是等の規定に反しまして、事實勞働組合に加入したり、或は又勞働組合を組織せんとして解雇されたる幾多の事實を私は知つて居るのであります、併しながらさう云ふ事實がありまする場合、事業主は此の條文の規定に該當することを巧みに避けまして其の勞働者の日常の樣々な缺點を取上げまして之を解雇の理由にして居るのであります、所が之を勞働委員會に持出しまする場合に、勞働委員會の構成は資本家代表五名、勞働者代表五名、中立五名を以て組織せられ、所謂從來の機構から言ひまするならば極めて民主的な組織構成になつて居りまする關係上、本人の自白を強要する或は自白を期待すると云ふやうなことは、所謂事業主が不當なる馘首をした其の馘首の事實を勞働委員會に於きまして自白を期待すると云ふやうなことは事實上不可能でありまして、本人が解雇の理由を他に求めて強辯することは當然であります、勞働委員會は客觀的事情其の他諸般の點を考慮して判斷するの外途ないことは當然豫想されなければならぬのであります、偖て檢事局及び裁判所が勞働委員會の本質に鑑みまして、其の常識的判斷を踏襲して事實の認定をなすものなりや否や、是が第一點であります、從來の如く動もすれば形式主義に流れた所謂被疑者本人の自白を重視致しまして、さうして事實を認定した方針を採られるかどうか、又は檢事局及び裁判所は嚴格なるものを要求せられるものであるかどうか、若し之を要求するとせば、勞働委員會が其の性質上形式的證據を求めることは困難でありまして、折角第三十三條の規定に依つて勞働者の團結權を保護せんとすることは、結局空文に等しいと思ふのであります、即ち私の言はんとする所を要約して申上げまするならば、第十一條に於ける規定事項は、違反事實があると云ふ追訴希望意思の表明だけで足りるかどうか、又は勞働委員會が第十一條違反事實の全部の證據を添へて追訴希望意思の表明をしなければならない解釋であるかどうか、此の點に付て司法大臣の明瞭なる御答辯を御願ひしたいと思ふのであります
尚ほ此の機會に於きまして、從來の「ドイツ」式の形式主義より英米方式の合理的な判斷に移るの意思なきや、即ち言葉を換へて申上げますならば、民主的な勞働裁判所の如き機關を設ける意思があるかどうかと云ふことを御尋ねして見たいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=2
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003・木村篤太郎
○木村國務大臣 只今の御質問に御答へ致します、要するに御質問の御趣旨は、勞働組合法第三十三條第二項の「勞働委員會の請求を待て之を論ず」と云ふことの意義竝に其の取扱に付ての御質問のやうに察せられるのであります、御承知の通り此の三十三條の罰則は第十一條の規定と相俟つて勞働者を保護しようと云ふのであります、そこで使用者が不當に勞働者に對し其の組合員たるの故を以て解雇し、其の他之に對して不利益なる取扱をなした場合に、使用者に對して制裁を設けようとするのであります、是は特に御考へになつて戴きたいのは、今申上げます通り勞働者の利益擁護の規定であります、而して斯樣な違反行爲があつた場合に偖てどうするかと云ふ問題になりまして、初めて此の三十三條第二項の規定が動いて來るのであります、勿論此の「勞働委員會の請求を待て之を論ず」是は恐らく日本の各法律の罰則規定に於きましても極めて稀な規定であります、刑法第九十條國交に關する罪、初めて之と同樣な規定が設けられてあるのであります、御承知でもありませうが、「帝國に滯在する外國の君主又は大統領に對し侮辱を加へたる者は三年以下の懲役に處す但外國政府の請求を待て其の罪を論す」と云ふ規定になつて居ります、恐らく今度の規定は今申上げました規定と同じ性質であつて、極めて稀な規定なのであります、要は斯う云ふ違反行爲があつた時に、直ちに檢察當局が動いて宜いのかどうか、是は暫く檢察當局の自發的、積極的の動きをしない方が宜い、要は使用者と勞働者の關係であるから、其の方面の自發的行動に在るのが宜いと云ふ建前で、此の勞働委員會の請求を待つて之を論ずと云ふ規定になつたのであります、そこで勞働委員會の方は、是は勞働者側から、要するに十一條のやうな違反行爲があつた場合、之をどうして呉れるのかと云ふことを委員會に申出る、さうして委員會の働きを促してやらうと云ふことになつて居るのであります、然らば此の勞働者が勞働委員會を動かすに付てはどう云ふ手續を執つて宜いのか、總ての證據を蒐集してさうして勞働委員會に之を申出でなければならぬのかと云ふと、さうではないのであります、一應勞働者が斯く斯くの使用者側に違反行爲があつた、之を取調べて貰ひたいと云ふことを申出れば、勞働委員會では恐らく其の言に基いて、色々の材料を蒐集して働き掛けて來るものだらうと思ふのであります、勞働委員會の方では勞働者側に色々な資料を求めるのでありませうが、是は凡ゆる資料を求めると云ふことは中々困難な事情がありませうから、大體さう云ふ事實がありと認められますれば、勞働委員會の方では、恐らく檢察當局の方へ向つて、其の發動を促すことになるであらうと信じます、勞働委員會の方から檢察當局の方へ發動を促す場合に於て、それでは凡ゆる證據を持つて來なくてはならぬかと云ふことになりますると、さうではないのであります、一應勞働委員會から是は檢察當局に其の發動を促すに足れりと信じて請求があつた以上は、檢察當局ではそれを取上げて凡ゆる角度から之を檢討致しまして、十一條の如き違反行爲があれば、之を取締つて行くと云ふことが其の精神であります、勞働委員會の方から檢察當局の方へ向いて請求がある場合に於ても、それは確實なる證據があれば、それに越したことはありませぬが、的確確實な證據がないからと云つて、直ちに檢察當局ではそれを斥けるものではないのであります、要は勞働委員會の方で十分調べて、是は十一條の規定に違反するものであるから、檢察當局の發動を促すと云ふ請求があれば、檢察當局では勞働委員會の請求で一應尊重致しまして、自發的行動に出づるべきものと信ずるのであります、結局は此の三十三條は十一條と相俟つて、勞働者の保護規定でありますから、其の方面から十分考慮を致しまして、檢察當局では萬違算のないやうに處置をする積りであります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=3
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004・赤松勇
○赤松委員 厚生省所管事項にも關聯致しますので、後程此の點に關しまして更に厚生大臣に御尋ねして見たいと思ひますが、只今司法大臣は縱し證據物件が明示されなくても、司法權の發動をなす場合があり得ると云ふ御答辯でありましたが、それは所謂常識判斷に待つて行ふものであるかどうか、所謂判斷の基準は何すあるかと云ふことを一應御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=4
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005・木村篤太郎
○木村國務大臣 檢察當局の取扱と致しましては、是は常識と申しますれば常識でありますが、所謂法律常識であります、凡ゆる角度から之を檢討致しまして、さうして果して十一條の違反行爲がありや否やと云ふことを認定するのであります、通り一遍の常識とは考へられませぬが、要は客觀的妥當性と申しませうか、總ての情勢、其の時の在り方と云ふものを考慮に入れまして處置をするのであります、左樣御承知願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=5
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006・赤松勇
○赤松委員 私は勞働組合法に於ける第一條は、特に勞働者の團結權を擁護するものであると云ふ建前から極めて此の問題を重要視して居るのであります、只今司法大臣は即ち常識判斷を以ても司法權の發動をすると云ふやうな御答辯でありますが、私はさう云ふ瞹昧なる司法權の發動に依つて、果して此の問題に對する勞働組合法第十一條に規定もる所謂勞働者保護の精神が法の上に於て十分に其の意義を發揚出來るかどうかと云ふことを疑はざるを得ないのであります、隨ひましてそれに對するもつと積極的な、發展的な、もつと勞働者保護を百「パーセント」なし得るやうな用意があるかどうかと云ふことを再度、質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=6
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007・木村篤太郎
○木村國務大臣 只今私は常識的と云ふことを御質問を全然丸呑みに受取つて申したのであります、所謂常識的と申せば法律的常識である、要は客觀的妥當性なのであります、凡ゆる資料を檢察當局では考慮致しまして、さうして法律的常識に訴へて之を處斷しようと云ふのでありますから、通り一遍の常識ではないのであります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=7
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008・赤松勇
○赤松委員 然らば厚生大臣に御尋ね致しますが、勞働委員會に於きまして解雇されたる勞働者から是は不當解雇なりとの請求があつた場合に、勞働委員會が其の取扱に付きまして、只今司法大臣の言はれるやうな客觀的妥當性を持つやうな認定が十分になし得ると御考へになつて居りますかどうかと云ふことを質問致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=8
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009・河合良成
○河合國務大臣 勞働委員會に其の一應の認定を任せてある譯でありますが、勞働委員會と致しまして是もやはり客觀的妥當性のある場合でないと取扱ひせぬ、さう考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=9
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010・赤松勇
○赤松委員 若し其の客觀的妥當性なりと考へる點が實は客觀的妥當性を缺いて居る場合が往々にあるのであります、現に埼玉縣に於きましても其の問題が起りまして此の問題の取扱に付きまして昏迷して居つた事實があるのであります、私は只今の厚生大臣の答辯に對しては極めて不滿足であります、其の客觀的妥當性を明示し得るやうな根據と云ふものが實は稀薄なのであります、言ひ換へますならば事業主が勞働者を第十一條に實際は該當するも他の理由を以て往往解雇することがあるのであります、其の場合に其の勞働者が不當解雇なりと言つて勞働委員會に不當解雇の理由を請求致します時に客觀的妥當性に缺くるやうな嫌ひが往々あります、只今の第一條の規定はさう云ふ意味に於きまして實は空文に等しいと思ひます、其の點に關する厚生大臣の更に明快なる御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=10
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011・河合良成
○河合國務大臣 勞働委員會の構成は御承知の通りに勞働者側の代表、資本家側の代表、それから中立の者と雖も勞資兩代表の同意の上委囑すると云ふ建前になつて居りますから、勞働委員會の公正性と云ふことに付きましては色々建て方はありませう、あるけれども是は色々考へて、寧ろ輿論にも聽き、それから勞働者側、經營者側の意見も聽いて、之に落着くんだと云ふことで拵へた形でありまして、是れ以外に非常な名案があつて、今のやうな問題に對して極めて剴切な處置が絶對的に出來るものだと云ふ方法がありますれば兎も角、それがなくてやはり人間として考へて、どうも只今の勞働委員會と云ふ制度より外にないと云ふのが日本の現状に於ける勞働委員會制度と云ふものを作つた根據だと思ひますから、場合に依りましてはどうも滿足にいかぬこともありませうし、是は變へたら宜からうと云ふやうな議論のあることもあらうと思ひますけれども、一應はそれに信頼性を持つて行くと云ふ外に制度としてやはり方法がないのであります、而もまづい時には輿論も起きませう、双方に不平も色々起きまして、自然的に發展し改革されて行くと云ふのが、是が社會の行く道だと思ひます、それで裁判所ではありませぬけれども、其の公平な認定に任すことが宜いと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=11
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012・赤松勇
○赤松委員 厚生大臣の御答辯は極めて瞹昧模糊でありまして、さう云ふことでは此の第十一條の精神が勞働者側十分になる安心感を與へるやうな結果にはならないと思ひます、更に私は積極的な一つの方策と致しまして、さう云ふ勞働委員會の取扱方が所謂客觀的妥當性があるかどうかの認定をすべき基準が十分に定つて居ないと致しますれば、勞働者の請求權に對する所謂裏打をする意味に於きまして、勞働問題を全般的に取扱ふやうな綜合的な民主化された勞働裁判所と云ふが如きものの機關の設置を急ぐ必要があるのではないかと云ふことを御尋ねしたいのであります、尚ほ私は此處で一言申上げますが、現在の檢判事の古臭い頭を以て致しましては、現在の如く目まぐるしい勞資の樣々の紛爭殊に客觀的情勢に對應するやうな客觀的妥當性を以て判斷をなすと云ふことは到底出來ませぬ、さう云ふ意味から民主化された勞働裁判所の如き機關を設ける意思が政府にありや否やと云ふことを再度質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=12
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013・木村篤太郎
○木村國務大臣 只今の御質問に對して御答へ致します、現今の司法官──是は裁判官、檢察官を含めて居りますが、之に付ての御批判があつたやうであります、成程一部の者に多少舊來の頭の拔け切らない者もありませう、併し大體の者に付きましては現在の此の時代を認識して居るのであります、我々も此の司法官の教育と云ふことに付ては最善の努力を拂ひつつあります、又將來大いに拂はんとして居るのであります、例へて申しますと最近司法部内に於て司法檢察研修所と云ふ一つの組織を設けまして、是で十分司法官の教育の再建と云ふことを實地にやつて居るのであります、斯う云ふ勞働問題に付ても現在の司法官は相當の認識を深めつつあるのであります、どうか其の點に付ては御心配なくやつて戴きたい、若しも御質問者の如き或は時代に副はぬ斯う云ふ取扱をしたと云ふやうなことが具體的にありますれば、どうか御遠慮なく申出で戴きたい、將來司法官を時代の線に沿つて教育すると云ふことに萬全ふ考慮を拂ひたいと考へます
次に勞働裁判所の設置問題でありまするが、政府と致しましては只今の所勞働裁判所を設置すると云ふ意向はございませぬ、要は先刻申上げました通り、此の三十三條、十一條の規定に關聯した問題の如きは、自主的に勞働委員會に於て之を處理する、さうして勞働委員會に於ける問題に付て、檢察當局に於て解決を要すべきものであれば、勞働委員會の積極的活動に依つて、司法檢察當局に於て、其の請求に依つて動いて行けば、十分に勞働者の保護を全うし得るものと確信するのであります、繰返して申しまするが、目下の所勞働裁判所の設置の意向は政府に於てないと云ふことを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=13
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014・赤松勇
○赤松委員 私は現下の如き錯綜せる經濟状態、或は社會的危機に當面致しまして、現在の司法官が果して其の事態から發生する結果に對する客觀的妥當なる取扱をなし得るかどうかと云ふ點に付きましては、殘念ながら否と答へざるを得ないのであります、是は單に司法官のみならず官僚全般に對する勞働階級の不信であります、是は非常に重大な問題でありまして恐らく日本の民主化と云ふ點から言ひましても、此の問題はまだまだ十分論ずる必要があると思ふのでありまするが、只今の司法大臣の御答辯甚だ不滿足でありまするが、司法大臣に對する御質問は是で終りたいと思ひます
次に私は膳國務大臣の御出席を要求して置いたのでありまするがまだ御出席がないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=14
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015・逢澤寛
○逢澤委員長 膳國務大臣は、今日は一寸都合が付かぬかも知れぬと云ふ話ですから、膳國務大臣に對する質疑は保留して戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=15
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016・赤松勇
○赤松委員 それでは膳國務大臣に對する質疑は保留して置きませう
次に河合厚生大臣に御尋ねしたいのでありまするが、河合厚生大臣は、現下の日本の勞働運動に對し、其の動向に對してどう云ふ御認識を持つて居られるかと云ふ點であります、私の考へを以て要約して申上げますならば、現下の日本の勞働運動と云ふものは、極めて健全なる形を執つて進んで居ると思ふのであります、是は厚生大臣の御答辯に對しまして、更に私は其の見解を披瀝して見たいと思ふのでありまするが、一應厚生大臣が我が國の勞働組合運動の現況に對し、どのやうな御考へを持つて居られるかと云ふことを先づ御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=16
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017・河合良成
○河合國務大臣 只今の勞働運動の大體のあり方に付てどう云ふ考へを持つて居るかと云ふ御話でございましたが、是は非常に廣汎に亙る問題でありまして、私の考へと致しましては、大體に於て斯う云ふ行き途だらうと思つて居ります、中々勞働運動の展開が巧く行つて居る所もある、成程民主主義に變る、斯う云ふ風に行かねばならぬものかと思ふやうな例も中々あります、殊に色々問題が解決したから一肌脱いで國家の爲に一つ増産だと云ふやうな所に非常な熱を持つてやつて下さるやうな、本當によくも此の食糧不足の時に是までやつて貰へるかと思ふ本當に感激を持つて迎へるやうな組合なども相當あります、併し、と云うて全部さうかと申しますと、必ずしもさうでありませぬ、遺憾な點のあるのもやはりあります、そこで是は言ふまでもなく今日の法制の下、或は近く制定されんとする憲法草案を目標としまして、茲にやはり一つの社會秩序と云ふものは、どうしても絶對的に保持して行かなければならぬ、さう云ふ點に關して今まで勞働組合は全部合格かと言ふと、必ずしもさう申せぬものもあります、と云ふことでそれは一つ一つを捉へますと色々の議論がありますけれども、兎に角も非常な急激な發達でありまして、さうして日本の民主化と云ふことも御承知の通りに急激に來た問題である、そこへ生活難と云ふ問題、物價高、食糧不足と云ふものは御承知の通りに斯う云ふ「テンポ」の速い状態で參つたのでありまするから、茲に或る程度の混亂なり或は錯雜なりがあることは已むを得ませぬが、總ての社會的條件を皆織込ませて、又やはり勞働組合の健全なる自覺と云ふことにも相當の時が掛かると云ふことも、萬事綜合的に觀察しますれば最近の此の状態と云ふものは先づ斯う云ふ行き途を通るべきものだらうと云ふ風に大體私は考へて居ります、併し目標としましては絶對的に一つ健全組合の發達をやつて欲しい、さうして日本再建の經濟目標、即ち今の時を以てしますれば生産増強、此の一點に萬端が集中すると云ふことにあつて欲しいと云ふことを希望して居ります、大體さう云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=17
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018・赤松勇
○赤松委員 只今厚生大臣の現下の勞働運動に對する御認識を承つたのでありまするが、實は一昨日の本會議に於きまして共産黨の志賀君が勞働關係調整法、此の法律を制定する政府の反動性に付きまして質問したのでありまするが、それに對しまして厚生大臣は省電の「サボ」を取上げて、斯の如き公共を害する「ストライキ」があるが故に勞働關係調整法を必要とすると云ふことを言はれたのであります、只今も厚生大臣が言はれました如く、個々の點に於きましては好ましからざる現象があるが併し是は急激なる民主化の過程に於て必然に現はれて來る現象であるから已むを得ないと云ふ只今御答辯があつたのであります、私は省電の「サボ」の如き一つを御取上げになりまして、あの志賀君の御質問に對して御答辯なすつた厚生大臣から、只今委員會に於きまして私の質問に對して、それと異つた御答辯を賜つたのであります、そこで私は河合厚生大臣に御尋ねしたい點でありますが、御承知の如く我が國の生産機構、分けても勞働條件の中に喰入つて居る封建制と云ふものは極めて濃厚であります、而も我が國の勞働階級が、「ヨーロッパ」「アメリカ」と比較を致しまして、惠まれざる勞働條件の下に於きまして、多年我が國の産業發達の爲に努力をして來たと云ふ點に於きましては、是れ河合厚生大臣と雖も當然御認めになると思ふのであります、私は戰爭中監獄に入つて居りまして十分分りませぬが、あの戰時中に於きまして、日本の勞働階級が帝國主義侵略戰爭に總動員されまして、特に徴用工の如きは父祖傳來の家業を剥ぎ取られ、二束三文の賃金で工場に打込まれ、或は多數の勤勞者大衆は同樣の條件の下に於きまして各軍需工場に總動員をされ一方に於きましては團結權を蹂躙され、即ち日本勞働組合總同盟を初めと致しまして、私共の所屬して居りました日本勞働組合全國評議會も昭和十二年十二月二十一日に時の末次内務大臣に依りまして社會の安寧秩序を紊す存在であると云ふ理由を以て遂に解散を命ぜられ、私は昭和十二年から昭和十六年八月四日まで拘禁されたのであります、其の間、大東亞戰爭終戰まで日本の勞働階級はどのやうな形に於て今次の戰爭の最も大きな被害者として動員されたかと云ふことは、厚生大臣と雖も十分に御承知であると思ふのでございます、特に憲兵監視の中に強制勞働をやらされました、あの爆撃の中で而も彼等はそれが國家の爲なのである、戰爭に勝つまではと云ふさう云ふ合言葉の下に隱忍自重、殆ど半植民地的な、植民地以下の奴隸生活に耐へて來たのであります、終戰になりまして、「ポツダム」宣言を我々は受諾を致しました、終戰になりまするや日本は急遽民主主義の過程に入つたのでありまするが、長い間戰爭に依つて家を奪はれ肉親を奪はれ、更に自己は空襲の中で國家の軍需生産の爲に挺身を致しまして、與へられたものは何であつたかと申しますれば、それは敗戰の事實、更に彼等は失業者に轉落した、又殘つた勞働者は工場内に於きましてやはり御承知の如き勞働條件の下に耐へて來たのであります、是は「ヨーロッパ」の場合ならば或は「イタリア」の工場占領の如き「サンヂカリズム」的な傾向を以ちまして、政府打倒の恐らく政治的「ストライキ」に起ち上つたのでありませう、或は又一九〇五年に於ける「ツァール」の專制政治、それを取卷く「ロシア」の資本主義、其の集中的表現である所のあの反動政府に對しまして、又一九一七年當時の「ロシア」の勞働者は一齋に政治的「ゼネスト」を以て鬪つたのであります、其の要求は勿論經濟的の諸要求もあつたのでありませうけれども「ツァール」を先頭とする反動的資本主義の勢力を倒し、此の革命的な諸要求を先頭と致しまして政治的「ゼネスト」を全國に展開したことは御承知の通りであります、歐州大戰終戰を致しました後に於きまして「ドイツ」に於きましても同樣に又全國的な革命的、政治的「ストライキ」が勃發したことも、厚生大臣十分に御承知であると思ふのであります、我が國の勞働階級はあの戰時中に於きまして慘憺たる血の犧牲を拂ひ、更に終戰となりまするや彼等は暴動一つ起さず、政治的「ゼネスト」一つ起さず、尚ほ日本民族の再建の爲に、祖國再建の爲に現在彼等は起ち上つて居るのであります、私は省電の「サボ」一つ、或は全國に一つや二つの「ストライキ」の例を御取りになりまして、是で日本の勞働階級全般を律せられると云ふことに對しましては、勞働階級の一人として洵に憤激に堪へない(拍手)一體何處の國に是れ程柔順な、是れ程祖國愛に燃えた、是れ程民族的な勞働階級がありませうか、一體政府は「ベッド」の上に横はつて居る所の、胃潰瘍に苦しんで居る所の患者に對しまして砂利を與へて然る後に榮養食を與へるか、先に砂利を食へと言つて勞働關係調整法を出したのではないか、一體此の勞働運動で何處に行過ぎて居る所があるか私は日本の再建は誰が何と申しましても、斷じて資本家陣營の中から湧いて來るのぢやないと思ふ、日本の再建は組織された三百萬勞働者を中心として日本の勞働階級の熱烈なる日本民族再建、國家再建の其の階級的な本能的な意欲以外には、日本を再建するものは斷じてないと確信して居ります、此の點に關しまして本會議を通じ委員會を通じ、政府の日本の勞働階級に對する認識は根本的に誤つて居る、殊に私は本日膳國務大臣が御見えになつた時此の點に付きまして十分に其の御見解を聽きたいと思つて居つたのでありますが、穗積七郎君の質問に對しまして二十年、三十年前までの古びた所謂勞資協調論を盛んに説いて居られましたが、今や日本の國は、若し日本の勞働階級は此の勞働關係調整法に反對を致しまして「ゼネラル、ストライキ」をやつたならば政府は一體どう致しますか、政府當事者と雖も、又我々と雖も同じ血を分けた日本人同士である、我我は「ソ」聯の植民地にも又外國の植民地にもなりたくはないのである、何とかして一日も早く日本の再建の爲に、日本民族の永遠の繁榮の爲に起ち上りたいと考へて居る、其の矢先に今日の勞働階級は革命的な政府顛覆と云ふやうな「ゼネスト」をやらず、自然生長的に自己に與へられた團結權、更に自己に與へられた封建的な勞働條件を改善する爲に、極めて健全なる勞働政策を以て起ち上つて居る時に、其の出鼻を挫き、其の民主的な生長を阻む勞働關係調整法は一體何處に意義があるのですか其の必要は一體何處にあるか、若し必要とありまするならば、其の自然生長的に正しく生長しようとする勞働運動に對しまして、政府當局が健全な自然生長的な勞働運動が横道に外れないやうに、それを民主主義的に正しく指導する方策を考へることが先づ先決問題でないかと思ふのであります、過日の穗積君の質問に對しまして勞働權に對する國家統制は一應之を肯定するも、更に其の勞働權に對して國家統制を加へるならば、當然資本の利潤に對しても是れ亦國家統制を加へる必要があるではないか、私は穗積君の觀點と其の「イデオロギー」に於て根本的に異にして居るのでありますが、私を以て言はしめますならば、當然國家再建の爲には此の際總ての資本家階級が、其の利潤を自發的に國家に返納することと、更に未發達な、未成長な此の勞働權を政府の手に依つて枠を嵌めるのでなくて之を正しく成長させると云ふことが必要ではないか、私はさう云ふ點に於きまして今回の勞働關係調整法は無用の長物である、厚生大臣に申上げて置きませう、此の勞働關係調整法が此の委員會を通過致しまして、更に本會議に於て、我々は絶對反對を致しますけれども、遂に數に於て破れまして、議會を通過し、是が貴族院に廻されました時に於きましては、必ずや官廳官公吏職員組合の諸君を先頭と致しまして、全國の重要産業の勞働者が、勞働關係調整法反對の「ゼネラル・ストライキ」をやると云ふことを決して是は駄法螺ではないのであります、さう云ふ理窟の通らない、筋の通らない案を押付ける、即ち「ベッド」の上に寢て居る所の胃潰瘍の患者に榮養食を與へる前に砂利を食はさうとする如き政府の反動政策に對しましては、好ましくはないけれども全國的な「ストライキ」を以て此の法案の實現を阻止せんとする決意と用意を整へて居ると云ふことをば、特に河合厚生大臣に申上げて置きたいのであります、私はさう云ふ意味に於きまして全國官公吏職員組合の諸君が、特に委員會に於て政府當局に傳達して呉れと云ふ所の勞調法反對聲明及び議會鬪爭東京中央勞働大會の決議文を讀上げます「勞調法中官公吏爭議禁止規定反對聲明、目下議會に於て審議中の勞働關係調整法第三十八條は警察官吏、消防職員、監獄に於て勤務する者のみならず一般行政司法官吏に付ても爭議行爲を全面的に禁止する旨規定せるも、右は我々官廳職員組合の活動を完全に封殺せんとするものであつて、次の理由に依り是が削除方を要望する、第一、勞働組合法第四條に依れば警察官吏、消防職員、監獄に於て勤務する者を除き一般行政司法官吏は組合を結成し團結する權利を認められて居るのであつて此の團結權が認められて居る以上警察官吏其の他のやうに團結權の認められて居ない者と同樣一律に爭議權を否定することは勞働組合法の趣旨と全く一致しない、蓋し團結權の實質的效力は爭議權を與へられて居ることにあるからである、第二、我が國官廳制度の現状は依然封建的色彩が濃厚で之を打破し、眞の官廳の民主化を推進するものは官廳内部に於ける下から盛上る力、即ち官吏組合の運動以外にはあり得ない、此の意味に於て官吏組合の爭議權を否認することは、組合に依る官廳民主化運動の決定的效果を減殺し、封建主義の厚い壁の前に組合をして窒息せしめるものである、第三、本條文は現在の官吏組合に對する明かなる不信の表明である、我々は對一般的國民の關係に於て」此處を能く御聽き願ひます「普通の會社工場に於ける勞働組合と異なり、特殊なる立場にあることを十分自覺認識するものであつて、其の本來の性質上輕々に爭議に入ることを許されないし、又爭議行爲自體も亦極めて制限されたものでしかない、此の特殊性から見ても官吏組合から爭議權の一切を奪はうとする事由の發見に苦しむものである昭和二十一年七月十八日、商工省職員組合」
尚ほ聲明書を澤山持つて居りますが、煩瑣を避けまして止めますが、私は以上の點から申しまして只今厚生大臣が新しい社會秩序を確立する爲に勞働關係調整法、其の他の勞働法が必要であると云ふやうな御答辯でありましてけれども、私を以て言はしめますならば現在の如き健全なる而も戰爭以來非常に從順、專心勞働條件の改善と云ふ經濟的の諸要求の範疇に於て運動を展開して參りました現在の勞働組合運動をして、更に勞働關係調整法と云ふが如き惡法の枠を嵌めることに依つて其の健全なる勞働組合運動を強いて政治的の「ゼネラル・ストライキ」まで發展させようとする、さう云ふやり方自身こそ新しい社會秩序を破壞するものであると私は思ふのであります、若し眞實に政府自身が新しい秩序を確立せんとするならば既成のものに對する、既成と申しますならば、日本の産業再建に依つて缺くべからざる所の基本的要件である所の現在の資本に對しまして國家統制を加へて、同時に又勞働階級に對しましては其の階級的な、本能的な、即ち日本民族を愛する日本の祖國を愛する、祖國日本を再建するには我々以外にはないのだと云ふ其の民族的な階級的な本能、意欲と云ふもの、生産意欲と云ふものを之を昂揚することが一番必要ではないか、特に私は斯う云ふ事實を知つて居るのであります、過日の新聞を見ますと「日本産業再建に暗影」とあります、「工場閉鎖續出傾向、資本喰逃げの魂膽からか亂暴な一方的宣告」是は此の工場だけではないのであります、現に東芝の如きは、一方に於て第二會社を拵へ、現在の工場はがらがらである、資本家のやり方は皆さうである、第二會社を作つて置いて、さうして自分の利潤を確保しながら元の工場は斯くの如く儲からない、隨て馘首は已むを得ない、「ロック、アウト」も已むを得ない、賃金値上は出來ない、勞働條件の改善は出來ないのだと云ふことを彼等は言つて居る、此の工場は東京都の三鷹にある所の正田製作所、資本金百萬圓、是は元海軍機關大佐で戰犯である、此の機關大佐は是は終戰後轉換して金屬生必品を作つて居つた、創業以來八年、四百人の從業員を持つて居つたが、是が勤續八年の熟練工も含めて頭割僅か三百圓を支給し、新規雇傭契約には應ずる用意があると云ふ餘地を殘して居るのみで全四百の從業員に對して退所を要求した、之に對して從業員側が斯かる一方的通告は團體協約、經營協議會規約並に勞働組合法に違反するものとなし生産管理に移つた、目下前經營當時よりも三倍も能率を擧げて居る、正田所長は其の後關西方面に旅行して不在、其の爲に交渉が出來ず今後の成行が注目されて居る、軍需補償の打切を豫斷しての自己資本の再戰備、爭議に伴ふ金利的な打算などが工場閉鎖と云ふ所謂資本喰逃げの方向を釀成して居る、是は果して日本産業再建に取つて健全なるやり方であるかどうか、若し厚生大臣が社會秩序を云々するならば、なぜ斯くの如き資本家に對して取締りをしないか、厚生大臣は本會議以來生産管理を屡屡所謂一片の法理論的根據から反對をして居られますけれども、大體法理論的の見地から見ましても資本家の企業權、資本家の所有權と云ふものに對しましては、是は各國の憲法を見ましても、其の通りである「ワイマール」憲法に於きましても當然所有權、企業權に對しましては、義務が伴ふのです、其の所有權、企業權だけが一方的に、神聖にして侵すべからざるものであり、他方に於ける勞働權だけが抑制されなければならぬと云ふ所の根據が、一體何處にあるか日本の産業を再建し、日本の民族の危機を突破する爲には、自己の利益に汲々として居る所の、斯くの如き資本家の徒輩に對して、宜しく政府は嚴重なる處罰を行ふと同時に當然勞働者の正當なる生産管理に對しましては、之を認めなければならぬ、若し生産管理が前革命當時の「イタリア」に於きますやうな「サンジカリズム」的な所謂政治的な意味を持ちました所の工場占領であるならば、勿論厚生大臣としをは望ましくないでありませう、政府當局としても望ましくないでありませう、併し今日の個々に行はれて居ります所の生産管理と云ふものは、一體さう云ふ政治的意味を持ちました所の工場占領であるか、或は又日本の産業再建を根本的に妨げる障碍になるやうなものでありませうか、資本家の企業權、所有權には當然義務が伴ふと致しますならば、資本家が國家再建を「サボタージュ」即ち手持資材の値上りの爲に、彼等が意識的に生産「サボ」をやつて居るが故に、勞働者が生産を管理致しまして、全く是は御苦勞さんの話である、さうして一品でも一物でも之を國家再建の爲に多く生産せんとする、其の民族的な意欲に對しまして、なぜそれを彈壓する必要があるか、殊に生産管理は先程申上げましたやうに、單なる是は事務管理であります、法理論的な立場から言ひましても、或は現下の客觀的事情から申しましても、國家再建と云ふ大目的から言ひましても、之を一律に私は認めよとは申しませぬけれども、あの「イタリア」に於ける所の工場占領、或は政治的意味を持つた所の所謂工場管理でなくて、當面の資本家の生産「サボ」を打破致しまして、少しでも國家の爲に盡したいと云ふ遠い、民族的な、階級的な、本能的生産意欲から出發して居るものならば、之を政府は認め、健全なる方向に指導し、發達さすのが當然ではないか、それを合理的に解決するのが當然ではないか、私はそれに對する厚生大臣の全勞働階級に對して安心感を與へるやうな、責任ある御答辯を要求するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=18
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019・河合良成
○河合國務大臣 只今赤松君の洵に聲涙共に下ると云ふ御質問に對しまして、敬意を表する次第であります、色々御指摘の事實に付て先づ答辯を致しますが、志賀君の質問に付て山手電車の「サボ」を例に引きましたのは、公益事業に對しましては、拔打的の爭議をやられては、實際市民も國民も日常生活に困るのだと云ふことを、時間も餘り掛けて説明するのもどうかと思ひまして、端的な例を引いて、皆さん御存じの事實で、公益事業に於ける拔打爭議は困るのだと云ふことの例に述べただけのことであります、それで私は先程全體の流れとしまして、斯う云ふことであらうと云ふことを申しましたのは、勿論個々の問題を指摘して居る意味ではありませぬ、非常に大きな流れ、歴史の上に書くやうな意味の此の流れに於て、色々錯雜した事情にある時には、先づここらであらうと申した意味であります、其の點をどうぞ御諒承願ひたいと思ひます
それから色々御指摘の點もありました、日本の勞働者が、戰爭中に色々のことを通つて來たに拘らず、終戰後に於て是だけ國家の爲にやつて居るぢやないかと云ふことに付きましては、私も大體に於て非常に御同感でありまして、民族の特質と申しますか、或は一般國民の自覺が相當進んで居つたと申しますか、兎も角も破壞に導かずして、此の時代を斯うやつて通して戴いて居ると云ふことに付きましては、是は政府當局は勿論、國民全般に於て、お互ひに慶ぶべきことであると云ふことに付きましては、御同感であります併し此の勞働關係調整法と云ふものは、決して私は壓迫的のものと考へて居りませぬ、又資本家を擁護するとか、さう云ふ一派の階級の爲に斯うするものとは、少しも考へて居りませぬ、前から度々申上げまする通りに、一つは仲裁なり、或は調停なり、或は幹旋なりの、機械的な方法と申しますか、手續のことを書いたに過ぎない、もう一の面は、官吏の點に付つて御指摘がありました、若し假に、官吏の「ゼネスト」と云ふやうなものが起きるとしますれば、日本の國はどうなりませう、私も此の間勞働關係調整法の提案の時に勞働者諸君の腕で日本の經濟を再建して貰はなければならぬのだと申して居る、今赤松君の御指摘のやうな、是だけ自覺のある、是だけ反面に於てしつかり肚の坐つた勞働者諸君、或は勤勞者諸君、此の終戰後に何の風波も起さず、斯うやつて來て下さつたお方が、今度は「ゼネスト」をやると云ふことになると、どうなりますか、さう云ふことをやられては困る、やるかも知れないと云ふことでは大變で、やられては困るから、やはり國家の全體としましてはさう云ふことは止めて貰ひたいと云ふ國家の意思を、民衆多數の代表である兩院、殊に衆議院に於て提案して、さうしてさう云ふことは困るのだと云ふことを書かうと云ふのが、此の法律の趣旨であります、決して今の御所論と矛盾するものでなく、日本の國を本當に安穩に保つて行く、破壞をしては何にもならぬ、破壞をしては共倒れです、それを保つて行く爲に、其の意味が官吏の「ストライキ」禁止となつて現はれて居るのであります、さうしてそれ以外に勿論他意はありますそれは官吏も困る、困るから生活と云ふことは注意しなければならぬ、併しながら一方に於て國家の財政状態、又食糧不足、其の他の苦しい状態も御承知の通りでありますが、此の間も先づ是だけと云ふことで、あれは政府が獨斷で決めたと云ふことでなく、各役所の内部の空氣、それから官業勞働者の方の鐵道なり或は遞信なりの空氣も聽いて、あれだけの點に政府としてはやつた譯であります、其の點に付て將來非常に生活が困ると云ふことになれば、又それも考へなければならぬ、一方に於て政府は出來るだけの誠意と以て物をやつて居ると云ふことを御考へ願ひたいと思ふのであります
生産管理の問題に付て御言及になりましたが、此の點に付きましては度々申して居る通りでありまして、又改めて此處に御説明するのも、餘り繰返すことになるから止めますが、大體此の點に付きましては聯合國側の趣旨も明瞭となつて居ることでありまして、是は我々當局としましては今までの聲明を變更する考へを持ちませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=19
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020・赤松勇
○赤松委員 私は更に二つの點に於て御質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=20
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021・逢澤寛
○逢澤委員長 赤松君、今豫算總會の方で要求して居るさうですがあなたの厚生大臣に對する質問はまだ長いのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=21
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022・赤松勇
○赤松委員 長いです、私は引續いて答へて戴かなければ困る、豫算總會の方を後廻しにしてもやつて戴きたい、本法は憲法に次ぐ重大な問題です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=22
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023・逢澤寛
○逢澤委員長 それではどうぞ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=23
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024・赤松勇
○赤松委員 私は二つの點に於て更に厚生大臣に御質問致します、それは厚生大臣は官吏のみに爭議を禁止した、其の根據は一體何處にあるかと云ふことです
更にもう一つ御尋ねしたいことは、若しさう云ふ抽象的な理由を以ちまして生産管理を認めないと云ふならば、曾て東京都に於きまして業務管理を行つたのであります、其の場合に當時の松井都長官は、之を業務管理の宣示事件と稱しました、勞働組合側は之を業務管理と稱して居つたのであります果してあの業務管理が一體公共の利害の何處に反したのであるか、更に又あの業務管理自身が都の行政或は其の他の運營に貢献しこそすれ、一體何處に大きな障碍を殘したのであるか、其の二つの點に付て御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=24
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025・河合良成
○河合國務大臣 第一の點の官吏のみなぜ禁止したかと云ふことは官吏の爭議行爲と云ふことは、直ちに國務の遂行に支障を來しますさうして國家の政務と云ふものは國民一般に對しまして、最も公共性の深い、公共の福祉と云ふ上に於て最も重大な關聯を持つて居ると思ひますが故に、官吏のみを禁止した譯であります──官吏のみではありませぬで、官吏及び官吏に準ずべき者と云ふことであります
それから第二點の東京都の業務管理は、政府に於ては業務管理とは認めて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=25
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026・赤松勇
○赤松委員 然らば御尋ねしますが、ああ云ふ形態を業務管理と認めないならば、ああ云ふ形態に於ける業務と云ふよりも、勞働組合運動形態を是認になりますかと云ふ點が一つ、もう一つは官公吏に對する爭議制限は、國務の遂行に障碍になるからと云ふ點でありますけれども、此の點が厚生大臣と我々勞働階級との間の認識の相違なんであります、厚生大臣はあなたの下に厚生省の職員組合があるのを御存じでせう、商工省の中に商工組合、農林省の中に農林省の職員組合があるのを御存じでせう一體日本の現在の官公吏が理由もなく、又何の必要もなく突然「ストライキ」行爲に出ると云ふやうな不信頼を、厚生大臣自ら自分達の子供に對してさう云ふ風に御考へであるか、私は日本の官公吏位從順な官公吏はないと思ふ、自分の子供に對して、是は不良になるからと云ふので、前以て不良の「レッテル」を自分の子供に貼るのと同樣である、なぜもつと自分の部下を信頼しないのであるか、其の官公吏を含めた勞働階級に對する所の根本的な信頼感がなくて、どうして國家の再建が出來るのであるか、人を見れば泥棒と思へと云ふ諺がありますが、政府の大臣自らが道議の頽廢を來して居ると思ふ、此處にも官吏諸君が居るが一體それらの人が國家の利害も考へず、理由もなく、不必要に誰が「ストライキ」をやるやうな馬鹿があるか、なぜもつと自分の部下を、日本の勞働階級を信頼しないのであるか、厚生大臣がさう云ふ御認識を持たれ、さう云ふ認識の上に立つて勞動政策をおやりになる限りに於きましては、社會秩序を作る爲にさう云ふ法案を作つたと云ふが、結果に於ては社會秩序を政府自らが破壊するやうなことになる、一體河合厚生大臣は、自分の子供に對してどう云ふ御考へでありますか、信頼して居ると云ふことと爭議禁止の法律を作ると云ふこととは別個の問題であると云ふやうに御考へになるか、法律とは行動の規範であり、同時に又國民生活の集中的表現である、其の一片の形式的な法律に依つて人の心を動かせると思つて居るのか若しそんな風に考へて居るとすれば、何と云ふ今日の日本の官僚共は馬鹿野郎なんであらう、日本人が日本人をなぜ信頼しない、官僚の形式的な觀念で、そうして此の未曾有の大國難が突破出來るか、自らの子供を信頼し得ないやうな者が、どうして自らを信頼することが出來るか、私は若し飽くまで河合厚生大臣が、自分の子供に對して信頼が持てなければ、河合厚生大臣自らが國務を遂行することが不可能ではないか、辭職を要求する(笑聲)──あつははとは何だ君なんか勞働階級に對してどう思つて居るのだ、あつははぢやないよ、そんな不眞面目な態度があるか、辭職を要求すると云ふことがなぜそんなに惡いか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=26
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027・逢澤寛
○逢澤委員長 赤松君に注意します、質問を繼續して下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=27
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028・赤松勇
○赤松委員 以上のことに付て御答へ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=28
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029・河合良成
○河合國務大臣 東京都の此の間起きました事柄を業務管理とは思はないと申しましたけれども、それが業務管理でないから、其の他の運動が總て善いとか惡いとか云ふ問題とは別に考へなくちやならないと思ひます、さう云ふことが官廳として善いか惡いか、それは其の問題に付て個々に判斷すべきことでありまして、唯私は業務管理とは政府は認めて居らないと云ふ點だけを申上げたのでありまして、それ以外のことに付てそれはどう云ふ運動の形態を執るのかと云ふことは、其の時の具體的の問題に付て、どう云ふことであつたかと云ふことがもつと明細に分らなくては、唯抽象的にさう云ふ形態を將來認めるか認めないかと云ふことは論斷を下せないと思ひます
もう一つ御答へ致します、第二の問題の點は、部下を信頼して居るか、居るならば、其の部下が拘束されるやうな法律を設けることはどうかと云ふ意味の御質問と拜承致しますが、私は只今私の部下に全幅の信頼を置いて居ります、さうして其の部下に依つて、厚生省の仕事が圓滿に行つて居ることを感謝して居ります、併しながら今の時、今の瞬間だけを捉へて、國家の法律をどうすると云ふことには行かぬのだと思ひます、やはり國に、斯う云ふ一つの途を付けやうではないか、斯う云ふ風の範圍内に於て勞働組合の健全な發達を圖らうではないかと云ふ一つの目標がありまして、其の目標に依つて法律を制定することでありまして、決して今の部下に對してどうの斯うのと云ふ考へとは、全く別の見地に基いて居ることを御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=29
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030・赤松勇
○赤松委員 問題を明瞭にする爲に、私は先に業管の問題から入つて行きます、さうして只今の官公吏に對する爭議行爲の禁止に對しましては、是は又後程質問致しますが、私が今厚生大臣に御尋ね致しまして、厚生大臣は斯う云ふ御答辯でした、あの業管が宜いか惡いかと云ふことを抽象的に論ずることは出來ぬ、語るに落ちた、抽象的に宜いか惡いかと云ふことは生管一般に對してどうする、さうでせう、あの業管は、業管の具體的な内容を見なければ、宜いか惡いかと云ふことの判斷が出來ない出來ないとすれば、政府自らが、抽象的に生管がいけないと云ふことをなぜ規定するか、御質問します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=30
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031・河合良成
○河合國務大臣 あの時の事情は結局生産管理と云ふものなり、業務管理と云ふものは、どう云ふ點にどう入つて來たものを生産管理と認めるか、どう云ふ點にどう入つて來たものを業務管理と認めるかと云ふ、一つの政府の見る所はありますので、其の線に入つて來ないから、是は業務管理でないと云ふ風に認定したと云ふことに御承知願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=31
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032・赤松勇
○赤松委員 然らば續いて御質問致しますが、生産管理、業務管理の具體的な内容、特にそれを否認する理論的な根據、範疇、限界、さう云ふものに付て具體的に御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=32
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033・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御質問に御答へ致しますが、生産管理は、企業者の指揮、命令に反して行ふ行爲が生産管理と思ひます、だから此の前の東京都の生産管理が生産管理でないと申しまするのは、指揮命令系統に反して居ないのであつて、其の中で生産管理をやつて居るのだ、斯う言つて居りますから、それで生産管理の實體と認めない、斯う云ふ意味であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=33
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034・赤松勇
○赤松委員 事業主の指揮命令に反して行ふものが生産管理でありますか、さう云ふものを否認すると云ふのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=34
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035・吉武惠市
○吉武政府委員 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=35
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036・赤松勇
○赤松委員 是は又問題だ、然らば勞働者側、勞働組合側の意思に反してやつた場合はどんなものですか、それは否認しないのですか認めるのですか、事業主の命令系統に反するものを否認する、然らば勞働組合側、勞働者側の意思に反してやつた場合は認めるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=36
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037・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御尋ねは分りにくいのでありますが、詰り生産管理に付きましては、度々厚生大臣から答辯致しましたやうに……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=37
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038・赤松勇
○赤松委員 中心だけ言つて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=38
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039・吉武惠市
○吉武政府委員 承知しました──片一方に勞働權があると同時に、片一方に企業權がある、斯う云ふ譯ですね、お互ひの立場を尊重しながらやつて行く、さうします時に、其の企業權、其の經營を行ふ指揮命令を排してさうして勞働者が勝手にやると云ふことは詰り我々の言ふ生産管理になる、それでそれは宜しくない、斯う云ふ意味であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=39
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040・赤松勇
○赤松委員 さう致しますると、勞働權と企業權と云ふものの立場は、企業權の方が上位にあるのですね──更に私は其の點でもう一つ聽きたいのですが、若し上位にないとするならば、當然勞働者側からのさう云ふ生産管理の要求は又是は政府が否認しやうとしまいと、客觀的に見て正しいと云ふことになる、あなた達の御考へから言へば、企業主の命令系統に反するものは、政府の否認する生産管理だ、私は生産管理の意義はそこにあるのではないと思ふ、其の生産管理が、社會的國家的に見て國家、社會の福祉に或は生産に寄與し得るや否やと云ふ點から問題を決めて行かなくてはならぬ、あなたの言ふのは、企業家の指揮命令に反するものを、政府が否認する生産管理だと云ふことになりますならば、是は一つの新しい問題として私は取上げて見たいと思ふ、若しさう云ふ風な一方的な、企業家の封建的な、天降り的な、そこに批判と云ふもののない指揮命令と云ふものは絶對權だ、丁度曾ての我が國の天皇が持つて居られたやうな絶對權、其の絶對權と云ふものが行使せられ、それに反するものは全部政府の好ましからざる否認すべき生産管理だと云ふことになる、さうなると一體勞働權と云ふものは何處にあるのですか、團結權と云ふものは何處にあるか憲法に於て人民の權利義務と云ふものが規定され、所謂平等と云ふことが規定されて居りますが、其の憲法に反し、且つ「ポツダム」宣言に反すると思ふ、御答辯願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=40
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041・河合良成
○河合國務大臣 此の點は前々から私が何遍も申上げて居ります通りに、經營權と勞働權とは二本建になつて居ると云ふことであります、それで經營權と云ふものは、其の工場の生産なり何なりが指揮命令をして行かなければ纒まりは付かぬのですが、それは其の經營權の内容ですから、そこに入ることは勞働權としては宜しくないと云ふことなのです、此の點は明かだと思ふ、さうすると勞働權の内容と云ふものは、是は勞働者の團體を作り、それから爭議をやつても宜しい、さう云ふ所に團體を作つてはいかぬ、爭議をやつてはいかぬと云ふことになりますれば、是は經營者がこちらの分野に干渉することになる、是はいけませぬさう云ふ意味に於て對立的になりまして、決して經營權が上であつて、勞働權が下だと云ふ觀念では一つもありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=41
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042・赤松勇
○赤松委員 然らば吉武政府委員に御聽き致しますが、今の河合厚生大臣の御説明と、あなたの御説明とは違ふやうに思ふ、あなたの御説明に依れば、唯問題の焦點が指揮命令系統だけに存するのですね、生管認定の基準と云ふものが──何處までが生産管理であるか何處までが生産管理でないかと云ふことの認定の基準と云ふものが指揮命令系統だけに存すると云ふことになるのですが、其の點に關して是は政府一般の御解釋と考へて宜しうございますか、吉武政府委員から御答へ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=42
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043・吉武惠市
○吉武政府委員 只今厚生大臣から御答辯致しましたこととちつとも矛盾して居りませぬ、私の申しましたのは、企業權と勞働權とがあつて、それで企業權の内容として經營をして行く、其の經營の指揮命令を排して勞働者が勝手に其の生産をやり、經營をすると云ふことは宜くない、斯う云ふ意味であります、片一方の厚生大臣から言はれた勞働權の内容は、組合の團結權も認められて居り、而もそれに基いて主張し、團體交渉も出來る、さうして爭議權も認められて居り、爭議をやる上に於ては、此の爭議はどんなことでも宜いかと云ふことにはならないのであります、正當なる爭議行爲を認めて居る、正當でないものは認めない斯う云ふ意味であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=43
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044・赤松勇
○赤松委員 爭議行爲の正當と云ふのは一體どう云ふことですか、正當と云ふのはどんな「ストライキ」が正しくて、どんな「ストライキ」が正しくないと云ふのでありますか、更にもう一つ御聽きしたいことは、今日企業權と云ふものも勞働權と云ふものも、もつと言葉を換へて申せば、當該工場に於ける從業員全體の生産に對する發意權或は能動的な働き掛け、自發權、さう云ふものは多かれ少なかれ人事、經理、勞働、生産の問題に總て繋がつて居る、あなたの仰しやるやうに企業家のみの一方的の人事、經理生産と云ふものはあり得ない、多かれ少なかれそれは綜合的な有機的な關聯性を持つて居る、若しそれなしにやらうとするならば、それは本當に封建的な一方的な經營の仕方だと云ふことになる、あなたは何處の工場へでも行かれて御覧になれば分ると思ふ、一つの人事の問題を扱ふ場合でも、丁度鐵道省が今度の人事の問題で勞働組合に對して申入れをした、是は團體協約があるからないからと云ふので申入れをしたのではない、今日では總ての問題は勞働組合との相互ひの深い理解と信頼と合議の上でなければ成立たない、隨てあなたの仰しやるやうに企業權が天降りに來る、其の企業權の意思に對して、命令それ自身に對して反對した場合は企業權を侵犯するものだと云ふことでさう云ふ「ストライキ」なり或は生管なりは認めない、それからあなたのさつき仰しやつた生管の問題ともう一つ私が前に御尋ねした點を明瞭に御答へ願ひます、中心點だけで宜しい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=44
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045・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御意見は生産管理で私が申上げましたのと多少異つて居るのでありますが、一つの經營が勞働者の經營權に基くのと、もう一つ勞働權と云ひますか勞働者の意思が入つて相倶に一つの生産が行はれて行くと云ふことは御話の通りであります、隨て今日所得經營協議會等を設けて勞働者の意思を參畫せしめると云ふことが問題になる、而も政府としてはそれを否認して居ないのです、併しさうだからと云つて片一方の企業權を全然排除して其の經營を勞働者自らが勝手にやつて宜いと云ふことにはならないと思ひます、其の點を一つ御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=45
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046・赤松勇
○赤松委員 然らば斯う云ふ現象が起きた場合にどうなりますか、事業主が其の企業權に伴ふ當然の義務を遂行しないとすると企業權其のものは社會的に國家的に見て企業權其のものの本來の在り方と云ふものは消滅する、本質的に消滅しないまでも其の意味が非常に減少される、若しさう云ふものが絶對的な企業權を振廻して俺が企業の權利を持つて居る、經營の權利を持つて居るのだから生産「サボ」をやらうが、生産を停止しやうが、それは俺の自由だ、斯う云ふ場合が往々にあり得る、さう云ふ當然義務の伴ふ所の企業權を果し得ない場合、勞働權が其の義務を代行すると云ふことは決して私は非合法ぢやないと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=46
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047・吉武惠市
○吉武政府委員 其の點は御尤もな點があると思ひます、隨ひまして本會議に於ても厚生大臣及び商工大臣から現下に於て縱し生産「サボ」のやうなことがあるならば、政府としては愼重に精査して特別の方途を講ずる、斯う言つて居られますし、又さう云ふ方法を準備されて居るのであります、それは御尤もかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=47
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048・赤松勇
○赤松委員 それは資本家の生産「サボ」を對象とする取締をやると云ふのであつて、私はそれを言つて居るのではない、さう云ふ企業權に當然伴ふ所の義務を果し得ないものに對して、勞働權が其の義務を代行すると云ふことは決して非合法ではない、どうですあなたの御意見は……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=48
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049・吉武惠市
○吉武政府委員 さう云ふ場合はあらうかと云ひますけれども、併しそれも法的な根據なしに勝手に勞働者がやると云ふことは宜くないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=49
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050・赤松勇
○赤松委員 法的根據がないと仰しやるが、然らば生管を否認する法的根據と云ふのは何ですか、例へば當然義務を伴ふ企業權を果し得ない者に法的な根據があるのですか、ないでせう、それはないから政府の方に於て生産「サボ」に對しては特別な取締をする爲の方法を講じて居ると言ふのでせう、だから具體的に言へば現在の工場内に於ける勞資の關係は殆ど無政府状態である、そこであなた達が今仰しやつたやうに、上から天降り的に企業權の一方的指揮命令に依つてやるものは合法的である、それに從はないものは非合法である、其の判定の基準が企業家の企業權から出發して居る、其の點が我々と考へ方が違ふ、我々を以て言はしめますならば、當然現在の企業權と云ふものは、其處には生産をしなければならぬ、而も其の生産は自己の利益の爲に生産すると云ふのではなくて、國家社會の爲に生産をしなければならぬと云ふ所の意義が附與されて居る、其の意義を抹消して、又其の義務を代行しようとする勞働組合の生産意欲を取入れようとしない、さう云ふ企業權を合法的と認められるかどうか、それに對してあなたの方は積極的な取締の方法は講ずると言はれますが、さう云ふものが存在する、而も勞働者が企業權の義務を代行しようとして所謂生産の爲に生産を管理する──管理の方法も色々あります、例へば人事經理を管理する場合もあり得る、或は人事だけを管理する場合もある或は經理だけを管理する場合もある、何れに致しましても、さう云ふ生産意欲に基いて物を一つでも二つでも多く造らうとして努力しようとする勞働組合の生産意欲之を非合法だと云ふ風に片付けられることは間違ひではないか、私は勞働權と企業權は双方の理解と信頼の上に立つて双方の義務を其處に果さなければ──勞資協議會の問題は別問題として、當然現段階に於ける勞資の在り方はさうでなければならぬ、あなたの仰しやるやうに唯企業權だけの一方的な指揮命令に依つて、それに反するものは非合法であると云ふやうな判定の基準は私は根本的に誤つて居ると思ふ、隨て東京都の業管、あれは私を以て言はしめますればあれは生産「サボ」とは違ひますが、自己の勞働權に伴ふ所の義務を今までの「ストライキ」のやうに抛擲しない、其の義務をより社會的に生かす意味に於てああ云ふ運動經過に入つた、それを厚生大臣は業管と認めないと仰しやるならば、然らばあれを一つの宣示事件として、あの程度のものならば合法的なものとして御認めになるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=50
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051・吉武惠市
○吉武政府委員 私の説明が足りないと見えまして御諒解戴けないのでありますが、今の生産管理は企業者の指揮、命令に反して、生産管理すると云ふのですから、誰かそれを經營する者が居る譯です其の居るのを管理すると云ふことは、其の經營する者を排除して、代つてやると云ふことである、それですから其の生産を行ふ者の意思に反して排除して、勞働者が勝手にやることが生産管理である、それは企業權を犯すことになつて宜くない、斯う云ふ意味なんです企業者の指揮命令に反する行爲は一切いかぬとは言つて居ないのです、「ストライキ」なるものは是は正當なる爭議行爲と認められて居る、仕事をせよと云つても、それが正當の要求が通らない時には已むを得ず「ストライキ」に出るさう云ふものまでいかぬと言つて居る譯ではない、經營權を全然排除してそれに代ると云ふことがいけない、斯う云ふ意味です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=51
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052・赤松勇
○赤松委員 然らば御尋ねしますが、先程私は正田製作所の實例を擧げて御尋ねしたのですが、正田製作所に於ける工場閉鎖、それに對しまして勞働者は生産管理をやつて、現在生産を續け、而も平生の三倍の能率を擧げて居る、此の生産管理に對してはどう思はれますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=52
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053・吉武惠市
○吉武政府委員 あれの眞相はまだはつきり致して居りませぬが、新聞で見た所に依りますと、ああ云ふ風に出られる事業主の態度は私必ずしも宜いとは思ひませぬ、けれどもさうだからと云つて生産管理をやること、生産管理としては宜しくないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=53
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054・赤松勇
○赤松委員 是は重大な問題です然らばあなたは、其の正田と云ふ人が資本の食逃げをやつて餘所へ逃亡した、行方が分らない、其の場合に生産管理をせず、生産をせずに正田と云ふ行方不明になつた人の歸るのを待つて居れと云ふのですか、其の場合に仕事をすることがいけない、仕事する場合に生産管理になり得る根據は、あなたがさつき仰しやつたやうに、企業權と勞働權の兩方合議の上で行ふ場合に是は合法的であると仰しやる、所が是は一方が逃げてしまつた、而も生産をしなければならぬ企業の義務と云ふものを一方的に抛擲して居る、其の場合にあなたは其の勞働者側に其の生産に携はつてはならないと云ふことならば、一體生産をせずに、其の儘ぼんやり何時歸るとも分らぬ其の事業主を待つて居ると云ふことになる、さう云ふことをあなたは正しいと仰しやるか、さうなると今正田製作所に於きまして、四百人の從業員諸君が事業主に逃げられても、刻下の急務としては一品一物も澤山生産することが必要であるさう云ふ生産意欲で一生懸命に生産して居ることがいけないとあなたは仰しやるのですか、いけないと仰しやるならば、一體勞働者はどうなるのですか、さう云ふ「ロック・アウト」を喰ひ資本の食逃げのあつた時に、取殘された勞働者が尚ほ生産を續けると云ふことがいけないのか、是は重大な問題ですよ、あなたは簡單に御答辯になつたかも知れませぬが重大な問題ですよ、資本家が資本の食逃げのやつて工場を「ロック・アウト」して當然企業權の義務を果さない故に勞働組合側、從業員が、其の資本家の義務を代行して、一品一物でも國家の爲に生産しなければならぬとつ云て働いて居る、汗と油で働いて居る從業員のやつて居ることが惡いと云ふことになると重大な問題ですよ、斯う云ふ生産管理こそ政府自らが奬勵してやらせるべきぢやないか
〔「だから調整法が出來たのだ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=54
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055・河合良成
○河合國務大臣 大體是は所有權を土臺にして、さう云ふ經營權と勞働權と云ふものとの二つの關係でありますから、それは全體の秩序の問題で、それを一々の場合のそれが生産増強になつたから是は善いとか、是は惡いとか云ふ問題ではない、二つの眞中に線を引いて、經營權を侵犯してはならなぬ、又勞働權を侵犯してはならぬと云ふ建前が建前ですから、それが個個の場合に、是は善かつたとか、惡かつたとか云ふことはあつてもそれは問題ではない、全體に一つの線を引く、是は國家の秩序ですそれで今の問題も、資本家側が「サボ」だとか、或はそこに拙いことがあつたとか云ふ問題に對しては是は又特別な法律を出す準備をして居ります、それに依つて「サボ」はいかぬぢやないかと斯うやつて行かう、片方だけやるのでなく、片方もやらうと云ふのであります(「ひやひや」拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=55
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056・赤松勇
○赤松委員 でありますから我が黨を代表しまして松岡駒吉氏が本會議に於きまして、生産管理をさう云ふ法理論的な企業權、勞働權の抽象的の意味に於て、之を一律に律すべきではない、生産管理の具體的な内容、それを十分見て、さうして國家の爲め社會の爲に一品一物でも澤山生産しようとしてさうして逃げて居る、或は生産「サボ」をやつて居る其の資本家を激勵しながら、生産意欲を百「パーセント」發揮せんとして居る勞働者に對して、政府は非合法的だと一方的な抽象的な解釋に依つて否認するが、さう云ふものは特別に保護を加へると云ふ方法が必要ではないか、而もさう云ふ現象は東京都に於ける正田製作所だけの現象ではない、全國各地に、愛知縣に於きましても生産管理をやりましたのが、既に十三件以上に上つて居ります、而も其の十三件以上の生産管理をやりましたそれ等の總てが、一つとして工場を潰しては居ない、總て生産管理後は三倍五倍の能率を擧げて居る、それを今も「ひやひや」と云ふ手が鳴つたのでありますけれども、決して「ひやひや」所ではない、大事な問題である、でありますから抽象的な概念的な一方的な法理論的な解釋を以てそれを否定することは出來ない、是は厚生大臣も屡屡言はれた、抽象的にさう云ふ問題を律することは出來ないと言ひながら、自ら抽象的な法理論的な立場からそれを律して居られる、でありますから本會議に於て我が黨を代表して松岡駒吉君が質問したやうに、個々の生管の具體的な内容に於て、政府自身が保護すべきは保護し、取締るべきは取締ると云ふやうにすることが、勞働運動をして健全なる發達をせしめる所以だと思ふ、河合厚生大臣の御答辯を求めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=56
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057・河合良成
○河合國務大臣 此の二つの間に一線を劃するにあらずんば、日本の經濟の秩序は保てないと云ふ所信で居ります、それで一々の場合に付きまして、斯う云ふことがあつた、ああ云ふことがあつたと云ふことは、それはあるかも知れませぬ、併しそれは國家の大方針とは別であります、其の他の點は意見の相違だと云ふ風に御承知を願ひます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=57
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058・赤松勇
○赤松委員 只今厚生大臣から個個の場合は例外でありまして、之を政府が社會秩序を保持すると云ふ一點から一つの「アウト・ライン」を引いて、さうしてそれに對する認定をするのだ、斯う云ふ御答辯でありましたが、私は其の態度は根本的に誤つて居ると思ふ、現在の勞働組合の實際の在り方と云ふものを具體的に把握して居られないから、さう云ふ抽象的な、而も現在の勞働運動の實態と凡そ懸離れた間違つた結論が生れて來ると思ふのであります、第一勞働者が資本家に代つて一品一物でも澤山生産して社會國家に寄與すると云ふことがなぜ惡いか、成程それが「イタリア」に於けるやうな工場占領、ああ云ふやうな一つの政治的意味を持つて、而もそれが全國的な形に於て現はれて來る場合に於ては或は當然それは取締りの對象になるでせう、併し生産管理の取締りに於きまして、厚生省は唯一箇の抽象的な規定を置かれて居るだけであつて、具體的事實がない、厚生大臣自らが頭の、所謂觀念の中に於て勝手に枠を作つて置いて、資本家は此の程度まで進出しろ、勞働者は此の程度まで進出しろと云ふ「アウト・ライン」を引かれることは、是は少くとも一國の政治を掌られる所の厚生大臣としては遺憾千萬な態度方針であると私は思ふのであります、隨ひまして個々の事實と云ふものがそれが集中的に見現されて、そこに一個の國全體としての規定が生れて來る、即ち政府當局の認定と云ふものが生れて來るのでありますが、其の個々の具體的な事實が何處でどう云ふ風に生管の爲に企業權が侵害されたのか、厚生省當局は生管に對する具體的統計を持つて居られませうから其の具體的な統計の中から斯う云ふことの爲に企業權が侵犯された、或は此の程度の數字に於ては生産管理が立派になされて居ると云ふ所の具體的な數字を示して御説明を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=58
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059・河合良成
○河合國務大臣 問題に依りましては具體的事實から法律をどうするとか、認定、解釋はどうすると云ふ風な政府の方針の決まることもありますけれども、又問題に依りましては具體的事實と云ふことと何も關係なく、一つの信念に基いて國家の方針の立つこともあります、それ故に具體的事實がどうだから此の問題は斯うだと云ふ風に直ちに考ふべきものでもなからうと思ひます、勿論生産管理の状況と云ふものに付ては出來るだけ詳細に政府も相當其の事實を存じて居ります、併し此の事實が斯うだから結論は斯うだと言う風に行くべきものかどうかと云ふことは非常に疑問であると思ふのであります、それで大體此の問題は憲法草案の下に於て、日本の民主主義と云ふものは斯う云ふ程度に於て斯うなるのだと云ふ一つの大きな「ライン」がありまして、其の「ライン」に基いて所有權と云ふものと勞働權と云ふものの對立を認めて居るのは御存知の通りであります、勿論現行憲法ではそれ以上になつて居ると思ひますが、さう云ふ基本的觀念に於て、此の問題は生産管理はいかぬのだと云ふことで、國情が非常に變つて、さう云ふ問題に付て差別を設けなくても宜いと云ふ、さう云ふ建前の憲法であり、國であるならば其の時にはさう云ふ考へ方もあるが、今我我の目標にして居るのはさうでない、さう云ふ風に御諒承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=59
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060・赤松勇
○赤松委員 私は此の問題は極めて重要な問題である、而も我が國の生産再開に取りまして非常に大きな意義を持つものでありますから商工大臣の御出席を要求致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=60
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061・逢澤寛
○逢澤委員長 厚生大臣に對する質疑は終りましたか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=61
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062・赤松勇
○赤松委員 いやまだ終りませぬ商工大臣の來られるまで續行致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=62
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063・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは商工大臣の來られるまで續行して戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=63
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064・赤松勇
○赤松委員 生産管理の問題に對する私の質疑は尚ほ留保して置きます
更に私は現在の官公吏の生活状態竝にそれに對する政府の對策、斯う云ふことに付きまして一應質問して見たいと思ふのであります現に東京都に於ける實體調査は、昭和二十年九月を一〇〇と致しまして、各月に於ける指數は、昭和二十年九月が一〇〇、十月が九八十一月が一〇八、十二月が一〇二二十一年度になりまして一月が一六九、二月が一六一、三月が一七九と云ふ指數になつて居りまして戰前の物價指數よりは御承知の如く五十倍に上つて居るのであります、尚ほ厚生省の御調べになりました標準世帶收入支出調査でありますが、是は昭和二十一年三月を基準として居る、之に依りますならば、勞務省の支出は飮食費が五百三十九圓十七錢、其の他が二百五十二圓十五錢でありまして、計七百九十一圓三十二錢であります所が之に對しまして收入がどの程度であるかと申しますならば、收入が四百三十圓三十一錢、此の不足は三百六十一圓一錢であります更に俸給生活者はどうであるかと申しますならば──是は特に官公吏諸君の生活實體でありますが、俸給生活者の飮食費は五百四十一圓十三錢、其の他が二百九十三圓二十九錢、計八百三十四圓四十二錢になつて居ります、之に對して收入が四百三十四圓、此の不足四百圓四十二錢、實に收入の倍の不足を示して居るのであります、尚ほ私は生活保護法に對する質問の材料と致しまして、實は名古屋地方、或は東京都の大森、本郷其の他に於きまして、東京帝國大學の經學部の學生諸君と共に軍人遺家族の實態調査を行ひました、之に依りまして商工省の調査が如何に杜撰極まるものであるかと云ふことが明瞭になつたのであります所が此の一家の働く支柱を失つた軍人遺家族の家庭ですら非常に生活費が嵩んで居るのであります、況んや今日官公吏と致しまして一應の社會的態裁を具へ、或は又人間として生活を致します時に、果して現状の儘で宜いかどうか、特に私は去る日に新聞を見たのでありますけれども、其の中に實に慄然とするやうな事實が書かれて居るのであります、即ち是は厚生大臣も特に御考慮を願ひたいと思ふのでありますが、國務の遂行に障碍があると云ふので、特に「ストライキ」の面に於きましては、一般勞働階級から特別扱をして貰はなければならないやうな、非常に形の上では優遇されて居りまする所の官公吏諸君が、今日生活面に於ては餓死か鬪爭かと云ふ言葉がぴつたり當嵌まるのであります、それは此の新聞に依りますれば、「今日は路傍の靴磨き、賣食ひのねたも果てた」斯う云ふ記事が載つて居ります、さうして今無理をして出勤をして居る者も働く氣力なく、へとへとに參つて、衣類殘らずはたいて、路傍の靴磨きに出て居る者もある、一日五十圓になるので恥も外聞も云つて居られない、或は又國鐵方面に於ては缺勤が六〇%、農林省方面に於ては失調の母を抱へ、死にさうな赤ん坊を抱へて官公吏諸君は其の日其の日を辛うじて生きて居ると云ふやうな實情であるのであります、又巡査の如きは、上役に手柄を讓つてさうして僅かなお小遣ひを貰つて居ると云ふやうなことも新聞に載つて居るのであります、特に東京都の物價、別けても家屋維持費が非常に生活費の中で高い割合を占めて居ると云ふ一つの事實でありますが、本郷區に於ける或る「アパート」の如きは、三疊一間で五十二圓と云ふ篦棒な間代を取つて居る事實があるのであります、私は今日特に此の日本民族が危機存亡の決定的な歴史的な運命の岐路に當面致しまして、官公吏諸君及び公益事業、或は基礎産業に從事する所の從業員諸君に特に奮起をして戴かなければ、當面の危機を突破すると云ふことは、爾く困難なことに屬すると思ふのであります、所が斯う云ふ生活實情で果して厚生大臣が期待されるやうな國務の遂行、或は生産の増強が出來るかどうか、農林省に於きましては買出の時間を一箇月に十日與へて居ると云ふやうなことも新聞に載つて居るのでありますが、三十日一ぱい全身全靈を打込んで働いて戴いても、尚ほ背負ひ切れない程樣々な國家的な仕事が山積して居るのであります、所が一箇月三分の一休んで買出に行かなければならぬ、而も農林省自身が其の買出の時間を與へて居ると云ふ、さう云ふ現状の下に於きまして、果して官公吏及び公益事業或は基礎産業に於ける全勞働者諸君をして安んじて國務遂行、或は産業再開の爲に動員することが可能であるかどうか、成程政府の過ぐる引上に依りまして、若干官公吏の收入が殖えたのでありますけれども、或る新聞の投書に依りますれば、政府は六月には五割増俸を實現すると云ひ、七月にも給與の大幅引上を行つて、恰も我々の要求に副ふが如き態度に出て來た、所が政府の此の七月案を見ると、依然上に厚く下に薄く、尚ほ最低生活は何等保障されて居ない、我々はこんなことでは到底滿足は出來ない斯う云ふやうな記事も載つて居るのであります、斯樣な官公吏諸君及び公益事業の從業員諸君を現實に殆ど半餓死状態のやうな状態に放擲して置いて、さうして「ストライキ」を先づ抑壓しなければならぬと云ふので「ストライキ」抑壓の爲の策を圖ると云ふことは、先程申しました通り、例へば胃潰瘍の病人に砂利を與へて後で榮養食を與へてやると云ふのと何等變りないと思ふのであります、之に付きましては、政府當局は本會議を通じ、或は委員會を通じて、是等勞働者に對しては生活保護法を制定することに依つて其の給與に關しては萬全を期する方針であると言はれたのであるけれども、我我を以て言はしむるならば、先づ第一に是等の半餓死状態にある人人に對して生活の保障──勿論我我は贅澤なことは申しませぬ、最小限度の生活の保障を致して、然る後に於て又勞働階級に要求すべきものを要求して貰ふ、さう云ふ筋の通つた政治を行つて戴かなければ、到底勞働階級は現内閣を信頼して産業再開の爲に全身全魂を打込むことは出來ないのであります、隨て先づ是等の諸君に對する生活の保護に關する具體的な措置を執られ、本勞働關係調整法案は先程私が申しました通り、日本の民主主義化に取つて有害な法案でありまするが故に、此の法案は延期と云ふより寧ろ即時撤廢すべきである、さうして私はそれ等の勞働者諸君の民族的な、階級的な本能を十分に御信頼下さいまして、先づそれ等の諸君に對して、安心して政府を信頼して働けると云ふ所の具體的な生活條件を與へて戴くことが先決問題ではないかと思ふのであります、今や全國の官公吏諸君、又公益事業に從事する諸君、或は基礎産業に從事する從業員諸君が、本案と關聯して自分達の待遇問題に關し、特に曾て勞働組合法を抹殺致しました膳國務大臣の登場に依つて非常に不安心、不信頼の氣持を持つて居る現實の事實から歸納して、特に厚生大臣は其の場逃れの答辯でなく、是等の勞働者諸君に對し十分安心の出來るやうな具體的な御答辯を御願ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=64
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065・河合良成
○河合國務大臣 官吏の給與俸給問題を中心にしての只今の御質問に御答へ致します、官吏の生活は洵に氣の毒な状態にあることはもう私共も御同感でありまして、先程六月に於いては五割、七月からはそれより少し増して彼此れ六割増加位になつて居ると思ひますが、それを決定して目下、實施して居る所であります、此の點に付きましては、勿論是で十分滿足に行つたとは思ひませぬが、此の點に付きまして國家の財政の状態もありますれば、日本の現在の状態も御承知の通りの状態でございますから、色々官吏の職員組合、或は先程申しました遞信省、運輸省あたりの勞働組合とも色々協議をしまして、先づ此の邊で一應問題を決めた譯であります、不滿足ではありませうが、大體の御諒承を得て居る恰好でありまして、百「パーセント」と云ふ譯に行かないのは甚だ殘念の至りであります、唯御承知の通り、只今日本の一番問題は、食糧初め物の不足と云ふことはもう疑ひないことであります、丁度例へて見ますると、一枚の蒲團を何人かで引張り合つて寢て居るやうなものであります、こちらが引張ればこちらが不足し、こちらが引張ればこちらで不足し足らぬと云ふことで、是はもう言ふまでもなく皆さん御存じの状態でありまして、國家全體としてやはり「バランス」を考へて行きませぬと又おとなしく此の中に寢て呉れさうしないとお互ひに引張合ひつこをしては仕方がないではないかと云ふことで、どうも是は少いもので着て行かなければならぬ、是は何處に原因があるか、何處がどうだと云ふことは一切拔きにしまして、現實の事實はさうであります、さうであるから百「パーセント」思ふやうに行かぬと云ふことは、實はさう云ふ理由に基くのであります、それで問題の中心は如何にして物を多くするか、食糧問題は幸ひにして聯合國からの好意に依りまして、まあどうやら危機は凌げるかと云ふ所まで行きました私なども昨日歸りまして罐詰を「アメリカ」から貰ひましたので洵に衷心から斯う云ふ結構なものは食つたことはないと云ふので本當に家族一同揃つて感謝を捧げたやうな次第であります、斯う云ふ状態を何とかして回復しよう幸ひ天候も宜しい、米の問題も是ならばと云ふことで稍稍愁眉を開くやうになりました、勞働者諸君もどうやら段々無理な「ストライキ」もなくなりました、それで物は段々均霑して來る、改まる所に收まつて來る、一種の不安が段々收まつて來ると云ふやうな傾向にあることを實は最近我々も稍稍安心を持つて居るやうな次第であります、是はまだ併し油斷はなりませぬ、是から所謂擬制資本の削除と云ふやうな問題から關聯しまして又色んなことも赴きませう、特に勞働問題の性格も多少變つて來はせぬかと云ふ心配も持つて居ります、又是から先色んな困難な問題がありませうが、それを兎も角も打退けて敗戰後我々は起ち上つて行かなければならぬと云ふことでありますから、状態が良くなれば出來るだけのことはやる、それから苦しい中でも是は最も弱點と見る所ではやはり補強工作をして行くと云ふ考へで、大體やつて居る次第であります、其の點はどうか深く御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=65
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066・逢澤寛
○逢澤委員長 赤松君に申上げますが、商工大臣はもう直ぐ見えますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=66
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067・赤松勇
○赤松委員 尚ほ私は此の官公吏其の他の諸君の生活問題に付きまして屡屡質問したい點がありますが、是は我が黨の各同士が尚ほ後に立つて詳細に厚生大臣の所信を質すと存じまするので、私は其の點に關しましては此の程度で打切つて置きます、併しながら只今の厚生大臣の御答辨は極めて不滿足なのでありまして、さう云ふ不滿足な答辯では到底現在の官公吏及び其の他の方々が政府を信頼して安心して産業再開或は國務の遂行に精進すると云ふことは不可能であると思ふのであります
尚ほ私は次に御尋ね致したいのは、本法案の第二の定義、規定に於ける問題でありまするが、一體政府は公共事業或は公益事業、是は抽象的な非常に概念的な言葉でありますが、公共或は公益と云ふ言葉の持つ本質、所謂公共或は公益と云ふものを認定の基準と致しまして、それを一體何處に置くものであるか、それを御尋ね致しまして、引續き此の問題に付きまして御質問して見たいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=67
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068・河合良成
○河合國務大臣 公益公共と云ふことは是は廣く使はれて居る用語でありまして、社會通念として大體決つて居ると思ひまするが、併しながら法律としましては成べく明瞭にする必要があると思ひますので、第八條に於て「この法律において公益事業とは、左の事業であつて、公衆の日常生活に缺くことのできないものをいふ」と云ふ風に、公益事業の範圍を限定して居ると云ふことであります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=68
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069・赤松勇
○赤松委員 然らば御尋ね致しまするが、只今厚生大臣の御定義から行きますると、三の公益事業に於ける定義、即ち其の公益性に於て茲に羅列してありまするが、茲に羅列してありまする是等の事業は、特に其の中に於きまして醫療衞生と云ふ風なものも擧げられて居るのでありまするが、一體公共公益の只今の御説明のそれから言ひまして、石炭事業等と比較致しまして、何故醫療や衞生などをその事業と言ふのであるか、國民生活に取つて缺くべからざるものを公共と言ひ、公益と言ふならば、石炭事業、其の他の基礎産業は一體どうなるのであるか、此の點に付きまして更に厚生大臣に御尋ねして見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=69
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070・河合良成
○河合國務大臣 此の公益事業と云ふのは公衆の日常生活に缺くことの出來ないと云ふことが條件になつて居りますので、石炭も勿論重要な産業でありまするけれども毎日の──何と申しますか「デーリーライフ」と云ふことにならうと思ひまするから、さうすれば先づ醫療とか公衆衞生の問題、例へば汲取りのやうな問題とか、さう云ふものの方が日常生活にぴんと來るのであります、さう云ふ意味で限定して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=70
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071・赤松勇
○赤松委員 然らば再度御尋ね致しまするが、若しさうであると致しますと、其の規定の中には尚ほ必要に應じて中央勞働委員會を通じて其の範疇に指定することが出來ると云ふことになつて居るのでありまするが、此の石炭或は鐵鋼其の他の所謂國の産業の動脈をなす所の基礎産業に對しまして、將來之を是等の制限事項の中には入れないと云ふことの御回答は戴けるでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=71
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072・河合良成
○河合國務大臣 追加指定に付いては第二項を御覽の通り「業務の停廢が國民經濟を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする」とありますが業務の停廢が國民經濟を著しく阻害すると云ふことを一つの要件にして居りますが、大體は是は拔打爭議の禁止でありまして爭議自體の禁止ではありませぬから、拔打されては困ると云ふことが問題の中心になると考へます、そこで例へば食糧の配給問題の如き、是は食糧の統制をやらない普段の時には、食糧の配給と云ふ仕事は假に拔打爭議が起つてもさう國民の日常生活には影響せぬと思ひますけれども、併しながら今日のやうな配給で而も各戸に貯藏食糧を持たぬと云ふやうな時には拔打をやられると困ると云ふやうなことなどがあります、さう云ふ問題などが今取上げる必要があると見れば取上げると云ふのでありまして、茲に法律に書きました一から四と云ふものは、是は繼續的にさう云ふ性質のものだと云ふことで、暫定的に又必要な場合には食糧の配給の如きものも考へると云ふ意味で此の第二項は書いて居るのであります、鐵、石炭の問題に付ては只今はさう云ふ考へは持ちませぬ、或は鐵、石炭以外のものでも國家の情勢如何に依つてどう云ふ状態にならぬとも限りませぬので、先のことに付きましては今ここで斯うやらぬとかやるとか申上げるべき限りではないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=72
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073・赤松勇
○赤松委員 さう致しますならば好むと好まざるとに拘らず、此の規定は結局基礎産業全體に適用される危險性があるのであります、固より政府當局の御考へに從ひますならば、爭議禁止ではなくて、爭議の制限であるが故に敢て勞働者の團結權、罷業權を否認するものではないと仰しやるでありませうけれども、私共長い間、二十年間勞働運動に携つて參りました者に取つて見ますならば、事實罷業權と云ふものは、是は概念的な存在ではないのであります、具體的な而もそれはいつ何日「ストライキ」をやると云ふことを豫定し、企畫し、さう云ふやうに發生するものではないのであります、即ち一方の意思が他方の意思と合意しない場合、又言換へまするならば相手側の不必要なる刺戟に依りまして、是は刹那的に發生するものである、而も罷業權の根柢をなすものは、飽くまでも其の罷業と云ふ權利を通して、勞働者側の客觀的妥當なる要求を實現すると云ふ所にあるのであります、隨ひまして若し禁止はしてはないが、制限はした、隨て勞働者の、勞働組合法に依つて認められて居る所の罷業權には無關係なものであると云ふやうな御認識を政府は御持ちになつて居ると致しますならば、私は其の認識は實際の實體に即さないものでありまして、全く笑止千萬な認識であると言はざるを得ないのであります、又假にそれを十分認識しながら、意識的にさう云ふことを仰しやられると致しますならば、私は此の法案の中に内包される所の所謂來るべき社會的危機に對應しての勞資休戰の臭ひを嗅がざるを得ないのであります、一體三十日の爭議制限期間を置いておいて、それで罷業權を認めて居るのだと云ふやうな考へ方が妥當性を持つて居るかどうかと云ふ點であります、一體是等の公益事業と稱せられ、更に又國民生活に缺ぐべからざるものと云ふやうな抽象的な概念的な規定から行きますと、恐らく徹底的な社會的危機發生の瞬間に於きましては、之を廣く基礎産業に適用されることも亦當然豫想されるのであります、隨ひまして此の法案に依る所の爭議制限の規定は、明白に勞働組合法に依つて規定されて居る所の勞働者の罷業權を否認するものでありますが故に、私共は此の規定に對しまして絶對に反對せざるを得ないのであります、其の點に關しまして更に厚生大臣の御認識を御伺ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=73
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074・河合良成
○河合國務大臣 公衆の日常の生活を維持させて、之を保つて行くと云ふことは、是は憲法に認められました、我々の生存上にも非常に重要なことでありまして、之をやはり公益上の最も尖端的なものと考へて居る次第でありまするから、それに拔打爭議をやられては非常に困る、斯う云ふ事態を發生することは公益上宜しくない、又國民の公共の福祉を増進して行くと云ふ國家の目的にも副はないと云ふことで、拔打爭議の制限と云ふことになつて居りまして、是は度々申上げました通り立法の理由は十分あると信じて居る次第であります
それから第二項の問題に付きまして、一般の基礎産業にも及ぶ危險があるぢやないかと云ふ御話でありましたが、是は第二項の業務の停廢が國民經濟を著しく阻害すると云ふ事態を起すことは、さう總ての問題に起る譯でもありませぬ、又公衆の日常生活を著しく危くすると云ふことも度々起る譯ではありませぬ、而もそれには勞働委員會の議を經、而も其の議に付きましては細かい規定がありまして、各代表者のそれぞれ過半數の同意が要すると云ふ風に餘程限定的になつて居ります、御心配のやうな事態は起らぬもとの考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=74
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075・赤松勇
○赤松委員 其の點に關しましても私は更に凡ゆる角度から、又幾多の論據から御質問申上げたいと思ふのでありますが、此の點に關しましては我が黨の諸先輩に依つて更に後程詳細に論ぜられると思ひまするので、私の之に關する質問は其の程度に止めて置きます
更に次に御伺ひしたいことは、勞働關係調整法に依りますならば爭議の發生した場合には直ちに勞働委員會或は行政官廳に届出ることになつて居るのであります、其の發生した場合とは如何なる場合を指して言ふのであるか「ストライキ」とか「ゼネスト」とか云ふことは至極明瞭でありますけれども、勞働爭議の定義の中には、勞働爭議とは爭議の發生した場合或は發生の虞ある状態と規定して居るのであります、一體、發生の虞ある場合に於ては届出るのであるが、發生の虞ある例へば茲に一千人の從業員を包容する工場がありまして、其の一千人の從業員を包括する勞働組合に於て、例へば幹部十名が爭議の問題に關しまして協議した場合、或は又要求を從業員に提示を致しまして要求の統一或は爭議行爲に移るかどうかと云ふことの協議をなす、さう云つた場合に於ては、之を虞ある場合と云ふ風に取つても取れないことはないのであります、又虞ある場合でないと云ふ風に取ることも出來るのであります、此の規定は極めて瞹昧でありまして、私は此の點に關しましてももつと詳細な規定──勿論私は本案に對しては絶對に反對であります、隨て修正意見ではないのであります、反對の立場から斯う云ふ各條項に於きましても斯くの如き種々なる缺點と短所を持つて居ると云ふ例を擧げまして、厚生大臣に御答辯を願つて居るのであります、一體發生の虞あると云ふやうな抽象的な規定に依つて勞働者の重大なる罷業權の制限を行ふと云ふが如き或は又それを届出でなければならないと云ふ風に法律に於て強要すると云ふが如きは斷じて許されない所のやり方であると思ひまするが故に此の點に付きまして御答辯を御願ひしたい
尚ほもう一つの點でありますが此の法案に依りますならば爭議の調停行爲は届出の手續の完了を以て始められるとも何とも書いて居ないのであります、勞働委員會の職權に依つて開始する場合もあるし或は行政官廳當事者一方の申請に依つて同樣に手續完了を示すことになつて居るのであります、一體斯う云ふ點に於きましても厚生大臣は、斯う云ふ規定が妥當性を持つて居るか否かと云ふ點に付きまして御答辯を煩はしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=75
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076・河合良成
○河合國務大臣 爭議發生の虞あると云ふことを書きましたのは、爭議でなくてももう殆ど爭議の一歩手前と云ふやうな場合がやはりありますので、それで虞あると云ふ言葉以外に何かもつとはつきりした言葉がないかと色々心膽を碎いて考へて見たのでありますけれども、どうも適當な言葉がなくてやはり一般の法律用語に從つた次第であります、其の決定は勿論最終はそれぞれ決定する機關で決定することでありますから、それをやはり包含しなくちや困ると云ふ實體に付ては包含しなくちや困るのですけれども、用語に付きましては色々考へたが、やはり仕方がないので虞あると云ふことにしたのであります、其の點御諒承を願ひたいと思ひます
それから届出調停の始まる時期のことに付きましては政府委員から御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=76
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077・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御質問にありましたやうに、爭議行爲の起る虞のあるものまで届出させますと、非常に其の間に難かしい場合があらうかと思ひますので、第九條で爭議行爲が發生した時だけしか要求して居りませぬ、其の爭議行爲と云ふのは前にありますやうに「ストライキ」とか怠業、作業所閉鎖等第七條で明瞭にして居ります、御諒承願ひます
それから調停の方の手續に付きましては、調停の所で、大體任意調停に付きましては双方から申請をし、或は勞働協約に決めて居る時には一方から申請があり決議した時は宜しいと云ふ風にして居りまして、それ以上の細かい點はもう必要ないぢやないかと思ひますと云ふのは餘り此の手續を面倒に致しますと却て御困りの場合がありはしないか、即ち迅速且つ便宜にと云ふ趣旨を考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=77
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078・逢澤寛
○逢澤委員長 赤松君に申上げますが、商工大臣が見えて居りますから、商工大臣に對する質疑を繼續して下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=78
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079・赤松勇
○赤松委員 一寸今のことで……さう致しますと、例へば從業員大會、若しくは勞働組合の總會、或は從業員大會に於て選出せる從業員大會執行委員會、或は勞働組合執行委員會に於て要求書を作り、要求書を事業主側に提出致しました時を以て爭議行爲と見做すものであるか、それとも完全なる生産活動を停止した場合を指して言ふのであるか、或は又それ等の兩者でないと致しますならば、一體爭議行爲とは何を指して言ふのであるかと云ふことの、明確なる御答辯を御願ひして置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=79
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080・吉武惠市
○吉武政府委員 御尤もであります、其の點を考へまして今の唯要求事項を大會で決めるとか、何とか云ふことは爭議行爲とは見て居りませぬ、それは若し其の意見を決めて事業主に提出をして、其の間に意見の不一致があればそれは所謂紛議と云つて居る、詰り爭議に入りますけれども、併し爭議行爲と云ふのは其の中でここの七條に例示して居りますやうに、怠業に入るとか或は同盟罷業に入るとか、作業所閉鎖に入る、さう云ふやうな正常な運營を阻害する行爲に入つた時には爭議行爲と言つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=80
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081・赤松勇
○赤松委員 然らば從業員大會若くは勞働組合の總會に於て、或は役員會に於て要求書を作成し、それを事業主側に提出致しまして會社側に生産を阻害しない、尚ほ生産を續けながら事業主と交渉を續ける際はそれを指して爭議行爲と呼ばないのであるかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=81
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082・吉武惠市
○吉武政府委員 其のやうに折衝を續けられて居る間は爭議行爲と見ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=82
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083・赤松勇
○赤松委員 然らば再度御尋ねしたいのでありますが、其の折衝を續ける過程に於きまして、例へば一日數回の若くは數十回の從業員大會、若くは勞働組合の總會を開く、其の場合には恐らく生産は出來ないのでありませう、其の要求事項若くは交渉の經緯に付きまして或は交渉の仕方に付きまして、或は交渉戰術其のものに付きまして偶偶協議が行はれる、さう云ふ場合にそれを同盟罷業と間違へられ或は生産の完全な機能停止と云ふ風に間違へられる場合が往々あります、一體さう云ふ場合を指して爭議と云ふのかどうかと云ふ點に付きましても明確にして置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=83
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084・吉武惠市
○吉武政府委員 就業時間中に大會を開かれることは餘り好ましくないと思ひますけれども、併しそれをやつたからと云つて直ぐそれが爭議行爲とは考へて居りませぬ併しながら今御話のあるやうに就業時間中に何回も大會を開いてやると云ふことになりますと、それはやはり正常の運行を阻害する行爲であると考へますので、さうなれば爭議行爲と認めざるを得ないかと思ひます、其の具體的のやり方、行動を見ないと一寸此處で申し兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=84
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085・赤松勇
○赤松委員 是は非常に瞹昧な御答辯でありまして、工場内に於きまして集會を屡屡持つことは好ましくない、斯う云ふ御答辯でありますけれども、實際問題と致しまして自分達の生活を左右する所の重大なる要求を討議する爲に、而もそれが民主的に統御されまして全體の納得の行くやうに十分なる討議が行はれます時に、一體屡屡集會を開くことは困る或は又屡屡集會を開くことは正常なる運行を妨げるものであると云ふやうな認定を下すと云ふ御答辯でありましたけれども、さう致しますならば勞働組合なり、從業員なりが自ら集會をする權利がなくなると思ふのであります、さう云ふ集會をする所の權利、合法的なる權利が所謂勞働委員會に依る所の、或は又本法案に規定される所の爭議制限の條項に依つて、即ち爭議行爲制限の條項に集會の自由が蹂躙されると致しますならば、我々勞働階級の集會の自由と云ふものは是は根本的に否定されるやうな結果になると思ふのであります、其の點に關しまして更に政府の意のある所を御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=85
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086・吉武惠市
○吉武政府委員 さう云ふ集會をすることは自由であります、併し出來得れば就業時間外にやることが望ましい譯であります、就業時間中にやられたら直ぐいかぬとは申しませぬが、出來得れば就業時間外にやられることが望ましい、斯う云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=86
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087・赤松勇
○赤松委員 是は吉武政府委員は何と考へて居られるか知りませぬが、望ましくないとか、好ましくないとか云ふやうな瞹昧な御言葉は極力避けて戴きたいと思ふのであります、其の理由は吉武政府委員個人の主觀的の御説明であるならば我々は言を費して、此の貴重なる委員會に於て政府當局に御尋ねする必要はありませぬ、少くとも本委員會に於きまする所の政府當局の御答辯が、其の儘今後法の運營の上に具體的に生かされなければならぬと云ふ意味から申しまして、私は個人の考へでなく、厚生省、政府全體としての明確なる御答辯を煩はしたいと思ふのであります、今吉武政府委員は、集會をすることは自由ではある、集會の自由を抑壓するものではない、斯う云ふことを仰しやられますが言葉の上で集會の自由を認めても實際は就業時間中にさう云ふ集會を屡屡持つことは好ましくないと仰しやるならば、好ましくないと云ふ言葉をもつと強めて申しますならば、やつてはならない──やつて貰ひたくないと云ふやうな法律言葉はありませぬ、やつて貰ひたくない、好ましくないと云ふやうな馬鹿げたことは、どうしてさう云ふ取締りなり或は法的な基準と云ふものが示されるか、或は好ましくない云ふことはやつてはならないと云ふ風に解釋しても宜いと思ふのでありますが、若し其の解釋が妥當なりとしますならば就業中に集會をやることは許しても宜い、當然與へられた權利だ、集會は認める、併し集會はやつてはいかぬと云ふことになるのであります、實際問題と致しまして、是は吉武政府委員は未だ爭議を御指導なさつた御經驗がありませぬから御分りではありませぬが、實際問題として我々が工場の中に於きまして一つの爭議を指導する場合に於きましても、成るべくならば就業時間外にやりたいのであります、けれども既得の生活條件を左右するやうな重大な爭議を致します時に、今は就業時間だから一つ晩になつてゆつくり集つて相談しようではないか、或は今就業時間中だから一つ朝の出勤時間前に五時か四時にどこかに集つてやらうではないか、さう云ふ馬鹿げたことは、事實上出來るものではないのであります、隨ひまして、工場内に於ける所の集會の自由は、當然我々は公然の憲法上の權利として確保して居りまするが故に、私共は其の爭議行爲の爲めでなく要求書を出しまして、さうして當事者と其の要求貫徹のことに付きまして種々相談する場合に、當時工場内に於て從業員大會、若くは勞働組合の總會を繼續的に開くと云ふことは有り得るし、又開かなければ到底全體の意のある要求書を作ることは出來ないのであります、隨ひまして、若しもそれすらもいかぬと云ふことになりますならば、我々は集會の自由もありませぬし、同時に又要求書一つ作成することも出來ない、又政府が望んで居られるやうな、當事者との間に圓滿なる爭議の解決、即ち圓滿なる要求の合理的な解決は出來ないと思ひます、更に此の點に付きまして御答辯を御願ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=87
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088・吉武惠市
○吉武政府委員 どう云ふ風な點を豫想されて居るか存じませぬが、私が申しましたのは、從業員大會と云ふ風に全部が集つてやられる點を豫想したのでありまするが、組合として色々幹部の方が御相談になるやうなことは、是は就業時間中におやりになることも已むを得ないことではないかと私は思つて居ります、それから今の從業員大會のやうなものも、是は爭議行爲として爭議に入つてやられるものを實際私は言つて居るのではないのであります、爭議でない場合には、出來るならば就業時間外が望ましいと云ふことを言つたのであります、それは全然違法であると云ふ譯ではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=88
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089・赤松勇
○赤松委員 所が爭議に實際に入ると、一つの要求書として纒めてそれを出して當事者の回答を聽く爲に集會を開いて、それに對する返事を聽く、さう云ふことで、若しも一週間も十日も續いて、其の爲に生産の運行を著しく阻害するやうな結果を招來した場合に、政府はそれに對して非合法と認められるかどうか、斯う云ふ私の質問であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=89
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090・吉武惠市
○吉武政府委員 それは非合法とは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=90
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091・赤松勇
○赤松委員 非合法でないと云ふことは、反對に考へますればそれは自由である、斯う云ふことでございますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=91
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092・吉武惠市
○吉武政府委員 ええ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=92
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093・赤松勇
○赤松委員 分りました然らば商工大臣に御尋ねしたいのでありますが、先程から實は……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=93
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094・逢澤寛
○逢澤委員長 一寸赤松君に御諮り致します、もう厚生省に對するものは濟みましたか、もう一時ですから、片方に御讓り願ひたいと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=94
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095・赤松勇
○赤松委員 それでは繼續して申します──商工大臣に御尋ねしたいと思ひます點は、實は生産管理の問題であります、此の點に付きましては未だ政府部内に於きましても十分なる統一的な見解がないやうに見受けられるのであります若し厚生大臣なり、商工大臣なりが、さうではなく政府は明瞭なるそれに對する統一的な見解を持つて居ると云ふならば、洵に結構であると思ふのであります、實は過日も全官公吏職員組合の代表及び交通同盟の代表、其の他の勞働組合の代表と植原國務大臣が御會ひになりました際に、生産増強の爲めの、即ち具體的に生産が一時的でなく、繼續的に生産が増強出來るやうな生産管理ならば、之を認めると云ふことを從業員代表の前で明瞭に言つて居られるのであります、之に對しまして河合厚生大臣はさう云ふ具體的な個々の生産管理に於て、如何に生産能率を上げ、非常に好ましい理想的な生産運行が行はれて居つたとしても、國としては、國全體の立場から言つて、之を抽象的な法理論の建前から、所謂企業權、所有權の神聖なる擁護と云ふ建前から言つて、之に對しては一線を引かなければならぬと云ふやうな御見解を持つて居られるのであります、私は先程も一つの例を擧げたのでありますが、例へば或る一つの工場に於きまして、其の工場の事業主が著しく其の生産の運行を妨げ、具體的に申しますならば手持資材の値上り其の他を狙ひまして、意識的に生産の「サボタージュ」をやる、其の場合は企業權に伴ふ當然の義務を遂行して居ないと云ふことになるのであります、それに對しまして勞働者が昔のやうに直ぐに工場外に出まして、さうして赤旗を立てて「デモンストレーション」をやる、或は之を輿論に愬へる爲に、廣汎なる大衆運動を組織すると云ふのではなく、反對に、如何に其の責が資本家にあるとは言へ自分達が今生産の運行を停止するならば、國が要求して居る、日本人全體が要求して居る所の生産に重大な支障を來すが故に、我々はそれ等の資本家が爲し得ない所の國家的な義務を、資本家に代つて果さうと云ふ、さう云ふ正しい生産意欲から生産管理を行ひまする時に、商工大臣は斯樣な生産管理に對しては、之を寧ろ取締の對象として、或は非合法的のものとして、單に觀念の上で否定するのではなく、寧ろ其の生産を助長するやうな合理的對策を御考へになつて居るかどうかと云ふ點を御伺ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=95
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096・星島二郎
○星島國務大臣 赤松君の外の色色な御質問を承らないので、私或は取違へて御返事するかも知れませぬ、何れ機會を得まして十分伺つて御答辯を致したいと思ひます實は今日已むを得ないことがありまして、午前の豫算總會に出ませぬで、今豫算總會が始まりまして進歩黨の犬養君に午後のことを約束して居りますので、簡單に一言だけ答辯されて戴きまして、御無禮することを御許しを願ひたいと思ひます
只今の御尋ねの要點だけに付て考へますのに、或は交通の如き「ストライキ」するよりも、一時ちょっと生産管理の形に於て交通を續けると云ふ場合に生産管理が便利だと云ふやうなことは、當初生産管理の問題が起つた當時に、個人と致しましては植原君も私も或はここに合法性があるかなあと云ふやうなことも考へたことがあります、其の後色々研究の結果一歩目先に一寸便宜なやうなことに囚はれて、日本の全産業に稽へますと是はいかない、其の他惡い面は非常に澤山あるのでありますから、一つ一つの例を取つて、是は宜いやうに見えるがどうだと云ふやうなことはいかぬ、全閣僚餘程研究した結果先般聲明を發したやうな結論に達したのでありまして理論的には初めから惡いと思ひましたけれども、個々のことに付きましては、生産管理も或はと云ふやうな點もありまして、多少瞹昧なやうなことを發表したこともあるかも知れませぬ、率直に申しますれば、私は最初の時は交通事業の如きは、と云ふやうなことを考へたことがあります、又商工省關係のことで、小さな仕事で生産管理で旨く行つて居ることも聞いたことがあります、併しそれを少し堀下げて考へますと、全日本の産業を考へる時に、生産増強にならぬと云ふ結論に達したのでありまして、今日我々と致しましては全面的に是は先般内閣として發表致しました聲明通りに考へて居る次第でございます、其の點御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=96
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097・赤松勇
○赤松委員 實は此の點に關しまして更に私は詳細に質問したいのでありますが、商工大臣もさう云ふ御意向ならば、私は商工大臣に對する質問を更に保留して置きたいと思ひます、尚ほ一言商工大臣に御願ひして置きたいことは、實は配給の問題であります、配給問題と中小商工業者の問題で御話したいのでありますが、是も保留して置きます、唯一言現在の食糧營團其の他の配給機構及び配給のやり方が如何に勤勞者家族をして非常に重大なる負擔になつて居るかと云ふ點であります、是は私の感違ひかも知れませぬが、感違ひであるならば後程私は訂正致しますが、食糧營團の利益と云ふものは一箇年一億圓以上に上ると云ふ風に私は聞いて居ります、何れに致しましても食糧營團に限らず、或は野菜の配給に致しましても其の他の配給に致しましても、あれは戰時中の惡例でありまして、即ち自由主義を以て任じられて居る所の商工大臣の意に反する所のやり方ではないかと思ふのであります而も厖大なる利潤を占め手數料を占めて居る所の、それ等の機構に於きまして今尚ほ弊害がある、隣組若しくは個人々々が行列をして殆ど半日或は一日潰すと云ふやうなことは、如何に今日勤勞者家庭の大きな負擔になつて居るかと云ふことは、商工大臣自ら政黨出身でありますから、さう云ふ點に於きましては十分に御關心を持つて居られまするし、又周知の事實であると思ふのであります、一體食糧營團と致しましても、國民に對する日常の配給機構が、是程失業者が充滿して居る時期に於きましてなぜあの戰爭中に於きますやうな非差別的な配給方針を續けなければならないのであるか、是は單に今日勤勞者の家庭と言はず恐らく此の爲にどれだけ家庭に於ける婦人が泣かされて居るか知れないのであります、勿論上流の家庭に於ては數人の女中を置いて、其の女中が之を擔任するが故に直接家庭の大きな負擔にならないでせうけれども、澤山の子供を抱へて夫を工場に送り出した後の勤勞者の家庭としては、斯う云ふ篦棒な戰時中のやり方が今尚ほ續いて居ると云ふことに對しては非常に不滿と不平とを持つて居るのであります、私は此のやり方に對しまして商工大臣は──是は希望でありますけれども、戰前のやうな状態に還元して、勤勞婦人の家庭に於ける負擔を少しでも少くし、全家庭擧げて生産再開に獻身出來るやうな、さう云ふ態勢を整へ、具體的な方策を御考へになつて居るかどうかと云ふ點を御質問したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=97
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098・星島二郎
○星島國務大臣 赤松君の御質問は御趣旨に於ては私も同感であります、唯食糧營團其の他配給機構のことは商工省の所管でありませぬが、私一國務大臣として考へますのに、是は眞に一つ直さなければならぬけれども、事變前の複雜なる中間搾取或は非常な共食ひと云ふやうなものは一つ改めまして私は或る程度まで今日の隣組は能く發達して來たと思ひますから、之を一つ指導して消費組合化するやうな風にすれば、旨い所へ導いて行けるだらうと考へますので、商工省の現在の行政に於きましても、統制の除れるものは出來るだけ除つて行く、所が中々今日物資不足でありまして、需給調整が旨く行きませぬから、まだまだ遺憾乍ら相當統制を加へぬと、ともすれば、横流れ或は少數者の方面へ流れてしまふと云ふことがありますので、已むなく或る程度の統制は必要と致しますけれども、御趣旨のやうに早くここに落して行きたい、それには寧ろ民間が目覺めて來て、自主的なる隣組、町會等が消費組合等を自主的に作つて行くことが解決の要點だと思ひます、政府がああせい、斯うせいと云ふことは勿論末であらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=98
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099・赤松勇
○赤松委員 一言だけ御希望申上げて置きます、基本的な方向としては消費組合洵に結構であります併し左樣なことを言つて居れませぬ、各家庭に於きましては奔命に疲れて居るのでありますから、食糧營團が昔のやうに配達する者を置いて、配達出來ないと云ふ理由はないと思ふ、どう云ふ點から言つても、配達することが出來ないと云ふ馬鹿なことはないと思ふ我々男ですからさう云ふ點は比較的無關心ですが、家庭に於て、實際に主婦がどれだけ困つて居るかと云ふことは、やつて貰ひたいと云ふことより寧ろ全部怨嗟の聲です、斯う云ふ聲を政黨出身であり特にさう云ふ點に於きまして、關心を持たれて居ります商工大臣、唯官僚的にずつと命令を下すと云ふ意味でなく、食糧營團なんかに對しましても十分注意を喚起して戴きまして、一日も速かに家庭の主婦の過重な負擔が解除されますやう御努力下さらんことを特に御願ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=99
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100・逢澤寛
○逢澤委員長 本日は此の位に致しまして次會は明後三十一日午前十時から開會致します、本日は是で散會致します
午後一時二十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00619460729&spkNum=100
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