1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
勞働關係調整法案(政府提出)
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昭和二十一年七月三十一日(水曜日)午前十時四十分開議
出席委員
委員長 逢澤寛君
理事 江崎眞澄君 理事 瀧澤脩作君
理事 岡部得三君 理事 古賀喜太郎君
理事 伊藤卯四郎君
飯國壯三郎君 花月純誠君
杉田馨子君 原侑君
村上勇君 山田善三君
山本勝市君 川崎秀二君
橘直治君 長尾達生君
辻井民之助君 土井直作君
山下榮二君 東隆君
木下榮君 原國君
藤井正男男 柏原義則君
磯田正則君
同月三十日委員疋田敏男君辭任に付其の補闕として磯田正則君を議長に於て選定した
同月三十一日委員柏原義則君辭任に付其の補闕として中野四郎君を議長に於て選定した
出席國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
内務大臣 木村清一君
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
内務事務官 谷川昇君
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生參與官 佐藤久雄君
厚生事務官 吉武惠市君
商工事務官 吉田悌二郎君
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本日の會議に付した議案
勞働關係調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=0
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001・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは是から會議を始めます、此の際報告することがあります、本委員會も既に五回の回數を重ねて居るのでありまするが、尚ほ質問通告者が相當多數あるのであります、そこで今朝理事會を開きまして申合せを致しました、其の申合せ事項を茲に御報告申上げます、大體本議案は八月五日位までに切上げたいと云ふ要望があります、隨ひまして今後は、本日と來月の二日と、五日と此の三回を開くと致しましても、時間が午前午後を通じましても十五時間位しかないのであります、隨ひまして御一人の發言時間を大體一時間位に御願ひしたい、斯う云ふ理事會の申合せがあるのであります、之を御承認願ひたいと思ひます、隨ひまして政府の答辯も亦親切丁寧であると云ふことは勿論でありますが、成たけ要領を得た簡單なる御答辯を願ひたいと存ずるのであります、以上御報告申上げます、通告順に依りまして磯田正則君に發言を許します──磯田正則君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=1
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002・磯田正則
○磯田委員 私は途中で入りましたので前の發言者が御發言なされた内容等に付きましても、詳しく承知致して居りませぬけれども、只今委員長の御注意もありましたので努めて簡單に御質疑を申上げたいと思ひますが、多少前の發言者と重復する點があるかも知れませぬが、此の點御諒承を願ひたいと思ひます
第一に新憲法第二十六條は「勤勞者の團結する權利及び團體交渉その他の團體行動をする權利は、これを保障する。」とあります、又金森國務大臣は去る十八日の憲法委員會に於きまして、怠業の如きも權利の内容中に含まれて居るものと思ふと云ふ御答辯がありました、更に此の條文が多少社會を刺戟するやうなことがあつても自制し合つて行きたいと斯う申されて居ります、然るに本法に對しまして厚生大臣は爭議權に最小限度の制限を加へるものである、當事者に最小限度の制限を加へるものであると云ふ御答辯をなされて居りますが、此の金森國務大臣と厚生大臣との御見解の中に、御答辯の中に、何だか割り切れない大きな矛盾が隱されて居るやうに思はれるのでありますが、特に第八條、第三十八條は新憲法第二十六條に相反して居ると思ひますが、此の點厚生大臣の御意見を承りたいと思ひます
第二に本法案が前議會の翼賛議員との約束の下に立案されたと云ふ所に、勞資の摩擦を豫期し、資本家を擁護する爲に急がれて居るものとも解される點がありますが、此の點如何でありませうか、尚ほ大藏大臣は財閥が解體したと云つて居りますが、成程表面はさう云ふ形になつて居るかも知れませぬけれども、實情は中々さうでないやうであります、隨て資本家の爲に不利となるべき場合を豫想して本法案が作られて居ると思はれるやうな點があるのであります、例へば産業整理や軍需補償の打切の場合、多くの失業者が出ることを豫想して、本法案の通過を急いで居るのではないか、又厚生大臣は本法案は法制審議會に掛け、中央勞働委員會にも委託して、勞働組合の代表を集めて意見を申述べたと言はれて居りまするが、此の集めた範圍はどの程度でありまするか、或は又政府は將來外國資本の入ることを豫想致しまして、此の場合外國資本に迷惑を掛けてはならないと云ふ氣持から少し勞働者には苛酷だ、無理だとは思ひながらも、無理を意識して本法を急速通過せしめようとするのではないか、斯樣にも考へられますが、此の點を御伺ひ致したいと思ひます
次に去る七月十日の對日理事會の席上米國代表の「アチソン」大使は、日本の勞働運動は最初から順調に發展した、我々も知つて居るやうに一部の戰鬪的な少數分子が此の新しい勞働組合を間違つた方向に導かうとし勞働者を戰鬪的な一政黨の思ひの儘に動かさうとした、日本の勞働運動の大きな危險はともすれば極端な利己的分子の勢力に捲込まれてしまふ虞があることだと言明せられて居りますが、政府も亦此の「アチソン」大使の憂へて居ると同樣に、共産黨及び「フアッシスト」を中心とする政黨に勞働組合が利用せられることを恐れて本法の提案を急いで、特に第八條に列記の事業が共産黨や「フアッシスト」を中心とする政黨に利用されることを防止する爲に第八條と共に第三十八條、第三十七條を定めたと思ひまするが、若しさうであれば政府は此の際大膽率直に此の點を全國の勤勞大衆に納得の行くやうに説明して貰ひたい、説明すべきではないか、今日までの厚生大臣の説明では遺憾ながら勤勞大衆の空氣を滿足させることは出來ない、寧ろ惡化させるのみであると思はれるのであります、又對日理事會に於きまして、發展途上にある日本の勞働組合が一政黨の思ひの儘に動かされることの危險を警戒して居る以上、再建途上にあります日本、特に今漸く劃期的な勞働組合を與へられて、敗戰日本に唯一つの民主日本建設に貢獻し得る力を持つて居る此の勞働組合が、まだ完全な發展を見ぬうちに一部の煽動的な分子の爲に間違つた方向に進むことは全國勞働者の爲にも、日本の將來の爲にも遺憾至極のことでありまして、此のことが聯合軍に對して惡印象を與へることを考慮して、此の際政府も、又勞働組合も、勞働組合を操縱して居る所の政黨も、日本再建と云ふ大きな襟度から黨勢擴張に組合運動を利用することを抛棄して、米國の勞働組合のやうに、政黨に關係のない勞働組合を作り上げることに協力して貰ふやう、政府は此の際大膽率直に之に對する手を打つ考へがあるかどうか、而して一部煽動分子が組合に加入することを禁止すると云ふことを本法に織込む意思があるかどうか、其の點を御伺ひ致したいと思ひます、實際問題と致しまして、現在一部政黨の煽動分子が入つた組合運動は、其の結果に於きまして非常に惡い結果を見て居ると云ふ現状であります、現に新聞紙の報道する所に依りますれば、九州の炭坑に於ては勞働組合が二つの政黨を中心とするものと、他のものとの三つの場合に分裂しまして、常に黨勢擴張の爲に勢力爭ひをなし、増炭に大きな影響を及ぼして居るが如き、好き實例であるのであります
次に、本法の目的が勞働爭議を豫防し、又は解決するにあることは申すまでもありませぬが、本來勞働爭議は何も物好きや洒落に起す者はありませぬので、結局は食へないから起すのであります、敗戰と云ふ苦い體驗を厭やと云ふ程味はつて居る勤勞大衆は戰爭中に或は産業報國會或は勞務報國會の美名の下に繋がれて、心身共に戰爭の犧牲に甘んじてやつて來た勤勞大衆であります、食へさへすれば決して勞働爭議などを起す理由がないのでありまするが、日本再建に全國勤勞大衆の擔ふ産業興隆の役割が如何に重大であるかを承知して居りながらも、而も尚且つ爭議を起すのは食へないからであると云ふことになるのであります、そこに過激分子も附込んで來ると云ふやうな結果になるのであります、政府は本法を以て勞働爭議を豫防し、解決すると言つて居りまするが、法律だけでは到底腹は太らないのであります、法律だけでは爭議の豫防も解決も到底出來るものではないのであります、要は食はせることであります、然るに最近政府は特殊産業にのみ加配米を殘しまして、其の他の産業に從事する勤勞者から加配米を剥ぎ取つて、腹を減らす政策を執らうとして居ることは、政府自體爭議激發の種を播いて居るのではないか、斯うして本法は彈壓法なりと勤勞者が呼ぶ結果になつたのではないか、政府は爭議根絶の一方法として速かに一般産業に從事する勤勞者にも加配米を復活する意思があるかどうか、是は特に商工大臣關係だと思ひましたが、通告漏れでありまして、御見えがありませぬので、厚生大臣の御考への程度で結構でありますから御答辯を戴きたいと思ひます
次に、私は本法案の内容に付て少しく御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=2
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003・逢澤寛
○逢澤委員長 磯田君に一寸御注意致します、成たけ一問一答の形でおやりになつた方が能く分りはしないかと思ひます、餘り數が多いと答辯の方も……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=3
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004・磯田正則
○磯田委員 時間の御注意もありましたので、一應申上げて置いて、「メモ」して戴いて御答辯下さればそれで結構であります
次に本法の第一條より第六條までは勞働組合法第一條、第十條、第十一條、第十二條、第十四條、第十五條等に依つて十分であり、茲に總則として改めて條文化することは物を故らに複雜化することになるから、是だけを一纏めにして簡單なものを一箇條だけ作れば結構だと思ひます、斯う云ふ點に付きましては如何なる御考へでありませうか
次は、第七條の爭議行爲の解決に於て、私は政府と根本的に意見を異にするものであります、勞働組合が同盟罷業、怠業をやる場合は最後の最後であつて、又之を行つた爲に一時的には總ての生産の停止と云ふ結果を招くに違ひないけれども、之に依つて勞働者の地位の向上が與へられ、其の結果として勞働能率が却て從前に比べて向上するものであることを、色々の實例から承知致して居るのであります、隨て爭議行爲を以て「業務の正常な運營を阻害するもの」と斷定することはどうかと思ふのであります、此の言葉は單に資本家とか、官僚とかの一方的から見た場合のみの言葉で公平な言葉とは申されない、そこで勤勞大衆の反感を買つたものであるから、本條文からは此の言葉を抹消して、「之に對抗する行爲を云ふ」と打切られるのが宜しいのではないか
次に第八條の「公益事業」と云ふ言葉は、戰爭中の産業報國會、勞務報國會と同じやうな響と含みとを持つやうな氣がするのであります、大東亞戰爭に於て産報、勞報と云ふ美名の下に騙されて參りました勤勞大衆は、今又「公益事業」と云ふ言葉の中に丸め込まれようとして居るのでありまして、之を極度に惧れて居る勤勞大衆には同情しなければなりませぬ、今政府は第八條の一項一號、二號、三號、四號の從業者を公益事業と云ふ枠の中に入れて、第十八條、第三十七條を適用して、是等の人達が組織する勞働組合の力を弱體化しようとして居るやうに見えるのであります、又事實上第八條は是等の人々の勞働組合運動を禁止するにも等しいのであり、此の結果起つて來る色々複雜な問題を私共は却て惧れるのであります、勞働者は第八條を戰爭中の官僚と軍閥が取つて來た勞働者への罠と云ふことを思出して、之を又陷穽と直感して居ることは事實であります、又第八條第二項では、中央勞働委員會の決議に依つて、公益事業を指定するとされてありますが中央勞働委員會の構成が最大委員數を二十一人と致しますれば、勞働者の委員は七人で、あと十四人の委員は官僚と資本家を擁護する委員であつて、政府に都合の惡いものは、何時でも自由勝手に公益事業に指定し得る仕組になつて居る所に、本條文の魔術性があるやうに思はれます
更に第三章の調停全文、特に第十八條、第十九條、第五章爭議行爲の制限禁止の第三十七條を併せ考へますならば、公益事業と指定されたものは常に資本家と官僚の味方に依つて、爭議行爲の出來ない中に有耶無耶に一切が丸められて行く虞があるやうに思はれます是では勞働組合法の第一條は完全に抹殺されたことになりまして、殊に罷業を致しまする權利は大福に制限せられまして、勞働組合法の生命は、茲では骨拔きにされたことになるのであります、斯くの如き理由から、勤勞大衆は反對するものではありますまいか、此の點に付きまして厚生大臣の御意見を承りたいのであります
次は第九條の爭議行爲の發生の問題でありまするが、是は頗る明瞭の如く見えまして實は不明瞭であると思ひます、政府はどの程度を以て爭議行爲の發生と見るのであるが、是は實に重大であります、故に第三十七條にも第十八條にも關係があり、更に第二十九條の罰金に大關係がありまするが、勞働組合と勞働委員會と官廳との間に爭議行爲の食違ひが起つた場合に必ず彈壓と云ふ言葉が飛出して來るのでありますが、此の點は如何に御考へでありまするか
次は第八條の公益事業に指定された勞働組合には爭議をして貰ひたくない、又拔打ち的の爭議は困ると云ふのでありまするが、厚生大臣は此の際是等の關係の勞働組合は悉く勞働協約を必ず締結することにされる御考へがあるかどうか
それから十一條に於て「斡旋員候補者は、學識經驗を有する者で、この章の規定に基いて勞働爭議の解決につき援助を與へることが出來る者」とありまするが、此の學識經驗のある者と云ふ言葉は常に官僚陣の常套語として、所謂專賣語でありまして、而も第八條の勞働委員會が斡旋員候補者を委囑する方法が不明瞭である爲に、一層此の學識經驗と云ふ瞹昧な文字の中には勞働委員會の官僚化、斡旋員候補者の官僚化の臭ひがするのであります、是は勞働委員會の構成が私の知る範圍では今日まで官僚の獨善的選定方法で勞働組合から非難を浴びて居ることでも分るのでありまするが、今後勞働者側の代表が眞の勞働者の代表の立場から民主的に選ばれたと致しましても、資本家側の代表は依然として商工經濟會の形態の中から選ばれ、第三者の選定は官僚陣の情實關係から選ばれることは幾多の今までの實例が證明して居るのであります、此の誤られた人選から構成された勞働委員會に依つて、果して公正な斡旋員が選定されるとは考へられないのであります、政府は此の缺陷をどのやうにして補ふことが出來るのであるか、又斡旋員の委囑方法を具體的に何故明示しないのであるか、斡旋員の人員も不明でありまするが、其の人員はどうして定めるのであるか、又第十二條には勞働委員會の會長が斡旋員名簿に記されて居る者の中から指名するとあるから、相當數の候補者の中から幾名かを指名するものと思ひますが、ここにも會長が情實的に又資本家側に同情的に色彩の付いた斡旋員のみを偏して指名する場合をも考慮に入れなくてはならないと思ふのであります、此の弊害は何を以て防止することが出來るのでありますか、又第十四條の如きは洵に瞹昧でありまして、第十四條の如き場合の、次に起つて來る行動はどうするのであるか、以上何れも不明瞭な點が多いのでありまして、勞働者が不安を懷く點であり、反對をする點であると思ふのであります、殊に第十五條に「この章に定めるものの外命令でこれを定める」とありまするが、是こそ最も勞働者が警戒をする所であります、既に命令と云ふ文字其のものが軍國主義再燃を思はせるものであります、元來本法は調整法とあるから出來るだけ双方合意の下に總てを纏めることを本旨とすべき筈であるにも拘はらず、茲に斡旋員候補者と云ふ重要な鍵を握る者の事項を、命令に依つて定めると云ふことが不穩當である、本法全體に對する政府の氣持は此の命令の二文字の中に隱されて居ると思ふが、此の點はどうか、若しさうでないとすれば、此の命令と云ふ文字は何とか變へて行くことは出來ないだらうか
次は勞働委員會から斡旋、調停、仲裁と色々な機關を一つの勞働爭議に對して竝べ立てて居ることは政府が反動的な機關に段々すり換へて行く手段であると云ふ風にも思はれるのであります、こんな複雜な幾つもの法律を作らないでも宜いのではないか、斯樣に考へられるのであります、特に第三十四條の意味を具體的に説明して戴きたいのであります、尚ほ第三十六條は頗る重大でありまするが内容が非常に漠として居りますので、爭議行爲の開始された場合に勞働組合の見解、資本家の見解、官憲の見解と云ふ風に、色々食違ひの起ることは火を睹るよりも明かであると思ふのであります、此の點政府はどう考へて居るか、殊に安全保持の施設とありまするが工場でも、炭坑でも設備してあるものは皆必要なものであり、安全保持の施設でないものはないと言へるのであります、こんな所にも勞働者の壓迫が隱されて居るやうな氣がしてならないのでありますが、尚ほ三十六條を犯した時はどうするのかと云ふことに付きましても御伺ひを致したいと思ひます
次は第三十七條の三十日の期間を置くと云ふ根底は何處にあるのか、勞働委員會が調停を愚圖愚圖して居る中に、勞働組合が怠業と見えざる巧妙にして合法的な怠業をやつた場合にはどうする積りであるか、此の際の損失の莫大のことを考へる時、此の三十日と云ふ期間はもつと短縮する方が勞資双方の利益ではあるまいか、詰り此の長い期間と云ふものは彈壓と懷柔の期間に利用される虞れがあると思ふ、此の點政府の見解を御伺ひ致したいと思ふのであります
次は勞働組合法第四條の「警察官吏、消防職員及監獄に於て勤務する者は勞働組合を結成し又は勞働組合に加入することを得ず」と云ふ條文は、團結行動の結果公安を害するものと考へられてのことと思ひますが、是等の人達が同盟罷業や怠業を行ふことは公安保持の見地から許し難いと云ふ風に思はれまするが、勞働組合を結成して地位の向上を圖り、勞働意欲を自發的に起させる爲には、此の第四條は不當であると考へて居る時、重ねて第三十八條を追加することは赤ん坊の手を捻るやうなものではあるまいか、三百萬官公吏は今まで國家國民に迷惑を掛けるやうな爭議をやつたと云ふことを聞かないのであります、私は寧ろ官公吏は團結力が弱いとさへ考へて居る時に、政府が敢へて勞働組合法に又勞働調整法に二重に官公吏を束縛せねばならぬ理由は何處にあるのであるか、或は共産主義者の煽動が恐ろしいのであるか、其の點明瞭に説明して戴きたいのであります、國民の公僕たる官吏が、國民の支持なくして爭議行爲をなすことは官吏の自殺行爲に外ならぬことを彼等は能く心得て居るのでありまして、此の際政府は第三十八條に該當する人達の爲に温かい親心を發揮して、彼等の待遇改善を圖るのは勿論でありますが、此の勞働組合に代つて特別勞働委員會と云ふやうなものでも作りまして、此の制度を活用して、天降り的の待遇改善方法を一歩前進せしめて彼等の待遇を改善してやると云ふやうな考へがあるかどうか、最も理想的には第三十八條を撤廢することが宜いと思ひますが、政府は之を撤廢する意思があるか、然らずんば特別勞働委員會と云ふやうなものを置くか、二つに一つの實現をして戴きたいと思ふのであります
次に、軍需補償の打切、産業の整理等に依り今後相當數の失業者があると云ふことは政府も言明して居る所でありますが、是等の失業者に對しては、政府は眞に責任を以て救濟の手を伸ばさなければなりませぬ、併し如何に政府が最善を盡して是が救濟に當ると云つても、現在でも相當數に上つて居る自由勞働者、詰り日雇勞務者は益益増加すると思はれますが、同じ勞働者でありながら、官廳、會社等の勞働者は團體交渉權の保護助成、勞働條件の維持改善、其の他經濟的地位の向上を圖る爲の法的保護を持ちながら、一方自由勞働者には何等是等の特權が與へられて居りませぬ、此の矛盾に對しまして政府は如何なる考へを持つか、是等の勞働者に對しては現在確たる統制が取れて居ない爲に、無法なる勞銀を取る者があり、是が爲め生産増強上大なる支障を來して居るのでありますが、之に對する勞銀統制に付て、是はやはり厚生大臣の御考へとして結構でありますか、政府の確たる成案を承りたいと思ひます、尚ほ、失業救濟は飽くまでも失業救濟で、所謂惰民を作つてはならないと思ふのであります、現に終戰後、地方に居れば幾らも仕事があるにも拘らず、骨の折れる筋肉勞働を嫌つて唯骨を折らず口先で世渡りをし、而もぼろい儲けの出來る闇商人等になつて都會に流れ込んで食へない食へないと云ふ只今の食糧事情を益益窮屈にし、自分でも食へない食へないと言ひながらも正業に就かうとしない失業者も相當多いし、今後益益斯う云ふ失業者が殖えて來ると思ひますが、斯うしたものを、所謂勞力の調整に依つて生産面に働かさせる計畫的勞務配置の對策が必要であると思ひますが、政府は此の問題をどう御考へになつて居りますか
最後に、勞調法案が今議會を通過すれば、現行の勞働組合法及び目下立案中の勞働基準法と申しますか、それと共に我が國の勞働立法の體系が一先づ整備されることになると思ひます、斯うなるとどうしても勞働立法を統一的に動かす所の行政官廳が必要となつて來ると思ふのであります、政府は此の重要行政が現在厚生省の一部、運輸省の一部、或は商工省の一部で個々ばらばらに執られて居る程度で勞働行政の實を擧げることが出來ると思ふ確信がありますか、又現在の制度、機構に於ては、滔々として押寄せる失業問題の解決や、勞働組合運動の健全なる指導育成も出來ないとすれば、この際勞働行政を一元化する勞働省の設置は急務中の急務でなければならないと思ひますが、政府は此の際急速に勞働省の設置をなす意思があるかどうか、若しありとすれば其の時期と政府の構想する機構、竝に運營の大綱等に付て承りたいと思ひます、大體以上が私の質問の要旨であります、先程も申上げましたやうに、一問一答が宜しいのでありまするが、時間の關係も考慮致しまして一度に申上げましたので、分りにくい點もあつたかも知れませぬが、努めて詳細に御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=4
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005・河合良成
○河合國務大臣 只今の約十五、六點に亙る點に付て御答辯致します
先づ第一點の憲法第二十六條に於ける團體權と云ふものと此の法律の第三十八條に於ける爭議の禁止と云ふことと牴觸しないか、金森國務大臣の答辯と牴觸して居はせぬかと云ふ御尋ねのやうに拜聽致しますが、是は憲法と此の勞働關係調整法案とは決して牴觸して居ないと思ひまするし、又金森國務大臣の答辯とも少しも牴觸する所がないと考へて居ります、と申すのは、本法に於きまする團體權は、勿論是は原則的に憲法に於て認められた所でありますけれども、又憲法の他の條項、特に第十一條、第十二條等に於きまして、國民の權利は當然公共の福祉の爲に利用されなければならぬ、又或る程度の制限を受けると云ふことを豫想して居ります、それだから是は社會生活と致しましては、色色の階級の色々な屑の人が住んで居るのでありまして、さうして其の全體の利益と云ふことを公共の福祉と云ふことで表明して居る譯でありますから、其の點に於ての調節を取らなければならぬと云ふことは憲法を流るる精神であります、さう云ふ意味に於て此の法案が出來て居りますので、決して牴觸して居る次第ではありませぬ、此の點は、金森國務大臣の答辯を私は聞いて居りませぬが、必ずさうあることと信じて疑はぬ次第であります
第二の點は、此の法案が資本家擁護の點に重點があるのぢやないか、或は財閥解體との關係とか、或は「ストライキ」の勃發を豫想して急いで居るのではないかと云ふやうな御話でございましたが、是は度々申上げます通りに、此の資本家擁護と云ふやうな條項は何處にも見當りませぬ、全く公益擁護、國民大衆の爲の公益を擁護すると云ふ基本から流れ出て居りまして、資本家を擁護すると云ふやうな考へは一つも持つて居りませぬ
それから財閥解體と云ふ問題に付きましては、財閥解體は御承知の通りの状況でありまして、是は實は私の所管ではありませぬのです、委員會其の他が非常に遲れて居ると云ふことは甚だ殘念でありますが、此の問題と此の法案とには何等意思的の關係は一つもありませぬ、社會事實としてどう云ふ風に織込まれて來たと云ふことは、是は別な話です、それから御話の通りに軍需補償打切に依つて失業整理が促進しますと「ストライキ」は或は又頻發すると云ふことになるかも知れませぬが、自然「ストライキ」の特質も今までと多少變つた形を持つて來、退職手當などは問題の中心になつて來やせんか、又工場閉鎖などが問題の中心になつて來やせんかと云ふ氣持を持つて居ります、此の法律が出來ますれば、此の法律の運用に依りまして爭議を未然に防止し、或は圓滿なる解決を求めまして國家の經濟再建に間に合はすと云ふことはあることと信じますが、併しながら此の法律はさう云ふことを豫想して急いでやると云ふやうな「インテンション」を一つも持つて作つた法律ではありませぬ、是はやはり勞働組合法が出來まして、それと共に勞働調整法と勞働保護法と申しますか、基準法と申しますか、斯う云ふ二つの法律がどうしても出て來なければならぬことになつて居る、其の中の先づ出來たものから議會に提案したと云ふ筋道でありまして、一つ一つの事柄を將來豫想しまして、其の爲にどうすると云ふ事實は一つも有りませぬ、それから外國資本が將來入つて來るだらう、それに付て其の資本を擁護する爲に、日本の勞働法規を斯うして置かなければならぬと云ふやうな考へは一つも持ちませぬ、斯う云ふことも自然の成行きに依つて、此の法律と外國の資本とがどう云ふ關係を持つて來るかと云ふことは、是は色色なことが色々な面で觸れて來ませうが、併し此の目的を以て此の法律を作つて居るなんと云ふ趣旨はありませぬ
それから第三番目の御尋ねの點でありますが「アチソン」大使の先日の對日理事會に於ける御話、或は既に發表されたことに付ての色々の御尋ね、それに對し政府はどう考へて居るかと云ふやうな色色分れた點の御質問がありましたが、「アチソン」大使の御言ひになつて居る線に付きましては、私共はもう至極同感であります、私共の勞働問題の處理も大體さう云ふ線に沿うて行つて居ることはもう申上げるまでもないことであります、そして少數者とか或は利己的の一部の爲に全體多數の者、或は全體的のことが動かされると云ふことは、民主主義の原則に反することであると云ふ考へに於ては全く御同感であります、それで政府がもう少し斯う云ふ問題に對して闡明な態度を執つたら宜いではないかと云ふやうな色々意見もありましたか、斯う云ふ問題は非常に微妙な問題でありまして、思想の自由は徹底的に認めなくちやならぬと云ふことは勿論のことであります、中々やり方如何に依つては、思想の彈壓と云ふやうなことになつても困る事情もありまして、そこらの點を見定めまして、只今の如き態度を執つて居る譯であります、一面此の勞働爭議の状態及び社會不安の状態に企業整理、軍需補償の打切其の他の國情全體を睨み合はせまして、政府がもつとはつきりした態度を執つて宜い場合には其の態度を執ります、今日に於ては我々が政府として執つて居る態度を以て適當なものなりと思惟して居ります
それから第四番目の問題は、此の法律は爭議の豫防解決をやつて居るが、是だけでは駄目ぢやないか、根本問題があるのではないか、爭議と云ふものは唯起るものでなくして、起るべき原因がある、其の重大な點は生活難であると云ふ御質問でありましたが、全く御趣旨に付きましては、同感でございます、此の法律一片を以て勞働爭議が收まるものとは思つて居りませぬ、根本問題に付て勿論十分手當を致さなければなりませぬ、此の點に付きましては政府は如何にして日本の經濟を繁榮に導くか、一刻も早く日本の經濟の興隆再建と云ふことを目指して、又其の經過の途中に於きましては失業對策、生活保護等の方法を講じて、さうして生活を援護して行かうぢやないかと云ふ點に最も重大なる政策を執つて居りますが、一面やはり形の上に於てものは治める必要がある、それは此の法律を以てやつて行く、實質と形態と兩方から勞働問題に對處して居ることを御諒解を願ひます
それからそれに關聯して加配米に付て御尋ねがありましたが、是は私の所管ではありませぬが、便宜私から申上げます、加配米の工場配給の範圍を狹めたのは甚だ遺憾なことでありまするが、御承知の通り昨日何處かの委員會で申したのですが、一枚の布團を皆が引張り合つて寢て居るやうな只今の現状でありまして、あそこを十分にすればこちらがもたがる、こちらを押へればあちらがもたがると云ふやうなことで、是は國民全體を見て、農林省が中心で斯う云ふ形を取らんとどうしても食糧問題がやつて行けぬのだと、國民全體を睨んでの目からやつたのでありまして、是はどうも暫くの間は遺憾ながら我慢をして戴くより仕方がない、決して一部の勞働者に待遇を惡くすると云ふやうな意思は毛頭持ちませぬ、さう云ふ意味にどうか御諒承願ひます、併し段々食糧事情も幾分曉光を認めました感がありますので、一番後に剥がれた所は一番先に改訂されるのが私は無論常道であると思ひますから、出來るだけ早く之を元の状態に返すと云ふことは必要なりと私は考へて居ります
それから第五の問題は色々立法技術の問題、條文整理の問題に付ての御質問でありましたが、此の點は政府委員から答辯致させます
それから第六には第七條に於ける爭議行爲と云ふものを定義して、正常の運營を阻害することを爭議行爲と決めると云ふやうなことで、正常な運營を阻害すると云ふのは、増産を双肩に擔つて自分の運命、自分の義務と心得て居る勞働者に對して、どうも言葉が適切でないぢやないかと云ふ御尋ねでありまして、成程さう言はれて見ますと、私は感じの上に於てさう云ふ氣持も致します、私も初めて此の法律を讀んだ時に、正常の運營を阻害する、何だか惡いことを此處へ書くやうな感じを受けたのは事實であります、併しながら是はやはり立法技術としましては斯う云ふことを明示して置きませぬと、どうしても爭議行爲と云ふものの定義をはつきりすることは出來ませぬ、大體各國の立法又は勞働問題に對する一般的常識として、斯う云ふ形を執つて居るのだらうと云ふ風に私は解釋致して居ります、それから勞働委員會、公益事業と云ふ言葉などに對して、官僚がやるのは意の儘ではないかと云ふ御批評もありましたが、是は公益事業と云ふものに對しまして、どう云ふものだと云ふことは第八條に於ても明示してありますから、それは何人も此の問題に付て異論はなからう、斯う斯う斯う云ふことは公益事業でやるが、是は決して資本家擁護と云ふことは一つも考へて居らぬ、之に依つて我々一般の日常生活が脅やかされることであります、そこに何の他意もないことは明瞭でありまするから、之をどう云ふ風にも惡意的に運用する途は私はないのではないかと思ひます、殊に政府に於きましても、勞働問題の大體の大勢民主國家への轉換と云ふことは、我々初め皆身に沁みて感じて居る次第でありまして、決してさう云ふ御心配なく、法律の最も健全なる運用と云ふことを志して行く積りであります、又勞働委員會と云ふことに對しまして、色々「マジック」的なことがあるではないかと云ふ御話でございましたが、勞働委員會の委員と云ふのは、大體勞働者なり經營者側なりが選ぶ人であります、それから中立の人を選びましても、是は双方の同意を得ると云ふことでありまして、茲に無理をすると云ふことは絶對に出來る性質のものではありませぬ段々斯う云ふ國家になつて來ますると、與論の勢力も中々強くなつて、役所で勝手に人を其處へ入れて、勝手なことをしようなんと云ふことは出來ることではありませぬ、又さう云ふ時代でもないと私は存じて居るのであります、具體的のことを申しても何ですが、現に今日勞働委員會の中立に出て居る人に付きましても、必ずしも、勞働者側に於て反對があると云ふ譯でもないと云ふやうな事實も、私は或る程度に認めることが出來るのではないかと思ふ次第でありまして、此の點に付きましては杞憂に屬することではなからうかと云ふ風に私は信ずる次第であります、且又公益事業と云ふことの追加などに付きましても、勞働委員會の議を經る、其の上勞働委員會の各階級から出る委員のそれぞれの同意を得ると云ふ所まで、詳細に規定してありますので、公益事業の追加などに付ても、さう云ふ心配はないものと考へて居ります
それから第七の問題は、第九條の爭議行爲發生の時に關する問題でありますが、是は政府委員から答辯致させます
それから第八の問題も政府委員から答辯致させます
第九の問題は、第十一條に於て學識經驗と云ふ言葉を使つてあるが、是はどうか、又之に關聯しまして、斡旋と云ふことに對しましての色々な御質問、御議論がありましたが大體斯う云ふ法律は──法律と云ふものは申すまでもなく死んだ活字ではありませぬ、此の運用と云ふものが問題の中心になるのでありまして、其の運用に付きまして、政府としても勿論色々考へなくてはならぬことでありまするから、委員の選定其の他に付ても、十分考へなくてはならぬことでありまするが、大體此の法律に於きましては、さう云ふ問題の「イニシアティーヴ」は、常に勞働委員會をして取らして居ることになつて居ることになつて居ります、斡旋者の名簿を作りますのも、勞働委員會に於て之を作ることとなつて居ります、勞働委員會は先程申しました「デモクラティック」な方法で選擧した者から成つて居るのでありますから、是れ以上の政府としては考へることが出來ぬのぢやないかと云ふ風に私共は考へて居ります、隨て勞働委員會に於て適當な人を委囑し、斡旋員候補者の名簿を作る、それを勞働委員會に於て選擧した會長が其の名簿の中から何名かを「ピィックアップ」して、其の問題の斡旋に盡力せしめると云ふことでありまして、尚ほ其の斡旋者の指定其の他に付きましても細かい規定も出來ませうし、命令で之を定めると言ひましたのは、餘り細かいことを此の法律に書くのもいかぬ、又餘り細かいことを書きますと、却て皆さんから是は細か過ぎるから、是は別の細則にしたらどうかと云ふ御議論も必ず起ると思ひます、政府は其の眞中を取りまして細かいことは命令で決めまして、大體のことはここで決めて行くと云ふことにしまして、決して命令と云ふことは官僚の隱れ蓑と云ふ譯ではありませぬ、戰時中はさうであつたかも知れませぬが、之に關する限りはさう云ふ御心配はありませぬ、又茲に與論と云ふものもありますし、時代と云ふものもありまして、さう云ふことを勝手にやれるものではなく、やれば必ずそこに問題が出て來るのであります、其の點は御心配ないではないかと云ふ風に考へて居ります
それから第十の點に付て御答へ致しますが、斡旋、調停、仲裁と段々階段的にやつて行くのは、段段反動的な手段に歸るのではないかと云ふ御話がありました、勿論是はさう云ふ意思は毛頭持ちませぬので、斡旋と云ふものは御承知の通りに盡力をして見ようと云ふことで、勿論それは何等強制力もないし、勞資双方に於て厭ならば厭で濟むのだが、其のことは話合つて片付くことなら話合つてやらうではないかと云ふことであります、調停は稍稍それが具體的になつて、片方から申込むとか、或は双方から申込む、或は公の事業に關する時は強制調停の途もありますが、併しながら決して此の調停といふものも強制するものではありませぬ、調停の結果必ず斯うせいと云ふことを命令するものでもありませぬから、勞資双方に於てそれに從はなければ從はないのでありまして、全く自由に任されて居るのであります、決して是は彈壓と云ふ意味は斡旋にも調停にも一つもないのであります、それから仲裁は特に勞働協約と同一の效力を持たせるのはどうかと云ふ御話でありましたが、中裁と云ふのは勞働協約に規定してあれば、双方が意思の合致で仲裁者を決めて、之に任ぜようではないかと云ふことでありまして、是は合意であります、合意の結果は守らなければ、是は契約上に於ける不信任であります、だから是は決して壓迫でも何でもない、合意で任せると云ふなら其の結論に從ふと云ふことは當り前のことであります、此の三つの方法は物の「アービットレート」「メディエート」に付て三つの方法を書いただけでありまして、此の外に何等斷壓的なものは微塵もないと云ふことを斷言する次第であります
それから第三十六條の安全保持の施設と云ふものも、是で何か非常に廣くやるのではないかと云ふやうな御質問もありましたが、此の點に付きましても、安全保持と云ふものは、生命の安全を保持することでありまして、勿論勞働委員會を中心として、具體的に是はどの設備とどの設備と云ふ風に決める、是は炭礦も之に入つて居りますが、色々工場法、鉱業法其の他の規定がありまして、それに命じたものを指すのでありまして、是は伸縮自在に考へては居りませぬ、それだから是は行政行爲として非常に都合好く勝手に伸縮出來ると云ふことは考へて居ります
第十一の問題としまして、三十七條の三十日の期間は長きに失するのではないかと云ふ議論がありましたが、之をもつと短くしたらどうかと云ふ議論もあるし、もつと長くしたらどうかと云ふ議論もある、それは立法例も色々でありまするが、先づここらは拔打ち禁止として、一般國民が心の準備、或は物資上の準備をするのに適當な期間なりと考へまして、三十日と決定した次第であります
それから第十二の問題は、勞働組合法第四條の警察官吏、消防職員、監獄勤務者等に對しまする組合結成禁止の外に、尚ほ第三十八條に於て爭議行爲の禁止をやつたのは二重になつて居る、又官吏にして「ゼネスト」等の心配はないぢやないかと云ふ御尋ねでありました、是は官吏にして「ゼネスト」などあつては堪らぬのでありまして、それはないことを衷心希望し、又官吏に對しまして國家は出來るだけ生活保護の途も講じて行かなければならぬ、自分の子供として皆可愛がつて行かなくちやならぬと云ふことに付ては、もう全く御同感でありまするが、やはり萬一少數の者に依つて公共の福利上最も重大なる國務の進行が阻害されるやうなことがあつては大變である、先程御指摘の所謂少數者に依つて全體を動かすと云ふことなどがあつては大變だと云ふことにやはり重點を持つて居ります、それで國務と云ふものは七千何百萬國民全體の福祉の上に大切なことである、「ゼネスト」に致しましてもそれは少數の人である、其の少數の人の爲に全體を動かされては困りますから、國家の最も大切なることとして保護しなくちやならぬと云ふ趣旨でありまするから、是は組合法等で一部に於ては二重と申しまするか、言葉を換へて二重と言ひましても、目的は違つて居りまするから、是は勿論二つ入つても差支へないのでありまして、殊に三十八條はさう趣旨に於て立案致したのであります
それから第十三の問題に付て御答へ致しまするが、補償打切りの結果、特に日傭勞働者が困るぢやないか、之には中々團體の結成と云ふやうなことも困難で、是はどうするのだと云ふ御尋ねのやうに拜承致しましたが、此の日傭勞働者に付きましては、最近關係筋からも色々指示を受けて居りまして、此の問題の機構に於て段々變革を加へつつある次第であります、さうして殊に今後の軍需補償打切りに伴ひまして、所謂浮動的勞働者と申しまするか、「フロート」した勞働者が出來ることを心配して居ります、之に對しては大都市を中心としまして機動的の公共事業と云ふやうな方法などを考へて居ります、結局本當に植林をするとか、治水をするとか、河川を直すとか云ふやうな公共事業と別に、そこに「フロート」して居る人を臨機に集めて、さうして公共事業の部分的のものをやらすと云ふやうなことを、相當大仕掛にやることを今考へて居る次第であります、實は是非それを實行したいと思つて居ります
それから其の賃金の統制が取れて居るかと云ふ御話でありまして、賃金に對する統制は全體的には勞働者全體に付ての賃金統制は取れて居りませぬが、日傭勞働者に付きましては日傭勤勞署と云ふものが中心になつて賃金の支拂も致すことになりつつありますので、自然此の面に於ては事實上の統制が取れると云ふ風に考へて居ります
それから第十四は、一寸初めの御言葉を聽漏しましたが、闇商人などになる者が非常に多い、或は「インテリ」失業者などを含んだ意味ぢやないかと思ふのでありますが、斯う云ふ面に付きましても出來るだけ肉體勞働の面に轉換して貰ふ、さうして増産の面に働いて貰ふことを十分努力致しますが、併しながらどうしてもさうは行かぬ人に對しましては、色々頭の仕事に付てもやつて貰ふ、今現に相當のことをやつて居りますが、殊に頭の仕事としましても生産面に關係のあることを出來るだけやつて貰ふ、生産面に關係のあることでどうも入り切れぬ時には、調査なり、統計の面なりやつて貰ふと云ふ風な方法を執り、さう云ふ面に對する失業者等を救濟して行く積りであります
それから最後の御尋ねの點は、勞働法規の制定と同時に、勞働省と云ふものをどうするかと云ふ御話でありますが、是は本會議でも申上げた通りに、勞働省は作る積りで只今其の手續を進めて居ります、其の時期に付きましては茲で言明致す譯に行きませぬが、出來るだけ早い機會に於てやりたいと思つて居ります、それから機構に付きましては、やはり只今の厚生省の所管の外に船員局──船員の問題、或はもう一つ鑛山局の方の勞働者の問題、之を統合することが宜いか惡いかと云ふ問題、是は色々各方面、特に關係筋などの意向も色々打診を致しまして、今練つて居る所であります、それから尚ほ元の厚生省と勞働省と分れると云ふ點に付きましても、具體的の問題としまして中々困難な問題もありますので、今それを研究して居る次第であります、暫く其の決定は御待ちを願ひたいと思つて居ります、大體斯う云ふことでありまして、若し漏れた點がございましたら御尋ね願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=5
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006・吉武惠市
○吉武政府委員 今厚生大臣の御答辯のありました以外のことに付きまして、私から簡單に申上げます、總則に色々規定があるが、是は後の條文を見れば分るから要らぬぢやないかと云ふ御趣旨でありますが、實は此の總則は非常に大事な事項でございまして、なければなくて濟まぬでもありませぬけれども、特に此の法律の趣旨とする、詰り爭議は兩當事者が自主的に誠意を以て解決するのを本旨とする、政府は徒に干渉するのでなくして、其の双方に援助を與へると云ふことが最も大事な所なのでございますので、是はやはり必要だと存じて居ります
それから第九條に、爭議行爲が發生した時は届出の義務が規定してありますが、是は不闡明ではないかと云ふ御尋ねでございます、是は先日赤松委員からも御話がございましたので御答辯申上げたのでありまするが此の届出に付きましては特に「爭議行爲が發生したとき」と云ふ風に、實は明瞭にしてあるのであります、其の爭議行爲とはどんなものかと言へば、前の第七條で、此の法律に於て爭議行爲とは是れ是れを言ふ、斯う言つて居るのであります、隨ひまして是で明かだと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=6
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007・磯田正則
○磯田委員 大體與へられた時間がもう既に過ぎましたので、一つ一つに付て又御尋ねすることを省略致しまして、次の機會に讓ります、唯只今御答辯戴きました厚生大臣の御話の中に、此の法案は自然の成行きと申しますか、さう云ふやうなことで必要があるから作るんだと云ふやうな御話のやうに承りました、自然の成行きでありますれば日本の勞働組合運動は現在多少幼稚さはありますけれども、一歩進んで何が故に官公吏に對しまする爭議權と云ふものを認めないのであるか、爭議と爭議權の違ふことは勿論でありまして、さうしたことを法案の中に入れて置いても、先程申上げまするやうに、三百萬の官公吏が必ず爭議を起して公安を害すると云ふやうなことを度々やるとは考へられませぬし、又さう云ふことをやる危險があるから、それを入れて置かないんだと云ふことは、三百萬の官公吏に對する不信任であると思ふのであります、現に全國官公職員勞働組合協議會の傘下の多數の團體が眞劍に此の問題に付て反對して居りますることは、要するに爭議をしたいからではなくして、外の者と同等の立場を認めろと云ふだけのことであると思ふのであります、隨ひまして此の官公吏の爭議行爲を禁止すると云ふことに付きましては、今一應再考の必要があるのではないか、殊に只今まで私等の聞いた所に依りますれば、此の問題は洵に危機に直面して居ります、先程大臣は「ゼネスト」の起らぬことを希望すると云ふことを申されて居りましたが、或はさう云ふ結果になるのではないかと云ふことを私等は非常に惧れて居るのであります、此の點に付きましては尚ほ再考する必要があると思ひまするので、特に一言致して置きます
尚ほ自由勞働者と申しますか、其の點に付て厚生大臣と私の考へ方が一寸喰違ひがあるやうに考へますが、私の申しまするのは、現在地方から澤山東京邊りに──東京は食糧事情が困ると云ふにも拘らず、どんどん入つて來る、而もそれ等の者が東京では食へない食へないと云ひながら、東京に入り込んで來る、さう云ふ者は結局ぶらぶらして遊んで居ると云ふやうな者が非常に多くなつて居るぢやないか、さう云ふやうな者に對する取扱方をどうするか、詰り先程大臣の仰しやつた浮動的の勞働者と云ふやうな者より一寸體裁の宜い高等失業者と申しますか、さう云ふやうな者が非常に殖えるのではないか、さう云ふ者をどう云ふ風に是からの生産部面に當嵌めて行くかと云ふことの大方針を承りたかつたのであります、其の點に付きまして今一應大臣の御考へを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=7
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008・河合良成
○河合國務大臣 只今御尋ねの第一の點に付て申上げますが、私の言葉の中に自然の成行と申したやうに御尋ねでありました、さう云ふ言葉を使つたとすれば、どう云ふ所に入れて使つたか覺えませぬが、此の法律は唯自然の成行で出來たのではありませぬ、私の申したのは、御尋ねの趣旨が今軍需補償を打切ると同時に色々なものが起きるから、それで此の法律を慌てて出すのではないか、或は外國の資本が入つて來る、其のことに對する特別の意圖を以て斯うするのではないかと云ふ御尋ねでありましたから、さう云ふ意味ではないのだ、是は出來べき法律として出來て來るのだと申した言葉の綾だと思ひます、左樣御承知を願ひます、隨て是は前に勞働組合法が出來ました、勞働組合法が出來るとそれに伴ふ問題として、調停とか仲裁とか云ふことを書かぬといかぬのだ、それから「ストライキ」も野放しにしては、國民全體困ることがあるから、そこで「ストライキ」を公共の福祉の關係から或る程度の制限をしなければならぬのだ、斯う云ふ必要が勞働組合法の時に既に出て居る譯であつて、それを別の立法でやつたと云ふ譯であります、それからもう一つの法律は少し手間が掛るから、是は次の議會に保護法を出さうと云ふことを私は申したので、今の特定の問題に對して慌てて居るとか、或は特別の意思を持つてやつたと云ふことでないと云ふことの説明に申上げた言葉でありまして、左樣御承知を願ひたいと思ひます
それから官吏の爭議權に付て重ねて御尋ねでありましたが、是は私も少數の官吏が國家全體の國務の運行を妨げるやうなことをやつては大變だと云ふことを呉れ呉れも申して居りまして、さう云ふ「ゼネスト」などの起きないことを勿論期待し希望し、又其の考へで居りますけれども、只今御指摘のやうに、或は「ゼネスト」などの結果になるかも知れないと云ふ御心配のやうでありましたが、さう云ふことになつては大變だから、萬一の場合──今の官吏がどうと云ふのではありませぬ、今の官吏は絶對にさう云ふことはないと思ひますが、どう云ふ時代に、どう云ふことで斯う云ふことにならぬとも限りませぬから、少數者の爲に國民全體を動かしては困るのだと云ふことは、やはり公益擁護の立場からどうしても考へなければならぬと云ふ信念でございます
それから最後に地方から出て來る者──是は先程御斷りしましたやうに、一寸御言葉の初めの部分を聽取りにくかつたものですから、それで私は「インテリ」のことでも、或は浮動勞働者のことでも御聽きかと思つて、其の前提の下に御話したのですが、只今のも話では御趣旨は能く分りました、是は只今異動を止めて居りまして、さう大きな者は東京其の他の大都市に流れて來て居りませぬ、併しながら多少はありませう、多少あれば、それは「フロート」して居る勞働者なり、或は「インテリ」勞働者として、それに對して先程申したやうなことを考へて居る、さう云ふ施設をやる積りで、現にやつて居ると云ふことを申上げた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=8
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009・磯田正則
○磯田委員 今一言、只今大分官公吏の問題に付て御心配なさつての御話であります、尚ほ只今の御話の中に將來のことを考へて云々と申されて居りますが、私は現在の問題として、何より先に之を解決すると云ふことに付て、若しさう云ふ結果が起つた場合に、政府はどうするかと云ふことに付ての大臣の信念を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=9
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010・河合良成
○河合國務大臣 勿論現在のことも含めて考へて居りまするが、私共は日本の官吏諸君は、決してさう云ふ無謀なことはおやりでないと云ふこどを確信して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=10
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011・磯田正則
○磯田委員 尚ほ御尋ね申上げたいことがありますが、時間が既に超過致しましたので、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=11
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012・逢澤寛
○逢澤委員長 それではここで暫時休憩致します、本日は午後一時半から繼續致します
午後零時休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=12
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013・会議録情報2
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午後一時四十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=13
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014・逢澤寛
○逢澤委員長 午前に引續き開會致します──辻井民之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=14
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015・辻井民之助
○辻井委員 司法大臣に對して簡單に一、二の點に付て御尋ねしたいと思ひます、勞働組合法に依りまして「警察官吏、消防職員、監獄において勤務する者その他國又は公共團體の現業以外の行政又は司法の事務に從事する官吏その他の者は、爭議行爲をなすことはできない。」と、勞働組合法に依つて團結權をば奪はれ、更に勞働關係調整法に依りまして司法省關係としましては監獄に於て勤務する者竝に司法事務に從事する官吏其の他の者は罷業權も奪はれて居る譯であります、所が今日までの實情を見ますると、御承知のやうに終戰以來「インフレ」は急激に昂進して參りまして、生活費は實に暴騰に暴騰を續けて參りました、斯うして勞働者或は官公吏を含む是等の勤勞階級は全く生活の「バランス」を失ひまして、生活の危機に襲はれた譯であります、所が其の後組合の自由が認められて各勞働者は勞働組合を作つて猛烈に賃金の引上げを要求した結果どうにか「インフレ」に追付きつつある状態であります、今日まで司法省關係では監獄に勤務する者、或は行政官吏と云つた立場にあります人々は、特に上層部に居る人達は所謂武士は食はねど高楊枝で、食へないから俸給を上げろと云ふやうな要求をすることは何かさもしいやうな考へを持ちまして、まだ斯う云ふ封建的な觀念から拔け切らずして正當な權利さへ主張し得ない、其の結果是等の立場にある人々の俸給が最も低い状態に放置されて居つたことは司法大臣も十分に御承知の所と思ひます、最近に至つて漸く一般の官公吏の俸給が稍稍上つたのでありますが、現在の「インフレ」はまださう簡單に解消されさうにない、生活費の騰貴はまだ相當續くものと考へなければならぬ、さうした場合に初めに申上げたやうに今日まで組合を作つて要求をする、爭議をやるか、爭議の一歩手前まで行かなければ賃金が上らなかつた、此の實情より致しますならば勞働組合も作り得ない、爭議行爲も禁壓せられて居ると云ふことでは、今後豫想せられる物價の騰貴に對して到底最低に生活を保障されると云ふことは不可能であると思ひます、之に對して今日まで此の法案は決して勞働者を抑へるものではない、資本家或は雇主、使用主側を益するものではないと云ふことを厚生大臣初め其の他の大臣から繰返し御述べになつて居たのでありますが、目的は或はさうかも知れない、決して勞働者を抑へ或は資本家其の他使用主を益する目的ではないかも知れないが、結果に於ては組合も作れない、爭議行爲も抑へられると云ふことになれば、明かに今日までの事實が示して居るやうに、幾ら生活費が昂騰しても到底それに伴ふ俸給の値上げを得ることが出來ないのであります、斯う云ふ點に付て司法大臣は如何に御考へになつて居るか、一應承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=15
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016・木村篤太郎
○木村國務大臣 只今の御質問に御答へ致します、要するに御質問の趣旨は司法事務に從事する者及び監獄に勤務する者が、自己の生活擁護の爲に、或は組合を組織し或は爭議行爲をなすことを禁ぜられることはどうかと云ふ御質問のやうに拜察するのであります、そこで申上げたいのは、御承知の通り司法事務に從事する者の性質であります、此の司法事務に從事する者と云ふのは所謂裁判官、檢察官及び之に附隨事する書記等の事務に從事するものであります、是等の人はどう云ふことをやつて居るか、其の事務の本質、之を十分に御諒解を得たいのであります、要は一般に申して司法官は國家の正義を擁護する任務を帶びて居る、不肖私其の當局の一人として事務に携つて居るのでありますが、此の司法の公正な事務が一角崩れると、恐らく國家の社會秩序は根本的に崩れるであらう、是は國家に取つて由々しい大事であります、此の一角はどうしても確保して行かなければならぬ、生命を賭しても國家の正義昂揚維持の爲に守つて行かなければならぬ信念を持つて居ります、是等の人が假りに自分の生活擁護の爲に、或は罷業權を行使すると云ふことになりましたならばどうなりませうか、司法檢察事務は一朝にして停止するのであります、國家はどうなりますか、所謂多數の被告人の審理も止まつてしまひませう、多數の犯罪人を取調べることも出來なくなりませう、國家はどうなりませう、此の一點を御考へ願ひたい、故に此の司法の公正を維持すべき司法事務に從事する者は氣の毒ながら爭議行爲をやつて貰つてはいけないと云ふことが、此の規定の本質であります、又監獄の事務に從事して居る者もさうであります、御承知の通り、皆樣或は御分りにならぬ方もいらつしやいませうが、監獄は一角の牢城をなして居ります、此の中に多數の囚人を扱つて居ります、此の人達の改過遷善に從事する此の人達が、若しも罷業をした時にはどうなりませう、是は國家に大きな影響を及ぼすのであります、隨て此の人達にはどうしても罷業行爲をして貰つては困る、是は國家の要請であると私は考へます、故に此の調整法に於ては、此の人達の罷業行爲は出來ないぞと云ふ明かな規定を設けた所以であります、然らば今御質問の要旨に入るのでありますが、此の人々の生活はどうするのか、組合を結成することは、司法官は組合を結成することは出來ますが、罷業行爲は出來ない、どうするか、御尤もであります、私も司法官及び監獄に勤務する人々の生活は何處までも擁護しなければならぬと云ふ責任を帶びて居りますが、不幸にして只今の所、是等の人々に對する待遇と云ふものは極めて惡いことは御承知の通りであります、私は何とかして此の人達の生活の向上を圖りたいと云ふ氣持に充ち滿ちて居ることを茲に確信致します、然らば從來此の人達の一般的の取扱ひはどうであつたかと云ふことになりますと、甚だ申譯ありませぬ、併し今度の新憲法草案が實施されますると、御承知の通り裁判官の地位と云ふものは、非常に向上されると同時に、適當な報酬を支拂ふべきことを憲法の明文に於て之を規定されて居ります、他の行政官に付ては左樣な規定はありませぬ、裁判官に付てのみ左樣な規定を憲法に設けられてあります、是が私の申上げる司法官の地位と云ふことに顧みて、憲法に於て特に斯樣な規定を設けられたと存ずるのであります、かるが故に新憲法實施の曉に當りましては、幸ひにして此の裁判官に對する生活の保障と云ふものは十分にされると云ふことを確信して疑はないのであります、併しながら裁判官以外の檢察當局に從事する者、其の他の職員に付ては何等の規定はありませぬから、それに付ては我々は出來るだけの考慮を拂はなくてはならぬのであります、現状に於て申上げますと、監獄に勤務して居る人達の生活でありますが、是は殘念ながら餘り良くありませぬ、警察官吏と比較致しまして、三人家族の者を標準にして見ますと、約二十圓の差があるのであります、一方に於ては──詳しい數字は申上げることは出來ませぬが、警察官吏に付ては一月五百四十圓ばかりでありますが、監獄に勤務する者は五百二十圓ばかりで、二十圓位の差はあります、是も最近に大藏當局に折衝致しまして、此の生活の向上と云ふことを今我々は圖りつつあるのであります、司法官に付きましては、只今の所一般行政官に比較致しますると、御承知でもありませうが非常に司法官は出世が遲いのであります、一例を取つて申上げますると、昭和三、四年に大學を卒業した人でもう知事になつて居る人が澤山あるのであります、然るに一方に於て司法官吏としては勅任官になつて居る者は──今の一級官ですが、それになつて居る人は極めて寥々たるものであります、是は殆ど其の平衡が取れないのであります、俸給制度は變りはないのですが、所謂出世の度合が非常に違つて來て居る、それが平衡が取れないと云ふことを申上げるのであります、それ等の點から顧みますと、司法官の一般的の俸給の改善と云ふことは是非ともやらなくてはならないと云ふ氣持を私は持つて居ります、不肖私は司法當局の一人と致しまして、十分に其の點に付て考慮致しまして、司法官、監獄に勤めて居る人達の生活の擁護に、將來十分の努力を圖つて行きたいと存じます、左樣御承知願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=16
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017・辻井民之助
○辻井委員 只今司法大臣から部下の生活の保障の爲に飽くまで誠意を以てやると云ふ熱意をば披瀝せられたのでありますけれども、是までの司法大臣と雖もやはり部下に對しては同樣な頭を以て臨まれて居つたと考へます、然るに事實今日まで是等の立場にある人の待遇が惡く、俸給、給料が低かつたことは、是は爭はれぬ事實であります、それで今後も先に申上げたやうに、恐らく尚ほ生活必需物價は昂騰すると考へられるのでありますが、將來に對するはつきりした安心の出來る保障を──勞働組合を作つてはいけない、爭議行爲をやつてはいけないと云ふことでありますならば、それに代る──唯大臣を信頼をし、上をば信頼をして天降りにやつて貰ふのに頼るのではなくして、民主主義の今日でありますから、十分に下の與論を反映せしめて、例へば一般の罷業に於きましては經營協議會とか生産協議會とか云ふやうなものも出來て居りますのですから、何等かのそれに代るやうな對策を講じて貰ひたい、若し間違つたならば國家の重大事である、大臣が生命を賭しても此の一線を護らなければならぬと申されたことは分ります、それ程大事な仕事に從事して居る者に對して、唯大臣のお情、誠意を信頼せよと云ふだけでは、私は安心して其の職務に邁進することは困難ではないかと思ふ、今申したやうに今日まで隨分ひどい待遇に置かれて居りました爲に、而も良く言へばさう云ふ重要な職責に就いて居るから待遇の改善を要求することは穩かでない、惡く言へば封建的な武士は食はねど高楊枝で、さう云ふことを口にすることをば恥ぢて要求しない、其の爲に何時も後廻しになりまして、惡い條件に置かれて居つた、司法官と雖も霞を食つて生きて居る譯に行かぬのでありますから、やつて行けなければ或は戰爭中の貯蓄をば使ひ果して、衣類や大事な生活資料までも金に換へて生活を補ふ、それでも行けなければ知らず識らず役得をやるとか、色々さもしいことをやるやうになるのは必然であります、總ての司法官を君子を以て律することは出來ぬと思ふ、先程も大臣のお出でにならぬ中に一度申しましたが、前の本會議で或る裁判所の判事が囚人に配給されて居る米を食つたと云ふことで問題が起つて、田万君は取消を致しましたが、其の後の調査に依れば是は多少の間違ひはあつたが、囚人ではない、未決の監禁されて居つた者の配給の米であつたやうでありますが、確かにそれをば外食券なしで食つて居つたと云ふ事實がある、大阪に於ては終戰後間もなく砂糖をば曖昧な分配をやつて、何人か處分を受けた、私は之をば決して唯追究するのではないのであります、小さいことをも擧げますならば、是は決して司法官だけではないのでありまして、警察官に於ても司法官に於ても隨分新しい日本の建設途上に於て、道義の上で如何はしい行爲をば相當見るのであります、私は唯それを徒らに咎める譯に行かぬと思ふ、其の由つて來る所以をば十分に見極めて、さうして其の源を芟除することが先決問題であると思ふ、ああ云ふことが暴露されれば司法部の威信に係はるとは思ひます、併しさうかと申して臭い物に蓋をして、益益病膏盲に入りますならば、一層重大事であります、俸給だけでは決して食つて行けない、待遇が特に劣惡であると云ふことであるならば斯樣なことが段々盛んになつて行くのでありまして、是は由々しい問題であると思ひます、さうして役得をやるか、さうでなければ其の鬱憤をば弱い者に爆發させしまて、所謂裁判所は最も官僚的であると云ふことが定評になつて居るが、非常に一般國民に對しても不親切になり、官僚的になると云ふ結果を來しまして、國民も亦其の爲にどれだけ損害を受けるか分らぬのであります、斯樣に考へますならば、唯大臣が十分に情を持ち、熱意を以て常に待遇を良くしてやると云ふだけでは私は決して安心が出來ない、何等か下の與論と申しまするか、意思と云ふか、それをば十分に反映せしめて、さうして不幸にして物價が益益暴騰して參りまするならば、常に之に伴うた所の改善をば行ふことが出來ると云ふやうな確乎たる對策がなければならぬ、さう云ふ對策もなくして、唯重大な國家の役目を果して居るのだから組合を作つてはいけない、爭議行爲をやつてはいけないでは、私は決して旨く行くものではないと思ひます、斯う云ふ點に付て何等かの對策を御持ちになつて居るか、御考慮になつて居るかと云ふ點をば進んで御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=17
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018・木村篤太郎
○木村國務大臣 御答へ致します、先づ對策の第一と致しては、是は全般の官吏に關することでありまするが、官吏の俸給に對しての大幅の増額と云ふことは最近に行はれることになつて居ります、是は各省とも連繋を取つてやつて居るのであります、是は一般官吏のみならず、各役所に働いて居りまする從業員、例へば鐵道省に働いて居る從業員、或は遞信省に働いて居る從業員と云ふ者にまで及ぼしまして、全般的の考慮を拂はれて、近く其の點は實現することになつて居ります
それから司法官に付ての下からの聲を聽いたらどうか、御尤もなことであります、私は就任以來其の點に考慮を拂つて居ります、自ら第一線に立つて、若い人達と膝を交へて、其の人達の希望なり意見なりを聽くやうに努めて居るのであります、又部下の下僚に對しましても、努めて下の與論を聽いて、それを上に反映させるやうにして貰ひたいと云ふことをやつて居ります、其の他具體的のことと致しましては、現實に今大藏當局に交渉致しまして、何とか此の危局を切拔けたいと云ふ手段を講じて居るのであります、どうか左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=18
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019・辻井民之助
○辻井委員 大臣から、十分に下情を聽くやうに努めて居ると云ふやうな御言葉だけでありまして、水戸黄門が漫遊して下情をば探られたのと變らぬ、何等かの機關とか法規とかに依らずして、唯成べく下々の聲を聽くやうに努めると云ふやうな御答辯だけしか得られなかつたことは、私は甚だ遺憾とするものであります、是程重大な國家の任務に從事して居る者に對して、爭議も組合も禁止して居る以上は、唯勝手に大臣が聽いて歩くのではなしに、例へば先刻申上げたやうに經營協議會と云ふやうなものが既に手本が示されて居るのでありますから、何等かさう云ふ具體的なはつきりした機關を御作りになる必要がある、又さう云ふことを御考へになつて居るかと思つて御伺ひしたのでありますが、何等左樣なことを御考へになつて居らぬと云ふことで、其の點甚だ私は遺憾に堪へぬのでありますが、是は單に司法部だけに限つたことではないので、一般の問題にも關聯致しますから、司法大臣に對する御質問は是で打切りまして、厚生大臣或は大藏大臣から御答辯を繼續して得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=19
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020・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは通告順に依りまして、江崎眞澄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=20
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021・江崎眞澄
○江崎委員 厚生大臣に御質問申上げます、本法第一條に、勞働關係の公正な調整を圖り、勞働爭議を豫防し、又は解決して、即ち此の産業の平和を維持し、以て經濟の興隆に寄與すると云ふ大目的が謳つてありまするが、敗戰後の經濟界の混亂から此の産業を再開せしめ、動もすれば怠業の資本家を刺激致しまして、此の資本家を起ち上らしめたと云ふのが、所謂勞働組合法制定に依りまする勞働者の團結であるとか、其の賃銀値上であるとか云つた理由の爭議が大きな原因をなして居る、發展に貢獻した點と云ふことも私は見逃し得ない點だと思ふのであります、そこで今日此の勞調調整法を出されたのでありまするが、厚生大臣は再三資本家の味方としての法規でもない、勿論勞働者の味方としての法規でもないと頻りに仰しやるのでありますが、勿論何れかの味方であるやうな法規でありますならば、左樣な法案に對しましては、我々としても審議の必要を認めて居らないのであります、當然私は厚生大臣の言はれる所の公益擁護の觀點に立つ立法であることを了解して居るのでありますが、本法案が自然此の爭議を規制すると云ふ點に於きまして、何としてでもやはり勞働者側により多くの規制を持つて居るのでありまして、資本家に對する制限は窺はれない、そこで厚生大臣或は政府當局としては、何れ資本家に對しては生産「サボ」などに對する規制を改めて法制化すると云ふ意圖を洩らし、同時に其の構想に付ても若干伺ふことを得たのでありまするが、尚ほ私は商工大臣に對しまして、此の生産「サボ」に對する嚴正なり制限と申しまするか、規制と申しまするか、此の輪郭をはつきり承りたいと思つて居りまするが、本日は御都合で來て居つて戴けませぬ、併しながら勞働者は少くとも本法案が通過した時には「ゼネスト」を以て之に反對するのだと云ふやうな言葉があるとしまする時に、此の法案の内容を十分諒解すれば恐らく反對はしない、さう云ふ厚生大臣の御話にありました如くでは、私は中々諒解は難しいと思ひます、そこで眞に厚生大臣が茲に此の法案を何としてでも正しい法案として通さうと思はれるのであつたならば、先般赤松君も指摘致して居りましたが、確かに一部の産業資本家が怠業して居る事實は見逃し難いことでございますが、其の資本家に對して一體如何なる構想を持つて居られるのか、少くとも立法技術の上から見ましても、是は當然勞働保護法が同時に勞働保護法が事務の手續上不便であると云ふことでありましたならば、資本家「サボ」に對する制約だけは少くとも茲に一緒に提案される必要があつたのぢやなからうか、さうして非常に疑心暗鬼を生み、而も「ゼネスト」を以て應ずるのだと云ふ、半ば脅迫的な一部の言葉を聞くのでありまするが、是等勞働者の前に惡徳資本家に對しては、此のやうな制裁を加へ此のやうに取締るのだと云ふ、はつきりした態度を御示しになることが私は先決問題でなからうかと考へるのであります、此の點厚生大臣は如何に御考へになつて居られまするか、丁度内務大臣も御出席になりましたから、此の一點だけを先づ最初に御尋ね致しまして、次に廻したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=21
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022・河合良成
○河合國務大臣 終戰後に於ける勞働組合の發達の状態、勞働問題の進み方に付きましては、大體に於て斯う云ふ道行であらう、極く大まかに見ますると、順調なる進み方を以て來て居るのだらうと云ふことに付きましては私共も同感でありまして、確かに勞働問題に對しまして、殊に個人の權利を擁護すると云ふ面に於きまして、且又勞働者の生活を保護すると云ふ面に於て、相當の働きがあつたことは認めるものであります、併しながら一面に於きましては爭議の頻發もありまするし、又斯う云ふ場合には斯う云ふ調整もあつて欲しかつた、調停なり、或は斡旋なり、或は仲裁なりがあつて欲しかつたと云ふ希望も多分に持つ譯であります、宜い所は宜いが惡い所は成べく避けたいのが政治の目標であります、さう云ふ意味に於て此の法律が一日も早く成立することを希望する次第でもあり、又一面に於きまして日常生活が脅威に曝されると云ふことがあつては、是は國家全體の爲に不幸であるから、さう云ふ意味に於て公益事業に對する拔打爭議の禁止等も至急にやらなければならぬと云ふ意味に於て此の法案が出來て居るのでありまするから、先づ其の問題が一番緊要であると云ふことが重點になります、併しながら今御指摘の通りに、此の法律は組合法から見まして勞働者側を中心に考へて居る、是は疑ひのないことでありまして、大體爭議に關する法律、勞働問題に對する法律は、いつでも勞働者側の規定が何處の國でも大部分になる性質を持つて居るものであります、それは結局勞働者の立法として斯う云ふ形を、取るのが、先づ物の進み方の常態的のものであると私は思ひまするが、併しながら御指摘の如く惡質なる資本家の生産さぼの如きは是は許すべからざる事情でありまして、斯う云ふものに對する制裁を作るのは是は勿論必要であります、同じく此の議會に提案するに付て前後關係はありましたけれども、もう追つ掛け是は出す積りでありますから、其の點に付ては、恐らく法律の實施の機會に付ては同一にならうかと思つて居ります、唯多少殘念に思ひますのは、今も實は已むを得ず生産管理をやつて居ると云ふ實際の陳情を承つて來た所であります、生産管理に對する政府の方針が多少其の徹底を缺いてはつきりしなかつた點がありましたが、最近は御承知の通りはつきり致しました、はつきりしない前に起きました生産「サボ」などに對しまして、それは事實已むを得ずして起きたものか、或は言葉を換へますると、生産者が生産をやらぬと云ふこと、或は工場を閉鎖したと云ふことが、眞に生産者の「サボ」であつたか、又是はどうも已むを得ざる事情であつたか、又其の事業がどうしても國家として生産を増強しなくてはならぬ必要があつたかと云ふやうな點に付きまして、具體的に色々決しにくい點もあらうとは思つて居りまするが、只今承はつた事情であるとすれば、是は生産「サボ」に對するはつきりした法律關係がもつと早く出來て居れば宜かつたと云ふ氣持は私十分持つて居ります、是はどうも世の中の物の進み方に付て、次々に起きて來る社會現象に對して法律が追從して行く關係から多少の手違ひ手遲れと云ふことは已むを得ぬこととは思ひまするが、若し生産「サボ」に對する規律、法規が生産「管理」と云ふものを否認すると云ふ前に出來て居つた方が尚ほ宜かつたと云ふことを率直に私は認めるのであります、併しながら一面に於て、生産管理と云ふものを此の儘に放任するとどう云ふ事態になるかも知れぬと云ふ緊急な必要がありましたから、そこで政府の態度を急に決定してはつきりさしたと云ふ點もあります、彼此れ睨み合はせまして、最も早い機會に於て生産の「サボ」を禁止するのが適當だと云ふ意味に於て今度法律を出す、さう云ふ風に御諒承を願ひたいと思ひます、どう云ふ法律を作るかと云ふことは是は商工省ばかりではありませぬが、主として商工省の關係になりますので、私としましては直接其の方面の關係は薄い併しながら生産「サボ」の禁止と云ふ結果から來ることに付きましては重大な關係を持つて居るのでありますが、其の法律の内容は直ぐ一兩日の中に出ると思ひます、唯それは極く概括的に生産命令なり或は經營を委任することを命じ得る概括的の規定でありまして、又それは生産「サボ」だけを目標として居りませぬ、其の外に國家再建の爲に必要なる生産面に對する權限をも必要として居りますので、極く抱括的の法律が提案されることと思ひます、併しながら具體的の生産「サボ」と云ふものに對して、それをどうするかと云ふことは更に勅令なり其の他で決まることと存じて居ります、さう云ふことになるであらうと想像して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=22
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023・逢澤寛
○逢澤委員長 大變御迷惑ですが出來れば内務大臣に對する御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=23
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024・江崎眞澄
○江崎委員 只今の御答辯に對して尚又後刻御尋ねすることに致しまして、内務大臣の態態の御出席を得ましたから、先に内務大臣に御尋ねを申上げたいと思ひます
私の先づ第一に内務大臣に御尋ね致したいのは官廳の半どん制度であります、此の半どん制度と云ふことを私新聞で見ました時に、土曜日だけ文字通り半日だ、最近官廳の人達の待遇問題が世評に上つて居る折柄、同時にお互ひに食糧問題に困難を來して居りまする上から、土曜日半日程度ならば、是は時代の流れとして一應許さるべきことではないかと云ふ風に感じて居つたのでありまするが、圖らずも是は私の認識不足でございまして、或る日官廳を訪ねますと連日半どんで晝からは居ないと云ふことを知つて、私の認識不足を恥ずると同時に、非常に時節にそぐはない奇異の感に打たれたのであります、少くとも今日敗れた日本の状況を議會を通じ、又國民の日常生活を通じてお互ひが本當に沁々と身に沁みて感じて、其の敗戰感にしつかり足場を据えて起上つて行くことが要請せられて居る譯であります、のみならず本委員會に於きましても健全なる産業の再開と云ふ目途の爲に、産業の平和を維持し以て經濟の興隆に寄與すると云ふやうな大目的を掲げて勞働關係調整法の審議をして居るのであります、其の時に獨り官廳のみが──勿論從業員の待遇問題とか其の外改善しなければならぬ點は認めますが、少くとも戰前に於ても徒に官僚のみが貪つた所の最も封建的な、而も因襲的な此の制度を何が故に今日復活する必要があつたか、少くとも健全なる勤勞意欲を持つて居る所の勞働者諸君の眞面目な氣持を傷つけること甚だしい制度の復活だと思つて居ります、現在新聞の報ずる所に依れば東鐵勞組員の三千名は直ちに此の半休を返上して國鐵輸送に飽まで敢鬪するのだと固い決意を誓つたと云ふことでありますが、少くとも健全なる勞働者の感じ方に於ける限り、私は斯くの如きものであると同感を久しうして居る次第であります、一體今日資本家「サボ」と云ふことが頻りに言はれて居りますが、資本家「サボ」が所謂善良なる勞働者に對する壓迫であるとしましたならば、民衆の友である、民主主義政治の最も良き相談相手である官吏が、半日しか、午前中しか仕事をしないと云ふやうなことであつたならば、是は民に對する所謂官僚の官僚「サボ」である、一體此の制度を何處と何處におやりになつたのでありませうか、又如何なる理由を以て現在の状況にそぐはない制度を復活されたのでありませうか、或は又格別な要求が從業員諸君からあつたのでありませうか、其の點を御尋ね申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=24
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025・大村清一
○大村國務大臣 官廳の執務時間に關することは、内務省に所管して居る所ではございませぬので、餘りぴつたりした御答へは出來ないかと思ひますが、私の所管して居る限りの御答へを申上げます、御承知のやうに官廳の執務時間は内閣で決めて居ることであります、さうして戰時中に於きましては特別の勤務時間を決めたのでありますが、終戰後になりまして、戰前の状態に總ての點が復歸すると云ふ方針で來て居りますから、恐らく官廳の執務時間を戰時中の特例から元へ戻すのも其の線に沿うての措置と云ふやうにも考へて居るのであります、而して官廳の執務時間は暑中に於て午前中と云ふことになつて居りますが、是は現業廳は固より含んで居りませぬ、現場を持つて居る所は別の時間になつて居るのでありまして、内務省のやうに地方の府縣廳、市町村を監督するやうな純然たる官廳事務をやつて居る所は暑中は午前中になつて居ります、是は事實執務の實際から申しまして、暑中になりますと午前中でも十分其の官廳事務は捌けて居るのであります、だらだらと長く居ることが必ずしも宜いと考へて居ないのであります、午前中で捌いて、午後は暑中でもございますので休養もさせ、或は又それぞれの身躾み、修養的なことも致すと云ふことが寧ろ適切だと考へて居ります、併し執務時間外に於きましても民衆に大なる不便を與へることは洵に相濟まぬことであります、又今日は進駐軍との關係もありまして、先方の方の執務時間とこちらとは必ずしも一致して居りませぬから、是等の應待、受入態勢は内務省に於ては十分整へて居ることでありまして、内務省相談所の方に御出掛け願ひますれば、是は受付の所に設置致しております、其處でそれぞれ御不便のないやうに取計らふことに致して居ります、尚又内務省管下の地方廳及び市町村役場に付きましては、是も現場の所は別の時間を持つて居りますが、現場でない所に於きましては、内務省でやつて居りますと同じやうに、之に準じた方法を講じさせて居ります、尚ほ市町村役場に付きましては事情が餘程違つて居りますので、官廳執務時間を必ずしも勵行させると云ふことでなく、市町村役場は其の實情に應じてそれぞれの執務時間を執るやうに致して居ります、其のやうな次第でありまして、之に依りまして大なる不便を一般に與へて居ると云ふことはないものと信じて居ります、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=25
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026・江崎眞澄
○江崎委員 何れ是の復活をされました直接の責任者に對しまして、今少しく私詳しく御尋ねしたいと思ふのでありまするが、尚ほ餘り實際上の執務には影響が少なからうと云ふ御答辯でありましたが、少くとも是が地方廳に至りました時には、實際の執務に非常に影響が多い實例は數々あると思ひます、一々此處に申上げなくても私は御分り戴けると思ふのでありますが、直接の責任者でないと云ふことでありまするから論點を次に進めると致しまして、今日多數の露店商人、要するに健全な勞働者であつたものが現在の待遇、現在の状況では飯が食へない、已むを得ずして闇商人になり下つた、或は又露店商人として細々と生活をして來たと云ふ状況が見られるのでありまするが、之に對しまして七・一五禁止令に依つて大きな制限を加へられた、之に關聯しまして丁度、半どんの問題でありまするが、例へば是等の多くの人達が留置をせられた、役所では半どんで、警察では取調をしない、斯う云ふやうな場合に於て半日しか取調をしないと云ふやうなことがあるならば、是こそ最も大きな迷惑であります、少々の小商人が一日に三人も四人も取調べらられるにも拘らず、半日しか取調をしないと云ふやうな實情がありとしましたならば、私は由々しい大事だと思ひます、それこそ謂はば不法留置とも申すべき事態ではないか、是は東京の話ではなく、さる地方の警察署の話でありまするが、やはり此の經濟違反者を警察に留めて居りまして、丁度午後二時頃に地方の其の警察署長が「サイドカー」を驅つて私用に飛び廻つて居つた、而も午後二時頃微醺を帶びて歸つて參つたのであります、仕事のある時には仕事をして居ると今内務大臣の御話でございましたが、其の署長の如きは醉眼朦朧として二時頃に署長室に歸つて來て居る、私は相對して、少くとも今日微醺を帶びて署長が居らつしやると云ふのは一體をかしいぢやありませぬかと言つて聽くと、自分達は半どんだ、晝からは「サーヴィス」で出て居るのだ、今友人の家へ行つて酒を飮んで來たのだけれども、何が惡いと云ふ體たらくの應答でありました、代議士の私に對して左樣な應答であると致しましたならば、一般民衆に對する應答が如何なるものであるか、而も又其の人の管轄下に取調を受けて居る所の人達、俄かに拘置された勞働者より轉落した人達、或は小商人、闇商人、事の善惡は別と致しまして、是等に對する留置が不法に亙りはしないか、若しも此の事實に付て名前を擧げよと仰しやるならば、私はそれをはつきり申上げても宜しい、斯かる状況で、半どん制度が仕事がある場合には實際に仕事がなされて居るのだと仰しやるのであつたならば、私は大臣の認識を疑ふものであります、此の點如何に御考へになりますか、御答へを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=26
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027・大村清一
○大村國務大臣 前に御答へを申しましたやうに、現場は官廳執務時間に依つて居る譯ではございませぬ、取調當局には半どんは適用して居りませぬ、殊に人權を尊重しなければならぬ時でありますから、犯罪を檢擧する過程に於ての取調を要するやうな場合には執務時間に拘らず急速に取調を進めまして、不必要なる拘束は出來るだけ之を避けると云ふことに指導して居ります、又事實取調當局には、先程申上げましたやうに半どんなしと云ふことで進んで居るのであります、只今の事例は取調當局それ自身の問題ではないと思ふのでありますが、其のやうな措置は妥當でないと思ひまするが、併しそれに依りまして取調當局が半どんをやつて居つたと云ふ譯でもないのでありまして、此の點御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=27
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028・江崎眞澄
○江崎委員 序でに御尋ねを致して置きますが、現在警察署長で實に涙ぐましい模範的な人も數々居るのでありますが、斯かる惡徳署長が尚ほ地方にあり、而も日中から酒を飮んで當然半どんだから酒を飮むのは勝手だと云ふやうな言辭を弄するに至つては不届も甚だしいと思ひます、問題は小さい、さりながら斯かる事態が往々にして地方には尚且見掛けられるから私は申上げたのであります、其の點大臣は一體何と御考へになりますか、無論警保局長などからも此の問に對して御答辯を得たいと思つたのでありますが、左樣に半どんが解釋されて居るとしましたならば、其の半どん自體が少くともあなたの御想像以上に弊害の伴つて居るものであると云ふことを一體御認めになりませぬかどうか御尋ねします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=28
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029・大村清一
○大村國務大臣 只今御述べになりましたやうな事實が果してありとすれば穩當でないと思ひます、此の點は私もはつきり申上げます、尚ほ多數の職員の中に於きましては時に不心得な者もございますので、其のやうなこともあつたのであらうと思ひます、併し大多數の職員は能く職員としての職務を盡すのに專念を致して居るものと私は信じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=29
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030・江崎眞澄
○江崎委員 御答へに對しまして尚ほ詳細に御尋ねしたいのでありますが、問題が問題でありますから、さう云ふ惡徳者に對しましては嚴重に處斷されまするやう要望を致しまして次に移りたいと思ひます
最近露店及び闇商人の取締りが俄かに行はれました、是は關係筋の注意もあり、旁旁從來ありました禁制品の取締、價格などの統制令違反と云ふはつきりした名目も當然あつての上の御取締りであると云ふことに了解するに吝かではございませぬ、さりながら丁度四月の「マッカーサー」元帥の日本占領の報告に見ましても、日本には非常に極端な闇が行はれて居ると云ふ瀝然たる事實に見ましても又我々が銀座を歩きましても、又それぞれの驛の附近を歩いて見ましても、一として闇ならざるはなし、我々の日常生活から闇と云ふものを離したならば、少くとも生活は成立たないと云ふやうな實情にあると思ひます、之を今回七・一五の日を區切つてさうして嚴重に處すると云ふ風に承つて居ります、又全部起訴と云ふことで、説諭處分であるとか云ふやうなことは全然行はないと云ふ風に承つて居ります、丁度十五日以前は其の儘手放しに放置をして置いて、俄かに拔打的に取締りを行つた、決して彼等闇商人、露店商人と雖も好んで私は闇を犯して居り、禁制品を取扱つて居つたのではないと思ひます、働かんとしても働き得ない、食はんとしても食ふことが出來ない、そこで何とかして漸く活路を見出したのが其の途であつた、而も一方に於ては現在の中小商工業の立直りと云ふ點から行きましても、新圓封鎖と云ふことをして中小商工業の息の根の詰まるやうなことをしてしまつた、だから封鎖支拂と云ふやうなことには見向きもせずして、全部中小産業界と云ふものは新圓獲得の爲に闇物資の製造に暇がなかつた、斯かる状況下に於きまして、政府も全然手放しで、凡ゆる所に繊維製品があり、凡ゆる所に禁制品が見られる状況から俄かに取締りを開始し、而も嚴罰に處する、斯かる状況下に罰則を適用されると致しましたならば、それこそ零細な貧乏人、正直者がやはり馬鹿を見ると云ふ結果になるのではなからうかと云ふことを私は心配するのであります、なぜ一體七・一五にしても、例へば明日八月一日からの取締りを一層嚴にすると云ふが如くに、事前にはつきりと示して置いて、政府の行届かなかつた點は同時に國民の自覺を俟つて、一週間なり十日間の間に處理をし、其の後惡徳を續ける者に對しては嚴に取締ると云ふやうな親心あり、厚意ある態度を以て臨まれなかつたのでありませうか、其の點御答辯を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=30
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031・大村清一
○大村國務大臣 此の露店の取締、闇の取締、禁制品の取締、是は今日我が警察の直面して居ります實に扱ひの困難な、非常な重大な問題でございます、御承知の如く終戰後色々の理由から致しまして、國民の間に遵法精神が極めて稀薄になつて參りました、是は必ずしも國民が虚脱状態に陷つて、國民のみ惡いと云ふ譯には申せぬと思ふのであります、是は終戰後の食糧其の他の物資の極端なる不足、之に對する政府、民間に於ける増産が思ふやうに進んで參らぬと云ふやうな社會事情、經濟事情が其の原因になつて居る點が多大でありまして、其のやうな所で國民の大部分が法令なきが如き振舞をすると云ふことになりますると、到底五萬や十萬の警察に依りまして悉く其の違反者を取締ると云ふやうなことは、事實不可能なことでありまして、之に對處致します方法としましては、大いに生産を盛んにし、或は食糧の如きは何等かの方法で國民の露命を繋ぐだけの措置は執る、さう云ふやうな施策が宜しきを得ますれば、そこに衣食足つて禮節を知るとも申します如く、遵法精神も段々蘇へつて來ると云ふことに相成るのでありまして、警察力のみに依りまして此の困難な事態を解決することは所詮困難であらうと云ふやうに考へて居る次第であります、併し終戰後一時警察官も國民と同樣に虚脱状態に陷つたことを否認する譯に參りませぬ、又終戰前のやうな警察の態度で終戰後に臨むことは固より宜しくございませぬ、そこに警察官の頭の切換が百八十度行はれなければならぬ事態に遭遇致して居ります、其の變轉期に於きまして、警察官に於て警察力の執行の限界と云ふやうな點に付きましてもはつきりした見當が付かぬと云ふやうな事態もあつたのでありまするが、段々時日の推移に依りまして、又關係方面との十分なる諒解も遂げられまして、段段と警察官は確信を持つて、此の線までは職務の遂行に勇往邁進して宜しいと云ふ所がはつきりして來つつあります、今日に於きましては略略其の完成の域に達して居ります、今日直ちに十分なる警察力を回復したと云ふことは申上げ兼ねますが、ここ一、二箇月の後に於きましては、必ず國民の信頼を贏ち得るだけの警察官の確信ある行動が出來得ることになると信じて居る次第であります
其のやうな大體の概別でありまするが、御尋ねの露店の問題であります、固より露店を出して居ります側から申しましても、經濟上生活上已むを得ず其處に露店を張つて生計を營むと云ふ者も多分にあることは能く承知致して居ります、それから尚ほ此のやうな物資が不足して居ります時期に於きまして、需要家の方に於きましても露店の便益を受ける點もあることであります、商賣がそこに成立つ點に於きましては、賣る方にも、賣られる方にもやはり双方利益のある點は明瞭であります、此の現實も無視する譯には到底行かないことでございまするが、併し實際問題と致しまして、露店が廣く今日の如く行はれ、さうしてそこには闇行爲乃至經濟統制品がどんどん姿を現はすと云ふやうな、それ等の事態は或は「インフレ」の原因となり、或は又物資が正常「ルート」に依つて配給されることを妨げる、それ等が國民生活及び産業の再建に支障を及ぼすと云ふやうな點も段々あることであります、之を行く所まで自由に放任して置くと云ふ譯に參らぬ點もあるのであります、殊に曩に御指摘になりました七月十五日の如き措置は、露店が契機になりまして、帝都の眞中で澁谷事件、新橋事件と云ふやうな、洵に憂慮すべき騷擾事件を起すに至りましたので、關係方面とも連絡致しまして、是は涙を揮つて馬稷を斬ると云ふだけの決心で斷乎たる措置に出て、ああ云ふやうな騷擾の根を刈るより外ないと云ふことで、あの斷乎たる措置を執つたのでありまして、是は治安の維持の上に於て已むを得ざる措置だと考へて居る次第であります
それから然らば今後の露店をどうするかと云ふことでありますが、此の東京に於きましては澁谷、新橋事件の後、露店商は自發的に休業を致して居つたのであります、現に尚ほ休業中でありますが、是が再開をして──自發休業でありますので、いつまでも休業と云ふことには參らない譯であります、併し澁谷事件でもありました如く、又我々の方の調査に依りますと、今の如く多數の露店が開かれて居りますと、是は謂はば犯罪の温床がそこにあると云ふやうな點があるのでありまして、之を其の儘放置して置きますることは、各種の經濟違反のみならず、治安の維持にも影響を及ぼすやうな虞が多分にございますので、漸次露店は整理してしまふと云ふ方針で進みたいと考へて居るのであります、併し之を一時に全部整理すると云ふことに付きましても、曩に申上げましたやうな、一般市民の上にも不便もあることであります、そこでそれ等の點を彼此れ考慮を致しました結果、禁制品の販賣を先づ嚴重に取締ると云ふことで行きたい、是は闇打ちでは非常に迷惑をする人がありますから、警視廳當局をして、翌八月一日から斯う云ふ方針でやると云ふことを公表致しまして、そこに知らざるが爲に無辜の民を罪すると云ふやうなことのないやうに措置を致して居る次第であります、露店を全部閉店させると云ふことに致しましても、露店外に於きまして、普通商店に於て禁制品が販賣されると云ふことでは非常に不公平なことにもなることでありますから、禁制品の取締を強化すると云ふことで、先づ進む積りであります、恐らくは禁制品の取締強化が十分に成功致しますならば、露店と云ふやうな問題も餘程相貌を改めまして、現在の如き犯罪の温床、治安を紊す原因と云ふやうな性格はなくなるものと考へて居る次第であります、而して是等の禁制品の取締を強化致す方針でございますが、各位も直ちに御想像下さる如く、今日の警察力は全國を通じて僅かに八、九萬のものであります、其の八、九萬の者が凡ゆる禁制品の摘發を、一つも殘さず出來るかと申しますと、現状を以て致しまして、物理的に是は不可能であります、從つて之をやります上に於きましては、重點的に最も惡質なもの、最も放つて置けないものから逐次手を付けるより外事實上出來ないことであります、是等の運營に付きましては、餘程旨く計畫をし、指導をし、運行を致さなければならないことは勿論でございますが、其のやうな事態にありますので、無辜の民を悉く罪すると云ふやうなことには實際問題として進む譯はないと存じます、惡質なる者、最もいけない者、最も取締を要する者と云ふ者から逐次手を強めて行くと云ふ方針で居る點を御諒承願ひたいと思ふ次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=31
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032・江崎眞澄
○江崎委員 御答辯に依りまして、今後の露店商の在り方と云ふ點も、一應はつきりしたのでありますが、問題は前の七・一五に依つて摘發を受けた人、丁度警保局長もいらつしやいましたが、今凡ゆる摘發と云ふやうなことは物理的に不可能だと仰しやつたのでありますが、其の點我々は了解を致します、所が然らばさう云ふやうな状況下に於て、勿論我々も闇に働くやうな者達に對する憎しみと云ふやうなものに付ては、實に限りない憎しみを覺えるのでありまするが、併し此の摘發することが不可能な状況下に於て、而も放置してある状況下に於て、或る者は捕まつた、或る者は闇の利潤に依つて何十萬と云ふやうな家を建てたり、豪奢な生活をして居る此の不均衡を憎むのであります、而も七・一五に引掛かつた者は嚴罰に處する、説諭處分を執ると云ふことはないと云ふことになれば、之に引掛かつた者の多くは少くとも眞面目な勞働者か、多數の家族を擁しまして闇の苦しみに苦しみ拔いた其の結果、闇の恩恵に浴してさうして此の闇の苦しみから逃れようと云ふ方法に出でた結果が、左樣な事態に引掛かる、所謂運不運の岐れ目が大きく作用することになるのではないかと思ひます、左樣なことが若しも今日民主政治と言はれる此の時に於ても、尚ほ平然と行はれることであつたならば、不均衡も甚だしい、而も是れ程弱い者虐めはない、禁制品が一體何處から出たかと云ふことを芋蔓式に大きく出す、勿論又斯樣なことは實際問題として不可能であります、今度引掛かつたやうな零細な者には、一應情状斟酌とか、或は説諭處分とか、さう云ふことがあつて宜しいのではなからうかと言ふことを私は思ふのであります、此の點大臣及び警保局長は如何に御考へになりますか、若し御急ぎでありましたならば、要點を内務大臣から御答辯を戴きまして、爾後技術的なものは詳細に局長から承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=32
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033・大村清一
○大村國務大臣 七・一五の場合に於きましても、是は實際は最も惡質と認められる者を檢擧したのでありまして、實際説諭處分等の輕微の者に對しましては、釋放した者も多數にあるのであります、尚ほ是は一般大衆に對して警告を致します爲に、新聞記事等に出ます所と、實際の方とは相當そこに距離のあることを御諒承願ひたいと思ひます、唯何に致せ此の少數の警察官を以て、多數の取締を致して居ります其の間に於きましては、不公平のないやうに出來るだけの措置は考へますけれども、結果に於きまして總ての點を比較致しまして、何等の不公平も必ずしもないと云ふやうなことも實は有體に申しまして困難なことであります、併しそれ等の點は檢擧處罰をする上に於きまして、能く其の點を念頭に置きまして、不公平の出來るだけ起らないやうに、十分當務者に注意せさる積りであります、尚ほ又御述べになりました禁制品の出所等を確かめまして、拔本塞源的に取締ることは、是は又我々として、最も力を入れなければならぬことでありまして、此の點に付きましても、只今折角努力を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=33
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034・江崎眞澄
○江崎委員 正直な者が馬鹿を見たり、弱い者が一層虐められると云ふ不都合がないやうに、願くば今回の件に關する限り、特に警察力の不十分なるが故に今日の無警察状態が闇の跳梁を來たしたものであると思ひましたならば、其の邊に對する取締に付きましては十分取締當局に於かれましても、御考慮を戴きたいと云ふことを、要望致すものであります、併し成る程新聞記事と實際とは違ふと云ふことは、中央に於て威令の行はれる所に於きましては、實に能く行届いて居ると思ふのでありますが、一歩地方に出ますと、先程申上げたやうな不逞な署長があると同樣に、既に地方の警察署に於てたつた三萬圓の取引に付て其の取引をした本人を一箇月間、今月の二日から昨日に至るまで留置をした、或は又其の關係者三名を十日間に亙つて留置したと云ふやうな、洵に人權蹂躪とも言ふべき不法な留置が行はれて居る、而も其の間取締が十分期されて居なかつた爲にさう云ふ結果があると致しますならば、尚ほ現在地方警察に於て一體何處まで取締つたら宜いか、どう云ふ風に今度の措置を履行して行つたら宜いかと云ふ地方警察の惱みに對しまして、十分なる御連絡と御指揮を得たいと思ひます、以上要望を申上げまして私の内務大臣に對する質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=34
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035・逢澤寛
○逢澤委員長 磯田君に御諮り致します、内務大臣に對する質問、短時間でありましたら此の際許したいと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=35
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036・磯田正則
○磯田委員 二、三分です──簡單に御伺ひします、先程勞調關係法案の私の質疑の際に、厚生大臣と内務大臣に特に兩方の御考へを承りたかつたのでありますが、丁度お見えになつて居りませぬで只今お見えになりましたので一點だけ御伺ひして置きたいと思ひます、此の勞調關係法案が通過致しますと、全國の官公吏は「ゼネスト」を敢行するであらうと云ふやうなことを一部から聞いて居ります、尚又全く此の問題は重大なる問題でありまして、爭議權を官公吏のみに認めないと云ふことに付きましては、全く是は恐るべき結果を來すやうなことになりはしないかと云ふことを憂ふる者であります、之に付きまして先程厚生大臣はさうしたことの起らないことを希望する、又全國の官公吏がさうした行動に出ないやうであることを信じたいと云ふやうなことを言つて居りまするが、尚又厚生大臣は此の法案は將來の勞働組合關係を慮つて作るのであると云ふやうなことを仰しやいましたが、此の目先の只今一觸即發の關係にありまする所の事態に對しまして、取締の面に於きまする内務大臣は、此の問題に對してどの程度の御調査をなされて居るか、又此の不幸な結果が若し勃發致しましたとしたならば、内務大臣としては之に對してどう云ふ態度に出られるか、さう云ふやうな點に付きまして簡單で結構でありまするが、内務大臣の本當の信念を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=36
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037・大村清一
○大村國務大臣 官公吏は其の取扱つて居りまする仕事の公共性に基きまして「ストライキ」をやる權能を認められないことに調整法には立法されて居りますが、是は先進國にも其の例もある所でありまして、又日本の實情から申しましても、さうでなければならぬと考へるのであります、此のやうな事情は官公吏一般も十分諒解して居ることと思ひます、又諒解せしめ得ることと信じますので、此の法案が通過致しましたならば、「ゼネスト」が起るやうなことは私は殆ど考へて居ないのであります、さう云ふことは絶對なからうと確信致して居る次第であります、併し萬一起つたらどうするかと云ふことでありますが、是は勞働關係調整法に於きましても鐵則を定めてありまして、警察と致しましては、「ストライキ」に對しましても、一般的には勞働爭議に對しましては、是が罰則に觸れる刑事犯になると云ふやうな場合でなければ、今後の警察は一切それに關與せざる方針でございます、若し此の「ゼネスト」が起き、そこに犯罪行爲があると云ふことになりますれば、斷乎たる處置を執りますが、そこまで至らない場合に於きましては、警察としてそれに關與する意思は持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=37
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038・磯田正則
○磯田委員 全國官公職員勞働組合協議會、此の傘下の十九團體が此の反對の運動を起して居るやうでありますが、之に付ての内務當局の御調査の範圍と申しますか、御承知でございましたならば御知らせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=38
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039・大村清一
○大村國務大臣 先にも一寸觸れたのでありまするが、今日の警察に於きましては、從來の如き警察のやり方からすつかり反省致しまして、人命、財産乃至暴行、脅迫と云ふやうな所謂刑事犯があります場合に於きましては、其の犯罪の防遏竝に其の檢擧に付きましては全力を盡す積りでありますが、そこまで參りませぬ勞働爭議と云ふやうなものに付きましては何等介入を致さない方針で居りますので、隨て只今御述べになりましたやうな程度のものに付きまして別段調査も致して居りませぬ、それ等の勞働運動に對しましては、今日に於ては主管省は厚生省であります、厚生省で情報を集められるやうなことは或はあるかも存じませぬが、内務省としては情報を集めて居りませぬので、隨てそれ等の問題に對しましての今日御報告を申上げますやうな情報を持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=39
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040・磯田正則
○磯田委員 他の機會に讓りまして、私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=40
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041・逢澤寛
○逢澤委員長 江崎君に諮ります、警保局長に質問をなさつて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=41
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042・江崎眞澄
○江崎委員 大體先程來内務大臣から警察制度に付て、例へば新聞面に現はれたあの威嚇的な言辭とは違つて、實際審理に當つては情状を斟酌し、民主的に處理して居ると云ふ言葉を承りまして、私は是こそ善政なる哉と云ふ感じを深くしたのでありまするが、其の點内務大臣の御答辯に對しまして一應の滿足感を持つて居ります、特に警保局長に御願をし且つ御尋ねしたい點は、一應の御回答を得た譯でありまするが、警保局長としましては、此の際地方警察が統制品などの取締に付きまして非常に迷つて居る、中央では威令が行はれて圓滑に行つて居るのでありまするが、一たび足を地方に振向けると、中央と地方との均衡が取れて居ない、地方では非常に之を重大視して苛酷な取締をして居ると云ふ實情は實際問題として擧げ得るのであります、同時に又是は闇を放置して置いて、さうして中央に於ても遽かに取締を開始したと云ふことと同じやうな話として考へられるのでありまするが、斯樣な不均衡は將來とも決してあつてはならないと思ひます、十分其の點威令を盡して戴きますると共に、斯樣な警察力の薄弱化から、民間に、闇が横行した場合に於きましては、特に事前に豫告をして、さうして國民の自發的な氣持に於て闇行爲を根絶し、然る後にそれに背いたものは徹底的に取締つて行く、其の時こそ私は闇を憎むべしだと思ひます、けれども現在の状況に於て零細な者をいじめるやうなことは、さうして氣の弱い者は浮浪者になり、氣の強い者は辻強盜になるより外に途はないと云ふやうな、一層道義の頽廢を來すやうなことを憂へる者でありますが、警保局長は今回の取締りに付きまして一體如何なる御考へを持つて居りまするか、其の點簡單に直接の責任者として御答へを賜はりたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=42
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043・谷川昇
○谷川政府委員 前段で御指摘になりました點は、全く我が警察の一つの缺陷であると思ふのでありまして、此の點は凡ゆる努力を傾けまして、是が是正に努めたいと思ふのであります、長い間の命令遵法と云ふやうなことに馴れて居りまする警察のことでありまするから、中央からの指示がありますると、之を飽くまでも守り通さうとする非常に職務に忠實なる餘りの行過ぎと云ふやうなことは、今日まで各方面に認められて居たものであることは私も氣付いて居る所であります、是が矯正に付きましては、出來るだけ色々な指示事項の精神なり内容なりを末端まで徹底致させたいと考へて居りまして、此の方面に付きましても極力努力を致して居るやうな次第であります、一例を申上げますれば、今回の闇行爲の取締りに當りましても、警察部長會議を招集し、更に防犯課長の會議を招集致し、更に六大都市のありまする府縣の關係官を集めまして、是等のやり方竝に精神の徹底に努力を致して居るやうな次第であります、又警察官が非常に十分な訓練を受けて居りませず、又最近矢繼早に出て參りまする新しい取締り法規等を十分に消化して、適當なる取締りをやることは中々容易な業ではないと思ふのでありますが、能力のある者を採用し、更に之に十分なる訓練を加へまして、行過ぎ或は間違ひ等を仕出かさないやうに導いて行きたいと考へて居るやうな次第であります
又此の度の問題でありますが、實は是は決して突發のことではないのでありまして、既に半箇年に亙りまして色々取締を續けて參り、又各方面にも色々な手段方法を以ちまして直接間接に自肅或は自戒を促して參つて居つたのでありますけれども、其の效果が吾々の期待に背くものが非常に多いものでありまして、斯樣な結果を見たのであります、色々研究して見ますと、或は一時的に或は一地方的に或は表面的に、此の問題に當りましても問題の根本的解決は困難と考へられますので、明日を期しまして全國的に取締を強化することに致して居ります、總ての準備も出來て居るやうでありまして、餘り行過ぎないやうな形に於て、明日から全國的の取締が開始されることと思ふのであります、最も心配致して居りました關西、殊に大阪等に於きましては、去る二十五日に現地軍政部から知事に對しまして、直ちに府下の全闇市場の閉鎖を求めて參つて居ると云ふやうな有樣でありまして、是が措置に付きましても段々準備を進めて居ります、私共の得て居ります報告に依りますと、一、二箇所多少心配の點もあるのでありますが、大體に豫期したやうな形に收まつて行くのではないかと考へて居るのであります、其の他隱匿物資或は此の方面の經濟關係の犯罪の取締に付きましても、御示しの點は十分に各方面に傳へまして、行過ぎと云ふやうなことのないやうに措置致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=43
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044・江崎眞澄
○江崎委員 只今の詳細の御答辯に依りまして、一應私は此の問題に關する質疑を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=44
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045・逢澤寛
○逢澤委員長 江崎君に御諮り致します、今厚生大臣は豫算總會で答辯中ださうです、約十五分程掛るさうでありますから、暫く休憩致したいと思ひますが──暫時休憩致します
午後三時十五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=45
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046・会議録情報3
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午後三時三十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=46
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047・逢澤寛
○逢澤委員長 休憩前に引續き開會致します──江崎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=47
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048・江崎眞澄
○江崎委員 厚生大臣がおいでになりませぬので、吉武政府委員に對しまして質疑を行ひたいと思ひます、特に與へられました時間内に簡單に御尋ね申上げる便法としまして、逐條的に要點を申上げて御答へを願ひたいと思ふのでありまするが、第七條に「この法律において爭議行爲とは」云々とございまして、之に對する行爲、要するに同盟罷業とか、怠業、作業所閉鎖、之に對抗する行爲と云ふ風に一括資本家側の態度が書いてあるのでありまするが、一體是はどの程度のことを意味するのでありますか、同時に又なぜ一體茲に資本家側の行爲としては斯う云ふことがある、斯う云ふことがあると云ふ風にはつきり御擧げにならなかつたのでありませうか、同時に又爭議に對抗する行爲とあるのでありまするが、例へば資本家側に於て最初に不當な工場閉鎖などを俄かに行ふと云ふやうな場合もあり得るのでありまするが、斯う云つた場合調停はどう云ふ風に行はれるのであるか、例へば資本家「サボ」の規制に於て之を規定せられるのであるか、其の點御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=48
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049・吉武惠市
○吉武政府委員 今の御話の「これに對抗する行爲」と云ふ資本家側の行爲と致しましては、七條の中に「作業所閉鎖」と云ふものを一應掲げて居ります、普通爭議として用ひられる爭議行爲は、何處の國に於きましても勞働者側は所謂「ストライキ」、それから「サボタージュ」と云ふ方法を執り、事業主側はそれに對しまして「ロックアウト」と云ふ方法を執つて居るのであります、是は代表的なものでありますので此處に掲げたのでありますが、併し色々の細かい點になりますと兩方とも色々作戰を練る譯でありますので、其の際には個々の細かい點を一々掲げられないので、主なものだけを掲げてあるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=49
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050・江崎眞澄
○江崎委員 大臣が來られましたから、先程御答辯を戴きました點に付きまして、再度御尋ねを申上げたいと思ひます、資本家「サボ」に對する規制立法化が遲れた、洵にどうも已むを得ぬ、同感だと云ふ御返事でございましたが、少くとも此の勞調法が勞働者抑壓の法規であると云ふ風に誤解されて居ると致しましたならば、是も已むを得ずとして、なぜ一緒に御出しにならなかつたか、是は何度考へて見ましても全く遺憾の極みでありますが、併し二、三日の中に恐らく出るであらうと云ふことで一安堵をする者であります、此の勞調法の審議に當つては、勞働法制審議會に依つて原案が練られたのであります、資本家「サボ」は勞働者に最も重要な關聯のあるものでありますが、先程承る所に依ると或る法制の中に書くのだ、是れだけ獨立ではなくして、他の法制中に一應規定が書かれるのであると云ふことでありますが、左樣なことでありましては十分理解させて行くのに困難な點が考へられるのではなからうか、先般松岡駒吉氏の答辯に對して商工大臣は資本家「サボ」の認定は非常に難かしいと言つて居られたが、今度の規定は大雜把であるとか、資本家「サボ」は認定が難かしいとか、成程難かしいでありませうが、總てさう云ふことは動もすれば資本家を擁護するかのやうに取られる憂ひが多分にあると思ひます、さう云ふ點に於て是非共資本家「サボ」の規制は嚴重に行はれる必要があると思ひますが、經濟閣僚として資本家「サボ」に對する立法精神はどう云ふ構想に於て練られて居るか、今少しく詳細に御尋ね申上げたいのであります
尚ほ御答へを戴きます便宜上あと二點だけ續けて御尋ねを致します、先程私は内務大臣に自由市場の取締と云ふ點を中心にして色々御尋ねを申上げたのでありますが、愈愈明日から禁制品は繊維製品にしても食料品にしても全部影を潜めることになるのであります、今日都會生活に於て缺配、遲配を漸くにして補つて來たものは洵にあの露店の功績であつたと私は思ひます、又一方に於ては闇の放任が辛うじて我々の露命を繋がしめたものであると云ふことも考へられると思ひます、勿論闇が此の平和日本に於て堂々行はれるなどと云ふことは好ましいことではありませぬ、去りながら明日から影を潜めたとして我々の食生活は一體保ち得るであらうか、特に勞働者の場合に於て、一日の慰安をあの露店の出店に於て得ると云ふことは今後は不可能になります、又賃金の中から闇の高い「パン」ではありましたけれども、之を買つて家庭に持ち歸つて、待ちわびた妻子に與へて何とか其の日其の日を凌いで一日の勞働に從事することを得た、是も私は確かな實情だつたと思ひます、此の點に關して厚生大臣は此の遲配、缺配の時に一體露商の取締と睨み合せて如何に御考へになつて居られますか、此の都市生活者の苦難生活を全からしめる所の自信を御持ちでありますかどうか、其の點御尋ねを致したいと思ひます
尚又先程御聽きになつて居つて戴いたと思ひますが、内務大臣に對して半どん制度に付て御尋ねを申上げました、是は内閣の規制であるからと言つてお逃げになつたのでもないでせうが、正面からの御答辯を避けられたのでありますが、厚生大臣として、今健全なる勞働意欲の盛んに世上言はれて居る時に、一體此の半どん制度を如何に御考へになるか、此の儘此の制度を存置する結果が健全なる産業精神の發達、産業の再開に對して、官僚の横暴、官僚の因襲と云ふことが大きな障碍となりはしないかと云ふ點を私非常に憂ふるのでありますが、此の點厚生大臣は如何に御考へになるのでありませうか、以上三點に對して要點に付て御答辯を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=50
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051・河合良成
○河合國務大臣 資本家「サボ」の點に付てでありますが、勞働法規は、勞働法規として一つの纒まつた體系に於て發達を遂げて來て居りますが、日本は後進國としてまだ此の問題を習つて行く點が多分にあります、資本家「サボ」と云ふ問題に付ては餘り纒まつた體系の法はないと思ひます、それはどう云ふ譯かと云ふと、資本家「サボ」がいかぬと云ふことは二つの意味がある、其の一つは國家を再建しなければならぬと云ふところの増産目標、是が最も大きい點でてる、増産は何れの國でも必要でせう、併しながら或る場合には「オーヴァー・プロダクション」で、もう増産は御免だと云ふ時代もあつた、自由主義、資本主義時代に於ける經濟轉換と云ふものは御承知の通りの状況である、そこで戰爭が來て居る、戰爭は又特別な視角から見た増産と云ふものを必要とした、それで日本のやうな、經濟再建を目標とした増産がどうしても非常に高調されなければならぬ時代は、餘り世界各國に此處にも彼處にもあつたと云ふ例ではありませぬから、それに對する法律は社會事情に追隨する、さう云ふ見地から特別な法規がなかつたと思ひます、だから是は一つの纒まつたものでなければならぬと云ふことに考へるのはどうかと私は考へます、且つ又法律は一つのものの中に編み込ませよう或は分量が少ないから、さう云ふことに依つて法律の價値は減ずるものではない、小さくても「ダイヤモンド」は値段があるやうに、それは或る法律の中に一條の條文でも、迚も立派な光を發することも考へ得る、是は全く、立法技術の形式のことになります、其の運用の妙さへ得れば其の點は遁がれるものではないかと思ひます、もう一つの資本家「サボ」の問題に付ては勞働の「チヤンス」と云ふ問題に關係して居りませう、勞働者が職場を失ふ、是は成べく失はしたくないと云ふ點が中心になりませうが、併し申せば此の問題は相對的です、何となれば勞働の機會を失はせると云ふには、先程の「ロック・アウト」の問題、斯う御考へになれば御分りになります、「ロック・アウト」と云ふことは當然行はれて居る、それが國家再建の爲に増産に必要だと云ふ點に主要點がありますから、是は目標にはありますが、第一の重大な問題ではないから、是は商工省の法規とせずして出る、さう云ふことに依つて行かう、旁旁以て勞働者の「チヤンス」を失はしたくないと云ふ氣持を編み込ませようと云ふところから、法制としては斯う云ふ形を取つて行くのは當り前だと思ひます、又勞働關係調整法と何故一緒に出さなかつたか、少し遲れるのは遺憾であると云ふことでありますが、私は之を勞働者の彈壓法だとは夢にも考へませぬ、だから一緒に出さなかつたのであります、寧ろ生産管理を拒否する結果として、其の點に於て斯うも考へたら宜からうと云ふ點が主要なのであります、さう云ふやうに御承知願ひます、第二の點は八月一日からの闇市場閉鎖の爲に、勞働者、勤勞者の食生活に自信があるかと云ふ意味の御質問でありましたが、是は洵に面倒な問題でありまして、平重盛の忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず、是は御質問の方も能く其の衷情は御察しのことと存じます、と申すのは、私は嘗て農林次官の時に生鮮食糧品の統制を撤廢した男です、さうして其の後を「レール」に乘せて補給制度にしますのに、半ばにして私は職を辭めました、それで此の問題に付きましては私は多分の體驗を持つて居るのであります、中々こちらを抑へればああなり、あちらを抑へれば斯うなる、闇と市民の食生活と云ふ問題は兩立しなくちやならぬが、中々完全に兩立は出來ない問題であることは御存知の通り、此の社會事實に對してどうしろと御言ひになつても、少し御質問が御無理でないかと衷心考へて居る次第であります、併しながら最善を盡します、併し是は時と睨み合せなければならぬ、今野菜の出盛り、先づ宜からうと思ふ、是れから又野菜の冬枯れになる、又何かの方法を講じなくちやならぬと云ふので、時と睨み合せ、其の需要供給の状態と睨み合せまして、さうして、又各人の收入と睨み合せて、色々補給なり助成金なり或は市場を強くしたり弱くしたり、斯う云ふ方法を執るのぢやないかと私は考へて居ります、それで今日自信があるかと云ふならば、出來るだけのことを致しますと云ふことで、どうぞ此の問題は御勘辯を願ひたいと思ひます
第三の半どんの問題でありますが、是は働かぬと云ふことは、働かなくちやならぬと云ふ意欲に對しまして常に「マイナス」であります、さう云ふ意味に於て私は御質問の通りのことを感ずる者であります、併し是はやめて居ると云ふことに付ては色々の事情もありませうし、是は大村君も觸れられましたが、總ては先づ復舊すると云ふことで、國民の伸び伸びした自由に歸したいと云ふ一つの氣持もありませう、併しながらそれに對する反面の批判もありませう、斯う云ふ點を秤に掛けて考へる問題でありまして、是は私から其の是非を申上げる立場でないことを御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=51
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052・江崎眞澄
○江崎委員 資本家「サボ」の問題でありまするが、現在少くとも資本家「サボ」と云ふのは、小資本に於ては永續することが出來ないのでありまして、少くとも日本の現状に於ても、やはり資本家の生産の再開と云ふことは、先づ小資本から始まつて中資本に亙り、今日では大資本が相當な資材を持ちながら、やれ是れが足らない、あれが足らないと云ふやうなことを口實にして、「サボ」をして居る儼然たる事實は、飽くまで私共見逃し難い事實だと思ひます、而も經營上採算が取れないと云ふ所からして、資材の不備、不圓滑と云ふやうなことを口實としまして、生産「サボタージュ」をして居ると云ふことは、資本家が社會に對する所の製品値上げの一種の運動だと私は思ひます、資本家の値上げ運動なんです、勞働者の所謂勞働賃金の値上げと云ふことと在り方は違つて居りまするが、洵に忌むべきものだと思ひます、而も此の生産「サボ」と云ふものが、勞働爭議を誘發する所の大きな原因になつたり、同時に又生産管理の問題を繞りまして、色々な問題が提起さされて居ることを見まするに、私は生産管理の問題に付きましては洵に政府と意見を同じくし、特に先般の赤松君の質疑の點に對しましては非常な異論を持つが故に、尚ほ商工大臣に對しまして意見を開陳しながら能く御尋ねを申上げたいと思つて居りまするが、現在敗戰後の特殊な事情にある日本の生産「サボ」と云ふものは、恰も此の勞働法制定と同時に急坂を下る自轉車のやうにぐつと下りたから、茲で勞調法を出して大事を取らうと云ふのであつたならば、やはり變態的な資本家「サボ」に對しても、同樣に嚴重な規制と云ふものが加へられなければならないと思つて居ります、而も其の立法化に際して勞働者側の意見を徴して立法化すると云ふことは、何としても現在に即した法規を作る以上は、私は是が非でも必要だと思つて居ります、其の點に付きましては、何れ又商工大臣に對しまして詳細なる質問を試みたいと思つて居りまするが、其の點厚生大臣は如何に御考へになりますか、重ねて御伺ひを致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=52
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053・河合良成
○河合國務大臣 生産「サボ」の問題は値上運動だと云ふ御觀察もありましたが、それまでの意思がありますかどうか、是はある場合もあるかも知れませぬ、一概にさうとも言へぬのぢやないかとも思ひます、と申すのは、今日生産の状態は御承知の通りに、利潤と云ふものは、今の軍需工業の轉換工業などに見ましても殆どありませぬ、物に依つては勿論ありませうけれども、大體に於て基本産業的なものになれば利潤と云ふものは少しもないのでありまして、さうして採算が非常に問題の重點になると思ひます、採算と生産の必要性と云ふものが茲に睨み合つて、其の中にどう云ふ意思が加はるかと云ふやうなことと睨み合つて、生産「サボ」であるか、生産「サボ」でないかを決定しなければならぬやうな、微妙な問題になるのではないかと思ふのであります、勿論是が決定には勞働委員會なり、或は又特殊の機關なり、或は一種の統制機關なりが介在しまして、公正な立場からそれを見なければならぬとは思ひます、勿論惡意のものもありませう、併しながら惡意と云ふよりも、客觀的の情勢に於て生産「サボ」と認むべきやうなものが中々出て來ると思ひます、さう云ふ問題に對してそれでは無理に生産を命じて、さうしてどう云ふ結果になるかと云ふやうな問題も、やはり資本主義を認めて居る以上は、それに對する問題も考へなければならぬ、さう云ふ點に於て色々技術的の問題がありますけれども、此の問題は勞働者の側の權利義務の方の關係には餘り重大な接觸點はないと思ひます、さう云ふことで、只今の所では勞働組合に此の問題に付ての意見を聽かうと云ふ考へは持ちませぬ、持たなくても宜いのではないかと考へて居ります、併し此の點に付きましては何れ商工大臣の意見も聽きました上で、能く練つた上で、必要があれば必要な措置は執る積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=53
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054・江崎眞澄
○江崎委員 此の問題に付きましては何れ次回商工大臣の御出席の節に、尚ほ詳細に御尋ねすることに致しまして、與へられました時間も既に經過して居りますから、簡單に逐條的な問題を御尋ね申上げたいと思ひます、第九條に、爭議行爲が發生したときは其の當事者は直ちに其の旨を勞働委員會なり、行政官廳に届出なければならないと規定してあるのでありますが、若し此の勞働委員會なり、行政官廳などに届出をしなかつたならば、一體どう云ふことになりますか、届出は自由であるかどうか、此の點を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=54
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055・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御尋ねの届出に付きましては、罰則を附して居りませぬ、ですから出來るだけ届出て欲しいと云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=55
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056・江崎眞澄
○江崎委員 さうしますと罰則がなくて結局自由であると云ふことであれば、強制調停以外の場合は調停に應じなくても宜しいのでございますか、例へば勞働者側、使用者側それぞれの場合に調停に應じない……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=56
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057・吉武惠市
○吉武政府委員 御話のやうに調停の際は、十八條に規定して居りまするやうに、公益事業以外の場合、即ち一と二に掲げてある場合に於きましては、一は、双方から申請がないと片方からだけ申請があつても、片方は應ずる必要がございませぬ、それから二の方は、一方からの申請があつても受理しますが、それは豫め兩者で勞働協約で以て若し自分の工場で爭議が起つた時には、一方から申請があつても調停委員會に掛けると云ふ約束があつた場合には一方で宜しい、斯うなつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=57
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058・江崎眞澄
○江崎委員 十八條の第五項に於きまして、「特別の性質の事業に關するものであるために公益に著しい障害を及ぼす事件につき、行政官廳から勞働委員會に對して、調停の請求がなされたとき云々」と云ふ言葉があります、一體此の特別の性質の事業、公益に著しい障害を及ぼす事件と云ふのは、是は規定した以外のものも含んで居るやうに受取れるのであります、若しさうであるとすれば特別の性質の事業と云ふものを行政官廳は、其の場の状況を眺めて獨斷をすることはないか、必要以上に之を縛り付けて、必要以上に干渉すると云ふことも考へられるのであります、若しさう云ふ事態が發生したとすれば、是は事實上の彈壓であり、それこそ行政官廳に依る所の、所謂官僚の彈壓と私は斷じても差支へがないのではないかと云ふ風に考へるのであります、此の點どう云ふ解釋でありますか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=58
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059・吉武惠市
○吉武政府委員 十八條の第五項にありまする其の事件が規模が大きい爲めか、若くは特別の性質の事業であつては公益に著しい障害を及ぼす事件、是はやはり客觀的に判斷する外ないと思ひます、隨て之を以て廣義に政府が之を解釋して、全部何でも彼でも勞働委員會の調停に持つて行くと云ふことは、是は許されないのは勿論であります、そこで是は政府が勝手に之を調停するのではないのでありまして、勞働委員會に持込みますから、勞働委員會ではやはり使用者側、勞働者側、中立と云ふ民主的な機構になつて居りまして、其處でやはり判斷致しますので、客觀的な妥當性のある判斷と云ふものが成立つのではないか、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=59
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060・江崎眞澄
○江崎委員 例へば公益事業で指定外の場合、銀行であるとか、新聞社であるとか、或は配給の組合であるとか、總てさう云つたものを此の規定に依つて私は不當に行政官廳が取締る、或は調停の請求を委員會にすると云ふやうな場合が考へられると思ひます、勿論只今の御答辯のやうに、常識を以て、一應尺度を以てそこに規制をすると云ふ考へ方も考へられるのでありまするが、此の規定は非常に勞働者側に取りましても誤解を生じ易い文面と受取れます、行政官廳と言はず、或は勞働委員會なり別な機關に依りまして之を認定すると云ふやうなことは御考へにならぬかどうか、其の點御答へ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=60
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061・吉武惠市
○吉武政府委員 今御話致しましたやうに、一應行政官廳としてどうも是は放つて置いては著しく公益を害すると考へました時に、それを勞働委員會に持込みます、勞働委員會ではそれを取上げる時に、やはり皆の意見で取上げまするから、そこに公正な判斷が付くと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=61
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062・江崎眞澄
○江崎委員 時間も大分過ぎましたので、あと一點だけ御尋ねします、第二十三條には調停委員會のあり方に付て書いてある譯でございますが、例へば爭議の主張事項に於て相當是は委員會内部の協議に於て對立する場合があるだらうと思ひます、一體さう云ふ對立した場合に、委員長は決定權を持つて居るかどうか、又若し茲に決定權がはつきり書いてないから恐らくないではないかと思ひますが、さうすると調停の最後案と云ひますか、成文化に於て非常な不自然なことを來すやうなことはないか、此の點御答へを願ひます、簡單で結構です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=62
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063・吉武惠市
○吉武政府委員 此の二十三條に於ける決定權は委員長にはございませぬ、併し委員の一人としてそれに對して加はることは勿論出來る譯であります、兩方が同數になつた時に之に決定權を持たせなかつた所以は、調停と云ふのは裁判と違つて唯結論を出すと云ふだけでなしに、兩方の納得が行くやうな案を作ると云ふのが趣旨なのですからはそれを唯多數決で決定しないと云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=63
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064・江崎眞澄
○江崎委員 尚ほ一點三十八條に付きまして御尋ねをしたい點がありますが、是は丁度大臣も御席に見えませぬので、何れ次會に讓りまして、私の本日の質疑を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=64
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065・逢澤寛
○逢澤委員長 山下榮二君に御諮り致します、今大臣が一寸缺けて居られますが、政府委員に對しての質問事項がありましたならば、政府委員に對して先に一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=65
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066・山下榮二
○山下(榮)委員 時間も相當遲いので、大臣も忙しいやうでありましたならば、明後日でも……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=66
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067・逢澤寛
○逢澤委員長 五時過ぎ位までは繼續したいと思ひます、後の豫定もありまして、皆さんに成たけ均等に質問の機會を與へるやうにして行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=67
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068・山下榮二
○山下(榮)委員 それでは質問を申上げますから、政府當局から大臣に御話を願つて、大臣が御聽きになつた上大臣から御答辯を戴きたいと思ひます
本法律案の制定に對しましては各議員の色々な御意見、御質疑を拜聽致して居りましても、どの委員の方も殆ど何故勞働者側の反對があるのを押切つて提案するかと云ふ議論が多いやうであります、私は下關の久保田鐵工場で働く一勞働者と致しまして、本法律案に對しましては勞働者の立場から此の問題を檢討して見たい、斯う考へて居るのであります、新聞紙の傳へる所に依りますと勞働調整法案は曩に中央勞働委員會に設置された所の勞働法案審議會で御相談をなさつたと伺つたのであります、而も其の審議會で勞働者側の方の委員が全部反對であり、中立側の方の委員も一名か二名反對があつたと云ふ記事を拜聽したのであります、殘りの中立側と資本家側の委員は本法案に賛成であつたと伺つたのであります、さう云ふ情勢下にあるのをなぜそれを押して提出されなければならぬかと云ふ其の理由を私は御伺ひ致したいと云ふのであります、而も最近の實情に依りますと、獨り官廳の勞働組合だふでなく、一般工場の勞働組合と雖も本法案の通過に反對致しまして、職場に於ては職場大會を開き、地方にては地方の勞働者大會を開いてそれぞれ反對の決議を致して居るのであります、先程の同僚議員の質問の中にもありましたやうに「ゼネスト」を行つてでも敢へて此の法案に反對すると云ふ氣勢が窺はれて居るのであります、斯樣な情勢下に於てなぜ本法律案を提出されなければならぬか、其の理由が我々には分らないのであります、其の理由の存する所を御説明を伺ひたい、斯う考へて居るのであります、本調整法案の實施は我が國の健全な勞働組合運動の發展を期する爲に出なければならぬ法律案だと想像するのでありますけれども、法律案の内容乃至は世間の今の喧しき問題等から綜合致して考へて見ます時に、必ずしも日本の勞働運動を助長發展せしむる法律案だと云ふ解釋が出來難いのであります、若し政府は本法律案は勞働運動の助長發達の爲に出すと仰しやるならば、此の法律案のどの箇所が勞働組合運動助長發達になると云ふ明文があるか御示しを願ひたいと思ふのであります、更に厚生大臣は日本の凡ゆる組織勞働者が本法案に反對して居ることを御知りになつて居るかどうか、私は其のことを伺ひたいと思ふのであります、私の手許には一昨日から本日に掛けまして、相發多數の反對の文書が參つて居るのであります、本日院内に參りましたものを讀んで見ますと、神戸交通勞働組合、或は關西交通勞働組合協議會と云ふやうな方面からも參つて居りますが、其の書面に依りますると、「謹啓、酷暑の折柄中央に御健鬪の事深く感謝いたします扨て今般政府提出にかかる勞働關係調整法案なるものは社會の健全なる發展を阻害するのみならず吾等勤勞無産者の自由を再び鐵鎖の運命に追ひこまんとしてヰる尚此の上に勤勞所得税は吾等一般勤勞階級として眞に其の日の生活に追はれ乍らも最後のどたん場に尚自衞の爲めに鬪ひ續けてヰる吾等勞働階級の眞理を御賢察の上議會に於て充分御審議の上生か! 死か! 岐路に立てる吾等の爲めに御盡力下さいます樣切に御願ひ申上げます」と云ふ稍稍同文の葉書が本日此處に二十五通參つて居るのであります、更にそれぞれの職場に於て勞働組合の大會を開いて決議をして參つて居るのが澤山あるのであります、是は東亞鑄鋼株式會社の勞働組合の決議であります、昨日は宿屋の方へは或は大同製鋼其の他から澤山參つて居つたのであります、其の内容を一々檢討致して見ますと、勤勞所得税の即時撤廢、勞働關係調整法制定絶對反對、生産管理彈壓反對と云ふものが大部分であるのであります、而も本法律案が日本の産業復興、産業振興を目途として制定される法律だと致しまするならば、も少し勞働者により良き協力の出來る態勢を整へて本法律案を出さなければならぬのではなからうかと云ふことを痛感するのであります、せめて中央勞働委員會乃至は其の下に作られた所の勞働法案審議會等の勞資双方の協力を得て本法律案を出されると云ふことが最も適切な方法ではなからうかと思ふのであります、然るにそれ等の方途を講ずることなく、唯反對を押切つて出されると云ふことの其の理由が我々には分らないのであります、其の理由を伺つてから私問題の審議に入りたいと考へるのでありますけれども、大臣が御見えになりませぬから、もう少し進めたいと考へるのであります、私の考へは本法律案が制定されなくとも、昨年十二月制定されました所の勞働組合法だけで、今日の日本の勞働實情は完全に巧く運營が出來る筈だと云ふことを痛感するのであります、勞働組合法の内容を具さに檢討致します時、此の組合法案の中に日本の凡ゆる勞働事情に善處する條項が見られて居るのであります、或は先般も問題になつて居りました所の經營委員會の問題に致しましても、勞働協約を中心と致しまして、最近何處の工場でも經營委員會を設置致したのであります、寧ろ勞働調整法案と云ふ法律案を出すよりも、此の所謂經營協議會を法制化されて、勞働者をして經營に參加せしめると云ふ法的な根據を與へる、さうすることが日本の産業の民主化である、日本の勞働者をして産業に全幅の協力をなさしめる唯一の方法ではなからうかと云ふことも考へられるのであります、それ等の色々な問題は全部此の勞働組合法の中に盛られてあると私は思ふのであります、然るにそれ等の全面的な活用なくして茲に勞働調整法なるものを敢て出さるる所の眞意を私は質したい、斯く考へて居るのであります、以上に付て先づ事務當局でも構ひませぬから、之に對する御答辯を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=68
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069・吉武惠市
○吉武政府委員 只今御話がございましたやうに、本法案を勞務法制審議會に付議致しました際、最後に勞働者側にも反對がありましたことは御話の通りであります、私共甚だ殘念に存じて居る譯でありますが、之を制定致しました理由を申上げますと、第一は昨年の暮に制定致しました勞働組合法は、主として組合の團結權保障を主とした法律であります、唯其の中に勞働委員會を設けまして調停、仲裁をなし得ると云ふ規定が僅かに入つて居る、勞働委員會が調停、仲裁をする場合にはどう云ふ風にしてするかと云ふ規定は全然織込まれて居りませぬ、それは引續いて此のやうな勞働爭議の調停に關する法律を出す積りでありましたので其の方に規定する積りで讓つて居るのであります、其の點は昨年の暮の議會に於ても答辯して居る所であり、又議員からも然らば引續いて次の議會には提出するやうにと云ふ意見も出て居つたやうな次第でございます、それが一つであります
もう一つは屡屡生大臣から申しました如く、公益擁護の爲の最小限度の制限が入つて居るのであります、是は一つは所謂三十七條に於きまする拔打爭議の制限であります、是は勞働者側の爭議に取りましては多少制限になり氣の毒には存じますけれども、併し一般の大衆を考へますならば、交通とか水道とか、斯くの如き日常生活に直接關係のある爭議に付きまして拔打爭議をすると云ふことは甚だ面白くない、是等に付ての制限は唯此の法律のみでなく、各國の法律にも規定されて居る所であります、特に「アメリカ」等に於きましては、鐵道等に於ては最長六十日間の猶豫期間を置かなければ爭議に出られないと云ふ位の制限が付いて居る位であります、私共三十日間の猶豫期間を置きましたことは、勞働者側の爭議をする上に於てやりにくい點は十分了承して居りますけれども、他面公益の爲には或る程度是れ位は忍んで戴かなければならぬのではないかと云ふ積りで致した譯であります、尚ほもう一つの點は三十八條に於ける官吏の爭議行爲の制限であります、是も今朝來厚生大臣から屡述べましたやうに、國務の遂行は一日としても停滯しては國民に相濟みませぬので、是も最小限度の已むを得ぬ制限を設けたやうな譯であります、以上が此の法律をどうしても出さなければならない理由でございますが、勞働者側の反對には色々ございます、全般として申されて居る理由の一つは勞働法を先に制定すべきであつて、其の後に此の法律を出したらと云ふのが相當全般を通じての御意見であります、是は私共も御尤もな點であると存じて居ります、併し先程來申しましたやうに、此の法律は元來から言ふならば、昨年の暮に出した勞働組合法の姉妹法たるべきものでありまして、寧ろ十二月の議會に同時に出すべきであつたのであります、併しあの終戰後の僅かな期間どさくさの間に急いで組合法だけをやつと間に合して提出したやうな譯であります、遲れたのは甚だ遺憾には存じますけれども、引續きやつと今度の議會に提出したやうな譯であります、さうだからと言つて勞働法、詰り勞働者保護に關する法律が遲れて宜いと云ふ理由にはなりませぬ、是は一刻も速く作るべきであり、我我は其の責任をひどく痛感して居るものであります、先般來是が成案に鋭意努力して居りまして、今日も實は私こちらに出て居つて出席出來ませぬが、厚生省に於きましては勞務法制審議會をやつて居ります、先般來之を立案して急いで居るやうな譯であります、是は是非共次の臨時議會には私共出したいと思つて居ります、此の法律は唯組合法とか調整法の如き單純な法律ではございませぬで各方面の勞働者各企業に亙る賃金でありまするとか、勞働時間であるとか、或は安全衞生の問題であるとか、或は扶助の問題でありまするとか、勞働契約の問題であるとか、各種に亘る法律であります、さう短時日に出せと申されましても案に書けぬことはありませぬが、極めて粗末なものになります、是は重要な法案でありますから、私共も此の春以來實は鋭意勉強して、急いで居る譯であります此の點遲れたことは甚だ申譯ございませぬが、故意に遲られた譯ではございませぬので、御諒承戴きたいと思ひます、尚ほ此の勞働組合法の健全なる發達を助長すると云ふが、此の法律が何處に役に立つかと云ふ御話でありますが、斡旋に致しましても、調停に致しましても、又仲裁に致しましても、決して使用者だけが利用すべきものではございませぬ、現に勞働委員會に於きましても、色々な手續がございませうが、勞働者側からも隨分澤山提訴されて居ります、中央勞働委員會でも寧ろ勞働者側の方の提案があつて、使用者側の提案がない位であります、各府縣に於きましても必しも此の機關を使用者だけが利用するとは私共考へて居りませぬ、爭議はお互ひに自主的に解決されることを私共は本旨と致しまするけれども、お互ひで解決付かない時には、或は使用者側からも提出されることであるでありませうし、又勞働者側からも提案されることはあります、そこで公正な立場に立つて、さうして爭ひをなくすると云ふことは、私は一刻も早く制定さるべきものであつて、放置されて宜いと云ふことにはならないかと思ひます、要は是の運用であります、此の運用が兩方に公正に行はれるならば、私は決して勞働者に不利ではないと思ひます、今日勞働委員會が色々議論されて居ります、私共も此の勞働委員會の構成に付きましては完全なものとは考へて居りませぬ、目下是が改正に付きましては中央勞働委員會に諮問を致して居りますので、成案を得れば此の施行に伴つて早く改組して公正なる組織に置換へたいと思つて居ります、此の法律が爭議を解決する仕組として、斡旋なり、調停なり、仲裁なりの三つの方法がございますが、此の斡旋なり、調停なり、仲裁は官廳がやるのでございませぬ、從來動もしますると官吏が間に入りまして解決をして居りましたけれども、是は總て民主的なる勞働委員會、其の勞働委員會の中に於ける調停委員會、勞働者側、使用者側及び中立と云ふ極めて日本としては他に例のない民主的なる組織に依つて之を解決すると云ふのであります、決して是は勞働者側に役立たない法律であるとは存じて居ない譯であります
尚ほ經營協議會を法制化したらどうかと云ふ御意見でございますが、此の議論は我々も實は相當研究をして居ります、商工省邊りの意見に於きましては之を法制化しようと云ふ意圖もございます、併しながら此の經營協議會と云ふ所謂事業主と勞働者とが相共に協議をして、産業民主化を圖ると云ふことは、各企業に依つて色々違ひます、又勞働組合の色々な發達に依つても違ひます、それを全國一律に各企業、各勞働組合に當嵌まる基準を以て之を強制すると云ふことは、私は決して運用宜しきを得たるものとは存じて居りませぬ、私の聞いて居る所に依りますと、「ドイツ」が此の前の第一次大戰の後にやはり此の經營協議會のやうなものを法制化致しまして、やらせたのであります、數は全國に行渡つて出來たけれども、其の運用は一向に宜しきを得なくて、遂に廢めたと云ふ例も聞いて居るのであります、私共は是はやはり勞働者の御互ひの話合ひの上で協議會を設け、又其の運用をして行かれることが結構だと思つて居ります、唯是等に付きましては、色々或は行過ぎの點もありまするし、或は又極めて微温的なものもありまするので、政府と致しましては、先般の中央勞働委員會に諮問致しまして、經營協議會は一體どうあるべきものであるかと云ふ一つ見解を諮問したのでありまするが、新聞等で御承知と思ひまするが、中央勞働委員會に於きましては、一應現在に於ける經營協議會の斯くあるべしと云ふ指針を設けて居るのであります、是等に於きましては十分勞働者の意見が反映するやうになつて居ります、其の點御諒承を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=69
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070・山下榮二
○山下(榮)委員 本法律案は、完全なる日本勞働運動の助長、發展の爲に、調停或は仲裁、斡旋等の方法がある、斯う伺つたのでありますが、此の法律案が出來るまでに、日本にまだ勞働組合法が制定される以前既に勞働爭議調停法と云ふ法律があつたのであります、而も其の法律の中に、勞働爭議は警察が之を強制調停をすると云ふことは毛頭書かれて居ないのであります、勞働爭議は双方が圓滿に解決する爲に委員を作つて、各府縣には府縣に委員を作つて、爭議調停をなすと云ふことに定めて居るのにも拘らず、從來の爭議調停法の一事實を見ましても、調停委員會が開かれて、圓滿な解決を見たと云ふことの例は少いのであります、殆んどの場合が、當時は特高警察が中に入つて參りまして、殆ど爭議團の方を彈壓を致しまして、爭議の仲裁は勞働者側の方が強制的に抑へつけられて行はれて居るのであります、私は其の過去の事實を見まして、將來是が通過致しまして運營されたと致します時に、本法に付ても亦左樣な虞なしとしないのであります、左樣な所に今日の勞働組合、勞働者が反對する所以が存すると想像出來る次第であります、今吉武政府委員の説明に依ると、而も民主主義的に委員を擧げて行ふと仰しやつたが、此の條文を讀んで見ますと、或は中央、地方の勞働委員乃至は勞働委員會で指名致しました委員が其の斡旋の勞に當る、斯うなつて居るのでありまして、是は動もすると私は從來の勞働爭議調停法と同じやうな運命に立至るのではなからうかと云ふ懸念を持たざるを得ないのであります、隨て法案の審議の時には、成程御説の通り彈壓を致します、強要致しますと云ふことは毛頭言はれて居ないのでありますけれども、事實運營に至りますと、法の審議の時とは趣を一變して參るのであります、其の點に餘程御留意を願はなければならぬこと、斯う考へて居るのであります、それ等の點が如何樣な運營が行はれるのか、實は法の實施後でなければ分らないのであります、其のことは後でなければ分りませぬから、今茲で十分の議論は避けたいと思ふのであります、左樣な弊に陷らざるやうに、政府は御留意を戴きたいと云ふことを願ひたいと思ふのであります──今厚生大臣が御見えになりましたから、私は重ねて伺ひたいと思ふのであります、先程吉武政府委員から色々本案制定に向つての方針に付て伺つたのでありますが、私の伺はんと欲する「ポイント」は、本法律案を出されるのに、中央勞働委員會の下に設置された勞働法制審議會で審議なされて、本法律案を提出になつたと拜聽致して居るのであります、而して其の審議會の審議は、勞働者側の委員は全部反對である、中立側の委員の方も一名か乃至二名反對があつたと云ふやうなことを伺つたのであります、本法律案の實施が日本の勞働運動の圓滿なる、健全なる助長發達にあり、日本の産業の復興、日本の産業の振興を目的として行はれると致しますならば、勞働者も全面的に協力の態勢を以て、本法律案の提出なり、實施を見ることが何よりも肝要である、斯樣に我々は考へて居るのであります、併しながら左樣な反對を押切つて出される所の大臣の所信は何ものであるかと云ふことを伺ひたい、今日に至つては、官業所謂公益事業に入つて居る勞働組合の反對は當然でありますけれども、それ以外の一般勞働組合員擧つて此の法律案の通過に反對を致して居るのであります、せめて本法律案を提出されたに對しましては、中央勞働委員會の全部の賛成を得て提出される、さうして全日本の勞働者の了解を得ると云ふやうな方途を採ることが、何よりも私は肝要であると考へて居るのであります、併しながら左樣な方途を行はれずに、反對があつても尚且つ出されなければならぬと云ふ其の大臣の所信を私は伺つて見たい、斯う思つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=70
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071・河合良成
○河合國務大臣 只今山下君から、私は途中から承りましたのですが、色々な御體驗から來た色々の御意見を承つて、私も欣幸として居る所でございます、此の法律案は御承知の通りに勞務法制審議會に掛けまして、實は勞働者側の代表の方も小委員などにおなり下さいまして、實際的に起草の衝に御當り下さつたことでありまして、多分勞働組合側の御意見も十分含まれて居るものなりと云ふ考への下に、私は進めて居つたのであります、一方關係方面とも色々御承知の通りの折衞がありまして、關係方面からの完全なる指導の下に此の問題を取扱ふことになつた次第であります、それで實は愈愈採決する間際になりまして、勞働組合側としまして反對だと云ふことで、私どうも稍稍意外の感じになりましたのが僞はらざる事實であります、それで唯どうも納得の行きませぬのは、何處が惡いのかと云ふことに付きまして、此の日本の經濟の進行状態に於て、勞働爭議頻發は言ふまでもなく生産に良い影響を持ちませぬ、どうしても生産をやらなくちやならぬ、そこで之に對する調停なり、仲裁なり、幹旋なり、是は今まで警察官が關與した場合には實效も少く、又彈壓と云ふことを致した、併し「アメリカ」の實際などに於きましても、單純な幹旋で中々效果を擧げて居るやうな事實もあります、斯う云ふ理の通つた途を盡してやることに付て、どうして是が皆さんに納得して貰へぬのかと云ふことを實は甚だ遺憾として居る次第であります、それからもう一方は公益問題、是は度々御説明しまする通り、官吏の「ゼネスト」の如きは少數を以て多數の公益を妨げるものであると云ふことに政府は固い信念を持つて居ります、又一つの問題は拔打爭議が如何に市民を困らせたかと云ふことは現實の事實であります、さう云ふ意味に於て斯うするのは國家全體の福祉の上に於て當り前ぢやないかと云ふことに私共は固い信念を持つて居る、是れだけのことでありまして、況や官吏關係、公益關係の勞働者以外には關係する所全く──幹旋、調停、仲裁の問題で、決して是は彈壓の意味も何もない、此の本當の眞心が分らぬ譯はないと私は思ひます、さうして是は政府も今日の國際情勢、今日の日本の勞働の推移に於ては、是は當然やるべきことだと云ふ固い信念の下に立つて居ります、暫定的には色々議論がありましても段々分る、又此の法案を斯うやつて居る中にも段々御理解が進みつつあるものである、さう云ふ確信の下にやつて居る譯です、其の點を御諒承になつて、何卒出來るだけ早く御協賛あらんことを希望する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=71
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072・山下榮二
○山下(榮)委員 拔打的な爭議をやつてはならぬから斯う云ふ法律が必要だ、斯う云ふことを言つて居られるのですが、元來日本にまだ勞働組合法と云ふ法律があらざる時代に行はれた所の勞働爭議に於ても拔打的な勞働爭議をやつたことはないのであります、從來組合法のあらざる時の爭議行爲でも、或は歎願書を出して歎願書が聽き入れられなければ、要求書を出し、屡屡交渉を重ねて其の圓滿な解決が出來兼ねる場合に、始めて爭議行爲に出ると云ふことを日本の勞働運動は行つて來て居るのであります、而も今日は完全なる組合法が制定されて行はれる勞働運動でありますから、今大臣の言はるるやうなことは、毛頭あり得ないことを我々は想像致して居るのであります、順序を經て正しい運動が展開することを希ひ、左樣にしなければならぬと考へて居るのであります、隨て其の面からだけ本法律を制定することは當を得て居ない、斯う考へるのであります、殊に先程吉武政府委員の説明の中にもあつたと思ふのでありますが、私は敗戰後の日本の將來は如何樣なことがあつても勤勞國家としての性格を帶びなければならぬ實情に追込められて居るのであります、左樣な國家實情の場合に、吉武政府委員の説明にもありましたやうに、私は本調整法と云ふ法律よりも、寧ろ勞働法と云ふ基本法を制定されて、然る後に調整法、其の他のそれに附隨する所の法律が生るべきが當然であると云ふことを我々も考へて居るのであります、政府の方としても左樣なことを想像し、既に根本法は今立案しつつある、斯う伺つたのであります、而して遲くとも次の臨時議會には提案する、斯う仰つしやるのでありますから、次の議會に提案さるる所の勞働基本法と相並んで、それまでに全日本の勞働者を納得せしめ、或は中央勞働委員會、地方勞働委員會の委員を納得せしめて、全部の協力の下に勞働調整法と云ふやうなものの生れることも非常に好ましいことではなからうかと思ふのでありますが、それまで此の法律がなければ、我が國が持たぬと云ふ程窮迫した實情ではない、斯う考へるのであります、折角法律を作るならば、勞働者も資本家側も之に協力するの態勢が整へられる所に私は其の法律の運用が完全に行はれ得る、斯う考へるのであります、此のことに對して厚生大臣は如何樣に御考へになるか、御信念の程を御伺ひしたいと致ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=72
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073・河合良成
○河合國務大臣 勞働基準法と申しますか、勞働保護法と申しますか、其の制定のことに付きましては御話の通りに此の法案と一緒に出した方が宜かつたと思ひますけれども、二つの法律とも成べく早く出したい、此の調整法も保護法も成べく早く出したいと云ふことは、勞働組合法制定以來の方針であります、そこで此の方が早く間に合つたと云ふことの方が事實であります、片方の法律は勞働條件の色々細かい點に入らなければなりませぬので、法律は厖大なものになります、さうして民間の意見も十分聽きませぬと、間違ひを起してはいかぬと思ひます、それで唯立法技術上、片方は時を要せず、片方はもつと時を要すると云ふ事實であります、それで遲れるのであります、決して遲らして居るのではありませぬ、遲れると云ふ事實なんであります、出來るだけ早い機會に出したいと思つて居ります、左樣御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=73
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074・山下榮二
○山下(榮)委員 私は今大臣の答辯では納得出來にくいのですが、もつと勞働者に全面的に──獨り法律の實施に對する考へ方でなく、日本の敗戰後の建直し、産業の復興乃至は産業の振興と云ふ方面に力を注がしめる方途を執ると致しますならば、今勞働者が喧しく切實に叫んで居る問題を先に取上げて、それを解決して行くと云ふことが今日の急務ではなからうか、斯う考へられるのであります、先程大臣はおいでなかつたのですが、私の手許へ參つて居ります色んな各方面から參ります書類を讀上げたのでありますけれども、どの方面の勞働組合の意見を徴して見ましても、今各職場で切實な問題は何であるかと申上げますと、午前中の同僚議員の質問の中にもありましたやうに、勞働者の加配米の問題、乃至は勤勞所得税の問題等が喧しい問題であるのであります、左樣な今日の具體的な實際の問題が解決されて行くのでなけれべならぬのであります、殊に今は加配米を全部的に停止されて、部分的に行ふかの如く拜聽致したのであります、今日二合一勺の配給量で、而もそれが遲配、缺配續きの時に、是だけの食糧で勞働者に精一杯働け、産業に協力せよと言ふこと自體が非常な無理であるのであります、當局も是が無理であることは能く御諒承をなさつていらつしやるであらうと想像するのであります、厚生省としては一日も速かに全勞働者に、全産業人に加配米をしたいと云ふ肚を持つていらつしやるであらうことは想像致しますけれども、仄聞致す所に依ると、加配米の方法が農林省關係から或は商工省關係に移つたとか、或は商工省關係だけではいかぬから農林省關係と協議の上でやると云ふやうなことを色色伺つて、工場の方では加配米のない今日洵に四苦八苦を致して居るのであります、其の加配米の問題が如何樣なことに決定されたのか、此の席上で只今伺ひたい、斯く考へて居るのであります、或は厚生省が取扱ふことになつたのか、或は農林省が取扱ふことになつたのか、どの作業種別に加配米を切捨てると云ふことを決定されたのか伺ひたいと思ふのであります、或は勤勞所得税の問題は、是は問題外でありますから、厚生大臣に伺ふのは甚だ無理だと思ふのであります、何れ大藏大臣の御見えの節に其の問題に付ては伺ひたい、斯う考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=74
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075・河合良成
○河合國務大臣 加配米の問題に付て御尋ねでありますが、出來るだけ速く恢復しましてさうして勤勞者、勞働者が成べく食生活に於て困らぬやうにしたいことを切實に希望して居ることは申すまでもないことであります、此の問題は直接厚生省が關係して居りませぬので、正確に申上げることは出來ませぬが、是は御承知の通りに、食糧危機突破の問題に關聯しまして、農林省に於きまして米の計畫を立てまする上に、どうしても足らぬ、どうしても一般の國民に二合一勺と云ふものを維持出來ないと云ふ非常な深刻な問題に來まして、さうして其の財源に何處か持つて來ぬと二合一勺が出來ぬと云ふことで、已むを得ず特殊の一番重い方の加配米は殘しまして、輕い方の加配米を取つて、さうしてそれで一般國民の二合一勺を維持したのでありますと云ふことが、其の當時の眞相であると私は考へて居りました、それで問題は農林省に於て所管して居りまして、只今と雖も、是は勿論商工省も關係をなして居りますけれども農林省で處理して居ります、さう考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=75
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076・山下榮二
○山下(榮)委員 加配米の問題はそれぢや何れ農林省關係の方の御見えになつて居る時に御尋ねしたいと思ひまして、保留致します
次に伺ひたいと思ひますことは、生産管理の問題で、過般同僚赤松君から色々質疑が行はれたのでありますが、私は今伺ひたいと思ふことは、私は兵庫縣の地方勞働委員會の委員を致して居るのでありますが、本年の三月だつたですか、東京芝浦電氣の姫路にあります余部工場が爭議をやりまして、生産管理に入つたのであります、此の問題は逐一地方勞働委員會にも報告になつたのでありますが、兵庫縣の勞働委員會の會長が直ちに其の爭議の調停に、委員會として乘出さうと云ふ意見を出されたのであります、所が縣の勞務官の御意見に依ると、所謂勞政課の意見に依りますと、只今の所では其の時期ではない、勞働委員會が直ちに其の調停に乘出すと云ふ所の理由には、或は社會の安寧秩序を其の爲に紊すとか、或は公益上許すべからざる問題であるとか云ふやうな時に調停に入るのであつて現在の所では社會秩序を紊すと云ふこともなければ、資本家側が調停を望んでも居ないし、爭議團側も調停を望んで居ない、暫く此の儘推移をして行つて欲しい、斯う云ふ意見であつたのであります、其の時の報告に依りますと、此の場合を國家的な見地から批判をするならば、生産管理に入つてから、今まで七十何「パーセント」の出勤率であつたものが九三%の出勤率になつた、生産率も會社が定めた百「パーセント」の生産率を遙かに超過して百三十何「パーセント」の生産率になつた、會社が管理をして居る場合は百「パーセント」の生産率にも達して居ない、即ち何れの面から見ても、國家的見地から見るならば生産と云ふものは爭議團が管理して居ることの方が生産率が良いんだ、出勤率が良いんだ、此の場合に今直ちに勞働委員會が調停に乘出すと云ふ理由を發見し得ない、斯う縣の勞政課の方は言はれたのであります、私は其の事を聽いて更に申上げたのでありますが、爭議團が生産管理をやつて左樣な實績を示すと云ふことは、是が永久に續く問題ではなからう、一時的な現象であることを想像しなければならぬ、併しながらと言ふて其の問題を我々は笑つて看過すべき問題ではない、何が九三%の出勤率になさしめたのか、何が百三十何「パーセント」の生産率を擧げしめたのか、此のことはお互ひに深く研究檢討しなければならぬ問題ではないか、斯う其の當時申上げたのであります、過般來から私は本委員會の席上で以て此の問題が議論される度毎に、大臣は生産管理はいかない、斯う言つて居られるのでありますが、若し今私が申上げるやうな事實が所々方々に展開すると致しますならば、生産管理必ずしも不當だとか、或は社會の安寧秩序を壞すとか云ふことには、なり得ないと私は考へるのであります、或は獨り東京芝浦電氣の姫路余部工場だけではなからう、其の外にも或は之に類するやうな成績を擧げた生産管理もあり得るんではなからうかと云ふ想像を致すのであります、若し左樣な實績を示し、左樣なことが何等かの方法で永久に持續する方法があると致しまするならば、國家の見地から洵に宜いことだと言はなければならぬと私は思ふのであります、是等に付ては餘程政府當局も檢討を重ねなければならぬ問題であると思ふのでありますが、若し左樣な事態があつても、さう云ふやうなことは全面的にいかぬ、斯う大臣は否定されるのでありますか、左樣な問題は深く檢討して、其の成績が何に依つて行はれるかと云ふことを考へて採上げて、それを全面的に社會に活用すると云ふ御考へを御持ちになつて居るか、其の邊のことを伺ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=76
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077・河合良成
○河合國務大臣 生産管理が生産能率を擧げたと云ふ事實に付きましては、只今やはり御指摘の通りに一時的には擧つた例はありますが、やはり結局に於て擧つた例は僅少だと私は思つて居ります、大體に於ては擧つたとは言へないと私は考へて居ります、併しながら此の生産が擧る、擧げぬと云ふ問題と、生産管理がいかぬと云ふ問題とは、是はどうも別に御考へを願はなければならぬ、と申すのは、譬は甚だ惡いですが、茲に家が二軒竝んで居る、家が二軒竝んで居ると云ふのは、例へば是は勞働權と云ふものと經營權と云ふものとは二本建になつて居ると云ふ意味なんです、それで片方の人が隣の畑へ行つて、まあ君の畑が遊んで居るから、私が耕してやらうと云ふやうなことを想像して見るのであります、いや、是は君に耕して貰はぬでも、俺の地面だから、まあ默つて居て私に委せて呉れ、いや私はあなたが何と言つても、私が耕してやると云ふことは社會通念としてどうか、そこで國家がそこへ來て、いやどうも君遊ばして置くと云ふのは國家に對して濟まぬぢやないか、是は耕されなければいかぬ、耕すのは百姓を持つて來る、隣りの方もおいでを願ふ、是が生産「サボ」に對する手當と云ふ風に私は物事を考へたい、それだから相手方の承諾なくして──日本の憲法、日本の只今の國では、又新憲法では又民主國では、是は勞働權と經營權と云ふものとを對立的に認めて居る、「ロックアウト」されれば仕方がないと云ふ建前になつて居る、そこで問題は、それが社會の秩序であると云ふことになります、是は社會状態が變ると別ですよ、日本と云ふものの組織が變つてしまふ、憲法も變る、日本の「デモクラシー」が或る形に變ると云ふやうなことになれば別ですが、今日此の日本に於きましては、是はそこにも一つの線を引かなければならぬと云ふ風に私は物事を考へて居る、それだから是は偶偶宜いから隣の地面を耕して上げますと言はれても、いや是は俺の地面だからと云ふことになつて居るのだから、それは先づ承諾のない以上は御入りにならぬ方が宜からう、是が社會の秩序です、秩序と云ふものは目に見えぬものだけれども、垣は大きい、是がなくちや亂れますと云ふことは私は茲に確信を持つて居ります、さう云ふ意味にどうぞ御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=77
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078・山下榮二
○山下(榮)委員 出勤率が好くなり、生産率が上つたと云ふことの理由に付ては、大臣は如何やうな見方をされて居るかと云ふことを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=78
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079・河合良成
○河合國務大臣 是は非常に大きな問題です、此の問題は勞働者が自分でやると云ふこと、自分の力でやると云ふことが大きいものだと云ふ、勞働者の自覺及び其の力の動く所、之を國家は捉へて行かなければなりませぬ、將來の日本は勤勞國家になると云ふ御意見がありましたが、私はさうは斷定しませぬ、併しながら勤勞と資本との立體的國家になります、決して平面ではない、立體的に私は考へて居ります、さう云ふ意味に於て勞働者の自覺、それに基いた自發的の勞働意欲と云ふものに對する非常な尊重を拂はなくてはならぬ、此の點に付ては同感であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=79
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080・山下榮二
○山下(榮)委員 そこで伺ひますことは、丁度大臣の御考へも私が考へて居ることも同じだと私は思ひます、勞働者が自分で經營を管理して居ると云ふ誇り、其の感激と云ふものが九十何「パーセント」の出勤率となり、百何十「パーセント」の生産率になつて現はれると斯う考へるのであります、若しさうだとするならば、大臣は先程おいでにならなかつたのでありますが、當初に私が申上げました所の、今勞働組合法の團體協約に基いて協約を致しますことの中に、經營協議會と云ふ委員會を設けつつあるのであります、其の經營委員會と云ふものを法制化して、勞働者が經營に參加したと云ふことの法的根據を與へしめると云ふことが、勞働者に生産意欲を昂揚せしむる所の唯一の方法ではないかと云ふことを、絶えず私は考へて居ります、隨て此の經營協議會なるものを法制化すると云ふことが、今日の日本の産業復興乃至は産業振興の問題に重大なる結果を與へるのではなからうかと思ふのでありますが、其のことに對して政府は如何やうに御考へになつて居るか、私は厚生大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=80
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081・河合良成
○河合國務大臣 只今の御質問に對し御答へ致します、是は經營協議會と云ふものに付きましても、やはり一面は平面的に考はて行かなくてはなりませぬ、是はやはり經營者と云ふせのと勞働者と云ふものとが、二元的に「ディヴィジュアル」に出來て居る以上は、それはやはり平面的に考へて行かなくちやならぬ、併しながら將來の方針、行き方としましては、是はやはり立體的に渾然と段々と融け合つて行くと云ふことが私は理想だと思ひます、そこで此の經營協議會と云ふもの、勞働協議會と云ふものに二つの形を御考へになる、二つの形を考へると云ふのは、餘り宜い表はし方ではありませぬが、結局是は合意で行かなければなりませぬ、合意で行くならば、どう云ふ形でも宜いと云ふことになるです、併しながら片方の強壓で行くと云ふことならば、それは自ら茲に眞中に垣根があると云ふことを私は申す譯であります、さう云ふ風に此の問題を考へて行けば、契約の自由はもう何ものよりも權力を持つて居ります、と云ふことだから契約の自由で行くと云ふことはどう云ふ形を作つても宜い、併し現に今私共の知つて居る會社などても、もう全く勞働者と一つにして、お團子に捏ねたやうな形さへもやつて居ります、それはもう契約の自由です、併しながら相手方が承知しないのに之を推して行かうと云ふ形に無理があつてはならぬ、是は民主國家の本質です、そこにはつきりした區別がある、そこで法律で作るか作らぬかと云ふことは問題です、問題でありますけれども、餘り法律で形を作るのは、今までの統制經濟の日本の經驗に於きましても、宜いものは出來ませぬ、やはりそこに自然の發達を待つた方が宜くないか、其の方が却て資本と勞働との將來に對する對策として宜からうと云ふ信念の下に、餘り無理な形は執らぬと云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=81
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082・山下榮二
○山下(榮)委員 能く分つたのでありますが、それでは片つ方が好まない場合に殊更法制化するよりも、寧ろ双方合意の上で協議會を作ることの方が圓滿で宜いと云ふやうな大臣の御考へのやうであります、私も左樣なことが宜いと考へるのであります、然らざれば本勞働調整法と云ふものも、全面的に勞働者が反對して居る時に、私は前者の場合と同じやうに、双方好まないのでありますから──片つ方好まないのであるから、私は此の際は或は延期されるか、撤回されるかして、來るべき双方が諒解し合ふ時に俟つことが一番妥當なのではないか、斯う考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=82
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083・河合良成
○河合國務大臣 私の申上げました刄を以て私に擬しなさるやうな御論法でありまするが、それはそれで、是は是です、と申すのは、之に勞働者の誤解があると私共は信じて居る、此の正しい議論が分つて呉れぬ筈がないと思つて居ります、又段々分つて來つつあると私は思ひます、さうだから此の法律は出して行かなくちやいかぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=83
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084・山下榮二
○山下(榮)委員 甚だしつこいやうですけれども、それでは先程も申上げましたけれども、私等の所には屡屡反對の決議や文書が參るのでありますが、大臣は地方に於ける所の勞働組合と云ふものは本法律案に反對して居ると云ふことを御存じないのでせうかどうかを伺ひたいと思ふのであります
それから何回も立つのが何ですから、立つた序でに申上げますが、もう一つ重要なことを伺つて置きたいと思ふことは、是亦屡屡問題になつたことだと思ふのでありますが、本法律案の三十八條に「警察官吏消防職員、監獄において勤務する者その他國又は公共團體の現業以外の行政又は司法の事務に從事する官吏その他の者は、爭議行爲をなすことはできない」と斯うありまして、此の事柄に付ては、もう今まで屡屡議論が繰返されて居るのであります、當局の答辯も、質問者の質問せんと欲する所も能く我々は諒承出來たのでありますけれども、唯私が此處で伺つて置きたいことは、其の職員と云ふものが、どの程度までが職員か明瞭を缺いて居るのであります、或は勞働組合法の場合でありまするならば、組合員になり得ざる者は利益代表乃至は經營者、斯う云ふことが明記してありますが、是ですら私は疑問を持つのであります、各地方の工場に於ては、或は部長を勞働組合に入れるか入れないか、部長と云ふものの中には工場の組織に依つて多種多樣であります、重役が部長の場合もあり或は部長であつても重役にあらざる普通の社員の場合もある、さう云ふ者を入れるか入れぬかと云ふことで、地方でも屡屡議論が行はれて居るのであります、而も其の勞働法以外に今度の此の法律案を見ますと、何處までが職員か、何處までの範圍が官吏として組合に入つてはいけないか、爭議行爲をしていけないかと云ふことの明記を缺いで居るのであります、課長なら課長まで、何なら何までと云ふ明確な大臣の御答辯を、私は此の席上に於て得たいと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=84
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085・河合良成
○河合國務大臣 只今の御質問の第一の點に付て御答へ致します、あちらこちらの勞働組合から反對だと云ふ御陳情もあります、其の事實は私共存上げて居ります、併し御會ひしまして色々御説明を申上げて、勿論其の場では御反對の意思表示は見えるやうでありますけれども、私共の眞意が多少とも通つたのではないかと思はれる場合もなきにしもあらずであります、それから尚ほ一般大衆と申しますか、國民と申しますか、或は其の中には勞働者の方もあるかも知れませぬが、さう云ふ方から私共に是非此の法律案を通して欲しいと云ふやうな投書なども、多數賜はつて居るものもあります
それから第二の點に付て御説明致しますが、第三十八條に於ける所の現業以外の司法行政又は司法事務に從事する官吏と云ふことに付きましては、是は申すまでもなく少數の人の意思に依つて國務が妨げられては困る、さう云ふことでは公共の福祉を維持する譯には行かぬのだと云ふのが、此の立法の精神でありますから、是はさう云ふ「ストライキ」などをやられる爲に、國務が阻害される範圍の人を指すのであります、隨て國務に關係のないものは、假令役所などにおいでになつても、それは爭議權を禁止して居る譯ではありませぬ、爭議をやつて宜しいと云ふのが是の原則です、是は國家の國務の必要から、斯う云ふ人だけが限定的に爭議をやつてはいかぬと云ふことになつて居るのであります、隨て例を申上げますれば、「エレヴェーター・ボーイ」、「エレヴェーター・ガール」或は守衞、小使、運轉手或は庭を片付けて居るやうな人は、總て此の中に入りませぬ、それ等の「ストライキ」を制限している譯ではありませぬ、行政及び司法官吏系統の本體たる者であります、さうして又現業は此の限りではありませぬ、さう云ふ風に御承知願ひたい、此の點世間に或は誤解があるかも知れませぬが、此の點は私から明瞭に御説明申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=85
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086・山下榮二
○山下(榮)委員 それでは法文の中に、何か傭員とか、雇員とか、何とか云ふ名目で、階級をはつきり分るやうに謳ふと云ふ譯には行かないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=86
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087・河合良成
○河合國務大臣 それは參らぬのであります、例へば「タイピスト」の如きも、やはり國務の一端を擔つて居る譯であります、それで其の名稱では參らぬ、實質で行くより仕方がない、さう云う風に御解釋を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=87
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088・山下榮二
○山下(榮)委員 先程も申上げましたやうに、勤勞所得税の問題或は加配米の問題等に付て、まだ伺ひたいことがあるのでありますけれども、所管外のことでありまするから、それ等の關係大臣或は政府當局の方が御見えになつた際に、私は御伺ひ致します、厚生大臣に對する質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=88
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089・逢澤寛
○逢澤委員長 本日は此の程度に致しまして、次會は明後八月二日午前十時より開會することに致します、本日は是にて散會致します
午後五時十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00719460731&spkNum=89
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