1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
勞働關係調整法案(政府提出)
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昭和二十一年八月五日(月曜日)午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 逢澤寛君
理事 江崎眞澄君 理事 岡部得三君
理事 伊藤卯四郎君 理事 竹田儀一君
理事 古賀喜太郎君 理事 松岡駒吉君
飯國壯三郎君 原侑君
山本勝市君 橘直治君
中原健次君 木下榮君
今井はつ君 村上勇君
川崎秀二君 仲川房次郎君
辻井民之助君 山下榮二君
杉田馨子君 山田善三君
關谷勝利君 山下春江君
今村等君 東隆君
八月三日委員長尾達生君辭任に付其の補闕として仲川房次郎君を議長に於て選定した
八月五日委員赤松勇君辭任に付其の補闕として荒畑勝三君を議長に於て選定した
出席國務大臣
文部大臣 田中耕太郎君
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
内務事務官 谷川昇君
司法事務官 佐藤藤佐君
文部政務務官 長野長廣君
厚生事務官 吉武惠市君
厚生事務官 富樫總一君
商工政務次官 小林かなえ君
石炭廳次長 岡松成太郎君
運輸事務官 大久保武雄君
運輸事務官 滿尾君亮君
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本日の會議に付したる議案
勞働關係調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=0
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001・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは前日に引續き是より會議を始めます、通告順に依りまして杉田馨子君に之を許します──杉田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=1
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002・杉田馨子
○杉田(馨)委員 私は現下の日本の状勢は終戰以來最惡な段階に立つて居ると思ふのであります、「インフレ」の惡化に伴つて勞働攻勢は日に日に激しくなつて參ります、而も生産の増大と云ふものが焦眉の急を告げて居る時に、此の勞働關係の調整法案は非常に重大な意義を持つと思ふのであります、それで厚生大臣に質問致しまして、併せて私の一、二の卑見を申述べまして其の御所見を伺ひたいと存じます
先づ第一に御尋ね致したいのは、本法案の目的に付てでございます、敗戰に依つて産業が衰退致しまして、國民大衆が塗炭の窮乏の中にあります時に、最も重大なのは生産力の増大と國民生活の安定であることは申すまでもございませぬ、本法案は産業の平和と發展とを目標として制定されたものと存じますが、其の爲には勞働者の生活保護、それから生産力の擴大に對する勞資の強調、それから拔本塞源的に此の爭議の發生する根本の原因を除去すると云ふことが、此の第一條の目的の中に明文化される必要があると思ふのであります、現段階に於ける爭議の發生原因は、資本家の搾取や或は分配論にあるのではなくて、勞働者の生活困難にあるのを見ましても、是は現在の社會的、經濟的情勢が爭議の原因になつて居ると思ふのでございます、隨て現在の爭議は單なる局部的な情勢に依つて解決することは困難なことは明かでございます、又本法案は官公吏の爭議を禁止致して居ります、又公益事業の爭議も制限して居るのでありますが、此の爭議發生の原因を除去すると云ふことが、最も必要であると共に、勞働階級の生活條件を改善致しまして、爭議をしなくても濟むやうな生活状態に置くことが先づ先決問題だと思ふのでございます、爭議をしてはならないと云ふ代りに、爭議を起さなくても濟むと云ふ風な生活條件を與へて行くことが必要だと思ひます、隨て此の第一條の目的條文の中に勞働階級の生活の維持と勞資の協力に依る生産力の發展を圖り、勞働爭議を豫防解決し、又其の因つて來る原因の除去に努め、産業の平和と發展を期し、以て國民經濟の安定興隆に寄與することを目的とすると、斯う云ふ風に其の發展的目的を明文化しては如何かと思ふのでありますが、之に對して御所見を伺ひたいと思ひます
第二に御尋ね致したいのは、此の目的の中に勞働爭議を豫防してございますが、是は具體的に誰が豫防するのでございませうか、勞働委員會が此の責務に任ずるのか、又は調停委員會にあるのか、或は警察官廳が豫防するのでありませうか、豫防に名を籍つて爭議彈壓にならないやうに注意することが最も必要であると思ひます、現在我が國は産業再整理時代に入つて居りますが、殊に軍需補償打切の爲に産業整理は必然的となりまして、勞働者の大量解雇が豫想されて居ります、之に依る失業者をどの程度に政府は見て居りますかお伺ひしたいと思ひます、此の産業整理に對して勞働爭議は全國的に起ると思ひますが、政府は之に對してもどう云ふやうな豫防處置を御執りなりますか、それから其の際に勞働階級は全國的「ゼネスト」を以て大量解雇に反對すると思ひますが、之に對してもどう云ふやうな豫防方策を御執りになりますか、具體的措置を伺ひたいと思ひます
第三に御尋ね致したいのは、本法案の方針並に原則に付てでございます、本法案は爭議解決の骨子として、斡旋、調停、仲裁の三方式を執つて居りますが、是は形式的三段論法に過ぎませぬ、現在の爭議は個々の經營者と勞働者の單なる經濟的なる爭議ではありませぬで、戰に依る「インフレ」と産業整理に依る國家の全體的情勢から起つて來る爭議でありますから、此の方法では解決されないと思ひます、本法案の致命的な缺陷が茲にあるのでありますが、形式論ではなくして、爭議解決の具體的方針と原則を明瞭にされる必要があると思ひます、米國に於ては勞働者の賃金値上をする場合には資本家は其の損失を補填する爲め、生産物の價格を値上げさせると云ふ方法を執つて居りますが、本法に於ても幾多の方針が採用されべきであると思ひますが、政府は之に對してどう云ふ風に御考へになつて居りませうか
次に第四に御尋ね致したいのは、爭議の本質に付てでございます、本法案の第五條と第六條に勞働爭議と其の爭議行爲に對して定義を與へて居りますが、其の本質に針ては觸れて居りませぬ、私は勞働爭議は其の本質に於て勞働階級の生活維持を目的とする經濟的要求に限定さるべきものであると思ひます、そこに政治的の目的を以て行はれてはならないと思ひます、例へば反動内閣打倒或は社會主義政府樹立等を根本目的にして爭議を行ふと云ふことは政治的目的追求手段として爭議が行はれることでありまして、是は問題であると思ひます、之に對して政府はどう云ふ御考へを持つて居りませうか
次に御尋ね致したいのは本法案の實行に當りまして其の根幹をなす所の勞働委員及び調停委員の政治的性格でございます、現在我が國の勞働組合は七千三百五十七組合ありまして、約二百七十萬の組織勞働者の六割が共産黨に屬して居ると言はれて居りますが、此の事實は現在の聯合軍占領下にあります我が國に取つて重大な意義を持つものだと思ふのでございます、對日理事會議長「アチソン」氏が七月十日の理事會の席上で、我が國の勞働問題に言及致しまして、共産主義者は勞働指導の資格なしと強調して居ります「ポツダム」宣言を忠實に履行して、行かなければならない立場にあります我が國と致しましては、此の言明を信奉することが必要であると思ふのでございます、それでありますから勞働委員又は調停委員には共産主義者を參畫せしめてはならぬと思ふのでございますが、政府は之に對してどのやうな御考へを持つていらつしやるのでございませうか、御伺ひしたいと思ひます
次に、婦人の勞働賃金に付て御伺ひ致したいのであります、婦人勞働者は男子より遙かに低い賃金で今日まで働いて參りましたが、殊に纖維工業の勞働者は農村の婦女子が製糸女工として極めて低い賃金で以て慘憺たる生活を續けて參りました、曾て「女工哀史」と云ふ本に其の悲慘な状態が暴露されたことがございますが、爭議防止と、産業の發展の爲には此の状態は直ちに改善されなければならないと思ひます、婦人の勞働者が男子と等しい技能を持つて居た場合には、男子と同等の賃金を與へるべきだと思ひますが、それに對する政府の御意見を伺ひたいと思ひます
次に御伺ひ致しますのは、最低賃金制は爭議防止に最も關係が深い、此の最低賃金制に付てでございます、現段階に於て政府は勞働者の最低賃金をどの程度に考へて居りますか、又官公吏と一般會社員、技術者等の職員組合の最低賃金と、勞働者の最低賃金と同樣にする御積りがありますか、此の最低賃金は何を規準にして御決めになられますか、それを承りたいと思ひます
次に、本法案を如何なる立場に於て御作りになりましたか、其の根本的立場に付て御伺ひ致したいと思ひます、本法案は勞働階級からは、資本主義を守つて勞働爭議を彈壓する法案であると言はれて居りますし、又經營者側からは金融資本家に從屬する爲に、企業整理を前提とする法案であると言はれて居ります、政府が今回産業の再開、封鎖資金引出を嚴禁致しまして、銀行からお金を借りると云ふ原則を定められましたのは、産業資本家を金融資本家に屈服させたものと言はれて居ります、斯う云ふ點から此の法案は金融資本家と官僚の抱合ひ政治の立場から作られたものではないかと思ふのでございますが、之に對して如何でございませうか、我が國の經濟的現段階からすれば、金融資本主義を打破して其の矛盾を除去することが必要でございまして、資本主義でも社會主義でもなく、社會主義と資本主義との中間に立つ進歩的資本主義即ち修正資本主義の立場に立つことが必要だと思ふのでございます、此の修正資本主義は資本主義の缺陷であります無政府的な生産と、資本家の搾取的利潤を排除致しまして、資本主義の長所を發揮させたもので、根幹には計畫經濟を採用し、末端に自由經濟を採入れると云ふ特長でありますが、本案も金融資本家擁護の立場に立たないで、修正資本主義の立場に立つて國民大衆の利益を擁護する爲に此の法案を作るべき必要があると思ふのでございますが、之に對して御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=2
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003・河合良成
○河合國務大臣 只今七、八箇條に亘つて色々御質問でありましたが、大體のことを御答へ致します、若し私の御答辯が一寸或は聽き漏らした點もあるかも知れませぬから、不足のやうでございましたら又御尋ねを願ひたいと思ひます
第一の問題は、勞働爭議に付て此の法律で色々規定して居るけれども、勞働爭議と云ふものは生活問題が原因になつて居るぢやないか、それだから生活問題の原因を除去すると云ふことを目的とし、且つ其の旨を此の法案に明記したらどうかと云ふ御趣旨と拜承致しますが、是は御話の通り勞働爭議の一番重大な原因は生活問題であることは言ふを俟たぬことであります、それで政府も之に對しましては凡ゆる方法を以て是が解決を企てて居る譯であります、一つは物を増産する、或は又「インフレ」を防止する、或は日本の經濟の再建を圖ると云ふやうな實質的の問題を凡ゆる方面で企圖して居るのは、國民全般が生活が出來るやうになることを目標として居る譯でありまして、勿論勞働者、勤勞者は其の中の非常に大きな部分でありまするから、其の面に對しても生活がやつて行けるやうにやつて居ることは問題ないことであります、此の問題は恐らく政府全體の目的と言うたら宜いと思ひますので、單に勞資の調整を目的とする法案だけの問題ではありませぬ、憲法に明示され、それに基いて大部分の法律と云ふものが其の線に沿うて行つて居る譯であります、此の法律は爭議が起きんとする場合にどうするか、起きたらどうするかと云ふ現實の問題を寧ろ捉へた專門的の法律でありますから、此の法律には一般の生活を安易にする爲に、其の根本原因を除去すると云ふ所まで行く必要を認めませぬ、結局專門的の法律なるが故に專門の範圍に止めて置くと云ふのが、大體此の法律の立法の趣旨だと解釋して宜いと思ひます、勿論經濟の興隆と云ふやうなことも抽象的ではないかと云ふ御議論も出ませうが、さうなりますると是は五十歩百歩の問題になる譯であります、組合法に於て經濟の興隆と云ふことを強く掲げて居ります關係もあるし、是は全く同一系統の法律、姉妹系統の法律である、別に勞働者を彈壓するとか、或は資本家を擁護するとか、どうとか、そんなやうな意思を持つたものではない、全く組合法の延長的の意味に於きまして作つて居ると云ふ趣旨を明かにする爲に、經濟の興隆と云ふ同一の理念を用ひて居りますけれども、生活と云ふ一般の政府全般の問題までも之に明示する必要はなからうと云ふ位の常識的の意味を以てそれが掲げられてないと云ふ風に御諒承願ひたいと思ひます
それから第二の問題は、爭議の具體的豫防處置即ち是から軍需補償の打切り其の他に依つて大量解雇も出來るだらうが、斯う云ふ問題に對してどう云ふ風に考へて行くか、此の法律の條文ばかりでなく、政府はどう云ふ風にして「ストライキ」に對處して行くかと云ふ意味の御質問と思ひますが、此の點に付きましては出來るだけ爭議の起きないやうに總ての方法は勿論油斷なくやつて行く積りでありまするが、大體軍需補償の打切りなどに依つて大量の失業者の出來ることも是はどうも巳むを得ぬことでありまして、さうしますると爭議が或は起るだらうと云ふ豫想も勿論付きます、併し爭議の性質も、前々から申上げて居る通りに段々前と多少變化をして來ぬか、一面に於ては勞働の機會が非常に減ると云ふ問題から爭議が特別の性格を持つて來るだらう、結局生活が出來ると云ふことは、今までの爭議と同じ線に沿うた問題は勿論重大でありますけれども、其の他に勞働の「チャンス」が減ると云ふ問題が起きて來まして、是は結局爭議をしてでも其の主張を貫かなければならぬと云ふ主張も一面に出まするが、又失業者の量が非常に多くなりますから、爭議に依つて又失業しても困ると云ふやうな杞憂の念も起きて來ると云ふことに於て、特質を持つたものでなからうか、其の他一面から言ひますると、退職慰勞金其の他殊に補償打切に依つて、銀行預金其の他の影響を受けまして、工業會社、産業會社法人等が、賃金支拂などに困難を來しはせぬかと云ふやうな問題も想像されるのでありまして、さう云ふ面に付きましては、金融措置其の他に於て政府は萬全を期して行きたいと云ふ積りで、只今研究を進めて居る次第であります、出來るだけの方法を以て對處致しますが、「ストライキ」を今全般的に止めると云ふやうなことは、到底出來ることではありませず、又之を政府だけの意思を以てやると云ふやうな考へは一つも持つて居りませぬ、併し或は勞資の懇談會を開きまして、政府も之に介在して、さうして合意の上で、何とか日本將來の爲に一つ考へて行かうではないかと云ふやうな問題の餘地は、私はあると思つて居りますが、併しながらさう云ふ問題に對してどうと云ふことの具體的な考へは、まだ決まつて居りませぬ
それから全國的「ゼネスト」と云ふやうな問題もありましたが、國家の斯う云ふ危機の際に、一面に於ては、生活權を擁護する爲に巳むを得ぬ事情もありませうけれども、一面に於ては、國が是で旨く行かぬと云ふことになると、是は共倒れの悲境に陷ることでありまするから、其の點は組合員諸君の十分な御考へを期待したいと云ふ積りで居ります
第三の問題は、本法に於ては斡旋、調停、仲裁の三方法を執つて居るが、斯う云ふ形式的でなく、具體的に爭議をどうするかと云ふ、具體的の原則を、何か法律で明瞭に出來ぬかと云ふ問題でありますが、是は例へば御指摘のやうに、先進國に於きましては勞働爭議の色々な經驗から、そこに爭議を解決する方法を色々案出されて居る實例も多少あるやうでありますけれども、まだ日本の現在の状態に於きましては、そこまでの階段に勞働問題は發達して居りませぬ、それやまはり原則的、抽象的の方法を以てやるより、今日の状態に於ては仕方がない、併し是は段々組合も發達し、又經營者側に於ても之に對する充分な理解が出來ますれば、そこに又一つの自ら原則的のものが發生し、具體的の方法が考案されると思ひますが、まだ其の時期に達して居りませぬ、其の上只今の色々混亂時期の經濟状態に於きましては、物價とか或は賃金などに一つの基準を設けると云ふことに非常な困難性がありまして、早急には具體的の問題は掲げることが出來ないと云ふ風に考へて居ります、だから理論として之を掲げることがいかぬと云ふのではなく、まだ其の掲げるやうな状態に達して居らぬ、又今其のやうな經濟状態でないと言うた方が適當だと思ひます
それから第四番目に、組合が、内閣を反動的であるとか、其の他の理由を掲げて、政治的の目的を持つと云ふことは、宜くないではないかと云ふやうな意味の御質問と拜承致しますが、大體「デモクラシー」の原則は「ヴオート」の多數、投票の多數と云ふことが原則でありますから、今日の政府は國民の多數の投票に依つた政黨から成立つて居ると云ふことで、國民多數の信頼を受けて居る、是が總選擧でもやり直して今度又別になれば兎も角も、總選擧をやるまでは其の前提に於て立つて居ると云ふことが、是が民主主義の國家に於ける議會政治の本體であります、それですから、斯う云ふ政府が一部の少數の人に依つて打倒される、覆されるとか云ふことは勿論希望致して居りませぬ、官吏の罷業權、爭議行爲を禁止したのも其の趣旨であります、官吏と云ふものは、全體に於て國民の數から見ると一部の數に過ぎませぬ、それが「ストライキ」をやりますと、國務が遂行されぬ爲に、國民多數の支持を受けて居る所の政府が顛覆すると云ふやうなことがあつては困るのだ、それは「デモクラシー」でないのだと云ふ趣旨に於て、官吏の爭議を禁止して居るやうな趣旨でありますから、御論旨のことは私共全く同感で居ります、併しながら勞働組合に政治的の目的を全然持たせるなと云ふやうなことに付ては、勞働組合は言ふまでもなく經濟上の目的を主なものにして居りますから、政治上の目的を主なものにすれば、それは勞働組合でありませぬけれども、大體に於て主要線は經濟上の目的であるが、經濟と政治とは言ふまでもなく密接な關係がありますから、勞働組合が政治に關係を持つて來ると云ふことの意味に於て、之をさう云ふことはいかぬのだと云ふ風に取締る考へは、只今の所では持ちませぬ、さう云ふ意味に御諒承願ひたいと思ひます
それから其の次の問題は、調停委員に共産主義者を除外してはどうかと云ふことで、「アチソン」大使の主張などを引いての御意見でありましたが、此の點に付きましては、大體私共勞働問題に對して「アチソン」大使の「アチソン・ライン」と云ふものに全面的に沿うて行くことは言ふまでもないことでありますが、此の勞働委員とか、調停委員にどう云ふ人が行くかと云ふ所まで干渉する氣持は持ちませぬ、と申すのは、勞働委員なり、調停委員は、是は勞働者が自ら決定して來ることでありますから、それは政府としてそれを干渉すると云ふ考へは持ちませぬ、併しながら大體勞働運動に對してどう云ふ考へを持つて居るかと云ふのであれば、「アチソン・ライン」に沿うた線に考へて居ると云ふことは、申上げて差支へないと思つて居ります
それから第六の問題は、製絲女工などの例を御引きになりまして、技能を持つて居る婦人勞働者は、其の技能と云ふことを標準として、男子と同じ賃金を拂ふべきでないかと云ふやうな意味の御主張と思ひますが、是は全く同感でありまして、政府は專ら今其の線に沿うて萬端の政策を推進させて居ります、殊に御指摘の製絲女工の如きは、戰爭前の實情に於きましても、賃金が甚だ安かつた、男子の賃金に比して、技能の割に比較的低廉であつたと云ふ事實は、私共も同樣に感じて居る次第でありまして、斯う云ふ點は、今後の見返物資としての蠶絲の重要性其の他から考へまして、技能と云ふことを中心にして、技能の立派な者は男でも女でも餘計賃金を拂ふと云ふ方向を以て進むと云ふ考へで居ります
第七の點は、最低賃金の問題に付ての御尋ねでありました、最低賃金及び官公吏と一般勞働者との賃金の多寡に付ての御尋ねでございましたが、是は一般官公吏と勞働者との賃金は成べく差異のないやうにしたいと云ふ目標を以て進んで居ります、併し是は財政上の都合もありますし、從來の長い間の沿革もありますので、一時に是が出來ると云ふ所までは確信は持ちませぬが、其の線に沿うて出來るだけのことをやつて行くと云ふ考へで居ります、それから最低賃金の問題でありまするが、是は結局に於て最低賃金は規定せぬといかぬと云ふ氣持ではありまするが、只今の物價の變動が非常に激しい時に、殊に通貨の購買力の動揺の非常に激しい時には、是は中中實際問題としては定めにくい、定めても直ぐ動搖を來すやうな状況でありまして、もう少し經濟界の安定を俟つて處理したいと云ふ考へで居ります、其の場合に於てどう云ふ基準でやるかと云ふ問題に付きましては、具體的にはまだ何と何とをどうすると云ふことまでは明確に御答へ出來ませぬが、やはり大體は生活費、特に最低生活費と云ふものを睨み合せまして之を決むべきものだと云ふ風に考へて居るのであります、併しながら最低生活費と云ふものは、生活保護法に於ける最低生活費などよりも多少意味の違つた最低生活費と云ふものを採るべきものであつて、やはり相當の文化と云ふ面も入れなくちやいかぬのぢやないかと云ふ風に考へて居ります
それから最後に、本法が金融資本擁護の立場から作られて居りはせぬか、又大體進歩的の資本主義、即ち修正資本主義の立場に立つべきものではなからうかと云ふ議論がありましたが、是はどの階級を擁護すると云ふやうな意味は一つも置いて居りませぬ、若し擁護すると云ふ意味を持つて居るならば、國民大衆、國民一般を擁護する立場から「スタート」して居る、此の點ははつきりと私は申上げて宜いと思ひます、と申すのは此の法律は何遍も御話しまする通りに、初めは調停仲裁等の面は是は手續上の問題であり、官吏の爭議禁止は少數を以て、多數に依つて成立して居る、「バック」を持つて居る政府を顛覆さしては、是は「デモクラシー」でないと云ふ意味であります、結局最大多數、國民全般の公益を擁護すると云ふ意味であります
それから公益事業の拔打禁止と云ふのは、是は國民一般の日常生活を保護すると云ふ意味であります、其の以外には何の意味も、何の意思も持つて居りませぬ、是は明瞭に御答へします、色々是が、「ストライキ」の理由などに算へられて居るのは、私はどう考へても分りませぬ、どう云ふ譯であるか、況や此の法律は政府が自ら作つたものではありませぬ、勞働者の意見を聽き、勞働組合の意見を聽き、公聽會を開き、審議會に掛け、さうして出來た與論の結晶だと私は思つて居ります、それがどう云ふ譯で只今組合の目標になつて、「ストライキ」の理由になつて居るか、どうしても不肖私は頭に理解することが出來ない問題であります、それで勿論時は足りませぬ、と云ふのは、是は敗戰後の斯う云ふ状況で、非常に複雜多岐の問題が世間に續々起きて居る時でありますから、斯う云ふ問題に對して一般の徹底を缺いた、是は時の關係、そこへ政變其の他で二箇月もはつきりせぬやうな時もありました、さ云うふことの怨みは私はあると思ひます、あると思ひますけれども、此問題自體に付て只今の如く御質問を受けるのは甚だ意外であります、是が金融資本家を擁護すると云ふことは何處をどう叩いても出て來ることは絶對にありませぬ、國民大衆を保護して居る、國民一般を保護して居る、それ以外に何の意圖もないと云ふことを私ははつきり申上げて宜いと思ひます、先程、是は別のことに入りますけれども、軍需補償の打切りは産業資本家を屈服せしめて、金融資本家の方へ權利を與へたものではないかと云ふやうな御尋ねもありましたが、是は何も金融資本家を擁護する必要も何もありませぬのですけれども、是なども私共にはちつとも、理解出來ぬ御尋ねでありまして、今日は恐らく軍需補償の爲に困るのは産業資本家です、けれども其の煽りを食つて最も困るのは金融資本家です、さうして其の中で最も困るのは、例の追放令と同じく大きな方が一番困ると云ふ實體になつて居りまして、是で日本の金融資本家と云ふ階級は殆どもう起つ能はざる打撃を受けるのではないかと最後は私は考へて居る問題であります、勿論其の後は工場は金融資本家の擔保に入る、擔保に入りますけれども今日金融資本家の擔保に入つた其の工場を金融資本家が勝手に處分して、さうして利益のある所に賣ると云ふやうな措置は執れるやうな國情ではありませぬ、是は國家産業として必要のものは、産業としてやつて行かなければならぬ、それはもう今日の國家政策の公益性と云ふものから見まして明かに是は分る問題でありまして、例の物資調整法と云ふやうな法律も、もう提案しましたか、政府から提案する積りでありまするが、それなど御覽になつても分る通り、必ずそれは國家目標、又大衆の利益と云ふ目標に向つてさう云ふものは處理されると云ふことは是は一點の疑ひないことでありまして、軍需補償打切りと云ふものは金融資本家を擁護するものだと云ふことは勿論間違ひでありまして、況や此の法律は金融資本家を擁護すると云ふやうなことは其の匂ひだに嗅ぐことは出來ない、是ははつきり私申上げたいと思ひます、又是が修正資本主義の立場に依つてやつて宜いぢやないかと云ふこと、是は御議論は御尤もでありまするが、私共は今どの主義、どの「イズム」と云ふものは考へて居りませぬ、國家の現情に即して、善いことは善い、何でも採つて行きます、惡いことは惡い、何でも捨てて行くと何ふ考への下に何でも採り、何でも捨てる「イズム」と云ふやうに御考へ下されば宜いと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=3
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004・杉田馨子
○杉田(馨)委員 只今第一條の厚生大臣の御説明がございましたが、今度の勞働關係の調整法案は勞働階級から爭議彈壓の法案であると云つて大反對が起されて居りまして、全國的の爭議にもならうとして居る現在の状態でござますから、やはり勞働階級の生活の維持と勞働爭議の起つて來る所の原因除去と云ふことをはつきりと明文化して行くと云ふことが私は必要だと思ひます
それから第二と第三の點に付ての御説明は、私の期待したやうな説明ではなくはつきり致しませぬが、是は現在の情勢は個々の資本家と勞働者の爭議でなく、是が全國的な規模を持つたものになつて行かうとして居ります、さう云ふ状態でございますから、やはり爭議の解決の方法と致しまして、又爭議の豫防と云ふやうな點に付てもつと具體的に其の方針、原則と云ふものを明かにして行くことが調停委員會に於ても非常に都合が好いのぢやないかと思ふのでございます、時間を取りますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=4
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005・逢澤寛
○逢澤委員長 杉田さんに申上げます、文部大臣が見えて居りますから、文部大臣に對する質問を繼續して戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=5
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006・杉田馨子
○杉田(馨)委員 文部大臣に御尋ね致したいのは、教員の爭議に付てでござます、政府は一時教員の爭議を禁止されまして、後に之を禁止しないことになりましたのはどう云ふ理由でございませうか、教員の爭議が少年兒童に與へる影響は非常に甚大でありますが、教員が爭議に當つて、其の生徒を爭議の手段に使ふと云ふことは、是は一番重大な問題だと思ふのでございます、一つの例を擧げますと、最近茨城縣の土浦市に起りました事件でございますが、第一高等女學校と云ふ學校に爭議が起りまして、是は非常に深刻でございました、此の女學校は校長が私財を投じて建築致しまして、認可まで取つて經營して居たものでございますが、此の學校の教員三名が爭議を起しまして──是は共産黨の指導を受けて爭議を起したのでございます、爭議は一部の父兄を動かしまして、父兄會の名で以て女學校の入學試驗を行ひました、一方校長側の方も入學試驗を行ひました所が、爭議團側では生徒を街の要所々々、それから停車場に立たせて、校長側の試驗を受けに來る兒童を全部追ひ返したのであります、さうして女生徒を、「トラック」に乘せまして縣廳に「デモ」を行ひ、知事に面會を強要し、坐り込み戰術を行つたのであります、知事は此の時に共産黨を恐れたものでありませうか、爭議團側に有利な解決策を講じまして校長は引退することになりました、此の第一高等女學校の經營の母校である霞ケ浦學園と云ふものがあります、其の理事長も此の校長が兼ねて居つたのでありますが、爭議團側が勝利を得ましたから、兩方とも校長と理事長の職を追放されまして、折角自分で私財を投じて努力して建設したものを爭議團側に依つて乘取られた、是は他に見ないことでありまして、知事の裁定が穩當でなかつた原因は共産黨を恐れたものと思ふのでございますが、此の爭議を起した教員を縣の勞働委員に任命して居るのでございます、而も此の三名の教員は「マッカーサー」司令部の追放令に該當して、最近追放になつたのでございます、此の事件で問題が如何に解決したかと云ふことではなくて、教員が爭議の場合に生徒を爭議目的の手段に使ふことが、兒童に精神的影響を與へることが非常に大きいと思ふのでございます、此の生徒を「トラック」に乘せて「デモ」を行つた結果、二名の生徒が共産黨に人黨したと云ふ話がございます、私は此の爭議が教員自體で行はれる場合には宜しいのですが生徒を目的の手段に使ふと云ふことは、非常に是はいけないことだと思ひます、此の意味に於て教員の爭議に制限が加へらるべきだと思ふのでございますが、之に對して文部大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=6
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007・田中耕太郎
○田中國務大臣 教員の爭議の問題は根本的に考へて見ますと、甚だ複雜なる點が存在致して居る譯でございます、政府としても此の問題に付きましては色々熟慮致しまして、結局本案のやうな形になつたのであります、此の熟慮を致しました其の經過に付きましては、巷間傳へられて居る所必ずしも正確とは申し得ないのであります、然らばどう云ふ經過であるかと申しますと、是は内部の事情でございますから申上げ兼ねる次第でございます、唯結論は教員は其の本來の使命、特に教職者の被教育者に對する人格的謂はば訓育の關係に基きまして、他の仕事とは違ふと云ふ建前から致しまして、教員に付きましては爭議行爲は好ましくないものの中の最も好ましくないと云ふ立場を堅持致して居る次第でございます、併し又他の爭議の場合に、先程厚生大臣が言はれましたやうな理由で以て法文で好ましくないからと云つて教員の爭議を禁止すると云ふことは是れ亦甚だ好ましいことであるとも言へないと云ふやうな譯でありまして、詰り教員に對する尊重の念、又信頼の念からして、わざわざ法文に書かなかつた次第でございます、法律と雖も萬能ではありませぬ、或る場合には事柄がそれ程宜くないことであつても法律に書現はすことは、人の氣持の「デリカシー」を尊ばないと云ふ意味から云つて、其の效果が又宜くないと云ふこともあり得るのであります、併し是は色々議論も立ち得ることでありまして、いや是ははつきり書いた方が明瞭になつて宜いと云ふ御説もあり得ると思ひます、併し法案の立場は只今申上げますやうな意味であると存じます、教員は爭議行爲を普通の現業者と同じやうな意味で以てやつて宜いと云ふやうな意味合を、文部省としては少くとも持つて居らぬのであります
それから第二の先程御指摘になりました土浦の問題でございますが、是も私が學校局長時代以來承知して居ります所では、事情甚だ複雜なやうに存じます、唯併し其の點は具體的事實に付て御質問があつた譯ではありませぬので──詰り要するに生徒を爭議の目的に使用することは宜くないではないかと云ふ御質問、其の點に付てどう思ふかと云ふ御質問でございました、此の點は全く御同感至極でありまして、文部省と致しましては所謂學校管理なる現象、其の内容は色々あるかも存じませぬが、併しながら先程御話のやうな事實ありとするならば、詰り教員が校長に對抗して入學試驗を別にやる、或は學材全體の經營を自分の手に引取つてやる、殊に生徒まで使ふと云ふやうなことは、是は文部省としては決して是認して居ない次第でございまして、學校經營管理は終始一貫否認して居る態度に出て居ることを御承知置きを願ひたいと思ふのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=7
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008・河合良成
○河合國務大臣 只今の第一と第二の點、是は私もあとで考へて一寸不十分な點がありますので補足致します、第一の方は此の法律は爭議の原因を除去すると云ふことを目標として居らぬのであります、と申すのは、勞働關係の公正な調整を圖り、勞働爭議を豫防し、又は解決して、さうして産業の平和を維持し、以て經濟の興隆に寄與すると云ふのでありますから、斯う云ふ範圍に於ける目的でありますから、茲に原因を除去すると云ふことになると此の法律で原因を除去することを書かねばならぬ、それは政府の目的であつて法律の目標でないから、此の原因を除去すると云ふことは妥當でない、さう云ふ意味に御諒承を願ひたいと思ひます
第二の點は、質問の趣旨を取違へた點がありますから明瞭に御答へ申上げますが、「ゼネスト」とか色々軍需補償打切りの爲に爭議が起るかも知れないが、それに對してどう云ふ處置を執るかと云ふ御尋ねのやうですが、是は大體爭議と云ふものに對して政府は、爭議を起すべからずと云ふやうな強壓的のことは出來ないのです、勞働爭議と云ふものは生活權から、「スタート」したものでありまして、爭議權を認めた以上は、それと一般の困ると云ふことと併行的に行つて、自らそこを調整して行くと云ふものでありまして、之をきちりと斯うする、ああすると云ふことの出來る性質のものでないこと、徹底的にどうすると云ふ性質のものでないことを先づ第一に御承知願ひます
それから第二にそれではどう云ふ方法を執つて成べくそれが起らぬやうにするかと云ふことに付きましては、色々の方法を考へて居ります、先づ當面の問題としては退職手當の問題を何時も考へて居る、是は又軍需補償の打切の煽を喰つて吹飛んでしまふと云ふことがあつては大變だから、之を如何に擁護するかと云ふことを考へて、勞働者に如何に安心を與へるかと云ふことを具體的に考へて居ります
それから第二番目として是から會社が仕事を續けて行かうと思ふが、會社では預金もなくなつてしまつたと云ふやうなことで、月給が拂へぬぢやないか、さうすると勞働者も勤人も困るぢやないかと云ふやうな問題も起きます、斯う云ふ問題に對してどう云ふ風に之を處置するかと云ふことを具體的に考へて居ります、それから第三番目としては銀行の融通が餘り付かなくなつて來ると産業が困るぢやないか、それに對する金融の途も十分付けて置かぬといかぬぢやないかと云ふことで、是も政府として出來るだけ金融を付けて、そこに脈絡、血管が「ストップ」しては困りますから、「ストップ」しないやうな方法を講じて、勞働者が一生懸命仕事がやつて行けるやうな方法を出來るだけ執らうぢやないかと云ふことを考へて居ります、斯う云ふやうな問題は今補償打切に當面して直接關聯した問題であります、それが今度やつて來ると整理は當然行はれる、整理が行はれることを目標として擬制資本の切捨をやるのだから、是は整理は出て來ぬとは言はれませぬ、どうも失業者が出て來ることは巳むを得ぬ、國家再建途上に於ける一つの已むを得ざる必要な罪惡である、是はどうしても起きて來る、それに對しては今まで申上げて居ります失業對策、或は生活保護の面に於て行かうぢやないか、それでは失業對策をどう云ふ風にするかと云ふことになりますと、是は先づ中小工業なり或は石炭の増産と云ふ大切な方面に出來るだけ新興工業を興して行かなければなりませぬ、それから終戰事務費百四十億と云ふもので聯合軍家屋の建築問題、斯う云ふ問題でも大分救はれます、六十億の公共事業の面の土木の問題、治水、道路、港灣と云ふやうな問題、さう云ふ公共事業の面もあります、それから戰災地の處理或は復興と云ふ問題も勿論是は協力にやつて行く積りである、それから都會中心に浮いて來る勞働者が必ずある、それを機動的に集めて、機動的に公共事業をやつて行くと云ふやうな問題も起きて來ます、それから補導機關を出來るだけ強化して行く、それから授産所を出來るだけやつて行く、それから共同作業所、工場「アパート」と云ふやうなものを作る積りであります、それから賠償物資の撤去の問題も中中勞力が要ります、例へば兵器の除去、破壊の問題もあらうと思ひます、斯う云ふやうな方面に向つて失業對策の一つの構想を描きまして、それで出來るだけ之を救つて行く、それでも尚ほ困ると云ふ人がありませう、それは社會保護法で救つて行くと云ふことにする、社會保護は社會保護法を忠心にしまして現に其の中の三億ばかりは既に庶民金融金庫に出しました、三億の金が十億になりました、十億になると三十三萬世帶に三千圓の金が貸付けられる、其の外に一家族三百圓、或は醫療助産の補助をやつて、失業した方を成べく生産面に向け、それを救ふと云ふことで、今申しました通りに第一は補償打切に直接の問題、第二番目は失業對策の面、第三番目は生活保護の面、斯う云ふ三段構へを以て、豫算が足りなければ國家は當然豫備費、追加豫算が出せるものだと思ひます、是は恐らく日本としては劃期的な計畫でせう、斯う云ふ風にして國民生活を保護しなければならぬと云ふことは出來るだけ徹底的にやる肚で居ります、斯う云ふ意味に於て勞働者が「ストライキ」などを起して貰つては國の爲に困る、其の爲に斯う云ふことも講じて居るから我慢して呉れと云ふことで、やつて行くと云ふやうに御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=8
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009・逢澤寛
○逢澤委員長 文部大臣に對する質疑はありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=9
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010・杉田馨子
○杉田(馨)委員 是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=10
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011・逢澤寛
○逢澤委員長 此の際委員諸君にも一寸御諮り致します、實は理事諸君には御相談申上げたのでありますが、文部大臣が今見えて居りますので、吉田總理大臣並に文部大臣に委員長と致しまして一つ要望することがあります、此の際要望して置きたいと思ひます、御許し願ひたいと思ひます
吉田總理大臣が見えて居りませぬが、閣僚から御傳へ願ひたいと思ひます、我が國の資源地帶であつた朝鮮、滿州、樺太、臺灣等を失つた此の狹き面積の上に多數の人民を擁して、食糧及び各種の生産資源が又著しく貧弱になつた此の苦境の現在から出發して、平和と文化の高い日本を建設するには、どうしても無から有を生ずることに努力するより外に名案はありませぬ、結局國民の大多數が勞働をすることであります、勞働は全産業の基本であり、無から有に導く所の崇高なる行であります、國民の大多數が喜んで勞働に精通精勵することになれば、現在の日本を覆ふて居る所の幾多の問題は解消され明朗な平和の日本が必ず實現するでありませう、政府は既に勞働の重要なることを是認して、新しく出來る所の憲法の條章の中にも是等に關する字句を明記する由でありますが、本委員會は更に進んで國民學校の教科書の一部の中に、勞働の重要性及び其の意欲の昂揚を圖る文章、實例などを書かれて、小國民時代からして其の教育をなし、旺盛なる勞働精心と道義の滋養に資すべきであると存ずるのであります、此の點を實行して戴きたいことを要望致したいのであります
序ででありますから、一寸厚生大臣にも立つた序でに要望を申上げて置きます、それは世界勞働組合參加に關する件であります、資本と資源のない日本の勞働の重要性を確認して居る所の政府は、是が發達の爲に軈て來るべき所の平和會議が終了した後に我が國から世界勞働組合聯盟に速かに參加すべきであると思ふのでありますが、政府としては如何なる準備をなして居るか、又どう云ふ用意があるかを御伺ひして置きたいと思ひます
それでは通告順に依りまして今井はつさんに之を許します、警保局關係のことをおやりを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=11
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012・今井はつ
○今井(は)委員 私は敗戰日本の産業振興は國家建設上最も重要なる基本と存じまして、それに参加致しまする勤勞者の待遇改善、優遇を心より願ふものでありますが、併し同情が過ぎましては此の結果は如何になることかと憂ふるものでありますので、公平なる立場に於て所見を申上げ、政府の御意見を承りたいと思ひます
衆議院議員は凡ゆる階級の代表者でありますから、一方に偏ることなく、嚴正な立場に於て國事に參與し、國民の正しい要望を政府に傳達、而して政策の檢討に臨むべきは私が今更申すまでもないことでありますが、過日來議員諸氏の政府に對する御質問を拜聽致しますに、中には御熱心の餘り聞き方に依れば一方的に偏れる感じを抱かせられ、恰も母親が愛に盲目な爲め愛兒の前途を誤らすに似た感じを抱すのでありますが、我が日本は今敗戰占領下にあり、明朗な文化國家再建には總てのことが友愛精神に基く民主主義に依つて行はれなくては相成らぬことは國民周知のことであるにも拘はらず、民主主義と自己主義の履違ひに依り道義もなければ徳義もなく、隨て國家の思ふの念は忘却された形であります、茲に於て民主主義の根本を正しく國民に理解せしむるの方途を取り誤まてる見解の是正をせしめなくては明朗日本の建設は覺束ないと思慮されるのであります、此の見地から國民に對し民主主義の正しい理解を普及する必要ありと私は思ひますので、民主主義の正しい理解の普及を政府に要望する意味に於て質問致したいと思ひますが、私の御聽き致したいことは、大體に於て他の委員に依つて既に御質問されましたので成るべく重複を避け私見の一端を述べて御伺ひ致すことに致します
我が國の再建は種々の點から考察致しまして、生産の速やかなる實現でありますことは今更ら私が申上げるまでもないことであります、人間最上の仕合せは全心全力仕事に傾注愉快にそれに打込み得ることでありますが、仕事に全力を打込み得て生活出來得るのは勤勞者であります、此の勤勞者の心持如何で仕事の能率が上下されるのであります、隨て勤勞者自らは勿論のこと、企業の經營者の立場にある者は如何にすれば仕事に全身全力を打込み得るかと互ひに自諭自覺爲し、再建の重責を擔ふ「プライド」の下に行動してこそ國家再生の偉業は達成されるのであります、故に兩者にして此の面を重要な目標とするなれば、政府提出の勞働關係調整法案も必要のないものと相成るのでありますが、今日の勞働運動を見ますに、自己の主張のみに走り、職場の神聖を忘れ、大衆の迷惑を考慮せざる非民主主義的の行動と看做される嫌ひがあります、某新聞社の如く僥倖に依つて乘取り得た業管を繞り今日未だ爭議を續けて居る有樣を見ましても、勞働組合法に對し勞働關係調整法は國家治安の建前から必要な法案であると公平な立場に依り思考致します、私達日本國民は永年の戰爭に依り心身共に疲れ果て、鬪爭行爲は好まないのは勿論忌避する所であります、隨て鬪爭性のない明朗平和なる友愛精神を要望する民衆に於ては、勞働關係調整法の實施には理解を持ち反對はないのでありますが、勤勞者が身を仕事に打込むには生活の安定が前提でなくては相成らぬのでありますが、今日の如く物價が天井知らずに上がる状態では薄給者は生活困難で仕事に打込めないのでありまして、給料の上るより物價の下るのを望んで止まないのであります、故に政府は此の物價高を低物價策に轉換さす意思ありや、第一に御聽き致したいのであります
第二は既に他の委員に依り質問せられた爭議行爲の出來得ない職域に在る官公吏に對する件でありますが、元來地方の官公吏は薄給の餘徳と申しませうか、職權を惡用致して參りました者が多く、都會の官公吏が生活困難の悲鳴を上げるに拘らず、地方の官公吏の生活難は餘り耳にしないのでありまして、終戰後に至りました今日、尚ほ依然として改まらぬ傾向があります、長崎縣の警察署及び檢事局の如きは、殺人未遂告訴を本年三月に出しましたのに對し、五箇月後の八月の今日未だ加害者を一回の取調も行はない怠慢なる状態であります、又或る地方ではあるべからざる所に肥料が山積なし居る事實を知りながら摘發出來得ない警察署もあると聞きます、地方には斯かる好ましからざる官公吏が多いのでありますが、それも生活の爲に行ひ、生きんが爲の行爲なれば許すことも出來ませうが、中には相當の蓄財をやつて居る者が多いさうであります、斯うした官公吏の肅清を斷行せぬことには明朗日本の再建は覺束ないのであります、官公吏の生活の保障、待遇の向上と相竝行し警察官の素質の向上淨化を日本再建の爲に要望致しますが、内務大臣、司法大臣に其の御英斷がありますや否や御伺ひ致したいのであります
次に封建思想の根強い地方の勞務者は種々の環境に依り爭議行爲の出來得ない弱い立場にありまして、經營者中には之を幸ひとし、無理解にも自己の利益のみを圖り勞務者には物價高の今日に於て男子日給五圓、女子二圓程度なるものが今尚ほ現存して居る有樣であります、今日の物價高では主食の配給を受けるにさへ困難で、働けど働けど食ふを得ず、巳むを得ず職場を休み、野や山に食糧を探し、辛うじて飢餓を凌ぎ行く者が數知れないのであります、是は勞務者の「サボタージュ」に見えますが、眞實に於ては經營者の利己的經營の犧牲であります、是等の人々の保護對策として適正なる勞働賃金の制定を要望致しますが、其の御意見ありや
第四は勤勞婦女子の待遇改善であります、特に地方の勤勞婦女子の待遇は低調でありますが、之を是正し向上せしめなくては生産に大なる影響を來すは固より、壯健な子孫は望めないのでありまして、地方の勤勞婦女子の中に結核者が多いことを見ましても分ることであります、故に次の通り待遇の改善同上を願ふものであります
一、勞力を要する仕事を除き他の業務に關係の勤勞賃金は男女平等にすること
一、毎月三日間の生理休暇を與へること
一、産前三箇月、産後一箇月の保養休暇を與へること
それに對する賃金の付與
一、冬期に於ては暖房設備を確實にすること
一、文化國家建設の意味に於ても勤勞婦女子の素質及び教養を高めるの要ありと認めまして、五十人以上の從業員を擁する職場に於ては文庫の設備をなすこと
一、月一回産業、政治の講座を開くこと
一、月一回懇親會、座談會等を開催すること
一、保育所、託兒所を増設すること
前述の八項目は婦人の要望希望を最小限度に縮小致しました要目でありまして、決して無理な主張ではありませぬから、日本再建の一端を擔ふ婦人勤勞者の爲に是が非でも實現を願ふ所であります、厚生大臣は宜しく御理解下されることと思ひますが御採用の御意思ありや否や、右御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=12
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013・河合良成
○河合國務大臣 只今の第一の質問の物價を下げる意思があると云ふ點でありますが、是は主として大藏省の方の所管になりますけれども、私共の方の立場からしましても、生活安定の面から低物價を非常に希望して居ります、政府も大體此の線に於て進んで居ることは疑ひない所でありますが、併し是は中々困難な問題でありまして、只今の所では先づ物價を上げないと云ふことが中心になりまして、それから物價低落と云ふ面に行くべきものと思ひまするが、唯食糧關係等が段々解決の曙光を認めて來ましたので、食糧面などが幸ひに都合好く行きますれば、全體の物價の上に於ても非常に好影響を及ぼすと云ふことを考へて居ります──尚ほ今大藏省と申しましたが、經濟安定本部が此の中心の主體になつて居ります──私共の方面から申しました意味に於てさう云ふことを希望し、さう云ふ方向に行つて居ると云ふことを御答へ致します
それから其の次に、地方に封建的勞働體制がまだ殘つて居る、それに對して賃金を上げるやうな措置ら執らなければいかぬのではないかと云ふ御話でございまして、是は段々さう云ふことは拂拭されつつあると云ふ現状であります、が將來又失業者などが非常に出ますると、さう云ふことにならぬとも限らぬ状態でありますが、唯先程申しました通りにまだ通貨購買力の安定性を缺いて居りまする現状に於きましては、最低賃金を以てそれを規律して行くと云ふ風な所まではまだ進んで居りませぬ、甚だ遺憾なことですけれども、やはり或る程度は自然に見て行き、指導的に之をやつて行くと云ふより外に仕方がない、法律できちんと決めると云ふ所までは行つて居りませぬ
それから其の次の問題、勤勞と婦女子の状態から考へまして、勞務賃金を男子と同樣にと云ふ御話でありましたが、是は同樣でないものに付ては、やはり能力技術を中心に考へて公平な措置を執つて行くと云ふことで、男と女と同じと云ふ原則ではなく、能率、能力を中心に、公平にやつて行くと云ふ見地より外に途はないと考へて居ります、其の外、三日の生理的の休暇、産前産後の問題、暖房の設備の問題、文化的色々な方法の問題等もありまするが、是は此の次の議會に出しまする勞働保護法、或は勞働基準法となりまするか、さう云ふ方面に付て出來るだけ今の御議論のやうな風に採上げたい氣持で居ります
それから保育所、托兒所の制度に付きましては、只今も相當程度やつて居りますが、是は更に擴張して、強化して行く積りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=13
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014・谷川昇
○谷川政府委員 御尋ねの第二の點に付て御答へを申上げます、官公吏、殊に警察官が其の職務執行の點に付て待遇問題と非常に密接な相關關係を持つて居りますることは御指摘の通りであります、政府と致しましては先づ警察官に對しましては、物心兩方から此の問題の解決に當りたいと思ひまして、色々施策を練つて居りますし、既に皆樣の御審議を煩はすべく提案して居るものもあるのであります、今日までの警察官の待遇は何と致しましても、非常にみぢめなものであつたのであります、併しながら今日の再建の時期に當つて、警察官に負荷されて居りまする國家的職責の重大さから考へまして、斯樣な状態に置くことは許すことの出來ないことでありまして、一日も早く是が是正を致したいと存じまして、最近の處置に於て他の官公吏と同じ程度に改善を致し、或は多少の色も着けられて居ると云ふ所であるのでありますが、更に警察官の職務の性質に鑑みまして、特別な考慮を拂ひたいと思ひまして、今大藏省と交渉を進めて居るやうな次第なのであります、待遇の問題に付きましては、斯樣な方針の下に進んで居ります、更に一方精神的の方面に於きましては出來るだけ健全な社會人的な人格、識見、素養を持つて居る者を警察官の職に就かしめたい、又職にある者もさう云ふ教養訓練を致さしめたいと考へて居りまして、之に依つて計畫を致して居るやうな譯であります、戰爭中は色々人の不足の爲に、程度の低い者を採用して、缺員を充足せざるを得ない状態にあつたのでありますが、今日は非常に世の中も變つて參りましたので今後は出來るだけ中等程度の教育を得た者を警察官に採用する方針であります、更に警察官に對しましては、第一次に於て擴充改善されました各府縣の警察講習所、竝に第二次的には全國地方的に作ります專門學校程度の警察專門學校に於きまして訓練を施し、第三次には大學程度の内容を持つて居ります警察大學校と云ふやうなものを中學に置きまして、之に依つて警察の幹部を養成致したい、斯樣に考へて居るやうな次第であります、色々御指摘になりましたやうな不屈の點のありますことは、我々としては實に殘念に思ふのでありますが、斯樣な手段方法に依りまして、一日も早く現在の警察官と云ふものに、國家の要請に應じまして、十二分の機能の發揮致さしめたいと折角努力致して居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=14
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015・佐藤藤佐
○佐藤(藤)政府委員 只今の御質問の司法部え關係する點がございましたので御答へ致したいと考へます、長崎縣下に於ける或る殺人事件に付て此の春頃告訴したけれども、全然搜査の手を付けられないと云ふやうな御話でありましたが、さう云ふ具體的な事件に付てはまだ本省に報告がございませぬので、全然内容は分りませぬが、若し斯樣な事實がございましたならどうぞ地方の檢事局なり或は檢事正に直接御知らせを願ひますれば、或は場合に依つては私の方に御知らせ下されば、早速取調を致したいと思ひます、御承知のやうに投書、密告などに付きましては、若し捜査の端緒がありましても、之を取扱ふことを專ら愼重にやつて居りますので、單なる投書、密告風評等に依つて、之を盲信して、搜査に活動すると云ふやうなことは嚴に戒しめて居るのであります、告訴告發が正式になされると云ふやうな場合には、勿論早速取調に着手しなければならぬと思ひます、何等かの手違ひで左樣なことが假にありと致しますれば、此方も注意致しまして、早速取調を開始致したいと思つて居るのであります
尚ほ地方の官公吏の官紀肅正に付て御注意がございましたが、全く同感でありまして、若し官紀を紊すやうな行爲がありますれば、檢察當局と致しましては斷乎官紀肅正に邁進したい、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=15
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016・逢澤寛
○逢澤委員長 今井さん、もう宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=16
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017・今井はつ
○今井(は)委員 大體了承致しましたが、一言、只今の殺人未遂事件の問題に付て申上げますが、それは搜査を要する問題ぢやなくて告訴事件なんです、そこを御諒承下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=17
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018・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは午前中の質疑は是で終りまして、午後は一時から續行致します、是にて休憩致します
午後零時一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=18
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019・会議録情報2
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午後一時二十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=19
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020・逢澤寛
○逢澤委員長 午前に引續きまして是から會議を始めます、通告順に依りまして伊藤卯四郎君に之を許します──伊藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=20
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021・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 同僚諸君から可なり長くそれぞれ質問されて居りますし、又それに對する答辯もありましたので、私は成べく重複を避けまして、厚生大臣の答辯で滿足することの出來得ない點等に付て質問致したいと思ひます、本法が本委員會に於て審議されまして、それに對する厚生大臣の答辯を伺つて居りますと、厚生大臣の産業經濟に對する一つの思想觀念と云ふものが、舊態依然とした「ブルジョアジー」主義に依る資本主義擁護以外の何物をも發見し得ないことを私は遺憾に思つて居ります、私は將來のことは論じませぬ、日本の敗戰の現状に於ては御承知のやうに國土は非常に狹隘化して居る、資源も缺乏して居る、更に生産設備も破壊されて居る、國民經濟力も慘めなる破産の現状にある、斯う云ふ深刻なる敗戰日本の現状を建直すと云ふことに付て、果して厚生大臣の持つて居られるやうな、其の一つの産業經濟に對する觀念、さう云ふ觀念で、此の慘めなる現状が平和的に復興、再建出來るか、さう云ふ考へ方で産業勞働を調整して平和を維持しながら、此の國の再建を早からしめることが出來るか、此の點に對して、其の答辯中に、私は非常な遺憾を感じて居ります、日本の産業の復興、再建は將來のやうな自由主義、資本主義經營を主體とした經營を以てしては到底平和的に再建復興することは出來得ないのであらうへ思ふ、更に又資本主義的、營利追求主義的に産業經營をやるとするならば、勞資間に於て自ら深刻なる社會問題が惹き起つて來ることは火を睹るよりも明かであると思ひます、又さう云ふやり方では到底日本の全勤勞勞働者をして希望を持ち、其の再建に熱意を感じ、其の事業に自ら責任を感じて起ち上つて、此の國を平和的に復興再建することは出來得ない、私は根本的な點を深く考へて居るのでありますが、此の點に對する厚生大臣の産業經濟に對する一つの思想、觀念を明確に先づ伺つて置きたいと思ひます
〔委員長退席、古賀委員長代理着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=21
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022・河合良成
○河合國務大臣 只今の伊藤君の御質問でありましたが、端的な話は、私は現在と云ふものと將來と云ふものと、やはり二つに分けて考へたいと思ひます、それで現在に於きましては御承知のやうな國状でありまして、どうしても増産をやらぬと日本の國全體が生きる途がない、全體の爲にどうしても増産が第一である、さう私は考へます、そこでそれには増産と云ふことと、各人が生活をして行くと云ふこととの間にどう云ふ調和「バランス」を求めて行くかと云ふ問題になるのであります、それで増産を先づ目標としてやる上に於て、今日相當に物が足りぬ、物價が段々高くなる、生活は困難になると云ふ現状に於きまして、度度申しましたやうに、一枚の布團を引張り合ひして居ると云ふのが現在の状態で、是は動かすべからざることであります、隨つて之を餘り無理して引張りますと國全體が立つて行かぬのであります、そこに物の困難さがあります、勿論是は一面に於て此の時局は勞働者の力で解決しなくてはなりませぬ、勞働者の力と云ふことになりますと、勞働に從事する人の氣持、生活等、總て明朗な氣持ちで樂に日々の生活を暮さしてやらなくてはなりませぬ、やらなくてはならぬのは尤も至極でありますが、そこまで行くものがないとなれば、出來るだけ是はやはり忍ぶ所は忍んで貰つて、さうして國民全體の一つの再建と云ふことをやつて貰はなければならぬと云ふ所に、自ら又そこに制限と申しますか、調和と申しますか、お互ひの謙遜互讓と云ふものが一つ出來て來て、そこに國が立直るのではなからうかと云ふ氣持を持つて居ります、私は決して資本家を擁護すると云ふ大それた考へでも何でもありませぬ、國家の現状としてそれ以外に途がないと云ふことが私の現状に對する考へであります、將來の問題に付きましては稍稍私は違つた見方をして居る、それはなぜかと言ひますと、日本の國と云ふものの状態が變つて來ます、日本の産業と云ふものの將來が變つて來ます、一面に於きましては「マスプロ」と云ふものが御承知の通り餘程制限されます、さうすると「マスプロ」中心の勞働問題に於ける地位に變革を生じます、一面に於きまして中小工、即ち纖維工業なり或は見返り物資を中心にした工業が餘程展開されます、又展開されなくては國が立ちませぬ、さう云ふ二つの工業上の特質を持つたことを將來に眺めなくてはならぬ、さう云ふ問題、そこで農業が御承知の通り餘程大きな分野に於て加はつて來ます、農業に伴つて恐らく食糧の世界的過剩と云ふ現象も起りませうから、一面に於て農業は非常に「インテンシブ」の深度を持たせると同時に、又彈力を持たせなければならぬ、結局農村工業が非常に大きな分野を持つて來る、さう云ふやうな我々の行く將來を頭に描いて考へまする時に、勞働問題のさう云ふ構圖の下に於ける地位如何と云ふことを考へて來なくてはならぬ、さう致しますと、今までの日本の戰爭中若しくは戰前に於ける勞働問題と大分新しい變つた性格を持つて來ると云ふことが考へられます、殊に中小工なり農業なりと云ふものには餘程協同組合的の思想が入つて來る、併しながら大體は「デモクラシー」であり、やはり自由思想が根本になりませう、さうすると契約の自由の尊重と云ふこともあります、或る程度の計畫性も入つて來ます、さう云ふやうな問題と絡み合つて問題を考へて行かなくてはならぬ、私は將來の問題に對しては相當進歩的に考へたいと思つて居ります、結局勞働問題と勞資問題は多くの場合に於て立體的に考へて、さうして編上げ合ひ、縺れ合つて一つの日本の發展があるのではないかと考へて居ります、さう云ふ風に御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=22
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023・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 私は冒頭に申上げましたやうに將來のことを論じては居りませぬ、將來のことに付ては厚生大臣と自ら私は違ふ點があるだらうと思ひますが、さう云ふことを私は論じようとは思つて居りませぬ、私の質問の根本は、此の廢墟の日本の産業經濟の現状を如何にして回復するかと云ふ、極めて緊急當面の問題に付てのみであります、今厚生大臣の答辯を伺つたのでありますが、どうも私には何だか抽象的ではつきりしないのであります、私が漸次質問を進めて行きたいと思ひますことは、資本主義の營利主義經營と云ふものは、良い言葉で言へば優勝劣敗とも言へませうし、率直に言へば弱肉強食であります、さう云ふやうなことを以てして此の廢墟の日本の産業經濟を復興して國民世活に寄與すると云ふことが出來るかと云ふことであります、日本の今日はお互ひに自覺をして居る、足らざるを我々は憂へて居らぬ、均しからざるを憂へると云ふことが、我々が今日最も政治上に於て考へなければならぬ重大なる點ではないかと思ふ、更に國民生活の上に於ても其の點を根本に立ててやらなかつたならば、到底廢墟の日本を平和的に復興再建することは出來ないと、私は斯う信じて居る、そこでさう云ふ現状であるのに、厚生大臣の考へ方が依然とした「ブルジョア」自由主義的な考へ方である、資本主義的な考へ方である、一體さう云ふ弱肉強食の、搾取を主體とする經營體を以てしてやつて行く經濟的餘力が日本にあるかどうか、此の點に付て一つ厚生大臣の御意見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=23
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024・河合良成
○河合國務大臣 只今の經濟は自由取引を原則にして居ることは疑ひない、ことでありまするが、斯う云ふやうな物の足らぬ、資金の足らぬ時に於きましては、相當計畫的にやることは勿論必要であります、今正にさう云ふことをやりつつある、將來失業問題なり色々な問題に對しても、相當程度の計畫性を以て行かなければならぬと云ふ風に考へて居りまするが、一面やはり企業の「イニシアチブ」と申しまするか、推進的、獨創的な考へは斯う云ふ時代に於ても勿論必要である、さう云ふ線に沿うなこともやつて行かなければならたと考へて居るのであります、併しながら只今のやうな非常な變革期に於きましては、搾取的なことは勿論やり得ることでもないし、又今の實態に於て殆どない、殊に工業と云ふものを中心にしてはない、商業の分野には、御承知の通り斯う云ふ時代ですから色々なことがありませうけれども、工業的にはそれを高く取上げて言ふ程のことはないと考へて居ります、併し勿論是は全體に於て斯う云ふ過渡的な時でありますから、相當計畫性を以てやらなくちやならぬことは疑ひないことであります、最近出まする物資調整法の如きも其の趣旨に依つて、經濟安定本部の如きも其の趣旨で出來て居ります、唯之を「イズム」の問題に分けてはつきり解決すると云ふことはどうかと考へますので、其の點に對する私ははつきりした御答辯を此處では遠慮したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=24
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025・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 今日果して其の經營體が搾取をやり得るだけの餘力があるかどうかと云ふ問題に付ては、それは厚生大臣の言はれるやうに、尚ほ今日の經營體に於て利潤を思ふやうに擧げて行くと云ふことは、是はあり得ないであらう、併しながら其の經營體自體が所謂利潤追求の經營體であり、搾取を巧妙にやれる所の企業經營の構成が其の儘殘つて居ると云ふことになれば、やはり勞働者階級に、其の經營體をして協同的なものである、協同責任を感じて復興再建をしなければならぬ、少くとも半分以上は自分等にも其の責任があるのだと云ふ、さう云ふ觀念を喚び起すことが出來ないであらうと私は思ふのであります、其の點を今後の企業經營體の上に於てどう云ふ企業經營體制を作らすか、さうして勤勞者、勞働者にして、將來の如き資本主義的搾取的な經營體ではない、自分等も其の經營に對して參畫して居るのだ、隨て企業に責任があるのだ、復興に對して責任があるのだ、さう云ふ考へ方を起さすやうな經營體の構想が生れて來ない限りには、勞働者の責任的協力を發揮さすことは出來ないのであらう、斯う云ふ點であります、斯う云ふ點に對して其の企業體の構成單位に對して、厚生大臣は從來の如く其の情性、依然たる其の儘で宜しいと御考へになつて居るかどうか、此の點を明かにしたいと思つて居るのであります、それから厚生大臣の言はれるやうな考へ方であると、資本主義と云ふものを強化して行く爲には、當然今度今茲に上程されてありますやうに、勞働爭議を防止するやうな、或は又彈壓になるやうな、凡そさう云ふ勞働取締に對する強權と云ふものが作られて來るであらうと思ふのであります、やはりさう云ふやうなものに保護されて行かなければ、苦しい産業經濟界と云ふものはやつて行けない、どうしても苦しければ苦しくなるに從つて、法律強權の、或は政治力の保護を受けてやつて行かうと云ふことになるであらうと思ふことは、當然の歴史であります、さう云ふやうなことでやるとするならば、到底日本の敗戰の現状に於てやはり勞資が理解することは出來ずして、對立をする、一方は餘力のないものを飽くまでそこから利潤を上げて行かうとする一方は、生活が苦しくなるからして、之に對立をして行く、勞働組合がなかつた當時であるならば、過去に於て行はれましたやうな「ソシアルダンピング」と云ふやうな、ああ云ふ長時間、低賃金と云ふやうなものもやれたであらうと思ひますけれども、併し現在民主主義日本に於て勞働組合が設立強化された今日に於て、從來のやうな賃本家的觀念を以て經營をやつて行かうとするならば、そこには強力なる勞働の反抗鬪爭が起つて來ることは當然であります、さう云ふことで經濟力は破綻の現状にある、そこに資本主義的に依然としたさう云ふ機構で經營體を續けて行かうとする、一面に於て勞働組織と云ふものが強力なものが出來て居ると云ふことになれば、勞働組合の組織力の反抗の上から見ても、やつて行けないであらう、隨てい濟力自體が貧困であるから、其の餘裕がないであらう、そこに無理をして其の資本主義的な機構經營を以て飽くまでやらうとするならば、必然に重大なる社會問題が起つて來ることは言ふまでもない、さうなれば所謂治安の維持をやつて行くと云ふことも出來なくなるのぢやないか、私は今日我が國の治安の維持と云ふものは、日本の法律の權威に依つて維持されて居ると思つて居らぬ、占領軍の占領下の力に依つて今日日本の平靜が維持されて居るのぢやないか、所謂日本の國民大衆と云ふものは、日本の法律の權威と云ふものに依つては安寧を維持して居るのではない、平和を維持して居るのぢやない、是は全く占領軍の其の力に依るものである、さう云ふやうに日本の現状と云ふものは、日本の國威、日本の法律力を以てしては治安を維持して行くことが出來ない現状になつて居る、それ程日本の經濟力、日本の國民生活、日本の思想状態と云ふものは、自ら拾收することの出來ない現状にある、さう云ふ現状にある場合に事業經營體と云ふものは舊態依然たる經營體でやつて行かうとする、そこで困難を感ずると、法律を作つてそれ等を禁止しやう、取締らうと云ふやうな法律萬能的なことで、舊態依然としてやつて行くと云ふやうなことで、果して日本の復興再建が出來るかと云ふことに對して、私は出來得ないと私自ら信じて居る、さう云ふ點に對して厚生大臣はどう云ふ御考へを持つて居られるかと云ふことをもつと率直に私は御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=25
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026・河合良成
○河合國務大臣 只今の伊藤君の大體の考へ方に對しましては、私共も大體同じ線に考へて居ります、唯今此の際に「イズム」の問題で物は解決して行くとは思つて居りませぬので、機構を變へたりなんかして是が巧く行くものだとは考へて居りませぬ、斯う云ふ戰爭の後のやうな混亂時代には、やはり現在の状態に於て、それを出來るだけ改善しまして、さうして勞働者も氣持好く出來るだけ働いて貰ふと云ふやうな、意味に於てやつて行く、勿論今までの勞働問題の中心は、主として現在に於てもやはり生活問題である、それは「イズム」の問題を絶無でないかも知れませぬが、大體に於ては生活問題であると思つて居ります、此の問題の解決と云ふことが問題の中心である、それにはやはりどうしても「ウエージ」となるべき「フアンド」と云ふものを増加させなければお互ひの分け分も少いから、國を擧げて増産に邁進すると云ふことはお互ひに我慢して行くものであると云ふやうな見地に立つて物を眺めますので、機構の問題との關係は比較的少いのではないかと云ふやうに考へて居ります、勿論是は絶無と云ふ譯ではありませぬので、政府の方針と致しましても、經營協議會其の他に於て問題の調和を求めつつある次第でありますし、又勞資双方の合意に依つて協同的な立場を執つて行くと云ふことも段々多からうと思つて居ります、と云ふことで政府の方針に於ても完全なる調和を求めて行くことは期待はして居りますけれども、根本は機構全體に付てどうと云ふ考方は致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=26
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027・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 物がないからと云ふことでありますが、其の點私の先程から質問して居ることを認めて居られると思ひますが、物のない場合に依然として資本主義的な將來の經營體で宜しいのかと云ふ點であります、そこでそれを強行して戴いて勞資の間の爭ひと云ふものが收まつて行くと御考へになつて居られるかどうかと云ふことなんです、收まつて行かないとするならば、どう云ふやうに其の經營態勢を更正したならば、勞資間が此の最近の産業經濟復興再建に盛上がると御考へになつて居るか、もうそんなことは考へる必要はない、物がないのだから是は仕樣がないぢやないか、そこで勞働者を取締るには勞働關係調整法のやうなものでやつて行くのだ、それでいけなかつたらもつとあれを強權化して行くのだと云ふやうに御考へになるのか、物がないのであるから、ない所を再建する爲には從來の利潤追求或は搾取經營機構體ではいけない、其の經營機構をそれならどう變へたら勞働者を奮起させ盛上がらすことが出來るのか、共同責任を以て起上がらすことが出來るのか、さう云ふことに付てどう云ふ御考へを持つて居られるか、そんなことを考へる必要はない、強權一方で行かれると云ふ御考へであるかどうか、其の點を明かにして貰ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=27
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028・河合良成
○河合國務大臣 物がないと云ふことに付ては勿論私共もさう考へて居りますが、それだから取締方針を強權一方で行くかと云ふ御尋ねでありますけれども、さう云ふ氣持は一つも持つて居りませぬ、物がない中で成べく仲好くやつて行かうぢやないかと云ふ考へで居ります、併しながら物がないからと云つて機構を今根本的に變へて、それで物が出て來るかと云ふと私共はさうは考へない、物はないがない中で、お互ひに我慢して讓り合つて、さうして物を殖やさうぢやないかと云ふやうにやつて行きたい、さうして現状を出來るだけ改善しまして、そこに協調し調和を求めて行きたいのだと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=28
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029・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 物を殖やすと云ふことに付て從來の經營體、經營機構其の儘で物が殖えると御考へになつて居られるかどうか、其の點に於ては物は殖えない、其の證據には御承知のやうに何れの生産現場を見ても一向産業復興に對する熱意が起つて來て居ない、爭議は依然として激増する現状であるが、唯漠然としてさう云ふ神頼みのやうなことで物が殖えると御考へになつて居られるかどうか、さう云ふ點に對して、私に對する答辯だけでなく此の委員會開かれて以來、厚生大臣の答辯と云ふものは、何だかどうも一向に要領を得ないのであるが、此の點に對してはつきりした答辯を伺はなければ、私は何時までも此の問題を續けなければなりませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=29
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030・河合良成
○河合國務大臣 只今の機構を以てしまして、それに改善し努力して行きますれば、物は殖えると私は考へて居ります、併し御承知の通りに終戰後の國民の虚脱状態から或は最近の將に起きんとする補償打切のやうな問題など、色々な困難が起きまするが、困難中ではあるが、漸次國民は元の國民の氣力を恢復しつつある、さうして生産意欲も段々是から出て來ると云ふやうに私は考へて居ります、さうして逆に申しますれば機構を根本的に改へて、端的に言へば、資本主義經濟を社會主義經濟に振變へましても、物は殖えるものでない、私はさう考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=30
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031・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 改善努力と云ふことは其の機構に於ての改善努力と云ふことを御考へになつて居られるのかどうか、例へば勞働協約上から結ばれて來ることを、之をさう云ふことに進めて行かうと御考へになつて居られるかどうか、或は經營協議會などと云ふやうなものを以て、さう云ふ機構上の問題に對して勞働組合と云ふものも、其の經營に參加し、經營に責任を持つと云ふやうなことに改善努力をされると云ふ具體的な御考へであるかどうかと云ふことを明かに伺はないと、唯改善努力をすれば物が殖えるであらうと云ふことは厚生大臣の希望であつて、現實は希望でなく極めて物が殖えないで、爭議が激増して居ることは御承知の通りであります、だから厚生大臣の希望は今日正に裏切られ居ると云ふことだが、政治と云ふものは希望でなく具體的にやるのが忠實なことであるから、さう云ふ點を具體的に御答辯願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=31
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032・河合良成
○河合國務大臣 是は非常に難かしい問題でありまして、改善努力と云ふことは非常に廣汎なことを意味して居る、例へば食糧問題が解決されるとすれば物はずつと増産されて來ます、物價問題が解決されれば物は増産して來ます、假に「アメリカ」の「ドル」とでも「リンク」して貰へば日本はすつかり安定して來る、色々教育の面でやつて貰つても變つて參ります、治安の面でやつて貰つても變つて參ります、是は百般の事情で行くのでありまして、其の中の一部で機構と云ふ問題は考へ得ると思ひます、考へ得ますけれども其の機構と云ふものをどう云ふ風に變へる、機構を變へるか變へぬかと云ふ一言を以て御答辯する譯には行きませぬ、私は先程も申しました如く、將來に向つては日本の産業に對する一つの理想を持つて居ります、私共はやはり人間としての理想に近付きたいと云ふ考へを持つて居ります、それだから一歩一歩は、或は機構と云ふ問題に觸れて行くかも知れませぬが、機構の問題に觸れるが故に、機構を變へたと云ふ理論は適當でないと云ふ風に考へますので、非常に廣範な中の機構と云ふものは、勿論其の中の一つ一つを考へますが、其の機構を變へるにしても、どう云ふ風に變へるか、それを變へる方法、時と云ふものに付て、どう云ふ刻み方をして行くかと云ふ問題が色々ございますから、是は平たく私は、「イエス」とか「ノー」とか、機構を變へるとか變へぬとか云ふことを、一言で御答へすれば、或は誤解を招くと考へますので、さう云ふ風に御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=32
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033・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 何れの工場鉱山でも、それと並行して經營協議會と云ふやうなものを締結して居ります、更に經營參加と云ふやうなものも、現場に於て締結してやらうとして居りますが、政府の方からさう云ふことに付て具體的な指示されるものがないと云ふので、思ひ思ひに作り、又政府から何れ何とかあるだらうと云ふやうなことを求めて、延期をして居ると云ふやうな所もある、さう云ふ爲にさう云ふことが具體的に現場に締結されないで、勞資の間に、此の産業復興に盛上る態勢が其の爲に出來ないで居るとか、それが長引いて居る爲に、其の間に勞働爭議が起つて來て居ると云ふやうなことが屡屡あちらこちらあるのですが、斯う云ふ點に對してはやはり勞働協約、經營協議會なり經營參加なりに對して、現場の方で事實上必要を感じて、さう云ふことが盛上りつつあるのですから、是等を政府としては採上げて、それを次代の日本の産業、勞働體制の大道に乘せると云ふことが、極めて私は日本の勞資關係を調整、發展させる上から見ても、或は産業の復興再建をする上から見ても、或は産業勞働の新しい平和を作る意味から見ても、極めて緊急重要なことが差迫つて居ると思つて居るのだが、斯う云ふ點に對して厚生大臣は、さう云ふことを採上げようと御感じになつて居るのでせうかどうか、或は又さう云ふことが現場に盛上りつつあるのであるから、それを育成しよう、發展させようと御考へになつて居るかどうか、さう云ふことはどうも資本主義的「ブルジョアジー」主義から考へて、面白くない例が澤山出て來ることだから、それ等は一つ放つて置いて、さうして自然にさう云ふことは何とか、今度のやうな、斯う云ふ調整法なり、其の他勞働者の行動を壓迫するやうな法律でも作つて、漸次抑へ付けて行かうと云ふ御考へであるかどうかと云ふ點を、一つ明確に御答辯願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=33
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034・河合良成
○河合國務大臣 只今のご質問の先の方に御述べになりました線に沿うて大體私共も同感であります、さうして契約の原則に基きました經營協議會の如きは勿論結構であります、それに依つて勞働意欲が非常に昂進して來ると云ふことになれば、勿論是は結構なことだと思つて居ります、そして此の經營協議會の案に付きましても、色々是は法律其の他で決めるかと云ふ説もありましたが、やはり勞働組合の健全なる發達を期する意味に於ては、自然の展開に俟つた方が宜からうと云ふ趣旨で、餘り箱に入れたやうな取極めはやりませぬが、過日も中央勞働委員會で、參考案を向ふで作つて貰ひまして、只今出來て向ふから其の線に大體沿ふことを御示し下さいました、斯う云ふ中央勞働委員會などの案も一つであらうと云ふことを、參考に各位に知らせるやうに進んで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=34
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035・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 其の案を一つ私共委員にも知らせて貰ひたいと云ふことを御願ひ申上げて置きたいと思ひます、それで其の點は大體私共一應どう云ふ風に御考へになつて進まれつつあるかと云ふことは分つたのでありますが、更に爭議は漸次少くなるのかと思つたところが、事實は工場礦山等に付て見ても少くない、段々激増すると云ふ傾向が、相當大きい所に起つて來つつあります、さう云ふ點から、例へば石炭なども一つも増産にならない、或は其の他の工場礦山等を見ましても、大きい所などに於ても一向復興再建と云ふやうなことを生産の上で我々は見ることの出來ないやうな現状である、そこで私はさう云ふやうに爭議が激増して來る現實と云ふものは、是は一體誰に責任があるものか、厚生大臣は此の點爭議の責任を「パーセンテージ」に分けてすれば、資本主義的經營體其のものにあるのか、或は此の急激に作られた勞働組合に多くの爭議の責任があるのか、或は政府がさう云ふものに對して無策であり、消極的である、さう云ふ點から政府の責任なのか、此の責任は誰が負はなければならぬのか、斯う云ふ點に對してどう云ふ見解を持つて居られるかを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=35
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036・河合良成
○河合國務大臣 どうも一寸爭議の責任と云ふことに對しましては私ははつきり分りませぬ、殊に「パーセンテージ」に分けると云ふやうなことは到底出來ませぬ、人間はやはり母親から生れたか父親から生れたか一寸分らないやうなもので、中々此の社會現象を捕へて、斯う云ふ御尋ねを下さいましても一寸私には──甚だ不敏でありまするが、斯う云ふ社會状態全體が原因としか私には思へませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=36
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037・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 其の點が或る程度分らないと、此の激増して來つつある爭議を、何處をどうしたら之を少くして、復興再建の生産意慾に燃え上らすことが出來るのか、政治の打ちどころの手が私は分らなくなると思ふのであります、此の點どう御考へになつて居るか、私がそれを「パーセンテージ」と言ふのは、數字で出せと云ふ意味ぢやないのであります、政治をやる上に對して大體に於て其の目星を付けないと、政策を立てる上に於ても、法律を作るに當つても、どう云ふ風に政治をやつたら宣いのかと云ふ私は「ポイント」が得られなくなると思ふのであります、さう云ふ意味に於て厚生大臣がどうも今の譬話のやうなことで御考へになつて居られると云ふことになると、此の爭議をどうして少くするか、出來ることならば爭議をなくすことが出來るか、さう云ふものに對して一體眞劍に御考へになつたことがあるかどうか、眞劍に御考へになれば、自ら政治としては斯う云ふ手を打たなければならぬ、斯う云ふ施策を以てしなければならぬと云ふことが、自然に私は出て來ると思ふ、是が分らぬと云ふことになると、政治の建て方も分らぬと云ふことになるが、是こそ全く私が前に言つた無策、消極的であると斷じなければならぬが、さう云ふやうに私共が斷じて差支ありませぬか、此の點を一つ伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=37
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038・河合良成
○河合國務大臣 さう云ふ風に斷定をされては實は困ります、それは責任と御尋ねになるから私は分らぬと申上げた、併し原因は略見當が付いて居ります、どうして爭議を起すか、それに對して何處がどう云ふ責任を負ふかと云ふ問題になると、政治として其の責任の所在が何處と云ふことを、私から答辯申上げるのを控へる譯であります、併しながら原因は何處にあるかと云ふことに對しては、大體の見當は付いて居ります、さう云ふ意味に於て、例へば物價問題なり、生活問題なり、或は食糧問題ですが、或は組合の態度にも善くないのもあります
〔古賀委員長代理退席、委員長着席〕
善いのもあります、色々そこに問題がありまして、それに對して具體的な方法は執りつつあります、又將來も執る積りであります、さう云ふ風にどうぞ御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=38
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039・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 どうも一番重大な點がはつきりしないので、私は甚だ遺憾に思つて居るのでありますけれども、厚生大臣がそれより以上、どうも答辯をされぬものであるならば、出來ないと云ふことであるならば、私はそれを追究することも、徒らに時間を取ることで、甚だ遺憾に思ひますので、私共は政府がさう云ふやうな方針であるとするならば、自ら此の法案の取扱の上に於ても、私共は非常な疑惑を以て此の法案を取上げなきやならないと云ふことを茲に一言して置きます、更にそれと關聯も致しますが、私は最近に於ける勞働爭議の激増して來ることを單に私共が生活の面から取上げたと致しますと、今日使用者側は斯う云ふことを言つて居る、非常に月給賃金と云ふものが高くなつた、何倍になつたと云ふことのみを言つて居るのであります、月給賃金さへ拂つて行けば、又増額をして行けば、もうそれで自分の所の使用人に對する責任は萬事終れりと云ふやうな考へ方が非常に多い、月給賃金を拂つて居るけれども、併しこんなに物價が高くなつて來るので、一體うちの從業員、うちの職員はどう云ふやうに物を買つて生活をして居るだらうか、果して此の仕事に專心するやうな生活をして居るだらうかどうだらうか、さう云ふやうな點に對して、全く無關心であると云ふやうなことが、私は非常に多いことを遺憾に屡屡感じて居る、使用主側で今日言つて居りますのは、物の高いと云ふことは、お互ひに話さへ出れば、それを攻撃して居る、併しながら勞働者職員が月給賃金さへ上つたらば、どう云ふ生活をして居るかと云ふことに對しては、極めて無關心なことが多いのであります、斯う云ふことが私は爭議の奮起つて來る一つの大きな原因であると云ふことも考へて居る、さう云ふ點から此の職員でも勞働者でも其の雇主に對して生活上の信頼と尊敬をして居らない、さう云ふ點から此の勞働爭議と云ふものが次から次に起つて來て居ることを、私共は甚だ遺憾に思つて居るのであるが、今日私は月給賃金を拂ふと云ふことばかりぢやなくて、どう云ふ生活をして居るかと云ふことに對して、例へば官廳の職員にしましても、工場鑛山の職員、從業員にしても、さう云ふことを相當責任を持つて考慮をして行かなければならぬぞと云ふやうなことに對して、經營者側にさう云ふことを指示すると云ふやうなことに付ての御考へを持つて居られるかどうかと云ふことに付て伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=39
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040・河合良成
○河合國務大臣 只今の御意見は御尤もでありまして、經營者側なり、使用者側に於て其の點まで勿論思ひを致すべきものであると云ふことに付ては全く御同感であります、唯政府としてそれに對しどう云ふ方法を執つて居るかと云ふ御尋ねでありまするが、只今具體的にさう云ふ點にまで注意をせよと云ふやうな意味の指令は出したことはないと思つて居りまするが、大體の精神に於て、併し勞資と云ふものはさう云ふ態度に出べきものだと云ふ考へは持つて居ります、全般的にはさう云ふ一つの考へを持つて居りますけれども、勞資問題に對して特に經營者側に對して、さう云ふ具體的なことを特定的に指示したと云ふことはないと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=40
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041・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 まだ指示されてないと云ふことで、厚生大臣も極めて同感であるとされるならば、直ちにさう云ふことに對して具體的な指示事項を作られまして、それで月給賃金を拂つて居るだけではいかぬし、其のどう云ふ生活をして居るかと云ふことに對して本當に責任を持つて、斯くして安定感を與へて事業に專心出來るやうにやれと云ふことの指示を下されることを此の際希望申上げて置きます、其の點は其の程度が宜いと致しましては次は勞働委員會の問題でありますが、勞働委員會が勞働法の精神を完全に活かす爲には、此の委員會を掌つて居ります所の中央地方の勞働委員會の事務局がどう云ふ機構構成になつて居るかと云ふことが、是が私は非常に重大な關係を持つものぢやないかと思つて居りますが、此の事務局が現在完全に勞働法の民主主義を活し得て居ると思つて居られるかどうか、あの中央地方を通じての事務局程度で勞働法の精神を完全に民主化して活かすだけの機能を持つて居るかどうかと云ふことに付ての御考へを先に伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=41
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042・吉武惠市
○吉武政府委員 只今伊藤さんからの事務局に付ての御尋ねでございますが、御話の如く中央地方を通じまして事務局が完全な域に達して居ないと私も存じて居ります、此の點に付きましては、今後とも漸次改善を圖つて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=42
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043・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 現在の事務局は洵に官僚機構其のものであります、例へば事務局の中に專任として民間から採上げられて事務局の責任者となつて居る人が果してあるかどうか、現在中央地方を通じて其の事務局の構成人員を見ると、殆ど官僚の兼務であります、地方の如きに行けば、殆ど警察官が特高をやつて居つたとかなんとか云ふ、さう云ふ警察官が此の勞働事務局の總てをやつて居る、それから中央地方を通じて皆兼務であります、此の官吏が兼務をして居ると云ふことは、其の時の政府の意向に依つて絶えず鼻息を窺つて居る、さう云ふ所から眞に勞働法の民主主義的な精神に立つて其の事務局が此の事務を掌つてやると云ふことは出來ない、さう云ふことでは、例へば中央地方を見ましても、其の事務局の勞働委員會の會長になると云ふやうな人もない、皆官吏がなつて居る、或は又其の豫算がないので、皆兼務をさして居ると云ふやうなことで、勞働法自體は民主主義的な法律であるが、其の中核となつて之を運營し、掌つて行く所の、而も企畫をし、指導をして行く所の其の事務局が、皆官吏の兼務で、警察官の古手である、さう云ふやうなことで一體此の事務局が完全に此の勞働法の精神を活かして、此の指導企畫をしてやつて行くことが出來ると御考へになつて居るか此の兼務の儘で宜しいと御考へになつて居るかどうか、斯う云ふ點に對して先に一つ御伺ひして置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=43
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044・河合良成
○河合國務大臣 只今の御質問は御尤もでありまして、此の勞働委員會の構成は近い機會に於て改善されると思ひますが、其の機會に出來るだけ事務局も獨立の專任の人を置かなくちやならぬと云ふ風に考へて居ります、或は其の改正前に於てもさう云ふ機會があればしたいと思ひますが、少くとも改善の機會には出來るだけ今御質問の趣旨のやうな風に變へたいと思つて居ります、變へたいと云ふことも是も政府の方でやるのださうですから早速致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=44
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045・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 大體私は是は自分の調査研究が足らぬのか知れませぬが、大體私の知り得る範圍では全日本を通じて專任者は民間人が一人しかないのぢやないかと思つて居るが、まだありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=45
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046・吉武惠市
○吉武政府委員 實は事務局の機構は所謂勞働委員會と云ふ民主的な機構の「スタッフ」としての事務局であります、隨て民主的に構成さるべきは勿論だと思ひまするが、併し其の職員は身分としてはやはり官吏、若しくは囑託で入る譯であります、隨て民間人を登用致しましても、それは囑託であれば囑託の身分でありますが、官吏の身分を取得しますと、官吏になるのであります、要は形式的な官吏であるかどうかと云ふことよりも、其の人に眞に民主的な人を得ると云ふ御質問の趣旨ぢやないかと思つて居ります、我々も勿論さう云ふ線に沿うて人選を進めて居ります、隨て民間人を登用しながらそれを官吏に登用して置く場合もございますし、又それを囑託の身分で、官吏では所謂俸給其の他の關係で拘束を受ける場合には、囑託で置くと云ふ風な方法を講じて居る譯であります、御説のやうに兼務者が非常に多うございます、是は御承知と思ひますけれども、豫算面に非常に括られまして、豫算が非常に少いものですから、片つ方俸給もさう云ふ安い俸給では人を得られませぬので、勢ひ役所の人が手傳ふと云ふ形式を執つて居るのであります、決して役所の者が手傳ふから役所のやうにすると云ふ趣旨ではございませぬ、委員會は總て委員長及び夫員の合議の上で運用されて居る譯でありまして、事務局は何等の權限を持ちませぬ、唯其の委員會の命に依り調査をし或は下働きをすると云ふ状況であります、而も是も御話のやうに民主的な機構に作り直すことは是は至極當然のことでございまするので、我々も努力致す考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=46
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047・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 勞働委員會事務局其のものに豫算が取れないと云ふことはもう御承知の通りであります、中央勞働事務局の豫算を私共それとなしに調査して見ますと給仕一人一年間の豫算が五圓、小使一人十二圓と云ふ豫算を組んで居る、一體一年間五圓で給仕になりてもなからうし、一年間十二圓で小使が傭へると云ふ道理もなからう、と云ふ譯で、あの豫算を見て私は洵に馬鹿々々しい名稱と金額をくつ付けたものだと云ふことを感じて居るのでありますが、段段調査をして見ると云ふと、例へば會長に二千圓、非常に忙がしいのに、一年間に二千圓位では是もなりてがない さう云ふことで豫算がないからして、會長を輔佐する智能の「スタッフ」と云ふか、「ブレーン」と云ふものが置けぬと云ふやうなことで、本當に官吏の警察官上りと云ふか、さう云ふ人達が唯兼務で片手間にやつて居ると云ふやうなことだけで、そこには何等の新しい企畫性と云ふものも、それから創造指導性と云ふものもあり得る道理はない譯である、斯う云ふ點を私は眞劍に御考へになつて御取上げにならぬと云ふと、此の勞働組合法に基く所の勞働協約なり、或は勞働委員會なり、或は更に經營協議會なり、斯う云ふ問題に對してそれぞれ回答を與へ、自ら積極的に企畫と指導を以てやつて行く所に此の勞働事務局、勞働委員會の使命があると思つて居る、唯爭議が起つて來たから之をどうするか、或は訴へて來たから之をどうするかと云ふ、さう云ふ受身の立場でなくて、私は寧ろ勞働法の精神を體して、事務局を中心にして勞働委員會と云ふものは積極的な企畫と創造と指導性を以てやつて行く所に、勞働法を中心にする新しい勞資關係の態勢が確立すると、私は斯う思つて居るのでありますが、さう云ふ重大なる使命を持たされて居る、所が今申したやうなもに貧弱語るに足らぬと云ふやうな状態を見て私は一體本氣で其の勞働法を中心にして勞働委員會なり或は勞働協約なり、經營協議會なり、新しい態勢の指導と云ふものを確立しようと云ふ御考へがあるのかどうかと云ふことに、私甚だ疑惑を持つて居るのでありますが、斯う云ふ點に對して私は現在はさう云ふ状態であつても、今後斯うして行くのだと云ふことをもう少し具體的に厚生省としてのそれに對する方針を私は明確にして貰ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=47
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048・河合良成
○河合國務大臣 只今御指摘の通りでありまして、私も實は勞働委員會に於ける豫算關係を聽いて驚いた次第なんであります、それで出來るだけ近い機會に於て、どう云ふ方法でそれを填補するかは、是は財政當局との交渉にも依りますので分りませぬが、或は豫備金でも取れるものか──此の豫算には今遡つて末端の細かい問題を組替へる譯には行きませぬが、豫備金でも取れるものか、或は出來るだけ近い機會に於ける追加豫算にでも計上すべきものか、何等かの方法を以て、もつと勞働委員會と云ふものが十分に運營出來ると云ふ風に豫算的措置を講じなくてはならぬと云ふことに付ては御同感でありますので、出來るだけのことを致す積りで居りす発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=48
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049・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 厚生省に五十萬圓と云ふ何か調査豫算か何かがあるらしいが、其の豫算の中から此の中央勞働事務局若しくは地方府縣に對してもそれを幾らかづつ雀の涙程割いてやつて居ると云ふことになつて居るのですが、どうなんですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=49
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050・吉武惠市
○吉武政府委員 あの五十萬圓の調査費は、中央勞働委員會の調査に使ふと云ふことで取つた豫算でありますから、地方へ分ける譯には行かないかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=50
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051・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 地方の勞働事務局には政府からの經濟的な補助と云ふものは現在やつて居られぬかどうかと云ふことを併せて伺ひたいのでありますが、更に延長しまして、勞働委員會と云ふものが、此の中央勞働事務局と云ふものをどうしても地方に延長させねばならぬと云ふやうなことが現實の問題として私は起つて居るやうに思ふのですが、其の理由は例へば一つの會社が幾縣かに亙つて同一事業場を持つて居る、或は鉱山を持つて居るとか或は紡績業を持つて居るとか、さう云ふことで幾縣にも亙つて其の事業場を持つて居る、さうすると其の事業場の勞働組合は、それぞれ其の事業場に勞働組合の聯合會の組織を持つて居る、さうすると其の勞働組合の聯合會と其の會社の本社と勞働協約を締結する、爭議が起つて來た場合に、要求書を一體何處に訴へて宜いのか、何處が主體になつてそれを取上げて解決する權能を持つのか、此の點がどうも一府縣の勞働委員會だけではそれを處理することが出來ないと云ふ現状になつて來て居ると私は思ふのですが、其の點から中央勞働事務局としてそれぞれの區域に亙つて出張所のやうなものでも作ると云ふか若しくは又それ等を本社を中心にし、其處でどう云ふ風に之を解決してやると云ふことに付ての何か御考へがあられるかどうか、此の點を先に伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=51
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052・吉武惠市
○吉武政府委員 中央勞働委員會と地方勞働委員會はやはり管轄を別に致しませぬと、そこに權限の重なり合ひがありますと、解決其の他の點で面倒なことが起る、隨て地方的に起つた勞働問題は地方の勞働委員會で解決する、それから二府縣以上に亙りました場合には、何處かの縣を指定して決めるか、或は中央勞働委員會で決めると云ふ風にして居ります、隨て中央勞働委員會事務局の支部を地方に置くと云ふ考へは持つて居りませぬ、併しながら御話のやうに中央と地方とは非常に關聯が消いものがございます、隨ひまして中央勞働委員會で論議になりました事項或は決議された事項等は、逐一地方委員會に速報して連絡を取つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=52
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053・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 其の點がまだはつきりせず、又敏速に行かない爲に幾縣かに跨つて居る爭議の解決を徒らに長引かして居る、それから勞働委員會の取上げる其の主體性に付て、勞働委員會でも間誤ついて居ると云ふやうなことも聞くのであるが、此の點に對してはつきり、又敏速に指示して貰ひたい此の點は希望として申上げて置きます
それから私は更に新しく最後に質問致したいと思ひますことは、御承知のやうに敗戰日本を再建する爲には日本は戰爭を抛棄した、自衞權も持たないと云ふ未だ世界に類例のない憲法を此の度制定する譯であります、其の點から今後の日本は平和國家、文化國民として茲に新しく再出發することになつた、今後我々が平和的に文化的に優秀なる日本國民として成長發展するか否かが此の國の運命を決定するのであらうと云ふ極めて重大なる現状に立たされて居ることは申上げるまでもありませぬ、憲法に於ても戰爭を抛棄し、自衞權を持たないと云ふことを世界に發表して、文化國を以て誇る私共はどうも國内に於て社會問題、勞働爭議等の問題が頻發して、絶えず國内に物情騷然たるものがある、斯う云ふことを世界に見せるやうでは、何だ日本は憲法を作つて平和國家、文化國家と言つて居るけれども、國内を見るとさう云ふ香ひもしないぢやないかと云ふことになつて、自ら日本の重大なるあの憲法をして、又新しい平和國家、文化國家をして彼等に納得させることが出來ないではないか、納得さすことが出來ぬならば日本の將來の凡ゆる發展の上に非常に影響する所が重大ではないか、斯う云ふやうに私は考へて居るのでありますが、斯う云ふ點に對して私は厚生大臣の根本的な信念を先に伺つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=53
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054・河合良成
○河合國務大臣 憲法の戰爭抛棄に關する規定と關聯して、國内の爭議を成べく起らぬやうにすることが宜いのではないかと云ふ御質問でありましたが、全く同感でありまして、出來るだけ爭議を未然に防止する、防止をしますには其の原因たるべき事項を成べく芟除しなければならぬ譯でありますから、食糧問題の解決なり、經濟の回復なり、人心の安定なり、又勞働者の文化生活の潤澤化と云ふやうな所に伺つて主力を注いで行かなくてはならぬことは御同感であります、唯今斯う云ふ終戰後の混亂時代と云ふやうなもんですから、意餘つてどうもそこまで國全體の力の及ばぬのは甚だ遺憾とする次第でありますが、政府も出來るだけの努力をしましてさう云ふ方針に持つて行きたいと云ふ覺悟であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=54
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055・逢澤寛
○逢澤委員長 伊藤君に御諮り致しますが、商工大臣に對する御質疑がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=55
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056・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 厚生大臣に對する質問はもう少しで終りますから、其の後にしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=56
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057・逢澤寛
○逢澤委員長 それではどうぞ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=57
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058・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 先般本會議で遞信大臣が、自分の所の問題は勞働協約と經營協議會で完全に旨くやつて行ける自信を持つて居ると非常な大見榮を切つて答辯をされたのでありますが、遞信大臣がさう云ふ自信を御持ちになつて居るとするなら、私は農林省に於ても、厚生省に於ても、商工省に於ても政府關係或は官廳關係、さう云ふ所に於ても恐らく遞信大臣の自信と同じやうな自信を各大臣とも持つて居られるだらう、政府もさう云ふ自信を持つて居るだらうと私は思ふのであります、さう云ふ點に對して遞信大臣が言はれたやうなことを政府として何か閣議で話合ひになつたかどうか、御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=58
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059・河合良成
○河合國務大臣 遞信大臣の御話になつたことは私能く存じませぬ、今初めて承つたのでありますが、全體の國務大臣がさう云ふ風にして處理して行かうと云ふやうなことを閣議で決めたことはありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=59
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060・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 今私共が審議を致して居ります勞働關係調整法でありますが、是は官吏、公益事業に從事する人々の罷業を防止することは、國家國民に極めて重大な影響があると云ふ所から、此の勞働關係調整法を提案されてあるのであります、所が罷業と云ふものがそれ程國家國民に重大なる影響がありとするなら、又あるのであるから、さうすれば當然此の官吏及び公益事業に從事される總ての人々の生活權と云ふものに對して國家國民は責任を持たなければならぬだらうと私は思ふのです、例へどう云ふやうな待遇を受けて居るか、どう云ふやうな生活をして居るかと云ふやうなこと、私はそれは國家國民がそれに對して責任を持たなければならぬのではないかと思つて居ります、唯一片の爭議をやることを時間的に抑へる法律を作つただけでは相濟まぬ、斯う私は思ふのでありますが、さう云ふ點に對して厚生大臣はどう云ふやうに御考へになつて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=60
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061・河合良成
○河合國務大臣 是は現業員以外の官吏と云ふ問題と、それから法律に決めました公益事業に從事して居る人々に對する問題との二つは、やはり自から性質が違ふのではないかと思ひます、一つは爭議をやつてはならぬと云ふ問題になつて居りますか、一つは豫告を與へてと云ふ問題になつて居りますから、自から其の性質が違ふと云ふことを先づ前提と致しまして、生活を保障して行かなくてはならぬと云ふ問題は、此の度の憲法に於きまして、國民全體に對して政府の與へられた責任になつて居ることでありますから、廣く國民全體に責任を持つて行くべきことは、是は言ふまでもないことでありますが、特に官吏に付ては爭議權と云ふ勞働條件が制限されて居るから、其の意味に於て官吏の生活權と云ふものに對しては、特に重大な關心を拂つて行かなくてはならぬと云ふことは、疑ひないことだと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=61
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062・逢澤寛
○逢澤委員長 伊藤君に一寸御諮り致しますが、午前中の委員長の要望に致して、今文部當局と厚生大臣から發言を求めて居られますから、大變御迷惑でありますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=62
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063・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 一寸待つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=63
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064・長野長廣
○長野政府委員 日本の再建に付ては、究極する所國民の勞働がなければならぬ、就ては教科書の中に勞働のことに付て特に内容を差込む必要があるではないか、斯う云ふ御質問でございますが、全く御同感でありまして、是からの日本再建には、國民が精神的にも、肉體的にも勞働すること、即ち國民の勤勞の結集こそ最も大事な、根本的なものと存じます、隨ひまして實は文部省と致しましても是からの教育は行學一體、學ぶと云ふことは單に知識を取入れることでなくて勤勞することである、此の趣旨に依つて推進めたいと存じて居ります、加ふるに最近の傾向と致しまして、子弟の修學には巨額の經費を要することになりました、國民の産業的、財政的、經濟的生活の現状から見まして、非常な茲に困難を迎へて居るのでございますが、之に付てはやはり學生生徒が自ら働き、以て學ぶと云ふ氣風も相當加味しなければならないと存じて居ります、斯樣な次第から致しまして、御質問の御趣旨の如く、行學一體、勤勞を尊重すると云ふ建前で進まなければならぬと存じますが、殊に教育上大切な教科書の中に、是等に關聯する内容を盛り込むことは申すまでもなく大切なことになつて來るのであります、御質問の要點としまして、勞働の重要性及び其の意欲の昂揚を圖る文章、實例と云ふものを御指摘になつて居られますが、全く左樣に致したいと存じて居ります、更に道義の昂揚を此の點に結付ける必要はないかと云ふ御趣旨でございますが、是れ亦全く御同感でありまして、今後の教育は社會の何等かの部分を分擔し、之に全身全靈を傾倒することを以て職責を果すものである、此の個人の職責の原理に從ひまして至誠其の職務に邁進する所に、自ら眞の道義が生れ出て來ることと考へて居りますので、斯樣な意味に於て精々御趣旨に副ひまして、有效なる内容を教科書の中に盛りますことを茲に御誓ひ申上げる次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=64
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065・河合良成
○河合國務大臣 先程委員長から委員會全體の御意見として勤勞の重要性と云ふことに付て要望がありまして、政府に於ても至極御尤も、同感至極に存ずる譯であります、それで只今の日本の現状は、資源地帶がなくなつた關係上、どうしても或は農業の面に或は工業の面に、鑛山業の面に、凡ゆる面に深く入つて行きまして、所謂委員長の言葉を其の儘申しますれば、無から有を生ずると云ふことに精進して行かなければ是が打開の途がないのであります、一方さう云ふ風にして、多數の人口を狹い領土内に於て之を安定させて行くと云ふことになつて來ますと、自然そこに南洋方面なり或は大陸方面なりに對する繊維雜貨其の他の貿易品も其の必要に應じて出來て來るではないか、さうすればそれに應じて資材も原料も外國から仰ぐことが出來る、それに依つて再建する以外に途がないことは明瞭でありまして、全く國民の勤勞意欲其のもので國を再建して行くと云ふことに前進したいと思ひます、委員長の御發言に對しては喜んで政府も之を容れまして、之に對して努力致すことを御誓ひ申上げる次第であります
それから尚ほもう一つ世界勞働組合に對して日本の勞働組合が參加してはどうかと云ふ御話でありました、此の點も御尤もでありまして、出來るだけ近い機會に於てさう云ふ時期の到來することを希望して已まぬ次第であります、其の時期の問題に付きましては是は勿論先方の意向が中心になることでありまして、明瞭には勿論分らぬが、少くとも講和條約前後を以て是非加入さして戴ければ非常に結構であると政府は考へて居ります、但し是は主として勞働組合の自發的の問題が重點を占めて居りまして、勞働組合が健全なる發達を遂げまして、世界の勞働組合に入つても宜しいと云ふ風に向ふから言うて來るやうな機運が早く到達せんことを、朝野とも期待して已まぬ次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=65
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066・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 私は最後に之を結論的に御伺ひして置きたいと思ひます、今厚生大臣が言はれたやうに、官吏は爭議をやつてはいかぬ、それから公益事業に從事する者は此の法案にありますやうに制限されてある、そこで私は先にも申しましたやうに、官吏、公益事業に從事する人々は爭議をやつてならぬ程國家國民に重大なる關係のある所に其の職を奉じて居るのであります、それだけに又國家國民も此の人々に生活の不安なからしめて、其の職務に忠實に働くことの出來るやうに、やはり當然の責任と義務を我々も亦負はなければならぬと思ふのであります、さう云ふ點から官吏と同時に公益事業に從事する人々がどう云ふ生活をして居るか、どう云ふ待遇を受けて居るかと云ふやうなことを調査をし、審議をし、決定をするやうな、特別の國家にさう云ふ機關を作られると云ふ御意思があるかどうか、例へば官吏の職員組合或は公益事業に從事する諸君の勞働組合、さう云ふ代表者を參加せしめ、或は雇主側である所の政府、或は公益事業の事業主、更にそれに民間の專門的な權威者、さう云ふやうな人々を以て、此の人々の生活を不安なからしめて行くやうに解決をしてやる、絶えず國民の標準生活の待遇を受けて居るかどうかと云ふことを、此の機關が調査をし、審議決定をすると云ふやうなものを作つてやると云ふことは、國家國民の當然の義務であり責任ではないかと考へて居ります、唯爭議をやつてはならぬ、或は公益事業の爭議は兎に角斯う云ふ風に抑へて居ると云ふことだけでは、私は到底此の安定を維持することは出來ないと思ふのであります、是はやはりさう云ふ大事な所に働いて居つても窮鼠猫を噛むと云ふこともあります、昔御承知のやうに判檢事でさへも、やはり生活苦の時には「ストライキ」をやつた、全國的に連絡を取つてやつたことなどもあるのであります、だから國家の爲に大事な諸君でありますから、それに對しては、生活待遇をあれに託して置けば宜しいと云ふ機關を構成して、此の機關に依つてやるのだからと云ふ一つの安心感を與へると云ふことは當然政治の上に於て我々が執らなければならぬ責任ではないかと思ひますが、此の點に對して厚生大臣はどう云ふ風に御考へになつて居るか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=66
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067・河合良成
○河合國務大臣 只今の御質問の趣旨は御尤もでありまして、私も全く同感至極であります、早速さう云ふ風な制度を立てますことに付て具體的に考へたいと思ひます、何れ勞働問題に對する官廳の機構が變はることも成べく早く決定したいと思つて居ります、或はそれに關聯しますか、それと離れてか、兎も角さう云ふ線に沿うて具體的の研究を進めることに致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=67
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068・逢澤寛
○逢澤委員長 伊藤君、大分時間が經過して居りますので、河合厚生大臣は豫算委員會の方から、大分前から要求がありますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=68
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069・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 もう一點だけで終ります、今の人的な構成の問題に付てでありますが、其の場合に勞働組合の、例へば職員組合なり、公益事業の勞働組合なり、さう云ふ諸君も參加をさせて構成するものであると云ふ御考へであるかどうか、いま一應御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=69
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070・河合良成
○河合國務大臣 それは當然加へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=70
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071・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 それでは厚生大臣に對する質問は以上を以て打切ることに致します、石炭廳の方は……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=71
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072・逢澤寛
○逢澤委員長 石炭廳の方も商工政務次官も見えて居りますから、成べく簡單に要旨を御尋ね下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=72
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073・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 それでは要點だけを一つ御伺ひ致すことに致します、石炭の増産の問題に付てでありますが、實は先般から「アメリカ」側の方からも特に石炭の重要性に鑑みまして、輸入放出米を貰つて居る、さう云ふことで食糧の問題は可成り解決をされつつあるのでありますが、石炭が一向増産にならない、のみならず爭議は依然として大きな爭議が増加して行くのであります、斯う云ふ現状であれば石炭の増産は何時になつて望めるか、國民は此の點に對して不安を持つであらうと私は思つて居るのでありますが、石炭の増産は斯くして必ず増産が出來る、斯う云ふ點に對して石炭廳の方で具體的な、國民を納得させることの出來る案があるならば御發表を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=73
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074・岡松成太郎
○岡松政府委員 石炭の生産に付きましては世間で申します所謂隘路と稱するものが色々あるのでございます、其の中に於きましても、一番石炭の生産を阻んで居りましたのが食糧の不足、食糧の不安と申すものであつたのではないかと私共は考へるのであります、所調勞働爭議等に於きまして待遇改善の叫ばれますのも畢竟するに食糧を取得する爲の必要なる資金を獲得すると云ふことが大きな目的であつた、是は勞働爭議の實際の要求の面にも掲げられて居つたやうな次第であつたのでございます
そこで石炭の生産に伴ふ各種の隘路を皆是は解決する必要があるのでありますが、先づ第一に食糧に對する對策を講じなければならぬと云ふことで、只今伊藤委員から御話がありました通り、聯合軍側の御盡力を得まして、只今では最も食糧の不足して居りました北海道、九州方面の食糧の問題も解決を見まして、私共の見込みに於きましては此の八月以降に於て漸次出炭數量を増し、九月、十月以降に於ては完全に當初の目標の線に到達をする、それ以後に於ては逐月増産の歩調を辿りまして、本年度内に當初の目標である二千三百萬「トン」を確保致すと云ふ所を第一の目安として進んで參つたのでございます、尤も此の外に大いなる石炭増産を阻む隘路として所謂資金の問題、石炭の買上價格の問題、それから新圓の獲得の問題等もございましたのでありますが、是も略略近く議會に提案になります追加豫算を以て解決を見ると云ふことが考へられますので、大體從來考へられました隘路と云ふものは打開をされて居る、勿論其の地方々々の事情、各炭礦の事情等に依りまして爭議が起ると云ふことは、是は私共も勿論希望は致さない點でありますが、事實問題として現在も爭議は起つて居るのであります、關係方面と協力致しまして、是が解決を圖つて居りますので、非常に困難な、長引くやうな爭議に發展して行くことはないのではないかと考へて居り、又それに向つて關係方面と力を合はせて努力をして居る次第であります、斯う云ふ風で、結局は色んな不明確な點を綜合した見透しではございまするが、從來石炭の生産を阻んで居りました大きな隘路は解決を見て居りますので、九月位を轉期としまして目標の線に達し、尚ほそれを凌駕するやうな方向に進むものと我々は考へて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=74
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075・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 資金の問題等は分りました、最も今炭礦で生産隘路、減産の大きな理由の一つになつて居るのは、やはり資材の問題であります、例へば炭礦關係など私共が調べて見ると「モーター」であるとか「ポンプ」であるとか、其の他色んなさう云ふ機械類と云ふものは、三分の二位は其の部分品がない爲に修理が效かないで、雨曝しか倉庫の中に詰めてあると云ふ状態であります、さう云ふ所から炭礦災害に對應する設備はない譯であります、持つて居るけれども、それは部分品がないから兎に角どうすることも出來ないと云ふことであります、だから私は此の機械器具の解決をやることが極めて重大な一つであると思つて居るのですが、之に對しては炭礦其のものにはないのでありますから、從來の軍需工關關係と云ふか、戰爭中さう云ふ工場に相當是等を修理し得る部分品と云ふか機械類のあることを知つて居るのであります、所が是が商工省内に於ても各局別に割據されて居りまして、是では到底石炭廳の方でも、他の方面のことは分らないし、如何とも手の付けやうもないと云ふので其の儘放置してあると言はざるを得ないのであるが、商工省として省議と云ふか、綜合企畫と云ふことに依つて炭礦資材の不足の解決をやられようとするならば、自ら解決の途がそこに出て來ると思ふのです、さう云ふ點に對して、此の不足のものを解決する爲に綜合企畫を樹て、商工省管下に於て何處々々にどう云ふものが幾らある、是等のものを全部擧げて、炭礦の足らざるものの部分品なり其の他のものを之に依つて解決をしてやる、さう云ふ省議を開いて、綜合企畫に依つて解決してやると云ふ御考へがあるかどうかと云ふことを一つ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=75
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076・岡松成太郎
○岡松政府委員 只今資材のことに付きまして御質問がございましたが、洵に御尤もな次第でございまして、現在以上の生産を擧げて行くと云ふことになりますれば次に問題になつて來る、所謂隘路は資材でございます、殊に其の中の只今御指摘 なりました機械類は豫め能く手配を致して置きませぬと、愈愈足りなくなつたから云とつて急に之を賄ふことが出來ないものでございますので、商工省と致しましても是が爲に計畫的に資材を用意する案を以ちまして──所謂我々の用語でまる炭と呼んで居りますが、炭礦の生産維持竝に計畫的増産遂行の爲に必要な資材を製造せしむる爲に必要な石炭は、之を優先的に配給せしめると云ふ制度を設けまして、此の年度に入りまして以來計畫生産を致して居るやうな次第でございます、唯併しながら只今の御質疑の中で機械類の三分の二は破損して居ると云ふ御言葉がありまして、私も大要觀察を致せばさう云ふやうなことに相成るかと思ひますが、此の多く破損して居ります機械類を本當に修理をする爲に必要な材料の中の眞に足らないと申すものは比較的少いのであります、其の少い所の資材に付きましては或は進駐軍方面の要求を受けて居ります用途、或は其の他の肥料とか、鐵道の修理用とか色々他の方面の緊急なる用途とも競合を致して居るやうなものもございます、又原料として我國に比較的乏しいと云ふ「ゴム」のやうなものもございます、又或るものは其の設備が非常に足りない、戰災の結果非常に製造設備能力が落ちて居ると云ふやうなものもございまして、是が計畫量の達成を致します爲には商工部内の各局は勿論のこと、之に關係を持ちます各省各部局間の連繋を餘程密にして行きませぬ限りは十分なる計畫の遂行は期し得られないのでございます、從來とも商工省と致しましては、石炭廳が中心になりまして、能く關係局とも連繋を執つて參つた積りでございますが、實際にやつて見ました所の結果を振返つて見まするならば、只今伊藤委員の御指摘の通り尚ほ吾々の努力に於て足りない所があつたと反省を致す次第でございます、況してや商工省外の他省との連繋の點に於ては中々思ふやうに行かなかつた、又實際に連繋を執つた積りでも商工省内の各局にしろ或は他の省にしろ、戰後間もない時分には實際の製造工場の能力等に付て的確な事實の把握が出來なかつた、此の位のものは出來る積りでそこに註文を割當てて居つた所が現實にはそれだけの能力がなかつたと云ふ工合に、現實に中央に於て地方の末端の事實を把握すると云ふ面に於て足りなかつた點も逐次發見をせられて參つたのであります、現在に於きましては地方の各「メーカー」の製造工場の實情等も殆ど之を明確にすることが出來ましたし、又所謂軍の拂下物資と致しまして民間に委讓をして居りました所の特殊物件の所在等に付きましても十分に之を把握することが出來て參りました、隨て之を振向けると云ふことに付きましても、所謂紙上計畫、机上計畫でなく、現實に即した計畫を樹て得るやうになつて參りましたので、今後は只今御指摘の御趣旨の通りに、十分商工省省議は勿論のこと、必要があれば閣議に於ても之を決定して戴きまして、政府の全能力を擧げて石炭の生産の確保、資材面から是が阻害を爲さぬやうに努力を致したいと存じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=76
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077・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 資材の面はそれで分りましたが、もう一點石炭に關する點でありますが、大體今日幾ら焦つても中々石炭の増産が上昇しないのは、抑抑遡れば戰爭中に新坑と云ふ新らしい坑口を開けてやる開發を許さなかつたと云ふことが大きな原因の一つであります、戰爭中長年の間許さなかつたものだから、新らしい若々しい礦山と云ふものは今はない、皆んな段々時間と共に坑内が深くなり「コンディション」は惡くなつて來まして、段々老朽老廢をして來て、さう云ふ點から資材と人とを多く使つても石炭が出ないと云ふのは、是は大きな原因の一つはそこにある、そこで私は今後の新たな問題として、増産する爲にはどうしても新たなる開發に積極的に石炭廳が乘出してやらなかつたならば、恐らくより以上の増産を圖つて行くことは困難であらうと思ふ、なぜかと言へば、老朽老廢であるだけに、非常に色々な災害が多くなつて居る、さう云ふ點でどうしても私は新坑の問題を御考へにならなければならぬと思ふ、更に又筑豐炭田なり佐賀、長崎の方を歩きますと、今日礦區はないないと云ふことを言つて居るけれども、財閥の礦區に於ては何千萬坪と云ふ、或はより以上の厖大なる所の豐富なる礦區と云ふものを睡眠させて、之を三十年先に掘るとか、五十年先に掘るとか云ふやうに、それを死藏して居る、今日國家が殆ど皆破産をして、戰災保險も取れない、或は政府の債務證券も取れない、財産も皆んな投げ出してしまはなければならぬと云ふ今日に於て、天然自然にあつた其の礦區を、一個の自分が登銀をして居ると云ふだけで、其の礦區を三十年五十年先の分だと言つて睡眠死藏させて、之を掘らせないと云ふやうなことは、私は是は今日の我が國の再建復興の上から許すことの出來ない問題であると思ふのであるが、斯う云ふ點に對して、さう云ふやうな睡眠藏させて私有物として之を開發させない、さう云ふものに對して政府はそれ等を或は整理するとか、或は統合するとか、或は是等を解放するとか、さう云ふ新たなる礦區に對して新坑を造らせて増産を圖ると云ふやうな積極的な御考へを持つて居られるか、一つ伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=77
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078・逢澤寛
○逢澤委員長 成べく簡單明瞭に御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=78
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079・岡松成太郎
○岡松政府委員 政府と致しましては、只今御指摘の點に付きましては、新坑開發助成と云ふ方法を以て望まうとして居る次第でございます、是は前々から第一次、第二次と繼續を致しまして、昭和二十一年度以降第三次新坑開發助成を致して行きたい、三箇年の繼續事業でやつて參りたい、斯う云ふ風に考へて居る次第でありまして、それに關する豫算を計上致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=79
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080・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 今の財閥が持つて依然として私有財産にして居る睡眠死藏礦區を今日の場合解放することに付ての御考へは如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=80
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081・岡松成太郎
○岡松政府委員 財閥と言はれて居ります大鑛業會社等が持つて居る礦區に付きまして、是が開發を必要とする所は、政府より指示を致しまして、其處の開發を促し、且つそれを致します爲に必要な助成金を、只今申しました新坑開發助成金として交付致して、之を勸奬に依つて進めて參りたい、斯う考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=81
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082・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 本人がやらないで、其の儘放置して居るものは、他にやれる適格者があるならば、其の者に對して増産の見地からそれ等を許してやることの積極的な方策に付て御考へがありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=82
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083・岡松成太郎
○岡松政府委員 現在持つて居る鑛業權者がそれを開發するに不適當である、且つ他に是が開發に當るのに適當なる者がある、さうして其の適當なる者をして開發せしめなければ之を開發して行くことが出來ぬと云ふ場合には、現在政府と致しましては重要鑛物増産法と云ふ法律の根據に依りまして、其の開發せしめる者に礦區の使用權を設定せしめて、之をやつて參ることが出來る制度を持つて居ります、是等の運用に依つて只今仰しやつたやうな場合には臨んで參りたいと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=83
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084・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 其の點を今一點だけはつきり伺つて置きたい、今の御答辯で大體に於て分りましたが、併しどうもまだ實際問題になつて來ると可なり躊躇されると云ふことで、おやりになることが結局何か反對があると出來ないと云ふ弱さを私は感ずるのであるが、それに對するさう云ふ反對があつても、政府は増産の見地から斯う云ふ方針を以て斷乎としてやるのだと云ふことに付ての強さがあるなら、それを一つはつきり伺ひたいと云ふことと、もう一つは例へば御承知であると思ふが、隣り同士掘つて居る、さうすると片方はもう掘つてしまつた、所が、片方から掘るのにはまだ十年も二十年も掛らなければ掘つて來ない、こつちの方は掘つてしまつたので、其の儘延長すれば資材は要らぬ、或はさう費用も使はないで炭も出ると云ふやうな所が礦山には澤山あるのであるが、さう云ふ場合に對する礦區の分割と云ふか、或は進掘延長と云ふか、さう云ふものに付て具體的に、さう云ふ所は取上げて直ちに増産の爲に許すと云ふやうなことに付ての命令を發するか、何か増産の爲にやられる御意思があるかどうか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=84
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085・岡松成太郎
○岡松政府委員 最後の點でございますが、法規の建前は先づ當事者の間に協議をなさしめる、協議が調はない時には、公平なる第三者等を加へた委員會に諮つて、其の委員會の決議を以て其の協議に依つて定まつたものと認定をして其の價格條件等に依つて使用權の設定を認めると云ふことでありますので、決して甚だしく使用權を侵害すると云ふ方法でもなし、決してさう所謂「ドラスティック」な、亂暴な法制でもありませぬので、現實の必要が起りましたならば政府としても十分やつて行けると私は考へて居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=85
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086・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 其の點は今度委員會を作つてさう云ふ委員會を構成されるのでありますか、從來私共はさう云ふことを耳にしたことはないが、今御答辯になりましたやうな委員會と云ふものは公正にさう云ふ問題を解決する爲に、或はさう云ふ不振の礦區の分割と云ふか、睡眠死藏礦區を適者に開發さす、さう云ふ問題を解決する爲にさう云ふ委員會を今度御作りになるのか、御作りになるのは今度御作りになるのか、御作りになるのならばどう云ふ法制で御作りになるのか最後に伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=86
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087・岡松成太郎
○岡松政府委員 此の法制は大分前から、昭和十四、五年からですか一寸今はつきり記憶して居りませぬが、戰時中からありましたので、現實に適應する時には地方の商工局が中心となりまして、其の商工局に委員會の設定を致しまして、其の委員會に掛けて決定をすると云ふことになつて居ります、石炭に付きましては現實に此の委員會を作つた例はないと私も存じて居ります、戰爭中に於きましては所謂他の閣議決定其の他の決定に依りまして整理統合と云ふやうなこと、所謂戰時的方法でやりましたので、之に俟たずやつた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=87
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088・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 石炭の問題は其の程度で打切ることに致します
次は賠償代償の問題等に付て先般本會議に於て商工大臣から大まかな、本當に一言御答辯があつたやうでありますが、私は賠償代償の問題は可なり國民も此の點は關心を持つて居ると思ふ、それぞれの工場に居る勞働者の方では非常な關心を持つて居るのであります、仍て賠償代償とされる所が最早今日工場別的に大約御分りになつて居るかどうか、又發表されて差支ないことになつて居るのならば御發表願ひたい、それから賠償代償に取られるものは先般商工大臣が一千百萬「トン」か二百萬「トン」と仰しやつたやうでありますが、其の賠償代償に取られる品物の大體の種類を大雜把で宜しいのでありますが、さう云ふことが種別に發表が願へるならば御發表願ひたい、それから其の賠償代償に取られる工場から工場別に大體どの位の失業者が出るのかと云ふ點を御伺ひしたい、併せて是は厚生省に關聯しますが、其の出る所の失業者の數も相當のものであらうと思ふが、それ等の失業者に對してはどう云ふ風な手當其の他の待遇をして、是等の失業者から重大なる社會問題を惹起させないやうにする保護的な御考へがあるかどうか、斯う云ふ點を御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=88
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089・小林かなえ
○小林政府委員 賠償の範圍でありますが、是はまだ確實になつた譯ではありませぬけれども「ポーレー」大使の聲明、それから極東委員會の發表などに依りまして、大體の所を考慮して申上げますと、鐵鋼でありますが、鐵鋼は鋼塊生産三百五十萬「トン」銑鐵が二百萬「トン」超をゆる部分全部が撤去、それから接觸法硫酸は年産三百五十萬「トン」の生産能力を超ゆる能力全部の撤去、それから鹽素は年産約七萬五千「トン」以上の生産施設全部撤去、苛性曹達年産八萬二千五百「トン」の生産能力を超ゆる能力全部撤去、曹達灰年産六十三萬「トン」の生産能力を超ゆる能力全部撤去、それから工作機械年産二萬七千臺の生産能力を超ゆる能力全部撤去、軸受年産二千二百五十萬圓の生産能力を超ゆる能力全部撤去、それから輕金屬再融解のものを除き全部撤去、それから輕金屬壓延年産一萬五千「トン」の生産能力を超ゆる能力全部撤去、火力發電二百十萬「キロワット」の能力を超ゆるもの全部撤去、航空機全部撤去、それから是は大體商工省所管の業種別のみを擧げたのでありますが、他省所管として陸海軍工廠全部撤去、それから造船二十造船所を撤去、是は年産十五萬總「トン」の商船の建造能力及び三百萬「トン」の商船隊修繕維持に要する施設を超過するもの全部撤去、尚ほ以上の管理工場として指定されて居るものが、航空機其の他四百五十二工場、陸海軍工廠が八十五工場、研究所が四十五工場になつて居ります
そこで是等の賠償の爲に生ずる失業者がどの位あるかと云ふことでありますが、賠償指定産業に屬する勞務者は約二十萬人位でありまして、其の内工場撤去に依つて失業するものと考へられるものが約十萬人位あります、併し是等の失業者が如何なる工場に、どれだけと云ふことは未だ決定して居りませぬ、又具體的工場に付ては明示されて居りませぬ、賠償設備の見積は大約千二百萬「トン」位と云ふことが大體の概數になつて居ります、失業者に對する對策などに付きましては、厚生省から御答へがあると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=89
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090・吉武惠市
○吉武政府委員 目下研究中でございまして、茲で申上げることは出來ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=90
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091・小林かなえ
○小林政府委員 こちらで分つて居る分だけを御答へ申上げます、賠償關係工場の勞務者に對する所謂失業に對する對策と致しましては、大體次のやうに處置したいと云ふ風に考へて居ります、第一は、賠償指定と同時に生産を停止する工場、之に屬する勞務者の措置と致しましては、會社工場等から支給する退職手當の外に、慰勞金を支給するのでありますが、是は國庫で負擔をして行かうと云ふのであります、さうして更に是等の人々に對しては、同種の産業及び他の産業への就職を一つ出來るだけ幹旋して上げよう、それから第二には、賠償指定工場の中で撤去まで生産の繼續を要する工場、是は相當重要なものでありますが、之に屬する勞務者の措置と致しましては、勞務者に對しては、撤去まで特に保留する必要がある爲に、前に申しました慰勞金の外に特別報償金を國庫負擔で支給すると共に、併せて優先的に同種の産業及び他の産業の方面へ就職を出來るだけ幹旋確保して、さうして是等に依つて生ずる不幸を出來るだけ救つて參りたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=91
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092・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 此の點も本會議で商工大臣から一言漏らされた意見でありますが、此の賠償代償に取られる所の工場と云ふか、それ等に關する賠償委員會と云ふものを作つて、而も其の賠償委員會には必ず賠償に掛つて撤去させられる所の勞働組合の代表も參加をさせて、それで其の問題を平和に解決を圖るやうにしたい、斯う云ふやうに私伺つて居つたのでありますが、此の賠償委員會と云ふものは中央にのみ御作りになるのであるかどうか、さうすれば、其の作られる所の賠償委員會と云ふものは、どう云ふ人々を以て參加させて構成されるのであるか、或は中央に一箇所作られるのであるか、或は地方の其の賠償撤去をされると云ふ地域に於ても、さう云ふものを御作りになるのかどうかと云ふことを、勞働組合代表を參加させると云ふことと併せて、さう云ふことに付ての人的な方針に付て一つ御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=92
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093・小林かなえ
○小林政府委員 只今賠償委員會に付ての御話がありましたが、御承知の如く賠償と云ふことは、我が國が敗戰の結果聯合國から課せられた一方的義務でありまして、對等の立場に於て契約をすると云ふやうな性質のものではないのであります、隨てこちらが賠償委員會を作つて彼此れと聯合國に對して色々な意見を述べると云ふやうなことは、全然許されないことでありまして、我々としては聯合國より課せられたる此の賠償に對する命令を、誠實に且つ迅速に之を履行し、完成して行くと云ふことが今日に於ける我々の義務であります、隨て大臣がさう云ふ意味のことを言はれた譯はないと思ひますが、何か言葉の上の誤解があつたのではないかと考へるのであにます、併しながら此の賠償物の撤去及び輸送と云ふやうなことは、是は固より金額國庫負擔としまして、迅速にやらなければならぬ、此の點に付きましては我が方に於て之を完全に撤去輸送をして行くと云ふことが、我々の仕事になるのでありますから、此の撤去若しくは輸送と云ふことを圓滑に行ふと云ふことに付きましては、官民の間にお互ひに相談をし會つて、さうして一日も早く、又確實に履行して參りたい、此の意味に於て撤去、輸送と云ふやうなことに對しましては、官民の間に何等かの委員會を設置して、さうして民主的に立派に此の義務を履行して參りたい、斯う考へて居る譯であります、其の委員會などに對しましては、伊藤さんの仰しやいましたやうなことは出來るだけ一つ考慮致しまして 民意を暢達して出來るだけ勞働者各位の意見も入れて參りたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=93
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094・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 今私御意見を伺つて、戰勝國と戰敗國との關係に於て、國際的な關係から私共が考へても、今の御答辯が正しいと思ふのであるが、商工大臣はどう云ふ意味で言はれたのか知らぬが、本會議では、賠償委員會が出來るから、それには勞働者の代表も參加させてやらうと云ふやうなことを確かにはつきり申されて居ります、それを私今いざこざを、擧足を取らうとは思ひませぬが、今の御答辯で大體内容も能く分りました、問題は今數字的に示されたさう云ふ工場に働いて居る所の職員、從業員と云ふものは、賠償の結果から來る失業の不安、生活の脅威と云ふものに對して、全體的に非常に取越苦勞をやつて居るのであります、さう云ふ點からやはり此の扱ひ方と云ふものは、政府なり其の所有者の間で妥協的に勝手なことをしてしまつて、自分等は唯失業のみがあつたのだと云ふやうなことを感じさせないやうにやらないと云ふと、誤解の上から來る問題と云ふものは、私はより以上の紛爭があるであらうと云ふことも想像されるのであります、斯う云ふ點に對しては、今御話になつた戰敗國としての戰勝國から示される絶對的なもの、或はそれ以外の國内に於て處理することに付て、勞働組合の代表と云ふものも必ず參加さして、極めて明瞭に、一點の疑惑と云ふものもないやうにして、斯うしてやると云ふやうなことを、特に留意を此の際希望して置きたいと思つて居ります
それから最後に一つ御伺ひして置きたいのは、敗戰日本の産業復興の運動の問題であります、是は私共の所屬を致して居ります、日本勞働組合總同盟に於きましても、或は又其の他の組合、鑛山などに於きましても、如何にして増産を圖り復興をするか、産業再開をするかと云ふことは、それぞれ決議を致して居るのでありますけれども、具體的に此の運動を採り上げてやる方法に付て、まだ着手をして居らぬのであります、さう云ふ點から工場でも鑛山でも具體的に是が採り上げられて燃え上ると云ふものがまだ現場々々に起きて居らぬのであります、之を勞働組合のみで一つ生産再開、産業復興運動をやらうぢやないかと云ふことを言つても事業家の方なり、政府の方なりが之に積極的に乘氣になつて協力と云ふか、それがより宜くやれるやうに協力して貰はないと、中々具體的に此の運動自體が採上げられて積極的に起つて來ないのではないかと思つて居りますが、どうも勞働組合側からさう云ふことをやつても事業家なり政府が一向さう云ふ點を具體的に採上げられて積極的にやられようと云ふことが示されてないやうであります、商工省として斯う云ふことは多分新聞其の他で見らも居られるであらうし、勞働者側から斯う云ふ問題を採上げて來ることは如何に喜ぶべきことであるか、待つてましたとばかりに是等を採上げて、やはり一つの方針を持たす、經營者側も大いに積極的にやらすやうに鞭撻をする、尚ほそれでもやらないでさぼつて居るもの、今再開してやるよりも後で再開した方が宜いとか、能く言はれる資材であるとか、さう云ふものを生産するより其の儘賣つた方が宜いとか、是は正に私は生産「サボ」であると思ふ、斯う云ふ者に對しては嚴重に處置をすることも大事であらうと思ふが、商工省として産業復興に對する何か積極的な具體的計畫案があるかどうか、此のことを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=94
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095・小林かなえ
○小林政府委員 只今伊藤さんから御示しになりました御意見は洵に同感でございます、敗戰後國民が本當に已むを得ないことであつたでせうが、虚脱状態に陷り、凡ゆる人々が其のなす所に迹つたと云ふことから近來追々と目覺めて參つて、勞働者各位の中から、只今示されたやうな燃上る再建の機運が起りつつあると云ふことは洵に喜ばしいことでございます、凡ゆる階級のものが本當に民主日本を再建すると云ふ希望を持つて燃上つて、互ひに手を繋ぎ合つて協力して行くと云ふことのみに依つて、今日の我が國の窮境は打開し得ることだと思ふのであります、商工省に於きましては、何を言ひましても中小商工業の再建、是は勞働者各位の熱烈なる協力に依つてのみ本當に再建が實現出來ると考へて居ります、隨て御示しの如き御意見は將來十分體しまして、勞働者各位の中からの燃上る意見を能く參酌し、商工行政の立場からも十分之に共鳴し、手を取り合つて行くやうな方法を講じて參りたいと思つて居ります、近來特にさう云ふ勞働者各位の意見を尊重し、之を力として再建して參りたいと云ふ所に我々は考へを持つて居る次第であります、さう云ふ譯でありまにから、どうか伊藤さん其の他各位に於かれましてもさう云ふ具體的問題がありましたならばどしどし我々の所に御通知を願ひまして、我々がさう云ふ燃上る熱情を知らずに無にすることのないやうに御鞭撻が願ひたいと思ふ次第もります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=95
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096・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 生産廳として今日一番重大責任を負はされて居る商工省が、此の復興再開に對して具體的な計畫を持たれず、又それ等をどう云ふやうにして起ち上らすかと云ふことに付ての案を今尚ほ御持合せにならぬ、其の爲に凡ゆる産業が再開されずに依然たる状態であると云ふことは、洵に當然なことではないかと遺憾に思つて居ります、仍つて民間側、而も勞働者の方から生産再開、産業復興運動を起さうと云つて起ち上つて居る時に、商工省が今尚ほさう云ふ具體的安も御持ちにならちで居ると云ふことは、私は洵に遺憾千萬だと思ふのであります、そんな怠慢な状態でどうして此の廢墟の現状をして復興再建することが出來るであらうか、此の點に對しては大臣初め次官なども本當に血眼になつて生産責任者、關係者を起ち上らす氣魄を以て生産廳としての方策を立てられんことを私は強く要望致して置きます
それから是も大臣が本會議で言はれたことであるが、生産「サボ」をやつて居るものに對しては生産「サボ」を監視と云ふか、それを處置すると云ふか、さう云ふ委員會のやうなものを作つて之を處置したいと云ふことを言はれた、併しながら此の委員會がどの程度が生産「サボ」であるかと云ふことを見究めることは中々難かしいと言つて、どうも前の話と後の話を聽くと「ゼロ」になるに等しいやうな答辯をされて居るのでありますが、其の生産「サボ」を取締る委員會はどう云ふ人的構成で御作りになる御考へであるか、其の委員會は最早出來たのであるかどうか、其の委員會の構成等に付て一つ具體的に御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=96
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097・小林かなえ
○小林政府委員 勞働組合の協力を可及的速かに商工行政の上に活用して參りたいと云ふことは我々が深く考へて居ることであります、又先程御尋ねになりました生産「サボ」などに付きましては、此の前大臣から申上げましたやうに、生産監査委員會と云ふものを作りまして、そこに勞働組合の代表者などにも入つて戴きまして、さうして生産「サボ」に一つの認識を與へて貰ひたいと考へて居ります、生産監査委員會の案と致しましては、大體配置は地方商工局毎に一つづつの生産監査委員會を設けたい、構成でありますが、勞働組合の代表、それから統制團體の代表、其の他學識經驗者と云ふやうなものに依つて組織致して參りたいと思ひます、發動の手續としましては職權に依つてする場合、それから勞働組合の請求に依る場合、又統制團體からの講求に依る場合、斯う云ふ場合に一々の具體的事案に付て其の認定をして參りたい、審査をして參りたいと云ふことになつて居ります、其の效果と致しましては、生産命令をする、或は經營委託の勸奬をすると云ふやうな途を取つて參りたいのでありますが、生産命令に當つては近く上程されます物資需給調整法の適用の下に參りたい、大體斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=97
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098・逢澤寛
○逢澤委員長 伊藤君に一寸御注意しますが、非常に重需な御尋ねでありますから、默認致して居りますが、非常に時間が經過して居りますから、簡單に‥‥発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=98
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099・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 もう一點で打切ります、今の問題は非常に具體的に能く分つたのでありますが、此の委員會はそれをどう處置すると云ふ決定權を持つものでありますか、或は商工大臣か或は地方に於ける商工局長とふ云か、さう云ふ者の諮問機關であるか、それを處置する決定權を持つものであるかと云ふことを一つ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=99
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100・小林かなえ
○小林政府委員 是は諮問機關であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=100
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101・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 諮問機關と云ふことになると、それを處置する最高の權能者は誰でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=101
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102・小林かなえ
○小林政府委員 執行命令を出す責任ある行政官は大臣又は局長になります、併し權威のある監査委員會で決定されることでありますから、假令建前は諮問機關になつて居りましても、特殊の事情のない限りは其の事柄が實行されて參らなければならぬと考へますから、伊藤さんの御心配になるやうなことはあるまいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=102
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103・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 其の委員は單なる諮問の委員として依囑されるだけでありますか、何か法律上から來る權能を持つ構成委員でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=103
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104・小林かなえ
○小林政府委員 是は官制上設けられるものでありますから、固より法規上の根據のある諮問委員であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=104
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105・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 之を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=105
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106・逢澤寛
○逢澤委員長 通告順に依つて橘直治君に質問を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=106
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107・橘直治
○橘委員 先般來主として同僚各位から陸上勞務者、陸上勞働者の諸問題に關しまして屡屡御質問があつたのでありますが、私は主として海上從業勞働者各位の問題に質疑を集中致したいと思つて居ります、我が國の船員問題は今後とも極めて重要な問題であると云ふ風に私は考へて居るのであります、戰前六百萬「トン」を有して居りまたし我が國の海運界が今日僅かに百二十萬「トン」の船腹を擁し、而も戰時中全海員の四割の數を戰爭の犧牲として失つた我が船員各位に對しては、衷心から同情を捧げて居る次第であります、而も今後の我が國の海運界の状勢は船舶運營會の解體問題乃至はL・S・T、「リバテイ」型の返船問題等より見まして、前途極めて悲觀すべき状況にあると見て居るのであります、政府に於かれましては特に此の船舶運營會の解體以後に於きまする是等船舶の運航體制の再編成に伴ふ失業船員に對する御處置、竝に外國よりの借入船を返還することに依つて生じまする失業船員の救濟問題、是等の諸點に關しまして先づ失業對策以下の諸點に對する當局の御説明を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=107
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108・大久保武雄
○大久保政府委員 只今御尋ねの失業船員は凡そ四萬三千名と存じて居ります、只今御話の通り船員は戰爭中非常なる努力を致し、又其の犧牲率に於きましても四三%と云ふやうな、實に陸海軍を遙かに凌駕したる非常なる犧牲を拂つて居ります、そこで今後に於ける船員の已むを得ざる失業に對しましては、國としまして凡ゆる手を差伸ばしまして、此の船員の救濟に最大の努力を傾注致したいと考へて居ります、何と申しましても御承知の通り船乘りは、やはり船に乘つて居たいと云ふのが、船員の衷情であります、何とかして彼等の此の海に生きんとする衷情を生かしてやりたい、斯う云ふことを考へて云ります、第一段の政策と致しましては何とかして船乘りをしてやはり船に乘る機會を掴ませてやりたいと云ふ點にありまして、日本に船がない場合に於ては日本の優秀なる船員の技術を以て、何とかして他國の船にも日本の船員が進出する面はないかと云ふ點、更に同じ船乘り關係でありまする所の漁船の方面に轉換させる途はないか、更に沈沒船の引揚げとか、水先人とか、或は官廳船方面に更に船員を採用する面はないか、斯う云ふ點に先づ第一段として努力を傾注致したいと存じて居ります
第二段と致しましては、やはり海に關聯のある産業、例へば船舶の造修、或は港灣荷役、或は船用品の製作、或は海岸無線局でありますとか、或は倉庫關係の仕事でありますとか、さう云ふ彼等が從來馴染んで居た仕事の方面に廻はして行く、斯う云ふ方策を第二段階としては考へて居ります
第三には現在の學校に於ける教育の中に更に船員を收容致しまして、船員の再教育をする、斯う云ふ方面に船員を向けて行きたいと思つて居ります、どうしてもそれで吸收出來ないものは厚生省や經濟安定本部とも十分連絡を取りまして、陸上産業に轉換の途を講じたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=108
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109・橘直治
○橘委員 只今御示しになりました三つの案の中で、特に第一點の船員であるから船に乘せる機會を極力考慮したいと云ふ案は、極めて私も同感に存ずる次第でありますが、第二の船舶關係への進出或は倉庫、港灣其の他の關聯性のある職場への轉出を圖ると云ふ問題は、既に此の職場に於きましてては十二分の人員が居る筈でありますから、是と摩擦を生じないやうに當局に於て御注意が必要であると存ずるのであります、第三の再教育の問題でありますが、之に關しまして今少しく詳細に承りたいのでありますが、時間の關係もありますから別の機會に讓りたいと思ひます、どうか一つ是非此の失業船員の待遇に關しまして、今御示しになりました如く熱意を以て善處あらんことを要望致したいのであります、殊に運輸省と致されましては、鐵道從業員關係は直接自分の子供であると云ふやうな後考へがあるやうでありますが、船員は寧ろ他所の預り子であると云ふ風な御考へがないやうに、是は等しく自分の子供である、實子であると云ふ御考へで、大臣以下十二分の御對策を願つて戴きたいと考へるのであります
次は海員組合に關聯致しました問題でありますが、海員組合は現在機帆船乘組員をも傘下に收めて居るのであります、此の機帆船關係でありますが、此の機帆船乘組員を傘下に收め或は大手筋十四社の大型船は別と致しまして、地區機帆船、五「トン」十「トン」殊に船主船長と云ふやうな乘組員を海員組合の傘下に收めると云ふことは不都合千萬ではないか、親爺が船長、兄貴が機關長、次男の方は「ウォーター・マスター、」お袋が「コック」をやつて居ると云つたやうな此の船員までも海員組合へ參加させることは意義がないのではないか、斯樣に考へるのであります、是は一に勞需物資の配給機關が海員組合に握られて居ると云ふ此の一事に依つて遮二無二參加せしめられて居るのであります、地區機帆船海員組合が所屬機帆船全部を纏めまして、此の乘組員と海員組合と團體協約を結んで居ると云ふのが現状であります、さうして地區機帆船海員組合が海員組合から是等の勞需物資の配給を受けて、組合員に流す、洵に無駄な「コース」を取つて居るのであります、之に依りまして機帆船乘組員は拂はなくても宜しい海員組合の經費を負擔させられて居ることは洵に遺憾に存ずる次第であります、是等勞需物資、特に地區機帆船の乘組員に對する勞需物資は須く地區機帆船海員組合に流しますれば斯樣な無駄と冗費は省ける、斯樣に私は存じて居るのでありますが、當局の此の點に對しまする御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=109
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110・大久保武雄
○大久保政府委員 只今御尋ねの機帆船、主として船主船長の御話と考へますが、御尋ねの物資を流す道は是は海員組合がやつて居るのではございませぬので、是は日本海員財團と云ふのがやつて居る、此の日本海員財團と申しますのは使用者と海員との共同機關であります、唯日本海員財團が生れました際に於きまして地方機關がございませぬでしたので、それで海員組合の支部が手足として擔當致して居る譯であります、そこで今申しますやうに、中性の機關でございますので、物資の配給は固より公正に配給することを以て建前と致さなくてはなりませぬ、そこで物資の配給を見返りに之を組合運動と關聯せしめると云ふやうなことは是は望ましくないと考へて居ります、そこで船主船長が現在組合に入つて居ります、其の一つの問題と致しましては、組合の方では是は一つの經濟的の弱者である、謂はば一臺の車を持つた車曳である、そこで僅かな船主船長であるから、此の經濟的の弱者を同士として救ひたい、それに依つて組合の實勢は害されないからと云ふやうな現在意見がございます、尚ほ今の物資の配給問題に絡んだ點に付きましては十分政府としましても公正を期するやうに今後努力を致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=110
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111・橘直治
○橘委員 今の大久保政府委員の御説明に依りまして多少私の考へ違ひを致した點も明かになつたのであります、兎に角仰せられました通り、地方に於きましては海員組合と海員掖濟會、それ等の區別が全然ないのであります、須く是は海員組合であると云ふことで律して居ります、殊に或る地區に於きましては機帆船海員組合が其の地方の海員組合と團體協約をしないと云ふことで、三月から六月の間全然物資の配給をやらなかつた、已むを得ず地區機帆船海員組合が全部の船主船長を納得を致させまして、涙を呑んで加入をしたと云ふ實例もあるのであります、ですから海員組合側の御主張ばかりを御聽きになつて問題を律せられることは甚だ迷惑千萬だと思つて居ります、須く地區機帆船海員組合の代表者の御意向も十分御聽取になつて、此の問題の善處方を御願ひする次第であります
次は監理局長に御質問致したいのでありますが、先日も此の委員會の同僚委員から鐵道總局の今度の大幅十三萬人に及ぶ整理の件に關しまして、まだまだ鐵道總局としては人員整理以外に考慮すべき方法はないのか、或は工事、工作の部面、或は電氣等の部面に於てまだまだ餘計な存在が澤山ぶら下つて居る、在來の官廳と業者との抱合せと云ふやうな面に於ける甚だしく不純なる存在が相當にある
〔委員長退席、江崎委員長代理着席〕
是等をなぜ早く整理しないかと云ふ意見があつたのであります、之に關聯致しましてやはりさう云つたやうな面を十二分に御考慮をなさつて戴きたい、一々の事例も申上げたいのでありますが、時間の關係上省きまして、唯日通の問題であります、日本通運は是は私は極めて奇怪なる存在であると考へるのであります、御承知の通り戰前から全國各地にありました中小運送業者を、鐵道の大輸送の附帶事業であると云ふ性格と、今一つは戰時中陸上小運搬力の輸送力隘路打開と云ふやうな名目を以ちまして、殆どと言つて宜い位全國の小運送業者を日通の傘下へ集約統合致したのであります、其の結果土地の人情、風俗に通ぜざる支店長が赴任致されまして、さうして所謂獨占事業の弊を盛んに發揮致したのであります、恐らく全國民の聲は、此の日通の獨占力排除を要望致して居ると私は考へて居ります、而も戰時中壓力で以て父祖傳來の家業を奪はれました中小運送業者は未だに泣いて居るのであります、政府は須く、特に鐵道當局は此の戰時中壓力を以て民衆の手から奪ひ取つた各地の小運送業を今日もつと民主主義的な機構の下に之を解放して然るべきである、私は斯樣に斷じたいのであります、政府の本件に對する御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=111
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112・滿尾君亮
○滿尾政府委員 日通の問題に付きましては、御話のやうな批判が相當行はれて居ることを能く存じて居ります、それから又それを裏書するやうな遺憾な事實も時々ある、運輸省と致しましては、戰爭が濟みました時に、日本の小運送の體系をどうするかと云ふことに付きまして、相當考慮を重ねまして、そして其の結果どうしても再編成しなければいかぬと云ふことを色々考へて見たのであります、殊に一番最初に日通が「スタート」致しました時には、總括會社としての性格で生まれた、それから途中で現業に手を出しまして、御話のやうな工合に大體全國の九割位を總括出來たと思ひます、今はやはり三百五十人ばかり日通にあらざる小運送業者もありますが、大體實力に於きまして九十「パーセント」位は收めて居る、隨て餘り規模が大きくなりまして、大男總身に智慧が廻り兼ねと云ふ嫌ひも色々出て來た、どうすれば世の中の實情に合ふかと云ふことも色々考へて見た、併しながら、成程具體的な一つ一つの事例に於て色々世間の御不滿を招きましたけれども、戰爭遂行と云ふ大きな變動に際しまして、陸海軍の荷物を一手に元請致しまして、大きく働きましたこと、又只今農林省關係の生活必需物資に付きまして大きく元請を致しまして、全國的に有機的な活動を致して居りますこと等に付きましては、相當此の制度の長所も亦ある譯であります、又長所と短所を併せ比較致しまして、色色研究致しました、私共の研究の要點と致しましては、全國一本と云ふことを多少考へを變へて、「ブロック」別の幾つかの複數制にしたらどうぢあらうと云ふことも、要點として採上げて見たのでありますが、結局一利一害でありまして、是は全國的體制は崩さぬ方が宜い、併し戰爭中に色々起きました弊もありますし、營業を刷新すべしと云ふことに付て見解が一致しました、社長及び副社長の最高人事の更迭及び内部の重役陣をすつかり切替へまして、新しく「スタート」を切り直す、殊に今後の運營に付きましては、餘り中央集權的に、東京で全國に號令すると云ふ建前は、仕事の性質から言つて「サーヴィス」で本旨旨としなければならぬのでてるから、どうしても御話のやうな地方の特色を活かすやうに、各支店長に權限を分割致しまして、其の地方々々の實情に合ふやうな經營に精進するやうに内部機構に對しまして幾多の改善命令を出した譯であります、大體此の二月の總會で左樣な人事の刷新等を全部行ひまして、只今切替へましてから約數箇月經つて居ります、其の結果を私共も非常に注目致して居るのでありますが、若し此の方式でどうしても所期の目的が達成せられぬと云ふことであれば、是は又第二段として、次の「ステップ」を考へなければならぬ、斯う云ふ考へで居ります、極く最近私共の得まする情報に依れば、一、二荷物の事故等もありましたが、是は單り日通ばかりの問題ではなく、國有鐵道とも關聯して居るのでありますが、大分其の面に於きましては改善の實が擧つて居るかのやうに私共は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=112
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113・橘直治
○橘委員 色々と御話がありましたが、運輸省としては複數制に還元する意思がないと云ふのが結論であつたと思ひます、私は甚だ遺憾に思つて居ります、御承知の通り港灣作業等統制令も撤廢致されまして、全國の港灣會社に對するGHQの批判もあつた筈であります、恐らく此の批判は陸上小運送の獨占經營者である日通にも私は執らるべきであらうと斯樣に考へて居るのであります、特に政府委員に能く研究して戴きたいことは、先程の御話にありました通り唯中央集權を排除して、各地の支店長に大幅の權限を委讓する、之に依つて民主化して行つたのだ、是は全くあなたの方の「カムフラージュ」である、斷じて斯う云ふことは行ひ得ない、適切な一例を申しませう、各地の支店長が今如何なることをやつて居るか、先刻私が申しました通り、土地の風俗人情に合致せざる餘所者の支店長がやつて來て、而もやつて居ることは全く闇屋であります、小運送の獨占を好機として、勿論役得はありませう、詳しくは申しませぬが、上役への賄賂は言ふも更なり是等の支店長の宅へ行つて見ますと凡ゆる物資が山積して居ると云ふのが全國の支店長──偶には例外はありませうが──大部分の支店長の是は實情であります、さう致しますと、斯う云つたやうな惡弊を地方への權限分讓に依つて尚更助長する一途しかないのであります、之を是正するにはどうしても各驛一店主義を即刻複數制に改善なさるより以外には方法はない、特に複數制に還元すると云ふことが先刻申しました通り、先祖傳來の小運送業を失つて、今日泣きの涙で居る連中に對しまして、昔の業務への復活をも是は意味して居るのであます、是等の點に關しまして、今一應正確な御認定の上に立つた監理局長の御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=113
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114・滿尾君亮
○滿尾政府委員 複數制を執れ、獨占の排除と云ふことは此の制度に對する最も有力な御考へでありまして、我々と致しましても、其の問題に付ては相當考慮を重ねました、現在の段階に於きましては、併しながら先程申上げましたやうな方式で、二月四日に省議決定を以てさう云ふ方式を執りました、まだ今日に至りますまで約半年のことでございますし、我々と致しましては此の方針で以て暫らく樣子を見て、決して獨占を止めないと云ふ譯ではありませぬけれども、是はそれぞれ利害得失がございまして、此處で短時間に其の利害得失を詳細に申上げることは出來ませぬので、一寸御許しを願ひたいのですが、具體的に運輸省の方に御連絡を戴きますれば、當時研究致しました資料を御手許に差上げても宜しいと思ひます
〔江崎委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=114
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115・橘直治
○橘委員 本問題に關しまして是れ以上論議しても結局水掛論と思ひますから最後に一言申上げますが、横濱港に於ける食糧の沿岸荷役の隘路の原因は監理局長に於ても御承知だらうと私は存ずるのでありますが、日通の荷役の海上部門への進出と云ふことが最大の原因であらうと私は存じて居るのであります、此の問題は神戸に於ても起きた問題でありますが、神戸は幸ひに海陸雙方の協力で以て妥結して居りますが、横濱に於ては依然として是が放置されて居る、是等の點に關しましても、日通の陸上小運送制覇はさらなり、更に海上への進出を企圖して居ると云ふ一種の侵略主義の現はれとして看過すべからざる事實であらうと存じます、併し本問題に關しましては以上を以て打切りたいと存じます
次は厚生省へ御尋ねを致したいのでありますが、厚生省に御尋ねをする前に、三日の日に土井委員から質問があつたと存じますが、官吏の「クローズド・ショップ」の問題であります、官吏の組合が組合を除名若しくは脱退した官吏の罷免を要望した場合は、官廳は之に對して如何なる處置を執るかと云ふ質問に對しまして、是も御回答がなかつたやうに思ひます、此の際御答へ下されば非常に幸ひに存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=115
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116・富樫總一
○富樫政府委員 官吏の「クローズド・ショップ」の協定の效力の問題に付きまして、曩に土井委員からの御質問に付きまして、法制局とも打合せました結果に付て茲に御答へ申上げます、大體前會申述べました通りでございまするが、其の要旨を申上げますると、一般に「クローズド・ショップ」の協定が有效であるかどうかと云ふことに付きましては、解釋上無效であると云ふ有力な議論もあるのでありまするが、併し現在の民法の雇傭契約の解釋其の他より致しまして、一應民間に於きましては其のやうなことは有效であると云ふ解釋に傾いて居ります、併し是とても結局は、最終決定は裁判長に於てなす所でございます、併しながら之に反しまして、官吏に付きましては民間の場合と其の法律關係を全く異にするのでありまして、所謂公法關係であります、是が任免は強行法であります所の官吏法に依つて縛られて居るのでありまして、其の解釋上から致しまして、「クローズド・ショップ」の協定は假に結びましても、單に組合より除名された故を以て免官すると云ふことは出來ない、所謂「クローズド・ショップ」の協定の履行は出來ない、斯う云ふ風に解釋せざるを得ない、隨ひまして基本的に其のやうな「クローズド・ショップ」の協定其のものが妥當を缺く、斯う云ふことに解される次第でございます、どうぞ左樣御諒解願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=116
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117・橘直治
○橘委員 只今の御答辯で明瞭になつたことを感謝致します、次は第八條であります、是も本會議に於て御質問があつた點でありまするが、其の後色々考へて見ても、腑に落ちない點がありますので、改めて御質問したいと思ふのでありますが、第八條の公益事業を中央勞働委員會に於て決定する決議權の問題であります、是は當時の御答辯は、各階層を代表する委員であるから、何れかの階層を代表した委員が全面的に反對であつた場合は之を公益事業となすには忍びないと云ふ意味の御答辯があつたやうに存じまするが、併し各各の過半數の同意を要すると云ふことは、實際問題として私はどうかと思ふのであります、恐らく甲の是とする所は乙の否とする所であることは火を睹るよりも明かであります、斯う云つたやうな場合、政府がどうしても此の事業は公益事業に指定致したいと云ふ場合に、是の指定出來る機關は此の中央勞働委員會一つなんであります、是が何時までも甲乙の兩者の不一致に依つて、第三者の斡旋があつたとしても、一方の絶對過半數を得られなかつたならば、誰が一體之を公益事業に指定して行くのでありますか、是ではもう絶對に出來ないと思ふのであります、斯う云つたやうな意味から致しましても、委員の各各の過半數の同意と云ふ此の項目は、委員會の全部の過半數と云ふ風に改めて行くのが當然ぢやないかと私は思ふのであります、元來勞働委員會の委員に選出致されました方は、成程一面に於きまして各階層の利害を代表して居ると云ふ一面はありませうが、更に中央勞働委員會と云ふ一つの枠の中に入りました以上、自づと別個の性格がある筈であります、此の性格に基きまして民主的に此の委員會を運營して行くと云ふ風な場合は、一向全體の過半數であつて宜いのぢやないか、各各の過半數であることは必要はない、斯樣に私は斷じたいのであります、此の點に關しまして今一應政府の御所見を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=117
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118・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の橘さんの御質問は洵に御尤もの點であると思ひます、唯前にも申上げたと思ひますが、公益事業に付きましては、御承知のやうに本法に於きますると強制調停の外拔打爭議の制限と云ふ制限がございまするので、出來得べくば此の制限は少くあるべきであります、唯併し一般の公共の爲に已むを得ぬことでございまするので、強制調停の方法を講じ、又は拔打爭議の制限等を講じて居るのでございます、それで第八條で一應豫想されるものは、一から四まで指定して居ります、今の所では大體此の程度を考へて居りまするけれども、併し世の中ではどう云ふ風な困る事態が生じないとも限りませぬ、此の列記致しましたことと同程度の重要性、又は是れ以上の重要な問題が出て來ぬとも限りませぬので、其の際を考慮して二項で追加出來るやうな途を講じたのであります、隨て中央勞働委員會の委員になりました以上は、勿論御話のやうに委員は恐らく各立場もありませう、併し同時に又中央勞働委員會としての性格上から御考へになるとは思ひますけれども併しながら一應各立場を代表して出まするので、動もすると此の範圍が容易に擴がる虞がないでもございませぬので、嚴格なる意味を以ちまして各代表の過半數と云ふ方法を採つたのであります、勿論只今御話もございましたやうに、各代表の委員はそれぞれの立場を主張されることもあらうと思ひますが、併し國家全體、公共全體から見てどうしても是は公益事業として指定をしなければならぬと云ふ、本當に客觀的な必要性がございましたならば、各立場の過半數とは言つて居つても、さう云ふ場合には恐らく追加が成立するのではなからうかと云ふ點を考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=118
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119・橘直治
○橘委員 吉武政府委員の御答辯は、私は前會からの御答辯の幅を出て居らないと思ふ、私の最も懸念して居る事項は、政府が其の當時の客觀的情勢に基いて、此の事業は是非とも公益事業に指定をしなければいけない、又國民の大多數が公益事業に指定をしなければいけないと認めた事業が、此の委員會が纏まらなかつたことに依つて遂に指定が出來ない結果を生ずる、さう云つたやうな場合の責任は一體誰が負ふか、此の決を或は議會に於てでも決定權があるならば、私は何にも申しませぬ、唯勞働委員會だけしかない、さうした場合には此の委員會の決定權と云ふものは、今少し考へて見る必要があるのではないか、私は此の點に付て今一度政府は考へ直す御意思はないか、斯樣に存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=119
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120・吉武惠市
○吉武政府委員 御質問の點は洵に御尤もでございまするが、先程申しましたやうな趣旨で斯う云ふ風に致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=120
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121・橘直治
○橘委員 本問題に關しましては、是れ以上論議致しましても今までの御答辯の範圍を出ないと思ひまする故に私は打切ります
最後に是も前會各委員から御質問があつたのでありますが、運輸事業の内容であります、是が極めて不明瞭であります、特に私の承つた範圍に於きましては厚生大臣は廣範圍に解釋致して居ります、吉武政府委員の御答辯は極めて狹い御解釋であつたやうでありまするが、私は運輸事業と云ふものは必ずしも人の輸送ばかりでなく、公衆の日常生活に缺くことの出來ない物資の輸送をも含めたもの此の場合に於きましてはどうしても廣範圍に是は解釋すべきではあるまいか、斯樣に存じて居ります、一例を申しますれば横濱の食糧の輸送であります、輸送と云ふものは川の流れと同樣、何處で是は堰止めてもいけないのであります、本船の荷役から艀に取つて沿岸の荷揚、貨車積み、是等は一貫して水の流るる如くやらなければいけない、特に昨今の情勢からして渉外局からも御注意があつたやうでありますが、横濱の沿岸作業が極めて不圓滑であつて、是が日本の食糧の配給を阻碍して居ると云ふ注意があつた位であります、是などを考へた際には當然是は廣範圍に解釋すべきであるまなか、斯樣に考へて居るのでありますが、狹い範圍に御解釋になつた吉武政府委員の御答辯を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=121
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122・吉武惠市
○吉武政府委員 厚生大臣の答辯と私の答辯致しました點と差異はない積りでありまするが、私の申上げました點には或は缺くる所があつたかと存じまするが、此の運輸事業は決して人ばかりではございませぬ、御話の如く物の輸送も含む譯であります、要は八條にありますやうに運輸事業が公衆の日常生活に缺くことの出來ないものと客觀的に決めざるを得ぬのでありまして、左樣御諒承戴きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=122
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123・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは本日は此の程度に致しまして、明日は午前十時より開會致します、本日は是を以て散會致します
午後四時三十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X00919460805&spkNum=123
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