1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
勞働關係調整法案(政府提出)
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昭和二十一年八月六日(火曜日)午前十時二十六分開議
出席委員
委員長 逢澤寛君
理事 江崎眞澄君 理事 瀧澤脩作君
理事 竹田儀一君 理事 岡部得三君
理事 古賀喜太郎君 理事 伊藤卯四郎君
理事 松岡駒吉君
飯國壯三郎君 今井はつ君
大内一郎君 原侑君
村上勇君 山田善三君
川崎秀二君 關谷勝利君
橘直治君 仲川房次郎君
山下春江君 荒畑勝三君
辻井民之助君 土井直作君
今村等君 中原健次君
山下榮二君 東隆君
木下榮君 原國君
出席國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
内務大臣 大村清一君
商工大臣 星島二郎君
厚生大臣 河合良成君
運輸大臣 平塚常次郎君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
内務事務官 谷川昇君
司法事務官 佐藤藤佐君
厚生事務官 吉武惠市君
厚生事務官 富樫總一君
商工事務官 吉田悌二郎君
委員長の許可を得た出席者
議員 布利秋君
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本日の會議に付した議案
勞働關係調整法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=0
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001・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは是から會議を始めます、前日に引續きまして通告順に依りまして中原健次君に質疑を許します──中原健次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=1
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002・中原健次
○中原委員 私は勞働關係調整法案に對しまして御質疑を申上げまする前に、我が日本の一大轉換を致しました「ポツダム」宣言の受諾後に於ける所謂日本民主主義化の爲の急速なる各方面の動向の中で、取分け勞働組合運動が其の日本民主化への重大なる任務を擔當致しまして今日に及んだのでありますが、其の勞働組合運動が日本民主化の爲に占むべき地位とでも申しませうか、此の事柄は言ふまでもなく、「マッカーサー」司令部の其の初めの指示の中にもございましたやうに、日本民主化の爲には勞働組合運動の健全なる發達を先ず期待する、又從ひまして勞働組合運動それ自身の中に、其の役割の大いなるものを求めると云ふ意味のことが言はれたことは申すまでもございませぬが、斯かる意味に於きまして、勞働組合運動が日本の新たなる出發の爲めの重大なる、而も絶對條件である日本民主化の爲に占むべき役割或は地位──寧ろ地位と申しませうか、それに付きましての當局の御所見を一應伺つて置きたいと考へる者であります、是は政府當局全體に對する御尋ねであるのでありますが、偶偶大臣が御姿を見ませぬので、厚生省當局に於ける其の中樞的な役割を持つておいでになる局長から、取敢ず其の點に付ての御所見を承つて置きたいと思ふのであります
偖て私が御尋ねを申上げたい次の點は、先般來勞働關係調整法の上程を繞りまして、巷間色々な流布がなされて居るのでありまして、其の謂ふ所は、即ち日本社會黨が今日勞働關係調整法に對して全面的な反對の態度を示して居ると云ふことに付て、それは其の最初に於て政府當局が本法案を審議檢討致しまする場合に、勞働關係諸團體其の他各方面の有力者、或は國内の輿論に之を問うて決定したのであつて、今更日本社會黨が之に反對の意思表示をすると云ふことは何だか行き方が違つて居るかのやうな誤解が流れて居るのであります、私は是は甚だ遺憾に存ずる者でありますが、それに關しまして茲に當局より最初に示されました即ち勞働法制審議會の答申なるものでありますが、此の答申書に依りますと、少數意見として茲に七項目に亙る意見が明記されて居るのであります、又主なる各論の點に於ても少數意見が散見されるのでありますが、ともあれ此の少數意見なるものは其の内容を檢討して見ますると、勞働關係調整法案其のものと相對峙する見解であると私は信ずるのであります、隨ひまして既に勞務法制審議會内に於てすら明かに本法案に對する反對の意思表示があつたと私は見るのであります、而も其の少數意見の反對論者として茲に五名の名前が擧げられて居る、即ち勞働組合總同盟の會長である我々の先輩松岡駒吉氏の名前を筆頭に、志賀義雄、加藤勘十、荒畑勝三、又勞働科學研究所の勝木新次と云ふ風な人々の名前が茲に見受けられるのでありますが、ともあれ其の少數意見の抱懷者は本法案に對しまして、一つの例を取つて申しますと、此のやうなことが言はれて居ります、即ち「勞働組合運動發足の緒に於ける若干の混亂を對象とし直ちに斯かる制約を爲すことは彈壓と謂ふの外なく要は當事者の健全なる自主的訓練に俟つべきものなること、尚ほ原則として勞働者は不當なる爭議行爲は法規の有無に拘らず爲すものに非ざること」斯う云ふことを其の少數意見要旨の中に見出すことが出來るのであります、又其の次にもう一つ例を取りますと「調停仲裁の手續の如きは勞働組合法の改正又は其の施行令等に於て之を爲すべく、公益事業及び官公吏等に付ては其の勞働條件他に比し良好ならざるに拘らず爭議權を制限禁止するは不當なること」斯う云ふ文字が見出され得るのであります、さうでありますならば常に繰返して厚生大臣が口にして居られまする所調一般の輿論に之を問うたと云ふ事柄が結果としては果して其の一般の輿論に應へたる勞働關係調整法案であらうか、斯う云ふ疑問が起つて參るのであります、斯樣に申しますると、それは少數意見なるが故に之を採上げる必要がなかつたと云ふ御答辯が或はあるかも知れませぬけれども、此の少數意見の抱懷者は少くとも我が日本に於ける勞働階級即ち本法案を適用されるべき筈の範圍の、即ち國民中に於ける一千萬を算する勞働階級の利益を、さうして又勞働階級の願念を正しく代表し得る筈の人々であることは言ふまでもございませぬ、さうであるならば審議會内に於ける縱しそれが少數意見であつたに致しましても、飜つて其の少數意見の背景を考へますならば、寧ろ是は多數者の意見を代表する少數者の意見であつた、斯う云ふ見解も亦無理ではないと私は考へる者であります、隨ひまして此の審議會の委員の構成等勿論是は問題になりますが、此の審議會の決定を絶對とは考へて居りませぬけれども、大體に於てさう云ふ動き、さう云ふ法案に對する批判が茲に見出されると致しますならば、本法案を御作成になりまする場合に先づ以て此の勤勞大衆を眞實に代表するであらう所の此の少數者の意見を十分考慮し採り入れて態度を決定すべきことこそが所謂民主的な政府の當然爲すべき態度であると私は考へる者であります、此の點に付きまして政府當局は此の少數意見に對してどのやうな取扱ひをなされたか、此の點を私劈頭に承つて置きたいと思ふのであります、當時の大臣は慥か芦田均氏であつたと思ひまするが、大臣は迭りましたが、厚生省當局は依然として其の儘の繼續であることは言ふまでもないのでありまして、願くは厚生省當局の責任ある御答辯を求めたい考へる者であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=2
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003・吉武惠市
○吉武政府委員 只今中原さんからの御質問でありまするが、第一點は「ポッダム」宣言に基く日本の民主化に於て勞動組合運動の占むる地位をどう考へて居るかと云ふ御話でございます、私共も民主化に於て勞働組合運動と云ふものが非常に重要な地位を占めて居ると云ふことを考へて居るのであります、勿論民主化に付ては單に勞働關係ばかりでなく、政治經濟行政文化各般に亙る問題に付て檢討を要する問題でありまするので、唯勞働組合だけと云ふ譯には參りませぬが、勞働組合運動と云ふものが其の主要な要素を占めて居ると云ふことは私共も考へて居ることであります、隨ひまして勞働關係の法制と致しましてはいの一番に昨年の暮の議會に之を提案を致しまして目下實施をして居る譯であります、既に三月一日から實施致しまして組合數も八千を超え組合員も三百萬を超えんとする發展をして居ると云ふことは私共も非常に喜んで居る所であります
次に本法案に對して勞働者の反對があるにも拘らずと云ふ御意見でありまするが、御話のやうに法案を制定致しまするに付きましては、勞務法制審議會に今年の一月から掛けまして、其の後小委員會等を開催して數箇月に亙つて實は審議を重ね、關係方面とも詳細なる打合せをして居つたのであります、其の間勞働關係の方々の御意見も勿論聽き、之を尊重し採り入れ、勞働者側だけの意見に依つては出來上つて居りませぬけれども、其の間に於て勞働者側の御意見も十分實は採り入れながら作つて來たのであります、唯御話の如く、最後の勞務法制審議會に於きましては、勞働者側代表は全部反對をされました、此の點は事實でございますし、又私共の甚だ遺憾に思ひ、殘念に思つて居る所でありますけれども、其の間に於きましては、我々は出來るだけ勞働者側の御意見も聽き、之を尊重しながら實は來て居ります、只今御指摘になりました少數派としての意見、是等も我々は決して之を無視して居る譯ではございませぬ、一つの意見として御述べになりました勞働爭議、爭議權と云ふものは基本的な人權であるから之を制限するのは宜しくないと云ふ御意見であります、我々は基本權を無暗に制限しようと云ふ考へは毛頭ございませぬ、厚生大臣が屡屡申しましたやうに、公益擁護の爲には憲法自體に於ても考へて居る所であるから、最小限度の制限は已むを得ない所で、我々は此の法案に於ても出來るだけそれを制限しようと云ふ努力をして居ります、昨日來御審議になりました公益事業の指定も、政府がしようかと思つた時、指定しようと言つても、こんなに勞働者側の過半數の、同意がなければ指定が出來ないやうでどうするかと云ふ御叱りもありましたが、是等の點も我々は無闇に擴がることを避けたいと云ふ努力の一端であります
次に、此の法律を無理に出さなくても組合法の改正で出來るぢやないかと云ふ御意見、是は唯手續なり或は立法形式の相違だけであります、組合法で改正して宜いものならば、本法案で手續を決めることは私は何等支障はないものぢやないか、斯樣に存じて居る譯であります
尚ほ官吏の待遇改善等に於て改善の方途を講じないで、斯う云ふ法律を作るのは宜くない、是は御尤もでありまして、我々は此の法律制定の途中に於きましても、官公吏の待遇問題が偶偶出て居りましたから、我々としても是は兎に角解決しなければいけないと云つて努力も致して居りますが、大體御承知のやうに、七月分からは相當の改善をして居るのであります、之を以て我々は足れりとは考へて居りませぬので、今後の官吏の待遇改善に付きましても、出來るだけ努力し、又それが合理的に行く方法をも考へなければならないと存じて居る次第であります
尚ほもう一點指摘されて居りまする勞働保護法、或は勞働法と云ふものを先に制定すべきぢやないかと云ふ反對論であります、是も勿論勞働保護に關する法律を先に制定する、急がなければならないと云ふ點に付きましては御尤もでありまするが、此の法律が出なければ此の法律がいけない、此の法律が出れば是が宜いと云ふだけの反對を、我々は之を承服する譯に行かないのであります、此の法律は度々申しましたやうに、爭議が起つた場合、之を如何にして解決するかと云ふ、其の手續的な規定が一つと、もう一つは公益を最小限度擁護すると云ふ點にあるのでありまするから、公益擁護の爲には、或る程度必要なものは制定をして行かなければならないと云ふ感じを持つて居るのてあります、反對の意見は了承して居りまするが、何れも大體のことは私共採入れもし、又考へて居る積りであります、御諒承戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=3
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004・中原健次
○中原委員 反對、所謂少數意見は採入れて居ると云ふ風な御言葉でありましたが、是は洵に私遺憾に思ふのでありまして、採入れて居れば、もつと本法案に對しまする根本的な所謂内容の相違が現はれて來る筈であります、斯樣に信ずるものであります、内容の點に於て、私は少數意見の指摘致した所が考慮されて居らないと云ふことは、如何なる言葉を以て致しましても、之を説明することは出來ないと思ひます、問題は現實なのでありまして、所謂勞働關係調整法の内容を檢討致しますると、只今指摘致しました一、二の點に付ても勞働關係調整法では、何等それを考慮することなく、ひた進みに最初の制定意圖の儘に突進んだものであると云ふことが考へられます、眞實に民衆の、取分け關係勞働大衆の要望或は意見を斟酌することが出來たのでありまするならば、本法案が又生れ出でやう筈もなかつたのでありまして、此の點は唯公益云々の言葉に依つて一切を「カバー」し盡して、合理化せんとする努力に依つて一般を納得せしめんとする當局の態度であると云ふこと以外に考へられませぬ、私御尋ねを致したい順序が可なり狂つて參りますのですが、厚生大臣が今暫くの時間で御出席になると云ふ御話がありますると、司法、内務關係の政府委員が只今御出席であると伺ひますので、問題を一足飛びに致しまして、兩省關係の問題に觸れて質問を致したいと思ひます、それは最近勞働運動の動きに對しまして、政府當局は急速に勞働運動壓殺の方針に態度を轉換したと云ふ嫌ひが見えると云ふこと、それであります、勞働組合運動の健全なる成長を眞實に念願されるのでありまするならば、恐らく行過ぎの取締り、或は無理解な彈壓的なる態度は生れて來ない筈であると私は信ずるものでありまするが、遺憾ながら最近起りまする一、二の例を以て之を考へまする時に、政府が急速に所謂資本の攻勢に協力致しまして、勞働階級の已むに已まれざる一つの爭議行爲に對して、之を徒らに暴動視致して、無理解なる迫害が其の上に加へられつつあることを思ふのであります、其の最も手近な例を指摘致しますると、先般讀賣新聞の爭議に關聯致しまして、其の讀賣爭議の場合、之を彈壓せんと警察當局の執りました措置、是は既に何人も能く承知する所でありますが、其の當時警察官が讀賣新聞の社内に入り込みまして、暴力を以て從業員を押へ付け、又中には「ステッキ」を首に引掛けて引摺り廻したと云ふことも聞いて居りまするが、聞くに堪えない、見るに忍びないやうな、曾つて軍國主義政府が指導致しました當時の取締方針其の儘のことが、現在の段階に於て尚且繰返へされたことがあつたのであります、其の時慥か五十數名の爭議團員を檢束致しまして、其の中から五名でありましたか、六名でありましたかを起訴したと云ふ出來事が未だ尚ほ耳に新たなるものがあるのであります、私共勞働階級運動の健全なる發達、勞働階級運動の民主主義化に於ける役割を固く信じまする者は、斯樣な不祥なる問題に對しまして、寧ろ斯かる問題を激發致した其の對象に對しまして憎惡を、或る意味に於ては復讐の念さへ感ずるものであります、而も其の起訴致しました六名は、其の結果どう云ふ風になりましたか、此の點に付て私、非常に氣遣つて居りまするが、私凡そのことは聞いて居りまするが、的確なることを承知致しませぬので、是は司法當局に此の六名の被起訴者の始末がどのやうに落付いたかと云ふことを承つて置きたい、又内務當局に對しては、先に申した警察官の暴行沙汰に付て、内務當局はどのやうに之を御覽になつておいでになるのか、又最近では警察の力を直接用ひることを避けて、暴力團を驅立てて職場に之を亂入せしめると云ふことを聞及んで居るのであります、此のやうな事柄は御承知であるかないかは存じませぬけれども、假にも神聖なる生産職場の中に暴力團が亂入したと云ふ出來事は、如何なる寛容なる氣持を以て臨みましても之を許すことは出來難いのであります、之に付きまして當局はどのやうな御見解を持つて居りますか、或は其の眞相に對しまして、どの程度までのことを御存知であるか、是も承つて置きたいと存じます、是は獨り讀賣新聞だけのことではございませぬ、九州の三菱關係の鑛山に於ても、先般大量の幹部の檢束騷ぎが起つたことを新聞紙を通して聞き及んで居りますが、此の檢束騷ぎと云ふものは、唯表面の文字或は言葉だけから受取りますと、已むを得ず其の身體を保護する爲に或は其の混亂を取鎭める爲に致したる檢束の執行であると云ふ風に説明されるかも知れませぬけれども、決して眞相は其のやうなものではないことが屡屡なのであります、此の檢束と云ふことは、言ひ換へますと所謂被支配階級の自由なる行動を、支配階級の意思の儘に引摺り行かんとする爲の、所謂彈壓政策の一つの現はれであると云ふことは、私共其の長い經驗を通して十分承知致して居ります、恐らく三菱關係鑛山勞務者諸君組合の幹部の檢束事件に付きましても、之を其の現場に就いて詳細に調べましたら、恐らく許し難き事實が發見されるであらうと私は固く信じて疑ひませぬ、甚だ遺憾でありますけれども、從來執り來りました政府當局の、依然として軍國主義時代に於ける政府の方針を完全に拂拭し去ることの出來ない當局としては、屡屡繰返され易いことなのでありまして、斯樣な出來事に付て内務、司法兩當局の御見解を一應伺つて置きたいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=4
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005・佐藤藤佐
○佐藤(藤)政府委員 只今の御質問に對して、司法當局の御答へを致したいと思ひます、先般讀賣新聞の爭議に關聯しまして、暴行騷擾等が起きまして、其の不祥事に當つて數名の被告人に付て起訴を見るに至りましたことは洵に遺憾なことでございました、此の事件の公判の進行に付きましては、目下取調べ中でありまして、其の處分、成行等に付ては、まだ分つて居りませぬけれども、其の被告人の身柄は既に保釋中のやうに報告を受けて居ります、尚ほ九州其の他の方々に起きました勞働爭議に關して、内務省當局の官憲が爭議に彈壓の方針を以て臨んで居るのではないかと云ふやうな御意見のやうに承つたのでありますが、左樣なことは決してないのであります、勞働組合法に於て、勞働組合の健全なる發達の爲に御互ひに勞働者の地位の向上、日本の經濟の興隆の爲に盡さなければならぬ、さう云ふ目標の下に取締りを致して居るのでありまして、正當なる爭議行爲に付ては、決して干渉するとか、或は彈壓するとか云ふことは毛頭ないと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=5
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006・谷川昇
○谷川政府委員 只今の司法當局の答辯で、大體を盡して居ると思ふのでありますが、御尋ねの點に付きまして、簡單に御答へを致したいと思ひます、勞働運動の健全なる發達に對しましては、私共衷心から之を望んで居る所でありまして、寧ろ警察當局と致しましては、職務の上から申しましても、此の事を衷心より念願を致して居る譯なのであります、色々御指摘に相成りましたけれども、彈壓とか、或はさうした健全なる發達を啄むとか云ふやうな意圖は更々持つて居ないのでありまして、寧ろ反對に健全なる發達をのみ念願して居るやうな次第であります、個個の爭議に隨伴して起ります不法行爲の取締に對しましては、十分愼重に研究致しまして、對處致して居るのでありまして、警察當局自體の考へで單獨的に行動すると云ふやうなことは、嚴に戒めて居る所であります、司法當局とも十分連絡を取り、又事態の推移に對しましても、十分なる注意、研究を遂げまして、萬巳むを得ざる場合に限りまして是が取締に當つて居ると云ふやうな有樣でありまして、御懸念になつて居りますやうな彈壓とか或は之に對して警察官が昔あつたやうな考へで進んで居ると云ふやうなことは毛頭ございませぬので、此の點はどうか御諒解を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=6
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007・中原健次
○中原委員 私は政府の答辯を伺つて居ります間に感じたことでありますが、言行一致と云ふ、實に簡單な慣習的な言葉を思ひ出すのであります、言葉と實際とが屡屡一致して居らない、成程言葉だけに付て受取りますならば洵に立派であります、併しながら政府當局、殊に御答辯に關して私が特に御願ひ致したい事柄は、上手に答辯すると云ふことは避けて戴きたい、眞實を以て答辯をして戴きたいのであります、隨ひまして只今御尋ね申上げました中で、私が最も重要視して居ります暴力團の驅り立て闖入の問題でありますが、之には聊かも觸れて戴けなかつたのであります、此のやうな行き方は見樣に依りますと、警察官が先頭に立つことは餘りにも露骨に過ぎるので、關聯性のある暴力團を以てそれに代行せしめる、斯う云ふことは從來屡屡あつたことでありますが、又今囘の讀賣爭議に於ても、さう云ふ意圖の下に派遣された暴力團ではなからうかと云ふことが考へられるのであります、此の點に付きまして、本當に肚を打割つた御答辯が求めたいのであります、當局の御話のやうに、健全なる發達を冀ふ點に於きまして何人にも讓らない當局の熱意がありますならば、縱し此の爭議の中に如何樣なる口實が見出されたにしても、暴力團を派遣して之を闖入せしめると云ふやうな事柄を、何が故に看逃すのであるか、私は了解に苦しむものでありまして、此の點に付ての答辯を勇敢に其の儘率直に煩したいと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=7
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008・谷川昇
○谷川政府委員 如何にも警察が自分の責任を回避する爲に暴力團の使用を事業主側に慫慂するが如き御尋ねであつたやうでありますが、全くそんな考へは持つて居ないのでありまして、我が日本警察は今非常な窮境にあると雖も、左樣な卑怯なものではないと私は確信を致して居るのであります、繰返して申上げたいと思ふのでありますが、警察の立場は何も罷業者であるとか、事業主であるとか云ふので、片方だけを取締ると云ふ意圖は更にないのでありまして、事業主でありましても、或は罷業團關係者でありましても、其の關係者が法を犯すと云ふやうな場合にのみ取締を致すのでありまして、決して、依估晶屓と云ふやうなことはないのでありまして、此の點は能く御諒承置きを願ひたいと思ふのであります、又爭議の對抗の一手段と致しまして、事業主が暴力團を使用致して居たと云ふ事例もあるのであります、最近もさう云ふやうな問題が發生を致しまして、是が取締に努力を致して居りまするけれども、それが今申上げましたやうに、法に觸れると云ふやうな場合には、警察は凡ゆる力を傾注致しまして、是が取締の任に當る覺悟でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=8
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009・中原健次
○中原委員 御説は能く分るのでありますが、實際が一向解決致しませぬ、暴力團を警察が利用したか資本主が之を利用したかは別と致しまして、少くとも暴力團が神聖なる筈の工場の中に、職場の中に闖入致しまして、暴行沙汰を致したと云ふ事實があるのでありますが、之に對して當局はどのやうな御處置をなさつたか、之を承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=9
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010・谷川昇
○谷川政府委員 讀賣爭議の内容に付きましては、事細かに報告致したいと思ふのであります、中には非常に針小棒大にあることないことを傳へられて居るやうでありまして、非常に遺憾と致して居るのであります、今御指摘になりました爭議中に於きまして暴力團が暴力を以て爭議團或は爭議團の相手方に非常な壓迫を加へたと云ふ事實がありますれば、是も能く取調べまして又御報告申上げたいと思ひますが、今此處ではつきりした記録を持つて居りませぬので、はつきりしたことを後刻御報告申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=10
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011・中原健次
○中原委員 色々内部的に「デリケート」な事情があるかのやうな御言葉でございましたが、或はさうであるかも知れませぬ、併しながら此の暴力團の取締云々と云ふことに付きましては、未だ尚ほ之に付て此の場所で御發表がし難いやうな複雜なことがあらうとも考へられませぬ、少くとも、其の先に於ては五十餘名の爭議團員を檢束し、六名を起訴まで致しました當局が、即ち此のやうな嚴重なる取締をなさつた當局が暴力團の闖入に對しては只今の御答辯の如き洵にあやふやな心を以て之を御覽になられると云ふことは、甚だ私は遺憾に存ずるのであります、此のやうな事柄は、言換へますならば、やはり我々勞働階級に屬する者は、斯くの如き政府の態度に對して納得し難いものを窺ひ得るのであります、眞實に此の問題に對して誠意を御持ちでありますならば、所謂資本にも味方せず勞働にも味方せず中正公平なる立場で之を取締ると云ふことを仰せになりましたが、其のことが眞實であるならべ、縱し勞働者に對して加へたそれが迫害であつたに致しましても、やはり勞働者に加へた當局の取締方針と同じ方針を以て暴力團にも臨まれると云ふことであつてこそ、初めて公正妥當なる政府當局の態度であると云ふことが立證せられると私は考へるものであります、此の點は洵に遺憾でありまして、若し許されるならばはつきり明白な御答辯を煩はしたいのでありますが、只今の政府委員の御言葉では何だか所謂奧齒に物の挟まつたやうな感じでありまして、明確に此の點を此處で公表することは出來難いかとも想像出來るのでありますが、若しさうでありまするならば御答辯を此の場合求めないことに致します、取敢へず最後に内務、司法兩當局に御願ひをして置きたいのでありますが、勞働組合運動は言ふまでもなく勞働組合法第一條に依つて、善良な意圖の下に行使されて居る譯であります、隨ひまして勞働組合が當然其の勞働權確認の建前に於きまして、團結權、罷業權が茲に法的に確認されて居る場合でありまするので、此の勞働組合運動が正常に發達すると云ふことならば、此の與へられました勞働權の保護の爲めの團結權、罷業權の行使に付ては之を極力保護育成する、即ち政府の良き取計ひに依つて之を逸脱せしめるのではなくして、正しく成長發展せしめると云ふことの保護的な氣持がそこに溢れて居ることを必要とするのでありまして、勞働階級が團結致しまして俄かに爭議行爲に移つたと見るや、直ちに之を暴徒的な行爲であるかの如くに斷ずる傾きが屡屡政府に從來あつたのでありまして、其のやうな物の考へ方は此の民主主義への新たな出發に際して、政府は本當に心から其の認識、物の見方、考へ方を改めることが必要だと云ふことを私は御願ひして置きます、屡屡戰犯人の追究等に於きまして、所謂間違つた「イデオロギー」を持ち、間違つた考へを持つ者に對しまして、重要なる要職に就くことを拒む取扱があることは、又さう云ふ意味があるのではないかと私は考へるのであります、如何に言葉の上で公平だと申しましても、其の公平は又見方に依りますると不公平になるのであります、本當に心から現在の段階を眞實に理解することの出來ることが、政府當局の椅子に居る人々の絶對條件であると云ふことを私は考へるのでありまして、此の點を要請致して置く次第であります、司法、内務に對する質問は是で打切ることに致します、更に前に戻りまして、厚生大臣に對する御尋ねを續けたいと思ひます、話の順序が妙になりましたが、一應簡單に第一に質問致しました點を厚生大臣に申上げて置きたいと思ひます、即ち勞務法制審議會の答申書に依る少數意見が考慮さるることなく勞働關係調整法案が提案されたものではないかと云ふことを御尋ね致しいのでありまするが之に對する局長の答辯はそちらで一つ御引繼を願ひたい、私の申上げようと致しまする要點は、即ち勞働大衆の如何なる反對の意圖にも拘らず、本法案を通過せしめ、本法案の施行に依つて勞働階級の爭議權を抑へ甚だしきは之を剥奪せんとする所の方向を辿りつつあることに付て私は御尋ねをしようと思ふのであります、勞働階級が全面的に此の法案に反對して居ると云ふことは最早厚生大臣は能く御存じであると私は信じて疑ひませぬ、所謂巷に或は文書の上に其の他各種各樣の場所に於て、勞働大衆は勞働關係調整法案が勞働階級壓殺法であると云ふ意味に於て、決定的な反對運動を起して居ることであります、今私が拾ひ上げました反對運動の動きを見ますると、一番私の手近い岡山地方から始まりすまが、六月十日、岡山地方民主團體協議會は勞調生管彈壓反對勞働委員會を開催致して、其の陳情書が多分縣知事を通してこちらへ參つて居ると考へます、又其の次には七月十五日に對議會鬪爭東京中央勞働者大會は、所謂楠公銅像前に集まりまして、勞働者大會を催し、其の決議を以て衆議院に代表者を送つたことは御存じの通りでありますが、其の當日厚生大臣、植原國務大臣は其の陳情團に直接御接見になつて居りますので、内容を能く御存じと考へます、引續きまして、七月二十二日には、全國官公職員勞働組合協議會の決議が手交されて居るのであります、又七月二十四日は全日本鐵鋼産業勞働組合全國大會の決議が又同樣なことを致して居ります、更に八月三日には日本勞働組合總同盟の第二回全國大會は、此の問題に付きまして絶對反對の意思表示を決議致しました、又昨日議會の周圍を取圍みました「デモンストレーション」は實に整然として行はれましたが、是亦等しく勞働關係調整法案に對する反對の示威運動であつたのであります、其の他數へて參りますと皆樣が御迷惑に感ぜられる程澤山の事實があるのでありますが、此のやうな國を擧げて勞働大衆が本法案に何が故に決死的反對をして居るかと云ふことを十分御認識が戴きたいのであります、唯馬耳東風的に此の蜂起を聞き逃されるやうなことがありますならば、是で民主日本建設への熱意が燃える當局であると云ふことが言へるならば、私は矛盾撞着も甚だしきものがあると思ふのであります、少くとも全勞働大衆は徒らにものに反對して、徒に事を構へて參つたものではございませぬ、長い歴史が之を證明致しまする如くに、「ストライキ」が起りましても、其の「ストライキ」は誰かが申しまするやうに少數利己主義者が之を煽動指導して、徒らに世を攪亂すると云ふ行爲であると云ふやうなことを斷ずる、正に、「ドン・キホーテ」的な洵に時代錯誤の甚しき認識をする人も中にはあるのでありまするが、私は左樣なことは寧ろ洵に笑止千萬であると考へる、實際勞働大衆が一つの爭議行爲に移りまする爲には、或は一つの示威運動に移ります爲には、相當愼重審議、内部に於て火花の散るやうな討論の結果、其の策を決定するのでございまして、決して不和雷同的に事をなすものでないのであります、凡そ勞働者程自己の行動に對して愼重を期する者はなく、又勞働者を組織付けました勞働組合程其の行動に對して責任を感ずるものは少いのであります、是は長い間の概念を先づ新たにして戴きたいと私は思ふ者でありますが、勞働組合を見るに當りまして、殆ど認識不足も亦極端に甚だしい人があることを私は憂へるのであります、此のやうな意味に於て勞働組合が此の反對示威運動を續けて居りますることでありまするが、是等の全國的な勞働大衆の反對意思表示にも拘らず、當局は最初の御方針通りに否が應でも先づ兎に角此の法案を通過せしめる、斯う云ふ御見解を御持ちであると致しまするならば、私甚だ遺憾でありまするが、政府が屡屡仰せられまするやうに、多數者の幸福の爲にする政治と云ふことが果して當るかどうかに疑問を持つのであります、何となれば此の一千萬を算する勞働者の此の要求に對しまして、若し假に國民投票を以て問ふならば結果がどうなるであらうか、私は恐らく國民の多數者は此の勞働大衆の血の悲痛なる叫びに對して共感し、之に賛同の意を表するであらうことを信じて疑ひませぬ、斯かる見解から兎もあれ、此の勞働階級の反對運動に對しまして、尚且つ政府が本法案を遮二無二押切つて通過せしめんとする御考へであるかどうか、此の點を承つて置きたいと考へるものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=11
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012・河合良成
○河合國務大臣 只今の御質問に御答へ致します、色々先日來陳情の御方にも御目に掛かつて御趣旨も聽いて見ました、それから又言葉は十分でなかつたかも知れませぬが、我々の考へて居ることも御話して見ました、數回色々の面で御目に掛かり、又世間の色々な反對の聲にも深甚なる注意を拂つて聽いて居りますが、どうしても反對の御方には誤解があると信じて居ります、それで段々話して行く中に、大分御分り下さつたのぢやないか、個人的に見まして……と云ふ氣持も私共の胸に映ずる所もあります、唯甚だ期間が短かかつたので、それから斯う云ふ混亂時代であり勞働調整法の内容に付て世間に十分周知せしめると云ふことの出來なかつたこと、及び私共は微力でありまして、十分我々の誠意を酌んで貰ふことがまだ十分でないと云ふ點に付ては、甚だ遺憾に感じ恥入つて居る次第であります、是は正しいことは正しい、是はここまでのことは主張は正しいと思ひます以上は自ら解けて來るものと云ふ風に、そこに私共の信念を持つて居ります、其の線に於て進む積りであります、どうぞ其の意味を御諒承の上、何卒此の法律は無事通過するやうに御盡力の程を希望する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=12
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013・中原健次
○中原委員 厚生大臣は非常にそれ等の折衝に付て御苦心をされておいでになることを能く承知致して居ります、併しながら大臣が言はれまするやうに段々分つて來て呉れたと思ふ、即ち勞働者も納得しつつある、斯う云ふ風な御所見のやうでありまするが、そこに問題の本質が變つて來る原因があると思ふのであります、決して勞働者は納得しつつありませぬ、益益反對の意思を固めつつある一方であります、若し是が大臣の御説明で勞働者が納得をしつつあるのでありまするならば、どの勞働組合も直ちに方向轉換をするでありませう、然るに私の耳に致しまする範圍で考へますると、官公廳關係の職員組合の諸君は若し本法案が通過するやうなことがあるならば巳むを得ぬ最後の手段として業務管理を敢て致しても、此の法案に對して反對の意思表示をすると云ふやうなことを申して居るし、又決議も致して居るやうに考へて居ります、さう云ふことが事實でありまするならば、勞働者は而も指導者的な諸君と能く曾つておいでになる筈でありまするが、指導者諸君は能く諒解しつつあると云ふやうな御見解は、甚だ遺憾ながら厚生大臣の獨斷でありまして、實相とは相離るること遠いのであります、斯くの如く致しまして、各勞働團體は全勞働大衆の一擧立上りに依りまして、決定的に此の勞働階級壓殺の勞働關係調整法反對の行動に移るであらうと云ふことは、今や豫想されつつあるのであります、若しさう云ふことがありましたならば、政府當局はそれに對して如何樣なる責任を御執りになるのでございませうか、而も極く足元の内閣、本省内に於ける職員組合諸君が、其の意思を特に固く致して居ると云ふ現實を見まするならば、恐らく政府當局は、此の職員組合の諸君が必ず移るであらう所の業務管理或は爭議の態勢に對しまして、之に徒らなる彈壓を以て臨むことは勿論出來ないことであると信じて居りまするが、若しさう云ふことに對して彈壓を以て致しまするならば、是れ亦問題は更に發展致しまして、國内に大騷動が起らぬとも限らない、況や左樣な暴なる方法に出られるとは考へられませぬが、此の業務管理は、言ふまでもなく勞働組合の諸君が、自ら責任を持つて、秩序とさうして能率ある業務管理を遂行することは、今から豫想するに難くありませぬ、曾て東京都廳關係の諸君の業務管理に其の經驗を見る如く、寧ろ是等關係者諸君は、より立派なる業務の遂行をやるであらうことが期待されるのでありまするが、何はともあれ、此の業管に依つて政府の理解なき此の法案に對する態度に抗議すると云ふことが起りまするならば、如何なる御信念にも拘らず、現實は極めて冷嚴であります、此の冷嚴なる現實は、政府當局に對しまして不信任の抗議を致すであらうことは言ふまでもございませぬ、それでも尚且つ之を押切ると云ふことがありまするならば、是は言ふまでもなく勞働關係調整法案を一方的立場から獨斷されまして、即ち使用者的立場から獨斷されまして、無理押しに之を勞働階級に強要するものであると云ふことが、結論としては私は言へるのではないか、萬一左樣なことが言へると致しまするならば、取りも直さず是は勞働階級に對し、民主主義日本建設への意欲に燃える勞働大衆に對する惡意の挑戰であると云ふことを私は申上げたい、斯樣なことを尚且つ無視して、本法案を固執なさると云ふのでありまするかどうか、私一應念の爲に、此の點を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=13
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014・河合良成
○河合國務大臣 私共は、官公組合の諸君は、政府の斷定して居ります非法なる爭議行爲に御入りになるものとは信じませぬ、此の日本の大切な時に、少數の官吏がさう云ふ誤つたことをなさいまして、國務がそれに依つて頓坐する、停滯すると云ふやうなことは是は國家の一大不祥事であります、國民多數と云ふものと、官廳の國務と云ふものとの間にどれ位深い關係があるかと云ふことは、是はもう説明を要せぬことであります、それが少數に依つて動かされると云ふやうなことになりますと、國民一般多數は非常に迷惑します、さう云ふことは絶對に今の日本の國民としてはあり得ないものである、そこらに對して十分なる自覺を御持ちだと私共は信じて居ります、色々茲に不祥事が起きたことを前提としまして政府の責任とか、之に對する取締とか云ふことを云爲することを私は餘り快しとせぬ次第であります、左樣に御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=14
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015・中原健次
○中原委員 職員組合或は勞働組合が、特に官廳關係の場合に、業管に移つても、國務を澁滯せしめ、混亂に陷れると云ふやうなことはないと信じて居る、斯樣に伺ひましたが、勿論さうであります、私も固く此の點を信じて居ります、併しながらそれが打撃を與へないから、其の爭議方法の行使が、勞働關係調整法に對する反對の意思表示であると云ふことは、同時に御考へにならぬのでありませうか、固より私共は業管或は生管等に付きましては屡屡論議されたことでありますが、私等それを正しく認識するだけの明を持つて居るのでありますが、それがどうでありませうとも、其のやうな爭議行爲に移つたと云ふ事柄を無視してはならぬ、爭議行爲に移つたと云ふ事柄に對して親切な、本當に心からなる態度が表明さるべきではないか、斯う云ふことを私は申上げるのであります、更に厚生大臣は、以上のやうな状態にも拘らず、勞働者は此の問題に付て之を納得することが出來るかどうか、勞働者の納得を求めたいと云ふやうな意味の御言葉を洩らしておいでになりましたが、御尤もであります、併しながら勞働者は果して能く此の法案を納得理解することが出來るであらうか、其の御見透しを、くどいやうでありますが、もう一應承つて置きたいと思ひます
更に本法案と致しまして、最も重點的に問題になつて居ります條項は、第八條、十八條、三十七條、三十八條の四つが、屡屡繰返され、指摘されて居るのでありますが、此の第八條に於ける、所謂中央勞働委員會の構成の問題であります、中央勞働委員會が公益事業なりとする決議をするの件、此のことが屡屡問題に相成つて居るのでありますが、現在の勞働委員會の構成に付きましては、私も岡山地方勞働委員會の委員を致して居ります關係上、或る程度まで内容が分るのでありますが、所謂中立委員なるものであります、此の中立委員と云ふものは、果して純正なる中立委員であらうかどうかと云ふ疑問であります、是は從來のやうな選定方法を以て致しますと、嚴正なる意味に於ての中立委員を求むることは困難であります、或は又或る意味では中立と云ふことを此の世の中から求め出すと云ふことは甚だ困難であるかも知れない、何れに致しましても、此の中立委員の銓衡の問題に付きまして、或は勞働委員の銓衡の方法に付きまして、政府は從來執られましたやうな方法を以てされたのでは、之を全幅的に信頼して、其の委員會の決議に依るならば巳むを得ないと云ふ、納得の行く決定が豫想されないのであります、此の方法に付きまして、勞働委員會の、特に中立委員の銓衡方法、竝に勞働委員の銓衡方法に付ての政府の御所見を此の際承つて見たいと考へます
更に第十八條でございまするが、此の樣な意味に於て銓衡されました勞働委員會が即ち此の調停の問題に關して所謂關係當事者一方からの申請に對しまして勞働委員會がそれを採上げると云ふ第三項、或は第四の勞働委員會が其の職務權限に於て行ふ必要があると云ふ場合に其の決議をした時、斯う云ふことが調停の對象になつて參ると思ひます、隨ひまして此の勞働委員會の構成は愈愈以て公正を期し、飽まで其の偏跛性のなきものたらしめなければならないのでありまするが、此の點に付て一層勞働委員會銓衡方法に付ての政府の今日までの事柄は、今兎や角申しても巳むを得ませぬが、是から先に於ける方針に付ての御決意を承つて見たいと考へます
それから三十七條の所謂豫告爭議でありまするが、是は實際問題と致しまして、爭議それ自身から考へますると、洵に笑止千萬な規定であります、三十日の豫告を以て爭議に移ると云ふやうなことは、是は本當に爭議を理解する者の能く言ひ得ない所でありまするが、兎もあれ政府は此の期間を指摘明記して居られるのでありまするが、實際問題と致しまして、此の三十日の爭議豫告は、言ひ換へますると、是は爭議的な態勢の期間中を徒らに長からしむる爲の制限である、斯う云ふやうな思ひが致すのであります、此の點に付きましては爭議を奬勵すると云ふことは勿論我々考へて居りませぬけれども、曩にも申します如くに、爭議と言ひまするものは巳むに巳まれざる必死的な結果として爭議行爲が發生するのであります、其の實情を十分御理解が戴けまするならば、私此の三十日の豫告爭議の問題の如きは恐らく多辯を要するまでもなく御理解が戴けるでありませうし、隨ひまして原案の無理であると云ふ點を肯定して戴くことが出來るであらう、斯樣に信ずるのでありまするが、此の點は如何でございませうか、此の三十日の根據を伺つて見たいと思ひます
三十八條は、是が今官公廳關係の從業員、職員諸君の最も大きく氣に致して居りまする點でございまするが、所謂「公共團體の現業以外の行政又は司法の事務に從事する官吏云々」と云ふ條項に付きまして、此の「現業」と云ふことに對する認識が甚だ曖昧模糊たるものがあるのであるのでありまして、前に御答辯もありましたので諄くは申しませぬが、兎に角此の樣な重大な問題は此の限界を思切つてすつぱりともつと明かにする方が宜いのではないかと云ふやうな見解も生れて來るのでありまするが、何れに致しましても、さう云ふ混亂を敢て條文の中に挿入して居ると云ふ所に本法案の掴み所の如何に不透明なものであるかと云ふことが裏付けられて居るのであると考へます、固より警察官吏、消防職員或は監獄に於て勤務する人々に付きましては、勿論私も甚だ御氣の毒ではありまするけれども、爭議權を行使することを遠慮して貰ひたいと云ふことに付て同感でありまするが、若し此の條項を茲にはつきり明記すると致しましたならば、勿論是は勞働組合法にも明記されて居りまするが、此の場合是が關係の官吏職員諸君に對しましては、具體的な所謂生活保障の裏付けが伴ふことを必要とするのではないか、唯此の人々が爭議をしては罷りならぬと云ふ嚴命だけを以てすると云ふことは、法律其のものの不備を自ら暴露するものではないか、斯樣に私は思ふのであります、勿論政府當局とせられましては是等警察官吏消防職員監獄に勤務する職員等に對しましては相當の考慮はする、又其の他の官公吏に對しましても、其の待遇改善に付ては十二分の心配をして居ると云ふ風に御答辯になるのでありまするけれども、私共唯一片言葉を以て之を肯くことが出來難いのであります、そこで本條項の前段を若し活かすと致しますならば、此の三者に對しまする生活保障の裏付けをやはり明文化せしめることが必要ではないか、斯う云ふことを私思ふのでありますが、此の點に付ての御所見も一應參考までに承つて置きたいと思ふのであります、學校教職員の爭議權の問題に付きまして、罷業權の問題に關しまして、當局の執られました態度は洵に結構でありました、私滿腹の敬意と感謝を捧げる者であります、勿論學校教職員は其の職掌柄、其の人格に於て、飽くまで其の人格權を高く評價し、之を信用して寸毫も誤りなきものであります、私をして言はしめまするならば、其の認識を更に官公吏諸君にまで伸ばすことがなぜ出來ないか、政府當局が直接繋がりのある官公吏諸君に對しては教職員に對する程度の人格權の確認がなぜ出來ないか、私此の點を甚だ遺憾に存ずる者であります、苟も公共の事業に携つて居り、或は官公職に居りまする人人に對しまして、我々は今少し信頼と其の人格觀の深さを信じて行きたいと思ふのであります、之に付きまして當局は依然として其の信頼感の薄きが故に官公吏諸君に對しては此の法律を必要とする、斯う云ふ御見解になるのでございますか、此の點一應承りたいと考へる者でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=15
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016・河合良成
○河合國務大臣 只今の御質問に對して御答へ致しますが、段々斯う云ふ風に議會でも色々論議の的になり、又段々此の法律の制定審議に伴ひまして、此の法律の内容が何處にあるか、全く國民大衆の利益擁護の一點以外に何もないと云ふ點は、段々私は分りつつあり、又分つて下さるものと思つて居ります、又此の法律は實施されまして、直ぐ其の翌日から施行される譯でもありませぬ、其の間周知期間もありませうし、段々御分り下さり御納得下さると云ふことに對する政府は確信を持つ次第であります
それから警察官吏其の他の組合結成禁止乃至爭議禁止の人々に對して生活保障の裏付をするかと云ふ御話でございまして、是はもう御尤も千萬なことでありまして、法律で爭議權を禁止する以上は、特に其の點を考慮して行くべきことは當然のことと思ひます、併し今まで官公吏の待遇と云ふものは好くなかつた、此の點に付ては勿論遺憾な話であります、過般も相當上げたけれども、まだ勞働者の所まで行かぬと云ふことは御尤もであります、併し一面に於ては國が立つか立たぬか、「インフレ」がどうなるかと云ふやうな通貨膨脹の問題も片方にありますし、財政問題もありまするし、全體を睨んで行かなくてはならぬことは勿論でありますが、併しながら生活擁護に對して遺憾のない措置を執ることも勿論政府として責任を感ずる點であると云ふ風に私共は考へて居ります、唯問題は今度の憲法に依りまして生活保障と云ふことは、國民全體に對する政府の責任となつて居りまして、引揚者の如き或は戰災者、戰死者の遺族、寡婦、孤兒等今日非常に悲慘な氣の毒な環境におありの方に對しましては、國が其の全體に付て救護の手を差伸べて行かなくてはならぬ、或は失業對策或は生活保護法等、日本は今日「デモクラシー」になつたからこそ、ここまで行くのですけれども、是が戰前の考へを以てすれば正に劃期的な法案を作らんとして居る、其の位保護の對象も、亦生活保障の對象も全般的であります、色々今日要望も議論も同階級に於てありますけれども全般に萬遍なく又十分滿足の程度に行くことの出來ないのは皆さん御承知の通りでありますが、其の間に「バランス」を取つて漸く逐つて完全なものにしたい生活保障、社會生活と云ふことに付ては政府も深く心に期して居る次第であります、それから學校職員の關係に付きまして、學校職員は人格の尊重をして「ストライキ」禁止の規定はやらぬ、是は宜しい、そこで之を公吏にまでなぜ伸ばさぬか、勿論人格の尊重と云ふ點に於ては學校職員ばかりでなく、各官公吏職員に對しても同じ念慮を持つて居ります、私共一緒に仕事をして居るものに對しても、何よりも第一に人格の尊重と云ふことでやつて居る次第であります、併し此の法律を作りますのは人格尊重とは別問題であります、之を作るから人格を蔑視すると云ふことではないのであります、是は國家全般の利益を擁護する上に於て必要であるから、其の必要の程度に於て、又其の性質に於て官公吏職員と學校職員とは違ふのであります、官公吏の「ゼネスト」は勿論おやりになるとは思はぬが、間々或は此の法律を通すなら「ゼネスト」だと云ふ私共が驚くやうな聲さへ聞くのであります、だから時代の變遷に依つて國民の輿論が政府に對して反撃的な場合にどう云ふことが起らぬとも限らぬ、其の場合「デモクラシー」に依つて選出された多數黨議員に依る政府が顛覆することになりますと、小數者が多數の者の「マジヨリティ」を無視する、即ち「デモクラシー」の本質に背くと云ふのが此の法律の精神であります、所が教員は假に不幸「ストライキ」をやりましても國務全體の停廢と云ふことにはならぬ、即ち政府顛覆と云ふことにはならぬのであります、そこに性質上の差別があるのでありまして、其の點で問題が分れると云ふことを御諒承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=16
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017・中原健次
○中原委員 言葉は洵に重寶でありまして、成程本當にさう云ふ御認識をお持ちであらうと信じて疑ひませぬ、併しながら若し先のことまで考慮して、國家の公益の爲にと云ふ此の觀點から、例へば只今例を御擧げになりましたやうな大衆の支持を受けて議會を構成した其の政黨が内閣を組織するやうな場含があつた時に、少數の反對者、少數の惡質なものの動に依つて官公吏職員が又さう云ふ「ゼネスト」的なことをやらないとも限らないと云ふ憂慮を籠めた御話を承つたのでありますが、若し私の聽き違ひであつたら取消します、若し聽き違ひでなかつたら遺憾ながら私は大臣とは反對の見解を持つて居ります、官公吏職員が國民大衆の支持のない「ストライキ」或は爭議行爲に移ると云ふことは寸毫も考へられない、少くとも官公吏が爭議行爲に移ります場合は國民大衆の絶對的支持を受けてのみなされると信じます、又さうあるべきだと信じます、そこに私は官公吏の人格、品性、教養其の他の點に於て教職員と何等劣るものでないことを信ずるものであります、徒らに少數者の煽動に依つて國民の意思に反する「ストライキ」に移る、況んや「ゼネスト」を敢へて敢行すると云ふやうなことがある場合を苟くも想像されるならば、大臣が只今申された自分は官公吏職員を信頼すると云ふ言葉は遺憾ながら虚言であると申さざるを得ないのであります、さう云ふ出まかせの言葉に依つて本法案通過の爲め十分な納得をせしめんとする程、それ程御立場が苦しいと云ふことを寧ろ御同情申上げます、けれども本法案は遺憾ながら如何なる言葉にも拘らず全勞働大衆大反對の法案であると云ふことだけは間違ひもない、而も國民大衆の公益を害し云々と云ふことを言はれますけれども、只今の論を以て致しますならば、若し巳むに巳まれぬ場合がありまして一つの爭議行爲に移りましてもそれは公益を紊亂し、國の公務を澁滯せしめるやうな拙劣な、或は國民に反逆するやうな方法を以て爭議行爲に移るものでないことを私は深く信ずるものであります、さう云ふことが豫想されますならば、本法案は寧ろ徒らに善良な國民、延いては關係勞働大衆の反感を助長する爲めの刺戟になることだけが能であつて、決して本法案を説明される其の目的に副ふものでないと云ふ結果に遺憾ながら到達するものであると斷言せざるを得ないのであります、大臣は此の問題に關しまして大臣の信頼されるであらう所の官公吏各位が國民の支持なき爭議をすると御豫想になるかどうか、やはり御豫想になつて居ると思ひますが、其の點に付てもう一度御答辯を願ひたいと考へます、屡屡議論が持上ります度毎に「デモクラチック」と云ふ言葉が使はれますが此の「デモクラティック」に付ての御理解は甚だ遺憾でありますけれども、聊か履き違へられて居るのではないかと思ふのであります、先づ政府が所謂支配者の御立場から支配せん爲めの法を作上げると云ふこと自體が既に本當は間違つて居るのであります、是は現在の制度に於て直ちにさう云ふことが出來ないから巳むを得ないのではありますけれども、眞實に民主主義を國の建前と致して居るのであるならば、斯くの如き大法案を作り上げて參ります爲には、眞に民主的な方法を遺憾なく採入れた上に於てのみ、是はなされなければ相成らないのであります、然るに成程説明は如何樣に付かうとも、一方的な獨斷に依つて、法案を押付けようとする態度は、決して是は「デモクラチック」な行き方ではない、遺憾ながら私はさう云ふ風に申上げて置く、併しながら現在の制度を以て致しまして直ちに出來ないと云ふことは豫想して居りますけれども、其の精神を十分把握することが出來るならば、此の法案に付てもやはり其の精神を呑込んだ上に於ての取扱方がなされたいと私は思ふのであります、斯う云ふ意味に於て現在の段階は實に目まぐるしき展開をしつつある瞬間でありますので、政府が思ひ切つて此の民主主義化への理解と把握が過ちなく出來ることに依つてのみ、我が日本の民主主義化は早く可能になるのであります、是が徒らに後退りして民主主義の方向を堰止めんとする動きが、さう云ふ心構へが──本質的に或はさうであるかも知れないが、さう云ふことがあるとすれば、如何に言葉の上で民主主義と云ひましても、我が日本の民主主義化は決して期待出來ませぬ、期待出來ないと云ふことは、同時に「ポッダム」宣言の履行が恐らく遲れて行くであらうと云ふことを遺憾ながら指摘せざるを得ないのであります、勿論觀念の上に於ては「ポッダム」宣言の履行に付ては熱意を持つであらうけれども、唯單に大臣或は内閣全體のさう云ふ言葉や單なる觀念だけで此の事柄がなされるのではないのであります、内容は兎も角、本質が其處にまで飛躍しなければ民主主義は遂行されない、さうであるならば是は其の一つの試練として、試驗臺としての本法案の取扱であると私は信ずるものであります、隨ひまして本法案に對する取扱方は飽くまで愼重を極めて──決して勞働階級は暴徒ではございませぬ、勞働階級こそ秩序と責任を重んずる表代的な我が日本民主主義の先頭者としての地位を持つ階級であると云ふことを私は再び繰返して申上げて置きたいと思ひます、どうぞ以上の點に付きまして御答辯を煩はしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=17
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018・河合良成
○河合國務大臣 只今中原君の懇懇たる御諭しに對しましては、私共注意する所は十分注意をして行く積りであります、唯私共は只今の官吏に向つて全幅の信頼を置いて居ります、併し是はどう變らぬとも限りませぬ、それでやはり將來と云ふ事も見て行かなくてはならぬ、勿論與論の支持のない「ストライキ」は大體駄目でせう、駄目だけれども此の社會情勢の變化と云ふものは色々ありまして、其の一つ一つの問題に付て正確な輿論と云ふものが一つ一つ反映するとは必ずしも限りませぬ、外に例へば外交問題なり或は何か大きな問題でもありまして、さうしてそれが政府に對して非常に一つの議論の的になつて居ると云ふ樣な時に、もう一遍「ボート」をやり直して、國民の總意を問ふか問はぬかと云ふ問題などが起きることは、やはり是は考へて宜いことではないか併し總選擧をやるまでは、やはり「デモクラシー」としまして政黨の支持を受けた内閣が立つて行くと云ふことが、今度の議會制度の本義だと私は思つて居ります、さう云ふやうな間障などに色色な問題が起きたり、或は少數の指導者等に依つて間違つた指導をされたりした場合に何が起きないとも限りませぬ、さう云ふことが起きた場合に、輿論は又それに正確な批判を與へるかと、もつと他の問題の爲に正確な批判を與へる餘地がないと云ふことなどもやはり人間としては考へて行かなければならぬ、必ずしもさう云ふことがあると云ふことを斷念する譯ではありませぬが官吏が「ストライキ」をおやりになる意思を持たぬ、又持つべきものでないと云ふ官吏に對しても斯う云ふことをやつて置くと云ふことは決して人格上の問題でも何でもないと云ふ風に私共は考へて居ります、又此の法律は決して政府だけで作つた法律ではありませぬ、是は出來るだけ民意に問うて居ります、政府は一つの指示もしないで、初めから勞務法制審議會で出來ましたものでありまして、期間が短かかつたから民主主義的と云ふ點に於て民意反映と云ふ事に十分な點がなかつたとは或は言へるかも知れませぬが、是は期間が短かかつた爲めでありまして、手は盡して居ります、さうして私共も只今は誤つて政府の一員となつて居りますけれども、斯う云ふ問題に對しましては、本來の一野人としての感覺、觸覺を持つて此の問題を眺めて居る積りであります、何とか一つさう云ふことを言はぬで御協賛を願ひたいものであります、懇請致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=18
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019・逢澤寛
○逢澤委員長 中原君に御諮り致しますが、此の問題に付きましては、あなたは途中から御代りになりましたが、此の委員會を始めてから相當詳論して居りますから、成たけ簡單に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=19
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020・中原健次
○中原委員 昨日大臣は世界勞働會議參加に付て大體賛意を表されたのであります、私勿論感謝して居るのでありますが、世界勞働會議に日本勞働組合が參加すると云ふ出來事は、言ふまでもなく日本民主化の證左でありまして、此の事なしに、我が日本の民主化を口にすることは出來難いと信ずる者であります、又世界の戰勝國或は其の他の各國が日本の勞働階級の動きに對しましては、實に注意深き關心を以て眺めて居る次第でありまして、勞働階級が眞に世界の舞臺に登場致しまして、我が日本の所謂究極の活動を全身に背負ふの自負を以て今後は活動する筈であると思ひますが、果してさうであるとするならば、此の勞働組合の健全なる發達を來す所の途は如何に考へられるか、唯是もいけないあれもいけない、或は大臣の感覺に是はどうも法に觸れるから忽せに出來ない、謂はば折角女房を貰つて見たものの、どうも女房が心配で金庫に毎晩鍵を掛けるの愚ではないかと私は思ふのであります、さう云ふやうな態度を以て勞働階級に臨むと云ふことは、今後とも決して採らざる所でありたいと私は思ひます、寧ろ勞働組合運動の正常なる發展を來さしめるの途は、先づ勞働大衆を其の勞働大衆の爲すべき善意の行動の中に自由に解放する、即ち勞働組合法第一條の命ずる所に依つて其の行動を解放するにあり、勞働組合は是ら勞働組合法第一條の精神を把握致しまして、其の勞働組合法第一條の精神を過ちなく掴むことに依つて、勞働階級の所謂勞働組合運動は正常にぐんぐん發展を遂げて行く筈なのであります、其のものに對しまして色々な手を以て、是が前方に横はるが如き法案を御制定になると云ふことは、私何としても承服し難いのであります、而も我が日本にはまだ刑法は健在であります、暴力行爲取締法も健在であります、勿論斯樣な戰爭中に於ける實に反動的な法律は明日の日にもなくすべきであると信じますが、ともあれ一定の公安を保持する爲めの刑法は私は必要であると思ひますが、兎に角刑法が健在である以上、わざわざ色々な法律を作つて國民を重壓する必要はない、現行刑事關係の法律を以て或は現在の制約付ける色々な法令、命令、規則は寧ろ多きに失すると思つて居るのであります、少くとも民主主義の此の段階に於ては、段々惡法或は惡令、惡規則は撤廢して行くべきが本當であると考へて居りますが、それでも尚且つ澤山の制約付ける爲の法律、命令、規則がある、だから其の點では大臣が御心配になるやうな手放しの状態ではないのでありまして、少くとも現行法律の範圍内に於て勞働組合法は成長せんとして居るのであります、斯かる時に此の法律が出ますることに依つて、組合の正常なる發展が阻害されると云ふことを私は固く信じますと同時に少くとも此の法律の命令する範圍に屬する官公署等の關係の勤勞階級は、遂に法律を適用されない、勞働組合法を與へられましたが、之を自らのものとして取上げて行くことが許されない状態に陷入れられんとして居るのであります、折角出來ました日本民主化の根幹をなす勞働組合法が、而も勤勞大衆の相當部分に適用されない日が約束されんとして居ることは、我が日本の勞働組合の健全なる發達の爲に、私は歎かはしい事柄であると存ずるものであります、之に付きまして大臣の御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=20
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021・河合良成
○河合國務大臣 結局健全なる勞働運動の發達を圖ると云ふことに付ては、勿論是は出來るだけ凡ゆる方法を講ずべきことでありまして、一面に社會教育の面にも非常に重大な「ウエイト」が掛ると思ひます、併しながら今御話になりました通りに、解放と申しますか、是は一つの意味は、今までの人間の頭の切換と云ふか、最も重大なことは頭を解放することだと思ひます、それから御話のもう一つ、勞働者に對する今までの色んな掣肘的のことを解放して行く、是も御尤もでありまして、其の意味の解放もやらなくてはならぬと思ひます、併しながを解放と云ふことになりますと、やはり裏に責任の自覺と云ふことを考へて行かなくちやならないのでありまして、他人の權利の尊重と云ふこともしなければならない、一般大衆の利益の擁護、公益擁護と云ふ責任は勿論解放の裏に太い線として存在しなければならない、此の法律の如きは其の線に觸れたものだと思ひます、併しながら一面に於て解放と同時に、凡ゆる保護を與へなければならない、保護法の如きものを至急作らなければならない、又勞働、問題の面ではなく、生活保證其の他の問題に付てもやはり太い施策を行つて行かなくちやならないと考へて居ります、併しさう云ふ問題は稍稍抽象的になりますが、もつと根本的の問題は、日本經濟の興隆であります、兎に角物を餘計にして、お互ひに食ふ物、着る物、住む物を餘計にしなくちや何もならない、結局私が能く言ふ「ウエイジ、フアンド・セオリー」之を何とかしなければならない、斯う云ふ風に私は構想を畫いて、居りますが、斯う云ふ線に沿つて健全なる發達を助長したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=21
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022・中原健次
○中原委員 私は繰返し申しましたやうに、勞働者は自分の行動に責任を持つて居る、其のことに付ての自覺は十分にあると云ふことを何遍も繰返しましたが、やはり我々を疑はれまして信ぜられないやうであります、勞働階級は大臣が御考へになつて居りますやうに左樣にふしだらな、無責任なものではないのであります、現在世の中に起つて參ります色んな事象の中で調べて御覽になると直ぐ分るのでありますが、勞働階級が犯罪を起しまする場合は、結局押詰められた生活の必死のどたん場に起きるのであります、一方勞働階級ではなくて持てる階級が犯罪を犯しました場合にはさうではなくて、寧ろ相當惡意に滿ちた企みに依つて色んな犯罪が構成されて來たことを知るのであります、其のことはどうであらうとも、兎に角勞働階級に對する大臣の御見解は、勞働階級をまだ本當に御存じないと云ふことを申上げたい、言ふまでもなく、我が日本の經濟興隆に對して總てのことが集中されて行かなければならぬことは言ふまでもございませぬ、勞働組合運動も此の線に沿つて行はれて居りまするし、偶偶私は勞働組合總同盟に關係する者であります、勞働組合の組織の根本方針は、勞働階級の生活權の向上を約束すると同時に、我が國の經濟興隆に寄與すべしと云ふことを以て組合の基本綱領と致して居るのであります、私共は如何なる場合にも總てのことが、我が日本再建の爲に絶對必要である、經濟興隆に寄與すべしと云ふことを勞働階級にも告げると同時に、實際の組合の指揮方針の中に之を全面的に振翳して居る次第であります、言ふまでもなく勞働階級は最も能く此のことを理解し、感激して、我が國經濟興隆の爲に努力しつつある状態でありますが、是は生産の面で考へましても實證することが出來るのであります、もう時間が相當……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=22
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023・逢澤寛
○逢澤委員長 中原君もう非常に時間が延びて居ります、他の發言者が非常に支障を來たしますので、成たけ簡單にやつて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=23
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024・中原健次
○中原委員 兎に角 現在の生産工場内に於ける色んな「サボタージュ」的な生産不振の状態を具さに檢討しますと、勞働者の「サボタージュ」に依つて、勞働者の協力せざることに依つて工場の生産能率が減退すると云ふ現象は見られない、さうではなくて、生産者それ自身の方が、寧ろ此の生産増強に對しては障碍となりつつあると云ふ現實を屡屡見るのであります、勞働階級の今や生産の意慾に燃えて起ち働かんとする決意に付ては、最早何等の證明を必要としない、斯樣な意味に於きまして、先づ私は大臣の勞働階級に對する御認識を今一度改むる必要があると云ふことを此の際申上げて置きます、勞働階級に對する認識が違ふことに依つて、勞働階級に對する諸政策、諸施策が間違つて來ることは言ふまでもない、之を正しく理解することに依つて正しい方針が生れて來ると思ふのであります、どうぞ内閣閣僚全體も、此のことは或は無意味かも知りませぬが、特に勞働行政に對して當られます厚生大臣としましては、先づ何よりも眞先に勞働階級の本質、勞働階級の持つ姿を十分誤りなく御自覺が願ひたい、其のことに依つてのみ我が國の勞働對策も初めて誤りなきを期することが出來るであらうと信ずるものであります、時間がないさうでありますから一應是で打切りますが、もう二十分程必要なんですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=24
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025・逢澤寛
○逢澤委員長 委員の諸君にも御願ひ致します、委員長は、皆樣が非常に我慢して戴きまして、靜肅に發言者の發言を十分御聽取り下さつて居る點に付きまして私は感謝して居ります、併しながらまだ後に數人質問を殘して居るのでありますし、成べく他の議事の進行上本月中には打切りたいと云ふ申合せもありますので、他の委員の諸君の發言に支障のないやうに願ひたいと思ひます、隨てもう三十分も過ぎて居るのですから、此の程度で打切つて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=25
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026・中原健次
○中原委員 それでは議事進行で一寸……勿論時間を十分注意しなければならぬことは言ふまでもありませぬし、より迅速に問題を解決しなければならぬことは同感でありますが、それにも増して大切なことはより納得の行く愼重なる審議がなされると云ふことにあると思ひますし、又さう云ふ御理解の下に委員長初め委員各位も、成程御聽き辛い點も十分あると思ひますが、御辛抱が願へて居ると私信じて居ります、隨ひまして私も徒らに之を申上げて居るのではなく、どうしても此の點だけは觸れさして戴きたいと念願して巳まない條項だけを實は取上げて居ります次第であります、最後に二十分だけ午後を一つ御割き戴きまして、繼續を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=26
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027・逢澤寛
○逢澤委員長 中原さん、午後の二十分と云ふのを、あなたの發言も非常に重要ですが、併し他にも今後あなたの方の松岡先生、荒畑さんなど、多數の重要な發言者がまだ控へていらつしやるのです、本委員會だけでなしに、他の委員會の均衡もありますので、極く簡單に此の際繼續してやつて戴いて、午後は他の發言者がやるやうに致したいと思ひます、簡單にやつて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=27
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028・中原健次
○中原委員 商工當局は居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=28
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029・逢澤寛
○逢澤委員長 商工當局の方は此の後で商工當局が來た折に關聯質問としてやつて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=29
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030・中原健次
○中原委員 是は厚生にも關係がありますけれども、商工も必要なんですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=30
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031・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは午前中の質問は是で一應打切りまして、午後は一時半から繼續致します、此の際更に申上げて置きますが、政府當局に對しても大變御迷惑と思ひます、又委員諸君に對しても甚だ御迷惑と思ひますが、成たけ今日中に理事の申合せを遵奉して打切りたいと思ひますので、少々時間が延びても、六時になつても今日打切る豫定で居りますから、其の御積りで御願ひ致します、是にて休憩致します
午後零時十七分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=31
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032・会議録情報2
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午後一時三十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=32
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033・逢澤寛
○逢澤委員長 是から午前中に引續きまして會議を始めます、通告順に依りまして東隆君に之を許します──東君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=33
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034・東隆
○東委員 私の質問の第一點は、今の日本に於ける勞働爭議の状態は、終戰後の昏迷して居る状態から考へて必ずしも盛んなものでない、斯う云ふ考へ方を持つのであります、さう云ふ考へ方から出發をして、日本に於ける階級意識、さう云ふやうなものは非常に鈍化されて居る、斯う云ふ風に考へるのであります、其の理由は、階級意識の非常に盛んなものは、是は軍需産業を中心にした重工業と云ふやうなものに從事して居る者が中心になつて、階級意識尖鋭化したのである、斯う考へるのであります、それは恐らく重工業に從事して居る勞働者が革命の前衞分子となつて居る、斯う云ふ風に思ひます、其の考へ方は私は正しい、斯う存じますが、さう云ふやうな意味から考へて、既に重工業と云ふものは戰爭中に大分潰されてしまひ、それから今後日本に於て發達するものは是は制限を受けて居る、隨て日本に於ては重工業と云ふものは發達をしない、殊に平和産業に轉換されてしまつて、軍需産業と云ふものは問題でない、さう云ふ風に考へて見ますと、私は日本に於ける所の勞働問題を中心にしての階級意識、斯う云ふものは非常に鈍化されて居る、斯う云ふ風に考へるのでありますが、此の點に付てどう云ふ風な御所見を持つて居られますか御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=34
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035・河合良成
○河合國務大臣 只今の東君の御質問に御答へ致しますが、只今御述べになりました通りに、一番勞働問題の起きますのはどうしても重工業其の他の「マスプロ」を中心にしたものの方がやはり起きる率が多いのであります、さうして重工業は今日少くなつたから日本の勞働問題の性格が多少變つて來ると云ふことに付ては、政府に於ても同樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=35
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036・東隆
○東委員 そこで私はもう一歩中に入り込みまして、今の厚生省の勞働政策と云ふものを假に進歩的な立場に立つて進められて居ると云ふ風に考へますると、私は利潤の公正な分配を要求する爭議と云ふやうなものは、私は或る意味に於て抑制しないで積極的に進めて行かなければならぬぢやないかと云ふ風に思ふのですが、政府はどう云ふ風に御考へになりますか
〔委員長退席、古賀委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=36
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037・河合良成
○河合國務大臣 只今起きて居ります爭議の一番主な原因は生活問題でありまして、結局生活が維持出來ない、今日の賃金生活では食つて行けない、と云ふのは御承知の通りの經濟上の變革が非常に急「テンポ」に參る時代に遭遇したものですから、さう云ふやうな意味の爭議が最も大きな部分を占めて居ることは疑ひないのでありますから、さう云ふ意味に於ける勞働者側の要求が幾分消極的であつた、性質が消極的であつた、爭議のやり方が消極的と云ふ意味ぢやないのです、結局生活の確保、維持と云ふものが問題の中心であつたと云ふ風に考へて宜からうと思ひまするが、今後やはり利潤の分配と云ふ面に於ける積極的の問題も勿論起ると思ひます、今までも勿論起きて居ります、併し是は其の意味の爭議を何と言ひますか、勞働政策の進歩的の見地から之を奬勵して行くかと云ふ點に對する御質問と思ひますが、是は單純にさう申すことはどうかと思ひます、色々其の時の事情に依りまして、公正なる分配を要求することが至當であるかどうかと云ふことを一概に茲に公式的に斷定すると云ふことも一寸困難ぢやないかと思ひます、併しながら成べく資本と勞働との調和を求めて、さうして謂はば「プロフィット・シェアリング」の制度其の他に依つて、或は又合意に依る經營權の協同的の參加と云ふやうな形などに依つて、斯う云ふ線に進んで行くと云ふことは結構なことだと思ひますけれども、總て公正なる分配を要求する權利があるんだと云ふ風に解釋することはどうかと云ふ風に思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=37
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038・東隆
○東委員 厚生大臣の御答辯は少し私の質問から的外れのやうに思ひますが、私は利潤の公正なる分配を要求する爭議は、産業の民主主義を確立する爲に當然必要でないか、斯う云ふ觀點から質問したのであります、併し是は大變具體的な問題になると難かしいだらうと思ひます、併し抽象的に私はそれに付て「イエス」か「ノー」か、斯う云ふ御答へを欲しかつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=38
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039・河合良成
○河合國務大臣 一寸初めの方が聽取りにくいのでありまして、もう一遍質問の點を……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=39
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040・東隆
○東委員 利潤の公正なる分配を要求する爭議は、産業の民主主義を確立する爲に私は當然行はれて然るべきものだ、斯う云ふ考へ方を持つて居る譯であります、だからそれに對してどうか、「イエス」か「ノー」か、斯う云ふ御返事を聽きたかつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=40
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041・河合良成
○河合國務大臣 利潤の公正なる分配と云ふことが私にはつきり來ないんです、是は事業は經營と勞働との形で行つて居るものと云ふ前提を置きますと、勞働は賃金と云ふ形で來るんです、さうして其の賃金なり經費を差引いたものに利潤があるかないかと云ふ問題になつて來る、利潤がある時には配當其の他の形で行くと云ふことになります、さうすれば配當を勞働者が當然取る權利があるかと云ふことを御言ひになるならば、今の制度ではありませぬ、併しながら利潤の分配を成べく勞働者にも拘霑させることが政策上どうかと云ふ御話になれば「プロフィット・シェアリング」其の他の方法で行くのは結構だらう、さう云ふ意味になります、どうも御質問の趣旨がぴつたり來ぬものだから一寸言葉がはつきりせぬのでございまして、今のやうな趣旨に解釋するなら今の答辯でどうか御諒承願ひたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=41
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042・東隆
○東委員 私は此の問題を茲で打切つて次の問題に入らうと思ひます
官吏其の他の公共團體に關係して居る者の爭議、是は前から御話にありますやうに現在は生活問題が中心であります、私はそれの根據を、官吏其の他の者は、是は分配の問題を離して居ると思ひます、利潤の分配と云ふやうな問題とは全然懸け離れたものであります、隨て生活問題を中心にして考へて見る、斯う云ふ風に考へられます、隨て前の營利企業に於ける所の利潤の公正なる分配と云ふことを假に考へて見ます時に、私は適正なる分配を要求する爭議ならば、是は進歩的なる勞働政策の立場からは積極的に之を見て行かなければならぬ、斯う云ふ考へ方を持つのです、それで其の考へ方から行きまして、官吏其の他公共團體關係者の爭議は「デイストリビユーション」の問題ではないから、私は之を勞働爭議の性格から當然二つに分けてしまはなければならぬのではないか、爭議と云ふものを二つに分けて、營利企業に從事をして居る關係の方面の爭議と、それから官廳或は公共團體或はもう少しぼけて參りますけれども半官半民の營團のやうな方面に於ける爭議、或は協同組合經營の企業、さう云ふやうなものと、それから營利企業を中心にして居る所の企業、さう云ふやうな意味に於ける爭議と云ふものは當然峻別さるべきものではないかと云ふ考へ方を持つ譯であります、それに付てどう云ふ御所見を御持ちでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=42
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043・河合良成
○河合國務大臣 それは爭議の問題の對象となる範圍が官吏に於ては俸給──勞働條件は俸給と云ふ問題が中心でありませうし、それから一般の營利事業に於ては俸給の外に經營參加と申しますか利潤の分配を希望すると云ふ面があり得ると云ふ意味に於て、爭議の性質は違ひますけれども、何れにしても勞働條件が問題の中心でありまするから、勞働條件と云ふものは其の企業々々に依つてどう云ふ形を持つて居るかと云ふことに依つて、さう云ふ區別が出來ると云ふことに私は考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=43
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044・古賀喜太郎
○古賀委員長代理 東君に一寸御願ひ致します、速記の方が非常に聽取りにくくて御困りださうでございますから、東さん咽喉を痛めて居られると思ひますが、前の方においで下さいまして御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=44
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045・東隆
○東委員 それでは私はもう一つ別な方に質疑の中心を進めて行きたいと思ひます、私は今までの日本、終戰前までに於ける日本の國の性格、さう云ふやうなものを警察國家だと、斯う云ふ風に世間の人は申しますし、それから我々もさう云ふやうな氣分がする譯でありますが、如何樣に御考へになつて居られるか、それを一つ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=45
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046・河合良成
○河合國務大臣 警察權が相當強かつたと云ふ意味はさうも思ひますけれども、警察國家と云ふことには私は考へませぬが、是は併し私の所管ではないのでありまして、私の感じとしましてはそこまで強くも感じて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=46
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047・東隆
○東委員 私は警察國家らしい所があると云ふ風な程度の御答へがあるのでないか、斯う豫想をして居つたのでありますが、厚生大臣からは、私にははつきりしないと云ふやうな意味の御返事ですが、そこで私は今までの色々な法律其の他のものは大部分色々な點で分けて行かなければならぬ部面があるのではないかと考へる譯であります、と言ふのは勞働政策のやうな動いて行く部面に付ての法律、それから内務省でおやりになつて居るやうな關係の法律、さう云ふやうなものの間には、私は當然違つた形式の法律が行はれて行かなければならぬ、斯う考へる譯であります、と言ふのは今までの日本の法律はどちらかと申しますと、實體がまだ現はれて居らない時に、直ぐ何々取締規程と、こんなやうな法律が出まして、さうして色々な産業は其の爲に發展を阻碍された部面が非常に多い、一番甚だしい例を申しますと、電氣事業のやうなものを考へて見ますと、小發電、其の他のものは、是は取締規定其の他之に類する所の法律に依つて阻碍をされて來て居る譯であります、斯う云ふやうな規定を澤山出して、さうして國家の産業其の他の方面に損失を非常に來したと、斯う考へて居りますが、勞働政策を中心にしてやつて行くと、斯う云ふやうな方面の法律と云ふものは、私はさう云ふやうな形のもので現はれてはいかぬのではないか、殊に厚生省關係の社會政策を中心にした所の法律、さう云ふやうなものは活きた社會に常に合ふ所のもの、さう云ふやうな形の法律でなければならぬ、斯う云ふ風に考へます、さう云ふやうな意味で私は「ケインズ・ロー」の方式を採るべきぢやないかと思ふ、網の目を廻らしたやうに良い頭を絞つて法律の網を造つて、さうして將來を豫想して行くやうな、さう云ふ法律の作り方は間違ひぢやないか、斯う考へる譯であります、斯う云ふやうな意味から今度の此の法案を考へますとさう云ふやうな部面がある、それで私はさう云ふやうな考へ方から、今後は少くとも厚生省關係の法律は社會現象に對應して、事實が起きて參りましたら、それに對して判例的に規定をして行く、斯う云ふ形で行くべきであつて、豫め規定をすべきではない、斯う云ふ考へ方を持つ譯であります、其の點に付て如何樣の御考へを御持ちか御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=47
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048・河合良成
○河合國務大臣 極く抽象的な御話でございまして、一寸明確な御答へを致し兼ねますけれども、大體は御論旨のやうに常識的に考へます、併しながら物にはやはり程度もあり、輕重もありますから、斯う云ふ具體的の問題をどう處理すると云ふことは自ら別問題になる、さう云ふ風に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=48
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049・東隆
○東委員 私は例へば明治維新或は今度のやうな場合に於て、無血革命と云ふやうな形で以て進んで來たことに對して非常に國民は幸福だ、斯う云ふやうに考へて居る譯でありますが、併しさう云ふ先程申上げたやうな形で反動的な形で以て、折角の革命の成果を得ることが出來ない、さう云ふやうな形が現はれて居る、斯う云ふやうに考へますので、今厚生大臣が御考へになつたやうに私の話は抽象的な質問でありますけれども、さう云ふ御考へで御進みを願ひたいと存ずるのであります
次に私は、飛び飛びになりますけれども、第八條の公益事業の定義に付て疑問がある譯であります、私は此の第八條の公益事業の中には、先程申上げましたけ「ケインズ・ロー」のやうな關係で行くべきでないか、斯う云ふ考へ方から却て昭和十五年に出ました勞働爭議調停法の第一條に書いてあるやうな、ああ云ふ形で進められて行くべき問題ではないか、斯う云ふ考へ方を持つ譯であります、殊に爭議の中心を營利企業と公益的な事業、さう云ふやうなものに峻別すべきだ、斯う云ふことは私は最初に御聽きした譯でありますが、さう云ふ意味から私は公益事業の中味を公共事業、さう云ふやうな關係のものに一應切つて置く方が宜いのではないか、斯う云ふ考を持つ譯であります、公益事業の中味は非常に廣範な中味を今度は規定してある譯であります、それで大臣は只今非常に此の中味を狹く御解釋になつて居られるやうでありますけれども、併し是は時代が遷るに從つて、私は相當廣く解釋をされるのではないかと存じます
〔古賀委員長代理退席、委員長着席〕
殊に末項にあります醫療關係の仕事、さう云ふものになつて參りますると是は別に醫療關係に付ては、醫師法か何かに規定があるのではないか、さう云ふやうなものを活用をされますれば私は必ずしも公益事業に持ち出して來る必要はないのではないか、斯う云ふ風にも考へます、併し色々な關係で、却て多く根を張り過ぎたやうに考へて居りますが、其の點は如何御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=49
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050・河合良成
○河合國務大臣 第八條の公益事業の範圍に付きましての御質問でございましたが、是は今御示しの通りに公共事業と云ふ意味に限つて、營利事業を除くと云ふ方法も一つの方法だらうと思ひます、それから先程御示しの官吏其の他の爭議は給與と云ふのが目的だが、私營事業は利益を伴ふから、利潤に關する爭議の目標があり得ると云ふ點に於て爭議の性質が違つて居ると云ふこととの關聯性に於きまして、只今の主張を含んだ御質問と思ひますが、私は其の一つの方法としてさう云ふことも勿論考へなければならぬと云ふことには同意見であります、唯是は客觀的に公衆の日常生活に缺くことの出來ないと云ふことが問題の重點になつて居ります、日常生活に缺くことが出來ないが故に公益事業なのではなく、營利事業でも其の結果として公益に重大な關係を持つものはやはり日常生活に缺くことが出來ないもの、斯う云ふことに決つて來ますから、それを中心にして考へた方が私は社會公益を意味する上に於て適當なりと思ふから、やはり原案の如きものが適當でないかと云ふ風に考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=50
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051・東隆
○東委員 日常生活に必要なものだと仰しやいますと、私は今で言ひますと食糧營團の仕事のやうなものは、是は最も必要だらうと考へますが、食糧營團に爭議をされたのでは、是は目に餘る、斯う思ひますが、さう云ふやうなものが載つて居なくて、別なものが載つて居る、さう云ふ風に考へて來ます時に毎日の生活に必要な度合、それから其の他の分け方と云ふものは、是はやはり時勢の動き方に依つて違つて來るのだと私は飽くまで考へる譯です、其の點御答へが出來れば幸ひだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=51
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052・河合良成
○河合國務大臣 只今御示しの食糧營團の如きは、最も日常生活に缺くことの出來ない又公益的性質を持つたものであると云ふことに付ては御同感であります、併しながら食糧營團の仕事自體は本來是は配給的の仕事ではないのが本體なのです、是は時局の關係で食糧が足らぬから巳むを得ず配給をやつて居るのであつて、やはり元の米屋の方が日本の状態としては本來の性質だと思ひます、それであるから運輸、水道と云ふやうな事業とは違つて、本來自由であつたが故にここへは書かないのでありますが、直ちに第二項に於て必要のあつた時には書く、第二項に於ける問題は食糧營團の事業などを眞先に實は考へて居る、さう云ふ風に御考へ願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=52
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053・東隆
○東委員 一應それは其の程度にしまして、次に勞働爭議と爭議行爲、是の定義が六條と七條にありますが、爭議行爲と紛議行爲の判定は一體誰がやるのか、此の問題をはつきりしたいと思ふ譯であります、それと同時に意識的に「サボタージュ」をやつて居る、それから安全週間だとか或は先程あつた電車の業管のやうな、ああ云ふものを爭議行爲或は紛議行爲、さう云ふ風に判定するのは一體誰がやるのか、それを御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=53
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054・吉武惠市
○吉武政府委員 御質問の第六條に勞働爭議と云ふ定義を下しまして、第七條に更に爭議行爲の定義を下して居ります、勞働爭議と云ふのはここにありまするやうに當事者間で意見が一致しない、詰りそこの間に爭ひのあるものを言ふのでありますが、其の中には御話にありましたやうに次の七條のやうな爭議行爲に出る場合と爭議行爲に出ないで紛議で爭つて居る場合とがあるのであります、それは兩方の場合を含んで居る譯であります、爭議行爲の方は第七條にありますやうに、其の中で同盟罷業とか怠業とか或は作業所閉鎖と云ふやうな行爲に出でたものを爭議行爲と言つて居る譯であります、そこで御話のやうに、それはどう云ふ風に認定するかと云ふ問題は御尤もだと思ひます、それは客觀的に判斷せざるを得ぬのでありますけれども、本法ではそれぞれ爭議の起りました時には解決の方法としては勞働委員會で取扱ふことになりますから、結局は勞働委員會で判定することになるだたうと思ひます、詰り勞働委員會に、爭議が發生した時は調停なり、斡旋なり或は仲裁の行爲に出ると云ふことになりますから、是は紛議の状態である、或は爭議行爲に入つて居ると云うて取上げる時は、勞働委員會がそれを取上げる譯であります、それからもう一つの點は第五章に爭議行爲の制限がございます、是等に付きましても、それが違反であるかどうかと云ふことは直ちに官憲なり檢事局が發動するのではないのでありまして、やはり是にも其の違反した場合は勞働委員會の請求に依つて論ずることになつて居りますから、結局勞働委員會で判定して、是は爭議行爲であつたが、其の爭議行爲が之に該當して違反して居るとか、しないとか云ふことになる譯であります、勝手に官廳だけがそれを認定して處罰すると云ふことはない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=54
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055・東隆
○東委員 假にどうして「ストライキ」をしようかと云つて研究して居る勞働組合があつたとして、其の爭議が戰術として爭議行爲に觸れないやうに進めて行く所のものを判定することは是は調停委員會に掛けた後でなければ決まらぬ譯ですね、さうすると事實は勞働爭議行爲と云ふものは進んで行つて、然る後に爭議行爲をやつてしまつてから、それに對して判定をする、斯う云ふことにならうと思ひますが、それは勞働爭議を抑制すると云ふやうなことに付て、私は非常に何か缺陷があるやうに思ひますが、其の點は何か巧く「アジャスト」する點があるかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=55
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056・吉武惠市
○吉武政府委員 爭議團の方でどう云ふ爭議行爲に出ようか、色々作戰を練られ、考へられて居るものに付てどうしようと言つても是は仕方ありませぬし、又それをどうしようとも考へて居りませぬ、別にそれを抑制しようと云ふ考へはないのであります、唯茲に公益事業に付きまして爭議行爲を制限して居りますから、其の爭議行爲と云ふものはどう云ふものを言ふかと云ふことを一應定義して置きませぬと云ふと問題になりまするから、それで明かにして居ります、それで爭議行爲の制限を受けて居りますのは、本件では三十七條、三十八條である譯であります、どう云ふ戰術をやり、どう云ふことを考へると云ふことを一々探知して、それを抑制しようかどうしようかと云ふことは毛頭考へて居ない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=56
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057・東隆
○東委員 私は今の御答ヘの中にまだ釋然としないものがあるのでありますが、爭議行爲と云ふ事實が、或は紛議の形で進められたものが、後で以て爭議行爲に判定をされたり、或は紛議と認定されたり、さう云ふやうなことが後に殘つて來る、斯う云ふやうなことで大部難かしい問題が之にはあるのではないか、斯う云ふ點を考へる譯であります、其の次に私は教育關係の問題、教養の問題、さう云ふやうな問題を、是は文部省の方に關係のものでない點を御聽きしたい、斯う思ふのであります、それは勞働組合の方でも、或は協同組合の方でも、組合は學校だ、斯う云ふことをよく言ふのであります、所が勞働組合の方の學校は私はどつちかと言ふと、今は如何にして待遇を善くしようか、或は勞働條件を善くしようか、斯う云ふやうなことに付て此の學校は盛んに教育をするのぢやないか、斯う考へます、そこで私は教育をするのは勞働組合ではなくて、協同組合で、其の中で其の組合の構成員、それは勞働組合の構成員と同じものでありますから、それを協同組合を通して教育をし、教養を高めて行く、二宮尊徳の芋こじと云ふやうな、ああ云ふ形で以て教養を高めて行く、或は「ロッチデール」の原則の中から出て居ります教育、ああ云ふやうな形で以て私は勞働者の教育をし、教養を高めて行くことが必要だらう、斯う思ひますが、是が私は爭議をなくする意味に於ても、産業を再開すると云ふ意味に於ても必要だらうと思ひますが、さう云ふやうな協同組合に依る、協同組合を中心にして勞働者の教育を進めて行く、斯う云ふやうなことを積極的に厚生省は御採上げになる意思はないかどうか、それを御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=57
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058・河合良成
○河合國務大臣 勞働組合に致しましても、協同組合に致しましても、組合の團結に依つて御互ひの自省を促し、自覺を促すと云ふ點に付ては私も極めて同感であります、同感ではありますが、勞働問題を協同組合の名を冠せまして、さうして此の問題を解決して行くと云ふことに付きましては、私も實は今まで深く考へたこともありませぬが、此の協同組合の思想「コオペラティーヴ」と云ふものは大體物の生産とか、物の消費とか、物の貸借購買、販賣のやうな一種の物を中心に置いての「コオペラティーヴ」と云ふ思想ではないかと私は考へて居ります、勞働組合は物を中心に置いて居りませぬ、謂はば權利を中心に置いて居ります、さうして人格權なり勞働權なりの主張と云ふものを中心に置いて居りまして、どうも少し本質が變つて居はせぬかと思つて居ります、併しながら勞働組合に「コオペラティーヴ」の精神、「スピリット」を成べく入れて、友愛的にやつて行くと云ふ考へは勿論結構なことでありますが、組合本來の性質は違つて居るものと解釋しますが故に、直ちに之を其の上に冠せて行くと云ふことはどうかと云ふ風に考へます、併し是は私今此處で考へた考へで、實は其の問題を私の頭で考へて見たことは未だないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=58
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059・東隆
○東委員 私は協同組合を中心にして勞働者の教育を考へることが、生活を通して教育を高めて行く、斯う云ふ意味で非常に考へて行かなければならぬことではないかと考へるのであります、是は次の質問と關係を持ちますので、次の問題は、今の爭議の中心は生活問題が中心である、斯う云ふ御話なんであります、それで生活を中心考にへて見ました時に、私は形式的な賃金を以て生活が改善されるとは考へない譯であります、形式的な賃金の高で、別な言葉で言へば貨幣に依つて支拂はれた所の賃金、さう云ふやうなものに依つて私は生活は決して良くなりませぬし、待遇は改善されぬと思ふ私はどうしても生活の改善、待遇を良くする爲には物の裏打を考へなければならぬ、斯う云ふ考へ方を持つ譯であります、退職した後、或は失業した後に對する色々な方途を講ぜられて居りますが、現實の失業しない今現在の者が生活問題を中心にして色々「トラブル」を起して居る時に、形式的な賃金ではなく、實質的な賃金、之を考へる場合に、私はどうしても協同組合と云ふものを必要とすると考へます、是は前の教育の問題と同じやうに私は協同組合を通してやつて行かなければならぬ、斯う云ふことを考へる譯でありますが、それに付て願はくは厚生大臣は積極的に之を進めて行くのだと云ふ意圖を表明されたいと思ふのであります、先程厚生大臣はさう云ふ點に付ては今此處で考へたばかりである、此の程度でありますが、私は其の點に付ては非常に悲觀をした譯であります、私は勞働政策と云ふものは單に法律を出すだけでなくて、もつと大きな見地に立つて各般の問題に付て考へて行かなければならぬと思ふのですが、さう云ふやうな場合に協同組合を通して實質的な待遇改善をする、斯う云ふ部面に私は相當突込んで考へて行つても宜いぢやないかと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=59
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060・河合良成
○河合國務大臣 只今の私の言葉が足りなかつたかも知れませぬが、私は協同組合と勞働組合と云ふものは本質的に違つて居るのだと云ふことを主として説明しまして、さうだから勞働組合に置き換へるに協同組合でやつて行くと云ふことは困難なり、と申すのは勞働組合は一面協同的にやつて行かなければなりませぬけれども、巳むを得ざる場合には鬪爭的にやつて行くものだと思つて居ります、協同組合の如きは全く「フラターニテイ」を中心にやつて行くべきものでありまして、鬪爭的の分子を持つたものではない、本質に於て違つて居る、其の點を私ははつきり申上げる爲に、其の問題を二つ一緒に考へて、重ね合つて考へることは未だ考へたことがないと云ふことを申したのであります、併しながら協同組合の本當の「スピリット」である友愛精神、協同精神と云ふやうなものは、是は勞働組合たると何組合たるとを問はず、廣く世間一般にあるべきことであります、殊に此の勞働組合の問題が勞働政策と云ふ言葉を御用ひになれば勿論此のことは非常に重大な關係を持つて參るのでありまして、さう云ふ意味に於ては私は全然御同感であります、殊に經營協議會の如きものは大體此の勞資の間の共同的の施設と云ふものが一つの目標でありますから、さう云ふ意味に於て勞働政策と協同組合的の思想との間に非常に重大な關係があり、是は又或る程度に於て大いに奬勵して行かなければならぬものだと云ふことに付ては御同感であります、唯組合の性質が違つて居るから、それと之とを重ね合ふか或は置き換へるかと云ふ觀念に付て疑問を起したと云ふことが私の眞意であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=60
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061・東隆
○東委員 私は是からの社會を擔ふ所の大きな組織が三つあると斯う思ふのです、一つは協同組合それから勞働組合、もう一つは共濟保險組合此の三つが私は是からの社會を作り上げて行く所の基礎的な組織でないか、斯う考へて居りますが、是は擧げて厚生省に關係を持つて居る所のものでありまするが故に、此の三つを通して勞働政策、さう云ふやうなものに付て御考へを願ひたいのであります、此の點は先程御話がありましたやうに、私の質問に對して同感をされましたので此の點で打切ります
次に先程の方から御質問があつたのでありますが、教職員の爭議權を認めながら、官吏に爭議權を認めて居ない、斯う云ふ點で私は之に關聯をして現業の問題、現業者を除いて居る譯でありますが、私は普通の爭議其の他の關係で考へて見ました時に、一番初めに私が質問を致しました階級意識は鈍磨されて居るのだ、殊に官公吏、公共團體、さう云ふやうなものには階級意識はないのだ、斯う云ふやうな考へ方から言つて、現實の爭議として恐ろしいのは却つて現業方面に於ける所の爭議ぢやないか、さう云ふ風に考へまして、却つて是は爭議の抑制或は禁止、さう云ふやうな部面から見ると、現業から爭議權を剥奪してないと云ふことが却つてをかしいではないか、斯う云ふやうな氣がするのであります、それで一應階級意識或はさう云ふものが鈍磨されて居るのだと云ひながら、逆に今度は現業の部面に於ては爭議權を認めて居る譯です、さう云ふ點で私は何かぴちつとしないものがある譯です、之に付てどう云ふやうな御考へを御持ちか、此の點もう少し午前中の質問で私は解し兼ねる點があつたので御伺ひをする譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=61
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062・河合良成
○河合國務大臣 今の點は現業の爭議行爲が起きますれば、社會の被れる不利益は相當大きい、さうして又實質的に其の影響を金錢上と申しますか、物的上と申しますか計上出來るやうな影響を受けることのあることは私も御同感でありますけれども、併しながら假に國務に携はる官吏が爭議を起します場合には、是は物的のものは案外少いかも知れませぬ、併しながらそれが國務に關係するから國務の遂行を妨げるから、是は其の性質から言ひまして非常に公益に重大なる所に影響が及ぶ、さうすると是は現業の面に於ける被害が大きいと云ふ物的の問題とは自ら性質が違ふと云ふ意味を中心に問題を取扱つて行きたいのでありまして、さうだから官吏に罷業は禁止して行くと云ふ風に御考へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=62
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063・東隆
○東委員 私は官吏が公益性の度合が非常に強い、斯う云ふことは承知をする譯です、隨て公益性の度合の強いものと、それから公益性の度合の弱いものと峻別しなければならぬ、斯う云ふことは初めから言つて居る譯でありまするけれども、併し私は唯それだけでなくて、御答辯を通して見ますと、何か斯う云ふ面子のやうな──此の法律を拵へる時の面子を中心にして、此の法律を拵へた時に何か行掛けの駄賃に──是は言葉が惡いのですが、あの中に官吏或は公共團體に從事して居る者、さう云ふやうなものをあの中に入れたのではないか、斯う云ふ風な氣がしてならぬ譯であります、あそこの中から官吏竝に公共團體に從事して居る云々のあの文句を御取りになつた方が、私は今の情勢から言つても宜いのではないか、斯う云ふ氣持を持つ譯であります、是は私はさう云ふ考へを持つて居ると斯う云ふ程度に止めます
次に私は勞働爭議の調停委員或は其の他の委員會、色々なものが澤山出來るやうでありますが、此の中に「ニュートラル」な中立の立場に立つ人が澤山入る譯であります、併し私は此の中に入る人を互選をされる時に、私は中立と云ふものは是は最も選びづらいとか其の他の話が午前中にありましたが、私は此の場合に選ぶべきものは最も進歩的な人間を選ぶべきでないか、進歩的な人間と云ふのは、必ずしも左翼と云ふことではなくて、進歩的な考へを持つて居る者を中立の委員として選ぶべきでないか、斯う考へる譯であります、固定した人間を選んではいかぬのぢやないか、斯う考へます、さう云ふやうな意味で私は却つて共同組合關係、さう云ふやうな部面に居る者が私は此の中立の委員として、最も適當した性格を持つて居るのぢやないか、斯う云ふ考へを持ちますが、それに付ての如何やうな御考へを御持ちになるか御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=63
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064・河合良成
○河合國務大臣 是はやはり中立として公益擁護の立場にあると云ふことを中心念慮に置きますので、進歩的な人が大部分であり、共同組合などの思想の非常に豐富な人は又多く加はることは、是は物の自然だと思ひますけれども、或る目標を捉へて之をやると云ふことではありませぬ、やはり物の公正なる批判の出來る、さうして公益を代表するに足る人と云ふことが、お爺さんでも宜いこともありませうし、若い人でも宜いこともある、年齡に依りませず、まあさう云ふ觀點から選ぶべきものだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=64
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065・東隆
○東委員 私は一應以上で私の質問を終る譯でありますが、今まで御伺ひを致したことを綜合致して參りますると、御答へは區々でありまして、はつきりしたことを決める譯に參りませぬけれども、私は公共性の度合の強い所の仕事、而も利潤追求と云ふやうな仕事でない方面のことに携つて居る者、殊に官吏、公共關係の仕事に從事して居るやうな者、さう云ふ者は私は當然爭議行爲に出たり、或は「ゼネスト」をやつたりする、さう云ふやうなことは或る猛烈な刺戟がなければ理不盡な刺戟──是は言葉が言ひ過ぎかも知れませぬけれども、理不盡な刺戟がなければさう云ふやうなものは起きないのである、現在に於ける日本の状態と云ふものは、勿論爭議は頻々として起きて居りますけれども、是は敗戰後に於ける所の状態であつて、此の程度のものは當然だらう、斯う云ふやうな前提の下に私は官公吏其の他の爭議權の否認、斯う云ふやうなものは、是は空文に過ぎないものである、さう云ふものを入れたつて是は問題にならぬ、斯う云ふやうなことからそれを除いて欲しいと云ふことと、それから抑制方面に付て、公共的な方面に一つ中心を置いて「ケーンズ・ロー」的な形で以て徐々に入れて行く、さう云ふやうな形で以て此の法律の大部分を假に考へて見ますと、さう云ふものは別途に除けて、殘つた所のものは勞働組合法の施行規則のやうな形で以て現はせば十分に足りるのではないか、斯う云ふやうな感じを持つ譯であります、隨て此の法律其のものに付ては私は全體から考へて見まして、今早急に提案をしなくても宜いのではないか、斯う云ふやうな考へを持つて居る譯であります、之には御返答を戴かなくとも宜い譯でありますが、以上で私の大體の質問を終りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=65
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066・逢澤寛
○逢澤委員長 通告順に依りまして荒畑勝三君に發言を許しますが、此の際荒畑さんに一寸御諮り致します、厚生大臣は豫算總會に一寸十五分程時間を貸して呉れと云ふ要請があるのであります、それで政府委員に對する質問でしたら此の際直ぐ繼續して戴きたいと思ひます、其の内に厚生大臣が十五分か二十分したら直ぐ歸つて來られるさうですから、それからやつて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=66
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067・荒畑勝三
○荒畑委員 成べく早く御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=67
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068・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは荒畑君に質問を許します──荒畑君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=68
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069・荒畑勝三
○荒畑委員 質問に入ります前に一寸申上げて置きたいのは、私は昨日初めて此の委員會に出席しまして、今までの質疑應答に付きましては仄聞して居るだけで詳細に存じて居りませぬ、私の質問が多少重複する點がありまして委員會の諸君に冗漫な感を與へる點があらうかと存じますが、彼此關聯して居りますので、それを一々整理して行く譯にも參りませぬので、其の點豫め御諒承を願つて置きたいと思ひます
私は此の法案に關する質問の第一點と致しまして勞働爭議發生の原因に對する政府の御考へを伺ひたいと存じたのでありまするが、併し是はもう厚生大臣が爭議の主因は生活問題にあると云ふことを認められて居られまするから、其の點はもう申上げませぬ、爭議發生の原因が生活問題が一番多きをなして居る、本年の一月から三月までに三百六十二件の中生活不安と云ふのが二百九十一件で、壓倒的な多數を占めて居る、又隨て合計一千三百二件の中賃金増加の要求が三百八件で第一位にあると云ふやうな點を見ましても、爭議發生の原因が生活問題にあると云ふことは明白でありますし、又賃金の増加が一般的な賃金引上げに依るのではなくして、爭議をやつたものだけが資金引上げを得て居る、之に依つても爭議が必然であり、又爭議に依つてのみ勞働者が纔かに生活不安に追付くことが出來て居ると云ふ事實を擧げて爭議發生の原因に對する政府の御考へを伺ひたいと思つたのでありまするが、もう生活問題が主因であると云ふことを御認めになれば、それ以上に詳しく申上げる必要はないと存じます、是は厚生大臣に若し分らなかつたならば吉武さんが能く御説明になつて戴きたい、で私は此の法案は、色々ありまするが、眼目と云ふものは、是は公益事業に於ける爭議の制限、私から言はせるならば實際的禁止である、それと官公吏の爭議の絶對的な禁止、此の二つが眼目でありまして、他は要するに附け足しである、斯う私は考へるのであります、併し此の當面一番問題になつて居りまする主として公益事業、此の從業員と云ふものの生活條件は他の一般産業の勞働者に比べて惡くはあるが好くはない、例へば鐵道從業員と遞信從業員の如きは此の法律の制定に依りまして最も大きな影響を受ける勞働者でありますが、其の鐵道從業員の如きは六大都市の例に付てだけ申しましても、採用當事二十歳の獨身者の本俸が月額四十五圓、諸手當を加へて百八十五圓、それが二十五年を經まして當人が四十五歳になり、夫婦の外に子供が四人もあるやうな六人の家族になりましても本俸月額百二十五圓、諸手當を加へて七百三十二圓と云ふ合計が出て居るのであります、合計七百三十二圓に過ぎない、今日の暮しの上に一人當り一ヶ月百二十二圓で暮して行けるかどうかと云ふことは、是はもう申すまでもないのであります、遞信從業員の如きに致りましてはもつと惡い、最近の統計に依りまして、遞信從業員の平均給料と云ふものは四月五月頃に比して八十五%の増加を示して居るのでありますが、それでも尚ほ平均月額四百五十圓乃至五百圓に過ぎないのであります、斯う云ふ他の一般勞働者に比べまして一番待遇の惡い、少くとも宜くはない勞働者が公益事業の勞働者なるが故に、此の法案の成立に依りましてそれを、やらなければ賃金が殖えない、現在賃金が殖えて居るのは一般的の工場の賃金引上の結果に依るのでなくて、纔に爭議をやつた所だけが殖えて居る、是は厚生省勞政局の調査なんである、さう云ふ調査に依つても分りますやうに、爭議をやらなければ賃金が殖えないと云ふのが一般勞働者の状態でありますのに、斯う云ふ、一般勞働者の條件よりももつと惡い條件にある者は、單に公益事業に從事して居ると云ふだけに依つて其の賃金引上の最も有力な究極的な手段を制限されると云ふことは、私は是は不合理ではないかと考へるのであります、既に爭議の主因が生活問題にある、さうすれば此の生活問題と云ふ一番大きな原因が除かれなければ、隨て爭議と云ふものも根絶やしには出來ない、爭議を禁止する法律があると云ふことと爭議が發生すると云ふこととは別個の問題であります、隨て爭議と云ふものは現在の情勢の下に於ては是は巳むを得ない、良いとか惡いとか云ふ問題ではないのであります、巳むを得ない問題であります、此の問題が巳むを得ない限りは、是は業態とか業種とか云ふものを問はないのであります、公益事業であるとか或は官公吏であるとか云ひましても、爭議に出でざるを得ないやうな社會情勢に置かれて居ります限りは、之を唯一片の法律を以て禁止すると云ふことは、甚だ不公正なことではないかと私は存ずるのであります、例へば現に大村内務大臣が先頃本委員會で質問に答へた所として、私が新聞で承知した所に依りますと、大村内相は下級警察官の生活が一般の水準以下にあると認めて居られる、それで本俸増額の爲に豫算を計上して居られると云ふことでありますが、併し其の額は僅かに一千百萬圓に過ぎない、一人當り月額十圓内外に過ぎないと云ふことを此處で御答辯になつたやうに新聞で承知致して居りますが、斯う云ふ風に下級官吏であるとか或は官營事業の從業員と云ふ者は、一般の勞働者よりも條件が惡いばかりでなく、或は給料であるとか或は豫算であるとか云ふやうな關係から、一般の勞働者が爭議に依つて直ちに其の要求を實現し得ると云ふのとは非常に違つた状態にあるのであります、中々要求が貫徹出來ない、寧ろ非常に不利な條件にある、其の不利な條件にある者に更に不利な條件を課さうとするのが本法の根幹になつて居ると私は思ふ、斯う云ふ原因を除去しないで、單に法律に依る爭議の制限、禁止だけを以て臨むと云ふことは、是は單に爭議權の制限とか否認とか云ふものではなくして、寧ろ今日の状態に於ては是は生活權の否認に外ならないものと存ずるのであります、此の點に關する政府の御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=69
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070・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の荒畑委員の御質問の、爭議の原因が生活問題であると云ふことに付きましては同感でございまして、私共も左樣に存じて居ります、隨て只今官公吏及び官業に於ける待遇の状況を御指摘になりましたが、從前是等の從業員の待遇が必ずしも芳ばしくないと云ふ點に付きましては、私共も夙に感じて居る所であります、隨て政府と致しましても先般來是等に付きまして、從來の例から見るならば相當思ひ切つて待遇の改善をした譯でありまして、七月からそれを實施することになつたのであります、併し是とても決して非常に良いとは存ぜられませぬ、是で以て十分な生活が出來るかと云ふと、私共も左樣には存じませぬし、今後とも是等の待遇改善には不斷の努力なり援助をしなければならないとは存じて居ります、是等の官業及び官吏の待遇が從前他より、どちらかと云ふと低いにも拘らず、茲に又制限を受くるのは不合理ではないかと云ふ御言葉でありまして、私共も洵に氣の毒だと思つて居ります、併しながら是は前々からも申上げますし、又御承知のことと思ひますけれども、所謂公益事業、一般大衆の日常生活に直接至大の關係のある事業に於きましては、直ちに爭議に入ると云ふことは穩當でございませぬので、本法では三十七條に於きまして、公益事業に付きましては三十日間の猶餘を置く、其の内に出來得べくんば調停其の他に掛けて解決が望ましい、どうしても解決が出來ませぬければ、三十日經つて爭議行爲に入るのは巳むを得ぬ、其の點は禁止して居るのではありませぬ、併しながら三十日間の期間を置くと云ふことは、爭議の力に依ると云ふ點から見るならば、確かに氣の毒な事情であると思ひますけれども、さうかと云うて一方大衆の不便を考へますならば、是はどうも巳むを得ぬ所で、御忍びを戴きたいのであります、此の點に付ては何處の國に於きましても此の公益事業に付きましては、大體三十日位の餘裕を置いて居るのであります、「アメリカ」等に於ては、鐵道爭議に付ては特に三十日間の期間を置いて、調停に掛けて、而もそれで解決しなかつたならば、更に三十日の期間を置いて、初めて爭議に入る、最長の場合は六十日を置くと云ふやうなのもあるのであります、又アメリカの各州の状況は私詳細には存じませぬけれども、州に依つて違ふが、大體三十日或は三十日以上の餘裕を置いて居るものが多いと云ふやうに聞いて居るのでありまして、此の點は御話のやうに洵に氣の毒な事情にありますが、公益の爲に一つ御諒承を戴きたいと思ひます
尚ほ官吏に付きましても待遇が必ずしも良くございませぬ、是は皆さんに一つ御同情を戴きたいと思ふのでありますが、是も先般現業と一緒に相當の改善を致しました、今後とも又之に付ては努力を致さなければならないと存じて居ります、是等の官吏に付きましての爭議行爲の制限を致しましたは、是れ亦厚生大臣が屡屡申して居りますやうに、國務の遂行は一日も之に支障があつては洵に相濟みませぬので、已むを得ず斯う云ふ制限を置いたのであります、併しながら是等官業或は公益事業なり或は又一般の官公吏に付きまする待遇改善は、爭議の手段に出でないでも、何等かの努力なり方法なり或は皆さんの御同情に依つて解決の途があるのではなからうか、最後に爭議權と云ふものの發動に依ると云ふことは確かに強い主張でありますけれども、一方他面斯う云ふ公共事業を考へますならば、其の點の御辛抱を願ひまして、他の方法を以て何等か合理的に是が改善されることを偏に希望する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=70
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071・荒畑勝三
○荒畑委員 只今吉武政府委員の御答辯に付きましては、尚ほ後程私は言及致したいと存じますが、質問を進めまして第二に御質し致したいことは、罷業權を含めた勞働爭議權と云ふものに對する政府の御所見を伺ひたいと思ひます、爭議權と云ふものは勞働組合法に依つて確認されました勞働組合の基本的なる權利であります、勞働組合は資本主義制度の下では必然的に作らざるを得ない勞働者の自衞的組織であります、さうして其の爭議權は勞働者が要求を貫徹する上に最も有效且つ究極的な手段なのであります、資本主義制度の下に於きましては、勞働力は一個の商品として扱はれて居る、是は異論のあるなしに拘らず嚴然たる事實であります、隨て其の商品の價格でありまする賃金と云ふものは他の一切の商品と同一の法則に支配せられて居る、さうして公私の雇主との間に斯かる性質の代金の給付に對して取引されて居るのであります、今日の毎日新聞の記事に依りますと、平山運輸次官は新聞記者の問に對しまして、戰爭中二十七萬圓で出來た電氣機關車が今日では四百五十萬圓掛かる、石炭は「トン」二十一圓が百五十圓もする、「レール」は十九倍になつて居るし、枕木は十八倍になつて居る、「セメント」は十四倍になつて居る、隨てどうしても運賃を上げざるを得ないと云ふことを言つて居ります、さうして運賃の値上は物價に影響し、私生活を脅かすことになりはせぬかと云ふ質問に對しまして、それは逆だ物價が暴騰するので運賃を上げざるを得なくなつたのだと、斯う答へて居りますが、此のやうに物は生産が足りなくなれば高くなる、高いものでも無い物は高い値を出して買はなくてはならないし、厭なら買はないまでの話、是が今日資本主義制度の下に於て行はれて居る平等なる自由なる民主主義的なる取引であります、さうして勞働組合法が確認して居ります爭議權とか罷業權とか云ふものは早く申せば勞働者が其の勞働力をより高く賣る爲に、或は値段が折合はなければ賣りたくない、賣らないと云ふ權利の確認に外ならないのであります、公益事業の勞働者や官公吏に對しましても今日組合が認められて居る、隨て團結權や團體交渉權が認められて居る、是は認められて居りますね──さうすると是は即ち公益事業の勞働者や官公吏が其の勞働力を商品として賣る上に成べく有利に取引する權利を認めたことに外ならないと私は思ふ、それならば獨り其の商品の價格取引に關する爭議權を制限する或は禁止すると云ふことは不公正であるばかりでなく不合理であると私は考へるのであります、資本主義制度の下では必然的に勞働權と爭議權とは不可分の關係にあると私は考へる、隨て勞働者から爭議の權利を制限する又は剥奪すると云ふのは即ち勞働の權利をも否定する結果とならざるを得ないと考へるのであります、是は矛盾に違ひない、確かに矛盾であります、併し此の矛盾は資本主義に固有の矛盾でありまして、斯う云ふ矛盾を解決しようとすれば、是は資本主義制度を根本的に改めるより外にない、資本主義制度を認めて居る限りは斯う云ふ制度は已むを得ない矛盾である、私共は多少の不便、多少の不都合が生じましてもそれは辛抱するより仕方がない、厭なものは其の根本原因を除くことに努力するより外はないのであります、其の不可分的な關係にある勞働爭議の權利を制限禁止すると云ふのは、結果に於て勞働組合を彈壓するものだと、斯う言はなければならないと私は考へる、さうして是が今日此の法案に對して勞働者が一齊に反對して居る根據であります、此の點に關して政府當局は如何なる御見解を執られるか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=71
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072・吉武惠市
○吉武政府委員 只今荒畑委員の仰せられました組合に於ける爭議權、是は今日の制度に於ては基本權であり、現在の制度に於て不可分なものであると云ふ御説に付きましては私共も同感でございます、勿論左樣に考へて居ります、隨て正當なる爭議權の發動に付きましては、政府は之を抑壓しようと云ふ考へは毛頭ございませぬ、唯本法に於きまして制限を加へて居りますのは、御承知のやうに公益事業と官公吏だけでありまして、其の他の一般に付きましては當然勞働組合を認める以上、組合の持つ爭議權の發動、是等に付きましては當然な權利の行使と私共は存じ、之を制限しないやうに存じて居る譯であります、又公益事業に付きましても制限とは申しますが、實は三十日間の豫告を與へて、出來得べくば其の間に解決をすればと云ふことと、一般の大衆に其の間に用意をして迷惑の少くなるやうにと云ふ趣旨でございます、三十日間の豫告を置くことは、爭議の發動に於ては確かに一つの痛手ではあらうと思ひますけれども、決して爭議權を剥奪したのではございませぬで、三十日間經てば自分達の正當なる主張が若し容れられなければ爭議の發動に入ることは正當視されて居るのであります、又組合と致しましても、爭議が目的ではなからうと私は思ひます、正當なる主張が容れられれば宜いのでありまして、爭議は出來得べくばなくして解決すると云ふことは恐らく荒畑委員も御諒承になつて居ることと思ふのであります、三十日間の豫告を與へることが爭議の發動に確かに一つの痛手であると云ふ點は御同情申上げたいのでありますけれども、併し之を以て今仰せられました正當なる爭議權の發動を押へると云ふ趣旨ではございませぬので御諒承を戴きたいと思ひます、唯官吏──官吏に付きましても現業は除いて居りまして、現業は一般の會社其の他に於ける公益事業と同樣に取扱つて居ります、唯所謂國政事務を掌りまする官吏其の他の者に付きましては、是は所謂國務の遂行と云ふ非常に重要な性質を持つて居りますので、此の點に付ては洵に氣の毒でありますけれども、爭議行爲に出づることを制限したのでございます、之に付きましては政府と致しましても制限致しまする限りは、是等の待遇改善に付て不斷の努力を拂ひ、注意を拂はなければならないと云ふ責任を感じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=72
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073・荒畑勝三
○荒畑委員 只今の吉武政府委員の御答辯で、此の法律の眼目が私の申しました通りに、一般の産業に對する問題は、是は附けたりであつて、公益事業、官公吏の爭議權と云ふものを狙つて居ると云ふことが明白になつたのであります、そこで私は更に公益事業と其の爭議に關する政府の御所見を伺ひたい、私の見まする所では、本法に規定されて居りまする公益事業と云ふものの性質が甚だ瞹昧で且つ不合理であると存ずるのであります、例へば運輸、電氣又は「ガス」醫療と云ふものが加はつて居りますが、是は成程皆公衆の用に供する事業に違ひない、隨て明白に公益事業の性質を帶びて居るものであります、併しながら是等の事業の中には其の性質は公益事業であるが、私的に經營されて居るものが又決して少くないのであります、言葉を換へて申しますれば、公益の性質を有する事業が利潤追求を目的とする私營に委ねられて居る、是は私は非常な矛盾であらうと考へるのであります、政府は動もすれば公益事業の爭議に依つて公衆が非常な迷惑を蒙ると云ふことを口實にせられて居りまするが、併し公益事業に偶に起る爭議に依つて公衆が迷惑するよりも、社會公衆は、斯う云ふ利潤追求を目的として私的に經營せられて居りまする所謂公益事業の爲に、常住不斷に損害と迷惑を蒙つて居るのであります、斯う云ふ事業の勞働者の爭議權をも、單に事業の公益性と云ふ爲に制限するのは不當ではないか、不合理ではないか、初期資本主義の自由放任主義經濟が認められて居りました時代には、成程所謂公益事業も他の企業から截然と區別すると云ふ理由はあつたに違ひない、併し今日では一般企業の公益性と云ふものが認められて居ります、最早純然たる利潤追求の對象とすることを許されて居らないのであります、隨て所謂公益事業の特殊性と云ふものはそれだけ減つて居る譯でありますから、企業の公益性と云ふことを根據として從業員の爭議權を制限する理由は存し得ないと私は考へる、今日如何なる企業と雖も、社會公衆の日常生活に深甚な關係、影響を持たないものはない、例へば炭坑の「ストライキ」が若し全國的に全産業的に廢汎に起りましたならば、鐵道も「ガス」も是が爲に停止、痳痺せられるに違ひありませぬ、左樣に現代の複雜錯綜した産業制度と云ふものは、企業の私利と公益とを殆ど區別することが出來ない程に密接な關係を持つて入り組んで居ります、何時も截然と是は私利事業である是は公益事業であると區別することは出來ないと私は思ふ、さう云ふ點で公益事業と云ふものの定義が非常に瞹昧ではないかと考へるのであります、又政府委員は頻りに公衆の生活に迷惑を及ぼす公益事業の勞働爭議と云ふことを制限の大きな理由とされて居りますが、斯樣に如何なる事業も公益、私利と云ふことを截然と區別し得ない今日に於きましては、どの産業の勞働雖爭議とも、直接間接に多少の迷惑を社會公衆に及ぼさないで行はれると云ふものは私はないと思ふ、就中交通事業の如きは特にさうであると云ふことは、もう明白な事實であります、何人も之を認むるに吝かではありませぬ、此の社會公衆に迷惑を及ぼすと云ふ事實が、無辜の局外者に傍杖を食はすものである、斯う云ふ非難の起る所以でありまして、又本法制定の要求が起つた本當の理由であると考へるのであります、併しながら資本主義社會に生活する者は、資本主義經濟に固有な勞働爭議に對して決して局外者ではあり得ないと思ふ、第三者と云ふものではあり得ないと思ふのであります、例へば官公營の所謂公益事業にありましては、是は實は其の雇主と云ふものは市民或は國民である、隨て斯う云ふ公益事業に起つた爭議は、國民自身が自分に向けられた爭議なのであります、其の爲に迷惑をする、不都合を感ずる不便を感ずると致しましても、それは決して局外の第三者が爭議の傍杖を食つたと云ふことではないのであります、國民或は都民自身が直接の關係者なしである、自分の使つて居る使用人が爭議をして居る、例へば電車や鐵道は公衆の謂はば足であります、而も公衆と云ふものは、一般的には平生に於て自分の足である勞働者の生活とか福祉とか云ふことに付て考へて居る人は殆どないのであります、其の足が運轉を止めました時に、さうして自分が足を取られて不都合、不便、不自由を感じたと云ふ時に、僅かに初めて勞働者のことに考へを及ぼす、而もそれも正當な待遇とか其の要求の正否に付て考へると云ふ人は殆どなくて、自分が旅行に不自由であると云ふ所から、直ちに之を非難攻撃すると云ふのが世間一般の事情であります、でありますから、鐵道、遞信兩從業員の最近の過去に行はれた爭議の如きも、先程私の擧げました生活條件が、一般の産業勞働者に比して頗る惡いにも拘らず、隨て其の待遇改善の要求と云ふものは、社會の一般常識からして極めて正當であるにも拘らず、部分的な要求の貫徹を見るにさへも數箇月を要した、殊に社會は一般にさう云ふことに對して餘り關心を拂つて居らぬ、是が公益事業の勞働者の置かして居る状態であります、例へば鐵道に致しましても、政府は企業整理に基く大量失業の出鼻に先づ鐵道從業員の解雇をやらうとして居る、是が公營、私營とを問はず雇主と勞働者との今日の状態であります、公益事業だからと云つて特別な保護を受けて居らない、非常な責任を背負ひ非常な制限を受けて居るにも拘らず、何等の保護も受けて居りませぬ、鐵道と云ふものは恐らく公益事業中の大宗でありませうが、其の從業員は任務、職責の重大に反比例して不安定極まる生活を送つて居る、最近鐵道當局の言明に依りましても、鐵道從業員の勤務時間は十二時間にも及んで居る、或は「ワン・ストレッス」二十四時間にも及ぶことがある、それから年少勞働者の深夜業であるとか危險作業を禁止するとか云ふことが非常に困難である、連結作業のやうな危險な仕事は主として體の柔軟な年少勞働者の仕事であるから、他の工場勞働者に於きましては年少勞働者の就業を禁止すると云ふやうな法案が近く考へられて居りまするにも拘らず、鐵道では之を其の中に入れることに反對の態度を明白に表明して居る、斯う云ふ状態なのであります、而も一年に六百人を超える多數の職員が鐵道事故の爲に死亡して居る、其の原因の如きも、作業の危險に拘らず、安全施設が十分に存して居ない、それが一年六百人を超える職員の死亡の原因であると云ふことを鐵道當局が表明せられて居る、是は吉武さんも御承知の筈であります、斯樣に國家の經營に係る六十萬の大衆を擁して居りまする國鐵從業員にして、尚ほ且つ斯くの如きであります、況んや私營に委ねられて居りまする場合に於ては、是は想像に餘りあるものがある、單に公益の名に依つて是等の從業員の爭議權──其の爭議權と云ふものは、鐵道、全遞の場合に於けると同樣に、是なくしては僅かな其の正當な要求の部分的な貫徹すらも期することが出來ないと云ふやうな、有效にして究極的な手段、是が單に公益の名に依つて制限せられると云ふことは、實際の問題から申しまして、單に抽象的にそれが國家の利益であるとか、社會の利益であるとか云ふやうな抽象的な言葉だけで之を實際上に於て禁止する──此の三十日間の期限と云ふことに付ては私は後に申しますが、私は是は實際上の禁止だと考へて居るのでありますが、實際上に禁止すると云ふことは甚だ不合理であると存ずるのでありますが、此の點に關する御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=73
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074・吉武惠市
○吉武政府委員 荒畑さんの今の御質問の中の第一點は、本法で公益事業等を取扱つて居る第八條を見ると、是が國家公共の企業として行はれるもののみならず、一般の營利を目的とする私營事業にも同樣に取扱はれて居ることはいかぬではないかと云ふ御趣旨のやうに存じます、御尤もの點もあるのでございますが、實は此の法律は度々申しまするやうに、誰を援護し、誰に味方する譯ではないのでありまして、專ら一般の企業に付きまして、爭議權を確認し、其の場合の調停のことを考へて居るだけでありまして、唯一般の公衆に直接關係の深いものに若干の制限を加へる、そこで一般の公衆の日常生活に直接響いて來るものを最小限度此の八條に列記を致しまして、之に付きましては、三十日間の餘裕を與へる、汽車で旅行をして居つた所が、だし拔けに途中で下されて、往くも歸るもならないと云ふ風なことがあつてもならないと云ふことで、是は置いて居るのであります、さう云ふ性質の下に置いた規定でございまするから、其の汽車が、國が經營致しましても、或は民間のものが經營致しましても、さう云ふ趣旨から行けば同樣でございますので、是は同じやうに取扱つて居るのであります、唯斯う云ふ公益事業を私營に任した場合に、其の私營を營利の儘に任すべきではないと云ふ趣旨でありますならば、是は私も亦考へなければならぬ所があると考へまするが、それは又別個の觀點から監督なり又補整を致すべきものではなからうかと存ずる次第であります、尚ほ公益事業に付ては只今御話がありましたやうに、鐵道に致しましても、其の他に致しましても、爭議が起ると一般の大衆が常に迷惑だと云ふやうなことばかり言つて、それに對して大衆が如何なる責任があるかと云ふことが分らないと云ふことは、是は御尤もな點でございます、普通さう云ふ風に取られ勝ちでありますが、一般大衆も亦是等の公益事業に付ては平素からそれ等の從業員が如何に苦勞し、如何なる條件であると云ふことに對する深甚なる同情と關心を拂はれなけなばならないと云ふことは御話の通りだと存じます、又往々國鐵其の他が、一般の企業に比べて勞働保護の點に特別の扱ひをして居ると云ふやうな點を御指摘になつたやうでございますが、我々は從來は兎も角と致しまして、今後はそれが國家の經營であらうと、民間の經營であらうと、必要なものは同樣に取扱つて行きたい考へで居ります、隨ひまして本法でも三十八條に官公吏に對する爭議行爲の制限をして居りまするが、此の點から現業を除きました所以も、是は國が經營して居るからと云ふことで、官吏の制限と一緒にして、之を制限すると云ふことは趣旨に反する、是は國家が經營しようと、民間が經營しようと、其の性質に於ては同樣でございますから、現業に付きましては三十八條から外して、それが公益事業に該發する場合は一般の民間が鐵道を經營して居るのと同樣に、三十七條で取扱ふことにして居るのであります、今後又新しく立法を企圖して居ります勞働保護法でありますか、基準法等に於きましても勿論國鐵其の他に於ける勞働條件は、一般に支持致しますると同樣に取扱はなければならないと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=74
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075・荒畑勝三
○荒畑委員 政府委員は爭議行爲の制限が三十日であつて、是は爭議を禁止するものではない、唯世間に、公衆に迷惑を及ぼさない爲に豫告期間を置かせるのだ、拔打爭議をやらせない爲めだ、米國の如きは鐵道に關しては六十日もあるが、日本は僅に三十日だ、斯う云ふやうな屡屡御説明でありまするが、一體「アメリカ」と日本と私は同一に取扱ふことは出來ない、「アメリカ」ばかりではない、西洋の諸外國と日本と、私は同一に扱へない、外國の勞働者は強大なる勞働組合を持つて居る、或は強大な勞働者の政黨を其の背後に持つて居る、さうして勞働組合と資本家との間の協議機關も十分に備はつて居る、今日本に三十日の期間を置くと云ふことは大した論議もなく、勞働者側に取つて不利でもないと言はれるが、併しながら日本のやうな昨日、今日雨後の筍のやうに出來ました唯形だけは具はつて、其の内容の未だ全く具はつて居りませぬ勞働組合の初歩的な發展段階にあります勞働組合の場合、假令三十日に致せ、斯う云ふ期間を設けると云ふことは、「アメリカ」は斯うである、諸外國も斯うである、「アメリカ」は六十日であると云ふやうな一般論を以てしては、私は律することは出來ないと思ふ、此の規定に依りますと公益事業に關する事件又は其の性質若くは規模に依り、公益を著しく障害する事件は、三十日を經なければ爭議行爲をなし得ない、斯う云ふことがあるのですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=75
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076・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の三十日の豫告期間を要求致しまするのは公益事業でございまするから、其の公益事業の範圍は第八條に指定して居るものだけでございます、ですから今御話になりましたのは公益事業の以外に、性質又は規模等をも含めておいでになりますけれども、それは此の中に入つて居りませぬ、八條の公益事業だけに付て三十日の制限を設けて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=76
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077・荒畑勝三
○荒畑委員 一年間の規定に服せしめる事業でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=77
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078・吉武惠市
○吉武政府委員 もう一度申上げます、三十七條に於きまして、公益事業に付ては調停に掛けてから三十日經たなければ爭議行爲、詰り「ストライキ」とかさう云ふやうな行爲に出てはいけない、斯う云ふやうに要求して居ります、さうしますと、重大な制限になりますから、偖て公益事業とはどう云ふものかと云ふことを限定しなければなりませぬので、第八條を以ちまして此の法律で公益事業と云ふのは次の運輸事業、郵便、電信、電話、水道、電氣、瓦斯、醫療、公衆衞生、此の四つに限定をして居るのであります、併しながら此の四つだけで今後の状況に是れで宜いか、時代の推移に伴つて是れ以外のもので、是と同等以上のものが出て來やしないか、さう云ふ點を豫想しまして、第二項で若しさう云ふものが起つた時には、勞働委員會に掛けて、一年を限つて、詰り一應豫想されない時局的な、例へば食糧配給等に付きましては、先般來御話がございましたが、今日の時局に於きましては最も重要なことであらうとは思ひます、併しながら是はいつまでもとは考へられない、時局的なものでありますから、若しさう云ふものが此處に列記して居る以上の重要性を持つと云ふことでありますならば、勞働委員會に掛けまして、一年間を限つて指定をすると云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=78
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079・荒畑勝三
○荒畑委員 いや分つて居ります、私の申しますのは後の一年間を限つて斯う云ふ規定に嵌め得るかと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=79
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080・吉武惠市
○吉武政府委員 左樣な必要があれば考へられるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=80
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081・逢澤寛
○逢澤委員長 荒畑君に一寸御諮り致します、實は今日四時過ぎから經濟閣僚會議があるさうです、そこで今色々委員長の所で取り運びをしまして、運輸大臣と大藏大臣とに松岡君の質問がありますので、此の際大變御迷惑でせうけれども、之を御許し願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=81
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082・荒畑勝三
○荒畑委員 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=82
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083・逢澤寛
○逢澤委員長 それでは通告の順序を變更致しまして、松岡駒吉君の發言を許します──松岡君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=83
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084・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 私は餘り多くの前提を置かないで短刀直入に運輸大臣に明確な御答辯を御願ひしたい一つの事柄があるのであります、鐵道では今日のどの新聞でしたかを見ましたが、私共は乘車券を買ひに行きましても二つの窓口があるのに拘らず一箇所しか窓口を開いて居ない、斯う云ふやうな状態でありまして、大變な列をなして一般鐵道利用者は隨分迷惑を感じて居るのであります、然るに鐵道當局は冗員があるとして人員整理を企圖されて居るのであります、鐵道從業員諸君は其の當局の整理に對して絶對に反對だと云ふので、私は昨日登院して居りましたので其の吹鳴を耳にすることが出來ませぬでしたけれども、全國一齊に汽笛を鳴らすと云ふやうな方法を執つたかのやうに新聞は報道して居ります、或は此の問題の扱ひ方如何に依りましては、國鐵の全員が或は總罷業に愬へると云ふやうなこともなきを保せずと私は非常な心配をして見て居る譯であります、一體先にも申上げました通り、窓口が幾つかあつて一つしか開かないで出札が行はれて居る、斯う云ふ状態にあつて、さうして人を整理しなければならぬ、何が故に一體冗員があるならばそれを其の方面に廻さないか、是は單なる一つの例にしか過ぎないのであります、或は保線の方に女の子を廻す譯にも行き兼ねるでございませう、どう云ふ方面に一體冗員があつて、どう云ふ方に人を轉換すると云ふことが出來るのであるか、さう云ふことを計畫し、考へて居られたのであるか、さう云ふ人の置換へを考へたけれども、それが不可能であるが故に餘儀なく整理を斷行しなければならないやうなことになつたのであるか、今日鐵道で發表して居られますやうな人の整理を行ふに至るまでに、鐵道當局はどう云ふ點を研究し、考慮されたか、或は鐵道と組合との間にどう云ふ交渉が行はれて居るか、此の際明瞭に御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=84
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085・平塚常次郎
○平塚國務大臣 鐵道從業員は戰時中非常に殖えて居ります、御承知の通り輸送力は戰災の爲に反對に減つて居るのであります、色々復舊のことを急いで居りましても、資材の關係其の他で中々復舊が捗が行きませぬ、一方殖えた人だけでなく外地の復員、又歸還者が入つて參りますると、運輸省としては是は一應全部收容をしなければならぬのであります、隨て現在でも多いのでありますが、六月頃は、五十二萬餘であつたのでありますが、現在既に五十五萬になつて居る、是が更に年末までもう六萬人位殖えるだらうと思ひます、さうしますと六十一萬の職員になるのであります、鐵道の經營から見ましてどれだけの人があつたら宜いか、所謂鐵道には輸送力に伴うた定員がございます、其の定員で動かせるのでありまして、定員を決めまするとそこでどうしても十二分に近い人が餘る譯であります、併しながらそれだけ餘るからと言つて、將來どんどん鐵道の復舊も行はれるのでありまして、急激にそれを減らすと云ふ譯にも勿論いかぬのでありまして、順序と致しましては、先づ大體七萬五千程度を減らして、後は暫く保有して置く、斯う云ふやうな觀點から先般來色々協議を致しまして、今回整理すると云ふことに方針が決まりまして、從業員組合にも豫め話合をして居る次第であります、尤も先般待遇改善問題で爭議が起りました時に、組合の代表者が大勢私と會見をして居る時にも、出來るだけ諸君の要求を容れるやうに自分は努めるけれども、併しながら鐵道從業員の多いと云ふことは、是は今日一般の輿論でもあるし、私と致しましては、鐵道の經營と云ふものはもつと民主的に合理的に之を經營しなければならぬ、それに着手すると、隨て茲で餘る人の整理も必要である、斯う云ふことを申しまして、其の位のことは認識して居る、唯それは別に條件でも何でもありませぬが、將來さう云ふ考へを持つて居るからと云ふことを豫告して今日に至つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=85
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086・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 十數萬の人を整理しなければならぬ、取敢ず七萬數千の人を整理しなければならぬ、斯う云ふことに大體伺ひましたが、それ程の冗員があるならば、一體鐵道の方は只今も申上げた通りに、何が故に一體構内を汚くし、輸送力の有無に拘らず鐵道利用者が切符を求めるのに、殊に窓口で時間を潰すことを放任して、窓口を御開けにならないで僅かな窓口で出札をやつていらつしやるのであるか、さう云ふ事實を見るに付けましても、どうも人の轉換を行ふことに付ては眞面目に考慮されることなくして、人が餘る餘るで、國民は實は迷惑して居る、さう云ふ事實から見ても、何か方法を以てすれば、他に置換へることに依りまして整理をしなくても濟むやうな部分があるのではないかと私共は疑惑を持たざるを得ないのであります、今日まで鐵道當局は急速に七萬五千名のものを整理しなければならない現状に於て、さう云ふものの中で、どうしても出札をやることの出來る適應者がなかつた譯ですか、さう云ふことを御考へになつたことはないのですか、之を明瞭にして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=86
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087・平塚常次郎
○平塚國務大臣 只今の窓口に二人も居らないで、人が餘るならばもつと窓口を開けてはどうか、是は一應御尤もな御説でありますが、此の切符も自由に販賣も出來ませぬ、やはり今日でもまだ相當制限をして居ります、東京都であるとか云ふ繁華な土地に於ては人はそれ程餘つて居るとも存じませぬけれども、全體的に見ますると、只今申上げましたやうに、定員を超過すること十萬人以上だと云ふことを申上げて居る、是は窓口が不足だ、或は改札口がいかぬと云ふことは始終國民全體からも要求されて居るのでありますから、之に對しましては成べく大衆の迷惑にならぬやうにせなければならぬと云ふことは注意をして居ります、又注意したばかりでなく是は近い中に實行させようと思つて居ります、唯局部的にさう云ふ點はありまするけれども、國有鐵道全體としては先程申上げましたやうに、どうしても過剩人員があるのであります、是は常識的に御考へになつても御分りになることでありまして、四十七、八萬の從業員が居れば現在の鐵道の輸送には何等支障がないのでありまして、方々の驛に遊んで居る鐵道從業員が多勢居るぢやないかと云ふことをよく言はれて居りますが、是は一般に國民の輿論としてさう叫ばれて居るのでありまして、どの角度から見ましても民主的に合理的に經營する場合に、さう云ふものを何時までも繼續して置くと云ふことは私は正しくないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=87
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088・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 私は是れで質問は止します、唯此の際特に御考へを願つて置きたいことを最後に強く申上げて置きたいのであります、先程來申上げて居りますやうな點を十分御考慮なさることなくしては、國民全體をして從業員の整理に對して納得をせしめるものを缺くことになるのでありませう況や鐵道從業員それ自體は──當局が今日まで國民から斯うした不滿を持たれ、又人が餘つて居る、餘つて居ると言ひつつ、それを何等鐵道業務の上に改善をするが如きことなくしてやつて居ると云ふことは、是は何から來て居るか、或は鐵道從業員は怠け者であると云ふやうな工合に、鐵道從業員の勞働組合員の如きも、鐵道從業員を怠け者にしてしまひまして、さうして綺麗にする所も綺麗にせずして、鐵道を利用するものに迷惑が掛からうが一向平氣だと云ふやうなことで、勞働運動が起つて來てから鐵道從業員の態度が一段と惡くなつたやうな感じを與へる爲の、寧ろ其處に卑劣な物の考へ方が、政策的なものが鐵道當局にあるのではないかとすら思ふものがある譯であります、是は少し皮肉な物の考へ方になるのでありますけれども、さう考へざるを得ないやうな──先程來私の質問して居る事實に付て十分鐵道當局は反省されまして、今後どうしても人を整理しなければならない場合に於きましても、從業員は固よりのこと、國民を十分納得せしめるに足るだけの方法を以てして戴きたいと云ふことを強く警告申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=88
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089・逢澤寛
○逢澤委員長 司法大臣が見えて居りますから、あなたの質問を引續いて願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=89
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090・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 私は全體を通じて質問し、其の時に司法大臣或は内務大臣からも聽きたいと思つて居りましたが、折角見えて居りまして、他に又御出席にならなければならぬ委員會等もあらうかと思ひますから、切離して、是亦極めて簡單に御聽きしたいのであります、現内閣は生産管理を全面的に否定して居られるのでありますが、幾ら否定されましても、生産管理は續々としてあちこちに行はれて居ります、而も生産管理に類する業務管理が東京都の從業員職員に依つて行はれました、當局は是は彼等の宣言だけであつて、業務管理の實が伴はないから是は放擲して置くと云ふ趣旨の回答をされました、此の勞調法の問題に關聯しまして炭坑や勞協の諸君が業務管理をすると宣言して居ります、果して之をやるかどうか、まださうはなつて居ないやうであります、斯う云ふ各工場に行はれて居ることは固よりのこと、斯う云ふ調子であつて一體宜いのであるかどうか、餘り無理をなさると、自信のないことをおやりになつて居られる爲に斯う云ふ結果になつて居るのではなからうか、甚だ變なことを申上げるやうでありますけれども、現内閣の威信程度ならば是は忍ぶべきでございませうが、斯う云ふ調子でやつて一體國家の權利をどうするのであるか、生産管理は非合法だと云ふけれども、其の生産管理が續々と各地に行はれて居る、東京都の職員從業員が業務管理を斷行する、それは業務管理ではないと云ふやうなことを言うて、全面的に否定して居る、是が業務管理ではないと言うて居る議論は外にもありますけれども、私は司法大臣には多くのことを申上げませぬが、斯う云ふことで一體國民の遵法精神と云ふものはどうなるのでせうか、是で宜いのでございませうか、是はもう少し考へ直される必要があるのではないか、業務管理を宣言しても、業務管理の實が伴はないから放任してあるのだと云ふことを仰しやる、だから私共はやはり生産管理と云ふものに一定限界を設けて之を認むべきではないかと云ふことであります、頭ごなしに否定して、實が伴はないから是は業務管理ぢやないと言はれる、是は耳を掩うて鈴を盜むと云ふ言葉がありますが、業務管理ぢやないと云ふやうなことを言つて、うつちやつて置かれることは──うつちやつて置かれるのが惡いと云ふのではない、又それを檢擧せよと云ふのでもない、元來無理なことを聲明なさつて居られる、是は失禮ながら自信がおありでない爲に斯う云ふ結果になるのではないか、私が此の機會に一つ申上げたいと思ふことは、法律の解釋は時代と共に發展的に解釋されて行くべきではなからうか、斯樣に考へるのであります、斯う云ふやうに固定的に法律の解釋などが行はれて居て飽くまで金城鐵壁で、勞働者が頭をくつ付けたやうな氣持であることが、私は多くは申上げませぬが、無血的な革命として無産階級の運動が進んで行くかどうか、或は暴力的な革命に是がなるか否かと云ふことは、斯う云ふ所に私は重大なものがあるのではないか、斯樣に考へるのであります、餘り多く時間を使ふことは同僚諸君にお氣の毒でありますから、それに付ての司法大臣の明確な御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=90
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091・木村篤太郎
○木村國務大臣 東京都の業務管理に付ては、私より内務大臣から御答へするのが本筋であるかと思ひますが、私に對する御質問でありますから御答へ致します、私は勞働組合の健全なる發達を衷心より冀うて居ります、此の勞働組合の健全なる發達なくして日本の再建はどうしても出來ませぬ、政府と致しましても私は何處までも勞働組合と云ふものの意思を尊重して、さうして國家再建に大いに努力して貰ひたい、又資本家も是までのやうな頭ではいけない、何としても勞働者の十分なる意思を酌取つて、さうして相共に本當の氣持で手を携へて日本再建に努力しなければ、立ち直りは難かしいと思ふ、冀ふ所は勞働組合の健全なる發達と同時に資本家の覺醒であります、そこで此の生産管理の問題でありますが、生産管理と云ふのは、實は私はそこまで持つて行きたくないのであります、さう云ふ所まで持つて行かなくても、本當に勞働組合と資本家と語り合へば、是は解決し得るのではなからうか、私はさう云ふ氣持を持つて居ります、併し不幸にして生産管理になつた場合にどうなるか、是であります、生産管理に付て私の方で色々事件として取扱つた方面から見ますと、各種のものがあります、殊に最近に於て、いかがはしい資本家の横暴と云ふものを目のあたりに見て、私も憤激して居る一人であります、例へて申しますと、昨日勞働協約が締結された、勞働者が安心して居る、所が其の翌日に至つて、其の工場主の親と云ふものが横から飛び出して來て、そんなことぢやいかぬ、何をするのだ、そんな勞働協約と云ふものは大變なことだ、それなら會社は閉めてしまへば宜いぢやないかと云ふので、會社を閉鎖して、勞働者側は唖然としたと云ふ事件に打突かつて居ります、是は私の方の事件であります、私はとんでもないことだ、實は其の方面の直ぐそれは生産管理に移つたのですが、假處分と云ふことで資本家側から來たさうでありますが、裁判所が斷乎としてさう云ふ假處分を受付けなかつたと云ふ事例もあるのであります、是は私は生産管理の問題として、一つの例を擧げたのでありますが、斯樣なことでは日本の再建と云ふものは到底覺束ない、資本家も覺醒しなくてはならない、是は私の個人の氣持でありますが、どうしても會社の經營まで進んで、勞働組合の幹部と協定して行くと云ふ所まで行つて宜いのぢやないかと私は思つて居ります、私は生産管理に付て、生産管理をやつたから直ぐそれを取締ると云ふことは毛頭致しませぬ、併し生産管理の手段として暴力行爲が行はれる、是は、社會治安から見て、斷然取締らなければならぬ、こんなことではいけない、是は勞働者の爲でもない、勞働組合を毒するものである、こんなことは排撃しなくてはならない、不幸にしてさう云ふ事例が又あつたのであります、そこに於て私の方では、さう云ふ暴力行爲を伴ふやうな生産管理に付ては斷乎としてやれ、是は勞働組合の爲でもないと云ふので、やつた事例はあります、併し穩健なる生産管理と云ふものに付ては是は私は何處までも虱潰しにやると云ふやうな考へは、毛頭ありませぬ、又司法當局の間でも、假に是が民事問題として今申上げる假處分と云ふ問題が起つても、全面的に採上げることはないと私は確信して居る、どうか畏敬する松岡氏、あなた方が本當に健全なる勞働組合を作つて戴きたい、さうして良き指導者になつて、日本の資本家の覺醒と相俟つて、日本の再建に努力して戴きたいと云ふことを私は此の機會に切願するものであります、繰返して申します、生産管理に付ては、司法當局としては決して高壓的のやうな態度に出るものではないのであります、併し一歩誤つて暴力行爲を伴ふやうなことがあれば是は斷乎として取締ると云ふことを茲に表明する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=91
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092・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 司法大臣の此の問題に付ての御理解に對しては、私も能く之を認めるものであります、そこで私は言つて居るのであります、其の實際の運用に當つては、司法大臣も只今御述べになりました通り、之を檢擧し、之を彈壓するに忍びない、寧ろ資本家の罪なんだ、勞働者が斯うやることは當然なんだ、斯う御認めになるやうな事實が存在して居るのでありまするから、一定限界内に於ける生産管理と云ふものは、是は必ずしも不法なものでない、斯う云ふ建前を一つ明かにする必要があるのではないか、さうでございませぬと、今も司法大臣が憤慨されるが如く、生産管理が否定されて居ることを奇貨居くべしとして、昨日團體協約が出來た、其の翌日に只今御話のあつたやうな暴擧を敢てするやうな資本家を、寧ろ私は生むに至るのではないかと云ふことを惧れるからであります、今日日本の勞働者を苛めるとか苛めないとか云ふことで、なくして、日本の生産の問題に稽へまする時に、生産管理の方が能率が上つたか上らぬかと云ふことは、私に言はせるならば、是は全く枝葉末節の問題でありまして、能率が上つたから生産管理を認めるとか、下つたから認めないとか、そんな風のものではないと考へて居りますが、併し今日の情勢からすれば、「ストライキ」をやらうにも「ストライキ」をやれない、勞働者は生産管理の方法しかないのが澤山あるのであります、司法大臣は既に御認めになつて居るやうな事例が澤山あるのであります、にも拘らず、是が否定されて居ると云ふことが、善くない資本家に司法大臣が憤慨されるやうなことを屡屡行はしめる結果を生むのであります、是が私は現内閣が頭ごなしに生産管理を否定されることを非常な誤りであるとして、本會議以來追究して已まない點なのであります、私は是以上に司法大臣の御答辯を要求するものではありませぬが、勞働組合法十五條には屡屡法令に違反し、或は安寧秩序を紊るとか云ふ場合に於て、勞働組合が解散されることがあるのであります、其の場合に中央勞働委員會が此の問題を扱ふのであります、中央勞働委員會が此の生産管理の問題を扱ひます時に、どう云ふ扱ひをするか、生産管理と云ふものが法令に違反しないものと、一體考へるか考へないか、中央勞働委員會の代表が生産管理と云ふものは必ずしも是は法令に違反するものとは、一人々々の御意見を聽いて見ませぬけれども、併し大勢は考へて居ないと、私は觀察して居ります、斯う云ふことと關聯しても、現内閣が折角勞働組合法と云ふものを制定して置いて、さうして此の餘儀なく行はれる生産管理を全部頭ごなしに否定して居ると云ふ態度に付ては、誤つて居つたら之を取消すと云ふやうなことをやつて貰ひたいと云ふので、私は言ふのであるが、是の扱ひ方に對しては、勞働組合法第十五條等の關聯もあるのでありますから、中央勞働委員會に於て此の問題を箇箇に具體的に扱ふやうな途を開くと云ふことが必要ではないかと思ふのであります、さうでないと、中央勞働委員會と云ふものは最も大切な勞働組合法第十五條の屡屡法令に違反し安寧秩序を紊るものに對して解散を申請するとか云ふやうな此の重大な問題に對しまして、扱ひ方がないことになるのであります、之に對して幸ひに大勢閣僚が御揃ひになりましたが、此の問題だけはもう一應司法大臣の御答辯を願つて、同時に厚生大臣からも此の機會に御答辯を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=92
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093・逢澤寛
○逢澤委員長 委員長と致しまして、今大臣の發言中に一寸聽き兼ねた所があります、生産管理を是認する如く聞えるやうな感じがあつたのでありますが、それを一つ明確に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=93
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094・木村篤太郎
○木村國務大臣 生産管理の個々の取扱ひに付て司法當局としては話したのでありまして、生産管理の原則に付て私は決して申したものではない、政府が生産管理を全面的に否定した、此の問題であります、私も其の閣僚の一人として之に贊成して居るのであります、と申しますのは、生産管理は御承知の通り、一體企業と云ふものは何から成立つて居るか、企業は資本と勞働力とから成立つて居る、資本を代表するものは要するに機械、設備、工場一切であります、勞働者を代表するものは勞働力であります、是と是との謂はば戰ひである、そこで勞働者が勞働力を以て單獨に行く場合はそれで宜しいが、苟くも資本を代表する工場其の他機具一切の設備を占據して、さうして勞働爭議に入ると云ふことは、是は法律上認むべからざることである、此の意味に於て、生産管理と云ふものは政府としては絶對に是は認めない方針を執つたのであります、是は今も政府としては變らない何處までも其の理念で以て行く積りである、併しながら個々の生産管理が起つた場合には、是は司法當局として一一それを虱潰しに處斷して行くかと言へば、さうではない、一々其の場合々々に依つて善處する、斯う云ふ意味であるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=94
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095・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 私は少くとも司法大臣の只今の御答辯を御聽きしなくても、先程から私はさう了解して聽いて居ります、憤慨されるのが少々おかしいと思ふ、私はさう了解して居て、而も個々にそれを虱潰しにやることが出來得ないものがあると云ふことは事實なのであります、それを全面的に否定されると云ふことからして、個々に處分出來得ないやうな事柄を頻發せしめる虞があると云ふことを私は感じまして、それに付て問ふと云ふよりか、お終ひに申上げたことは、それに付て考へて戴きたいと云ふこと、それからもう一つ言つたことは、勞働組合法の第十五條の法令に違反し安寧秩序を紊る場合に於ける勞働組合の解散の處分が行はれる時に際して、而も中央勞働委員會と云ふものが之を審議致しまして、解散を至當なりと認めるのでなければ政府は之を解散しないと云ふことになつて居るのであります、生産管理と云ふことに付て本法案との關係がありますが、本法案の第七條の一番お終ひに正常な運營を阻害するものを言ふと云ふことになつて居るのである、爭議行爲と云ふのは、東京都の業務管理の如きは、是は業務管理の單なる空宣言にしか過ぎないのであつて、其の實を持たないから放つて置くのだ、一體斯う云ふやうな、甚だ無理のある所から斯う云ふやうなことが起つて來るのだ、だから此の點は一つ考へたらどうですかと、是は私は司法大臣に對して希望を申上げたのであります、序でであつたから厚生大臣に之に付て一言聽かうとしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=95
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096・木村篤太郎
○木村國務大臣 只今東京都の業務管理の問題が盛んに松岡君から出たのであります、司法當局としては先般の業務管理、是は私は生産管理と認めないのです、色々情報も入つて居りますが、實際の意味に於ける生産管理ぢやありませぬ、それは恐らく松岡君に於ても内容を十分御調査のことと存ずるのであります、之を以て生産管理と言へば何をか生産管理と言ふか、恐らく生産管理と云ふことは何でも生産管理になつてしまふ、あれは私は絶對に生産管理ぢやない、ああ云ふものはほんの名を借りてやつて居るに過ぎない、唯勞働者が俺達が業務管理をやつて居るのだと言ふだけであつて、其の實は何もないのであります、それは松岡君が能く内容を御調査になつて能く御承知のことと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=96
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097・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 私はさうなつて來ると殘念ながらもう少し議論しなければならぬ、と云ふのは行動に出ると云ふことが罰せられると云ふことは、是は言ふまでもない、併しながら團體が違法のことを決議した場合に罰せられなくて濟みますか、其の點を私は明確に御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=97
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098・木村篤太郎
○木村國務大臣 團體は決議しただけで罰せられるかどうか、斯う云ふのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=98
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099・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 さうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=99
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100・木村篤太郎
○木村國務大臣 それは行動に出ない限りは必ずしも罰すると云ふことはありませぬ、其の決議其のものが社會的に非常な影響を及ぼして、或は社會の秩序を紊り、社會の人心を惑亂すると云ふことに至れば、それは罰するのは當然であります、併し唯決議したからと云つてそれを罰するやうなことは絶對にないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=100
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101・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 私は先刻も申上げました通り、是は無血革命に導くか暴力革命になるかと云ふ重大問題に關聯するのでありますから、もう少し眞面目に考へて貰ひたいと云ふことを私は一番最初に言つて居るのであります、そこで私の言ひたいことは、所有權の問題、屡屡厚生大臣も言つて居られるし、只今司法大臣も仰しやつて居る通り、其のことは私は能く分つて居るのである、是は大變大切な精神なのであります、是は民主主義の基調をなすものである、其の根本的の精神に私は反對して居る者ではないのである、法律の解釋と云ふものは其の時代と共に發展的にされなければならないではないか、それに無理がなければ無血革命、洵に順序の好い改良と進歩を積んで行くやうな方向を辿るでありませうが、一つの法律の解釋で勞働階級が鐵壁に打突かつたやうな、何か強い強い枠の内に踏込まれたやうな形になつた場合に於ての其の爆發力が恐ろしいのであります、是が國の爲に考へなければならぬと云ふのであります、でありますからさう云ふ點から致しまして現内閣の閣僚は民主主義の基本的な大切な問題として、勞働者と資本家と云ふものの所有權或は企業權、經營權、之を勞働者が侵してはいけない、其の代り其の企業者も經營者も勞働者の勞働權を侵してはいけない、是が民主主義の基調だと言つて居られる、然るに現内閣の解釋する所の生産管理が其の企業權並に經營權を侵すものなりとして之を否定しつつ生産管理の決議が頻々として行はれると云ふことが、是が果してうつちやらかして置いて宜いことであるかどうかと云ふことを私は言つて居るのであります、そこで根本に無理がある、根本に無理がある爲にさう云ふことになつて居るではないか、だから一定の其の範圍に限界と云ふものを定めて、今更私は敢て助船を出すやうな意味で申上げるのではありませぬ、今更先般聲明した所の生産管理は必ずしも否認するものではないと私は言つて貰はうと云ふのではないのであります、個々の生産管理、餘儀なき事情が事實あるのでありますから、さう云ふものに付ての取扱ひを勞働組合法第十五條との關聯等に於きましても、中央勞働委員會に於て是は個々に愼重に扱ふべきではないかと云ふことを言つて居るのであります、今聲明を取消せと私は迫るのではない、さう云ふ扱ひが出來ないと遵法精神の上に非常な重大な影響があると思ふのであります、行動に移らなければ差支へないと云ふならば、それは私有權も企業權も經營權も否定するやうな決議を無暗にやつて宜いか、之をうつちやらかして置いて宜いものでせうか、是が安寧秩序に影響がないか、果して宜いかどうか、私は中央勞働委員會と云ふものは勞働組合法第十五條に依つてあの重大な問題を扱はされる立場にあるが、中央勞働委員會に席を置く者と致しましては、生産管理が頭こなしに否定されると云ふことは此の取扱上甚だ困るのであります、本法案の第七條との關聯に於きまして極めて重大な問題と思ひますので、私は是以上もう答辯を求めぬことに致します、どうか其の點は特に御考へ置きを願ひたいと思ひます、是は私は單なる議論の爲に議論をして居るのではありませぬ、此の點十分御考慮を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=101
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102・逢澤寛
○逢澤委員長 松岡君に御諮り致しますが、商工大臣が見えて居りまするので、商工大臣に關することを繼續しておやりを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=102
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103・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 商工大臣の方は難かしさうですから、大藏大臣に先に……實は生産管理のことに付て、一緒に居つて戴いて色々と聽きたかつたのでありますが、大變御忙しさうですから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=103
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104・逢澤寛
○逢澤委員長 大變短時間と云ふことでこちらの方に御出席願つたのでありますから、簡單に一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=104
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105・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 それでは大藏大臣に一つ御伺ひします、是は本法案と生活保護法と云ふものとの關聯に於て、私は國民健康保險の問題に付て、大藏大臣に簡單に質疑を行ひたいと思ふのであります、御承知の通り國民健康保險は今日兎に角日本國民の大凡五〇%四千萬以上の者を組合員として居るのでありまして、それ等の被保險者の組織して居ります所の健康保險組合は一萬餘に上つて居ります、多くの説明を申上げるまでもなく十分御承知のことと存じますが、國民健康保險法が實施されましてから今日までの醫療費なんかの關係を大まかに申上げますと云ふと、今日は大體醫療費が五倍になつて居ります、極めて大まかに──醫療費は五倍ではない、五倍や六倍ではないけれども、點數の關係からするならば、嘗て二十錢位であつたのが今日に於ては郡部に於て一圓になつて居る、六大都市に於て一圓五十錢、市部に於て一圓三十錢と云ふやうに、一點單價が大凡五倍と云ふことになつて居るのであります、斯う云ふことになつて居るに拘らず、國民健康保險に對する政府の補助は、御提出になつて居る豫算案に依ると、七千八百萬圓、極めて少額でありまして、是は依然として元々通りなんです、是では到底いかぬのでありまして、實は國民健康保險組合は先程申上げた通り、一萬餘の組合があり、今日では全然駄目になつたのもありますし、開店休業状態になつて居るものを加へて、七割近くがさう云ふ状態になつて居るのであります、今日既に憲法なんかを見ても、國民の生活を保障すると云ふ趣旨から、生活保護法と云ふ法律の名前になつて居りますけれども、生活保護法と云ふ法律も既に上程されて居る譯なのでありますが、四千萬人の人の加盟して居ります所の保險が斯う云ふ状態に置かれて居ると云ふことでは、是はもう生活保護法との關聯から見ましても由々敷き大事だと考へるのであります、私共は政府當局に今までも時々陳情的に御話ししたことがありますが、寧ろ農村「インフレ」と云はれるやうな言葉に關聯して、農山漁村なんかは存外新圓なんか相當豐富に持つて居るから、個々の農民がもう少し多く負擔しても宜いのぢやないかと云ふやうな逆襲的な意見をちよくちよく聞くのでありますが、農村は必ずしも農民のみではないのでありまして、國民健康保險組合の被保險者の凡そ四割以上と云ふ者は農民ならざる地方民であります、今日それ等の人々は國民健康保險の斯う云ふ状態から非常に困つて、組合が旨く行かぬものでありまするから、個人々々が特別に金を負擔して醫療を受けると云ふ現状にあるのでありますが、農村に於ける四割餘りの農民ならざる者達の生活状態を見ますと、今度審議されます所の生活保護法に依つて救濟を受け、或は新しい憲法の精神から云ひますならば、生活の保障を受けると云ふことなくしては、今後生存出來ないやうなことになつて來るのではないかと思はれるやうな人々が相當數農村に居るのであります、斯う云ふ事實に鑑みて、七千八百萬圓と云ふやうな少額のものでなくて、本當に立派に之を運營しようと想へば、どうしても五億以上の金が掛るさうでありますが、それ程の金は出すことは出來ないと致しましても、少くとも一億八千萬圓位の金があれば、今ある所の一萬數百の組合は立派に立つて行くのであります、でありますから生活保護法と云ふやうな法律が今日問題になつて居る時に、折角國民の半數を被保險者として居る所の國民健康保險組合が事實上臺なしになつてしまふやうな危機から之を救ふ爲に──今日まで單に國家が思ひ付きにこんなことをやつたのではないのでありまして、此の保險法が實施されましてからここに相當の年月を經まして、國民の半數を組織し得る所まで參つたのであります、現在では東京都なんかには殆ど國民健康保險組合と云ふものは見るべきものはありませぬが、恐らく今日の東京都民の生活の状態から見まするならば、職場に居る者達の爲になる所の健康保險のみではいけなくなつて、東京に住ひする都民なんかもやはり國民健康保險なんかに依つて其の醫療の問題が扱はれることなくしては、今後益益東京都民の生活が苦しくなるに連れまして、さう云ふことが豫想出來得るのであります、折角今日まで發達した國民健康組合を潰すか潰さぬかと云ふ瀬戸際にありますが、之に對して大藏大臣は思ひ切つてここらで一つ國庫の補助を増額される、少くとも一億八千萬圓程度に補助を増額せらるることが出來るかどうか、明瞭に御聽かせ願ふことが出來るならば、大變仕合せだと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=105
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106・石橋湛山
○石橋國務大臣 今松岡君からの御質問の點は、私も豫て聞いて能く知つて居ります、私は此の醫者、藥、詰り醫療に付ては是非とも、今どころではない、財政其の他が許せば思ひ切つた處置を國家的にしなければならぬと云ふことは、豫ての私の宿論でありますから、御趣意には全然同感であります、唯私が今少しく躊躇して居ります理由は國民健康保險、あの組合と云ふものが不幸にして都市に殆どなくなつてしまつて、地方だけであると云ふことと、それから私は地方の實情を知らないのでありますが、色々議會内の地方の關係の方などに伺つて見ましても、非常に良いのもあるけれども、惡いのもあると云ふやうなことを伺つて居りますので、只今實は少し研究して見まして、本當に國民の健康の爲に役立つものなら相當に金を惜しむまい、併し役立たぬものならば一文も出さない、此の際でありますから、他のことでもさうでありますが、さう云ふ立場で、只今厚生省とも連絡をして研究致して居る次第であります、左樣な趣意で、若し此の判斷に依つて役立つと云ふことならば、御趣意のやうに致したいと、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=106
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107・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 先程の荒田君の質疑に戻つて戴くことに致しまして、さうして私は後で質問さして戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=107
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108・逢澤寛
○逢澤委員長 此の際荒畑君に御相談申上げます、大藏大臣が見えて居りますが、山下君の此の間のあれがあるので、極く簡單に三分か五分で濟むさうですから、一つ山下君にやらせて戴きたいと思ひます──それでは山下君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=108
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109・山下榮二
○山下(榮)委員 既に豫算委員會や色々な機會に議論は盡されて居るのぢやないかと思ふのでありますが、委員會が違ひますので、新聞で多少窺ふだけのことでありますから、此の機會に大藏大臣に伺つて見たいと思ふのであります、過般の私の當委員會に於ける質問の時に趣旨は申上げたのでありますが、本勞働調整法の問題は勞働者が今非常に政治的に社會社的に要求しつつある問題を先に考慮すべきではないかと云ふことを申上げたのであります、私の手許に方方から參つて居ります所の陳情書や、或は色々な書類が參つて居るのでありますが、其の勞働者の要望する所を見てみますと、第一に勤勞所得税の撤廢乃至は工場加配米の要求等色々な問題が書かれてあるのであります、大藏大臣に御願ひ申上げたいと思ふことは、過般來から本會議の席上でも説明を伺つたのでありますが、勤勞所得税の撤廢は出來ない、斯う大藏大臣は申されて居るのであります、三十數億圓の金は國家財政の上から洵に今は大きな財政力であると、斯う大藏大臣は申されて居るのであります、私は廢止しようとすれば出來ぬことではないではないかと云ふ考へ方を持つて居るのであります、本會議や或は豫算委員會の席上のことを伺つて見ますと、戰時中に發行しました公債の破棄等が問題になつて居るやうでありますけれども、そこまで行かなくとも私は公債の利子の値下をやつただけでも行はれるのではなからうかと思ふのであります、私は概算致しまして公債の利子は六十億圓程になるだらうと想像するのでありますが、其の半分の利子に依りましても勤勞所得税の金が浮いて參るのぢやないかと想像するのであります、寧ろ勤勞所得税を私は撤廢されて、綜合所得税の方で勤勞所得税の方に代るべき財源を取る方法もあるのではないか、斯う考へられるのであります、さうすることが税の體制の上から考へましても、源泉課税の如き或は消費税の如き考へ方のあの勤勞所得税よりも、綜合所得税的に物事を考へて行くことの方が妥當ではなからうかと云ふことを考へて居るのであります、さうすることが今日の勞働者の要望にも副ふ所以ではないか、斯う考へるのであります、何と言ひましても再建日本の力は勤勞者の勤勞意欲を大いに昂揚することが唯一の方法だと考へるのであります、せめて勞働者の要望する其の途でも一つ政府は聽いてやる、斯う云ふ英斷が出來ないものであるかどうかと云ふことを大藏大臣に伺つて見たいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=109
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110・石橋湛山
○石橋國務大臣 日本の税制は只今の所所得税中心の税制であります、でありますから御説のやうに若し致すとすれば、是は根本的に税制を改革しないと出來ないことであります、唯申上げて置きたいことは、各國とも現在の税制は所得税中心でありまして、又私は現在に於ては所得税中心の税制が宜しいと考へて居ります、然るになぜ日本に於て勤勞所得税の問題が近頃やかましいかと云ふと、是は日本のあの所得税が餘り細か過ぎまして、詰り親切過ぎた譯であります、一本にすれば宜かつたのであります、總ての所得に對して一本にすれば宜かつた、例へば英國のやうに一「ポンド」の收入のある人は、事業所得であらうが、資産家の所得であらうが、勤勞所得であらうが、一「ポンド」に對して幾らと云ふことにすれば、さう云ふ誤解は起らなかつたのであります、日本の税制は非常に親切に考へまして、詰り勤勞所得税に對しては免税點を上げ、或は税率を下げ、事業所得に對してはそれ以上にする、資産所得に對しては更に高いものを課けると云ふやうな三本建でやつて居る、そこで勤勞所得税と云ふものがあつて、如何にも勤勞者に對して特別の税を課するやうに見えます、私はさう云ふ意味でなく、他國の税と比較すると日本の勤勞所得税に對する課税は非常に低いと考へて居ります、併し是は議論でありますから議論と云ひますか事實でありますから御參考に申上げたのでありまして、唯今日の場合に於ては御話のやうに單に三十何億圓の歳入があるから是が捨てられないから廢められないと云ふだけではございませぬので、之を廢めると云ふことは税制の根本をすつかり引繰り返すことになりますので、今日俄かにやれない、税制に付ては屡屡申上げます通り、最も早い機會に、戰時中色々ごたごたしてしまひまして直さなければならぬ點が多々ありますので、議會等から一つ皆さんに出て戴いて調査委員を設けて、税制の根本的の檢討をやつて見たいと思つて居ります、其の際に一つ各方面からの御意見を出して戴きまして十分改正をすべき所は改正すると云ふことに致したいと考へて居ります、暫く之を懸案にして置きたい、唯私の只今の考へを率直に申上げますと今のやうな譯でありまして、どうも税制としては是は廢められないのぢやないか、斯う考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=110
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111・山下榮二
○山下(榮)委員 一言だけ伺つて置くのでありますが、それぢや大藏大臣は──今の勤勞所得税は所謂給料の中から天引される譯なんですが、さういふことでなしに先程申上げましたやうに或は綜合所得税の如く勞働者の手に渡つた其の勤勞者の手に渡つたものを改めて税金として納めると云ふ體制を整へ得ることが、私は税の體制から考へて一番正しい方法である、或は勞働者に對して納税の義務を負はしめる上から考へても眞面目な考へ方ではないかと思ふのであります、自分の給料の中から天引されると云ふ事柄が私は非常に面白くない問題だと考へるのであります、或は先程の言葉から見ますると、戰時中の色々の税制等を平和に向つては近く大改革を行ふと云ふ御説も伺ひましたので、さう云ふやうな場合には今私が申上げるやうな線に沿うて改革する意思を持つておいでになるかどうか、其の點だけを伺つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=111
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112・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點も遺憾ながら只今の私の考へは御説と違ひまして、詰り源泉課税に非常に面白味がある、御承知のやうに英國あたりでは所得税は非常に單純のものでありますが、是は殆ど悉く源泉課税であります、さうでないと所得税と云ふものは實は面白くないのであります、綜合所得税の方は、英國で申せば超過所得税になる譯でありまして、詰り或る程度──例へば私なら私が年に五千圓なら五千圓の收入があれば、それに對しては必ず幾らかの税を納める、其の上にそれが一萬圓の人は是は綜合して超過の課税をする、斯う云ふ二本建で行くので初めて税の公平が保たれる譯になりまして、是は源泉課税のあの今の所得税は實は今の税率が高いから面白くないのでありますが、是は戰時からの關係がありまして、詰り日本の財政が良くなればもう毎年あの税率を變へまして、今年は千圓に對して幾ら、財政の状況が惡くなればそれを引上げる、良くなれば直ぐ翌年度下げると云ふ、非常に伸縮性のある税をやるにはどうしても源泉課税でなければ旨く行かないと考へます、是は御參考でありまして、將來尚ほ色々研究致しましてどう云ふ風に税制を改めるか、其の場合に今申上げた説を固執するのではないが、今私の考へを率直に申上げますとさう云ふ譯でありますから、御參考までに申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=112
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113・山下榮二
○山下(榮)委員 もう一言だけ申上げて置きたいと思ひます、源泉課税が非常に良いと云ふ御考へのやうでありますが、政府の方から申すならば手を煩はす必要がなくして中々便利であらうことも想像が付くのであります、併しながら或は日傭人夫とか其の他色々な關係から致しまして、さう云ふ方面に非常に非難があると云ふことも我々は伺つて居るのであります、眞面目に工場で給料として貰ふ者のみ嚴重に源泉課税が課けられて、日々働く人夫其の他の者に付ては中々脱税等も多いと云ふことも伺つて居るのであります、更に先程申上げましたやうに、勤勞者が納税の義務を履行して行くと云ふ精神、意思を昂揚する上から考へましても、やはり綜合所得税の如き方法を以て納税せしめると云ふ義務を負はしめることが正しい考へ方ではなからうかと云ふ考へが拔けないのであります、どうか將來の税制改革には左樣の方面も御考慮を願つて何かの參考にされんことを希望致しまして私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=113
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114・逢澤寛
○逢澤委員長 荒畑君、どうも度度洵に相濟みませぬが、もう一遍御相談申上げます、厚生大臣は又豫算の方から呼びに來て居りますことと、今一つは松岡君の要望して居ります内務大臣が今此處に見えて居りますので、若しあなたが御承諾下さるならば、もう一遍松岡君の發言を許して戴けませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=114
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115・荒畑勝三
○荒畑委員 私は實は何も厚生大臣の答辯を要求して居ないのであります、厚生大臣には、此處で是から初めて答辯を要求するかも知れませぬが、今まで外の本會議や豫算委員會などで厚生大臣の御答辯を拜聽致して居るのに、甚だ不親切、冷淡、さう云ふ答辯は私は大臣だからと云つて要求しないので、吉武政府委員の懇切丁寧な答辯の方が私に取つては非常に好都合なのであります、吉武政府委員で結構であります、唯厚生大臣が此の席を御外しになると云ふのであれば、三點だけ最初に……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=115
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116・逢澤寛
○逢澤委員長 いや大臣は直ぐ御歸りになるのです、たつた十分か十五分ですから──それでは御諒承を願ひまして、只今申上げたやうな次第で松岡君の發言を許します──松岡君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=116
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117・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 先程司法大臣に質問致しました時に、内務大臣にもおいでを願つて内務大臣の御答辯を一緒に願へば、私も餘計なことを言はないで宜かつたのですが内務大臣が居られなかつたので、同じやうなことを繰返さなければならぬことを甚だ遺憾と致します、多くを言はなくても内務大臣には御分りになつて戴けるかと思ひますが、過般の東京都に於ける業務管理、是は空宣言に過ぎないので、實の伴はないものであるから宜しいと云ふ大體本會議に於ての御答辯であつたのであります、實が伴ふか、伴はないかは姑く別問題と致しまして、兎に角現内閣の閣僚が口を揃へて生産管理を否認して居られるに拘らず、其の後續々としてあつちこつちに頻發をして居るのであります、幸ひにしてさう云ふことがなくして濟むかどうか知りませぬが、官公勞組協議會の國務に關係して居る人々も、此の勞調法が飽くまで議會を通過するならば、之を阻止することの爲に自分達は東京都で行はれたと同じやうな業務管理を遂行するんだと云ふことを揚言して居るのであります、そこで斯う云ふことが實際に現はれて來る、來ないと云ふことばかりでなくて、一體政府が否定して居るやうなことが、屡屡勞働組合に於て決議されると云ふことは望ましいことでないと私は思ふのであります、是は私共國民として考へて望ましいことでないばかりでなく、固より政府としてはさう云ふことは望ましからざることとして御心痛なすつて居られることと想像するのでありますが、否定しつつ、而も今日の如き状態にして置くの外ないと云ふことは、あの聲明に少し無理があつたのではないか、此の點を行掛りや面目に拘泥されないで少し考へて貰はなければならないのではないか、それでないと實際内務當局としても今後の御取扱上御困りであらうし、我々勞働組合の者と致しましても、徒らに頭ごなしに否定されると云ふやうな點から、良くない資本家が勞働者をまるで棄てて願みないやうなことを致しましても、勞働者は生産管理と云ふ方法を以て對抗することが出來ないのだと云ふ高を括つた考へ方から、隨分亂暴なことが今後行はれるであらうと云ふことを、日本の經濟事情に即して私は想像し得るのであります、さう云ふことと相俟つて事實否定しても否定し切れぬやうなものを、唯否認してしまふと云ふことでなく、もう少し考へ直して戴いてはどうか、例へば勞働組合法第十五條の屡屡法令に違反し、安寧秩序を紊るが如き勞働組合がありますならば、是は中央勞働委員會が其の問題を採上げて審議し、而して厚生大臣に其の結果を申告致しまして、初めて勞働組合が解散を命ぜられると云ふことになつて居るのであります、それ程重要な問題を中央勞働委員會は扱ふことになつて居るに拘らず──是は本法案の第七條に關聯がありますが、斯う云ふ問題等を唯一片の聲明で否定し終ることが出來るものであるかどうか、是は眞劍に御考へ下さいまして、さうして中央勞働委員會で個個に斯う云ふ問題を扱ふやうな途を一つ開いて貰ひたいと思ふのであります、さう云ふことに付て考へ直して戴くことが出來るかどうか、出來るならば私は一つ考へ直さうと云ふ御答へを御聽きしたいのでありますが、それに付てどう御考へになるかを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=117
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118・大村清一
○大村國務大臣 私茲に内務大臣として御答へを申上げたいと思ひます、内務大臣と致しましては、只今御話になりました業務管理と云ふ問題は、二つの面に於て關係があると思ひます、一つの面は警察面であります、それから公共團體に於きまして業務管理をやりました場合に於きましては、地方行政の運營の上からの面であります公共團體以外の一般の生産管理、業務管理が爭議手段として行はれて居ります場合の扱ひの問題に付きましては、一般問題としましては内務行政の關する所ではございませぬ、是は勞働行政の主管省たる厚生省なり、又産業行政の主管省たる商工省なりの主管でありまして、内務省の關する所ではございませぬ、併し業務管理の進行過程に於きまして、そこに暴行脅迫其の他の法令違反行爲、正確に申すならば處罰を伴ひますやうな事件が發生する場合に於きましては、其の豫防及び防遏に付ては警察が之に出動する、關與すると云ふことは固よりのことであります、其の面に於きまして業務管理に「タッチ」は致しますけれども、其のやうなことの伴はない生産管理は厚生行政、商工行政に依つて處理せらるべき問題でありまして、内務省の關する所ではないのであります、尚又公共團體の職員にして所謂業務管理をやると云ふ場合に於きまして、若しそこに違反事件、刑事事件が隨伴して起つたと云ふ場合に於きましては、生産管理の場合と同樣に警察が「タッチ」を致します、又其のやうな刑事事件のない場合に於きましても、公共團體の行政事務遂行途上に於きまして、所謂業務管理が起りますると、それは行政諸法規に牴觸致しますので、是は警察行政ではなく、地方行政の面に於きまして内務省はそこに關聯を持つて來る譯であります、併し其の關聯のない、以外に於きまする業務管理に付きましては、是は勞働行政、産業行政の關する所で、我我の方としては關係がないのであります、只今御質問の中にありました、東京都に於きまして、所謂業務管理と云ふものがあると言はれて居つたのでありますが、是は警察方面からも、地方行政方面からも仔細に觀察を致したのでありますが、何れも我々の方で取締り乃至はそれを監督すると云ふ面に觸れることはなかつたのであります、要するにあの場合の業務管理は、名は業務管理でありましたが、私共の見る所では事實上何等の業務管理ではなかつたと云ふ結論に達して居るのであります(拍手)若し此の業務管理或は生産管理を勞働爭議として扱ふ場合の取扱に付きましての御質問は、是は内務大臣から申上げる筋でないことを御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=118
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119・逢澤寛
○逢澤委員長 松岡君、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=119
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120・松岡駒吉
○松岡委員 宜しうございます、但し宜しいと云ふ意味は、内務大臣には今宜しいと云ふ意味ですから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=120
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121・逢澤寛
○逢澤委員長 荒畑君、洵に御迷惑でございました、發言を許します──荒畑君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=121
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122・荒畑勝三
○荒畑委員 公益事業と一年間公益事業に指定し得る規定と、私はどうせ同じものだと云ふことを言ふ積りで、早合點で一つにしてしまつたので、吉武君から訂正されましたが、其のことは分つて居るのです、で私が伺ひたいことは、公益事業は非常に重要なものであるから拔打の爭議は困る、其の爲に三十日間餘裕を置くのであつて、決して爭議を禁止するものではないと云ふ御話でありますが、それでは三十日間經つて第一に考へられることは、調停の條件に不滿である、其の場合に「ストライキ」でも何でも起して構はぬと云ふことになるのでありませうが、三十日間はどうしても吉武政府委員の言はれるやうに、非常に勞働者に取つて氣の毒であるに拘らず、三十日間の餘裕を是非とも置かなければならない程國民生活の日常の問題に對して重要な關係を有する産業を、三十日間經てばもう構はないのかどうか、三十日間經てばそれとも社會公衆が爭議が起つても迷惑を感じないのかどうか、三十日間の規定で假令爭議の解決條件に不滿足で爭議が起らうとも社會が迷惑を感じない、三十日間猶豫を置く所以は、もう公衆が迷惑を感じないと云ふ爲には此の三十日間に爭議がもう起らないやうにすることが必要なのであります、それであなた方に取つて必要なんだらうと思ふ、或は三十日間經つて今度は勞働者の方が解決條件に不滿足で爭議を起さうと思つても、其の時はもう爭議を起すことが出來ない、強ひて起してもそれは結局無效であると云ふやうな事態を三十日間に作り出すのでなければ、唯三十日間足止めを食はして置いて、三十日經つたらさあ何でも勝手にやるが宜い、其の爲に世間が迷惑を被つて社會が損害を受けてもこちや知らぬと云ふのでは隨分無責任な話ではないかと私は考へる、公益事業の勞働者は三十日間爭議をやることが出來ぬ、一體爭議と云ふものは──此の言ひ方には反對の方があるかも知ませれぬが、我々の眼から見ますれば是も一つの戰爭であります社會的な戰爭であります、爭議を起すのには、爭議を有利に導くには、さうして勝利を得まする爲には、やはり戰略的な時期と云ふものが非常に大事なんだ、此の三十日間は勞働者側は手も足も縛られて何にも出來ぬ、併し資本家の方は三十日間に爭議の解決が不滿足で協定が破れた場合に對處する手段を幾らでも講ずることが出來る勞働者の方は非常に不利な立場にあるのでありますが、之に對する別に補償と云ふものもないやうに私には感ぜられる、斯う云ふ點に對する御考へを伺ひたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=122
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123・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御質問の三十日でありますが、此の國民生活の日常生活に非常に關係の深い公益事業に三十日の制限を置きましたのは、一つは一般の大衆が其の間に準備をする、用意をすることであります、拔打にやられますと非常に不平が起つて參りますので、豫め其の心構へを與へると云ふことが一つ、もう一つは三十日間に若し解決が付くならば解決をしたいと云ふことであります、勿論公益事業等に於て勞働條件の主張がありまする場合に、恐らく爭議をしたいと云ふことが目的ではなからうと思ひます、公正なる主張が貫徹することを望まれるものであると思ひますので、然らば、三十日位ありますれば其の間に調停委員會等に掛け、或は又一般の輿論に愬へて、出來得べくば解決をしたい、無理矢理に解決させると云ふ趣旨はございませぬ、隨ひまして調停に骨折つたけれども遂に決裂したと云ふことになりますれば、已むを得ず罷業權の發動、是は已むを得ないと私共考へて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=123
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124・荒畑勝三
○荒畑委員 其の點は能く分りますが、さう云ふことは必ずしも私は法律に據る必要はないと思ふ、一體勞働組合が拔打爭議をやると云ふことは勞働組合の發達しない時代には通有であります、又或る點から言ひますれば訓練を經て居ない、組織團體が小さい、勢力が弱い、斯う云ふ場合には已むを得ないとも言へるのであります、大きな長い經驗を持ち、強力な組織を持つて居る勞働組合運動の歴史を見れば皆拔打爭識をやることはない、皆協定に從つて一定の期間を置いて通告し、其の上でやつて居ることは、是はもう何處の國にも通有であります、私も此の冬の鐵道の所謂拔打爭議に對しては非常に迷惑を感じた一人であります、さうして是が中央勞働委員會に掛けられました際も、私は此の問題に付て、斯う云ふ爭議は社會公衆に迷惑を掛ける、勞働組合としては斯う云ふやり方をやるべきではない、寧ろ組合は斯う云ふ要求、斯う云ふ事情、斯う云ふ理由だと、爭議の理由を社會に愬へて、さうしていつ何日までに此の解決が付かなければ其の時は已むを得ず爭議に出ざるを得ないと云ふことを社會に通告して、ああ云ふ「サボタージュ」でなく、正正堂々と「ストライキ」を何故にやらなかつたかと云ふことを私は中央勞働委員會のあの採決に際して述べた位であります、併しながら斯う云ふことは組合が十分な自制力を持ち、組合が十分に發達し、さうして又組合が資本家とも協定の機關を作り、或は資本家との間に勞働協約を結び、其の中に規定した條項に依つて自主的にやると云ふことが最も望ましいと私は思ふ、斯う云ふことを單に一片の法律だけで取締ると云ふことは非常に無理である、是は平靜の状態の下に於てではなくて、今日のやうな獨り勞働者ばかりではない、國民の生活一般の上に非常時である、超非常時とも謂ふべき今日のやうな状態にあるのに、唯法律の上でそれを取締ると云ふことは、私は非常な無理な片手落ちの結果になると思ふ、是は寧ろ勞働者をして勞働組合を通じて資本家との協定の機關、經營協議會と云ふやうな機關を通じて、又資本家との間に締結せられる勞働協約の規定を通じて自主的にさう云ふ態度に出でさせることが組合運動を健全に發達させる所以もあり、又産業復興、生産再開と云ふやうな上に勞働階級の協力を得しむる所以でもありまして、さう云ふ所にこそ私は政府の政策の重點が置かれなけれべならぬと思ふ、唯之をさう云ふやうな勞働者の現在置かれて居ります條件をも考へずに、又勞働組合運動の發展段階をも考へずに、唯法律だけで之を禁止する、外に方法があるにも拘らず斯う云ふやうな制限を法律で付すると云ふことは、結局結果に於きまして勞働者の爭議を非常な不利に陷れ、勞働者を手も足も出なくしてしまふ、愈愈解決條件が出來た時にはもう不滿でも爭議をやるだけの情勢になつて居らぬと云ふやうな不滿を抱かせることになるのであつて、寧ろ勞働組合の自主的な措置に任せる方が私は有利ではないかと考ふるのでありますが、特に今日のやうな勞働者の此の法案に對する全面的な反對を押切つてどうしても斯う云ふ條項を設けなければならない理由は何處にあるのでありますか、それを一つ御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=124
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125・吉武惠市
○吉武政府委員 只今荒畑委員から申されましたやうに、さう云ふ解決方法はお互ひに自主的に決める方が宜くはないかと云ふ御意見でございますが、自主的に決めることは私も望ましいと思ひます、併しながら只今御話にもありましたやうに、今日の組合はまだ發達の過程にある、それで國鐵のやうなああ云ふ爭議が起るのだと言はれましたが、私共も左樣に存じて居ります、能く組合が發達するならば統制も利くし、又色々な事情もありまするので、詰らぬ手段には出ないと思ふのでありますけれども、今日まだ發達の途上にありますが故に、往々にして起り勝ちであります、隨てやはり自主的に協定に俟つと申しましても、一般公衆の點を考へますならば、放つて置く譯に參りませぬので、却て法律に依つて一定の制限を設くることが必要ではなからうかと思ひます、法律の制限があるからと云つて決して其の範圍内に於て自主的の協定を妨ぐるものではございませぬ、お互ひが此の範圍内に於て色々の協定を結ばれることは私共も亦望む所であるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=125
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126・荒畑勝三
○荒畑委員 さうしますと、政府としては此の法律が政府の意圖して居るやうな十分なる效果を必ず擧げ得ると云ふ自信がおありであらうと思ふ、今日勞働組合が此の法案に對しましまして全面的な反對を唱へて居ります所以は、此の法律は政府が企業整理、其の他現在目前に迫つて居ります國策の爲に大量の馘首をやる、失業者を出す、其の爲に益益産業豫備軍が殖え、勞働者の生活水準が全般的に低下する、隨て爭議は益益増大せざるを得ないことが見透される、之に備へて、此の爭議頻發に對する豫防として斯う云ふ法律を制定するのではないかと云ふことを疑つて居るのであります、さう云ふ不審猜疑、それにも拘らず本法を強行して、制定して、果して本法の冒頭に謳つて居ります産業の平和の維持發展と云ふことが期せられるでありませうか、寧ろ合法的に行はれる勞働爭議を却て非合法的なものにする虞はないか、公然と、平和裡に、組織的に行はれる「ストライキ」を、さうさせないで、地下運動的に、祕密に、「カンニング」に「サボタージュ」して、組織的な「サボタージュ」を蔓延させる虞がありはしないか、私はさう云ふ傾向に導きはしないかと云ふことを非常に惧れるのであります、さうして其の結果として、却て政府當局が豫防せんと欲して居る産業不安、不穩な社會情勢を誘發するやうなことになるのではないか、勞働者が其の要求を實現せんとする手段は多種多樣であります、勞働者の武器の中には種々雜多な武器がある、勞働者が公然たる、平和なる、合法的なる爭議手段を禁ぜられて、而も尚且つ爭議に訴へなければ其の正當なる要求すらも實現されないやうな状態に置かれました時は、さう云ふ武器を用ひて斯う云ふ法律の裏を掻くやうな手段に出ることは易々たる問題である、やれるのである、幾らでもやれるのである、さう云ふ實例を擧げろと仰しやれば私は幾らでも擧げることが出來るのであります、併しながらさう云ふことは民主主義日本の再建、特に其の基礎をなす所の産業の再建、是は勞働階級の全幅的協力を俟たなければ實現することの出來ない困難なる大事業でありますが、之に私は寧ろ非常に遠ざかるのではないかと思ふ、政府が産業の平和を維持しようとして斯う云ふ法律を制定されんとするのが政府の意圖であるかも知れない、併しながら結果は逆に、寧ろさう云ふ政府の意圖を裏切つて、産業の復興、生産の再建、延いては民主主義日本の再建を妨げるやうな不穩なる社會情勢を誘發する結果となるのではないかに云ふことを私は惧れるのであります、此の點に關する吉武政府委員の御考へを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=126
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127・吉武惠市
○吉武政府委員 只今の御質問の第一點は、私多少誤解がありはしないかと思つて、此の際改めて一つ御協力を仰ぎたいと思ひます、と申しますのは、最近新聞に少しづつ出て居ります近く發動せられるであらうと云ふ補償打切に伴ふ企業整理、之に付て恐らく整理と云ふものが行はれるであらうが、それに備へる爲に本法を制定したのであると云ふやうなことを間々耳にするのでありますが、私共さう云ふ意圖は全然ございませぬ、御承知と思ひますが、本法は昨年の暮の議會に組合法を掛けました時から懸案になつて居る問題でありまして一月以來立案に從事して居つたのであります、其の時には此の補償打切に伴ふ整理と云ふやうなことは全然私共も豫想しなかつたのであります、只今本法案が議會に提案になりましてから後に、私共も實は補償打切に伴ふ問題を聞いた位でございまして、それと本法とは何等の關係はございませぬ、又特に補償打切の影響を受けまする工場は、主として戰時中生産を致して居りました重工業方面であらうかと思ひます、重工業方面に付きましては此の法律には何等の制限を加へて居ないのであります、唯爭議のありました時に、若しお互ひに調停に付したいと云ふならば斯う云ふ調停委員會がある、又斡旋を頼みたければ斯う云ふ斡旋の方法があると云ふことを明示して居るだけでありまして、若し此の調停委員會なり、斡旋に掛けたくないと云ふ御趣旨であるならば決して掛けなくても宜いのであります、それ等のものに對する爭議權を微塵も否定して居ないのであります、此の點を企業整理と引掛けて彈壓の爲に是が制定されるかの如き印象を勞働組合等に於て宣傳されて居りますることは、私は法律を知つて言はれて居るのか、知らないで言はれて居るのか存じませぬけれども、其の點甚だ遺憾に存じて居りますので、荒畑委員能く此の法律を御諒承と思ひますので、若しさう云ふことであれば一つ御努力を願ひたいと思ひます
それから次の第二點の、即ち組合の團結權を認め、罷業權を認めて居るならば、それを堂々と正當に行使されるのが却て社會の秩序を維持出來るのであつて、徒らに制限すると所謂地下に潜行して却て面白くない結果を生ずると云ふ御趣旨は私も亦憂慮する所でございます、隨ひまして私共は組合の健全なる發達を希望し、さうして正當なる爭議手段に出られることを望むのでありまして、出來るだけそれ等の罷業權を制限する意圖に出て居ないのであります、度々申しましたやうに、本法は所謂最小限度の公益事業に對する三十日の豫告期間を設けたことと、所謂國政事務に從事する者だけの最小限度の爭議行爲を制限して居るだけでありまして、其の他一般の罷業に於ける勞働者の團結權、罷業權は微塵も制限して居りませぬ、其の點誤解のないやうに御諒承戴きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=127
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128・荒畑勝三
○荒畑委員 そんなことは辯解にはなりませぬ、單に法文の上で斯う云ふ事業の勞働者は爭議を制限する、斯う云ふ事業の勞働者は差支へない、それだから企業整理に依つて失業する者は主として重工業の勞働者であつて、本法の三十日間の制限を受ける範疇に入つて居ないと云ふやうなことは問題ぢやないのです、若し今日百萬の失業者が出る今年内には五百萬の失業者が起ると言はれて居りますが、百萬に致せ五百萬に致せ失業者が出て、所謂産業豫備軍を構成致しますれば、私營事業に從事して居ると公益事業に從事して居るとを問はず、勞働者は爲に賃金の競爭、隨つて生活水準の低下を經驗せざるを得ないのであります、隨てさらでだに現在のやうな「インフレーション」の進行下にあつて、生活に怯えて居ります一般勞働階級が其の爲に非常な脅威を受ける、隨つて私營の事業ばかりでなく、公益事業の勞働者と雖も、已むなく爭議手段に訴へざるを得ないと云ふやうな「ケース」が頻發するであらう、それを私は言つて居るのであります、それから要するに效果が私は又問題であらうと思ふ、如何に法律で嚴重に禁じましても、嚴重な法律さへあればさう云ふ虞は起らないと云ふならば、今日畑荒しも闇商人も起つて居ない筈である、日本が國家と民族との運命を賭して行つて居りました戰爭中に、私利、私慾の爲に闇をやる人間もない譯ではなかつた、嚴重な法律を設けると云ふこととさう云ふ事實が起ると云ふこととは別問題です、御承知のやうに濠洲は勞働爭議に對する強制調停の最も廣汎に行はれて居る國であります、曾ては「ニュージーランド」の如きは「ストライキ」のない國だと云つたことさへもあるのでありますが、併しながら此の爭議の調停仲裁に關する「オーソリテイー」である「バックハウス」判事の如きは、此の調停委員會の惡口を言つて、是は「コンシレーション」の委員會でなくて、「イリティーション」の委員會である、即ち和解の委員會ではなくて焦立たせる委員會であると言つた位である、是は爭議の解決の提訴が殺到致しましてとても手に負へなくなる、斯う云ふ「ケース」が私は日本にも必ず起つて來るだらうと思ふ、一件や二件ならば三十日間で片付き得るかも知れませぬけれども、現在日本の産業界の状態、勞働階級が當面致して居ります状態から考へまするならば、今後の爭議それは勿論公益事業をも含めての爭議と云ふものは頻發する情勢にならざるを得ないと思ふ、さう云ふ場合に其の「ケース」が山積殺到致しまして、三十日間で果して滿足なる解決が得られるかどうか甚だ疑問であると思ふ、其の場合にはそれこそ「コンシレーション」の委員會ではなくて、「イリティーション」の委員會になつてしまふ虞が多分にあると思ふ、決してあなた方の豫期せられて居るやうな效果は擧げ得ないと私は考へる、現に「バックハウス」判事の如きは、斯う云ふ法律で決して勞働爭議が解決出來るものとは自分は確言することは出來ないと其の道の權威が言つて居る位である、濠洲は御承知のやうに勞働黨の勢力が政界に非常に強い國でありまして、さう云ふ勞働黨の内閣の下で、比較的勞働者に有利な判定が下されて居ると云ふことである、それにして尚ほ且つ斯うである、況や日本のやうな、まだ勞働階級の全勢力を背後に控へて勞働階級の利害を代表するに足るだけの遺憾ながら政黨が發達して居ない、隨て斯う云ふ政黨の政界に於ける力も弱い、さう云ふ日本に於て訴ふるに所のない、爭議に訴ふるより外に自己の正當なる要求、單に主觀的な要求だと云ふばかりではない、今日の社會の一般の水準から見まして正當なる要求を貫徹する、そんな部分的な貫徹を遂げるにさへも尚且つ數箇月の日子を要すると云ふやうなさう云ふ無力な勞働階級の状態に於きまして、斯う云ふ法律に依つて拘束することが果して所期の目的を達し得られるかどうか、寧ろ反對の結果を生むやうな事態を惹起するのではないかと私は考へる、其の點に付ての御所信を伺ひたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=128
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129・吉武惠市
○吉武政府委員 御答へ申上げますが、只今引例されました濠洲の制度は御話のやうに恐らく殺倒したかも知れませぬ、それは濠洲は調停に致しましても仲裁に致しましても私の知り得る範圍に於きましては強制調停又は強制仲裁をやつて居る、而も其の制度はここにありまする公益事業の強制調停とは違ひまして、其の決定の強制をして居るのである、全く裁判所と同じやうなやり方を執つて居る、是は御話のやうに濠洲の政治情勢は勞働黨が政權を持つて居るやうで、其の點多少事情は違ひますので餘り不平もなく行はれて居るやうに私共は聞いて居ります、唯さう云ふ強制的の解決をやつて居りますから、恐らく事件は皆そこへ持込まれる爲に殺倒したかと思ひますが、私共が此の法案に於て企圖致して居りますのは斡旋にしましても調停にしましても、仲裁に致しましても、原則としては斯う云ふ機構を一應考へて居ると云ふことであります、爭議は出來得べくば兩當事者が自治的に解決することを望むのであります、其の點を二條に明瞭にして居るのでありまして、之を先日も、單なる此の總則の數箇條は全くの飾りものではないかと云ふことを言はれましたけれども、其の點は私共深くそこに中心を置いて居るのでありまして、特に茲に規定して居るやうな譯であります、而も各章、詰り斡旋の章の終りに於きましても、調停の章の終りに於きましても、又仲裁の章の終りに於きましても、皆茲に規定して居る、此の制度は若しお互ひ同士が合意か或は協定に依つて、別の方法を考へて、それで解決をしたいと云ふならばそれに依つて宜しいと云ふことを、尚ほ念の爲に書いて居るのであります、斯う云ふ制度を置きますると、一切合切皆此の中へ追込むやうな印象を與へまするけれども、實は趣旨はさうでなくしてお互ひ同士で解決するならば、出來るだけそれでやつて欲しい、併しそれでも解決しない場合、或は是等の制度を利用されるならば御利用なさるやうにと云ふのが趣旨であります、又現在に於きましても、組合法で勞働委員會が各府縣及び中央にも出來て居りますが、是等を、それでは勞働者側が利用して居ないかと云ふと、隨分利用されて居ります、まだ出來まして日にちも少いのでありますけれども、使用者側が之を專ら利用して居るのではなくて、寧ろ勞働者側が利用して居るやうな感じを私は持つて居るのであります、それはどうかと申しますると、爭議をやつて、旨く行けば宜いのですけれども、段々こじれて長くなりますると、やはり組合でも困る場合があります、爭議が目的ではございませぬ、やはり勞働條件の正當なる主張、解決が目的でありまするから、さう云ふ場合には、やはり調停に掛けますると、現在の勞働委員會に付ては色々御批判はあらうかと思ひまするけれども、併しやはり色々な使用者代表、勞働者代表、さうして中立、斯う云ふやうな仕組で出來て居りまするし、又一般の輿論も注意して居りまするから、勞働者側の全面的な滿足で解決すると云ふ譯には行かないかも知れませぬけれども、大體の所は公正に採上げて解決して居る例が、私は多いやうに存じて居る譯であります、是等の制度を設けまして、決して私は勞働者側にもさう害をなすものではない、寧ろ御利用になる機會は多からうかと存ずる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=129
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130・荒畑勝三
○荒畑委員 最後に、私は今度は河合厚生大臣に御伺ひ致したいのでありますが、河合厚生大臣には先日豫算總會で或る委員の質問に御答へになつて、資本の繁榮は即ち勞働の繁榮である、斯う云ふ意味のことを御述べになつた、併しながら私の信ずる所では、是は全く事實と逆であります、資本繁榮は決して勞働の繁榮を伴ふものではなくして、却て反對に勞働の搾取、勞働階級の窮乏の上に打立てられて居るのであります、是が資本主義制度の根本原則であります、資本の繁榮と勞働の繁榮とが正比例致しますならば、資本主義經濟に固有の周期的な恐慌であるとか、或は不景氣とか云ふやうな現象は起らない、資本家的産業が益益榮えて勞働者の生活が愈愈窮迫する、國内市場も購買力が衰へて十分なる利潤が得られないからこそ、商品や資本の輸出に必要な海外市場を獲得せんとする國際的競爭が起るのであります、さうして其の結果が帝國主義戰爭を不可避とするに至つて居る、隨て河合厚生大臣の仰しやるやうに、資本の繁榮とは即ち勞働の繁榮であると云ふやうなことは、一片の詭辯に過ぎない、河合厚生大臣が、國民の生活、國民の經濟の上に最も大きな關係を有する厚生省の長官として、殊に勞働者の生活に深甚なる關係を有する斯樣な法案作成の責任者として、斯う云ふ考への上から常に物を考へられ、法律作成をやられるとすれば、勞働階級に取つてこんな危險なことはないと私は斷言せざるを得ない、日本を現在のやうな有史以來曾てない亡國的な状態に陷れた支那事變、太平洋戰爭、斯樣なものも畢竟は斯う云ふ資本主義制度の必然的な趨向に、軍閥や官吏の野心が結付いた結果であります、さうして國民一般、就中勞働階級は其の犧牲に供せられて參つたのであります、決して資本の繁榮に伴つて勞働が繁榮して居る譯ではない、戰爭中「ブルジョアジー」は鼓金の糞を垂れ流すやうな暴富を積んだ、利益を得て居る、其の後どれ程の損害を受けたかは別と致しまして戰爭中それだけの利益を得て居るのであります、其の間勞働階級は自己の權利と自由とを守る所の自治的な勞働組合さへも禁止せられて、天降り的な産業報國會の制度の下に奴隸化せられて居つたのである、而も終戰と同時に、資本家は僅かの涙金を呉れてどんどん勞働者を解雇し、其の爲に政府自身が、無暗勝手に勞働者を解雇してはいかぬと云ふ聲明を發したのである、或る資本家は、勞働者は雜草みたいなものだから、踏み付ければ踏付ける程丈夫になるもので幾ら踏付けても構はぬと言うて放言をして解雇した位であります、殊に今日企業整理であるとかか何と、さう云ふことを口實にし、理由にして、既に勞働階級に對する資本の攻勢が全面的に展開せられて居るのである、現に私の關係致して居ります關東金屬勞働組合に加はつて居ります正田製作所と云ふやうなものでも、經營協議會が出來て居るにも拘らず、勞働協約が締結されて居るにも拘らず、一方的に工場閉鎖を宣言して居る、さう云ふ例が頻繁に起りつつあり、又今後も起ると云ふことが豫想せられるのである、少しも資本の繁榮と一致して居る事實はないのであります、古往今來、逆に行つて居る事實こそあれ、決して調和はして居らない、さうして勞働階級は、今や軍閥、官僚、財閥の抱合に依る政治の特殊な形態、即ち所謂軍國主義の犧牲になつて、未曾有の生活不安に脅かされて居る、敗戰に依る産業の崩壊、生産の痲痺、賠償の爲の工場施設の撤去、企業整理、「インフレーション」の促進、さう云ふものの犧牲となつて、大量失業、生活水準の全面的低下の脅威に曝されて居るのであります、さう云ふ状態にある勞働者が此の當面の困難に對抗する唯一の手段方法は爭議より外はない、善いに拘らず惡いに拘らず、それは現在まで纔かに勞働者が其の生活難、生活の窮迫に堪へて來た唯一の手段であつたことは、厚生省の勞政局の調査に依つて明白なのであります、私が先程申上げたやうに、厚生省の調査其のものが之を立證して居るのであります、それにも拘らず此の法律の強行に依つて勞働者の爭議權を制限する、政府委員は決して是は制限ではない、唯猶豫を置くだけである、或は其の點が濠洲と違ふとか、色々な理由を擧げてられますが、併しながら私の申上げた三十日間の制限と云ふことが一方では勞働者を手も足も縛して少しも行動の自由を與へない、資本家は其の三十日間に解決に到達せられなかつた曉に備へて幾らでも手段を講じて置く自由があるのであります、さう云ふ不公平に對して勞働者には何の補償もないではないかと云ふことに對しては少しも御答辯がないのでありますが、さう云ふ状態に在る勞働者に更に爭議權を、法文の上ではどうであつても、實際的には是は禁止と少しも違はない、さう云ふ結果を招來するやうな法律を、勞働者の反對を押切つて強行しようとすることは不公平である、不合理である、のみならず隨分情を知らないやり方ではないか、厚生大臣は財閥資本家の利益を代表して居るのであつて、勞働者のことは意とするに足らない、資本主義的な産業の復興、財閥的な生産の再建、さう云ふことが當面政府に取つて目的であつて、國家のそれが目標なのであつて、勞働者の意思、勞働者の感情、勞働者の利害と云ふやうなことは二の次である、さう仰しやるならば又何をか言はんやでありますが、併しながら今日此の亡國に瀕して居ります日本を再建致す爲には産業の復興、生産の再建と云ふことは何よりも必要である、根本である、さうしてそれに勞働と云ふ要素が重要な位地を占めることは、あなた自身が昨日當委員會の席上で、勤勞を重視して勤勞一本で進みたいと云ふことを仰しやつたのに徴しても明かであらうと思ふ、然らば勞働階級の全幅的な全面的な協力を政府が獲得しないでは、勞働階級の支持、信任、熱心なる援助を勞働階級から得られないでは、斯う云ふ國家再建の大事業が圓滿に解決進行しないことは明白ではないかと存ずるのであります
前「ヨーロッパ」大戰の際に、「イギリス」の「ロイド・ジョージ」内閣は戰爭を有利に遂行致します爲に勞働組合に對して、産業を縛つて居りまする勞働組合規則の一時的撤廢を要求したのであります、戰爭が濟んだらば必ず無條件に復舊すると云ふ國家としての公約を與へて、さうして從來種々なる制限を産業に加へて居りました勞働組合規則を一時止めさして、さうして自由に、如何なる機械を用ひようとも、如何なる勞働者を用ふることを自由にして、戰爭の遂行を有利にやつたのであります、若し此の際「ロイド・ジョージ」内閣が戰爭遂行と云ふ當時の「イギリス」に取つての國家最高の目的を達成致しまする爲に、勞働組合の一切の自由を禁止致すやうな法律を作りましたと致しましても、恐らく勞働組合は默つて居つたかも知れない、政府に協力したかも知れないけれども、それにも拘らず、勞働組合と協議をして、法律に依つて縛るのではなくして、諒解に依つてやつたのであります、さうして「イギリス」は「ドイツ」に勝つことが出來たのであります、是は當つて居るかどうかは別と致しまして、日本が戰爭に負けたのは勞働組合を潰して産報を以て之に代へたからだと云ふ批評を下した人があります、それが當つて居るかどうかは別でありますが、斯う云ふ風にしてこそ、此の「イギリス」に見られるやうな方法を執つてこそ、今日此の超非常時の日本を再建する爲に、勞働階級の信任を贏ち得る所以ではないでありませうか、もつと大きな政治的な見地に立つて、唯一片の法律で以て勞働階級の反對を押切つて之を制定すると云ふのではなくして、進んで政府が勞働組合と協議をして、勞働組合を腹中に信を置いて、さうして勞働階級に今日は斯う云ふ時代である、今日は濫りに爭議をやるべき時ではない、政府も諸君の状態に付ては十分な考慮を拂ふから、諸君も國家再建の爲に此の亡國に瀕して居る日本再建の爲に協力して貰ひたいと云ふことを言つたらどうですか、私は常に關係勞働組合の會合に於て、今日は勞働組合と云ふものは單に勞働者の利害を擁護すると云ふ勞働組合本來の任務以外に、今日の日本が置かれて居る四圍の條件其のものが勞働組合に別個の任務を課して居るのである、それは即ち勞働階級が率先して、勞働階級が指導して、勞働階級が主唱して、工場の生産の隘路を發見して、どう云ふ風にすれば是が打開出來るかと云ふことを、政府の役人も呼んで、關係資本家の代表も呼んで、關係勞働組合あたりの代表を出して、さうして混合委員會を作つて、自分達の平生働いて居ります工場内で何が果して生産の隘路であるか、何が本當に産業復興の基礎を脆弱ならしめて居る原因であるか、さう云ふことを自分の方で調べるなりして、さうして是が原因である、資材の關係である、資金の關係である、人員の關係である、施設の關係である、其の原因を確めて、さうして之を排除することに資本家も、勞働者も、技術家も一緒になつて努力をする、或る場合には關係當局に愬へても宜しいであらう、又或る場合には進んで「マッカーサー」司令部に行つて愬へても宜しいであらう、斯う云ふ風に勞働者が「イニシアティヴ」を取つて資本家の尻を引叩いて産業復興の實を擧げることが、今日の勞働組合に課せられて居る任務である、斯樣に私は常に宣傳して居るのであります、さうして之に對して曾て一人も反對した者はありませぬ、勞働者は國家再建の意欲に燃えて居るのであります、資本家の出方一つ、政府の態度一つでは此の少くとも當面亡國に瀕して居る日本國家を再建すると云ふ上には、政府に援助を與へ、政府を支持すると云ふ意欲に決して吝かなる者ではないのであります、唯一片の法律を以て無理やりに抑へる、さう云ふことに對して、勞働階級が全面的に反對を表明して居る、是は私の關係して居る組合ではありませぬが、同じく勞働總同盟に屬して居ります化學關係の組合の私共の友人でありまする組合長の日向野と云ふ人が、是は花王石鹸の工場を經營して居る人であります、勞働者であつて、又工場管理をやつて經營をして居る、石炭がなくなつて産業をやつて行くことが出來ない、生産を續けて行くことが出來ない、そこで私が曾て「マッカーサー」司令部でも、何處へでも行つて、産業再建の爲には談判するが宜いと言つたことを覺えて居り「マシテマツカーサー」司令部へ出掛けて行つて、さうして當路の人に會ひました、所が冬寒い中でありましたが、部屋の中は皆「ワイシヤツ」一枚で仕事をして居る位に温かい、そこで日向野君が申しますのは、此の温度は七十五度だ、寒暖計を見れば七十五度だ、人間に快適な温度は六十五度が最も是は好い譯である、諸君は「シヤツ」一枚で仕事をして居るのぢやないか、諸君が十度も高く煖爐か煖房かの氣温を上らせて、さうして集つて居る、「シヤツ」を脱いで働いて居る程温かい思ひをして居る傍らで、日本の産業は今日石炭がない爲に工場が閉鎖しようとして居るのであると言つて談判致しました所が、私は今其の名前を忘れましたが、「マツカーサー」司令部の當路の人が非常に感心をして、君のやうなことを今まで此處に來て言つた者はない、君が初めてさう云ふことを言つたと言つて、早速石炭を廻して呉れる手續をして貰つたのである、左樣に組働者は實際に産業を經營して行く産業を再建して行く、生産を再開して行くと云ふ上に假令小さな例でありましても、實際に資本家や政府と違つて實踐して居るのです、それ程に勞働階級は日本の今日の状態、明日の運命と云ふことに對して非常な熱意を持つて居るのである、さう云ふことに政府は思ひを致して、眞に勞働階級の全面的な協力を得る爲の方法手段を講ずることが先決問題ではないか、こんなことは後でも宜いんだ、こんなことはなくても宜いのである、もつと勞働者の基本的な權利自由を保障する所の、例へば今厚生省で審議されて居りますが、勞働保護法と云ひますか、勞働基準法と云ひますか、さう云ふものを先に出すが宜しいのである、こんなものは其の後で宜しい私は斯樣に考へるのであります、此の點を厚生大臣から御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=130
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131・河合良成
○河合國務大臣 御答へ致します、其の前に一言御斷はり致しますが、先程私の答辯が外の委員會其の他で不親切だと云ふことで荒畑君からお叱りを受けましたが、實は始め不慣れでありましたこと、それから厚生省の仕事には經驗も淺かつたものですから相當勉強はして居る積りですけれども、追付けませぬで甚だ至らぬ所があつたことは恥入る次第であります、其の後注意も受けましたので、段々出來るだけのべすとを盡して答辯を致して居ります、是れ以上は出ませぬ(笑聲)此の點はどうか一つ御勘辨を御願ひをしたいと思ひます
それで今荒畑君の色々御熱烈なる御話を承りまして、皆體驗に基いて居る御話と傾聽致して居る次第であります、色々私共に幾多の示唆を御與へ下さいまして、厚く御禮申上げます、且つ此の場合どうしても國家再建の目的から勞働者の積極的の協力を得て國を建直して行かなければならぬと云ふことに對しては全く御同感であります、政府も出來るだけ其の線に沿うてやつて行く積りであります、唯御承知のやうにまだ二箇月しか現政府は經ちませぬ、そこへ直ぐ議會だ、まあ朝から晩まで實は之に一ぱい掛かつて居りまして、人間としてそこまで參らぬ、實は端的な話を申しますと、此の企業整理、其の他の問題に付ても、勞働組合などの御方とも御懇談申さうと云ふことを考へて居ります、此處にもそれを先方に傳へる爲に組合首腦者協議會と云ふものを持つて居りますが、之を忘れては書き、忘れては書きと云ふことで、實はさう云ふことも考へて居る、考へて居りまするけれども、實は本當にもう一分間も暇がないと云ふことで、人間として苦しんで居る、まあ弱い人間のことでありますから、八面六臂と云ふ譯にも行きませぬ、其の點も御諒承願ひたい、出來るだけのことを致して、此の國難をお互ひに日本國民が切拔けて行くと云ふ誠意に付ては、政府も一つも變はりございませぬ、御諒承願ひたいと思ひます、それから色々私の考へて居ることに付きましての御批判もありましたが、私は決して資本家の代表ではありませぬ、又さう云ふ意味に於て此の職を汚して居る譯でも絶對ありませぬ、申さば國民全體の代表の積り、又代表になりたい積りでやつて居ります、さうして一つの階級を代表して居りませぬと云ふことをはつきり申上げて置きます、それから資本と勞働との共榮と云ふか、資本家の繁榮は勞働者の繁榮だと云ふやうな意味のことを言うたと云ふことでありますが、どう云ふ言葉を用ひましたか記憶はありませぬが、私の肚に考へて居りますのはさう云ふことぢやありませぬ、私は「ウエージファンド」と云ふことを申して居ります、と云ふのは、物が足りない、物が足りないのを引張り合つては困るぢやないか、一枚の蒲團をお互ひに引張り合へば何處か又足だの肩だの出るんだ、そこで此の蒲團を大きくしようぢやないか、何枚も一つ蒲團を拵へようぢやないか、さうすれば皆すくすくと着て行けるんぢやないか、斯う云ふことに一つ中心を置かなければならぬ、世話に碎けて申せばさう云ふ意味であります、さう云ふ意味のことを、或は資本と申しましたか、或は經營と申したか、或は勞働者と申しましたか、或は組合と申しましたか、其の用語は知りませぬが、茲に明瞭に申上げて置きます、是は古い言葉で言へば「ウエージフアンド・セオリー」と云ふ「セオリー」が「イギリス」にあつたと云ふことを例に引いて私は申上げて居る、さう云ふ意味に此の問題を御諒解下されば、それ以外に決して他意のないと云ふことを私は申上げる次第であります
それから勞働者には斯う云ふ法律などよりも直ちに本當に肺肝を吐露した懇願に行つてやるべきものだ、此の法律は勿論見方に依つてはさうだと思ひます、けれども、此の法律は、度々申上げて居る通り何も一つも彈壓と云ふ目的も持たなければ、何にも持ちませぬ、全く國民全體の利益の爲と云ふ一語に盡きるのであります、國民全體の利益の爲には他の國民全體は、又部分としての、階級としての國民は、同意をして下さるものと云ふ氣持だけでありまして、それ以外には一つも意圖は持たぬのであります、それではどうして法律を出したかと云ふと、是は何と申しますか、甚だ言葉は惡いが、自然的に出たと申しますか、前に勞働組合を拵へて、さうして「アジヤストメント・ロー」を作らなければならぬと云ふことで是が早く出來、勞働保護法はまだ御承知の通りに手續を踏んで居る最中であります、やはり簡單なものから先に出たと云ふことでありまして、決して此の間に之を先にして勞働保護法を後にすると云ふ意圖も何にも持ちませぬ、是は色々中央委員會などに立案を願ひまして、其の時の經過からも荒畑君も御存知のことと思ひますが、是は政府の意圖してやつたものではなくして、當時の考へと致しましては、出來るだけ民間側の意圖を酌んで──勿論是は多數で決定しなければならぬ問題でありますから、多數の意見、少數の意見と云ふ意見の決定はありましたけれども、大體會議に於て政府が最も民意を代表したものであると云ふ形のものを通つて來た、今日の状態で行けば又今日之に處する途もあつたでせうが、當時の状態に於てはさう云ふ意圖を以て決めたと云ふことは、衝に當つて居る此處の吉武君も恐らく證人として言つて呉れることだと思ひます、さう云ふ意味に於きまして、何等の意圖を持たぬ、そこで私共は偶然にも此の衝に當つて、勿論政府に於ても宜いと認めて居りますが故に、大いにそれを丁度被告のやうな立場で辯明をして居る状態でありまして、信念は其處にありますことをどうぞ御承知願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=131
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132・荒畑勝三
○荒畑委員 大變長い時間を御分ち下さいまして有難うございます、是で終ることに致しますが、最後に申上げたいと思ひますことは、私は繰返すやうでありますが、爭議の主因が生活不安にある、それからさう云ふ状態にあつては爭議は不可避であります、爭議に依つてのみ初めて要求が實現されて居るやうな實情にある、隨て斯う云ふことは社會一般の常識から考へましても、爭議は正當であると言はなければなりませぬ、その限りでは官公吏も公益事業の勞働者も一般勞働者も差別がない、業態業種に依つて爭議權の行使に差別を立てる理由はない、斯う云ふことを私は申して參つた積りであります、所が主として吉武政府委員の御答辯はさう云ふことに對して一々御尤もだ、又氣の毒だが是は何とも致し方ない、我慢して貰ふより仕樣がないと云ふやうな御答辯では甚だ是は曖昧である、是では一般國民は勿論勞働者は納得しないと思ふ、尤もである、御氣毒である、だが斯う云ふ風にどうかやつて呉れ、それでは論理もへちまもないと思ふ、私は其の點に於て政府の御答辯には全面的に不滿足である、隨て依然として此の法案に對する反對の意見を飜すまでになつて居らないことは甚だ遺憾であります、私は最後に一言、無駄かも知れませぬが、希望を表明して置きたいのでありますが、政府はもつと大乘的見地に立つて、斯う云ふ法律を撤回なすつて、勞働者の基本の權利、自由を確保する法律を先にお出しなさい、こんなものはもつと後になさい、それから若し公益事業と云ふものに對して、特別な扱ひをなさらうと云ふのならば、之に對しては勞働組合の經營に對する參加權、發言權を御認めになると云ふやうな御用意があつて欲しいのであります、又性質は公益事業であるに拘らず、利潤追求を目的とする所の私營に任されて居るやうな事業は此の際官公營に移されるだけの御用意を持つておいでなさい、又官公吏の組合に對しても、勞働組合と同等の權能を御認めになつて、さうして吉武政府委員の仰しやるやうな、官公吏の場合には何とか他の方法を執つて爭議などに依らないで、合理的に解決する途がありさうなものだ、さう云ふやうな抽象的な曖昧なことではなく、はつきりした本當に官公吏が爭議などをやらぬでも濟むやうな制度を御設けになる御用意があつて欲しいと思ふのであります、是は敢て御答辯を要求するのではありませぬ、私の希望として申上げて置くのであります、長い間有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=132
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133・逢澤寛
○逢澤委員長 松岡君大變有難うございました、發言を許します、松岡君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=133
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134・松岡駒吉
○松岡委員 遲たなつて居りますから、さうして先程殘されて居ります生産管理の問題に付て厚生大臣から御答辯を願ひたいのであります、日は覺えませぬが、此の委員會の討議が行はれました際に、經營者の意に反して、若しくは經營者を排して行はれる生産管理、斯う云ふ所まで話が進みまして、さうして厚生大臣は、例の如く先刻私の申しましたやうな意味合に於て之を否認されたのでありましたが、經營者、企業家の意に反して、若しくは之を排して行はれる生産管理でなくて、先にも一寸觸れましたけれども、實は是は今日膳國務大臣にも來て戴いて其の點を聽きたいと思つて居つたのでありますが、曾て膳國務大臣が「ラジオ」討論會で──私直接聽いたことではありませぬが、私の友人の言ふ所に依ると、生産管理なるものは認められよう筈がないぢやないか是は國務大臣におなりになつた後のことではないのでありますが、例へば召使が一家の主人を追出して、家庭を占領するのとまるで同じやうなことになるではないか、さう云ふことを誰が一體容認出來るか、斯う云ふ話もあつたさうでありますが、友人の曰く、中々旨いことを言つて居る、「ラジオ」討論會で膳さん流石に光つて居つたですよ、私はさう云ふ話を聽かされたのであります、私はさう云ふことを思出すのでありますが、今日では是とは逆になつて、うつちやらかして逃出す工場主、經營者があるのであります、それで私は朝から膳さんに是非とも出て戴いて其の所見を聽きたいと思つて居つたのであります、此の問題は先般赤松君の質問でしたか、意に反し或は之を排してと云ふやうな所まで行きまして、それから先はつきりしなかつた、勞働者を捨て兒にしてしまふやうな調子で工場に置去りにした場合に、さう云ふ場合に於ける生産管理と云ふものは資本家の意に反してと云ふことは或は言ひ得るかも知れませぬが、資本家を排してやるのでかない、斯う云ふ場合に付ての見解を一つ聽かして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=134
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135・河合良成
○河合國務大臣 松岡君の御尋ねに御答へ致します、生産管理が正當でないと云ふことは、日本の制度、又日本の現在の法制其の他に於きまして、自他の區別を付けなくてはならぬと云ふことの一語に盡きると思ひます、それで今の御話のやうな問題に觸れて參るのでありますが、結局契約でやられたのならば一切差支へないことでありますから、本人が承知する、承知せぬと云ふことの區別を、意に反し、意を排してと云ふやうに申したのだらうと思ひますが、承知しようにも承知する相手がなかつたと云ふやうな場合の問題を民事的に見てどう云ふ風に行くものかと云ふことは非常に難かしい、客觀的に承知し得べき状態に於て承知しなかつたならば惡意だとか、或は是は不可抗力的に承知し得なかつたとか、色々茲に細かい區別が出ませうから、此の一語も、それで此の問題の法律的の見解をはつきりする問題ではないかと思ひます、御指摘の場合は、實は正田製作所の問題に付きまして先程荒畑君も御引例になりました、私も其の爭議をやつて居る代表者の陳情も聽きました、其の陳情に依りますと全く資本家はうつちやつて行つたので、成程氣の毒な状態で、是は洵に困つたもんだなあと云ふ氣持も起しました、而も相手方の資本家、經營者はどう云ふのか、其の反面のことは聽いて居ないのでありますが、それで斯う云ふやうな場合は資本家の責任或は資本家の「サボ」と見得べきことが明かであつたと致しますれば──是もどう云ふ事情で抛つて行つたのか、どう云ふ事情でどうしたかと云ふことがはつきり致しませぬが、假にさうであつたと致しますれば、それは別の面から國家の權力と云ふものが其處に加はつて、さうして別な面からそれはやはり解決すべき問題であると云ふ風に私は考へて居ります、其の點はやはり法制上資本家の惡い所は飽まで是は徹底的にやらなくちやなりませぬ、其の點は私共全く同感であります、是は別の法制と申すのは、やはり物資統制法で、是は多分もう出て居りますか、或は出ると思ひますが、是は極く粗い法律でありますから、之に細則なり細かいものを設けまして、只今の商工省の意見では監査委員會と云ふものを設ける、監査委員會には勿論官憲なり或は勞働委員會なども入れまして、其の勞働側の意思も能く反映させまして、國家がそこで權力を行使すると云ふことになりますれば是は自他の區別がちやんと付く譯であります、だから日本の法制上に於ても何の障りもないことだらうと云ふ風にして此處に深く「メス」を入れて行くと云ふことを考へる、其の場合には勞働者側の意見を十分容れて之を解決して行く方法を執ると云ふ風に問題を考へて居ります、斯う云ふ風にして所謂資本家側「サボ」も考へる、或は其の時に政府が第三者に經營させる、第三者と云ふものが誰になるかと云ふことは、廣く第三者と言つて居りますから、其の時の情勢に依つて隣の經營者が宜いやら、當業者が宜いやら、或は政府が誰か任命するやら、或は其處の勞働組合の適當な人に責任を持たせるやら、是は其の時の情勢に依つて決める、さうすれば物は極めて合法的に行く、さう云ふ方法を考へて斯う云ふ面倒なことを解決したいと云ふ場合を考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=135
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136・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 本法案第七條の爭議行爲とは、私が讀まぬでも皆さんが御覽になつて居る通り、此處に擧げてある生産管理と云ふものは是は爭議でもなければ爭議行爲でもないと云ふことになつて居る、唯私は理窟の爲に理窟を言ふのではないが、之に生産管理と云ふことを挿入せよと主張するのではないが、政府は生産管理を否認し續けて居て、將來此の勞働關係調整法を力で押通された後に──慥か之を通されるが宜いと確信を持つて居られる、政府は之を通した後に、此の勞働關係調整法に依つて、それ等の事態が起つて居る工場に於ける問題を或は斡旋し、或は調停し、或は之を仲裁することをおやりになりますかどうですか、此の點を御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=136
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137・吉武惠市
○吉武政府委員 先程荒畑委員の質問に對しても申上げましたが、勞働爭議に對する態度と致しましては、政府は出來るだけ當事者間に自主的に解決することを望んで居るのであります、本法にも其の趣旨は第二條に之を明かにして、勞働關係の當事者は互ひに誠意を以て自主的に之を解決するやうにと云ふことを言つて居ります、尚又斡旋、調停或は仲裁に於きましても、それぞれ其の章の終りに、此の制度は若し當事者がお互ひに合意で、又は別の協定で別の方法を考へるならば、それに據つて宜しい、斯う言つて居るのでありますから、一切合財皆此の制度に依つてやると云ふ考へはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=137
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138・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 私の御尋ね申上げたのはさう云ふ意味ではないのであります、本法にはちやんと例示的に、例示的と云ふよりは寧ろ爭議行爲とはとして爭議行爲なるものを定義付けて居る、さうして是等の行爲を禁じたり或は制限したりすることが國家の爲に必要なりと云ふ觀點から、其の爭議行爲なるものを定義付けて居るのであるが、其の定義の中に生産管理と云ふものは含まれて居ない、それから一般民間のサボ行爲に付ても何でもないものであれば、制限するものでもなく、禁止するものでもない、此の爭議行爲として定義付けたものの中に作業所の閉鎖或は捨子同樣に勞働者を扱つて工場を逃出し、勞働者が餘儀なくやつた、是は司法大臣が御覽になつても生産管理を内面的に肯定する譯に行かぬけれども、事情を聽いて見れば之を罰するに忍びない、是は當然然るべきことである、さう云ふことの爲に起つた生産管理を本法が制定されたと假定して、其の中に於て其の生産管理或は工場閉鎖と云ふやうな勞資の係爭問題を委員會が斡旋し、或は調停し、或は仲裁の勞を御執りになる意思があるかどうかと云ふことを私は尋ねるのであります、是は當事者が勝手にやることは大變結構なことです、お世話にならないで當事者が自治的に解決することは大變結構であるが、或はそれを事業主が調停を御願ひをすることがあらうし、勞資双方が生産管理を行ひつつ、やはり勞資双方が御願ひすることもあるかも知れませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=138
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139・吉武惠市
○吉武政府委員 只今松岡委員のやうに、生産管理は政府は認めないが、若しさう云ふものが起つた時に、それをどう云ふ風にするかと云ふ風な御尋ねかと思ひます、政府と致しましては、生産管理に付ては厚生大臣なり其の他外の閣僚からも御話致しましたやうに、是は正當なる爭議行爲とは認めませぬ、隨ひましてそれぞれ行ひましたものに付ては、或は必要に應じて取締るものがあれば取締りませうし、或は民事上の問題になる問題に付きましては民事上の手續を執る場合があらうかと思ひます、併し事實起つたものを違法だからと云ふことで、それに何等の手を觸れないで放つて置く譯に參りませぬから、解決出來るものは勿論委員會なり調停なりに依つて解決すべき努力を拂ふことは起り得ると存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=139
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140・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 そこで私はそこをすつきりとしたことにする必要があると云ふのであります、工場管理に類するが如き生産管理は一體私共は反對なのであります、生産管理に藉口して自分達が工場會社の資産を勝手に處分するが如きことは、是は明かに違法だと私共自身考へ、大いに愼むべきだと我我は仲間を制して居るのであります、一々申上げればきりがない、要は一定の限界を定める必要がある、今更否認されて居る後に於て繰返すやうでありますが、それを取消して戴かうと云ふのではない、此の種の問題の扱ひ方を先から申上げて居る通り、勞働組合法第十五條との關係に於て、是は非常に大切な問題でありますから、勞働委員會が個々にさう云ふ問題の成否を審査し得るやうなことに付ての道を開くと云ふことに付て御考慮願ひたいことを私は重ねて此處で質問ぢやなく申上げて、是で此の問題を濟ましたいと思ひます
次には補償基金の問題或は賠償清算處理の進行に依つて厖大な失業者が出ることは是は厚生大臣自ら明瞭に答辯されて居るのでありますが、今日でも既に數百萬の失業者がある、之を厚生大臣としましては、所謂三段構へで以て國家的な事業を大いに起して、それで其處に吸收する、それは、變に結構なことでありますから大いにやつて戴きたい、が、私が厚生大臣に御尋ねしたいことは、技術職工を、例へば開拓事業が行はれる、或は「ダム」が建設されるから其處へ君行つて一つ働いて呉れないかと言はれて、甚だ慣れない仕事であるけれども、我慢をしてやると言ふ、そこで大いに努力してやる人のあることも私は聞いて居りますが、それは國に取つても損であります、なぜかと云ふと、技術職工は技術で働くことの出來るやうに仕向けてやることが本當であります、機械職工などが「ダム」の建設なんかに出掛けて行つて、そして土工と一緒に働くなんと云ふことは成べく避けたいことであります、本人の生活の爲に同情を以て考へ、國の爲にも考へなければならぬことであります、そこで私の考へることは、是は何とか一つ勞働時間を短縮しまして、出來るだけ短時間勞働に於て大勢の者が交替して働くと云ふ必要があるのではなからうか、殊に一方生産機關が極度に燒き盡され、或は破壊されまして、何分の一かに減じて居る現状に鑑みまして、全然戰爭の爲に必要のものなんかは生産の必要もなくなつたのではありますけれども、さうでなくて、多々益益生産しなければならないに拘らず、生産の機關を失つて居るものもあるのであります、さう云ふ事實と關聯して、是は短時間勞働で、出來るならば其の少くなつた生産機關を「フル」に運轉して、さうして此の國民の間でもう喉から手の出る程欲しい衣料に致しましても、其の他の日用雜貨に致しましても、或は見返物資の生産等に於ても、生産を盛んならしめなければならないことは、是は私が喋々するまでもないと思ふのであります、そこで御尋ねしたいことは、或るものは六時間にして四交替制を執る、或は紡績工場の如きは、四交替制と云ふと深夜業になりますから、少年少女や婦人に深夜業をやらすと云ふ譯に行きませぬので、是は六時間で三交替にして十八時間、あと六時間深夜を控除することが出來るのであります、唯之をやれば色々と言ふべくして中々困難な交通機關のことなんかもありますし、或は深夜に通勤すると云ふことも困難であつたりなんかするので、寄宿舍の設備なんかも必要であることも考へられるのであります、私は成べく簡單にしたい爲に一緒に申上げますが、商工大臣の居られないことは甚だ遺憾でありますけれども、さう云ふ場合には本當に必要なものならば、國家が補助してさう云ふ施設をせしめても、短時間勞働の交替制を實施すると云ふことが此の際必要ではないか、私は唯勞働者の勞働時間を短縮したいと云ふやうなことの爲に言うて居るのではないのでありまして、失業問題の對策としまして、是は一應考へて貰つて宜いことではなからうかと考へるのであります、之に付て一つ厚生大臣の所信を伺ひたいのであります
次に、是はもう理窟張つて申上げる程のこともないけれども、一般失業者と云ふものは、勞働する能力と意欲と意思を持つて居る者で仕事を持たない者が失業者であることは言ふまでもないのでありますが、大臣は頻りに生活保護法のことを言はれるのである、私は今度の憲法と云ふものは、一體國民の中の勞働の能力がなくて、或は其の意思すらないやうな者に付ては、どうしても之を何とかして國が飽くまで負擔して、國の全負擔に於てでも、一般の國民は斯う云ふ者の生活を保障しなければならない、斯う云ふ精神が新憲法の精神だと私は考へて居るのであります、今日此の生活保護法なるものは、さう云ふ者を含めてそれから私が前に申上げたやうな、失業者の、働く意思もあれば能力も立派にある者もごつちやにしての生活保護法の適用なのです、何遍聽いて見てもさうなのであります、私は多くの理窟を言はうと云ふのではありませぬが、元來はさう云ふ者を一緒にすべきものでないことは言ふまでもないのであります、懶惰であるとか何とか云ふことでなく、年取つて働かうにも働けない人がある、併し日本の國民である以上は國家が其の生活を保障して差上げると云ふ精神の上に立つのが生活保護法であります、而も失業者は前に言つたやうな工合に、職業を求めても、又働く能力もあるけれども、職業はないのであります、それを今日一體二百五十圓程度で、我々が主張する所の失業手當と云ふものは一向御考へにならないで、それで宜いのであるか、生活保護法一本でやらうと御考へになるならば、仕事を求めて、さうして自分も失業者であることを登録したに拘らず、國家が責任を以て仕事をちやんと振分けて貰へぬと云ふ人に對しては二百五十圓以上のものを據出し負擔してやらうと云ふことになつて居るならば、法律は一本でありましても、さう云ふ取扱上の相違がある譯でありまして、失業者の問題の扱ひ方が稍稍正しいと云ふことに考へることも出來るのでありますが、厚生大臣の説明を聽いて居りますと、頻りに三段構へと言ひますが、失業問題に對しての三段構へとしては、私共にはどうも承服出來得ないものがそこにあるのであります
更にもう一つ、斯う云ふ機會に失業保險法なんかやると云ふことは、景氣の好い時に失業保險法をやつた方が宜い位のことは誰でも分り切つたことでありますけれども、幾ら不景氣でありましても、日本の産業が全部自滅するのではないのであります、一定の者は必ず職業に就くのでありますけれども、どうして努力しても就けない者が出來るのであります、政府が如何にどんな事業を始めるとか何とか言うて見ました所が、どうしても吸收し切らぬで殘される失業者がございます、さう云ふ失業者が現にあるし、而も今日此の一定量の者は職業に就きは致しまするが、一方既に今日存在する失業者があることから來る全體の失業の脅威と云ふもの、それが勞働者にどう云ふ心理的影響を及ぼすか、是は勞働者の生活に取りましての大なる脅威、極めて深刻な脅威でありますが、工場に現に勤務して居る者達には、失業保險の掛金位負擔する收入はあるのでありますから、さう云ふ者達に失業者の掛金を負擔させて、さうして將來どう云ふことがあつて、現に働きつつあつても失業すると云ふやうなことがあつた場合に保險の制度に於てやはり最低の生活が保障されると云ふことになつて居るならば、必ず是は今どうやら働いて居る人達に餘程の安心を與へることが出來るでありませう、一方から言へば、働いて居る人達が被保險者としてやはり或る程度に掛金を負擔することに於て、相互扶助の精神がそこに具現するのであります、縱令んば今日のやうな時にありまして、保險した初めから直ぐさま保險經濟が樂になると云ふやうなことはないと假定致しましても、是は國家がやると云ふのでありますから、赤字になつたつて宜いのぢやないかと私は思ふのであります、極端に言へば借入金で經營して行きましても、將來失業者が段々出なくなると云ふことになるならば、其の時に保險經濟が段段と確立されて參りまして、投資したやうなものでありまして、其の赤字は軈て消すことが出來るでありませう、保險經濟だからと云つて、何も十年間失業者が出ないやうな時に於て保險を始めて、基金が出來たから大丈夫だ、さう云ふことでなければ失業保險と云ふものは出來ないのだと云ふやうな考へ方は、往々にして議論をするのでありますけれども、私は間違ひぢやないかと思ふ、或る一定の期間は赤字で經營しても、今日の場合に於て失業保險法と云ふものを實施される所の重大な意義があるのではないか、私は斯樣に考へるのでありますが、之に付ての厚生大臣の御所見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=140
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141・河合良成
○河合國務大臣 松岡君の御質問に御答へ致しますが、第一の技術職工の點に付きましても、是は御尤もでありまして、今度の計畫に依つても知識階級の失業に準じまして、何とか此の技術職工に付て特別の方法を執つて行きたいと云ふ考へは實は持つて居るのであります、それで工場「アパート」のやうなものを先づ作りまして、そして出來るだけ技術職工の技術に對する場所を與へると云ふやうなことなども、一應の考へとして考へて居る譯でありまするが、其の外御示しの通り、時間短縮の問題と關聯して是も考究しなくちやならぬと思つて居ります、唯やはり御話の通り單純に時間を唯詰めて、仕事は一つのものである、其處へ勞働者を唯餘計入れると云ふことは、是はもう出來るだけ避けべきことでありまして、どうしてももう少し積極的増産と云ふことを育まして行かなくちやならぬ、それには何交替と云ふやうな問題なども茲に出て來る譯でありまするが、不幸にして問題は原料の問題、資材の問題と云ふ點を考へなくちやならぬ、特に原料の問題を考へる必要がありますので、まあ例へば棉花に致しましても、もつと餘計入つて呉れますれば、色々是は手もありませう、併し棉花も餘計入らずさうして紡績の機械の能力も一定の能力しかないと云ふことになると、茲に交代制度の問題も起きて來る、さう云ふやうに問題を、總て現實に即して解決して行かなければならぬのであります、又如何にして原料を餘計貰ふかと云ふ點に付ても、一段の努力を致さなければならぬ問題であります、色々さう云ふ點に付ても考へて居ります、併し是は主として商工大臣の分野のことでありまして、私から餘り詳しく申上げる知識もありませぬが、大體私共もやはりさう云ふ線に沿うて物を考ふべきものである、御趣旨の點は商工大臣にも傅へまして、出來るだけ考慮すべきものであると云ふ風に考へて居ります
それから其の次の問題は生活保護法の性格から見て、働くことの出來ない寡婦とか、孤兒とか、或は怪我をした人とか、又働くことの出來ない「デイセーブル」と申しますか、さう云ふ人を目標としたものであらう、所が失業の問題とそれを絡んで、何か失業の第三線として之を考へて居るではないか、それがどうも趣旨が通らぬと云ふ御話、御尤もであります、其の通りであります、是は私共もやはり成べく狹く解するのか生活保護法の目的とは思ひますけれども、今度起きます失業の問題は御承知の通り急に起きた問題であります、それで其の次に申します失業保險制度其の他のことはまだ出來て居ないし、殊に失業手當と云ふことになりますと、是は非常に財政上の負擔も大きくなります、又中々今日さう云ふことで問題が解決が出來るかと云ふと、「インフレーション」の問題もありますので、まあ謂はば一寸折衷的の考へを之に入れて居ります、それを御指摘になつたのでありますから、論理としましては明白を缺いて居ることは御意見の通りであります、併しながら御質問題としましては、先づ東京で五人家族に──五人家族と云ふのは、三十一歳の寡婦が六十の親、六歳、三歳、一歳の三人の子供を持つて、其の食糧を中心にした「カロリー」などを考へて三百圓として居る譯でありまして、是では足らぬのです、足らぬから、餘程足らぬ場合には又何とかそれを考へなくちやならぬ、彈力は持たしてありますけれども、併し又失業の人にしても、一家全體失業して居る場合もあれば、さうでない場合もある、何とか親戚交友の關係もあらうと云ふことで、兎も角五人家族で三百圓と云ふことになりまして、正確な失業保險とか、失業手當とか云ふことには行かぬでも、幾らか相當の助けになるであらうと云ふ意味で、是も失業對策の第三線と、事實の働きから考へて戴きたい、一面に於ては國家財政「インフレーション」などの問題を頭に置いて、斯う云ふ政策働を執つて居ると云ふことを特に御諒承願ひたいと思ひます
それから第三番目には失業保險の問題でありますが、是は少し日本の事情の變化を俟ちまして、是非之を實行したいものだと云ふ意味に於て、調査を進めて居りますが、是は結局社會補償或は完全雇傭と云ふやうな線に沿うた問題を裏付けとして、どうしても斯う云ふ問題を考へて行かなければならぬのだと云ふ考へで居ります、唯時の問題でありまして、やはり御指摘の如くに、私も保險をやつて保險の算盤は存じて居りますが、今一番惡い時に之をやりますと、保險受取者ばかりになつてしまひます、さうして結局國家が全部負擔しなくちやならぬ、是は借入金にしても、何にしても國家の負擔になりまして、國家の財政なり「インフレーション」に非常な拍車を掛けることになります、やはり中々そこまでは行かぬ、失業保險として起すには、やはり之を「スタート」する時を選ぶ必要があると云ふ風に考へて居りまして、まだ時期が早いのぢやないかと云ふ氣持を持つて居ります、併しながら其の時期の問題如何よりも、調査が完全に行つて居らぬ、案が立つて居らぬと云ふことが最も重要な問題であります、左樣御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=141
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142・松岡駒吉
○松岡(駒)委員 商工大臣が居られないので甚だ殘念ではありますが、實は原棉の問題の如きは、今日の日本の紡績の錘數を以てして、輸入される原棉をこなすことが出來るか出來ないか、甚だ疑問な現状にあるのであります、而も戰爭中勞働時間を餘りやかましく監督されなかつたせいで、隨分此の頃諸方に於て亂暴なことが行はれて居るかのやうに私共は耳にして居るのであります、一方豫想以上の原棉の輸入が許されて居る、さうしてそれだけの物を或る部面に於てはこなさなければならない責任を持つて居ると云ふことと、それから勞働時間に付ても餘り嚴重な監督が戰爭以來ないと云ふやうなことから致しまして、いたいけない子供達に、相當無理な長い時間を働かして、深夜業に近いやうなやり方をやつて居る所もあるのであります、さう云ふ點から私は先刻申上げたのです、短時間勞働の三交代制と云ふことも申上げた譯でありまして、此の點は産業行政の方ではないに致しましても、産業政策的に重要な問題でもありますし、尚ほ厚生行政としましても、言ふまでもなく是は厚生大臣に取りまして重大な問題だと思ふのでありますが、成るべく勞働時間を短くして、多くの人を吸收して失業者をなからしめる一助にしたい、而もそれが産業政策上亦大切な問題の一つではないかと云ふのであります、殊に原棉の如きは、只今私が申上げた通りの現状にあるのでありますから、特に其の點の御考慮、研究を望んで巳まない次第であります、私の聽きたいことはまだ實はないではありませぬが、餘り遲くなりまして、まだ原君の御質問もあるやうですから之を以て打切ることと致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=142
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143・逢澤寛
○逢澤委員長 中原君に御伺ひしますが、あなたはまだあると云ふやうな御話でしたが、極く簡單でしたら許しますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=143
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144・中原健次
○中原委員 私實は昨日散會の時に、政府か事務局の人に、首相又は首相がいけなければ首相を代理し得る國務大臣竝に商工大臣、司法、内務、厚生大臣、斯う云ふことを申入れて置きました、又本日も早朝早速繰返して此のことを申入れたと思ひますが、委員長の取計ひに依りまして、商工大臣の顏だけは見たのでありますが、まだ他の方の發言中でありましたので、遠慮致して居りました、其の間に何時の間にか姿を掻き消してしまつたのであります、特に私が御尋ね致したいと思ひます重要な對象は、商工行政を擔當する商工大臣であるのでありまして、其の商工大臣が出て來ないことになりますと、質問が可なり中途半端なものに相成るので、甚だ遺憾に思ひます、少くとも委員の質問の申入れに對する政府當局の態度としては、甚だ遺憾であると云ふことを、私申上げて置きたいと思ひます、併し折角御好意に依りまして、僅かの時間で宜ければ許すと云ふことでありますので、甘えますやうでありますけれども、私共此の生産管理に關聯致しまして、是非とも商工竝に厚生兩當局の御意見を承りたいと思つて居りましたので、跛行的な妙なことになるかも知れませぬけれども、取敢へず厚生大臣がおいでになりますので、厚生當局に對する質問を極めて簡單に──私の構想から申しますと一時間以上掛かりますが、十分程で切上げる程度で致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=144
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145・逢澤寛
○逢澤委員長 五分か十分で御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=145
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146・中原健次
○中原委員 只今も生産管理のことに付きまして、先輩松岡氏との間に相當込入つた質疑應答が繰返されたのでありますが、此の生産管理の問題に付て唯一點だけ竝に摘出致しまして、厚生大臣の御所見を伺つて置きたいと思ひまするが、厚生大臣は企業權と勞働權をはつきりと區分を致したい、此の區劃に立つて物を考へて行くのであると云ふことを屡屡繰返されたと思ひます、成程一應論理的にはさうでもあるかのやうに考へられるのでありますが、今日の段階から申しますると、先づ目標は生産の増強、日本の再建の爲の經濟の興隆、斯う云ふ目標に集中されて總てのことが考へられようとして居る段階であると思ひます、其の場合に、企業權が或る特定者の私有物として、私有財産として考へられようとする強い傾きは、果して妥當であるかどうか、勿論私有權を否定するものではございませぬが、其のやうな目的も、其のやうな方向を認識する今日と致しまして、唯獨り遮二無二一途に企業權に重點を置いて、之に關聯する一切のことを取扱ひ、考へようとする行き方が果して妥當であらうか、果して妥當であるならば、其の妥當な根據を明かにされたい、斯樣に思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=146
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147・河合良成
○河合國務大臣 是は端的に申しますれば、物を平面的に考へまするのと、立體的に考へるのとの間の區別がありまして、是は現下の日本の法制で、之を法律問題として處理致しますには、自他の區別と申しますか、私有財産權の尊重と申しますか、と云ふことで、そこへ線を引かなくては物の秩序が立つて參らないと云ふことであります、隨て其の根據は憲法にもありますれば、それから今度の改正憲法にも出て居りまするし、それに基く色々な法令、刑法にも出て居りますれば、民法にも出て居る、又改正されるそれらの法律にも當然出ることと思つて居ります、さう云ふ風に根據はあると思ひます、併しながら之を立體的に考へる、立體的にと申しますのは將來是はどう云ふ傾向を持つであらうか、斯くあつて欲しいとか、斯うあるべきものだと云ふやうな一つの將來性と云ふもの、時と云ふものを入れて縱に考へますならば、是は色々の議論が立つと思ふのであります、そこで是は平面的の法制の制度が變らぬ以上は、やはりさう云ふ立體的に對する希望と雖も、理想と雖も、それは契約に依りますが、相手方の承諾に依りますか、さう云ふ問題がそこに編込まれて來ると云ふ風に私は考へて居りまして、さう云ふ傾向が強くなつて、社會の形勢として、其の線を或る程度まで超えることが認めて宜しいと云ふ社會情勢になりますれば、自ら法律も變つて來ると云ふことになり、國の性格が變つて來るかも知れないと云ふやうなことは、將來それはあり得るかも知れませぬ、併し今の今、今の法制の下では斯う解釋するより外に仕方がないのだと云ふ風に説明を申上げたい、私はさう云う風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=147
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148・中原健次
○中原委員 立體的に物を考へると、色々な見方もあると云ふ御言葉でありましたが、勿論今日我が日本の状態は、平面的に、一方的に、固定的に物を考へてやつて行くやうな場合ではないのであります、此の際靜かに目を四方に擴げて見ますると、日本は今や全く油斷の出來ない重要な轉機に立つて居るのでありまして、日本を今後如何に再建するかと云ふことに付ては、最早從來の慣習を其の儘固執し、從來の形式を其儘に繰返して行くことが、必ずしも此の日本の状態に即應する行き方ではないと云ふことは言へると私は思ひます、隨ひまして、今大臣は、時代に依つて、立體的な物の考へ方に依つて解釋も決めなければならないこともある、さうなつて來れば過去のことは、過去として、さう云ふ情勢に即應して法律の改正も見るに至るであらうと言はれましたが、私は寧ろさう云ふ時が今や來て居るのではないか、其の大英斷に依つてこそ、初めて徹底的に破壊し盡されました日本の再建への方途が立つのではないか、斯樣に思ふのであります、隨ひまして一人の企業者が、それが現在の場合から申しますと、國家再建の爲に絶對必要な企業でありまするならば、其の企業は特定個人の營利を追求する爲の企業と考へるのではなくて、國家再建の爲に動員さるべき筈の企業である、斯う云ふ解釋が先づ必要になつて來ると思ひます、さうであるならば、此處へ若し勞働階級の爭議が起つたと致しまして、其の爭議の手段が、若し是が何分か公共性を持つ場合には、只今の此の法案に依つて相當拘束されるのでありますが、何れに致しましても勞働階級は今や殆ど爭議の手段を否定され、法律的に之を拘束されようと致して居る、此の時に方りまして、それでも國家の目的に副ひながら爭議行爲に入ると云ふことの唯一つ殘された、而も實に機宜を得た爭議手段である生産管理、此の生産管理が私有權を、或は企業權を侵犯するからいけないと云ふやうな單純な物の考へ方に依つて、否認し盡されて行くと云ふことになりますと、勞働階級は實際は國家の再建に應へつつ自分の要求を少しでも貫徹する爲の手段を奪ひ去らしてしまふのであります、さう云ふことに對する考慮は、少くとも國家を全面的に心配する當局でありますならば、御考慮に相成るべき筈のものであると私は考へるのであります、然るに、之を唯遮二無二一方的に考へて、所謂政府の聲明に依る如くに妥當なることでなくして、即ち生産管理否認と云ふ絶對的な方針を以て押切り、推進めんとして行かれると云ふ態度は、餘りにも反省がなさ過ぎると私は斯樣に思ふのであります、偶偶先程司法大臣の言葉の中に、其の生産管理の事情に依つては、必ずしも其の生産管理を全面的に取締ると云ふ考へは持つて居らない、是は速記録に載つて居ると思ひまするが、私は其の通りを書いたのであります、生産管理をやつたからと云つて直ぐに取締る考へは毛頭ない、生産管理を虱潰しにして行かうと云ふやうな考へは毛頭持つて居らない、唯暴力を伴ふやうな場合が來れば斷乎取締る、斯う云ふやうなことを言はれたと思ふのであります、是は速記録に明かでありまするが、是は木村法相の所謂良心的答辯でありまして、私木村法相に對する認識を新たに致しまして、其の人格の高さに敬意を感じました、大體此のやうな方針がどのやうに獨斷されようとも私は現在の時局の我が日本に於ける状態の客觀的な諸情勢を具さに考へまするならば、生産管理と云ふ此の事柄に對して、之を全面的に否認すると云ふ態度は決して機宜を得た態度ではないと云ふことを繰返し申上げて置きたい、勞働組合は生産管理を行ひまする場合に、必ずしも當局竝に資本に協力する人々の考へまするやうに、所謂秩序を紊亂し、徒らに企業權を侵犯するやうなことをするのではない、唯其の企業内に於て、其の企業内に動員されて居る勞働者が其の組織された組織體を以て便宜的に、一時的に其の目的貫徹の爲にやられた所のたつた一つの殘された手段であるのであります、隨ひまして勞働組合の健全なる發達を冀ふと云ふことが眞實でありまするならば、此の問題に付ては十二分に其の研究がなされたい、現在の政府並に其の方針に協力する一切の諸君は、此の問題に付ての一方的な考へ方からだけではなく致しまして、所謂獨斷からではなく致しまして、飽くまで淡々たる氣持で國家の再建に燃える熱意を以て、此の問題は十分御檢討願ひたい、さうして我が日本の民主化の爲に、勞働階級を眞實に飛躍させしめるやうに御考慮が願ひたい、私は此の點に付て敢て次の答辯を求めようとは考へませぬ、此の點に付て答辯を重ねて聽くと致しますならば、少くとも一時間の時間を要するのでありまして、其の一時間の時間を要せざる限り、當局の次の答辯は必要と致しませぬ、隨ひまして此の點は私の希望と致しまして一應御忠告を申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=148
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149・逢澤寛
○逢澤委員長 原君に發言を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=149
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150・原侑
○原(侑)委員 私は先般委員長に申上げました通りに、各委員が多數ありますので、時間を守つて各政黨とも要を得て質問致す事が必要である、而も國策的な部分を率直に質問すべきものと私は考へて居つたのであります、然るに入れ代り立ち代り殆ど社會黨の方に質問を許されました、是は委員長が野黨である社會黨の御共鳴を得て、何とかして此の法案を通さなければならぬと云ふ一つの方策でもあるやうに見受けられるのであります、又同時に一般から見ますれば、此の社會黨の方は勞働問題に對しましては長い間の御經驗がありますので、私は簡單に二十分の間に御質問を切つて戴き、同時に大變御疲れになつて居るやうでありますので、厚生大臣もはつきりした答辯を簡單に御願ひしたいと思ふのであります
第一は何と言ひましても、誰も是は質問して居ないのでありまするが、一體政府當局はどう云ふ主義とどう云ふ思想とどう云ふ態度を以て勞働問題に臨んで居るのか、之を私は質問致したいのであります、御存じの通りに主義と致しましては共産主義、社會主義、自由主義、他の人達に言はせるならば所謂自由主義は資本主義だと言ふ人があるのであります、我々は自由主義を以て立つて居る自由黨でありまするが、所謂修正資本主義を以て將來進みたいと思つて居ります、同時に高度の社會政策を以て進みたいと考へて居るのであります
第二は思想でありまするが、御存じの通りに二十世紀までの歐洲の状態を見ましても、自由的民主主義思想を以て立つて居るのであります、現在ありまする平等民主主義思想を理想として今日進んで居りまするが、我々は民主主義思想に於きましても、日本に於ては搖籃期だと思ふのであります、此の自由的民主主義思想に依つて、我々は今次の日本を進めて行きたいと考へて居るのであります
態度に付きましては御存じの通りに反動であるとか、保守であるとか云ふことを言つて居ると思ふのでありますが、我々は反動でも保守でもないのであります、民族將來に對する自由解放を叫んで居るのが我々の態度であると云ふことをはつきり致したいのでありまするが、政府は此の點に對して如何なる態度思想及び主義に於て、將來勞働運動を御扱ひになるか、此の點を御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=150
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151・河合良成
○河合國務大臣 日本の國の現状に照しまして、國を擧げて國家再建に向つて行かなくてはならぬのでありまして、只今の主義、思想、態度と云ふ問題に付きましては、大體原君の御主張の通りに考へて居りますが、引括めて申しますと是は私の考へでは日本再建主義とでも申しますか、そいつが一番締括つた所そこへ向つて行くと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=151
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152・原侑
○原(侑)委員 今の御答辯に對しましては難しうございませうし、言ひ難いのであるからそれを以て私は滿足致します
第二は勞働運動が經濟交流に對して寄與する、之を主體に致すか、或は人格權の向上を主體に致して經濟社會的或は政治的、文化的向上を促すかどうか、勿論經濟交流に寄與することを以て主體にせられて居りますが、現時の此の勞働運動の實情を見ますと、一種の政治的な運動化しまして、經濟の交流に豫期せらるるが如き運動をなして居る點があると思ふのであります、此の點に對して政府としては將來政治の上に考慮致さなければならぬと云ふのが大きな原因をなして居やしないかと思ふのである、それから御存じの通り三月には三千七百四十六組合、百六十萬九百八十五人でありましたが、四月の末になりますとそれが七千三百組合になり、二百七十萬の勞働者の數になり、七月に至りまして三百萬人の勞働攻勢を今日執られて居るのであります、過去に於きましては資本攻勢であつたが、御存じの通りに財閥が解體する今日は寧ろ勞働攻勢に變りつつあると思ふのであります、資本攻勢と云ふよりも勞働攻勢を執りつつあると云ふのが今日の實情であります、此の重大なる組合組織及び勞働者の自覺に基くか基かぬかは別と致しまして、勞働組合が出來、今日までの勞働運動の經過を見ますと、私は荒畑氏が言はれるやうに外國で見られるが如き勞働運動でなく致しまして、洵に地に着かざる勞働運動の姿を私は今日見て居るのであります、其の一つは御存じの通りに總同盟の松岡氏が此處に居られまして、比較的長い間の御經驗を持たれて、「アメリカ」の總同盟に於ける所の姿は私は是は妥當だと思ふのでありまするが、勞組及び今日産別の勞働運動に對しまする指導者が、所謂一つの思想の上に立つて地下工作をなし、地下運動を以て終始致して居ると云ふ實情を私は見ざるを得ないのである、此の「フラクション」組織に對する將來の勞働問題に對しましては十分我々も監視致しまするが、政府當局と致しては之に思ひを深くせらるる必要があると思ふのであります、質問の第二點と致しましては、此の政治進出をなしつつある地下工作に對して政府は如何なる對策を持つて居るか、之を私は御質問したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=152
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153・河合良成
○河合國務大臣 勞働組合が主要目的を離れて餘りに政治運動化することは好ましくないことだと思つて居ります、併し政治運動に關係することを取締る考へは持ちませぬ、尚ほ少數の者は特に利己的考へを持ちまして多數を巧みに指導して行くことは「デモクラシー」の本體ではなからうと云ふことに於て好ましいものとは考へて居りませぬ、又只今御指摘のやうな色々の運動に對しては、一面に於て憲法に保障せられた思想の自由と云ふ點は、今度終戰後日本の國が「デモクラシー」にすつかり變つてやつて行く上に於て最も尊重すべき所であり、是は徹底的に守つて行かなくてはならぬことであります、色々政治運動の實際の面にどう云ふ問題が起き、それにどう云ふことが起きるか、それに對してどう云ふ取締方針を採るかと云ふ御質問に對しては色々具體的な場合でないと申上げ兼ねますが、大體に於て思想の自由と云ふことの憲法上の精神を尊重すると云ふことを前提として適當の措置を採つて行くと云ふことより外に申上げやうがないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=153
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154・原侑
○原(侑)委員 第三は失業者の問題でありますが、之に付ては前委員から御質問がありましたから私は唯一點希望として申上げて置きますが、金をやれば何とか一時事が收まると云ふ失業者對策は止めなければならぬと思ひます、今日失業者になつて居る海外同胞引揚者にしても、其の他我が民族の血の通ふ人達の中に於ては、金を貰つて其の日の生活を弄ぶと云ふ觀念の者は比較的少いのでありまして、働く職を與へて貰つて生きて行きたい、斯う云ふ觀念を引揚同胞者も其の他の失業者も持つて居ると思ふ、同時に引揚同胞者は特に長い間海外に於て命を的にやつた人達であります、此の人達の意氣を買ふべきものは此處にあります、唯千圓やるとか三百圓やるとか云ふことのみに依つて失業者問題が解決すると云ふ感じを全面的に捨てられて、生きた人間を如何にして指導するか、此の精神を如何に昂揚するかと云ふことに是非御著眼を願ひたいと思ひます
第四は勞働委員會でありますが、中央勞働委員會を見ますと御存じの通りに中立、使用者、勞働者の中には殆ど松岡さん、西尾さん、荒畑さん、徳田球一君まで入つて居ります、はつきり言ひますと勞働者の本當の代表者であれば別でありますが、寧ろ政黨代表者を出して居ると云ふやうな感が私は深いと思ふ、此の第八條に「各各の過半數の同意がなければならない」と云ふことが書いてありますが、「各各の過半數」と云ひますと、勞働者の代表者も過半數、中立も過半數、使用者も過半數である、私は此のやうな條文を初めて見た、恐らく多數決と云ふことになると、十五人であれば七人、八人に分れる、奇數になつて居る、どこの條文を見ても「各各」と云ふやうな協議體は初めて見る、此の「各各」を取る必要があるやうに考へる、恐らく斯の如き状態では纒まりにくい、全部が賛成しなければ出來にくい状態になつて、中々決議がむづかしいのではないかと思ふ、此の點に付て御答辯願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=154
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155・河合良成
○河合國務大臣 第一點の失業者に對する御注意、御希望は御尤もでありまして、御話の通り、日本人は唯金を貰ふと云ふことで滿足する國民ではありませぬ、どうしても働きたいと云ふことを熱心に希望して居る國民でありますから、其の線に沿つてやつて行くことに出來るだけ注意致します
次の問題は勞働委員會の第八條第三項の過半數と云ふ問題でありますが、御話の通り勞働委員會の集團的の意思を茲に一つとして認めながら、更にそれを三つの「フラグメント」に分けて、其の「各各の過半數」と云つたのは形の上に於てはどうも意思の分裂を來したやうな外見のあることは御話の通りであります、一寸立法としては珍らしい立法だと云ふ風に考へます、併しながら是は物事を愼重にする必要で、特に斯う云ふ方法を取つたのでありますから、其の點御諒察願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=155
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156・原侑
○原(侑)委員 第三十八條でありますが、團結權を持つたけれども爭議權を持たないと云ふ官吏に對して、教職員に爭議權を與へながら、官吏に之を與へないと云ふことは撞着も甚しいと考へる、併しながら全文を見て主體になるのは何處かと思ふと、是が分れる所である、どうしても爭議權を與へることが出來なければ、他に方法を何か考へようと云ふことでは、私は駄目だと思ふ、どうしたら宜いかと云へば、斯うしたらどうかと考へるものを申上げて置きたい、内閣に生活を保障し裏付ける委員會を作る意思があるかどうか、各省に於ける團結權を持つた代表者及び第三者其の他に於て首肯せらるべき委員會を作りまして、爭議權の代りにする、其の意思が政府にあるかどうか、是がなければ、恐らく爭議權を要求することは當り前だと私は考へる、此の點に付て厚生大臣のはつきりした御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=156
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157・河合良成
○河合國務大臣 教職員と官吏との區別を致しました所以は、前に御説明申上げた通り、官吏が「ゼネスト」をやると、國務が停滯して、政府の運命に係はると云ふことに直ぐなつて來る、併しながら教職員の「ストライキ」は好ましいことではないが、それをやつたと云ふことで、直ちに國務の停滯にならぬと云ふことに區別を求めまして是が教職員を書かなかつた意味であります、官吏の生活保障の問題に付て委員會を設けるかと云ふ御説でありましたが、此の點は官吏の「ストライキ」を禁止致しました以上は國民全般に政府は生活保障の責任を持つて居るとは申しながら、特に爭議權のない官吏に付て考へて行かなくちやならぬと云ふことに付きましては深く考へて居る點でありますから、何等かの方法に依つて御考へのやうな線に沿うたことをやりたいと云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=157
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158・原侑
○原(侑)委員 あと三分ございまするからもう一つ申上げて置きます、生産管理の問題でありまするが、是は松岡先輩が言はれるやうに、所謂生産「サボ」及び生産逃避と言ひませうか、さう云ふ状態が起つた時に於ける勞働者の立場、生活權の擁護と云ふものに對しましては、私は生産管理に對する所の同情を禁ぜざるを得ないのであります、併しながら之に對して司令部から七月十六日でありまするが、生産管理は財産の占守占有であり、事實上の無償沒收に外ならず、財産權に關する法律、即ち正當な補償なくしては財産を押收し得ずと云ふ法律を蹂躙するものである、我々の知る限りでは世界の如何なる國に於ても財産の無償沒收を許す規定はない、「ソ」聯に於てすら斯かる規定があり、或は許容されて居ると云ふことは恐らくないと思ふと云ふとを司令部がはつきり言つて居るのでありまするが、此の線に沿つた生産管理の否定であるかどうか、或はそれ以外に或る程度を認めて、何かの方法に依つて生産管理と云ふものを認めるかどうか、此の點に付きまして質問をしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=158
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159・河合良成
○河合國務大臣 其の司令部の發表の趣旨の通りに政府として考へてやつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=159
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160・原侑
○原(侑)委員 二十分參りましたから御約束に依つて質問を打切ります、私は二時間でも三時間でも質問すべき材料を持つて居るのでありますが、最後僅かに二十分間に御質問をしまして、唯一つ滿足に感ずるのは、官吏に對する生活保障をする所の委員會を作つて戴きたい、其の線に沿ひたいと云ふ所の御意見に對しまして洵に滿足する所であります、是を以て私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=160
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161・逢澤寛
○逢澤委員長 此の際委員諸君に御諮り致しますが、委員外の布利秋君から質疑が致したいとの旨の申出があるのであります、併しながら既に時間も非常に經過致して居る時でありまするから一應の御斷りは申上げたのでありまするが、唯時間が二分か三分と云ふやうな申出でありまするので餘り短時間のことでございまするし、折角の御申込でありまするから皆さんに御諮り致します、如何でございませうか──それでは布さん、約二、三分の豫定で御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=161
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162・布利秋
○布利秋君 最後の委員會と聞きましたので、一寸述べさして戴いて賛否を決定させて戴きたい、私は制度と義務と云ふ問題に付て二分間だけ觸れたいと云ふ譯であります、第一としましては、外國の「ストライキ」を平面的に御研究になつて詰り制度のみを御研究になつて、實際的な「ストライキ」の現状、其の状態を平面的に立體的に御研究になつて居つて、さうして此の法案が出來たのであるか、先づ私の意見として述ばますと、詰り外國の工場では、特に「ストライキ」の模範的なるものは「アメリカ」を措いて以外に現状に於てはない、して見れば、勞働者が働きます時には話さない、煙草を喫まない、油を賣らない、絶對的に勞働の時間だけははつきりと守るが、時間が來たならば一秒を問はず引揚げると云ふ組織ある正しい勞働の状態を審さに河合さんは御究研になりましたか、さうして此の勞働法案を作り出さうと云ふ氣持が出たのですか、それから「ストライキ」と云ふ命令の下る時を屡屡見て來ましたが、一つの暗號が出ますれば、自分が機械の場所に居るとすれば、どんどん仕事をして居る時に汽笛が鳴れば、其の時に若し「ハンマー」を持つて居るとしたら、時間限りばつたり落してしまつて置く、さうして油を後から拭いて行くと云ふこと、如何に忠實に機械に對して自分の生活を維持する「パン」であると云ふ上からして、此の機械を守つて行くと云ふ義務的觀念を御研究になつたか、器物を愛すると云ふことは詰り自分の生命であると云ふ建前から出て居ると私は見る、あと一點、「ストライキ」になりますと、實に秩序整然たるものがある、亂暴をしない、歌だけは唱ひます、斯うしたことを能く御考へになつて一體此の法案を作らうと云ふ所に立至つたものか、勞働と資本と云ふものがどうも日本には餘りにどちらも封建的であるやうな感じを私は受けます、お互ひに讓り合はない、そこに教育の差があると思ふ、「アメリカ」の教育と云ふものと日本の教育と云ふものに差がずつとあつて來ましたから、「アメリカ」人は自主的に建前を置いて決して煽動に乘らない、他人がどう言ふから俺は煽動されると云ふことは敢て自らを辱しめるものとして居る、日本の場合は一體厚生大臣どう御考へになるのですか、さう云ふ建前を十分に御考へになつて、さうして是が一番良い法律であると云ふので立案されたのであるか、質問だから斯う云ふ風に申上げるのですが、それで私の最後の一言は、協調してでなければどうしても日本の再建は出來ないものだと思ふ、それで是だけのことを丁度二分半言はして戴いた、御約束通りの時間が來ましたから止めますが、若し出來ますことならば河合厚生大臣はどの程度の研究がされて居つたか、君よりももつとして居つたと仰しやるなら一つ仰しやつて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=162
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163・河合良成
○河合國務大臣 私は古く「アメリカ」に參つて、「アメリカ」の工場を見たこともあります、それから多少「アメリカ」の本を讀みまして「ストライキ」の状況などを書物で見たことがある程度でありまして、斯う云ふ問題に對して今御尋ねのことの自信を持つた人間ではないのであります、併し此の法律はずつと前から色々專門家に依つて研究されまして、役所にも隨分分つた人が澤山居りまして、さうしてそれでずつと築き上げた儘此の現内閣になりまして引繼いで茲に提案した意味でありまして、私は極めて淺いですけれども、全般に付いてさう云ふものを能く考へて、日本の國情に合はせて作られた法律なりと信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=163
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164・逢澤寛
○逢澤委員長 是を以て本案に對する質疑は終了致しました、討論採決の日時は追つて公報を以て御知らせ致します、委員各位竝に政府當局は連日に亙り、且つ長時間に亙りまして御努め下さいましたことに對して茲に厚く御禮を申上げます、本日は是にて散會致します
午後七時五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013756X01019460806&spkNum=164
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