1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
○皇室典範案
―――――――――――――――――――――
昭和二十一年十二月十九日(木曜日)
午後一時十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=0
-
001・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 只今から委員會を開會致します、第二章に關する御質問、渡部信君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=1
-
002・渡部信
○渡部信君 第十一條に、今度は年齡十五年以上の内親王、王子は其の意思に基いて皇族の身分を離れることが出來る、此の規定は現在のに較べますと、非常に範圍が擴まつて居ります、現在は御承知の通り、五世以下の王だけでありますけれども、今度は女王が入つたばかりでなく、内親王、二項を見ますると、親王も場合に依つては皆降下する、非常に降下の範圍が擴まつて居ります、少し廣過ぎはしないかと思ひますが、殊に斯う云ふことを伺ひたいのであります、天皇の直系の方で三世の方は王になりますが、其の直系で、而も稀有の場合かも知れませぬが、皇太子、皇太孫ともいらつしやらないで、王だけ御在りになる、其の方でも、其の自由意思に依つて身分を御離れになられると云ふ規定のやうでありますけれども、却つて親王であれば、叔父さんでも、從兄弟でも、甥でも、親王と云ふ形があれば、勝手にいけないのですが、王であれば、實際上の皇太孫と言へるか、言へないかと云ふ問題は別と致しまして、實際上の皇太子、皇太孫である方でも、身分を離れることが出來ると御決めになつた理由を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=2
-
003・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 十一條の規定を設けたことは成る程現在の典範よりも皇族の身分を離れられる範圍が擴まつて居ります、擴まると云ふことには相當の理由があるのでありまして、元來皇位繼承の趣旨に顧みまして、皇族の範圍を定めまするに付ては、餘りに其の範圍が廣くならないやうに注意することが正當であると存じて居りまして、例へば現在の有樣は、明治の皇室典範の決定に據つて居る譯でありますけれども、併し過去の色々な沿革をも踏襲して居ることと考へて居りまするが、御參考に供しました所の皇統譜の略のもの等を見ましても、今から六百五十何年、凡そ七百年前からして、御分れになつて居る方と云ふのが、當然に皇族の範圍としておいでになるのでありますが、詰り斯樣な考へ方は、如何にして適當に調節することが出來るかと云ふことを相當深く考へる必要があると思ふのであります、從つて今囘の典範に於きましては、皇族の範圍は永世皇族の原理を執つては居りまするけれども、併し今の皇位繼承の正統なる範圍を越えて、皇族の方が多く御在りになると云ふことの不適當なる場合のあることを考へまして、皇族の身分を離れる場合を擴張致した譯であります、從つて第十一條の第一項の場合が、ここに現れた譯であります、今仰せになりました直系の方であつて、而も其の王であるやうな方が、此の第一項に當るのではないかと云ふ御尋がありましたが、極く稀有なる場合を想像致しますれば、論理的には左樣なことが起らうと思はれるのであります、併しそれは恐らくは割合に珍らしい場合に屬するのでありませう、固より絶無でありませぬけれども、珍らしい場合と存じまして、例へば今迄でも皇太子、皇太孫と云ふ言葉がありますけれども、それから先の言葉は、例へば皇太曾孫と云ふ言葉は生れて居りませぬ、大體其の思想を調節致しまする時に、第十一條の第一項のやうな風にして思想を調節致しまして、若しもそれが不適當なる場合がありますれば、皇室會議が適當に此の判斷を下すものであらうと、斯樣な考へ方に依つて來て居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=3
-
004・渡部信
○渡部信君 皇室會議と云ふものがありますが、さう云ふ實際上の皇太子、皇太孫に當るやうな方の皇族の身分を御離れになると云ふことは、皇室會議で廣くされると言ひますか、さう云ふことになるかと思ひますが、制度の上で親王と云ふ名前ならば、從兄弟でも、叔父さんでもいけない、王であれば直系の方でも御離れになつて宜しいと云ふことを御設けになつた理由が、今伺つては其處迄行くことは、廣過ぎやしないかと云ふ感じが致しますが、皇室會議と云ふものを制度として許してありますが、皇室會議を相手にすると云ふことはどうであらうかと思ひますが、一應其の點はそれで止めて置きます、第十條の是は別に質問と云ふ譯でありませぬが、第十條に依りますと、今迄は皇族の降下は皇族と華族に限つて居りましたが、今度はさう云ふ制度がありませぬから、外國人との婚姻でも御許しになると云ふことに、是も皇室會議とありますが、外國人との婚姻でも理論上は今度は御許しになると云ふ意味でございませうね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=4
-
005・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 條文の解釋としては、左樣なことになると存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=5
-
006・渡部信
○渡部信君 第十四條の一番お終ひの規定でありまするが、第十四條の末項に、「第一項及び前項の規定は、前條の他の皇族と婚姻した女子に、これを準用する、」とありますが、之に依りますと、親王なり、王なりが臣籍に降下なさつて、其の直系の卑屬の中で他の皇族の御嫁にいらしつた方、妃となつて居る方、それは皇族になる譯でありますが、其の方が離婚になりますと、皇族の身分を離れると云ふことになるやうでありますが、どうも皇族の女子でおありになつた方が、臣下から上つた人はそれで宜しいのですが、皇族女子でいらしつた方が離婚になれば、其の皇族の列を離れると云ふことが如何でありませうか、其の御趣旨を伺ひたいのですが、離婚と云ふのは夫が惡い場合、妻が惡い場合、兩方惡い場合、色々ありませうが、大體夫の不行跡などで妻を虐待するやうな場合も相當あり得るのでありますが、さう云ふ場合に皇族さんは離婚すれば女子だけ臣下に下らなければならぬ、其の爲に侮辱を忍んで離婚が出來ないと云ふ苦しい目に御立ちになる場合があるやうに思ひまして、其の男子の方は皇族として御殘りになつて皇族女子は臣下から上つた方でないのです、初めから皇族女子であるに拘らず、離婚されれば降下する、是はどうも少し酷なやうな氣持が致します、殊に其の十三條の規定で臣籍に御下りになつた方でも、其の尊屬は殘つて居られるやうでありますから、御歸りになる家もあるのですが、大體宮家と云ふものは、宮家と俗に申して居りますが、是は家でないと思ひますが、皇室御一家である、皇室の一員ですが、家でない、假に家と假定致しましても、尊屬が殘つた場合でも、其の方は皇族たり得ない、離婚すれば下ると云ふことはをかしいやうに思ひますが、どう云ふ趣旨でございませうか、少し強過ぎるやうに思ひますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=6
-
007・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 第十三條の第一項の規定に依りまして、他の皇族と婚姻した女子を除き、其の他の者は同時に皇族の身分を離れられると云ふことになつて居ります、從つて他の皇族と婚姻したる女子は特別なる其の婚姻と云ふ關係に於て皇族として御殘りになるのであつて、其の關係がなければ十三條一項の規定に依り皇族の身分を御離れになると云ふ趣旨であります、そこで其の皇族の身分を御離れになることを妨げて居つた理由、即ち皇族と婚姻して居ると云ふ其の理由が消滅致しまするならば、十三條一項の原則が囘復して來て、矢張り皇族の身分を御離れになると云ふことが自然の考へ方であらうと存じます、それで其の趣旨を明かに致します爲に第十四條の末項に其の範圍に於て表れて居るのでありまして、詰り最も考の自然なる所を踏襲したと云ふ風に了解致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=7
-
008・渡部信
○渡部信君 御趣旨は分りました、唯生れながらの皇族の方がさう云ふ場合にも、お父さんが降りて居られるから臣籍に下られるのだと云ふことは、少し酷な場合もあるのぢやないかと思ひますが、御趣旨は分りました、それから第十五條のことでございますが、是は皇族以外の女子が皇族になることがある以外はないと云ふ意味でありませうが、此の婚姻前に、皇族に事實上のあれで一般國民との間に庶子がおありになつた場合、さうして其の人を後に妃となさつたと云ふやうな場合に、其の庶子は嫡出子になるのでありませうが、さう云ふ時に嫡出の庶子でありました男のお子さんがおありになつたとして、其の方も庶子ではありませぬが同時に皇族となれるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=8
-
009・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 皇族の方が左樣な場合を御持ちになると云ふことを實は豫想して居りませぬ爲に、詰り皇族が正式の婚姻外に於て子孫を御持ちになると云ふことを、此の皇室典範の新たに出來ました後に於きまして起り得るとは、實は餘り強くそこに豫想を置いて居りませぬ爲に、それ等に關する規定を設けては居りませぬ、後は解釋の問題になることと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=9
-
010・渡部信
○渡部信君 ぢや是は解釋の問題として研究して戴きたいと思ひます、それは當然御兩親の結婚に依つて嫡出子になるのでありますから、さう云ふ場合は男子であつても皇族として宜いやうにも思はれるのですが、さう致しませぬと人情に反するやうに考へますが、其の點は御研究を願ひます、それから文句のことでありますが、「女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合」とありますが、是は「皇后又は妃となる場合」と、斯う簡單に言つても濟むやうに思はれます、態々「皇族男子と婚姻する場合」と諄く言はないでも、「皇后又は妃となる場合」で宜いやうに思ひます、是は簡單な文字のことなのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=10
-
011・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 左樣な言葉を使ひましても、多分意味に於きましては變る所はないと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=11
-
012・渡部信
○渡部信君 それでは私の第二章に付ての質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=12
-
013・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは村上君、第二章に付て発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=13
-
014・村上恭一
○村上恭一君 只今第二章の逐條審議の際誠に恐縮でありますが、第一章に戻りまして唯一點だけ質問することを御許し願ひます、簡單なことであります、第一章の皇位繼承の順序でございますが、此の皇位繼承の順序に關する現行の皇室典範の規定と本案の規定とを比較しまして庶系、庶出者、是は現行の典範では認めてありますけれども、本案では認めない、其の違ひは分りますが、其の他には新舊典範の規定する所が全然同樣である、斯う解釋して宜しいでありませうか、さう解釋します爲には、現行の皇室典範の第七條に最後の順位として「最近親ノ皇族」とありまする、是は現行典範の解釋としても疑がないでもなかつたのでありまして、最近親の系統の皇族と云ふ意味に解すべきものと思ひます、さう解しますれば現行の典範の規定と、それから本案の規定とは全く同じになります、それで宜しうございませうか、念の爲に伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=14
-
015・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 御説の通り、現行の皇室典範は記述の文字の使ひ方に多少疑義を起す餘地がありますので、今御述べになりましたやうな第七條に付きましては、解釋の間に多少意見の相違を見る面があると存じて居ります、併し私共豫々考へて居りました解釋は、今仰せになりましたやうな最近親の皇族と云ふ言葉は、最近親の系統の皇族、斯う云ふ風の意味と了解致して居りまして、詰り其の趣旨に依りまして、今囘の皇室典範を起案致しました、全く御説の通りの考へ方を踏襲して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=15
-
016・村上恭一
○村上恭一君 能く分りました、有難うございました、第二章の中でございますが、本章の數箇條に於きまして、皇族が皇族の身分を離れると云ふことが認めてあります、是は現行典範では所謂皇族の臣籍降下でございますが、本案では臣籍降下と言はず、皇族の身分を離れると云ふことになります、言葉は違ひまするが、意味は同じと思ひまする、偖其の皇族の身分を離れられた皇族は、今迄の言葉に依りますれば一般人民の籍に入られまして、その際以後の其の方の戸籍關係はどうなるのでございませうか、現行規定に於きましては、さう云ふ方々は所謂臣籍に降下されます際に、或家に入られる、場合に依りましては實家に復すると云ふこともあります、而して又さう云ふ家のない場合には一家を創立すると云ふことになつて居りました、それぞれ或家を持たれることに定つて居りまする、本案にはそこが何も規定してありませぬ、是は私の察する所では今囘民法、就中親族篇、相續篇、これが改正憲法の線に沿うて著しく改正されまして、家と云ふ制度がなくなる、家と云ふ存在が消えると云ふことを考慮せられまして、此のやうに皇族の身分を離れられたお方の其の際以後に於ける戸籍關係をはつきりしてないのであらうかと考へまするが如何でありませうか、此の方の其の後の戸籍關係はどうなるのでありますか、之を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=16
-
017・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 御説の通り此の皇室典範が來年の五月三日以後效力を生じまする當時には、今日の民法及びそれに關係する法律に於きまして多少の變更があることと考へて居ります、それ等の新しく生ずる規定と共に必要なる戸籍等の關係が一般の法律の中に規定されると考へて居ります、こちらでは唯皇室から自分が御離れになると云ふことだけを盛り込みまして、其の外は一般法規に委すと云ふ考へ方を持つて進行して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=17
-
018・村上恭一
○村上恭一君 それでは、其の問題は將來の立法に俟つ外はないと思ひます、もう一點本章に於きまして伺ひたいことは、是は甚だ細かいことでございまするけれども、併し私の豫ねての疑問でございますので、此の際御教へを受けたいと思ふのであります、第十三條、「皇族の身分を離れる親王又は王の妃竝びに直系卑屬及びその妃は、」本則として「同時に皇族の身分を離れる、」と云ふことは是は能く分ります、そこで除外される方があります、それは他の皇族と婚姻したる女子及び其の直系卑屬であります、之を除外すると云ふことは分りまするが、私の分らないのは、他の皇族に嫁したる女子の直系卑屬の「その妃」であります「その妃」を除くと云ふことは茲に書いてありませぬ、是が不審なのです、是は併し現行規定以來の疑問なのです、皇室典範、第一増補、第三條に同じ規定があるのであります、「前二條ニ依リ臣籍ニ入リタル者ノ妻直系卑屬及其ノ妻ハ其ノ家ニ入ル但シ他ノ皇族ニ嫁シタル女子及其ノ直系卑屬ハ此ノ限ニ在ラス」、此の但し書に、直系卑屬の妻と云ふことが書いてありませぬ、私は現行規定から不審を持つて居ります、同じことが此の法案にも表れて居りまするので、甚だ不審なのであります、實は此のことは渡部委員から併せて御質問願はうと思つて居つたのでありますが、餘り渡部君を煩はしても恐縮と存じますので、私から御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=18
-
019・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 是は御説の通り大體文字の用例を、現在の典範増補に從つて整理したのでありまして、之に關しまする解釋は、現在の典範と同じやうな途を辿るべきものと考へて居ります、で、此の起案者の態度と致しましては、大凡そ妃たる者が夫の身分に從ふと云ふことは、從前の考へ方から致しますれば、當然のことであるから、別に書かなかつた、斯う云ふのが一應の御答であります、それでは其の直ぐ上の所で、「直系卑屬及びその妃」と書いたのは、どう云ふことかと申しますると、それは一番有り得べき普通の場合でありまするが故に、早分りするやうに書いて、斯う云ふことになりまして、文字の脱けて居りまする、直系卑屬の、「その妃」は、詰り解釋に依りまして、矢張り明文があると同じやうな立場になる、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=19
-
020・村上恭一
○村上恭一君 どうも私としましては滿足し兼ねまするが、一應の御辯明は承つて置きます、最後にもう一つ、是は單なる文字の整理に亙ることでありまするが、併し申添へることを御許し願ひたい、それは本案の第八條に「皇嗣たる皇子を皇太子という、皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という、」此の皇嗣と云ふのは改めて申す迄もなく、皇位繼承の第一順位に當らせられる御方のことに違ひないと存じまする、さうしますれば同時に皇嗣が二人あることはない、從つて皇太子と皇太孫とが、同時にあることはないに決つて居る、としますると本條に於て、「皇太子のないときは、」斯う云ふ一句が入つて居ります、是は註釋の上で素人分りには便宜でありませうけれども、法規としましては全く無用で、如何にも蛇足な文句だと思ひます、何故こんな蛇足の文字を御加へになつたのでありまするか、御氣を附きになつて之を削除する、議會で修正するほどのことではないと思ひまするから、内閣で潔く訂正なさる、誤植であつたと云ふやうな處置を、御執りになる御考はないでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=20
-
021・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 蛇足を附けると云ふ風に、御批判になりましたけれども、法と云ふものは之に緻密なる解釋を加へて、的確なる意味を見出すと云ふよりも、自然に普通の人が見ながらも、謂はば若干の法律的知識がある上に、一般の常識を持つて居る者が讀んで、早く分るやうに書くこととが、望ましき姿であると思つて居ります、從つて是は蛇足を附けたと云ふ意味ではなくて、實用の見地から申しますると、矢張り斯樣な文字があることが望ましいと考へて、規定を致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=21
-
022・村上恭一
○村上恭一君 是で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=22
-
023・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 梅園子爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=23
-
024・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 現行皇室典範に於きましては、其の第三十五條に「皇族ハ天皇之ヲ監督ス」とありまするが、本案の第二章、皇族に關する第五條以下第十五條迄の條文を見ますると、監督に關する規定がないのであります、就ては皇族に關する監督は、どう云ふ風に御取扱ひに相成るのでありまするか、伺ひたいのであります、即ち一般國民に關する法律に依つて監督せらるると云ふのでありまするかどうか、此の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=24
-
025・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 此の憲法改正の規定の結果、天皇は國事に關しまする範圍に、於きましては、憲法所定の事項のみを行はせらるるのであります、從つて皇族の監督と云ふことが、若しも國事、詰り國の事務に屬する意味がありまするならば、是は天皇の御權能にすることが、憲法と牴觸して參ります、若し是が民法上、一般の家族制度の關係に於きまするものであるならば、それは皇室典範の關與する所ではなくつて、一般の民法の面に於て解決せらるるものと考へて居ります、で研究の結果、斯樣な事項は、國の公事と云ふ面を離れて、一般の家族關係に於きましての問題に殘すことが、適當であると考へて居りまするが故に、此の皇室典範に依りましては、天皇が皇族を監督せらるる規定を省きまして一般の民法に致して居る譯であります、併し左樣には申しまするものの、實質に於きまして、幾分斯樣な含蓄が、此の皇室典範の中にも考慮はされて居りまするけれども、表面的には監督と云ふ規定はないのであります、どう云ふ場合に左樣な規定が現れて居るかと申しますると、今囘の典範の第十一條の二項の、「特別の事由があるとき」と云ふ場合の一部分に、斯樣な場合が形を變へて入り得るものと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=25
-
026・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 宜しうございますか、梅園君……それでは、是で第二章に關する質問の通告者の發言を終りましたので、第三章に入ります、申上げる迄もないことでありますが、成るべく簡明に御質問が願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=26
-
027・渡部信
○渡部信君 第十七條の本文に、成年に達した皇族が就任する、是は昨日申しました第一に「皇太子又は皇太孫」とありますので、是は皇太子又は皇太孫たる親王と云ふ字がなければ不正確でないかと云ふ感じが致しますので、其のことを申上げるのでありますが、其の第六號に「内親王及び女王」とあります、現在の皇室典範に依れば、攝政になる方は内親王、女王の方は配遇者のない方に限つて居るのであります、今度は配遇者の有無を問はないやうに見えますが、内親王、女王たる方は親王妃王妃でいらつしやつても差支へない、是は當然だと思ひますが、唯之に皇族でない方はいけないやうに見えますが、どう云ふ譯でありませうか、例へば今の皇太后樣は東宮妃でいらつしやつた場合、非常に御聰明な方で、ああ云ふ方は皇族の御出身でない人でも攝政になられても差支へないやうな御聰明な方でいらつしやいます、斯う云ふ方でも皇族の出身でない方はいけないとせられた理由を伺ひたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=27
-
028・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 大體攝政は皇族でなければならないと云ふ非常にはつきりした根據はございませぬ、併しながら今囘の憲法の建前に於きましては、天皇の御働は可なり多く一般の國家機關の方に移りまして、天皇に殘つて居りまする御權能は殆ど天皇の根本的性格と密著して居る程度のものに限られて居るやうに存じます、天皇のディグニテイを維持する見地、又其の國の象徴たる本質と即應する限りに於きましての權能が認められて居ると了解致して居ります、其の幅は色々に考へられます、從つてそれに對しまする法定代理の意味を持つて居ります攝政に付きましては、矢張り其の精神を踏襲致しまして、萬世一系と云ふ其の考へ方と出來るだけ密著する範圍に之を限定する方が、宜いと存じまして、皇族に限る、但し皇后、皇太后、太皇太后は別であります、是は持別な意味もありますが、それ以外に於ては擴張しない方針を執つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=28
-
029・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) ちよつと御諮り致します、昨日梅園子爵から華族が廢止され、士族に付てはどうなるかと云ふ質問を金森國務大臣にせられた時に、御所管違でありますから司法大臣にと云ふことでありました、只今司法大臣が御見えになりましたから、之を問題に供します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=29
-
030・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 私の昨日の質疑の中で、士族の族稱廢止に付きまして金森國務大臣に御伺ひ致しました處、所管大臣の御答が正當であると云ふ風に伺ひましたので、幸ひ此處に司法大臣が御見えになりましたので、此の機會に重ねて伺ひたいと存じます、申す迄もなく新憲法が實施せられますると同時に有爵者は無くなるのでありますから有爵者あつての華族の族稱は當然自然消滅することと存じます、一方士族の族稱が廢止せられたと云ふことは寡聞にして聽かないのでございますから、現在存置せられて居るものと思ひます、さう致しますと一面に於て華族の族稱が廢止せられ、他面に於て士族の族稱が存置せられて居ると云ふことは聊か不公平であるかのやうに感ずるのであります、就きましては士族の族稱をば此の儘存置せられる御考でございまするか、或は又近く之をば廢止せらるる御考でございますか、此の點に付て司法大臣の御答辯を願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=30
-
031・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 只今の梅園子爵の御質疑に對して御答へ致します、憲法改正と同時に只今の民法、之に附屬する戸籍法の改正立案中であります、そこで華族の稱號の廢止されることは申す迄もないことでありますが、士族の稱號に付きましては、是亦戸籍法から其の稱號を取去る積りであります、從ひまして是迄御承知の通り戸籍謄本なんかに士族、平民と區別して記載されて居るのでありますが、將來は左樣な士族、平民と云ふやうな記載は全部取除けられると信じて居ります、左樣御承知願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=31
-
032・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 了承致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=32
-
033・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは再び渡部君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=33
-
034・渡部信
○渡部信君 幸ひ司法大臣も御見えになりますので、第三章の中の關聯したことで御伺ひしたいのであります、但し三章の一番終ひに「攝政は、その在任中、訴追されない、」とありますですが、是は攝政が在任中、或は在任前か何かに不都合なことがおありになつたと假定致しまして、後に發覺することもありませう、在任中なされることもありませう、何れの場合も訴追されないと云ふことは分りますが、其の場合、公訴權の時效はどうなるのでありませうか、其の儘進行致すのでありますか、或は進行致しませぬのでありますか、若し進行致すとすれば消滅致しますし、致さないとすると攝政が二十年も三十年も續けられた場合に、其の公訴權が消滅しないと致しますれば時效と云ふものは公益上絶對的な必要があるのであります、併し數十年間色々記録なり證人なんか色々なものを保存して置くこともむづかしいやうに思ひます、此の規定の解釋は實際上どうなるのでありますか、御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=34
-
035・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 只今の御質疑の點は、實は憲法の第七十五條に、國務大臣に付てありまする規定と同じ文字を用ひましたので、一應の解釋と致しましては、憲法七十五條の解釋と此の場合の解釋とが同樣になるべきものと考へて居ります、さうして茲に除かれて居りますのは訴追されないと云ふことだけで、一面に於きまして訴追の權利は害されないと云ふことになつて居ります爲に、時效の問題は其の間は時效も走らないと云ふ風に考へて、訴追されない期間が滿了してからの問題に解釋はなると思ひます、但し斯樣な場合に於きまして、特別なる規定を設けると云ふことでありますればそれも一つの考へ方かと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=35
-
036・渡部信
○渡部信君 さう致しますと、何十年でも走らないだけの話で公訴權は消滅しない、斯う云ふ意味でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=36
-
037・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=37
-
038・渡部信
○渡部信君 公益上如何かと思ひますが、御趣旨だけは分りました、それから同じ第三章の十九條のことでございます、十九條を見ますと、攝政となる順位にあたる方が故障の爲に他の皇族が攝政になつた時には先順位にある皇族が成年に達し或は故障がなくつても、皇太子、皇太孫に對する場合の外は攝政の任を讓ることがない、さう致しますと攝政となる順位に當る方が、故障の除かれることを豫想して居るやうでありまするが、其の天皇の故障を除かれた場合には次の二十條で、「皇室會議の議により、攝政を廢する、」とあります、攝政となる順位に當る方が故障の囘復された場合には、されたかどうかと云ふ事實を確める機關と云ふものが、方法が書いてないやうでありますが、それはどう云ふことで御決めになるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=38
-
039・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 問題は第二十條の規定が、新しい規定であります爲に表面に現はれて來るのでありますが、從來斯樣な問題に付きまして色色の意見はあつたかも知れませぬけれども、併し大多數の意見は、矢張り初め攝政を置かれた場合と同じやうな方法を以て之を廢する場面の手續とすると云ふ風に了解されて居つたと存じて居ります、併し之に對しまして若干の疑惑もあるかも知れぬと思ひまして、事重大であるが故に、第二十條に於きましてはつきり攝政を廢する場合には「皇室會議の議により、」と云ふ風の規定を設けた譯であります、處が第十九條の「皇太子又は皇太孫に對する場合を除いては、云々」と云ふ規定は、是は在來の型を踏襲致しましたので、是は此の場合の處置が解釋に委ねられてあると云ふことになるのであります、處が其の解釋と申しますのは、凡そ今迄一定の判斷があつたのでありまして、唯二十條に於きまして特にそれを、此の攝政を廢する場合に付てはつきりさしたのであります、して見れば、其のはつきりさした部分の解釋が第十九條の場合の解釋ともなることと存じまするが故に、成年の場合は是は特別なる手續は要らない、故障がなくなつたと云ふ場合は第二十條の如く皇室會議の議に依るものである、斯樣に解釋を致して居ります、さう致しますると、第十九條に何故さうはつきり書かないのかと云ふことになりまするが、是は從來も解釋に殘されて居つた位のものでありまするが故に、特に重要と思はれます第二十條だけにさうした規定を置いて、あとは其の儘にして置いた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=39
-
040・渡部信
○渡部信君 御趣旨は分りましたが、どうも二十條に明文を設けますと、十九條にも其のことを言つて置きませぬとはつきりしないやうに存じますし、殊に昨日の御話に依りますれば、第三條の場合に、皇嗣の順序を變更した時、是も兩方が直つたかどうかと御尋ねしたら、是は絶對に元に復さないと云ふやうな御話もありましたので、三條の方は絶對に復さない、此の十九條の方は復すことも有り得る、それは解釋上二十條と同じやうに見るのだと云ふことははつきりしないのでありますが、御趣旨だけは分りました、序に極く細かい文字のことでありますが、そこに「皇太子又は皇太孫に對する場合を除いては、攝政の任を讓ることがない、」とありますので皇太子、皇太孫に對しては讓ることがあると云ふ風に見へまして、讓らないと、ここに書いて置けば、皇太子、皇太孫には必ず讓ると反對に見へるが、讓ることがないとありますから、皇太子、皇太孫には讓ることがあると解されまして、是は字のことでありますが、讓らないと書いて置けばはつきりしたやうに思ふのですが如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=40
-
041・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 讓らないと云ふことと、讓ることがないと云ふことがどれだけ違ふかと云ふことは非常に機微なものでありまして、本當に申しますれば、其の日其の日の調子で氣持が違ふと云ふ位のものと存じて居ります、是は結局現在の典範の言葉を軟かく口語體にしただけでございまして、まあ意味はさう疑を生ずる程のこともないと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=41
-
042・渡部信
○渡部信君 私の質問は終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=42
-
043・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは第三章は別に……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=43
-
044・村上恭一
○村上恭一君 第三章に付てちよつと質問があるのですが、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=44
-
045・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=45
-
046・村上恭一
○村上恭一君 攝政に任ぜられます是は資格の問題でございますが、現行規定の第二十三條に「皇族女子ノ攝政ニ任スルハ其ノ配偶アラサル者ニ限ル」とありますが、抑抑此の規定は少々をかしいのでして、皇族女子の中には皇后を含みます、皇后には天皇と云ふ立派な配偶者があらせられる、現行典範第二十一條で、皇后を攝政に任ぜられる資格を認めて居りながら、第二十三條に至つて、併し配偶のある方は除く、斯うありますので、皇后は攝政に任ずる資格があるのかないのか分らなくなります、現行規定が抑抑をかしいのでありますが、それはそれと致しまして、本案では、殊に内親王及び女王の所で、それには親王妃又は王妃である配偶者のあらせられる方もあるに違ひありませぬ、さう云ふ御方は攝政に任ぜられる資格があるのかないのか、現行規定ではないとなつて居ります、本案には何の規定もない、それは矢張り攝政に任ぜられる資格を認めると云ふ御考なのでありますか、是は攝政の資格に關する重大な問題だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=46
-
047・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 配偶者の有無は攝政就任の資格の有無に關係がないと云ふ考へ方を執つて居ります、言換へますれば、現在の典範とは違ひまして、皇族女子が夫あるが故に、其の攝政就任の關係に於きまして特別なる地位に置かるることはない、普通の取扱で行くと云ふことの建前になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=47
-
048・村上恭一
○村上恭一君 それだけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=48
-
049・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 現行の攝政令はどう云ふことにせられるのでありませうか、之を廢止せられる御考でございますか、伺ひたいのであります、又攝政に付きまして、皇室典範以外の規定をば御設けになる御考があるのでございませうかどうか、伺ひたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=49
-
050・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 現在の政攝令は曩にも申しましたやうに皇室典範及び之に基きます所の皇室令は宮内省側の發動に依つて、そちらの方の規定で、此の憲法の切換への時に取止められるものと考へて居ります、さう致しますと、あとに殘りまするのは、今度の皇室典範で出來ました所の此の攝政に關する規定が殘る譯でありまして、是だけでは尚手續、儀式等の點に於て完備しない部分があらうと存じて居ります、それ等は政令等を以て規定せられることと豫定致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=50
-
051・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 能く了承致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=51
-
052・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは第三章は終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=52
-
053・羽田亨
○羽田亨君 通告申して居りませぬが、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=53
-
054・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それではどうぞ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=54
-
055・羽田亨
○羽田亨君 此の第三章の攝政の制度に付きましては、是は淵源、沿革、又將來を考へますと非常に適切なことと存じます、當然のことと考へるのでありますが、唯此の攝政と云ふ名前に付きまして、私は適當な名前であるかどうかと云ふことに付て疑問を持つて居つたのでありますが、先刻其の話を同僚の方と話した時に、或新聞にもさう云ふことが書いてあつたと云ふやうなことを承りましたので、それでは疑問は私一人でないと云ふ風に考へて、一度御伺ひ申して置きたいと思ふのであります、既に天皇が國政を御扱ひになると云ふやうなことなんかに付きましても、國政と云ふことから、國事に關する行爲であると云ふ風に、總て政治に關しては餘り觸れられないと云ふ風に憲法の上ではなつて居ります、其の天皇に代つて國事に關することに當られる所の御方が、「リテラル」に見まして攝政と云ふ名前を御採りになると云ふことが、何やら一つ「アナクロニズム」のやうな感がないでもないと私には感ぜられるのでありますが、先刻申しますやうに、他にもさう云ふ考があり、新聞に出て居つたと云ふやうなことを承りますので、其の邊のことを、要するに御考へになつて居ることとは存じまするけれども、之を御決めになつた御考を承りたい、尤も憲法の方に行きまして、既に皇室典範の定むる攝政云々と云ふ文句が見えて居りまするので、今更之を御伺ひしましても後の祭のやうにも存ずるのであります、若し御考の程をば承ることが出來ますれば仕合せと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=55
-
056・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 憲法は政府が提案を勅を奉じて致しました時と、衆議院に於きまして文字を修正せられましたと云ふ其の二つの段階を經て居りまする爲に、文字の上に於きましては、當初の肚で考へた所の文字が結果に殘りました所に於きまして、多少連絡の不十分なる感じのする場面が出て來ることも免れ得ないと思つて居ります、大體私共が此の憲法の提案を致しました時に、天皇は廣い意味に於きましては、矢張り國の政治に關與しておいでになるのである、即ち憲法の第六條、第七條等に掲げてありますることは、政治の面に觸れて居ると申しまするか、詰り内閣は行政を擔任して居ると云ふことになつて居りまするが、此の内閣の助言と承認に依つて行はれまする所の天皇の行爲も、矢張り其の國政に關與せられて居ると云ふ風に考へて居ります、併しはつきり太い線を描きまして、天皇は色々の面の政治は擔任せられない、唯此處に限られたることのみを行はせられると云ふ趣旨を明かにしまする爲に、第四條に於て「國政に關する權能を有しない、」と云ふ言葉が設けてありまして、茲に「國政に關する權能を有しない、と云ふことは、其の周りの文字と併せて讀むべきものでありまして、天皇に全然政治に關係する權能がない、斯う云ふ趣旨ではなからうと存じて居ります、從つて左樣な意味に於きまして、天皇の國務上の御作用、特別なる場合に外の人に依つて代理せられまする時には、矢張り政の或部分を攝せらるることになるのでありまして、「攝政」と云ふ文字がそんなに不自然なる文字とは考へては居ないのであります、處が此の憲法の第四條等の字句が、幾分國事に關すると云ふやうに變られました爲に、何か其の關係の所に、文字の上で天皇は政治を行はせられないと云ふやうな感覺は強くはなつて居りますが、併しそれはほんの感じのことでありまして、本質的に申しますれば、矢張り政治に關する或部面の權能を御行ひになるのであるし、從つてそれを代理する者は矢張り攝政と申上げても、そんなにをかしいことはないと、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=56
-
057・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは御質疑はございませぬか、第三章は終りました、第四章に移ります、渡部君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=57
-
058・渡部信
○渡部信君 此の天皇、皇族の成年のことでありまするが、御承知の通り今日年齡の計算に付きましては、民法の計算の規定に據らずに、其の生れた日が假令半端でも何でも、其の日から勘定すると云ふ法律があります、是は從來天皇、皇族には適用がないと解釋致されまするので、天皇、皇族の御成年は一般の國民の成年とは起算の日が一日違つて居るやうに解釋せられるやうに思ひます、今度一般の私法は皇族には無論適用があることになりますると、自然其の法律も適用されるのでありまして、皇族も御成年は一日繰上るやうに思ひますが、それで宜しうございませうか、それから天皇には、此の法律は今迄適用はないと見て居りましたが、今後は適用があるものと見るのでありませうか、さうなれば天皇の御成年も一日繰上る、併し午前零時に御誕生になれば別でございますが、念の爲に伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=58
-
059・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 今囘は從來の皇室典範との關係とは別に、此の皇室典範が行はれることになり、又國の一般の私法……特別なる限定がない限りは、天皇及び皇族に、其の私の面に於て適用あるものと存じて居ります、從つて年齡計算に付きまして特別の原理を御採りになつて居ると云ふことは、最近に之を知つたのみでありまして、其の基礎の原理を存じて居りませぬ、現在の所の解釋が正しいかどうかも存じて居りませぬ、今後と致しましては民法の適用があるものと、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=59
-
060・渡部信
○渡部信君 此の點ははつきり致しました、それから是は二十三條の敬稱の問題でありますが、是は昨日も申上げました通り、此の規定に依りますると、どうも皇太子殿下と云ふことは公式には申上げられないやうに解釋せられまするので、それは前のことと關係致しますが、茲に特に皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃と云ふことを此處に入れる譯には參りませぬから、前のことで御考を願ひたいのであります、御承知の通り刑法でも特に皇太子、皇太孫に對する罪は重く罰して居りますし、又皇太子、皇太孫に付ては特別の旗章もありますし、立太子禮と云ふものも行はれますし、又皇太子から行啓と云つて、普通の親王や内親王、王、女王には使へない、太皇太后、皇太后、皇后は同じやうに行啓と云ふことを申されますし、其の外色々の點に於て違つて居るのでありますから、皇太子と云ふことははつきり皇族として申したい、殊に大寶令の儀制令の中を見ましても、「率土の内、三后、皇太子上啓するを殿下と稱し、自らは臣妾と稱せよ、」此の大寶令の制度は殿下と云ふことは皇太子樣それ以上の方に申上げるのであつて、其の外の皇族にはない敬稱であると云ふ沿革もありますので、皇太子と云ふことをはつきり皇族の中に入れて置いて、此のことも正式に申上げることにして置きませぬと工合が惡いやうに思はれまするので、其の點は一應どう云ふ御考でありますか、伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=60
-
061・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 政府が今囘の案の立て方の中に於きまして、皇族の範圍を規定致しまする場合に、特に皇太子等の言葉を用ひて之を限定しない、唯親王と云ふやうな一般の言葉の中に含まれるものとして皇族の範圍を決めたのであります、其の根本の原理は斯樣な概括的な言葉を以て皇族の範圍を決めまして一點の間違ひはない、加之、現在の建前のやうに、皇族の中には皇太子と親王が御入りになつて居ると云ふと、そこに思想が二重になつて居りまする爲に、斯樣な點は避けた方が宜いと云ふ見地から規定を致した譯であります、斯樣な風に考へました第五條の規定は、それだけで十分の意義があると信じて居ります、そこでそれ等の思想が基になつて他の規定にどう云ふ影響を持つて來るかと云ふことになりまするが、若し親王の中に於きまして、皇太子たる方と然らざる方とを區別する必要がありますれば、左樣な場合に皇太子とはつきり申上げますることは、何等の支障がないことと存じて居ります、又敬稱は皇太子と云ふ言葉に附ける、親王と云ふ言葉に附けるとかと云ふのではなくて、皇太子たる方、親王たる方に附けるのでありまするからして、法規の建前と致しましては、其の點に於きまして何等の支障はないのでありまして、皇太子に對して殿下と云ふ敬稱を附けますることは、皇室典範の二十三條、「前項の皇族以外の皇族の敬稱は、殿下とする。」と云ふ、其の言葉に矛盾はないと存じます、若し此の殿下と云ふ言葉は上にある皇族と結び附けなければ、使へないと云ふことになりますれば、二十三條の第二項は皇族殿下と申上げるより外に仕樣がないと云ふ解釋も生れまするが左樣なことは實は考へて居りませぬ、個人に關係し、其の皇族たる、御方に對して殿下とすると云ふ風に考へて居りまするが故に、そこに何等の破綻は起らないと今囘の起案では考へて居ります、大寶令當時の思想は色々むづかしいことはあると思ひますが、是は又別に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=61
-
062・渡部信
○渡部信君 只今の御説明を伺ひましたが、どうも私は沿革に囚はれる譯ではありませぬが、皇太子と云ふ特別の御身位である皇族二重の御資格は御持ちになりますが、二重の御資格は御持ちになりましても、女王が親王妃になる場合もありますし、内親王が王妃となり、皇族の二重の資格を御持ちになることもあります、妨げないのでありまして、さう云ふこともあるのでありまして、二つの御資格の中で、皇太子と云ふ特別の御資格として正式に皇族として御認めになることが絶對に必要のやうに私は考へます、是は意見の相違でありますから、別の問題に致します、次に第二十七條には、「天皇、皇后、太皇太后及び皇太后を葬る所を陵、」と書いてあります、處が二十五條には、「天皇が崩じたときは、大喪の禮を行う。」今日は天皇ばかりではなく皇后、皇后、太皇太后が崩御遊ばされた時には、矢張り大喪の禮を行ふことになつて居りますが、陵の方には三后の場合迄書いてありまするのに、御大喪の方は書いてないのは、是は太皇太后、皇后、皇太后、此の三后に對しては大喪と言はないのでありませうか、陵とするに拘らず、太喪を行はないと云ふことになるのでありませうか、其の區別はどうなすつたのでありませうか伺ひたいと思ひます、序に「葬る所」とあるのは御尊骸の一部がなければ陵と言はないのでありませうか、其の點も伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=62
-
063・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 此の典範の建前は第二十五條、「天皇が崩じたときは、大喪の禮を行う。」と云ふことは、特に天皇の地位が國の象徴たる意味に於きまして格別に御大切であると云ふことを考へまして、それに對して大喪の禮を行うと云ふ風の規定を設けたのでありまして、然らば天皇以外の三后の方々が崩ぜられました場合に於きましては、喪はれた場合の禮をどう云ふ風に行ふかと云ふことになりますると、此の典範は末だ解決を致して居りませぬ、其の解決に付きましては、尚第二の問題として典範以外に於て考へて宜しからうと云ふ方針から出て來る譯であります、それから次に、第二十七條に於きまして、三后を併せて其の葬る所を陵と云ふ風に書きましたが、是は陵と云ふものの定義を掲ぐるのでありまするが故に、どうしても其の陵と云ふことの概念に當ります中味を此處に竝べなければなりませぬので、二十五條の建前とは、物を考へる方法が違つて居るのであります、別に其の間に一貫した意義を織り込んで居る譯ではありませぬ、それからもう一つ、此の葬ると云ふ言葉の意義でありますが、斯樣な言葉は、從來の慣例に依つて、自ら意味が決つて居ると存じまして、其の發達して居る思想を基にして解釋するの外はないと存じますが、私の聞いて居ります所では、御身體の一部を少くとも此の場合に葬ると言つて居ると云ふ風に了解して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=63
-
064・渡部信
○渡部信君 宜しうございます、私の此の章の質問は終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=64
-
065・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 第四章、別に御質疑がございませぬければ、第五章に移ります、渡部君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=65
-
066・渡部信
○渡部信君 此の皇室會議のことでありまするが、二十八條と三十條と較べて見ますと、三十條の問題として申上げたいのでありますが、皇室會議の議員である皇族も、豫備議員の選擧權は持つていらつしやる、それから皇室會議の議員である衆議院の議長、副議長、參議院の議長、副議長、其の方も矢張り此の豫備議員の選擧權があるやうに思はれます、それから最高裁判所の長でない所の裁判官である議員其の人も、矢張り豫備議員の選擧權があるやうに思はれる、然るに最高裁判所の長である裁判官は、議員も豫備議員も、議員或は豫備議員となるべき裁判官を選擧する權利がないやうに見えるが、裁判所の長官だけを特に其の選擧權を御除きになつて居るのはどう云ふ譯でありますか、其の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=66
-
067・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) それは結局準用と云ふ形を取りました爲に、今御示しになりましたやうな區別が起つて來るのでありまして、まあ餘り諄々しく區別をしなくても、第二十八條を準用すれば、大體の目的を達すると云ふ趣旨で出來て居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=67
-
068・渡部信
○渡部信君 さうすると、實質上特に大審院長のやうな方、さう云ふ方だけを除くと云ふ、それが爲の趣旨ではなく、唯何と申しますか、此の準用の結果であると云ふことになりますと、最高裁判所の長たる裁判官に選擧權を持たせることは不都合とは無論御考へにならない、不都合どころではない、是だけがないのが非常に不思議に私共見えるのでありますが、外の方が皆選擧權があるが、是だけは除くと云ふことは、最高裁判所の長を……ちよつと妙に思ひますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=68
-
069・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 極く非常に細かい議論を致しますと、最高裁判所の長だけ互選權の範圍から省くと云ふ理窟はないものと實は思つて居りますけれども、此の豫備議員と云ふやうなことは、事柄は大事でありますけれども、非常に神經質に一人々々のことを規定しなくても、本議員の選擇の場合の標準を其の儘類推して行くと云ふ形で此の規定が出來て、其の結果斯う云ふ形のものが出來て來ると云ふやうな譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=69
-
070・渡部信
○渡部信君 それから三十五條に、此の皇室會議の議事が、一定の場合に三分の二以上の多數で之を決するとありますが、此の列擧した中に、十一條の二項で、詰り皇族の意思に基かず、反する場合もありませうが、基かずして皇族の身分を離れられるやうな場合、斯う云ふ風なことは相當重大だと思ひますので、是も三分の二以上の多數の方に御入れになる方が、單純な多數決でなく、三分の二以上の多數で決められるやうなことにした方が宜くはないかと云ふやうな感じが致します、それは如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=70
-
071・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 斯樣な點は、結局價値判斷の問題になりまして、何處から何處に線を判然置かなければならぬと云ふやうなことを明白に論證することは困難と思つて居ります、三分の二の多數決と云ふやうな言葉を使ひますると、如何にも三分の二が關與するのであるから多數が決めるのだと云ふ風に思はれます、過半數の場合と三分の二と較べますると、三分の二の場合は、多數が贊成したんだから尤もだと、斯う云ふ風に思はれまするけれども、併し他の面から申しますると三分の一が反對をすれは、逆に決定が出來ると言ふことでありまして、他の面から言へば少數なる者の發言がそこに重きをなす、斯う云ふ意味を持つて居りまして、實は普通に漠然考へて居りまするけれども、三分の二の多數決と云ふものには相當の弱點がある、實際如何なる場合に三分の二の多數決を使つて行くか、即ち三分の一の少數意見を保護して行くかと云ふことになりますると、事の性質を一々見極めて行かなければならぬと思ひますが、それ等を一々見極めまして、三十五條の程度に分けた方が適當と云ふことに結論を得た譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=71
-
072・渡部信
○渡部信君 それは方針の問題でございますから、分りました、それから三十六條に「議員は、自分の利害に特別の關係のある議事には參與することができない、」とありますが、自分でない、自分の父母、兄弟、姉妹と云ふやうな風な、極く近い方の關係のある場合には、自分の利害と見るのでありませうか、色々攝政の順位を變更するとか、或は皇嗣たる順位を變更するとか、多少懲戒的な意味で、さう云ふやうな場合には、親子兄弟として相當御關係の深い方々があり得ることと思ひますが、それは自分の利害に關係のあるものと見るのでありませうか、見ないのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=72
-
073・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 自分の利害に關係すると見るか見ないかと云ふ論ではなくて、此の場合に於きましては、自分の利害に關係すると云ふことになつて來るのではなからうかと存じます、唯何處からどの邊の程度迄行けば、身體は別の人のことでも、自分の利害に關することと言へるかと云ふことは、認定問題でありまするけれども、其處は勿論自分以外の人の關係から自分に振り懸つて來る影響迄を含めまして、利害と云ふ言葉の中に入つて來るものと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=73
-
074・渡部信
○渡部信君 私としては第五章の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=74
-
075・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 第五章は、他に御質疑ございませぬか、それでは附則に移ります、渡部君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=75
-
076・渡部信
○渡部信君 文字のことではございまするが、此の附則の第二項に「現在の皇族は、この法律による皇族とし、第六條の規定の適用については、これを嫡男系嫡出の者とする、」とありますが、現在の皇族に嫡男系嫡出の方が多いことは御承知の通りであります、それは嫡男系嫡出の者と、さうでないとに拘らず嫡男系嫡出の者とするのでありますから、嫡男系嫡出の者とみなすとかと云ふ風に言つた方が分り易いやうに思ひます、次に現在の陵墓、之も先程伺ひました通り、天皇、皇族の御尊骸の一部が少くも葬られてあることが御陵の本體だと思ひますが、昔の御陵墓には、有名な安徳天皇の御陵のやうなものは、全く歴史上はつきりして居ります、其の他に景行天皇の皇后の御陵などにもさう云ふのがあります、全くさう云ふ御尊骸のないものを陵と稱して居るものがありますが、現在の陵墓は第二十七條の陵墓とみなすと言つた方が分り易いやうに思ひます、是は文字のことでありますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=76
-
077・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 法令の言葉を出來るだけ民主化させると云ふことが現在の一つの方針でありまして、成るべく法律家臭い言葉は避けよう、勿論總ての場合に避ける譯ではございませぬが、出來得るならば避けようと云ふ一つの考へ方があるのであります、處で「みなす」と云ふ言葉は、法律家の間に於きましては、特別なる意味を持つて居りまして、本質に於て然らざるものを法律の效果の關係に於て同一視すると云ふ、特殊なる意義を持つて居りまするが、世間では必ずしも左樣な意味に使つては居りませぬ、可なり紛はしい點があると思ひます、さう考へて見ますと、「みなす」と云ふ言葉を殊更に法律の中に使はなくても、若し世間の言葉で之に當て嵌め得る宜い字があるならば、それでも宜からう、斯う云ふ風に考へます、そこで此處で言つて居ります「嫡男系嫡出の者とする、」と云ふことは、者でない者を者とすると云ふのでありますから、事實の世界に於てはさう云ふことはないのでありまして、甲と乙と違つて居るに拘らず、甲を乙にすると云ふことは、事實の世界の問題ではなくて法律效果の世界の問題であると云ふことは、自然に分るのであります、又素人はさう云ふこと迄考へないで、直觀的に了解致しまして、却て此の方が事實に合ふのではなからうか、斯う云ふ風に存じて居ります、末項の方の「現在の陵及び墓は、これを第二十七條の陵及び墓とする、」是はもう少し廣い意義を持つて居りまして、法律家特有の「みなす」と云ふ言葉では却て紛はしい場合がある、詰り同一性のある部分と同一性のない部分と兩方含んで居りまして、それを一切合切、合せて斯う云ふ風になると云ふのでありますから、曖昧な廣い言葉を使つた方が適切と思つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=77
-
078・渡部信
○渡部信君 それは御陵墓ばかりではなく、現在の皇族にも、みなすどころではなく、嫡男系嫡出の方はいらつしやるから、其の點は同じでありますが、憲法にも五十九條に、參議院が衆議院の可決した法律を受取つた後に六十日以内に議決しないときには、衆議院は參議院が其の法律を否決したものとみなすことができると書いてありまして、最近の憲法にもさう云ふ風に、否決したものとすると言つても宜いのに「みなす」とありまして、みなすと言つた方が分り易いと思いましたので、其の前例がありましたので申上げたのであります、御趣旨は分りましたから、附則に對する私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=78
-
079・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 之を以ちまして、各章に關する質疑は一應終りました、尚一括致しまして、御質疑の御希望がございますれば、御許し致します、若し御質疑が別にございませぬければ、暫く懇談に移りまして、御所見を御披瀝になる機會を作りたいと思いますが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=79
-
080・坂田幹太
○坂田幹太君 ちよつと……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=80
-
081・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 質疑でございますか………それでは質疑を御許し致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=81
-
082・坂田幹太
○坂田幹太君 大體御濟みになつたやうでございますが、現行典範の中で、皇室經費のことは別案が出るやうに承つて居りますが、太傅のことは、是は矢張り御一家のこととして、今度は御除きになつたので、斯う云ふ太傅の制度があるかないかと云ふことは、是は宮中の別のことに御委せになつたのだと拜察して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=82
-
083・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 太傅のことを皇室典範から省きましたのは、國の公の方面に於て規定する必要はない斯う云ふことで省いた譯であります、さう致しまするとそれでは太傅と云ふやうな方を皇室の方で御決めになるであらうかどうか、斯う云ふ今度問題が起つて參りまして、それは私共の方で實ははつきり決めることでございませぬからはつきり分つて居りませぬですが、今迄話合つて來て居る道行では大體民法の規定の適用を持つて行く方が實際の事情に合ふのではなからうか、比較的縁の薄い人が保護の任に當らるるよりは、民法の一般の原理に從つて御行ひになる方が適切な結果が生ずるのではなからうかと、斯樣な話合をしつつ、未決定の儘進行致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=83
-
084・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは御質疑がなければ懇談に移ります
午後二時三十一分懇談會に移る
――――◇―――――
午後二時三十三分懇談會を終る発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=84
-
085・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは懇談會を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=85
-
086・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 大體質疑も終つたやうですし、會期も切迫して居るんですから、直ちに討論に入つて戴いたら如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=86
-
087・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 直ちに討論に入つたら宜からうと云ふことですが、それで宜しうございますか……それでは是から討論に入ることに致します
〔渡部信君發言の許可を求む〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=87
-
088・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 梅園子爵から討論の御通告があつたと云ふことに承知致しますから、其の御順序で御發言願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=88
-
089・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 私は本案に贊成を致す者であります、皇室典範案に依りますれば、皇族に關することで、一般國民が行なつて居るのと同じやうな、普通の生活に付きましては、特に皇族のみに適用さるる法律を設けずして、一般國民に關する法律に依つて之を取扱ふ趣旨であるものと解せられるのであります、故に是は日本國憲法の建前に徴しましても、適當であると考へらるのであります、又皇室典範と國家との關係と云ふ問題に付きましても、皇室典範と云ふ特別法を以て取扱ふと云ふことではなしに、成るべく一般の法律で以て取扱ふと云ふ建前なりと察せられるのであります、是亦、日本國憲法の精神から行きましても適當であると認められるのであります、以上の根本的見地から致しまして本案に贊成を致す者であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=89
-
090・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) いま一度懇談に移りたいと思ひます
午後二時三十八分懇談會に移る
――――◇―――――
午後二時五十三分懇談會を終る発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=90
-
091・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは懇談を終ります、本日は是で散會致します、明日は午前十時から開會致します
午後二時五十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=91
-
092・会議録情報2
出席者左ノ如シ
委員長 伯爵 二荒芳徳君
副委員長 男爵 今園國貞君
委員
侯爵 東郷彪君
侯爵 淺野長武君
男爵 白根松介君
子爵 黒田長敬君
子爵 北小路三郎君
子爵 梅園篤彦君
子爵 高木正得君
子爵 三島通陽君
子爵 梅渓通虎君
小山松吉君
松村眞一郎君
羽田亨君
村上恭一君
渡部信君
男爵 飯田精太郎君
慶松勝左衞門君
男爵 鶴殿家勝君
男爵 岡俊二君
男爵 島津忠彦君
坂田幹太君
瀧川儀作君
菅澤重雄君
小汀利得君
長島銀藏君
國務大臣
國務大臣 金森徳次郎君
司法大臣 木村篤太郎君
政府委員
法制局事務官 井手成三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00419461219&spkNum=92
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。