1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○皇室典範案
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昭和二十一年十二月二十二日(日曜日)午後一時二十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=0
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001・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは只今から開會を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=1
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002・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私は此の討論の途中に於て懇談會に移つたのは、色々慎重に此の法案に付ての進行を致したいと云ふ御趣旨と考へます、委員の御方々も其の趣旨に於て懇談に入られたと思ひます、處が私は尚もう一つ此の儘討論として御進め願ふことも結構かと思ひますけれども……ちよつと申上げますが私の此の發言は議事進行に關する發言と御了解を願ひたい、さう云ふ譯でありますから、私の考へて居りますことは、もう少し典範を全般的に取扱ふことに付て御懇談を願ひたいと云ふ趣旨なんです、其の意味は、金森國務大臣の御説明に依りますと云ふと、本會議に於てもさうでありました、此の委員會に於てもさうでありましたが、此の皇室典範は現在の皇室典範の改正でないと云ふ御説明をして居られる、改正でないのである、現在の皇室典範は別の手續を以て、此の日本國憲法が施行される其の前に、皇室典範は廢止の手續を取るのである、さうして新しい典範は今度憲法と共に施行されるのであると云ふ御説明をして居られる、それでありますと云ふと、憲法の方は、大日本帝國憲法と日本國憲法との間には、さう云つた手續は政府は取らないと云ふことになつて居る譯であります、さうしますと云ふと、大日本帝國憲法の廢止と云ふことに付ては、何等此の手續はなさらない、皇室典範に付ては廢止の手續をされる、さうして之を我々が眺めた時に、從來は皇室典範と云ふものと憲法とは並行して同じやうなことで御扱になつて居ることは、告諭文を見て明瞭だと私は思ひます、此の皇室典範の前文には非常に嚴かなる御言葉を以て出て居ります、それと同じく嚴かなる、それより更に一層嚴かと申しても宜しいと思ひますが、帝國憲法もさう云ふ形に於て現れて居る、若しさう云ふ形で以て現れて居りまする皇室典範に付ての廢止の御手續きをなさるとするならば、矢張りさう云つた手續が又茲で行はれるのぢやないかと思ひます、さうなれば帝国憲法に付では何等さう云ふことがないと云ふのは、私は國民が非常に奇異の感を懷くのぢやないかと思ふ、さう云ふ譯でありますから、矢張り皇室典範も全般的の改正である、皇室典範が此の皇室典範に改正されるのであると云ふことになつて、廢止と云ふことに付て特別のさう云ふ御勅諭のやうなものが出ない形に於て皇室典範を御取扱になつた方が宜いのぢやないかと私は思ふ、併し國務大臣としてさう云ふやうなことを言明されて居るのでありますから、さう云ふことを斷行されることと思ひますが、私はそれは穩かでないと思ふ、寧ろ此の委員會で、是は全般的の改正であると云ふことに決議したならば、政府は其の委員會の趣旨を尊重して、全部改正の意味の取扱をされることになつて、極めて穩かぢやないかと思ふ其の點を私は實は御懇談を致したい、懇談會でもう少し議論したいと思ふ、何故かと云ふと是は討論中でありますから、討論の途中に於ける懇談で私はもう少し自分の意見を申述べたいと思ふ、又皆樣の御意見も承りたい、今直ちに討論して採決されるには、さう簡單でないと思ひますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=2
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003・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 只今松村委員から此の討論の間に於て、尚懇談を致して十分に審議を盡したいと云ふ御提案でありますから、懇談に移りたいと思ひます、御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=3
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004・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは懇談に入ります、速記を止めて……
午後一時三十二分懇談會に移る
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午後二時五分懇談會を終る発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=4
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005・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 懇談會を終りまして、是から討論に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=5
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006・渡部信
○渡部信君 此の度の皇室典範の案に付きましては、私先日來二三質問を申上げた際、此の度の案の色々な疑義に付きまして、御質し致しました事柄の中で、皇室の將來を考へ、又皇位繼承に直接關聯致して居りまする制度に付きまして、色々此の案を御修正願ひたいと希望致す點があります、例へば皇室典範と云ふものは法律案でなく、皇室典範と云ふ形が宜くはないか、或は又此の案には庶子の皇位繼承權は認めて居りませぬ、御認めになつたら如何であるか、胎中皇子の皇位繼承權を、保護せられたら如何でありませうか、或は神器の事、大嘗祭の事、改元の事、是等を皇室典範の中に御入れになつたら如何であらうか、其の外の條文の上で色々疑義の點が澤山あります、皇位繼承の順序を御變へになつた場合、攝政の順位なるものを御變へになつた場合、病氣故障が恢復せられた場合にどうなるかと云ふ規定もありませぬ、さう云ふやうな點も何したら如何であらうかと云ふ點も澤山あるのでありまするが、今何れも重大問題であります、色々政府の御方針も伺ひまして、今直ちに之を改正することは餘に全體の問題になりますので、是は最近の次の機會に、御修正の御發議あることを希望致すのでありますが、今囘は其の點は自分としては修正を希望致して置きながら、一應後日に讓ることと致しまして、特に此の只今配付致しました三つの點だけは、是非共此の案に御修正を加へて戴きたいと云ふ希望を持つて居ります、さう云ふ意味で修正の動議を提出致したいと思ひます、修正の理由は、先日來質問の際に、此の修正を致すと云ふ事柄を、先づ讀んで見ますが、其の三つの點に付きまして、第一は此の度の案の第五條、此處に皇族となる方が列擧致してあります、其の中の「皇后、太皇太后、皇太后、」其の下に「皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃、」是だけのことを加へて戴きたいと云ふことが一つでございます、次に第六條に「嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、」とありますが、其の言葉を「天皇より一世及び二世の嫡男系嫡出の子孫は」と斯う云ふ風に御修正を願ひたいと云ふことが第二點であります、第三點は、只今の御配付の物はちよつと字が違つて居るやうでございますが、第十一條の第一項に、「内親王」の下に「王及び」とあります、其の「王及び」と云ふのを「王」として、「(皇嗣を除く)及び」と、斯う云ふ風に續くやうに、此の案に王及び王と、ちよつと書き方が間違つて居りますが、是は「王及び」と云ふのを「王(皇嗣を除く)及び」と、斯う御改め願ひたい、是が私の修正の第三點であります、それで只今修正を提出致しました理由は、質問の時に詳細に申上げて置きましたので、簡單に申したいと思ひます、皇太子、皇大孫と云ふ風な方は從來天皇の皇子、皇位繼承の第一順位の方と云ふばかりでなく、其の外に動かせられざる御皇子の御地位を持つていらつしやる、皇室の中で特別な方でありまするから、法制上も色々特別の制度がありまして、刑法でも皇太子、皇太孫に對する妨害罪不敬罪があり、他の一般と區別して居りまして、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃と云ふやうな特別の旗が、徽章が出來て居りますし、皇太子以上は上啓、一般の親王、内親王の方には申されない上啓と云ふ言葉は皇太子には使はれて居ります、さう云ふ風な特別の御身位の方でありますから、此の案の第五條に、皇族を列擧した中にはつきりして置きませぬと云ふと、例へば皇位は、皇族に傳へると書いてございますが、皇太子としては、皇族でないことになりますと云ふと、親王には御傳へするのだ、皇太子には御傳へするのでないと取れて參りまするし、又第十七條にも攝政は皇族が就任すると云ふのでありますが、皇太子としては皇族でないと云ふことになりますると、どうも第一號は、「皇太子又は皇太孫」とありまして、その次に「親王」と書いてある、皇太子は親王でないと云ふことは、親王以外の方であると云ふことは、十七條を見ても分るやうに思はれますし、又二十三條の敬稱の問題、結り皇族には殿下と云ふ敬稱を申上げる、然るに二十三條の「皇族」と云ふのは、前の五條を承けますから、そこに入らない爲に、皇太子殿下とは申上げられない、正式にはさう云ふことになりまして、無論その方が同時に親王でゐらつしやいますから、例へば皇太子明仁親王殿下と申上げますが、親王を省きますと、單に皇太子殿下と云ふことは事實はあります、正式に皇太子親王殿下とは申上げられないやうに解釋せられる疑問も生じて參る譯であります、殿下と云ふ敬稱は元來大寳令の規定を見ましても、皇太子以上の方に申上げて、其の外の方には、殿下と云ふ敬稱はなかつた方もございますので、どうも面白くないと思ひまして、皇太子は必ず親王でありますけれども、内親王、女王が親王妃、王妃と、皇族の二つの資格を御持ちになることは、外にも澤山例があるのでありますから、此の親王の中で特に皇太子、皇太子妃と云ふことを明かに茲で掲げて置きたい、此の間中から金森大臣は、現在の皇室典範にある無理な規定は、多少疑義があつても其の儘にして置きたいと云ふことを度々仰しやつた、此の點は現在の皇室典範に現にありますのを、此の度憲法が改正せられましても、皇太子、皇太子妃を除く理由が何處にあるが、其の儘にしても差支ないと思ひますが、態態御拔きになつて疑問を生ぜしめ、或は皇太子、皇太孫として、正式に殿下と申上げられるかどうかと云ふことを不明にさせる必要が、何處にあるのか、是は是非お入れ戴きたいと云ふのが五條の改正の理由であります、それから六條は、六條と八條には皇子と皇孫と云ふ言葉が兩方使つてありますが、質問の時に申上げた通り六條と八條は皇子、皇孫兩方とも意味が違ふやうでありまして、六條の方は主として世數を云ふ意味のやうにずつと從來も理解解釋して居るのでございますが、さう云ふやうに六條の方は世數のことであるやうに思はれます、皇子とか皇孫とか云ふ意味を少し細かく考へて見ますと云ふと、皇子は三つ、皇孫の方は五つもの場合が想像せられるのであります、第六條と第八條と五つある中共通して居るのは唯一つ現在の天皇の御子、現在の天皇の御孫と云ふ點が共通して居りますが、其の外の點は、或者は八條に入り、或者は六條に入ると云ふのでどうもはつきり致しませぬ、例へば此の間皇位繼承の順序を御配付になりましたが、天子樣が御代りになつて、一番の御長男の方が御即きになりますと、其の御兄弟の御子、新しい天子樣の御兄弟の御子は御甥に御當りになる、新天皇の御甥に御當りになりますが、此處に言ふ皇孫と云ふことに當てなければ親王と云ふことにならないのでありまして、其の外五つも場合がありますので、どうも六條の方は世數を示す意味に存じますので、それをはつきりしたい、さう致しますと、皇子とか皇孫と云ふ意味が二樣にも三樣にも解釋されないで濟むと思います、只今出しました修正案は文字が不十分な點があるかも知れませぬが、其の意味で是ならば疑問が少なからうと思ひました次第であります、それから最後の第三の點であります、是は此の度の十一條に依りますと、第一項は「年齡十五年以上の内親王、王及び女王」、是等の方は御自由に御自分の御考で皇室會議の議に依つて皇族の身分をお離れになれる、第一項に依りますと、親王と云ふ方ならば、天子樣の御兄弟でも伯叔父、從兄、さう云ふ方々でも苟も親王と云ふ方は御自分の意思では絶對に其の身分をお離れになつてはいけないとあります、是ならば三世以下の王であれば御自由だと云ふ風に特に形式で分けてあるやうでありまするが、少しく形式に過ぎはしないかと思ふのであります、例へば天皇の三世に御當りの方、其の方は直系の三世でありまして、其の一世二世の方で皇太子、皇太孫に御當りの方がゐらつしやらない場合は、其の三世は實質上の皇太子、實質上の皇太孫なのであります、さう云ふ方々迄自分の自由意思で皇族を離れると云ふことはどうも面白くない、無論是には皇室會議の議によるとありまして、皇室會議に於てさう云ふことは否決されると云ふことは御説明もあつたやうでありますが、さう云ふ皇室會議を當てにせられないで、さう云ふ天皇の御後嗣に當るやうな方は、もう制度として、さう云ふことはいけないとして置かるべきぢやないのでありませうか、さう云ふ意味で此の度の修正の意見を出しました、是非共此の三點だけは時節柄色々御手數は掛かることとは存じまするが、御修正を願ひたいと云ふ意味で提出を致しました次第でこざいます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=6
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007・松村眞一郎
○松村眞一郎君 贊成致します、本提案に贊成致します、贊成を致しましたのでありますから、此の修正案は成立致したのであります、それで私は贊成の理由を申述べます、極めて簡單であります、第五條の改正は何故斯う云ふやうにせられなければならないかと云ふことを申しますと、第十七條に攝政の順位としまして、第一に皇太子又は皇太孫と云ふことが書いてある、之を特に書いて居ると云ふ關係から申しましても、どうしても茲に御書きになるのは順序であると思ひます、現行法がさうなつて居りますから……今渡部さんが御説明になりましたやうに此の第十七條では特に第一項を掲げなくても、皇位繼承の順位に依ると掲げれば斯うなる、それでなくても皇太子、皇太孫と云ふことが特に茲に出してあると云ふことから考へましても、矢張り第五條に於ても皇太子、皇太孫と云ふことを特筆する必要があると私は考へます、仍つて此の第五條の修正意見は誠に適當なりと考へます、それから第六條の修正、是は皆樣の御手許に廻つて居ります「皇位繼承の順序圖解」と云ふものがありますから、之を御覽になつて御聽取を願ひたい、此の第六條の規定に依りますと云ふと、どこ迄を親王と申し上げるか、どの順位に御立ちになつて居る御方から第三世になるかと云ふことを御覽願ひながら申上げたいと存じます、そこで圖にありまする、天皇から眺めまして、五に書いてあります所の位置に御いでになる方は、是は第二世でありますから、天皇から第一世、第二世でありますから、それは親王であらせられる、處が今度其の天皇の次の位置にありまする皇長子が御即位になつた場合を想像致しましたなれば、其の五に御當りになる御方は三世になる譯であります、天皇から見ますなれば第三世になる、さうして天皇のあらせられる位置は天皇と書いてあります、其の御位置の天皇の御いでになる時には五に當られて御いでになる方は親王であらせられる譯である、處が今度一の御方が天皇に御なりになりますと云ふと、第三世になります、そこで昨日迄親王と申し上げて居つた御方が今度は王になると云ふことに私は解釋致すのであります、何故かと云ふと、此の第一世第二世と云ふのは現在の天皇から御考になつての意味の三世であると思いますから、現在の天皇の位置と云ふ字から見ます云ふと、それは三世になる、併しながら從來の取扱に於ては矢張りそれは親王として御取扱になつて居る、斯う云ふことです、金森國務大臣は此處においでになつて居りませぬから能く確めることは出來ませぬが、金森國務大臣はさう云ふ御説明をして居る、併しながらさう云ふことが此の條文で讀めますかと云ふことを私は申上げる、讀めないと云ふことを申上げる、天皇から御覽になつて第三世になることは明瞭である、此の規定を御覽になれば分る、それは第六條に何と書いてある、三世以下の嫡男系嫡出の御子孫とありますから、どうしても是は五に當る所のものは第一の地位に御當りになる方が天皇に御なりになつたなれば三世になる譯であります、それは王になります、私はさう考へます、處が金森國務大臣はそれは親王であると云ふことを答辯されて居る、渡部委員の御説明も從來の取扱はさう云ふやうな工合に……宮内省に於てもさう云ふやうになつて居ると云ふやうな御話であります、それは宮内省關係の御方々は此處に多數おいでになつて居りますから、其の從來の取扱及び其の慣例は確定した事實であると致しましたならば、どうしてもそれを確める爲の改正としては、今度のやうに修正しなければさう云ふことには讀めない、私はどうしてもさう讀まざるを得ないと思ひますが、皆樣如何でありますか、三世と云ふことになる、三世以下の嫡出の皇太孫と云ふことになります、それは皆樣はどう御解釋になりますか、それを王と御解釋になるか、親王と御解釋になりますか、どうしても私は王となると思ひます、金森大臣は、親王となると言はれる、さうすれば言はれるやうに合ふやうに改正しなければならぬから、此の修正案の如く致せばさう云ふことになる、修正案はどうあるかと言へば、天皇より一世、二世といふことになつて居ります、さうしますと、天皇と云ふのは、現在の天皇のみならず、過去の天皇も天皇であります、天皇には違ひない、だから天皇から三世と云ふことになるから、此の五は二世になるから、矢張り依然として親王と云ふことになる、是は非常に重大なる改正である、之を若し改正しなかつたならば私が申したやうになる、さう解釋せざるを得ない、それは慣例に反することである、金森國務大臣の言明にも反することであるから、どうしても金森國務大臣は、さう云ふことを言明された以上、斯くの如く修正しなければ、此の條文がさう云ふやうに適用することが出來なくなると云ふことを私が感じますが故に、此の修正案が成立せざるを得ないと云ふことを申上げるのであります、第三の點の、五と云ふ下に「皇嗣を除く」と云ふ字を特に修正案は書いてありますが、是は理由のあることで、それは矢張り之を圖面で御覽になつた方が宜いと思ひます、天皇の直系の御方々は今男子がおいでにならぬと云ふことで想像致しました場合に、此の系統から考へまして、此の王は、當然其の次に皇嗣に御成りになるべき順序に當つて居る御方がある譯であります、當然さう云ふことになります、皇嗣の方々には、もう系統がないのでありまして、それから其の王に當る所は丁度男子であると云ふ場合は是は當然ある、其の場合に此の規定に依りますと云ふと、矢張り此の方は御意思に依つて皇嗣たることを御辭退になつて宜いと云ふことになる、それは甚だ此の規定と矛盾するのでありまして、第十一條に依りますと、年齡十五歳以上の親王、内親王で、其の御意思に基いて御身分を御離れになることは出來ますけれども、「皇太子及び皇太孫を除く。」と云ふ趣旨は、是は民法で申しますと云ふと、推定の家督相續人、推定の家督相續人に當る地位においでになつて、明瞭に此の次は其の御方に當るのであるから、是は推定家督相續人、民法で申しますと云ふと……さう云ふことは皇室典範にありませぬけれども、推定皇嗣と申上げて私は宜からうと思ひます、推定皇嗣の地位に御就きになつて居るのは、皇太子、皇太孫、其の推定の皇嗣に御成りになつて居る方は、御自身の御心持で皇族の身分を御離れになることは出來ないと云ふことを此處に規定して居るならば、其の親王でない王が、推定の皇嗣の地位に其の方が御成りになると云ふことが明瞭になつて居るに拘らず、其の方は御離れになつても宜いと云ふことは、私は此の法の精神に合つてないと思ひます、是は確かに此の規定の不備と考へます、此の修正案が適當なんであつて、斯く又修正しなければならぬと思ひます、其の意味に於て贊成致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=7
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008・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 松村君の修正案に對して …発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=8
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009・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私はまだ修正案を提出して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=9
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010・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) それでは松村さんどうぞ …発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=10
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011・松村眞一郎
○松村眞一郎君 次に私は本案に對して修正を致したいのであります、それは第三十七條中「この法律」とあります此の法律と云ふのを「典範」と云ふことに改めるのであります、其の結果「この法律及び他の法律」と云ふ文字が「この典範及び法律」と云ふことになる譯であります、附則の第一項の「この法律」とありまするのを「この典範」と改めます、第二項の「この法律」とあるのを「この典範」と改めます、此の提出案の理由は、質問の際にも申したのでありますが、憲法の第二條に於きまして「國會の議決した皇室典範の定めるところにより、」と云ふことが書いてあります、第五條にも亦「皇室典範の定めるところにより、」と云ふことを書いてあります、併しながら皇室典範とあるのみでありまして法律たる皇室典範と云ふことは書いてありませぬ、さうして又此の第二條及び第五條の皇室典範と稱するは、法律とすと云ふことも書いてありませぬ、さう云つた場合に於きまして率直に憲法の規定を眺めました場合に於て、皇室典範と云ふ名前のものが制定されることを憲法は要望して居るものと私は考へるのであります、然らば此の新しく成立致します日本國憲法に依つての法規は、どう云ふやうな工合に解釋するかと申しますと、矢張り從來の如く憲法と典範、法律と命令と云ふものに私は考へて宜からうと思ひます、現行の憲法はさうなつて居る、典範は法律ぢやありませぬ、是は議會の議決を經ないのでありますから、本質上に於て法律と云ふことは出來ないのであります、此の度の典範は議會の議決を經るのでありますから、是を學問的に申しましたなれば、凡そ法規であつて國會の議決を經るものは法律であると云ふことの解釋から申しますならば、典範も法律であると云ふことを申して宜しいでありませう、併しながら特別委員會に於ても金森國務大臣が仰せられて居るが如く、此の皇室典範は特に莊重に考へる意味のものであると言つて居られるのでありますから、之が假令法律と云ふ名を冠すると否とを問はず、實質的には法律であり法律以上の效力を持つのであると云ふことに當然解釋されるのであつて、何が故に此の憲法は特に法律と云ふことを書かなかつたかと云ふことも考へなければならないと云ふことを、私は質問の際に申して置いたのであります、是は特に愼重に憲法は書いてあるものと私は考へます、其の意味は、國會の議決したと云ふ其の國會の議決は、憲法の五十九條の第二項にある規定に依りまして、衆議院の三分の二の多數で參議院と異つた意見の場合と雖も成立すると云ふことに法律はなつて居りますけれども、私は皇室典範は斯かる適用のないものと考へるのであります、國會の議決したと云ふことだけ此處に明瞭に書いて居る場合に於きまして、是は法律と云ふことを書いて居りませぬから、私は皇室典範の成立に付きましては、五十九條第二項の如き場合を想像せざるものと考へて居るのであります、矢張り衆議院に於ても議決をして、參議院に於ても議決をして、然る後に皇室典範は成立するものであると云ふ、さう云ふ用意の加つた立法であると、第二條を私は解釋致すのであります、さう云ふ譯でありますから、典範其のものに、憲法が書いて居ないに拘らず、法律であると云ふことを直ちに言ふと云ふことは、典範それ自身が、日本國憲法の欲せざる所迄進んで規定して居ると云ふことに私はなると思ひます、憲法は唯典範と書いて居るのでありますから、此の法案の中にも、之が法律として成立します場合に、第三十七條に於て、「この典範」で一向差支ないのであります、附則に於ても「この法律」とあります所を「この典範」で一向差支ない、典範の本質が法律なりや否やといふことは、是は憲法が定めることであつて、此の典範それ自身が自分から名乘つて「この法律」と云ふことを稱する理由は、私はないと思ふ、典範が法律なりや法律ならざるやと云ふことは、是は憲法が解釋すべきものであつて、典範が解釋すべきものであると私は考へませぬ、何處にもないのでありますから……、典範が法律であると云ふことは、さう云ふ理由に依りまして、この典範の中には「この典範」と書いて置いた方が宜しいと思ひます、其の本質が法律なりや否やと云ふことは、憲法それ自身が決定するのでありますから、憲法の決定する所は典範に直く反映して、憲法が典範と書いてあるのを、是は法律だと云ふことになれば、此の典範の中に「典範」と書いて居るのは法律と云ふことになるのでありますから、自分から決めて掛つて「この法律」と書く必要なきのみならず、憲法に對して、或意味から申しますと云ふと、憲法に對する違反であると私は申して宜からうと思ひます、さう云ふ意味に於きまして、どうしても斯の如く修正をされなければならないものであると云ふのが、私の修正案の理由であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=11
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012・渡部信
○渡部信君 只今の松村委員の御提出になりました修正案に、私としては贊成の意を表したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=12
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013・宮澤俊義
○宮澤俊義君 反對意見を述べて宜しいですか今の修正案に付てですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=13
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014・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 外にないですか……それぢや宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=14
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015・宮澤俊義
○宮澤俊義君 只今の渡部、松村兩委員の修正の御意見に付て反對意見を述べさして戴きます渡部委員の御意見の三點の中の第一點及び第二點は、是は御修正になりましても、ならなくても結局同じことになると私は解釋して居ります、第二點の方は松村委員の御説明に依りますと、斯う改めないと斯う云ふ風に解釋出來ないと云ふやうな御説明でありましたが、此の點松村さんにお叱を受けるかも知れませぬが、私は原案の儘で、松村さんの仰しやるやうな趣旨に十分解釋出來るので、原案の意とする所は將に其處にあるのではないか、或方の親王たる地位が、天皇がおかはりになつたから、それに依つて動くと云ふやうなことは、全然考へられて居なかつたことと考へますので、此の二點は斯う云ふ風な修正になると非常に害があるとか、意味が分らなくなると云ふやうなことは全然ありませぬけれども、併し原案の儘で少しも差支はないやうに思ふので、修正には及ばないではないか、斯う云ふ意見であります、此の第一點の皇太子の問題も、從來の皇室典範にございます言葉ですから、確かに強ひて除かなくとも宜かつたではないかと云ふことを申されようかと思ひますが、併し今是が入らないと、皇太子の皇族たる地位がはつきりしないとか、或は殿下の敬稱を御附けすることが出來ないとか云ふやうなことは全然考へられないことでありまして、全く是はあつてもなくても、法律の解釋として違つた所は少しもないやうに思ひます、そこで何れも特に改める必要はなからうと、斯う云ふ意見でございます、第三點は、是は今迄申しました第一點、第二點と違ひまして、十分問題となり得る修正の御意見と思ひます、皇嗣たる王が、皇族の身分を離れることを許すか許さないか、斯う云ふ問題でありますから、十分理由のある修正の御意見と思ひますが、唯是も結局は程度問題で、絶對に斯う云ふ風に改めると、色々差支があつていかぬと云ふやうなことは言へないと思ひますけれども、原案の儘でも、勿論王御自身の御意思に基いて、自由に皇族の身分を御離れになることが出來ると云ふ譯ではない、無論然るべき手續に依つてのみ可能なのでありますから、其の邊は十分コントロール出來ることでありまして、皇嗣たる地位に居られる王が皇族の身分を離れることが可能になつて居りましても、餘り多くの不便は實際上ないのではないか、斯う云ふ風に考えられる次第であります、さう云ふ理由で是も原案の儘で宜くはないかと私は考えて居ります、松村委員の御修正の點は、是は又違つた問題でありまして、特に理論的には極めて重大な問題を包藏してゐると考へます、只今の御説明にもございましたやうに、新憲法に所謂皇室典範は通常の法律であるかないかと云ふことと結局關聯する問題と思ひます、私は新憲法の解釋と致しまして、新憲法に所謂皇室典範は通常の法律であると考へて居ります、それは其の理由は一一申上げませぬが、憲法全體の解釋として極めて明瞭であると考へて居ります、それならば何故皇室典範に限つて皇室典範と云ふ言葉を使つたかと云ふ先程の渡部委員の仰しやつたやうな御尤もの疑問が出て參ります、私自身と致しましては、憲法の中でも特に皇室典範に限つて皇室典範と云ふやうな言葉を使ふべきではなかつたと考へて居ります、寧ろ「法律の定める所に依り」とすべきではなかつたかと思ひますが、併し從來皇室典範と云ふ言葉が使はれて居りましたので、それと同じ言葉を偶偶使ふと云ふことも、先程植原國務大臣の仰しやつたやうな理由から、敢て絶對に排斥すべきものでもなからうと云ふ位に考えた譯でありまして、從つて皇室典範と云ふ言葉が用ひられて居りますけれども、それが通常の法律たる性質を有するものであることは、憲法全體から見て明瞭ではないかと思ひます、皇室典範が從來占めて居りました地位は、明治憲法に於ける獨特のものでありまして、御承知の通り、當時は帝國憲法と竝んで皇室典範と云ふ最高の成文法典が認められて居た譯であります、處が新憲法はさう云つた最高の成文法典を二つ認めると云ふ二元主義を根本的に否定したのでありますから、從來の皇室典範に相當するやうな法形式は全然認められて居りませぬ、其の意味でも私一人としましては、皇室典範と云ふ從來特殊な意味を持つた言葉を、新憲法の通常の法律に用ひることはどうも適當でないと考へるのであります、併しさう云ふ言葉を用ひましても、新憲法に所謂皇室典範が通常の法律であり、從つて兩院の意向が一致しない場合は、通常の法律と同樣に取扱ふべきものであると云ふことは、憲法全體から見て明瞭ではないかと考へるのであります、松村委員の御意見にあります此の「法律」とあるのを典範とするかしないかと云ふことは、結局はそれ自身は言葉の問題で、是が典範でありますから、此の法律即ち典範と改めましても、餘り變つたことはない譯でありますが、併し只今の御説明にもありました通り、其の趣旨の根本には、新憲法に所謂皇室典範は通常の法律とは違ふ形式であると云ふ御考が潜んで居りますし、又特に此の際斯う云ふ修正をすることは、さう云ふ御考を皇室典範が是認することになると思ひます、それは私の考では新憲法に反することになると思ふのでありますから、さう云ふ理由で是も言葉だけと致しましては、斯う云ふ風に改めましても差支がないやうに考へられますけれども、矢張り原案通りにする方が、此の點に付ては正しいのではないかと斯う云う風に考へて居ります、さういふ理由に依りまして渡部委員の修正意見、松村委員の修正意見の兩者に付て、反對の意見を持つて居ると云ふことを申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=15
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016・松村眞一郎
○松村眞一郎君 此の場合は討論でありませぬから、私は御議論に對しては申しませぬ、唯私の補足だけ申して置きます、それは先日有馬委員から斯う云ふことを申されたのであります、それは私としては、或意味に於て御答辯をしなければならぬ立場にあるのではないかと思ひます、それは有馬委員より斯う云ふことを申された、第二條に於て「國會の議決」と言つて居るが、「國會」はないと云ふことを先づ言はれ、それから第百條には「必要な法律の制定」と云ふことになる、典範が法律でないと云ふことになると、此の規定との關係はどうか、斯う云ふ御議論もして居られる、第二條の關係は、是は此の第百條の規定に依つて立法の手續が進められる場合に於ては、是は現在の帝國議會を言ふの外ないことは當然でありますから、其の方は御答辯は要らないと思ひます、唯第百條の方で、若し私の解釋に依れば「必要な法律」と云ふ文字に捉はれない關係になりますと、此の百條の末文の方に關係して私は根據を付けて置くことに致したいと思ひます、それは「この憲法を施行するために心要な準備手續は」、と云ふことがありまするから、矢張り是は大きな意味に於ての、必要な準備手續と斯う解釋して、私は典範の中の「法律」と云ふ字を取つても、百條の關係にはちつとも支障を生じない、矢張り必要な準備手續として提案するのである、斯う云ふことに私は考へて居ります、それから議會の議を求めます場合に於て、内閣が其の議案を作ることは内閣の規定の中にございます、七十二條に「内閣總理大臣は、内閣を代表して議案を國會に提出し、」とございますから、此の「議案を提出し、」で宜からうと思ひます、是は一つの議案だから、國會は此の場合には、是は帝國議會になります、此の日本國憲法が施行された後に於て、典範に付て何か手續をしなければならぬ場合に於ては、第七十二條に依つて議案を國會に提出すれば宜しいので、私は手續上何等缺陷がないと云ふことを申上げて、私の説明の補足を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=16
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017・村上恭一
○村上恭一君 私も遺憾ながら渡部、松村兩委員の修正意見に同意し兼ねるものでございます、先づ渡部委員の修正意見に付て申述べますが、第一點は、此の皇族の身位を列擧しました所に皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃と云ふことを加へると云ふことは、惡いこと、間違つたこととは申しませぬが、しなければならぬことではないと思います、他の條文なり、又常識なりに依つて解釋の出來ることでございます、強ひて此の修正をするには及ばぬと思ひます、それから第二點、皇子、皇孫とあるのを、天皇より一世、二世と改めようと云ふことでございますが、皇子は天皇の御子、即ち天皇より一世の御方、皇孫は天皇の御孫、即ち天皇より二世の御方であると云ふことは文字の解釋として疑はありませぬ、唯疑のあるのは、其の天皇が現在の天皇に限るか、又は過去の天皇をも含むかと云ふ所にあるのであります、それは渡部委員の修正に依りましても解決することが出來ないのであります、其の御趣意を徹底する爲には、何と申しますか、現在及び過去の天皇より一世、二世と言ひますか、或は天皇又は天皇たりしものと言ひますかの一世、二世と言ひますか、或は又歴代天皇の一世、二世と言ひますか、さう云つたやうに天皇と云ふ言葉にもつと他の言葉を取付けて其の意味を明確にしなければならぬ、それでなれけば、此の修正の趣旨が徹底せぬと思ひますが、其の點から考へましても、此の修正案には御同意し兼ねるやうに存じます、第三點の皇族の身分を離れることの出來る王の中皇嗣は除かうと云ふことであります、是は先刻宮澤委員からも申されましたやうに、正に實質的の意味を有する變更でありまするが、併し此の點は要するに其の皇嗣たる王、それが皇族の身分を離れられて宜しいかどうか、それは皇室會議の議に依ることとありますから、恐らくは事實上適當に調節されるであらうと思ひますし、又其の皇嗣たる王が強ひて皇族の身分を離れられますれば、其の次の順位の王が皇嗣となられます、さう云ふ他の王のない場合迄強ひて豫想しなくても宜しいのではありますまいか、現に皇嗣たる王が皇族の身分を離れられるのは適當でないやうでありまするが、併し何か特殊の思召があり、特殊な事情があつて、自己の意思に依つて皇族の身分を離れたいと云ふ場合は、強ひて之を差止めるにも及ばないのではないかと云ふやうにも思はれますが、彼此考へ合せまして、此の點にも私は同意し兼ねる次第でございます、次に松村委員の修正意見に付て申述べますれば、是は簡單、今日の帝國議會、後の國會に於て議決したる法規、それは總て法律である、そこの議決を經たる法規の中に法律と法律でない別のもの、それは外にはない、是は皇室典範だけであるとしましても、普通の法律と、さうでないものとがあると云ふことは、將來の國法學、日本の國法學の立場から言ひましても必ずしも適當な考へ方ではないと思ひまする、況して先刻宮澤委員も述べられましたやうに、それは恐らくは改正憲法の精神に沿はないものであらうと思ひます、斯樣な考からしまして、帝國議會、國會の議決を經た法規は總て法律であると云ふ見地を貫きまして、此の新しい皇室典範も亦法律である、普通の法律である、特殊な性格を持つたものではない、斯う云ふことに了承すべきだと思ひます、此の理由に依りまして此の修正意見にも贊成し兼ねる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=17
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018・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 外に御發言はございませぬか、御發言は終つたものと認めます、是より直ちに修正案の採決を致します、先づ渡部君の修正案を議題と致します、之に御贊成の方の御起立を願ひます
〔起立者少數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=18
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019・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 少數と認めます、次に松村君の修正案を議題と致します、御贊成の諸君の御起立を願ひます
〔起立者少數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=19
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020・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 少數と認めます、他に御意見のある方は御發言を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=20
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021・村上恭一
○村上恭一君 それでは原案に付きましての私の意見を先づ皮切りに申述べますることの御許しを戴きたうございます、私は原案に贊成する者でございます、先に質問の際に申述べましたやうに、今日の此の會期の短い臨時議會に於きまして、此の重要な案件を審議しまするのは、何となく慌だしい心持で之を審議しますることは、私共の窃かに忸怩たらざるを得ない所でございます、即ち此の議會に向けて政府が此の議案を提出されましたことを遺憾とします、次の會期の十分な通常議會に於てゆつくりと審議する機會を與へられなかつたことを殘念に思ひまする、此のことは同時に政府部内に於ける此の議案の立案準備にも關係があつたやうにも思はれます、即ち此の議案は具さに檢討しますると、幾多の缺陷とも見られるものがないではないのであります、政府部内に於きまして、此の案件を立案なさるに當つて、どうも十分推敲を盡されたものではないやうに見受けられます、蓋し時間が許さなかつたのでありませう、是亦私は此の議案に付て遺憾を感ずる所であります、詰り政府が急いで之を御拵へになり、さうして我々に急いで審議せよと、斯う言はれますことは、重々遺憾に存じます、併し其の故を以て之に反對し、其のことが直接に本案反對の理由となるとは申せませぬ、具さに點檢しますれば、若干の缺陷を見出せないではないやうに思ひますが、併し大體に於て今日斯かる皇室典範案を議決しますることは、蓋し已むを得ないことであらうと存じます、さうして是は從來の皇室典範とは違ひまして、普通の法律である、私の解釋に依りますれば、其の性格は普通の法律であると考へまするから、他日どうしても此の儘では差置き難い缺點を見出しますれば、さうする外はないと云ふやうな場合に立至りましたならば、相當の手續を以て之が一部を改正すると云ふことも出來るのであります、其のやうなことも考慮に加へまして、私は此の際本案に原案の通り贊成するものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=21
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022・坂田幹太
○坂田幹太君 私も本案に對しまして、原案に贊成する者であります、其の心持を申上げたいと思ふのであります、私は二つの點に付きまして、此の度の典範に付て、贊成致して居るのであります、第一點は現行の皇室典範の定めと違つて居りまして、此の萬世一系の皇統を繼がせられる方は、正當の結婚に基いて御生れになつた嫡男系の方に限るとせられたことであります、是は一面には國民の儀表たる御地位に於て、道義の根本を御示しになるものと存ぜられるのでありますが、又之に依つて御血統の純粹性を長く保たるるものとして、私は誠に有難く思ふのであります、第二の點は是は本案が現行典範と同じ精神に基いて、皇位の繼承は天皇崩御の場合のみを豫想して、天皇崩御あれば皇嗣直ちに即位せられる旨を規定して、御退位を豫期せられないことであります、此の點は天皇の御自由なる御意思を否定するものとして、或は論議する者もありますかも知れませぬが、我が國の中世以來、實際に御讓位のありました跡を考へて見ますると、御讓位が御自由の御意思に基いたものと拜察せらるる場合ばかりではありませぬで、却て反對に御意思に背いて行はれたのではないかと拜察せられる場合もあるのでありまして、御退位を豫想しないことは御自由の意思に背く場合が假令あると致しましても、天皇の御地位の特殊なものでありまするので、既に御即位それ自體が天皇の御意思の如何に拘らず、其の御資格の備はられたる方に對しましては、天皇崩御の場合直ちに踐祚せられるのであります、之に對して國民統合の象徴として、御世の千代八千代を壽ぎ奉つて、御壽命は致し方ありませぬことでありますが、それ以外の御退位を豫期するものでないのでありまして、私は明治の御世に、前の現行典範を制定せられるに當りまして、御退位に關する御規定のないと云ふことは、是は過去の歴史の跡を稽へ將來の移り變りの流れをも察せられます彼を思ひ此を思うて、深き慮りの致された所であると存ぜられまして、嚴肅の氣に打たれて居るものであります、此の新しき典範が、今度現行典範の精神を承繼がれて居ることに對しまして、私は強き贊意を表するものであります、斯樣な二點に付きまして、右申上げまするやうな心持で、特に本案に對しまして、贊同の意を表するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=22
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023・宮澤俊義
○宮澤俊義君 私も原案に贊成の爲に一言申さして戴きたいと思ひます、本案に付きましては立法的には少なからぬ不備な點があるやうに思ひます、私自身も其の點に付て政府の御意見を御伺したいと思ひながら、病氣の爲其の機を得ませぬで甚だ殘念でもあり、申譯なく存ずる次第でありますが、併し全體として見まして新憲法下に於ける皇室典範として一應定むべきは定めてあると考へますので、原案に贊成したいと思ふのであります、唯其の運營に關聯しまして、政府其の他關係の方面に對して一應二點に付き希望を述べさして戴きたいと思ひます、第一は皇室會議の問題でございます、皇室會議の組織に付きましては、私個人としましては稍稍不滿の點を持つて居ります、それは其のメムバーの中に宮内府の長が入つて居りますことと、裁判官が入つて居りますことであります、宮内府の長は其の性質がまだはつきり致しませぬから、それに依つて又事情も變つて來るかと思ひますが、裁判官が之に入りましたことは、恐らく從來の皇室會議などからの聯想に基くのではないかと思ひますが、司法權の運用に當る裁判官が皇室會議に入つて居ると云ふことは、どうも筋が通らないやうに考へるのでありますが、唯私が其の點で希望致したいと思ひますことは、新憲法の下に於きましては、從來の如く國務と區別せられた皇室の事務を云ふものは全然ないのであると云ふことであります、從つて皇室關係の事務と言ひますものは、全部國務であり、政府の事務であります、從つて内閣の責任に於て、國會に對する責任に於てなさるべきことであると云ふことを、十分政府におかれまして理解されまして、其の方針で皇室會議を運營せられたいと思ふのであります、從つて宮内府の長と云ふものが、假にも内閣から多少でも獨立であるかの如き地位を持つと云ふやうなことは、絶對にあつてはならないのでありまして、宮内府の長の行ふことは全部内閣の責任、而も國會に對する責任に屬するものであると云ふことに付て、特に御留意を促したいと思ふのであります、と言ひますのは、其の點が新憲法の明治憲法と異る大きな特色の一つでありまして、其の點に十分の留意がなされないならば、結局宮内府と云ふものが從來の宮内省の延長となり、國務の他に國務から多かれ少なかれ獨立性を持つた皇室の事務と云ふものがあるかの如くに取扱はれるやうになる虞がない譯ではないと考へられるからであります、裁判官の皇室會議參加に付きましても、それと同樣の趣旨の配慮がなさるべきではないかと思ひます、第二の點は王侯族の身分に關してであります、此の點に付きましては、既に委員會に於て十分御論議があつたやうに拜察致しますが、私も一言だけ希望を申述べさして戴きたいと思ひます、王侯族は皇族ではありませぬから、新憲法の下に於ては一般國民の列に加はることとなると思ひます、併し御承知の通り併合條約に依りまして日本は王公族に對して精神的に物質的に優遇することを約束して居ります、日本は近年不幸にして國際的な約束を十分に守らず、信を國際に失ふこと多々あつたのでありますが、願はくは此の點に付きましては、諸般の事情の許す限り政府に於かれましても十分併合條約の精神を遵守することに御留意あられまして、日本が國際に信を失ふこと是以上にならないやうに、十分に御考慮を願ひたいと思ふのでありまして、其の二點を希望として申述べながら、原案に贊成の意を表したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=23
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024・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 外に御發言はございませぬか、ないと認めます、引續きまして本法案原案の採決を致します、御贊成の諸君の御起立を願ひます
〔起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=24
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025・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳徳君) 多數と認めます、之を以ちまして本委員會に提出せられました皇室典範案は原案通り可決致しました、之を以て散會と致します、どうも誠に有難うございました
午後三時十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=25
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026・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 伯爵 二荒芳徳君
副委員長 男爵 今園國貞君
委員
侯爵 東郷彪君
侯爵 淺野長武君
侯爵 前田利建君
伯爵 大木喜福君
男爵 白根松介君
子爵 黒田長敬君
子爵 北小路三郎君
子爵 高木正得君
子爵 三島通陽君
子爵 梅溪通虎君
松村眞一郎君
村上恭一君
渡部信君
男爵 飯田精太郎君
男爵 鶴殿家勝君
男爵 岡俊二君
坂田幹太君
宮澤俊義君
塩田團平君
原田讓二君
小汀利得君
長島銀藏君
國務大臣
國務大臣 植原悦二郎君
政府委員
法制局事務官 井手成三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009100896X00619461222&spkNum=26
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