1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
皇室典範案(政府提出)
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昭和二十一年十二月十一日(水曜日)午前十時二十八分開議
出席委員
委員長 樋貝詮三君
理事 北浦圭太郎君 理事 小島徹三君
理事 武藤常介君 理事 吉田安君
理事 菊地養之輔君 理事 酒井俊雄君
井上卓一君 稻葉道意君
大塚甚之助君 北浦圭太郎君
齋藤行藏君 田中善内君
竹内茂代君 三ツ林幸三君
藥師神岩太郎君 馬越晃君
神戸眞君 菅又薫君
星一君 堀川恭平君
森山ヨネ君 井伊誠一君
及川規君 新妻イト君
島田晋作君 松本七郎君
武藤運十郎君 森三樹二君
今井耕君 川野芳滿君
越原はる君 久芳庄二郎君
野本品吉君
出席國務大臣
國務大臣 金森徳次郎君
出席政府委員
法制局次長 佐藤達夫君
法制局事務官 井手成三君
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本日の會議に付した議案
皇室典範案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=0
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001・樋貝詮三
○樋貝委員長 それでは會議を開きます、質疑に入ります、質疑は發言席でお願いいたします、馬越晃君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=1
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002・馬越晃
○馬越委員 先般第九十臨時議會が終了いたしました際、陛下におかせられましては、私ども貴衆兩院議院を宮中にお召しになりまして、親しく拜謁を賜わりましたことは、私どもまことに恐懼感激に堪えなかつたのであります、所でその拜謁を賜わりました際におきまして、私どもは一種の物足りなさを感じたのであります、これはひとり私のみならず、同日參内いたしましたわれわれ同僚が異口同音に言つておつた言葉なのでありますが、ただ單に陛下から御會釋を賜わつたというばかりでは、あの際何となし非常な物足りなさであつた、出來れば一口何かお言葉が戴きたかつたというような感に打たれましたことは、當時の實相であつたのであります、陛下が身をもつて民主化をお示しなさいまして、親しく地方巡幸をなされて、あの大衆の中に、もまれながら歩まれておられるお姿を新聞紙上で拜見いたしまして、非常に恐懼いたしておるのでありますが、ああした所にこそ民主化がほんとうに具現されたように考えられるのでありますが、こうした場合におきまする一言のお言葉を戴くことが、もし何か宮中の或は儀制令その他の規定に違背するものであろうかどうか、これに對しまする國務大臣の御見解を承りたいと思うのであります、なほまたこの宮中儀制令なるものは、今後適當に改廢せられるものであろうかどうか、この點も併せてお伺いしたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=2
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003・金森徳次郎
○金森國務大臣 只今仰せの趣旨は、私どもも既にその當時に或る方々からの御感想として伺つておつた次第でありまするが、いろいろ宮中の儀式には建前があるように存じておりまして、嚴重な御儀式、幾分くだけた御儀式、それから非公式の御儀式といふように、場合によりまして、同じように見えまする場合におきましても、その儀式の扱い方が違いまして、お言葉のない場合もあり、ある場合もあり、何かその邊の所の技術的な考え方は、相當むつかしいものであるそうでございまして、そういうことは、實は現在の所では政府は直接に關係がないのでありまして、宮内省の方の仕事になつておりまするために、詳しいことは存じません、非常にくだけた場合にお言葉があることは往々きいておりまするけれども、多分この間は、やや角ばつた儀式の現われとして、あのように取扱われたものでないかと私は、非常に不確實でありますけれども、了解しておるわけであります、そういうふうな個個のことは、現在儀制令に出ておることでもなんでもございませんので、今後研究をよくいたしまして、最も妥當と思う所、儀式の壯嚴さと、それからいろいろな心持の交流という雙方を考えまして、妥當な所にものが動いて行つてしかるべきもののように考えておるわけであります、それから儀制令のお話でありましたが、かような點はいずれにいたしましても、この憲法が施行されるに伴いまして、相當變らざるを得ない状況になつております、殊に現在の建前の儀制令と申しますのは、皇室の方の規則として定められておりまして、政府の方でも關係はもつておりますけれども、それはただ皇室の儀式に對しまする政府の關係面が多いために關係をしておるのでありまして、主たる立場においては關係はいたしておりません、しかしこの憲法が實施されますと、それは全部政府の責任として考えなければならぬ場面になりますので、その時に儀制令自身も實質的に考究いたしまするし、またそのほかの、儀制令の面を離れましての、事實上のいろいろのことにつきましても、しかるべき考え方をもつて研究をいたしたいと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=3
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004・馬越晃
○馬越委員 やはりその際私どもが非常に恐懼いたしたのでありますが、赤坂離宮へお召しになりました時におきまする離宮の御模樣であります、御邸内の芝生には草がぼうぼうと生い茂つておりまして、また宮殿内も相當破損の箇所が見受けられたのであります、ことに宮邸内の御手洗所の方へまいりますと、水道の水がぱつたり止まつておりまして、用をなした後の不便さえも感ぜられるという實情であつたのであります、漏れ承る所によりますと、宮城内における御殿も大半炎上いたしまして、その後何らの修理の手が伸べられていないと承つているのであります、政府におかれましては、天皇は國家の象徴であられる、その御地位の尊嚴を保持いたしまするためにも、速やかな宮城の御復興ということが非常に急務なものであるのではないか、かように考えるのでありますが、これに對しまする政府のお考えを承つておきたいと思うのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=4
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005・金森徳次郎
○金森國務大臣 お説はまことに傾聽いたしました、私自身の觀察から申しますと、あの時の赤坂離宮の草ぼうぼうという點について御注目になりましたが、私の記憶からして、あの時には特に綺麗になつておつたのでありすして、あれより少し前は、あの前の所には、ぺんぺん草のような草が三、四尺も生い茂つておつて、どこが道かわからないような状況になつておつたのであります、かなり手が廻つていないので、あの時ですらもああいうふうであつたというように私は了解しておつたのであります、實際國民の氣持としては、これは非常に考えなければならぬ點が多くあると思うわけでありますけれども、他の一面から申しますと、國民が現に經濟的にも、物質的にも非常に、未だかつてないような状態になつておりますので、宮内省側の考え方としても、或る程度までは、或は大いに、その點につきまして考えておられることが影響しておるとも思つておりまして、こういう點は、今後政府に問題が移つて來まするに從いまして、最善の注意をしなければならぬことと考えている次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=5
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006・馬越晃
○馬越委員 現在の世相といろいろ照らし合せまして、只今國務大臣の御答辯の御趣旨は、私どもも十分了とするものがあります、しかしながら私ども國民といたしましては、決して御心配になられるようなことを、ほとんどのものが考えていないと思うのであります、一日も早き宮城の復興は、私ども一般國民の望む所でありますから、政府におかれましても、この點につきましては十分なる御考慮が望ましいと考えるのであります
次ぎは本典範の第十條に「立后及び皇族男子の婚姻は、皇室會議の議を經ることを要する、」と規定されてありますることは、先日殿田君の御質問もありましたけれども、私どもといたしましては、天皇が日本國の象徴であらせられる以上、その尊嚴と純潔を保持いたしまする建前から申しましても、かくのごとき大事をとるということは當然のことと考えられるのであります、そこで立后の場合は、皇室會議にかけてそのことが定まるのでありますが、まことに畏れ多いことでありますけれども、もしその反對に、離婚の場合は一體自由に離婚ができるものであろうか、もとより今般制定になりました改正憲法の精神から申しますと、自由に離婚ができるもののように考えられるのでありますけれども、かくのごとき象徴としての特殊な御地位にあられることでありますので、もしこの離婚が自由に話されるものといたしますならば、その離婚後において前皇后が再婚なされるというような場合もまた考えられぬことはないのであります、その再婚が自由であるということになりますと、その影響というものは國民一般に非常な大きなものがあると考えられるのであります、政府はかくのごとき場合におきまして、いかにこれを取扱われんとせられておるのか、これは將來の問題でありますけれども、しかしながら現在の世相といい、新憲法の精神といい、いろいろ併せ考えて見ます時、必ずしもかくのごとき場合が將來起らないとは保障し得ないのであります、政府の御見解を承わりたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=6
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007・金森徳次郎
○金森國務大臣 御離婚の場合さらに進みましては、もつと想像だけを馳せ進めますれば、皇后、太皇太后、皇太后の御三方につきまして、皇后については離婚の場合が考えられますし、皇太后、太皇太后につきましては、また今仰せになりました御再婚というようなことも、理論的には考えられ得るものであります、しかしこの皇室典範の案は、さような場合を念頭においておりません、そういう場合のあるということを前提にいたしませずに、まずないということが前提となつてこの典範ができておりまするが故に、さような方面に關しましての規定は存立いたしておりません、しかし今仰せになりましたように、萬一さような場合が理論的に考えらるるとすれば、それに對する何かの規定を設けておくことがいいではないかという議論も、もとより成立いたします、しかし人間世界の一切のことを法をもつて規定するということは、餘りにも觀念的になりますので、この典範は、さような所までは規定が緻密さをはかつてはおりません、もとよりこの典範は動かないものではございませんで、國會の議によつて萬萬一の必要の場合には、しかるべく改正も補修もできることでございますから、この點を今規定がなくても差支えはなかろう、こういうように考えておる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=7
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008・馬越晃
○馬越委員 庶出の皇子と申しますか、そうした庶出の皇子に對しまする取扱いというものが、典範には規定されておらないのであります、皇位繼承の面から申しますと、その對象には一切なつていないのであります、しかしながらこの庶出の皇子といえども、皇子であることにおいては間違いないのでありまして、天皇が人間生活を行われる上におきまして、親子の情というものはまた格別なものがあるであらうと考えられるのであります、そうした場合における、典範を離れたる庶出の皇子の取扱いに對しましては、いかにお考えになつておるのでありませうか、またその御家族としての御地位は保たれるものであらうか、またその親子の間柄として、宮城内に御起居なされることができるであらうかこれらに對する御見解を承わりたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=8
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009・金森徳次郎
○金森國務大臣 皇族庶子の關係につきましては、かねがね申上げますやうに、ある意味におきましては從前の制度にも非帶に理由がある、こう考えられますけれども、これは人間世界におきましての、道義に關しまする考え方が變化して來ました現在におきましては、皇位繼承の範圍に考えることは無理である、こういうような結論をとつてこの皇室典範ができております、從つて既に皇位繼承權なしといふことがはつきりいたしますと、これは國民平等の原則がここに及んで來るのでありまするが故に、特に皇族として尊嚴の地位をおもちになるということは適當でないというわけで、この皇室典範の一般の規定からは除かれているわけであります、そうしますると、それに代りまする部分は、一般の國民に適用のある所の、民法の規定がその部分には當てはまつて來るものと考へておりますので、そういう面は一切民法によつて解決せらるる範圍となるものと思つております、今日まだ確定しておりませんので、具體的に申し上げることは或は不都合かと思いますが、たとえば財産の相續というような關係になりますると、結局民法が當てはまつて來るものと思うわけであります、それで意識的には解決できると思つております、さらに現實の問題として、心の交通というような意味においてどういうふうにその庶子の方が扱はれるか、或は宮中に御住居の場面があるかどうかというような點につきましては、これは全く事實問題として殘されているものでありまして、この典範におきましてこれを何ら解決はいたしておりません、その點は私どもから御説明申し上げ得ない範圍に屬するものと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=9
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010・馬越晃
○馬越委員 皇族の御地位を保持せられまする上から申しましても、相當な皇族費が豫算に計上されなければならぬと考えておつたのであります、所が今朝配付せられました皇室財産法によりまして、第六條に皇族費の規定が設けられていることを初めて知ることができまして、非常に安堵いたしたのでありますが、これに對しましては、その金額等におきまして一定の標準が見えていないのであります、それは當然いろいろ物價との睨み合せから考えまして、一定額のものをこの經濟法の中に掲げるということは至難な問題であり、掲げること自體が不適當であろうということは拜察できるのでありますが、しかし現在におきまして、この皇室經濟法の第六條にあるそれぞれの項の基準になる親王に對しては、既婚者定額相當額、その他についてはそれの何分の一というような定めがあるのでありますが、その基本になります親王の既婚者に對しまする定額と稱するのは、政府は一體どのくらいにお考えになつているのでありましようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=10
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011・金森徳次郎
○金森國務大臣 今のお尋ねの、皇族費を計算いたします時の、基本の標準、額をどうきめるかという問題でありますが、これは皇室經濟法の中にも明白に書いておりません理由は、だいたい經濟上の金額は世の中の情勢によりまして動きますので、皇室經濟法の方は割合に安定性をもつた法律として殘つて行きますけれども、年々の金額はどうしても動きやすいものでありますから、それは特別の法律をもつてきめるという考えをもつております、そういたしますと、その特別の法律をきめます時に、いくばくの金額にするかということが起つて參りまして、それは今日まだきまつておりません、政府といたしまして、關係の一番深い宮内省當局者との間に若干の交渉は行つておりますけれども、何分にも物價の變化が多いのと、租税制度の關係との組合せ等も考えなければなりませんので、現在まだ全く未定と申し上げるよりほかはございません、私どもの方と、宮内省との間に話を交換しておるという程度の金額は相當少い金額であるという、甚だこれは要領を得ませんで恐縮でありますけれども、そういうふうに御諒解を願います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=11
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012・馬越晃
○馬越委員 私どもといたしましては、皇族の御地位が十分に確保せられるだけの金額は、御計上になつていただきたいという希望を申し述べておきます
それから攝政でありますが、攝政の御地位というものは一體いかになつて參るのか、具體的に申し上げますると、皇族の序列、その他一般皇族に對しての攝政の御地位、或は天皇は皇族を御監督になられるということになるのでありますから、勿論それを御代行になられるのでありまして、その點はだいたい諒承できるのでありますが、序列その他については、攝政になられた後が如何になるのであるか、その點お伺いしておきたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=12
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013・金森徳次郎
○金森國務大臣 攝政の序列と申しまするか、そういう點は今日まだはつきりした所まで參つておりません、恐らくは現在の制度に似たような程度の序列が保たれることと思いますけれども、これは宮中の方の非常に詳細な知識を集めて研究しなければなりませんので、まだはつきりお答へ申し上げかねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=13
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014・馬越晃
○馬越委員 宮内省の機構というものはおのずから變更されるものと考えられるのであります、その變更をされるであろう政府の御構想を承りたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=14
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015・金森徳次郎
○金森國務大臣 宮内府に關しましても、まだ制度は確立するという程度まで研究は進めておりません、ただ今囘の皇室經濟法の中に、宮内府という言葉を導き入れておりまして、それによつて宮内府ができるということは法律の上にもはつきりいたしておりますけれども、それがどんなふうの規模になるものかということは、今日申し上げかねる次第でございますが、だいたい私どもの考えております著想といたしまして、宮内府の事務は今囘政府の一部として扱うということになりまするが故に、しかも各省に屬しないことになりまするが故に、内閣と最も縁故の深い一つの官府になるものと思つております、そうしてその宮内府には、もとよりその長となる長官ができることは當然でありまするが、その下に若干の缺くべからざる部局を設けるといふことにはなりまするけれども、その職員の數等も、現在の宮内省の職員の數よりは相當に少いものとなることと考えております、また世間で、ことによると噂されておつたかも知れませんけれども、恩賞に關しまする部局を宮内府につけるかどうかといふ論が何かあつたやうに存じまするが、そういふやうなことは考えておりません、ただ國の事務の普通のことになりまするが故に、宮内府にはつけないと思つております、でありますから、殘る所の宮内府の職務といふものは、天皇の國家の象徴として御行動になりますることに直近する事務、それから皇室の經濟に關する事務、この二つに分かるるのでありまするが故に、そんなに複雜なものにはならぬと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=15
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016・馬越晃
○馬越委員 皇統譜に登録されておりまする歴代天皇と御陵等は、だいたい現在の所その御陵のありかといふものは、ほとんどおわかりになつておるのでありませうか、または歴代天皇の御陵の判明しないものもあるのでありませうか、その點お聽きしたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=16
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017・金森徳次郎
○金森國務大臣 御陵の中にははつきりしておるものもありまするし、なお今日研究問題として確定のできないものもあるやに伺つております、それらのことの一應できました書類は、今日まだ刷れませんでしたけれども、近くお頒ちいたしたいと思つております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=17
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018・馬越晃
○馬越委員 その問題は資料をいただきまして、また他の機會にお伺いすることといたします、最後に私は改定憲法の定める所によりまして、國會は國憲の最高機關であり、かつ衆議院は參議院に優先するの地位にあるのでありまするから、皇族會議の議長は、衆議院議長がその任に當るのが當然であらう、かように考えるのであります、しかるにこの典範におきましては、内閣總理大臣がその議長の椅子につかれることになつておるのでありますが、この點私どもには了解に苦しむ所があるのであります、これに對する御見解を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=18
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019・金森徳次郎
○金森國務大臣 お尋ねの點は、結局皇室會議というものの性格が議論の論點となるように存じておりますが、國會は國の最高機關であることはもとよりでありますけれども、だいたいの働らく面というものは立法的であり、また行政部を監督するという所に重點があると思つておるのでありますが、この皇室會議の方は多少趣きを異にいたしまして、いわば裁判所のような、法規解釋ということに近い面もありまするし、また諸般の事柄を綜合してきめます所の、行政的な措置というものもありますし、また法律的な措置というものもありまして、いろいろのものが混ざつておるのであります、その結果といたしまして、議員にも皇族或は最高裁判所の裁判官というものがはいつておりまして、どうもその議長をどこにもつて行くかということにつきまして、はつきりした目印がつかないわけでありまして、現行の皇室會議のように、天皇が議長におなりになりまするというならば、これははつきり筋は通るわけでありますけれども、憲法改正からしてさような途はないということになりますると、まず綜合的な立場にある内閣總理大臣の方が、こういう場合には比較的無難であらうというふうに考えて、かような制度にいたした次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=19
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020・馬越晃
○馬越委員 以上をもちまして私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=20
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021・樋貝詮三
○樋貝委員長 北浦圭太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=21
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022・北浦圭太郎
○北浦委員 一番先お伺いいたしまするのは、この皇室典範を今日審議いたしました所で無效であるという議論、この議論は私は輕々に看過すべきものでないと考えております、それは舊憲法の第七十四條、新憲法の第百條の前段及び新憲法の第四十二條、これによりますると、新憲法は六箇月後に效力を發生する、かような規定がありまするし、舊憲法では皇室典範は議會の審議を經るを要しない、かように書いてございます、そこで新憲法の第百條後段によりまして、この憲法を施行するために必要な法律の制定は六箇月前でもやつてもよい、こういうことが書いてございますから、われわれは今日これを審議する、所で新憲法の四十二條には、國會とは何か、これは衆議院と參議院とを言うんだ、かように書いてございます、そういたしますると、今日衆議院と貴族院とで審議することは違法である、こういう解釋は一應立ちます、これは無理もない過日の本會議における質問であつたと思うのであります、所が金森國務相は、國會という文字を楯にされたと私は思うのです、もし私が間違いであればそうじやないといふことを仰しやつていただきたいのですが、この前文の國會という文字を楯におとりになつて、そうしてこれを一蹴された、そこで問題が殘る、この問題を解決するのには、これは私一人考えておることでありますが、間違えたらお教え願いたいのであります、國會は何と何とで構成するのであるか、これを明答される、そうすればこの問題は解決する、過日本會議における質問者は、何と仰しやつても無效だと非常に確信をもつて叫んでおられましたが、私はこれは無效と思わぬ、そこで國會というものを、いかにも憲法には衆議院と參議院とで組織すると書いてございます、ございまするが、前文の國會はどう考えても、これは衆議院と貴族院からなつていなければならない、そういうふうに讀まなければ讀めないようにできております、そこで國會は必ずしもこの憲法に提言されたる通りに、衆議院と參議院を指すのか、そうでなくてもよいのか、この點をまず明らかにしていただきたいと思うのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=22
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023・金森徳次郎
○金森國務大臣 御質問が非常に緻密でありまして、分けてお答えをしなければならないと存じます、國會といふ言葉は、使い場所によつてその意義の扱い方が自然違つて來るものと考えております、皇室典範は國會の議決を經たるものであるということを指しておりまする第二條の國會と申しまするのは、改正憲法の豫見しておりまする所の國會でありまして、第一義的に、すなわち參議院と衆議院との雙方をもつて形つくられておるものと思うわけであります、しかしながら憲法の補則におきまして、準備的な法律をつくり得るという規定を本にして考えますると、この補則の豫想しておりまする範圍におきましては、國會は現在の帝國議會と同じ範圍のものとして考えなければ、この補則を讀むことはできないわけであります、さような意味におきまして、この憲法準備に必要なる範圍におきまして働きまする國會というものは、現在の秩序の下におきましては、この帝國議會そのものが當つておると考えておるわけであります、そこで、さらに前文にありまする所の國會という言葉はどういう意味をもつておるかと申しますると、これは前文を意味のあるように的確に讀みまするためには、過日憲法改正の行われました時の議會を指しておるものと言わざるを得ないと思うわけであります、そうしてこの憲法全般の趣旨から申しますると、國會という言葉は議會という言葉とはつきり區別して使つていなかつたということが、この點から解釋できると思うわけであります、さらに進みまして、恐らくは今の御質問の、或は要點になつておる所ではないかと存じますけれども、「正當に選擧された國會における代表者を通じて」という、この全體の意味を讀みまするために、この國會というものはどういうふうに正當に理解するかという問題が起つて來るわけでありまするが、現在におきまして貴族院はもとより選擧せられたものではございません、だからこの前文の中の國會という言葉は、廣く帝國議會を眼目におきまして、この實體といたしましては、その中の國民代表、すなわち衆議院議員を通じて、こういうふうに讀むのが一番正しい、かように考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=23
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024・北浦圭太郎
○北浦委員 それでまず今日、この皇室典範を審議することは正當なりと私も考えるのであります、そこで疑いのないことは、この皇室典範は新憲法第百條に基づきまして、法律として提案された、これは疑ひない、そこで過日幣原國務相は、今日までは皇家の私法として議會なんかには關係なかつたのだ、今日議會で審議される以上は、非常に民主的になつた、かような御答辯でありましたが、それは形式だけが民主主義であつて、この實體は私は明治典範の足踏み状態であると考えておるが、新憲法は御承知の通り、近代國家憲法の尖端を行つておりまする、憧れ國體、戰爭放棄、これは實に憲法學未踏の新天地を開拓されたものであり、かくのごとき學説が世界學界から容れられるかどうかは別問題でありますが、確かに民主主義的で平和主義的の憲法であるということには間違いございません、しかるにこの典範は實質的に少しも前進していない、憲法ということをさておいて、歴史とか宮廷の古い習慣とか、國民の感情とか、いろいろなものを織り混ぜなければ説明できない、しかし憲法第九十八條によりますると、これは絶對的の條文であつて、その條規に反する法律は無效であります、故に私がこれから質問いたして參りますのは、有效か無效か、主としてこういう點をお伺いしたいのであります
その第一點といたしまして皇位繼承の問題であります、皇室典範の第一條は「皇位は、皇統に屬する男系の男子が、これを繼承する、」とかように書いてございます、皇統に屬する男系の男子であればそれでいい、その間何ら區別は要らぬ、故に皇統に屬しますることと、第二の要件といたしましては、男系の男子であればそれでいい、それで皇位繼承權という權利がある、これは明白である、しかるに過日來再々問題になつておりまするが、庶子なるが故に順序についてこれを排斥する、これは御殿女中式であります、同時に憲法の第十四條の違反である、私はこう思う、よつて憲法の第九十八條によりまして、憲法は最高法規である、これに反する法律であろうが、命令であろうが、處分であろうが全部無效であります、故に皇室典範第二條の第一項及び第二項第一號乃至第七號、第三項、第四項は全部無效であると私はかように考えます、そこでお伺いいたしまするのは、こういうものを排斥して、それで第一憲法に反するということと、皇統に屬する男系の男子がこれを承繼するということからもう間違つておる、それにも矛盾がある、この點國務相の御意見を伺いたいものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=24
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025・金森徳次郎
○金森國務大臣 今御質疑になりました點は、今囘の改正憲法におきましては「皇位は、世襲のものであつて、國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する、」とあるわけであります、從つて直接なる標準といたしましては、この第二條を根據とし得るものと思うのでありまして、今囘の皇室典範は、世襲のものであるということはもとより完全に守つております、また國會の議決した皇室典範の定める所によつてこれを決定しようというのでありますから、この點におきまして何らの憲法に違反する點はないと考えております、しかしてこの第十四條の關係におきまして、國民平等という立場と、これとの關係がどうなるかという問題になりまするけれども、それは既に憲法第二條に、皇位につきましては特別なるこの皇室典範によつてきまるのである、こういう原理を明らかにいたしておりまするが故に、その點に顧みまして、もし一般人の場合と異なる所がありましても、憲法違反という問題は起り得ないと思うわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=25
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026・北浦圭太郎
○北浦委員 憲法第二條は「皇位は、世襲のものであつて、」いかにも世襲でなければならぬ、そこで「國會の議決した皇室典範の定めるところにより、」皇室典範中の第一原則は、この點御説明願えなかつたのでありますが、男系の男子でさえあればよい、嫡出たると庶子たるとを問わず、一つも區別していない、これをどういう理由で庶子を排斥するか、この點は萬人は法の下に平等である、庶子であらうが嫡出子であろうが、それを區別する理由がない、その點において憲法違反であり、皇室典範それ自體に矛盾がある、かように申し上げる、その皇室典範中に、男系の男子であればよいというのと、それから順序についてこれを排斥したのと矛盾しないか、この點を一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=26
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027・金森徳次郎
○金森國務大臣 憲法自身によりますれば、世襲ということが原則であるわけであります、そこで世襲ということは廣い幅の考え方でありまして、その世襲という原則の中におきまして、現實にはどういうような順序と範圍によつてきめて行くかということが、皇室典範できめ得る範圍になつてきますそこで具體的に皇室典範がこれを規定いたしたのでありますから、その繼承の範圍におきまして、どこまでのものが繼承權があるかときめることは、當然皇室典範としてなし得る範圍に屬するものと思うのであります、かような點を先ほどは説明をしたのであります、そこで今お尋ねになりましたことは、第十四條を特に眼目になさいまして、そこでたとえば庶出子が除かれるということは、人間平等という原則からいつて不公平ではないか、或はそれが憲法違反になるのではないか、こういうほうのお尋ねであつたように思うわけであります、しかしそれわ、庶出子であるものと然らざるものとを區別いたしますことは、殊にたとえば相續の關係等において區別いたしますことは、これはひとり皇室典範の問題ではなくして、民法の問題、一般人の問題においても許され得ることではなかろうかと、私は今考えておるのであります、なんとなれば、庶出子と嫡出子との間におきましても、社會的な判斷はおいて區別すべき實體があるからである、こう考えておるわけであります、それは民法一般の問題で、庶出子と然らざるものとの法律上の扱いを區別しても差支えないということを申し上げたのであります、そこで次ぎには皇位と、いふその點の問題をもつてきて、庶出子と然らざるもの、すなわち嫡出子と區別することが正當であるかという問題になつてくると思いますが、憲法的に申しますれば、これをその根柢が違うということによりまして區別し得ることは、一般人の場合と同じである、こういう論を提出すればそれで一應のお答へになると思います、ただ問題は、皇位繼承ということと組み合わせまして、そこに區別をすることが妥當であるかどうか、皇室典範をきめます上に、かような考え方についての是非善惡の論は起り得ることと思います、これは現在までの考え方におきまして、庶出子についても皇位繼承權があつたということは、はつきりした原則であります、今囘これを改正するということも、一つの方針としてここに現われていることでありまして、この二つのものが、世の中で一應は兩方とも正當化されるのでありますから、ここで次ぎの斷案として、どつちをとるがよいかという判斷が起つて來なければなりません、その點につきましては、過日たしか本會議で御説明を申し上げたと思いますけれども、人間の間におきましての道義心が漸次變化して來ますると、正當なる結婚の間に生れたる者が、特に正しき血筋の皇位を繼承すべき人であると考えられますことは、細かい理窟を超越いたしましてまず當然のことのやうな氣がいたしております、妥當な見地からしてはそれがお答えになることと思います、ちよつとごてごてしましたが、法律的に申しますれば、國民の間においてすらも區別ができる、皇室典範において區別することは何ら矛盾する所はない、妥當なる點から言へば、正當なる結婚を尊重するといふことは、今日において明白なる道義的筋道であらうと考へておる、こういうのがお答えであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=27
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028・北浦圭太郎
○北浦委員 民法のことをお話しになりましたが、民法では庶子は排斥しておりません、順序は變えておりまするけれども、全然排斥してをりません、簡單に私はお伺いいたします、憲法、民法すべての法律をさておきませう、皇位承繼の第一條と第二條との間に矛盾がないか、この一點発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=28
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029・金森徳次郎
○金森國務大臣 また遡りまして相濟みませんが、庶子と嫡出子と區別があるといふことだけきまれば、私の先ほどのお答えはそれで目的を達しております
第一條と第二條との間に矛盾がないかというお尋ねでありますけれども、第一條は全體の原則を掲げ、第二條はその範圍内において順位をきめて行きまするが故に、矛盾は起つてゐないわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=29
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030・北浦圭太郎
○北浦委員 どうもこの點が明らかでありませんが、次ぎに移りませう
次ぎに皇室典範の第三條でございます、これは私一人の私見でありまするが、無用の條文と考へます、天皇に精神もしくは身體に不治の重患がある、または重大なる事故がある場合には、すなわち攝政を置きます、皇嗣にかくのごとき事故ありや否やを皇室會議が認定するということは越權の沙汰だ、今日までは皇室會議は天皇これを親裁あそばしまして、皇族自體が認定される、今後は臣下がこれをやる、これは越權であると同時に困難である、かえつて紛爭の原因となります、外國の立法例によりましても、このような規定は甚だ稀であると私は聽いております、天皇は生れながらにして天皇である、死に至るまで天皇である、これを細かく分析してお伺いいたします、一體皇嗣がかくのごとき事故あるかないか、これを皇室會議がどうして審判いたしますか、具體的の場合……、それが一つ、それから、そうでもないのに、それに事故ありと稱して退けるというような恐れも考えられる、これが故に今日まで外國に立法例あつても、これをなくしたといふことを聽きます、まづこの二つについてお伺いいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=30
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031・金森徳次郎
○金森國務大臣 第三條は重大なる規定であつて、容易にその適用のあるべきものでないことは申すまでもありません、しかしそうは申しまするものの、制度としてまた考えなければ、國の象徴たる地位をお充たしになる方を決定いたしまする上において、不適當であるということも言えると思うのであります、やむにやまれぬ規定と申し上げてよからうと思います
次にお尋ねになりました認定方法でありまするが、これは言うまでもなく皇室會議の議によるのであります、國民の總意に基づく國の象徴たる天皇でありまするが故に、いわば國民の總意の結晶とでも言うべき力に根源している所の、この皇室典範第三條といふものを規定することは、決して不合理なることとは言われません、そこで現實の方法といたしましてどうするかということになりますれば、これはもとより認定可能のことと思います、人間世界のことにおきまして、事實の認定ができぬといふことになりますれば裁判も何もできないことでありましてそれはできるに相違ない、ただこれをする時にもつと擴張しなければ困る、これがもし一局部の人の考えによりまして動かざるるといたしますると、古代の歴史におきまして、やはり忌はしい疑いのある物語りが殘つておりまするがそういふことを復活することになるのではなかろうか、私はこれに十分注意をしなければならぬということに、皇室會議の意義が現われて來るわけであります、皇室會議の構成の關係から申しましても、まづ國民代表と思われまする所の國會の議長、副議長四人というものがあつて、一般の國民の氣持がここに現われて來る、それから行政部二人、裁判系統の者二人、しかして皇室の最も知識豐かであらせらるると豫想せられまする皇族の方もお加わりになる、こういふ關係におきまして、しかも特別なる多數決によつて認定することになりまするが故に、萬々誤りはないものと思うわけであります、ただ今お尋ねの中に、不治の重患とかいうようなことを素人がどうして見極めるか、こういふような點をお疑いになつてあつたかも知れないと思うのであります、それは又別に鑑定をするとかいうような方法は、必要に應じて現實には行われるものと思つておる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=31
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032・北浦圭太郎
○北浦委員 私のお伺ひしたいのは、一旦皇位を繼承あらせられまして、天皇と相なられました場合におきましては、このような精神もしくは不治の重患がありましても、依然としてこれは天皇だ、天皇の地位に一つも變りはない、しかるに皇嗣の場合、それは尤も初めから不治の病ある者を皇位につけるということは不穩當であるという考えは起りまするけれども、そういう道理は天皇御即位後でも同じ理窟が起きて來ます、天皇はいかに重大な病氣であらせられましても天皇であらせられる、讓位といことは日本にはない、天皇には辭職がない、そうすると、皇嗣の間だけ特にこれをするという理窟が立たぬ、私はかように思うのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=32
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033・金森徳次郎
○金森國務大臣 お尋ねの點はよく分りました、確かにさような考えは成立し得るものと思います、しかしものには程度ということがありまして、既に天皇の御位におつきになりましたことが、金輪際これに對して動きが起らぬということが一番正確な行き方であらうかと思うのであります、從つてお伺いになりました限りはいかなることがあつても順位に變りはない、必要があれば攝政がここに設けられて、現實の必要に善處するということになるわけであります、しかしまだ天皇におなりにならない前の有樣におきましては、これはできるだけものの動きの適正な方向に工夫をして行かなければならなかつたのでありますから、御位におつきにならない前の段階におきましては、今ここに第三條の豫想しておりまするようなお扱い方は、考えらるることと思いまして、これはむしろ理窟で言うよりも常識的のものと思います、かような考え方が現行の皇室典範におきましても認められておりますることは、やはり從來そこに人々が思いをいたしておつたことの證據でありまして、今日におきましてもその考え方を變えるだけのはつきりした理由はないように存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=33
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034・北浦圭太郎
○北浦委員 進みまして、天皇一身に附著する權利についてお伺いいたします、新憲法第二條及び新皇室典範の第一條によりまして、皇位繼承の順序にある者は新憲法の國家の象徴たる地位を承認せしむる權利、國民その他第三者に對して承認せしむる權利をもつておられる、この權利はただ天皇一個人に屬する特權であると私は考えております、この特權は勿論天皇の國事に關する行爲をなすの作用も包含いたしまするが、行爲權は天皇一身上の權利でありまするから、從つてまたこれを免れる、いやだと思えば、非常に窮境に立つて、これ以上國事に關する行爲をやつて行くのには自分として不適當だというような考えが起りました場合においては、權利でございますからして、これを抛棄しても構わないのではないか、換言いたしますると、なぜ讓位の制度を認めないか、この一點でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=34
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035・金森徳次郎
○金森國務大臣 御説のように、權利というものを、權利だけの立場から見ますれば抛棄してもいいという議論は成立するものと存じます、しかし天皇の御位におつきになるということは、さういうふうのものと違いまして、國の根本秩序といたしまして、國民の總意によつて國の象徴たる仕事をお行になるということは、要するに國民の確信というものを根源といたしまして、これに基づいて必然的に象徴たる地位のお充しを願う——願うというとそれ自身も言葉に誤謬がありますが、お充しになるべきものであるということが憲法第一條の狙つておる所と存じます、從つてかような地位は、その基本の原則に照して處置せらるべきものでありまするが故に、一人々々の御都合によつてこれをやめて、たとえば御退位になるというような筋合いのものではなかろうと思うのであります、勿論これは日本の古代の制度におきましては、御讓位によつて上皇、法皇というような名稱をもつて、政治の一面をも擔任せられたような場合もありまするし、或は場合によつて政治には全然御關係にならなかつたような場面もありまするけれども、そういうことは今日の發達したる國民意識におきましては、どうも是認できないかのように思うわけであります、またそれから生じました所のいろいろな紛糾とか、弊害とかいうものも、日本の昔の歴史が論證しておる所と思うのでありまして、御一人の、普通人の考えのようなふうにこれは理解しては正しくないと私は考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=35
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036・北浦圭太郎
○北浦委員 勿論私は皇位繼承は公法行爲であると考えております、ただいろいろの場合があるからして伺つてみたのであります、さらにこの次ぎにお伺いいたしますることも天皇の特權、一身に附著する權利についてお伺いするのであります、私はこの皇室典範の條丈の中にも、また憲法のどこにも、直接に天皇の不可侵權を規定した條文は發見できません、これはこの間本會議でもちよつとお伺いいたしましたが、新憲法第一條よりこれを演繹するのでございまするか、或はまた金森國務相は、皇室典範第二十一條から類推解釋、ここにこういう規定があるのであるから、いわんやおいておやというふうに承つたのでありまするが、それは許されないのだ、かくの如きことを許されるといたしますると、法律に規定して、そうして憲法に規定ないものを憲法に意味を附著せしむる、これはいかぬ、そこで天皇に不可侵權というものはあるのかないのか、文字はないことはきまつております、そういう刑事上、民事上被告となり得る所の適格性というものがあるのかないのか、この點をお伺いするものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=36
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037・金森徳次郎
○金森國務大臣 天皇に不可侵權がある、すなわち民事上のことは別といたしまして、政治上及び刑罰上におきましての責任を問うことがあり得ないという、その不可侵權があることは、前からたびたび積極的に私は申し上げております、そこで、かような權利があるということの論據がいずこにあるか、現行の憲法におきましては、神聖にして侵すべからずという言葉からそれが生れて來ると説明せられておりまするが、今囘の憲法におきましては、さような規定がないという點に顧みて、たびたびその點の御質疑があつたことと存じております、これは憲法の改正の場合に私から、多分衆議院の委員會においても御説明を申し上げたと思つておりまするし、貴族院におきましても申し上げていると考えておりまするが、一體文字のみを通して、あらゆる法律上の原則が生れて來ると考えることに多少の弱點があるのであろうとは存じております、文字は人間の心持の或る一局面を現わすだけのことでありまして、その文字から演繹することによつて、必ずしも本當の權利は生れて來ないのであります、この憲法第一條におきまして、天皇は國の象徴であり、國民統合の象徴であるということをきめました精神は、天皇を仰ぐことによつて國そのものの姿、すなわち國というもの自身が天皇の姿の中に體現せられている、こういうふうのものであり、ここには國民のすべての尊敬が集中しているはずのものであります、でありますから、かような地位に對しまして、その尊嚴を害するような責任を問い得るというふうの考えは、恐らく生れて來ないとする方が正當であると思うわけであります、過去の日本の、つまり現行憲法制定以前におきましての日本の天皇につきまして、もとより不可侵權の規定があつたわけではございませんが、しかもその不可侵權があると一般に考えられておつたことは、これは自明のことではないかと思うわけであります、誤つて北條氏その他が天皇に對して責任を負わせまいらせたということはありまするけれども、それがはたして正しいことと考えられておつたかどうかというふうに思想を運んで行きますれば、規定なしといえども、かような國の根本的象徴に對して、そういう責任は起り得ないものであるというふうに考えているわけであります、その考えを踏襲いたしまして、今囘の改正憲法の中におきましては、さような白々しい規定を設けない方が國民精神に合致するという前提をとつたわけでありまして、それによつて御諒知を願いたいと思います、この第二十一條に、攝政のこの責任のことが書いてある、その場合からもこう申しましたが、それはただ常識からいつて、かりに私の前に申しましたことを疑う人がありましても、攝政にすら刑事責任がないといえば、天皇に政治責任がないということは得心ができるのではないかと、こういう意味でお答えを申し上げたわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=37
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038・北浦圭太郎
○北浦委員 憲法第一條は、申すまでもなく、金森國務相の有名なる憧れ國體觀の基本條文である、再々われわれ委員も、本會議においてもここでもお伺いいたしましたが、憲法第一條というものは別に權利義務の條文じやないのだ、治者被治者ということも規定していない、權利義務を規定していない、私はここで再三お伺いした、そういたしますると、天皇不可侵權、いわゆる刑法上、民事上無責任の規定ということに相なつて參ります、それで金森國務相の仰しやるように、文字から解釋しないで、その精神を見ろというお言葉でありまするが、この憧れ國體觀、ほぼ私はわかつて參りましたが、これはまずまず文字を離れて諒解いたしておりまするが、權利義務の規定でないということは、金森國務相は再々おつしやつた、しかるにこの一條から不可侵權という重大なる法理が生れて來るのだと申しますると、この點が甚だどうも私としては了解に苦しむのでありまするが、これは畢竟するに、なんぼここでお伺いいたしましても繰返えすだけであるから、これは留保いたします
その次ぎ、今度は皇室會議、皇室會議というものは、これは國法上どんな性質をもつか、皇室典範によりますと、皇室會議は天皇をして國事に關する行爲を行うことを得ないようにいたしまするし、またその第十八條によりますると、攝政をしてその位につくことを得ないようにいたしまするし、その位を退くことに至らしめまするし、そういう重大なる役割をもつておる、この皇室典範は、皇室會議をして、かくのごとき重大なる作用をなすことを得る地位においておりまするが、勿論これは行政官廳ではない、司法官廳でもない、これはどういう性質をもつ所の機關であるか、この點御説明を願いたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=38
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039・金森徳次郎
○金森國務大臣 法律學的にこまかく分類いたしますると、面倒なことになるかも知れませんが、これは結局國の仕事に關する機關であります、こういうふうに申上げることが一番正しいと思うわけであります、そうしてその性質から申しますれば、もとより立法の機關ではございません、もとより裁判の機關でもございません、といたしますれば一種の行政的なる働きをする所の機關である、しかもその中には外に向つて仕事をするというのではなくて、ここに掲げられましたような條項の、一種のたとえば順位變更という結果をここに導き出す所の機關である、こういうふうにお答え申し上げたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=39
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040・北浦圭太郎
○北浦委員 そういたしますと、行政的の行爲をなす特別機關というふうに伺えまするが、その役目をもつ所の、その性質をもつ所の皇室會議を構成いたしまするのに、最高裁判所の長官、それからその他の裁判官、これを加入せしむる、これはどう考ても當を得ないと私は信じます、なぜならば、この特別機關の行爲が時に憲法違反の行爲なりや否やを審判する所の人々であります、みずから行爲して、みずから決議に關與して、みずから決議して、そうしてみずからその審判をする地位におるということは、これは理論の許さざる所であります、常識もこれはいかぬ、そこで私は、政府においてはすべからくこの最高裁判所の長、竝びに裁判官、これに代えまするに、いわゆる民主主義陣營のチャンピオンとも申すべき辯護士、この二名をもつてすべきである、御承知の通り英國王室におかれましても、その王室辯護士というものはおかれておる、勿論役目は違いましよう、これは私は本會議においては、立法、司法、行政三者合流するということは面白くないと申した、そうすると金森國務相は、合流するもよし、せざるもよしと、まるで禪問答のような御答辯を頂戴いたしたのでありまするが、これはどうもわけが分らぬ、こういう審判するもの、たとえば過日どなたかの質問におきましても、三笠宮妃殿下においても、大審院に訴えることができるかというお言葉があつたということを拜聽いたしまするが、審判する機關、この點いかがでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=40
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041・金森徳次郎
○金森國務大臣 お尋ねの點は御尤もな意味を多分に含んでおると考えております、だいたい最高裁判所というものの構成者が或る他のことに關與いたしますということにつきましては、餘ほど注意すべきことと存じております、普通には最高裁判所の裁判官等が他のことに關與することは面白くないと存じております、しかしこの皇室會議の擔任しております事項の中には、可なり混みいつた問題がありまして、國の各方面の人の考えが綜合結集せられまして、萬過ちなきを期したいという念願は強いのであります、さような事情でありますが故に、法律的なる知識において、制度上信用のおかれておる所の、最高裁判所の裁判官をここに代表せしめたわけでありまして、その考え方に特別に不都合な點もないのでありまするし、從來の皇族會議等につきましても、これに近い考え方は導き出されておつたように思います、今仰せになりました辯護士等をここに代表せしめたらばどうかということでありましたが、大きく考えをもちますれば——辯護士と裁判官というものは區別して考えるのも一つの事實でありましようけれども、かような國家の綜合的なる判斷をいたします時には、國内における辯護士的知識が、ここにやはり裁判官を通して代表せられておる、つまり法律的なる國の知識はこの形を通つて代表せられておる、こういうふうに見てもいいのではなかろうかと私は考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=41
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042・北浦圭太郎
○北浦委員 法律上の知識のある者は、別に裁判官でなくても澤山おりまする、弊害がある、どうしても弊害があるということであれば、無理にもつて行く必要はありません、從來の皇族會議もいかにも、大審院長は出ておりますが、これは決議しない、意見を申し上げるだけです、今度は決議する、そこにおいて私は不都合ありと、かように思うのであります
次ぎに皇室典範の第十條の「立后及び皇族男子の婚姻」でありまするが、これに皇族會議が干渉するということは、今までこれにも質問がありましたが、私は憲法離反であるという點において、角度を變えて質問いたします、憲法第二十四條違反でありまする、これはなんとしても違反だ、皇族というものは別だ、皇室というものは特別のお方である、かようなことは歴史的説明でありまして、法律的説明では、どうしても違反だ、故に憲法第九十八條によりまして無效の條文である、これはどこまでも確信する、これを有效か無效か、それだけの御答辯を願いたいものであつて、宮中の慣習であるとか、或は國民の信念であるとかいうようなことは、私は御説明願いたくない、これは憲法に當てはまるか、情状は幾多今日まで聞いておりますが、ただこの事實が、こういう皇室會議が干渉するということが、憲法第二十四條に適合するか否か、その點だけお伺いいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=42
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043・金森徳次郎
○金森國務大臣 憲法は一般原則及び特別原則を含んでおるものと信じます、從つて婚姻につきましては兩性の同意を唯一の要件とするといふ規定は、一般的の規定としてもとより尊重し、效力をもつておるものであることは疑いがございません、しかし特別なる規定をも含んでおるものであり、すなわち皇室典範というものが、第二條において豫想せられておりまして、皇位繼承ということと組合わさるる關係におきまして、ここに何等か特別なる規定が生じ來ることをも是認しておるものであろうと存じます、そこで婚姻につきまして、兩性の平等を尊重すべきことはもとよりでありまするけれども、皇位繼承ということと不可分に存しまする範圍において、やむを得ざる所の變化を加えることは、憲法第二條が許しておる所と思うわけです、だいたい立后及び皇族男子の婚姻というものは、單純なる個人の婚姻と違いまして、その血統を本にしまして皇位繼承が行われて來るわけであります、特にここに皇族男子という項を抑えまして、皇族女子の婚姻のことをここに書きませんのは、皇位繼承ということとの關係から、男系ということとの結びつきでできておるのでありますが、さような意味におきまして、婚姻自身はなるほど自由でなければならぬ、しかし皇位繼承という面から來るやむを得ざる特例というものは、これに加えられてよいのではなかろうかというふうに考えて來ますると、第十條が皇位繼承と結びつく限りにおいて、婚姻につきまして一つの要件をここに設けておることは、憲法上是認できることと思うのであります、殘る問題は、かような一つの條件、皇位繼承、すなわち憲法第二條の豫想しておりまするそれと無關係に存するか、或は必要なる限度を越えて存するかということの問題になつて來ると思いますけれども、これは血統を本位としてできておりまする所の、皇位繼承の根本原理を顧みますれば、ここに自ら血統上の考慮からの制限が生れて來ることは、しかたがないといいますか、やむにやまれざる正當なことと考えまするが故に、憲法違反には全然ならないと思うのであります、なおこれはただ婚姻の制限だといたしますと、非常に強く響きますが、そうでない、皇位繼承の範圍をきめるということと組合わせての制限である、こういうふうに御理解下さいましたならば、やはり憲法違反だというふうにきめておしまいにならないで、もう少しお考えを願いたいと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=43
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044・北浦圭太郎
○北浦委員 私は、憲法違反なりと考えまする根據は、單に「兩性の合意のみに基いて成立し」これだけをとつておるのではありません、その第二項に、配偶者の選擇、離婚竝に婚姻、こういう事項に關しては、法律は個人の尊嚴に立脚して制定しなければならない、個人を離れていろいろなそのほかの事情、習慣、感情を織り混ぜて、そういう法律をつくつてはならない、これが第二十四條の規定であります、政府の仰しやることをじつと聽いておりますると、どうも國民の中に特別のものをつくつておる、それだから私は初めから言う、この皇室典範は明治典範の足踏みだ、足踏み状態だ、一つも變らぬ、なるほどこの時の皇室會議はなるべくは御贊成なさるのでありましよう、さような反對ばかりなさるのではありますまいが、その贊成自體がいけない、贊成する者は反對もいたし得る、そういう資格を皇室會議に與えるということが憲法上間違つている、私はかように考えている、これは將來憲法違反の無效確認の訴訟でも、起そうと思つたら起せると私は確信いたしております
次ぎに第十一條は「年齡十五年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室會議の議により、皇族の身分を離れる、」こうなつております、この僅かに十五年の未成年者、刑法では御承知の通り十四年以下は人間ではない、十四年以下の人のしたことは無責任である、何をしても罪にならない、それとたつた一年違いの十五年、これらのお方に——、どうも書いてあることがおかしい、「その意思に基き」と書いてあるが、十五ではほとんど意思がない、一面に刑法といふ法律では十四年——たつた一つ下ではもう人間と認めていない、そうしてこの典範には十八歳、これが特別成年にできております、普通われわれは二十歳である、このわずか十五歳の方々に、その意思を基礎として重大なる法律行爲をなすことを許し、かつこれに干渉する、これも私はわけのわからぬ無理な規定だと思つております、これも明かに萬人は法律の前に平等なりという趣旨に反する、一體どういうわけでこの十五という年におきめになつたのか、それでよろしいか、これが萬人の前に平等という原則に反しないか、この點を一つお伺いしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=44
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045・金森徳次郎
○金森國務大臣 皇室のこと、つまり皇族の身分を離れるということは一般人には起り得ないことでありまして、皇室の方にのみ當はめることでありますが故に、この點は國民平等の點の規定とは相わたることは多分なかろうと思ひます、從つて問題は、十五年という年齡をもつてかような問題を解決することを認むることが、その人の立場を顧みまして適當かどうかということになろうと思います、いろいろな事柄につきまして、人間はその時代々々の判斷をするのでありますから、民法では二十歳ということをもつて制限しておりますけれども、しかしそれは事にもより、ものにもよるのでありまして、或る限られた問題については年齡を變えるということは理由の成立することと思うわけであります、未成年者でもなお營業をなし得るということは民法自體も認めておることであります、そこで皇族たる身分をお離れになるかどうかということを、いくつ以上の方が御判斷になつてしかるべきかという問題になりますと、從來の沿革等を見まして差支えがなかつたという保障がついた年齡であるならば、それを基礎としてもよかろうというふうに考えます、この十五年というのは、從來のこれに類似したる場合における判斷をなし得る年齡、こういう趣旨でここに掲げられておるわけでありまして、法規の上から申しましても、また妥當性の上から申しましても、差支えはないように存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=45
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046・北浦圭太郎
○北浦委員 臣籍降下が一般人にないというようなことはよくわかつております、わざわざ御説明を聽かなくてもわかつております、私の言うのはそうじやない、たとえ三人でも五人でも、特別のものをつくるということが非民主的だ、間違いだ、かように申すのです、それから十五におなりになると、既に一人前の意思が決定できるんだ、前から考えて弊害がなかつたんだ、こう仰しやいますが、それで御無理はございませんか、内親王や女王、わずか十五歳の幼小のお方が、臣籍降下という大事件を決定なさる、もう少し年を繰り上げなさることを私は政府に衷心から進言しておきます
次ぎに皇族會議の構成員中に國會の議長、副議長及び最高裁判所の長、こういうものが含まれておられますが、これはおのおのその機關を代表して議員となるのか、或は個人たる資格においてこの特權をおもちになるのか、この點をお伺いいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=46
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047・金森徳次郎
○金森國務大臣 今お尋ねになりましたこういう機關の長ともなるべき人を議員にいたしまする場合に、代表か個人の資格かということは、一般論として常に起る問題でありまして、御質疑の次第は御尤もと存じております、かような場合にどう解していいものであろうかということになりますると、法律的の見方と、政治的の見方と、そこに二つ別になつて生れて來るもののように思います、法律的に申しますると、國會を代表して一人の議長或は副議長がそこで發言をするということは、ちよつと考えられません、無理につくればできまするか知れませんけれども、考えられません、でありまするから、法律的に言えばこれは個人としてこの地位を充たさるる、こういうふうに見てよかろうと思います、しかしそれは冷やかなる法律の判斷でありまして、政治の眼から見ますれは、自然國會を代表するが故に、ここに働きができるということになりますから、まことに野暮つたいような議論になりますが、法律的には個人としてここに現われるのである、しかし政治的にはその背景をここに代表されるのである、こういうふうに御理解を願いたいと思います、それからただ裁判官につきましては、その議論は少しく不適當になりまして、もう少し緩和いたしまして、裁判所の氣分或は考え方をここに現わすという政治的目的をもつてつくられておる、こういうふうに御諒解願いたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=47
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048・北浦圭太郎
○北浦委員 いまの御答辯は私はほとほと感心して、そして私も衷心から贊成いたします、どう考えても司法官だけいかぬ、ほかの法律的に個人であつて、政治的に背景を重んじている——まことに巧妙なる御答辯でありまして、これで滿足でありまするが、司法官はそれでは解決つかぬ、かようなものはやはり、どこから考えても解決つかぬようなものは、省くことが私は最も適當であると、再びつけ加えて申し上げて置きます
次ぎに皇族でありまするが、立后と御婚姻、これは別個の觀念であると思いまするが、いかがでございまするか、即ち婚姻は民法上の法律行爲であつて、立后は儀式であると思いまするが、いかがでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=48
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049・金森徳次郎
○金森國務大臣 御説のように、日本の古い時代の考え方といたしましては、立后と婚姻ということは別のものであつた事例もあるように存じます、例えば既に皇族、まだ皇位におつきにならない前に、御婚姻になつておつた場合におきまして、皇位におつきになつた後に改めて立后ということが行われたということもあるわけであります、しかし今囘の典範において豫想しておりまする立后と申しまするのは、そういう特殊な古代の用例によつたのではなくて、近ごろの考え方を本としておりまするが故に、ここに立后という言葉は、天皇の御婚姻ということと同じ意味に了解をしております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=49
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050・北浦圭太郎
○北浦委員 これは法律的ではありませんが、立后の御儀式或は立太子の御儀式というのは、これはやはり今後もおやりになる御計畫になつておりまするか、この點念のためお伺いしておきます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=50
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051・金森徳次郎
○金森國務大臣 この點につきましては今の所何らまだ確定したる結論に到達しておりません発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=51
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052・樋貝詮三
○樋貝委員長 北浦君、まだ相當ありましようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=52
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053・北浦圭太郎
○北浦委員 もう少し……多少ございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=53
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054・樋貝詮三
○樋貝委員長 もし長ければここで休憩して、午後に願いたいと思います——それではこれで暫時休憩いたします、午後は一時より開會いたします
午後零時五分休憩
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午後一時十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=54
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055・樋貝詮三
○樋貝委員長 休憩前に引續き會議を開きます、質疑に入ります、北浦圭太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=55
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056・北浦圭太郎
○北浦委員 午前に引續きまして、立后問題でありまするが、政府の御意見では、立后とは御婚姻とは別個に考えていないと拜聽いたしましたが、大多數の場合におきましては、皇太子殿下が御婚姻あそばす、後に天皇陛下に御即位あそばします、その時に立后式というものが行われますが、まず御即位後天皇におなりになつて、皇后陛下ということに相成ることもございませうが、その代りに、御婚姻と立后とは別々の場合が多い、こういう場合にはどうしても御婚姻と別個の觀念でなければならぬ、かように私は考えておるのであります、かりに同時に立后ということが行われましても、觀念は別である、そこでお尋ねするのでありまするが、婚姻ということは疑いもなく民法上の法律行爲でありまするが、立后はどう考えてもこれは儀式である、從來から立后式、立太子式と申しまして、われわれの常識はこれを儀式の部類に入れておるのであります、そういたしますると、憲法第七條の十によりまして、内閣の助言と承認とにより天皇がこれを行わせられるのでありまして、皇室會議がとやかくこれに干渉することは憲法違反ではないか、かように私は考えるのでありまするが、金森國務相の御意見をお伺いいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=56
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057・金森徳次郎
○金森國務大臣 この場合の立后と申しまするのは天皇の御婚姻、そういう意味と全く同じに了解しております、宮内省方面の人の解釋も、現在ではそういうふうになつているということでございますからして、只今お尋ねのお言葉はありましたけれども、極く古代の立后ということとは違う意味と存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=57
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058・北浦圭太郎
○北浦委員 その御答辯は先ほどお伺いしたのでありまするが、皇太子殿下中に御婚姻遊ばす、既に御婚姻ということは過去の事實であります、將來天皇におなり遊ばした時に立后という問題が起つて來る、この場合に立后と婚姻と同一ということが考え得られまするかどうかをお伺いするのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=58
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059・金森徳次郎
○金森國務大臣 今例にお擧げになりましたような場合は、立后ということが起らないというふうに存じております、現實の場合といたしまして、今上陛下の場合でも、たしか私の記憶しております所では、前に御婚姻が行われまして、それから御即位が起つたというのでありまするが、その場合に別に立后という特別な途は行われたようには記憶しておりません発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=59
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060・北浦圭太郎
○北浦委員 そこで食前にちよつとお伺いしておいたのでありますが、しからば將來立后式、立太子式というものはないのか、こういう問題になつて來るのでありますが、これは今のところでは決まつておりませんですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=60
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061・金森徳次郎
○金森國務大臣 決まつておりません発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=61
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062・北浦圭太郎
○北浦委員 それじやよろしゆうございます
次ぎに皇族の民事、刑事裁判に關する特權、これは今囘は全然消滅せしめたのでありまするか、或は將來、刑事裁判に關することは刑事訴訟法で、民事に關しますることは民事訴訟法で、御規定になつて、來る通常議會にでもお出しになるのでありまするか、たとえて申しますると、皇族は從來は勅許を得るのでなければ拘引したり、召喚したりすることはできなかつたこと御承知の通りであります、それから皇族と國民の訴訟、これは特別管轄がございました、こういうことはもう消滅いたすのであるか、或は將來お出しになるのであるか、消滅するとしたらその理由はどういうわけでありまするか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=62
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063・金森徳次郎
○金森國務大臣 民事及び刑事の訴訟と皇族との關係につきましてのそのやうな規定は、この皇室典範系統の今囘の改正法律の中からは除かれております、それではそれの代りになるだけのものが、實態としてやはり制度上設けられないかどうかということが次ぎの問題になつて來ますけれども、幾分は特例を生ずる場面もあろうかと存じておりまするが、だいたいとしては特例をなくするという方向でありまして、來るべき通常議會の時に、それらの點をはつきりきめて御審議を願うということに豫定いたしております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=63
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064・北浦圭太郎
○北浦委員 もう一つこの問題についてお伺いいたしますが、この皇室典範には、御陵墓の規定は現われておりますが、神宮ということがない、それから刑法にも神宮ということが問題になつているということをきいておりますが、御承知の通り、刑法には神宮に對する不敬罪が規定してあります、神宮の御陵というものとは、刑法では同列になつておりますが、これもなくなるのでありますか、もしなくなるということであるならば、なぜなくするか、この點をお伺いいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=64
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065・金森徳次郎
○金森國務大臣 この皇室と直接または間接の關係におきまして、今仰せになりましたような種々の點を考究しなければならぬことになつておりますが、この方面のことにつきましては、新らしい刑罰制度におきまして、相當根本的に考えなければならぬ點が多いのでありまして、現に研究中ではありますけれども、まだはつきりしたことにつきましては、方向をも申し上げにくい状況になつております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=65
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066・北浦圭太郎
○北浦委員 このことにつきましては、巷間いろいろ噂があります、私は奈良縣人でありまして、奈良縣には橿原神宮というのがございます、その隣りには伊勢神宮というのがございますが、一體こういう神宮というものは皇族とは最も密接な關係がございます、それを、このごろいかにも何か戰爭に關係でもあるような考えをもちまして、誰言うとなく、誰するとなくこれを排斥する、御承知の通り、別に橿原神宮や伊勢神宮がこの侵略戰爭をやれと仰しやつたのでもなければ、またこの神宮に對して戰のことをそう國民が迷信的に頼みに行つたわけでもないが、妙にそれが誤解されまして、恐らくこれは今度の改正刑法でも、神宮の不敬罪ということがなくなるのでないかということを私は心配いたしておるのであります、既に皇室典範には、御陵、墓と書いてある以上は殘るのでありましようが、やはり信仰の自由ということはこの憲法にも書いてあるのでございますから、くだらない侵略戰爭と結びつけて、そうして皇室の御先祖であり、われわれの崇敬いたしまする神宮を、目下考究中であると仰しやいますから、私は御參考のために、またわれわれの念願として申しておくのでありますが、これを戰爭と結びつけて排斥するというのは、けしからぬ話だと私は思つております、神樣は何の關係もない、そしてわれわれは佛教を信じようと、天理教を信じようと、或は神道と申しまして神樣を信じようと、これは自由で、憲法に規定されてある、そういうことをよくよくお考え願いまして、これは金森國務相が總理大臣にもその他の閣僚にもお話し願いたいのでありますが、やはり從來永らくやつて來られましたように、内閣を組織されて大臣におなりになると、國民の象徴の、しかもその御先祖である神宮でありますから、にわかにぷつつりとお詣りになることをおやめにならないで、もとの通り御參詣なさることが至當であると、私は考えているのでありますが、これは私の念願であります、憲法違反とも何とも申すのではありませんが、少くとも排斥するのはよろしくない、戰爭とは何の關係もないのであります
次ぎに、前には民事、刑事の裁判でありますが、今度は民法上であります、民法上皇族に關する特例もなくなるのでありますか、或はまた民法を改正して規定せられる豫定でありますか、たとえば皇族の後見人は皇族たるを必要としたがごとき、或は禁治産宣告は勅旨によつたがごとき、これを全部廢止されるとするならば、一體皇族の御幼少なる方は誰がこれを後見なさるか、或はいわゆる浪費の癖あらせられるようなお方に對しては、どなたがこれを宣告なさるか、裁判所であるか、この點を明らかにしていただきたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=66
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067・金森徳次郎
○金森國務大臣 民事關係のことにつきましても、これは民間の一般適用になります民法制度も、いずれはこの憲法の改正によつて、相當大幅の變更が行われることと存じますために、まだその邊まで十分の結論ができておりません、いずれは通常議會において御審議を煩わすことになろうと思つておりますが、特にこの皇族に關しましても、できるだけ特例をつくらないという方向をもつて、萬やむを得ない部面においてのみ特例を設けようという方針をもつて進めておるわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=67
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068・北浦圭太郎
○北浦委員 次ぎに進みます、この皇室典範には宮内大臣とは書いてありませんが、宮内府の長という文字が、現われております、そこで宮内大臣は豫想されておるに違いありませんが、一體宮内大臣というものは國法上どういう性質をもつものであるか、この點まずお伺いいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=68
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069・金森徳次郎
○金森國務大臣 現在考えております所では、宮内大臣に代ります今後の宮内府の長は官名等はまだはつきりいたしておりませんけれども、結局皇室に關しまする行政府の長官という意味において心得ております、從つて國會に對しまする政治責任のごときものは直接には負いません、それに關係しますることは、内閣それ自身が責任を負うというふうに考えております、しかし皇室のことを扱うものでありまするが故に、格式は相當高きものにしなければならないというふうに考えております、一口に申しますれば、形から言えば、内閣の外局というような性質をもつものではなからうかと存じております、しかし事柄が皇室の事務を擔任するのでありますから、一般行政官廳とは違つた構想に基ずきまして、しかるべき制度を設けたいと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=69
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070・北浦圭太郎
○北浦委員 しからば宮内省の役人は、これは皇室の私的使用人ではなくして、國家の公務員ということに相なると思いますが、いかがでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=70
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071・金森徳次郎
○金森國務大臣 現在の宮内省の職員は、仕事の中味から申しますと、國の公務員に近いものもありまするし、そうでなくて皇室御一家の事務を擔任するものもあると思つております、言い換えますれば皇室の公の面を擔任する職員もあると同時に、私の面を擔任すと職員もあると存じてをります、今度の改正の制度におきましては、皇室の面を擔任する者が宮内府の職員となろうと思います、それから公に全然關係のない私の職員は、國の役人たる性質をもたないことになりまして、一家の民事的なる使用人ということになろうと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=71
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072・北浦圭太郎
○北浦委員 問題は別でございますが、私の考えによりますと、皇族になりたい、皇族でありたいというような考えは、私は非民主的である、かように考えております、故に或る程度必要以外はどしどし臣籍降下を認むべきである、換言いたしますると、この皇室典範はあまりに多く皇族を縛り過ぎておる、新憲法の國民の自由と非常な違いがあります、ぼちぼち比較いたしてみますと、第一に庶子なるが故にこれを排斥する、民法はこれと反對である、皇族の身分になつてみますと、精神的に身體的に重患ありや否やを看取される、民法にはさようなものはない、養子は禁止される、民法は反對、婚姻は干渉される、憲法は反對、臣籍降下も干渉される、金森國務相のお言葉のように、これは一般にあるものではありませんから民法もありません、天皇攝政の辭職は許されない、大臣はなん時でも辭職する、祖先傳來の財産は奪われる、天皇は政治に關係できない、皇族はたいてい今日まで武官であられたから、内閣總理大臣や國務大臣にはなれない、これは憲法に規定せられる、幼年にして責任を負擔させられる、民法は反對、數えて見ますと十指に餘る、これでよいか、どこに自由がある、これが民主主義的の自由と公正とを尊ぶ立法であるか、一面に大權はなくする、他面に法律で自由を奪う、これは金森國務相はよくお考えを願いたい、いかにも皇室典範は皇族だけ特別扱いである、天皇だけ別に國民と離して鄭重に扱う、實はこの通り自由を奪つている、そこでこれらの制限中から、庶子の排斥は絶對にいかぬ、もとの皇室典範はそれでよかつた、それから婚姻の自由を主張いたします十五歳、十八歳の能力に反對する、これらの分は結論といたしまして、是非とも、いろいろなほかの理窟を言わないで、法律的にお考えになつて、政府において十分お考えを願いたい、これが私の結論であります、天皇竝びに皇族をあまりに束縛し過ぎる、御自由を奪い過ぎる、私は本會議においても述べたが、皇族、天皇に自由を與えろ、これであります、この點については、金森國務相に只今私が申しました十箇條の束縛に對して、御感想でよろしうございますからお聽かせ願いたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=72
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073・金森徳次郎
○金森國務大臣 今いろいろな點を擧げて、皇族の方々が甚だ御不自由である點をお述べになりましたが、私は全くお言葉の通りと存じております、しかし言葉の取り上げ方によりまして、お言葉だけ聽いておりますと、皇族の御自由ということはほとんどなくなつてしまつたように感ぜられるのでありますけれども、實際は辯護めいたようなことにはなりますけれども、皇位繼承ということと組み合はされまして、やむを得ない範圍においてのみ、いろいろな制約がつくのでありまして、言葉だけをお取りになれば可なり激しく響きますけれども、事實は可なり御自由の餘地が得られるように、いろいろの點に注意は加えてあるわけであります、と申しますのは、例へば婚姻の自由ということにつきましての制約がありましても、多くの皇族の方々は、皇族たることに伴う制限は、皇族でおありにならないようになることによつて離れることが出來るわけであります、一々の明文の中に露骨にそれを書きますことは避けておりますけれども、賓際においてはそこにゆとりがある點を含んでおります、そのほかいろいろのお示しの點、例えば十五年以上の意思表示というような身分に關しますことは、一般の行爲能力と違いまして、多少の變化のございますことは、必ずしも稀有なことではございません、今度は民法等の婚姻などにつきましての規定も、變りますと具體的にいかになるか存じませんけれども相當年少な人が、例えば十六歳というような人が自己の自由意思によつて婚姻出來るようなふうになろうと思います、これとの振合いにおいて、必ずしも實質上はひどくなつておることはないと考えております、そこでその邊の所の申しわけだけいたしておきまして、だいたいの立前といたしまして、今囘の皇室典範はほんとうに皇位の御繼承ということに關する種々なる御制限は、これはもう根本的な國民の考えからしてやむを得ないという所を眼目にいたしまして、それ以外のことにつきましては、できるだけ御自由な立場が得らるるように、一々眼にははつきり見えませんけれども、條句の末において相當の意を用いておるのであります、庶子の點は、實際私自身のこの案を認めて來まする經路におきましての感想を述べますれば、私は初めは庶子というものは一面において不自然なる點があるにしても、從前の通りの形を残す方がいいじやないか、こう考えた時代が相當ありました、しかしいろいろな角度から考えまして、結局國民道徳の見地から見、或る原理を皇室が違つた態度によつて處理せられるということは、どうしても好ましくないというので、やむを得ず範圍から除いたわけでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=73
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074・北浦圭太郎
○北浦委員 私はただ一言だけ金森國務相に申し上げておきますが、この庶子問題について、國民道徳ということを盛んに仰せられますが、從來も決して國民道徳というものを無視したのではない、皇統が、いわゆる明治大帝から以下の皇統でもよろしゆございますし、或は神武天皇を標準とされてもよろしゆうございますが、皇統が成べく血の濃い、そうして親密な方向に向つて血統が續いて行くということを希望するのあまり規定されてあつたのであつて、かつ一體國民道徳とは何か、それほど惡いか、假にそれが不道徳といたしましても、過日同僚の一人が仰しやつたように、生れた子供に何の罪があるか、これが差別待遇だ、この御説明は國民道徳維持のためだと、どうもそういうことはいけない、しからば民法にも庶子というものを抹殺してしまわねばならない、人間の待遇をしない、民法から庶子というものを抹殺して、これは嫡出子にあらざる子とわれわれはごく細密に注意を拂いまして、庶子だの私生兒だのなくした、嫡出子にあらざる子である、なぜか、その子供たちに大きくなつて變な氣持をもたしてはいけないというので、法律は遠慮してそういうふうに改正いたした、それを政府は國民道徳の上から除く、それではいわゆる皇庶子の方々はおさまるまいと思う、この條文だけは憲法無效確認の訴訟は必ず起る、私どもでも大審院に向つて起して見せる、この説明は私は頗る不滿足であります、もつとお考えを願いたい、これで私は皇室典範の金森國務相に對する質問は終りましたが、この次ぎは多少政策に關係いたしますから、幣原國務相をお願いしておいたのでありますが、いかがですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=74
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075・樋貝詮三
○樋貝委員長 今出かけまして三時半まで出られぬそうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=75
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076・北浦圭太郎
○北浦委員 それではその時間にやることにいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=76
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077・樋貝詮三
○樋貝委員長 それでは一應それで切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=77
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078・北浦圭太郎
○北浦委員 三時半になれば私ぜひお伺いしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=78
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079・樋貝詮三
○樋貝委員長 それではそれを諒承しまして、次ぎに松本七郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=79
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080・松本七郎
○松本(七)委員 私は第一に質しておきたい點は、この典範案を立案するに當つて、政府はどういう態度をもつて臨んだかということであります、由來天皇とか、皇室に關することは議論がしにくいものであります、しかし、今日では新憲法は制定されましたし、これまで神格化されていた天皇も人間天皇となられ、日本がこれから民主的な新國家となるの國是はきまつたのであります、この際皇室典範の審議に當りましても、あくまでも冷靜に、科學的態度をもつて臨まねばならぬと考えるのでありますが、政府のとつた態度をここに明確に表明していただきたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=80
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081・金森徳次郎
○金森國務大臣 皇室典範は、今囘の憲法の改正の基本原理と見らるる所に從いまして、もとより現代の知識をもつて判斷し得べき合理的なる道順をとつたつもりであります、しかし他の一面におきまして、憲法自身の認めておりまする天皇というのを、結局三千年の歴史の中に、國民精神の中に育まれて根柢が築かれておるものという前堤をも併わせ考えたのでありまするから、その點を離れて詰論をつくることはできません、一口に申しますれば、改正憲法第二條の世襲ということにはつきり根抵を置いて、その世襲の意義を歴史によつて解釋しつつ、現代の諸般の情勢を噛み合わせて規定をした、こういうことになるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=81
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082・松本七郎
○松本(七)委員 政府のとられた態度は正しいと思ひます、しかしその效果がこの典範案に現われていないと思う、せんだつて九日のこの委員會での答辯でも、幣原國務大臣は、この典範案が非常に民主的であるという理由として、第一に法律として議會で制定されることになつた點、及び今までの皇族會議が皇室會議になつたというこの二點を上げられたようでありますが、これは先ほど前の方が言われたように形式的なものでありまして、なるほど現行典範と比べれば幾分民主的ではありましよう、けれどもその實質は少しも民主的になつておらないのでありますが、これからの法律は新憲法の肉となり、また血となつて來るものでなければならない、そのためには、あらゆる法律が新憲法の精神を、積極的にここに活かして來るものであつて、新憲法と調和するものでなければならないと思います、しかるにこの典範案はあまりにも新憲法と不調和である、憲法が非常に新鮮味に溢れておるに比して、この典範案においては庶子の繼承權を認めないという點にわずかに新味が見られる以外に甚だ古臭い、まるで時代にとり殘された觀があるのであります、この觀點から第二に伺いたい點は、これは多少重複をいたしますが、どうしても納得が行きませんから、もう一度重ぬてお伺いするのですが、どうして女子の繼承權を認めないかということであります、わが國の歴史にも女帝の例はありますし、また新憲法の精神から考えても、當然女子の繼承權を認むべきであろうと思うのであります、女帝を認めるとその婚姻とか或は配遇者の地位というようなことに關する取扱いに不便があるという論には確かに一理はありますが、これ等の實際的な不便などは別に大したことではないのであります、新憲法においては、天皇の大權はごく形式的なものに限られており、天皇は象徴にならないのでありますから、女子の繼承權を排斥すべき理由は何等認められないのであります、この際むしろ新憲法の精神を積極的に活かして、女帝を認むべきものであると私は考えるのであります、この點をまずもう一度お答え願いたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=82
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083・金森徳次郎
○金森國務大臣 世間には女子の繼承權を認むべしという論があると同時に、認めてはよくないという議論も聽いております、そこで認めるはよくないという議論の骨子となりまするものを、いろいろ考えて見ますると、今仰せになりましたやうな、婦人の一般的眼から見たる能力が、國の象徴たる地位と顧みて適當ではない、こういう見解が一つあります、それはもしも軍國主義のような國でありまするならば、婦人が國の現行憲法のように統治權の總攬者であられるということになすますると、ここに思わしくない事情も出て來ると思いますけれども、事情は變りましたからして、さような議論に重きをおく必要はないと考えております、それから婦人の体力を本にして國の元首たるにふさわしくない、こういう議論も出て來まするけれども、これも同じように認むるに乏しき議論であるように思われます、さらに考えまして、今仰せになりましたやうに、婦人には配遇者がある、その配偶者があるということが、この現行制度でいへば國の元首たるにふさわしくない、こういう論點も從來よく言われておりました、しかし人間の本質ということに根抵を置いておりまするこの憲法の眼をもつて見ますれば、さような論據をもつて女帝を認めないという理窟は、甚だ影の薄い議論になると思います、多分この點は御意見と同じであらうと思います、そういうふうにいろいろ考えて來ますると、女性の天皇が適當でないという論據は漸次減少して來るということを認めなければなりません、それではなぜ女性の天皇をこの皇室典範が認めないのか、こういう論が直ちに起つて來るのでありまして、私ども研究の道程におきましては、女性の天皇を認むべきであらうということを、まず一應の假説的な題目といたしまして、そうして研究を進めて行つたのでありまするが、ここに根本的に問題となりますのは、日本の皇室が常に男系の原理を認めておつて、未だかつて男系たることに一つの例外をも置かなかつたということであります、何故に男系にのみ繼承權を認めて、女性には繼承權を認めなかつたかということを、まずはつきり考えて見なければならぬと思います、このいろいろな社會的事項を研究しておりまする學問を少しばかり覗いて見ますると、古代におきましては、女帝に重きを置くという思想もあつたと思います、それが日本の古代のことは幾分茫漠としてわかりませんけれども、歴史のわれわれに正確に教えて呉れる範圍内におきましては、常に男系を尊重しておつたという所に、相當注意をしなければならぬと思うのであります、これに對しまする學問的な見解は、今日必ずしもはつきりしていないのでありまして、これを眞に掘り下げて、明らかなる點までもつて行かなければならぬと思いまするけれども、これはなかなか一朝一夕にはできかねることと存じまするが故に、まずこの邊の所は、今日の段階におきましては、かくあるもの、從つてかくあるべきものとして扱つて諸般の制度を考えて行く外にしようがないと思うわけであります、そうなりますと、既に男系を尊重するということになりますれば、その自然の結果といたしまして、男系の女子が御位におつきになるということは、そののちにおきまして皇位を繼承せられる所の系統が起つて來ないということを示しておるものであります
最後に女子が帝位におつきになりますれば、その配偶者との間にお生れになつた方は、これは男系でありませんで、繼承權がそこに及ばないということになるのでありまして、この點がさらに大きないろいろな問題の疑惑となるのでありまして、日本の古來の制度におきまして、御承知のごとく十代の女子の天皇があらせらるるのでありまするけれども、なんとなく特別なる扱いであつて、それが偶然的なるものではないのであります、八人にして十代のその女帝が、どういうわけでおなりになつたということを考えて見ますると、だいたいこれを三つの種類に分けることができるのでありまして、その一つはこれはまあ歴史の批判にはなりまするけれども、皇室の外戚がその虚に權勢を張ろうとする原因に基づいているというふうに、歴史家によつて認められております、それは御二方であります、そういう事蹟があるわけであります、それからまた他の場合は、男子たる御後繼ぎの方の成長を待つために、一時的に位をお充たしになる、いわば攝位というような氣持をもつてできていると考えらるるのであります、さらに第三の場合は、これとやや異つた特別な事情によるものでありまして、たとえば持統天皇の場合について考えて見ますると、持統天皇は天智天皇の皇女であらせられ、そうして天武天皇の皇后であつたのでありまするが、この天武天皇の崩御ののちに、若干の經過のもとに皇位におつきになつたのでありまするが、その事情はどうも天武天皇の諸皇子があらせられ、おのおの異つたる母からお生れになつておりまして、その各皇子の間に恐らくは激しい紛糾が起るであろうという特殊なことを豫見せられて、さうして皇后たる方が御位におつきになつた、これはまあ歴史の見る所でありまするから、個人的のそういう歴史家の意見も加わつているとは思いまするけれども、だいたいそんなような意味でありまして、どれを見て行きましても、ほんとうに當然の意味において繼承せられたる形跡がないのであります、そう考えて行きますると、たしか皇室典範義解でありましたか、註釋が加えてありまするように、これは一時の權宜であつて祖宗の常憲にあらず、常の規則ではない、こう示されている所に理由があるように思いました、これは多分男系ということと組み合わされ、そののちには御系統が生じて行かないという所に何か關係があるものではないかと思つております、つまりこれだけの疑惑を起しまして、なお深く掘り下げて女帝を認むるがよいか惡いかという議論に移るわけでありまするが、それから先なかなか困難なる問題が伏在しておりまして、一つの考え方——假に女帝を認むるといたしましても、今のように後繼ぎが自然の系統において起つて來ないのでありまするから、そういうことを考えますると、女帝の繼承の順位をどこに置くか、男子と同じような普通の順位に混ぜて女帝を考えるのがよいか、それとも一つの血統のしまいの所で、やむを得ず女帝をお認めするという考えがいいか、それとも皇位繼承者の範圍の全部を見渡して、その最後の所に女帝をお置きするがいいか、こういう順位の問題が起つて、なかなかこれはわれわれ微力であると言えば言えるのでありますが、いろいろな角度から適當にきめまするということは容易ではないと思います、なおまた他の面から考えて見ますると、もしも男子に優先的なる地位を認むる、つまり皇統が連續して起ることを豫見いたしますれば、どうしても男子に優先的なる繼承順位を認めなければなりませんが、そういたしますれば男子盡きて初めて女帝に及ぶわけであります、となりますると、そういう場面を豫想するということは、今日の情勢ではなかなかありそうもないのでありまして、竹の園生は相當の男子を包含してあるのでありまするが故に、今この際女子を考えますることは一種の抽象的なる理論討究に終るような氣持がございまして、すぐにこの制度をはつきりきめなくてもいいという考えが起つてきます、さらに女子の天皇を認めますると、もしこれが最後に來ると、それから先は皇位繼承がどうなるのだろうか、もう皇族の方がなくなつてしまう、一般の考えによります皇位繼承者というものが容易に發見できないようなことになりまして、そういうおかしい制度をわれわれは考えるわけに行きません、そこまで考えるような場合には、もつと根本的に諸般の制度を頭の中において、間違いのないように考えなければなりません、そんなふうに考えて來ますと、要するに女帝につきましては、過去の男系ということを尊重する根本の原理を探求して、それからまた歴史の上に現われましたのが、恐らく變態とのみ言われ得るような場合のみであるということを考えまして、さらに皇位繼承の順位を考える時に、相當困難なる問題が湧き起つて來るのでありますし、また女帝を認めますることによつて、皇族の範圍などにつきましても非常に考えなければならぬ幾多の場面が附屬して起つて來ます、それらをこの貴重なる制度の中に認めまするためには、よほど根本的なる研究をしなければなりません、今日五月三日までにぜひとも完備いたしまする立場から言うと、これは將來の問題に殘して、萬遺漏なき制度を立てることが、われわれの行くべき道であろう、こういうふうに考えまして、つまり結果におきましてはこれが規定の表面に現われなかつた、こういう次第でありまして、決して疎かに考えておるわけではありませんので、さように御諒解願いたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=83
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084・松本七郎
○松本(七)委員 結局この問題は、男系に限ることの科學的根據ということになつて來るだろうと思うのですが、今後もこの男系に限らなければならぬかどうかという問題は、今の御答辯ではなお御研究されるおつもりのように承りましたが、この問題さえ根本的に解決するならば、女帝を認めても差支えないと思いますし、これをさえ認めれば、また女帝の問題も、さらに胎内皇子の問題も、すべて解決すると存じます、そこで現在では、まず男系に限つたということになれば、女帝を認めるわけにはいかなくなるでありましようが、今後この問題を檢討した結果、男系に限る必要がないということがはつきりした場合に、それから改正してもいいというようなお考えがおありでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=84
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085・金森徳次郎
○金森國務大臣 もとより十分なる研究をいたしまして、正しい結論が出ますれば、それに從うべきことは言うまでもないと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=85
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086・松本七郎
○松本(七)委員 その次ぎは、なぜ天皇の退位を認めないかという點であります、恐らく現状に對する配慮から、天皇の側近者の意向が強く反映して、こうなつたのだろうと想像いたしますけれども、現實の退位ということと、退位の法律的可能性を認めるということとは全く別のものであります、もつと遠い將來のことを考慮すべきであろうと考えるのであります、天皇の自發的意思に基づいて、しかもその上に國會の議決を經るというような手續きをもつて退位することを認めるのが、私は適當であろうと考えるのであります、神格化されたる天皇の觀念を一掃して、人間天皇ということに徹するならば、必ず今申したような、天皇の自發的意思に基づくものと一定の手續きを經て國民の承認し得る退位の途を講ずべきものであろうと考えるのであります、この點についてお考えを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=86
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087・金森徳次郎
○金森國務大臣 退位の問題につきましては、相當理論的にも實際的にも考慮すべき點が殘されておるように思うのでありまして、今仰せになりました退位を是なりとする御議論も、もとよりその一つでありまして、傾聽すべき論點が多々あるものと考えておりますがこれを客觀描寫と申しまするか、退位ということに關連しておりまするいろいろなものを竝べ立てて考えて見ますると、日本の古い時代の歴史におきまして、皇位繼承についての爭いというものもあつたことは認めなければなりませぬ、それに關連して退位という問題が考えられるということもあるのであります、これはそれだけの範圍において考えて見ますれば、退位ということを好ましからずとする一つの論據となると思うのであります、それから第二の一つの事例といたしましては、退位せられた後になお元のごとき働きが行われたという事績、上皇、法王という形をもつて政治が行われまして、天に二日あるがごとき外觀を呈した歴史もおおうことはできないのであります、これはもとより時代の差によりまして今日かくのごとき懸念なし、こう言つてよかろうとは思いまするけれども、何となくあと味が惡いような感じがあることは、これは否定はできませぬ、こういうように考えて行きまして、時代は變りまして、現代の人の頭の中に、退位の問題がいかに映つておるであろうかということになつて來るのでありまするが、私どもが國家生活をつくつて、民族があり、その精神的結合の中心として天皇を仰ぐということ、またこれが基盤となつて憲法第一條が生れ來つたということはこれはかなり必然的なるものを多く含んでおりまして、いわば自由意思による面がどこまでここに働いてよいかということは、何人にも考えられる問題であろうと思います、私どものこの立場は、天皇は國民の信頼する象徴である、こういうふうに考えまして、この考え方は現在動く所はない、こう考えますると、國民は御退位できないという方向に非常に強い考えをもつておる、國の象徴たる方は一定の血統をもつておなりになるのである、やはり御退位になるべきものでないという感覺が強いであらう、もとより反對の考えもあらうと思いまするけれども、それはいわば文學的な考え方という氣持が強くなつて來るのであつて、そういう考えとほかの考えと合わせて、綜合して結論をつくりますると、やはりきまつたもの、搖ぎなき皇位の充實者というものがなくちやならぬ、こういうのが恐らくだいたいの人の考えではあるまいかというふうに思つたのであります、私自身といたしましても、今仰せになりました、御退位によつて人間的な自由を確保せらるるということに相當な事由ありと考えたのでありまするが、他のもつと根本的な、この國の象徴というものが確定不動であるということを、國民の確信としておるという組合せ方、どうせ世の中に絶對の考え方というものはありませんからして、これは各々讓歩し合い、妥協すべきものであろうと思うのでありまするけれども、搖ぎなき國の中心として臨むということが、今日の日本人としてだいたいの歸著點である、こういうように考えた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=87
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088・松本七郎
○松本(七)委員 政府の考え方はあまりに實際問題に拘泥し過ぎておるように思うのでありますが、これは現實問題と法律の問題を混同しておるので、理窟上不都合であるばかりでなく、あまり國民感情論を振り廻すということは、實際上からいつても、かえつてひいきの引き倒しになる恐れがあるのでないかと心配するのであります、天皇の自發的意思だけで退位するといふことになれば、これはいけませんが、天皇の地位そのものが既に國民の總意に基ずいておるのですから、天皇が自發的に退位されたいという場合は、國會の議決を經て、これができる途を講じておくのが當然な行き方ではないか、こう考えるのであります、たとえば天皇が希望される婚姻をどうしても皇室會議が承認できないというような場合には、一體どういうことになるか、そのお見透しを伺つておきたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=88
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089・金森徳次郎
○金森國務大臣 物事につきまして、あらゆる場合を豫想をして規定をいたしますることも、一つの行き途であるに相違はございません、しかしおのずからそれには限度があるのでありましてこんな場合もあり得るというふうに、學問的に考えますると、なかなか具體的なる法律制度はきめかねるものであるわけであります、今仰せになりましたような場合は、もとより考えの中に起り得ることではありまするけれども、これからは或はお叱りを受けるか知りませんが、まずそういう場面が起らないように、適當に事物が實質において調節せらるるものであろうということを假定をして、この皇室典範ができておるわけでありまして、私どもの大體豫想しておる範圍外のことが現われました時にどうなるかということになれば、もとより皇室典範も國の法律でありまするが故に、その時に國のすべての智力を盡くして適當なる法律がまた生まれ出る餘地もあろうと思います、今日あまり多くの場合を豫想をして規定をするということは、實はこの典範は避けておりまして、そういう點が隨所に現われております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=89
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090・松本七郎
○松本(七)委員 第四に皇室會議についてでありまするが、この案によりますと、第三條及びその他の條項によつて、攝政の設置、或は皇位繼承や、攝政就任の順序の變更ということを審議する職能が皇室會議に與えられております、しかし一體攝政の設置というような重大な事柄をなぜ國會にかけないのか、この點非常に理解に苦しむのであります、國會があるのにわざわざこれを皇室會議だけに委ねる理由は一體どこにあるのですか、新憲法によつて、皇室典範自體が普通の法律として國會がこれを制定することになり、また天皇の地位そのものが主權の存する國民の總意に基ずくものである、それにも拘らず攝政を置く場合、皇位繼承と攝政就任の順序を變える場合、これを國會にかけることを避けるということは、あまりにも新憲法との不調和が甚だし過ぎる、むしろ新憲法の精神を蹂躙するものであるとさえ言いたいのであります、天皇も皇室も、名實ともに今は既に國民のものである、國會が天皇や皇室のことを自由に討議して決定するの體制を確立すべきものであると、こう信ずるのでありますが、この點いかがにお考えになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=90
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091・金森徳次郎
○金森國務大臣 國會はもとより國の最高機關でありまして、この法律みずからが國會の議決によることは申すまでもありません、しかし一般的な問題について申しましても、國會がみずから行政をしておるわけではございません、國會が直ちに警察權を行使するということもありませんし、國會が直ちに租税を取るということもございませんし、また國會がみずから裁判をするということもございません、おのずから國會というものはこの立法という點に重點をおき、そのほか憲法の認めておりまする内閣總理大臣の指名とかいうような執行の任務をもつておりまして、これはどういうわけでそういうふうになつたかという憲法の精神を考えて見ますれば、國會が直接に行動をするに適する問題と、それからそうでない問題と二つあるのであります、最後の鍵は國會及び國民にありまするけれども、實行的に國會に不適當なことは、國會は直接にやらないで、ほかのものにやらせるというような基本の考えが含まれておるもののように思うわけであります、そこで皇室會議に現われて來まする多くの問題は、法規をつくるということではなくして、事實の認定ということに重きがおかれておるように思うのであります、たとえば攝政を置くと申しましても、攝政を任命する、こういうことの意味ではございません、憲法上攝政が置かれる場合がある、それに必要なる條件が充たされておるかという事實認定の問題に入つて來ておるわけであります、さうすると、かような事實認定は皇室の中に湧き起つておるいろいろな事情を事細かに判斷しなければなりません、たとえば御健康の状態とか、その他特別な重大なる故障の内容の、かなり機微なるものを問題にしなければなりません、そういうことになりますと、一般に開かれておる、しかも多數の人が侃々諤諤の議論を鬪わせます所の國會で直接に解決することは、場合によりまして非常に好ましくない場面が起つて來るのではなかろうかと思うのであります、そこでそういう缺點を避けて、しかも國會の任務ともよく調和するようにするという企てがこの皇室會議でありまして、午前中にも申しましたけれども、皇室會議は不十分な形ではあるけれども、國會の代表という意味を強くもつておられる所の四人の人が入つて、そのほかの六人の人を加えて、他の角度からの判斷をも加えるというならば、この方がいろいろな不便を除き、よい點をここに結晶せしめたというふうに考えられておるわけであります、それがために決して國會の權威を害したということもなく、また國民がこういうことに觸れようとする熱情を阻碍するということにも、大體においてはならないものと存じておりまして、まあ妥當の制度のように思つたわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=91
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092・松本七郎
○松本(七)委員 この點は象徴天皇制そのものが全く世界歴史上にも例のない新らしいものでありますし、今までの天皇が全く神格化されておつたという點から考へても、どうしてもこれはもつと、多少そういう皇室の内部に亙つたことを論じ過ぎるような弊害はあつても、やはり自由にこれを討議するような形式だけは置くのが、むしろ今後の天皇制を護り、皇室を護つて行く大きな力になるのじやないか、そういうことをせずに、あまりこれを別もの扱いにし過ぎると、結局これが國民から遊離し、先ほど申すようなひいきの引き倒しになるのではないか、こう考えられるのです、やはり皇室會議できめて、そしてこれをやはり國會にもう一度はかるというような形を取ることが、どうしても必要となる、こう考えるのですが、これ以上は議論に亙りますから、これで止めておきます
最後に今度皇室經濟法によつても、皇族費というものが出されるようでありますが、皇族が無制限に殖えて行くということは、いろいろな弊害があるのではないか、この皇族の範圍を限定するというやうなことはお考えになつたことはないか、今まで通りに臣籍降下ということを適當にやつて行つて、これを調整して行こうというお考えであるかどうか、その點をお伺いしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=92
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093・金森徳次郎
○金森國務大臣 まだこの皇室典範が國會の議決をも經ていないわけでありますし、憲法自身が實施されてもいないのでありますから、具體的なる立法の方向につきましてここで申し上げることはかなり困難な事情がありまするが、その點はお許しをいただきまして、だいたいの典範の建前といたしましては、皇族の範圍というものにはある程度の制約があるということを前提にいたしておきます、今囘親王の範圍を二代に限つた、親王の四代という制度を二代に縮めたということは、氣持の上においてはさような感じを現わしてゐる露骨なる言葉ではございません、すなわち皇位を御繼承になることについて密接に關係のある方は二代である、四代ではないという暗示を出しておきました、その氣持はこの典範の中に現われておるのであります、しかし皇族の範圍を、五代なら五代にはつきり限るというふうに、過去の大寶令がきめましたやうな行き道をいたしますると、實際の經驗に徴しまして、それでは困るという場面もまた起るかも知れぬのであります、この血統の續き工合というものは一概には理窟が立ちませんで、それがために皇位繼承の範圍が不足したということになつてはまた一大事だと思うのであります、そういう所を調節して行きまするのは、その時その時の實情を念頭においてどちらの面から見ても支障のない所で調節して行かなければならぬというふうに考えられるのであります、そこでこの皇室典範におきましては、形式的にきちんとそれをきめませんで、皇族が身分をお離れになるような場合が豫想されておりまして、しかもそれは御自身の御意思によらない場合もある、十一條第二項のごときものも規定せられましたので、そういふ制度の運用によつて、行き過ぎもなく、行き足らずもないように調節しようというふうに考えたわけであります、なかなかこれを形式的にきちつときめまして、何代まではということにいたしますると、かえつてそこに逆の保障作用と申しまするか、まあ昔の言葉でいえば皇族の範圍が御繁榮になり過ぎるという場面も起るかも知れない、そういうことを考えて起案をいたしておるわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=93
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094・松本七郎
○松本(七)委員 これで終了いたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=94
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095・樋貝詮三
○樋貝委員長 北浦君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=95
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096・北浦圭太郎
○北浦委員 私は幣原國務相に質問したいと思うておりましたが、どうもおいでにならぬようでありますから、簡單に金森國務相にお伺いいたしまして、これを一つ閣議の席上ででも、こういうことを言うておつたとぜひ問題にしていただきたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=96
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097・樋貝詮三
○樋貝委員長 よろしうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=97
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098・北浦圭太郎
○北浦委員 ではもう簡單に申し上げます、このたび新憲法によりまして、莫大なる皇室財産が國庫に歸屬いたします、これは多分世傳御料も普通御料も含むものであらうと思いまするが、これ等の財産の中で、大分古いことになりまするが、明治代に、宮内省や地方長官が皇室に忠誠のあまり、人民からずいぶん無理をして取り上げて來ておる土地がある、これは奈良縣だけではありません、大分方々にちよいちよいあります、たとえば大和で申しますると、大和に大和三山があります、御承知のように畝傍御陵、それから畝傍山というておつたのでありますが、天の香具山、それから耳無山というような有名な山であります、その中の耳無山の方は、人民はこれを村の薪炭材料として、祖先傳來一村の共用として來たのであります、それを明治十二、三年頃に、皇室の古墳であるというてこれを強制的に買い上げた、これは皇室がお買上げになつたのでありまするが、やつた役人は宮内省と地方官とであります、決して皇室がそういうことをされたのではない、これが今世傳御料になつております、その後村の人は、松の落葉を拾いに行つて警察に引かれたり、ちよつと木を伐つたりして、監獄に入れられたりしておりましたが、とにかくあの附近では、御承知でもありましようが山は澤山あるが、あの邊は全部御陵か或は畝傍山のやうにはいれない山になつておる、そこでわれわれの先輩は、宮内省にしばしば返還方を願い出ましたが、聽き屆け難しという言葉で一蹴されて來た、これがために村民は多年薪炭で苦しんで參つておるのでありますが、國民が天皇陛下の御ためだ、宮中の御ためだというので無理にとられたのを默つて來たのでありますから、この際政府は、憲法改正になつたからといつて默つてとつてよろしくない、こういうものは北海道にもあるそうでございまするが、證據十分なものは、そう國民がしようと言つても一切引取つては相濟まぬが、證據不十分なものだけは政府はこれを返したらどうか、ぜひ返して貰いたい、もう一つは、それでも大部分の皇室財産は殘る、私は人から聞いたことであるからどうか知りませんが、百億以上の財産が國家に歸屬する、今の價格で言うと大蔵省では十億あまりということでございますが、時價で百億以上ある、これをどこでお使いになるか、この點を政府としてお考え願いたい、今日わが國のすべての犯罪から、ゼネストから、混亂、いろいろ原因がありましようが、人口がいよいよ密になる、これは大臣方は御承知でありますまいが、私は毎日茅ケ崎から通つて來ます汽車なんかほんとうに困る、非常な人口稠密である、關西地方に參りましてもその通りでありまするがこれは人口稠密が原因である、そこで幸い軍閥、官閥どもが忘れておいた廣漠なる土地が北海道にある、われわれの調べによりますると七十餘萬町歩の未開墾地、可耕地がある、まだ開拓されていない八十億トンの石炭が地下に眠つている、二百二十億石の木材が移民を待つておる、なお無限の水産物、無限の水力電氣があることは御承知の通りである、人口に見積りますれば一億五千萬の同胞が收容できる、これは數字がちやんと出ます、そこで政府はだいぶ北海道移民計畫をお立てになりまして、この方面に百億あるか或いは五十億あるか知りませんが、この財産を振向けていただきたい、そうすることが國家百年の大計であるし、明治大帝、今上陛下の大御心にも適う所以であると、私は恐縮ながらさように信じております、この點私は幣原國務相の御意見を聽きたかつたのでありまするが、もし金森國務相で、わしならこうするのだという御答辯ができますればしていただきとうございます、でなければ、ぜひとも、皇室の財産は國家に歸屬いたしまするが、この方面に使つて貰いたい、どちらでもよろしゆうございます、もし御答辯願えれば結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=98
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099・金森徳次郎
○金森國務大臣 只今のお尋ねの點につきまして、わしならこうするという答えをするか、しからずんば取次げ、こういうことでありまして、もしわしならこうするという方面の道順を取りますると、或は御趣旨に反するお答えをしないという保證もつきませんので、そちらの方向は避けまして、一つこれを權限を持つておる閣僚によくお傳えをして善處を望むことにいたしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=99
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100・北浦圭太郎
○北浦委員 これで私は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=100
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101・樋貝詮三
○樋貝委員長 それでは武藤常介君がおられませんから、稻葉道意君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=101
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102・稻葉道意
○稻葉委員 私は實は質問をいたします前に、式典に關します參考書類を一つ取り寄せていただくことに申し出して置きましたが、そこまでにまだ手續が運んでおりませんので、從つてお尋ねいたしますこともきわめて杜撰なことになるかも存じませんが、私のお尋ね申したいと思いますことは、ただいわば一項目でありまして、きわめて簡單なことであります、その道行きといたしまして一つ、二つお尋ねを申したいと存じますのは、天皇が毎日賢所に御參拜になります、非常に御丁寧な御態度で毎日御參拜をなさるということを承つておりますが、それは只今も御繼續になり、また新しき皇室典範が制定されました後も、やはりそういう御儀式はお廢しにならぬものでございましようか、その點を第一に伺いたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=102
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103・金森徳次郎
○金森國務大臣 天皇が賢所の御參拜を現實にどういうふうに遊ばされているのか、或は今後いかに遊ばさるるのかということは、これは私の立場からはお答えしにくい立場にあるわけでございます、なぜかと申しますると、今囘の皇室典範の建前から申しますると、天皇の公のお立場としての御地位がきめらるることになります、そうして賢所を御參拜になりまする立場は、今までは多分國の公の仕事という面において考えられておつたと思いまするけれども、この憲法が改正せられました後におきましては、それは國の公の立場として行わせらるるのではなくて、天皇御一人としての立場として行わせらるるものと考えております、と申しまするのは、宗教に關することは國の制度の中に取り入れぬということになつておりまして、今賢所を御參拜になりますることが宗教であるかどうかということは、一つの問題になるかも知れませんが、今までの考え方では、或は現在の考え方では、宗教に屬するものと考えております、從つてそれはこの典範から全然外に立つものでありまして、平たく申しますると、從來の皇室典範が二つに割れまして、その一つが今度の皇室典範である、他の一部分が殘るわけでありますから、その方面に屬することになろうと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=103
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104・稻葉道意
○稻葉委員 私のお尋ね申したいという點は、ちようど今國務大臣が既に私の意圖をお察し下さつて、それに觸れて御答辯がございましたが、そういたしますと、たとえは今後四方拜とか、或は神武天皇祭とか、もしくは春秋二度の皇靈祭とかいつたようなものの扱いは、どういうことになりますか、これは天皇の御一私事と申しまするよりも、やはり國民が同時に行います、もしくはその日は、現にこの秋の秋季皇靈祭の日はやはりこの議會もたしか休みまして、國民が同樣にその日を、なんと申しますか、やはりそのお祭りの意義を遵法したようでありますが、そういうことはどういう工合になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=104
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105・金森徳次郎
○金森國務大臣 從來宮中のいろいろなお祭りが宗教であるかどうかは、先にも申しました通り、それは議論のあり得る問題と思います、しかし現在はそれを宗教的のものと考えております、そこで宗教的なものは國の國家機關がこれをとり行つてはならないということに憲法できまつております、從つて國の仕事の中に取り入れませんで、國の仕事以外のものとなつて行くものと思わるるのであります、この皇室の御地位は、先ほど申しましたように二つに分れまして、一面におきまして、國の面ということになりますると、天皇のこの國の象徴たる面におきましては、それは祭祀は行わせられないのでありますけれども、天皇御一人の面におきまして、これは私生活ということは語弊がありますけれども、公生活でない面、その面におきましては從前通りのお祭り等は行わせらるるものと拜察しております、これは全く想像ではありまするけれども、だいたい私どもの經驗しておりまする所から想像いたしまして、從前通りお祭りは行わせらるるものと思うわけであります、しかし、それは國の制度ではなく、皇室御一家の制度である、こういうことになる、まだ議會に提出されておりません法律案を引用して御説明を申し上げるのは、おかしいと言えばおかしいのでありまするが、現に衆議院に政府からは出しておりまする皇室經濟法というものなどによりますと、皇室の經費の中に内廷費、いわゆる御内帑金というようなものがありますが、そういうものがそのお祭りなんかには用いられるようになりまして、國としては直接には關係がないということになる、そこで今度お祭り等をこうして行わせられますると、それが一般國民にどういうふうに影響して來るかということになりますと、國家はこれを強制することはできません、だから國家はただ脇で見ておつて、國民が勝手に自由意思でやれ、こういう形になる、それを休みにするかどうかは別問題となりまして、國のいろいろな施設の關係上、その日に休みにするのがいいということで休みにすることは、それは宗教だけではございません、ただ宗教と關連する日は休みにする、こういう關係であります、これから漸次もつとはつきりして、解決して來る、今の所多少混亂状態になつている、こういうわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=105
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106・稻葉道意
○稻葉委員 およそ御答辯によりまして、この上くどくお尋ねするにも及ばぬようでありますが、御大葬とか御即位の禮というようなものであります、御即位の禮も御承知のごとく、ずいぶんいろいろ變遷がありましたが、全く宗教的な儀式をおとりになつたという時代も多分あつたのでありますが、御即位禮はしばらく單なる儀式といたしましても、御大葬の禮というものはこれはどういたしましても宗教的なものと見るよりほかにしようがないと思いますが、これらは今後どういうことになりますか、御大葬といえば天皇の御一私事ではなくて、もしくは皇族という一家のことではなくて、いわゆる國民の象徴である天子のお葬式でありますから、これはどうしても宗教的なものになるわけであると存じますが、その點はどういうお考えでございますか、それを一つ承つておきたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=106
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107・金森徳次郎
○金森國務大臣 御大禮も御大葬もその關係におきましては、宗教と宗教でないものと二つが組み合されているということに現状ではあると思つております、そこで御大禮の方は御質問が直接にはありませんでしたが、これはこの前本會議だつたか、少し申したと思つておりまするが、御大禮の中にも宗教的色彩の籠つているものと、それから色彩の籠つていないものと二つに分け得る、たとえば賢所大前の儀というようなのは、これはどうしても宗教に組み合されますから、表向きの皇室典範の御大禮になりません、しかし群臣を集め、外國の使臣等を集めて行わせられまする今までの紫宸殿の儀というふうなものになりますと、これは宗教的意味は含んでおりません、またほかに關係はあるかも知れませんが、觀念的に切り離すことができます、そういうことはこの典範に基づきまして、國で御大禮を行う、即位の禮を行うということになる、そういたしますると、その裏にありまする宗教的な面、たとえば大嘗宮の御儀ということになりますと、皇室典範はわれ關せず、こういう態度である、それがなくなるかといえば、それがなくなるということは恐らくあり得ないと思うのであります、この外において行われると思います、御大葬の方に問題を移して參りますると、仰せになりましたように、御大葬の方は即位の禮よりももつと緊密に宗教が絡みついておることは、これは仰せの通りでありますけれども、そこが人間の考え方でありまして、一つのものを二つに分けて、裏と表にいたしますれば、その表側におきまして、國民がここに悲しみの意をいたすということになりますと、國民の意思は宗教を離れて考えられる、そうすると、その宗教によつて行われまする部面は、皇室のお内輪のこととして別に存在するようになつて、實際は手續は相當工夫しなければなりませんけれども、實際はそれで通ると思うのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=107
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108・稻葉道意
○稻葉委員 それではもう一つ最後に、そういうような御大禮、もしくは御大葬というような場合の費用、外國使臣などの往復などもありましようし、そういうことに對する費用というものは、國費でないもので賄うという建前をとりますか、どういうことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=108
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109・金森徳次郎
○金森國務大臣 まだそういう場面につきまして、はつきりした筋道は考えてはおりませんけれども、ただ憲法を本にして考えますれば、さような經費は、正式にいたしまする經費は國の經費でするものと思つております、國の大事は國の經費ですることは當然と思つております、ただその裏に存在しておりまする所の、皇室みずからで行わせらるる宗教的なる儀式という方面の經費はどうなるかということは、憲法が直接に解決しておりません、しかし第八十八條では、皇室に御入用な經費というものは國から支辨するということになつておりまするから、その條文によつて國から支辨することになるべき筋のものと思つております、一口に申しますれば、初めの經費は國の經費で、一般の經費と同じ國の經費でやります、皇室御みずからの方は第八十八條によつて國からこれを差し出す、こういうことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=109
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110・稻葉道意
○稻葉委員 これで私の質問は打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=110
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111・樋貝詮三
○樋貝委員長 それでは武藤常介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=111
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112・武藤常介
○武藤(常)委員 私の質問の第一點は、本會議においても、また委員會におきましても、非常に問題になりました女帝の問題でございます、これに對しまして金森國務相は、これに關しては幾多の考えを必要とする點があるから、今後の研究にまち、今囘はこれによつて立案された、こういうふうなお話でもあり、先ほどもこれに對しましてはいろいろ御説明がございました、しかし私は、わが國といたしましては獨得で、しかもそれが長所を保存するということには相當考えもいたし、また今後の種々なる問題を考える時に、相當考慮せなければならんではないか、こういうふうに考えるのであります、金森國務相が申されたのには、幾多考えるべき點があるが、それは後日に殘して、未解決のままにその問題を取り上げない、こういうことは本問題を決定するのには少しく遺憾の點があるのではないか、こういうふうに考えます、こういう點でこれを解決いたしまするならば、われわれといたしましては、どうも解釋に苦しみ、納得のできない所があるのであります、先ほどもたびたび論じられました所の憲法において明らかになつておるのでありますが、これらの點から考えてみまして、この女帝の問題をわが國の國家の歴史から考えてみて、相當再檢討の必要があるのではないかと考えるのであります、御承知のように、今囘の憲法は平和國家の建設でありまする關係上、よほど明治の憲法の考え方とは、別な考えから考えてみなければならぬのではないか、こういうふうに考えるのであります、すなわち天皇が大元帥として三軍を叱咤する、こういうふうな場合には、どうしてもそれは男でないとふさわしくないというような點もありましよう、これらの點から考えてみまして、明治の憲法は男系の男子というような所に決定されたということも考えられるのでありますが、いよいよ平和國家、文化國家の建設ということになりますと、これらの點はまたおのずから違つて參ります、わが國の歴史を考えてみます時に、あの奈良朝といいその他の場合といい、女帝の場合にわが國の文化が燦然として興つたという例もないのではありません、かようなことを考える時に、この場合に女帝を排斥するということは、これはよほど考え直さなければならぬではないか、こういうふうに考えるのであります、なおかつ私が考えますことは、皇位繼承の行詰まりということを、金森國務相は申されましたが、私は別な點から、この女帝を排する場合に、皇位の繼承に行詰まりを來すようなことがあるのではないか、こういうことを私は考えるのであります、すなわち、御承知の通りあの清寧天皇のあとに、皇統が絶えなんとした、それで日本全國に使いを派して、皇統の系統はないかというので、探し當てました、その結果といたしまして、億計、弘計といふ二人の皇子を發見いたしました、これは皇統の正しい皇子であるということが、だんだん種々なる方面から研究されまして、遂にその二人が皇位についた、こういう歴史があるのでありますから、これらのことを考える時に、私は、だんだんこの世の推移と共に種々なる場面が展開して參ります、そういう場合に或は女子の皇位ということを排斥したために行詰まりということがないとも限らないと存ずるのであります、かような點から考えてみまして、輕率に女帝を排するといふことは、これはよほど今一考を要するのではないか、こういうふうに考えるのでありまするが、これにつきまして、金森國務相の御意見を伺いたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=112
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113・金森徳次郎
○金森國務大臣 女性天皇のことにつきましては、今日既にいろいろ申し上げましたが、お説の通り女性の天皇を不可なりといたしておりました所のいくつかの原因は、現在はなくなつた、こう考えてよかろうと思います、武力といふことが主眼でなくなりました時代におきましては、武力ということを中心にして考えておりました女性天皇の阻却事由というものは、はつきり取り除かれておるというふうに思つております
また今仰せになりましたように、女性の皇位繼承ということを取り去りますれば、お跡繼ぎの範圍が狭くなつて、時に困る場面が起るということも考え方として意義あるものと思つております、そういふことにつきまして、私が反對する考えをもつておるわけではございません、ただ今日も申しました、一般の系統の考え方は、やはり男系ということに一番根源の來るものと思います、既に男系ということが確定不動の原則のごとく今取り扱われておることを前提といたしまする時、女性天皇を考えますると、至る所に疑問を起して來るのでありまして、今日差迫つた必要が眼前に想像でき難き時代におきましては、しつかり研究をして、しかるべき制度を立てる方が正しい行き道であらうというので、正直に申しますれば、研究不十分ということが御疑惑の的になつておる次第と考えます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=113
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114・武藤常介
○武藤(常)委員 只今女帝の問題につきましては、金森國務相の仰せられた所を大體了承いたしました、現在の場合としては、なるほどお話のような程度でございましよう、憲法さえも明治憲法は不磨の大典と申しておりましたが、御承知のように改正の必要があり、今後ともまた改正されることと存じます、殊に皇室典範は法律でありますので、時宜によりましてまた改正の必要に迫られて、改正することの可能であるということを考える時に、只今の御答辯によりまして大體了承いたしました
第二には庶子の問題でございます、これまたあまたの方から御議論がありましたが、これは現實的には澤山例があつたのでありまして、これを今排するということは、私はこれにつきましては、相當の考慮の餘地があるのではないか、たとへば皇位繼承が斷絶するというようなことは勿論ないのでありましようが、金森國務相の申されるように、天皇は憧れの中心である、われわれ國民の憧れの中心であるということを考えまする時に、それが皇位繼承の關係から、あまり過去に遡りましてそうしてその皇孫が甚だ現在の天皇に縁遠い所のものが繼承された場合に、果してその現實の憧れの中心が保たれるかどうかというようなことを考える時に、私はこの庶子の問題は相當考えねばならぬのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、これに關しましても、なお一應お伺いいたしたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=114
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115・金森徳次郎
○金森國務大臣 庶子の問題につきまして、いろいろ考えなければならぬ點がある、すなわち萬世一系ということに重きをおきますれば、その竹の園生の豐かさを確保いたしまするために、庶子にも皇位繼承を認むるというようなこと、從つて庶子も皇族であるというふうにすることが理由ありとする論據は十分考えられるのであります、過去の庶子の制度が惡かつたとか、よかつたとかいうことを、今日の目で批判することも、私は行き過ぎであろうと考えております、ただ現段階まで來て、人間の心持ちが何を道義としておるかということをはつきり見きわめますると、今日において皇室に庶子がある、その庶子が皇位繼承の當然の範圍に入るというふうにいたしますることが、どうも國民の意識にぴつたりと來るであらうかどうか、寧ろ逆に兩性の平等というようなことの憲法の精神等も汲みとりますると、遺憾ながら庶子は皇位繼承者の範圍外にありとする考え方の方が、國民精神の狙い所に合しておるのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります、なほ私どもをしてかような確信を強からしめました一つの理由といたしましては、現在の皇室の皇統と申しまするか、御系圖をよく現在の姿において理解いたしまする時、庶子を認むる必要は容易に見受けられないというような結論を得たわけでありまして、それらの考えから庶子を皇族の外におくという考えになつたわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=115
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116・武藤常介
○武藤(常)委員 只今庶子の問題につきまして御答辯がありましたが、なお考える餘地はありますが、繰返すようになりまするからこの點はこれで打止めます
次ぎに第十六條の攝政を決定する場合の事項でございまするが、この決定の機關は、皇室會議によりましてこれを決定するということになつているようでありますが、先般本會議におきまして金森國務相の仰せられるのには、この皇室典範にもいわゆる皇室部内の家族的な問題と、なお國事的の問題と二つある、こういうふうなお話がありましたが、この攝政を置くような部面は明かに國事に關する重大な問題であると私は考えるのであります、殊に國務相の仰せられるのには、すなわち憲法の第一章の、天皇は日本國民の象徴であり、國民統合の象徴である、こういう觀點から考えます時に、この重大な問題を、あの皇室會議だけで決定するということは、いわゆる民主的の制度の今日、ほんとうに國民の憧れの中心である皇室の問題がぴつたりいくのであるかどうかというようなことを考える時に、これはいま少しこの決定については民主的な方法、すなわち國會の義を經るというようなことがいいのではないか、こういうふうにも考えられるのでありますが、これに關しましてはいかようなお考えをおとりになつておりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=116
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117・金森徳次郎
○金森國務大臣 攝政は、仰せになりましたように公けの事務を擔任されまして、御質問の範圍外ではありますが、現行の皇室典範におきましては、天皇に故障がありますと、公けの方面においては攝政、私の方面におきましては大傳という、いわば後見人に當る方が置かれることになつておりますが、この皇室典範もやはりこの方針を踏襲しておりまして、攝政は公けのことのみを行われる、それから大傳に當ります方の方は制度をやめまして、それは一般の民法の規定に從う、こういうふうの態度をとつておりますかような風に公けの方面を攝政が擔任せらるるのでありますから、攝政が就任せらるるや否やということは全く國の公けのことでありますでありますから國擧つてこれに關係をもつべきものでありますから、議會ももとより十分の關心をもつておるのであります、その他行政の部面も、司法の部面も共同して研究をすべきもの、こういうことになつて來るものと存じております、そこで第十六條の第二項におきまして、そういう問題は廣い部面において議論をいたしますと、あまり公けの席ではいたしたくないような問題にまでも觸れる恐れがありますので、皇室會議の議によるのであるという方針をとりました、皇室會議におきましては、その構成員は皇室のことをよく知つておられる方、それから國會の議長、副議長四人、裁判所系統二人、内閣總理大臣、それから皇室のいろいろな世話人というと語弊がありますけれども、そういうような立場におかれます宮内府の長官、こういうふうに分けまして、まず國の内におきましての各方面の目によつてその問題の正確を期しよう、こういうふうにして皇室會議ができたのでありますから、この皇室會議の三分の二の多數決でできましたような議決は、まづ絶對信用を置いてよいものと思うわけであります、そこで殘ります問題は、この皇室會議によつてきまりました結果を、もう一遍國會の議に付する方がいいのではないか、こういう問題が強いて考えれば考えられるわけであります、所がこの皇室會議で、このような皇室典範の定むるような方法によりますと、絶對に確實というふうに信用してよかろうと思いますが、それが、それをもう一遍國會の議にかけますということは、いわば考え過ぎであつて、屋上屋を重ぬる、或は形式的滿足を求むるに過ぎないという嫌いが起りますで、そこまで行かなくともよかろうということが一つの考えであります、今一つの考えは、さようにして皇室會議の議に付した後に國會の議に付するといたしますと、そこに相當の期間が起つて來まして、典範の絶對條件にいたしますと、その間に或は衆議院解散のために議會の招集ができないようなこともありますし、そのほかどうしても期間ができて來ると思います、その時に、後から議會でその議決を變更することはないと思いますけれども、理論的に申しまして、變更をしたというふうになりますと、既に置かれた攝政が、再び攝政を置かれるというような場合まで待つておられないという事情がありますから、既に置きました攝政が今度は取りやめになり、別の方法をとるという紛糾が理論的に起る、實際には起りませんけれども、理論的に問題を推し進めて行けば、そういうことにならうと思います、でありますからまず皇室會議が安心のできる機關であるといたしますれば、それの議決によつてはつきりものが確定するものとする、こういうふうにしておいてもいいのではなかろうかというのが原案の趣旨であります、しかしその當時のことにつきまして國會が後に批判を加えるということは、政治問題としては十分できるものと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=117
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118・武藤常介
○武藤(常)委員 攝政の決定に對する只今の御意見は相當私も了承いたしました、しかしどうしてもやはりこうした場合には、事或は形式的になるかもわかりませんが、いわゆる民主的の建前から、天皇でない者が政治をとるといふいう結果になりますので、なお形式だけであつても、それだけの手順を經ることが適當ではないかと考えるのであります
次ぎに皇室會議の議員でございまするが、この議員の組織につきましては大體伺つておりましたが、皇族から二人その議員に出る、こういうことになつておりますが、その皇族の二人はいかなる方法によつて選定するか、またその順位等はどういうことによつて決定するか、こういうことをお伺いいたしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=118
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119・金森徳次郎
○金森國務大臣 皇族の議員の選び方は第二十八條の三項に定まつておりまして、議員となる皇族は各各成年に達した皇族の互選によるということになつているわけであります、從つてこれは成年というだけが唯一の條件になりますので、親王たると王たるとを問わず、また男性たると女性たるとを問わず、一種の普通選擧に近いような意味の互選によつてきまる、こういうことになつております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=119
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120・武藤常介
○武藤(常)委員 大體問題の重點は自分が伺つにような點に歸著しているようでありますので、その他繰返してお伺いしても意義のないことと存じます、私の質問はこれをもつて打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=120
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121・樋貝詮三
○樋貝委員長 及川規君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=121
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122・及川規
○及川委員 このたび提案されました皇室典範の法案は、きわめて保守的であり或は多分に封建性が殘存しておるというような意見は、ひとり私の意見ではなくして、本委員會におきましても、白由黨の殿田委員及び北浦委員から鋭く批判をされておるようであります、改正憲法は比較的進歩的であるが、あまりにこれに副わないような保守的な、封建的な皇室典範が提出されたということにつきまして、なぜこういう性格をもつて來たのであるか、こういう性格をもつべきものであるか、もつのが妥當であるかということの論據でありますが、私はやはり妥當ではない、このように保守黨であると言われる與黨の委員からまで、鋭い批判を受けなければならない根源はどこにあるかというと、これはこの法案の作成者自身の思想に、まだ相當に保守的な封建性が殘つておるのではないかということを考えるのであります、というのは、この原案はどなたが作成になつたか知りませんが、少くとも金森國務相は原案作成者の有力なメンバーとして御參加になつたであらうと思います、そこでこれは直接に、この法案の第何條に關係するわけではありませんが、金森國務相にお伺いいたしたいことは、かつて憲法審議の場合も私質問いたしましたが、遂に見解の相違、信念の相違で、私の質問は架空の根據に基づいたということで一蹴されたのでありますが、私その後金森國務相の書いたものもよく讀んでみましたが、金森國務相は、大體天皇制のあるべき姿についての觀念が、なお新しい憲法の精神に即していないようであるということを私は確信するものであります、というのは、日本の國體につきまして、ここではあくまでも變らないということで論議し盡くしましたが、貴族院に參りましては、相當御意見が變つたような樣子も見えますし、それにしても、なお最後まで新しい國體論を構成しまして、變らないと仰しやつておりますが、金森國務相は本年二月の著書において、日本憲法民主化の焦點という本を本年發行になつておられるようであります、そうしてこの本は去年の十一月に書いたので、序文は本年一月に書かれておるようでありますが、この最近の金森國務相の御意見によると、大分ここでこの前仰しやつたこととは違うようでありまして、例えばこれは國體の問題ですが、國體の問題がやがて天皇制のあり方の問題に關連すると思いますから申しますが、「問題の最根本を爲すものは國體問題である、茲に國體と言ふは萬世一系の天皇が日本を統治せらるる原則を指すのである、國體の變更を論ずるのは、この原則を止めて他の原則を承認することに外ならぬ、」こう仰しやいましてさらにまた數行おきまして、「轉じて國内問題として國體原理を考へて見ねばならぬ、萬世一系の天皇が統治權の總攬者であることは、憲法の第一條及第四條に依つて明であるが、此のこと自體は敢て憲法を俟つて定まつたことではない、古來よりの日本人の確信し確認し來つた所である、我等の祖先は時に隆替隱顯はあるにしても、終局此の思想の發展の爲に心樂しく生き、力の限り働いたのである、私自身としては確信的に、信仰的に——合理論を超越して——此の國體の原理を尊重すること我々の先人例へば本居宣長と同樣である、故に學理的に此の問題を論議する資格が乏しいかも知れぬことを自白せねばならぬ、然し幸なことに我々と血統的連環を爲せる人々、我々と民族發展の歴史を分擔して來た人々、我々と同じ樣な境遇に在つた人々は、非常に稀有な特例を除いては、私と同じ確信と信仰とを奉ずるものである、從つてこれが民族的團結の基本を爲し來つたことに特別な論證を爲す必要がなかつた」少しおきまして、「此の國民中の何千萬分の一に當る人々は我が信ずる國體を變更することを主張し、或は既に變更せられて居る如く考へて論議する、」こう仰しやいましてさらに、「私の結論を言へば國體論即ち統治權が國内の何人の手にあるか、即ち統治權の總攬者が何人であるかは憲法で定めらるるのではなくして、憲法を定むる力の問題である、憲法に其の規定があつても、これは宣言規定であつて、創設規定ではないと思ふ、蓋し眞に「最高なる者」を定むるは、「其の最高なる者」自らでなければならぬからである、此の故に國體問題は正しい意味に於ては憲法改正論の範圍外である、私は國體問題は民族の内部に於て歴史的に成立し、確たる存在を保つて居るものであり、其の確證は國民(類面異素の稀少數を除いて)の心の中に強い根柢を有つて居るものと思ふ、而して斯かる存在の基礎は、肇國の史實又は其の史實に關する信仰や血縁の事實、又は之に對する信念や、列聖の宏積慈仁や、國運發展の條件や、法的規律の效果や、信教的意識や、自由意思に基く承認(歸化等)や其の他種々なるものがあるであろうが、此等の綜合集積の上に民族の中に國體が成立して居るのである、之を疑ふものがあるならば、國民表決の如き方法で實證すれば明瞭であろう、其の結果萬一にも少數異論者があるならば夫れ等は反省して其の表見的意見と眞底の本心との間の一致不一致をよく自制し夫れでも得心が出來なければ民族から離脱するか又は機宜の方法を執るべきであり、少くとも我々と共にデモクラシーを論議する資格はないと思ふ、」という非常に強い確信を表明しておられまするが、これが本年の初頭までの金森國務相の固い信念だと私は存じます、これによりますと、あくまでも天皇か統治權の總攬者であることが國體の本義で、この思想に共鳴できなければ國民から離脱するか、その他の適宜の方針をとるべきであるというにも拘らず、わずか一箇月にしてこの信念を放擲いたしまして、天皇が統治權の總攬者ではないという新しい憲法の規定にも携つたようでありますが、突如としてこういう信念が變つてしまつたのか、恐らく私はこの信念が變らずして表見的に新しい憲法のこの國民主權の原理を御採用になつたのではないか、從つてあくまでも新しい憲法の精神に副うて、この皇室典範の原案をつくらるる時も隨所にこの古い信念がその閃きを出したのではないか、こう思うのでありますが、今申し上げたような國體の信念は根柢から拂拭して、新憲法の精神でこの原案を御作成になつたかどうかということをまづ第一點としてお伺いしたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=122
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123・金森徳次郎
○金森國務大臣 私の著書をお擧げになりまして、そうして私自身の考えがはつきり拂試されておるかどうかというお尋ねであります、その今御指摘になりました書物は、仰せになりましたように、昨年終戰後間もなく筆を執つたものでありまして、十一月でありましたか十月でありましたか、それはよく覺えませんが、その頃と考えております、そうしてその時に考えておりました考え方は、それに書いてあるとおりでありまして、寸毫違いません、しかしその後私の反省をいたしました點というのは、天皇の本質が統治權の總攬者というその言葉にあるのではなくて、國民の精神結合の中心であるという所にあるのであります、私がその頃用いました所の統治權の總攬者というのは、當時存在しておつた所の憲法のその現象的なる面に強く言葉を引摺られて、そこに認識の不完全なるものがあつたということを言わざるを得ません、その統治權の總攬者ということの意味は、私のそれに書いてあつたかどうかは覺えませんけれども、それは國の意思を身に體現するということであつたのであります、しかしこの新憲法に基づきまする私の基本のアイデアは、天皇は國民の精神結合の中心である、法律的に申しますと統治權の總攬者ということと、國の精神結合の中心であるということとの間に相當の差があるのではありますけれども、かような大きな歴史的變遷を遂げた日本におきまして、私の心はそれだけの深みにはいつて、表面の現象的なるものよりして、もう少し根柢的なるものにはいつたということを、私は前から、そのつもりのことを申し上げておりましたけれども、今日さらにはつきり申し上げます、かような考えを經過した者は私一人ではないと思います、そうしてその基本に横つております何故これを信ずるか、何故かく認むるかということの考えにおきましては、今日寸毫も變つておらないわけであります、そこでその考え、すなわちそのもつておりました考えを、この憲法の改正によりまして、今申上げた點において、精神結合の中心という所まで移動させたという點においては變つております、その他は本質においては變つておりません、そしてこの皇室典範を制定いたしまする時に、どういうような道順を經たかということを一應申上げてみることも實益があろうと思いますが、これは御承知のごとく、内閣におきまして臨時法制調査會を設け、各方面の識者多數を集めまして、何ら政府から原案を示すことなく、それらの方向によつて案を練つていただいて、それを基本といたしまして、漸次法文化させたわけでありまして、これを是認したことはもとよりでありますけれども、その基本を私の考えをもつて左右したというような意味は含んでおりません発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=123
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124・及川規
○及川委員 さらに第二點としてお伺いいたしたいことは、私は主として本會議で質問したことの補充として質問するのでありますが、皇位繼承の開始に天皇の退位を認めないというのは何故かということをお聽きするのであります、その時のお答えは、實はよくはつきりと掴めなかつたのであります、今日も私の前にお二方が質問したようでありますが、その一人の方は、天皇の權利であるから權利を抛棄することはこれは當然でないか、その面から退位することは可能でないかという點でありました、もう一人のお方えのお答えは、甚だ失禮でありましたが、皇室經濟法が明日上程になるであろうというので、その相談のためにちよつと席を退きましたので、その質問に對する金森國務相の御返答をきくことができなかつたので、また重ねてお伺いすることは甚だ失禮でありますが、一つ簡單に、箇條書きのように、要點だけでようございますから、何故に規定しなかつたかということをお答え願いたいと思います、實は金森國務相のお答えは、從來とも非常に該博なる知識で、しかも口から滾々として無限に流れ出る所の、豐富なる語彙と、表現の巧みさと、極めて圓滑で、婉曲で、縷々として熱誠をもつて述べられるのでありますが、いつの間にか聽いているうちに、聽いている方がぼんやりいたしまして、何か尤もらしいような感じを受けますけれども、後に至つて、じや何を聽いて來たかと言われると、その要點を掴みかねるのであります、私はその後國務相の答辯を大分速記録で讀みましたが、速記録で讀んで考えてみると、なるほどこういうことを仰しやつているのだということがわかるようでありますが、しかし的確に掴みかねるのでありまして、先ほども北浦委員から簡單に簡單にという御要求がありましたが、私も御説明は簡單でようございますから、第一點、第二點というように、箇條書きのようにして、骨だけの所をお答え願いたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=124
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125・金森徳次郎
○金森國務大臣 只今のお尋ねは、天皇の退位を何故に皇室典範に設けないかということの點であろうと了承いたします、私が本會議で申しました考えの基本、天皇の天皇たる所以は國民の確信に置く、過去の歴史、これを二つ結びつけますれば、過去の歴史によつて今日國民の心の中に殘つているその考えに基本がある、これすなわち國民の總意に基づく所以であると思つております、しかして國民はかような場合におきまして、御退位のあることを制度の上に書くことは希望していない、かように考えます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=125
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126・及川規
○及川委員 よくわかりました、天皇の退位を認めないことは國民の確信にある、所がこの前も私本會議で申し上げましたように、天皇の退位なさらなかつたのは、わずかに上古、三十四代までに限りまして、その後はむしろ退位の方が多かつたのであります、この千年以上にわたる間、そういう退位の事例がずつと續きまして、やはり國民の信念がこれを支持しておつたものであろうと思うのであります、それが明治になりまして、この憲法が制定され、皇室典範が制定される時、突如としてこの制度が廢止せられて、いわゆる古例に復した、これが何の理由であつたかということは、私寡聞にしてこれを知ることができません、實は政府にも、この現皇室典範制定の時の會議の議事録を請求いたしましたけれども、これは御前會議においてなされたのであつて、その會議録は皆燒いてしまつたというのであります、直接の議事録でなくてもいい、そこに參列した人が後で著わした著書でもいいからと、私請求しましたけれども、何かそういうものは一、二あつたけれども、發賣禁止とかになつて、もう出せないというのでありまして、その資料が一向手に入りません、今まで現われている憲法の著書等によつて見ても、この點について、いかなる理由によつてこの永年にわたつて行われた天皇退位の制度が、突如として變更を受けたかということについて、私確信を得ることができないのでありますが、これは今度の典範の制定とは違いますけれども、とにかく千年以上にわたつて、長く日本に恆例として傳はつて來たこの制度を變えることについては、相當の理由があつたことであらう、政府におかれましては、この御前會議の議事録は燒かれても、そういう資料を得られる手段がおありになつて、金森國務相はその點において該博なる知識をもつておられるであろうと思いますによつて、もしどんな論議がなされ、どんな理由であつたか、單に國民の確信であるということであつたのか、それともまだ他に重大な理由があつたのか、その點歴史上のことでありましようが、ご存じであつたなら、お知らせ願いたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=126
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127・金森徳次郎
○金森國務大臣 當時の會議の記録は、私ども入手することができません、わずかに伊藤公の書かれたという憲法義解を基礎として、その經過を推察するに止まつております、私はかような問題を論議いたしまする最後の解決點というものは、現代の國民が總じて考えて、いかに考えるかということに基礎をもつべきものと考えておりまして、よろずの理由は、それの考えのもう一つ奧に基礎材料として存在するものと思つております、その意味におきまして、今日私の申しました所も、この前本會議において述べました所も役立つものと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=127
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128・及川規
○及川委員 國民の確信によつてこういう規定をおつくりになつた、それは正しい道であることも私存じておりますが、かかる場合、國民の確信というものをいかにして知るか、ただ自分でこれが確信であろう、自分でつくつて國民の確信としておつかぶせるという態度は、甚だ好ましくないと私は思うのであります、このたびこの典範の作成に當りまして、國民の總意を知るというような何らかの方法を講じたのかどうか、私の見る所では、一向に國民の輿論も確信も問うことなく、いつの間にか蔭でできて、われわれの目にさえ突如としてこれが現われて來た、もし國民の總意を問うとならば、あらかじめこういう草案を發表して世論に問う、或は公聽會を開くとか、或は學者等の意見を聞くとかいうような方法がとられたならば、多少とも世論が分るでありましようが、そういう方法がとられなかつたように私は思いますが、その點について、國民の確信或は總意をいかにして知つたか、それから知るということについていかなる手續きをとられましたか、その點をお伺いいたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=128
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129・金森徳次郎
○金森國務大臣 實質的には内閣に臨時法制調査會を設けまして、その議を通したのでありまして、これは國民を直接に代表する意味は毛頭ありませんけれども、或る人選の方法により、貴衆兩院の方々、學識經驗ありとして選ばれたる方々によつてつくられたわけであります、しかしそれは準備作業にほかならぬのでありまして、國民の確信たるや否やを確かめまするのは、本議會に提出してその議了を經ることによつて初めてはたされるものでございまして、この提案はただそれを一應假想して提案した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=129
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130・及川規
○及川委員 次ぎにお伺いしたいことは、私が天皇の退位の規定を設くべきであるということの論據といたしましては、このたびの新しい憲法の精神に基づきまして、人間天皇としての象徴たる地位を充たすべき人は人間天皇でなければならない、その點において人間としての特質である所の意思が自由でなければならないという點でありまするが、第一象徴たる地位を充たすべき人は、いわゆる人間であつて、われわれと異ならない所の普通の精神作用をもつたものである、しかも通常の人よりも特に優れた精神能力をもつたものであるということは豫定すべきものでない、勿論個々現實には非常に優れた方もあるでありましようが、しかし全部がそういう優れたる能力をもたれる方だと豫定することは間違いである、普通一般の精神能力をもつた自然人であるということを豫定するのが當然と思います、今までは、天皇といえば皆允文允武とか、御英邁にわたらせられるというような言葉で、すべてが普通の人間よりも優れたる能力をもつたものであるかのごとく主張せられておりましたが、かかる見解は今後は拂拭せらるべきである、普通の人間の能力をもつた自然人が今後象徴の地位につかれるものなのだ、こう私は思うのでありますが、やはり金森國務相も、この皇室典範の規定をなさる時は、そういう御趣旨であつたでありましようか、それともまた昔ながらの天皇は御英邁にあらせられるとか、特殊の能力をもつた、普通の人間より優れたものであるという豫定でありましようか、その點を一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=130
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131・金森徳次郎
○金森國務大臣 私は特殊の能力とか、御英邁とかいうことと關係はないものと考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=131
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132・及川規
○及川委員 そうすると象徴につかれる自然人である天皇も、普通のわれわれと同じような能力精神作用をもつたものであるということになりますれば、やはり普通の人間のように、或る地位につかれることを欲しない、或は途中から嫌になる、或は非常に萬機その任に堪えずとか、或は煩に堪えずとか、とにかく象徴の地位におられることを欲しないという精神作用を起すということも、また當然考えられる、從つて日本の歴史にはそういう事例が澤山あるのであります、金森國務相のその點の御見解はいかがですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=132
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133・金森徳次郎
○金森國務大臣 事實としてそういう考えが起るかどうかということにつきましては、歴史の示す所は事實としてかような考えが起つておることを認め得るがごとくであります、しかし事實ではない、かくあるべきものとしての姿としてそれを認めるかどうかということになりますれば、私自身の見解から言えば、日本の皇位は萬世一系の血統を流れるものである、しかもそれは一定の原理に從つて流れるものであるということを前提として憲法はこれを掲げております、從つてそれを打切ることはできないものであると、かように考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=133
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134・及川規
○及川委員 わかりました、現實は嫌だという心理状態におかれることがあつても、あるべき姿としてはそうあつてはならないという御意見だそうであります、天皇はこのたび象徴たる地位になられた、政治上の權能は有せられない、こういう姿において、天皇がなお國民の統合の中心である、金森國務相の憧れの中心であるというためには、今までよりももつと道義的方面は強調されなければならない、こう思うのでありまするが、今後は天皇は精神的結合の中心である、道義的責任はより大なものである、こう思うのでありますが、その點いかがですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=134
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135・金森徳次郎
○金森國務大臣 もう少し具體的にお示しを願いませんければ的確な御返事はできないと思いますが、かような精神結合の中心が、道義においてこれに値するようにあらねばならぬことは當然と思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=135
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136・及川規
○及川委員 次ぎに天皇の責任でありますが、天皇は國内法的にはいわゆる天皇無答責の原則によりまして、政治上及び刑事上の責任を負わないということは、たとえこの規定になくてもわかつておりますが、これは要するに國内法上のことでありまして、國際法上においては、やはり天皇といえども責任を負わなければならぬ場合があることを私は思うのでありますが、金森國務相の御意見はいかがでございましよう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=136
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137・金森徳次郎
○金森國務大臣 國際法のこととなりますと、私はその方面におきまして甚だ研究不十分でありまするが故に、的確な御返事はできませんが、恐らく御説の通りに考えて差支えないものだと思つております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=137
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138・及川規
○及川委員 そういたしますと、國際法上では通常無答責の原則は通用されず、責任があり、國内法上においても政治上及び刑事上の責任がなくとも、少くとも道義的責任はある、しかもその道義的責任は、憧れの中心として、國民結合の中心として強調せられねばならない、こういうことになると思うのでありますが、そういう道義上の責任或は國際法上の責任をはたすために、天皇が御自身で、自分の自由の意思で退位をされた方がいいというような場合に、やはりぜひともその意思を拘束して退位を許さないというような規定は、國民總意によつても、これは妥當なものであるとお考えでございましようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=138
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139・金森徳次郎
○金森國務大臣 妥當であると思つております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=139
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140・及川規
○及川委員 さらにお伺いいたします、勿論新しい憲法は國民主權でありまして、天皇の地位といえども國民の總意によつてそのあり方がどのようにでも變り得る、從つて金森國務相の御意見は、國民の總意によつてであるから、天皇個人の絶對自由の意思を拘束し得るものであるという御見解でありましようか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=140
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141・金森徳次郎
○金森國務大臣 われわれは法律には從わなければならぬと思つております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=141
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142・及川規
○及川委員 私はこういうことを聽いたのであります、國民の總意が今度は絶對である、最高であるから、この國民の總意に從つて天皇の意思を拘束して退位を認めないということが出て來るのだ、こういう結論になりますかとお伺いしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=142
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143・金森徳次郎
○金森國務大臣 私は御質疑の趣旨がまだはつきり捕足できませぬが、われわれは國家生活をつくつているとすれば、國法に從わねばならぬ、國法が決まればその國法を遵法する、もちろん憲法を基礎としての國法でありますが、これに從うということは當然であると考えております、天皇に關する御秩序もやはり國法を基礎として存在しているかぎり、國法がこれを規律することは自然の結論であろうと思つております、御質疑の趣旨はさような國法をもつて天皇の御自由の御退位を拘束することがいいか惡いかということであろうと思いまするが、私は改正の皇室典範案の期待しているように、讓位の規定をここに設けないということが正しいと考えているのでありまして、それは私の意見であります、それから國法的になるには、これからの御審議を經てなるのでありまするから、この段階における私の意見としては正しいというふうに申しているわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=143
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144・及川規
○及川委員 意思の自由を認めない、絶對の自由の意思のない人は、自分の行爲に對して責任をもち得るかどうか、私は責任ということは、その根源に意思の自由があつて初めて出て來ることであつて、意思の自由のない所に責任は生じないと思いますが、金森國務相はどういう御意見でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=144
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145・金森徳次郎
○金森國務大臣 われわれは意思の自由をもつております、これは一點の疑いありませぬ、しかしながらその意思は、その人の個人の左右により難き場面もまたある、もし各人が自己の意思のままに動きますると共同生活はできぬものと考えております、自繩自縛という、その言葉の沿革は別として、みずからの意思によつてみずからを規律して行くということが今日のわれわれの生活の姿であると思いまするが故に、共同生活におきまして、この民族の一つとなつて動いて行く姿の中におきまして、個人の自由意思がありのままに動き得ざる場面のあることは、これはもう仕方のないことと存じております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=145
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146・及川規
○及川委員 國民の總意によつて、天皇の意思をも拘束して絶對退位を許さないということが妥當であるという御見解でありますが、私の見方は、天皇が憧れの中心である、或は國民結合の中心であるというのは、どこにその根源があるのか、單に國民は偶像として天皇を憧れているわけではないと私は思いまするが、結局天皇が道義の源泉である、今度は道義の源泉であるというような點に憧れが生ずるのではないかと思いますが、金森國務大臣は、天皇の憧れの中心であることを盛んに強調いたしますが、何が故に憧れの中心として、しかもこれが永久に變らないだろうという信念であるか、何が故に天皇が國民の憧れの中心となつておるのか、またこれは永久に變らぬだろうという根據はどこにあるか、そのことをお伺いしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=146
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147・星一
○星委員 議事進行についておはかりしたい、今の同僚委員の質問は皇室典範案の質疑ではないと思います、憲法が既に確定したのでありますから、その憲法によつてこの皇室典範案を論議する時に、元の憲法の時に返つてその論議をし、批評をしているということは、この皇室典範案の質疑ではないと思います、これについて委員長から相當な警告があつて然かるべしと思います、既に憲法ができた、發布にもなつたのである、その上は憲法の精神によつて、この皇室典範案を論議すればよいと思います、今のような質問は委員會のすべきものでないのです、委員甚だ迷惑でありますから、委員長から相當な警告を與えて議事を進行されんことをお願いします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=147
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148・樋貝詮三
○樋貝委員長 委員長は只今の及川君の御質問は皇室典範の質問の前提としてお聽きになつておるというふうに諒解しております、但しそれが少しく煩に過ぎておるように私も考えております、さらに煩に過ぎるようであれば御忠告したいと思つております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=148
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149・金森徳次郎
○金森國務大臣 只今の御質疑に對してお答えをいたしまするが、何故天皇が憧れの中心であるかという御質疑に關しまして、私は國民が過去において、また現在において憧れの中心と思つている、故に憧れの中心である、かように考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=149
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150・及川規
○及川委員 過去において憧れの中心であつたから、將來も憧れの中心でなければならぬ、こう仰しやるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=150
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151・金森徳次郎
○金森國務大臣 私は過去において天皇が國民の憧れの中心であつたということを、歴史を通して認識をしており、また現在におきまして天皇が國民の憧れの中心であるということは、國民相互の間の思想を交流することによつてかく認識しております、將來のことにつきましては、私は私の推測である、かように申し上げております(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=151
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152・及川規
○及川委員 憧れの中心、國民が何を憧れているか、單なる偶像を憶れておらないと私は思います、少くとも天皇制の存在によつて、われわれは何等かの價値あるものを實施することができる、善か、美か、正か、或はよりよき生活か、より高き文化、何かが價値あるから、そこに憧れるものであつて、何等の價値なきものに、單なる偶像に憧れる筈がない、われわれは天皇制の存置を主張する所以もここにあつた、從つて今日今後この象徴たる地位に何人がつかれるか、つかれてそれが値いしない、御本人自身にその責任をとられるというような時、これを阻止すべきものではない、こう思いますが、憧れは單なる過去における事實である、現在國民の心の交流によつて憧れるのだ、將來はまたわからぬということになれば、再びここに論議を進めることができなくなるのでありますが、さういう御答辯は實は甚だ私は意外に思う、きわめてこれは不親切なる答辯である、金森國務相は何と仰しやつたか、この著書によりますと……
〔「分つておるじやないか」その他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=152
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153・樋貝詮三
○樋貝委員長 及川君に申し上げますが、結局憧れの中心だということについては、あなたはお認めと思いますから、あなたの御質問なり、それから國務大臣の御答辯なり、もう少し和やかに進行せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=153
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154・及川規
○及川委員 和やかにやるつもりでありますが、そういう御答辯では和やかに行きません、上滑りである、こういうことを仰つしやる、政黨や或は民間においても、憲法に對する論議が表面的活溌であるように見えるが、上滑りであり、精緻でない所に、私のはげしい不滿が存するのだ、識者の怠慢、むしろ識者の社會的無責任に對する憤懣をさえ感ずるのである、と言つているが、私はこれに憤懣を感ずる、精緻をきわめなければならぬ、今までの各委員の質問等に對するお答えは多くは上滑りである、その根本まで突き詰めて、なるほどこれが天皇退位を規定すべきではないという確たる論據があればともかく、單に古來の國民の信念であるというようなことで、その信念も實は長年續いた信念ではない、突如として明治になつてから變えてしまつた、しかも變えた理由もよくわからない、今なおわからないで、こういう皇室典範の案を出されたことに私は非常に憤懣を感ずる、精緻をきわめようとして、實はこれは甚だ失禮かも知れませんが、私は婉曲に言うことに慣れてをりません、率直にものを申したのでありますが、これ以上論議いたしましても、これはまた同じことになつてしまいますからこれで質疑を打ち切りますが、もう一つ伺います、皇室會議の議長を、總理大臣でなく衆議院議長がすべきであるという質問が今日ありまして、お答えを聽いておりますと、皇室會議の性格によるものである、皇室會議は審判をするような、法律的の解釋をするような場面もあり、行政的な處置をするような場面もあり、さまざまあるのだ、所が衆議院というのは、國會は主として立法の府であり、後は行政を監督するのだ、そういう意味で、内閣總理大臣の方は綜合的に見て、綜合的の職務をもつておるから、それでこれが適當だ、こういう御答辯であつたようでありますが、内閣總理大臣は綜合的の職務をやるのではなくて、これこそ行政一點張りなのでありまして、これはきわめて部分的の職務をやるものでありますが、それを綜合的というような言葉でただ片付けてしまつたのでありますが、内閣總理大理の職務は、司法、行政、立法、綜合的の職務でありましようか、その點を一つお聽きしたいと思います発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=154
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155・金森徳次郎
○金森國務大臣 いろいろ言葉の行違いがありまして、私の申し上げたことを十分御理解を願つていないように思います、先の問題でありますが、私は憧れの中心であるということは、事實であるから、これがそうである、こう申しました、それは決して粗末に申し上げる意味ではなくて、私の信念とする所におきましては、かく答うる以外に正確な言い方がないからであります、なぜかと申しますと、私は日本の天皇の象徴たる御地位に對して、國民が愛敬しているということは、天皇が國のためにいいことをなさつて下さる、或は將來の文化にどういう面があるとかいうような、功利的な考えをもつて論據とはいたしておりませんので、ただかくあるが故にかくあるということを私の基本の思想といたしております、及川君の考え方は、だんだん伺つてをりますと、それと少しく違う立場で意見を御主張になつているやうでありまして、これはどうしてもやはり考え方の差に基くのであつて、私が御主張を粗末にしているということではないというふうに了解しております
次に總理大臣が綜合的であると言つたのはどうかということでありますが、これはもとよりそうはつきりしたる點のことではありませんけれども、しかし何と申しましても、議院内閣制におきまして、つまり國會を基礎とする内閣の下におきましては、事務全體は常に内閣が責任をもつて按排をしているということは否定はできないのであります、國會は會期中に働く、しかし、内閣は始終おるものでありまして、國のすべてのことの、いわばまとめる立場というものは内閣であろうと考えております、權能の強さに至りましては、これは固より憲法の定める所によつて段階がありますから、そういう意味において綜合的なものと、こういつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=155
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156・及川規
○及川委員 これで終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=156
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157・樋貝詮三
○樋貝委員長 それでは本日はこの程度にいたしまして、明日は午前十時から開會いたします、なお明日は豫算委員會の關係がありますので、皇室典範の委員會は第十委員室で開くことにいたします、第十委員室は正玄關の上の三階であります、御諒承を願います、本日はこれにて散會いたします
午後三時五十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009110895X00419461211&spkNum=157
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