1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年十二月十八日(水曜日)
午後二時三十五分開議
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議事日程 第十一號
昭和二十一年十二月十八日
午後一時開議
第一 増加所得税法案(政府提出) 第一讀會
第二 議院法の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 參議院議員選擧法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 内閣法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 國會法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次ぎの通りである。
増加所得税法案
〔以上十二月十八日提出〕
一、議員から提出された議案は次ぎの通りである。
國會法案
提出者
大野伴睦君 芦田均君
大久保留次郎君 坂東幸太郎君
葉梨新五郎君 森幸太郎君
犬養健君 田中萬逸君
成島勇君 井上知治君
水谷長三郎君 中村高一君
田原春次君 佐竹晴記君
松本瀧藏君 宇田國榮君
鈴木彌五郎君 鈴木憲一君
中野四郎君 徳田球一君
(以上十二月十七日提出)
一、昨十七日衆議院規則第十五條但書により議長において議席を次ぎの通り變更した。
一 石原登君
四六〇 福岡縣第一區選出議員
一、昨十七日常任委員理事補闕選擧の結果次ぎの通り當選した。
建議委員
理事 小池新太郎君(九鬼紋十郎君今十七日理事辭任につきその補闕)
一、昨十七日次ぎの通り特別委員の異動があつた。
内閣法案(政府提出)委員
辭任 林田正治君 補闕 橘直治君
辭任 保利茂君 補闕 山下春江君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) これより會議を開きます。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=1
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002・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際日程第五を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=2
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003・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=3
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004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます――政府はこの議事日程變更に同意せられました。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第五、國會法案の第一讀會を開きます。提出者の趣旨辯明を許します。提出者田中萬逸君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=4
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005・会議録情報2
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第五 國會法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會
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國会法案
國会法
第一章 國会の召集及び開会式
第一條 國会の召集詔書は、集会の期日を定めて、これを公布する。
常会の召集詔書は、少くとも二十日前にこれを公布しなければならない。
臨時会及び特別会(憲法第五十四條により召集された國会をいう)の召集詔書の公布は、前項によることを要しない。
第二條 常会は、毎年十二月上旬にこれを召集する。但し、その会期中に議員の任期が満限に達しないようにこれを召集しなければならない。
第三條 臨時会の召集の決定を要求するには、いずれかの議院の総議員の四分の一以上の議員が連名で、議長を経由して内閣に要求書を提出しなければならない。
第四條 参議院の緊急集会を求めるには、内閣総理大臣から、集会の期日を定めて、参議院議長にこれを請求しなければならない。
第五條 議員は、召集詔書に指定された期日に、各議院に集会しなければならない。
第六條 各議院において、召集の当日に議長若しくは副議長がないとき、又は議長及び副議長が共にないときは、その選挙を行わなければならない。
第七條 議長及び副議長が選挙されるまでは、事務總長が、議長の職務を行う。
第八條 國会の開会式は、会期の始めにこれを行う。
第九條 開会式においては、衆議院議長が、議長の職務を行う。
衆議院議長に事故があるときは、參議院議長が、議長の職務を行う。
第二章 國会の会期及び休会
第十條 常会の会期は、百五十日間とする。
第十一條 臨時会及び特別会の会期は、両議院一致の議決で、これを定める。
第十二條 國会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。
第十三條 前二條の場合において、両議院一致の議決に至らないときは、衆議院の議決したところによる。
第十四條 國会の会期は、召集の当日からこれを起算する。
第十五條 國会の休会は、両議院一致の議決を必要とする。
各議院は、七日以内においてその院の休会を議決することができる。
各議院は、議長において緊急の必要があると認めたとき、又は総議員の四分の一以上の議員から要求があつたときは、國会の休会中又はその院の休会中でも会議を開くことができる。
第三章 役員及び経費
第十六條 各議院の役員は、左の通りとする。
一 議長
二 副議長
三 仮議長
四 常任委員長
五 事務総長
第十七條 各議院の議長及び副議長は、各各一人とする。
第十八條 各議院の議長及び副議長の任期は、各各議員としての任期による。
第十九條 各議院の議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する。
第二十條 議長は、委員会に出席し発言することができる。
第二十一條 各議院において、議長に事故があるとき又は議長が欠けたときは、副議長、が議長の職務を行う。
第二十二條 各議院において、議長及び副議長に共に事故があるときは、仮議長を選挙し議長の職務を行わせる。
議院は、仮議長の選任を議長に委任することができる。
第二十三條 各議院において、議長若しくは副議長が欠けたとき、又は議長及び副議長が共に欠けたときは、直ちにその選挙を行う。
第二十四條 仮議長の選挙の場合及び前條の選挙において議長の職務を行う者がない場合には、事務総長が、議長の職務を行う。
第二十五條 常任委員長は、各議院において各各その常任委員の中からこれを選挙する。
第二十六條 各議院に、事務総長一人、参事その他必要な職員を置く。
第二十七條 事務総長は、各議院において國会議員以外の者からこれを選拳する。
参事その他の職員は、事務総長が、議長の同意を得てこれを任免する。
第二十八條 事務総長は、議長の監督の下に、議院の事務を統理し、公文に署名する。
参事は、事務総長の命を受け事務を掌理する。
第二十九條 事務総長に事故があるとき又は事務総長が欠けたときは、その予め指定する参事が、事務総長の職務を行う。
第三十條 役員は、議院の許可を得て辞任することができる。但し、閉会中は、議長において役員の辞任を許可することができる。
第三十一條 役員は、官吏と兼ねることができない。
第三十二條 両議院の経費は、独立して、國の予算にこれを計上しなければならない。
前項の経費中には、予備金を設けることを要する。
第四章 議員
第三十三條 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
第三十四條 参議院の緊急集会中、参議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、参議院の許諾がなければ逮捕されない。
参議院の緊急集会前に逮捕された参議院の議員は、参議院の要求があれば、緊急集会中これを釈放しなければならない。
第三十五條 議員は、一般官吏の最高の給料額より少くない歳費を受ける。
第三十六條 議員は、別に定めるところにより、退職金を受けることができる。
第三十七條 議員は、別に定める規則に從い、会期中及び公務のため自由に國有鉄道に乘車することができる。
第三十八條 議員は、会期中公の書類を郵送し及び公の性質を有する通信をなすため、別に定めるところにより手当を受ける。
第三十九條 議員は、その任期中別に法律で定めた場合を除いては、官吏又は地方公共團体の吏員となることができない。
議員は、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、嘱託その他これに準ずる職務に就くことができない。但し、法律で定めた場合又は國会の議決に基く場合は、この限りでない。
第五章 委員及び委員会
第四十條 各議院の委員は、常任委員及び特別委員とする。
第四十一條 常任委員は、会期の始めに議院において選任し、議員の任期中その任にあるものとする。
議員は、少くとも一箇の常任委員とする。但し、同時に三箇を超える常任委員となることができない。
第四十二條 各議院の常任委員会は、左の通りとし、その部門に属する議案、請願、陳情書その他を審査する。
一 外務委員会
二 治安及び地方制度委員会
三 國土計画委員会
四 司法委員会
五 文教委員会
六 文化委員会
七 厚生委員会
八 労働委員会
九 農林委員会
十 水産委員会
十一 商業委員会
十二 鉱工業委員会
十三 電氣委員会
十四 運輸及び交通委員会
十五 通信委員会
十六 財政及び金融委員会
十七 予算委員会
十八 決算委員会
十九 議院運営委員会
二十 図書館運営委員会
二十一 懲罰委員会
各議院において必要と認めたときは、前項各号以外の常任委員会を設けることができる。
第四十三條 各常任委員会には、少くとも二人の國会議員でない專門の知識を有する職員(これを專門的職員という)及び書記を常置する。但し、議院において不必要と認めたものについては、この限りでない。
專門的職員は、相当額の報酬を受け、他の職務を兼ねることができない。
專門的職員は、その職を辞した後二年間は、内閣行政各部における、いかなる職務にも就くことができない。
第四十四條 各議院の常任委員会は、他の議院の常任委員会と協議して合同審査会を開くことができる。
第四十五條 特別委員は、常任委員会の所管に属しない特定の事件を審査するため、議院において選任し、その委員会に付託された事件が、その院で議決されるまでその任にあるものとする。
特別委員長は、その委員がこれを互選する。
第四十六條 常任委員及び特別委員は、各派の所属議員数の比率により、これを各派に割当て選任する。
第四十七條 常任委員会及び特別委員会は、会期中に限り付託された事件を審査する。
常任委員会及び特別委員会は、各議院の議決で特に付託された事件については、閉会中もなお、これを審査することができる。
第四十八條 委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する。
第四十九條 委員会は、その委員の半数以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第五十條 委員会の議事は、出席委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
第五十一條 委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聽会を開き、眞に利害関係を有する者又は学識経驗者等から意見を聽くことができる。
予算及び重要な歳入法案については、前項の公聽会を開かなければならない。
第五十二條 委員会は、議員の外、委員長の許可を得た者が、これを傍聽することができる。但し、その委員会の決議により祕密会とすることができる。
委員長は、秩序保持のため、傍聽人の退場を命ずることができる。
第五十三條 委員長は、委員会の経過及び結果を議院に報告しなければならない。
第五十四條 委員会において廃棄された少数意見は、委員長の報告に次いで少数意見者がこれを議院に報告することができる。
議長は、少数意見の報告につき時間を制限することができる。
少数意見者が簡明な少数意見の報告書を議長に提出したときは、委員会の報告書と共にこれを会議録に掲載する。
第六章 会議
第五十五條 各議院の議長は、議事日程を定め、予めこれを議院に報告する。
第五十六條 すベて議員は、議案を発議することができる。
議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。但し、特に緊急を要するものは、議院の議決で委員会の審査を省略することができる。
委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した議案は、これを会議に付さない。但し、委員会の決定の日から休会中の期間を除いて七日以内に議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
前項但書の要求がないときは、その議案は廃案となる。
第五十七條 議案に對する修正の動議を議題とするには、二十人以上の贊成を要する。
第五十八條 内閣は、一の議院に議案を提出したときは、予備審査のため、その翌日以後他の議院に同一の案を送付しなければならない。
第五十九條 内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となつた議案を修正し又は撤回するには、その院の承諾を要する。
第六十條 各議院が堤出した議案については、その委員長(その代理者を含む)又は発議者は、他の議院において、提案の理由を説明することができる。
第六十一條 各議院の議長は、質疑、討論その他の発言につき、特に議院の議決があつた場合を除いて、時間を制限することができる。
議員が時間制限のため発言を終らなかつた部分につき特に議院の議決があつた場合を除いては、議長の認める範囲内において、これを会議録に掲載する。
第六十二條 各議院の会議は、議長又は議員十人以上の発議により、出席議員の三分の二以上の議決があつたときは、公開を停めることができる。
第六十三條 祕密会議の記録中、特に祕密を要するものとその院において議決した部分は、これを公表しないことができる。
第六十四條 内閣は、内閣総理大臣が欠けたとき、又は辞表を提出したときは、直ちにその旨を両議院に通知しなければならない。
第六十五條 両議院の議決を要する議案について、最後の議決があつた場合、及び衆議院の議決が國会の議決となつた場合には、衆議院議長から、その公布を要するものは、これを内閣を経由して奏上し、その他のものは、これを内閣に送付する。
内閣総理大臣の指名については、衆議院議長から、内閣を経由してこれを奏上する。
第六十六條 法律は、奏上の日から三十日以内にこれを公布しなければならない。
第六十七條 一の地方公共團体のみに適用される特別法については、國会において最後の可決があつた場合は、別に法律で定めるところにより、その地方公共團体の住民の投票に付し、その過半数の同意を得たときに、さきの國会の議決が、確定して法律となる。
第六十八條 会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。
第七章 國務大臣及び政府委員
第六十九條 内閣は、國会において國務大臣を補佐するため、両議院の議長の承認を得て政府委員を任命することができる。
第七十條 國務大臣及び政府委員が、議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告しなければならない。
第七十一條 委員会は、議長を経由して國務大臣及び政府委員の出席を求めることができる。
第七十二條 委員会は、議長を経由して会計檢査院の長及び檢査官の出席説明を求めることができる。
第七十三條 議院の会議及び委員、に関する報告は、議員に配付すると同時に、これを國務大臣及び政府委員に送付する。
第八章 質問及び自由討議
第七十四條 各議院の議員が、内閣に質問しようとするときは、議長の承認を要する。
質問は、簡明な主意書を作り、これを議長に提出しなければならない。
議長の承認しなかつた質問について、その議員から異議の申立があつたときは、議長は、これを承認するかどうかを議院に諾らなければならない。
議長又は議院の承認しなかつた質問について、その議員から要求があつたときは、議長は、その主意書を会議録に掲載する。
第七十五條 議長又は議院の承認した質問については、議長がその主意書を内閣に轉送する。
内閣は、質問注意書を受け取つた日から七日以内に答弁をしなければならない。その期間内に答弁をしないときは、理由を明示することを要する。
第七十六條 質問が、緊急を要するときは、議院の議決により口頭で質問することができる。
第七十七條 質問に対する内閣の答弁に関し、議員の動議により、討論又は表決に付することができる。
第七十八條 各議院は、國政に関し議員に自由討議の機会を與えるため、少くとも、二週間に一回その会議を開くことを要する。
自由討議の問題につき、議員の動議により、議院の表決に付することができる。
自由討議における発言の時間は、特に議院の議決があつた場合を除いては、議長がこれを定める。
第九章 請願
第七十九條 各議院に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
第八十條 請願は、各議院において委員会の審査を経た後これを議決する。
委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した請願は、これを会議に付さない。但し、議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
第八十一條 各議院において採択した請願で、内閣において措置するを適当と認めたものは、これを内閣に送付する。
内閣は、前項の請願の処理の経過を毎年議院に報告しなければならない。
第八十二條 各議院は、各別に請願を受け互に干預しない。
第十章 両議院関係
第八十三條 國会の議決を要する議案を甲議院において可決し、又は修正したときは、これを乙議院に送付し、否決したときは、その旨を乙議院に通知する。
乙議院において甲議院の送付案に同意し、又はこれを否決したときは、その旨を甲議院に通知する。
乙議院において甲議院の送付案を修正したときは、これを甲議院に回付する。
甲議院において乙議院に回付案に同意し、又は同意しなかつたときは、その旨を乙議院に通知する。
第八十四條 法律案について、衆議院において参議院の回付案に同意しなかつたとき、又は参議院おいて衆議院の送付案を否決し及び衆議院の回付案に同意しなかつたときは、衆議院は、両院協議会を求めることができる。
第八十五條 予算及び衆議院先議の條約について、衆議院において参議院の回付案に同意しなかつたとき、又は参議院において衆議院の送付案を否決したときは、衆議院は、両院協議会を求めなければならない。
参議院先議の條約について、参議院において衆議院の回付案に同意しなかつたとき、又は衆議院において参議院の送付案を否決したときは、参議院は、兩院協議会を求めなければならない。
第八十六條 各議院において、内閣総理大臣の指名を議決したときは、これを他の議院に通知する。
内閣総理大臣の指名について、両議院の議決が一致しないときは、参議院は、両院協議会を求めなければならない。
第八十七條 前三條に規定したものを除いて、國会の議決を要する事件について、後議の議院が先議の議院の議決に同意しないときは、先議の議院は、両院協議会を求めることができる。
第八十八條 一の議院から両院協議会を求められたときは、他の議院は、これを拒むことができない。
第八十九條 両院協議会は、各議院において選挙された各各十人の委員でこれを組織する。
第九十條 両院協議会の議長には、各議院の協議委員において夫々互選された議長が、毎会更代してこれに当る。その初会の議長は、くじでこれを定める。
第九十一條 両院協議会は、各議院の協議委員の各各三分の二以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第九十二條 両院協議会においては、その意見が一致したときに限り成案を議決する。
両院協議会の議事は、前項の場合を除いては、出席協議委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第九十三條 両院協議会の成案は、両院協議会を求めた議院において先ずこれを議し、他の議院にこれを送付する。
成案については、更に修正することができない。
第九十四條 両院協議会において、成案を得なかつたときは、各議院の協議委員議長は、各各その旨を議院に報告しなければならない。
第九十五條 各議院の議長は、両院協議会に出席して意見を述べることができる。
第九十六條 両院協議会は、國務大臣及び政府委員の出席を要求することができる。
第九十七條 両院協議会は、傍聽を許さない。
第九十八條 この法律に定めるものの外、両院協議会に関する規程は、両議院の議決によりこれを定める。
第十一章 両院法規委員会
第九十九條 両院法規委員会は、両議院及び内閣に対し、新立法の提案並びに現行の法律及び政令に関して勧告し、且つ、國会関係法規を調査研究して、両議院に対し、その改正につき勧告する。
第百條 両院法規委員会は、衆議院から選挙された十人の委員及び参議院から選挙された五人の委員でこれを組織し、その委員長は、委員会でこれを互選する。
委員の任期は、議員としての任期による。
第百一條 両院法規委員会は、両議院において特に議決のない限り閉会中は、これを開くことができない。
第百二條 両院法規委員会に関するその他の規定は、両議院の議決によりこれを定める。
第十二章 議院と國民及び官廳との関係
第百三條 各議院は、審査又は調査のため、議員を派遣することができる。
第百四條 各議院から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに應じなければならない。
第百五條 内閣及び各省は、その刊行物を國会図書館に送付しなければならない。
図書館運営委員会において必要と認めたものについては、内閣及び各省をしてこれを各議員に配付させることができる。
第百六條 各議院は、議案その他の審査又は國政に関する調査のため、証人の出頭を求めたときは、別に定めるところにより旅費及び日当を支給する。
第十三章 辞職、退職、補欠及び資格爭訟
第百七條 各議院は、その議員の辞職を許可することができる。但し、閉会中は、議長においてこれを許可することができる。
第百八條 各議院の議員が、他の議院の議員となり、又は法律により議員たることのできない職務に任ぜられたときは、退職者となる。
第百九條 各議院の議員が、法律に定めた被選の資格を失つたときは、退職者となる。
第百十條 各議院の議員に欠員が生じたときは、その院の議長は、内務大臣に通知しなければならない。
第百十一條 各議院において、その議員の資格につき爭訟があるときは、委員会の審査を経た後これを議決する。
前項の爭訟は、その院の議員から文書でこれを議長に提起しなければならない。
第百十二條 資格爭訟を提起された議員は、二人以内の弁護人を依頼することができる。
前項の弁護人の中一人の費用は、國費でこれを支弁する。
第百十三條 議員は、その資格のないことが証明されるまで、議院において議員としての地位及び権能を失わない。但し、自己の資格爭訟に関する会議において弁明はできるが、その表決に加わることができない。
第十四章 紀律及び警察
第百十四條 國会の会期中各議院の紀律を保持するため、内部警察の権は、この法律及び各議院の定める規則に從い、議長が、これを行う。
参議院の緊急集会中は、前項の規定を準用する。
第百十五條 各議院において、必要とする警察官吏は、議長の要求により内閣がこれを派出し、議長の指揮を受ける。
第百十六條 会議中議員がこの法律又は議事規則に違いその他議場の秩序をみだし又は議院の品位を傷けるときは、議長は、これを警戒し、又は制止し、又は発言を取り消させる。命に從わないときは、議長は、当日の会議を終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。
第百十七條 議長は、議場を整理し難いときは、休憩を宣告し、又は散会することができる。
第百十八條 傍聽人が議場の妨害をするときは、議長は、これを退場させ、必要な場合は、これを警察官廳に引渡すことができる。
傍聽席が騷がしいときは、議長は、すべての傍聽人を退場させることができる。
第百十九條 各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。
第百二十條 議院の会議又は委員会において、侮辱を被つた議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。
第十五章 懲罰
第百二十一條 各議院において懲罰事犯があるときは、議長は、先ずこれを懲罰委員会に付し審査させ、議院の議を経てこれを宣告する。
委員会において懲罰事犯があるときは、委員長は、これを議長に報告し処分を求めなければならない。
議員は、二十人以上の贊成で懲罰の動議を提出することができる。この動議は、事犯があつた日から三日以内にこれを提出しなければならない。
第百二十二條 懲罰は、左の通りとする。
一 公開議場における戒告
二 公開議場における陳謝
三 一定期間の登院停止
四 除名
第百二十三條 両議院は、除名された議員で再び当選した者を拒むことができない。
第百二十四條 議員が正当な理由がなくて召集日から七日以内に召集に應じないため、又は正当な理由がなくて会議又は委員会に欠席したため、若しくは請暇の期限を過ぎたため、議長が、特に招状を発し、その招状を受け取つた日から七日以内に、なお、故なく出席しない者は、議長が、これを懲罰委員会に付する。
第十六章 彈劾裁判所
第百二十五條 裁判官の彈劾は、各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員で組織する彈劾裁判所がこれを行う。
彈劾裁判所の裁判長は、裁判員がこれを互選する。
第百二十六條 裁判官の罷免の訴追は、衆議院においてその議員の中から選挙された訴追委員で組織する訴追委員会がこれを行う。
訴追委員会の委員長は、その委員がこれを互選する。
第百二十七條 彈劾裁判所の裁判員は、同時に訴追委員となることができない。
第百二十八條 各議院において裁判員を選挙する際及び衆議院において訴追委員を選挙する際、その予備員を選挙する。
第百二十九條 この法律に定めるものの外、彈劾裁判所及び訴追委員会に関する事項は、別に法律でこれを定める。
第十七章 國会図書館及び議員会館
第百三十條 議員の調査研究に資するため、國会に國会図書館を置く。
國会図書館は、一般にこれを利用させることができる。
第百三十一條 議員の法制に関する立案に資するため、各議院に法制部を置く。
第百三十二條 議員の職務遂行の便に供するため、議員会館を設け事務室を提供し、及び各議員に一人の事務補助員を付する。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
議院法は、これを廃止する。
この法律施行の際現に在職する衆議院の議長及び副議長は、この法律により衆議院の議長及び副議長が選挙されるまで、その地位にあるものとする。
この法律施行の際現に在職する衆議院及び貴族院の書記官長は、この法律により衆議院及び参議院の事務総長が選挙されるまで、夫々事務総長としての地位にあるものとする。
参議院成立当初における参議院の会議その他の手続及び内部の規律に関しては、参議院において規則を定めるまでは、衆議院規則の例による。
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〔田中萬逸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=5
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006・田中萬逸
○田中萬逸君 只今議題となりました國會法案について、各派を代表いたしまして提案の理由を説明いたします。
新憲法の制定に伴いまして、わが帝國議會は今後國會と改稱され、かつ國會は國權の最高機關として國政運用の中樞となり、萬全の活動をいたさなければなりません。それがためには、現行の議院法の建前とは全然異つた觀點に立つて、新たなる立法をする必要があります。しかしこの立法は、國會の運用に關することであり、今後の國會がその責任において運用の完全を期すべきことを内容とするものでなければなりません。從つて國會法は、政府の立案に一任すべきものではなく、われわれの手でこれをつくることが當然であると考えるのであります。(拍手)この見解から、本院においては、本年七月以來議院法規調査委員會を設け、各黨各派よりそれぞれ委員を出し、今日まで十數囘の會合を開き、ようやくここに一の成案を得て、今日上程の運びと相なりました。過去の歴史を顧みまする時、今囘この憲法附屬の最も重要なる本法案を、議員發議案といたして、われわれの手になつたものについて御審議を願うこととなりましたことは、實に劃期的のことであり、けだし今後憲政運用の上に及ぼす影響は甚大なるものがあると確信をいたします。(拍手)以下簡單に、現行の議院法と比
較しつつ内容について御説明をいたします。
新憲法によりますと、國會は政府に對して優位の地位にあることは明白の事實であります。すなわち議院法の隨所に見出しまする政府優先の規定は、存續することを許されないわけでありまするから、かくのごとき規定はことごとく削除いたしました。また部屬、全院委員會及び讀會の制度は、過去の經驗に顧み、これを廢止することといたしたのであります。
次に國會法に新たに規定いたしました事項について申し上げます。
第一、召集及び開會式。その一、召集の形式は、從來通り詔書をもつて行われまするが、通常會召集の詔書は、從來のものを短縮して、二十日前に公布せらるべきものといたしました。かつ通常會は十二月上旬に原則として召集すべきものと定めました。しかしこれがため會期中に議員の任期が滿了するような場合は、かかることのないように繰上げまたは繰下げて召集することにいたしたのであります。その二、開會式、從來の開院式は皇室儀制令にその規定があり、かつその開院式によつて議會に活動能力が與えられたのでありますが、今後の國會では、召集即開會となるのであります。從つて法律的に言えば、開會式は不要でありまするが、國會が國權の最高機關であることに鑑み、その儀禮として開會式を擧行することといたし、その主宰者に衆議院議長が當ることとなし、衆議院議長に故障がある場合には、參議院議長がこれに當ることといたしました。
第二、會期及び休會。その一、會期。イ、通常會の會期は、今後の國會の使命が重くなることを考えまして、百五十日間、すなわち五箇月といたしました。ロ、臨時會及び特別會の會期は、兩議院の議決で自主的に決定することといたしました。ハ、會期の延長についても、兩議院の議決によることといたしました。その二、休會。從來先例によつて認められていた、兩院が同時に休會しておりまた國會としての休會は、新憲法の下にあつては、大きな法的效果をもつこととなりましたので、國會の休會は兩議院一致の議決によることとなし、別に七日以内ならば、兩議院はおのおのその院だけの休會をなし得ることといたしました。
第三、役員及び經費。その一、役員は憲法の條章により、これを議院において選擧しなければなりません。從つてこの役員の範圍をいかに定むべきかについて研究の結果、議長、副議長、假議長、常任委員長及び事務總長を役員とすることにいたしました。議長、副議長及び假議長については、現在とほとんど相違がありません。常任委員長を議院において選擧することは、特別委員長をその委員の互選としたことと考え合わせて、いささか均衡を得ていないように思われまするが、これはあとで述べまするように、今後國會運營の中心を常任委員會におきまする關係上、これを役員としたのであります。また事務總長は、現在の書記官長に相當するものでありまするが、今後の國會の本質から考えまして、官吏の枠からはずして、國會の役員として、國會議員以外の者から各議院において選擧することといたしました。けだし事務局を構成する職員は、從來通り政爭の中心におりながら、政爭より離れて政黨的色彩はいささかも帶びることなく、獨立公平にその職務を執行することができ、かつ事務の性質上恆久性を保たしむるとともに、國會事務に熟練した者を得るように望んでおる次第であります。その二、經費。從來のごとく國會豫算が他の省の豫算の一部となつておつて、大きな制約を受けるようでは、職務遂行上遺憾なきを得ませんから、國會法に基本的原則を明定し、兩議院に關する經費は、他の行政費とは獨立して豫算に計上することといたしました。
第四、議員。議員の身分上の權利義務については、國會の地位とその職責の大變革に伴いまして、新たな規定を設けました。すなわち會期中逮捕せられない特權は、現行犯の場合を除くのほか、すべての犯罪につき議院の許諾なくしては逮捕せられないこととなし、歳費については、一般官吏の最高額よりも少くない金額を受けることといたしました。ここに一般官吏とは、内閣總理大臣、國務大臣、最高裁判所の長官及び最高裁判所の裁判官を除いた官吏を意味するものでありまして、只今申しました各大臣、裁判官は一應除きまして、現在の次官よりは低くあつてはならぬとの意であります。最高機關の構成分子として、當然のことと言わなければなりますまい。また通信手當を新に設けたほか、あとで申しまするように、議員には一人づつの事務補助員を付し、かつわれわれ議員として仕事をする上に必要な事務室を使用し得るようにいたしました。そのほか、相當年月引き續き議員として在職した者が退職する時には、別に定むる所により退職金を受けることといたしました。これらの待遇改善によつて、議員は後顧の憂いなく、眞に國務に專念して國民の指導に當ることができると信ずるのであります。また新憲法の精神からみまして、徒らに行政部と立法部と紛淆があつては相なりません。すなわち國會法第三十九條で、特に法律で認めた場合を除くのほか、議員が官公吏となること及び各種の委員、顧問、囑託等の兼務を禁じたのも、この趣旨に出ずるのであります。
第五、委員及び委員會。委員會に關する事項は、別に述べまする本會議に關する事項とともに、今後の國會運營に著しい影響を與えるものであり、かつこの運用如何によつては、新憲法の豫期する民主的な國會も、その實を擧げ得ないことと相なりまするので、われわれは愼重な態度で檢討をいたし、深く構想をめぐらして、ここに從前には豫想だにせなかつた、一大革新的な案を得たのであります。すなわち、委員會は、從來は五つの常任委員會と、必要な特別委員會でありましたが、これらは原則として議案の種類別に分類せられておつたのであります。所が今後は常任委員會を數多く設け、ただ特に必要ある時だけ特別委員會を設けることにいたしました。しかしてその常任委員會は、行政事項の内容に從い、部門別に設け、その部門に屬する事項は、議案の種類を問わず、これが審査に當ることといたしました。部門別に設ける常任委員會は、各省の司る事項の態樣を分ちまして、外務委員會、治安及び地方制度委員會等合計二十一といたし、各議員は必ず一箇の常任委員たることを要すことといたしたのであります。しからばこれらの常任委員會の權限如何と申しますれば、その部門に屬する法律案、決議案、請願、陳情書等について審査するのであります。かくすることによつて、その常任委員はその部門に屬する深い造詣を有することとなり、かつ議員の任期中その委員は變更しないことを原則としておることと相まちまして、審査の能率を大いに高めることと信じて疑いません。この常任委員會は、開會中に活動するのを原則としますが、議院の議決によつて特に審査を命ぜられたものについては、閉會中でもなお審査をし得るのでありまして、衆議院の年來の主張たる常置委員會の目的をも達することができると存ずるのであります。この閉會中の審査は、その付託されたものの審査を繼續するのであります。議案は次ぎの會期に繼續いたしませんから、必要があれば再提出をせねばなりませんが、この閉會中の審査がどれほど國會の能率を上げるかは、はかり知れぬものがあると思います。次ぎに、各常任委員會は、その部門に關し、特に專門的知識を有する職員を少くとも二名づつ常置して、委員の審査、調査を助けしめ、同時に委員會專屬の書記をも設けることとしました。また一院の常任委員會は他の院の常任委員會と協議して、合同して審査會を開き得ることといたしました。これは、内閣から提出する議案は、その翌日以後他の一院に豫備審査のため送付するようにしたことと相まちまして、大なる效果を期待するものであります。以上をもちまして、常任委員會に關する大綱の説明を終りましたが、特別委員會及び常任委員會を通じて目新しい點を二點申し上げることといたします。まず第一は、國會法第五十一條に規定しております公聽會であります。公聽會は、或る事件について必要ある時は、民間の有識者及び眞に利害關係ある者の意見を聽取して、審査の參考に供せんとするものであります。なお豫算及び重要な歳入法案については、必ずこの公聽會を開き、もつて審査の完璧を期したのであります。次ぎは委員會に一般公衆の傍聽を認めたことであります。從來委員會は、その院の議員のほか、新聞通信記者だけしか認められておりませんでしたが、このたびはこのほかに、委員長の許可さえあれば、一般公衆にも傍聽の機會を與えることとしました。これにより議會の信用が一段と高まることと信ずるのであります。
第六、會議。次ぎに本會議について説明いたします。ここで最も注意を要する點は、議案審査の徑路であります。新國會法では、議員より發議された議案、内閣または他院より提出された議案は、その發議提出と同時にその所管の常任委員會に付託することといたしました。すなわち從來の第一讀會における提案の理由説明及び質疑はなくなり、本會議にかかることなく、直接に委員會に付託せられるのであります。しかして委員會での審査が終了いたした後に、初めて本會議に上程することと相なります。換言すれば、すべての議案の徑路が現在の豫算案と同樣となるのであります。なおこの際一言申し上げたいことは、内閣から議案を提出されました時は、その翌日以後、豫備審査のため他の議院へ送付しなければならないようにしたことは、審議能率を高めることと考えております。さて委員會において審査の終つた議案は、本會議にかかり、委員長の報告があり、次ぎに委員會においての少數意見者の報告があります。この少數意見は、委員會においてたとえ一人であつたといたしても、なお少數意見の報告をなし得ることといたしましたことは、從來の少數意見輕視の弊を除かんとするものであります。また委員會において本會議に付するを要しないと決定した議案については、七日以内に議員二十人以上から本會議にかけよとの要求がない限り廢案と相なり、否決されたものとみなされることとなります。本會議の議事を進捗せしめる一手段として、特に議決のない限り、議長に發言の時間制限をなし得る權限を與えたことは、注目すべきことと思います。すなわちかくすることにより、議事妨害的な發言を排除し、他面なるべく多くの人々に發言の機會を與えんといたしたのであります。この點に關連して、なるべく多人數に發言の機會を與える一方法が採用されました。それは自由討議であります。自由討議は、本會議の一形態であります。すなわち「各議院は、國政に關し議員に自由討議の機會を與えるため、少くとも、二週間に一囘その會議を開くことを要する。」これを第七十八條に規定いたしました。すなわち從來は、われわれ議員も豫算委員にならない限り、われわれの有する抱負はこれを發表する機會がなかつたと申しても差支えありません。言論の府と呼ばれながら、その實を得られなかつた憾みが深かつたのでありますが、この自由討議の制度を設くることによつて、この缺點を是正し得ると信ずるのであります。自由討議でありますから、それは政府に對する質問であろうと、また意見の開陳であろうとも構いません。さらにそれが政黨の意見であろうと、或は個人の抱負であろうと、これは問いません。要するに問題を特定せず、自由に意見の發表をなし得るようにいたしたのであります。この制度により、從來のように豫算委員會における本案をかけ離れた質疑はなくなり、豫算そのものについての議論が行われ、豫算委員會本然の姿に立ち戻ることと確信いたすのであります。
第七、政府との關係。次ぎに政府との關係について一言いたします。すなわち從來政府は政府委員を任意に任命したのでありますが、そのために、多い時には百八十名にも上る政府委員が任命せられたのであります。かくては政府の責任の所在を疑わしめるものがありますが故に、今後は政府委員の任命には、兩院議長の承認を要することといたしました。また決算の審査には、從來でも會計檢査院の係官を立會わしめよとの要望があつたのでありますが、明治憲法の下ではそれは不可能のことでありました。よつてわが國會法では、會計檢査院の院長及び檢査官の出席説明を求め得ることといたしたのであります。
第八、質問。これまで贊成者三十人を要しました質問は、贊成者がなくともこれをなし得ることといたしました。この點は、他の議案の發議についても、贊成者は必要のないものと改めました。なお質問については、すべて議長の承認を要するものとし、議長が承認しない場合は、これにつきその議員から異議の申し立があれば、院議にはかつて承認するかどうかを決定いたします。議長または院議による承認があつたものだけ内閣に轉送することとし、内閣は七日以内に答辯をしなければならないように規定いたしました。
第九、兩議院關係。兩院協議會に關しては、現行の規定と大同小異でありますが、新憲法が衆議院の優位を認めていることを考慮いたして、その精神に副うて規定いたしました。すなわち法律案については衆議院から、内閣總理大臣の指名については參議院から、豫算及び條約その他の案件については先議の議院から、兩院協議會を求めることといたしました。
第十、兩院法規委員會。この制度は新しいものであります。すなわち衆議院の議員中から選んだ十人の委員及び參議院の議員中から選んだ五人の委員で組織するこの兩院法規委員會は、兩議院及び内閣に對して、新立法の提案、現行法の改廢、政令の改廢等を勸告し、かつ國會法、兩院議事規則及びその他の關係法規を常に調査研究し、その改正について兩議院に對して勸告する使命を有しております。すなわち立法事項及び國會の運營に關して、終始關心をもちつつ、公正な立場より批判的に諸法令の實施状況を監査、監督せんとするものでありまして、その兩院法規委員會の運營は、常任委員會の運營と相まつて、國會の機能増進に寄與する所多かるべしと期待いたしております。
第十一、彈劾裁判所。罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するための彈劾裁判所については、詳細は別の法律に讓り、ただその構成及び訴追委員會の構成に關して基本的な規定をいたしました。
第十二、國會圖書館及び議員會館。最後に國會圖書館、議員會館及び議院法制部について説明をいたします。圖書館を充實せよとの要求は、本院において相當古くから行われ、その聲は日増しに強くなつて參りました。今や國會が國權の最高機關となる時、現在のごとき貧弱な圖書館、否圖書室では、われわれの欲望をとうてい充たすわけには參りません。われわれは動く圖書館、すなわち調査機關を完備する圖書館をどうしてももたなければなりません。この意味において、本法中に特に國會圖書館に關する規定を設けました。この圖書館は、單なる書庫ではありません。勿論書籍の充實を要することは喫緊の急務でありますが‥‥
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=6
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007・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=7
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008・田中萬逸
○田中萬逸君(續) それにも増して、この圖書館に完全な人的要素を配置し、各種の調査研究に專門的に從事せしめ、圖書館というよりも、むしろ調査局、研究所としたい熱望をもつておるのであります。次ぎに議員會館に關する問題であります。われわれ議員に、この議事堂に近接する地域内に事務室を與え、職務遂行に遺憾なくして貰いたいとの要望も、圖書館の充實とともに先輩によつてしばしば繰返された主張であります。この理想を實現するため、議員會館に關する規定を設け、事務室を提供することを義務づけるとともに、各議員に一人づつの事務補助員を付せしめ、われわれ議員が小事に拘泥することなく、國家のため專念し得るようにいたしたのであります。また今後法律案は、政府より提出するものよりも、議員の發議にかかる場合が多いと信じまするので、その立案に資するため各議院に法制部を置き、人材を集めて、萬遺憾なきを期することといたしました。
以上のほか、請願、議員の辭職、退職及び資格爭訟に關する事項及び懲罰について必要な規定を設けましたが、いずれも現行のものと比較すれば、時勢の變化に伴い、かつ議事運營を圓滑ならしむるため、若干の改正をいたしましたほか、特に御説明申し上げることはないと思います。
以上をもちまして、國會法案の提案理由の説明を終りまするが、この際特に御審議の上、滿場一致本案を認められんことを切望いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=8
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009・山崎猛
○議長(山崎猛君) 只今の趣旨辯明中に、條文を整理の結果相違がありますれば、これを訂正いたします。(「相違があるじやないか」と呼ぶ者あり)相違があるものに對しては訂正いたしますから、さよう御諒承願います。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=9
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010・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名三十六名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=10
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011・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=11
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012・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=12
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013・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際日程第四を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=13
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014・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=14
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015・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第四、内閣法案の第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長高橋泰雄君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=15
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016・会議録情報3
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第四 内閣法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 内閣法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十一年十二月十七日
委員長 高橋 泰雄
衆議院議長山崎 猛殿
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〔高橋泰雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=16
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017・高橋泰雄
○高橋泰雄君 只今議題となりました内閣法案の委員會に於ける審議の經過竝びに結果について御報告いたします。
本案は内閣の組織權限に關する必要なる事項を規定するものであります。すなわち内閣の組織、職權、運用に關する基本的なる事項のほか、内閣總理大臣の職權、行政各部との關係、その他政令の規律範圍及び補助部局に關する事項を規定するものであります。この際一應案の内容を説明いたすことが順序かも知れませんが、既に政府よりその説明のあつた所でありまするが故に、これを省略いたしたいと存じます。
委員會におきましては、去る九日會議を開きまして、委員長及び理事の互選を行い、政府の説明を聽取いたしました後、直ちに審議にはいりまして、前後三囘にわたつて、委員諸君と政府との間にきわめて眞撃熱心なる質疑應答が交されたのであります。その詳細はこれを速記録に讓りまして、ここにその大要を要約して御報告申し上げたいと存じます。
質疑の第一は、内閣法の二條によりますと、内閣の首長たる内閣總理大臣及び國務大臣十六名をもつて内閣を組織するということに相なつているのでありますが、この國務大臣の數を十六名とした根據はどこにあるか、また十六名という數の中に國土省及び水産省の構想が含まれているかどうか、こういう質疑に對しまして、政府は、國務大臣の數を十六名といたしました理由は、現在の内閣組織の下において、國務擔當の状態及び行政の分量から見まして、十六名あれば、十六名をもつて能率的な運營ができるという答辯であつたのであります。さらに、この十六名の中に國土省及び水産省が含まれているかどうかということについては言明の限りではないが、政府において將來これらのものを實現いたしまする場合においても、十六名の枠をはずさぬで十分やつて行けるという趣旨のお答えがあつたのであります。
第二の質疑といたしまして、農林、商工の兩省を統合して産業省を設置する意思があるかどうか、また肥料の増産をはかるために、肥料省を設置する意思ありや否や、この質疑に對しまして、政府は、農林、商工兩省の所管の事項が敗戰の結果相當に變化減縮せられました現在、兩省を統合して一體としたらどうかという考え方もあるが、新憲法實施の上は、行政機構の上に相當大幅な改革が必要ではないかと考える旨の答辯がありました。また肥料省の問題に關しましては、肥料生産の今日最も大きな障碍をなしているものは、實に石炭の不足であります。そこで政府としては、肥料省を置くというような行政的な措置よりも、まず石炭の解決に手段を盡くしているが故に、今の所肥料省の設置については考えておらぬという旨の答辯があつたのであります。
次ぎに第三の質疑といたしまして、内閣法十二條の規定によりますと、内閣の補佐部局といたしまして、内閣官房及び法制局を置くということに相なつているが、さらに勞働省又は勞働廳を置く必要はないか、政府の所見如何との質疑に對しまして、政府は、勞働省の設置の點につきましては、趣旨においては贊成であるが、省にするか、またはこれを廳にするかということは、目下研究中であり、これを内閣の直屬下に置くことについては、さらに考慮すべき問題があつて、目下の所内閣官房及び法制局と竝べて、省なり廳なりをつくることは考えてゐない旨の答辯がありました。
なおこの補助機關として、法制局及び官房のほかに、統計局及び豫算局を設置する意思はないか、かような質疑に對しまして、統計のことに力を注がなければならぬことは無論であるけれども、これを内閣の直屬にする、省なり局を置くということは、愼重に研究を要することであつて、政府としては未だ決定をしていない旨の答辯がありました。豫算局につきましては、今後議會が中心となつて政治をやつて參りまして、政治の中心に國會がなりまする場合に、豫算の編成に關して議會と政府との間に相當密接なる關係をもたねばならぬことは申すまでもないのでありますから、從來のような大藏省の一角において豫算を編成するというような建前が、はたして實行できるものであるかどうか。政黨と政府とが豫算の編成についても密接な關係をもたねばならぬ形になるのでありますから、かような場合に豫算編成の官廳をどうするかということは、これは國會が中心となつて、政治をやる議會において研究を要する問題ではないか、これを今後どういうふうに進化するか分らぬ途上において、内閣官房、法制局とひとしく、内閣に豫算局を置いた方がよいかどうかということは、今日あらかじめこれを決定しておかぬ方がよいと思うという趣旨の御答辯がありました。
次ぎに文官任用令の文官任用試驗及び國家試驗を撤廢する意思はないか、こういう質疑に對しまして、從來の文官任用試驗制度及び國家試驗制度が非常に缺陷のあるものであるということは認めているが、新憲法の實施によつて國民の基本的權利が認められ、民主主義の徹底したる制度が行われるようになれば、從來の制度が根本的に改められるものであることは論のない所でありまして、目下行政調査部において官吏、公務員の資格任用の方法について研究中である旨の答辯がありました。
最後に、各省長官との關係に關する質疑は、その要旨を申し上げますと、内閣法の規定によると、國務大臣であつて行政長官を兼ねることに相なつているが、これは行政長官を兼ねるということにしないで、國務大臣は國務大臣という立場において、國務に精勵する建前をとる方が、いわゆる責任内閣制、さらに内閣の能率を上げる上からみても一番よいのではないか、國務大臣が行政長官を兼ねることになりますと、各省の對立、さらに豫算の分取り、こういういわゆる割據主義の弊害を生じて、強力なる責任政治を行う上において妥當でないと思うがどうかという質疑がありました。これに對して政府は、從來内閣においてはかような弊害がありがちであつたけれども、今後眞に國會を中心として内閣をつくる場合において、行政事務の取り扱いにおいても、從來とは相當變革が生じて來るものと思われる。また刷新を施す乙とは有效有利であると思われる、目下この點については行政調査部において折角研究中であり、從つて省の立て方においても、やがては相違を來す場合もあることと思う、從つてセクシヨナリズムというようなものは、さういう行政機構改革の上からいつても、將來は取り除かれることになると確信する旨の御答辯があつたのであります。
かようにいたしまして質疑を終りまして、討論に入りまして、日本自由黨の安部俊吾君、日本進歩黨の苫米地義三君、日本社會黨の淺沼稻次郎君、協同民主黨の平川篤雄君、國民黨の丸山修一郎君から、それぞれの黨を代表いたしまして、いずれも原案に贊成の意見を述べられ、採決の結果本案は全會一致をもつて可決いたした次第であります。以上簡單でありますが御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=17
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018・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=19
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020・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=20
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021・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=21
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022・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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内閣法案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
日程第一、増加所得税法案の第一讀會を開きます。
石橋大藏大臣。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=23
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024・会議録情報4
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第一 増加所得税法案(政府提出) 第一讀會
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増加所得税法案
増加所得税法
第一條 左に掲げる所得を有する個人は、この法律により、増加所得税を納める義務がある。
一 第一種所得
昭和二十一年中に生じた所得税法第十條第一項第一号の不動産所得並びに同項第三号の甲種及び乙種の事業所得に該当する所得の金額の合計金額が、同法による同年分の不動産所得並びに甲種及び乙種の事業所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額(同年分の当該所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額が三千円に満たないとき又は当該所得の金額の決定がなかつたときは三千円)を超過する場合におけるその超過する所得
二 第二種所得
昭和二十一年中に生じた所得税法第十條第一項第五号の山林の所得
三 第三種所得
昭和二十一年三月三日から同年十二月三十一日までの間に生じた所得税法第十條第一項第八号の讓渡所得
第二條 この法律施行の際、この法律の施行地に住所を有せず且つ一年以上の居所を有しない個人が、この法律の施行地外に有する資産又は事業から生じた所得については、増加所得税は、これを課さない。
第三條 増加所得税を課すべき所得は、左の各号の規定により算出した金額による。
一 第一種所得は、所得税法第十條第一項第一号の不動産所得並びに同項第三号の甲種及び乙種の事業所得に該当する所得につき、昭和二十一年中の総收入金額から必要な経費(收入を得るのに必要な負債の利子を含む。以下同じ。)を控除した金額の合計金額から、同法による同年分の不動産所得並びに甲種及び乙種の事業所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額(同年分の当該所得の決定金額の計算の基礎となつた所得金額の合計金額が三千圓に満たないとき又は当該所得の決定がなかつたときは三千円)を差し引いた金額
二 第二種所得は、所得税法第十條第一項第五号の山林の所得につき、昭和二十一年中の総收入金額から必要な経費を控除した金額
三 第三種所得は、所得税法第十條第一項第八号の讓渡所得につき、昭和二十一年三月三日から同年十二月三十一日までの間の総收入金額から当該財産の取得價額、設備費、改良費及び讓渡に関する経費を控除した金額
第四條 第一種所得については、その所得金額から七千円を控除する。
第二種所得及び第三種所得については、その所得金額から各各一万円を控除する。
戸主及びその同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額は、各各これを合算し、各各その総額について、前二項の規定を適用する。戸主と別居する二人以上の同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額についても、また同樣とする。
第五條 増加所得税は、左の税率によりこれを賦課する。
一 第一種所
得所得金額を左の各級に区分し、逓次に税率を適用する。
二万円以下の金額 百分の三十
二万円を超える金額 百分の四十
五万円を超える金額 百分の五十
十万円を超える金額 百分の六十
二十万円を超える金額 百分の七十
五十万円を超える金額 百分の八十
百万円を超える金額 百分の九十
二 第二種所得
所得金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用する。
二万円以下の金額 百分の二十
二万円を超える金額 百分の三十
五万円を超える金額 百分の四十
十万円を超える金額 百分の五十
五十万円を超える金額 百分の六十
三 第三種所得
所得金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用する。
二十万円以下の金額 百分の二十五
二十万円を超える金額 百分の四十五
五十万円を超える金額 百分の六十五
前項の場合において、戸主及びその同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額は各各これを合算し、各各その総額に對して税率を適用して算出した金額を、各各その第一種所得及び第二種所得の所得金額に按分して、各各その税額を定める。戸主と別居する二人以上の同居家族の第一種所得及び第二種所得の所得金額についても、また同樣とする
。第六條 増加所得税について納税義務がある者は、命令の定めるところにより、昭和二十二年一月三十一日までに、所得の種類及び金額その他必要な事項を、政府に申告しなければならない。
第七條 第一種所得、第二種所得又は第三種所得の所得金額は、増加所得税調査委員会に諮問して、政府において、これを決定する。
前項の所得金額の決定について脱漏があることが発見されたときは、昭和二十五年十二月三十一日までは、増加所得税調査委員会に諮問して、政府において、その所得金額を決定することができる。増加所得税調査委員会の閉会後、第一項の所得を有する者が納税義務があることを申し出た場合又は納税義務者が所得金額の増加があることを申し出た場合において、政府がその申出を相当と認めたときは、前二項の規定にかかわらず、増加所得税調査委員会に諮問することなくして、政府において、その所得金額を決定する。
増加所得税調査委員会に関する規程は、勅令でこれを定める。
第八條 前條の規定及び第十條において準用する所得税法第三十六條第四項の規定により所得金額を決定したときは、政府は、これを納税義務者に通知する。
第九條 増加所得税の納期限は、昭和二十二年三月三十一日までとする。但し、特別の事情があるときは、命令で特別の定をなすことができる。
第七條第二項若しくは第三項の規定又は第十條において準用する所得税法第三十六條第四項の規定により所得金額を決定した場合においては、前項の規定にかかわらず、直ちに、その税金を徴收する。
増加所得税の税額の全部又は一部について、納付を困難とする事情があるときは、納税義務者は、その納付を困難とする金額について、命令の定めるところにより、六箇月以内の延納を申請することができる。
前項の規定により延納を許可された場合においては、当該延納税額については、命令の定めるところにより、当該税額に年百分の十の割合を乘じて算出した金額に相当する税額を加算して、これを納付しなければならない。
第十條 所得税法第五條、第六條、第十一條第六号及び第七号、第十二條第二項、第三項及び第六項乃至第八項、第三十六條第四項、第三十九條第二項、第六十六條、第七十三條第二項、第七十五條、第七十六條、第八十一條、第八十二條及び第八十四條乃至第八十七條、租税特別措置法第三條並びに財産税法附則第三項及び第四項の規定は、増加所得税の課税について、これを準用する。
第十一條 詐僞その他不正の行爲により増加所得税を免れた者は、これを一年以下の懲役又はその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料に処する。
前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その所得金額を決定し、その税金を徴收する。
第十二條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第十條において準用する所得税法第八十一條の規定による帳簿書類その他の物件の檢査を拒み、妨げ又は忌避した者
二 前号の帳簿書類で虚僞の記載をなしたものを呈示した者
三 第十條において準用する所得税法第八十一條又は第八十二條第一項の規定による質問に対し答弁をなさない者
四 前号の質問に対し虚僞の答弁をなした者
第十三條 第十條にいて準用する所得税法第六十六條の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第十四條 増加所得税に関する調査に関する事務に從事している者又は從事していた者が、その事務に関して知り得た秘密を漏らし又は窃用したときは、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第十五條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して第十一條又は第十二條第二号乃至第四号の違反行爲をなしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑を科する。
第十六條 第十一條第一項の罪を犯した者には、刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に処するときは、この限りでない。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律は、本州、北海道、四國、九州及びその附属の島(勅令で定める地域を除く。)にこれを施行する。
昭和二十二年一月三十一日までになすべき所得税法第三十四條第一項及び営業税法第十六條の申告は、これをなすことを要しない。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=24
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025・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題となりました増加所得税法案について、簡單に提案の理由と内容の御説明を申し上げます。
御承知の通り商工業、農林水産業、その他の事業所得者に對しましては、前年中の所得の實績によつてその年の所得税を課税しているのであります。しかるにこの制度によりましては、國民經濟及び國民所得に著しい膨脹または收縮を生じまして、從つて擔税力ある所得者層に顧著な變化が見受けられます際には、時期的に課税上のずれを生じて、國民負擔の公正を期しがたく、またその變化が膨脹的であります場合には、國庫收支の均衡を保ちがたい缺點があります。よつて政府はその年の所得税ほその年の所得金額を豫算してその税金を納めしめるという、いわゆる豫算申告納税制度を實施いたしたく、目下税制の根本的改正について考究を進めている次第であります。しかして本年度の實況は、前に比し、まさにこの國民經濟及び國民所得に著しき膨脹的變化を來している次第でありまして、同時に終戰處理、國民經濟再建等のため當面必要とする財政需要は、巨額に上つておるのであります。
そこで政府は今議會に提案いたしている追加豫算の財源の一部を求めるとともに、明年度から實施する所得税の根本的改正に對應いたしまして、國民負擔の公正と財政收支の均應とをはかり、併せてこの際いわゆる新圓所得者層等から、できるだけ速やかに購賣力を吸收するため、商工業者、農林水産業者その他の事業所得者及び不動産所得者等で、昭和二十一年中における所得と前年の所得とを比較いたしまして、一定金額以上増加した者に對し、その増加所得を對象としまして、一年限りの増加所得税を課税することといたしたいのであります。
そこで本案の内容でありますが、増加所得税は、課税の便宜上これを第一種、第二種及び第三種に分類いたします。第一種所得に對する増加所得税の納税義務者は、昭和二十一年中の所得税法による甲種及び乙種の事業所得竝びに不動産所得の合計金額が、昭和二十一年分のこれらの所得の決定金額の基礎となりました所得金額か、または三千圓かのいずれか多額な一方と比較いたしまして増加した者であります。この増加所得金額につきましては、七千圓の控除を認め、その超過金額に對し課税するのであります。税率は、現行の分類所得税及び綜合所得税の税率及び最近の經濟事情等を併せ考慮いたしまして、二萬圓以下の金額に對する百分の三十から、百萬圓を超える金額に對する百分の九十の超過累進税率によることといたしたのであります。
第二種所得に對する増加所得税の納税義務者は、昭和二十一年中に生じた所得税法による山林の所得を有するものであります。この所得につきましては、一萬圓の控除を認めます。しかしてその税率は、昭和二十一年中の所得金額中一萬圓を超え二萬圓以下の金額に對しまして百分の二十、またそれ以上五十萬圓を超える金額に對して百分の六十という、超過累進税率により課税することといたしたのであります。
第三種所得に對する増加所得税の納税義務者は、昭和二十一年三月三日以後同年中に生じた所得税法による讓渡所得を有する者であります。この所得につきましても、一萬圓の控除を認めております。税率は、二十萬圓以下の金額に對する百分の二十五乃至五十萬圓を超える金額に對する百分の六十五といたしております。
本税は原則としまして、昭和二十一年度の歳入財源に充てることといたしまして、納税者が一時に納税することを困難とする税額を除くのほかは、これを昭和二十二年三月三十一日までに徴收することといたし、その課税の手續きを急速に取り進めるため、所要の規定を設けておる次第であります。なお本税の收入見込額は、昭和二十一年度において四十億八千餘萬圓、昭和二十二年度において四億五千四百餘萬圓であります。
以上の通りでありまして、何卒御審議の上速やかに御協贊を賜わらんことをお願ひする次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=25
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026・山崎猛
○議長(山崎猛君) 質疑の通告があります。順次これを許します。川島金次君。
〔川島金次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=26
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027・川島金次
○川島金次君 私は只今提案になりました本法案竝びにこれに關連いたしまして、二、三の質疑を試みたいと存ずる一人であります。
只今大藏大臣の説明によりますると、増加所得税の目的といたしまする所は、專ら通貨の膨脹によりまする新圓所得階級から新圓を吸收することにあるということが、重要な狙いであるようであります。しかも本法案の提案理由といたしまして、ここに書いてある理由書を讀みます時は、「現下國民所得の實相に鑑み」という理由が明記してあるのであります。しかるにこの法案を一覽いたしまする時に、この法案の實施によりまして、今や國内に滔滔として流れ溢れておりまする所の厖大なる新圓が、はたして徹底的に、しかも國民の負擔の公正を期するという精神に基づいての吸收ができるかどうかということに對して、重大な疑問をもたざるを得ないのであります。(拍手)しかもこの法案が、只今私が申し上げましたことについての問題は別といたしましても、かりにこの法案だけを成立せしめましてこれを實施いたしました場合に、不動産の所得の問題、或は山林の所得の問題、或はさらに讓渡所得等の問題に對しまして、その間に行われておりまする所の闇の取引に對してでも、その實相を徹底的に具體的に把握することがきわめて困難ではないかと私どもは疑わざるを得ないのであります。(拍手)
先般本席上におきまして、共産黨の徳田議員から、闇は見えないものであると言はれ、これに對して大藏大臣も、まことに見えないものであると、同感の意を表した事實があります。しかしながら私どもから言わしめますれば、闇というものはなるほど見えないようではありまするが、われわれの耳元には聞える事實もあるのであります。この聞える闇というものの取引を、はたして當局が勇敢に把握して、その闇取引によつて生じた増加所得を徹底的に課税するだけの、具體的な對策を今當局はもつておるかどうかということを、私どもはお伺いを申し上げたいのであります。
同時にさらにこの法案では、冒頭に申し上げましたごとく、今や滔々として行われておりまする所の、物資の流通經濟に携わる所の、いわゆる看板を掲げず、營業の許可を受けず、店舗を設けずして、眞の闇取引のみによつて厖大なる新圓を吸收しておりまする所の、いわゆる闇取引新圓所得階級に對して、はたしてこれが吸收をなすという、積極的な勇敢なる施策の用意があるかどうかということに對しましても、この際お伺いを申しておきたいのであります。(拍手)もしこれらの闇商人に對する徹底した課税處理が行われずいたしまして、この法案に出ておりまするだけの羅列的な所得に對する課税を斷行いたしまする時は、冒頭に掲げてありまする當局の課税精神である、國民負擔の衡平を期するという精神にも、甚だしく悖るのではないかとさえ私どもは考えられるのであります。(拍手)
殊に今囘の税案によりますれば、納税者の人員は、だいたいにおいて百萬人を豫想されておるようであります。その百萬人の納税對象者から取り上げまする税金は、四十五億餘萬圓であります。この四十五億餘萬圓の税金をとりまするのに、その對象の人員はかりに百萬あるといたした場合におきまして、はたして増加所得というその所得額の基礎というものは一體どこに求めて、この百萬人という人員と、總額における四十五億二千三百萬圓という數字が出たのであるかということをも、この席上からお伺いしておきたいのであります。
さらにこの際私は、大藏大臣にこれに關連した若干の質疑を試みたいと思うのであります。この議場からも、また豫算總會の席上等におきましても、昨日のラジオの發表によりましても、既に通貨が八百億圓臺の大臺を突破いたしておりますることは、大臣も御承知の通りであります。しかもこの上にわが國の豫算上の、財政上の面から見ました時におきましても、本年度の豫算の總額は、一般竝びに特別兩會計を合わせまして、既に決定をいたしましたものだけでも、一千二百二十五億萬圓という厖大な豫算に達しておるのであります。さらに只今豫算總會で審議されておりまする第一次追加豫算、さらに豫想されておりまする第二次、第三次の追加豫算案を想像いたしまする時には、その額實に一千五百億萬圓にも達するのではなかろうかという想像がされるのであります。こういう一方においては通貨の著しい膨脹があり、一方においては政府の財政のインフレが、刻々として深刻にならうという數字の萠しを示しているのであります。この時に當りましても、今なお大藏大臣は、物價の指數が横這いであり、或は生産の増強が達成できるならばこのインフレは恐るるにたりないと、相變らず強氣の樂觀論を唱えておるのでありますが、大藏大臣と席を同じゆうする、同じ閣僚の中の膳國務大臣は、去る十二月十三日新聞記者との會見の席上において、今やわが國の財政のインフレの將來はまことに憂慮すべきものがあるという、正直な告白をしているのであります。さらにまた吉田總理大臣は、この臨時議會の劈頭においての施設方針の演説の際におきまして、わが國の經濟的危機が招來しつつあるということをも正直に告白されておるのであります。この經濟的危機というものは、單なる生産増強の面や、物價の面における所の經濟的危機にあらずして、吉田總理は、恐らく來るべき政府の財政インフレ危機に對する所の憂慮をも含めて、經濟的危機が到來するのではなかろうかということを告白しておつたのではないかと私は推察いたすのであります。(拍手)かように考えました時に、大藏大臣は相變らずインフレに對して樂觀論を唱えておりまするけれども、吉田總理を初めとして、同僚の閣僚である膳國務大臣すらも、インフレの前途まことに憂慮すべきものありと言つて、事實を告白している。この實際の言葉に照らし合わせまして、はたして大藏大臣は今もなお閣僚の心配、總理の憂慮に對して、何ら心配すべき筋合のものでないという確信をおもちであるかどうかということをも、この際お尋ねしておきたいのであります。(拍手)
政府は口を開けば國民生活の安定を唱え、或は生産の増強、産業の再建を唱えております。それがためにはあらゆる積極的施策を斷行することをおしまないという言明をしておりまするけれども、その事實は恐らく私どもから申し上げますならば、逆であり、反對であるということをも言わざるを得ないのであります。なぜならば、今日のいわゆるインフレの收拾を行い、國民生活の安定を期し、或は經濟の復興をはかるがためには、通貨の面、或はまた生産の面、或は物價の面から見ただけのインフレ問題はもとよりでありますが、冒頭に私が唱えました、いわゆる政府の財政インフレに對して、重大なる關心を拂い、これに對して相當な根本的の解決策を講ずるという、積極勇敢な態度の政策がありませんければ、國民生活の安定、經濟の再建などは、思いも及ばないであろうということを私は警告いたしたいのであります。(拍手)
大藏大臣はきわめて樂觀的でありますが、冒頭に私が申上げましたように、本年度の豫算においてすらも、既に一般會計、特別會計を合わせまするならば、一千數百億萬圓になるのではないかという豫想がされているのであります。この國庫資金がもし今年度中に國内の流通經濟にばら撒かれるというようなことになりました時に、それが大藏大臣が樂觀してゐるように、大半の金というものが國民の箪笥の中に滯留せられ、或はその他の所に踏み留まつている間でありまするならば、これは大藏大臣の言うように或は心配ないでありましようけれども、この滯留する所の通貨というものが、いつ物に變り、或はいつ爆發的な運動を開始しないとは、いかに大藏大臣といえども斷じて保證できないであらうということを私は申し上げるのであります。(拍手)さようなことになつた場合に、日本のいわゆる惡性インフレシヨーンの症状というものが、いかなる結果になつて、國民の上に重壓となつてのしかかるであろうかということをもわれわれは考えました時に、いわゆる政府の財政インフレの將來に對して、哀心から寒心に堪えない次第であるのであります。この意味におきまして私どもは、政府が今次考えられましたような、かような思いつきの急場の一策であるような徴温的な増税案などを考えるよりも、私は國民生活の安定と經濟の根本的な再建をはかるがためにも、いわゆる財政インフレ危機を眞に防止するに足るだけの根本的な治療を施すに如くはないと考える次第であります。
この意味合におきましても、わが黨が先ほど來強く主張しておりまする所の國債の徹底的處理、この問題は大藏大臣は依然としてこれに手を觸れること、口に觸れることを避けておるような態度でありまするが、日本の財政インフレの現状に照らしまして、この國債の根本的な處理がつきませんければ、これが財政インフレの癌となりまして、將來の日本の財政の上に重大な破局的な危機が來るのではないかという心配を、私どもはもたざるを得ないのであります。(拍手)殊に來年度の豫算案その他を私どもが勘案、想像いたしまする場合に、このままで行つたならば、恐らく政府のかかえ込みまするところの國債というものは、二千億を突破するのではなかろうかという想像を私どもはしておるのであります。しかもその二千億を突破しようと想像されておる所の國債の中の一千億は、御承知のごとき、いわゆる軍事公債であります。この軍事公債というものは、私どもから言いますならば、いわゆる帝國主義、侵略主義の遺物であると言へるのであります。この帝國主義、侵略主義の遺物である所のいわゆる戰犯的な國債が、しかも日本財政における所のインフレ危機の癌をなしておるということを私ども考えました時に、日本財政のインフレの危機を防止するがためにも、國債を徹底的に處理する所の勇敢な施策を斷行するの必要が、今や好むと好まざるとに拘らず到來したのではないかということを申し上げて、私どもは強く大藏大臣に要求いたしたいのであります。(拍手)
さらにこの際、私は大藏大臣に改めてお伺いをいたしたいのであります。この問題は、かつての臨時議會において、最後の戰時補償打切り等の法案とともに提案せられました財産税の問題であります。この財産税のごときも、あの重要なる法案を、會期既に餘す所わずかに一週間しかない時に、突如としてこの臨時議會に提案されたのであります。私どもはその會期わずかなる場合におきまして、財産税その他に對しても徹底的審議を盡くしたいという考えをもつておつたのでありますが、政府の咄嗟的な提案に對し、しかも會期がきわめて切迫しておりましたので、遺憾ながらこれに對して十分なる審議を遂ぐること能はず、遂にわが黨はこの法案を一括返上するのやむなきに至つたことは、大臣も御承知の通りであります。われわれはこの財産税につきましても、政府の態度というものが、きわめて不徹底きわまるものであるということを衷心から痛感いたしておるのであります。財政當局の發表いたしておりまする所の額によりますると、わが國の國民の總財産というものは、だいたいにおいて四千六百億萬圓だと説明しておるのであります。この四千六百億萬圓の中で、財産税をとる、すなわち十萬圓以上の財産というものは、だいたいにおきまして一千三百億萬圓だというのが、財政當局の發表であるのであります。この一千三百億萬圓の財産をもつております所の人員というものは、だいたい五十一萬人だというのが、財政當局の數字であります。しかもこの一千三百億萬圓という、十萬圓以上の財産をもつた人の財産の總額の評價基準というものは、本年の評價基準であつたか、或はまた二、三年以前の評價基準であつたか、その點は不明でありますが、私の聞き及びます所によりますと、だいたい時價の三分の一ぐらいを基準として、この一千三百億萬圓という基準の評價額を出したのであるということを承つております。いやしくも日本の經濟を根本的に建て直し、國民の富の配分を均等化して、この敗戰日本の經濟的な、國民生活的な再建をはかろうというのには、なまはんかな、微温的な、資本的な立場に立つての増税案を考えたのでは、斷じて日本再建は不可能であるということを、私は繰返して申し上げたいのであります。(拍手)かりに只今申し上げましたような一千三百億萬圓の總財産というものが、いわゆる時價の相場に見積つた三分の一であるというならば、その三倍すなわち四千億萬圓というものが時價相場による所の、いわゆる財産税を課税する所の國民の總財産額でなければならないのであります。このようなことを私どもは基礎といたしますならば、政府が從來のいわゆる資本家的な立場、資本家的な徴税技術というものを一擲いたしまして、日本の再建、國民生活の安定という二大目標に向つての勇敢なる施策を斷行するという熱意がありといたしますならば、この財産税のごときも、私の計算から言いますならば、實に一千億万圓ぐらいの徴税ができるであろうということを、私は大藏大臣にお伺いいたしたいのであります。
かようなことを勇敢に、積極的熱意をもつて斷行いたしませんければ、恐らく大藏大臣がいかに樂觀論をふりかざしておりましても、この財政のインフレの惡化は、やがてそれが國民、勤勞大衆の生活への重大な壓迫となり、勤勞大衆に對する生活の重大な壓迫になりますることは、やがてそれが生産意欲の減退となります。生産意欲の減退があつては、とりも直さず、政府が聲を大にして唱えております所の生産の増強、經濟の再建など、これまた夢にもおぼつかないであろうと、私は必配を申し上げておるのであります。かような意味合におきまして、この際政府が思い切つた、熱意のある、すなわち日本の再建のために重大なる決意をされて、從來のごとき微温的な、資本家的な立場による徴税技術を一擲されんことを、私は強く要望してやまないのであります。これに對して、大藏大臣のあえて確信ある所の御答辯を煩わしたいと思うのであります。以上をもちまして私の増加所得税案に對する質問を終ります。(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=27
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028・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 川島君の御質問に對してお答えいたします。増加所得税の課税對象が、はたしてうまく把握し得るや否やというお尋ねでありますが、これはお言葉の中にもありますように、なるほど闇は或る意味において見えないに違いない、見えないから闇でありますが、しかしその闇が聞えると仰しやつた。その通りでありまして、すなわち聞えもし、見えもするのであります。從つてこれは把握することができるという結論になります。その場合に勇敢にこれに課税する決意があるか、これは勇敢にやるつもりでありますから、この提案をしたのでありますが、どうかそれに御協力を願いたい。勇敢にやる場合にはいろいろ苦情も出ますから、その點どうぞお願いいたします。
それから闇商人等に對する所得調査の問題は、只今申し上げた所とだいたい同じことであります。これは無論調査をいたすのであります。調査をすれば、必ず捉まえられると思つております。この收税見込額でありますが、約四十五億圓、納税人員は、だいたい今の豫測では百三十萬人のつもりであります。どうしてかような數字が出たかと申しますと、これはほかの税でも同じことでありますが、だいたい今まで大藏省は、各財務局、税務署等によりまして調査をいたしておるのであります。だいたいの調査の結果、かような見込みを立てた次第であります。
それからいわゆるインフレでありますが、これはしばしばお答え申し上げました通りであります。勿論財政が今後止め度なく膨脹する、或は生産がどんどん下つて行くということになれば、話は別であります。膳國務大臣或は吉田總理の言われましたのは、すなわちさようなことがないように、生産増強に對して政府もみずから鞭撻し、また國民諸賢にも御協力を願いたいという意味で申したのであります。こういう話は、たとえばお前は前途有望な青年だ、こういつた場合に、怠けていても前途有望だという意味ではないのです。前途有望だから怠けていてもいいと言えないと同じように、一面において私は、私のみでなく政府としては、財界の前途を樂觀しなければやつて行けないのでありまして、日本の前途は有望だ、しかしながらそれはうつちやつておいて有望だというのではありません。その政策ありやという御質問に對しましては、私は今やつておりますあらゆる政策が、この問題解決の政策であると御承知を願いたいのでありまして、今囘提案いたしました増加所得税もその一つであります。
それから國債の徹底的處理云々のことは、これまた前議會以來常にお答え申しておるのでありまして、もし國債を戰犯的國債であるというならば、郵便貯金は戰犯的郵便貯金であるということになるわけでありまして、現政府としては、國債の整理はいたしません。
それから會期逼迫の際に財産税を提出したということは、いかにも御尤ものことでありまして、われわれとしても遺憾に存じておりますが、何故にさようなことになつたかということは、社會黨の諸君もよく御承知のことと存じます。それから財産税についての評價の問題であります。これを時價の三分の一とか何とか仰しやいましたが、さようなわけではありませんので、現在評價委員會が中央及び地方にできて、すなわち民主的に、政府ばかりでなく委員によつて評價を願うのでありますから、それによつて無論十分の評價ができるものと私は信じております。以上によりまして、甚だ簡單でありますがお答えといたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=28
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029・川島金次
○川島金次君 只今の大臣の答辯は、まことに滿足をいたしません。しかしながら續いて議案があるようでありますから、私の質問は打切りまして、詳細は委員會でこれを行いたい思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 的場金右衞門君。
〔的場金右衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=30
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031・的場金右衞門
○的場金右衞門君 私は只今上程されました増加所得税法案につきまして、協同民主黨を代表いたしまして、若干質問をいたしたいと思います。特に私は農山漁村の關係の課税について、以下數點を質し、政府の御所見を伺いたいと思います。
農山漁村の課税につきましては、昨今囂々たる非難の聲があります。この怨嗟の聲は、政府においても承知されているはずと思いますが、承知されているでありましようか。所得税の二十年度及び二十一年度の比較を見ますと、總額において二十年度は三十億でありましたものが、二十一年度は七十五億に相なつておりまして、これは二倍になります。所が農業者に對する課税は、二十年度は三億であつたものが、二十一年度は十五億と相なつておりますから、五倍となつているのでありまして、その率は、總額の増加よりも倍になつておりますし、商工業者關係は六億が八億五千萬圓となつておりますから、わずかに五割の増加に過ぎません。これは課税の率は低いようになつていても、とりやすい方面が重税となる。率はたとえ高くても、隱れやすい方面は脱漏が多く、實課税は低率となる結果となりますが、この點いかにして公正を期する考えであられますか。すなわち農業のごとく收入が明らかであり、納税義務者もまたきわめて正直でありますものは、常に重税に苦しめられ、不公平となつているのが事實であります。これをいかにして是正せんとするものでありますか。徴税技術上、公正妥當なる課税をなし得る自信があられるのでありますか。この點をお伺いいたします。
次ぎに、從來は收入の方面だけの調査によつて課税せられておりますが、支出の方面を調査して、徴税脱漏なきを期する考えはありませんか。
第三は、農業生産に對する課税において、收入は過大に見積られ、支出は過小に見て課税されつつあります。農業を知らない税務署員の調査であり、農業を知らない所得税調査委員でありますから、かような結果になつているのであると思います。これからは所得税調査委員のごときも、農民殊に耕作農民をもつて構成するように考えなければならぬのではなかろうかと思うのであります。米にいたしましても、現在その生産費は石千二百圓かかるものでありますのに、現在の米價は五百五十圓と定められております。言い換えますと、收入はあつたけれども缺損となつている。缺損となつているに拘らず重税が課せられるこういう結果になつているのであります。特に牛馬というものは、日本農業においては一つの農機具であります。使役する農機具にも等しきものに課税をすることのないように考慮されておるのでありますか。
第四に、林業生産については、財産税として課税し、伐採の時所得税を課することとなれば、二重の課税となるのではないか。五十年間努力して、ただ一度伐採する材木について重税を課するために、日本の山は朝鮮の山のごとき禿山になりつつある現状にあります。國土保全のために山のことを十分認識されて、これらのことをお考え願わなければ、ますます國土の保全ができなくなるのではないかと思います。造林勞力というものは、非常な苦しい重勞力であります。その五十年間の苦しき努力は、一日の勞銀が今日わずかに五十錢にも當らない。こういう關係に相なつておることを考慮されなければならぬと私は考えます。
最後に、税務署の徴税に働いております下級官吏は、非常に世評が惡いのであります。その取扱いが公正を缺く。この點については、政府においてよほどこの際よく御考慮願わなければならぬのではないかと思います。その取扱いを是正し、民主化することが必要であります。多く税金をとりさえすれば成績がよいことになつておりますので、多く税金をとることに專念いたしまして、公正妥當に徴税するということに工夫努力するの風がないのであります。この點をいかにして是正されんとするのでありますか、從來の私どもの農村における徴税の實情から見まして、このたび提案されましたこの税金も、今日までのような結果になることになりますと、世の中を毒することになると思いますので、今日までの經驗に鑑みまして、これらの諸點を質問いたす次第であります。以上簡單でありますが、お尋ねをいたします。(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=31
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032・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 的場君の御質問にお答えいたします。農業者の方面に本年度の課税額が著しく殖え、商工業者方面に減つたことは事實でございます。これは御承知のように、最近の状況が農漁村方面に所得が事實上殖え、それから商工業方面は、殊に戰災地が多いものでありますから、總額といたしまして納税者が減つた。こういう關係に出ずるものであります。先ほど川島君からお話がありましたように、相當所得の殖えた所に勇敢な課税をせざるを得ない状況であります。先ほど御協力願いたいと言つたのはこの邊であります。
それからなお收入支出の點で、實際支出の方は小さく見て、收入を多く見るというお言葉でありますが、これはわれわれの方針といたしましては、收入も支出も實際によつてこれを調査するということにいたしている次第でありますが、ただかような新しき納税者が殖えるような場合には、とかく誤りも、事實人のやることでありますからありまして、その點は甚だ申しわけなく存ずるわけでありますが、もしさような誤りがありました場合には、躊躇なくこれを訂正いたすことにいたしておりまして、本年農村方面から種々の苦情を伺いまして、この訂正はほとんどことごとく濟んでおります。
林業につきましては、財産税の納税のために伐採をいたした場合には、所得税は滅免いたすことにいたしております。
それから税務署員の件につきましては、しばしばお小言を頂戴いたして恐縮であります。平時におきましても、常に過ちのないように指導いたしているつもりでありますが、なお最近外部からも優秀者を相當入れまして、素質の改善をはかり、同時に省内に學校を設けまして、税務署員の再教育をはかることにいたしている次第であります。逐次改善されているものと信じている次第であります。なお不都合な點がありましたならば、事實について御通告願いますと、私どもの方で然るべく處置をいたすつもりでありますから、この點についてもどうぞ御協力をお願いいたす次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=32
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033・的場金右衞門
○的場金右衞門君 爾餘の質問は委員會に讓りまして、これで打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=33
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034・山崎猛
○議長(山崎猛君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についておはかりいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=34
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035・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名三十六名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=35
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036・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=36
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037・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=37
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038・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の日程を延期し、本日はこれにて散會せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=38
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039・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=39
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040・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
次會の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後四時十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01219461218&spkNum=40
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