1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○所得税法を改正する法律案
○法人税法を改正する法律案
○特別法人税法の一部を改正する等の法律案
○土地臺帳法案
○家屋臺帳法案
○地方税法の一部を改正する法律案
○地方分與税法を改正する法律案
○相續税法を改正する法律案
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昭和二十二年三月三十日(日曜日)午前十時十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=0
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001・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) それでは是から昨日に引續きまして開會致します、佐藤委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=1
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002・佐藤助九郎
○佐藤助九郎君 私は所得税改正法案中の豫算申告制度と、調査會制度の件に付て、聊か疑義を持ちまするので、極く簡單に政府の御意見を伺ひたいと思ふのであります、先づ第一點の申告制度の採用は、所謂民主的と申しまするか、國民の自主的納税義務を普及せむとする所に狙ひがあると考へまするが既に此の制度は此の度の財産税に於て試驗濟みの通り、國民一般の教養が低下して居る爲に、本立法の精神を無自覺に終らしめて、其の成績が極めて不良であつたことは否めない事實であつたと思ふのであります、殊に敗戰後の日本の現状では國家觀念が極めて乏しくなつて、惡徳思想は商工農と有らゆる階級に瀰漫して止まらない現状であります、從つて今日の政府の豫想さるるが如く申告制度が順調に成功するならば、誠に宜しいと思ひまするが、是はなかなか容易でないと考へます、是等惡徳階級は申告は愚か、一切の課税を免れることに努力するは勿論、此の惡い傾向が一般的風潮として瀰漫するは必定であると考へます、其の結果、正直者は依然として損をし、獨り惡徳階級のみが課税を免れて、所謂國民の公正なる負擔が望めないと考へるのであります、斯くの如き現状を豫測する時に、國家の租税收入に依る豫算は極めて不安定なものに陷りはしないかと案ずる者でありますが、此の點に付てどう云ふ風に政府としては考へて居られるか、斯く申上げますると、未申告者の問題に付ては所謂第三者の通報即ち密告とか、投書に依つてそれを防止すると申されるだらうと思ひまするが、元來此の投書とか密告とかは國民の教養の高い場合に於て初めて理想的に實現されるものであつて、今日國民の道義は全く地に墜ちて居る爲め、結局徒に社會の不安を助長するに過ぎないと思ふのであります、殊に其の密告者に對しては相當に報償するなどと云ふやうなことも申して居られるのでありまするが、是は誠に外道極まる話であります、由來我が國の此の種の階級は極めて惡質の者が多い事は過去の警察司法關係に於て明かな事實であります、此の點を政府は如何に考へて居られるのであるか、一應承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=2
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003・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 申告納税制度に依つて自主的に納税させましても、最近の道義が地に墜ちました現在に於きましては、成功は覺束ないのぢやないかと云ふやうな御話でございます、我々も最初は餘程其の點に付きまして愼重に考へたのでございます、で其の結論を申上げますと、豫算課税はどうしてもやらなければならぬ、其の前提としては、何と致しましても申告納税制度を採らなければならないのでございます、併し其の申告納税制度もやり方に依りましては從來と何等異る所なしにやつて行けると云ふだけの確信を得たのでございます、勿論年四囘に分けまして申告させるのでございまするが、之を一々政府で更正するなり、或は決定すると云ふことは困難でございます、從ひまして一期、二期、三期に於きましては餘程指導をうまくやつて、適當な申告を出させることに骨を折らなければならぬと思ひます、で最後に於きまして、若し從來のやうに不誠實なる申告のみでございました場合には、從來と何等異る所なしに政府の調査致しますことに依りまして決定をするなり、或は更正をすると云ふ方法が殘されて居るのでございます、言ひ換へれば非常に最惡の事態に立至りましたと致しましても、本年に昨年度の決定をし、又増加所得税の決定をやつて居るのでありまするが、それを一緒にしたやうな操作が出來る、勿論申告納税制度に付きましては、我々は成るべく自主的に申告を慫慂させると云ふことに依りまして、又季節に依りまして重點的に一期、二斯、三期に亙つて、各業者の團體、或は市町村と云ふやうなものを通じましてうまく指導して參りたいと思ひます、申告が不相當であり、或は申告がないと云ふ場合には、此の豫定申告の場合に於きましても更正するなり、或は決定をするなり致すのでございます、で最後に於きまして、既に一年間、税務署と致しましては常に從來と同樣に調査を致して居ります、最終の確定申告が出ました時に不相當なものに付きましては、全部從來のやうに剔抉すると云ふことに致しますると、最惡の事態と致しましても十分やつて行ける、況や申告納税制度は理想でございます又三年五年と納税者を馴致して參りますならば、其の中には十分に目的を達し得ると云ふ風に考へて居るのでございます、又此の豫定申告に於きまして、不正の、不當の申告なり、或は申告しないと云ふ場合に於きましては、加算税を取りまして、それに依つて、所謂民事的な罰則に依りまして或程度慫慂をして參るのでございます、其の點に付ては御安心を願ひたいと存じます、又第三者の通報制の問題でございます、從來の租税の民主化と云ふことに付きましては、所得税調査委員會と云ふものがありまして、所謂納税者の選出致しました調査委員から成る委員會に依つて調査を致したのでございます、是は納税者の方から選出され、而も何等の報酬を得て居ない委員でございますので、最近のやうに全く減税委員と云ふやうなことになつて參つたのでございます、從いまして租税の民主化と云ふのはさう云ふ點にあるのではなく、先づ第一には申告納税制度に依つて自主的に申告をさせる、又もう一つの民主化と致しましては、所謂第三者の通報に依つて廣く民衆から監視をすると云ふ點でございます、併し是も第三者の通報制を餘り頼りに致して居る譯ではございませぬ、從來の所得調査員と變つた構想の下に、現在もやつて居りまする税務協力員と云ふやうな制度を擴充強化致しまして、矢張り民衆に依つて税務署も監視すると共に、納税者も監視すると云ふやうな制度を以て代へて行きたいと云ふやうに考へて居る次第でございます、尚財産税の申告に付きましては、最初收入見込の約九割は申告納税されるものと云ふことで考へて居つたのでございまするが、最近二月中頃の成績に依りますと、大體八割でございます、其の後にも、期限後の申告が出て居ります、最初の申告納税制度の試みとしては、大體豫期に近い成績を擧げて居るのでございます、段々申告納税制度に慣れて參りますと、御心配のやうな懸念は解消されると我々は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=3
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004・佐藤助九郎
○佐藤助九郎君 只今御伺致しますと云ふと、豫定申告制度に對して、政府は割合樂觀して居られるやうでありますが、私は地方に於て長年此の方面の衝に當り、市町村の擔税者と此の問題に付て相當に研究して參つて居るのでありますが、都會の方面はいざ知らず、町村の方の所謂農工商の擔税者の階級の状況を見ますると、殆ど毎年の自己の收支計算をやつて居る者は極めて僅少でありまして、況や其の年の收入を豫算して、自分の所得を申告するなどと云ふことは先づ不可能だと考へます、從來の所謂前年度の實績申告にすら、我我は町村役場に於て、口やかましく納税者を督勵指導致しまて、殆ど納税者の申告の代辯をやつて居るやうな現状であります只今伺ひますと、財産税は八割の申告の成績であつたと申されまするが、其の申告の内容を見ますると、實に雜駁な據り所のない不完全極まる申告のものが多かつたのであります、こんな事は恐らく中央の當事者は其の末端の状況を御存じあるまい、從つて此の豫算申告制度等と云ふものは、アメリカのやうな高度の教養國民に於て初めて行はれるべきものであつて、敗戰日本の慘澹たる現状に於て果して是が望まれるか否かを私は疑ふのであります、若しも政府の豫想通り第一囘の豫算申告から確定申告に至る四期の間の申告がうまく行かない場合には、極めて國家豫算が杜撰な、不安定なものになると考へますので、特に此の點を研究さるる必要がないかと考へるのであります、從ひまして、どうも現在の國情に於て斯かる豫算申告制度は尚早きに失するのぢやないかと云ふ考へを持つて居ります、此の點政府は十分留意されて、所謂納税者の自覺を促がして、公平なる課税を念願致します、其の次に所得税調査會が此の度の改正に依つて廃止されるやうに伺つて居るのでありまするが、之に代るべき制度は何か御考へでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=4
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005・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 先程ちよつと申上げましたやうに、所得税調査委員會は廢止致します、又税法には委員會のことを書いて居りませぬ、私共と致しましては、別個に官制に依る委員會を設けまして現在のやうな折角協力委員會と云ふやうな各層の人を集めた税務署に對する督勵機關又納税者に對する監視機關と云ふものを作りたいと考へて居るのでございますが、唯從來と違ひまして賦課決定ではございませぬので、そこ等はどう云ふ風にして參加して戴くかと云ふことに付きましては目下研究中でございます、又關係方面とも打合せ中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=5
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006・佐藤助九郎
○佐藤助九郎君 只今御伺ひしますと云ふと、何か代るべき制度を御研究中のやうでありまするが、抑抑此の所得税調査會制度なるものは非常な重大な役割を今日迄やつて來て居ります、成る程此の度の改正に依つて、自主的に、納税者が豫算申告をして行くと云ふ制度でありますから是は理想ではありまするが、先程も申上げた通りに、今日の國民の現状に於て容易でないと思ふのであります、從來此の制度は所謂官と民との間に立つて、全く補助的の重要機關であつたものが、一朝にして廢止されると云ふことは、是は極めて妥當を缺い結果になりはせぬかと考へます、即ち此の調査會は民間のそれぞれの各階級から精通した人が選拔されまして、上意下達、下意上達と云ふやうな、重要な補佐役をやつて來て居ります、殊に税務官の仕事は諸官廳の中でも最も困難な、且つ繁雜なる仕事であります故に、其の調査員の役割も非常な大きなものであつたのです、是がなくなつた場合に、果して公正な課税が出來るでありませうか、之を非常に懸念するのでありまするが、只今何か之に代るべき案を考へて居られると云ふのでありまするから、多少懸念が解けましたが、願はくば寧ろより以上擴張して、強化し、一般大衆に公平なる課税をされることを特に希望する次第であります、其の次に保險に對する控除の問題でありまするが、保險金は申す迄もなく、所謂貯蓄の部類に屬するものでありまして、謂はば強制貯金のやうなものであります、今日一般大衆から申しますると云ふと、貯金をすれば必ず國家に沒收されるやうな氣持を持つて居ります、從つて貯金は段々減る一方であります、せめて此の保險を援助保護されまして、從來のやうな控除の制度を設けられる必要があると思ひまするが、此の點政府としてはどう云ふ風に御考になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=6
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007・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 今囘は保險控除を廢止致したのであります、其の理由と致します所は、從來に於きましても、年額二十四圓、月額二圓を最高として居ると云ふやうなことでありまするが、殆ど其の金額に於て意味がないのと、もう一つは今囘は御覽の通り簡易税表と云ふやうな、源泉の場合に非常に簡單な税表に致しまして、扶養家族が何人の場合には幾らと云ふやうな早見表で納税者の便宜を圖つて居る次第でございます、又之に依りませぬと、累進税率を持つて居ります所の給料其の他に付きまして、源泉の課税と云ふことは不可能でございます、其の際に保險料の控除と云ふやうなものが入つて參りますと、表が複雜化して殆ど見ることが出來ないと云ふやうな不便がございます、又保險に付きましては、勿論奬勵致すべきものではありまするが、それは別途外の點で考へるべき問題でありまして、税に依つて保險を奬勵すると云ふのは、最近の税全體の行き方から行きますと、税に依つてさう云ふ奬勵はしない、外の別途の方法で考へて行くと云ふのが最近の傾向であります、それや是やを考へまして、此の際之を廢止するのが適當だと云ふ結論に達した譯でざざいます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=7
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008・佐藤助九郎
○佐藤助九郎君 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=8
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009・片岡直方
○片岡直方君 坐つた儘で宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=9
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010・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) どうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=10
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011・片岡直方
○片岡直方君 租税の收入の見込を立てます一番に基礎である所の國民所得、本年度の國民所得と云ふことは、政府に於てはどう云ふことを算定の基礎にして居られますか、實は勿論今度は實績課税でなくして、豫算課税であります、さう云ふ所からも考へて居られると思ひますし、それから又インフレーシヨンで段々名目的の所得が殖えると云ふ風に、相當に國民の所得が殖えるものと御考になつて居るものと思ふのでありますが、其の程度又は御見込の基礎を伺ひたいのであります、實は昨日御伺ひしましたが、一般國民の關心を持つて居る石炭問題が解決しませぬ以上は、なかなか事業を再開すると云ふことに非常な障碍になつて居るのであります、で大藏大臣の御説明に依りますと、一應法人税を下げた所得税も下げた、さう云ふ御話でありまするけれども、能く拜見しましても、どうも是は割切れぬものがあるのであります、實際問題として二十一年度は所得税が八十六億圓、法人税が十二億圓、二十二年度の所得が四百十三億、法人税が二十億、丁度所得税は五倍になつて居ります、法人税は一・七になつて居ます、斯う云ふ風に數字から見ますと、下げたから詰り間接税だけ非常に殖えたのだと云ふ御説明でありまするけれども斯う云ふ風に調べて見ますと、どうもそこの所は私ぴんと來ませぬので、此の點に付きまして、もう一遍國民所得の點と増税との……税率は下げたに拘らず、さふ云う風に實質的に殖えて居る譯でありますから、此の點に付ての御説明を御願ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=11
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012・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 今囘の税收の見込に付きましては、國民所得から割出したものではございませぬ、又國民所得も公式には幾らであると云ふ算定をされたものはございませぬ、まあ世間に流布される五千億と云ふやうなものとの關係はどうかと申しますと、まあ煙草收入其の他を入れまして約一千億でごいざいますからして、二割に迄達しないと云ふ位の間隔でございます、併し我々が税收の見込を立てます際に於きましては、是は全く實際に割出した、地に着いたものでなければならないのでございます、從ひましてどう云ふ風な算定の仕方をしたかと云はれますと、甲種勤勞所得税、從來の所謂給與に付きましては、最近の千二百圓と云ふのをベースにして算定致して居ります、又農業所得に付きましては、米價が五百五十圓と云ふのを基礎に致しまて、それに依つて收入を出して居る譯でございます、又事業所得、營業等に付きましては、最近の増加所得税に付きまして調査致して居りまするものから致しまして最近の所得の状況がどうであるかと云ふやうな點を考へまして、それから推定致して居るのでございます、全く國民所得が幾らと云ふやうな……是は算定の仕方が色々ありまするが、それから出して實際の税收を立てましたのでは是は全く見込違ひの場合も多いのでございます、我我と致しまして、之に昨年末と云ふ點を抑へて、それ以上には殖えないものであり、又其の程度にはあるものだと云ふ風に考へまして、見込額を出して金額を出して居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=12
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013・片岡直方
○片岡直方君 一應それで了承致しましたが、先程御質問がありまして、一般國民が關心を持つて居る財産税の現況の御説明がありましたが、實は此の財産税を納めますることで相當に我々共苦慮致したのでありますが、實際大藏大臣、前の主税局長と色々御話をしまして、愈愈家屋を擔保にして金を借りると云ふ場合に當りまして、銀行は極度に之を嫌がりまして金を貸しませぬ、さう云ふことはない筈である、日銀に交渉しましてもなかなか要領を得ませぬ、それで結局どうするかと云へば、金を貸さぬと云ふ證明を出して呉れと言ひましたけれども、それは出さぬと云ふことで非常に皆が苦慮致しました、で個々別々の場合に解決すると云ふやうなことでありましたのですが、さう云ふ事情で相當に現實に家屋を擔保にして金を借りると云ふことで苦慮をして居るやうな現状であります、どうもそれが納められぬ場合は、大部分が延納になつて居るのではないかと云ふやうな氣持も致すのであります、此の延納と云ふ……先程の御話に八割大體片付いた御見込と云ふやうな御話がございましたが、もう少し無理な御註文かも知れませぬが、是は餘程之に付て私共實際問題で交渉した立場に居りまして、非常に苦慮して居りますので、もう少し詳細に、其の後の經過を、延納の工合はどうなつて居るかと云ふ風なことを示して戴きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=13
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014・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 既に御承知のやうに、延納はもう一番已むを得ない場合でありませぬと、財産税の目的を達しないと云ふことで、まあ成るべく延納は抑へなくてはならぬと云ふことに付ては御了承を致されたことと思ひます、併し最近の是は先程申上げました二月十五日迄の申告でございますので、それに依りますと、最初はまあ十八億程度の延納と云ふ風に考へて居つたのでありますが、延納の申請は約三十二億位出て居ります、併し其の中、又可成り現金收入が最初考へて居りましたより殖えて參つて居りますし、又最近の樣子を聞いて居りますと、現金收入が可成り殖えて居るやうでございますので、或は延納する額もグツと減るのではないかと云ふやうな氣も致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=14
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015・徳田昂平
○徳田昂平君 私も簡單にちよつと御尋ね致したいと思ふのでありますが、税法第九條の七の株式の讓渡に依る利益に課税すると云ふことでありますが、是も申告税になつて居るのでありますが、申告に付きましては先程他の委員から御述べになりました通り非常に困難ではないかと思ふのであります、殊に株式の讓渡に依りまする申告は、他の申告に較べまして尚申告が困難ではないかと思ふのであります、況んや第三者の通報と云ふ如きものは …到底是は第三者には窺ひ知ることが出來ないだらうと思ふのでありまして、第三者の通報と云ふやうなことは絶無になるのではないかと思ふのであります、申告のない場合に政府ではどう云ふやうな處置を御執りになつておやりになる御考であるか、正直に公平を期すると云ふ上に於きましてなかなかむつかしいことではないか、正直の者が馬鹿を見て、不正直の者が税を納めないでも宜いと云ふやうな結果になる虞が相當あると思ふのであります、之に對しまして政府の方では、どう云ふやうな方針で洩れなく申告を徴すると云ふやうに御考になつて居りますか、其の方法の一端でも御伺ひしたいと思ふのであります、尚是は施行は本年の一月から遡つて致すのでありますか、或は四月一日から致しますか、其の點を併せて御伺ひ致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=15
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016・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 讓渡所得に株式を入れますに付きましては、從來から非常に研究して、可成り困難であると云ふやうな點から致しまして、今迄見合せて參つたのであります、之を入れなければ負擔の公平を期し得ないと云ふのと、もう一つは、此の際財産税の施行を機と致しましてやるのが最も …此の機會を逃したのでは、將來の株式の讓渡利益に對する課税と云ふものは永久に斷念しなくちやならないのではないかと云ふやうな點から致しまして、之を入れたのでございます、で、調査方法に付きましては、可成り困難であることは仰せの通りでございます、併し我々と致しましては、其の配當を取る場合、或は名義を書換へる場合、さう云ふやうな時に調査致しまして、それから先にどんどん遡つて行く、御承知のやうに、今囘は可成り延滯した場合に對する加算税、或は申告をしなかつた場合の加算税、其の他色色な罰則を強化致して居ります、それに依つて發見次第に相當嚴重な監督を致しまして、又一面に於きましては納税者に其の點を非常に普及、宣傳致しまして、誠實なる申告を出して貰つて、それに對する監視と致しましては、先程申上げたやうな方法で嚴重に資料を取りまして、それに依つて萬全を期して行きたいと云ふ風に考へて居る次第でございます、尚此の施行は四月一日からでございます、一月には遡及しないことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=16
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017・徳田昂平
○徳田昂平君 只今御方針を承つたのでありまするが、更に御尋ね致したいと存じまするのは、一旦讓り受けて又讓り渡したと云ふやうな場合に損を生じた場合には、其の讓渡の利益の方から差引いて貰ふことが出來ますのでありませうか、如何でせうか、其の點御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=17
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018・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) ちよつとはつきり聞き取り出來なかつたのでございますが、損を生じた場合でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=18
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019・徳田昂平
○徳田昂平君 一應讓り受けて、それを讓り渡した場合に損がいつたやうな場合に、一方では利益があつたが、一方では一旦讓り受けたのを處分した爲に損を生じたと云ふやうな場合発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=19
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020・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) それは一年間を通じまして損益を通算する譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=20
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021・徳田昂平
○徳田昂平君 更にもう一點御伺ひしたいと思ふのでありまするが、株式の賣買を、繼續的に營利を目的と致して株式の賣買をすると云ふやうな課税は、之に依るのでありまするか、又は他の方法に依つて課税なさるのでありますか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=21
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022・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 是は營利を目的として繼續的にやらない場合でございまして、其の場合には事業所得として課税をすることになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=22
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023・徳田昂平
○徳田昂平君 次に取引税のことに付て御尋ねしたいと思ふのでありますが、昨日大藏大臣と御説明の中に取引税は公社債萬分の一、株式萬分の十を徴收すると云ふ御話でありましたが、是は目下取引所が開設になつて居りませぬ、只今開設準備中のやうに聽取して居りまするが、取引所が開發後に御課税なさる御方針でありまするか、又取引所が開設致しまして、其の取引全部に課税する御方針でありまするか、又は其の取引の中で所謂清算取引と云ふものに課税することになりまするか、其の點を御伺ひ致したいと思ふのであります、そのことと、更に之に對しまして、政府は本年度どの位御取りになる御方針でありますか、其の額も併せてお伺ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=23
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024・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 取引税の點に付きましては、是は清算取引に對するもののみでございます、從いまして取引所が再開にならない間は課税に相成らない譯でございます、又收入見込と致しましては、殆ど實際問題として清算取引は許されないのぢやないかと云ふ風なことも考へられますので、收入見込としては見込んで居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=24
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025・徳田昂平
○徳田昂平君 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=25
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026・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) 御通告のあつた方々は是だけでありますが、他に御質問ございませぬか○佐藤助九郎君 ちよつと小さい問題でありますが、山林所得の中で私共の地方には屋敷林がありまするが、其の屋敷林を伐採して處分した場合に、それぞれ今迄課税をされて居るのであります、處が私共の地方では屋敷林は山林と全然性質が違ふのみならず、其の屋敷林と云ふものは、家を護る爲に屋敷林があるのであつて、其の家を護る屋敷林を伐採して處分する時は、最後的處分であります、例へば此處に十萬圓の負債が出來た、家を賣つても足らない、どうしても屋敷林を賣らなければならぬ、そこで屋敷林を賣つて、それで負債を處分をする場合に初めて處分するのでありますが、それに課税した時には、殆ど納税不可能となるのであります、それが私共の地方では、時折問題になるのですが、尚それが繼續施行されるのでありますか、此の點、或は中央の方では例が少いので御分りないかも知れませぬが、ちよつと念の爲に御伺ひして見たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=26
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027・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 山林でありましても、屋敷林でありましても、要するに我々としては是は一時の所得と云ふ風にして考へて居るのでございます、山林所得と申しますのは、一時的の所得を建前として居りますので、總てさう云ふものも課税致して居ります、其の代りに税率が、從來は分類所得税が別個に設けられまして、綜合所得税を掛けずに、可なり輕減された、所謂互分互讓と云ふやうな觀念から出來て居ります所の税率で、課税致して來た譯でございます、今囘は矢張り是は一時的の所得である、株式讓渡其の他總て一括致しまして、どの場合に於きましても、所得額の半額だけを綜合して課税する、それに依りまして、可なり從來よりも寧ろ輕減されて居るやうな形になつて居ります、又實際上さうなつて居るのでございまするが、是は總て一時的所得だと云ふ觀念から出て居るのでございまして、只今の場合も、或は非常に氣の毒な場合も起るかも分りませぬが、一時的所得として課税する方針には何等變りないのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=27
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028・佐藤助九郎
○佐藤助九郎君 只今申上げた通りに、屋敷林を處分する場合には、最後的處分であつて、負債を返濟しても尚足らぬ時に課税されると云ふことは、誠に不可能を可能ならしめむとす無理がある、それでも率は少いと仰しやるが、納税能力のない者に、それを強ひると云ふことは、結局國家の租税收入の減少を來すことになるのでありますが、それでも矢張り其の通りおやりになる御考でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=28
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029・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 恐らくさう云ふ場合でありますと、他に所得がない場合だと考へられます、其の場合に於きましては、其の賣却致しました收入金から必要の經費を控除致しまして、其の半額、少くとも半額だけは殘る譯でございます、其の半額に對して、又最高と致しましても、七十五パーセント、さう云ふやうな、只今のやうな御話でございますと、二十パーセントとか、精々三十パーセントと云ふやうな税率が適用になるのでございます、負擔は非常に輕いのでございまするから、さう過重なことにならない、それは其の他の場合も同樣でございまして、例へば株式を賣ると云ふやうな場合に於きましても、同樣な譯でございますので、それだけを除外すると云ふことは適當と我々考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=29
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030・佐藤助九郎
○佐藤助九郎君 第十二條に所得金額の控除を四千八百圓と算定されて居りまするが、是は何か基本的理由が含まれて居るのでありますか、唯單純に四千八百圓と御決めになつたのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=30
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031・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 基礎控除の額は、必ずしも最低生活費を意味して居るものではございませぬ、租税に於きましては、成るべく、殊に所得税に於きましては、假令最低生活の人と雖も一圓、二圓の税金は納めて戴く、それに依つて國に對する自覺と申しますか、財政に對する自覺を持つて戴くと云ふのが狙ひでございます、從ひまして最低生活と云ふことは、或程度に於て我々は念頭には置いて居りますが、それのみに依つて考へて居るのではありませぬ、結局負擔が各階層の所得額に對して、此の程度の負擔が適當と云ふやうな税額を頭に描きまして、それを出すにはどう云ふやうな控除を持つて來れば宜いかと云ふので、算出して居る譯でございます、月額にして四百圓、從來の二百圓が大體倍額の四百圓と云ふ風な御考を願つたら御分りではないかと思ひます、尚今囘は基礎控除は總て四千八百圓になつて居ります、從ひまして普通の事業所得は、從來千二百圓であつたものを四倍に引上げて居る譯であります、尚勤勞所得に對しては、所得額から二割の控除を致すことになつて居ります、從つて六千圓迄の人は、獨身者と雖も全然課税にならない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=31
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032・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) 私からちよつと伺ひます、今度の税法の改正で色々増税になつて居りますが、是は勿論財政の收支を調整する上に於て必要なことでやられたと思ふのでありますが、其の間に税源の涵養と云ふやうなことは何か御考になつたのでありませうか、斯う云ふ非常の際でありますから、餘りさう云ふことに重きを置かれなかつたのか、何か税源を涵養して、將來の税收入を確保すると云ふやうな點に付て、御考になつたでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=32
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033・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 税源の涵養と云ふことは、租税の面で何等か特別の輕減をすると云ふことに相成ると思ひます、我々と致しましては、今囘は別にさう云ふ點に付て考へて居りませぬ、寧ろ是は世界的の風潮でございます、租税の面でさう云ふことを考ふべきではないと云ふので、次第に減免税と云ふ關係は整理されて參つて居ります、又成るべく租税は普遍的に課税するのだと云ふやうな風になつて居ります、從ひまして主要物産の製造事業に對する減免税の規定等に付ても、可なり問題視された向きもあるのでありますが、併し我々と致しましては、寧ろ負擔の適正と云ふことに重點を置いて考へて居りますので、税源を涵養する爲に特に輕減をするやうな考はございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=33
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034・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) 他に御質問ございませぬか、なければ討論に入りたいと思ひます、所得税法を改正する法律案外七件の法律案を全部一括致しまして、討論に付したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=34
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035・毛利元良
○男爵毛利元良君 私は原案に對しまして、贊成を致しますが、此の機會に政府當局に一言御願をして置きたいと思ひます、それは憲法が新しくなりまして、總ての行政、財政、經濟方面が從來と一轉をするのでございますが、之に付きまして、殊に國民の實生活に密接な關係のございます租税、色々な税金の問題に付きまして、從來の方法とまるで變りますので、是は特に當局に於かれまして、國民に其の趣旨を廣く周知徹底をして戴くと同時に、關係官廳の末端に於きましても、速に新しい税法、其の他取扱に付きまして、周知をせしめて戴きたいのでありますと申しますのは昨年以來經濟界の變動に依りまして、國民の經濟に色々な變化がありました、例へば三月三日の新圓切替、又封鎖預金の設定、八月には第二封鎖の設定がありまして、其の都度國民は其の取扱に付きましての徹底を缺きまして、非常に迷惑をした所が多いのであります、殊に地方の金融機關に至りましては、相當長い期間しなければ取扱ひ方が徹底しないのであります、又新しい措置に付きまして、税務署、金融機關に照會をしましても、さう云ふ通達はまだ來ない、話は聞いて居る、新聞にも出て居るが、其の通達に接しないと云ふやうな事例が澤山ございまして、取扱に非常に迷惑をしたことが多いのであります、今囘は總てが變りますので、關係當局も御忙しいと思ひますが、一つは國民に對しまして、税制の根本的に改革された要旨、それから其の内容に付きまして、新聞、ラジオ等で十分に徹底をして戴きたい、もう一つは只今申しましたやうに、末端の機關、それから金融機關、郵便局等、國民の經濟生活に直接關係があり、毎日の生活の必要なる機關に對しましては、此の趣旨及び取扱の方法を迅速且明快に分るやうに、御通達と御取計らひを戴きたいと思ふのであります、さうしなければ、折角御當局で色々御苦心をされましても、徹底致しませぬならば、取れるべき税金も取れない、其の爲に新しい税制が圓滑に運行出來ない爲に、國家の財政にも相當の影響を及ぼすと思ふのであります、委員會で追加豫算の問題も出ましたが、恐らくさう云ふ所から、税收が見込の額に達しないで、或は追加豫算が出るかも知れませぬが、私は特に其の點を當局に御願ひ致しまして、議題になりました法律案には全部贊成を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=35
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036・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) 他に御發言はございませぬでせうか、他に御發言がございませぬければ、本案の採決を致したいと思ひます、本委員會に付託せられました所得税法を改正する法律案外七件の法案全部、可決致すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=36
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037・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) 御異議ないと認めます、それでは原案通り可決致すことに決定致しました、それでは是にて散會致します
午前十一時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=37
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038・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 黒田英雄君
副委員長 子爵 綾小路護君
委員
公爵 二條弼基君
侯爵 中山輔親君
伯爵 東久世通忠君
子爵 富小路隆直君
子爵 日野西資忠君
白澤保美君
男爵 長基連君
男爵 鶴殿家勝君
男爵 毛利元良君
奧村嘉藏君
小山完吾君
徳田昂平君
片岡直方君
佐藤助九郎君
政府委員
内務事務官 柏村信雄君
大藏事務官 前尾繁三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00219470330&spkNum=38
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