1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案
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委員氏名
委員長 子爵 梅渓通虎君
副委員長 男爵 中村徹雄君
侯爵 嵯峨實勝君
侯爵 久我通顯君
伯爵 清閑寺良貞君
子爵 松平乘統君
子爵 錦小路頼孝君
白澤保美君
あね崎正治君
男爵 高崎弓彦君
男爵 尚琳君
松尾國松君
齋藤万壽雄君
杉山茂君
瀬川彌右衞門君
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昭和二十二年三月二十二日(土曜日)
午前十一時七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=0
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001・梅渓通虎
○委員長(子爵梅渓通虎君) それでは是より開會致します、初めに此の法案に付きまして政務次官より提案理由の御説明を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=1
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002・北村徳太郎
○政府委員(北村徳太郎君) 本委員會に付託相成りました昭和十四年法律案の提案理由を御説明申上げます、現在神社、寺院等に對しましては、御承知の通り國有財産法、國有林野法又は「寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財産ノ處分ニ關スル法律」等の規定に依りまして、國有境内地を無償で貸付け、又は社寺上地の森林を社寺保管林として使用、收益せしめ若しくは國有境内地の讓與、拂下等に關して特別の規定を設けてございます、是は一面に於きまして是等の國有財産は古來社寺等の所有であつたものが、明治の初年に行はれました地租改正の必要に伴ふ土地の官民有區分の査定又は社寺上地處分等に依りまして國有財産となりました關係もあり、又他面に於きまして宗教團體を保護致しまして、其の教化作用を十分に遂げさせようと云ふ趣旨から、斯樣なことに相成つて居るのでありますが、此の際此のやうな沿革的な財産上の特殊關係を整理する必要がございます、就きましては是等の社寺境内地又は社寺保管林が國の所有となりました沿革を考慮致しまして、此の際之を社寺等に對し、一定の條件の下に、讓與又は時價の半額賣拂等を致しまして、從來の特殊關係を整理しようとするものでございます、以上の理由で此の改正法律案を提出致しました次第でございます、本法案の概要を申上げますると、第一は讓與に關する事項でございまして、地租改正若くは社寺上地又は寄附等に依りまして、國有となつた國有財産で、本法施行の際現に社寺等に對しまして、國有財産法に依つて無償で貸付けてあるもの又は國有林野法に依つて保管させてあるものであつて、宗教活動を行ふのに必要と認められますものは、其の社寺等から一定期限内に申出がありましたならば、之を讓與しようとするものでございます、第二は時價の半額に依る賣拂に關する事項でありまして、地租改正、若しくは社寺上地又は寄附等に依つて國有となつたものでなくとも、例へば國の費用で購入したものであつても、本法施行の際に、國有財産法に依つて無償で貸し付けてあり、宗教活動を行ふのに必要なものは、其の社寺等に於て、一定期限内に申請をしたならば、時價の半額で賣拂を爲すこととし、又其の賣拂代金を現金に依る即納を困難とするものに付きましては、十年内の年賦延納又は土地に依る代物辨濟を認めることと致すのであります、第三は、讓與又は賣拂をすることが出來る國有境内地が、讓與又は賣拂をする前に、耕地整理又は土地區劃整理の施行地區に編入せられた場合の處置でありますが、此の場合に於きましては、社寺等が讓與又は賣拂を受けた後に、右のやうな地區に編入せられた場合と同じ結果を得らるるやうに致す爲めの規定を設けてあります、第四は、社寺保管林に關する事項でありまして、從來國有林野法の規定に依りまして、社寺に保管させてありました森林の中で社寺が植栽したものに付きましては、社寺より一定期限内に申請があり、國に於て森林の管理經營上特に必要があると認めるものは、本法施行の日から國有林野法の規定に依る部分林を設けたものとし、部分林としないものに付きましては、社寺が費した有益費を一定の基準に依つて補償することと致すのであります、第五は、社寺等に境内地として無償で貸付けてある御料地に關する事項でありますが、斯る御料地は改正憲法の施行に伴つて、國有の雜種財産となることになつて居りますが、雜種財産となりましたならば、從來より國有財産であつた場合と同樣に、讓與又は半額賣拂をすることと致すのであります、第六は審査會に關する事項でありまして、本法に依りまして行ふ讓與、賣拂又は補償の決定は、之を愼重且公正ならしめる爲に、社寺境内地處分審査會又は社寺保管林處分審査會を設けまして、之に諮問することに致すのであります、更に又本法に依る行政處分に對する訴願を裁決するに當りましては、重ねて社寺境内地處分審査會又は社寺保管林處分審査會に諮問するのであります、第六は、從來認めて來ました無償貸付關係の廢止でありますが、讓與又は賣拂をすることに決定致しました國有境内地に付きましては、其の讓與又は賣拂の日迄引續き無償貸付を認めますが、然らざるものに付きましては、是迄ありましたやうな無償貸付關係は、本法施行の日から消滅せしむることに致すのであります、以上大體の御説明を申上げたのでございまするが、何卒御審議の上速かに御贊成あらむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=2
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003・梅渓通虎
○委員長(子爵梅渓通虎君) 是より質疑に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=3
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004・高崎弓彦
○男爵高崎弓彦君 今伺つて居ると、整理する必要があると言ひますが、其の必要があると云ふのはどう云ふ必要なんでありますか、それをちよつと伺ひたい、其の理由なんですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=4
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005・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 御説明申上げます、新憲法の規定に依りますると、第八十九條に公の財産、即ち國の財産は宗教團體の使用に供してはならないと云ふやうな規定がございます、それで現在、國の土地を無償で貸して置くと云ふやうな形に置きますることは、此の規定の趣旨から見て適當でございませぬので、此の際其の沿革等を考へまして、元社寺の所有であつたものが、明治初年に於きまして地租改正、或は社寺上地等の處分に依りまして國に歸屬されたと云ふやうなものを元に返さう、或はさうでないものでも、社寺等の現に國から無償で貸付を受けて居るやうなものは半額で賣拂ふ、或は保管林制度をそれぞれ整理しまして、矢張り讓與なり、或は部分林にすると云ふやうなことに依りまして、此の國の財産を宗教團體に利用させて居ると云ふ關係を整理しなければならないやうな事情になりましたので、斯樣な整理を致したいと存じた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=5
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006・高崎弓彦
○男爵高崎弓彦君 さうすると、今の御説明に依れば、今迄持つて居つた所は其の儘願ひ出さへすれば持つて居られると云ふやうなことですか、それとももつと減してしまふとかと云ふ考でやつておいでになるのですか、そこの所をちよつと伺つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=6
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007・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 御答へ申上げます、元に返しまする場合の條件はそれぞれございまするが、此の改正法律の第一條が即ち讓與する場合の條件を定めてあるのでございます、其の一つは社寺上地、地租改正或は公共團體等の寄附に依らないところの、實質上の負擔にならない寄附に依るところの寄附だとか、一般の寄附と云ふやうな、元々社寺の本來の所有であると思はれるやうなことが一つの條件でございます、それから國有財産法に依りまして無償で貸付けて居ることと、或は國有林野法に依つて保管林として保管さしてあると云ふ、現在無償で國から借りて使つて居ると云ふことが一つの條件でございます、それからもう一つは、是が更に今後共宗教活動を行ふのに必要なものでなければならないと云ふ此の三つが條件でございまするから、大體に於きまして從來社寺等の元元所有であつたものを、國有になつて居るけれども、それを使つて居ると云ふものは此の際讓與出來ると思ふのでございます、唯其の讓與の範圍に付きまして勅令の方にそれぞれ規定を致して居りまして、其の規定は從來と大して變りございませぬが、大體宗教の法人と致しまして祭祀法要を營んだり、其の他尊嚴を維持する爲に必要なものはやりますけれども、國土保安上どうしても國に於て利用しなければならないと云ふやうな部分がございましたならば、其の點は留保されることに相成ると思ふのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=7
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008・瀬川彌右衞門
○瀬川彌右衞門君 ちよつと同ひますが、嘗て寺のものであつた、それを一旦返しまして、それに依つて幾らか國から金を頂戴して其の御寺を維持して居ると云ふ場合は、どう云ふ風に解釋したら宜いのですか、例へば國の所有でありますが、何か金を頂戴して居るのださうです、其の金で寺を維持して居る、併し元はそれは寺のものであつたのだ、斯う云ふ場合はどう承知したら宜いものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=8
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009・福田繁
○政府委員(福田繁君) 只今の御質問は恐らく社寺保管林の問題だと思ひます、社寺保管林は先程御説明申上げましたやうに、元々明治四年當時に社寺が持つて居りましたものを、上地處分に依つて取上げたものであります、それを明治三十二年でございますか、社寺に保管を委託致しまして、それから上る一定の收益を社寺に分收さして居る制度でございます、さう云ふものであらうと思ひますが、今度の此の法律に依りまして、一部分は宗教活動に必要な範圍と致しまして境内として讓與致すのでありますが、其の他は社寺が投じました有益費を補償を致しまして、其の他は解除致します、斯う云ふ處分に相成つて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=9
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010・松尾國松
○松尾國松君 此の法律は、條項は僅か十四條であるけれども、今日迄の土地に關する實情から申すと、相當に複雜な關係を持つて居るのであります、先程北村政務次官の説明の中にもありましたやうに、改租の際それぞれの處分をされた、其の時の實例を申すと、改租の際には、全國的にはないけれども、地方に依つては、社寺の名にして置くと沒收されてしまふ、斯う云ふ關係に於て、或は當時の神社總代の名に變へて居るものもある、又黙つて居つて御料地の方に編入させたのもある、又寄附して社寺に置けば、將來どう云ふ思想變化が來ても宜いと云ふので、社寺保護の爲に寄附したものもある、又事實社寺のものであつて、其の當時の取扱ひの役人の考に依つて取上げられたものもある、さう云ふやうな關係から言ふと、非常に複雜なる關係を持つて居るのであります、處が一旦是が法律になると、今迄の役人的な頭で取扱ふから、第一條に斯う云ふことがある、第二條に斯う云ふことがある、斯う云ふことだけで取扱つて行く、さうすると實際の問題と非常に掛け離れた結果を見ることは、本員が今日から斷言して憚からぬものであります、例へばもつと具體的に申すと、國幣小社伊奈波神社は藩主徳川公から十二町歩の寄附をされて、更に附近の土地を合せて十八町歩程あるのが、それが御料林に編入されてしまつた、處でそれは現在に於て、先程の説明に依ると……、私は項目を擧げて聞かうと思ふが、さう云ふ複雜なる關係がある、それが從來の如き役人的の獨斷的の取扱になれば、事實とてつもない掛け離れた結果を見ることは、私は全部とは言はぬが、相當數あることを今から心配するものであります、從つて此の法律を實施するに當つては、もつと事情を調べて、具體的なる事實を調べて、さうしてそれに依つて處理されることを必要とすると云ふことを申して置きます、單に本員の希望でなく、法律を實施するに當つてそれが必要である、從來の如き役人の一方的の法規依存其の儘の獨斷的の解釋でなく、實際の實情に即した正しい取扱ひをすべきものであると云ふことを本員は主張するものである、又それに付ては此の社寺有と云ふものも、現在に於ては社寺有でも何でもない、御料地になつて居ると云ふやうなものも、それを申請する時に當つて、昔からの書面を出せ、あれをしなければいかぬ、之をしなければいかぬと今迄の役人的なことを言つても、そんなものは出せはしない、又有りはしない、だからさう云ふものは實際に即した方法で之を處理することが必要であると私は考へるものである、本法施行に左樣な考を主張する者である、それに付て一つ聞きたいことは、本法は讀めば子供でも分る、誰でも皆分るが、本法を本當に如何にして、どう云ふ方法で、今のやうな複雜な事情を處理されるか、斯う云ふ點を一つ承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=10
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011・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 御答へ申上げます、只今の御話は御尤もな御話でございまして、是は明治初年に行はれました社寺上地處分或は地租改正に依りまして、官民有區分をされたと云ふ時には、御説のやうに、社寺側と致しましては色々の事情から、寧ろ之を國有にして貰つた方がいいと云ふやうなことを考へられて、國有になつたと云ふやうなものもあるのでございます、それで色々其の當時の沿革を能く調べて見ますと、さう云ふ取扱を統一するやうなことに付て、當時の政府も色々苦慮したやうな通牒が殘つて居ります、さう云ふ風に、結局其の當時の色色の事情で、本來社寺のものであるべきものが國有になつたと云ふやうな疑ひがございましたやうな關係もありまして、明治三十二年に國有土地森林原野下戻法と云ふ法律が出まして、之に依りまして、地租改正又は社寺上地處分に依り官有に編入せられ、現に國有に屬する土地森林原野若しくは遊牧地には、其の處分の當時之に付き所有又は分收の事實ありたるものは、此の法律に依り明治三十三年六月三十日迄に主務大臣に下戻しの申請をなすことが出來ると云ふやうな法律が出たのでございます、それで元所有又は分收の事實があると云ふ場合には、此の申請を致しまして、戻して貰つた事實があるのであります、併し其の當時も矢張り國有地を使つて居ると云ふやうな、其の當時の官尊民卑の風潮から申しますと、却つて社寺の格が上だと云ふやうな風に考へたり致した者がございまして、此の規定に依る下戻しを申請しなかつた、或は期間も短うございましたので、此の趣旨が徹底しない爲に下戻しを申請しなかつたと云ふやうなものなどもあつたやうでございまして、之に依りまして、從來社寺の所有であつたものが全部返つたと云ふことにはなつて居ないのであります、そんな關係もございまして今日に至つたのでございますが、今囘の法律は、さう云ふやうな沿革もございまするので、從來社寺所有であると云ふ沿革のあるものは、寧ろ今迄のさう云ふ色々沿革的に問題になつて殘つて居りましたものを整理して元へ返すと云ふのが趣旨でございまして、寧ろ御趣旨に副ふやうな措置を執りたい爲に、今囘の法律が改正になつたことと、斯う御考へ戴いて然るべきかと存ずるのであります、尚官吏が、從來のやうな官吏だけの頭で判斷して讓與を澁ると云ふやうなことに付きましては、只今御話がございましたやうな結果になることは、極力是は避けなければなりませぬので、特に此の處分審査會と云ふものを作りまして、此の審査會に於きまして、民間の學識經驗のございます方々にも入つて戴きまして、十分に審査して戴きまして、最も民主的な方法で其の判定を得たいと、斯う考へて居る次第でございます、尚其の場合に、上地であるとか地租改正に依つて官有編入と云ふやうな事實の證明に付きましては、非常に古いことでございますから、なかなか困難であらうと云ふことは、私共も左樣考へて居ります、それで此の場合に證據書類と云ふやうなものも、成るべく廣く求めまして、例へば社寺には直接證明出來るやうな朱印状、黒印状、其の他公簿公書或は賣買讓與、質入、寄附と云ふやうな色々な直接の證據もございます、さう云ふ證據があれば固より結構でありますが、然らざる場合に於きましても、間接的な傍證でも結構だと考へて居るのでございます、例へて申しますると、其土地の古老等の話に依つて、明治以前からあすこにお社があつて、或は神社があつて、それがあの社寺でずつと使つて居るのだと云ふやうな事實が分れば、其の當時社寺の所有であつたものが明治維新の際に、假りに編入されたと云ふやうな一つの資料にならうかと存じます、そんな風に成るべく廣く間接的な傍證も認めて處理したいと考へて居りますから、萬々御説のやうな間違のないやうに出來るかと思つて居りまするし、又左樣に致したいと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=11
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012・松尾國松
○松尾國松君 加藤政府委員の御説明で、私は本法の眞意と云ふものが非常に能く分つて、今の御説明の如き御取扱を受ければ大變結構である、其の次に伺ひたいのは、宗教的活動と云ふ範圍でありますが、是は具體的なことを申して御尋ねするのですが、例へば甲の神社は社格が上であるけれども、其の所有地は……多く田畑を言ひますが、田畑山林が少い、處が乙の神社は從來社格は下であるけれども、氏子が神社の繁榮を圖る爲に、繁榮と申しますか、神社の壯嚴を維持する爲に田畑を二町歩、山林を五町歩持つて居る、斯う云ふやうな場合に於ては、甲と乙との從來の社格は違ふが、さう云ふ宗教活動の必要なる範圍と云ふものは、神社に依つて何か制限なさるか、それは現在持つて居れば宜いと云ふのか、其の邊はどんな御考でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=12
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013・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 宗教活動を行ふに必要だと申しますることは、大體御手許に參考資料として提出したいと思ひますが、勅令案の第一條に該當するやうな事項が宗教活動を行ふに必要なものと、斯う考へて居る次第でございまして、只今の御話に依りますと、田畑と云ふやうな例をお擧げになりましたのでございますが、是は社會の收益としての目的に使はれて居るものぢやないかと考へられまするので、さう云ふものは讓與致す考はございませぬか、唯山林の方でございますと、是は社寺保管林の、それが境内地として使はれて居るやうなものでございますれば、讓與になりますし、又然らざるものに付きましては、部分林の……其の社寺が植栽したと云ふ事實があれば部分林になり、其の他のものに付ては補償になると云ふやうな取扱で解決されることに相成つて參るやうに思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=13
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014・松尾國松
○松尾國松君 もう一つ、現在に於て當局では調べが出來て居ると思ふのでありますが、各縣の……數が十萬以上もあるのですから、さう全部細かい所迄は行かぬと思ひますが、神社だけでも分り得る限り、神社の大凡の財産が分れば、さう云ふ調べが知りたいと存ずるのであります、其の次に第三條の國有財産の範圍は勅令で決める、斯うなつて居るのでありますが、其の勅令の要綱と、是だけを委員長より當局に提出を要求して戴きたいと存じます、私は是で質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=14
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015・梅渓通虎
○委員長(子爵梅渓通虎君) 承知致しました、さう云ふ風に傳へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=15
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016・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 只今の御尋の點が二つあつたのでございますが、其の第一點の、社寺有の現在讓與、賣拂の對象となるべきやうな土地がどうかと云ふ御尋でございます、それからもう一つは勅令の要綱と云ふ御尋でございますが、御手許に配付してございますと思ひますが、御持ちでございませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=16
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017・松尾國松
○松尾國松君 要綱の方は承知致しましたが、最後の社寺の對象になると云ふのは、何と申しますか、餘りに大綱で能く分らぬのですが、もう少し細かいものは分らないでせうか、私は率直なことを申すと、もう少し大きい神社に關してどの位の土地があるかと云ふことが知りたいのであります、さうしてそれが今御尋ね申したやうな、實際にあるかないかと云ふことが知りたいのであります、尚率直なことを申すと、委員會に出ると云ふことは、當局から案が出ると云ふことが中心になつて、委員會其のものから調べて出すと云ふやうなことは、從來の委員會がさうであつたやうに今後もさうであらうと存じます、だから私の恐るることは、先程加藤政府委員の御説明で、私は此の法律施行には安心をしたものでありますが、扨て實際の實施になると、さうでなくて、俺が公布して居るのだと云ふやうな所でそりくり返つて、頼んで來る者はお百度參りをしなければならぬと云ふやうな結果を見るのでありますから、さう云ふ時の審議材料に出來るなら私は各神社の要領が知りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=17
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018・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 具體的にどの神社に於てはどう云ふ國有地を持つて居るかと云ふやうな一應の調べは非常に澤山ございますが、まあ一二だけ申上げて見ますと、元の官幣大社の社格の明治神宮は御料地が二十萬二千六百八十二坪、國有地が一萬七千四百八十坪、斯う云ふやうな數字になつて居ります、それから官幣大社の札幌神社と云ふやうな所でございますと、國有地が、是は非常に多うございまして、二百五萬九千六百二十七坪と云ふやうなことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=18
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019・松尾國松
○松尾國松君 有難うございました、もう其の邊で宜うございます、餘り細かいですから、もうそれで結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=19
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020・梅渓通虎
○委員長(子爵梅渓通虎君) 松尾委員に申上げます、今の數字を次囘の委員會開會日迄に大體の數字を表に致しまして提出せられるさうでございまするから、其のことを申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=20
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021・高崎弓彦
○男爵高崎弓彦君 此の法律に係るのは何でございませうか、林野だけのやうに了解して宜いのでありますか、畑地と云ふやうなものは何か除外されたやうにさつきちよつと承つたのでありますけれども……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=21
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022・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 御答へ申上げます、境内地としての土地竝にそれに附隨致しまする立木地に、其の他の定著物と云ふものと、それから從來の所謂保管林としての林野と、此の二つでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=22
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023・高崎弓彦
○男爵高崎弓彦君 さうしますと、先程の伺つた畑地なんかは收入を目的とするものは除外される譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=23
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024・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 國有境内地を無償で借りて居る場合でも、其の社寺が之を境内地として使はずに、現實には田畑にして居る、或はそれは借家として貸して借地にして居ると云ふやうな、所謂目的外使用と稱されるものがあるのでありまして、さう云ふものは本來國有財産法の規定から申しますと、其の社寺用に使つて居る間は貸せるのでありますが、さう云ふ宗教活動以外のものに使はれた場合は取上げることになつて居るのでありまして、さう云ふものが現に殘つて居れば、此の際讓與が出來ない、斯う云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=24
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025・高崎弓彦
○男爵高崎弓彦君 若し其の場合、關係の社寺で以てそれの土地を自分の方で買ふと云ふやうな場合でも、それは賣らぬ、斯う云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=25
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026・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 社寺側に於きまして買ひたいと云ふ場合には勿論賣る積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=26
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027・高崎弓彦
○男爵高崎弓彦君 宜いのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=27
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028・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=28
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029・高崎弓彦
○男爵高崎弓彦君 さうして矢張り其の時價の半額で讓つて呉れるのですか、それとも時價でなければ賣らないと仰しやるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=29
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030・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 半額で賣ることが出來まする場合は本法改正法の第二條にございまするやうに、それが矢張り「宗教活動を行うのに必要なもの」と限定になつて居りまするので、純粹の收益目的に使はれまする場合には、時價全額で買つて戴く外に途はないと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=30
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031・松尾國松
○松尾國松君 もう一つ今の説明で疑問を生じたのでありますが、社寺には御承知の通り田畑が相當にあるのであります、田畑として社寺を維持する爲に田畑を寄附して居る、それでありますから社寺有として田畑が澤山ある、是は境内地でないから、所有して居るものは差支ないと云ふ風に考へて宜いのか、どうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=31
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032・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 社寺が田畑を持つて居りまする場合に、殊に神社なんかでございますると、矢張り神事に使ふものを栽培すると云ふことがございまして、さう云ふ問題の所は矢張り是は「宗教活動を行うのに必要なもの」として認めることになると思ひます、唯普通の本當の收益目的の、全く御神事と關係ないやうな目的に使はれるものは、是は「宗教活動を行うのに必要」と認められませぬので、此の場合だけは讓與の對象にはならぬ、斯う云ふ風に考へるのでございます、どうぞ御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=32
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033・あね崎正治
○あね崎正治君 今ので何ですが、「宗教活動」と云ふ範圍の問題になりますが、收入を目的として田畑若しくは借地にして居る場合に、其の收入に依つて其の社寺が慈善事業とか社會事業、所謂私共から見るとそれは宗教活動の一部分だと思ひますが、さう云ふものを營んで居る場合はどうなりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=33
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034・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 結局社寺が其の收入に依りまして、さう云ふ公益事業を行ふと云ふやうなこともあり得る譯でございまするが、現實に公益事業に使つて居りまする其の土地はやりまするけれども、其の財源としての土地其の他森林と云ふものは對象には考へられないのでございまして、本規定はさう云ふ風になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=34
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035・あね崎正治
○あね崎正治君 さうしますと、總て矢張り此の「宗教活動」と云ふことは、直接儀式を營むと云ふことだけに限るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=35
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036・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 此の「宗教活動」と云ふことの内容と致しまして、直接と申しました方が宜しうございますが、間接の場合は全然含まぬとも申し兼ねますが、大體宗教團體が最初法要を營む直接のものは勿論のこと、譬へて申しますと、其の社寺の尊嚴を維持するとか、或は災害防止の爲に必要な土地と云ふやうな、色々其の社寺に取つてそれがなければ困る、即ち宗教活動を行ふのに困ると云ふものは含めでございまするが、單なる財政收入の財源だと云ふことでございますると、其處迄擴げることは、所謂宗教を國家が保護すると云ふやうな所迄發展して來やせぬかと云ふ心配もされまするので、其の點は憲法の精神から見て適當でないと思ひまして削つた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=36
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037・松尾國松
○松尾國松君 もう一つ……、どうも私の考が惡いのかとも思ひますが、例へば先程も私申したのでありますが、現實に神社に五段歩潰して居る、社有地になつて居る、それが田二段に畑三段である、其の收益は何に使ふと、斯う云ふことになると、口では……口ではでない、それは神社の御祭りに使ふものです、氏子が寄つて御祭りをすると云ふ時に、其の收入を當てて使ふのです、ですから神事と言へば神事である、それが先程申した甲なる神社に於ては何もないが、乙なる神社に於ては、宮は小さいけれども田畑を五段持つて居る、一町持つて居る、斯う云ふ場合に於て、それは現在の神社有であります、神社有であるが、さう云ふ土地に付ては先程加藤政府委員の御説明に依ると、除外されるやうに承つたんですが、其の邊はどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=37
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038・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 御答へ申上げます、或は只今のやうな社寺が田畑を持つて居ると云ふことは、多くの場合社寺固有の所有のものではないと思はれるのでございますが、殊に寄附に依つたと云ふやうなことになりますと、恐らくそれは社寺自身の所有になつて居りはせぬかと存ぜられますので、さういふものは勿論此の際問題にするのではございませぬので、國が持つて居るものでそれを貸して居る場合に而も社寺の境内地として貸して居るものでありまするから、境内地として使はずに收益目的に使はれて居る部分は、此の際讓與をしないと云ふだけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=38
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039・松尾國松
○松尾國松君 分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=39
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040・錦小路頼孝
○子爵錦小路頼孝君 此の讓與するものと半額賣渡になるものとの區別はどう云ふ風になりますのですか、宗教活動を行ふ必要性の度合、詰り強い弱いに依りまして、或ものは讓與となり、或ものは半額賣渡と云ふやうになるのでせうか、其の點を一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=40
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041・加藤八郎
○政府委員(加藤八郎君) 御答へ申上げます、其の點は宗教活動を行ふと云ふ必要性の厚薄ではございませぬ、是は全く社寺上地、地租改正、或は寄附と云つたやうな風に、元々社寺の所有であつたものが、明治初年に色々の斯う云つた取扱で國のものになつたと云ふやうなものは、それを返しますので、讓與致しますが、さうでないものは半額賣拂ひ、結局さう云ふ元々向ふものであつたことのないものは半額、斯う云ふことでございます、あとの條件は同じであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=41
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042・松平乘統
○子爵松平乘統君 神社の所有して居る公園地などがありますが、今度はさう云ふ公園地と神社との關係はどうなりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=42
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043・福田繁
○政府委員(福田繁君) 只今神社の使つて居ります境内地が公園になつて居る場合の御尋でございますが、此の點に付きましては、本法施行の際に、現に無償貸付を受けて居る國有財産と云ふやうな規定の致し方をして居ります關係上、公園に設定されて居ります境内地に付きましては、直接社寺が無償貸付を受けて居ると云ふやうな形にないのでございます、從つて公園を解除する、此の本法施行前に公園を解除すると云ふやうな手續をして參ることになつて居ります、從つて宗教活動に必要な範圍を事前に解除致しまして、さうして其の分を神社の境内地として今後此の法律の對象として讓興して行く、或は賣拂をして行く、斯う云ふ手續になるのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=43
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044・梅渓通虎
○委員長(子爵梅渓通虎君) 外に御質問もございませぬければ、本日は是にて散會致しまして、次囘は明後日午前十時より開會致します
午前十一時五十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=44
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045・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 子爵 梅渓通虎君
副委員長 男爵 中村徹雄君
委員
侯爵 嵯峨實勝君
子爵 松平乘統君
子爵 錦小路頼孝君
白澤保美君
あね崎正治君
男爵 高崎弓彦君
男爵 尚琳君
松尾國松君
齋藤万壽雄君
杉山茂君
瀬川彌右衞門君
政府委員
大藏政務次官 北村徳太郎君
大藏事務官 加藤八郎君
同 今泉兼寛君
文部事務官 福田繁君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201716X00119470322&spkNum=45
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