1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○船員法を改正する法律案
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委員氏名
委員長 伯爵 後藤一藏君
副委員長 男爵 伊藤一郎君
侯爵 廣幡忠隆君
侯爵 前田利建君
子爵 實吉純郎君
子爵 七條光明君
村上恭一君
渡部信君
霜山精一君
男爵 小原謙太郎君
男爵 前島勘一郎君
木下謙次郎君
板谷順助君
田島正雄君
山地土佐太郎君
杤木嘉郎君
黒澤富次郎君
重宗雄三君
長島銀藏君
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昭和二十二年三月二十三日(月曜日)
午後一時五十二分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=0
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001・後藤一藏
○委員長(伯爵後藤一藏君) それでは只今から船員法を改正する法律案の特別委員會を開會致します、それでは運輸大臣から最初に御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=1
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002・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) それでは御説明申上げます、船員法を改正する法律案の提出理由は既に本會議に於て御説明申上げました通り、新憲法の施行に伴ひ、新たに船員の給料、勞働時間、休息其の他の勞働條件に關する基準を定めますと供に、船員の勞働關係及び船内の紀律を、終戰後の新事態に即應させることに依り、船員の生活の安定を圖り、以て我が海運再建の一助たらしめむとするものでありますが、次に主要な改正點に付きまして具體的に御説明申上げたいと存じます、新法案は十四章百四十七條より成つて居りますが、第一章總則に於て船員法の適用範圍を擴張致しまして、總トン數五トン未滿の船舶、湖、川又は港のみを航行する船舶及び三十トン未滿の漁船を除いて、總ての船舶に乘り組む船員に適用することとし、又新たに乘組員以外に豫備員をも船舶法の適用の對象と致しました、第二章、船長の職務及び權限に於きましては、從來商法中にありました船長の公法的義務の規定を、船員法中に移しまして、統一的に規定する外、現行法の規定を踏襲したのであります、第三章、紀律に於きましては、新憲法の精神に基きまして、所謂海員の強制乘船の制度を廢止する外、懲戒の種類中から監禁を削除する等、人權尊重の見地に立脚して、所要の改正を施しました、第四章以下は、前二章が海上航行の安全保持に關する規定でありますのに對して、海上勞働の保護規定とも言はれるべきものであり、國際勞働條約の内容を採用すると共に、勞働基準法案と相並んで、新憲法の要請である健康で文化的な最低限度の生活を船員に對し保障せむとするものであります、右の勞働保護規定の内、新たに規定せられました主要の點を申述べますと、先づ雇入契約の締結に際しましては、勞働條件を明示するものとする外、雇入契約に關し種々の保護規定を設けますと共に、船員が契約の解除を爲し得る場合を擴張致しました、又給料其の他の報酬に關しましては、其の支拂方法に關し、從來より一層厚い保護を與へ、又必要ある場合は、最低給料を定め得ることとする外、歩合給に付て、一定額の保障制度を設けました、勞働時間及び休日に付きましては、八時間勞働を原則とし、碇泊中に於ては、原則として週休日を與へることに依り保護を圖る外、勞働時間制の實施を可能ならしめるのに必要な定員を乘組ませるべき旨規定して居ります、有給休暇は海上勞働の特異性に鑑み、最も重要な規定でありますので、勞働基準法案の休暇日數を遙かに上廻つた日數の休暇及び報酬を與へることとして居ります、食料及び衞生に關しましては、法定の食料表に依り、食料を支給すべき船舶の範圍、醫師を乘り組ませるべき船舶の範圍醫藥品等を備へ置くべき船舶の範圍を擴張致しますると共に、健康證明書を總ての乘組員に所持せしめて、船員の健康の増進に遺憾なきを期して居るのであります、次に船員の最低年齡は、現行法通り一般の者に付ては十五歳、石炭を運搬し又は石炭を焚くと云ふやうな重勞働に從事する者に付ては更に最低年齡を十八歳と定めてありますが、今囘の改正に當り從来勅令に依つて規定されて居つた例外は絶對に之を認めないことと致しました、又女子の船員に付きましても年少船員と共に夜間勞働を禁止する外、勞働基準案に準じた保護規定を設けてございます、災害補償の額は船員が後顧の憂なく職務に從事し得るやうに、從來の扶助額に比し劃期的に増額致しましたが、一面船舶所有者の負擔を輕減せしめる爲是等の補償を保險に依つてカヴアーすることとし、目下船員保險法の改正の準備を進めて居りますが、成案を得次第今議會に上程される豫定であります、右の外就業規則、監督制度等に付きましても概ね勞働基準法案の趣旨と同じく必要な改正を致して居ります、最後に本法案の立案の過程を申上げますと、本會義にも御説明申上げました通り、本法案は船主及び船員の代表者を初とし、關係各方面の學識經驗者から成る臨時船員法令審議會が全國主要港で開かれました公聽會の意見を參考として約半年に亙り、愼重審議を重ね、成案を得ました答申を骨子として居るのでございまして、最も民主的方法に依つて立案されたものでございます、何卒御審議の上御贊成あらむことを切望する次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=2
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003・後藤一藏
○委員長(伯爵後藤一藏君) 只今御説明がございまして、是から質疑に入りたいと思ひますが、どう云ふ方法でやつたら宜しいでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=3
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004・板谷順助
○板谷順助君 大體の質問をして、其の後で必要があつたら逐條審議されたらどうでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=4
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005・後藤一藏
○委員長(伯爵後藤一藏君) 皆さん御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=5
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006・後藤一藏
○委員長(伯爵後藤一藏君) 御異議がないやうでありますから初に大體に付ての御質問を願ひまして、必要であれば其の後に於て逐條審議をするやうに致したいと思ひます、ちよつと速記をを止めて……
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=6
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007・後藤一藏
○委員長(伯爵後藤一藏君) 速記を始めて、それでは此の際大臣に御質問のある方がありましたら御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=7
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008・村上恭一
○村上恭一君 實は咄嵯のことでありますので、まだ十分質問の準備が出來て居りませぬが、豫て考へて居りますことの二、三に付て御伺ひしたいと思ひます、先づ御伺ひ致したいのは、茲に提案せられて居りまする法律案、船員法を改正する法律案は頗る厖大なるものでありまして、條數で申しましても、百數十箇條に上つて居ります、船員に關する根本的な、さうして全面的な法律でありまして、申さば法典であります、此のやうな厖大な法典を御立案なさる迄の當局各位の一方ならぬ、御苦心は、固より私共の深く敬意を表する所でございます、唯只今の場合に於きまして、私共、少くとも私が甚だ遺憾に感じますることは、斯樣な厖大な、さうして重要な法律案を、此の會期の極めて切迫致しまして、殘す所旬日を超えないと云ふやうな時期に至りまして帝國議會に提案せられ、我々が之を審議しなければならぬと云ふ羽目に落し込まれましたこと、此の點を私は甚だ遺憾に感ずるのであります、先刻主務大臣の御説明に依りますれば、此の法律案を立案する迄には三年有餘の年月を閲したと云ふことであります、御立案迄に左樣に長年月を費したものでありまするならば、帝國議會に於て之を審議しまするのにも、相當な時間を與へられるのが當然ではないかと思ひます、我々が之を十分に審議する時間がなく謂はば鵜呑みにして之を通過させると云ふことは、我々に於て遺憾であるばかりでなく、今日迄長い年月に亙る當局各位の御苦心に對して、適當な敬意を表する所以ではない、斯樣に存ずるのであります、就きまして、私が質問したいのは、此の法律案はどうしても此の目下開會中の帝國議會に於て通過させなければならぬものであるかどうかと云ふ點であります、此の法律案の末尾に附いて居りまする理由書に依りますれば「日本國憲法の施行に伴い」云々とありまする此の文句を文字通り解しますれば、改正憲法が施行されまする本年五月三日迄に此の法律を制定しなければならぬと云ふやうに見えまするが、果して其のやうなものでありませうか、此の改正法案はそれ程迄に改正憲法と直接離すべからざる關係があるものなのでありまするか、此の點を私は御伺ひしたいと思ふのであります、他の多くの法律に付きましても同樣の問題はあります、例へば民法とか、刑法はどうでありましたか、民事訴訟法、刑事訴訟法と云ふやうな法律…改正憲法に不可分の關係にあるものがあるやうであります、處でそれは其の關係法律の一部改正が到底間に合はぬので、應急措置の臨時立法が企てられて居ります、船員法の關係に於きましても、萬々已むを得なければ左樣な應急措置の立法と云ふことも考へられるやうに思ひます、さうせずして此のやうに本式に全法律案を御提案になりまして、さうして之を數日の間に議了することを求められる、さう致す要が果してあるのかどうか此の點に付きまして、私は當局の明快なる御答辯を戴きたい、是が私の質問の第一點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=8
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009・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 村上さんの御質疑に御答へ申上げます、今囘の改正憲法の施行に伴ひまして、勞務者の給料とか、或は勞働時間、或は休息、其の他の勞働條件に關する基準的な事柄は法律で決めると云ふ憲法規定がございまして、其の憲法の趣旨に添ふことを期する爲に、陸上勞働者に付きましては、御承知の勞働基準法案が今議會に提案され、海上勞働者に付きましては、船員法が提案された次第でございます、差迫つた此の機會に於て突如として提案すると云ふことは、誠に私共も恐縮に存じて居りまするが、三年前から審議をしたと云ふのでございませぬ、半年と云ふ譯でございまして、半年前からでございまして、是は關係筋等の要望もございまして、又新憲法の趣旨に副ふ爲に勿論必要でございますし、こちらも研究して居つた譯でございまして、而も其の審議は、只今も御説明申上げました通り、臨時船員法令審議會と云ふ會を設けまして、此の方面に於ける學識經驗者を網羅致しまして、審議會を開くこと三囘、それから小委員會を開くことが十七囘、公聽會、パブリツク・ヒアリングをやつたことが十囘に及んで居りまして、大體其の審議過程と云ふやうなものは別に祕密を要することではございませぬ、パブリツクとかオープンとか言はれるやうに、詰り公の誰でも分つて居る所で研究し、審議し、討論した譯でございまして、當時新聞等にも見えて居りますが、尚船員法の要綱も、先般實は新聞に發表した次第でございまして、實は其の前にそれぞれ草稿等を各位に御差し廻し致しまして、豫備審査でも願つたら尚宜かつたのではないかと思ひますが、併し學識經驗者の中には、貴衆兩院議員から出られた方も澤山ある譯でございます、問題は結局海上勞働關係が主でございまして、あと紀律だとか船舶の運營に關する船長の職權職務と云ふやうなことも規定してございますが、是は寧ろ新しき規定ではございませぬので、村上さんの仰しやるやうな一つの法典を作る、一つのコードを作ると云つたやうな意味で唯此處へ合せたと云ふやうな程度でございます、要するに問題の中心は、海上勞働に關する基準的規定でありまして、之を作るに際しましての其の經過經緯は、只今申上げた通りであります、甚だ差迫つた期間に御審議願ふことは、重々恐縮でございますが、相成るべくは憲法の施行に伴つて此の法律案が御協贊願へたならば一番宜しいのぢやないかと、斯う熱望して居る譯でございますから、何卒宜しく御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=9
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010・村上恭一
○村上恭一君 只今の主務大臣の御答辯に依りますれば、此の改正法律の成立することは、改正憲法の施行前であることを相成るべくは希望する、斯う云ふ御言葉でございまして、相成るべくと云ふのは、絶對の必要ではないやうに思ひます、どうしても改正憲法の施行と同時に此の新しい船員法を施行しなければならぬと云ふ絶對の必要ではない、相成るべくさうなることを希望すると云ふことと私は了解致しますが、恐らくさうであらうと私も考へて居りました、それならばそれで、其の點は私は了解致します、即ち是はどうしても改正憲法の施行迄に拵へ上げなければならぬものではないと云ふやうに私は了解して置きます、次に御尋ね致したいことは、此の船員法と勞働基準法との關係でございます、今期議會に別途勞働基準法が提案されて居りまして、目下本院に於て審議中と存じます、あの勞働基準法と此の船員法とはどう云ふ關係のものでありまするか、漠然と觀察致しますれば、勞働基準法が一般法であつて、船員法は特別法であると云ふやうに認められます、勞働基準法は一般の勞働者に關する法律であり、船員法は特に船員に關する法律であると云ふやうに考へられます、さう考へて宜しいものでありませうか、さうだとしますれば、一般法律の解釋適用の法則に從ひまして、船員に關しては寧ろ船員法を適用する、船員法に別段の規定のない事項に付ては、勞働基準法を適用すると云ふことになる筈でありまするが、其のやうに考へ定めて宜しいものでありませうか、さうして勞働基準法と船員法との間にはどの位の違ひがあるものでありまするか、一般法に對する所の此の特別法を制定する、其の開きはどう云ふやうなものでありまするか、是は細かい點に亙りましては、長い説明を要しませうから、出來まするならば概略の、さうして簡明な御説明を伺ひたいと思ひます、此のことに續きましては、是も形式的の考へ方でありますが、目下提案されて居りまする勞働基準法が、若し此の議會に於て議決を經なかつた、それが成立しなかつたと云ふ場合に於きまして、此の船員法は、それに拘らず、議會の議決に依つて成立すると云ふ事態を生じて差支ないものでありまするか、一般法たる勞働基準法が成立せずして、特別法たる船員法だけが成立しても支障はないかと云ふ點、是は要するに勞働基準法と船員法との關係と云ふ問題に歸著します、其の問題の一環となるものでありますが、是等の點に付きまして大臣又は政府委員より御説明を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=10
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011・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 村上さんの御質問に御答へ申上げます、勞働基準法と船員法との關係でございますが、勞働基準法は陸上勞働者の勞働條件の基準に關することを規定した法律であり、船員法は仰しやる通りコードでありますが、其のうち海上勞働に關する分に付きまして、海上勞働者の勞働條件に關する基準を規定したものであります、從つてそれぞれ相呼應しては居りますけれども、別箇の法典でありまして、特別法、一般法の關係には相成つて居りませぬで、竝存的な法典であります、從つて船員法の第六條に於きましては、勞働基準法の中の總則に關する部分を適用と云ふ文句で書いてあります、併し仰しやる通りに、是は海上勞働に關する特殊規定であるから、勞働基準法を一般法と見て、之を特別法と云ふ御解釋でも差支ないと思ひますが、要するに竝存的法規でありまして、兩々相俟つて新憲法の精神たる人權尊重なり勞働者の保護の實を擧げる、斯う云ふ規定を致した譯であります、從つて一方が通つて一方が通らぬと云ふことは、甚だ困ることでございまして、どうか兩方共車の兩輪でございますから、新憲法施行の日迄には、仰しやるやうな何等かの特別緊急的な措置などを執らないで、此の法律が適用出來るやうになることを切望して已まぬと云ふことを先程も申上げた次第でありますが、熱願致して居る次第でありますから、宜しく御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=11
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012・村上恭一
○村上恭一君 もう一點御伺ひしたいことがございます、それは船員關係の行政機構に付てであります、船員に關する行政、是は大雜把に言ひますれば、勞働に關する行政の一部であらうと思ひます、さう申して差支ないと思ひます、ところで、勞働に關する行政は、現在に於きまして、一般に厚生省が之を所管して居ります、而して傳へる所に依りますれば、一般の勞働行政を更に擴大し強化する爲に別箇の官省を設置する、即ち勞働省と云ふやうな中央の一省を設置する、其のことは政府部内に於きまして既定の方針であつて、遠からず實現されると云ふやうに仄かに承つて居ります、其のやうに勞働行政の機構が強化擴充せられるに當りまして、船員に關する行政も之に統合すると云ふことが考へられるのではなからうかと云ふやうに私は感ずるのであります、果して其のやうな行政機構の改正が適當でありませうかどうか、いや勞働省を設けることが適當かどうかと云ふことを申すのではありませぬが、勞働省が設置せられる場合に、船員に關する行政を之に統合すると云ふことが適當でありますかどうか、私は其處に疑を感ずるのであります、元來行政機構の組直し、改組と云ふことはむづかしいものでありまして、或一つの點から言ひまして一つの事務を吸收しますると、其の吸收せられた事務は、他の點から見れば、是と密接な關係のある事務と岐れると云ふことになります、一方をくつ附ければ他方から引離れると云ふことになりますので、行政機構の改組と云ふことは實にむづかしいものだと思ひます、で船員に關する行政、是は一面には勞働に關する行政の一部でありまするが、一面には又海運に關する行政の一部であります、廣く海運と云ふ行政があるに違ひない、其の海運行政の一部が船員行政であるに違ひないのであります、船員行政を勞働行政に結び附けますれば、それは海運行政とは離れると云ふことになります、即ち問題は海運の行政を勞働行政に附けるが宜しいか、又海運行政に附けるが宜いかと云ふことであります、そこが岐れ路であります、勞働に關する行政機構を擴充強化すると云ふ機運に乘りまして、船員の行政を之に吸収すると云ふ説が必ず行はれるであらうと思ひます、併しながら其のやうにして、船員に關する行政が海運行政から離れると云ふことは、又決して望ましいことではない、私は海運には海運の生命があり、性格がありまするので、船員行政は此の海運行政の一環として之に統合すると云ふことが適當ではなからうかと思ふのであります、此の點に付きましての政府當局の御意向を伺ひたい、是は實は運輸省に專屬の問題ではない、又露骨に言ひますれば運輸省の當局としては、船員行政を勞働行政に結び附けて、勞働省の所管に移すと云ふことを好まれないであらうと思ひます、是は正に政府全般の問題でありますので、運輸大臣から御答辯を伺ひますることは適當でないかも知れませぬ、併し政府一般の方針を承るべく内閣總理大臣の出席を求めると云ふことも、或は差迫つた時間では困難であらうと思ひまするから、私は運輸大臣に於きまして全政府を代表する意味を以て、さう云ふ態度を以て御答辯を願ひたいと存ずるのであります、又運輸省としましては、其の是なりと信ぜられる所に從つて之を守ると云ふことに付ての態度、關心の強さ、之を言明して戴くことになると思ひます、さう云ふ御心持を以ちまして、私の質問に對して適當な御答辯を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=12
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013・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 村上さんの御質問に御答へ申上げます、只今村上さんの仰せの御意見は私全然同感でございまして、深く傾聽致した次第でございます、申す迄もなく仰せの通り船員勞働に關する行政ばかりでなく、海運行政と云ふものが必ず船員行政には密接不可離の關係に於て伴つて來て居る譯でございまして、唯理論の要求に應じて勞働省が出來たからして、海員行政を全部向ふへ持つて行くと云ふことは理論倒れになつて、實際の需要に應じないと云ふことは御説の通りであります、假に海員行政だけを切離して、海上勞働行政だけを分離して向ふへ參つた處で、海上勞働と云ふものは、御説の如く非常な特殊性を持つて居るものでありまして、陸上勞働とは全然其の性質が違ひますし、又規律と云ふ關係もありますし、又危險共同體のシムボルたる船舶を動かすと云ふことは、唯勞働關係だけを規律して居つたのではうまく行きませぬ、從つて廣い意味の海運行政の中に海上勞働行政は入ると私は認めて居りまして、從來から單に理論で分けると云ふことは宜しくないと云ふことを力説して居ります、併し一面厚生省、將來或は岐れて勞働省になるかも知れませぬが、現在の厚生省等に於きましても、我々の意見と、全然と迄行きませぬでも、殆ど同感でございまして非常に理解のある態度を示して呉れて居ります、又内閣の部内の法制局等に於きましても、村上さんのやうな御意見でなければ實際の海員行政は行ひにくいと云ふ點を力説されて居りまして、要するに政府は一體となつて海運行政、之に伴ふ海上勞働行政は運輸大臣が主管せねばならぬと云ふことになつて居りますから左樣御了承願ひます、斯かる方針に依りまして關係方面とも交渉して居りまするが、現在の所は理論の命ずる所に依つて、機械的に分けると云ふやうなことは、宜しくないと云ふ結論に傾きつつあるやうでございますから、左樣御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=13
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014・村上恭一
○村上恭一君 私の此の機會に於ける質問は是で打切つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=14
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015・後藤一藏
○委員長(伯爵後藤一藏君) それでは今日は此の程度に於て散會致します
午後二時三十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=15
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016・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 伯爵 後藤一藏君
副委員長 男爵 伊藤一郎君
委員
侯爵 廣幡忠隆君
子爵 七條光明君
村上恭一君
渡部信君
霜山精一君
男爵 前島勘一郎君
板谷順助君
杤木嘉郎君
國務大臣
運輸大臣 増田甲子七君
政府委員
運輸事務官 有田嘉一君
同 大久保武雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202068X00119470323&spkNum=16
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