1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○地方自治法案
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昭和二十二年三月二十七日(木曜日)
午後二時三十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=0
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001・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 是より委員會を開會致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=1
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002・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 私前囘に質問しようと思つたことで二、三細かいことですけれども、此の際御許しがあれば一つ伺はせて戴きたいと思ひます、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=2
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003・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=3
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004・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 色々な方の御質問で、大體私の御尋ねしたいと云ふことなんか以上に もう了解したのでありますけれども、此の政府提案の原案の方ですけれども、百五十八條の縣廳の局部の設置とか色々なことがありますが、是は縣廳其のものの何は斯う云ふ風に決るでせうが、或は市とか町とか云ふやうな現在やつて居る局部と云ふやうなものなんか、何か矢張り標準がなければいけないと思ひますが、之に準じたやうなものになるのですか、是が一つです、それから尚縣會、市會或は村會、町會と云ふものも出ませうが、國會なるものには國會法と云ふものがありますが、常置委員制で國會なんかは行きます、今迄の讀會と云ふものは止めになりますが、是も之に準じたやうに縣會法と言ひますか、或は市會法と云ふか、町會法と云ふか、さう云ふやうなものが條例か何かに出來るとか出來ないとか、出來れば、其の内容と云ふやうなものを一つ御示しを願ひたいと思ふのであります、極く簡單で宜しうございます、もう一つの問題は、中央の官廳から方々に地方機關として、出張所と云ふものが色々出來て居りますが、是は地方自治に、今迄非常に邪魔になると云ふと少し語弊があるかも知れないが何時も茶々を入れて色々なことを言つて、能く運ばぬと云ふことがあります、此の點は今度どうなりますか、自治を重んじになる以上は、出來るだけ地方の在來の機關或は今度出來る局部に委任するとか、極く重點的な又重點だけを中央から指示すると云ふことにした方が、もつと自治が完全に行はれはしないかと云ふ氣がします、此の點に付ての御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=4
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005・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 只今御尋の第一點の市町村等の部課の組織はどう云ふ風になるかと云ふ點でございますが、是は都道府縣の方は現在官制の規定がございまして、今後も公選知事の下に於て、今迄の知事と同じだけの仕事の幅を以て一應やつて參りますのでありますが、そこで一應官制の規定に倣ひまして、局なり部なりの組織を茲に百五十八條に設けた譯であります、市町村の方は現在も特に左樣な制限的規定がございませぬので、特に法律に於て部課の組織を限定すると云ふことは市町村の權能及び能力の點から考へまして、どうも一律に規定致しますことが相當むづかしいことに存じます、そこで條例で必要の部課を設けることが出來ると云ふことに規定を致しまして、總て條例に一任することに致した次第でございます、唯特別市なぞに參りますと云ふと、是は大體東京都と同じやうな内容の仕事をやることになりますので、其の場合には都に關する規定が特別市に準用になる、斯樣に規定を致して居ります、それから二番目の御尋の地方議會の丁度國會法と同じやうな關係の規定はどう云ふ風になるかと云ふ點でございますが、是は仰せになりましたやうな地方議會に付て國會法に倣ひまして、何か地方議會法と云ふやうなものを別個に設けると云ふことも一つの御考と存じますが、矢張り此の地方自治法の中に出來るだけ全體のことを、地方自治全部に關しますことを纏めて規定を致した方が、見る方から申しても便宜であらうと云ふやうな考へ方に立ちまして、茲に此の第六章に「議會」の章を設けまして、此の「議會」の章の中の第二節以下の事項は、殆ど國會法の規定に出來るだけ從はせまして規定致した次第でございます、それから第三に御尋ねの地方に國の行政機關を多數設けると云ふことは、地方自治の點から申して適當ではないではないかと云ふ御尋ねでございますが、是は私共も全く御同感であります、從ひまして出來るだけ此の府縣知事の下に、公選知事の下に國の地方に於ける行政も纏めて之を行はしめると云ふことが一番理想的な形であらうと存じて居るのであります、殊に知事を公選にしたことと關聯を致しまして、出來ることならば、現在の知事よりも、より多くの權限を公選知事に與へると云ふことが地方分權の立場からも、地方自治の立場からも望ましいのでありますが、矢張りそれぞれ各省其の他關係方面がありまして、なかなか左樣な理論通りに事が運びませぬ、其處で今囘の地方自治法立案に對しましては、只今此の現在官選知事と言ひますか、官吏たる地方長官が所管を致して居ります國政事務と云ふものは、矢張り公選知事に其の儘引繼ぐと云ふことを此の際の大前提と致しまして、其の他の點は逐次今後出來るだけ統合して行く、左樣な考へ方で立案を致した次第であります、最近、色々各省の中央政府の直轄の出先の機關が出來る傾向が稍稍顯著でございますが、併し之に付きましては、十分國會に於て、果して左樣な特別の國の行政機關を府縣知事以外に設けることが必要であるかどうかと云ふことを十分に審議して戴きまして、それでも尚どうしても作らなければならないと云ふ結論が出ました時に之を作る、さうでない限りは、矢張り是は府縣知事に成るべくやらして行くと云ふことが、政府の方針としても適當ではないか、斯樣に考へて居る次第であります、此の點は衆議院の方に於きまして、地方自治法の百五十六條と云ふ規定がございますが、ここに國の機關と府縣知事との關係を規定した規定が百五十六條の第三項にあるのでございます、是は「都道府縣知事は、法律又は政令の定めるところにより、食糧事務所、木炭事務所、社會保險出張所その他行政機關の長を指揮監督することができる。」斯う云ふ規定が原案にあつたのでございますが、之を衆議院に於きましては、「法律又は政令の定めるところにより、」と云ふのを「部内の行政事務に關係のある事項につき、」と云ふ修正がなされたのでございます、是は府縣知事の部内の行政事務に關係した事項に付ては、左樣な行政機關の長を指揮監督出來る、斯う云ふ風になることになる譯でありまして、之に依つて公選知事と國の機關との關係が保持出來ると思ふのであります、尚若しも都道府縣知事の指揮監督が、中央各省大臣の指揮に反すると云ふやうな場合に於きましては、行政官廳法の規定に依りまして、各省大臣が此の府縣知事の處分を取消すと云ふやうなことで調節が執れると思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=5
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006・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 今の御説明で能く分りましたが、地方にも經濟部長なんと云ふものがあるのですが、其處へ又大藏省から財務局と云ふものを置いて居る、それから此の參考書の中でちよつとをかしいと思ふのですけれども、商工局なんと云ふものが地方にあるのでありますが、是は當然商工省あたりのことぢやないかと思ひますが、是は内務省の管轄になつて居るなんと云ふやうな項があるのですが、同じやうな名前があつて同じやうな仕事を地方で監督し、片方はそれを横の方から、中央から來ると云ふ、管轄が違ふ、何だか自治を非常に邪魔して居ると云ふ感じがするので御質問申上げたのでございますが、今の御話で能く了解しましたし、又衆議院の修正にもはつきり出て居ります、尚併し自治をもつと強化するやうに、又此の外の條例が何か出ませうから、御注意あらむことを希望致します、是だけです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=6
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007・山隈康
○山隈康君 只今秋元子爵の再度の御質問に牽聯を致しまして、政府の御説明も稍稍それに觸れたやうでありますが、第百五十六條の第三項、此の第三項の「食糧事務所、木炭事務所、社會保險出張所その他行政機關」と云ふのは、是は恐らく國政事務を處理する機關であつて、商工省若しくは厚生省、斯う云ふ本省の出張所的のものであらうと察するのであります、そこで無論、地方公共團體の長の指揮監督と云ふのは、其の部内の行政事務に關係する事務に限つて指揮監督をされると思ふのでありまするけども、中央の所管官廳の指揮命令と、都道府縣の長の指揮命令權と二重監督の弊があるのと、もう一つは是等の指揮監督が衝突矛盾を致します虞はないか、斯う云ふ點を心配するのでありますが、當局の御所見を一應伺つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=7
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008・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 只今御尋の點に付きましては、行政官廳法の關係規定と併せまして御説明を申上げた方が分り宜いかと存じますが、今の府縣知事が部内の行政事務に關係ある事項に付きまして、國の行政機關を指揮監督出來ると申しますのは、御話のやうに政府の行政事務と云ふ考へ方でありますが、從ひまして府縣知事が部内の行政全般を監督致して居りまするから、其の全體の部内の行政の運營上、自分が所管をして居ります事務に關聯して、例へば輸送の問題に付きましても、食糧の輸送と云ふことでなく、其の他全般の輸送の關聯を考究致さなければなりませぬから、左樣な關係で其の間に調整上必要な指揮をしなければならぬと云ふことが出て來ると思ふのであります、從つてさう云ふ意味で直接食糧事務所等の指揮を致すことが出來ますが、其の指揮に付て、更に中央の農林大臣、或は運輸大臣の指揮する所、定むる所に違反をして居る、或は其の權限を越えて居ると云ふやうな場合に於きましては、行政官廳法の規定に依りまして、其の府縣知事の處分は農林大臣なり、運輸大臣に依つて取消されると、斯う云ふことになつて來る譯であります、從つて中央各省の大臣が知事の指揮監督を取消さない限りは、それは其の儘適法に働いて居る、斯う云ふことになる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=8
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009・山隈康
○山隈康君 八十二條の二項に「議會の議長に通知」と云ふ文句があります、更に其の他の七十五條の二項には「公共團體の議會及び長に報告」とありますが、議長は議會を代表するものでありまするから、議長に對する報告は、即ち議會に對する報告であらうと思ふのであります、又議會に對する報告は議長の宛名で報告をされのであらうと思ふのでありまするが、どう云ふ譯であるか、一面には議會に「報告」とあり、他面には「議會の議長に通知」とある、是は其の他に、斯う云ふ條文は轉々見えるやうでありますが、斯う云ふ風に區別して御定義になつた趣旨は何處にありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=9
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010・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) ちよつとはつきり御質問を了解致し兼ねましたのでございますが、何條でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=10
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011・山隈康
○山隈康君 八十二條の第二項に「當該普通地方公共團體の長及び議會の議長に通知し、とありますが、是は議會に通知する意味ではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=11
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012・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 八十二條第二項の規定に依ります解職は、普通地方公共團體の長の解職の通知と公表の規定でございます、即ち解職の投票の結果が判明した時は、選擧管理委員會から今の請求して來た代表者それから其の解職の請求をされた地方公共團體の長それからそれに關係のあります、議會の議長に通知する、斯う云ふ意味でございまして、單に議會に通知すると申しましても、矢張り同樣な結果になると思ひます、議會に對する通知は、矢張り議長宛に發すると云ふことになりますから発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=12
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013・山隈康
○山隈康君 それは御答辯の通りに同じことだらうと思ふのです、議長に通知と云ふのは、議會に通知する、議會に通知するのは議長を經て通知をすると云ふので、同樣なものであつたならば、何故斯う云ふ文句を區別して記載されたかと云ふのが質疑の要點でありますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=13
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014・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 七十五條の第二項に「當該普通地方公共團體の議會及び長に報告しなければならない。」とあり、こちらの方は單に「議會」となつて居りますが、こちらの方は「議會の議長」と特に斷つて居ります、是は通知と申しますと、矢張り特定の相手方を考へて申します、報告と申しますと一般的に議會に對して報告すると云ふ觀念で、其の他の規定でも同樣な書き方で規定致して居りますので、其の用例に從つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=14
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015・山隈康
○山隈康君 近來財産税の施行等に依りまして、地方の擔税力も相當輕減を致しまして、それに經費が非常に増加致しまして、之に從つて擔税の率も順次増加の傾向があるやうであります、從來に比して普通は公共團體の負擔は物價の騰貴其の他に依つて非常に増加致し、殆ど二、三年前の地方の經費と地方公共團體の經費等と對照致しますと十倍以上の増加を來して居る現状であります、殊に此の法案に依りますと、重要な問題は殆ど議會の決議を經る、從つて市町村會の會議の開催の日數も相當増加するであろうと思ひます、其の上に選擧管理委員とか立會人、それから專門委員、是等に對して俸給を交付すると云ふ建前になつて居りまして、今後の地方自治の上に於ては非常な費用の増加と云ふものを見ると思ふのであります、無論是等のことに付きましては、土地の經濟事情に通じたる議員が、それが施設を決議し、負擔等も決議致しますから、非常な負擔に堪へないやうなことはなからうかと思ひますけれども、今後の地方自治の強化と共に、財政上の負擔の重壓に依りまして、餘程御注意願はなければ、却て地方自治の強化を呪ふやうな結果を招來しはせぬかと思ふのであります。當局に於かれましては此の自治制の確立に依つて經濟界に於ける影響に付ては、どう云ふ風に御考に相成つて居りますか、一應伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=15
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016・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 今例を擧げて御指摘になりましたやうに、相當色色な機關に付きまして、一々給與を地方團體からやらなければならないと云ふやうな點を考へましただけでも、相當御話のやうに地方團體の負擔は此の地方自治法の施行に依つてそれだけでも相當殖えて來ると存じます、其の他御話のやうな點が今後多々あると存じますが、併しながら一方國政事務を地方團体に委任致します場合には、同時に其の財源に付ても國として考へて行かなければいけないと云ふ規定を此の中に挿入したのでございます、それは國家として單に事務を仰せ附けるだけで經費の方を一切頓著なしにすると云ふのでなく、常に兩者を併せ考へると云ふことを考へて居る次第でございます、一方地方税法の改正に依りまして、地方團體の財政の自主性と云ふことも今後相當強化せられ獨自の財源を持つことになりますので、双方睨み合せまして、財政としては從來よりも彈力性のある運用をすることが出來、且國からも特定の事務を仰せ附ける場合には、矢張りそれに付て別箇に又財源を心配すると云ふことになつて居りますので、其の邊で運用が出來るのではないかと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=16
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017・山隈康
○山隈康君 地方自治の強化と云ふことは、民主政治確立の上に於て極めて重要な問題であつて、是等の案に付きましては私は贊同を惜しむ者ではないのであります、唯併しながら是等の制度と共に財政状態、國民の擔税力と云ふことも併せ考慮致しまして、地方自治と經濟關係とがうまく併進すると云ふやうなことに最善の注意を拂はなければ、地方自治の促進の逆效果を生ずる虞があると思ふのであります、申上げる迄もないことでありますけれども、政府當局に於ては最善の御努力を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=17
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018・白根竹介
○白根竹介君 ちよつと内務大臣に伺つて置きたいと思ひます、此の自治法が出來ましても、警察に關する政令が出なければ、公選知事の下に今迄の警察通りのものが運用されると云ふことにならうと思ひます、さうすると公選知事は來月五日に大體公選になつて就任しますし、警察の方の特別の規定が何時出ますか、其の間に於て若し今日のやうに色々經濟上の事態が變化しつつある際でありますからして、例へば具體的に申せば闇の取締とか、或はさう云つたやうなものに付て嚴重にしろと云ふ政府の方針を傳へても、公選知事の頭で、さなきだに世間の一般の人は闇取締、殊に主食の闇取締なんか餘り嚴重にすれば、今遲配、缺配が多い時に、更に益益國民を苦しめる一方である、警察は何をして居るのだと云ふ風に考へられて居る向もあるのでありますからして、さう云ふ頭で公選知事が臨むとすると、或は中央の命令を其の通り執行しないやうなことが出來やしないかと思ひますが、さう云ふ場合に於ける内務大臣が知事に對する監督はどう云ふ風になされまするか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=18
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019・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 白根委員の御話、地方自治を實行する上に於て若し民選の知事たる公吏が、中央政府と云ふものに對する適正な考を持つて居らぬ、又國家的の考を持つて居らぬ、唯自分の野心とか或は自分の間違つた考の爲に中央の威令に對して却て反動的の行動をする、さう云ふ場合に、現在の状態に於て經濟状態も、社會状態も、可なり今日に於てはまだ安心出來ない状態である、さう云ふ場合に、此の自治法に於て警察の根本の制度は變らぬけれども、或一部の監督、指揮の權は知事に移る、であるからして其の間に、中央の内務大臣の警察指揮の權が思ふやうに行はれない時には面白からざる事態が起りはしないか、さう云ふ場合にはどうする、斯う云ふ御質問だらうと推測しますが、誠に御尤もの御質問で、其の點を非常に心配致して居ります、それ故に警察制度は、軈て自治警察と國家警察と區分する立法を致さなければならない、又さうすることが地方自治を確立する上から言つて當然のことである、さう思ひますが、現下の實情に於きましては、御心配のやうなことは非常に憂慮して居ります點から、警察の實際の指揮監督に付ては、此の變轉極りない所の情勢の下ではまだ内務大臣が相當強く持つて行かなければならないと云ふやうな建前で、警察制度に對しては更に研究して、他日に立案しようと云ふことは、先般も御話申した通りであります、で非常に其の點は微妙な所で心配致して居るのでありまが、左樣な民選の知事も、御心配のやうな知事も、どうも却て出ないぢやないか、何故かならば、初めて民選の知事として出て、安寧秩序は維持しなければならない、それのみならず、幾ら民選の知事でも、日本のやうな國家組織の立場から言ひますならば、中央政府に離反するやうな立場を執つて、自分の支持を縣民から得て行くと云ふことは、どうも思はれないと思ひます、さう云ふやうな考で、先づ大體に於てまあやつて行けるぢやないか、さうしてそこへ行くと、まあ是は法律の問題ぢやない、政治の問題ですけれども、どうも日本人は斯う云ふ場合に、法律よりも、秩序が亂れる場合には、内務省の從來の警察權を相當強く使つても、秩序を維持して呉れた方が宜いと云ふので、輿論は之を支持しはしないでせうか、兎に角法律上の問題は姑く問題とせず、實際に政治問題として可なり強くそれに警察權を利用して行つて宜しい、御承知の通り尚更警察の上の方は、皆内務省の任免黜陟の範圍内に居るのだから、それ等を通して可なり安寧秩序維持の爲には、強力に内務大臣の任免黜陟と命令系統でやつて行けると、人間のすることだから、さう云ふことはないかと言つて想定されて御質問を受けると、ちよつと答辯にも困りますけれども、大體に於て政治的にやつて行けるぢやなからうか、さうして國民も之を支持するだらう、斯う一つ御了解を願いたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=19
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020・白根竹介
○白根竹介君 ちよつと是は制度とは少し離れるやうですけれども、昨日實は此處で懇談會をいたしました際に、警察の闇取締に付て色々速記なんかなしに話がありましたが、今は非常に嚴重にやつて居られますが國民として多くの人の言うて居る所は、警察があれ程取締つて呉れるのに遲配、欠配は相變らず二週間以上になつて居る、物は更に出て來ない、家の米櫃は空になる、買ひに行かなければ飯が食へない、で、どうも警察は我々を苦しめて居るのぢやないかと云ふ風に考へる向が可なりあるのであります、實際の處、それで或地方に於ては、地方長官が其の事態を考へて、大分緩めて居る、手を緩めて居る所もある、實際さう云ふやうな譯でありますからして、斯う云ふことに付ては、餘程是は、内務大臣は、さう云ふことはあり得べからざることで、此の機會に處しては徹底的に取締らなけばいかぬと言ふが、其の半面に於て實際の世間から見ますと取締をして、さうして食糧の裏附けがあつて、それが爲に遲配、欠配で無い所に澤山來ると云ふならば、現實に來つつあるならば、餘り文句はありませぬけれども、今ちつともないですから、もう市場へ行つても何もないと云ふやうな事態でありますからして、可なり警察に對して、警察としては非常に氣の毒な譯ですけれども、警察に對して反感があります、のみならず、捕まる者は善良な者が捕まつて、闇屋は色々の諜報機關を持つて居るさうでございますが、それが何時幾日には何處で以て取締がある、何時幾日には何處其處で一齊檢擧があると云ふことを、何處から聞いて來るものですか、或は警察の末端であるか、或は運輸省の方の關係の者であるか、兎に角何處からか聞いて、なかなか網に引掛らうとしないので、現に私の聽いた所では、此の間土浦で以て、松戸で列車を停めたと云ふ話がありますが、其處で停められて、此の汽車は上野迄行くのですが、松戸で以てストツプだ、で上野迄行く方は汽車に乘つて下さいと言はれて、降されて、荷物も皆降されて、闇屋も捕まつたさうですが、で電車に乘つた闇屋が、それは何か竹輪を仙臺から擔いで來る商人ださうですが、自分は今迄四十囘やつて居るけれども、今度で二度目だ、滅多に捕まるものではありませぬ、我々の仲間は何時幾日、何處で取締があると云ふことはちやんと知つて居るのだからして、例へば此處であると云ふことになれば、其の手前で降して、次の外の奴に其の物を安全な土地に運ばせると云ふ風に計畫的にやつて居ますから、滅多に捕まらないのみならず、四十囘に一遍とか、二遍捕まつたのではちつとも痛くも痒くもなくて、もう商賣は十分出來ますと云ふやうなことを言つて居ります、是は現に見た同僚の話でありますが、私が汽車の中に乘つて見聞する所に依つても、皆さう云ふことを言つて居ます、又事實其の通りです、ですからして、是は餘程内務大臣として御考になつて、食糧當局の方の意見を確かめて、俺の方は取締をやるが、併しそれだけお前の方で以て裏附をしなければ、我々は唯怨府になるばかりだと云ふことを能く言はれて御取締を嚴重になさらないと、どうも我々殊に内務省出身の者としましては、警察の小さい巡査や警部が、國民から怨まれると云ふことは非常にどうも情けなく思ひますので、其の邊は能く實情を御調査願ひまして、此の緊迫した時期に於て、どうか警察の運用を誤らないやうに、詰らぬ所で警察官をして國民の怨府たらしめないやうに御願ひしたいと思ふのであります、殊に今端境期でありますからして、或は私の非常に杞憂かとは思ひますけれども、或はそんなやうなことが四月五日以後に出來やしないかと云ふやうなことを考へましたものですから、ついさう云ふ質問を致した譯でございます、此の意味に於て一言、私の希望を述べて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=20
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021・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 誠に御深切な御注意で、非常に有難く感謝するばかりでなく、唯言葉の上で感謝するだけでなく、實際御説の如きこともあらうと思ひまして、最善を盡して左樣なことのないやうに致したいと思ひますが、此の缺配遲配のことも、少し御了解を願つて置きたいと思ひます、實は昨年八月、一時可なりに闇取締をやつて居ましたけれども、あれを繼續すれば宜かつたと云ふ説が殆ど一般であります、一時あの手を緩めましたので、却て取締つた手を緩めると云ふことは結果が惡い、斯う云ふことで今度は取締を嚴重に繼續的に之をやつて行くと云ふ方針を只今執つて居る譯であります、さうして實は昨年は何と申しましても田畑共に近年稀なる豐作であつて、是が政府の割當通りに迅速に供出して呉れましたならば、又交通、運輸の機關が、もう少し石炭等の不足がなくなつて、うまく動きましたならば、豐作でありながら尚食糧に惱んで缺配遲配を見て居ると云ふやうな不便を御掛けすると云ふやうなことはなくて濟んだでなからうかと云ふやうにも考へますけれども、實は之に對しては警察のことに付ても、御心配になつて御質問下すつた背後に潛んで居る所の一つのものに對する御考も、今の闇に對することも同じやうなものが裏面に潛んで居る、農民が相當物を持つて居ることは各地の状況で分つて居りまするが、色々の政治運動や、或は細胞組織を作ると云ふやうな政治的の運動の爲に、出さなんでも宜いと云ふやうなことを盛に農村民の間に流布して歩く者がある、隨分供出量の惡かつた青森とか奈良とか、其の他各方面に手を入れて見れば、實にさう云ふ所が多く、農民はそれ程豐作であつたから、出し惜しんで居ると云ふ譯ではないけれども、兎に角闇で賣れば高く賣れる物を出さないでも宜いと云ふことなら、出さないで置いた方が宜い、お前達は出さぬで宜いと言つて歩く者があると、ついそれに引摺られてしまふ、斯う云うやうに供出はうまく行つて居りませぬです、さうして色々の關係で輸送關係が滑らかでありませぬでした、其の爲に非常に御迷惑を掛けたり、今のやうな社會情勢の不安な状態を釀したりして、誠に相濟まないことだと痛感致して居りますけれども、闇を嚴重に取締ると共に、出來得るだけ供出を促進する有らゆる方法を執つて居ります、さうして御承知でもありませうけれども、之を完遂しない時には、幾らアメリカで日本の食糧不足に同情を持つた所が、手前の物を全部出して、うまく公平に適正に配給しないのに助けてやれないと云ふやうな空氣もある、それから左樣にするには、供出を第一としなければならないと云うやうな立場をら、關係筋で以て最近は非常に供出の惡い所を助けて行つて呉れます、其の爲に此の一箇月ばかりは供出の程度が、非常に何處も彼も良くなりました、まだ稀には惡い所もありますけれども、此の供出の状態で輸送の關係を考いて、さうして致しましたらば、さう缺配、遲配なく行けると思ひます、缺配、遲配がなくて行けるやうになれば、闇の方も少くなります、誠に斯う云ふことで御心配を掛けたり、世の中の不安な状態を人心に釀したと云ふことは、誠に相濟まぬけれども、政治に之を利用する者に對して嚴重な取締を怠つたと云ふことも一つの原因があります、最近は是等に對して徹底的のメスを入れて居りますから、可なり改善されるだらうと思ひます、御注意の點、闇屋が連絡を執つて居つて、何處で取調があるか分つたら、其の前の驛で降りてしまふとか、或はさう云ふ連絡があると云ふやうなことも聞きますが、さう云ふことに付ては、十分取調べて左樣なことのないやうに、成るたけ缺配、遲配も極く近い内になくして行くやうな方針を執りたいと思つて居ります、御注意の點は誠に有難うございましたが、其のことを肝に銘じて十分な取締をすると共に、食糧に對しては出來るだけ缺配、遲配のないやうに、御迷惑を掛けないやうに致したいと思ひます、御注意有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=21
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022・白根竹介
○白根竹介君 御丁寧な御答辯で、有難うごいました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=22
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023・山田三良
○山田三良君 私は衆議院の修正になりました百四十六條に付て御尋したいのですが、此の原案には「内務大臣は、都道府縣知事が著しく不適任であると認めるときは、政令の定めるところにより、公聽會を開いて、これを解職することができる。」とあつて、都道府縣知事も市町村長が著しく不適任と認める時には、「これを解職することができる。」と、斯うありましたのを、今度は「法律で定める彈劾裁判所にその罷免の訴追をすることができる」と、斯うなつて居りますが、此處に「法律で定める彈劾裁判所」とあるのは、是は内務省では近々に、此處に謂ふ所の彈劾裁判所に關する法律を御拵へになる御積りでおいでになるのでせうが、私の解釋する所では、「彈劾裁判所」とありますけれども、是は裁判所ではないですね、ですから、此の條の「彈劾裁判所」を御決めになる時に、私は今此の法文を改めたいと思ひますけれども、會期も切迫して居りまして、又外の關係方面との交渉等も、とても期日がないと云ふことでありますから、已むを得ず此の儘で贊成する外はないと思ひますけれども、今度此の條にある所の「彈劾裁判所」に關する法律を決められる時には、是は裁判所でないのでありますから、此の法文を其の時に改められる、斯う云ふ御考で内務省が御居りになるなら、此の儘で我慢して居る外はないと思ひますけれども、どうも此の「彈劾裁判所」とありますのは、あれは又特別な意味でありまして、あの例を擴めて矢鱈に「彈劾裁判所」と云ふことを用ひると云ふことは、我が國と致しましては、裁判所の出來ました裁判所法の裁判所と云ふ言葉とも相容れないと思ひますから、「彈劾裁判所」と云ふやうなことは、裁判所に非ざるものに裁判所と云ふ言葉を付けることは、日本の法制上に於きましては嚴重に之を避けなくてはならぬ、此の點は何でもないことのやうでありますが、國民全般としましても、裁判所に非ざるものを裁判所と誤解せしめる、斯う云ふ虞のあることは甚だ困ることと思ひますから、此處に言ふ所の法律で定められる際には、此の法文の「彈劾裁判所」と云ふのを適當に改められると云ふことを私は希望するのでありまして、さう云ふことが内務省に於ても時日の關係では今は已むを得ないと云ふ御考であるなら、私は遺憾ながら此の案に贊成する外ないのでありまするが、併し若し内務省に於て其の御考がなくて、此の通りで行くと云ふのであれば、會期が切迫して居りましても、私は此の言葉では贊成が出來ない、又さう言つては失禮かも知りませぬが、或方面の交渉なら、私一人が行きましても此の言葉の改正は見込あると思ふ位でありますから、此の點に付ての内務省の御考を一つ承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=23
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024・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 誠に山田博士の御意見、御尤もでありまして、此處に「彈劾裁判所」と云ふ文字が出て來るやうになりましたことに付きましては、色々の經緯があります、結局はインピーチメント・コートのことで、其のインピーチメント・コートと云ふ字の譯し方の問題で純然たる裁判とは違ふのであります、日本に於きましては、裁判所は純然たる裁判所と云ふ字を使つて居りますし、偶偶憲法には矢張りインピーチメントの、「彈劾裁判所」と云ふ字を使つて居りまするが、それらと混同されても困るだらうと思ふので、次に之を改正するに付きましては、勿論關係方面との打合せもありますけれども、是も唯原文のインピーチメント・コートと云ふことに付きましては、議論のない所で、それは變更する場合もあるし、又之の上には矢張り地方自治と云ふ名も附けますし、彼此、左樣な文字の爲に司法の方と混同するやうなことのないやうに、之を彈劾審判所としますか、まあ適當なる名前に次の機會に、成るべく早い機會に之を改正しようと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=24
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025・山田三良
○山田三良君 大變結構なことで、どうぞ其のやうに御願ひ致します、それで此の案に贊成致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=25
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026・松尾國松
○松尾國松君 私は内務大臣にちよつと承りたいのですが、先程白根委員の質問に對して、内務大臣は詳細なる答辯をされまして、事は能く私は分つて居るのであります、殊に又實際の問題は、私は自分でも能く知つて居る問題でありまして、色々なことは申しませぬが、私は實は昨年七月の取締の時に、大村さんに矢張り委員會に於て強く其の取締の結果と云ふものに付て數字を擧げて申上げたのが、今日の白根委員の質問に對する内務大臣の答辯と同じやうな意味でありますが、唯私が承りたいことは、是から取締を繼續して、止めたので惡かつたから、今度は繼續してやると云ふことでありますが、それを私は惡いと言ふのではない、處が實際の都民の樣子は、私は昨日も都民の樣子がどんなかと思つて調べて歩いて見た、さうすると或人は、十日以上遲配で食つて行けませぬ、子供は斯う云ふ風にして食ひたがるし、どうにもならぬ、一體あんたはどう云ふ人で、さう云ふことを聽くのか、いや私はどう云ふ人でもないがと言うたが、如何にもどうにもならぬ、其處へ、取締の爲に餘計物が高くなつて居ります、それで長くなさると云ふことは宜いが、闇を防ぐと云ふことは結構であるが、一面裏附がなけらねば幾らやつてもいかぬ、私は今度は數字を擧げて申しますが、大體内務省も農林省も、まあ内閣總動員で供出をやかましく言はれる、是は尤もである、先程の御説明に依ると、相當に成績が擧つたと云ふことで、是も結構であります、處で數字を眺めて見ると、大分、約七割以上出て居るのです、全國の供出が七割以上出て居る、然るに米穀年度はまだ四割しか來て居らぬのです、であるから、供出の面では七割以上出て居るのに、米穀年度は四割であるから、もつと十分に配給を受けることが數字的にも現實的にも出來るのです、處がそれが出來ずして置いて、言換へて見ると、他の言葉で表現すると、もう米は米穀年度の四割の所で七割五分出て居るのであるから、其の配給するだけの米はだぶだぶにある譯なんです、然るに茲に遲配は十日、所に依つてはそれ以上になつて居ると云ふ風に、取締だけを繼續して居ると云ふと、其の數字の缺陷と云ふものは、國民がどうしても食つて居れぬ、斯う云ふことです、此の頃私はあの鐵道の事故があつたに付て、あの多數の被害者の中に、買出の爲にもう恐しく死んで居ると云ふ新聞を讀みまして、私は全く涙なき能はずと思ひます、それは或は儲けると伝ふ積りもあるでせう、が多くの子供も連れた者がやり切れないであれは買ひに行くのです、それであるから、闇を取締ると云ふことは結構であるが、私は實は實際の状況は、言葉が適當でないかも知れぬが、彼等は矢張り幾分都民の困難を救つて居るのではないかと、斯う迄思ふのです、處で數字的に言ふと、七割以上出て居つて、米穀年度は四割外經過して居らぬ、茲に米穀は、主食物は十分に配給が出來なきやならぬのに出來ないと云ふことは、先程内務大臣の答辯にあつた通り、他の輸送其の他の事情が工合が惡いと云ふ御話、是も私は非常に能く分る、成る程其の通りである、通りであるが、然るに一面に於て取締をすると云ふならば、其の裏附なくして如何に生活せしむるかと云ふ、私は實は非常に切迫したる危險が此處にありやしないかと云ふことを日夜憂慮をして居る者であります、さう云ふ點に付て、あなた方は閣議に於て主食物を供給する責任のある所管大臣と何時も御協議になるが、今七割出て居る、米穀年度は四割ほか來て居らぬ、數字的に言ふと事實今ならばなければならぬ、それに來ぬと云ふことで其の來ない缺陷を一面取締られると同時に、どうして都民の不安を救濟なさるか、斯う云ふことが承りたいのであります、私は繰返して申しますが、取締が惡いとか善いとか云ふことを言ふのぢやない、昨日も私は斯う云ふことを言つた、若し此の裏附なき取締をやり通しにやると云ふならば、恐らく效果はない、近き將來に改めなければならぬ時が來はしないか、斯う言つて置きましたが、其の數字的にやり得るのにやられぬと云ふ、其の不安をどうして除く御見透しが附いて居るか、是だけ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=26
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027・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 誠に御尤もな御質問で寧ろ恐縮致します、御説の如く七割のみではありませぬ、七割以上も供出は出來て居ります、米穀年度の四分の一しか來て居らぬと云ふことも御説の通りであります、又嚴重に闇を取締つて、さうして遲配があれば却て國民を不安絶望の極度に追込めると云ふやうなものだと云ふことも誠に御説の通りだと思つて居ります、闇を取締る、今迄ずつと闇を取締らないで居つたのを俄に取締つた、其處で缺配、遲配があつた場合に於ては、誠に困つた状態の起ることは御尤もであります、そこでそれならば闇を取締らぬで宜いかと言へば、矢張り是は取締つて行かなければならぬ、一面に於て缺配、遲配をさせないやうに政府は努力しなければならぬと思ふ、今朝も實は農林大臣とも話したのでありますが、一面に於て相當に供出がある、それなのに何故大都會に於て缺配遲配を生ずるかと云ふと、實は色々の事情がありますが、輸送機關のいかぬと云ふことも一つだし、何處の米を東京なら東京に持つて來るか斯う決めてある、其の持つて來る所の縣に於て十分でない所は、其の持つて來られないと云ふやうな今迄の一定の型があつて、それから又其處に却て供出さして居つた米を、其の地方に於ては全部持つて行かれては困ると云ふやうな今迄の感情もあります、斯う云ふものは皆一掃してしまはなければならぬ、もう一つ供出は良く出來て居りますけれども、假に輸入の食物を放出すると、其の放出するだけは貯藏して置け、何故かならば、まだ食糧が全部昨年の如く外國の援助に依らなければやつて行けないと云ふ状態ではないのだ、あるのだ、あるのだから今缺配遲配を補ふ爲に輸入食物を放出してやるが、それと同時に其の高だけは貯藏して置け、斯う云ふやうなことの關係もあるので、放出してくれる、貯藏したのは貯藏しないでも宜い、それが樂に融通出來ると云ふことになりますれば、誠に都合能く行きますが、さう云ふやうな色々の關係で、只今御心配になるやうな、又市民に誠に食糧の不足遲配で御迷惑を掛けるやうなことになつたのは相濟まないのでありますが、只今のやうな其の縣に貯藏して置くべきものでも、融通をして他日埋めてやるからと言つて、之を融通させることを了解せしむる、それから若し出來るならば、缺配や遲配を埋める爲に此の貯藏して置くのを一部幾らか解除して貰ふ方法も一つ講じて、缺配、遲配を早く埋めてしまつて、さうして滑かに行くやうにと、折角今協議して居るのでありますから、近い中に是は埋つて、相當に御心配を掛けない状態にはならうかと思つて、十分には參りませぬけれども、主要食糧の政府の豫定した二合五勺なら二合五勺の状態は、都會地に於ては缺配、遲配なくやりたいと思つて、折角、今迄の色色の支障のあつたものを直す計畫を立てて、農林大臣とも協議して、其の手配を致して居りますから、どうぞ其の御心配は、軈て御掛けしないで濟むやうにならうと思ひます、左樣に致して成るだけ取締を嚴重にして行く、嚴重にして行きますけれども、成るべく農民を苦しめないやうに、さうして供出を妨げないやうに、又實際闇屋を商賣として居るやうな不正な存在、さう云ふものに強いメスを入れて、成るべく御説のやうな風に良民を苦しめないやうにと、之に付ても十分出來るだけの注意を致して居るのでありますが、なかなか多數のことで、末端まで思ふやうに行かないことは、責任を逃れる譯ではありませぬけれども、偶には、ちよつと行かない所もありますが、其の點は惡しからず御承知を願ひたい、只今指摘になつたことに付ては、さう云ふ風な、私が申上げるやうな角度から直して、此の缺配、遲配を早く取戻すやうに、今朝も農林大臣と相談した譯でありますから、どうか御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=27
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028・松尾國松
○松尾國松君 非常に私は愉快な御答辯を聽いたのですが、實は今御話の指定縣と云ふ、既に決つて居ると云ふのか、東京に持つて來るとか何とか云ふことは今御話の通りでありますが、是はどうも私の見る所に依ると、從來の役人の人の計畫は、役人の人が主觀で見て居るから直さない、幾らやかましいことを言つても……私は實は怒鳴つて行つたことがある、それはどうであるかと云ふと、岐阜縣に假に米があつても、ちつともそれを出させない、斯う云ふやうなことで、是は幾ら言つても直さない、處が今度は、あなたも農林大臣も政治家であるから、政治家と政治家の話ならば、それは直ると思ふ、それが實は非常に愉快な御答辯だと思つて、聽いて居るのですが、どうかそれを私は其の指定縣の奴を放つたらかして置いて宜いと言ふのでも何でもない、此のあなたの方の取締らるる此の效果、價値と云ふものは、それを一應、其の枠を外さなければ出來ないのです、であるから、是は必ずしも近い中と言はずに、早速に御相談をして、此の取締の效果と竝行するやうにと云ふことを私は切望を致す者でありますことを申上げて置きます、是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=28
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029・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 如何ですか、他に御發言もございませぬければ、是から討論に入りたいと思ひますが、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=29
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030・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 御異議ないと認めまして、討論に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=30
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031・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 衆議院の方から、非常な修正が澤山附いて居る法案をこつちに提出してあるのでありますけれども、それでも之を極く不完全ではございましたけれども、研究致しまして、尚更に政府提出の原案の一部及び又衆議院から送附されて居ります修正案の中の一部、兩方に跨りまして數箇所の修正案を提出致したいと云ふ動議を出します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=31
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032・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 只今秋元子爵から修正の動議が出ました、如何に取計らひますか
〔「贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=32
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033・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 贊成の方がございますから、動議は成立したものと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=33
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034・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 それでは私の修正案に付て、其の箇條其の他に付て一言申上げます、何分修正と申しますと、衆議院から參つて居るものも相當澤山ありまして、ちよつと勘定しても五十數箇所あるのですが、それから又其の兩方を合せますと、私の方を入れますと、六十何箇所か、多數のものになります、それで之を要約して申上げますれば、大體大きな點を拾つて見ますと、十項目だけになるのでございますが、それで政府提出の方の原案の方で、第百二十條及び第二百七十一條、ちよつと是は順序はばらばらになりましたが、それから第六十六條、それから第六十八條、それから第十三條、是だけはこの原案の方からの數字で申上げます、尚衆議院からの修正になりました方は第二百四十九條、第二百五十一條、第二百五十五條、二百五十八條、第二百七十條、それから二百八十二條、以上でございまして、其の中には字句の修正もありますし、又は條文其のもの全部を削除したと云ふものも二、三此の中には含んで居ります、確か御手許に刷り物が行つて居ると思ひますが、地方自治法案の一部を次のやうに修正すると云ふガリ版があると思ひます、是が全部になつて居ります、尚一應私は其の全文に付て申上げます、第十三條に付きまして、是は政府提出の原案の方の條項の數字で御調を願ひたい、第十三條第一項として左の一項を加へる、元の第十三條は一項しかありませぬけれども、之に一項附加へますから、元の方が第二項になります、それは「日本國民たる普通地方公共團體の住民は、この法律の定めるところにより、その屬する普通地方公共團體の議會の解散を請求する權利を有する。」此の一條項が第一項として十三條の中に入る譯です、其の次に、矢張り是も原案の方でございます、第六十六條第四項の中、「不服がある者は、」とありますが、其の下に「その決定書若しくは裁決書の交付を受けた日又は前項の規定による告示の日から三十日以内に、」これだけのものを加へる、それから六十八條、是も原案ですが、第一項中「被告として、」と云ふことが書いてあります、其の下に「第五十九條第一項の規定による告示の日から三十日以内に、」を加へる、それから次に第百二十條ですが、是は全部削除することに致しました、それから第百二十一條、是は削除の結果から來るのでありますが、第百二十條に之を繰上げます、それから又第百二十二條第一項、之を第百二十一條と、詰り此の分を二つに分けて穴埋めをするやうな形式になる譯です、續いて第百八十條を左の通り改める、「普通地方公共團體の議會の權限に屬する輕易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共團體の長において、これを專決處分にすることができる。」續いて「前項の規定により專決處分をしたときは、普通地方公共團體の長は、これを議會に報告しなければならない。」斯う云ふ風に是は變更致す譯であります、第百八十二條、是は衆議院修正の方の中の第八十二條であります、五項中「超える場合とあります、之を「超える場合等」と云ふ、「等」と云ふ一字を加へます、其の次に、第二百七條の分ですが、是は「竝びに」と書いてありますが、「竝びに」を「及び」に改める、尚續いて「及び第百四十六條第一項」を削つて取つてしまひます、それから其の次は第二百四十七條、之を左の通り、是は全部改めます、「市町村長及び助役にともに故障があるとき、又は收入役及び副收入役(第百七十條第四項の規定による收入役職務代理者を含む。)にともに故障があるときは、上席の吏員又はその指定した吏員が、その職務を行う。」斯う云ふ風に之を改めます、次に第二百四十九條、此の二百四十九條は、是は原案の方の二百四十九條ですが、修正案の方には是は二百四十七條と云ふことになつて居ります、是だけ違つて居ります、第二百四十九條中「第二百四十七條の臨時代理者又は」を削る、次には第二百五十一條を全部削ります、其の次に第二百五十二條第一項を二百五十一條とする、是は適當に繰上げるのです、第二百五十二條中「前項」を「前條」に改める、其の次に、第二百五十五條を削ります、從つてそこに穴が明きますから、之を繰上の方の關係上、其の次の條項を分けまして、第二百五十六條を第二百五十五條とするのと、それから第二百五十六條、「この法律に特別の定があるものを除く外、異議の申立又は訴願の提起は、處分又は決定があつた日から二十一日以内にこれをしなければならない。尚「決定書の交付を受けない者に關しては、前項の期間は告示の日からこれを起算する。」「異議の申立に關する期間の計算については、訴願の提起に關する期間の計算の例による。」「異議の申立は、期限が經過した後においても容認すべき事由があると認めるときは、なお、これを受理することができる。」斯う云ふことが入る譯であります、次に二百五十七條第一項、第二項、それから第五項、第六項、及び第八項を削り取ります、それからその次に、第二百五十八條、「異議の申立があつても處分の執行は、これを停止しない。但し行政廳は、職權により又は關係人の請求により必要を認めるときは、これを停止することができる。」斯う云ふ風に變更致します、それから第二百七十條第一項中「内務大臣の許可を受け、」とありますが、是は全部削ります、其の次に二百七十一條第二項の次に、次の一項を加へ、同條第二項中「區長及び」を削り取ります、「區長は、その被選擧權を有する者について選擧人が投票によりこれを選擧する。」是だけ入る譯であります、それから第二百七十七條中「、第九十四條」及び「第二百五十五條」を削る、是は前と關聯した關係で是が入ります、それから第二百八十二條中「内務大臣の許可を受け、」を全部削ります、それから附則第七條第二項中「第百二十二條第一項」を「第百二十一條」に改めます、是は條文の入れ替への關係で斯うなります、附則第十九條を削り、第二十條を第十九條とし、以下順次操上げる、今此處で申上げましたのが全部であります、之に付ては、或は御質疑等がございますれば、私からも御返事申上げます、尚私で不十分な場合には、政府委員の方からも、其の趣旨を代つて御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=34
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035・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 外に御質疑ございませぬか、修正案に對する御意見でも、法案全體に對する御意見でも差支ございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=35
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036・山田三良
○山田三良君 採決を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=36
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037・白根竹介
○白根竹介君 修正意見に全部同意致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=37
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038・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) それでは別に御發言もございませぬやうでありますから、直ちに採決に入らうと思ひます、先づ第一に、秋元子爵から御提出になりました修正案全部を問題と致します、此の修正案に御贊成の方は、御起立を願ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=38
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039・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 全員起立、秋元君提出の修正案は可決になりました、次に、是等の修正に係ります部分を除きました所の法案全部を問題に供します、全部原案、詰り衆議院送付案通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=39
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040・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 御異議ないものと認めます、仍て本委員會に付託になりました地方自治法案は、全會一致を以て修正議決することに相成りました、之を以て委員會は終了致しました、どうも御苦勞樣でございました
午後三時五十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=40
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041・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 男爵 松平外與麿君
副委員長 子爵 藤井兼誼君
委員
侯爵 鍋島直泰君
伯爵 二荒芳徳君
子爵 秋元春朝君
子爵 青木重夫君
子爵 土屋尹直君
山田三良君
白根竹介君
男爵 三須精一君
男爵 岡俊二君
男爵 紀俊忠君
男爵 斯波正夫君
松尾國松君
山隈康君
瀬川彌右衞門君
淺井清君
國務大臣
内務大臣 植原悦二郎君
政府委員
内務事務官 林敬三君
同 鈴木俊一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00519470327&spkNum=41
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