1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月二十三日(日曜日)午前十時二十二分開議
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議事日程 第二十二號
昭和二十二年三月二十三日
午前十時開議
第一 郵便法の一部を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 船員法を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 帝國鉄道会計法を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 通信事業特別会計法を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 地方自治法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 日本銀行法の一部を改正する等の法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 金融機関債券発行特例法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=1
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002・会議録情報2
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〔參照〕
去ル二十日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十二囘帝國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
厚生省所管事務政府委員
厚生事務官 友納武人君
同 岩瀬繁一君
昨二十二日委員長ヨリ豫算委員第一分科擔當委員子爵梅渓通虎君ヲ第四分科兼務委員ニ選定シタル旨ノ報告書ヲ提出セリ
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
裁判所法案可決報告書
裁判所法施行法案可決報告書
日本銀行法の一部を改正する等の法律案可決報告書
金融機關債券發行特例法案可決報告書
臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案可決報告書
請願委員會特別報告第二號
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
郵便法の一部を改正する法律案
船員法を改正する法律案
帝國鉄道会計法を改正する法律案
通信事業特別会計法を改正する法律案
地方自治法案
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十二囘帝國議會政府委員仰付ヶラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
政府委員
内閣事務官 橋本龍伍君
同日政府ヨリ左ノ決算及同檢査報告ヲ提出セリ
臨時軍事費歳入歳出決算
臨時軍事費歳入歳出決算檢査報告
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=2
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003・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、昨二十二日男爵久保田敬一君より病氣に付豫算委員辭任の申出がございました、許可を致して御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=3
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004・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、就きましては第一部に於て其の補闕選擧を行はれむことを望みます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=4
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005・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第一、郵便法の一部を改正する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、一松遞信大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=5
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006・会議録情報3
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郵便法の一部を改正する法律案右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十二日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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郵便法の一部を改正する法律案
郵便法の一部を次のように改正する。
第十八條第一項を次のように改める。
通常郵便物ノ種類及料金ハ左ノ如シ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ料金ヲ低減スルコトヲ得
第一種 書状
重量二十グラム又ハ其ノ端數毎ニ 一圓二十錢
第二種 郵便葉書
通常葉書 五十錢
往復葉書 一圓
封緘葉書 一圓二十錢
第三種 毎月一囘以上刊行スル定期刊行物
重量百グラム又ハ其ノ端數毎ニ 五十數
第四種 書籍、印刷物、業務用書類、寫眞、書、畫、圖、商品ノ見本及雛形、博物學上ノ標本
重量百グラム又ハ其ノ端數毎ニ 一圓二十錢
第五種 農産物種子
重量百グラム又ハ其ノ端數毎ニ 十五錢
附 則
この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
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〔國務大臣一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=6
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007・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 只今議題となりました郵便法の一部を改正する法律案の提案理由を簡單に御説明申上げます、現在の時局に對處致しまして生産を振興し、國民生活の安定を確保して新日本を建設する爲に、通信事業サービスの復興を圖り、其の正常なる運行を確保することが喫緊の要務でありますることは申上げる迄もございませぬ、然るに通信事業運營上必要なる各般の經費は、終戰後に於ける異常なる物價の高騰に依りまして、急激なる増嵩を來して居る半面、事業收入は之に伴はず、既に昭和二十一年度以降歳入不足となりまして、之が對策として昨年通信料金の引上を行つた次第でありましたが、其の後引續く物價の高騰の爲、依然として赤字を克服することが出來ませぬ、昭和二十年度末以來巨額の借入金に依りまして、僅に收支の均衡を保つて現在に及んだ次第であります、而も昭和二十二年度に於きまする通信特別會計業務勘定に相當する部分の歳入不足は約五十三億圓と推算され、此の儘に推移致しまする時は、事業運營を破局に導く惧がないとも申上げ兼ねるやうな状況でありまするので、是が對策に付先般來種々考究を重ねて參つたのであります、即ち先づ出來るだけ事業運營の合理化を圖ることと致しまして、昭和二十二年度豫算の編成に當りましても、徹底せる緊縮方針を以て之に當り、努めて經費の節約を圖ると共に、他方サービスの改善に依る増收策をも考へて居る次第でありまするが、併しながら是等の手段には自ら限度がありまするので、其の不足する部分に封する方策と致しまして、一般國家財政の現状及び通信事業の特殊性を考慮致しまして、愼重に考究致しました結果、業務收支の面に於ける赤字は、之を通信料金引上に依つて賄ふのが、諸般の情勢から見て適當であると思料せらるるに至つたのであります、而して郵便料金の中、書状葉書等、所謂通常郵便物の料金は、郵便法に規定せられて居りまするので、茲に是が改正案を提出致した次第でございます、何卒速かに御審議の上御協贊あらむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=7
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008・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました郵便法の一部を改正する法律案は、其の特別委員の數を十九名とし、其の委員指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=8
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009・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=9
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010・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=10
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011・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔富坂書記官朗讀〕
郵便法の一部を改正する法律案特別
委員
公爵 桂廣太郎君 侯爵 池田宣政君
伯爵 大木喜福君 子爵 六角英通君
子爵 伊集院兼高君 子爵 齋藤齊君
永井松三君 男爵 伊江朝助君
村上義一君 長谷川赳夫君
男爵 平山洋三郎君 男爵 八代五郎造君
松尾 國松君 佐藤惣之助君
熊谷三太郎君 伊藤傅七君
戸口米次郎君 倉井敏麿君
村上 巧兒君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=11
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012・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第二、船員法を改正する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、増田運輸大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=12
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013・会議録情報4
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船員法を改正する法律案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十二日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
…………………………………
船員法を改正する法律案
船員法目次
第一章 総則
第二章 船長の職務及び権限
第三章 紀律
第四章 雇人契約
第五章 給料その他の報酬
第六章 労働時間、休日及び定員
第七章 有給休暇
第八章 食料及び衞生
第九章 年少船員及び女子船員
第十章 災害補償
第十一章 就業規則
第十二章 監督
第十三章 雜則
第十四章 罰則
船員法
第一章 総則
(船員)
第一條 この法律で船員とは、日本船舶又は日本船舶以外の命令の定める船舶に乘り組む船長及び海員並びに予備員をいう。
前項に規定する船舶には、左の船舶を含まない。
一 総トン数五トン未満の船舶
二 湖、川又は港のみを航行する船舶
三 総トン数三十トン未満の漁船
第二條 この法律で海員とは、船内で使用される船長以外の乘組員で労働の対償として給料その他の報酬を支拂われる者をいう。
この法律で予備員とは、前條第一項に規定する船舶に乘り組むため雇ようされている者で船内で使用されていないものをいう。
第三條 この法律で、職員とは、航海士、機関長、機関士、船舶通信士及び命令の定めるその他の海員をいい、属員とは、職員以外の海員をいう。
(給料及び労働時間)
第四條 この法律で、給料とは、船舶所有者が船員に対し一定の金額により定期に支拂う報酬のうち基本となるべき固定給をいい、労働時間とは、上長の職務上の命令に基き航海当直その他の作業に從事する時間をいう。
(船舶所有者に関する規定の適用)
第五條 この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち船舶所有者に関する規定は、船舶共有の場合には、船舶管理人に、船舶貸借の場合には、船舶借入人に、船舶所有者、船舶管理人及び船舶借入人以外の者が船員を使用する場合には、その者にこれを適用する。
(労働基準法の適用)
第六條 労働基準法第一條乃至第十一條、第百十七條乃至第百十九條及び第百二十一條の規定、船員の労働関係についても適用があるものとする。
第二章 船長の職務及び権限
(指揮命令権)
第七條 船長は、海員を指揮監督し、且つ、船内にある者に対して自己の職務を行うのに必要な命令をすることができる。
(発航前の檢査)
第八條 船長は、発航前に船舶が航海に支障ないかどうかその他航海に必要な準備が整つているかいないかを檢査しなければならない。
(航海の成就)
第九條 船長は、航海の準備が終つたときは、遅滯なく発航し、且つ、必要がある場合を除いて、予定の航路を変更しないで到達港まで航行しなければならない。
(甲板上の指揮)
第十條 船長は、船舶が港を出入するとき、船舶が狹い水路を通過するときその他船舶に危險の虞があるときは、甲板にあつて自ら船舶を指揮しなければならない。
(在船義務)
第十一條 船長は、やむを得ない場合を除いて、自己に代わつて船船を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ、荷物の船積及び旅客の乘込の時から荷物の陸揚及び旅客の上陸の時まで、自己の指揮する船舶を去つてはならない。
(船舶に危險がある場合における処置)
第十二條 船長は、船舶に急迫した危險があるときは、人命、船舶及び積荷の救助に必要手段を盡し、且つ旅客、海員その他船内にある者を去らせた後でなければ、自己の指揮する船舶を去つてはならない。
(船舶が衝突した場合における処置)
第十三條 船長は、船舶が衝突したときは、互に人命及び船舶の救助に必要な手段を盡し、且つ船舶の名称、所有者、船籍港、発航港及び到達港を告げなければならない。但し、自己の指揮する船舶に急迫した危險があるときは、この限りでない。
(遭難船舶の救助)
第十四條 船長は、他の船舶の遭難を知つたときは、人命の救助に必要な手段を盡さなければならない。但し、自己の指揮する船舶に急迫した危險がある場合及び命令の定める場合は、この限りでない。
(水葬)
第十五條 船長は、船舶の航行中船内にある者が死亡したときは、命令の定めるところにより、これを水葬に付することができる。
(遺留品の処置)
第十六條 船長は、船内にある者が死亡し、又は行方不明となつたときは、法令に特別の定がある場合を除いて、船内にある遺留品について、命令の定めるところにより、保管その他の必要な処置をしなければならない。
(在外國民の送還)
第十七條 船長は、外國に駐在する日本の領事官が、法令の定めるところにより、日本國民の送還を命じたときは、正当の事由がなければ、これを拒むことができない。
送還費用の償還に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(書類の備置)
第十八條 船長は、命令の定める場合を除いて、左の書類を船内に備え置かなければならない。
一 船舶國籍証書又は命令の定める証書
二 海員名簿
三 航海日誌
四 旅客名簿
五 積荷に関する書類
海員名簿、航海日誌及び旅客名簿に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(航行に関する報告)
第十九條 船長は、左の各号の一に該当する場合には、命令の定めるところにより、行政官廳にその旨を報告しなければならない。
一 船舶の衝突、乘場、沈沒、滅失、火災、機関の損傷その他の海難が発生したとき。
二 人命又は船舶の救助に從事したとき。
三 無線電信によつて知つたときを除いて、航行中他の船舶の遭難を知つたとき。
四 船内にある者が死亡し、又は行方不明となつたとき。
五 予定の航路を変更したとき。
六 船舶が抑留され、又は捕獲されたときその他船舶に関し著しい事故があつたとき。
(船長の職務の代行)
第二十條 船長が死亡したとき、船舶を去つたとき、又はこれを指揮することができない場合において他人を選任しないときは、運航に從事する海員は、その職掌の順位に從つて船長の職務を行う。
第三章 紀律
(船内秩序)
第二十一條 海員は、左の事項を守らなければならない。
一 上長の職務上の命令に從うこと。
二 職務を怠り、又は他の乘組員の職務を妨げないこと。
三 船長の指定する時までに船舶に乘り込むこと。
四 船長の許可なく船舶を去らないこと。
五 船長の許可なく端艇その他の重要な属具を使用しないこと。
六 船内の食料又は淡水を濫費しないこと。
七 船長の許可なく電氣若しくは火氣を使用し、又は禁止された場所で喫煙しないこと。
八 船長の許可なく日用品以外の物品を船内に持ち込み、又は船内から持ち出さないこと。
九 船内において爭闘、乱醉その他粗暴の行爲をしないこと。
十 その他船内の秩序をみだすようなことをしないこと。
(懲戒)
第二十二條 船長は、海員が前條の事項を守らないときは、これを懲戒することができる。
第二十三條 懲戒は、上陸禁止及び戒告の二種とし、上陸禁止の期間は、初日を含めて十日以内とし、その期間には、停泊日数のみを算入する。
第二十四條 船長は、海員を懲戒しようとするときは、三人以上の海員を立ち会わせて本人及び関係人を取り調べた上、立会人の意見を聽かなければならない。
(危險に対する処置)
第二十五條 船長は、海員が凶器、爆発又は発火しやすい物、劇藥その他の危險物を所持するときは、その物につき保管、放棄その他の処置をすることができる。
第二十六條 船長は、船内にある者の生命若しくは身体又は船舶に危害を及ぼすような行爲をしようとする海員に対し、その危害を避けるのに必要な処置をすることができる。
二十七條 船長は、必要があると認めるときは、旅客その他船内にある者に対しても、前二條に規定する処置をすることができる。
(強制下船)
第二十八條 船長は、海員が雇入契約の終了の公認があつた後船舶を去らないときは、その海員を強制して船舶から去らせることができる。
(行政廳に対する援助の請求)
第二十九條 船長は、海員その他船内にある者の行爲が人命又は船舶に危害を及ぼしその他船内の秩序を著しくみだす場合において、必要があると認めるときは、行政廳に援助を請求することができる。
(爭議行爲の制限)
第三十條 労働関係に関する爭議行爲は、船舶が外國の港にあるとき、又はその爭議行爲に困り人命若しくは船舶に危險が及ぶようなときは、これをしてはならない。
第四章 雇入契約
(この法律に違反する契約)
第三十一條 この法律で定める基準に達しない労働條件を定める雇入契約は、その部分については、無効とする。この場合には、雇入契約は、その無効の部分については、この法律で定める基準に達する労働條件を定めたものとみなす。
(労働條件の明示)
第三十二條 船舶所有者は、雇入契約の締結に際し、船員に対して給料、労働時間その他の労働條件を明示しなければならない。雇入契約の変更に際しても同樣とする。
(賠償予定の禁止)
第三十三條 船舶所有者は、雇入契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
(強制貯金の禁止)
第三十四條 船舶所有者は、雇入契約に附随して、貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
船舶所有者は、船員の委託を受けてその貯蓄金を管理しようとするときは、保管及び返還の方法を定めて、行政官廳の認可を受けなければならない。
(相殺の制限)
第三十五條 船舶所有者は、船員に対する債権と給料の支拂の債務とを相殺してはならない。但し、相殺の額が給料の額の三分の一を超えないとき及び船員の犯罪行爲に因る損害賠償の請求権を以てするときは、この限りでない。
(労働條件の記載及び提示)
第三十六條 船長は、雇入契約が成立したときは、雇入契約により定められた労働條件を海員名簿に記載して、これを海員に示さなければならない。雇入契約の変更があつたときも同樣とする。
(雇入契約の公認)
第三十七條 船長は、雇入契約の成立、終了、更新又は変更があつたときは、命令の定めるところにより、遅滯なく、海員名簿を提示して、行政官廳に雇入契約の公認を申請しなければならない。
前項の場合において船長が公認を申請することができないときは、船舶所有者は、船長に代わつて公認を申請しなければならない。
第三十八條 行政官廳は、雇入契約の公認の申請があつたときは、その雇入契約が航海の安全又は船員の労働関係に関する法令の規定に違反するようなことがないかどうか、又、当事者の合意が充分であつたかどうかを審査するものとする。
(沈沒等に因る雇入契約の終了)
第三十九條 船舶が左の各号の一に該当する場合には、雇入契約は、終了する。
一 沈沒又は滅失したとき。
二 全く運航に堪えなくなつたとき。
船舶の存否が一箇月間分らないときは、船舶は、滅失したものと推定する。
第一項の規定により雇入契約が終了したときでも、船員は、人命、船舶又は積荷の應急救助のために必要な作業に從事しなければならない。この場合には、雇入契約は、なお存続するものとみなす。
(雇入契約の解除)
第四十條 船舶所有者は、左の各号の一に該当する場合には、雇入契約を解除することができる。
一 船員が著しく職務に不適任であるとき。
二 船員が著しく職務を怠つたとき、又は職務に関し船員に重大な過失のあつたとき。
三 海員が船長の指定する時までに船舶に乘り込まないとき。
四 海員が著しく船内の秩序をみだしたとき。
五 船員が負傷又は疾病のため職務に堪えないとき。
六 前各号の場合を除いて、やむを得ない事由のあるとき。
第四十一條 船員は、左の各号の一に該当する場合には、雇入契約を解除することができる。
一 船舶が雇入契約の成立の時における國籍を失つたとき。
二 雇入契約により定められた労働條件と事実とが著しく相違するとき。
三 船員が負傷又は疾病のため職務に堪えないとき。
四 船員が命令の定めるところにより教育を受けようとするとき。
船舶が外國の港からの航海を終了した場合において、その船舶に乘り組む船員が、二十四時間以上の期間を定めて書面で雇入契約の解除の申入をしたときは、その期間が満了した時に、その者の雇入契約は、終了する。
海員は、船長の適当と認める自己の後任者を提供したときは、雇入契約を解除することができる。
第四十二條 期間の定のない雇入契約は、船舶所有者又は船員が二十四時間以上の期間を定めて書面で解除の申入をしたときは、その期間が満了した時に終了する。
(船舶所有者の変更に囚る雇入契約の終了)
第四十三條 相続その他の包括承継の場合を除いて、船舶所有者の変更があつたときは、雇入契約は、終了する。
前項の場合には、雇入契約の終了の時から、船員と新所有者との間に從前と同一條件の雇入契約が存するものとみなす。この場合には、船員は、前條の規定に準じて雇入契約を解除することができる。
(雇入契約の延長)
第四十四條 雇入契約が終了した時に船舶が航行中の場合には、次の港に入港してその港における荷物の陸揚及び旅客の上陸が終る時まで、雇入契約が終了した時に船舶
が停泊中の場合には、その港における荷物の陸揚及び旅客の上陸が終る時まで、その雇入契約は、存続するものとみなす。船舶所有者は、雇入契約が適当な船員を補充することのできない港において終了する場合には、適当な船員を補充することのできる港に到着して荷物の陸揚及び旅客の上陸が終る時まで、雇入契約を存続させることができる。但し、第四十一條第一項第一号乃至第三号の場合は、この限りでない。
(失業手当)
第四十五條 船舶所有者は、第三十九條の規定により雇入契約が終了したときは、一箇月の範囲内において、船員の失業期間中毎月一回その失業日数に應じ給料の額と同額の失業手当を支拂わなければならない。
(雇止手当)
第四十六條 船舶所有者(第四号の場合には旧所有者)は、左の各号の一に該当する場合には、遅滯なく、船員に一箇月分の給料の額と同額の雇止手当を支拂わなければならないときは、この限りでない。
一 第四十條第六号の規定により船舶所有者が雇入契約を解除したとき。
二 第四十一條第一項第一号又は第二号の規定により船員が雇入契約を解除したとき。
三 第四十二條の規定により船舶所有者が雇入契約を解除したとき。
四 第四十三條第一項の規定により雇入契約が終了したとき。
五 船員が第八十一條の健康証明書を受けることができないため雇入契約が解除されたとき。
(送還)
第四十七條 船舶所有者は、左の各号の一に該当する場合には、遅滯なくその費用で雇入港又は船員の希望する地まで船員を送還しなければならない。但し、送還に代えてその費用を支拂うことができる。
一 第三十九條の規定により雇入契約が終了したとき。
二 第四十條第一号又は第六号の規定により船舶所有者が雇入契約を解除したとき。
三 第四十條第五号又は第四十一條第一項第三号の規定により船舶所有者又は船員が雇入契約を解除したとき。但し、船員の職務外の負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあつたときは、この限りでない。
四 第四十一條第一項第一号又は第二号の規定により船員が雇入契約を解除したとき。
五 第四十二條の規定により船舶所有者が雇入契約を解除したとき。
六 第四十三條第二項の規定により船員が雇入契約を解除したとき。
七 雇入契約が期間の満了に因り船員の本國以外の地で終了したとき。
八 船員が第八十一條の健康証明書を受けることができないため雇入契約が解除されたとき。
(送還の費用)
第四十八條 船舶所有者の負担すべき船員の送還の費用は、送還中の運送賃、宿泊費及び食費並びに雇入契約の終了の時から遅滯なく出発する時までの宿泊費及び食費とする。
(送還手当)
第四十九條 船舶所有者は、船員の送還に要する日数に應じ給料の額と同額の送還手当を支拂わなければならない。送還に代えてその費用を支拂うときも同樣とする。
前項の送還手当は、船舶所有者が送還するときは、毎月一囘、送還に代えてその費用を支拂うときは、その際これを支拂わなければならない。
(船員手帳)
第五十條 船員は、船員手帳を受有しなければならない。
船長は、海員の乘船中その船員手帳を保管しなければならない。
船員手帳の交付、訂正、書換及び返還に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(勤務成績証明書)
第五十一條 海員は、船長に対し勤務の成績に関する証明書の交付を請求することができる。
第五章 給料その他の報酬
(給料その他の報酬の定め方)
第五十二條 船員の給料その他の報酬は、船員労働の特殊性に基き、且つ船員の経驗、能力及び職務の内容に應じて、これを定めなければならない。
(給料その他の報酬の支拂方法)
第五十三條 給料その他の報酬は、法令又は労働協約に特別の定のある場合を除いて、その全額を通貨で直接船員に支拂わなければならない。
命令の定める報酬を除いて、給料その他の報酬は、これを毎月一回以上一定の期日に支拂わなければならない。
第五十四條 船舶所有者は、左の場合には、支拂期日前でも遅滯なく、船員が職務に從事した日数に應じ、前條第二項に規定する給料その他の報酬を支拂わなければならない。
一 船員が解雇され、又は退職したとき。
二 船員、その同居の親族又は船員の收入によつて生計を維持する者が結婚、葬祭、出産、療養又は不慮の災害の復旧に要する費用に充てようとする場合において、船員から請求のあつたとき。
第五十五條 船長は、海員の給料その他の報酬が船内において支拂われるときは、直接海員にこれを手渡さなければならない。但し、やむを得ない事由のあるときは、他の職員に手渡させることができる。
第五十六條 船舶所有者は、船員から請求があつたときは、船員に支拂わるべき給料その他の報酬をその同居の親族又は船員の收入によつて生計を維持する者に渡さなければならない。
(傷病中の給料請求権)
第五十七條 船員は、負傷又は疾病のため職務に從事しない期間についても、雇入契約存続中給料及び命令の定める手当を請求することができる。但し、その負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあつたときは、この限りでない。
(歩合による報酬)
第五十八條 船員の報酬が歩合によつて支拂われる場合においては、その歩合による毎月の額が船舶所有者の定める一定額に達しないときでも、その報酬の額は、その一定額を下つてはならない。
第三十五條及び前條の規定の適用については、前項に規定する一定額の報酬は、これを給料とみなす。
船員の報酬が歩合によつて支拂われるときは、第四十五條、第四十六條、第四十九條及び第七十八條の規定の適用については、船舶所有者の別に定める額を以て一箇月分の給料の額とみなす。
前項の額は、第一項の一定額以下であつてはならない。
(最低報酬)
第五十九條 行政官廳は、必要があると認めるときは、命令の定めるところにより、労働組合法による
労働委員会(以下船員労働委員会という。)の議を経て、給料その他の報酬の最低額を定めることができる。
船舶所有者は、前項の規定により最低額が定められたときは、命令の定める場合を除いて、その額に達しない額の給料その他の報酬で、船員を使用してはならない。
第六章 労働時間、休日及び定員
(航海当直をする者の労働時間)
第六十條 左の者で航海当直をすべき職務を有するものが航海当直をする場合における労働時間は、一日について八時間以内、一週間について五十六時間以内とする。
一 総トン数二千トン以上の船舶に乘り組む甲板部及び無線部の職員並びに甲板部の属員
二 総トン数七百トン以上の船舶に乘り組む機関部の職員及び属員
船長は、前項の規定にかかわらず、左の時間労働時間を延長することができる。
一 甲板部又は無線部の職員が航海当直をする場合における労働時間については、一日について一時間以内
二 船長が特別の必要に因り甲板部又は無線部の職員の航海当直の員数を増加する場合における増加された者の労働時間については、一日について四時間以内
三 機関部の属員が航海当直に從事する場合における労働時間については、航海当直の通常の交代及び石災がらの投棄のために必要な時間
(停泊中の航海当直)
第六十一條 航海当直は、停泊中これをさせてはならない。但し、入港後十二時間以内又は出港予定時刻前十二時間以内であるとき及び船長が船舶の安全を図るため必要があると認めるときは、この限りでない。
(航海当直をしない者の労働時間)
第六十二條 総トン数七百トン以上の船舶に乘り組む甲板部及び機関部の職員及び属員で航海当直をすべき職務を有しない者の航行中又は入出港日における労働時間は、一日について八時間以内、一週間について四十八時間以内とする。
(停泊中の労働時間及び休日)
第六十三條 甲板部、機関部及び無線部の職員並びに甲板部及び機関部の属員の停泊中(入出港日を除く。以上同じ。)における労働時間は、第六十一條但書の規定により航海当直をする場合を除いて、一日について八時間以内、一週間について四十八時間以内とする。
船舶所有者は、停泊中前項に規定する海員に一週間について少くとも一日の休日を與えなければならない。
船長は、やむを得ない事由のあるときは、前項の規定にかかわらず、休日においても第一項に規定する海員を必要な作業に從事させることができる。但し、そのために一週間について四十八時間以内の労働時間の制限を超えてはならない。
(事務部の属員の労働時間)
第六十四條 十二人を超える旅客定員を有する船舶に乘り組む事務部の属員は、航行中一日について少くとも十二時間これを休息させるものとする。
前項の規定による休息時間には、八時間の連続した休息時間を含むことを要する。
第六十五條 前條第一項の船舶以外の船舶に乘り組む事務部の属員の航行中及び入出港日における労働時間は、一日について八時間以内とする。但し、船長は、必要があると認めるときは、一日について二時間以内これを延長することができる。
第六十六條 事務部の属員の停泊中における労働時間は、労働協約で特別の定をした場合を除いて、一日について八時間以内とする。
(時間外労働及び時間外手当)
第六十七條 船長は、臨時の必要があるときは、第六十條、第六十二條、第六十三條第一項第三項但書、第六十五條及び前條に規定する労働時間の制限を超えて海員を作業に從事させ、若しくは第六十四條第一項の規定による休息時間を短縮することができ、又、同條第二項の規定にかかわらず、休息時間を八時間連続させないことができる。
船舶所有者は、前項の規定により労働時間が延長され、若しくは休息時間が短縮されたとき、又は休息時間が八時間連続させられなかつたときは、命令の定める時間外手当を支拂わなければならない。
船長は、命令の定めるところにより、船内に帳簿を備え置いて、前項の時間外手当に関する事項を記載しなければならない。
(例外規定)
第六十八條 第六十條及び第六十二條乃至前條の規定は、海員が船長の命令により左の作業に從事する場合には、これを適用しない。
一 人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業
二 防火操練、端艇操練その他これらに類似する作業
三 作業に從事すべき人員が負傷、疾病、死亡その他の予想し難い事故に因り減少したのに伴つて増加された作業
四 通関手続又は檢疫その他の衞生手続のために必要な作業
五 船舶の正午位置測定のために必要な作業
(定員)
第六十九條 船舶所有者は、命令の定める場合を除いて、第六十條乃至第六十六條の規定を遵守するために必要な海員の定員を定めて、その員数の海員を乘り組ませなければならない。
船舶所有者は、航海中海員に欠員を生じたときは、遅滯なくその欠員を補充しなければならない。
第七十條 総トン数七百トン以上の船舶に乘り組む甲板部の属員で航海当直をすべき職務を有する者の定員は、九人以上とし、同時に航海当直をする者の員数は、三人以上としなければならない。但し、総トン数二千トン未満の船舶にあつては、その定員は、六名で足りる。
前項の定員は、労働協約に特別の定のある場合を除いて、甲板部の勤務一年未満の者を以て、これに充ててはならない。
第一項の定員の過半数は、年齢十八年以上の者で三年以上甲板部の勤務に從事したもの又は年齢十八年以上の者で行政官廳が命令の定めるところによりこれと同等の能力のあることを証明したものを以て、これに充てなければならない。
(適用範囲)
第七十一條 第六十條乃至前條の規定は、左の船舶については、これを適用しない。
一 沿海区域又は平水区域を航行区域とする総トン数千トン未満の船舶で國内各港間のみを航海するもの(行政官廳が船員労働委員会の議を経て指定する船舶を除く。)
二 帆船
三 漁船
第七十二條 第六十條乃至第七十條の規定は、左の者には、これを適用しない。
一 甲板部、機関部又は無線部の最上位にある職員で航海当直をしない者
二 医師及び專ら調剤又は看護に從事する者
第七十三條 主務大臣は、必要があると認めるときは、船員労働委員会の決議により、第六十條乃至第七十條の規定の適用を受けない船員の労働時間、休日及び定員に関し必要な命令を発することができる。
第七章 有給休暇
(有給休暇の付與)
第七十四條 船舶所有者は、船員が同一の船舶において一年間連続して勤務(船舶のぎ裝又は修繕中の勤務を含む。以下同じ。)に從事したときは、その一年の経過後一年以内にその船員に有給休暇を與えなければならない。但し、船舶が航海の途中にあるときは、当該航海に必要な期間有給休暇を與えることを延期することができる。
船員が同一の事業に属する他の船舶へ轉船したときは、その轉船の前後の勤務は、同一の船舶において從事されたものとみなす。
船舶における勤務が中断した場合において、その中断の事由が船員の故意又は過失に因るものでなく、且つその中断の期間の合計が六週間を超えないときは、その中断の前後の勤務は、連続して從事されたものとみなす。
(有給休暇の日数)
第七十五條 有給休暇の日数は、連続した勤務一年について二十五日とし、連続した勤務三箇月を増すごとに五日を加える。
沿海区域又は平水区域を航行区域とする船舶で國内各港間のみを航海するものに乘り組む船員の有給休暇の日数は、前項の規定にかかわらず、連続した勤務一年について十二日とし、連続した勤務三箇月を増すごとに二日を加える。
第七十六條 船舶所有者が船員に週休日、祝祭日の休日、慣習による休日又はこれらに代わるべき休日を與えているときは、その休日の日数は、これを前條の有給休暇の日数に算入しないものとする。負傷又は疾病に因り勤務に從事しない日数も同樣とする。
(有給休暇の與え方)
第七十七條 有給休暇を與うべき時期及び港については、船舶所有者と船員との協議による。有給休暇は、労働協約の定めるところにより、期間を分けて、これを與えることができる。
(有給休暇中の報酬)
第七十八條 船舶所有者は、有給休暇中船員に給料並びに命令の定める手当及び食費を支拂わなければならない。
船舶所有者は、有給休暇を請求することができる船員が有給休暇を與えられる前に解雇され、又は退職したときは、その者に與うべき有給休暇の日数に應じ前項の給料、手当及び食費を支拂わなければならない。
(適用範囲)
第七十九條 この章の規定は、左の船舶については、これを適用しない。
一 漁船
二 船舶所有者と同一の家庭に属する者のみを使用する船舶
第八章 食料及び衞生
(食料の支給)
第八十條 船舶所有者は、船員の乘船中命令の定めるところにより、これに食料を支給しなければならない。
遠洋区域若しくは近海区域を航行区域とする船舶で総トン数七百トン以上のもの又は命令の定める漁船に乘り組む船員に支給する食料は、主務大臣の定める食料表によらなければならない。
(健康証明書)
第八十一條 船舶所有者は、行政官廳の指定する医師が船内労働に適することを証明した健康証明書を持たない者を船舶に乘り組ませてはならない。但し、やむを得ない事由のあるときは、この限りではない。
前項但書の場合には、船舶所有者は、遅滯なく、その後に到着する港で健康証明書を受けさせる手続をしなければならない。この場合において健康証明書を受けることのできない者は、これを引き続き使用してはならない。
健康証明書に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(医師の乘組)
第八十二條 船舶所有者は、遠洋区域を航行区域とする総トン数五千トン以上の船舶又は遠洋区域若しくは近海区域を航行区域とする最大とう載人員百人以上の船舶に、医師を乘り組ませなければならない。但し、やむを得ない事由のある場合において行政官廳の許可を受けたときは、期間を限つてこれを乘り組ませなくてもよい。
(衞生用品及び医療書)
第八十三條 船舶所有者は、遠洋区域、近海区域若しくは沿海区域を航行区域とする船舶又は命令の定める漁船に、主務大臣の定める医藥その他の衞生用品及び医療書を備え置かなければならない。
第九章 年少船員及び女子船員
(未成年者の能力)
八十四條 未成年者が船員となるには、法定代理人の許可を受けなければならない。
前項の許可を受けた者は、雇入契約に関しては、成年者と同一の能力を有する。
(最低年齢)
第八十五條 船舶所有者は、年齢十五年未満の者を船員として使用してはならない。但し、同一の家庭に属する者のみを使用する船舶については、この限りでない。
船舶所有者は、年齢十八年未満の者を石炭を運び又はたく作業に從事する海員として使用してはならない。
船舶所有者は、年齢十八年未満の者を船員として使用しようとするときは、その者の船員手帳に行政官廳の認証を受けなければならない。
前項の認証に関し必要な事項は命令でこれを定める。
(産前産後)
第八十六條 船舶所有者は、六週間以内に出産する予定の女子の請求があつたときは、船内でその者を作業に從事させてはならない。
船舶所有者は、出産後六週間を経過しない女子を船内で使用してはならない。
船舶所有者は、妊娠中の女子の請求があつたときは、その者を他の軽易な作業に從事させなければならない。
前三項の規定は、同一の家庭に属する者のみを使用する船舶については、これを適用しない。
(生理休暇)
第八十七條 船舶所有者は、生理日における就業が著しく困難な女子の請求があつたときは、その者を生理日において船内で作業に從事させてはならない。
(夜間労働の禁止)
第八十八條 船舶所有者は、年齢十八年未満の船員又は女子の船員を午後八時から翌日の午前五時までの間において作業に從事させてはならない。但し、命令の定める場合においてこれと異なる時刻の間において午前零時前後にわたり連続して九時間休息させるときは、この限りでない。
前項の規定は、第六十八條第一号及び第三号の作業に從事させる場合には、これを適用しない。
第一項の規定は、漁船及び船舶所有者と同一の家庭に属する者のみを使用する船舶については、これを適用しない。
第十章 災害補償
(療養補償)
第八十九條 船員が職務上負傷し、又は疾病にかかつたときは、船舶所有者は、その負傷又は疾病がなおるまで、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければならない。
船員が雇入契約存続中職務外で負傷し、又は疾病にかかつたときは、船舶所有者は、三箇月の範囲内において、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければならない。但し、その負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあつたときは、この限りでない。
第九十條 前條の療養は、左の各号のものとする。
一 診察
二 藥剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 病院、診療所その他治療に必要な自宅以外の場所への收容(食料の支給を含む。)
五 看護
六 移送
(傷病手当及び予後手当)
第九十一條 船員が職務上負傷し、又は疾病にかかつたときは、船舶所有者は、四箇月の範囲内においてその負傷又は疾病がなおるまで毎月一回、命令の定める報酬(以下標準報酬という。)の月額に相当する額の傷病手当を支拂い、その四箇月が経過してもその負傷又は疾病がなおらないときは、そのなおるまで毎月一回、標準報酬の月額の百分の六十に相当する額の傷病手当を支拂わなければならない。
船舶所有者は、前項の負傷又は疾病がなおつた後遅滯なく、標準報酬の月額の百分の六十に相当する額の予後手当を支拂わなければならない。
前二項の規定は、負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあつたときは、これを適用しない。
(障害手当)
第九十二條 船員の職務上の負傷又は疾病がなおつた場合において、なおその船員の身体に障害が存するときは、船舶所有者は、なおつた後遅滯なく、標準報酬の月額に障害の程度に應じ別表に定める月数を乘じて得た額の障害手当を支拂わなければならない。但し、その負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあつたときは、この限りでない。
(遺族手当)
第九十三條 船員が職務上死亡したときは、船舶所有者は、遅滯なく、命令の定める遺族に標準報酬の月額の三十六箇月分に相当する額の遺族手当を支拂わなければならない。船員が職務上の負傷又は疾病に因り死亡したときも同樣とする。
(葬祭料)
第九十四條 船員が職務上死亡したときは、船舶所有者は、遅滯なく、命令の定める遺族で葬祭を行う者に標準報酬の二箇月分に相当する額の葬祭料を支拂わなければならない。船員が職務上の負傷又は疾病に因り死亡したときも同樣とする。
(他の給付との関係)
第九十五條 第八十九條乃至前條の規定により療養又は費用、手当若しくは葬祭料の支拂(以下災害補償と総称する。)を受くべき者が、その災害補償を受くべき事由と同一の事由に因り船員保險法による保險給付又は命令で指定する法令に基いて災害補償に相当する給付を受くべきときは、船舶所有者は、災害補償の責を免れる。
(審査及び仲裁)
第九十六條 職務上の負傷、疾病又は死亡の認定、療養の方法、災害補償の金額の決定その他災害補償の実施に関して異議のある者は、行政官廳に対して審査又は事件の仲裁を請求することができる。
行政官廳は、必要があると認めるときは、職権で審査又は事件の仲裁をすることができる。
行政官廳は、審査又は事件の仲裁に際し船長その他の関係人の意見を聽かなければならない。
行政官廳は、審査又は事件の仲裁のため必要があると認めるときは、医師に診断又は檢案をさせることができる。
第一項の規定による審査又は事件の仲裁の請求及び第二項の規定による審査又は事件の仲裁の開始は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。
第十一章 就業規則
(就業規則の作成及び届出)
第九十七條 常時十人以上の船員を使用する船舶所有者は、命令の定めるところにより、左の事項について就業規則を作成し、これを行政官廳に届け出なければならない。これを変更したときも同樣とする。
一 給料その他の報酬
二 労働時間
三 休日及び休暇
前項の船舶所有者は、左の事項について就業規則を作成したときは、これを行政官廳に届け出なければならない。これを変更したときも同樣とする。
一 定員
二 食料及び衞生
三 被服及び日用品
四 陸上における宿泊、休養、医療及び慰安の施設
五 災害補償
六 失業手当、雇止手当及び退職手当
七 送還
八 教育
九 賞罰
十 その他の労働條件
船舶所有者を構成員とする團体で法人たるものは、その構成員たる第一項の船舶所有者について適用される就業規則を作成して、これを届け出ることができる。その変更についても同樣とする。
前項の規定による届出があつたときは、同項に規定する船舶所有者は、当該就業規則の作成及びその作成又は変更の届出をしなくてもよい。
第一項乃至第三項の規定による届出には、第九十八條の規定により聽いた意見を記載した書面を添附しなければならない。
(就業規則の作成の手続)
第九十八條 船舶所有者又は前條第三項に規定する團体は、就業規則を作成し、又は変更するには、その就業規則の適用される船舶所有者の使用する船員の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合、船員の過半数で組織する労働組合がないときは、船員の過半数を代表する者の意見を聽かなければならない。
(就業規則の監督)
第九十九條 行政官廳は、法令又は労働協約に違反する就業規則の変更を命ずることができる。
行政官廳は、就業規則が不当であると認めるときは、船員労働委員会の議を経て、その変更を命ずることができる。
(就業規則の効力)
第百條 就業規則で定める基準に達しない労働條件を定める雇入契約は、その部分については、無効とする。この場合には、雇入契約は、その無効の部分については、就業規則で定める基準に達する労働條件を定めたものとみなす。
第十二章 監督
(行政官廳)
第百一條 行政官廳は、この法律、労働基準法(船員の労働関係について適用される部分に限る。以下同じ。)又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実があると認めるときは、船舶所有者又は船員に対し、必要な処分をすることができる。
第百二條 行政官廳は、船舶所有者及び船員の間に生じた労働関係に関する紛爭(労働関係調整法第六條の労働爭議を除く。)の解決について、あつせんすることができる。
(外國における行政官廳の事務)
第百三條 この法律によつて行政官廳の行うべき事務は、外國にあつては、命令の定めるところにより、日本の領事官がこれを行う。
(行政官廳の事務を行う市町村長)
第百四條 主務大臣は、この法律によつて行政官廳の行うべき事務を市町村長に行わせることができる。
(船員労務官)
第百五條 主務大臣は、所部の職員の中から船員労務官を命じ、この法律及び労働基準法の施行に関する事項を掌らせる。
第百六條 船員労務官は、必要があると認めるときは、船舶所有者又は船員に対し、この法律、労働基準法及びこの法律に基いて発する命令の遵守に関し注意を喚起し、又は勧告をすることができる。
第百七條 船員労務官は、必要があると認めるときは、船舶その他の事業場に臨檢し、船舶所有者若しくは船員に出頭を命じ、帳簿書類を提出させ、報告をさせ、又は質問をすることができる。
船員労務官は、必要があると認めるときは、旅客その他船内にある者に質問をすることができる。
前二項の場合には、船員労務官は、その身分を証明する証票を携帶しなければならない。
第百八條 船員労務官は、この法律、労働基準法及びこの法律に基いて発する命令の違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。
第百九條 船員労務官は、職務上知り得た祕密を漏してはならない。船員労務官を退職した後においても同樣とする。
(船員労働委員会の権限)
第百十條 船員労働委員会は、労働組合法に定める権限を行う外、行政官廳の諮問に應じ、この法律及び労働基準法の施行又は改正に関する事項を調査審議する。
船員労働委員会は、舶員の労働條件に関して、行政官廳に建議することができる。
(報告事項)
第百十一條 船舶所有者は、命令の定めるところにより、左の事項について、行政官廳に報告をしなければならない。
一 使用船員の数
二 給料その他の報酬の支拂状況
三 災害補償の実施状況
四 その他命令の定める事項
(船員の申告)
第百十二條 この法律、労働基準法又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実があるときは、船員は、命令の定めるところにより、行政官廳、船員労務官又は船員労働委員会にその事実を申告することができる。
船舶所有者は、前項の申告をしたことを理由として、船員を解雇しその他船員に対して不利益な取扱を與えてはならない。
第十三章 雜則
(就業規則等の公示)
第百十三條 船舶所有者は、この法律、労働基準法、この法律に基いて発する命令、労働協約及び就業規則を記載した書類を船内の見やすい場所に掲示し、又は備え置かなければならない。
(報酬、補償及び手当の調整)
第百十四條 船舶所有者は、給料その他の報酬、失業手当、送還手当又は傷病手当のうち、その二以上をともに支拂うべき期間については、いずれか一の多額のものを支拂うを以て足りる。
船舶所有者は、給料その他の報酬を支拂うべき場合において雇止手当又は予後手当を支拂うべきときは、給料その他の報酬を支拂うべき限度において、雇止手当又は予後手当の支拂の義務を免れる。
(讓渡又は差押の禁止)
第百十五條 失業手当、雇止手当、送還の費用又は災害補償を受ける権利は、これを讓り渡し、又は差し押えることができない。給料その他の報酬及び傷病手当をともに支拂うべき期間についての給料その他の報酬を受ける権利(傷病手当の額に相当する部分に関するものに限る。)についても同樣とする。
(附加金の支拂)
第百十六條 船舶所有者は、第四十五條乃至第四十七條、第四十九條、第五十九條第二項、第六十七條第二項又は第七十八條の規定に違反したときは、これらの規定により船舶所有者が支拂うべき金額(第四十七條の場合には送還の費用)についての第二項の規定による請求の時における未拂金額(第五十九條第二項の場合には同條の規定による報酬の最低額と契約で定められた報酬の額との差額)に相当する額の附加金を船員に支拂わなければならない。
船員は、裁判所に対する訴によつてのみ前項の附加金の支拂を請求することができる。但し、その訴は、同項に規定する違反のあつた時から二年以内にこれをしなければならない。
(時効の特則)
第百十七條 船員の船舶所有者に対する債権は二年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。船舶所有者に対する遺族手当及び葬祭料の債権も同樣とする。
(準用規定)
第百十八條 第三十一條乃至第三十四條、第八十四條第二項及び第百條の規定は、予備員の雇よう契約にこれを準用する。
(戸籍証明)
第百十九條 船員、船員になろうとする者、船舶所有者又は船長は、船員又は船員になろうとする者の戸籍について、戸籍事務を管掌する者又はその代理者に対し無償で証明を請求することができる。
(國及び公共團体に対する適用)
第百二十條 この法律、労働基準法及びこの法律に基いて発する命令は、國、都道府縣、市町村その他これに準ずるものについても適用があるものとする。
(命令の制定)
第百二十一條 この法律に基いて発する命令は、その草案について公聽会を開いて、船員及び船舶所有者のそれぞれを代表する者並びに公益を代表する者の意見を聽いて、これを制定するものとする。
第十四章 罰則
第百二十二條 船長がその職権を濫用して、船内にある者に対し義務のない事を行わせ、又は行うべき権利を妨害したときは、二年以下の懲役に処する。
第百二十三條 船長が第十二條の規定に違反したときは、五年以下の懲役に処する。
第百二十四條 船長が第十三條の規定に違反して人命及び船舶の救助に必要な手段を盡さなかつたときは、三年以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。
第百二十五條 船長が左の各号の一に該当する場合には、二年以下の懲役又は二千円以下の罰金に処する。
一 第十四條の規定に違反したとき。
二 船舶を遺棄したとき。
三 外國において海員を遺棄したとき。
第百二十六條 船長が左の各号の一に該当する場合には、三千円以下の罰金に処する。
一 第八條、第十條、第十一條、第十六條、第十七篠第一項、第三十六條、第五十條第二項又は 第五十五條の規定に違反したとき。
二 第九條の規定に違反して予定の航路を変更したとき。
三 第十三條の規定に違反して告げなかつたとき。
四 第十五條の規定に基いて発する命令に違反して水葬に付したとき。
五 第十八條の規定による書類を備え置かず、又は同條第一項第二号乃至第四号の書類に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚僞の記載をしたとき。
六 第十九條の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をしたとき。
七 第六十七條第三項の規定による帳簿を備え置かず、又は帳簿に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚僞の記載をしたとき。
第百二十七條 海員が上長に対し暴行又は脅迫をしたときは、三年以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。
第百二十八條 海員が左の各号の一に該当する場合には、一年以下の懲役に処する。
一 船舶に急迫した危險のある場合において、船長の許可なく船舶を去つたとき。
二 第十二條乃至第十四條に規定する場合において、船長が人命、船舶又は積荷の救助に必要な手段をとるのに当り、上長の命令に服從しなかつたとき。
三 第三十九條第三項に規定する場合において、人命、船舶又は積荷の應急救助のために必要な作業に從事しなかつたとき。
四 外國において脱船したとき。
第百二十九條 船舶所有者が第八十五條第一項又は第二項の規定に違反したときは、一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第百三十條 船舶所有者が第三十三條、第三十四條第一項、第三十五條、第四十五條乃至第四十七條、第四十九條、第五十九條第二項、第六十三條第二項、第六十七條第二項、第六十九條、第七十條、第七十四條、第七十八條、第八十條、第八十二條、第八十三條、第八十六條、第八十八條、第八十九條、第九十一條乃至第九十四條若しくは第百十二條第二項の規定に違反し、又は第七十三條の規定に基いて発する命令に違反したときは、六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
第百三十一條 船舶所有者が左の各号の一に該当する場合には、五千円以下の罰金に処する。
一 第三十二條、第三十四條第二項、第五十三條、第五十四條、第五十六條、第五十八條第一項、第八十一條第一項第二項、第八十五條第三項、第八十七條又は第百十三條の規定に違反したとき。
二 第三十四條第二項の規定により認可を受けた保管又は返還の方法に違反したとき。
三 第百十一條の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をしたとき。
第百三十二條 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一 第九十七條の規定による就業規則の作成若しくは届出をせず、又は虚僞の届出をした者
二 第九十八條の規定に違反した者
三 第九十九條の規定による命令に違反した者
四 第百一條の規定による処分に違反した者
五 第百七條の規定による船員労務官の臨檢を拒み、妨げ若しくは忌避し、出頭の命令に應ぜず、又は質問に対し陳述をせず、若しくは虚僞の陳述をした者
六 第百七條の規定による帳簿書類を提出せず、若しくは虚僞の記載をした帳簿書類を提出し、又は報告をせず、若しくは虚僞の報告をした者
七 第百九條の規定に違反した者
八 第百十二條第一項に定める場合において、虚僞の申告をした者
第百三十三條 左の各号の一に該当する者は、これを三千円以下の罰金に処する。
一 第三十七條の規定に違反して雇入契約の公認を申請しなかつた者
二 詐僞その他の不正行爲を以て雇入契約の公認を受けた者
三 自己の船員手帳を棄損した者
四 第五十條第三項の規定に基いて発する命令に違反した者
五 詐僞その他の不正行爲を以て船員手帳の交付、訂正又は書換を受けた者
六 他人の船員手帳を行使した者
第百三十四條 この章のうち船長に適用すべき規定は、船長に代わつてその職務を行う者にこれを適用する。
第百三十五條 船舶所有者の代表者、代理人、使用人その他の從業者が船舶所有者の業務に関し第百二十九條乃至第百三十一條、第百三十二條第一号乃至第三号第六号又は第百三十三條第一号第二号の違反行爲をしたときは、その行爲者を罰する外、その船舶所有者に対して、各本條の罰金刑を科する。但し、船舶所有者(船舶所有者が法人の場合には、その代表者、船舶所有者が営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者の場合には、その法定代理人。以下この條において同じ。)が違反の防止に必要な措置をしたときは、この限りでない。
船舶所有者が前項に定める違反行爲の計画を知つてその防止に必要な措置をしなかつたとき、違反行爲を知つてその是正に必要な措置をしなかつたとき、又は違反行爲を教唆したときは、船舶所有者も行爲者として処罰する。
第九十七條第三項に規定する團体の代表者、代理人、使用人その他の從業者がその團体の業務に関し第百三十二條第一号乃至第三号の違反行爲をしたときは、前二項の規定を準用する。
附 則
第百三十六條 この法律は、第十章の規定を除いて、公布の日からこれを施行する。
第十章の規定施行の期日は、命令でこれを定める。
第百三十七條 小形船舶乘組員手帳法は、これを廃止する。
百三十八條 從前の船員法第六十八條第三項但書の規定は、この法律施行後でも、なおその効力を有する。
第百三十九條 この法律施行前に生じた事項については、なお從前の例による。
第百四十條 第十八條の規定は、総トン数二十トン未満の船舶又は平水区域を航行区域とする船舶については、この法律施行の日から六箇月間、これを適用しない。
第百四十一條 第三十七條の規定の適用については、前條に規定する船舶に乘り組む者の雇入契約でこの法律施行の際現に存するものは、これをこの法律施行の際成立したものとみなす。
第百四十二條 第六十條乃至第七十條の規定は、戰時標準型船舶で、行政官廳においてその居住設備が第六十九條の規定による定員数の海員を乘り組ませることが困難なものと認めて、船員労働委員会の議を経て指定したものについては、これを適用しない。
第百四十三條 第八十三條の規定は、沿海区域を航行区域とする船舶については、この法律施行の日から六箇月間、これを適用しない。
第百四十四條 この法律施行前から引き続き年齢十五年未満の者を船員として、又は年齢十八年未満の者を石炭を運び若しくはたく作業に從事する海員として使用するときは、第八十五條の規定は、これらの者については、この法律施行の日から六箇月間、これを適用しない。
第百四十五條 第六十七條第三項、第九十七條及び第百十三條の規定は、この法律施行の日から六箇月間、これを適用しない。
第百四十六條 商法の一部を次のように改正する。
第七百八條 削除
第七百九條 船長ハ屬具目録及ヒ運送契約ニ關スル書類ヲ船中ニ備ヘ置クコトヲ要ス
前項ノ屬具目録ハ外國ニ航行セサル船舶ニ限リ命令ヲ以テ之ヲ備フルコトヲ要セサルモノト定ムルコトヲ得
第七百十條 削除
第七百十一條 削除
他の法令の規定の適用上商法第七百八條乃至第七百十一條の規定によらなければならないときは、從前のこれらの規定によるものとする。
第百四十七條 商法施行法の一部を次のように改正する。
第百二十二條中「遞信大臣」を「運輸大臣」に改める。
第百三十條 屬具目録ノ書式ハ運輸大臣之ヲ定ム
〔國務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=13
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014・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 只今上程されました船員法を改正する法律案の提出理由を御説明申上げます、現行船員法は昭和十二年に改正せられて今日に及んで居るのでありますが、終戰後の新事態に副はない點が多々ありますると共に、新憲法第二十七條は、賃金、就業時間、休息、其の他の勤勞條件に關する基準を法律を以て定めるべき旨規定して居りますので、成るべく速かに改正する必要を認め、昨年八月運輸省に、船主及び船員の團體の代表者を始めとし、關係各方面の學識經驗者からなる臨時船員法令審議會を設けまして、之に改正船員法案の立案に關し諮問致しました、同審議會は、其の後約半年に亙つて愼重審議を續けると共に、其の間東京、神戸を始め、全國主要港で開かれました公聽會の意見を聽き、成案を得て、一月十六日政府に答申致しましたので、政府は此の答申を骨子として、船員法を改正する法律案を立案し、茲に本議會に提案する運びに至つたのでございます、新法案の要旨を申しますと、前述の如き改正憲法の要請に基き、新たに船員の給料、勞働時間及び休息に關して基準を設けますと共に、同じく新憲法の人權尊重の精神を體し、現行法中の海員に對する強制乘船及び船内に於ける懲戒としての監禁に關する規定を廢止致しました、又今後に於ける我が國の國際的地位に鑑みまして、新たに千九百三十六年國際勞働總會に於て採擇せられました四箇の條約案、即ち「船員ノ爲ノ年次有給休暇ニ關スル條約案」、「船内勞働時間及ビ定員ニ關スル條約案」、「船員ノ疾病傷痍又ハ死亡ノ場合ニ於ケル船舶所有者ノ責任ニ關スル條約案」及ビ「海上ニ使用シ得ル兒童ノ最低年齡ヲ定ムル條約案ノ改正條約案」の趣旨を採入れると共に時代の要請に應じ、労働基準法案と歩調を合せて、諸般の勞働保護規定を設ける外、現行商法中の船長の公法的義務に關する規定を、船員法中に採入れたのでございます、此のやうに今囘の改正案に依りますると、海上勞働者である船員は、陸上勞働者が労働基準法案に依つて保護を受けることになりますのと同樣に、相當手厚い保護を受け、其の生活の安定が期せられることになりますが、此のことは、廷いては我が海運再建の爲の第一歩となるものであると信ずるものでございます、何卒御審議の上御協贊あらむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=14
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015・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 質疑の通告がございます、田島正雄君
〔田島正雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=15
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016・田島正雄
○田島正雄君 只今議題と相成りました船員法を改正する法律案に關しまして、三つの點に付て簡單に御尋を致しまして、委員會に於ける審議の御參考にも供したいと存ずるのであります、最近の情勢に鑑みまして、勞働立法の中で労働組合法及び労働関係調整法は既にそれぞれ制定を見たのでありますが、今囘本議會に於きまして、労働基準法竝に船員法を政正する法律案の兩法案が提出せられまして、勞働關係法制の整備を見むと致して居りますことは、先づ以て慶賀すべき次第と考へるのであります、併しながら今囘の兩法案に付きまして、一つの特色と考へられますことは、船員勞働の特殊性に鑑みまして、労働基準法とは別個に、而も同樣の趣旨を狙つて茲に船員法の改正が提案せられまして、言換へまするならば、兩建の立法措置を執られると云ふ點に特色を見出すのであります、此のことは労働基準法百十六條に於きまして、一條乃至十一條、百十七條乃至百十九條及び百二十一條の規定を除いては、此の法律は、船員法に依る船員には之を適用しないと云ふことを規定致して居ります、之を承けまして、同樣の規定が此の船員法改正法案の六條に掲げられて居り、又五十二條には、船員勞働の特殊性と云ふ言葉が用ひられて居ります點に鑑みましても明かであると存ずるのであります、船員勞働が一般の陸上勞働に比べまして、著しく異る特色を有して居りますことは多言を要しない次第でありまして、從つて之に關する立法も亦別段の考慮を拂はるべきは當然の次第と考へます、併しながら船員勞働に對する保護助成、或は指導改善と云ふことは、單に立法措置のみを以て其の目的を達することは出來ないと考へます、言換へますならば、行政運用の面に於きましても同樣に別段の考慮が拂はるべきであると考へます、此の點に關しまして、今囘の労働基準法及び船員法改正法案にはそれぞれ十一章及び十二章に於きまして監督機關に關する規定を設けて居るのであります、然るに労働基準法に於きましては、勞働に關する主務省と云ふ言葉を用ひて居るのに對しまして、船員法に於きましては、單に行政官廳と云ふ言葉を用ひて居ります、是等の點から考へまして、將來労働省が設置せられたる場合に於きましても、船員勞働に關する事柄は、海事行政の主務官廳である運輸省の管轄の下に置かれむとする政府の御意向でありまするや否や先づ以て之を御尋を致したいのであります、新憲法の精神に鑑みまして、勞働の保護助成に關し、萬全の施策が行はれるべきことは固よりのことでありまするが、勞働の保護と云ふことは、就業して居る勞働者に對する勞働條件の改善のみを以て足れりとするものではないと考へます、言ひ換へまするならば、勞働者の就業機會其のものを維持し、又之を擴張することに於てより重大なる社會的意義が存するのであり、斯樣に考へまする場合には、其の勞働就業機會の母體である、産業の復興と云ふことを切離しては考へられませぬ、此の問題に付きまして、政府の御考は如何でありませうか、今日の時代、情勢を見まして、敗戰に依つて國土は狹められ、多數の復員者、引揚者を擁しまして、失業者は巷に溢れ、是が亦闇の原因をなして居る此の情勢から考へまして、産業の復興に依つて正當なる勞働就業の機會を増すと云ふ積極面に對して、有らゆる努力が集中せられなければならないのではないかと考へるのであります、船員勞働の特殊性と云ふことを考へまする場合に、其の船員勞働の母體となるべき海運産業の特殊性と云ふことをも合せて直ちに考へなければならぬと存ずるのであります、殊に我が國の如き資源の乏しい島國に於きまして、海運産業は單に海上勞働の母体たるのみならず、國民経済全體を維持する上に於て缺くべからざる要素であると考へるであります。最近マツカーサー元帥は新聞記者團との會見に於て、日本が自給經濟を保ち得ないことを認め、對外貿易の復活は其の生存上缺くべからざる要素であることを指摘せられたのでありまして、之に對し我々は滿腔の同感を表する者でありまするが、此の場合に於ける貿易と云ふ言葉は、少くとも日本の國情に於きましては、海運と云ふことを切り離しては考へられないと思ふのであります、斯樣に船員勞働の面から見ましても、亦國民經濟の面から見ましても、重要なる存在でありまする所の海運産業と云ふものが、此の戰爭に依つて他の如何なる産業に比較することも出來ない深刻なる打撃を被つて居るのであります、此のことに付きましては、昨年夏本議場に於きまして、補償打切の問題に關聯して御尋を致しました際に、詳細申述べました所でありまするが故に、茲に再び繰返しは致しませぬが、其の後の状態を見まするのに、不幸にして海運産業の救濟、或は再建に付て何等格段の措置が執られて居りませぬ此の現状に於きまして、我々が海運産業と云ふものは、復活はおろか、其の存立すらも危ぶまれるやうな状態にあることを甚だ遺憾とする者であります(拍手)、而も斯くの如き情況にあるに拘はりませず、今囘此の船員法の改正が行はれむとするのでありまして、此の船員法の改正其のものに私は決して反對する譯ではありませぬ、併しながら此の船員法改正の結果、船員に對する勞働條件の改善に關して生じまする幾多の負擔が悉く此の疲弊困憊せる海運産業の上に掛つて來るのであります、労働基準法に依りますれば、使用者は勞働者に對して賃金を支拂ふ義務を負ふのでありますが、それに對比致しまして船員法に依りますると、船舶所有者は船員に對して給料を支拂ふ外、食糧を支給し、又船内に於て醫藥品を備へる義務迄も負ふのであります、此の一事を以てしましても、海運産業と云ふものが、一般の陸上産業に比べて如何に異るものであるかと云ふことが分ると思ふのであります、斯樣なる情勢の下に於きまして、此の船員法改正が行はれます場合には、之を裏附けるべき海運産業の保護育成と云ふことが、同時に當然考へられなければならぬ事柄であり、又しかするにあらずんば、此の船員法改正の趣旨、目的其のものすらも完全には達し得ないことになるのではないかと思ふのでありまするが、此の海運産業の保護育成に付て、政府に於て如何なる方針と用意を有して居られますか、之を第二に御尋ね申上げたいのであります、最後に只今主務大臣の御説明の中にも觸れられました國際海上勞働條約に關する事柄であります、是は只今の御説明の通りでありますが、唯一點伺つて置きたいことは、此の國際勞働條約に依つて、規定せられました勞働條件の基準に對して、今囘の船員法改正案に定められて居りまする基準が、著しく上廻つて居ると云ふことであります、其の一例を擧げまするならば、一年間勤續をした船員に對する有給休暇は、國際勞働條約に於ては十二日と定められて居るのに對しまして、本法案に於ては二十五日と相成つて居るのであります、是は單なる一例でありまするが、先刻來申上げましたやうな海運産業の現状に於て、今直ちに國際勞働條約規定基準よりも飛躍的に高度なる基準を、法律を以て定めることの必要ありや否や、此の點に於て疑念なきを得ないのであります、のみならず左樣に致しますることが、此の船員法改正の根本趣旨でありまする海上勞働大衆に對する其の利益と、果して一致する結果に最終的になり得るや否や、そこ迄考へさせられる問題であります、私見を以て致しまするならば、法律を以て定むることは、絶對必要なる最小限度に止め、即ち此の場合に於きましては、國際海上勞働條約の基準其の儘に法律を以て定め、それに依つて船員勞働の母體である海運産業其のものの存立を先づ保障し、而して其の海運産業が將來復活するに伴ひまして、勞働組合の活用に依つて、船主と勞働者との間の協議に依り、又經濟的考慮に依つて可能なる限度に勞働條件の改善に向つて進んで行くと云ふ方針に出ることが、寧ろ堅實ではないかと存ずるのでありまするが、此の點に付ての政府の御考を承りたい次第であります、以上三點に付きまして主務大臣の御答を御願ひ致します(拍手)
〔國務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=16
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017・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 田島さんの御質疑に對して御答辯申上げます、先づ此の船員法の勞働關係に關する主務官廳が、労働基準法と違つて海事官廳と云ふことに相成つて居りますのは、御説の通り、總て海事行政官廳を指すものであります、其の點陸上勞働を規律する労働基準法の主管官廳とは違ふ意味でございますから、左樣御了承を願ひます、それから今囘の船員法が開運産業に惡影響を與へないやうに、此の海運産業の保護育成と云ふことが、産業再建祖國復興の重要なる條件であると云ふ御説は、誠に御尤でございまして、深く傾聽致した次第でございます、私共も其の點には最も注意と努力を注いで居る次第でございまして、開運産業の復興なくして祖國再建、産業の復興は期し難い、出來るならば昔のやうな世界に雄飛した海運産業を再び復興せしめたいと云ふ意圖の下に、微力ではございますが、努力を傾倒致して居る次第でございます、其の具體的の方策如何と云ふ御尋でございますが、今囘何れ當院に提出致しまする船舶公團法等も、其の一つの具體的の現はれでございます、尚私共は海運業と云ふものは戰時中のやうな統制の姿、或は戰後引續き聯合軍の管理下にある爲に、船舶運營會等が統制を實施致して居りますが、是は本來のあるべき姿ではないと云ふ風に感じて居ります、御説の如く民營體制、自營體制に戻すべきものと云ふ風に確信致しまして、其の方向に向つて微力を盡して努力致して、一日も早く本來の姿に歸すべく努力を傾倒致して居る次第でありますから、左樣御了承願ひます、是が具體的方策の第二でございます、それから更に運賃等も現在の諸物價の状勢に照しまして、均衡が取れて居ない、從つて開運業だけは獨り戰時中非常に犧牲を忍んだのみならず、戰後に於ても打撃が繼續されて居ると云ふ状況でございますから、此の點に付ても能く考慮致したい、斯う存じて居る次第であります、左樣御了承願ひます、唯御説に依りまして、海上勞働保護の強化とか、或は勤勞條件の格段なる改善に依りまして、海上海運産業に惡影響を來さないやうに、此の點は呉々も私共注意致す積りでございます、左樣御了承願ひます、尚それに伴ひまして第三點の御質疑の、國際勞働條約の基準よりも上廻つた勞働保護を與へて居る、斯う云ふことでは海運産業の復興もなかなか容易ではないと云ふ御説は誠に御尤に拜聽致しました、私共も其の點は從來から留意を怠らなかつたのでございまして、本法案を、改正法律案を作るに當りましても、勞資兩方面の意見を虚心坦懷に拜聽致し、又研究も致した次第でございます、御説の如く確かに國際勞働條約の規定した基準よりも上廻つては居りますが、併し今囘議會に提出致しました労働基準法との均衡が取れるやうにと云ふことも亦考慮を致した次第でございます、即ち勞働時間等に於きましては、一週の勞働時間が労働基準法に比べますと相當時間數が多うございます、又御説の如く海上勞働の特殊性に鑑みまして、郷關を離れ、家庭を離れて、一年も繼續して勤務したと云ふ者に對しまして、繼續二十五日の休暇を與へて、さうして其の間家庭生活を持たせると云ふことも亦海上勞働效率を擧げる所以ではないか、斯う云ふ風に考へた爲に、多少上廻つた勞働基準を設けた次第でございますが、斯かる勞働保護を與へることに依りまして、一生懸命、勞資協調、一體となつて働いて海上勞働效率を擧げると云ふことに依つて、海運産業の復興は又期し得ると云ふ信念もあり、斯う云ふ風な規定を設けた次第でございます、何卒宜しく御了承願ひます、尚最近の傾向として申上げますが、海上勞働運動界は非常に、私共と致しましては穏健中正の線に歸りつつある、斯う云ふ點で私共深く喜んで居る次第でございますが、尚皆樣の御協力を得て、海上勞働運動と言はず、日本全體の勞働運動を、穏健中正の線へ歸らせるやうに、反省を促すやうに、極力努力して參りたいと存じて居ります、左樣御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=17
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018・田島正雄
○田島正雄君 只今の運輸大臣の詳細な御答辯を多と致します、尚御尋ね致したい事柄も色々ございますが、委員會に讓りまして、此の質問は之を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=18
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019・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 板谷順助君
〔板谷順助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=19
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020・板谷順助
○板谷順助君 本法案に對しまして、只今田島議員の質問に對しての政府當局の御答辯は、其の眞相に觸れて居りませぬ、已むを得ず私は起つた次第でありまするから、どうか諸君の御許しを得たい、私は此の法案に對して更に政府の所見を質すと同時に、諸君の公正なる御判斷を得たいと存ずるものであります、御承知の通り、此の法案は社會立法として船員を保護することは當然であります、併しながら一面に於て勞資協調の精神に基いて我が國の海運の再建を圖る、此の方針に基いて立案せねばならぬことは言ふ迄もないことであります、又先程運輸大臣は、新憲法に基いて労働基準法の附則として此の法案を提出したと云ふ御説明でありまするが、勿論新憲法に於きましては、總ての國民に對して勤勞の自由、從つて義務の責任、是は當然であります、權利を主張すると同時に義務を負ふと云ふことは言ふ迄もないことであります、又マツカーサー元帥は本年の初頭に於て、完全なる自覺心のない者は住民權を主張する權利はないと云ふことを仰しやつて居るのであります、私は此の法案の内容を檢討して見ますると、只今田島議員から指摘されましたる通り、船員の保護と云ふことに付きましては程度問題であります、例へば今日は世界に於ける所の船員の國際勞働條約は、一年を通じて高等船員が十二日、普通海員が九日であります、然るに此の新法案を見ますると、一年を通じて高等船員に對して二十五日、普通船員に對して九日と云ふことが規定されて居る、更に又三箇月を増すに五日を加へると云ふことが書いてあるのであります、御承知の通り、船舶は常に海上を運航して居ることでありまするから、一年に一囘定期檢査があります、定期檢査の際に於ては一箇月位は殆ど休暇があるのであります、私は現在の我が國の海運は殆ど全滅同樣の状態に置かれて居ることでありまするから、此の再建と云ふことに付ては、經營者に於きましても、船員に於きましても、非常なる所の決心と、非常なる所の努力を拂はなければ再建は出來ませぬ、然るに此の法案に對して、只今運輸大臣は臨時船員法令審議會に於て、三囘之を審議した、更に又公聽會に於て之を審議したと云ふことを述べられましたけれども、眞相はさうではありませぬ、此の審議會に於ても、或は公聽會に於きましても、經營者側は、若し此の法案が其の儘實行されましたならば、我が國の海運は全滅に瀕する、恐らくは勞資共倒れになるだらうと云ふことを盛に力説致したのであります、然るに此の委員會に出席した所の貴衆兩院議員、其の他の人々は碌に出やしない、其の結果勞働攻勢に迫ひまくられて、此の案が出來たのであります、經營者側は決して贊成はして居りませぬ、勞資共倒れになると云ふことを其の當時力説したのであります、又更に此の法案が衆議院の委員會に付された其の際に於ける所の状態がどうであるか、委員が十八名でそれが三人か四人位しか出て居らない、甚だしきは一人位より出やしない、最後に此の案に附帶決議を附して、衆議院が可決して本院に廻つたのであります、果して此の重大なる法案、船員法と云へば、諸君は大した案ぢやないと御考になつて居るかも知らぬが、我が海運國と致しまして、將來重大なる所の利害関係のありまする此の船員法に對し、衆議院の審議が一體如何なる状態であるか、果して是が審議を盡されたものと御考になつて居りますか、私は労働基準法、是は恐らくは本院も通過するでありませう、此の労働基準法が我が國の産業に如何なる影響があるか、如何なる所の國情に合ふか、此の適用の經過を見て、更に再審議を致しまして、次の議會に出しても決して私は遲くはないと思ふのであります、此の故に於て、私は此の法案を今囘は撤囘することを政府に勸告する、政府は撤囘する意思ありや否や、此の點を先づ第一に伺ひたい、更に私は海運の再建に付きまして、現在の我が國の海運は如何なる状態にあるかと云ふことを申述べる必要があると思ふのであります、御承知の通り、戰前に於きましては、我が國は六百萬トンの船を持つて居つた、世界到る處に活躍を致しまして、一面に於て貿易外の國庫收入を圖ると同時に、國際關係に於きましても、寄與する所大なるものがあつたのであります、恐らくは世界各國に於きましても、我が國海運の發展に付ては、是は認めて居つたのであります、然るに戰爭の結果、此の六百萬トン、更に又戰時中に三百萬トンの船が出來た、併せて九百萬トンの船が戰災の爲に殆んど其の大半は喪失したのであります、現在に於ては百二三十萬トンでありまするけれども、其の七割は粗製濫造、所謂戰時標準型でありまして、能率は惡い、船足は遲い、船も粗未だ、殆んど七割は粗製濫造の船であります、現在食糧或は石炭輸送に從事して居る船が一體幾らあるか、四十五萬トン前後でありませう、此の船で現在石炭が所謂基礎産業である、重要産業であるからして、どうしても之を掘らなければならぬと云ふので、政府が非常な努力を拂つておいでになる、處が、此の石炭が山から掘出されても、工場に運ぶ所の、無論汽車を利用するだらうけれども、船がなくて一體どうする、此の船で運ぶと云ふことに付きまして、恐らくは經營者に於ても、或は勞働者、船員の諸君に於きましても、所謂協力一致非常なる所の努力を以て、或場合に於ては其の時の状態に於て所謂臨機應變、夜荷役迄しなければならぬと云ふ現状であります、我が國の現在は決して平時ではありませぬ、非常時であります、此の非常時を乘り切ると云ふことに付きましては、國民が協力一致して進まなければ、決して再建は出來ませぬ、尚又考ふべきことは、此の船員法が實施されましたる結果、非常に船費が厖大になる、船の大小にも依りまするけれども、二割から五割位増す、此の増すのが一體どうして増すか、船の能率が低下するから増すのである、經費が増大をして、船員諸君の懷に入るのではないのであります、船の運行が所謂低下をするから、是だけ費用が増す、之を一體誰が負擔するか、運賃を値上すると云ふことになりましたならば物價に影響する、運賃を其の儘で置くと云ふことになつたならば、現在の運營會が之を背負はなければならぬ、運營會に對しては、御承知の通り、國家が補助を與へて居る、國家が現在に於て、十二億圓の補助を與へて居るのであります、二十二年度の豫算にも運營會の費用が十二億圓計上されて居る、であるから政府が是等を計算に入れて居る、詰り此の増した所の費用は、國家が之を負擔するだけの計算に一體入れて居るのかどうか、之を伺ひたい、更に海運界の再建、此の點に付て運輸大臣は色々御話になりました、政府も色々此の點に付ては相當な計畫も樹てて居られるでありませう、之を一體どうするのか、殆ど全滅に近い、私が先程申上げまする通り、現在貨物船の運行して居るものは四十五萬トンでありますよ、之を一體どうする、船舶公團、是は最近に法案が出るでせう、是は御承知の通り、現在戰時標準型の船を整理するものである、更に又新しく船を造る、一體是に幾ら掛かる、ポーレー案に依りましても、二十一年度に於ては十五萬トン位許すやうな説が出て居つた、現在船一トン造るに付ては二萬圓から三萬圓掛かりますよ、戰時中ですらも一トン四五百圓前後で出來た船が、現在に於ては、二萬圓から三圓萬掛かる、船を再建すると云つて、一體今日迄幾ら船が出來た、若し出來て居るならば茲で明かに示して貰ひたい、であるから先づ第一に、我が國の海運界の再建を圖ると云ふことに付ては、船の計畫を樹てべきものである、容れ物があつて、船があつて初めて船員が乘る、此の計畫も樹てずして、船員法ばかり先にかけると云ふことは不思議である、要するに私は今日の時代に於きまして、出來るだけ勞働者、船員の保護をすると云ふことは是は當然であります、私は決して之に對して反對するものではありませぬ、所謂勞資協調に基いて、お互に能く理解し合つて初めて效果が擧るのであります、どうか此の點に付て政府は最善の注意を拂つて、若し現在の船員法が行過ぎて居り、國際勞働條約で以て、我が國の再建が出來ないと云ふ考であるならば、今囘は此の法案を撤囘して貰ひたい、是は私の希望であります、更に又運營會の問題、御承知の通り、現在運營會が總ての船を支配して居る、處が所謂統制團體、損益に關係のない所の統制團體が扱つて居るのでありますから、從つて民間の經營とは違ひまして思ふやうに行かない、赤字が段々増す、物價を暴騰、どうも已むを得ざる結果でありまするけれども、之に對して政府の當局は屡屡之を民營に移したいと云ふやうなことは仰しやつて居る、一體之に對して民營と云ふことに付て政府の熱が足りないのか、或は又關係筋の御了解を得ることに付て困難であるのか、未だに解決をしないのであります、御承知の通り、此の運營會の存續と云ふことに付ては、本年度三月三十一日迄暫定的になつて居るのでありませうが、此の管理の適用はどうなつて居るのでありませうか、此の後は一體どうする積りか、之を繼續する積りであるかどうか、此の點も一つはつきり御示を願ひたい、そこで私は政府の意見を聽きたいことは、御承知の通り、今御話した通り十二億圓の赤字がある、其所へ持つて來て先般海員組合に於きまして爭議が起つた、爭議が起つて所謂賃金俸給は十七億圓の要求をしたのであります、運營會と色々折衝したが纏らずして、此の問題が勞調委員會に付されたのであります、勞調委員會に於きましては、之を十一億圓の査定をした、まあ海員組合が之に同意するか、或は同意したかも知りませぬが、兎に角十一億圓に査定した調停案が出來た、處が現在船員に對する所の俸給は五億圓、さうすると六億圓増さなければならない、六億圓増すと云ふことに付ては所謂是が政府の負擔になる、政府の負擔は要するに國民の負擔になるのであります、如何に大藏大臣が現在はインフレぢやない、物價は其の中に安定すると云ふことを盛に力説されるけれども、御承知の通り、段々段々と物價が高くなり、或は第二第三の問題が必らず起るかも知れない、さう云ふ情勢でありまして、現在勞調委が權威を以て、權威ある調停でありまするから、恐らくは政府も之に服さなければならぬと思ふ、其の場合に於て今申上げましたる所の船員の給料が六億圓、是が政府の支出になる、政府が果して之を出すだけの勇氣があるかどうか、大藏大臣盛に健全財政を唱へて居られるが、其の次ぎ次ぎと斯う云ふ追加豫算が出るのであります、要するに私は政府に希望致しまするのは、勞働者保護も結構だ、勞働者の幸福を圖ると云ふことに付ては勿論のことでありまするけれども、所謂勞資協調、船員と船主との間に能く協調して、御互に納得し合つた其の上で法案を出すべきものと考へますが故に、只今申上げました通り、一先づ此の法案の撤囘を要求したのでありまするが、政府の所見は如何(拍手)
〔國務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=20
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021・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 板谷さんの御質疑に御答へ申上げます、先程法案を御説明申上げる際にも申上げました通り、本法案は休暇とか、勞働時間とか、其の他一般勞働條件に關する基準は法律を以て定める、而も新憲法が施行される前に此の法案を、労働基準法案と平仄を合せて出す方が宜しいと云ふ結論に相成りまして、説明の時にも申上げました通り、各方面で審議會を開きましたり、小委員會を開きましたり、公聽會を開きましたり、其の數も審議會、總會は三囘でございますが、小委員會等は十七囘の多數に及んで居ります、又公聽會も各方面で十囘開いて居ります、種々意見はございましたが、結論と致しまして、政府は此の程度の勞働保護を海上勞働者に與へることが適當である、斯う云ふ結論を得まして斯かる法案を提案致した次第でございます、尚板谷さんも御承知と存じますが、船舶運營會等では現在此の程度の勞働保護を現に與へつつあるのでございます、其の點は特に海運界の先輩である板谷さんが能く御承知のことと存じますが、尚戰前に於きましても既に郵船會社等は、繼續一年勤務した者に對しましては二十日の有給休暇を與へて居りますから、此の點も特に御承知ではございますけれども申上げる次第でございます、要するに日本の海運勞働は、陸上勞働でもさうでございますが、一般にチープ・レーバー、或はソシアル・ダンピング等の譏を受けて居るのでありまして、我々と致しましては、海運界を再び昔日の姿に戻したい、其の爲には世界各國に比較致しまして、少しも恥しくない勞働基準に依つて堂々と海運界に雄飛致したい、斬う存ずる次第でございます、其の點どうぞ御了承を願ひたいと存じます、從つて此の法案は是非御協贊を願ひたいと熱願致す次第でございますから、宜しく御願ひ致します、それから第二の今船舶界、海運界は非常に、戰時中以來打撃と犧牲を忍んで居つた、今日百二三十萬トンの少數にもなつて、而も船舶の素質は非常に低下して居る、戰時中に於ける船舶界の皆樣の受けられた犧牲、或は打撃に對しましては、私平素衷心より敬意と謝意を表して居る次第でございます、然る處、戰後に於きましても引續き聯合軍の管理下に置かれて居る、本來の姿になかなか還つて行かないと云ふことは齊しく皆樣と遺憾に存ずる次第でございまして、此の點は板谷さんの仰しやる通り、微力ではございますが、一生懸命關係筋と連絡致しまして、出來るだけ早く昔のやうな姿に致したい、是が海運界復興の先行條件であると云ふ風にすら考へて居る次第でございますから、其の點どうぞ惡しからず御了承願ひたいと存じます、何と申しましても民營體制に戻すと云ふことが先づ第一の海運界復興の先行條件である、斯う云ふ信念に燃えて居りますから、左樣御了承願ひます、唯今日でも相當の國費の補給がなくてはならない、御説の通り、十二億圓有餘の補給が行つて居ります、將來例へば民營體制に戻つた時に、現在のやうな手厚い勞働保護を加へて、若し損失があつた時どうするかと云ふ御質疑でございますが、是も御尤な御質疑でございます、將來若し各種の方策を講じまして、尚且相當の赤字が出ると云ふやうなことになります時には、國庫が之を顧みないと云ふ譯には參らぬ、斯う存じて居る次第でございます、それから運營會のことでございますが、是も御承知の通り、戰時中に船舶が國家の管理下に置かれて、其の實施機關としての船舶運營會でございます、それが戰後も引續き殘存して居ると云ふのは、御承知の通り、百トン以上の船は進駐軍の管理下に置かれて居りまして、其の實施事務を果す爲の運營會でございまして、謂はば暫定的措置としての運營會でございます、此の管理が繼續する間は斯かる運營會形態が已むを得ざる形態として存續すると云ふこともあり得る、斯う云ふ風に御承知願ひたいと思ひます、それから先般の海上勞働者の賃金値上でございますが、是は御承知の通り官吏一般が二倍に上つて居ります、其の二倍と云ふやうな所へ均衡の取れるやうに平仄を合せると云ふやうなことで已むを得ず此の點迄上つて來た譯でございまして、左樣御了承願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=21
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022・板谷順助
○板谷順助君 不滿でありますけれども、質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=22
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023・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程せられました船員法を改正する法律案は、其の特別委員の數を十九名とし、委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=23
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024・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=24
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025・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=25
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026・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔宮坂書記官朗讀〕
船員法を改正する法律案特別委員
侯爵 廣幡忠隆君 侯爵 前田利建君
伯爵 後藏一藏君 子爵 實吉純郎君
子爵 七條光明君 村上恭一君
渡部信君 霜山精一君
男爵 伊藤一郎君 男爵 小原謙太郎君
男爵 前島勘一郎君 木下謙次郎君
板谷順助君 田島正雄君
山地土佐太郎君 杤木嘉郎君
黒澤富次郎君 重宗雄三君
長島 銀藏君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=26
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027・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第三、帝國鉄道会計法を改正する法律案、日程第四、通信事業特別会計法を改正する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、是等の兩案を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=27
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028・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、北村大藏政務次官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=28
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029・会議録情報5
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帝國鉄道会計法を改正する法律案右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十二日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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帝國鉄道会計法を改正する法律案
國有鉄道事業特別会計法
第一條 國有鉄道事業を企業的に運営し、その健全な発達に資するため特別会計を設置し、一般会計と分つて経理する。
この法律において國有鉄道事業とは、國有鉄道の事業(國有鉄道の事業に関連する國営船舶事業を含む。)及び國営自動車の事業並びにこれらの附帶事業をいう。
第二條 この会計は、運輸大臣が、法令の定めるところに從い、これを管理する。
第三條 この会計においては、この会計に所属する資産の金額を以て資本とする。
前項の資本は、これを自己資本及び借入資本の二種とし、自己資本は、これを固有資本と積立金と減價償却引当金とに、借入資本は、これを公債及び借入金とその他の負債とに区分する。
第四條 この会計においては、國有鉄道事業の経営成績及び財政状態を明らかにするため、財産の増減及び異動を、その発生の事実に基いて計理する。
第五條 この会計において建設改良費、用品保有額の増加に要する経費及び出資拂込金を支弁するため必要があるときは、公債を発行し、又は借入金をなすことができる。
この会計において業務の運営に要する経費の財源に不足があるときは、借入金をなすことができる。
前二項の規定による公債及び借入金の限度額については、予算を以て國会の議決を経なければならない。
第六條 この会計において支拂上現金に不足があるときは、一時借入金をなし、又は融通証券を発行することができる。
前項の規定による一時借入金及び融通証券の限度額については、予算を以て、國会の議決を経なければならない。
第一項の規定による一時借入金及び融通証券は、当該年度内にこれを償還しなければならない。但し、歳入減少のためこれを償還することができないときは、その償還することのできない金額を限り、一時借入金又は融通証券の借換をなすことができる。
前項但書の規定により借換をなした一時借入金又は融通証券は、一年内にこれを償還しなければならない。
第七條 前二條に規定する公債、借入金、一時借入金及び融通証券の起債、償還等に関する事務は、大蔵大臣が、これを行う。
第八條 左の國債は、この会計の負坦とする。
一 從前の帝國鉄道会計の負担に属する公債又は借入金
二 第五條又は第六條の規定による公債、借入金、一時借入金又は融通証券
三 鉄道、軌道、旅客自動車運輸事業又は事業区間を定める貨物自動車運送事業の買收又は補償のため発行した公債又は國の負担に帰した債務
四 前三号に規定する公債、借入金、一時借入金又は融通証券の借換のため起債した公債、借入金、一時借入金又は融通証券
前項に規定する公債、借入金、一時借入金又は融通証券の償還金及び利子並びに発行及び償還に関する諸費の支出に必要な金額は、年度内に償還する一時借入金及び融通証券の償還金を除いて、毎会計年度これを國債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。但し、第五條第二項の規定による借入金の借入又は第六條第三項但書の規定による一時借入金若しくは融通証券の借換を必要とする場合には、公債及び借入金の償還金に限り、これを繰り入れない。
第九條 運輸大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予算実施計画書及び國庫債務負担行爲要求書を作製して、これを大藏大臣に送付しなければならない。
前項の歳入歳出予算実施計画書には、資産勘定、負債勘定、損益勘定、工事勘定その他の中間勘定の区分を設けるものとする。
第十條 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に從つて、これを款及び項に区分する。
第十一條 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の予算には、左の書類を添付しなければならない。
一 歳入歳出予算実施計画書及び國庫債務負担行爲要求書
二 前前年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録
三 前年度及び当該年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表
四 國庫債務負担行爲で翌年度以降にわたるものについての前年度までの支出額及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度にわたる事業に伴うものについてはその全体の計画その他事業等の進行状況の調書
第十二條 この会計においては、業務取扱数量の増加その他避け難い事由に因り生じた歳出予算の不足を補うため、歳出予算に予備費を設けることができる。
前項の規定による予備費のうち、業務の運営に要する経費に充てるものについては、政令の定めるところにより、財政法第三十五條第二項及び第三項の規定にかかわらず、運輸大臣が、これを使用し、その事由及び金額を大藏大臣及び会計檢査院に通知するものとする。
第十三條 この会計においては、建設改良費の財源の不足を補うため、調整資金を保有することができる。
前項の調整資金は、予算の定めるところにより、剩余金を以てこれに充てる。
第一項の調整資金は、予算の定めるところにより、これを使用しなければならない。
第十四條 この会計において執行する歳入歳出予算の区分は、財政法第三十一條第二項の規定にかかわらず、第十一條第二項第一号に規定する歳入歳出予算実施計画書の区分によるものとする。
第十五條 この会計の支拂計画は左の二種とする。
一 小切手を振り出し、又は國庫金振替書を発行するもの
二 第十六條の規定により鉄道官署の出納官吏をして支拂をなさしめるもの
前項第二号に規定する支拂計画は、これを日本銀行に通知することを要しない。
第十六條 この会計の支出官は、歳出金を支出するため、小切手を振り出し、又は國庫金振替書を発行する外、政令の定めるところにより、鉄道官署の出納官吏に対し支拂命令を発することができる。
運輸大臣は、必要があると認めるときは、支出官の事務を分掌せしめるため、分任支出官を置くことができる。
支出官は、前條第一項第二号に規定する支拂計画の範囲内で、前項の分任支出官に金額の限度を示して、鉄道官署の出納官吏に対し、政令の定めるところにより、支拂命令を発せしめることができる。
運輸大臣は、第二項の規定により分任支出官を置いたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十七條 運輸大臣は、政令の定めるところにより、鉄道官署の出納官吏をして、この会計の歳出金をその保管に係る現金を以て、支出官又は分任支出官の発する支拂命令により支拂わしめることができる。
第十八條 この会計において、決算上利益を生じたときは、これを積立金に組み入れ、損失を生じたときは、積立金を減額してこれを整理する。
第十九條 運輸大臣は、毎会計年度、第十一條第二項第一号に規定する歳入歳出予算実施計画書と同一の区分により、この会計の歳入歳出実績計算書を作製し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第二十條 内閣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の歳入歳出決算には、左の書類を添付しなければならない。
一 歳入歳出実績計算書
二 当該年度の損益計算書、貸借対照表、財産目録、資産價格増減表及び資本増減表
三 債務に関する計算書
第二十一條 この会計において支拂義務の生じた歳出金で当該年度内に支出済とならなかつたものに係る歳出予算は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
前項の規定による繰越は、財政法第四十三條の規定にかかわらず、大藏大臣の承認を経ることを要しない。
運輸大臣は、第一項の規定による繰越をなしたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第二十二條 第十三條の規定による調整資金は、公債を以てこれを保有し、又は大藏省預金部に預け入れることができる。
この会計に余裕金があるときは、これを大藏省預金部に預け入れることができる。
第二十三條 國有鉄道事業の運営に妨げのない限り、この会計の負担において、一般の委託により、陸運に関する機械器具その他の物品を製作し、修理し若しくは調達し、又は工事を施行することができる。
第二十四條 鉄道、軌道その他陸運、陸運の用に供する機械器具の製造(自動車の製造を除く。)修理その他の事業及び倉庫営業(臨港倉庫に係るものを除く。)に関する監督、助成及び統制に要する諸費用は、この会計の負担とする。
第二十五條 この法律の施行に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、附則第四條の規定は、公布の日から、これを施行する。
第二條 昭和二十一年勅令第百十一号、同年勅令第百八十号及び同年法律第五十五号により借り入れた從前の帝國鉄道会計負担の借入金及び昭和二十二年三月三十一日現在の支出未済額は、これを借入資本に編入する。
第三條 昭和二十二年三月三十一日現在における鉄道官署の出納官吏の保管に係る歳入歳出外現金及びその日本銀行えの預託金並びに從前の帝國鉄道会計に属する物品で資本所属以外のものは、これを資産に組み入れる。
第四條 從前の帝國鉄道会計の用品勘定においては、昭和二十一年度に限り、用品資金の額を超過して用品を保有することができる。
前項の規定による超過額は、これを用品資金の他勘定からの借入れとして整理するものとする。
第五條 從前の帝國鉄道会計の昭和二十一年度歳出予算中同年度内に支拂義務を生じ同年度末までに支出済とならないものについては、これを昭和二十二年度予算に繰り越して使用することができる。
第六條 この会計において昭和二十二年三月三十一日までに歳出金に繰替使用した現金の補填のためにする歳出の支出、これに伴う公債金及び借入金の收納並びに同日までに出納官吏の收納した歳入金の拂込は、これを昭和二十一年度分として整理するものとする。
前項の收納及び拂込は、昭和二十二年五月三十一日までに、これをすることができる。
第一項に規定する公債金及び借入金は、これを第八條第一項第一号に規定する公債及び借入金とみなす。
第七條 從前の帝國鉄道会計法第二條の規定は、昭和二十一年度の歳出の財源に充てるための公債の発行については、なおその効力を有する。
從前の帝國鉄道会計法第二條の規定による公債又は借入金を以て支弁する経費で附則第五條の規定により昭和二十二年度に繰越した場合においては、第五條の規定にかかわらず、公債を発行し又は借入金をなすことができる。但し、昭和二十一年度において発行した公債及び借り入れた借入金の額と通じて同年度における公債又は借入金の予算額を超えてはならない。
第八條 前條の規定に基いて発行する公債及びこの法律施行の日以後昭和二十一年法律第五十五号に基いてなす借入金は、これを第八條第一項第二号に規定する公債及び借入金とみなす。
第九條 この法律施行前になした予備費の使用並びに昭和二十年度及び同二十一年度の決算に関しては、なお從前の例による。
第十條 この法律中「國会」、「内閣」及び「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、これをそれぞれ「帝國議会」、「政府」及び「勅令」と読み替えるものとする。
第十一條 昭和二十年法律第十九号を次のように改正する。
第二條中「帝國鐵道會計資本勘定」及び「帝國鐵道會計收益勘定」を「國有鐵道事業特別會計」に改める。
第十二條 昭和二十一年法律第五十五号の一部を次のように改正する。
第四項を削る。
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通信事業特別会計法を改正する法律案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十二日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
…………………………………
通信事業特別会計法を改正する法律案
通信事業特別会計法
第一條 通信事業を企業的に運営し、その健全な発達に資するため、特別会計を設置し、一般会計と分つて経理する。
この法律において通信事業とは、郵便、電信、電話、郵便爲替及び郵便貯金の事業、簡易生命保險及び郵便年金の取扱に関する業務、年金及び恩給の支給その他國庫金の受入拂渡に関する事務、收入印紙の賣さばきに関する事務、電氣試驗所において行う試驗及び研究並びにこれらの附帶業務をいう。
第二條 この会計は、逓信大臣が、法令の定めるところに從い、これを管理する。
第三條 この会計においては、この会計に所属する資産の金額を以て資本とする。
前項の資本は、これを自己資本及び借入資本の二種とし、自己資本は、これを固有資本と積立金と減價償却引当金とに、借入資本は、これを公債及び借入金とその他の負債とに区分する。
第四條 この会計においては、通信事業の経営成績及び財政状態を明らかにするため、財産の増減及び異動を、その発生の事実に基いて計理する。
第五條 この会計において事業設備費、用品保有額の増加に要する経費及び出資拂込金を支弁するため必要があるときは、公債を発行し、又は借入金をなすことができる。
この会計において、業務の運営に要する経費の財源に不足があるときは、借入金をなすことができる。
前二項の規定による公債及び借入金の限度額については、予算を以て、國会の議決を経なければならない。
第六條 この会計において、支拂上現金に不足があるときは、一時借入金をなし、又は融通証券を発行することができる。
前項の規定による一時借入金及び融通証券の限度額については、予算を以て、國会の議決を経なければならない。
第一項の規定による一時借入金及び融通証券は、当該年度内にこれを償還しなければならない。但し、歳入減少のためこれを償還することができないときは、その償還することのできない金額を限り、一時借入金又は融通証券の借換をなすことができる。
前項但書の規定により借換をなした一時借入金又は融通証券は、一年内にこれを償還しなければならない。
第七條 前二條に規定する公債、借入金、一時借入金及び融通証券の起債、償還等に関する事務は、大藏大臣が、これを行う。
第八條 左の國債は、この会計の負担とする。
一 從前の通信事業特別会計の負担に属する公債又は借入金
二 第五條又は第六條の規定による公債、借入金、一時借入金又は融通証券
三 前二号に規定する公債、借入金、一時借入金又は融通証券の借換のため起債した公債、借入金、一時借入金又は融通証券
前項に規定する公債、借入金、一時借入金又は融通証券の償還金及び利子並びに発行及び償還に関する諸費の支出に必要な金額は、年度内に償還する一時借入金及び融通証券の償還金を除いて、毎会計年度、これを國債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。但し、第五條第二項の規定による借入金の借入又は第六條第三項但書の規定による一時借入金若くは融通証券の借換を必要とする場合には、公債及び借入金の償還金に限り、これを繰り入れない。
第九條 逓信大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予算実施計画書及び國庫債務負担行爲要求書を作製して、これを大藏大臣に送付しなければならない。
前項の歳入歳出予算実施計画書には、損益勘定、建設勘定、用品勘定その他所要の勘定の区分を設けるものとする。
第十條 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に從つて、これを款及び項に区分する。
第十一條 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の予算には、左の書類を添付しなければならない。
一 歳入歳出予算実施計画書及び國庫債務負担行爲要求書
二 前前年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録
三 前年度及び当該年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表
四 國庫債務負担行爲で翌年度以降にわたるものについての前年度までの支出額及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度にわたる事業に伴うものについてはその全体の計画その他事業等の進行状況の調書
第十二條 この会計においては、業務取扱数量の増加その他避け難い事由に因り生じた歳出予算の不足を補うため、歳出予算に予備費を設けることができる。
前項の規定による予備費のうち、業務の運営に要する経費に充てるものについては、政令の定めるところにより、財政法第三十五條第二項及び第三項の規定にかかわらず、逓信大臣が、これを使用し、その事由及び金額を大藏大臣及び会計檢査院に通知するものとする。
第十三條 この会計においては、事業設備費の財源の不足を補うため、調整資金を保有することができる。
前項の調整資金は、予算の定めるところにより、剩余金を以てこれに充てる。
第一項の調整資金は、予算の定めるところにより、これを使用しなければならない。
第十四條 この会計において執行する歳入歳出予算の区分は、財政法第三十一條第二項の規定にかかわらず、第十一條第二項第一号に規定する歳入歳出予算実施計画書の区分によるものとする。
第十五條 この会計の支拂計画は、左の二種とする。
一 小切手を振り出し、又は國庫金振替書を発行するもの
二 第十六條の規定により通信官署の出納官吏をして支拂をなさしめるもの
前項第二号に規定する支拂計画は、これを日本銀行に通知することを要しない。 第十六條 この会計の支出官は、歳出金を支出するため、小切手を振り出し、又は國庫金振替書を発行する外、政令の定めるところにより、通信官署の出納官吏に対し支拂命令を発することができる。
逓信大臣は、必要があると認めるときは、支出官の事務を分掌せしめるため、分任支出官を置くことができる。
支出官は、前條第一項第二号に規定する支拂計画の範囲内で、前項の分任支出官に金額の限度を示して、通信官署の出納官吏に対し、政令の定めるところにより、支拂命令を発せしめることができる。
逓信大臣は、第二項の規定により分任支出官を置いたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十七條 逓信大臣は、政令の定めるところにより、通信官署の出納官吏をして、この会計の歳出金をその保管に係る現金を以て、支出官又は分任支出官の発する支拂命令により支拂わしめることができる。
その月中に前項の規定により支拂われた金額が、その月初における出納官吏の保管に係る歳入金額とその月中に出納官吏の受け入れた歳入金額との合計額を超過したときは、逓信大臣は、政令の定めるところにより、翌翌月末までに、その超過額に相当する金額を出納官吏に交付しなければならない。
第十八條 この会計において、決算上利益を生じたときは、これを積立金に組み入れ、損失を生じたときは、積立金を減額してこれを整理する。
第十九條 逓信大臣は、毎会計年度、第十一條第二項第一号に規定する歳入歳出予算実施計画書と同一の区分により、この会計の歳入歳出実績計算書を作製し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第二十條 内閣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の歳入歳出決算には、左の書類を添付しなければならない。
一 歳入歳出実績計算書
二 当該年度の損益計算書、貸借対照表、財産目録、資産價格増減表及び資本増減表
三 債務に関する計算書
第二十一條 この会計において、支拂義務の生じた歳出金で、当該年度内に支出済とならなかつたものに係る歳出予算は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
前項の規定による繰越は、財政法第四十三條の規定にかかわらず、大藏大臣の承認を経ることを要しない。
逓信大臣は、第一項の規定による繰越をなしたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第二十二條 第十三條の規定による調整資金は、これを公債を以て保有し、又は大藏省預金部に預け入れることができる。
この会計に余裕金があるときは、これを大蔵省預金部に預け入れることができる。
第二十三條 收入印紙の賣さばき代金及び買戻代金は、これをこの会計の歳入及び歳出とし、その收入済額から收入印紙の買戻代金を控除した金額に相当する金額は、これを一般会計に繰り入れるものとする。
第二十四條 通信事業の運営に妨げのない限り、この会計の負担において、一般の委託により、通信に関する機械、器具その他の物品を製作し、修理し、若くは調達し、又は工事を施行することができる。
第二十五條 この法律の施行に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二條 昭和二十一年勅令第百十一号、同年勅令第百八十号及び同年法律第五十五号により借り入れた通信事業特別会計負担の借入金及び昭和二十二年三月三十一日現在の支出未済額は、これを借入資本に編入する。
第三條 昭和二十二年三月三十一日現在における逓信官署の出納官吏の保管に係る歳入歳出外現金及びその日本銀行への預託金並びに從前の通信事業特別会計に属する物品で資本所属以外のものは、これを資産に組み入れる。
第四條 この法律施行前になした予備費の支出並びに昭和二十年度及び同二十一年度の決算に関しては、なお從前の例による。
第五條 この法律中「國会」、「内閣」及び「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、これをそれぞれ「帝國議会」、「政府」及び「勅令」と読み替えるものとする。
第六條 簡易生命保險及郵便年金特別会計法の一部を次のように改正する。
第五條第二項を削る。
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〔政府委員北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=29
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030・北村徳太郎
○政府委員(北村徳太郎君) 只今議題と相成りました、帝國鉄道会計法を改正する法律案及び通信事業特別会計法を改正する法律案に付きまして、提案の理由を御説明申上げたいと存じます、現在國有鐵道事業及び通信事業に關する經理に付きましては、明治四十二年制定の帝國鐵道會計法及び昭和八年制定の通信事業特別會計法に基きまして、それぞれ經理致しまして居るのでございますが、現行法に於きましても、資本の制度を設けまして、不十分ながらも複式簿記法に從ひまして計算整理致し、事業の損益計算竝に財産及び資本の増減計算を行ひ、一應事業の財政状況を明かならしめる體制を整へて居るのでございます、併しながら其の損益の計算は現金の收支を主たる對象と致しまして計算する制度と相成つて居ります關係上、未だ眞の損益を正しく把握し得る制度とは相成つて居ないのでございまして、事業會計としての經理と致しましては、遺憾ながら十分とは申し得ない状態にあるのでございます、事業會計に於きましては損益の計算を正確にし、經營成績及び財産状態を明確にすることは最も重要なことでございまして、之に基きまして事業の合理化、能率化も亦圖られる次第であると存じます、從ひまてて今囘現行制度を改善致しまして、兩事業に於ける財産の増減及び異動を其の發生の事實に基きまして計理し、經營成績及び財政状態を明確ならしめることと致したのでございます、以上の理由に依りまして、兩法案を提出致しました次第でございます、何卒御審議の上速かに御協贊を與へられむことを御願ひ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=30
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031・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました帝國鉄道会計法を改正する法律案外一件は、郵便法の一部を改正する法律案の特別委員會に併記せられむことの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=31
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032・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=32
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033・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=33
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034・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=34
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035・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第五、地方自治法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、植原内務大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=35
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036・会議録情報6
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地方自治法案
右の政府提出案は本院において修正議決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十二日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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地方自治法案
地方自治法目次
第一編 総則
第二編 普通地方公共團体
第一章 通則
第二章 住民
第三章 條例及び規則
第四章 選挙
第一節 通則
第二節 選挙人名簿
第三節 投票
第四節 開票
第五節 選挙会
第六節 候補者及び当選人
第七節 特別選挙
第八節 爭訟
第九節 選挙運動及び罰則
第五章 直接請求
第一節 條例の制定及び監査の請求
第二節 解散及び解職の請求
第六章 議会
第一節 組織
第二節 権限
第三節 招集及び会期
第四節 議長及び副議長
第五節 委員会
第六節 会議
第七節 請願
第八節 議員の辞職及び資格の決定
第九節 紀律
第十節 懲罰
第十一節 書記長及び書記
第七章 執行機関
第一節 普通地方公共團体の長
第一款 地位
第二款 権限
第三款 補助機関
第四款 議会との関係
第二節 選挙管理委員会
第三節 監査委員
第八章 給與
第九章 財務
第一節 財産及び営造物
第二節 收入
第三節 支出
第四節 予算
第五節 出納及び決算
第六節 雜則
第十章 監督
第十一章 補則
第三編 特別地方公共團体及び地方公共團体に関する特例
第一章 特別地方公共團体
第一節 特別市
第二節 特別区
第三節 地方公共團体の組合
第四節 財産区
第二章 地方公共團体の協議会
附則
地方自治法
第一編 総則
第一條 地方公共團体は、普通地方公共團体及び特別地方公共團体とする。
普通地方公共團体は、都道府縣及び市町村とする。
特別地方公共團体は、特別市、特別区、地方公共團体の組合及び財産区とする
第二條 地方公共團体は、法人とする。
普通地方公共團体は、その公共事務並びに從來法令により及び將來法律又は政令により普通地方公共團体に属する事務を処理する。
特別地方公共團体は、この法律の定めるところにより、その事務を処理する。
第三條 地方公共團体の名称は、從來の名称による。
都道府縣及び特別市の名称を変更しようとするときは、法律でこれを定める。
都道府縣及び特別市以外の地方公共團体の名称を変更しようとするときは、この法律に特別の定のあるものを除く外、條例でこれを定めなければならない。
第四條 地方公共團体は、その事務所の位置を定め又はこれを変更しようとするときは、條例でこれを定めなければならない。
第二編 普通地方公共團体
第一章 通則
第五條 普通地方公共團体の区域は、從來の区域による。
都道府縣は、市町村を包括する。
第六條 都道府縣の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。
都道府縣の境界にわたつて市町村の境界の変更があつたときは、都道府縣の境界も、また、自ら変更する。所属未定地を市町村の区域に編入したときも、また、同樣とする。
前二項の場合において財産処分を必要とするときは、関係地方公共團体が協議してこれを定める。その協議が調わないときは、関係地方公共團体の議会の意見を聽き、内務大臣がこれを定める。但し、法律に特別の定があるときは、この限りでない。
前項の協議については、関係地方公共團体の議会の議決を経なければならない。
第七條 市の廃置分合又はこれに伴う町村の廃置分合若しくは市町村の境界変更をしようとするときは、関係市町村の議会の議決を経て、内務大臣がこれを定める。
町村の廃置分合又は市町村の境界変更をしようとするときは、都道府縣知事は、関係市町村の議会の議決を経、内務大臣の許可を得てこれを定める。所属未定地を市町村の区域に編入しようとするときも、また、同樣とする。
都道府縣の境界にわたつて市町村の境界の変更をしようとするときは、関係普通地方公共團体の議会の議決を経て、内務大臣がこれを定める。
前三項の場合において財産処分を必要とするときは、関係市町村が協議してこれを定める。その協議が調わないときは、関係市町村の議会の意見を聽き、第一項及び第二項の場合においては都道府縣知事、前項の場合においては内務大臣がこれを定める。
前項の協議については、関係市町村の議会の議決を経なければならない。
第八條 市を設置し又は町村を市としようとするときは、その地方公共團体は、人口三万以上を有し、且つ、都市的形態を具えていなければならない。
町村を市とし又は市を町村としようとするときは、当該市町村の 議会の議決を経て、内務大臣がこれを定める。
村を町とし又は町を村としようとするときは、町村は、その議会の議決を経て、都道府縣知事の許可を受けなければならない。
第九條 市町村の境界に関する爭論は、都道府縣知事がこれを裁定する。
市町村の境界が判明でない場合において、その境界に関し爭論がないときは、関係市町村の議会の意見を聽き、都道府縣知事がこれを決定しなければならない。
都道府縣の境界にわたつて前二項の場合を生じたときは、関係のある都道府縣知事が協議してこれを裁定又は決定しなければならない。その協議が調わないときは、内務大臣がこれを裁定又は決定する。
前三項の規定による裁定又は決定に不服がある市町村は、高等裁判所に出訴することができる。
第一項乃至第三項の規定による裁定及び決定は、文書を以てし、その理由を附けてこれを関係市町村に交付しなければならない。
第二章 住民
第十條 市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府縣の住民とする。
住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の財産及び営造物を共用する權利を有し、その負担を分任する義務を負う。
第十一條 日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律で定めるところにより、その属する普通地方公共團体の選挙に参與する権利を有する。
第十二條 日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の條例又は規則の制定を請求する権利を有する。
日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の事務の監査を請求する権利を有する。
第十三條 日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の議会の議員、長、副知事若しくは助役、出納長若しくは收入役、選挙管理委員又は監査委員の解職を請求する権利を有する。
第三章 條例及び規則
第十四條 普通地方公共團体は、法律の範囲内において、その事務に関し、條例を制定することができる。
法律又は政令により都道府縣に属する國の事務に関する都道府縣の條例に違反した者に対しては、法律の定めるところにより、これに刑罰を科することがあるものとする。
第十五條 普通地方公共團体の長は、法律の範囲内において、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。
前條第二項の規定は、前項の規則にこれを準用する。
第十六條 條例及び規則は、一定の公告式により、これを告示しなければならない。
第四章 選挙
第一節 通則
第十七條 普通地方公共團体の議会の議員及び長は、その被選挙権を有する者について選挙人が投票によりこれを選挙する。
第十八條 日本國民たる年齢二十年以上の者で六箇月以來市町村の区域内に住所を有するものは、その属する普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙権を有する。
市町村は、市町村に対し特別の関係のある者の申請により、前項の規定による住所の要件にかかわらず、議会の議決を経て、これにその議会の議員及び長の選挙権を與えることができる。
前項の規定により選挙権を與えられた者は、当該市町村を包括する都道府縣の議会の議員及び長の選挙権を有する。
第二項の規定により住所を有する市町村以外の市町村において選挙権を與えられた者は、その住所を有する市町村においては、第一項の規定にかかわらず、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙権を有しない。
第一項の六箇月の期間は、市町村の廃置分合又は境界変更のため中断されることがない。
第十九條 普通地方公共團体の議会の議員の選挙権を有する者で年齢二十五年以上のものは、普通地方公共團体の議会の議員の被選挙権を有する。
日本國民で年齢三十年以上のものは、都道府縣知事の被選挙権を有する。
日本國民で年齢二十五年以上のものは、市町村長の被選挙権を有する。
第二十條 禁治産者及び準禁治産者並びに懲役又は禁錮の刑に処せられその執行を終り又はその執行を受けることがなくなるまでの者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
第二十一條 選挙管理委員、選挙管理委員会の書記、投票管理者、開票管理者及び選挙長並びに選挙事務に関係のある官吏及び吏員は、その関係区域内においては、被選挙権を有しない。
在職の檢察官、警察官吏及び收税官吏は、被選挙権を有しない。
第二十二條 都道府縣の議会の議員は、各選挙区において、これを選挙する。
前項の選挙区は、郡市の区域による。
前項の区域の人口が著しく少いときは、條例で数区域を合せて一選挙区を設けることができる。
都道府縣の議会の議員の任期中あらたに第二項の区域の設定があつた場合において、從前その区域が属していた選挙区の配当議員数が同項の規定による関係選挙区の数に達しないときは、同項の規定の適用については、次の総選挙までの間、その区域は、なお設定されないものとみなす。
前二項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
市町村はその議会の議員の選挙につき、條例で選挙区を設けることができる。但し、第百五十五條第二項の市については、区の区域を以て選挙区とする。
市町村の議会の議員の選挙における選挙人の所属の選挙区は、その住所によりこれを定める。
第十八條第二項の規定による選挙権を有する者で市町村の区域内に住所を有しないものについては、当該市町村の選挙管理委員会は、本人の申請により、その申請がないときは職権により、その所属の選挙区を定めなければならない。
各選挙区において選挙すべき普通地方公共團体の議会の議員の数は、人口に比例して、條例でこれを定めなければならない。
第二十三條 普通地方公共團体の選挙に関する事務は、当該普通地方公共團体の選挙管理委員会がこれを管理する。
第二十四條 普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙は、これを行うべき事由が生じたときは、速かに行わなければならない。
普通地方公共團体の議会の議員又は長の任期満了に因る選挙は、その任期満了の日前三十日前にはこれを行うことができない。
市町村の議会の議員又は長の選挙は、第二十五條第四項の規定による通知があるまでの間は、これを行うことができない。但し、同項の期間内に通知がないときは、この限りでない。
選挙の期日は、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会が選挙の期日前、都道府縣にあつては三十日、市町村にあつては二十日までにこれを告示しなければならない。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合においては、選挙の期日は、都道府縣の選挙管理委員会において、選挙の期日前三十日までにこれを告示しなければならない。
第二十五條 都道府縣の議会の議員の選挙と都道府縣知事の選挙又は市町村の議会の議員の選挙と市町村長の選挙は、これを同時に行うことができる。
市町村の選挙管理委員会は、市町村の議会の議員又は長の選挙を行う場合においては、任期満了に因る選挙については任期満了の日前六十日までに、任期満了以外の事由に因る選挙については第五十九條第二項又は第六十一條第三項の規定により報告する場合を除く外選挙を行うべき事由を生じた日から三日以内に、その旨を都道府縣の選挙管理委員会に届け出なければならない。市町村の議会の議員の選挙の当選人につき第六十二條第一項に掲げる事由を生じた場合又は市町村の議会の議員に欠員を生じた場合において、第五十六條又は第六十三條第二項の規定により不足の当選人又は欠員を補充することができないときも、また、同樣とする。
都道府縣の選挙管理委員会は、前項の規定による届出又は第五十九條第二項若しくは第六十一條第三項の規定による報告に基き、当該市町村の選挙を都道府縣の選挙と同時に行わせることができる。
都道府縣の選挙管理委員会は、第二項の規定による届出又は第五十九條第二項若しくは第六十一條第三項の規定による報告のあつた日から三日以内に、当該市町村の選挙を都道府縣の選挙と同時に行うかどうかを、当該市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
第一項又は第三項の規定により同時に選挙を行う場合においては、この法律に特別の定があるものを除く外、投票及び開票に関する規定は、各選挙を通じてこれを適用する。第一項の規定により同時に選挙を行う場合において、選会の区域が同一であるときは、選挙会に関する規定についても、また、同樣とする。
前項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第二節 選挙人名簿
第二十六條 普通地方公共團体の選挙は、衆議院議員選挙人名簿及び補充選挙人名簿又はその抄本によりこれを行う。
市町村の選挙管理委員会は、毎年九月十五日の現在により補充選挙人名簿を調整し、十一月五日から十五日間その指定した場所においてこれを関係人の縱覽に供さなければならない。
補充選挙人名簿の縱覽の場所は、委員会において縱覽開始の日前三日までにこれを告示しなければならない。
補充選挙人名簿には、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙権を有する者で当該市町村における衆議院議員選挙人名簿に登載されることができないものを登載しなければならない。
補充選挙人名簿には、選挙人の氏名、住所、性別及び生年月日等を記載しなければならない。
選挙権を有する者の年齢は、選挙人名簿の確定の期日によりこれを算定する。
第二十七條 補充選挙人名簿に脱漏又は誤載があると認めるときは、関係人は、その名簿の縱覽期間内に当該市町村の選挙管理委員会に異議の申立をすることができる。
委員会は、前項の申立を受けたときは、その日から二十日以内にこれを決定しなければならない。その申立を正当であると決定したときは、直ちに補充選挙人名簿を修正し、その旨を申立人及び関係人に通知し、併せてこれを告示しなければならない。その申立を正当でないと決定したときは、直ちにその旨を申立人に通知しなければならない。
前項の規定による決定に不服がある者は、決定のあつた日から七日以内に地方裁判所に出訴することができる。その判決に不服がある者は、控訴することはできないが、最高裁判所に上告することができる。
補充選挙人名簿は、十二月二十日を以て確定する。
補充選挙人名簿は、翌年の十二月十九日までこれを据え置かなければならない。但し、確定判決により修正すべきものは、委員会において、直ちにこれを修正し、その旨を告示しなければならない。
天災事変等のため必要があるときは更に名簿を調製しなければならない。
前項の名簿に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三節 投票
第二十八條 投票区は、衆議院議員の選挙の投票区による。
第二十九條 投票管理者は、選挙権を有する者の中から市町村の選挙管理委員会の選任した者を以てこれに充てる。
投票管理者は、投票に関する事務を担任する。
投票管理者は、選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。
第三十條 候補者は、各投票区における選挙人名簿に記載された者の中から、本人の承諾を得て、投票立会人となるべき者一人を定め、選挙の期日前三日までに、投票管理者に届け出ることができる。
前項の規定により届出のあつた者(候補者が死亡し又は候補者たることを辞したときは、その届出に係る者を除く。以下これに同じ。)が十人を超えないときは、直ちにその者を以て投票立会人とし、十人を超えるときは、届出のあつた者において投票立会人十人を互選しなければならない。
前項の規定による互選は、投票によりこれを行い、得票の最多数の者を以て投票立会人とする。得票の数が同じであるときは、投票管理者がくじでこれを定める。
第二項の規定による互選は、選挙の期日の前日にこれを行う。
第二項の規定による互選を行うべき場所及び日時は、投票管理者において、予めこれを告示しなければならない。
候補者が死亡し又は候補者たることを辞したときは、その届出に係る投票立会人は、その職を失う。
第二項の規定による投票立会人が三人に達しないとき若しくは三人に達しなくなつたとき又は投票立会人で参会する者が投票所を開くべき時刻になつても三人に達しないとき若しくはその後三人に達しなくなつたときは、投票管理者は、その投票区における選挙人名簿に記載された者の中から三人に達するまでの投票立会人を選任し、直ちにこれを本人に通知し、投票に立ち会わしめなければならない。
投票立会人は、正当の理由がなければ、その職を辞することができない。
第三十一條 投票用紙の樣式は、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会がこれを定める。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合においては、投票用紙の樣式は、都道府縣の選挙管理委員会がこれを定める。
第二十五條第一項又は第三項の規定により同時に選挙を行う場合においては、投票用紙に各選挙における候補者の氏名を記載する欄を区分して設けなければならない。
第三十二條 選挙人は、投票所において、投票用紙に自ら候補者一人の氏名を記載してこれを投票箱に入れなければならない。
第二十五條第一項又は第三項の規定により同時に選挙を行う場合においては、選挙人は、投票所において、投票用紙の各選挙における候補者の氏名を記載する欄に、自ら候補者一人の氏名を記載してこれを投票箱に入れなければならない。
投票用紙には、選挙人の氏名を記載してはならない。
第三十三條 投票の拒否は、投票立会人の意見を聽き、投票管理者がこれを決定しなければならない。
前項の決定を受けた選挙人において不服があるときは、投票管理者は、仮に投票をさせなければならない。
前項の投票は、選挙人をしてこれを封筒に入れて封をし、表面に自らその氏名を記載して投票箱に入れさせなければならない。
投票立会人において異議のある選挙人についても、また、前二項と同樣とする。
第三十四條 選挙人でその從事する職務若しくは業務又は疾病その他政令の定める事由に因り選挙の当日自ら投票所に行き投票をすることができない旨を証明するものの投票については、第三十二條第一項、第二項、第三十七條、第四十一條及び前條の規定にかかわらず、命令で特別の規定を設けることができる。
第三十五條 島その他交通不便の地について、投票の当日に投票箱を送致することができない情況があると認めるときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、適宜にその投票の期日を定め、開票の期日までにその投票箱、投票録及び選挙人名簿又はその抄本を送致させることができる。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合においては、前項の規定による投票の期日は、同項の規定にかかわらず、都道府縣の選挙管理委員会がこれを定める。
第三十六條 天災その他避けることのできない事故に因り投票を行うことができないとき、又は更に投票を行う必要があるときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない。但し、その期日は、委員会において少くとも五日前にこれを告示しなければならない。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合において前項に規定する事由を生じたときは、都道府縣の選挙管理委員会は、同項の例により更に投票を行わせなければならない。
都道府縣の選挙について第一項に規定する事由を生じた場合及び前項の場合においては、市町村の選挙管理委員会は、都道府縣の選挙の選挙長を経て都道府縣の選挙管理委員会にその旨を届け出なければならない。
第三十七條 衆議院議員選挙法第二十一條乃至第二十三條、第二十五條、第二十六條、第二十八條乃至第三十條、第三十二條、第三十四條、第三十五條及び第三十九條乃至第四十三條の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙の投票にこれを準用する。
第四節 開票
第三十八條 開票区は、衆議院議員の選挙の開票区による。但し、市町村の議会の議員の選挙については、当該市町村の選挙管理委員会は別に開票区を設けることができる。
第三十九條 開票管理者は、選挙権を有する者の中から市町村の選挙管理委員会が選任した者を以てこれに充てる。
開票管理者は、開票に関する事務を担任する。
開票管理者は、選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。
第四十條 第三十條の規定は、開票立会人にこれを準用する。
第四十一條 第三十二條第一項の規定による投票で左に掲げるものは、これを無効とする。
一 成規の用紙を用いないもの
二 候補者の氏名の外他事を記載したもの、但し職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、この限りでない。
三 候補者でない者の氏名を記載したもの
四 二人以上の候補者の氏名を記載したもの
五 被選挙権のない候補者の氏名を記載したもの
六 候補者の氏名を自書しないもの
七 候補者の何人を記載したかを確認し難いもの
第三十二條第二項の規定による投票で前項第一号及び第二号に該当するものは、これを無効とする。その投票中の各選挙における候補者の氏名を記載する欄の前項第三号乃至第七号の記載は、これを無効とする。
第四十二條 開票管理者は、開票立会人立会の上、投票箱を開き、まず、第三十三條第二項及び第四項の規定による投票を調査し、開票立会人の意見を聽き、その投票を受理するかどうかを決定しなければならない。
開票管理者は、開票立会人とともに各投票所の投票を混同して、投票を点檢しなければならない。
投票の点檢が終つたときは、開票管理者は、直ちにその結果を選挙長に報告しなければならない。
第四十三條 第三十六條第一項本文、第二項又び第三項の規定は、開票にこれを準用する。
第四十四條 衆議院議員選挙法第四十五條、第四十六條、第四十八條、第五十條、第五十一條、第五十三條乃至第五十五條及び第五十七條の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙の開票にこれを準用する。
第五節 選挙会
第四十五條 選挙長は、選挙権を有する者の中から当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の選任した者を以てこれに充てる。
選挙長は、選挙会に関する事務を担任する。
選挙長は選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。
第四十六條 選挙会は、選挙長の指定した場所でこれを開く。
第四十七條 第三十條の規定は、選挙立会人にこれを準用する。
第四十八條 選挙会の区域と開票区の区域が同一である選挙については、第三十九條、第四十條、第四十二條第三項、第四十三條及び第四十四條の規定にかかわらず、当該選挙の開票の事務は、選挙会場において選挙会の事務に合せて行うことができる。
前項の規定により開票の事務を選挙会の事務に合せて行う場合においては、開票管理者又は開票立会人は、選挙長又は選挙立会人を以てこれに充て、開票に関する次第は、選挙録中にこれを併せて記載するものとする。
第四十九條 選挙長は、すべての開票管理者から第四十二條第三項の規定による報告を受けた日又はその翌日に選挙会を開き、選挙立会人立会の上、その報告を調査し、各候補者の得票総数を計算しなければならない。
前條第一項の場合においては、選挙長は、前項の規定にかかわらず、投票の点檢の結果により各候補者の得票総数を計算しなければならない。
選挙の一部が無効となり更に選挙を行つた場合において、第四十二條第三項の規定による報告を受けたときは、選挙長は、第一項の例により、他の部分の報告とともに、更にこれを調査し、各候補者の得票総数を計算しなければならない。
第五十條 選挙長は、選挙録を作り、選挙会に関する次第を記載し、選挙立会人とともに、これに署名しなければならない。
選挙録は、第四十二條第三項の規定による報告に関する書類と併せて当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会において、普通地方公共團体の議会の議員又は長の任期間これを保存しなければならない。
第四十八條の場合においては、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、投票の有効無効を区別し、投票録及び選挙録と併せて当該普通地方公共團体の議会の議員又は長の任期間これを保存しなければならない。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合においては、前二項の規定にかかわらず、都道府縣の選挙管理委員会において関係書類を保存しなければならない。
第五十一條 第三十六條第一項本文、第二項及び第三項の規定は、選挙会にこれを準用する。
第五十二條 衆議院議員選挙法第六十條、第六十三條及び第六十六條の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙の選挙会にこれを準用する。
第六節 候補者及び当選人
第五十三條 候補者となろうとする者は、選挙の期日の告示があつた日から選挙の期日前七日までに、その旨を選挙長に届け出なければならない。
選挙人名簿に記載された者が他人を候補者としようとするときは、本人の承諾を得て、前項の期間内に、その推薦の届出をすることができる。
前二項の期間内に届出のあつた候補者が、普通地方公共團体の議会の議員の選挙にあつてはその選挙における議員の定数を超える場合、普通地方公共團体の長の選挙にあつては二人以上ある場合において、その期間を経過した後候補者が死亡し又は候補者たることを辞したときは、前二項の例により、選挙の期日前三日まで、候補者の届出又は推薦届出をすることができる。
普通地方公共團体の議会の議員の選挙において選挙区があるときは、一の選挙区において候補者となつた者は、他の選挙区においては、候補者の届出をし又はその推薦届出を承諾することができない。
候補者は、選挙長に届出をしなければ、候補者たることを辞することができない。
第一項乃至第三項及び前項の届出があつたとき、又は候補者が死亡したことを知つたときは、選挙長は、直ちにその旨を告示するとともに、これを当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に報告しなければならない。
第五十四條 都道府縣及び市の議会の議員又は長の選挙において候補者の届出又は推薦届出をしようとする者は、候補者一人につき、左の区分による金額又はこれに相当する額面の國債証書を供託しなければならない。
一 都道府縣知事の選挙 五千円
二 市長の選挙 三千円
三 都道府縣の議会の議員の選挙 二千円
四 市の議会の議員の選挙 千円
候補者の得票数が、都道府縣及び市の議会の議員の選挙にあつてはその選挙区内の議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)を以て有効投票の総数を除して得た数の十分の一、都道府縣知事及び市長の選挙にあつては有効投票の総数の十分の一に達しないときは、前項の供託物は、当該都道府縣又は市に帰属する。
前項の規定は、候補者が選挙の期日前十日以内に候補者たることを辞した場合にこれを準用する。但し、被選挙権を有しなくなつたため候補者たることを辞したときは、この限りでない。
町村長の選挙において候補者の届出又は推薦届出をしようとする者は、選挙人三十人以上の連署を以てこれをしなければならない。
第五十五條 有効投票の最多数を得た者を以て当選人とする。但し、普通地方公共團体の議会の議員の選挙にあつてはその選挙区内の議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)を以て有効投票の総数を除して得た数の四分の一、普通地方公共團体の長の選挙にあつては有効投票の総数の八分の三以上の得票がなければならない。
当選人を定めるに当り得票数が同じであるときは、選挙会において、選挙長がくじでこれを定める。
第五十六條 第六十六篠第一項、第二項若しくは第四項又は第六十八條第一項若しくは第二項の規定による異議の申立、訴願又は訴訟の結果、更に選挙を行わないで当選人を定めることができる場合においては、選挙会を開きこれを定めなければならない。
当選人が当選を辞したとき、死亡者であるとき、又は第五十七條の規定により当選を失つたときは、直ちに選挙会を開き前條第一項但書の得票者又は第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者で当選人とならなかつたものの中から当選人を定めなければならない。
第六十二條第一項第五号及び第六号の事由が第六十條第二項の期限前に生じた場合において前條第一項但書の得票者若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者があるとき、又はその期限経過後に生じた場合において前條第二項若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者があるときは、選挙会を開き、その者の中から当選人を定めなければならない。
前三項の場合において、前條第一項但書の得票者又は前條第二項若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者で当選人とならなかつたものが選挙の期日後において被選挙権を有しなくなつたときは、これを当選人と定める
ことができない。
第五十七條 当選人は、選挙の期日後において被選挙権を有しなくなつたときは、当選を失う。
第五十八條 第五十三條第一項乃至第三項の規定による届出があつた候補者が、普通地方公共團体の議会の議員の選挙にあつてはその選挙区における議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)を超えないとき、普通地方公共團体の長の選挙にあつては一人であるときは、投票は、これを行わない。
第二十五條第一項又は第三項の規定により同時に選挙を行う場合において、前項の場合を生じたときは、当該選挙に係る部分の投票は、これを行わない。
前二項の規定により投票を行わないこととなつたときは、選挙長は、都道府縣の選挙にあつては市町村の選挙管理委員会を経、市町村の選挙にあつては自ら、直ちにその旨を投票管理者に通知し、併せてこれを告示し、且つ、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に報告しなければならない。
投票管理者は、前項の通知を受けたときは、直ちにその旨を告示しなければならない。
第一項及び第二項の場合においては、選挙長は、選挙の期日から五日以内に選挙会を開き、候補者を以て当選人と定めなければならない。
前項の場合において、候補者の被選挙権の有無は、選挙立会人の意見を聽き、選挙長がこれを決定しなければならない。
第五十九條 当選人が定まつたときは、選挙長は、直ちに当選人に当選の旨を告知し、同時に当選人の住所氏名を告示し、且つ、当選人の氏名及び得票数、その選挙における各候補者の得票総数その他選挙の次第を当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に報告しなければならない。市町村の選挙にあつては、併せて都道府縣の選挙管理委員会にもこれを報告しなければならない。
当選人がないとき、又は普通地方公共團体の議会の議員の選挙において当選人がその選挙における議員の定数に達しないときは、選挙長は、直ちにその旨を告示し、且つ、これを当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に報告しなければならな。市町村の選挙にあつては、併せて都道府縣の選挙管理委員会にもこれを報告しなければならない。
第六十條 当選人は、当選の告知を受けたときは、その当選を承諾するかどうかを当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出なければならない。
当選人が当選の告知を受けた日から十日以内に当選を承諾する旨の届出をしないときは、その当選を辞したものとみなす。
官吏で当選した者は、所属長官の許可を受けなければ、これを承諾することができない。
第六十一條 当選人が当選を承諾したときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、直ちにこれに当選証書を付與し、その住所氏名を告示しなければならない。
当選人がなくなつたとき、又は普通地方公共團体の議会の議員の選挙において当選人がその選挙における議員の定数に達しなくなつたときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、直ちにその旨を告示しなければならない。
前二項の場合においては、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、左の区分により、直ちにその旨を報告しなければならない。
一 都道府縣知事の選挙にあつては内務大臣
二 都道府縣の議会の議員の選挙にあつては都道府縣知事
三 市町村長の選挙にあつては都道府縣知事及び都道府縣の選挙管理委員会
四 市町村の議会の議員の選挙にあつては都道府縣知事、都道府縣の選挙管理委員会及び市町村長
第七節 特別選挙
第六十二條 左に掲げる事由の一が生じた場合において、普通地方公共團体の議会の議員の選挙にあつては更に選挙を行わないで当選人を定めることができず又は更に選挙を行わないで当選人を定めてもなお当選人の不足数が第六十三條第一項にいう議員の欠員の数と通じて当該選挙区における議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)の六分の一を超えるに至つたとき、普通地方公共團体の長の選挙にあつては更に選挙を行わないで当選人を定めることができないときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、選挙の期日を定めてこれを告示し、更に選挙を行わせなければならない。但し、同一人に関し左に掲げるその他の事由により、又は第六十三條第一項の規定により選挙の期日を告示したときは、この限りでない。
一 当選人がないとき、又は普通地方公共團体の議会の議員の選挙において当選人がその選挙における議員の定数に達しないとき
二 当選人が当選を辞したとき、又は死亡者であるとき
三 当選人が第五十七條の規定により当選を失つたとき
四 第六十六條第一項、第二項若しくは第四項又は第六十八條第一項若しくは第二項の規定による異議の申立、訴願又は訴訟の結果、当選人がなくなり、又は普通地方公共團体の議会の議員の選挙において当選人がその選挙における議員の定数に達しなくなつたとき
五 選挙運動を総括主宰した者が選挙に関する犯罪に因り刑に処せられた当選人の当選が無効となつたとき
六 当選人が選挙に関する犯罪に因り刑に処せられ当選が無効となつたとき
第六十六條第一項、第二項又は第四項の規定による異議の申立期間、異議の決定若しくは訴願の裁決が確定しない間又は訴訟が裁判所にかかつている間は、前項の選挙は、これを行うことができない。
第一項各号の一に該当する事由が普通地方公共團体の議会の議員の任期の終る前六箇月以内に生じたときは、同項の選挙は、これを行わない。但し、議員の数がその定数の三分の二に達しなくなつたときは、この限りでない。
当選人の不足数が第六十三條第一項にいう普通地方公共團体の議会の議員の欠員の数と通じて当該選挙区における議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)の六分の一を超えなくても、その区域において普通地方公共團体の他の選挙が行われるときは、その選挙と同時に更に選挙を行うことができる。
第六十三條 普通地方公共團体の議会の議員に欠員を生じた場合において選挙を行わないで当選人を定めることができず若しくは選挙を行わないで当選人を定めてもなおその欠員の数が前條第一項にいう当選人の不足数と通じて当該選挙区における議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)の六分の一を超えるに至つたとき、又は普通地方公共團体の長が欠けるに至つたとき若しくはその退職の申立があつたときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、選挙の期日を定めてこれを告示し選挙を行わせなければならない。但し、同一人に関し前條第一項の規定により選挙の期日を告示したときは、この限りでない。
第六十條第二項の期限前に普通地方公共團体の議会の議員に欠員を生じた場合又は普通地方公共團体の長が欠け若しくはその退職の申立があつた場合において第五十五條第一項但書の得票者若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者で当選人とならなかつた者があるとき、又は第六十條第二項の期限経過後にこれらの事由を生じた場合において第五十五條第二項若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者で当選人とならなかつた者があるときは、直ちに選挙会を開き、その者の中から当選人を定めなければならない。この場合においては、第五十六條第四項の規定を準用する。
前條第二項の規定は第一項の選挙に、同條第三項及び第四項の規定は第一項の普通地方公共團体の議会の議員の選挙にこれを準用する。
第六十四條 普通地方公共團体の議会の議員又はその選挙における当選人について、第六十二條第一項又は前條第一項に掲げる事由が生じた場合において、議員又は当選人がすべてないとき又はすべてなくなつたときは、これらの規定にかかわらず、総選挙を行う。但し、これらの事由に関し第六十二條第一項若しくは前條第一項の規定による選挙の告示又は第五十六條第一項乃至第三項若しくは前條第二項の規定による選挙会の告示をしたときは、この限りでない。
第六十二條第二項の規定は、前項の総選挙にこれを準用する。
一の普通地方公共團体の議会の議員に関する第六十二條第一項又は前條第一項の選挙を同時に行う場合においては、一の選挙を以て合併してこれを行う。
第六十五條 普通地方公共團体の長の選挙において第五十五條第一項但書の得票者がないときは、第二十四條第一項、第四項及び第五項並びに第六十二條第一項の規定にかかわらず、第五十九條第二項の規定による告示の日から都道府縣知事の選挙にあつては十五日以内、市町村長の選挙にあつては十日以内に更に選挙を行わなければならない。この場合においては、第五十三條第一項乃至第三項及び第五十四條第一項第一号又は第二号の規定にかかわらず、その選挙において有効投票の最多数を得た者二人を以て候補者とする。
第二十五條第三項の規定により都道府縣知事の選挙と市町村長の選挙を同時に行つた場合において、その選挙がともに前項の場合に該当するときは、都道府縣知事の選挙に関する第五十九條第二項の規定による告示の日から十五日以内において都道府縣の選挙管理委員会の定める期日に、その選挙を同時に行わなければならない。
前二項の場合においては、選挙管理委員会は、選挙の期日前五日までに選挙の期日を告示しなければならない。
第一項の場合において二人の候補者を定めるに当り得票数が同数であるため得票数によつては二人を定めることができないときは、選挙管理委員会がくじでこれを定める。
第一項の選挙にあつては、第五十五條第一項但書の規定にかかわらず、有効投票の過半数を得た者を以て当選人とする。
第一項の選挙における候補者の得票数が同じであるときは、前項の規定にかかわらず、選挙長がくじで当選人を定めなければならない。
第一項の選挙において候補者が死亡し又は候補者たることを辞したため候補者が一人となつたときは、投票は、これを行わない。この場合においては、第五十八條第二項乃至第六項の規定を準用する。
第一項の選挙における第三十條第七項又はこれを準用する第四十條若しくは第四十七條の規定の適用については、これらの規定中三人とあるのは、二人とする。
第八節 爭訟
第六十六條 選挙人又は候補者は、選挙又は当選の効力に関し異議があるときは、選挙に関しては選挙の日、当選に関しては第五十九條第一項又は第二項の告示の日から十四日以内に、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に対しこれを申し立てることができる。
前項の規定による市町村の選挙管理委員会の決定に不服がある者は、都道府縣の選挙管理委員会に訴願することができる。
第一項の規定による決定及び前項の規定による裁決は、文書を以てこれをし、理由を附けてこれを申立人に交付するとともに、その要旨を告示しなければならない。
第一項の規定による都道府縣の選挙管理委員会の決定又は第二項の規定による裁決に不服がある者は、高等裁判所に出訴することができる。
普通地方公共團体の長の選挙について前條第一項の選挙を行つた場合においては、第一項の期間は、前條第一項の選挙の日又はその選挙に関する第五十九條第一項若しくは第二項の告示の日からこれを起算する。
衆議院議員選挙法第百四十一條及び第百四十一條ノ三の規定は、第四項の規定による訴訟にこれを準用する。
第一項の規定による市町村の選挙管理委員会の決定に対しては、第二項の規定による裁決を受けた後でなければ裁判所に出訴することができない。
第六十七條 選挙の規定に違反することがあるときは、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り、選挙管理委員会又は裁判所は、その選挙の全部又は一部の無効を決定し、裁決し又は判決しなければならない。
第六十八條 衆議院議員選挙法第百十條の規定の準用により当選を無効であると認める選挙人又は候補者は、当選人を被告として、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の属する普通地方公共團体の区域を管轄する高等裁判所に出訴することができる。
檢察官は、衆議院議員選挙法第百十二條乃至第百十三條の規定の準用による罪にあたる事件の被告人が選挙運動を総括主宰した者であるため同法第百三十六條の規定の準用により当選が無効であると認めるときは、公訴に附帶し、当選人を被告として、訴訟を提起しなければならない。
衆議院議員選挙法第百四十一條及び第百四十一條ノ三の規定は、第一項の規定による訴訟に、同法第百四十一條ノ二及び第百四十一條ノ三の規定は、前項の訴訟にこれを準用する。
第六十九條 裁判所は、第六十六條第四項又は前條第一項の訴訟を裁判するに当り、檢察官をして口頭弁論に立ち会わしめることができる。
第七十條 第六十六條第四項の規定による訴訟が提起されたとき、裁判所にかからなくなつたとき若しくはその訴訟につき判決があつたとき又は第六十八條第一項の規定による訴訟につき判決があつたとき、若しくは第六十八條第二項の規定による訴訟につき判決が確定し効力を生じたときは、裁判所は、関係のある普通地方公共團体の長を経て当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に通知しなければならない。
第七十一條 第六十八條第一項の規定による訴訟を提起しようとする者は、保証金として三百円又はこれに相当する額面の國債証書を供託しなければならない。
原告が敗訴した場合において、裁判が確定した日から七日以内に裁判費用を完納しないときは、保証金を以てこれに充て、なお足りないときは、これを追徴する。
第九節 選挙運動及び罰則
第七十二條 衆議院議員選挙法第十章及び第十一章並びに第百四十條第二項の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙の選挙運動に、同法第百四十條第三項乃至第五項の規定は、都道府縣知事の選挙の選挙運動にこれを準用する。但し、政令で特別の定をすることができる。
第七十三條 衆議院議員選挙法第十二章並びに第百四十二條、第百四十三條及び第百四十七條の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙にこれを準用する。但し、政令で特別の定をすることができる。
第五章 直接請求
第一節 條例の制定及び監査の請求
第七十四條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の五十分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の長に対し、條例の制定の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、当該普通地方公共團体の長は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
普通地方公共團体の長は、第一項の請求を受理した日から二十日以内に議会を招集し、意見を附けてこれを議会に付議し、その結果を同項の代表者に通知するとともに、これを公表しなければならない。
第一項の選挙権を有する者とは、選挙人名簿確定の日においてこれに記載された者とし、その総数の五十分の一の数は、当該普通地方公共團体の選挙管理委員会において、選挙人名簿確定後直ちにこれを告示しなければならない。
第七十五條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の五十分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の監査委員に対し、当該普通地方公共團体の経営に係る事業の管理、出納その他の当該普通地方公共團体の事務及び当該普通地方公共團体の長の権限に属する事務の執行に関し、監査の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、監査委員は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
監査委員は、第一項の請求に係る事項につき監査し、その結果を同項の代表者に通知し、且つ、これを公表するとともに、当該普通地方公共團体の議会及び長に報告しなければならない。
監査委員を置かない市町村においては、第一項の請求は、市町村長に対してこれをし、前二項の規定による監査委員の職務は、当該普通地方公共團体の長に対する報告に関するものを除く外、市町村長がこれを行う。
前條第四項の規定は、第一項の選挙権を有する者及びその総数の五十分の一の数にこれを準用する。
第二節 解散及び解職の請求
第七十六條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共團体の議会の解散の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、委員会は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
第一項の請求があつたときは、委員会は、これを選挙人の投票に付さなければならない。
第七十四條第四項の規定は、第一項の選挙権を有する者及びその総数の三分の一の数にこれを準用する。
第七十七條 解散の投票の結果が判明したときは、選挙管理委員会は、直ちにこれを前條第一項の代表者及び当該普通地方公共團体の議会の議長に通知し、且つ、これを公表するとともに、都道府縣にあつては都道府縣知事及び内務大臣、市町村にあつては市町村長及び都道府縣知事に報告しなければならない。
第七十八條 普通地方公共團体の議会は、第七十六條第三項の規定による解散の投票において過半数の同意があつたときは、前條の公表の日において解散するものとする。
第七十九條 第七十六條第一項の規定による普通地方公共團体の議会の解散の請求は、その議会の議員の総選挙のあつた日から一年間及び同條第三項の規定による解散の投票のあつた日から一年間は、これをすることができない。
第八十條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、所属の選挙区におけるその総数の三分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の選挙管理委員会に対し、当該選挙区に属する普通地方公共團体の議会の議員の解職の請求をすることができる。この場合において選挙区がないときは、選挙権を有する者の総数の三分の一以上の者の連署を以て、議員の解職の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、委員会は、直ちに請求の要旨を関係区域内に公表しなければならない。
第一項の請求があつたとき、委員会は、これを当該選挙区の選挙人の投票に付さなければならない。この場合において選挙区がないときは、すべての選挙人の投票に付さなければならない。
第七十四條第四項の規定は、第一項の選挙権を有する者及びその総数の三分の一の数にこれを準用する。
第八十一條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共團体の長の解職の請求をすることができる。
第七十四條第四項の規定は、前項の選挙権を有する者及びその総数の三分の一の数に、第七十六條第二項及び第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第八十二條 第八十條第三項の規定による解職の投票の結果が判明したときは、普通地方公共團体の選挙管理委員会は、直ちにこれを同條第一項の代表者並びに当該普通地方公共團体の議会の関係議員及び議長に通知し、且つ、これを公表するとともに、都道府縣にあつては都道府縣知事及び内務大臣、市町村にあつては市町村長及び都道府縣知事に報告しなければならない。
前條第二項の規定による解職の投票の結果が判明したときは、委員会は、直ちにこれを同條第一項の代表者並びに当該普通地方公共團体の長及び議会の議長に通知し、且つ、これを公表するとともに、都道府縣及び市にあつては内務大臣、町村にあつては都道府縣知事に報告しなければならない。
第八十三條 普通地方公共團体の議会の議員又は長は、第八十條第三項又は第八十一條第二項の規定による解職の投票において、過半数の同意があつたときは、その職を失う。
第八十四條 第八十條第一項又は第八十一條第一項の規定による普通地方公共團体の議会の議員又は長の解職の請求は、その就職の日から一年間及び第八十條第三項又は第八十一條第二項の規定による解職の投票の日から一年間は、これをすることができない。
第八十五條 政令で特別の定をするものを除く外、第四章の規定は、第七十六條第三項の解散の投票並びに第八十條第三項及び第八十一條第二項の規定による解職の投票にこれを準用する。
前項の投票は、政令の定めるところにより、普通地方公共團体の選挙と同時にこれを行うことができる。
第八十六條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の長に対し、副知事若しくは助役、出納長若しくは收入役、選挙管理委員又は監査委員の解職の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、当該普通地方公共團体の長は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
第一項の請求があつたときは、当該普通地方公共團体の長は、これを議会に付議し、その結果を同項の代表者及び関係者に通知し、且つ、これを公表するとともに、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事に報告しなければならない。
第七十四條第四項の規定は、第一項の選挙権を有する者及びその総数の三分の一の数にこれを準用する。
第八十七條 前條第一項に掲げる職に在る者は、同條第三項の場合において、当該普通地方公共團体の議会の議員の三分の二以上の者が出席し、その四分の三以上の者の同意があつたときは、その職を失う。
第八十八條 第八十六條第一項の規定による副知事若しくは助役又は出納長若しくは收入役の解職の請求は、その就職の日から一年間及び同條第三項の規定による議会の議決の日から一年間は、これをすることができない。
第八十六條第一項の規定による選挙管理委員又は監査委員の解職の請求は、その就職の日から六箇月間及び同條第三項の規定による議会の議決の日から六箇月間は、これをすることができない。
第六章 議会
第一節 組織
第八十九條 普通地方公共團体に議会を置く。
第九十條 都道府縣の議会の議員の定数は、人口七十万未満の都道府縣にあつては四十人とし、人口七十万以上百万未満の都道府縣にあつては人口五万、人口百万以上の都道府縣にあつては人口七万を加えるごとに各各議員一人を増し、百二十人を以て定限とする。
前項の議員の定数は、総選挙を行う場合でなければこれを増減することができない。
第九十一條 市町村の議会の議員の定数は、左の通りとし、人口三十万以上五十万未満の市にあつては人口十万、人口五十万以上の市にあつては人口二十万を加えるごとに各各議員四人を増し、百人を以て定限とする。
一 人口二千未満の町村 十二人
二 人口二千以上五千未満の町村 十六人
三 人口五千以上一万未満の町村 二十二人
四 人口一萬以上二万未満の町村 二十六人
五 人口五万未満の市及び人口二万以上の町村 三十人
六 人口五万以上十五万未満の市 三十六人
七 人口十五万以上二十万未満の市 四十人
八 人口二十万以上三十万未満の市 四十四人
九 人口三十万以上の市 四十八人
議員の定数は、條例で特にこれを増減することができる。但し、前項の定限を超えることができない。
第一項の議員の定数は、総選挙を行う場合でなければ、これを増減することができない。但し、著しく人口の増減があつた場合において同項の定数以内の数を増減することは、この限りでない。
第九十二條 普通地方公共團体の議会の議員は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。
普通地方公共團体の議会の議員は、当該普通地方公共團体の有給の職員と兼ねることができない。
第九十三條 普通地方公共團体の議会の議員の任期は、四年とする。
前項の任期は、総選挙の日からこれを起算する。但し、普通地方公共團体の議会の議員の任期満了の日前に総選挙を行つた場合においては、前任者の任期満了の日の翌日から、これを起算する。
補欠議員は、前任者の残任期間在任する。
議員の定数に異動を生じたためあらたに選挙された議員は、総選挙により選挙された議員の任期満了の日まで在任する。
第九十四條 市町村の議会の議員の定数に異動を生じたため議員の解任を必要とするときは、市町村長がくじで解任すべき議員を定める。但し、議員に欠員を生じ又は議員の選挙において当選人に不足を生じているときは、その欠員又は不足の当選人を以て解任すべき議員に充てなければならない。
前項但書の場合において、欠員及び不足の当選人の数が解任すべき議員の数を超えるときは、解任すべき議員に充てる欠員及び不足の当選人の順序は、その事由を生じた時の前後により、その事由を生じた時が同時であるときは、市町村長がくじでこれを定める。市町村の議会の議員の定数に異動を生じたため議員の解任を必要とする場合において選挙区があるときは、第二十二條第八項の條例でまずいずれの選挙区の議員を解任すべきかを定め、当該選挙区所属の議員につき前二項の例により解任すべき議員を定めなければならない。
第九十五條 特別の事情がある町村においては、條例で第八十九條の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。
町村総会に関しては、町村の議会に関する規定を準用する。
第二節 権限
第九十六條 普通地方公共團体の議会は、左に掲げる事件を議決しなければならない。
一 條例を設け又は改廃すること。
二 歳入歳出予算を定めること。
三 決算報告を認定すること。
四 法律又は政令に規定するものを除く外、使用料、手数料、地方税、分担金、加入金又は夫役現品の賦課徴收に関すること。
六 歳入歳出予算を以て定めるものを除く外、あらたに義務の負担をし、及び権利を放棄すること。
七 異議の申立、訴願、訴訟及び和解に関すること。
八 普通地方公共團体の区域内の團体等の活動の綜合調整に関すること。
九 その他法令により議会の権限に属する事項。
前項に定めるものを除く外、普通地方公共團体は、條例で普通地方公共團体に関する事件につき議会の議決すべきものを定めることができる。
第九十七條 普通地方公共團体の議会は、法律又は政令によりその権限に属する選挙を行わなければならない。
第九十八條 普通地方公共團体の議会は、当該普通地方公共團体の事務に関する書類及び計算書を檢閲し、当該普通地方公共團体の長の報告を請求して事務の管理、議決の執行及び出納を檢査することができる。
議会は、監査委員に対し、当該普通地方公共團体の事務に関する監査を求め、その結果の報告を請求することができる。
第九十九條 普通地方公共團体の議会は、当該普通地方公共團体の長に委任された國、他の地方公共團体その他公共團体の事務に関し、当該普通地方公共團体の長の説明を求め、又はこれに対し意見を述べることができる。
議会は、当該普通地方公共團体の公益に関する事件につき意見書を関係行政廳に提出することができる。
第百條 普通地方公共團体の議会は、当該普通地方公共團体の事務に関する調査を行い、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。
議会が前項の規定による調査を行うため当該普通地方公共團体の区域内の團体等に対し照会をし又は記録の送付を求めたときは、当該團体等は、その求めに應じなければならない。
第三節 招集及び会期
第百一條 普通地方公共團体の議会は、普通地方公共團体の長がこれを招集する。議員定数の四分の一以上の者から会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集の請求があるときは、当該普通地方公共團体の長は、これを招集しなければならない。
招集は、開会の日前、都道府縣及び市にあつては七日、町村にあつては三日までにこれを告示しなければならない。但し、急施を要する場合は、この限りでない。
第百二條 普通地方公共團体の議会は、定例会及び臨時会とする。
定例会は、毎年六回以上これを招集しなければならない。
臨時会は、必要がある場合において、この事件に限りこれを招集する。
臨時会に付議すべき事件は、普通地方公共團体の長が予めこれを告示しなければならない。
臨時会の開会中に急施を要する事件があるときは、前二項の規定にかかわらず、直ちにこれを会議に付議することができる。
普通地方公共團体の議会の会期及びその延長並びにその開閉に関する事項は、議会がこれを定める。
第四節 議長及び副議長
第百三條 普通地方公共團体の議会は、議員の中から議長及び副議長一人を選挙しなければならない。
議長及び副議長の任期は、議員の任期による。
第百四條 普通地方公共團体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会を代表する。
第百五條 普通地方公共團体の議会の議長は、委員会に出席し、発言することができる。
第百六條 普通地方公共團体の議会の議長に故障があるとき、又は議長が欠けたときは、副議長が議長の職務を行う。
議長及び副議長にともに故障があるときは、仮議長を選挙し、議長の職務を行わせる。
議会は、仮議長の選任を議長に委任することができる。
第百七條 第百三條第一項及び前條第二項の規定による選挙を行う場合において、議長の職務を行う者がないときは、年長の議員が臨時に議長の職務を行う。
第百八條 普通地方公共團体の議会の議長及び副議長は、議会の許可を得て辞職することができる。但し、副議長は、議会の閉会中においては、議長の許可を得て辞職することができる。
第五節 委員会
第百九條 普通地方公共團体の議会は、條例で常任委員会を置くことができる。
常任委員は、会期の始めに議会において選任し、議員の任期中在任する。
常任委員会は、普通地方公共團体の事務に関する部門ごとにこれを設けることができる。
常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共團体の事務に関する調査を行い、議案、陳情等を審査する。
常任委員会は、予算その他重要な議案、陳情等について公聽会を開き、眞に利害関係を有する者又は学識経驗を有する者等から意見を聽くことができる。
常任委員会は、議会の議決により特に付議された事件については、閉会中も、なお、これを審査することができる。
第百十條 普通地方公共團体の議会は、條例で特別委員会を置くことができる。
特別委員は、議会において選任し、委員会に付議された事件が議会において審議されている間在任する。
特別委員会は、会期中に限り、議会の議決により付議された事件を審査する。
第百十一條 前二條に定めるものを除く外、常任委員会及び特別委員会に関し必要な事項は、條例でこれを定める。
第六節 会議
第百十二條 普通地方公共團体の議会の議員は、議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができる。但し、歳入歳出予算については、この限りでない。
前項の規定による議案の提出は、文書を以てこれをしなければならない。
第百十三條 普通地方公共團体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、議事を開き議決することができない。但し、第百十七條の規定による除斥のため半数に達しないとき、同一の事件につき再度招集してもなお半数に達しないとき、又は招集に應じても出席議員の定数を欠き議長において出席を催告してもなお半数に達しないとき若しくは半数に達してもその後半数に達しなくなつたときは、この限りでない。 第百十四條 普通地方公共團体の議会の議員の定数の半数以上の者から請求があるときは、議長は、その日の会議を開かなければならない。この場合において議長がなお会議を開かないときは、第百六條第一項又は第二項の例による。
前項の規定により会議を開いたとき、又は議員中に異議があるときは、議長は、会議の議決によらない限り、その日の会議を閉じ又は中止することができない。
第百十五條 普通地方公共團体の議会の会議は、これを公開する。但し、議長又は議員三人以上の発議により、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、祕密会を開くことができる。
前項但書の議長又は議員の発議は、討論を行わないでその可否を決しなければならない。
第百十六條 この法律に特別の定がある場合を除く外、普通地方公共團体の議会の議事は、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
前項の場合においては、議長は、議員として議決に加わる権利を有しない。
第百十七條 普通地方公共團体の議会の議長及び議員は、自己又は父母、祖父毎、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件については、その議事に参與することができない。但し、議会の同意があつたときは、会議に出席し、発言することができる。
第百十八條 法律又は政令により普通地方公共團体の議会において行う選挙については、第三十二條、第四十一條及び第五十五條(普通地方公共團体の長の選挙に関する部分を除く。)の規定を準用する。その投票の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する。
議会は、議員中に異議がないときは、前項の選挙につき指名推選の方法を用いることができる。
指名推選の方法を用いる場合においては、被指名人を以て当選人と定めるべきかどうかを会議に諮り、議員の全員の同意があつた者を以て当選人とする。
一の選挙を以て二人以上を選挙する場合においては、被指名人を区分して前項の規定を適用してはならない。
第一項の規定による決定に不服がある者は、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事に訴願することができる。
前項の規定による裁決に不服がある者は、高等裁判所に出訴することができる。
第一項の規定による決定は、文書を以てし、その理由を附けてこれを本人に交付しなければならない。
第百十九條 会期中に議決に至らなかつた事件は、後会に継続しない。
第百二十條 普通地方公共團体の議会の議員は、選挙人の指示又は委嘱を受けてはならない。
第百二十一條 普通地方公共團体の議会は、会議規則を設けなければならない。
第百二十二條 普通地方公共團体の長、選挙管理委員会の委員長及び監査委員並びにその委任又は嘱託を受けた者は、何時でも付議された事件について発言するため議場に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
前項の出席者が発言を求めるときは、議長は、直ちにこれを許可しなければならない。但し、そのため議員の演説を中止させることができない。
第百二十三條 議長は、書記長(書記長を置かない市町村においては書記)をして会議録を調製し、会議の次第及び出席議員の氏名を記載させなければならない。
会議録には、議長及び議会において定めた二人以上の議員が署名しなければならない。
議長は、会議録の写を添えて会議の結果を普通地方公共團体の長及び都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事に報告しなければならない。
第七節 請願
第百二十四條 普通地方公共團体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
第百二十五條 普通地方公共團体の議会は、その採択した請願で当該普通地方公共團体の長、選挙管理委員会又は監査委員において措置することが適当と認めるものは、これらの者にこれを送付し、且つ、その請願の処理の経過及び結果の報告を請求することができる。
第八節 議員の辞職及び資格の決定
第百二十六條 普通地方公共團体の議会の議員は、議会の許可を得て辞職することができる。但し、閉会中においては、議長の許可を得て辞職することができる。
第百二十七條 普通地方公共團体の議会の議員が被選挙権を有しない者であるときは、その職を失う。その被選挙権の有無は、議員が左の各号の一に該当するため被選挙権を有しない場合を除く外、議会がこれを決定する。この場合においては、出席議員の三分の二以上の多数によりこれを決定しなければならない。
一 禁治産者又は準禁治産者となつたとき
二 禁錮以上の刑に処せられたとき
三 選挙に関する犯罪に因り罰金の刑に処せられたとき
都道府縣の議会の議員は、住所を移したため被選挙権を失つても、その住所が同一都道府縣の区 域内に在るときは、そのためにその職を失うことはない。
第一項の場合においては、議員は、第百十七條の規定にかかわらず、その会議に出席して自己の資格に関し弁明することはできるが決定に加わることができない。
第百十八條第五項乃至第七項のの規定は、第一項の場合にこれを準用する。
第百二十八條 普通地方公共團体の議会の議員は、第六十六條第一項、第二項若しくは第四項、第六十八條第一項若しくは第二項又は前條の規定による決定若しくは裁決又は判決が確定するまでは、その職を失わない。
第九節 紀律
第百二十九條 普通地方公共團体の議会の会議中この法律又は会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、これを制止し、又は発言を取り消させ、その命令に從わないときは、その日の会議が終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。
議長は、議場が騷然として整理することが困難であると認めるときは、その日の会議を閉じ、又は中止することができる。
第百三十條 傍聽人が公然と可否を表明し、又は騷ぎ立てる等会議を妨害するときは、普通地方公共團体の議会の議場は、これを制止し、その命令に從わないときは、これを退場させ、必要がある場合においては、これを警察官吏に引き渡すことができる。
傍聽席が騷がしいときは、議長は、すべての傍聽人を退場させることができる。
前二項に定めるものを除く外、議長は、傍聽人の取締に関し必要な規則を設けなければならない。
第百三十一條 議場の秩序を乱し又は会議を妨害するものがあるときは、議員又は第百二十二條第一項の規定による出席者は、議長の注意を喚起することができる。
第百三十二條 普通地方公共團体の議会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。
第百三十三條 普通地方公共團体の議会の会議又は委員会において、侮辱を受けた議員は、これを議会に訴えて処分を求めることができる。
第十節 懲罰
第百三十四條 普通地方公共團体の議会は、この法律及び会議規則に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。
懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない。
第百三十五條 懲罰は、左の通りとする。
一 公開の議場における戒告
二 公開の議場における陳謝
三 一定期間の出席停止
四 除名
前項第四号の除名については、当該普通地方公共團体の議会の議員の三分の二以上の者が出席し、その四分の三以上の者の同意がなければならない。
第百三十六條 普通地方公共團体の議会は、除名された議員で再び当選した議員を拒むことができない。
第百三十七條 普通地方公共團体の議会の議員が正当な理由がなくて招集に應じないため、又は正当な理由がなくて会議に欠席したため、議長が、特に招状を発しても、なお故なく出席しない者は、議長において、議会の議決を経て、これに懲罰を科することができる。
第十一節 書記長及び書記
第百三十八條 普通地方公共團体の議会に書記長及び書記を置く。但し、市町村においては、書記長を置かないことができる。
書記長及び書記は、議長がこれを選任する。
書記長は、議長の命を受け議会の庶務を整理する。
書記は、上司の指揮を受け議会の庶務に從事する。
第七章 執行機関
第一節 普通地方公共團体の長
第一款 地位
第百三十九條 都道府縣に知事を置く。
市町村に市町村長を置く。
第百四十條 普通地方公共團体の長の任期は、四年とする。
前項の任期は、選挙の日からこれを起算する。但し、普通地方公共團体の長の任期満了の日前に選挙を行つた場合においては、前任者の任期満了の日の翌日から、これを起算する。
第百四十一條 普通地方公共團体の長は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。
普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体の議会の議員及び地方公共團体の有給の職員と兼ねることができない。
第百四十二條 普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体に対し請負をし、又は当該普通地方公共團体において経費を負担する事業につきその團体の長若しくはその團体の長の委任を受けた者に対し請負をする者及びその支配人、又は主として同一の行爲をする法人の無限責任社員、取締役若しくは監査役又はこれに準すべき者、支配人及び清算人たることができない。
第百四十三條 普通地方公共團体の長が、被選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。その被選挙権の有無は、普通地方公共團体の長が第百二十七條第一項に掲げる事由の一に該当するため被選挙権を有しない場合を除く外、当該普通地方公共團体の選挙管理委員会がこれを決定しなければならない。
第百十八條第五項乃至第七項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第一項の決定に対しては、前項において準用する第百十八條第五項の規定による裁決を受けた後でなければ、裁判所に出訴することができない。
第百四十四條 普通地方公共團体の長は、第六十六條第一項、第二項若しくは第四項、第六十八條第一項若しくは第二項又は前條第二項の規定による決定若しくは裁決又は判決が確定するまでは、その職を失わない。
第百四十五條 普通地方公共團体の長は、退職しようとするときは、その退職しようとする日前、都道府縣知事にあつては三十日、市町村長にあつては二十日までに、当該普通地方公共團体の議会の議長に申し出なければならない。但し、議会の同意を得たときは、その期日前に退職することができる。
第百四十六條 内務大臣は、都道府縣知事が著しく不適任であると認めるときは、政令の定めるところにより、公聽会を開いて、これを解職することができる。
都道府縣知事は、市町村長が著しく不適任であると認めるときは、前項の例により、これを解職することができる。
第二款 権限
第百四十七條 普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体を統轄し、これを代表する。
第百四十八條 都道府縣知事は、当該都道府縣の事務及び部内の行政事務並びに從來法令により及び將來法律又は政令によりその権限に属する他の地方公共團体その他公共團体の事務を管理し及びこれを執行する。
市町村長は、当該市町村の事務並びに從來法令により及び將來法律又は政令によりその権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務を管理し及びこれを執行する。
第百四十九條 普通地方公共團体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
一 普通地方公共團体の経費を以て支弁すべき事件を執行すること。
二 普通地方公共團体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
三 財産及び営造物を管理すること。
四 收入及び支出を命令し並びに会計を監督すること。
五 証書及び公文書類を保管すること。
六 法律及び政令又は普通地方公共團体の議会の議決により使用料、手数料、地方税、分担金、加入金又は夫役現品を賦課徴收すること。
七 その他法令によりその権限に属する事項
第百五十條 普通地方公共團体の長の権限に属する國の事務の処理については、普通地方公共團体の長は、都道府縣にあつては主務大臣、市町村にあつては都道府縣知事及び主務大臣の指揮監督を受ける。
第百五十一條 都道府縣知事は、その管理に属する行政廳又は市町村長の権限に属する國又は当該都道府縣の事務につき、その処分が成規に違反し、公益を害し、又は権限を犯すと認めるときは、その処分を取り消し、又は停止することができる。
市町村長は、前項の例により、その管理に属する行政廳の処分を取り消し又は停止することができる。
第百五十二條 普通地方公共團体の長に故障があるときは、副知事又は助役がその職務を代理する。この場合において副知事又は助役が二人以上あるときは、予め当該普通地方公共團体の長が定めた順序により、その職務を代理する。
副知事若しくは助役にも故障があるとき又は助役を置かない町村において町村長に故障があるときは、当該普通地方公共團体の長の指定する吏員がその職務を代理する。
第百五十三條 普通地方公共團体の長は、その権限に属する事務の一部を当該普通地方公共團体の吏員に委任し、又はこれをして臨時に代理させることができる。
都道府縣知事は、その権限に属する事務の一部をその管理に属する行政廳又は市町村長に委任することができる。
都道府縣知事は、その権限に属する事務の一部を市町村の職員をして補助執行させることができる。
第百五十四條 普通地方公共團体の長は、その補助機関たる職員を指揮監督し、法律の定めるところにより、その任免、分限、給與、服務、懲戒等に関する事項を掌る。
第百五十五條 普通地方公共團体の長は、その権限に属する事務を分掌させるため、條例で、必要な地に、都道府縣にあつては支廳(道にあつては支廳出張所を含む。以下これに同じ。)及び地方事務所、市町村にあつては支所を設けることができる。
政令で指定する市は、市長の権限に属する事務を分掌させるため、條例でその区域を分けて区を設け、区の事務所を置くものとする。
法律又は政令で特別の定をするものを除く外、行政区に関する規定は、前項の区にこれを準用する。
支廳若しくは地方事務所又は支所若しくは区の事務所の位置、名称及び所管区域は、條例でこれを定めなければならない。
第百五十六條 普通地方公共團体の長は、前條第一項に定めるものを除く外、法律又は政令の定めるところにより、警察署その他の行政機関を設けるものとする。
前項の行政機関の位置、名称及び所管区域は、條例又は規則でこれを定める。
都道府縣知事は、法律又は政令の定めるところにより、食糧事務所、木炭事務所、社会保險出張所その他の國の行政機関の長を指揮監督することができる。
第百五十七條 普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体の区域内の團体等の活動の綜合調整を図るため、これを指揮監督することができる。
前項の場合において必要があるときは、普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体の区域内の團体等をして事務の報告をさせ、書類及び帳簿を提出させ及び実地について事務を視察することができる。
普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体の区域内の團体等の監督上必要な処分をし又は当該團体等の監督官廳の措置を申請することができる。
前項の監督官廳は、普通地方公共團体の長の処分を取り消すことができる。
第百五十八條 都道府縣知事は、その権限に属する事務を分掌させるため、左に掲げる局部を設けなければならない。但し、必要があるときは、條例で、局部を分合し又は事務の配分を変更することができる。
都
総務部
一 職員の進退及び身分に関する事項
二 議会及び都の行政一般に関する事項
三 市町村その他公共團体の行收一般の監督に関する事項
四 他の主管に属しない事項
会計部
一 会計に関する事項
民生局
一 社会事業その他國民生活の保護指導に関する事項
二 社会保險に関する事項
教育局
一 教育学藝に関する事項
経済局
一 農業、工業、商業、森林及び水産に関する事項
二 物資の配給及び物價の統制に関する事項
三 度量衡に関する事項
建設局
一 建設及び復興一般に関する事項
二 都市計画に関する事項
三 住宅及び建築に関する事項
四 土木に関する事項
交通局
一 交通に関する事項
水道局
一 水道及び下水道に関する事項
衞生局
一 保健衞生に関する事項
労働局
一 勤労に関する事項
道府縣
総務部
一 職員の進退及び身分に関する事項
二 議会及び道府縣の行政一般に関する事項
三 市町村その他公共團体の行政一般の監督に関する事項
四 他の主管に属しない事項
民生部
一 社会事業その他國民生活の保護指導に関する事項
二 社会保險に関する事項
三 保健衞生に関する事項
四 勤労に関する事項
教育部
一 教育学藝に関する事項
経済部
一 農業、工業、商業、森林及び水産に関する事項
二 物資の配給及び物價の統制に関する事項
三 度量衡に関する事項
土木部
一 土木に関する事項
二 都市計画に関する事項
三 住宅及び建築に関する事項
四 交通に関する事項
農地部
一 農地関係の調整に関する事項
二 開拓に関する事項
警察部
一 警察に関する事項
都道府縣知事は、その権限に属する事務を分掌させるため、局部の下に必要な分課を設けることができる。
市町村長は、その権限に属する事務を分掌させるため、條例で必要な部課を設けることができる。
第百五十九條 普通地方公共團体の長の事務引継に関する規定は、政令でこれを定める。
前項の政令には、正当の理由がなくて事務の引継を拒んだ者に対し、千円以下の過料を科する規定を設けることができる。
第百六十條 非常災害のため必要があるときは、市町村長は、他人の土地を一時使用し又はその土石、竹木その他の物品を使用し若しくは收用することができる。この場
合においては、市町村は、その損失を補償しなければならない。
非常災害に因る危險防止のため必要があるときは、市町村長、警察官吏又は所轄廳は、市町村の区域内の住民をして防禦に從事させることができる。
第三款 補助機関
第百六十一條 都道府縣に副知事一人を置く。
副知事の定数は、條例で人口二百万以上の都道府縣にあつては二人、人口三百万以上の都道府縣にあつては三人までこれを増加することができる。
市町村に助役一人を置く。但し、町村は、條例でこれを置かないことができる。
助役の定数は、條例でこれを増加することができる。
第百六十二條 副知事及び助役は、普通地方公共團体の長が議会の同意を得てこれを選任する。
第百六十三條 副知事及び助役の任期は、四年とする。但し、普通地方公共團体の長は、任期中においてもこれを解職することができる。
第百六十四條 第二十條の規定に該当する者は、副知事又は助役となることができない。
副知事又は助役は、第二十條の規定に該当するに至つたときは、その職を失う。
第百六十五條 普通地方公共團体の長の職務を代理する副知事又は助役は、退職しようとするときは、その退職しようとする日前二十日までに、当該普通地方公共團体の議会の議長に申し出なければならない。但し、議会の承認を得たときは、その期日前に退職することができる。
前項に規定する場合を除く外、副知事又は助役は、その退職しようとする日前二十日までに、当該普通地方公共團体の長に申し出なければならない。但し、当該普通地方公共團体の長の承認を得たときは、その期日前に退職することができる。
第百六十六條 副知事及び助役は、第二十一條第二項に掲げる職と兼ねることができない。
第百四十一條、第百四十二條及び第百五十九條の規定は、副知事及び助役にこれを準用する。
第百六十七條 副知事及び助役は、普通地方公共團体の長を補佐し、吏員の担任する事務を監督し、別に定めるところにより、普通地方公共團体の長の職務を代理する。
第百六十八條 都道府縣に出納長及び副出納長を置く。
市町村に收入役一人を置く。但し、町村は、條例で收入役を置かず町村長又は助役をしてその事務を兼掌させることができる。
市町村は、條例で副收入役を置くことができる。
副出納長及び副收入役の定数は、條例でこれを定める。
出納長及び副出納長並びに收入役及び副收入役は、第二十一條第二項に掲げる職と兼ねることができない。
第百四十一條、第百四十二條、第百五十九條、第百六十二條、第百六十三條本文及び第百六十四條の規定は、出納長及び副出納長並びに收入役及び副收入役にこれを準用する。
第百六十九條 普通地方公共團体の長、副知事若しくは助役又は監査委員と親子、夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は、出納長若しくは副出納長又は收入役若しくは副收入役となることができない。出納長若しくは副出納長又は收入役若しくは副收入役は、前項に規定する関係が生じたときは、その職を失う。
出納長又は收入役と親子、夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は、副出納長又は副收入役となることができない。
副出納長又は副收入役は、前項に規定する関係が生じたときは、その職を失う。
第百七十條 出納長及び收入役は、当該普通地方公共團体の出納その他の会計事務並びに当該普通地方公共團体の長その他の吏員及び選挙管理委員会の権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務に関する出納その他の会計事務を掌る。但し、法令に特別の規定があるものは、この限りでない。
副出納長又は副收入役は、出納長又は收入役の事務を補助し、出納長又は收入役に故障があるときは、その職務を代理する。副出納長又は副收入役が二人以上あるときは、予め当該普通地方公共團体の長が定めた順序により、その職務を代理する。
普通地方公共團体の長は、出納長又は收入役をしてその事務の一部を副出納長又は副收入役に委任させることができる。但し、当該普通地方公共團体の出納その他の会計事務については、予め議会の同意を得なければならない。
副收入役を置かない市町村にあつては、市町村長は、市町村の議会の同意を得て、收入役に故障があるときその職務を代理すべき吏員を定めて置かなければならない。
第百七十一條 普通地方公共團体は、出納員を置くことができる。
出納員は、事務員の中から、普通地方公共團体の長がこれを命ずる。出納員は、出納長若しくは副出納長又は收入役若しくは副收入役の命を受けて出納事務を掌る。
前條第三項の規定は、出納員にこれを準用する。
第百七十二條 前十一條に定める者を除く外、普通地方公共團体に必要な吏員を置く。
前項の吏員は、普通地方公共團体の長がこれを任免する。
第一項の吏員の定数は、條例でこれを定める。
第百七十三條 前條第一項の吏員は、事務吏員、技術吏員、教育吏員及び警察吏員とする。
事務吏員は、上司の命を受け、事務を掌る。
技術吏員は、上司の命を受け、技術を掌る。
教育吏員は、上司の命を受け、教育を掌る。
警察吏員は、上司の命を受け、警察に関する事務を掌る。
第百七十四條 普通地方公共團体は、常設又は臨時の專門委員を置くことができる。
專門委員は、專門の学識経驗を有する者の中から、普通地方公共團体の長が、これを選任する。
專門委員は、普通地方公共團体の長の委託を受け、その権限に属する事務に関し必要な事項を調査する。
第百七十五條 都道府縣の支廳若しくは地方事務所又は市町村の支所若しくは第百五十五條第二項の市の区の事務所の長は、事務吏員を以てこれに充てる。
警察署の長は、警察吏員を以てこれに充てる。
前二項に規定する機関の長は、普通地方公共團体の長の定めるところにより、上司の指揮を受け、その主管の事務を掌理し部下の吏員を指揮監督する。
第四款 議会との関係
第百七十六條 普通地方公共團体の議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共團体の長は、理由を示してこれを再議に付し又は再選挙を行わせなければならない。
前項の規定による議会の議決又は選挙がなおその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、普通地方公共團体の長は、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事の指揮を請わなければならない。
内務大臣又は都道府縣知事は、前二項の議決又は選挙を取り消すことができる。
第二項の指揮又は前項の処分に不服のある普通地方公共團体の議会又は長は、高等裁判所に出訴することができる。
第百七十七條 普通地方公共團体の議会の議決が明らかに公益を害すると認めるときは、当該普通地方公共團体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない。
前項の規定による議会の議決がなお明らかに公益を害すると認めるときは、当該普通地方公共團体の長は、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事の指揮を請わなければならない。
議会の議決が、收入又は支出に関し執行することができないものがあると認めるときは、前二項の例による。左に掲げる経費を削除し又は減額した場合において、その経費及びこれに伴う收入についても、また同樣とする。
一 法令により負担する経費、法律の規定に基き当該行政廳の職権により命ずる経費その他の普通地方公共團体の義務に属する経費
二 非常の災害に因る應急又は復旧の施設のために必要な経費、傳染病予防のために必要な経費その他の緊急で避けることのできない経費
前二項の規定による都道府縣知事の指揮に不服がある市町村の議会又は長は、内務大臣に訴願することができる。
第百七十八條 普通地方公共團体の議会において、当該普通地方公共團体の長の不信任の議決をしたときは、当該普通地方公共團体の長は、十日以内に議会を解散することができる。
議会において当該普通地方公共團体の長の不信任の議決をした場合において、前項の規定により議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決をしたときは、当該普通地方公共團体の長は、退職しなければならない。
前二項の規定による不信任の議決については、議員数の三分の二以上の者が出席し、その四分の三以上の者の同意がなければならない。
第百七十九條 普通地方公共團体の議会が成立しないとき、第百十三條但書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共團体の長において議会を招集する暇がないと認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共團体の長は、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事の指揮を請い、その議決すべき事件を処分することができる。
議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による。
前二項の規定による処置については、普通地方公共團体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。
第百八十條 普通地方公共團体の議会の権限に属する事項の一部は、その議決による委任により、普通地方公共團体の長において、專決処分をすることができる。
第二節 選挙管理委員会
第百八十一條 普通地方公共團体に選挙管理委員会を置く。
選挙管理委員会は、都道府縣にあつては六人、市町村にあつては四人の選挙管理委員を以てこれを組織する。
第百八十二條 選挙管理委員は、普通地方公共團体の議会において、選挙権を有する者の中からこれを選挙する。
議会は、前項の規定による選挙を行う場合においては、同時に委員と同数の補充員を選挙しなければならない。補充員がすべてなくなつたときも、また、同樣とする。
委員中に欠員があるときは、選挙管理委員会の委員長は、補充員の中からこれを補欠する。その順序は、選挙の時が異なるときは選挙の前後により、選挙の時が同時であるときは得票数により、得票数が同じであるときはくじにより、これを定める。
第百八十三條 選挙管理委員の任期は、二年とする。但し、後任者が就任する時まで在任する。
補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
補充員の任期は、委員の任期による。
委員及び補充員は、その選挙に関し第百七十六條第二項若しくは第三項の規定による処分又はこれに関する判決が確定するまでは、その職を失わない。
第百八十四條 選挙管理委員は、選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。その選挙権の有無は、選挙管理委員が第百二十七條第一項に掲げる事由の一に該当するため選挙権を有しない場合を除く外、選挙管理委員会がこれを決定する。
第百十八條第五項乃至第七項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第一項の決定に対しては、前項において準用する第百十八條第五項の規定による裁決を受けた後でなければ、裁判所に出訴することができない。
第百八十五條 選挙管理委員会の委員長が退職しようとするときは、当該選挙管理委員会の承認を得なければならない。
委員が退職しようとするときは、委員長の承認を得なければならない。
第百八十六條 選挙管理委員会は、法律又は政令の定めるところにより、当該普通地方公共團体又は國、他の地方公共團体その他公共團体の選挙に関する事務及びこれに関係のある事務を管理する。
都道府縣の選挙管理委員会は、市町村の選挙管理委員会を指揮監督する。この場合においては、第百五十一條第一項の規定を準用する。
第百八十七條 選挙管理委員会は、委員の中から委員長を選挙しなければならない。
委員長は、委員会に関する事務を処理し、委員会を代表する。
委員長に故障があるときは、委員長の指定する委員が、その職務を代理する。
第百八十八條 選挙管理委員会は、委員長がこれを招集する。委員から委員会の招集の請求があるときは、委員長は、これを招集しなければならない。
第百八十九條 選挙管理委員会は、委員三人以上が出席しなければ、会議を開くことができない。
委員長及び委員は、自己又は父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件については、その議事に参與することができない。但し、委員会の同意を得たときは、会議に出席し、発言することができる。
前項の規定により委員の数が減少して第一項の数に達しないときは、委員長は、補充員でその事件に関係のないものを以て、第百八十二條第三項の順序により、臨時にこれを充てなければならない。委員の故障に因り委員の数が第一項の数に達しないときも、また同樣とする。
第百九十條 選挙管理委員会の議事は、出席委員の過半数を以てこれを決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
前項の場合においては、委員長は、委員として議決に加わる権利を有しない。
第百九十一條 選挙管理委員会に書記を置く。
書記の定数は、條例でこれを定める。
書記は、委員長の指揮を受け、委員会に関する事務に從事する。
第百九十二條 選挙管理委員の分限、服務及び懲戒に関しては、別に法律でこれを定める。
第百九十三條 第百二十七條第二項、第百四十一條第一項、第百四十二條及び第百六十六條第一項の規定は選挙管理委員に、第百五十條の規定は選挙管理委員会に、第百五十三條第一項、第百五十四條及び第百五十九條の規定は選挙管理委員会の委員長これを準用する。
第百九十四條 この法律及びこれに基く政令に規定するものを除く外、選挙管理委員会に関し必要な事項は、委員会がこれを定める。
第三節 監査委員
第百九十五條 都道府縣に監査委員を置く。
市町村は、條例で監査委員を置くことができる。
監査委員の定数は、都道府縣にあつては四人、市町村にあつては二人とする。
第百九十六條 監査委員は、普通地方公共團体の長が、議会の同意を得て、議員及び学識経驗を有する者の中から、各各同数を選任しなければならない。
監査委員は、地方公共團体の有給の職員と兼ねることができない。
第百九十七條 監査委員の任期は、二年とする。
普通地方公共團体の議会の議員の中から選任された監査委員の任期は、前項の規定にかかわらず、議員の任期を超えることができない。但し、後任者が選任されるまでの間は、その職務を行うことを妨げない。
第百九十八條 監査委員は、退職しようとするときは、普通地方公共團体の長の承認を得なければならない。
第百九十九條 監査委員は、普通地方公共團体の経営に係る事業の管理及普通地方公共團体の出納その他の事務の執行を監査する。
監査委員は、毎会計年度少くとも一回以上期日を定めて前項の規定による監査をしなければならない。
監査委員は、所轄行政廳又は普通地方公共團体の議会の要求があるときは、臨時に、その要求に係る事項について監査をしなければならない。
監査委員は、前二項に定める場合を除く外、必要があると認めるときは、何時でも監査をすることができる。
監査委員は、監査の結果を所轄行政廳又は、普通地方公共團体の議会及び長に報告し、且つ、これを公表しなければならない。
第二百條 監査委員の事務を補助させるため書記を置くことができる。
書記の定数は、條例でこれを定める。
書記は、監査委員の指揮を受け、監査に関する事務に從事する。
第二百一條 第百四十二條、第百五十四條、第百五十九條、第百六十四條、第百六十六條第一項及び第百九十二條の規定は、監査委員にこれを準用する。
第二百二條 この法律及びこれに基く政令に規定するものを除く外、監査委員に関し必要な事項は、條例でこれを定める。
第八章 給與
第二百三條 普通地方公共團体は、その議会の議員、選挙管理委員、議会の議員の中から選任された監査委員、專門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人に対し、報酬を支給しなければならない。
前項の者は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。
報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は、條例でこれを定めなければならない。
第二百四條 普通地方公共團体は、法律の定めるところにより、普通地方公共團体の長及びその補助機関たる職員(專門委員を除く。)、学識経驗を有する者の中から選任された監査委員、議会の書記長及び書記、選挙管理委員会の書記並びに監査委員の事務を補助する書記に対し、給料及び旅費を支給しなければならない。
給料及び旅費の額並びにその支給方法は、條例でこれを定めなければならない。
第二百五條 前條第一項の職員は、法律の定めるところにより、退隠料、退職給與金、死亡給與金又は遺族扶助料を受けることができる。
第二百六條 前三條の規定による給與に関し、異議のある関係人は、これを普通地方公共團体の長に申し立てることができる。
前項の規定による異議の申立があつたときは、普通地方公共團体の長は、議会に諮つてこれを決定しなければならない。
議会は、前項の規定による諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならない。
第二百七條 普通地方公共團体は、條例の定めるところにより、第百條第一項の規定により出頭した選挙人その他の関係人並びに第百九條第五項及び第百四十六條第一項の規定による公聽会に参加した者の要した実費を弁償しなければならない。
第九章 財産
第一節 財産及び営造物
第二百八條 普通地方公共團体は、收益のためにする財産を基本財産として維持することができる。
普通地方公共團体は、特定の目的のため特別の基本財産を設け又は金穀を積み立てることができる。
第二百九條 旧來の慣行により市町村の住民中特に財産又は営造物を使用する権利を有する者があるときは、その旧慣による。その旧慣を変更し又は廃止しようとするときは、市町村の議会の議決を経なければならない。
前項の財産又は営造物をあらたに使用しようとする者があるときは、市町村は、議会の議決を経て、これを許可することができる。
第二百十條 普通地方公共團体は、その区域外においても、また、関係普通地方公共團体との協議により営造物を設けることができる。
前項の協議については、関係普通地方公共團体の議会の議決を経なければならない。
第二百十一條 普通地方公共團体は、他の普通地方公共團体との協議により、他の普通地方公共團体の財産又は営造物を自己の住民の使用に供させることができる。
前項の協議については、関係普通地方公共團体の議会の議決を経なければならない。
第二百十二條 普通地方公共團体の財産又は営造物は、宗教上の組織若しくは團体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、その利用に供してはならない。
第二百十三條 普通地方公共團体は、法律又は政令に特別の定があるものを除く外、財産の取得、管理及び処分並びに営造物の設置及び管理に関する事項は、條例でこれを定めなければならない。
第二百十四條 普通地方公共團体は、財産又は営造物の使用に関し、條例で二千円以下の過料を科する規定を設けることができる。
第二百十五條 財産又は営造物を使用する権利に関し異議がある者は、これを普通地方公共團体の長に申し立てることができる。
前項の規定による異議の申立があつたときは、普通地方公共團体の長は、これを議会に諮つて決定しなければならない。
議会は、前項の規定による諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならない。
第二節 收入
第二百十六條 普通地方公共團体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴收することができる。
第二百十七條 普通地方公共團体は、分担金を徴收することができる。
分担金は、政令の定めるところにより、数人若しくは普通地方公共團体の一部を利する財産若しくは営造物又は普通地方公共團体の一部に対し利益のある事件に関し、特に利益を受ける者から徴收する。
第二百十八條 普通地方公共團体は、夫役現品を賦課徴收することができる。但し、都道府縣にあつては、当該都道府縣内の一部の市町村その他公共團体に対してもこれを賦課徴收することができる。
夫役又は現品は、これを金額に算出して賦課しなければならない。但し、市町村においては、直接市町村税を準率とし、直接町村税を賦課しない町村においては直接國税を準率としなければならない。
学藝、美術及び手工に関する労務については、夫役を賦課することができない。
夫役を賦課された者は、本人自らこれに当り、又は適当な代人を出すことができる。
夫役又は現品は、金銭を以てこれに代えることができる。
第二項及び前項の規定は、急迫の場合その他特別の事情がある場合に賦課する夫役又は現品については、これを適用しない。
第二百十九條 数人若しくは普通地方公共團体の一部を利する財産若しくは営造物又は数人若しくは普通地方公共團体の一部に対し利益のある事件に関しては、普通地方公共團体は、夫役現品につき不均一の賦課をし、又は数人若しくは普通地方公共團体の一部に対してその賦課をすることができる。
第二百二十條 普通地方公共團体は、財産及び営造物の使用につき使用料を徴收することができる。
第二百二十一條 市町村は、第二百九條の規定による財産又は営造物の使物に関し、使用料若しくは一時の加入金を徴收し又はこれを併せて徴收することができる。
第二百二十二條 普通地方公共團体は、特定の個人のためにする事務につき、手数料を徴收することができる。
第二百二十三條 分担金、使用料及び手数料に関する事項については、條例でこれを規定しなければならない。
詐僞その他不正行爲に因り、分担金、使用料又は手数料の徴收を免れた者については、條例でその徴收を免れた金額の五倍に相当する金額以下の過料を科する規定を設けることができる。
前項に定めるものを除く外、分担金、使用料及び手数料の徴收に関しては、條例で二千円以下の過料を科する規定を設けることができる。
過料の処分を受けた者は、その処分に不服があるときは、訴願を提起することができる。
第二百二十四條 分担金、夫役現品、使用料、加入金及び手数料の賦課又は徴收を受けた者が、その賦課又は徴收につき違法又は錯誤があると認めるときは、その告知を受けた日から、三十日以内に、普通地方公共團体の長に異議の申立をすることができる。
第二百九條の規定による財産又は営造物を使用する権利に関し異議がある者は、これを市町村長に申し立てることができる。
前二項の規定による異議の申立があつたときは、普通地方公共團体の長は、これを議会に諮つて決定しなければならない。
議会は、前項の規定による諮問があつた日から、二十日以内に意見を述べなければならない。
第三項の規定による異議の決定を受けた後でなければ、第一項及び第二項に規定する事項については、裁判所に出訴することができない。
第二百二十五條 分担金、使用料、加入金、手数料及び過料その他の普通地方公共團体の收入を定期内に納めない者があるときは、普通地方公共團体の長は、期限を指定してこれを督促しなければならない。
夫役現品の賦課を受けた者が定期内にその履行をせず又は夫役現品に代える金銭を納めないときは、普通地方公共團体の長は、期限を指定してこれを督促しなければならない。急迫の場合その他特別の事情がある場合に賦課した夫役又は現品については、更にこれを金額に算出し、期限を指定してその納付を命じなければならない。
前二項の場合においては、條例の定めるところにより、手数料を徴收することができる。
滞納者が、第一項又は第二項の規定による督促又は命令を受け、その指定の期限内にこれを完納しないときは、國税滯納処分の例により、これを処分しなければならない。
第一項乃至第三項の規定による徴收金は、都道府縣にあつては國の徴收金に次いで先取特権を有し、市町村にあつては國及び都道府縣の徴收金に次いで先取特権を有し、その追徴、還付及び時効については、國税の例による。
都道府縣知事の委任を受けた吏員がした前三項の規定による処分に異議がある者は、これを都道府縣知事に申し立てることができる。
前項の規定による異議の申立があつたときは、都道府縣知事は、これを議会に諮つて決定しなければならない。
議会は、前項の規定による諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならない。
第四項の規定による処分中差押物件の公賣は、その処分が確定するまで執行を停止する。
第四項の規定による処分は、当該普通地方公共團体の区域外においても、また、これをすることができる。
第二百二十六條 普通地方公共團体は、その負債を償還するため、普通地方公共團体の永久の利益となるべき支出をするため、又は天災等のため必要がある場合に限り、議会の議決を経て、地方債を起すことができる。
地方債を起すにつき、議会の議決を経るときは、併せて起債の方法、利息の定率及び償還の方法について議決を経なければならない。
第二百二十七條 普通地方公共團体の長は、予算内の支出をするため、議会の議決を経て、一時の借入をすることができる。
前項の規定による借入金は、その会計年度内の收入を以て償還しなければならない。
第三節 支出
第二百二十八條 普通地方公共團体は、その必要な経費及び從來法令により又は將來法律若しくは政令により当該普通公共團体の負担に属する経費を支弁する義務を負う。
第二百二十九條 普通地方公共團体の長若しくはその補助機関たる職員又は選挙管理委員会が、國、他の地方公共團体その他公共團体の事務を執行するため要する経費は、法律又は政令に特別の定があるものを除く外、当該普通地方公共團体がこれを支出する義務を負う。
普通地方公共團体の長若しくはその補助機関たる職員又は選挙管理委員会をして國の事務を処理し、管理し、又は執行させる場合においては、そのために要する経費の財源につき必要な措置を講じなければならない。
第二百三十條 普通地方公共團体は、宗教上の組織若しくは團体の便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、公金を支出してはならない。
第二百三十一條 普通地方公共團体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。
第二百三十二條 普通地方公共團体の議会において予算を議決したときは、普通地方公共團体の長は、直ちにその写を出納長又は收入役に交付しなければならない。
出納長又は收入役は、普通地方公共團体の長の命令がなければ、支出することができない。命令を受けても予算がなく、且つ、予備費支出、費目流用その他財務に関する規定により支出することができないときも、また、同樣とする。
第二百三十三條 普通地方公共團体の支拂金の時効については、政府の支拂金の時効による。
第四節 予算
第二百三十四條 普通地方公共團体の長は、毎会計年度歳入歳出予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない。
普通地方公共團体の会計年度は、政府の会計年度による。
予算を議会に提出するときは、普通地方公共團体の長は、併せて財産表その他必要な書類を提出しなければならない。
第二百三十五條 普通地方公共團体の長は、議会の議決を経て既定予算の追加又は更正をすることができる。
第二百三十六條 普通地方公共團体の経費を以て支弁する事件で数年を期してその経費を支出すべきものは、議会の議決を経て、その年期間各年度の支出額を定め、継続費とすることができる。
第二百三十七條 普通地方公共團体は、予算外の支出又は予算超過の支出に充てるため、予備費を設けなければならない。
特別会計には、予備費を設けないことができる。
予備費は、議会の否決した費途に充てることができない。
第二百三十八條 予算は、普通地方公共團体の議会の議決を経た後、直ちに都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事と報告し、且つ、その要領を告示しなければならない。
第二百三十九條 普通地方公共團体は、議会の議決を経て特別会計を設けることができる。
第五節 出納及び決算
第二百四十條 普通地方公共團体の出納は、毎月例日を定めてこれを檢査し、且つ、毎会計年度少くとも二回臨時檢査をしなければならない。
檢査は、監査委員がこれを行う。臨時檢査には、普通地方公共團体の議会の議員において互選した二人以上の議員の立会を必要とする。
監査委員は、檢査の結果を普通地方公共團体の議会及び長に報告しなければならない。
監査委員を置かない市町村においては、第二項の檢査及び前項の報告は、市町村長がこれを行う。
第二百四十一條 普通地方公共團体の出納は、翌年度の五月三十一日を以て閉鎖する。
第二百四十二條 決算は、証書類と併せて出納長又は收入役からこれを普通地方公共團体の長に提出しなければならない。この場合において、收入役は、出納閉鎖後一箇月以内にこれをしなければならない。
普通地方公共團体の長は、決算及び証書数を監査委員の審査に付し、その意見を附けて、都道府縣にあつては翌翌年度の通常予算を議する会議、市町村にあつては次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付さなければならない。
決算は、その認定に関する議会の議決とともに、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事に報告し、且つ、その要領を告示しなければならない。
監査委員を置かない市町村においては、第二項に規定する監査委員の職務は、市町村長が自らこれを行う。
第六節 雜則
第二百四十三條 普通地方公共團体は、法律又は政令に特別の定がある場合を除く外、財産の賣却及び貸與、工事の請負並びに物件、労力その他の供給は、競爭入札に付さなければならない。但し、臨時急施を要するとき、入札の價格が入札に要する経費に比較して得失相償わないとき、又は議会の同意を得たときは、この限りでない。
第二百四十四條 普通地方公共團体の長は、議会の指定した事業につきその経営状況を明らかにするため、定期に貸借対照表その他必要な書類を作成し、これを監査委員の審査に付し、その意見を附けて次の議会に提出しなければならない。
前項の規定中監査委員の審査に関する部分は、監査委員を置かない市町村については、これを適用しない。
第二百四十五條 予算及び決算の調製の樣式、予算費目の流用その他財務に関し必要な規定は、命令でこれを定める。
第十章 監督
第二百四十六條 都道府縣に関する事項は内務大臣、市町村に関する事項は第一次において都道府縣知事、第二次において内務大臣の所轄とする。
第二百四十七條 所轄行政廳は、必要があるときは、普通地方公共團体につき事務の報告をさせ、書類帳簿を徴し又は実地について事務を視察し若しくは出納を檢閲することができる。
所轄行政廳は、必要があるときは、普通地方公共團体の事務に関する基準を定め、普通地方公共團体に対してこれを通知し又はその採用を勧告することができる。
第二百四十八條 普通地方公共團体において、法律若しくは政令により負担し、又は法律の規定に基き当該行政聽の職権により命ずる経費を予算に計上しないときは、所轄行政廳は、理由を示してその経費を予算に加えることができる。
普通地方公共團体の長及びその補助機関たる職員、選挙管理委員会又は監査委員が法律又は政令により執行すべき事件を執行しないときは、所轄行政廳又はその委任を受けた者は、当該普通地方公共團体の負担において、これを執行することができる。
第二百四十九條 市町村長、助役、收入役又は副收入役に故障があるとき、又は普通地方公共團体の選挙管理委員会が成立しないときは、所轄行政廳は、臨時代理者又は臨時選挙管理委員を選任し、その職務を行わせることができる。
臨時代理者又は臨時選挙管理委員に対する給與は、所轄行政廳が当該普通地方公共團体の議会の同意を得てこれを定める。
第二百五十條 普通地方公共團体は、第二百二十七條の借入金を除く外、地方債を起し、並びに起債の方法、利息の定率及び償還の方法を変更しようとするときは、政令の定めるところにより、所轄行政廳の許可を受けなければならない。
前項の規定による内務大臣の許可については、内務大臣は、政令の定めるところにより、大藏大臣に協議するものとする。
第二百五十一條 普通地方公共團体は、條例を設け又は改廃するときは、政令の定めるところにより、所轄行政廳の許可を受け又はこれに対し報告しなければならない。
第二百五十二條 所轄行政廳は、許可を要する事件については、許可の申請の趣旨に反しないと認める範囲内において、更正してこれを許可することができる。
所轄行政廳の許可を要する事件については、政令の定めるところにより、その許可の職権を下級所轄行政廳に委任し、又は軽易な事件に限り報告を以て許可に代え若しくは許可を受けしめないことができる。
第十一章 補則
第二百五十三條 都道府縣知事の権限に属する市町村に関する事件で数都道府縣にわたるものがあるときは、内務大臣は、関係都道府縣知事の申請により、その事件を管理すべき都道府縣知事を指定しなければならない。
第二百五十四條 この法律における人口は、政令の定めるところによる。
第二百五十五條 第二百十八條第二項の直接市町村税及び直接國税の種類は、政令でこれを定める。
第二百五十六條 この法律に規定するものを除く外、第六條第一項及び第二項並びに第七條第一項乃至第三項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第二百五十七條 この法律に特別の定があるものを除く外、異議の申立又は訴題の提起は、処分、決定又は裁決があつた日から二十一日以内にこれをしなければならない。
決定書又は裁決書の交付を受けない者に関しては、前項の期間は、告示の日からこれを起算する。
この法律に特別の定があるものを除く外、異議の決定は、その申立を受けた日から三十日以内にこれをしなければならない。
異議の決定をすべき期間内に異議の決定がないときは、その申立を斥りぞける旨の決定があつたものとみなすことができる。
異議の申立に関する期間の計算については、訴願の提起に関する期間の計算の例による。
異議の申立は、期限が経過した後においても容認すべき事由があると認めるときは、なお、これを受理することができる。
異議の決定は、文書を以てこれをし、その理由を附けてこれを本人に交付しなければならない。
異議の申立があつても処分の執行は、これを停止しない。但し、行政廳は、職権により又は関係人の請求により必要と認めるときは、これを停止することができる。
第二百五十八條 島に対する行政の特例に関し必要な事項は、政令でこれを定めることができる。
第二百五十九條 郡の区域をあらたに画し若しくはこれを廃止し、又は郡の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、関係都道府縣の議会の意見を徴して内務大臣がこれを定める。
郡の区域内において市の設置があつたとき、又は郡の区域の境界にわたつて市町村の境界の変更があつたときは、郡の区域も、また、自ら変更する。
郡の区域の境界にわたつて町村が設置されたときは、その町村の属すべき区域は、都道府縣知事が内務大臣の許可を得てこれを定める。
前三項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第二百六十條 政令で特別の定をする場合を除く外、市町村の区域内の町若しくは字の区域をあらたに画し若しくはこれを廃止し、又は町若しくは字の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、市町村長が議会の議決を経、都道府縣知事の許可を得てこれを定める。
前項の規定により許可をしたときは、都道府縣知事は、直ちにこれを告示するとともに、内務大臣に報告しなければならない。
第二百六十一條 一の普通地方公共團体のみに適用される特別法が國会において議決されたときは、衆議院議長は、内閣総理大臣を経由し、当該法律を添えてその旨を内務大臣に通知しなければならない。
前項の規定による通知があつたときは、内務大臣は、その日から五日以内に、関係普通地方公共團体の長にその旨を通知するとともに、当該法律その他関係書類を移送しなければならない。
前項の規定による通知があつたときは、関係普通地方公共團体の長は、その日から三十一日以後六十日以内に、選挙管理委員会をして当該法律について賛否の投票を行わしめなければならない。
前項の投票の結果が判明したときは、関係普通地方公共團体の長は、その日から五日以内に関係書類を添えてその結果を内務大臣に報告しなければならない。その投票の結果が確定したことを知つたときも、また、同樣とする。
前項の規定による報告があつたときは、内務大臣は、直ちに関係書類を添えて内閣総理大臣にその旨を報告しなければならない。
前項の規定により第三項の投票の結果が確定した旨の報告があつたときは、内閣総理大臣は、直ちにその旨を奏上するとともに衆議院議長に通知しなければならない。
第二百六十二條 政令で特別の定をするものを除く外、第四章の規定は、前條第三項の規定による投票にこれを準用する。
前條第三項の規定による投票は、政令の定めるところにより、普通地方公共團体の選挙又は第七十六條第三項の規定による解散の投票若しくは第八十條第三項及び第八十一條第二項の規定による解職の投票と同時にこれを行うことができる。
第二百六十三條 第二十二條第二項中郡とあるのは、都においては支廳長の所管区域を含み、道においては支廳長の所管区域とし、同項中市とあるのは、第百五十五條第二項の市においては、区とする。
都の選挙については、第四章中の市に関する規定は、特別区にこれを適用する。
都道府縣の選挙については、第四章中の町村に関する規定は、全部事務組合又は役場事務組合にこれを適用する。
第三編 特別地方公共團体及び地方公共團体に関する特例
第一章 特別地方公共團体
第一節 特別市
第二百六十四條 特別市は、その公共事務及び法律又は政令により特別市に属する事務並びに政令で特別の定をするものを除く外從來法令により都道府縣及び市に属する事務を処理する。
第二百六十五條 特別市は、都道府縣の区域外とする。
特別市は、人口五十万以上の市につき、法律でこれを指定する。その指定を廃止する場合も、また、同樣とする。
特別市の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。但し、特別市の区域に市町村若しくは特別区の区域又は所属未定地を編入する場合においては、関係地方公共團体の議会の議決を経て内務大臣がこれを定める。
第二項の規定により特別市の指定があつたとき又は前項但書の規定により境界の変更があつたときは、都道府縣の境界は、自ら変更する。
前二項の場合において財産処分を必要とするときは、関係地方公共團体の協議によつてこれを定める。その協議が調わないときは、関係地方公共團体の議会の意見を聽き、内務大臣がこれを定める。
前項の協議については、関係地方公共團体の議会の議決を経なければならない。
第二百六十六條 特別市と市町村若しくは特別区との境界に関する裁定又は決定は、第九條の例により、内務大臣がこれを行う。
第二百六十七條 特別市の区域内に住所を有する者は、当該特別市の住民とする。
第二百六十八條 特別市に市長及び助役を置く。
助役の定数は、條例でこれを定める。
特別市の市長は、当該特別市の事務及び部内の行政事務並びに法律又は政令によりその権限に属する他の地方公共團体その他公共團体の事務及び政令で特別の定をするものを除く外、從來法令により都道府縣知事及び市長の権限に属する他の地方公共團体その他公共團体の事務を管理し及び執行する。
第二百六十九條 特別市に收入役一人及び副收入役若干人を置く。
副收入役の定数は、條例でこれを定める。
第二百七十條 特別市は、市長の権限に属する事務を分掌させるため、條例で、その区域を分けて行政区を設け、その事務所を置くものとする。
特別市の市長は、区長の権限に属する事務を分掌させるため、條例で、必要な地に行政区の支所を設けることができる。
行政区の事務所又は支所の位置、名称及び所管区域は、條例でこれを定めなければならない。
第二百七十一條 行政区に区長及び区助役一人を置く。
区長及び区助役は、特別市の事務吏員の中から特別市の市長がこれを命ずる。
区長は、特別市の市長の定めるところにより、区内に関する特別市の事務及び特別市の市長の権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務並びに法律又は政令によりその権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務を掌理する。
区助役は、区長の事務を補佐し、区長に故障があるときその職務を代理する。
第二百七十二條 行政区に区收入役及び区副收入役各各一人を置く。
区收入役及び区副收入役は、特別市の事務吏員の中から特別市の市長がこれを命ずる。
特別市の市長、助役、收入役、副收入役若しくは監査委員又は区長若しくは区助役と親子、夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は、区收入役又は区副收入役となることができない。
区收入役又は正副收入役は、前項に規定する関係を生じたときは、その職を失う。
第三項の規定は、区收入役及び区副收入役相互の間において区收入役又は区副收入役に、前項の規定は、区收入役及び区副收入役相互の間において区副收入役にこれを適用する。
第二百七十三條 区收入役は、特別市の收入役の命を受け、特別市の出納その他の会計事務並びに特別市の市長及び区長その他特別市の吏員並びに特別市及び行政区の選挙管理委員会の権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務に関する出納その他の会計事務を掌る。
特別市の市長は、收入役の事務の一部を区收入役に委任させることができる。但し、特別市の出納その他の会計事務については、予め議会の同意を得なければならない。
区長は、特別市の市長の許可を得て、区收入役の事務の一部を区副收入役に委任させることができる。
前二項に定めるものを除く外、区收入役及び区副收入役の権限に関しては、市の收入役及び副收入役に関する規定を準用する。
第二百七十四條 行政区に区出納員を置くことができる。
区出納員は、特別市の事務吏員の中から特別市の市長がこれを命ずる。
区出納員は、区收入役の命を受け、出納事務を掌る。
第二百七十五條 前四條に定める者を除く外、行政区に必要な吏員を置き、区長の申請により、特別市の市長がこれを任免する。
前項の吏員は、特別市の吏員とし、その定数は、條例でこれを定める。
第一項の吏員は、区長の命を受け、事務又は技術を掌る。
区長は、その権限に属する事務の一部を第一項の吏員に委任し又はこれをして臨時に代理させることができる。
第二百七十六條 行政区に選挙管理委員会を置く。
前項の選挙管理委員会に関しては、第二編第七章第二節中市の選挙管理委員会に関する規定を準用する。
第二百七十七條 第十三條、第十八條、第二十二條第七項、第八十六條第一項、第八十八條第一項、第九十一條、第九十四條、第百四十五條、第百五十二條、第百六十條、第百六十二條乃至第百六十七條、第百六十八條第五項及び第六項、第百六十九條乃至第百七十一條、第二百九條、第二百十八條、第二百二十一條、第二百二十四條、第二百三十二條、第二百四十二條第一項、第二百五十五條及び第二百六十條中市に関する規定は、これを特別市に適用する。
第二百七十八條 この法律又はこれに基く政令に特別の定があるものを除く外、第二編中都道府縣に関する規定は、特別市にこれを適用する。
第二百七十九條 特別市の選挙については前條の規定により第二編第四章中都道府縣の選挙に関する規定を適用する場合においては、市に関する規定は、行政区にこれを適用する。
第二編第四章中選挙人名簿に関する規定についても、また、前項と同樣とする。
第二百八十條 この法律に規定するものを除く外、特別市に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
第二節 特別区
第二百八十一條 都の区は、これを特別区という。
特別区は、その公共事務及び法律若しくは政令又は都の條例により特別区に属する事務並びに從來法令又は都の條例により都の区に属する事務を処理する。
第二百八十二條 都は、條例で特別区について必要な規定を設けることができる。
第二百八十三條 政令で特別の定をするものを除く外、第二編中市に関する規定は、特別区にこれを適用する。
第三節 地方公共團体の組合
第二百八十四條 普通地方公共團体並びに時別市及び特別区は、第三項の場合を除く外、その事務の一部を共同処理するため、その協議により規約を定め、都道府縣及び特別市の加入するものにあつては内務大臣、その他のものにあつては都道府縣知事の許可を得て、地方公共團体の組合を設けることができる。(これを一部事務組合という。)この場合において、組合内の地方公共團体につきその執行機関の権限に属する事項がなくなつたときは、その執行機関は、組合の成立と同時に消滅する。
町村は、特別の必要がある場合においては、その事務の全部を共同処理するため、その協議により規約を定め、前項の例により、町村の組合を設けることができる。(これを全部事務組合という。)この場合においては、組合内の各町村の議会及び執行機関は、組合の成立と同時に消滅する。
町村は、特別の必要がある場合においては、役場事務を共同処理するため、第一項の例により、町村の組合を設けることができる。(これを役場事務組合という。)この場合において、組合内各町村の執行機関の権限に属する事項がなくなつたときは、その執行機関は、組合の成立と同時に消滅する。
公益上必要がある場合においては、都道府縣知事は、政令の定めるところにより、第一項の規定による市町村及び特別区の組合を設けることができる。
前項の市町村及び特別区の組合に関しては、この法律にかかわらず、政令で特別の規定を設けることができる。
第二百八十五條 前條第一項乃至第四項の規定による地方公共團体の組合は、法人とする。
第二百八十六條 地方公共團体の組合は、これを組織する地方公共團体の数を増減若しくは共同処理する事務を変更し、又は組合の規約を変更しようとするときは、関係地方公共團体の協議により、都道府縣及び特別市の加入するものにあつては内務大臣、その他のものにあつては都道府縣知事の許可を受けなければならない。
全部事務組合は、前項の規定にかかわらず、その組合を組織する町村の数を減少し又は組合の規約を変更しようとするときは組合の議会の議決により、その組合を組織する町村の数を増加しようとするときは組合とあらたに加入しようとする町村との協議により、都道府縣知事の許可を受けなければならない。
第二百八十七條 一部事務組合の規約には、左に掲げる事項につき規定を設けなければならない。
一 組合の名称
二 組合を組織する地方公共團体
三 組合の共同処理する事務
四 組合の事務所の位置
五 組合の議会の組織及び議員の選挙の方法
六 組合の執行機関の組織及び選任の方法
七 組合の経費の支弁の方法
全部事務組合の規約には前項第一号乃至第四号、役場事務組合の規約には同項第一号乃至第五号及び第七号につき規定を設けなければならない。
第二百八十八條 一部事務組合又は役場事務組合を解散しようとするときは、関係地方公共團体の協議により、第二百八十四條第一項の例により、内務大臣又は都道府縣知事の許可を受けなければならない。
全部事務組合を解散しようとするときは、組合の議会の議決により、都道府縣知事の許可を受けなければならない。
第二百八十九條 第二百八十六條又は前條の場合において、財産処分を必要とするときは、関係地方公共團体の協議により若しくは関係地方公共團体と組合との協議により又は組合の議会の議決によりこれを定める。その協議が調わないときは、関係地方公共團体又は組合の議会の意見を聽き、都道府縣及び特別市の加入する組合にあつては内務大臣、その他の組合にあつては都道府縣知事がこれを定める。
第二百九十條 第二百八十四條第一項乃至第三項、第二百八十六條、第二百八十八條第一項及び前條の協議については、関係地方公共團体にあつてはその議会、組合にあつては組合の議会の議決を経なければならない。
第二百九十一條 地方公共團体の組合の経費の分賦に関し、違法又は錯誤があると認めるときは、地方公共團体は、その告知を受けた日から三十日以内に組合の管理者に異議の申立をすることができる。
前項の異議の申立があつたときは、組合の管理者は、組合の議会に諮つてこれを決定しなければならない。
組合会は、前項の規定による諮問があつた日から二十日以内にその意見を述べなければならない。
第二百九十二條 地方公共團体の組合については、法律又は政令に特別の定があるものを除く外、都道府縣及び特別市の加入するものにあつては都道府縣に関する規定、市及び特別区の加入するもので都道府縣及び特別市の加入しないものにあつては市に関する規定、その他のものにあつては町村に関する規定を準用する。
第二百九十三條 第二百五十三條の規定は、第二百八十四條第一項乃至第四項、第二百八十六條、第二百八十八條及び第二百八十九條の規定による処分にこれを準用する。
第四節 財産区
第二百九十四條 法律又は政令に特別の定があるものを除く外、市町村並びに特別市及び特別区の一部で財産を有し又は営造物を設けているもの(これを財産区という。)があるときは、その財産又は営造物の管理及び処分については、この法律中地方公共團体の財産又は営造物の管理及び処分に関する規定による。
前項の財産又は営造物に関し特に要する経費は、財産区の負担とする。
前二項の場合においては、地方公共團体は、財産区の收入及び支出については会計を分離しなければならない。
第二百九十五條 財産区の財産又は営造物に関し必要があると認めるときは、市町村及び特別区の財産区にあつては都道府縣知事、特別市の財産区にあつては特別市の市長は、議会の議決を経て市町村若しくは特別区又は特別市の條例を設定し、財産区の議会又は総会を設けて財産区に関し市町村若しくは特別区又は特別市の議会の議決すべき事項を議決させることができる。
第二百九十六條 財産区の議会の議員の定数、任期、選挙権、被選挙権及び選挙人名簿に関する事項は、前條の條例中にこれを規定しなければならない。財産区の総会の組織に関する事項についても、また、同樣とする。
前項に規定するものを除く外、財産区の議会の議員の選挙については、第二編中町村の議会の議員の選挙に関する規定を準用する。但し、被選挙権の有無は、市町村又は特別市若しくは特別区の議会がこれを決定する。
財産区の議会又は総会に関しては、第二編中町村の議会に関する規定を準用する。
第二百九十七條 この法律に規定するものを徐く外、財産区の事務に関しては、政令でこれを定める。
第二章 地方公共團体の協議会
第二百九十八條 地方公共團体は、地方公共團体の事務又は地方公共團体の長の権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務の連絡調整を図るため、その協議により、規約を定め、都道府縣及び特別市の加入するものにあつては内務大臣、その他のものにあつては都道府縣知事の許可を得て、地方公共團体の協議会を設けることができる。
公益上必要がある場合においては、内務大臣又は都道府縣知事は、政令の定めるところにより、地方公共團体の協議会を設けることができる。
第二百九十九條 地方公共團体の協議会は、地方公共團体の事務又は地方公共團体の長の権限に属する事務の連絡調整を図る外、法律又は政令によりその権限に属する國、地方公共團体その他公共團体の事務を処理する。
第三百條 地方公共團体の協議会に会長及び副会長一人を置き、関係地方公共團体の長の中からこれを互選する。
会長は、協議会に関する事務を総理し、協議会を代表する。
副会長は、会長を補佐し、会長に故障があるときその職務を代理する。
第三百一條 地方公共團体の協議会は、必要があると認めるときは、その会議に関係官廳の長の参加を求めることができる。この場合において、関係官廳の長は、会議に出席し、議事に関係のある事項につき説明をしなければならない。
関係官廳の長は、必要があると認めるときは、地方公共團体の会議に出席し、発言することができる。
第三百二條 地方公共團体の協議会は、事務局を置くことができる。
事務局には局長及び書記を置き、会長がこれを選任する。
事務局長は、会長の命を受け、協議会に関する事務を整理する。
書記は、事務局長の命を受け、協議会に関する事務に從事する。
第三百三條 地方公共團体の協議会に要する経費は、関係地方公共團体がこれを負担しなければならない。
第三百四條 地方公共團体の協議会を廃止し、これに加入する地方公共團体の数を増減し又は協議会の規約を変更しようとするときは、
第二百九十八條第一項の例により、内務大臣又は都道府縣知事の許可を受けなければならない。
附 則
第一條 この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。但し、警察部、警察署及び警察吏員に関する規定の施行の期日は、政令でこれを定める。
第二條 東京都制、道府縣制、市制及び町村制は、これを廃止する。但し、東京都制第百八十九條乃至第百九十一條及び第百九十八條の規定は、なお、その効力を有する。
第三條 この法律施行の際現に東京都長官、北海道廳長官、府縣知事、市町村長及び市町村長に準ずる者若しくは東京都議会議員、道府縣会議員、市町村会議員及び市町村会議員に準ずる者又は都道府縣若しくは市町村及びこれに準ずるものの他の職に在る者は、この法律又は他の法律で別に定める者を除く外、この法律により選挙又は選任された都道府縣若しくは市町村及びこれに準ずるものの長若しくは議会の議員又は都道府縣若しくは市町村及びこれに準ずるものの他の相当する職に在る者とみなし、任期があるものについては、その任期は、從前の規定による選挙又は就任の日からこれを起算する。
都又は特別区の議会の議員の定数は、第九十條第一項又は第九十一條第一項の規定にかかわらず、次の総選挙までの間は、なお、從前の規定による。
第四條 この法律又は他の法律に特別の定があるものを除く外、都道府縣に関する職制に関しては、当分の間、なお、從前の都廳府縣(警視廳を除く。以下これに同じ。)に関する官制の規定を準用する。但し、政令で特別の規定を設けることができる。
第五條 この法律又は他の法律に特別の定があるものを除く外、都道府縣の吏員に関しては、別に法律が定められるまで從前の都廳府縣の官吏又は待遇官吏に関する各相当規定を準用する。但し、政令で特別の規定を設けることができる。
都道府縣の吏員は、政令の定めるところにより、分限委員会の承認を得なければ事務の都合により休職を命ぜられることはない。
前項の分限委員会の名称、組織、権限等は、政令でこれを定める。
第六條 この法律施行の際現に都廳府縣の地方事務官、地方技官又は特遇官吏たる者は、この法律若しくはこれに基く政令又は他の法律で別に定めるものを除く外、当該都道府縣の第百七十二條の事務吏員又は技術吏員に任用され、引き続き現に在る職に相当する職に補されたものとする。
第七條 道府縣における警察については、この法律中警察部、警察署及び警察吏員に関する規定の施行までの間は、なお、從前の例による。但し、政令で特別の規を定設けることができる。
第九十九條第一項、第百二十二條第一項及び第二百三十二條第二項の規定の適用については、当分の間、警視総監も、また、これを普通地方公共團体の長とみなす。
第八條 政令で定める事務に從事する都道府縣の職員は、第百七十二條、第百七十三條及び第百七十五條の規定にかかわらず、当分の間、なお、これを官吏とする。この場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第九條 この法律に定めるものを除く外、地方公共團体の長の補助機関たる職員、選挙管理委員及び選挙管理委員会の書記並びに監査委員及び監査委員の事務を補助する書記の分限、給與、服務、懲戒等に関しては、別に法律が定められるまでの間は、從前の規定に準じて政令でこれを定める。
第十條 都道府縣及び特別市は、軍人軍属であつた者の身上の取扱に関する事務及びその家族等に対する俸給その他の給與に関する事務を処理しなければならない。
前項の事務の処理に関しては、政令で特例を設けることができる。
第一項の事務を掌らせるため、都道府縣知事及び特別市の市長は、世話部を置くものとする。
都道府縣知事及び特別市の市長は、必要があるときは、條例で世話部出張所を置くことができる。
世話部出張所の位置、名称及び所管区域は、條例でこれを定めなければならない。
世話部及び世話部出張所の長は、都道府縣又は特別市の事務吏員を以てこれに充てる。
第一項の事務を処理するために要する経費は、國庫の負担とする。
第十一條 從前の東京都制、道府縣制、市制若しくは町村制又はこれらの法律に基いて発する命令によつてした手続その他の行爲は、これをこの法律又はこれに基いて発する命令中の相当する規定によつてした手続その他の行爲とみなす。
第十二條 この法律施行前東京都制、道府縣制、市制若しくは町村制又はこれらの法律に基いて発する勅令により行つた選挙に関し、これらの法律において準用する衆議院議員の選挙に関する罰則を適用すべきであつた行爲については、なお、從前の例による。
第十三條 他の法令中地方長官、東京都長官、北海道廳長官又は都道府縣若しくは東京都の区の官吏に関する規定は、政令で特別の規定を設ける場合を除く外、各各都道府縣知事若しくは特別市の市長、都知事、又は都道府縣若しくは特別区の相当する吏員に関する規定とみなす。
第十四條 他の法令中都道府縣参事会若しくは都道府縣参事会員又は市参事会若しくは市参事会員に関する規定は、この法律による都道府縣、特別市若しくは市の議会又はこれらの議会の議員に関する規定とみなす。
第十五條 他の法令中に東京都制、道府縣制、府縣制、市制又は町村制の規定を掲げている場合において、この法律中これらの規定に相当する規定があるときは、政令で特別の規定を設ける場合を除く外、各各この法律中のこれらの規定に相当する規定を指しているものとする。
第十六條 他の法令中都道府縣及び市に関する規定は、政令で特別の規定を設ける場合を除く外、特別市にも、また、これを適用する。
他の法令中の從前の市制第六條の市又は市制第八十二條第一項若しくは市制第八十二條第三項の市に関する規定は、特別市及び第百五十五條第二項の市に関する規定とみなす。
第十七條 他の法令中市に関する規定は、政令で特別の規定を設ける場合を除く外、特別区にも、また、これを適用する。
第十八條 他の法令中從前郡長の管轄した区域に関する規定は、郡に関する規定とみなす。但し、政令で特別の規定を設けることができる。
第十九條 他の法令中町村制を施行しない地に関する規定は、第二百五十八條の規定による特例の適用を受ける島に関する規定とみなす。
第二十條 他の法令中都議会議員選挙管理委員会、道府縣会議員選挙管理委員会、市町村会議員選挙管理委員会若しくは市町村会議員選挙管理委員会に準ずる選挙管理委員会に関する規定は、都道府縣又は市町村若しくは市町村に準ずるものの選挙管理委員会に関する規定とみなす。
第二十一條 戸籍法の適用を受けない者の選挙権及び被選挙権は、当分の間、これを停止する。
前項の者は、選挙人名簿にこれを登載することができない。
第二十二條 この法律の施行に関し必要な規定は、政令でこれを定める。
…………………………………
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=36
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037・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 只今上程になりました地方自治法案に付きまして、其の提案の理由及び法案中主要なる事項の概略を御説明申上げます、最初に本法案提出の經緯に付きまして説明致します、既に諸君御承知の如く、政府は昨年第九十囘帝國議會に於きまして、地方行政の民主化の根本精神に基き東京都制を初め府縣制、市制及び町村制の一部を改正し、廣く二十年以上の男女兩性に對して地方自治に對する直接參與の權利を認め、府縣知事及び市町村長等を直接選擧とすると共に、地方議會の權限及び地位を擴充強化する等、相當廣範圍に亙る地方制度の改正を行つて參つたのであります、併しながら此の第一次の地方制度の改正は、地方行政の民主化を徹底する上に於て尚不十分且不徹底の譏を免れなかつたのであります、仍て政府は第一次改正案審議の際に於ける衆議院の附帶決議の精神を尊重致しまして、地方行政の徹底的民主化を圖る爲、第二次の地方制度の改正を斷行することとし、昨年十月地方制度調査會を設置し、朝野の權威者の參集を求め、一般地方自治制度、大都市制度及び公務員制度等に付きまして諮問を致したのであります、爾來地方制度調査會に於きましては、本年二月迄約五箇月間に亙り、委員各位の絶大なる努力に依り愼重審議を重ねた結果、極めて詳細且適切なる答申を寄せられましたので、政府は此の答申に基き立案を進めて參つたのであります、以上の經緯に基きまして本法案を今次議會に提出することになつたのでありますが、其の提案の理由に付て説明申上げます、御承知の如く、日本國憲法に於きましては地方自治の重要性に鑑み、特に一章を設け、地方自治に關する基本的規定を掲げて居るのであります、即ち地方自治に關する事項は、其の基礎を直接に憲法に置き、地方自治に關する法律は、憲法附屬の法典と申すべきでありますから、日本國憲法の規定及び精神に即應した地方自治法を制定し、憲法と同時に之を施行し、地方行政の民主化を更に徹底し、以て國政民主化の根柢を培ふことが特に必要であると考へたのであります、又申す迄もなく、地方自治制度は國家組織の地方に於ける骨格でありますが、地方に於ける國の直接の行政組織は、固より地方に於ける各種公共團體、協同組合等の地方住民の各種の自主的組織に對しても、謂はば其の中軸となり根幹となる地位を占めるものであります、從つて都道府縣及び市町村に關する組織及び運營の如何は、國家行政の振否に至大の影響を與へ、各種の地方的組織の在り方に直接決定的な關係を持つものでありますから、先づ新憲法の實施と同時に、新憲法の理念に即應した地方自治法を制定施行し、其の新しい地方自治の在り方を基本として、各般の地方組織を決定して行くのが順序であると存ぜられるのであります、殊に我が國の地方自治の本位たる都道府縣の行政は、從來官吏たる都道府縣知事に依つて運營されて來たのでありますが、新憲法の施行と共に之を公吏に切替へる必要があるのであります、茲に從來知事以下の官吏に依つて運營されて來た地方行政は、將來公吏に依つて運營せられ、我が國の地方行政組織上一大轉換を行ふことと相成る譯でありまして、斯かる新事態に即應する地方自治制度を新憲法施行迄に確定して置くことは、絶對に必要であると存ぜられるのであります、以上が今次議會に特に本法案を提案致しました理由であります、次に本法案制定の基本方針に付て説明致します、先づ第一に、地方公共團體の自主性及び自律性を強化したのであります、即ち新たに特別市の制度を設け、所謂二重監督の弊を芟除し、大都市の自主的且積極的な活動を助長促進致しますと共に、東京都の區に對しては、原則として市と同樣の權能を認めることとする等、第一次改正の精神を更に擴充強化し、地方公共團體の自主性の原則を更に貫徹することに努めたのであります、又許可其の他の個別的監督事項を極力整理致しますと共に、地方公共團體の事務自體に對する一般監督の制度は、極力之を抑制し、必要最小限度の統制を行ふに止めることと致す等、地方公共團體の自律性を更に徹底するに努めたのであります、又地方議會の地位を強化し、其の自主的且自律的な活動を促進することと致したのであります、第二に、地方分權の徹底であります、今囘別途地方税法を改正致しまして、地方公共團體に對し財源を移讓し、所謂自主財政の確立を期すると共に、近き將來に、警察事務中、自治警察に屬せしむるのを適當と認める事項の地方移讓を行ふことを明かにする等、能ふ限り地方分權の趣旨の徹底を圖つたのであります、第三は、行政執行の能率化及び其の公正の確保であります、即ち選擧の執行に付ては、同時選擧の方法を新に規定すると共に、其の手續も衆議院議員選擧法の手續と成るべく同一ならしめ、選擧手續の簡明化と能率化を期したのであります、又都道府縣に新に獨立の權限を有する出納長制度を設けて、都道府縣會計の公正を確保することと致したのであります、今次の地方制度の改正は、概ね以上の方針に基き立案致したのでありますが、立法の形式と致しましては、現行東京都制、道府縣制、市制及び町村制竝に地方官官制等の諸規定を統合整理して、成るべく同一の原則に依り各種地方公共團體を律することとし、各種地方公共團體に特異な事項は之を條例に讓り、一本の地方自治法を制定して、之を總ての地方公共團體に適用すると云ふ形式を採用したのであります、次に此の法律案に定めました主な事項で、特に現行法に改正を加へました點に付て、其の概略を説明致します、第一は、總括事項であります、即ち地方公共團體を二種に分ちまして、都道府縣及び市町村を普通地方公共團體として規定を設けると共に、特別市、特別區、組合等の團體を特別地方公共團體として規定し、東京都に付きましては、區は之を特別區として、原則として市と同一の權能を認め、之と共に東京都は、基礎的地方公共團體でなく、道府縣と同樣に市區町村を包括する複合的地方公共團體としたのであります、又是等總ての地方公共團體又は其の機關に對する事務の委任は、法律又は政令を以てすることを必要とし、團體の自主的地位を尊重し、都道府縣に付ては、其の處理する國家事務の重要性に鑑み、條例又は規則に違反した者に對しては、法律の定める所に依り、刑罰を科することがあるものとし、警察權の移讓等に依る地方公共團體の權能の擴充に伴ひ、行政の執行に遺憾なきを期することとしたのであります、第二は、選擧に關する事項であります、選擧權の缺格條項の整理をすると共に、選擧人名簿の調製、投票、開票及び選擧會、選擧運動の費用等、選擧に關しましては努めて衆議院議員選擧法に準じ、之と手續を同一ならしめ、以て總ての選擧の手續を簡明ならしめ、又各種の選擧を同時に行ふ場合に關し、必要なる規定を設け、選擧事務の合理化及び能率化を圖ることと致したのであります、第三は、地方議會に關する事項であります、從來都道府縣知事及び市町村長に對する所謂機關委任の事務に對しましては、都道府縣會及び市町村會は、豫算の審議を通ずる外、全然干與することが出來なかつたのでありますが、地方議會は是等の國の事務に付ても都道府縣知事又は市町村長に對して報告若しくは説明を求め、或は其の意見を述べることが出來ることと致し、以て國政の民主的運營を所期することと致した次第であります、次に地方議會の議員は、其の四分の一以上の數を以て議會の招集を請求し、議員の一人でも議案を發案することが出來るものとする外、新たに國会法に準じ常任委員會及び特別委員會の制度を設け、又議會が選擧人を召喚し、各種の調査等を行ふことが出來るものとする等、議會の活動の能率化及び國民との間に於ける緊密なる接觸を圖ることと致し、之に伴ひまして都道府縣及び市の參事會は之を廢止することと致したのであります、以上の外國會法の規定に倣ひ、地方議會の自主的且自律的な活動を促進する爲、懲罰其の他に所要な規定の整備を圖つた次第であります、第四は、執行機關に關する事項であります、本法案に於きましては、知事及び其の部下の職員の身分は之を公吏とし、名實共に地方自治團體の職員として、地方團體の住民及び議會に對して責任を負擔し、住民の福祉の増進に努めさせることと致したのでありまして、之に依り我が國の從來の地方行政の官治的色彩が拂拭せられ、眞に民主的自治制度たる實を備へるに至るものと信ずる次第であります、次に地方團體の行政中、選擧の事務及び監査に關する事務はそれぞれ獨立の機關をして執行せしむることが適當と考へられますので、選擧管理委員會及び監査委員の地位を明確に規定し、都道府縣知事及び市町村長と相竝んで、地方團體の執行機關を構成する獨立機關としたのであります、而して公選に依る都道府縣知事の補佐機關として新たに副知事を置くこととし、部内の行政の執行に萬全を期することと致しました外、概ね市の收入役及び副收入役に準じて出納長及び副出納長の制度を設け、都道府縣の會計を統一的に出納長の責任に於て處理させ、會計の公正の確保を期することと致したのであります、知事公選の根本の趣旨より致しまして、現在地方長官の權限に屬する特殊事務は、總て之を都道府縣知事に繼承せしめるべきことは申す迄もない所でありまして、從つて現在の官廳たる都道府縣の部局の組織は其の儘之を新らしい都道府縣の部局とし、且食糧、木炭其の他地方住民の生活に最も密接な關係のある國の行政機關に付ては、法律又は政令の定むる所に依り、都道府縣知事が之を指揮監督し得ることとし、又都道府縣内の各種の團體等に對しても、地方行政の綜合的運營を圖る爲必要がある場合に於ては、之を指揮監督することが出來ることと致したのであります、尚都道府縣に於ける國の行政に付ては、別に法律又は政令で除外しない限り、當然都道府縣知事が之を管理執行することとし、以て地方に於ける特別行政機關の設置を出來るだけ避け、地方行政の混亂を防止すると共に、地方分權の趣旨に背馳することなきを期したのであります、尚都道府縣知事又は市町村長が其の職務の遂行上甚だしく當を失し、重大な故障が生じた場合等に於きましては、公聽會を開き、公平に第三者の意見を聽き、本人の辯明をも徴した上、監督官廳が之を解職することが出來ることと致しました、第五は、地方公共團體の監督に關する事項であります、地方自治に關する憲法の規定の精神に基きまする地方公共團體に對する監督事項は、努めて之を整理し、其の自由且自主的な活動に一任すべきでありまして、地方公共團體の本來の活動に關しましては、斯かる方針の下に監督規定を整理致したのであります、第六は、特別市に關する制度であります、特別市制の問題は多年の歴史を持つ重要問題でありますが、終戰後五大都市に特別市制實施の要望が急激に強まり、昨年第九十囘帝國議會に於ける地方制度改正法律案に對する衆議院の附帶決議に於きましては、特別市制の速かな實施が要望されて居たのであります、仍て地方制度調査會に於きましても、五大府縣及び五大都市の代表者も加へて、愼重且熱心な檢討が加へられたのであります、申す迄もなく、府縣の下に大都市を併存せしむる現行制度に付きましては、所謂二重監督、府縣市併存の弊が夙に指摘されて居る所であります、又一面大都市を府縣の監督より獨立させ、其の自主的地位を尊重すると共に、地方行政民主化の本義から申して、特に必要であると認められるのであります、仍て今囘此の多年に亙る懸案を解決すべく、地方自治法案中に特別市制度を規定することと致したのであります、尚特別市は國家的見地から、國會に於て人口五十萬以上の市の中から法律で指定することとし、其の組織は概ね市の組織に準ずるが、其の權能及び地位は之を原則として都道府縣と同樣に扱ふことと致したのであります、唯特別市の指定の時期に付ては、尚篤と考慮を重ね、改正憲法の施行後適當な時期を選んで之を行ひたいと考へて居る次第であります、尚都道府縣及び市町村の吏員の任用、資格、分限、給與等に付きましては、別に單行の法律を制定致す考でありますが、是は官吏制度と密接不可分の關係がありますので、官公吏を通じて公務員に關する制度を鋭意檢討中でありますが、今次議會に關係法案を提出する運びに至らず、已むを得ず都道府縣の吏員に付きましては、當分の間從來の官吏に關する規定を準用することと致した次第であります、最後に警察制度に付て説明を致します、警察の組織を民主化し、其の執行に改善を加へ、警察官吏の素質及び教養の向上を圖ることの必要なるに鑑みまして、其の刷新改善に努力し、既に實行可能なるものに付ては逐次之を實行して參つたのでありますが、現下の國情より致しまして、警察の制度に付て今日直ちに根本的變革を加へますことは治安保持の見地から適當でないと考へるのであります、從ひまして地方に於ける警察行政に付きましては、概ね現行の制度に依り警察部長以下の官吏たる警察官をして之を擔任せしめ、都道府縣知事が之を指揮監督することと致し、其の根本的改正は今暫く仔細なる檢討を加へた上之を行ふことと致したのであります、從ひまして警察に關しましては、地方自治法の施行に伴ひ措置すべき事項を其の附則中に暫定的措置として規定するに止めた次第であります、以上地方自治法案の提案の理由及び其の内容中主要な事項の概略に付て御説明致した次第でありますが、衆議院に於きまして、地方公共團體に對する一般監督權に關する規定、其の他監督に關する事項を初め、都道府縣知事及び市町村長の職務權限及び地方議會との關係に關する事項、地方議會に關する事項、選擧に關する事項、其の他是等に關係のある規定に付て修正が加へられたのでありますが、其の詳細は以上に御説明申した地方自治法の細部に關する事項と共に委員會に於きまして御説明申上げたいと考へて居ります、何卒御審議の上速かに御協贊あらむことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=37
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038・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今朗讀せられました地方自治法案は、其の特別委員の數を二十七名とし、其の委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=38
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039・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=39
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040・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=40
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041・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔宮坂書記官朗讀〕
地方自治法案特別委員
侯爵 細川護立君 侯爵 鍋島直泰君
伯爵 二荒芳徳君 子爵 秋元春朝君
子爵 森俊成君 子爵 藤井兼誼君
子爵 青木重夫君 子爵 土屋尹直君
山田三良君 白根竹介君
男爵 松平外與麿君 男爵 三須精一君
男爵 岡俊二君 男爵 紀俊忠君
男爵 斯波正夫君 山崎延吉君
坂田幹太君 松本學君
宮澤俊義君 松尾國松君
磯貝浩君 山隈康君
小山完吾君 長谷川萬次郎君
町村敬貴君 瀬川彌右衞門君
淺井清君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=41
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042・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第六、日本銀行法の一部を改正する等の法律案、日程第七、金融機関債券発行特例法案、日程第八、臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、是等の三案を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=42
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043・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、委員長渡邊男爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=43
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044・会議録情報7
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日本銀行法の一部を改正する等の法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月二十二日
委員長 男爵渡邊 修二
貴族院議長公爵徳川家正殿
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金融機関債券発行特例法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月二十二日
委員長 男爵渡邊 修二
貴族院議長公爵徳川家正殿
━━━━━━━━━━━━━
臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月二十二日
委員長 男爵渡邊 修二
貴族院議長公爵徳川家正殿
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〔男爵渡邊修二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=44
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045・渡邊修二
○男爵渡邊修二君 日本銀行法の一部を改正する等の法律案外二件の特別委員會の經過竝に結果を御報告致します、本委員會は三月二十日及び三月二十二日の兩日に開會致しまして、先づ政府の説明を聽き、次いで委員と政府との間に熱心なる質疑應答を重ね、或は速記を止めまして審議を致しました結果、三案共原案通り可決すべきものなりと議決せられました、三案提案の理由及び其の内容等は本會議に於て政府より説明せられましたので、之を省略致します、質疑應答の二三を御詔介申上ぐれば、日本銀行法の一部を改正する等の法律案に付きましては、通貨發行審議會の委員に如何なる人を以て組織するかとの質疑に對しまして、政府は委員の數を十名位と致しまして、大藏大臣、日本銀行の總裁及び其の他の八人とし、是は學識經驗者、金融業の代表者、學者、勤勞者の代表者を以てする豫定であると云ふ答でありました、次に現在の通貨發行の状況竝に其の將來の見透し如何と云ふ質疑に對しましては、政府は昨年三月の措置に依りまして六百億の通貨は百五十億となりましたが、國民所得の一割約三百七十億圓位が必要となつて其の後膨脹を致しまして、本年一月には千億を超して目下千百億を超えました、其の原因は本年度の赤字豫算の六百億は日本銀行が政府への貸出に依つて賄ひ、是が通貨膨脹の六割を占めて居り、又銀行が預金を集めることが出來ない爲に、資金を日本銀行より借出に依り賄ひ、是が通貨膨脹の約四割を形成して居ります、政府は預金を再封鎖せず生産を増強し、通貨の發行を抑制する考であると云ふことでありました、二十二年度の豫算は赤字を出さない健全財政であり、且金融機關は日本銀行より借出をせず、自己資金に依つてすることとしましたから、此の六割、四割の増加を抑制することは出來ると思ひます、二十二年度の豫算が實施せられれば通貨を増發しないと思ひますが、只今は二十一年度の豫算が實施せられて居り、通貨増發の状况にあります、六月迄は通貨増發は續くと思ひます、自由預金は昨年九月迄はありませぬでしたが、補償打切に依り通貨安定が叫ばれ、救國貯蓄運動が效果を擧げまして、貯蓄は昨年十月に七十億、十一月に七十億、十二月には百億、一月は七十億、二月は八十億圓になりました、大體一箇月の資金の需要は百億を必要として居る、産業資金に五十億、銀行預金引出で十億、封鎖引出が二十億の用意をしなければならぬ、地方債、公債等の爲約二十億、合計百億を必要とすることになつて居る、故に貯蓄が一箇月百億増加すれば通貨膨脹は止まり、インフレは劃期的段階に入ることと思はれます、財産税の現金に依る納入は百二十億程度と思はれる、第一封鎖が大部分であります、通貨發行限度は國民所得を六千億と思はれるが故に、六百億圓位と若干の増加を見て然るべしと思ひます、退藏通貨は今申上げた所で大體御想像に委したい、其の分布状況は的確には分らぬと云ふ答辯でございました、次に金融機関債券発行特別法案に付ての質疑は企業は目下赤字經營に依つて繼續をして居ります金融機關は、安全第一主義を以て經營することは困難と思ふが、之に對し政府は補助を與へてはどうかと云ふ質疑に對しまして、政府は企業には國家の補助を與へないと云ふことを只今は原則として居ります、例外に復興金融金庫がありますから、之を利用してやつて行けば企業の經營も出來ると思ふと云ふ答辯がありました、次に臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案に付きまして、隱退藏物資の摘發の爲に各家庭に踏込む如きことはないと思ふがどうかと云ふ質疑に對しまして、政府は大量の物を摘出する考であります、生産物資の一定量以上のものは提出せしめる考であります、各家庭に踏込むが如きことはないと思ひますが、併し惡質者で疎開して持つて居るものの如きは出させるの考であります、一律には致しませぬと云ふ答辯でございました、其の他三案に付きまして、重要なる質疑應答がありましたが、之を省略して速記録に讓ります、斯くして質疑を終りまして、討論に入りました處、發言者なく、採決の結果、三案とも全會一致、原案通り可決すべきものなりと議決せられました、右を以て報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=45
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046・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 別に御發言もなければ三案の採決を致します、三案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=46
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047・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=47
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048・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに各案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=48
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049・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=49
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050・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=50
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051・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=51
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052・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 三案の第二讀會を開きます、御異議がなければ全部を問題に供します、三案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=52
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053・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=53
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054・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに各案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=54
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055・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=55
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056・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=56
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057・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=57
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058・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 三案の第三讀會を開きます、三案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=58
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059・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、次會の議事日程は、決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午後零時四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02219470323&spkNum=59
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