1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○勞働基準法案
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委員氏名
委員長 畠山一清君
副委員長 男爵 長基連君
公爵 島津忠承君
侯爵 佐竹義榮君
伯爵 東久世通忠君
子爵 岩下家一君
子爵 大久保教尚君
牧野英一君
男爵 山根健男君
男爵 内田敏雄君
種田虎雄君
膳 桂之助君
竹中藤右衞門君
伊藤傳七君
丹羽彪吉君
小汀利得君
渡邉覺造君
伊藤豐次君
古垣鐵郎君
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昭和二十二年三月二十日(木曜日)午前十時二十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=0
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001・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それでは是から勞働基準法案特別委員會を開催致します、豫め申して置きますが、私は議事に不慣れでありまして、定めし不都合があることと思ひますが、どうか其の點は各位の御同情に依りまして、無事に取り運んで行くやうに致したいと存じて居ります、又此の法案は勞働憲法とも言ふべき重大なものでありまして、我が國將來の産業に大いなる關係を持つものであらうと存じますからして、十分に御審議を願はなければならぬのでありまするが、何分にも會期が切迫して居りますからして、大凡三四日間位で御審議を願へれば結構なのではないかと存じて居る次第であります、どうか其の御積りで十分御審議を願ひます、從つて簡單明瞭に質疑應答を願ふと云ふことが必要だらうと存ずるのであります、それでは大體此の御説明を最初に願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=1
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002・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 勞働基準法案の概要に付て説明致します、本法案は既に本會議でも説明致しました通り、勞働條件の最低基準を定める法律であります、憲法第二十七條の趣旨竝に現下の勞働情勢に鑑みまして、勞働者の基本的權利とも目すべき最低勞働條件を法律で規定することは、我が國の再建に取つて必要缺くべからざる所であります、本法案は斯かる要請に基いて提出されて居るのでありまするが、其の規定する所の概要は次の通りであります、即ち第一章總則は勞働條件の決定に關する基本的な諸原則を規定したものであります、國際勞働會議の設置を決定しました千九百十九年の平和條約勞働編は、勞働憲章として、勞働は單なる商品と認めらるべきものにあらずとする原則の外、八原則を掲げて居るのでありまするが、其の後に於ける勞働問題の進展と、我が國勞働問題の特殊性に鑑み、茲に勞働條件の原則を規定したのであります、勞働條件の原則としては、勞働者解放の歴史に徴し、勞働者に對して人格に値する生活を保障することを目標と致しまして、勞働條件の決定に付ては、勞働者と使用者の間を、法律的意義に於てのみならず、事實の上に於ても對等たらしめむとする勞働法制の理想を謳ひまして、均等待遇、男女同一賃金の原則に於ては、新憲法に掲ぐる平等の理想を勞働法の分野に於て具現することを企圖致しまして、強制勞働の禁止、中間搾取の排除に於ては、我が國の勞働關係に殘存する封建的惡習の絶滅を期しまして、又公民權の保障に於ては、勞働者の地位の向上に伴つて擴大して來た其の公的活動を保障せむとするものであります、此の章は是等の諸原則を明示しまして、勞働條件の決定に當り勞使雙方に其の赴くべき基本的方向を示さむとしたものであります、第二章は、勞働契約の締結及解除に伴ふ諸般の問題に付て規定したものであります、雇傭契約に付ては民法に其の一般原則に關する規定がありまするが其の規定には近時の勞働契約には其の儘適用し難いものがあり、又其の效力に於ても不十分な點がありますから、ここには勞働法制上必要な特例を規定したのであります、即ち勞働契約に附隨して惹起され易い勞働者の身分的拘束を排除する爲に、契約期間、賠償豫定の禁止、前借金相殺の禁止、強制貯金の禁止等に關する規定を設け、勞働契約の締結、又は解除に際し發生する勞働者の生活問題を必要の最少限度に保障する爲に、勞働條件の明示、解雇制限、解雇豫告等に關する規定を設けたのであります、第三章は、賃金支給に關する原則的事項及び最低賃金を規定したものであります、物給制の禁止、一定期日拂、直接拂、全額拂等は勞働者の基本的權利として必要な規定であります、使用者の責に歸すべき事由に依る休業の場合には、賃金の六割迄は休業手當として強制力を持つ此の法律で保障することに致しました、最低賃金制に關しては、此の法律自體には其の金額を定めることとせず、唯單に其の方法と原案作成の手續と效力を規定するに止めました、即ち其の方法としては、最低賃金が事業別、職業別に定めらるべきこと、其の原案は勞働者側、使用者側及公益代表を以て構成される賃金委員會が作成すべきこと、及び一旦最低賃金が決定された場合には、特殊の事例を除き、是以下の賃金に依る勞働者の使用は認められぬことを規定して居ります、最低賃金制は勞働者の最低生活保障に關し特に重要な意義を持つものでありますが、其の金額は經濟情勢の變動に應じ、絶えず變化するものでありますから、之を法定することとせず、ここには一般の最低賃金法制の例に遵ひ、原則的規定を掲ぐるに止めまして、之が具體的決定は所要の制約の下に行政官廳に委任することとしたのであります、第四章は勞働時間、休憩、休日及び年次有給休暇に關する規定であります、勞働時間としては實働八時間制を、休日としては週休制を規定しました、八時間勞働制と週休制は、第一囘國際勞働會議以來、國際社會のみならず、あまねく我が國に於ても理解せられ、今日既に廣汎に實施せられて居るので、之を法律上の最低基準とすべき時期であると考へたのであります、唯我が國の實情に鑑みまして、八時間勞働制と週休制とは之を嚴格なものとせず、團體協約と二割五分の割増賃金と云ふ二つの條件の下に例外を認めることと致しました、尚八時間勞働制に關しましては、非工業的企業に付ては特殊の必要がある限り命令を以て特例を定め得ることと致しました、年次有給休暇に付きましても廣く國民に理解されて居る制度でありますので全勞働日の八割出勤を條件として、繼續一年に付て六勞働日の有給休暇を認めることと致しました、第五章は安全、衞生に關する規定であります、職場が安全にして健康に適するものであるか否かは、働く者に取つて最も大きな關心事の一つであります、其の詳細は法律では定め難いものがありますので、此の法律は原則的事項を規定するに止めまして、具體的な内容の規定は之を命令に讓つて居ります、疲弊せる我が國産業の現状を以て致しますれば、此の方面に於ける物的施設の改善に付ては多くを期待し難いものがありますが、尚事情の許す限り、命令に於て高き水準が企圖されなければならぬと存ずる次第であります、第六章は女子及び年少者に關する規定であります、健康上特殊の考慮が要請される女子及び年少者に對し特殊の規定を設け、之が保護に遺憾なきを期することは、社會正義に立脚する民主國家の當然の責務であります、此の法律では年少者の保護年齡を十八歳に定め、最低年齡を十五歳とし、非工業的企業では滿十二歳以上の者を特定の嚴格な條件の下で使用することを認めました、滿十五歳以下の者に付ては一日の勞働時間を修學時間を通算して七時間とし、滿十五歳以上の保護年齡該當者には嚴格な八時間制を適用し、其の他安全衞生、深夜業等で特別の保護を加へました、女子に付ては、八時間制に對する勞働協約に依る時間外勞働に一定の制限を加へ、休日勞働を禁止し、深夜業、産前産後、育兒時間等從來認められて居た制度にはそれぞれの改善を加へ、又生理休暇に付ては所要の最少限度に於て之を法律に規定することに致しました、第七章は技能者の養成に關する規定であります、從來徒弟制度は我が國に於ける劣惡勞働の一事例とされて居るのでありますが、ここには其の弊害を除去すると共に、勞働の過程に於て技能者を養成する特殊の必要がある場合には、技能者養成委員會に諮つて特別の規程を作り、此の規程に於て技能者養成の爲の必要と、此の法律の最低基準との調整を圖ることと致しました、而して此の規程に依つて技能者たらむとする者を使用する場合には行政官廳の認可を要することとして、産業の必要を充足すると共に、弊害の防止に遺憾なからむことを期したのであります、第八章は災害補償に關する規定であります、其の原則は、從來我が國の勞働法制で確立せられて居る所を踏襲したものでありまするが、此の法律では災害補償に關する實質上の責任と、之に對する補償義務とを出來得る限り一致させることと致しました、又災害補償の義務額は産業の負擔力の限度に於て災害犧牲者の最低の必要を充足させることを目途として之を決定致しました、災害補償に關する紛議に付ては、之を簡易に迅速に、公正に處理する爲、監督官に依る審査、仲裁の外、勞働者側、使用側及び公益代表を以て構成する勞働者災害補償審査委員會を設け、之が審査、仲裁に當らせることと致しました、第九章は就業規則に關する規定であります、就業規則は、勞働協約のない場合又は勞働協約の規定せざる勞働條件に付ては、個々の勞働契約に對して準則的效力を持つものであります、ここには就業規則の斯かる効力を法律に規定すると共に、其の作成を一定規模以上の事業場に要求し、之が作成に付ては勞働者に發言の機會を與へることと致しました、第十章は寄宿舍に關する規定であります、土建、纖維等に於て其の例を見る如く、通勤距離内に於て所要の勞務が充足されない場合、事業附屬の寄宿舍が設置されるのは已むを得ない制度でありますが、寄宿舍生活に於ては、從來動もすれば勞働者は一定期間其の全生活の自由を拘束されたる如き觀を呈することなしとしないのであります、本章の規定は斯かる弊害を除去し、寄宿舍に於ける勞働者の私的生活の自由を確保することを目的とするものであります、第十一章は監督官に關する規定であります、此の種の勞働條件に關する法律の實施を確保する爲の行政機構に付ては、先進諸國に於ては長い間の歴史に基いて確立された制度があります、前に申しました勞働憲章は、其の一項目として監督制度の確立を掲げ、且つ國際勞働會議は各國の監督制度の實績に根ざす詳細な勸告を採擇して居ります、此の法律の監督制度は、國際的に是認されて居る是等の制度に則つて規定したものであります、第十二章は雜則でありまして、主として此の法律の實施上必要な諸般の事項を規定したものであります、第十三章は罰則に關する規定であります、他の刑罰規定との均衡を考慮して此の法律の實施を有效ならしめる爲、必要な限度に於て所要の罰則が規定されて居ります、本法案の概要は以上説明を致しました通りであります、何卒御審議の上御協贊あらむことを希望する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=2
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003・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 是から質疑に入ります、必要がありまするならば章別或は逐條に審議を願ひたいと思ひます、先づ以て總論的に御發言を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=3
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004・種田虎雄
○種田虎雄君 此の勞働基準法が實施されますと、我が國の産業に相當の影響があるだらうと思ひます、當局としては、どの程度の影響があるかと云ふことに付て見當が付いておいでになるのでありませうか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=4
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005・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今種田議員からの御尋ねの通りに、相當影響を持つと思ひます。併し一方に於きまして、勞働者に相當に此の保護と自由とを與へまする結果、能率の上に於ても、一單位當りの能率の向上も圖れると云ふ氣持を持つて居りまするので、それ等を相殺しますと、國の産業力の上に減退せしめると云ふ影響はあるかないか、はつきり致しませぬが、あるとしても極めて輕微なものであると云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=5
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006・種田虎雄
○種田虎雄君 此の基準法の中で、一番大きな問題と考へますのは、最低賃金の制度と勞働時間との點とだらうと思ひますが、今度殊に勞働時間の點に於て八時間制が實施されることとなり、週休制が實施されることになるのであります、從つて今日迄支拂はれて居る所の賃金は其の儘に据え置いて、此の八時間制、週休制を實施されることになるのでありませうが、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=6
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007・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 賃金の状態は、是は最低賃金を決めまするのは、地方別に行政官廳がイニシアチーブを取つて決めますことになつて居りますので、其の發動を致さぬ限りは、現状に於て其の儘で据え置かれると思ひます、而して八時間勞働制に付きましても、大體に於ては八時間勞働制と云ふことは相當徹底して居りますし、殊に最近此の鐵道、遞信其の他に於ても其の以内に於て決めて居るやうな實情でありますから、實働八時間勞働制を採ると云ふことは、現在の事情に於て大きな支障のないものであると云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=7
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008・種田虎雄
○種田虎雄君 此の法律を實施する上に於て、監督面に於て相當の機構が此の法律に考へられて居りますが、此の法律の實施に際しまして、今後設けられまする是だけの機構は十分整備される御準備と申しますか、豫算其の他總て準備が出來て居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=8
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009・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 工場法の實施の最も眼目は、言ふ迄もなく其運用の點でありまして、殊に是だけ廣汎な法律でありまして、適用の範圍が現行の此の工場法と違ひまして、工場以外の非工業的企業にも廣く及ぶことで、劃期的の適用範圍の擴大と云ふことになりますから、それ等の點に付て色色……此の法律の徹底する迄は色々問題もあることと存じます、さう云ふ意味に於て工場監督官と云ふものの制度を非常に重きを置いて考へて居ります、此の點に對する豫算も相當十分取つてありますし、それから其の制度も矢張り地方的でなくして、中央的に考へまして、地方は皆勞働基準法に於て地方的に統轄して、運用の矢張り畫一的性質を以て行かねばならぬと考へて居ります、一種の矢張り裁判に似たやうな所もあらうと思つて居ります、併し一面に於きましては、法の實施の當初の期間に於きましては、濫りに刑罰を適用すると云ふやうなことでなく、本當に工場法の精神を事業者及勞働者に滲み込ませると云ふやうな頭を以て、工場監督をやつて行きたいと云ふやうに考へて居ります、それ等に付きまして只今監督官其の他の準備も相當進めて居ります、其の教育の點に付ても考慮して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=9
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010・種田虎雄
○種田虎雄君 此の監督官の方で、此の賃金の問題と、或は時間の問題等に付て色々監督になるのでありますが、色々此の各種の事業に爭議が起つて來た場合に、現在あります勞働委員會とそれから監督官等の關係、相當に是は交錯して居るやうに思ふのであります、或は仲裁とか色々なことに付ても監督官が、なさることが出來るやうになつて居りまするが、それ等の點に付て截然とした線が引かれるのでありませうか、其の點を御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=10
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011・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今種田さんの御尋は、私多少或は聞き違ひかも知れませぬが、普通の爭議に付きましては、先般御審議を戴きました勞調法に依る建前を採つて居りましたので、あの時御承知戴きましたやうに、政府と致しましては爭議に直接介入することを避けまして、勞働委員會、民主的なる勞働委員會を使ひ、又勞働委員會に依つて選定されました斡旋委員を使つて爭議に當らせる建前を採つて居るのであります、監督官は基準法の施行監督に當る爲に監督官を置いて居るのでありまするから、直接には此の監督官が爭議の方に入ると云ふことは避けさせる積りで居ります、唯併し此の基準法の中でも、此の法律施行に伴ふ例へば災害補償等の金額其の他に、多少事業主と勞働者の間に意見が違ふと云ふ場合が豫想せられますので、それは此の法律の施行でございますから、先づ監督官が間を調査致しまして決める、併しそれも役人のやることでございまするから、それに若し不服があれば民主的に構成されまする補償委員會と云ふものに訴へて、そこで最終的に決めると云ふ方法を採つて參りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=11
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012・種田虎雄
○種田虎雄君 實は是は各條に入つてから御尋ねするのが本當かも知れませぬが、此の勞働基準監督署と云ふものが仲裁と云ふやうなことが出來るやうになつて居りますので、それでちよつと伺つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=12
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013・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今申しましたやうに仲裁をやるやうになつて居りまするが、それは今の災害補償の金額と怪我の程度がございますから、其の程度の認定に付てだけでございまして、一般の爭議には觸れませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=13
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014・種田虎雄
○種田虎雄君 ああさうですか、分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=14
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015・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 此の基準法は、假に貴族院を通過致しますと、何時頃から實施の御豫定なのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=15
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016・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 此の法律の實施の期日は、實はまだ政府でもはつきり決めて居りませぬが、勞働者側は出來るだけ早く實施して呉れと云ふ要望はあります、併しなかなか廣汎の法律で、先程申しました通り、適用範圍が非常に廣くなつて居りますから、是は餘り徹底せぬ時に實施してもどうかと云ふ心配も持つて居ります、先づ早くて七月位ではないかと……是はまあ此處での氣持を申上げましただけでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=16
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017・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 實はそれは我々は土木建築を致して居りますけれども、是はなかなか周知徹底せしめることが非常に困難だ、餘程相當の時間を置いて戴きたい、斯う思ふのです、特に今度の刑罰は相當重いものでありまするから……是は併し御説に依つて濫りに初めは刑罰に付せないと云ふ御考のやうでありますが、どうかして之を周知徹底される時間を餘程御考を願ひたいと、斯う思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=17
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018・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 其の點は考慮致すことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=18
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019・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 それからもう一つ御伺ひ致したいのは、寄宿舍制度でありますが、土建業者の假設物には之を適用しないと云ふやうなことを承つて居るのでありますが、尚其の點をもう一度明かに大臣から承つて置きたいと思ふのであります、御承知の通りに、我々のは勞務者の一時的の、假設的の收容でありますから、是が直ちに用ひられることはちよつと困難の事情もあります、其の點改めて一つ尚承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=19
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020・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 矢張り寄宿舍、宿舍と云ふ形になつて居りますれば、法律の適用があると解釋しなくちやならぬかと思つて居ります、併しそれが宿舍と云ふ形に迄なつて居るか、居らぬかと云ふ事實上の問題が起ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=20
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021・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 只今大臣の御話ですと、一々御認定を得なければならぬやうなことになると思ひますが、事實はどうも矢張り職工を或期間其處に收容するのですから、寄宿舍とも言ひ得るのであります、假に若しも此の法律の適用を嚴重にせられることになりましたならば、其の種の費用が非常に厖大に上ると思ふのであります、一例を申しますと、只今炭鑛の勞務者の宿舍を矢張り建てようとして居る、職工を其の方面へ集めなければならない、それ等も矢張り寄宿舍と看做されるかどうか、是は少しどうも實情に副はないやうに思ひますが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=21
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022・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今大臣から御話がありましたやうに、此の法律は啻に工場、鑛山ばかりでございませぬ、有らゆる企業に適用がある譯でありますから、第十章に決めて居りまする寄宿舍の原則は、矢張りどの企業にも適用がある譯であります、唯寄宿舍の設備なり、色々な施設等に付きましては、是は或は色々な企業に相應しいやうな方法は考へなくてはならぬかと思ひますが、此處にあります寄宿舍の原則、是はどの企業にも適用がある譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=22
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023・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 我々の事業と云ふものは一時的のものである、人を收容する以上は寄宿舍とも看做さるる譯でありますが、我々の方では現にさう云ふものは飯場と呼んで居るのであります、飯場は寄宿舍でないと云ふ理由も立ち兼ねるやうに思ふのですが、是は重大な關係があるのであります、何か斯う其の種の假設的のものに對しては除外例を御認め願はなければならぬと思ふのですが、私は實は勞務法制調査會に於て其の種の御質問をした時は、其の種の臨時的のものは宜からうと云ふやうな當局の御説明であつたやうに思つたのでありますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=23
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024・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 是は、寄宿舍の規定は、御覽の通り大體自治的の精神上の問題の規定と、それから設備の問題の規定と二つになるのでございますが、第一の精神的の方の問題のことは、是は問題に餘り深くならぬのぢやないかと思ひますが、第二の設備の問題の點でありますが、設備は矢張り其の企業に應じた、炭鑛なり或は假設のものなら假設と云ことを、土臺にしまして考へて行かなくちやならぬのですから、それだから假りに飯場の建物のある、建築のあるだけの暫定的の飯場の如き所に、非常に立派な設備をせいと言つても、是は無理な話で、是は固定的のものと暫定的のものとは從來も慣行も違ひまするし、それから設備自體に付ても考へなくちやならぬ點もある、さう云ふことは行政上の運用で以て處して行けると思ひますが、矢張り換氣、採光、照明、保温、斯う云ふやうなことをずつと書いてありまするが、是等に付て工場監督官の運用の實際としまして、そこに寛嚴と言ふと少し語弊がありますが、物の性質の本來から、さうあるべきものがさうあると云ふやうなことは考へられることぢやないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=24
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025・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 是は運用の上に於きましては、餘程地方廳に於てさう云ふ點を一つ基本的に何等かの御指示がないと、眞つ正直に之を適用しようとされると大變困難が出來ると思ふのであります、どうか其の點は當局に於きましても、假設的なものに對しては大臣の御話のやうな、何等かそこにゆとりのありまするやうに運用を願ひたいと思ふのであります、御存じの通りにどうも末端になりますと、非常にものが嚴格になりまして、非常に憂ふべきことになる、殊に我々の業界では小さな人々もあるのでありますから、どうもさう云ふ人々が完全な施設をすることは餘程困難だと思はれる、どうか其の點に付きましては遺憾のないやうに一つ御配慮を願ひたいと思ひます、此の點は特に一つ御願を致して置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=25
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026・種田虎雄
○種田虎雄君 此の賃金の問題で男女同一賃金の原則が決められて居りますが、此の意味は生活給と云ふやうなものに付て同一であると云ふ意味なんでありますか、能率給等に付ても同じであると云ふ御考なんでありますか、是等の點に付て伺つて置きたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=26
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027・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の男女同一賃金の原則は同一價値に對して同一の賃金を拂ふ、斯う云ふ原則でございます、同一價値勞働に對する同一賃金の原則を云ふことでございます、從つて實際の問題としては、其のどう云ふのが能率が同じかと云ふことは、色々難かしい問題があらうかと思ひます、同じ仕事を男と女がやつて同じである場合に、唯女だからと云ふので從前は矢張り低かつたと云ふことが宜くないと云ふことです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=27
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028・種田虎雄
○種田虎雄君 例へば女には生理の爲に相當休暇を與へると云ふやうなことも、是は認められて居るのですが、是は正に其の期間、或程度の勞働價値と云ふものは低下すると斯う思ふのです、從つて其の意味に於ては差別を設けると云ふことは當然ぢやないか、斯う考へるのですが、さう云ふ點はどうお考へですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=28
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029・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今御尋の點は非常に難かしい所でありますが、矢張り此の法律の建前と致しましては、同じ仕事を同じにやれば矢張り賃金を同じにやらなければならぬ、唯此の法律で特別の女子に對しては保護規定がございますが、是は矢張り此の法律で女に對する特別の保護をしなければならぬと云ふ所から出て來て居るのですから、さう云ふ點を皆差引いて價値が違ふと云ふことになりますと、一應女子に對する保護の點が缺くることになりまするので、其の點は難かしい所ではありますが女子に對する特別の保護の點を一應マイナスに考へると云ふことは出來るだけ避けたいやうに思ふのですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=29
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030・種田虎雄
○種田虎雄君 只今政府御當局の御説明に依つて御趣旨は能く分りますけれども、實際に斯う云ふやうな規定を設けて居る他の國の立法例は何處と何處にありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=30
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031・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 男女同一の賃金の原則は大體勞働條約でも勞働原則として決めて居りますので、大體外の國も此の原則は認めて居ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=31
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032・種田虎雄
○種田虎雄君 此の生理休暇に關するやうな規定等を、さう云ふやうなことから私は今御尋して居つたのでありますが、何處の國でもさう云ふ規定はありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=32
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033・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 生理休暇に關する規定はございませぬ、是は日本が初めてであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=33
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034・種田虎雄
○種田虎雄君 此の生理休暇と云ふものは各人申出を其の儘認めるのでありますか、凡そ何日と云ふ風にはつきり御決めになるのでありませうか、それ等の點に付て新しく斯う云ふ立法をなさるとすれば、そこに外の國が之を規定して居なかつたと云ふことは、實際上困難だから規定して居ないわけだ、之を我が國が進んでさう云ふ新しい試みをなさると云ふことは、如何にも進んだやうでありますけれども、實際の運用に茲に非常な困難な問題が實は現にある、之を各人の申出を其の儘認めて、或は一週間、或は三日とか、其の人の體質に依つても非常に違ふ、それ等を常に認めて同じ賃金の原則を以て之を律しろと仰しやることは、少し行過ぎでもあり、又實際に即しないやうな感もあるので、御尋したわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=34
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035・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今御尋がありましたやうに、此の生理休暇の問題は色々公聽會其の他に於きましても問題になつたものであります、矢張り女子の生理日は健康的に相當の影響がある爲に、仕事、其の上に色々な事故を起したり色々あるから、矢張り一律に生理休暇を認めたら宜いと云ふ意見も一方にございますが、同時に又生理と云ふものは病氣ではなくて自然の現象であつて、影響はあるけれどもさう大したことはないから、矢張り是は置く必要はないと云ふ意見もございました、そこで茲に採上げて居りますけれども、是は女子に總て生理日に休暇を與へると云ふことではございませぬで、此の中にもありますやうに、生理が……女子には個人に依りまして非常に病的に來る者があるのであります、それを無理をしまして仕事をしますと、矢張り非常な影響を受けるのでありますから、是は此の規定がなくとも普通であれば病氣として休むわけであります、それで生理日の就業が著しく困難な女子が請求すれば、矢張りそれは生理休暇として與へなければならぬと云ふことが一つ、それからもう一つは、是は從前私共が專門家をして研究させて居るのでありますが、バスでありまするとか、さう云ふ激動の仕事に從事して居りまする者は、是が病的でない人に取りましても、逆に體に影響を來しまして生理が止つてしまふと云ふ風なことがある、是は相當從前から研究致して居りまして、學者の意見の一致して居る所であります、そこでさう云ふ特殊な有害な業務に付きましては、是は病的に來ると來ないとに拘らず、矢張り生理休暇を認めたらどうか、斯う云ふ最少限度の必要なものに付て此處に規定をしたのであります、而も此の生理休暇に付きましては、此の法律では其の生理休暇を有給で休ませなければならぬと云ふことを言つて居るのではございませぬで、矢張り本人からさう云ふ要求があれば、それはいかぬと云ふことの出來ないやうにしてあるのであります、御了承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=35
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036・内田敏雄
○男爵内田敏雄君 斯う云ふことをちよつと漠然として居りますけれども伺つて置きます、日本の再建と云ふことで、是から從來に増して中小の工業者が勃興して來ると云ふことが考へられると思ふのでありますが、從來の資本家對勞働者と云ふ觀念、是が貧弱な今の中小の工業者に對してです、さう云ふ觀念で、若し此の法案が立法されて居ると致しますと、其の中小の工業者の勃興に非常な阻碍を來しはしないかと云ふやうなことをちよつと考へられると思ふのであります、十分政府の方ではさう云ふことも御考への上であると思ひますし、此の二條でございますか、此處にも「勞働者」と「使用者」と云ふやうな言葉を使つてありますから、資本家と云ふ言葉ではないのでありますけれども、御考への上だとは思ひますが、中小工業者の勃興に對して、此の法案が從來の觀念で、何か阻碍をするやうなことがないかと云ふやうな懸念を持つて居りますが、さう云ふやうな點に付きまして、何か御示を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=36
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037・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 日本の工業の非常に大きな部分は段々に中小化するだらうと云ふやうなことに付ては御同感でありまして、此の法律もさう云ふ點を考慮して十分考へて作つた積りでありまするが、是は矢張り建前としましては、大體一つの此の勞働者の勤勞意欲なり、勞働者の勞働力なり、或は健全なる身體なりと云ふものを土臺にして行つた方が、日本の中小工業の將來に對しても、それだけの矢張り一つの規律に依つてやつて行く方が宜からうと云ふ積極の意味を持つことと存じます、さうして又それが中小工業に色々危險を與へるとか、損害を與へるとか云ふやうな心配に付きましては、殊に災害補償の問題等に付きましては、矢張り保險制度を之に伴うて行くと云ふやうな點等で此の中小工業に對する心配を無くして居る譯であります、それから只今尚御尋の勞働問題と申しますか、或は勞使對立と云ふ思想と、此の法律と、中小工業との此の三者の關係と云ふ點に付て御尋もあつたやうに存じますが、其の點は結局勞働者に對する相當の保護を與へて行くと云ふ建前の方が、寧ろ勞使の間の問題を無くする所以であると云ふ風の考で此の法律を立てて居りまするので、自然中小工業に對しても、さう云ふ心配はなからうと云ふ考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=37
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038・内田敏雄
○男爵内田敏雄君 もう一つ簡單なことでありますが、勞働者の企業參加と云ふやうなことが問題になつて居ると思ひますが、斯う云ふ點も之に關係が大いにあると思ひますが、それに付きまして御見解を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=38
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039・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 此の法律と直接には關係がありませぬけれども、勞働者の企業參加と云ふことに付きましては、勿論歡迎する所であると云ふ風に考へて居ります、唯其の企業參加と云ふ言葉で……少しく前に能く問題になりました生産管理と云ふやうな問題、今日は餘程減りましたけれども、斯う云ふやうな問題になつて來ると、多小又問題が違つて參りまするので、あの生産管理と云うたのは、結局經營者側の意思を無視して、承諾なきに拘らず、力を以てやつて行くと云ふ點に於て生産管理の違法性と云ふものを認めて居る譯でありまして、契約の自由に依りまして、又お互の了解に依つて、さうして勞働者と使用者側とが、或は資本家側とが出來るだけ協調し、さうして經營を共に進めて行かうと云ふやうな體制に付ては、勿論是は結構だと云ふ考を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=39
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040・渡邉覺造
○渡邉覺造君 社會保險と本案の關係をちよつと御尋ね致します、本案に依ると、第九條に依つて勞働者と云ふ定義が非常に廣範圍に擴大された、今迄我々の社會的通念に依つて解釋した勤勞者と云ふのも、此の勞働者の中に總稱されるやうになつたやうに思はれる、それでさうなりますと、所謂日本の稼働人口の大部は勞働者であると言ひ得るのぢやないかと、斯う思ひます、此の勞働者の意義が斯う廣範圍になりますと、實際稼働人口の大部は勞働者を以て占められるとすると、其の者の健康に付て、或は療養給付をするには、それ等の者は健康保險に加入するのですか、或は國民健康保險に加入させるのですか、どちらでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=40
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041・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御話のやうに、此の法律では勞働者と云ふ定義が廣うございます、是は勞働組合法の制定の時から、ずつと組合法も之と同じ、又勞調法も同じで、勞働法としては同じであります、廣くなつて居りますが、今御尋の點の健康保險は、是は是と別個の體系にございまして、此の勞働者の範圍全部を健康保險の中に入れるかどうかと云ふことは、是は又研究すべき問題だと思ひます、現在では健康保險の方は五人以上を使用して居るものでありまして、それから而も上の方には、或程度の保險制限が確かあつたと私は記憶して居ります、又間違ひましたら後の機會に訂正致しますが、一定の範圍と云ふものを決めて居るのであります、是は保險としては、全部に擴げると云ふことも一つの方法でありませうけれども、一定の範圍に限つて保險制度を作ると云ふことも考へられる譯であります、從つて其の範圍外のものは國民健康保險に依ると云ふことになるかと思ひますが、健康保險の方も、今後是なんかと關聯して、漸次改正して行かなくてはならぬかと思ひますが、現在に於きましては、此の勞働者全部が直ぐ健康保險に入るとは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=41
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042・渡邉覺造
○渡邉覺造君 只今五人以上を使用と云ふことですが、此の第九條竝に第八條から考へますと、所謂勞働者を使用する範圍が非常に廣くなりましたから、今政府委員の御話の健康保險に對する考と云ふものは、私は大改正を加へなければならぬと斯う思つて居ります、只今政府委員の仰しやる所の、假に上が、收入が、或一定限度決つて居ると云ふことと、それから五人以上の使用者であると云ふことがありますけれども、是は必ず相當數に増加致しますからして、是等の者の診療と云ふものは、直接もう是は明日にも問題化して來ようと思ふのです、之に對して政府はどう云ふ風な御準備がありますか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=42
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043・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 是は國民健康保險との關係の問題になつて參りまするが、只今此の法律で工場法の適用の範圍を斯う云ふ風に、勞働基準法の適用の範圍に非常に擴げると云ふことから、健康保險を今直ちに其の範圍を之に伴うて擴げると云ふ所迄は行つて居りませぬ、併し將來に付きましては、其の方針を以て段々健康保險の範圍を擴げて行くことが適當であると云ふ考を持つて居ります、其の線に沿つて行く積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=43
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044・渡邉覺造
○渡邉覺造君 將來國民健康保險も健康保險も單一化されなければならないと思ふのですが、勞働基準法から言ひましても、それに對してどう云ふ風に御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=44
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045・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 是は將來の考としては、其の方が宜いと云ふことには御同感でございますが、唯御承知の通りに此の二つの財源が違いまして、健康保險では收入の歩合で保險料が入つて居りまするし、それから國民健康保險では一人當りの單位に保險料が入つて居りまするので、斯う云ふ風に收入を増加致しまする時には、健康保險の收支は非常に能く取れるが、國民健康保險はもう金が足らぬで非常に困ると云ふのが只今の情勢であります、此の二つの間に大分收支の上に於けるバランスが違います點と、それからもう一つは、健康保險は非常に順調な發達を來して居りますが、國民健康保險は戰時中に急に此の組合を増加さした關係で、中には宜く行つて居るものもあるが、まだどうも宜く行かぬものもなかなか多い、それに對して只今豫算が、國庫の補助等が十分行かぬと云ふ關係にあるものですから、國民健康保險は只今惱んで居る状況で、之をどう云ふ風に整理するかと云ふことに付て政府は一つの考を持つて今やつて居る譯であります、そこらの整理にめどが付きまして、相當兩者を眺めましてバランスが取れると云ふやうな所に行きませぬと、完全な併合と云ふことはむづかしいのぢやないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=45
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046・渡邉覺造
○渡邉覺造君 實際勤勞者と云ひますか、今度は勞働者と云ふ名前になりますが、勞働者の健康竝に診療に付ては屡屡社會問題となることが今迄もありましたし、今後も益益是が激化して來るやうに思はれるのでありますが、此の法案と併行的に、私は社會保險制度の確立と云ふものが必要ぢやないかと、斯う考へて居ります、それは是非早急に社會保險制度の確立を私は切に望む者であります、それから次に健康診斷のこと、第五十二條の健康診斷でありますが、之に依りますと、定期的に勞働者は醫師の健康診斷を受けなければならぬ、それから又病氣の時には診斷書を添へて出さなければならぬ、茲に於て現在の開業醫制度、或は開業醫の公益的性格に對する自覺と云ふか、それ等から併せて考へまして、此の第五十二條の目的を達成するのには、私は餘程醫師の公共性と云ふことを強調しなければ相成らぬと思ふのです、と云ふのは、具體的に申しますると、時々醫師に健康診斷を受ければ、色々の病氣で、無理な診斷書を書いて貰つて休む者が多いのです、是は今迄の健康保險でも何囘も問題になつたことでありますが、現在の開業醫制度で果して是がうまく行くかどうか、之に付て何か政府で別に御考がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=46
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047・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今渡邉委員から御話のありましたやうに、さう云ふ事例が今迄も時々あつたやうに聞いて居りますが、是は矢張り今後の御醫者さんの御自覺に俟たなければならぬ所ぢやないかと思ひます、又私の方の監督と致しましても、一層氣を付けて行きたいと思つて居ります、どうもちよつと法律でどうと云ふ譯にも行かない、まあ今後の教育と云ふか指導に俟つより外なからうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=47
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048・渡邉覺造
○渡邉覺造君 私はさう手緩いことぢやいかぬと思ふのです、此の戰爭中に於ても醫師の公共性、社會性と言ひますか、公益性が、醫療法に依つて醫師の身分と云ふものが非常に公益化されて居るにも拘らず、現在尚寒心に堪へない状態であるのです、其の者に此の五十二條の規定のやうなことを言ひ付けても、果して此の通りやれますかどうか、是は私は甚だ心配に堪へない、之に對して政府が何か打つ手がないかと私は思ふのですが、今御話に依れば無いと云ふのですが、私は甚だ遺憾と思ふ、是は又此處においでになる政府委員の方も其の道の人でないやうですから、是以上私は追及致しませぬけれども、是は大臣が省に御歸りになつて、能く御研究を御願ひしたいと思ふのです、今日は其の方面の方が居ないから私も是で止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=48
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049・内田敏雄
○男爵内田敏雄君 大臣御退席になつたのでちよつと伺はうと思つて居りましたが是は大變個々の小さい問題でございますけれども、今此の第八條をちよつと見まして氣が付きましたが、此の中に、第四號に航空機と云ふことが書いてございます、是は此の法案とは全く關係がないことですが政府では矢張り日本の將來に航空機と云ふことを豫想して斯う云ふ字を御使ひになつたのでありませうが、一つ其の點を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=49
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050・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は將來のことも考へ、有らゆる業態を豫想致しまして、まあ漏れる所のないやうにと云ふことで規定して居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=50
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051・種田虎雄
○種田虎雄君 最低賃金を行政官廳が必要であると認める場合には定めることが出來ると云ふことになつて居ります、それには中央賃金委員會と云ふやうなものを置いて、それぞれ御諮問になり御決定になるのだらうと思ひますが、最近の各方面の賃金を引上げることに付ての要求の中に、本來賃金の中に入らないやうな性質のものを、相當に最低賃金の中に含めてそれぞれ要求があるやうに思ふのであります、例へば家族の數に應じて、相當手當を含めた賃金を要求すると云ふやうなことが、是は現實の問題として何處にもあるやうであります、又年齡で以て相當に賃金を決めて行くと、斯う言つたやうな傾向もあるやうでありますが、殊に今後行政官廳が最低賃金を定められると云ふことになるとすれば、政府の御方針として、賃金と云ふものは一體どう云ふ風に、どう云ふものから構成されると云ふ御考がありますか、此の點に付て伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=51
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052・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今の種田さんの御質問は最も重大な問題でございます、結論的に申しますると、私共と致しましては賃金は矢張り最低生活を保證するものでなくてはならないと云ふことと、一つは賃金は能率に應じたものでなければならない、此の二つを加味した所に賃金政策と申しまするか、賃金制度と云ふものは進められて行かなければならぬかと思ふのであります、唯、今御指摘になりましたやうに、最近の賃金要求は御話の通り家族手當なり、或は家族の數に應じた賃金形態の要求が多うございます、是は賃金の本當の在り方としては私は必ずしも宜いとは思ひませぬが、何と申しましても、今日の日本の賃金の状況は、矢張り一方敗戰後の、斯う云ふ産業のまだ復興して居ない時でありますから、十分なる賃金は出せない、さうかと言つて片方勞働者の方は其の日其の日を生活して生きて行かなければならないと云ふ所から、勢ひ其の賃金が生活賃金の面に押しやられて居るのが現状ではなからうかと思ふのであります、それがもつと裕福になつて、相當の賃金が出せるやうになりますと、先程も申しましたやうに最低の生活を保證する上に於て、能率に應じた賃金制と賃金體系を作り上げると云ふことが出來るのでありまするけれども、今日は能率に應じた賃金迄に行けない、若し能率に應じただけの賃金になると云ふと、片方の最低生活を保證して行けない、食つて行けない部面が澤山出て來る、從つて其の方面を重點的に考へまして、今日の賃金は能率の點に於ては稍稍變ではありまするが、片方の生活の方面に重點が懸つて賃金形態が出來ると云ふ實情にあるのであります、將來の問題と致しましては、先程申しましたやうに進んで行かなければならぬと思ひまするが、今日の状況と致しましてはどうしても生活と云ふことが先に參りまするので、勢ひ已むを得ざる家族手當であるとか、家族數に應じた賃金で切り抜けて行かなければならぬと云ふ状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=52
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053・種田虎雄
○種田虎雄君 國として、或は色々の各種の保險制度に依つて、國民の生活の出來ないものを救濟して行かなければならぬ、さう云ふ施策を政府としては御考へにならなければならぬのは、是は言ふ迄もないだらうと思ひます、殊に今のやうな非常な生活困難の時代に於ては、特にさう云ふ面に於て御考慮を願つて居るやうにも思ひますし、又其の點に於て一層力を入れて戴かなければならぬと思ひますが、今日各種の所謂事業を營んで居りまする經營者の側と致しまして、國家が當然爲さなければならぬ點迄も負擔をして、此の賃金を支拂ふと云ふことになれば、恐らく各種の企業が赤字を出して、根柢から各企業は崩れて行く、斯う云ふやうな趨勢に向ひつつあるのではないか、而も行政官廳、或は各種の委員會に於て、何處に重點を置いて、それを御決めになるのか、甚だ疑問に堪へないやうなことが多いのであります、それで私は只今御尋ね申した譯なんでありまして、決して將來如何に社會が變つて行きましても、國として負擔されることと、各種の企業其のものが負擔して行くべきものと、截然と區別して、此の點は御方針を樹てて行かなければ、由々敷しき結果に陷るぢやないかと云ふことを憂へますので、御伺ひしたやうな次第であります、此の點に付て其の方針を承つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=53
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054・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今種田さんの御言葉のやうに、國家でやるべきものは、是は國家が今後負擔して行くべきであることは、私共も同感であります、唯只今の御言葉を返すやうでありますが、能く言はれますることは、家族手當のやうなものは、是は賃金の能率に應じたものでないから、家族に對する手當が若し必要であれば、是は國家が負擔すべきではなからうかと云ふ意見が往々あるのであります、之に付きましては私共は、先程もちよつと觸れましたのでありますが、賃金は家族に應ずべきでなくて、能率に應ずべきでありまするが、其の能率に應じた其の賃金の基礎を成すものは何かと云ふと、それは勞働者個人が生きる爲の賃金と云ふ譯には參らないのでありまして、矢張り其の働く個人に繋がる家族、矢張り一家が生きて行く所の所謂其の生活費を保證すべきである、詰り第一條にございます「人たるに値する生活」を保證しなければならぬと云ふことは、其の本人だけが生きると云ふ譯ではなくて、矢張り本人の家族が共に生きるものでなければならぬ、唯それが著しく家族が多いと云ふ者と、家族の少い者とがありまして、其の著しく家族の多い者に迄もみんな矢張り事業主が負擔すると云ふことになりますと、私共も妥當でないと思ふのであります、そこで一體今日の賃金なんかでは、普通の家族を養ふだけの基本賃金が與へられて居るかと云ふと、所謂基本賃金はそこ迄行つて居ない、行つて居ないから、勢ひ家族手當等の別個な方法に依つて家族に應じた賃金形態が出て居ると云ふのが實情ではなからうかと思ふのであります、從ひまして、さう云ふ面に對するものでありますならば、是は矢張り賃金形態の中に……賃金形態とは別でありますが、賃金形態が惡ければ、賃金形態を變へるに致しましても、基本勞働賃金の中に織込まれて行くべきものであつて、國が之を補償すると云ふ行き方は適當でないと思ふのであります、唯それが家族に病人が出て來るとか、特殊な貧困な事情が出て來た場合に、それを事業主が負擔すると云ふことは無理であつて、さう云ふ特殊なものに付きましては國が、補償する、又働かうと思つても、病氣や其の他で働けないと云ふ者が出ました時には、是は矢張り國家の手で、救濟して行くと云ふことは、是は當然やるべきものだと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=54
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055・種田虎雄
○種田虎雄君 今の御説明で政府の御考は能く分りますが、家族手當として出して居りますものが、家族が三人でも五人でも十人でも出して居る、さう云ふやうに無制限に家族手當の名目に依つて、賃金の支拂をすると云ふことが誠に不條理であります、さう云ふことを御決めになるならば、凡そ何人迄は家族手當として出して宜いとか何とかならなければならぬ、今日の樣子はさうぢやない、それを今後行政官廳が最低賃金を決められたりなんかする時に何にもさう云ふことを考慮されず、どんどん生活は保證しなければならぬ、斯う云ふやうな頭で以てやつて戴いては非常に困る、それに付てもつと考慮をして戴きたい意味で、實は御尋ねして居る譯なんでありまして、實は私共は最低の生活を保證すると云ふことは當然だと思ひますが、併しながらそれには凡そ限度があるのぢやないか、今日のやうに無制限なる家族手當を出して居ると云ふことは、是は何處の國でもないことで、恐らく私は日本だけぢやないかと思ふのであります、さう云ふやうなことは、過渡期だからと云つても、少し考慮の餘地があるのぢやないかと、斯う思ふので御質問したやうな譯でありまして其の點に付きましては、何分一つ……今後行政官廳が最低賃金を御決めになる、斯う云ふことが書いてありますから、是は餘程適當な御指導がないと飛んだ結果になりはしないかと心配するのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=55
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056・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 其の點は御尤もな所と思ひます、私共も不自然な所があることは十分了承して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=56
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057・渡邉覺造
○渡邉覺造君 ここらで資料を持歸つて、後にしたらどうですか、是は突然戴いたので、質問も何も出來ないと思ひます、私は勉強が足りないのですけれども……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=57
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058・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 他に御質問はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=58
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059・伊藤傳七
○伊藤傳七君 ちよつと伺ひますが、是は大臣に御伺ひ致したいと思ひましたけれども、おいでになりませぬが、第二條の勞働條件は、勞働者と使用者が對等の立場に置かれると云ふことがはつきりと規定せらるる以上は、勞働者としては色々の條件を使用者に對して申出ると思ひます、何時も勞働爭議がありますと、生産管理とか云ふことが起りますが、それは兎に角として、今後起るべく動きつつあるのは、經營協議會と云ふものが勞働者から使用者に對して盛んに申出られるのぢやないか、現に我々關係して居る所にもさう云ふことが起りつつあるのですが、政府は此の經營協議會と云ふものに對してどう云ふ御考を持つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=59
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060・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 經營協議會に付きましては、政府と致しましては、矢張り生産を本當に起す爲には勞働者の協力に俟たなければならぬ、從つて生産をやります上に、勞働者の意見をも採入れて、さうして相共にそこで相談しながら生産を進めて行くことが望ましいと云ふ考で居ります、唯併し御承知のやうに、此の經營協議會の色々な動きと云ふものは昨年の四月頃から段々起つて參りまして、爭議の度に此の問題がやかましくなつて居りますが、其の中には動もしますと行過ぎの要求がございまして、例へば人事權も協議會で決定をするとか、或は總て配當から總理も是でやると云ふやうな方面の要求も相當あつたのでありますが、政府の一應の方針と致しましては、確か昨年の七月頃であつたかと思ひますが、中央勞働委員會にも意見を聽きまして、大體中央勞働委員會でも、經營協議會と云ふものは斯うあるべきものではなからうかと云ふ一つの指針を決定致して居ります、政府も大體其の中央勞働委員會で決めました經營協議會の運營を大體宜いとして今考へて居るのでありますが、それでは矢張り人事權とか經理の部面に付て迄立入ることは、是は行過ぎだ、併し勞働條件なり、又勞働條件ばかりでなしに、色々生産のやり方等に付て意見をお互に聽き合つて、そこで決めて行くと云ふことは宜い、經營協議會が唯之を議決機關とか決定機關とか申しましても、是は使用者側と勞働者側とが兩方納得しなければならぬ、多數決で決めると云ふ筋合のものでございませぬ、何處迄も協議機關と云ふことでやつて行くと云ふ風に考へて居るのであります、一時は相當行過ぎもございましたが、最近では矢張り經營協議會が段々と軌道に乘つて參りまして、さう無理なものは出て參りませぬ、昨年四月頃にはちよつと一時行過ぎの要求があつたやうに思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=60
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061・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 私から小さい問題を御伺して見たいと思ひます、第九十條の「就業規則の作成又は變更について、」と云ふ所に、勞働者の意見を聽かなければならぬ、斯う云ふ條項がありますが、此の聽くと云ふことはどう云ふことでありますか、其の點を一つ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=61
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062・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は御承知のやうに就業規則は矢張り其の職場に於ける一つの規律を定めたものでありまするから、それを使用者が一方的に決めまして、さうして勞働者に服從させると云ふことは面白くない、さうかと言つて、之を一々組合なり勞働者の過半數の同意がなければ出來ないと云ふことになりますると云ふと、同意が求められない限りはなかなか出來ないと云ふことになりますから、そこで同意と迄は行かない、矢張り意見を何處迄も聽いて、さうして作つて行かうと云ふ所で此の意見を聽くと云ふことに致して居るのであります、ですから唯此の反面から出て參ります解釋と致しましては、就業規則は使用者が一方的に勝手に作ると云ふことは宜くないと云ふことと同時に、一方同意迄は必要でないと云ふ趣旨でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=62
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063・畠山一清
○委員長(畠山一清君) さうすると第九十五條の五項目に付きまして、寄宿舍の規則に付ては「同意を得なければならない」とありますが、只今の御説明に依りますと云ふと、九十條は同意を得なくても宜しい、一方に諮れば宜しいと云ふのでありますから、此の九十五條の同意を得なければならぬと云ふ意味と全然意味が違ひまして、九十條に於ては不同意でも差支へないと云ふことに解釋せられますが、さう云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=63
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064・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今御指摘のありましたやうに、九十五條の方は同意を必要として居ります、是は此の所謂寄宿舍と云ふものは個人の生活を主としたものでありまするので、從前は此の寄宿舍も、附屬して居ります寄宿舍は、其の工場の定めた色々な生活規律に從はなければなりませぬでしたが、此の法律に依りましては、第一條にありまするやうに、矢張り工場で建てた寄宿舍でありましても、其の中に入つて居る勞働者の私生活は是は自主的、自由のものでなければならない、從つて其の自由であるべき生活を規律する色々な此の規則に付きましては、矢張り其の中に入る勞働者の同意を得なければならぬと云ふ風に今はなつて居る譯であります、從ひまして先程御質問のありました點は、單なる意見を聽く程度でありますが、こちらの寄宿舍の方は生活を直接規律するものでありますから、同意迄必要だと斯う云ふことになるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=64
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065・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それから今一つ伺ひますが、第九十四條の寄宿舍に於ける私生活の自由を侵してはならぬと云ふことでありますが、此の私生活と云ふ範圍はどの程展でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=65
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066・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 私生活と申しますのは、其の寄宿舍で所謂寢起きから、色々な自分の個人としての生活を言つて居る譯であります、工場で色々な生産をやる場合は、是は生産の規律に從はなければなりませぬが、それから寄宿舍に歸りますれば、寄宿舍に歸つての生活は、個人としての私生活ですから、其の生活は自由でなければならぬと、斯う云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=66
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067・畠山一清
○委員長(畠山一清君) さう致しますと、寄宿舍生活の全貌を稱して私生活と申すのでありますか、さう云ふことになりますと云ふと、寄宿舍生活の全部に對して自由に放縱に流れると云ふやうな虞がありますが、其の點は規則其の他で制限すれば宜いやうに思ひますが、其の邊の範圍がなかなかむづかしいので、つい行過ぎを生ずることになります、何か適當な言葉がないものかと思ふのでありますが、此の私生活の自由と言ひますと云ふと、自由を無暗に要求するやうな傾きになるのでありますが、其の點は何か良い文句はないものかと思ひます、それからもう一つは、其の次にあります「役員の選任に干渉してはならない」と云ふことがあります、此の寮長、室長等を決めるのに干渉してはならないと云ふことがありますけれども、會社の取締上必要と思ふ者が其の任に就くことが出來ぬと云ふ次第にもなるかと思ひますが、此の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=67
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068・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今御質問のありました點は、實は私共も多少の心配がない譯ではございませぬ、が併しさうかと言つて、良い意味に於て所謂若い者の爲に心配をする譯でありますが、さう言つて居りますといつ迄經つても個人の自覺、個性の完成と申しまするか、それに矢張り干渉と申しまするかになり勝ちでありますので、從來の寄宿舍制度と云ふものが、其の良い意味に於ての心配からではあらうと思ひますが、それがつい勢ひ色々な生活を干渉し、拘束をするやうになつて居りますので、本法と致しましては、相當進歩的ではありますが、寄宿舍の勞働者の生活と云ふものは、矢張り自由にしなければならぬ、從つて其の自由に對しては干渉しないと云ふ建前を採つて居るのであります、勿論寄宿舍の管理等に必要な舍監と致しましては、是は工場の責任もございまするから、使用者側から選任されますが、其の寄宿舍の中の生活としての室長を誰にするか、或は其の寮の寮長を誰にするかと云ふことは、矢張り其の中に入つて居ります勞働者が自治的にそれを選ぶのが宜いと云ふことで、此の原則を掲げたのであります、唯併しさうかと言つて、多數の人が入つてゐることでありますから、それぞれがさう勝手なことを致しましては、其の團體の生活と云ふものは保てないと云ふので、さう云ふものが色々な寄宿舍規則として、秩序が保たれる必要が出來る譯であります、併し是も所謂使用者側の方が勝手に作りますと云ふと、勢ひ私生活に干渉することになりますので、之を勞働者の同意を求め、出來るだけ寄宿舍生活と云ふものは自治的にさせて行きたいと云ふのが主眼でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=68
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069・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それぢや舍監を置くことは勝手でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=69
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070・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 寄宿舍の舍監は工場の責任もございます、唯中の私生活に付て誰を寮長にする、どうすると云ふことは、是は自治的にやるわけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=70
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071・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 外に御質問ありませぬか、それでは今日は此の程度で散會致しまして、次囘は二十二日の午前十時から開會致しますから左樣御承知を願ひます
午後零時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=71
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072・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 畠山一清君
副委員長 男爵 長基連君
委員
公爵 島津忠承君
子爵 岩下家一君
子爵 大久保教尚君
男爵 内田敏雄君
種田虎雄君
竹中藤右衞門君
伊藤傳七君
丹羽彪吉君
小汀利得君
渡邉覺造君
伊藤豐次君
國務大臣
厚生大臣 河合良成君
政府委員
厚生事務官 吉武惠市君
同 寺本廣作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00119470320&spkNum=72
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