1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○勞働基準法案
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昭和二十二年三月二十五日(火曜日)
午前十時五十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=0
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001・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 開會致します、昨日迄に逐條的に一應質疑が終つたやうなことでありまするけれども、今日更に一般的或は綜合的の御質問がありまするならば、御願ひしたいと思います、そしてそれが終りましたら、懇談會の後に討論採決に入ることが出來れば結構だと、斯う云ふ風に存じて居る次第でありまするから、どうぞ御質疑を御願ひ致します、御質疑がありませぬですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=1
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002・渡邉覺造
○渡邉覺造君 此の本案は醫療關係と密接な關係を持つて居るから、此の社會保險制度と醫療機關との關聯を緊密ならしむるやうに是非御考慮を願ひたいと思ふのですが、是に付て念の爲にもう一遍政府の御考を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=2
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003・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今御質問ありましたやうに、本案と醫療關係は非常に關係の深い問題でございまして、現在でも健康保險と密接な關係があり、現在の工場法とも關係ございます、從ひましてそれ等の所謂社會保險特に社會保險中の此の醫療との關係に付きましては、是はもうどうしても密接不可分の關係でありまして、我々現在でも保險局其の他とも連絡を取つて居りまするが、今後とも此の點に付きましては十分連絡を取つて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=3
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004・渡邉覺造
○渡邉覺造君 只今迄の政府當局との質疑を綜合致しますと、本案を立案するに當つては、國民勞働者の保健醫療と云ふことに付ては余り關心を拂つて居らなかつたやうに見受けられますが、之に付ては是非特段の御考慮と御努力を御願ひ致したいと存じて居ります、唯希望を申し述べて置きます、私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=4
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005・種田虎雄
○種田虎雄君 此の前にも御尋ねしましたが、今度出來ます中央及び地方の賃金審査會、それと中央及び地方の勞働委員會、さう云ふ風な關係でございますが、殊に此の賃金問題は矢張り爭議の重點になるだらうと思ひますが、さう云ふ連絡或は關係等に付て餘程うまく是が運營されないと、動ともすると權限爭ひと云つたやうなことに相成るのではないだらうか、斯う云ふ風に氣遣はれるのでありますが、さう云ふ點に付てどう云ふ風に御考へでありませうか伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=5
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006・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御話のやうに本案に付きましては、各種の委員會がございます、其の中特に重要なのは今御指摘になりました賃金委員會とそれから勞働基準委員會であらうと思ひます、大體はそれぞれの分野が決つて居りまするから間違ひはないと思ひます、賃金委員會は賃金に關する事項、それから勞働基準委員會は一般に關する事項でありますが、併し實際の問題になりますと、一つの問題が兩方に關聯すると云ふやうな問題も出て來るかと思ひますが、其の點は十分氣を付けまして間違ひのないやうには進めたいと思つて居ります、大體は法律でそれぞれの權限範圍が大枠決つて居りますから大丈夫だと思ひます、只今私は勞働基準委員會の積りで申上げましたが、勞働委員會と云ふ御言葉でしたが、若し勞働委員會だと申しますると、それは爭議の調停斡旋、所謂勞調法或は勞働組合法にありまするのでありまするから、多少性質が違つて參ります、併し一つの紛議が爭議の紛議として起る場合と、それから此の法律の施行上の紛議として起る場合があらうかと思ひますけれども、向ふの方は所謂爭議の調停を主眼にして居りまするから、勞働委員會の方は爭議の調停以外は、詰り團結權の保障だけをやつて居ります、それはもうこちらの方とは全然關係なしに、問題は其の爭ひの調停に屬するか、或は此の法律の施行の解釋に屬するかと云ふ問題が起つて來るかと思ひます、其の點も自ら其の使命が違つて居りまするから、何とかやつて行けるかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=6
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007・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御説明で、大體間違ないだらうと云ふことでありますが、殊に最低賃金に關する問題は中央及び地方の賃金審査會でそれに諮問されて、行政官廳が御決めになるのでありますが、一番虞のあるのは最低賃金等に付ての色々の爭だと思ひます、勞働委員會等にはさう云ふ賃金の色々の主張等が、特に最低賃金に觸れて居る問題が非常に多いのでありますが、今のやうな御説明でありますと、最低賃金に關する限りに於ては是は勞働委員會の方で扱はないのだ、是は所謂行政官廳が中央及び地方の賃金審査會に諮つて決められれば、それが例へば勞働者側にとつて十分でないと云ふので、各組合がそれぞれの會社に向つて要求して行く、或は官廳に向つて要求して來ると云ふやうな場合には、どう云ふ風に御扱ひになる積りであるか、さう云ふ點に付て粉淆が起きはしないかとい云ふことを御尋ねした譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=7
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008・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 多少私の説明が足りなかつたと思ひますから、もう一度申上げたいと思ひます、此處にあります賃金委員會は最低賃金の決定をするのであります、此處に言ふ最低賃金と申しますのは、所謂團體交渉其の他で言ふ最低賃金ではございませぬで、法律で以て最低賃金を決定する場合であります、詰り法律で以て強制をする。最低賃金を定める必要がある時には政府は其の賃金委員會にかけまして、さうして其の決定に基いてそれを告示する、さうしますと、法律的な強制力を持ちまして、それ以下に傭ふことが出來ないと云ふ風な拘束力を持つ、さう云ふやうな重要な基準でありますから、民主的に構成された委員會が決定して行く、斯う云ふことであります、併しそれぢやさう云ふ法律で作る時だけかと云ふと、委員會が出來ますれば、矢張り其の專門的な事項を審議する機關でございますから、其の他の問題に付てもそれは委員會に諮つて意見を聽くこともございませう、又委員會が建議することもあらうと思ひます、併し今のやうに爭議が起つて、其の爭議の中には最低賃金を幾らにするかと云ふ爭があつたり、或は最低賃金でなくつても、爭議の中の項目として是位の賃金を出せ、いやそれだけ出せないと云ふ時の其の爭を如何に調停をするかと云ふことになりますと、是は勞働委員會の方の權限になると思ひます、だから總て賃金の爭は賃金委員會に來ると云ふ風に若し私の先程の説明を御取りになりましたら、それはさうはなりませぬので、矢張り其の爭の中には賃金もありませうし、或は其の他に時間の問題其の他もあります、爭議と云ふ形で出て來ると、それは調停と云ふ形になりますから、勞働委員會に行く、こちらの方は法律で強制力を持つ最低賃金の制度を作る時には委員會の方で決定をする斯う云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=8
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009・種田虎雄
○種田虎雄君 さう致しますと、最低賃金と云ふものを行政官廳がそれぞれの委員會に諮つて御決めになつたとして、會社と從業員勞働者組合との間に此の最低賃金では生活は出來ない、さう云ふ風な問題で會社に組合が要求して來た場合に、それは固より法定の最低賃金はちやんと決められて居るから、それ以上會社としては拂はない、斯う云ふことを突張つた場合に、其の問題は一體どう裁いて行くのでありませうか、是は矢張り組合の方が委員會に提訴したと云ふ時に、勞働委員會の方で行政官廳の方に交渉して最低賃金を變へさせるやうなことになるのでありませうか、最低賃金は最低賃金として行政官廳が決めて居る、併しながら實際問題として生活が出來なければ、其の問題を取上げる會社と組合との間に矢張り調停をする、或は仲裁をする、斯う云つたことになるのでありませうか、行政官廳と勞働委員會との關係、さう云ふやうなものは、どう云う風に實際問題としてなる御考でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=9
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010・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) さう云ふ場合があらうかとは思ひますが、若し政府が必要があると思つて最低賃金を作る、其の際に委員會に掛けてさうして所謂強制力あるものとなつた場合に、是は是以下に若し使ふ、之に違反すれば所謂制裁もありますが、それ以上の分に付きましては、是は各種の勞働條件或は各職場に於ての特殊性もあらうかと思ひます、其の爲に此處の法律の第一條にも念の爲に謳つてありますが、此の法律が基準を設けると、其の基準が宜いのだ、其の基準さへ出せば宜いのだと云ふ風になりますのではなくして、會社で政府の求めた最低賃金は幾ら幾らであるけれども、自分の所ではまあ組合の方と協定をして、其の最低賃金より是位上げた所を最低賃金にすると云ふことは、是はあり得るし構はない、併し會社の方が唯組合が要求したからと言つて直ぐ會社としてもそれを其の儘受取られる場合もあらうし、又ない場合もございませうし、それは會社の經營なり其の他の事情から出ることでありまして、會社にどうしても出來ないのに要求があると云ふ場合、是は調停と云ふことになるのでありませうが、さう云ふ時の調停は矢張り勞働委員會に掛つて來ると思ひます、勞働委員會は其の會社の實情なり何かを見まして、非常に會社の經營が無理だ、非常に經營状態が良くない、それに政府が決めて居る最低賃金より以上を要求するのは、それは無理だと云ふ裁定を下す場合もありませうし、又會社はさう言つて居るが、經理状態を見ると、經理は必らずしも惡くない、それならば政府が決めた賃金を必らずしも固執しなくても少しは考へたらどうだと云ふ調停になるかも知れませぬが、さう云ふ風に此の法律に謂ふ最低賃金と云ふのは國家が是はどうも法律で此處だけの線は引かざるを得ぬと云つた場合に一律的に引く、一律的と申しましても、全國、各職場一律的と云ふ趣旨ぢやございませぬが、特に必要と認めた職業或は地域に付て全般的に決めるので、個々の工場に付てではありませぬですから、さう云ふ風にどうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=10
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011・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御答辯で御趣旨は能く分りましたが、是は運用の上に於きまして、餘程實際の、問題としては爭ひが起ることが多からうと思ひますので、斯う云ふ點に付ては豫め餘程當局の方でも御研究を願ひ、又實際に當る人も餘程常識的な決め方をされないと、非常に問題が多くなるだらうと思ひますので、ちよつと其の點を申上げて置きます、私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=11
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012・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 質疑はございませぬか、質疑がございませぬやうならば、是で終ることに致しまして、是れから暫く懇談に入ろうと存じます
午前十一時十六分懇談會に移る
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午後零時十七分懇談會を終る発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=12
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013・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 開會致します、討論に入りたいと思ひますが、御發議を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=13
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014・種田虎雄
○種田虎雄君 本法案は勞働組合法及び勞働關係調整法と共に勞働立法の一環を爲すものでありまして、極めて重大な法案だと思ふのであります、曩に經濟民主化が提唱されまして、眞先に勞働組合法の制定を見たのでありまするが、其の後の實情を見ますると、勞働爭議が經濟上の爭より、動ともすれば政治上の意圖を含んだ爭に變化しつつあるやうに思ふのであります、此の際此の爭を防ぎますのには、どうしましても、此の勞働基準法、即ち本法の如き制定を見なければ、到底之を阻止することは出來ないだらうと云ふやうな議論も一部に出て居るのでありまして、私共も其の點に付ては同感の意を持つて居るのであります、曩に勞働關係調整法の審議に際しましても、他の委員會に於て勞働基準法の制定が極めて必要であると云ふことも言はれて居つたやうな次第でありまして、誠に此の法案は極めて適切なものでありまして、私は本案に對しては贊成の意を表するものでありまするが、唯其の法案の内容を見ますると、我が國の實情から考へまして、歐米其の他の勞働關係に付ての先進國等の立法例、或は實際に照しましても、より以上に我が國の實情に添はぬ位な進歩的な規定も含まれて居るやうに思ふのであります、從つて此の法案を實施致しますに付ては、相當考慮を要する點が多々あると思ふのでありまするので、私は此の法案の施行に當つて、政府に對して左の諸點に留意せられむことを希望する次第であります、其の希望決議案を申上げますと、一、本法の施行期日を定むるに當りては經濟勞働の實情特に本法運營の爲多くの施設準備を要すべき事情に鑑み十分の餘裕を存するやう篤と考慮すること、一、本法施行の爲の命令規則の制定に當りては經濟勞働に知識經驗ある委員に諮問して之を行ふこと、一、本法の運營に當りては徒に取締乃至處罰を旨とすることなく指導斡旋に努め且此の方針を行政の末端に徹底せしむること、一、本法の施行と竝行して社會保險及び公的醫療機關の整備充實を圖ること、以上の希望決議案を附けまして本案に贊成する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=14
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015・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 私も只今の種田君の御意見に贊成致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=15
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016・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それでは先づ本法案全部を問題に供しまして採決を致したいと存じます、御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=16
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017・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 御異議ないと認めます、本決案は可決になりました、次いで只今の希望決議に付ての採決を致したいも存じます、希望決議全部に付て御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=17
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018・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それでは是も可決致しました、然らば政府の御考を伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=18
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019・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今滿場一致を以て決定下さつたことに對して、厚く御禮を申上げます、尚希望決議の點に付きましては、政府と致しまして大體御趣旨に添つて善處する積りで居ります、第一の問題の施行期日の問題に付きましては、是は實情に即しまして十分考慮致します、それから第二番目の問題は是は命令規則の制定に當りましては、十分知識經驗ある御方の意見を聽いて制定する積で居ります、それから第三の點は取締に付きましては、法律の實施の當初に當りましては、特に指導と云ふことを中心に考へまして、無理のないやうにやる積りで居ります、それから第四番目の社會保險及び公的醫療施設に付きましては出來るだけ法律と竝行してやるやうに努力致す積りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=19
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020・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 誠に連日に亙りまして各位の御熱心なる御質疑を得て、御蔭を以つて本案の審議を終ることを得ましたことを厚く御禮申上げます、有難うございました、是で散會致します
午後零時三十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=20
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021・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 畠山一清君
副委員長 男爵 長基連君
委員
子爵 岩下家一君
男爵 内田敏雄君
種田虎雄君
膳桂之助君
竹中藤右衞門君
伊藤傳七君
小汀利得君
渡邉覺造君
伊藤豐次君
國務大臣
厚生大臣 河合良成君
政府委員
厚生事務官 吉武惠市君
同 寺本廣作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00419470325&spkNum=21
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