1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
所得税法を改正する法律案(政府提出)(第二五號)
法人税法を改正する法律案(政府提出)(第二六號)
特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)(第二七號)
土地台帳法案(政府提出)(第二八號)
家屋台帳法案(政府提出)(第二九號)
地方税法の一部を改正する法律案(政府提出)(第三〇號)
地方分與税法を改正する法律案(政府提出)(第三一號)
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本委員は昭和二十二年三月十八日(火曜日)議長の指名で次の通り選定された。
安部俊吾君 神田博君
菊池長右ェ門君 厚東常吉君
武田信之助君 綿貫佐民君
金光義邦君 神戸眞君
菅原エン君 宮前進君
八木佐太治君 稻村順三君
奧村又十郎君 川島金次君
中崎敏君 石崎千松君
木下榮君 二階堂進君
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三月十九日(水曜日)午前十一時三十七分委員長理事互選のための次の委員が參集した。
神田博君 菊池長右ェ門君
金光義邦君 神戸眞君
菅原エン君 宮前進君
八木佐太治君 稻村順三君
奧村又十郎君 川島金次君
中崎敏君 石崎千松君
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〔年長者八木佐太治君投票管理者となる〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=0
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001・八木佐太治
○八木投票管理者 先例によりまして私が年長のゆえをもつて投票の管理者となり、これより委員長の互選を行います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=1
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002・宮前進
○宮前委員 投票を用いず、金光義邦君を委員長に推薦いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=2
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003・八木佐太治
○八木投票管理者 宮前君の御意見に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=3
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004・八木佐太治
○八木投票管理者 御異議ないと認めます。よつて金光義邦君は委員長に御當選になりました。委員長金光義邦君に本席を讓ります。
〔金光義邦君委員長席に着く〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=4
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005・金光義邦
○金光委員長 御挨拶を申し上げます。各位の御推薦により、不肖この席を汚すことになりました。至つて不慣れでございますし、萬事行き屆かぬことと存じますが、さいわいに皆樣の御援助によりまして、審議を續けたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
引續き理事の互選を行います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=5
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006・宮前進
○宮前委員 理事はその數を三名とし委員長において御指名あらんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=6
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007・金光義邦
○金光委員長 宮前君の意見に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=7
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008・金光義邦
○金光委員長 御異議ないものと認めます。
神田博君 宮前進君
稻村順三君
以上の方々を理事に指名いたします。午後は一時より開會いたしまして、政府の説明を聽取してから質疑に入りたいと思います。これにて休憩いたします。
午前十一時四十分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=8
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009・会議録情報2
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昭和二十二年三月十九日(水曜日)午後一時十六分開議
出席委員
委員長 金光義邦君
理事 神田博君 理事 宮前進君
理事 稻村順三君
安部俊吾君 菊池長右ェ門君
厚東常吉君 神戸眞君
菅原エン君 八木佐太治君
奧村又十郎君 松永義雄君
川島金次君 中崎敏君
石崎千松君 木下榮君
同日委員奧村又十郎君辭任につき、その補闕として松永義雄君を議長において選定した。
出席國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
商工大臣 石井光次郎君
農林大臣 木村小左衞門君
出席政府委員
内務參與官 水田三喜男君
内務事務官 柏村信雄君
大藏政務次官 北村徳太郎君
大藏事務官 前尾繁三郎君
大藏事務官 忠佐市君
食糧管理局長官 片柳眞吉君
商工事務官 吉田悌二郎君
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本日の會議に付した議案
所得税法を改正する法律案(政府提出)
法人税法を改正する法律案(政府提出)
特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
土地台帳法案(政府提出)
家屋台帳法案(政府提出)
地方税法の一部を改正する法律案(政府提出)
地方分與税法を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=9
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010・金光義邦
○金光委員長 午前に引續き會議を開きます。まず政府の説明を求めます。北村政府委員。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=10
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011・北村徳太郎
○北村政府委員 本委員會に付託と相なりました所得税法を改正する法律案ほか四法律案につきまして提案の理由を御説明申し上げます。
本會議におきまして御説明申し上げましたように、政府は最近における國民經濟の推移、國民生活の實情、竝びに中央及び地方の財政事情等に鑑みまして、現行の税制につきまして根本的改正を加える必要を認め、その方策につきましては、昨年末發足を見ました税制調査會に對し諮問をいたした次第でありますが、先般その答申を見るにいたりましたので、右答申に基き、關係法律案を作成いたしまして、ここにこれを提案するの運びと相なつた次第でございます。
今囘の税制改正にあたりましては、多額に上る財政需要の現状に對應いたしまして、その收支の均衡をはかるため、租税收入を確保するとともに、國民生活の實情に即應いたしまして、負擔の公正を期し、併せて租税の民主化及び税制の簡易平明化をはかり、かくして現下當面いたしまする財政經濟の再建に資するに適切な税制を樹立することといたしたのであります。
以上の趣旨に基きまして、所得税はこれを租税體系の中樞といたし、一定額以上の所得を有する個人に對してはその擔税力に應じまして適當なる課税を行い、これにより租税收入の根幹を形成せしめることといたしたのであります。法人税及び特別法人税につきましては、個人に對する課税との權衡上、必要な改正を行うことといたしたのであります。しかして、酒税その他の消費税及び流通税につきましては、物價事情の變動その他諸情勢の推移に即應して、各税にわたり相當の増徴を行うこととする一方、物品税につきましては、現在としては課税上不適當と認められる一部の税率の引き下げを行う等、所要の改正を加えたのであります。このほか地方税制度の改正に關連し、地方財政の確立及び適切な地方應益負擔の實現に資する等のため、地租、家屋税、營業税、鑛區税及び遊興飮食税は、これを地方に委讓することといたしたのであります。
なお、相續税につきましては、民法の改正に伴う所要の改正を行うとともに、各般の状況に鑑み、その課税を相當強化する必要を認めている次第でありまして、一兩日中にその改正案を提案することといたしておるのであります。
次に各税に關する改正の大要について申し上げます。まず所得税でありますが、先ほど申し上げましたごとく、本税は租税の大宗として國民所得の現状、國民生活の實情及び財政需要の現況において、全國民がおのおのその分に應じてこれを負擔する趣旨のもとにあらゆる所得を總合し、一定額以上の所得を有する者に對し、累進税率により課税することといたしのであります。これに伴い現行の分類所得税及び總合所得税を兩建とする課税は、これを廢止することといたしたのであります。
所得税につきましては、まづ課税所得の範圍は、大體現行によつているのでありますが、今囘新たに株式等の有價證券の賣買讓渡による差益等につきましても課税することにいたしました。但しあらゆる所得を總合して累進税率により課税するため、山林所得、讓渡所得、退職所得等、長期間にわたる所得の累積とも目し得べき一時的所得につきましては、その所得の二分の一を控除して課税することにいたしました。
次に、税率でありますが、所得税改正の根本のねらいの一つは、納税者の負擔を現下の實情といかに適合させるかということであります。このことにつきましては、所得及び生計費の實情並びに財政の需要等、各般の事情につき愼重に考慮を重ねました結果、その年一年間を通じて計算した課税所得金額に對し、最低百分の二十乃至最高百分の七十五の税率によりその税額を定めることといたしたのであります。基礎控除及び扶養家族控除につきましては、先般御審議を願いました勤勞所得に對する分類所得税の控除額に見合つてこれを引上げることといたしました。まず基礎控除の金額は、原則として年四千八百圓に引上げることにいたしました。勤勞所得者につきましてはその擔税力を考慮し、その給與として受ける金額のうち、年三萬圓までの金額については、その二割を控除して課税することといたしておりますので、この基礎控除の金額は、給與所得につきましては、年六千圓となる次第であります。次に扶養家族を有する者につきましては、家族一人ごとに税額で年二百四十圓の控除を認めることといたしました。以上によりまして小額所得者及び扶養家族を擁する者、特に勤勞所得者の實際負擔は相當緩和されることとなるのであります。これを實例について申し上げますれば、妻及び子女三人を有する勤勞所得者は、年收一萬圓のときは課税を受けず、年收二萬圓のときは税額が千三百四十圓、年收三萬圓のときは税額が三千五百五十圓となるのであります。これを營業の所得者について申し上げますれば、年收一萬圓のときは税額が八十圓、年收二萬圓のときは税額が二千三百五十圓、三萬圓のときは税額が五千六百十圓、十萬圓のときは税額が三萬九千六百五十圓となるのであります。
所得税の納税につきましては、原則として豫算申告納税が方法によることといたしたのであります。すなわち、現在の納税方法が、前年の所得によつて税額を定め、政府がその税額を告知することになつているのを改め、今囘は、課税の年の所得によつて税額を定め、納税者がその申告した所得によつて、みずから税額を計算して納税することといたしたのであります。これにより所得を生ずる時期と、納税の時期とが近接することに相なりまして、負擔の均衡適正をはかる上からも、納税者の納税上の便宜からも、國庫收入の的確を期する上においても、適當と認められるのであります。その内容について申し上げますれば、一定の勤勞所得者以外の納税者は、毎年四月に、みずからその年の所得を豫算し、その豫定税額の四分の一づつを毎年四月、七月、十月及び翌年一月に分納することといたしております。年の中途において所得の見積額に増減があつたときは次の申告期において修正申告を行うと同時に、納税額を調整することといたしております。なお、その年の經過後その年の確定所得により確定税額を計算し、豫定税額との差額は、不足額についてはこれを翌年一月に納付することとし、過納額はこれを還付することといたしたのであります。また勤勞所得及び配當利子所得等につきましては現在通り支拂の都度源泉において支拂者が一定の税額を徴收することといたしておるのでありますが、この源泉で徴收された税額は、申告期納税の税額からはこれを差引くことといたしておるのであります。
次に、申告納税及び源泉徴收上の便益に資するため、特定の税表による納税の制度を設けることといたしました。その一は所得金額が年五萬圓以下の者についての簡易税表であります。その二は給與所得及び退職所得に對する源泉徴收額表であります。これら税表には所得金額または給與の金額を相當數に區分し、一定の金額に對し一定の税額が定められており、税額計算の手數が全然省略されるのでありまして納税上すこぶる有益であると存じておるのであります。
なお、改正所得税の初年度たる本年におきましては、申告事項、申告期限及び納期等について、一部の特例を設け、申告及び納税の圓滿なる實施をはかることといたしておるのであります。
次に法人税について申し上げます。法人の各事業年度の超過所得に對する課税は、最近における經濟界の急激な變動に伴い、その負擔が實情に即せず産業の再建に必要な法人の企業活動の促進を期しがたい憾みがありますので今囘その税率を、資本金額の一割を超える部分の所得に對し百分の十、同二割を超える部分の所得に對し百分の二十、同三割を超える部分の所得に對し百分の三十に、それぞれ引下げることといたしたのであります。また清算所得に對する税率につきましては、改正後における所得税の負擔との權衡上、積立金から成る金額等については、現行百分の三十五を百分の二十に、その他の金額については、現行百分の五十を百分の四十五に引下げることといたしました。なお各事業年度の資本に對する課税につきましては、最近における法人の負擔力等を考慮し、現行の税率千分の三を千分の五に引上げることといたしました。
法人税につきましても、全面的に申告納税制度を採用し、法人は事業年度終了の日から二箇月以内に、みずから所得等の申告をなすと同時に、みずからその税金を計算して、これを納付することといたしたのであります。また事業年度が六箇月を超えるときは、六箇月の實績によりその税金を概定して申告納税をなすこととする等、個人の豫算申告納税制度に對應し、所得發生の時期と課税の時期との近接をはかることといたしたのであります。特別法人税につきましても、改正後における所得税の負擔との權衡上、清算剩餘金に對する税率を、積立金からなる金額については百分の二十、その他の金額については百分の四十に引下げる等の改正を行うことといたしました。また新たに申告納税制度を採用することといたしたのでありますが、一般の法人とはその事情を異にしておりますので、各事業年度の剩餘金についての申告納税の期限は、決算確定後一箇月といたしたのであります。
有價證券移轉税につきましては、その負擔の實情その他諸般の事情を考慮し、税率を現在の二倍に引上げることとしたのであります。
酒税につきましては財政の現状及び酒類消費の状況等に照らし、この際各種酒類について相當大幅の税率の引上げ等を行うことといたしました。すなわち清酒については、一升びん詰の小賣價格第一級酒現行四十三圓を百二十圓程度に、第二級酒現行三十三圓を九十圓程度に、ビールについては大びん詰一本の小賣價格現行七圓を二十圓程度に引上げるため、相當の増徴を行うとともに、その他の酒類についても、品質に應じ税負擔に差等を設けて、これに準ずる増徴を行うこととし、總税額において二十四割程度の増收をはかることといたしたのであります。なお料理店、酒場等において販賣する業務用の酒類については、その消費の性質等を考慮し、一般の酒税のほかに、清酒第一級酒及び第二級酒の一升びん詰一本について二百圓程度、ビール大びん詰一本について四十圓程度の酒税を加算して徴收することとし、その他の酒類についても、同程度の酒税を加算し、これらにより相當多額の國庫收入の増加をはかることといたしたのであります。
清凉飮料税につきまましては、酒税増徴の權衡等から、第二種サイダーの税率を一石について現行五百五十圓を二千三百圓に引上げ、その他の清凉飮料についても同程度の税率の引上げを行うことといたしました。
砂糖消費税につきましては、他の消費税の増徴の權衡等から、分蜜白糖の税率を、現行百斤について三百六十圓を千八十圓に引上げ、その他の砂糖についても、同程度の税率の引上げを行う等の改正をすることといたしました。
織物消費税につきましては、抄纎織物等は、その負擔を綿織物と同程度とするのが適當と認められますので、現行の税率百分の四十を百分の十に引下げることにいたしました。
物品税につきましては、最近における物價及び各種消費の状況等に鑑み、從價課税に屬するものにつきましては一部奢侈的性質の特に濃厚なものを除き、その他の物品につき税率の引下げ等を行うこととし、甲類物品のうち化粧品等數品目に對する税率百分の百を百分の八十に、乙類物品に對する税率百分の六十を百分の五十に、丙類物品に對する税率百分の四十を百分の三十に引下げるとともに、丁類物品のうち折箱、割ばし、防虫劑等の課税を廢止することとしたのであります。他方從量課税に屬する税率を引上げることとし、マツチに對する税率現行千本につき二十五錢を一圓五十錢に引上げるとともに、飴類等に對しましては、砂糖に準ずる程度の税率の引上げを行うことといたしたのであります。
入場税につきましては、最近における映畫館、劇場等の利用の状況に鑑みまして、現行の税率の階級區分を廢止することといたしました。これにより入場料等が三圓五十錢未滿の場合におきましても、その税率は入場税については百分の五十が百分の百、特別入場税については、百分の二十が百分の四十となり、相當の増徴となる次第であります。
取引所税につきましては、有價證券移轉税の増徴その他諸般の事情を考慮し、取引所における有價證券の賣買取引に對する取引税の税率を改正し、決濟期間の長短にかかわらず、地方債證券または社債券については萬分の一、その他の有價證券については萬分の十といたしたのであります。
以上の各税の改正に伴い、登録税のうち定額で課税しているもの、印紙税骨牌税及び狩獵免許税につきましてもそれぞれ相當の増徴を行うことといたしたのであります。
なお今囘別途實施せらるべき地方税制度の改正に對應し、地租、家屋税、營業税、鑛區税及び遊興飮食税の五税はこの際地方にこれを委讓することといたしました。但し地方税として課税する地租及び家屋税の課税標準たる賃貸價格の均衡適正をはかるとともに、土地及び家屋の状況を國において明確に把握するため、この際土地臺帳法及び家屋臺帳法を制定し、現在通り税務署に土地臺帳及び家屋臺帳を備え、土地及び家屋に關し必要な事項の登録を行うことといたしたのであります。
土地臺帳法におきましては、國有地以外の土地を第一種地及び第二種地に區分いたしております。第一種地は賃貸價格を定める土地でありまして、概ね現在の有租地がこれに該當し、第二種地は賃貸價格を定めない土地でありまして、概ね現在の無租地がこれに該當いたすのであります。土地臺帳に登録すべき事項及び土地の異動に關する整理等につきましては、概ね地租法に準じて規定を設け、税務署においてその事務を取扱うことといたしておりますが、地租の免除または輕減のため認められていた各種年期地の制度は、概ねこれを廢止することといたしました。これらの從前の年期地につきましては、新たに賃貸價格を設定し、または修正することになりますが、都道府縣において課税をいたしまする際には當該地方において實情に即し、適宜課税の輕減または免除を行うこととなる次第であります。また土地臺帳に登録すべき賃貸價格は、さしあたり地租法による現行賃貸價格をそのまま引繼ぐこととし、今後は十年ごとに一般的にこれを改定することといたしましたが第一囘の一般的改定は昭和二十五年においてこれを行うこととし、現行の規定によるものよりも一年延期することといたしました。
なお、耕地整理地につきましては、負擔の適正及び事務の簡素化等をはかるため、各種年期を一本に統合して耕地整理年期とし、その年期を三十年に改めることとし、また耕地整理地について換地處分があつた場合の賃貸價格の配賦等に關し、現在の複雜な手續を簡捷化する等のため、耕地整理法につき所要の改正を行うことといたしたのであります。
家屋臺帳法におきましては、國有家屋以外の家屋についての規定を設けているのでありますが、現行の非課税家屋等につきましては、概ね賃貸價格を定めないことといたしました。家屋臺帳に登録すべき事項及び家屋の異動に關する整理等につきましては、概ね家屋税法に準じて規定を設け、税務署においてその事務を取扱うことといたしておるのであります。また家屋臺帳に登録すべき賃貸價格は、さしあたり家屋税法による現行賃貸價格をそのまま引繼ぐこととし、今後は五年ごとに一般的にこれを改定することといたしましたが、第一囘の一般的改定は昭和二十七年においてこれを行うこととし、現行の規定によるものよりも二年延期することといたしました。
以上各税法の改正その他の必要に應じ、租税特別措置法、酒類業團體法、國税徴收法、納税施設法、間接國税犯則者處分法及び關税法等につきましても所要の改正を行うことといたしました。まず租税特別措置法につきましては、相續財産のうちに、終戰後著しくその價格の下落した株式等または在外財産が含まれている場合の相續税の課税の輕減または徴收の猶豫について、必要な規定を設ける等の改正を行うことといたしました。酒類業團體法につきましては、最近における情勢に對應し、構成員の強判加入制の廢止、統制規程に關する規定の改正等を行うことといたしました。なお、日本國憲法の施行に即應し、政府のなした租税の賦課徴收に關する處分及び滯納處分に對して不服がある者には、廣く政府に對して審査の請求の手續を開き、その決定を經た後、訴願又は訴訟をなし得ることといたしました。又、間接國税及び關税に關する犯則事件につきましては、その調査上の手續を整備するため所要の改正を行つているのであります。
今囘の税制改正によりまして、租税及び印紙收入の國庫收入額は、近く改正法律案が提出される豫定の相續税の收入額をも含め、平年度において約六百七十二億四千三百萬圓、初年度たる昭和二十二年度において約六百九十五億千四百萬圓に達する見込みであります。その各税につきまして初年度の收入額で申し上げますれば、直接税は約四百六十六億八千三百萬圓でありまして、全體の六割七分二厘に當り、間接税は約百九十一億七千萬圓でありまして、全體の二割七分六厘に當り、その他の諸税は約三十六億六千百萬圓でありまして、全體の五分二厘に當るのであります。しかして直接税のうち、所得税の收入額は、初年度において約四百十三億四千八百萬圓に達し、租税收入總額の五割九分四厘に當る見込みでありまして國税の重點は所得税にかかつてゐるのであります。又間接税のうち、酒税の收入額は、初年度において約百四十一億五百萬圓の見込みでありまして、租税收入總額の二割二厘に當るのであります。
この際申し上げたいことは、今囘、直接税の各税にわたり、畫期的な申告納税制度を採用したのでありますが、これが成否は、一に全國民の協力に俟つこととなる次第でありまして、一般國民が自主的に納税の義務を果され、現下の難局に處し、財政の基礎確立に寄與せられるよう、期待して已まないものであります。本案の提案につきましては、各般の事情により議會提出の時期がはなはだ遲れまして、遺憾に堪えないところでありますが、何とぞ御審議の上、速やかに賛成せられんことを希望する次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=11
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012・金光義邦
○金光委員長 地方税法の一部を改正する法律案及び地方分與税法を改正する法律案の兩案について、政府委員の説明を求めます――水田政府委員。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=12
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013・水田三喜男
○水田政府委員 本委員會に付託となりました地方税法の一部を改正する法律案及び地方分與税法を改正する法律案につきまして、その概要を御説明申上げたいと存じます。
現行地方税制は、昭和十五年の國税地方税を通ずる税制の根本改正の結果制定されたものに、その後毎年若干ずつの小改正が加えられてきたものでありますが、これを新憲法の精神とする地方自治強化の趣旨に副い、かつは地方財政の現況に即應するものとするためには、再び國税地方税を通ずる税制の根本改正を必要とするものとなつたのであります。これがため今囘、一、地方所要財源の充足、二、自主的地方財政の確立、三、税種間負擔不均衡の是正、四、地方財政調整の適正化の四つを目標といたしまして、地方税法の根本に觸れてその一部を改正するとともに、地方分與税法の全文を改正することといたしました次第であります。
先づ地方税法中の改正事項について御説明申上げます。改正の第一は、還付税判度の廢止と、國税の地方委讓に關する事項であります。その一は、地租及び家屋税の委讓を受けんとすることであります。すなわち地方財政自主性確立の見地から、地租及び家屋税について還付税制度を廢止して、これを都道府縣の獨立税とするとともに、市町村において附加税を課するものとせんとするのであります。しかし、地方税といえどもひとしく國民の負擔になるものでありますし、この兩税は分與税分與の基準にも用いているものでもありますので、その課税標準については、現行法定賃貸價格制度を踏襲し、その決定は國の手において行うことにいたしたのであります。賦課税につきましては、課税標準たる賃貸價格は相當長い間据えて置かれているものでありまして、現在の經濟事情に即しない點がありますし、他面經濟界の安定をみない際に、賃貸價格補正の措置を講じましても、勞多くしてしかも公正を期しがたい點もありますので、現行賃貸價格を改定または補整する代りに、暫定的に税率を引上げることとし、地租については、現行の三倍以内、家屋税については現行の二倍以内で、命令をもつて別段の定めをなすことができるものと致したのであります。
その二は、營業税の委讓を受けんとすることであります。營業税につきましても、地租及び家屋税について申述べましたと同じ理由で、還付税制度を廢止し、これを都道府縣の獨立税とするとともに、市町村において附加税を課するものとせんとするものであります。課税標準は、さしあたつては原則として現行純益制度を踏襲し、府縣がみずから決定することといたしておりますが、所得税や法人税の申告納税の事績を資料として用いることによりまして、地域的にも負擔の公平を期することが出來ると考えております。
なお數都道府縣に營業所を有する納税義務者につきましては、主たる營業所所在の都道府縣において總純益額を決定するとともに、關係都道府縣にその課税標準となるべき純益額を通知することといたしまして、課税標準分割事務の迅速を期することといたしました。賊課率は現行とまつたく同じであります。
その三は、鑛區税の委讓を受けんとすることであります。鑛産地帶の財政状況に鑑み、かつは地租に準じまして國税鑛區税を都道府縣の獨立税として委讓を受け、市町村においてこれに附加税を課するものとせんとするのであります。賦課率につきましては、この税の特質からみまして、全國的に均衡を得ている必要がありますので、三收益税についてと同樣、法定することといたしましたが、國税その他諸税の増税の程度ともにらみ合わせ、現行の倍額に引上げることといたしました。市町村の附加税も本税と同額を徴收するものといたしておりますので、本附加税を合わせますと、鑛區の租税負擔は、三倍強に増額になります。
その四は、遊興飮食税の委讓を受けんとすることであります。遊興飮食税につきましては、その沿革並びにこの税の地方團體の施設との關連性の深い點に鑑みまして、これを都道府縣の獨立税として委讓を受け、市町村においてこれに附加税を課するものとせんとするものであります。しかし特に遊興とは言えないような飮食や宿泊に對してまで課税することは穩當ではありませんので、國税の場合と同樣、特定の場所における遊興、飮食及び宿泊に對し課税するものとはいたして居りますが、これを遊興税として地方獨立税に取入れることといたしているのであります。
改正の第二は、法定獨立税目の擴張に關する事項であります。現行税制のもとにおきましては、地方團體が法定税目以外の獨立税を設けようといたしますときには、一々主務大臣の許可を受けねばならないのでありますが、あまり無理のない税につきましては、この煩瑣な手續を不要とすることが適當であると考えまして、法定獨立税目は可及的にこれを擴張することといたしたのであります。しかして新たに都道府縣の法定獨立税目として、電話加入權税、軌道税、入湯税を追加するとともに、現行自動車税及び船舶税の内容を擴張して、自動車及び船舶の取得に對しても課税し得るものといたしました。新たに市町村の法定獨立税目としては、廣告税を追加するとともに、現行舟税の内容を擴張して、舟の取得に對しても課税し得るものといたしました。
改正の第三は、住民税の増税に關する事項であります。地方財政の現況、經濟事情變化の状況等に鑑みまして、住民税につきましても、これを倍額に増税することとし、一納税義務者當り平均の賦課額を府縣民税においては百二十圓、市町村民税においては八十圓に改正せんとするものであります。
改正の第四は、目的税の整備に關する事項であります。その一は府縣の目的税を市町村と同樣、水利地益税に擴張せんとするものであります。その二は國税附加税制度が廢止せられましたので、都市計畫税は、府縣税獨立税割及び市町村税獨立税割の二本建とし、税率もこれを同率に改正せんとするものであります。
次に地方分與税法中の改正事項について御説明申上げます。改正の第一は分與税全體に關する事項でありましてその一は還付税制度を廢止するとともに、遊興飮食税を分與税財源から除外せんとすることであります。その二は繰入率及び分與率を改訂せんとすることであります。明年度において増額を要すべき地方所要財源の總額は、一應二百十二億六千萬圓と概算いたしているのでありまして、その内譯は、地方職員待遇改善費七十八億四千六百萬圓地方議會議員用辨償の追加二億九千八百萬圓、地方制度改正に伴う所要經費の増加十三億一千百萬圓、物價の騰貴に伴う物件費工事費等の増加百八億四千六百萬圓、國費地方費の負担區分改正に伴う地方負担の増加三億二千百萬圓、學制改革(六・三制)に伴う地方費の増加三億四千五百萬圓、税制改革に伴う徴税費の増加二億九千三百萬圓であります。これに對し、税制改革によるものと、いわゆる自然増收に屬するものとを合算いたしまして、地方財源の増加いたします額は、住民税の増收十六億四千四百萬圓、三收益税、同附加税の増收八十三億九千二百萬圓、その他の獨立税、同附加税の増收二十一億六千三百萬圓、使用料手數料等の増收二億四千八百萬圓、分與税の増六十二億三千萬圓、合計百八十六億七千七百萬圓でありますが、なお二十五億八千三百萬圓の不足を生じますので、これを分與税の増額に求めることといたしますために、所得税法人税及び入湯税の徴收額から地方分與税分與金特別會計へ繰入れるべき分與税の繰入割合を増率する必要が生じたのであります。その三は分與税の道府縣分と市町村分との割振りを改め、市町村分から百分の二を道府縣分に移讓せんとすることであります。
明年度において増額を要すべき地方財源の總額中、道府縣分は八十九億五千百萬圓となるのでありますが、これに對する財源として、分與税において増額する額は、道府縣分五十九億七千九百萬圓、市町村分二十八億三千四百萬圓となるのでありまして、既定の額であるところの道府縣分十四億三千六百萬圓、市町村分七億七千三百萬圓を合算いたしますと、道府縣分七十億千五百萬圓、市町村分三十六億七百萬圓となるのであります。その割合をとつてみますと、道府縣分百分の六十七・二八、市町村分百分の三十二・七二となるのでありますが、市町村財政の彈力性の少い點を考慮いたしまして、これを道府縣分百分の六十七、市町村分の百分の三十三に定めんとするものであります。その一は、課税力を標準とする分與基準を一種類追加せんとすることであります。道府縣の獨立税目を擴張いたしました結果、三收益税以外の獨立税の税收入も相當の額に上ることになつたわけであります。從いまして、從前のように三收益税のみをもつて課税力を算定し、それだけで課税力を標率とする分與税分與額の算定基準とすることは、穩當ではなくなつたのであります。しかし三收益税以外の獨立税は、三收益税ほど普遍的に存在するものでありませんし、賦課率は、概ね團體に一任されているわけでありますので、これらの獨立税を三收益税と同じウエイトをもつて分與基準に用いることも適當ではありません。從つて三收益税と三收益税以外の普通税とは別個の分與基準として使用することといたしたのであります。しかしてそれぞれの道府縣分與税總額に對する割合は、三收益税を用いて分與する額は、原則としては百分の四十五、その他の普通税を用いて分與する額は百分の五といたしましたが、これは兩者の税額の割合を基準として若干三收益税の方にウエイトをつけて定めることといたしたからであります。
なお、法定外獨立税はまつたく團體の特殊な事情によつて設定されるものでありますし、住民税は團體の規模に應じて與えられている財源でもありますので、この兩者は、分與基準の算定からは除外することといたしているのであります。
その二は分與税分與額の制限基準を改正せんとするこであります。課税力を標準とする分與基準を追加いたしましたと同樣の理由によりまして、三收益税のみならず、住民税と法定外獨立税以外の普通税の全體をみて、それと分與税分與額との合算額の人口一人當りが、全道府縣のそれより著しく高い團體には、分與税の分與額を制限いたすことにいたしたのであります。
改正の第三は、市町村分與税に關する事項でありまして、その一は市町村分與税を大都市分與税、都市分與税、町村分與税の三ブロツクに分割する際並びに大都市分與税、都市分與税及び町村分與税を各大都市、都市、町村に分與する際、課税力を標準として分割または分與する基準を一種類追加せんとすることであります。その課税力には三收益税附加税、住民税及び法定外獨立税、同附加税以外の普遍税を用いること、その總額は市町村分與税の百分の五とすること、及びそれらの事由はいずれも道府縣分與税について申し述べたと同じであります。
その二は市町村分與税を三ブロツクに分割する際も、課税力の著しく高いブロツクには、分與税の分與額を制限することとせんとすることであります。
このたび獨立税目を多數追加いたしましたが、その中には地域的に相當偏在すると考えられるものもありますので、市町村分與税を三ブロツクへ分割する際にも、ある程度の制限規定を設けておきませんと、大都市などで獨立税の收入が多いのに分與税の分割額も相當多く、不必要にたくさんの財源が集中するということになるおそれもあるからであります。
その三は分與税分與額の制限基準を改正せんとすることでありますが、その内容は道府縣分與税について申し述べたと同樣であります。
以上地方税法の一部を改正する法律案及び地方分與税法を改正する法律案の概要について御説明申し上げた次第であります。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=13
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014・稻村順三
○稻村委員 議事進行について――。どうも、こうやつてみますと、これは特に税制というような國民生活にとつて非常に重要な法案であつて、われわれはこれを愼重に審議しなければならぬ。しかしながら委員が半分以下であるということは、定數を缺いていると思うのでありますが、それにつきまして至急ひとつ委員を動員して、この審議に當られるように御配慮を願いたいこう思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=14
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015・金光義邦
○金光委員長 諒承いたしました。それではこより質疑に入ります。質疑は通告順によりこれを許します。まず大藏大臣に對する質疑のみを願います。御諒承願います。中崎敏君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=15
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016・中崎敏
○中崎委員 私は最初大藏大臣に質問いたします。本税制の改正問題を審議しますにあたりまして、まずこの豫算を編成する上におけるところの基本問題についてお尋ねいたします。本改正案が圓滑に運用さるる場合におきましては、まず國民經濟に基礎をおいている建前上、國民經濟というものについて、十二分の考慮を拂う必要があると同時に、國民所得の實體について考慮しなければならぬと思うわけでありますが、まずその中で、昭和二十一年度の國民所得と、昭和二十二年度の國民所得を、どういうふうに計算しておられるかを、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=16
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017・石橋湛山
○石橋國務大臣 國民所得の計算については、しばしば豫算總會においてもお答えをしたのであります。研究所、理財局その他において、種々なる計算をいたしております。しかしながら國民所得の計算というものは、外の國でも同樣かもしれないと思いますが、これだけを基礎にするというような確實なものはなかなかできかねる。少くとも日本においてはできかねる。でありますから、參考として計算をいたしておりますが、これによつて特にどうというようにただいまのところでは考えておりません。從つて二十一年度二十二年度の國民所得がどういうことになつているかということは、確たることはお答えできない次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=17
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018・中崎敏
○中崎委員 國民所得に關する確たるお答えができぬと言われておりますけれども、少くとも國民から血の税金を取上げる以上、確固たる所得の徴收によるのは當然のことでありまして、これが實行の上において、はたしてその通りにいくかどうかは第二の問題といたしまして、少くともこうした大増税を斷行する上におけるところの基礎というものはなくてはならぬわけだと思うわけでありまして、この點についての答辯を重ねてお願いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=18
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019・石橋湛山
○石橋國務大臣 これは各財務局、それからその下部機構、地方支部でありますとか、あるいは税務署等においては、絶えずそれぞれの地方における納税者の調査をいたしているわけであります。その調査を集めまして、そうして大藏省において研究し、その適當だと思うところによりまして豫算を立てている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=19
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020・中崎敏
○中崎委員 財務局等において調査した數字は、當然大藏省に集まつておることと思います。またそれを基準にしてこれらの租税の取立てを計畫されたものと思うわけでありましてまず第一にその取纏まつたところの數字をお尋ねするわけであります。いやしくも大藏省がこうした計畫を立てられるからには、ただ行き當りばつたりにめのこ勘定でやられるとも思いませんし、またそうあつてはならぬものでありますし、少くとも確實な豫想し得るところの根據というものは必要であるわけでありまして、その數字的な根據をお願いしたいと思うわけであります。これは大藏大臣直接おやりになるというわけでもありませんから、結局各財務局あるいは大藏の事務當局の直接に調査されたところの數字があるべきだと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=20
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021・前尾繁三郎
○前尾政府委員 もちろん先ほど大臣の言われましたように、われわれの課税するもとの所得でございますので、總括的に國民所得全體から見ましたあれとは、あるいは間違つておるかもわかりませんが、ただいまたとえて申し上げますと、甲種勤勞所得については所得の總額を千二百十八億というふうに押えております。それは納税人員に對して最近の給與のいわゆる千二百圓のベースによつて考えておる次第であります。次に從來丙種事業所得と申しておりました日傭勞務者等の所得につきましては、三百二十億という程度に押えております。また不動産所得につきましては九億九千萬程度に押えております。次に甲種の事業所得につきましては、いわゆる營業所得でございますが、これにつきましては七百十三億という程度に考えております。また農業所得その他の庶業所得につきましては、これも米價五百五十圓を基準にして考えておるのでありますが、その所得につきましては五百二十四億というふうに考えておるのであります。その他こまごました所得については、もし御要求があれば申し上げたいと思いますが、大體のところはその程度になつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=21
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022・中崎敏
○中崎委員 大藏大臣が行かれたようですが、政府委員で足りる範圍は政府委員にお答え願います。それから殘りの問題で、やはり大藏大臣に尋ねたい問題は、大藏大藏の見えるまで質問を留保しておきたいと思います。
そういたしますと、これは二十二年度の豫想の國民所得と思いますが、二十一年度の國民所得のうちで既に總豫算を考えられた當時の國民所得、さらにその後實際において今日まで實行された結果から見たところの國民所得について御説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=22
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023・前尾繁三郎
○前尾政府委員 その數字をもつてまいつておりませんので、後ほどお答えいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=23
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024・中崎敏
○中崎委員 二十二年度豫算が編成される當時の状態は、昨年の十月から十二月當時を基準に考えられたものと思うわけでありますが、その後におきましてだんだんと物價も上つておりますが、結局において當時豫算を編成されたときの状態と今日の物價の状態との割合を、どういうふうに考えておられるか。それをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=24
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025・前尾繁三郎
○前尾政府委員 現在見積つております租税收入につきましては、大體において豫算の歳出に合わせまして、十一月、十二月當時の所得について考えておるのでございます。たとえて申しますと、勤勞所得につきましては、その後に官廳なんかで引上げはいたしておりますが、會社等その他を入れて大體千二百圓のベースであれば、昨年末程度でないかというふうに考えております。また營業所得につきましては、最近調べております増加所得税は昨年の所得を調査いたしておるのでございます。昨年の所得のうち十月、十一月、十二月という年末當時の所得の状況から推定いたしておるわけでございます。また農業所得につきましては、先ほど申し上げましたように五百五十圓の米價という點から推算いたしておりますので、ごく最近の物價の値上りその他はこの租税收入としては見積つていないわけでございます。さよう御諒承願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=25
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026・中崎敏
○中崎委員 まだ非常にたくさんあるのですが、やはり大藏大臣の説明を聽いたあと、それから出た糸口についてまた政府委員に聽くかもしれないが、根本問題がまだ解決しないので、私の質問はこれを大藏大臣の見えるまで留保しておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=26
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027・金光義邦
○金光委員長 それでは中崎君の大藏大臣に對する質疑を留保いたしておきます。次に稻村順三君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=27
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028・稻村順三
○稻村委員 私實は大藏大臣に質問をしたかつたのであります。なおそれに關連して農林大臣にも質疑したいと思つておりましたが、兩方とも見えません。食糧管理局にもその點につきまして質問したかつたのでありますけれども、今おりませんので、ただ事務的に事務當局は實を言えば實際こういう税制をきめる事務を取扱つたのでありますから、その點事務的に答えることができる程度のところを、ひとつ政府委員から御答辯願いたい。こう思つております。
まず第一に、これは繰返し繰返し問題になることなのでありまして、九十議會から九十一議會にかけて、また今度の九十二議會にかけていつも法案が非常に遲れがちなのでありまして、この點普通にたとえばこういう法案を出すということになりますと、いろいろな點で關係方面との折衝その他がありまして、遲れるのは當然であらうと思いますが、既に九十議會、九十一議會と幾たびかその經驗をもつておつたはずであります。そのもつておつたのにもかかわらず、こういう所得税その他の法案といえば、むろん國民生活にとつて非常に重要な大増税であります。その大増税のものを、今會期わずか十日間かそこらの間に、これをやつてしまえということで、この厖大な法案を一つに固めて出されたといたしましてもこれは實は議員に審議しろというても無理な話であります。實を言えば、これは審議しないでのみこんでしまえという一つの押しつけになると、私は思うのであります。こういうことは、既に九十議會、九十一議會で十分に經驗濟みなのだから、今度は一應そういうことを見越してそうしてこういうふうな準備をする期間がなかつたのかどうか、絶對になかつたならば、その理由をはつきりと、ここに聽きたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=28
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029・前尾繁三郎
○前尾政府委員 ただいまおつしやいましたように、われわれも既に關係方面と從來折衝いたしております。臨時議會が終りますと同時に、われわれといたしましては折衝を開始いたしましたし、いろいろ努力いたしておるのでありますが、係り官の一人は本國へ折合せに歸るというような事態もありまして、大體におきまして大筋がきまつたのが先月の十日過ぎでございます。またすべてにわたりましてやはり歳出の方がきまりませんと本ぎまりにきまらないのでございます。その後におきましても、既に税制調査會の御答申を得てからも、歳出がきまりますまでは本ぎまりにきまらない。またその後におきましても、各條文ができあがりまして、いろいろ向うの關係方面の諒解を得るというので、法案全體として向うの承認を得たというのはごく最近でございます。そういうような事情でございまして、われわれとしては、もう既に何箇月か努力してまいつたのでありますが、こういうような事態になつたのでございます。もちろん内容を逐一御審議願わなくてはならぬのでありますが、その大綱につきましては、要綱におきまして大體意を盡しておると思いますので、それによつてごらん願いますと同時に、できますれば、逐一御審議を願いたいと考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=29
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030・稻村順三
○稻村委員 なおこれは大臣に聽いた方がはつきりすると思うのでありますけれども、實を言うと、今度の税法というものが要するに全面的な改正のような形になつておりますので、改めてこの税法を制定するに至つたところの根本理念と申しますか、そういうものについて少しお尋ねしてみたいと思うのであります。大體において今度の税制というものは、私たちから考えるならば、現段階に即應して考えますというと、まず第一が、インフレの阻止であり、それから次にはいろいろな點における支出のための財源の確保であり第三には生産を増強するというこのことであります。それから今度は第四には國民生活の安定と申しますか、負擔の均衡化と申しますか、この四つのものが非常に重要であろうと思うのであります。しかしながら、われわれが考えてみますというと、こういうものを一遍に全部なされれば非常にいいのでありますけれども、この税制の改革は一體この四つの中のどこを主眼としてなしておるか。この點は私は非常に重要だと思うのでありまして、一遍にすることができなければ、一個の重點を置いて、他はその線に沿うて按分していくというような立場をとらなければならぬと思うのでありますが、これらの中の最も重點としてねらつておるところはどこなのか。この法案を讀んでみるとその點はつきりしないのでありますが、その點もし御説明ができればしていただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=30
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031・前尾繁三郎
○前尾政府委員 今囘の税制改正の主眼點はどこかという御質問でございます。われわれといたしましては、今囘の改正は最終的な改正だとは考えておりません。税制調査會もなお一年間の期間がございます。それによつて最終的の改正をいたしたいというふうに考えておるのでございまするが、ただいまの最近の情勢において、どうしても改正しなければならぬというものを取上げたのでございまするが、その中心は所得税でございます。所得税につきましては、根本的に改正いたしております。從いまして先ほど申されました收支の均衡、あるいは負擔の公正、それらの點をすべて取入れまして、根本的に改正いたしておるわけでございます。それ以外の諸説につきましては、いわゆる收支の均衡というために、たとえば間接税等におきまする増税というような點につきましては、それらが主體となりまして考えられておるわけでございます。なお直接税全體につきまして、所得税、法人税、相續税、これらにつきまして申告納税の制度をとつております。これは所得税におきまして申告納税をとつておりますゆえんは、いわゆる豫算課税、すなわち所得の發生時期と徴收の時期を近接させるという必要に基きまして、豫算課税をとる前提としてどうしても申告納税の制度によらなくちやならぬということが一つでございまするが、申告納税こそは、これが租税のまつたく理想でございます。いわゆる租税の民主化という點は、申告納税をとらなければ、いわゆる自主的納税はできないのであるというふうにわれわれは考えておる次第でございます。また、それに伴いまして、國民がみずから税金を計算して納めていただくのでありますから、税制につきましては、できるだけ簡易平明化するということに努力いたしておるのでございます。從いまして、何と申しましても、收支の均衡ということが第一ではございまするが、租税につきましては、國民負擔の公正、これを忘れて租税というものは成り立たないのでございます。また、先ほど申し上げましたように、民主化をはかるとともに、簡易平明化するということにつきましても、十分努力いたしておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=31
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032・稻村順三
○稻村委員 實は、私がなぜそういうことを問題にしたかと申しますというと、もしこれがインフレーシヨンの阻止を重點としておつたとするならば、やはり所得税の賦課でも、どちらかというと、所得税を賦課したものをすぐ財源として豫算化するという方向に重點をおかないで、結局そのものはどうかというと、ある程度消費力を抑制するという建前から所得税をとらなければならぬのでありますし、もしこれが財源としてたただ考えていくものとするならば、たとい政府が相當多額にこれを徴收したといたしましても、それがさらに豫算化して追加せられていくのであります。政府支出となつて現われまして、むしろこれがインフレーシヨンを激成する一つのモメントになるという危險性を十分にもつておるというふうに考えられるのであります。さらに私たちは、生産の増強の場合を考えてみますというと、生産の増強の中に――私、この所得税法の改正法律案を讀んでみましても――この中にいろいろと私たちは考えさせられるものが多いのであります。それはなぜかというとたとえば私たちから考えれば、不勞所得であります山林税だとか、あるいはまた有價證券の利子税だとかいうものと、勤勞所得税というものとの間にそう大きな實際上課税率の上に――表面に現われたところは相當違いがあつても、課税率を個人として考えてみますというと、利殖生活者に對するところの課税と、勤勞者の課税との間に、そう大きな差額があるとも思われない。そうするならば、やはりここに私たちにとつては、生産の増強というようなことでなく、ただここに財源を求めさえすればいいというふうな氣配が見えるような感じがするので、そういう質問をしたわけであります。殊に、ただこういうふうな課税のしかたをいたしておきますというと、將來さらに物價というものがどんどん上つていくということをわれわれは考えるのであります。その場合に、この税金というものが、たとえば三箇月四箇月というわずかな期間であつても、物價が非常に上つていつたとするならば、こういうふうな時期において、これに對して從來の税金を取立てた、三箇月前の基準でもつて税金を取立てたということが、インフレーシヨンならインフレーシヨンの阻止に對して何の効果ももたらさないというようなことも考えられる。こういうふうなことでありますので、それで、當面の問題と先ほど言いましたように、基本的な問題ではなくて當面の問題であると、こうおつしやいましたが、當面の問題であればあるほど、その期間においてどこに重點をおいて、この税制の改革をしようとしておるのか。はつきりと私たちはそれが聽きたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=32
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033・前尾繁三郎
○前尾政府委員 この税法の今囘の改正につきまして、インフレ防止について、どういうふうなことを考えておるかという御質問でございます。われわれはインフレ防止に對しまして、あくまで租税を役立たせるということについては、もちろん考えておる次第でございます。ただいわゆる税法だけの面でインフレ防止に役立たせるということは、むしろ不可能でございます。と申しますのは、結局所得の捕捉という點に努力しなければならぬ。いわゆる税務行政の面において努力しなければならないのでございます。税務行政の面に努力して、眞にいわゆる新圓階級に對する捕捉をいたします場合におきましては、從來の税率では、あまりにも高過ぎる。たとえて申しますと、從來は事業所得については二五%であり最高税率が三十萬圓を越すところが六十七ということに相なりますると、百萬圓、二百萬圓の所得を決定いたしますと、上の方はほとんど税金にとられてしまうということに相なりまするから、徴税する者にいたしましても、ある程度の手心をしなければならぬ、そうしないと眞に税金が納まらないというようなことが起るのでございます。從いまして、むしろわれわれは最高税率を下げていわゆる四分の一は所得として殘る、四分の三だけは税金としてとる。そういたしますことによつて、みずから申告して納税する場合にも、その四分の一が殘るのだというので、かえつて申告もしやすい。また徴税いたします者も徴税しやすいというような考えからいたしまして、今囘の最高税率を下げる。しこうしてそれはただいま申し上げましたように、徴税機構を整備して、税務行政をしつかりやりまして、所得の捕捉をするという點に向つておるわけでございます。豫算課税の制度も、所得の發生時期と徴税の時期を近めるということによりまして濫費を防ぎ、また先ほどのインフレ防止に役立つということになりますと、ほんとうは公債の償却その他に充ててしまうのがよいのでございますが、それは財産税その他の臨時的な税におきましては、そういうこともできるのでございますが、一般の經常的な租税におきましては、そういうようなことはむしろできないのでございます。赤字公債によらないというところに、あくまで租税で賄うのだという點でインフレ防止の一端を擔つておるということでございます。また間接税等におきましても、酒税等におきましては思い切つて引上げております。しかし敗戰後の現状におきましては、消費を節約する直ちにこれによつて生活費が上るのだというふうな考え方をとらないように道義的な觀念で國民に協力してもらうというようなつもりで、酒税等において思い切つて増税いたしておるのでございますが、その點を十分諒解してもらえば、決してインフレに對して拍車をかけるというようなことはないものだと、われわれは信じておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=33
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034・稻村順三
○稻村委員 大分ピントが合わないようで、いつまでもそのことを話しておりましても、どうも大臣が來ないとはつきりしたことはわからないと思うのでありますから、別な問題に移つていきたいと思います。
生産の増強の問題でありますが、すべてこの人間が今日の時代において、税金を負擔するということはわかつていることであります。しかしながら、その場合に、今の状態においては生産増強というものが非常に重要な意味をもつておるだろうと思うのであります。それならばこの生産増強の面に直接タツチしてるところの法人であるとか、あるいはまた個人であるとかいうようなものに對するところの所得と、そうでない、たとえば利殖生活者、と言えば山林をもつておるとかあるいは有價證券をもつているとかいう利息生活者との間におけるところの課税が、その課税率についてあまり大きな相違がないと私は考えまするが、その點に關する御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=34
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035・前尾繁三郎
○前尾政府委員 從來の分類所得税におきましては、資産所得と事業所得、勤勞所得、この三段階にわけたのでございます。しかし今囘の改正においては、勤勞所得については二割の控除ということで差別待遇をいたしておるのでございますが、その他の資産所得との關係においては、何ら區別をしていないという點でございます。この分類所得税を設けました當時においては、所得の源泉に從つて種類による負擔の區別をするというのが分類所得税の一つの意味であつたのでございます。しかるに最近においては地方税となつておるところの三牧益税、すなわち地租家屋税、營業税、これらが累次増徴されまして、最近においては可なりの負擔に相なつておる次第でございます。これらから考えますと、事業所得と資産所得に區別を設ける必要はむしろないのではないか。と申しますのは、所得税においては、やはり一萬圓の所得はあくまで一萬圓だという觀念で、所得税における所得源に從う區別はしないのがむしろ理想でございます。またこの三牧益税のかかりません配當利子所得については、從來においてはかなり高い率を使つておつたのでありますが、預貯金等については、御承知のようにこれを輕減して、むしろ事業所得よりも低い税率で課税しておる次第でございます。すなわち現在においても、貯蓄の奬勵、その他の點を考えますと、必ずしも現行のように分類所得税として區別をいたしておきますよりも、みな同一の率に從つて納める方がむしろ簡明であるし、また實情にも即應するのだというふうに、われわれ考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=35
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036・稻村順三
○稻村委員 そこで私先ほど質問した問題にやはり還らざるを得ない、今の話を聽いてみますと、預金の吸收や何かでもつて公債や社債、預金利子というものの所得はなるべく少い方がよいということが問題になつております。ところがこれは生産の面から申しますと、インフレの防止の意味からいつて貯金奬勵という意味を非常に大きく含んでおるだろうと思います。ところがそうかと思うと、今度は生産という面から申しますと、むしろ直接生産にタツチしておる所得、たとえば事業所得であるとか、あるいは前の勤勞所得に相應しておつたものが、なるべく税金を輕減してやつてそれらの人間の生活を保障する、こういう建前をとれば生産増強になつてくると思うのであります。この點になりますと、先ほどあなたの説明を聽いていますと、一體そういう方面になりますと、どつちがどうなるかわからないので、一部分々々々には先ほど言つたように、預貯金を擁護するためには云々というそれを從來のより減らして、そうして今度は生産増強の方との從來の開きを縮めたということになりますと、他面これはまた預貯金の利子によつて食うという利殖生活をある程度奬勵するという結果になつて、生産増強との間に一個の矛盾が生じてくるのではないか。この點を税法はどこに一體重點をおくのか、それがわからなければ、私は今後の税法の問題に對しては見透しが立たなくなるのではないか、こういう私の意見なのでありまして、これに對して、もう一度私に對する御答辯を煩わしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=36
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037・前尾繁三郎
○前尾政府委員 どこに重點をおくかというお話でございまして、われわれはすべてに重點をおくというので、むしろ勤務所得は區別いたしておりまするが、事業所得、資産所得、すべてを同一税率でいく、しかも最高税率を下げておる、あるいは基礎控除にきましても、從來事業所得につきましては勤勞所得が二千四百圓の場合に千二百圓としておりましたがその基礎控除につきましても、一本でいく。所得税といたしましては、所得の種類に從つて區別するのがむしろ不當であり、もしその必要があれば、たとえばただいま申し上げましたような三收益税等の補完税によつて補完していく。所得税はあくまで所得の種類に從わずに、一萬圓の所得は一萬圓でいくというのが根本の考え方でございます。從いまして、生産増強につきましても何ら支障ないばかりでなく、ただいま申し上げましたように最高税率も引下げ、生産意欲の向上について、十分配慮しておるつもりでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=37
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038・稻村順三
○稻村委員 そうしますと、この税法は大體政府委員でははつきりわからないことだと思うのでありますけれども、たとえば貯金の増強の建前から利殖生活者をある程度保護していくという建前であるかどうか。それに對する御意見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=38
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039・前尾繁三郎
○前尾政府委員 最近の状況によりますと、利息のみで生活しておる人はほとんどございません。われわれの對象と考えておりますのは、むしろ最近におきましては配當も減り、利息もそう多くないという現状に鑑みまして、むしろ貯蓄を奬勸するというような考え方でございます。現在ほとんど利息のみで食つていくという人は、まあないものだというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=39
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040・稻村順三
○稻村委員 利息のみで食つていないけれども、利子なら利子というものを基準とした擬制資本と申しますか、から資本と申しますか、そういうものの取引によつて生活するというような現状は非常に多いと思うのでありますがそれはどうお考えでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=40
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041・前尾繁三郎
○前尾政府委員 ただいまたとえば株を賣つて、それで食うというような點のお話かと存じます。いわゆる一時の所得といたしまして、最近の臨時所得税上の讓渡利得を所得税に取入れたのでございますが、有價證券の讓渡に關しましては、大きな穴があいておつたわけでございます。今囘は財産税その他の關係によりまして、最もいい機會でございまするので、あらゆる所得の一時的の讓渡につきましても取るというふうな制度にいたしておるのでございます。それによつてただいまの御指摘の點は、十分補填できると考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=41
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042・稻村順三
○稻村委員 そこで問題になるのでありますが、この出資の讓渡の場合、あるいは山林讓渡の場合などにおいて、山林ならば一定の賃貸價格であるとか、それからまた有價證券であるならば額面が問題でなくて、ここでは對價の價格による。こういうふうに言つておるわけでありますが、一體對價はどういうところに基準をおいて求めるものでありますか。その點をはつきり御答辯を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=42
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043・前尾繁三郎
○前尾政府委員 今囘の讓渡所得の計算におきましては、對價はすべて取得のときの價格でございます。ただ山林所得につきましては、これは從來と同樣に植林費等の必要經費を差引いた所得でございます。その他株等におきましては、買いましたときの價格、それが昨年三月三日以前からもつておりました場合には、いわゆる財産税の價格によるわけでございます。それを五分だけ控除いたしまして、その差額に對して課税をいたすのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=43
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044・稻村順三
○稻村委員 この場合の對價というのは、直接買つた値段でありますか。これは個々の場合を問題にするのですか。そのときの市場價格を問題にするのですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=44
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045・前尾繁三郎
○前尾政府委員 個々の場合の價格でございます、われわれとしましては、その基準として取引上の市場價格があれば、それによつて一應やる。申告納税でございますから、本人はよく知つておられるわけです。個々の具體的の取得價格を御記入願つて計算していただくわけです。しかしそれが不當であるかどうかという參考としては、もちろんわれわれは市場價格を參考としてその當否を決する次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=45
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046・稻村順三
○稻村委員 そういうところにこういうふうな利殖生活者が、いろいろな點で利殖生活者として立つて行く拔け道がたくさんあつて、いわゆる生産へ資金が流れないでこういう方向にのみ資金が流れていくという傾向を助長するのではないかということを非常に恐れております。この問題を調べてみますと、こういう穴がたくさんある。たとえば對價と申しましても、ある場合にある方面との間に諒解を得まして、その諒解の結果個々の場合でありますから、たとえば半分とか、そういうことになると非常に目立ちますけれども、あるいは三分の一なり四分の一なりを對價を安く賣買したというような形式をとつて、實際上はそれよりも高く取引して、その差額をある程度自分の所得にするということも起るだろうと思うのであります。なお私はそういうところにおいて脱法行爲が非常に行われることによつて、一つは利殖生活者がその利子だけで食えない、配當だけで食えないという場合、そういうやりくりによつてはびこつていくということが考えられる。もう一つの問題は、いわゆる第三條における「所得税は、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團體及び民法第三十四條の規定により設立した法人」こういうふうなものがございます。この場合の公共團體の範圍がどの程度であるか。またこの公共團體の範圍がはつきりしておらないとこういうところにいわゆる利殖生活者がはいつていくような餘地もあると思いまするしここにまた公益信託という場合もあります。これも所得税の對象から省かれているのであります。こういう場合にも、そつちの方面に食いこんでいく。こういうふうなことも一應考えられるのであります。これは實際上、法律の上からいつて、そういうことができないというような場合がありましても、たとえば公共團體と指名されたものが現に營業をやつている事實はたくさんある。また公益信託というような形でもつて信託したものが、實はその内面を探つてみると、ある有力な個人が一應名義をかえたような公益信託というようなものがなされるというような脱法行爲が、到るところになされるという事實があると思いますが、これに關してまず第一に私が質問したいのは、公共團體というのはどういうところに一體限定するのか、また現在公共團體といわれている人間の營業がたくさんある。公共團體としては認めていながら、しかもそれが營業團體となつて公然と營業しているという事實もたくさんあるのであります。こういうことからすれば、この公共團體という範圍をきわめて嚴密に定めなければならぬのでありますが、これに對するところの御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=46
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047・前尾繁三郎
○前尾政府委員 公共團體に對して非課税にいたしておりますのは、從來で申しますと都府縣組合、府縣組合、都市町村組合、市町村組合、町村組合、そういうような組合、それ以外におきましては水利組合、耕地整理組合、あるいは土功組合、なお重要物産同業組合森林組合、酒造組合、水産組合、商工會議所、商工經濟會というようなものもございます。もちろんこれ以上に擴げることは考えておりません。ただこれを整理していきたいと考えております。これについて脱法が行われるのじやないかというような御懸念でございまするが、これはむしろ税の面で取締るべき問題ではありません。その事業の目的により、それぞれ監督官廳があるのであります。その監督官廳によつて取締つていただくよりほかはないと考えるのでございます。ただわれわれといたしまして、それが假裝的に行われているという場合には、できるだけ實體に副つて課税をするというような取扱いをいたしたいと考えている次第であります。また公益信託につきましても現在公益信託というのはほとんど實例がございません。これによつてまた脱税が行われているというような事實も聽いていないのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=47
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048・稻村順三
○稻村委員 それから生産増強との關係についてもう一つお尋ねしたいと思うことは、農業に關する問題であります。この點食糧管理局の長官も見えておりますから、大藏省と食糧管理局の兩方から御答辯を願いたいと思つていることなのであります。たとえば農業の場合におきまして、この前に私社會黨の控室でいろいろな話を聽きましたときには、大體において一町五反程度以下の農民には實を言うと超過所得税はかからない、一町五反以上のものは超過所得税がかかる。しかしながらその當時にもし總合所得の基礎控除額が二萬圓になるならば、こふういうものがかかるまい。こふういうふうなお話でありました。ところが最近になつてこの所得税の改正案を見ますと、別段そういうふうに二萬圓というところが控除額になる、實質的にそれにひとしいという状態にはないというふうに考えられる。そうしますと、ここに問題になることは、いろいろな事業所得に相當するものの中に、たとえば種子であるとか、肥料であるとか、こういう實際上の生産に必要な價額を控除する、こういうふうになつているのであります。ところがこれが全部公定價格で控除されていることを私たちは知つているのであります。そうすると現在の農民の生活を見ますと、農業生産の約六割というものはほとんどが公定價格の十倍ないし二十倍、はなはだしいのになると公定價格の五十倍くらいのものを買つて注ぎこんでいるのであります。それらの事實から考えますと、五百五十圓という收益のほかに、さらに供出が惡い場合になると、これがやみ價格という形で、一石千圓なら千圓という値段で計算されているのであります。そうすると販賣だけがやみで問題になつて、その生産に要した出費は公定價格で計算するということになると、これはもちろんやみを奬勵するわけではないのでありますけれども、こういう點について非常に大きな農民の恐怖、ほとんど恐怖に近い状態が、昨年のちようどこれから早場米が出まわろうという九月に行われてきたのでありますが、今後これはどういう計算でやつていくのか、まず大藏省の方からその御説明を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=48
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049・前尾繁三郎
○前尾政府委員 増加所得税につきましては、一町歩程度の人は大體かからないという計算で七千圓の控除を認めたのでございます。一町五反というお話でございますが、われわれ常に一町歩というので考えてまいつたのであります。一町歩以下の人には全然かけないという意味ではございません。増加所得税は御承知の通り、昨年の決定と實際の所得の差額を取るというのでございます。從いまして昨年決定した所得と兩方考えてまいりますと、一町歩以下の人ももちろんかかるわけでございます。今囘の新税法におきましてもやはり四千八百圓という基礎控除でございますが、もちろん一町歩以下の人にもかかるわけでございます。廣い範圍において納税していただくということが、いわゆる租税の民主化である、そういう意味から、なるべく所得の少い人も、もちろん税金は安いのでございますが、應分の税金を負擔していただくというような考え方でいるわけでございます。
次にやみ所得、あるいはやみ價格と課税との問題でございます。われわれはその實際賣つている價格、あるいは買入れた値段がやみであるかないかということについては、税の面からいたしましては何ら考えずに、實際の收入實際の支出によつて考えているのでございます。從つて、あるいはいろんな基準を求める際に公定價格で賣り、また公定價格で買つた場合、どういう數字が出るかというような計算はもちろんいたしております。しかし實際の課税にあたりましては、實際の收入と實際の支出というものを考えまして、その間やみであるかどうかということについては、全然考えずに課税していくというふうに考えておるのでございます。もちろん將來の申告納税につきましても、同樣の考え方をいたしておるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=49
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050・稻村順三
○稻村委員 その場合に重ねてお尋ねしたいことは、大藏當局の方では、それでは實際上の收入云々ということを大體考えておりまして、たとえば一町五反ということになりますと、これは實は平均はなるほど一町であります、しかしここに食糧管理局の長官もおられるのでありますが、實際言うと日本の最も中堅の農家というのは、一町五反程度の農家でありまして、これらの人間がたとえば日本人の食糧であるところの多額の米の供出を負擔するところの人々であるというふうに考えております。そこえもつてきて、こういうふうな計算が米だけならばいいのでありますが、藁工品をつくりますとこれがやはり所得の中にはいつてまいります。それから今度は畦豆までがこれにはいつてまいります。さつまいもをつくればさつまいもにかかつてまいり、今度は麥をつくれば麥にかかつてまいりじやがいもをつくればじやがいもにかかり、野菜をつくれば野菜にかかる、これらのものを合わせると、現在のインフレ時代におきましては、農家は實際言えば一萬圓とか、あるいは二萬圓とかいうような價額にすぐ上るのであります。これで超加所得税まで負擔しなければならぬということになりますと、農家は非常な大きな税金に對する恐怖が起つてまいります。しかるに一面五百五十圓に米を上げてくれるというが、二百五十圓も上げてもらうということについては、農家は非常に喜ぶとともに、すぐ問題になつてくることは、こういうふうに非常な大きな税金がかかつて來るのじやないか、殊に去年の九月のいわゆる何千圓というような大きな所得税が農家にかかつてきたというので大分問題になつたのでありますがこういうようなことになりますとその影響というものは、この食糧問題の窮迫化しておるときに、大藏省はただ收支だけ考えて食糧供出の面に對してはこれは全然考えていない。そういう政治的な面は少しも考えておらぬこういうふうにお考えになつておるのかどうか、その點を御答辯願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=50
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051・前尾繁三郎
○前尾政府委員 農家の供出について大藏省は何も考えていないとおつしやつておるのでございますが、われわれは税の面からそれを考えるべきものとは考えておりません。勤勞所得等につきましては、ある程度考えなくちやならないのでありますが、農業所得だけ他のものと區別して課税するということはむしろ所得税としてはいたしかねる次第でございます。ただたとえば今囘の改正におきましては、農業所得がほとんど年末に片寄ります關係上、納税が四期分納ができがたいというような農業者につきましては、翌年の確定申告だけを出せばいいというような特例を認めておるのでございます。しかしその他の面、たとえば金融緊急措置の面というような點からいたしましては、よほど大藏省としても、米の供出については考えておるわけでございます。またわれわれの主税局におきましても、酒の配給その他につきましてはまず米の供出並びに石炭の増産というようなことに重點をおきまして考えておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=51
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052・稻村順三
○稻村委員 そうしますと、供出成績の可否は、税が非常に大きな一個の阻害的な要素になつておるということは認めない、こういうのでありますか、その點をお伺ひしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=52
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053・前尾繁三郎
○前尾政府委員 われわれといたしましては、常に所得はただいま申し上げましたように、いかなる收入によつて得る所得にいたしましても、實際にそれだけの收入があるということになれば、それに對して課税するのが當然であり、それを農業所得だからといつて輕減するということは、いかなる各國の税法の例を考えましても、そういうことを考えておる國はありません、また日本といたしましても、從來そういうことは考えなかつたのでございます。もしそういうことに相なりますとたとえば石炭の増産というようなことで、その石炭勞務者に對して所得税をかけるとか、その時その時の所得税の輕減というようなことは、税の面ではとうてい、考慮するわけにもまいりません。また税の面からそれを考えるということは適當でないと私は考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=53
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054・稻村順三
○稻村委員 何も私が言つているのは主税局長の言うような意味で言つておるのではないのでありまして、實にこの農民の税金というものは、一種特殊なものであるという一つの問題であります。小さな農家と大きな事業家などとはよほど違つております。殊に農家の所得というのは、私たちから申しますと、ほとんどあれは勤勞者の所得であつて、實際上はいつてくるところの收入というものは、これは賃金收入にひとしい、自分の家族の勞働に對する報酬というような形に實質上はなつておると思うのであります。
〔委員長退席、神田委員長代理着席〕
こういうふうなものでありますから、そこで私たちが問題にしなければならないのは、こういうふうな意味の税金で非常に多くの税金がかかるというその恐怖があつた場合には、自分がそういう小さなものでありますから、いわゆる自分の食べるだけの物をあくまでも確保しようというその心理からしまして、どうしても供出の意欲がそがれるということであります。私新潟縣でありますけれども、新潟縣で今藁工品が非常にやかましくなつておりますが實を言うといくら藁工品を割當ててみましても、たとえばわずか千圓かあるいは千二百圓の藁工品が供出されますと、それがちやんと帳簿に載る、藁は非常に高い値段でもつて買つて、そうして安い藁工品を出すということになる。そういうふうな損失ばかりではなくて、實に千圓か千二百圓の藁工品を供出しても、實際上の自分の所得が一萬圓以上に評價されるのではないかというような恐怖から、その千圓か千二百圓の藁工品を割當てられてもつくらないという傾向があるのであります。さらにはなはだしい例は、今年は甘藷のごときは比較的豐作でありましたがその甘藷が一貫匁五圓の公定價格であるにもかかわらず、やみには二圓五十錢で流れておるのであります。私がどういうわけでそういうふうに五圓の甘藷が二圓五十錢で流れるのかということを聞くと、これを農業會なら農業會に集荷すると、これが全部帳簿に上つて、自分達の供出量だけは全部十貫匁なら十貫匁、百貫匁なら百貫匁が總所得の中に加わつてくる、そうすると非常に高い税金が課せられる。だからこの場合にはどうかというと、できるだけ收穫は少いように努力して、そうしてたとえ二圓五十錢でも一圓五十錢でも横流しにした方が得だという、そういう心理を税金の面から恐怖さしておるといふ事實がある。こういうふうな場合に、大藏當局はただ米の方は所得はこうであり支出がこうであるからどうしてもこれだけの税金がかからなければならぬのだというようなことは理窟としてはもつともでありますしかし國民の今日の生活に一番重要であるところの食糧問題が非常に激化しておるときには、ただそれだけですまして、おくというわけにはいかないので、そこに徴税に關して一應の彈力性が要るのじやないか、たとえて申しますならば事實におきまして控除すべき額の中には、農民はおそらく公定價格でやるよりも、それの二倍三倍の多くの生産費を使つておることは事實なのであります。この點食糧管理局長官にお尋ねしたいのでありますけれども、農民のこの實際上の生産に、ルートをまわつてくるところの資材というのはわずか四割であつて、六割くらいはほとんどやみの物を買つておる。こういう事實があるものとしたならば、その事實を生産費なら生産費というものの中に控除する中に入れて、そうしてこれを控除してこの税金の恐怖というものから農民をある程度解放してやるというようなことが、當然行われるならば、私はこの面だけで――そのほかにも供出を妨げる幾多の面があると思いますけれどもこの面から解放することによつて供出成績を非常にあげることができる面もあるということを考えるのでありますが、その點に關するところの食糧管理局長官の御意見を伺いたい、こう思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=54
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055・片柳眞吉
○片柳政府委員 ただいまの稻村さんの御質問でありまするが、私も昨今の農家が肥料その他の資材を公定價格で入れておるとは決して思つておりません。實體はやはりやむを得ず相當量やみで手に入れておるという事實を私ははつきり認めております。從いまして税務當局といたしましても、ともかく實際にはいつた所得と、それから實際に出しました支出とを考慮いたしまして、ネツトの捕捉について考えておると思つております。ただ實際の支出がどの程度にこれを見ておるかという點につきましては、これはおそらく大藏當局としても、できるだけ實體をつかまえてやつておると思いますが、さらに私の方からもこれらの實體は、大藏當局にいろいろ助言もしてまいりたいと思つております。先ほど主税局長の言われましたように、税務當局としては、あくまで客觀的な所得をつかむということでやつておると、私は信じておるわけでありますが、從いまして米の供出等に、そこに彈力性をもたせるということは、これは遺憾ながら私も困難と思つておりますが、ただこういうことだけは私は申し上げてよろしいと思うのであります。結局米をつくつておる農家と、それから米以外の畑作物をつくつておる農家との間においては相當に――米をつくつておりまする農家は面積をごまかすこともできませんし、また米の生産高につきましては、一番手を入れてやつております關係で、米による所得につきましては、一番正確なものがつかみやすい。これに對しまして蔬菜でありますとか、果樹等をつくつておりますいわゆる畑作農家につきましては、相當面積等につきましても、ごまかしがきくようでもありますし、また相當囘轉率も幾囘轉もいたしまする關係で、米をつくつておる以外の畑作等の農家については、所得をつかむということについては、相當困難がありはせぬだらうかさらに言いますれば、米作農家の方は非常にはつきりしたものが出ていますが、畑作農家等については、相當含蓄に富んでいる經營の關係で、所得の實體が捕捉しがたいという實情はあろうと思うのであります。この邊は毎々大藏當局にも申し上げておりますが、それだけの違いは私はあると思つております。これらの實體は少くとも特に考慮に入れて、所得の計算を精密にしていきたいというふうに考えております。
〔神田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=55
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056・稻村順三
○稻村委員 それから山林所得の問題でありますが、山林というものは、私は有價證券などと同じように、やはり一個のから資本であるというふうに考えております。そしてまたこれの所有というものは今日のごとき状態におきましては――これは農林當局の人々に一應意見を聽きたいと思つておつたところでありますが、今農林省の人々が見えておりませんので、そこで私大藏當局にお尋ねしたいのでありまするが山林というものは、なるほど山林に生えている木は一個の物でありますけれども、その所有權というものは、これは有價證券と同じようなから資本であるというふうに、私は考えているのでありまして、この點どちらかというと、所得税をかける場合におきましては、山林所得というようなものが、將來相當私は押えられていつた方が、むしろ將來の日本の農業の發展にとつては殊に農地改革の後における日本の農業の發展にとつては、適切なのではないかというふうに考えるのであります。なぜかと申しますと、わが國においては、今日農地改革によつていわゆる土地を解放させられたところの舊勢力というものは、ほとんど山林にこもつておりまして、むしろ農地改革を實施するのを――大抵山林というものは、大きな山林でない限りにおきましては、農家がはいりまして、あるいは薪炭を伐るとかあるいは採草をやつているとかいうふうにして、その山林にはいるということが、やはり農業經營を補助していくといいますが、支えていくための非常に重要な條件になつているわけであります。ところがその場合に、農地だけは解放されたけれども、山林は舊勢力がもつているために、どうかというと、お前の方で農地解放を要求するのならばおれの方では、そんなことを要求した人間は山林に一歩も入れないということによつて、農家の生活をある程度威嚇するというふうな態度をとりまして、そうして農地改革の進行をある程度齒止めをするというような態度を、しばしば見受けておりますので從つて山林業者をこういうふうに保護するというような建前から、所得税をかけるのではなくして、山林所得というものはむしろこういう山林をもつているということによつて、決してそう大きなもうけにならぬということをはつきり私は自覺さした方が、日本の農業生産の面から申しますならば、非常にいいことではないかというふうに考えられるのでありますが、その點に對する大藏當局の御意見をお聽きしたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=56
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057・前尾繁三郎
○前尾政府委員 山林の所得につきましては、御承知のように、今囘は五割の控除をいたしまして、一般の所得と總合いたしているのでございます。その理由は、山林の所得は御承知のように何十年か經つて一時に現われてくる所得税でございます。從つてそれが何年かにわかれた所得で、そのときどきの所得として課税し得るものであるといいのでありますが、技術的にそういうことができない。從つて一時的に現われたときにその年の所得を合算してしかも累進率で適用することになると他の所得との均衡を得ないという意味からして、他の一時的所得と同樣に五割を控除し、總合してそれに對して普通の税率を適用するということになつております。從つてその間に山林所得を保護するという考えももちろんもつているのではなく、また山林の所得をいじめるという考えももつていません。ただいま御説のような事實があるのかないのか、私としては信じないところでございまするが。それらに對しては、別個の觀點から、また別個の制度によつて、そういう問題を支持するあるいは保護することを取扱わるべきものだと私は考えております。所得税においてそのときのいろんな事情を織りこんで課税するようなことは、事實上できがたいというふうに御諒承を願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=57
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058・稻村順三
○稻村委員 今までの御答辯を伺つておりますと結局において今われわれがこの税制の施行によつて、どういうところを助長する、どういうところを抑えるというような目標は全然ないという結論に聽えるのであります。なぜかというと重點はどこにもあるというけれども、先ほど私が到るところで質問したように、ある程度においてこういうような税の賦課のしかたが生産増強にこういうふうに齒止めになつているということに關しても、ほとんどこれに對する考慮をしないで、ただ客觀的にほかとの振合の關係上こうしなければならぬ、こういう答辯ばかり聽いておる。そうすると今度できた税法の改革は、たとえば生産を増強するためにまた一面インフレーシヨンを阻止するために、生産に直接關與している人間の所得に對しては、一應の保護を與えるとか、あるいは生産の直接増強には大して關係のないところには、なるべく所得を抑えるとか考慮しなくて、ただ千遍一律に課税するという建前が、最も正しいとお考えであるように私は聽いたのであります。こういう形でまいりますと、今度の税金のうちに考えられるのは、法人税の問題にはいつていつても同じことが言える。法人といつてもピンからキリまであると思う。この法人のうちの税金を法人なるがゆえにといつて、たとえば全部その負擔を輕減することになると、法人には商事會社もあれば、生産の會社も、金融會社もある。一體これらに對してどういうふうに一々の區別をして課税していくか。殊に私たちの聞くところによると、法人税が多少でも輕減されるというので、このごろでは相當の料理屋が集つて會社をつくり、今まで非常な新圓もうけをしてきたのを、多少でも税金を免れるために、法人の名前を借りる方向に向いているということさえ聞いておりますが、これらに關して大藏當局はどうお考えになつているか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=58
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059・前尾繁三郎
○前尾政府委員 諸政策をいろいろな税法に織りこむことは、所得税については、われわれはあまり考えていないのでありまして、他の面からいろいろ推進さるべきものと考えております。殊に諸般の事情を所得税でも考えていくべきではありますが、要するに實際にそれだけの收入あるものについてはそれだけの負擔をしてもらうというのが、所得税の本來の目的であります。從いまして、むしろ從來行われておりました戰時中のいろいろな施策を織りこむという行き方は、この際平靜に顧み、整理していくべきであるというように考えている次第であります。
法人税の問題については最近超過所得に對する税率を引下げたのでありますが、その理由は、從來の戰時利得税の當時の税率をそのまま繼承いたしました。しかも最近營業税が非常に上つてまいりまして、それを入れますと、八五%に一五%の營業業税が加はると一〇〇%取られる状態であります。そういう状態では、申告納税もできない。企業意欲も起らない。むしろそれが濫費に使われるということになつてまいりますので、これまた今囘非常に平靜な税率に還つてきたわけであります。ただいまのお話は實際の實務行政として商法人その他ただいまお話の料理屋が法人にするというようなことが起り得るのであります。と申しますのは、税制自體ではなく、割合會社に對して所得の調査が徹底していないという關係から起るのではないかと思います。從いまして、われわれとしては現在法人の調査があまり徹底していない際、實務行政の面において督勵いたしまして商法人は他の個人と同樣な徹底した調査をするようにということも指示しておるのであります。課税の充實あるいは實務行政の強化ということで、十分補い得ると考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=59
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060・稻村順三
○稻村委員 そうすると、法人の場合においては、種類によつて課税率を異にするというお考えですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=60
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061・前尾繁三郎
○前尾政府委員 業種によつて區別することはありません。法人としてはいわゆる資本團體であります。從つて業種によつて區別するのではありませんが、要するに業種によつていろいろ所得の状況が最近違つておるから、その調査を徹底するためにいろいろの業種殊に新圓を吸收しておる方面に、調査の充實徹底をはかるという意味であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=61
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062・稻村順三
○稻村委員 しかしそういうように、所得が業種によつて異なるから法人でもむずかしいということになれば、個人ではその點が一層困難になつてくると思う。むしろこの際今奬勵すべきところの、たとえば生産増強に非常に貢献しているというような法人、もしくは個人、こういうものに對するところの一應の所得の輕減等を考えると同時に、今日生産に直接關係のない個人ないしは法人の所得に對しては相當多額に大きな率でもつて所得税をかけていくなり、法人税をかけていくなり、その方がはるかに私は有利だというふうに考えているのでありますけれども、どうもそういうふうに區別するのがいやらしいのでありますので、その點いくら私と話合つても、これは要するに並行線のようでありますからして、私の質問は大體あとは農林大臣に對する質問を留保いたしまして、質問を終りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=62
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063・金光義邦
○金光委員長 了承いたしました。奧村又十郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=63
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064・奧村又十郎
○奧村委員 私は昨日の本會議で質問いたしたのでありまするが大藏大臣がおられませんし、また政府委員からも滿足な御答辯が得られませんでしたので、補足して御質問いたしたいと思います。今囘の税制改革による豫算課税申告納税の制度を斷行せられるということは、非常にこれは大きな問題でありまして、特にこれをおやりになる時期ということは、國民納税思想の状態からしてこれは昨日も申し上げたように、非常に危險な困難な事情が伴うておると思うのであります。この際において政府のそれに對する覺悟と申しますか、用意と申しますか、それがまだ不足している。そういう不用意なあるいは覺悟の足りないのに、こういう重大な改革をやることは、非常にこれは危險である。失敗を招くのぢやないかと思うのであります。そういうことについて、以下第三者通報制度、それから銀行預金の秘密性の問題、その他税務協力委員會の構成の問題、あるいは今囘の所得税の見積りの根據などについてお伺いいたしたいと思います。しかし大藏大臣がただいまおられませんので、順序をいろいろかえまして、具體的な問題から御質問をいたしたいと思います。
ただいまわが黨の稻村君から御質問もありましたので、それに關連して、特に私はまず預金の秘密性という問題これに關しての今囘の規定について、お伺いいたしたいと思います。昨日の預金の秘密性ということにつきましては、今囘の條文において六十三條の第三號はこれに該當するかどうか伺いましたところはつきり該當すると御答辯があつたのであります。したならば、いわゆる預金の秘密性ということは大藏御當局としてはお認めにならないと解釋してよろしゆうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=64
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065・前尾繁三郎
○前尾政府委員 現在におきましても今度の改正法案は從來と同樣でございます。それで檢査あるいは諮問することができるということでございますがそれをするか、しないかは、また別個の問題でございます。現在われわれは貯蓄奬勵に對して障害のあまりないような、刺激しないような行き方をいたしているのであります。ただ特に必要ある場合、たとえば非常な脱税の嫌疑がある、あるいは滯納處分をしなければならぬというような場合でありますと、個々の人につきまして、銀行に諮問するというような場合も、必ずしもないというわけではございません。またやるようなつもりでもいるのであります。ただ端的に調査するというようなことは、直ちに動搖を起しますのでそういうことは現在やらない。實際上の問題としてやらないという方針でおります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=65
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066・奧村又十郎
○奧村委員 ただいまの御答辯、これは私としてはまことに意外に承ります。實際としは當分預金はお調べにならないという御答辯でありますが、それは貯蓄増強のための考慮の上からというお言葉である。そうすると、ただいまわが黨の稻村君が御質問申し上げたときに、たとえば米の供出などの場合において、政治的に課税の御考慮がないかと言つた場合、課税としてはそういうことは考慮できない。ただ税の立場のみからやると言われた。ところが、この銀行預金の場合は、これは貯蓄増強のまた別の觀點からむしろ手心するという。そこに當局の御方針が非常に變つておりますが、この點いかがお考えでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=66
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067・前尾繁三郎
○前尾政府委員 銀行利子の課税につきましては、これはもう脱税は絶對に行えないような仕組になつております。ただ預金の秘密性という問題は、それを課税の資料として、預金でなく所得の調査ということに利用することはしないといふだけのことでございます。もちろん預金を調べなくても、他の面からいくらでも調べる方法はあるわけであります。たとえばその人の消費生活の状況、あるいは不動産等を買いこんだとか、あるいはバラツクを建てるとか、そういう資金の出所、また土建業者等におきましては、いろんな請負の資料がございます。それを追究していけばわかるわけでございます。銀行預金を調べましても、銀行預金をしている人ばかりであればよいわけでありますが、最近におきましては、ほとんど預金をせずに、たんすにしまつておくというような場合が多いのであります。それで實際上銀行を調べてもあまり効果がないのでございます。効果があるということなら、われわれも考えてもよいのでありますが、現在のところまつたく効果を期待していない。むしろ貯蓄奬勵の方に障害があるというだけのことでございます。また先ほどのお話は、課税上、制度として何かいろんな施策を織りこむというお話であつたのでございます。しかし今申し上げましたように、課税に手心を加えるのではないのであります。ただその方法が銀行預金の調査という方法によるかよらないかというだけの問題でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=67
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068・奧村又十郎
○奧村委員 もちろん私がお尋ねいたしますのは、銀行預金の利子に對する課税のことではありませんので、銀行預金の出し入れを調べて、それによつて所得調査の資料にするという意味であります。この問題は何と申しますか少し無責任な御答辯と思います。昨年第九十議會において、財産税の調べの場合において、特にいわゆる財産税逃れの換物をやつた者の調べに對しては當局はどうするかという御質問をいたしましたときに、當時の主税局長が、銀行預金の出し入れを調べる。その出し入れによつていわゆる換物した者の所得を調べる。それに對して所得税をかけるというふうな御答辯があつたのであります。どうしても預金の出し入れを調べるということが調査上非常に必要な場合が多いということは、これはまぎれもないことであります。これを貯蓄増強のために手心を加えるということになりますと、ただ銀行預金だけにそういうことになりますと、これは非常に大きな弊害があると思うのであります。一つ例を申し上げますと、魚などの出荷販賣所でございますが、これはわが黨の稻村君から先ほどもお話がありまして米のお話を申し上げましたが、魚の場合はもつとはなはだしいと思います。魚は販賣所にまわらずにやみへまわつていく。やみにまわつた分についてはお調べにならぬ。お調べになる方法がない。從つて販賣所へ調べに行つて、販賣所の水揚價格を全部調べるのであります。それに片つぱしから税金をかけるのであります。販賣所へ上つたのは丸公でありますが丸公であがつた魚には全部税金がかかる。やみであがつて、やみでもつて賣る魚は値段が高くて、しかも税金は全然かからぬということになりますが、販賣所にあがると値段は安く税金がかかる。どうしても販賣所へ魚があがらない。おそらく今後においてはまたまた税を捕捉しようということになりますから、この税の面からして販賣所へ魚が集まらぬということになろうと思います。これは私地元の漁業會長をやつておりますから、事實これには困つておるのであります。そして銀行預金に對しては貯蓄の方から考慮して、これの祕密性を保たせる。それ以外の販賣所の供出の問題などに對しては考慮しないというようなことでは、これからのこの大きな税制改革に對して實際上非常に不便が生じましようと思いますが、重ねてお答辯願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=68
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069・前尾繁三郎
○前尾政府委員 ただいまの實例をもつてお答え申し上げますと、なるほどやみで賣りましたものについて從來課税していないかもわかりませんが、その他探聞するとか、あるいはその消費生活を見るとかそれらの點から課税していくべきものだと考えるのでございます。もしその人が銀行預金をしておればいいのでありますが、預金をせずにほとんどふところにもつておる。あるいはたんすの下に隱しておるというような状況の場合が多いのでございます。ほとんど銀行預金を調べましてもただいま仰せのようなやみ所得に對する課税が完全にいくとはわれわれ考えられないのでございます。それ以外の方法に工夫を凝らさなければできないというふうに考えておるのでございます。そういうような意味合いから効果の少いしかも他に影響の多い方法を無意味にとる必要はないのでございます。なおその以外のただいま申し上げましたように、探聞調査あるいは消費生活の面から調査するというような、別個の觀點から課税していくべきものだというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=69
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070・奧村又十郎
○奧村委員 この問題はこれ以上つつこんでお尋ね申してもどうも御答辯がないように思いますから、打切りたいと思います。要するにそれでは六十三條に該當するが、當分預金の祕密性は尊重するということになるわけでありますか。そういうように解釋してよろしかろうと思いますがどうですか。
それからその次に、この六十三條には有價證券の取引所などの帳簿あるいは官廳の帳簿なども該當するのであるかどうかお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=70
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071・前尾繁三郎
○前尾政府委員 取引所その他ははいると思います。官廳につきましてははいらないと思います。ただ實際上の問題として、官廳を調べることはこの税法による必要はないのであります。これは官廳のことでありますから、相互に調査をする場合にも十分協力をしてくれるというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=71
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072・奧村又十郎
○奧村委員 證券取引所ははいるのですね。――證券取引所の場合におきましては、今囘やはり有價證券の賣買利益は全部所得に調べられることになるわけでありますので、有價證券取引所の帳簿は全部お調べになる。こう解釋してよろしうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=72
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073・前尾繁三郎
○前尾政府委員 そういうふうに考えております。それからなお預貯金の祕密性でございますが、大體おつしやつたように、われわれも考えておる次第でございます。細かい點を申しますとたとえば預金者自身で調べることはこれは當然でございまして、銀行について一般的に調査するということをしないという意味でございます。また特に必要な場合につきましては、具體的の問題として調べる場合もあり得るのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=73
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074・奧村又十郎
○奧村委員 官廳は該當しないと言われましたし、それから第三者通報制度の場合において、官廳から出た通報の事實は、これは報奬金が下付せられないということになつております。官吏あるいは官吏待遇官から出た事實は該當せぬということになるのですが、そうすると官廳關係において相當調査の資料があると思いますが、通報制度の場合はつきり官吏の場合を除くということになると、非常に効果が薄れると思いますが、いかがでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=74
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075・前尾繁三郎
○前尾政府委員 官吏が通報いたしますことは、その職務上知りえた秘密ということにも相なるわけでございまして、それの報酬というのはむしろ適當でないと考えるのでございます。普通の場合官吏におきましては、いろいろ協力する意味もございます。また仕事の關係からいたしましては、むしろ通報する義務があるわけでございまして、報奬というようなことは、適當でないというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=75
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076・奧村又十郎
○奧村委員 しかしどうも從來とも官廳特に大藏省以外の官廳が、税務署の方に所得調査に協力をするということが非常に少かつたように思いますのでこの點特に御質問したわけであります。しかしこれもこの程度に止めたいと思います。第三者通報の場合に、その通報した事實がもしうそであつた場合は、これは三年以下の懲役その他の罰金の非常な嚴罰に處しておるわけであります。しかし他人樣のことを通報いたしますのに、これは惡意がなくとも過つたことがあろうと思いますが、その際に特に、ほかの法律のほかの刑罰はみな一年以下ですが、これだけ特に三年以下の罰をかける、こういうことになつておるのですが、これでは通報する人は人樣のことをそこまで確かめることはできまいと思いますから、恐れをなしてほとんど通報しないと思う。この通報に對する罰則については少くとも第七十三條の罰則の規定、これは「虚僞の報告をなした者は、」としてありますが、これは何か特に故意あるいは惡意をもつてというふうな規定を入れませんと、こういう罰則を入れたのでは、通報制度は完全に死んでしまうと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=76
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077・前尾繁三郎
○前尾政府委員 七十三條につきましては、故意犯でございまして、故意がある場合に限つて罰則が適用があるわけでございます。御心配のような點はないと存じます。ただ三年以下の懲役が重いかどうかという問題はあるのでございますが、故意に誣告をするというようなことでも困りますので、かなり重い罰則になつております。これは財産税の場合にも同樣の罰則となつておつた次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=77
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078・奧村又十郎
○奧村委員 それならばここに「虚僞の報告をなした者は」というその上に「故意に」という字を入れるべきでありますが、これがはいつておりませんから、故意犯ということにはならぬと思いますが、いかがでございましよう。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=78
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079・忠佐市
○忠政府委員 司法省からお答えした方が適當かと思いますが、私のところで一應司法省と打合わせいたしましたところを申し上げますと、刑法總則によりますれば、過失犯は特に過失を處罰するという規定がありました場合に限り處罰することにいたしてありまして、別に規定がございませんならば、これは罪を犯す意がある、犯意があるという場合に限ることになつております。それで法文といたしまして、その點國民各位に對してあるいは誤解を生ぜしめぬかという心配はございますが現在の法令の建前といたしましては、これは故意犯に限る、かようになつておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=79
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080・奧村又十郎
○奧村委員 それから第六十九條、「詐僞その他不正の行爲により」という罰則規定であります。これは從前の所得税の法規の八十八條にも同じく「詐僞その他不正の行爲により」と出ておるのでありまするが、今囘は申告納税制度をとりましたので、同じ字句ではありますが、解釋が變つてくるものと私は存じます。すなわち從前の所得税第八十八條の場合におきましては、たとえば自己の所得を申告しなんだという場合でも、詐僞その他不正の行爲には該當しておりません。しかし今囘は申告納税であつて、申告の義務が負わされておるのでありまするから、所得を申告しなかつた、正直に言わなかつたということも、これは詐僞その他不正の行爲に該當するものとと思いますが、この字句の解釋は、從前の法規と今囘の法規と變りはありませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=80
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081・前尾繁三郎
○前尾政府委員 從來の規定と同樣でございます。申告をしない、無申告の場合に、罰則を設けるべきかどうかということについては、相當問題があると思います。刑法上の罰則を設けるべきかということについて問題があるかと存じます。そういうような場合につきましては、前のいわゆる加算税すなわち民事罰でいつているわけでございます。それによつて十分指導もし効果も期待し得るというので、今囘につきましては、そのままの規定になつている次第でございます。ただ豫定申告等につきましては、七十條に嘘僞の記載をしたというような場合につきまして、秩序犯のかなり重い罰則ができておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=81
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082・奧村又十郎
○奧村委員 相當思い切つた今度の改革におきまして、どうも御當局のお考えは少し、何と申しますか、なまぬるいように考えられるように思います。たとえば從前の所得税法第八十八條の規定において、その規定、罰則が税をとり始めてほとんど適用されなかつたということになつているのでありますが、今囘もこういう條文がまた空文にあるいは死文に、終るような憂えが非常に多いと思います。しかしこれはまあ私の意見でありますから、これ以上追究いたしません。
次にこれらの罰則は税務官吏から裁判所に告發することになるのでありますが、その裁判所は特に租税裁判所のごとき特別な裁判所をおつくりになるお考えがあるのでありまするか。ただいまのところどういうふうな方面で取扱うことになるのでありますか、お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=82
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083・前尾繁三郎
○前尾政府委員 この罰則につきましては、前の税法におきましては、最初な政府で罰則は適用しないというようことも言明いたしたのでありまするが今囘はかなり罰則は嚴重に勵行しようという氣持をもつておりますので、この際その點をはつきり申し上げておきます。
それからこの租税裁判所の問題でございまするが、こういうような刑罰について特別の裁判所を設けるということは、直ちに憲法違反となるわけでございまして、ただいまのところそういうことは考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=83
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084・奧村又十郎
○奧村委員 昨日本會議でお伺いいたしまして、一部御答辯がありました税務協力委員會の構成について、今御當局の考えておられる概要をお示し願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=84
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085・前尾繁三郎
○前尾政府委員 ただいまのところ關係方面とも折衝中で、今具體案にはなつておりません。ただわれわれが考えておりますところは、各税法にそういうものを設けるよりも、官制で全般的に税務署の協力者、並びに場合によりましては税務署を督勵していただくというような意味合いからして、現在でも協力委員というものはあるのでございまするが、それを擴充強化した税務署を、――この申告納税の關係とも相なりますので、從來のような賦課決定でございますると、決定前にいろいろ御相談するというような仕組でやつているのでございますが、今囘は申告納税の關係で、どういうふうに運用するかについては、まだ具體的のことを申し上げるまでに立ち至つていないのでございまするが、要するに税務署の内部の機構といたしましても、申告に對して申告が妥當であるかどうかというのは、ちようど裁判官のような立場になりまして、相當訓練された、また相當教養のある組織で最後の決定をするということが一つであり、またその際十分外部のいろいろな意見なり情報を聞かしていただくような仕組をもつていきたい。それらをどういうふうに組み合わしていくかということについては、十分研究いたしました上で、最も理想的な形體をつくりあげたいというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=85
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086・奧村又十郎
○奧村委員 この所得税法の中に審査という言葉が出ておりますが、從來の場合には、審査は所得審査委員會があつたのでありますが、これがなくなるとすれば、この審査ということは、いかなる機關でおやりになるか、その機關をお示し願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=86
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087・前尾繁三郎
○前尾政府委員 從來はこの審査をいたしますと、その間に税務署で誤謬の訂正をするなり、あるいは財務局の審査委員會に提出するなりするのでございますが、今囘は、今度憲法が變りまして、直ちに、普通の場合でありますと訴願かあるいは行政訴訟をやるのではなしに、普通の裁判所に行かなければならないということに相なりまするとかえつて一々裁判所に頼みますることは納税者も不便であり、税務署も不便である。その間に一應税務署の内部で反省もする機會を與えてもらい、また納税者といろいろ話し合いのできる制度がなくては、直ちに裁判所に行くということでは、事務的にも運びにくいというような考えからいたしまして、やはり一應審査の制度を殘した次第でございます。そして審査を經なければ裁判所に行けないということにいたしたのでございます。從來のように所得調査委員というような制度がありますと、そこから選出された審査委員というような制度ができるわけでございますが、今囘は所得調査委員がなくなりますと、結局財務局に審査部というようなものが、あるいは内部的の關係ではありますが、相當經驗者が相集りまして、委員會というようなことで行かなければならないとわれわれ考えておる次第であります。ただ從來の審査というのは、御承知のようにほとんど審査會にかけられるものはないのでございまして、その審査會に行く間にいろいろと事件はほとんど解決するというような状態でございまして、從いまして今囘も特に審査委員會を設けるほどの必要はないではないかと、われわれ考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=87
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088・奧村又十郎
○奧村委員 そうしますと、今囘所得調査委員會、あるいは審査委員會などがなくなります。この所得調査委員會は、納税者の側に立つておりましたので、これは必ずしもよくなかつたと思いまするが、しかしそれかといつて、税務協力委員會なるものを非常にはつきりと強化してつくつていただきませんと、あまりにも官廳のみの仕事に偏ると思うのであります。私はインフレの對策として健全財政は絶對に避けられない最も重大な對策であると思います。それに對する税收入の確保ということについて、よほど確固たる覺悟をもたなければならぬと思います。その點御當局の御意思をいろいろ伺つてみてきたわけでありますが、税務協力委員會については、これは希望でありますが、くれぐれも速やかに、また強力な民主的なものをおつくりになつていただきたいと思います。それはいままでのような所得を引下げるというものでなく、むしろ所得の隱匿を國民の手で監督するという氣持のものをつくらなければならぬと思います。勤勞所得と比較いたしますと、事業所得などの所得はどうしても捕捉しにくいものでありまして、これは私から申し上げるまでもなく、御當局よくおわかりのことと思います。特に今日のやみの所得などについては調べる方法が非常に少いのでありまして、いかに御當局が御答辯になりましても、われわれ非常に不安に思つておりまするので、どうしても民主的な協力委員會をおつくりになつていただきたい。それも速やかな實現を希望いたす次第であります。
次に農業所得につきまして、十月以降において大部分の收入のある所得については確定申告を許す。こういうことになつておりまするが、これに關連して水産業の所得であります。御承知の通り水産業の所得は年によつて大漁不漁の豐凶がはなはだしいために、以前水産業の所得だけは三箇年平均でもつて所得を調べたのであります。それほど水産業の所得の平均がとれないのでありますが、この農業は確定申告を認める。水産業のような全然見透しのつかないような事業について確定申告をお認めになりませんかどうかお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=88
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089・前尾繁三郎
○前尾政府委員 水産業について確定申告だけで、農業のような特例を設けるかどうかということにつきましては、われわれも一應考えたのでございまするが、農業のように十一月以降にならなければ米の收獲が全然ないのだこういうふうにきまつたものでありますれば、それでいいのでありまするが漁業のようなものになりますると、要するに年によつて非常な違いがあるというような關係にあるわけであります。ただ季節的にいろいろ例年變動のあります分については、一年を豫算する場合に、從來の實績に徴して、春の漁があつても秋の漁はこの程度しかないというふうな見積りの合理的な推算の場合に、十分考えて申告していただけばいいということになります。それによつて十分賄い得るというふうにわれわれ考えておりますので、農業所得のような例外を設けないということにいたしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=89
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090・奧村又十郎
○奧村委員 それでは水産業に限らず、一般事業所得の點でありますが、御承知の通りほとんど最近あらゆる事業家がストツクがなくなつた。あるいは動力、燃料などもなくなつた。見透しがつかないということで、四月においてその年一ぱいの申告をさせようとしても、これは事實不可能なことと思います。水産業の場合特にそうでありまして、一箇年間の見積りの申告をさして、しかも四月から分割納税をさせる、これは實際問題として不可能と思います。その場合に、水産業などの場合、あるいはその他危險な事業は何でもそうでありますが、先の不安を見越して非常に差控えた申告を出すということが當然豫想されます。そういう場合にいかなる御方針をおとりになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=90
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091・前尾繁三郎
○前尾政府委員 先の不安という場合につきましても、客觀的にそういうことが推定される場合と、ただ單なる不安である場合と、いろいろあると思います。間違いなしに誰が考えてもそういう事態になるのだということがはつきりしておれば、もちろんそれを織りこんで申告して差支えないと思います。ただわれわれは申告その他におきましてはやはり相當こちちとして指導して歩かなければならないと思つております。從いまして、四月の申告はあるいは五月あるいはそれ以後に延ばし、相當指導してまいらなければならぬと思つております。現實問題としてはつきりそのストツクもなくなつて廢業まであるいは休業の状態にまではいることが客觀的に考えられる場合はそれでいいが、そうでない場合については、やはり前年の季節的變化、一月、二月、三月の實績と今年の一月、二月三月の實績というようなものを比較していただき、それによつて一年を推算してもらうということでいくことにしたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=91
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092・奧村又十郎
○奧村委員 私は末端の税務署のただいまの税務吏員の素質なり力、あるいは今の國民思想が頽廢し、しかも納税思想が非常に低下しているこの際において、さようなことは事實なかなか行いにくいと思う。たとえば三箇月間づつに區切つて、便宜三箇月間だけの申告書を出させるというようなことは、特にこの際においてはそういう臨機應變の處置をおとりになるくらいのお考えがなければ、これは大藏省に行えぬのじやないかと思うが、この點いかがですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=92
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093・前尾繁三郎
○前尾政府委員 結局そういうことになるわけです。ただ累進率の關係があるから一年を推算しろということになるわけでありますが、大體においてこの源泉課税のものが累進率を織りこんだ率で課税になるのと同樣な考えに行けばいいので、實際問題としてはただいま言われたようなことに歸着すると私は考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=93
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094・奧村又十郎
○奧村委員 それから今囘の財産税徴收の場合において、法人の評價と個人の場合と非常に不公平があると存じます。もちろん財政税は法人にかかつておりません。個人の財産でありますが、その個人が堂々同族會社をつくつている。その同族會社の株式の評價を非常に安く見ている。一つの例でとつてみると、同族會社をやつている場合には株式の額面の評價から一割なり三割なり値上した程度で評價しております。個人の經營の場合には、家から機械から道具から一切を評價するから、同じ財産状態でも會社にしている人は非常に財産を遁れている。その點非常に不公平があると思うが、當局はどうお考えになつておられますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=94
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095・前尾繁三郎
○前尾政府委員 ただいま御指摘の點は、われわれとしても非常に苦勞した點でございます。というのは同族會社についてもしそれを拂いもどしして税金を納めるようなことになると、非常に大きな税金がかかつてきます。たとえば半分はとられてしまうというような關係になる。それで株をそのまま物納できる場合だといいのですが、そうでなしに、その財産を減資するなり、あるいは財産を賣つてそれを拂いもどして税金に充當することになると、ちよつと現在では支拂い得ないことになつてくるわけです。といつて個人經營している場合とにらみ合わせると、もしその株を今のように會社を解散するなり、あるいは減資するなりして納めないものとすると、いかにも表面上個人と法人との負擔の關係が惡いという感じもいたしますので、大體その中間といいますか、その兩者に偏しないというわけで、純資産を個人と同樣に見積つて、税金として概算すれば五割も取られるわけであるが、それを三割程度の控除をするという關係で評價しております。大體兩方に偏しないということは、一面からいえば兩面から工合の惡いことにもなるわけでありますが、その邊でやむを得ないことと、株式評價委員會、あるいは財産税審議會などに諮つて、こういうようにいたした次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=95
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096・金光義邦
○金光委員長 奧村君にお諮りいたします。質疑の中途ではなはだ恐縮でありますが、農林大臣は貴族院の方にも出席を要求されているそうでありまして、この際農林大臣に對する稻村君の質疑をしていただきたいと思いますが、御諒承願えましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=96
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097・奧村又十郎
○奧村委員 結構です。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=97
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098・金光義邦
○金光委員長 それでは稻村君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=98
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099・稻村順三
○稻村委員 先ほど山林所得の問題についてお伺いしたのですが、實は山林所得は他のいわゆる農業所得、勤勞所得との間の實際上の開きが小さくなつて、山林所得者を非常に保護する形になるのではないか。しかるに今日殊に日本における農村の半分くらいは山林と密接な關係にあるところが多い。しかも農村において今農地改革が進行中であります。農地改革進行の一番大きながんになつているものは何かというと、大きな山林所有者の問題でなく、むしろ雜木林や採草地や薪炭を取るとかいう農民生活と密接な關係にあるものが農地改革と密接な關連性がある。たとえば新しく開墾地を求めるという場合にも、こういう所が多く求められるという點もあるし、その上今日ではたとえば農地改革がだんだん進行してくると、それによつて昔の地主階級の人には、農地改革實施に對する復讐というか、村の人間に對して、自分の土地に薪炭取りや、採草のために入れていた者を入山を禁止するという犬糞的復讐行爲が間々あるのであります。現に新潟縣の山間地帶に近い農村では常にそのことが問題になつている。從つて今後所得税の改正と關連して、私たちから見るならば、このままにしておくのでは、農地改革の上からいつて、きわめて不都合な状態であるから、早く農林省といたしましても、この際かかる雜木林あるいは採草地というようないわゆる山林の名前になつているもの、あるいはまた高いところであつても、非常に平坦で土地は肥沃なのであるけれども、ある個人が所有していることによつて、それを肯んじないというようなところに對して、農地改革と同じような一箇の山林改革をする必要があるのではないか、これに對するところの農林大臣の御答辯をまずお聽きしたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=99
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100・木村小左衞門
○木村(小)國務大臣 私貴族院の方へ行つておりまして、大變失禮いたしましたが、ごもつともな御質問であります。そういうようなことが、實は方々に起つているそうであります。これは山林政策といたしまして、農地改革の發展に大きく言えば支障のないようにひとつやつていきたい、こう思つておりますが、具體的な方策につきましては、ただいまちよつと私ここで御即答申し上げかねますが、御趣旨のある通り善處いたしたいと思つております。なほ箇々の場所というようなことについての御質問がありましたが、これはひとつ政府委員に御答辯をいたさせますから、その方でどうぞお聽き願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=100
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101・稻村順三
○稻村委員 もう一つは、これは食糧管理局の長官にも質問したことなのでありますけれども、實は農家の所得に對するところの課税の問題でありますが、これがあまりにも形式的に、畫一的になされることによつて、租税からの恐怖からくるところのいわゆる供出の不振という形をとつて現われております。これは米だけの問題ではなく、殊に農村においては種々いろいろな藁工品であるとか、卵であるとか、麥であるとか、芋であるとかいうようなもの一切が重つてまいりますと、一町五反の米をつくつておつたといたしましても、約一萬二千圓の收入が、事實上その總收入になるわけであります。これに對してさらにじやがいもなり、甘藷なりがこれに加わつてくる。さらに藁工品が加わり、その他が加わつてくると、公定價格をもつてしても、とにかく一町五、六反もつくつておりますと、直ちに二萬五千圓や三萬圓の收入は、今日はあることになつているのであります。しかしながら、他面また農家から申しますと、いろいろな點で、これは御承知でもありましようけれども、農業のためには正式ルートに乘つてくるものは四割であつて、そうしてほとんど自分の力によつて買ひあさらなければならないものが六割というような厖大なやみのものを買つて、そうして生産を續行するという形になつているのであります。しかしこの際このやみの六割のものを全部これを生産の費用として計算することは、なかなかむつかしい状態になつております結果といたしまして、いわゆる生産費の控除というものが、これまでの實例から申しますと、なかなか農家の思うようにもいつていない。そのために税金は思つたよりたくさんかかつてくるという實例がたくさんあるのであります。殊に昨年の九月のごときは早場米の出廻りを前にして、わずか一町五、六反つくつている百姓に、何千圓という税金がかかつてきて、大分新潟縣地方で騷ぎました。騷ぎました結果、私が實は大藏大臣のところへ行つて話して、約三分の一に削つてもらつたという實例があるのであります。こういうようなことが、今度の税制の改正にありますと、また繰返される。たとえば大藏省は、要するに收入があるのだからとればいいではないかというような立場に立ちますし、農林省から言えば、米をたくさんつくつてもらつて、食糧もたくさんつくつてもらつて供出してもらいたいという建前から、おそらくこういうふうな場合には、多少のそこに政治的な措置というものが必要になつてくると、農林省ではお考えになるだろうと思うのであります。たとえて申しますならば生産費の控除、これはやみが相當はいつているから、そのやみも入れてある程度控除するとか、そういうふうないろいろな考え方が出てまいらねばならぬ。殊に一萬圓と一萬五千圓との間では、とにかく約一割の税金が違つているのであります。そうしますと、ここで私の實例を申し上げますと、農村においてわずか米一俵をよけい出したのと出さないのとでは、税金にして五、六百圓は違うという大きな差が出てくる。こういう場合に、農家としては供出によつて、自分の收入をはつきり押えられないようにというので、なるべくやみに流す。はなはだしいのになりますと、高く流さないで、甘藷のごときは一貫目五圓のものを二圓五十錢で流してしまつた。という實例さえある。こういう場合に、農林大臣としては、これに對する政治的折衝をなすことによつて、米の供出をある程度促進するというような方針をとつて、實情を十分に考慮して、こういうふうな政策をとるように、大藏當局と折衝をして、その方向に進むように努力をされるかどうか。これはたとえば税務署の人間が生産費の計算などをある程度考慮すればできると思われることすらやつていないのでありますが、こういうことの政治的折衝を農林大臣が今後やつていく御意思があるや否やを私は聽いておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=101
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102・木村小左衞門
○木村(小)國務大臣 私就任後日が淺いのでありますが、御指示のごときことをたびたびほかからも陳情を受けたことがありまして、これは何とか大藏省にしてもらわなければ、せつかく生産しても供出する上の阻害になると思つております。御承知のようにそういうことは實際問題としてはどこにもあるのだそうであります。それで私はあなたの説をお認めいたします。しかし税をとる方は大藏省でありますから、あなたの御説のごとく政治的に大藏大臣に直接私から話をして見ようと思います。さよう御承知を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=102
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103・稻村順三
○稻村委員 それから土地臺帳の問題でありますが、實はこれまでの土地臺帳というのは、非常に不完全なものでありまして、これからくる食糧の供出というようなものも、きわめて問題が多いと思うのであります。この點で私たちが一番重要だと思うことは、たとえて申しますならば平場地帶において、非常に耕地整理のよく行屆いている所と、山間部あたりで耕地整理が十分行屆いていない所とでは、土地臺帳においては同じく一反歩となつておりましても、また等級の上において非常な差があつたといたしましても、實を申しますと、平場でちやんと耕地整理が行屆いている所では一反は三百歩というようにはつきり出ている。ところが耕地整理が行われていない所では、新潟縣あたりでは普通において大體三百六十歩、あるいは四百歩が一反歩になつて、いわゆるのびというものがあるのであります。ところがいざ供出となりますと、これが一反歩いくらというふうな收穫見積りがやられまして、むしろ平場は一段歩の收穫が大體多いとみられておりますから、平場は三百歩のところへ非常に多くの供出が割當てられる。それから山地の方はといえば三百歩に割當てられるのでありますけれども、他面そこに統計にないところの六十歩ないし百歩の餘分がある。その上に等級が大體低いのであります。低いから一段歩の割當が少い。そこから、今度の供米成績をみますと、大體どこをみましても、平場地帶が非常に成績が惡くて山間部は非常に成績がいい。これは山間部はのびがあるからそこで餘分の土地があるというので、供出が非常に樂なのでありますが、平場地帶は耕地整理がなされまして、はつきり三百歩とされておりますので、そこから非常に割當の供出がむずかしいという問題ができてくるのであります。こういうことに對して、これは大藏當局の問題とも關連しておりますが、農林省といたしまして、こういう土地臺帳の整理ということに對して、どういうお考えであるか、それをお伺いいたしたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=103
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104・木村小左衞門
○木村(小)國務大臣 これも大藏省の所管と思いますが、土地臺帳を整備するということは、租税地租の徴收の基本になることと思います。しかしそれが耕地整理の關係などで、お説を承つてみると――私も生れは農村で百姓でありますが、今初めて承つたのですが、なるほどそういうことがあろうと思いまするので、これもよく調査いたしまして、後日御答辯いたしますが、これは國費の許します限り大藏省と折衝いたしまして、土地臺帳の整備をするということにいたしたいと思います。さよう御承知を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=104
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105・稻村順三
○稻村委員 關連しますから農林大臣ではなしに、主税局長にちよつと伺いますが、その土地臺帳の整備の問題に關して、そういうふうにいろいろな問題があるために、供出その他農村の生産計畫、あるいは肥料の配給、そういう一連の問題に非常に不公平が起きて、そのために農業生産、農民の不滿足というものが、非常に増大していつておる點があると思うのであります。この點に關して土地臺帳の、單にこれを等級を改めるとかいう机上の問題でなくて、一々これを整備するということになれば、相當の困難があると思うのであります。これに對して大藏當局は自信をもつてやることができるかどうかということを、ちよつとお尋ねいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=105
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106・前尾繁三郎
○前尾政府委員 土地臺帳の整備につきましては、お説のように、かなりまだ整備ができていない面が多いのであります。これを整備いたしますことは、われわれとしてはもちろん理想として考えております。またしなければならないというふうには考えておるのでございますが、ただいまのところ賃貸價格の調査も一年延ばさなくちやならぬというような税務署の状況にあるのであります。將來の問題としては、できるだけ早い機會にやりたいというふうに考えておるのでございます。ただそれを供米の問題と結びつけられてお考えになつたのでは、とても供米に間に合うようなわけにはこちらの整理はまいりません。供米はまた別個の調査によつておやり願わないと、こちらの土地臺帳の整理を待つてどうこうするというようなことでは、とうてい時期的に間に合わないというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=106
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107・稻村順三
○稻村委員 これで私の質問は打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=107
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108・金光義邦
○金光委員長 それでは奧村委員の質疑を繼續していただきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=108
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109・奧村又十郎
○奧村委員 先ほどの繼續であります。
〔委員長退席、八木委員長代理着席〕
財産税實施に際し、法人財産の評價が不公平であります。戰時中に企業整備等で、いろいろな株式會社なりあるいは有限會社なりできました。またその會社の資本金などは、資金調整の關係から無理に引下げられております。そういうものの財産税と個人の財産の評價の場合ですが、その法人の株式の評價というものは、その無理に引下げられた株金額に幾分か色をつける程度で評價しております。個人の財産にわたつては、これは機械なり設備なりは、買つた價格の何倍か値上りをみて、評價を非常に殖やしてみております。それで莫大な不公平が生じており、財産税の問題で國民の間に非常に不滿があります。これをお認めになりますかどうですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=109
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110・前尾繁三郎
○前尾政府委員 その點は先ほど申上げたのと同樣で、その具體的の會社につきましては、どういうふうな例でありますか、調査してみないとわからないのでありますが、大體において、準資産も個人と同樣に評價し、そうしてある程度の輕減をしておる。その範圍は明確に三割とか二割とかきめております。それによつて、もしその會社が解散した場合に、どれだけの税金がいくかというようなことまでこまかくは言つておりませんが、それよりはむしろその時にかかる清算所得その他の税金よりも少ない控除で輕減をしているという程度のものでございます。從いまして具體的にその會社の準資産の評價がよかつたか惡かつたかということは調査すべきでありますが、方法としては今のところ先ほど申上げたように均衡は十分とつているというように考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=110
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111・奧村又十郎
○奧村委員 しかし株式などは大體その時の賣買の價格でやつております。ところが、株式はただいま不當に下つております。そういう場合に、そういう流通される株式の價格でいくならやむを得ぬのでありますけれども、個人の有限會社などの場合に、株式はほとんど流通されない。そういう場合の評價において、實際その會社の資産を調べておりません。これはいろいろ例がありますが、これは今日過ぎ去つたことでありますので、御當局に御參考のために御注意を申し上げておく程度であります。次に罰則の適用の場合に、たとえば體刑などのときには、收税官吏が行政裁判所に告發することになるわけでありますが、この場合における罰則の適用の手續を具體的に御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=111
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112・前尾繁三郎
○前尾政府委員 行政裁判所というのはなくなりますので、これは司法裁判所でありますが、まず檢事局に告發するのであります。檢事局から裁判所にということになるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=112
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113・奧村又十郎
○奧村委員 それから今囘の増加所得税の場合です。これは石川縣であつたことであります。これは各縣ともそういうことになつているのですが、醫師の組合に對して増加所得税、大體増加所得を、十三人なら十三人の醫者に對して何ぼの増加所得があると思うか、こういうて税務署から割當ててきております。これに對して業者が、これではやり切れぬというので、文句を言うておるのでありますが、こういうふうに頭ごなしに上から割當てた徴税の方法をとつておる。これは從來ともとつておるのですが、増加所得税は特に個人の申告を尊重することになつておりますが、こういうやり方はどうもあまり穩當でないと思いますが、いかがですか。
〔八木委員長代理退席、金光委員長着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=113
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114・前尾繁三郎
○前尾政府委員 増加所得税につきましては、いろいろな事情からいたしまして、申告納税制度ではありません。從來と同樣な賦課決定の方法でやつております。それから割當というようなことは、從來からわれわれは考えていないのでありますが、ただ時期的に間に合わないので、ある程度業者團體等の意見を聽いて、そうして簡單に特に増加所得税を設けておるというような個別的な場合は別として、總體に上つておるというような場合ですと、一應の順位なりをきめて、そうしてそれに從つて所得はこの程度であるかというようなことで、團體に諮問したりする場合が多いのでありますが、あるいはそういうようなことをやつておるのかもわかりません。ただわれわれとしては、あくまで割當てるというような考え方は全然もつておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=114
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115・奧村又十郎
○奧村委員 はつきり割當てておりますので、石川縣の場合、金澤の醫師組合に對しては一人に對して一萬五千圓、小松の場合には一人に對して一萬二千圓というような割當てであつて、同じ地域でも非常に見込みも違うというので、業者がやかましく言うておるということを聞いておるのであります。今賦課決定ということを承りましたので、これは從來やつておつたことでありますから、いまさら取立ててもいたし方がないわけであります。今後の豫算課税、申告納税制度においては、こういうことは行われ得ないと思いますが、いかがでありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=115
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116・前尾繁三郎
○前尾政府委員 先ほどのお話は、割當という意味じやなしに、結局業者の團體に諮問した場合に、業者の團體の中で、いくらいくらという割當をやつておるのではないかというふうに考えられるのでありますが、そこらに團體を利用いたしました場合の弊害もあるわけで、というて、またある程度よい面もございます。兩方うまくこれを運用していかなければならぬと思うのでありますが、將來の申告納税制度につきましては、もちろん個人的に自分の推算によつて申告していただくことに相なると思います。ただその間、豫定申告の場合につきましては、やはり業者の團體等を通じまして指導してまいりませんと、個々にすべてにわたつて指導するということには、なかなか事務的に間に合いません。從いまして場合によつては、業者の團體を指導して、割當という意味じやなしに、大體不權衡のないようにこの豫定申告をさせるというようなことがあると思います。ただ確定申告につきましては、これは個々別々に違うのであります。その際にわれわれとしては、實際に所得に合うか合わないかということは個別的に調べていき、また更正決定についても、そういうようなやり方をしたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=116
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117・奧村又十郎
○奧村委員 所得税に關する御質問はこの程度で打切りまして、次に酒税の點についてお伺いいたしたいと思います。この酒税の税率引上げは、これはまことにひどいと思います。三倍半程度になつておりますが、これにつきましては、昨年は特配の酒も一般配給酒と同じようになつておりますが、一昨年までは、たしか特配の酒は、特に値段は引下げられておつたわけであります。今囘三倍半も税率を引上げるという場合においては、やはり特配の酒に對しては、特別に價格を引上げずに止めておくというふうに、あるいは幾分かの引上げで止めておくというようにいたすべきであろうと思います。なぜかならば、農村において供米の場合に、供米の報奬物資としては酒の特配が、これは最も確實に配給され、最も喜ばれておつたものであります。この供米に對する特配の酒、農民が米一俵供米をした、その一俵の供米代金で、今度の値上りによりますと、せつかく政府が報奬の意味で特配した酒二升が手にはいりかねる。そんなことでは供米の報奬という意味が薄れますし、また農民の心理として、米一俵が酒二升だというようなことになりますと、いずれはこの米の價格に對して不平が起ると思います。一率に大幅に引上げたということは非常にいけないと思いますので、特配酒はある程度に價格を押えるべきであると思います。この點當局の御意見を伺いたいと思います。それにつきましては、參考のために、大體のわくで結構でありますから、家庭用の配給と、特配と、それから特に二百圓の加算をする業務用の配給と、この三段階にわかれておりますが、それの大體のパーセントをお示し願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=117
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118・前尾繁三郎
○前尾政府委員 酒税の二十四割の増徴につきましては、かなり問題はあると思います。ただ先ほど申し上げましたように、敗戰の現状におきましては、何といつても、食糧輸入をしている折柄でございますので、酒は相當な貴重品としてごく節約して飮んでもらうということでいかなければならないと思います。ただいまのお話のような業務用の特配についての特別税というようなことでございまするが、現在は全部が重要産業なり、供米というようなことに對する特配用だということで、實際食糧を輸入しておりながら酒をつくつておるような状況でございます。しかしながらその間におきまして、實際問題として、そういうような家庭用、あるいは重要産業用という以外に、業務用にまわつております。いわゆる業務用のものに對しましては、相當高い二百圓の加算税というものを課税することによつて、一般の二級酒九十圓、一級酒百二十圓が、相當やはり特配だ、料理屋で飮む酒からみますと相當低い價格で賣られておるのだというようなことに相なるのでございます。現在家庭用と農村の供出用という問題につきましては、家庭用が農村にももちろんまわつております。その上にとにかく相當量が特別に配給されるということだけで、相當な報奬的な意味を現状のやみ値と比較するわけではございませんが、そういうようなことで相當な特典であるというふうに考えられておるのでございます。なお酒の種類別と申しますか、用途別の配給につきましては、ごく最近二十年度の上半期について、大體のわくをきめたのでありまするが、それは大體におきまして、二十一年の用途別の割合と同樣になると思うのでございます。その數字はあとで二十二年度の分については申し上げますが、二十一年度につきましては特別配給用、すなわち産業特配等でございまするが、それが三八%それから家庭用が四九%、それから特殊用すなわち冠婚葬祭等に使いまする分が三%、それから業務用が一〇%というような割合になつております。二十二年度の上半期の分については、後ほど調べて申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=118
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119・金光義邦
○金光委員長 奧村委員にお諮りいたします。ただいま大藏大臣が見えておりますので、大臣に對する質疑がございますならば、この際御願いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=119
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120・奧村又十郎
○奧村委員 それは中崎委員が……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=120
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121・金光義邦
○金光委員長 それでは中崎委員の大藏大臣に對する質疑をしていただきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=121
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122・中崎敏
○中崎委員 先ほど政府委員から二十一年度の國民所得の數字を知らしていただくことになつておりますが、まずそれをひとつさきに出していただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=122
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123・前尾繁三郎
○前尾政府委員 それはまだできておりませんから……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=123
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124・中崎敏
○中崎委員 いつごろになりますと出してもらえますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=124
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125・前尾繁三郎
○前尾政府委員 明日の午前中に差上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=125
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126・中崎敏
○中崎委員 大體私の論議は國民所得をスタートにして始めたいと思つておりますが、それではその問題については、いずれ數字が出てからのことにしたいと思います。この國民經濟の基礎の上に税金がとられるのでなければならぬわけでありますが、この國民經濟の二十二年度の見透しと、それから二十一年度の結果とについて大藏大臣にお尋ねしたいと思います。言いかえますと、まず物資生産配給の面から見たところの二十一年度の結果と、二十二年度の見透しについて御説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=126
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127・石橋湛山
○石橋國務大臣 御質問どの範圍かはつきりしませんが、數字に關する問題でありますから、今ここで急に言われても御返答はできかねます。ひとつこれは調べてからお答えをいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=127
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128・中崎敏
○中崎委員 と申しますのは、大體におきまして、これは國民所得をはかる上におきましての、一つの大きな資料となるわけでありますので、まず國民所得が出てくれば、これを大體において、にらみ合わせはつくものと思うのであります。ごくわかりやすく申し上げますと、たとえば石炭なら石炭の面において、二十一年度と二十二年度の上において、どういうふうになるのか。あるいはこれを基礎原動力としまして考えたときに、そのほかの主要物資がどういうふうになるのか。あるいはまた、今度は量の面において見たわけでありますが、價格の面においては、二十一年度と二十二年度においてどういうふうになるのか。こういうふうなことについてお尋ねしたいと思うのでありますが、これについての問題は、大體安定本部の長官をかねておられますところの石橋さんから、御説明が聽けると思いますので、これについてそのアウトラインでもよいわけでありますが、大體において經濟の全般を知り得るような統計としての資料を、明日でもできればお願いしたい。こう思うのであります。
さらに物價の問題についても同じように考えるわけであります。物價はわれわれの通念から考えてみますと、昨年の全般を通じてみたよりも、今年の一月から三月、殊に本年二十二年度の豫算の實行上においては、相當大きな値上りがするのではないかというふうに考えるわけでありますが、少くとも昨年度の豫算が編成される當時におけるところの一般の物價と、それから今年の豫算を審議する現在の状態、豫算と申しましても、これは國家歳出の裏づけとなるところの租税收入でありまして、その根本となるものは、國民のこうした生活上の物價、これは同時に大きく考えてみなければならぬわけでありまして、これはこうした物價の中にあつて、國民の所得はどういうふうになるのかということを考えるところの大きな資料でありますので、物價という問題についての全體の二十一年度、二年度の見透しについて、ひとつ御説明願いたいと思うわけであります。これにつきましては、大藏大臣は本年の一月から三月までの間においては、相當の値上りを認めてはおられますが、大體その値上りの範圍がどの程度のものであるのか。さらに大藏大臣はこの二十二年度の豫算執行の上においては、大きな値上りは考えておられぬわけでありますか。言いかえますと、二十二年度の豫算實行の上においては、財政の面において、さらにまた金融の面において、萬全を期しておるがゆえにインフレは起らないのだ。インフレはこの財政面と金融面において起るのであるというふうに言うておられますが、これらの點を考慮する上におきまして、この二十一年度豫算編成當時の價格の状態と、それから現在の價格の状態とを比較勘案してみたいと思いますので、これの資料をも併せてひとつ御提供願いたい、こう思います。それで以上のような根本問題を考えてみませんと、はたしてこの租税が妥當であるかどうかというふうな問題も簡單にはわからぬわけでありますので、根本的な問題は、それらの資料を得た上にするといたしまして、次に今度はこの財政の面と關連しましたところの金融の問題についてお尋ねしますが、本年度の金融計畫をどういうふうに立てておられるか。たとえば豫算の面からするところの金融の計畫と、それから單に金融機關を通じて直接金融機關の自主的立場においてなすところの資金計畫という面について、どういうふうに考えておられるかを、これは數字を示されなくても、大體の見當をひとつここで御説明願いたいというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=128
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129・石橋湛山
○石橋國務大臣 これは非常に大きい問題といいますか、ちよつとお答えしにくいのであります。大ざつぱに申し上げますれば、今までも隨分繰り返したと思いますが、昨年以來貯蓄運動も展開されておりまして、今年の一月、二月あたりは、少し豫定のような成績が上らなかつたようでありますが、しかしこれは大藏省とか私が勝手に考えておるのではなくて、日本銀行を初めとし、實際の市中に活動しておる金融機關の意見及び先生等の計畫によつて大體の見當をつけておるのであります。むろん今後變化がないとは限りませんが、一應目標は月百億圓程度の新預金を期待しておるわけであります。そこでそれを大ざつぱに申しますと、半分ばかりを――半分にならぬかもしれませんが、數字をここにもつておりませんが、財政資金、それから半分あまりを産業資金というふうに考えておるのであります。しかし産業資金の方は、そのほかに實際に生産が起る、そしてその目度がある。たとえば石炭なら石炭というものは三千萬トン必ず生産ができる。それで今度も御承知のように賃金問題がありまして、一、二、三月で約十五億圓ぐらい資金が賃金支拂のために要るわけであります、これは金融を一應してやる。そういうものは復興金融金庫から出そう。これはもうそれによつて生産を殖やす、こういうわけでありますから、それによつて出す、こういうふうに考えております。つまり原則としては貯蓄の範圍において産業も財政も賄う。ただし産業については、あるいは財政面に現われる場合もあるかもしれませんが、大體産業については増産の目途をもつて計畫の立つものについては、一時日本銀行から金融をする場合もある。結局その半面から言えばこうなるでしよう。勞力及び設備等を動かし得ることの明白な場合は、いくらか時間のずれは起りますけれども、物の裏づけがあるわけでありますから、そういうものに對しては必ずしも貯蓄の範圍に限らなければならぬ、こういうことはない。そういう考え方で相當彈力性をもたせていく、大體はかように考えておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=129
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130・中崎敏
○中崎委員 月百億の新圓預金が吸收し得るとして、約その半額、五十億圓が財政資金に豫定されておると言われておりますが、自由預金を財政資金として使われるという面におきましては、まずわれわれは考えられますのは、公債としてこれを買わせるという場合と、さらに日本銀行より借入れて、政府が産業面に必要な範圍において使われるということに大體なるわけであります。その中で復興金融金庫に必要な出資の金額というものは、これは大體において自由預金でなしに、政府が租税その他のものをもつてやられるという豫算の建前になつておりますので、早晩これはそういうふうになるかと思いますが、今のほかに政府は一時借入なり、あるいは大藏省證券をもつて發行される面にも、この金が一時利用されるというふうに考えておりますが、それにしましても月五十億、六百億圓の金というものは豫算面のどこを探してみましても、民間の自由預金が財政資金として用いられるというふうに考えられないわけでありますが、これについてざつとした數字的な明細を示していただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=130
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131・石橋湛山
○石橋國務大臣 ちよつと今私の言い方が惡かつたかもしれません。實はここに數字をもつていないのですが、第一四半期でありましたかの計畫として、大體さようなことであります。あとずつと一年中通じてそれだけ財政資金を使うという意味ではありません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=131
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132・中崎敏
○中崎委員 それでは百億というのは第一四半期の……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=132
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133・石橋湛山
○石橋國務大臣 今の計畫において第一四半期として月百億を豫定し、それをどういうふうにわけようかこういうわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=133
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134・中崎敏
○中崎委員 かりに、これは先の見透しは大藏大臣もつかぬと見えますのでまず第一四半期の計畫が月百億、都合三百億の豫定としてみますと、百五十億を三箇月において財政資金として利用される。それから百五十億が民間の産業資金となるという建前になるわけでありますが、私はこの月百億圓の自由預金というものはとうてい現在のような状態、殊に政府に對するところの不信の状態においては、この一箇月百億圓の預金というものは集らない見透しをもつておるわけであります。そうするならば、まずこの財政資金の方面には、何とかして月五十億のものが充てられるとしても、殘る民間にまわされるところの自由預金の範圍というものは、まずないものだというふうに考えておるわけでありますが、そうしてみたときにおきましては、この産業に活を入れて、そうしてこの資金を使うというこの經濟復興の面において、大きなる力をもつておるところのこの産業資金というものが、とうてい賄えないというような實情になりはしないかというふうに考えるわけでありますが、この點についての確たる責任のあるところのお見透しを御説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=134
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135・石橋湛山
○石橋國務大臣 さつきも申したように、月百億圓は、これは目標であります。それを目標として各金融機關が今努力をする、こう言つて申し合わせておるわけであります。ですからお話のように經濟界の動きによりましては、あるいはその目標に到達し得ない場合が起らないとは限らない。しかし今のお話の中にもあるように、その場合にせつかく活動し得る産業をどうするか。こういうことでありますが、活動し得る産業ならば、資金の供給をしていつても差支えないのでありまして、必ずしも新圓預金の範圍でもつて全部賄わなければならぬ、こういうことではないと思います。ですからそういう場合が起つて、せつかく活動しておる産業が資金がないために動かなくなるということがあるとすれば、それはさつき石炭の場合に申し上げたように、一時金融をしておく。そうすれば生産が起るのでありますから、その次の期にはそれが囘收される。もしくは新たな預金となつて現われる。こういう動きをいたすはずでありますから、どこまでも生産と見合つて、生産が期待できるという場合であるなら、これは金融の措置はすこぶる容易だ。こう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=135
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136・中崎敏
○中崎委員 ただいまの説明と、大藏大臣がこの九十二議會における豫算總會においてなされたところの説明との間に、大きなる開きがあるのではないかと思うわけであります。と申しますのは、豫算總會におきましては、大藏大臣は、わが國の現在の經濟の状態というものは、ただ金を事業界に投じたのみで解決するというふうな、そう簡單なものではない。それで事業資金というものを出す場合においても、インフレという問題も考慮に入れて、そうしてこの自由預金の範圍をもつて事業資金を賄うということを原則とするということを言明しております。ところが今の話によりますというと、産業の活動の實際の上において必要なところの金ならば、これはあえてインフレになつても、通貨が増發されても構わないという言い方ではないかと思いますがこの點において根本的な建前に違いがありはしないか。言いかへますると、現在の金融機關の方面において月百億圓の自由預金の豫想をしておる。ところがこれが五十億圓政府に使われる。そして五十億圓だけが民間の貸出の、事業方面に使われるという問題は、かりに五十億しかできなかつたという場合には、五十億は全然貸出ができない。ところがこれに必要な金は事業再開のためには出すということを言つておられる。そうするとやはり新しい通貨を發行せねばならぬではないかということになるのでありますが、この點について、この答辯の不一致をもう一度説明してもらいたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=136
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137・石橋湛山
○石橋國務大臣 少しも不一致ではないのでありまして、前からその通りに言つて、今日も同じように言つておるのであります。ただ通貨を出しさえすれば生産が囘復するということはないのであります。よく通貨を出しさえすれば生産が囘復するように私が申したと言われますが、それはそんなことは言つたことはありません。今申し上げましたのはそういつた意味ではなく、つまり通貨を出しさえすれば、生産が囘復すると申し上げたのではなくて、御質問の中に、資金がないために生産が非常に阻まれる場合が起るのじやないか、今の新圓預金の範圍でやるということであれば、萬一それが五十億しかない、そうして財政資金に五十億要るという場合には産業資金というものはなくなつてしまう。そうすれば産業というものは、せつかく活動しようとしてもできないじやないかという御質問でありますから、それはもう産業が活動するということが前提なのでありますから、そういう場合には、これは一時日本銀行が資金を出しても一向差支えない。なぜかと言うと、それによつて産業が活動する。出すから産業が活動するのではなく、産業が活動する食い物として出すのでありますから、それは差支えない。これはもう私昔からの意見で、少しも變つておりません。そこのところが、今日の日本の經濟が、普通の不景氣によつて失業者が現われたり、設備が遊んだりしておる場合であります、これは政府の消費をただ殖やす。言いかえれば、購買力をそこへ注ぎこみますと、そうすると生産の再開ができるのであります。これは第一次世界戰後、世界が不景氣になつて、非常な失業者が現われた場合はそれであります。ドイツの第一次世界戰後の、二十九年以後の不景氣の場合、つまりナチがやりました經濟政策というものは大體それであります。今日、そういう状況では日本はありません。ですから、あの時のように、ただ購買力を出せばいいということは絶對に言えないのであります。しかしそうかといつて、日本にはやはり遊休設備もあれば、遊休勞力もあるのでありますから、これを大いに動かすことができる範圍においては、やはり第一次世界戰後の不景氣の場合と同じ政策をとつてちつとも差支えない。そういうことを申しておるわけであります。それで、今の新圓預金がどれだけできるかということは、これは先のことでありますからわからぬ。ただ市中の、實際に金融業に從事しておる專門家たちが、自分の店の窓口から見た状況によつて判斷をしておるのでありますからある程度それに信用を置いていいかと思いますが、しかしこれは何がしかのはずれがないとは言えません。しかしその場合には、その通貨はどこにいくかと言うと、これは退藏されるか、あるいはまたその場合の經濟界の状況でそれだけ動いておる。すなわち預金にまわつてくることができない事情が何かあるのであります。ですから、その場合には通貨を補つて、すなわちお話の産業の活動に支障のないようにしても、これはその場合にいわゆるインフレとかなんとかいう働きはなさないものと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=137
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138・中崎敏
○中崎委員 この問題は、われわれが今日まで、新聞の面において、あるいは大藏大臣から説明を受けた範圍において納得がいかぬ點がありますので、もう一度繰返しますが、大藏大臣は豫算總會におきましても、あるいはまた金融機關を通じて新聞に公表された範圍におきましても、今後における事業資金は原則として新圓預金の範圍をもつて賄う。新圓預金の中の一部は國債の引受け、その他の國家財政の用に充てさす。そうして他の一部をもつて事業資金を賄わせるのだ。ただしこの場合におきましても、これは復興金融なんかを通じて例の豫定された範圍の資金は石炭その他の上に出されるということは當然豫想し得るわけでありますが、その局限された範圍において事業資金を出されるということを言つておられる點から見まするというと、今みたように、事業資金に實際に必要なものはどしどし出すということと矛盾する。一致しない。こういうことを私は言うわけでありまして、この點についてもう一度説明を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=138
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139・石橋湛山
○石橋國務大臣 これは同じことを繰返すことになりますが、今のお話の中に、原則としてと第一にあります。ですから原則としてはそうしたい。そうするつもりであります。しかしながらあなたが假定をして、もし豫定通りの貯蓄ができなかつた、貯蓄はできないんだ、しかしながら産業活動はここでもつてやつているのだ。こういう假定をして御質問になりますから、その場合にはこうできると言うので、これはちつとも私の意見と矛盾はしておらないので、今までも常に繰返して申し上げておることだ。こう申し上げておるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=139
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140・中崎敏
○中崎委員 假定に對するお答えだとすれば、當然大藏大臣の言うことに食い違いがある。こういうことが言えるのであります。言いかえますと、百億の預金を吸收することができればいいが、できないことは明らかに想像し得るが、その假定のもとに立つたならばこれは今度は事業資金には一箇月五十億必要なんだ。ところが、その五十億が新圓で賄えないという場合においてはどうされるかという問題なのですからその場合においては新しく通貨を發行して、いわゆる新圓の囘收されたところの預金でなしに、新しく通貨を發行して、そしてこれを事業資金に賄うということになるのだから、新しく通貨を發行しないという建前とは違いはしないか、こういうことを言うておるわけでありますので、どうも一向私は大藏大臣の説明が納得がいきませんが、この問題についてあまりかれこれ繰返しておつてもしようがありませんので、この問題はその程度にしておきたいと思います。
次に租税體系の問題についてお尋ねしますが、わが國の租税體系は、今日まで所得税を中樞としまして、營業税家屋税、それから地租これだけを大體その兩翼としてできておるところの體系であつたのでありまするが、今囘の税制改正によりまして、所得税を根幹としたところのものであつて、これらの三收益税というものは地方に委讓されるに至つたわけであります。理想から申しますと、所得税一本の租税體系というものは、これは理想的なものではあるわけでありますが、この徴收の方法において、また税率その他の方法において、きわめてこれが公正に公平になし得るものかどうかということについては、非常な疑問があるわけでありますので、これを補完するという意味において、名目的な財産税を設けられるところの考えはないかということをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=140
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141・石橋湛山
○石橋國務大臣 ちよつと今名目的財産税というその内容がわかりませんがただいまさようなことを考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=141
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142・中崎敏
○中崎委員 名目的財産税と申しますと、終戰後現在徴收中のいわゆる財産税というものはきわめて高率な沒收的意味を課するところの眞實の意味における財産を取上げるというふうな意味のものでありますが、財産の實體を枯らさないでおいて、いわばその收益のある部分に該當するものをとるというようなごく輕度なものでありまして、外國においてもこれは實際において行われておりますし、日本においてもこうした名目的な財産税をとるということは既に何囘も過去において論議されておるところであります。でありますので今日のごとく他の所得一本によつて税金をとるということは、實際においてきわめて困難なことでありますが、その實際の所得いわゆる動態の状態を調べるよりほかに靜態におけるところの状態、財産の實態を調べて、しかもその源泉を枯渇せぬという意味におけるところの三%ないし五%、重くても一〇%程度の課税をすることによつて、この所得税一本の缺點を補うというふうな考え方をされてはどうかということの御意見をお伺いしたいと思うわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=142
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143・石橋湛山
○石橋國務大臣 これはまあお話の中にもありましたように、そういう意味の財産税は過去において幾たびかうわさにのぼつたが、いつも實行しなかつたのであります。その理由は非常にこれはめんどうで困難な税でありましてややもすれば不公平に陷る弊がある税でありますが、これは少くも今日のように國民の財産の状態がむしろはなはだ不安定で、今までの財産税の納付が近いうちに終るでしようが、これが十分片ずかない。それから補償打切り問題にからみまして、會社の整理、金融機關の整理というものも、まだこれから行われる、こういう時期においては、殊にお話のような財産税を設定することは、時期を得たものではないだろうと考えます。これは將來さらにまた日本の税制を考える場合にそういう問題も取上げ得る時期はあろうと思いますけれども、ただいまのところでは、政府としては即座に實行するということを考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=143
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144・中崎敏
○中崎委員 今大藏大臣はそうした財産税は不公平であるというふうに言うておられます。私はこの財産の實體を調べることによつて、初めて公平な課税ができるのではないか。今囘のごとく三倍以上の大増税をやつておられます。ところが今日のごとくこうした浮動の状態において、こうした思い切つたところの増税というものは一面きわめて苛斂誅求に陷る。一面またこうした大きな大やみ師をそのまま放任しておくというような結果にもなりましてこれこそきわめて不公平な状態だと考えております。國民全體は敗戰後におきまして、きわめてみじめな状態に追いやられている。そうしているのにもかかわらず一面大きな苛斂誅求を強いられ一面において大きな利得者がそのまま見のがされるというような方法においてやられるということはきわめてわれわれは不滿足なものでありましてそういう意味においても、一應財産の實體を調べまして、その實體の調査の上に、その源泉を枯渇しないような意味におけるところの輕い財産税の徴收は必要ではないかと思うわけであります。そこで財産の所在を調べるということは、この前の財産税の調査によつてもきわめて困難なことでありますけれども、これを斷行してこそ初めて日本經濟というものは健全に進むわけでありますし、國民負擔の公平ということも期し得らるるわけでありまして、これは公平なところの所得税を徴收する上においても、ぜひともこれは斷行されなければならぬものではないかと思うわけでありますが、この點について重ねて大藏大臣の所信をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=144
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145・石橋湛山
○石橋國務大臣 社會黨で主張せられておるように、一度限りの財産税でありまするならば、財産の調査をまた去年政府がやりましたように、新圓の登録なり、とにかく新新圓と交換をするということで、そういうところまで當つて財産の調査をするということでかなりこまかい財産の檢査ができるでありましよう。しかしこれを年々やる低率な財産税とすれば、年々通貨の交換をするわけにもいきますまいから、そうするとどうもこの財産税というものは、今まで常によくないと言われたのは、目に見える不動産というようなものにどうしても税がかかつてくる。財産の中には相當隱れる部分が多くあるということで、殊に地所もちとか家屋もちとかいうものに、不當な不公平な租税負擔が農村などにそのためによけいかかるのじやないか、こういう憂えから賛成する者が少く、從つて日本でもしばしば話になつたにかかわらず今日まで實行をされなかつたのであります。その意味において、平時やる財産税というものは、理窟はなかなかいいのでありますけれども、實行の上においては、そう簡單なものでない。そうしてお話のようなふうに、ほんとうに財産を捕捉する、殊にやみとか何とかいう、今日のあの方から利得を得ているというような者は、所得税で捕捉することがなかなか困難であるということも、御指摘になるがごとく、お話のような財産税によつてもなかなか捕捉することはできにくいと思う。ですから一つの案として、むろん將來研究する價値はないとは言えませんけれども、今のところではそれによつて私は日本の國民の租税負擔が非常に公平になるというふうには考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=145
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146・中崎敏
○中崎委員 今のような問題は、これは國民の財産の實體調査の上においてきわめて困難でありますが、私は所得税を徴收する上においても、ぜひともこの問題に着手せなければならぬのじやないか。言いかえますと、社會黨が言いますように、もう一度新圓の何らかの處置をとらなければ、千百億、さらにその二十一年度の豫算の終る、大體五月見當になると思いますが、それまでには千三百億を突破するのではないかという豫想までされるわけでありますが、こうしたところの新圓階級に對して、何ら課税するところの手が打つてないということは、きわめてゆゆしい問題であると思います。これと同時に、換物によつて實際に多くの物を手に納めている者に對して、何ら課税の方法がないということも、きわめて遺憾でありますので、一時的の財産税あるいはまた先ほど言いましたような恒久的な財産税のいずれを問わず、この際思い切つたところのこうした財産調査の措置をとられるのでなければ、とうてい公平な負擔は期し得ないばかりでなく、一面また大きな所得税などの税收をねらつておられますけれども實際においては經濟を混亂に陷れるばかりでなく、國民全體を塗炭の苦に陷れるところの苛斂誅求の税制の改正となつてくるのではないかということを考えますので、これは所得税を新しく徴收される問題を併せて考慮しながらこの際思い切つて新圓に對する處置、さらにまた物に對するところの嚴重なる申告、あるいは調査の方法によつて、その源泉を突きとめるということによつて初めて公平な負擔が期し得るのではないかと思いますので、この點について、財産税はともかくも、新しい所得に對して公正な負擔を課す意味においての非常措置をとられる考えはないかどうかをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=146
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147・石橋湛山
○石橋國務大臣 しばしば申し上げている通り、ただいま御趣意のような非常措置をとるつもりはございません。そこへいきますと、あるいは意見の相違になるかもしれませんので、今度の總選擧による國民の意思によつて、お述べになつたような租税をこの際とるがよいという國民の意思が反映したならば、その時の政府がなすべきであると思います。ただいまにおいては私の考えではこれはなし得ない、なしてはならぬことだ、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=147
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148・中崎敏
○中崎委員 意見の相違と言われますとそれまででしようが、總選擧によつてこれを決定するということについては、もちろん異議はありません。國民の意見によつてやるということについて異議はありませんが、しかしいやしくも大藏大臣たるものが、その職責に關するところの重大問題についての意見を問われたのに、總選擧によつてやるというふうなことは餘分のことではないか。言いかえればその日の職責をどうしてはたすかということを私はここに熱心に論議しているところでありまして、投票の結果がどうなるかということをあえてここでわれわれは研究しているものではありません。さらにまた大藏大臣は、はたして國民の意思が石橋さんそのものにあるか、あるいは自由黨にあるのかどうかということについて、大きな自信をもつているように考えられますが、選擧の面においては、石橋さんが財政經濟を擔當しているという立場においてというよりも、むしろこの際大藏大臣をやめて裸一貫の石橋として戰われるだけの信念があれば、今の言葉は受入れますけれども、まだ遺憾ながら今の日本國民は事大思想によりまして、權力の前には依然として長いものに卷かれろという頭が多分にあるということを、短い政治生活を通じて相當私は感じているものであります。言いかえれば、眞の民主主義に對しては、國民はわれわれの想像しているよりも進んでいないということが言えるのではないか。また自由黨の言われる通りに、選擧法の改正までやつて自己の勢力を温存せんとして汲々としている。國民の眞の正しい判斷によろうとするならば、何を好んで一週間も日にちがないのに、選擧法の改正をやらなければならぬか。さらにまた金の面においても、自由黨はきわめて大きな金をもつてこの選擧に臨むということが言われております。かくのごとく公正なる選擧の妨害されるような事情のもとに、はたして國民が思うがままを現わすかどうか。石橋さんの考えている通り、國民が眞に自由黨に味方するものとするならば、過般しばしば新聞界における輿論調査の結果に現われた四五%の比率と二五%の比率とが明らかにこれを示しているのではないかと思うのであります。選擧というものは一つの形におけるものでありまして、國民の良心がそのまま率直に現われるものではありませんので、この點をもつて、はたして石橋さんの今言われるように、新圓をどこまでも追求せずにほつたらかしにする、あるいは物の面をそのままほつたらかしにする、それを國民が信用しまた信頼してやつていくものであるとばかりは考えられないのではないか。こういうように考えられますので、今のような言葉は少くともこのような財政問題を論議する上においては、口にしてもらいたくないということを、餘分ながら申し上げておきます。
それから日本銀行法の一部を改正されまして、今度銀行券の發行制度に一部の變更を加えられるというふうに考えられるわけでありますが、これについてお尋ねしたいと思います。まず石橋さんは通貨の發行に對して制限を設けられるというふうに言うておられるわけであります。あるいはいわゆる最高發行限度をきめられまして、その運用のもとに、さらに制限外の發行に對しては一定の率をもつた課税をするというふうに考えておられるように思いまするが、それに對する御構想について御説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=148
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149・石橋湛山
○石橋國務大臣 今日既に衆議院の委員會を通過したのでありますが、別段新しいことではないので、最高發行限度をきめるということは、今までは大藏大臣がこれをやることになつておつた。それを今度は大藏大臣だけではなく、適當な審議會を設けて、その審議會の議に付してこれを内閣がきめる。こういうふうな愼重な方法をとつて今後の通貨政策に誤りのないことを期した。それからある限度をつくりますから、從つて限外發行というものもあり得るわけである。その限外發行制度は以前日本銀行で採用しておりました方法にもどつた。戰時中その點を非常にルーズにしたのを元にもどしまして、十五日までの發行に對してはまず大藏大臣の承認を受ける。それ以上になりますと審議會の議を經なければならぬ。それに對してそれぞれ適當な限外發行税を課する。そうして通貨の調節をしようというわけであります。金本位にもどつたのではありません。以前の日本銀行の通貨發行制度は金本位であつたのでありますが、金本位ではなく、管理通貨制度の最高發行限度をきめるということだけが戰時以來の新しい行き方でありまして、その他はかつての紙幣發行制度にもどした、これだけのことであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=149
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150・中崎敏
○中崎委員 説明で大體の趣旨はわかりましたが、大藏大臣はこれが實施に從つて、大體通貨の最高額の限度をいくらにされる豫定であるか。そこらの點について御説明願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=150
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151・石橋湛山
○石橋國務大臣 これは法律案が通りまして、それからそれによつて審議會を設けてきめるべきことでありますから、その時期の状況によつて、いろいろ評議さるべきものと思います。ただいまのところで、いくらの最高限度をきめたらいいかということは、まだ私は考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=151
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152・中崎敏
○中崎委員 大體最高額發行の限度をきめられるからには、これが現在の金融面において、政府の一方的事情による銀行券の増發はなるべく阻止したいというところの氣持と、さらに金融界方面において、できる限り通貨の不統制な發行に終るようなことを食い止めようというふうな重大なねらいをもつた法案であり、構想であるように考えておるわけであります。そうしますと大藏大臣がこういう法案を提案されまして、結局それがどこへいくのかわけがわからぬというふうな行きあたりばつたりの方針をもつておられるとも思いませんので、大體においての構想は千億で止めるのか、あるいは千百億で止めるのか、千二百億で止めるのか、そこらあたりの檢討がつかぬことはおそらくないと思います。もちろんあの規定によりまして、通貨審議會にかけるべき事項もあるわけでありますが、これは通貨審議會がどういうふうな意見をもつておるにかかわらず、大藏大臣としては、自分の立場上、自分の責任において、自分としてはどういうように考えておるというくらいのことは、この際言えるのではないかと考えております。また實際にこれを實施されるのが一年も二年もさきに實施されるのではなくて、ここ何箇月の間に實施されるねらいをもつてやつておられるのではないかと思いますので、その點についてもう少しつつこんだところの御説明が願いたいと思うわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=152
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153・石橋湛山
○石橋國務大臣 これはさつきもほかの問題で申したように、今財産税を納付しており、あるいは戰時補償の問題をこれから片づけるというわけでありますから、なかなか通貨の發行限度というものについても見透しは容易でないと思います。從つてここでいくらいくらということを申し上げぬ方がいいと思います。これは審議會がいつ發足し得るかしれませんが、それまでの間に大藏省としても十分の研究をいたしそうして間違いのないと思うところに定めていきたいと思いますが、今からそのときのことを豫想していくらいくらと言つたところが、結局ただ今想像する見當ということになりまして、何らの利益のないことでありますから、申し上げない方がいいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=153
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154・中崎敏
○中崎委員 いやしくも一箇年間の豫算をおつくりになつてここに出されるのに、そのうちのわくのある部分である金融の面においてその見透しのつかぬということはないはずだと思います。またそうした大藏大臣ならば、われわれはこの際望んでない。少くともこうした大きな増税を含んだところの税制案を審議するのに、そうしてまたそれに必要なるところの事項を審議するのに、そうしたことが必要がないというふうな言い振りは、決してわれわれの歡迎するところではないのでありまして、この點について、とにかく自分の見透しはこうだ。かりにこれを五月に實施するとすれば、大體どの見當あるいは六月になればどの見當というくらいの、およその見透し、言いかえればこの財政と關連したところの金融の動きによつて、大體きまるのではないか。もつともこのうちには、自由預金の吸收というような大きな問題がありますが、かりに自由預金が豫定通りに實行し得るものだとするならば、今度は一體通貨はどの程度に押えられるかということが、當然考え得られるわけでありまして、素人でない以上、そのくらいのことは責任をもつて言えるのではないか。しかしその際においてある種の變更が實際の状態においてあり得るということは、これは見透しの違いであつて、われわれはあえてそれをとがめるものではありませんけれども、少くともその見透しはどういうような状態にあるかということくらいはわかるはずだと思います。その範圍におけるところの大藏大臣のお見透しをひとつお聽きしたい、こう思うわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=154
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155・石橋湛山
○石橋國務大臣 これは大藏大臣として責任あればあるほど、申し上げかねるのであります。もし私が想像し得られるとおつしやるならば、むろん皆樣の方でもそれぞれ專門の知識をもつておられるのですから、いろいろ御想像がつこうと思いますが、しかし通貨審議會で審議してきめよう。殊に非常にデリケートな金融の面について、ここで大藏大臣としてとやかく自分のただ推測に過ぎないものを申し上げることは、かえつてよくないと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=155
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156・中崎敏
○中崎委員 石橋さんの今のそうした氣持はよくわかりますので、この點についてはこれ以上追究をしません。
それから今の問題に關連して一、二お尋ねしたいのですが、當然今の制度が實施されるようになりますると、今度は制限外の發行税がここにとられるわけであります。この發行税は今までは日本銀行券の納付金という形において、豫算に計上されておつたように思いますが、これは當然制限外の發行税の形において豫算の上に組替えられなければならぬ。こう思うわけでありますが、その點について大藏大臣の御意見をお聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=156
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157・石橋湛山
○石橋國務大臣 これは實は日本銀行のいわば暫定的な改革なのでありまして、さしずめ通貨制度だけに對してはかような手を今から打つていきたいと考えておりましたが、これが本議會にはたして間に合うかどうかということに、多少疑念がありまして、そんな關係で何も法律の通過を豫想しておりません。しかしこれは別段豫算を組替えなければならぬというほどの大きな狂いはないのではないか。もしあるとすれば歳入が殖えるわけでありますが、そのために豫算に非常な響きを來すとは考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=157
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158・中崎敏
○中崎委員 少くとも今まで日本銀行からの銀行券の發行によるところの利益を含めたものは、納付金の形において豫算に計上してあるわけであります。今度はそうした納付金の形のものが制限外の發行税という別個の税金の形に變つてきておりますので、これを日本銀行であるにせよ、一つの税金として取上げるべきものでありますので、これは當然議會にかけるべきものであり、さらにまた納付金の形が變り、その内容が變つておるという點においてこれは豫算的措置をとらるべきが當然のことと思うわけでありますが、この點については、今見透しがつかなければ、次の特別議會にでも提出される用意があるか、どうかを、あらためてお尋ねします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=158
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159・石橋湛山
○石橋國務大臣 發行税でありますがそれは日本銀行法の改正の中にちやんと法律としてできるわけであります。ですから法律手續としては、それでいいのだと私は思います。それから歳入の方については、ことしの豫算には、たしか納付金はなかつたかと思います。ちよつと今記憶しませんが、それはあつたかもしれません。ありましても、納付金がなくなれば、それは歳入缺陷になつて出てくる。そのかわり豫算の中のどこかに發行税が出てくるということになります。私はそういうことの手續はよく知りませんが、もしもあとで豫算の修正をする機會があれば、豫算の修正をなし得ると思います。あるいはしなくても、結局この法律によつて起ることでありますから、當然の變化として差支えないものかと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=159
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160・中崎敏
○中崎委員 今の點はさらに豫算技術の問題でありますので、石橋さんの方でもとくと研究していただきましてそうして、そのままでいじくらないでいいものならそれでいいし、あるいはいじくるべきものであるならば、そういうふうにお考えを願いたい、こう思うわけであります。これは今まで税制改革案がもう議會において通つたというような場合ならばいいのですが、ちようど片一方においては、この議會において日本銀行法の一部改正によつて新たにこの項目の上におけるところの大きな變化がある。その最中においてこの税制の問題と、國家の歳入の問題を論議するのでありますから、同時にこの際において、これを變更する必要があるならば、そういうふうにやつてもらうべきであるし、もしそれをやらないでいいというならば、それはやらぬでもいい。そこで少くとも私は金額の面においては違いがあるのではないか。言いかえますと、今度は制限外の發行税をどういう税に定めるかは明らかでありませんが、その率のとり方によつては、當然交付金の今豫算に計上してあるところの收入と、それから今度發行税に對するところの收入とが、金額においても違い得るのではないかこういうふうに考えられますので、この點について、ちようど同じ金額と言われるならば、これは別でありますがこの點についても、さらに具體的な研究を願いたいというふうに考えますので、私の質問はきようはこれで打切りますが、明日引續いてまだ相當ありますからお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=160
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161・奧村又十郎
○奧村委員 もう五分ほど私の質疑が殘つております。大藏大臣にお尋ねいたします。最近どぶろくの密造が全國ほとんど到るところにひどいのであります。大都會の眞中でも公然とどぶろくが賣られておるというふうな状態であります。從來税務官吏が非常にしつかり取締つておられて、一時は山奧でなければ密造はなかつたのでありますが最近これは公然とやつておられるようなことでありますが、今度の酒の値上げによつて、また密造がひどくなると思うのでありますが、これに對する對策をどういうふうにお考えになつておりますか、お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=161
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162・石橋湛山
○石橋國務大臣 これはなかなかむずかしい問題であります。そこで酒精の釀造をもう少し殖やしたい。あるいは造石高を殖やしたいということも考えておるのでありますが、これは御承知のように、いろいろの關係でむずかしくなつておるのであります。ただ埼玉縣で試驗的に供出が一〇〇%以上超えた村に對しては、ある條件のもとにいくらか委託釀造といいますか、よけい米を供出さして、そのうちの一部分を酒につくらしてみるというような試驗的なことをやり得るような段階になつておりますが、そんなことで、もし造石高でも殖やし得れば、お話の密造もこれを抑え得るのでありますが、現状においては、まだ實際において非常に困難であります。しかしそうかといつて、放つておくわけにもいきませんから、むろん税務署としては、できるだけの取締りはやろう。こういうふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=162
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163・奧村又十郎
○奧村委員 ただいまお話の埼玉縣に試驗的にやられたことは、いずれ關係方面の諒解を得られたことと思うのでありますが、これは一つぜひ全國に及ぼして、供米完遂農村における委託釀造は必ず早急に實現するようにお願いいたしたいと思います。これは税制調査會においても答申案の中に附加えてあるわけでありますから、お願いいたします。それから酒類公社をつくるという話が昨年の暮からよりより出ておるのでありますが、これに對して當局は今どういうふうにお考えになつておられますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=163
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164・前尾繁三郎
○前尾政府委員 獨占禁止法のためにどうしても現在の大日本酒類販賣株式會社その他の統制會社を解散しなければならないことになつてまいりました。しかし單なる切符制度では將來の配給はとうてい成功し得ないとわれわれ考えておりますので、それに代るものとして配給公廳というような行き方について、われわれも酒類についてはその一つに加えたいというようなわけで、關係方面と隨分折衝いたしておつたのでありますが、今議會には間に合いません。と申しまして、獨占禁止法のために、今月一ぱいで日酒販の解散その他をやらなくてはならぬということに相なりますと、ついその變り目におきまして非常に不安でございます。ただ獨占禁止法か何かの附則によりまして、一箇月ごとに限つて從來通りでいくというような規定ができるらしゆうございます。その中に酒類も入れていただくことに話もきまつております。從いまして、次の議會までは現状のままで繼續するというようなことになると思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=164
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165・奧村又十郎
○奧村委員 それではただいまの酒類公廳の構想は獨占禁止法案に關係するのでお考えになつておられる。從つてこの公廳ができるといたしましても、酒類專賣制のようなものをお考えになつておるのではない、こういうふうに解釋してもよろしゆうございますか。
それから時間の關係上ついでにもう一つお尋ねいたしたいのですが、かねて局長に要望しておりました水産業に對する酒の特配であります。これは魚百貫供出に對して油をどれだけ米を二升五合というようなことになつておりましたが、農村の供米に對する酒の特配と比べて、魚の供出に對する酒の特配というのはほとんどないのであります。これはぜひ魚百貫に對してせめて五合でも特配をしていただいたら非常に効果があろうと思います。漁場においては大漁があれば赤旗を立てて歸る。そのときにはお神酒は絶對附きものであります。そのお酒がないので、從つて魚を横流しして酒と交換する、こういうことになつておりますので、くれぐれもそういうふうな供出の魚に對する酒の特配ということをお願いしてありましたが、これはそういうふうにやつていただくことになつたのですかどうですか、お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=165
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166・前尾繁三郎
○前尾政府委員 酒類の配給公廳は、專賣の前提ではもちろんございません。現状におきましては、やはり相當強固な統制をやつていかなければ、圓滑なる配給ができない。また財政收入も確保できない。それで將來自由經濟にしてもいい時代がまいりますまでの間の過渡的の措置として公廳を考えておるだけのことでございます。それから漁業に對する特配用の酒につきましては、最近産業特配があまりに一律に從來の既得權のごとくなつておりますので、報奬制がかなり無視されてきております。で、全般的に特配の行き方について、もつと報奬であることのはつきりするように考え直すべき問題だというので、研究させております。その意味からいたしますと、漁業に對する酒の特配ということも供出その他について實効のあるような行き方でいきたいと考えております。そのときに漁業についても十分考慮いたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=166
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167・奧村又十郎
○奧村委員 最後に、先ほど政府委員の方に銀行預金の内譯として、自由預金のうちの定期預金とその他の預金とこれを區別して資料をいただきたいという要求をいたしたのでありますが、その統計が今とつてないというお話であります。國民の貯蓄思想と申しますか、貯蓄觀念の程度を見たいと思うと自由預金でもつて定期預金ができておるかどうかということが一つの有力な材料になると思うのであります。これについてはひとつぜひ調べたいと思いますので、この際要求しておきます。これをもつて私の質問は終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=167
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168・石橋湛山
○石橋國務大臣 ちよつとさつき中崎さんに私の言つた數字が間違つておるから訂正いたします。二十二年度においては財政資金として月二十億圓、産業資金として月六十億圓を見こみ、同時に封鎖預金の減少するものが約二十億くらいあるだろう、それを合計いたして大體月平均百億圓と見たのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=168
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169・金光義邦
○金光委員長 本日はこの程度に止めまして、明日は午前十時から開會いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後六時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00119470319&spkNum=169
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