1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
所得税法を改正する法律案(政府提出)(第二五號)
法人税法を改正する法律案(政府提出)(第二六號)
特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)(第二七號)
土地台帳法案(政府提出)(第二八號)
家屋台帳法案(政府提出)(第二九號)
地方税法の一部を改正する法律案(政府提出)(第三〇號)
地方分與税法を改正する法律案(政府提出)(第三一號)
相續税法を改正する法律案(政府提出)(第五三號)
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昭和二十二年三月二十二日(土曜日)
午前十時四十七分開議
出席委員
委員長 金光義邦君
理事 神田博君 理事 宮前進君
理事 中崎敏君
安部俊吾君 菊池長右ェ門君
厚東常吉君 綿貫佐民君
神戸眞君 菅原エン君
八木佐太治君 加藤シヅエ君
松永義雄君 川島金次君
石崎千松君 木下榮君
三月二十日委員稻村順三君辭任につきその補闕として加藤シヅエ君を議長において選定した。
三月二十二日理事稻村順三君の補闕として中崎敏君が理事に當選した。
三月二十日相續税法を改正する法律案(政府提出)の審査を本委員に付託された。
出席政府委員
内務事務官 柏村信雄君
大藏事務官 前尾繁三郎君
大藏事務官 伊原隆君
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 河野一之君
大藏事務官 浦邊喜久造君
大藏事務官 忠佐市君
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本日の會議に付した議案
所得税法を改正する法律案(政府提出)
法人税法を改正する法律案(政府提出)
特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
土地台帳法案(政府提出)
家屋台帳法案(政府提出)
地方税法の一部を改正する法律案(政府提出)
地方分與税法を改正する法律案(政府提出)
相續税法を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=0
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001・金光義邦
○金光委員長 會議を開きます。お諮りいたします。理事稻村順三君が去る二十二日委員を辭任されましたので、これは先例により委員長において理事を指名するに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=1
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002・金光義邦
○金光委員長 それでは中崎敏君を理事に指名いたします。
去る二十日本委員會に審査を付託されました相續税法を改正する法律案についても、審議を進めたいと思います。まず政府の説明を求めます。前尾政府委員。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=2
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003・前尾繁三郎
○前尾政府委員 本委員會に付託せられました相續税法を改正する法律案について、提案の理由を説明いたします。
本會議において説明いたしましたごとく、日本國憲法の施行に伴う相續制度改正の大勢、その他現下諸情勢の推移に即應いたしまして、相續財産に對する課税の整備及び強化をはかるとともに、贈與財産に對する課税を擴張するため、新たに贈與税を創設し、併せて納税について申告納税制度を採用することとし、本法律案を提案することといたした次第であります。
次に改正の内容について説明いたします。まず相續税について申し上げますと、今囘の改正の要點は、第一に、日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に即應し、現行の家督相續と遺産相續との別による税率の區分は、これを廢止することとし、被相續人と相續人、受遺者等との親疎の別に從い、新たに三本建の税率により課税することといたしたのであります。すなわち相續人が配偶者または直系卑屬の場合には、第一種の税率最低二萬圓以下の金額百分の十から、最高五百萬圓超の金額百分の六十に至る税率を適用して、最も輕い負擔に止めることとし、相續人が直系尊屬または兄弟姉妹である場合には、第二種の税率を適用して、次に輕い負擔を受けしめ、相續人がその他の者である場合には、第三種の税率を適用し、最も重い負擔に任ぜしめることとしたのであります。從前の相續税法による負擔と比較いたしますと、總じて現行の家督相續税の場合に比し若干重く、遺産相續税の場合に比し若干輕くなつております。
第二に、相續税の計畫的の負擔輕減の防止等課税の適正を期するため、相續税の課税にあたつて相續財産とみなすべきものの範圍を擴張整備することといたしました。まず、相續開始の直前になされた贈與でありますが、現行法においては相續開始前一年以内に被相續人がなした贈與に對して相續税を課税しておるのでありますが、今囘これを、相續開始前二年以内になした贈與にまで及ぼすことに改めるとともに被相續人の死亡により相續人その他の者が取得する生命保險金、退職手當金等のほか、新たに定期金の給付に關する權利を、相續財産とみなす等の改正をいたしました。
第三に、非課税財産の範圍をある程度限定するとともに、最近における物價騰貴の状況等に鑑みまして、非課税として取扱う金額の限度について、所要の調整を加えることといたしたのであります。すなわち、現行法においては、公益事業に對する贈與財産及び遺贈財産は、すべてこれを課税外においたのでありますが、今囘はその相手方を限定し、府縣、市町村等に對する分は、全部課税外といたしましたが、一般の公益事業に對する分は、一定額以下の金額だけを課税外におくことといたしたのであります。他面被相續人の死亡により、相續人その他の者が取得する生命保險金及び退職手當金等につきまして、從來は各別に五千圓までの金額を課税外におきましたが、今囘はこれを改めまして、被相續人の死亡により相續人その他の者が取得する郵便年金等をも含めて總額三萬圓までの金額については、課税しないことといたしたのであります。
第四に、從來の免税點の制度を基礎控除の制度に改めるとともに、扶養家族控除の制度を廢止することといたしたのであります。すなわち現行法におきましては、家督相續については二萬圓、遺産相續については三千圓の免税點を設けているのでありますが、今囘これを改めまして、一律に五萬圓の基礎控除を認めることといたしたほか、扶養家族控除の制度を廢止することといたしたのであります。
第五に、二以上の相續が短期間のうちに相次いで起つた場合のいわゆる相次相續に對する相續税免除の規定について所要の改正を行うことといたしました。すなわち現行法においては、最初の相續開始後七年以内に第二相續が開始した場合には前の相續に對する相續税相當額を全額免除し、第二の相續が七年を超え十年以内に開始した場合には、前の相續に對する相續税相當額の半額を免除することとなつているのでありますが、相續制度改正の趣旨等にも鑑みまして、第二の相續が最初の相續開始後五年以内に開始した場合に限り、前の相續に對する相續税相當額を全免することといたしたのであります。
第六に、延納の制度を合理化するとともに、物納の制度を擴張することといたしました。すなわち延納につきましては、現行法は、その税額が千圓以上である場合に、一律に七年間の年賦延納を認め、相續財産中不動産の價額が二分の一以上を占めている場合にはさらに十年まで延納期間の延長を認めているのでありますが、これを改めまして、相續税額が一萬圓以上の場合に限り、五年間の延納を認めることとしかつ延納を認める範圍は、金錢で一時に納付することを困難とする金額を限度といたしたのであります。また物納につきましては、現行法は不動産の價額が相續財産價額の二分の一以上を占め、かつ税額が千圓以上である限り、これを認めていたのでありますが、これを改め、その制限を撤廢し、金錢で納付することが困難である税額については、廣く相續財産による物納を認めることといたしたのであります。
次に今囘創設された贈與税について申し上げます。贈與税については、現行の贈與に對する課税と相當異なる内容を盛ることといたしたのであります。
その一は、贈與財産に對する課税を擴張いたしたことであります。すなわち現行法におきましては、贈與財産に對する課税は、親族に對して贈與した場合及び本家の戸主又は家族から分家の戸主または家族に贈與した場合に限り、遺産相續が開始したものとみなして、相續税を課税してまいつたのでありますが、今囘はこれを改正し相手方が親族であると他人であるとを問わずまた個人であるとを問わず、すべての贈與に對して贈與税を課税するとともに、納税義務者を受贈者から贈與者に改めることとし、もつて相續税の補完税たる機能を十分果させることといたしたのであります。
その二は、非課税財産の範圍につき概ね相續税と同樣の改正を行うとともに、後に述べる申告納税制度の採用等とも關聯して、暦年課税といたしたことであります。
その三は、贈與税が、相續税の補完税たる點に鑑み、その課税標準を一囘ごとの贈與財産の價額とせず、贈與者の一生を通じての贈與財産の累積額とし、これに對し五萬圓の基礎控除を行い、殘額について相續税の第三種税率と同一の超過累進税率を適用し、これにより算出した金額から前年分までの贈與財産の合計額に對する贈與税相當額を控除して、その税額を算出することといたしたのであります。
次に、相續税及び贈與税を通じて財産の評價に關する規定を整備するとともに兩税を通じて申告納税制度を採用することとし、現在及び将來における諸情勢の推移に即應して、自主的な納税制度を導入することといたしたのであります。
以上のほか、この際所要の改正を行うことといたしたのでありますが、これにより相續税收入見込額は、贈與税をも併せ、初年度約一億六千五百萬圓平年度約三億二千三百萬圓となる見込みであります。何とぞ速やかに御審議の上、本案に御賛成くださらんことを切望してやまぬ次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=3
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004・金光義邦
○金光委員長 この際政府より相續税法を改正する法律案その他の正誤について説明を求められておりますので、これを許します。前尾政府委員。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=4
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005・前尾繁三郎
○前尾政府委員 はなはだ申し譯ないのでございますが、印刷の誤りその他につきまして正誤をさせていただきたいというので、お手もとに配つてあります正誤表について御説明申し上げます。
大體におきまして常用漢字その他の誤りが大部分でございます。また實質的に直つております點を二、三御説明申し上げます。最初の十八ページ九行十九ページ八行、二十ページ二行、これは大體同樣でございまするが、これは配當利子所得等につきまして源泉課税を受けます場合に、從來の看做配當それらにつきましては今囘は増加所得の關係がありますので、取得價額と拂込濟金額との差額を徴收することになつておるのでありますが、取得價額自體は源泉課税の場合にはわかりませんので、源泉課税の場合には、ここに書いてあります「支拂又は拂戻を受ける金額が株式又は出資の拂込濟金額を超過する場合」これによつて一應徴收して後で調整する方法にいたしたいのでございます。その點の正誤はただいま申し上げた點でございます。
その次の三十八ページの十一行も同樣でございます。それ以外のものにつきましては、文字の誤謬その他でございます。
それからこのページの一番終りの「五十一條に次の但書を加える」は、所謂調査委員會なり所得審査委員會がなくなりますので、ずつと以前の臨時利得税につきましては、所得調査委員會、所得審査委員會にかけなくてはならないのでありますが、ここにかけずして、政府でそれを決定するという點でございます。これはわれわれの不注意でございます。
次に所得税を改正する法律案正誤表は金額の誤謬で、これはまつたく誤植でございます。
次のページの法人税につきましては二十八ページ十一行は從來資本に對するいわゆる法人資本税の税額が十圓以下であります場合は十圓とするのが、今度は五百圓に改めました。五百圓以下の場合は五百圓にするということに訂正いたしたのでございます。
それから次は追徴税額の關係でありますが、期限後申告の場合、あるいは誤謬の申告があつた場合において追徴税額をとるというのでありますが、修正申告の場合につきましても、實際上は同樣であるべきでございますので、その修正申告の場合につきましても、それを挿入いたしたのでございます。
次に三十四ページ八行は、やはり審査委員會並びに調査委員會の關係でございます。これがなくなりますので、なくなつた場合は、政府がこれらの決議によらずして自分で決定する。これは從前のものに限つて行われるわけでございます。
次は特別法人税の場合でございまして、特別法人税におきましては、修正申告の際にも、やはり追徴税額をとるという、先ほど申し上げた事項が法人税における場合と同樣でございます。
次に五十九ページの四行につきましても、これは先ほど申し上げました所得調査委員會並びに所得審査委員會の關係で、同樣な事項でございます。
七十一ページ十行につきましても同樣でありまして、これは營業税についてやはり所得調査委員會と所得審査委員會の關係を訂正しております。
次に相續税におきましては實質的に違います點は相次相續につきまして、七年以内の場合には全額前の相續税を引く、七年を超える場合には半分というのでございますが、これを七年を五年に改めまして、五年以内の場合には前に納めたところの相續税をそのまま控除するという行き方で、これは實質的に違つておる次第でございます。
次に二十三ページ十一行の「命令で定める金額」というのは、公益事業その他に贈與した場合でございますが、その「命令で定める金額」は、命令だけではなく、むしろこれは法律に盛るべきものだということで、「五千圓(その贈與に係る財産の價額の合計金額が五千圓を超えるときは、五千圓及び五千圓を超え十萬圓までの金額についてその二分の一に相當する金額の合計金額)」すなわち五千圓までは非課税とするが、五千圓を超える場合は十萬圓まではその半額を引こう、十萬圓を超えるものについてはそのままで課税をするというふうに命令で定める方針であつたのを、法律で書いておいた次第でございます。
それから四十三ページ四行これは先ほど申し上げましたように、やはり修正申告の場合でございます。
それから五十六ページ五行、これは租税特別措置法の物納の場合に、相續税の物納の場合に、物納財産によつて生ずる所得についての輕減を規定したのでありますが、物納の範圍が今囘擴張されますので、從來「不動産又は立木」というだけに限つておりましたのを、相續財産の物納の範圍を擴張したのに合わせるようにいたしまして、それについての所得税を輕減することにいたしておるのでございます。
その他につきましては、ほとんどすべて誤植あるいは當用漢字の間違いというようなことでございます。はなはだ恐縮でございますが、御諒承願いたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=5
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006・金光義邦
○金光委員長 質疑に入ります。川島金次君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=6
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007・川島金次
○川島委員 最初に、昨晩のラジオ放送によりますと、大藏省では七百圓のわくを五月一日から撤廢して俸給賃金の新圓拂いを實施する、同時に一方第一封鎖の預金引出しの制限をもこれと見合つて實施するというように閣議で決定を見たというような報道がありましたが、もしそれが事實でありましたならば、その内容を一つお聽かせを願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=7
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008・前尾繁三郎
○前尾政府委員 私はその係でございませんので、何らそれについて聽いておりません。それでその係の者を呼びまして御説明させます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=8
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009・川島金次
○川島委員 ではその問題はいずれ擔當の當局からお答えを願いたいと思います。
次にお伺いをいたしたいのは、今度税制の全面的な改正を實施するのと同時に、本年度の歳入を得る關係において、日本の國民が負擔いたしまする一箇年の税額はどのくらいになるか、同時にまた一戸世帶平均どのくらいの負擔額になるか。さらに國税以外の地方税をも加えました平均負擔税額、それがわかつておりましたならば、お教えを願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=9
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010・前尾繁三郎
○前尾政府委員 二十二年度におきましては、これは煙草の專賣益金を含めておりますが、その總額が九百二十四億でございます。その一戸當りは六千二百七十七圓、それから一人當りは千二百三十一圓ということになつております。これは國税でございます。地方税につきましては一應私の方で計算はいたしておりますが、あるいは不正確であると思いますので、内務省の方に御説明願いたいと思います。總額については何ですが、國税地方税の通り拔けの勘定がありますので、後ほど計算してお答えいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=10
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011・川島金次
○川島委員 二十二年度の益金を加えた税負擔額が一人當り千二百三十一圓となりますと、私の記憶によりますと昨年度の税負擔額は一般地方税を加えまして三百三十圓と記憶いたしておつたのです。これに間違いないといたしますと、國税だけでも四倍、地方税を加えると昨年度の四倍以上になるという形になるのではないかと思うのですが、私の記憶に誤りがないでありましようか。それをお聽きかせ願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=11
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012・前尾繁三郎
○前尾政府委員 昨年の一人當りの國税の負擔は三百九十三圓、大體四百圓程度でございます。ちよつと三倍に本年は相なるということになります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=12
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013・川島金次
○川島委員 この一人當りの千二百三十一圓のうちに、國民として何人も納めなければならぬ負擔額と、また國民の中でそれぞれの事情によつて特殊の條件で納めなければならぬ税とおのずからあるのでありますが、その特別な條件によつて納める税額を差引いた、すなわち國民が何人でも、その條件のいかんにかかわらず納めなければならぬ負擔分というものが、必然的にあるのではないかと思うのですが、そういうことについての資料がありましたならば、この際お示しを願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=13
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014・前尾繁三郎
○前尾政府委員 少し計算すれば出ると思いますが、ただいままでのところ計算したものはもち合わしておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=14
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015・川島金次
○川島委員 後ほどそれを計算して、參考のためにお示しを願いたいと思います。第三にお伺いいたします財産税の納税につきまして、最近地方の税務署を中心として、一般納税者の間に延納の期間延長がうわさされており中には税務官吏から、すでに設定された期限をさらに二箇年ぐらい延納期間を延長するであろうということを納税者が聽いておるかのごとくに傳えられておりますが、その事柄がはたしてあるのでありますかどうか。この際お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=15
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016・前尾繁三郎
○前尾政府委員 財産税の延納につきましては、一年となつており、どうしてもやむを得ない場合に二年ということに相なつております。その期間の延長ということについては、絶對に私は今のところ考えてもおりませんし、そういうことは將來ともしない方針であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=16
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017・川島金次
○川島委員 大變はつきりしたお答えでありまするが、埼玉縣の管下における納税者の間に、既に税務官吏が非公式の間に、やむを得ざる者は二箇年となつておるが、さらにそれを四箇年に延長するかもしれぬ、こういうことを言つておるということを納税者が信じております。その事柄が非常に宣傳されまして、納税者の納税氣構えと申しますか、その心構えに非常にゆるみを生じていることは事實であります。そこでそういうことがないといたしますならば、この際それら税務署所管の責任者に對して、何らかの處置を講ずる必要があると私は思うのであります。この際御注意までに申し上げておきたいと思います。
次にお尋ねいたしたいのは、この前私が社會黨を代表いたしまして、本會議でお尋ねをいたしたのでありますが所得税納税者のうちの勤勞所得納税者の免税基礎控除の問題でありますが、今度の基礎控除の法案によりまするというと、大體全所得額の百分の二十を控除して、その殘額に課税をするということと、さらにその上に四千八百圓を控除するということになつておるように私は考えておるのでありますが、私の考えから申し上げまするならば、こういつた二重の煩瑣な計算のしかたということは、徴税の上においてまことに各方面に支障があるのではないかと思うのであります。何ゆえに税務當局は勤勞所得に對して、やはり他のものと同樣に何らか一本建で、はつきりとすぐに計算ができるような仕組にすることが、徴税の簡素化、民主化をはかるゆえんではなかつたかと思うのでありますが、どのような根據でこのような二重的な計算手續をしなければならぬように定めたのでありますか、その理由についてお尋ねを申し上げたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=17
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018・前尾繁三郎
○前尾政府委員 勤勞所得に對する他の所得との負擔力につきましては、ある程度輕減をはからなければならぬということは、もちろん私も考えておることでございます。そのやり方につきまして、從來は御承知のように、分類所得税におきまして、基礎控除、税率を違え、その他の所得と區別いたしておつたのでありまするが、分類所得税總合所得税の二本建ではかえつて手續が煩瑣でございます。從いましてそれを一本建にするというのが理想でございます。しかしその間に勤勞所得との區別をどういうふうにするかという方法につきましては、あるいは税率を違えるという行き方もございましよう。基礎控除だけを違えるという行き方もございましよう。しかし勤勞所得にいたしましても、ある一定額の非常に大きい所得をもつておりますものは何ら區別する必要はないのでございます。たとえば會社の重役の勤勞所得というようなものにつきましては、何ら區別をする必要はないと存ずるのでございます。その際にやり方といたしましてこれはずつと以前の第三種所得税、あるいは十七年後の所得税におきましても、一定金額の勤勞所得に對してある程度の控除をいたしておつたのでございます。また外國の立法例に鑑みましても、アメリカは最近は勤勞所得に對する控除をやめております。しかし以前におきましてはやはり一割の控除をしておる。また英國におきましても、百五十ポンドまでは一割を控除いたしております。これは必ずしも手續は煩瑣にならないのでございます。と申しますのは、御承知のように今囘はそれによつて月々支拂うべき税金がはつきり税表中に現われて出ております簡易税表を使います。それによりますと、すぐその負擔額がいくらならいくらというのが出るのでございます。かえつて前の税率を違えまして、あるいは基礎控除を違えるということよりも、今囘の簡易税表で簡單に、しかも累進、總合とも合わせたものが毎月の税表に現われて出てまいるのでございます。その點は非常に簡便になつたと私は確信いたしておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=18
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019・川島金次
○川島委員 私どもの考えといたしましては、先般も大藏大臣に勤勞大衆の最低生活問題を中心として質疑をいたし、また前囘の本會議でも私どもは要求をいたしておつたのでありますが、勤勞所得税の基礎控除は少くとも月一千圓、すなわち一箇年に一萬二千圓程度の設定をすることが、勤勞大衆の生活の窮乏に對して政府當局が拂うべき心構えでなければならぬと私は思うのであります。その上に扶養家族の免税點の問題につきましても、今の法案に對して私どもは異議はないのでありますが、要するに勤勞所得の基礎控除を百分の二十、それに對する四千八百圓というような仕組でなくて、月額一千圓、年額一萬二千圓というようにして、さらに扶養家族の基礎控除をもそれに加えるということがきわめて端的であつてかつ私は勤勞大衆の生活の負擔力に即應した心構えであると思うのでありますが、税務當局においては、われわれのこの主張に對して、何らか變更するという用意がありますかどうか。この際はつきりとお答えを願つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=19
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020・金光義邦
○金光委員長 川島君にお諮りいたします。先刻のあなたの質疑について福田政府委員より發言を求めておられますから、許可いたしたいと思います。福田政府委員。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=20
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021・福田赳夫
○福田政府委員 七百圓のわくの問題についてお尋ねがあつたのでありますが、七百圓のわくをはずしまして、そして今後勤勞所得は賞與等の臨時所得まで合わせて全部新圓一本にするということにつきましては、ただいま關係方面と協議中でございます。あとは速記を止めていただきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=21
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022・金光義邦
○金光委員長 速記を止めていただきます。
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=22
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023・金光義邦
○金光委員長 速記を開始願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=23
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024・川島金次
○川島委員 今のお話で大體諒承いたしましたが、この際それに關連しまして私意見を申上げておきたいと思うのですが、新圓一本の經濟ということはもはや國民の全體的輿論である。それに對して當局はいろいろの輿論にこたえるべく苦心をされていると思うのですが、ただ問題は今のようなお話がかりに實施されるといたしますと、少額所得者の上に少からぬ影響があることをもお考えにおいて善處してもらいたいと思う。言うまでもなく、少額所得者はかりに賃金俸給の支拂を全額新圓で受けるようなことになりましても、その生計は必ずしも保障されて行くわけではない。しかるに一方、第一封鎖の方の引出しの制限がありますと、從來ならば何らかの方法によつてそういう制限を家族の人員とかその他の數によりまして方法があつたのでありますが、それがせき止らめれるという形になるおそれが十二分にあるのじやないか。そうすると、少額賃金所得者、俸給生活者は、現在でも預金のある者はその家族數その他によつて第一封鎖から引出して、生計の資に充つるということになつておつたのを、第一封鎖の方の支拂制限が強化されますと、せつかく新圓拂一本の勤勞大衆は、そうなつても、そうでない少額所得者はかえつて不自由な窮屈な思いをさせられるというようなことになるのではないか。かように私は思うのでありますが、これは假定論として局長さんのひとつその方面に對するお考え方を聽かしていただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=24
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025・福田赳夫
○福田政府委員 ただいまお話しの點まことにごもつともです。私ども今後新規所得は全部新圓にするから、百圓の引出しをやめていくという際におきましては、この點は從來に較べまして不權衡にならないよう氣をつけていきたいと思います。たとえば、その方法につきましては、無所得者につきましては百圓の引出しをさらに増額した形で認める。さような際には少くとも無所得者としての待遇までは認めていくとか、さようなことによりまして、從來に比べて決して困らぬようにはいたしたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=25
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026・川島金次
○川島委員 この際局長が見えておりますから、もう一つついでにお伺いしておきたいと思いますが最近預金吸收の問題が非常に重大な日本の經濟再建の上に繋がつてきている問題になつております。その預金吸收の一策といたしまして、近く政府は大幅の預金利率の引上げを實施したいというようなことを考えていることと、もう一つは同時に新規發行公債の利率をもこの際引上げるというような事柄が考えられているように承つているのでありますがその點いかがになつておりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=26
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027・福田赳夫
○福田政府委員 最近の金融機關のコスト等から考えますと、ただいまの國債の三分五厘というのがとても金融機關の採算にも合いません。そこで、これがある程度引上げにならざるを得ないというふうに私どもは考えておりますが、いつこれをやるかという問題につきましては、またいかなるレートできめるかという問題は、もう少し檢討してみたいと思う。それから公債と申しましても、三月中には出さない、四月に出すわけでありますが、それまでにはどうしてもきめなければならないと思つております。それからそれに關連して公債が上がる。また貸出利率が上つてくるということになりますれば、多少預り金の利息も上つていくという傾向になるのは、理論上當然のことであります。しかしただいま貯蓄の増強の面から考えますと、預金の利息が多少あがるというくらいのことではほとんどききめはない。大した影響はないというふうに考えておるのであります。しかし國債の利息が上る。また一般の貸出金利水準というものが上つていく。一般的の水準が上るという際でありますれば、それにあまり實効がないからといつて、放つおくわけにはいかぬというので、多少のことは考えてみたいというふうに考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=27
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028・川島金次
○川島委員 關連しての御質問でありますが、預金の問題であります。貯蓄増強の方面におきましては、大體の目標を一箇月八十億、できれば百億、多くある程結構なんでしようが、大體政府の考えておりますところの貯蓄増加の目標というものは、八十億ないし百億だと私記憶しておるのであります。しかるに表をみますと昨年末の預金増加は百億ばかりになりましたが、一月二月にはいつて急激に減少を來しまして、六十億程度ということに私は聞いております。しかるに一方政府として健全財政の建前から今後は赤字をなるべく出さぬ。そして事業資金というものは、國民の蓄積資金によつてこれを賄つていきたい。殊に當面の經濟的危機を前に控えまして、一方においてそういうような政府の考え方がありますが、しかるに預金の増加は思うようにいつておらぬ。一方においては事業資金等の如きものは、できるだけ預金で賄つていくということになると、そこに大きな矛盾を生じまして、それがひいては産業の復興に重大なかかわり合いがくるのではないかと思う。それでなくてさえ今日は重點産業のための、いわゆる傾射産業の影響を受けて、最も經濟復興に大切であるところの、中小工業者の上に、これまた重大な影響があるのではないかと思う。中小工業者の現情というものは、既に政府も御承知のごとく、傾射生産の影響下にありまして、ほとんど採算がとれるような仕事を繼續するようなことになつておらないのであります。その上にその中小工業者といえども、多くのものは相當この平和復興のために、經濟復興のために必要欠くべからざる仕事をしておる向きが相當多い。そういう方面が非常に資金的に抑制を受けて、二重の苦痛を感じながら、ついには閉店、あるいは閉鎖、そういつた事柄に逢著せざるを得ないような工場が、もはや相當に現われてきつつあるではないかとさえわれわれは心配しておるのであります。そういう預金の問題と事業資金の問題に對して、政府といたしましては、どのような處置を今後は講じていこうとするか、同時に中小工業者の復興のために、どんな手を打つていこうといたしておるのか。それにつきまして、何かお考えがおもち合わせでありましたらば、この際ひとつお聽かせを願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=28
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029・福田赳夫
○福田政府委員 産業資金でありまするが、産業資金の二十二年度における全體の仕組みをどうするか。この問題につきましては、まだ國家資金計畫というようなものから考えていくという段階には到達しておらないのです。でありまするが、大體の見當といたしましては、昨年における産業資金放出の實績というものは、月三十億であります。それから來年度これをどういたしますかということにつきましては、大體五十億というふうに考えておるのであります。毎月五十億、年に六百億です。それから貯蓄の問題に關連いたしますが、五十億を産業資金にもつていく。それから特別會計や地方において公債を發行するのです。一般會計は赤字はないのでありますが、特別會計や地方で公債を發行する。この消化財源として二十億圓は、ほんとうに健全財政という建前から必要です。それから復興金融金庫等に、相當の資金力をつけてやるという必要があります。これを考えますると、毎月十億の復興債券を、銀行に引受けてもらわなければならぬ。それから毎月平均いたしまして二十億の封鎖預金の現金拂いの財源が要るのであります。それだけの資金を確保しなければいかぬ。そういたしますと、合計いたしまして、百億の新規自由預金というものを必要とするわけであります。必要の方面から見ますとただいまの通り百億でありますが、これが實際いくら集まるかという問題であります。ただいま川島さんからのお話では、今年非常に下つたと言われますが、一月には七十億、二月は八十億であります。一月の七十億は二月の百億に比べますと、相當減つておりますが、これは一月の十日ごろから、どういう關係か新圓再封鎖、平價切下げというようなデマが飛びまして、引出しが多かつたこと、それからゼネストの關係で手持ちを多くしようという關係から引出しが多かつた。その關係で非常に異例なことになつた。二月はちよつと調子をとりもどしまして、八十億になつておる。これが大體來年度下ぶくれになるというのが普通でありますが、ならしまして百億いきますれば、ただいまの産業資金を賄いまして、また國家財政の赤字も賄いまして、日本銀行券は一切増發しない。さようなことに相なるわけであります。それからさような状況で、産業資金全體といたしましては相當考えておる。五十億の上に、さらに復興金融の十億圓を加えますれば、六十億ということになるわけであります。さらに産業資金全體として、その中で中小工業にどういうふうに考えるかということにつきましては、これは復興金融の方でも十分氣をつけておるのでありまして、復興金融には中小工業部というものをおきまして、特に專門にそういう方面を扱う。それから相談部みたいなものを設けまして中小工業の金融相談に與かるというような、特に中小工業を對象にした復興金融ということを、考えておるのであります。それからさらに、復興金融と兩建の形におきまして、商工中金というものを相當活用するつもりでおります。今議會にもその増資——資本金はただいま三千萬圓でありましたが、それを一億圓まで増資する。そしてこれに相當手廣い活動をやつていただくという趣旨の法案を、別途お願いしておるのであります。さようなことで中小工業の方には、特に見落しのないように配意はいたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=29
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030・川島金次
○川島委員 もう一つついでにお伺いしておきますが、この十二月の預金の増加率が百億、一月にはいつて七十億二月は八十億になつたということであります。ところが私の聞くところによりますと、地方銀行で昨年十一月以來大分預金の勸誘をやつておる。その勸誘のしかたが、明日下げてもよろしい。二、三日預けてくれというようなことが、非常に全面的に行われたが、そこに私は不審な點がある。そういつた全國の預金、金融機關に集まつた計數を、日銀あるいは政府當局が清算されるのではないか。そうすると、はたしてこの表われてきておる計數というものが、預金の實際上の純増加の數字であるかということに、非常な疑いをもちたくなるのであります。私どもの知る範圍では、相當有力な銀行がとにかく各戸ごとに訪問しまして、ちよつとひとつ十萬圓ばかり預けてくれ。そこで預ける。そうして明日下げてもよろしいというので、三日目には下げておるというようなところが、全國的に相當あるのではないかと思う。かりにそういうものが、こういう預金純増の上に上つてくるということになれば政府の資金計畫に重大な狂いが生ずる。同時にそれは一般の産業資金の上にも、大きな狂いが生じてくることは私は非常に輕視できない問題だと思う。そういう事柄について、當局の方は全部承知の上で、こういう計算を立てておるのか。これをひとつお聽かせ願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=30
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031・福田赳夫
○福田政府委員 ただいまお話の點は御安心くださつてよい問題であります。ということは、百億圓あるいは七十億圓、八十億圓とういのは、この際の計算はすべて月末の預金の殘高で計算しておるのであります。だからこれはネットの増加でありまして、二、三日の出入りというようなものは計算外にありますから、御安心を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=31
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032・川島金次
○川島委員 それでは、先ほど主税局長にお伺いしました問題について、御答え願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=32
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033・前尾繁三郎
○前尾政府委員 先ほど基礎控除の問題について、御質問があつたのであります。基礎控除につきましては、既に繰返し申し上げておりますように、われわれは最低生活費という點は、もちろん考慮には入れておりますが、最低生活費はみな控除するのだというふうには考えておりません。むしろ廣く負擔分と申しますか、その所得の分に應じて、まず國に對する費用を負擔する。これによつて國に對する財政の認識あるいは國の義務に對する認識と責任を果していくという必要から、なるべく廣い範圍から納めていただくというふうに考えておるのでございます。今囘の月額四百圓、その二割を控除する。また扶養家族の控除につきましては、月額二十圓というのでまいりますと、千圓の所得の人でありますれば、扶養家族のない獨身者におきまして、月額八十圓の税金であり、扶養家族が一人あれば六十圓、一人あれば四十圓扶養家族四人あれば全然税の負擔がないというような關係にあるわけでございます。すなわち普通の五人家族の家では千圓では課税にならない。また獨身者といえども千圓につきまして月額八十圓、税金を引きまして九百二十圓はいるということになるのでございます。最低生活費には缺くといたしましてもまず天引きされて、それだけは國に對する奉仕をするのだという觀念で考えていただくならば、絶對に負擔しきれないという税金ではございません。また勤勞所得のみ二割の控除もし、また千圓の基礎控除にするというようなことになりますと、また勤勞所得と、他の事業所得につきましても少額所得の人につきましては、あまり違わないわけでございます。もしその勤勞所得につきまして月額千圓ということに相なりまして、それが事業所得との關係を考えますと、あるいは事業所得には八百圓ということになりましては、現在の税收の三分の一くらいは減少してしまうというようなことにも相なるのでございます。現状といたしましては、應分の負擔は、少くともこの程度にしていただかなくちやならぬ。そういうふうな負擔の關係からまいりますと、ただいま申し上げましたように、勤勞所得については二割の控除をし、しかも月額四百圓の基礎控除をするということに相なりますと、その負擔はわれわれはまつたく適正なものだというふうに確信をいたしておる次第でございます。その點御諒承願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=33
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034・川島金次
○川島委員 なるほど所得税だけの面を見れば、そういう考え方にもなるのだろうと私は思うのですが、今度の財政、税制全面を總合して考えた場合、一般の勤勞大衆が一應從來よりは基礎控除の率が上つたことは上つた。上つたが、それだけ助かるじやないかと言えばそれまででありますけれども、その半面に間接税その他の益金收入等における負擔が、著しく増額されておる。從つて所得税の面だけを見れば、なるほど非常に緩和されたということになりますが、所得税自體は緩和されたが、全體的には從來以上の負擔額を強いられるという形に、計數の上から見てもなるのじやないかと思うのです。そこで私どもは先般も大藏大臣と質疑を續けたのでありまして、今の安本の方面から出しておるところの生計標準費、と言いましても五人家族で千二百圓、こんな生活が成り立つか立たないということは、論議の餘地はない。しかも一般の勤勞階級の平均所得額というものは、かなり待遇が改善されても、なおかつ今年一月現在の調査によつても千四百圓であると私は記憶しておる。そういう薄給の生活をしております。平均率からいえばかような状態でありますところの勤勞者に對して、なるほど從來よりは率は上げたけれども、他面においてはまた大きな負擔をしよいこまざるを得ないような形になつておるということと、もう一つは主税局長も御承知の通り昨年の六、七月ころの勤勞大衆の平均所得額というものは一箇年に五千五百圓だと私は記憶しておる。そういう奴隷的賃金に甘んじて日本の勞働者は國家の産業その他に間接、直接携つてきておつた。そこでインフレの高進に伴いまして、勞働爭議が各所に起り、あるいは賃金鬪爭が起つた。なるほど昨年の六、七月頃に比べますと、今年の一月は千四百圓になつたのだから、大體月額にすれば倍の收入になつた。しかしながら一方、去年の十月には公定價格が改正されておる。その公定價格の改正の率を見ますると、全面的に總合すると二・七倍上つておる。これは政府自身が公定價格を改正しておる。從つて公定價格の二・七倍の率の引上げに刺激されまして、いわゆるやみ物價と稱するものが大體去年の六、七月に比べますと、昨年の年末から今年にかけて四倍に、少く見積つても上つております。そういうことになりますと、一面において勤勞俸給生活者の平均收入が二倍になりましても、その二倍になつた途端に、生活をしていく大衆の生計費は、公定物價ですらも二・七倍——まあ三倍です。いわんややみが生活の半分を占めておるといたしますれば、これまた四倍の率で上つたものが、生計の支出になつてくるという形になる。從つてこれをさらに數字的に計算いたしますと一方において勤勞大衆は二倍近くに俸給は上つたが、實際の生活の支出面においては、むしろ三割、あるいは四割近くの減俸になつておるという形になる。そこで政府は今度所得税の中の勤勞所得者に對して、特段の處置をとつて、基礎控除を取扱われるようになつたのでありますが、それでは追つかない。いろいろ總合して計算いたしますと、むしろ從來の免税點五百圓、基礎控除、すなわち先だつて改正せられました一人二十圓、こういうふうになつても、今日の法案を實施いたしますとむしろ今度は税が高くなつた、そういう形になります。實生活において支出が多くなつて、さらにまた税率の改正によつて、實體から言うと、改正をいたしましても負擔は多くなる。生活の實體から言えば、こう言うことができる。そこでわれわれは基礎控除に一千圓、年額一萬二千圓ということを主張するところの根據をもつており、そういう形で主張しておるのでありまして政府當局では國民の分に應じてと言いますが、國民をして最低生活を維持せしむるに足りるだけの強力な、責任ある政治をとつてこそ、初めて少額所得國民からも税をとり得るのだ。國民大衆に最低の生存生活すらも、維持し得るに足るような政治がなくして、その一面においてたけのこ生活どころか、たまねぎのような生活を續けておるところの大衆から、またしても實際の生活上から計算をすれば、むしろ増税をするにひとしいところの所得税をとり上げるということは、政治的に言つて斷じて妥當な處置ではない。かような確信を私はもつておる。そこでしつこくこの問題を質問し、追究するのでありますが、この法案に對して政府當局はどうしても、みずからこれを變更するというような心構えがないかどうかということを、この際はつきりともう一遍お伺いをしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=34
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035・前尾繁三郎
○前尾政府委員 基礎控除現在の四百圓につきましては、われわれは改正する意思はありません。ただいま御指摘のごとく所得税自體としては、私は非常に均衡を得ておるというふうに考えておりますし、またお認めのようでもございます。ただそれ以外の間接税等の大幅の増徴が、勤勞大衆の生活をある程度壓迫いたしますことは、これは認めざるを得ないのでありますが、しかしこれはあくまで節約し得る面でございます。特に申し上げたいのは、敗戰後の現在の財政状況その他の諸情勢から考えまして、よほど日本人は生活程度を引下げて考えていかなければ、結局税もとれないし、あるいは生活もうまくいかない、滅亡するよりいたし方ないんだということになつてしまうのでございます。われわれといたしましては、決して輕い負擔だとは考えておりません。しかしとにかくこれで賄つていくというくらいの精神をもつてほんとの最低生活に甘んじて、日本の國民が耐乏の生活に耐えていくということになつて、やつと財政の均衡を得、それを基礎として日本が再建し得るのだというふうに考えておる次第でございます。御指摘のように、決して負擔は輕くございません。またもちろん税の面だけの問題でなしに、根本の給與という問題にもかかつてくるのでございますが、給與の關係から言えば、金額は少くても生活は重壓されるということについても、われわれはある程度認識いたしておるのでありまするが、しかし現在の日本の現状を考えますときには、どうしてもこの負擔に甘んじてやつていただかなくちやならぬというふうに確信いたしておるのでございます。まつたくのやむを得ない必要でございまするので、ただいまのところ現在の基礎控除を引上げるという考えは毛頭もつていないのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=35
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036・川島金次
○川島委員 私は大體今度の税制改正と豫算のことを總合的に分析してみまするというと、健全財政とは言うものの、實體は大衆の犧牲において組立てられた健全財政だという考え方をもつておるのであります。そのことにつきましては、いずれ討論の場合にでも私の意見を、また黨の意見をも申し上げたいと思いまするので、その事柄につきましては、この程度で切上げておきたいと思います。
最後にひとつこの際お伺いいたしたいのです。それは物品税の問題ですがわれわれは化粧品といえども、それは婦人を中心とした身だしなみと言いますか、そういつた點において一應ぜいたくな品物だ、なくてもあつてもよろしい物であるとは考えておりません。その氣持に立つてひとつお伺いするのですが、その化粧品と寫眞機、映寫機などの物品税とが同率になつておるのであります。化粧品が必ずしも私はぜいたく品だとは思いませんが、寫眞機、映寫機と同率で物品税を納めるという形になることは常識的に考えまして、必ずしも私は妥當な措置ではないと考えられるのでありますが、當局の考えは、どのようなことで、こういう同率の扱いをいたしておりますか。それをひとつお聽かせ願いたいのです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=36
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037・前尾繁三郎
○前尾政府委員 化粧品について課税を百分の百を百分の八十にしたという氣持にはおわかりだろうと思うのでございまするが、最近の化粧品と申しまするのは、ポマードその他の、ほとんどぜいたく品ではないようなものが、大部分でございます。もしできれば奢侈的な化粧品と日用的な化粧品とを區別するということが望ましいのでありますが、それは課税技術上、その限界が非常に困難でございます。從つてこれを區別して課税するわけにまいりません。また生活の明朗化というような意味合いで、何しろ原價がどんどん上つてまいります。それに對する比例税率はかなりの負擔になつてまいります。それらを緩和するというような意味合からして、百分の百を百分の八十に引下げたのでございます。
次に寫眞機の問題でございますが、寫眞機自體につきましては百分の百そのままのすえおきでございます。ただ消耗品であります寫眞用の乾板、フイルム、感光紙、これらについて百分の八十という税率に引下げたのでございます。そのおもな理由と申しますのはまあ一番大きいのは生フイルムでございます。映畫等に使いますフイルム等があまりに高い課税であるということは、結局また大衆の觀覽する映畫である——まあ入場税は引上げておるのでありますが、その裏に全體の氣持といたしましては、なるべく大衆に關係のあるものは引下げていきたいというようなつもりで、このフイルムを中心とした消耗的なものを引下げておるのであります。その他の、蓄音機用レコードとかなんとかつきましても、家庭的娯樂ということを中心にして考えておる次第でございます。
なおこの際申し上げたいのは、大衆的課税ということは、われわれはできるならば避けたいのでございますが、現在の實状から申しますと、すべてが大衆の負擔においてやらなくちやならぬというよりも、ほとんど全部が、日本全體が非常に貧困な生活に落しこまれておるのであります。それに代る、大衆でない非常に大財産家があるということでありますと、それによつてある程度課税によつて賄い得るのでございますが、最近の財産税その他の課税後の状況から考えますと、今のところいい財源がないというので、結局大衆で、皆で負擔ていかなければならないのだということに相なるわけでございます。その點は十分御諒承願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=37
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038・川島金次
○川島委員 時間がないから手取早く申し上げますが、この化粧品を百分の百から百分の八十に下げたという措置は、私は別に異議はないのです。同時にそういう措置がとられるときにあたつて、非常に實用的な、産業の上にもあるいは漁業用、あるいはまた一般の報道、印刷、學術というような方面にまでも、相當重要な位置を占めておるところの光學機械、これを從來通り百分の百としてすえおいたということは妥當じやないと私は思う。實際上の形から言えば、むしろ化粧品よりも私は重要な品物だと思う。そういう方面の對象物を百分の百にすえおいて、化粧品のごときものを百分の八十に引下げる。これは私は妥當でないと思う。そこで私は、寫眞機といえども、平和國家建設の上に重大な役割を果すべき物品なんであります。その物品税をそのまますえおいたということは、私の考え方から言えば妥當な措置じやない。少くとも化粧品を百分の八十に引下げたその措置があれば、同時にこういつた重要な品目に對しても税率の引下げを斷行すべきが適當な措置ではないか。そうしてこれら重要な物品の生産を刺激し、これら物品の生産の科學的な、技術的な、いわゆる研究その他に寄與させるというくらいの心構えがあつた方がよいのじやないか。私はこういうふうに考えるので、今化粧品を土臺として話を進めたのであります。その點についてどうぞひとつ御意見をお聽かせ願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=38
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039・前尾繁三郎
○前尾政府委員 お話の點はよくわかりました。われわれが寫眞機をそのままにすえおいて、それから乾板、フイルム、感光紙というようなものを引下げました理由は、化粧品についても同樣でありますが、これは消耗品である。寫眞機でありますと、一囘買いますと相當期間もつ、入場税が最近百分の百という最高税率をもつておりますので、物品税につきましても百分の百は殘さなくてはならぬ。ただいま申し上げましたように、一番消耗的な常に買替えなければならぬというようなものだけを引下げたわけでございます。御趣旨の點は十分了承いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=39
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040・金光義邦
○金光委員長 この際政府委員より發言を求められておりますので、これを許可いたします。柏村政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=40
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041・柏村信雄
○柏村政府委員 先ほどお尋ねの點につきまして地方税關係のお答えをいたします。二十二年度の地方税收入の見込額は二百六十七億二千八百萬圓でございまして、この國民の一人當りは三百五十六圓ということになります。しかしながらこの中には所得税、法人税入場税の一定の割合をもつていたしまする配付税、今度の改正によりまして分與税になりますが、この配付税の百十億二千二百萬圓というのが含まれております。この分は先ほど大藏省から説明のありました分に含まれておりますので、これを差引きますと、總額が百五十七億二千六百萬圓ということになりまして、その一人當り額は二百九圓ということに相成ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=41
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042・金光義邦
○金光委員長 午後一時半まで休憩いたします。
午後零時十三分休憩
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午後一時五十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=42
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043・金光義邦
○金光委員長 これより再開いたします。引續き質疑を繼續いたします。石崎千松君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=43
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044・石崎千松
○石崎委員 一、二お尋ねいたします。税制改正に關する法律案要綱という中の第一に税制改正の目標ということが書いてあります。その中に「財政需要の現状に對應し、收支の均衡を圖るため、」こういう文句がありますがその收支の均衡をはかるために税制が改革されたということについては異議がないのであります。必要なだけの支出に對して必要なだけの收入を得なければならぬということははつきりわかるのであります。從つて私がここでお尋ねしたいことは、政府は今日支出が非常に殖えた、言葉をかえて言いますれば、物價が非常に高くなつたということをこれはお認めになつての上だと思いまするが、もう一つ別な言葉で言えば、政府は今日のインフレーションというものをはつきり認めておるでありましようか、どうでしようか、この邊のお答えをひとつ願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=44
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045・前尾繁三郎
○前尾政府委員 財産收支の均衡をはかりますのは、既に御承認を經ておりますところの歳出一千百億以上に上ります財政支出に對しましても、それを赤字公債ではなしに、租税なり專賣收入なりその他の收入によつて賄うのを目的といたしておるわけでございます。それはもちろん將來のインフレ防止ということが一つの大きなねらいになつておる次第でございます。ただいま仰せのように、最近まで物價は相當上昇してきているということにつきましては、日銀の物價指數その他から考えましても認めざるを得ないところでございます。また最近の官廳給與の引上げ、その他に照しましても、最近において相當物價あるいは賃金が引上げられておりますことにつきましてはそれは異存のないところであろうと存じます。ただその上昇をここで抑えるというのが現在われわれとしてあらゆる手段をとつて、それに對應して、これ以上に引上られないということに最善の努力をいたしておる次第でございます。それにつきまして、そのまず第一の基礎は、やはり赤字公債ではなしに、收支の均衡を得せしめるということが第一の條件でございます。もちろん唯一の條件ではございません。これによりましてすべてがこれで十分インフレーションを抑えておるのだというわけにはまいりません。ほかのあらゆるものの、方面における施策、金融の方面における施策、通貨に對する施策、すべてが總合されて初めて可能ではございまするが、まずその第一條件として、財政のバランスを取るということが、まず第一に必要な條件であると、われわれは考えておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=45
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046・石崎千松
○石崎委員 これを前提條件としまして私の質問は進んでいこうとするのでありまするが、そうすると、過去一箇年間政府は通貨の膨脹、物價が上昇していくということに對して、何らの手を打たなかつたというのでありまするが、先ほど伺いますように、先ず第一に收支の均衡をはからなくちやならぬこれが第一であるということになりますなら、第一の手を今から打とうとなさるかのごとくに私は聽きますが、それでは今までは何もしなかつたかということであります。そうしてそれに對してこの物價高、そういう物價の上昇に對していろいろな手を打つてそれを止めようとなさるが、物價はどんどん上つていこうとする。過去一箇年間におけるこの面から見ましても午前中に承つたところから言いましても約四倍になつていこうとするまた來年一箇年間これが行われるならさらに今年の四倍にならなくちやならないといつた理窟になるのであります加速度というものがこれに加わるなら來年はあるいは六倍になる。とういつたことになるなら、この税制の改革ということは、法律的な意義を失うのではないかと考えまするが、その點いかがなお考えでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=46
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047・前尾繁三郎
○前尾政府委員 過去一箇年間につきまして、そういう手を打たなかつたかという御質問でございます。もちろん昨年におきましても收支の均衡を得るということにおいては第一の主眼點をおいてまいつたのでございますが、しかしそれは御承知のように財産税の大きな收入をあてにいたしまして、それによつて辛うじてバランスをとつておつたのでございます。その財産税の徴收は、既に年度末最近におきまして徴收いたしておるような次第でございます。しかるに支出の方面は、既によほど放出してまいつております。この際財産税を徴收するというようなことが相當効果的に初めて現われてまいる次第でございます。もちろんほかの面、すなわち先ほど申し上げましたように通貨の面、あるいは物の面におきましても、相當努力はいたしてまいつたのでありまするが、物の生産の面におきまして、思うほどの効果を得られなかつたというようなことが、非常に大きな原因になつておると、われわれどもは考えておるのでございまするが、先ほど申し上げましたように、單にバランスを合わすそのことだけではインフレーションを防止するわけにはまいりません。ただ、まず第一條件として收支の均衡を得さしておかなければ、インフレーション防止の第一條件が備わらないというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=47
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048・石崎千松
○石崎委員 どうも話がはつきりしないのですが、もとより收支の均衡をはかるということは必要でありますが、私が疑問に思うことは、收支の均衡をはかるというのは靜的状態、物價の上るというのは動的状態であります。從つてこの靜的状態をもつて動的状態というものをはたして抑え得るかどうかということであります。私は抑え得ないだろうと思うのです。從つてこの税制改革に關するところのものが、來年もまた根本的に變りはしないかということであります。それでもう一遍お尋ねしたいのですが、物價が上る、つまり今日の經濟状態は惡性インフレーションへの途をたどつておる。そういうことをはつきりお認めになりますか、どうでございますか。そうしてもしそうであるとするなら、どこの邊にいつたらこういう手によつて食い止められるだろう、止まるだろうというようなお考えがあるだろうか。それがあることによつて、この税制改革の意義というものがおのずから備わつてくる。私はかように考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=48
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049・前尾繁三郎
○前尾政府委員 收支の均衡は靜的状態であり、物價の騰勢は動的状態である。しかし收支の均衡と言いますのは、もちろん一年のバランスを一應考えております。しかしこの物價の騰勢その他と歩調を合わせて、その時その時においてバランスをとるということが、最も望ましいのでございます。もちろん一年間を通じて收支の均衡を得るというのみでは足りないのでございます。今囘の根本的税制改正におきましても、われわれが苦心いたしまして豫算課税制度をとり、その時その時に、源泉課税と同樣にその時々のバランスをとつていく。常にある短い期間で均衡状態を保たせるということにつきまして注意してまいつておるのでございます。先ほど申し上げましたように、財産税等によりますものは、時期的に非常な均衡状態をはずしておつたということが言い得るのではないかと思うのでございます。また先ほど申し上げたことを繰返すことに相なるのでございまするが、租税の面のみでインフレーションを防止するというわけにはまいりません。今まで相當物價が、上昇してまいつたことにつきましては、われわれも認めておるのでございまするが、これは單に租税の面のみの問題ではなしに、先ほど申し上げましたように、あらゆる面において施策が遲れたと申しますか、足りなかつたと申しますか、そういうような結果でございます。從いまして先ほど申し上げましたように、第一條件としてその時々の收支の均衡をはかる。それとともにあらゆる他の施策を總合いたしまして、それによつて物價の上昇はある程度抑え得るのだというふうに確信いたしておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=49
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050・石崎千松
○石崎委員 この問題はもとよりあなたのおつしやる通り、租税の面からだけ解決することは私はむずかしいと思います、從つて他のいろいろな施策というものが必要であることは、議論の餘地がないと思います。これを前置きにいたしまして、この税制改革に關するところの問題をいろいろと考えてみます。
そこで私がもう一言、つけたりとしてお尋ねしておきたいことは、この税制の民主化をはかるという言葉がありますが、税制の民主化という言葉がぴつたりこないのです。具體的に言いますと、税制の民主化ということはどういうことを指すのでありましようか。一應承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=50
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051・前尾繁三郎
○前尾政府委員 われわれがただいま考えております税制の民主化ということは、その一つは負擔を廣く國民全體に分擔していただく。それによりまして國の財政というものに對する認識、あるいは國に對する責任という觀念を、廣く自覺をもつていただく。これが一つの税制の民主化だと考えるのでございます。次に一つの面は今囘とりました申告納税制度でございます。これは要するに國民の自主的納税、みずから税に對して税金を計算し、またその税金を自分で納めていただく。從來のように税務署から通知がきて初めて。これはどうしても納めなくちやならぬものだというだけで納めていただくのではなしに、自分で計算していただきますと、税の何たるか、何故にこういう計算をするかということについて、十分な自覺をもつていただくとともに、實際自分の良心によつて税金がはじき出されるということが、一つの税制の民主化であると考えております。また、從來の所得税調査委員會というものが、かなり弊害のある制度でございまして、これも最初できました當時は、納税者の選擧によるものでございますので、やはり租税の民主化というような趣旨からできたものであつたのに相違ないのでございまするが、單に納税者だけの選出いたしました委員であり、また何ら報酬も受けることのない委員でありますので、いきおい減税委員になるというような弊害を生じたのでございます。從いまして、われわれはその弊を除くために、もつといわゆる民衆によつて監視していただくというような氣持からいたしまして、第三者の通報制度を採用いたしたわけでございます。またそれとともに、第三者の通報制度をもつと具體化いたしますか組織化いたしますか、何らかの形において税務協力委員會というようなものを擴充強化いたしまして、それによつて税務署なり、あるいは一般の納税者に對しまして、民衆による監視、廣い各層からなる民衆によつて監視をやる。これがわれわれの現在考えている税制の民主化の内容でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=51
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052・石崎千松
○石崎委員 およそ租税を徴收するのには、産業が起つてそれに課税することができるといつたような産業情勢におかなくてはならぬと私は考える。ところが今日の状態を見ると、政府の施策がそこまでいつておらぬ。言いかえれば、産業資金がまだ潤澤に動いていない。先ほど午前中川島さんの質問に對して政府委員が答えられたが、今度百億餘りのものが産業資金として注ぎこまれるということでありますけれども、まだだということになれば、來年できるのか、再來年できるのか、その次にできるのか、一向にわからない。從つてこの産業資金が注ぎこまれて、産業が刺激されて起つてくる。つまりとりよくなる。とられる状態になれば、そこで財政の收支のバランスはつくと私は思うが、今日ではなかなかそれができておらぬ。まだだというところに私の疑問がありますが、それはいつごろ實現されてどういうふうにするのですか。それがわからないことには、それまではまた再び税率が改正されなくてはならぬ運命になつてくるだろう、かように考えられるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=52
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053・前尾繁三郎
○前尾政府委員 産業資金の問題については、私係りでございませんので、また適當な政府委員から後ほど説明させることにいたしたいと思いますが、ただいまのお話のごとく、まず産業が起る、それによつて税收が上つてくる。これが最も望ましい状態でございます。當然かくあるべきものだとわれわれも考えております。もちろん資金の面についても、最近のいろんな制限は一面からいうと産業に對する壓迫ではございまするが、また一面からすると、いわゆる預貯金等も吸收して、民主的に自治的に産業を復興するという考え方で、根本精神を違えた行き方をしなければ、單に政府が補助金を出すようなことでは産業は起らない。そういうことを申してまいりますと、結局は根本施策ということになるのでごいますが、われわれはそういう根本施策が相當順調に進行することを考えて、殊に來年度においてはそういう考え方のもとに、現在の税制についてもその刺激というか、たとえて申しますと法人の超過所得を引下げる、あるいは最高税率を引下げる。從來のように單に百パーセントとつてしまうということでは産業は起らない。適當な利益を得ることによつて刺激するという考え方も織りこんで、所得税においては最高税率を七五%すなわち少くとも四分の一は殘るんだという制度にいたした次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=53
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054・石崎千松
○石崎委員 およその心持はわかりました。こまかい問題がたくさんありますが、それらは後に政府委員室で個人的に伺うことにいたし、今さしあたつて伺いたいことは、今度の財産税の物納にあたつて、かりに私が家を物納した場合、政府がそれを競賣して、私の税金を引いて、餘つたのは還してくれるのか、足りないときには追徴されるのか、どうですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=54
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055・前尾繁三郎
○前尾政府委員 物納していただいた財産はすべて國有財産となるのでありまして、その家屋等については競賣を原則といたすわけでありますが、場合によつては、その貸家に住んでいる人に優先的に賣却するという方法も考えております。しかしその財産が高く賣れたから收納額の差額はもとに還すという規定ではもちろんありません。たとえばある不動産については、申告價格より相當高く賣れることもありましようが株等においては受けとつた額より低くなる場合が多いかと存じます。それらの危險負擔はすべて國有財産として國が負擔することになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=55
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056・石崎千松
○石崎委員 その家の價格は時價だつたでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=56
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057・前尾繁三郎
○前尾政府委員 家屋の評價については一應三月三日現在の時價であります。しかし三月三日現在というよりは、法律によつて家屋の賃貸價格に一定の倍數をかけるのでありまして、それは不動産評價委員會に諮問してきめた倍數でありますが、それをかけ合わせたものによつて課税し、物納していただいております。そうしませんと、單なる時價と申しますと、その基準がないのと、不動産等については非常に地域的に不權衡になる場合がありますので、ただいま申し上げたように賃貸價格の一定倍數ということによつて評價をし、物納といたしておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=57
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058・石崎千松
○石崎委員 今日の國債を日本がたくさんもつているが、一人當りの負擔額はいくらになつていますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=58
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059・前尾繁三郎
○前尾政府委員 國債總額は約二千億圓だと思いますが、一人當りについては後ほど計算して申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=59
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060・石崎千松
○石崎委員 私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=60
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061・金光義邦
○金光委員長 加藤シズエ君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=61
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062・加藤シヅエ
○加藤(シ)委員 私は税制の民主化ということと、今度の新らしい憲法によつてまさに崩壞しようとしてゐる日本の家族制度との關係について伺いたいと思います。總合所得税を拂うときに、ただいま世帶單位として、たとえば、一家の主人である夫の收入に對して、妻も、息子も、娘もみな働いているということになると、主人の收入に他の者の收入が加算されて、その全額に基いて總合所得税の税率がきまると理解しておりますが、それで正しいのでありませうか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=62
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063・前尾繁三郎
○前尾政府委員 從來同居の家族と申しておりますのは、戸籍上の家族であることが第一要件でございます。また同居をいたしておりますことが、一つの要件でございます。同居をいたしておるという事實は、やはり從來からかまどを一つにしているという觀念でございます。すなわち同一の家屋に住んでおります場合は同居だというふうに考えておつたのでありますが、家屋が別でありましても、生計は同じふところでやつている場合は同居だというふうにいたしておつたのでございます。今囘憲法並びに民法の改正と相合わせまして、所得税法の第八條におきまして、「同居親族とは、配偶者及び三親等内の親族で生計を一にするものをいう」というふうにはつきり明定しております。また三親等内の親族でございますが、その三親等内のまた同居の家族中に三親等内の關係のある人があり、その人とは三親等の關係になつているというような、ある家族だけを通じて見ますと、三親等内になつていないが、他の人を介して見ると三親等との關連をもつている。要するに經濟單位が一つである。すなわち生計を一にいたしておりますもの、それを同居の家族といたしまして合算いたしているのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=63
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064・加藤シヅエ
○加藤(シ)委員 そういたしますと、ずつと以前に、累進所得税というもので、だんだん高くなる率がそれほど開きのないときには、たとえば一家總出でもつて職場に出て働いているというような場合には、皆が働いてたくさんの收入を家庭にもつて歸りますれば、その家は大變に暮しが樂になるということになつておつたわけでございますが、この節のやうに、だんだん收入の額によつて累進的に非常に税率が高まるということになつてまいりますと、今政府委員の御説明くださいましたような、それだけの家族でも、とにかく個人が基礎でない限り、家族が基礎である限り、たとえば夫婦がともかせぎをするというような場合には、その收入のいかんによつては、一人で働いていた方が二人で働いてたくさん金を家へもちこんで、そうして非常に高い税金を拂う。そうすると差引一人で働いて少い税金を拂うのと同じようになるというような勘定が出てくると思うのでございますが、そういうことになりますれば、この税制の民主化ということとやはりそこに矛盾があるのではないか。殊に家族制度というものは今度崩壞して個人というものが單位ということになりますれば、その一家の者がめいめい働いて收入を得た場合には、その個人を基礎にしてそのめいめい個人單位で税率を課するということにする方が民主的ではないかと思うのでございますが、この點はいかがでございまようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=64
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065・前尾繁三郎
○前尾政府委員 同一のかまどでやつております場合、事業所得につきましては、それが實際問題としてだれの所得であるかというようなものははつきりいたしません。またそれによつて大體一家を支えていくというわけでございますから、その收入を全部合算するということが、むしろ家族の制度は崩壞いたしましても、戸籍の面でなしに、それを中心でなしに、實際の經濟の單位というものにつきまして、これを一箇の單位で計算して累進税率を適用するということがむしろ當然であると考えるのでございます。ただ勤勞所得につきましては、まつたく勤め先も違つており、別個の觀點に立つと考えるのでございます。從いまして勤勞所得につきましては、もちろん合算して累進税率は最後に適用するのでございますが、ただ事業所得でございますと、基礎控除の四千八百圓は同一家族につきましては一囘しか引かないのでございますが、勤勞所得につきましてはその人ごとに引くということによつて、勤勞生活をしている方の實情に適應するような方法をとつている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=65
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066・加藤シヅエ
○加藤(シ)委員 ただいまの御説明によりますと、私の考えておりますように、家庭というものに集まつて、そこで協力して生活するということにいたしましても、あくまでも個人が本位で、個人がおのおの獨立心をもつて働くという建前からは、今政府委員の御説明になりましたところは、やはり矛盾していると私は考えるのでございます。それで、先ほど私が申し上げましたように、たとえば夫婦二人で働くより一人で働いている方が結局差引收入が多いということになりますから、たとえば妻も一緒に働くというようなことはやめて、税が高くなるから夫だけの收入に頼つた方がいいという結果が生れてくると思いますが、これについてどういうふうにお考えでございませうか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=66
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067・前尾繁三郎
○前尾政府委員 同じ家で住んでいるという事實、たとえて申しますと、片方は五萬圓の所得があり、奧さんは一萬圓の所得がある。つまり六萬圓の生活をしているわけでありますから、從つて擔税力はそういう人の方が多いのだということの方が私は實情に適合いたしていると考えるのでございます。また累進税率はかなり高い税率にはなつておりますものの、税が高くなつたからといつて所得全體をとるものではございません。先ほども申し上げましたように、非常に大きな所得で、百萬圓の所得があつて初めて七五%という税率が適用されるのでございまして、今お話のように一萬圓とか五萬圓というような程度では、そのために勤勞意欲をなくするということは私は絶對にないと考えております。また先程申し上げましたように勤勞所得につきましては、特に各人別に基礎控除をするというやうな方法も設けておりますので、奧さんが出てお働きになるというような場合、今日の改正におきましては十分考慮いたしているつもりでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=67
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068・加藤シヅエ
○加藤(シ)委員 ただいまの御説明では、どうしても私のもつております質疑を十分明確にすることができないのでございますけれども、今日は時間の都合がありますので私の質問はこれで打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=68
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069・金光義邦
○金光委員長 松永義雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=69
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070・松永義雄
○松永(義)委員 昨日私が大藏大臣に對して質問いたした場合に、消費税のごときは轉嫁しやすい。直接税はあまり轉嫁されないものである。しかし現在の財産税及び増加所得税というものは、製造品の値段に加算されて、そうしてその値が上るばかりでなく、一般物價の値上りを刺激しつつある。これに對して大藏大臣の答辯は、それは購買力であるからであるということでありましたが、私がここで御質問いたしたいことは、その購買力のある人というものは一體はたして國民全部であるのか、それとも購買力のある層というものが特にあるのか、その點につきましてお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=70
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071・前尾繁三郎
○前尾政府委員 昨日でありましたか大藏大臣の御説明では、購買力というような點も御説明になつたのでありますが、もちろんやはり需要と供給、兩方面から考えていくべきものだと思います。もちろん浮動購買力というほどの購買力でなくても、購買力がなければ買えないのは當然でありますが、需要がもつと強いという場合には、少々無理をしても買おうというようなことに相なりますので、單に購買力というようなことだけでは説明はつかないと思いますが、ただ大臣はおそらくその前に申されましたように、間接税でも需要が少いというときには、販賣業者に轉嫁される場合がある。從つて直接税においても轉嫁が全然ないということは、もちろん言えないのでございます。そういうことを申されたあとで、もしまつたく購買力がないとすれば、買う人が買おうと思つても買えないのであるが、購買力があるから買う。從つてそこに直接税でも轉嫁が起つてくるのだ。こう裏側からお話しになつたわけでございます。ただ私といたしましては、もちろん需要供給の關係であり、いかなる統制をいたしましても、經濟上の弱者という方に税は轉嫁される傾向をもつておる。ただ直接税が轉嫁されないという理由は、結局累進税率なりその他によりまして、轉嫁しようと思つても所得のうんとある人は税金が高い。ある人は税金が安い。累進税率等の關係から考えますと、甲の人はそう多額を轉嫁しなくてもいい。また乙の人は非常に全部の税を轉嫁するということになりますと多額なものを轉嫁しなくちやならぬ。そうするとその間、結局累進税率の高い適用を受ける人は、轉嫁することができないというような關係からいたしまして、直接税については、原則としてあまり轉嫁されにくいというような關係にあるのでございます。そういう意味で私が申し上げておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=71
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072・松永義雄
○松永(義)委員 どうも今の政府委員の答辯でははつきりしないのですが、需要供給の關係につきましては、さつきも申し上げたように、とにかく物の量が少い。非常に少いところへもつてきて、それに對する需要がある。しかし需要はあるけれども、その買い得る人と、買い得ない人があるのではないか。その買い得る人は一體どういう層であるか。たとえば具體的にこれを申し上げますれば戰爭前らなば坪五十圓で家ができたその時分ならばわれわれでも二十坪の家を拵えるのに千圓あればいい。どうにかやつていける。ところが昨年の今ごろは坪千圓、しかるに今日は五千圓とか、一萬圓とかになつて、とてもわれわれは建てようと思つても建てられない。しかし需要という點については非常に強い。しかるに購買力がない。金がない。そのためにわれわれは衣食住のもつとも重要な一つである住というものが、滿されぬというようなわけになつておると同じように、一般に需要供給の關係からしまして、需要者が求めておるにもかかわらず、買い得ない層がある。また買い得る層がある。その買い得る層はきわめて少數の者であるけれども、しかし供給が少いために、供給者は値を上げても賣れる。そうして値が上つてきて、ますます金のない者は買い得ない。ほとんど天に指をさすように、遠くの方に存在しておるということになつておる。そういう買い得ない層と買い得る層があるが、その買い得る層はどういう層であるかということは、一應考えられるのでありますが、その點はどうでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=72
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073・前尾繁三郎
○前尾政府委員 買い得る層と買い得ない層、すなわち購買力をもつた層ともつていない層、これは當然考えられるのでございます。また現實問題として、現在においてそういうような状況になつております。それを抽象的に申し上げますれば、實に勤勞階級、定額給與でやつておる人は、割合に購買力をもたない。また事業をやつておる人の中でも、やみ所得の多いやみ屋というようなものにつきましては、相當なというよりも、非常な購買力をもつておると考えます。また農業所得、すなわち從來のて種事業というようなものを營んでおる農民階級におきましても、最近は相當な購買力をもつておると、私は考えるのでございます。ただその購買力を、非常に事業所得者のように消費の方に相當振り向けるものと、また農民のように割合に購買力はあつても、實際問題として割合に退藏しておるというようなものと、各種さまざまな階層があることにつきましては、もう私から御説明申し上げるまでもないと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=73
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074・松永義雄
○松永義委員 そこでさらにお尋ねいたしたいことは、そうした購買力の力の強い層に對して、課税の上に今度の税法はどういうふうに考えられておるか。さらにそれについて私の税明を補充いたしたいのでありますが、そうした購買力があるにもかかわらず、それを貯蓄すれば一應それでもつともだとうなづかれるのでありますが、その購買力の振り向け方が、いわゆる生産投資の方に向けられないで、消費の方にばかり向けられていく。そうした浮動購買力というものに對して、一體今度はどういうふうに考えられておりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=74
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075・前尾繁三郎
○前尾政府委員 この浮動購買力をもつておる事業所得者方面に打つた手は、御承知のように豫算申告納税制度であります。從來のように前年の實績によつて課税するということになりますと、いきおい納税資金を殘らずに、濫費をしてしまうというおそれが一つございます。またとりました税金は、昨年の所得に對して課税するものでありますので、その時の感覺には既に合わないというような状況にあるのでございます。そこで御承知のように勤勞所得につきましては、從來から源泉課でその時その時天引してまいりましたが、それと同樣な方法でいこうというのが、今囘の豫算申告納税制度でございます。しかし毎月々、月別でとるということは、とうてい實行不可能であります。從いまして三月ごとに四半期ごとに源泉課税等に近づける。要するに所得の發生時期と徴收の時期を接近させて、もうかつたらすぐその場でまた税金を納めるというふうな仕組にいたしたのでございます。そのことが納税者から言いましても、濫費をせずに税金が納めやすいという得もあり、また國から言いましても、物價の變動による危險負擔を國で負わなくてもいいという利得があるわけでございます。それ以外といたしましては、最高税率は相當引下げたのでございまするが、しかしそれともう一つの問題として殘りますのは、要するに所得の捕捉の問題でございます。これは單に税法の問題ではございません。要するに税務行政の問題でございます。税務行政につきましては、所得の捕捉ということに今後重點をおきまして、税務署員を動員するなり、訓練するなり、また税務機構の内部の改革、あるいは外部からの協力というような、各方面にわたつて、所得の捕捉ということを嚴重にいたすとともに、最高税率を引下げましたゆえんも、單におざなりの從來の課税をある程度引上げていくという程度のことをして、税率を引上げることによつて糊塗してまいつたのでありまするが思い切つて適正な税率にして、その代り何ら斟酌なしに適正な實際の所得の捕捉をするという方向に向おうというのが今度の根本改正のとりました方針でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=75
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076・松永義雄
○松永(義)委員 さらに續きましてお尋ねいたしたいのですが、昨日も質問いたしましたように、たとえばこのごろ、これはまれな場合であるかもしれませんが、たれが見ても一番消費であると思われるのが料理店あるいは待合のごときものなのであります。殊に、これは市井の、巷の話でどこまでほんとうか嘘かわかりませんが、とにかくある待合ではひのきづくりの家を建てた。そうしたいわゆるほんとうにあつてもなくてもいいようなそうした商賣に對して無用な資材の濫費をやつておる。金の使い方が惡いとかいいとかいうことより、資材が濫費をされている。そういうものに對して禁止的な税金をかけるのが妥當ではないか。平時であればそれは禁止税というようなことは思いも及ばぬでしようが、こうした非常時においてきわめて物の少いという場合においては、できるだけ物を善用していかなければならぬ。一體そうした消費をやつておる者に對しては、特にその税率を上げて、税務の上でこれは強くとるということであるばかりでなく、税率の上において、そういつた消費的な方面のみ購買力を惡用しておる者に對しては、徹底的な税金をかける。こう考えておるのですけれども、いかがでしうか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=76
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077・前尾繁三郎
○前尾政府委員 最近續出いたしております料理店、待合等の高級料理店の課税の問題でございまするが、ただいまお話のごとく、最近建つておりますものは、あるいは資金の融通を受けておる場合も相當あります。しかしかなりの所得が増加いたして、それによつて建てておるものも、また多數あるように考えております。從いまして、その資金の出場所ということにつきまして、十分探究いたしまして、今囘の増加所得税、並びに將來の豫算課税は、がつちり課税していくつもりでございます。ただこういうものに對して税率を違えていつたらどうかというお話でございます。しかし現在におきましては、高級のこういうような料理店、待合等を建築するというためには、相富な資金が當然要つておるのでございまして、あるいは十萬圓とか二十萬圓、あるいは場合によつては五十萬圓、百萬圓というようなものに對しましては、現在の税率におきましても相當高いのでございます。ただ所得に對して百パーセントまでとるということは、先ほど申し上げましたように、實際上困難であり、また納税も不可能だというような意味からいたしたのでございまして、今囘の税率にいたしましてもこういうような相當の所得のある者につきましては、かなり高い負擔に相なることは當然でございます。ただ私は所得の捕捉ということを、從來のようにあまり高い率でありますと。せつかく捕捉いたしました所得でも、ある程度考えてやらぬと、税金が納められないというような場合が生じますので、それよりはそういう所得はあくまでがつちり行つて、それに對して税率を適用すれば、七五%までも、まあ四分の三はとるということになりますれば、大體目的を達するというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=77
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078・松永義雄
○松永(義)委員 さらに續いてお尋ねいたしたいのでございますが、ただいま私が一例として申し上げた場合のように、そうした方面に非常な重税を課するということになると、そんな商賣をやつたつてましやくに合わぬじやないか、自然金というものは生産の方に向つていきはしないか。預金の祕密制ということがかなり論議されたようでありますが、預金の祕密制によつて貯蓄を奬勵するというのも、あるいは一つのねらいであるとは思いますが、しかし國家はその投資のいかんによつては非常にきつい目に遭わせる。しかしいい方面については相當考えるという氣持を税法の上に現わしていくことが必要ではないかと思うのであります。御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=78
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079・前尾繁三郎
○前尾政府委員 投資に對してある程度輕減していくという氣持は、今囘の所得税の税率におきまして事業所得その他と同じ税率に配當所得をいたしておることによつて十分だと考えます。また預貯金の祕密制につきましては、實際を申しますと、われわれといたしましては、必ずしも歡迎すべきことではないと考えておるのでございまするが、ただ預金をした人がその預金によつて直ちに簡單に所得の捕捉によつてがつちりとられ、ほかの、預金をせずにいわゆるたんす預金等にいたしております者が課税がうまくいかないというようなことでは、とうていその目的を達しないのでございます。從いまして預金をしていない、いわゆるたんす預金をしておるといふような人に對しても、われわれは相當他の方法によつて課税の充實を期することができるというふうに考えておるのでございます。また預金をしておる人につきましても、ただいま申し上げましたと同樣の方法によつて十分他の面から課税ができるというだけの確信をもつておるのでございます。從いまして貯蓄奬勵その他の預金の吸收について相當重點をおいていかなくてはならぬという場合に、單に預金は公開するんだ、祕密にしないんだというようなことによつて預金者の心理を刺激しないというふうにわれわれとしては努力しておるだけのことでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=79
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080・松永義雄
○松永(義)委員 話を少しよそに轉じまして、通貨量と税の徴收の關係についてお尋ねいたしたいと思います。新しい税法によつて通貨量は減る見込みですか、それとも現状のままでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=80
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081・前尾繁三郎
○前尾政府委員 通貨の量が減るか減らないかと、いうことにつきましては、税法としては財政の收支の均衡を得ることによつて、財政の面から通貨の増發されることについて、できるだけの防止をいたしておる次第でございまして、通貨量がそれ以外の面から殖えてくることについては、これまた別個の問題であろうと私は考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=81
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082・松永義雄
○松永(義)委員 ただいま政府委員の御答辯によりますと、殖える方面の話だけをしてなられたようですが、健全財政という立場でとにかく收支を償つていこうというお考えでありますれば、大體現状のままで通貨量が進むと考えてよろしいのでありますか。それとも減るのですか。殖える方の話は別にしまして……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=82
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083・前尾繁三郎
○前尾政府委員 歳入に對應いたしました歳出を出しておるのでありますから、財政の面からは當然殖えもせず減りもしないことになる次第でございまして、もしそういう公債を償却する、その他の方法をとりますならば、通貨量が減つてまいるのでありますが、ただいまのところは結局通貨を、歳入として收入いたしましたものの全部を歳出でまた放出しておるわけでありますから、減少するというのは税の面からは出てまいりません。他の施策によつて出てくるものだというふうに考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=83
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084・松永義雄
○松永(義)委員 しからば現在のごとき通貨量で進んでいくと假定しますと、一體五月には何とかなるであらうと大藏大臣が言われておるのでありますが、それは一體どういう意味であるか、つまり三月危機といわれておる反面に、五月には何とか安定する、こういうことが言われておるのですが、一體それはどういう意味であるか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=84
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085・前尾繁三郎
○前尾政府委員 これは今囘の改正の問題ではございません。大臣の言うておられるのは、財産税は徴收の時期にはいつておりますので、これによつて相當通貨量が減少する、あるいは貸出の制限その他の金融面の手によつてまた收縮するというような、それらの關係でございます。すなわち來年度の問題としては、收支のバランスを合わして、それによつて直ちに通貨量が減るという面は出ておりません。それ以外の施策によつて減るというのを大臣は言つておられるのだと考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=85
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086・松永義雄
○松永(義)委員 その質問をさらに延ばしていきますと、あるいは主税局長の職分以外のことになるかもしれませんから止めておきますが、實はこれは大藏大臣がおいでになつてお聽きするのが妥當だと思いますが、物の方は一體どういうふうになつておるかということであります。現在のままで物の量が進んでいく、そして通貨はこのままで進んでいくと假定しますと、五月には安定するという考え方は、とにかく健全財政というものが現われてきて現在の實情でおさえていかれる。そうしてそのまま進んで五月に至るというふうに考えておいてよろしいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=86
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087・前尾繁三郎
○前尾政府委員 通貨の量が現在のままであり、生産される物の量が現状のままということになれば、現状のままで安定することになると思います。また通貨は先ほど申し上げましたように、財産税その他によつて相當その面から收縮されてくるということになりますと、物の量が現状のままである程度進行してもなおしつかりと安定してくる。また物の生産の面において施策が進行して、増産が進捗いたしますれば、十分安定するのだというふうな、むしろデフレになつていくのだというくらいのお話を大臣はされたのではないかと私は想像いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=87
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088・松永義雄
○松永(義)委員 もしそうだといたしますと、五月ころに至つてもなおかつ現在のままの物價でいく、さらに通貨量は殖えないでしようが、減りもしないということになつてまいりますと、現在の國民の生活はそれによつて、どういうふうに相違がくるであろうか。すなわち現在勞働によつて生活しておる階級は非常に苦しいのであります。なるほど札はよけいもらうことになつたかもしれませんが、その購買價値というものは、昨日申し上げましたように、せつかく財産税をとつても、かえつて物の量が少いために物價は上つていく、そのために買いたいものも買えない。しかもそれが衣食住である生活の必需品までその影響が及んでくるということになりますれば、現在苦しい國民の生活が、このまま五月にまで持越され、さらにその先まで持越されていくとなれば、一體いつになつたら勤勞階級が救われ得るか、物價をもう少し低いところにおくように安定さしたらよろしいか、あるいはまた物價をこのままで安定さしていく、あるいはもつと高くなつていくことになるのではないか。その結果いかんによつては、働く者は現在においても苦しいのでありますから、ますます苦しくなり、せつかく給料を上げても何の役にも立たぬ。それでいろいろの政策が總合されなければ解決し得ないと思いますが、税の上から見て、何らかそこにその目的を達しなければならぬということを考えられるにもかかわらず、このまま進んでいくということになりますれば、勤勞階級は救われぬことになるのであります。すなわち通貨量をこのままの高い程度にすえておいて、物價は上りこそすれ下らないということになれば、勤勞階級は非常に困る。そうした財政政策というものは、根本において誤りがあるといわれておるのでありますが、その點について政府委員は一つ本氣になつてお答え願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=88
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089・前尾繁三郎
○前尾政府委員 ただいまのところ、勤勞階級が非常に苦しい。その以外の階級と比べてたしかに苦しいというのはわれわれ毎日みずから體驗しておる次第でございます。しかし先ほどお話もありましたように、財産税を徴收する、あるいはその物納財産の拂下げをやる、あるいは資金の制限をやるというような施策が資金面に進行いたしまして通貨量が減る。また物の生産が一面において施策が成功したしまして進捗するということになれば、もちろん物價は下つてまいります。要するに今後その施策がどこまで強力に行われるかということは、私は税の面につきましては、現状のままにおいて勤勞階級の負擔がどの程度であればいい、どの程度であれば拂えるか、またその反面におきまして、相當購買力の殖えておる方面につきましては、どれだけ課税の充實を徹底すればいいか、そういうようなあらゆる面から考えまして、税制といたしましては適正を得ておると信ずるものでございます。ただ、ただいまのお話のように、現状のままで生産も起らない、あるいは資金の面につきましてはもう既に手を打つて財産税の徴收なり、いろいろなことが行われておるのであります。物の生産が上らないということになれば、もちろん全體の消費するものが少くなつてまいりますので、全體的に苦しくなつてくるわけでございます。ただ購買力の面からいたしまして、私は相當今度の増加所得税並びに豫算申告納税に對して課税の充實を期するということによつて、購買力の面につきましては、御滿足のいくような均衡を保つことができるというように確信いたしておるのでございます。從いまして物の生産がある程度順調にいけば、私は勤勞階級は十分救われる、こういうように考えておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=89
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090・松永義雄
○松永(義)委員 個々の生産力が進展すれば救われるであろうといふことであつて、今日のこの現状にもち來したところの過去における財政というものは、少くとも勤勞階級にとつて非常に苦しい結果に陷れたということは、否定できない事實ではないか。しかもこのままの高位の通貨量と物價でもつて推し進めていこうといえば、勤勞階級は根本において、もう救われぬという絶望的な斷定を下しても決して過言ではないと思うのであります。そうしてただいま政府委員は増加所得税をとつたり、あるいは來年度において税金をとれば購買力が吸收される、こういうのでありますが、しかしその購買力の使命として、貯蓄の方面へ向えばよろしいが、貯蓄の方面に向わないで濫費をされる。ところがそれに對する課税額というものが、それに相應する額になればよろしいけれども、相當の税金をとられるとあなたがうぬぼれられても、なおかつ餘すところがあるというわけで、そうしたいわゆる新圓層というか、金持層というものが購買力を殘して、そうして自分のところだけ必需品を集めてしまうという結果に陷るという懸念が多分にあるのでありますが、あなたがそういうふうにおつしやるからそうなるというふうにも考えられないことはないと思いますが、少くとも現在までの實績によれば、増加所得税も財産税も轉嫁されにくいものを經費のごとく見積つて、そうしてそれを價格の上に加算していく、しかもそれが賣れる、きわめて少數でありますが、賣るものも少量でありますから、需要供給というものが符合するばかりでなく、さらに値を高くしても賣れていくという現状になつておるのでありますが、少くとも税の上からは決してあなたが考えておるような目的に向つて進んではおらぬ。あなたの考えておられる氣持は決して惡意ではない、善意でそういうふうになさろうとしておるけれども、他の方面からの助成策がないために、そういう方面に落ちていくというのが現状でありますが、その現状に對して將來は新しい税法で何とかなるだろう、こうおつしやられるのでありますか、それでもなおかつ將來はこの税法によつて物價を安定し、何とか生活がいくらかでも樂になる。こういうようなお見込みをもつていられるのでしようか。その點はどうですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=90
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091・前尾繁三郎
○前尾政府委員 税の面から、税は私の先ほどから縷々申しておりますように、勤勞所得と事業所得その他の資産所得、その間の負擔の均衡がとれて、結局購買力の平均化がされるということを申しておるのであります。それにつきましては、財産税を昨年三月三日に押えました以後におきましては、また今盛んに努力しておる増加所得税が初めてでございます。増加所得税についても、相當の成績をあげることを私は期待しておるのでございます。豫算申告納税につきましても、從來と違つた税務行政の行き方、相當徹底した行き方をして、十分その間の負擔の均衡をはかるということについても、なし得る覺悟をもつておるのでございます。ただそういうふうにある程度購買力が平均化されてまいりましても、物全體として減つてまいりますれば、これは當然全體として窮屈になつてまいるのでございまして、所得と申しますのは結局配分の關係でございます。所得額がいくらという問題でなしに、要するに配分關係がどうである。現在ある物の量をどういうふうに配分するかという關係に相なるのでございます。その配分關係の基準をきめます所得の面においては、相當適正を期し得るということになると思います。ただその物の面からどういうふうに生産され、またどういうふうに適正に配給されるか、ということについては、私は係でありませんので、ただいまのところ申し上げる材料をもつていない次第であります。惡しからず御諒承を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=91
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092・松永義雄
○松永(義)委員 それは昨日川島さんが御質問になつて御答辯があつたと思うのでありますが、つまり生活費というものは、物の方面から勘定したので、それは物が少ければ、かつて言われたスローガンでありますが、均しからざるを憂う。苦しい中にも苦しさがひとしければ、この國歩艱難の際にお互いにがまんしていく。物がなければどんなに通貨量を減らしてみたところが、行きわたらないことは事實である。しかし問題は不當な所に物が集まつていわゆる正直な、ばかなところには物が集まらぬ。しかもそれが持續されていく。それが財政政策だ。それを知つておつて見逃していく、そういうところにまたもつていくために、過去においていろいろな財政政策が行われた。その事實に對してわれわれは實に遺憾と思うのでございます。さらに増加所得税を嚴重にとれば、何とか配分がつくであろう、また來年度において新しい税法によつて運用いかんによつて配分がつくであろう、そうおつしやられるのが、あなたとしては當然かもしれません。しかしもつと新しい別の税種を考えていく餘地がないか、増加所得税だけを頼りにしてそれで解決する、財産税だけでもつて解決する——財産税のとり方あるいは時期についても、いろいろ批評があることは、これはたれも知つている通り、そうしたことは別にしまして、別に考えなければならなかつた點があるのではないか。すなわち配分のよろしきを得るために、これだけの新しい税種だけでよいのか。やはり依然としてとられるものは下の方で、實際はよけいとられるように見えても、ある人は割合にとられる比率が少くてそうして金を餘す。そうした結果が物の配分の上に不公平を來すということになつていると、私は考えるのであります。新しいどういう税種を立てるかということにつきましては、おそらくいろいろな方から御質問があつたと思いますが、そういうものは把握しにくいからやらないのだ、こういう御意見もあろうと思うのですが、しかしそれじや脱け穴があつて、やはりそれは不當に苦しむ人が出てくるような結果になる。別に主税局の勉強振りを私は批評しようとは思わぬのでありますが、こうした非常時には非常時らしいような税を立てて、そうしてやつていくのでなければならぬと思うのですが、増加所得税だけで解決されると思うかどうか、増加所得税が一體どういうふうに税金をとられているかということを、あなたはお調べになつたかどうか。もうかる人というものは驚くべきものであります。増加所得税をかけられても、この一月働けば何とか納められる、こう言つておる人もある。そうしたような、相當あなたがとられると思われても、何しろ街に歩いているところの通貨量というものは非常に多いのです。あの増加所得税でこれを解決するということは私は困難ではないかと思うのでありますが、いかがでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=92
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093・前尾繁三郎
○前尾政府委員 現在の増加所得税並びに今後の豫算申告納税以外に何か新税がないかというお話でございます。これはあるいは理屈に倒れることに相なるかとも思うのでございますが、昨年三月三日を期日といたしまして、御承知のように財産税を設定したのでございます。その後今までに一年でございます。その一年の所得を對象としてとるものは、現在の所得税以外には考えられないのでございます。また來年度一年を通じて考えましても、まず所得税以外に理論としてはございません。もしそういうような財産が逋脱されたものが殘つているという場合におきましては、ある時期、相當長い期間經ちますと、財産増加税、あるいは場合によつては、すべての富の再配分をやる財産税というものが考えられるのでございますが、財産税施行後ごく短期間でございますので、今財産税をやる、あるいは財産増加税をやるという時期ではないと、私は考えておるのでございます。しからばそれ以外に何か税はないかという御質問もあるのでないかと思うのでありますが、結局われわれといたしましては、料理屋に對する業務用酒の加算税というようなものも、一つの大きな考え方であろうというようにも考えておるのでありますがただよくいわれておりますように、免許税あるいは外形標準によつてとるという税については、あまり効果を期待いたしておりません。結局やみ所得というようなものを、外形標準で捕捉いたしました場合には、かえつて逆効果を來してしまうというような點もございますので、よくいわれております外形標準による何らかの營業税あるいは免許税というようなものについては、ただいまのところ創設することはあまり適當ではないと考えております。ただ地方税におきまして、外形標準である程度捕捉するということは、別個の觀點から、最近におきまして、よいのではないかというように考えておるのでございます。またこの所得の捕捉の問題でございますが、もちろん税務署員が最近の増加所得税においても萬全を期し得ているというわけにはまいりません。しかし大きな、荒削りにおきましては、相當な効果を收めるものだと私は確信いたしております。また最近いろいろな實情なり、陳情なり、あるいは税務署員の實際にやつております状況を見ているのでございますが、まだ未熟練者が多いのでございますので、そう完璧にはいつておりませんが、先ほど申し上げましたように、大きな荒削りな行き方ではありますが、相當な効果をあげるということについて確信をもつているのでございます。また將來の問題といたしましては、いろいろな方法、たとえば倉庫のいろいろな貨物の調査とか何とかいうような、人手が十分ありますれば相當期待し得る調査方法もあるのでございまして、それらについて將來今度の豫算申告納税ぐらいからは、いろいろな調査方法によつて萬全を期したいというように考えておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=93
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094・松永義雄
○松永(義)委員 五月ごろにはとにかく安定するということを私が解釋しますと、五月ごろにおいて物價なら物價というものが一應安定するというふうに考えられるのであります。そこで財産税の評價は、家屋なら家屋について見ると、昨年三月三日ごろに千圓でできた家が今五千圓の價格、これを別の言葉で言うと、去年の夏時分になべを買つておけばよかつた、ところが今日買うと倍ぐらいになつているというようなわけで、同じものを去年買つた人と今年買つた人とは、その札の面からいつて非常な勘定の相違が起きている。そのままにおかれているものに對して税をかけるということはどうかという考えもあるかもしれぬが、しかし讓渡をしなければ讓渡をした場合において價格の差が起きた場合には、讓渡利得をとつても、そのまま默つてもつておるものは値があがつた。そうした者に對して、その上つただけは非常なもうけをした。しかもそのもうけというものは、政府の通貨政策というか、そうした面からきておるので、決して自分の努力からきておるのではない。自然に、いわゆる座していてもうかつたもの極端な場合には今年の春時分でしたか、これ以上は資材を配給しない。しかし必要な資材は配給するしかし今までの資材は不必要な製品でも使つてもよろしい。かりにこういうようなお達しがあつたと假定しますときになに、そんなことを言つたつて、俺のところには五年分の資材の貯蓄があるのだから、そんなことを言われたつて五年くらいは何とかやつていけるだろう。嘘かほんとか知りませんが、そんな話を聞く。これに似たようなことがあちらこちらにあつて、資材を寢かしておつてもうける。製品に變えるよりか、資材そのままを賣つた方がかえつてもうかるというので、生産に向けないで資材だけをそのまま商人のように動かしておる。財閥々々という言葉がよく用いられておるので、今どき財閥というものはないのだ。三井、三菱なんかどこかに飛んでいるのだ。こういう話を聞きます。ところがかつて財閥であつたところの事務所の電話口に行つて聞くと、昨年以來今年の初めごろの話でありますが、昔は何千トン、何萬トンという商賣をやつておつたその店が、今日ではわずかに十トンでも二十トンでもよいから、値にも構わず買つておけというように、買漁りというか買集める。私は特にその名前は申し上げる必要もないと思いますから言いませんが、そうしたいわゆる換物運動が非常に一時はやつて、生産に直接關連なくして、自分の手持の資材が値上りした、あるいは先行きの見越をもつて資材を買集めて値上りを待つ。そうして經濟状況の見透しをつけた。いわゆる名目的にしたところが、札の面からみてもうけておる者がある。そういつた者に對して見逃しておることは、私はどうかと思う。新圓々々といつて、札をもつておる者だけを目標にして、税をかけることはもとより必要でありますが、しかし札から物に換え、あるいは物をそのままもつておつて、大きな利得をしておる。しかもこれが當分の間下る見込みがない。今のままの通貨量に比して、今のままの物價で安定するとすれば、その人の札の面からきたもうけというものは、一應そこで確定するわけであります。そういうものを默つて放つておくことは公平を缺く。そういう者に對して税金をかけるというお氣持になつていただきたいのですが、先ほど少しその御説明はありましたけれども、さらにひとつお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=94
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095・前尾繁三郎
○前尾政府委員 先ほど申し上げましたように、財産増加税については、その時期でないと私は考えております。と申しますのは、財産税をとりました期間も、非常に短いのでございます。財産税的なものでまいりますと、ただいまのお話の點は、結局評價が、相當な現在の時價との差額によつてとるということになりますと、物納なり、その他の制度を認めていかなくちやなりません。また御承知の通り自家用家屋というものについても、増加所得税をとることは、實際において徴税が困難でございます。そうなりますと、相當高い免税點、あるいは基礎控除を考えていかなくちやならぬ。それではあまり効果をもたないのでございます。ただいまのような隱退藏物資があるというようなものでありますと、他の施策によつて、たとえば昨年の隱退藏物資調査令でございましたか、そういうような方法によつて、これを供出させるような方法がとられたらよいのじやないかと思います。その際には當然そこで値上り利益があれば、それによつて讓渡利得が出てくるわけでございます。今囘の改正によりまして、それらのものに對して課税するということはその途が開けておるわけでございます。私はただいまのお話の點は、他の隱退藏物資調査令のような、あるいは供出命令というような、他の施策と相まつてやることにつきましては、可能であるということを申し上げておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=95
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096・松永義雄
○松永(義)委員 主税局長に對する御質問はこれで終りまして、内務省の地方局長にちよつとお尋ねしたい。農村の所得の問題で、シエーレの話が方々で最近起きておるのであります。鋏状價格差と稱して、ちようどデフレーションの當時において、農産物が非常に下落し、一般物價が下落しておるのでありますが、しかし農村の需要するものの値段は、下つたといつても比較的高い。そのために農村は金錢收入が非常に少くて、農村の負擔を輕減しなけれどならぬというので、義務教育費國庫負擔とか、地租移讓とか、そうした負擔輕減の問題が、かなり強く起きて、それが交付金制度となつて、内務省で——われわれも本で讀んで見たのでありますがアリストクラツトといつたような言葉も使われたようであります。それが分與税とか、交付金制度ということになつたのであります。ここに再轉して、地租が委讓される、あるいは營業收益税が委讓されるということになつておるわけであります。ところが最近の農産物の物價です。なるほど東京の人から考えますと、近郊の農村地帶へ向つてさかんに買出しにまいります。親戚ですらも芋を三十圓で賣りやがつた、血も涙もない世の中だと言つて、東京都内の人たちは非常に憤慨した。農村は非常にもうけておる。こういうことが一般の感覺というふうに申してもいいようなわけになつております。ところが事實ははたしてそうであるか。實際そうであろうか。東京近郊のごく一部分、あるいは畑地をもつておる農家はそうでありましようが、日本全國から見て、農家にはこのインフレの時期に札がたくさん横溢しておる。あるいは漁村にも集まつておると言つておるのでありますが、はたして全國的に見て、農村にそれほどの札が散らばつておるかどうか。その點についてまずお尋ねしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=96
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097・柏村信雄
○柏村政府委員 ただいま農村の經濟状態についてのお話でありましたが、確かに最近におきまして農産物の價格が高騰してまいり、殊に都市近郊の農村に相當の金がはいつておる。また漁村等につきましても、同じような傾向が見られることは確かでありますが、御説のように、全體を通じて、例の農村不况時代と比べれば、もちろん非常に殖えておる。總體的に殖えておるということは申されましようが、私どもの考えとしましても、そうした都市の近郊とか、特殊な漁村とかで都會の人が見たような貨幣の膨脹というものが農村にあるというふうには考えておらないのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=97
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098・松永義雄
○松永(義)委員 これはもうたれでも知つている事實でありますが、米の値段が安い。今度超過供出ですか、何か一千二百圓ぐらいになるのだというので、それがまたインフレを刺激すると言い、また逆にそれを利用する人もある。このことは肥料の價値との比較になりますし、あるいは農機具との比較になるのでありますが、肥料にしても農機具にしても、こういうものは都會の工場に近いところは比較的安いけれども、工場から遠距離の貨車に載せていかなければならぬ地方ではそれだけ値段が高くなる。しかるにそうした方面における米のやみ値段は近郊に比較して著しく低い。近郊はどうやらこうやら收支は償つていくと假定しても、これから計算してみますと、東京からの距離が遠ければ遠いほど收支は償わなくなる。たとえば近郊においてはこの頃米が七十圓と言つているが、秋田縣その他のいわゆる米作地帶の方面へいくと、高くても三十圓か四十圓である。ところが同じ鍋を買うにも東京方面で買うのが安く秋田の方にいくと比較的高い。この事實は農機具の籾すりにしても脱穀機にしても同じ現象が現われているのではないか。東京の近郊においては收支が償つたと假定しても東京を離れれば離れるほど米の値段が安くなつて農機具が高くなり、ますすわ收支が償わなくなるという感じがする。收支が償わなくなるというのは極端な言葉の使い方かもしれませんがとにかくそうした面がぼつぼつ現われてきつつある。つまりデフレーション時代に鋏状の價格差といわれたことが再びインフレーション時代に現われてきて、賣るものは安くて買うものは比較的高いということになるのでありますが、そうすれば負擔の輕減ということを考えていかなければならぬ。今にして考えていかなければやはりあの農村恐慌と同じような途を踏んでいくことになるが、今の財政政策はやはり都會中心主義である。デフレーションのときにおいてもそうであつたが、こうしたインフレーションのときにおいても都會中心主義であり、工場中心主義商人中心主義である。そうして農村は漸次疲弊していくという傾向になつてくるのでありますが、將來税金というものに對してどういうふうにこれをお考えになつてやつていかれるつもりであるか、この點伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=98
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099・柏村信雄
○柏村政府委員 ただいま農村方面における負擔が都市方面よりも總體的に重く考えられておりはせぬかという御趣旨に拜聽したのでありますが、私どもの考えとしましては、そうした考えは絶對にもつておらぬのであります。また農村方面におきまして、いわゆる課税力の少い團體につきましては、分與税制度によつて多額にこれを補給するという方法もとつておりますので、ただ昨年の改正によりまして今年もそれを踏襲しているのでありますが、大都市、都市方面における戰災が非常にはなはだしかつたということからいたしまして、分與税の財政上の基準といたしまして、割増人口について大都市は實人口の三倍、都市は實人口の二倍、町村は一倍、こういうことにいたしている點は、これは當分續けていかなければならぬと思つておりますが、その他におきまして、農村方面に冷淡であつて、都市方面を中心的に考えているということは絶對にないというふうに考えているわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=99
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100・松永義雄
○松永(義)委員 具體的に例をとつてみますと、よくお百姓は言うのですが、昨年あるいは一昨年ころには物交の面においても價格の面においても大體米一俵が硫安一俵であつた。ところがこのころは米二俵に硫安が一俵である。つまり二倍になつてきた。米の値段はやみ相場はむろん上つているのでありますが、籾すり機のごときは昨年の夏時分には五千圓ぐらいしたものが一萬圓ぐらい。脱穀機の方もやはり同じように倍くらいの値段になつている。それでは米のやみは上つているかというと、それほどには上つておらぬ。買う物はだんだん高くなる。殊に衣料のごときは均しからざるを憂うで、なければがまんしていくのだというのでございましようが、なんとしても一つの生産要具でありますから、どうしても手に入れなければならぬ。無理して手に入れればこれはまた驚くべき値段だ。これではとても勘定に合わぬ。手をこまねいてそんなものを買わないでやつておればよいけれども、農村の生産はだんだん上つていく素質があつても、上り方が少いか上り方が減つていく傾向を帶びてくるというようなわけで、農村の收支は苦しくなつていく。それで一體農村はどれくらいの封鎖があるかということについて農業會の方でも調べているようであります。これは一部でありますから、全部の判斷の基礎になるかどうかは知りませんが、埼玉縣のごときは、五反百姓で三千五、六百圓一町近いもので五千何百圓、それだけしかない。その後においては近郊ですからよかつたでありましよう。しかしこれを秋田縣とか、新潟縣とか、あるいは青森縣の方にまいりますと、いわゆる貯金と稱するもの、あるいはたんす預金にしても何にしてもその額はわれわれの想像以外に少いという感じを受ける。一縣々々調べたわけではないが、殊に秋田縣方面のまじめな五反百姓あるいは一町未滿の米作だけやつているところで、正直な者は貯金がほとんどないということすら聞くが、今主税局長のお話になつたように、この物價のままでずつと進んでいく、下らないのだ。つまり農村の必要な物資が下らない、米の値段よりも低くなつてこないということになつて、このままずつと續いていくと、もう三千や五千の貯金は、税金と、そうして農村に必要なる物資の買入のためになくなつてしまう。ちようど都會においてサラリーマンが、もうたけのこはやりようがないんだ、嘘かほんとうか知りませんが、そういう聲を聞く。それと同じように、農村においてはいわゆる一町未滿の農民というものは、もうたけのこどころか、買うにも買う金がないというような状況に漸次今落ちつつあるという現象をわれわれは見るのであります。今にしてこれを考えておかなければ、再びまた分與税であるとか、交付金制度とか、いわゆる貧弱町村というような問題が擡頭してくる。必ず近くそうしたことが現われることは、火を見るより明らかな事實だと思うのでありまして、今からその對策を考えておかなければならぬと思う。税金の方面だけを考えたつてそれはだめだ、これはもつともなことでありますが、しかし税金の方面だけでも考えていかなければならぬ。それは石橋さんがどういう財政政策をやつてきたか、そのやつてきたことが誤りであるとか、あるいは將來また誤りを繰返されるかもしれぬ。しかしできないながらでも税なら税の方面から、これを助けていくということを考えていかなければならぬではないか。根本は物が殖えてきて、安くはいつてくれば、そんなことは何でもないということになるでしようが、しかしこの犧牲の原則だけは、これはデフレーションのときにもインフレーションのときにも、常に起つてきて、農村はいつも犧牲になる。實際農村は一生懸命に米をつくつてくれたから、今日本はほんとうに再建しつつあるが、その再建しつつある農民が、まだ金錢收入を求めているからいい。札に對する信仰があるからいい。都會の人のように、もう換物運動が始まつているというような、そうしたことは、まだ農村に見えないからいいのでありますが、この正直な農民を金が農村に散らばつたから、それだからお前ら農村には金があるというようなことを言つて、そうして札に對する信頼がわずかに農村において殘つておる事實を見ないで、そうして三千や五千の金があるのを、たまたま米を一升七十圓か八十圓で買つてきた人が、農村にはやみ賣りをして金があるのであると言つてまわる。そういう氣分に乘つていつたら、必ず農村はまた近く疲弊するに至る。今にして農村に對する税制政策というものをよくお考えになつていかなければいけないんじやないか。たとえば縣民税にしても、村民税にしても、同樣であります。何しろ都會の者は税金が安い。それはなるほど空襲によつて非常な被害を受けた。われわれも空襲によつて被害を受けましたが、しかし都會における商人の方々がどのくらい早くこれを囘復しておるか。農村だつて茅葺の立派な家を立てない家もないではないのであります。それは見ておりますが、しかし全體としまして、農村はこの犧牲の原則に追われつつある現象を見る。まあ結論的に言えば、分與税の話が出ましたけれども、このまま地租は委讓され、營業税は委讓されたけれども、はたしてそれだけでもつてやつていけるかどうか。つまり分與税制度、交付金制度というものが、また再び擡頭してくるおそれがあるのではないかと思うのでありますが、御意見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=100
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101・柏村信雄
○柏村政府委員 農村の財政の見透しにつきましてお話がございましたが、まことにごもつともな御意見であると思うのであります。そこで私どもの考えといたしましては、どうしても日本のように農業だけで立つているわけでなく、都市方面において商工業が相當發達しておるというような、また今後發達していくというような國におきましては、どうしても地域的に税源の不均衡というものが起つてくるわけであります。從いまして、財政の自主化という點からいたしますれば、できるだけ各團體ごとにその區域内から財源を求めるということが好ましいことではありますが、しかしながら、さきに申しましたような國の實情からいたしますると、どうしても團體間に財源の不均衡というものが起つてまいります關係上、これを調整するということがぜひ必要になつてくるのではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、決して補助金的な意味において行う交付金等ではなくて、法律によりましてその課税力に應じた、あるいは財政需要に相應した配付ということが行われるところの分與税制度というものは、將來もやはりこれは殘していかなければならない。そういうことによつて財源の貧弱な團體の經理を賄うことを可能ならしめるということが、どうしても必要であろうと思うのであります。分與税につきましてはいろいろ議論もありまして、これはできるだけ少くしたい、こう考えておるわけでありますが、そうした事情からいたしまして、さらにまた地方財源としては國の實情から非常に有力な財源というものもなかなか與えきれない状態でありますので、そうした一般的な財源附與というような面ももつておるのでありますが、現在分與税の占める割合というものは、税總額の四割に及んでおるわけであります。この一般的な財源として附與する面については、できるだけ獨立財源でこれを與えていくように努力したいと思うのでありますが、先ほど來お話のありました都市農村の財源の不均衡というものは、どうしてもそうした分與税制度において調整していかなければならないというふうに考えておるわけであります。
それから先ほどちよつとお話のありました住民税の問題でありまするが、これは今囘も昨年と同樣に、都市、町村を通じまして、一納税義務者當り同額といたしておるわけであります。これについて都市は輕いではないかというふうなお考えもあるかと思うのでありますが、御承知のように戰災の痛手をまだ脱し切れない状態でありますので、大都市方面における住民の大部分というものは相當に痛めつけられておる。なおまた大都市等におきまする多くの人は、いわゆる勤勞大衆でありまして、こういう人に對して住民税等が相當重く響いていくということになるということもいかがかと考えるわけであります。もちろん將來この戰災の痛手というものも囘復し、都市方面において農村と比較にならないような經濟力というものが附與されていくようなことになりますれば、その際にはこの住民税等についてもまた新たなる觀點に立つて檢討して見てはどうかというふうに考えておるわけでありまして、ここしばらくの間は、やはり農村の方には、先ほどお話がありましたが、總體的には現状としましては、ある程度經濟力は増しておる。都市方面においては何と申しましても苦しい状態である。そこでこれはやはり一納税義務者當りの負擔額というものを今度の改正においては同額にいたしておるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=101
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102・松永義雄
○松永(義)委員 結論だけを申し上げまして、私の質問を終りたいと思うのですが、都市方面の苦しいというのは、つまり勤勞階級が苦しいので、同じ燒けた者でも、商人あるいは工場主とかは、もうほとんど浮び上つておるのです。それから農村はなるほどデフレーション時代の借金はなくなつたそうであります。一應インフレーションで札で借金の解決は濟んだようですが、その後に設けたと言われる貯金あるいはたんす預金にしても、その額は都會における額に比較すれば言うに足りない。結局デフレーションで失業者がたくさん出て勤勞階級は困つている。物價は安くなつたけれども、失業者が出て買う金もないという階級が出ている。それと同じように、農村においては疲弊のどん底に落ちている。それと同じように、このインフレーション時代においても、札の分量はなるほどよけい勤勞階級の方面はもらつているような感じはしておられるけれども、いかにも百圓の月給が千圓になつたといつて札が殖えたような感覺をもつておられるが、物を買つてみると、自分の給料がいかにも少いという感じを強く受けておられるのではないか。このことはもとより物の量が少いのだから、生活問題についても、物の面から考えなければならないのでしようが、同じく物の少い中にもその配分に非常な差があつて、いわゆる札をたくさん稼いでいる者はよけい物を集めている。ところが百圓が千圓になつたというと多いように考えられるが、さて物を買うとよその人よりかきわめて低い程度のものしか買えない。給料は殖えても依然として苦しい。しかもだんだん苦しさが増してくる傾向にある。また農村においては一應物をもつているだけに收入は多いが、その貯金は言うに足りないものであるし、だんだん買う物が高くなつてくる。殊に生産的に使われる農機具を買おうと思つても、それが高くてまた苦しくなつてくる。やはりすべての財政政策は生産者本位というか、勤勞本位に向つておらない。何かしら慾で釣つていく。金をもうけることによつて生産を増していこうというのは一應理はあるが、その半面において、そのために金を集める者は經營難、資本家あるいは工場主である。こうした物の少いときに、その配分が少くなつてくるということから、月給が殖えても勤勞階級は依然として苦しさを増している。農村は物をもつておりながら漸次疲弊してくる。同じく物をもつている者でも、米をもつている者と農機具をもつている者との競爭のために農村が困つている。デフレーションのときと同じように、またインフレーションにおいてもそれらが困るということでは、結論において生産力を上げる熱意があつても、やはりだめになるんじやないか。十分これらをお考え願つて、税制の上にも公平にいくということ、ほんとうに生産力の上るように、お互いに一生懸命働くような建前をとつていただきたい。通貨や物價が今のようなままで進んで行たつのでは、生産量は上つても、その程度は知れたものである。ほんとうの生産力を上げていくためには、お互いに苦しさは同じである。税制だけについても、そういう方策をとつて、いただかなければ、生産は上つていかない。結局物をたくさん出さなければ、解決できないことになつてくるのであります。以上で私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=102
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103・金光義邦
○金光委員長 中崎敏君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=103
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104・中崎敏
○中崎委員 この前の委員會で十分に答辯を得られない點がありましたし、黨の態度を決定する上に、補足的に質問しておきたい。銀行券の制限外發行の場合、限外發行税をとることになつています。これについて豫算に計上する必要があるということを大藏大臣に質問したのですが、藏相は、法律で規定してあるから、別に豫算に計上する必要はないと答辯している。いかなる税金にしても、當然その根據となる法規はあるので、その法規に根據があるから、豫算に計上する必要がないという答辯には納得がいかないのであります。この點について改めて政府委員の答辯を求めます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=104
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105・前尾繁三郎
○前尾政府委員 限外發行税の問題については、從來納付金でいつておつたのでありますが、納付金制度を廢止いたすのを見越したのだと思われますが、納付金は豫算に計上しておりません。限外發行税についても、豫算に計上していないのでありますが、これについては、まだ法律も通つておりません。法律が通りまして、その曉において、豫算の科目設定が行われますならば豫算の執行上何ら差支えないのであります。また限外發行税がどのくらいの豫算に上るか、それが厖大な數字になるかならないかということは、現在わからない次第でありまして、あるいは豫算に計上されたとしても、そう多額を見込むわけでもないと思いますが、ただいま法律が通つていない場合には、豫算に計上いたしません。將來科目の設定をやれば、要するに増收になつてまいるわけでありますから、豫算の執行上何ら差支えない。また法規上も何ら牴觸するところがないというように私は存じております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=105
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106・中崎敏
○中崎委員 すべて國家の歳入歳出は、豫算をもつて議會に協賛を仰ぐのであつて、たといこれは新しい法律であるにしても、一つの税金の形で國家が當然收入をする建前であるから、これは豫算に計上するのが當然であると思う。その金額がいくらに上るかということは別問題であつて、すべて豫算は實際その通りに行われるものでないことは想像つくのであります。少なくとも限外發行税をとる場合において、豫見し得る範圍において妥當な數字を豫想してそれを計上するのがむしろ當然だと思うわけであります。ただここにまだこの法律案が通過していないということが一つの理由になるわけでありますけれども、いやしくも政府が同一議會においてこの提案を豫想しているわけでありまして、この法律案なるものは、きのうきようこれは制定されたものではないともちろん思うわけでありまして、これは前から豫想の上のものであると思うわけであります。少くとも豫算の執行の上に影響がないからということで、これを省くという理由にはならぬと思うわけでありますので、この點についてさらにもう一段と明確な答辯をお願いしたいと思う次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=106
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107・前尾繁三郎
○前尾政府委員 その點については主計局の責任者から御答辯さした方がよいかと存ずるのでありますが、あるいは仰せのように限外發行税の科目を設定して豫算として出した方がよかつたのではないかと考えるのでございます。ただ限外發行税その他の事項がきまります前に豫算が組まれているというような場合、しかもまたそれが別に追加豫算を出すほどのものじやないという場合には、殊に歳入の面でございますので、歳出でございましたらこれはすべてもちろん豫算に計上しなければできないことになつておりますけれども、そうでない場合には差支えないというふうに考えております。それ以外のことは、もし必要でしたら主計局の政府委員を呼んでまいることにいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=107
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108・中崎敏
○中崎委員 それではこの問題は留保することにしまして、いずれにしても差支えないという議論には承服できぬわけでありまして、實際においてまだこの日本銀行法の一部改正に關する法律案の中には、通貨委員會の審議を經るようなこともあるので、間に合わなかつたということであるならば、一應これは承服できないでもないわけでありますが、それをやらなくてもよいのだという説明に對しては、承服できないわけでありまして、この點については、いずれまた專門的立場の方から説明を願いたいと思います。
次に移ります。勤勞所得税の免税點に關する問題でありますが、現行所得税法によりますと、勤勞所得者の免税點が二千四百圓になつているのに對して、その他の所得に對する免税點が原則として千二百圓となつているわけであります。ところが本改正法によりますと、勤勞所得に對しましては大體二倍半程度の免税點に引上げられたわけでありますが、そのほかについては大體四倍程度の免税點の引上げになつているのではないかと思いますが、この點についての相違はいかなる理由に基づくのかと説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=108
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109・前尾繁三郎
○前尾政府委員 この基礎控除につきましては、從來は、ただいま仰せになりましたごとく、勤勞所得について二千四百圓、その他の所得につきましては千二百圓、その以前は六百圓と四百圓、すなわち三對二の割合であつたかと存ずるのでございます。現行法は二對一という割合になつておりますが、今囘の改正におきましては、一律に四千八百圓ということにいたしたのであります。今囘の所得税の根本の改正は、御承知のようにすべて所得は所得税として一本で、一律でいく。いわゆる從來の分類所得税なり綜合所得税の區別を廢止いたしまして、所得税においては何ら區別しない。そうして最近非常に増徴されてまいりました地租、家屋税、營業税、その他の補完税で十分負擔の、また補完的な負擔の均衡がとれるというような考え方でございます。ただ勤勞所得と事業所得につきましては、御承知のようにもちろん擔税力において相當均衡に差異があるというように考えておりますので、ずつと以前の第三種所得税におきまして一萬二千圓の所得で六千圓以下の場合には二割とか一割とかいうような所得額を控除するという方法が一番簡便であり、またその負擔の割合から申しましても、非常に適合いたしておりますので、この方法が最も適當であるというように考えたのでございます。外國の例についてみましても、現在アメリカにおいては、勤勞所得とその他の所得とにおいて、何ら區別をいたしておりません。しかし英國におきましては、勤勞所得については、一割の控除を百五十ポンドまでやつているのでございます。またドイツあたりの税法によりましても、やはり千マルクを最高限度として一割まで控除するという行き方をいたしております。それらのことを考えまして、今囘のそういう二割控除ということによつて勤勞所得とそれ以外の擔税力の差異を補つていくという行き方をいたしたのであります。たとえて申しますと、年收一萬五千圓の人について申しますと、事業所得が改正前においては五千二百圓、給與所得では四千二百七十圓というような負擔になつております。それが今囘の改正によりますと、事業所得が二千五十圓、それから給與所得が千四百四十圓、その割合でみますと、事業所得と給與所得の輕減の割合は、改正前が九百三十圓、改正後は六百十圓になつておりますが、その事業所得に對する給與所得の割合は、改正前におきましては八割一分の差異でありましたのが、改正後には七割二分弱の差異になつておるのでございます。また三萬圓の所得のところで申し上げますと、從來事業所得の一萬五千四百圓が、改正後は六千五百七十圓になり、給與所得につきましては一萬三千七百七十圓、それから改正後は四千五百十圓ということに相なりまして、その割合からみますと、改正前は八割九分であつたものが、改正後におきましては六割八分、すなわち從來よりもむしろとにかく三萬圓までの所得につきましては輕減の割合が強くなつておるのでございます。これらの負擔關係を考慮いたしました結果、むしろ基礎控除の方法によらず、所得額の二割控除という方法によつた方が適當であるという結論になつたのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=109
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110・金光義邦
○金光委員長 中崎君、この際お諮りいたしますが、理財局關係の政府委員が見えております。お急ぎになるそうでありますから、そちらを先にやつていただけませんでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=110
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111・中崎敏
○中崎委員 ではその問題から先にお尋ねいたします。企業整備再建法によりますと、政府が戰時中において國民から負つたところの一切の債務に對して打切りにする結果、金融機關に對して生ずる損害を百億圓を限度として政府が改めて補償するということになつておるように記憶しておるわけでありますが、それに間違いはないかどうかをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=111
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112・伊原隆
○伊原政府委員 お答え申し上げます。ただいま中崎委員の仰せの通り、戰爭中負いました補償の問題の打切りによりまして、企業體に損失が出ます。その企業體の損失を、まず企業體は積立金を崩し、場合によりましてはある程度の評價益を出し、それから資本金を崩しましてなお足りません場合におきましては、大ざつぱに申し上げまして企業體の負つております借入金をある程度ある基準に從いまして棒引にいたします。そういうふうにいたしますると、企業體の借入金、すなわち金融機關から申しますと貸出しの一部分が棒引にせられまするので、從いまして金融機關に損失が出ます。金融機關に損失が出ましたときには、預金を第一封鎖と第二封鎖に分けまして、少額の預金は保護いたしまするが、第二封鎖預金の方は打切りの對象になります。第二封鎖預金が打切られましてもなお足りないような場合におきましては、政府が補償いたしまして、第一封鎖預金は補償せらるる結果になりますので、約百億圓を限度といたしまして政府が補償する、こういう仕組になつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=112
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113・中崎敏
○中崎委員 今の解釋によりますと、政府が戰時保險としまして保險會社に對していわゆる再保險の意味において債務を負うておるところのいわゆる戰時保險についての損害は除外されるものか、どうかをお尋ねしたいと思います。言いかえますと、今の私の解釋しておるところでは、戰時中において政府が國民——各企業體を含んででありますが、そういうものに對して負つたところの一切の債務を打切りするのだ、そうして生じたところの一切の損害は、それぞれ各企業體あるいはこれらの關係者をして一應負擔整備せしめて、そうしていよいよ足りない部分を百億圓に限つて政府が補償するのだという建前になつておると解釋しておるわけでありますが、その場合において、火災保險なり、あるいは海上保險なり、生命保險というようなものに對する再保險の意味における損害というものは、その百億圓の損害の外にあるのかどうか。こういうことをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=113
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114・伊原隆
○伊原政府委員 お答え申し上げます、結論から申しまして、中崎委員のおつしやいますように保險の補償の問題は百億圓の外になつております。と申しますのは、保險の方もただいま申し上げましたように、戰爭保險は五萬圓以上その他の基準によりまして打切りになるわけでございますが、それによりまして生じました損失は、別途保險會社の方に政府が補償することによりまして處理いたす。こういうことになつておりまして、ただいまお尋ねの金融機關の補償の百億とは別の問題になつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=114
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115・中崎敏
○中崎委員 そうしますと保險の場合においては、戰爭中において政府が背負つたところの債務よりも別のその他という解釋が成り立つわけであるかどうか。さらにまたその保險に對してはこれは別途政府が大部分は打切する——保險の場合でもやはり相當大きな戰時保險の契約額になつておりますので、それを打切りするということが當然差支えないという法律の根據はどこにあるのか。そうしてまたその損害に對して二百十億圓を今度生命保險なりあるいは損害保險の中央會に支拂うということになつておりますが、その二百十億圓は支拂つてもよいという法律的根據はどこにあるかということをお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=115
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116・金光義邦
○金光委員長 中崎委員にお諮りいたしますが、ただいまの御質疑は銀行局關係であるそうですが、その方面の政府委員をお呼びいたしましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=116
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117・中崎敏
○中崎委員 この問題は私としては相當重要な問題だと思いますので、やはりそういうふうにお取計らい願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=117
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118・金光義邦
○金光委員長 了承いたしました。そうすると理財局關係はよろしうございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=118
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119・中崎敏
○中崎委員 理財局關係は大體今の問題をお尋ねしようと思いましたので、それでよろしゆうございます。主税局長の方に引續いて御質問いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=119
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120・金光義邦
○金光委員長 中崎君にお諮りいたします。今主計局長關係の政府委員が見えておりますが、この方面に何か御質疑はございませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=120
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121・中崎敏
○中崎委員 では先ほどの問題につきましてお尋ねしますが、今度日本銀行法を一部改正しまして、銀行券の發行に對しまして制限外發行税を徴收するということになつておりますが、これがいつ實施されるかまだ明らかではありませんが、いずれにしても本二十二年度内においては當然實施されるものと豫想しておるわけであります。そうしますと、これから上つてくるところの税金、いわゆる限外發行税というものが當然この豫算の面に計上せられなければならぬと思うわけであります。現在既に豫算案は衆議院を通過してはおりますけれども、既にこの日本銀行法を一部改正するということの中には、當然この制限外發行税をとるということがその中に織りこまれておるわけでありまして、過般衆議院においてこの豫算を審議する際には、既にこの發行税というものは、ある程度構想の中に當然描かれておつたはずのものと思うのであります。それがこの豫算に計上されておらないということはどういうわけか。さらにまたこの豫算に計上されなくても、法律的に見て差支えないものかどうかという問題についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=121
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122・河野一之
○河野政府委員 お答えいたします。限外發行税が豫算に計上されていないではないかというお尋ねでございましたが、計上いたしてございません。これは限外發行税をとりますには、日本銀行の限度額以上に上つた場合に、税がたてられることになるわけでありますが、この限度額については、通貨審議會において定めるというようなことになつておるかと存じております。それから經濟界の情勢いかんによりまして、限度額をいかに定めるかということが一點でありますが、まだこの發行額はいくらになるかということを全然豫測しがたい状況でありますので、現在の豫算においてはこれを計上いたさなかつた次第であります。もちろん今後状况によりまして、そういうふうなことに相なりますれば、豫算に計上してまいるというようなことも考えられるわけでございますが、それまでの間におきましても、歳入豫算は歳出豫算と違いまして、その科目が設置してなければとることができないという性質のものではないのでありまして、たとえば現在でも古い、もう既に廢止になりましたような税金も、現在はいつてきておる。北支事件特別税というようなものは、現在の豫算には計上されておりませんにもかかわらず、それは收入することができる。こういう建前になつておりますので、かりにそういう限度を超えた發行額、その税の收入があるといたしますれば、科目を便宜設置いたしまして、收入してまいりたい。かような考えであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=122
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123・中崎敏
○中崎委員 法律的根據においてはたして今の取扱いが正しいかどうかは別としまして、少くともいやしくも税金として取立てるものは、項目が設定してなければ、豫算に組んで議會の審議を經なくてもよいというのは、著しく非立憲的な考えでありまして、舊官僚的な行き方ではないかと思うのであります。言いかえますと、既に議會において承認を受けて通過した法律に基いて税金をとるというからには、これは豫算に組んで議會の協賛を經べきものであるということは當然でありましてたとえば歳入の面において、税金の中でその金額がとれたとかとれないとか一部殖えたとか減つたとかいうような量の問題ではないのでありまして、本質上の問題としては、當然これは議會にかけて、どの程度の金額はとれるというふうなことは、當然われわれ國民の代表として知るべき義務があり、權利をもつておるのではないかと思うのでありまして、もし税法の上においてそういうものが認められるというならば、即刻法律なりやり方を根本的に建直してもらつて、いやしくも税金の形において國民から徴收する以上は、當然議會の審議を經てもらいたいということを、強く要求しておきたいと思うわけであります。
それから先ほど限外發行税の範圍、金額がはつきりしていないと言われておりますが、これはもともとこの法律案の改正のときにも、その範圍、金額の確定はきわめて困難である。殊に現下のインフレの情勢において、國民經濟、國家經濟の現状において、その測定はきわめて困難である、無理であるということは、われわれも容易に想像がつくわけであります。それを押してなおかつ大藏大臣がああいう案を出した。そうして議會においてもこれを承認した以上は、たとえ困難であろうとその金額は適當にピシャッと的中するかどうかは別として、一應豫算に計上をされ、審議さるべきものだと考えておりますので、この點についてわれわれ國民の代表として、きわめて重要な事項だと考えますから、政府の所信を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=123
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124・河野一之
○河野政府委員 お答え申し上げます。これはいいか惡いか存じませんが現在の歳入豫算の立て方は、その時の情勢によつて收入し得るというものを計上してあるわけであります。會計法の規定にもありますように、法令の定むるところによつてこれを徴收するということでありまして、その歳入の基本は他の法律その他勅令もございますが、そういうものに讓られておるわけでありまして、その結果出てくる收入を豫算の上においてその財源として見積るというのでありまして、歳入豫算自身がそれを協賛あるいは議決がないと、その金の收入はできないという性質のものではないわけでありますのでかたがたこういうような處理をいたしておるわけでございます。殊に先ほども申し上げましたように、限外發行税の限度は、なかなかその積算のいたしにくいものでございます。これが一年とかあるいは二年とか經ちますれば、過去の實績によりまして、いくらを見込むというような行き方もございますが、現在のところまつたくその情勢がわかりませんで、同じことを繰返し申し上げるようでありますが、限度額の問題もございますし、經濟界の情勢もございますし、またこういうような限度額を立てないことが望ましいとも考えられますので、そういうような處理をいたしておるわけであります。御趣旨の點もあると思いますが、今後どういうふうに相なりますか、將來歳入が殖えまして追加豫算をするというような事態がありました場合において、そのときに限外發行税の收入がありますれば、やはり豫算に立ててまいるのが筋であろう。それは豫算の内容を國家の收入を明らかにする意味においてはつきり立てていくのが至當ではあろうと存ずる次第であります。さしあたりといたしまして、いろいろ推測困難なることが多うございますので、立てなかつた次第でございます。惡しからず御諒承願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=124
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125・中崎敏
○中崎委員 それでよろしゆうございます。今度は銀行局長にお伺いいたします。先ほど政府委員に質問したわけでありますが、これは銀行局長の範圍だというのでお尋ねしたいと思います。企業再建整備法によりますと、戰時中政府の背負つたところの一切の債務を打切ることによつて生じたところの損失に對しては、國家は百億圓を限つて金融機關に補償するということが書いてあつたと記憶しておるわけであります。ところが實際においては戰時中において政府の債務に屬するところの損害に對して現實政府は三百十億の豫算的措置を講じておる。銀行方面に對して大體百億。生命保險、損害保險中央會に對して二百十億の豫算を既にとつておる。これは企業再建整備法において認められた範圍を二百十億も突破しておるが、もしこれが當然やるべきものだとすれば、その理由はどこにあるのか。さらにまた法的根據はどこにあるかということをお尋ねしたわけでありますが、その點について銀行局長の御意見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=125
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126・福田赳夫
○福田政府委員 ただいまのお尋ねの保險の關係の二百十億圓と金融機關全般に對する百億と、これが豫算的措置を講じておることは御説の通りであります。この兩者は性質が全然違つておるのでありまして、二百十億圓の方の豫算は、これは今度この補償特別法によりまして戰時中の政府の債務は原則として打切るということになつた、その場合の例外といたしまして保險についてたとえば個人につきまして戰爭保險の五萬圓以上は打切つてしまうけれども、それを出ない額は効力を存續する、その際におきまして、これを保險會社が支拂う力は自力ではございませんから、政府がともかくも補償をするという關係から二百十億という數字が出てきておるのであります。この根據は戰時補償特別法にあるわけであります。そこで百億圓の方はどういうことであるかと申しますと、これは戰時補償特別法と違いまして、金融機關再建整備法というのがあります。これは金融機關經理應急措置法、それから金融緊急措置令この三者が一體となつておるのであります。これは現在——現在というか八月十一日現在におきまして、われわれ國民が持つておるところの一切の預貯金——保險金もその中にはいるわけであります。それにつきまして第一封鎖預金と第二封鎖預金にわけまして、第一封鎖預金は國民の零細なる貯蓄額だけを第一としておるわけであります。大きなものは第二封鎖預金としております。第一封鎖預金というこまかい額は、これはもし金融機關の新勘定において支拂いができないという際におきましては、その差額を國家において補償する、そうしてその支拂いを確保してやろう、かような措置なのであります。全然別個なんです。その關連を申し上げれば二百十億という保險會社に對するこの補償の方は、ほんとうなら國家に對する請求權をもつておるから全部しなければならぬわけでありますが、それを一部補償してやろうという關係になります。それから金融機關の方は、これは國家には關係はないのです。銀行に對するわれわれ國民の預貯金を國家が支拂いを一部確保してやろう、こういう全然筋の違つたものであります。この金融機關の方の百億圓は、その法的根據は金融機關再建整備法の中に掲げてあります。それに基いて豫算に計上してあります。かようなわけになるのです。金融機關に對する預貯金、その中には保險金も含まつておるわけでありますが二百十億圓補償をいたしましてそして保險金の請求權者がたとえば五萬圓の保險金が政府の補償によつて保險會社からとれる、そのときはまた別の金融機關再建整備法によりまして、やはり第一封鎖預金第二封鎖預金にわかれまして、そうして零細なる額につきましては、金融機關再建整備法によつてその支拂いが補償されるといふ關係になるわけです。これは全然別個のものでありまして、金融機關に對する補償として同一に論ずるわけにいかぬ性質のものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=126
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127・中崎敏
○中崎委員 この二つのものが別個だと言われる意味がわからないのですが私の考えでは、一面においては戰時中政府が命令をもつて金融機關に對して必要な事業に貸出しを要求して、そうしてもしそれが囘收できない場合においては政府が補償するという一種の政府の補償債務であるものだと思ひます。そうして一方の保險の方は保險會社に對してもしこの保險が支拂いができぬ場合においては、政府がその支拂いを補償するのだ、もうすこしつつこんで言えば、いわゆる政府が再保險者の立場においての補償をしてやるのだこういうふうな意味でありまして、これはもちろん戰爭を前提としておるところの債務であるという點において何ら變りはない。しかもこの保險の場合においても、これは一つの金融機關として見ておられるということはこれはもう明らかな問題でありまして、そうしてみれば、この二つの間に區別する理由は何ものもないじやないか、こういうふうに考えてみますと、殊に保險の場合においてもこの戰爭中においても損害を生じた。それに對しては大體保險會社がまず銀行の特殊預金の形において拂いもどしをしておつた。こういうようなものを補償する建前になるわけであります。結局においてこの二つのものの間にほとんど區別がつかないじやないか。そうしてみればそれを區別して、その百億圓の金を突破して二百十億も新しく出しておるということは、言いかえますと、あのときの見込みが違つたのじやないか。もし見込みが違つたとするならば、あらためてこれに對する法律的措置を講ずる必要があるのではないか。こういうふうに考えるわけでありますが、その點についてもう一度説明していただきたいと思ひます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=127
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128・福田赳夫
○福田政府委員 ただいまの御質問の點は、政府の見込み違いでもなんでもありません。當時から金融機關に對しましては百億圓、それから保險會社の補償金は二百十億圓というように豫想しておつたのであります。當時の記録にもそういうことがあると思います。これはごらん願いたいと思いますが、戰爭保險の二百十億圓につきましてはこれは政府が保險會社に補償しましてこの補償あることによつてわれわれ國民は保險會社に對してその補償された額だけの支拂いを獲得する力ができてきたわけなのであります。それから百億圓の系統の方は、もともと政府には關係なく、われわれ國民が金融機關に對してもつておる預貯金の問題なのであります。でありますから強いて兩者の關連を言えば、保險會社の保險金は政府の補償によつて初めて國民が保險會社からとれることになつたのであります。そこで百億圓の方の系統の對象になる預貯金と同じ地位に立つたわけであります。兩者はさような關連はありますが性質はまつたく別で、一は國家に對する請求權を國家がある限度において補償してやる。もう一つは國民が各金融機關自體に對して國家に關係なくもつところの請求權を國家が確保してやる。さような根本的な違いがあるしかも兩者は法的根據も違います。金額においても當時法案の御審議を願うときに御説明申し上げた通りであります。さように御諒承を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=128
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129・中崎敏
○中崎委員 この性質が違うということについては、私は同意しかねるのですが、たとえば今の金融機關、銀行等に對して融資命令というものが出ておるそれはすなわち銀行自身としては、これは國民全體の金なのだから、やたらには貸せないのだ。こういうことになる。ところが政府がこれを補償したのだから貸出ししろ。そういう命令で銀行が金を貸しておる。その意味においては、何ら區別はないと思いますがただ問題は金融機關というても、この保險という損害を補償するというふうな意味においての、その業態そのものに對する區別それから金融機關というても、銀行を中心としたところの資金の面を扱う面とのその業態上における區別の上において、そういう扱いを別にするというならわかるのでありますが、性質が全然違うということでは納得ができない。いずれにしても、その問題はいいとして、この二百十億の支出を認められているところの法律的根據は戰時補償特別税ですが、それにはつきり金額が認められているのかどうかということを、もう一度御説明願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=129
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130・福田赳夫
○福田政府委員 戰時補償特別税法には金額は書いてありません。當時説明いたしまして、大體その金額は二百億ぐらいになるということを御諒承願いたと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=130
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131・中崎敏
○中崎委員 次に百億圓に對しましては——百億圓もそうでしようし、あるいは二百十億圓もそうであるかと思いますが、多分これは公債をもつて支給されるものだと思いますが、その通りかどうかを伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=131
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132・福田赳夫
○福田政府委員 その通りであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=132
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133・中崎敏
○中崎委員 そうしますと、これが支給の曉においてはインフレ助長の原因になるのではないか、こういうふうに考えられますが、御意見いかがですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=133
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134・福田赳夫
○福田政府委員 これは銀行にまた保險會社に公債を交付するのでありまして、各個人にはその公債は直接には渡りません。從いましてインフレには直接の關係はないのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=134
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135・中崎敏
○中崎委員 一應政府は戰時補償を受けたところの會社、既に銀行から金を借りているとこういうものに對してはさらにこれを取上げるという建前において百パーセントの課税をする。こういうような場合において今度は企業體が税金を納めなければならぬ。こういうことになるわけですね。その場合においてまず自分自身に手もとの預金がないという場合においては、當然これは銀行で借入れるか何かの處置を講ぜなければならぬ。そうしますと、その際においては借入れるためにはこの公債でもつて——金融機關には相當公債をもつている。あるいは相當借入にも使つておりましようが、さらにこれを見返りとして金を借りるというような場合が考えられるのじやないか。さらに第一封鎖を拂出しする場合においても今度は金融機關としては預金の範圍で賄いますけれども、もちろん自由預金の十分でない現在においては、この公債を利用して借入に使うおそれがあるのではないか。そういうふうな範圍においてインフレに影響してくるのではないか。こういうことをお尋ねしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=135
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136・福田赳夫
○福田政府委員 戰時補償特別税を納付する納税者は、金融機關が當事者である場合もありますが、これは一般のその他の人の場合が考えられているのじやないかと思います。その際には金融機關には何らの關係はないわけであります。それから金融機關が産業資金を融資するというようなことで手もとがつまるという際に、金融機關が日本銀行から金を借りるというようなことはあり得るわけであります。しかしながらそのあり得るということも、今まではさような方針で相當産業資金に日本銀行から金を借りた。その際國債を擔保に取り、そうして金融機關は日本銀行から借りた金を緊要産業に放出するというようなことがあつたわけですが、御承知の通り三月一日からインフレ克服の見地から産業資金の融通の調整をしているわけです。原則として金融機關は日本銀行から金を借りない。集まつた預金の範圍内でやつていくという式を確立したわけでありまして、さような方針が確立した今日におきましては、金融機關の手持公債がそのまま資金化するというようなことはなかろうと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=136
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137・中崎敏
○中崎委員 そうしますと、手許資金をもつて十分に貸出をなし得る場合、あるいは少くとも第一封鎖はまだある程度支拂われているわけでありますがこれらのものの支拂いをするに必要な資金について、この擔保による貸出を認められるというところには、非常な無理があるのではないかと考えられる。一面においてこの公債というものは第一封鎖支拂の原因ともなり得るものと見得るわけでありますが、そういう場合に貸出しはしない、そうして第一封鎖としては實際に預金を拂出ししなければならない、こういうことがあつた場合においては、自由預金をもつて賄えない場合においては貸金をむりに囘收してこなければならぬといふ結果になりまして、今度はインフレの原因でなく、むしろ經濟壓迫の原因になるのではないか、こういうふうにも考えるわけでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=137
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138・福田赳夫
○福田政府委員 ただいまのところ國家總合計畫の見地から資金計畫を立てて、それを適實にやつていくということは、なかなかむずかしい段階なのであります。しかしながら一應の資金融通のわくを考えてみますと、來年度におきまして、一應金融機關の必要な量というものは、毎月平均約百億と考えます。そのうち五十億圓は産業にまわす。昨年の實績としての産業資金の融通額は月三十億であります。來年度は物價の値上り等もありますので、五十億ほど見ていこう、こういうふうに考えております。
それからもう一つ必要なのは今後健全財政をとるという主義で一般會計では金を出しませんが、特別會計において相當なものを出す。それから地方公共團體において多少の赤字が出る。それを大體私どもは月二十億くらいと見ております。二十億くらいの資金がありませんと結局日本銀行の特別會計、地方公共團體から出す公債が國民によつて消化されない。日本銀行の貸出に依存するということになる。すなわち健全財政主義を實現せんとすれば、金融機關の手もとに二十億圓の預金が集まらなければならぬ。同樣な趣旨によりまして、復興金融金庫の資金というものはやはり國民から集まつた資金によりたいと思つております。その額を大體月十億年額百二十億と見ております。
もう一つは封鎖預金の引出の財源、これが毎月二十億圓、合計して百億の資金が必要なのであります。そこで百億圓の資金が金融機關に集まるかどうかと申しますと、皆さんの御協力によりまして例の救國貯蓄運動、あれによりまして相當成績が上つております。大體大したことはなかつた自由預金というものが、十月から急に七十億圓、十一月に七十億圓、十二月には百億圓それから一月には、これはストライキの關係が伴いまして七十億圓に減りましたが、二月にはまた上りまして八十億圓になりました。それがもう一息というところであります。これが百億圓になりますれば、國家の大體の計畫上の必要量は充足できるというわけであります。私ども政府當局としては、二月は八十億圓というのでありますが、來年度平均いたしまして百億圓という資金をぜひ獲得いたしたいというふうに考えております。この百億圓というものができませんと、おつしやる通りこれはただいまの計畫を推し進めるといたしますと、相當の摩擦がくる、窮屈になるさような状況でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=138
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139・中崎敏
○中崎委員 それでは銀行局長に對しましては、大體これで打切りたいと思います。それからもう一つ主税局の方で豫算課税の問題についてお尋ねしますが、これは申告納税制度になつておるわけでありますが、今日のごとく經濟界が非常に浮動である。從つて起伏が激しい。それで各人々の根據の移動の状況も殊にはげしいというふうな状態において、いかにしてこの納税の申告を、これは良心的に申告してくれば申し分ないわけでありますが、とうていこれはその多くを期待し得ないのではないか、こういうふうな前提のもとにこの納税の申告人並びに納税の所得の内容といいますが、正確を期する意味においての金、物、所得こういう面をいかにして捕捉されるかということについて御説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=139
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140・前尾繁三郎
○前尾政府委員 豫算課税の困難であり、また申告納税の困難であることはわれわれも最初から豫想し、いろいろ研究いたした次第でございます。ただ申告納税は日本以外はほとんど諸外國におきましてすべて申告納税制度をとつておるのでございます。數年間この方法に對して一般の民衆を馴致していきますならば、當然わが國といえども申告納税制度に十分成功するということについては疑わないのであります。また豫算課税の制度につきましてはこれは現在においてはアメリカでとつておる以外、諸外國においてはとつていない制度でございます。それで豫算の見積りの非常に困難であることは、これはわれわれも承知いたしておるのでありまするが、その實際のことをみますと、豫算という言葉が必ずしも適當でないかもわかりません。要するに一年間を四期にわけてその三箇月ごとの實績、それによつて一年間の累進率すなわち給料にいたしましても一年間の累進税率というものを考えて月別に納める。それと同樣に事業所得につきましても、前年の實績その他によつて季節的變動を考慮に入れ、合理的に一年間を推算して、三月ずつに納めていく言いかえれば、その三月間ごとの實績に應じて納めていくのだというふうにお考え願つた方が、實際に適合しておると私は考えます。また申告納税制度につきましても、從來やはり申告はさせておるのを許可決定するというような建前であつたのでありますが、今囘は申告と一緒に税金も納めていただくということになりますと、やはり申告に對して相當な熱意、注意を喚起することに相なると思います。またその申告期前にはよほどいろいろな業者の團體あるいは市町村を通じまして、税務署としては相當指導してまいらなければならぬと思います。それからしばしばお話のありました新圓階級等につきましては、重點的にその期ごとに、もし豫算申告の出ておりますものがあまり、不當なものであるという場合にはかりに更正決定するというような方法も設けられており、われわれといたしましても、重點的にその季節、たとえば十月、納期だと夏期に相當もうけております氷屋とか、そういうような夏期事業に對して特に指導するとともにもしいい加減の申告だというような場合には、どんどん更正決定していく、すべての業態にわたりまして年中指導して歩く、從來と違つて一月から三月あるいは四月、その間に一年間の所得をずつと調べて、それでどんどん決定していくという行き方でなしに、年中指導して歩く、また間違つておる、あるいは申告をしていないというものに對してどしどし更正決定なり認定決定をしてやつていく。もしあまりにもそれで足りない部分で申告がうまく出ないというような場合でございますと、最終申告のあとで今年の増加所得税と同樣な氣持で全部更正決定をやるというようなことでいけば、少くとも從來の所得税と本年の増加所得税、この二つを兩方併せただけの効果は少くともあるわけでございます。しかしもちろんみずから申告納税するというのが理想でありますから、その點についてはわれわれは何としても指導していつてただいま申し上げましたのは最惡の場合でございまするが、財産税その他の申告納税の状況から考えましても、必ずしもいい加減な申告ばかりということは私はないと考えております。また勤勞所得につきましては、御承知のように、人數は六百萬からの納税人員があるのであります。これは皆會社で從來通り源泉課税でとつてくれるわけでありますから、それ以外の申告納税をさせるというものにつきましては、營業者が百五、六十萬、農業所得者等が三百萬、全部入れましても五百萬といふ程度でございますから、私は相當指導して歩き得る。また最惡の場合にはただいま申し上げましたような傳家の寶刀と申しますか、そういうものによつて、最後的には十分確保できる。ただ行き方としては、なるべく民主的に民衆の自覺を促していき、そうして理想的な納税形態にもつていくということをいたしたいというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=140
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141・中崎敏
○中崎委員 次に山林所得に關する課税の問題でありますが、これは一時の山林所得に對しては、一年の總收入から必要經費を引いて、そうしてその殘額の二分の一を控除して課税するということになつておるわけでありますがこれは現在の山林に對する實情から見て著しくその課税が寛大ではないか、こういうふうに考えるわけでございます。同じ不動産所得にしましても、家屋なんかを賣らなければならぬどいうふうな場合には、多くこれは實際において行き詰つた人が多い。家屋なんかは戰災などにかかつておる關係上そうまとまつてもつておるといふ人は考えられないわけでありますが、この山林所得に對しましては、相當に大きな山をもつておる人々、あるいはそれでなくても、とにかく相當の所得のある階級だと考えなければならぬわけであります。そういう意味において、山林所得に對して二分の一の控除はあまりに大き過ぎはしないか。殊に勤勞所得のごときは、長い間、何十年間か自分の血と汗とをもつてようやくかち得たなんぼかの金に對して課税される。しかも現在のインフレ状態においてあぶく金がもうかるというような山林所得に對しても、同じような扱いをされるということは、これはきわめて不當な措置ではないかというふうに考えますが、その點についての御意見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=141
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142・前尾繁三郎
○前尾政府委員 山林所得の課税につきましては、いろいろ行き方があるのじやないかと思います。現状におきまして、山林が一時的な所得であるということは全般の山林經營の現状から見ますと、やむを得ないことでありますが中には年々伐採して年々所得を得るという人があるのでございます。それらにつきましては、今度は逆に、山林所得につきまして、賣れた當時の收入金から必要經費——と言うのはもうずつと以前の、ほとんど經費のかからなかつた程度の、實際に支出した必要經費を引いております。年々課税するという場合でありますと今度は植林するという場合には、植林費を相當考えていかなくなちやならぬということになるのじやないかと思います。それで年々の所得というふうな考え方でいきますと、今度は所得の出し方が、非常に必要經費を多く引いて、所得金額そのものが非常に小さいものになるのであります。その代りただいまのように必要經費を控除する、半額に課税する必要はないということに相なるかと思うのであります。またしかし日本の現状で申し上げますと、山林所得の年々ある人はもうごく少數でございまして、大部分は伐採の適齡期が三十年とか四十年に一囘というのでございまするが、それらを考えていきますと、退職所得その他と區別する必要はないと考えておるのでございます。もちろん退職所得につきましては、あるいは他の資産所得と違つておる點があるかとも思つたのでありまするが、年々の給料によつて基礎控除その他はすべて控除されてしまつておる。その上積みになつてくるわけでありますので、すべての所得の均衡から考えまして、皆一律に五割の控除というのが實際におきましても簡明でありますし、また實情にも適合しておる。殊に山林所得につきましては、最近は増伐の關係もあり、増伐關係のものにつきましては、輕減したり、いろいろなことをやつておるのでありますが、それらの複雜な手續はかえつて實効を伴いません。それで山林増伐その他の點から考えますと、やはり同樣に取扱つていく。殊に從來の、單にその所得に對する分類所得税だけを課税するのと違いまして、ほかに所得があれば、ほかの所得をすべて合算して累進税率を適用していくわけであります。從來のように個々の所得によつて違つた税率を盛り、あるいは控除割合を考えるということは不適當だとわれわれ考えるのであります。大體においてわれわれが一時的所得と考えておりますものは、二年に一邊、三年に一邊というものではなしに、少くも十年二十年に一囘というようなものばかりでございます。從いまして、それらを全部總合いたしまして、その年のほかの所得とも總合する代りに、半額だけ控除する。そうして合わせて現在の超過累進税率を適用するというのが一番簡明であり、實際に適合しておる思い切つた制度ではありますが、われわれとしてはこれが理想だというふうに考えて採用した次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=142
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143・中崎敏
○中崎委員 山林所得に對しましては今みたように三十年も五十年も、親の代からの山をしておるものもあるし、あるいは最近の材木等の値上りに乘じて一時的にうまくやつた人もあるし、いろいろあるわけであります。いずれにしても、山林というものは元來長い間ほんの一寸、二寸づつ伸びていくのを樂しみにやるものであるということは事實でありますけれども、はたしてそうであれば、それだけの堅實性をもつたところの價格であるかと言えば、今日は著しくそこに大きな開きがあるわけであります。その開き、すなわちその差額によつてもうけておるところのものを、半分もねこばばをきめると言うか、しまい込ますというようなことは、これはどうしてもわれわれの納得のいかない點であります。言いかえますと、住宅、家屋というようなものになりますと、自分の住む家も賣らなければならぬ。こういうふうなものに對して、その差額までことごとく課税の對象にするということはどうかと思いますけれども、少くともこうした山林のごときものにおいては、相當餘裕のある所の階級であり、しかも急激に相當大きなまとまつた金額において利得するというのが大部分の實例であるわけでありまして、この點については別に容赦する必要はないのじやないか。言いかえれば、普通の事業所得と同じような氣持において課税していいのじやないか。こういうふうに考えるわけであります。今の濫伐後におけるところの植林の問題については、これはゆゆしい國家問題ではありますけれども、これは別に税金をなんぼか安くしてやつたからそれで餘分に植林をしある程度税金をよけいかけたから植林をしないというふうな、そんな單純なものではないと思うわけでありまして、この見地から見れば、私は課税のある程度の相違くらいは、別に問題じやない。こういうふうに考えてみますというと、社會通念に從いまして、殊にどう客觀的情勢を考えてみても、うまい比率になつておるところの山林所得に對しては、當然にこうした大きな控除までする必要はないのじやないか。こういうふうに考えられるわけでありますので、もう一度説明を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=143
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144・前尾繁三郎
○前尾政府委員 先ほど申し上げましたように山林所得につきましては、現在の收入に對して、なるほどお説の通りに半額以上には税金はかからないという結果に相なります。しかし、先ほども申し上げましたように、必要經費というのはもうごくわずかなものである。九〇%までが所得と見られるくらいのものでございます。しかしその植林費は先ほど何囘も説明いたしましたように現在におきましてそれを今度新たに植林するということになりますと非常に多額を要する。われわれ現在の所得の計算におきましては、一時的所得であるという建前をとつておりますので、ほとんど八〇%九〇%がすべて所得であるというふうに計算しておるのでありまして、他の農産物等の年年の收入というものにつきましては、所得の計算の場合にはその年その年の十分な必要經費を控除しておるが、その所得の割合は山林については非常に大きいのであります。ただいまのお話の點もわれわれとしても相當愼重に考えたのでありますが、實際問題としていろいろ負擔關係を計算してまいりますと、これを五割引くのを四割引く程度に違えるほどのこともない、すべて一時的所得として五割を引くということで十分だ、實際にいろいろ當りまして計算いたした結果、さりとてこれは三割引けばよいというようなものでもないので、ございますので、一律に五割ということにいたしたい次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=144
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145・中崎敏
○中崎委員 これで質問を打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=145
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146・金光義邦
○金光委員長 これにて質疑は終了いたしました。明後二十四日午前十時より討論の上採決いたしたいと思います。本日はこれにて散會いたします。
午後五時十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211577X00319470322&spkNum=146
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