1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案(政府提出)(第六八號)
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昭和二十二年三月三十日(日曜日)午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 岡部得三君
理事 木村公平君 理事 舟崎由之君
理事 松本七郎君
内海安吉君 庄司一郎君
三ッ林幸三君 大井直之助君
横田清藏君 寺田榮吉君
江川爲信君 稻村順三君
鈴木茂三郎君 増井慶太郎君
木下榮君 石崎千松君
同日委員藥師神岩太郎君辭任につき、その補闕として三ッ林幸三君を議長において選定した。
出席國務大臣
厚生大臣 河合良成君
國務大臣 高瀬莊太郎君
出席政府委員
經濟安定本部第一部長 橋井眞君
内閣事務官 橋本龍伍君
司法事務官 石井良三君
商工事務官 小山雄二君
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本日の會議に付した議案
私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=0
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001・岡部得三
○岡部委員長 これより會議を開きます。私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案に對する質疑を繼續いたします。石崎千松君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=1
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002・石崎千松
○石崎委員 この法律案の中に公正かつ自由な取引ということが書いてあります。公正かつ自由な取引と言いますると、一定の基準があつて、その基準の上に立つたものでなければ、公正かつ自由と言うことはできないわけであります。もつと具體的に申すなら、町角に二軒向いあつてうどん屋があつた。その二軒のうどん屋に對するところのお得意というものは、大體その附近の人たちだけであるといつた場合に、片一方のうどん屋の方が、その附近のお客を全部とろうという意思、または相手方のうどん屋を倒そうというところの意思をもつて、うどんの玉がたとえば五錢なら五錢でこれぐらいであつたものを、五錢でこのくらい食わすということになると、うどんの量がたくさんあるということによつて、お客は大體その大きな玉を賣つてくれるうどん屋に集まるということになる。そうすると相手方がだんだん困る。從つて相手方であるうどん屋は、これに負けちやならないというので、さらに大きなうどんの玉をこしらえて賣る。つまり向うのうどんの玉よりも、こつちのうどんの玉の方が大きいものをつくつて賣るということになりますると、またお客がこつち側の方に移つてくるという結果になります。そうすると負けた方のうどん屋は、また大きなうどんの玉をこしらえてお客をとるということになります。そうするとこのうどんの玉を大きくしてお客をとろうということが、結局二軒のうどん屋自體を經濟的に破産させることになります。言いかえると、競爭というものが放縱に行われるなら、結局二軒のうどん屋は倒れざるを得なくなるのであります。ここにおいてでき上るものが何かというたら、うどん屋組合の組織であります。大體五十錢のうどんに對しては玉をどれだけの大きさにしようという協定ができ上る。この協定というものは人爲的にできることもあれば、自然にできることもありまするが、今競爭が無制限に、むちやくちやに認められるなら、かような結果が起るのであります。從つて公正かつ自由な競爭というのは、そのうどんや組合というものが決定した、五十錢なら五十錢といううどんの値段に對するところのうどんの一定量であります。定まつた量であります。これから先が公正かつ自由なる競爭というわけであります。なぜ私がかようなことを斷定的に申しまするかと言いますと、前の本會議におきまして、安本長官から承りましたところによりますると、この法律それ自體は、アメリカから輸入されたものであるということを聽いております。私は長くアメリカにおりまして、この邊の消息をよく知つております。一九三二年にアメリカがN・R・Aというものを制定いたしました。そうしてあの有史以來ないところの不景氣を突破しようと企てたときに起つたのが、このフエーヤ・コンピテイシヨンであります。從つてフエーヤ・コンピテイシヨンということになりますと、どうしてもそこに一つの基準がなくちやならないのであります。その基準であります。つまりうどんの玉を同じにするというその前提條件であります。この條件がない限りには、いかなるものも公正かつ自由な競爭ということはできないのであります。すなわちもうひとつ申しまするならば、うどんの玉というものを決定しておいて、それから先に美人の給仕を雇うてこようと、家を立派にしようと、器を立派なものにしようと、あるいはまた金鍋でもつてうどんをサービスしようと、それから先が公正かつ自由な競爭であります。從つてうどん玉の一定量というものを決定することが、公正かつ自由な競爭の前提條件でなくちやならない。しからばこの法案において、日本のあらゆる獨占事業というものを、この物さしでもつてはかるとするならば、そこのところにいろいろなものが起つてこなくてはならぬ。言いかえまするならば、最低賃金の決定ということが、どうしても起らなくてはならない。最低賃金というものがきめられた上において、初めて公正かつ自由なる競爭というものが起つてくるのであります。最低賃金の決定と同時に、必要缺くべからざるものは何かというと、勞働時間の決定であります。つまりどれだけの時間を働くということをもつて條件にする。全工場は八時間なら八時間、六時間なら六時間というところの、一定の全國的なものによつてそれを決定しなくてはなりませんが、ここに對するところの大臣のお考えはいかなるものでありましようか。この點をお伺いいたしておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=2
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003・河合良成
○河合國務大臣 公正かつ自由な競爭というものは、あまりに弱肉強食的になつてはいけない。そこに一つのやはり基準というものがなくてはならぬ。その基準は主として勞働基準に求めなくてはならぬという意味と拜承いたしますが、それはその面から勞働基準の必要ということも考えられるのでありまするが、またほかの意味において、結局個性を保護する、勞働者を保護しなくてはならぬ。結局むやみにからだを壞すようなことをさしてはいけない。それは自分の意思による場合もいかぬが、意思よりも外部の力をもつてやることがいかぬというような意味、何と申しますか、個性の尊重と申しますか、そういう意味と、それから經濟的の、ただいまのような必要という意味から歸納しまして、そこに一つの勞働基準の必要だということは、むろん御意見の通りであります。その點につきましては、御承知の通りに最近兩院を通過しました勞働基準法で、その基準をきめておりまして、勞働時間については實働八時間、それから最低賃金につきましては、行政官廳においてイニシヤテイーヴをとつて最低賃金をきめることができるという規定をして、その面の備えをしているわけであります。ただ最低賃金という問題につきましては、これは行政官廳にイニシアテイーヴをとらしたということと、今の御主張のように、すべて最低賃金をきめるということの間に多少の開きがあります。やはりこの最低賃金というものは經濟の實情から來るものでありまして、今日のように物價の高騰が非常に激しくて、購買力の非常に動搖しまするときには、最低賃金を全國的にびたりときめるということはなかなか困難な事情もあり、またその上業態により、すべての條件により、いろいろなものに差等がありまして、その差等のあるものに向つて、一定の最低賃金をきめることは困難な事情もあるというようなことで、私は全國的にすべての勞働者の最低賃金がちやんときまつてしまうことになるまでには、多少の時がかかると思います。しかしながらその間といえども、行政官廳の必要と認めたときには、そういう方法をとるという規定を設けておりまして、そうしてその線に備えております。經濟のスタビリゼーシヨンがもつとはつきりしまして、日本の國というものはこれで大體立つていくのだということになれば、貨幣の購買力も安定いたしましようし、そういう場合には最低賃金という面が非常に廣くなるというふうに考えておりますが、一應基準法においては、そういう備えをしておるということを御諒承願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=3
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004・石崎千松
○石崎委員 そうしますと、大臣の御答辯のうちで、私二、三わからなくなつた點があるのでございますが、そのイニシアテイーヴを行政官廳にとらせるということになりますと、行政區劃のうちにおいて線を一つひつぱつて、こつちではこういうものができた——私の方で言いますならば、小倉市においてはこうなつたが、隣りの戸畑市と街はまつたく續いておりますが、その戸畑市においてはこうなつた、小倉市においてはこうなつたといつたように、同じ平原のうちに二つの違つたものができるような憂えはありますまいか。同時にそのセクシヨンの状態に應じて、最低賃金というものを決定することは今日では不便である、やがてそれができるであろうかというお話でありまするが、もし將來しばらくの間はセクシヨンによつて違うとすれば、この獨占法そのものの適用は、數年間というものは一定のあてはまるところがなく、こつちにいつてはこのくらいに小さくしてあてはめる、こつちにいつてはこのくらい大きくしてあてはめるということになる不便が生ずると思います。この邊大臣はどうお考えになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=4
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005・河合良成
○河合國務大臣 ただいま行政官廳と申しましたのは、勞働基準法を實施するときには、中央に勞働基準局を置き、他方にまた地方の勞働基準局を置くのでありますが、そこでイニシアテイーヴをとるのでありまして、いつも中央との連絡をとりまして、そこで中央の認可を受けることになつております。そういう制度になつておりますから、その畫一性は破れぬと思います。ただ地方の状況がいろいろであり、また業態によつていろいろ差別があるという意味において、地方廳にイニシアテイーヴをとらしておるということになつております。それからなお最低賃金の問題は、これは行政官廳がイニシアテイーヴをとるというばかりでなしに、御承知の通り、勞働協約で相對的にいくらでもきまつてまいりますので、たとえば官廳のこの間の官公職の職員組合につきましても、十八歳六百五十圓というような線などは、やはり一つの最低賃金の線でありまして、そういうことは各工場ごとに、勞働者と工場事業主との間にも、そういう問題はもちろんきめ得る問題であります。そういうことが一般的に自由にゆくと同時に、行政官廳として必要を認めたときにはそういうことをするというような、二つの線でものごとが動いていくということを御承知願いたい。そういうふうにして劃一性はもつていけるということを申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=5
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006・石崎千松
○石崎委員 そこで思い出しましたが、なるほど最低賃金というものは勞働者の團體と資本家側との協定によつて行われる場合があります。そういうふうにして今日賃金の決定が多くされております。しかしながら一工場に働く勞働者と、その工場を支配する資本家との協約によつてでき上つたところの賃金というものが、はたして日本が將來進もうとする方向に向つていいか惡いかということになりますると、これははなはだしく問題である。そこのところには多くの場合無條件つまりノートラブルでできたというような、そう軋轢がなくてできたという場合はほとんどないのであります。常に資本家、勞働者の間に軋轢が生じて、その結果が曲りなりの資金に落ちつくわけであります。そうすると、その賃金というものは自然に定まつた歡迎すべき傾向のものではないと私は思うのであります。國家は常に一定の方針をもつているはずであります。將來はこういうふうにゆかなければ、世界の態勢に日本が後れをとるといつたようなことから。日本は常に後れをとらないように進んでいるはずであります。そうしますと、この最低賃金の問題ははなはだしくむずかしいものでありまして、かりに勞資當事者間においてさような曲りくねつたものができたとしましても、政府の考えとしては、それではいけないという場合が起るかもしれない、あるいはまたできたらできたでいいから、そのまま放つたらかしておけ、それでトラブルが終つたら終つたでいいということがあるかもしれませんが、そうなると、そこに非常な國家の方針との食い違いができるから、これはどうしても近いうちに——今はできないとおつしやつておりまするが、近いうちにこの最低勞働賃金が全國的にきめられなければならないと私は思いまするが、大臣いかような考えでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=6
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007・河合良成
○河合國務大臣 その問題は結局他の言葉で申しますと、賃金統制の必要性及びその實行性という問題になつてまいるのであります。今日の經濟情勢は、御承知の通り貨幣價値、購買力の非常な變動、あるいは日本經濟の混亂というような面から見まして、これはスタビライズした工業状態とはよほど違いますので、なかなかこれに一律の賃金統制を行うことの、非常に困難なことは御存じの通りだと思いますが、しかしながらある程度における賃金統制ということはもちろん考えられるのであります。これはマツカーサー司令部からの昨年十月か十一月のデレクテイヴにも、物價及び賃金統制の必要ということを考え、また今日日本の物價體系を作成するについても、賃金を含んだ意味の物價構成ということを考えておるようなことでありまして、絶えずその點については、政府としても注意をしておる點であります、その一面においては勞働契約は自由でありますから、その自由はできるだけ尊重していかなくちやなりません。しかしながら國家全體としての公益にこれが差障る。これでは日本の産業が立たぬ。あるいは個性というものの生存が脅やかされるという場合には、それは進んで最低賃金などの制度でなく決定していかなくちやならぬと考えられるというように、自由經濟の建前と、公共の維持あるいは日本産業全體の建前ということもにらみ合わせて、彈力的の措置をとつてゆくより方法がないと思うが、そういう意味において勞働基準法が制定される。さうしてまた勞働組合法によつて勞働者の權利が認められておるというふうに御了解願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=7
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008・石崎千松
○石崎委員 大體はわかりました。お氣持もよくわかりましたが、私がアメリカにおいて見ましたことから申しますなら、一九三三年にナシヨナル・リカヴアリー・アクトすなわちN・R・Aというものができた。もう一つ申しますなら、その一九三三年というあのアメリカの有史以來の不景氣は、ちようど今日の日本にも匹敵するがごとき状態でありました。物價というものがこうなつたり、こうなつたりして、非常に困つたときでありました。つまりスタビリゼーシヨンというもののなかつたときであります。だから今日の日本の状態からいいましても、あの一九三三年というところと私は似ておると思います。ですからスタビリゼーシヨンのないところで、アメリカではN・R・Aというものを布いて、最低賃金というものを決定いたしました。決定しなければどうにもならないという破目までやつてきたのであります。そこで今大臣のおつしやつたことはよくわかりますが、今の情勢に應じて、大體の貸金がきめられるということをおつしやつたのでありまするが、それもよろしうございますけれども、この私的獨占の禁止法というものは法律として動かすことのできないものであります。言いかえれば、練瓦のようにぴたつとまつすぐなものであります。そうするとここのところじや賃金が五圓である。こつちは五圓五十錢、こつちは四圓五十錢だという凹凸のあるものを、練瓦みたいなきちつとしたものではたして測り得るかどうかということです。凹凸のあるものを練瓦みたいなぴたつとした定規をもつてあてはめるというところにはなはだしく困難がある。從つてこの法律の適用ということにおいて欠けるところができてくる。困難さが生じてくるということになりますが、これは大臣どうでございましようか。それで私は全國的にぴたつとするにあらざれば、この法律の適用というものはむずかしい、かように考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=8
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009・河合良成
○河合國務大臣 公正かつ自由なる競爭の基礎になる最低賃金を、今全國的に一律に線を引くということは事實上困難だと思います。それでまずできるだけそういう線に沿うてゆく、言葉をかえますと、最低賃金の必要ということは、結局勞働者の生活保護をしなくちや、勞働者があるレベルから以下に落ちたのでは、人間として個性の完成という意味から言うても困るし、それからまたそれが日本の産業の上においてもいかぬのだといふ意味の最低賃金でありまして、やはり最低賃金というものはどうしても公共的の必要ということが土臺になつてのことでありますが、今日の經濟事情ではそれがいけないということで、できるだけそういう線に進むが、それを法律的に畫一的に今やつてしまおうというだけのことは、事實困難であります。しかしある線から落伍する人に對しましては、あるいは生活保護法なり、あるいは失業對策なり、いろいろの方法で、その線以下には落さぬように、また他の面において努力していくというくらいのところでいくより、實際上の問題としてしかたがない。それでこの法律を行つていきまして、大體そういう意味において基礎づけていく。それからだんだん産業がちやんとスタビライズするようになりましたら、だんだんそういう線がはつきり浮き上つてくるのではないかというふうに、私は考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=9
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010・石崎千松
○石崎委員 實は私はこれが法律であるがゆえに、そうきちんきちんとお尋ねしてみたいのであります。今のところは當分最低賃金の決定はできないということになれば、結局この法律は公正かつ自由なるところの競爭の基準が立たない。そういう意味になりはしませんですか。公正かつ自由なる競爭基準というものは、最低賃金と最短勞働時間というものの決定が前提條件である。その前提條件のうちの一つが欠けることになれば、この法律の適用というものは、その欠けたところが、まつすぐもとのところになるまでは、適用ができないといつたことに歸着すると思いまするが、どうでありましようか。ちよつとくどいようでありますけれども、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=10
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011・河合良成
○河合國務大臣 最低賃金ということは少し狹いのじやないか。大體そのベースを求めるならば、最低生活の保障という線じやないかと私は思います。これは議論になります。意見になります。最低生活の保障という線については、憲法の條項によつて、日本の國情の許す限りやつておる。その一つの現われとして、最低賃金ということが非常に大きく考えられるということであります。全體を申しますと、やはり最低生活の保障ということが、この自由競爭のベースになつておる。私はそう考えておる。だからその最低生活の保障ということについては、日本の國情においてできるだけのことは全力を盡くしておる。たとえば最低生活の保障ということについては三十六億の金を出してやつておる。また公共事業についても九十何億の金を出してやつておるというような實情からごらんくださいましても、ただいまの事情としては、許す限りのことをやつておる。その線が定まりますれば、自由競爭はフエヤーになる。だから國家はフエヤーな自由競爭をやらせると同時に、片方においては公正なベースを考えていくことは、もちろんのことであります。こう御解釋くだされば、お考えのように滿足にはいきませんが、大體その線がそこにあるのじやないか。そういうふうに私は考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=11
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012・石崎千松
○石崎委員 まことに肯緊に値する御意見だと思いまするが、獨占禁止法のできたゆえんというものは、この獨占禁止法が全國的な生活基準の上に立つての、個々のどれもこれも、いかなる商行爲に對しても、禁止するというのではなくて、一定のわくは設けられておつて、その範圍においてなされるものであります。從つて今大臣のお話の通り、最低生活の保障ということが最もよいようでありますけれども、獨占禁止法の適用されるところの範圍というものは、少くとも私は勞働賃金でなくちやならぬと思うのでございます。かりに私が現在十分なる生活が營めておるといたします、從つて私は最低賃金などいらぬ。それよりもつと下の賃金をもらつてもよい。なぜなら家に恒産がある。資産があるから、私は最低生活ということは、既に保障されておるが、競爭ということによつて、不當な競爭が行われるようになつたから、やがては私の最低生活ということは、將來いつかは脅かされることになる。從つてこの法律の定めるところの範圍のものは、最低生活にあらずして、最低賃金でなくちやならない、私はかように考えるのでありますが、これは先ほど大臣の御しやる通り、各自の意見であります。考え方であります。だから今日の事情において、大臣の御しやるように、最低賃金を定めるということが、非常に困難な状態にあるということも、私は一應それは認めるような認めぬようなでありますが、わかるような氣持がするのであります。そこでそのでこぼこのあるものに、法律というぴつたりとしたまつすぐな定規をあてはめて、はたしてこの法律の適用というものがうまくできるかできぬかということについては、なお河合厚生大臣の答辯を承つても、私は了解のできないところがたくさんあるのであります。そこでこの點は曲りなりであるという私の了解でおいておきまして、その先をひとつお尋ねしたいのです。
最低賃金の制度というものは、今はできないと仰しやるが、やがてはできるかもしれないというようなお答えであつたと思いますが、最低賃金というものを決定されると、必然的に起つてくるものは、あらゆる社會問題である。社會問題が當然起つてくるのです。それはどういうふうにして社會問題が起つてくるかというと、私がかりに片目であるとします。目が片方見えないとします。次の人は足がびつこであるとします。次の人は手が片方ないといたします。そうしますと最低賃金が決定されることによつて、片目である私も、びつこである彼も、手のない彼も、一律に同樣な賃金を拂われなければならないことになる。そのA、B、Cの一番向うに今度はDという人間がおりまして、そのDという人間はからだことごとくが健全であるというような場合、四人おります場合に、びつこも片手も片目も、からだの完全な者も、一律に同じ金をもらうことになります。そうすると雇つておる方の人から言いますと、びつこの男は常に腰をかけて、お金を計算するだけの、つまりキヤツシヤーならキヤツシヤーというところにすわつておつて、それで用は足りた。びつこであるけれども腰をかけておつて、キヤツシユ・レジスターをちやつちやつといじるのだから、それで用は足りた。ところが片方の手のない方は、常に米をつくのだから、片手であつてもかまわぬ。兩足二本さへあればよかつた。片目の者も同樣に片目で使い途があるという場合に、健全な者とそれらの者が一律に賃金というものを定められるならば、雇つておる方の側から言えば、米つきの片手は、木を割ることができぬ。木を割ることは不便である。米をつくのが四六時中じやない。一日中じやない。たまには木も割つてもらわなければならぬという場合がきましたときに、からだの達者な者と同じに拂うとするならば、ばからしくて使えない。米をついてあとは木を割らせるということになると、からだの健全な者を使つた方が得だ。彼は片手であつてかわいそうであるがゆえに、普通の人は一週間十五圓の給料であつたけれども、彼は十三圓で働いてくれて、二圓安かつたから、私は今まで使つて來た。しかるに最低賃金というものが決定したために、達者な者もかたわも同じものになつたということになると、ばからしくてかたわが使えないということになると、かたわという者は非常に困つた立場におかれて、これは失業者の仲間にはいるのでございますが、これらの者は全國的に見て相當な數に上ると思いまするが、これらの人の、言いかえると最低賃金の決定ということは、これらの不具者をシヤツトアウトしてしまうということになるのですが、これは話がずつと遠い將來のことになりまするが、大臣はこの邊はいかがなお考えでございましよう。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=12
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013・河合良成
○河合國務大臣 ただいまの御質問の中で、最低賃金というものを定めないと私は申すのではありません。最低賃金は現に行政官廳がイニシヤチーヴをとつて定めることもできるし……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=13
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014・石崎千松
○石崎委員 定めた結果がその不具者の問題が起る。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=14
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015・河合良成
○河合國務大臣 その問題にはいる前でございます。また現に當時者間において定められつつある現状でありまするから、そうだから最低賃金というものを、ただ畫一的に、全國的に一つのベース・ラインをつくる時期に至らぬということを、私が先ほどから申しておる意味は、そういう意味であることを御諒承願いたいのであります。それから第二にただいまのお尋ねの點にお答えいたしまするが、ただいまのお尋ねのことは、いろいろな意味においての問題を實は含んでおりますので、ちよつと單純にお答えできぬかと思いまするが、まず第一に最低賃金というのは、いわゆる最低賃金でありまして、最低のものを線を引くという觀念であろうと思います。そうだから決してすべての人がその最低賃金に引つけられるわけではないのでございます。能率に應じて、能率のある人はよけい賃金がもらえるのであります。賃金の根本原則は、やはり能率ということが非常に重大なことで、ただいまの通貨價値の變動する時代には、御承知の通りに家族手當その他のことから、生活給というものは非常に重大に働いておりますけれども、本來の賃金の姿はやはり能率給である。ただ能率給でばかり極端なことではいかぬというので、そこで最低資金という思想が出て、公共的にそれを一つ保護しようじやないかという考えが出てくるのだと思いまするから、大體の賃金の姿というものは能率ということが本位でありますから、今のような意味の御心配は私はないと思います。しかしながら一面におきまして最低賃金の、將來線を引くといたしますれば、その線の引きようによつて、その線からドロツプする者があるだろうということは、これはその線の引きよう如何によります。そういう者までも救いあげる意味に低い線を引けば、それは下に線を引きますればドロツプしませず、それから上に線に引けばそれはドロツプするのでありまして、そのドロツプした者は、これは御承知の通りに社會の状態として、健康の非常に惡い人もあれば、職につけない人もあるということでありまするから、これはやはり社會救濟なり、社會保障という制度の面でこれをどうとかするということは、國家の目的として當然のことである。またそれを使用するということのいかんという問題になりますると、これはやはり自由經濟の建前から、雇傭契約というものは決して強制的性質を帶びたものではなく、各自の任意になつておりますから、それは使用者と勞働者との合意でゆくことになつておりまするから、使用者側においても、どうしても能率の惡い人を用いなくちやならぬという義務は出るわけでありません。そういう意味において、一面には使用者側を拘束するものではなく、一面にはそういう場合には、社會保障の制度を以つて何とかやつて行かなくちやならぬものだという二つの面から、今お尋ねの面は解決さるべき性質のものであるというふうに考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=15
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016・石崎千松
○石崎委員 よくわかりました。まさにその通りであります。それでありまするから、願わくばそこの線を引くときに、高いところで引いていただきたいということであります。それで不具の人、かたわの人を基準にして線を引くなら、達者の者が皆かたわのところに下つていく。だからどうしてもここのところの線の引き方というものが、私は高く引かれなくちやならぬ。そしてその線からドロツプした者は國家が救濟してやらなくちやならぬ。それも私の考えはまつたく同樣であります。最低賃金とその最短勞働時間ということになりますと、いろいろなものがアメリカに現われております。このくらいではきりませんけれども、あまり長くお尋ねしてもいかぬとも思いまするし、あとのことはまた事務當局ともよくお話しいたしまして承りたいと思いまするので、河合厚生大臣に對する私の質問はこの程度に止めます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=16
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017・岡部得三
○岡部委員長 稻村君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=17
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018・稻村順三
○稻村委員 關連してちよつと厚生大臣に御質問してみたいと思います。この獨占禁止法によりまして、從來獨占資本と目されるような會社が分割解體するということは、小さな會社に分割するという結果になつてくると思うのでありますが、その結果といたしまして、これは將來、半年とか一年の後になれば、またそれが生産を再開するという點も一應考えられますが、その解體直後の、いわゆる過渡的な形態として、そこに從業員などが失業するというようなおそれはないものかどうか。事實現在の生産の状態を見ますと、大きな、いわゆる獨占資本といわれているような會社が、過去の資材を一應本社からわけてもらつて、そうしてほんのちびりちびりと、あるいはサツカリンを製造したり、あるいはなべ、かまを製造したり、塩を製造したりというような格好でもつて、細々として從業員を養つているという事實が各地にあると思うのであります。こういうところは一應本社から切り離された獨立工場というようなものになりますと、たとえばそういうものが結局やつたところで、それは資本の點などでは、やはり本社の資本でもつてやつているという形であるものが、これが本社から斷ち切られたために、それだけの生産をもつてしては從業員を十分養い切れないというような場合が起つて、それかといつて資材その他の關係で、新らしく一つ自分が獨立しただけの生産をやつていくという準備が十分に整えられない。こういうような工場がある場合には、必然にそれは當面の間、生産再開の態勢が整うまで失業状態に陷る、こういうようなことが考えられるのでありますが、これに對する厚生大臣の御答辯を承りたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=18
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019・河合良成
○河合國務大臣 お尋ねのような危惧は多少考えられると思います。實際上の問題としまして、この獨占禁止法が私的事業に適用されまして、どういうことが起るかということは、實は事務當局においても相當考慮しておるのでありまするが、やはりこの問題はおもに經營の抽象的な面が一番重大でないかと思いまして、それはたとえば新聞にも出ております。嘘かほんとうか知りませんが、三井物産が幾つかにわかれると、昨日の新聞にも出ておりましたが、ああいうことが事實としますれば、單獨に幾つかになるわけでありまするが、大體經營面の獨占的の綱を切るということが目的でありまして、事業自體に變動が及ぶことはきわめて少いのじやないか。あるいは金融面などについて問題が起きぬかという危惧もあるのでありますが、こういう面につきましては、復興金融金庫などにおいて中小工業、小資本に對しても十分に考慮していきましようから、實害としては御心配のような點は少いのじやないかというふうに、實は考えている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=19
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020・稻村順三
○稻村委員 實際上の問題としては、生産が普通になされている場合には、厚生大臣の言われているようにそういうことはきわめて少いのでありますが、生産が常道に乘つていないで、ほとんど副業みたいなものをわずかに經營して、ただ從業員に形式的に仕事を與えている。しかも勞働組合その他の結成によりまして、勞働者の馘首というものを避けるために、從業員の經費その他については、やむなく生産というものはほんの補助的にやつていて、大部分のそういう經費は本社から出てカバーしているという事實は、私の知つている工場の中でも事實二つや三つではきかないのでありますが、この獨占禁止法によつて會社が分離した場合には、そういう經費をどういうふうにして捻出する政策をお立てになつているか、その點なお御答辯を煩わしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=20
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021・河合良成
○河合國務大臣 ただいまお尋ねのように、本社から赤字を填補して給料をやつと拂つているという事例は御承知の通り多いのです。ないとは申しません。それでこの獨占禁止法の影響を受けて、そういうものがいくら起るかという問題でありますが、その點も多少はあると思ひますが、しかしこれが非常に大きな問題になつて、そのために失業者が續出するというようなことは、私どもは考えておりません。またそれに伴うて多少企業整備のことも出てこないとも限らぬということは、それは考えられるわけであります。そういう點につきましては、一般失業問題に對する對策としまして、その中に入れて考えるというよりほかに方法はないというふうに考えている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=21
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022・稻村順三
○稻村委員 それからもう一つ考えられることでありますけれども、これは獨占禁止法によつてある程度解體いたします。ところが私たちから言えば、集中した資本のもとにおける勞働者の團結というものは、比較的統一的で強固であるという結果として、勞働條件その他につきましては、比較的いいという建前がとられていると思う。しかるにこの獨占禁止法の實施によつて解體する。たとえば日本通運株式會社というようなものが一つの例になるのでありまして、これは運輸大臣もある程度において、一應別な處置をとらなければいけまいという意味合のことを述べております。こういうような場合に、日本通運なら日本通運という一つの會社のもとに、十三萬の勞働者が強固な組合をつくつておつたために、他の小さな免許小運送業者などの從業員に比しましては、比較的勞働條件に惠まれているということができるのでありますが、これがもし解體して、小さな小運送業者が各驛に三つも四つもできるということになると、各小運送業者の資本の問題も起つてまいりますし、そういうことから必然的にここに勞働條件の後退というものが起つてこないか。勞働條件の後退が起つてきますと、かつて運輸業の勞働組合として相當強固な組織があるので、このために非常に大きな爭議が卷き起るような結果になりはしないか。この點に對する厚生大臣のお考えをお聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=22
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023・河合良成
○河合國務大臣 勞働者の團體交渉權の問題になりますが、團體交渉權の形が、大きな企業單位が小さくなるために、そのフオームが變るということについては、これは事實上やむを得ぬことで、認めなければならぬことでありますが、そのために勞働條件が低下するということにつきましては、できるだけ政府としてもそれを防止しまして、そこに大きな變化のないように努めたい、そのために惡くなるというような事態を起さぬように努めたいと思います。それで大なる企業體における團體交渉權なり、勞働組合というものがよいのか、細分されたものがよいのかということについては、いろいろ議論のある問題だと思いますが、私的獨占事業の禁止ということは、その部分の問題よりも、なお國家全體として一般大衆なり、あるいは勞働者の利益のために、こういうふうにやるのがよいという大きな觀點から、アンチ・トラスト法ができているものと考えますから、そのために受けるところの勞働組合の團體交渉權の單位が小さくなるという問題については、そのために何か弊害が起ることをできるだけ防止するという方法でやつていくということに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=23
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024・稻村順三
○稻村委員 その場合に團體交渉權の問題でありますが、たとえば小運送業をとつてみますと、從來日本通運の十三萬の從業員で結成されていた小運送の勞働組合がいわゆる團體交渉權をもつか、あるいはそれが小さく分離いたしまして、一驛に數軒ないしは十數軒の小運送業者になつた場合に、その小さなものがおのおの單一勞働組合となつてそれに交渉權をもたしめるか。これは將來の團體交渉權の問題にとつて非常に大きな問題だと思います。その點厚生大臣のお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=24
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025・河合良成
○河合國務大臣 勞働組合法に組合の連合的の方法も設けられておりまするし、現にいろいろ單一組合のような制度も出ております。これは勞働者側の自由だと思います。その方法はいろいろ法規によつて、許された範圍内においてできることであるというやうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=25
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026・稻村順三
○稻村委員 私の關連質問はこの程度で終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=26
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027・岡部得三
○岡部委員長 石崎千松君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=27
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028・石崎千松
○石崎委員 本會議におきまして、私はこの獨占禁止法がもし法律となつた曉において、この法律がどの範圍まで適用されるかということをお伺いしたのでありますけれども、そのときに私はどうも長官のお答えがぴんと來なかつたので、もう一度ここでお尋ねしたいと思います。法律案の中に書いてありますところのいろいろなものを見ますと、上は三井とか、三菱とかいつたような大きな獨占的形態なり、コンツエルンといつたようなものがたくさんありますが、下の方になりますと、またコンツエルンの形において、露店商人みたいなものがある地域を獨占して排他的な商取引をやつております。これらのものの上から下での、つまり大商人、大財閥と言われるものから下の方のごく小さいもの、新橋の方に行きますと靴磨きの組合があつて、この一つのボスのもとでなければそれができぬというような形になつておる。つまり個人の自由な意思というものが束縛されております。あの地域において私が靴磨きをやろうとしても、ある順序を經てその仲間にはいるのでなければいけない。そのはいるときにはいろいろな物やお金をとられたりして、どうも自由にやれない。商賣におきましても、さようにして小さい所でやりたい、小資本で經營してみたいと思つても、そこに一つの組合みたいなものがあつて、入れさせてくれないということになりますと、上のコンツエルンから下のコンツエルンまでたくさんありますが、この法律が適用されるところの範圍は、はたして露店商人まで及ぶかということであります。露店商人に及ぶなら及ぶ。こうおつしやつていただければもうそれでわかるのでありますが、どうか一つ聽かせてもらいたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=28
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029・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 この法律の趣旨は、御承知のように日本の經濟全般につきまして獨占的な弊害が起る。これを防止しよう。こういう趣旨であります。從いましてこの法律の適用される對象というものは、非常に大きなものであります。つまり日本經濟全體として見て、いろいろな方面から結合なり、連合なりというようなことで價格の操作をしましたり、生産方面の操作をしましたりして、消費者大衆の利益に反し、あるいは競爭事業の發生を妨ける。そういうようなことのないようにしたい。これが趣旨なんですから、ごく部分的に共同してやつて、それがために地域的にいろいろなそういう弊害が起るという場合がありましても、これにははいらないのだろうと思います。なわ張りのような問題でありますとこれも地域的獨占でありますが、これは組合の許可とか何とか、そういう取締りの問題になるのだろうと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=29
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030・石崎千松
○石崎委員 なるはどなわ張りというようなものは取締りの規則かも知れぬけれども、少くとも地域的獨占である限りは、この私的獨占禁止法案というものが取締りをしなくさやならないことになるのであります。つまり取締りの根本基準というものは何かと言うと、この私的獨占禁止であります。これによつて發して來なけれなばらぬ。この法律が取締りの泉源をなすものであると私は考えておりまするが、そこになりますると、今の御答辯では私はあまりぴんと來ないのであります。この私的獨占禁止法の適用範圍は廣い。その目的とするところは何かと言つたら、なるはど消費者一人々々の利益を高めるということがこの目的である。かように考えます。そうすると、この問題が大きな所ばかり掴んで、下の方に及ばない限りは、中小工業というものが非常に苦しめられると思うのです。言葉は惡いかもしれぬが、依然として苦しめられる。かように申し上げたいのでありまして、この私的獨占禁止法案の何のお蔭も受けぬ。上の方はなるほどそれでお蔭を受けることになつて、上のお蔭に潤うかもしれぬけれども、下にある中小工業がはいつていくところのものに向つては、比較的このお蔭を受けることが少いと私は考えるのできりますが。下の方にもこの有難さというものを浸潤させるところの方法いかんといつたようなことを一つ伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=30
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031・橋本龍伍
○橋本政府委員 お答えいたします。實際の問題としては、私どももよく研究をいたしたのでありますが、一番の問題は警察許可の問題であると思うのであります。つまり今おつしやつた問題というのはどこから起つておるかと申しますと、現在企業許可令を廢止いたしましたので、小さなものが新規に商賣にはいるのを妨げるような根據法というものは正面からないはずであります。實際問題として、たとえば露店だとかあるいは理髪屋を開業するときに、問題が起るのは何かと申しますと、露店などは路面を占領して使うのには警察署長の許可が要るわけであります、實際においては、法制的には警察署長の許可あるものが、ある道路に店を出すことができる。こういうことになるのであります。現實の問題はどうなつておるかと言うと、お話の通り親分がおりまして、その親分のわたりをつけたものしか露面使用の許可が貰えないというのが實際であります。それからたとえば、この間うちも引揚者の團體から商工大臣あたりに御要求が出ておりましたが、理髪屋とか酒屋とかをやろうとしたときにできない。企業許可をやめろというやうな話があつたのでありますがそういうものはないのであります。何かと言うと、結局理髪屋の組合というようなものをつくつて、同一町内には何軒しかつくらないという申合せをして、衞生上の見地から警察許可をやるときの基準にそれを使つてもらつておる。正直に言うと、警察許可の内容が、若干單純な交通の位置だとか、あるいは衞生の取締りというような點から、逸脱と言わぬまでも、別の考慮をさらにした方がいいのぢやないかという點があるのではないかと思います。それで本法の適用といたしましては、ここにありますように「一定の取引分野における競爭を實質的に制限することをいう。」といいますのは、たとえば露店商で言えば、ある者は小間物を扱つておる。その小間物取引の獨占という問題になるので、從つて露店商のような小さなものが日本の小間物取引を獨占するということが考えられないという意味において、本會議以來大臣の説明がありましたように、大體そういうふうなものは本法の取締りの對象にならない。こういうふうに考えられるのでありまして、今のお話のような問題は、一應建前上は、おそらく警察許可というのは府縣令で行つていると思いますが、それによつて正當の許可を得たものが商賣でき、それによつて許可を得られないものが商賣ができないという關係でありまして、警察許可の反射的な結果という場合が非常に多いのだと思います。そういうような問題に關しましては、やはりそういう警察許可の制度自身を、本法の建前から今後政府としてもなお見直していく。議會の方でも御意見をいただくということが必要であるのだ。大體こう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=31
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032・石崎千松
○石崎委員 警察許可というものをこの法律によつて、この法律を泉源として今後立て直しをするという意味はわかりました。すなわちあなたが今小間物業のお話をなさつたけれども、小間物屋がその對象にならないということでありますが、この中に排他的なものはいかぬということが書いてあると、どれもこれもあてはまらなくちやならぬという結果になります。小間物屋對小間物屋の問題、床屋對床屋の問題ということになりますると、明らかにこの中に書いてあるところの公正な取引というところにもつていつて抵觸いたします。小間物屋と靴屋はこれは競爭相手でありません。しかしながら電氣とガスとはこれは競爭相手であります。電氣と石油とは同樣に火をつけるという意味において競爭相手である。從つて小間物屋對小間物屋、床屋對床屋というものは、當然この中にはいらなくちやならぬし、私がこの町で床屋をやろうとしてこの町へ行つても、この町ではあなたのおつしやるように、三軒しかやらさないということになつた場合は、私は大日本帝國の國民でありながら、自由な競爭フエア・コンペテイシヨン、フエア・エンタープライズというものが當然禁止される。だからそこのところになるとこの法律の適用がどうなるか。ストリクトリイに言うと、この法律に定めたところの條項にひつかかるものは、これことごとくこの法律の對象でなくちやならぬ。私はかように考えるのであります。從つて私の考え方は、これをストリクトリイに適用するなら、上から下まで全部かかつてしまわねばならぬが、下の方をかけるということになると、國民經濟の發展を阻害する。むしろこの獨占禁止法の趣旨に反することになる。そうでございましよう。小さいものはどんどんと自由の意思によつてフル・エンタープライズ、フル・コンペデイシヨンによつてやつておるが、この禁止法というものを嚴格に適用するなら、上から下まで及んでしまう。この文句では上から下まで及んでしまう。そうすると下の方のものははなはだしく窮屈になつて、みずから發展していこうという力が阻害される。そうでございましよう。私が床屋をすぐ始めたいと言つても始めることができぬことになつておつては、自由なる意思によつて何事かをしようとしても、常にその制限を受けることになれば、私は自由にやれないのだ。そうするとこの精神に反することになる。從つてこの法律そのものが適用されるところの線が引かれるならば、その線はどこに引かれるべきものだろうかというのが私の言分なのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=32
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033・橋本龍伍
○橋本政府委員 ただいまのお話でございますが、私の説明に對する誤解がおありなのだろうと思います。理髪屋の例で申し上げます。理髪屋が衞生上の見地から今全部警察許可になつております。ある町内に理髪屋を三軒しか警察が許可しないという方針をとつたといたします。そうするとその三軒の人間というものが、警察許可の結果、自分だけしか許可をしてくれなかつたので、仕事をしているだけなのであります。ほかの者も警察署長がただ許可申請を出しても受けつけないというだけなのです。それで警察署長がほかの者も許可すべきを、自分が何らかの方法で阻害しているわけではないので、警察署長はちやんと許可できるわけであります。ただ私に許可してくれなかつたというだけの話であります。初めのころ許可を受けてやつておつた、獨占だというので徴役三年になつてはかなわない。それは要するに警察許可という法制上の見地がよろしくないから、もつと許可制度をやめなくちやならぬ。つまり許可制度をやめておいて、仕事をやつた者に對していつでも衞生上の監督をして、ストリクトリイにせよというようなことで解決すべき問題であります。それからあとの、しからば本法の適用はどうなるかということになると、本法はここに書きましたように、どこに線を引くかということは、機械的な線でなくて實體的な線、要するに公共の利益に反して、一定の取引分野における競爭、を實際上できなくなつてしまうようにするというのが問題なのであります。たとえば理髪屋なら理髪屋において何か特別な方法で、これはちよつと考えられませんけれども、全國の理髪屋は商賣しようと思つてもそこしかできぬというふうなことに相なれば、それは理髪屋の獨占でありましようけれども現實の問題としては、一軒の理髪屋がどんな仕事の仕方をやつても、日本全國の頭を刈るお客を、そこでとつてしまうのだというようなことはちよつと考えられない。要するに實體的に一定の取引分野における競爭は、實際上できなくなることになれば、これが獨占なわけです。從つて今のお話のありましたような露店商とか、いろいろなものが、どうも取引を獨占するというようなことはちよつと考えられないと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=33
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034・石崎千松
○石崎委員 そうすると獨占というものに對しての最初のプロポジシヨンという問題が必要になつてくる。獨占の範圍いかんということが問題にならなければならぬ。あなたのおつしやるように、髪をつむ者を日本全體一人手にとるということはできぬ。だからあなたの言うように、獨占の範圍というものは日本全體に及ぶものでなければならぬということの規定があれば、それは石崎ももはや何をか言わんやであります。地域的な規定がない限り、一縣において、一郡において、一市において、一町においてこれが行われても、この法律は適用されるのではないかと思う。こう言うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=34
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035・橋本龍伍
○橋本政府委員 私の今の説明が少し足りませんでしたが、實は私昨日説明いたしました際おられなかつたのでありましたが、こういうわけであります。「一定の取引分野における競爭を實質的に制限することをいう。」というところの御説明を申し上げます。これは全國一圓の場合もありますし、一地域の場合もございますが、要するにこの獨占と申しますのは、ある物資の生産であるとか、あるサービスの提供であるとか、いろいろな販賣であるとかいうような一定の取引分野におきまして、競爭が實際的に行われないようにすることを言うわけであります。しからばこの一定の取引分野というのはどういう範圍であるかということが問題になるわけであります。一口でお答えいたせば、當該物資の、ないしサービスの、生産供給等に關して、經濟的に獨占が成り立つ分野が、ここに言う一定の取引分野だということであります。經濟的に獨占が成り立つというのはどういうことであるかと申しますと、一番大きい方から小さい範圍に及びますれば、まず第一に輸入の可能性が容易であるかどうかというのが一番先にくる問題であります。日本全國一圓に獨占をやりましても、海外からの競爭ですぐ敗れてしまうのでは獨占はできないわけであります。かりにたとえば日本において石油の獨占を、日本國内産油にだけやるということをしてみましても、これは輸入石油の獨占を何らかの方法で講じない限り、おそらくすぐ敗れてしまうと思います。それからもう一つは代用品がすぐ出てくるかどうか、ないし當該物資の生産設備をすることが容易で、競爭者がすぐ出てくるという場合においては、獨占というものは非常に成り立ちにくい。今海外からの競爭によつてなかなか崩されない、ないしは生産設備を新たにするといつても、相當時間がかかつたり經費がかかつたりして、競爭者というものはなかなか出てこない。代用品もなかなか出てこないというようなときに、初めて經濟的に獨占が成り立つわけであります。しかしてその場合に、それでは全國一圓でなければ獨占が成り立たないかどうかというと、大體においてごくかさばるような貨物であつて、輸送費用の非常にかかるもの、ないしは保存の非常にききにくい、腐りやすいような品物、こういうものについては地域的な獨占が成り立つと思います。つまり關東一圓で獨占をした場合に、北九州あたりにある品物は、競爭者がその獨占を崩す活動として送ることはできない。そういうような場合には地域的な獨占が成り立つと思います。私先ほどちよつと申し上げ方が惡かつたのですが、小間物のような場合においては、大體かさが小さいものでありまするし、かつ好みも地方的な好みというものはあまりないものでありますから、大體全國一圓でないと獨占はほとんどできにくいと思います。ただ理髪のようなものでありましたら、これは大阪で理髪料が安くても、頭をもつて刈りに行くわけにいきませんから、これは地方的な獨占というものは成り立てば成り立ち得ると思いますけれども、ただ現實の問題としまして、今理髪屋等で問題になつておることは、むしろその競爭を自由にしておいて、その上である者が獨占をするというよりも、むしろ警察許可の關係上、一種の統制經濟になつておつて本法の適用する對象のものから大體除外されておるのでございます。そういうのが現状であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=35
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036・石崎千松
○石崎委員 警察許可の問題は先ほどからの御説明でわかりました。だから今後警察許可というものは、當然この法文をもととして新たに發しなくちやならぬ。私はかように考えております。今あなたは小間物屋のようなものは全國的にはモノポリーができないとおつしやるが、なるほど獨占ということにおいては——この先の方に書いてあるところの相手方を倒そうとする、つまり不當なことをやつて相手方を倒そうとすることです。言いかえれば東京はちよつと大きうございますが、たとえば私の郷里の小倉市なら小倉市という所において、一軒非常に有力な小間物屋がおつても、もう一つこれに劣らないものがおる。彼が小倉市におるために自分の事業がはなはだしく歪められたり、狹められたりするときに、彼を倒したいということから私が不當なことをやつても、小間物屋は全國的に獨占することができぬという見地に基いて、私は罰せられないのですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=36
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037・橋本龍伍
○橋本政府委員 本法の中の私的獨占の規定の適用はないと思います。ただ不公正競爭の問題は、ここに書いてありますように、要するにダンピングをやつて相手を倒すというような場合には本法の適用がございまして、これはいきなり刑罰ではございませんけれども、公正取引委員會は訴えにより、または職權によつて差止め命令を出して、それの言うことをきかない場合には罰則の適用がございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=37
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038・石崎千松
○石崎委員 つまり競爭ということは一つのダンピングです。ダンピングによるにあらざれば同業者は競爭が成り立たぬ。つまり生産した物を賣ることによつて、初めてそこに競爭がなり立つ。その前提條件が私が言うように勞働時間であり、勞働賃金であり、他のあらゆる雇傭條件であり、資材の關係であり、工場の機械の關係であるというわけなのです。だから工場の關係がいかに立派なものを据えつけても、あるいはいかに物を安く買つて來ても、資材を安く仕入れても、勞働賃金が安くても、それをダンピングする、賣るというところで初めて競爭がスタートするのです。だから賣るということになつてスタートするなら、小間物屋が二軒おつて、相手方を倒すことによつて彼がやろうとするなら、そこでダンピングが行われて、初めてそのことができるとするなら、そのダンピングということによつて罰せられるなら、彼は罰せられるかというのが私の言う點です。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=38
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039・橋本龍伍
○橋本政府委員 競爭は必ずダンピングだということはないと思います。それが本法でいわゆる公正かつ自由な競爭を促進しなくちやならぬという意味でありまして、あくまでも私的な結合をやりましたり、あるいは經濟實力を蓄えて、トラストをつくるというような拘束をやつて、經濟支配をやるのはいけませんとともに、そういうふうなことはいけないので、自由な競爭でやつていかなければならぬわけでありますが、ただその競爭はあくまでも公正でなくちやいかぬという意味において、トラストやカルテルの取締りをすると同時に、公正競爭の取締りをやつているわけであります。ここにありますように、不當に低い對價をもつて物資、資金その他の經濟上の利益を供給することというのは不公正競爭の一手段になつておりますが、要するに自分の生産コストを割りまして、そうして相手を壓倒するために繼續的に品物を投賣りをいたすというのは、明らかに不公正な競爭方法としての取締りの對象であります。自由な競爭をすることは必要ではあるけれども、自由な競爭は必ず公正でなくちやいかぬというのがほんとうの建前であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=39
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040・石崎千松
○石崎委員 よくわかりました。あまりくどいようでありまするけれども、くどいということをもつて單に私の質問を片づけられるなら、私ははなはだ殘念だと思います。私は少くともこの法律に對しては專門的知識をもつている者といたしまして、學問的な立場から私はいろいろお尋ねいたしている次第でありまするから、くどくてもこらえていただかなくちやならぬと思います。それでもう一つお尋ねいたしますが、この法律はアメリカのアンチ・トラストロー、インターステーツ・コンマース・コンミツシヨン、この二つのローがこの一つの中に織込まれておつて、しかも日本的なものを私は多分にもつていると思います。さよう承知してよろしゆうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=40
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041・橋本龍伍
○橋本政府委員 この法律はこういうことでございます。大體アメリカの反トラスト法が合衆國としてシヤーマン法から始まりまして約六つぐらいの法律から成り、かつここの第四章に掲げました子會社の關係の問題などは、アメリカの州法で規定してある會社法の規定の中の、反トラストの見地から定められたものをとり入れてありますし、かつアメリカは各州法で反トラスト法をそれぞれつくつたようであり、それぞれにつきまして英米法特有の慣例法ができているわけであります、結局合衆國法と州法の反トラスト法、州法の會社法、慣例法と併せまして、それが大體集大成された體系として、これのもとになつております。從つてお話のございましたI・C・CそのほかにF・T・C、ああいうふうなものも併せまして、かつこの適用除外の中にカツパーボルステツド法の精神なんかを織込んできまつているわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=41
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042・石崎千松
○石崎委員 それで大體よくわかりますが、この公正取引委員というものにつきまして、それではお尋ねしますが、アメリカのインターステーツ・コンマース・コンミツシヨンというものは、いくつかの州が寄つて、その州から出されたところの代表者七名ないし九名によつて構成されております。從つてこれらの委員というものが、一つの州が不當なることをやつたときには、その法律に定めるところの規定に違反したときには、州自體を相手どつてこれを大審院に告訴いたします。そうして州の間違つたところを改めさせるのでありまするが、今日の日本の制度を見ますと、あらゆるコントロールが行われておる。つまり政府獨占が行われておる。政府獨占ということは、實際のことを言うならば、ほんとうのことを言うならば、この法律の精神、あるいは他のあらゆる法律の精神、あるいはポツダム宣言を受諾したという、デモクラテイツクなものを日本に植えつけるという精神からいつて、はなはだしく反對な行爲であります。それはおわかりと思います。そうすると政府のとつているところのこの獨占的な傾向に對して、政府が、今日法律ではそれは認められてやつているのですが、もしもその政府の獨占的な行爲において、相手方であるところの私ども人民のやり方というものを倒すような行き方があつた場合には、このI・C・C・のコンミツテイというものは、日本の政府とその相手方であるところの私なら私というものをコートに呼び出して、これをジヤツジすることができるという權能をもつておるのですか。これをお伺いしたいのです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=42
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043・橋本龍伍
○橋本政府委員 今I・C・Cを問題にされましたが、アメリカでは大體御承知のように、I・C・Cは州際運用を多く扱つておるようであります。本法の公正取引委員會は、大體アメリカで一番一般的にこの反トラスト問題を扱つておりますF・T・Cの法律をもとにいたしたものであります。從つてF・T・Cは上院で選擧された五人の委員を主にしてやつておるわけでありますが、これもそういう建前でつくつております。それからなおお話のありました、本法に反するようなものについて、官廳公署を相手どつて問題にすることができるかという御意見のようでございましたが、これにつきましてはアメリカのF・T・Cにはそういうようなことはないようでありまするし、かつそういうふなことをかりにやると考えてみましても、アメリカのように非常に大きな國で、州と州とがそれぞれ獨立して別々の法律をもつておるというふうな國と違いまして、一本の議會によりまして一本の法律ができておりますので、その同じ議會を通つた法律に基く行動でありながら、片方の法律であるこの法律に基いて、たとえば煙草專賣法がかりに惡いにしても、同じ議會を通つた煙草專賣法に基く大藏大臣の正當な行爲に對して、同じ議會を通つた獨占禁止法に基く公正取引委員會が訴えをするというようなことは、話がおかしいのであります。それはどうしてもやはり一つの政府、一つの議會において、兩者の間の趣旨が當該社會情勢においてだんだん合わなくなつてくるというようなときには、政府及び議會がそれぞれ考えなければならぬ問題でありまして、公正取引委員會においては、もちろん本法を運用してまいる上から時々そういうふうなことを考える機會が一番多いと思われますので、本法第四十四條を規定いたしまして「公正取引委員會は、内閣總理大臣を經由して、國會に對し、毎年この法律の施行の状況を報告しなければならない。」ということが第一項の規定であり、それからさらにこの施行状況を報告すると同時に、その中から得られたいろいろな問題につきまして第二項で「公正取引委員會は、内閣總理大臣を經由して、國會に對し、この法律の目的を達成するために必要な事項に關し、意見を提出することができる。」ということに相なつておりまして、今仰せられましたような問題につきましては、公正取引委員會において考慮すべき最も大きな問題であると考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=43
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044・石崎千松
○石崎委員 今あなたのおつしやつたことには、私はおかしいと思う點がいくつもあります。それは日本國内で、日本は一つのローによつて支配されておる。なるほどその通りであります。日本は一のローによつて支配されておつて、その法律の中において行われたものであるがゆえに、ただその公正取引委員というものは意見をその主務官廳に提出すればよろしいということになつておるというのでありまするが、一國の國内においてなるほど法律というものはできております。できておりますけれども、その中に相矛盾するものがないという保證というものはだれもできない。矛盾する法律が必ずある。現にアメリカの例をとつて言いまするならば、アメリカでN・R・Aというものをやつた時に、そのインターステーツ・コンマース・コンミツシヨンというものはどういうものかということをやつて、それが法律として立派なものをつくつたにもかかわらず、御承知の通り大審院に行つてころりと負けてしまつた。負けてしまつたところが、明けの年には同じ法律で、法律を改正しないにかかわらず、大審院の判事が解釋を變えて、今度はころりと政府を勝たせた。つまり前の場合においては矛盾があつた。今度の場合においては矛盾がない。こういつたようなものがどの國でも起る。起つた場合に、日本なら日本で起つた場合に、ただこの公正取引委員がかようでありますという意見を出すだけでは、公正取引委員としては權能というものが非常にゆがめられることになる。そうでありましよう。最後の斷を下すことができるにあらざれば、彼は完全なるところの權利をもつておるとは言われない。パワーをもつておるということは言われない。そういうことになると思いますが、お答えをいただきます前にちよつと委員長に申し上げますが、私の質問は實際を言いますと、今九つのうちのようやく一つをやつたに過ぎない。あとこのくらいの長さのものが八つばかり續きます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=44
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045・岡部得三
○岡部委員長 そうですか。後でそのことについて御相談申し上げますが、今一時休憩いたしましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=45
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046・石崎千松
○石崎委員 そうしていただけば大變結構であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=46
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047・岡部得三
○岡部委員長 それでは今度の政府委員の御答辯の後で休憩いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=47
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048・橋本龍伍
○橋本政府委員 ただいまの問題に關してでございますが、まず基本的の問題といたしまして、法律と法律の間ではつきりわかる問題は法律の中で解決をいたしていかなければなりませんので、第六章の適用除外において、はつきり牴觸いたす部分については解決を考えておる次第であります。それから國營公營の獨占的事業に關しましては、本法は私的獨占を取締るものであるという建前をはつきりいたしまして、本法とは全然矛盾をいたさない。從つて國營、公營の獨占的事業に關しましては、それぞれ法律に基いて仕事をしておるわけでありますが、それはその問題は、本法の趣旨と合わせて、同じ國の行き方としていいか惡いかということはまつたく政府及び議會でやる仕事である、こういうふうに考えておる次第であります。ただ、たとえば保險業法などで、保險會社は料率の協定をすることができるというような規定につきましては、第二十二條におきまして、これはなお關係方面とも相談をいたす必要がございますので、どの法律を本法の適用から除外するかということを規定をいたしまして、それに從つて除外をいたしますれば、そのそれぞれの主務官廳が運用をいたすという問題に相なります。それでアメリカにおいても、大體F、T、C、の法律などを見ますと、金融關係のものは連邦準備局が扱つておりますし、運輸關係はI、C、C、が扱つておりまするし、そのほかの部分をF、T、Cが扱つておるということになつておるようであります。それで今お話のありました問題につきまして、たとえばいかに政府が提案して議會を通つた法律であつても、公正取引委員會において本法の趣旨から見てよくないと見て、それをやめてしまう。たとえば何らかの意味において必要があるということで、ある政府において炭鑛國營をきめた、そうして炭鑛國營法ができて、炭鑛國營でやつておる、そういうときに、本法の趣旨から見て、公正取引委員會が、工合が惡いから、商工大臣をして炭鑛國營を差止めしめる、こういつたふうな立法體制というものは、私は行き過ぎであると考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=48
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049・岡部得三
○岡部委員長 それでは一時半まで休憩いたします。
午後零時二十一分休憩
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午後一時四十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=49
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050・岡部得三
○岡部委員長 午前中に引き續き質疑を繼續いたします。石崎千松君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=50
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051・石崎千松
○石崎委員 實は大臣がいらつしやつたら承ろうと思うことが一つあるのです。それは今橋本政府委員がおつしやつたやうに、頭を刈るのが日本全國的にならないというような理由なのでありまするが、實を言うと、大臣が私に答辯したのは、日本全體的でない、全國的な獨占にあらざれば本法を適用しない、こういつたわけです。そうすると橋本政府委員のおつしやるのはそうじやない。一セクシヨンにおいてやつてもいいということになると、これは明らかに大臣の答辯と食い違いを生ずるわけです。そうすると私は少くとも橋本事務官の答えの方が正しいと思うのです。なぜかというと、この法律の第一條の中に、これこれのことをしてはいけない、なぜかと言えば國民經濟の健全な發達を阻害する、もう一つ説明するならば、この國民經濟の發達を阻害するところのこれこれの仕事に對しては、この私的獨占禁止法を適用するぞということが説明してあるわけであります。從つて全國的ということはこの中には一つもない。長官の返事というものは私は間違つておると思う。かように思うが、橋本さんあなたはどういうようなお考えですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=51
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052・橋本龍伍
○橋本政府委員 大臣の言われたのも、お言葉が足りなかつただけだと思いますが、それははつきり地方的に獨占の成り立つ場合には、地方的に獨占を問題にいたしまするし、それからまた全國、それからそれに對する一地方という關係でなくて、一つのなんと言うか、取引先の種類、それによつても獨立が成り立つ、こういう考え方でおります。たとえば小間物なら小間物で、小間物の實體はどうかわかりませんが、かりに年寄り向きの小間物と、若向きの小間物と非常に質が違つておるという場合に、若向きの小間物だけで獨立が成り立つ。文房具にしましてもこれは明らかに國民學校用の文房具、それから一般的な官廳會社の事務用品とは違いますが、そういうような得意先の違いによつても獨占は成り立つと思います。こういう考え方でおります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=52
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053・石崎千松
○石崎委員 秀才の橋本君の説明とはどうも思えぬような見當違いのものであつたようでありまするが、それはいずれにしても、主觀的に私がいずれをとるかということになります。大臣の説明をとるか、それから橋本さんの説明をとるかということになりますのは、それはもつぱら私の主觀に屬する問題でありまするから、さようなことはおいておきまして、次にお尋ねしたいことは、今日政府というものがあらゆる獨占事業をやつております。たくさんなことをやつております。電信から電話から、あらゆるものが統制機關だと言つたようなものがある。獨占事業がある。ところがその政府の獨占事業というものの範圍が擴大されればされるほど、われわれフリーな立場におるところの人民の活動範圍が狹められる。だんだん狹くされていく。そうするとせつかくこの第一章の一番しりに國民經濟の發達ということがうたつてある、このことに合わぬようになる。つまりそうすると國民經濟の民主的で健全な發達を促進するということになると、日本的に國民經濟が發達するのか、それとも政府がとつた殘りのほんの狹い部分だけでわれわれがいかなくちやならぬというのか。ここのところははなはだむつかしい問題になつて、この法律の言うところのものは、政府をのけた以外のものということであろうと思われる。少くとも國民經濟というものを健全に發達促進せしめようとするなら、政府の行う統制あるいは獨占という事業形體がだんだん縮小されなくちやならない。かように考えます。今日の日本の状態に照らしてみると、政府が獨占事業を行うということに一應もつともな點がありまするが、この政府の行おうとする獨占事業と、今あなた方がおやりなさろうというこの獨占禁止法案との接觸面と、それから政府の獨占事業に對する、今後はこうしてほしいといつたようなあなた方の方の立場に立つところの希望を一應承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=53
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054・橋本龍伍
○橋本政府委員 お答えいたします。これは私からお答えするのは非常に僭越であると思いますが、純粹に法律的な意味において考えたことだけを申し上げます。本法は御説の通り私的獨占を問題にいたしますので、國營の獨占事業は除外をいたしております。しかしながらこれは國民經濟全體を律する建前として、こういういき方が一番國民經濟を民主的で健全な發達を促進する上でよろしいという基本原則を立てているわけでありますから、從つて國營、公營の獨占事業につきましても、今までの分についても、今後本法を審議いたしましてなお反省をいたすべきでありますし、それからまた今後新たに國營が考えられる場合においても、本法の精神との調和というものは、十分に考えなければならないということを考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=54
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055・石崎千松
○石崎委員 私が伺いたいことは、調和ということになりますと、あるものを調和させるだけで發達という面が乏しいのであります。調和だけでは、そこのところに角がないというだけであります。だから今後この國民經濟というものを健全に發達させ、そして民主的に促進させようとすれば、一つの積極案、積極的な方法というものが要るわけなんです。私がお尋ねしようとするところのものは、安本が政府に對して今後いかなる積極的な方法をこの目的を達するためにとるか。この法の目的を達成するためにいかなる方法をとるかということが實は問題なんです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=55
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056・橋本龍伍
○橋本政府委員 これはちようど長官がおみえになりましたし、私からお答えをするのはあまりに僭越で、かつ意味もないと思いますから、長官にお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=56
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057・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 大變遲くなりまして失禮申し上げました。ただいま御質問のありました要點につきまして擔當の者から聽きましたが、それにつきましてお答えを申し上げます。國營公營の獨占の行われております趣旨は、元來が公共の利益のために必要がある、こういうことでできておると思うのであります。このトラスト禁止法の方は公共の利益に害があるというものを禁止しよう、こういうことになつておりますので建前が相當違つておると私は考えております。しかしトラスト禁止の精神はどこまでも公共の利益を擁護するという趣旨でありますので、その精神はどういう場合におきましてもむろん生かしていくべきものだろうと考えております。將來國營等の事業の點がどうなつていくかというような御質問もあつたと承知いたしますが、これは私の考えでは、具體的に個々の問題にぶつつかりまして、國營をぜひ必要とするものができてまいりますれば、やはりそれは取上げていくべきである。そういう考えで進んでいきたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=57
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058・石崎千松
○石崎委員 もう一つそれに關連してお尋ねいたします。既に獨占事業というものはたくさんあります。そうすると今後はこれらの獨占事業はこの法律ができた結果どうなるであろうかということであります。もつと具體的に言いますると、東京に都電というものがあります。都電は明らかに獨占事業であります。また私どもの郷里におきまするところの小倉におきましては、西日本という鐵道會社が電車を運轉し、バスを運轉して、他の競爭者の侵入する餘地のないようにしております。從つてこれらのものに對してはどういうお考えをなさるか。これらのものはこの法律から言うと違反である、やめてしまえとおつしやるのか、今後繼續してもいいと言うのか、それによつて私の質問は第二段目のものが起るわけであります。ひとつお答えを願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=58
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059・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 ただいま例におあげになりましたのは鐵道事業であります。これらのものは御承知のように公共事業というような名前さえつけられておりまして、獨占的な經營を國家なり公共機關がやるのが公共のために利益になると一般的に認められておる事業であります。それでもむろん私營で惡いということはありませんから、私營のものもありますが、現在はいろいろのそういう公共的事業につきましては、鐵道事業、電氣事業、瓦斯事業、それぞれの事業法ができて實行されております。それが公共の利益になるものと考えて實行されていると私は考えております。ただ將來におきまして、現在國家なり公共團體が、經營しておりますそれらの獨占的事業につきましても、事情の變化、いろいろの事實によりまして、これを變更した方が公共の利益に合するというような場合が起らぬとは限りません。そういう場合には、具體的にその場合に應じてこれを實施すべきである。そう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=59
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060・石崎千松
○石崎委員 起ると考えておるそうでありまするが、自然發生によつて起るのか、起らせるのか。一つのポリシーというものは自然發生をまつまでもなく行われなくちやならないと考えるのであります。自然發生が出てきて、それから行うのではこれはきわめて遲い。それぢやいかぬと考えるのであります。そこで、なるほど公共事業というものは、あるいはパブリツク・ユーチリテイという言葉を使うならばパブリツク・ユーチリテイというものは、國民に利益があるからということによつて政府が許しておることは、それはもとよりであります。そうしますと、國民の利益になるということを考えますと、たとえて言うなら、東京で申しますならば、私が都電にことごとく竝行してもう一本バス・ラインをつくりたい。都電というものは夕方になると乘れない、朝乘れない。トランスポーテーシヨンというものがうまく行つておらぬ。從つて私がここのところに目をつけて、もう一本これに竝行したところのバス・ラインをつくつたら必ず儲かるという見地から、都電と競爭すべく線を一本敷くということになれば、國民というものは便利という上において二倍の利益を受けることになる。さらにまた運賃の點において、私が都電と競爭することによつて運賃というものが下つてくるということになれば、お金がより多くに使えるということになります。國民の利益というものはさらに増す。また三本の競爭線ができると國民の利益というものはこれまた三倍になると、かように考えられる。だから國民の利益という言葉のみを使つてここのところで解釋しますと、今言つたようなことに歸著しようかと思いまするが、大臣はこれに對するところの、將來をどうしようというお考えでございましようか。そうならなくちやならぬと私は思う。たとえば、ちつと話がまた長くなりますけれども、私どものくににおきまするところの軌道というものは、あすこは西日本鐵道と言つておりまするが、それがバス・ラインで何でも獨占しておる。競爭の餘地のないようにしておるということによつてはなはだしく困る。しかも場合によると、バスを運轉するところの權利をもつておりながら、實際においては、バスが壞れたとか、燃料がないとか言つてやらない。他のものに許してくれるならば他のものがたちまちやるといつたような所も今日の許可制というものが禍いしておる。その許可制というものが今日國民の健全なるところの、民主的な經濟發達というものを阻害しておる。こういつたことになりまするが、この法律の發布と同時に、安本ではいかなる方針でお進みなさるかということが承りたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=60
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061・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 お答えいたします。ただいま御質問のような鐵道事業等のようなものは、ただ公共の利益にそれが合致するという理由ばかりでなく、事業の性質から申しまして、どうしても獨占化される性質があるのであります。國家がこれを經營するにいたしましてはもちろんでありますが、會社が經營いたしまするにしても、あまり競爭線がたくさんできてやるというようなことは、經營上許されない性質の事業でありますし、またそれが國家の資本を合理的に運用する上から言いましても、不適當な性質の事業であると私は考えておりますので、鐵道事業等につきましては、將來もやはり現在と同じような方針で進んでいくべきではないかと、こう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=61
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062・石崎千松
○石崎委員 大體お心持だけはわかりますが、もう一つお尋ねしたいことがあります。それは小さい問題でありまするけれども、たとえばかようなものがあります。國民經濟の發達とかあるいは國民の利益とかいうことから言いますると、たくさんのものが發明されて文化が高くなるということは望ましいことであります。そうなくちやならないのでありまするが、私が知つておるところでかようなことがありました。自動車のカーブレーターというものがあります。そのカーブレーターをある男が發明いたしまして、そのカーブレーターをつけますると、一ガロンについて今まで走つたよりも三倍もよけい自動車が走るのであります。ところが前の古いカーブレーターをもつておる會社が、その新しく立派なカーブレーターをもつておる會社を買收してしまつて、そうしてそのカーブーレターを使わずにしまつてしまう。何で使わずにしまつたかというと、ガソリンが多く消費されるということは、ガソリンが多く賣れるということの原因になるからであります。だからさようなガソリンに經濟的な機械を發明されたらガソリン屋が困るということによつて、それがどこかに隱れてしまつた。デイスアビヤーしたのでありますが、そのような事實が日本にもたくさんあると思います。パテントであります。特許であります。その特許がある場合、自分のものを有利にするために他の特許のものがあるとそれを買收してしまつて、それを横に捨ててしまつて、世の中に出てこないといつたような事實が起るのであります。この場合にこの法律から言つてひつかかるところがあるのでございますか、ないのでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=62
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063・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 ただいまのお話のような例は確かにほかにもあります。アメリカにもたくさんあるように聞いております。そういう弊害の起きることを防ぐのがこの法律の精神であろうと思います。むろん程度の問題で、はつきりしない場合は、どうかという場合もありますが、はつきりそういう點で弊害が起きるということであれば、この法律にかかるだろうと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=63
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064・石崎千松
○石崎委員 わかりました。これがもう私の最後であります。たくさんありますけれどもここを最後にいたしましたが、この第八ページの第三章のところにこう書いてあります。「第三章不當な事業能力の較差」ということが書いてある。だからこの第三章の精神というものは較差をなくする、平均させるということが目的であろうかと考えられまするが、その第八條に「不當な事業能力の較差があるときは、公正取引委員會は、第八章第二節に規定する手續に從い、事業者に對し、營業施設讓渡そのの他その較差を排除するために必要な措置を命ずることができる。」こう書いてあります。そうすると、ここに一つの大きな會社があつたといたします。たとえば八幡にあります日鐵の製鐵所のような大きなものがありまして、戸畑という隣りの町にまた小さい製鐵所がかりにあつたと假定いたしまして、この戸畑の製鐵所は常に八幡の製鐵から押し倒されるのであります。大きいがゆえに押し倒される。從つてさような場合にはその較差をなくするという意味において、八幡製鐵所はその一部か半分か大部分かの營業施設の讓渡、その他その較差を排除するため必要なところの措置をやらなければならぬということになると、大きい方が細かい方に讓り渡しをしなければならぬということになりまするが、これは具體的に申しますといかなる場合を指すのでございましようか。御説明を願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=64
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065・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 不當な事業能力の較差、この點は實は意味の不明瞭な點がないわけではないと思います。しかしこれは實は合理的な根據がなく、つまり經營方面の非常なすぐれた點があつて大きくなつている事業というのでなくて、單に資本關係などで非常に規模が大きくなつているので、内容的にすぐれた點があるというわけではない。そういう場合を指しているのであります。それで具體的に八幡のような場合でありますと、技術的に非常に優秀な點がありまして、それで規模が大きくなつているというふうに考えられますので、この不當な事業能力の較差という場合にはあてはまらないだろうと思つております。そうして各能力の違いを全然なくすべきである、こういう趣旨では決してありませんで、技術上あるいは經營上等の非常に優秀なるがゆえに大きくなつているというような事實でありますれば、必ずしも大きいがゆえにこれを小さくしなければならぬということにはならないのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=65
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066・石崎千松
○石崎委員 そこのところになると、私はつきり今の答辯で滿足しかねるのですが、どうもこの第八條の條文に私自身がとらわれ過ぎているかも知れませんが、そうしますと、今大臣の説明のようにしますと、この第八條のところにもつていつて、もう少し具體的な説明を加える必要が起りはしませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=66
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067・橋本龍伍
○橋本政府委員 お答えいたします。これは昨日も實は詳しく御説明を申し上げましたが、不當な事業能力の較差と申しますのは、第二條の第五項に定義がしてあるわけであります。それでこの第二章、第三章あたりはずつと措置を含めた規定をいたしているわけであります。第二條の第三項が私的獨占、第四項が不當な取引制限の説明でありまして、第五項に不當な事業能力の較差が説明してあるわけであります。なお補足的に若干申し上げておきますが、ここに書いてございますように、第一章總則の第二條にずつと定義が上つているわけです。それの五項目、三ページの後ろから二行目から始まつているのです。この法律において不當な事業能力の較差とはこういうことだ。この不當な事業能力の較差とは、ただ事業者と競爭者の事業能力の間に著しい差があるというだけでなくて、その差があつて、その大きな方の能力が技術的理由によつて正當とされるものであるならいくら大きくてもいいし、むしろそれが望ましいわけであります。それで技術的理由によつて正當とされると申しますのは、二つ理由がありまして、一つは技術の優秀なるがゆえに自然に大きくなつていつたこと、これはむしろ本法の目的にかなつて優秀なものが競爭の結果大きくなつたというわけであります。第二點は技術的に見て合理的な經營をやる上にそれくらいのユニツトが當然必要であるという場合が、技術的理由によつて正當とされる第二の場合であります。こういうふうな理由がありますれば、いかに較差があつて大きくてもよろしいわけであります。もしそういう理由がなくして、しかもその較差が左の一號、二號、三號に掲げる程度に具體的に私的獨占を行う危險性がある場合にいけない。こういうわけでありまして、この一號が一番主でありますが要するにほかの事業者が新たに事業を起そうと思つても、とてもできないという程度に、壓倒的にその事業者が當該事業分野で強い力を示す、あるいはまたその事業に使う原材料を新規に事業を起して融通しようと思つても、割り込みがとうていできないという程度に大きくて、しかも技術的理由が何もない、こういう場合におきましては、初めてこの第八條の措置をとることがあるというわけでありまして、實際問題としましては、これの適用のある場合というのはほとんど考えられない。少くとも本法のようなものが出る場合においては、ちよつと考えられないではないかと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=67
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068・石崎千松
○石崎委員 ありがとうございました。まだいろいろ尋ねたいことがありますが、他日に讓りまして、本日の質問はこれをもつておしまいにいたします。ながながと濟みませんでした。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=68
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069・松本七郎
○松本(七)委員 議事進行について動議を提出いたします。われわれの方もまだ質すべきことが非常にたくさんあるのでございますが、それだけに重複するような箇所もあるかと思いますので、一度休憩されまして懇談會を開き、議事の促進について懇談されんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=69
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070・岡部得三
○岡部委員長 松本君の動議はいかが計らいましようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=70
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071・岡部得三
○岡部委員長 それでは松本君の動議のごとく取計らいまして、一時休憩いたしまして、懇談會に移ります。
午後二時二十二分休憩
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午後二時三十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=71
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072・岡部得三
○岡部委員長 休憩前に引續き質疑を繼續いたします。稻村順三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=72
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073・稻村順三
○稻村委員 時間の關係上、審議を進める上におきまして、きわめて簡單に基本的な法の精神と、二、三の事務的なものに質問を止めていきたいと思つております。まず第一に安本長官に御質問したいのでありますが、競爭と獨占の關係であります。公正なるところの自由競爭が行われると申しましても、この自由競爭が發展すれば、次第に獨占のところにいくという點は、橋本政府委員の説明におきましても、正常なる獨占ということ、正常なる競爭によつて獨占形態ができていくということは、これは大いに奬勵さへするところだ。こう申しております。しかしながら資本主義經濟においては、一定の獨占形態ができ上れば、その出發點はいかに公正かつ自由なる競爭であつたにいたしましても、かならずそこに一個の獨占の弊害というものは起らざるを得ない。これは資本主義の一つの法則だと私は思つております。そうしますと、私たちの考えから申しますと、この獨占と、それからアメリカにおいては資本の規模が非常に大きい。日本に比べれば獨占の形は非常に違つておるというような話もありますが、しかしアメリカでは、資本の規模がいかに大きくとも、アメリカにはそれに相應したところの廣い市場があり、それに相應したところの大きな資源があります。國際市場におきましても、アメリカは實に厖大なものをもつております。こういう關係から申しますと、相當大きな資本ができましても、なおそこにはそれと競爭し得る資本というものはやはり存在している。しかしわが國のように資源が非常に貧弱である。しかも敗戰後におきましては、それがますますはげしくなつてきた、また販路もきわめて狹い。こういうところになりますと、資本がやや大きくなりますと直ちに獨占の段階にはいる。先ほど石崎委員からも話がありましたように、日本では何でもかでも獨占の傾向があるというのは、必ずしも日本の資本家がアメリカの資本家に比して非常に貪慾だとか、あるいは國政に當つているところの官吏が、非常に獨占がすきだとかいうような弊害からくるものではなくして、實に根本的には、日本の資本主義そのものを基礎づけておる條件が、少し大きくなると、獨占的にならざるを得ない。こういうふうに私は解釋しているものでありますが、公正かつ自由な競爭というようなものが、日本のような資源及び販路の條件におきましては、直ちにまた獨占形態を呼び起し、獨占の弊害を繰返す。そうしてまたこの禁止法がそれを抑えるからいい。こういうことになりますと、資本主義社會におきましては、すなわち資本の大きさが生産の力を決定するということになつてまいると思うのであります。そうしますと、もし資本主義制度をそのまま是認して、日本のような條件のもとに禁止法を實施するということになりますと、この禁止法自體は實に生産力を確大しないということを前提とすると考えられるのでありますが、その邊に對する安本長官の御所見を伺いたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=73
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074・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 日本の資本主義制度のもとで、獨占がどうしてもますます多くなり易い。資本主義の發達のためにそれがどうしてもたどるべき過程であり、これをこのバロメーターによつて、獨占的傾向を抑止し、防いでゆくということになると、日本の資本主義制度のもとにおける經濟發展が非常に阻害されるのだ。こういう點はどうであろう。こういう御質問じやないかと思います。たしかにそういう點がないとは申されぬことであります。
〔委員長退席、木村委員長代理着席〕
しかしながら私の考えでは、資本主義の制度のもとで獨占化が進行いたしまして、それが弊害を著しく現わすということになりますことは、やはり日本の經濟を決して發展せしむることにならないで、日本の經濟力をそれによつてうんと伸ばすということにならない結果にやはりなるのではないかと思います。つまり獨占等によりまして、私利のために經營をするということになりますれば、國家全體として見ますれば、經濟力發展という點からいえば、非常に不合理の點が出てまいります。やはりそれでもそういう傾向が顯著になつて來て、しかも御指摘のようになれば、國家のためにも國民のためにもそれが非常に有益であるということにはならないのではないかと思います。從いまして資本主義を前提として自由競爭をやつてゆく。こういう制度のもとにこういう前提で公共の利益を害さないように、また國民經濟の發展を合理的にやつてゆくためには、やはりこういうトラスト禁止法というやうな性質のものは、ぜひ必要ではないかと私考えてをります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=74
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075・稻村順三
○稻村委員 先ほどから繰返すようでありますけれども、日本において、たとえばここに一つの例があります。鐵鋼業の問題にいたしますと、鐵鋼業の生産を非常に増大させようという問題であります。ここに日鐵なら日鐵というものが、ああいうふうな獨占形態のものを解散いたしまして、製鐵業が十ぐらいできたといたしますと、日本の内部における鑛山というものは、實にしれたものであります。その鑛山は直ちにどうかというと、その中の一つか二つのものがその鑛山を經營する。あとの製鐵業はほとんど日本においては鑛石が手に入らない。こういう状態になつてまいります。さらにある程度鐵鑛石の輸入を一部なして、そして製鐵に從事するといたしましても、さて鐵の需要に關して申しますと、今日のような状態でありますと、なるほど鐵は相當の生産があつても、その需要にはとても應じきれないような情勢でありましようけれども、一應鐵鋼なら鐵鋼というものの生産が、その需要以上に殖えたときには、その販路というものはきわめて狹いために、十なら十のものがこの禁止法によつて全部潰れるというような結果になりはしないか。私はそういうふうに思う。またその需要もそれでは一定の限度があるかと申しますと、そうではなくて、やはり商品生産である限りにおきましては、國民生活の水準あるいはまた諸産業のいろいろな技術の程度というようなものによつて、その需要が變化するのでありますけれども、その變化に直ちに應じて、たとえば利潤その他というような資本主義の法則というものの一定のうち外にこういうものを置いて、そして生産を續行していくためには、場合によつては製鐵業なら製鐵業というようなものが計畫的に一つのものにまとまつた方がいい。しかしもしこれが一つにまとまつて私的獨占という形をとらせておけば、もちろんこういうものは生産力がそのまま萎縮しましてつぶれてしまう。私たちはかように考えるのであります。そうしますとこの發展というものをさせ、しかもこういうふうな自由な競爭から出發して獨占が進んでいくということであるならば、少くとも重要産業というようなものは、この單なる私的獨占を禁止させるということになれば、資本主義經濟制度を前提とした生産制度は持續できなくなるというふうに私一人考えるのでありますが、その方面に關する長官の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=75
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076・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 日鐵のような製鐵事業についてのお話でありましたが、事業の規模につきましてはやはりその事業の性質、種類によりまして、相當大きな單位でなければ合理的な經營のできないものがたくさんありまして、製鐵などもその一つではないかと思います。從いまして日鐵のような大きなものが合理的な生産をやり、能率をあげていく上から言えば、ぜひ必要な點が認められると思います。從いましてただ大きいといつてこれを解體するということでありませんで、そういう合理的根據があつて大きくなつており、しかもその大きい力を利用しまして獨占的な權力を振つて他の競爭者をあくまで壓迫する、あるいは私利のために公益を害していくというようなことがなければ、それでいいんだろうと思つております。必ずしもこれを分解しなければならぬというわけではないじやないかと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=76
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077・稻村順三
○稻村委員 ちよつと長官は私の質問の意味がはつきりしなかつたと思いますが、これは例でありますが、たとえば日鐵のような、自然公正かつ自由な競爭のもとにそういう段階にまで到達したものがあつたといたしました場合に、その際にどうかというと、資本主義制度のもとにおいてはいわゆる獨占の弊害というか、獨占的ないろいろな條件が起きてくるのである、そういうふうになりますと競爭相手はいなくなります。競爭相手というか、自然に競爭しようとして、小さな製鐵業なら製鐵業が新たに擡頭するという餘地は、ほとんど暴力的にやらなくてもできないことは明らかであります。そのために一般消費者はどうかというと、そこに獨占價格ができて、たとえば原價計算の問題などにおきましては、一番實務に當つているところの日鐵なら日鐵の原價計算というものが土臺になつて價格がきめられる。その場合にはこういうふうな原價計算のしかたによつて、獨占的な計算、獨占者としての立場からの計算が行われる。こういうことになりますと消費者がきわめて困難な立場に置かれてくる。これはたとえば公正取引委員會その他においての委員會においてやるとは申しますけれども、しかしながら專門的な知識というものは結局そういう公正取引委員會できめるというよりも、やはり獨占體が一番たくさんの規模で專門家をもつておるために、そういうところから産業獨占價格というものが發生してくる。こういうふうに思わざるを得ませんし、さらに私は各産業に對するところのいわゆる供給の面、鐵鋼材の配給の面、あるいはその他取引の面において、いろいろの取引技術の上において、やはり獨占者たるの地位を利用するという事情も發生してくるのではないか。なぜかというならば、資本主義社會においては一應利潤というものがなくては生産が不可能なのでありますから、これを目標とする生産たる限り、こういうことが必然に起つてくると私は思うのでありますが、この點について御答辯を煩わしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=77
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078・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 非常に大きな事業ができた場合に、たとえその根據が合理的な技術的理由等によつてできておるという場合におきましても、非常に大きなものになると自然獨占力を振つて、獨占利益を上げるために努力して、公共の利益に反するようなことになるかもしれぬ。こういうお話でありますが、そういう心配はたしかにないことはないと思います。もしそういう獨占價格についての横暴な勝手なことをやる。それがために公共の利益を害するという場合があれば、どこまでもこれはこの法律で取締つていく。そう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=78
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079・稻村順三
○稻村委員 私が先ほどから問題にしておるのは、單なる心配ではなくて、これは經濟制度そのものがもたらす必然だというふうに考えております。そこでそういうものに對してはその必然の途、そういうものが必然にくるというのをとことんのところまで、到達するまで放つておくというのではなくて、こういうものに對して、あらかじめ國が獨占的なものになるようなものであるならば、自由競爭にもどしても結局同じであるからして、そういうものに關しては、自由競爭に改めて、もどつて、それから出發するというよりも、今の状態に計畫的にこれを民主的の方法において、そのいわゆる獨占禁止法によつて解體するというような方策をとらない方がよいと思うのでありますが、その點に關する安本長官の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=79
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080・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 將來の問題といたしまして現在私的の獨占になつておるもので、國家的な獨占になるというものがあるかもしれない。そういうものについてこの法律を適用して、解體しないでまず直接そういうふうにした方がよいのではないか、こういうお考えと思いますが、そういう性質のものがあるとすれば、むろんその方がよいと思つております。ただしかし一應そういうものが一方においてはあるということを考えながらも、その他の方面の仕事についてはやはりこういう法令をつくつて、獨占的な弊害というものを防止するということは、やはりあくまでも必要ではないかと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=80
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081・稻村順三
○稻村委員 私は先ほどから何度も繰返すように、この競爭の結果というものは結局落ちつくところへ落ちつくものだという建前から見ましても、今からそういうようにこの法律に明らかに牴觸するようなものを殘しておくよりも、むしろこういう法律に牴觸しないところの方向に、早くいくように計畫的に政府がやるべきことが至當であると、かように考えておりますけれども、時間の關係上この點について問答をしていることはやめまして、なお私は次に移つてみたいと思つておるのであります。
まず第一に、私的獨占と、こういうふうに言つております。しかしこの私的獨占と言つたところで、私は實を言うと、公共的事業の性質というものと、それから今度は私的性質と言いますか、そういうふうな事業との間の區別が、今日のように國民經濟が發達してくれば發達してくるほど、區畫線がなくなつて、すなわち區別が困難になつてきつつあるのではないかと考えられるのであります。從いまして私は私的獨占とこう申しましても、どういうものをもつて私的獨占とするか、どういうものをもつて公共的な獨占とするか。たとえて申しますれば、國が直接經營しているものは、これは明らかに公共的な事業でありますけれども、しかしながらその他のものは、それでは全部私的獨占と言えるかといえば、その中には、たとえば村が經營しているとか、あるいは部落が經營しているとかいうように、下つては小さなものもありましようし、またある場合においては、いろいろな公共團體が經營している事業なども、これは公的な企業であるか、私的企業であるかわからぬのであります。その點について、いわゆる私的獨占というものの意義を、ひとつはつきりと示す必要はないかと思うのでありますが、その點に關する御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=81
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082・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 お答えいたします。私的獨占の意味でありますが、これは事業の性質からして、そういうものが私的獨占になるとは必ずしも言えないのじやないかと思います。やはり地方の事情等によりまして、村なり町なりがいろいろの事業をやる。それが村や町でやる場合には決して私的な目的をもつてやるわけではございません。公的な目的をもつてやるのでありますから、これは當然私的な獨占にははいらないと思います。ただしかし同じ仕事でありましても、個人が企業としてやるという場合には、公共の利益ということもむろん無視するわけではないでありましようが、第一の目的は、その個人が考えている企業の目的なのでありまして、その場合には私的にどうしてもなる。いわゆるパブリツク・ユーテイリテイーのようなものでありますと、大體仕事の性質からいつて、公的なものになるべき性質のものだと思いますが、その他の仕事につきましては、御説のようにはつきりとわけにくいようなものもないことはない。たとえば金融のようなものでありますと、かなり公共的な性質が強いのであります。しかし現在においては、あれはまだパブリツク・ユーテイリテイーのような性質のものとは一般には考えられておらぬ。しかし町でもつて公益質屋をやるとか、そういうこともありますから、そういう場合にはその仕事は決して私的なものではありませんので、それが獨占的な仕事でありましても、私的獨占とは言えない、そういうふうに私は思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=82
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083・稻村順三
○稻村委員 目的が違うということによつて、同じ企業でも非常に異なるということになりますと、地方に行きますと、こういうことがあります。たとえば地方財政をゆたかにするために、一つの事業をやつております。その目的は地方財政をゆたかにするということについては公的であります。しかしながら、その事業そのものを見ますと、やはり他のものと同じように、それが材木業や、製材業であつたり、あるいはまた單なる取引業であつたりする。しかしそのことが、實を言うと製材の中からあがる利潤が地方の財政を潤澤にするということを目的にしている。こういうような場合が、市町村へ行くと非常に多いと思う。それが非常に大きくなつた場合には、これはやはり私的獨占となすべきか、公的な事業としてこの禁止法から除外されるかということは、技術的に非常にむずかしい。こういうふうに考えられますが、その點に對する長官の御所見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=83
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084・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 お答えいたします。明瞭に法令に則りまして、公共團體が公共團體の事業としてこれを經營するということになつておるものでありますれば、これは公營の事業でありまして、私企業の中にはいりませんから、この私的獨占という範圍にもむろんはいらない。しかし聽いてみますと、實際に村や町でやつている仕事の中には、そういうほんとうの法令に則つた公の性質のものとして、はつきりした性質の仕事以外にやつているものがあるらしいのです。木材業というようなものでありますか、そういうようなものははやはり公的なものとはどうしてもはつきり認めるわけにはまいりませんから、私的な事業と考えるよりほかないのではないかというふうに思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=84
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085・稻村順三
○稻村委員 それから今度は獨占の範圍の問題でありますが、この點も隨分皆さんから質問が出たと思いますので、こまかいことは聽きませんけれども、たとえて申しますれば、戰時中において新聞紙などが、大體日刊新聞は一縣一紙というような形になつておりますし、銀行もまた大體一縣一行主義というような形をとつているのであります。これらは明らかに一個の獨占だと私は考えておりますが、これに關して御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=85
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086・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 お答えいたします。お話の通り今のような合併主義というようなものが流行いたしまして、各方面の事業とも非常に合併が奬勵されて、一縣で一つ、二つというふうになつたものが多いと思つております。確かに形の上におきまして、それは獨占的な形態にされているわけであります。しかしこれは一方におきましてやはり國の政策として大藏省がそういう金融政策をもつて實行しておりまして、大藏省の許可を得て初めて銀行が新しくできるとか、何とかいうことになつておるのでありますから、そちらの金融政策の方の面からくることでありまして、自然やはり國の法律でそれがきまつておりますので、實質的にはたしかに獨占の形にはなりますが、その場合の私的獨占という範圍に入れるわけにはゆかないと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=86
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087・稻村順三
○稻村委員 新聞の場合はどうです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=87
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088・橋本龍伍
○橋本政府委員 銀行の場合は銀行法で明瞭に、銀行は大藏大臣の認可を得てこれを設立しなければならぬ。合併なんかの問題でも、結局大藏大臣が大體管掌しまして、新規の銀行法による認可でできます。從つて大藏大臣が外の銀行に認可をしなかつたという結果として、もと認可を受けていたものが本法で刑罰になるというようなことはないわけであります。新聞社の關係は、私實は銀行に對する銀行法のように、新聞社の設立關係について何か根據法はあるのかないのかよく存じません。新聞紙法によりましても新聞紙は認可制度になつているのかどうかよく存じないのですが、もし新聞紙法によつて、新聞社の設立が認可制度になつているとするならば、その一つなり二つなりの新聞社にしか認可をしなかつたということは、主務大臣が認可をしなかつたというだけのことでありまして、たまたま認可を受けたものがそのために本法で叱られるということはないわけなのであります。
〔木村委員長代理退席、委員長着席〕
認可制度も何もなくて、實力を揮つて、何か資本的實力かなんかで、ほかのものが出られないようにしているという場合には本法の對象になると思いまして、戰時中の新聞統合の問題なんかはちよつとまた問題は違うのじやないかと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=88
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089・稻村順三
○稻村委員 そうしますと、認可制度のあるものは主務大臣がいかに本法の精神に反對する行動をとつて認可しなかつたとしても、やはりこの法律に觸れない。こういうふうに結論してもよろしうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=89
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090・橋本龍伍
○橋本政府委員 お答えいたします。法制的な建前といたしましてはその通りでございます。實はこの第六章の適用除外というのがございますが、第二十二條に「この法律の規定は、特定の事業について特別の法律がある場合において、事業者が、その法律又はその法律に基く命令によつて行う正當の行爲には、これを適用しない。前項の特別の法律は別に法律を以てこれを指定する。」と申しましたのは、ただいま問題になつておりますようなことがありますので、實は各個の事業法につきまして、これを本法の適用除外にするか、あるいはまたその場合に事業法の方をなんらか手を入れてゆくかということを、なお關係方面とも交渉しつつ考えている次第であります。それでその特別の事業法の規定が正當のものであるというふうにして考えますならば、それはそれぞれの見地で、たとえばむやみに銀行を濫立しない方が公共の利益に合致するという建前でできておりますので、その結果獨占的状態が起りましても、本法においてこれを公共の利益に反すると認めません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=90
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091・稻村順三
○稻村委員 そうすれば、別に本法をせつかく制定いたしましても、主務大臣の意向いかんによつては本法の精神を認可制度のある限りにおきましては、平氣で踏みにじるという一箇の矛盾ができてまいるのでありますが、こういうことは實はいうと、安定本部でいかにこういうような法律によつて、今日の經濟のいろいろな點についての再建をはかろうといたしましても、ほとんど不可能なような状態が生ずるのではないかというふうに考えるのであります。從いまして認可制度があるところのいろいろな事業法というようなものに關して、われわれももちろんこういうふうな法律が出た以上は、それに協力するのが至當でありますけれども、安定本部の長官といたしましても、こういうふうなものが牴觸するようなことがあつた場合には、これを改正するところの御意向をもつておるか。また牴觸しなくても牴觸するおそれありと思うものは、これを改正するという方向に向つていく御意思がありや否やということの、御返答を伺いたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=91
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092・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 今御心配になりましたような點はたしかにないことはないと思うのであります。從いまして現在殘つておる事業法というものは、極く種類も少いのでありますが、それの運用、將來認可許可を要するというようなものができる場合もあるかもしれませんが、それらにつきましてはもとより安定本部としては、この法律の精神に基きまして、牴觸することのないように、もし牴觸する點があるならばそれを訂正させるように十分努力したいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=92
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093・稻村順三
○稻村委員 もう二、三質問してみたいと思いますが、たとえば私は農業會の方面に深い關係をもつておりますので、まず第一にこれが問題になつてくると思うのでありますが、それは適用除外の中に、やはり認可制度と結びついておるのでありますが、電氣は一箇の公共事業として、それにつきまとうて水力電氣は、主として水利權の問題が問題となつてくると思うのであります。この水利權の問題でありまして、たとえて申しますならば、私今日の電氣事業の情勢をみますと、關西の方面はいざ知らず、關東方面におきましては、たとえば水量から申しますと、出電能力に對して十倍ぐらいな水をもつておる。しかして現實において電氣會社が利用しておるところの水は、その水の十分の一ぐらいしか使つていないのにもかかわらず、この獨占によりまして、農業が十分な土木工事を行うことができないという實例は、これはもう聽かなくても皆さん御存じの通りだらろと思つております。たとえば灌漑がつくりたいと申しましても、その灌漑が電氣會社の水利權と結びついておるためにできないというような問題があるのでありますが、これに關しましては、先程申しました通りただちに電氣事業法のこういう方面に關して改正をする必要があると思うのでありますが、これに對する安定本部長官の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=93
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094・高瀬莊太郎
○高瀬政府委員 水利權等につきまして、お話のような不合理な場合が實際もしあるとするならば、これはむろん適當な方法において是正される必要があるものと私は考えております。將來の問題といたしましては、水利權の設定につきまして、そういうことのできるだけないように、絶對にないようにすべきものと私もむろん考えております。それを防ぐために、それらの法律について改正すべき必要がある箇處があるというなら、私としてもむろんこの法律の精神から言いまして、その點は努力すべきであると考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=94
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095・稻村順三
○稻村委員 それはその程度にしておきまして、次にこれもやはり技術的の問題になりますけれども、專賣特許と私的獨占との關係について、お伺いしたいと思うのであります。專賣特許は發明の奬勵というような意味合を、非常に強くもつておるのであります。ところがこれはそういうふうな意味をもつておつて、發明を促進するということは非常によいことでありますが、他面發明が專賣特許によつて獨占される實情を私たち見てみますと、專賣特許の所有者がすなわち事業を始めるというような實例は、きわめて少いのでありまして、專賣特許權は賣買されている。この賣買によつてその專賣特許權を買つたいわゆる資本家がこれを獨占している。こういうふうな形で、むしろ事業を獨占しております。たとえばヴイスコース法の專賣特許が、人絹というものの獨占を非常に促進したとか、あるいはまた何々式の金庫が專賣特許であつたために、その金庫會社が金庫製造業務をほとんど獨占している。こういうふうな實例がたくさんあるのであります。この點に關しまして、いわゆる專賣特許制度と獨占との關係を、どういうふうに調節なさるつもりか、その點をひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=95
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096・橋本龍伍
○橋本政府委員 ただいまの問題は法律技術的にいろいろ問題がございますので、私から御答辯申し上げます。特許の問題はいくつかの問題があるわけでごいますが、ほんとうの特許權自體は當然一つの獨占權でありますが、この特許法に書いた特許權自體を行使することは、これは本法において獨占として問題にしないということを、適用除外の第二十三條に書きました。ただこれについては、今稻村委員からお話のありました問題がございますので、本法の審議過程におきましても、發明を奬勵するために特許權を與える必要はあるけれども、しかし特許の實施權というものは、少くとも實施權料を拂う者には必ず分讓をしなければならぬ。そういう法律的義務を課さなくてはならない。それを拒んだならば、本法で取締りをするというやり方にしようかという考えがございましたが、結論としまして、それは特許法の方で考えるということにいたしまして、本法の中には入れませんでした。この理由は、本來特許權というものは、法律でわざわざ權利を認めるからこそ、そういう權利ができるわけでありまして、特許法の方で獨り占めにしてよろしいという權利をわざわざ與えておいて、それを本法の方で違法とするというよりも、むしろ特許法の中で、特許權を與えるけれども、實施權というものは要求があつたら必ず正當の値段で、分讓しなければならぬということを規定するとすれば、それは特許法の方で規定すべきものである。こういうふうに考えて特許法の改正の問題は、あとに殘したわけであります。この點についてはまだはつきり意見をきめたわけではございませんが、商工省の方で課題として、なおいろいろな關係を考えて研究中であります。それからもう一つ特許權自身の保護の問題より、いささか逸脱いたしまして、つまり特許を惡用して獨占するということは、お話のように非常に實例があるわけであります。殊にその特許を誰にでも使わせさえすれば、非常にいろいろな仕事ができるのに、それを獨り占めにしておるために、何もできないというふうな場合においては、これは特許法の第四條だと思いますが、現在でも公益上の理由がある時には公開を命ずる。適當な措置を講ずることができるように相なつておりますので、そういう方面における活用を、もつとやつていかなければならない問題だろうと思います。いろいろな特許を組合わせまして、獨占の種にするというような方法の問題は、明らかに本法において取締りの對象と相なるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=96
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097・稻村順三
○稻村委員 最後にもう一つお伺いしたいと思います。小さな、たとえばチエーン・ストアーとかあるいはまた支店の制度、こういうものはどの程度までの範圍であれば、本法に牴觸するのか。その點をお伺いしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=97
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098・橋本龍伍
○橋本政府委員 お尋ねの趣旨をあるいは誤解しておるかと思いますが、本法におきましては、一應全面的に、あらゆる經濟活動に適用があるわけであります。從いましてこのチエーン・ストアー・システムを非常に大規模に使うというふうな場合には、獨占になる可能性ないし取引制限を起す可能性が非常に多いのでありまして、アメリカにおいてもチエーン・ストアーの法律は、反トラストの一部として重要な法規をなしておるような次第であります。
それから支店というお尋ねがありましたのは、その支店を一つの獨立の事業者とみるかというような御趣旨ではないかと思うのでありますが、國内においては全體本店、支店を合せて一つの事業者というふうに考えますし、外國法人の日本における支店というのは、それを一つの事業者というふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=98
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099・稻村順三
○稻村委員 結局支店というものがある程度認められると、これがついやはり支店として、たとえば旅館でも何でも支店。新潟縣の例のごときは、同じ新潟市に旅館の支店等が四つも五つもあるが、こういうことが起り得ないだろうかと思います。新潟縣だけでも三つや四つではきかぬというくらいもつておるものがありまして、しかも日本全國にも支店をもつておるというようなものが起つてきたり、あるいはまた、ある一定のところに、たとえば乾物商なら乾物商というものが、その市なら市の中においてこれを獨占しようということになると、大きな資本を出して、どんどんと自分の番頭なり何なりに經營させるという意味で支店をもつていけば、自然そこに獨占ができてくるということも考えられます。さらに大きな商事會社などが全國に支店をもつというのは、これは明らかに一つの獨占になると思うのでありますが、小さなところは小賣商人から、大きなところは會社に至るまで、この支店制度というものは獨占に觸れる場合もあるし、あるいは觸れない場合もあると思うのでありますから、その範圍をお伺いしたいと考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=99
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100・橋本龍伍
○橋本政府委員 本店、支店を合せて一事業體とみまして、それが獨占をするかどうかという判斷をいたすわけでありますので、具體的にどの程度で線をひくかということはわかりませんけれども、お説のように非常に大きな支店網を張つて、全體の體系を合せて獨占をやるという場合も、確かにあると思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=100
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101・稻村順三
○稻村委員 私の質疑は大體終りますけれども、最後にたつた一つ伺いたいのは、取引所の所員の問題であります、取引所の所員は、大體株なんかをしよつちゆう動かしておるのでありますが、これが一應實株を短期間所有するということもあり得るのであります。それが遂には一個の會社に對する支配權というものを、一時でももつということになりはしないか、實はこの心配はないようであつて、事實はあり得ることでもあろうと考えるのであります。これは取引所の所員である場合には、二五%というふうな簡單なパーセンテージに抑えることができないような場合すら、できてくるのではないか。こういうふうに考えられますが、これはどう思いますか、これでもつて私の質疑を終りたいと思いますから、最後の御返答をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=101
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102・橋本龍伍
○橋本政府委員 お答えをいたします。最近取引所法が改正になりましたが、私は前のしか知りませんが、おそらく改正取引所法においても、取引員というものは會社でなければならないということに相なつておるはずだと思います。從つてこれは第十一條の適用の問題でありまして、證券業を營む會社が業務として株式を取得する場合には、一會社について百分の五という制限を適用しないというのに該當することに相なると思います。これは本來としましては轉々として株式が變つていくということを考えておりますので、何かの場合に引受けて賣れないというようなときに一年を超えて所有しようとする場合には、あらかじめ公正取引委員會の認可を受けて實害がないとにらんだときしか許されないということに相なつております。短期間にせいぜい何日か、長くて何箇月という株式の所有のしかたであるならば、あまりそれによつてコンツエルンをつくるということは考えられないのではないかと思つておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=102
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103・岡部得三
○岡部委員長 それでは鈴木茂三郎君の質疑を許します。鈴木委員。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=103
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104・鈴木茂三郎
○鈴木(茂)委員 質疑して質さなければならない問題は非常にたくさんございまするが、會期の關係もあり、また私多年多少獨占について研究をいたしてまいりまして、獨占の弊害を非常によく認識いたしております。できるだけこういうような法案を施行いたしますことは、日本の獨占の弊害を防いで、獨占から中小工業を守り、または國民の生活をいくらかでもよくするために必要であると存じますので、こういう法案は相當の不滿がございまするが、會期の關係上できるだけ早く審議を終りたいと存じまする社會黨の建前から、ごく二、三だけの質問をやることに止めまして、私の質疑を終りたいと存じます。
私は前の商工大臣に、去年の八月この問題についてなぜ提案をしないのかとお尋ねをいたしましたときに、商工大臣はそういう必要を認めておらぬ、商工大臣はそういう必要はないという昨年の八月御答辯でございました。大藏大臣も引續いていろいろな機會において日本には財閥というものはないのだ。つまり獨占というものはないのだ。大資本というものもないのだ。全部中小の小さい工業ばかりだ。こういう御見解をたびたび披瀝されておりまするが、そういたしますると、この獨占の對象となる資本はどういうものを大體對象にしていくのか、それからあるいは前の商工大臣がこういう必要はないというふうに述べられたことは、何かの間違いであつて、あるいはまた大藏大臣が、今日獨占體のような大きな資本はない。こうお答えになつておるのは、大藏大臣の何かのお見込み違いであるか。これは安本長官は最近御就任になりましたので、前のことに對してはここで御質問するのは當を得ていないかと存じまするが、安本長官といたしましては、そういう點についてどういうお考えでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=104
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105・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 日本にこの私的獨占禁止の法令の適用を受けるべきような獨占的な事業體というものがあるだろうかどうかという御質問ではないかと思います。私は現在まで存在しておりましたものの中に、全然ないわけではないと思つております。ただしかし今度財閥解體等によりまして、そういう種類の事業は大部分が解體されることになります。それ以外にあるかどうか、これは十分檢討いたさなくてはいけないと思います。あればむろん何とかいたしますし、將來の問題といたしまして、やはりこういうものをつくつておくということがぜひ必要であろう。そう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=105
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106・鈴木茂三郎
○鈴木(茂)委員 私は重ねて同じ問題についてはお尋ねをしないで進みますが、大體資本主義の制度のもとにおいて、資本の集積、集中によつて獨占體ができるということは、これは資本の發展の法則であります。それに對して、獨占に對するいろいろなこういう法令によつてこれを取締るということは、非常に困難な問題である、こう本質的には考えておりまするが、ただいま稻村君との質疑應答を承つておりましても、現行法との間に非常な矛盾がたくさんございます。そういう點につきまして、この法案を施行する以上は、安本長官としては現行法に矛盾するものがあればこれは撤去して、これは取除いて、そうしてこれを斷行するという強い御決意がなければ、これは私は單なる一つの法案、よその國の例がありますように、死物となると存じますが、むしろ惡用されることもございましよう。そういう點についてもつと御決意が必要であると存じます。とりわけ獨占資本は、私どもの承知しておりまするところによると、なお強力に殘存いたしております。いまの内閣にいたしましても、世間では石橋大藏大臣もそれから厚生大臣も、財閥の巨頭であるところの池田成彬が推薦したのだ、こう解釋しております。そういう内閣の中で獨占に對するこういう取締りを、公益のための取締りを撤底させるということは、安本長官としては相當なる御決意が必要であると存じますが、そういう點についての長官の御決意を承りたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=106
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107・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 この法令をつくります以上は、もとよりこれを嚴格に適用していきたい。そうしてこれが、これからの日本の經濟の民主的な體制をつくるにつきましての、根本の一つの精神になるわけであります。これからの日本經濟の再建を安本としては考えていかなくてはなりませんので、どこまでも十分の決意をもつてこれを實行したい、そういう考えでおります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=107
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108・鈴木茂三郎
○鈴木(茂)委員 その非常な強い御決意をもつて、いわゆる公益のために、獨占に對しては安本長官としては十分に鬪うというくらいの御決意でなければ法案は死物になり、あるいはむしろ惡用される危險が多分にあると存じます。次に私はこの私的獨占に對する法案をお出しになりますると同時に、私的獨占はただいま御答辯のように財閥の解體その他で弱まつてはおりますが、一番問題はむしろ私は公的獨占にあると存じます。政府からただいまいただきました資料によりましてもいわゆる公的獨占というものはタバコ、しようのう、あるいは鹽、アルコール、鐵道、郵便、電信と、いわゆる國家資本トラストというものが日本の資本主義經濟の最も根幹を今日なしております。そうしてたとえばタバコにしても、いろいろなものは國民と何らの關係なくどんどん値上げをされていくというような、獨占の弊害をまざまざと國民の生活の上に與えておるのでありまして、私的獨占よりもむしろ公的獨占を公益のために取締るという根本方針をきめて、何らかのそれに對する法案を同時に御提案になるのが、私は當然であるとこう考えるのでありますが、今後公的獨占に對する、やはりこういうような何らかの取締りの法案を御提出になる御方針でございますか。またもう一つは、公的獨占に關しまして、私は今の國營事業というものは、官僚によつて支配されておる。官僚のいろいろな物的な勢力の基礎になつておるというこの國家資本トラストというものを、どうしても民主化する、社會化するという必要が、今日最も急務である。こう存じておるのでありますが、いわゆる國家資本に對して、これを民主化する、社會化するという御意見があるかどうかという二つの點を、公的資本についてお尋ねいたしておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=108
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109・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 お答えいたします。國家資本の獨占についてのいろいろの弊害ということも、私も考えておるところもあります。しかしこの國家獨占の問題になりますと、安本だけの法令でどうというわけにもまいりませんので、國家の法律として各方面の關係でこれを決定されなければなならぬと思つております。これを運營する場合に、國家資本の獨占弊害をなくすのに、十分民主化して、今までの官僚獨占というような弊害を除かなければならぬ。これも私御同感であります。いかにしてこれを民主的運營に直していくかという實際問題でありますが、政府としても各方面とも考えてはおると思います。しかしなかなか實際問題といたしましては、有效適切な方法が見あたらないというようなことで、十分の効果をあげ得ないでおると思つております。私は私の關係する範圍におきまして、いろいろの獨占とは申せないまでも、統制關係に關係をもつてまいりますので、その點につきましては十分に考えまして、今まで私も官僚ではありませんので、そういう弊害については十分感じておるところであります。できるだけの手段を盡しまして、今までのような弊害はできるだけ除く、こういう方針でいきたい。そう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=109
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110・鈴木茂三郎
○鈴木(茂)委員 これは公的資本のもとに搾取されております從業員の生活の問題もございますし、國民の生活も、やはり日本の國家資本獨占によつて抑えつけられておるというような事態にございますので、ぜひともこれは民主化する、社會化するということについて、一段の御努力をお願いいたしたいと存じます。
次にこの法案によりますると、いろいろな企業のほかに、商業に關しましてもこの法案のうちに含まれておるようであります。御承知のようにインフレーシヨンが惡性化してまいります段階の一番特徴は、商業資本が非常に活發に活躍するということでありますが、この商業資本、特にこの場合はやみがほとんど大部分でございまして、このやみによるところの商業資本というものが、いろいろと獨占的な行爲を今日いたしておるのが現實でございます。この法案によつていろいろな企業は、工場を基礎としてそこにいろいろ集まつてまいりまするから、それに對する取締は割合にいくらか商業資本よりは簡便でございまするが、今日のようにやみ資本が大部分であつて、それが非常な横暴をしておるというこのインフレーシヨンの發展の段階において、商業資本の獨占的な行爲をどうして取締るかという、ひとつ具體的に何か御意見がございますならば、この際承つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=110
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111・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 御承知のように、やみというものはなかなか實體をつかみにくいものでありまして、漠然とは私どももそういうやみの行爲による非常な弊害を聞き、また感じております。しからば具體的にこれをしつかりとつかんでどうしてゆくかということになりますと、なかなか容易でありません。しかしながら放つておくわけにもまいりませんので、安本といたしましてはむろんあらゆる手段を盡しまして、やみによるいろいろの惡行爲、弊害等につきましては、これを摘發し、處斷していくつもりでおります。
商業方面からくる獨占關係でありますが、これもやみの方ははつきりとした契約なんぞでやつておるというわけでもないでありましようし、そういうところからとうていつかみにくいのであります。しかし普通の企業として行われておる場合でありますと、やはり商業につきましても販賣協定であるとか、地域協定であるとか、そういうようなことで獨占的弊害に墮すということに現われてまいりますので、そういうところからこれをつかんでいくということになるのではないかと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=111
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112・鈴木茂三郎
○鈴木(茂)委員 もう一、二點で終りますが、大體獨占は國内の資本が集積してまいりまして、そうして國内の競爭がなくなつて、その代りその大きな獨占の力をもつて海外との間に國際的な競爭を行うというのが、いわゆる獨占の段階の私は特徴だとこう考えております。そのよしあしは別といたしまして、日本における獨占——これでまいりますると、ほとんど中小工業が日本の經濟の中心になるようでございます。講和會議が開かれましたその後において國際的にはいろいろな經濟上の問題も起るかと存じまするが、そういう際にこの法案をそのままに適用してまいりますると、國際的な日本の經濟力という問題について、多少の支障もあるように存じまするが、そういう點についてはどうお考えでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=112
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113・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 國際通商の場面におきまして、やはり獨占的な活動ということが一つの有力な武器になり得るということは事實でございます。しかしこの法律の建前は、そういう貿易活動につきましても、日本の立場におきましては、これを獨占的な活動は一切認めないという立場になつておりまするので、できないことになつております。これは一面から言えば、日本の貿易を非常に巨大なものになり得ると考え、そうしてそれが獨占的な力を揮い得るものになるということを考えますと、それが一面獨占の弊害があるとは言いながら、日本經濟の上から言えば、一つの有力な力にはなると思いますが、現在のところでは、日本といたしましては、たとえこれが認められ、許されたといたしましても、國際的な規模におきまして一種の獨占的活動を行い、それによつて非常な有利な結果をもたらすということは、まずできないという條件のもとにあると私は考えております。從いまして現在のところ、また近い將來の見透しにおきましては、別にこれがために非常な支障を生ずるということはなかろうと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=113
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114・鈴木茂三郎
○鈴木(茂)委員 獨占ということの一番日本の特徴でありまする財閥の問題でありまするが、これは賠償の問題と關連いたしますので、いろいろな諸般の事情を考慮いたしまして、これは差控えたいと存じます。ただそういう問題に觸れないで、一點だけ抽象的にお尋ねいたしておきたいと存じますが、どうも財閥解體に關する政府のお取扱いを見ますると、財閥温存——財閥を何とかしてできるだけ殘していく、こういうふうに私どもには受取れるのであります。私どもが財閥と申しますのはその資本を言うのでありまして、三井一家とか、あるいは三菱一家の資本の金がなくなつたとか消えたとかいうことを言うのではありません。三井のもつておつた獨占的な資本の機構を三井財閥と言つておるのでありますが、その財閥は確かに今囘の解體によりまして、從來のような活動力をもつことはできないようでありますが、どうも政府は財閥をあらゆる方法において温存しようとされておるように私どもには考えられるのであります。具體的な事實はちよつと差控えまするが、その一つといたしまして、賠償と關連して、一つの産業のうちこれだけのものを殘すということになつてまいりますると、その場合今日まで政府でおとりになつておりまするいろいろな各産業の方面を見ますると、大體において財閥の關係の産業を殘して、中小工業というものを切つて捨てるというような、つまり中小工業を賠償に當てるというようなお取扱いが多いように、私にはいろいろな點から考えられるのであります。もう一つ申しますると、銀行金融資本などにつきましても、生産だけでなく財閥關係の金融資本も、政府としてはできるだけお殘しになるように私どもには見受けられまするが、財閥といたしましては各産業に人的配置をいたしまして、この法令もしくは財閥解體のG・H・Qの命令によつて、一應解體したような形になつておりまするが、人的配置をいたしまして、それによる精神的な結合をとつておるように私どもには見受けられるのであります。そういう點に對する長官の御見解と、こういうような獨占的財閥にかかわらず、その他の大資本と中小工業の資本というものに對しまして、何らかこの法令の適用の上に御斟酌がございますかどうかという點を、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=114
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115・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 財閥解體の問題でありますが、これはあくまで日本經濟民主化という建前から、完全なる解體をいたすべきものと考えております。從いまして、そこに徹底しない部分がありますれば、われわれとしてはあくまで徹底してやつていくつもりであります。
財閥解體と關連いたしまして、賠償物資の指定等につきまして、なんらか財閥温存の意向が取入れられてあるのではないか、こういうお話でありますが、私にははつきりと具體的に事實がわかつておりません。ただ賠償の指定につきましては、隨分手續きがこたごたしておるようでありまして、どれを先にするとか、どれをあとにするとかいうようなこともあり、財閥關係のものを先に指定してもつていくと言いましたり、また能率のよいものをもつていくということにしましたり、いろいろな順序があるようでありまして、まだはつきりとはいたさないと思います。賠償のそういうこまかい具體的な指定のことになりますと、私自身はまだよくわかつておりませんので、もし必要があれば賠償關係の係の者から申し上げることにいたしたいと思います。とにかく抽象的には、賠償問題が財閥解體についての一種の何か政策的に利用されることはけしからぬことであるということは私も考えます。そういう事實があるかどうですか、そのことにつきましては具體的に私自身まだ事實をつかんでおりませんので、申し上げられないのであります。
中小工業の問題でありますが、中小工業の問題は、私的獨占の方から言えば保護される關係に立つと思います。從いましてこの法令ができましたために、中小工業の育成發展につきまして積極的にじやまになることはない。ただしかしこういう法令をつくるくらいならば、もつと積極的に中小工業育成についても何らかの手段を盡す必要はないだろうか、こういうお考えじやないかと思います。それもむろん商工省におきまして十分考えておられるところじやないかと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=115
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116・鈴木茂三郎
○鈴木(茂)委員 最後の質問でございますが、いわゆる獨占に對する惡い方面も非常にお認めになつております。私もまた從來惡い方面を指摘いたしてまいつたものでございます。しかしこれは資本主義の一つの發展の法則でありまして、企業結合は反面におきましては、それ自體いい部面ももつておると存じますが、私どもの考えといたしましては、どうしてもこういうような獨占の弊害を公益のためにおさえる法案も必要でございますが、しかし政府がいわゆる財閥關係の代表する政府であつたり、あるいはまた事實資本の發展の法則が企業集中をやむなくいたしております制度である以上は、なかなか法案をつくりましても獨占の弊害をためることは非常に困難な事情にあると存じます。私どもはこういう法案も必要でございまするが、しかし根本の精神は、先ほど公的資本についてお尋ねいたしましたように、發展してまいります獨占的な資本を私的な資本に任せないで、これが經營を社會化する、その經營を今までのように官僚に任せたり、公益的な個人の私的資本に任せないで、できるだけ經營を社會化していくという方向にもつてまいりますれば、私はいろいろな法律で行うよりもむしろこの企業獨占の弊害をためることができると存じます。これは公的資本のみならず、私的獨占資本に關しましても根本の方針は經營を社會化していくことが必要だと存じます。その點に對する御所見を承りまして私の質疑を終りたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=116
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117・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 この法案の建前で申しますと、御趣旨とは大分方向が違つておるように思います。つまりこの法案の建前から申しますならば、國家資本でなく個人資本で自由競爭を完全にやる。これが一番いい、こういう建前の下でこれを實行するについてはいろいろな弊害が一方において起きてくる。自然にそれを妨げるような獨占的傾向が一方において起きるから、これを防いで、自由競爭を完全にさせるための法令である。こういう建前だと思つております。ですから法令そのものの建前から申しますと、國家資本に事業を移していくことは、ちようど逆じやないかと思つております。しかしむろん公共の利益ということが一番大事でありますので、その當時の經營の客觀的な條件、また公共の緊急の必要、事業の内容、その他それらのいろいろの事情を考慮いたしまして、たとえこの法令のごとく自由競爭の原則のもとにやるという立場を前提といたしましても、國營に移すべき必要のあるものもありますし、また將來もあり得ると思います。それらにつきましては私はどこまでもそういうものはいつでもいけないのだ、どんな場合においてもいけないのだという考えをもつておりません。しかし現在におきましては、そういういろいろの客觀的事情を十分考慮した上で、やるべきものはやるべきである。そういう程度の考えをもつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=117
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118・岡部得三
○岡部委員長 これにて質疑は終局いたしました。討論に入る前に皆樣と御懇談いたしたいと思います。ちよつと速記を中止して下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=118
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119・岡部得三
○岡部委員長 速記をお願いいたします。これより私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案を議題として討論に付します。討論を許します。木村公平君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=119
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120・木村公平
○木村(公)委員 私は日本自由黨を代表いたしまして本法案に贊成をいたすものであります。本法案に對しましては、各黨各派からいろいろの御高邁なる御説を拜聽し、私どもも非常に教えられるところが多かつたのでありますが、結論的に見まして、現段階におきましてはこの法案を可決するにあらずんば、ますます資本主義の惡い面を露呈するおそれもありまするから、その意味において私どもは黨議をもつて本法案に全面的に贊成をするものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=120
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121・岡部得三
○岡部委員長 舟崎由之君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=121
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122・舟崎由之
○舟崎委員 本案は經濟の民主化、特に中小工業の發展を促進する上において、非常に役に立つ重要なる法案だと信じまするがゆえに、日本進歩黨を代表いたしまして原案に贊成いたすものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=122
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123・岡部得三
○岡部委員長 稻村順三君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=123
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124・稻村順三
○稻村委員 日本社會黨を代表しまして本案に贊成いたす次第でありますが、この委員會の名前をもつてこういう附帶條件を付していただきたいのであります。
本法の實施を效果あらしむるため、在來の認可制度による獨占、特許による獨占を排除する意味において、これら關係法律を可能な限り速やかにこれを改正するとともに、公的獨占確保を抑制するため、國營事業の民主化をはかるべし。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=124
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125・岡部得三
○岡部委員長 増井慶太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=125
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126・増井慶太郎
○増井委員 私は國民協同黨を代表いたしまして、ただいまの社會黨の附帶條件に贊成いたしまして、本案に贊成するものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=126
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127・岡部得三
○岡部委員長 これにて討論は終局いたしました。これより採決を行います。原案に贊成の諸君の起立を願います。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=127
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128・岡部得三
○岡部委員長 起立總員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。——次に稻村順三君君より提案されました附帶決議案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=128
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129・岡部得三
○岡部委員長 起立總員。よつて本附帶決議案は決定いたしました。
まことにどうも早急にいたしまして相濟みませんでした。ありがとうございました。本日はこれにて散會いたします。
午後三時五十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00719470330&spkNum=129
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