1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
船員法を改正する法律案(政府提出)(第一二號)
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昭和二十二年三月十七日(月曜日)午後一時四十七分開議
出席委員
委員長 中川重春君
理事 馬越晃君 理事 米窪滿亮君
近藤鶴代君 三浦寅之助君
森崎了三君 中村嘉壽君
佃良一君 奧村又十郎君
布利秋君 岡田勢一君
三月十七日委員松原一彦君辭任につきその補闕として岡田勢一君を議長において選定した。
出席政府委員
農林事務官 藤田巖君
運輸事務官 有田喜一君
運輸事務官 大久保武雄君
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本日の會議に付した議案
船員法を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=0
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001・中川重春
○中川委員長 これより會議を開きます。前會に引續き質疑を行います。中村嘉壽君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=1
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002・中村嘉壽
○中村(嘉)委員 私の質問は船に關することですが、申し上げるまでもなく、わが國が今直面しておる一番めんどうな問題は食糧の問題であります。殊に動物質の蛋白質をとることが、非常に不足をしております。從來わが日本では、これを補うために水産物を相當あげておりました。いろいろなものを加えると五百萬トンくらいの水産物があがつておつたのでありまするが、戰後になりましてから漁場の區畫が少くなつたり、資材がないというため、その他の事情から非常に漁獲高というものが減つてまいりまして、これをどうかして復興しなくちやならぬというのが私の眼目なのであります。政府もむろんそういうことを注意しておられると思うのでありますが、今後農産物によつて日本の食糧を殖やすということは、なかなか難儀なことではないかと思います。今の米なりその他のものを倍にするということは容易なことではない。もし動物質のものがなくして米だけで食糧を滿そうとするならば、一日に七合くらいの米を必要とするのでありますから、魚を六十匁ぐらいづつとることになると、米を二合七勺ぐらいに減らしても今までの平均の榮養物はとり得るのであります。それをなすには、やはり今申し上げましたように水産物を殖やすことを考えなくちやならぬ、水産物も今われわれがとつておるものは、近海とか、沿岸でとつておりまして、これはほとんどこれ以上に殖やすことは不可能とも言わなければならぬのであります。しかるに南方とか、あるいは北方に適當な遠洋漁業を興すならば、これを倍額にすることは決して不可能ではありません。日本が必要とする動物食の蛋白質は約六百萬トンなのでありますが、これを滿たすことも決して不可能ではないと思うのであります。しかるに今船をつくるとか、あるいは資材を求めるとかいうことは、非常に困難なのでありまするが、現在わが日本において使われていないところの大きな船が相當にあるのであります。一萬トン級の、たとえば石油タンカー船であるとか、その他いろいろな船があるのであります。これをどうしても遠洋漁業に使うように確保しておいてもらいたい。このままにして、各國から賠償物資にとられるということになると、非常な私は損失だと思うのであります。これをそのまま放つておくというと、賠償物資として各國にとられるか、あるいはこれをスクラツプにされるという結果になるから、どうか政府はそういうことにならぬように、こういう漁船に使い得る、一萬トン級の母船に適するものを確保しておくことに全力を盡していただきたい。これが私の希望なのでありますが、政府ははたしてそれに對して何か手をつけておられるか。もし手をつけておられないとするならば、今後それに手をつけて、連合國の諒解を得て、殘してもらうことに盡していただきたいとこう思うのであります。今たとえばタンカー船なんか一萬トン以上のものが相當あります。約二十五隻あります。この二十五隻のものを留保しておいてもらいたい。それだけではなく、われわれは進んで相談をして、リパテイー型の船舶、これをチヤーターするなり、讓り受けてもらうなりすることも必要だとまで思つております。それからL・S・T・という船がありますが、向うで上陸用舟艇に使つておつた。こういう船もたくさんあるのでありますから、こういう外國のものをばわれわれは讓り受けたいとまで考えておるのであります。その以前において、日本で現に使つておつたものを、漁船に使うことをばひとつ考えていただきたい。これが私の質問の眼目でありますが、水産局長がどんなふうに考えておられるか。またこのことに努力をしていただけるかどうかということを、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=2
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003・藤田巖
○藤田政府委員 お答えを申し上げます。ただいまの御意見まことにごもつともと存じております。現在の食糧事情からいたしまして、動物性蛋白食糧の補給源としての水産業の重要性ということにつきましては、いまさらに申すまでもないところでありまして、それに必要な船舶の確保ということについては、私どもも從來ともできる限り努力をいたしておるわけであります。お話の一萬トン級タンカーを將來の遠洋漁業進出のために確保する問題についても、御同樣にぜひこれを確保する方向へ進めていきたいと思つております。ただ問題は、これもやはり新しい漁場への進出なり、それからまたたとえば將來の南氷洋捕鯨の出漁が確保されるというふうに、それぞれ行きます先が相當具體化いたしてまいりませんと、ただ單にこの船をリザーブをするというようなことも、實際問題ではできなかろうかと考えるのであります。われわれとしては、將來この種の船が、新しい漁場が開發されるに伴いまして、どうしても必要であろうと考えておりまするからして、そういうふうな漁場の進出とにらみ合わせまして、この必要な漁船の確保については努力をいたしてまいりたいと、さように思つておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=3
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004・中村嘉壽
○中村(嘉)委員 藤田水産局長の御意見も、私とほぼ同じようなことがよく明瞭になりましたが、どうかひとつ努力していただきたいと思います。私が接觸をしておるG・H・Qの人たちも、これに相當な考慮を拂つてくれると私は信じて疑いません。日本の食糧事情の困難なことは痛切に考えておるし、それから日本の水産物が重要な役割をしておることも、むろん彼らは知つております。平和克服はもうそんなに長いこではなかろう、いずれ何箇月のうちかと思いますが、平和が克服をすると、北の方はオホーツク海からベーリング海の方面、これは航海においては何らの支障を受けることなく、われわれが行つて魚をとり得るのであるし、赤道直下方面でもあるいは南極方面でも公海に關する限りは自由に横行闊歩ができるのであります。また公海でなくても諒解を得るならば、彼らは日本の漁業者と競爭をする必要もなし、また立場にもなし、技術もわれわれにはるかに劣つているのでありますから、もし彼等が水産物を必要とするならば、日本の人々をしてとらしめるということまでも私は考えさせることができると思うのであります。だから少しも戰敗國だなんということを考えることなしに、公海に關する限りは何らの遠慮なしに私はやるべきだと思います。今藤田局長の、これは計畫と併行していかなければ留保することかできないというお話、その通りでありますが、ひとつ計畫を水産局は立ててもらいたい。私どもは私案としては相當なる私案をもつておるつもりであります。たとえば南極においては今捕鯨をやつております。既に終末になりつつありますけれども、歐米の捕鯨船は油のみを採取して肉をとらない。日本は肉も油もとるから、外國の船よりも倍に相當する、あるいは倍以上の收獲を得る。そのために日本の捕鯨船を彼らが排斥するような傾向があるのでありますから、私は案を携えて總理大臣初め農林大臣にも進言いたしておるのであります。この際において國際關係をよくするためにも、やはりこういうようなことに注意を拂つて、彼らが捨てておつた、あるいは利用の途を十分に知らない鯨肉、これを日本の方に買取つてもつてくるならば、日本の食糧を補給するのみならず、彼らが捨てて顧みなかつたものが金に代つていくのでありますから、喜んで應ずることができるし、それにはアメリカのリバテイー・ボートを改造して、冷凍船にしてひとつ買つてきようじやないか、かくすることによつて一年約四十萬トン以上の肉を日本にもつてくることができ、彼らに數千萬圓の利益を得せしめることができると私は思つております。それと同時に冬の間はさような仕事をするが、夏になると、この母船を使つて、北の方で、彼らが競爭しないような、たとえば底におる魚、たらとかすけとうたらとか、かにとか、ないしはかれいというようなものをとると、二、三十分網をつけておくと網が一ぱいになるほど魚がたくさんおるのです。これを母船に積んで日本にもつてくれば、十分な食糧の補充ができると思います。なお熱帶地方においては、これらの母船を使いまして、まぐろのはえ繩でもやつてとつてくると、これで日本の現在の水産物を倍以上になすことができる。六百萬トンになすということは架空の言ではなくして、現に私自身がみずから案を立てて、これを政府にも進言しておるのであります。こういうことを政府自身がみずから立案して、そしてそういうものが外から出てくるのをまつておるということでなしに、指導してもらつて、そこで計畫を立てて、今の船を留保することを考えてもらいたい。それでなければ、一方に何か計畫が立たなければ船を留保することができない。船はとられてしまう。スクラツプにされてしまう、どつちかを先んじていかなければならないのですから、そういう案を立てていただきたい。これに對して水産局長はどういうお考えでしようか。御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=4
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005・藤田巖
○藤田政府委員 南氷洋の捕鯨につきましては、この昭和二十二、二十三年度の漁期に出漁ができるかどうか、まだ現在のところ保證はできませんので、何とも申し上ぐるわけにはまいらないのであります。われわれといたしましては、極力引續いて南氷洋捕鯨に出漁のできるように、努力いたしたいということで、現在連合軍の方へもそれを申請をいたしておるわけであります。そういうふうなこととにらみ合わせまして、先ほどお話のございました肉を持歸える問題についても、ひとつ來年度漁期の問題として具體的に早目に計畫を取上げて、そしてこれの實行性について協議をし、また國内的にだけでは處理ができない問題でありますので、對外的にも折衝するというふうにして、できるだけ實現をいたしたいというふうに考えております。なおそのほかの漁業につきましても、現在のところまだはつきりした見透しはございませんけれども、將來の問題としては、お話のございました南の方のまぐろの問題、あるいは北洋の漁業の問題、相當新らしい漁場の進出をわれわれとしても期待しておるわけであります。こういうふうな所が開けました場合は、お話のように、どういたしましても陸地を使わないで母船式漁業というものを考えなければならぬのであります。そういうふうなことから考えまして、この方の母船式漁業形態の研究、それからまたそれに必要な母船の問題、これについてももちろん私どもといたしましてはできるだけこれを實行するように考えていき、同時に必要な母船の確保についても、併行してこれを確保するように努めたいというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=5
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006・中村嘉壽
○中村(嘉)委員 最後に一言申し上げておきたいと思いますが、今藤田局長の言われたこと了承いたしますが、どうかこういうことをひとつ頭においていただきたいと思います。アメリカではしばしば向うで聲明をしております。日本は水産物が必要であるから、このためには漁區の擴張もしようし、いろいろな物資も供給してやるようにしなければならぬというのがアメリカの政府の考え方でもあり、またアメリカの輿論にもなつておるのでありますから、この輿論を有効に使うということをひとつ考えていただきたい。私どもがわきから見ておりますと、いかにも、これに對應して、この勢を使つて水産を發展させようということの力が足らぬように思うのであります。これは水産だけではありません。私は常にアメリカにおつたし、外國人と折衝しておりますが、現在ここにおる人々でも、日本の人々があまりに消極的であつて、何でも言われるなりになつておる、何が自分でやり得ることでも、われわれの鼻息をうかがうような傾向がある、非常に殘念だ、ほんとうのデモクラシーというものはそんなものじやないんだ、許されたる範圍のことならば率先して進んでいかなければならぬのだ、ということを彼等は思つております。私どももまたそう信じております。こういう行き方が日本では今日までなかつた。なかつたので、いつでも泣く子と地頭にはかなわないというような考えから、政府なりあるいは有力者の言うことは無批判で通しておつたものであります。これが今日の世の中をつくつたのであつて、およそデモクラシーというものとは縁の遠いものである。今直ちにデモクラシーをほんとうのものになそうということは容易なことじやありませんが、しかしこれは努めておればできないことじやない。日本人は、一面から見ますと百八十度の轉換をすることを容易にでき得る人間でありますから、百八十度の轉換をしてもらいたい。君子豹變ということがあります。いいことならば豹變しても少しも差支えないと私は思うのであります。私は、ほんとうのデモクラシーの精神というものは、世の中に飢える者のない世の中をつくることだ、むだのない世の中をつくることだ、こう思つております。デモクラシーの説明には、エブラハム、リンコーン初めいろいろな人が言つておりますが、結局、むだのない、森羅萬象ことごとくを世の中のためになすというのが私はデモクラシーだと思つております。なおこれをわかりよく言いますならば、デモクラシーというのは、今まで三猿主義というのをやつておつた。見ざる、聞かざる、言わざるというこの封建思想がいけなかつたのであるからこの三猿主義を裏返しにして、よく耳をほじくつて聞くがよろしい、目を見張つて見るがよろしい、實態を掴んだら信念ができる、信念ができたらどんどん意見を交換していくということがデモクラシーであるというふうに私は思つているのであります。どうか、外國人との間にでも遺憾なく意見を交換してください。彼らは自分の誤つたことならばいつでも變えることを意としない國民であります。その代りに自分の信念は絶對に貫こうという人達でありますから、そのサイコロジーをよくつかまえて、ひとつ進んでいただくことを私はお願いしたいのであります。殊に水産に對しては、これほど彼らが同情しているものはないのであります。それを右顧左眄したり、遠慮したりしていることは、結局水産の發表をよくするゆえんでないのでありますから、ひとつこれをよく御注意くださつて、あまりに消極的であつたり、あまりに遠慮したりすることなしに進んでいただきたいということを、一言希望して私の質問はこれで終ることにいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=6
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007・中川重春
○中川委員長 馬越晃君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=7
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008・馬越晃
○馬越委員 本委員會に付託せられました船員法は、新憲法の實施に伴いまして、船員の勞働條件の改善と人權の尊重の精神に基いて御起案になられたものであります。しかもこれが立案に際しましては、政府におかれましては特に愼重を期せられまして、臨時船員法令審議會の審議に付し、その審議會の總會を開くこと三囘、小委員會を開くこと十七囘に及び、しかもこれを全國各地の海運と密接な關係のある方面に赴かれまして、公聽會を開くこと十囘に及んだというほど、そんなに愼重を期せられてこの船員法が立案せられたのであります。私、かつて二十年前から海上生活をしておりました體驗をもつているのでありますが、その當時の船員法から比較いたしましたときには、まことに長足の進歩でありまして、私ども政府に對して深甚の感謝を捧げるにやぶさかでないものでございます。それでこの船員法の内容につきましては、私全然贊意を表しますが、これに關連いたしまする事柄につきまして、少しばかり質問をいたしたいと思うのであります。私ども諸外國へ參つて痛切に感じますることは、わが國における港灣の荷役施設というものが非常に不備である。このために船員に餘分の勞力を費さしめ、苦しみを與えている。港灣荷役施設が完備することによりまして、海運界の發展はなお一層助長せられることと考えておるのであります。この港灣荷役施設に對しまする政府の御方針につきまして、またどういうお考えをもつておられるかにつきまして、お伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=8
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009・有田喜一
○有田政府委員 わが國の港灣荷役施設の不十分なることは、ただいま馬越委員から御指摘された通りであります。この點政府當局としても非常に遺憾に思つております。もちろんこれが原因には多々あるのでありまするが、私の今日の考えといたしましては、どうしてもこの港灣荷役施設というものは、機械荷役という方面にもつていかなくちやならぬ、かような考えのもとに、着々その準備をやつている次第でありますが、何分今日の資材その他の状況から見まして、これが豫定通りに進まないことを非常に遺憾に思つております。殊に戰災によりまして、せつかく進みかけたところの機械荷役は相當打撃を受けまして、方々に故障を起しております。これらも速やかに改善いたしまして、今申されたような、海員の面から見ましてあまりに不都合のないようにいたしたいというので、着着これを進めておるような次第であります。政府としましては、過般も經濟安定本部におきましてかような問題を取上げまして、そうしてマツカーサー司令部の方にも荷役施設の改善のために必要とするところの資材その他の面の御援助を懇請しつつあるような次第であります。以上簡單でございますが大體の考えと經過を御報告いたしました。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=9
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010・中川重春
○中川委員長 馬越君、農林省の水産局長は何か會議の關係があるそうですから、水産關係の方を先におやりになるように願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=10
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011・馬越晃
○馬越委員 それでは水産局長がお立ちになるそうですから、その方の質問を進めます。現在わが國におきまする船舶職員の養成機關はほぼ完備いたしておるものと考えておるのであります。が、反面漁船の船舶職員につきましては、單に水産講習所等において養成せられておるのでありまして、實際にその機關が完備されていないように思うのであります。殊に今後の水産は非常に遠洋漁業の方に力を入れなければ、とうてい日本の沿岸漁業によつて水産食糧を補うことはできないのでありますから、遠洋漁業に依存するところが多くなつてまいる。そうなつてきますと、一層漁船の船舶職員というものの必要が痛感されるのでありますが、この漁船船舶職員養成に對しまする政府の御方針を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=11
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012・藤田巖
○藤田政府委員 戰後この水産業の重要性が強調せられましてから、漁船も續々できてまいつておりますが、お話の漁船の船員の方につきましては、高級船員は別といたしまして、いわばちようど手ごろの者が、すべて戰爭中あるいは徴用によつて相當數少くなつているのであります。そういうようなものの數的な問題のみならず、また質的にも非常に低下をいたしております。將來の遠洋漁業を發展せしめるため、どうしても人的な、人の問題はぜひとも漁船の建造とともに強化をしていかなければならぬところでありまして、私どもといたしましても、これにつきましては若干の經費を從來とも認められ、また昭和二十二年度におきましてはこれを計上いたしております。決してこれで滿足をしているわけではございません。將來とも漁船舶員の養成の問題については、私どもといたしましても極力努力をいたしてまいりたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=12
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013・馬越晃
○馬越委員 今日は有田海運總局長官がおいでになつておりますし、水産局長もおいでになつておりますので、ちようどいい機會だと思うのでありますが、どうもこの漁業と漁船建造というものとは密接不離な關係があるのでありますが、現在のように漁船の建造は海運局の方に委ねられている、一面におきまして漁業の許可權というものは水産局の方にある。それでその許可と漁船建造というものとがとかく均衡を欠いて、そのためにいろいろな不都合を生じてくる。これは私豫算總會におきましても質問をいたしまして、水産局長から御答辯はあつたのでありますが、たとえば機船底引網漁業のごとき、これは沿岸漁業と非常な關係をもつものでありまして、一面におきましては機船底引網漁業によつて沿岸漁業が非常に荒廢に導かれるというおそれもあるので、この間政治上におきましては、非常に留意をしなければならぬ問題であるのであります。しかるに農林省の水産局におきましては、機船底引網漁業の許可につきましては相當の制壓を加えまして、その許可數においても嚴重なる制限が加えられておるのであります。ところが現在の状態はどうであるかと申しますと、底引網いわゆる手繰網漁業というものに非常に眼をつけまして、許可の有無にかかわらず、どんどんこの漁船建造をやつておる。現在許可件數がたとえば十五、六件許されておるとすれば、その三倍乃至四倍の無許可業者がどんどん漁業をやつておるという状態にある。それらがまた相當な收益をあげておる關係で、今まで漁業に無關係であつたところの企業家たちが、この機船底引網に眼をつけまして、そうして無許可でどんどん漁船の建造をしておる。これは瀬戸内海方面の木造船の建造所をお調べになりましたらよくわかる。現在でも建造中のものが相當數あるのであります。これは農林省の水産局と海運局との横の連絡が密接にいつてない關係で、そうしたような不許可の漁船の建造が盛んに行われておるものと思つておるのであります。これに對しまする海運局の現在の御許可の御方針がどういうふうになつておるものか。水産局との關係をどういうふうにしてこの建造を許しておいでになるのか。また現に無免許であつて、漁船の建造が盛んに行われておる、その事柄について、どういうふうな御處置をおとりにならんとするか。これにつきまして海運局竝びに水産局の御意見を承りたい。それからいま一つは、水産省に代つて近近水産廳が新設されるということは、これはもう議會におきましても、しばしば關係大臣が言明されておるところでありますので、不日水産廳が新設されると考えております。もし水産廳が獨立した官廳として新設せられた場合におきましては、私どもは漁船建造の部面の仕事は、當然水産廳へ移讓せらるべきものである。かように考えております。水産廳へこのことが移讓されない以上は、ただいま私が申し上げましたような不都合が、しばしば起きるのであります。もし近き將來水産廳が新設せられた場合において、漁船建造に關する一切の仕事は水産廳へ御移讓になる御意思があるかないか、この點も併せてお伺いしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=13
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014・有田喜一
○有田政府委員 ただいまの漁船の建造につきましては、御指摘の通り海運總局でこれが許可をやつておるのであります。ただこれが許可をやります前には、まず造船所から地方海運局を經由いたしまして、中央海運總局の方にその申請が出てくるのでありますが、この申請の際には農林省水産局と緊密なる連繋をとつて、そうして許すべきものは許す、許さないものは許さない、かような方針で進んでおるのであります。しこうして鋼船竝びに木造船でも、百總トン以上のものは、これは御承知のことと思いますが、連合軍最高司令部の方へ許可申請をしなければならない。それで農林省と海運總局の方で話のまとまつたものは、許可申請を連合軍の方にやりまして、その許可の指令を受けまして、それぞれの地方機關を通じてその申請者に囘答するという仕組になつております。ただたまたま終戰當時の混亂時代におきまして、御指摘のようなことがあつたように見受けるのでありますが、これは實は終戰後食糧が非常に大事だ。殊に水産の方に大いに力を入れなければならぬというので、府縣廳で勝手な指示をなして、多少中央の今申しましたような緊密なる連繋のもとにやられておるものを、地方廳において勝手な指示をなした結果、ある混亂を來すような事態がないではありませんでした。この點は非常に遺憾に存じますが、私らの方としましても、その事實に鑑みまして、昨年の夏でございましたか、地方海運局に嚴重なる通牒を出しまして、嚴重なる監督の下に、さような、農林省で事業の許可にならないようなものに對しまして漁船ができるようなことのないように、嚴重に取締つておるような次第であります。
そうして水産廳ができたときに、その機構は現在通りであるかというお尋ねでありますが、漁船と言わず、普通の貨物船と言わず、客船と言わず、船舶の造修竝びに檢査及びその登録という仕事は、元來運輸省海運總局において一元的にやつておるのであります。その是非の問題はよほど愼重に研究しなければならぬと思うのでありますが、一方造船という見地から申しますと、これが運輸省と水産廳に二分するということは、いわゆる一つの仕事の二元的監督となりまして、非常に造船業者の方から言わせれば、不便がまた出てくるのであります。その議論をもつてするならば、漁船は水産廳、鐵道のフエリー・ボートは鐵道總局というように、それぞれ割當てられてくるわけでありまして、そうなつてきますと、造船所としてはとてもやりきれない、こういう意見も相當強いのであります。殊に造船は總合工業でありまして、非常に分野の廣い關連工業が附屬しておるのであります。造船を二分して、あるいは三分してしまうというと、これらの關連工業も二分、三分してしまうことになりまして、非常にその邊に對して不便、あるいは大變な支障を生じてくることになります。その邊も相當愼重に考慮する必要があるのではないかと思うのであります。殊に航海の安全という見地から申しますと、何と申しましても船舶安全法によつて、船の主管廳がすべての全責任をもつてこれが檢査を行つておるのであります。漁船といえども決して漁具ではなくして、立派な船であるのであります。その船の安全性ということは、やはり船の主管廳であるところの海運總局が責任をもつてやつているような次第であります。もしこれが二分するというと、その邊について非常な支障を來しまして、航海安全ということにつきましても相當問題を惹起するであろうと考えるのであります。殊に漁船は、ある場合におきましては漁船として作用いたしますが、またある季節になつてくると、それがカーゴーシツプとなつて使われることがあるのであります。その邊のところはよほど廣い視野に立つて、總合的に判斷しなければ、輕々しく結論が出されないと考えられるのであります。どうかさような點も御考慮くださいまして、直ちに御主張の通りにするということは、現在の段階においては申し上げかねるように考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=14
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015・藤田巖
○藤田政府委員 ただいま海運總局長官から御説明がございましたのに對しまして、若干私の方からお話をいたしておきたいと考えております。機船底引網の問題が出たのでありますが、お話のような實情のありますことも承知をいたしております。これは一つは漁業の許可自體も實は農林省でやつておりませんので、一應各縣々々の許可と相なつております。ただ定められました許可隻數の範圍内において、具體的な許可は個々の縣でやる、こういうふうな建前でこの内地沿岸の底引網漁業はこれを實施しているわけでございます。それからまたお話の建造許可の場合にあたりましても、そういうふうな建造の計畫ができます場合は、緊密に運輸省とも連絡をいたしまして、申請の出ておりますものにつきましては、これを適當に指示して、決してそういうふうなものについて漁業許可と建造許可が游離しておるというようなことはないのであります。しかしながら實際問題として、末端面へまいりました場合に、先ほど申しました許可を縣でいたしまするのと、それからまた建造をいたします場合に許可を受けずにつくるというようなものもございますので、そういうようなものの實際の取締りについて支障が起きてくる點があろうかと考えておるのであります。そういうふうないきさつからいたしまして、私どもといたしましては、漁業の許可と建造許可の關係を、現在よりもさらに行政の末端面においてもこれを完全に結びつけていくという方向に、何らか緊密にやつていかなければならぬのではないかということを實は痛感いたしております。水産廳の問題も實はそういうような目的も含んでおるわけであります。しかしながらただいま海運總局長官からのお話もありますように、これはざつくばらんに申しますれば、立場々々によつて相當意見の食い違いもあることであります。しかしながらこの問題については結局行政として二元的になり、そうして末端において、それがはなはだしく支障を生ずることのないように、私どもとしてはいたさなければならぬと考えております。かような問題についても、將來とも海運總局ともよく話合いをいたしまして、そこに行政が總合的に、下の方にいつて一致をしていくような機構を、お互いに話合いの上で十分につけていく、そうして現在生じておりますような資材なり、あるいは金融上のむだ、あるいは漁業取締上の弊害というもののないように、極力私どもといたしましては努力をしたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=15
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016・馬越晃
○馬越委員 海運總局長官は實際を御存じないと思うのでありますが、それは地方の木造船の造船所にまいりましたら、現に無許可の機船底引網の漁船というものが相當數建造されておるのであります。これについては十分水産局と御連絡をとつていただきまして、現に建造中のものに對しても、適當なる處置をおとりくださるように切望いたしておきます。
それから漁船建造が二元的になるということは、なるほど政府としては御不便な點もあろうとはお察しいたすのでありますが、しかしながら長官が言われるように、漁船がある時期においてはカーゴ・シツプの役目を果すという場合もあるから、必ずしも漁船のみに使用されるものではないということも、その反對の理由にあげられたのでありますが、私はカーゴ・シツプに利用されるというような、そうした大型のものを指して言つておるのではありません。たとえば捕鯨船のごとき、あるいはトロール機船のごとき、そういうようなものを言つておるのではありません。私が申しますのは、あるいはかつお船であるとか、あるいは底引網漁船であるとか、あるいは巾著網の漁船であるとか、こういうような比較的小さい漁船を對象にして申し上げておるのであります。もとより漁船をつくるということは、これは漁業の發展に寄與せしむることが本義なのでありますから、漁業者のほとんどがそのことを熱望しておるというこの現状もよく御研究くださいまして、將來におきましては、おざなりのものでなく、いま一層眞劍な態度でもつて御研究を願いたいと思うのであります。これは水産廳へ移讓する問題であります。
それから私この際特に申し上げておきたいことは、漁船以外に鮮魚運搬船というものがあります。これはたとえば機船底引網ならば、それぞれ根據地が設けられておりまして、根據地までもつて歸りますが、それから先はその魚は鮮魚運搬船によつて輸送せられておる。またそれぞれ生産地へまいりまして、それから消費地へもつて來ますのも、みな鮮魚運搬船が運搬するのである。これは鮮魚專門の運搬船であります。この鮮魚運搬船に乘り組むところの船員に對する待遇と、機帆船の待遇とにおいて著しく差がある。殊に機帆船の乘組員に對しましては、一人當り米が四合か四合五勺の特配があることになつております。ところが鮮魚運搬船の船員に對しましては、そうした特配の制度もない。また機帆船の乘組員は、酒、タバコその他のいろいろな特配物資の恩典に浴しておりますが、鮮魚運搬船の乘組員に對しては何らこうした特典が與えられていない。同じように港へ二つの船をつないでおりましても、一方の船は酒をもらつて飮んでいるが、一方の船は全然酒にもよりつけないというような状態で、これを使つているところの水産業會とか、漁業會あるいは運搬船組合のごとき、これらの所有者は非常に困つている。ただ一方は荷物が魚であり、一方はその他の荷物であるが、同じように輸送船であることに間違いはないのであります。その間においてかくのごとき差別があるということは、私どもどうも了解に苦しむのであります。これに對しまして政府は今後どういう御方針をおとりになるか、鮮魚運搬船の乘組員に對しましても、機帆船の乘組員と同じような待遇を與える御意思があるかないか、この點につきまして明快なる御答辯を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=16
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017・藤田巖
○藤田政府委員 鮮魚運搬船につきましての扱いは、おそらく現在は漁船と同じように扱つているのではないか、と考えております。從いまして漁船についても一般船舶と同樣に二合五勺の上に一合五勺でありましたか、一定量の加配米制度があるのでありますけれども、これは特殊な漁業のものだけに限られております。從いましてかつおとか、まぐろとか、あるいは以西の底引きとか、そういうものの鮮魚漁獲物の運搬というものは、それらの漁船と同樣にいわゆる定量加配はいつておるのではあるまいかと思う。それ以外の漁船はこれは普通の船舶とは違いまして、漁獲高に應ずるリンク制を採用しております。たとえば百貫とれました場合には二升五合のリンクをやる。そのリンク制を採用しておりますので、それを採用してその結果當りました加配米を、おそらくは鮮魚運搬船も他の漁船と同樣にこれを分配しておる。そういうふうなことに相なつておるのではないかと考えるのであります。しかしこれを沿岸の、たとえば以東の機船底引網漁業におきましては、これは一定量のリンク加配ということはやつておりませんので、從いましてそれの鮮魚運搬船につきましても加配米制度はないのではないかと考えております。現在の私どもの考えといたしましては、やはりリンク制による加配ということで進みたいと、さように思つておるのであります。それからそのほかの酒でありますとか、タバコでありますとか、一般の物資につきましても、おそらくこれは漁船並と考えられております結果、漁船に對する支給が現在非常に惡くなつておりますので、さような關係から、他の機帆船には當るが、そういうものには當らない。そういう結果になつておるのではないか、さように考えておるのであります。われわれといたしましては、正規のルートに出す漁獲物についてのリンク制というものを將來強化して、そうしてそれに對する必要な物資はまたできるだけ出す。報奬的にもこれを考える。こういうふうな考え方で進みたいと思つておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=17
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018・馬越晃
○馬越委員 それは水産局長は實際を御存じないから、そういうような御答辯があるのであります。鮮魚運搬船に對しましては、そういうような特權は全然ありません。現在行われておりません。私どもはしばしば陳情書を提出いたしますけれども、何らこれに對して具體的な現われというものはないのであります。殊に水産局長が現在企圖しておられ、またそういうふうにしていきたいと考えておられる、漁船と同じような行き方で進みたいというのは、大きな誤りであります。なぜかというと、漁船は魚をとるのでありますから、そのとつた魚に對してそういう食糧品等のリンク制をとるということはそれでいいわけなのですが、鮮魚運搬船というのは、自分が魚をとるのではない。積みに行くのである。そうしますと、生産地等へ積みにまいつて時化たりしますと、いつまで經つても港において魚を積むことができぬ。あるいは魚船について沖まで出ていく。出ていくけれども、漁がなかつたためにそれを積むことができぬ。しかしやはりあたりまえの機帆船の船員と同じように、船員としての働きは同じような状態において働いておる。ところが魚を積んでそれを陸揚げしたときにはリンクでいくならばいいのだが、積まないときに食わずにおれるかと言えば、食わずにはおれない。それは機帆船だつて荷物を積まない場合もあるので、そのときもやはり機帆船の船員としての特權を受けておるのである。そうして機帆船でも荷物を積んで、リンク制によつてその荷物を陸揚げしたその量に應じて食糧を渡せばよいという理窟でありますけれども、そうはいかない。これはどこまでも機帆船と同じ待遇にしなければ、鮮魚運搬船乘組員に關する限り、これはリンク制は實際に適しないのであります。ぜひともこの問題につきましては、一つ眞劍に御研究くださいまして、速やかに機帆船の乘組員と同じような待遇が與えられるように、御努力が願いたいというのであります。いずれ私どもは、農林當局がこの問題をいかにお扱い願うか、今後も十分に監視と申しますと語弊がありますけれども、そういう氣持で見ていきたいと思いますが、よく御研究願いたいと思います。これをもちまして水産局に關係しました質問は終りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=18
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019・藤田巖
○藤田政府委員 漁獲物の運搬船が、ちようど漁業の方面からも一般の輸送の方面からも、その間にありますだけに、いづれからも見離されておるような格好になつておりまして、少々取扱いがどちらにはいるかということも、むずかしい點であろうと思います。お話の點は十分研究をいたしまして、實情に即するようにやつてはまいりたいと思いますが、ただちよつと申し上げておきたいと思いますのは、やはり漁獲物を運搬いたします場合は、われわれの方では正規のルートによる漁獲物というものについてリンクでやつておるという考え方があるわけであります。從つて計畫出荷でなく、いわばやみで魚を運ぶ。かりにそういうふうな漁獲物運搬船がありました場合に、そういうふうなものに出すということは、現在とつております漁業政策の上から申しますと、水産局の關係としては非常に出しにくい。やはり正規のルートに乘つてきた場合にこれは出すという建前をとらなければ、現在資材をリンクでやつております方法が潰れるというふうに考えております。その點は一つ御諒承をいただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=19
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020・馬越晃
○馬越委員 私の言いますのは、正規のルートに乘つておる分であつて、あるいは漁業會の共同販賣所であるとか、あるいは水産業會の市場であるとかいうような所にやつても、それに對して食糧の増配はない。こういう實情にあるのであります。それで私はそのリンク制ということは、なるほど御方針としてはそれでいいと思うけれども、實際の問題として、もし乘組員がよう魚を積まなかつた場合には、食わずにおるわけにはいかんのであります。船員というものは非常に腹が減る。機帆船と同じことである。その點は必ずしもリンク制が最善なる方法ではないということについて、十分御考慮を願いたいと思うのであります。
それから先ほど私が港灣荷役の施設に關する質問をいたしました場合に、政府の御答辯は、近時いろいろな資材がないために思うような施設ができないのであるが、將來は十分注意していきたいと思うというような御答辯があつたのであります。ところがわが國の港灣施設というものは、戰時中もしくはそれ以後、資材がなくなつた後における日本の港灣荷役施設というものは決して完全なものではなかつた。のみならずこれは資材の豐富な時分から、日本の港灣というものは施設がまつたく不完全である。そのために船が港へ碇泊いたしましても、荷役の能率があがらないために、いたずらに碇泊日數を多く要するという状態にあるのであります。これは私考えますに、今まで關係官廳におきまする、港灣荷役施設に對するお考えが乏しかつた結果ではなかろうかと考えるのでありますが、この點に對する御所見はいかがでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=20
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021・有田喜一
○有田政府委員 港灣荷役施設に對しまして政府の關心が薄いのではないか。こういうお話でありますが、どうも昔のことはいざしらず、少くとも船舶が相當逼迫しかけて、戰時中以來終戰後の今日に至るまで、もちろんこの港灣荷役ということに對しまして、政府は絶大なる關心をもち、これが荷役力増進のために、非常に努力を續けておることは、紛うことなき事實であります。ただ戰前船腹が相當ゆとりがあつた時代、さようなときにおきましては、御説のような所論が成り立つかとも存じます。少くとも現在では大いにやつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=21
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022・馬越晃
○馬越委員 次は燈臺等、航路標識の完備の點であります。これは戰前におきましても、燈臺その他の航路標識が不完全であつたということは、およそ海を知る者の指摘するところであるのであります。殊に日本近海というものは、政府當局も御承知の通り、世界における最も航海上の難所とされておるのであります。日本海が霧の多いことは有名なのであります。從いまして船舶の遭難數におきましても、世界で最も多い海難統計を示しておるのであります。こうした海難を豫防しますのには、どうしても航路標識の完備をはからなければならないことは、これは萬人の認むるところであろうと思うのであります。戰前におきましても、かくのごとき貧弱なる航路標識の状態であつたにもかかわりませず、戰時中におきまして、これらの燈臺その他の航路標識というものは相當破損いたしまして、現にその機能を失つておりますものも相當數あることを私ども見受けておるのであります。これらに對しまして、政府は今後いかなる御方針をもつて進まんとしておられるのか。先般の豫算等によつて見ましても、こうした燈臺局等の豫算がきわめて少額であつた。私もこれについてはいろいろ發言をいたしたいつもりでおつたのでありますけれども、時間その他の關係で質問をいたす餘裕がなかつたのを遺憾といたしておるのでありますが、あの豫算面から見ましても、非常に少額であるように思う。これらにつきまして政府の御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=22
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023・有田喜一
○有田政府委員 航路標識、燈臺施設がわが國において不十分であつたことは、まことに遺憾であります。殊に御指摘のように、戰災によりまして、今の燈臺はほとんど三分の一程度は機能を失つておるような次第でありまして、急速にこれが復舊擴充をはからなければならぬと考えておるのであります。關係筋におきましてもこの點に着目されまして、目下われわれに對しまして、三箇年計畫を樹立せよというようなメモランダムを發せられまして、私といたしましては、燈臺局を激勵いたしまして、今日の事情の許す限りの燈臺の復舊計畫を立てておるのでありまして、本年の豫算にもその一部は計上されておるのでありますが、ただ三箇年計畫でありますがゆえに、全體といたしましては相當の金額に上つておりますが、今度はただ頭を突き出したというような次第でありまして、今年としては不十分かもしれませんが、少くとも資材その他の困難を克服しまして、この三箇年計畫は速やかに實現いたしまして、御要請に副いたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=23
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024・馬越晃
○馬越委員 次は、船舶運營會に對します政府の今後の御方針を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=24
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025・有田喜一
○有田政府委員 船舶運營會問題につきましては、本會議におきましてもしばしば御質問を受くるのでありますが、實を申しますと、わが國の海運企業というものは、基本方針といたしましては、これを民營に移すべきである。かように政府は考えているのでありますが、御承知の通り、わが國の船舶は連合軍におきまして管理されておるのであります。しこうして終戰後スカジヤツプなる機關ができまして、その指示によりまして、C・M・M・Cといいますか、商船管理委員會、かような性格において船舶運營會を繼續せよ、こういう指令を受けておるような次第であります。從いまして運營會をどうするかということが、わが國の政府の方針ばかりによつて勝手にできないような現状であります。しかし政府といたしましては、海運企業の基盤となるべきその根本方針に副うように、最善の努力を拂いながら、目下關係筋へ懇請しているよなう次第であります。一昨日も米窪委員長からお尋ねがあつたと思いますが、大體の線といたしましては、今日のような情勢でありますので、民營といいましても、直ちに運營會をつぶしてしまつて、それを自由奔放なる經營におくことは考えられないのでありますが、一方において配給の統制ということは必要でありますが、同時に業者の創意、企業意欲というものを十分に發揮できるようにしたい、大いに業者を勵ましながら、一方において今日の要請に應ずるような配船の統制をやりたい、かように考えまして、折角關係筋に對して懇請をしているような次第であります。いずれここ數箇月のうちには、何らかの解決を見るだろうと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=25
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026・馬越晃
○馬越委員 もちろんこういうことはなかろうと思うのでありますが、私ども今まで苦い經驗をもつておるのであります。とかく海運界が不振に陷りますと、船舶職員の養成というものが非常におろそかになつているのであります。これは過去の歴史がはつきりとこれを示しておるのでありますが、私はいつでもかような考えをもつておるのであります。たとえば重工業等が發達いたします場合には、各學校とも工科等の志願者が非常に多くなる。反對に文科、法科というようなものは非常に少くなる。今日のようにまた重工業等が非常に萎靡いたし、あるいは造船業、海運界が非常に不振に陷るということになりますると、今度は造船技術員を養成し、船員を養成するところの機關の機能が非常に低下する。志願者も非常に少くなる。いよいよ海運界が非常に活溌になつて來た場合には、今度は船員が不足する。あるいは造船の技術家が不足する。こういうような現象を來すのが、これはもういつの場合でも繰返されておると思います。現在こそ海運界というものか非常に萎靡いたしましたので、それで船舶職員というものがあるいは過剩になり、失業しておる。船舶職員なんかの養成などというものは、ここ暫く必要がないというように考えるので、現在の賢明な御當局は、そういうようなお考えはもつていられないものと私は思うのでありますが、しかし今日の船舶職員の養成機構というものは非常に完備せられた状態にあるのでありますが、これは現在のこの時勢とにらみ合わせまして、政府におかれましては現在の状態を勇敢に持續していかれる御決心をもつておられるかどうか、この點をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=26
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027・大久保武雄
○大久保政府委員 船員養成に關しまして、教育の波というものがただいま馬越委員のおつしやるように、景氣不景氣の變動等もございまして、とかくそぐわないものがあると思つております。御説はまことにごもつともでございまして、私どももその憾みを痛感しておる次第であります。そこで今後における船員の教育につきましては、そういうような點を努めて矯正をしていきたい、かように存じまして、現在の段階におきましては、船員は一應過剩になつておりますけれども、また近き將來を考えますると、やはり現在の船舶職員を相當新しい海運界に活躍を願う時期が到來するようなふうにも考えられますので、その間の調整をいたしまして、現在既に船舶に配乘しておりました船員、豫備中の者、あるいは現在乘船しておる者を交替をさせまして、年間五千人の船員の再教育をいたしたい、かように考えております。この點は從來學校に養成しておつた船員にプラスするものでありまして、日本の産業の勞働者の職業教育といたしましては、最初に取上げられました大規模な計畫であると存じまして、私たちはこの完成に渾身の努力をいたしたい。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=27
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028・馬越晃
○馬越委員 新日本建設の樞軸をなす教育の擴充強化の要請にこたえ、かつ將來の海運界の飛躍に備えるために、わが國現有船員の維持保存と、戰時中に養成せられた未熟な船員の改良その他をはかるということは、これはきわめて緊要なことでありまして、ただいま政府の御答辯にもありましたように、とかく戰時中は粗製濫造であつた、最も熟練を要するところの海事技術者としましては非常に欠くるところがあつた。そうしたような粗製濫造であつたところの船舶職員の再教育を實施せられるの方途をお考えになられ、かつ實施しておられるということを承り、非常に意を強うした次第であります。しからばこれら戰時中に粗製濫造をせられたところの技術者の實施指導に對し、政府が現在おとりになつております御方法はどういうようなことでやつておられるのか、その點を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=28
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029・大久保武雄
○大久保政府委員 戰爭中の短期養成をいたしました船員の再教育につきましては、先ほど申しましたように年間約五千名を目途といたしまして、上は船長から下は一船員に至るまで、全國にありますところの養成所、商船學校、海技專門學院、高等高船學校、海務學院というような、商船教育的體系の全機能を動員いたしまして、これが再教育に向つて努力をいたしておりますが、その最もねらいと考えておりますことは、從來とかく技術的な短期養成に偏しまして、船員の教養を高め、人格を高揚すると、こういう點に欠けた點がございましたことを痛感いたしますので、今後におきましては、海上の技術を一層錬磨しますことはもちろんのこと、船員の教養を高めまして、國際的にも恥かしからぬ日本の船員をつくり上げる、こういうことを基本にして目下養成をしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=29
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030・馬越晃
○馬越委員 そうした人格の陶冶に重點をおかれるという點はもつともなことであります。しかしながら船舶職員は何と申しましてもこれは專門の技術家なんであります。專門の技術家であります以上海上の訓練というものは、これは最も緊要であるのであります。しかるに現在におきましては、船舶が非常に欠乏していて、乘込むべき船もなく、多くのものは失業して、豫備船員となつて陸に降りる、陸に降りますと自然にその海上技術というものが衰えてくるのであります。その海上技術の低下というものをなさしめぬように、これを訓練していかなければならぬと思うのであります。そうした海上訓練というものはどういう方法でやつていられるのですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=30
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031・大久保武雄
○大久保政府委員 お説のように、船員が陸上で永く生活しますことは、これはまことに殘念な次第でございまして、そこで學校に養成いたしますにあたつても、やはり船乘は海に生きる、こういう性格からいたしまして、できるだけ海上の實際的な運航の技術をさらに錬磨することは必要でございますので、その點につきましては航海訓練所というのを設置しております。これに船を配屬いたしまして、ここにおいて統一ある航海訓練とをさらにつけていく。かようなことで養成いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=31
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032・馬越晃
○馬越委員 その訓練所に所屬いたしておりまする練習船を運營いたしますためには、あるいは石炭であるとか、重油であるとか、いろいろ燃料が要ると思うのでありますが、その點どういうふうになつておりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=32
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033・大久保武雄
○大久保政府委員 燃料事情は、日本全般としましても非常に逼迫しておりますので、商船教育にあたりましても、なかなか十分とは申されませんけれども、乏しきを活用いたしまして、極力最大の效率をあげるようにいたしたいと思つておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=33
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034・馬越晃
○馬越委員 私が聞いておりまする範圍では、船はなるほど各訓練所にたくさん備えつけてありますけれども、燃料がないために船が動かない。海上の訓練が十分に施されていないという憾みがあるというのであります。たとえて申しますと、日本丸、進徳丸、あるいは磯風丸、濱風丸というような、こうした石炭をたいております練習船の所要石炭量は、一箇月六百九十キロトンを要するのに、現在では百トンぐらいしか補給されていない。そのために實際の海上訓練を施すことができないので、まことに名ばかりであるというような話を私は承つて、非常に遺憾に存じておるのでありますが、そうした事實があるかないか。もしあるとすれば、政府はこれに對しいかに善處していかんとせられておるか。またこれに對する見透し等についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=34
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035・大久保武雄
○大久保政府委員 燃料事情で、運航が幾分私どもの豫定します通りに完全に動いていないという事情もございます。この點につきましては教育というものをできるだけ實地に即應せしめていく。あるいは復員船に從事せしめますとか、船員を現實の輸送の當面する重要なる段階に對處いたさせるというようなことによりまして、燃料等につきましても若干の新しい活路を見開きまして、船員教育の萬全を期していきたい。かように考えている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=35
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036・馬越晃
○馬越委員 練習船の燃料獲得に對しましては、御當局におかれましては一層の御努力を願いたいと思うのであります。
最後に私は、いわゆる河童の陸上りということを申しますが、私どもの先輩の立派な船長が、戰前におきましては海外貿易に活躍し、戰時中におきましては國家目的に副うべく全く身命を賭して努力してきた。ところが最近の海運界の状態ですつかり失業してしまつた。それならと言つて陸へ上つては、求めております職につくこともできず、非常に困つているところの立派な船長、殊に相當老境に入らんとする船長がありまして、私どものところへも幾たりかまいりまして、どこか適當なところはなかろうかと言つて、就職の斡旋を依頼してまいるのであります。私どもは何とかしてこれらの人たちによい就職口はないものかと思つて、あちらこちら探しますけれども、やはりこの人たちは特殊な技能者でありますので、陸上勤務の口というものはあまりないのであります。ところがこうした名譽ある船長たちの失業している悲慘な状態を見ますと、かつての國家に對する貢献せられたそのことを考え合わせて、まことに同情の念禁じ得ないものがあるのであります。こうした失業船長たちの救護につきまして、あるいは失業保險の施設、あるいは生活保護法による扶助等の途もありますけれども、そのほかに政府は何らかの救濟の途をお考えになつておりますかどうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=36
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037・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいま馬越委員仰せの通り、海上で長く國家のために働いておられた老いたる船長が、生活に窮せられるというような状態があることは、まことに殘念な次第と存じます。政府としましても、かような功勞者の救濟竝びに老後の生活安定につきましては、萬全の措置を講じなくてはならぬと考えておりますが、目下の措置といたしましては、日本海員掖濟援護會等の方面におきまして、種々生活の御相談に應ずる、こういうようなことにいたしておりますけれども、將來におきましては、もつともつと社會全體が、かような多年の功勞者に報いる、そういう一つしつかりとした基盤を形成することができますように、政府としましても格段の努力を拂わなくてはならぬ次第である、かように存じております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=37
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038・馬越晃
○馬越委員 とにかくこの海上勤務の特異性ということをよく御考慮くださいまして、そうしてこれらの考練な船長が、殊に余生を安樂とまではいきませんでも、相當に送れるようにと、それぞれ日ごろから用意はいたしておるのでありますけれども、しかし今囘のように戰災等によりまして家を失い、家財を失つて——これは一般の人も同じでありますけれども、しかしながらこの海員というものは、船を離れての海員というものはまつたく河童の陸上りで、實際就職すべきところもなく、さりとてかつての名譽ある船長等が、生活扶助法の援護を受けるというようなことでは、そうした施設しか國家にはないということでは、將來海上を目指して有爲な人が志すということは、なかなか困難なことになつて來る。この點につきましては政府はその特異性をよくお考えくださいまして、これらの施設に對して萬遺漏なきように、一つ一段の御努力が願いたいと思うのであります。以上をもつて私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=38
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039・中川重春
○中川委員長 この際先般米窪委員から御質問がございました、すなわち勞働省設置に際し船員行政をいかに所管すべきかという御質問に對しまして、總理大臣から答辯が參つておりまするから、これを朗讀いたします。「總理大臣答辯、海上勞働の特性並びに國際勞働會議における經緯等から考えまして、船員に關する勞働行政は、海事官廳の所管事項ときわめて密接な關係を有する事柄でありまするので、私といたしましては勞働省設置の際には、この點を十分勘案して善處いたしたいと考えておる次第であります。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=39
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040・米窪滿亮
○米窪委員 委員長のお許しを得て、先ほどの馬越委員の最後の御質問に關連して、ごく簡單に政府當局に、船員の失業問題についてお尋ねしたいと思いますのでお許し願います。
先ほど同僚の馬越委員から言はれたように、船舶が非常に喪失して、終戰後においてその職を失つた船員が非常に多いことは、私數字をここではあげませんが、政府當局既に御承知の通りであります。海運總局はこれに對處するために、先般來船員失業對策委員會を設けられて、それぞれこれに對處する處置を講ぜられておるそうで、私もその委員の一人であつたのですが、その後この對策委員會の方で、何か有效適切なる失業對策に結論をもつていかれたのであるか、なお今日においても調査中であるか。また調査の結果はこれを何等かの法的處置として、あるいは法律なり、あるいはその他の行政對策なり何かのことで、先ほど馬越委員が言われたような、船員全般に關する失業問題をいかに處置されるお考えであるか。これらの點についてお尋ねしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=40
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041・大久保武雄
○大久保政府委員 船員の失業對策につきましては、先ほどお答えいたしました船員の再教育において年間五千名、それからこれまた失業對策委員會の決定に基きまして、船員の職業補導を新しく取上げていく。そこでこの方法といたしましては、漁船の船員に轉換する者、それらの船舶の修理に轉換する者、この二つを想定をいたしまして、いづれも小型漁船、あるいは小型船舶の修理でありますが、これに對しまして約年間一千名の船員を吸收させたい、かような計畫に基きまして、目下これらの實現に着手いたしておる次第であります。ちよつと補足いたしておきますが、ただいまの失業對策の職業補導につきましては豫算は計上いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=41
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042・米窪滿亮
○米窪委員 先ほど大久保政府委員の御説明中にあつた、船員の職業補導については、當時の失業對策委員會においては、財團法人日本船員財團ですか、それにやらせるということだつたですが、どうも政府の計畫は非常に立派であるが、なかなかその實行がそれに伴わない憾みがあるのですが、その後その職業補導の點は實效をあげておるかどうかということを、一言確かめておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=42
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043・大久保武雄
○大久保政府委員 米窪氏の仰せの通り、この問題はまた特に實行がむずかしいと、かように考えまして、しかもその職業補導というような、船員の生活に關連しました仕事が圓滑にいかないということでは、これはまことに申譯ないと存じまして、海員財團をしてこれを實行させます上におきましても、その機構その他これに携わります職員につきましては、特に考慮をいたしまして、特別なる組織編成をもつてこの仕事の完遂に最善の努力をなし得る、こういうような組織で進ませるような豫定で着手をいたしております。なおまた實效があがつておるかと御質問でございますが、この仕事をしますについては、なかなか新しい分野を切り開いていくということは、非常に困難の伴うものでございまして、できるだけ從來の既存の業者の御協力を得まして、この仕事を進めていく、こういうことに着意をいたしまして、漁船の關係におきましては漁船の業者、修理の關係におきましても、修理關係の業者のそれぞれ既に相當御熱心なる御後援の申出もございますので、これらと提携いたしまして、この仕事の完遂を期しつつあるような次第であります。
〔委員長退席、馬越委員長代理着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=43
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044・馬越晃
○馬越委員長代理 布利秋君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=44
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045・布利秋
○布委員 馬越氏から質問ありましたのに關連して、ちよつとお尋ねをしておきたいと思うのは、教育々々とおつしやいまして、大變教育に重點をおかれておりますが、一體今までの教育はそれでは海員については惡かつたのでありますか。ずいぶん費用をかけてあるはずでありますが、再教育々々々とおつしやるので私は不安に感ずるのです。今までは技術面においても海員を養成する上において間違つておつた。今後再教育というのはどういうふうなねらいでおやりになるのであるか。どういうものが新しき再教育の眼目になつておるか。どうも私は腑に落ちない點があります。過去のはうそであつて、今度からはほんとうのものだとおつしやるのか。その點關連的に御説明願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=45
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046・大久保武雄
○大久保政府委員 私が先ほど再教育と申しましたのは、戰爭中御承知のように船員の急速大量の需要に應じまして、船員の教育期間を極度に短縮したのであります。年限を非常に短縮いたしまして、そして教育過程を終了さしておつた。そこで技倆の上から申しましても、今後の國際海運に處していきますためには、さらに一段の研修を必要とする、かように存じたのが一つ。もう一つは終戰後におきまする教育全般の新しい方針に基きまして、新しい民主日本にふさわしい船員の圓滿な教養を高めていく。この二つのねらいが再教育の方針になつているのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=46
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047・布利秋
○布委員 自分の意見を言つて相すみませんけれども、私も海員を廣く見てきましたが、ノールウエーの海員のもつておりますその技術とその心、トルコの海員のもつておりますその技術と心、それからギリシヤの船員がもつております心と技術、これを見ますと、この人たちは心ずしも教育があるとは思いません。しかしそのやりまする仕事の工合、海上における仕事の能率の點において、實に説明のできざるものが、その部署々々に現われておる。英國の話もさつき出ましたが、英國は老後の保證もできているし、あるいは職業の補導方法もやつている。それはその通りでありますが、しかし英國の船主がトルコの船員を雇いたい。ギリシヤ人はいやだがトルコ人は雇いたい。それから大した教育はありませんが、ノルウエー人を雇いたい。これはどういうわけであるか。その點御説明を願いたい。再教育とか何とか言われることについて、補足的に承つておかぬと、將來の教育は國際比較の上になければほんとうの教育はできぬ。先ほど國際進出の上に圓滿な人間をつくろうとおつしやつたのだろうと思いますけれども、しかしその圓滿な人間をどうおつくりになるか。技術面を聽かなければ、これは重大な問題であります。あまり物にのみこだわつた割り方でなく、つまり國際的進出ということについて、ひとつ承つておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=47
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048・大久保武雄
○大久保政府委員 もちろん教育と申しましても、船員は實際船を動かしている船乘りでありますから、單なる机上の教育だけではなく、その人間が海上の船乘りとして適性をもち、そして海に生きる、こういう性格をもたせますことが、今後におきまして、日本の船乘りが國際的にもまた國内的にも全たき船員となる要件であると考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=48
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049・布利秋
○布委員 今の御答辯では手細工で、どうでもいくようにお考えになつているような感じを受けましたが、そうたやすく、人形をつくるようにつくれるものでありましようか。その點技術問題をお伺いしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=49
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050・大久保武雄
○大久保政府委員 船員の教育は、もちろん學校で教育をいたしますと同時に、さらにこれを海上に出して、海上の生活をさせます。また學校を出た後におきましても、海上の實際の經驗を通じまして、立派な船乘りを養成していく、その教育の機會を、あらゆる職場の段階をとらえまして常にたたきこんでいく。こういうことを考えまして、今後におきましては一段と實歴を經ました者の再教育はもちろん、あるいは通信とか、その他あらゆる教育の方法を取入れまして、技術上の向上を期したいと考えている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=50
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051・布利秋
○布委員 ただいまお話になつた立派な船員という、その立派ということを具體的に御説明願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=51
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052・大久保武雄
○大久保政府委員 立派と申しますと、船乘りとしての適性をもち、また人間としましてもはずかしくない船員、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=52
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053・布利秋
○布委員 どうも滿足な御答辯を得ることができません。それで私はあまり申したくないのですが、しかしそこまで完全に御答えにならぬとすれば、多少の補足として申し上げておくが、ただ船乘りをつくるとしても、技術面においてはつくれましようけれども、日本の船員が國際場裡に出ていくとか、その教育問題とかいうような、話が大きいものですから、私がついこういう質問をするのであります。大體日本の船員に、全般を物で割り切ることはできますが、しかし割り切れざる心というものの面が存在しておる。この點一つも今の答辯の中にありません。あなた方が船員を指導されるのに、やはり今御説明になつた程度の頭で、教育機能を運營されておると私は思う。ノールウエーの人間が、海なら海というものを生涯のわが家としておるその氣持これはつくつたものじやありません。つくれつたつてそれはつくれましようか。これは何百年間の間に鍛え上げられた海そのものに對する自分の信念、海で死んで行つてよろしいというその覺悟は、それは製造物じやないと私は思う。そこに私は宗教というものをお忘れになつておると思う。ノールウエーの人間がいかにクリストに對して根強いものをもつて人格を養成しているかということについて、一つもお觸れにならないで、器物化して指導されるということに對して若干不滿が起きたわけです。トルコ人はどうするかと言いますとトルコ人はいわゆるマホメツトのあの熱狂的な宗教のもとにやつておりますから、人道的に行くことを——何も合理的な人道じやないのですが、植えつけられて、説明のできざる人道主義を彼らはもつておるから、ここに船内の統制がきくし、一致協力をするということに邁進していく點が強いのであります。ギリシヤ人は爭いを好みますから、結局技術面は發達しておつても、船内に攪亂を起すということにおいてやつかいな船員なんです。こういう區別がありまするのですが、日本ではさて、先ほどから海國日本とおつしやいますが、海國日本には違いない、海をめぐらしておるから。しかしほんとうに海國精神のほんとのものが日本に與えられたことがあるか、嘘がいつも與えられておる。偶像教を與えておりまするか、しかし眞に必要であるという熱意から燃えてくる、その自然性の發達から來た海員の魂というものを、ほんとうにおつかみになつておるのかどうか、それをつかまずに教育々々とおつしやる。これがどうも私は腑に落ちぬというところなんです。日本人に一體宗教がありますか、その點一つお伺いしておきたい。教育だけでは技術になりますが、現在の海員に教育をはずれたその上の氣品のあるきわめて崇高な、人類を本とした、いわゆる人格的な、宗教的なものが存在するとお考えになりますかどうか。それを一つ承つておかぬと、私は割ることができないですから。あとの問題がどうしても割れなくなります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=53
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054・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいま布委員のお話の、日本人にとりましては海は家でありまして、やはり海上に日本人が出て行くと言いますことは、これは日本人の一つの運命からいたしましても、これは一つの情熱をもつて海に出て行く、かように考え得られるわけであります。もちろん學校教育におきましても、教育というものを一つの技術的な面だけではなく、そういう日本人の性格的な運命觀、また日本人の信念、また海に對する日本人の適性、こういうような日本人の情熱を巧みに燃え上らしていく、こういうところが、御説の通りもつとも大事と考えまして、その點につきましては今後におきましてもさらにまた努力をいたしたい。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=54
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055・布利秋
○布委員 ただいまの御説明では信念は必要だという御説明ですが、その信念の根底はどこにありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=55
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056・大久保武雄
○大久保政府委員 日本はかような島國でございまして、日本ではなかなか完全なる自給態勢はできない。そこで今後日本が生活を向上さして行きますためには、どうしても海外との間に物資の交流をさしてゆく。船がそれを取持たなくてはならぬということは、これは日本のもつておる地勢學的な運命であり、またこれは日本人の海上に對する信念であろうと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=56
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057・布利秋
○布委員 運命と技術面で御説明があつてどうも私には腑に落ちませんが、いたし方がない。もうそれ以上はしようがないようです。そこでそのお考えをもつておいでになるから、結局先ほど質問が起きました、この職業補導の問題について、そういう場合には漁船に一つ使うとか或は修繕の方にそれをまわそうとかというお考えになつているのも、そういう頭でお考えになれば當然ここにゆくものと私は思うのです。だがここに私は質問があります。漁船の性格というものと——一體運航しておつた遠洋航海、あるいは近海航路にしたつて、そのクルーとして、船員として働いておつた、またその教育を受けた立派なる——立派とおつしやるその船員が、今度は失業したから、漁船の方にまわして、漁船の方をやれ、修繕の方をやれ。そうすると漁船の性格と、この何百トンか何千トンかの船に乘つておつた者のその職業的性格とが相一致し、相調和し、先ほどおつしやるように、海は信念であるから漁船でもよろしいのだ、何でもよろしいのだ、一人でこいで行つてもよろしいのだという氣持になる日本の海國民族であろうか。私は疑いを起すのです。私はできない相談じやないかと思うのです。その漁船に使う、また修繕に使うなんということは、これはある人はできるかもしれませんが、全面的にはできないことである。できないことをやるとおつしやるのが、まあ政府の今日しかたがない答辯であろう。答辯のための答辯でないかと思いますときに、私はその答辯に對していささかはかない感じをもちます。一例を申せば一番わかる。米窪氏などよくわかる。支那におけるジヤンク、あれがなかなか風波においてかえらない。そうなればたくさんもあることだし、日本の方に船が少いのだから、あれを借りてきて使おうつたつて、日本人がジヤンクに乘つて操縱することができるか。ある者はできるかもしれませんけれども、大體においてできないというのがほんとうだろう。性格が違います。ジヤンクは船でありますけれども、ジヤンクを使う者はジヤンクの性格をもつているのです。つまり日本の田舍で言います蒸氣船、これを動かします者は、やはりその性格をもつて育てられた者である。漁船——魚をとる船ですよ、漁船というのは、雨の中、夜の仕事は火をつけてやる。失業者の中の老人部隊をどうします。やれますか一體。また青年が金もうけがしたいために漁船にまわつていくのは、現實のインフレに對する波であつて、將來デフレが來て魚が安くなつたときには一體どうします。そういうようなてれかくしのような御答辯はさつぱり私の腑には落ちぬのですから、私はてれかくしと見るのです。やむを得ざる御答辯だと思うのです。
〔馬越委員長代理退席、委員長著席〕
だから補導なんというようなことについては、もつとほかに選んでいただくことが必要じやないか。漁船にまわすなんということは、もうおやりになつたらわかるが、やつてみて、成績が惡かつた。布という委員が言つたが、やつぱりいけなかつたと言つたつて、それは昔話になるだけです。だからあまり昔話にならぬように、一つ補導していただきたいと思うが、その點について御自信を承りたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=57
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058・大久保武雄
○大久保政府委員 船員の漁船への轉換につきましては、これは全日本海員組合も非常にこれを要望しておりますし、また實際ただいま仰せのように、漁船の勞働と商船の勞働とは態樣が相當違うということも、これまた事實でございます。そこですぐ右から左へこれを態樣がえできるというように、簡單には考えられない問題であります。そこで實はこれに非常に愼重に對處しなければならぬと考えておりますが、最近私どもの知り得たある事例から見ますると、ある商船の船長か、自分の會社の船員を漁船に轉換させたいという熱情から、まず自分が漁船の方にまづ先に轉換いたしまして、立派な船長になり得たのであります。そこで自分の後輩をして何とかして自分に續かせたいという熱情から、相當數の船員を新しく漁船へ轉換させていくその先達になつた。こういうように目下進んでいる實際の事例もある次第でございまして、かように實際の漁船等に適應するような先達を得て導き入れましたならば、船員も逐次漁船の方へ轉換することが可能でなかろうか。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=58
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059・布利秋
○布委員 漁船は他力的にも非常に要求があるから輔導の根本にしようというのはわかりました。しかしこれは他力の問題ではない。實際自分が考えれば確かにこれがいいことであるかないかは御判斷ができると思うのです。今一時的現象について申されたが、現在の魚のやみに對してはその方がいいかもしれないけれども、足場のみ考えないで少し長い將來を考えてみまするときに、行き詰らない輔導の方法を講じてもらいたいというのが私の願いであります。御答辯を聽いても同じことになるから、もうその點いたし方ありません。私どもと考え方が違うのでやむを得ません。
それで船員法の總括的な點をお尋ねしたいのは、臨時船員法令審議會というものがあつて、前後四囘ぐらいは開かれているはずであると思う。その際に經營者側も相當意見を述べたようであります。もちろん從業員の方も述べたと思うが、結局經營者側は、これでは勞資共倒れになる。こういう法案では自分で自分を食うことになる。自分を食つて無になれば海の發展ができぬではないかという議論があつたということを耳にしております。それで極力押したそうであります。またそれが民主主義の精神ならば、當然言うべきことであるからよろしいと思いまするが、その民主主義の精神を離れて、今度はあなた方の方から極力押しの一手でこれを通した。どうでもこうでもいいからこれを押して出してしまえという噂も聞きますが、これを一つ御返事を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=59
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060・有田喜一
○有田政府委員 實はこの船員法を改正いたしますために、船員法令審議會というものが設けられまして、その委員の中には使用者側、海員側、竝ひに中立側と申しますか、學識經驗者竝びに議員さんたちもおはいりになりまして構成された委員會において審議された。しかしてその中にまた小委員が設けられまして、全體の會議は仰せの通り、あるいは前後を通じて四五囘やつたかもしれまんが、小委員會は數囘となく開かれたのであります。それで小委員會も、今申し上げました全體の委員會と同じような精神から、中立、使用者側及び海員側が出ましてやられたのでありますが、最後にどうしても勞資對立のために纏まらないものが、二三の問題についてあつたことは事實であります。その際にわれわれが押し切つたというのではなくて、全體の小委員會、すなわち中立委員の方が結局中に入られて、多數決ということになつて決定を見たような次第でありまして、あくまでそれは委員會でありまして、政府側がそれを押し切つたとか、何とかいう事實は決してない。その點誤解のないように願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=60
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061・布利秋
○布委員 その中立とおつしやる人たちの性格はどんなものですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=61
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062・大久保武雄
○大久保政府委員 新船員法はただいま申されましたように臨時法令審議會が構成されましたが、この母體となつておりまする政府の諮問は、船員中央勞働委員會に諮問をされたのであります。そこで船員中央勞働委員會が總會を開きまして討議をされました結果、さらに勞資中立全部にわたりまして新しい專門委員を加えて、臨時船員法令審議會を構成いたしました。そしてこの新船員法を答申したらよろしかろうということになりました。かようなわけで臨時船員法令審議會が成立したのであります。審議會は勞働委員會の中立委員である方々、すなわち海上界の學識經驗者のほかに、新らしく各黨からこの法令審議のために委員の御委囑をいたしました。かような方から中立委員が構成されている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=62
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063・布利秋
○布委員 とにかく人權尊重という上においては、船員法は全く必要なものであらうと思ひますが、餘りに人權人權でいつた結果が經費を尨大にしてしまつて、二割から五割という増加を見るような計算が出ないわけでもありません。それを國家が負擔することになりますと、その負擔率を高くさすために精力をお盡しになることになる。その點一つお伺いいたしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=63
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064・大久保武雄
○大久保政府委員 經費の増加の點につきましては、ただいま布委員のお説のように若干の増加はいたしますが、その増加の割合の數字的な點は、私どもの方の計算によりますと、必ずしも三割、五割というふうには考えておらないのでありますが、もちろんこれによりまして若干の増加はあると考えております。しかし今後やはり日本の海運が國際的に伸びてまいりますためには、どうしても國際的な日本海運に對する信頼を獲得いたしますと同時に、船員の心からなる協力、勤勞意欲の高揚、こういうものを考えまして、若干の經費の増加にかかわらず、この新しい勞働法の基盤によつて日本の海運を運營していきたい。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=64
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065・布利秋
○布委員 ただいまの御説明では若干増加するとおつしやつて、その若干ということの具體的數字をお示しになりませんが、私どもが耳にしておりますことは、現在は總額五億萬圓あまりの賃金を拂つている。これが値上げになりますと、若干でありましようか、どこまで若干が進んでおりますか、ひとつその數字を見せていただきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=65
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066・大久保武雄
○大久保政府委員 一應私どもの方で考えました概要の増加の調べを申し上げたいと思います。在來船と戰標船と兩方考えてみました。その一番條件の惡い場合を想定してみたわけであります。そこで新しい船員法によりますると、五百トンから千トン未滿、こういうものが新しい法律案によつて相當影響してくる段階に相なつております。そこで五百トン、千トン級の船を八隻もつておる場合、これは船舶の運營をされる最低限度のものであらうと思いますが、八隻の場合と二十四隻もつておる、この二つの場合、それから新しい船員法では二千トンというものをいろいろな勞働保護の一つのラインにとつております。そこで二千トンから三千トン、このクラスをやはり八隻の場合と二十四隻の場合、こういうふうにとつてみました。そういたしまして定員増加による給與の増加の割合、それから豫備員の給與の増加の割合、それから有給休暇中の食費の増加による割合、オーバー・タイムによる増加の割合、こういうことを考えてみますと、大體運賃原價に對する増加率といたしましては、五百トンから千トンの場合の自營の場合で四分四厘になります。それは八隻の場合であります。それから二十四隻の場合は四分二厘になります。それから二千トンから三千トンの場合は、八隻の場合が二分五厘、二十四隻の場合が二分二厘、こういうような割合になりまして、運營會が動かしておる戰標船の場合にはもつと下りまして、二Aの場合一分二厘、二Bの場合が一分、こういうような運賃原價に對する増加率に相なつておるのでありまして、大體この程度の影響でありますれば、この船員法によつて進めていく必要がある。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=66
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067・布利秋
○布委員 ただいま申された給與の點ですが、そうすると近海航路の方が遠洋航海に從事するものよりは若干歩がいいということになりますか。そこがちよつとはつきり受取れなかつたのでありますが。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=67
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068・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいま申しましたのは、近海、遠洋では申しておりません。トン數で申しておりましたので、その點ははつきりいたしませんが、小さな船を少數もつておる方がいくらか歩が惡い、こういうことになると思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=68
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069・布利秋
○布委員 私はわかりやすく近海航路と言つたんですが、それは五百トンとか千トンとかいうような船は、どうせヨーロツパに送る船ではありませんからその言葉を使つたんですが、日本のこれから進みます道は、近海航路が生命線であらうと私たちは思うのですが、その生命線の方が費用がかかるとなりましたならば、その負擔というものは國民が受けなければならぬと思うが、その點國民が受けずに濟むものでしようか、はつきり御説明願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=69
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070・大久保武雄
○大久保政府委員 この運賃原價に對する増加率の今後における影響でございますが、もちろん海上運賃に關しましては、國民負擔の限度及び經濟の動きというようなものを勘案いたしまして、適當なる調整をいたさなければならぬものだと、かように考えておりますが、その増加率の負擔につきましては、その運賃のきめ方とにらみ合わせまして、國としてもいろいろな對策を講じなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=70
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071・布利秋
○布委員 私ともとどうしても考え方が違うのですが、今までの日本の遠洋航海というものはやはりオペレーターとしての動きが一番事業上の便利な方法であつた。これには世界の船持も閉口したというほど、日本はその點優位を占めておつた。しかしこの敗戰の結界この地位は全部棄てなければならぬですから、それに遠洋航海を御主張になつたところで、これは行われないことである。目的が遠洋航海をさせないように敗戰の結果ゆきつつあるのですから、儲からぬようにするのがつまり敗戰國が受ける責任になつておるのですから、それで問題は近海航路が重要な日本人の將來の船の生命線だと私は思う。遠方に出ていつて稼ぐなんといつたところで、從前でもほんとうは稼げなかつた。安い賃金でもつて、安いチヤーターによつてやつておつた。そうして印度洋を中心にやつておつた。それがつまり日本の海運界の世界に雄飛した一つの特典ですから、この特典をはぎとつてしまうという結果になれば、いくら遠洋航海を云々したところで、これは畫に描いたぼたもちと同じことだ。だから日本人の生命線がやはり東洋における近海ということになれば、これはこまかい船を盛んに運轉して、日本を養つていくという結果になつて、よその國と競爭するということは、とうていできません。このような高い料金でもつていつて、どうしてやれるか。ノールウエーの海運界があるのですが、ノールウエーは國際勞働條約に參加しておるか參加していないか、私は知りませんが、ノールウエーの連中などは、食物においても、給與においても、何においても、英國人のような高い程度にはないのです。だから自然ノールウエーが安いから、彼らが浮んでおるというのはあたりまえのことである。日本もそれと同じことだ。日本の海運界が浮んだというのもそれと同じことです。今日は浮べぬ。同じ重量をもたなければならぬような結果に陷つて、どうして英米の船と競爭ができるか。ヨーロツパにおいて、あるいは太平洋上においても、むろんアトランチツクにおいても、やれはしないのです。近海に生命をおくのに、近海の方がヘヴイー、すなわち重いということは、結局その負擔は日本國内が負はなければならぬという心配がありはせんか。こういう觀點を私はもつておるのですが、政府としての御所見を承つておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=71
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072・有田喜一
○有田政府委員 先ほど船員局長が御答辯いたしましたのは、五百トンないし千トンの場合、あるいは二千トンないし三千トンの場合の説明だろうと思います。私は二千トンとか三千トン程度のものは、これはもちろん近海で活躍すべき船だと考えます。もちろん船員法改正によりまして、勞働保護等に經費のかかることは事實でありますが、先ほど説明を申し上げました通り、その運賃原價に對する率たるや、そうびつくりするほど、日水海運が成り立たなくなつて壞滅してしまうというような、それほど驚くべき數字ではないのではないか。やはり日本が國際海運界に立ち得るには、一方において勞働保護を與え、海員をして仰せの通り、眞に海員魂を發揮して、喜んで遠洋航海に從事して、外國と競爭していくという建前をとつた方が、日本の海運の發展のために、よりよき結果を生みはしないか、かような考えをもつておるわけであります。なお布さんより、近海において大いに努むべきだ、それはごもつともなお説であります。しかし私は、近海も大事でありますが、やはり遠洋といえども日本の將來は大いに伸び出るべきものだと思うのであります。たまたま昨年でありましたか、ポーレー氏の報告によりまして、日本を遠洋に伸び出させないような報告がありましたが、あれは單なるポーレー氏の意見に過ぎないのであります。われわれは日本人といたしまして、あのポーレー氏の意見に屈伏せず、やはり日本は國際海運として近海はもちろん、遠洋にも乘り出すべく最善の努力をいたすべきじやないかと思うのであります。この點は講和會議の濟まない今日におきましては、お互いに斷言はできませんが、しかしさような考えで、日本の航路制限というものは何とかしてはずしてもらうというように、これは日本官民こぞつて懇請すべきことじやなからうかと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=72
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073・布利秋
○布委員 私は、今おつしやつた最後の懇請という言葉もわかりかねるのですが、これは勞働者もよし、資本家もよし、互いに抱きつ抱かれつ、そうして利潤を、双方が五分にというのが、ものの進歩でないかと思うのに、その結果の比重を見ますると、發展せんか資本家は分が惡い、勤めんか、勤める者歩がよし、こういう状態で、陸上の問題ならばそれでもよろしいかもしれませんが、海という問題を控えておつて、それで突き通されるということは、私は腑に落ちぬ。これは關係筋においても自滅を貴ぶはずはないと思う。小さい船を澤山つくつて、世界と競爭をしない國ができるなら、關係筋が置いたつて目の上のこぶにはならぬ。あまり發展するから、かくのごとき發展を見ましたならば、將來どこまでゆくかわからないのですけれども、過去の發展も私は浮薄な發展と思う。一つも根據がない。オペレーターでとにかく世界を征服しようとしたところで、そんなきわどい、輕業式の仕事しか海運界はできなかつたのです。けれども關係筋が日本の海に對して恐怖心をもつというならば、もう既に恐怖心がとれてしまつた。もうこれ以上こわすわけにはいかぬ、これ以上こわせば死物化してしまう、そこである程度育てていかなければいかぬというのが常識であろうと思う。だから勞働者にも五分よし、資本家にも五分よしというものならば、私は關係筋でもこれは大贊成であろうと思う。けれども私どもがこうして條文を讀んで、檢討して、まつたく第三者として、素人として、船に關係のない、長い間とにかく船に乘つたとしましても、私はみな金を拂つて乘つたパツセンジヤーです。世界をめぐつたつて、パツセンジヤーとして行つている。船乘りじやない。だから私は公平な點から申し上げられると思う。この法案は四分と六歩になつている。六分が從業員の方によくて、四分がやつと船主の方へきている。これでは協調ということにおいて、この點食違いがあると思う。關係筋においても、五分と五分の力でいくならば、あえてこれに對して云々をするはずはないと私は思うのです。これは當然だと思う。理窟があると思う。だからこういう法案は、實際を言つたら、この忙しい世の中に、このどさくさまぎれにお出しにならないでも、新議會において、ゆつくりと調べて、そして落ちついて出されても、今海の仕事が急にいつているわけじやないのです。鐵道の汽車とか、あるいは電車のように急を訴えておる問題でもない。だから私どもはお急ぎになる必要はないものであると思うのです。一月や二月ゆつくりと考えて、そうして關係筋にも再びいろいろな現象を呈示して、日本の海運界を今後發達させにやならぬという、その氣持をかえつてぶち壞すようにしてしまうということは、私は賢明な策ではないと思う。もし賢明にお考えになり、國家將來のためにお考えになるならば、一應この案を御撤囘になつて、そうして靜かに新議會に向けて、惡いところはさらに訂正し、眞に五分と五分の協調的法案に練り變えられて、關係筋にお出しになるならば、關係筋も笑つてこれを手にする。近海近海と言いますが、この小さい船が重い負擔をするならば、とうてい海運界は發達しない。發達しなければ、いくら船員がおりましても結局これは役に立たぬ。とも倒れに急がれるということが私には腑に落ちぬ。
五と五の力でもつてとも倒れならいいが、五分と五分ならとも倒れになりません。これは發展する。ところが四と六の差によつてこれをむりやりに進めていこうとするなら、とも倒れに向つてお急ぎになるものと思う。私ども實は自分の研究したものはたくさんありますが、これをどうして急がれるのか、このせつぱ詰つておる陸上の輸送の困難なときに、電氣の問題、ガスの問題、石炭の問題のあるときに、こういう形の法律のみを先にやるより、實際に船を動かしたらいいではないですか。實際において石炭があれば船は動きます。それよりもこれをつくるということをもう少し靜かに考えて、しかる後につくるということが本筋ではないか、この點私は急がれる理由を聽きたいと思う。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=73
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074・有田喜一
○有田政府委員 この船員法を急いで改正する理由は、本會議にも大臣から説明せられており、またこの委員會においても大臣から説明せられた通り、今囘の改正憲法の實施に伴いまして、勞働條件、賃金その他は法律をもつてきめることに相なつております。のみならず、今囘の改正憲法の精神に則りまして、強制勞働というような點、その他一、二項今日の段階におきまして不適切な點がありますので、船員法を改正せんとするのであります。これを急ぎます理由も、この五月三日でございますが、憲法が實施されるに先だちまして、これを立法化するという必要に迫られておるのであります。また一方資本家にとつて四分で、勞働者にとつて六分で歩が惡いと言われますが、それはどういう根據から四分六分ということが割り出されたかわかりませんが、とにかく勞働保護ということをねらつております結果、船主にある程度の負擔が増加するということは事實であります。しかしその負擔増加の程度が、これでは海運がやつていけないというほどのものであるか、負擔は増加するが、この程度ならば忍んでいけるではないかというものか、そこらのところはよくお考えを願いたいと思うのであります。私は負擔は増加するが、これでもつて日本の海運が國際場裡に出ていけないというようなことは斷じてないと思います。殊に今日船員費が上つたとかなんとか盛んに言つております。上つておることは事實でありますが、今日の爲替相場というものを一たび考えるときに、日本の圓がどうだかというように言つておりますが、一方爲替相場を考えたときには、さしたる程度ではない、かように考えられます。これはまだ國際貿易の開かれておらぬ今日において、爲替相場を云々することはできませんが、しかし今國内的に圓で非常に高い高いといつてびつくりするほどのことは、爲替相場のことを通して考えると、さほどでもないというような考えももたれるのであります。私の方としては、このくらいの程度ならば、國際海運に乘り出す分にはそれほど驚かない。むしろ國際條約を完全に取入れて、そうしていわゆるソーシヤル・ダンピングをやらずに、堂堂と勞働條件をよくしながら、國際海運として乘り出していくという方法をとられることの方が、日本の海運の將來のために一層賢明ではないか、かように確信する次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=74
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075・布利秋
○布委員 お説の通り、憲法の補足として必要なことは、もう云々するまでもありません。今ソーシヤル・ダンピングのお話が出ましたが、もうソーシヤル・ダンピングをやる必要は日本にはありませんから、力のないものを目標にする必要はない。これはできない條件になつてきたのです。だから外に向つて日本が發展しようと思つても、相手があることですから、これは希望だけであつて、この點も御希望附のものと思えば、別に質問をしてどうということもないので、それはいたしませんが、ただ今のお話の中でちよつと質問をいたしたいことが起つたのであります。憲法の補足として必要なことはきまつているが、こういうことはどうなんでしよう。人權蹂躙をしないというのが憲法の主眼ですが、たとえば船に乘つておつて、船員の不都合というか、何によつてかこれを船長がやめさせることができる。しかしやめろということは一種の人權蹂躙になりませんか。一方的に何でもやめさせぬのがいい。そうしないと、その人の權利、その人の生活を蹂躙することになる。ところが、こういう場合がある。その本人の意思によつて、この船に乘船するということの萬事の契約を濟ませ、それを船員として認めておいて、船長としてはこれで萬事整つたから船を出そうというときに、陸から歸つて來ない。そうすると、その人間一人か二人のために船を出すのを延期しなければならぬ。そうしてこれをやめさすことができないという、こういう人種の尊重があるでしようか。人權の尊重もよろしいが、一方で大變損害を受ける。人權尊重を認めるということは、この法文の中にある結果になるのでありますか、私どもはどうも腑に落ちない。自分の意思で船に乘りたいと契約して、よろしいと兩方が取極めてしまつておいて、そうして本人は陸で何か故障が起つた、それは突發的な故障もありましようが、船乘りですから、醉つぱらつたりなにかいろいろな故障が起つて、船は何時に出るというのに歸つてこない。それをやめさすことができない。しかし船は出ていかなければならぬ。こうした損害を受けなければならぬことになります。私はこれをそういうふうに讀んでおりますが、間違つておつたら教えていただきたいと思います。なるほど憲法々々とおつしやるのは、その通りでありまして、その通りやらなければなりませんけれども、これはあまりに行き過ぎではないか。その人の人權を尊重するために、陸から歸つてこない者に對する處置、この點どういうふうに見込まれておるのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=75
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076・有田喜一
○有田政府委員 ただいまお尋ねの點は、いわゆる強制乘船を今までやつておつたのを、今囘これを廢止した、その點であろうと考えます。その點も實は審議會におきましても相當議論があつたのでありまするが、初め、たとえ契約であつても、乘るのはいやだというものをかりに無理に乘せて、いわゆる定員を滿たして運航できるようになつても、結局いやがるものを乘せたのだから實際の働きはできない。さようなものはむしろ強制して乘せずとも、たとえ一時的に定員が不足しても、次の港においてこれを補充することにして、船の即發は妨げないような措置をとつた方が實際的であり、しかも何らの不都合が生じないで濟むのではないか、かような結論になりまして、この點は使用者側も私の記憶に間違いなかりせばかような解釋をするということで、委員會では全員一致贊成してきめられたように記憶するのであります。最初にこの點に關しまして使用者側から問題がありましたが、最後はこのように落着いたように思うのであります。政府といたしましてもこの問題は、今申しましたように、いやがるものを無理に乘せて定員を滿たすというようなことをやらずとも、さようなものは一方において適當な措置をして、船の即發には支障のないような措置をするのが、適切であるという考えのもとに、かような案ができたのであります。布さんもこういうことが最も實際的であるということにお考えくださるだろうと思いますが、いかがでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=76
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077・布利秋
○布委員 そういうように解されていきますれば何の文句もないわけです。私が見ましたのはそうでなかつたからお教えをいただきたいと申し上げたわけなのであります。まだ質問がありますが、委員は私一人になつてしまつたので、御迷惑ですから、中川委員長の親心をもつて、この次の日に保留させていただきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=77
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078・中川重春
○中川委員長 それでは本日はこの程度にいたしまして次會は明日午後一時から開會いたしたいと思います。明日をもつて本案に對する質疑を終了いたしまして、明後日討論採決を行いたいと思いまするから、各黨においてそれぞれ準備をお願いいたしたいと思います。本日はこれにて散會いたします。
午後四時三十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00319470317&spkNum=78
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