1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
船員法を改正する法律案(政府提出)(第一二號)
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昭和二十二年三月十八日(火曜日)午後一時三十七分開議
出席委員
委員長 中川重春君
理事 馬越晃君 理事 米窪滿亮君
近藤鶴代君 三浦寅之助君
中村嘉壽君 佃良一君
大矢省三君 布利秋君
岡田勢一君
出席政府委員
運輸事務官 有田喜一君
運輸事務官 大久保武雄君
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本日の會議に付した議案
船員法を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=0
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001・中川重春
○中川委員長 これより會議を開きます。前會に引續き質疑を行います。布利秋君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=1
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002・布利秋
○布委員 海員の給料というものはどういう基準でお定めになるのかということを、ひとつ御答辯願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=2
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003・大久保武雄
○大久保政府委員 船員の給料は新しい船員法にも規定をしておりまするように、現在でもやはり海上の特性というものを一つの基準にいたしております。それと船員の生活給というものと兩方をそれぞれ勘案をいたしますと同時に、船員の職務の内容というようなものにも考えを配りまして決定いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=3
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004・布利秋
○布委員 そうすると海員の手當というものは大體陸上と比べてどれだけの差をもつておりますか、ひとつ御説明願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=4
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005・大久保武雄
○大久保政府委員 陸上給と申しましても非常に千差萬別でございます。そこで現在の船員の給料の立て方は、一應これを官吏の場合に比較するのが一案ではなかろうかと考えておりますが、官吏に比較いたしますると、船員の本給は官吏の本給より大分惡いのであります。ただ船員は船に乘りますことによりまして、あるいは家庭を離れ、あるいは危險なる航海に從事をいたしますので、さような船に乘ることによりまして加給がございます。それを入れますと船員の給料は官吏に比較いたしまして若干上まわつている、こういうことになるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=5
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006・布利秋
○布委員 官吏の給料と言いますと、その本俸と大體照らし合わして、陸上の勞働者も順應しておるわけでしようか。つまり私のお尋ねしたいのは、今度の基準法から見て、陸上の勞働者より五割方海員の方が高まつておりはせぬかという感じをもつのでありますが、間違つておりましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=6
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007・大久保武雄
○大久保政府委員 船員の給料は陸上勞働者に對しまして、五割方高くないかという御質問のように拜聽いたしましたが、現在の船員の給料は、高級船員が船に乘つております場合を考えに入れまして、約千三百六十圓ばかりであります。普通船員が七百六十六圓余でございまして、これは鑛山勞働などと比較をいたしますならば、必ずしも上まわつていない。むしろ低い。こういうように考えられるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=7
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008・布利秋
○布委員 船を經營をいたします者の立場から考えますと、船員のこれから先とります給料の實際が、案外高まつておつて、それで船主が二割なり、あるいはそれ以上運賃を上げなければ支拂えないというような状態を來すかもしれませんが、その場合に處する政府のお考え方はどうであるかを、ひとつ聽かしていただきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=8
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009・大久保武雄
○大久保政府委員 運賃の上ります原因は、必ずしも船員の給與だけに問題が内在しておりませんで、現在の海運産業に横たわつておりますところの、最近の經濟情勢からする修繕費、燃料、その他各般の要素があるのでございます。これを彼此勘案いたしまして、運賃を上げた方がいいかどうかという問題につきましては、さらにこれを全體の物價政策の上から考慮されなければならぬ、かように考えておる次第でございます。どうしても物價政策の上から運賃が上げられないという場合におきましては、海運産業の維持のためには、政府としましては、諸般の對策を講ずる必要があろう、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=9
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010・布利秋
○布委員 經營者側からみますると、この法案を實行しますと、從來の船員では不都合ということになる、結局増員しなければやつていけないということに仕組まれておる。そうすると増員の部分だけはどうしても船主側としては經營の基準が高まつてくると私どもは觀察しておりますが、政府のお考えはどんなものでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=10
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011・大久保武雄
○大久保政府委員 新しい船員法によります定員の増加を戰前と比較いたしてみますると、新法の要求しておりまする最低定員は、五百トン以上千トン未滿の近海を航行する船舶におきまして、わずかに機關士が一名増加するだけでございます。そこでこの法律によつて直ちに定員が大幅に増員するということはなかろうと、かように考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=11
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012・布利秋
○布委員 どうも私どもの計算では増加が認められるのですが、増加すれば自然人件費の増加も起きてきますし、また豫備員の經費の増加ということも起きてきます。そうして勞働時間が陸上と同じく八時間ということになつてきますと、またこれに對する時間外の經費というものもかさんでくる。こまかい計算をするようですけれども、そうしたこまかいことがやはりそろばんのもとをなしますので、陸上で八時間働いておるから、海上でもやはり八時間だ。これは海の特殊性というものと陸の特殊性というものには、若干でなく大變な相違がありはせぬか。また船を運航しておりますときに、いろいろ作業か増大してきます。そういう場合にはもう自然に、船員として勤めの上でやらなければならぬ自然の運命にある。その自然的な責任以上に働くと言いますと、それは暴風のとき、あるいはその他の場合がありますけれども、時間外というものを陸上と同じようにおかれるということは、どうも私、腑に落ちぬではない、腑に落ちますけれども、經營者側に御不審がありはせぬか。きちんと八時間というふうにしておきますことは、ヨーロツパの勞働者と同じ建前に運ぶのだという主張からいきますれば當然でありますけれども、この點を私はノールウエーの連中を引き出すのはまことに相濟まぬですけれども、ノールウエー人は、どうも私は國際海上勞働條約の中から、實際的には違つた方向で働いておるような實感を受けるのです。それで自分は海の人として、もう船主から給料を貰つておるというようなことを打ち忘れ働く場合があるのです。もちろん形式の上にはノールウエーも、國際海上勞働條約を基準としておりましようけれども、そこにノルウエーの特殊性をもつておる。日本人の場合には、英國人なみにやるのか。英國でも、アメリカでも、できるだけ支那の苦力を使う。あるいわ安い地中海方面の海上勞働者を使つて、自國の海員を陸へ上げてしまつておつた實例も過去においてありまするし、現在はちよつとあちらへ行かないので掴めませんけれども、そういう歴史的な存在もあると考えるときに、若干陸上と同じようにしないという點を一つ希望するのですが、そのお心持はありませんでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=12
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013・大久保武雄
○大久保政府委員 新しい船員法の勞働時間の方におきましては、勞働基準法とこれを比較しますと、はるかに船員の勞働は過重されておる次第であります。たとへば船員の大部分が航海當直と申しまして、ほとんど交代をいたしまして、徹夜勤務をいたしております。もちろん日曜といえども働いております。これに對しまして勞働基準法は、週休日を必ずやるということになつております。また船員はいろいろな要請によりまして、勞働時間の延長をする機會を非常に多くもつております。かような諸般の點からいたしまして、むしろ船員の勞働は、その船舶の特性から申しまして、相當時間的に過重されておる。こういうふうに考えられます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=13
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014・布利秋
○布委員 私どもが調べてみますると、國際海上勞働條約案によつて見ました場合に、この法案がどうも私は均衡のとれていない點があるように思われます。國際海上勞働條約というものを基準としてやりまするならば、公正にこれに順應していくべきものですが、しかしそれを若干はずれて、均衡を保つておらぬという點が見出されますが、具體的に政府の方ではお氣づきになつておりませんでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=14
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015・大久保武雄
○大久保政府委員 この船員法は國際勞働條約を基準に取入れておりまするが、數箇の點におきましては、たとえば勞働時間の適用範圍、あるいは有給休暇の日數というような點におきましては、勞働條約を上まわつておる。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=15
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016・布利秋
○布委員 今はつきりと上まわつておるとお答えになりましたが、上まわつた法案を敗戰の國に、その敗戰から再建をしなければならぬ國に、どうして上まわりの法案をつくりあげなければならぬかということを、ひとつ疑問に思うのですが、お考えを伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=16
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017・大久保武雄
○大久保政府委員 勞働條約より上まわつております點につきましては、新しい船員法は、終戰後の日本の新しい海運が、國際海運會議に信頼をせられて、從來の日本海運が立つておつたと考えられておつた勞働條件の非常に低いという、その國際的な非難を拂拭いたしまして、世界の信頼のもとに、日本海運を堂々と世界に推し擴めたい。もう一つは海運は何と申しましても船がその眼目でございますが、この船を動かしておるのは、乘つておる船員であります。船員の勤勞觀の高揚ということは、これが高揚いたしますならば、海運界の興隆というものも一段と速度を早める。かように考えまして、新しい日本の海運界は、船員の保護によるところの、船員の勤勞觀の高揚というものから、スタートすべきであるという意味におきまして、若干の上まわりを見た次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=17
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018・布利秋
○布委員 お説ははつきりわかりましたが、どうもそのお説が私は一方的でないかと感ぜられるのは、相手のありますることで、いくら世界の信頼を受けていこうとしましても、また先方が感情ずくで出る世界の各國の連中を見ましても、その前へ自分達のみ信頼をしてもらうという、その姿を投げ出していつても、それでは競爭の條件にならぬと思う。だから若干そういうことに對するみえがありまするかどうか。日本が敗れておるということをよく考えましたならば、ここに再建する船に對しては、あらゆる節約をして、そうして國際海上勞働條約に基準を置いておりましても、何とかそこに工面をして、そろばんづくの上に工面をして發展していくという方法をとらなければ、實際論としてはなり立たぬと思うのです。抽象論なり希望論としては非常に私は立派な御説だと思います。つまり信頼してもらおうとするためにですね。今までが今までであつたから、またそこに敗れておるから、今後のことを考えて世界の信用をと言うのでありましようけれども、私は自分たちの經驗から見ますと、世界はそういうことに對しては、もう二、二が四で割り切れることだけしかやりませんから、そろばん外の話であつてアウトになりはせぬか、こう心配するのでありますが、それに對してどうお考えになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=18
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019・大久保武雄
○大久保政府委員 船員の保護が手厚くなります一方に、船員の勤勞觀が非常に高揚いたしましたならば、私は若干布委員と見解を異にいたしますが、やはり船員の勤勞によつて船の運航能率が上る、運航能率が上るということは、運賃がそれだけよけいはいつてくる。こういうことになつてまいりまして、自然採算というものはよくなつてまいる。その源泉はやはり船乘りが海上においては船を動かしておるのでありますから、どうしても船乘りが眞劍に、心から海運産業に盡瘁する、この勤勞觀を高揚することが根底である、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=19
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020・布利秋
○布委員 御説まつたく道理のある話で傾聽しますが、それがただ希望的に終らぬことを望む、こういう希望がまた私の方に出てくるわけであります。日本の海員の過去と現状とを私は見てきておる。刹那的にはよく働きましようけれども、時間長く働くということにおいては、決して能率のいいものではない。刹那によく緊張して働きます。それだけ見て日本人の勤勞ぶりを生産面に見屆けるということには、若干稀薄な點がありはせぬか。これはまあ双方の意見の相違ですから、何とも爭う價値もありませんが、ただここに國際海上勞働條約というものを上まわりさせて本案をつくるということに對しては、私はどうしても腑に落ちないのです。むしろ下まわりをさすべきものではないかと思う。けれども下まわりもできぬからここに平均して行こうということならば、一つの反對理由もないわけです。議論も起らぬのですけれども、願わくは私はこの國際海上勞働條約とほんとうに重さを同じにしてもらいたい、ということは、これは私はどうしても、これだけは自分として取消しがつかぬのです。これに對する御信念のあるところを、また希望的のところでよろしいですから、御返事をいただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=20
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021・大久保武雄
○大久保政府委員 現在の上まわつております先ほどの二點にいたしましても、船舶の適用の範圍の方面におきましては、現在の日本の海運界の情勢からいたしまして、少くとも勞働時間制をとります以上は、この程度の適用範圍を決定いたしませなければ、勞働時間制を適用する船舶が非常に少くなつて、その本來の意味がなくなつてしまう。勞働有給休暇制度におきましては、現に日本の海員はこれだけの有給休暇を獲得し得ているのであります。そのベースをこの基準にとり入れるということは必要ではなかろうか。かように考えている次第でありまして、なおまた國際勞働條約を上まわつたことに對する將來の見解につきましては、終戰後の日本は新しい感覺から、殊に國際産業でありますところの海上産業、その海上勞働におきましては、今後日本は海上勞働の保護におきましては、少くとも一歩前進をして、世界海上勞働界を一つの勞働法において日本がこれを導く、でき得ますならばそのくらいの理想をもつて、新しい日本が立ち上りたいものだと、かように考えております。またそれは決して日本の海運が國際的に發展することと矛盾するものではないと、かような見解をもつている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=21
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022・布利秋
○布委員 いまの御説明を聽きまして、大變將來に對する熱意はある。またそれで建設していこうというその希望的なお氣持は、まことに光明と希望のある御答辯であります。できるならば、お望みの通りに將來の海運界が進んでいきますれば、まことに仕合せと思う。ただそこに意見の食い違いがありますけれども、しかしそれはもう申し上げないで、陸上と海上との警察權の問題をちよつと御説明願いたいと思います。海上におきましての秩序というものは、船長に力をもたさぬと一切はできない。この條文によりますと、相當もたしてはありますけれども、しかしまだ私は不足の點があると、こう考えます。船が運航をいたしていく場合におきましては、船長は陸上の警察と同じ力をもたした方が運航上よろしくはないか。割引かないで——少しく割引きがあるのですが——私の考えが間違つているかどうか。一つその點御返事いただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=22
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023・大久保武雄
○大久保政府委員 船長の權限は、これは警察とは違うのでありまして、船舶の安全という一つの危險共同體の維持者といたしまして、その見地から生れてくるところの権限に相なつているのであります。もちろん船長も司法警察官の職務を行いますけれども、その權限の根底にあるものは、危險共同體であるところの船舶の安全の保持、秩序の維持、こういう點から生れてくるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=23
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024・布利秋
○布委員 船のことでありますから、また海上面のことでありますから、どういうことがもつれとなつて、船内に暴動的なものが起らぬとも限らぬのですから、そういう場合に、船長は海の中へ捨てられたとしたならば、結局チーフ・メートが船長となるのは順序でありましよう。そうした混亂を防ぐためには、若干船長に強權をもたしていかないとつじつまが合わないと思う。そうようなことが將來においてありはしないかと思いますが、これは單に老婆心でもありましようか、それともそれに贊意を表していただけるだろうか、この點もう一度繰返してお尋ねをします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=24
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025・大久保武雄
○大久保政府委員 新しい船員法の紀律の條章におきましては、船舶の安全に關しまして、船長が海員または船内にある者に對しまして、いろいろな命令その他の行爲を行い得る場合を現定していることは、お説の通りであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=25
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026・布利秋
○布委員 それからこまかいことを言うようでありますが、第一條に、湖川のみを航行する船舶とありますが、湖川というものは一體日本のどこを指して言いますか、お教えをいただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=26
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027・大久保武雄
○大久保政府委員 これは具體的には社會通念できまるわけでありますが、川筋ばかりを動いておる船、あるいは湖ばかりを航行しておる船、こういう船はこれに該當するわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=27
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028・布利秋
○布委員 私は日本の場合を聽いておるのですが、日本の湖川として船を運行さすというところは、ほんとうにわずかなものだろうと思います。さして言いますれば、琵琶湖その他どこかということをお教えを願いたかつた、これにはつまり五トン未滿の船舶というわけですが、これをもう少し大きく二十トン未滿の船舶というふうな私どもの修正の案に贊意を表していただくことができないものでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=28
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029・大久保武雄
○大久保政府委員 總トン數五トンという線を引上げるかどうかという點でございまするが、この點につきましては、現在五トンから二十トン未滿の船舶におきましても、相當海上を航行しておりますものもございますし、海上の特性におきましては、大體この船員法で賄つて差支えないものである、かように考えまして、この第一項を置いておる次第であります。ただ五トン以上で相當小型の船で、その特性に基きまして、若干例外を設定する方がいいというものもあると存じまして、そういう場合におきましては、各條章において例外を設けておるような次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=29
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030・布利秋
○布委員 私はこういう條文が海運界を衰弱させる一つの條件になる、こう考えたからそういう質問をしたのでありますが、ただいま申された除外例というのが私にはさつぱりわかりませんのでちよつとお教えをいただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=30
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031・大久保武雄
○大久保政府委員 總トン數五トンから二十トン未滿というのは、大體において帆船、機帆船にその例が多いのであります。そこで帆船、機帆船に關しましては、各章において除外することが必要であると考えられますことは、たとえば勞働時間制とか、その他いろいろな場合においてその例外を設けている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=31
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032・布利秋
○布委員 船員保險法とこの法案とは同時に竝行させていただきたいと私どもは思つておりました。また厚生省の方の説明を聽いてみましても、竝行して進めたいという責任ある言葉も私は承つております。それであるのに、船員保險法は後囘しなのか、また出ないのかその點私にはまだわかりませんが、一體私のもつているこの質疑に對してどう囘答していただくか、つまり船員保險法と本法案とどうして竝行して一緒にやつていかないか、一方を後囘しにされるかという點です。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=32
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033・大久保武雄
○大久保政府委員 船員保險法とこの法律の關係は、この新しい船員法が勞働保護法でありますので、この船員法がその基本であります。この船員法にきめられました災害補償の實施を船員保險が裏打ちをしていく、こういうことに相なつている次第であります。船員保險法の改正もこの議會におそらくは提案されるだろうと期待しておりますが、萬一船員保險法がこの議會を通過しないという場合におきましては、この災害補償の實施は、船員保險法と見合つて實施をするということもできるようにこの新しい立法の中に規定してあるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=33
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034・布利秋
○布委員 この法案の條文を調べてみますと、災害補償というものは經營者側が莫大な犠牲を拂うようにできているように感ぜられますし、その犠牲に對しまする負擔が、限度のない負擔になりはしないかという心配が起りますが、これは心配せぬでもよろしいものでございましようか、その點をお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=34
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035・大久保武雄
○大久保政府委員 船舶所有者は船員保險法の實施によりまして、みずからが直接補償責任の實施をやるということにはなりませんで、掛金を拂うことによりまして、保險自體がこの災害補償を擔保することになつております。無制限に船主側が義務を負擔するというような事態は起らないかとかように考えております発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=35
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036・布利秋
○布委員 今のお答えで無制限でないということははつきりいたしましたが、それに附隨して考えますと、國際勞働條約の方の規定から見まして、どうもその規定以上に引上げてあるという感じをもつのでありますが、これは私の誤りであろうか、その點を一つお伺いします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=36
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037・大久保武雄
○大久保政府委員 國際條約に比較をいたして見ますると、災害補償につきましては條約を上まわつておるのでありますけれども、結局これは保險の掛金によつて船主はその義務を免れるわけでありますから、また保險の經營もそれによつて成り立つことが考えられるわけでありまするから、一應この程度で實行するのが適當ではなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=37
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038・布利秋
○布委員 こうした觀點の違いまする點、意見の相違から質疑應答を繰返してみましても、結果は同じことになりまするし、また小さい問題ならばたくさんありますけれども、これは預かりといたしまして私どもの希望は、現在の敗戰のどさくさまぎれに、取急いでかような法律としなければならぬという筋合がないものである。もう少し研究して靜かにあと一月か二月かすれば、また法律案として完全なものを出すことができるのでありますから、それまで愼重審議されて、しかる後に出していただきたい。できることならば私はこれは先の樂しみのために撤囘してもらう。そう考えておることには變りはないのであります。その點について政府の御意向は、私とは正反對であろうけれども、若干理に落ちる點はありませんでしようか。そこを今ひとつお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=38
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039・有田喜一
○有田政府委員 昨日布さんにお答えいたしましたように、この船員法の改正は新憲法の精神によりまして、ぜひとも憲法施行前にこの改正を終りたいと考えておるのであります。なお一方勞働基準法と裏腹をなす關係もありまして、勞働基準法もわれわれと同じ立場によりまして、目下この議會において審議を進められておるような次第でございます。陸上勞働者が新憲法の精神によつて、新しく出發するのに、ひとり海上勞働者のみが取殘されておるということは、日本として、殊に將來日本の發展は海よりという大きな見地より見まして、船員法を後囘しにするということは、政府といたしましては絶對考えておらない次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=39
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040・布利秋
○布委員 長官の政治的な觀點からお答えになつたそのことには道理もあります。強いてそれに反對するわけでもありません。それで大きいと思いまする點は大體において私はお伺いをしました。小さい點はまた他の委員からもお伺いしましようしいたしますから、これで一應私の質疑を打切ることにいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=40
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041・中川重春
○中川委員長 岡田勢一君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=41
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042・岡田勢一
○岡田(勢)委員 私は先般本會議におきまして、本法案に對して總體的の若干の質疑をいたしたのでありますが、その趣旨に則りまして、本委員會で若干の質問をいたし、また一部修正の意見を申し上げたいと思うのであります。まず本法案の全法文から考えまして、先日もお尋ね申しましたように、この法律はいかなることを希求し、また何をなさんとするのであるかという根本精神が明示されねばならぬと思うのでありますが、先般も増田運輸大臣から、法案全體を通じて人道的のヒユーマニズムが盛りこまれておるのであるとのお話がありまして、私もそれには大體肯定できないわけでもないのでありますけれども、またもうひとつには、あるいは數百にわたる國家のいろいろの法規の中に、その目的を前書きせんならぬというようなことは、今日まで類例がないというようなことにもなるとも思うのでありますが、しかしながら今日はこの戰後の日本の再建、言いかえますれば國始まつて以來の大きな切りかえでありまして、そこから出發する。殊に昨年は畫期的な新憲法が制定いたされたというような關係から、この新憲法においても前文というものが明示されておるのでありますから、私の考えとしては簡單に本法律の第一章の初めに、この法律を運用していく心構えと申しましようか、その目的の精神を明示していただくことがよいのではなかろうかと考えるのであります。その理由は先ほど申し上げましたほかに、今日は戰後の國民思想の混亂と申しましようか、民主主義の行過ぎ、誤解と申しましようか、今日のこのいろいろの社會情勢を見ておりますと、どうも民主主義と申しましても、勤勞階級あるいは勞働者の權利を擴張するというようなことが非常に行過ぎておるのではなかろうか。そうしてもう一つは、終戰後今日までの間に起りました數百件の勞働爭議などから考えましても、何か今日では資本家と勞働者の對立ということが、一番にわれわれ日本國民全體の頭に植えつけられていきつつあるようでありまして、何をいたしますにも、オフイスの事務をとりますにも、あるいは電軍に乘つておる乘務員、あるいはまた官廳の方方にいたしましても、今日國民全般的に勞資の對立というようなこと、そういうことにのみこだわり過ぎまして、まことにぎこちない、融和性のない、温かみのない、とげとげしい國民感情をはなはだしく釀成してしまつておりまして、われわれ日本人の社會生活の上から考えまして、人間といたしまして、これはまことに不幸なことであると言わなければならぬと思います。一つはそういう考え方から見ることでありますし、また本法律が今日のそうした社會情勢下におきまして、何か打算的な、資本家と勞働者とのししのわけ前をこの法律によつてきめていくんだという印象を受けますことは、この法律の終局の目的に反することになると思います。かたがたこの法律に人間味のある、温かみのある、潤いというものを法文全體に對して躍動せしめるということは、これは必ずしも各條項全般に通じまして、さようなことを書きませんでも、總則の初めにあたりまして、簡單にこの法律の精神とすべきものをいれるということにいたしましたならば、終局の目的竝びに勞資の協調に對する心構えであるか、そういう非常にやわらかいものが注文全體に浮んでこようかと思われますので、その意味でこの法律の冒頭に、第一條の前に、新憲法の精神に則り平和日本建設のため勞資協力、國民の輿望にこたえて、海運産業の復興を希求してこの法律を制定するとか、もつといい文章もあるかと思いますが、さような意味のことをお書き加えになつたらどうであらうかというふうな意見をもつておるわけでありますが、この點につきまして當局の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=42
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043・有田喜一
○有田政府委員 岡田さんの御説傾聽に値すると思うのでありますが、その目的を最初に書くということは、一つの立法技術論として成り立つ次第でありますが、私の考えといたしましては、ともかく船員法全體にわたる條章よりみまして、その目的がはつきりにじみ出ておるのでありますから、必ずしも目的を特に書く必要もないのではなかろうかと思うのであります。殊に船員法は御承知の通り、明治三十何年でしたか、相當古くから制定されておる法律でありまして、船員法の精神というものは爾來わかりきつておるのであります。ここに新らしく勞働時間とか、あるいは有給休暇とかいう最近の新事態に即應する條章がはいつておるのであります。その理由は本法案の提案趣旨にもはつきりうたつておるのであります。必ずしも目的の條文を書くということにしなくても、御諒解ができるのじやなかろうかと思うのであります。
次に勞資對立の問題でありますが、これは今の時代の流れにおきまして、岡田さんのような心配をすることは、私もその一人であります。しかしさいわいと申しますか、今日の各海上勞働者の行き方としましては、もちろん自分の生活擁護のためにいろいろと要求のあることは事實でありますが、しかし今日の海員組合に流れているところの根本思想と申しますか、その傾向と申しますものは、いわゆる日本の海運榮えてはじめてわれわれ海上勞働者あり、海員と使用者と相手を携えて日本の海運再建をはかる、かような固き組合の精神と申しますか、さような目途のもとに組合がますます健全に進みつつあつて、今日の海運界におきまして、さような勞資對立というようなものが極端に出ていることは、私は考えないのであります。さようなこともよく御諒承願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=43
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044・岡田勢一
○岡田(勢)委員 長官の御説明を一應承つたのでありますが、私は昨年制定されました新憲法の中に「すべて國民は、勤勞の權利を有し、義務を負ふ。」こういうことが制定されてありますことは、まさにその所を得ていることであろうと、こういうふうに解釋いたされるのであります。昨年來の各種の爭議が起りましたその實績をずつと考えてまいりますと、どうも何か申しますと資本家々々々というて、敵對呼ばわりの代名詞のごとくに使うのであります。そうしてこれは勞働組合などの中におきましても、殊に年の若い人たちが、そのもつております血氣と勇氣に任せまして、そうして何か對立的なものをもつて敵視をして攻撃をするというふうな傾向がはなはだしいと思われます。今日の日本の經濟情勢なり機構から申しますと、資本家々々々というて、一部の極左分子の方が攻撃目標にいたしておりますけれども、實は今日におきましては、各種重要産業は國民全體の代表が責任をもつてやつている、言いかえると政府がやつておるのが多いのでありまして、財閥の解體などによりまして、獨占資本家のはなはだしいものは排斥されたわけでありますから、資本家々々々と申しますけれども、この相手は國民全體という意味になるのでありますから、もちろん一部の階級を形成しております勞働階級の人たちも、ひとしく日本の國民の一部であります。その日本の國民の一部の階級、あるいはグループの人たちが、國民全體を相手にいたしまして鬪爭をやる。こういうような行き方になるわけでありますから、どうも何とかしてさような鬪爭精神と申しましようか、對立意識というか、これは機會を得ることに緩和をしていつて、和やかな社會情勢と國民感情をつくつていかなければいけない。そうでなければ平和日本の正常なる建設は容易に進んでいかない。こういうふうに考えますので、やはりでき得れば、今長官の言われましたように、法の全體を通じて讀めば、この勞働協調あるいは目的がにじみ出ていると言われましたけれども、しかしやはり權利義務のことばかりを規定しているのが法律でありますから、何と申しましても無味乾燥は免れません。何か重復するようでありますが、もう一度御當局の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=44
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045・有田喜一
○有田政府委員 同じことを繰り返して申譯ありませんが、立法技術論としてお話のようなことを書くことも一つの方法でありますが、しかし必ずしも目的を書かなくても、全體を通じてさような精神を入れ、しかも本法案の提案理由にさようなことがはつきりしておれば、私はその目的を書かなくてもいいのじやないか、かような考えをもつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=45
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046・岡田勢一
○岡田(勢)委員 次に先般もお伺いいたしました船長の權限でありますが、この船員法では、船長の指揮命令權としまして、第七條に「海員を指揮監督し、且つ、船内にある者に對して自己の職務を行うのに必要な命令をすることができる。」と、ただ簡單にこれだけのことを規定しておられるのでありますが、多數の人命あるいは貴重な多くの財産を責任をもつて管掌し、國の監督を離れて、長い期日にわたりまして船員または船内にあります者に對して、統制と秩序を與えていきながら、特殊な危險を冒しまして、その任務を果していかなければならぬ船長という重責に與えられました職權の規定としては、少し私は簡單に過ぎはしないかと思うのであります。また第三章紀律の各條におきまして、船長の海員に對する懲戒權を認めまして、第二十一條以下二十八條まで強制權を附與しまして、船内秩序の維持、危險物に對する處置、強制下船などについて規定し、なおまた同章二十九條では、必要ある場合は行政聽に援助を求め得ることを規定してはありますが、これらの強制權の行使はあまりにも民主主義という今の考え方に遍重しまして、處置としては必要な手段をなし得るというのみであります。懲戒權の行使も第二十四條におきまして立會人の意見を聽くことを必要とするというだけで、これは薄弱に過ぐるのではなかろうかと考えられます。これらの條項は、法としましては相當立派な字句に見えるのでありますけれども、その實行力に至りましてははなはだ弱いと言わざるを得ません。近頃の船舶に見られますような無秩序、あるいはまた過去における不良船員の行爲、あるいは將來に豫想せられる勞働爭議の際における下剋上的の行動などを考えますならば、船長に與えられましたこれらの權限は、まつたく空文になるような場合が起り得ると思います。刑事訴訟法の二百五十條では船長は船内における犯罪に對して司法警察官の職務を代行するとありますが、この際船員法で、船長に對して、必要ある場合には警察權を附與するという規定を設けまして、できるならばこれにピストルでも持たせる。そうしてその身分は待遇官吏のようなことにでもしてもらいたいといふ希望をもつているわけでありますが、それに對してどういう御意見でありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=46
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047・有田喜一
○有田政府委員 船長の職務權限につきましては、大體現行法通りでありまして、多少異なりますところは、懲戒におきましていわゆる監禁、あるいは減俸というようなことをなくしたことと、強制乘船をやめたというような點であります。なぜ懲戒で監禁を除いたかと申しますと、これまた新憲法の精神によりまして、あまり人權蹂躙的なことは差控えた方がいいだろうということと、また強制乘船につきましては、昨日も布委員にお答えしましたごとく、一旦雇入契約をして船に乘らぬという場合、その海員としては實にふしだらなことであることは明らかでございますが、といつて嫌だという者を無理に乘せましても、ただ定員を滿たしたということだけで、航海上の全きを期することができないのであります。むしろそういう者は無理に乘せなくても、一方船が即發できるところの措置を講ずる方が實際的でもあり、かつ適切でなかろうか、かような見解に基きまして、強制乘船ということは省きました。かりにそのために一人の欠員ができたといいましても、一方便法を講じまして、欠員のまま航海ができる、次の港において補充するというような段取りをしてやるところの措置を加えまして、船の出帆に差支えがないようにしていきたい。かように考えております。それから警察權をもたしたらどうか、それを船員法に盛つたらどうだ、こういうお尋ねでありますが、警察權のことは御承知の通り刑事訴訟法に盛るべきでありまして、その立法體系はやはり船員法に扱わずして、刑事訴訟法系の法律に扱つた方が適切であろうと思う。それで今囘船員法が改正せられましても、依然として司法警察權は船長には與えられておるのでありまして、それは先ほどお話がありましたような、刑事訴訟法の二百五十條を基礎といたしまして、「司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ關スル件」という勅令が出ておるのであります。その勅令に基きまして、船長は司法警察權を行使することができる。この點も現行法と少しも變らないのであります。御心配のような點は、それによつて解消できるのではなかろうかと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=47
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048・岡田勢一
○岡田(勢)委員 大體まあ首肯できる御答辯でありまするが、船員の、好まない者あるいは下船したい者を下船させないという場合、いやの者をむりに乘せるというようなことは、もちろんこれはすべきでないのでありますから、それはよくわかつておりますが、またもう一つ、新憲法にも基本的人權を尊重しなければならぬということになつておりますので、たとえ見習い、コロツパス、ボーイにいたしましても、その人格を十分に尊重いたしまして、これを取扱わなければならぬ。これは私も長官のおつしやられた以上によく首肯のでき、また信じておるところでありますが、ただ船員というものは、遠洋航海の船になりますと、日本を出帆いたしまして歸つてまいりますまでの間、三箇月あるいは六箇月、長いのになりますと一年餘のも歸つてこられない。そうして單調な海上におきまして、何ら家庭的の潤いというようなものがなくなりまして、まことに毎月の生活が殺伐なものになつてまいります。人間の癖といたしまして、妙な例をとるようでありますが、この家庭的の潤いと申しましようか、女の人に會わないで男ばかりの殺伐な生活が半年も、あるいはそれ以上も續くということになりますと、氣分が非常に荒くなりまして、これはよく船、あるいは沈沒船引揚げに出張でありますとか、あるいは出征の場合に、異郷の土地で長く大勢の人をつれて行つてやりました人の御經驗には、明らかにあるのでありますが、何か申しましたらすぐ凶器をもつて、ちよつとのことでも猛り立つて、凶器をもつて渡り合う、切つた、はつた、人殺しをやるというふうになりがちであります。そういうふうなことから大きな事故が起るわけでありまして、その實績が今日までたくさんに記録されているのであります。それは船員生活のまことに氣の毒な境涯でありまして、私らも數十年の經驗によりまして、この船員の氣の毒な境涯、生活、心理というものにだれよりも最も同情するものであります。それでそれらに對する各種の精神的の保護を講じてやらなければならないのでありますが、一面におきまして、そうした氣分から起りました事件のために、有用なる技能者に缺員を生じましたり、あるいはまた途中の港で、代員を得られない所で下船してしまうというようなことが、從來も往々起つておりまして、そのために船を停船しなければならないというようなことが起るのでありますから、それでやはりその氣分なり、境遇には非常に同情して、これらの慰安保護施設を講じねばいけないのでありますが、取締りとか何とかいいますことは、これは相當嚴重にやつていかなければ、船そのものの使命を果すことができないことになります。いわんや船は御承知の通り日本内地だけのものではありませず、世界の各國の外洋に對して進出していきませんならぬ性質のものでありまして、かりにアメリカ船でサンフランシスコ日本間が、たとえば一トンいくらで運べるものが、日本の船ならその三割も四割も高くなければ運べないということになりますると、海運はなり立たない。從つて日本の建設はできていかないということを考えまするならば、これはやはり相當な監督と取締りができ得るということを一方に嚴格に規定しておきませんとだめであると思われます。もちろんデモクラシー、デモクラシーと申しますが、御承知のように海運というものは先進國であるイギリスから主として起つて、發展してまいりましたもので、日本の海運も、私はおそらくイギリスの海運のフオームによつて今日までやつてきていると思う。イギリス、アメリカの船舶に見ましても、たくさん人の乘る大きな船に行きますると、嚴重なる檻房がつくられてありまして、なかなか頑丈なカルボスがつくられてありまして、手錠も置いてあれば銃器も置いてあります。監禁するようにもなつておりますが、われわれはそういうまことに忌まわしい話はしたくないし、また期待するものでは決してありませんが、やはり船が大洋の中におきまして、あるいは外國の港におきまして、正常なる、良好なる状態のもとにその任務を果すということでありませんと、生命財産の危險もわずかなことから生ずるというような考え方から、私はもう少しこの船長の權限なるものを強化したことをただ先ほど長官も言われました刑事訴訟法の條文によるだけではなくして、何らかもつと強化した一文がなければならぬと思うのでありますが、もちろんこれは基本的に人權を尊重しないとか、無用に船員をいじめるとかという考えでなくして、そういうふうにしたいと思うのでありますが、御意見を承りたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=48
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049・有田喜一
○有田政府委員 船内において潤いのある生活ができるように、同時に船内紀律をしつかりきめて、危險の生じないような措置を講ずる。御趣旨まつたく同感であります。かるがゆえにこの船員法におきましても、船長の職務權限ということを從來の現行法通りはつきり明定しておるのであります。また危險に對する措置といたしましては、この法律にも明示しておりますように、第二十五條、二十六條、二十七條にもはつきりしておる。しこうして船員がもし犯したようなときにおいては、先ほど御説明しましたいわゆる司法警察官としての職務を行うことができる、岡田委員のおつしやる通りの仕組になつておるのであります。ただ強いて言えば、船員が怠けた、それが今まで懲戒におきまして監禁というようなことができたのが、今度はやれない。これは岡田委員も御承知の通り、新憲法の精神によつたのでありまして、まつたく岡田委員の御説の通りに新船員法の構成がなつておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=49
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050・岡田勢一
○岡田(勢)委員 大體私の意見と長官も御同感であられるようでありますが、第二十四條に船長が海員が惡いことをしましたときに懲戒をしようとすると、三人以上の海員を立ち會わせて本人及び關係人を取り調べた上、立會人の意見を聽かなければ處分方法を決定することが、できぬ、こういうことが入れられておりますが、これは私は海員を酷な取扱いをしようという考え方でなく、先ほど來申し上げましたような使命の達成であり、一つには海員をして非常に間違つた犯罪を起さしめないとか、あるいは將來に對して自己の身分、あるいは信用、人格を大なる破壞的失墜をせしめないという親心のために、この二十四條の立會人がなかつたならば船長が處置ができない、立會人の意見を聽かなければならないというようなことは、これは弊害が伴うものでありまして、非常に船長の權限を弱化する重大影響があると思うのでありますが、この點についていかがお考えになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=50
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051・大久保武雄
○大久保政府委員 船長は一般の長でありまして、その尊敬の象徴でなくてはならないと考えますので、その船長の立場からいたしましても、海員の輿論というものは十分察知しておるものと存じまするが、一應ここでは船長の適當と認める三人の海員を立會わせることによりまして、海員の氣持というものを汲みとりながら、船長が懲戒の判斷を決しよう。かような次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=51
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052・岡田勢一
○岡田(勢)委員 船員局長のお話一應承ますが、私はどうもこれは工合が惡いと思うのであります。なぜなれば、船長は監督者でありまして他の海員、特に屬員の方は監督される立場の人であります。人間の本能から言いまた人情から言いまして、やかましく言うて、能率をあげるために仕事をぎちぎち言うて任務を果させるということは、あまりいい感じは受けないのであります。その監督者、指揮者が任務遂行のために、嚴格にその職務の遂行を慫慂するということは、これは適當なことでありましても、言われる方の立場になりますると、どうしても口やかましい監督者とか、船長であるとかいうふうにとりますのが、これは否定できない人情の常であります。どろぼうにも三分の理窟と申しまして、どろぼういたしましても、盗んだ方は何か理窟をつけまして、全面的に自分が惡いということを言わないで、いくらかよい部分があるのだと言うのか、これが社會の常であります。殊に今度はデモクラシーということで、私の口から申しますると、若い者とか、ずつと下級の勞働者の方面には、少し行き過ぎて考えまして、監督者とか、上の者とか、經營者に對しましては、言いたい放題のことを言うてもいいものだ、自分の任務を盡さなくても構わない、自分の意思の赴くままに、でたらめの判を押してもいいものであるというふうに、はき違えてしまつておるものが相當一部にあると思うのであります。まして利害關係は、まさに船長とその使用されます船員の間には反對しております。くどいようでありますが、船員の方では勤務時間も短いのがよろしい、まだ給與もより以上多い方がよろしい。それから食事もうんとよいものを食べさせてもらつた方がよろしい。そうして過ちをしたとき、小言を言はない方がよろしい。ちよつとよいことがあつたときには莫大な賞與をくれなければいかん。そういうふうに考えるのは、これは通有性であります。そこで私はやはり、イギリスの海蓮が發祥いたしまして以來今日まで、何も昔の百年あるいは二百年前の人たちが、その時分の指導階級あるいは船の幹部、船長、あるいは士官が、決して私はでたらめに海運のフオームというものを今日までつくり上げてきたものでないと思う。長い間に洗練をされ、また過失を繰返し、過失、失態による體驗から改正され、組みかえられまして、ようやく完全な世界的な船員法というものが今日でき上つてきておると思うのであります。そこで全般の考え方といたしましては、私は何も共産黨であるとか、最左翼思想に反抗せんとしてさようなことを申しておるのではありませんが、今日何かはやりものみたいになつておりまする、デモクラシーの行過ぎということにとらわれるということが、立法をいたします場合の一番あぶないことであつてわれわれが注意せなければならぬことじやなかろうか、こう思うのであります。それで先ほど申し上げました實際上の體驗、いわゆる監督者と監督される者の利害の對立、それからまたもう一つには、私も相當に過去に經驗をもつておるのでありまするが、人間というものは、先ほどのどろぼうの話と同じでありまして、自分がその任務をするために苦しみますとか、あるいは上長から叱られましたり何かして、腹が立つとかいうときには、自分が仕事をサボることをすぐ考えます。ところが自分が仕事をサボるということは、大多數の者が正常に職務を盡しておるときに、自分だけがサボるとか、目立つて休むということになりますると、これは自分が惡いことが明らかに表面に出てまいります。それで心の中で同僚を誘いまして、同僚の共鳴を得ることに努力を盡しまして、そうしてサボるとか、反抗工作をやるというのが、これは實際なんであります。そういうことにつきましては、賢明な長官も局長も、私はよくおわかりになると思います。そこでこの二十四條の、三人以上の立會人の意見を聽かなければその處分方法、處置が決せられないということは、私は明らかに船長が嚴然としたその重大なる任務を遂行して行くことのできない、大きな障害になると私は思うのであります。それでどちらかというと、私は第二十四條というものを取除いてもらいたいと思うのですけれども、しかしそういうわけにもいかなければ、何らか緩和されてはどうかと思うのです。その點についてもう一度御説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=52
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053・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいまのお尋ね、二十四條の三人以上の海員を立會わせると申しますことは、船長はやはりこの點につきましては獨自の判斷ができる次第でありまして、三人の意見に拘束されるわけではないのであります。そこで船長は自己の一船の長としての職務上の地位に基きまして、三人の意見を聽くことはありますけれども、これに拘束されることはない。かように解釋いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=53
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054・岡田勢一
○岡田(勢)委員 そいう法の精神であるとするならば弊害は割に少かろうと思います。聽かなければならないというだけでありまして、それを參酌して採決をするのだというのでない。ただ聽くだけだ。それならいいと思いますが、往々にしてこの制裁の對象とせられる連中から見ましたならば、大いに三人に理窟を言わして、船長を牽制して、惡いことでも處分をさせないということになりがちであると思います。まあこの運用にあるということになつてまいると思いますから、一應ここらでこの問題は打切ります。
次に第三十條の爭議行爲の點ですが、これは舊船員法の中にも、航海中は爭議をやつてはならないというような規定があつたと思うのでありますが、これはどういうわけでその點を拔かれたのでありましようか。ちよつと御説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=54
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055・有田喜一
○有田政府委員 現行法におきまして勞働爭議に關する規定は第六十條にございますが、航行中ということは現行法にもないのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=55
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056・岡田勢一
○岡田(勢)委員 さようでありますか、それでは私が思い違いをしておりました。しかし航行中という一句を入れてもらつたらどうかと私は思うのであります。現行法にはなかつたのですが、ちよつと思い違いをしておりました。航行中ということを入れたいと思うのですが、この問題は審議會においても相當に議論になつたように私は聞いております。私も委員に委囑されておつたのでありますが、いろいろ多忙でありますし、缺席をいたしまして十分にお務めができなかつたのであります。大體前々から御説明もありましたように、この法案のまとまりますまでは、各地、各港灣で公聽會などが盛んに催されまして、それを參考にせられましたことはまことに結構でありますが、どうしてもこのごろの思想の流れ、あるいは勤勞階級が強くなつております今の社會の流れに押されまして、私はやはりこの公聽會とか、審議會におきましても、相當勞働者側の強硬なる意見に遇いまして、押されてしまつたのではないかと思うのであります。しかしさようなことは、どこをつかまえて言うかということになりますから、少し強く論爭するわけにもまいりませんか、三十條の中に、航行中という句を入れないということについての御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=56
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057・有田喜一
○有田政府委員 この爭議制限の規定はむしろ公聽會の意見を尊重して入れたのであります。途中の過程におきまして航行中という言葉があつたことは事實でありますが、いろいろと論議の結果航行中ということを入れるのは、結局人命もしくは船舶に危險を及ぼすから、航行中に爭議をやつては困るのだ。こういう御主張であつたので、それなら人命もしくは船舶に危險が及ぶときには、これをなしてはならないということがはつきり命令されておるのであつて、これによつてカバーできるから、航行中ということにむしろ入れない方がよかろう。しかも現行法におきましても、六十條におきまして「左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テ船員が勞働爭議ニ關シ團結シテ勞務ヲ中止シ又ハ作業ノ進行ヲ阻害シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス、一、船舶ガ外國ノ港ニ在ルトキ、二、人命叉ハ船舶ニ直接ノ危險ヲ及ボス虞アルトキ、三、船員又ハ其ノ代必者ガ相手方ニ對シ爭議事項ニ關シ交渉ヲ開始シタル後一週間ヲ經過シ且二十四時間前ニ豫告ヲ爲シタルニ非ザルトキ」ということが書いてあります、この三の條項は、勞調法の審議會におきまして、現行法から見ましても、航行中ということを入れる必要はない。かような結論になつておるのでありまして、これは決して使用者側が勞働者側に壓迫されたというようなことはないのであります。私の記憶が間違いなかりせば、ここにおられる米窪委員もその當時會議に列席されておつたが、滿場一致今申しましたような解釋に可決されたように記憶しておるのであります、法律解釋の仕方によりまして、多少修正意見がありましたが、その後今申しましたような解釋によつて異議がないということで、さような結論になつたように私は記憶しております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=57
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058・岡田勢一
○岡田(勢)委員 審議會におきまして意見一致で御決定になつたそうでありますが、これは私は今長官が言われましたが、人命、もしくは船舶に危險が及ぶときという意味のなかに、航行中ということが含まれるのではないか、こういうお話だと思います。しかしやはり法律というものは、はつきりすべきことははつきりしておかなければいかぬのであるから「人命もしくは船舶に危險が及ぶようなとき、または航行中」ということを入れても、ちつとも差支えないように思うのでありますが、こういう場合がかりに考えられると思うのであります。いろいろ對立抗爭が、あるいは感情的になり、激化しましたときには、船員が團結して爭議にはいる。その場合船主あるいは積み主、あるいは政府が、その船が目的地へ著くことが遲れるとか、あるいはまたその船に事故が起るということになつたなら、金錢にかえられない、辛抱のできない場合が往々にあるものであります。あるいはまた莫大に數千萬圓、數百萬圓というような損害が起るというよるなことがえてしてあるものであります。そういうようなときに、たとえば太平洋の中で爭議を起しまして、それは人命及び船舶に危險が及ぶものなりと解釋いたしまして、船長がこの爭議の停止命令を出し、あるいは船主からその停止方を無線で言うてやりましたところで、それはそうじやない、ここでいくら浮流しておつたところでちつとも危險は及ばないのだ、危險がないからわれわれは爭議をするのだということで、もし天候によつて一箇月でも一箇月半でも、あるいは季節等の關係でしけが來ないということになれば、食糧の續く限り、水の續く限り、いくらでも浮流しているのだということになつたならば、そのことによつて無理な要求でも何でもどうしても聽かなければならぬ。目的地の港へついてからの爭議ならば、あるいは總下船をしてもらつて、その目的の荷物をどうするということもありますが、海洋中においてそういう爭議を起されたら、手のつけようがない。そこで私は法律というものは憶測やあるいはまた文章とか何とかいうことにこだわりまして、航海中などと入れなくても、人命または船舶に危險が及ぶときというような意味も含まれてくるのじやないかと言われるかもしれませんが、考えてからその意味を發見しなければならぬというような不明瞭なことで無理につくるということは、私は立法の考え方から言いまして不適當だと思います。だから航海中という字句をはつきり入れてもよろしいのである。惡くはない。こういうふうに私は思いますが、いかがでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=58
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059・有田喜一
○有田政府委員 私は勞働爭議というものは制限するばかりが效果のあるものではないと思います。やはり許すべきものは許して、堂々と主張すべきものはさせたらいいと思います。ただこれに對する影響が人命とか、船舶に危險が及ぶようなときは困るというのでありまして、かようなおそれのないときに、必ずしも爭議をしてはいかぬ、使用者側も困るから絶對爭議をしてはいかぬ、かようなふうに法律で縛るということは、かえつて弊害の方が多いのではないかと思う。今申し上げたように人命または船舶に危險が及ぶというようなところではつきり線を引いて、そう縛らない方がよくはないかと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=59
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060・米窪滿亮
○米窪委員 今の岡田君の御質問に關連してお伺いいたします。第三十條が相當問題がありますが、ここにある爭議行爲という意味ですが、爭議行爲というものは、必ずしも罷業だけじやない。たとえば要求書を提出したということが爭議行爲に含まれるか、どこからどこまでがこの三十條の法文で爭議行爲の御解釋の中にはいるのか、その點をお伺いしたいのであります。要求書を提出した程度でも爭議行爲にはいるのか、その要求が通らないというので船を止めるとか、罷業をするとかいうこと、もちろんこれは爭議行爲になると思いますが、要求書を提出したということも爭議行爲と御解釋になるのか、その點をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=60
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061・大久保武雄
○大久保政府委員 ここに申します爭議行爲は勞調法第七條の爭議行爲と同一でございまして、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他勞働關係の當事者がその主張を貫徹することを目的として行う行爲及びこれに對抗する行爲であつて、業務の正常な運營を阻害するもの、かように考えているのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=61
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062・岡田勢一
○岡田(勢)委員 今米窪君から言われましたが、この範圍でありますが、爭議行爲ということになりますと、罷業も意味していることになりますから、やはり私は法文をつくる建前から申しまして、賃金値上の交渉とか要求書を提出したとかいうことを、職務を離れて罷業行爲に入るということ、そんなことはこまかくわけられないと思います。やはり海運というものが特殊的な仕事であるという考え方からいたしまして、われわれこれを期待することではないのでありますけれども、往々にしてさようなことが起る場合があると思います。前の歐州戰爭末期の大正八年ごろに、海運爭議がたくさん起つたのを私どもは知つておりますが、激化してきたら、これはもう命がけでやるというように、感情的にも非常に惡化するものであります、また、からだの危險とか何とかを踏み越えてやるというようになることは、先般の二、一ストの起ろうとする時の状態によつて、政府の方でもよくおわかりのことと思います。われわれは、そういう破局に導くことを事前に防止しまして、そうして勞資の圓滿なる解決にもつていかなければならぬと思います。もし大洋の中で、食糧のある限り船を漂流させておきながら、爭議行爲にはいるということになりましたならば、暴風さえなければ、生命に危險がなければ、あるいは太平洋の島嶼に船が漂着するとか、日本の沿岸に坐礁するとか、そこまでいきはしないかということを恐れるのであります。先ほど長官のお話では、むやみに制限するのが法の行き方ではないと言われますけれども、そんなかんじんなところはひとつ制限をしておかぬことには、二、一ストのように、何萬人括られてもいいのだ、射殺されてもいいのだというように、激化した以上になるのでありまして、大きな船舶が巨大な積荷を積んで、國家の財産、國家の公器であるこれらの物を、故意に、乘組員の人命にさえ差支えなければというので、あるいは日本海の沿岸、九十九里濱、鹿島灘などに故意にぶち當らせて、自分達が上るということになつたら、大變なことになると私は思いますが、この點についてどうお考えですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=62
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063・大久保武雄
○大久保政府委員 爭議行爲を制限する場合におきましては勞調法の三十六條の精神によりまして安全保持の施設という一線があるわけであります。あくまでこの安全施設の限界というものを法としては守る必要があると思います。この一線はやはり人命、身體に危害を及ぼすことを豫防するという精神に出ているのであります。そこで爭議行爲を制限する場合におきましては、何らか一つの安全を保持するという一線をどうしても法としてはもつ必要がありはしないか、かように解釋されるのであります。勞調法の三十六條の具體的な内容は各特別法によつてきまるので、あるいは鑛山におきましては鑛山法、工場におきましては工場法、そういうところできまりますが、船舶におきましては、船員法によつてその安全の一線はどこかと申しますと、それは人命もしくは船舶に危險が及ぶようなときである。かように一線をひいた次第でありまして、ただいま御説明のしけのあります太平洋を漂流するという場合におきましては、これは解釋上海員の安全に影響がある、かような考え方がとられ得るのでなかろうか、かように考える次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=63
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064・岡田勢一
○岡田(勢)委員 そういう御説明であつたら大體首肯できると思うのでありますが、先ほど私の質問の理由につきましては、此處に航海技術者の大先輩米窪代議士がおられるから、よくおわかりでありますが、これは前に遡りますが、ちよつと一つだけ申し上げたいのであります。大體今の大久保局長の御説明の危險が及ぶようなときという場合には、爭議行爲を停止する何らかの強力な指令が發令されるということになつておるのであるかどうか、それをあとから御説明願いたいのでありますが、そういうことにも關連いたしまして、今言われました安全なる状態、正常なる仕事の目的を達することに違反する行爲はあつてはならないというような精神、この精神をにじみ出させますためにも、私が冒頭に言つた、精神的の簡單なる一條をいれてもらつた方がいいということになると思います。そこでそういうようなときには、間違つて感情に激しまして、大洋の中で爭議をもし起しました時分に、強力にそれを停止せしめる法の根據というものが何かありますでしようか、御説明を願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=64
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065・大久保武雄
○大久保政府委員 船長の船舶の安全に關する諸般の命令權はすべてただいまお話のような危險のある場合に對しては、その豫防に對して一切の發動をするわけであります。あるいは自己の船舶を救い、あるいは他の遭難しておる船舶を救助する、こういう際におきまして、船長の發する職務上の命令に違反しました船員に對しましては、それぞれ本條の罰則によつて處斷をされることに相なつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=65
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066・岡田勢一
○岡田(勢)委員 罰せられるとおつしやるのでありますが、處罰をいたしますことはすぐにはできないことでありまして、事件の起りましたそのあとでなければ處罰はできないと思うのでありますが、もう一度その點を詳しくおつしやつていただきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=66
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067・大久保武雄
○大久保政府委員 紀律の條章によりまして、船長は生命もしくは身體または船舶に危害を及ぼすような行爲をしようとする海員に對しましては、その危害を避けるために必要な一切の處置をとることができることになつております。この結果、あるいは現行法にあります拘束というような文字を今度は削つておりますけれども、たとえて申しますれば、そういうようなこともできる、かように解釋されます。船長は必要なる防止の措置を講ずることができる、ただ問題は船は陸上の工場と違いまして、船長初め船員が一切の運航上の安全の責任を背負つておるいわば危險共同體であります。そこでこの船員から危險共同體の公益を守るという觀念を取去りましたならば、船舶ほど危險なものはないのであります。どうしても船員の自發的なる勤勞と、公益を守るというこの精神を向上することによりまして、船の安全というものを事實的に維持していくことこそ、この船員法のねらいでなくてはならぬ、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=67
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068・岡田勢一
○岡田(勢)委員 そのねらいなりまた法の精神なりはよくわかりますが、どうしても物事というものは、對立抗爭が起りました場合には、法律通り、規定通り、理窟通りにはまいらないのでありまして、われわれはやはりこの法をつくりますための考え方といたしましては、そうした事故とかあるいは損害とか、犯罪とかいうようなものを未前に防ぐために、そういう忌まわしいことが起らないために、法律をつくらなければならぬということになると思います。それでそういうためにもやはりはつきりと明文で現わしておかなければならぬのではないかと思うのですが、その點一つ……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=68
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069・大久保武雄
○大久保政府委員 この船員の紀律および船長の職務、權限の中に竝べてあります各條文は、すべて航海の安全という一つの公益的な要請に基く規定のみでありまして、この船長の職務、權限および紀律の條章から生れてくるものは、すべて海員に對しまして、ただいま御心配のような場合における海員の責任というものに對して、十分明示せられております。これによつて海員が不當なる秩序違反の處置をすることに對する、あらかじめの豫防が講ぜられているのである。かように考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=69
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070・岡田勢一
○岡田(勢)委員 今局長のお話の、航海の安全を期するためにいろいろの規定が設けてある、こういうことでありますが、爭議行爲は法的に許されたる堂々たる權利でありますがゆえに、やはり對立して利害が相反しました場合には、爭議行爲は起し得るわけでありますから、それならばなおさら航海の安全を期するために、各條項の規定に盛られている航海の安全ということを最低線として、すべての職務、任務を盡していかなければならぬということになるのであるならば、なおさら航海中には罷業とか爭議をやつてはいけないということを——要求するとか交渉するとかいうことだけはよろしいが、罷業とか職務を離れてはいけないとかいうふうな規定が、ここに書き入れられなければならぬと思います。それからもう一つは、船長の命令權、制止權でありますが、やはり爭議、罷業なるものが、今日の合法的な經濟鬪爭手段として認められまする以上、船長の職務に對する執行權、命令權もこれは合法と認められておるのでありますが、職務執行權のために、船長が船舶に危險が及ぶという見解、あるいは航海の安全を期し得られないという見解から、爭議權の發動を停止いたします場合、一方におきまして合法的な爭議權は認められておるのだから、それは船長の命令を聽かなくてもよろしい。あるいは見解において、船舶に今直ちに危險を及ぼさないということで、爭議行爲をとるという水掛論になりましたときは、一體どうするのでありましようか。その點をちよつと……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=70
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071・大久保武雄
○大久保政府委員 爭議行爲の一定の企圖をやめさせることにつきましては、既に爭議調整法がございますが、このほかにこの新船員法におきましても、あるいは行政官廳のこれに對する介入でありますとか、あるいは勞務官の活動等を考えておる次第であります。
それからもう一點の爭議の際の船長の命令權と、爭議の適法性との關係でございますが、適法なる爭議に關しましては、これは法律で認められておる正當なる行爲でありますから、船長の職務權限はそれに及ばない。かように解釋いたします。しかし違法なる爭議行爲でありますれば、これは合法性が缺けておりますので、この場合におきましては、船長の命令權は嚴然として生きている。かように考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=71
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072・岡田勢一
○岡田(勢)委員 どうも大久保さんのお話は、私にはぴんと來ない。私の質問は、不法に出發した爭議であるとか、あるいはこの條文にはずれた、船舶に危險が及ぶという見解のときに、この爭議を強行するというような場合には、行政官とか監督官とかいうようなものの發動ができるというお話でありますけれども、私は、陸上の工場などでありまして、經營者とかなんとかが、すぐ電話一本かけて、行政官、監督官あるいは警察官が駈けつけてくれるところならば、それでよいと思います。しかし洋上におきましてその手が及ばないとき、船長と爭議團と渡り合うておりましても、とうてい警察官も行政官も手が伸びない。しかもこのごろのはやりといたしまして、爭議團は官廳であろうと、上司の事務室であろうと、はなはだしいのは通信機關であろうと、占領してしまいます。船舶の無線電信局なども、爭議が起つた場合には、占領してしまうことが豫想されます。そうしたときに、まことにこれは重大な關係がありまして、行政官、檢察官、警察官、あるいはそうした監督官などの制止とか命令というものは絶對に及ばない。それを一體どういたしますかということであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=72
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073・大久保武雄
○大久保政府委員 私がただいま前段のお答えをしましたのは、一船的な勞働爭議のお尋ねと存じまして、お答え申し上げました。航行中の場合でありますれば、先ほどもお話を申し上げましたように、やはり人命、もしくは船舶に危險が及ぶという一線によつて、違法性の見解がございますので、そこにおいて船長の命令權は嚴然として發動する。かように考えておるのであります。そこでただ現在、あるいは往々の事例におきまして、ただいま岡田委員からお述べになりましたような、好ましからざる事態が絶無ではなかつた。かように考えるのでありますが、かような健全でない、勞働爭議のやりかたにつきましては、これはそのこと事態が違法であることはもちろんでありますが、一日を早く健全なる組合運動の精神を確立いたしまして、船舶のように、船員のみがこれを運航しておる事業態におきましては、どうしても船員の公益の觀念、公益に奉仕するその觀念というものを高揚いたしまして、その安全性を守るということ以外に、眞に船の危險を避ける途はない。かように考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=73
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074・岡田勢一
○岡田(勢)委員 今の局長のお話はすこぶる結構だと思いますけれども、それは正常に船内の秩序が立つておる場合のことでありまして、なんらの爭い、對立がないときのことであると思います。しかしなんといたしましても、爭議行爲をやりますときになりますと、鬪爭ということになりまして、双方が勝つために努力をするということになるのは明らかであります。ましてやその船の監督權を握つております船長は一人でありまして、これに、たとえば士官が加擔いたしまして、助力いたしましても、數から申しましたならば、何分の一にしかあたりません。この多數の船員が一致して、爭議行爲に出ます時分には、やはりこれは爭議という喧嘩でありますから、勝つためにはどうしても無理な理窟をこね、あるいは暴力にも及ぶことは、往々今日までの實績が證明しております。そういうことを考えましたるときに、はたして日本の國といたしまして、日本の國の再建のために、重要なる海運というものの正常なる運營、發達ということを考えましたならば、やはりこれは、そうした精神の異常を呈した場合においても、爭議をやつてはいけないという規定がなければならぬと思うのでありますが、もう一度御説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=74
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075・大久保武雄
○大久保政府委員 岡田委員の御説は至極ごもつともでありまするけれども、船長は、これは監督者として船員に對處するという立場のほかに、やはり船員全體の尊敬の象徴でなくちやならぬという、いわば船は一家と申しまするか、さような一つの船員の共同體としての魂の結びつきというものがなければ、あの船で荒波を乘切つて航海するということは、これは岡田委員も御承知の通り、できるものではありません。また船長の中にも、さように船員の尊敬を一身に集めておられる船長も、私は數多く存じておるような次第であります。かような船長の一旦緩急ある場合の處斷というものは、單なる監督機關を離れて、多年海上で監督したその技倆と功績とを信頼するという、海員の尊敬心と相俟つて、船舶の危險を防止することができる。そこに私は船長というものの、非常に利害對立を超えた一切の根據がある。かように考えておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=75
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076・岡田勢一
○岡田(勢)委員 それは今局長が言われました、船内の秩序がいつも立つておりまして、船長は船員の人格を尊敬し、よく愛し、また船員は船長の徳を慕つて尊敬していく。そして船内に和合ができていく。こういう考え方で船に乘らなければならぬ。また乘組の組合せもしなければならないし、人選も愼重にやらなければならない。これはあたりまえのことであります。しかしそうしたことばかりではない。そうしたときにはこの法律は必要ないのでありまして、この法律が必要となりますときは、そうした正常な和合のふんいきが破壞されまして、意見の對立したときに必要なのが、この爭議に關する法律であると思う。言われますように、われわれは徳の高い、經驗の深い、技能優秀な船長の、全部乘られることを希望いたします。しかし實際問題としてはそういきません。中にはやはり無理な命令を下す人もあります。技能の點、あるいは徳望の點において欠ける人もあります。また船員にいたしましても、そうしたじみちな穩健な人ばかりではないのでありまして、だからこの、船内の船長の指揮、命令が徹底して行われますという程度の、まことに良好な和合、秩序が整然としておりまます場合には、必要ないのであります。その正常の破壞されましたときに必要になるものである。ですから私はやはり、はつきりしておくべきことは、はつきりしておかなければいけないと思います。もう一度その點を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=76
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077・大久保武雄
○大久保政府委員 その點に關しましては、先ほど私もちよつと申し上げましたように、爭議行爲の制限というものは、あくまで勞調法によりまして、安全という一點にかかつておるのであります。いかなるものが安全を破るかということが、許されたる爭議行爲を制限するという法的な根據になつてくるわけであります。そこでその安全保持の施設と言いますものは、人命もしくは身體に對する危害を及ぼすというように解釋せられるのでありますから、やはりこれを船舶に適用します上におきましては、航海中であろうと人命、船舶に危害を及ぼすという一線をとらえて、違法、適法の限界を引くことが、最も法律としまして適當であろう。かように考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=77
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078・岡田勢一
○岡田(勢)委員 大體私どもの心配するところは、なお解消しないのでありますけれど、これ以上の質問應答は同じことを繰り返すようなことになると思いますから、この問題は一應これで打ち切ります。
次は七十一條の勞働時間及び定員の問題でありますが、この適用範圍をここに明示せられております。一、二、三に掲げられておるのでありますが、このほかに船員外におきましても、相當にもつと適用の範圍の除外を要望する聲があつたと思うのでありますが、この三つに限られました理由について承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=78
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079・大久保武雄
○大久保政府委員 この點は先ほど布委員からもお尋ねがあつた點でございまして、國際勞働條約の線から若干上まわつておる次第であります。そこで條約は御承知の通り國際航海に從事する者を適用範圍としておる次第でありますが、第七十一條の解釋から申しますと、それよりももつと廣範圍に適用がせられることに相なる次第であります。そこでかように第一號におきまして擴張いたしました理由は、現在の日本の海運の状態から判斷をいたしまして、勞働時間制を採用いたしますからには、少くともこの程度の船舶に適用するようにしなければ、勞働時間制をせつかく制定いたしましても、これの保護を受ける海員が非常に少くなるという點と、一方勞働基準法が制定せられまして、八時間制の大原則が一般的に確立をしてまいつたような情勢と見合いまして、この程度まで擴張をいたしますことは、現在の段階においては適當でなかろうか、かように考えた次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=79
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080・岡田勢一
○岡田(勢)委員 二の點に帆船とありますが、これは機帆船ははいつておりませんか、はいつておりますか、お伺いします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=80
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081・大久保武雄
○大久保政府委員 補助機關附帆船を含むものと解釋いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=81
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082・岡田勢一
○岡田(勢)委員 それから三の漁船という項目には、捕鯨船とか、あるいはそれと類似の作業に從事するものを含んでおりましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=82
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083・大久保武雄
○大久保政府委員 漁船は勞働の形態が非常に不規則でありますが、全部含んでおります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=83
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084・岡田勢一
○岡田(勢)委員 捕鯨船は含んでおりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=84
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085・大久保武雄
○大久保政府委員 含んでおります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=85
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086・岡田勢一
○岡田(勢)委員 捕鯨船を含んでおるのでありましたら、ここへやはり漁船、捕鯨船もしくはこれに類似の作業に從事する船舶、こういうふうにはつきり書いたらいかがでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=86
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087・大久保武雄
○大久保政府委員 漁船の内容につきましては、別の船舶安全法によりまして、規定をせられておるのであります。大體その名稱をとつて、これへ漁船とあげた次第であります。一應法的には解釋は確定しておる。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=87
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088・岡田勢一
○岡田(勢)委員 捕鯨船ということになりますと、ちよつと疑義が生れはしないかと思うのですが、船舶安全法との關連と申しますが、やはりここへ明文に書いたらどうかと思いますが、もう一遍書かないでもいい理由をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=88
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089・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、船舶安全法に規定してある漁船に中に捕鯨船等も含むことに規定せられておりますから、大體それで一般的にも御諒解を得ている、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=89
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090・岡田勢一
○岡田(勢)委員 それなればここへ書かずとも、捕鯨船もしくはこれ類似の作業に從事する船舶を含んだものと解釋してよろしいのですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=90
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091・大久保武雄
○大久保政府委員 よろしゆうございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=91
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092・岡田勢一
○岡田(勢)委員 そこへ私はこういうのを入れたらどうかと思うのですが、今の法案の七十一條の一は「沿海區域又は平水區域を航行區域とする總トン數千トン未滿の船舶で國内各港間のみを航行するもの」括弧云云と出ておりますが、これは國際航海に從事しない船舶ということではつきりするのじやないかと思うのでありますが、この點はいかがですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=92
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093・大久保武雄
○大久保政府委員 國際航海に從事しないものを除くということになるわけでありますが、國際航海に從事しないものにつきましても、日本のような非常に長大なる列島の地勢にあります國柄といたしまして、相當勞働時間制を適用してしかるベき船舶が生じ得るわけであります。これらに對しましては、どうしても法の精神から申しまして、勞働時間制の適用による保護を與えて、船員の勞働力を培養する、こういう必要を痛感している次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=93
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094・米窪滿亮
○米窪委員 岡田委員の御諒解を得て、委員長のお許しを得て、先ほど政府委員から御答辯のあつた捕鯨船その他の漁船の問題に關する七十一條の質問をしたいと思います。實は私も質問を許されたときに、第三の漁船という點については相當疑問があつたのですが、その當時私は第一條の三十トン未滿の漁船は本法から除外されることになるということと照合しまして、多分三十トン未滿の漁船と、私は一人勝手に解釋して御質問しなかつたのでありますが、今伺うところによるとこれは重大な問題である。捕鯨船にまで及ぶことになると、今日何千トンという大きな船が、日本からはるばる南氷洋にまで行くのですが、そういう大きい捕鯨船にまで除外例が及ぶということになると、捕鯨中において、漁業中においては、なるほど八時間勞働を適用するということは、仕事の關係上困難でしようが、航海中も捕鯨船たるをもつて適用しないということになると、これは重大問題であります。しかもただいま岡田委員から、少くとも國際航法上のものは八時間勞働制を適用してもいいという含みのある御質問があつたが、捕鯨船は南氷洋に行くので、一種の國際航法です。そういう船にまで除外例を及ぼすということはどういうものか。政府委員の方にはつきりと御研究の上、しつかりしたところのお答えをしていただかぬと、もしそういう解釋であるとするならば、私は本法案に對する修正意見を出さなければならぬが、その點に對する御意見を確かめたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=94
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095・大久保武雄
○大久保政府委員 漁船を除きましたのは一應國際海上勞働協約の趣旨によつた次第でございます。ただいま米窪委員からお尋ねの點につきましては、新船員法の第七十三條に「主務大臣は、必要があると認めるときは、船員勞働委員會の決議により、第六十條乃至第七十條の規定の適用を受けない船員の勞働時間、休日及び定員に關し必要な命令を發することができる。」とかように規定してありまして、勞働時間制の適用からはずれる船員につきましても、どうしても勞働保護の必要があると考えました特殊の場合におきましては發動し得ると考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=95
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096・米窪滿亮
○米窪委員 ただいまの大久保船員局長の御答辯でやや明瞭になつたのですが、今日においてもそういう勞働協約があると思いますが、私が海員組合に關係しておつた當時は、毎年南氷洋その他の方面へ出漁する漁船に對しては、船主と海員組合との間に一般に勞働協約が行われて、そしてその條項においては本法以上の進歩したところの勞働協約が行われておつたという過去の實績から見て、先ほどの船員局長の御答辯では、これはむしろ時代の趨勢に逆行すると思うので御質問したのですが、今承れば第七十三條によつて再びまた適用を受けることができるといをことですから、私の質問はこれで打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=96
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097・岡田勢一
○岡田(勢)委員 今の問題につきまして、私は漁船という意味において捕鯨船もしくはこれに類似の作業に從事する船舶を含むという御答辯を得ましたので、安心したのでありますが、第七十三條によつて特殊の場合發令ができるということでありますならば、やはりこの三に、捕鯨船もしくはこれに類似の作業に從事する船舶ということを明文に入れることを主張するのであります。
次にもう一つ繰返してお尋ねいたしますが、「二帆船」とあるところに、これは先ほどの政府委員の御答辯によると、機帆船を含んでいるものであると仰せられましたが、これを實證する何か根據を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=97
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098・大久保武雄
○大久保政府委員 これも帆船の中に機帆船を含むということは、船舶法によりまして、大體その定義が確定をいたしておりますので、一般的にも御諒承を得るのではないかと考えたのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=98
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099・岡田勢一
○岡田(勢)委員 船舶法と申しますとどういう法律でありますか。あるいは造船規定の中にある汽船あるいは帆船という區分から申されるのでしようか。機帆船という名前の性格がはつきりしているかいないか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=99
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100・大久保武雄
○大久保政府委員 船舶法施行細則の第一章總則第一條に船舶の種類を定めてあります。「本則ニ於テ船舶ト稱スルハ汽船、帆船ノ別ヲ謂フ」とございまして、「機械力ヲ以テ運航スル装置ヲ有スル船舶ハ蒸氣ヲ用ユルト否トニ拘ハラス之ヲ汽船ト看做ス主トシテ帆ヲ以テ運航スル装置ヲ有スル船舶ハ機關ヲ有スルモのト雖モ之ヲ帆船ト看倣ス」かように規定をいたしております。帆船の中に機帆船を含むということに確定いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=100
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101・岡田勢一
○岡田(勢)委員 そうでありましたら、ここへ機帆船という字をどうして書かないのでありましようか。書いてもちよつとも差支えないし、またはつきりしてくると思われるのでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=101
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102・大久保武雄
○大久保政府委員 機帆船と申しますのは、いはばなじみの深い略稱でございまして、法律用語としましては、機帆船という用語例はないのであります。帆船という用語の中に機帆船を含むことは法律上解釋が確定いたしておりますから、大體これによつて御諒解が願えるのではないか、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=102
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103・岡田勢一
○岡田(勢)委員 先ほど讀まれました施行細則でありますかに、蒸氣機關であると否とにかかわらず、機關をもつて航行する船舶というのと、それから主として帆走で航行する船舶ということによつてわけられておるそうでありますが、大體私の考えておるところ、また今の通念としまして、機帆船というのは、やはり主として燒玉エンジンなどの機械によつて走つておるのを申しております。造船規定上から、あるいは船舶法などから、汽船としての船籍證書を受けておらないものに、帆柱が立つておつても、機械で走つておるものがたくさんあります。そのわれわれの通念の機帆船というものが、この帆船の中に加わつておるのかどうかという疑いをもちはしないかと思います。そこで船籍證書なりに汽船となつておるもの以外の船をこの中に入れることを意味するものであるならば、やはり機帆船という明文をここに書き入れたらどうかと思いますが、その點いかがですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=103
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104・大久保武雄
○大久保政府委員 帆船という用語によりまして、機帆船を含めますことは、これはまあ一般的に御諒解を願える、またそれは現在の船舶法施行細則等からして既に決定せられたる用例である、かように考えまして、帆船ということにいたしておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=104
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105・米窪滿亮
○米窪委員 先ほど機帆船も帆船のカテゴリーに入れるという御答辯は、少し私はおかしいと思うのであります。帆船は明らかに帆のみをもつて航行する船舶とわれわれは專門的に解釋しております。機帆船の帆船というのは名稱だけであると思う。これは政府委員御承知の通り、昔は要するに帆の設備を整えておつたので機帆船といつたのですが、今日機帆船と稱するものの中には、帆の設備、帆走の設備というようなものは一つもない。いわゆる盲腸的な名稱が殘つておるのにすぎない。それを帆船のカテゴリーの中に機帆船を含むという御解釋は、これは臨時船員法審議會ででも、そういう點になにかはつきりした結論が、公聽會においてでも出たの、單に船員局長だけの御解釋であるのか、その點は確かめる必要があると思うのであります。私は先ほどから、岡田委員との間にしばしば繰返されておる質疑の間に、政府委員の御答辯は少し怪しいと思うのです。これは政府委員の方で思い違いしておるのではないか。機帆船を帆船の中に含むということは、私ははなはだ解釋に苦しむのであります。除外しないなら除外しないように、ここにはいわゆる機帆船も入れるべきであります。それは除外すべきものではなく、當然勞働時間及び定員の規定に機帆船もはいるというのなら、當然それは入れるべきだと思います。帆船というものの中には、明らかに機帆船などというものははいらないものであると解釋しておりますが、その點はどうですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=105
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106・有田喜一
○有田政府委員 この帆船には、いわゆる補助機關附帆船がある。これを稱して海運界では機帆船と言つておる。嚴格な法律的意味におきましては、帆船は補助機關附帆船、かように解しております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=106
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107・米窪滿亮
○米窪委員 今の御答辯で私は決して了承できない。今日の機帆船と稱するものは、いわゆる帆走設備は一つもない。補助機關附帆船と稱するのは、たとえばもうなくなつたですけれども、航海練習所のいろいろの帆船があります。それで補助機關附帆船というのは、帆走をもつてやつておるが、風のない時に機關を使う。これが機帆船である。ところが今の機帆船というのは、全然そんな帆の設備なんか一つもなく、機關でもつてやつておるので、これは機帆船を帆船の中に含ませるということは常識から言つても、技術上から言つても、妙な話である。もしも政府當局が機帆船というものは補助機關附の帆船である、とこう解釋しておるのだつたら、それは實情を知らないものである。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=107
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108・有田喜一
○有田政府委員 いわゆる帆船には、補助機關附帆船を含む、かように解釋しております。それをもう少し割つて嚴密に申すならば、機帆船を機船と帆船と二つにわける。いわゆる汽船に屬するものと、帆船に屬するものにわける。しかしここに、大久保船員局長が帆船に機帆船を含むと言うのは、いわゆる補助機關附帆船をもつて、その機帆船が帆船だと申すので、非常に掘り下げて申しますと、機帆船をわけて機船と帆船、かようにわかれております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=108
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109・米窪滿亮
○米窪委員 そういう御説明であるとするならば、岡田委員の言われている機帆船と、政府側の御答辯の機帆船と全然違うのです。岡田委員のおつしやつている機帆船はそういう形の船ではない。その點だけははつきり申し上げておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=109
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110・岡田勢一
○岡田(勢)委員 私の大體お尋ねしております根本の意味は、この勞働時間及び定員の規定によりまして、相當に大きな負擔がかかる。これはいわゆる國際海法の勞働條約の基準を上まわるような負擔がかかるということになります。近海のみをやつております機帆船、今言われますところの機帆船みたような、家族的な乘組員でもつてまわしておるといるようなものにまで適用いたしますと、海運の發展に大變な障害が起きる。こういう意味から考えまして、私はいわゆる長官の言われました補助機關附の機帆船、これらのものをこの適用範圍から除外してもらいたい、こういう意味で言うておるのであります。それは今申し上げましたように、大會社組織でやるべきものでありませず、また大會社組織のものでやつておりましては、かような小さい船でありましては運航コストがぐつと高くつきます。大きな汽船で運びましたならば、たとえば門司・阪神間、石炭一トン五十圓なら五十圓で運びますのに、積荷のトン數がかたまりませんのと、航海速力が遲い、配給率が少い、燃料が割合餘計要るというようなことによりまして、工場で申しまするならば家庭工業的のようなものでありまして、そういう解釋からしまして、これらにさような勞働時間、定員、こういうようなものの制限を加えましたならば、採算が立つていかない。こういう見地から私はこの機帆船を二の中に明文に加えるべきである、かように考えておるわけであります。
それからもう一つ進みまして、隣接國の沿岸のみを航行する船舶、言いかえますると、つまり朝鮮の西南岸なら西南岸ばかり、あるいはまた揚子江内においては揚子江内のみの航行、あるいは勃海灣のみの航行というものを、從來日本の船が行つてやつております。これらの船もやはり沿海航路と申しますか、小さい型の船で、經濟が非常に立ちにくいことになつております。しかも向うの國の沿岸航路の船と往々にして競爭的立場に立たされるものであります。これらの船にやはりこの制限が加えられまして、運航コストが非常に高くつくことになると、これらの經營が困難になります。その意味で無制限ではないのでありますが、ここに私は、主務大臣の指定する隣接國の近海だけをもつぱら航行するものという一項の除外規定を設けてもらいたいと思うのでありますが、これらについて當局の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=110
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111・大久保武雄
○大久保政府委員 隣接國の港を航海する船舶につきましても、やはり本條の適用を受けしめることが、現在の段階におきましては適當であろう、かように考えまして、これを適用の範圍内に入れておるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=111
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112・岡田勢一
○岡田(勢)委員 私はその御答辯に承服いたしかねるものでありますが、あまり時間が長くなりますので、討論のときにまた修正の意見を出したいと思つております。
次に進みまして、有給休暇の期間でありますが、この有給休暇の期間を今囘設けられましたについての考え方は大體わかるのでありますが、相當にこれは長い期間が決定されておるように思いますし、やはりこれは運航コストの上昇、船主の負擔、船主の負擔ということは、コストの上昇によるところの一般需要家、すなはち國民の負擔を増大するという結果になると思うのでありますが、この現行法との關係の點を一應御説明願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=112
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113・有田喜一
○有田政府委員 現行法には有給休暇のことは定めてありません。ただ現在行われておるところの有給休暇は、船舶運營會ではこれと同じように二十五日としております。岡田さんも御承知のことと思いますが、戰前自營時代におきましても、私の記憶に誤りなかりせば、郵船會社とかその他有力な會社では、二十日くらいの有給休暇を與えておつたかに思うのであります。御承知の通り、海員は陸上勞働と違いまして、郷里を離れ、家族とわかれて長い間海上生活をやる、しかもその間に週休も何も航海中には與えられないのが原則でありまして、航海中は一日も休みなく働いておる。從いまして、普通陸上勞働が一週間に一日の週休を與えられておる、それとの均衡を考えますならば、一年の間に二十五日の有給休暇を與えるということは、必ずしも私は長いとは考えないわけであります。運營會における現状竝びに戰前における有力會社の有給休暇の状況、かようなものを勘案いたしまして、二十五日が適切であろう、かような見地におきまして、かような原案をつくつたのであります。これに對して運賃コストの影響するところが大であるというお話でありますが、もちろん多少の影響はございます。しかし私の方の計算によりますと、有給休暇によつて生ずる經費というものは、かりに船會社に全然有給休暇がないという前提に立つても、船員費のわずか一分六厘というような程度であります。まして先ほど申しますように、二十日前後の有給休暇があるということを前提にいたしますれば、五日間の有給休暇が殖えたということは、ほとんど經費には影響がないといつても過言ではなかろうかと思うのであります。さような見地から見ますと、今日の運營會組織におきまして、國民の負擔がこのために非常に増大するということはない、むしろ運營會としましては現状通りではないかと思いますので、その點御諒承願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=113
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114・岡田勢一
○岡田(勢)委員 運營會が二十五日出しているというお話であり、從来の業者は郵船會社ほか一、二の會社を除いては出しておらぬということでありますが、これは出している方が常態であるか、出しておらなかつた方が妥當であるかということになつたならば、これは相當問題ではないかと思います。運營會は國家の代行機關として、この缺損はすべて國の補助でやつていることは御承知の通りでありまして、船舶運營會というものができましてから、すべての經費を非常に度胸よく出していく。つまり業者と考え方が違いまして、業者、つまり海運會社が待遇とか、いろいろな條件をよくして經費が膨脹いたしますことは、たちまち營業の採算面にも直接現われてまいりまして、黄金時代でない限りは非常に苦しいのであります。その考え方が國家が出すということになりますと、そこにどうしてもやつている氣分が違うのでありまして、大抵の場合、運營會は他の海運會社に比べて、給料でも、あるいは待遇でも先ヘ先へとどんどん出していかれているような實績になつております。いわゆる親方は日の丸式の、若干放漫といわれるような支出をしているということが言えると思うのであります。もちろん船員は航海中は一日も休むところなく航海しておるのでありますから、その境遇に對しては非常に御同情いたしますが、今日まで長い間それが船員の普通のことであるというふうなことにも思われて進んでまいつたわけでありますから、ここに運營會通りにやるということは、少し行き過ぎではなかろうかと思われるのであります。また郵船會社にしましても、御承知の通り、大體今までの郵船會社、あるいは商船會社もそうかもしれませんが、國策的な會社は國家の補助が相當莫大に出ておりまして、國家が保護しておる會社でありますがゆえに、自分一個のリスクを負うてやつております他の民間海運會社とは大分違うところがあります。話が餘談にわたりますけれども、昭和十年前後ごろから支那事變が起り、また歐州戰爭が起る雲行きを望見いたしまして、その時分に日本の船腹の擴充、海運の發展ということが大變熱心に論議されましたときに、山下龜三郎さんが、郵船會社や、商船會社のような國家の補助でふくれていける會社と同じように他の海運業者はいかない、だから郵船、商船の發展を見て安心しておるというわけにはいかない。標準は他の民間の何にも補助を受けていない會社の採算のとれることを標準にして、海運の發展策を考えなければならぬというようなことを言つておられた。それで山下氏に言わせますと、あの郵船、商船の會社でそうなつた人は、おんば日傘でそうなつたというので、非常に皮肉を言つておられましたが、郵船が二十日有給休暇をやられておりましたのも、そのしりは國費で負擔するというような、しりの世話をするところがあつてやられておる。だからこれは必ずしも一般の標準にはならないと思うのでありますが、そこで有給休暇も私は結構だと思うのでありますが、この際はもう少し縮めるべきではなかろうか。縮めていかないと、先ほどの勞働時間の問題、定員の問題に對しまして、今長官が言われましたように、比較的大きな率にはならぬかと思うのでありますけれども、すべての點に違いもありまして、つまるところ相當高率のコストの上昇になつてまいりますので、これを緩和してもらいたいと思うのであります。その點についてなお御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=114
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115・有田喜一
○有田政府委員 船舶運營會のやり方につきましての御批評、もちろんうなずける節があるのでありますが、そういう問題と別に、この船員の有給休暇の問題、これを考えますときに、やはり年中休みなくして繼續勤務をやつた者、それに一年に二十五日くらいやるということは、決して私は行き過ぎとは思わない。郵船、商船の例をおあげになりましたが、これも政府の補助を受けましたが、政府の帳尻補助とかいうようなことをやつたのではないのでありまして、山下翁の意見も、そういうことから郵船、商船が海運業として日本の海運界に貢獻したことは事實であります。さようなことはともかくとしまして、ともかく海員の保護をはかる。そうしてできるだけ氣持よく與うべきものは與える。そうして同時に海員の責任感を高揚して、思う存分運航能率を上げる。こういう仕組にいつた方が、私は日本の海運の發展を期するゆえんであると考えるのであります。できるだけ抑えるべきものを抑えてやろうというような考えよりも、やはり與うべきものは、氣持よく與える。その代り一方責任をもたせて、働く者はどんどん働かせる。かような體制でいきたいと考えておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=115
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116・岡田勢一
○岡田(勢)委員 私は大體におきまして、日本の海運の復舊ということにどうしてもなるように、熱情と誠意をもつて努力しなければならぬという見地から考えておるのでありますが、今日の敗戰後の日本の經濟の破綻に瀕しております現状から考えまするならば、私は本會議の場合にも意見を申し上げたのでありますが、どうしたところで經營者といわず、また勞働者といわず、國民の全體、窮乏ということをお互いに耐え忍び、隱忍自重して餘計働きまして、そうして苦しんで日本の經濟の崩壞を食い止めていつて、復舊をはからなければならぬということにならなければ、どうしてもわれわれが從前のごとく世界の獨立國家、獨立民族としまして、世界の場裡に立つ日は來ないと思います。そこで私はこの經濟の崩壞、民族の滅亡に瀕しております現状から考えまして、あげたいのではありますけれども、休暇も十分あげます、勞働時間も短かい時間にいたす、そうして賃金も高率な賃金を拂うというようなことは、事實において、總體的にこれを國家の現状を見まするときには、これはできないと思う。そこで連合國といたしましては、日本の昔からの長時間勤務、低率賃金、これによりまして安い商品が海外に向つてどんどん進出していくことを非常にきらつた時代はあつたことと思うのでありますが、今日の場合におきまして、いわゆる日本民族の獨立あるいは自活の途ということにつきまして、これを破壞するという考えは決してもつておりません。十分に自活權を認めるということがポツダム宣言以來言われておるのでありますから、決して日本を短時間勞働、高賃金に導きまして、ぶらぶらしておつて働かないために日本の海運のコストも、あるいは商品の價格も高くしてしまい、日本の經濟を弱體なものにしてしまつて、日本を劣等國にしようというような考えは、おそらく今日においても、連合國の人々は絶對にもつておらぬと思うのであります。そこで私は、今日のこうした環境のときにおきまして、この船員法において國際海上勞働條約の基準を上まわるようなことをやることは、まさに不適當でありして、われわれは、この際勞働者にもどうしても辛抱してもらわなければならぬ。最大限度この國際海上勞働條約の線を超えないところで辛抱するということは、船員の方々においても理解のつく問題であると私は思うのであります。それらを見合いまして、われわれはやはり今日は連合國の占領管理下におかれておりますが、今日の新聞にもマツカーサー元帥は、早く講和會議を完了して、そうして連合國の軍隊を引き揚げたい。そういうふうに日本人は努力して、そういう方面にどんどんいい状態に進行しつつある。こういうふうなことを言われておりますが、私らも早く日本人が平和國家をつくりあげ、民主主義に國家をつくりあげるということに心配のない人間であり、また經濟的に獨立しまして、自活のできる民族になるという日が一日も速やかに來まして、そうしてわれわれお互いに民族が平和を樂しみ、生活を樂しむというふうになりたいと思いますので、どうか今日のこの經濟危機を突破し、獨立の經濟の確立を得られますまでの間は、少くとも國際海上勞働條約の線を上まわるようなことにいかないで、それよりももつと惡い給與で長く働いて、お互いに苦しんでやつていく。しかし勤勞者にばかりそれを強いるのではないのでありまして、經營者側におきましても、あるいは資本家と申しましても、今日においては獨占資本というものは禁止されるわけでありますが、それらを皆お互いにこの窮乏を耐え忍んでいくという考え方から、どうしてもそういうふうに修正してもらわなければならぬ。こういう信念をもつておるわけでありますから、その考え方、經濟の考え方、それから國際競爭に耐え得ないということでは困るという見方、連合國も日本の經濟を低能率の高賃金にしようという考え方でないという見解に對して、政府はやはりそう思つておられるかどうか。この點を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=116
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117・有田喜一
○有田政府委員 この有給休暇の日數は、國際勞働條約のそれよりも上まわつていることは事實でありますが、しかしながら先ほど來縷々申し述べましたごとく、ともかく連續して一年間勤務した。それに對して一年間二十五日ということは、大ざつぱに見ましても、一週間に一囘の週休日をもらう陸上勞働者は、一月に四日、一年に約五十日、海員はその半分ということに相なつている。もちろん海員には碇泊中の休みはございますが、ともかく二十五日ということは決して長いとは考えないのであります。おそらく海上勞働をやつた經驗のある人は、なつかしき郷里を離れて、家族とも離れて、そうして海洋生活をやる。それが一年に二十五日の休みをもらうということは、決して私は長きに失するとは考えない。やはり海上勞働その他の均衡を考えてこの邊のところが妥當であろう。かように確信するのであります。なお國際條約を上まわつておつて國際海運に乘り出せるかどうか、こういう御懸念があつたようでありますが、私はやはり海員に與うべきものは與え、むしろ優秀なる海員を育成して、そうして日本の海運の進展に資する。殊に海員の力がなくては、日本の海運というものは伸びない。どうしても優秀な海員というものを培養していかなければならない。かように考えるのであります。なお勤勞條件はよくしてやつて、そうして能率を向上した方が日本の海運のためになると思います。その他船舶建造の方面、その他におきましていろいろと優秀なる技術を發揮し、そうして國際場裡に出ていくということも考えられるのであります。昨日も話したと思いますが、今日なるほど圓で換算いたしますと大變な賃金のように考えられますが、一たび爲替相場というものを考えますとき、これは高いものじやなくて案外安い、こういうことも言えるのであります。今日の圓の高さでもつて、一概に今日の船員費は高いから、國際場裡に出られない。こういうように斷定は下されないと思います。しかもこの三十五日くらいの有給休暇のために、日本の海運が將來崩壞してしまうというような、それほど大きな影響はないだろうと私は確信いたします。どうかその邊のところもおくみとりくださいまして、原案に御贊成くだされんことを切望するものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=117
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118・岡田勢一
○岡田(勢)委員 最近承りますには、近い將來に各船主に對して、修繕と船員を移讓するというふうに承りますが、大體そういう御方針でありますか。その時期は大體いつごろでありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=118
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119・有田喜一
○有田政府委員 船舶運營會の問題につきまして、政府が熱心なる研究を遂げながらマツカーサー司令部の方に懇請していることは事實であります。そうして大體の線といたしましては、今日の段階におきましては、やはり配船の統制と申しますか、一元化ということは原則的には必要でございますが、同時に一方業者の企業意欲を發揮せしめまして、そうして大いに能率をあげてやつていく、こういう仕組で、二つの線をわけなければならぬと考えるのであります。さような見地からいたしまして、一つの段階といたしまして、岡田委員のおつしやるようなことが緊急課題になつていることは事實でありますが、遺憾ながら今日の段階におきましては、いつからということを斷言しがたい状態であります。しかし、われわれは先ほどから申しますような線で、近く何らかの解決を見るのではないか考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=119
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120・岡田勢一
○岡田(勢)委員 先般本會議で運輸大臣からの御答辯の中にも、海運は民營を常態と考えているから早くこの常態に復したいというような御答辯がありまして、私も滿足したのでありますが、これは今日國家が莫大な費用を負擔いたしまして、一種の運營會という政府の代行機關が運營しておりますけれども、莫大な費用を使いながら能率はあがつていないのでありまして、早く船主の自營に還元してもらわなければ、國際的の海運が始まりましたときには、外國の船に絶對對抗できぬということは、これは今日常識化していると思います。そこで船員が必然的に移讓されまして、船員に對する給與などが直接船主から行われることに早晩なつてまいると思います。一方運賃收入の方におきましては、やはり相當の制限を受けることでありまして、運營會としても、今日國家財政の見地から、相當な豫算の制限を受けてやつているのでありますが、船主自營になりましたならば、この制限がなおさら強化せられると同時に、運賃に對する補助とか補償とかいうこともなかなかむずかしくなると思います。今日、年間十三億いくらの國の補助、そのうち運航に對する欠損の補助金がどのくらいの割合になつておるか知りませんが、それを全額各船主に對して補助金あるいは補償金として出すというわけにはいかないかもしれないと思います、殊にこの海運なるものはひつきよう營利企業でありますがゆえに、やはり採算というものが國内のみならず國際的にも制約を受ける問題になります。そこで願わくば日本の海運の復興のために、低コストのところから出發してやりたい。こういうことが私ども業者のために考えられるところであります。そういう意味をもちまして、私はまだまだお伺いしたいことはたくさんあるのでありますけれども、大體先ほどから御質問いたしましたこの船員法の基本的精神の問題、それから三十條の勞働爭議に對する航海中の問題、それから勞働時間と定員の問題竝びにただいまの有給休暇の問題など、數項目に對しまして修正をいたしたい、かように考えております。この修正意見を保留いたしまして、私は今日の質問を打切りしまして、討論の時に讓りたいと思うわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=120
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121・中川重春
○中川委員長 それでは別に通告もございませんので、船員法を改正する法律案に對する質疑は終了いたしました。次會は明十九日午後二時から討論採決を行います。本日はこれにて散會いたします。
午後四時五十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00419470318&spkNum=121
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