1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月十七日(月曜日)
午後二時十三分開議
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議事日程 第十八號
昭和二十二年三月十七日
午後一時開議
第一 昭和二十二年度歳入歳出豫算案 (前會の續)
第二 昭和二十二年度特別會計歳入歳出豫算案 (前會の續)
第三 (改第二號)昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案 (前會の續)
第四 (改特第一號)昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算追加案 (前會の續)
第五 (改追第一號)豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件 (前會の續)
第六 日本銀行法の一部を改正する等の法律案(改府提出) 第一讀會
第七 金融機關債券發行特例法案(政府提出) 第一讀會
第八 郵便法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第九 地方自治法案(政府提出) 第一讀會
第十 所得税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第十一 法人税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出) 第一讀會
第十三 土地台帳法案(政府提出) 第一讀會
第十四 家屋台帳法案(政府提出) 第一讀會
第十五 地方税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第十六 地方分與税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第十七 行政官廳法案(政府提出) 第一讀會
第十八 宮内府法案(政府提出) 第一讀會
第十九 裁判所法施行法案(政府提出) 第一讀會
第二十 學校教育法案(政府提出) 第一讀會
第二十一 統計法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 恩赦法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 罹災救助基金法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである。
日本銀行法の一部を改正する等の法律案
金融機關債券發行特例法案
郵便法の一部を改正する法律案
地方自治法案
所得税法を改正する法律案
法人税法を改正する法律案
特別法人税法の一部を改正する等の法律案
土地臺帳法案
家屋臺帳法案
地方税法の一部を改正する法律案
地方分與税法を改正する法律案
行政官廳法案
宮内府法案
裁判所法施行法案
學校教育法案
(以上三月十五日提出)
一、議員から提出された議案は次の通りである。
殘留同胞歸還促進竝びに引揚者、戰災者の生業復歸に關する決議案
提出者
竹田儀一君 大久保留次郎君
田原春次君 福田繁芳君
疋田敏男君 中西伊之助君
(以上三月十五日提出)
一、去る十五日吉田内閣總理大臣から次の通り政府委員を仰せつけられた旨の通牒を受領した。
内務事務官 鈴木俊一
同 柏村信雄
第九十二囘帝國議會内務省所管事務政府委員
大藏事務官 忠佐市
同 北島武雄
同 石原周夫
第九十二囘帝國議會大藏省所管事務政府委員
一、去る十五日議長において次の通り常任委員辭任の許可があつた。
第一部選出 豫算委員 飯島祐之君
一、去る十五日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した。
第一部選出 豫算委員 小川原政信君(伊藤郷一君補闕)
第一部選出 豫算委員 小峯柳多君(飯國壯三郎君補闕)
第二部選出 豫算委員 岡部得三君(苫米地義三君補闕)
第二部選出 豫算委員 服部岩吉君(石原圓吉君補闕)
第六部選出 豫算委員 上林山榮吉君(武田キヨ君補闕)
第九部選出 豫算委員 安部俊吾君(若林義孝君補闕)
第九部選出 豫算委員 近藤鶴代君(細田忠治郎君補闕)
第六部選出 決算委員 大橋喜美君(竹山祐太郎君補闕)
一、去る十五日常任委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した。
豫算委員
理事 西村久之君(理事細田忠治郎君三月十四日委員辭任につきその補闕)
理事 竹谷源太郎君(理事黒田壽男君三月十二日委員辭任につきその補闕)
一、去る十五日次の通り特別委員の異動があつた。
勞働基準法案(政府提出)委員
辭任山口好一君 補闕江藤夏雄君
辭任綿貫佐民君 補闕田中實司君
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
辭任菊池長右ェ門君 補闕大井直之助君
辭任戸叶里子君 補闕鈴木義男君
辭任林虎雄君 補闕佐竹晴記君
教育基本法案(政府提出)委員
辭任江川爲信君 補闕椎熊三郎君
辭任中田榮太郎君 補闕松原一彦君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=0
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001・井上知治
○副議長(井上知治君) これより會議を開きます。日程第一ないし第五の豫算案を一括して議題となし、討論を繼續いたします。金光義邦君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=1
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002・会議録情報2
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第一 昭和二十二年度歳入歳出豫算案 (前會の續)
第二 昭和二十二年度特別會計歳入歳出豫算案 (前會の續)
第三 (改第二號)昭和二十一年度改定歳入歳出豫算追加案 (前會の續)
第四 (改特第一號)昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算追加案 (前會の續)
第五 (改追第一號)豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件 (前會の續)
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〔金光義邦君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=2
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003・金光義邦
○金光義邦君 私はただいま議題となつております昭和二十二年度總豫算及びその他の諸案について、日本進歩黨を代表して贊成の意を表するものであります。
明年度の豫算は、インフレーシヨンの現状に鑑み、財政收支の調整に配慮せられております。インフレ現象が、國家の赤字財政のための通貨の増發を原因とするということは、古來財政上の通説でありまして、形式上とは申しながら、財政の收支の調整という一つのわくをはめたことは一大進歩であり、ここに特に留意せられたる政府の苦心は認められるのであります。この點、日本社會黨の返上論は、政府に對する警告としてはよいでありましようが、事實上の政治に即してみた場合、すこぶる根據を失うと思われるのであります。(拍手)
しかしながら財政の收支のみを調整いたしましても、なおその他にいわゆるインフレの原因は多々あるのでありまして、政府はこれらの點に留意し、通貨價値の安定に對しては格段の努力を拂うべきであります。なかんずく賠償撤去に要すべき經費は、必要資材の援助及び相當期間にわたる分割支出等の方法により、國民經濟の破綻をきたさない限度に止めるよう、關係方面に極力懇請せられたいのであります。
進駐軍關係その他の土建事業に對しては、生産意欲を振興するとともに、その監査の制度を充實せられたいのであります。
次に、公債漸増の現勢に鑑み、減債基金の制度を財政法中に規定する等、今後の公債處理方針を明確にすべきであります。また換物思想防止のため、重要物資の登録を強力に行う必要があります。
なお金融機關の情實による貸出しを極力制限する必要があります。
さらに主要食糧の遲配、缺配が都市生活者の家計を脅かすことは言うをまたないのでありまして、この面よりする經濟上、政治上の重大なる結果に對しては、特に認識を新たにし、格別の留意を拂われたいのであります。
産業の復興、その他重要なる諸問題に關しては、同僚諸君により豫算總會において愼重に審議を重ねられたところでありますから、私はその一切の議論を省略し、困難なる政治、經濟の現状において、なお財政收支の均衡を得るために拂われたる政府の努力を多とするとともに、その運用に關しては萬全の注意を拂われ、もつて經濟危機の突破に萬遺憾なきを期せられたいことを附言いたしまして、本案に贊成するものであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=3
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004・井上知治
○副議長(井上知治君) 北政清君。
〔北政清君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=4
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005・北政清
○北政清君 私は日本農民黨を代表いたしまして、昭和二十二年度一般會計豫算、同特別會計豫算につきましては、社會黨の森戸議員からの動議に贊成をいたすものであります。私は日本農民黨の觀點から、森戸氏の言われた以外の面につきまして、討論をいたしたいと思うのであります。
まず日本が敗戰をいたしまして、今後あらゆる面において努めて生産をあげなければならぬ。それには、不要な事務的な方面はできる限り節約をしなければならぬのであります。しかるにこの豫算を見ますと、二千數百億の厖大な豫算の大半が人件費であります。この人件費は、戰爭中からぐんぐん増し、戰爭後にいたりましても、さらに増して、あらゆる省、あるいは廳、局等、増しに増していまして、それに對して一つも手を觸れておらぬ。不要な機關に莫大な經費をかけ、そして國民のほんとうの働く者にこの負擔をかけさせるのであります。この豫算の根本的な誤りはここにある。行政整理を斷行せよ。かくいたしますならば、現在の官公職員は三分の一で十分である。
今の日本の官公職員ほど働かざるものは、世界に珍らしいでありましよう。實例をもつて申し上げますならば、去年の七月、われわれがここで議決いたしました國民學校教員の給料、これは何箇月かかつたか。六箇月もかかつて、一月ごろになつてやつと拂つたでありましよう。しかるにわれわれが、その日の生活に困るからこの豫算を直さなければならぬと主張して、六箇月も放つておいてよいほど樂であつたかどうか。これが實に官公職員が仕事をしておらぬ實績である。地方の町村役場吏員ほどに上級官廳が仕事をしてくれるなら、三分の一で十分である。
しかも北海道の實例で申しますならば、戰時中でも五部の制度でありました。それが現在十部になつておるのであります。人はますます殖やし、ますます仕事をしておらぬ。私は過般商工省にちよつと用があつて行つてみました。お晝の時間に、どうだ、午後の二時までピンポンをやつておる。これが給料を値上げせよと叫んでおる。かような經費をそのまま組んでおる。これが日本復興のための眞劍な豫算だと言い得るか。ふまじめきわまる案であるから返上する。こういうのである。
しかもこれらの官僚の人たちはどうしたか。官公職の追放にあたつても、地方の村長まで追放した。一體誰がやらしたのか。村長にむりやりやらしたのは、官廳の人間ではありませんか。米英撃滅と大きな看板をあげさせたのは、たれがあげさせたか。これらは漫然として知らぬ顔をしておる。少くともその責任者だけでも追放しなければならぬ。
しかるにこの間内務大臣は何と言うておるか。皆の胸に手をおいてみればわかる。一方は法律で追放しておいて、あとの方は、胸に手をおいてみればわかる。こういう逃げ口である。これらは、しかも給料の高い連中ばかりである。課長以上は少くとも首を切るべし。警察署長もそうである。特高の巡査の首は切つたが、警察署長はどうするか。思ふ存分使つたのは警察署長でしよう。これが胸に手をおいておるかどうかしらぬ。私はこれらのことについても何ら考慮されておらぬと思う。こういう意味合いにおいて、行政整理を急速に斷行するのでなければ、この豫算はだめである。これは半分の豫算で濟む。
その次は公廳、公社問題でありますが、今申し上げましたような、仕事をせない代表的な役人が、産業の統制にまで、しかも現物を押えて乘り取ろうとしておるのは、これでございます。何と言おうとも、今までの戰時でも、現在でも、官僚統制に何一つあたつたものがありますか。役人は偉そうなことを言うて物の値段をきめる。どんなふうにきめたか。みかん三つと米二升と同じにきめておる。今肥料でもその他の物でも、これらにもたしたら、一體どうなるのか。狂人に刄物を持たせたとよく申しますが、これよりもまだ惡いものだ。日本の國民はこうして滅びていかなければならぬかと思うと、涙がこぼれる。官僚が産業にまで食いこむ。かくして彼らの官僚獨善政治を行おうとするところの案と信じますがゆえに、このようなものが豫算に現われておる以上、斷じて許されぬのであります。
次いでは農産物價格の問題で申し上げたいと思うのです。これも官僚である。私は昨年の八月二十七日、食糧緊急措置令に反對の意見を申し上げておきました。現在私の言うた通りになつておるではないか、こう申し上げたい。何ゆえの缺配ぞや。あり餘つておる米が缺配とは不思議でならぬ。しかもこの東京においても、二週間の缺配だ。それでも大臣方は立派に生きておられる。しかし食うことの方法を國民に教えてやつたらどうか、私はそう思う。
これはどこに誤りがあるか。米價にいたしましても、極端な無謀な價格が遂にこれに導いてしまつたのであります。まず小さな例で申し上げますならば、食糧營團が一體いくらで米を販賣しておるか。こう言いますと、六圓八錢であります。農民から買上げる價格は五圓五十錢、これに一圓國家が負擔をいたしまして、四圓五十錢で消費者價格となる。それが事實は、消費者は六圓八錢で買う。その差一升一圓五十八錢。そのほかに農民の出した俵、なわというものは、今一俵二十圓かかります。一石五十圓、一升五十錢でございますから、一石にいたしまして二百八圓という厖大なものが、食糧營團にとられておるのであります。
この一升一圓の補給金は、消費者にやつておるのか、食糧營團にやつておるのかどつちなのだ。消費者には何の役にも立つておらぬ。あるいはそれは精米費が要ると言うだろう。あるいは運賃が要ると言うだろう。運賃だつて、その縣で消費する以外のものが運賃にかかるのだから、一升にいたしましたらいくらかかるか。二錢か三錢しかかかるはずがないのであります。また精米費にいたしましても、今のぬかは、米の重量に比べて、從量價格にいたしますならば、ぬかの方が高いのでございます。しからば米ぬかで精米賃は樂に出る。一%ぐらい減るでありましようが、減つたからとて問題はないでありましよう。そのほかにも食糧營團に、食糧調整用の莫大な金を與えておるのであります。
かくいたしまして、いわゆる官僚的な行き方は事ごとにちぐはぐをいたしておりまして、今の缺配、遲配が行われておるのであります。一體ただ農民からとつて、そうして消費者に竝ばせて、そこで現金で賣るものが、何のために一升について二圓からの利益をとらなければならぬのでありますか。私どもは空俵だけでも十分ではないか、こう申したいのであります。これは生産者にも、消費者にも、ひとつも役に立たない捨て金であります。
先ほど私は、公廳問題に反對いたしましたが、それと同樣、役人のやる仕事はみなこれなんである。せめてこの二百圓――あるいは五十圓はかかるとしても、百五十圓でもこれを生産者に増してやりますならば、もつと出荷はよくなるでありましよう。このような意味におきまして、この食糧調整に對する大きな豫算は、まつたく不用な金である。これが一石千五百圓にせなければならぬから、千圓は消費者がもつ、五百圓は國でもとうという話ならばわかります。そうではないのだ。ただ食糧營團のあの職員、官僚と、米ブローカーの固まりにただこれをとられてしまうのであります。かような意味においても、まことに無益な食糧調整の費用であります。これだけの食糧危機だと言いながら、この豫算を編成するにまつたく考えておらぬ。
かような状態でいきますならば――最近新聞を見ますと、われわれ議會できめた食糧調整委員の申告があろうとなかろうと、どんどんやると新聞には出ております。かくして農民をいじめつけることはいいが、一體本年いくらの生産になるかということを今から豫想してもらうならば、私はここで申し上げておきます。このままの状態でいきますならば、今年いかに天候がよくても、去年の收量より二割以上に下ります。そのときもし他からの御援助を得られなかつたなら、日本人は何を食うつもりか。この重大なことが今眼に見えている。
過般委員會において、農林大臣は、ある程度の價格を考えてみようという御答辯をしておられるけれども、今からあとでは既に遲いのです。官僚の考え方は、いつも濟んでしもうてから考えている。農民は今年米を何反つくるか、何町つくるか、今きまるのでございます。米一反歩つくつて千圓、チユーリツプの根をつくると、一反で一萬圓になる。この千圓ではどうしても生活ができないので、やはり經濟的作物に移らざるを得なくなる。
また單にそろばん勘定からのみ言うなと、しきりに言われるけれども、肥料は一體いくらになるか。昨年二月六日、この緊急勅令を出した同じ日に、皮肉にも二十六倍、一遍に値上げしたのでございます。これらは財閥の言う通り、資本家の言う通りにきく、農民からは五圓五十錢で搾りとる。これで日本人がどうして生きていけましよう。私は日本國民全體の食糧問題に安心感を與えざる以上、日本の再興なりがたしと斷言するものであります。いかにインフレになるとかならぬとか、石橋さんががんばられても、昨日も汽車に乘つてみると買出しで一ぱいです。ああして買出しに行つておつたら、工場で仕事ができますか。それはおそらくやみで買うていると私は思う。そういうふうに國民みんなにつらい思いをさせる政治は、斷じてないのでございます。
次に私は農地改革の問題について申し上げたい。なるほど農地改革において若干の豫算は組んであるが、これも人件費と會議費だけでございます。しかしながら農地改革をやるその際に、農民の困る場合にはどうするか。二言目には農林大臣は、農業保險であるとわれわれの質問に答辯しているではありませんか。その農業保險の費用がいくらであるか。災害を受けたら、一反に三十圓か四十圓、そんなものが保險になりますか。このごろの米一升です。そんな農業保險の豫算を組んだつて、何にもならない。農民を小作農から自作農にしてやつても、やれ、これで安心して農業が營めるということにせない以上、自作農にはなり得ないのであります。それでは自作農にするのでなくて農民追放になる。
またこの農業生産を殖やして、食糧の安心感を與えるために必要な農業技術員の俸給補助は、一體いくらになつているか。半額をやつて一億九千萬圓、二億圓近く出せば出るものを、それもやらぬではないか。官吏の給料は、ゼネストで二割五分上げているのに、この有樣です。また農業協同組合法案も未だに出ない。おそらく今議會にはもう出すつもりはなかろうと思う。これらをやつてみて初めて生産は生きてくる。しかるにその生産を生かさずして、いかにインフレになるとかならぬとか論議しておつてもだめです。
私はかような意味合いにおいて、この豫算總體を見て、昭和二十二年度はほんとうにやつて行く氣があるのかないのか、ほんとうにやつて行く氣がなさそうに見えるから、これを返上して組直しなさいと私は言うのである。以上をもつて私の討論を終る次第である。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=5
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006・井上知治
○副議長(井上知治君) 川野芳滿君。
〔川野芳滿君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=6
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007・川野芳滿
○川野芳滿君 ただいま議題となつております昭和二十二年度歳入歳出豫算案ほか數件に對し、私は國民協同黨を代表して、簡單に若干の希望條件を附して、原案に贊成の意を表せんとするものであります。
昭和二十二年度豫算は、一般會計竝びに特別會計を合わせまして、二千數百億という、まことに厖大な數字に上るのであります。從つてその審議にあたりましては、愼重審議を重ねることは、もちろんのことであります。しかるに政府は、會期正に三分の二を過ぎたところの去る三月三日に歳入歳出豫算案を、また去る十一日に特別會計豫算案を、それぞれ御提案になつたのであります。しかし審議期間はきわめて短かく、ために率直に申すならば、十分なる審議を盡さざる部分もありまして、まことに遺憾千萬に考えておる次第であります。
また豫算の内容を檢討してみますと、遺憾ながら不滿の點が多數ありまして、わが黨といたしましても、平常時ならば豫算返上か、あるいは豫算の大修正を行うのが至當かと考えます。しかし靜かに考えてみますと、
〔副議長退席、議長着席〕あますところ少なく、また時局はまことに重大であります。殊に本豫算の中には、時局下特に必要なる經費等も計上されておることに鑑みまして、希望條件を附して原案に贊成することにいたしました次第であります。ゆえに政府はわが黨の眞意を十分洞察されまして、以下ここに私が述べる希望條件に對しては、速やかに實行せられんことを要望いたす次第であります。
當豫算は、石橋大藏大臣のかねて稱される、いわゆる健全財政には矛盾するところ非常に多いのであります。特に勤勞者、農民、中小商工業者等に多大の負擔をかけるのみならず、かえつて失業者七百萬人を生ずる危險さえ多分に包含されているのであります。しかるに公共事業費九十五億は、わずかに百八十萬人の失業者を救濟するに過ぎず、ゆえに失業者問題は、今後大きな問題となつてくるかと考えます。よつてわれらは、過ぐる九十議會において、戰時公債につき率直なる意見を申し述べましたが、すなわちこの戰時公債の利率引下げ、また償還年限の延長等を行いまして、これに伴う財源を民生安定の費用に充てられんことを切望するものであります。
また百億の價格調整費の問題でありますが、この費目については、政府においても何らの根據がないようであります。しかしそれでは今後の新米價及び肥料價格等に確固たる見透しをなし得ないと思うのであります。政府は昨年米價を決定するにあたりまして、將來は米價を基準として他の物價を決定する、ゆえに米に比較いたして高いものがあるならば下げ、安いものがあるならば上げる、殊に農村必需品のごときものは、至急に適正價格を決定する旨を言明されたのでありまするが、今日になつても何らの御決定がないのみならず、すべての物價が上つておりまして、私は一品たりとも下つた品物のあることを發見するに苦しむのであります。ゆえに政府は現下の實情を洞察されまして、物價體系を至急に決定され、米、繭、肥料のごときものに對しては、十分なる價格調整費をもつて、速やかに新價格を決定されんことを要望いたすものであります。
また三十億の公廳費でありまするが、ただいまも北委員より反對意見があつたようでありますが、官僚統制の焼き直しは、すなわち不必要であると私は考えます。ゆえにこれらの豫算を農村振興、あるいは中小商工業の振興の費用に充てられんことを切望いたします。殊に農業技術員の問題でありまするが、食糧増産の第一線に働くところの農業技術員の使命というものは、まことに重大であります。農業技術指導によりまして、食糧その他の農産物の増産は必ず期し得られると思いまするがゆえに、政府は農業技術員補助に對しまして、少くとも二億圓の補助増額をなされんことを要望するものであります。(拍手)
次は教育費の問題でありまするが、畫期的な學制改革は斷行されましたが、しかし豫算措置というものはまことに貧弱なものでございまして、遺憾千萬に存じまするとともに、非常なる不滿であることを表明するものであります。ゆえに文教豫算に對しましては、一段の熱意と誠意とを要望する次第であります。殊に學制改革の結果、下級中等學校に充つべき施設なき市町村に對しましては、思い切つたところの國庫補助を與うべきなりと思うのであります。
次は鐵道運賃の値上げでありまするが、政府は近く赤字補填のために鐵道運賃の大幅値上げを計畫されているようであります。なるほど鐵道會計の赤字は、昭和二十一年末におきまして五十三億、さらに昭和二十二年におきましては八十三億あることは、私も承知いたしております。しかし鐵道運賃の値上げは、國民生活に重大なる關係を有するものでございます。すなわちインフレ助長の大原因となり、物價騰貴の素因をもつくり、從つて歳出實行不能の因もつくられると考えまするがゆえに、政府は經營の合理化を斷行され、經費の節約をはかり、その値上げを最小限度に食い止めるべきものであると思う次第であります。殊に貨物運賃の値上げのごときは、大いに考慮を要する問題であると考えます。
その他要望する點は多數でございますが、時間の關係でこの程度にしたいと思いまするが、要は國民をして生活の安定を得せしめるということである。(拍手)それには言行一致の政治が特に必要であると考えます。しかるに政府は口に議會政治を唱えながら、實際はどうであるか。九十議會、九十一議會におきまして、官公吏優遇が叫ばれたが、一向耳をかさなかつたところの政府が、一度ゼネストの嵐に遇うや、直ちに中勞委員會に頼んで、官公吏優遇を確約するがごときは、議會否認の行動ではないかと考えます。
また口には中小工業の振興を叫びながら、その實際はどうであるか。例を復興金融金庫にとつてみましても、その融資額三十四億二千餘萬圓のうち、中小企業に融資したところの金額は、わずかに一億三千萬圓に過ぎないのであります。殘り全部は大企業用にまわしているという實情にあるのであります。また食糧の増産、供出の重大性を説きながら、農産品は安く、農村必需品は高くするところの政府である。またインフレ防止を叫びながら、酒、タバコのごとき官製品及び官業事業の値上げを行い、諸物價暴騰の口火を切り、インフレ助長政策をとつている政府であります。
これでは、現政府によつて國民生活の安定というものは、思いもよらざることと考えまするがゆえに、政府はよろしく、わが黨の要望は政府に對するところの一大警告なりと考え、大いに反省されまして、われわれが要望したところの問題を、直ちに實行に移されんことを重ねて要望いたしまして、原案に贊成する次第でございます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=7
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008・山崎猛
○議長(山崎猛君) 中島茂喜君。
〔中島茂喜君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=8
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009・中島茂喜
○中島茂喜君 私は無所屬倶樂部を代表いたしまして、ただいま上程に相なつております議案について、二つの希望意見を付して委員長の報告に贊意を表すものであります。
昭和二十二年度歳入歳出豫算竝びに特別會計豫算の總額は、實に二千數百億円に達する厖大な金額に上つているのでありますが、その内容をつぶさに檢討いたしてみますときに、國民が現在最も要望いたしております生産増強のために使用せらるべき金額の僅少であることを、遺憾に思うものであります。しかしながら今日わが國内外の客觀的諸情勢を靜かに考えますときにおきましては、本豫算に贊成せざるを得ないと存ずるものであります。從來豫算の執行がその時期を失しましたがため、所期の目的を達成し得ず、從つて十分なる效果をあげ得なかつた幾多の實例があるのであります。この厖大なる豫算の執行にあたつては、特にこの點に留意せられまして、適期に、しかも急速に豫算を運用し、よつて生産増強のため、少額なりといえども效果あらしめ、國家再建の基礎を確立せられるよう要望いたすものであります。
さらにまた本豫算が執行せられますときには、當然インフレーシヨンを助長いたしますことは、火を見るより明らかであります。石橋大藏大臣は、その點については確信があると、かように申されておりますけれども、過去の事實より判斷いたしますときには、まことに心細く頼りないものがあるのであります。よつて政府は速やかにインフレ對策を確立し、もつて國民生活の安定をはかるべきはもちろんでありまするが、なかんずく國民生活の基盤であります食糧問題解決のため、米價を基準としたる物價體系の樹立を要望いたしまして、本案に贊成するものであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) これにて討論は終局いたしました。これより採決に入ります。まず森戸辰男君提出、昭和二十二年度本豫算案は編成替を求めるため政府に返付すべしとの動議を採決いたします。本動議に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=10
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011・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立少數。よつて森戸辰男君提出の動議は否決せられました。
次に昭和二十二年度歳入歳出豫算案、昭和二十二年度特別會計歳入歳出豫算案の兩案を一括して採決いたします。右兩案の委員長報告はいずれも可決であります。兩案を一括して委員長報告の通り決するに贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=11
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012・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立多數。よつて兩案とも委員長報告の通り可決確定いたしました。(拍手)
次に(改第二號)昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案、(改特第一號)昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算追加案、(改追第一號)豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件、右三案を一括して採決いたします。三案の委員長報告はいずれも可決であります。三案を一括して委員長報告の通り決するに贊成の諸君の起立を求めます。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=12
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013・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立總員。(拍手)よつて三案とも委員長報告の通り可決確定いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=13
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014・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第二十一ないし第二十三の三案を繰上げ一括上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=14
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015・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=15
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016・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第二十一、統計法案、日程第二十二、恩赦法案、日程第二十三、罹災救助基金法の一部を改正する法律案、右三案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長庄司一郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=16
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017・会議録情報3
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第二十一 統計法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 恩赦法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 罹災救助基金法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 統計法案(政府提出、貴族院送付)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十四日
委員長 庄司 一郎
衆議院議長山崎猛殿
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附帶決議
一、統計改善発達のためには、地方における統計制度の刷新機構の拡充を急速に実現することが特に重要である、政府はこの点に遺憾なきを期せられたい。
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 恩赦法案(政府提出、貴族院送付)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十五日
委員長 庄司 一郎
衆議院議長山崎猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 罹災救助基金法の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十五日
委員長 庄司 一郎
衆議院議長山崎猛殿
━━━━━━━━━━━━━
〔庄司一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=17
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018・庄司一郎
○庄司一郎君 統計法案、竝びに本法案の委員會に併託されましたる二法案の經過竝びにその結果を、これよりきわめて簡單に御報告を申し上げたいと思います。
まず統計法案について申し上げますならば、本法案は、統計上の眞實性とその正確とを確保し、調査の重複を避け、その體系を整備し、もつて統計制度の改善向上をはかるの必要上提案されましたことは、既に政府の提案説明により十分御承知の通りであります。そこで本委員會は去る十一日より開催をいたしまして、まず理事には花村四郎君、青木泰助君、氏原一郎君の御三君が當選され、委員長には不肖私が當選をいたしました。當初政府より入江法制局長官、美濃部統計委員會事務局長等より、提案理由の詳細なる説明を聽取した後において、委員各位より活發なる質疑が行われました。ただいまその二、三を御紹介申し上げたいと思います。
その一は、現行官廳統計の信頼すべからざる不正確きわまるところの調査を根本的に改善するには、政府はいかなる具體策をもつているかという問いに對しましては、政府はまず末端組織の完備、機構の改革、都道府縣竝びに市町村等の統計專任職員の設置等により、一方また統計に關する教育の普及發達をはかり、國民全體にも統計に關する理解と、深き協力とを求めて、漸進的に善處していきたい旨の答辯がありました。
また統計委員會の構成メンバーは、從來あまりにも官僚獨占的偏重のきらいはなかりしや、民間幾多の權威あるところの統計界の人材を民主的に起用する用意は政府においてないかとの問いに對しましては、政府は、この後は一層民主的の線に沿うて、民間の權威者のために門戸を開放し、もつて御協力を願いたいとの意味の答辯がありました。
また、政府はもつぱら産業生産方面と經濟面だけの統計調査にのみ重點を置いておるようであるが、時局下社會的あるいは文化的方面の統計の調査にいかなる施策ありやとの問いに對しましては、現下わが國の特殊性により、もつぱら經濟統計方面にのみ重點を置いてきたことは事實であるけれども、この後は文化統計、社會統計方面をも決して軽んずるようなことはしないとの答辯がございました。
このほか、十數項目にわたる適切なる質疑應答が行われたのでありまするが、詳細は速記録等に讓らしていただきまして、去る十四日討論に入り、自由黨を代表して今井はつ君、進歩黨を代表して森山ヨネ君、社會黨氏原一郎君、國民協同黨丸山一郎君より、それぞれ各黨を代表されまして原案贊成の旨述べられ、採決の結果、全員起立贊成をなされ、ここに本法案は可決されました。引續き委員氏原一郎君の御提案であられましたる附帶決議を、委員長朗讀の上議題とし、お諮りいたしましたところ、各派共同提案に御同意なされました上、これまた全員一致をもつて贊成可決されたのであります。附帶決議の全文をこの際朗讀さしていただきます。
附帶決議
一、統計改善發達のためには、地方における統計制度の刷新機構の擴充を急速に實現することが特に重要である。政府はこの點に遺憾なきを期せられたい。
次は併託第二の恩赦法案について御報告申し上げます。本法案に關しましては、去る十四、十五の兩日にわたり、委員會は愼重審議したのでございまするが、劈頭まず木村司法大臣は、本法は新しい日本憲法の施行に順應し、必要に迫られ、ここに新たに恩赦法を制定し、大赦、特赦、減刑、復權のほかに、さらに刑の執行の免除等をも加えて提案せる旨の説明あり、十四日質疑にはいりました次第であります。
委員中よりは、いかに本法の恩赦により復權して、いわゆる公民權を得ましても、刑餘者の前科を根本的に抹消せずんば、そのありがたみはないじやないか、何がゆえに前科抹消の關係を本法の中にうたわなかつたのであるかとの質問に對しましては、政府は、今議會に提案する豫定であつたのであるが、刑法中改正案の中に、御説の前科抹消はうたつてあるのであるが、不幸次の議會に讓るよりほか、會期切迫のためいたし方なかつたとの答辯があつたのであります。
本法案に關し、また關連して、委員長よりもその補充質問を一、二いたしました。すなわち第一、今般選擧に立候補せんとする者の資格審査申請書の第一ぺージの中に、かつて逮捕、監禁その他體刑、罰金刑等を受けた一切の事實を詳細にしたためよとあるは、いかなる目的であるか、またこの調書を中央、地方それぞれの選擧管理委員會に備えつけておいて、これを一般國民の前に公表するというその眞意は、一體那邊にあるか、人權竝びに人の名譽の尊重の點から考えても、恩赦法立法の精神から、はたまた司法保護法なる法律の精神から考えても、また前科抹消が未提出ではあるけれども、既に刑法改正の中にうたわれておる見地から考えても、まことに文化國家として感服のできないやり方ではないかとの質問に對しまして、金森國務大臣は、まつたく同感である、遺憾のことと思うが、餘儀なき方面よりの關係であつたから、一應ああなつたのであるけれども、身分上のこと、名譽上のことであるから、適當な措置に善處していきたい旨の答辯がありました。
第二に、新憲法の實施日に――本法案最初の適用として、來るべき五月三日、恩赦を發布する用意を政府はもつていないか、昨年十一月三日の恩に赦は、長期受刑者中、その罪名、罪質等の關係ではありましようが、恩赦の恩典に浴し得ざりし者が相當の數ある、刑務所中において、これら長期受刑者は、非常なる不平と不滿とをもつておるのであるが、彼の人々も、戰時中においてはその食糧の量を減ぜられ、その勞働をきわめて強化された人々であつたのである、この際本法を活かして、憲法實施の喜びのその日において、まず本法の愛の法律を活用されたいのである、また廣範圍の假釋放を斷行する用意が政府にはないのかとの要請的意見に對しまして、司法大臣より、恩赦のことはまことに望ましいことであるけれども、自分一個の意見によつてのみは決し得ないことであり、假釋放の擴大とともに、とくと研究さしてもらいたいとの意味の答辯がありました。また刑務所下級官吏、看守等の待遇改善の問題に關しましては、同大臣より、必ずや全力を傾注してその改善に努め、看守等の素質の改良をも實現し、もつて受刑者のよき指導者たらしめたいとの意味の答辯があつたのであります。
かくて討論にはいり、日本自由黨より今井君、日本進歩黨より森山君、日本社會黨より氏原君、國民協同黨より丸山君等が、それぞれ黨を代表されて原案贊成の旨述べられ、討論はここに終局いたしました。採決に入り、全員起立贊成と決し、本案は可決と決定した次第であります。
第三は、罹災救助基金法の一部を改正する法律案でございます。本法案は、現行法中「府縣」とあるを「都道府縣」に改めること、また第三條中の「府縣」とあるを「都府縣」に改めるほか、「北海道ニ於テ貯蓄スベキ罹災救助基金ノ最少額ハ百万圓トス」と改正するほか、これに附隨する若干の改正を伴う、きわめて簡易なるところの改正案でございます。
本法の委員會においては、氏原委員より、現行法による府縣の基本金五十萬圓程度の貯蓄額は、現下の貨幣價値よりこれを見て、あまりにも貧弱なる少額ではないか、よろしく最少限度の十倍の五百萬圓程度の額に根本的に改正し、地方罹災の場合等、ほんとうに役に立ち得るところの基金の造成が緊要と思うが、政府はどう考えるか、また該基金の造成方策として、遊興税の二分ぐらいを年々積立することによつて、きわめて容易なるところの基金の造成が可能ではないかとの建設的意見に對し、政府は、まことに結構なる御意見、御同感である、よつて將來研究して善處させていただきたいとの意味の答辯がありました。
ここにおいて討論に入り、今井、森山、氏原、丸山の四君より、それぞれ所屬政黨を代表され、原案に御贊成の旨を述べられ、討論は終局し、續いて採決に入り、全員贊成起立となり、本法案は可決決定いたしました。以上、統計法案に併託されたる三案の委員會の經過竝びに結果を御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 三案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=19
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020・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて三案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=20
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021・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに三案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=21
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022・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに三案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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統計法案 第二讀會(確定議)
恩赦法案 第二讀會(確定議)
罹災救助基金法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=23
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024・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、三案とも委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=24
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025・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第二十を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=25
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026・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=26
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027・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。日程第二十、學校教育法案の第一讀會を開きます。文部大臣高橋誠一郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=27
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028・会議録情報4
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第二十 學校教育法案(政府提出) 第一讀會
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学校教育法案
学校教育法
第一章 総則
第一條 この法律で、学校とは、小学校、中学校、高等学校、大学、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする。
第二條 学校は、國、地方公共團体及び別に法律で定める法人のみが、これを設置することができる。
この法律で、國立学校とは、國の設置する学校を、公立学校とは、地方公共團体の設置する学校を、私立学校とは、別に法律で定める法人の設置する学校をいう。
第三條 学校を設置しようとする者は、学校の種類に應じ、監督廳の定める設備、編制その他に関する設置基凖に從い、これを設置しなければならない。
第四條 國立学校及びこの法律によつて設置義務を負う者の設置する学校の外、学校(大学の学部又は大学院についても同樣とする。)の設置廃止、設置者の変更その他監督廳の定める事項は、監督廳の認可を受けなければならない。
第五條 学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定のある場合を除いては、その学校の経費を負担する。
第六條 学校においては、授業料を徴收することができる。但し、國立又は公立の小学校及び中学校又はこれらに準ずる盲学校、聾学校及び養護学校における義務教育については、これを徴收することができない。
國立又は公立の学校における授業料その他の費用に関する事項は、監督廳が、これを定める。
第七條 学校には、校長及び相当数の教員を置かなければならない。
第八條 校長及び教員の免許状その他資格に関する事項は、監督廳がこれを定める。
第九條 左の各号の一に該当する者は、校長又は教員となることができない。
一 禁治産者及び準禁治産者
二 長期六年の禁錮以上の刑に処せられた者
三 長期六年未満の懲役又は禁錮の刑に処せられ、刑の執行を終り、又は刑の執行を受けることのないことに至らない者
四 前條の免許状取上げの処分を受け、二年を経過しない者
五 昭和二十一年勅令第二百六十三号による教職不適格者
六 性行不良と認められる者
第十條 私立学校は、校長を定め、監督廳に届け出なければならない。
第十一條 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督廳の定めるところにより、学生、生徒及び兒童に懲戒を加えることができる。但し、体罰を加えることはできない。
第十二條 学校においては、学生、生徒、兒童及び幼兒並びに職員の健康増進を図るため、身体檢査を行い、及び適当に衞生養護の施設を設けなければならない。
身体檢査及び衞生養護の施設に関する事項は、監督廳が、これを定める。
第十三條 左の各号の一に該当する場合においては、監督廳は、学校の閉鎖を命ずることができる。
一 法令の規定に故意に違反したとき
二 法令の規定により、監督廳のなした命令に違反したとき
三 六箇月以上授業を行わなかつたとき
第十四條 学校が、設備、授業その他の事項について、法令の規定又は監督廳の定める規程に違反したときは、監督廳は、その変更を命ずることができる。
第十五條 私立学校は、毎会計年度の開始前に收支予算を毎会計年度の終了後二箇月以内に收支決算を監督廳に届け出なければならない。
收支予算に重大な変更を加えようとするときも、また同樣とする。
第十六條 子女を使用する者は、その使用によつて、子女が、義務教育を受けることを妨げてはならない。
第二章 小学校
第十七條 小学校は、心身の発達に應じて、初等普通教育を施すことを目的とする。
第十八條 小学校における教育については、前條の目的を実現するために、左の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
一 学校内外の社会生活の経驗に基き、人間相互の関係について、正しい理解と協同、自主及び自律の精神を養うこと。
二 郷土及び國家の現状と傳統について、正しい理解に導き、進んで國際協調の精神を養うこと。
三 日常生活に必要な衣、食、住、産業等について、基礎的な理解と技能を養うこと。
四 日常生活に必要な國語を、正しく理解し、使用する能力を養うこと。
五 日常生活に必要な数量的な関係を、正しく理解し、処理する能力を養うこと。
六 日常生活における自然現象を科学的に観察し、処理する能力を養うこと。
七 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養い、心身の調和的発達を図ること。
八 生活を明るく豊かにする音樂、美術、文藝等について、基礎的な理解と技能を養うこと。
第十九條 小学校の修業年限は、六年とする。
第二十條 小学校の教科に関する事項は、第十七條及び第十八條の規定に從い、監督廳が、これを定める。
第二十一條 小学校においては、監督廳の檢定若しくは認可を経た教科用図書又は監督廳において著作権を有する教科用図書を使用しなければならない。
前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる。
第二十二條 保護者(子女に対して親権を行う者、親権を行う者のないときは、後見人又は後見人の職務を行う者をいう。以下同じ。)は、子女の満六才に達した日の翌日以後における最初の学年の初から、満十二才に達した日の属する学年の終りまで、これを小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校に就学させる義務を負う。
前項の義務履行の督促その他義務に關し必要な事項は、監督廳がこれを定める。
第二十三條 前條の規定によつて、保護者が就学させなければならない子女(以下学齢兒童と称する。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村立小学校の管理機関は、監督廳の定める規程により、教育に関し都道府縣の区域を管轄する監督廳(以下都道府縣監督廳と称する。)の認可を受けて、前條第一項に規定する義務を猶予又は免除することができる。
第二十四條 第三十三條の規定により、小学校設置の義務を免除された区域内の學齢兒童の保護者は、第二十二條第一項に規定する義務を免除されたものとする。
第二十五條 経濟的理由によつて、就学困難と認められる学齢兒童の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を與えなければならない。
第二十六條 市町村立小学校の管理機関は、傳染病にかかり、若しくはその虞のある兒童又は性行不良であつて他の兒童の教育に妨げがあると認める兒童があるときは、その保護者に対して、兒童の出席停止を命ずることができる。
第二十七條 学齢に達しない子女は、これを小学校に入学させることができない。
第二十八條 小学校には、校長、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない。但し、特別の事情のあるときは、事務職員を置かないことができる。
小学校には、前項の外、助教諭その他必要な職員を置くことができる。
校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。
教諭は、兒童の教育を掌る。
養護教諭は、兒童の養護を掌る。
事務職員は、事務に從事する。
助教諭は、教諭の職務を助ける。
第二十九條 市町村は、その議会の議決を経て、その区域内にある学齢兒童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。
第三十條 町村が、前條の規定によることを不可能又は不適当と認めるときは、市町村学校組合又は町村学校組合を設けることができる。
第三十一條 町村が、前二條の規定によることを不可能又は不適当と認めるときは、その議会の議決を経て、小学校の設置に代え、学齢兒童の全部又は一部の教育事務を、他の市町村、市町村学校組合又は町村学校組合に委託することができる。
第三十二條 町村が、前二條の規定による負担に堪えないと都道府縣監督廳が認めるときは、都道府縣は、その議会の議決を経てその町村に対して、必要な補助を與えなければならない。
第三十三條 都道府縣監督廳は、町村、市町村学校組合又は町村学校組合の一部について、第三十一條の不可能又は不適当と認める事情はあるが、同條及び前條の規定によることができないと認めるときは、その町村、市町村学校組合又は町村学校組合に、その一部に関し、小学校設置の義務を免除することができる。
第三十四條 公立又は私立の小学校は、都道府縣監督廳の所管に属する。
第三章 中学校
第三十五條 中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に應じて、中等普通教育を施すことを目的とする。
第三十六條 中学校における教育については、前條の目的を実現するために、左の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
一 小学校における教育の目標をなほ充分に達成して、國家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
二 社会に必要な職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に應じて將來の進路を選択する能力を養うこと。
三 学校内外における社会的活動を促進し、その感情を正しく導き、公正な判断力を養うこと。
第三十七條 中学校の修業年限は、三年とする。
第三十八條 中学校の教科に関する事項は、第三十五條及び第三十六條の規定に從い、監督廳が、これを定める。
第三十九條 保護者は、子女が小学校の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初から、満十五才に達した日の属する学年の終りまで、これを、中学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校に就学させる義務を負う。
前項の規定によつて保護者が就学させなければならない子女は、これを学齢生徒と称する。
第四十條 第二十一條、第二十二條第二項、第二十三條から第二十六條まで及び第二十八條から第三十四條までの規定は、中学校に、これを準用する。
第四章 高等学校
第四十一條 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達に應じて、高等普通教育及び專門教育を施すことを目的とする。
第四十二條 高等学校における教育については、前條の目的を実現するために、左の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
一 中学校における教育の成果をさらに発展拡充させて、國家及び社会の有爲な形成者として必要な資質を養うこと。
二 社会において果さなければならない使命の自覚に基き、個性に應じて將來の進路を決定させ、一般的な教養を高め、專門的な技能に習熟させること。
三 社会について、廣く深い理解と健全な批判力を養い、個性の確立に努めること。
第四十三條 高等学校の学科及び教科に関する事項は、前二條の規定に從い、監督廳が、これを定める。
第四十四條 高等学校には、通常の課程の外、夜間において授業を行う課程又は特別の時間及び時間において授業を行う課程を置くことができる。
高等学校には、通常の課程を置かず、又は前項の課程の一のみを置くことができる。
第四十五條 高等学校は、通信による教育を行うことができる。
通信による教育に関し必要な事項は、監督廳が、これを定める。
第四十六條 高等学校の修業年限は、三年とする。但し、特別の技能教育を施す場合及び第四十四條第一項の課程を置く場合は、その修業年限は、三年を超えるものとすることができる。
第四十七條 高等学校に入学することのできる者は、中学校若しくはこれに準ずる学校を卒業した者又は監督廳の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする。
第四十八條 高等学校には、專攻科及び別科を置くことができる。
高等学校の專攻科は、高等学校若しくはこれに準ずる学校を卒業した者又は監督廳の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者に對して、精深な程度において、特別の事項を教授し、その研究を指導することを目的とし、その修業年限は、一年以上とする。
高等学校の別科は、前條に規定する入学資格を有する者に對して、簡易な程度において、特別の技能教育を施すことを目的とし、その修業年限は、一年以上とする。
第四十九條 高等学校に関する教科用図書、入学、退学、轉学その他必要な事項は、監督廳が、これを定める。
第五十條 高等学校には、校長、教諭及び事務職員を置かなければならない。
第五十一條 第二十八條第二項から第四項まで、第六項及び第七項並びに第三十四條の規定は、高等学校に、これを準用する。
第五章 大学
第五十二條 大学は、学術の中心として、廣く知識を授けるとともに、深く專門の学藝を教授研究し、知的、道徳的及び應用的能力を展開させることを目的とする。
第五十三條 大学には、数個の学部を置くことを常例とする。但し、特別の必要がある場合においては、單に一個の学部を置くものを大学とすることができる。
第五十四條 大学には、夜間において授業を行う学部を置くことができる。
第五十五條 大学の修業年限は、四年とする。但し、特別の專門事項を教授研究する学部及び前條の学部については、その修業年限は、四年を超えるものとすることができる。
第五十六條 大学に入学することのできる者は、高等学校を卒業した者若しくは通常の課程による十二年の学校教育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む。)又は監督廳の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする。
第五十七條 大学には、専攻科及び別科を置くことができる。
大学の専攻科は、大学を卒業した者又は監督廳の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者に対して、精深な程度において、特別の事項を教授し、その研究を指導することを目的とし、その修業年限は、一年以上とする。
大学の別科は、前條に規定する入学資格を有する者に対して、簡易な程度において、特別の技能教育を施すことを目的とし、その修業年限は、一年以上とする。
第五十八條 大学には学長、教授、助教授、助手及び事務職員を置かなければならない。
大学には、前項の外、必要な職員を置くことができる。
学長は、校務を掌り、所属職員を統督する。
教授は、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に從事する。
助教授は、教授の職務を助ける。
助手は、教授及び助教授の職務を助ける。
第五十九條 大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。
教授会の組織には、助教授その他の職員を加えることができる。
第六十條 大学の設置の認可に関しては、監督廳は、大学設置委員会に諮問しなければならない。
大学設置委員会に関する事項は、命令でこれを定める。
第六十一條 大学には、研究所その他の研究施設を附置することができる。
第六十二條 大学には、大学院を置くことができる。
第六十三條 大学に四年以上在学し、一定の試驗を受け、これに合格した者は、学士と称することができる。
学士に関する事項は、監督廳が、これを定める。
第六十四條 公立又は私立の大学は、文部大臣の所轄とする。
第六十五條 大学院は、学術の理論及び應用を教授研究し、その深奧を究めて、文化の進展に寄與することを目的とする。
第六十六條 大学院には、数個の研究科を置くことを常例とする。但し、特別の必要がある場合においては、單に一個の研究科を置くものを大学院とすることができる。
第六十七條 大学院に入学することのできる者は、第五十七條第二項に規定する者とする。
第六十八條 大学院を置く大学は、監督廳の定めるところにより、博士その他の学位を授與することができる。
博士その他の学位に関する事項を定めるについては、監督廳は、大学設置委員会に諮問しなければならない。
第六十九條 大学においては、公開講座の施設を設けることができる。
公開講座に関し必要な事項は、監督廳が、これを定める。
第七十條 第二十八條第六項及び第四十五條の規定は、大学に、これを準用する。
第六章 特殊教育
第七十一條 盲学校、聾学校又は養護学校は、夫夫盲者、聾者又は精神薄弱、身体不自由その他心身に故障のある者に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施し、併せてその欠陷を補うために、必要な知識技能を授けることを目的とする。
第七十二條 盲学校、聾学校及び養護学校には、小学部及び中学部を置かなければならない。但し、特別の必要のある場合においては、その一のみを置くことができる。
盲学校、聾学校及び養護学校には、幼稚部及び高等部を置くことができる。
第七十三條 盲学校、聾学校及び養護学校の小学部及び中学部の教科及び教科用図書、高等部の学科、教科及び教科用図書又は幼稚部の保育内容は、小学校、中学校、高等学校又は幼稚園に準じて、監督廳が、これを定める。
第七十四條 都道府縣は、その議会の議決を経て、その区域内にある学齢兒童及び学齢生徒の中、盲者、聾者又は精神薄弱、身体不自由その他心身に故障のある者を就学させるに必要な盲学校、聾学校又は養護学校を設置しなければならない。
第七十五條 小学校、中学校及び高等学校には、左の各号の一に該当する兒童及び生徒のために、特殊学級を置くことができる。
一 性格異常者
二 精神薄弱者
三 聾者及び難聽者
四 盲者及び弱視者
五 言語不自由者
六 その他の不具者
七 身体虚弱者
前項に掲げる学校は、疾病により療養中の兒童及び生徒に対して、特殊学級を設け、又は教員を派遣して、教育を行うことができる。
第七十六條 第十九條、第二十七條、第二十八條(第四十條及び第五十一條において準用する場合を含む。)第三十四條、第三十七條、第四十五條から第四十八條まで、第五十條、第八十條及び第八十一條の規定は、盲学校、聾学校及び養護学校に、これを準用する。
第七章 幼稚園
第七十七條 幼稚園は、幼兒を保育し、適当な環境を與えて、その心身の発達を助長することを目的とする。
第七十八條 幼稚園は、前條の目的を実現するために、左の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
一 健康、安全で幸福な生活のために必要な日常の習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
二 園内において、集團生活を経驗させ、喜んでこれに參加する態度と協同、自主及び自律の精神の芽生えを養うこと。
三 身辺の社会生活及び事象に対する正しい理解と態度の芽生えを養うこと。
四 言語の使い方を正しく導き、童話、絵本等に対する興味を養うこと。
五 音楽、遊戯、絵画その他の方法により、創作的表現に対する興味を養うこと。
第七十九條 幼稚園の保育内容に関する事項は、前二條の規定に從い、監督廳が、これを定める。
第八十條 幼稚園に入園することのできる者は、満三才から、小学校就学の始期に達するまでの幼兒とする。
第八十一條 幼稚園には、園長及び教諭を置かなければならない。
幼稚園には、前項の外、必要な職員を置くことができる。
園長は、園務を掌り、所属職員を監督する。
教諭は、幼兒の保育を掌る。
第八十二條 第三十四條の規定は、幼稚園に、これを準用する。
第八章 雜 則
第八十三條 第一條に掲げるもの以外のもので、学校教育に類する教育を行うものは、これを各種学校とする。
各種学校は、第一條に掲げる学校の名称を用いてはならない。
第四條から第七條まで、第九條から第十一條まで、第十三條、第十四條及び第三十四條の規定は、各種学校に、これを準用する。
前項の外、各種学校に関し必要な事項は、監督廳が、これを定める。
第八十四條 都道府縣監督廳において、学校又は各種学校以外のものが各種学校の教育を行うものと認めるときは、その旨を関係者に通告して、前條の規定によらせることができる。
第八十五條、学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる。
第八十六條 町村制を施行していない地域においては、この法律における町村及び町村学校組合に関する規定は、その地域におけるこれに準ずべきものに、これを適用する。
前項の地域において、この法律により難い事項のあるときは、都道府縣監督廳は、特別の処分をすることができる。
第八十七條 この法律における市には、東京都の区を含むものとする。
第八十八條 この法律に規定するものの外、この法律施行のため必要な事項は、監督廳が、これを定める。
第九章 罰 則
第八十九條 第十三條の規定(第八十三條第三項において準用する場合を含む。)による閉鎖命令に違反した者は、これを六箇月以下の懲役若しくは禁錮又は一万円以下の罰金に処する。
第九十條 第十六條の規定に違反した者は、これを三千円以下の罰金に処する。
第九十一條 第二十二條第一項又は第三十九條第一項の規定による義務履行の督促を受け、なお履行しない者は、これを一千円以下の罰金に処する。
第九十二條 第八十三條第二項の規定に違反した者は、これを五千円以下の罰金に処する。
附 則
第九十三條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、第二十二條第一項及び第三十九條第一項に規定する盲学校、聾学校及び養護学校における就学義務並びに第七十四條に規定するこれらの学校の設置義務に関する部分の施行期日は、勅令で、これを定める。
第九十四條 左に掲げる法律及び勅令は、これを廃止する。
公立学校職員年功加俸國庫補助法
現役國民学校職員俸給費國庫補助法
現役青年学校職員俸給費國庫補助法
青年学校教育費國庫補助法
國民学校令
青年学校令
中等学校令
師範教育令
專門学校令
高等学校令
大学令
盲学校及聾唖学校令
幼稚園令
私立学校令
教員免許令
学位令
第九十五條 義務教育費國庫負担法の一部を次のように改正する。
第一條 公立ノ小学校及中学校ノ義務教育ニ從事スル職員(勅令ヲ以テ定ムルモノヲ除ク)ノ俸給、特別加俸、死亡賜金及勅令ヲ以テ定ムル旅費ノ爲都道府縣ニ於テ要スル經費ノ半額ハ國庫ニ於テ之ヲ負擔ス
第二條中「北海道地方費及府縣」を「都道府縣」に改める。
第九十六條 第三十九條第一項に規定する保護者の義務は、昭和二十二年度においては、子女の満十三才に達した日の属する学年の終りまでとする。
当分の間昭和二十三年度以降における、第三十九條第一項に規定する保護者の義務に関しては、勅令で、これを定める。
第九十七條 この法律施行の際、現に存する從前の規定による國民学校、國民学校に類する各種学校及び國民学校に準ずる各種学校並びに幼稚園は、夫夫これらをこの法律によつて設置された小学校及び幼稚園とみなす。
第九十八條 この法律施行の際、現に存する從前の規定(國民学校令を除く。)による学校は、從前の規定による学校として存続することができる。
前項に規定する学校は、文部大臣の定めるところにより、從前の規定による他の学校となることができる。
前二項の規定による学校に関し、必要な事項は、文部大臣が、これを定める。
第九十九條 前條に規定する学校に係る教員免許状の效力、授與その他に関しては、第九十四條の規定にかかわらず、文部大臣の定めるものの外、なお從前の例による。
第百條 從前の規定による学校が、第一條に掲げる学校になつた場合における在学者に関し必要な事項は、文部大臣の定めるところによる。
第百一條 從前の規定による学校の卒業者の資格関にし必要な事項は、文部大臣の定めるところによる。
第百二條 第二條の別に法律で定める法人とは、当分の間、農業会その他これに準ずる公共團体又は民法による財團法人とする。但し、盲学校、聾学校、養護学校若しくは幼稚園又はこの法律施行の際、現に存する從前の規定による学校で、民法による財團法人でないもの又はその設置者が民法による財團法人でないものの設置者は、当分の間、民法による財團法人であることを要しない。
第百三條 小学校及び中学校には、第二十八條の規定(第四十條において準用する場合を含む。)にかかわらず、当分の間、養護教諭は、これを置かないことができる。
第百四條 市町村は、第三十一條の規定(第四十條において準用する場合を含む。)にかかわらず、当分の間、学齢兒童及び学齢生徒の全部又は一部の教育事務を、國、都道府縣又は私立学校を経営する法人若しくは私人に委託することができる。
私立学校においては、前項の規定により委託を受けた義務教育については、授業料を徴収することができない。
第百五條 中学校は、当分の間、尋常小学校卒業者及び國民学校初等科修了者に対して、通信による教育を行うことができる。
前項の教育に関し必要な事項は、文部大臣の定めるところによる。
第百六條 第三條、第六條第二項、第八條、第十一條、第十二條第二項、第二十條、第二十一條第一項、第二十二條第二項、第三十八條、第四十三條、第四十五條第二項、第四十七條、第四十八條第二項、第四十九條、第七十三條、第七十九項、第八十三條第四項及び第八十八條の監督廳並びに第四條及び第二十三條に規定する定をなす権限を有する監督廳は、当分の間、これを文部大臣とする。但し、文部大臣は、その権限を他の監督廳に委任することができる。
第百七條 この法律において、市町村立小学校の管理機関とは、当分の間、市町村長とし、都道府縣監督廳とは、当分の間、東京都長官、北海道廳長官又は府縣知事とする。
第百八條 從前の学位令による学位は、第九十四條の規定にかかわらず、第九十八條の規定による大学において、文部大臣の定めるものの外、なお從前の例により、これを授與することができる。
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〔國務大臣高橋誠一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=28
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029・高橋誠一郎
○國務大臣(高橋誠一郎君) 今囘上程に相なりました學校教育法案について、大略御説明申し上げます。
政府は民主的な平和國家、文化國家建設の根基をなします教育の重要性に鑑みまして、さきに内閣に教育刷新委員會を設置いたしまして、日本教育制度の根本的改革につきまして、愼重審議を煩わしてまいつたのでございます。このたびの學制改革案は、この教育刷新委員會の改革案を骨子とするものでありますが、この案はまた、昨年三月に來朝いたしました米國教育使節團の勸告書の線に沿うものでありまして、從來の學制を根本的に整備いたしまして、六年、三年、三年、四年の小學校、中學校、高等學校、大學としたのでございます。政府がこの案を實施せんといたしますおもなる理由は、おおよそ次のごとくでございます。
第一に、教育の機會均等の見地から考えまして、從來の學制におきましては、國民學校の初等科六年を修了して、國民學校高等科及び青年學校に進みます者と、中等學校を經まして、高等學校、專門學校に進みます者との、二つの體系に截然と區別せられておりまして、前者は國民學校初等科修了者の七割五分を占めておりますが、彼らには、能力がありましても、高等教育を受ける機會がほとんど與えられていない實情であります。この點改正憲法に規定いたしまする、能力に應じてひとしく教育を受け得るという教育の機會均等が保障せられず、また高等教育を受ける希望を失いまするがために、國民學校高等科及び青年學校の教育そのものも效果をあげ得ないのであります。
第二に、普通教育の普及向上と男女の差別撤廢について申しますと、公民たるの資質を啓發して、文化國家建設の根基に培いますることは、文化國家建設を中外に標榜するわが國の當然の責務であります。このため義務教育の年限を九箇年に延長いたしまするとともに、その範圍を擴充いたしまして、盲聾唖、不具者にもひとしく普通教育の普及徹底をはかりたいと存じます。義務教育の年限は、戰前八箇年に延長することに決定いたしまして、昭和十八年度から實施することになつておつたのでありますが、戰時中その實施が延期せられましたので、現在女子は滿十二歳まで、男子は青年學校を含めまして滿十九歳までとなつております。これは男女平等を規定する憲法の趣旨に抵觸すると同時に、心身の發育不十分の時期から職業教育を施しまして、將來の方向を決定さしてしまうことになりまして、個性の伸長をはかるべき教育的見地からも不適當であります。九箇年の普通教育を無償の義務教育といたしまして、男女一般に課するゆえんでございます。
第三に、學制を單純化することにつきましては、從來の國民學校、青年學校、中學校、高等女學校、實業學校、師範學校、專門學校、高等學校、大學など、複雜多岐な學制を單純化しまして、心身の發達の段階に應じまして、原則として六・三・三・四の小學校、中學校、高等學校、大學といたしたのでございます。
第四に、學術文化を進展させます見地から考えますると、大學卒業までの修業年限は、從來のごとく中學校四年修了で、高等學校に進むといたしますれば、現行制度と新制度と同年になりまするが、中學校五年卒業で高等學校に入學いたしますとすれば、一年の短縮になります。しかして大學の數を増加することによりまして、大學教育を受ける人員を増加し、さらに大學の上に大學院を充實することによりまして、高度の文化水準の維持向上も期待できると存ずるのでございます。なお欧米諸國においても、義務教育の年限は大體八箇年あるいは九箇年になつております。六・三・三・四の制度は、米國のみならず、次第に世界の趨勢に相なつておりますので、世界文化の交流の見地からいたしましても、有意義であると存ずるのでございます。
以上が、學制改革實施の主たる理由でございまするが、本案はこの六・三・三・四の學制を法制化したものでありまして、本案は從來の各學校令を一つの法律にまとめ上げたのでありますが、從來の制度と根本的に異なります點は、各種の學校系統を單一化しまして、六・三・三・四の小學校、中等學校、高等學校、大學といたしましたほか、從來の教育における極端なる國家主義の色彩を拂拭いたしまして、眞理の探究と人格の完成を目標といたし、心身の發達の段階に應じまして、適切なる教育を施すことを目的とし、從來の教育行政における中央集權を打破いたしまして、畫一的形式主義の弊を改め、地方の實情に即して、個性の發展を期するために、地方分權の方向を明確にいたし、高等學校、中學校、小學校、幼稚園及びこれに準ずる盲學校、聾學校などは、都道府縣の監督に委ね、教科書、教科内容など重要な事項につきましては、當分の間文部大臣が所掌いたしますが、この權限をいつでも下級機關に委任することにいたしてあります。文部大臣は直接には大學のことのみを掌りまして、大學にはまた能う限りの自治を保障せられておるのでございます。
さらに教育の機會均等を保障いたしますがため、高等學校、大學における夜間學校を法規上正式に認めまして、通信教育を制度化し、高等學校にはパート・タイムの學校をも認めておるのであります。なお私立學校の監督は、これまで直接個々の學校校長、教員に對しまして、行政上の裁量で監督できることになつておりましたが、このたびはこれを改めまして、學校の設置基準の設定、教員免許制度の確立等の措置によりまして、法規上の間接監督に止め、私立學校の自由な發展を期待しておるのでございます。
なお本案は昭和二十二年四月一日から施行することになつておりますが、盲、聾、唖等の義務制の施行期日は、別に勅令で定めることにいたしました。また一般の義務教育に關しましては、昭和二十二年度は、滿十三歳までを義務教育の對象といたしまして、昭和二十三年度以降における義務教育の施行期日は、勅令で定めることにいたしました。そのほか經過措置といたしまして、現在の學校の存續、昇格、在學者、卒業者、教員等の處置につきましても、遺憾のないやうにいたしました。
以上が本案の大要でございます。なお本案は樞密院の御諮詢を經たものであります。何とぞ愼重審議の上、速やかに御協贊くださることを切望いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=30
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031・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は、政府提出教育基本法案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=31
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032・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=32
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033・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=33
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034・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、政府提出教育基本法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=34
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035・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=35
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036・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程は變更せられました。
教育基本法案の第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長椎熊三郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=36
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037・会議録情報5
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教育基本法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 教育基本法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十七日
委員長 椎熊 三郎
衆議院議長山崎猛殿
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〔椎熊三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=37
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038・椎熊三郎
○椎熊三郎君 教育基本法案の委員會の經過竝びに結果を御報告申し上げます。
本法案は、去る三月十三日に本會議に上程せられまして、十八名の委員付託と相なつたのであります。翌十四日委員會を開きまして、委員長、理事の互選をいたしました。委員長には江川爲信君、理事には小川原政信君、山口光一郎君、及川規君、以上が選擧せられましたが、その後委員長において、やむを得ざる事情がありまして辭任せられましたので、私が改めて委員長に推擧せられました。
この法案は、政府の説明によりますと、新たに日本の教育の基本を確立するために、教育の目的を明示し、また日本國憲法の精神に則り、これと關連する諸條項を定める必要から、この法案を出したと申しております。委員會は、去る十四日より十五日に至る間、各委員、熱心なる御審議がございましたが、十五日をもつて質疑を終局いたしまして、本日午前十一時より委員會を開きまして、討論を行いました。以下、委員會の經過について御報告申し上げます。
委員會における質疑の大要を御紹介申し上げますと、まず第一に、教育勅語と教育基本法との關係、竝びに教育基本法の根底をなす思想の問題であります。これに對しまして政府は、教育勅語と、教育基本法にうたう教育の理念とは、矛盾するものではない、しかし教育勅語はなにしろ明治二十三年にできたもので、今日においてはさらにこれを補足しなければならぬ點が多い。また從來教育勅語の解釋について曲解せられているがごとき觀を呈する點もあるので、教育基本法を國民の代表たる議會の議に付して、法律の形をもつて制定することによつて、今後の教育方針を定めたい旨の答辯がありました。また教育基本法の根底をなす思想については、平和國家建設のためには、人格の完成という目的を掲げて、個人の尊嚴と價値を認めること、それを基礎とする旨の答辯がありました。
第二には、第三條の教育の機會均等の條項、及び第四條の義務教育に關する問題であります。すなわち形式的には教育の機會均等が與えられていても、實質的に、育英なり、奬學なりの方法が擴大充實せらるるのでなければ、教育の機會均等の精神は徹底せらるるものではないではないかというのであります。政府からは、現在の大日本育英會における奬學費の増額及び奬學生の増員等について説明があり、またこの趣旨徹底に今後十分努力する旨の答辯があつたのであります。これに關連いたしまして、勤勞青少年に就學の機會を大いに與えなければならぬという意見が多數ありました。これに對して政府は、定時制ないしは夜間の高等學校を充實して、青少年が進んで就學を希望するように仕向けるほか、通信教育、職場教育等によつて、勤勞青少年の教育を振興したい旨の答辯があつたのであります。さらに義務教育については、授業料を徴收しないのみならず、學用品の無償をも規定すべしとの意見があつたのでありますが、これに對して政府は、その精神には贊成ではあるが、現在のわが國の財政状態は、遺憾ながらかかる段階に達していないという答辯があつたのであります。
第三に、第六條學校教育に關するものであります。すなわち教員の身分の尊重、待遇の適正について、政府はいかなる點を考慮しておるかという問題であります。これと關連して、教員の身分の尊重は、單に物質上のそれに止まらず、精神上の身分の尊重にまで及ぶべきであるという意見があつたのでありますが、政府は、ここにこの法律によるところの身分の尊重というのは、精神上のそれをも含んでおるものである、教員の身分の尊重については、具體的に目下種々考究中である旨が答辯いたされたのであります。
第四の問題といたしましては、第八條政治教育に關するものであります。法律に定める、學校の教員の政治運動は、いかなる點まで許されるかということについてであります。第八條第二項は、教育活動中に、特定の政黨を支持し、またこれに反對するための政治教育、その他政治的活動をしてはならない旨を規定しているが、その他の場合は原則として自由であります、すなわち選擧法上の制限ないしは教育者たることから生ずる道徳的制限があるほか、ここにこれをなすことは自由である旨、政府の答辯がありました。さらにこれと關連して、學園内における學生生徒の政治運動をいかに考えるかとの質問に對しまして、政府は、一定年齡に達した學徒の政治運動は差支えないが、學園内においてそれを行うことに對しては、教育の目的の達成と、學園の秩序維持のため、その活動には一定の制限があるべきであると思う旨の答辯がありました。それについて、なおその制限の範圍は學校の段階によつて異なる、中學校、高等學校、大學と、その段階によつて異なる、それは學徒の自覺と、學校當局の判斷に任せらるべきものであるとの答辯があつたのであります。
第五に、第十條教育行政に關連しまして、第一項の意味について質疑應答があり、また地方教育行政制度一般について種々意見の開陳があり、政府においては、これが改革についてほぼその成案を得て、目下關係各方面と打合せ中である旨の答辯があつたのであります。それがただいま上程になつて、文部大臣から御説明があつた案の内容に盛られておることであると私は想像いたします。
最後に、この教育基本法は、教育の基本原則を示しておるため、概して抽象的規定が多いので、この法律を一片の法令に終らしめないために、この基本法の精神の趣旨徹底竝びにこれが實現に向つて、政府は最善の努力をいたすべきであるとの希望意見が、熱心に主張せられました。
大體質疑の内容は以上のごとくでありましたが、質疑を終局いたしまして、討論にはいりましてから、重大なる點について修正意見が出ました。これはかなり委員會でも問題になつた點で、この法案の大精神には各黨とも贊成しておるのである。しかしながら少數で敗れたりといえども、この少數意見は必ずしも無理を言うのでもなし、當然のことであるから、特にこの點については、本會議において詳細に報告してもらいたいという希望等もございましたので、修正意見については、やや詳細に御説明申し上げたいと思います。
第一の修正は、國民協同黨からでございます。第三條第二項の「國及び地方公共團體は、」の次に、「學校の設立配置を適正にし且つ」、こういう文句を入れるのであります。第二は、第三條第三項として、「すべて國民は、その教育を受けた學校の程度種別等によつて差別されない。」という一項を加える。これは今日までの幾多の文部省關係法律でも、私學と官學との差別は一應はないことにはなつておるが、現在の實社會では、まつたく多くの差別がございます。不當に差別をしております。私學と官學との差別、あるいは地方の高等學校と中央の高等學校との差別、これが教育上はなはだおもしろくない結果をもたらしておるし、またこれが教育の本質を無視すること重大なるものがある。この點に關しては、修正論者は熱心にこの内容について主張せられております。ごもつともな點が多いのであります。次は第四條第二項を、「國又は地方公共團體は、その設置する學校における義務教育については、學費を負擔することを原則とする。」、こういうふうに訂正するのであります。なおそのほかに、これは字句の問題でございますが、第十條第二項に「教育行政は、この自覺のもとに、」の次に、「獨立して」という字句を挿入する。こういう修正案でございました。修正の案に對しては、熱心なる説明がございまして、強く主張せられましたが、採決の結果は、遺憾ながら少數をもつて敗れたのでございます。
續いて社會黨を代表いたしまして、永井勝次郎君から希望意見が述べられました。この希望意見についても、社會黨は熱心なる研究の結果、一時討論を休憩までして、その意見の出るのを委員會が待つたほどでございますので、永井君説明のこの希望意見は、まことに内容においては尊重すべき點が多いのでございますから、特に委員長から御報告申し上げておきます。
第一、本法案は從來の教育行政概念からすれば、相當進歩的な部分が認められるが、生産勤勞大衆の立場からこれを檢討すると、第一に憲法に明記された教育の機會均等に關する大原則を、本案において具體的にすべきにもかかわらず、最も重要なる經濟的裏づけを缺いておることは重大なる缺陷である。第二、學校教職員竝びに學生の政治運動に關する自由保障が明確に規定されてないということである。第三は、教育財源に關する明確なる保障が規定されてない點である。第四は、勤勞青少年の教育が重大であるにもかかわらず、從來の青年學校教育においてすら滿十八歳までの義務を規定したにかかわらず、本案においてはこれが後退して、滿十五歳と規定されておることは、青少年に對する教育の保障を缺いておる點である。この四つの點は、わが黨としては――日本社會黨のことですが、見逃しがたい重大な點であると思う。ゆえにでき得る限り速かなる機會において、右の線に沿い、本法案を修正せられんことの希望を附して、本案に贊成する。これが希望意見でございました。よつて日本社會黨は、本案に對しては贊成の意見ということが明確でございます。
これに對しまして、自由黨、進歩黨を代表いたしまして、自由黨の上林山榮吉君から、本法案に對する贊成の討論がございました。これをもつて討議を結局いたしまして、採決の結果、原案を滿場一致をもつて可決確定いたしました。
はなはだ粗笨ではございましたが、以上委員會の經過竝びに結果を御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=38
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039・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=39
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040・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=40
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041・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=41
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042・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=42
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043・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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教育基本法案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=43
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044・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
日程第六及び第七は、便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=44
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045・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。日程第六、日本銀行法の一部を改正する等の法律案、第七、金融機關債券發行特例法案、右兩案を一括して第一讀會を開きます。大藏大臣石橋湛山君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=45
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046・会議録情報6
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第六 日本銀行法の一部を改正する法律案(政府提出) (第一讀會)
第七 金融機關債券発行特例法案(政府提出) (第一讀會)
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日本銀行法の一部を改正する等の法律案
日本銀行法の一部を次のように改正する。
第十六條中「勅裁ヲ經テ政府」を「内閣ニ於テ」に改める。
第三十條第一項中「主務大臣ハ」の下に「通貨發行審議會ノ議決ニ基キ閣議ヲ經テ」を加える。
第三十一條 日本銀行ハ必要アリト認ムルトキハ前條第一項ノ發行限度ヲ超エテ銀行券ヲ發行スルコトヲ得但シ十五日ヲ超エ其ノ發行ヲ繼續セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
日本銀行前項ノ規定ニ依リ三十日ヲ超エテ前條第一項ノ發行限度ヲ超ユル銀行券ノ發行ヲ繼續セントスル場合ニ於テ主務大臣前項但書ノ認可ヲ爲スニハ通貨發行審議會ノ議決ニ基クコトヲ要ス
第三十一條ノ二 日本銀行ハ十五日ヲ超エテ發行限度ヲ超ユル銀行券ノ發行ヲ繼續シタル場合ニ於テハ十六日以後ノ發行限度ヲ超ユル銀行券ノ發行高ニ對シ其ノ日數ニ應ジ主務大臣ノ定ムル割合ヲ以テ發行税ヲ納ムベシ但シ其ノ割合ハ通貨發行審議會ノ議ヲ經テ主務大臣ノ定ムル割合ヲ下ルコトヲ得ズ
第三十二條に次の一項を加える。
主務大臣ハ通貨發行審議會ノ議決ニ基キ第二項第一號乃至第四號及第四項ニ掲グルモノニ付各別ニ保證ニ充ツルコトヲ得ル金額ノ限度ヲ定ムベシ
第四章に次の一條を加える。
第三十六條ノ二 通貨發行審議會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム第三十九條第三項を次のように改める。
日本銀行ハ剩餘金中ヨリ拂込出資金額ニ對シ配當ヲ爲サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ但シ其ノ配當ハ年五分ノ割合ヲ超ユルコトヲ得ズ
同條第四項を削り、同條第五項中「第三項」を「前項」に改める。
第四十條 削除
第四十七條中「政府」を「内閣」に改める。
附 則
この法律施行の期日は、各規定につき、勅令でこれを定める。
この法律の施行に関し必要な規定は、勅令でこれを定める。
第三十九條第三項の改正規定並びに附則第五項及び第六項の規定は、昭和二十年四月一日を含む事業年度以後の事業年度につき、これを適用する。
第十六條の改正規定施行の際現に日本銀行の総裁及び副総裁たる者は、その殘任期間を限り、改正後の同條の規定により、就職しているものとみなす。
日本銀行は、当分の間、剩余金の配当をしない場合においては、剩餘金の金額から日本銀行法第三十九條第一項及び第二項の準備金に相当する金額を控除した金額を、拂込出資金額に対し年五分の割合に相当する金額に達するまで、特別準備金として積み立てなければならない。
日本銀行が剩余金の配当をした場合において、その配当金額が、前項の規定を適用した場合に積み立つべき特別準備金の金額に達しないときは、その差額に相当する金額についても、当分の間、また、前項と同樣とする。
前二項の規定による特別準備金(以下特別準備金という。)は、改正後の日本銀行法第三十九條第四項の規定の適用に関しては、これを改正後の同條第三項の規定による配当金とみなす。
特別準備金は、損失の填補又は主務大臣の定めるその他の目的以外には、これを使用することができない。
当分の間、日本銀行法第三十九條第一項及び第二項の準備金(同條第二項の準備金については、損失の填補又は配当に充てることのできるものに限る。)並びに特別準備金の金額を使用しても、なお毎事業年度に生じた損失を填補するに不足する場合には、政府は、その不足額に相当する金額を補給しなければならない。
日本銀行が解散した場合において、特別準備金があるときは、日本銀行法第十二條第二項の規定にかかわずら、拂込資本金額及び特別準備金の金額の合計額を超える残余財産を以て國庫に帰属するものとする。
日本銀行特別融通及損失補償法の一部を次のように改正する。
第三條中「二十年」を「二十五年」に改める。
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金融機関債券発行特例法案
金融機関債券発行特例法
第一條 金融機関再建整備法第十五條第一項に規定する新金融機関(以下新金融機関という。)は、同項に規定する旧金融機関(以下旧金融機関という。)が特別の法令により債券を発行することができるものである場合には、勅令の定めるところにより、当該特別の法令に準じて債券を発行することができる。
第二條 新金融機関が前條の規定により債券を発行しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
第三條 商法第二百九十六條乃至第二百九十八條の規定は、新金融機関が第一條の規定により発行する債券には、これを適用しない。
第四條 新金融機関が第一條の規定により発行する債券の権利の消滅時効は、元本については十五年、利息については五年で完成する。
第五條 この法律に規定するものを除く外、新金融機関が第一條の規定により発行する債券に関し必要な事項は、勅令でこれを定める。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
旧金融機関が特別の法令によつて発行した債券で、その債務が金融機関再建整備法に基き新金融機関に移されたものは、これを新金融機関が第一條の規定により発行した債券とみなす。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=46
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047・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) ただいま議題となりました日本銀行法の一部を改正する等の法律案ほか一件につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
言うまでもなく、通貨の發行が物價その他國民經濟に及ぼす影響はきわめて甚大であります。從つて通貨對策は最も愼重なるを要する次第であります。最近の通貨の増發に對しましては、これが吸收のため目下自主的運動として展開せられております貯蓄増強運動の成果に、多大の期待をわれわれとしてはかけておることはもちろんでありますが、同時に政府といたしましても、財政資金及び産業資金の放出面において、それぞれ適切なる處置をとつておる次第であります。すなわち財政につきましては、その健全化、收支の均衡をはかり、明年度豫算もこの線に沿つて編成をいたした次第であります。また金融機關が供給する事業資金につきましては、原則として市中より吸收した預貯金等の範圍に限定し、日本銀行からの借入依存の傾向を排除し、不急産業に對する資金の貸付は極力これを抑制いたしまして、緊要産業に對して重點的に融資することといたしておる次第であります。これに伴いまして、公債についても公募主義をとり、やむを得ず赤字公債發行を避け得ない場合でありましても、原則として日本銀行引受によることはこれをやめまして、貯蓄資金の範圍内において公債の消化をはかる計畫を立てておる次第であります。
かように通貨對策につきましては、當面必要な手をそれぞれ打つておるのでありますが、なおこれを一つの制度として恆久化する必要があることは、申すまでもありません。政府はこれがためかねてからその具體的措置を考究いたしておりましたが、先般金融制度調査會からの答申もありまして、ここにこの法案を提出いたした次第であります。かくて廣く全般的な經濟情勢に照し、また廣く各界の聲を聽くことによつて、通貨の適正量を定め、その發行を規正し、もつてわが國經濟の健全かつ圓滑なる發展に資することといたしたいのであります。
なお日本銀行の根本的改革につきましては、目下金融制度調査會において調査審議中でありまして、その答申を得た後、日本銀行法に根本的な改正を加えることになろうと存じます。しかし日本銀行の剩餘金の配當に關する規定、日本銀行の正副總裁の任命及び解任に關する規定等につきましては、今囘の通貨發行審議會に關する規定とともに、とりあえず所要の改正を加え、將來においてはさらに檢討を重ねることといたしたいのであります。以下、本法案についてその内容のおもなる點を簡單に申し上げます。
まず第一に通貨發行審議會を設けて、通貨發行に關する所要の事項については、その議決を求めてこれを定めることといたしました。またこれに關連して、日本銀行券の發行制度に必要な改正を加えることといたしたのであります。その一は、主務大臣が銀行券の發行限度を定めるにあたりましては、通貨發行審議會の議決に基くことといたしました。かつまたその事柄の重要性に鑑みまして、特に閣議を經ることとしたのであります。その二は、限外發行につきましては、それが十五日を超える場合は、主務大臣の認可を要することといたし、また三十日を超える場合は、主務大臣がこれを認可するに際しまして、通貨發行審議會の議決に基くことといたしたのであります。その三は、限外發行が十五日を超える場合には、發行税を課することとし、その最低割合は通貨發行審議會の議を經て、主務大臣が定めることとしたのであります。その四は、銀行券の各種の發行保證物件につきまして、主務大臣は通貨發行審議會の議決に基いて、それぞれ保證に充てることのできる全額の限度を定めることといたしたのであります。なお通貨發行審議會に關する規定は、別に勅令でこれを定めることにいたしております。
第二に、剩餘金の配當の規定について改正を加えました。すなわち昨年九月に施行されました、會社其の他の法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律の趣意によりまして、日本銀行に對する配當保證及び政府に對する劣後配當の規定を削除いたしました。しかしながら當分の間、毎事業年度における損失を填補するに必要な限度におきましては、政府の補償を實施することといたしたのであります。また特別準備金の制度を設けまして、當分の間、剩餘金中配當をなさず日本銀行に留保した金額を、一定の基準により特別準備金として積立てさせまして、とりあえず損失の填補、または主務大臣の定めるその他の目的のために使用することができるものといたしたのであります。
第三に、從來日本銀行の正副總裁は勅裁を經て政府がこれを命じ、また特別の事由がある時は政府が解任することができることに相なつておりますが、憲法の改正に伴いまして、内閣においてこれを命じまたは解任することといたしたのであります。
第四に、日本銀行特別融通及損失補償法中、特別融通の期限が二十年でありましたのを、二十五年に改めました。
以上述べましたごとく、ただいま上程せられました日本銀行法の一部を改正する等の法律案は、現下の經濟事情に鑑み、日本銀行券發行の適正を期する等のため必要なものであります。
次に金融機關債券發行特例法案につき御説明を申し上げます。特別銀行、金庫等を將來いかなる形のものにいたすかの根本的問題につきましては、金融制度全般の問題とにらみ合わせまして、目下金融制度調査會において調査審議中であります。從つてその根本的改正は、いずれ調査會の答申を得ましてからこれを決したいと存ずるのであります。しかしながら金融機關の再建整備も目下具體的に進行中でありまして、その過程におきましては、新勘定の事業をその第二銀行等に讓り渡す必要のある特別銀行等の生ずることも豫想せられるのであります。しこうしてかかる金融機關が債券を發行し、それによつて所要資金を調達する特權を賦與されている場合には、その第二銀行等に對しまして、債券發行の特權を暫定的に認める必要があります。この理由によりまして、金融機關債券發行特例法案を提出いたした次第であります。
すなわち、金融機關の再建整備におきまして、新勘定の事業を讓り渡す金融機關が、現在特別の法令によつて債券を發行することができるものであります場合には、その新勘定の事業を讓り受ける金融機關は、たといそれが普通銀行等、現在債券の發行について特例を認められていない金融機關でありましても、右の特別の法令に準じて債券を發行することができるものといたすのであります。しこうしてこの場合、金融機關がこの法律によつて債券を發行するのには、商法の一般原則に對し特例を設ける必要がありますので、商法の特則、時效に關する規定等、若干の特別規定を設けたのであります。
何とぞ御審議の上、速やかに御協贊あらんことを切望する次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=47
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048・山崎猛
○議長(山崎猛君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=48
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049・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第六及び第七の兩案は、一括して政府提出昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=49
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050・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=50
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051・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議の如く決しました。
日程第八、郵便法の一部を改正する法律案の第一讀會を開きます。遞信大臣一松定吉君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=51
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052・会議録情報7
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第八 郵便法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
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郵便法の一部を改正する法律案
郵便法の一部を次のように改正する。
第十八條第一項を次のように改める。
通常郵便物ノ種類及料金ハ左ノ如シ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ料金ヲ低減スルコトヲ得
第一種 書状 重量二十グラム又ハ其ノ端數毎ニ 一圓二十錢
第二種 郵便葉書 通常葉書 五十錢
往復葉書 一圓
封緘葉書 一圓二十錢
第三種 毎月一囘以上刊行スル定期刊行物 重量百グラム又ハ其ノ端數毎ニ 五十錢
第四種 書籍、印刷物、業務用書類、寫眞、書、畫、圖、商品ノ見本及雛型、博物學上ノ標本 重量百グラム又ハ其ノ端數毎ニ 一圓二十錢
第五種 農産物種子 重量百グラム又ハ其ノ端數毎ニ 十五錢
附 則
この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
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〔國務大臣一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=52
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053・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) ただいま議題となりました郵便法の一部を改正する法律案の提案理由を簡單に御説明申し上げます。
現在の時局に對處いたしまして、生産を振興し、國民生活の安定を確保して、新日本を建設するために、通信事業サービスの復興をはかり、その正常なる運行を確保することが喫緊の要務でありますことは、申すまでもありません。しかるに通信事業運營上必要なる各般の經費は、終戰後における異常なる物價の高騰によりまして、急激なる増嵩を來している反面、事業收入はこれに伴わず、既に昭和二十一年度以降歳入不足となりまして、これが對策として、昨年通信料金の引上げを行つた次第でありましたが、その後引續く物價の高騰のため、依然として赤字を克服することができません。昭和二十年度末以來、巨額の借入金によりまして、わずかに收支の均衡を保つて現在に及んだ次第であります。
しかも昭和二十二年度におきまする通信特別會計業務勘定に相當する部分の歳入不足は、約五十三億圓と推算せられまして、このままに推移いたしまするときは、事業の運營を破局に導くおそれがないとも申し上げかねるような状況でありまするので、これが對策につき、先般來種々考究を重ねてまいつたのであります。すなわち、まずできるだけ事業運營の合理化をはかることといたしまして、昭和二十一年度豫算の編成にあたりましても、徹底せる緊縮方針をもつてこれに當り、努めて經費の節減をはかるとともに、他方サービスの改善による増收策をも考えておる次第でありますが、しかしながらこれらの手段にはおのずから限度がありますので、その不足する部分に對する方策といたしまして、一般國家財政の現状及び通信事業の特殊性を考慮して愼重に考究しました結果、業務收支の面における赤字は、これを通信料金の引上げによつて賄うのが、諸般の情勢から見て適當であると思料せらるるに至つたのであります。しかして郵便料金のうち、書状、葉書等、いわゆる通常郵便物の料金は、郵便法に規定せられておりますので、ここにこれが改正法律案を提出した次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御協贊あらんことを希望いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=53
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054・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の審査を付託すべき委員の選拳についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=54
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055・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は、政府提出統計法案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=55
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056・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=56
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057・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第九、地方自治法案の第一讀會を開きます。内務大臣植原悦二郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=57
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058・会議録情報8
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第九 地方自治法案(政府提出) 第一讀會
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地方自治法案
地方自治法目次
第一編 総則
第二編 普通地方公共團体
第一章 通則
第二章 住民
第三章 條例及び規則
第四章 選挙
第一節 通則
第二節 選挙人名簿
第三節 投票
第四節 開票
第五節 選挙会
第六節 候補者及び当選人
第七節 特別選挙
第八節 爭訟
第九節 選挙運動及び罰則
第五章 直接請求
第一節 條例の制定及び監査の請求
第二節 解散及び解職の請求
第六章 議会
第一節 組織
第二節 権限
第三節 招集及び会期
第四節 議長及び副議長
第五節 委員会
第六節 会議
第七節 請願
第八節 議員の辞職及び資格の決定
第九節 紀律
第十節 懲罰
第十一節 書記長及び書記
第七章 執行機関
第一節 普通地方公共團体の長
第一款 地位
第二款 権限
第三款 補助機関
第四款 議会との関係
第二節 選挙管理委員会
第三節 監査委員
第八章 給與
第九章 財務
第一節 財産及び営造物
第二節 收入
第三節 支出
第四節 予算
第五節 出納及び決算
第六節 雜則
第十章 監督
第十一章 補則
第三編 特別地方公共團体及び地方公共團体に関する特例
第一章 特別地方公共團体
第一節 特別市
第二節 特別区
第三節 地方公共團体の組合
第四節 財産区
第二章 地方公共團体の協議会
附則
地方自治法
第一編 総則
第一條 地方公共團体は、普通地方公共團体及び特別地方公共團体とする。
普通地方公共團体は、都道府縣及び市町村とする。
特別地方公共團体は、特別市、特別区、地方公共團体の組合及び財産区とする。
第二條 地方公共團体は、法人とする。
普通地方公共團体は、その公共事務並びに從來法令により及び將來法律又は政令により普通地方公共團体に属する事務を処理する。
特別地方公共團体は、この法律の定めるところにより、その事務を処理する。
第三條 地方公共團体の名称は、從來の名称による。
都道府縣及び特別市の名称を変更しようとするときは、法律でこれを定める。
都道府縣及び特別市以外の地方公共團体の名称を変更しようとするときは、この法律に特別の定のあるものを除く外、條例でこれを定めなければならない。
第四條 地方公共團体は、その事務所の位置を定め又はこれを変更しようとするときは、條例でこれを定めなければならない。
第二編 普通地方公共團体
第一章 通則
第五條 普通地方公共團体の区域は、從來の区域による。
都道府縣は、市町村を包括する。
第六條 都道府縣の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。
都道府縣の境界にわたつて市町村の境界の変更があつたときは、都道府縣の境界も、また、自ら変更する。所属未定地を市町村の区域に編入したときも、また、同樣とする。
前二項の場合において財産処分を必要とするときは、関係地方公共團体が協議してこれを定める。その協議が調わないときは、関係地方公共團体の議会の意見を聽き、内務大臣がこれを定める。但し、法律に特別の定があるときは、この限りでない。
前項の協議については、関係地方公共團体の議会の議決を経なければならない。
第七條 市の廃置分合又はこれに伴う町村の廃置分合若しくは市町村の境界変更をしようとするときは、関係市町村の議会の議決を経て、内務大臣がこれを定める。
町村の廃置分合又は市町村の境界変更をしようとするときは、都道府縣知事は、関係市町村の議会の議決を経、内務大臣の許可を得てこれを定める。所属未定地を市町村の区域に編入しようとするときも、また、同樣とする。
都道府縣の境界にわたつて市町村の境界の変更をしようとするときは、関係普通地方公共團体の議会の議決を経て、内務大臣がこれを定める。
前三項の場合において財産処分を必要とするときは、関係市町村が協議してこれを定める。その協議が調わないときは、関係市町村の議会の意見を聽き、第一項及び第二項の場合においては都道府縣知事、前項の場合においては内務大臣がこれを定める。
前項の協議については、関係市町村の議会の議決を経なければならない。
第八條 市を設置し又は町村を市としようとするときは、その地方公共團体は、人口三万以上を有し、且つ、都市的形態を具えていなければならない。
町村を市とし又は市を町村としようとするときは、当該市町村の議会の議決を経て、内務大臣がこれを定める。
村を町とし又は町を村としようとするときは、町村は、その議会の議決を経て、都道府縣知事の許可を受けなければならない。
第九條 市町村の境界に関する爭論は、都道府縣知事がこれを裁定する。
市町村の境界が判明でない場合において、その境界に関し爭論がないときは、関係市町村の議会の意見を聽き都道府縣知事がこれを決定しなければならない。
都道府縣の境界にわたつて前二項の場合を生じたときは、関係のある都道府縣知事が協議してこれを裁定又は決定しなければならない。その協議が調わないときは、内務大臣がこれを裁定又は決定する。
前三項の規定による裁定又は決定に不服がある市町村は、高等裁判所に出訴することができる。
第一項乃至第三項の規定による裁定及び決定は、文書を以てし、その理由を附けてこれを関係市町村に交付しなければならない。
第二章 住民
第十條 市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府縣の住民とする。
住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の財産及び営造物を共用する権利を有し、その負担を分任する義務を負う。
第十一條 日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の選挙に参與する権利を有する。
第十二條 日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の條例又は規則の制定を請求する権利を有する。
日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の事務の監査を請求する権利を有する。
第十三條 日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の議会の議員、長、副知事若しくは助役、出納長若しくは收入役、選挙管理委員又は監査委員の解職を請求する権利を有する。
第三章 條例及び規則
第十四條 普通地方公共團体は、法律の範囲内において、その事務に関し、條例を制定することができる。
法律又は政令により都道府縣に属する國の事務に関する都道府縣の條例に違反した者に対しては、法律の定めるところにより、これに刑罰を科することがあるものとする。
第十五條 普通地方公共團体の長は、法律の範囲内において、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。
前條第二項の規定は、前項の規則にこれを準用する。
第十六條 條例及び規則は、一定の公告式により、これを告示しなければならない。
第四章 選挙
第一節 通則
第十七條 普通地方公共團体の議会の議員及び長は、その被選挙権を有する者について選挙人が投票によりこれを選挙する。
第十八條 日本國民たる年齢二十年以上の者で六箇月以來市町村の区域内に住所を有するものは、その属する普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙権を有する。
市町村は、市町村に対し特別の関係のある者の申請により、前項の規定による住所の要件にかかわらず、議会の議決を経て、これにその議会の議員及び長の選挙権を與えることができる。
前項の規定により選挙権を與えられた者は、当該市町村を包括する都道府縣の議会の議員及び長の選挙権を有する。
第二項の規定により住所を有する市町村以外の市町村において選挙権を與えられた者は、その住所を有する市町村においては、第一項の規定にかかわらず、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙権を有しない。
第一項の六箇月の期間は、市町村の廃置分合又は境界変更のため中断されることがない。
第十九條 普通地方公共團体の議会の議員の選挙権を有する者で年齢二十五年以上のものは、普通地方公共團体の議会の議員の被選挙権を有する。
日本國民で年齢三十年以上のものは、都道府縣知事の被選挙権を有する。
日本國民で年齢二十五年以上のものは、市町村長の被選挙権を有する。
第二十條 禁治産者及び準禁治産者竝びに懲役又は禁錮の刑に処せられその執行を終り又はその執行を受けることがなくなるまでの者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
第二十一條 選挙管理委員、選挙管理委員会の書記、投票管理者、開票管理者及び選挙長並びに選挙事務に関係のある官吏及び吏員は、その関係区域内においては、被選挙権を有しない。
在職の檢察官、警察官吏及び收税官吏は、被選挙権を有しない。
第二十二條 都道府縣の議会の議員は、各選挙区において、これを選挙する。
前項の選挙区は、郡市の区域による。
前項の区域の人口が著しく少いときは、條例で数区域を合せて一選挙区を設けることができる。
都道府縣の議会の議員の任期中あらたに第二項の区域の設定があつた場合において、從前その区域が属していた選挙区の配当議員数が同項の規定による関係選挙区の数に達しないときは、同項の規定の適用については、次の総選挙までの間、その区域は、なお設定されないものとみなす。
前二項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
市町村は、その議会の議員の選挙につき、條例で選挙区を設けることができる。但し、第百五十五條第二項の市については、区の区域を以て選挙区とする。
市町村の議会の議員の選挙における選挙人の所属の選挙区は、その住所によりこれを定める。第十八條第二項の規定による選挙権を有する者で市町村の区域内に住所を有しないものについては、当該市町村の選挙管理委員会は、本人の申請により、その申請がないときは職権により、その所属の選挙区を定めなければならない。
各選挙区において選挙すべき普通地方公共團体の議会の議員の数は、人口に比例して、條例でこれを定めなければならない。
第二十三條 普通地方公共團体の選挙に関する事務は、当該普通地方公共團体の選挙管理委員会がこれを管理する。
第二十四條 普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙は、これを行うべき事由が生じたときは、速かに行わなければならない。
普通地方公共團体の議会の議員又は長の任期満了に因る選挙は、その任期満了の日前三十日前にはこれを行うことができない。
市町村の議会の議員又は長の選挙は、第二十五條第四項の規定による通知があるまでの間は、これを行うことができない。但し、同項の期間内に通知がないときは、この限りでない。
選挙の期日は、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会が選挙の期日前、都道府縣にあつては三十日、市町村にあつては二十日までにこれを告示しなければならない。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合においては、選挙の期日は、都道府縣の選挙管理委員会において、選挙の期日前三十日までにこれを告示しなければならない。
第二十五條 都道府縣の議会の議員の選挙と都道府縣知事の選挙又は市町村の議会の議員の選挙と市町村長の選挙は、これを同時に行うことができる。
市町村の選挙管理委員会は、市町村の議会の議員又は長の選挙を行う場合においては、任期滿了に因る選挙については任期滿了の日前六十日までに、任期滿了以外の事由に因る選挙については第五十九條第二項又は第六十一條第三項の規定により報告する場合を除く外選挙を行うべき事由を生じた日から三日以内に、その旨を都道府縣の選挙管理委員会に届け出なければならない。市町村の議会の議員の選挙の当選人につき第六十二條第一項に掲げる事由を生じた場合又は市町村の議会の議員に欠員を生じた場合において、第五十六條又は第六十三條第二項の規定により不足の当選人又は欠員を補充することができないときも、また、同樣とする。
都道府縣の選挙管理委員会は、前項の規定による届出又は第五十九條第二項若しくは第六十一條第三項の規定による報告に基き、当該市町村の選挙を都道府縣の選挙と同時に行わせることができる。
都道府縣の選挙管理委員会は、第二項の規定による届出又は第五十九條第二項若しくは第六十一條第三項の規定による報告のあつた日から三日以内に、当該市町村の選挙を都道府縣の選挙と同時に行うかどうかを、当該市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
第一項又は第三項の規定により同時に選挙を行う場合においては、この法律に特別の定があるものを除く外、投票及び開票に関する規定は、各選挙に通じてこれを適用する。第一項の規定により同時に選挙を行う場合において、選挙会の区域が同一であるときは、選挙会に関する規定についても、また、同樣とする。
前項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第二節 選挙人名簿
第二十六條 普通地方公共團体の選挙は、衆議院議員選挙人名簿及び補充選挙人名簿又はその抄本によりこれを行う。
市町村の選挙管理委員会は、毎年九月十五日の現在により補充選挙人名簿を調製し、十一月五日から十五日間その指定した場所においてこれを関係人の縱覽に供さなければならない。
補充選挙人名簿の縱覽の場所は、委員会において縱覽開始の日前三日までにこれを告示しなければならない。
補充選挙人名簿には、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙権を有する者で当該市町村における衆議院議員選挙人名簿に登載されることができないものを登載しなければならない。
補充選挙人名簿には、選挙人の氏名、住所、性別及び生年月日等を記載しなければならない。
選挙権を有する者の年齢は、選挙人名簿の確定の期日によりこれを算定する。
第二十七條 補充選挙人名簿に脱漏又は誤載があると認めるときは、関係人は、その名簿の縱覽期間内に当該市町村の選挙管理委員会に異議の申立をすることができる。
委員会は、前項の申立を受けたときは、その日から二十日以内にこれを決定しなければならない。その申立を正当であると決定したときは、直ちに補充選挙人名簿を修正し、その旨を申立入及び関係人に通知し、併せてこれを告示しなければならない。その申立を正当でないと決定したときは、直ちにその旨を申立人に通知しなければならない。
前項の規定による決定に不服がある者は、決定のあつた日から七日以内に地方裁判所に出訴することができる。その判決に不服がある者は、控訴することはできないが、最高裁判所に上告することができる。
補充選挙人名簿は、十二月二十日を以て確定する。
補充選挙人名簿は、翌年の十二月十九日までこれを据え置かなければならない。但し、確定判決により修正すべきものは、委員会において、直ちにこれを修正し、その旨を告示しなければならない。
天災事変等のため必要があるときは更に名簿を調製しなければならない。
前項の名簿に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三節 投票
第二十八條 投票区は、衆議院議員の選挙の投票区による。
第二十九條 投票管理者は、選挙権を有する者の中から市町村の選挙管理委員会の選任した者を以てこれに充てる。
投票管理者は、投票に関する事務を担任する。
投票管理者は、選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。
第三十條 候補者は、各投票区における選挙人名簿に記載された者の中から、本人の承諾を得て、投票立会人となるべき者一人を定め、選挙の期日前三日までに、投票管理者に届け出ることができる。
前項の規定により届出のあつた者(候補者が死亡し又は候補者たることを辞したときは、その届出に係る者を除く。以下これに同じ。)が十人を超えないときは、直ちにその者を以て投票立会人とし、十人を超えるときは、届出のあつた者において投票立会人十人を互選しなければならない。
前項の規定による互選は、投票によりこれを行い、得票の最多数の者を以て投票立会人とする。得票の数が同じであるときは、投票管理者がくじでこれを定める。
第二項の規定による互選は、選挙の期日の前日にこれを行う。
第二項の規定による互選を行うべき場所及び日時は、投票管理者において、予めこれを告示しなければならい。
候補者が死亡し又は候補者たることを辞したときは、その届出に係る投票立会人は、その職を失う。
第二項の規定による投票立会人が三人に達しないときは若しくは三人に達しなくなつたとき又は投票立会人で参会する者が投票所を開くべき時刻になつても三人に達しないとき若しくはその後三人に達しなくなつたときは、投票管理者は、その投票区における選挙人名簿に記載された者の中から三人に達するまでの投票立会人を選任し、直ちにこれを本人に通知し、投票に立ち会わしめなければならない。投票立会人は、正当の理由がなければ、その職を辞することができない。
第三十一條 投票用紙の樣式は、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会がこれを定める。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合においては、投票用紙の樣式は、都道府縣の選挙管理委員会がこれを定める。
第二十五條第一項又は第三項の規定により同時に選挙を行う場合においては、投票用紙に各選挙における候補者の氏名を記載する欄を区分して設けなければならない。
第三十二條 選挙人は、投票所において、投票用紙に自ら候補者一人の氏名を記載してこれを投票箱に入れなければならない。
第二十五條第一項又は第三項の規定により同時に選挙を行う場合においては、選挙人は、投票所において、投票用紙の各選挙における候補者の氏名を記載する欄に、自ら候補者一人の氏名を記載してこれを投票箱に入れなければならない。
投票用紙には、選挙人の氏名を記載してはならない。
第三十三條 投票の拒否は、投票立会人の意見を聽き、投票管理者がこれを決定しなければならない。
前項の決定を受けた選挙人において不服があるときは、投票管理者は、仮に投票させなければならない。
前項の投票は、選挙人をしてこれを封筒に入れて封をし、表面に自らその氏名を記載して投票箱に入れさせなければならない。
投票立会人において異議のある選挙人についても、また、前二項と同樣とする。
第三十四條 選挙人でその從事する職務若しくは業務又は疾病その他政令の定める事由に因り選挙の当日自ら投票所に行き投票をすることができない旨を証明するものの投票については、第三十二條第一項、第二項、第三十七條、第四十一條及び前條の規定にかかわらず、命令で特別の規定を設けることができる。
第三十五條 島その他交通不便の地について、投票の当日に投票箱を送致することができない情況があると認めるときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、適宜にその投票の期日を定め、開票の期日までにその投票箱、投票録及び選挙人名簿又はその抄本を送致させることができる。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合においては、前項の規定による投票の期日は、同項の規定にかかわらず、都道府縣の選挙管理委員会がこれを定める。
第三十六條 天災その他避けることのできない事故に因り投票を行うことができないとき、又は更に投票を行う必要があるときは、当該類を保存しなければならない。選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない。但し、その期日は、委員会において少くとも五日前にこれを告示しなければならない。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合において前項に規定する事由を生じたときは、都道府縣の選挙管理委員会は、同項の例により更に投票を行わせなければならない。
都道府縣の選挙について第一項に規定する事由を生じた場合及び前項の場合においては、市町村の選挙管理委員会は、都道府縣の選挙の選挙長を経て都道府縣の選挙管理委員会にその旨を届け出なければならない。
第三十七條 衆議院議員選挙法第二十一條乃至第二十三條、第二十五條、第二十六條、第二十八條乃至第三十條、第三十二條、第三十四條、第三十五條及び第三十九條乃至第四十三條の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙の投票にこれを準用する。
第四節 開票
第三十八條 開票区は、衆議院議員の選挙の開票区による。但し、市町村の議会の議員の選挙については、当該市町村の選挙管理委員会は別に開票区を設けることができる。
第三十九條 開票管理者は、選挙権を有する者の中から市町村の選挙管理委員会が選任した者を以てこれに充てる。
開票管理者は、開票に関する事務を担任する。
開票管理者は、選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。
第四十條 第三十條の規定は、開票立会人にこれを準用する。
第四十一條 第三十二條第一項の規定による投票で左に掲げるものは、これを無効とする。
一 成規の用紙を用いないもの
二 候補者の氏名の外他事を記載したもの 但し、職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、この限りでない。
三 候補者でない者の氏名を記載したもの
四 二人以上の候補者の氏名を記載したもの
五 被選挙権のない候補者の氏名を記載したもの
六 候補者の氏名を自書しないもの
七 候補者の何人を記載したかを確認し難いもの
第三十二條第二項の規定による投票で前項第一号及び第二号に該当するものは、これを無効とする。その投票中の各選挙における候補者の氏名を記載する欄の前項第三号乃至第七号の記載は、これを無効とする。
第四十二條 開票管理者は、開票立会人立会の上、投票箱を開き、まず第三十三條第二項及び第四項の規定による投票を調査し開票立会人の意見を聽き、その投票を受理するかどうかを決定しなければならない。
開票管理者は、開票立会人とともに、各投票所の投票を混同して、投票を点檢しなければならない。
投票の点檢が終つたときは、開票管理者は、直ちにその結果を選挙長に報告しなければならない。
第四十三條 第三十六條第一項本文、第二項及び第三項の規定は、開票にこれを準用する。
第四十四條 衆議院議員選挙法第四十五條、第四十六條、第四十八條、第五十條、第五十一條、第五十三條乃至第五十五條及び第五十七條の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙の開票にこれを準用する。
第五節 選挙会
第四十五條 選挙長は、選挙権を有する者の中から当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の選任した者を以てこれに充てる。
選挙長は、選挙会に関する事務を担任する。
選挙長は、選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。
第四十六條 選挙会は、選挙長の指定した場所でこれを開く。
第四十七條 第三十條の規定は、選挙立会人にこれを準用する。
第四十八條 選挙会の区域と開票区の区域が同一である選挙については、第三十九條、第四十條、第四十二條第三項、第四十三條及び第四十四條の規定にかかわらず、当該選挙の開票の事務は、選挙会場において選挙会の事務に合せてこれを行うことができる。
前項の規定により開票の事務を選挙会の事務に合せて行う場合においては、開票管理者又は開票立会人は、選挙長又は選挙立会人を以てこれに充て、開票に関する次第は、選挙録中にこれを併せて記載するものとする。
第四十九條 選挙長は、すべての開票管理者から第四十二條第三項の規定による報告を受けた日又はその翌日に選挙会を開き、選挙立会人立会の上、その報告を調査し、各候補者の得票総数を計算しなければならない。
前條第一項の場合においては、選挙長は、前項の規定にかかわらず、投票の点檢の結果により各候補者の得票総数を計算しなければならない。
選挙の一部が無効となり更に選挙を行つた場合において、第四十二條第三項の規定による報告を受けたときは、選挙長は、第一項の例により、他の部分の報告とともに、更にこれを調査し、各候補者の得票総数を計算しなければならない。
第五十條 選挙長は、選挙録を作り、選挙会に関する次第を記載し、選挙立会人とともに、これに署名しなければならない。
選挙録は、第四十二條第三項の規定による報告に関する書類と併せて当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会において、普通地方公共團体の議会の議員又は長の任期間これを保存しなければならない。
第四十八條の場合においては、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、投票の有効無効を区別し、投票録及び選挙録と併せて当該普通地方公共團体の議会の議員又は長の任期間これを保存しなければならない。
第二十五條第三項の規定により都道府縣の選挙と市町村の選挙を同時に行う場合においては、前二項の規定にかかわらず、都道府縣の選挙管理委員会において関係書
第五十一條 第三十六條第一項本文、第二項及び第三項の規定は、選挙会にこれを準用する。
第五十二條 衆議院議員選挙法第六十條、第六十三條及び第六十六條の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙の選挙会にこれを準用する。
第六節 候補者及び当選人
第五十三條 候補者となろうとする者は、選挙の期日の告示があつた日から選挙の期日前七日までに、その旨を選挙長に届け出なければならない。
選挙人名簿に記載された者が他人を候補者としようとするときは、本人の承諾を得て、前項の期間内に、その推薦の届出をすることができる。
前二項の期間内に届出のあつた候補者が、普通地方公共團体の議会の議員の選挙にあつてはその選挙における議員の定数を超える場合、普通地方公共團体の長の選挙にあつては二人以上ある場合において、その期間を経過した後候補者が死亡し又は候補者たることを辞したときは、前二項の例により、選挙の期日前三日まで、候補者の届出又は推薦届出をすることができる。
普通地方公共團体の議会の議員の選挙において選挙区があるときは、一の選挙区において候補者となつた者は、他の選挙区においては、候補者の届出をし又はその推薦届出を承諾することができない。
候補者は、選挙長に届出をしなければ、候補者たることを辞することができない。
第一項乃至第三項及び前項の届出があつたとき、又は候補者が死亡したことを知つたときは、選挙長は、直ちにその旨を告示するとともに、これを当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に報告しなければならない。
第五十四條 都道府縣及び市の議会の議員又は長の選挙において候補者の届出又は推薦届出をしようとする者は、候補者一人につき、左の区分による金額又はこれに相当する額面の國債証書を供託しなければならない。
一 都道府縣知事の選挙 五千円
二 市長の選挙 三千円
三 都道府縣の議会の議員の選挙 二千円
四 市の議会の議員の選挙 千円
候補者の得票数が、都道府縣及び市の議会の議員の選挙にあつてはその選挙区内の議員の定数(選挙挙区がないときは議員の定数)を以て有効投票の総数を除して得た数の十分の一、都道府縣知事及び市長の選挙にあつては有効投票の総数の十分の一に達しないときは、前項の供託物は、当該都道府縣又は市に帰属する。
前項の規定は、候補者が選挙の期日前十日以内に候補者たることを辞した場合にこれを準用する。但し、被選挙権を有しなくなつたため候補者たることを辞したときは、この限りでない。
町村長の選挙において候補者の届出又は推薦届出をしようとする者は、選挙人三十人以上の連署を以てこれをしなければならない。
第五十五條 有効投票の最多数を得た者を以て当選人とする。但し、普通地方公共團体の議会の議員の選挙にあつてはその選挙区内の議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)を以て有効投票の総数を除して得た数の四分の一、普通地方公共團体の長の選挙にあつては有効投票の総効の八分の三以上の得票がなければならない。
当選人を定めるに当り得票数が同じであるときは、選挙会において、選挙長がくじでこれを定める。
第五十六條 第六十六條第一項、第二項若しくは第四項又は第六十八條第一項若しくは第二項の規定による異議の申立、訴願又は訴訟の結果、更に選挙を行わないで当選人を定めることができる場合においては、選挙会を開きこれを定めなければならない。
当選人が当選を辞したとき、死亡者であるとき、又は第五十七條の規定により当選を失つたときは、直ちに選挙会を開き前條第一項但書の得票者又は第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者で当選人とならなかつたものの中から当選人を定めなければならない。
第六十二條第一項第五号及び第六号の事由か第六十條第二項の期限前に生じた場合において前條第一項但書の得票者若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者があるとき、又はその期限経過後に生じた場合において前條第二項若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者があるときは、選挙会を開き、その者の中から当選人を定めなければならない。
前三項の場合において、前條第一項但書の得票者又は前條第二項若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者で当選人とならなかつたものが選挙の期日後において被選挙権を有しなくなつたときは、これを当選人と定めることができない。
第五十七條 当選人は、選挙の期日後において被選挙権を有しなくなつたときは、当選を失う。
第五十八條 第五十三條第一項乃至第三項の規定による届出があつた候補者が、普通地方公共團体の議会の議員の選挙にあつてはその選挙区における議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)を超えないとき、普通地方公共團体の長の選挙にあつては一人であるときは、投票は、これを行わない。
第二十五條第一項又は第三項の規定により同時に選挙を行う場合において、前項の場合を生じたときは、当該選挙に係る部分の投票は、これを行わない。
前二項の規定により投票を行わないこととなつたときは、選挙長は、都道府縣の選挙にあつては市町村の選挙管理委員会を経、市町村の選挙にあつては自ら、直ちにその旨を投票管理者に通知し、併せてこれを告示し、且つ、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に報告しなければならない。
投票管理者は、前項の通知を受けたときは、直ちにその旨を告示しなければならない。
第一項及び第二項の場合においては、選挙長は、選挙の期日から五日以内に選挙会を開き、候補者を以て当選人と定めなければならない。
前項の場合において、候補者の被選挙権の有無は、選挙立会人の意見を聽き、選挙長がこれを決定しなければならない。
第五十九條 当選人が定まつたときは、選挙長は、直ちに当選人に当選の旨を告知し、同時に当選人の住所氏名を告示し、且つ、当選人の氏名及び得票数、その選挙における各候補者の得票総数その他選挙の次第を当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に報告しなければならない。市町村の選挙にあつては、併せて都道府縣の選挙管理委員会にもこれを報告しなければならない。
当選人がないとき、又は普通地方公共團体の議会の議員の選挙において当選人がその選挙における議員の定数に達しないときは、選挙長は、直ちにその旨を告示し、且つ、これを当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に報告しなければならない。市町村の選挙にあつては、併せて都道府縣の選挙管理委員会にもこれを報告しなければならない。
第六十條 当選人は、当選の告知を受けたときは、その当選を承諾するかどうかを当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出なければならない。
当選人が当選の告知を受けた日から十日以内に当選を承諾する旨の届出をしないときは、その当選を辞したものとみなす。
官吏で当選した者は、所属長官の許可を受けなければ、これを承諾することができない。
第六十一條 当選人が当選を承諾したときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、直ちにこれに当選証書を付與し、その住所氏名を告示しなければならない。
当選人がなくなつたとき、又は普通地方公共團体の議会の議員の選挙において当選人がその選挙における議員の定数に達しなくなつたときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、直ちにその旨を告示しなければならない。
前二項の場合においては、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、左の区分により、直ちにその旨を報告しなければならない。
一 都道府縣知事の選挙にあつては内務大臣
二 都道府縣の議会の議員の選挙にあつては都道府縣知事
三 市町村長の選挙にあつては都道府縣知事及び都道府縣の選挙管理委員会
四 市町村の議会の議員の選挙にあつては都道府縣知事、都道府縣の選挙管理委員会及び市町村長
第七節 特別選挙
第六十二條 左に掲げる事由の一が生じた場合において、普通地方公共團体の議会の議員の選挙にあつては更に選挙を行わないで当選人を定めることができず又は更に選挙を行わないで当選人を定めてもなお当選人の不足数が第六十三條第一項にいう議員の欠員の数と通じて当該選挙区における議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)の六分の一を超えるに至つたとき、普通地方公共團体の長の選挙にあつては更に選挙を行わないで当選人を定めることができないときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、選挙の期日を定めてこれを告示し、更に選挙を行わせなければならない。但し、同一人に関し左に掲げるその他の事由により、又は第六十三條第一項の規定により選挙の期日を告示したときは、この限りでない。
一 当選人がないとき、又は普通地方公共團体の議会の議員の選挙において当選人がその選挙における議員の定数に達しないとき
二 当選人が当選を辞したとき、又は死亡者であるとき
三 当選人が第五十七條の規定により当選を失つたとき
四 第六十六條第一項、第二項若しくは第四項又は第六十八條第一項若しくは第二項の規定による異議の申立、訴願又は訴訟の結果、当選人がなくなり、又は普通地方公共團体の議会の議員の選挙において当選人がその選挙における議員の定数に達しなくなつたとき
五 選挙運動を総括主宰した者が選挙に関する犯罪に因り刑に処せられ当選人の当選が無効となつたとき
六 当選人が選挙に関する犯罪に因り刑に処せられ当選が無効となつたとき
第六十六條第一項、第二項又は第四項の規定による異議の申立期間、異議の決定若しくは訴願の裁決が確定しない間又は訴訟が裁判所にかかつている間は、前項の選挙は、これを行うことができない。
第一項各号の一に該当する事由が普通地方公共團体の議会の議員の任期の終る前六箇月以内に生じたときは、同項の選挙は、これを行わない。但し、議員の数がその定数の三分の二に達しなくなつたときは、この限りでない。
当選人の不足数が第六十三條第一項にいう普通地方公共團体の議会の議員の欠員の数と通じて当該選挙区における議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)の六分の一を超えなくても、その区域において普通地方公共團体の他の選挙が行われるときは、その選挙と同時に更に選挙を行うことができる。
第六十三條 普通地方公共團体の議会の議員に欠員を生じた場合において選挙を行わないで当選人を定めることができず若しくは選挙を行わないで当選人を定めてもなおその欠員の数が前條第一項にいう当選人の不足数と通じて当該選挙区における議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)の六分の一を超えるに至つたとき、又は普通地方公共團体の長が欠けるに至つたとき若しくはその退職の申立があつたときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会は、選挙の期日を定めてこれを告示し選挙を行わせなければならない。但し、同一人に関し前條第一項の規定により選挙の期日を告示したときは、この限りでない。
第六十條第二項の期限前に普通地方公共團体の議会の議員に欠員を生じた場合又は普通地方公共團体の長が欠け若しくはその退職の申立があつた場合において第五十五條第一項但書の得票者若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者で当選人とならなかつた者があるとき、又は第六條十第二項の期限経過後にこれらの事由を生じた場合において第五十五條第二項若しくは第六十五條第六項の規定の適用を受けた得票者で当選人とならなかつた者があるときは、直ちに選挙会を開き、その者の中から当選人を定めなければならない。この場合においては、第五十六條第四項の規定を準用する。
前條第二項の規定は第一項の選挙に、同條第三項及び第四項の規定は第一項の普通地方公共團体の議会の議員の選挙にこれを準用する。
第六十四條 普通地方公共團体の議会の議員又はその選挙における当選人について、第六十二條第一項又は前條第一項に掲げる事由が生じた場合において、議員又は当選人がすべてないとき又はすべてなくなつたときは、これらの規定にかかわらず、総選挙を行う。但し、これらの事由に関し第六十二條第一項若しくは前條第一項の規定による選挙の告示又は第五十六條第一項乃至第三項若しくは前條第二項の規定による選挙会の告示をしたときは、この限りでない。
第六十二條第二項の規定は、前項の総選挙にこれを準用する。
一の普通地方公共團体の議会の議員に関する第六十二條第一項又は前條第一項の選挙を同時に行う場合においては、一の選挙を以て合併してこれを行う。
第六十五條 普通地方公共團体の長の選挙において第五十五條第一項但書の得票者がないときは、第二十四條第一項、第四項及び第五項並びに第六十二條第一項の規定にかかわらず、第五十九條第二項の規定による告示の日から都道府縣知事の選挙にあつては十五日以内、市町村長の選挙にあつては十日以内に更に選挙を行わなければならない。この場合においては、第五十三條第一項乃至第三項及び第五十四條第一項第一号又は第二号の規定にかかわらず、その選挙において有効投票の最多数を得た者二人を以て候補者とする。
第二十五條第三項の規定により都道府縣知事の選挙と市町村長の選挙を同時に行つた場合において、その選挙がともに前項の場合に該当するときは、都道府縣知事の選挙に関する第五十九條第二項の規定による告示の日から十五日以内において都道府縣の選挙管理委員会の定める期日に、その選挙を同時に行わなければならない。
前二項の場合においては、選挙管理委員会は、選挙の期日前五日までは選挙の期日を告示しなければならない。
第一項の場合において二人の候補者を定めるに当り得票数が同数であるため得票数によつては二人を定めることができないときは、選挙管理委員会がくじでこれを定める。
第一項の選挙にあつては、第五十五條第一項但書の規定にかかわらず、有効投票の過半数を得た者を以て当選人とする。
第一項の選挙における候補者の得票数が同じであるときは、前項の規定にかかわらず、選挙長がくじで当選人を定めなければならない。
第一項の選挙において候補者が死亡し又は候補者たることを辞したため候補者が一人となつたときは、投票は、これを行わない。この場合においては、第五十八條第二項乃至第六項の規定を準用する。
第一項の選挙における第三十條第七項又はこれを準用する第四十條若しくは第四十七條の規定の適用については、これらの規定中三人とあるのは、二人とする。
第八節 爭訟
第六十六條 選挙人又は候補者は、選挙又は当選の効力に関し異議があるときは、選挙に関しては選挙の日、当選に関しては第五十九條第一項又は第二項の告示の日から十四日以内に、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に対しこれを申し立てることができる。
前項の規定による市町村の選挙管理委員会の決定に不服がある者は、都道府縣の選挙管理委員会に訴願することができる。
第一項の規定による決定及び前項の規定による裁決は、文書を以てこれをし、理由を附けてこれを申立人に交付するとともに、その要旨を告示しなければならない。
第一項の規定による都道府縣の選挙管理委員会の決定又は第二項の規定による裁決に不服がある者は、高等裁判所に出訴することができる。
普通地方公共團体の長の選挙について前條第一項の選挙を行つた場合においては、第一項の期間は、前條第一項の選挙の日又はその選挙に関する第五十九條第一項若しくは第二項の告示の日からこれを起算する。
衆議院議員選挙法第百四十一條及び第百四十一條の三の規定は、第四項の規定による訴訟にこれを準用する。
第一項の規定による市町村の選挙管理委員会の決定に対しては、第二項の規定による裁決を受けた後でなければ裁判所に出訴することができない。
第六十七條 選挙の規定に違反することがあるときは、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り、選挙管理委員会又は裁判所は、その選挙の全部又は一部の無効を決定し、裁決し又は判決しなければならない。
第六十八條 衆議院議員選挙法第百十條の規定の準用により当選を無効であると認める選挙人又は候補者は、当選人を被告として、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の属する普通地方公共團体の区域を管轄する高等裁判所に出訴することができる。
檢察官は、衆議院議員選挙法第百十二條乃至第百十三條の規定の準用による罪にあたる事件の被告人が選挙運動を総括主宰した者であるため同法第百三十六條の規定の準用により当選が無効であると認めるときは、公訴に附帶し、当選人を被告として、訴訟を提起しなければならない。
衆議院議員選挙法第百四十一條及び第百四十一條ノ三の規定は、第一項の規定による訴訟に、同法第百四十一條ノ二及び第百四十一條ノ三の規定は、前項の訴訟にこれを準用する。
第六十九條 裁判所は、第六十六條第四項又は前條第一項の訴訟を裁判するに当り、檢察官をして口頭弁論に立ち会わしめることができる。
第七十條 第六十六條第四項の規定による訴訟が提起されたとき、裁判所にかからなくなつたとき若しくはその訴訟につき判決があつたとき又は第六十八條第一項の規定による訴訟につき判決があつたとき、若しくは第六十八條第二項の規定による訴訟につき判決が確定し効力を生じたときは、裁判所は、關係のある普通地方公共團体の長を経て当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に通知しなければならない。
第七十一條 第六十八條第一項の規定による訴訟を提起しようとする者は、保証金として三百円又はこれに相当する額面の國債証書を供託しなければならない。
原告が敗訴した場合において、裁判が確定した日から七日以内に裁判費用を完納しないときは、保証金を以てこれに充て、なお足りないときは、これを追徴する。
第九節 選挙運動及び罰則
第七十二條 衆議院議員選挙法第十章及び第十一章並びに第百四十條第二項の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙の選挙運動に、司法第百四十條第三項乃至第五項の規定は、都道府縣知事の選挙の選挙運動にこれを準用する。但し、政令で特別の定をすることができる。
第七十三條 衆議院議員選挙法第十二章並びに第百四十二條、第百四十三條及び第百四十七條の規定は、普通地方公共團体の議会の議員及び長の選挙にこれを準用する。但し、政令で特別の定をすることができる。
第五章 直接請求
第一節 條例の制定及び監査の請求
第七十四條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の五十分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の長に対し、條例の制定の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、当該普通地方公共團体の長は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
普通地方公共團体の長は、第一項の請求を受理した日から二十日以内に議会を招集し、意見を附けてこれを議会に付議し、その結果を同項の代表者に通知するとともに、これを公表しなければならない。
第一項の選挙権を有する者とは、選挙人名簿確定の日においてこれに記載された者とし、その総数の五十分の一の数は、当該普通地方公共團体の選挙管理委員会において、選挙人名簿確定後直ちにこれを告示しなければならない。
第七十五條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の五十分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の監査委員に対し、当該普通地方公共團体の経営に係る事業の管理、出納その他の当該普通地方公共團体の事務及び当該普通地方公共團体の長の権限に属する事務の執行に関し、監査の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、監査委員は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
監査委員は、第一項の請求に係る事項につき監査し、その結果を同項の代表者に通知し、且つ、これを公表するとともに、当該普通地方公共團体の議会及び長に報告しなければならない。
監査委員を置かない市町村においては、第一項の請求は、市町村長に対してこれをし、前二項の規定による監査委員の職務は、当該普通地方公共團体の長に対する報告に関するものを除く外、市町村長がこれを行う。
前條第四項の規定は、第一項の選挙権を有する者及びその総数の五十分の一の数にこれを準用する。
第二節 解散及び解職の請求
第七十六條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共團体の議会の解散の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、委員会は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
第一項の請求があつたときは、委員会は、これを選挙人の投票に付さなければならない。
第七十四條第四項の規定は、第一項の選挙権を有する者及びその総数の三分の一の数にこれを準用する。
第七十七條 解散の投票の結果が判明したときは、選挙管理委員会は、直ちにこれを前條第一項の代表者及び当該普通地方公共團体の議会の議長に通知し、且つ、これを公表するとともに、都道府縣にあつては都道府縣知事及び内務大臣、市町村にあつては市町村長及び都道府縣知事に報告しなければならない。
第七十八條 普通地方公共團体の議会は、第七十六條第三項の規定による解散の投票において過半数の同意があつたときは、前條の公表の日において解散するものとする。
第七十九條 第七十六條第一項の規定による普通地方公共團体の議会の解散の請求は、その議会の議員の総選挙のあつた日から一年間及び同條第三項の規定による解散の投票のあつた日から一年間は、これをすることができない。
第八十條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、所属の選挙区におけるその総数の三分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の選挙管理委員会に対し、当該選挙区に属する普通地方公共團体の議会の議員の解職の請求をすることができる。この場合において選挙区がないときは、選挙権を有する者の総数の三分の一以上の者の連署を以て、議員の解職の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、委員会は、直ちに請求の要旨を関係区域内に公表しなければならない。
第一項の請求があつたときは、委員会は、これを当該選挙区の選挙人の投票に付さなければならない。この場合において選挙区がないときは、すべての選挙人の投票に付さなければならない。
第七十四條第四項の規定は、第一項の選挙権を有する者及びその総数の三分の一の数にこれを準用する。
第八十一條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共團体の長の解職の請求をすることができる。
第七十四條第四項の規定は、前項の選挙権を有する者及びその総数の三分の一の数に、第七十六條第二項及び第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第八十二條 第八十條第三項の規定による解職の投票の結果が判明したときは、普通地方公共團体の選挙管理委員会は、直ちにこれを同條第一項の代表者並びに当該普通地方公共團体の議会の関係議員及び議長に通知し、且つ、これを公表するとともに、都道府縣にあつては都道府縣知事及び内務大臣、市町村にあつては市町村長及び都道府縣知事に報告しなければならない。
前條第二項の規定による解職の投票の結果が判明したときは、委員会は、直ちにこれを同條第一項の代表者並びに当該普通地方公共團体の長及び議会の議長に通知し、且つ、これを公表するとともに、都道府縣及び市にあつては内務大臣、町村にあつては都道府縣知事に報告しなければならない。
第八十三條 普通地方公共團体の議會の議員又は長は、第八十條第三項又は第八十一條第二項の規定による解職の投票において、過半数の同意があつたときは、その職を失う。
第八十四條 第八十條第一項又は第八十一條第一項の規定による普通地方公共團体の議会の議員又は長の解職の請求は、その就職の日から一年間及び第八十條第三項又は第八十一條第二項の規定による解職の投票の日から一年間は、これをすることができない。
第八十五條 政令で特別の定をするものを除く外、第四章の規定は、第七十六條第三項の規定による解散の投票並びに第八十條第三項及び第八十一條第二項の規定による解職の投票にこれを準用する。
前項の投票は、政令の定めるところにより、普通地方公共團体の選挙と同時にこれを行うことができる。
第八十六條 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共團体の長に対し、副知事若しくは助役、出納長若しくは收入役、選挙管理委員又は監査委員の解職の請求をすることができる。
前項の請求があつたときは、当該普通地方公共團体の長は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない。
第一項の請求があつたときは、当該普通地方公共團体の長は、これを議会に付議し、その結果を同項の代表者及び関係者に通知し、且つ、これを公表するとともに、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事に報告しなければならない。
第七十四條第四項の規定は、第一項の選挙権を有する者及びその総數の三分の一の数にこれを準用する。
第八十七條 前條第一項に掲げる職に在る者は、同條第三項の場合において、当該普通地方公共團体の議会の議員の三分の二以上の者が出席し、その四分の三以上の者の同意があつたときは、その職を失う。
第八十八條 第八十六條第一項の規定による副知事若しくは助役又は出納長若しくは收入役の解職の請求は、その就職の日から一年間及び同條第三項の規定による議会の議決の日から一年間は、これをすることができない。
第八十六條第一項の規定による選挙管理委員又は監査委員の解職の請求は、その就職の日から六箇月間及び同條第三項の規定による議会の議決の日から六箇月間は、これをすることができない。
第六章 議会
第一節 組織
第八十九條 普通地方公共團体に議会を置く。
第九十條 都道府縣の議会の議員の定数は、人口七十万未満の都道府縣にあつては四十人とし、人口七十万以上百万未満の都道府縣にあつては人口五万、人口百万以上の都道府縣にあつては人口七万を加えることに各各議員一人を増し百二十人を以て定限とする。
前項の議員の定数は、総選挙を行う場合でなければこれを増減することができない。
第九十一條 市町村の議会の議員の定数は、左の通りとし、人口三十万以上五十万未満の市にあつては人口十万、人口五十万以上の市にあつては人口二十万を加えるごとに各各議員四人を増し、百人を以て定限とする。
一 人口二千未満の町村 十二人
二 人口二千以上五千未満の町村 十六人
三 人口五千以上一万未満の町村 二十二人
四 人口一万以上二万未満の町村 二十六人
五 人口五万未満の市及び人口二万以上の町村 三十人
六 人口五万以上十五万未満の市 三十六人
七 人口十五万以上二十万未満の市 四十人
八 人口二十万以上三十万未満の市 四十四人
九 人口三十万以上の市 四十八人
議員の定数は、條例で特にこれを増減することができる。但し、前項の定限を超えることができない。
第一項の議員の定数は、総選挙を行う場合でなければ、これを増減することができない。但し、著しく人口の増減があつた場合において同項の定数以内の数を増減することは、この限りでない。
第九十二條 普通地方公共團体の議会の議員は、衆議院議員又は参議員議員と兼ねることができない。
普通地方公共團体の議会の議員は、当該普通地方公共團体の有給の職員と兼ねることができない。
第九十三條 普通地方公共團体の議会の議員の任期は、四年とする。
前項の任期は、総選挙の日からこれを起算する。但し、普通地方公共團体の議会の議員の任期満了の日前に総選挙を行つた場合においては、前任者の任期満了の日の翌日から、これを起算する。
補欠議員は、前任者の残任期間在任する。
議員の定数に異動を生じたためあらたに選挙された議員は、総選挙により選挙された議員の任期満了の日まで在任する。
第九十四條 市町村の議会の議員の定数に異動を生じたため議員の解任を必要とするときは、市町村長がくじで解任すべき議員を定める。但し、議員に欠員を生じ又は議員の選挙において当選人に不足を生じているときは、その欠員又は不足の当選人を以て解任すべき議員に充てなければならない。
前項但書の場合において、欠員及び不足の当選人の数が解任すべき議員の数を超えるときは、解任すべき議員に充てる欠員及び不足の当選人の順序は、その事由を生じた時の前後により、その事由を生じた時が同時であるときは、市町村長がくじでこれを定める。
市町村の議会の議員の定数に異動を生じたため議員の解任を必要とする場合において選挙区があるときは、第二十二條第八項の條例でまずいずれの選挙区の議員を解任すべきかを定め、当該選挙区所属の議員につき前二項の例により解任すべき議員を定めなければならない。
第九十五條 特別の事情がある町村においては、條例で第八十九條の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。
町村総会に関しては、町村の議会に関する規定を準用する。
第二節 権限
第九十六條 普通地方公共團体の議会は、左に掲げる事件を議決しなければならい。
一 條例を設け又は改廃すること。
二 歳入歳出予算を定めること。
三 決算報告を認定すること。
四 法律又は政令に規定するものを除く外、使用料、手数料、地方税、分担金、加入金又は夫役現品の賦課徴收に関すること。
五 基本財産及び積立金穀等の設置及び処分に関すること。
六 歳入歳出予算を以て定めるものを除く外、あらたに義務の負担をし、及び権利を放棄すること。
七 異議の申立、訴願、訴訟及び和解に関すること。
八 普通地方公共團体の区域内の團体等の活動の綜合調整に関すること。
九 その他法令により議会の権限に属する事項。
前項に定めるものを除く外、普通地方公共團体は、條例で普通地方公共團体に関する事件につき議会の議決すべきものを定めることができる。
第九十七條 普通地方公共團体の議会は、法律又は政令によりその権限に属する選挙を行わなければならない。
第九十八條 普通地方公共團体の議会は、当該普通地方公共團体の事務に関する書類及び計算書を檢閲し、当該普通地方公共團体の長の報告を請求して事務の管理、議決の執行及び出納を檢査することができる。
議会は、監査委員に対し、当該普通地方公共團体の事務に関する監査を求め、その結果の報告を請求することができる。
第九十九條 普通地方公共團体の議会は、当該普通地方公共團体の長に委任された國、他の地方公共團体その他公共團体の事務に関し、当該普通地方公共團体の長の説明を求め、又はこれに対し意見を述べることができる。
議会は、当該普通地方公共團体の公益に関する事件につき意見書を関係行政廳に提出することができる。
第百條 普通地方公共團体の議会は、当該普通地方公共團体の事務に関する調査を行い、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。
議会が前項の規定による調査を行うため当該普通地方公共團体の区域内の團体等に対し照会をし又は記録の送付を求めたときは、当該團体等は、その求めに應じなければならない。
第三節 招集及び会期
第百一條 普通地方公共團体の議会は、普通地方公共團体の長がこれを招集する。議員定数の四分の一以上の者から会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集の請求があるときは、当該普通地方公共團体の長は、これを招集しなければならない。
招集は、開会の日前、都道府縣及び市にあつては七日、町村にあつては三日までにこれを告示しなければならない。但し、急施を要する場合は、この限りでない。
第百二條 普通地方公共團体の議会は、定例会及び臨時会とする。
定例會は、毎年六回以上これを招集しなければならない。
臨時会は、必要がある場合において、その事件に限りこれを招集する。
臨時会に付議すべき事件は、普通地方公共團体の長が予めこれを告示しなければならない。
臨時会の開会中に急施を要する事件があるときは、前二項の規定にかかわらず、直ちにこれを会議に付議することができる。
普通地方公共團体の議会の会期及びその延長並びにその開閉に関する事項は、議会がこれを定める。
第四節 議長及び副議長
第百三條 普通地方公共團体の議会は、議員の中から議長及び副議長一人を選挙しなければならない。
議長及び副議長の任期は、議員の任期による。
第百四條 普通地方公共團体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議會を代表する。
第百五條 普通地方公共團体の議会の議長は、委員会に出席し、発言することができる。
第百六條 普通地方公共團体の議会の議長に故障があるとき、又は議長が欠けたときは、副議長が議長の職務を行う。
議長及び副議長にともに故障があるときは、仮議長を選挙し、議長の職務を行わせる。
議会は、仮議長の選任を議長に委任することができる。
第百七條 第百三條第一項及び前條第二項の規定による選挙を行う場合において、議長の職務を行う者がないときは、年長の議員が臨時に議長の職務を行う。
第百八條 普通地方公共團体の議会の議長及び副議長は、議会の許可を得て辞職することができる。但し、副議長は、議会の閉会中においては、議長の許可を得て辞職することができる。
第五節 委員会
第百九條 普通地方公共團体の議会は、條例で常任委員会を置くことができる。
常任委員は、会期の始めに議会において選任し、議員の任期中在任する。
常任委員会は、普通地方公共團体の事務に関する部門ごとにこれを設けることができる。
常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共團体の事務に関する調査を行い、議案、陳情等を審査する。
常任委員会は、予算その他重要な議案、陳情等について、公聽会を開き、眞に利害関係を有する者又は学識経驗を有する者等から意見を聽くことができる。
常任委員会は、議会の議決により特に付議された事件については、閉会中も、なお、これを審査することができる。
第百十條 普通地方公共團体の議会は、條例で特別委員会を置くことができる。
特別委員は、議会において選任し、委員会に付議された事件が議会において審議されている間在任する。
特別委員会は、会期中に限り、議会の議決により付議された事件を審査する。
第百十一條 前二條に定めるものを除く外、常任委員会及び特別委員会に関し必要な事項は條例でこれを定める。
第六節 会議
第百十二條 普通地方公共團体の議会の議員は、議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができる。但し、歳入歳出予算については、この限りでない。
前項の規定による議案の提出は、文書を以てこれをしなければならない。
第百十三條 普通地方公共團体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、議事を開き議決することができない。但し、第百十七條の規定による除斥のため半数に達しないとき、同一の事件につき再度招集してもなお半数に達しないとき、又は招集に應じても出席議員が定数を欠き議長において出席を催告してもなお半数に達しないとき若しくは半数に達してもその後半数に達しなくなつたときは、この限りでない。
第百十四條 普通地方公共團体の議会の議員の定数の半数以上の者から請求があるときは、議長は、その日の会議を開かなければならない。この場合において議長がなお会議を開かないときは、第百六條第一項又は第二項の例による。
前項の規定により会議を開いたとき、又は議員中に異議があるときは、議長は、会議の議決によらない限り、その日の会議を閉じ又は中止することができない。
第百十五條 普通地方公共團体の議会の会議は、これを公開する。但し、議長又は議員三人以上の発議により、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、祕密会を開くことができる。
前項但書の議長又は議員の発議は、討論を行わないでその可否を決しなければならない。
第百十六條 この法律に特別の定がある場合を除く外、普通地方公共團体の議会の議事は、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
前項の場合においては、議長は、議員として議決に加わる権利を有しない。
第百十七條 普通地方公共團体の議会の議長及び議員は、自己又は父母、祖父母、配偶者、子孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件については、その議事に参與することができない。但し、議会の同意があつたときは、会議に出席し、発言することができる。
第百十八條 法律又は政令により普通地方公共團体の議会において行う選挙については、第三十二條、第四十一條及び第五十五條(普通地方公共團体の長の選挙に関する部分を除く。)の規定を準用する。その投票の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する。
議会は、議員中に異議がないときは、前項の選挙につき指名推選の方法を用いることができる。
指名推選の方法を用いる場合においては、被指名人を以て当選人と定めるべきかどうかを会議に諮り、議員の全員の同意があつた者を以て当選人とする。
一の選挙を以て二人以上を選挙する場合においては、被指名人を区分して前項の規定を適用してはならない。
第一項の規定による決定に不服がある者は、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事に訴願することができる。
前項の規定による裁決に不服がある者は、高等裁判所に出訴することができる。
第一項の規定による決定は、文書を以てし、その理由を附けてこれを本人に交付しなければならない。
第百十九條 会期中に議決に至らなかつた事件は、後会に継続しない。
第百二十條 普通地方公共團体の議会の議員は、選挙人の指示又は委嘱を受けてはならない。
第百二十一條 普通地方公共團体の議会は、会議規則を設けなければならない。
第百二十二條 普通地方公共團体の長、選挙管理委員会の委員長及び監査委員並びにその委任又は嘱託を受けた者は、何時でも付議された事件について発言するため議場に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
前項の出席者が発言を求めるときは、議長は、直ちにこれを許可しなければならない。但し、そのため議員の演説を中止させることができない。
第百二十三條 議長は、書記長(書記長を置かない市町村においては書記)をして会議録を調製し、会議の次第及び出席議員の氏名を記載させなければならない。
会議録には、議長及び議会において定めた二人以上の議員が署名しなければならない。
議長は、会議録の写を添えて会議の結果を普通地方公共團体の長及び都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事に報告しなければならない。
第七節 請願
第百二十四條 普通地方公共團体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
第百二十五條 普通地方公共團体の議会は、その採択した請願で当該普通地方公共團体の長、選挙管理委員会又は監査委員において措置することが適当と認めるものは、これらの者にこれを送付し、且つ、その請願の処理の経過及び結果の報告を請求することができる。
第八節 議員の辞職及び資格の決定
第百二十六條 普通地方公共團体の議会の議員は、議会の許可を得て辞職することができる。但し、閉会中においては、議長の許可を得て辞職することができる。
第百二十七條 普通地方公共團体の議会の議員が被選挙権を有しない者であるときは、その職を失う。その被選挙権の有無は、議員が左の各号の一に該当するため被選挙権を有しない場合を除く外、議会がこれを決定する。この場合においては、出席議員の三分の二以上の多数によりこれを決定しなければならない。
一 禁治産者又は準禁治産者となつたとき
二 禁錮以上の刑に処せられたとき
三 選挙に関する犯罪に因り罰金の刑に処せられたとき
都道府縣の議会の議員は、住所を移したため被選挙権を失つても、その住所が同一都道府縣の区域内に在るときは、そのためにその職を失うことはない。
第一項の場合においては、議員は、第百十七條の規定にかかわらず、その会議に出席して自己の資格に関し弁明することはできるが決定に加わることができない。
第百十八條第五項乃至第七項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。
第百二十八條 普通地方公共團体の議会の議員は、第六十六條第一項、第二項若しくは第四項、第六十八條第一項若しくは第二項又は前條の規定による決定若しくは裁決又は判決が確定するまでは、その職を失わない。
第九節 紀律
第百二十九條 普通地方公共團体の議会の会議中この法律又は会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、これを制止し、又は発言を取り消させ、その命令に從わないときは、その日の会議が終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。
議長は、議場が騷然として整理することが困難であると認めるときは、その日の会議を閉じ、又は中止することができる。
第百三十條 傍聽人が公然と可否を表明し、又は騷ぎ立てる等会議を妨害するときは、普通地方公共團体の議会の議長は、これを制止し、その命令に從わないときは、これを退場させ、必要がある場合においては、これを警察官吏に引き渡すことができる。
傍聽席が騷がしいときは、議長は、すべての傍聽人を退場させることができる。
前二項に定めるものを除く外、議長は、傍聽人の取締に関し必要な規則を設けなければならない。
第百三十一條 議場の秩序を乱し又は会議を妨害するものがあるときは、議員又は第百二十二條第一項の規定による出席者は、議長の注意を喚起することができる。
第百三十二條 普通地方公共團体の議会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。
第百三十三條 普通地方公共團体の議会の会議又は委員会において、侮辱を受けた議員は、これを議会に訴えて処分を求めることができる。
第十節 懲罰
第百三十四條 普通地方公共團体の議会は、この法律及び会議規則に違反した議員に対し、議決により懲罪を科することができる。
懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない。
第百三十五條 懲罰は、左の通りとする。
一 公開の議場における戒告
二 公開の議場における陳謝
三 一定期間の出席停止
四 除名
前項第四号の除名については、当該普通地方公共團体の議会の議員の三分の二以上の者が出席し、その四分の三以上の者の同意がなければならない。
第百三十六條 普通地方公共團体の議会は除名された議員で再び当選した議員を拒むことができない。
第百三十七條 普通地方公共團体の議会の議員が正当な理由がなくて招集に應じないため、又は正当な理由がなくて会議に欠席したため、議長が、特に招状を発しても、なほ故なく出席しない者は、議長において、議会の議決を経て、これに懲罰を科することができる。
第十一節 書記長及び書記
第百三十八條 普通地方公共團体の議会に書記長及び書記を置く。但し、市町村においては、書記長を置かないことができる。
書記長及び書記は、議長がこれを選任する。
書記長は、議長の命を受け議会の庶務を整理する。
書記は、上司の指揮を受け議会の庶務に從事する。
第七章 執行機関
第一節 普通地方公共團体の長
第一款 地位
第百三十九條 都道府縣に知事を置く。
市町村に市町村長を置く。
第百四十條 普通地方公共團体の長の任期は、四年とする。
前項の任期は、選挙の日からこれを起算する。但し、普通地方公共團体の長の任期満了の日前に選挙を行つた場合においては、前任者の任期満了の日の翌日から、これを起算する。
第百四十一條 普通地方公共團体の長は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。
普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体の議会の議員及び地方公共團体の有給の職員と兼ねることができない。
第百四十二條 普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体に対し請負をし、又は当該普通地方公共團体において経費を負担する事業につきその團体の長若しくはその團体の長の委任を受けた者に対し請負をする者及びその支配人、又は主として同一の行爲をする法人の無限責任社員、取締役若しくは監査役又はこれに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。
第百四十三條 普通地方公共團体の長が、被選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。
その被選挙権の有無は、普通地方公共團体の長が第百二十七條第一項に掲げる事由の一に該当するため被選挙権を有しない場合を除く外、当該普通地方公共團体の選挙管理委員会がこれを決定しなければならない。
第百十八條第五項乃至第七項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第一項の決定に対しては、前項において準用する第百十八條第五項の規定による裁決を受けた後でなければ、裁判所に出訴することができない。
第百四十四條 普通地方公共團体の長は、第六十六條第一項、第二項若しくは第四項、第六十八條第一項若しくは第三項又は前條第二項の規定による決定若しくは裁決又は判決が確定するまでは、その職を失わない。
第百四十五條 普通地方公共團体の長は、退職しようとするときは、その退職しようとする日前、都道府縣知事にあつて三十日、市町村長にあつては二十日までに、当該普通地方公共團体の議会の議長に申し出なければならない。但し、議会の同意を得たときは、その期日前に退職することができる。
第百四十六條 内務大臣は、都道府縣知事が著しく不適任であると認めるときは、政令の定めるところにより、公聽会を開いて、これを解職することができる。
都道府縣知事は、市町村長が著しく不適任であると認めるときは、前項の例により、これを解職することができる。
第二款 権限
第百四十七條 普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体を統轄し、これを代表する。
第百四十八條 都道府縣知事は、当該都道府縣の事務及び部内の行政事務並びに從來法令により及び將來法律又は政令によりその権限に属する他の地方公共團体その他公共團体の事務を管理し及びこれを執行する。
市町村長は当該市町村の事務並びに從來法令により及び將來法律又は政令によりその権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務を管理し及びこれを執行する。
第百四十九條 普通地方公共團体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
一 普通地方公共團体の経費を以て支弁すべき事件を執行すること。
二 普通地方公共團体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
三 財産及び営造物を管理すること。
四 收入及び支出を命令し並びに会計を監督すること。
五 証書及び公文書類を保管すること。
六 法律及び政令又は普通地方公共團体の議会の議決により使用料、手数料、地方税、分担金、加入金又は夫役現品を賦課徴收すること。
七 その他法令によりその権限に属する事項
第百五十條 普通地方公共團体の長の権限に属する國の事務の処理については、普通地方公共團体の長は、都道府縣にあつては主務大臣、市町村にあつては都道府縣知事及び主務大臣の指揮監督を受ける。
第百五十一條 都道府縣知事は、その管理に属する行政廳又は市町村長の権限に属する國又は当該都道府縣の事務につき、その処分が成規に違反し、公益を害し、又は権限を犯すと認めるときは、その処分を取り消し、又は停止することができる。
市町村長は、前項の例により、その管理に属する行政廳の処分を取り消し又は停止することができる。
第百五十二條 普通地方公共團体の長に故障があるときは、副知事又は助役がその職務を代理する。この場合において副知事又は助役が二人以上あるときは、予め当該普通地方公共團体の長が定めた順序により、その職務を代理する。
副知事若しくは助役にも故障があるとき又は助役を置かない町村において町村長に故障があるときは、当該普通地方公共團体の長の指定する吏員がその職務を代理する。
第百五十三條 普通地方公共團体の長は、その権限に属する事務の一部を当該普通地方公共團体の吏員に委任し、又はこれをして臨時に代理させることができる。
都道府縣知事は、その権限に属する事務の一部をその管理に属する行政廳又は市町村長に委任することができる。
都道府縣知事は、その権限に属する事務の一部を市町村の職員をして補助執行させることができる。
第百五十四條 普通地方公共團体の長は、その補助機関たる職員を指揮監督し、法律の定めるところにより、その任免、分限、給與、服務、懲戒等に関する事項を掌る。
第百五十五條 普通地方公共團体の長は、その権限に属する事務を分掌させるため、條例で、必要な地に、都道府縣にあつては支廳(道にあつては支廳出張所を含む。以下これに同じ。)及び地方事務所、市町村にあつては支所を設けることができる。
政令で指定する市は、市長の権限に属する事務を分掌させるため、條例でその区域を分けて区を設け、区の事務所を置くものとする。
法律又は政令で特別の定をするものを除く外、行政区に関する規定は、前項の区にこれを準用する。
支廳若しくは地方事務所又は支所若しくは区の事務所の位置、名称及び所管区域は條例でこれを定めなければならない。
第百五十六條 普通地方公共團体の長は、前條第一項に定めるものを除く外、法律又は政令の定めるところにより、警察署その他の行政機関を設けるものとする。
前項の行政機関の位置、名称及び所管区域は、條例又は規則でこれを定める。
都道府縣知事は、法律又は政令の定めるところにより、食糧事務所、木炭事務所、社会保險出張所その他の國の行政機関の長を指揮監督することができる。
第百五十七條 普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体の区域内の團体等の活動の綜合調整を図るため、これを指揮監督することができる。
前項の場合において必要があるときは、普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体の区域内の團体等をして事務の報告をさせ、書類及び帳簿を提出させ及び実地について事務を視察することができる。
普通地方公共團体の長は、当該普通地方公共團体の区域内の團体等の監督上必要な処分をし又は当該團体等の監督官廳の措置を申請することができる。
前項の監督官廳は、普通地方公共團体の長の処分を取り消すことができる。
第百五十八條 都道府縣知事は、その権限に属する事務を分掌させるため、左に掲げる局部を設けなければならない。但し、必要があるときは、條例で、局部を分合し又は事務の配分を変更することができる。
都
総務部
一 職員の進退及び身分に関する事項
二 議会及び都の行政一般に関する事項
三 市町村その他公共團体の行政一般の監督に関する事項
四 他の主管に属しない事項
会計部
一 会計に関する事項
民生局
一 社会事業その他國民生活の保護指導に関する事項
二 社会保險に関する事項
教育局
一 教育学藝に関する事項
経済局
一 農業、工業、商業、森林及び水産に関する事項
二 物資の配給及び物價の統制に関する事項
三 度量衡に関する事項
建設局
一 建設及び復興一般に関する事項
二 都市計画に関する事項
三 住宅及び建築に関する事項
四 土木に関する事項
交通局
一 交通に関する事項
水道局
一 水道及び下水道に関する事項
衞生局
一 保健衞生に関する事項
労働局
一 勤労に関する事項
道府縣
総務部、
一 職員の進退及び身分に関する事項
二 議会及び道府縣の行政一般に関する事項
三 市町村その他公共團体の行政一般の監督に関する事項
四 他の主管に属しない事項
民生部
一 社会事業その他國民生活の保護指導に関する事項
二 社会保險に関する事項
三 保健衞生に関する事項
四 勤労に関する事項
教育部
一 教育学藝に関する事項
経済部
一 農業、工業、商業、森林及び水産に関する事項
二 物資の配給及び物價の統制に関する事項
三 度量衡に関する事項
土木部
一 土木に関する事項
二 都市計画に関する事項
三 住宅及び建築に関する事項
四 交通に関する事項
農地部
一 農地関係の調整に関する事項
二 開拓に関する事項
警察部
一 警察に関する事項
都道府縣知事は、その権限に属する事務を分掌させるため、局部の下に必要な分課を設けることができる。
市町村長は、その権限に属する事務を分掌させるため、條例で必要な部課を設けることができる。
第百五十九條 普通地方公共團体の長の事務引継に関する規定は、政令でこれを定める。
前項の政令には、正当の理由がなくて事務の引継を拒んだ者に対し、千円以下の過料を科する規定を設けることができる。
第百六十條 非常災害のため必要があるときは、市町村長は、他人の土地を一時使用し又はその土石、竹木その他の物品を使用し若しくは收用することができる。この場合においては、市町村は、その損失を補償しなければならない。
非常災害に因る危險防止のため必要があるときは、市町村長、警察官吏又は所轄廳は、市町村の区域内の住民をして防禦に從事させることができる。
第三款 補助機関
第百六十一條 都道府縣に副知事一人を置く。
副知事の定数は、條例で人口二百万以上の都道府縣にあつては二人、人口三百万以上の都道府縣にあつては三人までこれを増加することができる。
市町村に助役一人を置く。但し、町村は、條例でこれを置かないことができる。
助役の定数は、條例でこれを増加することができる。
第百六十二條 副知事及び助役は、普通地方公共團体の長が議会の同意を得てこれを選任する。
第百六十三條 副知事及び助役の任期は、四年とする。但し、普通地方公共團体の長は、任期中においてもこれを解職することができる。
第百六十四條 第二十條の規定に該当する者は、副知事又は助役となることができない。
副知事又は助役は、第二十條の規定に該当するに至つたときは、その職を失う。
第百六十五條 普通地方公共團体の長の職務を代理する副知事又は助役は、退職しようとするときは、その退職しようとする日前二十日までに、当該普通地方公共團体の議会の議長に申し出なければならない。但し、議会の承認を得たときは、その期日前に退職することができる。
前項に規定する場合を除く外、副知事又は助役は、その退職しようとする日前二十日までに、当該普通地方公共團体の長に申し出なければならない。但し、当該普通地方公共團体の長の承認を得たときは、その期日前に退職することができる。
第百六十六條 副知事及び助役は、第二十一條第二項に掲げる職と兼ねることができない。
第百四十一條、第百四十二條及び第百五十九條の規定は、副知事及び助役にこれを準用する。
第百六十七條 副知事及び助役は、普通地方公共團体の長を補佐し、吏員の担任する事務を監督し、別に定めるところにより、普通地方公共團体の長の職務を代理する。
第百六十八條 都道府縣に出納長及び副出納長を置く。
市町村に收入役一人を置く。但し、町村は、條例で收入役を置かず町村長又は助役をしてその事務を兼掌させることができる。
市町村は、條例で副收入役を置くことができる。
副出納長及び副收入役の定数は、條例でこれを定める。
出納長及び副出納長並びに收入役及び副收入役は、第二十一條第二項に掲げる職と兼ねることができない。
第百四十一條、第百四十二條、第百五十九條、第百六十二條、第百六十三條本文及び第百六十四條の規定は、出納長及び副出納長並びに收入役及び副收入役にこれを準用する。
第百六十九條 普通地方公共團体の長、副知事若しくは助役又は監査委員と親子、夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は、出納長若しくは副出納長又は收入役若しくは副收入役となることができない。
出納長若しくは副出納長又は收入役若しくは副收入役は、前項に規定する関係が生じたときは、その職を失う。
出納長又は收入役と親子、夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は、副出納長又は副收入役となることができない。
副出納長又は副收入役は、前項に規定する関係が生じたときは、その職を失う。
第百七十條 出納長及び收入役は、当該普通地方公共團体の出納その他の会計事務並びに当該普通地方公共團体の長その他の吏員及び選挙管理委員会の権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務に関する出納その他の會計事務を掌る。但し、法令に特別の規定があるものは、この限りでない。
副出納長又は副收入役は、出納長又は收入役の事務を、補助し、出納長又は收入役に故障があるときは、その職務を代理する。副出納長又は副收入役が二人以上あるときは、予め当該普通地方公共團体の長が定めた順序により、その職務を代理する。
普通地方公共團体の長は、出納長又は收入役をしてその事務の一部を副出納長又は副收入役に委任させることができる。但し、当該普通地方公共團体の出納その他の会計事務については、予め議会の同意を得なければならない。
副收入役を置かない市町村にあつては、市町村長は、市町村の議会の同意を得て、收入役に故障があるときその職務を代理すべき吏員を定めて置かなければならない。
第百七十一條 普通地方公共團体は、出納員を置くことができる。
出納員は、事務吏員の中から、普通地方公共團体の長がこれを命ずる。
出納員は、出納長若しくは副出納長又は收入役若しくは副收入役の命を受けて出納事務を掌る。
前條第三項の規定は、出納員にこれを準用する。
第百七十二條 前十一條に定める者を除く外、普通地方公共團体に必要な吏員を置く。
前項の吏員は、普通地方公共團体の長がこれを任免する。
第一項の吏員の定数は、條例でこれを定める。
第百七十三條 前條第一項の吏員は、事務吏員、技術吏員、教育吏員及び警察吏員とする。
事務吏員は、上司の命を受け、事務を掌る。
技術吏員は、上司の命を受け、技術を掌る。
教育吏員は、上司の命を受け、教育を掌る。
警察吏員は、上司の命を受け、警察に関する事務を掌る。
第百七十四條 普通地方公共團体は、常設又は臨時の專門委員を置くことができる。
專門委員は、專門の学識経驗を有する者の中から、普通地方公共團体の長が、これを選任する。
專門委員は、普通地方公共團体の長の委託を受け、その権限に属する事務に関し必要な事項を調査する。
第百七十五條 都道府縣の支廳若しくは地方事務所又は市町村の支所若しくは第百五十五條第二項の市の区の事務所の長は、事務吏員を以てこれに充てる。
警察署の長は、警察吏員を以てこれに充てる。
前二項に規定する機関の長は、普通地方公共團体の長の定めるところにより、上司の指揮を受け、その主管の事務を掌理し部下の吏員を指揮監督する。
第四款 議会との関係
第百七十六條 普通地方公共團体の議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共團体の長は、理由を示してこれを再議に付し又は再選挙を行わせなければならない。
前項の規定による議会の議決又は選挙がなおその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、普通地方公共團体の長は、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事の指揮を請わなければならない。
内務大臣又は都道府縣知事は、前二項の議決又は選挙を取り消すことができる。
第二項の指揮又は前項の処分に不服のある普通地方公共團体の議会又は長は、高等裁判所に出訴することができる。
第百七十七條 普通地方公共團体の議会の議決が明らかに公益を害すると認めるときは、当該普通地方公共團体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない。
前項の規定による議会の議決がなお明らかに公益を害すると認めるときは、當該普通地方公共團体の長は、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事の指揮を請わなければならない。
議会の議決が、收入又は支出に関し執行することができないものがあると認めるときは、前二項の例による。左に掲げる経費を削除し又は減額した場合において、その経費及びこれに伴う收入についても、また、同樣とする。
一 法令により負担する経費、法律の規定に基き当該行政廳の職権により命ずる経費その他の普通地方公共團体の義務に属する経費
二 非常の災害に困る應急又は復旧の施設のために必要な経費、傳染病予防のために必要な経費その他の緊急で避けることのできない経費
前二項の規定による都道府縣知事の指揮に不服がある市町村の議会又は長は、内務大臣に訴願することができる。
第百七十八條 普通地方公共團体の議会において、当該普通地方公共團体の長の不信任の議決をしたときは、当該普通地方公共團体の長は、十日以内に議会を解散することができる。
議会において当該普通地方公共團体の長の不信任の議決をした場合において、前項の規定により議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決をしたときは、当該普通地方公共團体の長は、退職しなければならない。
前二項の規定による不信任の議決については、議員数の三分の二以上の者が出席し、その四分の三以上の者の同意がなければならない。
第百七十九條 普通地方公共團体の議会が成立しないとき、第百十三條但書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共團体の長において議会を招集する暇がないと認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共團体の長は、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事の指揮を請い、その議決すべき事件を処分することができる。
議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による。
前二項の規定による処置については、普通地方公共團体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。
第百八十條 普通地方公共團体の議会の権限に属する事項の一部は、その議決による委任により、普通地方公共團体の長において、專決処分をすることができる。
第二節 選挙管理委員会
第百八十一條 普通地方公共團体に選挙管理委員会を置く。
選挙管理委員会は、都道府縣にあつては六人、市町村にあつては四人の選挙管理委員を以てこれを組織する。
第百八十二條 選挙管理委員は、普通地方公共團体の議会において、選挙権を有する者の中からこれを選挙する。
議会は、前項の規定による選挙を行う場合においては、同時に委員と同数の補充員を選挙しなければならない。補充員がすべてなくなつたときも、また、同樣とする。
委員中に欠員があるときは、選挙管理委員会の委員長は、補充員の中からこれを補欠する。その順序は、選挙の時が異なるときは選挙の前後により、選挙の時が同時であるときは得票数により、得票数が同じであるときはくじにより、これを定める。
第百八十三條 選挙管理委員の任期は、二年とする。但し、後任者が就任する時まで在任する。
補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
補充員の任期は、委員の任期による。
委員及び補充員は、その選挙に関し第百七十六條第二項若しくは第三項の規定による処分又はこれに関する判決が確定するまでは、その職を失わない。
第百八十四條 選挙管理委員は、選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。その選挙権の有無は、選挙管理委員が第百二十七條第一項に掲げる事由の一に該当するため選挙権を有しない場合を除く外、選挙管理委員会がこれを決定する。
第百十八條第五項乃至第七項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第一項の決定に対しては、前項において準用する第百十八條第五項の規定による裁決を受けた後でなければ、裁判所に出訴することができない。
第百八十五條 選挙管理委員会の委員長が退職しようとするときは、当該選挙管理委員会の承認を得なければならない。
委員が退職しようとするときは、委員長の承認を得なければならない。
第百八十六條 選挙管理委員会は、法律又は政令の定めるところにより、当該普通地方公共團体又は國、他の地方公共團体その他公共團体の選挙に関する事務及びこれに関係のある事務を管理する。
都道府縣の選挙管理委員会は、市町村の選挙管理委員会を指揮監督する。この場合においては、第百五十一條第一項の規定を準用する。
第百八十七條 選挙管理委員会は、委員の中から委員長を選挙しなければならない。
委員長は、委員会に関する事務を処理し、委員会を代表する。
委員長に故障があるときは、委員長の指定する委員が、その職務を代理する。
第百八十八條 選挙管理委員会は、委員長がこれを招集する。委員から委員会の招集の請求があるときは、委員長は、これを招集しなければならない。
第百八十九條 選挙管理委員会は、委員三人以上が出席しなければ、会議を開くことができない。
委員長及び委員は、自己又は父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件については、その議事に参與することができない。但し、委員会の同意を得たときは、会議に出席し発言することができる。
前項の規定により委員の数が減少して第一項の数に達しないときは、委員長は、補充員でその事件に関係ないものを以て第百八十二條第三項の順序により、臨時にこれに充てなければならない。委員の故障に因り委員の数が第一項の数に達しないときも、また、同樣とする。
第百九十條 選挙管理委員会の議事は、出席委員の過半数を以てこれを決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
前項の場合においては、委員長は、委員として議決に加わる権利を有しない。
第百九十一條 選挙管理委員会に書記を置く。
書記の定数は、條例でこれを定める。
書記は、委員長の指揮を受け、委員会に関する事務に從事する。
第百九十二條 選挙管理委員の分限、服務及び懲戒に関しては、別に法律でこれを定める。
第百九十三條 第百二十七條第二項、第百四十一條第一項、第百四十二條及び第百六十六條第一項の規定は選挙管理委員に、第百五十條の規定は選挙管理委員会に、第百五十三條第一項、第百五十四條及び第百五十九條の規定は選挙管理委員会の委員長にこれを準用する。
第百九十四條 この法律及びこれに基く政令に規定するものを除く外、選挙管理委員会に関し必要な事項は、委員会がこれを定める。
第三節 監査委員
第百九十五條 都道府縣に監査委員を置く。
市町村は、條例で監査委員を置くことができる。
監査委員の定数は、都道府縣にあつては四人、市町村にあつては二人とする。
第百九十六條 監査委員は、普通地方公共團体の長が、議会の同意を得て、議員及び学識経驗を有する者の中から、各各同数を選任しなければならない。
監査委員は、地方公共團体の有給の職員と兼ねることができない。
第百九十七條 監査委員の任期は、二年とする。
普通地方公共團体の議会の議員の中から選任された監査委員の任期は、前項の規定にかかわらず、議員の任期を超えることができない。但し、後任者が選任されるまでの間は、その職務を行うことを妨げない。
第百九十八條 監査委員は、退職しようとするときは、普通地方公共團体の長の承認を得なければならない。
第百九十九條 監査委員は、普通地方公共團体の経営に係る事業の管理及び、普通地方公共團体の出納その他の事務の執行を監査する。
監査委員は、毎会計年度少くとも一囘以上期日を定めて前項の規定による監査をしなければならない。
監査委員は、所轄行政廳又は普通地方公共團体の議会の要求があるときは、臨時に、その要求に係る事項について監査をしなければならない。
監査委員は、前二項に定める場合を除く外、必要があると認めるときは、何時でも監査をすることができる。
監査委員は、監査の結果を所轄行政廳又は普通地方公共團体の議会及び長に報告し、且つ、これを公表しなければならない。
第二百條 監査委員の事務を補助させるため書記を置くことができる。
書記の定数は、條例でこれを定める。
書記は、監査委員の指揮を受け、監査に関する事務に從事する。
第二百一條 第百四十二條、第百五十四條、第百五十九條、第百六十四條、第百六十六條第一項及び第百九十二條の規定は、監査委員にこれを準用する。
第二百二條 この法律及びこれに基く政令に規定するものを除く外、監査委員に関し必要な事項は、條例でこれを定める。
第八章 給與
第二百三條 普通地方公共團体は、その議会の議員、選挙管理委員、議会の議員の中から選任された監査委員、專門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人開票立会人及び選挙立会人に対し、報酬を支給しなければならない。
前項の者は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。
報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は、條例でこれを定めなければならない。
第二百四條 普通地方公共團体は、法律の定めるところにより、普通地方公共團体の長及びその補助機関たる職員(專門委員を除く。)、学識経驗を有する者の中から選任された監査委員、議会の書記長及び書記、選挙管理委員会の書記並びに監査委員の事務を補助する書記に対し、給料及び旅費を支給しなければならない。
給料及び旅費の額並びにその支給方法は、條例でこれを定めなければならない。
第二百五條 前條第一項の職員は、法律の定めるところにより、退隠料、退職給與金、死亡給與金又は遺族扶助料を受けることができる。
第二百六條 前三條の規定による給與に関し、異議のある関係人は、これを普通地方公共團体の長に申し立てることができる。
前項の規定による異議の申立があつたときは、普通地方公共團体の長は、議会に諮つてこれを決定しなければならない。
議会は、前項の規定による諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならない。
第二百七條 普通地方公共團体は、條例の定めるところにより、第百條第一項の規定により出頭した選挙人その他の関係人並びに第百九條第五項及び第百四十六條第一項の規定による公聽会に参加した者の要した実費を弁償しなければならない。
第九章 財産
第一節 財産及び営造物
第二百八條 普通地方公共團体は、收益のためにする財産を基本財産として維持することができる。
普通地方公共團体は、特定の目的のため特別の基本財産を設け又は金穀等を積み立てることができる。
第二百九條 旧來の慣行により市町村の住民中特に財産又は営造物を使用する権利を有する者があるときは、その旧慣による。その旧慣を変更し又は廃止しようとするときは、市町村の議会の議決を経なければならない。
前項の財産又は営造物をあらたに使用しようとする者があるときは、市町村は、議会の議決を経て、これを許可することができる。
第二百十條 普通地方公共團体は、その区域外においても、また、関係普通地方公共團体との協議により営造物を設けることができる。
前項の協議については、関係普通地方公共團体の議会の議決を経なければならない。
第二百十一條 普通地方公共團体は、他の普通地方公共團體との協議により、他の普通地方公共團体の財産又は営造物を自己の住民の使用に供させることができる。
前項の協議については、関係普通地方公共團体の議会の議決を経なければならない。
第二百十二條 普通地方公共團体の財産又は営造物は、宗教上の組織若しくは團体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、その利用に供してはならない。
第二百十三條 普通地方公共團体は、法律又は政令に特別の定があるものを除く外、財産の取得、管理及び処分並びに営造物の設置及び管理に関する事項は、條例でこれを定めなければならない。
第二百十四條 普通地方公共團体は、財産又は営造物の使用に関し、條例で二千円以下の過料を科する規定を設けることができる。
第二百十五條 財産又は営造物を使用する権利に関し異議がある者は、これを普通地方公共團体の長に申し立てることができる。
前項の規定による異議の申立があつたときは、普通地方公共團体の長は、これを議会に諮つて決定しなければならない。
議会は、前項の規定による諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならない。
第二節 收入
第二百十六條 普通地方公共團体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴收することができる。
第二百十七條 普通地方公共團体は、分担金を徴收することができる。
分担金は、政令の定めるところにより、数人若しくは普通地方公共團体の一部を利する財産若しくは営造物又は普通地方公共團体の一部に対し利益のある事件に関し、特に利益を受ける者からこれを徴收する。
第二百十八條 普通地方公共團体は、夫役現品を賦課徴收することができる。但し、都道府縣にあつては、当該都道府縣内の一部の市町村その他公共團体に対してもこれを賦課徴收することができる。
夫役又は現品は、これを金額に算出して賦課しなければならない。但し、市町村においては、直接市町村税を準率とし、直接町村税を賦課しない町村においては直接國税を準率としなければならない。
学藝、美術及び手工に関する労務については、夫役を賦課することができない。
夫役を賦課された者は、本人自らこれに当り、又は適当な代人を出すことができる。
夫役又は現品は、金銭を以てこれに代えることができる。
第二項及び前項の規定は、急迫の場合その他特別の事情がある場合に賦課する夫役又は現品については、これを適用しない。
第二百十九條 数人若しくは普通地方公共團体の一部を利する財産若しくは營造物又は数人若しくは普通地方公共團体の一部に対し利益のある事件に関しては、普通地方公共團体は、夫役現品につき不均一の賦課をし、又は数人若しくは普通地方公共團体の一部に対してその賦課をすることができる。
第二百二十條 普通地方公共團体は、財産及び営造物の使用につき使用料を徴收することができる。
第二百二十一條 市町村は、第二百九條の規定による財産又は営造物の使用に関し、使用料若しくは一時の加入金を徴收し又はこれを併せて徴收することができる。
第二百二十二條 普通地方公共團体は、特定の個人のためにする事務につき、手数料を徴收することができる。
第二百二十三條 分担金、使用料及び手数料に関する事項については、條例でこれを規定しなければならない。
詐僞その他不正の行爲に因り、分担金、使用料又は手数料の徴收を免れた者については、條例でその徴收を免れた金額の五倍に相当する金額以下の過料を科する規定を設けることができる。
前項に定めるものを除く外、分担金、使用料及び手数料の徴收に関しては、條例で二千円以下の過料を科する規定を設けることができる。
過料の処分を受けた者は、その処分に不服があるときは、訴願を提起することができる。
第二百二十四條 分担金、夫役現品、使用料、加入金及び手数料の賦課又は徴收を受けた者が、その賦課又は徴收につき違法又は錯誤があると認めるときは、その告知を受けた日から、三十日以内に、普通地方公共團体の長に異議の申立をすることができる。
第二百九條の規定による財産又は営造物を使用する権利に関し異議がある者は、これを市町村長に申し立てることができる。
前二項の規定による異議の申立があつたときは、普通地方公共團体の長は、これを議会に諮つて決定しなければならない。
議会は、前項の規定による諮問があつた日から、二十日以内に意見を述べなければならない。
第三項の規定による異議の決定を受けた後でなければ、第一項及び第二項に規定する事項については、裁判所に出訴することができない。
第二百二十五條 分担金、使用料、加入金、手数料及び過料その他の普通地方公共團体の收入を定期内に納めない者があるときは、普通地方公共團体の長は、期限を指定してこれを督促しなければならない。
夫役現品の賦課を受けた者が定期内にその履行をせず又は夫役現品に代える金錢を納めないときは、普通地方公共團体の長は、期限を指定してこれを督促しなければならない。急迫の場合その他特別の事情がある場合に賦課した夫役又は現品については、更にこれを金額に算出し、期限を指定してその納付を命じなければならない。
前二項の場合においては、條例の定めるところにより、手数料を徴收することができる。
滯納者が、第一項又は第二項の規定による督促又は命令を受け、その指定の期限内にこれを完納しないときは、國税滯納処分の例により、これを処分しなければならない。
第一項乃至第三項の規定による徴收金は、都道府縣にあつては國の徴收金に次いで先取特権を有し、市町村にあつては國及び都道府縣の徴收金に次いで先取特権を有し、その追徴、還付及び時効については、國税の例による。
都道府縣知事の委任を受けた吏員がした前三項の規定による処分に異議がある者は、これを都道府縣知事に申し立てることができる。
前項の規定による異議の申立があつたときは、都道府縣知事は、これを議会に諮つて決定しなければならない。
議会は、前項の規定による諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならない。
第四項の規定による処分中差押物件の公賣は、その処分が確定するまで執行を停止する。
第四項の規定による処分は、当該普通地方公共團体の区域外においても、また、これをすることができる。
第二百二十六條 普通地方公共團体は、その負債を償還するため、普通地方公共團体の永久の利益となるべき支出をするため、又は天災等のため必要がある場合に限り、議会の議決を経て、地方債を起すことができる。
地方債を起すにつき、議会の議決を経るときは、併せて起債の方法、利息の定率及び償還の方法について議決を経なければならない。
第二百二十七條 普通地方公共團体の長は、予算内の支出をするため、議会の議決を経て、一時の借入をすることができる。
前項の規定による借入金は、その会計年度内の收入を以て償還しなければならない。
第三節 支出
第二百二十八條 普通地方公共團体は、その必要な経費及び從來法令により又は將來法律若しくは政令により当該普通地方公共團体の負担に属する経費を支弁する義務を負う。
第二百二十九條 普通地方公共團体の長若しくはその補助機関たる職員又は選挙管理委員会が、國、他の地方公共團体その他公共團体の事務を執行するため要する経費は、法律又は政令に特別の定があるものを除く外、当該普通地方公共團体がこれを支出する義務を負う。
普通地方公共團体の長若しくはその補助機関たる職員又は選挙管理委員会をして國の事務を処理し、管理し、又は執行させる場合においては、そのために要する経費の財源につき必要な措置を講じなければならない。
第二百三十條 普通地方公共團体は、宗教上の組織若しくは團体の便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、公金を支出してはならない。
第二百三十一條 普通地方公共團体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。
第二百三十二條 普通地方公共團体の議会において予算を議決したときは、普通地方公共團体の長は、直ちにその写を出納長又は收入役に交付しなければならない。
出納長又は收入役は、普通地方公共團体の長の命令がなければ、支出をすることができない。命令を受けても支出の予算がなく、且つ、予備費支出、費目流用その他財務に関する規定により支出することができないときも、また、同樣とする。
第二百三十三條 普通地方公共團体の支拂金の時効については、政府の支拂金の時効による。
第四節 予算
第二百三十四條 普通地方公共團体の長は、毎会計年度歳入歳出予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない。
普通地方公共團体の会計年度は、政府の会計年度による。
予算を議会に提出するときは、普通地方公共團体の長は、併せて財産表その他必要な書類を提出しなければならない。
第二百三十五條 普通地方公共團体の長は、議会の議決を経て既定予算の追加又は更正をすることができる。
第二百三十六條 普通地方公共團体の経費を以て支弁する事件で数年を期してその経費を支出すべきものは、議会の議決を経て、その年期間各年度の支出額を定め、継続費とすることができる。
第二百三十七條 普通地方公共團体は、予算外の支出又は予算超過の支出に充てるため、予備費を設けなければならない。
特別会計には、予備費を設けないことができる。
予備費は、議会の否決した費途に充てることができない。
第二百三十八條 予算は、普通地方公共團体の議会の議決を経た後、直ちに都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事に報告し、且つ、その要領を告示しなければならない。
第二百三十九條 普通地方公共團体は、議会の議決を経て特別会計を設けることができる。
第五節 出納及び決算
第二百四十條 普通地方公共團体の出納は、毎月例日を定めてこれを檢査し、且つ、毎会計年度少くとも二回臨時檢査をしなければならない。
檢査は、監査委員がこれを行う。臨時檢査には、普通地方公共團体の議会の議員において互選した二人以上の議員の立会を必要とする。
監査委員は、檢査の結果を普通地方公共團体の議会及び長に報告しなければならない。
監査委員を置かない市町村においては、第二項の檢査及び前項の報告は、市町村長がこれを行う。
第二百四十一條 普通地方公共團体の出納は、翌年度の五月三十一日を以し閉鎖する。
第二百四十二條 決算は、証書類と併せて出納長又は收入役からこれを普通地方公共團体の長に提出しなければならない。この場合において、收入役は、出納閉鎖後一箇月以内にこれをしなければならない。
普通地方公共團体の長は、決算及び証書類を監査委員の審査に付し、その意見を附けて、都道府縣にあつては翌翌年度の通常予算を議する会議、市町村にあつては次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付さなければならない。
決算は、その認定に関する議会の議決とともに、都道府縣にあつては内務大臣、市町村にあつては都道府縣知事に報告し、且つ、その要領を告示しなければならない。
監査委員を置かない市町村においては、第二項に規定する監査委員の職務は、市町村長が自らこれを行う。
第六節 雜則
第二百四十三條 普通地方公共團体は、法律又は政令に特別の定がある場合を除く外、財産の賣却及び貸與、工事の請負並びに物件、労力その他の供給は、競爭入札に付さなければならない。但し、臨時急施を要するとき、入札の價格が入札に要する経費に比較して得失相償わないとき、又は議会の同意を得たときは、この限りでない。
第二百四十四條 普通地方公共團体の長は、議会の指定した事業につきその経営状況を明らかにするため、定期に貸借対照表その他必要な書類を作成し、これを監査委員の審査に付し、その意見を附けて次の議会に提出しなければならない。
前項の規定中監査委員の審査に関する部分は、監査委員を置かない市町村については、これを適用しない。
第二百四十五條 予算及び決算の調製の樣式、予算費目の流用その他財務に関し必要な規定は、命令でこれを定める。
第十章 監督
第二百四十六條 都道府縣に関する事項は内務大臣、市町村に関する事項は第一次において都道府縣知事、第二次において内務大臣の所轄とする。
第二百四十七條 所轄行政廳は、必要があるときは、普通地方公共團体につき事務の報告をさせ、書類帳簿を徴し又は実地について事務を視察し若しくは出納を檢閲することができる。
所轄行政廳は、必要があるときは、普通地方公共團体の事務に関する基準を定め、普通地方公共團体に対してこれを通知し又はその採用を勧告することができる。
第二百四十八條 普通地方公共團体において、法律若しくは政令により負担し、又は法律の規定に基き当該行政廳の職権により命ずる経費を予算に計上しないときは、所轄行政廳は、理由を示してその経費を予算に加えることができる。
普通地方公共團体の長及びその補助機関たる職員、選挙管理委員会又は監査委員が法律又は政令により執行すべき事件を執行しないときは、所轄行政廳又はその委任を受けた者は、当該普通地方公共團体の負担において、これを執行することができる。
第二百四十九條 市町村長、助役、收入役又は副收入役に故障があるとき、又は普通地方公共團体の選挙管理委員会が成立しないときは、所轄行政廳は、臨時代理者又は臨時選挙管理委員を選任し、その職務を行わせることができる。
臨時代理者又は臨時選挙管理委員に対する給與は、所轄行政廳が当該普通地方公共團体の議会の同意を得てこれを定める。
第二百五十條 普通地方公共團体は、第二百二十七條の借入金を除く外、地方債を起し、並びに起債の方法、利息の定率及び償還の方法を変更しようとするときは、政令の定めるところにより、所轄行政廳の許可を受けなければならない。
前項の規定による内務大臣の許可については、内務大臣は、政令の定めるところにより、大藏大臣に協議するものとする。
第二百五十一條 普通地方公共團体は、條例を設け又は改廃するときは、政令の定めるところにより、所轄行政廳の許可を受け又はこれに対し報告しなければならない。
第二百五十二條 所轄行政廳は、許可を要する事件については、許可の申請の趣旨に反しないと認める範囲内において、更正してこれを許可することができる。
所轄行政廳の許可を要する事件については、政令の定めるところにより、その許可の職権を下級所轄行政廳に委任し、又は軽易な事件に限り報告を以て許可に代え若しくは許可を受けしめないことができる。
第十一章 補則
第二百五十三條 都道府縣知事の権限に属する市町村に関する事件で数都道府縣にわたるものがあるときは、内務大臣は、関係都道府縣知事の申請により、その事件を管理すべき都道府縣知事を指定しなければならない。
第二百五十四條 この法律における人口は、政令の定めるところによる。
第二百五十五條 第二百十八條第二項の直接市町村税及び直接國税の種類は、政令でこれを定める。
第二百五十六條 この法律に規定するものを除く外、第六條第一項及び第二項並びに第七條第一項乃至第三項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第二百五十七條 この法律に特別の定があるものを除く外、異議の申立又は訴願の提起は、処分、決定又は裁決があつた日から二十一日以内にこれをしなければならない。
決定書又は裁決書の交付を受けない者に関しては、前項の期間は、告示の日からこれを起算する。
この法律に特別の定があるものを除く外、異議の決定は、その申立を受けた日から三十日以内にこれをしなければならない。
異議の決定をすべき期間内に異議の決定がないときは、その申立を斥ぞける旨の決定があつたものとみなすことができる。
異議の申立に関する期間の計算については、訴願の提起に関する期間の計算の例による。異議の申立は、期限が経過した後においても容認すべき事由があると認めるときは、なお、これを受理することができる。
異議の決定は、文書を以てこれをし、その理由を附けてこれを本人に交付しなければならない。
異議の申立があつても処分の執行は、これを停止しない。但し、行政廳は、職権により又は関係人の請求により必要と認めるときは、これを停止することができる。
第二百五十八條 島に対する行政の特例に関し必要な事項は、政令でこれを定めることができる。
第二百五十九條 郡の区域をあらたに画し若しくはこれを廃止し、又は郡の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、関係都道府縣の議会の意見を徴して内務大臣がこれを定める。
郡の区域内において市の設置があつたとき、又は郡の区域の境界にわたつて市町村の境界の変更があつたときは、郡の区域も、また、自ら変更する。
郡の区域の境界にわたつて町村が設置されたときは、その町村の属すべき区域は、都道府縣知事が内務大臣の許可を得てこれを定める。
前三項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第二百六十條 政令で特別の定をする場合を除く外、市町村の区域内の町若しくは字の区域をあらたに画し若しくはこれを廃止し、又は町若しくは字の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、市町村長が議会の議決を経、都道府縣知事の許可を得てこれを定める。
前項の規定により許可をしたときは、都道府縣知事は、直ちにこれを告示するとともに、内務大臣に報告しなければならない。
第二百六十一條 一の普通地方公共團体のみに適用される特別法が國会において議決されたときは、衆議院議長は、内閣総理大臣を経由し、当該法律を添えてその旨を内務大臣に通知しなければならない。
前項の規定による通知があつたときは、内務大臣は、その日から五日以内に、関係普通地方公共團体の長にその旨を通知するとともに、当該法律その他関係書類を移送しなければならない。
前項の規定による通知があつたときは、関係普通地方公共團体の長は、その日から三十一日以後六十日以内に、選挙管理委員會をして当該法律について賛否の投票を行わしめなければならない。
前項の投票の結果が判明したときは、関係普通地方公共團体の長は、その日から五日以内に関係書類を添えてその結果を内務大臣に報告しなければならない。その投票の結果が確定したことを知つたときも、また、同樣とする。
前項の規定による報告があつたときは、内務大臣は、直ちに関係書類を添えて内閣総理大臣にその旨を報告しなければならない。
前項の規定により第三項の投票の結果が確定した旨の報告があつたときは、内閣総理大臣は、直ちにその旨を奏上するとともに衆議院議長に通知しなければならない。
第二百六十二條 政令で特別の定をするものを除く外、第四章の規定は、前條第三項の規定による投票にこれを準用する。
前條第三項の規定による投票は、政令の定めるところにより、普通地方公共團体の選挙又は第七十六條第三項の規定による解散の投票若しくは第八十條第三項及び第八十一條第二項の規定による解職の投票と同時にこれを行うことができる。
第二百六十三條 第二十二條第二項中郡とあるのは、都においては支廳長の所管区域を含み、道においては支廳長の所管区域とし、同項中市とあるのは、第百五十五條第二項の市においては、区とする。
都の選挙については、第四章中市に関する規定は、特別区にこれを適用する。
都道府縣の選挙については、第四章中町村に関する規定は、全部事務組合又は役場事務組合にこれを適用する。
第三編 特別地方公共團体及び地方公共團体に関する特例
第一章 特別地方公共團体
第一節 特別市
第二百六十四條 特別市は、その公共事務及び法律又は政令により特別市に属する事務並びに政令で特別の定をするものを除く外從來法令により都道府縣及び市に属する事務を処理する。
第二百六十五條 特別市は、都道府縣の区域外とする。
特別市は、人口五十万以上の市につき、法律でこれを指定する。その指定を廃止する場合も、また、同樣とする。
特別市の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。但し、特別市の区域に市町村若しくは特別区の区域又は所属未定地を編入する場合においては、関係地方公共團体の議会の議決を経て内務大臣がこれを定める。
第二項の規定により特別市の指定があつたとき又は前項但書の規定により境界の変更があつたときは、都道府縣の境界は、自ら変更する。
前二項の場合において財産処分を必要とするときは、関係地方公共團体の協議によつてこれを定める。その協議が調わないときは、関係地方公共團体の議会の意見を聽き、内務大臣がこれを定める。
前項の協議については、関係地方公共團体の議会の議決を経なければならない。
第二百六十六條 特別市と市町村若しくは特別区との境界に関する裁定又は決定は、第九條の例により、内務大臣がこれを行う。
第二百六十七條 特別市の区域内に住所を有する者は、当該特別市の住民とする。
第二百六十八條 特別市に市長及び助役を置く。
助役の定数は、條例でこれを定める。
特別市の市長は、当該特別市の事務及び部内の行政事務並びに法律又は政令によりその権限に属する他の地方公共團体その他公共團体の事務及び政令で特別の定をするものを除く外、從來法令により都道府縣知事及び市長の権限に属する他の地方公共團体その他公共團体の事務を管理し及び執行する。
第二百六十九條 特別市に收入役一人及び副收入役若干人を置く。
副收入役の定数は、條例でこれを定める。
第二百七十條 特別市は、市長の権限に属する事務を分掌させるため、條例で、その区域を分けて行政区を設け、その事務所を置くものとする。
特別市の市長は、區長の権限に属する事務を分掌させるため、條例で、必要な地に行政区の支所を設けることができる。
行政区の事務所又は支所の位置、名称及び所管区域は、條例でこれを定めなければならない。
第二百七十一條 行政区に区長及び区助役一人を置く。
区長及び区助役は、特別市の事務吏員の中から特別市の市長がこれを命ずる。
区長は、特別市の市長の定めるところにより、区内に関する特別市の事務及び特別市の市長の権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務並びに法律又は政令によりその権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務を掌理する。
区助役は、区長の事務を補佐し、区長に故障があるときその職務を代理する。
第二百七十二條 行政区に区收入役及び区副收入役各各一人を置く。
区収入役及び区副收入役は、特別市の事務吏員の中から特別市の市長がこれを命ずる。
特別市の市長、助役、收入役、副收入役若しくは監査委員又は区長若しくは区助役と親子、夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は、区收入役又は区副收入役となることができない。
区收入役又は区副收入役は、前項に規定する関係を生じたときは、その職を失う。
第三項の規定は、区收入役及び区副收入役相互の間において区收入役又は区副收入役は、前項の規定は、区收入役及び区副收入役相互の間において区副收入役にこれを適用する。
第二百七十三條 区收入役は、特別市の收入役の命を受け、特別市の出納その他の会計事務並びに特別市の市長及び区長その他特別市の吏員並びに特別市及び行政区の選挙管理委員会の権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務に関する出納その他の会計事務を掌る。
特別市の市長は、收入役の事務の一部を区收入役に委任させることができる。但し、特別市の出納その他の会計事務については、予め議会の同意を得なければならない。
区長は、特別市の市長の許可を得て、区收入役の事務の一部を区副收入役に委任させることができる。
前二項に定めるものを除く外、区收入役及び区副收入役の権限に関しては、市の收入役及び副收入役に関する規定を準用する。
第二百七十四條 行政区に区出納員を置くことができる。
区出納員は、特別市の事務吏員の中から特別市の市長がこれを命ずる。
区出納員は、区收入役の命を受け、出納事務を掌る。
第二百七十五條 前四條に定める者を除く外、行政区に必要な吏員を置き、区長の申請により、特別市の市長がこれを任免する。
前項の吏員は、特別市の吏員とし、その定数は、條例でこれを定める。
第一項の吏員は、区長の命を受け、事務又は技術を掌る。
区長は、その権限に属する事務の一部を第一項の吏員に委任し又はこれをして臨時に代理させることができる。
第二百七十六條 行政区に選挙管理委員会を置く。
前項の選挙管理委員会に関しては、第二編第七章第二節中市の選挙管理委員会に関する規定を準用する。
第二百七十七條 第十三條、第二十二條第七項、第十八條第八十六條第一項、第八十八條第一項、第九十一條、第九十四條、第百四十五條、第百五十二條、第百六十條、第百六十二條乃至第百六十七條、第百六十八條、第五項及び第六項、第百六十九條乃至第百七十一條、第二百九條、第二百十八條、第二百二十一條、第二百二十四條、第二百三十二條、第二百四十二條第一項、第二百五十五條及び第二百六十條中市に関する規定は、これを特判市に適用する。
第二百七十八條 この法律又はこれに基く政令に特別の定があるものを除く外、第二編中都道府縣に関する規定は、特別市にこれを適用する。
第二百七十九條 特別市の選挙について前條の規定により第二編第四章中都道府縣の選挙に関する規定を適用する場合においては、市に関する規定は、行政区にこれを適用する。
第二編第四章中選挙人名簿に関する規定についても、また、前項と同樣とする。
第二百八十條 この法律に規定するものを除く外、特別市に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
第二節 特別区
第二百八十一條 都の区は、これを特別区という。
特別区は、その公共事務及び法律若しくは政令又は都の條例により特別区に屬する事務並びに從來法令又は都の條例により都の区に屬する事務を処理する。
第二百八十二條 都は、條例で特別区について必要な規定を設けることができる。
第二百八十三條 政令で特別の定をするものを除く外、第二編中市に關する規定は、特別区にこれを適用する。
第三節 地方公共團体の組合
第二百八十四條 普通地方公共團体並びに特別市及び特別区は、第三項の場合を除く外、その事務の一部を共同処理するため、その協議により規約を定め、都道府縣及び特別市の加入するものにあつては内務大臣、その他のものにあつては都道府縣知事の許可を得て、地方公共團体の組合を設けることができる。(これを一部事務組合という。)この場合において、組合内の地方公共團体につきその執行機関の權限に屬する事項がなくなつたときは、その執行機関は、組合の成立と同時に消滅する。
町村は、特別の必要がある場合においては、その事務の全部を共同処理するため、その協議により規約を定め、前項の例により、町村の組合を設けることができる。(これを全部事務組合という。)この場合においては、組合内の各町村の議会及び執行機関は、組合の成立と同時に消滅する。
町村は、特別の必要がある場合においては、役場事務を共同処理するため、第一項の例により、町村の組合を設けることができる。(これを役場事務組合という。)この場合において、組合内各町村の執行機関の権限に属する事項がなくなつたときは、その執行機関は、組合の成立と同時に消滅する。
公益上必要がある場合においては、都道府縣知事は、政令の定めるところにより、第一項の規定による市町村及び特別区の組合を設けることができる。
前項の市町村及び特別区の組合に関しては、この法律にかかわらず、政令で特別の規定を設けることができる。
第二百八十五條 前條第一項乃至第四項の規定による地方公共團体の組合は、法人とする。
第二百八十六條 地方公共團体の組合は、これを組織する地方公共團体の数を増減し若しくは共同処理する事務を変更し、又は組合の規約を変更しようとするときは、関係地方公共團体の協議により、都道府縣及び特別市の加入するものにあつては内務大臣、その他のものにあつては都道府縣知事の許可を受けなければならない。
全部事務組合は、前項の規定にかかわらず、その組合を組織する町村の数を減少し又は組合の規約を変更しようとするときは組合の議会の議決により、その組合を組織する町村の数を増加しようとするときは組合とあらたに加入しようとする町村との協議により、都道府縣知事の許可を受けなければならない。
第二百八十七條 一部事務組合の規約には、左に掲げる事項につき規定を設けなければならない。
一 組合を名称
二 組合を組織する地方公共團体
三 組合の共同処理する事務
四 組合の事務所の位置
五 組合の議会の組織及び議員の選挙の方法
六 組合の執行機関の組織及び選任の方法
七 組合の経費の支弁の方法
全部事務組合の規約には前項第一号乃至第四号、役場事務組合の規約には同項第一号乃至第五号及び第七号につき規定を設けなければならない。
第二百八十八條 一部事務組合又は役場事務組合を解散しようとするときは、関係地方公共團体の協議により、第二百八十四條第一項の例により、内務大臣又は都道府縣知事の許可を受けなければならない。
全部事務組合を解散しようとするときは、組合の議会の議決により、都道府縣知事の許可を受けなければならない。
第二百八十九條 第二百八十六條又は前條の場合において、財産処分を必要とするときは、関係地方公共團体の協議により若しくは関係地方公共團体と組合との協議により又は組合の議会の議決によりこれを定める。その協議が調わないときは、関係地方公共團体又は組合の議会の意見を聽き、都道府縣及び特別市の加入する組合にあつては内務大臣、その他の組合にあつては都道府縣知事がこれを定める。
第二百九十條 第二百八十四條第一項乃至第三項、第二百八十六條、第二百八十八篠第一項及び前條の協議については、関係地方公共團体にあつてはその議会、組合にあつては組合の議会の議決を経なければならない。
第二百九十一條 地方公共團体の組合の経費の分賦に関し、違法又は、錯誤があると認めるときは、地方公共團体は、その告知を受けた日から三十日以内に組合の管理者に異議の申立をすることができる。
前項の異議の申立があつたときは、組合の管理者は、組合の議会に諮つてこれを決定しなければならない。
組合の議会は、前項の規定による諮問があつた日から二十日以内にその意見を述べなければならない。
第二百九十二條 地方公共團体の組合については、法律又は政令に特別の定があるものを除く外、都道府縣及び特別市の加入するものにあつては都道府縣に関する規定、市及び特別区の加入するもので都道府縣及び特別市の加入しないものにあつては市に関する規定、その他のものにあつては町村に関する規定を準用する。
第二百九十三條 第二百五十三條の規定は、第二百八十四條第一項乃至第四項、第二百八十六條、第二百八十八條及び第二百八十九條の規定による処分にこれを準用する。
第四節 財産区
第二百九十四條 法律又は政令に特別の定があるものを除く外、市町村並びに特別市及び特別区の一部で財産を有し又は営造物を設けているもの(これを財産区という。)があるときは、その財産又は営造物の管理及び処分については、この法律中地方公共團体の財産又は営造物の管理及び処分に関する規定による。
前項の財産又は営造物に関し特に要する経費は、財産区の負担とする。
前二項の場合においては、地方公共團体は、財産区の收入及び支出については会計を分別しなければならない。
第二百九十五條 財産区の財産又は営造物に関し必要があると認めるときは、市町村及び特別区の財産区にあつては都道府縣知事、特別市の財産区にあつては特別市の市長は、議会の議決を経て市町村若しくは特別区又は特別市の條例を設定し、財産区の議会又は総会を設けて財産区に関し市町村若しくは特別区又は特別市の議会の議決すべき事項を議決させることができる。
第二百九十六條 財産区の議会の議員の定数、任期、選挙権、被選挙権及び選挙人名簿に関する事項は、前條の條例中にこれを規定しなければならない。財産区の総会の組織に関する事項についても、また、同樣とする。
前項に規定するものを除く外、財産区の議会の議員の選挙については、第二編中町村の議会の議員の選挙に関する規定を準用する。但し、被選挙権の有無は、市町村又は特別市若しくは特別区の議会がこれを決定する。
財産区の議会又は総会に関しては、第二編中町村の議会に関する規定を準用する。
第二百九十七條 この法律に規定するものを除く外、財産区の事務に関しては、政令でこれを定める。
第二章 地方公共團体の協議会
第二百九十八條 地方公共團体は、地方公共團体の事務又は地方公共團体の長の権限に属する國、他の地方公共團体その他公共團体の事務の連絡調整を図るため、その協議により、規約を定め、都道府縣及び特別市の加入するものにあつては内務大臣、その他のものにあつては都道府縣知事の許可を得て、地方公共團体の協議会を設けることができる。
公益上必要がある場合においては、内務大臣又は都道府縣知事は、政令の定めるところにより、地方公共團体の協議会を設けることができる。
第二百九十九條 地方公共團体の協議会は、地方公共團体の事務又は地方公共團体の長の権限に属する事務の連絡調整を図る外、法律又は政令によりその権限に属する國、地方公共團体その他公共團体の事務を処理する。
第三百條 地方公共團体の協議会に会長及び副会長一人を置き、関係地方公共團体の長の中からこれを互選する。
会長は、協議会に関する事務を総理し、協議会を代表する。
副会長は、会長を補佐し、会長に故障があるときその職務を代理する。
第三百一條 地方公共團体の協議会は、必要があると認めるときは、その会議に関係官廳の長の参加を求めることができる。この場合において、関係官廳の長は、会議に出席し、議事に関係のある事項につき説明をしなければならない。
関係官廳の長は、必要があると認めるときは、地方公共團体の会議に出席し、発言することができる。
第三百二條 地方公共團体の協議会は、事務局を置くことができる。
事務局には局長及び書記を置き、会長がこれを選任する。
局長は、会長の命を受け、協議会に関する事務を整理する。
書記は、局長の命を受け、協議会に関する事務に從事する。
第三百三條 地方公共團体の協議会に要する経費は、関係地方公共團体がこれを負担しなければならない。
第三百四條 地方公共團体の協議会を廃止し、これに加入する地方公共團体の数を増減し又は協議会の規約を変更しようとするときは、第二百九十八條第一項の例により、内務大臣又は都道府縣知事の許可を受けなければならない。
附 則
第一條 この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。但し、警察部、警察署及び警察吏員に関する規定の施行の期日は、政令でこれを定める。
第二條 東京都制、道府縣制、市制及び町村制は、これを廃止する。但し、東京都制第百八十九條乃至第百九十一條及び第百九十八條の規定は、なお、その効力を有する。
第三條 この法律施行の際現に東京都長官、北海道廳長官、府縣知事、市町村長及び市町村長に準ずる者若しくは東京都議会議員、道府縣会議員、市町村会議員及び市町村会議員に準ずる者又は都道府縣若しくは市町村及びこれに準ずるものの他の職に在る者は、この法律又は他の法律で別に定める者を除く外、この法律により選挙又は選任された都道府縣若しくは市町村及びこれに準ずるものの長若しくは議会の議員又は都道府縣若しくは市町村及びこれに準ずるものの他の相当する職に在る者とみなし、任期があるものについては、その任期は、從前の規定による選挙又は就任の日からこれを起算する。
都又は特別区の議会の議員の定数は、第九十條第一項又は第九十一條第一項の規定にかかわらず、次の総選挙までの間は、なお、從前の規定による。
第四條 この法律又は他の法律に特別の定があるものを除く外、都道府縣に関する職制に関しては、当分の間、なほ、從前の都廳府縣(警視廳を除く。以下これに同じ。)に関する官制の規定を準用する。但し、政令で特別の規定を設けることができる。
第五條 この法律又は他の法律に特別の定があるものを除く外、都道府縣の吏員に関しては、別に法律が定められるまで從前の都廳府縣の官吏又は待遇官吏に関する各相当規定を準用する。但し、政令で特別の規定を設けることができる。
都道府縣の吏員は、政令の定めるところにより、分限委員会の承認を得なければ事務の都合により休職を命ぜられることはない。
前項の分限委員会の名称、組織、権限等は、政令でこれを定める。
第六條 この法律施行の際現に都廳府縣の地方事務官、地方技官又は待遇官吏たる者は、この法律若しくはこれに基く政令又は他の法律で別に定めるものを除く外、当該都道府縣の第百七十二條の事務吏員又は技術吏員に任用され、引き続き現に在る職に相当する職に補されたものとする。
第七條 道府縣における警察については、この法律中警察部、警察署及び警察吏員に関する規定の施行までの間は、なお、從前の例による。但し、政令で特別の規定を設けることができる。
第九十九條第一項、第百二十二條第一項及び第二百三十二條第二項の規定の適用については、当分の間、警視総監も、また、これを普通地方公共團体の長とみなす。
第八條 政令で定める事務に從事する都道府縣の職員は、第百七十二條、第百七十三條及び第百七十五條の規定にかかわらず、当分の間、なお、これを官吏とする。この場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第九條 この法律に定めるものを除く外、地方公共團体の長の補助機関たる職員、選挙管理委員及び選挙管理委員会の書記並びに監査委員及び監査委員の事務を補助する書記の分限、給與、服務、懲戒等に関しては、別に法律が定められるまでの間は、從前の規定に準じて政令でこれを定める。
第十條 都道府縣及び特別市は、軍人軍属であつた者の身上の取扱に関する事務及びその家族等に対する俸給その他の給與に関する事務を処理しなければならない。
前項の事務の処理に関しては、政令で特例を設けることができる。
第一項の事務を掌らせるため、都道府縣知事及び特別市の市長は、世話部を置くものとする。
都道府縣知事及び特別市の市長は、必要があるときは、條例で世話部出張所を置くことができる。
世話部出張所の位置、名称及び所管区域は、條例でこれを定めなければならない。
世話部及び世話部出張所の長は、都道府縣又は特別市の事務吏員を以てこれに充てる。
第一項の事務を処理するために要する経費は、國庫の負担とする。
第十一條 從前の東京都制、道府縣制、市制若しくは町村制又はこれらの法律に基いて発する命令によつてした手続その他の行爲は、これをこの法律又はこれに基いて発する命令中の相当する規定によつてした手続その他の行爲とみなす。
第十二條 この法律施行前東京都制、道府縣制、市制若しくは町村制又はこれらの法律に基いて発する勅令により行つた選挙に関し、これらの法律において準用する衆議院議員の選挙に関する罰則を適用すべきであつた行爲については、なお、從前の例による。
第十三條 他の法令中地方長官、東京都長官、北海道廳長官又は都道府縣若しくは東京都の区の官吏に関する規定は、政令で特別の規定を設ける場合を除く外、各各都道府縣知事若しくは特別市の市長、都知事、道知事又は都道府縣若しくは特別区の相当する吏員に関する規定とみなす。
第十四條 他の法令中都道府縣参事会若しくは都道府縣参事会員又は市参事会若しくは市参事会員に関する規定は、この法律による都道府縣、特別市若しくは市の議会又はこれらの議会の議員に関する規定とみなす。
第十五條 他の法令中に東京都制、道府縣制、府縣制、市制又は町村制の規定を掲げている場合において、この法律中これらの規定に相当する規定があるときは、政令で特別の規定を設ける場合を除く外、各各この法律中のこれらの規定に相当する規定を指しているものとする。
第十六條 他の法令中都道府縣及び市に関する規定は、政令で特別の規定を設ける場合を除く外、特別市にも、また、これを適用する。
他の法令中の從前の市制第六條の市又は市制第八十二條第一項若しくは市制第八十二條第三項の市に関する規定は、特別市及び第百五十五條第二項の市に関する規定とみなす。
第十七條 他の法令中市に関する規定は、政令で特別の規定を設ける場合を除く外、特別区にも、また、これを適用する。
第十八條 他の法令中從前郡長の管轄した区域に関する規定は、郡に関する規定とみなす。但し、政令で特別の規定を設けることができる。
第十九條 他の法令中町村制を施行しない地に関する規定は、第二百五十八條の規定による特例の適用を受ける島に関する規定とみなす。
第二十條 他の法令中都議会議員選挙管理委員会、道府縣会議員選挙管理委員会、市町村会議員選挙管理委員会若しくは市町村会議員選挙管理委員会に準ずる選挙管理委員会に関する規定は、都道府縣又は市町村若しくは市町村に準ずるものの選挙管理委員会に関する規定とみなす。
第二十一條 戸籍法の適用を受けない者の選挙権及び被選挙権は、当分の間、これを停止する。
前項の者は、選挙人名簿にこれを登載することができない。
第二十二條 この法律の施行に関し必要な規定は、政令でこれを定める。
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〔國務大臣 植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=58
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059・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) ただいま上程になりました地方自治法案につきまして、その提案の理由及び法案中主要なる事項の概略を御説明申し上げます。
最初に本法案提出の經緯について御説明いたします。既に諸君御承知のごとく、政府は昨年第九十囘帝國議會におきまして、地方行政の民主化の根本精神に基き、東京都制を初め、府縣制、市町村制の一部を改正し、廣く二十年以上の男女兩性に對して、地方自治に對する直接參與の權利を認め、府縣知事及び市町村長等を直接選擧とするとともに、地方議會の權限及び地位を擴充強化する等、相當廣範圍にわたる地方制度の改正を行つてまいつたのであります。しかしながら當時政府においても聲明いたしましたごとく、この第一次の地方制度の改正は、地方行政の民主化を徹底する上において、なお少からず不十分かつ不徹底のそしりを免れなかつたのであります。よつて政府は、第一次改正案審議の際における衆議院の附帶決議の精神を尊重いたしまして、地方行政の徹底的民主化をはかるため、第二次の地方制度の改正を斷行することとし、次の通常議會に關係法案を提出する豫定のもとに、まず昨年十月地方制度調査會を設置し、朝野の權威者の參集を求め、一般地方自治制度、大都市制度及び公務員制度等につきまして、諮問をいたしたのであります。彌來地方制度調査會におきましては、本年二月まで約五箇月間にわたり、委員各位の絶大なる努力により、愼重審議を重ねた結果、きわめて詳細かつ適切な答申を寄せられましたので、政府はこの答申に基き、鋭意立案を進めてまいつたのでありますが、何分にも厖大な内容のものでありますので、本日ようやくここに提出の運びとなつた次第であります。
以上の經緯に基きまして、本法案は今次議會に提出することとなつたのでありますが、その提案の理由について御説明申し上げます。御承知のごとく、日本國憲法におきましては、地方自治行政の重要性に鑑み、特に地方自治に關して一章を設け、地方自治に關する其本的規定を掲げているのであります。すなわち地方自治に關する事項は、その基礎を直接憲法にもつておるのであります。地方自治に關する法律は、憲法附屬の法典と申すべきものでありますから、日本國憲法の規定及び精神に即應した地方自治法を制定し、憲法と同時にこれを施行し、地方行政の民主化をさらに徹底し、もつて國政民主化の基底を培うことが、特に必要であると考えられたのであります。
また申すまでもなく、地方自治制度は國家組織の地方における骨格でありますが、地方における國の直接の行政組織はもとより、地方における各種公共團體、協同組合等の地方住民の各種の自主的組織に對しましても、いわばその中軸となり、根幹となる地位を占めるものであります。從つて都道府縣及び市町村に關する組織及び運營のいかんは、國家行政の振否に至大の影響を與えますとともに、直接地方住民の生活を左右する重大問題であるのであります。かくのごとく地方自治制度は、各種の地方的組織のあり方に直接決定的な關係をもつものでありますから、まず新憲法の實施と同時に、新憲法の理念に即應した地方自治法を制定施行し、その新しい地方自治のあり方を基本として、各般の地方組織を決定して行くのが順序であると存ぜられるのであります。
殊にわが國の地方自治の本位たる都道府縣の行政は、從來官吏たる都道府縣知事によつて運營されたのでありますが、新憲法の施行とともに、これを公吏に切りかえる必要があるのであります。從つて從來知事以下の官吏によつて運營されてきた地方行政は、將來公吏によつて運營せられ、わが國の地方行政組織上一大轉換を行うことと相なるわけでありまして、かかる新事態に即應する地方自治制度を、新憲法施行までに確定しおくことが、絶對に必要であると存ぜられるのであります。以上が、今次議會に特に本法案を提出いたしました理由であります。
次に、本法案制定の基本方針について御説明申し上げます。まず第一に、地方公共團體の自主制及び自律性の強化であります。すなわち新たに特別市制の制度を設けまして、いわゆる二重監督の弊を芟除し、大都市の自主的かつ積極的な活動を助長促進することといたしますとともに、東京都の區に對しては、原則として市と同樣の權能を認めることといたす等、第一次改正の精神をさらに擴充強化し、地方公共團體の自主性の原則をさらに貫徹することに努めたのであります。また許可その他の個別的監督事項を極力整理いたしますとともに、地方公共團體の事務自體に對する一般監督の制度は、極力これを制限し、國家として眞にやむを得ない必要最小限度の統制を行うに止むることといたす等、地方公共團體の自律性をさらに徹底するに努めたのであります。また地方議會の地位を強化し、その自主的かつ自律的な活動を促進することといたしたのであります。
第二に、地方分權の徹底であります。今囘別途地方税法を改正いたしまして、地方公共團體に對し、財源を移讓し、いわゆる自主財政の確立を期するとともに、近き將來において、警察事務中、自治警察に屬せしめるを適當と認める事項の地方移讓を行うことを明らかにする等、與う限り地方分權の趣旨の徹底をはかつたのであります。
第三は、行政執行の能率化と、その公正の確保であります。すなわち選擧の執行については、同時選擧の方法を新たに規定するとともに、その手續を、衆議院議員選擧法の手續となるべく同一ならしめ、選擧手續の簡明化と能率化を期したのであります。また都道府縣に新たに獨立の權限を有する出納長制度を設け、都道府縣會計の公正を確保することといたしたのであります。
今次の地方制度の改正は、概ね以上の方針に基いて立案いたしたのでありますが、立法の形式としましては、現行東京都制、道府縣制、市制及び町村制竝びに地方官官制等の諸規定を統合整理して、なるべく同一の原則により各種地方公共團體を律することとするとともに、各種地方公共團體に特異な事項は、これを條例に讓ることといたしまして、一本の地方自治法を制定し、これをすべての地方公共團體に適用するという形をとることといたしたのであります。
次に、この法律案に定めましたおもなる事項で、特に現行法に改正を加えました點について、その概略を説明いたします。第一は、總括的事項であります。すなわちまず地方公共團體を二種にわかちまして、都道府縣市町村を普通地方公共團體として規定を設けるとともに、特別市、特別區、組合等の團體を、特別地方公共團體として規定したのであります。しかして東京都につきましては、區はこれを特別區とし、原則として市と同一の權能を認めることとし、東京都は基礎的地方公共團體でなく、道府縣と同樣に、市區町村を包括する複合的地方公共團體としたのであります。またこれらすべての地方公共團體またはその機關に對する事務の委任は、單に省令によらず、法律または政令をもつてすることを必要とし、團體の自主的地位を尊重することとしたのであります。さらに都道府縣については、その處理する國家事務の重要性に鑑み、條例または規則に違反したものに對しては、法律の定めるところにより刑罰を科することがあるものとし、警察權の移讓等による地方公共團體の權能の擴充に伴い、行政の執行に遺憾なきを期することとしたのであります。
第二は、選擧に關する事項であります。選擧權の缺格條項を整理して、衆議院議員及び參議院議員の選擧權に準じて、刑の執行中の者等に限り選擧權及び被選擧權を與えないこととし、選擧權の制限の範圍をさらに局限したのであります。また選擧人名簿の調整、投票、開票及び選擧會、選擧運動の費用等、選擧に關しましては、努めて衆議院議員の選擧の手續と同一たらしめ、手續の簡明化と能率化を期することに特に意を用いたのであります。また市町村の選擧を行う場合には、市町村の選擧管理委員會より、あらかじめ都道府縣の選擧管理委員會に報告させるようにし、なるべく各種の選擧を同時に行い、その能率化をはかることといたしたのであります。なお町村の選擧につきましても、選擧區制を認めますとともに、選擧運動の費用の制限額を法定し、これを超えて選擧運動費用を支出した者は、當選を無效たらしむることとし、これに伴う訴訟手續を規定したのであります。
第三は、地方議會に關する事項であります。從來都道府縣知事及び市町村長に對する、いわゆる機關委任の事務に對しては、都道府縣會及び市町村會は、豫算の審議を通ずるほか、これについては全然干與することが出來なかつたのであります。すなわち府縣のごとく、その住民の生活上重要な國家事務を委任せられておる場合におきましても、都道府縣會は、これに對しては何ら發言權が與えられていなかつたのであつて、國の委任事務ではあつても、實質上、當該都道府縣または市町村と密接な關係があり、利害が伴う以上、これにある程度地方議會が參與すべきことは當然であります。よつて地方議會は、これらの國の事務について、都道府縣知事または市町村長に對して報告もしくは説明を求め、あるいはその意見を述べることができることといたし、もつて國政の民主的運營を所期することといたした次第であります。
次に、地方議會の議員の四分の一以上の者から要求があれば、地方公共團體の長は、これを招集すべきものとするとともに、議案は議員一人からでも發案することができるものとし、地方議會の眞摯活發な活動をはかることといたしたのであります。また議會は、選擧人その他の證人を召喚し、各種の調査を行い、關係方面に對して照會することができるものとし、その活動上必要があるときは、直接選擧人等と接觸できるようにいたしたのであります。
なお新たに常任委員會及び特別委員會の制度を設けて、議事手續を國會に倣つて整備するとともに、議會閉會中においても、常任委員會によつて議會の活動ができるようにしたのであります。しかしてこの委員會制度の設置に伴い、かつ地方議会の定例會は毎年六囘以上開催する關係もありますので、都道府縣及び市の參事會は、今囘これを廢止することといたしたのであります。地方議會につきましては、以上のほか、國會法案の規定に倣い、地方議會の自主的かつ自律的な活動を促進するため、懲罰その他について所要の規定の整備をはかつた次第であります。
第四は、執行機關に關する事項であります。わが國地方行政の最重要機關である都道府縣知事は、公選に基き選任せられることとなりましたが、なお日本國憲法施行の日まで政府の官吏であり、從つて中央に對して責任を負うものであります。その補助機關もまた同機であります。本法案におきましては、知事及びその部下の職員の身分は、これを名實ともに地方自治體の職員とし、地方團體の住民及び議會に對して責任を負擔し、住民の福祉の増進に努めさすることといたしたのであります。これにより、わが國の從來の地方行政の官治的色彩が拂拭せられ、眞に民主的自治制度たる實を備えるに至るものと信ずる次第であります。
次に、地方團體の行政中、選擧の事務及び監査に屬する事務は、それぞれ獨立の機關をして執行せしむることが適當と考えられますので、都道府縣知事及び市町村長のほかに、選擧管理委員會及び監査委員の地位を明確に規定し、都道府縣知事及び市町村長と相並んで、地方公共團體の行政機關を構成する獨立機關といたしたのであります。しかして公選による都道府縣知事の補佐機關として、新たに副知事をおき、部内の統轄及び行政の執行に萬全を期することといたしましたほか、概ね市の收入役及び副收入役に準じ、出納長及び副出納長の制度を設け、都道府縣の會計を、統一的に出納長の責任において處理させ、會計事務の公正を期することといたしたのであります。
知事公選の根本的の趣意よりいたしまして、現在地方長官の權限に屬する國務事務は、すべてこれを都道府縣知事に繼承せしむべきことは、申すまでもないことであります。從つて現在の官廳たる都道府縣廳の部局の組織のまま、これを新しい都道府縣の部局とし、かつ食糧、木炭その他地方住民の生活に最も密接な關係のある國の行政機關については、法律または政令の定めるところにより、都道府縣知事がこれを指揮監督し得ることとし、また都道府縣内の各種の團體等に對しても、地方行政の總合的運營をはかる必要がある場合においては、これらを指揮監督することができるものといたしたのであります。都道府縣における國の行政については、別に法律または政令で除外しない限り、當然都道府縣知事がこれを管理執行することとし、もつて地方における特別行政機關の設置をでき得る限り避け、地方行政の混亂を防止するとともに、地方分權の趣意に背馳することなきを期したのであります。なお都道府縣知事または市町村長が、その職務の遂行上はなはだしく當を失し、重大なる故障が生じた場合等におきましては、公聽會を開き、公平に第三者の意見を聽き、本人の辯明をも徴した上、監督官廳がこれを解職することができることといたしました。
第五に、地方公共團體の監督に關する事項であります。地方自治に關する憲法の規定の精神に基き、地方公共團體に對する監督事項は努めてこれを整理し、その自由かつ自主的な活動に一任すべきでありまして地方公共團體の本來の活動に關しては、かかる方針のもとに監督規定を整理いたしたのでありますが、反面において國政事務の處理については、直接に國家の利害の關係するところでありますので、從來國の機關として都道府縣知事及び市町村長が處理して來た事務に關する監督は、概ね從來の制度によることといたしたのであります。
第六は、特別市に關する制度であります。特別市制は、諸君御熟知のごとく、多年の歴史をもつ重要問題でありますが、終戰後五大都市に特別市制實施の要望が急激に強まり、昨年第九十囘帝國議會における地方制度改正法案に對する衆議院の附帶決議におきましては、特別市制の速やかなる實施を要望していたのであります。よつて地方制度調査會におきまして、五大府縣及び五大都市の代表者をも加えて、愼重かつ熱心に檢討を加えたのであります。申すまでもなく、府縣の下に大都市を併存せしむる現行制度につきましては、いわゆる二重監督、府縣市併存の弊がつとに指摘されておるところであります。また一面大都市を府縣の監督より獨立させ、その自主的地位を尊重することは、地方行政民主化の本義から申しまして、特に必要があると認めます。よつて今囘この多年にわたる懸案を解決すべく、地方自治法案に特別市制度を制定することといたしたのであります。すなわち特別市は、國家的見地より、國會において、人口五十萬以上の市のうちから法律で指定することとし、その組織は概ね市の組織に準ずるが、その權能及び地位は、これを原則として都道府縣と同樣に扱うことといたしたのであります。ただ特別市の指定の時期については、なお篤と考究を重ね、改正憲法の施行後適當な時期を選んで、これを行いたいと考えているのであります。なお都道府縣及び市町村の吏員の任用、資格、分限、給與等につきましては、別に單行の法律を制定いたす考えでありますが、これは官吏制度と密接不可分の關係がありますので、
〔議長退席、副議長着席〕
官公吏を通じて公務員に關する制度を鋭意檢討中でありますが、今次議會に關係法案を提案する運びに至らず、やむを得ず、市町村吏員につきましては、當分の間從來の官吏に關する規定に準ずることといたしたのであります。
最後に、警察制度について説明いたします。警察制度の改革につきましては、昨年秋、内務省に朝野の權威者をもつて警察制度審議會を設けて、調査研究をお願いいたしました結果、十二月に至つて、きわめて適切かつ詳細な答申を得たのであります。爾來この答申の趣旨に從つて改革を實施すべく、準備を進めてまいつたのでありますが、これが實施については、なお愼重研究を要する事項もあり、かつは現下の國情よりいたしまして、警察の制度については、今日直ちに根本的改革を加えますることは、社會公共の秩序を維持すべき警察本來の任務からいたしまして、時機を得たものでないと考え、今囘は暫定措置を講ずるに止めることにいたした次第であります、すなわち地方における警察、消防の行政につきましては、概ね現行の制度により、警察部長以下の官吏たる警察、消防職員をしてこれを擔任せしめ、道府縣知事がこれを指揮監督するものといたしまして、自治團體による警察の制度をいかにするか、その他將來における警察、消防の組織及び運營に關する根本的改正は、いましばらくしさいなる檢討を加えた上、これを行うことといたしたのであります。
以上、本法律案提案の理由及びその主要なる内容につき概要を説明したのであります。何とぞ愼重審議、速やかに御協贊あらんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=59
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060・井上知治
○副議長(井上知治君) 質疑の通告があります。これを許します。岡田春夫君。
〔岡田春夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=60
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061・岡田春夫
○岡田春夫君 ただいま上程になりました地方自治法案に關しまして、私は日本社會黨を代表いたしまして、次の諸點について政府の所信をお伺いいたしたいと思います。
先ほど内務大臣から御説明のありました通りに、本法案は三百數十條に達しまする厖大なる法案でありまするが、私はこの中で最も重要なる問題を整備いたしまして、まず第一に地方制度の民主化においてその基本的な問題と、この法案に現われましたところの具體的な諸問題について、この二つの點から、大體七項目にわたつて御質問いたしたいと思います。
第一には、地方制度の民主化におきまして、その基本的な問題をお伺いいたしたいと思いまするが、この點は三項目についてお伺いいたしたいと思います。
まず第一に、先ほど植原内務大臣が説明をされましたが、本法案の提出の理由といたしまして、第一次の改正法案において地方自治制の民主化をはかつたが、これの不徹底な部分を改廢して、一段進めて地方制度の民主化の徹底を期するということが、地方自治法の提案の第一の理由であつたのでありまするが、しからばこの法案の提出によつて、はたして日本の國家統治の下級機關でありますところの地方制度が、ほんとうに民主化をされて、民主化の完全を期し得るか否かという點についてお伺いいたしたいと思う。
現行の地方制度は、あらためて申し上げるまでもなく、昨年の七月の第九十議會におきまして第一次の改正が行われましたが、しかしこの改正によりましても、本質的には、明治二十三年の府縣制實施以來の封建的な、中央集權的官僚構造によつて體系ずけられておることは變りのない點である。すなわち不完全なる自治體といわれておる府縣におきましては、一面において行政官廳の面をもつておるとともに、反面におきましては地方自治體としての性格をもつておる。また市町村は完全自治體といわれておりまするが、しかし實質的には、法律、勅令あるいは省令のがんじがらめによつて、行政官廳でありまするところの府縣の末端組織としての役割しか果しておらないのであります。
しからば中央集權的な官僚構造の一環といたしまして、地方制度の構造というものはいかなるものであろうかということを簡單に申上げますると、まず第一に、天皇の大權事項でありまするところの官吏の任免を――藩閥勢力の惡用するところによりまして、この官吏の諸制度をすべて勅令によつて規定されておる。すなわち高等文官試驗令、文官任用令、文官分限令、あるいは官吏服務紀律、これら一連の勅令體系によつて、日本の官吏制度というものは確立されておる。
すなわち獨善排他的な官吏制度の根幹はここにある。第二に、明治初年の内閣職權以來、行政府の獨得なる優位性を獲得いたしましたところの諸勅令、すなわち内閣官制あるいは地方官官制、各省官制通則のごとく、いわゆる中央集權的な――きわめて中央集權的な行政組織。それから第三には、封建的なるプロシヤの自治制度の模倣でありますところの中央依存の官吏制度、すなわち府縣制、市町村制、都制、これら一連の地方自治制度、この三つの法律が、勅令の體系によつて、この三つの緊密な結合のもとに、現今の日本の地方制度というものは確立されておるのであります。
具體的に申しますならば、この府縣制におきましても、府縣の事務の八割までは國政の事務によつて占められており、中央の強力なる監督のもとにあります。反面におきまして、殘りの二割が、わずかに地方本來の事務であること、すなわちここに提案をされておりまするところの地方自治法に關しまする面は、殘りの二割の面にしか達しておらない。すなわち日本の地方制度の全構造中におきましては、きわめて微々たる役割を果しておるわけである。それゆえにここでいかに地方自治制度を民主化いたし、地方自治の面を民主化いたしましても、半面におきまして、先ほどから申しておりますところの中央集權的なる獨善排他的な、官僚的な諸制度、すなわち官吏制度あるいは行政組織の面を徹底的に民主化しない限りにおいては、本質的には、地方制度の民主化というものは果し得ないということが明確なのであります。
そこで本日地方自治法案を上程になりまして、從來の府縣制、あるいは市町村制、あるいは東京都制を統合一括いたしまして、そうして地方制度の完璧を期するということを、先ほど内務大臣から御説明がありましたが、實はこの法案の内容をしさいに檢討いたしますと、本質的には現在の地方制度と何ら變るところはない。むしろ實際上におきましては、現在の地方制度から見まするならば、一歩民主化の點においては後退しているとさえ、私は申し上げられるのであります。
この具體的な内容につきまして申し上げまするならば、先ほど内務大臣が御説明になりましたように、公選知事の身分が公吏になることによつて、府縣の職員は全面的に公吏とならなければならない。それと同時に公選知事の補助機關といたしまして、自由任用のもとに副知事制が設けられたのであります。あるいはまた府縣内の行政事務自體に對しましては、公選知事の指揮監督權を與える。その他の點において、中央の監督權におきましても、先ほど内務大臣の説明によりますと、地方の公共團體に關する事務において、中央の監督關係は極力これを制限するというように申されておりまするが、かような點において、表面的には一應確かに民主化されたように思われまするけれども、しかし半面におきまして先ほどから申しておりまするところの、府縣知事に委任されておりまする府縣の事務の大半を占めておりまするところの、いわゆる國政の事務に關しましては、從來の中央の監督というものは何ら弱められておらない。そればかりではない。進んで公選されました知事あるいは市町村長に對しての解職權を中央の監督官廳が握つて、表面的には公聽會を開いてこれを裁斷するとは言いながらも實質においては、監督官廳の解職權をもつて、自由に自分の思うままの監督をいたさんとする意圖が明確に現われているのであります。
この點から見まするならば、現在の地方制度の面におきましては、この法案に現われておりまするところでは、地方自治體の面に關する、もつと具體的に申しまするならば、地方の府縣廳において固有の事務に關する面に對しては、現在よりも、この法案において中央の監督關係がやや緩和された。しかし半面において、府縣におきまするところの、先ほど申し上げた通り事務の八割以上を占めておりまするところの國政の事務に關する中央の監督は、むしろ強化されたという現状である。
それのみならず、先ほどの説明によりまするならば、中央集權的な官僚機構の中樞機關と稱せられておりまするところの警察職員の問題、あるいはまた消防職員、あるいは教育吏員の問題に關しましては、これは身分を官吏にいたしまして、そうして中央の直轄といたしまして、公選知事の手によつて、これらの職員の任免を許さないという制度をここに現わしているのである。その結果といたしまして、公選知事に與えられました權限というものは、實質的において、現在よりもむしろ一歩縮小されているということは事實であります。
それのみではない。最近の地方の状況を見てみますと、知事公選の實施に伴いまして、經濟關係の各省におきましては、公選知事の不信任を表明するがごとき、相も變らない獨善的な官僚主義をもつて、各省は積極的にみずからの出先官廳というものを地方に設置しつつある。すなわち特別地方官廳の設置であり、勞働基準局あるいは臨時農地局、財務局の地方部、あるいはまた先ほど御提案になりました學校教育法によりまして學區廳、これらのごとく、續々と各省のいわゆる行政官廳としての下部機關が、官僚獨善主義による割據主義によつて、血みどろのなわばり爭いを地方に展開いたしているのであります。
このような實情に鑑みましたる場合に、現在におきますところの地方制度の民主化というものは實情においては、少くとも現状よりも、この地方自治法を實施いたしましたあとにおいては、むしろ民主化の點において後退せざるを得ないというのが實情であるのであります。(拍手)このような實情にかかわらず、しかも先ほど植原内務大臣は、この法案によつて地方制度の民主化を達成し得る、完璧を期し得ると、さように御説明になつておられましたが、この點につきましては、われわれきわめて不可解に存ずるのでありますが、政府の地方制度の民主化に對するところの基本的な考え方を、まず第一にお伺いいたしたいと思います。
第二の點は、國政事務の權限委讓と、特別地方官廳の整理の問題であります。本來中央機關と地方機關、中央と地方の自治體の間に、基本的の對立があるべきでない。地方制度というものは、國家統治の一環といたしまして存在するとともに、地方の實情によつて、住民自身の自治が運營されるという關係でなければならぬ。しからば民主主義の原則が一貫いたしまするならば、地方制度の眞に民主的なる構想というものは、まず第一に住民の意思決定機關でありまするところの地方議會が、執行機關より優位に立たなければならぬということであります。
この點につきましては、ちようど新憲法におきまして、國民の代表機關でありまするところのこの國會というものが、執行機關でありまするところの政府に對して優位に立つという點と對比せられてこなければならないと思うのであります。しかるにもかかわらず、今この地方自治法の構想いたしておりまするところの地方制度の基本的な構想というものは、實は執行機關でありまするところの地方公共團體の首長が、具體的に申し上げますならば府縣知事や市町村長が、地方議會の上位にあることが規定されている。もちろん前囘の改正によりまして、公共團體の首長は、これは公選にされたとはいうものの、先ほど申し上げました通りに、民主主義の原則が確立されている限りにおいて、あくまでも意思決定の機關が、執行機關の上に立たなければならないのであります。
しからば、なぜこの法案において執行機關を地方の議會の上に置いておるか。この點を分柝いたしまするならば、それは中央の行政官廳に巣を食つておりまするところの官僚機構が、厖大な國政の事務の實權を握つている。指揮あるいは監督權というものは、彼等自身の手によつて握られている。その握られておりますところの監督權のもとにおいて、これらの事務の執行というものは、地方公共團體の首長にこれを委任いたしまして、主として中央からこれを監督、指揮、指導をいたしていくというような方式をとつているわけである。
そこで本來の地方團體の固有の事務として、あるいは地方自治團體に委讓するのがよいと思われるところの事務に關してまでも、獨善、排他的な官僚機構が一手にこれを掌握いたしまして、地方公共團體の首長が地方議會の上にあるという體制をつくりあげているわけである。(拍手)これこそが、實は官僚機構の温存のために最もやりいい仕組であるという意味において、執行機關の優位性が認められているわけである。
本來國政の事務と地方自治體の行いまするところの固有の事務との區分につきましては、嚴密なる法的な規定というものはありません。從來ドイツにおきましては、この固有事務と委任事務との區分については、國家監督の點より、二つの嚴密なる區分を與えておつたのでありまするが、しかし日本におきましては、この固有事務と委任事務との區別というものは、今まで明確な區別を與えておらない。それぞれの法律の公布によつて、あるいは勅令によつて、省令によつて、それぞれの事務というものを適宜に分擔をいたしまして、從いまして現在固有事務と委任事務との限界というものは、お互いに入り亂れて、法理論的に見ましても、これは明確な區分を與えることはできないのであります。
そこでわれわれの考えますることは、眞に地方制度を民主化いたしまして、民主主義の、いわゆる人民のための、人民の手によるところの政治を地方制度の構造の上に確立するためには、まず第一に固有事務を委任事務との徹底的な整理を行つて、國政事務を地方公共團體に大幅に委讓していかなければならない。それと同時に、先ほどの質問にも具體的に述べましたが、いわゆる官僚の割據主義によりまして、特別地方官廳が續々と地方に生れつつありますが、これを思い切つて地方の公共團體の中核でありまするところの府縣に統合するという方向にもつていかなければならないと思うのであります。
この點につきましては、先ほど植原内務大臣も、地方制度調査會の答申案に、この國政事務の大幅なる權限の委讓、あるいは特別官廳の統合一元化の問題、この問題が實は取上げられたとお話しになつておりますが、しかしながら一月八日に閣議で決定された地方制度の實情を見てみますると、この調査會の答申を無視いたしまして、むしろ逆に特別官廳がますます簇生しつつあるところの現状というものを無視できないわけであります。この點につきまして、まず植原國務大臣に、國政事務の徹底的な整理と大幅なる委讓、竝びに特別地方官廳の事務を、地方公共團體であるところの府縣に委讓して統合するという點についての御意見をお伺いいたしたいと思います。
基本問題の第三の點につきましては、いわゆる公務員法の問題であります。憲法の附屬法は、實施の以前においてでき得る限り提出いたしまして、これを整備しなければならない。これは憲法委員會において、附帶條件として出されました。前囘のこの議會においての憲法の審議におきましても、附帶條件としてこれが出されている。またその後におきましても、政府はこの附屬法規の整備に努められているのでありましようが、未だわれわれの第一に解せないことは、この附屬法規の中で、最も重要な問題の一つであると考えておりますところの公務員法について、先ほど申し上げました、從來勅令なりあるいは省令なり、これらの法規をもつて、がんじがらめにつくられておりましたところの、いわゆる官吏制度の面、この面においては、何ら現在までに法案の提出を見ておらないのであります。
先ほど植原内務大臣は、鋭意公務員法の提案について努力をいたしたが、ただいままで議會には間に合わなかつたと、かようにお話になつておりますが、しかしながら政府におきましては、昨年の九月以來‥‥。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=61
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062・井上知治
○副議長(井上知治君) 岡田君に申し上げます。お約束の時間はとうに過ぎ去つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=62
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063・岡田春夫
○岡田春夫君(續) 時間は約束いたしておりません。――昨年の九月以來、内閣に臨時行政調査部を設けまして、主として公務員法の制度に關して鋭意研究を續けられてまいつたはずである。しかるにもかかわらず、未だ公務員法を提出されないところの理由というものは、一體いかなる點にあるのであるか。この點をまずお伺いいたしたいと思います。
次に、もし公務員法を提出いたさないといたしますならば、すべてのものは今まで勅令によつて規定をされておりますだけに、この勅令は、新憲法の實施とともに消滅いたしてしまうわけであります。そうすると、ここで經過的な措置として、現行の勅令をそのまま活かしていくといたしますならば、そこでまずお伺いいたしたいことは、この官吏の服務紀律の第一條において、およそ官吏というものは、天皇陛下及び天皇陛下の政府に對して忠順勤勉を旨とし、法律命令に從いおのおのその職務を盡すべし、かように規定されておりますが、この點と、新たなる憲法の第十五條において「すべて公務員は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」、かように規定されておりますが、この官吏の服務の關係において、實は二つの精神がここに存在する結果になるのであります。この點につきまして、はたして内部大臣は、今後部下の官吏を指導いたします場合において、いかなる紀律を中心にこれを行つていかれるのであるか。この點についてお伺いをいたしたいと思います。
あとはできるだけ簡略にいたしまして、具體的な問題を三點だけ申し上げたいと思います。まず第一に、監督機關の市長の解職權についてお伺いをいたしたいと思います。第百四十六條におきまして、府縣知事あるいは市町村長は、上級の監督機關がこれを著しく不適任であると認められたる場合においては、公聽會を開いて、これを解職することができるということを言つておるのであります。しかるにこの點は、私から考えまするならば、明らかに憲法第十五條の精神と背反をする、かように考えておる。すなわち公務員を選定し、これを罷免することは、國民固有の權利であるということが、憲法第十五條に明確に規定をされておりまするが、この點は、實は公選されましたところの知事が著しく不適任である場合において、監督官廳でありまする内務省が、これを解職するということは、明確に逆行いたしていると思う。この點につきまして、内務大臣はいかなる考え方をもつておらるるかということを、お聽きいたしたいと思います。
最後にもう一點、地方の公共團體の職員の、いわゆる任免權の問題と、給與の問題につきまして、簡單にお伺いをいたしたいと思います。本法案の第百五十四條には、任免の規定を設けておりまして、地方公共團體の職員は、地方公共團體の首長において一切任免せらるることになつております。しかもそのあとの附則に、休職に關しまする規定は詳細に設けてありまするが、この職員の任用に關しまする規定については、何ら詳細なるものが掲げられておりません。
この點につきましては、まず申し上げたいことは、從來の官僚機構の獨善排他的なる性格の第一の理由というものは、何といつても從來の官吏の任用の仕方において、高等文官試驗をとつた者を優先的に採用する方式、いわゆる高文試驗の有資格者を第一次的に採用するという原則が、その一環として取上げられておるのであります。そこで私のお伺いしたいことは、職員の任用に關しては、いかなる方法を制度化していかれるお考えであるか。また國民の全體の奉仕者であるべき職員の任用に對しましては、少くとも國民全體がこの奉仕者を採用するにあたつて、國民の意向が十分に反映し得るような仕組が、この中に制度化されておらなければならないと考えるが、この點はいかなる方法をお考えになつておるか。
それから第二の給與體系の問題につきましては、實は先般二月一日の、いわゆるゼネストの原因の問題に關連いたしましても、この給與體系の確立ということは、きわめて重要なる問題であります。現在の官公廳の職員の平均給は、實は六百六圓である。この六百六圓の給與の状態であつては、多々申し上げるまでもなく、食うことはできない。先般官公吏待遇改善委員會の準備會を設けられまして、これに對して何らかの改善案を設けられようといたしておるのでありまするが、しかしこの場合に根本的に考えてみなければならないことは、現行の給與體系というものが、先ほど官吏の任用の面において申し上げました通りに、位階勳等によつて裏づけられました高等文官官僚第一主義的な考え方、いわゆる身分給というものを基準にいたしておるのであります。この身分給を徹底的に改組いたしまして、いわゆる生活給というものを基準にいたしました給與體系を、ここに確立する必要があると思うのでありますが、これについての御意見をお伺いいたしたいと思います。
私の質問いたしたい點は、その他多多ありまするが、大體この程度にいたしまして、最後に申し上げておきたいことは、先ほど植原内務大臣が言われましたけれども、要するにかくのごとき厖大なる三百數十條にわたりまする法案を、殘り十日よりありませんところの議會に急遽提出いたしまして、しかもわれわれ議員にこの審議を任せられるのでありまするが、われわれはこの地方制度の眞の民主化をはかるためには、この三百餘條の法案を愼重審議いたしまする場合において、殘る十日間の審議の期日というものでは、とうていなし得ない場合が起るかも知れないということであります。しかしこの場合において、地方制度の民主化に對して、この法案が通らない場合の責任というものは、申すまでもなくこの法案を遲らして現在提出されましたところの政府自體にあるということを、明確にここに申し上げておきたいと思うのであります。
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=63
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064・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 岡田君にお答えいたします。どうもただいまの御質問を伺つていると、大分御意見のようで、法案自體から大變かけ離れたようにも感じられます。御説によりますれば、この法案が現在の日本の自治の行われているよりは、いささか退歩の感があるという御意見がありました。私どもはさように考えておりません。御承知の通り現在の知事は官選であります。この法案によりますれば、知事は普通選擧權をもつております男女の府縣民、都民によつて選擧されるのでありまして、從來の地方自治團體の構成と根本的に違うことを、まず第一に御諒承願いたいのであります。(拍手)
今までの知事は官選であります。この法案によりますれば、知事は民選であります。そうしてその民選の知事が、今までの中央集權の地方官制よりは退歩であるということは、少しこれはいき過ぎたお言葉であろうと思う。(「その通り」「ノーノー」拍手)もちろん現在の自治法によりまして、先刻の岡田君が理想とされるようなものが一擧にでき上がるとは、私どもは考えておりません。この地方自治法が必ずしも完璧であるなどという言葉は、決して私は一言もどこにも使つておりません。私自身この制度を完璧だとは思うておりません。
しかしながら政治は、實際の實情に即していくよりいたし方がありません。まず官選の知事と民選にいたし、そうして現在の知事が行うておりましたところの國家事務をも、民選の知事がとり行うことになるのであります。從つて地方固有の權力と國家の權力も、今までの官選の知事が行つておりましたことを、民選の知事によつて行われることになりますので、この點をはつきり御諒解くだされましたならば、從來の地方自治と、この地方自治制度に定めてあるところの地方自治とは、根本において違うことはおわかりであらうと思います。それが第一の御質問の要旨であると思います。
私どもは、これによりまして地方自治は完全にはできません。なぜかなら、地方自治を完全にいたしますならば、地方自治が完全に行い得る一切の財源ももたなければなりません。また地方自治が完全に行われるようになりましても、各府縣とも日本の一國であります以上は、中央政府との連繋がなければなりません。これらの地方自治が完成されるまでは、各府縣を統一する――アメリカでは各州がほとんど獨立いたしておりますが、その州の間を連繋するインター・ステートのローがあります。日本には、かようなものはまだにわかにつくり上げることはできません。それゆえに、從來の中央政府との關係を全部一時に切り放して、地方に完全の自治をつくるというがごときことは、これは政治家として、いかなる人であろうとも、なし能わざることであると御諒承願いたいのであります。(拍手)
それから知事は公吏であります。從つて今までの官吏は、これからは公吏として取扱われて、知事が縣廳内におけるところの吏員の任免權はもつのであります。その點は、今までとはなはだしく違うことを御承知を願いたいのであります。
なおさらにもう一つ御理解を願わなければならないことは、知事に非常な失政がありましたときには、公聽會を開いてその知事を免黜することは、決して民主主義でないとおつしやいましたけれども、公聽會なるものは、人民から成つておることを、ひとつ第一に御諒承を願いたいのであります。それのみならず、これからの内務大臣というものは、從來の内務大臣と違うことも、御承知を願いたいのであります。今までの内務大臣は、ややもすれば純官僚でありましたものが、新憲法によりますれば、國會の承認を經ないものはいかなる人であろうとも、内務大臣になることができず、その内務大臣は、直接に國民を代表しておるものでありますがゆえに、間接にはなりますけれども、今までの知事の任免を役人が取扱つておりましたとは根本的に相違して、これからの政府そのものも人民の代表者であり、その人民の代表者が、民選の知事がもし非常な失政をいたしましたときには、公聽會を開いて、世論の判決によつてこれを決定するのであります。それのみならず、知事も‥‥
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=64
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065・井上知治
○副議長(井上知治君) 靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=65
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066・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君)(續) これに對して自分の意見を十分に開陳することができるのでありますが故に、知事の任免は輿論において決定するということで、今までの知事の任免とは根本的に違うことを御承知を願いたいのであります。
さらにもう一つ‥‥。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=66
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067・井上知治
○副議長(井上知治君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=67
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068・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君)(續) なおさらにこういうお尋ねがありました。今までの官吏は、天皇の官吏である。しかるに今度の新憲法の十五條とおつしやつたが、これは國民の代表者で、天皇の官吏ではない。その取扱いは、これからかようになることを御承知を願いたいのであります。今までの官吏の身分は、勅令できめました。これからの公務員の身分は、全部法律できめるのであります。その法律は議會できめるのでありますがゆえに、從來の立て方と、勅令にあつたことと、根本的に違うことを御承知を願いたいのであります。法律そのものは、國民を代表した議會によつて決するのでありまして、民意によつてこれが取扱われるものであるということを、御承知を願いたのであります。
なお公務員のことでありますが、實は官吏の規定を定めて、公務員の規定もこれとともに一緒に決定するつもりでおりましたけれども、殘念ながらまだほんとうの成案を得ておりません。これは次の議會において、皆樣方の御審議を煩わすことになることを御承知を願いたいのであります。
公務員の給與についてお話がありましたが、公務員の給與は、生活を基本とすべきものだという御意見がありましたが、私はいかなるものの給與でも、生活を基本として給與を定めることはもちろんでありますけれども、それとともに、能率を無視して給與を定めるといふことは、あつてはならないことであると思います。(拍手)そうして待遇改善の委員會がありまして、これらの決定によつて、すべての公務員の給與等は定まるはずでありますが、ただいま問題とされました根本の點、生活一本によつて給與を定めるということでなく、生活と能率とを考慮して、待遇改善の委員會において正當妥當のものが決定されると思います。それによつて公務員の給與を定めることを御承知を願いたいと思います。
なおいろいろこまかしい點がありましたが、そのこまかしい點は、むしろ一問一答の委員會においていたした方が明瞭になると思いますから、それに讓ることにお願いいたしたいと思います。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=68
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069・岡田春夫
○岡田春夫君 議長。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=69
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070・井上知治
○副議長(井上知治君) 簡單ならお許しをいたします。
〔岡田春夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=70
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071・岡田春夫
○岡田春夫君 簡單でありますから、お聽きを願いたいと思いまするが、先ほど内務大臣の私に對する御答辯は、意識的か無意識的か、ともかくすべてにわたつて焦點をはずされておるのであります。
まず第一に申されました點は、地方制度の民主化をやるためには知事を公選にしておる、今までのように官吏でないから、全部地方制度は民主化されておるではないか、かようなお話でありまするが、しかしここでお伺いをいたしたいことは、公選されましたところの知事が權限をもたずして、中央の監督が強化されて、しかも官吏機構の中樞機關でありまするところの警察制度が中央直轄になりながら、しかも地方制度が民主化し得るかどうかという點をお伺い申し上げたいのであります。この點が第一の點である。
第二の點は、先ほど公選知事の解職權は内務大臣に與えられておるが、これは現在の内務大臣がほとんど政黨の出身によつて、政黨人の、あるいは國民の手によつて内務大臣がなつておる、それであるから、公選知事の解職權が内務大臣に與えられておつても、これは憲法の精神と反するものではないということをお話になりました。しかしこの點につきまして、あなたにお伺いいたしたいと思いまするが、先般の内閣法によりまして、内務大臣というものは、國務大臣であると同時に行政大臣であるということであります。行政大臣であるという意味において、行政官の最高府であるということであります。この意味において、その下に從屬いたしておりまするところの官僚機構によつて、この公選されましたところの知事というものは解職されるという結論が現われてくるということを私申し上げたわけであります。この點を意識的に無視いたしまして、現在あなたは政黨出身の大臣でおありでありますが、この内務大臣の地位にあつて、下におりますところの官僚機構に御自身が利用されまして、しかも公選知事の首をきるところの權限を賦與いたしておるわけなのであります。この點を明確にされたいと思うのであります。(拍手)
第三の公務員の點につきましては、これら官吏の服務紀律と、憲法の十五條の規定との關係であります。これは官吏の服務紀律を法律化するとか何とかいうことを私はお伺いしたのではございません。これは當然法律化しなければならないことになつておるので、こういう點はあなた御自身にお伺いしようとは思つてはおりません。ただ私のお伺いしたい點は、官吏が服務いたしまする場合の、服務の紀律というものが、新憲法の十五條に明確にうたつてある。すなわち官吏というものは國民全體の奉仕者であつて、一部の者のための奉仕者ではないということを明確にしておる。ところが前にありまするところの、勅令の官吏服務紀律によりましては、およそ官吏は天皇陛下竝びに天皇陛下の政府に忠勤を旨とすべし云々と、かように書いてある。新憲法によつては、國民の一部になりましたところの天皇に對してのみ忠勤を示すという點は、服務紀律上のいかなる點にああなた自身はおとりになるか。かような點をお伺いいたしたいのであります。重ねて御答辯を望みます。
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=71
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072・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 岡田君にお答えいたします。第一の、知事が民選であるにもかかわらず、なぜ警察權全部を自治の知事にもたせないのが、それで民主化の徹底と言えるか、こういう御質問だと解して差支えないと思います。そのことは、私が提案の理由にも説明いたした通り、自治警察はできるだけ速やかに知事の管轄下に委ねたいつもりであります。しかしすべての法律を一時に改正するわけにはまいりません。ここに地方自治の骨子ができたのであります。先刻も申し上げた通り、警察と消防につきましては、その特別委員會の答申もありましたけれども、目下の國の情勢に鑑みまして、これを一時に知事に委讓するようなことをいたしましたならば、國内の治安の問題にも相當懸念のことがありますので、しばらく現状といたして、できるだけこの警察の制度も、自治警察に關する限りは、知事の監督下に置くようにいたしたいと思います。しかしただいまにいたしましても、今までは警察は現在の下におきましては、中央からすべてを支配するのでありますが、民選の知事は、そこにおけるところの警察官を使うことができるように取極められてあるのでありますから、これは徐々に進展する、一足とびにはまいらないものであることを、御承知を願いたいのであります。
次に、地方の知事に非常な過失がある場合において、内務大臣が免職することは不都合ではないか。これに對しても、私は岡田君に根本的にひとつ諒解していただきたいことは、岡田君は從來の内務大臣の立場をもつてお考えになつておるようでありますが、從來の内務大臣と、新しい憲法によつてできるところの内閣官制のもとにおける内務大臣とは、根底において違うことは御諒承下さいましよう。それのみならず、知事を免職すると申しましても、知事を内務大臣が勝手に免職するのではありません。今までは内務大臣が知事を、ある意味から申しますれば任意に免官することもできたと申されましようが、今度は民選の知事を免職する場合においては、公聽會を開きます。この公聽會というものは、すべての國民の意思を表現するものであるということを考えなければなりません。公聽會を開き、知事もその公聽會において、自己の立場をいかようにも陳辯することができるのであります。かように公にされた機關によりまして、かような知事を地方の自治に置くことは國民のためによろしくないという判決が起りましたときに免職するのは、法規の上においては當然のことであると思うのであります。
もう一つ岡田君の御質問で、今までの官吏は勅令に基いた天皇の官吏であつたということをおつしやつた。その通りであります。新しい憲法によりますれば、官吏も天皇の官吏でなくて、國民の公僕として、すべての人に普遍的の役目をいたさなければならぬという御説もごもつとも、その通りであるのであります。そこで官吏のことにつきましては、今までは勅令できめておりました。しかるに官吏の取扱いにつき、これが公務員となりましよう。新しい法律ができれば、地方の自治團體のものは公務員になります。その公務員の取扱いは、法律で定めるのであります。その法律は、今までの法律や勅令と違うことをよく御諒解下さつたならば――この法律は國民の代表者である議會において決定するのでありますがゆえに、その法律は國民がきめるものであり、國民の意思によつて定まるものであります。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=72
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073・井上知治
○副議長(井上知治君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=73
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074・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君)(續) 國民が官吏を公僕として取扱つて定めるものでありますときに、今までの官吏と同じに、これが天皇陛下の官吏として職をとるということは、根本的に違うと思う。岡田君自身が、新しい憲法の行われる状態と現在の状態とを混淆されておるために、さような御質問があるものと承知いたすのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=74
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075・岡田春夫
○岡田春夫君 そのほか幾多の點についてきわめて不滿であります。特にただいまの問題につきましては、先ほど詳しく私御説明申し上げたはずでありまするが、經過規定として官吏制度の諸勅令が殘つた場合にどうかということをお伺いしたのでありまして、この點は植原さんは御諒解になつたのか、意識的に逃げておられるのかどうかは存じませんが、少くとも全面的に不滿であります。しかしこれは委員會に留保いたしまして、本日の私の質問を打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=75
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076・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
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077・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=77
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078・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=78
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079・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=79
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080・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第十九を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=80
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081・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=81
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082・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第十九、裁判所法施行法案の第一讀會を開きます。司法大臣木村篤太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=82
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083・会議録情報9
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第十九 裁判所法施行法案(政府提出) 第一讀會
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裁判所法施行法案
裁判所法施行法
第一條(廃止する法律) 明治二十三年法律第百六号、大正二年法律第九号、昭和十年法律第三十号、昭和十三年法律第十一号及び違警罪即決例は、これを廃止する。
第二條(從前の裁判所における手続) 裁判所構成法による裁判所においてした事件の受理その他の手続は、政令の定めるところによりこれを最高裁判所又は下級裁判所においてした事件の受理その他の手続とみなす。
裁判所法施行の際現に行政裁判所に係属している行政訴訟事件については、行政裁判所にした行政訴訟の提起は、これを東京高等裁判所にした訴の提起とみなす。
第三條(從前の裁判官の地位) 裁判所法施行の際現に大審院の裁判官の職に在る者で最高裁判所の裁判官に任命されないものは、判事として東京高等裁判所判事に補せられたものとみなす。
裁判所法施行の際現に控訴院の裁判官の職に在る者は、判事として当該控訴院の所在地を官轄する高等裁判所の判事に補せられたものとみなす。
裁判所法施行の際現に裁判所構成法による地方裁判所(以下旧地方裁判所という。)又は区裁判所の裁判官の職に在る者は、判事としてそれぞれ当該旧地方裁判所又は区裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の判事に補せられたものとみなす。
裁判所法施行の際現に旧地方裁判所又は区裁判所に予備判事として勤務する者は、判事補としてそれぞれ当該裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の判事補に補せられたものとみなす。
別に辞令が発せられた場合には、前三項の規定を適用しない。
日本國憲法第百三條但書の裁判官の後任者が任命される場合においてその後任者が第一項乃至第四項の裁判官のうちいずれの裁判官の後任者であるかは、その任命の際最高裁判所がこれを定める。
最高裁判所は、裁判所法施行の後六箇月以内に、前項に規定する後任者として任命されるべき者を日本國憲法第八十條第一項の規定により指名しなければならない。
第四條(閣令による裁判官任命諮問委員会) 裁判所法第三十九條第四項の裁判官任命諮問委員会は同法施行準備のため同法施行前において、閣令の定めるところによりこれを設けることができる。
前項の裁判官任命諮問委員会は、裁判所法施行前にその職務を行うことができる。
第五條(裁判所法第四十一條の大学) 裁判所法第四十一條第一項第六号の大学は、学校教育法による大学で大学院の附置されているもの及び大学令による大学とする。
第六條(從前の裁判官の恩給の特例) 裁判所法施行の際現に裁判官の職に在つた者で、日本國憲法第百三條但書の規定によりその地位を失つたものに支給すべき恩給については、恩給法の規定にかかわらず、法律で特別の定をすることができる。
第七條(その他の事項) この法律に定めるものの外、裁判所法及びこの法律の施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
この法律は、裁判所法施行の日からこれを施行する。
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=83
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084・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) ただいま議題となりました裁判所法施行法案の提案理由を、きはめて簡單に御説明申し上げます。
今囘裁判所法を制定いたしまして、現行の裁判所構成法、行政裁判所法等を廢止いたすことになりましたので、そのために必要な經過的處置を定める必要がありまするので、ここに本法案を提出した次第であります。
本法案におきましては、通常裁判所及び行政裁判所の事件の處理と、現職の裁判官の地位について經過的な規定を設け、その他若干の基本的、原則的な事項を定めて、附隨的な事項につきましては、これを政令で定めることといたしておるのであります。なお現行の裁判所管轄區域に關する法律、違警罪即決例、行政廳の違法處分に關する行政裁判の件等、若干の法律の廢止のことも定めておるのであります。
以上、本法案の概略を御説明申し上げました。何とぞ愼重御審議の上、速やかに御協贊を賜わらんことをお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=84
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085・井上知治
○副議長(井上知治君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=85
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086・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は、政府提出裁判所法案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=86
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087・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=87
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088・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=88
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089・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の日程を延期し、本日はこれにて散會せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=89
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090・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=90
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091・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。次會の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後五時三十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01919470317&spkNum=91
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