1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月二十八日(金曜日)
午後二時十六分開議
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議事日程 第二十八號
昭和二十二年三月二十八日
午後一時開議
第一 衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續
第二 私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 復興金融金庫法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 會計檢査院法を改正する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第五 所得税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 法人税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 土地台帳法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 家屋台帳法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 地方税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 地方分與税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 相續税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 國有財産法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 作業會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 燃料局特別會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 造幣局特別會計法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 國有林野事業特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 勞働者災害補償保險特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 公債金特別會計法外四法律の廢止等に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 企業再建整備法等の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 勞働者災害補償保險法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 健康保險法の一部を改正する等の法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十六 船舶公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十七 財政法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十八 會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十九 行政官廳法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十 宮内府法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十一 恩給法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十二 日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十三 石油配給公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十四 配炭公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十五 産業復興公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十六 貿易公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十七 價格調整公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十八 昭和二十年度第一豫備金支出の件
昭和二十年度緊急對策費第一豫備金支出の件
昭和二十年度特別會計第一豫備金支出の件
昭和二十年度特別會計豫備費支出の件
昭和二十一年度第二豫備金支出の件
昭和二十一年度特別會計第二豫備金支出の件
臨時軍事費特別會計豫備費支出の件
臨時軍事費特別會計豫備費外豫算超過支出の件
{承諾を求める件}(委員長報告)
第三十九 國會議員の歳費、旅費及び手當等に關する法律案(大野伴睦君外十九名提出)第一讀會
第四十 議院に出頭する證人の旅費及び日當に關する法律案(大野伴睦君外十九名提出)第一讀會
第四十一 國會豫備金に關する法律案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會
第四十二 議院事務局法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會
第四十三 國會圖書館法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會
第四十四 國會職員法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、昨二十七日貴族院から受領した政府提出案は次の通りである。
皇室經濟法の施行に關する法律案
一、昨二十七日貴族院において、本院から送付の次の政府提出案を可決した旨、同院から通牒を受領した。
勞働基準法案
學校教育法案
船員法を改正する法律案
帝國鐵道會計法を改正する法律案
一、議員から提出された議案は次の通りである。
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)に對する修正案
提出者
大野伴睦君 石黒武重君
衆議院議員選挙法の一部を改正する法律案(政府提出)に対する修正案
提出者 原彪之助君
衆議院議員選挙法の一部を改正する法律案(政府提出)に対する修正案
提出者
徳田球一君 柄澤と志子君
高倉輝君
石油配給公團法案(政府提出)に対する修正案
提出者
松本七郎君 細田綱吉君
稻村順三君 松尾トシ君
配炭公團法案(政府提出)に対する修正案
提出者
松本七郎君 細田綱吉君
稻村順三君 松尾トシ君
産業復興公團法案(政府提出)に対する修正案
提出者
松本七郎君 稻村順三君
細田綱吉君 松尾トシ君
議長信任の決議案
提出者 椎熊三郎君
(以上三月二十七日提出)
一、昨二十七日議長において撤囘を許可した議案は次の通りである。
決議案(議長不信任の件)
提出者 永江一夫君
議長信任の決議案
提出者 椎熊三郎君
一、議員異動
滋賀縣選出議員堤隆君死去せられたので、その補闕として長野重右ェ門君が當選せられた。
一、昨二十七日議長において次の委員を選定した。
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案(大野伴睦君外一名提出)外三件委員
有田二郎君 大石倫治君
神田博君 佐藤乕次郎君
辻寛一君 松浦東介君
村上勇君 山口喜久一郎君
山村新治郎君 藥師神岩太郎君
稻本早苗君 佐伯忠義君
椎熊三郎君 堀川恭平君
八木佐太治君 山崎岩男君
山下春江君 淺沼稻次郎君
佐竹晴記君 鈴木義男君
田原春次君 中村高一君
平野力三君 池上隆祐君
石崎千松君 石田一松君
松原一彦君 細迫兼光君
徳田球一君 中野四郎君
一、昨二十七日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した。
石油配給公團法案(政府提出)外四件
委員
理 事 木村公平君(理事山村新治郎君昨二十七日委員辭任につきその補闕)
一、昨二十七日次の通り特別委員の異動があつた。
行政官廳法案(政府提出)外一件委員
辭任川島金次君 補闕石川金次郎君
石油配給公團法案(政府提出)外四件
委員
辭任鈴木周次郎君 補闕九鬼紋十郎君
辭任舟崎由之君 補闕小笹耕作君
辭任山村新治郎君 補闕大井直之助君
辭任加藤一雄君 補闕内海安吉君
辭任九鬼紋十郎君 補闕鈴木周次郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=0
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001・井上知治
○副議長(井上知治君) これより會議を開きます。この際、新たに議席につかれました議員を御紹介いたします。第百二十一番、滋賀縣選出議員長野重右ェ門君。
〔長野重右ェ門君起立〕
〔拍 手〕
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=1
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002・椎熊三郎
○椎熊三郎君 日程第一は後囘しにせられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=2
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003・井上知治
○副議長(井上知治君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=3
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004・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程第一は後囘しといたします。
日程第二、私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案の第一讀會を開きます。國務大臣高瀬莊太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=4
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005・会議録情報2
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第二 私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案(政府提出) 第一讀會
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私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律案
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律目次
第一章 総則
第二章 私的独占及び不当な取引制限
第三章 不当な事業能力の較差
第四章 株式の保有、役員の兼任、合併及び営業の讓受
第五章 不公正な競爭方法
第六章 適用除外
第七章 損害賠償
第八章 公正取引委員会
第一節 組織及び権限
第二節 手続
第三節 雜則
第九章 訴訟
第十章 罰則
第一章 総則
第一條 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な競爭方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販賣、價格、技術等と不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競爭を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び國民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、國民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。
第二條 この法律において事業者とは、商業、工業、金融業その他の事業を営む者をいう。
この法律において競爭又は競爭者とは、潜在的な競爭又は競爭者を含むものとする。
この法律において私的独占とは、事業者が、單独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法を以てするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競爭を実質的に制限することをいう。
この法律において不当な取引制限とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義を以てするかを問わず、他の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競爭を実質的に制限することをいう。
この法律において不当な事業能力の較差とは、事業者と競爭者の事業能力の間に、著しい較差がある場合において、その事業者の優越した事業能力が、技術的理由により正当とされるものでなく、且つ、その較差が左の各号の一に掲げる事由により私的独占を行うことができる程度であるものをいう。
一 他の事業者があらたに事業を起すことを著しく困難にする程度に、事業者が、当該事業分野に属する事業又はこれに使用する原材料を支配していること。
二 事業者が、一定の事業分野において、他の事業者が現実に競爭することを著しく困難にする程度に生産を支配していること。
三 事業者が、私的独占を行うことができる程度に自由な競爭を抑圧し、又は著しく制限していること。
この法律において不公正な競爭方法とは、左の各号の一に該当する競爭手段をいう。
一 他の事業者から不当に物資、資金その他の経済上の利益の供給を受けず、又は他の事業者に対し不当に物資、資金その他の経済上の利益を供給しないこと
二 不当な差別対價を以て、物資、資金その他の経済上の利益を供給すること
三 不当に低い対價を以て、物資、資金その他の経済上の利益を供給すること
四 不当に、利益又は不利益を以て、競爭者の顧客を自己と取り引きするように勧誘し、又は強制すること
五 相手方が自己の競爭者から不当に物資、資金その他の経済上の利益の供給を受けないことを條件として、当該相手方と取り引きすること
六 相手方とこれに物資、資金その他の経済上の利益を供給する者若しくは顧客との取引若しくは相手方とその競爭者との関係を不当に拘束する條件を附け、又は相手方である会社の役員(取締役、業務を執行する無限責任社員若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の営業の主任者をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の承認を受けるべき旨の條件を附けて、当該相手方に物資、資金その他の経済上の利益を供給すること
七 前各号に掲げるものの外、公共の利益に反する競爭手段であつて、第七十一條及び第七十二條に規定する手続に從い公正取引委員会の指定するもの
第二章 私的独占及び不当な取引制限
第三條 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。
第四條 事業者は、共同して左の各号の一に該当する行爲をしてはならない。
一 対價を決定し、維持し、又は引き上げること
二 生産数量又は販賣数量を制限すること
三 技術、製品、販路又は顧客を制限すること
四 設備の新設若しくは拡張又は新技術若しくは新生産方式の採用を制限すること
前項の規定は、一定の取引分野における競爭に対する当該共同行爲の影響が問題とする程度に至らないものである場合には、これを適用しない。
第五條 事業者は、一手買取及び一手販賣の方法による資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の統制又は資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の割当を行う法人その他の團体を設立し、若しくは組織し、又はこれらの團体に加入してはならない。
第六條 事業者は、外國の事業者と左の各号の一に該当する事項を内容とする國際的協定若しくは國際的契約をし、又は國内の事業者と貿易に関し左の各号の一に該当する事項を内容とする協定若しくは契約をしてはならない。
一 第四條第一項各号の一に掲げる事項
二 事業活動に必要な科学又は技術に関する知識又は情報の交換を制限すること
前項の規定は、國際取引又は國内取引の一定の分野における競爭に対する当該協定又は当該契約の影響が問題とする程度に至らないものである場合には、これを適用しない。
事業者は、外國の事業者との國際的協定若しくは國際的契約又は國内の事業者との貿易に関する協定若しくは契約であつて相当期間継続するもの(一の取引による目的物の授受のみが相当期間にわたるものを除く。)をしようとする場合には、公正取引委員会に届け出て、その認可を受けなければならない。
前項の場合において、事業者は、届出の日から三十日を経過するまでは、当該協定又は当該契約をしてはならない。
第七條 私的独占又は不当な取引制限に該当する行爲があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に從い、事業者に対し、当該行爲の差止、営業の一部の讓渡その他私的独占又は不当な取引制限を排除するために必要な措置を命ずることができる。
第三章 不当な事業能力の較差
第八條 不当な事業能力の較差があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に從い、事業者に対し、営業施設の讓渡その他その較差を排除するために必要な措置を命ずることができる。
公正取引委員会が前項の措置を命ずるに当つては、当該事業者につき、左の各号に掲げる事項を考慮しなければならない。
一 資本金、積立金その他資産の状況
二 收支その他経営の状況
三 役員の構成
四 工場、事業場及び事務所の位置その他の立地條件
五 事業設備の状況
六 特許権の有無及び内容その他技術上の特質
七 生産、販賣等の能力及び状況
八 資金、原材料等の取得の能力及び状況
九 投資その他の方法による他の事業者との関係
十 前各号に掲げる事項に関する競爭者との比較
第四章 株式の保有、役員の兼任、合併及び営業の讓受
第九條 持株会社は、これを設立してはならない。
前項において持株会社とは、株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより、他の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社をいう。
第十條 金融業(銀行業、信託業、保險業、無盡業又は証券業をいう。以下同じ。)以外の事業を営む会社は、他の会社の株式(議決権のない株式を除く。以下同じ。)を取得してはならない。
前項の規定は、会社(商品の賣買を主たる事業とするものを除く。)が、左の各号に該当する他の会社の株式の全部を所有することとなる場合において、その会社の株式の取得について公正取引委員会の認可を申請し、公正取引委員会が、当該株式の所有が一定の取引分野における競爭を実質的に制限することにより公共の利益に反することとなることがないと認めて認可したときには、これを適用しない。
一 原材料、半製品、部分品、副産物、廃物若しくは事業活動に必要な物資その他の経済上の利益(資金を除く。)の供給について継続的で緊密な関係にある会社又は特許発明若しくは実用新案の利用関係にある会社
二 他の会社の株式を所有していない会社
前項に規定する場合の外、株式を取得しようとする会社(現に存する会社の株式を取得しようとする場合には、株式を取得しようとする会社及びその株式を発行する会社)が、その株式の取得が左の各号に掲げる要件を備えていることを明かにした場合には、その会社の株式の全部を所有することとならないときでも、同項に規定する他の要件を備えているときには、同項と同樣とする。
一 必要な資金を調達するために発行される株式の取得であること
二 申請会社において株式を引き受ける外、資本の取得が事実上困難である場合の株式の取得であること
三 株式の取得が不公正な競爭方法に因るものでないこと
四 取得しようとする会社と競爭関係にある会社が株式を所有していない会社の株式の取得であること。但し、商品の賣買を主たる事業とする会社の株式の取得については、取得しようとする会社以外の会社が株式を所有していない場合に限る
第十一條 金融業を営む会社は、自己と競爭関係にある同種の金融業
を営む他の会社の株式を取得してはならない。
金融業を営む会社であつてその総資産(未拂込株金、未拂込出資金又は未拂込基金に対する請求権を除く。)が五百万円を超えるものは、他の会社の株式総数の百分の五を超えてその会社の株式を所有することとなる場合には、その株式を取得してはならない。
前二項の規定は、左の各号の一に該当する場合には、これを適用しない。
一 証券業を営む会社が業務として株式を取得する場合
二 証券業以外の金融業を営む会社が賣出のための引受によつて株式を取得する場合
三 委託者を受益者とする有價証券信託の引受によつて株式を取得する場合。但し、委託者が議決権を行使する場合に限る
前項第一号又は第二号の場合において、取得の日から一年を超えて株式を所有しようとするときは、あらかじめ公正取引委員会の認可を受けなければならない。
第十二條 会社は、他の会社の資本金額(株金総額、出資総額、株金総額及び出資総額の合計額又は基金総額をいう。)の百分の二十五に相当する金額を超えてその会社の社債(銀行業を営む会社の社債を除く。以下同じ。)を所有することとなる場合には、その社債を取得してはならない。
前條第三項及び第四項の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、株式とあるのは、社債と読み替えるものとする。
第十三條 会社の役員又は從業員(継続して会社の業務に從事する者であつて役員以外のものをいう。)は、左の各号の一に該当する場合には、他の会社の役員の地位を兼ねてはならない。
一 両会社が競爭関係にある場合
二 両会社の何れか一方の役員の四分の一以上が両会社以外の会社の役員の地位を占めてゐる場合
会社の役員は、いかなる場合においても四以上の会社の役員の地位を占めてはならない。
第十四條 何人も、相互に競爭関係にある二以上の会社の株式を所有することにより、一定の取引分野における競爭を実質的に制限することにより公共の利益に反することとなる場合には、その株式を取得してはならない。
何人も、相互に競爭関係にある二以上の会社の株式を各会社の株式総数の百分の十を超えて所有することとなる場合には、その株式の取得について公正取引委員会の認可を受けなければならない。
会社の役員は、その会社と競爭関係にある他の会社の株式を取得してはならない。
会社の役員は、その就任の際、就任する会社と競爭関係にある会社の株式を所有している場合には、その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。
公正取引委員会は、前項の届出があつた場合において、一定の取引分野における競爭を実質的に制限することにより公共の利益に反することとなる虞があると認めるときは、その全部又は一部の処分その他必要な措置を命ずることができる。
第十五條 会社は、公正取引委員会の認可を受けなければ、合併をしてはならない。
公正取引委員会は、前項の認可の申請があつた場合において、当該合併が左の各号の一に該当し公共の利益に反すると認めるときは、これを認可してはならない。
一 当該合併が生産、販賣又は経営の合理化に役立たない場合
二 当該合併によつて不当な事業能力の較差が生ずることとなる場合
三 当該合併によつて一定の取引分野における競爭を実質的に制限することとなる虞がある場合
四 当該合併が不公正な競爭方法によつて強制されたものである場合 第十六條 会社は、公正取引委員会の認可を受けなければ、他の会社の営業の全部若しくは一部の讓受、他の会社の営業全部の賃借、他の会社の経営の受任又は他の会社と営業上の損益全部を共通にする契約をしてはならない。
前條第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、当該合併とあるのは、当該行爲と読み替えるものとする。
第十七條 何らの名義を以てするかを問わず、第九條から前條までの規定による禁止又は制限を免れる行爲をしてはならない。
第十八條 公正取引委員会は、第五條若しくは第九條第一項の規定に違反して会社が設立された場合又は第十五條第一項の規定に違反して会社が合併した場合においては、設立又は合併の無効の訴を提起することができる。
第五章 不公正な競爭方法
第十九條 事業者は、不公正な競爭方法を用いてはならない。
第二十條 前條の規定に違反する行爲があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に從い、当該行爲の差止を命ずることができる。
第六章 適用除外
第二十一條 この法律の規定は、鉄道事業、電氣事業、瓦斯事業その他その性質上当然に獨占となる事業を営む者の行う生産、販賣又は供給に関する行爲であつてその事業に固有のものについては、これを適用しない。 第二十二條 この法律の規定は、特定の事業について特別の法律がある場合において、事業者が、その法律又はその法律に基く命令によつて行う正当な行爲には、これを適用しない。
前項の特別の法律は、別に法律を以てこれを指定する。
第二十三條 この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行爲にはこれを適用しない。 第二十四條 この法律の規定は、左の各号に掲げる要件を備え、且つ、法律の規定に基いて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行爲には、これを適用しない。但し、不公正な競爭方法を用いる場合又は一定の取引分野における競爭を実質的に制限することにより不当に対價を引き上げることとなる場合は、この限りでない。
一 小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること
二 任意に設立され、且つ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること
三 各組合員が平等の議決権を有すること
四 組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること
第七章 損害賠償
第二十五條 私的独占若しくは不当な取引制限をし、又は不公正な競爭方法を用いた事業者は、被害者に対し、損害賠償の責に任ずる。
事業者は、故意又は過失がなかつたことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。
第二十六條 前條の規定による損害賠償の請求権は、第四十八條第三項又は第五十四條の規定による審決が確定した後でなければ、裁判所上これを主張することができない。
前項の請求権は、同項の審決が確定した日から三年を経過したときは、時効に因つて消滅する。
第八章 公正取引委員会
第一節 組織及び権限
第二十七條 この法律の目的を達成するため、公正取引委員会を置く。
公正取引委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。
第二十八條 公正取引委員会の委員は、独立してその職権を行う。
第二十九條 公正取引委員会は、委員七人を以て、これを組織する。
委員は、年齢が三十五年以上で、法律又は経済に関する学識経驗のある者のうちから、内閣総理大臣が、衆議院の同意を得て、これを任命する。
委員は、これを官吏とする。
第三十條 委員の任期は、五年とする。但し、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
委員は、再任されることができる。
委員は、年齢が六十五年に達したときには、この地位を退く。
國会閉会の場合又は衆議院解散の場合に委員の任期が満了したとき又は欠員を生じたときの措置については、命令を以てこれを定める。
第三十一條 委員は、左の各号の一に該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 禁治産、準禁治産又は破産の宣告を受けた場合
二 懲戒免官の処分を受けた場合
三 この法律の規定に違反して刑に処せられた場合
四 禁錮以上の刑に処せられた場合
五 公正取引委員会により、心身の故障のため職務を執ることができないと決定された場合
第三十二條 前條第一号又は第三号から第五号までの場合においては、内閣総理大臣は、その委員を罷免しなければならない。
第三十三條 内閣総理大臣は、委員のうちから、委員長一人を命ずる。
委員長は、公正取引委員会の会務を総理し、公正取引委員会を代表する。
公正取引委員会は、あらかじめ委員のうちから、委員長が故障のある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。
第三十四條 公正取引委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。
公正取引委員会の議事は、出席者の過半数を以て、これを決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
公正取引委員会が第三十一條第五号の規定による決定をするには、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。
第三十五條 公正取引委員会の事務を処理させるため、公正取引委員会に事務局を附置し、所要の職員を置く。
前項の職員は、これを官吏とする。
第一項の職員中には、檢察官、任命の際現に弁護士たる者又は弁護士の資格を有する者を加えなければならない。
前項の檢察官たる職員の掌る職務は、この法律の規定に違反する犯罪に関するものに限る。
第三十六條 委員長、委員及び公正取引委員会の職員の報酬は、命令を以てこれを定める。
委員長及び委員の報酬は、在任中、その意に反してこれを減額することができない。
第三十七條 委員長、委員及び命令を以て定める公正取引委員会の職員は、在任中、左の各号の一に該当する行爲をすることができない。
一 國会若しくは地方公共團体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること
二 内閣総理大臣の許可のある場合を除く外、報酬のある他の職務に從事すること
三 商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと
第三十八條 委員長、委員及び公正取引委員会の職員は、事件に関する事実の有無又は法令の適用について、意見を外部に発表してはならない。但し、この法律に規定する場合又はこの法律に関する研究の結果を発表する場合は、この限りでない。
第三十九條 委員長、委員及び公正取引委員会の職員並びに委員長、委長又は公正取引委員会の職員であつた者は、その職務に関して知得した事業者の祕密を他に漏し、又は窃用してはならない。
第四十條 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、事業者若しくは事業者の團体又はこれらの職員に対し、出頭を命じ、又は必要な報告、情報若しくは資料の提出を求めることができる。
第四十一條 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、学校、事業者、事業者の團体又は学識経驗ある者に対し、必要な調査を嘱託することができる。
第四十二條 公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公聽会を開いて一般の意見を求めることができる。
第四十三條 公正取引委員会は、この法律の適正な運用を図るため、事業者の祕密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる。
第四十四條 公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して、國会に対し、毎年この法律の施行の状況を報告しなければならない。
公正取引委員会は、内閣総理大臣を経由して、國会に対し、この法律の目的を達成するために必要な事項に関し、意見を提出することができる。
第二節 手続
第四十五條 何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
前項に規定する報告があつたときは、公正取引委員会は、事件について必要な調査をしなければならない。
公正取引委員会は、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、職権を以て適当な措置をとることができる。
第四十六條 公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、左の各号に掲げる処分をすることができる。
一 事件関係人又は参考人に出頭を命じて審訊し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること
二 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること
三 帳簿書類その他の物件の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと
四 事件関係人の営業所その他必要な場所に臨檢して、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を檢査すること
公正取引委員会が相当と認めるときは、命令を以て定める公正取引委員会の職員をして、前項の処分をさせることができる。
前項の規定により職員に臨檢檢査をさせる場合においては、これに証票を携帶させなければならない。
第四十七條 公正取引委員会は、事件について必要な調査をしたときは、その要旨を調書に記載し、且つ、特に前條に規定する処分があつたときは、その結果を明かにして置かなければならない。
第四十八條 公正取引委員会は、事業者が、私的独占をし、不当な取引制限をし、若しくは不公正な競爭方法を用いていると認める場合又は不当な事業能力の較差があると認める場合には、当該事業者に対し、適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
前項の規定による勧告があつたときは、事業者は、遅帶なく公正取引委員会に対し、当該勧告を應諾するかしないかを通知しなければならない。
事業者が勧告を應諾したときは、公正取引委員会は、審判手続を経ないで勧告と同趣旨の審決をすることができる。
第四十九條 前條第一項の場合において、事件を審判手続に付することが公共の利益に適合すると認めるときは、公正取引委員会は、当該事件について審判手続を開始することができる。
審判手続は、当該事業者に審判開始決定書を送達することにより、これを開始する。
第五十條 審判開始決定書には、事件の要旨並びに審判の期日及び場所を記載し、且つ、事業者が出頭すべき旨を附記しなければならない。
審判の期日は、審判開始決定書を発送した日から三十日後に、これを定めなければならない。
第五十一條 事業者は、審判開始決定書の送達を受けたときは、これに対する答弁書を遅滯なく公正取引委員会に提出しなければならない。
第五十二條 事業者又はその代理人は、審判に際して、公正取引委員会が当該事件について第七條、第八條第一項又は第二十條の規定による措置を命ずることが不当である理由を述べ、且つ、これを立証する資料を提出し、公正取引委員会に対し、必要な参考人を審訊し、鑑定人に鑑定を命じ、帳簿書類その他の物件の所有者に対し当該物件の提出を命じ、若しくは必要な場所に臨檢して業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を檢査することを求め、又は公正取引委員会が出頭を命じた参考人若しくは鑑定人を審訊することができる。
事業者は、弁護士その他適当な者を代理人とすることができる。
第五十三條 審判は、これを公開しなければならない。但し、事業者の事業上の祕密を保つため必要があると認めるとき又は公益上必要があると認めるときは、これを公開しないことができる。
審判には、速記者を立ち会わせて、陳述を筆記させなければならない。
第五十四條 公正取引委員会は、審判をした後、事業者が、私的独占をし、不当な取引制限をし、若しくは不公正な競爭方法を用いていると認める場合又は不当な事業能力の較差があると認める場合には、審決を以て、事業者に対し第七條、第八條、第一項又は第二十條に規定する措置を命じなければならない。
第五十五條 審決は、委員長及び委員の合議によらなければならない。
第三十四條第一項及び第二項の規定は、前項の合議にこれを準用する。
第五十六條 公正取引委員会の合議は、これを公開しない。
第五十七條 審決は、文書によつてこれを行い、審決書には、公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用を示し、委員長及び合議に出席した委員がこれに署名押印しなければならない。
審決書には、少数意見を附記することができる。
第五十八條 審決は、事業者に審決書の謄本が到達した時に、その効力を生ずる。
第五十九條 公正取引委員会は、必要があると認めるときは、職権で、審決の結果について関係のある第三者を当事者として審判手続に参加させることができる。但し、あらかじめ事業者及び当該第三者を審訊しなければならない。
第六十條 関係のある公務所又は公共的な團体は、公益上必要があると認めるときは、公正取引委員会の承認を得て、当事者として審判手続に参加することができる。
第六十一條 関係のある公務所又は公共的な團体は、公共の利益を保護するため、公正取引委員会に対して意見を述べることができる。
第六十二條 公正取引委員会が、第五十四條の規定により、審決を以て違反行爲の差止その他の処分を命じた場合においては、事業者は、裁判所の定める保証金又は有價証券を供託して、当該審決が確定するまでその執行を免れることができる。
前項の規定による裁判は、非訟事件手続法により、これを行う。
第六十三條 事業者が、前條第一項の規定により供託をした場合において、当該審決が確定したときは、裁判所は、公正取引委員会の申立により、供託に係る保証金又は有價証券の全部又は一部を沒取することができる。
前條第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。 第六十四條 公正取引委員会は、第五十四條の審決をした後においても、將に必要があきるとは、第四十六條の規定により、処分をし、又はその職員をして処分をさせることができる。
第六十五條 公正取引委員会は、第六條第三項、第十條第二項若しくは第三項、第十一條第四項(第十二條第二項で準用する場合を含む。)、第十四條第二項、第十五條第一項又は第十六條第一項の規定による認可の申請があつた場合において、当該申請を理由がないと認めるときは、審決を以てこれを却下しなければならない。
第四十五條第二項の規定は、前項の認可の申請があつた場合に、これを準用する。
第六十六條 公正取引委員会は、前條第一項に掲げる認可について、その認可の要件である事実が消滅し、又は変更したと認めるときは、審判手続を経て、審決を以てこれを取り消し、又は変更することができる。
公正取引委員会は、経済事情の変化その他の事由により、審決の基礎となつた事実が消滅し、若しくは変更した場合において、当該審決を維持することが不当であつて公共の利益に反すると認めるときは、審判手続を経て、審決を以てこれを取り消し、又は変更することができる。
第六十七條 裁判所は、緊急の必要があると認めるときは、公正取引委員会の申立により、事業者に対し、私的独占、不当な取引制限又は不公正な競爭方法に該当する疑のある行爲を一時停止するべきことを命じ、又はその命令を取り消し、若しくは変更することができる。
第六十二條第二項の規定は、前項の規定による裁判に、これを準用する。
第六十八條 事業者は、裁判所の定める保証金又は有價証券を供託して、前條第一項の規定による裁判の執行を免れることができる。
第六十三條の規定は、前項の規定による供託に係る保証金又は有價証券の沒取にこれを準用する。
第六十九條 利害関係人は、公正取引委員会に対し、事件記録の閲覽若しくは謄写又は審決書の正本、謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。
第七十條 この法律に定めるものを除く外、公正取引委員会の調査及び審判に関する手続その他事件の処理並びに第六十二條第一項及び第六十八條第一項の共託に関し必要な事項は、命令を以てこれを定める。
第三節 離則
第七十一條 公正取引委員会が第二條第六項第七号の規定により不公正な競爭方法を指定するには、指定しようとする競爭方法を用いる事業者と同種の事業を營む事業者の意見を聞き、且つ、公聽会を開いて一般の意見を求めた後、指定仮案を作成して、これを公表し、当該仮案について事業者に反対意見あるときは、これを充分に考慮した上で、これをしなければならない。
第七十二條 第二條第六項七号の規定による不公正な競爭方法の指定は、告示によつてこれを行う。
前項の指定は、告示の日から三十日を経過した日に、その効力を生ずる。
第七十三條 公正取引委員会は、この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは檢事総長に告発しなければならない。
前項の規定による告発に係る事件について公訴を提起しない処分をしたときは、檢事総長は、遅滯なく、司法大臣を経由して、その旨及びその理由を、文書を以て内閣総理大臣に報告しなければならない。
第七十四條 檢事総長は、この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その旨を通知して、調査及びその結果の報告を求めることができる。
第七十五條 第四十六條第一項第一号若しくは第二号又は同條第二項の規定により出頭又は鑑定を命ぜられた參考人又は鑑定人は、命令の定めるところにより、旅費及び手当を請求することができる。
第七十六條 公正取引委員会は、その内部規律及び事件の処理手続に関する事項について規則を定めることができる。
第九章 訴訟
第七十七條 公正取引委員会の審決に不服のある者は、裁判所に審決の取消又は変更の訴を提起することができる、但し、審決がその効力を生じた日から三十日を経過したときは、この限りでない。
前項の訴については、公正取引委員会を以て被告とする。
第七十八條 訴の提起があつたときは、裁判所は、遅滯なく公正取引委員会に対し、当該事件の記録(事件関係人、參考人又は鑑定人の審訊調書及び速記録その他裁判上証拠となるべき一切のものを含む。)の送付を求めなければならない。
第七十九條 第七十七條第一項の訴の提起は、公正取引委員会の審決の執行を停止しない。但し、裁判所は、必要と認めるときは、何時でも、利害関係人の申立により、又は職権で、決定を以て公正取引委員会の審決の全部若しくは一部の執行の停止を命じ、又はその処分を取り消し、若しくは変更することができる。
第八十條 第七十七條第一項に規定する訴訟については、公正取引委員会の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所を拘束する。
前項に規定する実質的な証拠の有無は、裁判所がこれを判断するものとする。
第八十一條 当事者は、左の各号の一に該当する場合に限り、裁判所に対し当、該事件に関係のあるあたらしい証拠の申出をすることができる。
一 公正取引委員会が、正当な理由がなくて、当該証拠を採用しなかつた場合
二 公正取引委員会の審判に際して当該証拠を提出することができず、且つ、これを提出できなかつたことについて過失がなかつた場合
前項各号に掲げる場合においては、当事者において、その事由を明かにしなければならない。
裁判所は、第一項の規定によるあたらしい証拠を取り調べる必要があると認めるときは、公正取引委員会に対し、当該事件を差し戻し、当該証拠を取り調べた上適当な措置をとるべきことを命じなければならない。 第八十二條 裁判所は、公正取引委員会の審決が、左の各号の一に該当する場合には、これを取り消すことができる。
一 審決の基礎となつた事実を立証する実質的な証拠がない場合
二 審決が憲法その他の法令に違反する場合
裁判所は、審決の内容が憲法その他の法令の適用について独断に過ぎ、又は不当であると認めるときは、これを変更することができる。
第八十三條 裁判所は、公正取引委員会の審決を変更することを相当と認めるときは、変更するべき点を指示して事件を公正取引委員会に差し戻すことができる。
第八十四條 第二十五條の規定による損害賠償に関する訴が提起されたときは、裁判所は、遅滯なく、公正取引委員会に対し、同條に規定する違反行爲に因つて生じた損害の額について、意見を求めなければならない。
前項の規定は、第二十五條の規定による損害賠償の請求が、相殺のために裁判上主張された場合に、これを準用する。
第八十五條 左の各号の一に該当する訴訟については、第一審の裁判権は、東京高等裁判所に属する。
一 公正取引委員会の審決に係る訴訟
二 第二十五條の規定による損害賠償に係る訴訟
三 第八十九條及び第九十條の罪に係る訴訟
第八十六條 第六十二條第一項、第六十三條第一項(第六十八條第二項で準用する場合を含む。)、第六十七條第一項、第九十七條及び第九十八條に規定する事件は、東京高等裁判所の專属管轄とする。
第八十七條 東京高等裁判所に、第八十五條に掲げる訴訟事件及び前條に掲げる事件のみを取り扱う裁判官の合議体を設ける。
前項の合議体の裁判官の員数は、これを五人とする。
第八十八條 前條第一項に規定する事件に関する裁判に対しては、その裁判において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由とする場合又はその判決が法令に違反することを理由とする場合に限り、上告することができる。
第十章 罰則
第八十九條 第三條の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者は、これを三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
前項の未遂罪は、これを罰する。
第九十條 左の各号の一に該当する者は、これを二年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第四條第一項の規定に違反して共同行爲をした者
二 第五條の規定に違反して法人その他の團体を設立し、若しくは組織し、又はこれらの團体に加入した者
三 第六條第一項の規定に違反して協定又は契約をした者
四 第四十八條第三項又は第五十四條の審決が確定した後においてこれに從わない者
第九十一條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
一 第六條第三項又は第四項の規定に違反して協定又は契約をした者
二 第九條第一項の規定に違反して持株会社を設立した者
三 第十條第一項又は第十一條第一項、第二項若しくは第四項の規定に違反して株式を取得し、又は所有した者
四 第十二條第一項又は同條第二項の規定で準用する第十一條第四項の規定に違反して社債を取得し、又は所有した者
五 第十三條の規定に違反して役員の地位に就いた者
六 第十四條第一項から第三項までの規定に違反して株式を取得し、同條第四項の規定に違反して届出をせず、又は同條第五項の規定による公正取引委員会の命令が確定した後においてこれに從わない者
七 第十六條第一項の規定に違反して他の会社の営業の全部若しくは一部の讓受、他の会社の営業全部の賃借、他の会社の経営の受任又は他の会社と営業上の損益全部を共通にする契約をした者
八 第十七條の規定に違反した者
第九十二條 前三條の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第九十三條 第三十九條の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
第九十四條 第四十六條第一項第四号又は同條第二項の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、六月以下の懲役又は千円以下の罰金に処する。
第九十五條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第八十九條、第九十條、第九十一條第一号から第四号まで、若しくは第六号から第八号まで又は第九十四條の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。
第九十六條 第八十九條及び第九十條の罪は、公正取引委員会の告発を待つて、これを論ずる。
前項の告発は、文書を以てこれを行う。
公正取引委員会は、第一項の告発をするに当り、その告発に係る犯罪について、第百條第一項第一号の宣告をすることを相当と認めるときは、その旨を前項の文書に記載することができる。
第一項の告発は、公訴の提起があつた後は、これを取り消すことができない。
第九十七條 第四十八條第三項又は第五十四條の審決に違反した者は、これを五万円以下の過料に処する。但し、その行爲につき刑を科するべきときは、この限りでない。
第九十八條 第六十七條第一項の規定による裁判に違反した者は、これを三万圓以下の過料に処する。
第九十九條 左の各号の一に該当する者は、これを五百円以下の過料に処する。
一 第四十條の規定による公正取引委員会の処分に違反して出頭せず、報告、情報若しくは資料を提出せず、又は虚僞の報告、情報若しくは資料を提出した者
二 第四十六條第一項第一号又は同條第二項の規定による事件関係人又は参考人に対する処分に違反して出頭せず、陳述をせず、虚僞の陳述をし、又は報告をせず、若しくは虚僞の報告をした者
三 第四十六條第一項第二号又は同條第二項の規定による鑑定人に対する処分に違反して、出頭せず、鑑定をせず、又は虚僞の鑑定をした者
四 第四十六條第一項第三号又は同條第二項の規定による物件の所持者に対する処分に違反して物件を提出しない者
第百條 第八十九條又は第九十條の場合において、裁判所は、情状により、刑の言渡と同時に、左に掲げる宣告をすることができる。但し、第一号の宣告をするのは、その特許権又は特許発明の実施権が、犯人に属している場合に限る。
一 違反行爲に供せられた特許権の特許又は特許発明の実施権は取り消されるべき旨
二 判決確定後六箇月以上三年以下の期間、政府との間に契約をすることができない旨
前項第一号の宣告をした判決が確定したときは、裁判所は、判決の謄本を特許標準局長官に送付しなければならない。
前項の規定による判決の謄本の送付があつたときは、特許標準局長官は、その特許権の特許又は特許発明の実施権を取り消さなければならない。
附 則
第百一條 この法律の施行の期日は、各規定について命令を以てこれを定める。
第百二條 各規定施の際現に存する契約で、当該規定に違反するものは、当該規定の施行の日からその効力を失う。
第百三條 この法律の規定は、企業再建整備法の規定による決定整備計画又は金融機関再建整備法の規定による整備計画に基いて行う事業者の行爲には、これを適用しない。
第百四條 第五條の規定施行の際現に存する法人その他の團体で、一手買取及び一手販賣の方法による資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の統制又は資材若しくは製品の全部若しくは一部の配給の割当を行うものの処置については、命令を以てこれを定める。
第百五條 第九條の規定施行の際現に存する持株会社の処置については、命令を以てこれを定める。
第百六條 第九條、第十條、第十二條、第十四條第一項及び第二項、前條、第百七條並びに第百十條の規定は、東北興業株引会社には、これを適用しない。
第百七條 金融業以外の事業を営む会社が、第十條又は第十二條の規定施行の際現に当該規定に反して所有する他の会社の株式又は社債の処置については、命令を以てこれを定める。
第百八條 金融業を営む会社が、第十一條又は第十二條の規定施行の際現に当該規定に反して所有する他の会社の株式又は社債の処置については、命令を以てこれを定める。
第百九條 第十三條の規定施行の際現に同條第一項の規定に反して役員の地位を兼ねている者は、同條の規定施行の日から九十日以内に、何れか一の地位を除いて他の地位を辞さなければならない。
第十三條の規定施行の際現に四以上の会社の役員の地位を占めている者は、同條の規定施行の日から九十日以内に、何れか三の地位を除いて他の地位を辞さなければならない。
第百十條 第十四條の規定施行の際現に同條の規定に反して所有されている株式の処置については、命令を以てこれを定める。
第百十一條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第百九條の規定に違反した者
二 第百四條、第百五條、第百七條、第百八條又は前條の規定に基く命令に違反した者
第百十二條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、前條第二号の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、同條の罰金刑を科する。
第百十三條 公正取引委員会の委員長及び委員は、持株会社整理委員会又は証券処理調整協議会の会議に出席して意見を述べることができる。
第百十四條 公正取引委員会の第一期の委員の任期は、内閣総理大臣の定めるところにより、そのうちの一人については一年、二人については二年、一人については三年、二人については四年、一人については五年とする。
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〔國務大臣高瀬莊太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=5
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006・高瀬莊太郎
○國務大臣(高瀬莊太郎君) ただいま上程せられました私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案につきまして、その提案の理由を説明いたします。
わが國の經濟は、敗戰による混亂と打撃からまだ脱却しておりませんが、これに對しまして、當面の危機を乘り切るために、生産對策、通貨對策等を果敢に行つてまいりますとともに、今後のわが國經濟再建の總合的計畫を確立いたしまして、その實現に邁進することが、きわめて緊要と考えております。このことは、また戰時補償の打切りに伴います一連の措置に基きまして再建に努力しておられます企業者に對しまして、その再建整備の目標を與えるためにも、ぜひ必要なことであると考えます。
この法律の要旨は、事業者の公正かつ自由な競爭を確保いたしまして、國民經濟の民主的で健全な發達をはかることを究極の目標といたしまして、そのために障害となる各般の不當な協定等を排除し、また獨占的企業集中體の發生することを防止する等の措置を講ずることにあるのであります。申すまでもなく、事業者の創意を發揮させ、技術の進歩をはかり、品質を改善し、サービスを向上し、經費のむだを省き、價格を低廉にする等、企業經營の合理化をはかり、一般消費者の利益を確保し、國民經濟の民主的でかつ健全な進歩發展をはかるためには、獨占や不當な協定等を排除し、常に公正かつ自由な競爭の行われることが肝要であります。但しこの原則には若干の例外があるのであります。
その一は國家または公共團體の營む獨占的事業でありまして、この法律におきましては、私的獨占を禁止することを規定いたしまして、國營、公營の獨占的事業を問題にするものでないことを明らかにいたしました。
その二は、私營事業であつても、鐵道、電氣、ガスその他の特定の事業につきましては、別の考え方をいたさねばならないのであります。これについては、それぞれの事業法によつて十分な監督をいたすべきものでありまして、かかる事業につきましては、この法律の適用を除外することを規定いたしました。
その三は、農家や小さい商工業者のような小規模の事業者及び消費者につきましては、その相互扶助を目的とする協同組合による團結を認めねばならないことでありまして、これについても、原則として適用を除外することを規定いたしました。
その四は、現下の危機を乘り切るに必要な統制のための行爲は、別に取扱わねばならぬことであります。この點につきましては、この法律は恆久的な立法であります關係上、この法律の中には規定いたしませんでしたが、次の特別議會までに、各統制法令についてなお一應檢討いたしました上で、統制法令に基く行爲につきましては、この法律を適用いたさない旨の單行法を制定いたすつもりであります。
この法律は、これらの例外の場合を除いては、經濟秩序の根本方針を定めるものとして、一切の事業活動に適用せられるものであります。しかしながらこれらの事業活動は、複雜な經濟行爲の現れでありまして、それが直ちにこの法律の禁止制限に該當するか否かを判定いたしますことは、なかなか困難なことであります。これに輕卒な判斷を下しますことは、いたずらに經濟界を萎靡沈滯させるおそれがありますのと、またこの法律に基く處分は、企業體の改組等、國民の權利に重大な影響を及ぼしますので、この法律の運用につきましては、特に公正取引委員會と稱する合議體の行政官廳を設け、その委員といたしましては、經濟問題、法律問題に通じ、かつ國民の信頼する人物を、衆議院の同意を得て任命することといたしました。
次に、この法律の内容につきまして、少しく御説明いたします。先づ第一は、冒頭の第一條において、この法律の目的を明記することといたしました。この目的は、單に法律の趣旨を説明いたしたものに止まらないのであります。この法律は、その本質として、法文の上では抽象的な基準を示すに止まり、事案の具體的な判定は、これを公正取引委員會の判斷に委ねておるものが多いのでありますが、その判斷をいたし、判斷をうち立てていく上におきまして、第一條に規定する目的は、重要な基準と相なるのであります。しかしてこの法律全體を通ずる精神として、要は國民經濟の繁榮をはかることが目的でありまして、取締ること自體が目的なのではないのであります。
第二には、第二條において、事業者及び競爭の意味を明らかにするとともに、私的獨占、不當な取引制限、不當な事業能力の較差、不公正な競爭方法の定義を明らかにいたしました。この法律において取締りの對象といたしまする不當な事業活動の最も根本的なものは、私的獨占及び不當な取引制限であります。私的獨占とは、トラスト等を結成いたしまして、他の事業者の事業活動を排除しまたは支配して、競爭が行われないようにすることを言い、不當な取引制限とは、カルテル等を結成いたしまして、他の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束し、または遂行して、競爭が行われないようにすることを言うのであります。しかして兩者ともに公共の利益に反して、ある物資なり用役なりの生産とか供給とかの一定の取引分野において、競爭が實質的に行われないようにいたし、たとい競爭者が形の上で殘つているにしても、それが將來とうてい成り立つていかないという程度に至らしめるものを、違法といたすのであります。その程度に至らないものは、これを私的獨占または不當な取引制限とはいたさないとともに、公正かつ自由な競爭が効果的に行われる結果として、優秀な事業者が自然に競爭に打勝つて、大きくなつていくことは、公共の利益に合致し、この法律において最も望むところであります。
この法律の實體的規定のうちで、私的獨占及び不當な取引制限以外に關するものは、原則としてこの兩者を取締るための補完的規定であると申してよろしいのであります。これについての詳細は、委員會における説明に讓りまして、その概要のみを申述べます。
第四條において、價格、生産數量、販賣數量等を制限する共同行爲を原則として禁止し、第五條において、事業者が統制的な機關を設立し、またはこれに參加することを禁止いたしました。これらは、必要があれば國家が法律を制定していたすべきものでありまして、私的な事業活動としてこれらの行爲を行うことは適當でないからであります。なお第六條において、價格、生産數量、販賣數量等を制限することを内容とする國際的協定等を、原則として禁止いたしましたのは、昭和二十一年勅令第三十三号中の第三條の規定を若干變更いたしまして、これを本法に移して、併せ規定いたしたものであります。
第八條においては、不當な事業能力の較差といたしまして、事業の大きさが技術的理由によつて正當とされるものでなくて、しかも私的獨占を行う危險性が強いような、徒らに巨大な企業體に對しましては、公正取引委員會が適當な是正措置を講ずることができるようにいたしました。「技術的理由によつて正當とされる」とは、技術の優秀なために自然に大きくなつたこと、及び技術的にみて能率的な企業經營をいたすためには、それくらいな大きさが必要であるということを意味するものであります。
第九條以降の第四章におきましては、持株會社の設立を禁止すること、その他會社の株式保有、役員の兼任、合併及び營業の讓受について規定いたし、第十九條以降の第五章におきましては、不公正なる競爭方法について規定いたしました。
第二十一條以降の第六章におきましては、適用除外について規定いたしておりますが、これについては、さきに申し述べた通りであります。
第二十五條以降の第七章におきましては、損害賠償について規定し、第二十七條以降の第八章におきましては、さきに申し述べました公正取引委員會につきまして、その組織及び權限、並びにその審判手續等に關しまして、詳細な規定を設けました。公正取引委員會の最も著しい特色は、その委員として衆議院の同意を得て、最も國民的信頼のある人物を選任いたすことと、委員がこの法律を運用するにあたりまして、獨立してその職權を行うことであります。もちろんこの法律の本質として、委員は常にその時々の社會的要求を十分に考慮いたすべきでありますが、その考慮と、これに基く判斷とは、裁判官と同じように、主務大臣の指揮監督を受けずに、獨立してこれをいたすのであります。
次に第七十七條以降の第九章として、訴訟に關する規定を設けております。公正取引委員會の審決に對する不服の訴訟事件及びこの法律に關する刑事訴訟事件等の取扱いにつきましては、他の訴訟事件の取扱いと相當異なつた取扱いをいたすことを規定いたしております。しこうしてこの法律の適用に關する諸問題は、複雜かつ機微な經濟問題である關係上、特に專門の裁判官による裁判官による裁判を適當とするために、東京高等裁判所に特別の部を設けまして、この法律に關する事件は、一般の裁判所において取扱うことなく、すべて東京高等裁判所の特別の部において取扱うことにいたしました。
第八十九條以降の第十章におきましては、罰則を規定いたしました。
最後は、第百一條以降の附則であります。この法律は、經過規定に種々重要な考慮を要するのでありますが、これにつきましては、なお愼重な檢討を要しますので、その多くは命令に讓ることといたしました。この法律實施の過渡期におきまして、經濟界に無用の摩擦混亂を起すことを防止する點につきましては、十分の配意をいたすつもりであります。
以上、私的獨占禁止及び公正取引確保に關する法律案につきまして、その要旨を御説明いたした次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御協贊あらんことを願います。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=6
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007・井上知治
○副議長(井上知治君) 質疑の通告があります。これを許します。石崎千松君。
〔石崎千松君登檀〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=7
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008・石崎千松
○石崎千松君 私はただいまの法律案に對しまして、二、三の質疑を關係方面へいたそうとするものであります。
この法規ができますにあたつては、日本の獨創的なものでないということだけは、私は言い得るであろうと思います。從つてこの法規がつくられましたという上からには、アメリカだとか、イギリスだとか、フランスだとかいつたところの各國々の同樣な法規というものが、參考にされたであろうと考えるのであります。從つて私が今ここで第一にお尋ねしようとするものは、この法規の制定にあたつて、いかなる國々の同樣な法規が參考にされたか、そうして日本のこの法規と異なる點は何かということであります。この差異でありまするが、この違いというものがはつきりわからない限りには、日本の特殊的な事情によつて、今後日本の經濟が向いていこうとするところの方向がわからないからであります。これを第一にお尋ねいたしたいのであります。
第二には、この第二章の中に、獨占の定義が定めてあります。獨占とは、そもそも上の方から申しますると、三井とか三菱とかいつたような大きなものがありましようが、下の方にいきますると、露店商人みたような獨占事業もないではありません。あるのであります。上から下まで續いておりまするが、しからばこの法律を適用するところの範圍を、この上から下までのうちの、どこでもつて一線を引くかということであります。この點が、第二問として私のお尋ねしたい點であります。
三番目には、獨占を排するというこの法律の目的の上からいうて、排他的であるところの各種の組合があります、たとえば書籍組合とか、牛肉屋の組合とかいつたような、いろいろな組合があるが、これらのものは今後どうなるかという問題であります。この法律によると、どうしても精神的には、これらの組合というものは成り立たぬと思いまするが、これらはどうなるかということであります。さらにまた獨占形態の一つの形として申し上げたいことは、たとえば――外國のことを言うて恐れ入りまするけれども、フオードならフオードという自動車が日本に輸入されて、そうしてこの自動車會社が東京にヘツド・オフイスを置いて、各縣にブランチ・オフイスを置く。そうしてこれが組織的に一つの網を張つて、獨占で事業の形態を行う。こういうものに對してはどうするか。もう一つここではつきりした言葉で申し上げまするならば、外國から來るところのこれらの企業に對しては、いかなる形をとるかということであります。それが私のお聽きしたいことであります。
その次には、公正なる公正取引委員というものができまして、裁判官の役目をやるのでありまするが、この裁判官の役目をやる公正取引委員が、鐵道會社とか、あるいはバスの會社とか、あるいは何々會社といつたような獨占事業の形のものが、たくさんの利益を得た場合、資本に對して一割二分というような非常に大きな利益を得たという場合、にその一割二分は資本に對して多過ぎるから、それは三分にしろ、あるいは三分五厘にしろとかいうことまでの命令を下し得るところの權能をもつておるかということであります。この權能をもつていない限り、一旦利益を上げてしまつたなら、それから先は何もとられぬということになると、この法の目的というものが達成せられないのであります。また法を潛るということから言いますと、いろいろなことが申し上げられるのであります。この法律の中に規定されているところの表向きのことはできましても、裏口の方からどんどん逃げていく手がたくさんあるのであります。すなわち自分の遠い親類だとか、あるいは腹心の者とかを他の會社にやつておきまして、それと氣脈を相通じて事を行うということになりますると、明らかに精神的にはこの法を犯すことになります。これらの問題に對しては、政府はいかなる態度をとるかということであります。この法律の中に、公正かつ自由な競爭ということが書いてあります。おそらくこれがこの法律の眼目ではないかと考えておりまするが、きわめて抽象的であります。從つて具體的にこれを了解するということは、容易ではありません。だから、この公正かつ自由な競爭というものの具體的説明が願いたいと考えるものであります。
公正かつ自由な競爭というものに對しましては、公正かつ自由というところの一つの基盤をもたなくちやならないのであります。その基盤の上に立つての公正かつ自由なる競爭でありまするから、それについて起るところの問題は何かと言えば、最低賃金の決定であります。この最低賃金の決定ということが行われない限りは、公正ということは行われないのであります。最低賃金の決定と同時に、また重要缺くべからざるものは何かと言うと、勞働時間の決定であります。勞働時間を――全體をどうするか。何時間にするか。八時間にするか。六時間にするか。このことが決定されなくちやなりません。八時間勞働にして、賃金は一人當りいくらにするという最低賃金が決定される。すなわち公正な基準というものがおかれて、それから上の競爭でなければ、私はこれは公正だと言い得ないと考えております。そこで政府はこの法案の制定にあたつて、はたして日本全體の最低賃金あるいは最短勞働時間というものを決定するところの用意をもつてかかつたかどうかということであります。
そうして最低賃金と最短勞働時間というものを決定いたしますると、次いで起るところの問題は、かようなものが起るかと考えております。同じ賃金を拂つて、同じ時間働かせるという條件のもとにおいては、かたわの人は雇つちやつまらぬ。完全な、何にでも向く人間を雇う方が得だ。彼はびつこをひいているけれども、芋の皮をむくことだけは確かだ。從つて芋の皮をむくだけに、安い賃金で雇つておつた。しかし最低賃金というものが決定して、男一人はいくら、女一人はいくらといふことになれば、好んでびつこのものを雇う必要はない。お前走つていけと言えば、走つていく。芋の皮をむけと言えば、芋の皮をむく。どこにでも使える人間を雇うことが得だということになつてくる。そうするとこれらのかたわの人たちは、當然法律が制定されるのとともに、失業の憂目を見なくちやならぬが、政府のこの邊に對するところのお考え如何というのであります。
もう一つお尋ねしたいことがあります。それは今日政府は幾多政府獨占事業をやつております。郵便がその大きなものであるかもしれぬ。日本では鐵道があり、電信があり、電話がある。あらゆる面に獨占事業がある。これらの政府のやる獨占事業といふものは、この法の目的からいくと、經濟の民主化を阻害するということのおびただしいことは、議論の餘地がないところであります。經濟の民主化ということを考えるなら――經濟の上に民主化を考え、公正なる取引と自由競爭ということをエンカレージしようとするならするほど、政府は、みずからがやつているところのこの獨占事業を、それぞれ民間に拂い下げなければ、うまくいかぬということになるが、これに對する政府の所見いかん。
なお一つ續いてお尋ねしたいことは、政府の獨占事業と國民經濟の民主化とを調和させるについて、政府はどういうやり方をするか。言葉が足りなかつたと思いますが、政府は今日獨占事業をもつている。それをやめないとすれば、繼續するとすれば、その獨占事業と、獨占事業が及ぼす害というものと、國民經濟を自由かつ公正に發達させようとする調和を、いかにしてとるかということが、私の尋ねんと欲するところであります。
その他いろいろありますが、他のものは大體委員會に讓りまして、私は國民協同黨を代表して、以上の質問をいたし、關係大臣の説明を求めるものであります。(拍手)
〔國務大臣高瀬莊太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=8
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009・高瀬莊太郎
○國務大臣(高瀬莊太郎君) 石崎代議士の御質問にお答えいたします。御質問のうちで厚生大臣の所管に屬するような部分もありますので、私としてお答えできる範圍のお答えをしたいと思います。
第一の、この法律ができるについて、いかなる國の法律を參考にしたかという御質問でありますが、これはもつぱらアメリカの反トラスト法を參考にいたしたのであります。それとあまり大した違いはないとお考えいただけばよいだろうと思います。
第二に、獨占の範圍等について、露天商等の關係がどうか、こういう御質問でありました。この法律は、あらゆる事業活動に適用されるものでありますが、法律の精神であります、私的獨占による弊害が公共の利益を現實に害するという程度に結合的な活動が行われました場合には、あらゆる場合に適用されるものと考えます。
第三の、書籍商、牛肉商というような組合についてはどうか、こういうお尋ねでありますが、この法律で規定してありますように、協同組合法によつて、しつかりできている組合であれば、除かれるわけであります。それ以外の組合については、やはり適用されますが、實際この法律で禁止しようとしているような、公共の利益に反する活動をするものであるかどうか、それが問題であろうと思います。
第四に、外國商社がわが國においていろいろの事業を行い、活動をする場合についてどうか、こういう御質問でありますが、外國商社のわが國における活動にも、これは適用されるのであります。
第五には、腹心者等の連絡によりまして、内密に公共の利益に反するような、一種の獨占的な活動をするというような場合もできるかもしれぬ、その場合どうかというような御趣旨であつたのではないかと思いますが、これは取締りがなかなか困難であると思いますが、はつきりそういうことがわかる場合においては、もとよりこれが適用され、取締らなければならないものと思います。
第六は、公正かつ自由な競爭の定義と關連して、最低賃金、勞働時間制限等の問題が重要である。こういうお話であります。その點まつたく御趣旨の通りであります。しかしこれについての御説明は、厚生大臣からお話し申し上げる方がよいのじやないかと思います。
第七として、政府がいろいろ獨占事業をやつておる。この獨占事業は、今度の法律の精神による經濟民主化等と關連して、日本經濟の民主化を阻害するものではないか、こういう御質問であつたと思いますが、現在政府がやつており、現在行われております國營事業というものは、事業の性質からいたしまして、公共の利益に合致するため必要であるという特殊な事情があつてやられてあるものが多いと考えます。しかしそれらの事情は、もとよりいろいろの社會的事情の變化等と關連して考えるべきものと思いますが、それは別に立法府におきまして、また御考慮になることではないかと思います。
第八に、今日日本經濟の民主化を實現することがぜひ必要であるが、獨占的な事業が現實にいろいろ行われておる、これが民主化に反することにならないか、あるいはそれによる弊害が非常に起きてはいないか、それについてどう考えるか、こういう御質問ではないかと思います。確かに獨占事業には、たとい國家の獨占でありましても、お説の通りいろいろ弊害が起る可能性はあるのであります。また實際にいろいろ起つておる場合もあるかもしれません。しかしながら獨占が特に行われておるのには、公共の利益という見地から特に必要がありまして、行われておるものが多いのでありますから、一方弊害につきましては、あらゆる手段を講じてこれを防止するということに、全力を盡すということが必要であろうと思います。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=9
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010・井上知治
○副議長(井上知治君) 石崎君に申し上げます。厚生大臣はただいまおられませんから、他の適當の場合に御答辯を願うことにいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=10
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011・石崎千松
○石崎千松君 ただいま私が大臣にお尋ねしたことの中で、答辯が拔けておるものがたくさんあります。私は、上から下まで獨占事業というものがある、露店商もある、こういうふうになつておる、そこで横に線を引くのには、どこに引くかということを尋ねたのであります。露店商がどうしたか、こうしたかということは、尋ねた覺えはないのです。ですから、それらのもの――あるいは大衆の利益になる、大衆の利益になるがゆえに置いてあるというようなことが言われるなら、獨占事業というものは、場合によつたら大衆の利益になるのであります。從つて大衆の利益になれば置くということになりますと、この法文というものは、はなはだしく怪しいものになりますが、議論すれば長くなりますから、委員會に讓ることにして、私はこの程度においてこれを打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=11
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012・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
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013・椎熊三郎
○椎熊三郎君 本案は、政府提出石油配給公團法案外四件の委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=13
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014・井上知治
○副議長(井上知治君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=14
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015・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第三、復興金融金庫法の一部を改正する法律案の第一讀會を開きます。大藏大臣石橋湛山君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=15
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016・会議録情報3
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第三 復興金融金庫法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
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復興金融金庫法の一部を改正する法律案
復興金融金庫法の一部を次のように改正する。
第三條及び第四條第一項中「百億圓」を「二百五十億圓」に改める。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=16
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017・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) ただいま議題となりました復興金融金庫法の一部を改正する法律案について、提案の理由を御説明申し上げます。
御承知のように、復興金融金庫は、去る一月二十五日に正式にこれが成立を見ました。そうしてこの三月上旬末現在におきまして、その融資殘高は六十億一千八百萬圓に達しております。かようにして本金庫は、戰後きわめて困難な状態にありまする産業界に、豫期のごとく適切な資金の供給をはかりまして、もつて經濟の囘復振興に貢獻をいたしておる次第であります。そうしてこの貸しました金は、資本金百億圓のうち、設立の當初政府が拂込みをいたしました四十億圓、それと未拂込金のうち、二月及び三月に、おのおの十五億圓の復興金融債券の發行を行いまして、これを調達いたしたわけであります。
しかして今日最も喫緊の問題である經濟の再建、民需生産の再興のためには、いよいよ本金庫の十分なる活動を必要といたしますことは、申すまでもありません。殊に超重點産業でありまする石炭、鐵鋼、肥料等の増産を確保いたしますためには、積極的にこれが金融的援助をはかることが、最も必要であると考えておる次第でりあます。加うるに今議會に御審議を煩わしておりますところの各種の配給公團、船舶公團、産業復興公團等の所要資金も、また本金庫から融資いたすことに相なつております。よつてこれらの資金の供給を十分圓滑ならしめますために、今般百五十億圓の増資を必要とするに至つた次第であります。
以上が、復興金融金庫法の一部を改正する法律案の提案の理由でございます。何とぞ御審議の上、速やかに御協贊くださらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=17
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018・井上知治
○副議長(井上知治君) 質疑の通告があります。これを許します。氏原一郎君。
〔氏原一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=18
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019・氏原一郎
○氏原一郎君 私は日本社會黨を代表いたしまして、ただいま議題と相なつておりまする復興金融金庫法の一部を改正する法律案につきまして、二、三政府の所信を質しておきたいと存じます。
第一は、今囘の金庫の資本金百億萬圓を二百五十億萬圓に増額をいたしまする、その増額の對象と相なるべき一般産業資金、その他の數字的基礎の問題でございます。この復興金融金庫法を第九十帝國議會に提案をされました場合に、政府は、この資本金百億萬圓に對する融資の對象となるべき産業資金の總額について、この法案の特別委員會において、政府委員より詳細なる説明をなさつておるのであります。
すなわち昨年九月四日、衆議院の委員會におきまして、石原委員の質問に對して政府は、大體において昭和二十一年度の年度末までにおける、わが國の産業復興に必要なる資金の總額を二百億萬圓、その中で一般市中銀行が賄うであろうところのものが七割、殘る三割をこの復興金融金庫から融資をして、それによつてわが國の産業の囘復をはかつていく、從つて百億という資金は必ずしも必要ではない、六十億の資金でことが足りるのであるけれども、いわゆる臨時的な放出のことが考えられるばかりでなく、同時にまたいくらかのゆとりを見込んで、百億萬圓という金額を決定したのである、こういう御説明に相なつておるのであります。
ただいま大藏大臣の提案理由の御説明によりまして、現在議會において審議をいたしておりまする各種公團等に對する資金の融通等が、この資本金の増額の對象となつておりますることは、一應諒とし得るのでありまするが、大體において昨年の八月、本法案を起案いたしましてから、本年の三月末日までの間におけるわが國産業資金の所要額を、二百億と押えておりましたものが、今囘の二百五十億という出資金に増額をされますることを、數字的に考へてみますと、大體において、まず政府の見ておりまするところの産業資金等の總額は、五百億以上になるというお見込でなければ、この増資ということは考えられないのでありますが、この點について政府は、どういう數字的な根據の上に立つて増資をなさるのでありますか。この點につきましては、願わくは政府は、各公團等に對する融資の見込額、及び石炭、肥料その他の増産に必要でありまするところの融資の見込額等を、なるべく詳細にお漏らしを願いたいと存ずるのであります。
第二、は政府この金庫に對するいわゆる出資をいたしまするにあたりまして、金融復興債券その他の方法によりまして資金を確保するのでございまするが、政府がこの金庫に出資するために必要なる資金を集めまするために發行いたしまするところの債券の利率は、大體におきまして、現在の一般公債の利率三分五厘というものを基準としてお考えのようであります。この點につきましても、昨年の貴族院における本法案の委員會において、政府當局から明確にされておるのであります。政府が資金を得るために發行する債券の利率は三分五厘、さらに復興金融金庫が――その當時におきましては、日本興業銀行がこれを代行いたしておつたのでありまするが、その當時における貸出の利率については、大體日歩一錢四厘から一錢六厘までの範圍であるということを明らかにされております。
だがしかしながら、現下の經濟界の實情から考えますと、政府が必要なる資金を確保するための復興債券の利率三分五厘、竝びに復興金融金庫が融資をいたしまする場合の金利の日歩一錢四厘ないし一錢六厘ということが、はたしてこのままでいけるものであるかどうかという點については、大きな疑が存するのであります。この際政府は、この金利及び利率の點につきまして、明確に今後のお見透しをお示しを願いたいと存ずるのであります。
第三の問題は、いかなる種類の資金を重點的に出すのかという問題であります。すなわち本法案の目的とするところは、一般の市中銀行及びその他の金融機關から融通を受けることが困難であるものに對して、特に融資をするというのが建前のごとく相なつておるのでございまするが、その一般金融機關が融資をすること困難であるというのは、主として長期にわたりまするところの設備資金といつたようなものは、好んで一般金融機關がこれを融通をいたしません。結局復興金融金庫の融資の對象となりまするものは、一般金融機關から除外をされて、非常に資金の確保に困難の伴いますようなものであつて、それがこの金庫から融資をされなければならないというふうに考えられるのであります。
しかるに興業銀行が代行をいたしまして後約二箇月間の統計を見てみますると、當初の政府の御説明とは全然反對の結果を示しまして、申込み三十八件の中でわずかに二件だけが、設備資金その他一般銀行において賄い得ざるにあらざるやと考えられるような資金でありまして、三十二件というものは一般金融機關において賄い得るところの運轉資金もしくは流動資金といつたようなもので、これを政府から明かにされております。このことは、私ども本金庫の本來の目的を逸脱するものではないか、むしろ本金庫を濫用するものではないかということさえも考えざるを得ないのでありまするが、その後における政府の方針――特に私はこの席において御答辯が願えぬことではないかと存じまするので、いかなる資金が、業種別に見ました場合、金額別に見ました場合、あるいは地域別に見ました場合に、どういう形で今日まで流れ出しておるか。大藏大臣の先刻の御説明によりますると、融資額の殘額が六十億以上になつているということでございまするが、その六十億という融資の殘額の内容が、業種別に見て、金額別に見て、地域別に見たような場合に、どういう形になつておるかということを、これは書面で結構でございまするから、御明示を願いたいのであります。
第五は、本金庫の融資が囘收不能の場合におけるその負擔は、一體どういう形で穴埋めをするかという問題でございまするが、この點につきましては、昨年九月二十六日の貴族院の委員會におきまして、石橋大藏大臣は、委員の質問に答えてかく申されております。萬一復金から融通を受けたところの産業が失敗したときにおいては、金庫の出資を國庫で全部負擔する、まかり間違えば、出資全部が飛ぶという覺悟のもとであると、まことにお勇ましいことを言われておるのであります。この大藏大臣の言明をこのままで受取りますることについては、私ども多少の異論をもつものでございます。
國民といたしましては、この復興金融金庫から融資をいたしましたことによつて、ある一つの産業が復興いたしまして、生産を増大して、それが國民生活全體をゆたかにするという方向に進むという、いわゆる復金の本來の目的を十二分に達成するという場合に相なりまするならば、言葉をかえて申しまするならば、復興金庫から融資を受けて産業が成功をする場合がありまするならば、あるいは國民は、この復金の出資というものを國民全體が背負うていつてもよろしいのではないかということに相なります。
ところが大藏大臣の言うごとく、この復金から融資を受けたところの産業が失敗をしたときにおいては全部の負擔を國家が引受けてよろしいということに相なりますると、せつかく融通をして金を貸して育てようとした産業はつぶれたわ、經濟の再建はできなかつたわ、大きな荷物は國民が負わなければならぬということに相なりまして、まことにこれでは國民が迷惑いたします。かような事柄でありましたならば、とうてい復金の目的は達せられないばかりでなく、九月二十六日、貴族院の委員會における大藏大臣の答辯によつて、復金の金は借り得だ、これは返さなくてもよい、つぶれたら國家が負擔してくれるという空氣が生れてきておることが、現實の問題となつて現れております。(拍手)
この點を私ども考えますときに、さらにせつかく生産を復興させるために出した金が、復興しないで失敗したときに、國庫がこれをしりぬぐいをする。今までのところでは百億という限度がありましたが、さらに今度は二百五十億という限度になりますから、これを一般會計の租税收入等で穴埋めをするか、ないしは赤字公債を發行するか、いずれの手段によるにいたしましても、それは結論におきまして、われわれ國民大衆の負擔とならざるを得ないのでありますが、この點について、この際あらためて大藏大臣の御所見を伺いたいのであります。
その次は、復金から融資を受けましたところの資金が、その融資を受けた目的外の方面に流用されておるということについての政府の所見を伺いたい。大藏大臣が、借りたものは借り得だと言わんばかりの議會における聲明をいたしましたために、全國的に復金を利用するという傾向が助長されまして、萬一の場合には、しりはぬぐつてくれるのだからという氣持もありまして、私ども第一問で申し上げた通り、三月末日までに六十億の資金があれば十分やつていけるんだけれども、臨時の場合と、さらにまたいくらかのゆとりを殘して百億ときめたのだと言うておくれたように、そのこと自體から考えましても、復金のその最初の計畫というものが、少くとも昭和二十一年度中の計畫というものが、全體的に考えまして、大體政府の計畫通りに事實が伴うてまいつております。
ところが、今度二百五十億という資金に相なりますると、復金の活動というものは、より以上活溌化するということが豫定されます。そうなりますと、資金の貸出は相當頻繁に行われましようし、また中にはこの復金から融資を受けましたところの資金をもつて、他の産業にこれを振向けるというようなことは、しばらく問わぬといたしましても、舊債の穴埋めとか、あるいは高利債との肩替りといつたような方向に、現實に利用されるということを豫想することができるのであります。また現に復金から融資を受けました資金をもつて、今までの日歩二錢とか二錢一厘とかいう高い金利のものの支拂をいたして、そうしてほつと一息ついておるという産業も、また中にはなきにしもあらずであります。
かような工合でありまして、復金の融資は、あくまでも日本産業の再建という大きな目的のために使われるのでなければなりませんのに、この資金が、高利債の肩替り、あるいは舊債の穴埋めとかいう、全然目的を逸脱した方向に使われるというおそれが多分にありまするし、またこの點については、既に興業銀行が代行機關として業務を始めてから、わずか一箇月くらいの間にすら、議會においても問題となつておる事實もございますし、こういう點についての、政府のいわゆる復金に對する監督というようなものについて、今までに何らの遺憾がなかつたかということが、表明できるかどうかということを伺いたいのであります。なおこれは大藏大臣の御答辯によりまして、具體的な問題をもつて御所見を伺うかもわかりません。
次は、商工大臣はお見えになつておりませんが、さいわい安定本部長官がおいででありまするからして、伺いたいのでありまするが、復興金融金庫の資金の融通を受けまして、産業の再建、經濟の再建をやるという大きな目的をもつて、せつかくそこに資金の面においてはある程度確保することができましたけれども、現下の實情からいたしまして、どうも資材の確保ということが非常に困難である。でありまするから、せつかく復金の融資を受けましても、その資金を有效に使うことができないで、いつのまにかそれが他の方面に流用されなければならないというような、現實の問題が起つておるのであります。
從いまして私が經濟安定本部長官に伺いたいのは、復興金融金庫において、産業再建のために融資をいたしまするような場合におきましては、この資金に對する物の裏づけを確保いたしますることによつて、ほんとうにその産業が再開され、生産が復興するという方向に導かなければなりませんが、これらの點について經濟安定本部においてはどういうお考えをもたれておるのであるか。復興金融金庫の融資による資金に對する資材の裏づけという問題についての、安定本部の御意見を伺いたい。
最後に一つ、ごく最近の問題でございまするが、昭和二十一年度の第一四半期におけるところの復金の融資が、水産業に對しましては、三億萬圓という一つのわくが與えられておる。ところでこの三億萬圓というわくのうちで、日魯漁業に對して、その三分の一である一億萬圓を融資しておる。そうなりますると、一つの會社だけで三分の一のわくをとつてしまいましたから、全國の水産業者からの融資の要求というものは、自然制約されざるを得ない結果に相なつておる。肝腎かなめのこの資金が、一つの大手筋だけに融資を集中して、中小その他の水産業者に對する融資の途をふさいだというような事柄を、われわれは聞くのであります。
かようなことでありまするならば、絶對にこの復興金融金庫の目的に副うものではない。どうしてもこれはほんとうに起ち上つていかなければならぬすべての業者を、おのおのの規模において、おのおのの着想において生かしていくというのが、復金の資金融通の最後の目的でなければなりませんのに、それがただ大きな會社へ集中されるというようなことに相なりますると、これはゆゆしき問題でございまするが、かような事實が政府において取扱われておるであろうかどうかということについて、この機會に伺つておきたいと思うのであります。
なおその他の點につきましては、時間もございませんから、委員會その他においてお伺いをいたすことにいたしまして、私の本案に對する質問は、この程度に止めたいと存じます。(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=19
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020・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 御質問にお答えいたします。第一のお尋ねは、少し金が出過ぎたというお尋ねのように聞えましたが、今のお言葉の中にもありましたように、三月末までに大體六十億圓くらいは出るだろう。また私その當時どの機會かに、時日は覺えませんが、どうか次の通常議會に復興金融金庫の資本金が足りなくなつて、これの増資をしなければならないようになることを希望するということを申しておきました。それほどに仕事が進み得るならば、復興金融金庫としても成功だ、また日本の經濟界のためにも喜ぶべきことだと申し上げておいたのであります。爾後の成績を見ますと、少くとも金額の上においては、先ほど申し上げましたように、三月上旬末で六十億圓、この中には御承知のような事情で、石炭が割合多い、多分九億圓くらいは石炭であろうと思います。というようなことでありまして、大體豫定通りの金額に上つておると申せると思います。
それから今囘増資いたします百五十億圓は、これは今後の所要資金であります。三月末日までに貸すのではございません。三月は今月でありますから、來月以後の所要資金でありまして、どういうふうになりますか、前途のことはむろんわかりませんが、今後臨時議會等で、また復興金融金庫の増資ということが起らぬとは斷言できませんが、ただいまの見込みでは、この次の通常議會までは、むろん増資の必要はない。大體産業資金は、明年度六百億圓くらいみておるわけです。そのうち復興金融金庫の所要資金百五十億圓、但し公團等の所要資金がこの中に含まれるわけであります。ですから計畫が大變はずれておるものとは私は考えておりません。
次に復興金融債券の利率、條件の問題でありますが、これは現在では、お話の通りの現在の條件によつて行つていくつもりでありますが、しかし金融の状況から見まして、いつも申し上げますように、現在のままの状況が、そのまま長く續くとは私は考えておりませぬ。多少變化があるものと考えておりますが、それはそのときの金融市場の状况によつて、適當にきめていきたいと考えております。
それから業種別の貸出の状況を示せということであります。これはお話の通り、いづれ委員會までに書類等によつて調べてお答えいたします。
それからどうも運轉資金が多過ぎやしないか。これは初めのうちは、私が何かの機會に御報告申し上げたように、そうでありましたが、最近はそうではなくなりました。最近二月末頃の状況をみますと、運轉資金、設備資金ほぼ半々ぐらいの状況を示しております。何しろ今日のような經濟界でありますから、運轉資金といえども、實は普通金融機關では貸出のできない向きもあります。全然運轉資金を出さない、設備資金だけだ、こういうことは、やはり復興金融金庫の目的でないと考えます。しかしこの中には、さつき申しましたように、石炭のごとき、政府關係の支拂の遲延のために他で融資しておるものが相當含まれておりますから、實際は設備資金の方が多いわけであります。
それから今後復興金庫が清算をした場合に損害が起つた場合のお話がありましたが、これは言うまでもなく、普通の金融機關では融資ができない。融資ができないという理由は、そこに何らかの危險が伴うということを含んでおるのであります。そのことを明白に復興金融金庫法の説明のときにも申し上げたのでありますが、これは損害が起らないとは申し上げかねますが、しかしながら融資は隨分嚴重に査定をいたしております。從つてそれがゆえに損害がかかつてもかまはないからというので、放漫な貸出をするとか、あるいはこれをよいことにして勝手な貸出を要求しておる。借りる方は、むろん借りられればそれに越したことはないから、相當勝手なことを言うかもしれないが、貸す方ではなかなかそんな手には乘りません。隨分貸出については嚴選しておりますから、御安心を願いたいのであります。
それから今度復金から貸したものが、舊債の償還等にまわつておるというのでありますが、これはおそらく、そういう懸念があるではないかということではないかと思います。私は今申しましたように、貸出については、かなりむずかしい條件をつけ、むしろそれでもつて、一方から言えば苦情が起ておるほどでありますから、いたずらに舊債の借替等にまわしておるものとは思いません。そういうものはないと申し上げ得ると思います。復金から金を貸した――これは經濟安定本部長官への御質問でありますが、これはあえて長官を煩わすまでもなく、復興金庫から金を貸したが資材がない。從つて仕事ができないから、そのうちに金がどこかへ飛んでしまうのではないかという御質問でございましたが、そんなことはございません。これは復興金庫から貸します場合には、資材等については隨分やかましく、できるかできないかということをまず査定いたすわけであります。
その次に御質問のありました水産業の問題についても、そんなら船はどうしてつくるか、業務はどうしてやるのかというところまで、隨分突き詰めた貸出をするのでありますから、復金から貸出されたものが、資材がないために、金だけ遊んでしまうということは、絶對にございません。
最後に、水産業の問題でございますが、これは第一四半期のわくが、今日の水産業としては小さ過ぎたという非難は受けております。しかしながら日魯漁業に一億圓貸したのではございません。これは第一四半期の分としては、三千萬圓程度の融資であります。一億圓というのは、今後の計畫を含まれて、日魯漁業としては、あの一連の計畫に一億圓ほど資金が要るというのでありますから、一億圓の融資をしてやろう、しかしながらすぐにそれをやるのではないのでありまして、第一四半期としては三千萬圓だけの用立をしてやろうというのでありまして、決して大きなところに一手に金を出したのけではございません。その點は十分考慮をいたしまして、誤りのないことを期しておる次第でありますから、どうか御諒承願います。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=20
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021・氏原一郎
○氏原一郎君 なお必ずしも御答辯によつて了解し能わざる點もございまするが、詳細は委員等においてお尋ねいたすことにいたしまして、打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=21
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022・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
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023・椎熊三郎
○椎熊三郎君 本案は、政府提出昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=23
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024・井上知治
○副議長(井上知治君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=24
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025・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第四、會計檢査院法を改正する法律案の第一讀會を開きます。國務大臣金森徳次郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=25
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026・会議録情報4
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第四 會計檢査院法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
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会計檢査院法を改正する法律案
会計檢査院法目次
第一章 組織
第一節 総則
第二節 檢査官
第三節 檢査官会議
第四節 事務総局
第二章 権限
第一節 総則
第二節 檢査の範囲
第三節 檢査の方法
第四節 檢査報告
第五節 会計事務職員の責任
第六節 雜則
第三章 会計檢査院規則
会計檢査院法
第一章 組織
第一節 総則
第一條 会計檢査院は、内閣に対し独立の地位を有する。
第二條 会計檢査院は、三人の檢査官を以て構成する檢査官会議と事務総局を以てこれを組織する。
第三條 会計檢査院の長は、檢査官のうちから互選した者について、内閣においてこれを命ずる。
第二節 檢査官
第四條 檢査官は、両議院の同意を経て、内閣がこれを任命する。
檢査官の任命について、衆議院が同意して参議院が同意しない場合においては、日本國憲法第六十七條第二項の場合の例により、衆議院の同意を以て両議院の同意とする。
檢査官の任免は、天皇がこれを認証する。
檢査官は、年額五万円の俸給を受ける。
第五條 檢査官の任期は、七年とし、一回に限り再任されることができる。
檢査官が任期中に欠けたときは、後任の檢査官は、前任者の残任期間存任する。
檢査官は、満六十五才に達したときは、退官する。
第六條 檢査官は 他の檢査官の合議により、心身の故障のため職務の執行ができないと決定され、又は職務上の義務に違反する事実があると決定された場合において、両議院の議決があつたときは、退官する。
第四條第二項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第七條 檢査官は、刑事裁判により禁錮以上の刑に処せられたときは、その官を失う。
第八條 檢査官は、前二條の場合を除いては、その意に反してその官を失うことがない。
第九條 檢査官は、他の官を兼ね、又は國会議員若しくは地方公共團体の吏員若しくは議会の議員となることができない。
第三節 檢査官会議
第十條 檢査官会議の議長は、院長を以て、これに充てる。
第十一條 左の事項は、檢察官会議でこれを決する。
一 第三十八條の規定による会計檢査院規則の制定又は改廃
二 第二十九條の規定による檢査報告
三 第二十三條の規定による檢査を受けるものの決定
四 第二十四條の規定による計算証明に関する事項
五 第三十一條の規定による処分の要求
六 第三十二條の規定による出納職員の檢定
七 第三十五條の規定による審査決定
八 第三十六條の規定による意見の表示又は処置の要求
九 第三十七條の規定による意見の表示
第四節 事務総局
第十二條 事務総局は、檢査官会議の指揮監督の下に、庶務並びに檢査及び審査の事務を掌る。
事務総局に官房及び左の四局を置く。
檢査第一局
檢査第二局
檢査第三局
檢査第四局
官房及び各局の事務の分掌及び分課は、会計檢査院規則の定めるところによる。
第十三條 事務総局に、事務総長一人、事務総局次長一人、祕書官、事務官及び技官を置く。
事務総長及び次長は、一級とし、祕書官は二級、事務官は一級、二級又は三級、技官は二級又は三級とする。
一級事務官は專任十一人とする。
第十四條 一級官吏は、檢査官の合議で決するところにより、内閣でその任免、進退を行う。
事務總長及び次長については、官吏の任用敍級の資格に関する法令の規定は、これを適用しない。
二級官吏は、檢査官の同意を経て事務総長の指名するところにより、内閣総理大臣においてその任免、進退を行う。
三級官吏は、事務総長においてその任免、進退を行う。
第十五條 事務総長は、事務総局の局務を統理し、公文に署名する。
次長は、事務総長を補佐し、その欠けたとき又は事故があるときは、その職務を行う。
第十六條 各局長は、事務総長の推薦により、檢査官の同意を経て一級の事務官のうちから、院長がこれを補する。
各局長は、局務を掌理する。
第十七條 祕書官は、檢査官の命を受けて、機密に関する事務に從事する。
事務官は、官房又は各局の課長となり、又は局課に分属し、上官の指揮を受け、庶務、檢査又は審査の事務に從事する。
第十八條 技官は、各局課に分属し、上官の指揮を受け、技術に從事する。
第十九條 会計檢査院は、会計檢査院規則の定めるところにより事務総局の支局を置くことができる。
第二章 権限
第一節 総則
第二十條 会計檢査院は、日本國憲法第九十條の規定により國の收入支出の決算の檢査を行う外、法律に定める会計の檢査を行う。
会計檢査院は、常時会計檢査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図る。
第二十一條 会計檢査院は、檢査の結果により、國の收入支出の決算を確認する。
第二節 檢査の範囲
第二十二條 会計檢査院の檢査を必要とするものは、左の通りである。
一 國の毎月の收入支出
二 國の所有する現金及び國有財産の受拂
三 國の債権の得喪又は國債その他の債務の増減
四 日本銀行が國のために取り扱う現金、貴金属及び有價証券の受拂
五 國が資本金の二分の一以上を出資している法人の会計
六 法律により特に会計檢査院の檢査に付するものと定められた会計
第二十三條 会計檢査院は、必要と認めるとき又は内閣の請求があるときは、左に掲げる会計経理の檢査をすることができる。
一 國の所有又は保管する物品及び有價証券又は國の保管する現金
二 國以外のものが國のために取り扱う現金、物品又は有價証券の受拂
三 國が直接又は間接に補助金、奬励金、助成金等を交付し又は貸付金、損失補償等の財政援助を與えているものの会計
四 國が資本金の一部を出資しているものの会計
五 國が資本金を出資したものが更に出資しているものの会計
六 國が借入金の元金又は利子の支拂を保証してゐるものの会計
七 國の工事の請負人及び國に対する物品の納入者のその契約に関する会計
会計檢査院が前項の規定により檢査をするときは、これを関係者に通知するものとする。
第三節 檢査の方法
第二十四條 会計檢査院の檢査を受けるものは、会計檢査院の定める計算証明の規程により、常時に、計算書及び証拠書類を、会計檢査院に提出しなければならない。
國が所有し又は保管する現金、物品及び有價証券の受拂については、前項の計算書及び証拠書類に代えて、会計檢査院の指定する他の書類を会計檢査院に提出することができる。
第二十五條 会計檢査院は、常時又は臨時に職員を派遣して、実地の檢査をすることができる。
第二十六條 会計檢査院は、檢査上の必要により檢査を受けるものに帳簿、書類若しくは報告の提出を求め、又は関係者に質問し若しくは出頭を求めることができる。
第二十七條 会計檢査院の檢査を受ける会計経理に関し左の事実があるときは、本属長官又は監督官廳その他これに準ずる責任のある者は、直ちに、その旨を会計檢査院に報告しなければならない。
一 会計に関係のある犯罪が発覚したとき
二 現金、有價証券その他の財産の亡失を発見したとき
第二十八條 会計檢査院は、檢査上の必要により、官廳、公共團体その他の者に対し、資料の提出、鑑定等を依頼することができる。
第四節 檢査報告
第二十九條 日本國憲法第九十條により作成する檢査報告には、左の事項を掲記しなければならない。
一 國の收入支出の決算の確認
二 國の收入支出の決算金額と日本銀行の提出した計算書の金額との不符合の有無
三 檢査の結果法律、若しくは予算に違反し又は不當と認めた事項の有無
四 予備費の支出で國会の承諾をうける手続を採らなかつたものの有無
五 第三十一條の規定により懲戒の処分を要求した事項及びその結果
六 第三十二條の規定による出納職員に対する檢定
七 第三十四條の規定により意見を表示し又は処置を要求した事項及びその結果
八 第三十六條の規定により意見を表示し又は処置を要求した事項及びその結果
第三十條 会計檢査院は、前條の檢査報告に関し、國会に出席して説明することを必要と認めるときは、檢査官をして出席せしめ又は書面でこれを説明することができる。
第五節 会計事務職員の責任
第三十一條 会計檢査院は、檢査の結果國の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく國に損害を與えたと認めるときは、本属長官その他監督の責任に当る者に対し懲戒の処分を要求することができる。
前項の規定は、國の会計事務を処理する職員が計算書及び証拠書類の提出を怠る等計算証明の規程を守らない場合又は第二十六條の規定による要求を受けこれに應じない場合に、これを準用する。
第三十二條 会計檢査院は、出納職員が現金又は物品を亡失毀損したときは、善良な管理者の注意を怠つたため國に損害を與えた事実があるかどうかを審理し、その弁償責任の有無を檢定する。
会計檢査院が弁償責任があると檢定したときは、本属長官その他出納職員を監督する責任のある者は、前項の檢定に從つて弁償を命じなければならない。
第一項の弁償責任は恩赦によらなければ減免されない。
会計檢査院は、第一項の規定により出納職員の弁償責任がないと檢定した場合においても、計算書及び証拠書類の誤謬脱漏等によりその檢定が不当であることを発見したときは、五年間を限り再檢定をすることができる。前二項の規定はその場合に、これを準用する。
第三十三條 会計檢査院は、檢査の結果國の会計事務を処理する職員に職務上の犯罪があると認めたときは、その事件を檢察廳に通告しなければならない。
第六節 雜則
第三十四條 会計檢査院は、檢査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。
第三十五條 会計檢査院は、國の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱に関し、利害関係人から審査の要求があつたときは、これを審査し、その結果を是正を要するものがあると認めるときは、その判定を主務官廳その他の責任者に通知しなければならない。
主務官廳又は責任者は、前項の通知を受けたときは、その通知された判定に基いて適当な措置を採らなければならない。
第三十六條 会計檢査院は、檢査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官廳その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。
第三十七條 会計檢査院は、左の場合には予めその通知を受け、これに対し意見を表示することができる。
一 國の会計経理に関する法令を制定し又は改廃するとき
二 國の現金、物品及び有價証券の出納並びに簿記に関する規程を制定し又は改廃するとき
國の会計事務を処理する職員がその職務の執行に関し疑義のある事項につき会計檢査院の意見を求めたときは、会計檢査院は、これに対し意見を表示しなければならない。
第三章 会計檢査院規則
第三十八條 この法律に定めるものの外、会計檢査に関し必要な規則は、会計檢査院がこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
第二條 左の法律は、これを廃止する。
明治二十九年法律第九十一號
(會計檢査官退官ニ關スル法律)
會計檢査官懲戒法
第三條 この法律施行前の事由に因る出納官吏の弁償責任に関する第三十二條第三項及び第四項の改正規定の適用については、從前の規定による判決は、これを同條第一項の改正規定による檢定とみなす。
第四條 この法律施行の際現に存する会計檢査院事務章程その他会計檢査院の制定に係る会計檢査に関する諸規程に定めた事項は、第三十八條の改正規定による会計檢査院規則の制定があるまでは、なお從前の例による。
第五條 この法律施行の際現に在職する会計檢査院長は、この法律により、会計檢査院の長の任命があるまでは、会計檢査院の長の地位にあるものとする。
前項の会計檢査院長及びこの法律施行の際現に在職する部長又は檢査官のうち、同項の会計檢査院長の指名する者二人は、この法律により、檢査官の任命があるまでは、檢査官の職務を行うものとする。
この法律施行の際現に在職する会計檢査院長は、この法律により、事務総長の任命があるまでは、事務総長の職務を行うものとする。
第六條 この法律施行の際現に在職する部長、檢査官、書記官、副檢査官、理事官及び書記は、別に辞令を発せられないときは、同俸給を以て事務官に任ぜられ、勅任の者は一級、奏任の者は二級、判任の者は三級に敍せられたものとする。
この法律施行の際現に休職中の会計檢査院の職員は、別に辞令を発せられないときは、休職のまま、前項の例により事務官に任ぜられたものとする。
第七條 この法律により初めて任命される檢査官のうち二人の任期は、第五條第一項の規定にかかわらず、一人については三年、他の一人については五年とする。
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〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=26
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027・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) ただいま上程に相なりました、會計檢査院法を改正する法律案につきましての、提案理由を御説明申し上げます。
會計檢査院法の現在の制度は、明治二十二年に制定せられまして以來、特に大きな改正もなくて現在にいたつておる次第でございまするが、今囘日本國憲法が施行されまするに伴いまして、その憲法の精神に準據いたしまして、全面的に改正をし、これに刷新を加える必要を認めて、本案を提出した次第でございます。
本案の内容につきまして、大略御説明をいたしたいと存じまするが、まず第一に、本案の内容を設けまするについての根本的の着想であります。どういうところに眼目をおいてこの制度を改正したかと申しますると、根本は、まずこの會計檢査院というものに、できるだけ強い獨立性を與えるという點であります。現在の檢査院も、やはり獨立性はもつておりますけれども、何と申しましても、行政部によりまして獨立を制肘せらるるのきらいなしといたしません。その點を補整したということであります。
第二は、國會との緊密なる關係を定めるということであります。現在の會計檢査院は、國會と直接に意思の流通をする機會をもつておりませんが、その點に着想をいたしまして、國會と會計檢査院との間にできるだけ必要なる緊密關係を設けようという考えをもつております。
第三には、會計檢査院の職能の範圍を擴げまして、かつ能率を發揮せしむるように、種々なる點を考慮したという點であります。
以上の三眼目に從いまして、會計檢査院の組織の問題と權限の問題とを、この法律の中の中に定めておるのであります。まずその組織の方を申しますと、會計檢査院は、内閣に對しまして獨立の地位をもつておる。言いかえますれば、これから制肘せらるることのないような地位を保たしめておるのであります。それからまた内部の組立て方、今までの制度とは非常に違つた着想をもちまして、三人の檢査官というものが檢査官會議を構成いたしまして、これが基本的な働きをしていくことにいたしました。まずこれに伴いまして、事務總局というものを設けまして、この事務總局は、いわば會計檢査院の執行事務を擔任することにいたしております。決定事務は三人の檢察官の合議により、執行事務は、その事務總局の内部の働きによつてこれを遂行する次第であります。
またこの會計檢査院の檢査官の任命はいかにしてするかと申しますと、これは國會の兩議院の同意を得まして、内閣がこれを行うのであります。もしその同意につききまして兩議院の意見が一致をいたしませんような場合におきましては、憲法の定めております内閣總理大臣を指名する場合の例によりまして、衆議院の同意をもつて兩議院の同意とするというふうに定めております。
會計檢査院の長をいかにして定めるかと申しますと、これは今申しました三人の檢査官が互選をいたしまして、その結果に基いて内閣がこれを命ずるというふうにいたしております。
次にこの檢査官の獨立性を保ちますために、どうしてその身分を保障するかという點でございますが、これは今日も檢査院法の中に若干の規定がございますけれども、今囘の制度におきましては、相當はつきりした嚴密な規定を設けておる次第でございます。
次にその權限の範圍の問題でございますが、これは憲法が改正になりましても、檢査院の働きが特に本質におきましては殖えるという次第ではございません。憲法及び法律の規定に基きまして、會計檢査を行うという點までは、從來と同じであります。しかしながら今囘は、さらにその上に種々なる檢査をなし得ますところの範圍を増加いたしまして、檢査院の機能を充實いたしております。たとえば一定額以上の資本金を國から出資しております法人の會計というものを、檢査の客體にするというような面がそれであります。
次に、なお會計檢査院が、行政の各部局におきましての會計經理の上につきまして、相當力強き連絡をもつようにいたしております。たとえば、檢査院が檢査の進行に伴いまして、會計につきまして違法であるとか、不當であるとかいうようなことを發見をいたしました場合には、また制度がよくないというようなことを發見いたしましたときは、これに對して必要なる事項を、本屬長官または主務官廳等に述べて、あるいは適宜の處置を要求して、是正改善させるというようなことをしております。
さらに特に申し上げたいことは、會計檢査院が檢査報告というものを提出し、それが國會に現われてくることは、當然の憲法の要請でありますが、その檢査報告に關しまして、會計檢査院は、國會へ出席して説明する必要を認めますときには、その檢査官を國會に出席させ、また書面でこれを説明することができることになつております。但しこれは會計檢査院がさような權限をもつておるということを規定したのでありまして、國會がこれを受けて、いかなる手續、いかなる順序に從つてそれらの意見を聽くかということは、これは國會のもつておらるる、自己の内部の規律をみずから定めらるるところの權能に屬することは、もとよりのことと存じております。
その他各種の細目にわたつた規定がございますが、大略は右樣でございます。どうぞよろしく御審議の上、御協贊あらんことをお願いする次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=27
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028・井上知治
○副議長(井上知治君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=28
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029・椎熊三郎
○椎熊三郎君 本案は、政府提出行政官廳法案外一件委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=29
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030・井上知治
○副議長(井上知治君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=30
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031・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=31
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032・椎熊三郎
○椎熊三郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなはちこの際、政府提出、皇室經濟法の施行に關する法律案を議題となし、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=32
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033・井上知治
○副議長(井上知治君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=33
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034・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は變更せられました。
皇室經濟法の施行に關する法律案の第一讀會を開きます。國務大臣金森徳次郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=34
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035・会議録情報5
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皇室經濟法の施行に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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皇室経済法の施行に関する法律案
第一條 日本國憲法施行後の最初の國会において、皇室経済法第二條の一定價額が定められるまでは、同條の規定にかかわらず、相当の対價による賣買等通常の私的経済行爲に係る場合の外、通計五十万円を超えない範囲においては、その度毎に國会の議決を経なくても、皇室に財産を讓り渡し、又は皇室が財産を讓り受け、若しくは賜與することができる。
第二條 皇室経済法第四條第一項の定額は八百万円とする。
前項の規定は、この法律施行後二年を限り、その効力を有する。但し、物價の変動その他の事由により、前項に定める額が、不適当と認められるに至つたときは、速かにその額の変更について、法律改正の手続をとらなければならない。
第三條 日本國憲法施行後の最初の國会において、皇室経済法第六條第一項の年額の定額が定められるまでは、十五万円を以てこれに代わるものとする。
前項に規定する國会において、皇室経済法第六條第一項の一時金額が定められるまでは、同條の一時金額に関する規定は、これを適用しない。
附 則
この法律は、皇室経済法施行の日から、これを施行する。
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〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=35
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036・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) ただいま上程せられました皇室經濟法の施行に關する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。
この法律案は、さきに本院の議を經て公布せられましたところの皇室經濟法におきまして、別に法律で定むるものとせられておりまするところの三、四の重要なる項目がございまして、その項目を定めようといたしておる次第でございます。ただ各般の事情から申しまして、それらの事項を今日全面的にかつ恆久的に確定をいたしますることにつきましては、なお檢討を要するものありと考えまするので、今囘はさしあたつて必要な、やむを得ない規定だけを設くるに止めた次第でございます。
内容を御説明申し上げますると、第一には、皇室と皇室外との間に行われまするところの財産の授受に關しまする定額についての規定であります。皇室經濟法の第二條によりますと、皇室と皇室外との間に行われまする財産の授受については、特別の手續を用いずして、自由にその行爲の行わるべき價額の限度、また皇室經濟會議の議を經る必要があるけれども、國會の議を經ることを要しない價額の限度というものを定めることを豫定いたしておるのでありまするが、これは本格的には、日本國憲法施行後の最初の國會におきまして、これらの額が定められるものといたしまして、それまでの間につきましての、さしあたりの措置といたしまして、一般の私的經濟行爲にかかる場合のほかは、皇室全體につきまして、通計五十萬圓を超えない範圍におきましては、そのたびごとに國會の議決を經なくとも、賜與または讓受をなし得る旨を定めたわけであります。
第二の點といたしましては、内廷費の定額に關する規定でございます。内廷費と申しまするものは、天皇及び内廷にあるところの皇族の日常の御費用、その他内廷諸費に充てられるものでございますが、本案におきましては、その額を年額八百萬圓と定めた次第であります。この定額につきましては、物價の變動等の影響も相當考える必要がありまするので、この規定の有效期間を、一應二年と定めたのでありますが、この期間内におきましても、もしもその定めました金額が時宜に適しないというような場合におきましては、速やかに法律改正の手續きをとるべき旨を、豫定しておるのであります。
第三には、皇室費の定額に關する規定であります。これは皇室經濟法の第六條によりますると、皇族費の年額、また皇族が身分を離脱せられる場合の一時金額の算出の基礎定額を、法律で定めることになつておるわけでありますが、これもまた暫定的なる措置といたしまして、その年額算出の基準たるべき定額が、憲法施行後の最初の國會におきまして定められまするまでは、皇室費の年額は、十五萬圓を基準として算出することといたしました。
なお今申しました中の一時金額を算出いたしまする基準定額も、本來ならば定むべきでありまするけれども、これも憲法施行後の最初の國會において定めらるべきものといたしまして、それまでは一時金額に關しまする皇室經濟法の規定は、暫時これを適用しないということに定めたわけでございます。
以上が本案の大要でございますが、何卒御審議、御協贊あらんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=36
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037・井上知治
○副議長(井上知治君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
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038・椎熊三郎
○椎熊三郎君 本案は、政府提出行政官廳法案外一件委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=38
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039・井上知治
○副議長(井上知治君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=39
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040・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
貴族院より、政府提出、地方自治法案が囘付せられました。この際議事日程を變更して、右囘付案を議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=40
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041・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は變更せられました。
地方自治法案、貴族院囘付案を議題といたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=41
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042・会議録情報6
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地方自治法案(政府提出、貴族院囘付)
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地方自治法案
第十三條第一項トシテ左ノ一項ヲ加フ
日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の議会の解散を請求する権利を有する。
第六十六條第四項中「不服がある者は、」ノ下ニ「その決定書若しくは裁決書の交付を受けた日又は前項の規定による告示の日から三十日以内に、」ヲ加フ
第六十八條第一項中「被告として、」ノ下ニ「第五十九條第一項の規定による告示の日から三十日以内に、」ヲ加フ
第百二十條ヲ削ル
第百二十一條ヲ第百二十條トス
第百二十二條第一項ヲ第百二十一條トス
第百八十條 普通地方公共團体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共團体の長において、これを專決処分にすることができる。
前項の規定により專決処分をしたときは、普通地方公共團体の長は、これを議会に報告しなければならない。
第百八十二條第五項中「超える場合」ヲ「超える場合等」ニ改ム
第二百七條中「並びに」ヲ「及び」ニ改メ、「及び第百四十六條第一項」ヲ削ル
第二百四十七條 市町村長及び助役にともに故障があるとき、又は收入役及び副收入役(第百七十條第四項の規定による收入役職務代理者を含む。)にともに故障があるときは、上席の吏員又はその指定した吏員が、その職務を行う。
第二百四十九條中「第二百四十七條の臨時代理者又は」ヲ削ル
第二百五十一條ヲ削ル
第二百五十二條第一項ヲ第二百五十一條トス
第二百五十二條中「前項」ヲ「前條」ニ改ム
第二百五十五條ヲ削ル
第二百五十六條ヲ第二百五十五條トス
第二百五十六條 この法律に特別の定があるものを除く外、異議の申立又は訴願の提起は、処分又は決定があつた日から二十一日以内にこれをしなければならない。
決定書の交付を受けない者に関しては、前項の期間は、告示の日からこれを起算する。
異議の申立に関する期間の計算については、訴願の提起に関する期間の計算の例による。
異議の申立は、期限が経過した後においても容認すべき事由があると認めるときは、なお、これを受理することができる。
第二百五十七條第一項、第二項、第五項、第六項及ヒ第八項ヲ削ル
第二百五十八條 異議の申立があつても処分の執行は、これを停止しない。但し、行政廳は、職権により又は関係人の請求により必要と認めるときは、これを停止することができる。
第二百七十條第一項中「内務大臣の許可を受け、」ヲ削ル
第二百七十一條第一項ノ次ニ次ノ一項ヲ加ヘ、同條第二項中「区長及び」ヲ削ル
区長は、その被選挙権を有する者について選挙人が投票によりこれを選挙する。
第二百七十七條中「、第九十四條」及ヒ「第二百五十五條」ヲ削ル
第二百八十二條中「内務大臣の許可を受け、」ヲ削ル
附則第七條第二項中「第百二十二條第一項」ヲ「第百二十一條」ニ改ム
附則第十九條ヲ削リ、第二十條ヲ第十九條トシ、以下順次繰リ上ク
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=42
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043・井上知治
○副議長(井上知治君) 本案の貴族院の修正に同意するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=43
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044・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて貴族院の修正に同意するに決しました。
日程第五ないし第十二は、同一委員に付託したる議案でありますから、一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=44
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045・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。
日程第五、所得税法を改正する法律案、日程第六、法人税法を改正する法律案、日程第七、特別法人税法の一部を改正する等の法律案、日程第八、土地臺帳法案、日程第九、家屋臺帳法案、日程第十、地方税法の一部を改正する法律案、日程第十一、地方分與税法を改正する法律案、日程第十二、相續税法を改正する法律案、右八案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長金光義邦君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=45
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046・会議録情報7
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第五 所得税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 法人税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 土地臺帳法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 家屋台帳法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 地方税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 地方分與税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 相續税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 所得税法を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 金光 義邦
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 法人税法を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 金光 義邦
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 金光 義邦
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 土地台帳法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 金光 義邦
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 家屋台帳法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 金光 義邦
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 地方税法の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 金光 義邦
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 地方分與税法を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 金光 義邦
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 相続税法を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 金光 義邦
衆議院議長山崎 猛殿
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〔金光義邦君登檀〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=46
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047・金光義邦
○金光義邦君 所得税法を改正する法律案、法人税法を改正する法律案、特別法人税法の一部を改正する等の法律案、土地臺帳法案、家屋臺帳法案、地方税法の一部を改正する法律案、地方分與税法を改正する法律案及び相續税法を改正する法律案につきまして、委員會における審議の經過竝びに結果を御報告いたしたいと存じます。
本税制諸案は、中央及び地方を通ずる税制の改正に関するものでありまして、すこぶる廣範多岐にわたる内容をもち、國民の負擔に大影響を有するものであります。國税に關しては大藏當局より、地方税に關しては内務當局より、それぞれ詳細な提案理由の説明がありまして、直ちに質疑に入り、委員各位には終始熱心かつ愼重に審議を進められたのであります。ただいま委員會における質疑應答のうち、おもなるものについてその概要を申し上げます。
まず今囘の税別改正はどこに主眼點をおいておるのか、いわゆるインフレーシヨンの阻止にあるのか、生産の増強にあるのか、それとも國民生活の安定にあるのか、その主眼點のあり方によつては、今囘の税制改正はインフレ状態の阻止にならず、かえつていわゆるインフレーシヨンに拍車をかけることになるのではないかという意味の質疑がありました。(「議長、議長、定數をどうする」「定數がないぞ」と呼ぶ者あり)これに對し政府から、今囘の改正は財政收支の均衡をはかるとともに、國民の負擔の適正を期し、税制の民主化を通じて、國民經濟の再建に資することを目標としておるので、特にいずれに主眼點をおいておるということはない、國の歳出は租税その他の普通歳入で賄うことが理想であつて、財政收支の均衡を得ることが、インフレ状態を阻止する根本條件の一つであるから、今囘の改正は、財政の面よりインフレを生ずるおそれを除去しておるものであり、いわゆるインフレーシヨンに拍車をかけるものとは考えていないという答えがありました。
次に、税制改正後における國民負擔は、本年の國民所得の見透し及び豫算面に現われた財政事情から見て、むりだとは考えられはしないか、また國民負擔の最大限度を、政府はどの程度に考えておるかという質疑がありました。これに對し政府から、終戰後におけるわが國の現状として、必要とする財政を賄わねばならないという基本的事實より考えれば、この程度の負擔はまことにやむを得ないところである、なお租税負擔の最大限度は、計數的に一概には斷定できない問題であるとの答辯がありました。
所得税につきましては、豫算申告納税制度を採用することになつておるが、國民の道義觀が低下しており、かつ從來の賦課納税制度になれておる國民に對して、はたしてこの新制度が成功するという確信があるかという質疑がありました。これに對し政府から、租税の自主的納税ということは、税制の理想であるし、前年實績課税を改めて、その年の所得により課税することとなれば、豫算課税の方法によることになり、これがためには、どうしても申告納税に改めなければならない、しかして各方面に民主化の態勢が展開せられておるので、納税の面においても、自主的納税の機運を釀成するには絶好の機會であるから、この際廣く國民各層の協力を求め、十分の理解のもとに本制度の適正な運營をはかつていきたい、これがためには、第三者通報制度を採用し、あるいは税務協力委員會により、その成果をあげることに努める一方、無申告または不當申告の場合には、更正決定の方法により正當税額の徴收を行い、また罰則を強化して、脱税等を取締ることとしておるという答辯がありました。
なお勤勞所得者に對する課税は、今囘の改正でまず二割を控除したのち、四千八百圓の基礎控除を行うという煩雜な方法をとつておる、また賃金の増加割合と、物價の値上りの割合とは格般の相違があつて、勤勞所得者は實質的には減收となつておる、從つて簡素化及び負擔の適正化の意味で、控除を一本にして、一萬二千圓としてはどうかという質疑がありました。これに對して政府から、今囘の改正で、勤勞所得者については、賃金の高さに應じ、税表で定めた税額を徴收することにしておるので、實際にはきわめて簡略化されておる。また基礎控除の金額は、必ずしも最低生活費を意味しておるものではなく、税負擔を、國民所得、國民生活、財政事情等、各般の状況に適合せしめるためには、この程度を妥當と考えるという答辯がありました。
次に、農業所得に對する課税は、供米が所得計算の確實な資料となるので、課税高を輕くしようとする者は供出をしぶることとなり、結果において米の供出を阻害しておると思ふが、課税上何らかの考慮ができないかという質疑に對しては、所得税は、實際の收入から實際の支出を差引いて所得を計算し、これによつて課税するのが負擔の公正を得るゆえんであるのみならず、課税の際には、收獲の面、自家消費の面、供出の面等、あらゆる方面を總合して所得を計算しているので、所得税が供米を阻害しているとは考えられない、また供米の成績をあげる方法は、税の面からではなく、別個の面からそれぞれ適切な方途を講ずべきであるという答辯がありました。
次に、酒税の引上げ等は大衆の生活を壓迫することになるので、むしろタバコの値上げとか、酒税の増税などはやめた方がよいのではないかという質疑に對し、財政及び物價の現状、竝びにタバコや酒類の消費のように、ある程度節約の可能なものについては、この程度の負擔の増加はまことにやむを得ないと考えるという答辯がありました。なお酒税の大幅引上げの結果、濁酒の密造が激化するのではないかという質疑に對し、要は酒類の生産高が少いところからくる問題であるが、濁酒の密造については、取締りを強化しているという答辯がありました。また農家の濁酒製造を公許するか、あるいは供米完納の場合に、農家からの委託讓造を認めてはどうかという質疑に對し、農家の濁酒製造は、從來通りこれを認める意思はない、供米完納の場合に農家から委託釀造をすることは、現在試驗的に、ある條件のもとに、埼玉縣下において認めているという答辯がありました。
さらに名目的財産税を起してはどうかという質疑がありましたが、これに對し政府から、ただいまは實質的財産税徴收の中途にあり、また調査技術その他の點から考えてみて、これをただいま實行する意思はないという答辯がありました。また戰災者や引揚者については、その負擔力の實情から考えて、課税上相當考慮すべきではないかという質疑に對し、政府より、戰災者と非戰災者、引揚者と非引揚者との間の調整の問題は、租税の問題としては一應財産税の課税で考慮濟みであつて、年々の所得に對し課税する租税については、現在の段階においては、區別して取扱うことは適當でないという答辯がありました。
次に、戰災都市は非常な財政難に陷つているが、これをどう救濟するかという質疑がありました。これに對しては、戰災復興等の臨時の費用については、國庫の補助を受けるほか、さしあたつては當該團體の起債によつて賄わせていくことにするが、他面税收入の減收を來している所には、昨年新設した臨時特別分與税を今後も分與することにしている、なお今囘の税制改正による地方獨立税の擴充によつて、戰災都市の獨立財源は相當増加することと思うという答辯がありました。
次に、營業税の課税標準を府縣が決定することになると、その決定が府縣の間で不均衡を來すおそれはないかという質疑に對し、營業純益の算定にあたつては、所得税の課税標準となつた事業所得や、法人税の課税標準となつた普通所得の金額を參考にするから、その心配はないということでありました。
その他國民所得の實態、資金配分計畫、銀行預金の祕密性等、各般にわたる質疑がありまして、それぞれ答辯があつた次第であります。
かくて、去る十九日以來質疑を重ねること四日、二十四日午前討論に移つたのであります。日本自由黨の神田博君、日本進歩黨の林田正治君、國民協同黨の石崎千松君より、それぞれ黨を代表されまして原案に贊成の旨を述べられ、日本社會黨の松永義雄君より、黨を代表されまして、今囘の改正案は依然として、いわゆるもうける者にもうけさせる政策であつて、インフレ阻止の工夫に缺けているものであり、豫算とともに返上すべきものであるとの理由のもとに、原案に反對せられたのであります。討論終局後、各案につき採決いたしましたところ、多數をもつて原案通り可決いたしました。以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=47
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048・井上知治
○副議長(井上知治君) この際暫時休憩いたします。
午後四時十分休憩
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午後六時五十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=48
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049・山崎猛
○議長(山崎猛君) 休憩前に引續き會議を開きます。討論の通告があります。順次これを許します。中崎敏君。
〔中崎敏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=49
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050・中崎敏
○中崎敏君 日本社會黨を代表いたしまして、所得税改正法案外六件に對しまして反對をいたさんとするものであります。
政府は税制の根本的改革を斷行いたしまして、分類所得税と總合所得税二本建を、總合所得税一本建の税制に改正せんとするものであります。所得税一本建の租税體系は、理想といたしましては好もしいものでありますけれども、これには考えなければならぬ幾多の條件があるわけであります。すなわち各種の所得の間の均衡を保つということが第一に必要であるばかりでなく、免税點をいかにするかというふうなことも考えなければならぬわけであります。さらにまた税率をいかにあんばいするかといふことも、同時に考えなければならぬ問題であるわけであります。さらにまた所得の源泉を的確に捕捉することによつて、この目的を達することができるわけであります。
今日のごとく國民の財産及び所得の變動がきわめて大きくあるときの状態におきましては、所得税一本の租税體系をもつてしては、とうてい衡平なる租税の收入というものは期待し得ないわけであります。この意味におきまして、動的状態にありますところの所得税を補う意味におきまして、靜的状態にありまするところの財産税を徴收するということが、租税の體系の上において望ましいことであるわけであります。これはヨーロツパ諸國におきましても、既に所得税に配するに名目的の財産税をとることによりまして、補完税としているわけであります。
わが國におきましても、既にこの名目的財産税につきましては、再三論議せられたところでありまするけれども、この點につきましては、當時まだいわゆる財閥そのほか事業家というふうなものが、相當に政治の面において大いなる勢力をもつておりました關係上、遂にこの名目財産税も、その目的を達しないで今日に至つておるわけであります。名目財産税と申しますと、財産に對しましてその三分、五分あるいは一割というふうな、ごく輕率な税率を課することによつて、この財産の源泉を枯渇せしめないというところにあるわけであります。一方におきまして、所得税によつて、その年々所得するものに對するところの課税をするとともに、財産に對しましても、ごく輕い意味の財産税を課することによつて、きわめて衡平なる租税制度の確立を望み得るわけであります。
こういう意味におきまして、私は過般委員會におきまして、大藏大臣に對して、政府は名目的財産税を徴收するところの意向がないかと質問したわけであります。これに對しまして大藏大臣は、かくのごとき名目的の財産税をとるということはきわめて不衡平であるという答辯をしておるわけでありますが、私は名目的財産税が不衡平であるというところの説明は、初めてこの大藏大臣に聽くわけでありまして、大藏大臣はいまだこの問題について十分の研究をしていないのだということを、明らかに感知し得たわけであります。
次に、今囘の税制改正にあたりまして、豫算申告制度をとつておるわけであります。ところが、この豫算申告の制度は、今日のごとくインフレのはげしい時代におきましては、一應その時その時の事態に即したところの課税がなし得るというところの特典はあるわけであります。一面またインフレ防止の意味においてもある作用をなすということは、認めるにやぶさかでないものでありますけれども、この豫算課税というものは、一箇年間におけるところの收入を豫算しまして、これに對して課税するところの制度でありまして、わが國のごとくまだ納税思想の徹底していないところの國家におきましては、殊にまた國民思想の著しく混亂している現在の状態において、さらにまたインフレが著しくすべての状態を混迷の立場においておりますときにおいて、豫算課税の制度の實際運用というものは、きわめて困難ではないかと思うわけであります。
もしこの豫算課税の制度がうまくいかない場合におきましては、一面においては苛斂誅求の結果となり、さらにまたその反面におきましては、このインフレによつて大きくもうけたところの、いわゆるインフレ階級に對する課税を漏らすというところの、大きなる社會的不公正の結果を招くものでありまして、この運用につきましては、きわめて用意周到をもつてしなければならぬわけであります。政府におきましては、これに對する何ら的確なるところの方策をもつていないわけでありまして、わが社會黨におきましては、この問題と關連いたしまして、戰後においてできたころのいわゆる新圓階級に對する新圓竝びに換物によつて、各人が多く現在隱してもつているところの物を嚴重に調査し、さらにまたこの新圓に對しては、一時登録の方法によりまして、そうしてこの所得竝びに財産の現状を的確に調べてこそ、初めて公平なる負擔の均衡を得られるという點におきまして、特にわが社會黨はこれを主張しているわけであります。
過日の豫算總會におきまして、與黨側のある議員から、自由黨はこつそりと税金をとるのだということを言うておつたのを耳にしております。さらにまた今囘のこの選擧法改正の問題についても考えられるところでありますが、自由黨はやはりこつそりとこれをなさろうとしております。言いかえれば、やみからやみへ、裏から裏へと、こつそりやろうとするのが、自由黨竝びに進歩黨であります。わが社會黨は、堂堂と、そうして國民の信用を得ることによりまして、明るいところの政治を行わんとするのが、本來の主張であります。(拍手)
新圓階級に對するところの課税をする根據は、まず第一に社會正義に求めなければならぬと思うのであります。言いかえますと、今日インフレによりまして、國民大多數というものは、このインフレの犧牲になつているわけであります。ところで、このインフレの蔭に隱れまして、あるいは買溜めをなし、あるいはまた賣惜みをなし、さらにまた價格の差益をもうけることによつて、統制の蔭に隱れまして、幾多利益をむさぼつているところの階級の存在することを忘れてはならないのであります。(拍手)すなわち、國民大衆の犧牲において、こうした一部特殊の階級があぶくの金をもうけて、そうしてぜいたく三昧の生活をするということは、決して見逃すことはできないのであります。この社會正義に立脚いたしまして、わが黨が新圓に對するところの課税を要求しているのは、むしろ當然といわなければならぬわけであります。(拍手)
かくのごとくにしまして、貧富の懸隔を是正するということが、今日の情勢において最も望むべきことであるわけであります。さらにまた一面戰爭犧牲者の立場を考えてみましたときに、あるいはまたその日の生活に困るところの貧困者の身の上を考へてみましたときに、さらにまた日々増加しつつあるところの失業者を考えてみましたときに、さらにまた一般勤勞大衆はこのインフレによつてきわめて困難な生活を續けておるというときにおいて、一部の新圓階級のみがぜいたく三昧の生活をするということは、とうていこれは許すことができないものであるということを信ずるものであります。(拍手)
一方高級料理店に出入りしまして、そうして一晩何萬圓という金を使つておるところの階級があるわけであります。私は過日も委員會において政府に對して、この高級料理店を廢止する意向はないかということを尋ねたのでありますが、政府はこれを廢止するというところの何らの誠意を示さないわけであります。經濟の混亂に乘ずるところのボス政治家が、この高級の料理店に出入りしまして、そうして陰謀をこらしておるということを考えましたときに、さらにまた大多數の人々が苦しんでおるところのこの状態におきまして、高級料理店の拔扈しておるということは、國民思想をきわめて混亂せしめるものであるわけであります。勤勞意欲の減退も、これに胚胎するということも考えなければならぬわけであります。
さらにまた貨幣價値の低落によるところの一般國民の負擔の増大を考えましたときに、この新圓に對するところの強度の措置は、これはむしろ當然のわけでありまして、一頭三萬圓もするところの現在の牛の價格を考えてみましたときに、すべて貨幣の價値というものが、百分の一、二百分の一、三百分の一となつておるところの現在の状態におきまして、ただ金の多寡だけをつかんで、そうしてこれを金科玉條のごとく喜んでおることは、きわめて好ましくない状態でありまして、貨幣價値を安定せしむることによつて、初めてわれわれの經濟生活の安定があるといふことを考えられるときに、新圓に對するところの非常の措置を講ずべきは、むしろ當然のことであると言わなければならぬわけであります。さらにまた共甘同苦の立場におきまして、國民がお互いに苦しい立場を切拔けるという氣持におきましても、この新圓階級に對するところの措置は、當然の要請であるわけであります。
石橋大藏大臣は、金を封鎖してみたところで、じきにまた札が出てくるのだから、一向役に立たぬということを言うておられるわけであります。ところが、これは計畫經濟の何ものであるかを知らないものであるということを、私は認むるものであります。すなわち、まずすべてインフレの起るところの状態というものは、ただ金の面にだけあるわけではないのであります。金と物と物價との間の關係が、十二分に計畫的に調整されたときにおいて、初めて貨幣價値の安定を期し得るわけであります。
ところで石橋さんは、金をいじくつてみたところでインフレは止まらないということを言つております。もちろんそうであります。でありますから、わが社會黨は、社會主義計畫經濟の斷行によつて、そうしてこの金の面をいじくると同時に、物價の面をいじくり、さらに生産の面をいじくり、さらにまた生活の安定を確保することによつて、ここに初めてインフレを食い止めることができるというわけでありまして、總合的計畫經濟の斷行こそ、わが社會黨の主張するところであります。これによつてのみ初めてインフレというものは食い止められ、國民生活の安定が期し得られるものと信じて疑わないわけであります。
まずわが社會黨は、かくのごとき意味におきまして、危機突破を目的とする第二財産税を主張しておるわけでありまして、富の均衡を得る上におきまして、あるいはまたインフレを防止する上におきまして、これが役に立つということは、むしろ當然のことであると言わなければならぬわけであります。すなわち、かくのごとくして得たところの收入を、まず社會厚生に充當しなければならぬわけであります。さらに失業者に對する適當なる對策を講ずるために、この費用が使われなければならぬわけであります。さらにまた生産増強のためにも、またこれが振向けられなければならぬわけであります。
次にまた戰時國債の打切りに對しまして、わが黨はつとにこれを主張しておるわけでありまするが、とりあえず今年度におきまして、これは利拂いを停止することによつて、石橋さんのお話によれば、約三十億圓の利拂いをしなくてもいいということになるわけでありまするので、この金を、まず六・三教育制の實施のために必要な支出に充てるのほか、さらに水害對策に對しましても、あるいは農業技術員に對する國庫の負擔をなす意味におきましても、生活保護費の増額をなす上におきましても、戰爭犧牲者に對する適當な策を行う上におきましても、この三十八億圓をもつてするならば、不滿足ながら、現在のこれらの人の要求を滿たす上において役に立つということは、火を見るよりも明らかなわけであります。(拍手)
次に改正法案の内察を見ますと、すべての點におきまして、まず勤勞所得者に對する課税が著しく重加されておるということを考えなければならぬわけであります。免税點は二百圓より四百圓に引上げられておりますけれども、これらの人々の賃金は、インフレによつて名目的に増加しておる關係上、實際におきましては、この免税點の引上げというものは、むしろ引下げになつておるということを考えなければならぬわけであります。間接税におきましても、酒、タバコ、その他勤勞大衆に要するこれらのものに對して、著しく増徴となつておる關係上、勤勞大衆の負擔はきわめて重加されておることを見逃がすわけにいかないわけであります。
さらにまた勤勞所得者に對しましては、源泉課税を廢しまして、いわゆる總合所得税一本としました關係上、相當高率な累進税を盛られることによりまして、以前よりもはるかに實際上高率な租税の負擔をなすということになつているわけであります。この意味におきまして、わが社會黨は、勤勞大衆の負擔と犧牲によるところの租税制度の改革に對しては、斷乎反對を表明するものであります。(拍手)
さらにまた法人税の場合について考えてみますと、むしろ法人税を高率に引下げているわけであります。昭和二十一年度におきまして、法人に對するところの所得税の收入は、全體の所得に對しまして一四%を占めておつたわけでありまするが、昭和二十二年度の豫算におきましては、この比率が五%に低下しているわけであります。約三分の一に低下しているのであります。
これら法人の大部分というものは、戰爭中におきまして、軍需産業の立場において、多くの利益の温存をすると同時に、さらに終戰後多くの軍需物資を自分の手もとに抱えることによつて、莫大の利益を温存しているのであります。ところでこれらの法人は、帳簿上におきましては、これらの利益をことごとく隱しているわけでありまして、帳簿上においては、赤字の實態を示しているわけでありまするけれども、實際におきましては、莫大の利益がこれらの經營者の手に殘つているということを考へなければならぬわけであります。しかるにかかわらず、税率をだんだん低下し、これに對するところの課税を遞減するということは、言いかえますと、勤勞大衆の負擔によりまして、これら事業の温存をはかつているということは、火を見るよりも明らかなわけであります。
さらにまた軍需補償打切りの場合について考えても、同じことが言えるわけでありまして、資産の評價につきましては、當時政府は、この資産の評價は時價をもつて基準としていくということを言明したにもかかわらず、實際におきましては、帳簿價格によることとなつたわけであります。これがために政府は、金融機關に對する百億圓の補償を、さらにまた七十億圓を増額せなければならなくなつたというようなことを傳えられているわけであります。さらにまた保險會社に對するところの損害に對しましても、二百億圓の高額を國家から支出しているわけであります。言いかえますと、軍需補償打切りによりまして、既に三百七十億近いところの國家的負擔を課せられたばかりでなく、さらにまた一般の金融機關に對するところの預金者の負擔は、きはめて大きなものでありまして、言いかえますと、國家と國民大衆の犧牲によりまして、これら事業の温存をはかつているということは、火を見るよりも明らかなわけであります。(拍手)
さらにまた山林所得について考えてみましても、山林所得に對しましては、所要の經費を差引いた殘りの純所得に對しまして、その半額を免除いたしまして、殘りの半額に對してだけ課税をするということになつているわけであります。ところが今日におきまして、實際にあの山の材木に對しまして、莫大の利益を温存しておるものが、この大きな山林業者であるわけであります。ところがこの山林の大きな所得に對しましても、その半額を控除しておるといふことは、とうていわが黨はこれに對して納得できないわけであります。かくのごとく吉田内閣は、勤勞大衆の負擔において、事業家と資産家というものの擁護に汲々としておるのでありまして、かくのごとき政策に對しまして、わが黨が反對するゆえんであるわけであります。
石橋さんは、豫算總會においても、財政面において收支の均衡をはかつた、金融の面においても、民間の預金を吸收する上において萬全を期したから、これによつて財政金融の面において、まつたく完璧の域に達したということを言うておられますけれども、この收支の均衡を形式的に得たところの財政にいたしましても、ことごとく穴だらけの財政であるということを主張せざるを得ないのであります。さらにまた金融の面においても、民間の企業をことごとく麻痺状態に陷れるところの苛酷な金融政策であるわけであります。
かくのごとくにいたしまして、遂にこの昭和二十二年度におきますところの税制というものは、昭和二十一年度に比較しまして、約三倍の増徴となつておるのでありますが、これは中小商工業者に對するところの苛斂誅求の形において現われることは、火を見るよりも明らかでありまして、現に實施されておりますところの財産増加税が、これらの中小商工業者に傳達されましたときに、これらの業者は震え上つておるというふうな現在の状態にあるのであります。
かくのごとく中小業者をいじめ拔くことによりましては、とうてい日本經濟の再建はおぼつかないのでありまして、この意味におきまして、わが黨はこの所得税の改正に對しまして、改めて編成をし直して、そうしてこの日本經濟再建の上において、國民勤勞大衆に對するところの公正なる負擔を期する意味において、さらにまた法人に對しましては、當然課すべきところの課税に對する増徴を行うことによつて、財政の建直しをなすべきことを主張するのであります。この意味におきまして、この所得税法案ほか六案に對する反對を表明するものであります。以上をもつて、私の反對理由を説明したわけであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=50
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051・山崎猛
○議長(山崎猛君) 的場金右衞門君。
〔的場金右衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=51
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052・的場金右衞門
○的場金右衞門君 私はただいま議題となつております所得税法案ほか六件の法律案に對しまして、國民協同黨を代表いたしまして、次の希望を附して贊成の意を表明する次第であります。(拍手)
すなわち、勤勞所得に對する免税點は引上げられたのでありますが、農業所得及び中小商工業者の所得は、その大部分が勤勞所得でありまして、一般勤勞所得と同樣に考えられなければならぬものでございます。しかるに從來もこの種の農業及び中小商工業所得に對する課税は、苛酷に取扱われておるので、本法の運營にあたりましては、特にこの點に留意していただきまして、公正なる課税になるようになされたいということであります。
その次に、農業所得の査定につきましては、大藏大臣は、生産費を差引いて純所得に課説すると言明されたのでありますが、實際の取扱いを見ますと、農業知識のない税務官吏たちが調査いたしました、その調査に基きまして査定されるために、地方ごとに相當の相違があり、不公平を來し、過重なる課税となつておる場合が多いのであります。ゆえに農業關係の課税につきましては、農業關係者または農業專門の知識のある者を加えて調査し、査定をいたしまして、農業者に對し課税が特に過重となり、または不公平とならぬように注意されたいということであります。
申告制度を採用いたされましたことは、これはやむを得ないといたしましても、收入のはつきりいたしておりますこれらのものについて、また正直な、まじめな者に重い税が課せられて、利口な横着な者が税金を免れるといつたような結果にならぬように、御注意願いたいと思う次第であります。
以上、運營につきまして御注意願うことを希望いたしまして、本案に對しては贊成をいたす次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=52
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053・山崎猛
○議長(山崎猛君) 柄澤と志子君。
〔柄澤と志子君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=53
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054・柄澤と志子
○柄澤と志子君 ただいま議題となつております所得税法案ほか六件について、日本共産黨を代表いたしまして、反對の意見を申し上げる次第でございます。(拍手)
政府はこの改正案の理由といたしまして、國民負擔の公正を期し、併せて國民經濟の再建に資する等のため、租税制度に根本的改正を加えるということを申されております。この國民負擔の公正を期すということが重要な理由になつておりますところの點から、この法案を具體的に調べますと、このことについて石橋藏相も、委員會で、上と下に輕くする方針をとつたということを言明されております。税率の點を私どもが詳しく調べますと、前議會中に、あの全日本の勞働者階級が、働けば働くほどとられる惡税であるとして、全體が全力をあげて反對をしましたところの勤勞所得税、この勤勞所得税に該當いたしますところの、大體一萬圓から三萬圓の點につきまして私どもが考察いたしますと、下に輕くという藏相の言明にもかかわりませず、多少免税點が高くなりましたというようなことを考察いたしましても、インフレその他の事情とにらみ合わせますと、決して税率は低くなつていないのでございます。
それにもかかわらず、その税率の上つていきます割合は、一萬圓あるいは一萬五千圓という下の税率の場合には、五%づつ上つております。五萬圓、七萬圓、十萬圓、二十萬圓、五十萬圓、百萬圓と高くなりますほど、その幅が廣くなつておるにもかかわらず、依然として五%の割合に上つております。これを金額にいたしますと、非常に厖大な開きが出てくるのでございます。まことに石橋藏相の言明しておられますように、上にはまさに輕くなつていることが證明されているのでございます。
前の議會では、百萬圓を超える所得に對しては、大體百分の九十五をかけるということが案として出ているということを、私どもは聞いていたのでございますが、それに對しまして、はるかに低いところの百分の七十五をもつて最高といたしております。今日の政府のインフレ政策と相まちまして、このように勤勞者階級に對するところの、あの全勤勞者の反對しましたところの、働けば働くほど税をとられるという惡税が、依然としてこの所得税の新しい法案の中に殘されていることを指摘するものでございます。この法案は國民經濟の再建に資するためという趣旨にもかかわらず、今日ますますそれに相反しまして、勞働爭議を激發し、政府自身が經濟再建に禍いするがごとき結果を招來するものと私どもは指摘するのでございます。
それからなお委員會におきまして、石橋藏相は、上に輕くする理由といたしまして、資本の蓄積ということを申されたということを聞いております。資本の蓄積、利潤の保證がなければ、日本の經濟は再開されない、この御趣旨かと拜承されるのでございますが、しかし資本の蓄積の根源をなしているものは何であるか。つまり日本の富を生み出すものは何であるか。價格差益金を納付するところの資本家が、價格差益金を納めずに、自分のふところに納めておるのであります。その根源は、われわれ日本の人民大衆のふところから、一部の資本家のふところに溜つているに過ぎないのでございます。それによつて日本の富全體は決して殖えていくのではないのでございます。
この日本の富全體を殖やし、この富を生み出す力は、實に勞働者の生産力にあるのでございます。この勞働階級の生産力の再生産を保障しますためには、勤勞者に對するところの所得に對しまして、われわれは前の議會にも主張いたしましたように、これを全免することを主張するものであります。そうしてその富の蓄積の根源であるところの上に課税を少くすることによつて、日本の産業再開がますます促進されるという藏相御自身の考え方が、いかに誤つておるものであるかという次の理由を簡單に指摘いたしまして、私の反對理由を終りたいと思うのでございます。
今日勞働者の生活が不安に襲われ、インフレはますます高騰し、税金は殖え、その他の郵便料金、鐵道料金、タバコ料、あらゆるものが今度の税制によつて高騰を續けておりまして、政府自身がインフレを刺激する税制を打立てまして、勞働者があすの勞働力を再生産することが保障されていない今日、はたしてそれによつて石橋藏相の望むところの範圍におきましても、日本の資本の蓄積が可能でこざいましようか。
この根本的な矛盾について、私は政府に、この所得税法案が、いかに日本の經濟を破綻し、一部の、大やみをやりまして今日の經濟を破綻に陷れるような厖大なる所得をしておる階級を擁護しておるものであるかということを申し加えまして、前の議會の改正案――九五%を主張した改正案よりもはるかにこの法案は資本家擁護の法案であることを指摘いたしまして、これがまた日本の經濟を危くし、日本の民族を亡ぼすような政府の方針をここに具現化しておることを指摘いたしまして、私の反對を簡單に申し上げる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=54
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055・山崎猛
○議長(山崎猛君) これにて討論は終局いたしました。八案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=55
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056・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて八案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=56
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057・椎熊三郎
○椎熊三郎君 直ちに八案の第二讀會を開かれんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=57
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058・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=58
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059・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに八案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
――――◇―――――
所得税法を改正する法律案 第二讀會(確定議)
法人税法を改正する法律案 第二讀會(確定議)
特別法人税法の一部を改正する等の法律案 第二讀會(確定議)
土地臺帳法案 第二讀會(確定議)
家屋臺帳法案 第二讀會(確定議)
地方税法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)
地方分與税法を改正する法律案 第二讀會(確定議)
相續税法を改正する法律案 第二讀會(確定議)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=59
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060・山崎猛
○議長(山崎猛君) 採決いたします。所得税法を改正する法律案ほか七件を一括して採決いたします。八案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=60
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061・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立多數。よつて八案とも原案の通り決しました。これにて八案の第二讀會は終了いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=61
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062・椎熊三郎
○椎熊三郎君 八案の第三讀會を省略して、第二讀會議決の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=62
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063・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=63
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064・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて八案とも第三讀會を省略して第二讀會議決の通り可決確定いたしました。(拍手)
この際暫時休憩いたします。
午後七時三十七分休憩
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午後八時八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=64
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065・山崎猛
○議長(山崎猛君) 休憩前に引續き會議を開きます。日程第十三ないし第二十は、同一委員に付託したる議案でありますから、一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=65
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066・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。
日程第十三、國有財産法の一部を改正する法律案、日程第十四、作業會計法を改正する法律案、日程第十五、燃料局特別會計法を改正する法律案、日程第十六、造幣局特別會計法の一部を改正する法律案、日程第十七、國有林野事業特別會計法案、日程第十八、勞働者災害補償保險特別會計法案、日程第十九、公債金特別會計法外四法律の廢止等に關する法律案、日程第二十、企業再建整備法等の一部を改正する法律案、右八案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長大谷瑩潤君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=66
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067・会議録情報8
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第十三 國有財産法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 作業會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 燃料局特別會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 造幣局特別會計法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 國有林野事業特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 勞働者災害補償保險特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 公債金特別會計法外四法律の廢止等に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 企業再建整備法等の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 國有財産法の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 作業会計法を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 燃料局特別会計法を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 造幣局特別会計法の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 國有林野事業特別会計法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
附帶決議
一、本会計より生ずる余裕金を、一般会計等に繰り入れることは妥当ではない。
若し本会計において余裕ある場合には、造林、樹苗養成、國有林所在地元(都道府縣及び市町村)への交付金、森林輸送路の拡充、林業試驗、林業文化の建設、林業労働者の福祉施設等、單に直接國有林野事業の整備のみではなく、全森林行政の整備拡充を計るために、之を放出すべきである。
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 労働者災害補償保險特別会計法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 公債金特別会計法外四法律の廃止等に關する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 企業再建整備法等の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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〔大谷瑩潤君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=67
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068・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案委員會に併託されました、國有財産法の一部を改正する法律案、作業会計法を改正する法律案、燃料局特別会計法を改正する法律案、造幣局特別会計法の一部を改正する法律案、國有林野事業特別会計法案、労働者災害補償保險特別会計法案、公債金特別会計法外四法律の廢止等に關する法律案及び企業再建整備法等の一部を改正する法律案、以上八件の法律案につきまして、本委員會の審議の經過竝びに結果について御報告を申し上げますが、詳細なることは速記録に讓ります。
委員會は、以上八件の法律案につき三月二十二日より會議を開き、政府側より提案理由の説明がありました後、質疑に入り、まず小笹委員より、國有財産法の一部を改正する法律案につきまして、國有財産に關する大藏大臣の總括事務の内容、財産の讓與に關する規定及び國有財産調査會の組織、職權等についての質問に對し、大藏省政府委員より、總括事務とは、國有財産の管理、運用、處分を適實にするために、その取扱いを總合統一することであつて、これがために必要な諸規定を定め、臺帳樣式を一定し、國有財産の現状を明確ならしめる諸報告を一括して、内閣を經て國會に提出すること等が總括事務の一斑でありまするが、大藏大臣を總括大臣としたことは、國有財産の事務は、物の會計であり、豫算でありますから、財政を所管する大藏大臣がこれに當ることが最も適切だからであるという答辯でありました。
また國有財産の讓與については、現行法では非常に抽象的な規定で、政府の自由裁量の餘地がはなはだ多いので、改正法では、すべて具體的に法律で定めた場合のみなし得ることに改めたとの答辯でありました。なお國有財産法制調査會については、わが國國有財産制度を確立するため、これに關する法制を調査審議して、その法律案を作成し、次の通常議會に提案することとし、これがため、その委員も會長ほか六名の少數委員によつて、最も效果的に審議することとしたという答えでありました。
また地方木材會社に對する補償打切りに伴う求償權と、第二封鎖預金關係につき質問せられたに對し、大藏省政府委員より、第二封鎖預金のと相殺は、密接なる關係のある債權との間にのみ可能だが、具體的場合としては研究したいという旨の答辯がありました。
次いで同委員より、國有林野の面積及び蓄積、斫伐製品及び立木の拂下方法等につき質問があり、これに對して農林省政府委員より、國有林野の現状を述べ、かつ拂下の方法について答辯がありました。
次に、氏原委員よりの質問にはいり、まず國有林野特別會計法と豫算の關係についての質問に對し、大藏省政府委員より答辯があつた後、國有財産法第十三條、第二十一條ないし第二十三條を削除した理由を尋ねられ、大藏省政府委員より、第十三條の境界査定については、行政的裁判より一般民事裁判に付することが適當であり、第二十一條ないし第二十三條の豫約開墾の規定については、後來その事例はなはだ少く、また相當規模のものは國營の開墾にしておりますので、かかる規定を存置するの要がないからであるとの答辯がありました。
次いで國有林野事業特別會計法に關する質問にはいり、まず林野行政機構の改組につき政府の所見を質した後、森林所有形態に關する民主化の意圖なきやとの問いに對し、農林省政府委員よりの答辯がありました。さらに久しきにわたる濫伐に對する緊急植栽計畫、殊に水源地林、荒廢林地の復奮、濶葉樹増林關係、次に森林生産物の輸送、森林生産物の需給の調整、殊に植伐計畫の許可制、用途指定、地域外の搬出に對する切符制の實施等の諸點及び樹苗の育成計畫、保安林の擴充及び整備、民有林の施業案の編成、國有林野所在市町村に對する交付金の増加等、森林事業の全般にわたり質問がありました。これに對し農林省政府委員より、政府の現在までの施策の實情及び將來の方針につき、詳細なる御答辯がありました。
なおこの間同委員より、勞働者災害補償保險につき國庫負擔をしない理由、および國民健康保險組合の實情では、保健婦の失業を生じないかという質問があり、厚生省政府委員より詳しく御答辯がありました。
次いで丸山委員の質問にはいり、企業再建整備法に基く整備の目はなのつく時期いかんという質問に對し、大藏省政府委員より、評價基準及び未拂込株金の徴收方法等の決定が、種々の事情により遲延したため延び延びとなつていたが、四月上旬には評價基準等の具體的細目について公表を行い、六月末ころまでには、整備計畫を提出し得る運びとなるであろうとの答辯がありました。
以上をもちまして質疑を打切り、三月二十四日再び會議を開き、討論に入り、氏原委員より、國有林野事業特別會計法案に對し、次のごとき附帶決議の動議がありました。附帶決議を朗讀いたします。
附帶決議
一、本會計より生ずる餘裕金を、一般會計等に繰り入れることは妥當ではない。
若し本會計において餘裕ある場合には、造林、樹苗養成、國有林所在地元(都道府縣及び市町村)への交付金、森林輸送路の擴充、林業試驗、林業文化の建設、林業勞働者の福祉施設等、單に直接國有林野事業の整備のみではなく、全森林行政の整備擴充を計るために、之を放出すべきである。
右附帶決議案は、採決の結果、多數の贊成を得て可決いたされました。引續いて國有財産案の一部を改正する法律案ほか七件につきまして採決に入り、滿場一致をもつて可決せられた次第であります。
以上をもつて、國有財産法の一部を改正する法律案ほか七件に關する委員會の審議の經過竝びに結果について御報告をいたしました。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=68
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069・山崎猛
○議長(山崎猛君) 八案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=69
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070・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて八案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=70
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071・椎熊三郎
○椎熊三郎君 直ちに八案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=71
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072・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=72
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073・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに八案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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國有財産法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)
作業会計法を改正する法律案 第二讀會(確定議)
燃料局特別会計法を改正する法律案 第二讀會(確定議)
造幣局特別会計法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)
國有林野事業特別会計法案 第二讀會(確定議)
労働者災害補償保險特別会計法案 第二讀會(確定議)
公債金特別会計法外四法律の廃止等に関する法律案 第二讀會(確定議)
企業再建整備法等の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=73
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074・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、八案とも委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=74
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075・椎熊三郎
○椎熊三郎君 日程第二十一及び第二十二の兩案は、後囘しとせられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=75
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076・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=76
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077・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程第二十一及び第二十二は後囘しといたします。
日程第二十三ないし第二十五は、同一委員に付託したる議案でありますから、一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=77
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078・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。
日程第二十三、日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に関する法律案、日程第二十四、日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律案、日程第二十五、日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案、右三案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長小林かなえ君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=78
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079・会議録情報9
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第二十三 日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に関する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 小林 かなえ
衆議院議長山崎 猛殿
附帶決議
日本國憲法の基本的原則を実現するため、取り敢えず、暫定的應急的措置として止むを得ざるものとして、政府提出の諸法律案を承認したが、不十分なるものが多々ある。よつて政府に対し、これらの立法事項について、速かに國会において、日本國憲法の字義と精神に即した愼重且つ周到な本格的全面的改正を完成するよう、万全の努力をすることを強く要望する。
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報告書
一 日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 小林 かなえ
衆議院議長山崎 猛殿
附帶決議
日本國憲法の基本的原則を実現するため、取り敢えず、暫定的應急的措置として止むを得ざるものとして、政府提出の諸法律案を承認したが、不十分なるものが多々ある。よつて政府に対し、これらの立法事項について、速かに國会において、日本國憲法の字義と精神に即した愼重且つ周到な本格的全面的改正を完成するよう、万全の努力をすることを強く要望する。
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報告書
一 日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 小林 かなえ
衆議院議長山崎 猛殿
附帶決議
日本國憲法の基本的原則を実現するため、取り敢えず、暫定的應急的措置として止むを得ざるものとして、政府提出の諸法律案を承認したが、不十分なるものが多々ある。よつて政府に対し、これらの立法事項について、速かに國会において、日本國憲法の字義と精神に即した愼重且つ周到な本格的全面的改正を完成するよう、万全の努力をすることを強く要望する。
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〔小林かなえ君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=79
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080・小林かなえ
○小林かなえ君 ただいま議題となりました、日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に関する法律案ほか二件の、委員会における審議の經過竝びに結果の概要を御報告申し上げます。
本委員會は、去る三月十九日、政府委員より説明を聽取いたしまして、翌二十日より二十四日に至る四日間、熱心に審議を重ねたのであります。各案の内容につきましては、既に本議場におきまして所管大臣より詳細なる説明がありましたので、私はここにこれを省略させていただきたいと思います。ここには質疑應答のうち、きわめて重要な數點につきまして御紹介申し上げることといたします。
質疑に入りまして、林田正治君、榊原千代君、石川金次郎君竝びに米山文子君等の各委員と政府當局との間に、きわめて熱心にして詳細を極めた論議が行われたのでありますが、時間の都合上、詳細は速記録に讓ることといたしたいと考えます。
まず日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案に對する質疑といたしましては、第一に家の問題が取上げられたのであります。すなわちわが國の國民として、その傳統といたしましる、祖先崇拜の觀念と、名譽を重んずる觀念とは、家というものを中心にして起つてきておるものである、しかるにこの國民的信念とも言うべき家というものを廢止したならば、はたしていかなる結果がもたらされるのであろうか、こういう大變に御熱心なる質問でありました。すなわち家が廢されたならば、わが國の家族制度は一體將來どうなるであろうかという質疑に對しましては、政府の答辯は、民法上の家の觀念、すなわち戸主權を中心としたる權利によつて統率せらるるところの從來の民法上の家はこれを廢止するけれども、民法上の家の觀念と、現實上の家族生活とは、おのずから違うものであつて、たとい民法上の家という觀念は撤去せられても、夫婦、親子の共同生活そのものはなくなるものではないから、できるだけ現實生活に即したる規定をなし、さらに將來は家事審判制度を設けて、家庭内の紛爭を處理せしむる方針であるという御答辯でありました。
次は婚姻に關する問題でありまして、成年者の婚姻は父母の同意を要しないことになつておるが、二十歳から二十五歳までくらいの青年男女の自由に任しておくならば、一時の衝動に驅られて、一生を誤るものがなしとしないと思うが、かくのごときは、かえつて憲法の精神に反するものではないか、また婚姻の屆出のみならず、いわゆる事實婚を認めないのは憲法違反ではないか、こういう質問に對しましては、未成年者の婚姻に對しては父母の同意を要することが適當であるというふうに考えておるが、成年者にもまた父母の同意を要するということにすれば、憲法第二十四條の精神に反するし、また將來は結婚年齡も男は十八、女は十六というふうに高めていろいろとこれらの缺點を補つてまいりたい、また結婚の屆出は合意の形式であつて、當事者の自由意思を拘束するものではないから、憲法違反ではない、婚姻成立の有無竝びにその時期は、社會及び當事者間にはきわめて重大な問題である、これを不明瞭にしておくということはよろしくないので、また屆出その他公示主義をとるとはいいながら、屆出はきわめて簡單にできるのであるから、事實婚を認めるところの實益はないと考える旨の政府の答辯でございました。
次に、離婚の場合において、配偶者の一方が、將來の生計維持のために財産の分與を請求できることとしてはどうかという質疑に對しまして、政府當局より、今囘の應急的措置は、直接に憲法に抵觸すると考える點のみを規定した點――なるほどその點に關する規定はいたさなかつたけれども、將來改正民法には、これを設ける考えであるという答辯でありました。
次に、扶養の義務につきまして、父母が離婚をし、子供が母とともに家を去つた場合に、子供の養育費はどうなるのであるかという質疑に對しまして、父母がともに子に對しては扶養の義務を負擔する、すなわち養育費は父母が出すことになるが、もし母が資力をもたないときには、父が全部これを負擔しなければならないという政府の見解でございました。
次に、この法律は親族、相續、すなわち身分關係の改正のみに止まつておるようであるが、財産關係の規定は一體どうするのであるかという質疑に對しまして、財産關係についても、憲法の基本的原則に從つて、民法その他の法令中、財産關係に關する部分の解釋は當然變更され、その間はなはだしい不都合に起らぬと考える、改正民法では特にこの趣旨を明らかにするために、民法草案の第一條及び第一條の二のごとき特別の規定を設けたい希望をもつておるという旨の意向を表明されました。
次に、日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に關する法律案に關する頼疑といたしましては、第一點は、ひとり民事訴訟法のみならず、人事訴訟手續法、非訟事件手續法、破算法竝びに和議法等についても、またこれと同樣の應急的措置を講ずる必要はないかという質疑に對しまして、政府當局より、日本國憲法及び裁判所法の制定によりまして、民事訴訟法上必要な措置は、主として上告制度に關するものであるので、人事訴訟手續法、非訟事件手續法、破算法竝びに和議法等につきましては、特に應急的措置を設けなかつたのであるけれども、やむを得ない讀替え等に關する部分は、裁判所施行法に基く委任政令でこれを定める旨の答辯がありました。
第二點は、本案第三條の判決以外の裁判は、判事補一人ですることができるという規定の立法理由いかんという質疑であります。これに對しましては、裁判所法第二十七條第一項の判事補は、他の法律に特別の定めある場合を除いて、一人で裁判をすることができないという規定に照應いたしまして、判事補の民事訴訟における權限を定めたものであるという政府當局の答辯でありました。
第三點は、現行民事訴訟法の第五百七十條第十一號の家の系譜、すなわち系圖であります。系圖を差押禁止物件に掲げておるが、家及び家督相續に關する規定が適用せられなくなる關係上、日本國憲法施行後は、この種のものに對する差押は可能となるかどうかという質疑に對しまして、家及び家督相續に關する規定の適用がたといなくなつても、租先の祭祀は慣習上認めざるを得ないのであるから、系譜のごときは、日本國憲法施行後といえども、差押禁止物件たることに變りはない旨の答辯がございました。
最後に、民事訴訟に關する訴訟手續につき、法律で定めるものと、最高裁判所の規則で定めるものとの限界いかんとの質疑に對しまして、政府當局よりの答辯によりますれば、理論上は法律でもまた規則でもきめられるけれども、法律は規則より優位――優れた地位にあるものであるから、實際上は最高裁判所と協議の上定めることとなるのであろうが、國民の權利義務に直接關係のある事項は、少くとも法律できめることが妥當であるという見解でございました。
次に、日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案に對する質疑の第一點は、將來の刑事訴訟法の性格いかん、特に當事者對等主義、公開主義についてはいかん、さらに上告審において事實の審理を廢止した理由いかんというような質疑に對しまして、近く刑事訴訟法の全面的改正の際には、できる限り當事者對等主義を認め、辯護權を擴張するとともに、審理の公開についても十分考慮を加える考えで、この措置法案においても、その骨子を示しておる次第であるという答辯でございました。
なお上告審では事實の審理を行わないこととした理由について、元來上告審は法律審たるべきものであつて、僻遠の地に起つた犯罪について、事實の審理が妥當な結果を得がたい場合が多いのみならず、これを行うとすれば、上告審の負擔が非常に重くなつて、最高裁判所の性格に副わなくなる憾みがあるので、これを行わないこととしたが、新高等裁判所の判事は、經驗識見に富める者をもつてこれに充てることとなり、しかも事實の審理を必要とする場合には、下級審への移送または差しもどすこととなるから、不當な結果を生ずることはないと考えるという答辯でありました。
第二點は、本案の第八條第二號の規定は、憲法違反の疑いはないかという質問でありましたが、これに對する政府當局の答辯は、逮捕は原則として裁判官の令状によらなければならないこととした結果、相當重要な犯罪であつて、とつさの間に令状を求めるひまのない場合のため、緊急やむを得ない措置としてこの規定を設けたのであつて、逮捕行爲の繼續中に裁判官の逮捕状を求め、逮捕状の發付があれば、その逮捕は令状による逮捕ということになつて、憲法違反ではないと信ずるという見解でございました。
最後に、刑法についてのみ何ら改正に關する案件が出ておらぬので、現行刑法の解釋適用の基準が分明でないが、政府はいかに考えておるかという質疑に對しまして、當然憲法の趣旨に副うように解釋適用すべきことであつて、この點は、その任に當る者にも十分徹底するように努める旨の答辯があり、さらにこれに關連いたしまして、姦通罪の規定の現實の運用に對する政府の所見を質したところが、男女兩性の間に不平等を來す現行の姦通罪の規定は、明らかに憲法の精神に反するものであるからして、公訴權の運用によつて、不都合のないように十分考慮を拂う旨の答辯がございました。
以上、三案に對する質疑の大要を申し上げましたが、新憲法の精神の實現に向いまして、根強い歴史をもつ社會制度ないしは廣汎な手續規定をいかに改正すべきかは、技術的にもきわめて至難な問題でありまして、政府がこの點相當腐心しておる實情と、各案が特に重要な憲法の諸原則の實現のため、一應適切な效果をねらつて立案されておるということは、委員各位も承認をされたのでありますが、何を申しましても、法案の名の示すごとく、一時的また部分的應急措置に過ぎない、きわめて未熟かつ不十分なものであるということを認めないわけにはまいりませんでした。
各案の規定する精神を、次の全面的かつ恆久的改正へ誘導する精神といたしましてこれを汲みとり、かつ進んで本案の取上げていない幾多の重要なる問題についても、次の改正の意圖を究めようとする熱意は、既に御紹介申し上げました幾多傾聽すべき論議として現われたのであります。加うるに昨今における民生の不安と世相の惡化とに心をいたしますれば、今こそ眞に憲法の精神に即した完全な法制を樹立することこそ、あらゆる方面より熱望されておるところでありまして、この點に關し、政府の努力を要望する聲が、二十四日の討論の際に、各派共同提案になる附帶決議として提出されたのでございます。今ここにその案文を朗讀いたします。
附帶決議
日本國憲法の基本的原則を實現するため、取り敢えず、暫定的應急的措置として止むを得ざるものとして、政府提出の諸法律案を承認したが、不十分なるものが多々ある。よつて政府に對し、これらの立法事項について、速かに國會において、日本國憲法の字義と精神に即した愼重且つ周到な本格的全面的改正を完成するよう、萬全の努力をすることを強く要望する。
討論にあたりまして、日本自由黨を代表して小澤佐重喜君、日本進歩黨を代表して林田正治君、日本社會黨を代表して石川金次郎君竝びに國民協同黨を代表して越原はる君が討論に立ち、それぞれ附帶決議を附し、原案に贊成の意見を述べられました。次いで採決の結果、全會一致附帶決議を附し、各案いずれも原案の通りに可決いたした次第でございます。以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=80
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081・山崎猛
○議長(山崎猛君) 三案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=81
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082・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて三案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=82
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083・椎熊三郎
○椎熊三郎君 直ちに三案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=83
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084・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=84
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085・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに三案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案 第二讀會(確定議)
日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に關する法律案 第二讀會(確定議)
日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案 第二讀會(確定議)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=85
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086・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略て、三案としも委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=86
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087・椎熊三郎
○椎熊三郎君 日程第二十六ないし第二十八の三案は、後囘しとせられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=87
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088・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=88
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089・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程第二十六ないし第二十八は後囘しといたします。
日程第二十九ないし第三十二は、同一委員に付託したる議案でありますから、一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=89
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090・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。
日程第二十九、行政官廳法案、日程第三十、宮内府法案、日程第三十一、恩給法の一部を改正する法律案、日程第三十二、日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案、右四案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長天野久君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=90
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091・会議録情報10
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第二十九 行政官廳法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十 宮内府法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十一 恩給法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十二 日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 行政官廳法案(政府提出)
右は本院において別紙の通り修正すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 天野 久
衆議院議長山崎 猛殿
行政官廳法案の一部を次のように修正する。
第十二條に次の但書を加える。
但し、地方特別官廳の設置及び廢止については、法律の定めるところによる。
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報告書
一 宮内府法案(政府提出)右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 天野 久
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 恩給法の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 天野 久
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 天野 久
衆議院議長山崎 猛殿
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〔天野久君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=91
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092・天野久
○天野久君 ただいま議題となりました行政官廳法案ほか三件につきまして、委員會における審議の經過竝びに結果を簡單に御報告申し上げます。
各法案の内容につきましては、過日本會議において逐條にわたつて説明がありましたので、これを省略いたしますが、要するにこれら四法案は、いずれも五月三日日本國憲法施行に伴い、それに對應いたしまして、當然新たに規定または改正せらるべき行政官廳、宮内府の權限、組織、あるいは命令の效力、または恩給關係等に關するものであります。そのうち特に行政官廳法案は、行政部面の改革において、内閣法、官公吏法と相まつて、行政機構改革の根本に觸れるものでありますがゆえに、本委員會における質疑の中心は、もつぱらこれに集中された次第であります。以下、そのおもなる質疑數點につきまして御報告いたします。
その一點は、先日公布された内閣法の審議の際に、政府は速やかに官公吏法案、行政官廳法案を議會に提出すると言明せしにもかかわらず、有効期間を一年に限つた暫定的な本法案を提出せし理由いかんとの質疑でありました。これに對しまして、齊藤國務大臣より、行政機構の改革は複雜多岐であり、政府も昨年末行政調査部を設け、爾來熱心にこれが改革、公務員の運用について研究中であるが、未だ成案を得ないのは遺憾である、次期議會には間に合わす旨の答辯がありました。
また連立内閣の問題などの際に、巷間種々うわさに上つた勞働省、建設省を新設するの意思ありやとの質疑に對しましては、齋藤國務大臣より、未だ新設するや否やについては決定していない、新憲法施行後において新設する場合は、法律案として議會の審議に付することになるとの答辯がありました。
また公布されて未だ施行をみない内閣法の、第二條第一項の「及び國務大臣十六人以内」を、「並びに從來の各省大臣及び國務大臣の定數以内の國務大臣」と、行政官廳法案の附則において改正するのはいかなる理由に基くや、との質疑に對しましては、入江法制局長官より、行政官廳法案第一條において、「内閣總理大臣及び各省大臣の分擔管理する行政事務の範圍は、法律又は政令に別段の規定あるものを除くの外、從來の例による」とあつて、五月三日現在の行政機構をそのまま受け繼ぐ形となるゆえ、國務大臣の數も、五月三日現在を押えて法文の體裁を整えたのであるとの答辯がありました。
かくして二十四日討論にはいりましたが、自由黨小川原政信君より、行政官廳法案に關しては、各黨共同提案になる修正案を提出する、その他の三案については、原案に贊成の意見の開陳がありました。修正案は、行政官廳法案第十二條に、「但し、地方特別官廳の設置及び廢止については、法律の定めるところによる。」との但書を加えるの修正であります。その理由とするところは、政令により地方特別官廳の新設が認められることになりますと、各省がむやみにいろいろな特別官廳を地方に設置し、地方自治との關係上おもしろくない結果が生ずるため、そのおそれを防止する意圖に出るものであります。次いで進歩黨を代表いたしまして村島喜代君、社會黨を代表いたしまして森本義夫君、國民協同黨を代表いたしまして大津桂一君より、いずれも自由黨と同樣な趣旨の意見の開陳がありまして、討論を終結いたしました。引續き採決に入りましたが、各派共同提案になる修正案は、滿場一致をもつて可決、行政官廳法案は修正議決されました。その他の三法案は、いずれも原案通り滿場一致をもつて、可決いたしました。以上、簡單ながら御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=92
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093・山崎猛
○議長(山崎猛君) 四案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=93
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094・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて四案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=94
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095・椎熊三郎
○椎熊三郎君 直ちに四案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=95
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096・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=96
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097・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに四案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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行政官廳法案 第二讀會(確定議)
宮内府法案 第二讀會(確定議)
恩給法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)
日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に關する法律案 第二讀會(確定議)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=97
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098・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、四案とも委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=98
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099・椎熊三郎
○椎熊三郎君 日程第三十三ないし第三十七の五案は、後囘しとせられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=99
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100・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=100
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101・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程第三十三ないし第三十七は後囘しといたします。
日程第三十八、昭和二十年度第一豫備金支出の件外七件、承諾を求める件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。委員長大谷瑩潤君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=101
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102・会議録情報11
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第三十八
昭和二十年度第一豫備金支出の件
昭和二十年度緊急對策費第一豫備金支出の件
昭和二十年度特別會計第一豫備金支出の件
昭和二十年度特別會計豫備費支出の件
昭和二十一年度第二豫備金支出の件
昭和二十一年度特別會計第二豫備金支出の件
臨時軍事費特別會計豫備費支出の件
臨事軍事費特別會計豫備費外豫算超過支出の件
(承諾を求める件)(委員長報告)
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報告書
一 昭和二十年度第一予備金支出の件(承諾を求める件)
右は本院において承諾を與うべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 昭和二十年度緊急対策費第一予備金支出の件(承諾を求める件)
右は本院において承諾を與うべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 昭和二十年度特別会計第一予備金支出の件(承諾を求める件)
右は本院において承諾を與うべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 昭和二十年度特別会計予備費支出の件(承諾を求める件)
右は本院において承諾を與うべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 昭和二十一年度第二予備金支出の件(承諾を求める件)
右は本院において承諾を與うべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 昭和二十一年度特別会計第二予備金支出の件(承諾を求める件)
右は本院において承諾を與うべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 臨時軍事費特別会計予備費支出の件(承諾を求める件)
右は本院において承諾を與うべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 臨時軍事費特別会計予備費外予算超過支出の件(承諾を求める件)
右は本院において承諾を與うべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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〔大谷瑩潤君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=102
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103・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 ただいま議題に供せられました昭和二十年度第一豫備金支出の件外七件の事後承諾を求める件について、委員會における審査の結果を報告いたします。
昭和二十年度第一豫備金の豫算額は二億圓でありまして、家族手當等のため、その全額を支出しております。
昭和二十年度緊急對策費豫算額は二十億圓でありまして、そのうち十八億三千九百餘萬圓を支出しております。その支出のおもなるものは、戰時災害保護費、戰災者その他就農對策費、歸還輸送費等であります。
次に、昭和二十年度特別會計第一豫備金支出は、造幣局外十四件特別會計に關するものでありまして、九千五百二十餘萬園を支出しております。なお外地關係の朝鮮總督府外七特別會計の第一豫備金または豫備費の支出については、終戰に伴い經理の状況明らかでない關係上、事後承諾案の提出を延期しております。
次に、昭和二十年度特別會計豫備費支出は、食糧管理及び帝國鐵道の二特別會計に關するものでありまして、その支出額は一億二千餘萬圓であります。
昭和二十一年度一般會計改定豫算における第二豫備金の支出額は、四億五千七百餘萬圓であります。
次に、昭和二十一年度各特別會計改定豫算における第二豫備金の支出額は、專賣局における機構整備費百八十餘萬圓であります。
次に、臨時軍事費特別會計における豫備費支出及び豫備費外豫算超過支出でありまするが、豫備費支出については、昭和十二年十月三十日から同二十年十二月一日までの間において、三十二囘にわたり、三百四十五億二千八百萬圓を支出しております。豫備費外においては、一般會計からの繰入金を財源として、二囘にわたり、一億九千三百餘萬圓を支出しております。いづれも戰局の推移に伴うて、臨時軍事費の支出が多く、豫算に不足を生じたものであります。
委員會においては、委員より、會計事務の充實、特に會計事務職員の再教育等の問題について適切なる質問があり、政府より懇切なる答辯がありました後、討論に入り、さらに採決の結果、總員をもつて、本案に對し承諾を與うるに決定いたしました。右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=103
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104・山崎猛
○議長(山崎猛君) 昭和二十年度第一豫備金支出の件外七件は、承諾を與うるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=104
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105・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて八件とも承諾を與うるに決しました。
日程第三十九乃至第四十四は、便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=105
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106・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。
日程第三十九國會議員の歳費、旅費及び手當等に關する法律案、日程第四十、議院に出頭する證人の旅費及び日當に關する法律案、日程第四十一、國會豫備金に關する法付案、日程第十二、議院事務局法案、日程第四十三、國會圖書館法案、日程第四十四、國會職員法案、右六案を一括して、第一讀會を開きます。政府は六案の上程に同意せられました。提出者の趣旨辯明を許します。提出者村上勇君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=106
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107・会議録情報12
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第三十九 國會議員の歳費、旅費及び手當等に關する法律案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會(確定議)
第四十 議院に出頭する證人の旅費及び日當に關する法律案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會(確定議)
第四十一 國會豫備金に關する法律案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會(確定議)
第四十二 議院事務局法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會(確定議)
第四十三 國會圖書館法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會(確定議)
第四十四 國會職員法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會(確定議)
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國会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律案
第一條 各議院の議長は歳費として月額七千円、副議長は五千円、議員は三千五百円を受ける。
第二條 議長及び副議長は、その選挙された当月分から歳費を受ける。議長又は副議長に選挙された議員は、その選挙された前月分までの歳費を受ける。
第三條 議員は、その任期が開始する当月分から歳費を受ける。但し、再選挙又は補欠選挙により議員となつた者は、その選挙の行われた当月分から、繰上当選議員は、その当選の確定した当月分からこれを受ける。
第四條 議長、副議長及び議員が、任期満限、辞職、退職、除名の場合又は死亡した場合には、その当月分までの歳費を受ける。
第五條 衆議院が解散されたときは、衆議院の議長、副議長及び議員は、解散された当月分までの歳費を受ける。
第六條 各議院の議長、副議長及び議員は、他の議院の議員となつたとき、その他如何なる場合でも、歳費を重複して受けることができない。
第七條 議員で官吏を兼ねる者は、議員の歳費を受けるが、官吏の給料を受けない。但し、官吏の給料額が歳費の額より多いときは、その差額を行政廳から受ける。
第八條 議長、副議長及び議員で召集に應じた場合、又は議院の公務により派遣された場合は、別に定めるところにより往復旅費を受ける。
第九條 各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を郵送し及び公の性質を有する通信をなすため、通信費として月額百二十五円を受ける。
第十條 各議院の議長、副議長及び議員の事務補助員は、給料として月額千百五十円を受ける。
第十一條 第三條乃至第六條の規定は、前二條の費用についてこれを準用する。
第十二條 議長、副議長及び議員が死亡したときは、歳費一年分に相当する金額を弔慰金としてその遺族に支給する。
第十三條 この法律に定めるものを除く外、歳費、旅費及び手当等の支給に関する規程は、両議院の議長が協議してこれを定める。
附 則
この法律は、國会法施行の日から、これを施行する。
帝國議会各議院の議長、副議長及び議員の手当に関する法律は、これを廃止する。
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議院に出頭する証人の旅費及び日当に関する法律案
第一條 各議院における議案その他の審査又は國政に関する調査のため、その院の要求により証人として出頭した者には、この法律によつて旅費及び日当を支給する。但し、官吏がその職務の関係で証人となつた場合には、これを支給しない。
第二條 旅費は、鉄道賃、船賃及び車馬賃の三種とし、鉄道旅行には鉄道賃、水路旅行には船賃、鉄道の便なき区間の陸路旅行には車馬賃を支給する。
第三條 旅費は、天災その他止むを得ない事由のため、順路によつて旅行し難い場合の外は、順路によつてこれを計算する。
第四條 日当は、日数に應じてこれを支給する。
日数は各議院に出頭の当日から、証人として滯在した日数及び途中天災その他止むを得ない事由によつて要した日数の外は、鉄道旅行は四百粁、水路旅行は二百粁、陸路旅行は五十粁につき一日の割合を以て通算した日数による。但し、一日未満の端数を生じたときは、これを一日とする。
第五條 鉄道賃及び船賃は、旅行区間の線路及び船舶の旅客運賃(急行料金、通行税、はしけ賃及びさん橋賃を含む)によつて、又車馬賃及び日当は、両議院の議院運営委員会の合同審査会で定める定額によつてこれを支給する。但し、片道百粁以内を旅行する場合は、急行料金を支給しない。
第六條 この法律に定めるものを除く外、旅費及び日当の支給に関する規程は、両議院の議長が、協議してこれを定める。
附 則
この法律は、國会法施行の日から、これを施行する。
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國会予備金に関する法律案
第一條 各議院の予備金は、その院の議長がこれを管理する。
第二條 各議院の予備金を支出するには、事前に、時宜によつては事後に、その院の議院運営委員会の承認を経なければならない。
第三條 各議院の予備金の支出については、これを議院運営委員会の委員長が、次の常会の会期の初めにおいて、その院に報告して承諾を求めなければならない。
附 則
この法律は、國会法施行の日から、これを施行する。
議院事務局法案
議院事務局法
第一條 衆議院及び参議院に各事務局を附置し、左の職員を置く。
一 事務総長
二 参 事
三 副参事
四 主 事
五 常任委員会專門調査員
六 常任委員会書記
各事務局の職員の定員は、その院の議決によつてこれを定める。
第二條 事務総長は、議長の監督の下に、局中一切の事務を統理し、所属職員を監督する。
第三條 各事務局に、その事務を分掌するため、部及び課を置く。
各部課の分掌事務及び各部の分課並びに職員の配置は、事務総長が、これを定める。
第四條 各事務局に事務次長一人を置き、事務総長が、議長の同意を得て参事の中からこれを命ずる。
事務次長は、事務総長を助け局務を整理し、各部課の事務を監督する。
第五條 各部に部長を置き、事務総長が、議長の同意を得て参事の中からこれを命ずる。
部長は、事務総長の命を受けその部務を掌理する。
第六條 各課に課長を置き、事務総長が、参事又は副参事の中からこれを命ずる。
課長は、上司の命を受け課務を掌理する。
第七條 参事及び副参事は、上司の指揮監督を受け事務又は技術を掌る。
第八條 各事務局に衞視長数人を置き、事務総長が、副参事の中からこれを命ずる。
衞視長は、上司の命を受け警務を掌り、衞視副長及び衞視を指揮監督する。
第九條 主事は、上司の指揮監督を受け事務又は技術に從事する。
第十條 各事務局に衞視副長数人及び衞視若干人を置き、事務総長が、主事の中からこれを命ずる。
衞視副長は、上司の指揮監督を受け警務に從事し、衞視を指揮監督する。
衞視は、上司の指揮監督を受け警務に從事する。
第十一條 常任委員会專門調査員は、常任委員長の申出により、事務総長が、議長の同意を得てこれを任免する。
常任委員会專門調査員は、常任委員長の命を受け調査を掌る。
第十二條 常任委員会書記は、常任委員長の申出により、事務総長が、議長の同意を得てこれを任免する。
常任委員会書記は、常任委員長及び常任委員会專門調査員の命を受け調査に関する事務に從事する。
附 則
この法律は、國会法施行の日から、これを施行する。
この法律施行の際、現に衆議院事務局又は貴族院事務局に在職する官吏は、別に辞令を発せられないときは、現に受ける俸給額に相当する給料を以て、それぞれ衆議院事務局又は参議院事務局の國会職員に任用せられたものとみなす。
前項の規定を適用するに当り、勅任事務官及び書記官は、参事に、事務官、理事官、速記士並びに奏任の属及び技手は、副参事に、守衞長は、衞視長たる副参事に、属、技手、速記技手及び判任官の待遇を受ける雇員は、主事に、守衞副長は、衞視副長たる主事に、守衞は、衞視たる主事に任用せられたものとする。
國会図書館法案
國会図書館法
第一條 國会図書館は、内外の図書記録の類を蒐集保存し、議員の調査研究に資する所とする。
國会図書館は、別に定める規程に從い、一般にこれを利用させることができる。
第二條 國会図書館に左の職員を置く。
一 館 長
二 副館長
三 参 事
四 副参事
五 主 事
館長及び副館長は、各各一人とし、参事その他の職員の定員は、館長が、両議院の図書館運営委員会の承認を経てこれを定める。
第三條 館長は、図書館の運営に適当と認められる知識経驗を有する者につき、両議員の議長が、協議してこれを任免する。
副館長、参事その他の職員は、館長が、両議院の議長の同意を得てこれを任免する。
國会図書館の職員は、國会議員又は官吏と兼ねることができない。
第四條 館長は、両議院の議長の監督の下に館務を統理し、所属職員を監督する。
副館長及び参事は、館長の命を受け事務を掌理する。
副参事は、上司の指揮監督を受け事務又は技術を掌る。
主事は、上司の指揮監督を受け事務又は技術に從事する。
第五條 館長に事故があるとき、又は館長が欠けたときは、副館長が館長の職務を行う。
第六條 図書館に、その事務を分掌するため部又は課を置くことができる。
各部課の分掌事務及び各部の分課並びに職員の配置は、館長が、これを定める。
第七條 國会図書館運営に関する規程は、館長が両議院の図書館運営委員会の承認を経てこれを定める。
附 則
この法律は、國会法施行の日から、これを施行する。
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國会職員法案
國会職員法
第一章 総則
第一條 この法律において國会職員とは、各議院事務局の事務総長、参事、副参事、主事、常任委員会專門調査員及び常任委員会書記、國会図書館の館長、副館長、参事、副参事及び主事並びに彈劾裁判所及び訴追委員会の書記長及び書記をいう。
第二章 資格
第二條 國会職員は左の各号の一に該当しない者でなければならない。
一 禁治産者及び準禁治産者
二 懲役又は禁錮の刑に処せられて、その刑の執行を終らない者又はその刑の執行を受けることのなくなるまでの者
三 懲戒処分により官公職を免ぜられ、その身分を失つた日から二年を経過しない者
第三條 各議院事務局の主事若しくは常任委員会書記、國会図書館の主事又は彈劾裁判所若しくは訴追委員会の書記の任用は、左の資格の一を有する者についてこれを行う。
一 四年以上各議院事務局、國会図書館、彈劾裁判所又は訴追委員会の事務又は技術に從事した者
二 三級官吏に任用される資格を有する者
三 國会職員考査委員会において、前各号の一に掲げる者と同等以上の資格を有すると定めた者
四 その從事する職務に必要な学識経驗を有する者で、國会職員考査委員会の選考を経た者
第四條 各議院事務局の参事若しくは副参事、國会図書館の参事若しくは副参事又は彈劾裁判所若しくは訴追委員会の書記長の任用は、左の資格の一を有する者についてこれを行う。
一 八年以上各議院事務局の主事若しくは常任委員会書記、國会図書館の主事、彈該裁判所又は訴追委員会の書記の職に在つた者
二 二級官吏に任用される資格を有する者
三 國会職員考査委員会において、前各号の一に掲げる者と同等以上の資格を有すると定めた者
四 その從事する職務に必要な学識経驗を有する者で、國会職員考査委員会の選考を経た者
第五條 各議院事務局の事務次長又は部長は、左の資格の一を有する者について、参事の中からこれを命ずる。
一 十年以上各議院事務局の参事又は副参事の職に在つた者
二 一級官吏に任用される資格を有する者
三 その從事する職務に必要な学識経驗を有する者で、國会職員考査委員会の選考を経た者
第三章 異動及び在職年数
第六條 國会職員は、各議院事務局、國会図書館、彈劾裁判所及び訴追委員会の間を、それぞれの資格に應じて、同等の條件を以て、その所属を轉ずることができる。
第七條 各議院事務局の事務総長及び常任委員会專門調査員を除く國会職員又は官吏は、それぞれの資格に應じて、同等の條件を以て、官吏又は國会職員にその身分を轉ずることができる。
第八條 官吏としての在職年は、両議院の議長が協議して定める規程により、これを國会職員としての在職年とみなす。
第四章 分限
第九條 國会職員は、その意に反して個人的に減給をされることはない。但し、休職又は懲戒による減給は、この限りでない。
第十條 國会職員は、刑法の宣告、懲戒の処分又は第十一條の規定による外は、免職されることはない。
第十一條 國会職員が、左の各号の一に該當するときは、これを免職することができる。
一 不具、癈疾に因り、又は身体若しくは精神の衰弱に因り、職務を執るにたえないとき
二 本人より免職を願い出でたとき
前項第一号により免職するときは、國会職員考査委員会の審査を経なければならない。
第十二條 第十三條第一項第三号乃至第五号により休職を命ぜられ、満期となつたときは、当然退職者とする。
第十三條 國会職員が左の各号の一に該当するときは、これに休職を命ずることができる。
一 懲戒のため國会職員考査委員会の審査に付せられたとき
二 刑事事件に関し起訴されたとき
三 廃職となり又は定員改正により過員を生じたとき
四 身体又は精神の故障により長期の休養を要するとき
五 事務の都合により必要があるとき
前項第四号及び第五号の規定により休職を命ずるには、國会職員考査委員会の審査を経なければならない。
第一項の休職の期間は、第一号及び第二号の場合においては、その事件が、國会職員考査委員会又は裁判所に繋属中とし、第三号乃至第五号の場合においては満一年とする。
第十四條 休職者は、その身分を有するが、職務に從事しない。
前項第一項第三号乃至第五号の規定により、休職を命ぜられた者に対しては、事務の都合により、何時でも復職を命ずることができる。
第十五條 休職及び復職は、任用について権限がある者が、これを行う。
第十六條 本章の規定は、各議院事務局の事務総長及び國会図書館の館長については、これを適用しない。
第五章 服務
第十七條 國会職員は、國会の事務に從事するに当り、公正不偏、誠実にその職務を盡し、以て國民全体に奉仕することを本分とする。
第十八條 國会職員は、その職務を行うについては、上司の命令に從わねばならない。但し、その命令について意見を述べることができる。
第十九條 國会職員は、本属長の許可がなければ、職務上知り得た祕密を漏らすことはできない。その職を離れた後でも同樣である。
第二十條 國会職員は、職務の内外を問わず、その信用を失うような行爲があつてはならない。
第二十一條 國会職員は、営利を目的とする事業團体の役員又は職員その他の使用人となり、又は営利を目的とする事業に從事することができない。
本属長は、その所属國会職員が、営利を目的としない事業團体の役員若しくは職員となり、又は営利を目的としない事業に從事することが、國会職員の職務遂行に支障があると認める場合においては、これを禁ずることができる。
第二十二條 國会職員は、本属長の許可を受けなければ、本職の外に、給料を得て他の事務を行うことはできない。
第二十三條 國会職員は、本属長の許可を受けなければ、濫りに職務を離れることはできない。
第二十四條 國会職員の勤務時間、居住地、制服その他服務上必要な事項は、本属長がこれを定める。
第六章 給與及び恩給
第二十五條 國会職員は、その在職中給料を受ける。
國会職員は、給料の外、必要な手当その他の給與を受けることができる。
國会職員の給料、手当その他の給與に関する規程は、両議院の議院運営委員会の合同審査会に諮り、両議院の議長が、これを定める。
第二十六條 休職を命ぜられた國会職員は、その休職中、給料の三分の一を受ける。
第二十七條 國会職員及びその遺族は、その國会職員の退職又は死亡により、別に法律の定めるところにより、恩給を受ける。
第七章 懲戒
第二十八條 各議院事務局の事務総長及び國会図書館の館長を除く國会職員は、左の事由があつた場合において、懲戒の処分を受ける。
一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つたとき
二 職務の内外を問わずその信用を失うような行爲があつたとき
第二十九條 懲戒は左の通りとする。
一 戒告
二 減給
三 免職
第三十條 減給は、一月以上一年以下給料の三分の一以下を減ずる。
第三十一條 懲戒は、國会職員考査委員会の審査を経て、任用について権限がある者が、これを行う。
第三十二條 懲戒に付せられる事件が、刑事裁判所に繋属する間は、同一事件について懲戒のため國会職員考査委員会を開くことはできない。
懲戒に関する國会職員考査委員会の決定前に、懲戒に付せられる者に対し、刑事訴追が始まつたときは、事件の判決を終るまでその開会を停止する。
第八章 國会職員考査委員会
第三十三條 國会職員の資格、分限及び懲戒に関する事項を審査するため、各議院事務局、國会図書館、彈劾裁判所及び訴追委員会に、それぞれ國会職員考査委員会を設ける。
第三十四條 國会職員考査委員会は、それぞれ委員長一人、委員若干人でこれを組織する。
第三十五條 各議院事務局に設ける國会職員考査委員会の委員長は、その院の事務局の事務総長、その委員はその院の事務局の事務次長及び部長、他の院の事務局の事務総長及び事務次長並びに國会図書館の館長及び副館長が、これに当る。
第三十六條 國会図書館に設ける國会職員考査委員会の委員長は、國会図書館の館長、その委員は、國会図書館の副館長及び國会図書館の館長が指名する國会図書館の参事並びに両議院事務局の事務総長及び事務次長が、これに当る。
第三十七條 彈劾裁判所に設ける國会職員考査委員会の委員長は、彈劾裁判所の裁判長が、これに当り、その委員は、彈劾裁判所の書記長並びに両議院事務局の事務総長及び事務次長が、これに当る。
第三十八條 訴追委員会に設ける國会職員考査委員会の委員長は、訴追委員会の委員長が、これに当り、その委員は、訴追委員会の書記長並びに両議院事務局の事務総長及び事務次長が、これに当る。
第三十九條 國会職員考査委員会にそれぞれ幹事数人を置き、各委員長が國会職員の中よりこれを命ずる。
第四十條 國会職員考査委員会に関する規程は、両議院の議院運営委員会の合同審査会に諾り、両議院の議長が、これを定める。
附 則
この法律は、國会法施行の日から、これを施行する。
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〔村上勇君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=107
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108・村上勇
○村上勇君 ただいま議題となりました國會議員の歳費、旅費及び手當等に關する法律案外五件について、各派を代表して提案の理由を御説明申し上げます。
これらの五法案は、國會法が施行されますると同時に、ぜひとも必要な附屬法でありまして、國會法をわれわれ議員が立案いたしました本旨に從いまして、議院法規調査委員會において愼重研究、立案いたし、令般各派共同提案をいたした次第であります。
まず國會議員の歳費、旅費及び手當等に關する法律案について申し上げます。本法案においては、從來の歳費年度の制度を廢し、かつ歳費は月額支給といたしました。しこうして從來歳費年度中召集に應じなかつた者に對し、歳費を支給せずとする建前は、諸種の不合理な點がありまするので、これを廢止いたしました。なおその月額は、議長七千圓、副議長五千圓、議員三千五百圓といたしました。一般官吏の振合上、この程度をもつて適當といたした次第であります。また新たに議員が公務で派遣される場合、旅費を受けることといたしました。その他本法案においては、歳費を受ける始期及び終期、議員で官吏を兼ねる者の取扱い、通信手當及び事務補助員手當、弔慰金等を規定いたしました。
次に、議院に出頭する證人の旅費及び日當に關する法律案につき申し上げます。憲法竝びに國會法の規定によつて、議院に出頭する證人に對しては、その實費を辨償する意味において、旅費及び日當を支給することといたしまして、旅費の種類、その計算方法、日當の支給方法等を規定いたしました。すなわち旅費の種類は、鐵道賃、船賃及び車馬賃の三種とし、旅費は原則として順路によつて計算することとし、また日當は日數に應じて支給することといたしました。なお車馬賃及び日當の支給につきましては、兩議院の議院運營委員會の合同審査會で定める定額によつて、支給することといたしました。その他旅費及び日當の支給の手續等に關する規定は、兩議院の議長が協議してこれを定めることといたしました。
次に、國會豫備金に關する法律案につき申し上げます。國會法の規定により、國會の經費中に豫備金が設けられることと相なりましたことは、諸君御承知の通りであります。しこうしてこの豫備金は、その設けられたる本來の趣旨に鑑みまするに、内閣の責任において支出する豫備費とは別個のものでありまして、國會法では豫備金と稱し、豫算面では豫備經費となつており、全然獨立のものでありまするから、議院が必要と認めた使途に支出し得るものであります。よつて本法案においては、豫備金の管理者を議長と定め、その支出については、議院運營委員會の承認を經るものといたし、かつ支出の後、次の常會で議院の承諾を要するものといたしました。けだし國費の使用につき過誤なきを期したのであります。
次に、議院事務局法案につき申し上げます。從來事務局の職員は官吏でありましたが、國會法の規定により、政府とは離れ、立法府の職員となりましたので、國會に附屬する事務局及び圖書館等の構成及びその職員につき、別個の新立法を必要とするのであります。本法案は、事務局の構成につき規定したものでありまして、事務局を構成する職員の種類、その任免の方式及び權限等を規定いたしました。すなわち各議院の事務局の職員は、事務總長のもとに參事、副參事及び主事を置くことといたし、事務次長及び部長は參事の中から、課長は參事または副參事の中から命ずることといたしました。なお守衞の名稱を衞視といたしました。また常任委員會職員については、委員長の申出により、事務總長が議長の同意を得て任免することとし、身分上の所屬を明らかにいたしましたが、仕事は各委員長の命を受け、調査をいたすこととなつております。すなわち國會法の本旨に從いまして、身分上は事務總長に、職務上は委員長の監督に屬することといたしたのであります。
次に、國會圖書館法案について申し上げます。國政に寄與し、かつ一般文化の向上に重大なる關連ある國會圖書館の完成は、われわれの責務でもあり、かつ熱望するところでもあります。本法案はきわめて簡單でありますが、その意圖するところは、これによる國會圖書館の構成を規定し、もつて圖書館の發足を一日も早く企圖するとともに、館長及び圖書館運營委員會の、自由にして活發なる企畫及び運營を期待するのであります。國會圖書館には、館長、副館長のもとに、參事、副參事、主事を置きましてその定員は、館長が圖書館運營委員會の承認を經て定めることといたしました。館長は、圖書館の運營に適當と認められる知識經驗を有する者につき、兩議院の議長が協議して任免することといたしまして、かつ國會圖書館の職員は、すべて國會議員または官吏と兼ねることとができないものといたしました。けだし議院事務局の職員と同樣に、國會圖書館の館長以下職員は、政爭より離れ、政黨的色彩を帶びることなく、獨立公平に、かつ恆久的に事務に慣熟せしむることを意圖したのであります。なお圖書館運營に關する諸種の規程は、國會圖書館の發足とともに必要となるのでありますが、これらは、館長が圖書館運營委員会の承認を經て定めることといたしました。
最後に、國會職員法案について申し上げます。本法案におきましては、國會職員の資格、異動、分限、服務、給與、懲戒等を規定いたしました。その資格については、國會職員としてふさわしく、かつ有能なる者を任用できるようはかりました。また異動については、議院事務局、國會圖書館、彈劾裁判所及び訴追委員會の間の異動、國會職員と官吏との間の異動につき規定をいたしました。分限につきましては、國會職員の免職、休職、復職等につき、それぞれ規定を設けました。服務につきましては、新憲法の精神及び國會職員の本分をとりまして規定いたし、また職員の給與につきましては、本法案においては原則的のものを規定するに止め、その細則は、兩議院の議員運營委員會の合同審査會に諮り、兩議院の議長が定めることといたしました。懲戒につきましては、戒告、減給、免職の三種といたし、最後に國會職員の資格、分限懲戒に關する事項を審議する國會職員考査委員會の組織等につき規定いたしました。
以上をもちまして、各案の提案理由を簡單に御説明いたしましたが、既に法規委員各位の各條にわたる御調査があり、各派においても十分御檢討されたものでありまするから、滿場一致、速やかに本案をお認めくださるよう、切望いたす次第であります。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=108
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109・椎熊三郎
○椎熊三郎君 六案は、第二、第三讀會の順序を省略して、可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=109
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110・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=110
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111・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて六案は第二、第三讀會の順序を省略するに決しました。六案を一括して採決いたします。六案は可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=111
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112・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて六案とも可決いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=112
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113・椎熊三郎
○椎熊三郎君 先に後廻しとなしたる日程第二十一及び第二十二の兩案をこの際一括上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=113
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114・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=114
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115・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第二十一、勞働者災害補償保險法案、日程第二十二、健康保險法の一部を改正する等の法律案、右兩案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長夏堀源三郎君
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第二十一 勞働者災害補償保險法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 健康保險法の一部を改正する等の法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 労働者災害補償保險法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 夏堀源三郎
衆議院議長山崎猛殿
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報告書
一 健康保險法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 夏堀源三郎
衆議院議長山崎 猛殿
附帶決議
一、政府は、國民の健康維持に最大の責任を有するという新憲法の理念にもとづき、現下の國民健康保險の重要性にかんがみ、壞滅にひんしようとする同保險の再建に関して、國庫補助金の増額、保險診療実績による医藥品の配給等に万全の努力をつくすこと。
二、政府は、健康保險の直営病院の建設計画を拡充し、六大都市及び北九州のみに限らず、全國的に多数建設し、健康保險診療の改善に努めること。
三、政府は、厚生年金保險法による積立金が事業主並びに被保險者の保險料の積立てられたものであるのに鑑み、その運用に関しては被保險者の福祉増進のために、還元するように適切なる措置を講すること。
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〔夏堀源三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=115
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116・夏堀源三郎
○夏堀源三郎君 ただいま議題となりました勞働者災害補償保險法案及び健康保險法の一部を改正する等の法律案の、委員會の經過並びに結果を御報告申し上げます。
本委員會は、三月二十日より三日間にわたつて會議を開きまして、愼重に審議を進めたのであります。本法案の審議にあたりましては、各委員と政府側委員との間に、活發なる質疑應答が重ねられたのであります。詳細は速記録により御承知願うことにいたしまして、その主なる點を申し上げます。
第一に、既に實施されておりまする健康保險法、更生年金保險法との關連についてでありまするが、事務の煩瑣を避けるために、これらの三制度を一本に統合するつもりはないかとの委員側の質問に對し、政府側より、從來の健康保險法、更生年金保險法より、業務上の給付をとつてこの保險に一括したのであるが、これらの三制度を一本に統合することについては、十分に研究してみるとの答辯がありました。
第二に、國の直營事業または官公吏を適用から除外した理由いかんとの質問について、政府側より、現在國の直營事業の從業員または官公吏には、現行の共濟制度を擴充していくつもりであるとの答辯がありました。
次に、療養補償費の支給額は、療養に要した費用を全部支拂うのかとの質問に對しては、療養に要する費用は、原則としては全額現金で支給する方針であるが、その額が社會通念上から見てはなはだしく高額のものについては制限するとの答辯でありました。
次に、勞働基準法の審査委員會と、本保險の審査委員會とを、一本に統合するつもりはないかとの質問に對しては、法が別個であるので、一應別個に審査委員會を設置したのであるが、實際の運用にあたつては、十分に連絡をとつていく考えであるとの答辯でありました。
次に、健康保險法の改正に關し、その診療料金が適正でなかつたこと、またその事務が醫師にとり煩雜なりし等のために、十分なる治療を受けることができなかつたという遺憾な點があつたが、これらを是正してもらいたいという頼問に對しましては、診療料金の適正化、また事務の煩瑣については、診療報酬の適正化のために各府縣に委員會を設け、あるいは現金給付等を實施して、十分便宜をはかるとともに、公的診療機關を、六大都市及び北九州に設置して、被保險者の便宜をはかろうという考えであるとの答辯がありました。
以上で各委員の質疑を終了いたしました。續いて討論に移り、進歩黨の鹿島君より、原案贊成の意見の陳述がありまして、同時に各派共同提案として、三項目にわたり附帶決議が提出されました。附帶決議を朗讀いたします。
附帶決議
一、政府は、國民の健康維持に最大の責任を有するという新憲法の理念にもとづき、現下の國民健康保險の重要性にかんがみ、潰滅にひんしようとする同保險の再建に關して、國庫補助金の増額、保險診療實績による醫藥品の配給等に萬全の努力をつくすこと。
二、政府は、健康保險の直營病院の建設計畫を擴充し、六大都市及び北九州のみに限らず、全國的に多數建設し、健康保險診療の改善に努めること。
三、政府は、更生年金保險法による積立金が事業主竝びに被保險者の保險料の積立てられたものであるのに鑑み、その運用に關しては被保險者の福祉増進のために、還元するように適切なる措置を講ずること。
こういう三項目であります。引續き兩案の採決をいたしました結果、委員全員の贊成を得て可決されました。さらに三項目の附帶決議も、採決の結果、これを附するに決しました。以上、簡單ではありまするが、委員會の審議の經過竝びに結果を御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=116
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117・山崎猛
○議長(山崎猛君) 兩案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=117
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118・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて兩案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=118
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119・椎熊三郎
○椎熊三郎君 直ちに兩案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=119
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120・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=120
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121・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに兩案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
――――◇―――――
勞働者災害補償保險特別會計法案 第二讀會(確定議)
健康保險法の一部を改正する等の法律案 第二讀會(確定議)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=121
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122・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、兩案とも委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=122
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123・椎熊三郎
○椎熊三郎君 殘餘の日程を延期し、本日はこれにて散會せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=123
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124・山崎猛
○議長(山崎猛君) 椎熊君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=124
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125・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。次會の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後九時十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02919470328&spkNum=125
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