1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
勞働基準法案(政府提出)(第九號)
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昭和二十二年三月十七日(月曜日)午後二時三十二分開議
出席委員
委員長 矢野庄太郎君
理事 小島徹三君 理事 椎熊三郎君
理事 土井直作君
江崎眞澄君 江藤夏雄君
藥師神岩太郎君 中山たま君
青木清左ヱ門君 小川半次君
齋藤てい君 荒畑勝三君
伊藤卯四郎君 山崎道子君
石田一松君 野本品吉君
野村ミス君
三月十五日委員山口好一君及び綿貫佐民君辭任につきその補闕として江藤夏雄君及び田中實司君を議長において選定した。
三月十七日委員佐藤久雄君、山下春江君、田中實司君及び山田悟六君辭任につき、その補闕として青木清左ヱ門君、中山たま君、藥師神岩太郎君及び齋藤てい君を議長において選定した。
出席國務大臣
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
厚生事務官 吉武惠市君
厚生事務官 寺本廣作君
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本日の會議に付した議案
勞働基準法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=0
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001・矢野庄太郎
○矢野委員長 前會に引續き會議を開きます。一昨日大體質疑は終了いたしましたが、これで質疑を打切りたいと思います。御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=1
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002・矢野庄太郎
○矢野委員長 異議がなきものと認めます。それではただいまより勞働基準法案を議題として討論に付します。討論は通告順によつてこれを許します。小島徹三君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=2
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003・小島徹三
○小島委員 私は自由黨を代表して原案に贊成するものであります。しかし御承知のように、本法案は非常に進歩的なものでございまして、現在の日本の經濟上の段階におきましては、相當これを適用するのに無理があるのではないかということは、各委員が一致して政府に質問せられたところであります。その結果非常に無理があるからして、中小工業者に對しては特別に政府は保護しなければならぬという考え方の方もありますし、またある一面においては、このような法案を適用した結果、中小工業とか、あるいは一般の企業家というものが、國際競爭場裡において立つことができない。競爭に耐えなくなるであらうからして、これらを國家企業にしたらどうかというような意見がありまして、それぞれその結果につきましてはいろいろ意見がございますけれども、ともあれこの法律が非常に進歩的なものであるかどうか、現在の段階におきまして直ちに適用することに無理があるのではないかということにつきましては、みな危惧の念をもつておる次第であります。しかしながらこの法案というものは、現在の段階において非常に困難を伴うものであるといたしましても、憲法において保障しておるところの人間としての生活を保障された勞働者の權利を擁護するものでありますからして、何としてもこれはそのまま適用していかなければならない。もしもこの適用にあたりまして手心を加えて、大目にこれを見逃していきますれば、永久に日本の勞働者は救われないということになりますから、政府はこの點につきまして十分なる熱意と、また落ちのない研究を拂つて、適用については間違いのないようにしていただきたいということを希望いたしまして、私は贊成するものであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=3
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004・矢野庄太郎
○矢野委員長 椎熊三郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=4
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005・椎熊三郎
○椎熊委員 この勞働基準法がこの内閣の手によつて立案せられて、そしてわれわれ新憲法をつくつたこの議員によつて、この法案を審議決定することのできることを、私は非常に光榮と思ふと同時に、この法案の決定によつて、日本の勞働者の階級に對しては畫期的な一つの革命的問題であると思われます。すなわちこの法案の確定によつて、日本の勞働者の地位は、人としての生活を保障せられ、そうして世界の水準におけるところの勞働規約の下に、勤勞に意欲を發揚することができるような状況に立ち至るということは、わが國の勞働者のために同慶にたえない。この審議の經過を見ますると、各黨とも根本的にはほとんどこの法案に熱意をもつて贊成せられておるようでございます。個々の點については多少の意見もあつたようでございまするけれども、概してこの法案の進歩性、しかも今日まで政府が提案した法律の中で、わが國議會制度始まつて以來、かくのごとき進歩的な方法をもつて、決定した政府提出の法律案というものは、これをもつて嚆矢とするであろうと私は考えるのであります。法律の内容から見ますると、敗戰後の現實の日本から見てすこぶる飛躍的であり、すこぶる實情に適さざるがごとき觀を呈する點もなきにしもあらずでございまするけれども、これらといえども眞の日本の産業界の將來のあり方を見まするならば、これでなくてはいかぬと思うのです。舊來のごとく低賃金制度、あるいは勞働者の犧牲においての廉價貿易をやるというようなことは許されないことなんである。まず勞働者の生活を現實に擁護してやる。そうして地位を認め、人格を尊重し、その基盤の上に立つた企業でなければ、ほんとうの意味の産業ではないと私どもは思います。よつて現在の日本の中小企業の上からは、ややこれを受入れるには困難の點があるかもしれぬが、かくのごとき革命的の法律をつくる以上は、初めからすんなりゆくわけがないので、多少の困難が伴いましても、斷じてこの法案を施行すべきものであると私どもは確信いたします。この意味におきまして、法案の個々の條章については多少の意見もございましたが、今この法案の個々の問題に手を加えて、それがまた關係方面との事情を生じたり、樞密院との關係が生じたりすることによつて、この法案の成立が萬一にも遲れるというようなことがあるならば、實に申譯ないことだと私どもは思います。今や私どもは既に議會の解散も目睫に迫つております。新憲法を審議決定したわれわれの光榮は、續いてこの勞働基準法を審議確定することか、短い會期ではあつたが非常に重大な意義をもたらすものであることを確信するがゆえに、多少不滿の點はございましたが、政府提出の原案通り無修正のままに私は通過せしめたい。こういう考え方でございまして、日本進歩黨は原案に滿腹の敬意を表して贊成するものでございます。以上贊成の理由を申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=5
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006・矢野庄太郎
○矢野委員長 荒畑勝三君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=6
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007・荒畑勝三
○荒畑委員 社會黨は原則的に本案に贊成でございます。もう既に意見は十分に盡されましたから、ここで詳しい説明は申しませんが、ただ本案に對しまして私どもとしてはきわめて經微なる修正の意見を有しております。ただわれわれの提出しようといたしまする修正の箇條は、印刷が間に合いませんで各委員のお手許へまわしておけませんので、ここで討論の基礎といたすことができませんので、その點については本會議の討論に讓りまして、ただかような點において、私どもが修正意見を抱いているという點だけを、ここで申し上げておきたいと思います。
第一に法案第二十條、「使用者は、勞働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその豫告をしなければならない。三十日前に豫告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支拂わなければならない。」この點につきましては、私どもは三十日を六十日と修正いたしたいと考えております。
次に第二十四條の第二項、「賃金は毎月一囘以上、一定の期日を定めて」云々とありますのを、二囘以上と修正いたしたいと存じます。
第三は、第二十六條、「使用者の責に歸すべき事由による休業の場合においては」云々とありますのを、「勞働者の責に歸すべからざる理由による休業の場合においては」云々と修正いたしたいのであります。
次に第三十條の第四項の次に、「賃金委員會は、最低賃金に關する發議權を有する」という一項目を挿入し、第五項中「前三項」を「第二項乃至第四項」に改めたいのであります。
次に第三十二條、「使用者は、勞働者に、休憩時間を除き一日について八時間、一週間について四十八時間を超えて、勞働させてはならない。」この條文を、「使用者は、勞働者に、休憩時間を含み一日について八時間、」かように修正いたしたいのであります。
次は第三十四條、「使用者は、勞働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を勞働時間の途中に與えなければならない。」これを、「使用者は、勞働時間が五時間を超える場合においては少くとも四十五分、七時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を與えなければならない」と修正いたしたいと思います。
次に第五十六條、「滿十五歳に滿たない兒童は、勞働者として使用してはならない。但し、滿十四歳以上の兒童で、命令で定める義務教育の課程又はこれと同等以上と認める課程を修了した者については、この限りでない。」これを、「滿十六歳に滿たない兒童は、勞働者として使用してはならない。但し、滿十五歳以上の兒童で」云云と十五歳を十六歳にし、十四歳を十五歳に修正いたしたいと存じます。
最後に第六十條の第二項「第五十六條第二項の規定によつて使用する兒童については、第三十二條第一項の勞働時間は、修學時間を通算して、一日について七時間、一週間について四十二時間とする。」この第二項を「第五十六條第二項の規定によつて使用する兒童については、第三十二條第一項の勞働時間は、修學時間を通算して、一日について六時間、一週間について三十六時間とする。」かように修正をいたしたいのであります。これらの點は既に質問の際にわが黨の各委員によりまして説明せられたところでありますから、その詳しい理由の説明はここでは省くことにいたしておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=7
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008・矢野庄太郎
○矢野委員長 石田一松君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=8
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009・石田一松
○石田委員 私は國民協同黨を代表いたしまして、大體において本案の精神に贊成するものでございますが、一部の修正意見を申し述べたいと思います。それは第五十六條の「滿十五歳に滿たない兒童は、勞働者として使用してはならない。但し、滿十四歳以上の兒童で、命令で定める義務教育の課程又はこれと同等以上と認める課程を修了した者についてはこの限りでない。」その末尾に「この場合使用は、これらの兒童で定時制の高等教育を受けようとする者に對して修學に關する便宜を與えるようにつとめなければならない」という規定を挿入することをここに提議いたします。この理由につきましては本會議においても本委員から質問もし、その意見も申し述べておりますが、少くとも終戰前までは、滿十八歳までの勤勞青少年は青年學校に學ぶ義務をもち、また使用者としてもこれに勉學の機會を與える義務をもつておつたのでありますが、戰爭中の青年學校は軍國主義的色彩の濃厚なものでありまして、すでにこれが文部省あたりの言明によりましても、高等學校程度のパート・タイムの學校として更生するという意思表示、言明もいたしました。私はこの際この定時制の學校に働きつつ學ぼうとする向學の氣に燃えた青少年に、道徳的でなくて法律的根據のある就學の機會を與えようという意味において、この五十六條の末尾にただいま申し上げました規定の挿入を主張いたします。社會黨の修正案に對しても全面的にこれに贊成の意を表して、國民協同黨の討論にかえます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=9
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010・矢野庄太郎
○矢野委員長 石田君にお尋ねいたしまするが、あなたの方の修正案は、まず五十六條の中で滿十五歳とあるのを滿十六歳というように書き直す。それから五十六條の但書に滿十四歳とあるのを十五歳に書き直すということのほかに、五十六條第一項の末尾に「この場合使用者は、これらの兒童で定時制の高等教育を受けようとする者に對して修學に關する便宜を與えるようにつとめなければならない。」こういうことになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=10
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011・石田一松
○石田委員 そうであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=11
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012・矢野庄太郎
○矢野委員長 なおお尋ねいたしまするが、それ以外はやはり社會黨と同じような修正案でございますね。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=12
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013・石田一松
○石田委員 そうです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=13
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014・矢野庄太郎
○矢野委員長 わかりました。討論は終局いたしました。これより採決を行います。先ず社會黨と國民協同黨との修正案で共通でない部分は第五十六條、第一項の末尾の「この場合使用者は、これらの兒童で定時制の高等教育を受けようとする者に對して、就學に關する便宜を與えるようにつとめなければならない。」という點であります。この共通でない部分は後にまわしまして、社會黨と國民協同黨との共通部分についてまず採決いたします。修正案のうちでこの共通部分の修正案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=14
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015・矢野庄太郎
○矢野委員長 起立少數であります。
次に國民協同黨提出の修正案で、社會黨と共通でない部分があります。その部分はただいま申し上げました五十六條の第一項の末尾に加えようという修正案であります。これについて採決いたします。この修正案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=15
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016・矢野庄太郎
○矢野委員長 起立少數であります。よつて修正案はともに否決となりました。
續いて原案について採決をいたします。政府原案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=16
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017・矢野庄太郎
○矢野委員長 起立總員、よつて政府原案は可決と相なりました。(拍手)
これにて本委員會に付託された議案の審査は終了いたしました。一言御挨拶を申し上げます。不肖私が無事にこの重大なる任務を務め得ましたことは、皆さんの御同情と御支援の賜であると深く感謝いたします。本日はこれをもつて散會いたします。
午後二時五十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213758X00619470317&spkNum=17
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