1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
勞働者災害補償保險法案(政府提出)(第四七號)
健康保險法の一部を改正する等の法律案(政府提出)(第六六號)
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昭和二十二年三月二十四日(月曜日)午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 夏堀源三郎君
理事 水口周平君 理事 山下榮二君
小澤國治君 岡部得三君
中山たま君 山口靜江君
中原健次君 田中たつ君
鹿島透君
三月二十四日委員松岡駒吉君辭任につき、その補闕として山下榮二君を議長において選定した。
三月二十四日理事松岡駒吉君の補闕として山下榮二君が理事に當選した。
三月二十二日健康保險法の一部を改正する等の法律案(政府提出)の審査を本委員に付託された。
出席政府委員
厚生事務官 石丸敬次君
厚生事務官 友納武人君
厚生事務官 岩瀬繁一君
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本日の會議に付した議案
勞働者災害補償保險法案(政府提出)
健康保險法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=0
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001・夏堀源三郎
○夏堀委員長 會議を開きます。一昨二十二日本會議にて本委員會に健康保險法の一部を改正する等の法律案が併託になつております。これより同案を議題に供します。まず政府より提案理由の説明を求めます。政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=1
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002・石丸敬次
○石丸政府委員 ただいま議題となりました健康保險法の一部を改正する等の法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。
今般勞働基準法の制定に伴いまして勞働者災害補償保險制度が新たに設けられまする關係上、從來の健康保險法及び厚生年金保險法における勞働者の業務上の災害に對する給付を、勞働者災害補償保險制度へ移す必要が生じましたので、これに伴いまする所要の改正をすることといたした次第でございます。從いましてこの改正の結果は、健康保險におきましては、業務外の事故に對してのみ給付をいたすことになりましたし、厚生年金保險におきましては、業務外の事故に對して給付をいたしまするほか、業務上の事故につきましても、場合によりまして、勞働者災害補償保險からの給付を受ける一定の期間を經過したのちにおいても、一定の給付をするということとなつたのでございます。
厚生年金保險におきましては、障害給付につきまして、被保險者の最終三箇月間の平均標準報酬を給與額の計算の基礎とすることといたしまして、最近の經濟界の變動に伴いまして生じまする被保險者の不利益を是正いたしまするほか、障害給付及び脱退手當金の支給條件を緩和いたしまする等、保險給付の内容につきまして若干の改正をいたしたのであります。
その他この事業の民主的運營をはかりまして、その適正なる給付を實行できるようにいたしまするために、健康保險委員會、厚生年金保險委員會というものをそれぞれ設置いたしまするとともに、保險審査官制度を設けまして、速やかに公正なる裁決をし、給付の適正迅速を促進いたしまするようにいたした次第でございます。
以上はきわめて要點のみを御説明申し上げたのでありますが、御審議の間に十分御納得のまいりますように、政府委員といたしましてはお答え申し上げるようにいたしておりますので、愼重審議の上速やかに御決定あらんことをお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=2
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003・夏堀源三郎
○夏堀委員長 これにて同案の提案理由の説明は終了いたしました。別段質疑の通告はございません。暫時休憩いたします。
午前十時五十一分休憩
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午前十一時十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=3
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004・夏堀源三郎
○夏堀委員長 休憩前に引續き會議を開きます。これより質疑を行うことにいたします。質疑は通告順によつてこれを許します。中原君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=4
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005・中原健次
○中原委員 健康保險法の一部を改正する法律案に關連いたしまして、健康保險施行上の現況に關することをお尋ねをいたしたいと考えるのであります。由來この健康保險は勞働者にとりましては非常に大きな關心事でありまして、健康保險によつて救われる人が大きいだけ、それだけ勞働階級は健康保險を頼みといたしてまいつたのであります。しかるに健康保險の實際の施行の部面におきまして、せつかくの勞働者の期待に反する實情があるのでございます。それは何かと申上げますとせつかく醫療の給付を受けまして、その勞働者が期待いたしましたような結果をみることがはなはだ困難な事情にある。殊に最近藥價の大幅な高騰につれまして、なおさらその傾向が著しくなつてまいつたのでありますが、これに對して政府はどのような御所見をもたれ、かつ解釋を御考究になつておいでになるか、ということについて、ひとまずその點の見解を承つて、さらに質問を續けたいと考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=5
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006・友納武人
○友納政府委員 お答え申し上げます。健康保險の實施につきましては、われわれ非常に苦心をしているのでありますが、健康保險の診療實績と申しますが、健康保險によつて勞働者が醫師に診斷を受ける者が一番高かつた時代と申しますのは昭和十五年でございます。われわれは診療をどの程度受けるかというのを受診率と呼んでおりますが、受診率というものはどういうものかということを簡單に御説明申上げますと、勞働者一人が一年間に平均して何囘くらい醫師にかかるか。もちろん長くかかる者もありますし、一日でやめる者もございますが、要するにそれをおしなべて、勞働者一人が一年間に何囘くらい被保險者證をもつて醫師の所に行くかということを受診率と呼んでおります。それが昭和十五年頃におきましては二・五、從つて勞働者一人が被保險者證をもちまして醫師の所に參りますのが、平均して二囘半ずつあるというような實情でございました。それがだんだん低減してまいりまして昭和十八年には一・五程度に下つたわけであります。この受診率がだんだん低下いたしまして一番下つた時と申しますのは、ちようど終戰の直後でありまして、〇・三、すなわち言いかえますと、勞働者が一年間に醫者にかかる率というものは〇・三囘しかない。すなわち三人に一人が年に一囘かかるというふうな程度まで落ちたのであります。なぜこういうふうに落ちたかというような實情につきましては、ただいま御質問の中にもありましたような事情が影響いたしているのでありますが最近におきましては、この受診率の下降カーブと申しますか、低減の状況というものががらつと變りまして、毎月毎月上昇しておるのであります。現情は昨年の十二月におきまして、〇・九まで囘復をしてまいつたのであります。今年にはいりましての數字は、まだつかんでおりませんが、おそらく一を越す、すなわち一年間において各被保險者、各勞働者が、平均して一囘以上この被保險者證によつてかかるというふうになつてまいつておるのであります。この傾向は一般社會情勢、いわゆる經濟的に勞働者が困難な状況にあるというようなことも影響しておるのでありましようが、とにかく健康保險の受診率と申しますものは、われわれが空に考えますと依然として低下しつつあるというふうに考えますが、數字の上におきましては段々上昇しつつあるわけであります。政府といたしましてどういう對策を考えて、どういう所見を持つておるかという御質問でありますので、以下簡單に今後健康保險をどういうふうにしていこうかということについて、考えておるところを申上げたいと思うのでありますが、まず第一は健康保險が振わない理由といたしまして、社會保險の診療料金が、適正ではないということを、醫師が一つの理由として述べておるのであります。この點を是正いたしますために、社會保險の診療料金というものを民主的にきめると申しますか、醫師なりあるいは組合員なり、あるいは勞働者なりというような、各方面の人をもつて一つの委員會を構成いたしまして、それも各府縣ごとにつくりまして、そうしてそこで十分に論議を盡して、大體こういうところが、適正であろうというように、診療料金の適正を期するということについて、努力をまず第一に拂つておるのであります。もちろんこの點につきましては、從來診療料金の決定と申しますものが、政治的な折衝によつてきまつておつたり、非科學的と申しますか、實際の數字上の基礎がなくてきまつておつたというような傾向もございました。その點も是正してまいりたいと考えておる次第であります。
第二に健康保險が振わない理由といたしまして、いわゆるやみによる醫藥品の購入と申しますか、お醫者さんがやみ値でなければ醫藥品を手にすることができない。從つて健康保險のような公定價格による診療はできないということを第二の理由としてあげておるわけであります。この點につきましては、各方面と折衝中でありますが、大體の見透しは、先般この委員會で申上げましたように、日本の全醫藥品の生産量の何パーセントかを附加配給といたしまして、保險診療の實績によつてお醫者さんの手もとに行くようにいたしたい。かように考えておるのが第二の點であります。
次に第三の問題といたしまして、醫師が健康保險をきらう。從つて健康保險が振わない理由としてあげますのは診療報酬がおくれる。いわゆる實際に診療をしてから、診療報酬が手に入るまで、はなはだしきは六箇月くらいかかるというふうな非難があるのであります。この點につきましても、政府といたしましては、種々對策を練りまして、なぜおくれておるかという根源をいろいろ調査をいたしました結果、大體醫師の社會保險の診療料金というものがおくれても二箇月。あるいは規定通りに一箇月おくれて拂えるというような見透しもついておりますので、これに關するいろいろの手も打つております。
第四に健康保險が歡迎されない理由といたしまして、事務的にめんどうである。お醫者さんの手數が煩雜でかなわぬ。こういうような聲があるのであります。この點につきましてはいろいろ研究をいたしておりまするが、從來もこれ以上簡單にできないと思われるくらい、政府としては簡素化しておるのでありますが、こういう聲がまだあるといたしますれば、何らかやはり考えなければいけないと思いまして、考究をしておる次第であります。
そこで以上のようなことを考えておる次第でありまするが、來會計年度の四月からはこういうふうにいたしてまいりたいと考えております。その點はいわゆる現金給付とわれわれ呼んでおりますが、保險醫なり、あるいは保險醫でない醫者のところにまいりまして診療を拒否された。あるいはいい顏をして診療してもらえないというようなことが、よく勞働者側、被保險者側から非難の聲として出しおるのでありますが、こういう聲に對する對策といたしまして、いわゆる現金給付、すなわち自由診療でお醫者さんにかかつて、その領收證を保險官署——保險廳なりあるいは保險出張所なりに持つてまいりまして、それに對して料金の拂い戻しを受けるというような方法を實施いたしたいと考えております。こういう制度につきましては缺點もございますので、十分留意をして是正をしてまいりたいと思つておりますが、現金給付の支給というような點についてもそういうような考えをもつておる次第であります。
それからもう一つそれに關連いたしまして最後に附け加えておきますが、醫師側から、自分たちが保險醫になつたのは、政府が強制的に指定したのだ從つて自分ではやる氣がないにもかかわらず。政府がかつてに指定したものである。こういうような非難の聲がありますので、最近の醫療方面の實情から考えまして、ある程度自由意思による保險醫の辭退を認める。すなわちどうしても保險醫になつておつて、保險證によつて診療ができないという人には保險醫を辭退する途を開く。こういうことによつて醫師の不平を緩和するということも考えておる次第であります。大體政府の考えておりまするようなことを申し上げた次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=6
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007・中原健次
○中原委員 當局のいわゆる改善對策については、まことに同感いたす點が多々あるのでありますが、私は一應この場合、保險醫がいろいろ患者に對して取扱いが不親切である一、二の點を申し上げて、御參考に供したいと思うのであります。前にもこういうようなことはよく議論されておりまするので十分御存じのことと思うのでありますが、その實情があまりにも極端である場合に私どもはしばしば際會いたしておるのであります。たとえば急病が起りまして——これは私が身近かに經驗いたした問題でありますけれども、私の近くに住んでおりまする工場勞働者が、常に持病として急性胃カタルを起すのでありますが、その場合にはなはだしく苦しみまして、いわゆる七轉八倒の苦しみをするというような實際がしばしば繰返されたのであります。ある日ちようど夜中の一時ころのことであつたのでありますが、そのときもたまたま少々殘業をして歸つてまいりました。冷えこみがもとでありましたろう、急に大きな苦痛を訴えまして、家族のものも取りしずめにもてあましておるという状況があつたのであります。このまま時間を經過すればおそらく命を失うのではなかろうかと氣ずかわれる状態を現出したのであります。直ちに使をもつてお醫者を迎えに行かしたのでありますがどうも夜中のことでこれを快諾せなかつたのは當然でありますが、しかもそれが健康保險患者であるということを日ごろの經驗からよく承知しておりますので、なかなか積極的に動こうとしなかつたのでありますさらにその夜が明けまして、七時ごろもう來てくれる時期であろうと家族は首を長くして待つておりましたが、まだ來てくれない。さらに第二の使を馳せましたところが、今急患があるからしばらく行けないという答えであつたそうであります。被保險者の家族は私の方も急病なんだが、ということを言いましたが、お醫者は健康保險患者の急病は急病として扱つてくれなかつたのであります。直ちに私のところへ相談に參りましたので、私は電話をもつてその醫者を電話口へ呼び出しましてもちろん健康保險のはなはだ低廉なるために、あなたが十分治療しようという熱意をもたれないであろうことはわかる。普通算盤もつようにできておる人間は、そのことを必ずしも無理とは自分は考えないけれども、かりにも健康保險醫としてその衝に當つておる以上は、醫者としての責任において利害を越えてもこの場合急患に對する處置を講じてくれるのが本當ではないか。しかも聽くところによれば、一方に急患があるからお前のところへの往診はいつになるかわからないという囘答をなさるに及んでは、はなはだふらちではないかというふうな抗議をいたしましたところが、先生は私が電話をしたものでありますから、不承々々やつて來てくれましたが、しかしながらそのような實情は、實際過去においてしばしば繰返されたのであります。幸いにその患者はために命を落すこともなく囘復はいたしましたけれども、萬一病状のいかんによりますと、醫者の手當が遲れたために命を失する場合がしばしばあるのであります。そこで私は、ただひとりこれは醫者の責任なりとして、醫者のみとがめることがはたして適當なことであるかどうか、いかに醫者といえども、現在のように少くとも私有財産制度のもとにおきましては、自分の生活を護るために、自分の財産を常に考慮の中に入れつつ、つまり自分の利益を考慮に入れつつ働くことはまたやむを得ないであろうことが考えられる以上は、國家としては少くとも醫療費についての再吟味が要るのではないか。もちろんただいま藥品の闇値の買入等に對する對策を講ずるというお言葉がございましたが、それももちろん大切な問題でございますけれどもさらに進んで、基本的に、今日の價格が、いわゆる醫療費が妥當な數字かどうか。この點は單に藥の仕入價格を安くするということだけをもつて解決するのではなくて、基本的にその價格が適當であるかどうかということの再吟味が必要になつてまいるのではないかと思います。それにつきましても、ただいま、委員會の機關を設けて、委員會によつて適當にというお言葉がございましたが、そうなりますと、今日の保險料金と國庫の補助金等とのにらみ合せにおいて、その醫療費がどのような結果になるか、この醫療費の收支の關係がはたしてどうなるのかという問題に、當然發展してくるのでありますがこれに對して何か政府におかれて具體的な、計數的な吟味をなさつたことがあろうかどうか、さいわいありますならば、その具體的な内容を承つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=7
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008・友納武人
○友納政府委員 具體的な數字の問題でありますが、正確な數字をここにもつておりませんので、もし申し上げることが違つておりましたらあとで訂正をさしていただきますが、大體のことを申し上げたいと思います。昨年の十二月から今年の一月にかけまして、醫療費の調査をいたしました。これは全國の中から地域的に七府縣を選びまして、相當數の、大きな病院、中病院、小さい診療所、もちろん開業醫も含めまして、これらを調査をしたのであります。その結果によりますと、こういうような數字が出ておるのであります。健康保險、他の社會保險もみな同じでありますが、これの診療費の基礎を、一劑一日分、すなわち内服藥としてわれわれがお醫さんから貰います一劑一日分の藥價と申しますか、診療費というものを基礎において、それを一點の單價というふうに呼んでおります。すなわち盲腸の手術は二百五十點あるいは往診は四點というふうに、一劑一日分を一點と定めまして、その一點の單價というものを基礎にしていろいろな診療料金を社會保險ではきめておる次第であります。それを頭におきまして御説明申し上げますと、ただいま申し上げました調査によりますと、大體昨年の十二月から本年の一月の時期におきましては一點の單價が二圓、すなわち一劑一日分が二圓で必要にして十分な費用が賄われるという數字が出たのであります。これを本年の一月から三月までの物價指數の上昇状況というものを勘案いたしまして、一月から三月までの一點の單價はどれくらいにしたら必要にして十分かということを計算いたしますと、二圓三十錢という數字が出たのであります。この二圓三十錢という數字の基礎の詳しいことが御必要であれば、後刻差上げますが一つの假定を置いております。その假定は、醫師の家族を六人というふうに假定をしております。それから家族一人當りの生計費というものを千二百圓六人で七千二百圓というふうに假定をしております。なぜ七千二百圓に醫師の生計費を見積つたかということは、むずかしい問題でありますが、實際の調査から現われました生計費に基礎を置きまして檢討したものであります。すなわち醫師の家族を平均六人と見てそうして家族一人について千二百圓の生計費が一箇月に要るというふうな前提を置いて計算をいたしました結果が一點の單價が二圓三十錢であればいわゆるとんとんに賄えるという數字が出ているのであります。從つて一月から三月までの間におきまする社會保險の診療料金と申しますものを、多少の利潤とか、あるいは例外的な平均以下の醫師に對する補償も含めまして、二圓三十錢に二十錢の餘裕を見込みまして一點の單價を二圓五十錢というふうにきめまして、それを基礎にして、各府縣の都市であるとかあるいは郡部であるとかいうような、土地々々の實情を考慮に入れまして、一點の單價を、先ほど申し上げました委員會において適當に決定をしてもらいたい、こういうような方針で一點の單價をきめているのであります。すなわち全國平均の所におきましては、一劑一日分の單價が二圓五十錢であれば、大體醫師の生活というものは一月から三月までの間におきましては賄えるというふうな數字が出ているのであります。これを一般的慣行料金と比較をいたしますと——現在醫師がとつております料金のことを慣行料金というふうに申しておりますが、この慣行料金につきましては、國民醫療法に規定があるのでありまして、日本醫師會なり都道府縣醫師會なりが協議をしてきめまして、厚生大臣に屆出れば効果を發生するのであります。すなわち醫師が實際において普通にとつている料金のことを慣行料金というふうにわれわれは呼んでいるのでありますが、この慣行料金と比較いたしますと、診察、入院、この診察の中には、初診であるとか再診であるとか往診というものを含めますが、大體診察と入院、それから手術というふうなものにつきましては、一點の單價を二圓五十錢に全國平均を置きましたときには、多少上まわる程度であります。社會保險の方が高くなる程度であります。それから、藥價、いわゆる内服藥とか、その他特殊の頓服藥であるとかいうふうな藥價につきましては、慣行料金の方が多少上まわつている、いわゆる社會保險の方が低いというような實情にあります。しかし慣行料金と社會保險の料金を比較いたしますと、高いものもあり低いものもあるというような程度で、大體においては一致しているのであります。御質問の御趣旨に副わなかつたかもしれませんが、ただいま大體記憶しております範圍でお答え申し上げておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=8
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009・中原健次
○中原委員 醫師がもちろん一から百まで打算的な立場で患者に接しているというような、そういう醫師を侮辱したような考え方はわれわれはもちたくないのでありますが、しかしながら、やはり人間の人格といいますか、それにのみ期待をかけまして國家の對策がきまるということは、はなはだ危險であるという意味で、この數字の點をお聽きいたしたいと考えたのであります。なお最近の醫療費は、なるほどただいま仰せの通り診療、入院、手術等に對する場合は、今度の二圓五十錢という一點單價をもつてすれば、慣行價格に對して上まわるというふうに、御調査の結果出たと思いますが、しかし實際はそうでないのではないかと私は疑うのであります。なんとなれば、最近盲腸などの手術にいたしましても、全快して歸つてくるまでにはまず十日ないし二週間というめやすをおいて考えまして、それが一萬圓を超えるというふうな實情があるのであります。もちろん膨脹通貨のために、いろいろ患者の方では、醫師に請求額以上のものを差上げておるかもしれませんが、いずれにいたしましても、そういう實情にある場合でありますから、保險患者が常に不利益をこおむることもまた爭われないのであります。從いまして、せつかくここまで御苦心になりまして、いわゆる醫療價格の單價の決定についても、委員會等の意見を參酌して、適正なるものを御努力になられましてもやはり依然として保險患者はしばしば疎んぜられがちであるということを、常に考慮の中に織込まれながら、對策が發展していかなければならぬのではないかと考えるのであります。この醫療費の點で現在國庫の方が負擔をいたしております負擔額について、將來はかなり大きな決心が必要になるのではないかと私は思うのでありますが、國家がこの補助額に對しての將來の氣構えと申しますか、それに對する對策をどのようにお立てになつておいでになるか、この點の内容を、可能な限りにおいて御發表いただけば都合がいいと思いますが、この際ここにお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=9
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010・友納武人
○友納政府委員 大變御同情のある御意見を承りまして感激をしておる次第であります。この社會保險、特に醫療に關する保險の運營と申しますことは、現状におきましては非常にむつかしい問題でありまして、理窟だけ通してもうまくまいらないというような實情があります點は、御指摘のあつた通りであります。われわれ非常に苦心をしておる點であります。何分各保險——健康保險、厚生年金あるいは今度提案しております勞災補償保險を通じて、保險の運營に關して、事業主とか勞働者とかあるいは學識經驗者というような民間人の意思を參畫させるというような意味から、運營委員會を各保險について設けまして、勞働者なり事業主なり、あるいは學識經驗者なりを、保險の運營そのものに參畫させるというような、改正案の内容もごらんをいただいておると思いますので、そんな意味もありまして、どうか内輪の氣持になりまして、一つ御心配をいただきましたならば、なんとかうまくやつていける途が發見できるのではないかというふうにも考えますので、この席からもくれぐれもよろしくお願い申し上げておく次第であります。
それから醫療費に對する國庫の負擔に關する所見でありますが、この點は先般も申し上げましたが、醫療制度審議會と申します委員會が厚生省にできておりまして、委員の數五十數名をもちまして、最近盛んに活溌な議論をしているわけであります。そこにおきまする重要な問題といたしまして掲げられているのでありまして、醫療費に對する國家の負擔をどういう形でするかあるいはどういう理念に基いてするのかというようなことを論議しているのであります。大體の行き方といたしましては、病院とかあるいは診療所というようなものの醫療設備の建設費に對して國家が補助をするか、あるいは社會保險を通じまして、醫療費の支拂の一部を國家が負擔するというような形で負擔していくか、あるいはそのほか別な形で負擔をするかというような、いろいろな方法をあげまして檢討をしておられるようであります。何分醫療制度審議會の重要な問題でもありますので、近々適當な結論が出ることと期待しておりますが、政府といたしましては醫制審議會の答申をまちまして、今の點を考え方をきめていきたい、こういうふうに考えている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=10
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011・中原健次
○中原委員 保險運營委員會の構成についてでありますが、勞働者側の意向を直接十分參酌して運營する、こういう御見解に對して特に御注意いただきたい點は、勞働者の代表ということになりますと、これがしばしばむしろ勞働者の代表の名において、勞働者の眞の代表でない人が選ばれがちの傾向がいろいろな面で經驗をするところなのであります。その弊を防ぐためには、かりに工場單位あるいは職場單位に考えますならば、その工場、職場等に必ず組織されているはずの、勞働組合が委員選考の責任を負うというようなことが、取扱の上で大切になつてくると思うのであります。これにつきましては今囘いわゆる中央、地方の勞働委員の選擧の方法を取入れるということができれば、やや公正に取扱いができるのではなかろうかと考えるのであります。從いましてこの委員の銓衡については願わくは勞働委員を選擧いたしまする手續をそのまま、あるいはその方法に近い取扱い方がなされるようにありたいということを希望するのであります。この點について、その學識經驗者あるいは勞働者等の中から選ばれまする委員の選び方について、一應御説明を煩わしておきたいと、かように思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=11
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012・友納武人
○友納政府委員 運營委員會は、現在政府が考えておりますのは、各保險とも十八名をもつて構成いたしたいと考えております。そのうちの六名は勞働者側、六名は事業主側、六名は公益を代表する者、すなわち中立委員というふうにいたしたいと考えております。そうしてその委員の選任方法でありますが、これは實際から申しますと選擧が一番公平でありますが、なかなかそうもまいらぬ事情もございますので、世間におきまして廣く勞働者を代表すると認められておる團體等に委囑をいたしまして、推薦をしていただく、具體的に勞働團體の名前を申し上げますことは差控えますが、世間でそういうふうに認められておる團體と申しますものから、推薦をしていただくというふうに考えております。事業主の代表につきましても、事業主の團體から推薦をしていただき、その者について委囑をする。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=12
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013・中原健次
○中原委員 そういたしますと、事業主の場合、勞働者の場合、それぞれの團體に委囑して推薦をせしめる。かように承りましたのでありますが、この勞働者の團體の場合、大體最近はいわゆる御用組合的なものは影をだんだん薄くしつつありまするが、やはり勞働者の組織の民主化の徹底ということもなかなか困難な事情がしばしば横たわるのでありまして、眞に勞働者の意思をそのままに代表し得る民主的な勞働組合というものと、そうでないものとの識別についても、實際は困難な點があるのであります。そこで私は、おそらくこれは地區を單位に、府縣を單位に御決定になると思うのでありまするが、その場合に、その勞働組合を構成しておりまする組合員の員數、あるいは職別、産別の組合等をそれぞれ御考慮に入れていただくことが大切だと思うのであります。たとえば一つの府縣について考えましても、一方はいわゆる全國的な企業別の産別の組合でありあるいは一方は地方單獨の綜合體であるところの合同組合である。あるいはまた一經營内においても、またその職種によつて二つにも三つにもなつておる場合もあるというような複雜な關係もあるのでありまして、ただいま御説明のありました委員六名を勞働者側からとるといたしましても、その六名の配分については、かなり技術上苦心を要することであろうと考えるのであります。從いましてそういう諸團體についての取扱い上の公正を期するということのためには、どうあるべきかという事柄が、おそらく實際の施行の場合において、いろいろ摩擦面も生れてくるであろうと私は豫想するのであります。從いまして事業家の場合もおそらくそうでありましようが、勞働者の場合は特にその點に危險性、いわゆる困難性が横たわりがちだと思うのでありまして、府縣單位のそういう勞働者團體のまず意向を質すために、縣下にある一切の組合——といいましても單位的なそれぞれの組合を言うのではなくて、その組合を一應統合しておるであろうところの合同體、あるいは統一體等を單位に、言いかえますると、一つの勞働組合をその選から漏らすことのない手續においてそれらの代表を招いて意見を質すというふうに取扱いの上でなされたいと思うのであります。大體最近は、健康保險についても適用範圍等いろいろな考慮も必要でありまするが、御存じのように非常に廣範圍にわたつておりまするので、勞働組合の廣義の解釋も必要になつてまいつておると思うのでありますから、そういう點もお取入れの上で、取扱い方については申し上げるまでもないと思いまするが、遺漏なきを期していただきたい。と申しますのは、せつかく當局が苦心されて委員を選考されましても、その委員が適用範圍の勞働者の全體に、あまねくその意思を代表できる關係になつていないという場合が生れてまいりますると、やはり圓滿な運營がやりにくくなり、せつかくできました運營委員會が、名ばかりの運營委員會に陷る場合がないとも限らない。いささか極端な言い方かもしれませんが、そういう點まで御考慮を拂われることが大切だと考えておるのであります。私どもの經驗から申しますると、各種團體からしばしばそういう委員會等の組織について問題が起つてまいるのであります。御存じのように、最近いろいろな面で、民主主義的な取扱いのゆえに、それらの諸組織に對してかなり親切なる取計いがなされておるのでありますが。しばしばその認識が足りないばかりに、大切な點を遺漏するということもありがちなのであります。この點ははなはだめんどうに申し上げるようでありますけれども、大切な點でありまして、できました委員會をして、眞にその機能を活溌に發揮せしめるためには、選ばれましたその六名の委員が、眞に確信をもつて事を處理していけるような内容を必要とする。このように私は考えておるのであります。從いまして、當局の方で、具體的にはどういう勞働團體をどういうふうに取上げて選考の基準單位組織とするか、單位團體と認めるかということを、この場合お差支えなければお示し願いたいと考えるものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=13
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014・友納武人
○友納政府委員 ただいまのところ政府といたしましては、細部の點までは考えておりません。さいわいにこの各保險法につきまする改正案が御協賛をいただきました曉には、ただいまの御意見を十分くみ入れまして、御滿足のいけるような方法におきまして、選任方法をいたしたい。かように考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=14
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015・中原健次
○中原委員 それから先ほどちよつと忘れたのでありますが、保險料金の措置についてであります。この參考資料の末尾の方に、數字が載つておるようでありますが、實際積立金が將來どういうふうに取扱われていくかということについて實は疑惑がよく流れておるのであります。勞働者の間では、ひがみもありまして、料金は相當納めたが自分は一度も醫療を受けたことがない。こういう人ももちろんあるのであります。言うまでもなく、醫療を受けたことのない人はそれだけ仕合せのわけではありますけれども、自分の拂込みました料金の跡始末がどうなるのかという事柄については、やはり被保險者としてそこに心を用いることまたやむを得ないのであります。特に勞働者の生活が今日のような困窮状態に陷つております場合には、わずかなことでもそれを氣にいたすのであります。もちろん保險というものの性質から考えるならば、そのようなことが考えられようことさえおかしいことでありまするけれども、勞働者の實情から申しますとやはりそのことが氣にかかるのであります。殊にここにお示しの數字によりますと、國債等に對して投資ができているように考えるのでありますが、これらの投資をそのまま据え置くお考えであるか。それとも何かに轉換をしてもちろん今日の膨脹通貨から考えますと、大きな數字ではないと思いますけれども、取扱いとしては、これをどう御處理なさるお考えか、承つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=15
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016・友納武人
○友納政府委員 積立金の運營方法でありまするが、お手もとに差上げました資料に、ただいまお示しになりましたように、約二億三千萬圓の積立金ができているのであります。すなわち健康保險法施行以來本年は二十年になりまするが、二十年間にそれだけの額が剩餘として積立てられたわけであります。この使用方法をどういうふうにするかということにつきまして、ずいぶん頭を痛めているのでありますが、來年度といたしましては、別途提案をいたしておりまする特別會計法の豫算にございますように、この中の七千五百萬圓をもちまして、全國六大都市及び北九州の適當な地を選びまして、二十五箇所に一箇所三百萬圓程度の額をもちまして、健康保險の專門病院を建設もしくは買收するというふうな方法を提案をいたしている次第であります。殘額につきましても、來年度もしくはその翌年度というふうに、運營委員會等にも諮りまして、適切な用途に運營をしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=16
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017・中原健次
○中原委員 もちろんこの積立金が勞働者の大きな關心事であるということについて、當局は既にこれに對する相當の考慮をもつてくださることについて私どもは非常にありがたく考えるのでございます。專門的な病院を建設するということについて、實は私は社會政策的な觀點から、いわゆる公立の病院が要請されているということについて、相當積極的な意見をもつのでありますが、それにつきまして地區の選考について、かなり吟味を既になさつたことと思いますが、あるいはまだ確定的にどこというふうにきまつてはいないだろうと思いますけれども、地區の選考については特に周到な考慮が必要になつてまいると思うのであります。もちろん、少くとも各府縣の主要都市では、それぞれこれを必要としているのであろうことが考えられるのでありますが費用の點もあることでございますのですべてこれを普及せしめるということは今のところ困難でございましよう。しかしながら第一段階として建設するその地區が、はたしてどの地區を指摘することが妥當であるかということについての御調査は、取分け周頭であつていただきたい。單に概念的に、いわゆる大都市というようなことではなくて、勞働者、いわゆる被保險者の數が特にその場合に問題になることと考えるのでありまして、中小都市と考えられるような都市でも相當被保險者をもつ場合がないとも限りませんし、大都市でありましても、比較的その地區に住む被保險者の數が少い場合もあり得るのでありますから、この點はなるべく不滿の起ることのないように御處置がいただきたいと考えるのであります。さて七千五百萬圓の振當ということにつきまして、ここに二億三千七百萬圓という數字がでております中を七千五百萬圓、もし必要があればもう少し思い切つて使えることができるのではないかというふうにも私は考えるのであります。もちろん事務當局でないだけに、行政當局でないだけに、私が少少亂暴な考え方をいたすきらいがあるかも知れませんけれども、實際今日主要都市はほとんど戰災のために壞されておりまする場合、取分け一般の病院もはなはだその數を減殺しておるのであります。そういう場合であり、いわんや勞働者が一般の健康保險醫について治療を受けます場合に、はなはだ遺憾な點が多々あるということに相なるのであります。そういう實情を思いますならば、できるだけ、許す限りの最大限度をこの經費に充當するということが必要になつてくるのではないか。これについて特に考えられるのは、先ほどもお話がございましたように、一點二圓五十錢ということであれば、醫師の生計費を考慮勘案して適當であるというようなお言葉もありましたように將來病院の經費を支出する。つまり被保險者というものは、いやしくも病院の經營を可能ならしめるだけの受診者になるわけでありますから、病院が早速赤字を豫想しなければならないこともないのであります。辛うじてその病院が經營し得るならば、一應投資いたしました建設費、買收費というふうなものは、そのまま財産として殘ることでもございますし、この二億三千七百萬圓をもう少し割込ましめるというようなことが、可能になつてまいるのではないか。かように考えるのであります。從つてただいまお答えいただきました七千五百萬圓を増額する。そうして建設箇所をもう少し殖やす。こういうことがお考えいただけますかどうか。この場合伺つておきたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=17
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018・友納武人
○友納政府委員 當初といたしましては、七千五百萬圓をもちまして、とりあえず被保險者の大多數が居住しておりまする六大都市、それから北九州というような地區の適當な箇所を選びまして、建設をしてまいりたいというふうに考えておりますが、建設の途中におきまして、そういう必要の出ましたときには、また豫算案なり法律案なりとしてお願いをいたしたいと存じております。いずれにいたしましても、この病院の新築もしくは買收と申しまするのは、大變困難な問題でございまして、從來昨年度一昨年度で、健康保險におきまして約二千萬圓程度の病院を、全國二十二箇所に買込んでおります。この點につきましても大變いろいろな問題があるのでございまして、土地の開業醫との摩擦、あるいはその他いろいろな附隨した問題もございますし、なかなかたくさんの箇所を一擧にやるということはできがたい事情もあることを、ひとつお含みを願いたいと思うのでありますが、いずれにいたしましても、運營委員會等も四月からはできますので、そこにもお諮りをいたしまして、もし必要がありますならば、必要の豫算措置をとつてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=18
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019・中原健次
○中原委員 私は大體當局の御苦心のほどは實はわかるのであります。このような病院の建設に伴いまして、關係地區の開業醫が、保險患者をきらいながら、またそういうような病院のできることを非常に困惑するということがあるのであります。從いまして勢力の強い府縣の醫師會のごときは、保險關係の病院、あるいは公立等の病院の建設については、しばしば惡意の妨害を試みた場合さえ實は過去にあるのであります。ここで少くとも厚生當局がお考えをいただきたい大きな一點に逢着するのであります。それは何かと申しますと、醫療の今後の根本的な對策として、醫療は從來のごとく個々人の採算において營ましめることが適當なのかどうか、もちろんこれを立どころに實施し得ると考えるものではありませんが、しかしながら少くとも厚生當局とせられては、相當の抱負とそれに對する氣構えが要請されつつあるのではないかと思うのであります。これはひとり保險關係だけについて感ずることではなくて、一般醫療全體にわたりましてその感は深いのであります。最近進歩的な醫師は、みずからそのことを肯定もいたしておるのでありまするが、當局のそれに對する御所見をこの場合お漏らしが願えれば幸いだと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=19
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020・友納武人
○友納政府委員 いろいろな考えももつていないわけではございませんが、何分先ほど申し上げましたように、醫療制度審議會におきまする基本的な問題といたして、論議をいたしたいと思つておりますので、この際は醫制審議會において檢討するということで御勘辨願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=20
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021・中原健次
○中原委員 この醫療の公營あるいは國營化の問題について、もう少し承りたいと思うのでありますが、これは委員長に御相談申し上げますが、大臣は今日どういう御樣子でございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=21
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022・夏堀源三郎
○夏堀委員長 大臣は今日は御都合があつて出席できないことになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=22
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023・中原健次
○中原委員 少し問題が大きいために、ただいま御出席の當局では御無理だと思うのでありますが、しかし私は單に醫療制度の審議會にすべてを委ねるという程度では、ちよつと滿足し兼ねるのでありますが、現下の國内のいろいろな事情とにらみ合せて、この醫療制度についてはさらに大きな抱負を當局がもたれるであろうと期待いたしております。從いましてでき得ればその企圖について御答辯をいただける當局の御出席を煩わしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=23
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024・夏堀源三郎
○夏堀委員長 今連絡いたしますから……。この際ちよつと委員諸君にお諮りいたします。松岡駒吉君は委員を辭任されましたので、同君は理事でありますから、その補闕選擧を行わねばなりませんのですが、これは前例によりまして委員長にお任せ下さいますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=24
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025・夏堀源三郎
○夏堀委員長 御異議はないようであります。それでは山下榮二君を理事に指名いたします。——中原君にちよつと御相談しますが、大臣は今首相官邸に何か重要な問題があつて、あちらに參つておるそうであります。どうしましようか。政府委員の御説明で御滿足できませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=25
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026・中原健次
○中原委員 御答辯いただきますれば結構なのですが……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=26
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027・友納武人
○友納政府委員 醫療制度の問題でございますが、各方面に影響がございますので、あのように申し上げた次第でございますが、實は醫療制度審議會におきまして、よりより幹事案として厚生省が考えております大體の大綱を申し上げてみたいと思います。厚生省の考え方といたしましては、今後の醫療制度というものは、公的診療機關を中心として、これに配するに、開業醫制度を補佐的な意味において殘していく。すなわち公的診療機關というものを、醫療制度の根幹として、そうして開業醫制度の特色を生かして、いい意味における開業醫制度というものを殘していく、こういう二本建で醫療制度をやつていきたい。しからば公的醫療機關と申しますものを、一體いかようなものによつて經營をしていくか、すなわち國營とするか、あるいは府縣營とするか、あるいは從來ありましたところの醫療團というような特殊な法人とするかというような點は、まだ決定をしておりませんが、いづれにいたしましても、醫療團が最近ああいうような事情で解體をするということに決定をいたしました。この醫療團が全國にたくさんの診療所、病院というものを現在もつているのでありますが、これらのものを一體どういうふうに措置をするかということにひつかかりまして、すなわち醫療團解散後の醫療團所有の病院、診療所というものをどういうところに引繼ぐか、どういう公的な診療機關の主體に引繼ぐかということにひつかかりまして、今申し上げました大きな方針を大體頭に描いている次第でございます。いづれにいたしましても、醫療團の解散と申しますことは、三月いつぱいで一應の期間が切れることになつておりますので、大體の今後の國の醫療制度そのものの構想を描きながら、醫療團の措置を考えてまいる。こういうような考え方をもちまして、ただいま鋭意その點につきまして研究をしております。醫療制度審議會等におきましても研究をしているのであります。近々にその結論が出ることになるつもりでございます。大體厚生省が考えております荒筋のようなものを申し上げまして御答辯にかえたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=27
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028・中原健次
○中原委員 それではいわゆる近く解散されるであろう醫療團でもつておりまする設備等を、まず公的醫療機關として轉換させるというような豫測のもとに、公的診療機關の設置ということをお考えになるのでありまするか。それとも別箇に切離して、公的診療機關の設置を御豫想の中に入れておいでになるか、その點お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=28
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029・友納武人
○友納政府委員 言葉が足りませんでしたが、大體の將來の醫療體系というものに關する構想をきめながら、醫療團の問題を處理してまいる、こういうふうに考えておる次第でございます。すなわち醫療團を解散して、そのもつておる病院、診療所というものをどうするかということのためには、基本的な醫療制度に關する考え方というものが、基礎になつて、そういう小さい問題も考えられなければいけないじやないか。こういうことにおいて、いわば兩建でありますが、兩方を考えておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=29
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030・中原健次
○中原委員 申し上げるまでもございませんが、今日わが日本の實情から申し上げますと、罹病率は非常に上昇しつつあるとみなければならないのであります。ただ醫療を受ける醫療能力が、國民に缺如しておるというような點から、醫師の利用、醫療機關の利用が比較的下囘つておるというような結果に相なつておるのであつて、實際ははなはだ多數の病弱者を生みつつあるという悲しむべき現状であると思うのであります。特に結核性の發病者につきましても、恐るべき數字を示しつつあるのではないかと私は氣づかうのであります。そういう實情から考えまして、いわゆる國民の文化生活の程度が非常に引下げられてしまいました現實といたしましては、おのずからその所産として罹病者の數が増大するであろうことは、あまりにも悲しむべき當然でありまして、これに對して國は、まず健康にして最低限度の生活を國民に保障するための氣構えから、まずその一つの役割の醫療機關については、相當大きな決意が必要なのではないか、このように考えられるのであります。ひとりそれは健康保險關係の、いわゆる被保險者を對象として考えるのではなくて、もう少し大きく、全國民に對する考慮として、醫療機關については、相當いわば革命的な對策が要るのではないかと私は考えるのであります。もとよりこの大きな轉換をいたしまする場合に、數々の摩擦點もございましよう。いろいろな困難も豫想するにがたくございません。しかしながらそれが必要なる處置であるならば、よしそのときのどのような力に正面衝突をいたしましようとも、斷固やり遂げるの氣魄が必要であると思うのであります。つまり正しさに透徹するためには、それを障害するもろもろの事情に對して、革命的な方策が必要である、こう申し上げたいのであります。そうであるならば醫療制度審議のための審議會はもちろん、良心的な立場から、單にいろいろな運營上の問題についても考慮を必要とすることは、あまりにも當然ではございまするけれども、まずそういう實際から考えますならば、この審議會それ自身が、相當斷固とした態度をもつてこの問題に對處していくであろうということを期待するのであります。しかしながらすべてをそれに委ねるというのではなくて、政府みずからが積極的に一つの構想をもつということも、またおのずから大切なことでありまして、もとより國民の利害休戚を代表する國會は、さらに進んで積極的にこの問題を取上げることは、あまりにも當然と考えまするが、いづれにいたしましても、現在のわが日本の諸情勢、すべての事情は、まず國民の健康、いわゆる保健衞生に關する問題については、特に注目を強くしなければ相ならんのであります。しかるにかかわらず、しばしばこういうことは忘られがちなのであります。いわゆる消極的部面であるゆえにか、しばしばこの社會諸施設等について、あるいはそういう國家の醫療、保險制度等に關する氣構えについて、いつの場合にもお座なりであり、消極的であり過ぎるのであります。このような弊をわれわれはこの際一擲いたしまして、もつと進んだ、いわゆる文化國家日本建設の基礎をつくるものは、まず國民の健康保障に初まるべきものであるという建前から、大きな自信をもつてこの對策が考究されなければならぬと私は思うのであります。もとより政府におかれましても、このゆえにこそただいま御説明がございましたような、一大轉換の構想がもたれたであろうと考えられまするが、私の聞き得ました範圍の感じから申しますれば、まだ依然として、わずかに、單なる社會主義政策的な方面をなんとか糊塗するがために、きわめて消極的な内容を盛りつつ進もうとする構想ではないかというふうに疑われのでありまして、そのようなことは、國民を眞に保健衞生の觀點から守るということの十全を期し得ないではないか、かように思うのであります。あまり申し上げましても議論になりますから、これ以上申し上げませんが、つきましてはこの醫療審議會の構成でありますが、審議會が現在もたれているといわれますが、醫療審議會はどういうような構想で、どのような内容をもたれておるのでありますか。これをこの場合伺うことができれば好都合に存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=30
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031・友納武人
○友納政府委員 先ほど御説明申し上げました、醫療團の改組のさしあたりの問題として、醫療制度に關する考え方というものを考えておるというふうに、あるいは説明が惡うございましておとりになつたかも知れませんが、それとは別に醫療制度の大體の方向というものを考うべき時期であるということにつきましては、ただいまの御意見と同じ意味におきまして、厚生省においては非常な決意をもつて醫療制度の問題を考えておるのであります。ただ醫療團の解散という問題が差迫りましたので、それと絡んで、一應の大方針の方向に副つてそれを解決いたしたいというような意味で、醫療團の解散問題も考えておるのであります。すなわち醫療團が解散になつたから醫療制度の問題を考えておるというふうな意味に聽えましたら、訂正を申し上げておきます。
それから醫制審議會の構成でありますが、醫制審議會の構成といたしましては、從來の委員會と大體同じようなグループ、醫師側であるとか、あるいは學識經驗者とかいうような人のほかに、勞働團體それから醫療從業員の代表、あるいは社會保險の代表というような、各方面のいやしくも醫療制度に關連のある各方面の代表を選びまして、その數も五十數名に上つておるのであります。厚生省がもつております委員會としては相當大きな委員會であります。構成の内容といたしましてはいやしくも醫療制度に關連のある各種の各方面の代表者を中心に入れておるのであります。實際の具體的な人名とか、あるいはどういうパーセントになつておるというようなことは、後刻書面をもつてお手もとに差上げたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=31
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032・中原健次
○中原委員 醫療制度審議會に對する議論はそれだけにして、もちろん今日萬事民主の方向をたどるために、この審議會は相當重要視されておることは申すまでもございません。またただいまのお言葉により醫療團の解散のこととは別個に、醫療制度の大きな大轉換のために、構想を實現すべく御努力されておるということを伺いまして、非常に心を強くいたすものであります。私ども勤勞大衆、特に國民の惠まれざる多數の立場に立つております者につきましては、特にこの問題に心を強くいたしております。今後はひとり健康保險のみに止まらず、全般の醫療問題に對して、時の情勢にむしろ先んじて一大處決をされんことをお願い申し上げます。私の質問の點は他にもう少しあるのでありますけれども、一まずこれをもちまして打切りにいたします。いろいろ御懇切な御説明に對して感謝いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=32
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033・夏堀源三郎
○夏堀委員長 これにて質疑は終了いたしました。直ちに討論に入りたいと思いますが、御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=33
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034・夏堀源三郎
○夏堀委員長 御異議がなければ、これより勞働者災害補償保險法案並びに健康保險法の一部を改正する等の法律案を、一括議題として、討論に付します。討論は通告順によつて許します。鹿島君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=34
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035・鹿島透
○鹿島委員 本委員會に付託されました二つの法案は、勞働基準法に密接な關係のあるきわめて重要な法案でありまして、勞働者の保護、その福祉の増進という點から考えまして、一日も速やかにこれが實施を希望するところでありますが、要はその運營にありますので、政府におかれましては、十分これが運營については善處を希望するものであります。
なお私は健康保險法の一部を改正する法律案に、各派協同の提案として左の三つのことを附帶條件として賛成をいたしたいと思うのであります。簡單に條件をば申し上げます。
一、政府は國民の健康維持につき最大の責任を有するとの新憲法の理念に基き、現下における國民健康保險の重要性に鑑み、壞滅に瀕しつつある同保險の再建に關し、國庫補助金の増額、醫藥品の保險診療實績による配給等につき萬全の努力を盡すこと。
一、政府は健康保險の直營病院の建設計畫を擴充し、六大都市及び北九州のみに限らず全國的に多數建設し、健康保險診療の改善に努むること。
一、政府は厚生年金保險法による積立金は、事業主並びに被保險者の保險料の積立てられたるものなるに鑑み、これが運用に關し被保險者の福祉増進のために還元するよう適切なる措置を講ずること。
この三つの條件につきましては、各委員からそれぞれ政府に質疑をなされまして、その内容等について改めて私から説明する必要はなかろうと思いますので省します。どうか委員長において、この三つの條件を前申しました健康保險法の一部改正法律案の附帶決議としてお取計いくださらんことを希望いたすものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=35
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036・夏堀源三郎
○夏堀委員長 これにて討論は終結いたしました。引續き兩案の採決をいたします。兩案とも原案の通り可決するに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=36
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037・夏堀源三郎
○夏堀委員長 御異議がないと認めます。よつて原案の通り可決いたしました。次に各派共同提案で提出されましたる健康保險法の一部を改正する等の法律案に、附帶決議を附するという動議について採決をいたします。同附帶決議を附するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=37
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038・夏堀源三郎
○夏堀委員長 御異議はないと認めます。よつて同附帶決議を附することに決しました。これにて本委員會における議事は全部終了いたしました。
御挨拶申し上げます。本委員會におきましては、委員各位が熱心に御審議に當りまして、本委員會も無事終了いたしましたことを厚く御禮申し上げます。これで委員會は散會いたします。ありがとうございました。
午後一時八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213764X00319470324&spkNum=38
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