1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年九月二十七日(金曜日)午前十時四十分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 小川原政信君 理事 上林山榮吉君
理事 森幸太郎君 理事 飯島祐之君
理事 山口光一郎君 理事 細野三千雄君
理事 富吉榮二君 理事 藤本虎喜君
理事 井出一太郎君 理事 菊池豐君
磯崎貞序君 木島義夫君
古賀太郎君 田邊讓君
三浦寅之助君 森田豐壽君
杉田一郎君 松浦黨君
山口好一君 青木清左ヱ門君
江川爲信君 小笹耕作君
吉澤仁太郎君 井伊誠一君
大澤喜代一君 松澤一君
堂森芳夫君 中原健次君
平野市太郎君 麻生正藏君
松本六太郎君 北政清君
山木武夫君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
法制局長官 入江俊郎君
内閣事務官 島本融君
司法政務次官 古島義英君
農林事務官 山添利作君
農林事務官 笹山茂太郎君
委員長の許可を得た出席者
農林事務官 大和田啓氣君
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本日の會議に付した議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=0
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001・小川原政信
○小川原委員長代理 昨日に引續いて會議を開きたいと思ひます、未だどなたも御集りがございませぬやうですし、非常にお人數も不足ですから、十一時まで休憩致したいと思ひますが、如何でございますか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=1
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002・小川原政信
○小川原委員長代理 御贊成ならば其の通り御計らひします、それでは暫時休憩致します
午前十時四十一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=2
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003・会議録情報2
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午前十一時二十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=3
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004・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是より會議を開きます、前會に引續き逐條審議に入るのでありますが、此の際保留になつて居りまする新憲法の私有財産權と本法との關係に付きまして、入江法制局長官が幸ひ出席されましたから、保留條項に付ての審議を此の際行ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=4
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005・入江俊郎
○入江政府委員 此の法律に依つて目指して居りまする所が、新憲法の財産權の規定とどう云ふ關係にあるか、斯う云ふ御質疑がございまして、それに付きまして政府として考へて居りまする點を申上げたいと存じます、之に付ては既に農林省關係の方々からも一應御答へがあつたと思ひますが、取纒めて憲法の上からどう考へて居るかと云ふことを申上げて見たいと存じます、此の自作農の創設と云ふことに關して今囘の立法がなされるのでありまして、此の仕事自身は、司法の第一條にもあります通り「耕作者の地位を安定し、その勞働の成果を公正に享受させるため自作農を急速且つ廣汎に創設」しようと云ふのでありまして、此の目的は正に公共の福祉と云ふ目的を持つて居るものと言ふことが出來ると考へて居ります、そこで自作農を創設するに付きまして、一定の面積以上のものを國家が買上げると云ふことに付きましては、同法の第三條以下に規定がありまして、又それを買收致します時には、同法の第六條に於きまして農地委員會の定める農地買收計畫に依り、且つ其の場合には適當な對價を定めると云ふことになつて居りまして、對價を與へて之を買取ると云ふことになる譯であります、又同法第十六條に依ると、斯くの如くして政府の買收しました農地を、又一定の手續に依りまして自作農を希望する者に賣渡すと云ふことになつて居ります、そこで憲法の衆議院修正に依りますと、第二十九條──政府提出原案は第二十七條でありますが、是の第三項の規定に「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」とありますが、正に此の條項の下に今囘の法律は憲法上可能であると考へて居るのであります、自作農創設をするが爲に、只今申しました法案第一條に書いてあるやうな各種の目的を闡明して居るのであります、是は正に我が國に於ける今後の農地が如何にあるべきかと云ふことを最も明瞭に示したものでありまして、是こそ農地經營及び農地を國家として如何に扱つて行くかと云ふ點から見まして、社會公共の福祉に適合すると云ふことは明かであると考へて居ります、さうして特に買收致します場合に於きましては、法案第六條にあります通り對價を定める、而も其の定める場合に於きましても、農地委員會等の定める農地買收計畫の適切なる方法に依つて其の内容を決めて行くのでありますから正に正當なる補償と云ふことにならうと考へるのであります、斯くの如くにして買收しました土地は、同法案第十六條に依つて結局自作農を希望する者に對して之を賣渡すと云ふことを本體として居ります、勿論偶偶適當な買手がない場合には、國家に於て暫く之を持つて居なければならぬと云ふことはありませうけれども、それは偶發的に起る問題でありまして、買收の目的は、即ち其の農地を賣渡して、農地が本來の目的に從ひ、又國家將來の公共の福祉に適合するやうに利用されることを眼目として自作農を創設し、之に賣渡ざうと云ふのでありますから、憲法第二十九條第三項にある公共の爲め用ひると云ふことに歸著すると思ふのであります、斯樣な見地から新憲法が施行されまして、此の第三項の規定が適用になります場合に於きましても、今囘の法案は憲法上適法に運營され、又何等憲法違反と云ふ風な問題はないと私共は考へ立案をして參つた譯であります、一應私の考へて居ります見解を申上げた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=5
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006・葉梨新五郎
○葉梨委員長 只今新憲法に於ける財産權と本法との關聯に關しまする政府の見解の説明と申しますか、解明があつた次第であります、之に對しまして御質疑がありましたならば御發言を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=6
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007・木島義夫
○木島委員 政府の説明に依りますと、新憲法が施行せられた場合も、地主から買上げる所の農地の價格が第二十九條の財産權に牴觸する所はないとの御説明でありますが、私はさうでないと思ひます、大體此の農地の問題ばかりでなく、現在地主から買上げて居る米價の問題にしても、此の新憲法に照し合せれば非常なる財産權の侵害を平氣で政府はやると云ふことになると思ふのであります、要するに、農地とか若しくは食糧の問題に於ては、政府は地主の犧牲に於て社會政策を行つて居ると斷じて憚らぬと私は考へて居ります、其の理由を私は擧げて見たいと思ひます、今度の規定に依りますと、土地の價格は大體一段歩水田に付て七百六十圓と云ふものを豫想されて居るやうであります、然るに一方此の新しい農地法等に依りますと、小作料、所謂賃貸料は其の收穫の二割五分以上に亙つてはいけないと云ふことが書いてありますが、假に一段歩二石の生産があると假定しますと、現在生産者價格三百圓でありますから、一段歩六百圓の生産がある譯であります、そこで假に其の最高を取つたと假定して二割五分を計算して見ますと、一段歩の年貢は百五十圓にならなければならぬ、是は當然であると思ふのであります、此の百五十圓を假に五分に還元したと假定すれば三千圓にならなければならぬ、又三分に還元するならば五千圓の價格にならなければならぬのであります、然るに今から二十年も前に定められた賃貸價格に依つて此の土地の買上價格を決めると云ふことは、是は明かに財産權の侵害であつて、一種の沒收である、斯うまで考へる、又地方の農民は異口同音に之を叫んで居る、此のことは政府の耳に入らぬ譯はないのであります、是は故意に耳を掩うて一般小作大衆に阿ねらうとして居る政策であると言つて斷じて憚らぬ、又私は此の際私有財産の、所謂財産權の侵害を米價の面に於てもして居ると云ふ明かな事實を茲に指摘することが出來る、それは地主より買上げて居る米の價格は石五十五圓、地主の農業倉庫へ持つて行つて納める米は、土地に依つて違ふが、大體二十二圓、之を石に換算すると五十五圓になるのです、然るに政府が營團へ賣下げる所の價格は石二百五十圓でやつて居る、更に營團は他の費用を加算しますからして、之を精米にした場合には二百八十六圓六十五錢になつて居るのであります、併し假に之を二百五十圓と假定しても、其の差は百九十五圓になるのであります、此の價格を以て地主から米を買上ぐべきである、地主と小作との契約は金額に依るのでなくて、米、物納を以て現在の建前にして居るのであるからして、少くも此の二百五十圓、更に希望するならば三百圓を拂つても宜いのである、然るに地主の農業倉庫へ納める米は石五十五圓に抑へて居つて、さうして此の分は全く政府の利得の形になつて居るのです、政府は、いや、是は生産者に對して三百圓拂つて居るから、自分達は得して居るのではない、斯う説明するかも知れないが、是等の所謂生産者を奬勵する社會政策的の立場、若しくは産業上の政策は、國家自體がやるべきものであつて、斷じて地主の犧牲に於て行はるべきものではないのであります、是等の點に於ても地主の財産權を、新しい憲法が施行された後には侵害するものと考へるのでありまして、只今の當局の説明は當らぬと私は考へるのであります、此の米價竝に土地の買上價格に付て、地方の農民は多大の疑惑を持つて居ります、さう云ふやうな疑惑の裡に本法を通し、さうして施行することは、國家の理想上の立場から云つても甚だ宜くないことでありまして、却て地方に於ける知識階級や又現在までの有産階級に過激な思想を持たせると云ふやうな、所謂角を矯めんとして牛を殺すやうな結果にも陷らぬとは限らないと考へるのでありまして、此の點に付て、而も又一般農民の諒解が付くやうな御説明を煩したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=7
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008・入江俊郎
○入江政府委員 只今の御意見は、結局此の法案の第六條に決めてありまするやうな買上に付ての對價の決定の問題であると存じます、憲法第二十七條の第三項に於きまして、「正當な補償の下に」と云ふことがございますので、勿論此の對價は社會各方面から見まして正當なものでなければならぬと云ふことは當然であります、で新憲法が施行にならない今日と致しましても、勿論國家が公益の目的の爲に特定の者の財産權を買上げると云ふ場合に於きましては、正當な、適當な補償を出すと云ふことの必要であることは當然でありまして、實質的に申しますならば、新憲法の施行の前後を問はないものと考へて居ります、而して此の法案第六條に於きまして、對價に付ての一應の基準があり、更にそれに付ては色々なる決定の方法が細かく書いてございますが、今御話がございましたやうに、色々な觀點から色々な議論があることは私も聞いて居ります、併しながら正當な補償、正當な對價と云ふものは、社會各般の事情を考慮し、正當な補償を如何なる限度に於いて決めるかと云ふことは、社會各般に於ける事情を考慮しまして、將來農地が如何に利用されて行くことが國家目的であり、又社會目的であるかと云ふことを考へ、又廣い見地に立つて、物價政策を考へまして、最も妥當である所に其の正當の根據があると云ふことは申すまでもないと思ひます、此の法案の第六條に於きまして細かく基準が決めてありますが、之に付きましての算出の基礎等に付ては、十分なる根據ある農林當局の方からの御説明を願ひたいと思つて居りますけれども、又既に御説明があつたことと思ひますが、私共はそれ等の説明を聽きまして、此の法案の狙つて居りまする對價の算出の方法としては、正に適當なものであると云ふ見解を持つて居るのであります、隨て新憲法が施行になりました上で、是が果して正當なる補償であるかどうかと云ふことに付きましては、やはり正當であると云ふやうに解して居るのであります(「ノーノー」)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=8
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009・木島義夫
○木島委員 入江法制局長官の説明は甚だ牽強附會な説明であつて、見方に依れば、我々議員を侮辱して居る答辯であると言つて差支へないと思ふ、現在政府は、本年度の米價に付ても生産者價格、消費者價格の差──まだ決定にはならぬやうでありますが、石百五十圓を認めた場合に於て、四十億の國庫負擔になると云ふやうなことが今論議されて居るやうでありますが、一箇年の國民の消費價格に付ても、主食の米に付ても四十億、五十億の犧牲を敢て顧みない政府であります、然るに此の日本の農村の劃期的の法則を、殆ど此の一箇年の米の消費差額にも足らぬやうな金で片付けてしまふと云ふこと、是が公正にして妥當なる行き方であると云ふことは、到底我々信ずることは出來ないのであります、併し是れ以上論議することは、論議に亙りますから、我々は本案に付ては議員としての適當なる判斷を下せば宜しいと思ひますから、私の質問は此の程度で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=9
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010・松本六太郎
○松本(六)委員 今一點御伺ひしたいのですが、只今の御説明に依りますれば、正當なる補償乃至價格を以て之を買收することに依つて憲法違反ではない、斯樣な御解釋でありますが、其の價格が正當であるや否やと云ふことは、只今御議論もありましたやうに、大なる疑問を持ちますが、同時にもう一つ第二十三條に規定して居りまする所の交換分合等に關する規定であります、之に依りますれば、農地委員會が當該農地と其の附近にある所の小作地とを、自作農創設の爲に交換を指示することが出來る、此の交換の場合には、近似すると書いてありまするから、條件の相似寄つたものと云ふことは一應表現されては居りまするが、併し似て居ると申しましても、土地は如何に隣地でありましても、是は相當色々の條件に於て違ひがあるのでありまして、是が交換を命ぜられた場合に、之に對して強制的な決定權を農地委員會が持つと云ふことになつて居るのであります、是は勿論異議の申立等かあつて、市町村の農地委員會で決定の出來ないものは、都道府縣の農地委員會が之を裁定すると云ふことにはなつて居りますが、何れに致しましても、強權を用ひて此の目的を押通さうと云ふ理念は一貫して居るのであります、斯樣なことが此の條項の中には規定されて居りますが、其の場合適當なる補償をすると云ふやうなことは更に規定を致して居らないのであります、是等もやはり、憲法の所謂財産權の保障を致しますと云ふことに付ての精神とは矛盾するものである、斯樣に考へられるのでありますが、御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=10
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011・入江俊郎
○入江政府委員 只今の御質問に御答へを申上げます、農地の交換分合に付きましての規定がございますが、之に付きましては、手續と致しましては、先づ前提として關係者の協議がございまして、其の場合に適當なる、生産權に付ての協議をなし得る途も認めてございます、其の點に於て決して不當に當事者の財産權を侵害するものではないと考へて居ります、尚ほ此の憲法第二十七條に於きましては第二項に規定がございますが、「財産權の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と云ふことが先づ決めてありまして、其の次に第三項として「私有財産は正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」とあるのであります、此の第二項の規定は財産權の内容でありまして、其の財産權の性質に應じまして、公共の福祉に適合するやうに其の内容は法律で規制することが出來ると云ふ根據でもあります、只今の御話の點は、今私が申しましたやうに、協議と云ふ風なことに依りまして、當事者に不當な損失を掛けることのないやうな措置が決めてあり、其の他異議の手續等も決めてありまして、十分其の利益を考へて居ると思ひますが、併し此の憲法の第二項にありまする財産權の内容が、公共の福祉に適合するやうに法律で之を定めると云ふ規定に依りまして、其の内容を財産權に付て規制をすると云ふことは、是れ亦憲法上可能な範圍であると考へて居ります、唯其の際に勿論不當な損失を掛けないやうな措置を十分立法の手續に於てしなければならぬことは當然であります、隨て此の憲法第二十七條の二項、三項の規定を併せ考へまして、只今の御質問になりました點は十分考慮が拂はれて立法されて居るものと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=11
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012・木島義夫
○木島委員 どうも私は此の際法制局長官に御質問申上げて見たいと思ひますが、それは自作農の創定等のことは、一つ耕作權と云ふ考へが本になつて居るやうに自分は考へて居りますが、耕作權は一つの私有權であると考へます、成程國家の政策の下に今囘自作農を創定するものではあるけれども、之を公共の爲と考へて宜しいものでありますか、どうですか、自作農の創定と云ふものが公共の爲と斷定し得るか、成程國家の一つの目的を持つて居る事業とは考へられますが、窮極する所は、耕作權の確立若しくは自作農の土地所有權の確立と云ふことに結論はなる譯でありますが、之を一概に公共の爲と考へ得るかどうかと云ふのは、私は疑問が殘つて居る、況んや公共の爲でも正當な補償を行はなければならぬと云ふことになりますから、先程私は申上げた議論は筋が通ることと思ふのでありますが、此の自作農の創定と公共の爲め斯う云ふ觀念に付て一つ御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=12
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013・入江俊郎
○入江政府委員 此の自作農創設に關しまして、地主が所有權を持つて居るとか、或は又農民がそれを買取りまして自作農となると云ふ場合に於て、其の權利關係は民法上若しくは私法上の權利であることは言ふまでもないのでありまするけれども、此處で問題にして居りますのは、此の法案の第一條にもありますやうに、自作地を殖やして自作農を創設すると云ふ點が眼目であります、自作農を創設して行くことは、正に國家社會の公共の福祉を増進する所以であり、正に公共的な仕事であると云ふことは言へようと思ふのみならず、此の法案の第一條に於ては、自作農を創設して以て農業生産力の發展と農村に於ける民主的の傾向の促進を圖ることを目的とすると書いてあります通りで、斯かる目的の爲に自作農を創設するのですから、是は正に公共の事業であると云ふやうに私共は考へて立案した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=13
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014・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 一寸關聯して──只今公共の福祉を基本として財産權の代償を決定すると云ふ御話でありましたが、公共の福祉の爲に必要があるから定められなければならない、正當なる代價を低くしなければならぬと云ふ論據が何處にありますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=14
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015・入江俊郎
○入江政府委員 御答へ申上げます、私は先程、或は言葉が足りなかつた爲に誤解を生じたのかとも思ひますけれども、公共の福祉の理由の爲に不正當な補償をして宜いと云ふ意味を申上げたのではないのであります、結局公共の爲に用ひると云ふことは、常に公共の福祉に適合すると云ふことを考へて其の用途が決められ、又其の仕事が規定せられるのでありまして、之をする場合には、私有財産としての其の社會的價値を考へて、之に妥當なる補償は勿論しなければならぬと云ふ趣旨で申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=15
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016・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それでは今度は農政局長に御伺ひ致しますが、此の土地の對價を決定される基礎を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=16
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017・山添利作
○山添政府委員 是は御存じのやうに、現在小作料は金納になつて居り、且つ其の額の決定の基準としては、米一石七十五圓と云ふことで換算されたものが現在の小作料と云ふことになつて居ります、自作農創設をするに付て考慮すべきことは、土地を買受ける側の人から見て考慮することが多々ございす、と申しますのは、最長三十年間に亙つて負擔をして行く、其の間色々な變化もあると云ふことは當然考へなければならぬことでございますが、偖てそれ等のことを見透して行きまして、是れ是れであると云ふ豫斷を下すことは何人にも出來ない所であります、隨て自作農創設に使ひました公定價格は、現在小作者が支拂つて居ります小作料を超えない範圍に於て年々年賦金を支拂ふ、又租税を支拂つて行く、さう云ふやうに一定年間支拂を致すことに依つて自然に土地の所有權を取得する、斯う云ふことを目安にして、昨年の秋決定致して居ります公定價格を其の儘採用致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=17
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018・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それでは根柢が甚だ薄弱であると思ひます、對日理事會に於ける英國の勸告案が、丁度此の金額に符合するから御決定になつたと云ふやうにしか、我々としては受取れないのであります、それでは餘りに日本政府の權威がないのではないか、もう少し數字的な根據を御示し願ひたい、又只今の御説明で、小作料を基本として將來年賦償還がやれると云ふ範圍内に於て決めたと云ふやうに承知致しました、勿論三町歩以下の小地主に對しては、別途二百二十圓の報償金がありますが、それを加へても尚ほ小作人を中心とした所の價格の決定の仕方であつて、そこに何等地主的な考慮がされて居ない、併し是等は考慮の範圍に入らない非常に微細な考慮であると思ひます、只今法制局長官が御説明になりました所謂正當なる價格の補償をなす時に於て、初めて財産權は提供されなければならない、此の憲法の立場から考へると、只今の農林當局の御説明では當を得ないと私は思ふ、もう少し根據のある御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=18
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019・山添利作
○山添政府委員 此の價格は、本來御承知のやうに昨年の臨時議會の時に於きまして、現在の公定價格の通りに決定を見て居るのであります、それから議論になりますのは、當時米價が百五十圓となつて居つた、それが三百圓になり、更に其の倍にも騰貴すると云ふことが豫想せられるではないか、さう云ふことになれば、非常に物の値段と致しまして違つて居るべき筋合のものではないか、斯う云ふやうな感じを一般に持つて居るのであります、併し此の米價がどう云ふやうに決定されるかと云ふことは、御存知のやうに、其の生産費を基準として決定されます、其の生産費の中に含まれて居る土地資本利子に對するもの若しくは小作料、斯う云ふものに付きましては別に引上をすると云ふことを致さないのでありまして、是は其の儘と云ふことであります、隨て只今御述べになりましたやうな立場から致しましても、之を此の際引上げると云ふやうな必要を認めないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=19
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020・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 只今數字を以て具體的な説明がないのは非常に遺感であります、是は根據ある數字を極く最近の機會に御示し願ひたい、茲で私が特に言はなければならないのは、物價指數は去年と今年と變動して居る、勿論土地の代價には色々のものが含まれて居ります、又米價などに付ても、基本として生産費が含まれる、又其の中に土地に對する補償も其の一部に含まれて居る、併しながら土地に對する補償も、生産費が種々變化されて行くやうに、やはり土地の代價は、或は借地料、利用料と云ふものは、やはり物價指數に依つて變動すべきものと考へて居りますが、變動するものと認めるのか認めないのか、若し認めるとすれば、此の價格の決定に付て從來通り据置かれることは觀念的に私は違ふと思ふ、其の點に付てもう一度伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=20
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021・山添利作
○山添政府委員 變動すべきか否か、是は自由經濟時代に於て變動するだらう、又變動することは事實であります、併し御承知のやうに、現在の價格體系を立てて居ります時には、是は概ね生産費を基準として價格を決定して居ります、而して米が高くなりましても小作料が高くなるべき理由は私は發見し得ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=21
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022・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 さうすると大體物價指數が變動しても、土地の利用料は變更されないものであると云ふやうな、あなたの方の御説明のやうであります、勿論それは私は納得出來ない、それは見解の相違であつて致し方ないが、今政府當局が言はれるやうなことでありますならば、斯う云ふ問題が起つて來る、今後物價の切下げと云ふ問題が起つた時に、農地證券の切下げをなすや否や、若しあなたのやうな御説明ならば、切下げと云ふ問題は起らぬ、七十五圓の價格を持つた農地證券の價格は永久不變に持耐へて行かなければならぬ、其の點はどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=22
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023・山添利作
○山添政府委員 私が申しましたのは、永久不變に今の七十五圓を「ベース」として決められた小作料に變化がない、斯う云ふことを申上げたのではありませぬ、現在の國の經濟情勢に於て、「インフレ」防止と云ふ建前を以ちまして價格政策を致して居る、其の時に小作料を上げ、隨て米價を上げ、隨て又消費價格を上げるか、若しくは國庫負擔を増す、さう云ふ政策は執るべきにあらず、斯う云ふことを申上げたのでございます、將來農地證券等に付て何等か價格切下げをやるかどうかと云ふ御話でございますが、是はどう云ふことに依りましてさう云ふことを御考へになるのか存じませぬが、假に爲替等の關係に依りまして貨幣價値の切下げを一般的にやると云ふことでありますれば、それは凡ゆるものに及ぶ場合が恐らく想像されることでありまするけれども、是は何人にも分らぬと思ひますが、私自身の感じと致しましては、さう云ふ貨幣價値の切下げがあるとは考へて居らないし、又今後も經濟政策としてさう云ふことはあるまいと云ふやうに考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=23
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024・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 是は土地の價格が、私に言はせるならば、主觀的な要素を全然含めないで、客觀的な情勢に依つて決定されて居る、即ち不當に安いと云ふことの結論に相成る、さうなれば結局米價切下げが將來起つて來る場合も、それ等の政策に依つては此の農地證券の價値は一定不變であつて、左右されない性質のものでなければならぬと云ふ結論になる、其の爲に私は此の質問をして居る、唯茲に斯う云ふ問題が將來起ると思ふ、それは小作人は要するに土地の代價を年賦的に支拂はなければならぬ、所で買受側の收入が非常に變動を來して、收入がないと云ふことになると、此の規定に依つて政府は此の年賦償還を或る程度免除される、さうすると國家が損失を受けるのであります、其の時に國家は其の財源を何處に求めるのかと云ふ根本問題になります、大藏大臣が居られないのですが、農林省は之に付てはどう云ふ御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=24
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025・山添利作
○山添政府委員 御質問なさいました趣旨が分りました、先程申しましたのは、幣制の整理とか何とか、此の前の第一次大戰後「ヨーロッパ」に於てやつて居つたことを頭に浮べて答辯致しましたが、今のやうな御話でありますと、絶對に切下げと云ふことはありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=25
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026・森田豐壽
○森田委員 此の問題は非常に愼重を要すると思ふのでありますが、私御伺ひしたいことは、第一番に小作料を決定するに當りまして、根本的な小作料と云ふものは、現在の總ての收入の上から云つて、地主は今後一町歩になりまして、而も其の小作料で生活しなければならぬと云ふ立場になる譯でありますが、小作者を全然廢することが出來ぬ建前である以上は、小作料に依つて生きて行く人も考へなければならぬと思ひまするが、此の小作料の決定が現在の總てのもの收入、即ち國民の生活收入に於て、俸給生活者の如きは莫大なる増加をして居るにも拘らず、地主の所謂小作料と云ふものは、如何なる場合に於きましても最も少い所に置かうと云ふ其の考へ方に、根本的な誤りがあるのではなからうかと思ふのでありますが、此の小作料の算定の基礎をもう一度御伺ひ致したい
尚ほ時間もありませぬから續けて質問致しますが、報償金を出すと云ふことになりますと、財産税としては、此の報償金を加算したものを其の對象に見る、即ち三町歩なら三町歩の田地に對しまして報償金を交付する以上は、財産税として納入するものに對しましては、此の報償金を加算したるものを以て其の價格と見積る譯である、即ち報償金を加へたるものを財産税の對象に見られる以上は、其の土地の價格は、報償金とは申しながら其の金額を加算したものが其の土地の價額でなければならぬ譯であります、報償金を出す以上は、其處に價額を是正すべき價額の誤りがある、仍て報償金を出さなければならぬのだと云ふことを建前として、茲に報償金を御出しになつたのかどうか、其のことに付きましても併せて御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=26
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027・山添利作
○山添政府委員 御答へ致します、地主の人も、從來の状況に比べて非常に收入の状況が違ふことは事實でございまして、金納になつた時に違ひ、又昨年秋以來の一般の「インフレーション」の慘害を地主の人も受けて居ると云ふこともございます、そこで小作料算定の基準でございますが、昨年の秋に於きましては、御承知のやうに地主米價は五十五圓でございました、それが當時の状況に依りまして七十五圓と云ふことを基準として小作料を金納に換算する、斯う云ふ風に決定されたのでございます、それから更に米價が非常に上つて參つて居る譯でございますが、是は物納時代と比べますと、地主の人に取りましてそこに非常な差があることも事實でございます、併しながら斯う云ふ事柄の由つて來りまする所は、國の農業政策として、どうしても從來の物納小作料を金納にしなければならぬと云ふ理由、又價格政策と致しましては、極力「インフレーション」を防ぐと云ふことでございまして、生産費の増加と云ふやうな正當の理由がございます以外に、價格を上げることは、考へ得ないことでございますから、さう云ふ意味に於て据置かれて居るのでございます、隨て之を反面から見ますれば、丁度銀行預金をして居る人が、貨幣價値の下落に依つて慘害を被つた、それと同じ立場に地主の人も置かれて居ると云ふ譯でありまして、是は一般の苦痛斯う云ふことでございます
尚ほ報酬金に付きましては、價格が不正當であるから出すと云ふ意味ではございませぬ、價格は正當なる價値でございますが、偖て中小地主の身に取つて見ますと、今申上げましたやうな「インフレーション」の慘害とか色々苦痛がございます、そこの所を斟酌致しまして、國と致しましても、此の財政事情の中で許容される範圍のことを致したいと云ふので報償金を出すのでございます、又之を財産税の關係から見ますれば、例へば物納をする場合に、それが報償金附のものとして評價されるか否かと云ふ問題でございます、是は例へば十町歩の小作地を持つて居りますと、其の中五町歩は物納する、あとの五町歩に付ては、其の中の四町歩が今囘の措置に依る買收の對象になると云ふことでございますれば、物納分に對しては普通の公定價格に依る評價を致しまして、殘つて居ります五町歩の中で國が賣收致します四町歩、其の中の三町歩に對して報償金を交付する、斯う云ふ手續に相成る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=27
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028・森田豐壽
○森田委員 税を取立てる時には、報償金を加味した價格に依つて財産税を取ると考へまするが、地主が一町歩を取つてあとの殘りが三町歩──あと四町歩と云ふやうな御説明でしたが、一町歩は成程報償金は出しませぬが、三町歩は報償金が出る譯であります、其の報償金は、財産税として納める場合に於ては之を加算したものに對して税金が課かると云ふことにはつきりなると思ひますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=28
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029・山添利作
○山添政府委員 それは財産税の時には、報償金も含まれるものと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=29
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030・森田豐壽
○森田委員 財産税で含まれることにならば、其の金は正に土地の價格として決定した譯です、價格として少くともそこに決定を見た譯であります、即ち報償金を加へた價格が其の土地の價格であると云ふことがはつきりした譯であります、此の點に付きまして、之を報償金と看做さぬと云ふことは、財産税で取る場合には絶對許さない、其の價格と見たから財産税を課ける譯です、だから其の時には報償金ではない譯であります、是はそれだけの價値ありと云ふことを財産税として認めたからこそ、そこに徴收をする譯でありますが、其の點はどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=30
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031・山添利作
○山添政府委員 報償金は價格ではございませぬが、國家から報償金を交付されれば、それだけあると云ふことは確かで、其のものに關してそれだけの收入があると云ふ意味合に於て、さう云ふ評價をすると云ふことであらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=31
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032・森田豐壽
○森田委員 報償金として大藏看は認めませぬ、其の時には、土地の價格として──財産税として評價する時には、所謂報償金を交付する地所に對しましては、之を報償金としては勘定しないで、それは土地の價格として勘定して初めて財産税が課かる譯です、是はあなたの仰しやるやうに、報償金として交付は受けるが、財産税は含めたものに課けると云ふと、報償金は所得税か何かを取られる場合と同じやうに取られるやうに考へられますが、さうでなくして、報償金を含めたものが其の土地の價格であると云ふことを大藏省が認めて、初めて財産税が課かる譯です、其の點は、大藏省は居りませぬが、局長も御承知になつて居る筈だから、はつきり一つ御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=32
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033・山添利作
○山添政府委員 それは言葉の解釋だらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=33
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034・小川原政信
○小川原委員 此の際一點だけ御尋ねして置きたいと思ひます、先の法制局長官の御説明に依りまして疑問を生じたのでありますが、其の前に順序として農政局長に御尋ね致します、此の對價に付きまして、一段歩七百六十圓なら七百六十圓、それでも宜しうございますし、或る一農場と假定致します、其の農場が十五萬圓の借金を持つて居る、それを買上げた、所が十萬圓で買上げられると云ふことになるのであります、其の場合五萬圓は一體どう云ふことになるのでありませうか、それは地主の損になるのでせうか如何ですか、一點御尋ねして置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=34
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035・山添利作
○山添政府委員 其土地の上に、公定價格と言ひますか、國の買收致します價格以上の擔保が付いて居ると云ふ場合に於きましては、結局支拂ひ切れない農地證券以外の財源から負債を返さなければならぬと云ふことが起る譯でございます、是は色々擔保になつて居る事例等に付きまして、勸業銀行の話を聽いて居りますけれども、勸業銀行は手形を書かして居ると云ふ點もございませう、併し只今御示しになりましたやうな例はないと云ふやうなことを言つて居るのでありまして、さう云ふ場合がないとは申しませぬけれども、大體の場合に於きましては、さう云ふ事態は殆どないのではないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=35
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036・小川原政信
○小川原委員 甚だ當を得ない御答辯であります、北海道で自作農を設定させましたが、其の農場が八萬何千圓の借金を持つて居ります、是は拓殖銀行へ行つて借金をしました、所が自作農で買上げる時には五萬何千圓で、此の地主は三萬圓餘損をして居るのであります、斯う云ふ事實がある、さう云うことはなからうと云ふやうなことは、此の法制を作られる上に於て甚だいけないと云ふことを私は考へるのでありますが、此の點に付ての御答辯を願ひまして、更に法制局長官に御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=36
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037・山添利作
○山添政府委員 どう云ふ意味合で其の負債が出來たか存じませぬけれども、其の土地に付いて居る負債と云ふものと、國が買收します價格とは、凡そ直接の關係がある譯ではないのでありまして、それは恐らく貸す人の立場から見ますれば、其の土地がそれだけの値打があると云ふので、それを擔保にして貸したのかも知れませぬ、併し此の公定價格は全體的な基準を立てまして妥當な價格を賃貸價格を標準にして決めるのでございます、個々の事例に於きましてさう云ふ場合が生じましても、是は又巳むを得ないことであると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=37
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038・小川原政信
○小川原委員 其の御説明には承服出來ませぬ、併しここで一應法制局長官に御尋ねを致しますが、前の御話に依りますと、公正な適當な價格に依つて買上げるのであるからして、憲法違反にならぬ、斯う仰しやいましたが、今の農政局長の御話では、私はそれは強制買上だと思ふのであります、なぜならば、其の土地が三萬圓貸さうと五萬圓貸さうと、實態はそれが其の土地の適當な値段であります、甲から見ようが、乙から見ようが、兎に角それだけの對價が出て居るのであります、それを水田は四十、或は畑は四十八と云ふものが公正妥當なものだとは、それで判斷は出來ないのであります、さう致しますと、今申しました一例に依りましても、十五萬圓の借金のものを十萬圓で買上げて、地主は五萬圓を別に支拂はなければならぬと云ふことになりますと、是は強制的に私有財産を認めないと云ふことになります、私は是は憲法上違反であると考へる、其の點をはつきりして戴かなければならぬ、私の思ひますには、其の十五萬圓の借金の土地を持つて居れば、家族が食べられまして、さうして公課金も皆納めて、まだ其の外に、其の人は土地に對して收益を上げて行く所の方法があります、併し十萬圓で買上げられてしまつて、五萬圓の借金を押付けられましたならば、此の人間は倒れるより外に仕樣がないのであります、さうすると茲に於て全く人權を無視してしまつたことになる、此の立法は社會政策から來た所の立法でありますから、私も肯きますけれども、是は憲法上の違反であつて、さう云ふ無理なことをなさると公益とは見られないと云ふ結論になる、其の點が能く分るやうに御説明を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=38
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039・入江俊郎
○入江政府委員 御答へ申上げます、只今の具體的な設例に付きましては其の場合の色々な條件があつたらうと思ひますので、一般的な御答へとして一つ御聽きを願ひたいと思ひます、兎に角公共の用に供するが爲に或る土地を買上げると云ふ時の正當な補償と云ふことに付きましては、其の財産が社會通念上一般に持つて居る價値であると云ふことは言はずとも當然であると思ひます、其の爲に、其の土地を所有して居る者が、其の土地に關聯して各種の經濟關係、法律關係を持つて居る時に、それに依つて各種の關係が生じたものが、皆其の財産の價格になるかどうかと云ふことは、個々の場合に判斷する外はないやうに存ずるのであります、そこで憲法の狙ひと致しましては、其の財産が通常の社會通念上考へられる所の價値を算定致しまして、之を正當なるものとして拂ふと云ふことに依つて目的を達するものと思ふので、更にそれに關聯致しまして、色々の關係からして、場合に依つては其の所有者が或る損失を被むることがあるとしても、そこまでは現在としては考へて居らないやうに思ひます、要は結局具體的の場合に於ける算定であります、或は御説のやうな場合に、其の算定方法に適、不適があつたかも知れませぬけれども、現在の建前と致しましては、今申しましたやうな通常の見地からの正當な價格を算定して、之を買上げると云ふ建前で立法すべきものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=39
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040・小川原政信
○小川原委員 只今の御説明は能く分りますが私にはどうしても分らないのであります、斯う云ふことが偶發的に一つあつたとか、二つあつたとか云ふやうなことなら、あなたの説明は洵に當を得た説明で、私もそれを常識と致します、けれども擔保を受けて居ると云ふことは、是は常識であります、殆ど銀行に入つて居らない土地は稀であると思ひます、皆借金をして居ります、其の借金の大小に依りまして、買上げられた金で之を支辨出來る土地もございませう、併し支辨出來ない土地が相當ございます、是は私が二、三件自作農をお世話した中に一件さう云ふものがあります、三萬何千圓到頭押付けられてしまつた、是は當然であります、斯う云ふことがある、それでありますから、立法の上から考へますと、憲法と云ふものは特別のものを認めるやうにする、それは私は違ふと思ふ、憲法は、特別なものであらうとも、特別なものでなからうとも、其の下に押へられて行くことが本當であらうと思ふ、殊に斯う云ふ實例のあるものが此の法律に依つて押へられないと云ふことは、私は立法技術の不備であると思ふ、此の點を直して戴かなければならぬ、そこまで行けば議論になりますから、私は議論は申上げませぬが、私共は其の御答辯では承服出來ませぬ、全く農民が如何にもさうであると云ふことを一つ御答辯願はなければならぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=40
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041・山添利作
○山添政府委員 土地に對する負債は、今は殆ど少くなつて居るのであります、段々少くなつて居りました所へ、今年の春三月の金融措置令と云ふやうなもので又一緒に返してしまつたと云ふやうなこともありまして──是は餘談でございますが、兎も角非常に少いのが實際でございます、小川原さんの御述べになりましたのは、何か其の地方特別の事情のあることと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=41
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042・小川原政信
○小川原委員 さう云ふことになりますと議論になつてしまひますから、それは止めたいのです、併しそれは農政局長、相當考へて貰はなければならぬ、それは答辯せなければならぬ爲の答辯だと私は思ふ、事實はさう云ふものではないのです、それですから、さう云ふ場合があつたならどうするか、やはり立法としては──此の案を私共成立たせたいのです、ですから此の案を成立たせる爲には、さう云ふ場合があつた時に斯うするのだと云ふことがなければ、此の案は成立たない、それですから是は愼重な御態度で御返事を承りたい、今借金を持つて居らぬと云ふやうなことは大きな誤りであります、そんなものではない、農業を經營する者はそんなものではない、農場を經營する者はそんなものではない、さうでありますから、どうか能く其の點は十分納得の行くやうに御答辯を願ひたいと思ひます、それ以上私は追求しようとは思ひませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=42
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043・山添利作
○山添政府委員 それは土地を擔保にして相當負債をして居る、恐らく斯う云ふ場合が想像されます、土地改良をやる、或は水利事業をやる、さう云ふやうな事柄に依りまして、土地に對する投資と云ふやうな意味合ひに於て、相當の負債が付いて居る、斯う云ふこともあらうかと思ひます、其の場合に於きましては、度々申述べて居りますやうに、其の有益費用と云ふやうなものは土地の價格決定に參酌する譯でございます、若しさう云ふ理由のものでございますれば、是はさう云ふ方法に依つて解決をされると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=43
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044・松本六太郎
○松本(六)委員 今小川原君が質問致しましたことに關聯致しますが、只今農政局長から御答辯を願つた、土地に對する改良事業とか、特殊の施設の爲に出來た借金と云ふ場合は別であります、併しさうでなく、其の人の經濟上の都合に依つて持つて居る所の借金、小川原君が例に擧げられましたやうなものがあつた場合、政府の買上げるよりも多くの借金が付いて居る場合、其の當人が支拂能力のない場合は政府は其の土地をどうなさるか、御買上になることが出來ない場合です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=44
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045・山添利作
○山添政府委員 一々さう云ふ例を擧げられまして、如何にも不人情なことを答辯しなければならぬやうなことになる譯でございますが、是は兎に角一町歩までは保有が認められて居るし、而して其の他の小作地を買上げる譯でございますから、やはり相當從來の關係から見れば良く考へまして──土地を持つて居ると言へば相當の家だらうと思ひます、さう云ふ例を御擧げになりましても、やはり買ふことは買ふのでございますけれども、具體的にはどうもさう云ふことではないのではないかと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=45
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046・平野市太郎
○平野(市)委員 一寸關聯して…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=46
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047・葉梨新五郎
○葉梨委員長 如何でせうか、時刻も大分經過しましたし、此の問題は中々一、二分や四、五分で決まるやうに存じませぬのですが、午後も續行することでありますから、どうでせうか午後にしては…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=47
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048・平野市太郎
○平野(市)委員 午後に司法省の方が御見えになるのでしたら、午後で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=48
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049・葉梨新五郎
○葉梨委員長 勿論司法省にも求めなければならぬ、平野さんの質疑は關聯がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=49
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050・平野市太郎
○平野(市)委員 あります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=50
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051・葉梨新五郎
○葉梨委員長 さうすると司法當局に又別な質疑が起つて參りました、それでは菊池君の御質疑と併せて午後に一つ願ひます、答辯等を加へますと、餘り時間が後れましたから──司法當局に對する質疑もさうでありますが、それでは是にて休憩致しまして、午後は一時半から再開することに致します
午後零時二十七分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=51
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052・会議録情報3
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午後二時六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=52
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053・葉梨新五郎
○葉梨委員長 休憩前に引續き會議を開きます、休憩前に於きましては新憲法第二十九條の「財産權は、これを侵してはならない。」と云ふ條項と本法案との關係に付ては質疑が行はれたのであります、政府側は、本案は公共の福祉に適合する目的を以て立法せられて居るのであるから、正當な補償の下に之を公共の爲に用ひると云ふことになるのであるから、新憲法に牴觸しないものである、斯樣な解釋の下に進んで居られたのであります、之に對して委員諸君から、今囘の買上價格の決定が果して正當な補償であるか否かと云ふ點に付きまして、當局側との間に意見が交換せられたのであります、之に關聯致しまして、所謂正當な補償、此の價格が正當なりや否やを決定せんが爲に、此處に大藏大臣の出席をも要求致した次第であります、どうぞ其の意味に於きまして此の件に付きましての質疑應答を續行せられんことを希望致します、平野君、午前中のあなたの御發言が午後に留保してある譯ですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=53
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054・平野市太郎
○平野(市)委員 私は法制局長官と司法省の方に…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=54
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055・葉梨新五郎
○葉梨委員長 法制局長官が御出席なければあなたの御質問はありませぬか──木島君は宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=55
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056・木島義夫
○木島委員 私一つ…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=56
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057・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは木島君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=57
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058・木島義夫
○木島委員 私は先程土地の買上價格竝に政府が今日地主米を買上げて居る其の價格と云ふものは、新しい憲法が施行された場合に、慥か第二十九條だと思ひましたが、財産權の「正當な補償」と云ふ意味に於て牴觸するものではないかと云ふことに付て質問したのでありますが、法制局長官の御答辯は私を滿足させることが出來なかつたのであります、そこで只今農林大臣も大藏大臣もお見えのやうでありますから、重複する嫌ひはありますが、御尋ねして見たいと思つて居ります、尤も此の問題に付ては、私は前から農林大臣より是非御答辯を得たいと云ふやうな考へは持つて居つたのであります
私は現在地主から買上げて居る所の小作米の價格、之に付ての疑問を先に申上げて見たいと思ひます、是は結局土地買上の價格にも自然影響して來る問題であります、地主から買上げる米の價格は石五十五圓になつて居ります、所が政府が消費者に賣渡す米の價格は石二百八十六圓六十五錢になつて居ります、ですから此の一般國民の消費價格で國民が消費して社會上、生活上問題ないと政府は考へて居るものと私は考慮しますが、其の價格までは少くも地主から買上げる米の價格を持つて行かなければならぬと思ふ、なぜさうでなければならぬかと云へば、此の五十五圓と二百八十六圓六十五錢、尚ほ内輪に見ても一般營團に賣買する價格は二百五十圓です、假に二百五十圓と手取早く押へたとしても、此の差額は百九十五圓になる、此の差額は全く地主の犧牲に於て生産人に助成金を出して居る、斯う云ふ觀があるのであります、國家は米の生産を維持せんが爲に斯くの如き助成金を出さなければならぬとするならば、國家自體で之をやれば宜いのであつて、敢て地主の犧牲に於てやる必要はない、一方に於て國民を救ひながら、やはり地主も國民の一人である以上、之を虐げ搾取する、斯う云ふことはどう云ふものであるか、新憲法に依りますと、私有財産は公共の爲でも正當な補償を行はなければ用ひることは出來ない、斯う云ふ意味の規定があります、然るに地主に對して、社會一般の消費價格と考へられて居る二百五十圓以下、而も僅か五十五圓で強權を以て買上げなければならぬ理由が何處にあれか、此の點を私は政府當局から先づ御説明を願ひたい
第二としては、水田に付ては平均買上價格は一段歩七百六十圓になるやうであります、然るに今度の規定に依りますと、小作料と云ふものは水田に付ては二割五分を最高とする、それより高く出來ない、斯う云ふ規定になつて居るやうでありますが、假に今水田から二石の米が收穫されると致しますれば、現在の生産價格三百圓の二倍、即ち六百圓になる譯であります、此の六百圓の二割五分は百五十圓であります、此の見地から見ましても此の百五十圓を五分に還元するならば三千圓、三分に還元するならば五千圓の原價を考へることが出來るのであります、若し之を一割に還元しても千五百圓と云ふ價格は出て來るのであります、然るに此の土地を七百六十圓と云ふ、何分の一と云ふ非常に少い金額で買上げようとすることは、正當な補償をなすものとは到底考へられない、買上と云ふのは唯名目であつて、事實上地主から土地を沒收するものであります、さう云ふやうな政策を政府はなぜ行はなければならぬか、例へば二十一年度の米の買上に於ても目下問題になつて居るやうですが、假に今新聞等で傳へられて居る如く、國庫より百五十圓の補給金を出すとすれば、政府の負擔が四十五億になると云ふことを論ぜられて居りますが、單に一箇年の國民の米の消費と云ふ事柄から云つても、さう云ふ厖大な金額が考へられて居る、所が是等の米を生産すべき土地の買上に付て三十年、五十年の國家の大事を解決する此の案に於て、斯樣に不當な安い、而も其の犧牲の金額は一箇年の米の操作費にも及ばないと云ふ金額で、地主から土地を沒收しようとすることは、資本主義を全然認めない日本の國情でもないし、此の時に當りまして、政府は如何なる政策の轉換を見たのか分りませぬが、又さうだとすれば憲法に麗々しく、斯くの如き財産權の補償も出來ないのに拘らず、斯う云ふ條項を何故設けるのであるか、又國民が今後此の農地の買上に對して、是は新憲法の條項に反すると云ふ理由を以て訴願なり訴訟なり起さぬとも限らぬと私は憂慮するのであります、今や農村に於ては、此の農地法案を繞つて國民は非常な關心と脅えとを持つて居るのであります、地主も國民の一人であるし、又政府は戰爭中土地改良事業等幾多の仕事を農民、殊に地主に課して、地主は斯う云ふことをしなければならぬ、斯う云ふことをしてこそ初めて土地に對する果實を得る權利があると云ふことで、土地改良若しくは耕地の幾多の改良事業を地主の責任に於て課して居ります、然るに今日沒收にも等しい此の法案を出して恬として責任を感ぜざるの感があるのは、如何なる理由であるか、我々の了解に苦しむ所であります、此の法案の實施は憲法の財産權の侵害にならないと云ふ理由を、農林大臣竝に大藏大臣からの御答辯に預かりたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=58
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059・和田博雄
○和田國務大臣 地主の小作米が五十五圓と云ふことでありますが、是は御承知のやうに、此の戰爭中に於て地主米價と云ふものが決められたのであります、地主米價と云ふものは、自作農であれば、假に石三百圓ならば石三百圓が總て地主に行く譯であります、それを實際上此の生産をやつて居るものに與へると云ふ意味で、小作の場合には小作の方へ、五十五圓を差引いたあとのものを生産費としてやる、そこで地主米價と云ふものが出來て居ります、是は地主米價、結局地主が保有する米に付ては五十五圓を拂ひ、あとの供出米に付ては、五十五圓を拂つた殘り──此の保有米制度は、物納と云ふ小作制度であつたが故に、實はさう云ふ不合理的なことをやつて居つたのであります、併し去年の農地調整法に依りまして、現在既に小作料は金納となつて居るのであります、金納となりまする時に、是は本當を言ひますれば、地主が既に實質的に金納になつて居る、五十五圓と云ふものが小作料であるべき筈であつたのでありますが、其の時の政治的な情勢に依りまして、七十五圓と云ふものを以て換算すると云ふことになつて、金納小作料は實質的には二十圓上つて居ります、地主が保有して居りまする米、地主の保有米と云ふ制度は、金納制度の下には當然ないのであります、隨て次の食糧年度からは、地主の保有米の制度はありませぬ、併し現在に於ては──二十年産米に於ては、地主の保有米の制度があるものですから、其の保有米と云ふものに付て、食糧の窮屈な時に、地主さんの方からも、一般の人を救ふ爲に、地主が持つて居る保有米を出して貰つて、さうしてそれを供出して貰つて、一般の國民に配給しよう、斯う云ふことで地主の保有米を買ひまする時には、五十五圓で買ふ、元々五十五圓であるから五十五圓で買ふ、併しそれを地主に拂下げる時には二百四十圓で拂ひますと不合理が起りますから、之に付ては同額の金で拂ふ、斯う云ふことに致して居るのであります
それから價格の點でありまするが、是は前から私が御説明申上げましたやうに、此の價格が正當であるかどうかと云ふことを、唯單に地主の採算の立場からだけ議論をするのは、私は價格の點に於てはどうかと思ふのであります、是は自作農の創定と云ふ大きな公共の仕事を行ひまする建前から言ひまして、此の事業が同時に其の目的を達成しまするやうに、且つ農業の生産力を擧げる上に役立つ、斯う云ふ意味の見地を採入れまして、そこに價格を、本當の收益價格と云ふものを基礎にして決定する必要があると思ふのであります、隨ひまして成程只今の御計算のやうなことになりますれば、それは高い金になりませうが、さうでありませずに、實際上の政策を實行して行き、且つ自作農になりました者が、大きな負擔を負はずして、十分償還も出來、又生産力も擧げ得るやうに倍はなければならぬと云ふ觀點から申しますれば、私が前に説明を致しましたやうな方法に依りまして、只今のやうな價格を出した譯であります、それからどうも小作料が二割五分を超えることは出來ないと云ふので、直ぐ二割五分に物納的の場合に於けるやうに上げると云ふ御計算でありますが、是はさうではないのでありまして、小作料は現在の制度に於ては最早金納制度になつて居るのであつて、唯農産物の價格其の他色々のものが高くなつても、小作料は二割五分を超えることは出來ない、日本の小作料と云ふものは兎に角二割五分と云ふものが、將來色々な經濟的變動があつても、最高であると云ふことを規定したのでありまして、直ちに此の小作料を二割五分に上げて宜いと云ふことを言つて居るのではないのでありまして、隨てさう云ふものを基礎にして價格を出すと云ふことには參らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=59
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060・石橋湛山
○石橋國務大臣 御質問に對しては、只今農林大臣から御答へした所で盡きて居ると私は考へます、要するに、此の法案に依つて決められた土地等の價格は、今日假に土地の自由市場がありまして、それを販賣する、賣買すると云ふ建前から決められたものでなく、全體の日本の農業の今後のあり方を、どう云ふ風に持つて行つたら宜いかと云ふ、詰り公共の利益の爲とあるのでありますが、左樣な觀點から計算されて決められたるものである、斯樣に御理解を願ふ外はないと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=60
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061・木島義夫
○木島委員 さうしますと、今後如何なる經濟上の變化があつても、地主に納める金納小作料石七十五圓はずつと變へない考へでありますか、それが一つ、もう一つは、根本的の問題になりますが、今まで物納であつた小作料を、政府は、地主や國民の意思に拘らず、之を金納に直す、それはどう云ふ理由であるか、成程そこに地主の不勞所得とか、さう云ふやうな觀念があるからではないかと思ふけれども、一體米價なるものは、若しくは地主の年貢なるものは、過去數十年、否數百年に亙つて、其の率と云ふものは變つて居らなかつたものである、所が市街地の土地の如きは、日本の發展と共にここ五十年、百年の間は、數十倍、數百倍になつて居る事實があるのであります、にも拘らず、農地だけ、又地主の所得だけさうする理由が何處にあるか、若し地主の所得をそこまで制限し、又土地の所有をここまで制限するならば東京に於ては、東京驛前の三菱け原などは、相當厖大なる地價になつて居るのでありますが、是は社會的見地から、やはり農村と比例的に考へて行かなければならぬものではないかと思ふのであります、又將來農村の安定と云ふ立場から言つても、都會地の如くでなく土地以外に殆ど投資物件等はないのであります、之を唯耕作權の確立の爲に細分して行かなければならぬと云ふ合理的根據を、我々は發見することが出來ないのであります、殊に土地を持ちながら、耕作權の關係上、一畝歩の土地も耕作することが出來ない、歸農しても耕作することは出來ない、斯う云ふ人人を國家としてやはり救はなければならぬと思ふのであります、自分が土地を所有して居りながら、又租先傳來持ちながら、而も多年の間改良しながら、其の土地を所有して居ながら、作ることは出來ない、之を國家として傍觀して居て果して宜いものであるか、否、傍觀するのではない、國家が作意的にさう云ふことをして宜しいのか、其の儘で宜しいのか、それならば地主の活きる他の途を考へなければならぬのであると云ふことを我々は考へます、是等を匡救する對策は何處にあるか、何か考へて居られるか、又先般政府は、耕作權は所有權に優先すると云ふやうな御答辯をされたやうでありますが、是は如何なる法理的根據に基くものであるか、此の點も承つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=61
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062・和田博雄
○和田國務大臣 小作料を金納に致しましたのは、一寸考へて見ても分るのでありまして、此の貨幣經濟の時期に於きまして總てのものが貨幣と云ふものを通じて支拂をされて居ります中に、農村に於きまするものだけが物納と云ふ形を執つて居るのであります、其の前は勞働を以て小作料自體と致して居つた時代もあつたのであります、社會の色々な進歩のことを考へて見まする時に、又農業の今後の發達と云ふものを考へまして、日本の農村の基礎を固めると云ふ點から考へて見ましても、物納と云ふやうな制度よりも、是はやはり金納と云ふ制度を採りまして、耕作者である小作人が經營上何等拘束されることなく、自由に能力を伸ばし得る餘地を與へますることが、全體の國の經濟力を上げる上から必要だと考へて、金納に致したのであります、是は國家的な必要がありますれば、物の支拂方法等に付て相當の制限を加へますことは、考へ得る所であります、物納を金納に致したからと云つて、是は別にさう云ふ趣旨に反するのではないと考へるのであります
それからもう一つ都會の地代に關することでありますが、是はやはり今までも地代家賃の統制令等がありまして、都會に於きまする地代、家賃等が壓側的に昂騰致しまして、國民の生活を不安ならしめ、脅かすと云ふ時に、國家的な見地から之に統制を加へて行くのであります、只今はさう云ふ程度の統制を加へて居る譯でありますが、都會地に於ける地代其の他の點に付きましては、やはり將來と雖も大きな見地からは統制を加へて行く必要があるのではないか、斯樣に考へて居るのであります、何れもそれぞれの部門に於て國家の必要に依りまして公の制限を加へて行くと云ふことになるのであります
それから最後の點でありますが、耕作權は所有權に優先すると云ふ答辯を私がしたと云ふことでありますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=62
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063・木島義夫
○木島委員 それは農林大臣がしたかどうか、私此の間新聞で見たのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=63
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064・和田博雄
○和田國務大臣 さうではないのでありまして、耕作權と所有權とがお互ひに打突かる場合が出て來る、今度の場合、例へば地主が耕作をしたいと云つたやうな時には、現在の小作人が耕作して居る譯でありますから、そこで小作人の耕作の權利と地主の所有の權利が打突かつて來る、土地返還と云ふことが起つて來るが、其の時にはもう一つ上の立場に立ちまして、一體今の所有者が耕した方が其の土地に付て増産になるか、或は現在の小作人に其の儘耕させて置く方が増産になるか、それから又小作人がそれ等の土地を返すと云ふ承諾をし、さう云ふやうな情勢にあるかどうか、さう云ふ大きな見地からそれを判定するのであつて、どちらがどちらに優先すると云ふやうな事柄ではないのでありまして、さう云ふ場合には國家的な立場から、生産力の増加と云ふ點から判定を付けて行くのだ、斯う云ふことを御答へ致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=64
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065・木島義夫
○木島委員 最後の問題は私農林大臣の御答辯を以て大體滿足するものであります、私は此の間缺席して居りましたが、新聞に依りますと、耕作權を時代の趨勢上重く見ると云ふ答辯のやうに新聞では拜見したのです、私は之を政府當局竝に此の會を主宰して居る委員長に伺ひたいと思ふのですが、さう云ふ答辯はなかつたのでありませうか、此の間新聞で見ますと、所有權と耕作權が競合した場合に於て、斯う云ふ時勢であるから耕作權の方を優先的に考へると云ふ意味の──是は政府委員の方と思ひましたが、答辯をしたと云ふことが新聞に書いてあつたのですが、果してさう云ふことがありましたかどうですか、私は今の農林大臣の御答辯の程度ならば大體に於て滿足するものであるが、若し此の委員會でさう云ふ答辯があつて、それが認められて居るとするならば安心出來ない、斯う云ふことになるのですが如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=65
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066・葉梨新五郎
○葉梨委員長 委員長の記憶では、左樣な答辯はあつたやうに記憶致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=66
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067・木島義夫
○木島委員 それでは私の質問は此の程度で…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=67
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068・平野市太郎
○平野(市)委員 法制局長官が見えませぬから、司法省の方から先に御尋ね致します、戰爭中に出來ました各種統制組合でありますが、此の統制機關は、田舍の方では戰爭が終つたならば直ちに廢すべきである、然るに何時までも永續させることは、官廳の方に有利だから何時までも置いておくのである、此のやうな聲も聞くのであります、戰爭中官廳の方は統制になつて以來不自由を感じなかつたのであります、「ビール」でも酒でも菓子でも十分に手に入ることも出來たと思ふのでありますが、戰爭が終つた今日、戰爭中一時に出來ました統制機關の廢すると云ふことは困難でありますが、徐々に之を廢止すべきが正しいと思ふのであります、さう致しませぬと、やはり田舍で聞くやうな聲を、今日私こちらへ參りまして、政府の御膝元の東京の新聞で見たのであります、我々田舍者は實に驚いたのであります、是は本月二十二日の東京新聞に書いてあつたのでありまして、私百姓としてびつくり致したのであります、一寸參考までに茲に讀上げたいのであります「聲」と云ふ欄で、「或る幹部と役人」と云ふ見出しで、一女事務員が出して居ります、「私は或る統制組合の一事務員です、組合には毎日某省の役人が入れ代り立ち代り來て、組合の理事や幹部と話して歸ります、歸る時は決つた樣に大きな包みを拘へて歸ります大き過ぎる時は自宅まで屆ける樣にと命ぜられ、たまには中華料理店や待合にも行くらしく、眞赤になつて歸つて行くこともあります、だから私達組合の女事務員は、組合の仕事より役人の私用に使はれてヰる樣なものです、役人が歸つた後組合の理事幹部は、あの人は堅いがあれだけやれば融通を利かしてくれるだらうとか、あれだけ飮ませたら證明書に判を捺してくれるだらう等と話合つて居ります、また私達は課長とか事務官とか云ふ役人達の自宅へ酒や其の他の必需品を屆けに行つたことも再三であります、細かいことは私達は知る由もありませんが、大體の經緯は判斷が出來ます、こんなことをして業者に莫大な利益を與へるような公定價格を認めて、不當に物價を吊上げる役人は、果して消費者國民の爲の役人と云へるでせうか、が腐つた心根の役人達を責めるよりも、日本はこれで將來建ち直つて行けるだらうかと不安な氣持の方が先になります、そして民衆の爲の組合でなくて、役人達の組合の樣に思へてなりませぬ、こんな組合は果して私達の組合だけなのでせうか、私は特に組合の名を祕し官吏の反省を望む次第です(某統制組合、一女事務員)」と出て居るのであります、私達のやうな田舍者が東京に來て、斯う云ふ新聞を見て、田舍と東京が餘り變らないと云ふことを痛感致したのであります、故に私は戰爭中出來た統制組合は、惡いやつから先に廢止を願ひたいのであります、過日私食糧營團の問題を申上げまして、政府當局の御答辯を拜聽致しまして、非常に心強く感じたのであります、尚ほあの際に、御答辯を如何に請求しても承ることが出來なかつたのは俵の問題であります、之を一つ司法省の方で嚴重に取締つて戴きたいのであります、一俵の俵は如何に計算致しましても、百姓の手間賃を計算すれば二十圓は掛ります、それを營團が故らに刄物で切つて米を振つて、其の米は其の米で又賣る、俵は當然農民に還元すべきものを他へ流して居ると云ふことは、是は罪にならぬのでありませうか、一つ嚴重に取締つて戴きたいのであります、當然使へるものを鎌で切つて、さうして他の方面へ而も高い相場で流して居るのは、是が罪にならぬのでありませうか、是は嚴格に司法省が手を著けますれば、食糧營團は凡ゆることをやつて居るのが分ります、戰爭中乾麺は──是は已むを得ぬことでありますが、一元配給をする爲に、乾麺は食糧營團の手に移つたのであります、所が是が移る時には眠り口錢をやる、乾麺は八百屋が販賣致して居つたのであります、其の權利を取上げるのであるから、一貰目に二錢七厘の眠り口錢をやるからと云ふので營團が取つて行つたのであります、藷類も、是は藷類の販賣は組合にも──あの當時の藷屋の連中が寄つて、民間で組合を作りまして、政府に協力を致しまして、藷を腐らせずして皆消費者に配給して居つたのであります、是は旨いことをやつて居つたのであります餅屋は餅屋に限つて居つたのであります、是も營團が取上げてしまつた、藷屋の組合は解散してしまつた、之にも權利金も何も呉れない、さうして腐り藷を營團が消費者に配給する腐り藷でも取らなかつたならば、後の米麥の配給が止りさうになつた關係上、腐り藷を皆配給を受けたものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=68
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069・葉梨新五郎
○葉梨委員長 平野君に申上げますが、成べく條文に關係ないことは一つ簡潔に御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=69
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070・平野市太郎
○平野(市)委員 嚴重に一つ取締り下さる司法省の方針であるや否や、此の點を一寸御尋ね致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=70
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071・古島義英
○古島政府委員 御質問は洵に御尤もであります、統制會社、或は其の他の統制等が必ずしも正當なやり方をやつて居ないと云ふことを耳に致して居りますが、其の甚だしきもの、若しくは責任を持つて告訴致されたものに付ては、檢擧も致し、現に處罰を致したものもあります、只今の米の俵を横流しするとか、之を賣るとか云ふやうなことが犯罪になるかと云ふ仰せでありますが、是は正當な權限を以て取得したる物を他へ賣却を致し、若しくは其の處分をすると云ふことは、犯罪にならぬことと思つて居ります、若し是が俵は返すのだと云ふ約束の下に取つて、それを返さぬと云ふならば、契約の違反になるか、或は横領になると云ふことも起つて參りませうが、さうでなく、米を供出させる、麥を供出させる時に米何俵、或は麥何俵と云ふことで供出させた以上は、其の容れ物である俵と云ふ物も是は其の儘國家の方に所有權が移轉致すのであります、それを其の代行致す統制會社が處分致しましても犯罪にはなりませぬ、恐らく質問の御考へは、昔の縞の財布にお金五十兩、五十兩借りたのであるから、縞の財布まで置いて來ぬでも宜いのだ、五十兩さへ返せば縞の財布たる俵はこつちへ持つて來ても宜いのだと云ふ御考へから出るのでありませうが、是とは全く違ふのであります、何俵の供出と云ふことで、其の儘出して居りますから、所有權が移轉して居ります、其の完全に移轉した所有權に基いて之を處分するから犯罪にならぬ、斯う御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=71
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072・平野市太郎
○平野(市)委員 犯罪にならぬと云ふことは、私は最初から知つて居るのでありますが、是は社會的道徳の罪になると思ふのであります、社會的の道徳の罪は罰することは出來ませぬか、私は是は農林大臣に御尋ね致すのでありますが、俵は當然農民に無償で以て還元すべきものだと思ふのであります、なぜならば、我々の供出する米は政府が買上げて食糧營團に委託をして加工配給を命じて居るかと思ふのであります、それにはちやんと搗減りも見て居る、十六貫、六十「キロ」の米一俵を搗いたならば、五十六「キロ」で宜しい、四「キロ」の差額は見て居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=72
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073・葉梨新五郎
○葉梨委員長 平野君に申上げます、今は本條文の逐條審議中であります、此の條文に關聯しないことは御愼み願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=73
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074・平野市太郎
○平野(市)委員 けれども是は全國農民に關係する…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=74
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075・葉梨新五郎
○葉梨委員長 全國農民に關係する問題でありましても、他の機會に於て御質問あらんことを望みます、只今は條文の逐條審議中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=75
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076・平野市太郎
○平野(市)委員 それでは此の問題は是で打切りまして、先刻申されました耕作權の問題に付て御尋ね致します、小作人の耕作權は、小作人に取つては一番大きな財産であります、此の耕作權を政府は法律上如何に御認めになつて居るのでありませうか、小作人の耕作權は、地方に於て甘土とも申して居ります、地主の所有權は、是と反對に苦土とも申して居ります、其の小作人の甘土の權利、所謂耕作權は地主の苦土と云ふ所有權の何十倍の價額に依つて小作人同志が賣買して居る、是は地主も認め、社會一般が認めて居るのでありますが、政府は此の小作人の唯一の財産である耕作權を地主の所有權同樣、物權として法律の上に認める御意思ありや否や発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=76
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077・和田博雄
○和田國務大臣 耕作權と言ひましても、例へば香川の甘土料とか、其の他の縣で從來の慣習上行はれて居るものが多くある譯であります、例へば永小作權とまでは行きませぬが、開墾したとか云ふやうなことで小作人の耕作權を相當強くして、それが慣習上一つの經濟的價値を持ちまして、丁度所有權と同じやうに認められて居る所が方々にある譯であります、さう云ふ慣行上認められて居りますものは、法律の上で物權として書いてありませぬでも、是は政府と致しましても亦一般に於ても、十分社會的に認めて居るのであります、それ等のものは十分に社會的に認められて居る、斯う申上げて宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=77
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078・平野市太郎
○平野(市)委員 大體私は滿足致したのでありますが、社會的に認められて居るのでありまするから、地主の苦土の所有權と同じ權利に物權として認める譯には行かぬでせうか、香川縣に於ては、地主の所有權の何十倍で小作權の權利金は賣買されて居るのであります、地主の所有權よりも強いのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=78
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079・和田博雄
○和田國務大臣 どうもそれを物權として認めると云ふよりも、寧ろさう云ふものが發生する所に此の土地制度の上から云ふと何であるのでありまして、寧ろ其の甘土と苦土とは一緒になつて、早く其の小作人が自作になつて行くと云ふ方が制度としては宜いだらうと思ひます、だからそれだけを切離して物權として規定する考へは今ありませぬ、さう云ふ形で小作權に謂はば一つの價値が出て來ると云ふことは、其の小作人に取りましては非常な財産でありまして、それが慣習的に認められたものでありますれば、是は十分保護しなければなりませぬが、それと同時に又新たに小作をしようとする者に取つては、是は非常な負擔になると云ふやうな關係が色々ある譯でありますから、それは只今の所社會的に認められて居ると云ふ所で、出來るだけさう云ふことのないやうに、底土と何とか一緒になると云ふ方向に寧ろ問題は處理して行くべきものではないか、私は斯樣に考へて居る譯であります、御請のやうな甘土、香川縣、高知縣等に於ける上土と云ふやうなものは恐らく底土よりも多くの經濟的價値を持つて居る、現に自治的に登記か何かされて、轉賣などもされて居るやうな状態であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=79
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080・平野市太郎
○平野(市)委員 私農林大臣の御答辯で滿足することは出來ました、次に御尋ね致しますのは、都市附近の田畑であります、昨日都市計畫、或は區劃整理の土地に付て御尋ね致しましたが、本日は私都市附近の田畑の問題に付て御尋ね致しますが、都市附近の田畑では、其の土地の所有者が何等改良も加へず、都市の發展に伴つて耕地が宅地に賣却せられる場合があるのでありますが、此の時には坪何百圓と云つて賣買されるのであります、斯う云ふ場合に政府はどう云ふ風に御考へになるのでありませうか、私も現に都市附近に田畑を作つて居る百姓でありますが、今から十四五年前一段三百二十五圓で買つた土地が、宅地として賣る場合には、坪二百圓でも三百圓でも買手がある、斯う云ふことは今後の日本には絶對に許すことは相成らぬと思ふのであります、如何に都市の附近の土地と雖も、今囘の此の農地制度の改革に依つて政府が買上げる價格は、今後と雖も此の標準に依つて買上げるべきが正しいと思ふのでありますが、都市附近の土地が宅地に變更された場合、其の利益を全部土地の所有者に取らすのでありますか、全部税金を課けられるのでありますか、此のやうなことをせずして都市附近の土地と雖も、田畑はやはり田畑なりで賃貸價格の何十倍、現在の程度以上に賣ることは出來ぬ、斯う云ふ風に一つ御發表出來ぬものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=80
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081・山添利作
○山添政府委員 都市附近の農地の單に用途を轉換する場合でございますが、其の用途變換の場合に付きましては、地方長官の許可制度と云ふやうなことに依つて、不必要な變換は避けて、出來るだけ農地を維持したい積りでございますが、其の時の價格自身と致しましては、是は農地でなくなる譯でございますから、自然他の問題になる譯であります、其の場合に農地並みと申しますか、御議論のことは、一般的に、偶然的な利益の發生は之を止めたらどうか、斯う云ふ御意見のやうに承つたのでありますが、さう云ふことに付きましては、現在は價格統制を色色な面に致して居ります、それで一般政策に從ひ、又租税政策に於て増加税か何かを取ると云ふやうな必要があれば、それは一般政策でありまして、農地であるものを他の用途に轉用する場合に、それだけを捉へて特別の扱ひをすると云ふことは不適當のやうに思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=81
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082・葉梨新五郎
○葉梨委員長 菊池君、農地の賣買に關してあなたは昨日から發言を求められて居ります、司法政務次官が幸ひ見えて居りますから、極く簡單に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=82
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083・菊池豐
○菊池(豐)委員 簡單に申上げます、調停裁判に依つて決定を見ました農地の關係に付て、今度定められました第五條第六號に基いて農地委員會が其の決定を妥當ならずとし、さうして適當の措置を講じます際に、其の前の決定は覆すことが出來ますか、譬へて申上げますと、甲、乙、丙の關係で、乙が公用の爲に出征をする、其の間甲の地主の諒解を求めず丙に其の地所を貸與へる、歸つて來て其の返還を迫つた、丙から調停裁判を請求した、當時の終戰直後の社會情勢から見て、丙に與へることを妥當と見做した判定の官僚や委員達の決議は蓋し妥當だつたかも知れないのでありますが、今囘提案されました此の條文に依つて見ますと、市町村の農地委員會に於て之を覆すことが出來る根據があるのでありますが、此の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=83
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084・古島義英
○古島政府委員 調停と申しましても、普通の小作調停とか或はさう云ふ調停だらうと思ひますが、其の調停に基く決定と云ふものは、當然判決と同樣の效力があるのであります、所が偶偶今日になりますと、此の自作農創設特別措置法と云ふものが出た、是の要綱が現はれますと、地主の中には相當奸智に長けた方がありまして、此の頃になつて非常に目に付きますのは、要綱が出て後に賣買をして、實際はさうでないやうな仕組みを致します、さうして登記が出來ませぬから、之を故らに調停裁判に掛けまして、調停が成立してやるのだと云ふ形式を取りまして、此の裏を掻いて登記を取ると云ふやうな地主もあるのであります、所が只今御質問のやうな、出征其の他の事故に依つて外に出て居て、其の間一時其の耕地を依託して居つた、所が歸還して自分で耕作する必要が起つて來たからそれを返還して呉れと云ふ調停が起つたと致しますれば、其の調停は全く正當な返還請求でありますから、是は返還しろと云ふことで調停が成立したことと思ふのであります、然らば左樣な實際上出征等に依つて依託したる土地を返還させることが、今日の方策上から言ひましても適當なのでありますから、餘程の事情がなければ農地委員會に於て之を覆すことは出來ないと思ふのであります、若し又農地委員會に於て覆されると云ふやうなことがあるならば、其の時は御承知の通り異議の申立も出來ます、訴願も出來ます、又訴願の結果は、今度最高裁判所の一部に行政部があります、行政裁判所でありませぬが、通常裁判所に行政訴訟が起せると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=84
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085・菊池豐
○菊池(豐)委員 事實は司法次官が今御想像下すつたことは凡そ對蹠的な形になつて居る、地所の取上げを不可と看做して、調停に依つて、地主の關知せざる第三者が小作契約權を取得した形になつたのであります、ですから其の當時の社會情勢ではそれで宜かつかも知れませぬが、今日此の條文に當嵌めて考へて見ますと、農地委員會は恐らくは不當の決定なりと看做す場合が相當あるだらうと思ひます、大體御説明で分りましたが、念の爲め申上げます、それからもう一つ申上げます、御話のやうなもぐりの地主が他にもあります、やはり法の裏を濳つて居る、それは知事の認可を得るにあらずんば土地の賣買をすることが出來ないことを承知の上で、最近になつて契約したに拘らず、古い契約書を作つて、十年前に何年經つたら賣り買ひすると云ふ契約書を作つて買受けた者が契約履行の訴へを起す、さうして其の謄本を添へて知事の所へ殺倒すると云ふやうな手も屡屡行はれて居りますから、紙背に徹する眼光を以て適當に御處置願ひたいと思ひます、同時に更に屡屡此の委員會等で質疑が繼續されたことのやうに記憶して居りますが、農地の闇賣の取締が甚だ不徹底だと思ひます、他の闇賣の取締と違ひまして、犯罪搜査上別に苦心を要せざる所のものを、封建的の制度が強い爲か、政府が強い爲か、地方の大地主の闇賣に對して當局の取締が非常に微温的だと云ふことは、私は茨城縣ですが、茨城縣、栃木縣等に於て屡屡散見して居る事實であります、一つの例を申上げまして適當なる御調査を仰ぎたいと思ふのでありますが茨城縣西茨城郡の宍戸町に於きまして、闇の價格二十三萬何がしかを警察の取調に依つて返還した地主がありますが、其の地主などは更に莫大な闇をやつて居ります、明るく賣るのですから是だけは實際は明るい賣り方です、尚ほ目に觸れざるものが相當ある譯です、丁度お上に捕まりましたのは氷山のやうなもので、上に出て居ります分は僅かで、下に非常に多いと云つたやうなことも御洞察を願つて、適當な御取締を願ひたいと思ひます、甚だしいのは、「ブローカー」の跋扈、一つの詐害行爲、其の中に是は一つの例として申上げますが、茨城縣眞壁郡古里村桑山大島久一郎、有名な良くない存在の地主でありますが、是が現に私の居ります同村の大木昭、それに四町歩十二萬圓の賣買契約を三月の下旬に致しました、買ふ方の當人は、是は法律で買へないのだらうと言ふのに、いや俺は政治的の手腕があるから、必ず適當に知事も警察も籠絡するからと云ふので、十二萬圓の中手付金として八萬圓を現金で取りまして、さうして地所の引渡を要求しますと、今度の法律の爲に渡すことが出來なくなつた、金は新圓と舊圓の切換でないと言つてそつぽを向いて居る、是が一口かと思ひましたら、あと二十餘口もある、而も第一線の官憲は斯う云ふことを取調べるのに、何故か唯躊躇して居る傾向があるのであります、獨り是ばかりではございませぬ、其の外私の地方に斯う云ふ事例が非常に多いやうに思ひますので、成べく迅速果斷に耕作者の不安を一掃する意味に於て、適當なる取締を強化せられるやうに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=85
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086・古島義英
○古島政府委員 只今の一番初めの問題でありますが、實際今年になつて賣買致したに拘らず、買主と賣主兩方の當事者で十年も前の證書を作成して、知事の許可なきに拘らず之を登記しようと云ふ事項であります、是は勿論買主と賣主と共謀の上で、事情を知らざる縣廳を欺いて其の登記手續を致すのでありまするから、之には十分制裁を加へる必要があらうと思ふのであります、併しながら是が共謀の上でありますから、本當に十年前に拵へたものか、今年拵へたものかと云ふ擧證は中中困難なものだと思ひます、其の擧證さへ出來るならば十分處罰するに足ると思ふのであります
それから第二の、何萬圓かで賣つて手金の何萬圓かを受取つて、而も言を左右に託して登記をしなかつたと云ふ事實は、登記が出來ないからと云ふことが賣買契約後に起つた事項であるならば別でありますが、其の當時既に登記する能はざる事があつたのを隱蔽して、而も登記が出來るものの如く、殊に政治的の勢力があるから、如何樣な法律で妨げても、自分は其の法律の裏を潜つて登記をすると云ふことを言つて賣買すれば、そこに買人を欺いて手金名義を以て金員を騙取したと云ふことになりまするから、責任ある告訴がある以上は、私の方では十分それは取調を致し、處分を致したいと云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=86
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087・菊池豐
○菊池(豐)委員 今の問題の前に、同じ地主の下に二十數件行はれて居る問題は、告訴の有無は別と致しまして、司法當局で相當の搜査はしたのであります、事實は明白に分つたにも拘らず、先程どなたかの御質疑のやうな裏があるかどうか知れませぬが、其の儘に停頓してしまつて居ります、さう云ふことは到る處にある、告訴があつたなかつたは存じませぬが、現行犯として搜査竝に取調は致したのでありますが、それは被害者の取調のみが行はれて、加害者の取調が行はれないと云ふことが現實にあります、之には御異議はないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=87
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088・古島義英
○古島政府委員 取調があつたかなかつたか、若しあつたとするならば、恐らく司法省にも報告がある筈であります、恐らくは警察官等に於て一部の取締があつたのかも分りませぬが、私の方には未ださう云ふ報告は來て居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=88
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089・松澤一
○松澤(一)委員 一分で宜いのですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=89
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090・葉梨新五郎
○葉梨委員長 今の菊池君の問題と同じなのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=90
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091・松澤一
○松澤(一)委員 いや、違ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=91
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092・葉梨新五郎
○葉梨委員長 條文に關係してですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=92
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093・松澤一
○松澤(一)委員 勿論です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=93
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094・葉梨新五郎
○葉梨委員長 ではどうぞ松澤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=94
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095・松澤一
○松澤(一)委員 私は昨日からの農林大臣の御答辯の中に、耕地整理をしたり、地主が土地の改良に色々盡した場合には、其の土地の賣買は考慮すると云ふやうなことを澤山聽いたのでありますが、それとは反對に、小作人の方が其の土地に非常に改良を加へたり、澤山の金を掛けて色々施設をし、それが爲に賃貸價格が上るやうな良田美畑になつた、斯う云ふやうな場合には、あべこべに土地の價格を差引いて低くするかどうか、私は之を常識的に考へて見て、今日農地に對してどちらが手を加へやうと、又本人は相當の金を掛けやうと、自分のものになると云ふ所に有益費の請求もしない、私は過去ずつと農村に住んで實際を見て居る者でありますが、地主が、土地改良の爲に小作人の作つて居る土地に澤山の金を掛けると云ふやうなことは、澤山見受けて居りませぬ、土地改良でも其の他でも、殆ど助成金の範圍で金を貰ふと云ふことはあるが、自分の實際耕作せざる土地に對してそんなに金を掛けると云ふことはして居ないのであります、若し假にさう云ふ場合があつたとして、土地の價格が特別に高くなると云ふやうな場合には、反對に小作人側も土地の有益費等は請求することが出來て安くなる、過去非常な不毛の土地を改良して、それが爲に澤山の金を掛けて、今日では賃貸價格を上げて、一段八百圓も千圓もするやうになり、況して報償金も貰へるやうな土地にしてやつた、斯う云ふやうな場合には、此の土地は非常に安くされるかどうか、是は重大な問題ですから、一つ農林大臣の御意見を御聽きして置きたい、現實に於て値段の動搖を來すと云ふことは、此の法案の運營上非常に重大であると思ひますので御聽きしたいと思ひます
それから只今丁度司法政務次官が居られますので、次官に一寸御尋ね致しますが、調停などで最近地主が土地を返せと云ふので、調停を申立てたり或は訴訟を起したりして居る、さう云ふ場合に、今將に劃期的な農地法と云ふものが近い内に現はれて來ると云ふ場合に、さう云ふものの取扱に對して、各地方裁判所にどう云ふ命令を御發しになつて居るか、どしどし片つ端から片付けて、返さぬものは返さぬ、取るものは取つてしまへと云ふ命令か、それとも斯う云ふ立法が今に出て來るから、暫く此の成行を待つて、さうして土地の處分をすることが妥當である、斯う云ふことで土地買上等に對する調停は、裁判所に於ては一時停頓の状態に置かれて居るやうになつて居るかどうか、私の今まで見聞する所に依ると、此の法案の現はれるなどと云ふことは度外に、どしどし今までと同じやうな關係でやつて居るさうであります、私は是は非常に無駄が多いと思ふのでありますが、其の邊のことも御聽きしたい
今一つは十一月二十三日以後に於ける土地の買上や不正な土地の取引は之を無效にする、そこで序に承つて置きたいのでありますが、それが無效になつた場合に、之を行つた者は當然犯罪になるかどうか、嚴罰に處すべきかどうか、斯う云ふ立法が出る、或はさう云ふ社會情勢になつて來たと云ふ時に、殊更自分の知能を働かして、さうして國の土地改革に對して大きな障碍を與へるやうな者に對しては、嚴罰に處する用意があるかどうか、それも一つ承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=95
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096・古島義英
○古島政府委員 只今の調停の御話でありますが、成程御質問の通りに、さう云ふ風な調停の申立は中々多いのであります、殊更に土地の引上を調停に出したり、若しくは馴合ひでやる調停等もあります、併しながら私の方から、之を早く解決しろとか、どうせ法律が出るのだから、其の解決するまで待てと云ふやうな指令も命令も出して居りませぬ、併し實際の取扱上としましては、あなたの仰せになつたやうな、どしどし片付けろと云ふ事案よりも、此の法律が出るのだからと云ふので、調停委員會に於ても判事に於ても、相成るべくは此の法律の行き方を見てから解決しようと云ふので、解決の出來ない部分が甚だ多いのであります、それを私の方で統計を取つて參つたのでありますが、土地取立等の調停は其の後一向に進捗せぬのであります、賣買の問題は大分進捗したのがありますが、其の進捗した中には、今の馴合ひ調停がありますので、是は一遍きりで、成程左樣でござんすか、どうも有難うございました、と云ふので調停が成立するのであります、併し是は馴合ひでありますから、是の取消等も出來ることと私は信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=96
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097・和田博雄
○和田國務大臣 小作人が非常な資本、勞力を投じまして、生産力の増大に資したと云ふことがありますれば、それは有益費償還の時に考慮致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=97
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098・吉澤仁太郎
○吉澤委員 一寸農林大臣に御伺ひ致したいのでありますが、第六條の農地を買收する場合でありますが、現在耕地整理を施行中のものは、どうも一年や二年では完了出來ない箇所もあると思ひます、隨て其の後に於て賃貸價格等も決められる譯でありますが、それはやはりそれ等の完了後になるのでありますか、乃至は特殊の方法に依るのでありますか
それから次に車地と云ふ箇所があるのであります、それは單に名義だけは其の所有權があるのでありますけれども、十年毎に一囘位づつ地割をやりまして、それに依つて耕作を取決める場所がある、さう云ふ所はどうも小作人と稱するものが、どれが誰の名義であるかと云ふことが分らぬ、地租公課其の他はやはり年々部落が──要するに部落管理に依つて決めるのでありまして、自己の所有權の番地が果して自分のものであるか、他人のものであるか、全然分らぬのでありますが、さう云ふ箇所に對する買收方法を併せて伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=98
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099・和田博雄
○和田國務大臣 耕地整理施行中のものは、どうもやはり買收の對象になると思ひます、買つて整理の施行を促進するよりないのであります、地割の方は、御話のやうに、日本にも、僅かではありますがまだ殘つて居りますが、地割の方は買收の對象にしませぬ、政府としては買ひませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=99
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100・吉澤仁太郎
○吉澤委員 それは、不在地主も同樣なことになる譯でありますか、要するに在村地主でないものです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=100
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101・山添利作
○山添政府委員 我々の知つて居りまする範圍では、地割の慣行のある土地は、其の部落民が所有をして居ると云ふものでありまして、どうも不在地主が持つて居ると云ふやうなことは、一寸さう云ふ該當の例を知らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=101
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102・吉澤仁太郎
○吉澤委員 農政局長は御存じでないかも知れませぬが、私澤山知つて居りますし、現に私共の村の中にも三、四の部落にさう云ふものがあるのでありまして、東京都在住の地主の持つて居るものもあります、又他町村の地主の持つて居るものもあります、何れも車地であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=102
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103・山添利作
○山添政府委員 それは買收をしまして、さうして其の土地の上にさう云ふ慣行に依つて耕作をして居る農民の團體の所有に歸すれば宜しいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=103
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104・吉澤仁太郎
○吉澤委員 團體と云つても、別に部落と云ふものがありますが、團體と云ふのは、農事實行組合か或は農業會かでなければならぬと思ふのであります、さう致しますと、今の御答辯に依つて、在村地主のものは其の儘にして置くが、不在地主のものは農事實行組合なり乃至は農業會の所有に歸せしめる、斯う云ふ御方針なのでございますか、もう一應伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=104
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105・山添利作
○山添政府委員 其の場合に、共同致しまして其の土地をさう云ふ慣行に依つて耕作して居る人の團體に賣る譯であります、併しそれは便宜に從ひまして、實行組合でも宜しうございますし、又然らざる事實上のさう云ふ組合契約に依る所の團體と云ふことでも差支へないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=105
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106・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは第七條に移ります、第七條以下は説明員に朗讀致させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=106
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107・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第七條 前條の規定による農地買收計畫に定められた農地につき所有權を有する者は、當該農地買收計畫について異議があるときは、市町村農地委員會に對して異議を申し立てることができる。但し、同條第五項の縱覽期間を經過したときは、この限りでない。
市町村農地委員會は、前項の申立を受けたときは、前條第五項の縱覽期間滿了後二十日以内に決定をしなければならない。
前項の決定に對して不服ある申立人は、都道府縣農地委員會に訴願することができる。但し、同項の期間滿了後十日を經過したときは、この限りでない。
都道府縣農地委員會は、前項の訴願を受理したときは、同項但書の期間滿了後二十日以内に裁決しなければならない。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=107
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108・葉梨新五郎
○葉梨委員長 以上に付て御質疑はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=108
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109・麻生正藏
○麻生委員 第七條で都道府縣の農地委員會が訴願を受理するのでありますが、此の訴願を受理致しまして、此の決定に異議のある場合はどんなことになるのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=109
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110・山添利作
○山添政府委員 之を以ちまして裁決になります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=110
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111・麻生正藏
○麻生委員 價格の點に付て、此の前の御説明では、價格に關する限りは裁判所に出訴することが出來るやうに聽きましたが、さう云ふことでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=111
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112・山添利作
○山漆政府委員 價格に付きましては、裁判所に出訴をすると云ふ途は別に開いて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=112
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113・和田博雄
○和田國務大臣 第十四條であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=113
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114・葉梨新五郎
○葉梨委員長 他にございませぬか──ございませぬければ、次に第八條を朗讀致させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=114
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115・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第八條 第六條の規定による農地買收計畫につき同條第五項の期間内に前條第一項の規定による異議の申立がないとき、同項の規定による異議の中立があつた場合においてそのすべてについて同條第二項の規定による決定があり、且つ同條第三項但書の期間内に訴願の提起がなかつたとき、又は同項の規定による訴願の提起があつた場合においてそのすべてについて同條第四項の規定による裁決があつたときは、市町村農地委員會は、遲滯なく當該農地買收計畫について都道府縣農地委員會の承認を受けなければならない。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=115
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116・葉梨新五郎
○葉梨委員長 以上に付て御質疑はございませぬか
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=116
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117・葉梨新五郎
○葉梨委員長 御質疑なしと認めます、第九條を朗讀致させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=117
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118・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第九條 第三條の規定による買收は地方長官が前條の規定による承認があつた農地買收計畫により當該農地の所有者に對し買收令書を交付して、これをしなければならない。但し、當該農地の所有者が知れないとき、その他令書の交付をすることができないときは、命令の定めるところにより、第二項各號に掲げる事項を公告し、令書の交付に代へることができる。
令書には左の事項を記載しなければならない。
一 第六條第五項各號に掲げる事項
二 對價の支拂の方法及び時期
三 その他必要な事項
地方長官は、令書の交付又は第一項但書の公告をしたときは、遲滯なく令書の交付又は同項但書の公告の際における買收の目的たる農地につき先取特權、質權又は抵當權を有する者に對してこれを通知しなければならない。但し、先取特權、質權又抵當權を有する者が知れないとき、その他通知をすることができないときは、命令の定めるところにより、公告をし、通知に代へることができる。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=118
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119・葉梨新五郎
○葉梨委員長 以上に付て御質疑はございませぬか
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=119
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120・葉梨新五郎
○葉梨委員長 御質疑なきものと認めまして、第十條を朗讀せしめます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=120
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121・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第十條 第三條、第六條及び前條の規定の適用については、農地の面積は、土地臺帳に登録した當該農地の地積による。但し、市町村農地委員會が當該農地につき土地臺帳に登録した地積を以つてその面積とすることを著しく不相當と認め、別段の面積を定めたときは、當該農地については、その面積による。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=121
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122・麻生正藏
○麻生委員 第十條の但書に付てでありますが、耕地整理を施行したもので、まだ確定測量以前のものは土地臺帳の面積に依らうとしましても、其の増減が一致しない爲に決めることが出來ませぬ、隨つて此の場合は、土地の確定測量を早く實施して、増減を確定することが必要でありますけれども、是は本條文の但書の趣旨に依つて處置せられるものと思ひますが、御意見如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=122
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123・山添利作
○山添政府委員 是は耕地整理の場合にありまして、もう既に換地が出來ると云ふ準備の出來るものでありますれば、急いで換地を促進しまして、それに依る場合には、勿論實測した面積がある譯であります、それに依ることが出來ないと云ふ時には、前々申上げましたやうに、原簿に依ると云ふことでありまして、此の時にはどうなるかと云へば、原簿に依つて元の土地所有者の地位を承認すると云ふことであります、さうして實際に換地交付が行はれると云ふ場合には、臺帳と實際換地交付されるものとの差額は、耕地整理法に依る規定に從つて精算をする、斯う云ふことになると考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=123
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124・吉澤仁太郎
○吉澤委員 此の條項に依りますと、例へば券面より相當坪數が多いと云ふやうなものは、やはり農地委員會が決定すればそれに依ると云ふことになる譯であります、隨て今まで券面に依つて總て小作料を計つたと云ふものが、若し假に農地委員會が、或る程度の差があると認めましても其の地積に依つて買收することを適當と認めた場合、當然今度は小作者との間に或る種の紛議が釀される譯でありますが、是も大體券面、所謂土地臺帳に依ると云ふやうな方針で、條文を變更すると云ふのではありませぬが、さう云ふ方針と云ふことで、何か大臣の御言明を得ましたならば、後の紛議を釀すことが非常に少くなると思ひますが、一寸大臣の御意見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=124
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125・和田博雄
○和田國務大臣 御話のやうに、是は原則としては土地臺帳に依る譯でありまして、あなたの御話のやうに、僅かな地積の違ひのあるものを一々農地委員會が之を變へると云ふことでなくして、さう云ふ僅かの違ひのやうな場合には、土地臺帳に依る、斯う云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=125
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126・井伊誠一
○井伊委員 此の但書に付てでありますが、是は農地委員會が著しく不相當と認めた時には、農地委員會の意見に依つて更正決定が出來ると云ふ風に解されるのでありますが、是は買上をする際だけに限つて斯う云ふ權能があるのでありますか、それとも農地委員會と云ふものは、此の後に於ても實地の段別と公稱段別と違ふ場合に於ては斯う云ふことを更正決定する權能を持たせると云ふ所まで、擴がるのでありますか、其の點を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=126
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127・山添利作
○山漆政府委員 是は土地の賣買に付ての規定でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=127
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128・井伊誠一
○井伊委員 是は其の場合だけに限るのでありますか──分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=128
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129・葉梨新五郎
○葉梨委員長 他に御質疑がございませぬければ、第十一條を朗讀せしめます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=129
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130・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第十一條 第六條乃至第九條の規定によりました手續その他の行爲は、第三條の規定により買收すべき農地の所有者、先取特權者、質權者又は抵當權者の承繼人に對してもその效力を有する。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=130
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131・葉梨新五郎
○葉梨委員長 御質疑はございませぬか──なければ第十二條を朗讀せしめます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=131
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132・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第十二條 地方長官が第九條の規定による手續をしたときは、令書に記載し、又は同條第一項但書の規定により公告した買收の時期に、當該農地の所有權は、政府が、これを取得し、當該農地に關する權利は、消滅する。
前項の規定により政府が取得した農地につきその取得の當時賃借權、使用貸借による權利、永小作權、地上權又は地役權があるときは、その取得の時に當該權利を有する者のために從前と同一の條件を以て當該權利が設定されたものとみなす。但し、その權利の存續期間は、從前の權利の殘存期間とする。
前項の場合において、從前の權利の上に先取特權、質權又は抵當權があるときは、その先取特權、質權又は抵當權は、同項の規定により設定された權利の上にあるものとみなす。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=132
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133・井伊誠一
○井伊委員 買收の時期に所有權が政府に移り、當該農地に關する權利は消滅する、此の當該農地に關する權利と云ふものにはどう云ふものを含んで居るのでありますか、先程も御話のありました、耕作者の有益費の請求權の如きものも含むのですか、さうして此の第二項に樣々なものがあるのでありますが、それ等のものは一旦消滅して、更に其の瞬間に於て新たなる契約が成立したと云ふ風に解されるのでありますが、それは農地調整法の第八條の關係などにも響いて來る問題だと思ふのであります、でありますから權利はどう云ふものが含まれるか
それから第二には、他の所有權以外の權利と云ふものは一旦一切消滅して、さうして其の瞬間に新たに創設される、さう云ふ意味なのであるか、其の點を御聽き致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=133
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134・山添利作
○山添政府委員 第十二條全體を讀みますると、其の他の權利が實は消滅しないと云ふことが結果に於て書いてある譯であります、それは政府が此の手續に依つて買ひますものは、法律上の所謂原始取得である、隨て政府が所有權を取得し、其の他一切の權利が茲に消滅する、斯う云ふ觀念を一應取つた譯であります、併し事實はさう云ふことはない譯で、其の瞬間に又次のものが同じやうに設定されて居る、斯う云ふ風に第二項に書いてある譯でありますが、是は全く法律上の觀念上の必要に基いて斯う云ふ風に書いてある譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=134
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135・井伊誠一
○井伊委員 併し實際は第一項の方で消滅すると云ふ文字を使つてありますと、之を元として後の方の第二項以下のものを解釋しなければならぬ順序だと私は思ふ、それでありますから、他にそれから起る所の樣々な誤解、無理な解釋と云ふものが出て來る虞もあります、それでありますから、他に別に意圖がないのであるとするならば、文章で表はすのは苦心かも知れませぬけれども、何か誤解のないやうに文章を表はして、今の御答辯のやうな意味に之をすらつと讀めるやうな風に變へて戴きたいと思ふのであります、さうでありませぬと、私はやはりそこは最後になつてから、解釋上の疑義が樣々起きて來ると思ひます、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=135
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136・和田博雄
○和田國務大臣 今農政局長が御説明しましたやうに、兎に角一項は此の買收と云ふものは原始取得なのだ、斯う云ふことを書いた譯なのです、性質は原始取得だ、そこで原始取得になると、一切の權利は消滅する、併し其の土地に色々な權利が設定されて居る場合には、此の二項に書いてあるやうな權利はやはり依然として存續するのだ、斯う云ふことを二項に書いた譯であつて、今の法律の上から行くと、一應權利が殘つて居るやうな行き方を旨く書けぬものですから、原始取得の性質をはつきりして、而も其の農地に付て從來あつた土地の使用又は利用のやうな權利は、やはり從前と同じ條件で殘存期間あるのだ、斯う見做したのであります、書き方の問題でありますが、さう云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=136
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137・井伊誠一
○井伊委員 農地調整法の第八條の方の關係は、登記がなくても引渡しが出來たる時はと云ふことでありますが、是は固より小作關係は續いて居る場合でありますが、占有の關係はどう云ふ風になりますか、原始取得であつても二項で賃借權ですから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=137
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138・和田博雄
○和田國務大臣 原始取得であつても二項で賃借權に依つて占有してやつて居る譯でありますから、當然消滅せずに、二項に依つて元の條件でそれは存續する、斯う云ふことになるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=138
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139・細野三千雄
○細野委員 農林大臣に法律論をしても仕樣がないですが、原始取得と云ふことが生の儘の所有權が得られる、義務も何もくつ付いて居ない所有權が得られる、斯う云ふことは國家には非常に狡い規定なのですが、地主が持つて居る有益費の權利を國家が償還するかしないか、其の點を御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=139
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140・山添利作
○山添政府委員 本來有益費の償還請求權は、元の地主が小作者に對して持つて居る義務である譯であります、農地に關する權利と云ふものは消滅すると云ふ意味は、さう云ふものまで含めた意味ではないのでありまして、是は農地を對象とする所の、謂はば次の項に掲げてあるやうな權利と云ふ風に解釋すれば宜いので、さう云ふ單純なる請求權、債權に準ずるやうなものは別であらうと思ひます、唯其の場合に、結局地主から政府が土地を買ふ譯でありまして、其の時に地主と政府との關係に依りまして只今の有益費の處理をどうするか、斯う云ふことを買取の條件として定めれば宜い譯であります、若し其の土地を地主と、地主からそれを買ふ政府と──政府と言ひましても農地委員會でありますが、それから次に其の土地を買ふべき小作人との間に有益費の償還をやつて行かうではないかと云ふことであれば、さう云ふ安い地價で政府が買ひ、又安い地價で小作人に引渡す、斯う云ふことで宜いし、又全然別個の地價で扱ふと云ふことであれば、地主には高い地價と云ひますか、現状に即する所の地價を拂ひ、同時に其の價格で小作者に政府は土地を賣る、小作者は又地主に對して有益費の償還をする、斯う云ふ風に扱つても宜い譯であります、事實問題としましては、其の時の其の地價を低目に置くと云ふことは私は宜いと思ひます、是は小作者に取つても宜いし、地主も證券を受取つて、又別に現金を拂ふと云ふことは困ると思ひますし、其の地價に相當する分を減額して置く、斯う云ふ風にして處置をして行くのが妥當だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=140
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141・麻生正藏
○麻生委員 耕作權の問題ですが、小作料が安いやうな所は耕作權が事實上高いと云ふことが起つて居るのです、此の耕作權に對して價格を御認めになるのかどうか、之を御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=141
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142・山添利作
○山添政府委員 慣行等に依りまして權利が成立して居る、斯う云ふ場合に於きましては認められるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=142
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143・吉澤仁太郎
○吉澤委員 斯う云ふ場合を豫想して伺ひたいのであります、例へば抵當權を設定して居つた土地があつて、而も其の土地は先程來色々土地價格に付て御意見がありましたが、大體普通の闇と申せば宜いか、兎に角二千圓、三千圓と云ふもので賣買されて居つたと假定して、それに相當した抵當權を設定して居る、斯う云ふ形があることを豫想して、若し買收價格を上廻つて、倍乃至三倍位の程度に抵當權を設定して居つた、所が地主は、今度の此の法案が實施されると同時に、現在の大體の方針通りに行かなければならぬ、所が到底設定して居つたものを辨償するだけの資力がないと云ふやうな場合があり得ると思ふのでありまするが、斯う云ふ際に於ける農地委員會、所謂政府の方針は、どう云ふことに御處理相成るか、御見込を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=143
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144・山添利作
○山添政府委員 午前中にもそれと同じ御質問がございましたが、さう云ふ場合に於きましても、此の法律の適用がある譯であります、唯さう云ふ場合があるかないかと云ふことに付きましては、殆どさう云ふ場合はないだらう、なぜなれば、土地を政府が買ひますのは、少くとも一町歩以上の小作地を所有して居る人から買ふ譯であります、其の農地の上に附いて居ります擔保と云ひましても、それぞれ最近に於ける農地價格──是は闇でありますれば非常に最近高くなつて居る事例はないことはございませぬけれども、戰爭中からずつと農地價格の統制は致して來た譯であります、隨て御述べになりましたやうな場合が絶無とは申しませぬけれども、又さう云ふ場合が澤山あるとも思つて居ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=144
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145・吉澤仁太郎
○吉澤委員 私はあるとかないとか云ふことを御聽きした譯ではないのでありまして、さう云ふ場合があつたら、政府はどう云ふ工合に御處置なさるかと云ふことを伺つたのであります、今御答辯中に、ないとは言へないがと仰しやつたが、ないとは言へない場合の處置方法を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=145
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146・山添利作
○山添政府委員 此の法律に依りまして強制的に買收すべき場合でございますれば、それは此の法律に依つて買收すると云ふことであります、又其の時の價格は法律に定めて居る通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=146
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147・吉澤仁太郎
○吉澤委員 私の質問の申上げ方が惡いのかどうか、どうもまだはつきりしないのでありますが、私は抵當權を設定して、兎に角相當な借金をして居つた、其の借金の額が買收價格をずつと超過した場合、其の地主が其の差額を辨償するだけの力がないと云ふ場合に、それを其の儘御引繼ぎになるか、或は其の處置をどうなさいますか、斯う伺つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=147
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148・山添利作
○山添政府委員 是は此の法律を其の儘適用して行くと云ふ以外に途がないのでありまして、其の場合にどうするかと云つても、特別の救濟手段はない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=148
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149・吉澤仁太郎
○吉澤委員 例へば農業會が假に貸して居つた、或は個人が貸したのも同じことでありますが、其の債權者はどうなるか、政府は肩替りすることになりますか、詰り政府は超過額を負擔することになりますが、或は債權者が缺損することになるかを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=149
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150・山添利作
○山添政府委員 政府は足りない部分を負擔を致しませぬ、隨て是は其の土地以外に財産がないと云ふことでございますれば、債權者の損失になる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=150
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151・井伊誠一
○井伊委員 賃借權と云ふと、又貸の轉貸借も、其の儘くつ付けて移つて行く譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=151
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152・和田博雄
○和田國務大臣 御話の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=152
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153・木島義夫
○木島委員 地主が澤山土地を持つて居つた場合に、結局入れ付けて居るものは一町歩以内しか持てないと云ふことになるでせうが、其の土地に付ては地主に選擇權があるものであるかどうか、是は前に質問があつたかも知れませぬが、小作人との間に旨く行かぬ時は、やはり委員會で決定するものであるか、又小作人が良い土地を假に優先的に取入れたとすれば、地主は惡い土地だけを一町歩取らなければならぬと云ふ場合も想像されるのですが、此の按配に付て豫め方針がありましたら御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=153
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154・和田博雄
○和田國務大臣 其の點に付きましては前に屡屡御質問があつた譯でありますが、今囘は地主に選擇權はない譯であります、農地委員會が總て決めて行く、斯う云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=154
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155・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは續行を致します、第十三條を朗讀致させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=155
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156・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第十三條 第三條の規定による農地の買收については、政府は、その對價を買收の時期における當該農地の所有者に支拂はなければならない。但し、當該農地の上に先取特權、質權又は抵當權がある場合において、當該權利を有する者の請求があるとき、又は當該權利を有する者が知れないときは、その對價を供託しなければならない。
當該農地の上に先取特權、質權又は抵當權を有する者は、前項の規定により供託した對價に對してその權利を行ふことができる。
政府は、第三條の規定により買收する農地の所有者に對して、その農地の面積(その農地の面積が同條第一項第三號の當該都道府縣別の面積又は同條第三項の規定により當該區域につき定められた當該都道府縣別の面積に代るべき面積を超えるときは、當該都道府縣別の面積又は當該都道府縣別の面積に代るべき面積)に應じて報償金を交付する。
前項の報償金の一段歩當りの額は、田にあつては二百二十圓、畑にあつては百三十圓を基準とし、當該農地の收量、位置その他の状況を參酌して、主務大臣が、これを定める。
第三項の規定の適用については、第十條の規定を準用する。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=156
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157・葉梨新五郎
○葉梨委員長 以上に付て御質疑はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=157
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158・麻生正藏
○麻生委員 此の報償金は第六條の第三項「特別の事情に因つて市町村農地委員會が地方長官の認可を受けて當該農地につき額を定めたるときは、その額による。」、詰り特別價格の場合です、此の場合は此の報償金は特別價格に準じて交付すると云ふことに考へて宜い譯でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=158
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159・山添利作
○山添政府委員 御趣旨の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=159
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160・細野三千雄
○細野委員 此の報償金と云ふ性質、報ゆる償ふとあるのですが、何に報い、何を償ふのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=160
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161・和田博雄
○和田國務大臣 どうも意義が一寸分りませぬが、結局農地改革に依りまして相當地主の方も犧牲も拂ひますので、大體の面積を限りまして、此の報償金と云ふ名前で金を出す、斯う云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=161
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162・森田豐壽
○森田委員 此の報償金を與へる面積は、例へば地主が一町歩保有すべきものを除いて、あと三町歩に對しまして隈なく報償金は出す譯でありますか、其の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=162
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163・和田博雄
○和田國務大臣 地主から、假に三町歩を買ひますれば、其の三町歩に對して出す、斯う云ふことになります、三町歩を限度として出す、三町歩買へば三町歩出す、斯う云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=163
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164・中原健次
○中原委員 只今の報償金の問題に付て、斯う云ふことを一つ考へて見て戴きたいと思ふのであります、成程地主の土地を手離す爲に、何だか犧牲でも拂ふかの如き氣持のする、拭ひ去り難いものが、諦め難いものがあることは分るのであります、偖て農地委員會の取扱に依りまして、昨日までの小作者の手から第二の人の手に此の農地が移されると云ふやうな場合が發生した時、さうなりますると昨日まで耕作して居りました小作人は、唯手を組んで其の土地が他に移轉するのを見て居ることになるのでありまするか、其の點はどう云ふ解釋でありますか
〔委員長退席、小川原委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=164
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165・山添利作
○山添政府委員 是は國家が買ひまして、其の土地の上にある小作者に又土地を賣る譯でありまして、他に土地が移轉するのを手を拱いて見て居ると云ふ場合は原則的にはない譯であります、唯現在の小作者が、別に書いてあります所の第十六條の規定に當嵌らないと云ふやうな場合には、それは其の農家には土地を賣りませぬけれども、同時に又其の農家の耕作權を消滅せしめてしまふ、急にさう云ふことをすると云ふこともないのでありまして、原則的には兎も角其の農地は現に小作をして居る人に渡る譯であります、今御話になりましたのがどう云ふ趣旨でございまするか了解致し兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=165
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166・中原健次
○中原委員 御尤もであります、理窟の爲の理窟のやうに聞えるかも知れませぬが、併し必ずしもさう云ふ安堵が出來ないことが想像出來ないこともないと思ふのであります、土地の耕作状態を適當に、何と言ひますか、即ち第六條の第二號に「自作農となるべき者の耕作する農地を集團化し、且つ當該地方の状況に應じて當該農地につき田畑の割合を適正にすること。」、斯う云ふ割合を適正にすると云ふことの取扱の上に、或は只今の御宣言のやうな状態にだけなるのではない、異例の場合があることも豫想されるのではないかと思ふのでありまするが、殊にさう云ふ取扱のありまする場合に、農地委員會が洵に公正なる取計らひをして呉れれば異存はないのでありまするが、萬一不幸にしてさうでないやうな惡い結果を招來して、只今申上げましたやうな杞憂に屬することが現實の問題として持上つた時に、昨日の日までの耕作者が、土地に對して貢獻して參りました一切の功績が、所謂報償されないことになると云ふやうなことも考へられるのでありまして、殊に又第十六條に依つて其の反對に、若し自作農として農業に精進する見込のない者である場合には、當然それには耕作を繼續せしめないと云ふやうな決定をなされる場合もあると思ひます、所が此の場合、成程昨日の日までは非常に精農であつたにも拘らず、色々の事情の爲にさうではないと云ふ認定をされると云ふ人のある場合も、一應法的には考へて置く必要があるのではないか、さうであるならば、萬一さう云ふ場合には、自分の耕作者としての耕作權が、委員會の取扱の結果として無視されて、取上げられて行く、他に移動すると云ふやうな場合に、其の耕作に對する報償はどうなるか、斯う云ふ問題なのです、是はもつと平たく申しますと、報償金と云ふ制度を茲に取上げたと云ふことに私の云はうとする根據があるのでありまして、地主の土地を買上げる場合に、それに報償として田にあつて二百二十圓、畑にあつて百三十圓を與へると云ふことになりますと、それは唯土地の所有權と云ふものに對しての報償に過ぎないのでありまして、耕作者の其の土地に對する色々な功績は考慮されて居ないと云ふことになると思ふのでありますが、耕作者の其の土地に對する功績を相當認識すると云ふことでないと適正な取扱ではないことになるのではないか、それはなぜさう云ふことを氣遣ふかと申しますと、先程から、何でも土地が非常に安く、殆ど無償沒收でもあるかの如き觀で取上げられて行くことを、所有者の爲に惜しむやうな御議論を段々耳に致しましたので、敢て申すのでありますが、若し土地の價値と云ふことに付て嚴重に詮鑿して參りますると、是は必ずしも唯一片の土地臺帳の上に於ける所有權者だけが、其の土地に對してさう云ふ犧牲を拂ふのではなくして、考へ樣では、それよりはもつと大きい意味で、耕作者が、特に小作人が、只今申しましたやうな場合に際會した時には、成程大きな損失をしたと云ふことになると思ふのであります、そこで其の地價を決定する場合に忽ち是は問題になることでありまするが、只今までの概念上、土地の價格は當然地主が所有すべきものであるかの如く思うて居りまするが、實際は其の土地の價格、價値は必ずしも土地臺帳の上に於ける所有權者が全部を專有する權利があるかどうかと云ふことに付ては、少くとも今日の社會情勢の中で考へますると、議論の餘地が多分にあるのではないか、そこで、さう云ふ風に考へて參りますると、茲で又わざわざ國民全體の負擔に於て、或は犧牲に於て、買上段別に對する報償金を規定すると云ふことが、本當に適切なやり方かどうかと云ふ疑問も亦起つて參るのでありますが、報償金と云ふ此の取扱はどう云ふ意味に於て、是が絶對に必要であつたかと云ふことに付ての論據をもう一度承りたいと思ふのであります、先程大臣から御話がありましたけれども、私は今犧牲々々と申しましたが、さう云ふやうなことを聯關せしめて此のことを考へると、どうも腑に落ち難いのであります、もう一度御迷惑でありますけれども御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=166
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167・和田博雄
○和田國務大臣 是は私が只今申上げました以外に別段理由はないのでありまして、此の農地改革に依りまする一つの、謂はば地主側の犧牲でありますか、さう云ふものに對して、社會政策と言ふと少し大袈裟でありますが、報償金と云ふものを出す、斯う云ふ譯であります、是は地主の謂はば財産と言ひますか、さう云ふ見地から之を出したのではないのであつて、只今言ひましたやうな意味に於ける一つの犧牲に對する報償、斯う云ふ意味であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=167
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168・中原健次
○中原委員 此の項を御設定になりました意味は大體分るのですが、さうすると斯う云ふ問題が將來に考へられる、小作者は何等の特別な報償も受けずに、取敢ず或る期間其の土地の耕作を繼續して行く場合を考へて、或は大體の場合を考へて、さう云ふことを肯くと致しまして、是から先色々な經濟上の恐慌が來襲して其の土地を持ち續けることが困難になつて來る、さう云ふ困難になつて來た場合に、背に腹は代へられず、折角自作農として其の地歩を固めつつありましたが、一轉又沒落の過程に入り込んで行くと云ふやうな場合に、折角取得した其の土地が第三者に移つて行くやうな日もあり得るのでありますが、さう云ふやうなことを豫想されると致しまして、其の場合只今申しました耕作者に對する政府としての思ひやりは最早それで空に歸してしまふのであります、同時に、只今申しました其の土地に對する地主の場合は、土地を耕しはしなかつたが、兎に角土地臺帳の上で名義が殘つて居ると云ふだけで、二百二十圓或は百三十圓の報償金を貰ふのでありますが、小作人は一厘一毛の報償金も得なくて、唯自分の轉落に任せて行くと云ふやうな將來も考へられないこともないのであります、さう云ふやうなことを彼此れ考へまして、此の場合更に一層突込んで、小作人のさう云ふ立場の上に於て今後を如何に保障するか、どのやうにして小作人の自作農としての地位を確立保障すると云ふことに努力するか、政府がそれだけの施策を持つかと云ふ事柄を此の場合に關聯して承つて見たいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=168
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169・和田博雄
○和田國務大臣 將來長い三十年に亙つての間の自作農の地位保持の問題でありますが、それは勿論長い將來のことでありまするから、色々の經濟變動はあると思ふのでありますが、此の法制としましては、一應國家が農地を買上げまして、之を小作人に賣渡しまして自作農にする、さうすると自作になつた者は年賦償還金を年々拂つて行く譯でありますが、其の年賦償還金の支拂に一つの加減を致しまして、非常に農産物の下落があつて、年賦償還金と公租公課を加へたものが收益の三分の一を超えるやうな場合があれば、是は三分の一以下に減らすとか、或は非常な不況で、實際上自作人が年賦償還金を拂へないと云ふ時には、支拂の猶豫を致しましたり、或は土地が非常な災害で流失するとか、土をかぶつてしまつて一年も二年も耕作が出來ないと云ふやうな時には或る程度の免除を致しますとか、さう云ふやうな形で自作人の經濟變動から來る、負擔を少くしまして、自作人と云ふ地位を其の方面から強化して行くと云ふことを法制の建前としては致して居る譯であります、併し勿論是はそれだけでは足りませぬので、やはり耕作者に對する色々の農地の改良でありますとか、又其の他の施設を必要とする、斯樣に思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=169
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170・中原健次
○中原委員 大體分りました、そこで私はさう云ふ色々な氣遣ひ、色々な立論から、地主に支拂ふべき土地の對價は、賃貸價格の四十倍の割に依つて支拂をすると云ふ最初の決定で十分ではないか、即ち報償金を茲にわざわざ附加すると云ふことが、どうも理論上餘り深切過ぎて、本當は現在の社會情勢の上から考へる時に一方に偏し過ぎる嫌ひがあることを思はしめるのではないか、是は公平な見地から第三者が現在の日本の土地改革に對する考へ方を蒐集して見ますると、本當は地主は長い年代を通しを小作料の收入から可なり上位の生活を保障され、或は可なりの蓄積もなし、相當の住宅も保障され、倉まで建てて長い間安穩に暮して來たのであるから、今更其の土地に對してそれ程政府が氣遣ふ必要は毛頭ない、況や此の報償金と云ふものは、やはり全國民の負擔になる事柄でありまして、決して全國民との關聯なしに此の報償金は出て參らないのでありますから、其のやうな取計ひをなさる必要はないのではないか、最も進歩的な一説では、全面的ではありませぬが、或る特定の土地の所有者に對しましては無償沒收も亦妥當であると云ふ意見さへある今日、私は今其の儘にそれを受取らむとは考へませぬけれども、それにも又一應の論據のあることは肯定せなければならぬのでありまして、彼此れ考へ合せて見ますると、國庫が色々な意味で非常に困難なる状態に直面して居りまする此の時、わざわざ報償金を茲に設けて支出を増大せしめる、さうして國民に一層の負擔を約束付けると云ふやうな取扱ひ方は考へる必要があるのではないか、要するに、過去に於て地主階級は相當大きく報償されて居り、相當大きく待遇されて居る、だから今更それを更に輪を掛ける必要は毛頭ない、斯う云ふ見解を私は持つものでありますが、當局は寸毫もさう云ふことは御考慮になられませぬでせうか、一應御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=170
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171・和田博雄
○和田國務大臣 御意見は御尤もでありますが、政府としましては、只今申述べましたやうな理由に依りまして報償金と云ふ制度を設けた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=171
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172・森田豐壽
○森田委員 四町歩持つて居る場合に於きまして三町歩を財産税の物納として納めた場合に於きまして、報償金は其の物納の中に含まれるのでありませうか、要するに、物納として納める場合に於きまして、報償金を加算した價格を以て物納が所謂財産税に換算されるのでありませうか、其の點を承りたい、四町歩持つた場合に、一町歩は自己の小作地として保有することが出來る、三町歩は之を物納として財産税の方へ廻したと云ふ場合に於きまして、其の三町歩は報償金を全部加味された價額で、所謂財産税の價格に物納として換算して納めるのでありませうか、即ちさう云ふ場合には報償金を先に渡したと云ふ勘定にして財産税を納めることが出來るのでありまうか、其の點を御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=172
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173・山添利作
○山添政府委員 財産税の評價の場合に付ては、先程御説明致しましたやうに、只今の方針と致しましては、報償金を含めたもので財産評價を決定し、それに依つて財産税を課ける譯でありますから、其の反對の場合と致しまして、今の場合は其の中に財産税を含めたもので納めたもの、斯う云ふ風に取扱はれるものと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=173
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174・森田豐壽
○森田委員 さうすると、農地を財産税で先に納めた場合には、農地委員會を通さずして、地主の三町歩の分だけは取敢ず報償金は先に渡したと云ふ恰好になる譯でありますね、其の解釋で差支へありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=174
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175・山添利作
○山添政府委員 財産税の取扱と致しましては、さう云ふやうに措置される、先づ是は大體今まで事務的の範圍でやつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=175
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176・松澤一
○松澤(一)委員 報償金の問題に對して、一體農林大臣は答辯が不徹底である、さう云ふ苟くも何十億使ふか、計算しないから私は知らぬが、大體二十億と云ふ話だが、自分の金を出すのではあるまいし、國の金を使ふのに、地主が何だか犧牲を拂ふやうだからと言ふが、私達から言へば、地主は少しも犧牲を拂つては居りませぬ、價格の安い高いと云ふ議論も可なり幾日か聞かされて來ましたけれども、土地問題に限つて、價格が高いなどと云ふことは、是は言ふだけ野暮なのでありまして、さう云ふことは聞いて居られぬのであります、分り切つた問題であります、そこに一體報償金と云ふものは、關係筋でも不當だと言つたさうでありますが、是は私が農政局長から中間説明を受けた時も、其の點は曖昧だつた、それを外國が之を知らぬことを奇貨として、與黨の御機嫌を伺つて、之を無事に通過させようとして、報償金まで出すなんどと云ふことは言語道斷だ、それも宜いが、それは明瞭に根據のある報償金でなかつたら、是は惡償金である、それに付て其の理由を私達に納得出來るやうに説明すること、是は理論は拔きにして、結論は分つて居ることです、報償金が良いか惡いかと云ふことに付て幾ら議論をされても、それは我々の方が玄人であります、地代が高いとか安いとか云ふことに付ても、地代が高いと云ふことに對して地代が安いと言ふ人があつても、それはそれまでで、幾ら議論しても、そんなことは決まるものではありませぬ、況してや報償金を適用しようと云ふならば、之に付て國民に納得させるやうな答辯を農林大臣が言はぬと云ふことは、私には納得が出來ない、農民として納得の出來ないことです、自分の新しい心持から言へば、こんなものは惡償金だから、之を何とか考へて呉れと云ふ御答辯ならば我々も考へるけれども、唯今言つたやうに、地主が犧牲を拂ふからと云ふやうな曖昧なことでは承知することは出來ませぬので、一つ明瞭に御答辯願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=176
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177・和田博雄
○和田國務大臣 是は報償金でありますから、やはり社會政策的な一つの理由として、日本に於きまする中小地主と云ふことに觸れまする改革でありますので、隨て其の面に付ての一つの──報償と云ふ此の言葉は何でありますが、報償と云ふ意味で出して居るのであります、(笑聲)それからもう一つの考へ方は、土地の收益價格を、やはり地主の地代の財産價格と云ふことを考へまして、其の間の差額と云ふものを全部出すと云ふことは迚も出來ないのでありまするが、今言ひましたやうな意味に於きまして、言はば其の差額の補充と言ひますか、さう云つたものを報償金の形に於て出す、斯う云ふ二つの考へから報償金の制度を立てたのであります、先づ大體そんなことで…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=177
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178・松澤一
○松澤(一)委員 私は今のやうな御答辯を農林大臣に要求したのではありませぬ、もう少し誠意のある御話を承れれば半口で宜しうございます、どうも誠意がない、本當のことを言つて居ない、本當に今日の土地改革の上に立つて、農林大臣としての立派な氣持で一つ御答辯願ひたいと思ふ、もう一つは關係筋が報償金などは以ての外だと言つて居ると云ふ話を聽いて居たのですが、其の經緯、それから與黨あたりから何か言はれて、何ぼか報償金でも上げぬと土地改革が旨く行かぬのではないかと云ふやうな經緯があれば、其の經緯を眞面目に話して呉れれば、新しい議員は、成程世の中の政治と云ふものはさう云ふものか、斯う云ふ時代の政治としては已むを得ぬなと納得の行くことなのであります、あなたの眞面目な、所謂和田農林大臣の脚光を浴びた今日の農地改革の大芝居を打つ御答辯を私は要求したのでありまして、今言つたやうな千篇一律の、もう今までに百遍も聞いたやうな御答辯を私は一寸も欲いと思つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=178
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179・和田博雄
○和田國務大臣 是は關係方面に於てさう云ふ意見があつたと云ふことでありますが、報償金に付て我々が話をして居つた時には、成程さう云ふ意見を言ふ人も中にはありました、併しそれが決定したものであるかどうかと云ふことは、是は何でありまして、勿論報償金がどうかと云ふやうなことを言ふ人もありました、併し與黨の方からどう斯うと言はれましたが、それは全然ないのでありまして、是はやはり斯う云ふ大きな土地の改革をやりまする上に付ては、片一方に於ける犧牲と云ひますか、變革と云ふものに對して、謂はば社會政策的にさう云ふやうな施設も必要ではないか、斯う考へまして出したのでありまして、そこにさう云つた、どう斯うと云ふことはないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=179
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180・吉澤仁太郎
○吉澤委員 現行の自作農の法文に依りますと、大體報償金は全部に支給されて居つたのであります、私は是は議論をやる譯でもありませぬし、自分は自分の考へとして申上げて居る譯であります、大體價格が安いとか、高いとか云ふことは自ら立場が變り、又意見が相違して居る點があると思ひますが、私はやはり決して地主が犧牲ではないとは言ひ得ないと思ふのであります、隨て價格が現在の賃貸價格の四十倍と云ふことは、先達て私質問申上げた時も能く申上げたのでありまするが、是は昭和十三年の現行賃貸價格であつて、あの當時の賃貸價格は所謂收入に依つて賃貸價格を決めたのであります、從來の低い時の賃貸價格でありますから、現在の賃貸價格は必ずしも適正でない、斯う思ふのであります、併し一應は之に依ると云ふことでありまするならば、之に對して特別の異議はないのでありますが、やはり農地の價格に付ては立場が違ひ、又其の人に依つて意見が異なると云ふことは已むを得ぬのでありますが、私大體報償金は自作農の創設に對する一種の奬勵金を加味したものである、斯樣に今までは考へて居つたのであります、今度の法案に依りますと、是は國家が強制的にやるのでありますから、當然やはり自作農創設に對する奬勵金と云ふのは一寸意味をなさぬ譯でありまして、今大臣の御答辯になつたやうに、地主が相當程度犧牲を拂つて居る、それに對する代償を意味すると云ふやうなことで了解が出來ると思ふのであります、併し三町歩に限定したと云ふことは、現行法では幾らあつても全部兎に角報償金を出す、所謂政府が支出して居るのであるが、此の三町歩で限定すると云ふことは私はやはり意味をなさぬと思ふのであります、是は過日申上げましたやうに、均衡が取れなければ或る程度までやはり報償金が付いて參る、斯樣に考へて居ります、農林省の御調査に依る統計でも五町歩から十町歩までの所有者は十萬六千人ある譯でありますが、是等の土地所有者は必ずしも商人とか其の他の業者だけではないのでありまして、やはり農家が粒々辛苦した結果、土地を取得した人が多いのであります、農家はやはり土地に執著心を持つて居ります、一段歩でも一畝でも多くの土地を所有したいと云ふ意欲に燃えて居る譯であります、それが爲に辛苦を重ねて、さうしてやはり自分の財産として私有を認めてある所の土地を獲得したのでありますが、今後土地の所有が、或は三町歩なら三町歩以上持つて居ることが出來ぬと云ふことになれば、増産意欲にも支障を來すのではなからうかと思ふ、又現在の十町歩なら十町歩持つて居る人が、兎に角不在地主のやうな人だけではなく、やはり今申上げましたやうに、相當辛苦に辛苦を重ねた結果の所得であるから、三町歩で切ると云ふことは私は妥當ではないと云ふやうに考へるのでありますが、政府が其の方針を三町歩と限定されたと云ふことを今少しくはつきりと御聽かせ願ひたいと思ひます、是は所得税に於ける高率課税と違ひまして、やはり餘計持つて居つたからと云つてやらぬと云ふことは全然意味をなさぬと思ひますから、其の邊の御見解を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=180
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181・和田博雄
○和田國務大臣 それは只今申上げましたやうに、大體中小地主と云ふものを考へて居りまするので、隨て餘り大きな面積のものに全部やると云ふことも意味をなしませぬので、三町歩と云ふことに區切つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=181
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182・小川原政信
○小川原委員長代理 他に御質疑はありませぬか──なければ第十四條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=182
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183・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第十四條 第三條の規定により買收した農地の對價に對して不服ある者は、通常裁判所に出訴することができる。但し、令書の交付又は第九條第一項但書の公告のあつた後一箇月を經過したときは、この限りでない。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=183
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184・小川原政信
○小川原委員長代理 御質問がなければ次に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=184
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185・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第十五條 第三條の規定により買收する農地に就き自作農となるべき者又は當該農地につき所有權その他の權利を有する者が左に掲げる農業用施設、土地又は建物を政府において買收すべき旨の申請をした場合において、市町村農地委員會がその申請を相當と認めたときは、政府は、これを買收する。
一 第三條の規定により買收する農地の利用上必要な農業用施設
二 第三條の規定により買收する農地に就き自作農となるべき者が、賃借權、使用賃貸による權利若しくは永小作權を有する採草地、賃借權、使用貸借による權利若しくは地上權を有する宅地又は賃借權を有する建物
前項の場合には、第六條、第一項第二項第五項、第七條乃至第十二條、第十三條第一項第二項及び前條の規定を準用する
前項において準用する第六條第二項の對價は、採草地にあつては、命令の定めるところにより、當該採草地の近傍類似の農地の時價を參酌し、採草地以外のものにあつては時價を參酌してこれを定める。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=185
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186・松本六太郎
○松本(六)委員 此の條項に於きまして第一項に「第三條の規定により買收する農地の利用上必要な農業用施設」とありますが、是は具體的に言へば一體どう云ふ施設を指すのでありますか、之を御尋ねしたいのであります
それから是と關聯のあることですから御質問申上げますが、第三十條第六號に規定してあります水利權、是も政府が必要に依つて買收すると云ふやうに第三十條では規定して居るのであります、そこで具體的な北海道等に於ける例を取つて御方針を伺ひたいのでありますが、御承知のやうに、北海道には土功組合と云ふものがありまして、是は土功組合法と云ふ單行の法律に依つて出來た組合でありますが、主として水田を造成致します爲の水利の組合或は排水の組合であります、要するに土地の改良をやり、或は水田を造成すると云ふ目的で土功組合と云ふものが出來て居りますが、此の土功組合で無理な計畫をやつたものが非常に多いのであります、例へば水のない所に水田を造る、さうして是は水田としての經營が出來ないと云ふので、大きな貯水池等を後になつて造らなければならぬと云ふやうな事情になつて、非常に大きな費用を使つた譯であります、さうして大きな灌漑溝とか或は溜池とか云ふやうなものを造りました爲に、此の組合の區域内にあります農地は非常に大きな段歩を占めて居るのであります、是は政府の色々な助成等がありまして漸次輕減せられては參りましたけれども、今日でも尚ほ約二千五百萬圓の負債が殘つて居る、即ち水利の關係若しくは排水の關係上に於ける左樣な負債が土地に付いて居る、そこで從來の指導奬勵に依ります所の自作農創設に於ては、我々隨分骨を折りましても、此の土功組合の區域内に於ける土地は買手がない、小作をして居る者が其の土地を買收し、自作農になつても其の負債の爲にやつて行けないと云ふことで、却て希望者が殆どない譯であります、隨て此の區域内に於ける自作農創設の事業は非常に進捗しない實情にある譯であります、斯樣な實例等もある譯でありますが、第三十條に規定して居りまする水利權と云ふものを政府は買ふ、或は只今議題となりました第十五條に於ける農業用の施設と云ふものも必要があれば政府が買ふ、斯う云ふことでありますが、此の農業用の施設とは具體的には何を指して居るのであるか、尚ほ只今例に擧げました北海道の土功組合等の施設のやうなものを政府は御買上になる御意思であるのかどうか、此の點御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=186
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187・山添利作
○山添政府委員 第十五條の第一項の第一號にございます農業用施設と申しますのは、溜池とか或は水利の施設、或は肥溜と云ふやうなものを考へて居る次第であります
偖て第三十條の規定の買收する農業用施設と云ふ中に、個々の農地とは離れて、全體の農地に關係ありますやうな、全然別個な大きな水利施設を買收するか否かと云ふことに付きましては、此の法案では直接さう云ふことを豫想して居ない、即ち個々に買收する所の農地の利用上必要な農業用施設と云ふ風に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=187
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188・松本六太郎
○松本(六)委員 それでは更に御伺ひ致しますが、只今例に擧げました、北海道の土功組合の地區内等にあります施設をなしますが爲に付いて居ります所の、一種の債務とでも言ふべきものでありますが、此の償還の義務は誰が負ふことになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=188
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189・山添利作
○山添政府委員 それは當然其の元の組合員であります所の地主が負ふ譯でございますが、偖て實際の取扱と致しましては、其の土地に付いて居ります負債は、之を買收する者に於て承け繼いだ方が宜いと云ふ場合が相當ある譯であります、其の場合に於きましては、結局其の土地を購入致します小作人に於て其の負債を承繼して行く、又同時に其の承繼致します負債を現在の價格に直しました部分だけは、地價を安くする、斯う云ふやうな方法に依つて調節をしまして、現實の動きを都合の宜いやうにしたいと云ふ考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=189
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190・松本六太郎
○松本(六)委員 それで大體御方針は分りましたが、北海道に於ける斯樣な特殊事情と云ふものは非常に廣汎な區域に亙つて居ります、北海道の水田の殆ど全部と申しても過言ではない、でありますから、さう云ふ風に債務を地價の中から引去つて行く、さうして其の義務は買受ける所の自作農が承繼して行くと云ふ考へ方は、理論上さう行かざるを得ないのでありませう、併しながら其のことあるが爲に、今日まで是は非常に問題になつて參つて居るのでありまして、元來大きな溜池を造る、或は大灌漑溝、大排水溝、運河に等しいものを造ると云ふことは、是は殆ど國が施設すべき性質のものであります、けれどもそれを今日論議しても致し方がないと考へる、實は大藏大臣の御出席を求めて、國の一つの財政的な措置として、大藏省預金部から全額が出て居りまするが、之を國家が持てやつたならば一番簡單に片付くのではないか、是は多年の北海道の主張でもありますけれども、其の時の客觀情勢が左樣に成熟致して參りませぬから、まだ未解決でありますが、大々的に自作農を創設しようと云ふ此の場合に、當然其のことは考へて然るべきである、斯樣に私共は考へて居る譯であります、併しそれは大藏大臣に質問を致したいと存じて居りますので、本日は此の程度で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=190
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191・中原健次
○中原委員 第二號に採草地を買收することが出來ると云ふことが規定されて居りますが洵に適切なことと存じます、採草地の買收と云ふ其の採草地とは、大體どう云ふ状態の場所を言ふのでありませうか、一應承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=191
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192・山添利作
○山添政府委員 是は山裾等で草を刈る、さう云ふ採草地と云ふものは、ちやんと草を刈るやうに出來て居る譯であります、どうも餘り言葉で言ひましても、是は工合が惡いのですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=192
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193・中原健次
○中原委員 それでは私が申上げますが、山林の地帶、山奧の地帶へ參りますと、採草地は大體山林の状態をなして居る場合が多いやうであります、さう致しますと、其の近接する山林は採草地と云ふものの中に包合されると解釋して宜しいのでありますか、それとも全然別のものでありますか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=193
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194・山添利作
○山添政府委員 勿論森林の中の下草を刈ると云ふ場合は屡屡ある譯です、併しながらそれを採草地と見るかと云へば、それはさうではないので、やはり是は森林であつて、隨て其の土地の主たる状況に即して考へなければいけないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=194
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195・中原健次
○中原委員 それでは其の時の場所の事情に應じて、其の山林の如き形を持てる採草地が耕作上必要なりと認め、又曾つてそれを必要として採草其の他の對象として、所謂農業の必要なる施設としての條件を持つて居ると云ふ認定が付きますれば、是は當然第十五條の規定に基いて買收すると云ふことが成立つものと考へて宜しいでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=195
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196・山添利作
○山添政府委員 市町村農地委員會に於てそれを相當と認めた時はさう云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=196
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197・麻生正藏
○麻生委員 此の條項の中に時價と云ふ文字を使つてあります、「農地の時價を參酌し、採草地以外のものにあつては時價を參酌してこれを定める。」此の時價と云ふ文字ですが、時價と云ふのはどの程度のことに考へたら宜いのでせうか、例へば宅地には賃貸價格があつて、其の賃貸價格の何十倍と云つたものを考へたら宜いのでせうか、何か時價に對する標準と云ふものを考へられて居りませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=197
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198・和田博雄
○和田國務大臣 公定價格のあるものは公定價格であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=198
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199・麻生正藏
○麻生委員 宅地等に對する公定價格と云ふことになりますと…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=199
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200・和田博雄
○和田國務大臣 恐らく農村の宅地に付ては公定價格がなかつたと思ふのでありますが、唯宅地として九・一八「ストップ」令以後に取引されたものは、其の取引價格に依ります、さう云ふ價がない場合に於きましては、是は大體の時價と言ひますか、さう云ふものを斟酌して決める、斯う云ふことになるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=200
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201・小川原政信
○小川原委員長代理 御質問はありませぬか──なければ次に移ります、第十六條発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=201
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202・大和田啓氣
○大和田説明員 (朗讀)
第十六條 政府は、第三條の規定により買收した農地及び政府の所有に屬する農地で命令で定めるものを、命令の定めるところにより、その買收の時期において當該農地に就き耕作の業務を營む小作農その他命令で定める者で、自作農として農業に精進する見込のあるものに賣り渡す。
政府は、特別の事情があるときは、第三條の規定により買收した農地を市町村農業會その他命令で定める團體で自作農の創設の事業を行ふものに賣り渡すことができる。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=202
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203・麻生正藏
○麻生委員 此の場合第十六條の「自作農として農業に精進する見込のあるもの」と云ふ、精進する見込と云ふことはどの程度のものを標準とするか、或は飯米農家のやうな程度のものも該當するのであるか、或は其の農地が平均收穫以上收穫出來るやうな見込のある土地で、平均收穫以下の所謂惰農と云ふやうなものは精進する見込のない者と云ふ風に斷定し得るかどうか、それを伺ひます
それから次に「命令に定める者」と云ふことで、私共が戴きました表に依ると、順位があるやうでありますが、耕作權を認めた現在、其の農地の現在耕作者が買受を希望せぬと云ふやうな場合に、次の順位のものが所有權だけを買取ると云ふことになると意味をなさないやうに考へられるが、さう云ふ場合に耕作權も買取らせると云ふ意味でありまするか、其の點を一つ明瞭にして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=203
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204・山添利作
○山添政府委員 農業に精進する見込のある者とは、どう云ふ標準で定めるかと云ふことでありまするが、是は結局眞面目に農業をやり、又將來も農業で立つて行く意思もあり、見込もある、斯う云ふ人を指すのでありまして、さればと言つて、是は農業だけの收入で生計を維持して行く、所謂專業農家に限ると云ふ譯ではありませぬ、兼業農家も此の中に含めての意味であります、具體的に申しますれば、是は農地委員會に十人若しくはそれ以上の人が居りまして、あれはいかぬ、是は斯うでなければいかぬ、農業に精進する見込のある人、斯う云ふことになる譯であります、唯極端に小さい飯米農家、又は臨時に飯米獲得の爲に農家になつて居る、斯う云ふものに付きましては、土地を賣りましても將來性が危まれる譯でありますから、さう云ふ場合に於きましては、國は所有權を留保して置くか、若しくは交換分合と云ふやうなことをやりまして、他の適當な人に土地を取得せしめる、斯う云ふ措置を講ずると云ふ譯であります
それから命令で定めますものの範圍と順位でありまするが、是は其の土地に關係ある人の順位から行くべきであると思ひます、隨て第一に現に其の土地に於て耕作をして居る人、又何等かの事由、即ち不當なる土地取上と云ふやうな事情に依りまして、而して其の場合小作者を壓迫してさう云ふことをやつたのだ、斯う云ふやうな場合に於きましては、十一月二十三日現在に於ける小作者、是が第一順位になる、又其の他の土地でありますれば、是は例へば不適正なるものとして、三町歩以上の土地を國家が買收して之を賣渡す、此の場合には此の土地の上に於ける小作人はない譯でありますから、先づ第一順位として考へられます人は、其の土地の耕作に付て住込の年雇ひをやつて居つた人とか、或は他の名目で請負耕作と云ふやうな形で從事して居つた人、さう云ふ縁故者が第一順位になる譯であります、さう云ふやうな第一順位になる人がありませぬ場合に於きましては、是が誰に行くかと申せば、最も土地を必要とする人、即ち家族勞力に比べて耕作面積が非常に少い、是はもう少し土地を持たせる方が其の人に取つても良いし、又國家的にも良い、斯う云ふ風なことを農地委員會が選定すると云ふ風になる譯であります、此のことに付きましては、それぞれ命令に於きまして、或る順位を決定致すのでありまするけれども、其の具體的事情に於きまして、市町村農地委員會が處理をする、斯う云ふ風に致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=204
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205・麻生正藏
○麻生委員 耕作權と所有權とばらばらになる場合も考へられます、詰り現在業務を營んで居る者が其の土地を買はないと云つた場合、所有權は持たない譯ですが、其の耕作權をどうするか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=205
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206・山添利作
○山添政府委員 只今の場合は、結局土地を買ひたくないと云ら場合でございます、其の時には、其の所有權は國に於て留保し、其の上に相變らず小作をさせて置く、是が一つの場合であります、又他の農地と交換分合を致しまして、新しく交換分合に依つて國が取得した農地を其の農地の上にある小作人に賣る、元の土地を買ひたくないと云つた小作者に對しては、地主が國でなくて、他の地主になる場合もある譯であります、其の邊のことは状況に應じて適當に處置を致して行く積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=206
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207・麻生正藏
○麻生委員 どうも私は命令で定めると云ふことは起らないのではないかと思ひます、今あなたの仰しやつたやうに、元の耕作者、詰り雇傭關係のあつた者は、或は請負契約をやつた者とか、或は一町歩以下の者と云ふやうなことになりますと、現在あつたものを取つてやらなければならぬと云ふことになるのでありますが、命令の定めるものでと云ふことは要らないのではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=207
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208・山添利作
○山添政府委員 先程擧げました例に於きましても、例へば第三條のずつと終ひの方に不適正な場合には、自作地に付ても政府が買收すると云ふやうなことの規定がしてある場合がございます、さう云ふ場合に於て、其の買收の日に於て當該農地に付き耕作を營む小作農ではないので、それは結局其の土地の上の耕作に從事をして居る者、雇はれて居る人、斯う云ふことになる譯であります、之を耕作の業務を營む小作農と云ふことだけに限定を致しますと、原則としてはそれで宜しいのでありますけれども、それだけでは「カバー」し得ない場合がある譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=208
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209・麻生正藏
○麻生委員 まだはつきり致しませぬけれども、それから買受の希望者のない時は、此の後の方の規定で賣渡計畫から其の土地だけ除外してしまふのかどうか、詰り買受の希望者のない場合、賣渡計畫から除外するかどうか、或は又第十六條第二項の市町村農業會其の他命令まで定める團體に賣渡すことを原則とすると云ふやうなことで、さう云ふ風な賣渡計畫を立てると云ふことでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=209
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210・山添利作
○山添政府委員 是は市町村農業會に賣渡すと申しましても、市町村農業會の意向もあることでありまして、押付ける譯には參りませぬ、結局色々話をして見た結果、其の土地に付ては、國が所有權を留保をして居る外に途がないと云ふ時には、其の通りに致す譯であります、隨て是は賣渡計畫の中からは除かれます
〔小川原委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=210
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211・細野三千雄
○細野委員 第十六條の一番終ひの「命令で定める團體」と云ふものに付て印刷して御配付願ひましたものの中に「その他耕作者の組織する團體」とあります、詰り是は農民組合のことでありませうが、若しさうだとすれば、政府は此の場合の農民組合の法律の性格に付てどう云ふ風に御覽になつて居るでせうか御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=211
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212・山添利作
○山添政府委員 此の耕作者の組織する團體と云ふのは、別に農民組合を特に考へて居ると云ふ譯でもなく、さう云ふ場合もあるかも分りませぬが、要するに、それは耕作者の組織して居る申合せの團體でありましても、其の基礎の鞏固なもの、例へば地割の慣行のあるやうな所で、其の耕作者の團體、是は性格が申合せであるかも知れませぬが、さう云ふ場合もございませう、又私が偶偶聞きました所では、或る一括した土地を色々の危險の關係と云ふやうなことも考慮致しまして、個人個人で買はないで、一括して組合を作つて買ひたい、斯う云ふやうなことを申して居る所もあるのであります、是がどう云ふ組織になりまするか、是は基礎さへ確實なものであれば差支ないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=212
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213・細野三千雄
○細野委員 もう一遍念を押して置くのですが、法律上の法人でなくても差支へないのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=213
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214・山添利作
○山添政府委員 差支へございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=214
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215・井伊誠一
○井伊委員 此の第一項の方は、是は個人の順位が大體決められたものと思ふのですが、第二項の方は特別の事情のある場合、市町村農業會其の他の團體、特別の事情のある場合と云ふのでありますが、此の個人の方の順位と團體の方の順位、特に特別の事情のあるもの、それとの順位はどう云ふ風になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=215
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216・山添利作
○山添政府委員 此の特別の事情と申しますのは、是は普通の場合に於きましては、其の小作者の方で買取の希望がない、斯う云ふことを考へて居る譯でございまするが、場合に依りましては、農業會に於て一括買取の上、徹底した交換分合をする、さうして其の上で土地を各耕作者に分ける、斯う云ふことを致しますやうな計畫がございますれば、之に應じて政府は一括賣渡すと云ふやうな場合もあるかと思ひます、又此の列擧してあります團體の中に、特別に順位と云ふやうなものは原則的に考へて居る譯ではございませぬ、是は其の場合々々に應じて決めたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=216
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217・井伊誠一
○井伊委員 さうすると第一項の方も原則的に決まつて居ないと云ふことになると、やはり此處に競爭と云ふか、爭ひと云ふものが起きますが、それは全部其の方針を示さないで置いて、此の農地委員會の裁定に任すと云ふことになるのでありますが、もう少しはつきりして置いて、其の爭ひの起きないやうな風に、原則としては是々の順位と云ふ風に御決めになつた方が、宜いのではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=217
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218・山添利作
○山添政府委員 私が今申しましたのは、第十六條の第二項の場合に於て順序があるかないかと云ふ御質問だと思ひまして、御答へ致したのであります、第一項の方でありますれば、是は順位は明確でありまして兎も角其の買收の時期に於て、其の農地に付て耕作の業務を營んで居る小作農に賣渡すのが原則であります、それを賣渡さないと云ふやうな場合は、餘程色々の人が全然農業に精進する見込がないと云ふ風に、委員會に於て多數皆の意見で認める場合でありますとか、或は其の農地に付きまして不當取上が前に行はれた、隨て其の爲に小作人が今變つて居る、而も其の小作人が全然善意無過失であると云ふことであれば、それは其の現在の小作人に賣らなければならぬ譯でありまして、是も通謀して居る、同罪だと云ふやうな場合には、元の十一月二十三日現在の小作人に賣る、斯う云ふ場合がある譯であります、それ以外に於きましては、小作人のない場合、此の場合に於きましては、其の土地に縁故のある人を先づ以て優先さす、即ち自作農地に付きまして經營不適正に依つて政府が買收した、此の農地の上には所謂小作者なるものはございませぬが、其の農地の上で働いて居つた從業者がある譯であります、先づ其の人を考へる、其の人が不適格でございますれば、是は農地委員會の認定する所に依つて、家族勞力等に比べて土地の不足して居る人に與へる、まあ斯う云ふ順序であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=218
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219・井伊誠一
○井伊委員 分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=219
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220・葉梨新五郎
○葉梨委員長 さうすると第十六條は質問を終了したものとして宜しうございますか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=220
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221・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは明日は第十七條より質疑を續行することに致しまして、本日は此の程度と致したいと思ふのであります、明日は此の部會が經濟諸法案の何か祕密會の爲に使用せられるさうでありますから、明日に限り第十一委員室元の委員室でございます、彼處で午前十時より開會致すことと致したいと思ひます、本日は是にて散會致します
午後四時五十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01219460927&spkNum=221
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