1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年八月七日(水曜日)午前十時二十五分開議
出席委員
委員長 稻田直道君
理事 伊藤郷一君 理事 左藤義詮君
理事 小池新太郎君 理事 森本義夫君
杉田一郎君 天野久君
西山富佐太君 石川金次郎君
杉本勝次君 駒井藤平君
藤本虎喜君 井上赳君
近藤鶴代君
八月五日委員木下榮君及び河野金昇君辭任に付其の補闕として駒井藤平君及び藤本虎喜君を議長に於て選定した
出席國務大臣
遞信大臣 一松定吉君
出席政府委員
遞信政務次官 中川重春君
遞信事務官 小池行政君
遞信事務官 岡井彌三郎君
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本日の會議に付した議案
郵便貯金法等の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=0
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001・稻田直道
○稻田委員長 それでは是より會議を開きます、委員會に付託を致されました郵便貯金法等の一部を改正する法律案は、貴族院よりの送付のものでありまして、それを本院に於て審議することになつたのでありますが、先づ遞信大臣より提案理由の御説明を求めることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=1
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002・一松定吉
○一松國務大臣 只今議題となりました郵便貯金法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申上げます
此の法律案は現下の經濟事情に對應し、國民生活の安定確保を圖る目的にて、郵便貯金の最高最低制限額、簡易生命保險の保險金最高制限額及び郵便年金の年金最高制限額を引上げると共に、簡易生命保險及び郵便年金事業經營の適正強化を期する爲め、契約條項に關する命令變更の效力を、既存の契約にも及ぼし得ることとする等、郵便貯金法、簡易生命保險法及び郵便年金法の一部に付き、必要なる改正を行はんとするものであります
先づ第一條は、郵便貯金の最高最低制限額に關する郵便貯金法の一部を改正せんとするものであります、郵便貯金の最高制限額は、制度創始當時には五百圓と定められたのでありますが、其の後經濟界の發展に伴ひまして、明治三十八年一千圓に、大正九年二千圓に、昭和十六年三千圓に、翌十七年五千圓に引上げられ今日に及んで居るのであります、併し此の最後の改正以來約四年間の經濟情勢の變化は特に顯著でありますのみならず、郵便貯金自體に於きましても、昭和十七年末には預入額が百十九億圓に過ぎなかつたのが、只今では其の四倍以上の五百億圓を超え、一口座當り平均貯金額も、昭和十七年末の九十四圓に對して、二倍半に相當する二百五十圓に達し、總額四千圓を超える預け人の數は、總體の〇、八%に相當する百五十萬人以上を推定されるに至つたのであります、そこで此の郵便貯金の最高制限額を引上げて、此の經濟情勢の現状に對應すると共に、一面國民に新しい貯蓄目標を與へて、貯蓄心の喚起を圖り、「インフレ」防止策の一助とすることが極めて緊要と考へられるのでありまして、其の引上の程度は民營貯蓄機關に對する影響をも考慮し、一萬圓とすることが最も適當であると思はれるのであります、又郵便貯金一度の預入に付ての最低制限額は最初十錢と定められ、其の後三錢に引下げられたこともありますが、程なく再び十錢になり、更に昭和十六年に五十錢に引上げられ、最近の取扱を見ますると、一度の預入額十圓以上のものが約半數を占め、一圓未滿の小口預入は總口數の四%となつて居るのであります、勿論郵便貯金は零細な預金を受入れるのが本來の使命でありますが、さればと言つて餘りに小口のものにこだはり、之に勞力、物資を費すことは考へものでありまして、今日貨弊價値の大幅の低落から考へて、五十錢は如何にも低いとの感が致すのであります、仍て今囘最高制限額の倍額引上に竝行致しまして、最低制限額も、現在の二倍の一圓に高めることが、適當であると思はれます
次に第二條の簡易生命保險法の關係と致しましては、御承知の如く此の事業は、大正五年十月一日、國民生活の安定を目途として創始せられたものでありますが、爾來二十有九年間不斷の躍進を續けて參りまして、今日見るやうに輝かしき業績を示して居るのでございます、簡易生命保險の最高保險金額は、創始以來五囘に亙る引上に依りまして、現在其の最高制限額は二千圓と相成つて居り、同一の被保險者が數箇の保險契約をなす場合に於きましても、右金額を超えることが出來ないものとされて居りますが、是では、最近に於ける生活費の急激なる昂騰に伴ひ、克く國民生活の安定強化を確保し、制度本來の機能を十分に發揮することが出來なくなりましたのみならず、他面事業それ自體としても、最近に於ける人件費、物件費の急騰に伴ひまして、多額の經費を要するに至りましたので、高額契約を獲得することに依つて、努めて事業費の低減を圖る必要が起つて參つたのであります、仍て民營保險事業との關係をも考慮の上、茲に保險金最高制限額を五千圓に引上げると共に、一年間に付き契約し得る現行の制限規定を撤廢することにしたのであります、是が改正の第一點であります
次に改正の第二點は、獨占規定の廢止であります、御承知のやうに現在簡易生命保險事業は、政府の獨占と云ふことになつて居るのでありますが、之を其の儘に致して置きますと、最高制限額引上の結果、民間の興亞保險は經營出來なくなりますし、他方獨占規定を制定した當時と事情も異つて居りますので、茲に、保險業者の要請にも應へ、比の事業の政府獨占に關する規定を廢止しまして、官民兩保險は、それぞれ過去の經驗に照し、各各得意とする分野より相協力して保險思想の普及に努め國民生活の安定に寄與することに致したいと存じます
次に改正の第三點として、現行の小兒に關する保險制度を改正し、小兒の加入し得る保險金最高制限額に付て成人と區別することなく、生後直ちに五千圓まで契約の出來るやうに致しました、現行小兒保險制度實施後に於ける經驗に依りますと、小兒の死亡率は漸次少くなる傾向にありますので、現在のやうな制度を其の儘存置する理由は、極めて薄弱でありまして、却て小兒の保險的保護に於ても不十分なものがありますので、之を右のやうに改めんとするものであります、唯六歳未滿の小兒は大人に比べて多少死亡率も高いので、被保險者が六歳未滿にて死亡したる場合に於ては、支拂ふべき保險金額に一定の制限を設けることとし、之を勅令で定めることにしたいと存じます
次に政正の第四點として、保險金の削減期間一年六月を二年に延長したのであります、御承知のやうに、簡易生命保險に於きましては、被保險者の身體檢査を行はないことになつて居りますので、保險金最高制限額を五千圓に引上げまする時は、今までよりは病弱者が入つて來る危險が多くなります、そこで事業經營の安固を圖る爲め、現行の保險金削減期間を半箇年だけ延長致しまして、加入後二年内に死亡した者に、支拂ふべき保險金額を削減し得ることに致したいと存じます
次に改正の第五點と致しまして、保險契約者が貸付金の辨濟をしない場合に於ては、命令の定める所に依り、保險金の減額をなし得る旨の規定を設けたいと思ひます、保險契約は長期に亙るものでありますから、保險契約者が貸付を受け、長期に亙り是が辨濟をしない時は、貸付金のみが消滅時效に掛かる虞がありますので、保險契約者が貸付金を辨濟することなく命令の定める期間を經過した時は、貸付金の辨濟に代へ保險金の減額をなし得るものとし、是が債權を確保することに致したいと存じます、尚ほ從來の規定に依りますと、長期に亙り貸付金を辨濟しないで其の儘放置した保險契約者は、多額の利息と遲滯金を拂はねばならぬことになりますので、今囘の如く改正することに依り、加入者も亦利益を受けることに相成るのであります
改正の第六點として、成規支拂の範圍に貸付金を加へることにしました、現行の成規支拂の範圍は、保險金額及び還付金額の支拂に限定せられて居りますが、契約者貸付金に關する取引も同樣の性質を有し、民法第四百七十八條乃至第四百八十條に關聯して、是が支拂の效力に關し問題となる機會が多いので、之をも成規支拂の範圍に加へ、貸付金拂渡の效力に付き訴訟を未然に防止することに致したいのであります
改正の第七點として、政府は契約條項に關する命令を變更する場合に於て、簡易生命保險事業の經營の状況に依り、又は事情の變更に依り必要ありと認めた時は、簡易生命保險及び郵便年金事業委員會の議を經て、其の變更の際、現に存する保險契約に付ても亦將來に向つて其の效力を及ぼすことを得るものと致したいと存じます、申すまでもなく、簡易生命保險契約は長期に亙り繼續すべきものでありますから、其の間、從來の契約條項を變更して、保險事業經營の状況に鑑み、且又社會情勢の推移變遷に伴ひまして、之を既存の契約にも遡及せしむることを必要とする場合が少くないので、契約條項に關する命令變更の效力を、其の變更の際現に存する契約に付ても及ぼし得るものと致した次第であります
最後に、第三條の郵便年金法の關係に付て申上げますと、郵便年金は、大正十五年十月一日、國民生活の安定を目的として創始されたものでありますが、爾來十有九年間、簡易生命保險と共に不斷の躍進を續けて參りまして、今日見るやうに輝かしき業績を示して居るのであります、郵便年金の最高制限額は、昭和十八年に三千六百圓に引上げられて今日に及んで居るのでありますが、是れ亦生活費の急激なる昂騰に伴ひまして、現在の年金最高制限額に依つては、能く國民生活の安定強化を確保し難く、制度本來の機能を十分に發揮することが出來なくなつたのであります、他面事業それ自體としても、高額契約を獲得することに依つて、努めて事業費の低減を圖る必要がありますので、茲に年金最高制限額を六千圓に引上げることに致したいと存じます、是が改正の第一點であります
次に改正の第二點と致しまして、年金受取人又は年金繼續受取人が死亡した場合に於きまして、其の者が支拂を受くべき年金にして未だ其の支拂を受けないものは、勅令の定める所に依り、年金受取人又は年金繼續受取人の遺族にそれを支拂ふものと致したいのであります、現行法上斯樣な場合の規定を缺き、民法の相續規定に依り支拂つて居る實情でありますので、事務の簡素化を圖り、支拂事務の敏速を期する爲め、此のやうな年金に付ても、年金繼續受取人を法定したのと同じ理由で、其の受取人を法定することとしたのであります
改正の第三點と致しまして、年金の差押禁止規定を改正し年額六百圓を超える金額に付てのみ之を差押へ得るものと致したのであります、現行法に定めて居る年金差押不能額は、今日の經濟事情に照して、國民の最低生活を保障せんとする此の制度の趣旨に副はないものがありますので、茲に、此の制度額を改正し、今囘引上の金額六千圓が、創始當時の年金額二千四百圓の約二・五倍に當つて居ることに鑑みまして、年額六百圓以下の年金に付ては差押を禁止することとしたいのであります
次に改正の第四點と致しまして、年金支拂開始後に於ける契約解除權を認めることに致したいと存じます、郵便年金契約は長期に亙り契約繼續するを常とし、隨て其の間加入者の私經濟生活に變動を來すことのあるのは、已むを得ない所でありますが、契約後の事情に備へ、加入者に自由に契約解除權を與へることは、年金契約に必然的に伴ふ要請であるとせねばならぬのであります、之を經驗に徴しまするに、年金支拂開始後契約の解消を申出づる者も極めて多く、且又、契約の申込當時に於ても斯うした制限の故に申込を躊躇する者も亦少くありませぬので、茲に年金契約の解除は支拂開始前のみならず、開始後に於ても自由に之を認めることに致しました、尚ほ此の場合、契約解除權を行使し得る者は、年金支拂開始前にあつては年金契約者、開始後は年金受取人又は年金繼續受取人に限定するものとしたいと存じます
次に改正の第五點として、特別返還金制度を廢止することにしました、是は戰爭關係規定を存置する必要がないので、削除することにしたのであります
改正の第六點と致しましては、前申述べましたやうに、年金支拂開始後に於ける契約解除權を認めました結果、貸付金額を返還金の範圍内に改めることにしたいと存じます
尚ほ、改正の第七點と致しましては貸付金に付ても民法第四百七十八條乃至第四百八十條に關聯して、成規支拂に付き問題となる機會が多いので、之をも成規支拂の範圍に加へまして、貸付金拂渡の效力に付き訴訟を未然に防止することに致したいと存じます
最後に改正の第八點と致しまして、政府は契約條項に關する命令を變更する場合に於きまして、郵便年金事業の經營の状況に依り、又は事情に變更の依り必要ありと認めました時は、簡易生命保險と同樣、其の變更の際現に存する年金契約に付ても亦將來に向つて其の效力を及ぼすことに致しまして、事業の堅實なる運營に資することと致したいのであります
以上申上げました諸點を十分御了承の上何卒愼重御審議の上速かに御協贊あらんことを切望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=2
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003・稻田直道
○稻田委員長 是より質疑に移ります、質疑は通告順に依りまして先づ左藤義詮君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=3
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004・左藤義詮
○左藤委員 時局下國民生活の安定確保を圖ると云ふ目的で御提案になりました御趣旨、能く了解を致しましたが、又一面には各種事業の適正強化を期すると云ふことがございます、それに付きまして今事業の經營がどう云ふ状態になつて居るか、それを伺ひます爲に第一に預金部の融資状況、其の概略、特にそれが來るべき非常金融の措置に依つて、どう云ふやうな影響を受けるか、是は郵便貯金或は年金、簡易保險、何れも庶民大衆の利害に關する所が非常に深刻でありますので、それに對して遞信當局としてどう云ふ御見透しを御付けになつて居るか、其の概略を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=4
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005・一松定吉
○一松國務大臣 只今の御質問御尤であると思ひます、事務當局より御答へさせて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=5
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006・岡井彌三郎
○岡井政府委員 只今の左藤委員の御質問に對する御答へでありますが、先づ第一に預金部の融資状況であります、預金部は御承知の通り大藏省の所管になつて居りまして、當省が直接關係致して居りませぬが、間接に聽きました所を御傳へ致したいと思ひます
先づ原資でありまするが、預金部の資金の總額は六百六十億三千八百二十九萬三千圓となつて居ります、内譯の概略を申上げますと、郵便貯金及び郵便切手收入金預金、是が五百三十七億九千二百萬圓、貯蓄債劵等收入金の預金が二十五億八千三百萬圓、簡易生命保險及び郵便年金からの預金が四十一億三千五百萬圓、厚生保險からの預金、是が十四億六千二百萬圓、特殊財産預金五億二千八百萬圓、其の他の會計からの預金が二億六千三百萬圓、特殊基金保管金及び供託金預金が一億二千百萬圓、共濟組合及び法人預金が一億四百萬圓、積立金其の他が三十億四千七百萬圓、合せて先程申しました通り六百六十億三千八百二十九萬三千圓、斯うなつて居ります、之を如何なる方面に運營して居りますかと申しますれば、先づ國債證劵に五百一億三千三十八萬八千圓、一般會計及び特別會計への貸付金が二十億千九百萬圓、地方債劵及び地方公共團體等への貸付金が四十二億八千九百萬圓、特殊銀行などの債劵及び貸付金が四十一億八千九百萬圓、特殊會社などの債劵及び貸付金が三十二億五百萬圓、外國國債證劵、國外關係の債劵及び貸付金が十九億三千五百萬圓、現金が二億六千八百萬圓、合計致しまして六百六十億三千八百萬圓、斯う云ふことに相成つて居ります、さう致しまして今囘の補償打切の爲に影響を受ける額に付ては今詳しい數字は申上げ兼ねますが、勿論外地への投資もあること故若干の影響は免れないことと思はれます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=6
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007・左藤義詮
○左藤委員 今補償打切に因つて多少の影響は免れないであらうとのことであつたが、それが庶民に直接利害のあります貯金及び年金、簡易保險等にどう云ふ影響を及ぼしますか、一般銀行などは預金を相當凍結しなければならないと云ふ状況でありますが、果して郵便貯金の方面には庶民大衆に迷惑を及ぼさないで濟む御見込であるか、どう云ふ御見透しを御付けになつて居るか伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=7
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008・岡井彌三郎
○岡井政府委員 補償打切に依りまして先づ郵便貯金に如何なる影響を及ぼすかと云ふことでございますが、是は軈て大藏省令となつて現はれて來るであらうと思ひます、金融緊急措置の施行規則の改正が間もなく出て來るやうに聞いて居りますが、それに依りますと郵便貯金も一定の額以上のものは所謂棚上になるのではないかと思はれます、私共と致しましては郵便貯金は元々庶民階級の小口預金であるから、之に付ては例外を設けて貰ひたいと云ふことを強調致しまして、大藏省もそれには同感であつたが、愈愈と云ふ時の其の筋との交渉に於きまして、どうしてもそれは區別する必要がない、してはいけないと云ふことになりましたが爲に、殘念ながら郵便貯金に於きましても今申しましたやうな結果になつたのであります、封鎖された後どうするか、政府は結果に於て支拂ふかどうかと云ふことは今後の問題であると考へて居ります、それから簡易保險であるが、簡易保險と郵便年金、此の積立金は御手許に差上げてございます參考資料に載せてあります通り、兩方で七十五億圓となつて居ります、其の中で在外投資と致しまして五億三千四百萬圓ございます、是は恐らく賠償に充てられ、且つ政府は補償しないのぢやないかと考へます、其の外に今囘の軍需補償打切りに依りまして打撃を被る會社等への投資額が三億二千萬圓ございます、是は全額が喪失されると云ふことは恐らくないのぢやないかと思ひます、若し假に全額喪失致しますと致しましても、其の額は兩方で八億五千何百萬圓となります、是は打切になりましても、簡易保險や郵便年金には長期還附金或は滿期返還金と云ふものを現在支拂つて居りますが、此の法律の改正に依りまして、簡易保險の方に於きましては二十八條の二、郵便年金の方に於きましては二十二條の二の改正に依りまして、將來既存の契約の契約條項まで變更することが出來ると云ふ權能が、政府に認められました場合に於きましては、此の長期還附金なり、或は滿期返還金なりを減額或は全然支拂はないと云ふことにしますれば、それに依つて浮いて來る金が約八億圓程度ありますから、在外資産の五億三千四百萬圓、軍需投資三億二千萬圓、是が假に總て喪失されると致しましても、民間の利益配當に相當する長期還附金なり滿期返還金なりを支拂はないと云ふことに致しますれば、基本的の給與である保險金なり、或は年金にまでは手を著けないで十分やつて行ける、斯樣に思つて居ります、唯郵便年金に付きましては、今度の金融緊急措置令の改正に依りまして、年金額一千圓を超えるものに付きましては郵便貯金の一萬五千圓を超える場合と同じやうに一時第二封鎖に入れると云ふことになつて居りますが、是は一時封鎖するだけで、後では資金の關係に於きましては支拂能力は十分ありますので解除することが出來る、斯樣に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=8
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009・左藤義詮
○左藤委員 大藏省と連絡して極力努力をしたが、關係筋の制限の爲に庶民大衆の意に應ずることが出來なかつた、洵に已むを得ぬことでございますが、唯銀行其の他の預金と同じやうに棚上をした分を、今後出來るだけ早く解決するやうにしたい斯う云ふことでありましたが、其の點に付きましては郵便貯金等の本質に鑑みまして、是非一つ最善の努力を願ひたいと云ふことを切望して置きたいと思ひます
それから契約條項を變更することに依つて、長期還附金或は滿期返還金を減額或は削除してしまふ、それに依つて八億何がしの損失を補はうと云ふことは相當容易ならぬことでありまして折角營々として將來に希望を持つて積立て或は貯金したものが、事業の經營を救ふ爲に無視せられてしまふと云ふことは、さう簡單には承認出來ないことではないか、何とかそこに大藏省とも折衝して、庶民大衆の立場から御考慮になる必要があると思ふのですが、大臣の御所見如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=9
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010・一松定吉
○一松國務大臣 只今の郵便年金であるとか或は簡易保險だとか云ふやうな、庶民階級に重大なる影響を及ぼしまする是等の金の支拂に付きましては、只今政府委員から御答へした通りでありますが、唯之に附加へて置きたいことは、成程今囘の臨時緊急措置令に依りまして、今政府委員から御答へ致しましたやうな法案を、最近議會へ提案致しまして、皆樣方の御審議を求めることになつて居ります、それが經濟界に異常なる影響を及ぼすことは論ずるまでもございませぬが、特に郵便局に關する限り、所謂國營事業でありまするから、私設の銀行等の被る影響に比較致しまして、賠償能力は十分にあります、唯一時手續の濟みますまでは、今政府委員の御答へ致しましたやうに封鎖されますけれども、能力があると云ふことが分り次第、直ちに之を解禁致しまして、民衆にそれ相當に拂戻すと云ふ確信がありますから、其の點は此の臨時緊急措置令に關しまする銀行等の受ける打撃に比較致しまして、郵便局に預けてあります年金だとか、若しくは簡易保險の支拂とか云ふことに付きましては、餘程影響が少いと確信を致して居りますから、此の點は一つ御安心を願ひたいと思ふのであります、それに關聯致しまして、只今の所謂契約條件の變更、是は政府委員の説明から致しますると、國家の利益の方面から見て、契約條件を變更をすると云ふやうな説明であつたので、多分あなたは其の點に御心配をなさつたと思ふのですが、國家に不利益な時の變更もありますし、又是等の庶民階級に不利益な時にも之を利益に變更すると云ふことも此の委員會で出來る、政府はさう云ふ方面を考へまして、此の法文にありますやうに經營状況より、又事情の變更に依り必要ありと認めた時は、此の契約條項を變更しよう、而も變更するのは、政府が勝手に變更するのではなくて、所謂事業委員會の議を經て、或程度是は變更しなければならぬと委員會で決議した時に、初めて是が實施せられるのであります、それも此の委員會は遞信行政に抱負經綸を持つて居る者を入れることは勿論、其の他學界、經驗者等を以て委員會を組織して居るのでありまするから、非常に民衆に重大な影響を及ぼすと云ふやうな時には勿論契約條項は變更出來ないことになります、さう云ふ點に付きましての丁度「ブレーキ」が、此の委員會に依つて働くのでございますから、其の點は一つ御考慮を賜りたい、又當局と致しましても是が非常に民衆に惡影響を及ぼし、民衆の生活を脅威すると云ふやうな時に、國家さへ宜ければ民衆はどうでも宜いと云ふ考へ方は持つて居りませぬから、此の點は一つ御諒解をして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=10
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011・左藤義詮
○左藤委員 大臣の御説明でございましたが、今現實には八億何千萬圓と云ふ損害、それが長期還附、或は滿期返還金を削除することに依つて補填されやうとして居る、現實にはやはり庶民大衆の犠牲に依つて國家の事業經營を救はうと云ふ、丁度一部の資本家と同じやうな風の印象を與へると思ふのであります、其の點に於きまして只今の御説明にも拘らず、我々は相當の不滿を持つものでありまして、委員會は兩方の「ブレーキ」だと仰しやいますが、今現實に此の委員會を作つてやられることは、八億何千萬圓のものを契約を履行しないで、大衆に其の犠牲を負擔せしむる、斯う云ふ印象を受けますが、其の點に付て政府の御所見は如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=11
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012・一松定吉
○一松國務大臣 それは今御答へ致しましたやうに、若し事情の變遷に依つて國家が立ち行かぬと云ふやうな危急存亡の秋になれば、それは民衆に損害を與へても、民衆よりも國家が大事だと云ふやうなことで、さう云ふことをやらぬとも限りますまい、併しながら此の建前は今左藤委員の非常に御憂慮になつて居るやうなことのみを考へたのでございませぬから、今御心配のやうな事態の時には深甚の考慮を拂ひまして、成るだけ庶民階級に損害の及ぶことの少なからしむるやうに十分注意致しまして、さう云ふ弊害は成るたけ發生しないやうに努力致します、郵便年金法の二十二條、簡易保險法の二十八條の二に依りましても、今あなたの仰しやるやうに、是等の預金者若しくは契約者に對しては、非常な打撃を與へることを我々も能く承知して居りますから、其の點は十分に誤りなからしむることを期したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=12
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013・左藤義詮
○左藤委員 特別會計の損害に對して、一般會計から不足を補ふと云ふ制度が以前にはあつたやうですが、それは昭和十九年から廢止されて居るやうであります、是は積立金だけでも八億何千萬圓と云ふ大きな問題でありますので、先程から申しますやうな庶民階級の最も言ひたい問題であると云ふことから何等かの方法に依つて大藏省に對して、一般會計から以前のやうに其の不足を補填して、契約を履行して國家に對する國民の信頼に應へる、庶民階級の生活を擁護する、斯う云ふやうな御努力をなさり、大藏省に對して折衝なさる思召はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=13
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014・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御説の通り當局と致しましては昭和十九年に一般會計から補償すると云ふ規定はなくなつたけれども、それが其の當時に於きましては事業が是だけ基礎が固くなり、隆盛になつた以上は、もう一般會計から補償をする必要はないだらうと云ふので廢止を致したのであります、併し今日となつて參りますと全く情勢が變つて參りまして、そんなに大きな穴が積立金に空くと云ふことは、當時と致しましては全く豫想しなかつた所でありまして、問題は全く新たなことになつたのであります、隨ひまして私共と致しましては大藏省に對しまして、現在の規定では補償すると云ふことにはなつて居ないが、斯う云ふ場合だから補償してでも契約者に損失を及ぼすことのないやうにして貰ひたいと云ふことを一應は交渉致しましたが、大藏省と致しましては一般との關係竝に現下の財政上、どうしても困ると云ふことで、一應は只今申上げましたやうな措置を執らざるを得ないと云ふ考へになつて居りますやうな次第でございます、只今の御説にもありました通り、私共と致しましては極力契約者の利益を削減すると云ふことは囘避するのが當然の義務でありまして、今後に於きましても尚ほ締めないで、大藏省と此の點に付きまして折衝を續けて行きたいと思ひます、尚ほ御參考の爲に申上げまするが、長期還付金或は滿期返還金と申しますものは、民間保險に於きまする利益配當でありまして、其の額がどの位かと申上げますると、大體保險の方ですが一件當り二十圓程度になつて居ります、額と致しましては大した額ではないと云ふことと、民間に於きましては既に利益配當は廢止致して居りますのみならず、それだけでは經營がやつて行けないと云ふことで、保險金の削減まで手を著けなければどうしてもやつて行けないと云ふことまで言はれて居るやうであります、此の點を御參考までに申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=14
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015・左藤義詮
○左藤委員 只今御尋ねを致しました一般會計からの補填と云ふことに付きましては、一應の交渉をしたと云ふ御話でありますが、只今の御答辯にもありましたやうに、國家が庶民大衆の信頼に應へて此の事業を經營致します趣旨に鑑みまして、最善の努力を以て、出來得る限り八億何千萬圓の損害を全部契約者に負擔せしめる、假令それが二十圓であらうが、三十圓であらうが、さう云ふことの出來るだけ少くなりますやうに、是は今後十分の御善處を御願ひしたいと思ひます、さう云ふやうな問題を處置致します爲に事業の委員會が構成されるのでありますが、是が從來見る如き役所の思ふ通りになるほんの諮詢機關と云ふ形にならないやうに、此の委員會が眞に庶民大衆の血の出るやうな叫びを反映して、先程大臣の言はれました單に政府の損失を補填する意志ばかりでなく、貯金大衆の利益を護るやうな、さう云ふ十分民主的な性格を持つた組織にしなければならぬと私は思ふのであります、此の委員會の構成或は運用が、私は此の法案を通します上に於て、非常に重大な關心事でなければならぬと思ふのであります、其の點に付きまして此の事業委員會をどう云ふやうな性格、或は構成にされますか、大體の御構想を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=15
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016・岡井彌三郎
○岡井政府委員 御答へ致します、此の委員會は先づ其の權限と致しまして、保險法の二十八條の二、年金法の二十二條の二に掲げて居ります事項、其の外保險年金積立金の運用及び事業經營上重要な事項を調査審議する、斯う云ふ權限になつて居ります、さう致しまして其の構成は關係官廳の官吏、學識經驗者……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=16
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017・左藤義詮
○左藤委員 定員はどの位でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=17
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018・岡井彌三郎
○岡井政府委員 定員は總體で三十名でありまして、官廳の官吏が十名、學識經驗者十名、其の他に加入者代表と云ふものを十名、全體で三十名、勿論貴衆兩院議員も學識經驗者、或は加入者代表と云ふことで入つて戴くことに相成ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=18
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019・左藤義詮
○左藤委員 貴衆兩院議員は全然別な立場でなしに、それぞれ學識經驗者或は加入者代表の中に入つてしまふのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=19
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020・岡井彌三郎
○岡井政府委員 今の腹案としてはさう云ふ風に考へて居るのですが、まだほんの草案でございまして、是から如何樣にも變へ得ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=20
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021・左藤義詮
○左藤委員 ほんの腹案だと仰つしやいましたが、私は此の委員會の構成が此の法案の審議に一番「キーポイント」だと思ひますので、關係官廳の官吏が十名、學識經驗者、其の選擇權と申しますか、それも殆ど關係官廳から委囑なさると思ふのでありますが、それが十名、三分の二を占めるのであります、又加入者の代表の中に貴衆兩院議員も含めると云ふ一寸妙な話でありますが、加入者代表は本當に民主的な方法に依つて選擧なさる御積りであるか、或は關係官廳の方から天降りに御指名なさる御積りか、此の構想を此の機會にはつきりと本委員會に於て御示しを戴きたい、それでなければ此の法案の審議は私は出來ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=21
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022・一松定吉
○一松國務大臣 其の委員の構成に付きましては、今局長から申上げましたやうに未確定のものであります、其の點に付きましては私共の方で十分に檢討を加へまして、先刻私が御答へをしたやうな線に沿うて人選等を致したい、斯う考へて居りますから、今あなたの御批評になりましたやうに、關係官吏が十名と云ふのは多過ぎるのぢやないか、又加入者代表者を十名、其の中に貴衆兩院議員を加へると云ふことは不徹底ぢやないかと云ふやうなことは私御尤もと考へます、少くとも關係官廳の者は勿論入れなければなりませぬが、之を何も十名、三分の一に限る必要はありませぬ、成だけ關係者の數を十名と致しますならば、貴衆兩院議員或は學識經驗者と云ふものを、それ相當の意見を十分に發表をし、更に此の契約條項を變更するに付て適當か、適當でないかと云ふことに付て判斷するに、十分の考慮を拂ひ得るやうな人を大量に之に加へまして、さうして先刻私が申上げましたやうに、果して此の條項の變更が關係者の爲に利益であるか、國家の爲に利益であるか、斯う云ふことを變更するのが時局に適應して居るかどうかと云ふやうなことに付て、誤りなく判斷の出來るやうな構成に致したい、斯樣に私考へて居るので、今局長の申上げましたのは、さう云ふ意味に於てまだ確定はして居りませぬけれども、あなたの御質問に對して成たけ御疑問を避ける意味に於て、まだ未定稿のものを發表したと云ふ趣旨に御諒承を賜はりたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=22
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023・左藤義詮
○左藤委員 只今政府委員の答辯はほんの未定稿だと仰しやいましたが、其の中にも既に非常な非民主的な面貌が現はれて居ると思ふ、此の委員會の構成をはつきりしないで其の儘此の法案を通すことは私は一般の大衆に對して甚だ相濟まないと思ふ、尚ほ研究中だと仰しやいますが、憲法に於ても皇室典範や參議院法の構想を示さない限りはあの草案は審議出來ないと云ふ要求があつて、政府から色々案を示されたのであります、此の審議を致します爲に、此の委員會の構成運用と云ふことが一番此の改正の中心だと思ひますので、政府に於て十分案を練つて、我々委員會が是れならばと納得しますやうなものた御示し戴きたい、又それが今急に困難でありまするならば、之を政府の方で勅令等で御決めにならないで、必ず議會に掛けて此の委員會と云ふものの構成を法律條項として、決して政府の御用團體にならないやうに、官僚の頤使に甘んじて、形式的にそれを審議すると云ふことに終らないやうな態度を、はつきり御闡明を戴きたいと思ふのであります、其の點に付きまして大臣の御所信を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=23
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024・一松定吉
○一松國務大臣 御尤もな御要求であります、成たけ速かにさう云ふ構想を練りまして、此の委員會の終了する前までに之を出すことに致しませう、但し法律案で之を出すと云ふことは今の所考へて居りませぬが、勅令案にする積りでありますから、さう云ふやうな案を早速練りまして、明日あたりまでに御手許に差出すことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=24
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025・左藤義詮
○左藤委員 事業經營の適正強化と云ふことが謳はれて居るのでありますが、現在年金保險等の事業費はどう云ふ風な收支状態になつて居りますか、是は特定局への割戻とか、外交員などの手當とか、色々なことが混入つて來ると思ふのでありますが、大體に於て此の額を上げることに依つて適正強化をしようと仰しやるのでありますが、現在事業費がどれ位の程度になつて居りますか、此の額を上げることに依つて、果して現在の物價高の場合に事業費の收支は必ず償つて行くと云ふ、十分なる確信を持つて居らつしやるかどうか、事業費のことに付きまして大體の面貌を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=25
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026・岡井彌三郎
○岡井政府委員 簡易保險と郵便年金と、是は一緒になりまして簡易保險竝に郵便年金特別會計と云ふことになつて居りますので、一本にして申上げますが、今年度の豫算に於きまして事業費四億六千萬圓と見込んで居ります、是は昨年に比べますと二億八千百萬圓の増加であります、さう致しまして收入保險料に對する割合は、是は年金は別で省きますが、保險だけの關係で收入保險料に對する此の比率は二割七分一厘になつて居ります、昨年度は一割七分五厘であります、更に遡りまして十九年度が一割三分一厘と云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=26
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027・左藤義詮
○左藤委員 民間保險會社との割合はどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=27
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028・岡井彌三郎
○岡井政府委員 十九年度まではあります、民間保險會社と簡易保險の事業比率は、一流事業會社の比率に匹適して居ります、非常に此の點は成績は良かつたのであります、二十年度に入りまして從業員の大幅の待遇改善を續々やりまして斯う云ふ結果になつた譯でありますさう致しまして、此の二億八千二百萬圓は新たに財源を求めなければならぬ額でありますが、どうして財源を求めるかと申しますと、先づ新契約に付きましては——本年の四月から先程問題になりました長期還付金を廢止しました、是は新契約でありますが、委員會とか或は法律の改正とか云ふ難かしい問題はありませぬので、新契約に付きましては四月から廢止しました、其の外人件費を節約致したいと考へて居ります、是はまだ手を著けて居りませぬが、早速著けなければならぬことと思つて居ります、其の他色々事業の合理化を圖り、極力經費の節約を致したい、次には積立方式の變更であります、現在純保險料式で積立てて居りますが、之を「チルメル」式積立方式に改正致します、是で約一億千二百萬圓出る譯であります、是は一番大きい額であります、さう云ふ方法を講じます外に、改正案に依りまして平均保險金額は上ります、隨ひまして平均保險料もずつと上ります、それに伴つて事業費が少くなつて、所謂附加益が多くなり、是が今年は五千八百萬圓程度見込んで居ります、それから平年度でありますが、今年は十月からやりますから五千六百萬圓になります、一年を通じますと、一億二千萬圓になります、斯樣な色々なやり繰りを以ちましてやつて行く、此の状態を續けて居りますと、約四五年經ちますれば、斯う云ふ無理なことをしないでも十分經營が出來ると云ふ確信を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=28
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029・左藤義詮
○左藤委員 只今人件費の問題が出ましたが、是は他の委員の質問に讓ると致します、簡易保險は今度民營を許して行かふと云ふ御趣旨でありますが、是が競合状態になつて、只今申しまするやうな、將來には確信があると仰しやいましたが、事業費などの輕減には非常な困難を來しはしないか、其の他一方には簡易保險の額を上げまする爲に、一般の民營保險にどう云ふ影響を與へるかと云ふことに付きましては、現在の民營保險の一件當りの大體平均額と簡易保險との關係、又簡易保險を民營に許す爲に官營の簡易保險と同樣にそれぞれの經驗を生かして、兩方が相竝んで行くと簡單に仰しやつて居りますが、將來に於てどう云ふやうな影響を來すか、それに對する當局の御見込、御決心を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=29
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030・岡井彌三郎
○岡井政府委員 只今御尋ねの民營保險の一件當り平均保險金額は、昭和十九年度に於きまして、四千六百四十九圓、二十年度に於きましてはずつと上りまして八千圓、是は只今資料を持つて居りませぬのではつきりしたことを申上げられませぬが、確か八千五六百圓と云ふことになつて居る筈であります、次に獨占を廢止しまして民營にも許した結果、お互ひに競合して簡易保險に惡影響はないかと云ふ御質問と承りました、それは私共の方と致しましては影響はない、今更民營に許しましても簡易保險は御覽の通りの非常な鞏固な基礎を持つて居ります、國民の九割までが入つて居る、厖大なる事業形態をなして居りますし、一方に於きまして民營會社に於きましても非常な長足な進歩を致しまして、大部分の會社は非常に基礎が鞏固になつて居ります、のみならず簡易保險と普通保險とは、各各長年の經驗に依りまして分野が略略はつきり致して居りまして、今更獨占を廢止されたと致しましても、是が爲め民營と競爭を起して、お互ひの事業に惡影響を及ぼすと云ふことはないと考へて居ります、寧ろ多少の競爭がありましても、それはお互ひに切磋琢磨致しまして、其の結果保險料を安くすると云ふやうな結果になり加入者に取つては却て好都合ではないかと存じて居ります、更に保險金額を五千圓に致しました結果、民營に及ぼす影響も是亦私共と致しましては心配する必要はないと考へて居ります、と申しますのは先程申上げました通り、民營に於きましては、昭和二十年度に於きまして既に平均額は八千五、六百圓になつて居ります、現在益益是が高くなりつつある傾向にありますので、其の意味に於きまして簡易保險とは分野が違つて參つて居ります、簡易保險の方を五千圓に上げましても、是が爲に民營保險が壓迫されるやうなことはないと信じて居ります、是は私共が信じて居りますだけではなくて、民營保險を監督致して居りまする大藏省當局の意見も正に其の通りでございますので、其の點は心配ないのぢやないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=30
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031・左藤義詮
○左藤委員 只今非常に樂觀的な將來の御見透しでございましたが、現實に營々辛苦した貯金が打切られて行く、又一方物價から申しましても、十年、二十年前に貯金をした、或は保險金を拂込んだ、それを今受取る時の貨幣價値と云ふものの變動から申しますれば、私の最も憂ふる所は、國民の貯蓄心と云ふものが果して建直つて行くかどうか、私は道義其の他の方面から餘程の努力をしなければならぬことである、私は今後の斯くの如き事業は相當の困難をしなくちやならぬ、唯國家の豫算に於て、國家の信用に於てやるのであるからして心配は要らないと云ふ風な安易な御考へ方では、私共諒承が出來ないと思ふのでありまして、それ以上は議論になりますが、私は十分一つ將來の困難に對して今までの役所式の仕事ではなくして、民營と相竝しで獨占事業をやつた時代以上の成績を上げる爲には、私餘程遞信當局の御奮起を期待しなければならぬと思ふのであります、尚ほ保險事業は大藏省の監督でありますが、今度御許しになります簡易保險事業に付ても、やはり大藏省の監督、遞信省は民營の簡易保險に對しては、何等の發言或は指導權を御留保なさらない積りでありますか、此の機會に御伺ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=31
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032・岡井彌三郎
○岡井政府委員 法律的に申しますれば大藏省の專ら監督指導することでありまして、私共は法律的には關與出來ないことになつて居りますが、併し實質的に考へますと簡易保險の消長と云ふことに至大の關係がありまするので、今度許しました簡易保險の民營と云ふことに付きましては、大藏省當局と常に密接なる連絡を取りまして、遺憾のないやうにやつて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=32
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033・左藤義詮
○左藤委員 從來見ますやうな役所と役所との「セクショナリズム」の弊を再び見ませぬやうに、其の點に於て責任を持つて十分なる御連絡を希望したいと思ひます、尚ほ此の機會に是は請願委員會でさう云ふ請願が採擇になつて居りますが簡易保險の民營が許されます此の機會に、今非常に氣の毒な状態になつて居る戰災者、引揚者或は遺族、斯う云ふ人々に何等かの形に於て、此の簡易保險事業の優先的な權利を御與へになるやう、關係方面と御連絡願ひたい、是は非常に重大なことであり、非常に良い著想であると思ふのでありますが、其の點に付て當局に何か御考へがおありでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=33
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034・岡井彌三郎
○岡井政府委員 只今の御質問の海外からの引揚者の簡易保險或は郵便年金に對し優遇する ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=34
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035・左藤義詮
○左藤委員 其の人々に民營の何等かの優先權を與へるかと云ふ問題です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=35
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036・岡井彌三郎
○岡井政府委員 今度獨占を廢止しまして、民營會社でも簡易保險を經營すると申しますのは、是は私共の考へて居りますのは、現在澤山會社がありますが、此の會社が普通保險の傍ら簡易保險を運營する、之を許したと云ふ意味でありまして、今後新たに簡易保險の會社が出來て、それが簡易保險を民營として大部分取扱ふと云ふことは想像致して居りませぬ、隨ひまして引揚者に民營を許可するとか云ふ問題は、私共と致しましては考へて居らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=36
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037・左藤義詮
○左藤委員 厚生省方面とも御連絡を執つて——是は請願委員會で採擇になつて居るのであります、私も扱つて參つたのであります、是は凡ゆる方面から見放された戰災者或は引揚者に何等かの仕事を與へると云ふ意味に於て、唯單に從來の財閥で經營して居つた保險會社、既存の資本家の肩を持つだけでなくして、虐げられたる惠まれざる人々に、私は折角の此の機會を何等か均霑させると云ふことは、相當私は有意義な著想であると信ずるのでありまして、此の點に付きましても大藏省、厚生省とも連絡を執つて、成るべくならば此の委員會に一つ當局の御善處を願ひたい、之を一寸希望致しまして私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=37
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038・一松定吉
○一松國務大臣 只今の御質問の趣旨は能く私ははつきりとしませぬでしたが、引揚同胞が非常に困難な實情にあるからして、簡易生命保險等の運用の際に、斯う云ふ失業者をさう云ふ方面に使用して生活困難ならしめぬやうにして呉れと云ふ御趣旨ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=38
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039・左藤義詮
○左藤委員 さうです、戰災、引揚の議員同盟と云ふものが出來てやつて居るのですが、さう云ふものが何等かの方法に依つて、相當に經濟的に基礎を團結さして……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=39
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040・一松定吉
○一松國務大臣 さう云ふ趣旨でありますれば、只今岡井局長の御答へ致しましたやうに、さう云ふ人に向つて郵便局の經營する簡易生命保險を、直ちに許すとか許さぬとか云ふことは出來ますまいが、厚生省や大藏省等と私は國務大臣として協力して、成たけさう云ふ人の失業と云ふものを少くさせる意味に於て、若しくはさう云ふ人を一般勸誘員と云ふ方面に使つて、それ等の生活を助けてやると云ふやうな意味に於ての努力は、是は致すことを御誓ひ致しませう、其の以外に簡易生命保險法の郵便局の經營して居るものに付ては、例へば勸誘員と云ふやうなものを多分使ふ必要があらうと思ひますが、成たけさう云ふ方面には人物を選んで、是が適格者であると云ふことであれば、努めてさう云ふ人を使ふと云ふことに付ては、遞信大臣として十分の考慮を拂ひます、それだけ御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=40
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041・左藤義詮
○左藤委員 私の申しましたのは、海外引揚者の中にも、戰災者の中にも、相當の學識經驗を持つた人がありますので、さう云ふ人の力を結集して、引揚者だけの團體が色々ありますので、厚主省でそれを纏めて一つの力にしようとして居るのでありますが、それが纏まりました時に、さう云ふ團體で、此の場合民營に移される簡易保險を引受けて、相互扶助の力を以て、それを基礎にして彼等が立上つて行く足場にすると云ふ點に於て、唯單に現存の保險會社に此の特權を許すだけでなく、戰爭で最も不幸な目に遭つた人々の經濟的な立上りの足場として、之を御許しになる場合に優先的に御考慮して戴くと云ふことの努力を、厚生省或は大藏省と十分に遞信大臣としての御善處を願ひたい、斯う云ふ希望なのであります、今の郵便局のやつて居ります簡易保險に、氣の毒な人々を使つて戴くことは勿論でありますが、もう少し大きな意味で民營に移される場合に既存の資本家、と言うてはいけないかも知れませぬが、既存の保險會社に此の特權を與へるだけでなくして、新しいさう云ふ分野に、彼等が國家の生活保護を受けて行くのでなしに、自分達が團結して此の事業を經營をして、それを足場にして更生して行かうと云ふ、何か希望を與へる所の、さう云ふ一つの社會政策的な意味を以て御善處を願ひたい、斯う云ふ希望なのでありまして、其の趣旨を念の爲に繰返しまして、御努力を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=41
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042・一松定吉
○一松國務大臣 詰り簡易生命保險と云ふやうなものを民營に移し、民營に移すと云ふことは少し語弊がありますが、簡易生命保險を民營でやることも出來ると云ふことを認めたのでありますから、今あなたの仰しやるやうな種類の人で、自分も一つ簡易生命保險法に從つて斯う云ふ營業をやりたいと云ふやうな人が、團結の力若しくは個人の特殊の力に依つてそれを出願した時には、勿論是は大藏省の所管でありますが、成べく厚生大臣あたりとも話合ひの上で、出來る限り此の趣旨に副ふやうにして、さう云ふ人が更生して立上ることが出來るやうにしようと云ふことは大變良い思付きであります、是は私も一つ心から協力したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=42
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043・左藤義詮
○左藤委員 私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=43
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044・稻田直道
○稻田委員長 それでは通告順に依りまして小池新太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=44
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045・小池新太郎
○小池(新)委員 私は簡單に御尋ねを致す積りであります、丁度敗戰後約一箇年の經過を致して居るのであります、敗戰當時に於きましては通信事務は非常に錯綜を致しまして總てに困難があつたのであります、最近に於きましては著々御當局の御精勵に依りまして、色々の通信事務も囘復をして參つて居るのでありますが、我々が未だに遺憾に存じて居りますのは、第一に電信事務の如きも、最近至急電報を受付けて居りながら發信を怠つて居る、又受付をなさつて居つても、其の受取りました電文はどうにも解釋が付かないと云ふやうなことが非常に多いのであります、其の他總て郵便物の集配に致しましても、市内便に依る速達郵便が十數日も掛つて居ると云ふやうな現状が非常に多いのであります、料金を段段と昇騰致しまして、社會の視聽は此の遞信事務に相當注目して居るのであります、今一層の御當局の御精勵に依つて刷新をせられるのが急務ではないかと私は考へるのであります、食糧の不足とか、又色々な支障がございまして、待遇改善に付きましては大臣の御英斷に依つて解決を致して居るのでありますが、今日從業員の方々が適材適所ではないのではないかと云ふやうにも考へるのでありまして、大刷新を行つて戴きたい、さうして今一つ國民が不便を感じて居ります點に大臣として相當の御抱負がありはしないか、斯樣に考へまして御尋ねを致すのであります、御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=45
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046・一松定吉
○一松國務大臣 小池君の御質問は御尤もであります、此のことは實は私が就任前から非常に之を痛感をして居たのであります、況や此の遞信行政の局に當るに至りましては、一層其の責任の重大なることを感じて居りまして就任當日から斯くの如き弊害は之を徹底的に是正しなければならぬと云ふ考へを持つて居りまして、關係當局の人々と時間のある毎に之を打合せまして、是正すべく努めて居るのであります、今小池君の仰せになりましたやうに、至急電報を受理しながらそれが普通電報より後に著く、或は三時間か四時間で用を達して居つた電報が四日も五日も掛る、或は速達便で投凾したものが甚だしきは十日も掛ると云ふやうなことで、非難の聲が到る處に多いのであります、以前は御承知の如く遞信省の電報なり、郵便物の配達なりは非常に敏速に行はれて居りまして、隨分文化の促進とか、人類の幸福とか云ふ方面に絶大な寄與を致して居つたのが、此の戰爭に入り、殊に戰後に於てさう云ふ弊害の甚だしいことは洵に相濟まぬ譯であります、斯う云ふことに付きましては之に關係する從業員其の人の手不足、無經驗、或は道徳の頽廢だとか云ふやうなことも、ございますし、物的方面から致しましても、使用する機械、器具の不足、毀損、或は配達用具の不足だとか、制度の方面から見ましても餘りに手數が煩雜を加へるやうな機構になつて居る、或は汽車、電車等の急行の減少だとか、是等の運行の不圓滑だとか云ふやうな色々な原因があるでありませうが、之を一つ一つ是正致しまして、さうして國民の信頼に副ふと云ふ考へを以ちまして、先刻申しましたやうに各局課長竝に係員が、是等の點を深く反省を致しまして、之を是正すべきことに今著々進めつつあるのでございます、殊に電話のことは今御話がありませぬでしたけれども、今日電話器を目の前に見ながら、掛けて見れば故障だとか或は御話中だとかで中々掛らない、今日は掛つたけれども明日はもう掛らないと云ふやうなこともありますので、さう云ふことは一刻も早く改めなければならぬと云ふことで、實は本月一日から九月末まで滿二箇月間に、東京都内に於ける電話事故を全くなからしめると云ふ一大運動を今起して、著々さう云ふ點に向つて是正に努めて居ります、獨り東京都ばかりではありませぬ、之を大阪、神戸、名古屋、廣島、福岡と云ふやうに段々都市から都市に及んで是正しようと今努力致して居ります、又電話の急速の施設と云ふ點に付きまして、皆樣方に對しても電話を直ちに架設して、其の御用を徹底的に務めて戴かなければならぬに拘らず、貴衆兩院議員の御宅に電話の架設が急速に出來ぬと云ふやうな非難も受けて居ります、さう云ふことも急速にやりたいと云ふ考へを持つて居りますが、御承知の通りそれには又資材も必要缺くべからざるものでありますが、思ふやうに資材が手に入らない、斯う云ふことに付きましても關係方面に御願ひして、外國から輸入するやうにでもして、急速に之を實施しようと考へて實行に移しつつありますから、其の邊は一つ御諒承を賜はりまして、今暫くの御辛棒を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=46
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047・小池新太郎
○小池(新)委員 大變了解をさせて戴く御答辯を得まして、私心から嬉しく存じて居ります、都市の方から御心配になつて居るやうでありますが、田舍に於きましても電話の交換手等は、五分待つても十分持つても交換して呉れないと云ふ現状にあるのでありまして、我々の郷里に於きましては郵便局の取扱に對して非常な不滿が喧々囂々とあるのであります、今大臣より御説明のありました通り、出來るだけ早く此の通信事務に付きまして刷新せられますやうに御願ひ申上げる次第であります
次に郵便貯金なり又郵便年金、簡易生命保險等の貯蓄奬勵でございますが、終戰後殆んど此の奬勵がないのであります、又奬勵をなさいました所であの敗戰當時でありますから、誰一人として之に心を傾ける者がなかつたのであります、併しながら最早一年にも相成りまして、農山漁村等に於きましては、現在に於て非常な賃金の値上りと共に、貯へて居る金が相當あるのであります、之を何とか御奬勵になりまして、購買力の抑制と「インフレ」防止の爲に努められたいと私は考へるものであります、今日田舍の郵便局に於きましては唯通信事務のみで、從來の集金をすると云ふ位な程度に止まつて居るのであります、是は一つ零細な餘剩力を吸收することが、遞信省としての役目であらうと考へるのであります、更に今囘郵便貯金の最高制限額が一萬圓に引上げられましたのは是は當然のことと思ふのであります、現在の貨幣價値から云つて一萬圓はまだ低きに失するのでないか、一萬圓位では他の貯蓄機關との競爭は到底出來ないのであります、現に一萬圓以上の預金はどんどん局としても御取扱ひになつて居るやうに私は考へて居る、是が一萬圓とすると、一萬圓以上御預りになつて居るものは返濟をなさねば相成らぬやうなことになるのではないかと思ふ、又確かに一萬圓を限度とされますと、一萬圓以上預けて居りまする貯金者に對しまして利子はどう云ふ風になさる御考へであるか、一萬圓以上の預金者は一萬圓までの利子は支拂ふが、一萬圓以上は無利子である、斯う云ふ結果になるのではないかと思ふ、さう致しますと自然郵便貯金は激減をするのではないかと私は考へる、此の點に付きまして郵便貯金なり、郵便年金なり、又は簡易生命保險等の奬勵の方法に付て、具體的に御考へになつて居りまする點、又一萬圓は低過ぎる、又一萬圓以上の現在貯金者に對して一萬圓までは利子を付けるが、後は付けないと云ふ御考へでありまするか、一應此の點をはつきり御答へを願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=47
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048・一松定吉
○一松國務大臣 只今の御質問の中で、交換手の不親切だ、貯金の奬勵などに付いて御答へをしまして、只今の一萬圓以上の利息云々と云ふことは、政府委員から御答へ致したいと思ひます、小池委員の御質問のやうに交換手は非常に不親切である、是はもう一般の與論であります、交換手ばかりぢやありませぬ、郵便局の窓口に居る所の女事務員、若しくはさうでない事務員、殊に女の事務員などが、世間の批評に上つて居ります、實に不親切だ、交換手あたりでもこちらが例の機械を廻して呼出すやうな時でも、劍もほろろの扱ひである、機械仕掛の呼出と云ふやうなことに付ても中々出て來ない、宿直して居りながら幾ら呼んでも出て來ない、中川政務次官の如きは、自分の郷里の秋田縣に電話を掛けるのに、急報で何度掛けても出て來ないからして、成たけ電話の輻湊しないやうな夜中を見計らつて掛けたけれども、それでも出て來ない、漸く三囘目に掛かつたと云ふやうなことで、政務次官それ自身が既に御不滿であると云ふ有樣であります、是はどうしても改めなければならない、殊に二十歳以下の女子の從業員などが不親切だと云ふことは言語道斷である、よく木ではなをかんだやうな挨拶と云ふが、さう云ふやうな挨拶と仕方である、是はどうしても是正しなければならぬと云ふやうな考へを持つて居る、さう云ふやうな不親切は近い中に全く拂拭してしまふ考へを持つて居りますから、其の點は一つ御不滿でもありませうが、暫く御待ちを願へれば、ああ實に氣持の好い交換手になつた、氣持の好い窓口になつたと云ふやうな、朗らかな事柄が餘り遠からぬ中に實現しようと思ひます、それから郵便貯金、年金、簡易保險等の奬勵が、どうも今までなかつたぢやないかと云ふやうなことに對しましては、是は私就任後日が淺いのでありますから、それ等の點は果してどうであるか分りませぬが、殊に今囘のやうな簡易保險の金額を値上したこととか、或は年金の制限額を上げたと云ふやうなことに對しましては、今までのやうな從業員がどうかと云ふと怠り勝ちで、世間の信用を失墜したと云ふやうなことを改めて、待遇の改善をせられた自分等は、斯う云ふ態度ではいけないと云ふやうに、自分から自肅自戒して、さう云ふことのないやうにすると同時に、成たけ此の民衆の不滿不快を買はないやうに努力しようと云ふやうな氣配が、段々芽生ゑて行つて居ることを私は看取して居ります、さう云ふやうな状況でありまするから、一つ此の改正案の通過と同時に、從業員を督勵致しまして、さう云ふやうな所謂農村漁村等に於ける澤山蓄積せられて居りまする貯金等を之を吸收致しまして、さうして「インフレ」對策の資料にもし、貯蓄心も養成すると云ふことに努力したいと考へて居りますから、それ等の點に付ての御注意は洵に有難うございました、成たけ之を急速に行つて、御趣旨に副ふやうに致したいと考へて居ります、貯金が一萬圓以上のものに利息を付けるか付けぬかと云ふことは、事務當局から御答へして戴くやうに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=48
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049・岡井彌三郎
○岡井政府委員 現在は五千圓でありますが、將來は一萬圓になります、此の制限額を超過した場合利子を付けるかどうかと云ふ御趣旨の御質問であると存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=49
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050・小池新太郎
○小池(新)委員 現在既に一萬圓以上御預りになつて居る、五千圓以上御預りになつて居るものが澤山あります、それに對するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=50
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051・岡井彌三郎
○岡井政府委員 法律的に嚴格に取扱ふと致しますれば、是は貯金法第六條に於きまして、郵便官署で其の超過額に相當する國債を購入し、之を保管する、若しくは郵便貯金利率令第五條に依りまして、超過額に對しては主務官廳の命令で利率を低減し得ること、此の二つの中の一つの方法を執らなければならない譯でありますが、現在五千圓以上を預入して居るのはどう云ふ譯でさう云ふことになつたかと考へて見ますと、是は主として去る三月の金融緊急措置の爲に舊圓を一度に吸收致しました、其の際に、手持の澤山の現金を持つて來た爲に、斯樣な結果になつたのかと思ひますが、其の際に郵便局に於て五千圓以上は取扱はないと云ふことでありましたならば、是は其の時の措置が非常に圓滿に行かないと云ふことを考慮致しましたので、五千圓となつて居りまするに拘らず、それ以上預入を受付けた譯であります、さう致しましても、其の後の處理に於て、先程申したやうに國債を買はすとか、或は利率を引下げるとか云ふことをしなければならぬのでありますが、其の利率を引下げると云ふことは取扱が非常に煩鎖になりますので、未だ曾てやつたことではありませぬ、それから國債を政府で購入して保管すると云ふ取扱は、戰爭前までは實行して居りましたが、戰時中になりまして、事務が非常に輻輳したに拘らず、人員が不足した關係上、是が出來ないで今日に至つたやうな状態でありまして、國債を購入して保管すると云ふ手續もまだ現在はやつて居りませぬ、併しながら今囘一萬圓に引上げましたならば、此の機會に法律の命ずる通り勵行して、一萬圓超過額に付ては國債を購入して廻はす、此の取扱を開始致さなければならぬと思ひまして、其の準備をして居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=51
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052・小池新太郎
○小池(新)委員 私の御尋ねしたのは、五千圓以上御預りになつて居ると云ふことも能く分りますが、今度此の一萬圓と云ふことになる改正法律案が通過して實行されるまでの間の利子はどう云ふ風に相成りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=52
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053・岡井彌三郎
○岡井政府委員 それは先程申した通り何等特別の措置をして居りませぬから、五千圓以下の金額と同じやうに、普通の利子を便法として付けて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=53
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054・小池新太郎
○小池(新)委員 次に御尋ね致しますが、戰時中に彈丸切手とか色々の方法を以て貯蓄を奬勵せられて居つたのであります、それが据置貯金等になりまして、是には一定の据置期間があるので、是が滿了した場合には國民、兒重等に於ても、此のやうな零細なものを勝つ爲に奮發を致して居つたのであります、滿了致します際には之に直ちに新圓で支拂ふのであると云ふやうな御意思がございませぬでせうか、是は確かに小額なる貯金でありますから、今後の貯蓄の奬勵の一助にも私はなるだらうと思ひます、些細な金額でありますから是非共斯う云ふ方法にやつて戴きまして貯蓄の奬勵をして戴きたいと御願ひ申上げる次第であります、之に對しまして御當局はどう云ふ御考へを持つて居りますか御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=54
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055・岡井彌三郎
○岡井政府委員 切手貯金の支拂を現金でやる考へはないかと云ふ御質問のやうでありますが、只今の所當局と致しましてはさう云ふことを考へて居りませぬが、尚ほ能く其の必要ありや否や、又是が爲に他の貯蓄にどう云ふ影響を與へるかと云ふ點なども考究致したいと思ひます、然る後それが宜いと云ふことになりましたら實行致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=55
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056・小池新太郎
○小池(新)委員 此の點は温情大臣に御願ひ致します、小さな問題でありますが、貯蓄の奬勵には斯う云ふことが一番有效適切な方法だと思ひます、どうか十分御考へを願ひまして、是非小額なものに對しては温情味を以てやると云ふ御志に御願ひ致したいのであります、之を以て質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=56
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057・一松定吉
○一松國務大臣 只今の小池君の最後の御希望は能く諒得致しました、出來る限り事務當局と考究致しまして、十分善處致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=57
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058・稻田直道
○稻田委員長 それでは本日は之を以て審議を打切りまして次會は大體明日午前十時よりと致しまして、次會の審議日程は公報を以て御通知致します、本日は之を以て散會致します
午後零時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013523X00219460807&spkNum=58
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