1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治二十九年一月十六日(木曜日)午後一時十分開議
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議事日程 第九號 明治二十九年一月十六日
午後一時開議
第一 日本勸業銀行法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第三 農工銀行法案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第五 農工銀行補助法案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第七 外國語學校設立の建議案(柏田盛文君提出)
第八 區裁判所管轄區域變更法律案(坪田仁兵衞君外三名提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=0
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001・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 諸君、是ヨリ諸般ノ報告ヲ爲シマスル
〔佐脇書記官朗讀〕
貴族院ヨリ送付セラレタル議案左ノ如シ
明治二十八年勅令第百四十四號
特別委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
國債證券買入銷却法案審査特別委員長箕浦勝人君
同理事金岡又左衞門君
官設鐵道用品資金增加法律案審査特別委員長望月右內君
同理事加賀美嘉兵衞君
航海奬勵法案審査特別委員長西山志澄君
同理事南島間作君
特別委員左ノ通リ指名セリ
明治二十八年勅令第九十二號審査特別委員
島津忠貞君永井穎雄君小原金治君
北原信綱君源晟君依田道長君
小崎義明君鈴木仙太郞君堀昌造君
理事ノ恩給及遺族扶助ニ關スル法律案審査特別委員
富永正男君堀田康人君小鷹狩元凱君
秋保親兼君後藤五郞治君鈴江泰造君
藤岡常彥君中山平八郞君芦塚省三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=1
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002・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ヨリ會議ヲ開キマスル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=2
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003・星亨
○星亨君(八番) 豫算委員會ノ報道ヲ致シマス
〔星亨君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=3
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004・星亨
○星亨君(八番) 豫算委員會ノ報道ヲ致シマス、デ豫算委員會ノ經過ノ全體
ヲ御報道致スノハ二十九年度ノ豫算總豫算ガ結了致シタル時分ニ御報道
致サウト考ヘル本日ハ唯其二十八年度ノ豫算追加ノ一部分ニ就イテ御報道
致スノデゴザイマスカラ經過ノ事ノ大部分ハ御報道致サナイ積リデゴザイ
マス、則チ豫算委員會ハ九日ニ會ヲ開イテ始テノ會ハ九日ニ開イテ、サ
ウシテ科ヲ分ッタノハ四科ニ分チマシテ、第一科ハ內務省、文部省ガ第一科
ニナリ第二科ハ外務省、大藏省、司法省トガ第二科ニナリ、第三科ハ陸軍
省海軍省ガ三科ニナリ、第四科ハ農商務省、遞信省、此四科ニ分チマシタ
サウシテ其主査ヲ互選致シマシタ第一科ノ主査ニ當選セラレタ者ハ卽チ佐
々木正藏君、第二科ノ主査ニ當選セラレタ者ガ石田貫之助君、第三科ノ主査ニ
當選セラレタノハ栗原亮一君、第四科ハ改野耕三君ガ當選セラレマシタ、ソレ
カラ本日御報道致シマスノハ司法省所管ノ卽チ一一十八年度ノ追加豫算ニ就イ
テ御報道致シマス積デ、是ハ本日總會ヲ開キマシテ直チニ原案ノ通ニ可決致
シマシタノデアル而シテ其事項ハ卽チ大阪控訴院ガ火災ニ罹リマシテ其假
ノ營繕ヲ致サナケレバナラヌノデアリマス其費用ニ就イテ可決ヲ致シマシ
タノデアル、聞ク所ニ依レバ、是ハ至急ヲ要シマスサウデゴザイマスカラ、成
ルタケナラバ日程等ヲ御變更ニナリマシテ急ニ御結了アランコトヲ希望シマ
ス、乃チ之ヲ御報道致シマス、尙御質問等ガアレバ、此主査ハ卽チ石田君デ
アリマスカラソレヨリ御答ヲ致スデゴザイマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=4
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005・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 唯今豫算委員長ノ報〓ノ次ニ請求ニナリマシタ大阪控
訴院ノ假建築ニ係ル追加豫算案ハ卽時日程ヲ變更シテ議決シタイト申スコ
ト
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=5
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006・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 別段御異議ガゴザイマセヌナラバ日程ハ變更致サレマ
ス是ニ於テ豫算案ヲ議題ニ供シマス
(丙)明治二十八年度歲入歲出總豫算追加
〔町田書記官朗讀〕
歲出臨時部
司法省所管
第一款營繕費金六千圓
第三項火災新營費金六千圓
歳入臨時部
第六款前年度繰入金金六千圓
第一項前年度繰入金金六千圓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=6
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007・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 簡易ナル豫算案デゴザリマス、歳入出ヲ合セテ同一ニ
決議ヲ採リマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=7
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008・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 滿場御異議ナシト認メマス、結了ヲ報ジマス、ソレヨ
リ酒造稅ニ關スル委員長ヨリ今日ハ右調査ニ掛ルニ依ッテ席ヲ退クト申スコ
ト左樣ニ御承認ヲ請ヒマス
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=8
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009・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 次ハ日程ノ第一、日本勸業銀行法案ノ一讀會ヲ開キマ
ス、朗讀ヲ省略致シマス
第日本勸業銀行法案(政府提出)第一讀會
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
日本勸業銀行法
第一章總則
第一條日本勸業銀行ハ農業工業ノ改良發達ノ爲資本ヲ貸付スルヲ以テ目
的トスル株式會社ニシテ其ノ本店ヲ東京ニ置ク
第二條日本勸業銀行ノ資本金ハ一千萬圓トス但株主總會ノ決議ニ依リ政
府ノ認可ヲ經テ資本金ヲ增加スルコトヲ得
第三條日本勸業銀行ノ各株式ノ金額ハ二百圓トス
第四條日本勸業銀行ノ存立時期ハ設立免許ノ日ヨリ百箇年トス但株主總
會ノ決議ニ依リ政府ノ認可ヲ經テ存立時限ヲ延長スルコトヲ得
第二章重役
第五條日本勸業銀行ニ總裁副總裁各一人理事監査役各三人以上ヲ置ク
第六條總裁ハ日本勸業銀行ヲ代表シ其ノ事務ヲ總理ス
副總裁ハ總裁事故アルトキ其ノ職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキ其ノ職務ヲ
行フ
副總裁及理事ハ總裁ヲ補助シ定款ノ定ムル所ニ從じ日本勸業銀行ノ業務
ヲ分掌ス
監査役ハ日本勸業銀行ノ業務ヲ監査ス
第七條總裁副總裁ハ百株以上ヲ所有スル株主中ヨリ政府之ヲ命シ其ノ任
期ヲ五箇年トス但其ノ任期滿限ノ後再任ヲ命スルコトヲ得
理事ハ五十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ株主總會ニ於テ二倍ノ候補者ヲ
選舉シ政府其ノ中ヨリ之ヲ命シ任期ヲ五箇年トス但其ノ任期滿限ノ後本
條ノ手續ニ依リ再任ヲ命スルコトヲ得
監査役ハ三十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ株主總會ニ於テ之ヲ選定シ其
ノ任期ヲ三箇年トス但其ノ任期滿限ノ後再選スルコトヲ得
總裁副總裁理事及監査役ハ任命若クハ選定ノ六箇月前ヨリ引續キ本條規
定ノ株數ヲ所有スル者ニ限ル
第八條總裁副總裁及理事ハ在任中何等ノ名稱ニ拘ラス他ノ職務又ハ商業
ニ從事スルコトヲ得ス但主務大臣ノ認可ヲ得タルトキハ此ノ限ニアラス
第三章株主總會
第九條通常株主總會ハ每年二回定款ニ定メタル時期ニ於テ總裁之ヲ招集
ス
第十條臨時株主總會ハ臨時ノ事項ヲ議スル爲何時ニテモ總裁之ヲ招集ス
ルコトヲ得
第十一條監査役又ハ總株金ノ五分ノ一以上ニ當ル株主ハ會議ノ目的ヲ示
シテ臨時株主總會ノ招集ヲ總裁ニ請求スルコトヲ得
總裁前項ノ請求ヲ受ケタルトキハ臨時株主總會ヲ招集スヘシ
第十二條株主總會ニ於テハ株主ハ議決權ヲ有スル株主ノ外代理ヲ委託ス
ルコトヲ得ス但法律上ノ代理人ハ此ノ限ニアラス
日本勸業銀行ノ役員及使用人ハ株主總會ニ於テ株主ノ代理人タルコトヲ
得ス
第十三條株主ノ議決權ハ十株ニ付キ一箇トス但十一株以上ヲ有スル株主
ニ在リテハ五十株ヲ增ス每ニ一箇ヲ加フ
他人ノ代理ヲ爲ス者ハ二人以上ヲ代理スルコトヲ得ス
第四章營業
第十四條日本勸業銀行ハ五十箇年以內ニ於テ年賦償還ノ方法ニ依リ不動
產ヲ抵當トシテ貸付ヲ爲スモノトス
日本勸業銀行ハ年賦償還貸付金總高ノ十分ノ一ニ相當スル金額ヲ限リ不
動產ヲ抵當トシ又ハ地金銀若クハ國債證券地方債證劵ヲ質トシ五箇年以
內ノ定期償還貸付ヲ爲スコトヲ得
第十五條日本勸業銀行ハ府縣郡市町村其ノ他公共團體ニ貸付ヲ爲ス場合
ニ於テ抵當ヲ徵セサルコトヲ得
第十六條日本勸業銀行ニ於テ不動產抵営ヲ徵スルトキハ總テ第一抵當ナ
ルコトヲ要ス但舊債アル場合ニ於テ日本勸業銀行ヨリ借入スル新債ヲ以
テ舊債ヲ償還スル效果ニ依リ新債ノ第一抵當トナルコトヲ得ヘキトキハ
此ノ限ニアラス
第十七條日本勸業銀行ニ於テ抵當トシテ徵スル土地ハ永續スヘキ確實ナ
ル收益ノ見込アルモノニ限ル
日本勸業銀行ニ於テ抵當トシテ徵スル建物ハ保險付ノモノニ限ル但抵當
物ノ外ニ貸付金高二倍以上ノ價格ヲ有スル動產又ハ不動產ヲ添抵當ト爲
ス場合ニ於テハ保險ニ付セサルコトヲ得
第十八條不動產ヲ抵當トシテ貸付クル金額ハ日本勸業銀行ニ於テ鑑定シ
タル價格ノ三分ノ二以內トス
第十九條年賊金ハ元金ト利子トヲ併セテ之ヲ計算シ各年ヲ通シテ一定平
等ノ償還額ヲ定ムヘシ
前項ノ償還額ハ之ヲ變更スルコトヲ得ス但貸付金ノ一部償還ノ場合ニ於
テ其ノ額ヲ更定スルハ此ノ限ニアラス
第二十條土地抵當貸付ニ對スル年賦金ハ其ノ抵當地ノ平年收益額ヨリ公
課額ヲ扣除シタル殘額ヲ超過スルコトヲ得ス
第二十一條貸付金ノ年賦償還ニ付キテハ一箇年以上五箇年以內ニ於テ据
置年限ヲ定ムヘシ但其ノ年限間ノ利子ハ此ノ限ニアラス
第二十二條債務者年賦金、定期償還金又ハ利子ノ拂込ヲ遲延シタルトキ
ハ拂込期日ノ翌日ヨリ其ノ金額ニ對シ利子ヲ仕拂フノ義務ヲ負フ
第二十三條年賦償還ノ方法ヲ以テ借入ヲ爲シタル債務者ハ償還期限前ニ
借用金ノ全部若クハ一部ヲ償還スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ日本勸業銀行ハ定款ニ於テ定ムル所ノ率ニ依リ相當
ノ手數料ヲ要求スルコトヲ得
第二十四條債務者ハ借用金ノ五分ノ一以上ヲ償還シタルトキハ其ノ割合
ニ應シ抵當物一部ノ解除ヲ要求スルコトヲ得其ノ殘額ニ對シテモ亦同シ
第二十五條日本勸業銀行ハ年賦金ノ拂込ヲ遲延スル債務者ニ對シ償還期
限前ト雖貸付金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
第二十六條日本勸業銀行ハ抵當物ノ價格減少シ貸付金償還殘額ニ對シ第
十八條ノ割合ニ不足ヲ生シタルトキハ增抵當ヲ要求シ若クハ其ノ不足ニ
相當スル貸付金額ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
債務者前項ノ要求ニ應セサルトキハ日本勸業銀行ハ償還期限前ト雖貸付
金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
第二十七條抵當不動產ノ全部若クハ一部カ土地收用法ニ依リ收用セラル
ル場合ニ於テ日本勸業銀行ハ償還期限前ト雖貸付金ノ償還ヲ要求スルコ
トヲ得但債務者ニ於テ收用補償金ヲ供託シ又ハ相當ノ不動產ヲ以テ增抵
當トスルトキハ此ノ限ニアラス
其ノ收用一部ニ止マルトキハ償還ノ要求モ其ノ割合ニ應スヘキモノトス
第二十八條無抵當ニテ借入ヲ爲シタル府縣郡市町村其ノ他公共團體ニ於
テ年賦金、定期償還金又ハ利子ノ拂込期日ヲ過キ之ヲ拂込マサルトキハ
日本勸業銀行ハ監督官廳ニ其ノ處分ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ日本勸業銀行ハ府縣ニ對シテハ內務大臣ニ郡市町村其
ノ他公共團體ニ對シテハ第一次監督官廳ニ其ノ請求ヲ爲スヘシ
監督官廳請求ヲ受ケタルトキハ府縣郡市町村其ノ他公共團體ニ命令シテ
延滯金及第二十二條ノ利子ヲ拂込マシムヘシ
第二十九條日本勸業銀行ハ農工銀行法ニ依リ設立シタル各農工銀行ノ發
行スル農工債券ヲ引受クルコトヲ得
第三十條日本勸業銀行ハ農工債券ヲ引受ケントスル場合ニ於テ農工銀
行ノ業務及財產ノ實況ヲ調査スルコトヲ得
第三十一條日本勸業銀行ハ地金銀又ハ有價證券ノ保護預リヲ爲スコトヲ
得
第三十二條日本勸業銀行ハ營業上餘裕金アルトキハ一時各種ノ國債證劵
地方債證券ヲ買入レ又ハ日本銀行ニ預ケ金ヲ爲スコトヲ得
日本勸業銀行ハ前項ニ依ルノ外營業上ノ餘裕金ヲ使用スルコトヲ得ス
第三十三條日本勸業銀行ハ此ノ法律ニ記載セサル業務ヲ營ムコトヲ得ス
第五章勸業債券
第三十四條日本勸業銀行ハ資本金四分ノ一以上ノ拂込アリタルトキハ拂
込金額ノ十倍ヲ限リ勸業債券ヲ發行スルコトヲ得但年賦償還貸付金總高
及其ノ引受ケタル農工債券現在高ヲ超過スルコトヲ得ス
第三十五條勸業債劵ハ券面金額ヲ五十圓以上トシ無記名利札附トス但應
募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト爲スコトヲ得
第三十六條日本勸業銀行ハ少クトモ年賦償還貸付金及其ノ引受ケタル農
工債劵ノ償還高ニ應シ每年二囘以上抽籤ヲ以テ勸業債劵ヲ償還スヘシ
日本勸業銀行ニ於テ勸業債券ヲ償還スル場合ニ於テハ割增金ヲ附與スル
コトヲ得但其ノ方法及金額ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第三十七條日本勸業銀行ハ勸業債券借換ノ爲一時第三十四條ノ制限ニ依
ラス低利ノ勸業債券ヲ發行スルコトヲ得
低利ノ勸業債券ヲ發行シタルトキハ發行後一箇月以內ニ抽籤ヲ以テ其ノ
發行券面金額ニ相當スル舊勸業債劵ヲ償還スヘシ
第三十八條勸業債券ノ利子ハ每年二囘定款ニ定メタル時期ニ於テ之ヲ仕
拂フヘシ
第三十九條日本勸業銀行ハ年賦償還貸付金ノ償還延滯シテ豫期ノ金額ニ
達セサルトキ及其ノ引受ケタル農工債券ニシテ之ヲ發行シタル農工銀行
解散ノ爲ニ全額ノ償還ヲ得ルコト能ハサルトキハ第三十六條ノ償還ト同
時期ニ抽籤ヲ以テ其ノ延滯金額又ハ償還ヲ得サル農工債券面金額ニ相當
スル勸業債劵ヲ償還スヘシ
第四十條勸業債券ノ所有者其ノ元金又ハ利子ヲ要求セサルトキハ元金
ハ十五箇年利子ハ五箇年ニシテ其ノ要求ノ權ヲ失フモノトス
第四十一條勸業債券ヲ僞造及ハ變造シテ行使シタル者ハ刑法第二百四條
ノ例ニ依リ處罰ス其ノ模造ニ關シテハ明治二十八年法律第二十八號通貨
及證券模造取締法ニ依リ處分ス
第四十二條勸業債券ニ關シ此ノ法律ニ規定セサル事項ハ明治二十三年法
律第六十號ヲ適用ス
第六章準備金
第四十三條日本勸業銀行ハ每年準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益ノ
百分ノ八以上ヲ積立テ及利益配當ノ平均ヲ得セシムル爲利益ノ百分ノ二
以上ヲ積立ツヘシ
第七章政府ノ監督及補助
第四十四條主務大臣ハ日本勸業銀行ノ業務ヲ監督ス
第四十五條日本勸業銀行ハ其ノ定款ヲ變更セントスルトキハ主務大臣ノ
認可ヲ受クヘシ
第四十六條日本勸業銀行ニ於テ支店又ハ代理店ヲ設置セントスルトキハ
主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ又主務大臣ニ於テ支店若クハ代理店ヲ要用ナ
リトスルトキハ日本勸業銀行ニ命シテ之ヲ設置セシムルコトアルヘシ
第四十七條日本勸業銀行ハ主務大臣ノ認可ヲ經ルニアラサレハ株主ニ配
當金ノ分配ヲ爲スコトヲ得ス
第四十八條主務大臣ハ日本勸業銀行ノ營業上法律命令又ハ定款ニ背戾シ
若クハ公益ヲ害スル事件アリト認ムルトキハ之ヲ制止スヘシ
第四十九條日本勸業銀行ハ主務大臣ノ命命ニ從ヒ其ノ營業ニ關スル諸般
ノ景況及計算報告書ヲ差出スヘシ
第五十條主務大臣ハ必要ナリト認ムルトキハ日本勸業銀行ノ貸付金額
及方法ヲ制限スルコトヲ得
第五十一條日本勸業銀行貸付金ノ利子ノ最高步合ハ每營業年度ノ初ニ於
テ主務大臣ノ認可ヲ經テ之ヲ定ムヘシ其ノ營業年度內ニ於テ之ヲ變更セ
ントスルトキモ亦同シ
第五十二條日本勸業銀行ニ於テ勸業債券ヲ發行セントスルトキハ直接ニ
主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第五十三條主務大臣ハ特ニ日本勸業銀行監理官ヲ置キ日本勸業銀行ノ業
務ヲ監視セシム
第五十四條日本勸業銀行監理官ハ何時ニテモ日本勸業銀行ノ金庫、劵書
庫帳簿及諸般ノ文書ヲ檢査スルコトヲ得
日本勸業銀行監理官ハ視上必要ナリト認ムルトキハ何時ニテモ日本勸
業銀行ニ命シテ營業上諸般ノ計算及景況ヲ報告セシムルコトヲ得
日本勸業銀行監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述
スルコトヲ得但議決ノ數ニ加ハルコトヲ得ス
第五十五條日本勸業銀行ノ配當金年百分ノ五ニ達セサルトキハ政府ハ創
立初季ヨリ十箇年間ヲ限リ之ニ達セシムヘキ金額ヲ補給スヘシ其ノ額ハ
如何ナル場合ト雖拂込資本金ノ百分ノ五ヲ超過スルコトヲ得ス
第八章罰則
第五十六條日本勸業銀行ニ於テ左ノ事犯アルトキハ總裁若クハ總裁ノ職
務ヲ行ヒ又ハ代理スル副總裁ヲ二十圓以上二百圓以下ノ過料ニ處ス其ノ
事犯副總裁又ハ理事ノ分擔業務ニ係ルトキハ副總裁理事ヲ過料ニ處スル
コト亦同シ
一第十四條ノ規程ニ反シ貸付ヲ爲シタルトキ
二第十六條ノ規程ニ反シ第一抵當ニアラサルモノニ對シテ貸付ヲ爲シ
タルトキ
三第三十二條第二項ノ規程ニ反シ營業上ノ餘裕金ヲ使用シタルトキ
四第三十三條ノ規程ニ反シ此ノ法律ニ記載セサル業務ヲ營ミタルトキ
五第三十四條ノ規程ニ反シ勸業債券ヲ發行シタルトキ但第三十七條第
一項ニ該當スルモノハ此ノ限ニアラス
六第三十六條第一項第三十七條第二項及第三十九條ノ規程ニ反シ勸業
債券ノ償還ヲ爲サヽルトキ
七第四十三條ノ規程ニ反シ利益金ヲ處分シタルトキ
第五十七條日本勸業銀行ノ總裁副總裁及理事第八條ノ規程ヲ犯シタルト
キハ其ノ過料前條ニ同シ
第五十八條前二條ニ揭ケタル過料ハ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ科ス但其ノ
命令ニ對シ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
附則
第五十九條政府ハ設立委員ヲ置キ日本勸業銀行設立ノ免許ヲ與フルマテ
其ノ發起ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第六十條設立委員ハ定款ヲ作リ政府ノ認可ヲ得タル後株主ヲ募集ス
第六十一條設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込薄ヲ政府ニ
差出シ銀行設立ノ免許ヲ稟請スヘシ
第六十二條設立委員前條ノ免許ヲ得タルトキハ其ノ事務ヲ日本勸業銀行
總裁ニ引渡スヘ
第六十三條設立初度ノ總裁副總裁理事及監査役ノ第七條ニ依リ所有スヘ
キ株數ノ時期ニ付テハ同條第四項ヲ適用スルノ限ニアラス
第六十四條設立初度ノ總裁副總裁及理事ノ任期ハ三箇年トス
設立初度ノ理事及監査役ハ株主中ヨリ政府之ヲ命ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=9
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010・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 大藏大臣渡邊君
〔大藏大臣子爵渡邊國武君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=10
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011・渡邊國武
○大藏大臣(子爵渡邊國武君) 諸君、此戰後ニ於テ經濟ノ發達ト民產ノ增殖
ヲ計ルタメニ政府ハ金融機關ノ擴張ニ注意ヲ致シテ、不日ニ日本勸業銀行法
案、農工銀行法案等ヲ提出スル趣ハ前會ニ於テ諸君ニ向ッテ明言シテアリマス
カラ、再ビ之ヲ繰返シテ申ス必要ハアリマセヌガ、全體政府ニ於テハ以前カラ
シテ今日此宇內各國競爭ノ間ニ立ッテ國民ノ經濟ノ進步發達ヲ全ウスルニ
ハ、少クトモ三ツノ機關ヲ備ヘナケレバナラヌト云フコトヲ感ジテ居ッタノデ
ス、ソレハ第一ニハ爲替割引其他ノ方法ヲ以テ商業社會ノ金融ヲ圓滑ニスル
所ノ中央銀行、第二ニハ農工業ニ依ッテ事ヲ興シ業ヲ創メテ國家ノ富實ヲ
培養スル所ノ農工者ニ向ッテ資本ヲ媒介スル所ノ勸業銀行、第三ニハ細民ノ貯
蓄ヲ安全ニシテ貯蓄心ヲ奬勵スルタメノ貯蓄銀行、此三ツハ是非無クテハナ
ラヌト云フコトヲ初ヨリシテ感ジテ居ッタノデアリマス、然ルニ第一ノ
第一項ノ分ハ日本銀行ナリ又各種ノ國立私立ノ銀行ガ出來テ、第三ニ就イテ
ハ大藏省ノ預金、遞信省ノ貯金其他私立ノ貯蓄銀行モ澤山出來テ其形ヲ爲
シテ居ルガ此第二ノ勸業銀行ノミハ種々ノ障碍ガアッテ、遂ニ是マデ設立
致サナンダノハ甚ダ政府ニ於テハ遺憾ニ感ジテ居ル所デアリマス、慥カ第
五議會ト存ジマシタガ、本大臣ハ諸君ニ向ッテ其設立ノ必要ナルコトヲ明言
致シテ置キマシタ、ソレ以來畫夜屬僚ヲ督シテ其調査ニ從事シ、丁度第八議
會開ク前ニ於テ案モ成リ內閣ノ議モ決シ、上裁マデモ濟ンデ居リマシタガ、
何分アノ際ハ日〓交戰ノ最中デアッテ、新ニ事ヲ興シ業ヲ創メル時デナイト
思ヒマシタカラ遺憾ナガラ提出ニ至ラヌノデアリマシタ今日既ニ日〓ノ
事モ其局ヲ結デ、東洋ノ天地ハ平和ニ歸シ、亞イデ起ル所ノ此農工商ノ大戰爭
ニ對シテ、一層此勸業銀行、農工銀行ノ設立ノ必要デアルト云フコトハ諸
君モ蓋シ御同感デアラウト考ヘマス、提出シテアリマス法案ニ依リマスルト
中央機關トシテ設立セラレマスル日本勸業銀行ハ資本金ガ一千万圓、之ニ向ツ
テ其資本ノ十倍マデノ債劵ヲ發スルノ特權ヲ與ヘマスル又十箇年間ヲ限ツ
テ一年五朱ノ補償利子ヲ與ヘル又地方機關トシテ各府縣ノ下ニ置カレマス
所ノ農工銀行ハ其資本ノ五倍マデノ債券ヲ發スルノ特權ヲ與ヘルノト凡
ソ國費一千万圓バカリヲ支出シマシテ之ヲ各府縣ニ分ッテ各府縣ノ財產ト
シテ其株式ヲ持タセル、斯ウ云フコトニナッテ居リマス、斯樣ナ方法ニ依ッ
テ唯今マデ無用ニ屬シテ居ッタヤウナ此不動產則チ土地ノ信用ヲ活用シテ、
各種有益ナル事業ノ資本供給ニ充テルト云フコトハ是ハ事業者ノ固ヨリ希
望スル所デアリマス且ツ是マデノ所デハ此商業ニ屬スル所ノ各銀行ノ資本
ノ固著シテ居リマスモノヲ開放シテ、之ヲ以テ商業上ノ資本モ豐ニナリ、利子
モ亦從ッテ下ルコトデアリマス且ツ之ト同時ニ又免ニ角危險ナル投機的ノ
事業ニ當テ箝メタガル零細ナル資本ヲ以テ此安全有益ナル所ヘ投八スルコト
ハ實ニ今日之ヲ宇內ノ經濟上ノ傾キニ鑑ミマシテモ、亦我國ノ現在ノ有樣
ニ照シマシテモ餘程必要ノ事デアラウト思ヒマスドウゾ是ハ十分ナル審
査ヲ遂ゲマシテ、速ニ通過セラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=11
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012・高木正年
○高木正年君(百二十九番) 私ハ大藏大臣ニ御尋ヲ致シタイ、此第三十四條
ノ「勸業債劵ヲ發行スルコトヲ得」トアル是ハ矢張期限ヲ極メテ發行スル
コトデアラウト思ヒマスガ、果シテ有期デアルカ、若クハ無期勸業銀行
ノ存在ノ年限デアルカ其間ニモソット年限ヲ縮メテ發行スルコトガ出來ル
カソレヲ御尋致シタイ、其次ノ質問ハ第三十七條「日本勸業銀行ハ勸業債券
借換ノ爲メ一時第三十四條ノ制限ニ依ラス低利ノ勸業債券ヲ發行スルコト
ヲ得」トアル此低利ノ勸業債券モ矢張是ハ一時ノモノデアルカラシテ、必ズ
極短イ期限デ發行スルモノデアラウト思ヒマスガ、是モ一應御尋致シタイ
今一ツニハ勸業債券ノ中デ低利ノ債券ノ如キモノハ、矢張日本銀行ガ擔保ト
シテ之ヲ取リ得ベキ品デアラウト思ヒマスガ、ソレヲ序ニ御尋ヲ致シタイ、
且ハ此勸業銀行ノ債券ハ此銀行ノ信用ノ上デ、自由ニ金融ノ一ノ融通機關
ト爲ッテ相助ケテ參ルモノデアリマセウガ、或ル時ニハ此債劵ハ時ノ相場ニ
依ッテ低落スルコトガアラウト思ヒマス、斯樣ナ場合ニ日本銀行ガ擔保トシ
テ取得ラルヽ譯デ、低落スル時ノ極ク危險ナル場合ヲ防グコトガ出來ルト思
ヒマスガ、其邊ニ就イテハドウ云フ考ヲ持ッテ居ラルヽカ、一應御尋ヲシマ
ス
〔政府委員大藏書記官添田壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=12
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013・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 高木君ニ御答ヲ致シマス、勿論是ハ適宜ノ(此時
高木正年君「大聲デ願ヒマス」ト呼フ)ハイ勿論是ハ適宜ニ期限ヲ附シテ發
行スルモノデアリマス、借替ノ場合ニ於テモ亦同樣デゴザイマス、又日本銀
行ガ擔保トスルコトモ許シ得ラルヽト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=13
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014・門脇重雄
○門脇重雄君(百五十八番) 質問ヲ致シマス、本案ニハ單ニ低利トアリマス
ガ、其利子ノ程度ハ如何ナル程度デアリマスカ
〔政府委員大藏書記官添田壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=14
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015・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答ヲ致シマス低利ト申シマスルノハ市場ノ
利子ヨリハ幾分カ低メル積デアリマスガ、マダ營業ノ時期ニ至リマセヌカラ、
明ニ何分ト云フコトハ申上ゲラレマセヌガ、苟モ此法律ヲ設ケマス以上ハ、
一般ノ利子ヨリハ二分位低メル積リデアリマス、又抵當ハ土地家屋ノ如キ不
動產ニ限ル積デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=15
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016・西村禮作
○西村禮作君(二百三十三番) 本案ハ農工銀行ノ方ト同一ノ性質ノモノデア
ルト思ヒマスガ、農工銀行ノ方ニハ使用ノ目的ガ第七條ニアリマスガ勸業
銀行ノ方ニハ其使用ノ目的ガ規定シテナイハ如何ナ次第デアリマスカ、其目
的ガ規定シテナイ時ニハ本案ヲ設ケラレタ趣旨ヲ徹底スルコトガ出來マイト
考ヘマスガ、其〓ヲ一ツ伺ロタイ、ソレカラ今一ツハ此銀行ハ信用ガ堅ク、
資金ヲ得ルコトガ容易デゴザイマス、元ヨリ此法ヲ設ケル趣旨ハソコ等ニ
アリマスガ、然ルニ第十八條ニ土地ノ價格ヲ鑑定スルト云フコトガゴザイマ
ス其鑑定ニ就イテハ方法ガナイデアラウト思フ、鑑定ハ大變ニ重大ナ關
係ヲ持ツコトデアラウト思ヒマスガ實際土地ノ價格ヲ見マスルト各地種
種ノ原因カラ大イナル差異ガアルノデゴザイマスガ、或ル村ニ依ルト一字ノ
中デモ大變ニ高低ガアルト云フコトデアルガ、サウスレバ從ッテ之ガ鑑定ノ
方法モ非常ナ困難ナコトデアラウト思ヒマス、年賦償還法デアルト一一十條ノ
規定ガアッテ、稍〓確實ノヤウニ思ヒマスガ、定期ノ償還法ニナリマスト、鑑
定ニ關スル方法ガ指定シテゴザイマセヌデソレガタメ不確實ノヤウニ思
ヒマスガ、是ハ政府ニ於テハ決シテ危險ノ憂ハナイト云フ御考デアリマスカ
〔政府委員大藏書記官添田壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=16
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017・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答ヲ致シマス、此勸業銀行ノ方ニハ、第一條ニ
舉ゲテゴザイマス大體ノ目的ノ外ニ目的ヲ指定シテナイノデアリマシテ農
工銀行ノ方ニハ其事ガ明ニ指定シテアリマスノハ此農工銀行ノ場合ニ於キ
マシテハ、若シ貸付ノ目的ニ反スルトキニハ、一時ニ償還ヲ命ズルコトガ明
ニ規定シテアル結果デアリマス併シ何レノ場合ニ於キマシテモ、農業、工
業ノ改良、發達ト云フ目的ノ外ニハ出デナイノデアリマス、ソレカラ第二ノ
御問ノ鑑定價格ノコトデアリマスガ、是ハ定款ヲ以テ綿密ニ規定スル積リデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=17
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018・吉本榮吉
○吉本榮吉君(八十二番) 此法律ニハ實施期限ガ見エマセヌヤウデアリマ
スガイツカラ實行ニナルノデアリマスカ又創立ノ手續モ見エヌヤウデア
ルガ、株主ヲ申込ムハ何處ニ申込ミマスカ、又株主ヲ募集スル手續ハドウス
ルノデスカ
〔政府委員大藏書記官添田壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=18
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019・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 吉本君ニ御答致シマス此法律ノ施行ハ一般ノ法
例卽チ一般ノ施行ノ規定ニ依ル積デアリマス、ソレカラ創立ノ手續ハ日
本勸業銀行ノ方ニ於キマシテハ此末ノ條ニ書イテアリマスガ如ク創立委員
ノ規定スル所定ムル所ニ依ルノデアリマス、又農工銀行ノ場合ニ於キ
マシテハ一般商法ノ規定ニ依ル積デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=19
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020・眞下珂十郎
○眞下珂十郞君(二百四十二番) 私モ質問致ジマスガ、唯今ハ十二番カノ御
尋デシタガ此勸業銀行ハ債券ヲ發行スルコトガ得ルト云フノデ、先程大藏
大臣ノ演說モアリマシタガ、此不動產ヲ固定スルコトナク、債券ヲ發行シ得
ラルヽコトデアレバ、隨分利益ノアルコトデアラウト考ヘル、併ナガラ、低利
ノ金ヲ貸スト云フコトデアルカラ、殘ルカ殘ラヌカソコハ分ラヌト云フ政府
委員ノ御話モアッタガ、自分ノ考ニ依ルト免モ角株ノ募集ニ應ジヤウト云フ
人ハ澤山アラウト云フコトデアルト從來政府ガ株ヲ募集セラルヽトキニ、
日本銀行ノ株ノ募集ノ如キ、既ニ田舍ニナルト滿株ニナッテ應ズルコトガ出來
ヌト云フ有樣デアッタ、又正金銀行ニ就イテモ猶サウデアル、デ矢張從前ノ通
ノ是ハ御運ビニナルノデスカ
〔政府委員大藏書記官添田壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=20
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021・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答致シマス、此株ノ募方ニ就キマシテハ、所謂
創立委員-此法案ニアリマス創立委員ノ手デ致スコトデアリマスルガ
成ルベク希望ヲ申シマスレバ、廣ク全國ヨリ募ルト云フ積リデアリマス併
シ此農工銀行ノ方ハ法律案ニモ規定シテアル如ク、其地方ノ人ニ限ラレテ居
ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=21
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022・眞下珂十郎
○眞下珂十郞君(二百四十二番) シマスルト、全國カラ出タナラバ、東京邊
ノ方ハ減ジマシテモ地方カラヤルト云フ趣向ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=22
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023・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答ヲ致シマス、ソレハ此創立委員ノ專ラ取捨ス
ル所デアリマスルガ故ニ、明ニコヽデ申上ゲルコトハ出來マセヌガ、此切捨
等ニ就イテハ、成ルベク公平ヲ得ルヤウニシタイト云フ希望ダケヲ有ッテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=23
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024・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 次ハ日程ノ第二、特別委員ノ選舉ノ件ニ移リマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=24
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025・高木正年
○高木正年君(百二十九番) 此案ハ後トノ第三、第五ノ日程ト同一ノ委員ニ
付託シタイト思ヒマス、一體此案ハ當年ノ議案中デモ最モ重ナル議案デ其
關係ハ全國ノ經濟上ニ及ビマスカラ務テ此議會中ノ實業ニ明ルイ人ミヲ委
員ニ選ンデ、委員ノ數ハ二十七人ノ人ヲ議長指名デ選ミタイト思ヒマス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=25
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026・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 銀行ニ係ル三議案ヲ付託スルタメニ、二十七名ノ特別
委員ヲ議長指名デ選舉スベシト申スコト
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=26
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027・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 御異議ナシト認メマヌ、次ハ第三、農工銀行法案
朗讀ヲ省イテ議題ニ供シマス
第三農工銀行法案(政府提出)第一讀會
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
農工銀行法
第一章總則
第一條農工銀行ハ農業工業ノ改良發達ノ爲資本ヲ貸付スルヲ以テ目的ト
スル株式會社ニシテ其ノ資本金ヲ二十万圓以上トシ各株式ノ金額ハ二十
圓トス
第二條農工銀行ハ北海道又ハ一府縣ヲ以テ一營業區域トス但土地ノ精況
ニ依リ勅令ヲ以テ北海道又ハ一府縣ヲ二箇以上ノ營業區域ニ分割スルコ
トヲ得
第三條農工銀行ノ設立ハ一營業區域內ニ一行ヲ以テ限トス
第四條農工銀行ヲ發起セントスル者ハ十人以上ニシテ總株數ノ十分二以
上ヲ引受クヘシ
第五條農工銀行ノ營業區域内ニ原籍及住所ヲ有スル者ニアラサレハ其ノ
株主トナルコトヲ得ス
株主ニシテ農工銀行ノ營業區域外ニ原籍又ハ住所ヲ移轉スルコトアルモ
株主タルノ資格ヲ失フコトナシ
農工銀行ノ營業區域內ノ府縣郡市町村モ亦其ノ株主タルコトヲ得
第二章營業
第六條農工銀行ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
一三十箇年以內ニ於テ年賦償還ノ方法ニ依リ不動產ヲ抵當トシテ貸付
ヲ爲スコト
二農業者又ハ工業者ニ對シ其ノ生產ニ係ル物品ノ賣買ヨリ生スル爲替
手形ノ割引ヲ爲スコト
三農業者又ハ工業者ニ對シ其ノ生產ニ係ル物品ノ荷爲替貸ヲ爲スコト
四二十人以上ノ農業者又ハ工業者中合セ連帶責任ヲ以テ借用ヲ申出テ
タルトキハ五箇年以內ニ於テ定期償還ノ方法ニ依リ無抵當貸付ヲ爲
スコト
第七條前條第一號及第四號ノ貸付ヲ爲スハ左ノ事項ニ使用スルヲ目的ト
スルモノニ限ル
一開墾、排水、灌漑及耕地土質ノ改良
二耕作道路ノ築造又ハ改良
三殖林事業
四種苗、肥料其ノ他農工業用原料ノ購入
五農工業用ノ器具、機械、舟車、獸畜ノ購入
六農工業用建物ノ築造又ハ改良
七前各項ノ外農工業ノ改良
第八條農工銀行ニ於テ不動產抵當ヲ徵スルトキハ總テ第一抵當ナルコト
ヲ要ス但舊債アル場合ニ於テ農工銀行ヨリ借入スル新債ヲ以テ其ノ舊債
ヲ償還スル效果ニ依リ新債ノ第一抵當トナルコトヲ得ヘキトキハ此ノ限
ニアラス
第九條農工銀行ニ於テ抵當トシテ徵スル土地ハ永續スヘキ確實ナル收益
ノ見込アルモノニ限ル
農工銀行ニ於テ抵當トシテ徵スル建物ハ保險付ノモノニ限ル但抵當物ノ
外ニ賃付金高二倍以上ノ價格ヲ有スル動產又ハ不動產ヲ添ヘ抵當ト爲ス
場合ニ於テハ保險ニ付セサルコトヲ得
第十條不動產ヲ抵當トシテ貸付クル金額ハ農工銀行ニ於テ鑑定シタル價
格ノ三分ノ二以內トス
第十一條年賦金ハ元金ト利子トヲ併セテ之ヲ計算シ各年ヲ通シテ一定平
等ノ償還額ヲ定ムヘシ
前項ノ償還額ハ之ヲ變更スルコトヲ得ス但貸付金ノ一部償還ノ場合ニ於
テ其ノ額ヲ更定スルハ此ノ限ニアラス
第十二條土地抵當貸付ニ對スル年賦金ハ其ノ抵當地ノ平年收益額ヨリ公
課額ヲ扣除シタル殘額ヲ超過スルコトヲ得ス
第十三條貸付金ノ年賦償還ニ付キテハ一箇年以上五箇年以內ニ於テ据置
年限ヲ定ムヘシ但其ノ年限間ノ利子ハ此ノ限ニアラス
第十四條債務者年賦金定期償還金又ハ利子ノ拂込ヲ遲延シタルトキハ拂
込期日ノ翌日ヨリ其ノ金額ニ對シ利子ヲ仕拂フノ義務ヲ負フ
第十五條年賦償還ノ方法ヲ以テ借入ヲ爲シタル債務者ハ償還期限前ニ借
用金ノ全部若クハ一部ヲ償還スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ農工銀行ハ定款ニ於テ定ムル所ノ率ニ依リ相當ノ手
數料ヲ要求スルコトヲ得
第十六條債務者ハ借用金ノ五分ノ一以上ヲ償還シタルトキハ其ノ割合ニ
應シ抵當物一部ノ解除ヲ要求スルコトヲ得其ノ殘額ニ對シテモ亦同シ
第十七條農工銀行ハ年賦金ノ拂込ヲ遲延スル債務者ニ對シ償還期限前ト
雖貸付金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
第十八條農工銀行ハ抵當物ノ價格減少シ貸付金償還殘額ニ對シ第十條ノ
割合ニ不足ヲ生シタルトキハ增抵當ヲ要求シ若クハ其ノ不足ニ相當スル
賃付金額ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
債務者前項ノ要求ニ應セサルトキハ農工銀行ハ償還期限前ト雖貸付金全
部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
第十九條抵當不動產ノ全部若クハ一部カ土地收用法ニ依リ收用セラル、
場合ニ於テ農工銀行ハ償還期限前ト雖貸付金ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
但債務者ニ於テ收用ノ補償金ヲ供託シ又ハ相當ノ不動產ヲ以テ增抵當ト
スルトキハ此ノ限ニアラス
其ノ收用一部ニ止マルトキハ償還ノ要求モ其ノ割合ニ應スヘキモノトス
第二十條農工銀行ハ第六條第一號及第四號ノ貸付ヲ爲シタル場合ニ於テ
債務者カ貸付ノ目的ニ反シ貸付金ヲ使用スルトキハ償還期限前ト雖貸付
金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
第二十一條農工銀行ハ定期預リ金ヲ爲シ又ハ地金銀有價證劵ノ保護預リ
ヲ爲スコトヲ得
第二十二條農工銀行ハ營業上餘裕金アルトキハ一時各種ノ國債證券地方
債證券及勸業債券ヲ買入レ又ハ他ノ銀行ニ預ヶ金ヲ爲スコトヲ得
農工銀行ハ前項ニ依ルノ外營業上ノ餘裕金ヲ使用スルコトヲ得ス
第二十三條農工銀行ハ日本勸業銀行ノ代理店タルコトヲ得
第二十四條農工銀行ハ此ノ法律ニ記載セサル業務ヲ營ムコトヲ得ス
第三章農工債劵
第二十五條農工銀行ハ資本金四分ノ一以上ノ拂込アリタルトキハ拂込金
額ノ五倍ヲ限リ農工債券ヲ發行スルコトヲ得但第六條第一號ノ貸付金總
高ヲ超過スルコトヲ得ス
第二十六條農工銀行ハ少クトモ第六條第一號ノ貸付金ノ償還高ニ應シ每
年二囘以上抽籤ヲ以テ農工債券ヲ償還スヘシ
第二十七條農工銀行ハ農工債券借換ノ爲一時第二十五條ノ制限ニ依ラス
低利ノ農工債券ヲ發行スルコトヲ得
低利ノ農工債券ヲ發行シタルトキハ發行後一箇月以內ニ抽籤ヲ以テ其ノ
發行券面金額ニ相當スル舊農工債劵ヲ償還ス)a
第二十八條農工債券ノ利子ハ每年二回定款ニ定メタル時期ニ於テ之ヲ仕
拂フヘシ
第二十九條農工銀行ハ第六條第一號ノ貸付金ノ償還延滯シテ豫期ノ金額
ニ達セサルトキハ第二十六條ノ償還ト同時期ニ抽籤ヲ以テ其ノ延滯金額
ニ相當スル農工債券ヲ償還スヘシ
第三十條農工債劵ノ所有者其ノ元金又ハ利子ヲ要求セサルトキハ元金
ハ十五箇年利子ハ五箇年ニシテ其ノ要求ノ權ヲ失フモノトス
第三十一條農工債劵ヲ僞造又ハ變造シテ行使シタル者ハ刑法第二百四條
ノ例ニ依リ處罰ス其ノ模造ニ關シテハ明治二十八年法律第二十八號通貨
及證券模造取締法ニ依リ處分ス
第三十二條農工債券ニ關シ此ノ法律ニ規定セサル事項ハ明治二十三年法
律第六十號ヲ適用ス
第四章準備金
第三十三條農工銀行ハ每年準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益ノ百分
ノ八以上ヲ積立テ及利益配當ノ平均ヲ得セシムル爲利益ノ百分ノ二以上
ヲ積立ツヘシ
第五章政府ノ監督及補助
第三十四條主務大臣ハ農工銀行ノ業務ヲ監督ス
第三十五條農工銀行ノ定款ハ主務大臣ノ認可ヲ要ス之ヲ變更セントスル
トキモ亦同シ
第三十六條農工銀行ニ於テ支店又ハ代理店ヲ設置セントスルトキハ主務
大臣ノ認可ヲ受クヘシ又主務大臣ニ於テ支店若クハ代理店ヲ要用ナリト
スルトキハ農工銀行ニ命シテ之ヲ設置セシムルコトアルヘシ
第三十七條農工銀行ハ主務大臣ノ認可ヲ經ルニアラサレハ株主ニ配當金
ノ分配ヲ爲スコトヲ得ス
第三十八條主務大臣ハ農工銀行ノ營業上法律命令又ハ定款ニ背戾シ若ク
ハ公益ヲ害スル事件アリト認ムルトキハ之ヲ制止スヘシ
第三十九條農工銀行ハ主務大臣ノ命令ニ從ヒ其ノ營業ニ關スル諸般ノ景
況及計算報告書ヲ差出スヘシ
第四十條主務大臣ハ必要ナリト認ムルトキハ農工銀行ノ貸付割引ノ全
額及方法ヲ制限スルコトヲ得
第四十一條農工銀行貸付金ノ利子ノ最高步合ハ每營業年度ノ初ニ於テ主
務大臣ノ認可ヲ經テ之ヲ定ムヘシ其ノ營業年度內ニ於テ變更セントスル
トキモ亦同シ
第四十二條政府ハ特ニ北海道廳府縣高等官中ヨリ農工銀行監理官ヲ命シ
主務大臣ノ指揮ヲ承ケテ農工銀行ノ業務ヲ監視セシム
第四十三條農工銀行監理官ハ何時ニテモ農工銀行ノ金庫、劵書庫、帳簿
及諸般ノ文書ヲ檢査スルコトヲ得
農工銀行監理官ハ監視上必要ナリト認ムルトキハ何時ニテモ農工銀行ニ
命シテ營業上諸般ノ計算及景況ヲ報告セシムルコトヲ得
農工銀行監理官ハ株主總會共ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スル
コトヲ得但議決ノ數ニ加ハルコトヲ得ス
第四十四條農工銀行營業補助ノ方法ハ別ニ之ヲ定ム
第六章罰則
第四十五條農工銀行ニ於テ左ノ事犯アルトキ取締役ヲ二十圓以上二百圓
以下ノ過料ニ處ス
ー第六條ノ規程ニ反シ貸付ヲ爲シタルトキ
二第八條ノ規程ニ反シ第一抵當ニアラサルモノニ對シ貸付ヲ爲シタル
トキ
三第二十二條第二項ノ規程ニ反シ營業上ノ餘裕金ヲ使用シタルトキ
四第二十四條ノ規程ニ反シ此ノ法律ニ記載セサル業務ヲ營ミタルトキ
五第二十五條ノ規程ニ反シ農工債券ヲ發行シタルトキ但第二十七條第
一項ニ該當スルモノハ此ノ限ニアラス
六第二十六條第二十七條第二項及第二十九條ノ規程ニ反シ農工債券ノ
償還ヲ爲ササルトキ
七第三十三條ノ規程ニ反シ利益金ヲ處分シタルトキ
第四十六條前條ニ揭ケタル過料ハ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ科ス但其ノ命
令ニ對シテ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
過料ノ辨納ニ付キテハ取締役連帶シテ其ノ責任ヲ負フ
附則
第四十七條農工銀行ニ關シ此ノ法律ニ規定セサル事項ハ明治二十三年法
律第七十二號銀行條例ヲ適用ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=27
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028・高橋小十郎
○高橋小十郞君(百七十四番) 一寸質問ヲ致シマス、農工銀行法案ノ第六條
ノ四ト云フ處ニ「二十人以上ノ農業者又ハ工業者申合セ連帶責任ヲ以テ借用
ヲ申出テタルトキハ五箇年以內ニ於テ定期償還ノ方法ニ依リ無抵當貸付ヲ爲
スコト」トアリマスガ、財產ノ······二十人以上ノ連帶責任デ申出デタルトキ
ハ貸付ケルト云フ意味デアリマスカ、御說明ニ預リタイ
〔政府委員大藏書記官添田壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=28
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029・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 甚ダ恐入リマスガ、モウ一遍ドウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=29
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030・高橋小十郎
○高橋小十郞君(百七十四番) 第六條ノ四ニ二十名以上ノ者ガ連帶責任ヲ以
テ借用ヲ申出ル時ハ財產ノ有無ヲ問ハズシテ貸付ヲ爲スヤ否ヤ「貸付ヲ爲
スコト」トシテアリマスガ、無財產ノ者ガ申立テモ、貸付ケルト云フ意味デ
アリマスカ、又ハ財產ガナケレバ貸與ヘヌト云フ趣意デアリマスカ、ソレヲ
質問致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=30
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031・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答致シマスガ、此六條ノ第四ハ所謂對人信用ノ
端〓ヲ啓クモノデアリマス、故ニ借主ノ資產ト云フモノハ主タル目的デハゴ
ザリマセヌ、卽チ其事業ノ確實ナルヤ否ヤト云フノガ主タル目的デアリマス、
併シ此借人ガ危險ナ團體デアリマスレバソレハ貸付ケナイ場合モアリマセ
ウガ、此場合ニ於テ主トシテ目的トスル所ハ其事業ニアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=31
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032・高橋小十郎
○高橋小十郞君(百七十四番) 然ル以上ハ第二十條ニ貸借ヲ行ッタ後トデ
其目的ニ反シテ貸付金ヲ使用シタトキハ貸付金ヲ直ニ償還サセルト云フコ
トガアリマスガ、其時ニナルト其金ハ他ニ使果シテ身代限リヲスルヨリ外
ナイト云フ場合ニナレバ農工銀行ハ損害ヲ受ケルコトヽ考ヘル、ソレデモ
損害ハ受ケヌヤウナコトニナッテ行キマスカ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=32
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033・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答ヲ致シマス、全ク其資產ヲ標準トシナイト云
フ譯デハゴザリマセヌカラ幾分カノ標準ニハナッテ居リマス、故ニ二十條
ノ規定ヲ行フ場合ト雖モ、濫ニ損害ヲ受ケナイト云フダケノ豫防ハ致サナケ
レバナラヌト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=33
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034・高橋小十郎
○高橋小十郞君(百七十四番) 然ル以上ハ農工銀行ハ損ガアリマセヌカ、
私ノ考デハ取締ガ出來ヌヤウニ考ヘマス是デモ出來マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=34
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035・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) ソレハ銀行ノ營業ノ場合ニ於キマシテ、事實多少
ノ損ノナイト云フ保證ハ出來マセヌケレドモ成ルベク目的ガ確實デアリ
多少資產ヲ標準ト致シマシテ、損失ノナキヲ務メルコトデアルノデアリマス、
如何ナル場合ト雖モ、損害ガナイト云フ保證ハ實際ノ業務次第ニ依ルコトデ
スカラ、出來難ウゴザイマス、成ルベク無キヲ務メルト云フコトハ勿論デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=35
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036・西村禮作
○西村禮作君(二百三十三番) 本案ノ第八條ノ但書ニ、舊債アル場合云々ト
云フコトガゴザイマス、此舊債ハ第七條各項ニ規定シテアル所ノ目的ニ使用
シタルモノデアリマスカ又普通ノ舊債デモ宜ウゴザイマスカ若シ普通ノ
負債デモ··許スト云フ場合ニハ第七條ノ各項ノ目的ヲ達セラレナイヤウ
ニ考ヘマスガ、此法案ノ精神ハ如何デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=36
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037・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答致シマス、此舊債ヲ償還シマスル場合ト雖
モ苟モ此法律ガ農業工業ノ改良發逹ヲ大主眼ト致シテ居リマスカラ、其範
圍ヲ出デマスルモノハ此中ニハ矢張這入ラヌ積デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=37
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038・田邊久藏
○田邊久藏君(二百四十番) 本員モ質問ヲ致シマスガ、此設立ト云フモノハ
卽チ各府縣ニ於テ一箇所或ハ二箇所ト云フ目的デアリマスガ、其設立ヲ致シ
マスニハ地方デ必要ト認メテ出願ヲスレバ許スト云フ趣旨デアリマスカ、
或ハ其筋ニ於テ各府縣ノ有力者ニ向ッテ勸誘シテ設立ヲサセルト云フ精神デ
アリマスカ其發企ノ成立ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=38
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039・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答ヲ致シマス、此農工銀行ノ地方ニ設立セラル
ルノハ地方ノ農業工業ノ改良發達ノ必要ニ依タテ生ジタモノデアッテ其
計畫ガ確實デアリ其發企ニ加ハッテ居ル人ミガ信用ニ富ミ經驗ニ富デ居
ルノミナラズ、成立ノ後ト雖モ利益ガ全般ニ及プモノト認メタルモノデナカ
ラネバ許サヌ積デアリマス、漫ニ政府ガ勸誘スルナラント云フコトハナイ積
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=39
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040・金岡又左衞門
○金岡又左衞門君(百六十番) 唯今政府委員ノ答辯ヲ承リマスレバ元來此
第六條ノ貸付ト云フモノハ專ラ其財產ヲ目的トシテ貸付クルモノニアラズシ
テ其事業ニ對シテ貸與ヘルモノデアルカラシテ、其借ル人ノ財產ト云フ方
ヨリ事業ト云フ方ニ眼ヲ著ケテ此事業ガ果シテ將來ニ見込ノアルモノナラ
バ縱令資產ナキモノト雖モ貸與ヘルト云フ精神ト云フコトニ承ッテアル、
是ハ尤デアル、併ナガラ銀行ノ方カラ見レバ、寧ロ其方ヨリカ金ヲ貸シテ損ヲ
セナイト云フコトニスルガ、銀行其モノヽ最モ注意スベキ要點デアルカラ、銀
行ニ於テハ事業ハ相當ノモノデ、將來見込アルモノトシマシテモ、其借リニ來
タ人ガ無資產デ信用ノナイ人、萬一之ニ貸シテハ將來ニ於テ此金ヲ取ルコト
ガ出來ヌト云フ虞アリト認ムレバ此事業ハ目的ナキモノトシテ、之ヲ一モ
二モナク貸與ヘヌト云フコトニナレバ折角政府ガ一カラ四マデノ箇條ヲ設
ケテ無資產ノ者ニ融通ヲ付ケルト云フ途ハ杜絕スル譯デアル、サウ云フ場合
ニ銀行ガ事業ニ眼ヲ著ケズシテ、其人ノ財產ニ眼ヲ著ケテ金ヲ貸スコトヲ躊
躇シタ時分ニハ當局者ハ其銀行ニ向ッテハ如何ナル方法ヲ以テ之ヲ監督シ
テ、此法律ノ目的ヲ貫徹スル見込デアリマスカ、承ッテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=40
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041・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答致シマス、農工銀行ガドウアッテモ是ハ貸付
ケルニ足ラナイト見込ンデ、ソレガ正當ナル見込デアル場合ニ於テハ、ソレハ
如何ナル政府ト雖モソレヲ强テサセルト云フコトハ出來ナイノデアリマスル
ガ極ク見込ノ確ニシテ十分奬勵ヲ與ヘナケレバナラヌト云フ場合デアルニ
モ拘ハラズ、銀行ガ漫ニ唯己ノ利益ニノミ偏シテ其働ヲシナイ場合ニ於キマ
シテハ或ハ巳ムヲ得ザル場合ニ於テハ此第四十條ニ規定シテアリマス如
〃其銀行ニ對シテ多少ノ命令、指定ヲスルコトハアルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=41
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042・芦塚省三
○芦塚省三君(百十三番) 私モ質問ヲ致シマスガ、此第七條ノ各項ニ前條第
一號及第四號ノ金額ヲ貸付ケマスル用途ノ種類ヲ色〓揭ゲテアリマスガ、其
中ニ田畝ニ必要ナル所ノ堤塘又ハ機關ノ改良ト云フヤウナ箇條ハ見エテ居リ
マセヌガ、固ヨリ是ハ田畝ニ必要ナル事柄デアリマスカラシテ、無論貸付ニ
ナル事柄デアラウト考ヘマスケレドモ念ノタメニ一應御尋ヲ致シマスガ、
矢張田畝ニ必要ナル所ノ修築トカ、機關ノ修繕トカ、改良トカ云フコトニハ
無論貸與ニナル思召カ、念ノタメ一應御尋致シマスル
(政府委員大藏書記官添田壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=42
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043・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答ヲ致シマス苟モ農工業ノ改良ト云フ範圍ヲ
脫シマセヌ以上ハ、確ニ貸付ケサセル積デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=43
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044・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 委員ノ件ハ前ニ決シマシタニ依ッテ、次ハ第五、農工
銀行補助法案、朗讀ハ省略致シマス
第五農工銀行補助法案(政府提出)第一讀會
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
農工銀行補助法
第一條農工銀行法ニ依リ設立スル農工銀行ノ營業ヲ補助スル爲政府ハ豫
算ニ定ムル所ニ從ヒ其ノ營業區域ヲ管轄スル府縣(沖繩縣ヲ除ク)ニ其ノ
株式引受資金ヲ交付ス
前項ノ交付金額ハ該府縣ノ宅地鑛泉地池沼ヲ除キ有租地反別百町ニ付七
十圓以内トス但如何ナル場合ニ於テモ一府縣ニ交付スル總額三十萬圓ヲ
超過シ又ハ農工銀行拂込資本金ノ三分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス
第二條北海道及沖繩縣ニ設立スル農工銀行ノ營業ヲ補助スル爲其ノ創立
初季ヨリ十箇年ヲ限リ政府ハ豫算ニ定ムル所ニ從ヒ北海道ノ農工銀行ニ
貳萬五千圓以內沖繩縣ノ農工銀行ニ五千圓以內ヲ每年交付ス但農工銀行
ノ拂込資本金額ニ對シ一箇年百分ノ五ノ割合ヲ超過スルコトヲ得ス
第三條府縣ハ第一條ノ交付金ヲ農工銀行ノ株式引受ニ供スルノ外他ニ使
用スルコトヲ得ス
第四條此ノ法律ニ依リ府縣ノ引受ケタル株式ニ對シテハ農工銀行ハ其ノ
創立初季ヨリ五箇年間ハ利益配當ヲ爲スコトヲ要セス
前項ノ期限經過後仍五箇年間ハ農工銀行ハ前項府縣引受ノ株式ニ對スル
配當金ヲ悉皆準備金ニ繰入ルヘシ
第五條農工銀行ハ前條ノ期限ヲ經過シタル後ハ此ノ法律ニ依リ府縣ノ引
受ケタル株式ニ對シ他ノ株式ト同一ノ利益配當ヲ爲スヘシ
前項ノ配當金ハ府縣ノ收入ニ繰入ルルモノトス
第六條府縣ハ此ノ法律ニ依リ其ノ引受ケタル農工銀行ノ株式ヲ離權スル
コトヲ得ス但第七條ノ場合ハ此ノ限ニアラス
第七條農工銀行創立初季ヨリ十箇年經過ノ後府縣知事ハ府縣會ノ議決ヲ
經內務大臣及大藏大臣ノ認可ヲ得テ此ノ法律ニ依リ引受ケタル農工銀行
ノ株式ヲ市町村ニ交付スルコトヲ得
市町村ハ前項ニ依リ交付セラレタル農工銀行ノ株式ヲ基本財產ト爲スヘ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=44
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045・門脇重雄
○門脇重雄君(百五十八番) 農工銀行ニ補助スルタメニ政府ハ交付金ヲ各府
縣ニ下付スルト云フコトデアリマスルガ、其交付金ノ總額ハ幾ラデアリマス
ルカ、且ツ其金ハ何ノ財源カラ出ルノデアリマスルカ此二條ヲ御尋致シマ
ス
(政府委員大藏書記官添田壽一君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=45
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046・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答ヲ致シマス先ハ總額ハ一千万圓以內ノ積リ
デアリマス又其財源ハ一般ノ財政計畫ノ中ニ求メル積デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=46
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047・芦塚省三
○芦塚省三君(百十三番) 御尋ヲ致シマス造作モナイコトデアリマスガ、此
第一條ノ末項ノ所ニ「有租地段別百町ニ付七十圓以內トス」ト、此交付金額ヲ
限ッテアルガ是ハ如何ナル〓カラ御割出ニナッタノデアリマセウカ、其理由ヲ
一寸承リタイ
(政府委員大藏書記官添田壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=47
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048・添田壽一
○政府委員(添田壽一君) 御答ヲ致シマス財源ノ調査ニ致シマスレバ此有
租地ノ總段別最モ宅地、鑛泉地、池、沼ヲ除キマシタル高ガ、千三百餘万町
步デアリマスソレニ既ニ申上ゲマシタル一千万圓ヲ割當テマシタル分ハ
殆ド百町步ニ附キ七十圓ト云フ豫算ガ出タノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=48
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049・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 次ハ第七、外國語學校設立ニ關スル建議案、朗讀ヲ省
キマス、提出者柏田盛文君
第七外國語學校設立ノ建議案(柏田盛文君提出)
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
外國語學校設立ノ建議
今ヤ我國ハ一躍シテ東洋ノ表ニ雄視シ字內生存競爭ノ衝路ニ當ル固ヨリ百
般ノ事物一大刷新ヲ加ヘテ膨脹的ノ資性ニ順應スルノ準備ヲナサヽルヘ
カラス殊ニ列國ノ事情ヲ詳悉シ其ノ趨勢ヲ觀察シ談笑ノ際外政ニ商略ニ光
榮ヲ發揮シ利益ヲ擴充スル敏快ノ手腕ヲ保ツノ人材ヲ養育スルヲ要ス魯〓
韓ノ如キハ將來益≧密接ノ關係ヲ有スルモノニシテ今猶其ノ言語ヲ〓授ス
ルノ學校ナク外交モ商業モ殆ント模索以テ之レニ應セムトス樽爼ノ際折衝
ノ時麻姑ノ癢ヲ搔クノ快ナキハ豈雄資ノ一大缺〓ニアラスヤ英獨佛ノ如キ
ハ頗ル流行ノ觀アルモ要スルニ科學ヲ〓究スルノ階梯ニ過キス今總テ是等
ノ語學ヲ專修セシムルノ必要アリ玆ニ學校規程ノ要領及學課表ヲ添附シテ
參考ニ供ス政府ハ速ニ採納シテ設立ノ舉アラムコトヲ望ム
〔柏田盛文君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=49
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050・柏田盛文
○柏田盛文君(百四十七番) 諸君、此〓育ノ事ハ戰後ノ經營中、或ル意味ニ
於テハ軍事ノ擴張ヨリモ實業ノ發達ヨリモ重ナルコトデアルト云フコト
ハ先日彼ノ問題ノ時一寸御話モ致シタコトデアリマス、但シ此〓育ト云フ
コトニ附イテ三ツノ大別ガアルト私ハ信ジマス、第一ニ國民〓育、所謂日本
國ノ相當ノ國民ヲ造ル、所謂宇內ニ冠タル所ノ特性ヲ薫陶スルコトヲ以テ目
的トスル所ノ國民〓育、ソレカラ今度ハ理化學ノ學問、此日進科學ニ關係シ
タル學問ヲ〓究シテ、天地ノ化合ヲ助ケ、之ヲ應用シテ物質的ノ文明ヲバ
進メテ行クト云フコトソレカラマア一ツハ此科學ノ應用ガ盛ニナルニ從ツ
テ世界ハ小サクナル小クナレバ從ッテ接近スル接近スレバ其互ノ交渉ト
云フモノハ繁劇ニナッテ來ル、互ノ關係交渉ト云フモノハ非常ニ密ニナッテ
來ル、密ニナルニ從ッテ、優勝劣敗ト云フコトハ餘程度ヲ加ヘルト云フコトハ
是ハ物理ノ原則デゴザイマス、、然ラバ其關係ヲバ明ニシテ此交際ヲバ或ハ有
事ノ日無事ノ日ニ拘ラズコチラガ積極的ノ位置ニ立ッテ十分ノ意志ヲバ
應接セシメテ行カウトスルニハ語學ト云フモノハ極必要デアラウト思フ
若シ是ガ鎖國時代デアッタナラバ左程ノ必要ガナイ必要ガナイノミナラズ
殆ド無用ノモノカモ知レマセヌ、併ナガラ前申ス通、益〓密接ノ關係ヲ生ズ
ルニ從ッテ、此必要ト云フモノハ益〓其度ヲ增シテ來ルト云フコトハ是ハ自
然ノ勢デアラウト思フ、苟モ今日宇內ノ形勢ニ活眼ヲバ注ギタル者ハ此必要
ヲバ感ゼヌ者ハナカラウト思ヒマス、又ソレニ就イテ例ヲ舉ゲマス朝鮮ノ
獨立ハ東洋ノ平和ヲ永遠ニ維持スルタメニハ極必要ノモノデアルト云フコ
トデ、一昨年遂ニ宣戰ノ詔勅マデ發セラレテ遂ニ〓國ノ覊扼ヲ脫セシムルコ
トガ出來マシタ、然ラバ今後朝鮮ニ於テハ日本國ガ是ヲバ保護誘掖シテ、益ノs
文明ニ進メテ行クト云フコトハ大ナル重荷ヲ負フタルモノト見ナケレバナリ
マセヌシテ見レバ今マデノ通ニ或ハ外交官ニ於テモ、商人ニ於テモ、言葉
モ分ラズシテ互ノ狀況モ能ク分ラヌタメニ、隔靴搔痒ノ歎ヲ爲シテ居ルト云
フヤウナ有樣デアッタナラバ、十分其任ヲ盡シテ行クト云フコトハ出來マイト
考ヘマス又商人ナドノ一例ナドヲ言ッテ見レバ言葉ノ分ラヌタメニ向フ
ニ行ッテ隨分朝鮮人ヲバヒドイ目ニ遭ハセルコトガアルト云フコトハ往々
聞イテ居リマス、若シ言葉ノ分ッタル者ガ其途ニデモ居ッタナラバ、サウ云
フコトハ免レタノデアラウト思フ、ソレデ是等ノ事ハ極大切ナルコトデアラ
ウト思ヒマス、外交上ノ事ニ於テモ、又商業上ノ事ニ於テモ、極大切ノ事デ
アラウト思ヒマス又支那トノ關係ヲ申シテモ左樣デゴザイマセウ馬關條
約デ餘程コチラハ立派ナル所ノ條約ヲバ此通商上ニ於テ取結ビマシタ啻ニ
開港場ヲバ澤山開カレタバカリデナク內地ニ於テモ事業ノ出來ル樣ニナシ
久、併ナガラ十分ニソレダケノ働ヲスル人間ヲ拵ヘナイト云フコトニシタナ
ラバ丁度世ニ謂フ犬骨折ッテ鷹ノ餌食ト云フコトニナルデアリマセウ歐
羅巴諸國ハ皆最惠國條款ニ據ッテ利益ヲバ占ムルデアラウト云フコトハ、皆識
者ノ憂ヘテ居ル所デゴザイマスガ、今日ハ餘程其準備ヲバセナケレバナラヌ、
準備ヲスルニハ矢張言葉ノ能ク分ル者ヲバ作ラナケレバナラヌト云フコト
ハ是ハ極ク大切ノ事デアラウト思フツレカラ外交上ノ事ニシテモ左樣デ
ゴザイマス益〓支那トハ親密ニシナケレバナラヌト云フコトハ苟モ西洋
諸國ノ形勢ノ日ニ東洋ニ迫ッテ來ルコトヲバ考ヘタナラバ誰モ其必要ヲ感
ジテ居ルコトデゴザイマセウ、シテ見レバ、外交上ニ於テモ成ルベク互ノ情
實ノ能ク分ルヤウニ、笑ッテ話ノ出來ルト云フコトデナケレバ是亦隔靴搔
痒ノ歎ハ免レヌコトデアラウト思フノデアル、ソレカラ露西亞トノ關係ニ至ッ
テハ今更深ク說カナクトモ誰モ御承知ノ通デゴザイマスガ、若シ西比利亞
鐵道デモ出來タナラバ益*商賣上ノ事抔ハ繁劇トナルデゴザイマセウ啻
ニ商賣上ノ事ガ繁劇ト爲ルノミナラズ、日ニ益:外交上ノ事ハ切迫シテ來ル
ノデアル、是ハ決シテ前年ノ干渉一件カラ、是ガ切迫シタト云フ譯デハナク
シテ、天然ノ地形上ヨリ是ハ必要ノ事デアルト云フコトハ、能ク分リ切ッタコ
トデアル此大國ヲバ眼前ニ据ヘナガラ、十分ノ話ヲスルコトモ出來ナイト
云フヤウナコトニ至ッタノハ今迄如何ニモ手落ノコトデアッタト云フコトヲ
バ感ズルノデゴザイマス又此條約改正デゴザリマス、條約改正ノ事ハ國民
ガ總テ望デ居ルコトデゴザイマシタガ私抔ハ少シ不滿足ノ所ガアルアル
ケレドモ何ニセヨ對等條約ト云フヤウナ觀ハ爲シテ居リマス他日內地雜居
デモシマシタ時ハドウデゴザイマセウカ、是亦十分ノ準備ヲバセナケレバ
ナラヌコトデアルケレドモ此準備ト云フコトニ就イテ前年以來種々議論ノ
アッタコトデアル、或ハ語學ヲバ準備トスルハ大ナル間違デアルト云フコト
ガアッタガ唯語學バカリシテ向フノ便利バカリ計ルトカ向ガ條約面ヲ踏
破ッテ來テモ外人ハ能ク取扱ハナケレバナラヌトカ、或ハ內地雜居ノ事モ
條約ニ明ニ書イテ宜シイトカ云フコトニ至ッテハ、其頃吾ミハ反對シタコト
ガアル勿論立國ノ大義ト云フモノヲ明ニシテサウシテ此内地雜居ノ事モ
私抔ハ十分ニ云フナラバ條約面ニ書クモノデハナイト云フコトヲバ言ッタ
コトガアルノデゴザリマス今日ニナッテハ殆ド行レントスル時デアリマス
ガソレ等ノ事ハ別問題トシテ、何ニシロ立國ノ大義ト云フモノガ定マッタ
デナラバ、異人ヲ柔グルト云フコトハ是ハ又王道ノ至德デゴザイマセウワレ
成ルベク外人ニ便利ヲバ與ヘルト云フコトヲスルノハ、日本ノ外國ニ交際
ヲバスル方法デアラウト考ヘルノデアル、ソレニ就イテハ種々ナ必要ヲバ感
ズルコトガアル、或ハ警察署ニ行ッテモ直チニ話ガ出來ルトカ、或ハ郡役所
ニ行ッテモ話ガ出來ルトカ或ハ村役場ニ行ヨテモ話ガ出來ルトカ、或ハ民
間ニ於テハ旅宿ニ行フテモ、料理屋ニ行ッテモ話ガ出來ルト云フヤウナコトニ
ナレバ、大變便利ヲ與ヘルコトデアリマセウ、ソレ等ノコトモ成ルベク今日準
備シナケレバナラヌコトデアラウト思フ、唯其內外ノ別ヲバ正サナイ立國ノ
大義ト云フモノヲバ誤ルニ至ッテハ實ニ大變ノ事ト考ヘルノデゴザイマス
ソレデ之ヲバ要スルニ外交ノ局面ヲ一變シマシテ其通廣クナリ、サウシテ近
クナリマシタカラ、無事ト有事トニ拘ラズ、實ニ必要ナ事ト思ヒマス啻ニ外
交上バカリデハナクシテ先キカラ申シマス通、通商貿易ノ事ニ至ッテモ實ニ必
要デゴザリマスソレハ官吏ニモ要スレバ、會社ニモ要スル或ハ商館ニモ要
スル又普通〓育ニ至ッテモ外國語ヲ必要トスル土地ト云フモノハ段々廣マ
ル、今デハ普通〓育ニ於テハ必要トスル處ダケ、勿論ヤッテ居リマスル、是ハソ
レデ宜シイ、併ナガラ其必要トスル所ノ場所ガ廣クナルト云フコトハ、是ハ自
然ノ數デアラウト思ヒマス、サウシテ見レバ、其〓員モ矢張今日ヨリ養成シナ
ケレバナラヌト云フコトハ分リ切ッタコトデアル、ワレデ其必要ナル所ノ場所
ノ例ヲバ一寸舉ゲマス、マア外務省デ翻譯官トカ、公使館、領事館ノ書記、或ハ
書記生ト云フ者杯ハ極大切デゴザイマセウ、文部省デモ高等學校、或ハ師範學
校、中學校、實業學校、商業學校ノ語學ノ〓員ト云フモノハ益〓必要ヲ感ジテ來
マセウソレカラ大藏省デモ稅關、或ハ遞信省デモ通信局トカ、鐵道局ト
カ云フ所ハ又必要デアル、海陸軍省デモ編輯局トカ、通譯官トカ、又同省ニ
管轄シテ居ル學校ノ語學〓員モ亦必要デゴザイマセウ、ソレカラ内外國ノ
商館、內外ノ銀行、殖民會社、鐵道、保險、汽船、物產等ノ諸會社其他ノ商
業ニ從事スル者ハ最モ必要デアルソレカラマア一步進メテ言ッタナラバ
新聞雜誌ヤ或ハ著述、編輯ニ從事シテ居ル者モ段々必要ヲ感ジテ來マス是
マデハ我國ノ外國語學ヲバ修メル者ハ重ニ唯外國人ノ通辯ヲバスルト云フ
コトデ其通辯ヲシテ金ヲバ得ルト云フコトデアッタカラ、其弊ト云フモノ
ハ唯輕薄才子ノミ之ニ赴クト云フヤウナ有樣デ、殆ト世間カラ輕蔑セラレテ
居ルヤウナ有樣デアッタガ、其他ノ者ハ唯科學ヲバ〓究スルト云フ學生ニ
止ッテ居ッタヤウナ有樣デアッタノデスケレドモ、先キカラ申ス通リノ日本ノ
境遇デアッテ四方ニ雄視セナケレバナラヌト云フ境遇ニナッタナラバ決
シテソレ等ノ輕薄才子バカリニ之ヲバ委任スルコトハ出來ナイ、眞ノ俊才ト
云フモノヲバ選デ、サウシテ其成業ノ後ニハ重ナル地位ヲバ與ヘテ遣ルト
云フ望ヲ負ハセナケレバナラヌト思フノデアル唯今帝國大學ニ英、佛、獨
ノ分科ノ設ハゴザイマスケレドモ、其目的ハ高尙ナル文學デアッテ、語學ノ專
修デナイカラシテ、卒業生モ澤山ハ居リマセヌ、澤山居ラナイカラシテ、世
ノ需要ニ應ズルコトガ難イ、又高等商業學校ニモ其設ハアリマスケレドモ、
是モ商業上ニ關シタル學科ヲバ修ムルモノデ、語學ヲ專トスルコトハシナイ
カラシテ、是モ十分目的ヲ達スルト云フコトハ出來ナイ、語學ノ方ガ······又
高等學校デモヤラセルガ、是亦廣ク外ノ學科ニ渉ッテ居ルカラシテ、十分語
學ヲ專門トシテヤラナイカラ、是レ亦ソレニ達スルモノガ少ナイソレデ要
スルニソレ等ノ者ハ居ルコトハ居リマスケレドモ皆唯科學ヲバ達スルノ補
助ニ過ギナイモノデゴザイマスカラ、語學ヲバ十分流暢ニ善ク話シテ、況ヤ
ムヅカシイ議論ヲバ互ニ上下論難シテ意志ノ上ニ齟齬セヌヤウナ風ニスル
モノハ殆ド居ラナイ位デアル、居ッタ所デ僅ナモノデアル、況ヤ是スラ唯
英佛獨ニ向ッテノ話デゴザイマシテ先キカラ極ク必要、目ノ前ノ必要
ヲ感ジテ居ル、露西亞、支那、或ハ朝鮮ト云フコトニ至ッタナラバ、今日デハ
完全ナル學校モナイ、完全ナル〓員モ居ラナイト云フヤウナ有樣デアル斯
ウ云フヤウナ有樣デアッタナラバ前ノヤウニ四方ニ雄視セヤウト云フヤウ
ナコトハ殆ド翼ナクシテ飛バントスルノト同ジヤウナ有樣ニ陷ッテ居ルノ
デゴザイマス、ソレデコヽデ少シ外國語ノ學校ノ變遷ヲバ述ベテ、サウシテ
局ヲバ結バウト思ヒマスガ、我國デ外國語ヲバ〓授シタル學校ハ始ハ蕃書取
調所ト云フモノガアリマシタ後改メテツレヲバ開成學校ト云フコトニナシ
タ、始ハ英、佛ヨリ······其開成學校ハ明治二年ノ四月建テタノデ、ソレカラ
始ハ英、佛ノ二國ノ語學ヲバ置イテ後ニ獨逸ノ學校ヲバ設ケタ、ソレカラ明
治六年四月ニ生徒ヲ分ケテ上級ノモノヲバ專門科ノ生徒トシ、下級ヲバ語學
ノ生徒トシマシタ、其時課程ノ諸學ハ悉ク外國語デ〓ヘタカラシテ、學術上
ノ力ヲバ授ケルト云フコトニハ多少不便デアッタケレドモ、其語ヲ學ビ、語
ニ熟練スルト云フコトニ至ッテハ今日ヨリモ隨分優ッテ居ッタト云フコト
デアル、ソレカラ明治六年五月ニ至ッテ外務省デ建テタ所ノ獨逸、露西亞、
支那、此語學ノ〓究所ヲバ開成學校ニ合セテ之ヲバ東京外國語學講習所ト一ムッ
タソレカラ其後十三年三月ニハ新ニ朝鮮語學ノ一派モ設ケテアル、ソレ
カラ明治十四年三月カラ十五年七月ニ至ルマデノ語學生ノ總數ハ三百六十人
デアッテ、隨分其頃ハ盛ナモノデアッタノデアリマス、ソレカラ十八年ニ至ソ
テ學制上或ハ經費上ノ都合デモアリマシタラウ、ソレヲバ廢校シテ露、佛ノ
語學生ハ大〓豫備門ニ移リ、其外ノ者ハ當時新ニ建テタ商業學校ニ移スコ
トニナリマシタソレデソレ等ノ時ニ養ッタル所ノ人物ハ隨分今日政府
ニ居ッテ樞要ノ地位ヲ占メテ居ッテ役ニ立ツモノガ餘程居リマス併ナガラ
其遂ニ語學校ノ廢校ニナリマシテ、サウシテ其廢校ニナッタト云フノハ色〓
巳ムヲ得ヌ事情モアリマシタラウケレドモ、露西亞ヤ支那或ハ朝鮮等ノ語ヲ
修メタ所デ、其學生ト云フモノハ業ヲ終ヘテモ其使途ガ殆ドナカッタ、斯
ウ云フヤウナ有樣デアッタ、其頃デハ巳ムヲ得ヌコトデモアリマシタラウ
ソレデ追〓外ノ學科ニ移ッテ往クト云フコトニナッタノデアリマス、ソレデ
其頃丁度十七八年頃ニ至ッテハ殆ド外國ノ文明ヲバ入レルト云フコトガ
過度ニナッテ、所謂唯今ノ伊藤侯、井上伯ノ政略デアッテ、根底ヨリ西洋ノヤ
ウニナラナケレバ文明ノ仲間入ハ出來ナイト云フヤウナ政略ヲバ執ッタ時
分デ、或ハ踊ヲスルトカ、ドウトカ云フ有樣ニ次第ニナッタノデゴザイマ
スソレデ殆ド內外ノ別モ、立國ノ大義モ分ラヌト云フヤウナコトカラシ
テ遂ニ國粹論者ト云フモノガ出デヽ其力デ漸ク救フ······其時ニドウシテモ
救フコトガ出來ラレヌ有樣デアッタケレドモ隨分力ヲ盡シテ漸ク喰止メテ
居ッタノデゴザイマス併ナガラ其力ヲバ盡シタ所ノ極ト云フモノハ殆ド
角ヲ矯メテ牛ヲバ殺スト云フヤウナ傾ニナッタサウ云フ樣ナコトデアッタ
併ナガラ要スルニマア維新ノ大目的ハ萬里ノ波濤ヲ開拓スルト云フノデゴ
ザイマシタガ何ニセヨ始ヨリ遠略雄圖ノ國是ガ一定シナイ、始終グラノ
シテ後ニ至ッテハ西洋ノ文明ヲ入レル語學マデモ盛ニナッタケレドモ、是
ハ唯小刀細工デ、唯之ヲ用フルダケデ、語學ハ則チ輕薄才子ノ玩弄物トシ
テ居ルヤウナ有樣デアッタノデアリマスソレデ識者ハ之ヲバ遂ニ輕蔑
スル有樣ニナッタソレデ語學モ世間ニハ之ヲ誤解サレテ居リマスガ、餘程
誤用モサレテ居ッタノデアリマスナゼナラバ此語學ト云フモノハ誘導的ニ
出デズシテ始終指導的ニ出デヽ居ッタ向フノモノヲバ取ッテ、根底ヨリコチ
ラノモノニシテ改メテシマッテ文明ヲ進メルト云フヤウナ有樣デアッタカ
ラ餘程反動ヲバ惹起シ、反動ノタメニ今ノヤウナ有樣ニナッタト云フコト
デアリマシタガ、今日ニ至ッテハ先キ申シタ通ニ、步ヲ其方ニ斷タレヌヤ
ウナ有樣ニナッテ外交上ノ事モ商業上ノ事モ段々四方ニ手ヲバ擴ゲルト
云フ有樣ニナッテハ此必要ト云フモノハ日〓益ト感ズルヤウナ有樣デゴザ
イマスソレデ今申シタル所ノモノハ卽チ六箇國ノ語デゴザイマスルガ、
旣ニ御承知ノ通、臺灣モ我ガ版圖ニナッテ、サウシテひりつぴん群島モ近ク
ナッタ以上ハ、西班牙語ト云フモノモ必要デアラウト思フ、又伊太利語モ隨
分必要デアラウト思ヒマス、ソレデ是等ノ事ハ少シヅヽハ民間デヤッテ居リ
マスケレドモナカ〓〓始メノ間ハ決シテ民間ノ薄資ヲバ以テ、立派ナコト
ハ出來得ラレマセヌソレデ是ハ國家ガドウシテモヤラナケレバナラヌコ
トデアラウト思フノデアルソレデ西洋ノ方ニ於テモ餘程隔ッテ居ル所ノ
東洋諸國ト云フモノヽ語學校モ立テヽ居ルト云フコトハ決シテ是ハ物好キ
ニヤッテ居ルノデハナカラウト思ヒマス餘程遠略雄圖ニ一定シタル所ガ
アッテ始終變ラナイト云フコトガアルカラデゴザイマセウ吾〓ハ露西亞
ヲバ眼前ニ備ヘテ、サウシテ支那ヲバ眼前ニ備ヘテ、又朝鮮モ保護シナケレバ
ナラヌ誘掖シナケレバナラヌト云フコトガ眼前ニアルニモ拘ラズ、今日マ
デ今迄ハアッタ所ノモノヲ廢セラレテ、極ク必要ヲバ感ズル所ノ今日ニ
此學校ノナイト云フノハ實ニ遺憾千万ナルコトヽ考ヘマス、ソレデ、其
經費ニ至ッテモ極多額ヲバ要スルコトデモナシ、其事ノ必要ト云フコトハ益〓
感ズル今日デゴザイマスカラ、是ハ成ルベク早ク設立アランコトヲバ偏ニ
希望致シマスサウシテ其學校規程ノ要領、又ハ學科表ト云フモノハ茲
ニ備ヘテ居リマスガ、是ハ唯ニ當局者ノ參考ニ備ヘルコトデアリマスカ
ラ成ルベク此標準ニ依ッテ立テラレタイト云フコトヲ希望致シマスル併
ナガラ外ノコトニモ隨分金モ掛ル今日ノコトデゴザイマスカラ、成ルベク金
ガイラズシテ其目的ヲバ達スルヤウナ方法ガアルナラバ、其通リセラレテモ
差支ナカラウト思ヒマスル一寸高等商業學校ノ〓員カラ聞イタ所デモア
ノ學校ニ合併シテヤッテモ隨分行レサウダト云フコトハ、其後是ヲバ提出シ
タ後聞イタコトモアリマスガ、ソレ等ノ事ガ出來ルナラバコレ等ノ事モ一切
當局ノ意見ニ任セテ決シテ差支ナカラウト思ヒマスガ、成ルベク諸君モ御贊
成下スッテ、速ニ通過セラレンコトヲバ偏ニ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=50
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051・小幡儼太郎
○小幡儼太郞君(二十一一番) 大體ハ贊成デゴザイマスガ、此標準ノ所ニ於テ
少シク疑點ガゴザイマス、卽チ此事ハ委員付託ニナリマセウガ先ヅ御發議ノ
御意見ノアル所ヲ承リタイト思ヒマス此各語學悉ク〓授二名ト爲ッテ居リ
マス卽チ〓國ニ於テモ韓國ニ於テモ二名、然ルニ本邦現今〓國ノ新開貿易
場ハ餘程廣ウナッテゴザイマスルデ、其地方語學ハ或ハ三種四種ニモ分レテ
居ルト考ヘマスル、然ルニ朝鮮語學ガ二名デ擔任出來マスルソレヲ至當ト
シマスレバ、〓ノ〓授モ二名ニシテ〓授スルト云フコトガ出來マスルカ、其事
ヲ御尋申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=51
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052・柏田盛文
○柏田盛文君(百四十七番) 朝鮮語ノ〓員丈ガ少ナクシテ時間ヲ澤山持ッテ
居ルカラサウ云フコトハ出來マイト云フ御尋デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=52
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053・小幡儼太郎
○小幡儼太郞君(二十二番) 矢張〓國デゴザイマス支那デゴザイマス、韓
語ニモ二名、所ガ、韓國ノヤウニ小サイ國ノ所デモ二名三名ナケレバナラヌ
〓國ノヤウニ數種ノ語學ヲ〓授シナケレバナラヌモノデモ、矢張二名デ出來
ルト云フコトデアルカト云フ御尋デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=53
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054・柏田盛文
○柏田盛文君(百四十七番) ソレハ出來ル積デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=54
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055・吉本榮吉
○吉本榮吉君(八十二番) 是ハ議長指名ニシテ、九名ノ委員ニ付託セラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=55
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056・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 吉本榮吉君ノ動議、九名ノ委員ニ付託スルト云フ、尤
モ議長指名ニ御異議ナシト認メマスル-次ハ日程ノ第八、區裁判所管
轄區域變更法律案-朗讀ヲ省キマスル
第八區裁判所管轄區域變更法律案第一讀會
(坪田仁兵衞君外三名提出)
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲メ茲ニ揭載ス〕
明治二十三年法律第六十二號裁判所位置及管轄區域表中武生區裁判所管轄
福井縣丹生郡越廼村殿下村上岬村下岬村ノ四箇村ヲ福井區裁判所管轄ニ變
更ス
此ノ法律ハ明治二十九年四月一日ヨリ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=56
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057・久保九兵衛
○久保九兵衞君(八十五番) 私ハ此區裁判所管轄區域變更法案ヲ提出致シマ
シタ聞ク所ニ依レバ政府カラ今囘此法案ヲ提出サルヽト云フコトヲ承ッ
テ居ル其時マデ此決議ヲ延期ヲセラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=57
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058・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 久保九兵衞君ノ動議、政府案モ遠カラズ出ヅルト云フ
コトニ承ル、其事ノ確實ニナルマデ決議ヲ延期シタイト申ス提出者ノ意見デ
ゴザリマス
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=58
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059・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 然ラバ延期ニ決シマスル-明日ノ日程ヲ報ジマスル
〔佐脇書記官朗讀
議事日程第十號明治二十九年一月十七日(金曜日)
午後一時開議
第新聞紙法案(政府提出)第一讀會
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選擧
第三郡制改正法律案(多田作兵衞君外六名提出)第一讀會
第四府縣制改正法律案(多田作兵衞君外六名提出)第一讀會
第五近世史料蒐輯ニ關スル建議案(鈴木重遠君外
三名提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=59
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060・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ニテ散會ヲ報ジマスル
午後二時二十九分散會
衆議院議事速記錄第七號正誤
頁段行誤正頁段行誤正
一一四上四二一万七千九十一万七千九百一一四上四六六十六五十六
二五十二
衆議院議事速記錄第八號正誤
頁段行誤正頁段行誤正
一二三上三〇形以下議論形以下ノ議論一二四上二三近イコトハ近イコトヲ言
ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X00918960116&spkNum=60
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