1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治二十九年一月二十七日（月曜日）午後一時十八分開議
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議事日程 第十三號 明治二十九年一月二十七日
午後一時開議
第一 國債證劵買入銷却法案（政府提出） 第一讀會の續（特別委員長報告）
第二 新聞紙法案（政府提出） 第一讀會の續（特別委員長報告）
第三 新聞紙法案 第一讀會の續（特別委員長報告）
第四 明治二十三年法律第五十號民事訴訟法施行條例中削除法律案（草刈親明君外三名提出） 第一讀會
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001・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 諸君、是ヨリ報〓ヲ致シマスル
〔佐脇書記官朗讀〕
高木正年君ヨリ海軍擴張ノ程度ニ關スル件ニ付政府ヘ質問書ヲ提出セラレ
タリ
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
鑛業法案
提出者中村彌六君平岡浩太郞君
特別委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
市町村立小學校〓員年功加俸國庫補助法案
審査特別委員長肥塚龍君
同理事金岡又左衞門君
森林法案審査特別委員長櫻井勉君
同理事齋藤良輔君
特別委員左ノ通リ指名セリ
明治二十八年勅令第百四十四號審査特別委員
須藤時一郞君千葉禎太郞君工藤行
阪田昌熾君平岡浩太郞君富永正吉 男 幹男君君君
栗原亮一君高田早苗君市島謙
司法官試補實地修習期間ニ關スル法律案審査特別委員
山田泰造君平田箴君澁江公寧君
守屋此助君重岡薰五郞君鳩山和夫君
竹內正志君谷澤龍藏君鎌田勝太郞君
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ掲載ス〕
海軍擴張ノ程度ニ關スル質問
右成規ニ據リ提出候也
明治二十九年一月二十五日
提出者高木正年
贊成者名倉次
外三十名
海軍擴張ノ程度ニ關スル質問
海軍ノ擴張ハ造船術ノ發達ヲ以テ擴張ノ根底ト爲サヽルヘカラス然ルニ政
府ハ僅ニ造船ニ關スル小計畫ヲ爲スノミニシテ充分ナル設計ヲ爲サヽルハ
如何
造船擴張ノ準備中尤モ年所ヲ要スルハ職工ノ養成ナリトス然ルニ政府ハ之
カ準備ノ法方ヲ講セサルハ如何
職工ノ養成ハ其始ニ之ヲ習ハシムルニ止マラス永ク之ヲ補成シ且ツ練熟シ
タル技術者ヲ保育スルヲ要ス然ルニ海軍造船所ノ例規トシテ一定ノ年限ヲ
限リ其定限ニ至レハ假令技術ノ練達壯者ニ勝サルアルモ例規上之ヲ解放ス
ルカ故ニ職工生徒ハ其學習課ヲ竟リ僅々ノ年月ヲ經レハ他ニ吸收セラレテ
滿足ニ其技術ヲ應用スル能ハス政府ハ何故ニ之カ奬勵ノ道ヲ設ケテ之カ勤
續ヲ欲セサルヤ如何発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=1
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002・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、政府ニ質問ノ辯明ガゴザイマ
ス、高木正年君
〔高木正年君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=2
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003・高木正年
○高木正年君(百二十九番) 私ハ海軍ノ擴張ノ程度ニ關係致スコトニ就イテ
質問ヲ呈シマシタ此事ニ就イテ少シク御話セネバナラヌコトガゴザリマ
入、一體此自分ガ今日政府ニ向ッテ提出シマシタ質問書ノ要用ナル事柄ハ
本年度ノ豫算ヲ議シマスニ方リマシテ、最モ必要ナル事柄デアルト自分ハ思
フテ居ルノデゴザリマス、デ其要〓ハ三ツ程アルノデゴザリマス第一
ガ海軍ノ擴張ト云フモノハ、一體經常ノ時ノ性質カラ申シマシタナラバ將
來ハ日本ト云フ國ノ獨力デ製造ト云フモノヲ全クセネバナラヌト云フコト
ガ今日最モ必要ナ問題デアル、此問題ニ就イテ政府ハ如何ナル準備ヲ致シ
テ居ルカト云フトデス、或ル部面ニ向ッテハ擴張ヲ爲シテ居ルガ如クデゴザ
リマスルガ、實際之ヲ考ヘテ見マスルト、總テノ準備ニ於テ大體ノ方針ガ揃〃
テ居ラヌト云フコトガ、私ノ認メテ缺〓ト思フ所デゴザリマス、今一ツニ
ハ造船ト云フモノハ如何ナルモノガ最モ最要部分デアッテ、其最要部分ニ
就イテ、政府ハ如何ナル方針ヲ執ッテ是ガ準備ヲ致シテ居ルカト云フコトヲ
尋ネマスルト、職工ノ養成ト云フモノニ向ッテハ、甚ダ吾ミガ見テ十分ナル
準備ヲナシテ居ラヌト云フコトガ認メラレルガ第二デゴザイマス、今一ツ
ハ職工ノ養成ト云フコトヲ既ニ必要デアルト認メタ以上ハ、職工ヲシテ長
ク此造船事業、若クハ兵器ノ製造ト云フ上ニ於テ之ヲ養ヒツヽ、且ツ之ヲ奬
勵保護スルト云フコトヲセネバナラヌガ、海軍ノ今日ハ此點ニ向ヒテ大ナル
缺〓ガアルト云フコトハ、卽チ此三ツヲ認メテ缺〓ト爲ス所デゴザリマス、
段々委シキ事實ハ申シマスルガ、先ヅ大體ニ於テ私ガ今日申サネバナラヌト
云フコトハ、日本ノ海軍ノ形勢ト云フコトハ、確ニ二十七八年ノ戰爭以後ニ
於テ一變致シテ居ルト云フコトヲ申サネバナラヌ、今更繰返シテ申スモ、旣
往ノ悔ヲ述ブルニ過ギマセヌケレドモ、若シ遼東半島ト云フモノガ日本ノ範
圍ノ內ニ今日以後存シテ居ルナラバ、隨分陸軍ノ力ノミデモ、東洋ノ覇權ヲ
握ルコトガ出來ルノデアラウト思フノデゴザリマス、サリナガラ東洋ノ覇權
ト言ハンヨリ寧ロ平和ヲ維持スル所ノ根據ト爲ル所ノ占領地ト云フモノ
ハ却テ之ヲ支那ニ返シタニアラズシテ、今日ハ他國ノ手ニ委シタト云フ今
日ノ危ムベキ形勢ニ於テハ、以前ハ免モ角モ今日以後ハ則チ海軍其モノヽ
力ガ第一ノ働ヲ爲サネバナラヌ、第一ノ根據ヲ作ラネバナラヌト云フ今日ノ
形勢デゴザリマス、此場合ニ於テ、海軍ノ擴張ト云フモノハ第一ト第二ノ手
段ニ由ラネバナラヌ、第一ハ何デアルカト云フト、卽チ臨機ノ處分デゴザリ
ママ、卽チ造船ト云フモノハ日本其モノガ製造スルガ利益ト云フコトヲ認
メテ居ルニモ拘ラズ、此場合ニ於テ他國ニ依賴シテ製造セネバナラヌト云フ
臨機ノ處分ガ出テ來ルノデゴザリマス、今日ハ專ラ手段ニ依ッテ政府モ議案
ヲ發シテゴザリマスルガ、自國ノ造船ハ未ダ準備ガ出來ナイト云ッテ、其準
備マデ怠ルト云フコトノ一段ニ至ッテハ私ノ痛歎ニ堪ヘナイ所デゴザリマ
ス、本年度ノ豫算ノ上ニ現レタ所ノ製艦費ハ、如何ナル性質ヲ持ッテ居ルカ
ト云フト、二十九年度ニ於テ現レタ議案ノ中デ、日本帝國ノ力デ以テ製造ス
ルモノハ唯僅ニ一艘ノ軍艦デゴザリマス水雷ニ關係シタ船ハ澤山出來テ
居リマスルガ、卽チ戰鬪ノ力ヲ持ツ所ノ船ハ確ニ僅ニ一艘デゴザイマス、本
年ハ是等ノ準備ガ十分ナラザルカラト云ッテ、此事ハ巳ムヲ得ザルト申シテ
宜シイカト考ヘテ見マスルト、初メ申シタ如ク、準備ノ出來ナイト云フコト
ヲ土臺ニシテ、尙ホ準備ヲ怠ルト云フハ、抑〓大體ニ於テ、國家ノ最大要務タ
ル所ノ軍備ノ大體ヲ誤ルモノト言ハネバナラヌト私ガ思フノデゴザリマス
ル造船ト云フモノハサウ俄ニ出來得ルモノデゴザリマセヌ、財源ヲ造
リ、之ニ向ッテ材料ノ購入ヲナスト云フノデモ一年ノ日子ハ或ハ盡ルコト
ガゴザリマス、本年ニ於テ準備ガ屆カヌトカ申シテモ、僅ニ一艘ノ設計ノミ
ヲ爲スト云フコトハ、是レ亦怠ルノ甚シイモノト私ハ申サネバナラヌノデゴ
ザイマス、大體ノ計畫ノ上ニ就イテ斯ノ如ク私ノ認メテ遺憾ト爲ス所ノ決心
アルノミナラズ、一體擴張ト云フ文字ハ如何ナル意味ニ解スルガ一番至當デ
アルカト申シマスルト、例ヘバ陸軍ノ事デ申シマシタ所ガ六師團ガ十二師團
ニナッテ、直チニ擴張ニナッタト云フコトハ言葉デ言得ルコトデゴザリマス
ガ、事實ニ於テハ決シテ眞ノ擴張ト申スノデゴザイマセヌ、何時タリトモ五
十万ノ兵、六十万ノ兵ヲ直チニ揃ヘテ、日本全國ノ人ガ國ト云フモノヽ上
ニ就イテ熱血ヲ濺イデ、一號令ノ下ニ直チニ集ルト云フ準備、若クハ是等
ノ要素ガ備ツテ、始メテ擴張ト云フ文字ノ完成ヲ期スルノデゴザリマス、唯豫
算ノ上ニ金額ガ出タノデ、卽チ擴張ト云フ事實ヲ備ヘタノデゴザリマセヌ、
海軍ノ擴張ニ於テモ則チ其通デゴザリマス軍艦ノ製造ガ經常費ニ現レタノ
ミリ、擴張ト云フ事實ガ舉ルノデゴザリマセヌ、卽チ總テノ準備、總テノ分
子ガ揃フ後ニ於テ、始テ擴張ト云フ事實ガ完成致スノデゴザリマス、丁度二
十四年ノ時分ノ議會デゴザリマシタ、私ハ屢ゝ當時豫算委員デゴザリマシタ
ガ政府ニ對シテ申シタコトガゴザリマス、一體製造ノ上ニ就イテ何ガ一番
要用デアルカト云フト、職工ノ養成程要用ナモノハゴザリマセヌ、一體技術
ト云フモノハ、字書ニ依ッテ解釋シ得ラルヽモノニ於テ、始テ熟達致スデア
リマセヌ、實地練習シテ而シテ後ニ、技術熟成ト云フモノガ成ルノデゴザリ
やく、一ノ金巾ヲ織ルニシテモ外國ノ金巾製造所ガ漫ニ人ニ見セルコトヲ
嫌フハ何デアルカト云フト、所謂文字ノ以外ニ、職工ノ自ラ見ル所、自ラ慣
ルヽ所ニ依ッテ技術ノ熟成ト云フモノヲ期スルト云フコトヲ知ッタ以上ハ、海
軍ノ造船所ノ完成ト云フモノモ、須カラク職工其者ノ練達トヲ來タサシムル
途ヲ講セネバナラヌ、一人ノ技師ハ三艘、四艘ノ設計ヲ造ルコトハ出來マスケ
レドモ、一人ノ職工ハ一ノ艦船ヲ造ルコトガ出來ナイ、其部門々々ニ當シテ熟
練ノ者ヲ當嵌メテ、始テ艦船ヲ製造シ得ルモノデゴザイマス、之ニ附イテ私ノ
政府ニ申シタノハ斯樣ナ意味デゴザイマシタ、今製造ト云フコトニ附イテ生
徒ヲ派遣シタトテ、容易ニ外國ノ製造所ハ之ニ向ッテ〓ユルコトハ爲サナイ筈
デアル、此邊ハ其製造所製造所ノ專賣デアルカラ、容易ニ窺フコトハ出來ナイ
筈デアル、金巾ノ製造所ニ日本人ガ往ッテモ入レナイト同樣デアリマス、サリ
ナガラ日本ガ軍艦ヲ製造スルニ當ッテ、此軍艦ニ附ケテ軍艦ノ見習トシ、水
夫ノ名義ニテモ火夫ノ名ニテモ多クノ職工ヲ派遣セシメテコソ、政府ガ製造
セシムル造船ニ附イテ練達ノ途ヲ開カバ如何ナル製造所ニテモ拒ムコトハ
出來ナイ筈デアル、故ニ生徒ヲ養ヒ、生徒ヲ熟達セシムルコトヲセシメタナ
ラバ、日本ノ造船ハ早ク整フデアラウト云フコトヲ申シタノデゴザイマス
然シテ今日海軍ノ造船部ニ於テ、斯ノ如キコトハ未ダ十分ニ爲シテ居ラヌノ
デゴザイマス、唯僅ニ老ーめんす式製鋼ニ附イテハ佛蘭西ニ生徒ヲヤッタ
ト云フコトハ事實デゴザイマスガ、十分ノ成績ガ舉ガッテ居ラヌコトモ事實
デゴザイマス、斯樣ナ方法ニシテ生徒ヲ養ヒツヽアルナラバ、他日第二ノ計
畫トシテ日本的造船ノ十分ニ擴張シ得ラルヽ時ノ間ニ合フニモ拘ラズ、今日
ハ第二ノ擴張準備ヲ爲サナイト云フコトハ、甚ダ自分ノ遺憾ニ思フ所デゴザ
イマス、デ、第三ニ唯今申シタ如ク、生徒ノ養成ト云フコトヲ旣ニ必要デア
ルト云フ以上ハ、此生徒ヲシテ-得業生トシテ長ク造船所ニ留メルト云フ
コトヲシナケレバ、折角卒業サセテモ、イツデモ其職工ガ逃グテ往クト云フ
コトデハ到底滿足ナル技術ヲ保存スルコトガ出來ザルノミナラズ、造船所
其モノモ實效ヲ舉ゲルコトガ出來ナイ、海軍ニハ斯樣ナ事實ガアル、造船所ニ
於テ、一ハ一定ノ年限ヲ定メテ四十又ハ五十ニ至レバ職工ヲ解放スルト云フ
事實ガアリマス普通ノ製造所デゴザリマスレバ、四十以上五十ニナレバ、
縱令壯者ノ資格ガナクモ其熟練ニ依ッテ却テ之ヲ增給シテ使フトカ、若クハ
監督者ノ位地ニ立タシムルト云フ、種々使用法ニ依ッテ、是等ノ人ノ永年忠勤
シタ所ノ事柄ヲ奬勵シ、若クハ其技術モ長ク其造船所若クハ製鐵所ニ於テ便
利ニ供スルコトガ出來ルノデアル、海軍ハ縱令技術ハ宜クテモ年限ニ至レバ
解放スルト云フタメニ、造船所ニ養フ所ノ職工、生徒ハ何時デモ少シク手間
ガ取レルヤウニナレバ逃ゲテ行クト云フノハ今日ノ事實デアル、何故ナレ
バ海軍ニ居ルヨリモ私立ノ造船所若クハ製鐵所ニ居レバ長ク自分ノ飯ヲ食
フコトニ困ラヌコトデアルガ、海軍ニ居レバ解放サレルト云フノデ、居ッテ
モ詰ラヌト云フノハ人情ノ然ラシムルコトデゴザイマス、始ニ申シマスル如
〃海軍ノ擴張ト云フコトハドウシテモ日本其モノガ自分ノ力ニテナケレバ
ナラヌト云フコトガ、大體海軍ノ擴張ノ骨子デアルト考ヘタナレバ、卽チ造
船ト云フコトニ附イテ、以來之ヲ〓究シナケレバナラヌ、造船ノ準備ニ付イ
テハ熱心之ヲ擴張シナケレバナラヌノデゴザイマス一體日〓戰爭ト云フモ
ノハ實ニ日本其モノヽ海軍技術ノ上ニ賜ッタ所ノ一ノ特典デゴザイマス、
何故ニ斯樣ニ申シマスルカト云フト、海軍ノ近來ノ大戰爭ト云フモノハ殆ド
日〓ノ戰爭ヲ措イテ外ニ其例ガナイノデゴザイマス、僅ニ智利ノ變亂、少時
間ノ戰爭位ニ止ッテ、大體海軍技術ノ發明若クハ將來ノ經驗ト認ムベキモノハ
則チ二十七八年度ノ戰爭ニ過ギナイノデゴザイマス、海軍ノ造船ハ實ニ最モ
至難ノ事柄デゴザイマス、之ガ普通ノ商船抔デゴザイマスレバ唯速力サヘ
早クシ、及經濟ノ點ニ於テ償フモノガアレバ、則チ造船ノ方法ガ立ツモノデ
ゴザイマスガ、戰鬪用ノ造船ハ左樣ナ容易ナモノデハゴザイマセヌ、諸君モ
知ラルヽ如ク軍艦ニハ三ツノ性質ハ持タネバナラヌ、所謂裝甲卽チ鋼鐵ノ厚
キコトヲ望ムコト、今一ツハ兵器ノ十分ニ満載スルコト、卽チ戰闘用ノ器械
十分備ルコト、今一ツハ速力早キコト、又速力ニ附イテ今一ツ申スベキコト
ハ卽チ石炭ノ維持力デアル、之ニ浮泛力卽チ軍艦ヲ浮ベル力ヲ持タネバナ
ラヌ此三ツノモノ······此三ツノモノハ互ニ矛盾スルト云フ性質ヲ持ッテ居
ルノデゴザイマス、鋼鐵ヲ厚クスレバ船ヲ浮ベル力ガ少ナクナル、石炭ノ維持
力ヲ高メレバ、則チ大砲ヲ載セルト云フ所ノ噸ヲ減ズルノデゴザイマス、斯
樣ニ弱〓多キモノガ則チ軍艦製造其モノヽ性質デゴザイマスカラ、何レノ軍
艦ニモ互ニ少シク缺〓ハアルノデゴザイマス、況ヤ無經驗ノ間ニ唯技術ノ進
步ヲ爲シタ所ノ製造所デゴザイマスカラ、此日〓戰爭ニ依ッテ發明セラレ
タ所、經驗セラレタモノハ澤山アルノデゴザイマス、若シ之ヲ唯日本國ガ此
戰爭ニ依ッテ經驗シタリトシテ、唯他國ニ製造セシメンカ、日本國ガ多ク
熱血ヲ濺ギ、多ク國貨ヲ費シタ結果ハ他國ニ向ッテ發明ノ材料ヲ與ヘタニ過
ギナイデアリマス、何レノ船ニモ弱〓ガゴザイマス、此弱〓ヲ彼ニ知ラシ
テ、他日戰爭ノ時ニ及ンデ若シ其製造ヲ託シタ國ガ、若シ敵國ニナッタナラ
バ、非常ニ不利ヲ見ルノデゴザイマス、自ラ是等ノ掛引ヲ爲シテ、之ヲ巧ニ利
用シテ始テ日本帝國ノ海軍ノ万歲ハ謳ヘルノデゴザイマス、サリナガラ今日
ハ非常ノ時デ、臨機ノ處分トシテ外國ニ誂ヘナケレバナラヌト云フ、巳ムヲ
得ザル手段ヲ執ラナケレバナラヌ時デアル、第二ノ擴張トシテ準備成ラザル
ヲ口實トシテ、是等ノコトヲ怠ルノハ大失策ト言ハナケレバナラヌ、是等ノ
準備ハ先ヅ第一著ニ著手シナケレバナラヌ卽チ其要點ハ職工ノ養成ニ在ル
ト云フコトガ、私ハ此質問書ニ對スル辯論ノ趣意デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=3
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004・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ヨリ議事日程ノ第一、國債證券買入銷却法案ノ第一
讀會ニ移リマスー箕浦勝人君
第國債證券買入銷却法案(政府第一讀會ノ續(
提出)(長報告
〔箕浦勝人君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=4
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005・箕浦勝人
○箕浦勝人君(百四十二番) 國債證券買入銷却法案ノ委員會ノ意見ヲ御報道
致シマス、此案ハ國債ヲ銷却スルニ方ッテ現行ノ如ク之ヲ籤抽ヲ以テ銷却ス
ルバカリデナク、其外ニ更ニ公債ヲ、買入レテ銷却スルト云フ方法ヲ加ヘテ、
之ヲ併セ用ヒタイト云フ案デアリマス、之ヲ審査スルニ當ッテ第一ニ講究ヲ
シマシタノガ元來是マデノ公債ヲ募ル時ニ方ツテ、始カラ公債ヲ買入レ銷
却スルコトモアルト云フコトニ定ツテ居レバ一モ二モナイコトデアルガ、サ
ウデハナクシテ、今日マデハ必ズ籤抽ヲ以テ銷却スルト云フコトニ規定シテ
アル然ルニ中途カラ買入銷却ト云フ一ツノ方法ヲ用ヒヤウト云フコトデア
ルカラ、ソレガタメニ或ハ公債ノ所有者ニ對シテ不正-正道ニ違ヒタル所
爲ニ當ルコトハナイカト云フコトヲ穿鑿ヲシテ見マシタガ、若モ是ガ政府ガ
一ツノ價ヲ定メテ無理往生ニ其價ニ依ッテ買上ゲルナレバ是ハ甚ダ不正ノ
所爲デアルサリナガラ此法案ノ所爲ハ左樣デハナクシテ、詰リ市場ノ相場
ニ依ッテ公債ノ所有者ガ何程ノ價デ賣リタイト云フ賣物ヲ出シタ時ニ、政府
ハ其價ニ依ッテ買フノデアリマスカラ、決シテ無理往生ニ買フト云フノデハ
ナシ强制的ニ買フト云フノデナクシテ、所謂市場ノ相場デ任意ノ相場ニ依ッ
テ買フト云フ、公債ヲ賣リタクナイト云フモノヲ無理ニ買フノデナクシ
テ、幾ラデ賣リタイト云フテ市場ニ持出シタモノヲ買フノデ、公債ノ賣主ガ
主動者デ、政府ハ受動-受ケ身ニナルノデ、斯ウ云フ譯デアルカラ決シテ
所有者ニ對シテ正道ニ違フタル所爲デハナイト云フコトハ明デアル、サウシ
タ所デ此法案ノ結果トシテ、或ハ公債ノ所有者ニ大變迷惑ヲ掛ケルヤウナコ
トハナイカト云フコトヲ、次ニ穿鑿ヲシマシメガ是モ大抵迷惑ヲ掛ケルト
云フコトハナイヤウデアリマス、若モ政府ガ公債ヲ買フノデナクシテ無闇ニ
公債ヲ賣出スト云フコトデアレバ、公債ノ價格ガ下ル、下ッテ公債ノ所有者
モ困ルカモ知レナイ、併シ是ハ反對デ政府ガ買フト云フ働ノ結果トシテ、公
債ノ價ヲ維持スルコトガアッテモ下ルト云フコトハナイ譯デアル、唯斯ウ
云フ一ツノ說ガアル、政府ガ公債ヲ買ハウト云フ時ハ、必ズ公債ノ價格ガ額
面以下ニ大ニ下ッタ時デアル、其時ハ公債所有者ハ今公債ノ所有者ハ下ッ
テ居ルガ、若シ籤抽ニナッテ籤ニ當レバ、額面ダケノモノガ得ラレルト云フ
コトヲ望ンデ居ル、其望ヲ丸デ打壞シテ仕舞フト云フコトハアル、斯ウ云フ
コトガアリマスガ、併ナガラ幾ラカサウ云フ事情モアリマセウ、公債ノ下ッ
タ時ハ籤當リニナレバ額面ダケノモノハ貰ヘルト云フ、萬一ヲ僥倖スルト云
フ望ノ者モ幾ラカアルカモ知レナイ、併ナガラ其場合ニ政府ガ公債ヲ買入レ
ルト云フコトニナリマスト云フト、言ハヾ公債ノ價ニ底ヲ入レルト云フコト
デ、公債ガ段々下ッテ來ル、ソコデ此時ニ政府ガ買フカラ底ガ這入ッテ餘リ
下ラナイデ、公債ノ價ヲ維持スルト云フコトニナル、サウスルト價ヲ維特シ
タタメニ利益ヲ蒙ル人ハ大層多クテ、万一ヲ僥倖スルト云フ者ハ極少ナク、
例ヘバ公債ガ三億七千万圓アルトシマシタ內デ、七百万圓ダケ公債ヲ償還シ
ヤウト、サウスルト三億七千圓ニ對スル七百万ダカラ、丁度三百七十分ノ
七、籤當リノ万一ヲ僥倖スルト云フ者ハ唯僅ニ七デアッテ、公償ノ價ヲ維持
スルタメニ利益ヲ蒙ル者ハ三百七十ト云フコトハ明ニナルカラシテ、無論万
一ヲ僥倖スルト云フ僅ノ者ヨリモ、公債ノ價ヲ維持シテ其利益ヲ蒙ルト云フ
者ノ方ガ多イト云フコトハ明デアル、右樣ナ次第デアリマスカラ、別段ニ此
公債ノ所有者ニ迷惑ヲ掛ケルト云フコトハナイ、勿論此法案ヲ發スルト云フ
コトハ決シテ公債ノ價ヲ維持スルト云フ目的ヲ以テ發スルノデハナクシ
テ、詰リ害ノナキ仕方ニ於テ國庫ガ幾分カ利益ヲ得ルコトガ出來ルナラバ、ソ
レヲ得ヤウト云フダケノコトデアッテ、ソレヲ偶〓公債ノ價ヲ維持スルト云
フコトガアレバ、是ハ偶然ノ結果デアッテ、此法案ノ望ム所ノ目的デハナ
イ、要スルニ餘リ此法案ノ效能ハ多クハナイカモ知レマセヌ、效能ハ多クナイ
カモ知レマセヌガ、併ナガラ此法案ヲ行フタカラト云フテ何モ外ニ害ガナ
イ、差支ハナイ、差支ガナイナラバ效能ハ少ナクトモ、少シデモ國庫ニ利益
ヲ與ヘルト云フ働ヲ與ヘルト云フコトハ極テ然ルベキコトデアル、ソレデ
公債ノ下ッタル場合ニ、是ヲ買入レテ銷却スルト言ヘハ始メ豫算ニ極メタ
金額ヨリモ餘計ナ金ヲ銷却スルコトガ出來ル、七百万ヲ銷却スルト云フ場合
ニ五圓下ッタトシテモ五、七、三十五万圓ダケ餘計銷却スルコトニナル、斯
ウ云フ勘定ニナル、若モ此後公債ガ下ッテ、此法案ヲ適用スルト云フ機會ガ
多ク起ルカ起ラナイカト云フコトハ是ハ銘々ノ見込デゴザイマスガ、左樣
ナ場合ガ起ルカ起ラナイカト云フコトハ、何トモ申サレマセヌガ、マア餘リ
此法律ガ出來タカト云フテ、國庫ガ非常ナ利益ヲ受ケルト云フコトハ無論ナ
イコトデアルト思フ、サリナガラ公債ノ下ッタ場合ニ於テハ、幾分カ利益ヲ
受ケルニ就イテハ、其利益ノ幾分カノ利益ヲ受ケルタメニ、少シデモ公債ノ所
有者ニ對シテ正道ヲ失フト云フヤウナ所爲ニナリ、或ハ其利益ヲ害スルト云
フヤウナコトガアレバ宜シクナイデアリマスガ、ソレノナイ以上ハ、害ノナ
キ仕方ニ於テ國庫ニ利益ヲ與ヘルト云フコトハ差支ナカラウト云フコトガ、
委員會ノ意見デアリマスソレダケヲ御報道致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=5
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006・眞下珂十郎
○眞下珂十郞君(二百四十二番) 一寸質問致シタイ、唯今委員長ノ述べラレ
ル所ニ依ッテ見ルト三億七十万ノ公債ガ出テ居ル、其公債ニ對シテ安クナッ
タ時分ニ政府ガ買上ゲルト云フコトデアレバ、公債ノ價格ト云フモノガ騰ル
カラ利益ヲ得ル公債ノ所有者ニ異議ガナカラウト云フコトデアル、併ナガラ
三億七千万ト云フ金、其所有者ト云フモノハ其利子ト云フモノヲ以テ目的ト
シテ募集ニ應ジテ居ル、旁〓致シテ居ルノデアリマスカラ、其高クナッタ時
ハ買上ゲナイ安クナッタ時ハ買上ゲルト云フコトデアリマスト、或ハ少シ
我儘ト云フコトハナイカ、其〓ハドウカ御話ガアリマシタカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=6
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007・箕浦勝人
○箕浦勝人君(百四十二番) ソレハ我儘ノコトハナイト云フコトノ決議デア
リマシタ詰リ公債ヲ買フト云フテモ無理往生ニ買フノデナクシテ、賣リタイ
ト云フ人ガアル時其時ニハ買フト云フ丈デ、少モ公債ガ所有者ニ對シテ何等
ノ迷惑ヲ掛ケナイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=7
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008・眞下珂十郎
○眞下珂十郞君(二百四十二番) ソレハ公債ノ所有者ガ差支ガナイト云フコ
トナラバ宜シイガ、併シ安クナレバ買フガ、高イ時ハ買ハヌト云フコトニ就
イテハ·····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=8
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009・箕浦勝人
○箕蒲勝人君(百四十一一番) 高クナッテ買フト國庫ガ損ヲスル、サウ云フ不
必要ナ損ヲ國庫ガ蒙ルト云フ必要モナイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=9
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010・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 例ニ依ッテ決議ヲ採リマス、該案ニ對シテ二讀會ヲ開
クニ同意ノ諸君ハ起立
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=10
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011・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 大多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=11
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012・吉本榮吉
○吉本榮吉君(八十二番) 是モ簡單ナモノデアリマスカラ、讀會ヲ省略シテ
直ニ確定セラレンコトヲ望ミマス
(「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=12
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013・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 吉本君ノ直ニ讀會ヲ省略シテ確定ヲ要スルト云フ····
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=13
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014・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 御異議ナシト認メマスル、ソコデ又該案ニ對シテモ、別
段問題ニ供スルニ御異議ナシト認メテ宜シウゴザイマスカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=14
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015・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 全會一致ヲ以テ確定致シマス、次ハ日程ノ第二、新聞
紙法案ノ一讀會ノ續、委員長肥塚龍君
第二新聞紙法案(政府提出)第一讀會ノ續(特別委員
(長報告
〔肥塚龍君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=15
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016・肥塚龍
○肥塚龍君(百七番) 新聞紙法案ノ委員會ノ結果ヲ御報道致シマス、委員會
ニ於テハ本月十三日ニ役員ノ選舉ヲ-委員長、理事ノ選舉ヲ致シマシテ、
ソレカラ二囘會議ヲ開キマシタ二囘會議ヲ開キマシタガ、其會議ノ結果ハ
御手許ヘ迥ッテ居リマスル通リ、此政府案ニ箕浦案ノ精神ヲ加入致シマシ
テ、ソレデ此修正案ト云フモノニ致シマシテゴザイマス、其修正案ノ中ノ細
カナ箇條ハ澤山ニゴザイマスルガ、其要旨ヲバ摘ンデ申シテ見マスルト
政府案ノ方ニハ保證金ト云フ箇條ト、ソレカラ發行停止ト云フ、此二箇條ガ
アルノデゴザイマス、ソレデ委員會ニ於キマシテハ、發行停止ノ必要ハナ
〓、又保證金ヲ置クト云フコトモ、刊行ノ上ニ於テ幾ラカ制限ヲ置クト云フ
コトニナルカラ、此保證金ノ一條ト、發行停止ノ一件ト、此二ツヲバ削ッ
テ、サウシテ修正ヲ致シマシタ、之ヲ削ッタノハ則チ箕浦案ノハ是ガナイノ
デゴザイマシテ、此二ツノモノヲバ削除致シマシタノデゴザイマス、ソレデ
此修正案ノ委員會ノ模樣ハドウデアルカト申シマスルト云フト、委員會ハ一
人ヲ除キマシテ外ハ此修正案ニ總贊成デゴザリマスカラシテ、此段御報ヲ致
シマスルガ、若シ御質問ガアレバ御答モ致シマセウガ、其他ニ別ニ御報告ス
ベキ程ノコトモナイト考ヘマス
〔「質問ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=16
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017・田中正造
○田中正造君(二百九十番) 此案ニ對シマスル政府委員ハ出テ居リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=17
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018・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 唯今出席ヲ促シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=18
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019・田中正造
○田中正造君(二百九十番) 出テ居リマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=19
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020・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) マダ出マセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=20
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021・田中正造
○田中正造君(二百九十番) 各員ニモ御記憶ヲ願フ、且ツ速記錄ニモ確ト記
載ヲ致シタイ此修正案ヲシテ、政府ハ果シテ能ク之ニ同意シテ居ルモノト
見エル、是ニ不同意デアレバ大臣ヲ始メ必ズ出席シテ之ニ相當ノ議論ヲ爲
スコト、辯護ヲナス必要ガアル、其必要ナキヲ認メテ出席ナキコトハ速記
錄ニ確ト記載ヲ致シ、且ツ又各員ニモ御記憶アランコトヲ請フノデアル、決
シテ此事ハ由々シキコト、輕ミシキコトデナイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=21
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022・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ヨリ通告順ニ登壇ヲ促シマス、小室重弘君
〔「反對ガアリマスカ」ト呼フ者アリ「アリマス」ト呼フ者アリ〕
〔小室重弘君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=22
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023・小室重弘
○小室重弘君(八十八番) 諸君、新聞紙法案ニ就イテ反對ガナイカラ演說ヲ
シナクテモ宜カラウト云フ議論ガアルヤウデスガ、私ハ先ヅ第一政府ガ吾ミ
ノ議論ニ反對ヲシテ居ル、大ナル反對ガ、又山田泰造君モ此後私共ト所信ヲ
異ニシテ居ル所以ヲ御演說ニナルサウデスカラ、一應ノ演說ヲシナケレバナ
ラヌ譯デアリマス(「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)諸君、想ハザリキ、吾〓
ハ今日ニ於テ又此新聞紙法案ニ對シテ、政府案ニ對シテ反對ノ演說ヲシナケ
レバナラヌト云フコトハ私共今日ニ至ッテ新聞紙法案ニ就イテ此議會ガ自
分ノ意見ヲ定メ、而シテ此新聞紙法案ノ改正ニ就イテ討議ヲシタコトハ旣
ニ八囘ニ及ンデ居ル譯デゴザイマス、然ルニ政府ハ尙此原案ニ據リマスル
ト、私共ノ平生主張スル所、否、吾ミガ國民ノ議論トシテ主張スル所ノモノ
ニ反對スル、斯ノ如キモノヲ以テシマスノハ甚ダ民議ヲ容ルヽニ吝ナルモ
ノデアラウト私共ハ考ヘル譯デゴザリマス、是ハ實ニ吾ミガ今日ニ於テ一言
ヲ試ミザルヲ得ヌ譯デゴザリマスル、諸君、私共ハ此新聞紙法案ニ對スル議
論ノ如キモノハ、今ニ於テ利害ノ問題、或ハ損益ノ問題ト云フヤウニ解釋ス
ルコトガ出來ナイ今日デハ斯ノ如キ人權ニ關スル、人ノ權利、人ノ自由ニ
關スル議論ニ至リマシタナラバ、是ハ卽チ正邪ノ問題デアル是非ノ問題デ
アル、曲直ノ問題デアル、而シテ立憲、非立憲ノ岐ルヽ所ノ問題デアルト思ヒ
マスカラ是非此利害損益ト云フヤウナモノハ先ヅ第一ニ考ヘテ見ナケ
レバナルマイト思フノデゴザイマス、今委員長カラモ御報告ニナッタ通、此中
ノ主〓トスルモノハ何デアルカト云フニ、幾ラモゴザリマセウケレドモ原
案ノ十八條、吾〓ガ修正ヲシタ十三條ノ發行停止ノ事柄、此事柄ノ非理非道
デアル道理ニ協ッテ居ラナイ、專制ノ痕跡ヲ今日ニ存シテ居ル、立憲政體
ノ下ニ存スベカラザルモノデアルト云フコトハ存スベキモノデナイト云フ
コトハ旣ニ此院議ノ定ムル所ノモノデアルノニ尙今ニ至ッテ此行政權ノ
上ニ斯ノ如キ危險ナル危キ所ノ權力ヲ與ヘテ、サウシテ我〓ノ言論ノ自由
ヲ束縛スルト云フコトニ、牽制スルコトニ至リマシタノハ私共ノドコマデ
モ反對シナケレバナラヌ所以デゴザイマス、政府ハ曰ク、最早此無制限デアッ
タノヲ一週間ニシタノデアルカラ、ソレハ讓步デアル、誠ニ讓ッタモノデ
アル、民議ヲ容レタモノデアルト云フコトヲ申サレテ居ルガ、發行停止ヲ一
週間ニシタノガ、何レニ民議ヲ容レタノカ、私ハ今日實際ノ上カラ見マスル
ト一週間ト云フコトハ現ニ行レテ居ルヤウデアル、私共自分ハ一身ノ仕事
トシテ新聞ヲ書イテ居ルガ、或ハ一日、二日、三日ト云フガ今日ノ實際デア
ル、一週ト云フ長イ停止ハ殆ドナイ位ノコトデゴザイマスガ、併シナガラ之ヲ
一週間ニシテヤルコトナラバ私ハ今日ヲ竢タナイ、諸君ガ知ラルヽ如ク
週間ニシタナラバ讓步シヤウト云フコトハ、今日ニ起ッタコトデハナイ、吾
吾ハ第六議會ノ時ヨリ一週間ナラバ話ヲスルト云フコトハ既ニ出來タコト
ト云フコトハ存ジテ居ル、然ルニ尙ホ吾ミガ執ッテ動カヌト云フモノハ何可)
デアルカト云ヘバ、一日存シテ置イテモ、二日存シテ置イテモ、三日存シテ
置イテモ、發行停止ヲ此條例ノ中ニ存シテ置ク以上ハ決シテ之ヲ以テ言論
ノ此新聞社ニ對スル自由ヲ保ツコトハ出來ナイ、ナゼト云ヘバ行政官ノ手
心次第デ今日停止ヲシテ明日解イテ、又明後日停止ヲスルト云フコトハ幾ラ
モ出來ル、然レバ三日ノ停止ヲシテモ又三日ノ繼續スルコトガ出來ル、
週間ノ停止ヲシテモ、又一週間ヲ繼續シテ往クコトガ出來ルナラバ一日存
シテアッテモ其害ノ及ブ所ハ限ナイ譯デ、無期限ノ法律トチットモ違ハナイ
コトニナリマス、諸君ハ自分ノ頭ヲ拳骨デ叩カレヽバ人權ノ侮辱デアルト云
フテ居ルガ、頭ヲ少シノ力デ叩クノハ是ハ我慢スル痛ク叩クカラ我慢スル
コトガ出來ヌト云フ道理ハナイノデゴザイマス、卽チ正邪ノ問題ハ斯ノ如キ
此刀筆ノ吏ガ述ベルガ如キ不理窟ヲ以テ律スルコトハ出來ルモノデナイト考
ヘテ居ル過日末松政府委員ハ何ント言ハレタカ、縱令山ガ崩レテモ、縱令
地ガ裂ケテモ、モウ是ヨリ一步モ退クコトハ出來ナイ、私共嘗テ聞イタ伊
藤內閣ハ立憲的ノコトヲ爲サルヽ、誠ニ感服ノ至リデゴザイマス、併ナガ
ラ獨リ新聞紙ニ就イテハ、輿論公議ヲ容ルヽト云フコトニ就イテハ、山ガ崩
レテモ地ガ裂ケテモ、是ヨリ一步モ退クコトハ出來ヌト云フヤウナ事柄ハ甚
ダ之ヲ惜ム、何トナレバ、諸君、宋人ノ嘗ツテ云ッタ、國家ヲ誤ルモノハ陛
下ノ俗吏デアルト云フコトヲ言フテアル、私共思フ、斯ノ如キ暴言ヲナス、
卽チ甚ダ愼重ナラザル言葉ヲ以テ、地ガ裂ケテモ山ガ崩レテモ、モウ一步
モ退カヌト云フヤウナ言論ヲ、此立法部ノ議場デ吐クト云フコトニ至ッテ
ハ吾ミハ是政府ノタメニ惜ムノデゴザイマス、願ハクハ肝膽ニ照シテ是等
ノモノハ十分御考ヲ願フト思フガ、彼尙斯ノ如キコトヲ申スナラバ吾ミモ
言ハナケレバナラヌ、私共ハ日月ガ天ヨリ落ルトモ、世界ガ滅裂ニ至ルト
モ此發行停止ハ削除シナケレバ斷ジテ止マヌト云フコトヲ斷言スルニ憚ラ
ヌモノデアリマス諸君、俗論ハ屢〓正道ヲ誤ル、或者ハ言ヒマス、ソレハ
世ノ中ハ筍主義デアルカラ、一枚ヅツ皮ヲ剝イテ、今年一週間ニスレバ來年
ハ全廢ガ行レルカラ、先ヅ我慢シタラドウダラウト云フ議論ガアルカ知ラヌ
ガ、併ナガライツデモサウ云フ論ガ多クハ正道ヲ誤ルモノデアル、私ガ此修
正案ヲ持出シテ、之ヲ以テ貴族院ニ持ッテ往クナラバ、貴族院ハ前ミ通リ同ジ
手續ヲ履ンデ、或ハ衝突ヲシテ何ニモ虻モ取ラズ、蜂モ取ラズト云フコトニナ
ルコトハ明デアル、併シ私共ハ遺憾ナリト考ヘナイ、ナゼト云フニ、暫ク忍
デ之ヲナスト云フコトハ行ルヽコトガ出來ヌデ甚ダ遺憾デアッテモ、多年ノ
公論ト云フモノハ屹然トシテ動カザルコト山ノ如クト信ジテ居リマスカ
ラ、已ムナクンバ今年出來ヌデモ宜イ、〓ヲ貯ヘ馬ヲ肥シテ、卽チ彌久ノ計
ヲ爲シテ、政府ト對峙スルト云フコトニシテ一步モ退カヌ譯デゴザイマス
貴族院モ尙今日ニ於テ吾ヽノ議論ヲ容レナイト云フコトナラバ、貴族院ガ立
論ニ就イテ民怨ノ府ト爲ルコトヲ畏ルヽ譯デアリマス、願ハクハ此修正案ニ
就イテハ、敢テ討論ハ別ニイルマイト思フカラ、讀會ヲ省略シテ、直チニ此
案ヲ議決セラレンコトヲ望ミマス、聊カ簡單ニ述ベテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=23
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024・田中正造
○田中正造君(二百九十番) 玆ニ於テ一言述ベマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=24
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025・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 議案ニ就イテ御演說デスカ、贊成デスカ、反對デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=25
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026・田中正造
○田中正造君(二百九十番) 卽チ修正案ヲ贊成スル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=26
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027・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 其場合ニ依ッテ登壇ヲ促シマス-決議ヲ要シマスル、
該案ニ對シテ二讀會ヲ開クコトニ同意ノ諸君ハ起立
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=27
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028・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 大多數、二讀會ヲ開クコトニ決シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=28
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029・吉本榮吉
○吉本榮吉君(八十二番) 此案ハ條項ハ長イケレドモ、每度々々出テ暗記シ
テ居ル位デアリマスカラ直ニ二讀會ヲ開クコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=29
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030・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 直ニ二讀會ヲ開クコトハ異議ナキモノト認メマスー
二讀會ヲ開キマス、而シテ議題ハ年々歲々議シ來リタル議案デアルニ依ッテ、
委員會ノ修正ヲ以テ議題トナシマス、朗讀ヲ省イテ全部ヲ議題ニ供シマスル、
全部御隨意ニ討論御修正デ宜シイ、唯今反對ノ通〓ガゴザイマス山田泰造君
新聞紙法案第二讀會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=30
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031・田中正造
○田中正造君(二百九十番) 反對ト云フノハ、修正說ニ反對デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=31
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032・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 左樣
〔山田泰造君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=32
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033・山田泰造
○山田泰造君(二百八十七番) 諸君、本員ハ此新聞紙法案ニ對シマシテノ一
ツノ修正ヲ致シマシテ此修正ノ動議ヲ起シテ諸君ノ定規ノ贊成ヲ得テ此
議案ヲシテ、貴族院マデモ通過致シタイト云フ私ハ希望デアリマス、故ニ成
規ノ贊成ヲ得ルガタメニ其趣意ヲ聊カ辯ジマス、第一條ノ五號第二項ヲ斯ノ
如クニ修正ヲ致サント思ヒマス、「編輯人二人以上アルトキハ各部ニ分ツヘシ
若シ此區別ナキトキハ連帶ト看做ス但シ此屆出ナキモノハ編輯人タルコトヲ
得ス」又此結果トシマシテ、第十八條ノ第二項ニ「第一條第二條ノ屆出ヲ爲ス
モ實ヲ以テセサルトキハ發行人及其編輯ニ從事シタル者罪前項ニ同シ」卽チ
是ガ第一條ノ結果トシテ出マス、諸君ハ此新聞紙法案ニ就イテ如何ナル御考
ヲ持ッテ居ラレマスカ、言フマデモナク諸君ハ御承知ノコトヽ思フ、抑〓新新
聞紙法案ニ就キマシテハ委員會ノ修正法案ノ委キハ第一期以來、此衆議院
ノ開會以來、數囘ノ間當院ハ殆ド滿場一致ヲ以テ經過シタノデアリマス、併
ナガラ貴族院ヘ行キマシテ遂ニ否決セラルヽ所ト爲リマシタ、是ハ諸君ガ御
承知ノ如クデアル、而シテ年々歲々同ジコトヲ繰返シテ居ル、唯今小室君モ
旣ニ認メテ此事ヲ申サレタ、若シ此事ヲ既ニ十分ニ認メナガラ之ヲ爲スト云
フコトハ徒ラニ虛勢ヲ張リ空論ヲ吐クモノト私ハ言ハナケレバナラヌモノ
ト思フ、何故ナレバ、實際通過スル能ハザルモノヲリキンダ所ガドウシマスル
ゾ、實地效ヲ爲サヌト云フコトハ明デアルト云フコトヲ自ラ明言シテ居ルケ
レドモ、此法案ニ就キマシテハ貴族院ノ協議員ト衆議院ノ協議室ニ於テ協
議會ヲ開イタトキニ御聽ニナッタコトモアリマセウ、其時ニ貴族院ノ協議會
委員ノ或人ハ申サルヽニハ縱令協議會ニ於テ衆議院ノ議決シタ通協議會ガ
可決スルモ、貴族院ノ本會ニ於テハ到底是ハ通過スルコトハ出來マセヌゾト
云フコトヲ確ニ言ハレタ、不肖等モ正シク聽キタル所デアリマス、既ニ斯ノ
如シ、然ルニ諸君ハ唯獨リ政府ヲ責メテ居ルケレドモ、貴族院モ亦立法府ノ
議會デアリマス、我衆議院ト同一ノ權限ヲ有シテ居ル、貴族院ガ何ト言ハウ
トモト云フ語氣ト云フモノハ吾ミ立法府トシナガラ、其立法府ヲ聊輕蔑ス
ルノ嫌ナキ能ハザルカ、宜シク吾ミハ愼重ヲ以テ議スベキモノト思フノデア
ル、又私ハ飜ッテ其事情ヲ能ク見マスルト、貴族院ガ之ヲ否決スルノモ敢テ
不當ナリ非理ナリトハ本員ハ認メヌノデアル、何故ナレバ今新聞紙社會ノ
狀態ヲ能ク通觀ナサイ、諸君モ其內部ニ於テ明ニ認メテ居ラルヽコトデアリ
マセウ、嘗テ東京日々新聞是ハ現ニ政府ノ機關トシテ、諸君ガ十分ニ其機
關タルコトハ認メテ居ラルヽ所デアリマセウ、而シテ其東京日々新聞ガ如何
ナルコトヲシマシタ、嘗テ明治二十五年十二月十六日東京日々新聞ノ第六
千三百五十二號帝國議會記要ト題スル記事ハ如何ナルコトデアリマシタラ
ウ、諸君モ十分ニ記憶セラルヽデアリマセウ、彼ノ記事中ニ「三百ノ頭顱彼レ
固ヨリ土偶ニアラズ云々」「彼等ハ最早此世ニ要ナキ骨拔鰌ナリ煑テ以テ喰フ
ベシ」斯ノ如キ言ヲ吐イテアルノデス、其當時當院ニ於キマシテハ諸君ガ非常
ニ憤ラレタ-諸君ハ非常ニ憤ラレタ、不肖其場合ニ於テ、斯ノ如キモノハ敢
テ齒牙ニ懸ラヌ考ヲ持ッテ居ッタ、然ルニ非常ニ激セラレテ告訴ノ手續ヲセラ
レタノデアル、告訴ノ手續ヲモ議決スル位ノモノデアル、又其新聞紙ノ發行
停止ヲ命ズルガ如キハ最モ相當ナリト本員ハ信ズル所デアル、抑〓我衆議院
ハ吾ミ團體ノ倶樂部ノ如キモノデアリマセヌ、卽チ陛下ノ立法府トシテ國
家樞要ノ機關デアリマス、然ルニ斯ノ如ク侮辱ヲスルト云フコトハ果シテ如
何ノミナラズ其新聞タルヤ世人ノ認メテ最モ優等ノ地位ヲ占ムルモノデア
ル、而モ政府ノ機關デアル、而シテ猶ホ斯ノ如シ、其他ハ推シテ知ルベキノ
ミト本員ガ言フノハ決シテ無理ニアラザルヲ信ズルモノデアル、又先キニ自
由黨ノ機關デアリマシタル舊自由新聞ガ、明治二十六年十月二十五日第六百
九十三號ニ天驚石破-天驚キ石破ルト題スル記事ガアリマス、是ハ世間ニ
ニ有名ナル相馬事件-被〓人ノ人ミガ免訴ニナッタ、是ト引換ニ錦織剛〓
ガ拘留ニナッタコトヲ記シタ記事デアリマス、其文意ハ如何デアル、不肖之
ヲ熟讀シマスニ、暗ニ我司法權ヲ侮辱スルカノ如キ嫌ガアルノデアル、抑〓
司法權ハ天皇ノ御名ニ依ッテ行フ所、是レ又國家樞要ノ機關デアル而シ
テ新聞紙ガ斯ノ如ク之ヲ嘲弄スルカ、侮辱スルカ何タルコトデアルカ、本
員等ハ其意ノ在ル所ヲ知ルニ苦ムノデアル、苟モ其國民トシテハ其國家ノ機
關ヲ尊敬セザルベカラザルコトハ論ヲ竢タナイコトデアル、然ルニ近來新聞
紙ノ風潮率ネ斯ノ如クデアルノニ、若シ國民トシテ國家ノ機關タルモノニ對
シテ斯ノ如ク侮辱スルトキハ相當ノ處置ヲナスハ政府ガ當ニ盡スベキノ責
任ト言ハナケレバナリマセヌ、若シ政府ガ相當ノ手續ヲナサヌケレバ則チ
政府ノ職務ヲ怠リタルモノト云ッテ不可ナルコトガナイノデ、國家ノ機關ヲ
侮辱スルガ如キハ、卽チ其國ヲ紊亂スルモノ、破壞スルモノ社會ノ秩序ヲ破
壞シ紊亂スルモノ、何ンデ不問ニ措ケマセウ斯ノ如キモノハ刑法ニ別段制裁
ガナイノデ、則チ是レ發行停止ヲ命ズル所以デアルノデアル而シテ外ノ新
聞ニナイカト云ヒマスルト幾ラモアルガ、私ハ此場合ニ於テ外ノ新聞ヲ舉ゲ
ナイ、唯二ツヲ例舉シタト申シマスルハ、私ハ自由黨員デアリマスカラ外ノ
新聞ヲ舉グルコトハ好マナイ、却テ公平ノ判斷ヲ下スノ材料トシテ此二箇ノ
新聞ヲ舉ゲタノデゴザリマス、諸君ハ此〓ニ就イテハ宜シク御諒察ヲ願ヒマ
ス而シテ諸君、今ノ新聞紙ノ有樣ヲ御覽ナサイ、之ヲ既往十餘年以前ニ比
較ヲシテ見マシタ時ハ如何デアル不肖ハ思フ、十有餘年前ニ在リマシテハ
新聞紙ノ信用ハ天下ニ重ク、新聞記者ノ尊敬ト云フモノハ實ニ社會ニ厚カッ
タモノデアル、然ルニ今日ノ新聞ハ果シテ如何、信用地ヲ拂ッタリト云フテ
可ナルモノト思フ(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)又記者ニ對シテハ如何デアル、
ソレハノウ〓〓ト言フ、ノウ〓〓ノ新聞モアリマス、私ハ惡イ例ヲ玆ニ舉ゲ
ルノデアル、然ラバ私ハ尙ホ進デ惡イコトノ例ヲ、私ガ現ニ聞キ居ルコト
ヲ以テ一二ノ例證ヲ舉ゲマセウ、或ル新聞社デアル、相當ナル位地ノアル人ガ
虛構無實ノ事柄ヲ揭ゲテ連日揭載ヲ致シタデアル、故ニ其新聞社ニ向ッテ
是ヲ止メテ貫ヒタイト云フコトヲ請求ヲ致シタ、然ルニ其社長タル者ガ之ニ
對シテ曰ク、或新聞社ガ或ル人ニ對シテ醜行ヲ連日揭載シタ時ニ三百圓ヲ取ツ
タ併ナガラ本社ハ其社ヨリモ社員ガ多イカラ五百圓ヨリ下デハ止メルコト
ハ出來ナイト云ッタコトヲ確カニ不肖等ハ聞イテ居ル、(「名ヲ指シ給ヘ」ト呼
フ者アリ)又中ニハ新聞記者ノ中ニ、常ミ吾ミヲ誹謗シ、罵倒スル或新聞記
者ノ既往ノ履歷ヲ聞イテ見タレバ、詐僞取財ノ宣告ヲ受ケテ居ルト云フコト
ヲ聞イテ居ル、名ハ申シマセヌ、新聞社ト雖モ、新聞記者ト雖モ必ズ神樣ノヤ
ウナ人バカリハアリマセヌ、御役人デモ中ニハ犯罪ヲスル人ガアル故ニ新
聞社新聞記者ト云フテ必ズ善良ノ人ノミト斷定ヲ下ダスコトハ出來ヌ、而シ
テ我現行ノ法律卽チ讒謗律ニハ如何ナル事ガアル、苟モ人ノ榮譽ヲ害スベキ
記事ハ事實ノ有無ヲ論ゼズ-其事實ノ有無ヲ論ゼズ、人ノ榮譽ヲ害スベキ
コトヲ妄ニ記載スルコトガ出來ナイト云フノガ現行ノ法律デアル苟モ法律
ナルモノハ其國民トシテ之ヲ尊敬セザルベカラザルモノデアル、然ルニ此程
ノ新聞ヲ見ヨ、日々ニ此犯罪ヲ爲シツヽアル、試ミニ取テ見マスルト、ドノ新
聞ニシタ所デ常ニミミ人ノ榮譽ヲ害スベキコトヲ日々ニ揭載シテ恬トシテ顧
ミズ、本員ハ之ニ痛歎スルノミナラズ、我日本國民ノ風俗、人情ガ斯クマデニ
衰落シタルカト他國ノ人ニ思ハレルガ實ニ歎息ノ至リダ、又新聞紙ガ斯ノ
如キ記載ヲシテ恬ト顧ミズ、殆ド車夫、馬丁ノ如キ有樣ナルニモ亦私ハ驚ク、
是レ則チ新聞ノ信用ヲ失ヒ、新聞記者ノ位地ヲシテ衰落シタル所以デアル、
而シテ此由ツテ起ル所ハ、何ニ依ッテ生ジテ來タカト云フト則チ本員ガ此修
正ヲ提出スル所以デアリマス、今ノ新聞ノ有樣ヲ見マスレバ發行人トカ編
輯人トカ云フ人ヲ見マスルト五圓、六圓若クハ拾圓、大抵拾圓位ガ止マリ、
此者ヲ抱ヘテ置イテ、サウシア書ク人ハ其他ニ在テ嗜キナ勝手次第ナ事ヲ書
キ牢ヘ行ク時ハ何日デモ五圓以上拾圓以下ノ人ヲ入レルノデアル、縱令此
牢ヘ這入ル人ハ自ラ犯罪ヲ甘ジテ行キモシマセウ、金力ノタメニ往キモシマ
セウ、併ナガラ之ヲ爲サシムル人ニアッテハ如何、金錢ノタメニ人ニ罪名ヲ
負ハセ、己ハ尙ホ平氣ノ平左衞門デ居ルト云フガ如キハ、抑〓人間ノ德義トシ
テ許スベキモノナルヤ否ヤ、然ルニ新聞社ハ常ニ此法律ノ網ヲ潛ッテ、是又
恬ト愧ルコトナク顧ルコトナキノデアル、此等ハ一般ニ諸君モ認メテ居ラ
レル所デアリマセウ畢竟言ヘバ此新聞紙法案ニ二人以上-「編輯人二
人以上アルトキハ其主トシテ編輯事務ヲ擔當スルモノタルヘシ」是ガ則チ此
弊害ヲ生ズル所以ノ原因デアル若シ今ニシテ此弊害ヲ矯正セズンバ何レノ
日ニカ之ヲ矯正スルコトヲ得ン、若シ委員會修正ノ如キ法案ヲシテ通過セシ
ムルナラバ是ヨリモウ一層大ナル弊害ヲ生ズルト云ハナケレバナリマセ
又、既ニ今日保證金モアルシ、發行停止モアリシテサヘモ尙ホ斯ノ如クデア
ル若シ之ヲ自由ニ放任シタナラバ此曉ハ如何デアリマスルカ、マア諸君
ハソンナコトハアリマスマイ新聞紙ニ譽メラレタサガ一杯デ千代萩ノヤウ
ナ心持ヲ持ツト云フモノハ諸君ノ中ニハアリマスマイケレドモ世間多クノ
人ノ中ニハ隨分アル、苟モ吾ミガ國家樞要ノ機關ニ參與スル以上ハ國家ニ
弊害アルモノハ宜シク之ヲ排除スベシ、又國家ノ文運ヲ發達セシムルト云フ
コトニ於テハ果シテ如何デアル、獨リ軍事上ノ發達ノミヲシテ其國ヲ好シト
スルカ、獨リ工業、商業ノミヲ發達シテ之ヲ好シトスルカ、本員ハ是ノミヲ
以テ足レリトハシナイ此國民ノ意思ヲシテ高尙ナラシメ、發達セシムルノ
ガ最大緊要ナリト不肖ハ信ズルノデアル、則チ〓育ノ依ッテ起ル所以デアル
然ルニ今日ノ新聞ノ有樣ヲ見マスルニ、比々猥褻ノ事ヲ揭ゲ、虛構無實ノ事
柄ヲ揭ゲ、之ヲ見テ恬トシテ顧ミナイ、衆人皆之ヲ以テ笑柄ト爲ス、故ニ其
記事ノ信用モナク又記者ノ信用モナイ畢竟言ヒマスルト、新聞紙自ラ之
ヲ來シタ所以デアル、新聞ノ事ハ私ハ其人自ラ爲スガ儘ニ任セルニシタ所
ガ日本帝國ノ風俗ガ斯ノ如ク衰落セシムルト云フコトハ本員ハ實ニ痛歎
ニ堪ヘザル所デゴザリマス此事ハ本員ガ獨リ言フノミデハナイノデアル、
明カニ例證ガアルコトデアル、因テ私ハ之ヲ善イ事ノ例ヲ舉ゲテ茲ニ申シマ
ス、吾ミガ最モ敬愛スル所ノ當院ノ副議長ナル島田三郞君ガ歐米ヨリ歸朝セ
ラレタ時、曾テ之ヲ歎息セラレタル一場ノ演說ガアリマスソレハ每日新聞
ノ明治二十二年九月四日ノ記事中デアリマス、島田三郞君ガ歐洲ヨリ歸ラ
レタ時政友諸君ガ寄リマシテ祝宴ヲ張リマシタトキニ、卽チ三綠亭デアル、
其三緣亭ニ於カレマシテ演說ヲセラレタコトガアル、其要點ヲ一寸申上ゲマ
ス、「小生ガ英國ニアッタ時ニ、半日ハ之ヲ讀書、半日ハ之ヲ書物ノ觀察ニ用
ヒタ、ナゼサウシタカト云フタナラバ、新聞ヲ見ルトキニハ明日ニハ何ガア
ル、昨日見タコトハ何ンデアル、斯ウ云フコトガ能ク分ル、故ニ半日ハ新聞ノ
タメニ潰シタ、而シテ其新聞ノ中ニでーりーにゆす、すたんだーどノ二新聞ヲ
最モ見タ、是ハ一ハ改進黨ノ機關タル新聞デアル一ハ保守黨ノ代表者ト認
メラレタル新聞デアル此英吉利ニ於カレタル新聞ハ、反對黨ニ拘ラズ味
方ニ拘ラズ、物事ノ記事ト云フモノハ皆精確デアル縱令詳略ノ差ハアルニ
モセヨ決シテ是ガ事實ノ上ニ於テ異ルコトハナイ、然ルニ我國ノ新聞ノ有
樣ヲ見ルト其黨派ニ依ッテ正ニ反對ノ事實ヲ擧ゲ、少モ事實ノ確定ヲ得ナ
イ事實ノ確定ヲ得ズシテ、唯是ヘ議論ヲ爲スノハ恰モ浮雲ヲ標準トシテ
測地ヲナスガ如キデアル」ト云フコトヲ言ハレタ「抑〓人ニ主義ノ異ナルア
リ、政論ニ反對ノ意見アルハ固ヨリ怪シムニ足ラズ、然レドモ同一ノ事實ヲ
記シナガラ、其新聞紙ノ異ナルト共ニ其記事ニ黑白ノ異アルニ至リテハ讀
者孰ヲ眞トシ孰ヲ否ラズトセン、不定ノ記事ヲ基礎トシテ各自ノ意見ヲ定メ
ントスルハ浮雲ヲ以テ測地ノ標凖トナスガ如シ」諸君、如何デアリマス、
既ニ島田三郞君ハ多年新聞ニ從事セラレ、旣ニ此嘆息アル年久シ、年久シキ
ニモ拘ラス今日此新聞紙ノ有樣ヲ見ルト此弊ガ改良セラレテ居ルカ、
否本員ノ見ル所デハ議會開會以來一層甚シキ弊害ヲ生ジタト言ハナケレ
バナラヌ、既ニ弊害ノ極度ニ至ルトキニ於テ、尙ホ之ニ自由放任ヲ許スト云
フガ如キハ如何デアルカ、殊ニ此度ノ修正案ノ如キハ尙ホ一層甚シイノガア
ル、保證金ヲ全廢シ、發行停止ヲ全廢シ、既ニ保證金ヲ廢シ發行停止ヲ全廢
スルニ至ッテハデス之ニ代ユベキノ又擔保ト云フモノガナケレバナラヌ
若シ此擔保ガナクシテ之ヲ許スト云フトキニハ如何デアリマスルカ、不肖ハ
思フ無資產ノ無賴漢ニ無抵當デ數万圓ノ金ヲ貸スニ異ナラヌト私ハ斷言シ
テ憚ラナイモノデアリマス、而シテ發行停止ガ大變ヤカマシクアリマスガ、
凡ソ何等ノ事物ニ拘ラズ、無限ノ自由ヲ得ルト云フコトハ決シテ出來マセ
ヌ、必ズ其物ニ就イテハ取締ト云フモノガアル、取締ガアル以上ハソレニ制
裁ガアル、制裁ノ結果トシテ止ムルコトハ許多類例ガアル卽チ曩ニ當院ニ
於テ可決サレタル辯護士法案ノ如キ、普通刑法ノ外ニ尙ホ其職務上ニ對スル
ノ停止ガアリマス、尙ホ曩キニ當院ニ於テ第八議會ニ可決セラレマシタ所
ノ今日ハ現行法律トナッテ居ル古物商取締法案、又質屋取締法案、是等ノ
法案ニ就キマシテモ、或ル場合ニハ禁止停止ノ制裁ガ附イテ居ル、斯クナケ
レバナラヌノデアル弊害ヲシテ··弊害ヲ制止スルコトナクンバ其弊害
ヲシテ益〓助長セシムルノミデアル抑〓立法部トシテ弊害ヲ排除スルコト
ニ努ムルハ立法部ノ責任デアル然ルニ其弊害ヲ助長セシムルガ如キニ至ツ
テハ尙ホ弊害ノ大ナルモノト言ハナケレバナリマセヌ、故ニ本員等ハ決シテ
之ニ同意ヲスルコトハ出來ヌノデアル又立法部トシテ立法部タルベキノ原
則ト云フモノハ遵守シナケレバナリマセヌ、法律ハ普通ノ權利ヲ保護シ、又
法律ハ名譽自由ヲ保護ス、兔ニモ角ニモ是等ノ格言ハ本員等ハ服膺スベキ
ノ價値アルコトヲ信ズルモノデアル徒ラニ空言漫語ヲ以テ快シトスルガ如
キハ實ニ本員ノ取ラザル所デアル、實ニ新聞ノ弊ヤ極リハナイ、中ニハ途
方途徹モナイコトガアル、一寸序デスカラ御話申シマスガ此前ノ銀行法案
ノ時ニ、或新聞紙ガ、本員ハ田尻次官ノ賴ヲ受ケテ血眼ニナッテ奔走シタ
是等ハ私ハ齒牙ニ掛ケヌカラ、敢テ申シマセヌケレドモ政府委員ニ賴マレ
テ私ガ勸誘シタト云フ、併ナガラ私ハ政府委員室ニ往ッタコトモナケレバナ
ンニモナイ、又此ニ三百ノ議員ガ御出ニナルケレドモ、私ガ銀行法案ニ就イ
テ勸誘シタコトガアリマスルカ、私ハ我同僚タル所ノ水島保太郞君ト議ツタ
ルヨリ外勸誘シタコトモナンニモナイナゼト云フニ本員ハ常ニ心掛ケテ、
實ニ自ラ嗜ム所信ズル所ヲ守ッテ居ル、故ニ決シテ信ズル場合ニ於テハ動カ
ヌト云フノガ、私ノ決心デアリマス又共心ヲ以テ他人ヲ推量ッテ他人ニ
向ッテ運動致シタコトガナイ、獨リ銀行法案ノミデハアリマセヌ更ニ私ハ運
動シタコトハナイノデアル何等ニ依ッテ是等ノ事ヲ書クカ實ニ虛構無實
モ甚シイ少シハ類シタコトナラバマダシモ其項ノ新聞ヲ御覽ナサイ各
新聞ガ色ミ誰ガ何万圓取ッタ、誰レハ五万圓ノ賄賂ヲ取ッタ斯ノ如キ記事
ヲ諸君ハ眼ノ前ニ見テ置イテ、是等モ弊害ナシト尙ホ思ハルヽカ認メラレ
ルカ、決シテ諸君ガ內部ノ良心ニ問フタナラバ、新聞紙ノ弊害ノアルコトハ
本員ト同感デアリマセウ、既ニ斯ノ如ク弊害ノアル以上ハデス貴族院ガ此
事實ヲ認メテ通過セヌト云フノモ決シテ不理ニアラズ、不當ニアラズト本員
ハ斷言シテ憚ラヌモノデアル、徒ラニ空論虛勢ヲ張ッテ、唯新聞ニ阿ルガ如キ
コトハ本員ノ最モ取ラザル所デアルノデアリマス、私ハ玆ニ此修正案ヲ持
出シテ成規ノ贊成ヲ得タイ、併ナガラ此趨勢ニ於テ、又私ハ得ルコトノ難キ
ヲ信ズルノデアル、則チ此空論ヲ······之ヲシテ空論タラシムルコトヲ、玆
一言ヲ述べテ本員ハ此演壇ヲ退キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=33
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034・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 山田君ノ修正ニ就イテ定規ノ贊成ヲ得ルヤ否ヤ、修正
案ヲ一應朗讀致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=34
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035・小室重弘
○小室重弘君(八十八番) 議長、唯今ノ修正ハ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=35
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036・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 先ヅ成立ツヤ否ヤヲ試ミヤウト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=36
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037・小室重弘
○小室重弘君(八十八番) 此事ニ就イテハ山田君御一人ノ意見デアラウト
思ヒマスガ、誰カ贊成ガアッタノデゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=37
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038・山田泰造
○山田泰造君(二百八十七番) 贊成ハ是ヨリ問フ所デアリマス
〔奧田書記官長朗讀〕
第一條第五號第二項
編輯人二人以上アルトキハ各部門ニ分ツヘシ若シ此區別ナキトキハ連帶
ト見做ス但此屆出ナキモノハ編輯人タルコトヲ得ス
又第十八條第二項
第一條第二條ノ屆出ヲナスモ實ヲ以テセサルトキハ發行人及其編輯ニ從
事シタル者罪前項ニ同シ
〔此時「贊成ハアリマセヌ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=38
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039・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 山田泰造君ノ動議ハ定數ノ贊成ガアリマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=39
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040・小室重弘
○小室重弘君(八十八番) 既ニ山田泰造君ノ動議ニ贊成ガアリマセヌケレ
バ讀會ヲ省略シマシテ直チニ議決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=40
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041・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是ヨリ通告ガアリマス-田中正造君
〔田中正造君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=41
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042・田中正造
○田中正造君(二百九十番) 輿論ガ既ニ定ッテ居ルノデアリマスカラ、演壇
ニ登ッテ贊成ヲスル程ノ贊成ヲシナイデモモウ極マッテ居ル、宜イヤウナモ
ノデゴザイマスルガ頭數デ負カシタトカ何トカ、何カ逃路ヲ見付ケル政
府是ニ對シテハ能ク話ヲシテ聽カシテ置カナケレバナラナイ、デ本日ハ政
府委員ハ豫テ無責任ノ主義ヲ執ッテ、此肥塚君ノ演說中モ一人モ說明委員ナ
リ大臣ナリ影ヲ見セナイト云フヤウナ位ナ氣樂ナノデアル此氣樂ハ何デア
ル議會ハドウ決議シヤウトモ山ガ崩レヤウトモ衰龍ノ蔭ニ於テ不認可スレ
バソレデ用ガ足リル、斯ノ如キ不德義ナ舉動ガアルノデアル爲ニ言ハズト
モ分ッタコトデモ言フテ聽カシテ置カナケレバナラナイノデアル又唯今ノ
山田君ノ演說ノ如キ、是ニ對シテ反對ノ演說ヲスル價値モ何モアルモノデハ
ナイケレドモ是モ一二話シテ置カナケレバナラヌコトガアルノデアル、マ
ア細カナ事ハ暫ク措イテ新聞記者モ神ナラヌ身ダ、神デハナカラウマア
何ヲ云フノデアルカ、自由黨ハ神デアルカ、自由黨ガ神ニナル時代ハ新聞記
者モ神ニナルノダ、唯新聞記者ノ方ガ早ク神ニナルノデアル、同ジ人間デア
ルノダ、又何ヲ世迷言ヲ言フカ、新聞記者ノ新聞ニ褒メラレタガッテ妙ナコ
トヲ言フノデアルト、善イコトハ親孝行ヲスルモノガアルナラバ親孝行ノ
眞似ヲシテモ宜イノデアル、新聞記者ニ惡ク言ハレテモ政府ニ褒メラレタイ
何ヲ言フノデアル又昔ノ新聞ハ正直デアッタガ、今ノ新聞ハ不正直デアル
ト其通リ發行停止ガナイ時分ノ新聞ハ今更宜カッタト云フコトニナッテ
來ル法律ガ密ニナレバ法律ヲ潜ルト云フコトハ是ハ山田君ノ如キ、博士
ノ代言人ニハナイガ、ドウモ或ル學士ノ三百代言抔ニハ能ク此法律ヲ潛ル
者ガアル則チ神ナラヌ人生ニハ免レナイノデアル又島田三郞君ノ古イ演
說是ハ五六年前ノ明治二十二年カノ演說デアル、成ル程山田君ハ學者デア
ル、六年前ノ演說ヲ引張出シテ之ヲ議場ノ證據物中、第二號證カ三號證ノヤ
ウデアッタ、是ハ定メシドッカラカ御迴シニナッタ材料デアルモノト見エ
テ、材料ガ餘リ多カッタカラ御氣ノ毒ダガ演說ガ纒ラナイ、★三歲ノ小兒ニ餘
リ荷物ヲ多ク脊負セルト云フト脊負キレナイモソット材料ヲ少シ御渡シニ
ナレバ宜カッタノデアルソレハ島田君ノ演說カト云フト島田君ノ演說ニ
就イテ御話ヲシマセウガ、島田君ハ現在新聞記者デアル、新聞記者ニシテ六
年バカリ前是ダケ心配ヲシテ居ルノデアル六年前バカリニ新聞記者ガ此位
ノ公平ナ心ヲ持ッテ居レバ今日ノ新聞記者ハ一ノ島田君ニアラズシテ千百
人ノ島田君ガアルト見テ宜イノデアルサレバ發行停止ヲ何ヲ苦ンデ置ク必
要ガアルカ、斯ノ如クデアル又山田君ハ山田泰造ヲ惡ク書イタト言ッテ
大層怒ルガ、ソレハ新聞社ガ惡ルカッタカ知レナイ、山田君ヲ每日褒メテ書
イテ居タラ宜カッタラウニデ、新聞ガ新聞ガドウモ亂暴ナコトヲ書ク
トカ何トカ實ニ是ハ自由主義ヲ取ル人ノ、平日演說デモスル人ノ說ニハ餘
リ間違ッテ居ルカラ、ソレダケハ御話ヲシテ置カウト思フノデアルナゼナ
レバ社會ノ制裁ヲドコニ置クノデアル、社會ノ制裁力ト云フモノガアルノデ、
例ヲ演說ニ取レバ、如何ニ辯士ガ政府ヲ罵詈スル演說ヲシテモ、今日ノ所
デハ聽衆ノ耳ガ肥エテ居ッテ、却テ辯士ガ惡ク言ハレルノデアル不當ナ
攻擊ヲスレバ-政府ヲヒドク惡ク言ヘバ聽衆ノ耳ガ肥エテ居ルカラシテ、
決シテ此演說ハ通過サセナイノデアル、所ガ矢張是ニ立會フ所ノ警察官ハ
二十五圓カ八圓ノヤッガヤッテ來テ、法律ヲ楯ニ取タテ堂々タル他日大臣
ノ候補者トモナルベキ人物ノ演說ヲ、八圓カ五圓ノヤッガ之ヲ中止スルト云
フガ如キハ何デアルカ、此巡査ヨリ警部ヨリハ聽衆ノ方ガ耳ガ肥エテ居ルカ
ラ心配ハナイ、矢張新聞モ惡口ヲ書クガ宜シイ何ヲ書イテモ嘘ヲ書イテモ
ドウシテモ社會ノ眼ガ高イノデアル詐ヲ書ケバ社會カラ此新聞ヲ排斥ス
ルカラ、ソレデ宜シイノデアル、何ヲ苦ンデ山田君ガ獨リソンナニ頭ヲ痛ク
スル譯ハナイノデアル、デ、自由黨中ニモ小室重弘君ノ如キ、實ニ此法案ニ
就イテハ泥中ノ蓮ノ如キ立派ナ御方ガアルカト思ヘバ又山田君ノ如キ憫レ
無情ナル言ヲ御述ニナル御方モアルノデアル、是ヨリハ政府ノ側ニ向ワテー
其邊ヘ出テ來タカ出テ來ナイカ、若シ政府委員タルモノガ居ルナラバ耳ノ
穴ヲ明ケテ聽クベシ何ヲ以テ發行停止ヲ拒ムカ凡ソ世ノ中ニハ賞罰ト云
フモノガナケレバナラヌノデアル此政府ガ新聞ニ對スル待遇ハ唯獨リ罰ノ
ミヲ用ヒテ、何レノ所ニ賞ヲ行フタルコトガアルカ彼ノ日〓戰爭以前ハ暫
ク措イテ、日〓戰爭以來ニ取ッテハ聞カナケレバナラナイノデアル、成ル程
此新聞ニ此新聞ノ行ガ惡イコトガアルニモセヨ、隨分亂暴ナ書方ガアルニモ
セヨ惡イコトヲ以テ賞ト云フモノヲ差引ヲスルコトハ出來ナイノデアル、
如何ニ玆ニ亂暴ナ人間ガアッテ酒ヲ飮ムヤ必ズ朋友ト腕力ヲ以テ喧嘩ヲス
ル此亂暴人ガ一朝軍ニ出テ戰爭ニ臨デ立派ナル功ヲ奏シタナラバ金鵄勳章
ヲモ與ヘナケレバナラヌノデアル玆ニ色ヲ好ムヤツガアル、大本營ノ下ニ
於テ藝者ニ溺レテ、お菊ト云フ女ヲ受出シタル色ヲ好ム馬鹿野郎ガアル斯
ノ如キ者ガ若シ有ルトシテカラガ、功ガアレバ金鵄勳章ヲ遣ラナケレバナラ
ナイノデアル奈何ゾ其罪ヲ以テ其功ヲ滅スルカ若シ功ガアレバ功ヲ賞サ
ナケレバナラナイ、デ此新聞タルモノハ政府ノ言フガ如ク山田君其他ノ自
由黨ノ諸君ノ常ニ唱フルガ如ク、惡イモノトシテカラガ、對韓問題以來、日〓
戰爭以來ト云フモノハ日〓戰爭ニ就イテト云フモノハ、新聞ノ功ハドノ位
アルヤト云フコトヲ記憶シナケレバナラナイノデアル先日既ニ末松謙澄君
ハ此演壇ニ於テ御盡力ニナッタコトモ覺エテ居リマスガ其位デハイケナイ
ノデアル、御盡力ニナッタコトハ覺エテ居ルナラバ賞ヲ與ヘナケレバナラ
ナイコトハ申スマデモナイ、軍ノ始ルニ當ッテ其國ノ元氣ヲ發揚シ國力ノ團體
ヲ能ク固メ元氣ヲ皷舞シ奬勵シ一トシテ新聞屋ガ何ヲ戰ニ就イテ惡イ
コトヲシタカ是ダケノ宜イコトヲシテ居ルノデアル且ツ又遼東其他滿
州威海衞、臺灣等ニ皆新聞記者ト云フ者ガ參ッテ居ル、此新聞記者ガ軍ノ
方ニ利益ニナルコトハ報道ヲスルケレドモ不爲ニナルコトハ何ヲ報告シタ
ノデアル、隨分兵站部ノ弊抔ト云フモノハ當時ニ於テ知ラザル新聞記者ハ
一人モナイノデアル、此兵站部ノ弊抔ト云フモノハ斯ノ如キ事ヲ內地ニ報
告シテ、之ヲ新聞ニ記載シテカラガ矯正スル所ノ之ヲ矯メル所ノ利益ヨリ
ハ損害ガ大キイカラシテ軍場ニ出テ居ル新聞記者ハ愼デ此兵站部ノ腐敗、
罐詰ヲ開ケテ見レバ大抵ハ腐敗シテ居ル、烟草ヲ買ヘバ北海道デ出來ル所ノ
ドングイ葉ト云ッテ木ノ葉ヲ刻ンダ烟草、酒ハ一本一圓五十錢、斯樣ナ亂暴
ナルコトヲスル、色ミナ其他ノ惡イコトハ澤山アルケレドモ之ヲ說キ、戰
爭中ノ世ノ中ニ發布シテ見テカラガ、ドウモ害ガ多クシテ利益ガ少イカラシ
テ新聞屋ノ如何ニ新聞屋ガモノヲ書ク、無闇ニ書クカラト申シテモ、無闇
ニ事ヲ評イテ國ノ不爲ニナルヤウナコトヲスル意氣地ノナイ新聞記者ノ一人
モナカッタノデアルドコニ不良ナルコトガアル、是レ寧ロ功ニ數ヘ込マナ
ケレバナラヌノデアル、又三國ノ干渉抔ニ就イテハ當路者ガ其當路ノ人ガ
氣ガ付クヨリハ新聞屋ノ方ガ耳ガ早カッタノデアル三國ノ干渉ガ來ルゾ
來ルゾト云フヤウナコトヲ、新聞記者ノ方ガ外務ノ御役人ヨリハ少シク早カッ
タヤウニ覺エテ居ルノデアル、ドコニ惡イコトガアル、又愈〓以テ三國ガ
干涉シテ來タ時ニ、新聞記者ハドウ云フ風ニ決心ヲシタカ、此新聞ニドウ云
フ風ノ方策ヲ執ッタカ先ヅ國ノ元氣ノ强イコトヲ外國ニ示シ更ニ外國ニ
向ッテハ自主的運動ヲ國デナス位ニ元氣ヲ發達サセ、サウシテ國ノ强イト云
フコトヲ見セテ置イテ、此中ニ伊藤、陸奧、此全權委員ヲシテ十分ニ此國ノ
全權委員タルノ任務ヲ立派ニ盡サセヤウ此兩人ノ威望ヲ落サナイヤウニシ
ヤウソレニハ國ガ弱クッテハイケナイカラシテ國ヲ强ク見セ掛ケナケレ
バナラナイト云フ仕事ヲシタノデアル、立派ナ仕事デアッテ是ガ何デ惡イ
コトガアル、斯樣ナ善イ事バカリヲ數ヘ舉ゲテ、迚モ枚舉ニ遑アル譯デナイ
ノデアル、斯ノ如ク此軍ニ就イテ功ノアルモノナラバ、平日新聞ノ一個人ニ
就イテ如何ナル事ガアラウトモ、此新聞屋ニハ立派ナル勳章爵位ヲ與ヘナケ
レバナラナイノデアル併ナガラ新聞屋ト云フモノハ爵位勳章ピカノ八
ル有形物ヲ欲シガル譯デハナイノデアル、卽チ是ニ賜ル勳章ヲ與ヘテ損ヲシ
ナイモノガアルノデアル、卽チ惠シテ費ヘズ、物ヲ與ヘテ政府ノ國庫ニ損ノナ
イ與ヘ方ト云フモノガ宜シイノデアル、伯爵ガ侯爵ニナレバ則チ國庫ガ損ガ
アルノデアル無闇ニ新華族抔ノ出來ルノハ國庫ニ損ガアルガ、今新聞屋
ニ爵位ヲ與フルニ國庫ニ損ノナイ與ヘ方ガアルノデアル何デアルカ欲ス
ル所ノモノヲ與フル卽チ發行停止ト云フモノヲ止メルト云フコトガ宜シイ
ノデアル、是ダケノ道理ノアルモノデアル、區々タル行懸リノ新聞條例ニ噛リ
著イテヽ或ハ東京日々新聞ガ云々トカ何ダトカソンナコトヲ一局部ニ頭ヲ
入レタナラバ是ハ何トデモ理窟ガ附クモノデアルガ前ニ申ス通大局面ニ
就イテ功アル者ハ賞スベシ、罪アルモノハ罰スベシ、新聞ハ其他ノ隨分罰則
ニ於テ十分ニ事ノ足リルコトデアル、發行停止抔ト云フ無法ナル、暗闇デ人
ヲ撲チ擲グル如キ無法ナル法律ヲ此立憲政治ノ下ニ置クト云フコトハ第一耻
入ッタ話デアル、又外國ニ聞エテモ、未ダ日本ノ國ハ發行停止ノ必要ナ國デ
アルダラウカト、斯ノ如キコトハ餘リ外交官ノ政略ニ於テ誠ニ得策ノコトデ
ナイ又呉ミモ新聞ガ如何ナル亂暴ナコトヲ書カウトモ、社會ノ制裁力ガア
ルカラ其賞排ハ決シテ政府ノ心配ヲ蒙ラナイノデアル、斯樣ナ譯デゴザリマ
スカラシテ又何カ私ニ材料ヲ寄越ス者ガアッテ、演說ヲ長クシロト云フ注
文デモアレバソレハ山田君位ニハヤリマスガ、私ハ唯發行停止ノ一ニ就イ
テ簡單ナル意見ヲ申述ベタノデゴザリマス、幸ニ此ニ政府委員ガ出テ來タヤ
ウデゴザリマスカラシテ意見ガアルナラバ政府委員ハ御自說ヲ御述べニナ
ル方ガ宜イ、尤モ委員會ニ於テ降參シタナラバ敢テ復タ茲ニ於テ演說ヲ爲
サルニ及バヌ、政府委員ノ演說ニ依ッテハ、又更ニ御質問ヲ申スコトガアラウ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=42
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043・山田泰造
○山田泰造君(二百八十七番) 一寸田中君ノ演說ニ對シテ一言申シテ置キマ
ス
〔田中正造君「是ニ答辯スル例ガナイ」ト呼フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=43
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044・山田泰造
○山田泰造君(二百八十七番) 唯今田中君ハ古イ新聞デアル、ドコカラカ迥
シテ來タカト云フ如キ語氣ヲ以テシタガ、本員ハ每日新聞ハ明治六年頃カラ
明治八年カラハ皆取揃ヘテ持ッテ居ル、其他ノ新聞モ古イノヲ皆持ッテ
居リマス是ダケヲ一寸申シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=44
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045・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 小室重弘君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=45
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046・小室重弘
○小室重弘君(八十八番) 最早別ニ御論モゴザイマセヌ、山田君ノ御論ニハ
贊成スルモノモナイト思ヒマスカラ讀會ヲ省略シテ確定議ニナランコトヲ
望ミマス
(「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=46
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047・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 讀會ヲ省略シテ確定議ヲ採ルベシト云フ小室重弘君ノ
御論、御異議ナシト認メテ宜シウゴザリマスカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
新聞紙法案確定議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=47
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048・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 然ラバ二十八條ニ至ルマデ併テ確定議ヲ採リマス、該
案ニ同意ノ諸君ハ起立
起立者大多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=48
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049・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 大多數、卽チ該案ノ確定ヲ報ジマスル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=49
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050・肥塚龍
○肥塚龍君(百七番) 第三ノ日程デゴザイマスガ、唯今第二日程ノ修正案ガ
確定ヲ致シテアリマス、第三日程新聞紙法案ハ、卽チ此箕浦案ハ精神ガ第一一日
程ニ移クテ第二日程ノ修正案ガ出來テ居ル第二日程ノ修正案ガ確定致シタ
以上ハ、第三ノ日程ハ自然消滅シタモノデアラウト思ヒマス此段発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=50
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051・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 日程ノ第三ハ唯今第二ガ確定致シマシタカラ自然消
滅ニ歸シマス、次ハ第四、民事訴訟法施行條例中削除法律案、朗讀ヲ省略シ
テ第一讀會ヲ開キマス
第四明治二十三年法律第五十號民事訴訟法施行第一讀會
條例中削除法律案(草刈親明君外三名提出)
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
明治二十三年法律第五十號民事訴訟法施行條例第十二條ハ明治二十九年三
月三十一日限リ削除ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=51
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052・田口卯吉
○田口卯吉君(二百六十九番) 是ヨリ酒造稅ノ委員會ヲ開キマスカラ退席ヲ
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=52
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053・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 酒造稅則委員ガ調査ノタメニ退席セラレマスガ、諸君
ノ承認ヲ請ヒマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=53
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054・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 草刈親明君
()草刈親明君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=54
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055・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 私ハ明治二十三年法律第五十號民事訴訟法施
行條例中削除法律案ニ就キマシテ、聊カ提出ノ理由ヲ、申述ベヤウト思ヒマ
ス此案ハ簡單ナルコトデゴザイマシテ又第八議會ニ於キマシテハ本院
ガ全會一致ヲ以テ可決致シマシタノデゴザリマスルガ故ニ、敢テ喋々ノ辯論
ヲ要スルノ必要モナイト信ジマス然ルニ貴族院ハ此問題ヲ以テ餘程重大ナ
ルモノト認メラレマシタノデゴザリマスカ或ハ他ニ理由ガゴザイマスルヤ
ハ相分ラヌコトデゴザイマスルケレドモ免ニ角非常ナル討論ノ末ニ否決致
シマシタルガ故ニ、竟ニ今日當衆議院ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイ事實ニ
相成ッタモノト信ジマス、勿論本案ニ就イテ政府委員ガ貴族院ニ於キマシテ
申立テマシタ所ヲ見マスルノニ政府モ本案ニ就イテハ同意デアルト云フコ
トニ相成ッテ居ッタデアリマス、故ニ本年度モ亦政府モ御同意ノコトヽ私ハ信
ジマス而シテ此法律案ノ是非一部ヲ削除セヌケレバナラヌト云フ理由ハ
抑〓國民ニ對シテハ貧富ノ區別ヲ以テ、上訴ノ途ヲ一方ニ於テハ開キ方
ニ於テハ杜絕スルト云フコトハナイノデアル然ルニ此民事訴訟法ノ第十二
條ニ依タテ見マスレバ、正シタ貧富ニ依クテ國民ノ權利ヲ消長セシメテ居ル
ノデゴザリマス、卽チ假令如何ノ誤判、如何ナル不當ノ判決ニ對シテモ、十
圓ト云フ豫納金ヲ納メマセヌケレバ上告ト云フモノヲ致スコトガ絕對的ニ出
來ナイコトニ相成ッテ居ル、是ハ改メテ申スマデモゴザイマセヌガサウ云
フ法律アルガ故ニ、此十圓ヲ納メナケレバ上告ガ出來ナイト云フ箇條ヲ削除
スルト云フノデゴザイマス、昨年貴族院ニ於キマシテ此法律案ニ反對サレマ
シタ所ノ、其理由ヲ議事筆記等デ見マスルニ、先ヅ一ハ若シ此十圓ト云フ豫
納金ノ制ヲ廢シタナラバ、訴訟ト云フモノガ亂起スルデアラウ、事件ト云フ
モノガ多クナッテ、隨テ裁判費用ト云フモノモ亦多クナルデアラウト云フコ
トヽ斯ノ如キ例バ西洋ニモアリ支那ノ昔三千年以前ニモ之ニ類シタ所ノ
法律ガアッタト云フ谷君抔ノ御說ガアッテ、遂ニ否決サレタノデゴザイマ
ス然ルニ是等ノ說ヲ稱ヘラレマスル所ノ人ミハドウ云フ方デアルカト申シ
マスレバ、或ハ元ノ司法次官デアルトカ或ハ相當ノ地位ヲ持タレテ居リマ
スル所ノ人ミノ意見デゴザイマスル、ケレドモ縱シ歐羅巴ニ斯ウ云フ例ガゴ
ザイマシテモ、歐羅巴ニ斯ウ云フ例ガアル、斯ウ云フ法律ガアルト云フコト
ガ是ナラバ、ソレニ從フノハ宜シウゴザイマスケレドモ、其法律ガ宜シクナ
イ其例ガ惡例デアルト云フコトヲ知リマシタナラバ西洋ニ此例アルガ故
ニ我日本國ニモ此法律ヲ存シテ置カナケレバナラヌト云フ道理ハナイノデア
ル又濫訴ヲ防グト云フコト、其事ニ對スル意見ヲ見マスルノニ、若シ此豫納
金ト云フモノヲ廢シタナラバ、所謂世ニ三百代言ト云フ者ガアッテ、其者ガ
良民ニ對シテ訴訟ヲ勸メテー勸誘シテ、サウシテ無闇ニ上告ヲヤラセルデ
アラウト云フコトヽソレカラ上告スレバ何箇月カ何年カノ間執行ヲ免ルヽ
コトガ出來ルカラ、十圓ト云フ金ヲ廢シマシタナラバ、則チ上告スルモノガ
多クナルデアラウト云フコトヽ此二ツニ過ギナイノデゴザリマス、所ガ、
此二ツノ事實ハ頗ル間違ツタコトデ、今ヨリ七八年以前ノ裁判官、或ハ今ヨ
リ八九年以前ノ司法次官ノ眼ヨリ見タナレバ、三百代言ノ手ニ掛クテ-三
百代言アルガタメニ訴訟ノ濫起ヲ防ガナケレバナラヌト云フ感情ヲ持チマセ
ウ併ナガラ今日ハ全ク之ニ相反シテ居リマス、今ヨリ七八年ヲ見マスレ
バ上告ナリ控訴ナリ、一審ナリ何ナリ代言人ト云フモノニ-訴訟代
人ヲ、普通ノ人間ニ訴訟代人ト云フモノヲ許シテ居ッタノデアル、何人デモ免
許ヲ得ナイ所ノ代人ヲ選ンデサウシテ訴訟ノ代理人トナスコトヲ得タノデ
アル、故ニ是等ノ徒ハ或ハ利益ニ感フテ其利益ヲ得ントシテ、サウシテ實際勝
利ノ見込ナク實際勝チ得ベカラサル所ノ訴訟ヲモ、良民ヲ欺イテナサシメ
タコトガアリマシタラウケレドモ辯護士法實施以來ハ然ラズ、辯護士法實
施以來ハ司法裁判所ニ於キマシテハ如何ナル事故ガアッテモ、免狀ヲ取ッ
タ所ノ卽チ登錄ヲ得タ所ノ辯護士ニアラズンバ訴訟ノ代人ヲ許サヌノデア
ル、成ル程八九年前ニハ三百代言ト云フ者ガアッテ、或ハケムト云フ者ガアッ
テ、サウシテ訴訟ノ濫起ヲシタト云フ事實ガアッタニハ相違ナイガ今日ハ
サウ云フコトハナイノデアル、況ヤ年々法律社會モ世ト共ニ大ニ進步シ來リ
マシタルガ故ニ、今日ノ國民ハ今ヨリ七八年前ノ國民ノ如キ、實ニ一目瞭
然勝利ノ見込ナキモノヲ、代人ニ欺カレテ訴訟ヲスルト云フガ如キコトハ
ナイノデアル、殊ニ況ヤ司法省ナリ、裁判所ナリノ注意ニ依ッテ、此辯護士組
合會ト云フモノガ、頗ル其〓ニ注意シツヽアル今日デゴザイマシテ、而シテ今
日ノ辯護士ガ七、八年度ノ代言人ニ對シテ自ラ其名譽ヲ重ズルコトガ又高イ
ノデアル、故ニ自分ノ名譽ヲ重ンズルト同時ニ見込ノナイ訴訟ヲ僅バカリノ
金ノタメニ是認シテ、サウシテ裁判所ヘ參ッテ其理由ヲモ述ブルニ由ナク、
赤耻ヲ搔クヤウナ辯護士ハ今日割合ニハナカラウト思ヒマス、ソレカラ其次
ニ上告ヲスレバ執行期限ガ延長シテ一一箇月ナリ三箇月ナリ、其時間ノ猶豫
ヲ得ルコトガ出來ル、卽チ債權返濟ノ時間ヲ長クスルコトガ出來ルトシテ、
上告ヲ致スモノデアルト云フヤウナ議論ハ是レ又七、八年前ノ古イ頭ヲ持ッ
テ居ル所ノ裁判官ニ一ノ感ジガアル、成程七、八年前ノ古ヲ顧レバサウデゴ
ザイマス一度ビ控訴ヲスレバ四年、一度ビ上告ヲスレバ三年モ掛ッテ、裁
判官ガ遊ンデ居ッテ、又從ッテ法律ガ不備デアッテ、サウシテ長キ時間ヲ要
シテ居リマシタカラ、十圓ノ豫納金ヲ沒收サルヽモノトシテモ差引基金ノ
利息ト對シテ見マスレバ利益ヲ得ルト云フコトデ隨分上告ヲシタ者ガアル、
所ガ今日ハ大變ソレト違ッテ居リマシテ、司法省ノ第十九、民事統計表等デ
見マスレバ先ヅ此上告ニナッテカラ、サウシテ是ガ終結ヲ爲スマデノ間ニド
ノ位ノ時間ヲ要シタモノデアルカト申シマスルノニ上告事件デ一箇月以內
デ終結スルモノガアル、二年以上ニ亙ッタモノハナイ、卽チ大審院ノ分デ一
寸見マスレバ、三箇月以內デ終局シタモノガ百十三件、六箇月以內デ結局シ
タモノガ三百三十五件、一年以內ニ結局シタモノガ二百三十六件ト云フヤウ
ナ割合デアル、又是ト同ク地方裁判所ノ方ニ於テ爲シマシタ其控訴ニ對シテ
控訴院ノ上告モ同樣デ、三箇月以內ニ終局シタモノハ三百八十八件、六箇月以
內ニ終局シタモノガ一一百九十一件、斯樣ノ、今日ノ世ノ中ハ法律ノ完備ト共
ニ裁判官ノ腕モ達者ニナッテ來テ、七、八年前ノ裁判官ノ到底豫想シ能ハザ
ル程、今日ノ裁判ト云フモノハ敏速ナモノデアル故ニ上告ヲスレバ執行時
間ノ延長ヲ得テ、サウシテ義務ノ執行モ一時免レルト云フ勘定ヲ以テ此訴訟
ヲ爲ス者ハ決シテ私ハナイト思フデアルソレカラ先キニ又立戾ッテ其濫訴
ト云フコトニ就イテ私ハ考ヘテ見マスルノニ、是モ決シテ憂フルニ足ラナ
1、決シテ憂フルニ足ラナイト云フコトモ唯今申シマシタ所ノ統計年鑑ノ表
面ニ現ハレテ居リマス則チ大事件ノ方ハ、大ナル事件ノ方ハ却テ年々上告ノ
數ガ減ジテ小事件ノ方ハ年々上告ノ數ガ增シテ來ル之ヲ若モ則チ一時義
務ヲ免レントシテ濫訴スル者ガアル或代人、三百代言等ノ誘引ニ依ッテ、
徒ニ訴訟ヲ提起スルモノガアルト云フ事實ノ結果カラ見タナラバ大事件ナ
レバコソ大事件ニ從ッテ上告數ト云フモノガ多クナラナケレバナラヌ、何ト
ナレバ理由書ニモ書イテアリマスル通、大事件ヨリ此豫納金ヲ見タナラバ利
息ニモ充タナイ之ニ反シテ小事件ヨリ十圓ノ豫納金ヲ見タナラバ、五圓ノ
事件ヨリ十圓ヲ見タナラバドウデアル··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=55
-
056・高橋安爾
○高橋安爾君(二百三十七番) 唯今演說中デゴザイマスガ、見渡ス所定數ニ
足リマセヌソレデ此演說ハ委シクスル必要ハアラウト思ヒマス卽チ昨年
邊ニ於キマシテ、貴族院ハ本案ニ對シマシテ一向理窟ガ分ラヌト云フタ人モ
澤山見ルヤウデゴザイマス演說ヲ省略スルト云フコトハ本案ニ就イテ宜シ
クナイ、ソレ故ニ次囘ニ於テ引續イテ議セラレンコトヲ希望シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=56
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057・小室重弘
○小室重弘君(八十八番) 大抵人ガアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=57
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058・草刈親明
○草刈親明君(二百三十二番) 大抵アルト思ヒマスガ如何デゴザイマス(「ヤ
リ給ヘ」ト呼フ者アリ)何分ニモ短クヤリマス、此小事件ニ數ガ多クナツテ、大
事件ニ上告ノ數ガ少クナッタト云フコトハ、則チ先キニ申シマシタ所ノ此統計
年鑑デ明カデゴザイマスルケレドモ、尙ホ貴族院ト云フコトモゴザイマスカ
ラ一言申シテ置カウト思ヒマスガ、地方裁判所ノ此上〓デアル此地方裁
判所ノ上〓ノ數ヲ見マスルノニ、卽チ小事件ノ方ノ數ヲ見マスルニ、明治二
十六年度ノ上告ノ數ハ七百七十一件デゴザイマシテ、サウシテ前年度ニ受理
致シテ居リマシタ所ノ數ハ二百十四件デゴザイマスルガ故ニ、之ヲ加フレバ
九百八十五件デアル而シテ此九百八十五件ヲ前年度ニ比較シマスレバ百二
十八件增加シテ居ル、其訴訟ノ物價ヲ見ルノニ、五圓以上ハ三十五件、十圓
以上ハ四十五件、二十圓以上ハ八十六件ト云フヤウニ小事件ガ頗ル多イ十
圓ノ金ト云フモノデ權利ヲ押ヘルコトガ出來ルト云フコトニナッタナラバ、
五圓以上デ上告ヲ爲ス者ニ十圓以上ノ豫納金ヲ爲スト云フナラバ其數ガ減ゼ
ナケレバナラヌ、所ガ其數ガ唯今申ス通·発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=58
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059・高橋安爾
○高橋安爾君(二百三十七番) ドウシテモ議長ニ御確メヲ請フ、成規ニ背イ
テ居ル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=59
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060・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 一寸御待チナサイ、發論ガアル以上ハ注意セネバナラ
ヌ-草刈君-然ラバ御演說停止ヲ致シマス議場ハ定數ヲ缺キマシタ、
因テ此問題ヲ中止致シマス明日ノ議事ヲ報ジマス
〔佐脇書記官朗讀〕
議事日程第十四號明治二十九年一月二十八日(火曜日)
午後一時開議
第償金特別會計法案(政府提出)第一讀會ノ續特別委員〓
長報告
第二航海奬勳法案(政府提出)第一讀會ノ續特別委員
長報告
第三造船奬勵法案(政府提出)第一讀會ノ續特別委員
長報告
第四明治二十三年法律第五十號民事訴訟法施行第一讀會ノ續
條例中削除法律案(草刈親明君外三名提出)
第五外國語學校設立ノ建議案電話番号(員発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=60
-
061・楠本正隆
○議長(楠本正隆君) 是デ散會ヲ報ジマス
午後三時二十分散會
衆議院議事速記錄第十一號正誤
二頁段行誤正頁段行誤正
上一二炭坑石炭一六上四製造分割製造歩割
二下三六石炭特別石炭ハ特別一六下三一〇·九〇〇△〇·九〇〇
一一一一一六六六六六二下三九爲メ要スル爲メニ要スル八八八七七上九〇·七八三〇·七八三
三上二三該品ノ途該品ノ用途一一六六上九
〇·六七一〇·六一七
三上二九此防寒其防寒一六下一六雇人雇入
一六三下二八九万九千五百九万五千五百一七0上二二
七十二箇九十二箇土尾土屋
一六四上一七十人長千人長一七〇上三七乘室乘客
上二七百二十九万六百二十九万六一七一上三右上方左上方
一六六千三百箇千三百一箇一上三分ナラン部ナラン
一六六上三〇製造カ製造力八八八七三二一三八場ニハ場合ニハ
一六六下三三松田仙三松田仙二一上下二〇森林ト森林會ト
衆議院議事速記錄第十一一號正誤
頁段行誤正頁段行誤正
-九下三俸給恩給一九下八分限同樣同樣
一九下一五與ヘヌ奥、発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=000913242X01318960127&spkNum=61
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