1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
明治三十一年六月二日（木曜日）午後一時八分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十號 明治三十一年六月二日
午後一時開議
第一 民法中修正案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第二 戸籍法案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第三 衆議院議員選舉法改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第四 裁判所設立廢止及管轄區域變更に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第五 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第六 罹災救助基金法案（政府提出） 第一讀會
第七 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第八 航海奬勵法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第九 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十 秩祿整理公債法案（深山聳つら君外十七名提出） 第一讀會の續（委員長報告）
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=0
-
001・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔寺田書記官朗讀〕
政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
明治三十一年度歲入歳出總豫算追加案(第三號第四號)
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ要スル件(第二號)
貴族院ヨリ送付セラレタル議案左ノ如シ
船員法案
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
配當祿處分法案
提出者小室重弘君金尾稜嚴君
深山聳峮君松島廉作君
明治三十年法律第五十號中追加法律案
提出者深山聳峮君恆松隆慶君
西谷金藏君佐々木正藏君
高谷澤龍藏君橋本久太郞君
須賀穰君高津雅雄君
二位景暢君吉田吉十郞君
廣島縣下郡界變更法律案
提出者井上角五郞君佐々木高榮君
小田貫一君松井將壯君
特別委員長及理事左ノ通當選セラレタリ
鐵道公債事業公債及北海道鐵道公債ヲ外國ニ於テ
募集スル場合ニ關スル法律案委員長市島謙吉君
同理事降旗元太郞君
印紙稅法案委員長星松三郞君
同理事瀨貞文君
齋廣藤良輔君
不動產登記法案委員長
同理事佐々木高榮君
商法修正案外二件委員長鳩山和夫君
同理事久良知寅次郞君
同理事武市庫太君
特別委員左ノ通指名セリ
銀行條例中改正法律案外一件委員
草刈武八郞君中野武營君藤岡常彥君
脇坂行三君藤澤幾之輔君野坂茂三郞君
東條彰君猪狩八郎君中辰之助君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=1
-
002・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ヨリ會議ヲ開キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=2
-
003・小室重弘
○小室重弘君(百八十八番) 私ハ此會議ヲ開ク前ニ當ッテ、一ツ請願委員會
ノコトニ附イテ請願委員長ニ伺ッテ置キタイコトガアル、全體法律ニ依リマ
シテモ、請願委員會ハ少クトモ、一週ニ一囘其結果ヲ報告シテ貰ハナケレバナ
ラナイト云フコトニナッテ居ル、此議院ガ開ケマシテヨリ、最早二週日ニナッ
テ居リマスルガ、請願委員會ハ如何ナル經過ニナッテ、如何ナル結果ヲ爲シ
タカ吾ミハ未ダ報告ヲ聞カナイノデアリマス、殊ニ吾ミガ紹介シテアル請願
書ト云フモノモ、ドウ云フヤウナ決定ニナッテ居ルカヲ聞クコトガ出來マセ
ヌ規定ニアル如ク、一週日內ニ何等ノ異議ガアッテモ其事ヲ持出スコト
モ出來ナイト云フヤウナコトデアルソレデ、今日ハ願ハクハ請願委員長ヨ
リ其邊ノ經過ノ事柄ヲ詳細ニ伺ッテ置キタイノデアリマス
(「同感々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=3
-
004・藤金作
○藤金作君(二百四十八番) 唯今ヨリ償金ニ關スル特別委員會ヲ開キタウゴ
ザリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=4
-
005・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 藤金作君カラ償金ニ關スル特別委員會ヲ開クタメ退席
シタイト云フコトデアリマスガ、許可スルコトニ御異議ハアリマスマイカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=5
-
006・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通ニ致シマス-請願委員長ハ今
見エテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=6
-
007・小室重弘
○小室重弘君(百八十八番) 請願委員長ガ居ラレマセヌケレバ、理事ノ諸君
ガ居ラレマセウ、サウ云フ諸君ガ居ルナラバドナタカラデモ宜シイ、餘リ
請願委員會ガ此院ヨリ託サレタコトニ附イテ甚ダ其職務ヲ曠廢シテ、-曠
廢シテト申シテハ失禮カ知レマセヌガ、投ゲヤリニナッテ居ルト云フコトハ、
私ハ遺憾ニ思フノデゴザリマス、ドウカ理事ノ諸君カラ報告ヲセラレタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=7
-
008・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 尙ホ議長カラモ請願委員長ヘ其事ヲ注意致シテ置キマ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=8
-
009・小室重弘
○小室重弘君(百八十八番) 然ラバ御約束致シテ置キマス、明日ハ開會ノ始
ニ於テ報〓ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=9
-
010・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ヨリ議事日程第一ニ移リマス
第民法中修正案(政府提出)第一讀會ノ續(委員長)
報告
〔大岡育造君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=10
-
011・大岡育造
○大岡育造君(二百八十四番) 民法中修正案ニ附キマシテ、委員會ノ經過及
結果ヲ御報告申シマス、民法中ノ修正案ハ先月ノ二十五日ニ調査ヲ始メ
マシテ、昨六月一日ニ其調査ヲ終リマシタ、調査ニ係リマシテヨリハ、每日
午前九時カラ十二時マデ、議場ノ都合ニ依リマシテハ、午後モ此曾ヲ續ケマシ
テ、每編每節或ル場合ニハ每條ト云フ程ニ詳シク說明モ聞キマシタシ、討論モ
重ネマスルシ、修正案モ出マシテ、遂ニ昨日其全部ヲ審査シ終リマシタ、結局
民法中ノ修正案中二箇所ノ修正ガ成立致シマシタ、其第一ハ七百三十四條ノ
第二項ヲ削除スルコト、今一ツハ第八百十三條中ニ列記シテゴザイマスル中
ノ第四號中ニ「配偶者カ」ノ下ニ配付致シマシタル修正報告ノ如クニ、七十五
字ヲ加ヘルコトニナリマシテゴザイマス、今一ツ御注意マデニ申シテ置キマ
スガ、此民法ノ修正法條中ニ千二十八條ノ二項ニ「第千一一十條」ト云フ字ガゴ
ザイマスガ、調査中了解ニ苦ミマシテ、詮索致シマシタ所ガ、ソレハ第千二十
一條ノ誤植デアッテ、「一」ノ字ガ落チテ居ルト云フコトガ分リマシテゴザイ
マスカラ、念ノタメニ申シテ置キマス、以上ハ經過及結果デゴザイマス、而シ
テ何故ニ二箇所ノ修正ヲ致シマシタカト云フ說明ハ數多出マシタ修正中デ
成立致シマシタ、此二箇ノ提出者ハ藤澤幾之輔君デゴザイマスカラ、藤澤幾
之輔君カラ其意味ヲ御報申ス積リデゴザイマスカラ、御聽取リニナルヤウニ
願ヒマス
(藤澤幾之輔君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=11
-
012・藤澤幾之輔
○藤澤幾之輔君(百七十七番) 唯今委員長ヨリ報告ニナリマシタル通、民法
中ノ修正案ニ對シマシテ、二箇ノ修正ヲ加ヘマシタ、私ハ委員ノ一人トシテ
且ツ其修正ノ提出者トシテ修正致シマシタル理由ヲ述ベテ、諸君ノ御贊成ヲ
請ヒマスル二ツノ中、其一ハ第七百三十四條ノ第二項ヲ削除致シマスル
ノデス、七百三十四條ハ二項カラ成立ッタ所ノ法條デゴザリマス、第一項ハ
チヨット御分リ易イヤウニ讀ンデ見マスルガ「父カ子ノ出生前ニ離婚又ハ離緣
ニ因リテ其家ヲ去リタルトキハ前條第一項ノ規定ハ懷胎ノ始ニ遡リテ之ヲ適
用ス」養子ニ參リマシタ所ノ者ガ、ソレヲ去リマシタトキニ於テ、其婦ト爲リ
マシタ所ノ者ガ、懷胎ヲ致シテ居ッタ、卽チ左樣ナ場合ニ於キマシテ、養子
ガ原因ガアリマシテ、其家ヲ去リマシタトキニ於テハ、其懷胎中ノ子供ハ何
處ノ家ニ入ルカト、卽チ其懷胎當時ニ遡リマシテ其家ニ居ルデアリマスカ
ラ養家ニ入ルト云フコトニナッテ居ルノガ、第二項デアリマス、ソレデ、
第二項ハドウ云フコトカト云フト「前項ノ規定ハ父母カ共ニ其家ヲ去リタ
ル場合ニハ之ヲ適用セス但母カ子ノ出生前ニ復籍ヲナシタルトキハ此限ニ在
ラス一斯ヤウニアル卽チ本項ノ方ハ懷胎中ニ於テ父母共ニ其家ヲ立去ッタ
トキニ於キマシテハ前項ヲ適用卽チ前項ノ規定ニ全ク相反シタル所ノ結果
ヲ示シマスモノデ、卽チ父母共ニ其家ヲ去ルヤウニナッタナラバ、其懷胎ノ
子供ハ去ッタ所ノ父ノ方ニ參リマスノデアリマシテ、養家ノ子供ニハナラナ
イ養家ノ籍ニ入ラナイト云フノガ、第二項ノ規定デアリマス、卽チ此修正
ハ第二項ヲ削除致ス、卽チ縱令養子夫婦ガ養家ヲ立去リマシテモ其養家ニ
アッテ懷胎致シマシタル所ノ子供ハ、矢張養家ノ籍ニ入ル、裏カラ申セバ
之ヲ削除致セバサウナリマスノデ、サウ致シタイト云フノデス原案ノ通ニ
致シマスト子供ノタメニ利益ノ場合ガアル、卽チ懷胎中ノ子供ニシテ、父
母共ニ其家ヲ去ル時分ニハ養家ニ其子供ガ殘サレナイノデアリマスカラ
養家ニ入ラヌノデ、卽チ母ノ手ニ依ッテ育テラレルト云フ利益ガアルノデア
リマス、養家ニ入ラナイト致シマスレバ、サウ云フ利益ガアリマスケレドモ、
又他ノ一方カラ考ヘテ見マスト云フト、養子ニ對シテ餘所カラ嫁ヲ貫ッタ場
合ニハソレデ差支アリマセヌケレドモ、自分ノ家ノ一人娘デ、所謂家女ニ
壻ヲ取ッタ場合ヲ想像シテ見ルノデアリマス、其時分ニ附イテ考ヘテ見マス
ト云フト、養子ト其娘トガ他ニ去リマシタ時分ニ、其家ノ血統ガ絕エルト云
フコトニナル、其子供ヲ養家ニ入レナイト云フコトニ法律デ定メルト、卽チ
養家ノ血統ガ絕エルト云フコトニナル、個人ノ方カラ申シマスレバ利害相
半バシマスケレドモ苟モ血統ヲ重ジ家ヲ重ズル上カラ申シマスレバ、修正
ヲシナケレバナラナイサウシテ斯樣ニ修正致シマスルト、其結果ハ矢張古
來ノ習慣ニ適フノデアリマスシ、殊ニ我國體ニ一致致スコトデアラウト存ジ
マス唯斯ノ如ク修正致シマスレバ、戶籍法ダトカ或ハ國籍法ダトカ云フモノ
ニ對シテ、多少ノ修正ヲ加ヘマセヌケレバナラナイ斯ノ如キ法律ハ卽チ此民
法ノ人事編ト互ニ相關聯シテ居リマス、今其一例ヲ舉ゲテ見マスルト、國籍
法ニ於キマシテハ之ト關聯致シテ居リマス所ノ法律ハ唯僅ニ第二條ノ第
二項ニ過ギナイ、之ヲ此精神ニ依ッテ削除致シマスレバ差支ナイコトデアリ
マス、故ニ本員ハ此委員會ノ修正ノ通ニ可決セラレンコトヲ希望致シマスル
ガ政府委員ハ此改正ニ附イテハ、私ガ先キニ利益トシテ述ベタ所ヲ主張シ、
又他ノ法律モ修正ヲシナケレバナラナイト云フ如キ理由ヲ以テ反對ヲ致シマ
シタ、是ハ諸君ガ採否ヲ決セラレル上ニ於テ御參考ニナルベキ箇條デアリマ
スカラ、是レ亦共ニ申上ゲテ置キマス、ソレカラ八百十三條デ、第二款裁判
上ノ離婚ト題シマス所デス其條ノ第四號、之ヲ改正致シタイト云フノデ、四
號ニハドウ云フコトニナッテ居ルカト申シマスト、「配偶者カ重禁錮三年以上
ノ刑ニ處セラレタルトキ」此原案ノ通ニ致シマスレバ、夫ガ强盜ヲ致シ
マシテ、サウシテ其處刑ハ三年ヲ超エマスレバ、妻カラ離別ヲ請求スルノ原
因トナリマスケレドモ、減ジラレテ三年以下ノ重禁錮ニナリマシタトキニ
於テハ縱令夫ガ强盜ヲ働キマスルヤウナ人物デアッテモ、是ガ裁判上離緣ヲ
請求スルノ原因トナラナイト云フコトデゴザイマス、原案ノ通ニ致シマスレ
バ、又妻ノ方ニ附イテ見レバ、妻ガ泥坊ヲスル、或ハ其他破廉耻ノ罪ヲ犯
スワレデモデス、三年以上ノ處刑ヲ受ケタ場合デナケレバ、離婚ヲスル、コ
トガ出來ナイト云フコトナノデス、斯樣ナコトハ、實際ニ於テ如何デアルカ、
夫婦トナリマシタ所ノ目的ニ於テ如何デアラウカ、又現在强盜ヲシタリ泥坊
ヲスルヤウナ者ト夫婦トナッテ居ルコトハ堪エラレヌコトデアリマセウガ、
人ニ依ッテハ、固ヨリ左樣ナコトガアリマシテモ、夫婦ノ位地ヲ繼續スルデア
リマセウケレドモ、三年以上デナケレバ離婚ノ原因トナラナイト云フコトニ
規定致シテ置キマシテハ、其弊ト云フモノハ測リ知ルベカラザルモノデア
ラウト思ヒマス、故ニ此犯罪ノ性質ヲ大體上ニ於テ區別シテ見マスレバ
嘗テ行レタ所ノ律語ニ依ッテ言明セバ、破廉耻罪、泥坊トカ、詐欺トカ、强
盜トカ、强姦トカ、サウ云フ種類ノ所謂破廉耻罪ハデス、縱令刑期ガ短クテ
モ、輕罪以上ノ刑ニ處セラレタトキハ、矢張離婚ノ原因ト爲リ、其他ノ犯罪卽
チ輕罪デ申セバ官吏侮辱トカ、重罪デアレバ國事犯トカ云フモノハ、罪質
ガマルデ違ヒマスカラシテ、矢張原案ノ如クニ三年以上此二樣ニ區別致シマ
シタ、此修正ニ對シマシテハ、政府ハ異議ヲ唱ヘマセヌ、贊成致シテ居リマス、
斯樣ナ理由ニ依ッテ修正ヲ遂ゲマシタ、御贊成アランコトヲ希望致シマス
〔肥塚龍君「成文ノ朗讀ハナイデスカ」ト呼フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=12
-
013・藤澤幾之輔
○藤澤幾之輔君(百七十七番) 修正文ハ諸君ノ方ヘ印刷ガ囘ッテ居リマスレ
ドモ念ノタメ然ラバ讀ミマス、第八百十三條中第四號中「配偶者ガ重禁錮三
年以上ノ刑ニ處セラレタルトキ」トアリマスノヲ、配偶者ガノ下ニ「僞造、
賄賂、猥褻、竊盜、强盜、詐欺取財、受寄財物費消、贓物ニ關スル罪若クハ刑法第
百七十五條」第百七十五條ハ官ノ封印ヲ破毀シテ其物件ヲ竊取シタル如キモ
ノ、「第二百六十條」第二百六十條ハ賭場ヲ開張シテ利ヲ圖リ又ハ博徒ヲ招集
シタル者、卽チ是等ニ揭ゲタル罪ニ依ッテ輕罪以上ノ刑ニ處セラレ又ハ其他
ノ罪ニ因リテ云々斯ウ云フ風ニ修正ヲスル、一體此文章ガ長クテ面白クア
リマセヌケレドモ此種ノ事柄ヲ明カニ致シマスルニハ列記法ヲ取ルヨ
リ方ニ仕方ハアリマセヌ、曾テ代言人規則ヲ改メテ辯護士法ヲ制定シタ時
分ニ、矢張斯ウ云フ區別ヲスル必要ガアッテ列記法ヲ取ッタ例ガアリマス
卽チ矢張斯樣ナ列記法ヲ取リマスレバ、斯樣ナ具合ニナリマス、此段共ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=13
-
014・丸山嵯峨一郎
○丸山嵯峨一郞君(二百七十一番) 今通告ガゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=14
-
015・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 質問ナラバ宜シイガ、演說ナラバ、通〓ノ順ニ依ッテ
發言ヲ許シマス、山田喜之助君
〔山田喜之助君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=15
-
016・山田喜之助
○山田喜之助君(四番) 本員ハ病後ヒドク咽喉ヲ痛メテ居リマスルカラ、御
聽苦シイノミナラズ、聲ガ徹セヌダラウト存ジマス、御遠方ノ方ニハ趣意が
貫徹致シ兼ネマスル殘念ナガラ已ムヲ得ヌコトデアリマスカラ、御容赦ヲ
願ヒタイデアリマス、唯今議會ニ出テ居リマスル政府案卽チ親族編相續編ノ
二編ハ當議會中ニ於キマシテハ最モ大ナル問題デアラウト思ヒマス獨リ
當議會ノミデハアリマセヌ、縱令何等ノ議會デアリマシテモ、是ハ頗ル大キ
イ問題ト考ヘマス隨分重大ナル問題デアリマシテモ一時的ノ問題ガアリ
マス併ナガラ本件ノ問題ハ勿論申スマデモナク、永久的ノ性質ヲ有シテ居
ルモノデアル、又重イ問題デアリマシテモ局部的ノ問題ガアリマス、本問
題ノ如キ勿論左樣デハナクシテ、普及的ノ問題デアリマス從來當議院ニ於
キマシテ···
(恆松隆慶君「唯今ハ二讀會デゴザイマスカ」ト呼フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=16
-
017・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 一讀會ノ續デアリマス
(恆松隆慶君「全體ノ反對デスカ」ト呼フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=17
-
018・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 左樣
(恆松隆慶君「各條ニ就イテノ修正ナレバ、二讀會ノ時ニシタラ宜イデ
セウ」ト呼フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=18
-
019・山田喜之助
○山田喜之助君(四番) 少數ノ箇條デ成立ッテ居ル議案ト云フモノハ、比較
的ニ愼重ナル審査ヲ遂ゲマシタガ、浩澣ナル議案ト云フモノハ、寧ロ稍〓輕
忽ニ流レルカノ如キ憾ガアリマス、是ハ本員抔ノ殘念ニ存ズル所デアリマス、
法律ニ於キマシテ、其重サ加減ヲ比較スルコト若ハ貴重ノ程度ヲ比較スル
ト云フコトハ困難ノ問題デアリマスガ、親族法相續法ノ如キハ、少シク法
律ト皆サン方ニ於キマシテモ、異ナル御考ヲ御持チ下サルコトヲ希望スルノ
デアリマス、從來斯ウ云フ說ヲ主張スル者ガ往々アリマス、是ハ法律家ノ說
デハアリマセヌケレドモ、刑法ノ如キハ少々酷デアッタ所ガ、自分達ガ罪
ヲ犯サヌ積リナラバ、ソレデ宜イ、始ヨリ惡事ヲセヌ積リナラバ、竊盜罪ガ二
箇月以上デアラウガ、四箇月以上デアラウガ構ハヌ、或ハ詐欺取財ノ罪ガ二
年以下デアラウガ、四年以下デアラウガ、因ヨリ自分ハ惡事ヲナサヌカラ
刑法抔ハドウデモ宜イト云フ說ヲ出ス人ガアリマス、又或ハ商法ノ如キモノ
ニナルト、或ハ商法ノ一部分ノ保險法トカ云フモノニナリマスト、商取引ニ關
係ノナイモノハ實ハ冷淡ニ見テ居ル、或ハ又保險會社ニ關係ガアルトカ、
自ラ被保險人ニナルトカ云フ、保險法ニ先ヅ自分ノ身ガ關係ヲ致シテ居ラヌ
カラト云フコトデアル、是ハ誤謬ノ說デハゴザイマスルガ、免ニ角我身ニ直
接ニ觸レテ來ヌト云フコトニ附テハ先ヅ一理アルコトデアリマス、卽チ
生レナガラ法ノ下ニ立寄ラヌデ濟ムコトガアリマス、諸君、サリナガラ親族
編相續編ハサウハ參ラヌ、勿論申上グルマデモナク、此世ニ日本人トシテ生
レテ出テ來タ以上ハ、生レタ其時ヨリ死スルマデハ片時モ離ルヽコトノ出來
ヌ、誰モ彼モ此支配ヲ受ケナケレバナラヌ、世ノ中ニ親ノナイ人ハアリマセ
ヌ、又多クノ人ハ妻ガアリマス、妻ガアレバ多クノ人ハ子モアリマス、デ、是
等ノ多數ノ國民ガ凡テ支配ヲ受ケナケレバナラヌ法律デアリマスカラ、他
ノ局部的法律ト同視セラレテハ甚ダ國家ノタメ或ハ自己一身ノタメニモ不都
合ト思ヒマス、最モ刑法ト申シテモ、國家ノ公法デアルカラ、一個人ノ利害
ニ關係スル法デハナイ、又商法ト云ヒ、其他ノ法律ト云ヒ何レモ社會的ノ
モノデアリマスガ、己ノ身ニ直接觸レヌト觸レルトハ、唯今申シタ素人論ト
雖モ、尙ホ一理アリマス、ソコデ更ニ一歩ヲ進メマスルト、此親族法相續法ノ
如キハ、更ニ生レテカラ死ヌマデバカリデハナイ、母ノ胎內ニ居ルトキデスラ
規定シテアル又遺囑ト云フテ死シテカラ後ノ效力ノ事マデ規定シテアルカ
ラ、何人モ觸レル所ノ永久的普及的ノ法律デアルト云フコトハ、御呑込ヲ
願ハナケレバナラヌ、偖テ法典ト云フモノハ普通カラ申シマスルト種
ノ平易ナル問題デアル、ムヅカシイ問題デハアルガ、平易ナル問題デアル、然
ルニ我國ニ於キマシテハ、此法典ガ圖ラズモ條約改正ト云フ事ニ影響ヲ持ッテ
來タノデアリマス、此事ハ無論申上ゲズトモ、皆サン御承知ノコトデ、法典
ト云フモノヲ或ル意味ニ於テ完成セザル以上ト云フモノハ、條約改正ノ實行
ト云フモノニ差響ヲ生ジテ來ル故ニ旣ニ民法ノ第一編第二編第三編ノ如キ
ハ始末ガ付イテ居ル、今此殘部ノ第四編第五編ト云フモノガ卽チ問題デア
リマス、本員ノ考ヘル所ニ依リマスルト云フト、元來法典ト云フモノハ條
約改正ニ關係ヲ有ツベキモノデハナイノデアリマスガ、是ハ今更申シテモ詮
ナイコトデアリマス、旣ニ當局者ガ關係ヲ有タシテ仕舞ッタ以上ハ、是ハ詮
方ナイコトヽ言ハナケレバナラナイ、唯殘ル所ノ問題ガ親族編相續編ト云フ
モノガ條約改正ニ關係ヲ有タナケレバナラヌカ否ト云フノ問題デアリマス、
本員ハ無論是ハ條約改正ニ關係ヲ有ツ筈ノモノデハナイ、又有タシテハナラ
ヌト云フノ論ヲ御參考マデニ御聽ニ達スルノデアリマス、諸君、法典ト申シマ
シテモ、初ヨリ極ッタ定義ハナイノデアリマス、學者間ニ於キマシテモ、又
歷史的ニ言ヒマシテモ法典ト云ヘバ是非是ダケノモノガナケレバナラヌ
ト云フ極ッタモノガ、初ヨリアルノデハアリマセヌ若シ法典ト云フモノガ
デス、是ダケノモノガナケレバナラヌト云フコトニ、初カラ極ッテアルモノ
デアリマスナラバ各國ノ法典同一轍ニ出テ居ナケレバナラナイ譯デゴザイ
マスケレドモ、サウデハアリマセヌ、是ハ申上ゲルマデモナク、各國ノ法典
ハ無論同一轍ニ行ッテ居ラヌ、其中ニ記載シテアル事柄ノ或ハ甲ノ法典ニ這
入ッテ居ツテモ、乙ノ法典ニ這入ッテ居ラズ、或ハ甲ノ法典ニ拔ケテ居ッテ
モ、乙ノ法典ニ繰込シデ居ルト云フヤウナ鹽梅ニ、法典ト唱ヘルモノニ、初ヨ
リ學問上ナリ習慣上ナリノ一定ノ範圍ト云フモノガアルノデハアリマセヌ、
詰リ是ハ善意、常識、其國ノ歷史ト云フモノ三ツヲ以テ極メルヨリ仕方ナ
イノデアリマス、法典ノ完備シタル體裁ヨリ云ヒマスレバ、實ハ民法ト商法
トノ區別ノアルモノデハナイデハナイデス、是等ノ學術ノ問題ハ、今此席ニ
於テ申上ゲルハ皆樣モ御迷惑デアラウト思ヒマス、唯其結論ヲ申セバ、民法ト
商法ト云フモノガ區別サレテ居ルノハ實ハ一ノ習慣トカ或ハ來歷トカヨリ出
テ來タ譯デアリマシテ、根元ノ性質ニ於テハ、民法ト商法ヲ一ノ法典ニ編纂シ
テ仕舞ッタ方ガ、實ハ手際デアリマス、英米ニ於テハ法典ト云フモノハアリマ
セヌ、アリマセヌケレドモ、別段ニ民法商法ト云フ如キ區別モアリマセヌ、
學者ガ唯民法トカ商法トカ云フコトガアルカモ知レマセヌケレドモ、ソレハ
國法ニ於テ認メタ區別デハナイノデス、サウシテ見ルト宜ウゴザイマスカ
法典ト云フモノニハ卽チ一定ノ範圍ガアル譯デハゴザイマセヌ、何デモナ
イノデアリマスカラ、條約改正ニ法典ヲ必要トスルト云フコトニナリマスレ
バ其法典ハ條約改正ニ必要ナル部分ダケデ宜イト云フコトハ、自然ノ結果
デアラウト思フ、卽チ外國人ト條約改正ヲスルニ付イテ、外國人ガ法典ヲ編
纂シロト云フコトヲ要求スルナラバ、其要求ハ外國人ノ便利若ハ安心ニナル
ダケノ範圍デ宜イ、ソレヨリ餘計ノモノヲ拵ヘル必要ハナイ、元來親族法相
續法ト申シマスモノハ、內輪ノ法律デアリマス、是ハ世界的卽チ「コスモボ
リチック」ノモノデハナイノデス、商法ト云フ如キモノト甚ダ性質ヲ異ニシテ、
商法ト云フガ如キモノハ大抵今日普通文明國ト唱ヘラレテ居ル所デハ
先ヅ共通ノモノト見テ宜カラウト思ヒマス、併ナガラ、親族法相續法ト云フ
ガ如キモノハ共通ノ性質ヲ有ッテ居ラヌモノデアッテ、是ハ內輪ノ法律デ
アル、若シ國ト云フモノヲ家族ノ團體ニ比較スルナラバ是ハ詰リ家內ノ法
律デアル、外國ノ御客樣ニハ關係ノナイ所ノ法律デアル、此事ハ本員ガ新發
明ノ說デモ何デモナイ、又無論珍シイムヅカシイ話デモ何デモナイデス、今
日世間ノ法理若クハ法律的習慣トシテ認メラレテ居ル所ノモノハ、何處ノ國
デモ大抵サウデアリマス、唯箇條ニ少シバカリノ異同ガアリマスルケレド
モ英吉利デアラウガ、亞米利加デアラウガ、佛蘭西デアラウガ獨逸デアラウ
ガ、此親族法相續法ト云フモノハ、內輪ノ法律トシテ、外國人ニ關係ガナイ、
假リニアルトシテモ、餘程微々タルモノデ、殆ド利害ノ關係ヲ以テ目スベカ
ラザル程ノモノデアリマス、然ラバ、日本ノ立法官日本ノ政府ハ之ヲ如何ニ
見テ居ルカト申シマスト矢張吾ミガ言フ通リ、又吾ミガ言フ通リデナイ、
世界ノ法律國ガ認メテ居ル通、親族法相續法ノ二編ト云フモノハ、內部ノ法律
デアッテ、外國ノ御客樣ヲ當テニシタモノデナイト云フコトハ日本ノ法例
ニ於テ認メテ居ル、ソレハ外デハアリマセヌ、此帝國議會ノ案ニ出マシタル所
ノ法例ト云フモノヲ御覧ニナレバ分ル、法例ノ第三條ニ於キマシテ、外國人
ノ能力ト云フモノハ其本國法ニ依ッテ定メルトアル、其外澤山法條ト云フ
モノガアリマスルガ、之ヲ要スルニ外國人ノ夫婦關係トカ、相續關係ト云
フモノハ各〓其本國ノ法律ニ依ッテ定メルノデアリマス、故ニ英吉利人ガ
日本ニ商賣ナリ貿易ナリ或ハ學術ナリ、何ノタメデモ宜イ、日本ニ來テ居リ
マスルトキニ其者ノ能力ヲ定メルトカ其者ノ夫婦間ノ成立ガ正當デアル
トカナイトカ云フヤウナコトハ何レモ皆本國タル英國法ヲ日本ノ裁判所ニ
依ッテ裁判シテヤル、又佛蘭西人デモ獨逸人デモ同ジコトデアリマス、卽チ
外國人ノ能力身分婚姻相續ニ關スルコトハ、其本國法ヲ適用スルト云フノ
ガ、宇內ノ通義デアッテ、日本ノ立法官モ其法律ヲ採用シテ、諸君モ既ニ御
協賛ニナッタノデス、之ヲ反對ニ若モ日本ノ法律ヲ以テ-日本ノ親族法相
續法ト云フモノヲ以テ日本ニ在留シテ居ル所ノ英米諸國ノ人間ヲ、其條規ノ
下ニ當箝メヤウトスルナラバ、是ハ大變デス、彼等ハ非常ニ苦情ヲ持込ンデ來
ルニ違ヒナイ、何故ト云フト、習慣モ宗〓モ凡テ違ツテ居ル所ノ英吉利人、
佛蘭西人、獨逸人ガ商賣ニ日本ニ來タガタメニ、親族ダノ相續ノ事マデ日
本ノ法律ニ從ハナケレバナラヌト云フコトニナッタナラバ是ハ大變デ
アッテ、無論日本政府モサウ云フ無法ナコトヲスルノデハナイ、法例ニ
於テ其事ハシナイト認メテ居ル、(「モウ止メタラドウダ」「簡單」ト呼フ者
アリ)御静ニ願ヒタイ、是ガ簡單デス、右樣ノ次第デアリマスカラ、先
ヅ此法例ト云フモノヽ規定ガ、當ヲ得テ居ルモノトシマスト、親族法相
續法ト云フモノハ、外國人ニ關係ガナイ、又外國人ガ是ニ支配サレテハ
困ルノデアル、無論外國人ト雖モ日本ニ歸化スルトカ、或ハ又日本ノ親族法
ニ從ヒタイト云フ所ノ望ミノモノハ別デス、サウ云フ其己ヨリ取捨ノ道ヲ行ッ
テ來ル者ハ別デスサウ云フ取捨ノ道ヲ行ッテ來ナイ者ハ日本ノ親族法
相續法トハ無關係ノ人デアル、ナゼ斯樣ナ無關係ノモノヲ條約改正ノ條件ト
シタカ、是ハ謂ハレノナイデアリマセウ、故ニ初ヨリ當路者ガ氣ガ附イテ居ッ
タナラバ、親族法相續法ヲ除イテ、旣ニ他ノ法律ト云フモノハ〓完成シテ
居ルカラ、條約改正ヲ急イデ宜シイ、今日ノ如クグヅ〓〓シテ居ル必要ハナ
ィ、若シ氣ノ附カズシテヤッタコトデアルナラバ自ラ氣カ附クカ、或ハ
人ガ氣ヲ附ケテ吳レタナラバソレヲ採用シテ、所謂正道ニ復スルガ當リ前
デアル必ズ己ノ非ヲ遂ゲナケレバナラナイト云フコトハナイ確ナル筋ニ
依ッテ聞キマシタニ、日本政府ト暹羅政府トノ條約ニ依リマシテ暹羅政府
ハ日本政府ニ向ッテ、治外法權撤去ノ條件トシテ、法典ヲ編纂スルト云フコ
トヲ約束シテ居ル、然ルニ親族法相續法ト云フモノハ之ヲ除クト云フコ
トヲ申シテ居ッテ、日本政府ハ之ニ同意シテ居ルト云フコトヲ聞イテ居ル、
果シテ然ラバ、暹羅政府スラ正當ノ道ヲ取ルコトハ知ッテ居ッテ、日本政府
ガ暹羅政府ノ提議ヲ容レテ正當ナルコトニ同意シテ居ルト云フコトハ吾ミ
實ニ日本政府トシテ適當ナル所置ヲシテ居ルト思フ、暹羅政府ニ對シテ適
當ナル所置ヲシテ居ルノニ、他ノ諸外國ニ對シテ適當ナル所置ノ出來ヌト云
フ筈ハナイ、余輩ハ敢テ當局者ノ失態ヲ答メルノデハアリマセヌ、何時ニテ
モ氣ガ附ケバ直スガ宜シ、又直スコトノ出來ヌモノナレバ格別デアリマス
ガ斯ル事柄ハ外國人ニハ別段ニ何等ノ不利益ヲ與ヘルモノデハゴザイ
マセヌカラシテ、異議ナク輙ク纏マルデアラウト、我輩ハ確信スル、若シ斯
ル正當ナルコト又眞面目ナル當リ前ノコトスラ日本外交官ハ其目的ヲ達ス
ルコトガ出來ヌト云フナラ、日本外交官ハ實ニ不能デアルト云フコトヲ自認
シテ居ルノデアル委員會ニ於キマシテ、我輩ハ曾禰司法大臣ニ聽イタコト
ガアル、答辯ハ甚ダ要領ヲ得マセナンダケレドモ斯ウ云フコトニ聞イタ、今
山田委員ヨリ述ベタ所ノコトハ、至當デアル、併ナガラ、如何セン其事ハ外國
ニ掛合フニ附イテハコヽ三年四年ノ歲月ト云フモノヲ費シテ、ドウモ其間條
約改正ト云フモノハ少クトモ後レル、縱シヤ交渉ノ目的ヲ達スルモノトシテ
モ後レル、又諸外國ニ於テハ、此事ヲ各〓其國ノ帝國議會ニ掛ケテ協賛ヲ經ナ
ケレバナラヌト云フコトヲ曾禰司法大臣ガ答ヘマシタ、併ナガラ是ハ嘘デ
アル、本員ハ斷ジテ之ヲ噓ト云フコトヲ憚ラナイ、何トナレバ、諸外國ト云ジ
テモ國ハ多イコトデアリマスガ、重ナル國ニ就イテ之ヲ見レバ、外國政府ハ
斯ル事柄ヲ自國ノ議會ニ協贊ヲ求ムルト云フコトハナイ、詰リ議定書ト申シ
マスルカ、何ト申シマスルカ、形ハ何デアルカ知リマセヌケレドモ、此法典
ノ條件ト云フモノハ、條約ノ本文ニ記載サレテ居ル譯デモナク、又法典ト云
フ事柄ヲ善意ニ解釋シテ見レバ外國人ニ關係シテ親族法相續法マデモ編マ
ナケレバナラヌト云フ必要モナイ、又前ニ申シマシタ通、法典ト云フモノ
範圍モ初ヨリ極ッタモノデナケレバ是ダケハ各國政府ノ當局者ト云フモ
ノハ、己ノ力ヲ以テ取捨スルコトガ出來ル、必ズ其國ノ議會ニ諮ラナケレバ
ナラヌト云フコトハアリマセヌ、斯ルコトハ恐ラクハ曾禰司法大臣ガ嘘ヲ
言ッタカ、各國ノ憲法ニ付イテ甚ダ不調デアッタト本員ハ斷言スル親族
法相續法ト申シマスモノハ、先ヅ條約改正ヲ別ト致シマシテモ、諸君ノ御考ハ
他ノ法律案ト少シ變ヘテ戴カナケレバナラヌ、吾ミハ政府委員ト云フ者ハ善
良ナル法律家ヲ以テ組織セラレテ居ルト云フコトハ信ジテ疑ハナイ、先ヅ
今日本ノ法律家ト云ヘバ政府委員デ恐ラクハ其人ヲ得テ居リマセウ
尤モ漏レタ人モアリマセウケレドモ、先ヅ得テ居ルト思ヒマス、政府委員ガ
其處ニ居ルカラ、御世辭ヲ言フノデハアリマセヌ、サウダラウト思フ、併ナガ
ラ、諸君、此親族法ノ問題ト云フモノハ、法律問題デハナイノデス、單純ナ
ル法律問題デハナイノデス、是ハ一國ノ社會道德經濟ニ關スル問題デアッテ、
法律家ノミガ拈ネクッテ濟ムト云フ問題デハナイノデス、編纂ハ法律家ガ致
シマス、又體裁ト云フモノモ法律家ガ作リマス、併ナガラ、中ニ篏込ムベ
キ事柄-內容デス、內容ト云フモノハ、法律家ニ任スベキモノデハアリマセ
又、ソレハ重箱ヲバ三重ニシヤウトカ五重ニシヤウトカ云フコトハ宜シイ、
或ハ圓イ重箱トカ四角イ重箱トカ云フコトハ宜シイ、併シ中ニドウ云フモノ
ヲ詰込ムカト云フコトハ重箱ノ外形トハ關係ハナイ法典ヲ三篇ニスルト
カ五篇ニスルトカ云フコトハ重箱ヲ三重ニシヤウカ五重ニシヤウカ或ハ四
角ニシヤウカ六角ニシヤウカト云フコトデアル、重箱ノ中ニ何ヲ詰込ムカト
云フ問題ハ、單純ナル法律問題デナク、社會問題道德問題經濟問題其他諸般
ノ問題ヲ籠メテ居ル、是ハ政府委員ガ善良ナル法律家デアルガ故ニ、社會問
題經濟問題道德問題モ異議不都合ナク解釋ガ出來ルト云フコトヲ諸君ガ御信
ジニナッタナラバ宛モ大工ガ良イカラト一云ッテ壁モ塗レヽバ屋根モ葺ケル
ト云フコトヲ信ズルト同樣デス著シキ誤謬ト云ハナケレバナラヌ、外國
ノ例ヲ云フ必要モナイノデアリマスガ、併ナガラ政府委員ハ隨分外國ノ事
ヲ言フ人ミデアリマスカラ、一言言ヒマスルガ、日本ノ立法ト云フモノハ餘
リ早過キルデアリマス、立法ト云フモノハ決シテサウ其輕忽ニ早クヤッテ除
タベキモノデハナイ、現ニ他國ノ例卽チ日本抔カラ見レバ、先進國ト云ウテ
居ル所ノ國ノ例ニ依リマスレバ、僅カ一箇條カ二箇條ノ修正スラモ、或ハ七
年十年十五年ヲ費シテ居ルコトハ唯デモ少シ外國ノ事ニ通ジテ居ル者ノ
認ムル所デアリマス、然ルニデス、斯ル浩瀚ナル法律、四百何十條ト云フ法
律ヲ短期ノ議會ニ提出シテ之ニ協贊ヲ與ヘロト云フコトハ始カラ無謀デア
ル、始カラ亂暴ナ仕業デアル、之ヲ平タク云ヒマスレバ政府委員ガ無識ナ
ルガタメニ亂暴ナコトヲシテ居ルノデアルカ、然ラズンバ議會ヲ丸呑ニシテ
居ッテ、斯ウ云フ仕業ヲスルノデアル、何トナレバ、此四百何十條ト云フ法
律ヲ如何ナル神通力ヲ以テスルモ如何ナル勉强ヲ以テスルモ其當否ト云フモ
ノヲバ言フコトノ出來ルモノデハナイ當否ヲ云フコトノ出來ナイト云フ
コトガ始カラ分ッテ居ルノニ、ソレニ贊成シロト云フコトハ卽チ當否ヲ言
ヘト云フコトヽハ、衝突シテ居ルノデアル、斯ルコトハ常識アル者ノ言ヘル
モノデハナイ、常識ヲ外レタ仕事デアル、ソコデ簡單ト云フ聲ガ出ルカモ知
レマセヌガ、若シ世ノ中ノ事ガ簡單デ濟ムナラバ、此一言デ足リル、併ナガ
ラ、我輩ニハ此一言デ以テ止メル譯ニハ行カナイ、如何ニ政府ガ常識ニ外レ
タコトヲシテ居ッテモ、吾ミハサウ政府カラ侮蔑サレル譯ハナイ外國ノ立
法ガ遲々トシテ運バサル所ノ例ヲ申シマスレバ幾ラモアリマスガ、ソレハ
ヨシマセウ、仕舞ヒマデ私ノ聲ガ續キサウモアリマセヌ、條約改正ト云フコ
トヲ別ニ致シマスルト、云フト今日親族法ヲ制定スルト云フコトハ實ニ其
時期ヲ誤ッタモノデアルト言ハナケレバナラヌ、ソレハナゼデアルカト言
ヒマスルト、法典ノ編纂ニ反對ヲ致シマスルト云フト、何カ人ガ頑固論者
ノヤウニ言フ、又政府案ハコケ威シニ各國ノ法律ヲ澤山引ヒラアルカラ、如
何ニモ文明ノヤウニ見エル、併ナガラサウデハナイ、喜之助不似ト雖モ、サ
ウ頑固者流デハナイ、腹ノ中ニチヨン髷ヲ持ッテ居ラヌ、外貌バカリ洋服ヲ
著ケテモ腹ノ中ニチョシ髷ヲ持ッテ居ル者ガ澤山居ル、ソンナ論者トハ少シ
ク論者ガ違フカラ、政府委員ニ聞イテ貫ハナケレバナラヌ、先ヅ親族法ヲ今
制定スルト云フコトニ附キマシテハ從來ノ習慣ヲ採ラナケレバナラヌト云
フコトハ論ヲ俟タヌ、又歐羅巴ノ新主義トカ云フモノモ採ラナケレバナリ
マスマイサリナガラ、何レノ邊マデ之ヲ採リ何レノ邊マデ之ヲ捨テルト云
フコトハ、固ヨリ重大問題デアリマシテ、ナカ〓〓期月ノ間ニ之ヲ辨ズルト
云フコトハ出來マセヌ、、一例ヲ申シマスレバ、政府案ニハ隱居ノ制度ト云フ
モノガ採用シテアリマス、申スマデモナク隱居制ト云フモノハ我國ノ習慣
ニアリマス、併ナガラ、此隱居制ガ發達シタノハ吾ミノ考デハ色〓原因
モアリマセウケレドモ、其重ナルモノヲ索ネテ見レバ、封建制度ト云フコトヽ
ソレカラシテ佛〓其他哲學的ノ思想ヨリシテ、世ヲ厭フ所ノ主義卽チ厭世
主義ト云フモノガ勢力ヲ得テ、此隱居ノ制度ト云フモノヲ十分ニ發達セシ
メタモノト見ユル故ニ本員等ノ考デハ今日ノ隱居制度ナドト云フモノハ
採用スベキモノデナイト思フ、既ニ封建ト云フモノハ毀レテ、仕舞ッテ、吾〓
有難クモ立憲治下ノ民ト爲ッタノデアリマスカラ、最早封建的ノ遺物タル隱
居ノ制度ナドニ戀々シテ居ル必要ハナイ、固ヨリ不平ノ餘リ、絕望ノ餘リ、
世ヲ果敢ナミ世ヲ捨テントスル人ガアルカモ知レマセヌケレドモソレハ社
會問題ニウッチヤッテ置イテ、宜シイ、法律ニ於テ佛〓的哲學的ノ厭世主義ヲ
保護スルニハ及バナイ、故ニ今日法律ヲ立テル時期デナイト云フコトハ必
シモ舊慣ヲ保存シタイカラ時期デナイト云フノミデハナイノデアル、舊慣ノ
中ニハ早クウッチヤッテ仕舞ハナケレバナラヌモノガアル、又奬勵シテ行カ
ナケレバナラヌモノガアル是等ヲ今日法典ノ中ニ採用スルト云ヘバ要ラ
ザランモノニ聲援ヲ與ヘテ、將ニ亡ビナントシツヽアル習慣ナドニ活力ヲ與
ヘルヤウニナル、故ニ法典ノ時期ニアラズト云フモノハ新主義ノ注入ヲ不
可ト爲ス所ノ頑固論デハナイ、舊來ノ惡習慣抔ノ其餘勢ヲ止メシムルト云フ
コトモ、矢張恐ルヽカラデアル、諸君、凡テ立法ト云フモノハ、或ル部分ニ
於テハ、法律ヲ結晶セシメテ固クナルモノデアル故ニ此〓ニ附イテハ親
族法相續法ノミヲ批難スルコトハ出來マセヌ、サリナガラ今ヤ進ミツヽアル
日本-封建制度ヲ脫シテ立憲治下ニアル吾ミガ、今此際ニ於テ舊慣古例ト
云フモノヲ有難ク法典ヲ以テ保存スルト云フ必要モ亦無イ、ソコデ新主義ヲ
バ(「簡單」ト呼フ者アリ)民法ニ採用シテ居ラヌト云フコトハ是ハ餘リ多イ
デスカラ省キマセウ、簡單ト云フ論者ニモチヨットハ花ヲ持タスガ宜イデス
カラー之ヲ要スルニ親族法相續法ト云フモノデ疑問ト云フモノガ多イノデ
アリマス、ソコデ茲ニ言ハウト思ヒマスルケレドモ甚ダ咽喉ガ續キマセヌ
カラ、箇條ダケヲ以テ皆樣ガ若シ參照ナサラント欲スルナラバ爲シテ戴キタ
イモノヲ舉ゲル、卽チ本法ノ七百六十四條、七百六十五條七百三十八條、八
百三條、八百五條、八百二十條ノ第二節八百八十八條、八百八十九條、八百
九十條ト云フガ如キモノハ非難ヲ免レヌ所ノモノデアル、今之ヲ言ハン
ト欲シマスルケレドモ、ドウモ殘念ナルカナ咽喉ガ續キマセヌ、併ナガラ、
二言フベキコトガテアルノデアリマス、卽チ一例ヲ言ヒマスレバ、遺言ノ
方式ノ如キモノデアリマス、此法典ニ於キマシテハ遺言ト云フモノニハ式ガ
定メテアリマス斯クミニノ式ト云フモノニ據ラナケレバ、遺言ト云フモノ
ハ其效力ガナイトシテアリマス、是ハ私ハ甚ダ陳腐ノ規定デアルト思フ、全體
昔ハ儀式ト云フモノヲ尊ンダノデアリマスルケレドモ世ノ進ムト共ニ精神
ヲ人ガ尊ブヤウニナリマシテ、儀式ハ尊バナクナリ、詰リ蒔繪ノ重箱ニ蒟蒻
ガ這入ッテ居ルヨリハ、折詰メニモット立派ナ料理ガ這入ッテ居ル方ガ宜イト
云フヤウニ、儀式ハ段々人ガ尊バナクナッテ、花ヨリ團子ト云フ主義ニ文明
ハ餘程促シテ行クノデス、ソコデ法律ノ事柄ノ羅馬法ノ沿革ヲ始メ諸般ノコ
トヲ御承知ノ方ハ御承知デゴザイマセウガ、儀式ト云フモノヲ去ッテ實行ニ
就キツヽアルノガ今日ノ有樣デアル、起草委員-政府委員ハ元來文明ノ
人達デアルノデセウガ、此遺言ト云フコトニ附イテ儀式ヲ定メタト云フコト
ハ是ハ實ニ不當ナコトデアル、デ、此遺言ニ儀式ヲ定メタト云フコトハ、全
ク一人唯今申シマスル通、古代ノ人ト云フモノハ、儀式ヲ尊ムト云フ習慣ガ
アッテ、其遺リ物デアル是ガ一ツ、今一ツハ陪審制度ノ是ハ結果デアリマス、
歐羅巴諸國ニ在ッテハ陪審制度ト云フモノガ行レテ居リマシテ、事實ノ判
決ト云フモノハ、裁判官ガ致サズシテ、陪審役ガ致スノデアリマスソコデ
陪審役ト云フモノハ裁判官ホド事ニ慣レテ居リマセヌカラ、事實ノ判決ヲ
誤ッテハ困ルト云フノデ、色ミ事實ノ判決ヲ爲スニ附イテ、規則ト云フモノ
ヲ設ケテアルノデス、デ、今日歐羅巴ノ法律ニ於キマシテ、事實ヲ判決スルニ
附イテ、人ノ之ヲ自由ニ任サズシテ、束縛ヲシテ居ルト云フモノハ陪審制
度ニ直接若クハ間接ニ原因シテ居ラヌモノハ殆ドナイト言フテモ宜シイ
ノデアリマス、然ルニ幸ニ我日本ニ於キマシテハ、陪審制度ト云フガ如キモ
ノハ、幸ニ採用セラレナカッタ、又日本人ノ淡泊ニシテ磊落ナルサウ儀式ト
カ格式トカ云フコトヲヤカマシク申シマセヌ、故ニ遺言證書ト雖モ諸般ノ事
實ヨリ見テ、是ハ正當ノ遺言證書デアルト云フコトノ事實ノ確信ト云フモ
ノヲ裁判官ガ腦髓ニ得レバ、ソレハ卷紙ニ書イテアラウガ、塵紙ニ書イテア
ラウガ、鉛筆デ書イテアラウガ、實印ヲ捺シテアルマイガ認印ガ捺シテアル
マイガ、ソンナコトニハ構ッタコトハナイ正シイ遺言書デアルト云フ事實
サヘ得レバ、ソレデ宜イ、無論政府委員ト雖モ此事ハ知ラヌノデハナイノデ
アリマシテ、千七百六條ニハドウ云フコトガ書イテアルカト云ヘバ千七百
六條ニハ矢張遺言ト云フモノハ、裁判官ガ確信ヲ得レバ宜イト云フコトニナツ
テ居リマス、然ラバ卽チ此事實ト云フモノハ政府委員モ矢張認メテ居ル
コトデアル、ソレカラ致シマシテ、形式ノコトハ別ト致シマシテモ、遺言ノ性
質ニ附イテ、吾〓日本人ト西洋人トハ餘程考ヲ異ニシテ居ル、之ニ附イテハ
吾ハ西洋主義ヲ少シク反駁セザルヲ得ナイノデアリマス、日本ニ於キマシテ
ハ遺言ト云フモノハ諸般ノ目的ヲ持ッテ居ルコトモアリマセウケレドモ
ガ、先ヅ訓誠ノ意味ヲ持ッテ居ル、人ノ將ニ死セントスルヤ其言ヤ善シデ、卽
チ將ニ死セントスル所ノ人ガ、己ノ家族妻子ヲ枕邊ニ集メテ、財產ノコトナ
リ、婚姻ノコトナリ、或ハ祖先ノ祀ノコトナリ、其他卽チ訓誡的ノ言葉ガ遺
言デアリマス、所ガ、歐羅巴流義ノ遺言ト云フモノハサウデナイノデアリ
ママ、歐羅巴流義ノ遺言ト云フモノハ詰リ單純ナル財產處分デス、單純
ナル財產處分ト云フ意味ノ遺言ト日本流義ノ遺言トハ餘程名ハ遺言デアッ
テモ其實ハマルッキリ違フノデスナ、故ニドウ云フコトニナッテ居ルカト云
フニ、日本ニ於テハ遺言ト申シマスルモノハ、成ルベク多數ノ人ガ聽クコ
トガ本旨ニナッテ居リマシテ、例ヘバ親ガ死ヌトキニハ子、夫ガ死ヌトキニ
ハ妻ハ勿論ノコト、親族マデモ集メテ多數ノ者ニ聽カスト云フノガ、遺言ノ
本旨デアル又遺言ヲ致ス場合ニ於テハ他人ハ立會ハズトモ、親族ノ者ト
云フモノハ立會フノガ是ハ本旨デアル然ルニ歐羅巴流義ノ遺言ハサウデハ
アリマセヌ、元ト財產處分デアリマスカラシテ、是トハ正反對デアッテ、家
族トカ妻子トカ云フ者ハ立會人ト爲ルコトガ出來ヌノデアリマス、是ハ千
七十四條ニハ遺言ノ證人又ハ立會人タルコトヲ得ズト云フコトガ規定シテア
リマス、其中ニハ子供、遺言者ノ細君、相續人ト云フガ如キ、最モ將ニ死セ
ントスル人ニ近シイ關係ノ人ハ、遺言ノ立會人ト爲ルコトガ出來ナイノデス、
是ハ歐羅巴流義ニ於テハ無論正當ナコトデス、何トナレバ、錢勘定バカリノコ
トデアリマスカラ、遺言ニ依ッテ關係ノアル者ガ立會フト云フト、遺言ヲ僞
造スルトカ云フ虞レガアルカラ、先ヅ親父ガ長男ノミヲ立會ハシテ遺言ヲ
スルトキニハ何カ長男ノミガ己ニ利益ノアルヤウナ遺言ヲ拵ヘテ仕舞フト
云フヤウナ虞ガアルト云フコトカラ、詰リ親族ト云フガ如キ血族ノ最モ厚
イ者ハ遺言ノ立會人ニナルコトハ出來ヌノデアル、日本トハ正反對デアリ
マセウ、ソコデ法律ニ於テ規定スル所ハ重ニ財產ノ關係デアリマスカラ、
詰リ歐羅巴流義デモ場合ニ依ッテ差支ハアリマセヌケレドモ、今日本ニ於テ
普通遺言ト稱ヘラレルモノヽ精神ト、斯ク歐羅巴流義ト違ッテ居リマスル以
上ハ是等ハ採用スルカセヌカト云フコトハ、私ガドチラニ贊成スルト云フ
コトヲ申上ゲル必要ガナイ、之ヲ右ニ決スルカ左ニ決スルカト云フコトハ
何人デモ日本人ノ頭デ決スベキコトデ、法律家ノ決スベキコトデハナイノデ
ス、法律ト云フ名ガ附ク以上ハ凡テ法律家ガ決セナケレバナラヌト云フノハ
嘘デアル、法律ハ法律デアッテモ、法律ニ規定スル事柄ハ當リ前ノ人ガ決セナ
ケレバナラヌ、寧ロ法律家ヨリ三百ノ選良諸君ノ方ガ、之ヲ決スルニ適當ナ
ル方ミデアル却ッテ吾ミノ如キハ多少外國ノ法律ヲ知ッテ居ルガタメニ
知ラズ識ラズ、ソレニ引込マレテ、或ハ適當ナル判斷ガ出來ヌカモ知ラヌ、
却ッテ皆樣方ノ方ガ適當ナル判斷者デアル、其外法典ニ於キマシテ隱居ト云
フコトガ認メテアリマスニ拘ラズ、隱居ノ財產制度ガドウ云フモノデアルカ
ト云フコトガ明白デアリマセヌカラ、是等モ法律的ニ揚足ヲ取レバ-揚足
ヲ取ルデハナイ、質問ヲ致セバ、實ニ適用上ニ困難ナ點ハ澤山アリマス、併
ナガラ、右ノ如キ論斷ハ當場所ニ於テハ甚ダ不適當ト思ヒマスカラ、是ハ
申シマセヌガ、ドウ致シマシテモ、是ハ私ガ申上ゲズニ置カレナイ事柄ガ玆
ニ一ツアリマス、ソレハ何デアルカト云フニ、免ニ角折角ニ出來タモノデア
ルカラ、先ヅ發布シテ置イテ不便ヲ見タナラバ漸々ニ修正シテ行ケバ宜イ
デハナイカト云フ論デアリマス、是ガ或ハ勢力ガアルカ知ラヌト思ヒマスカ
ラ、一言申シテ置カナケレバナラヌ、免ニ角發布シテ置イテ、不便ヲ見附ケ
タナラバ修正シテ宜イヂヤナイカ、折角出來タモノヲ廢案ニスルノハド
ウモ惜シイト云フ考ガアル、併ナガラ是ハ非常ニ誤ッタ考デアリマス、ワ
レハ外デモゴザイマセヌガ、此親族法相續法ト云フモノハ前ニモ申シマシ
タガ、他ノ法律ト異ナッテ居リマシテ其關係スル所ト云フモノガ、極テ廣
"、極テ緻密デアリマス、故ニ是ガ修正ノ業ト云フモノハ容易デナイ、例
ハ刑法ノ如キハ、詐欺取財ノ罪ガ重キニ失スルトカ、輕キニ失スルトカ云フ
ナラバ、其處バカリ修正スルコトハ出來マス、或ハ皇室ニ對スル犯罪ガ重イ
トカ輕イトカ云ヘバ其處バカリ修正スルコトガ出來マス又强竊盜ノ罪ガ
重キニ失スルトカ、重キニ失シテ居ラヌトカ云フナラバ、其處バカリ修正スル
コトガ出來マス、比較的容易デアル、卽チ局部修正ト云フモノハ容易デアル、
之ヲ病人ニ譬ヘテ申セバ外科的治療ヲ施スヤウナモノデアッテ、腫物ノ出
來タ所ヲ切ッテ、ソレヲ治療シタ所ガ何ノ差響キニナラヌト云フヤウナモノ、
然ルニ親族法ハサウハ行キマセヌ、養子ノ制度ガ一ツ惡ルイト云ッテ、其處
ヲ直サウトシマシテモ、蜘蛛ノ巢ヲ張ッタ如クニ、方々ニ聯絡ガアリマスカ
ラ、ナカ〓〓之ヲ直スノハ容易デナイ、一旦拵ヘタモノハナカ〓〓容易ニ直ス
コトガ出來ナイ加之親族法ニ於テハ、法律家ノ所謂旣得ノ權利ト云フモノヲ
生ズル、或ハ嚴格ナル意味ニ於ケル既得ノ權利デナイニ致シマシテモ、併ナ
ガラ、既得ノ權利ニ似寄ツタモノヲ生ズルノデス、是ハ餘程吾ミガ重ジナケ
レバナラヌコトデアリマセウ、人ガ既ニ得テ居ル權利ヲ妄ニ取ッテ仕舞フト
云フコトハ是ハ到底容易ニハ出來ヌコトデアリマス、例ヘバ、明治初年ニ
於キマシテハ家督權利抔ト云フモノハ一向其考ヘガナイデ以テヤリマシタ
ケレドモ、最早今日ノ如ク社會ノ秩序ガ立ッテ來マスルト云フト人ノ既得
ノ權利ヲ十分ニ重ジナケレバナラヌ、例ヘバ玆ニ相續ナラ相續ノ點ニ附
キマシテ、長子相續ト云フコトニ法律ガ極ッテ居リマスルナラバ其法律ノ
行レテ居ルトキニハ、長子ト云フモノハ推定家督相續人タル既得ノ權利ヲ持ッ
テ居ル、若シ之ヲ長男相續ト云フモノヲ、平等ニ大勢ノ子供ニ分ツノデア
ルト云フコトニ法ヲ變ヘマスルト云フト、長子ガ持ッテ居ッタ權利ハ其法
ノ改正ニ依ッテ奪レテ仕舞フノデアル、是ガ反對ニ改正シマシタ場合モ同ジ
コトデス、卽チ相續ト云フモノハ凡テノ子供ガ均一ニ相續スルノ方アルト
云フノヲ長子ノミ相續スルノデアルト云フコトニ變ヘマスルモ、凡テノ子供
ト云フモノハ、現ニ法律ニ依ッテ得テ居ル權判ヲ法律ノ改正ノタメニ奪取ラ
レテ仕舞フノデス、ソコデ「ベストライト」ハ、非常ニ重イモノデアリマシテ、
既得ノ權利ヲ失ハスコトハ、立法官ニ於テモ餘程思慮シナケレバナラヌコト
デアル、然ルニ親族法相續法ノ改正ト云フモノハ、ソレ等ノ事柄ニ絕大ナル
差響ヲ生ジテ來ルノテアリマスカラ、社會民人ノ幸福ヲ恰モ已ノ休戚ヲ見ル
ガ如ク見テ居ルナラバ、容易ニ是ハ手ノ出セル仕事デハナイノデス、最早結
論ニ近クナリマスガ、暫ク御辛抱ヲ願ヒタイデアリマスガ、玆ニ我帝國議會
ニ於テハ法律ニ於テ一種ノ斷行論者ト云フモノガアル、是ハ外國ニハナイ斷
行論者デ、日本新發明デス、其斷行論者ト云フ者ハドウ云フ事ヲ言フノカ
ト云フニ、ボアソナードガ起草シタ法典デアッテモ今ノ政府委員ガ起草シ
タ法典デアッテモ、法典デアリサヘスレバ、イツデモ斷行スルト、斯ウ云
フ、此人達ニハ法典ト云フ名前ガ有難イノデアッテ、法典ノ中ニハドンナ
事ガ書イテアルカソレガ分ラヌ人達デス、ソレハ極メテ少數デ、此三百
選良諸君ノ中ニ僅カ一二人ダラウト思ヒマス、一二人ダラウトハ思ヒマス
ルケレドモ、宛モ法華宗ノ者ガドウ云フ意味カ分ラヌデ、南無妙法蓮華經
ガ有難イガ如ク、又門徒宗ノ者ガ何ノ事カ分ラヌデ、南無阿彌陀佛ヲ有難
ガ如ク、法典ト云ヘバ、隨喜ノ淚ヲ溢ボシテ、其中ニドンナ事ガアッテモ
隨分斷行論ト來ル人モアル、或ハ甚シキニ至ッテハ、前ノ法典ニ贊成シタカ
ラ、今度モ贊成シナケレバナルマイト云フ人モアル、法典ヲ一種ノ約束ノ如
ク心得ヘテ居ル、併ナガラ、是ハ御覽ニナレバ分リマスガ、此ボアソナードノ
法典ト此法典トハ餘程違ッテ居リマス、中ニ書イテアル事柄モ餘程違ッテ
居リマス、今ドレ程違ッテ居ルカト云フ箇條ハ指摘スルコトガ出來マセヌガ、
政府ヨリ出サレタ所ノ參考書ヲ見テモ、餘程變ッテ居リマス、シテ見ルト、宜
シウゴザイマスカ、ボアソナード法典隨喜ノ淚ヲ溢ボシテ斷行論ト云ッ
テ、ソレト變ッタ規定デゴザイマシテモ、亦隨喜ノ淚ヲ溢ボシテ斷行論ト云
へ、中ニ書イテアルノガ右ト書イテアッテモ左ト書イテアッテモ構ハズ斷
行論ト云フノデアルカラ、是程愚ナ論ハナイ、內容ヲ見ズシテ法典ヲ有難ガ
ルト云フナラバモウ國ハ末デス、條約改正ト反對ノナカルベキ筈ノモノガ
反對ノアルガ如クニ、政府ノ當路者ノ見タノハ實ニ吾ミノ不幸デス、現ニ條約
改正ノコトニ附イテハ井上伯モ手ヲ燒キ、大隈伯モ手ヲ燒キ、其他手ヲ燒
イタ者ガ幾ラモアリマスガ、併ナガラ、諸君、如何デゴザイマセウカ、是等
ノ元勳ニ對シテハ、氣ノ毒デアリマスケレドモ、吾ミハ是等ノ元勳ガ手ヲ燒
イタガタメニ吾〓ノ面目ヲ全ウスルコトガ出來タノデアリマス、井上大隈案
ガ通過シマシタナラハ吾〓ハ外國裁判官ノ下ニ、今頃ハ棲息シテ居ラナケ
レバナラヌ、是ガ倒レタカラシテ、今日外國裁判官ト云フモノガナクテモ
條約改正ガ出來ルヤウナコトニナッタノデアリマス、當時條約改正斷行論者
ガ勝ヲ制シタナラバ、吾ミハボアソナードガ制定シタ所ノ法典ノ下ニ支配サ
レナケレハナラヌ、諸君、何ト思召スカ知レマセヌケレドモ、稼穡アリ民人アッ
テ、四千年ノ間ノ歷史ヲ有シテ居ル日本人ガ、天下後世ノタメニデスナー
明治ノ日本人ガ天下後世ノタメニ外國人ニ作ッテ貫ッタ所ノ法律デ支配サレ
ナケレバナラヌト云ヘバ其時分ノ明治ノ法律家ト云フ者ハ顏色ガナイデア
リマセウ、又國民ト云フ者モ、實ニ顏色ガナイ、昔ベンザムガ露國ノタメニ
法律ヲ作ッテヤリタイト言ッタ所ガ、當時ハ實ニ文化ノ程度ニ於テハ、非常
ニ低イ所ノ露西亞ニアツテモ、ベンサムノ要求ヲ斥ケタト云フコトヲ仄ニ聽
イテ居リマス、當時條約改正斷行論者ガ破レタタメニ、外國裁判ト云フモノ
ガ免レタノミナラズ、外國法典ト云フモノモ免レタト云フ名譽ヲ今日マデ全
ウシテ來タ、此法典ガ縱令行レルトシテモゞ免ニ角吾ミハ吾ミノ先輩ナリト
シテ友人ナリトシテ居ル所ノ日本人ノ法律家ニ拵ヘテ貰ッタ法典ノ下ニ浴ス
ルノデアリマスカラシテ、ソレハ有難イノハ有難イデハアリマスルケレドモ
ガ今一步諸君ハ御進ミニナル氣ハアリマセヌカ、マ、一步デス、最早露國
マデハ行ッテ居ル更ニ一步セバ道ニ臻ル-モウ一步セバ卽チ道ニ臻ルデ
ス、ソコデ是ガ條約改正ニ非常ナル妨害ヲ爲ストカ、何トカ云フナラバ格
別デゴザイマスガ、ソレハ前申上ゲマシタ通、一向妨害ハナサヌデス、要路
者ガ爲ス積リナラバ實ニ一舉手一投足ノ勞デス、吾〓ハ今ノ內閣ニ恩讐二ツ
ナガラアリマセヌガ、併ナガラ若シ私ノ言ヲ政府ガ容レテ此掛合ヲ始メテ
此期月ノ中ニ此掛合ガ滿足ニ行ッタナラバ、實ニ今ノ伊藤內閣ハ井上大限抔
ノ能ハヌ事ヲ爲シタ、其上ニ親族法相續法等ヲ無法ニ發布セズニ、條約改正
ヲ遂ゲタト云フタナラバ、實ニ有終ノ美ト云フモノハ、伊藤内閣ニ歸シテ、今
政府大臣ハ此處ニ御出ニナリマセヌケレドモ、先刻私ガ談話室ニ於テ、伊藤總
理大臣ニ其旨ハ告ゲテ置イタ、吾〓別段ニ今日ノ內闇ニ恩讐ハナイガ、有終ノ
美ハ今最早單ニ一擧手一投足ノ勞ダ、軍艦モ出スニモ及バヌ、エライ事ヲス
ルニモ及バナイ、一〓手一投足ノ勞デ親族法相續法等ガ出來ナイデ、條約改
正ガ出來ルノニ、ソレヲシナイト云フノハ甚ダ遺憾ナコトデアル、斯ルコ
トヲ以テ行掛リトカ何トカ言ッテ居ルトキデハナイ斯ウ云フコトヲ言ッタ
ノデアリマス、諸君、實ニ此問題ト云フモノハ、重大ナ問題デアリマシテ、殊
ニ私ノ如キ者ガ述べマシタナラ、誠ニ下手デモアリ信用モアリマセヌケレド
モ私ハ此政府案ト云フモノハ否決スベキモノデアッテ、第二讀會ニ迴スベ
キモノデナイト思ヒマス、何故ナレバ、是ハ修正ノ出來ルモノデハナイ、四
百何十條モアル、大キナモノヲ、此短期ノ議會デ修正スルト云ヘバ、暴ヲ以テ
暴ニ易ヘルノデ、向フガヨツン匍匐ヒニナッテ來ルカラ、此方モヨツン匍匐
ニナッテ行クト云フ馬鹿ハナイ、政府ガ如何ナル無謀ナルコトヲシタ所ガ議
會ハ議會デ、ソレダケノ見識ヲ以テ行カナケレバナラヌ、諸君、私ハ演壇ヲ
降リル前ニ當ッテ、一言遺シタイト思フノハ此問題ニ付イテハ、諸君ト
云フモノハ決シテ如何ナル運動ヲモ御受ケニナッタコトハアリマスマイ又
如何ナル勸誘ヲモ御受ケニナッタト云フコトハゴザイマスマイ、斯ル問題
ノ大イナルニモ拘ラズ-小サナ問題デモ運動トカ勸誘トカ說得トカ云フモ
ノガ流行ルノニ、斯ル大問題デアリナガラ、說得勸誘ト云フモノガナクシテ
アルト云フノハ本員ハ堅ク信ズルノデス、正義ノ聲ト云フモノハ、明治ノ
衆議院ニ何等ノ運動何等ノ勸誘ガナクテモ、ドレダケノ勢力ヲ以テ徹底スル
カト云フコトヲ、天下後世ニ貽スノハ一ノ快談デアラウト思フノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=19
-
020・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 野澤武之助君
〔野澤武之助君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=20
-
021・野澤武之助
○野澤武之助君(百三十番) 私ノ訥辯ヲ以テ諸君ノ〓聽ヲ瀆スノハ甚ダ恐縮
ニ存ジマスカラ、極テ簡短ニ唯一言申述ベマス、私モ特別委員ノ一人デゴザイ
マシテ此政府案ノ法例-民法修正案ノ大體ニ附イテ、速ニ決議ヲ望〓者デ
ゴザイマス此諸外國ノ法制史ヲ見マスルト、不文法カラ成文法ニ移ルト云
フノハ、自然ノ順序デゴザリマス、始此人類ガ交通ヲ誠ニ稀ニシタ時分ニ
ハ、法律ト云フモノハ殆ド必要ハゴザイマセヌ、自然ニ交通ガ頻繁ニナッテ
參ルニ從ッテ慣習法ヲ生ジ、其習慣法モ段々積ミ重ナルニ從ッテ、是ヲ一
編ノ法典ト致ス必要ガ生ジテ來タノデアリマス、是ガ諸外國ノ法制史ノ順序
デゴザイマス、デ、日本デモ昔ノ有樣デ外國ト交際モナク、此東洋ノ天地ニ滿
足シテ居ッタ時分ニハ、格別此法典ト云フモノヲ作ル必要モ見ナイデゴザイ
マシタラウ、併ナガラ、維新ノ激變-此維新ノ激變ハ此社會ヲ殆ド根抵カ
ラ改造シタト云ッテモ宜イ激變デ、外國ニモ稀ニ見ル所デゴザイマス、此維
新ノ激變カラ致シマシテ、成文法ヲ作ル必要ヲ生ジマシタ、ソレデ政府ハ此明
治ノ初カラ、頻ニ注意致シマシテ、完全ナル法典ヲ作ラウト云フコトヲ考
ヘテ居リマシタコトヽ信ジマスル、殊ニ此近頃ニ至リマシテ、成文法ヲ編纂
ノ必要ヲ見マシタノハ諸君、御存ジノ通、內地雜居デゴザイマス、新ニ締
結サレマシタ所ノ條約、此條約ガ履行セラレマスト內地雜居ヲ許スコトニ
ナリマス、サウ致スト、外國人ト日本人トノ間ノ關係ト云フモノガ、非常ニ
繁クナリマス、外國人ト日本人トガ親類ニナルトカ、或ハ外國人ト日本人ノ
遺產ヲ相續スルトカ云フコトガ、度々起リマス、其他ノ法律關係ニ於テハ勿
論ノコトデアリマス、デ、斯ウ云フ時分ニ吾ミハ完全ナ法典ガナカッタナラ
バ、非常ニ不便ヲ感ズルト思フ、內地雜居ヲ許シナガラ、完全ナ法典ガナイ
ト云フナラバ、吾〓人民ハ實ニ危險ナモノト思フ、政府ガ新條約履行一年前
ニ法典ヲ發布スルト云フノハ寧ロ外國人ノ利益ヨリモ日本人ノ利益ヲ圖ツ
タモノデ、吾ミハ誠ニ適當ナ仕方ト思フノデアリマス、之ヲ外國政府ノ條約
此新條約履行條件ト致シ、新條約ノ條件ト致シタノハ、非常ニ適當ナコト
ト思フ、政府ノ失策デハナクシテ、却ッテ政府ノ一ツノ結構ナ仕方、適當ナ
仕方ト思フノデス、ソレデ此法典ニ附キマシテハ政府委員ノ說明モゴザリ
マシダカ、二十六年四月デゴザイマシタガ、法典調査會ヲ設ケラレマシテ
此處ニモゴザル、政府委員其他日本ノ有名ナ法律家三百諸君ノ中ニハ、此法
典調査會ノ委員タル人モゴザイマセウ、有名ナ法律家ヲ網羅シテ、古今ノ法例
習慣其他外國ノ法例ニシテ我國情ニ適スルモノヲ集メマシテ、サウシテ斯ク
數年間ノ〓究ヲ積ンデ、此法典修正案ヲ作リマシタ、此法典修正案ニ附キマ
シテハ吾ミハ十分信用ヲ措イテ宜シイモノト考ヘマス此法典ヲ此度此議
會ニ提出サレマシタニ附キマシテハ、色〓之ニ附イテ、異議ヲ唱フルコトモ
アルヤウニ見受ケテ居リマス、其內最モ異議ノアル〓ハ、短日月ノ間ニ斯ノ如
キ大部ノ法典ヲ議了スルコトガ出來ヌト云フノガ一ノ點デアリマス、ソレカ
ラ是ハ前ニ申ス通、此外國ト取結ンダ條約ガ履行セラルヽニ附キマシテ、內
地雜居ガ必要ニナルサウシテ前ニ言フ通法典ノ完備スルト云フ必要ガア
〓、其必要ガアリマスカラシテ、巳ムヲ得ナイコトデアリマス、殊ニ此議會
ニ提出サレマシタ法典ハ旣ニ昨年冬ノ議會ニ提出サレマシタノヲ、不幸ニシ
テ昨年冬ノ議會ハ解散ニナリマシタカラ、今日復タ再ビ此議會ニ提出スルコ
トニナリマシタガ、併ナガラ、吾〓此日本人民トシテ、此法典ヲ昨年冬)カラ
今日ニ至ルマデ一讀スルノ義務ハアッタモノト見テ、宜カラウト思フ、諸君
ハ私ノ申スマデモナク、十分〓究セラレタコトヽ考ヘマスデ、此議員ノ多數
ノ意見ハ、私ノ考ヘマスニハ餘程此法典ヲ速ニ議決スルト云フコトニ傾イテ
居ルト思ヒマス、何故ナラバ、前ニ此法律適用ノ大原則ト申ス法例ヲ一瀉千
里ノ勢ヲ以テ議決致シマシタ、之ヲ以テ見ルト民法モ速ニ議決サルヽコト
ハ此衆議院一般ノ意向デアラウト思ヒマス、ソレカラ尙ホ一ツノ點、此親
族編ト相續編ハ除イテモ宜カラウ、外國トノ條約ヲ履行スルニ附イテ親族
編ト相續編ヲ何ニモ今發布スル必要ハナイト云フニ附イテ、私モ司法大臣及
政府委員ノ說明ヲ聽キマシタガ、此說明ニ依ルト新條約履行ノ點ニハ此二
件ヲ含ンデ居ル、是ハ全クソレニ違ヒナイト申スコトデ、サウスルト今日ニ
於テ此親族編ト相續編ヲ除クト云フ譯ニハ行クマイ、十分敏腕ナ外交家ガアッ
テモ出來ナイト思ヒマスソレカラ又親族編相續編ハ外國人ニ關係スルコ
トハナイカラ、之ヲ除イテ差支ナイト云フ御說ガアルノデゴザイマス、成ル
程此親族編相續編ハ他ノ編ト比ベマスト、外國人ト關係スルコトガ少イノ
デゴザイマス、併ナガラ、全クナイト云フコトハナイノデ、ワレノミナラズ、
隨分或ハ利害ヲ感ズルコトデアラウト思フ、例ヘバ前ニモチヨット申シタ通、
外國人ニ日本人ノ遺產ヲ相續スルトカ、或ハ外國人ト日本人ト親族ノ關係ヲ
結ブト云フ時分ニハ此親族編相續編ノ必要ヲ感ズルノデゴザイマス、斯ウ
云フ關係ガアル時分ニ、此親族編相續編ヲ發布シナイデ、サウシテ此外國人
ハ內地雜居外國人ノ內地ニ入ルコトヲ許シマスト、ソレニ附イテ損害ヲ受ケ
ルノハ外國人デナクシテ、寧ロ吾〓日本人デアル、政府ノ此相續編親族編ヲ發
布スルト云フノハ、外國人ノタメデハナイ、日本人民ノタメデアル、ソレ故
ニ縱令此政府ガ條約履行ノ條件トシテ此親族編相續編ヲ發布シナイトシタ所
ガ斯ウ云フ條件ヲ附ケナカッタトシタナラバ吾ミハ寧ロ親族編相續編ノ
發布ヲ望ムノデアリマス、唯今今日敏腕ナル外交家ガ出テ親族編相續編ヲ除
イテ十分條約ヲ履行スルコトガ出來ルトシタナラバ私ハ寧ロ此說ニ贊成致
サズシテ、親族編相續編ヲ議決スルコトヲ主張スル者デゴザイマス、況ヤ此
條件ガ旣ニ外國ニ與ヘラレタ今日ニ於テハ、是非トモ親族編相續編ノ通過ヲ
望ミマス諸君モ御存ジノ通條約改正ハ吾〓人民ガ明治ノ初年カラ今日ニ
至ルマデ熱心ニ願ッタコトデ、之ガタメニ、政府ハ頻ニ此條約改正ヲ急イデ
居リマシタケレドモ、度〓諮ッテ度〓失敗シテ、トウ〓〓近年ニ至ッテ、
初テ締結致シタノデゴザイマス、所ガ旣ニ締結セラレタ今日ニアッテ、此折
角結ンダ條約ヲ延期スルヤウナコトガアリマシタナラバ、實ニ日本ノ面目ヲ
瀆スコトデ、吾ミハ外國人ニ對シテ面目ヲ失スル譯デアリマス、故ニ苟モ愛國
ノ精神ヲ有ッテ居ル吾〓日本人ハ、此親族編相續編ヲ議決シナケレバナラヌモ
ノト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=21
-
022・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百九番) 大體ニ就イテ反對ノ申込ガゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=22
-
023・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) アリマス平岡萬次郎君
(平岡萬次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=23
-
024・平岡萬次郎
○平岡萬次郞君(百七十五番) 諸君、本員モ不辯デハゴザイマスルガ、敢テ此
場ニ臨ンデ演說ヲシナケレバナラヌト云フコトニナリマシタノハ、議場內外
ノ形勢ヲ見マスルト云フト、此親族相續ノ二編ハ一瀉千里ノ勢ヲ以テ、將ニ通
過セントスルノ有樣デゴザイマス、本員ハ國家ノタメニ甚ダ之ヲ憂フルノデ
ゴザイマス、唯今贊成論者ハ此法典ガ新條約ノ實施ノ條件トナツタノハ、大變
適當ナ處置デアル、斯ノ如キコトヲ言ヒマシタガ、是ハ大イナル間違ヒデアラ
ウト考ヘマスル、巳ムヲ得ズ、是ヲ新條約實施ノ條件トナッタモノデアルノデ
ゴザイマス、苟モ獨立國タル以上ハ、立法ノ權ニ他ノ方カラシテ彼此言ハル
ガ如キコトヲシテ、ソレヲ適當ノ處置ダト云フコトハ甚ダ聞エヌコトヽ思フ、
是ハ巳ムヲ得ヌ次第ト存ジマス、果シテ巳ムヲ得ヌコトヽスルナラバ、飽クマ
デモ權利ノアル所ハ主張シテ此已ムヲ得ヌ事情ヲ取除ケナケレバナラヌト考
ヘマス、デ、ソレヲ取除ケル所ノ理由ト云フモノハ、十分アルノデゴザリマス
彼ノ公文中ニ謂フ所ノ「法典」ト云フコトハ、嚴正ニ解釋スルト云フト、裁判所
構成法ノ如キハ、此中ニ這入ッテ居ラヌノデゴザイマス、併ナガラ、條約實施ノ
曉ニハ治外法權ヲ撤去スル其タメニ、權利ノ確保裁判組織ノ健全ト云フモノ
ヲ求ムルガタメニ、斯ノ如キ裁判所構成法ノ如キモノモ、矢張法典ト云フ中ニ
含マセテ、是非此事ト云フモノハ、十分ノモノデナケレバナラヌト、彼ハ要求
致スデゴザリマス、此要求ト云フモノハ不當トハ信ジマセヌ、是ハ法典ト云フ
モノヲ嚴正ニ解釋セズシテカラニ、其法典ト云フコトヲ精神ニ依ッテ意譯シ
テ、斯ノ如ク解スルモノデゴザイマスル、サレバ我國ノ方ニ於キマシテモ、其
正反對デマルデ法典ト云フ中ニ相續編及親族編ト云フモノガ這入ッテ居ルモ
ノトシテモ、是等ハ外國人ニ關係スル所ガアルカ、少シモ關係スル所ガナイカ
ラシテ、是等ハ宜シク其中カラ法典ト云フ中カラシテ取除ク、卽チ法典ト云フ
文字ノ中ニ含マヌモノト解釋スルノガ至當デアラウト思フ、一方ニハ這入ッ
テ居ラヌモノデモ這入ッテ居ルト解釋シテ來ルカラ、斯ノ如ク關係ナイ所ノ
法律ハ這入ッテ居ラヌト云フコトヲ主張スルガ當然ノ事デアラウト考ヘマス、
然ラバ此條約ト云フモノヲ實施スルニ附イテ、法典ト云フモノハ全ク無關係
ノモノト云フコトガ出來ル、親族編相續編ト云フモノハ、法典ノ中ニ含ンデ居
ラヌト云フコトヲ主張スルニ附キマシテ、少シモ差支ノナイコトヽ本員ハ信
ジマスル、偖テ此法典ノ然ラバ善惡ト云フモノハ唯單ニ其實質ノミヲ見テ、
我國ノ民情習慣ニ適シテ居ルヤ否ト云フ所、此〓ノミヨリ反對シテ宜シイ
ト考ヘマス、所ガ、前論者ハ有名ナル所ノ法律家等ガ寄ッテ拵ヘタモノデア
ルカラシテ、決シテ是ヲ彼此レ非議スルニハ及バヌ、十分ニ信ヲ置イテ之ヲ
通過セシムル方ガ宜カラウ斯ウ云フコトデアリマスルガ、若シモ釋迦基督
ソレ以上ノ人ノ作ッタモノナラバ十分信ヲ置キマスルケレドモ吾ミハ決
シテ法典調査會諸君ヲ信用セヌノヂヤゴザリマセヌ、法學博士トシ、我國ノ
先輩トシテ、經驗アル人トシテ十分尊敬ハ致シマスルケレドモ、是ニ盡ク信
ヲ置イテ是等ノ人ノ作ッタコトニ附イテ誤リナイトマデ信用ヲ置クコトハ
出來ヌノデゴザリマス、此三百選良ハ、全國カラ集マッテ全國ノ慣習ヲ十分調
ベタ者デアル、調ベナクテモ三百選良ノ考ヲ集メルナラハ全國ノ事情ト云
フモノハ、明瞭ニ分ル、是等ガ此法典ト云フモノヲ調査スルニ付イテハ最モ適
當ナモノデアル、又是非調査ヲスル任ニ當ナケレバナラナイ、是ヲ唯ダ盲從ス
ルト云フガ如キコトガアッタナラバ立法權ヲ自ラ棄テルモノデアッテ、甚ダ
不都合ナモノデアラウト信ジマスル、御承知ノ通リ、西洋ハ個人主義デアル、
我國ハ家族制デアリマスルガ、此家族制ト云フモノハ、實ニ忠君愛國ノ思想ヲ
養成致シマスルモノデアッテ我國ガ萬國ニ卓越シテ美風ヲ存スルト云フモノ
ハ此制度ノ賜モノデアルノデゴザイマスル、然ルニ今度出來マシタ所ノ親
族相續ノ二編ト云フモノハ大イニ此家族制ト云フモノヲ破壞スル所ノ規定
ガ多分ニアルト信ジマスルト云フノハ一家ニ於テ親權ト戶主權ト兩立セシ
メタ如キハ、家族制ヲ破ル所ノ原因ニナラウト思ヒマスル、又扶養ノ義務ヲ
受ケル者ノ其順序ヲ附ケタ如キ、例ヘバ親ト子ト妻トアル場合ニ於テ、親ヲ
第一ニ-若シ其扶養ノ義務ヲ悉タ盡スコトガ出來ナカッタナラバ、子ヤ妻
ヲ棄置イテモ親ヲ養ハナケレバナラヌト云フガ如キ、又妻ハ棄テ置イテモ
子ヲ養ハナケレバナラヌ、兄弟ヲ棄置イテモ其子ヲ養ハンナラヌト云フコト
ガアゥタナラバ一家團欒ノ親ミノ中ニ於テ、丁度破裂彈ヲ投ジタヤウナモ
ノト考ヘマスル、是等ト云フモノハ、自然ノ愛ニ依ッテ集マッテ居ルモノデ
ゴザイマスルカラ、ソコニアル所ノ資產ト云フモノヲ以テ、共ニ食ッテ若シ
之ガ盡キタナラバ、共ニ乞食ニデモ出ルト云フガ如クスルナラバ、自然ノ愛
情ヲ保ッテ行ク道デアラウト思ヒマス、法律ヲ以テ是マデナイ所ノ斯ノ如キ
規定ヲ造ルノハ益〓家族制度ヲ破ル所ノ原因ト爲ルデアラウト信ジマスル、
又別有財產ノ制ヲ餘程盛ンニシテアリマスガ、是等モ矢張家族制度ヲ減殺ス
ル所ノ一ツニナラウト考ヘマス、其傍ニ次男三男ニ物ヲ分ツト云フコトハ認
メテゴザイマセヌ、又子女ノ嫁入支度ヲシテアルト云フコトハ認メテゴザリ
マセヌ、斯ノ如ク是マデアッタ所ノ慣習ヲ破ッテシマッテ、他ニ別有財產ヲ拵
ベルト云フ制度ヲ盛ンニスルガ如キハ、家族制度ヲ滅ボス所ノ方法デゴザリ
マスル、自然ニ家族制度ト云フモノガ破レテ行クナラバ、決シテ之ヲ惡ルイト
ハ考ヘマセヌ、自然ノ成行キニ任シテ行クノデアリマスカラ、吾ミハ決シテ
不都合トハ考ヘマセヌガ、法律ヲ以テ此勢ヲ激成スルト云フコトハ、甚ダ不都
合デアラウト信ジマスル、斯ノ如ク我國ノ慣習ニ背イタ所ノ法律ヲ今日施カ
ナケレバナラヌト云フ所ノ必要ガアルカ、條約實施ト云フモノニ關係ガナイ
ト見ルナラバ、之ヲ施ク所ノ必要ハ少シモナイノデアル、之ナクトモ條約ト云
フモノハ實施スルコトガ出來ルノデゴザリマスルカラ、斯ノ如キ缺點アル所
ノモノハ宜シク此議會ニ於テハ否決ヲ致シテ、尙ホ十分ニ審議ヲ盡シ、國情習
俗ニ十分適スルヤウナル法律ヲ設ケテ、之ヲ天下ニ施クト云フコトニナリマ
スルナラバ國家ニ於テ害ヲ受ケルト云フコトハゴザイマセヌ、此儘ニ實施
ヲシタナラバ、吾ミハ三千年來行ッタ所ノ慣習ヲ破壞シテ仕舞ッテ親族ト云
フ親シキ中ヘ破裂彈ヲ投込ミタルト同樣ノコトガ來ルデアラウト考ヘル
是等ハ著シイ所ノ缺〓デゴザリマスルケレドモ、各條ニ亙ッテ評シマスレバ
非常ニ澤山缺〓ガアリマスルデゴザイマス、是ハ山田君カラ詳シク云ハレマ
シテゴザイマスルガ、若シ此法ヲ施カレタナラバ各人ハ非常ノ迷惑ヲ蒙ル、
彼ノ遺言ヲ爲ス場合ノ如キ、最モ著シキ例デアラウト考ヘマス、其他彼ノ親ガ
子ヲ懲戒場ニ入レルト云フコトガゴザイマスルガ、是等ハ〓育上カラ論ジテ
非常ニ不都合ナル規定デアラウト考ヘルノデス、社會ノ人ノ多數ナル、決シ
テ一律ヲ以テスルコトハ出來ナイ中ニハ隨分度ヲ外レタ人間ガ出ルデアリ
マスガ、之ヲ懲治場ニ入レテ、盡ク同一ノ範圍內ニ入レテ其人ヲ懲治シヤウ
ト云フコトニナルト、甚ダ不都合デアラウト考ヘマス、若シサウ云フコトヲ
スルナラバ狂人ナドヲ非常ニ澤山出スヤウナコトニナルト考ヘマス、私共
ノ考デハ、元トアッタ所ノ勘當ノ制是ハ幾ラカ變ヘナケレバナリマスマイ
ガ、復活セシメテ、而シテ此ノ如キ懲治場ニ入レナケレバナラヌト云フヤウ
ナ人物ガ出マシタナラバ之ヲ懲治場ヘ入レズシテ放逐スル果シテ然ラバ
千百人ノ中一人ノ此中ヨリ豪傑ガ出テ來ルト云フコトノナイヲ保セラレヌト
考ヘマス然ルニ之ヲ窮屈ナ斯ウ云フ所ヘ入レルト云フコトハ是ハ大イニ
考ヘナケレバナラヌコトヽ考ヘマス、親デモ隨分一時ノ怒ニ乘ジテ、此ノ如
キ懲治場ニ入ルヽト云フヤウナコトヲ隨分致サウト考ヘマス、本員ハ尙ホ多
分ニ缺〓ハ知リマセヌケレドモ、詳シキコトハ山田君カラシテ述ベラレマシ
タカラ、以上ノ如キ理由ヲ以テ本案ニ反對致シマス、諸君ノ御贊成アランコト
ヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=24
-
025・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百九番) 段々反對演說モアリマシタガ、マダ申込ガアルデア
リマセウガ、吾ミハ大體ニ附イテ贊成スル者デアリマスカラ、直チニ二讀會
ヲ開カレンコトヲ希望シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=25
-
026・片岡健吉
○議長(片健岡吉君) 鳩山和夫君
〔鳩山和夫君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=26
-
027・鳩山和夫
○鳩山和夫君(二百四十番) 私ノ諸君ニ聽イテ戴キタイコトハ、極テ簡單デ
ゴザイマス、問題ハ大デアリマスケレドモ此問題ハ諸君ガ今日初テ耳ニ入
レラレタ所ノ問題デハナクシテ、先年法典斷行延期ノ二ツノ議論ガ世間ニ現
ハレタトキカラ、諸君ハ既ニ此問題ハ〓究セラレタノデアル、而シテ本議會ニ
政府ガ此案ヲ提出シマシテカラモ、最早既ニ數日ヲ經テ居リマスカラ、其間ニ
諸君ハ十分〓究セラレテアルノデアル是ニ於テ箇條々々ニ就キマシテ、長
イ演說ヲスル必要ハナイ、要〓ノミヲ揭ゲマスレバ、諸君ハ直チニ了承セラル
ルト云フコトハ、私ハ信ジテ居ル、山田喜之助君竝ニ平岡萬次郞君ハ反對ノ演
說ヲセラレマシタ、而シテ此山田喜之助君ノ演說中反對對論トシテ値打ノア
リサウナ所ハ、誠ニ僅カデゴザイマスルガ、區別ヲ立テヽ見マスルト、第一ニ
山田君ハ此問題ハ重大ナル問題デアルト云フコトヲ言ハレテ、重大ナル問題
ノ理由ハ詳シク言ハレマシタガ、ソレハ私モ同意デ、甚ダ重大ナル問題デアル
ト考ヘマス、諸君モ皆御同意デアラウト考ヘル、併シ問題ガ重大デアルト云フ
コトハ、反對ノ趣意ニハ勿論ナラナイ、第二ニハ、山田君ハ改正條約實施ト法
典ノ關係ヲ述ベラレマシタカ、山田君ノ此〓ニ於ケル結論ハ、斯ウデアルヤウ
ニ私ハ信ジテ居ルト聽取リマシタ、法典實施卽チ本日議題トナッテ居ル親族
編竝ニ相續編ガ改正條約ヲ實施スルニ附イテノ條件ニナッテ居ルト云フコト
ハ、山田君ハ認メテアル、併ナガラ、是ハ外交上ノ談判ヲ以テ其條件ノ中カラ
政府ガ取除キ得ルモノ、デアルト、山田君ハ信ゼラレルト云フコトニ、私ハ聽
取リマシタ、旣ニ此親族編竝ニ此相續編ガ改正條約ノ實施ノ條件ニナッテ居
ルト云フコトデアルナラバ、其條件ハ是ヲシタノガ善イカ惡ルイカト云フコ
トハ、今日此處デ議論スベキ問題デナイト考ヘマス、私ハ寧ロ惡ルイト云フ論
ニ同意ヲスル積リデアリマス、初ニ此問題ガ起ツタナラバ、親族編相續編ノ如常
キハ、外國人ニハ關係ノ薄イモノデアッテ、直接ノ關係ハ殆ドナイモノデアル
併シ間接ニハ幾ラモ關係ガアル、是等ノ問題ハ條約實施ノ條件ト爲サヌノガ
正當デアルト私ハ信ジマスル、其論ニハ直グ贊成スル、併ナガラ今事實ガ是ハ
既ニ條約ヲ實施スルノ條件トナッテ居ルト云フ事實ヲ認メマスル以上ハ、其事
實ノ上カラ論斷シナケレバナラヌト考ヘルノデアル、サウスルト隨分吾ミガ
輙ク外交上ノ談判デ爲シ得ルト信ズル所ノ事柄ヲ伊藤内閣ニ拘ラス、從來ノ
日本政府ガ外交上ニ爲シ得ナイト云フコトハ諸君ガ皆〕御承知デアラウ
ト思フ私ハ山田君ト議論ガ違フ、山田君ハ一擧手一投足ノ勞ヲ以テ、此條
件ノ中カラ此二編ハ引去リ得ルト云フ御論デアリマスルガ、ソレハ人ニ依
ルコトデアッテ、伊藤內閣ニハ私ハソンナコトハ出來ナイト信ジテ居ル、サ
ウ云フ私ノ觀察デアリマスレバ改正條約ヲ來年カラ實施スルト云フ覺悟ヲ
止メテ、實ニ是ハ重大ナ問題デアル、サウシテ且ツ不完全ナル法律デアルカ
ラ、斯樣ナ不完全ナ法律ヲ來年カラ實施サレテハ堪ラヌカラ、改正條約ノ實施
ハ二年延ビヤウガ三年延ビヤウガ、或ハ五年延ビヤウガ、卽チ無能ノ政府ガ止
メニナッテ吾〓之ニ代ッテ外交ヲ造ルトキマデ延ベヤウカ、ソコマデノ覺悟ヲ
シタナラバ、私ハ山田君ニ贊成スルコトガ出來ル、併ナガラ、今ノ伊藤ヲ其
儘ニシテ置イテ、此人ニ外交ノ談判ヲ以テ此二編ダケハ取除イテ下サイト云
フヤウナ注文ヲスルノハソレハ少シ御無理ヂヤナイカト思フ、ソレカラ第
三ニハ、山田君ノ御論ノ中デ、政府委員ト言ハレタノハ、詰リ法典調査會委員
ト云フ意味デゴザイマセウガ、法典調査會委員ノ人ハ學者デアッテ信用ヲ措ク
法律家デアル、併ナガラ、此問題ハ獨リ法律家ノミノ恣ニスベキ問題デハナク
シテ、德義ノ問題モアル、經濟ノ問題モアル、ソレデアルカラシテ、法典調査會
ノ委員ニエライ學者ガアッタカラトテモ、ソレデ學者ヲ丸呑ニスル譯デナイト
云フヤウニ聽取リマシタガ、至極御同感デアル私モ此問題ハ法律家ト云フ
技術家ノミニ託シテ置クベキ問題デハナイト信ジテ居ル、卽チ社會ノ人情モ
觀察シ得ル能力ヲ持ッテ居ル人デナケレバイカヌ、經濟ノ觀察モアル人デナケ
レバイケヌト考ヘル、而シテ之ガ法律ニナルマデニハ、ソレ等ノ人ノ手ヲ經
テ、而シテ後ニ法律ニナルト云フコトヲ私ハ信ジテ居ル、法典調査會委員ガ
原案ヲ拵ヘテ來タ、諸君ハ之ヲ二十七名ト云フ多數ノ委員ニ付託シタ、諸君ノ
中ノ粹ヲ拔イタ私モ其中ニ入ッテ居リマスガ、立派ナ二十七人ノ委員ニ付託
シノ、是等ノ人ガ日々〓究シテ、審査ヲ盡シテ、而シテ初テ此案ガ唯今諸君ノ
議題トナッタノデアリマス、諸君ガ又議セラルヽノデアルカラシテ、ソレハ
法律家ト云フ技術家ノ手モ經、財政ニ通シテ居ル人ノ手モ經、社會ノ發達ニ
通ジテ居ル人ノ手モ經テ、而シテ後ニ法律ニナルノデアリマスカラシテ、法
典調査會ノ委員ト云フモノガ、ドウ云フ人カラ成立シテ居ッタカ居ラヌカ、ソ
ンナモノハ極ク薄イ問題ヂヤナイカト思フノデゴザイマス、尙ホ此前ノ續キ
デゴザイマスカラ、言ッテ置キタイト考ヘマスノハ、現在ノ日本ノ有樣ガ此立
法ヲ要スルト云フコトヲ私ハ一言申シテ置キタイ唯一例ヲ取ッテ見レバ
夫婦ノ關係ヲ取ッテ見テモ、從來ノコトヲ-幾ラ從來ノコトヲ好ム山田君、
或ハ其他ノ諸君デモ夫ガ妻ニ三行リ半ノモノヲ以テ離緣狀ヲ渡シテ、サウシ
テ夫婦ノ關係ヲ絕ツト云フヤウナ簡單ニ下女ニ暇ヲヤルヤウナ遣リ方ヲ尙
ホ保存シテ置クベキモノデアルト云フ御論ハナイト思ヒマス、此法典ガ離婚
ニ附イテハ妻ガドウ云フヤウナコトヲシタ場合ト云ウテ、何條デゴザイマシ
タカ、澤山ニ其條件ガ舉グテアッテ、卽チ婚姻ノ成立ニ附イテモ、之ヲ確實
ナラシムル保障ヲ設ケヌ、又之ヲ解クニ當リマシテモ三行リ半デ以テチヨツ
ト其關係ヲ解クト云フヤウナ從來ノ關係ヲ止メテ、最ウ少シ鄭重ナル離婚ノ
理由ト爲ルヘキモノヲ法律ガ認メテ、其理由ノ存スル場合ニ限ッテ、離婚ヲ
許スト云フコトニナッタノデ、私ノ從來ノ三行リ半ト新法典ノ規定トヲ比較
スレバ、無論此法典ニ雙手ヲ舉ゲテ贊成スル者デアル、諸君モ亦左樣デアルト
考ヘル、又後見ノ制-從來後見ノ制度ニ附イテハ、法律ノ制度ハナイ、
唯後見人ト言フモノガアル、併ナガラ、此後見人ガ被後見人ノ財產ニ就イテ
ノ報告ヲスルニハ、如何ナル責ガアル、ドウ云フ人ガ後見人ニナリ得ルト云
フ法律ノ規定ガナイタメニ、後見人ノ不始末、ソレガタメニ被後見人ニ害ヲ及
スト云フヤウナ例ガ澤山アル、之ニ附イテモ定メテアル、此法律ハ丁度日本
ニ適シサウナコトガ定メテアル、又山田君ノ論中ニ隱居ノ制度ヲ非難セラレ
テアル、此隱居ノ制度ガ、丁度此新法ノ符牒位ニナルノデアル、山田君ハ隱居
ト云フコトニハ、所謂厭世主義トカ何トカ、或ハ封建時代ノ遺物デアルト云
フ風ナ語調ヲ以テ之ヲ攻擊シ、左樣ナモノヲ此法典ガ認メタカライケナイト、
斯ウ云フノデ、此論ニハ急進主義ノ人ナドハ、隨分同意セラルヽカ知レマセ
ヌガ、併ナガラ此法典ハ假令封建時代ノ遺物デアリマシテモ、厭世的ニ原因シ
タ慣例デアリマシテモ、兎ニ角今日ノ人民ノ中ニ慣例トシテ存シテ居ル以上
ハ無闇ニ之ヲ打破シナイ慣行習慣ハ之ヲ保存スルト云フ精神ニ基イテ、此
法律ノ案ガ作ッテアルノデアル、ソレ故ニ隱居ノ如キ先ヅ私ナドモ要ラヌモノ
デアルト云フヤウナモノデゴザイマスルガ、併シ世間ニ隱居ト云フモノガ事
實アル、事實アルモノハ法律之ヲ無視スルコトハ出來ナイカラ、隱居ノ制度ハ
矢張保存シテ置ク、併ナガラ隱居ト云フ制度ヲ惡ルイコトニ用ヒナイタメニ、
幾分カ此ヘ制限ヲ附ケタ、卽チ隱居スルトキハ年齡ガ六十歲ニ達シナケレ
バナラヌ、其隱居シタ跡ヲ繼承スベキ所ノ人ガ其所ニナケレバナラヌト云フ
ヤウナ制限ヲ用ヒテ、從來ノ隱居ヲ餘程宜イ隱居ニシタノデアル、丁度此法
律ガ今ノ隱居論ヲ以テ全體ヲトスルコトガ出來ルノデアル、議論ノ合ハナイ
モノデモ、文化主義ニ合ハナイ所ノ者デモ、慣習トシテアルモノハ、法律ハ
之ヲ認メル、而シテ其慣習ガ成ルベク害ヲシナイヤウニ、ソコニ保障ヲ附ケル
ト云フヤウナ主義デ出來テ居ルノデアル、ソレカラ、山田君ノ論中ニ遺言ノ
事ヲ大分御攻擊ニナッテ、此遺言ノ方式ニ餘程面例ノコトヲ持込ンデアル
體ニ世界ノ進步ト云フモノハ儀式カラ-儀式ヲ廢スルト云フ方ニ進ミツヽ
アルノニ、今日法典ヲ制定スルニ當ッテ、斯ノ如キ儀式ヲ要スルト云フコトガ
進步ノ主義ニ違ッテ居ルト云フコトヽ今一ツハ、歐羅巴流ノ遺言日本流ノ遺
言ハ違フ歐羅巴流ノ遺言ト言フノハ、財產ノ始末デアル、日本流ノ遺言ト云
フモノハ、先ヅ訓誡的ノモノデアル、全ク違フト、斯ウ云フノデ、ワレハ違フト
云フコトニ御同意申シテ宜シイ、併ナガラ、此法律ガ出來タメニ、訓誠的ノ遺
言ヲ爲シタモノハ、罰金ニ處スト云フヤウナコトハ決シテナイノデアリマス
カラシテ、此法律ガ出來テモ訓誡的ノ遺言ヲ爲シタイト云フナラバ、自由自
在ニ爲スコトガ出來ル、ソレ等ノ自由ハ決シテ束縛シナイノデアル、而シテ遺
言ニ依ッテ財產ノ始末ヲシヤウト云フ人モ天下ニハアルダラウト思フ、ソレ
等ノコトハ從來ドウナッテ居ッタカト云フト遺言ニ依ッテ財產ノ始末ヲ爲
スト云フコトハ、從來モアルニハアッタケレドモ、法律ニ明記ガナイタメニ、
何時モ爭ヒト爲ッテ、遺言ナルモノガ、眞直グニ遺言者ノ遺言通ニ行レタ
ト云フ例シハ殆ドナイノデアル、此所ニ財產始末ニ關スル遺言ノ法式ヲ定メ
レバ、此法式ニ依レバ、必ズ財產始末ダケニ就キマシテハ免ニ角遺言者ノ
遺言ガ行レルト云フコトニナルノデアリマスカラシテ歐羅巴流ノ財產始末
トシテノ遺言ガ、今日世ノ中ニ必要デアルトスルナラバ、此法律ハ矢張必要デ
アル、而シテ訓誡的遺言ト云フモノハ此法律關係スル所デナイカラ、是ハ
自己ノ自由自在ニナルノデアリマス、ソレカラ平岡君ノ御論中、新法ハ其家族
制ヲ破ル、外國ハ個人制デアッテ、日本ハ家族制デアル、而シテ此新法ガ家族
制ヲ破ルト云フコトデゴザイマスガ、私ハ外國卽チ歐羅巴諸國ガ個人主義デ
アルト云フコトニ附イテハ異議ガナイ、併ナガラ日本ノ制度ト云フモノガ、全
ク家族制度デアルト云フコトニ附イテハ、大イニ疑ガゴザイマス、日本ガ日本
ヲ組立ッテ居ル「ユニテー」卽チ單位ガ家デアルト云フコトニ附イテハ、私ハ異
議ガアル、矢張日本ヲ組立ツル所ノモノハ、人デアルト云フコトガ、餘程認メ
ラレテ居ルト云フコトヲ私ハ言ハナケレバナラヌ、全クノ家族制ニアリマシ
テハ、家ト云フモノガ一ツ、又其家以外ニハ法律若クハ政府ハ單位ヲ認メナイ
ノデゴザリマスカラ家カラ犯罪人ノアッタトキニハ其家長卽チ戶主ガ其
責ニ任ズルト云フ制度デナケレバナラヌ、併ナガラ、刑法ヲ見マシテモ、矢張
家族ノ中ニ犯罪人ガアッタ場合ニ其所ノ家長ガ、其責ニ任ズルト云フコトハ
刑法デハ之ヲ認メテナイ、ソレカラ徵兵令ヲ見マシテモ一軒カラ一人兵隊ヲ
出セバ、ソレデ宜イト云フコトヲ認メテナイ、丁年ノ男子ガアリマスレバ、
何人デモ其人ミニ附イテ、義務ヲ負フテ居ルノデアル、刑法ノ上カラ云ヒマ
シテモ、徵兵令ノ上カラ見マシテモ、其外ノ法律カラ云ッテモ、日本ガ家ヨリ外
ニハ-日本ノ法律若クハ政府ガ家ヨリ外ニ單位ヲ認メナイト云フコトハ
私ハ同意ガ出來ナイ、併シ之ヲ歷史的ニ溯ッテ考ヘテ見マシタラ、家ト云フモ
ノガ一ツ單位トシテ認メラレテ居ッタト云フコトガアルデゴザイマセウ、併
ナガラ、是ハ法律ノ沿革トデモシテ調ベテ見ルニハ面白イ問題カモ知ラヌガ、
今日ノ日本ノ制度ガ家族制デアルト云フコトハ、私ハドウシテモ認メルコト
ガ出來ナイノデアル、而シテ追ミニ家族制ノ範圍ヲ日本ガ維新-維新所デ
ハナイ、私ハ維新ノ以前カラ家族制ト云フモノハ、モウ破レ掛ッテ來タノデ
アルト思フ、維新後殊ニ甚シク家族制ト云フモノヲ破リツヽアルノデ、餘程
此三十年間ニ家族制ヲ破リ、家ノ-戶主ノ權利、親ノ權利ト云フヤウナモ
ノヲ段々縮小シテ、而シテ一個人ノ權利ヲ法律ガ認メテ來タデアラウト思フ、
尙ホサウ云フヤウニ進ンデ行クダラウト思フ、サウスルト、丁度此法典ガ其
道具ニナル、例ヘバ此法典ノ主義カラ行クト、親ガ死ンダ遺言モセズニ默ッテ
死ネバ、其全體ノ權利義務盡ク長子ニ行クノデアル、是ガ從來ノ慣行ノ通リデ
アル、併ナガラ先キニ生レタト云フダケノ僅ナ事柄ヲ以テ、總領ノ甚六ハ
凡テノ權利ヲ取ッテ仕舞フ、次男ハ少シモ財產ヲ得ナイト云フコトハ不公平デ
アル、次男モ財產ヲ與ヘナケレバナラヌト云フ議論ハ、世ノ中ニ出テ來テ、事
實ノ上ニ次男三男ニモ親ガ活キテ居ル中ニ、財產ヲ分ケルト云フ事實ハアル
ソレヲ此法律ガ認メテ、遺言ニ依ッテ財產ノ或ル程度マデハ、之ヲ次男三男其
他家族ニ分配スルコトガ出來ルト云フコトニシタ、必ズ分配シナケレバナラ
ヌト云フ卽チ長子相續ヲ全廢シテ、全體ノ權利義務ハ盡ク平等ニ男女ノ區別
ナク、子ニ分配スル如キ亞米利加ニ行レル如キ法律ヲ持ッテ來タナラバ是
ハ社會ニ激變ヲ生ズルト云フテ、大イニ心配ヲシナケレバナラナイガ、此原
案ハソンナ激變デナイ、默ッテ置ケバ、從來ノ慣行通長子相續、併ナガラ遺言
ニ依ッテ意思ノ發表-正確ナル意思ノ發表ニ依ヲテハ、之ヲ變更スルコトガ
出來ル、併シ變更シテモ長子ノ權利ヲ全ク奪ッテ仕舞フコトハ出來ナイ、ワ
コデ半額ダケハ長子ニ遣レト云フコトニナッテ居ル、是ダケ法ノ要〓ヲ御話
シ申シタナレバ、此法典ガ急進主義ニ出來テ居ル法典デナイト云フコトハ直
チニ分ルコトデアル、私抔此法典ニ多少不平ガアリマスルガ、其不平ハ寧ロ
保守主義ニ過ギテ居ルト云フ不平デアル、モウ少シ進ンデ貰ヒタイト云フ不
平デ、是ガ從來ノ家ノ中ニ破裂彈ヲ抛リ込ムト云フヤウナ激ナモノトハ認メ
ナイ、從來行レテ居ル事柄ヲ其儘法律ノ形ニ直シタモノデアルト信ジテ居ル、
若シ不平ガアレバ稍〓保守ニ失スルト云フ〓ヲ以テ少シハ不平ガアルノデゴ
ザイマス、是ガ急進主義ニ依ッテ出來タト云フ不平ハ少シモナイ、諸君ハ速
ニ之ヲ贊成セラレンコトヲ希望致シマス
(恆松隆慶君「討論終結」ト呼フ」「贊成、々々」ノ聲起ル〕
〔「討論終結ニ反對」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=27
-
028・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 討論終結ニ反對ガアリマスカラ、討論終結ニ附イテ採
決シヤウト思ヒマス、討論終結ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=28
-
029・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=29
-
030・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百九番) 直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ希望シマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=30
-
031・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 尙ホ念ノタメニ、直チニ二讀會ヲ開クヤ否ニ附イテ採
決致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
(「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=31
-
032・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガアレバ採決致シマス、直チニ二讀會ヲ開クニ
同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=32
-
033・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數デアリマス直チニ一一讀會ヲ開クコトニ致シマス
民法中修正案第二讀會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=33
-
034・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ノ二讀會ヲ開キマスニ就キマシテハ、朗讀ヲ省略
シテ全部ヲ議題ニ供シマス
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
(政府委員東京帝國大學法科大學〓授法學博士穗積陳重君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=34
-
035・穗積陳重
○政府委員(穂積陳重君) 諸君、本案ニ對シマシテ、(工藤行幹君)「モウ演
說ハ要ラヌ」ト呼フ)委員會ニ於テ、二箇所修正ガコザリマシタ、其修正ノ一箇
所ハ提出者ノ理由ノ辯明モ詳シク承ハリマスルシ、成ル程御尤ト致シマスカ
ラシテ、政府ニ於テモ、御同意ヲ致シマシタ、但シ他ノ一箇條ハ種々ノ差支ガ
ゴザリマスカラシテ、此〓ダケニ附キマシテハ、遺憾ナガラ修正案ニ御同意ヲ
致スコトガ出來マセヌノデ其出來マセヌ理由ヲ茲デ陳述致シマスルカラシテ
ドウゾ委員會ノ修正ノ中ニ第七百三十四條第二項削除ノ〓ダケハ、原案ノ儘
ニ据置カレルヤウニ相願ヒタイト存ジマス、七百三十四條第二項ヲ削除ニ相
成リマシタ結果ハ斯ノ如キ事ニ相成ルノデゴザイマス七百三十四條ニ於
キマシテ「父カ子ノ出生前ニ離婚又ハ離緣ニ因ッテ家ヲ去ッタトキニハ前條第
一項ノ規定ハ懷胎ノ始メニ溯リテ之ヲ適用ス」トアリマスカラシテ、若シ養子
ガ離綠ニ依ッテ養家ヲ去リマシタトキニ於テ、其後ニ子ガ生レマシタトキニ
其子ガ通則ニ依ッテ父ノ家ニ居ルト云フコトニ相成ッテハ甚ダ不都合デゴザイ
マスカラシテ、ソレ故懷胎ノトキニ溯ッテ、矢張其場合ニハ母ガ通常家女
ガ-母ガ養家ニ止マッテ居リマスカラ、其養家ノ子ト爲ル是ガ第一項デス
併ナガラ、父母ガ共ニ家ヲ去ッタトキニハ此規定ヲ適用致サナイト云フコ
トニ原案ガ相成ッテ居ル、例ヘバ夫婦養子ノ場合ニ夫婦トモ離緣ニ相成リ
マシタ、離緣ノ際ニ懷妊ヲ致シテ居ッテ離緣後ニ其子ガ生レタ、其場合ニハ
兩親共ニ養家ヲ去リマシタノデゴザリマスカラシテ、其實家ノ方ノ子ニ相成
ルト云フコトガ原案ナノデゴザリマス、然ルニ此第二項ヲ削除セラレマスル
ト云フト、斯ノ如キ夫婦養子ガ離緣ヲサレテ、離綠ノ際ニ丁度懷姙ヲ致シテ居
リマシテ、其後ニ子ガ生レマスルト、生レルヤ否ヤ、其小兒ト云フ者ハ元トノ
養家ノ方ノ者ニ相成ルコトニナリマスルノデ、卽チ其子供ト云フ者ハ、自分ノ
實父母ノ居ルコトガ出來マセズシテ-實父母ハ通常仲ガ惡ルクテ、離緣ニ
ナルノデゴザイマスガ、其離緣サレタ養家ノ方ノ子供ニナル、生レルヤ否其赤
子ト云フモノハ前ニ喧嘩ヲ致シテ出タ養家ノ者ニナル、是ハ如何ニモ其子
ニ對シマシテモ、甚ダ酷ナ譯デゴザイマス、其兩親ニ對シマシテモ、甚ダ人
情上堪ヘ得ラレヌコトデアラウト思ヒマス、又其養家ニ對シマシテモ甚
ダ迷惑ナコトデゴザイマス、子ハ生レルヤ否、直ク父母ノ慈愛ノ溫キ懷ニ依ツ
テ養育サレルコトガ出來ズシテ元トノ養家ノ方ニ附カナケレバナラナ
イ兩親ハ自分ノ子ヲ己ガハゴクミ育テルト云フコトモ出來ナクナリマス、
養家ノ方デハ不和等ノ理由ニ依ッテ、離緣ヲ致シマシタ、其者ノ胤ガ矢張自
分ノ方ノ厄介ニ相成ル、世嗣ニ相成ル、凡テ關係致シマスコトガ、或ハ迷惑ヲ
致シ、或ハ人情上忍プベカラザルコトヲ法律ノタメニ强セラレルト云フコト
ニ相成ルノデゴザイマス、ソレ故ニ此〓ニ附キマシテハ從來ノ慣例デアリ
マシテモ、養家ノ方ニ生レルト、其子ヲ直グニ遣ルト云フコトニ相成ッテ居ラ
ヌノデ、離綠ノ場合ニ、離縁以前ニ旣ニ生レタ子ハ、養家ノ方ニ留マルト云フ
ノガ本則ニナッテ居リマス、但シ協議ノ上連レテ歸ルト云フコトヲ許ス方ガ
變則ニ相成ッテ居ル、懷妊中離緣ニ相成ッテ、ソレガ問題ト爲ッタコトハ、明
治六年-八年ノ十一月ニ問題ニ相成ッタコトガゴザイマスガ、其場合ハ實
際養家ノ方ニ之ヲ遣ルト云フコトハ、人情上モウ出來ヌコトデアリマスカラ
遂ニ實家ノ方ニ屬スルト云フコトニ相成ッタノデゴザイマス、先刻藤澤君ガ此
通常ノ場合ハ誠ニ人情上忍ブベカラザル結果ガ生ズルト云フコトモ仰セラレ
マシタガ、家女ノ場合ニハ-併ナガラ、其血統ノ相續人ト云フ者ガナクナル
カラ困ルト云フコトモ述ベラレマシタ、ソレハ本案ニ於キマシテハ、此始末ガ
著イテ居ルノデゴザイマス、家女デゴザイマスト、元トノ養家ノ方ノ系統デゴ
ザイマスカラ其血統ノ者ハ七百三十七條ニ依リマシテ、矢張養家ノ方ニ引取
ルコトガ協議ノ上出來ルコトニ相成ッテ居ルノデ、若シ修正案ノ如クシマスト
云フト、必ズ其血統デナイ者ガ養家ノ家督ヲ繼グト云フコトニナリマスカラ、
非常ニ差支ヲ生ズルノデアリマス、今一步進ミマシテ、前ニ夫婦養子ガ離緣
ニナリマシテ、サウシテ出來マシタ子ガ、養家ノ方ヘ直グ歸ルトナリマスト
其後トニ又養子ヲ致シマス、其後ニ致シタ養子ニ本當ノ實子ガアリマスト
後ニ致シタ養子ノ實子ト云フ者、ハ家ヲ繼グコトガ出來ナクナッテ、却ッテマ
ルデ兩親ニ血緣ノナイ者ガ家ヲ繼グコトニナリマス、後ノ養子ト云フ者ハ
繼子ニ家ヲ繼ガセナケレバナラヌト云フ結果ニマデ至リマスノデ、實際ノ上
ニ種々ノ點ニ不都合ヲ生ジマスカラ、此〓ハドウカ元トノ通ニ差置カレンコ
トヲ希望スルノデアリマス、又懷胎ノ期日ト申シマスモノハ醫師ノ取調ニ依
リマシテモ百八十日カラ三百二十日ト云フコトデアリマス、然シテ離緣ノ
後、例ヘバ八箇月目凡ソ二百日前後ニ出來タ子ト云フモノハ離緣ノ後ニ懷
胎シタノデアルカ、懷胎シタ後ニ離緣シタノデアルカト云フコトハ分リマセ
ヌ、又十一箇月目位三百日以上ニ生マレマシタ子供デモ、離緣後ニ懷胎シタノ
デアルカ、離緣前ニ懷胎シタノデアルカ疑ガ起リマス、現ニ先キニ舉ゲマシタ
明治八年ニ生ジマシタ戶籍上ノ問題ノ如キハソコラモ一ツノ疑ニ相成ッテ
居ルヤウナコトデアリマス、畢竟此等ノ場合ハ種々ナ紛議ヲ生ズルコトモア
リマス、又今一ツ此〓ニ附イテ原案ヲ其儘ニ置カレマスコトヲ希望シマス點
ハ他ノ法律案トノ關係デゴザイマス、諸君ノ御手許ニハ囘ッテ居リマセウト
存ジマスガ、國籍法案ノ第二條ニ於テハ本案ト殆ド同ジ文章ガアルノデ、
是ハモウ殆ド同一ト申シテモ宜シイ、「父カ子ノ出生前ニ離婚又ハ離緣ニ因リ
テ日本ノ國籍ヲ失ヒタルトキハ前條ノ規定ハ懷胎ノ始ニ遡リテ之ヲ適用ス前
項ノ規定ハ父母カ共ニ其家ヲ去リタル場合ニハ之ヲ適用セス云々」若シ民法
デ此第二項ヲ削ラレマスナレバ、此國籍法ニ於キマシテモ、矢張第二條第二項
ト云フモノハ削ラレルヤウナ結果ニ相成ルデアラウト思ヒマス、此國籍法ハ
旣ニ貴族院ニ於テ議決セラレマシタモノデアリマシテ、之ヲ削リマシタ、結
果ト云フモノハ勿論決定シナケレバナラヌト云フヤウナ手數モ尙ホアルコト
デゴザイマス、一ツ困リマスコトハ、戶籍法案ノ第七十一條トノ關係デゴザイ
マく、戶籍法案ノ七十一條ニ於キマシテハ出生屆出ハ父ガスルト云フ
コトニナッテ居リマスル、從ッテ民法ノ七百三十四條ノ場合ガ取除ケニナッ
テ居ルノデゴザイマス、此場合ニハ母カラスルト云フコトニナッテ居ルノデ、
若シ民法ノ規定ガ削ラレマスト云フト、戶籍法ノ方ノ修正ト云フコトモ行
ハナケレバ相成リマセヌ、而シテ戶籍法ノ委員會ニ於テハ此條ハ元トノ儘ニ
置カレテアルノデゴザイマス、又戶籍法ヲ修正致シタトシテモ、實ハ戶籍上
不都合ノモノデゴザイマシテ、例ヘバ東京府ノ者ガ離緣ニ依ッテ其籍ヲ去リマ
シテ、長崎ニ參リマシタ、長崎デ出產致シマシタトキニ其居ヲシマス、父母ハ
長崎縣ニ在ッテ其出生屆ヲ致シマスト、忽チ其子ト云フモノハ東京ノ元トノ
養家ノ戶籍ニ入ル、マルデ屆ケル所ト戶籍ニ這入ル所ガ別ナモノニ相成ルヤ
ウナコトニナルソレ等ノ不都合モ此戶籍法ヲ修正スル必要ノ外ニ生ズルモ
ノデゴザイマス是等ノ種々不都合ガゴザイマスカラシ他ノ修正案ニハ全タ御
同意ヲ致シマシテ委員會ノ通ニナリマシテモ、少シモ差支ガアリマセヌガ、
此〓ダケハ何卒原案ノ儘ニ据置カレンコトヲ切ニ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=35
-
036・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 波多野傳三郞君
〔波多野傳三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=36
-
037・波多野傳三郎
○波多野傳三郞君(百二十五番) 若シモ今日直ニ第二讀會ヲ開カルヽト云フ
コトデゴザイマセヌナレバ諸君ヨリ定規ノ贊成ヲ得テ修正案ヲ提出スル
積リデアリマシタガ實ニ我社會ノ基礎ニ關係ノアルト云フ親族編相續編ナ
ルニ拘ラズ、諸君ノ賢明ナル直チニ第二讀會ヲ開カルヽト云フコトニナリマ
シタデ、巳ムヲ得ズ本員ノ希望スル修正ノ意見ヲ述べ、其大略ヲ說明致シテ、
諸君ノ贊成ヲ請ハント欲シマス、先ヅ他ノ人ハ免ニ角、今第一讀會ノ場合ニ
於テ、此民法修正案ヲ維持セラレタル鳩山博士ノ如キハ、確カニ本員ニ贊成
セラルベキ義務アリト鳩山君自ラノ維持ノ演說ニ於テ本員ハ信ジテ居ル譯デ
アリマス、本員ノ修正ヲセントスル箇條ハ、然ラバ何デアルカト申シマスト
第四編第二章ノ中第三節戶主權ノ喪失ト云フ一箇條、同ジク第四編ノ中第四
章第二節ノ中第二款庶子ヲ認知シタル箇條、此二箇條ヲ修正案中ヨリシテ除
キ去ルト云フコトガ本員ノ修正ノ趣意デゴザイマス本員等ノ素志ヲ申シマ
スレバ山田喜之助君ガ說カレタ如ク今日ノ如キ社會ノ變遷ノ多キ我國
ニ在ッテ千歲不磨ト云フコトハ少シ事大仰ニ失スルカハ知リマセヌガ
度制定致シマスレバ、十年位ハ改メント欲スルモ改メ難キト云フ、此民法ヲ
一ノ成典トシテ世ニ出スト云フコトハ、元來喜バヌ者デゴザイマス、併シナガ
ラ、旣ニ第一讀會ニ於テ、是ガ現在ノ場合ニ於テ必要ナリト諸君ノ御多數ガ
御可決ニナリマシタ以上ハ、已ムナク責メテハ是ヨリ先キノ社會ノ進運ヲ
察シ、現在ヲ慮ッテ改メント欲スルモ改メ得ザル期間位ニハ當テ篏メルモ
ノニ此法典ヲ修正シ置キタク存ジマス山田喜之助君ガ說カレタル如ク
本員等ノ考ハ改正條約ニ伴フテ居リマス所ノ議定書ノ所謂法典ト云フ中ニハ
親族編相續編ノ如キヲ含マレズシテ可ナリト二フフ考デゴザイマスルガ、既ニ
之ヲ含マルヽモノデアルト云フ、又鳩山和夫君ノ成ル程直接ノ關係トハ云ハ
レマジキモ、間接ノ關係ハ隨分外國人ニモアルコトデアルカラ今ニ於テ此
修正民法ノ中親族編相續編ヲ世ニ現シテ置クコトハ明年ノ七月十六日ヨリ改
正條約ヲ實施スルニ必要デアルト云フト斯ク說カレマシタ以上ハ現在之
ヲ存シテ益ナク、將來ヲ慮ッテ存スレバ害ガアル、而モ御同前ガ、御同前ト
申スヨリモ寧ロ上御一人ヲ始メ奉リ官民共ニ希望シテ巳マザル改正條約
ハ殆ド平等ノ基礎ノ上ニ成立ッテ之ガ將ニ行レントスルトキニ當ッテ、既ニ
外國人ト關聯スル必要ト云フナラバ、是等ノ者ノ眼カラ見テモ、大イニ喜ブ
ベキ有樣ニ修正シヤウ、サラバト云ッテ、其基礎タル四千万ノ兄弟姊妹其
修正ガ害アルト云フナラ、決シテ外國人ノタメニスベキデハナイ、四千万ノタ
メニ改テ害ナクシテ、又是ヨリシテ共ニ交ハルベキ人モ共ニ喜ブベキコトナ
ラバ、之ヲ修正スルガ相當ト本員ハ考ヘル、ワレ故ニ第四章第二章中ノ戶主權
ノ喪失卽チ隱居ノ制度ヲ第一削除スルト云フコトヲ本員ハ希望スルノデアリ
マド、然レバ此隱居ナルモノガ現在ニアッテ如何ナル用ヲナシテ居リ、如何
ナル働キヲシテ居ル、之ヲ存ゼザレバ現在ノ家族ノ有樣ニ害ガアルカト云フ
ト、本員ノ考デハ之ヲ存ゼズシテ何ノ害ハナイ、特ニ將來ヲ慮レバ之ヲ殘ス
ト云フハ社會ノ進歩ヲ妨ゲルト云フ害ガアルノデゴザイマスソレハ何デア
ルカト云フト、先ヅ低キ所カラ觀察致シマスト云フト、六十歲以上ノ年齡ニ
達シ、且ツ相續人ガ承諾スレバ隱居ガ出來ルト云フコトニシテ、果シテ社會
ノ多數ヲ占メテ居ル下層ノ者ガ隱居ガ出來ルヤ否ト云フニ、是ハ決シテ
吾ミハ隱居ナリト云フテ、細キ煙ダニ立テルコトガ出來ヌ有樣ナレバ六
十歲七十歲ニナラウトモ、晨ニ星ヲ戴イテ出デ夕ニ月ヲ踏ンデ歸ルト云フ生
活ヲ孜々營々トシテシナケレバナラヌト云フコトハ明デアル、然ラバ隱居制
度ハ實際ニ行ルヽハ中產以上ノ者ダケデアル、中產以上ノ者ハ隱居ト云フコ
トヲセナクテモ一家ノ經營ノ上ニ何等ノ妨ガアルカト云フニ、中產以上若
干ノ餘地アル者ハ、己レ自ラ戶主權タルハ稍〓不適當ト云フトキニナリ
マスレバ、相當ノ代理人ヲ置イテ、一家ノ經營ノ一部ヲ委託シテ大體ヲ括リ
置クト云フコトニ、何等ノ妨モナイ、置ケバ置ケルト云フモ-隱居スレバ
出來ルト云フモノニ附イテハ、隱居制度ハナクテモ、一家ノ經營ニ妨ゲナイ、
然ラバ申スモ畏キコトデゴザイマスガ上御一人ハ如何ニ在ラセラルヽト
云フコトヲ考ヘマスルト云フト、我大日本帝國憲法ト共ニ去ヌル明治二十
二年二月十一日ヲ以テ發布セラレタル皇室典範ヲ拜讀致シマスレバ諸君ノ
御存ジノ如クニ其古ハ我皇室ニモ隱居制度ハアリシモノヲ、此皇室典範ニ
於テハ隱居制度ト云フモノハ棄テサセ賜フタ譯デゴザイマス、我社會ニ在ッテ
中產以上ノ者ノ一家ノ經營抔トハ事異リマシテ、我大日本帝國憲法ノ第一
條ニモ示シテアルガ如クニ、我陛下ハ此帝國ヲ統治シ賜フト云フ萬機ニ當
リ賜フ御身デアリナガラモ、一度踐祚シ賜ヘバ、崩御アラセラルヽマデハ萬
機ヲ躬ラシ賜フト云フコトヲ、皇室典範ハ其第十條ニ於テ定メテアリマス、偶
天皇ガ久シキニ亙ルノ故障ニ依ッテ、大政ヲ躬ラスルコト能ハザルト云フ
ヤウナ場合ニ當ッテハ皇族會議竝ニ樞密顧問ノ議ヲ經テ攝政ヲ置キ賜フト
云フコトニ限ッテ居ルマデニ相成リ居リマスルハ誠ニ恐多キ比喩デハゴザ
イマスガ、御同然臣民ノ側カラ此民法ノ中ニ譬ヘラレタナラバ、恰モ後見人
ヲ置クト同樣ナ仕方ト相成ルノデゴザイマス、上御一人ハ斯ノ如ク國家ノ
事ノタメニハ、一タピ踐祚シ賜ヘバ終生再ビ其位ヲ退カルヽト云フコトハ
ナイ、又下層ヲ見レバ同ジク如何ニ隱居セントシテモスル能ハザルト云フ有
樣ノトキニ當ッテ、中產ノ者ノミガ爲シ得ル、然ラバ此中產以上ノ者ニ是ヲ遺
サネバナラヌカト云フト、少シモ遺サネバナラヌト云フ必要ハ認メナイ、
而シテ此事ガアレバ如何ト申シマスト云フト、是ヲ旣往ニ考ヘマシテモ、或
ハ現在ニ照シマシテモ、此制度ノアルト云フコトハ動モスルト、一家、
不和ノ端〓ヲ啓クト云フヤウナコトガアル、縱令一家ニ不和ノ端〓ヲ啓クト
云フコトガゴザイマセヌト致シマシテモ、社會ニ出テヽ働ケバ働ケルト云
フ人ガ空シク苟且偸安ニ日ヲ送ルト云フコトハ一人ニ就イテ不利益デアル
バカリデナクシテ、社會ノ國家ノ富强ノ上カラ考ヘマシテモ甚ダ好マシカラ
ヌ制度デアルト本員ハ考ヘマス、其昔武門ノ世ニ在ッテハ、成ル程六十一
歲ニナレバ、軍役御免弓馬槍劒ヲ以テ一騎討チヲスル世ノ中ニハ、斯ノ如キ必
要ハ或ハアッタデゴザリマセウ、併ナガラ今日ハ最早左樣ナル時代ハ去ッテ居
ルコトデゴザイマスレバ、此隱居制度ト云フモノヽ必要ヲ見ナイ、之ヲ遺シテ
置ケバ、害ガアルト云フ〓ヨリシテ、第一ニ第四編ノ第二章ノ中第三節戶主
權ノ喪失ト云フ箇條ヲ削除シタイト考ヘマス、第二ニ、同ジク第四章第一節
ノ中第二款ノ庶子ヲ認知スルト云フコトヲ除ク是ハ隱居ノ制度ヨリハモウ
一層社會ノ上ニ害ガアルト存ジマス、而シテ存シテ置イテ何ノ益モナイ然
ラバ我國ノ今日マデノ法律制度ノ變遷ハ如何デアルカト申シマスト云フト
維新以前ハ先程山田喜之助君モ其一部ヲ言ハレタル如クニ或ハ佛〓ニ感化
サレ、或ハ儒道ノ感化ヲ受ケタト云フタメデゴザイマセウ天子ハ幾人、
諸侯ハ幾人、太夫ハ幾人、士庶人ハ幾人ト云フヤウナ妾ヲ置クト云フコト
ハ殆ド普通ノコトヽ心得タコト、今一ツニハ、不孝ノ罪三ツ、後ナキヲ大ナ
リトスト云フヤウナコトヲ〓ヘラレ唯後嗣ヲ思フト云フ、ツレガタメニ、
遂ニハ妾ヲ蓄ヘルト云フコトマデガ、我封建ノ時代ニ行レ、又封建時代ニ家名
ヲ尊ビ、家名ニ依ッテ家祿ヲ世襲スルト云フ時代ニハゝ或ハ是モ已ムヲ得ザル
コトデアッタカモ存ジマセヌ、今日然ラバ如何ト云フト、今日ニ於テハ何ノ
必要モナイ、然レドモ今日マデノ法律制度ノ變遷ヲ見マシテモ、明治三年
ノ十二月ニ新律綱領ヲ發布セラレタル當時、同ジク六年六月ニ改定律令ヲ發
布セラレタル當時マデノ六等親ノ圖ヲ見マスルト云フト、父母ニ列ベテ一等
親ノ次ニ位シタル二等親ノ妾ト云フモノガ存シテアッタガ、流石ニ歐米ト交際
ヲシ、文明ノ光ニ照サレ、開化ノ風ノ吹來ッタルトキニナッテハ、法律ノ上
ニ妾ト云フモノヲ認メテ置クト云フコトハ忍ビヌモノト相成リマシタモノト
見エマシテ、十三年七月ニ發布セラレマシタル刑法以來ハ、初テ此二等親ト云
フコトハナクナリマシタ、此度ノ民法ニモ成ル程妾ト云フ文字ハ使ッテハゴ
ザイマセヌ、併ナガラ父ノ認メタル子ハ、庶子トスルト云フコトハ謂フ所
下世話ノ頭隱シテ尻隱サズト云フ仕方ト申サネバナリマセヌ、然ラバ此庶子
ト云フモノヲ法律ノ上デ認知シ置カナクテハナラヌト云フ今日必要ガアルヤ
否ト云フト、何モ必要ガナイ、而シテ之ヲ認知シ置ケバ、其結果ハ如何デア
ルト云フト、成ル程妾ト云フ文字ハ現レテ居ラヌガ、庶子ノ親卽チ妾ヲ蓄ヘ
ルト云フコトハ隱然社會ニ行ハルヽコトニナル、此事ノ行ハルヽ結果ハ
一家ノ不和ハ無論ノコト、ソレガタメニ社會ニモ隨分忌ハシキコトヲ此ニ演
出スルト云フコトヲ免レナイ是モ諸君ガ御承知ノ如クニ、彼ノ演劇ハ小世
界デアルト云フ其脚色ノ本ハ何カト云フト、世ニ所謂御家騒動ト云フモノ
ハ何カラ起ルカト云フト妾ヲ蓄ヘルト云フ一ノ制度カラ起ラザルナキ
ハ殆ド其軌ヲ一ニスルト云ッテモ宜イコトハ諸君ノ御承知ノ通ノコトデ
アル、斯ノ如ク弊ガアッテ、而モ今日此社會ノ進運カラ見、實ニ改正條約ヲ實
施シテ對等ノ交ヲ爲シ、對等ノ交ヲ爲スト云フコトハ、唯法律上ノ言葉制度
上ノ句ダケデ、對等ノ交ガ出來ズシテ、直ニ同等ノ交際ヲシヤウト云フニハ
御同前ガ鄰邦ノ間ニ在テモ互ニ知リ得ルコトデアル決シテ書イタモノヤ
口デ言ッタコトデ、心カラ安ジテ對等ノ交リ同等ノ交際ナドト云フコトハ出
來ルモノデナイ、之ヲ實際ニ行フニハ如何カト云フト、實ニ社會ノ基礎タル
家族ノ制度ニ至ルマデ、彼此格別ノ差ナク各〓心ニ快樂ヲ感ジ得ルト云フ制
度ニ定ッテ居ッテ、始テ對等ノ交際モ出來ルモノデアル而シテ之ヲ存セ
ザレバ害ガアルト云フナラバ、是亦他ノタメニ抂ゲルコトハ出來ヌガ、存ス
レバ害ガアル、之ヲ除イテ何ノ差支ガナイト云フトキニ當ッテ、千載不磨ト
ハ大仰カモ知レマセヌガ少クモ一ト度法典ヲ編纂シ、世ニ現シタル以上ハ、
十年ヤソコラデハ蓋シ改ムルコト難キト思ハルヽ其時ニ此文字ヲ殘シ置ク
ト云フ必要ハ本員ハ無イト考ヘマスルガ故ニ、本員ハ大體ニ於キマシテ、隱
居ノ制度竝ニ庶子ヲ認ムルト云フ此二ツヲ民法ノ中ヨリシテ削除スルト云フ
コトノ修正說ヲ呈シマス是ガ削除ト相成リマスト云フト、第二ノ日程ニ上
リ居リマスル戶籍法抔ニモ多少ノ影響ヲ及シマスルシ、又民法ノ中デモ此一
節二款ガ削除ト相成リマスレバ、多少加除セネバナラヌ箇條ハ起リマスルガ、
併ナガラ、此事ガ社會ニ益ガアッテ、國家ニ害ノナイコトデアルナラバ、此
大體ノ通過ヲ努メラレタル鳩山君ハ無論ノコト、他ノ諸君ニ於キマシテモ唯
法律ハ旣往ヲ考ヘテ現在ヲ見ルト云フバカリデナクシテ、將來ノ事モ慮ラネ
バナラヌコトデアルト云フコトニ御注意下サッテ定規ノ御贊成アランコトヲ
希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=37
-
038・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 木村格之輔君
〔木村格之輔君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=38
-
039・木村格之輔
○木村格之輔君(二百二十五番) 諸君、私ハ八百六十六條ノ第四ヲ修正致シ
マスル動議ヲ提出致シマスル此ノ如キ文字ヲ挿入致シタイト云フノデス、
第四ニ「他ノ一方カ」トアリマス其下ヘ委員會ニ於テ修正サレマシタ、八百
十三條第四號中ノ矢張修正ニナッテ居リマスル「僞造、賄賂、猥褻、竊盜、
强盜、詐欺取財、受寄財物費消、贓物ニ關スル罪若クハ刑法第百七十五條第
二百六十條ニ揭ケタル罪ニ因リテ輕罪以上ノ刑ニ處セラレ又ハ其他ノ罪ニ因
リテ」ノ七十五字ヲ加ヘヤウト云フ修正案デゴザイマス、諸君、夫婦ノ關係
ト養父子ノ關係トデハ孰ガ重イノデゴザリマセウカ、又孰レガ輕イノデゴ
ザイマセウカ、本員ノ考ヘル所ニ依リマスト、夫婦ノ關係ハ養父子ノ關係ヨリ
ハモット親密ナモノデアルト考ヘラレル、故ニ、原案ニモ夫婦ノ關係ニ就キ
マシテ、離緣ヲ求ムルノ理由ハ、輕罪ノ刑ニ處セラレテモ三年以上
デナケレバ離婚スルノ理由トスルコトハ出來ナイトシテアッタノデ
アリマス、然ルニ八百六十六條ノ第四項ニハ重禁錮一年以上ノ刑ニ處セ
ラルレバ離婚スルノ原因トスルコトガ出來ル、卽チ三年ト一年トノ差アルヨ
リ見マスルト原案者モ矢張夫婦ノ關係ハ養父子ノ關係ヨリモ親密ナモノ
デアルト云フ精神ヨリ、此ノ如ク輕重ノ法條ヲ設ケタモノデアルト信ジラレ
ル、然ルニ委員會ニ於テハ、夫婦ノ關係ノミニ對シテ、諸君ノ御手許ニ御囘
シニナッテアリマス通、八百十三條ノ第四號中ノ離別ノ原因ヲ矢張本員ガ唯
今修正セントスル挿入ノ文字ノ如ク修正シテアル、故ニ夫婦ノ關係ニ於テハ、
竊盜ヲシタ妻デアルトカ或ハ强盜ヲシタ妻デアルトカ云フヤウナ破廉耻罪
ヲ犯シタ場合ニハ三年以下ト雖モ離婚スルノ原因トスルコトガ出來ルケレ
ドモ養父子ノ間ニ於テハ竊盜ヲシマシテモ詐欺取財ヲ致シマシテモ一年
以上ノ刑ニ處セラレナケレバ、養子ヲ離別スルコトガ出來ナイト云フノハ甚
ダ其權衡ヲ得ザルモノト信ズルノデアリマス、諸君、如何デゴザリマセウ、自
分ノ養子ガ竊盜ヲ致シ又ハ强盜ヲ致シ、詐欺取財ヲ致シ、テモソレヲ理由トシ
テ其養子ヲ離別スルコトガ出來ナイトナリマシタナラバ是マデノ日本ノ慣習
ニ副ハナイト云フコトハ自ラ明白ナコトデアルト信ズルノデアリマス、故
八百十三條第四號ヲ修正シタ意思ヲ以テ矢張養父子ノ關係ニ對シマシテモ
唯今本員ガ修正致シマスル通ニ挿入セラレンコトヲ希望スルノデアリマス、
サウ致シマスレバ權衡ガ能ク合フノデアリマス、又八百十三條ノ修正ニ附
キマシテハ、政府委員モ反對ハナクシテ參同シテアルノデアリマス、故ニ其
權衡ヨリ見マシテ、此挿入ノ修正ニ就キマシテハ無論反對ノ無イコトヽ存
ジマスカラ、定規ノ御贊成アランコトヲ希望致シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=39
-
040・小室重弘
○小室重弘君(百八十八番) チヨット御注意致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=40
-
041・北島傳四郎
○北島傳四郞君(六番) 六番ハ修正ノ意見デアリマスカラ·発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=41
-
042・小室重弘
○小室重弘君(百八十八番) 斯ウ修正ガ澤山出テ參リマスト、大キニ採決ノ
トキニ困ラウト思ヒマス、成ルベクハ此修正ハ便宜ノタメニ一ツ出マシタノ
ヲ、先キノ修正カラ段々ニ決定ヲシテ行タラ如何カト思ヒマス誠ニ貴重ナ
演說ガアリマシテモ、甚ダ決定ノ際ニ至ッテハ無益ニナルダラウト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=42
-
043・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 今木村格之輔君ノ修正說ハ定規ノ贊成ガアリマセヌ
〔「アリマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=43
-
044・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 關信之介君
〔關信之介君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=44
-
045・關信之介
○關信之介君(百五十二番) 私ノ修正說ハ極テ單簡デゴザイマスル、其修正
致シマスルノハ第二章第一節第七百四十一條デゴザイマスガ、此法文ニ
「婚姻、又ハ養子緣組ニ因リテ他家ニ入リタル者カ更ニ婚姻云々」トゴザイ
マス此「入リタル者」ノ下ニ、「離婚離緣若ハ取消ニ因ル」ト云フ十一字ヲ
加ヘタイト云フノガ、卽チ本員ノ修正意見デゴザイマス、何故ナラバ、
此七百四十一條ヲ讀過致シマスルト云フト、殆ド一タビ養家ニ參リ、一タビ
婚姻ヲ致シマシタモノガ、再度又二重ニ婚姻ヲ致シ、二重養子綠組ヲ致シテ
モ、少シモ差支ナイト云フヤウニ見エマス、併シ立法者ノ趣意ハ右ノ如キ
モノデナイト云フコトハ委員會ニ於テモ承ッテ居リマスルケレドモ此文
字其モノヲ讀デ見マスルト、決シテ立法者ガ答辯致シマスル如ク、是ハ決シテ
重婚ヲ認メタモノデハナイ、養子ノ重緣ヲ認メタモノデナイト云フヤウナコ
トヲ述ベラレマスケレドモ、此文面ハ決シテ立法者ガ委員會ニ於テ答辯致シ
マスル如ク、是ハ決シテ養子重緣ヲ認メタモノデハナイ、重婚ヲ認メタモノ
デハナイト云フコトニ決シテ解スルコトガ出來ヌノミナラズ、法律ト云フモ
ノハ或ハ無學ノ者ニモ分ルヤウニシナケレバナラヌモノデアリマス、デア
レバ、此他家ニ入リタル者ガノ下ニ、「離婚離緣若クハ取消ニ因リ」ト云フ
コトガ這入ルト云フト、誠ニ明瞭ニ相成リマシテ、而シテ立法ノ趣旨ニモ適
フコトヽ、考ヘマスルカラ、此事ハ甚ダ字句ノ修正ノヤウデハゴザイマスケレ
ドモ、一目ニシテ分リ易イコトニ相成ルコトヽ考ヘマスルカラ、ドウカ滿場ノ
諸君、此ノ修正案ニ御贊成アランコトヲ希望致シマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=45
-
046・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 小室重弘君··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=46
-
047・小室重弘
○小室重弘君(百八十八番) 私ハ極ク簡單デアリマスカラ、此所カラ申シマ
ス、第七百三十四條ノ第二項ノ削除ニ附キマシテハ自分等モ委員會ニ於テ
贊成ヲシナカッタノデアリマス是ハ原案ノ如クニシテ置カナケレバナラナ
イノデ、其理由ハ先キ程穗積君カラ述ベテゴザイマスカラシテ、繰返ス必要
ハゴザイマセヌ況ヤ國籍法ノ第二條ノ一一項或ハ戶籍法ノ七十一條ト云フヤ
ウナ所ニ關聯ヲシテ居ルノデゴザイマス、故ニ之ヲ今玆ニ削除スルト云フコ
トハ外ニモ傷ケマスル、勿論傷ケテモ其道理ガ削除シナケレバナラヌト云
フ十分ナル理窟ガアルコトナラバ格別デゴザイマスガ、私共ハ削除スベシト
云フ議論ハ甚ダ薄弱ナルモノデアルト云フ者デアリマスカラ、是ヲ復活スル
コトニ御同意ヲ願ヒマス
〔「贊成、々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=47
-
048・北島傳四郎
○北島傳四郞君(六番) 議長····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=48
-
049・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 北島君ハ修正說デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=49
-
050・北島傳四郎
○北島傳四郞君(六番) 修正デス
〔北島傳四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=50
-
051・北島傳四郎
○北島傳四郞君(六番) 私ノ修正セントスル所ハ極ク簡單ナコトデアリマ
ス、簡單デアリマスケレドモ、最モ必要ナコトデアラウト思ヒマスカラシテ
-其章ハ第二章ノ第一節中デ七百三十六條ニ當ル所デアリマス、デ、詰リ此
法律全體ニ附イテハ和漢洋混交ノ法律デアッテ今日ニハ適セヌト云フコ
トヲ、吾ミハ感ジテ居ッタケレドモ、ソレハ旣ニ是ガ實際ニ行フト云フコト
ニナッタ以上ハ、甚ダ此今日ノ習慣ト反シテ居ルト云フコトダケヲ修正シテ
置キタイ積リデアルノデス、其七百三十六條ノ但書以下ヲ削ッテ、サウシテ
以下是ニ關係スル所ヲ皆是ヲ削ッテ行ク積リデアル、其中七百三十六條ヲ見
マスルト云フト、先ヅ其夫ノアル女ガ一家ノ戶主トナッテ、サウシテ夫ガ其
家族トナッテ其配下ニ服サナケレバナラヌト云フヤウナ規定ニナッテ居ルノ
デアリマス、是ハ日本ノ今日ノ社會ニ於テハ果シテ適當シテ居ルヤ否、私
ノ考デハ甚ダ日本ノ今日ノ有樣ニハ適セヌ規定デアルト云フ考ヲ持ッテ居ル
其適セヌト云フ考ハ長ク申上ゲルマデモナカラウト思ッテ居ルデス、然ルニ
委員會ニ於テハ此事ニ附イテ果シテサウ云フ習慣ニ基イテ此法律ヲ作ッタト
云フ政府委員ノ說明デアッタカラ、サウ云フ習慣ガアルカト云フコトヲ尋ネ
マシタ所ガ、ツレハズット古イ時分ニ鎌倉ノ尼將軍ノ時代ニ少シアッタラシ
イソレカラ其後ニハドウ云フ風ニナッテ來テ居ルカト云フニ、其後ニハサッ
パリ無イ、サッパリ無イガ、明治初年カラチラホラアル、斯ウ云フ答辯デア
リマシタ、明治初年カラ果シテアッタナラバ私ノ考ニハ是ハ成ル程アノ時
分ニハ一時妙ナ議論ガ流行ッテ、男女同權トカ何トカ大變ヤカマシイ議論ガ
アッタ時分ニ、物好キナ者ガ一ツ家內ヲ戶主ニシテ自分ガ家族ニナッテ見ヤ
ウト云フヤウナ考ノ人ガヤッタノデハナイカ知ラヌト思フ果シテサウ云フ
ヤウナ遺物ガ遺ッタトスレバ、其事ガ-今日社會ニ先ヅ男女同權ト云フヤ
ウナコトガ餘リ認メラレナイヤウナ今日ニナッテハソレヲ遺シテ置クノ必
要モナカラウ、又一ツハ是ハ此習慣ハ待合茶屋ヤ或ハ貸座敷等ヨリ起ッタ
習慣デハナイカ知ラヌト思フ、彼等ハ先ヅ其アヽ云フ所ニハ多ク戶主ト云フ
者ハ女デアルカラ、ソコデ何カ好キナ男デモ引張リ込ンデ、ソコデ懷胎シタ
カラ、私生兒ト屆ケルコトモ出來ヌ、ソコデ婚姻ノ式ヲ舉ゲル、婚姻ノ式ヲ
舉ゲルケレドモ、直グニ此者ヲ以テ戶主トシテハ、其財產ヲ宜イ加減ニサレ
ルト云フヤウナ恐ガアルカラ、先ヅソレヲ家族トシテ置イテ、女ガ戶主デ居ッ
タト云フヤウナモノデ、ソレガ戶籍上ニ遺ッテ居ルモノヲ、政府ノ方デ成ル
程此所ニ斯ウ云フ習慣ガアル、是ハ大變進ンダ習慣ダカラ、習慣トシテ一
ツ採用シヤウヂヤナイカト云フヤウナ所カラ、此規定ガ出來タノデハナイ
カト云フ考ヲ持ッテ居ル、ソコデ私等ハソレデハ明治初年カラ此習慣ガアル
トシタナラバ如何ナル社會ニ是ガ行レテ居ル習慣デアルカ、卽チ其社會ノ
如何ナル所ニ行ハレテ居ル習慣デアッテ、又其習慣トスレバ、ドノ位女ガ戶主
デアッテ男ガ家族デアルカサウ云フコトノ調ヲ一ツ聽キタイモノデアルト云
フコトヲ質問シタ所ガ、其調ハ出來タ、成ル程一二ノ例ヲ舉ゲルコトハ出來ル
ト云フ答辯デゴザイマシタ、一二ノ例ヲ舉ゲルコトハ出來ルコトデアッテ
統計等ヲスルコトガ出來ヌコトデアッタナラバ、今日習慣トシテ認メル値打
ノナイモノデアルト感ジテ居ルノデス、尤モ法律ハ習慣ニ基ク法律ト云フ
モノハ善良ナルモノデアルト云フコトハ固ヨリノコトデアル殊ニ此親族
法抔ハ習慣ニ基カナケレバナラヌモノデアルガ、法例デモ認メラレタ通リ、善
良ナル習慣デナケレバ採用セヌト云フコトニナツテ居ル、然ルニ若モ吾ミガ
想像スルガ如ク、一時社會ニ流行シタ男女同權論ナドノ飛離レテアッタルソ
レ等ノ者ト下等社會ノ待合茶屋料理屋ナドニ起ッタ習慣デアッタナラバ是
ハ撲滅スルコソ努メナケレバナラヌガ、之ヲ法律ヲ以テ認ムル程ノ必要ハナ
カラウト思ッテ居ル、ソレデ今日ハ假令此習慣ガアッタ所ガ、社會ノソレ程
害ニナッテ居ラヌ、ナゼカト云フニ法律ヲ以テ認メテ居ラレヌカラ、ソレ
ガ行ハレテ居ル所ハ、僅カノ範圍ニ行レテ居ル故ニ、社會ノ害ニナラヌガ、
併ナガラ一旦此帝國議會ノ協贊ヲ經テ之ガ若シ法律トナッテ世ノ中ニ出
タナラバ下等社會ノミニ行レル所ノ法律デナイカラ、社會ノ如何ナル階級
ニモ是ガ出來テ、ドウモ無權力ナル男ガ續々出來ルダラウト-ソレハ先ツ
勝手デアルカラト云フヤウナモノヽ今日ノ社會ニ適スル風俗ノ認ムルコト
ハ出來マセヌ、ソレデアルカラ、色ミ申上ゲタイコトモアルケレドモ、免モ角
モ此夫ノ無イ女ノ如キハ、固ヨリ戶主ニナルコトハ當然ノコトデアルケレド
毛、夫ノアル女ハ戶主タルコトハ出來ヌト云フヤウニ規定シタルノデアリマ
スカラ、此七百三十六條ノ但書以下ヲ削ッテ、以下之ニ關係スル所ノ卽チ有
夫ノ女戶主ト云フ者ヲ皆削リ去リタイ積リデアリマスカラシテ、諸君幸ニ御
贊成下サレンコトヲ希望致シマス、尤モ何カ細君ニ同情ヲ表スル御方デアッ
テ、是ニ贊成シテ具合ノ惡ルイ方ハ贊成シナクテモ宜イガ、成ルベク贊成セ
ラレンコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=51
-
052・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 段々修正說モ出マシタガ、定規ノ贊成ガアリマセヌカ
ラ委員會ノ修正ニ附イテ、一條ヅヽ採決致サウト考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=52
-
053・星松三郎
○星松三郞君(二百十七番) 修正說ノ中ニ贊成シタイ者ガアリマスカラ、一
言述ベタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=53
-
054・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 先キノ修正說ニ贊成デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=54
-
055・星松三郎
○星松三郞君(二百十七番) 何レガ宜イカト云フコトヲ勘考中デアリマス、
私ノ賛成シヤウト思フノハ波多野君ノ說ノ卽チ····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=55
-
056・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) ソレハマダ定規ノ賛成ガアリマセヌカラ、問題ニナッテ
居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=56
-
057・星松三郎
○星松三郞君(二百十七番) ソレヲ贊成シテ贊成ヲ請フト思ヒマス··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=57
-
058・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 贊成ノ有無ヲ仰シヤッテ下サイ、定規ノ贊成ガアルナ
ラバソレガ問題ニナル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=58
-
059・星松三郎
○星松三郞君(二百十七番) 贊成
〔笑聲起ル〕
〔「決々」ト呼フ者アリ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=59
-
060・小室重弘
○小室重弘君(百八十八番) ドウ云フ風ニ採決ニナリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=60
-
061・谷澤龍藏
○谷澤龍藏君(百番) 此七百三十四條ニ附イテ小室君ノ說ニ贊成ガアリマス
カラ、一應此處カラ簡單ニ述ベテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=61
-
062・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 贊成ナラ贊成ト仰シヤッテ下サイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=62
-
063・谷澤龍藏
○谷澤龍藏君(百番) 反對デゴザイマス、修正案ヲ委員長ノ報告通デ宜カラ
ウト云フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=63
-
064・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) ソレナラソレデ採決致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=64
-
065・谷澤龍藏
○谷澤龍藏君(百番) 少シ其趣意ヲ言ッテ置カフト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=65
-
066・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) モウ宜ウゴザイマス、採決シヤウト思ヒマス、此委員
會ノ修正說ヲ一條ヅヽ採決ヲ致シマスガ、先ヅ第七百三十四條ノ第二項ヲ削
除スルト云フ委員會ノ說ニ附イテ採決ヲ致シマス委員會ノ說ハ削除デアリ
マスカラ、本案ニ卽チ之ヲ削除ヲシナイト云フ方ニ附イテ採決ヲ致シマス、本
案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=66
-
067・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマスカラ、原案ニ決シマス、次ニ第八百十
三條ノ委員會ノ修正說ニ附イテ採決致シマス、委員會ノ修正說ニ同意ノ諸君
ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=67
-
068・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマスカラ、委員會ノ修正ノ通ニ決シマシタ、
次ニ本案全部ニ附イテ採決致シマス、本案ノ全部ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒ
マス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=68
-
069・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=69
-
070・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百九番) 直チニ三讀會ヲ···
(「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=70
-
071・大竹貫一
○大竹貫一君(二百三十三番) 矢張定規ノ如ク二日ヲ隔テヽ三讀會ヲ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=71
-
072・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ハ討論ヲ用ヒズシテ、決ヲ採リマス、直チニ三讀會
ヲ開クニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=72
-
073・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス、直チニ三讀會ヲ開クコトニ致シマス
民法中修正案第三讀會
〔「二讀會ノ通異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
(沼田宇源太君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=73
-
074・沼田宇源太
○沼田宇源太君(七十二番) 諸君本員ハ本案ノ全部ニ於テ否決ヲ主張スル者
デアル最早當議場ノ大勢彼此申上ゲマシテモ、此原案贊成ノ諸君ガ無論御
多數ト考ヘマス、又本案ニ附キマシテハ第一讀曾ニ於キマシテ、有力ナル
吾〓ノ先輩諸君モ十分御贊成ノ演說ニナッテアルコトデゴザイマスカラ、此
場合ニ至リマシテ、本員如キ者ガ、此處ニ出デ反對ノコトヲ申上ゲテ見マ
シタ所ガ、固ヨリ成立ツ筈モナカラウカト考ヘマスガ、此ノ如キ重大ナル問
題ニ當リマシテ、之ヲ默々ニ付スルコトガ出來マセヌカラ、私ハ此ニ一言反
對ノ意見ヲ申上ゲナケレバナラヌ、勿論簡單ニ申上ゲマス、本案ニ附キマシ
テハ淡泊ニ申上ゲマシタナラバ、私ハ恐ラクハ一人ノ贊成者ガナイ、案ダ
ラウト私ハ考ヘル、何ヲ以テ然カ云フカトナラバ、此案全體ノ組織ガドウナッ
テ居ルカト申シテ見マスレバ所謂家族主義、日本ニ是マデ行レ來タ所ノ家
族主義、西洋ノ流義ノ個人主義、此二ツノ混合シタ法律デアル謂ハヾ家族制
度ト個人主義ノ間ノ子法律デアルト云フテ可ナリデゴザイマスカラ古イ頭
ノ人ハ此個人主義ヲ採用シタコトニ反對スル、進步シタ頭ノ人ハ日本ノ家
族制度ヲ認メテ居ルト云フコトニ反對シテ居ル、ソレデゴザイマスカラ私
ガ茲ニ有リ體ニ申上ゲマシタナラバ政府委員ト爲ッテ今日出席シテ居ラレ
ル諸君モ亦反對ノ一人デアルト私ハ信ズルノデアル、其證據ガアル現ニ今
日政府委員トナッテ出テ居ラレル諸君、先キニ委員會ニ政府委員ト爲ッテ出
テ居ラレタ諸君ハ本員ガ承ッタ所ニ依ッテ見ルト隱居ト云フコトノ制度
二、全ク反對ノ諸君デアルト云フコトヲ聞イテ居ル、如何ニモ勿論其筈デ
アル今日文明ノ學問ヲシタ人、文明ノ思想ヲ持ッタ人ガ此封建制度ノ遺物
ナル、何ヤラ譯ノ分ラヌ隱居ト云フモノニ付イテ反對デアルト云フコトハ
當然ノコトデアルカラ、先キノ法典調査委員會ニ於キマシテハ專ラ此制度
ヲ削除スルト云フコトヲ主張セラレタ方ミデアルト云フコトヲ承ッテ居ル所
ガ、委員會ニ於テ隱居ノコトヲ質問シテ見マスルト是ハ今日ノ日本ノ習慣
ニ於テ是非ナケレバナリマセヌト斯樣ニ面ノ皮ノ厚イコトヲ云ハルヽ諸君
デアル法律ハ家族主義ナラバ家族主義、個人主義ナラバ個人主義、何レ
カ一ヲ貫クガ宜イノデアル然ルニ此法律ガ世ノ中ヲ胡麻化スニ最モ適當ナ
ル法律デアル一方ニハ家族主義ノ極ク古イ思想ヲ採用シテ居リマスルカ
ラ田舍ノ百姓樣ニハ極ク利キガ宜イノデアル又一方ニハ個人主義ヲ採用
シテ居リマスルカラ進步シタル思想人ニ對シテハ是ハ個人主義ヲ採用シ
タルモノデアルカラ、段々進步スル世ノ中ニ當ッテハ是非斯ウ云フ法律ノ
行ハナケレバナラント斯樣ニ言ヒ得ラレルノデアル如何デゴザイマセウ
此中ノ法律全體ノ詳シイコトハ私ハ述ベマセヌガ、一例ヲ舉ゲテ見マスル
ト家族卽チ家ト云フモノヲ認メテ居ル、從ッテ戶主ト云フ權利ヲ大變ニ重
ジテ居ル左樣致シテ、從ッテ此家督相續ト云フモノヲ尊重シテ居ルカト思
フテ見マスルト其家族ト云フモノニナルトドウデアルカト、云フト遺產
分配ト云フ制度ヲ採用シテ居ル、如何デゴザイマセウ、同ジ一軒ノ家
デアル、同ジク一軒ノ家デアルトキニ、家督ノ方ハ家督相續ト云ッテ昔ノ通ノ
慣習ヲ採用シテ居ル其ノ一家ノ中ニ居ル所ノ兄弟夫婦ト云フモノニナッテ
見ルト是ハ遺產分配ノ制度デ、外國流儀ノ遺產分配ノ制度ヲ用ヒテ居ルヤ
フニ思フノデアル之ヲ間ノ子法律ト言ハズシテ何ント申シマセウ然シ
テ是マデノ日本ノ家族制度デアリマスルト戶主ト云フモノヽ權利ヲ甚ダ尊
重シテ居ルソコデ此法律ニ於キマシテモ、一方ニ家族制度ヲ認メテ居ルカ
ラ、巳ムヲ得ズ、戶主ト云フ者ノ權利ヲ重ジテハ居リマスガ、今度ハサウ云フ
古イ思想ノ法律バカリハドウシテモ拵ヘルコトガ出來マセヌカラ一カニ
個人主義ヲ認メタ結果トシテ、親權卽チ親ノ權利ト云フモノモ亦尊重シテ居
リマス左程ニナリマシタナラバ一軒ノ內ニ一方ハ戶主ノ權利ト云フモノ
ヲ尊重シテ、其一家族ノ內ニ、例ヘバ兄弟ガ三人アッテ、各〓其三人ノ者
ガ妻ヲ娶ッテ子供ヲ產ンダト云フコトニナリマスルト、又親ノ權利ト云フモ
ノヲ非常ニ尊重シナケレバナラヌコトニナリマシテ、サウナリマシタナラ
バ同シ一軒ノ內ニ三ツ四ツノモ權利ガアル、卽チ親ノ權利ト云フモノ
ハ三人ノ兄弟是ニ加ヘテ戶主ノ權利ト云フモノガアリマシタナラバ一家
ノ平和ト云フモノハ如何デゴザイマセウ、權利ノ衝突デアッテ、一家ノ平和
ト云フモノヲ維持シテ行クコトガ出來ルデゴザイマセウカ、如何デゴザイマ
セウ、先キニ反對ノ諸君ガ、此法律ハ卽チ日本ノ社會的關係家族制度是ニ
向ッテ爆裂彈ヲ投ジタモノデアルト云フコトヲ申サレマシタ然ルニ是ニ贊
成セラルヽ諸君ハ決シテ左樣ナ急激デハナイ、急激ナ變化デハナイ爆裂
彈デハナイト云フコトヲ仰セラレマシタ、私ハ詳シイコトハ申シマセヌ、是ハ
日本ノ社會的關係ニ向ッテ爆裂彈ヲ投ジタモノデアルト云フコトハ極ク淡
泊ナルコトヲ申上ゲマスルナラバ諸君ノ銘々ノ家ノ關係ト云フモノハ是マ
デ如何ナルコトヲ以テ一家ノ平和ヲ維持シ來ッタノデアルカ所謂道德ノ關
係德義ノ關係、是ハ卽チ日本ノ家族制度ノ古イ風俗、良キ習慣ヲ維持シ
來ッタ所ノモノデアル、然ルニ一度此法律ガ發布ニナッタ以上ハ夫婦兄弟
ノ關係ト云フモノハ全ク變化シテ、權利義務ノ關係トナルノデアル如何
デゴザイマセウ德義ノ關係、此德義ノ關係ガマルデ一變シテ、今度ハ權利
義務ノ關係トナッテ、子ハ親ヲ養フハ親トシテ養フト云フ思想ヨリハ警
義務トシテ養ハナケレバナラヌト云フコトニナル又扶養ノ義務ト云ウモノ
モ順序ヲ定メテアッテ見マスルト祖父ガ貧困ニ迫ッテ養ハナケレバナラヌ
ト云フコトニナッテモ孫タルモノガ財產ヲ持ッテ居リナガラモ是ハ子供
ガアル、子供ガアッテ見ルト、法律ノ順序トシテ私ハ鐚錢一文モ祖父サンニヤ
ルコトガ出來ナイ、ト斯樣ニ權利ヲ主張スルヤウニ至ル是ハ卽チ日本ノ家
族制度ヲ破壞スルニアラズシテ何ゾヤ、日本ノ社會的關係ニ向ッテ爆裂彈ヲ
投ズルト言ハズシテ、何ト申スノデゴザイマセウ、而シテ條約改正ノ關係ノ
コトニ付キマシテハ、先キニ反對論者モ贊成論者モ十分ニ御述べニナリマシ
タカラ私ハ今日是ニ付イテ委シイコトハ申シマセヌ唯鳩山君ガ斯樣ナコ
トヲ申サレテ居ル是ハ成程贊成デアル山田君ノ說ニ贊成デアルサリナ
ガラ、今ノ伊藤總理大臣ノ弱蟲先生ニ持ッテ行ッテ斯樣ニ外交談判ヲセヨ
ト云フテモ出來ルコトハ思フテ居ルカドウデアルカソレデアルカラ、是ヲ
贊成スルノデアル果シテ如何ナルコトデゴザイマセウ成ル程伊藤總理大
臣ノ外交ト云フモノハ御互ニ多年御手竝ヲ拜見シテ居ル、伊藤總理大臣ノ內
閣ニ持ッテ行ッテ斯樣ノ外交談判ヲセヨト注交スルノハ或ハ無理カモ知レ
マセヌガ是ハ左樣ナル厄介ナ伊藤總理大臣ガ腰拔カス程ノ問題デハ決シテ
ナイノデアル如何デゴザイマス、旣ニ日本ト暹羅トノ條約ニ於テ、暹羅ノ
方カラ自分ノ國ノ親族相續ハ此條約改正ヲ實施スルニ附イテハ編纂ヲシナ
イト云フコトヲ日本ニ斷ッテ來タノニ日本ガ之ヲ承諾シテ居ル平素ハ我
日本國ハ暹羅ト云フ國ハ二等國デアルトカ三等國デアルトカ云ッテ非常ニ輕
侮シテ居ル其國ガ斯樣ナコトヲ申込ンデ威張ッテ居ルノニ、我日本帝國ガ
之ヲ承諾シテ居ルト云フ、左樣ナ雜作ノナイ問題ニ對シテ外國ニ交涉ヲ開カ
レヌト云フコトハ決シテナイノデアル殊ニ若シ伊藤總理大臣デハ駄目デア
ルカラソレヲヤラヌト申シマスルナラバ諸君ガ平生唱ヘテ居ル所ノ對外
硬ト云フモノハ何事デアル、伊藤總理大臣ニ向ッテ幾ラ對外硬ヲ申シテ見タ
所ガ、何ノ效ガアリマスルカ、決議案モ上奏案モ若ハ外交ノ質問モ一切止メ
テ仕舞フガ宜シイノデアル吾ミハ議員トシテ議員ノ爲スベキ職務ハ必ズナ
サナケレバナラヌノデアルソレヲ若シ特ニ外交官ガ軟弱ニシテ爲スコトガ
出來ナカッタナラバ是ハ十分責メルガ宜イノデアル、外交官ガ爲シ得ル力
量ガナイカラト申シテ斯ノ如キ重大ナル法律案ヲ直ニ盲目判ヲ押スト云フ
コトハ果シテ如何ナルコトデゴザイマセウ鳩山君ハ是ニ向ッテ斯樣ナコ
トヲ云フテ居ルノデアル、此問題ハ長イ問題デアル、ソレデアルカラ、御前方
ハ皆十分知ッテ居ルダラウ如何ナル胡魔化シデゴザイマセウ、成ル程民法
殘部ト云フ言葉ハ長イ言葉デアルケレドモ此法典ヲ諸君ノ御手許ニ配付シ
タノハ此議會始ッタ後ニ始テ配付ヲシタノデアル諸君ガ如何ニ神樣ノ如
キ人デアリマシテモ、人間普通ノ能力トシテ此短日月ノ間ニ何ヲ以テ之ヲ
十分審査スルコトガ出來得ルデゴザイマセウ第九議會ニ於キマシテハ政
府ハ浩澣ナル民法ヲ提出シマシテ、議會ニ盲從ヲサセタノデアル、議會モ亦
是ニ盲從シタノデアル、サリナガラ、彼ハ盲從デ決シテアッタカラト云ッ
テ、ソンナニ咎メルニハ及バナイ謂ハヾ賣買トカ貸借ト人權トカ物權
トカ金ヲ貸シタ者ハ斯ウナル、商フ者ガ斯ウナルト云フ位ノコトデゴザ
リマスカラ、惡ルカッテ見タ所ガ、日本ノ社會ニソレ程ノ影響ハ及サナ
イ惡ルケレバ又直シテ宜シイ、併ナガラ此度ノ親族相續ノ如キコト
ニ至ッテハ惡ルイカラ又直サウト云フ、左樣ナ輙イコトガ出來マスル
カ一度此家族關係ヲ破壞シタ以上ニナリマシタナラバ、此日本ノ種々ナル
社會的關係ニ於テ、如何ナル風波ガ生ズルデゴザイマセウ政府委員ハ日
本ノ舊慣ヲ採用シタカラ、左樣ナコトハ決シテゴザラヌト斯ウ申ス、其日
本ノ舊慣ヲ採用シタト云フ言葉ニ依ッテ見マスルト大審院ノ判事ガ何年カ
ニ斯ウ云フ判決ヲシタ、是ガ日本ノ習慣デアルト云フ、何タル墜語デゴザイ
マセウ、大審院ノ判事ハ諸君如何ナル先生方デアルト御考ヘナサルカ、アノ
人ミガ一度判決ヲ下シテアル、二度判決ヲ下シテアルソレデ是ハ日本ノ習
慣デアル抔ト云フコトハ誠ニ途方モナイ事柄デアルト私ハ考ヘル殊ニ此
人事ノ關係ニ至リマシテ、若シ此法律ヲ行ッテ見マシタナラバ必シモ圓滑
ニ行レル氣遣ハゴザイマセヌ、必ズ修正ヲ出サナケレバナラヌト云フ必要ガ
迫ッテ來ル外ノコトナラバ格別、人事ノ關係ニ於キマシテ修正ニ又修正ヲ
加ヘルト云フコトニナリマシタナラバ人ノ一家ノ安寧ト云フモノハ何ヲ
以テ安心スルト云フコトガ出來シデゴザイマセウ、夫婦ノ關係、親子ノ關係、
此法律ガ果シテ萬一屢變更スルコトニナリマシタナラバ非常ナル混雜非
常ナル錯雜ガ此處ニ生ジテ來ナケレバナラヌト云フコトヲ考ヘナケレバナラ
ヌ、殊ニ日本ノ今日ノ狀態、毎日遊步シツヽアル所ノ狀態デアル之ヲ以テ
參リマシテ、日々ニ進ンデ參ル所ノ社會ニ於テ、參ッテ斯樣ナ古イ思想ト新
シイ思想、古イ思想モ極ク極端ナル彼ノ士ト云フ時代カラノ遺物ノ隱居制度
ト云フガ如キモノヲモ認メ而シテ又一方ニハ極端ナル財產分配ノ制度ヲ認
メタ法律ヲ行ッテ、進ムデ行カントスル所ヲ、一方デハ抑ヘ、一方ニハ又最早
消滅セントスル所ノモノヲ此法律ヲ以テ此處ニ存シテ置クト云フコトニナリ
マシタナラバ、果シテ如何デゴザイマセウカ政府委員ハ決シテ心配ガナイ、
是ハ日本ノ今日ニ適當ナモノデアルト、斯樣ニ申サレマスガ、政府委員ガ幾
ラ保證致シマシタ所ガ、一度此法律案ガ發布ニナリマシテ、日本ノ社會的國
係ト云フモノガ全ク破壞セラレルコトニ至リマシタナラバ其場合ニ政府委
員ニ喰ッテ掛ッテ見タ所ガ、何ノ役ニ立タヌ話デアル、其時ノ責任ハ果シテ
何人ガ負フノデゴザイマセウ我衆議院ハ苟モ立法部トシテ斯ノ如キ法律案
ニ於テハ殊ニ十分審議討論ヲ盡サナケレバナラヌ所ノ責任ヲ持ッテ居ル者デ
アル然ルニ未ダ一讀ノ遑モアラズシテ、政府委員ガ斯樣ニ申ス、條約改正
ト云フ政府ガ鬼ノ面ヲ冠ッテ來テ威シ附ケルト是ニ從ッテ盲從スルト云フ
ガ如キハ誠ニ私ガ〓嘆ニ堪ヘナイ次第デゴザリマス、依テ本員ハ此處ニ全
部否決ノ說ヲ提出致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=74
-
075・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 星松三郞君
〔星松三郞君演壇ニ登ル〕
〔「簡單」「簡單」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=75
-
076・星松三郎
○星松三郞君(二百十七番) マダ言ハヌ中カラ簡單ト言ハレテハ困ル、(成ル
ベク詳シク」ト呼フ者アリ)私ハ簡單ト言ハレナクトモ簡單ニ言ハウト云フ
考デゴザイマス、此處ニ登ッテ辯ジヤウト云フノハ先刻ノ波多野君ノ說ニ贊
成シヤウト言ッタ所ガ、機會モ惡ルウゴザイマシタニ依ッテ二十人ノ贊成者
ガナカッタデ發言ヲ許スコトガ出來ヌト云フコトデ、殘念ナガラ其儘ニナッテ
仕舞ッタ、ソレヲ私ガ言ハント欲スル所デアッテ、要スルニ先刻波多野君ガ辯
ジタ所ハ
〔「三讀會ダカライケナイ」ト呼フ者アリ〕,発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=76
-
077・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) モウ三讀會ニナリマシタカラ、ソレハイケマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=77
-
078・星松三郎
○星松三郞君(二百十七番) 然ラバ私ハ唯今沼田君ノ述ベラレタ所ノ意ヲ以
テ廢棄說ニ贊成スル一人デアル何トナレバ此不備ナ所ノモノヲ此短期ノ
中ニ唯盲從セヨ的ノ考ヲ持ッテ通過スルト云フノハ通過セシメヤウト云フ
ノハ甚ダ遺憾トスル所デアル元來我輩ノ望ミハ左樣デナイケレドモ此
場合ニ至ッテハ勢此不備ナル所ノアルガ故ニ、矢張此場合ニハ否決スルト
云フコトニ同意ヲ致スタメニ、一言述ベテ此壇ヲ降リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=78
-
079・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百九番) 討論終結
〔贊成々々」ト呼フ者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=79
-
080・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 討論終結ニ御異議ガナケレバ、サウ決シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=80
-
081・大竹貫一
○大竹貫一君(二百三十三番) 此贊否ヲ決スルニ附イテハ私ハ記名ヲ以テ
贊否ヲ決シタイト存ジマス、何トナレバ此千載不磨ノ大典ト謂フベキ所ノ親
族相續ノ二編ヲ討論ヲ十分盡サズシテ、一瀉千里ヲ以テ、決スルト云フハ
何等ノ失態デゴザイマセウ少クトモ將來ノタメニ記名投票ヲ以テ贊否ヲ、
決シ置キタイデス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=81
-
082・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 大竹貫一君ノ此動議ニハ二十名以上ノ贊成ヲ要シマ
ス
〔「アリマス、アリマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=82
-
083・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 議長ハナイト認メマス
〔アル」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=83
-
084・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) ソレデハ尙ホ念ノタメニ起立ヲ願ヒマス、大竹貫一
君ノ本案ノ採決ハ記名投票ヲ、用フルト云フ說ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマ
起立者少數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=84
-
085・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 少數ト認メマス、ソレデハ採決ヲ致シマス、原案ニ同
意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=85
-
086・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數デゴザイマス、原案ハ確定ヲ致シマシタ
〔散會ヲ希望スト」呼フ者アリ又「マダヤリ給ヘ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=86
-
087・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 議事日程ノ第二戶籍法案ノ一讀會ノ續ニ移リマスー
大田信一君
第二戶籍法案(政府提出)第一讀會ノ續(委員長)
ノ報〓
〔大田信一君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=87
-
088・大田信一
○大田信一君(二百十九番) 諸君、私ハ戶籍法案ノ委員會ノ經過及結果ヲ御
報告致シマス卽チ本案ハ五月二十三日ヲ以テ委員ニ御附託ニ相成リマシ
テ其後第一囘委員會ヲ開キマシテ委員長及理事ノ選舉ヲ行ヒマシタコト
デゴザイマスソレカラ引續イテ日々ニ會議ヲ開キマシタガ諸君モ御承知ノ
通此法案ハ二百十餘箇條ニナッテ居リマスル所ノ大層ナ議案デアリマス故
ニ數囘ノ委員會ヲ開キマシテ、或ハ政府委員ニ向ツテ質問ヲ爲シ、之ニ對ス
ル應答ハ實ニ屢ヾデアリマシタガ其結果トシテ卽チ諸君ノ御手許ニ御囘シ
致シテゴザイマスル此報告書ノ如クニ修正致シマシテ其他ハ原案ヲ以テ可
決致シマシタ譯デアリマス然ルニ此修正ノ箇條ハ極ク簡單ナモノデゴザイ
マシテ、卽チ第六十九條ノ如キ又ハ第七十三條ノ如キ、又ハ第七十六條ノ如
ク別段是ハタイシタル修正ノ意味ノアルト云フ譯デハアリマセヌ、御承知
ノ如ク第六十九條ハ父ノ本籍ノ下ヘ本籍トノミデハ、他日不都合ガ生ズルト
云フ虞ヲ以テ、「若ハ寄留地」ト云フ字ヲ挿入シタニ止メタ譯デ、其他二三條
ノ挿入ガゴザイマスガ、卽チ此六十九條ニ父母ノ本籍地ノ下ヘ、「若ハ寄留地」
ト入レマシタ故ニ是ガ權衡上其他二箇所ヘモ挿入ヲシナケレバナラヌ
ト云フ結果ニナリマシタ譯デゴザイマスソレカラ七十三條ノ「裁判確定
ノ日ヨリ十日內」トアリマスルノヲ、卽チ「裁判確定ノ日ヨリ一箇月內」
ト改メマシタコトハ如何ニモ此十日內ト致シテ置キマシテハ時日ガ
短期デアリマシテ、或ハ此法律ヲ施行ノ上ニ隨分差支ガナイトモ云ヘナイト
云フ所以デ以テ、此七十三條ヲ修正致シマシタ譯デゴザリマス、ソレカラ七十
六條ノ修正モ矢張同一ノ意味、卽チ七十九條其他以下百三十九條ニ至ルマデ
ハ其影響ト致シマシテ矢張十日內トアルノヲ一箇月ト云フ事ニ修正致シマ
シタ譯デゴザリマス、ソレカラ百四十五條中ニ「指定ヲ爲シタル者ハ」ノ下、
「其時日ヲ知リタル日ヨリ一箇月內ニ」ト云フノ十七字ヲ加ヘテ「提出シ
テ」ノ下、「遲滯ナク」ト云フノ四字ヲ削リマシタ譯デゴザリマス、是モ別段タ
イシタ譯デハゴザリマセヌソレカラ第百二十八條中ニ「裁判カ確定シタル
日ヨリ十日內」トアルノヲ、矢張リ「裁判カ確定シタル日ヨリ一ケ月內」ト改
ムルト云フコトニ修正ヲシマシタノモ矢張前條影響ニ依リマシテ、此條
ヲ修正シタ譯デゴザイマスソレカラ第二百十條中、屆出ヲ怠リマシタ所ノ
過料デアリマス、此過料卽第二百十條ニハ「二十圓」トアリマスルノヲ「十圓」
ト修正可決致シマシタノデゴザイマス、ソレカラ續イテ二百十一條中、矢張
同種類ノモノデアッテ、「四十圓」トアルヲ「二十圓」ト修正致シタノデゴザイ
マハ、是ハ尤モ諸君モ御承知ノ如ク、屆出ヲ怠リシ者ノ過料デゴザイマシテ、
此屆出ヲ怠ルト云フモノヽ中ニハ或ハ〓シテ申ス譯ニハ行カナイデアリマ
セウガ、多分貧困ノ者ニハ東西不辨ノ者モ多イサウシテ見ルト云フト屆
出ヲ怠ルト云フ者ニ至ッテハ或ハ貧困者ガ多イト見レバ此二十圓ト云フ
二百十條ノ二十圓ト言フ過料モ餘程苛酷ナモノデアル、卽ナ過當ナモノ
デアル、矢張二百十一條ニ至リマシテモ、此四十圓ト云フコトハ實ニ苛酷
過ギル過當デアルト云フ意味ヲ以テ、此二箇條ヲ「二十圓」トアルヲ「十圓」ト
改メ、「四十圓」トアルヲ「二十圓」ト改メタ次第デゴザイマス、ソレカラ此二百
十二條中ノ「五十圓」トアルヲ「三十圓ト」改メ、又二百十三條中ニ「三十圓」ト
アルヲ「十圓」ト改メタコトニ附キマシテハ是ハ諸君モ御承知ノ如ク、戶
籍吏ノ故意デ以テ、其事務ヲ故ナクシテ怠リ又ソレガタメニ損害ヲ與ヘル
トカ、或ハ差支ヲ生ジサスト云フ場合ニ、之ヲ適用スルト云フノ規則デアリマ
ス、然ルニ此「五十圓」ヲ「三十圓」ト改メ「二十圓」ヲ「十圓」ト改メタト云フ
-理由ハ固ヨリ此戶籍吏ナル者ハ法律ノ結果ト致シテ、戶籍吏ト云フ仕事
ヲクッ附ケラルヽト云フモノヽ戶籍吏其者ノ身分ト云ハヾ卽チ町村制ニ
依ッテ名譽職ニ居ル者デアル、如何ニ其戶籍吏ナル者ガ萬々一惡意ヲ以テ
過誤失錯ガ出來タト云フ場合タリトモ是ニ向ッテ五十圓若ハ一一十圓ト云フ
苛酷ナル科料ヲ付スルト云フコトハ實ニ氣ノ毒ナ場合デアル斯ノ如キ者
ハ宜シク相當ノ額ニ減ジタラ宜カラウト云フ說ヲ提出セラレテ、終ニ「五十
圓」トアルヲ「三十圓」ト改メテ、「二十圓」トアルヲ「十圓」ト改メテ、多數ヲ
以テ可決致シマシタ次第デゴザリマス、其他別段簡單ナ修正デゴザリマスル
カラ理田ヲ御報告ニ及ブ程ノ必要モゴザリマセヌドウカ此邊ヲ御諒知下
サッテ、本案ハ急ニ可決セラレンコトヲ希望致シマスル次第デゴザリマスル、
一言御〓〓ヲ申シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=88
-
089・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百九番) 此案ハ大體贊成デゴザリマス、直ニ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=89
-
090・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君(百七十四番) チヨット政府委員ハ唯今ノ委員會ノ修正ニハ
同意セラレタカ如何デゴザリマス、念ノタメ聞イテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=90
-
091・高木豐三
○政府委員(高木豐三君) 政府委員ノ方ハ、同意ヲ致シマシタ
(「モウ少シ大キイ聲デナケレバ分リマセヌ」ト呼フ者アリ〕
〔政府委員司法省民刑局長高木豐三君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=91
-
092・高木豐三
○政府委員(高木豐三君) 唯今委員長ヨリ御報告ニナリマシタ修正ノ廉ミ
ハ政府委員ニ於テ凡テ同意ヲ致シマシタ次第デゴザリマス、此旨ヲ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=92
-
093・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ニ付イテ採決ヲ致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=93
-
094・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ第二讀會ヲ開クコトニ致シマス
〔「全部異議ナシ」ト呼ヒ又「讀會省略」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=94
-
095・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 直チニ二讀會ヲ開クコトニ附イテ御異議ハアリマスマ
イカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=95
-
096・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ直チニ第二讀會ヲ開クコトニ致シマ
シテ、全部ヲ議題ニ供シテ朗讀ヲ省略致シマス
戶籍法案第二讀會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=96
-
097・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百九番) 讀會省略ヲ希望致シマス
〔「贊成々々」ト呼ヒ又「異議ナシ採決」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=97
-
098・白田省吾
○白田省吾君(百六十一一番) 私ハ簡單ナル修正意見ヲ提出シタイト存ジマ
スソレト云フモノハ餘ノコトデアリマセヌガ此二百十二條デゴザイマス
戶籍吏ニ對シテ五十圓以下ノ過料ニ處セラレルト云フコトハ委員會ニ於テ御
修正ニナリマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=98
-
099・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 修正說ナラバ登壇ナサイ
〔白田省吾君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=99
-
100・白田省吾
○白田省吾君(百六十一一番) 私ノ意見ト云フモノハ、二百十二條ノ削除ノ意
見デアルソレト云フ最モノハドウデアルト云フト委員會ニ於テハ矢張
先刻委員長ノ方カラ報告ニナリマシタ如クニ三十圓ト云フコトニ修正セラ
レタコトデアリマシタガ是ハ其町村長ニ於テ戶籍吏ヲ務ムルコトニナッテ
見レバ斯ウ云フ苛酷ナ箇條ヲ當テ篏メルト云フコトハ穩當ヲ缺クト私
ハ考ヘル何トナレバ、御承知ノ如ク、町村長ニモ矢張村長ニ失策ノアッタナ
ラバ處分スル箇條ガアル殊更ニ此戶籍吏ニ對シテハ玆ニ置ク必要ハナイ
ト考ヘマス其次ニハ二百十三條、是モ同斷ナコトデ、斯樣ノ過料ニ處スル
ト云フコトハ穩當ヲ缺クカラシテ、二箇條トモ削除スルト云フ意見デアル、
滿場ノ諸君ハ宜シク御勘考下サルヤウニ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=100
-
101・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 修正說ニハ贊成者ガアリマセヌカラ、消滅シマス、百九
番ヨリ讀會省略ノ動議ガ出テ居リマスカラ、是ニ附イテ採決致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=101
-
102・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ讀會ヲ省略致シマス
戶籍法案確定議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=102
-
103・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 委員會ノ修正全部ニ就イテ採決致シマス、委員ノ修正
說ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=103
-
104・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス、是デ本案ハ確定シタモノト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=104
-
105・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百九番) マア少シ定規ノ時間ガアルカモ知レマセヌガ、本日
ハ是レ限デ
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=105
-
106・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 諸君ニ御諮リ致シマス、次ノ第三ノ日程ハ衆議院議員
選舉法デアリマスガ、是ニハ隨分議論モアリマセウト思ヒマスガ、是ヨリ時間
ヲ延ベテモ引續イテ第三ノ日程ヲ議スカ或ハ之ヲ明日ニ延ベルカト云フコ
トニ附イテ採決致シマス百九番ノ說ノ如ク、今日ハ是デ散會スルコトニ同
意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=106
-
107・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス-チヨット御報告スルコトガアリマ
ス先刻小室重弘君カラ請願委員會ガ請願文書表ヲ配付シナイト云フコトデ
アリマシタガ、議長ノ手許ヘ五月三十日ニ請願文書表ガ出テ居リマシテ、今
印刷中デアリマスカラ、其事ヲ報告致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=107
-
108・中村彌六
○中村彌六君(二百三十一番) 衆議院議員選舉法改正法案ハ明日ノ議事日程
ニ上セラレンコトヲ希望致シマス(「贊成々々」ノ聲起ル)サモナイト政府ノ
都合デ段々尻ノ方ニ囘ハシテ仕舞ヒマスト、握リ潰サレルカモ知レマセヌカ
ラ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=108
-
109・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 明日ノ議事日程ヲ報告致シマス
〔寺田書記官朗讀〕
午後一時開議
第衆議院議員選舉法改正法律案(政府第一讀會ノ續ヘ委員長
提出)報告
第二民法施行法案(政府提出)第一讀會ノ續((長貝長)
報告
第三人事訴訟手續法案(政府提出)第一讀會ノ續(委員長
報告
第四非訟事件手續法案(政府提出)第一讀會ノ續(委員長
報〓
第五明治三十一年度歲入歳出總豫算追加案
第六明治三十一年度各特別會計歲入歳出豫算追加案
第七豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スルモノ
第八裁判所設立廢止及管轄區域變更ニ關スル法律案第一讀會
(政府提出)
第九右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選擧
第十罹災救助基金法案(政府提出)第一讀會
第十一右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選舉
第十二航海奬勵法中改正法律案(政府提出)第一讀會
第十三右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選舉
第十四岡山縣下郡廢置法律案(政府提出)第一讀會ノ續(報告)委員長)
第十五明治三十一年勅令第二十一號(政府提出、貴族院送報道 東京都
付承諾ヲ来ムノ作作)郵番
第十六千葉縣茨城縣境界變更法律案(木村格之輔君)第二讀會
外七名提出
第十七秩祿整理公債法案((大阪山中央競走路)第一讀會ノ續報〓(委員長)
國有土地森林原野官民有區別處分法案(中村彌
第十八六君外第一讀會
八名)
提出発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=109
-
110・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是デ散會
午後五時〓會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001213242X01118980602&spkNum=110
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。