1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十二年一月十八日(水曜日)午前十時二十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=0
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001・黒田長成
○委員長(侯爵黑田長成君) 是ヨリ開會致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=1
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002・三浦安
○三浦安君 此商法ハ前囘ニ既ニ本院デ通過致シマシテ皆樣御承知ノコトデ
今日ノ會議ノ初メニ當リマシテハ昨年以來修正ニナリマシタリ或ハ除加ニナ
リマシタ所ヲ先ヅ政府委員ヨリ說明ヲ願ヒマシテ而シテ後ニ簡略ニ御議定ニ
ナラムコトヲ希望致シマス、初メカラ一々逐條ニシマセズニ先ヅ修正ト除加
ニナリマシタ分、ソレダケノ說明ヲ先キニ政府委員ヨリ御說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=2
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003・黒田長成
○委員長(侯爵黑田長成君) ソレデハ唯今三浦君ノ要求ガアリマスカラドウ
カ政府委員ニ於テ說明アラムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=3
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004・岡野敬次郎
○政府委員(岡野敬次郞君) 今囘提出ニナリマシタ商法修正案ハ前議會ニ於
テ通過イタシマシタ商法修正案ト大體ニ於テハ變ルコトハナイノデアリマス
カラ唯今ノ御說ニ基キマシテ前ノ修正案ニドレダケノ修正ヲ加ヘタカト云フ
コトヲ簡單ニ申上ゲタイト思フ、第一ハ第十四條デアリマス、是ハ殆ド誤植
デアリマシテ牴觸ノ牴ノ字ガ手扁ニナッテ居リマシタガ是ハ誤リデアリマ
スカラ今度ハ改メマシタ、次ハ第四十二條デ前ノ修正案ニ於テハ「本邦ニ於
テ會社トハ商行爲ヲ爲スヲ業トスル目的ヲ以テ設立シタルモノヲ謂フ」トア
リマシタノヲ「モノ」ノ代リニ「社團」ト云フ文字ヲ入レタノデアリマス、此
會社ハ固ヨリ社團法人デアルト云フコトハ疑ナイコトデアリマシテ「モノ」ト
云フノハ如何ニモ漠然デアリマスカラ法律上「社團」ト云フ文字ヲ遣フ方ガ
穩當デアリ且ツ適切デアルト云フ理由ニ因ッテ改メタノデアリマス其次ハ
第四十四條デゴザイマス、前修正案ニ於キマシテハ第二項ニ「會社ノ住所ハ
其本店ノ所在地ニ在ルモノトス但支店ニ於テ爲シタル取引ニ付テハ其支店ノ
所在地ニ在ルモノト看做ス」斯ウ云フ但書ガ加ッテ居ッタノヲ今囘之ヲ削除
シタノデアリマス、其削除致シマシタ理由ハ精神ニ於テハ敢テ變リハナイノ
デアリマスルガ其但書ヲ削除致シマシタ代リニ此修正案ノ第二百七十八條ニ
第三項トシテ一項ヲ加ヘタノデ「支店ニ於テ爲シタル取引ニ付テハ其支店ヲ
以テ營業所ト看做ス」ト云フ一項ヲ新ニ加ヘタノデアリマス此第二百七十
八條ノ第三項ノ規定ハ前ノ修正案ニハナカッタ規定デアリマス、デ前修正案
ノ第四十四條ニ但書ヲ加ヘマシタ、其理由ノ多クハ支店ニ於テ爲シタル取引
ニ付テ特ニ何レノ場所ニ於テ其行爲ノ取引ヲ履行ヲ爲スカト云フコトヲ極
メナカッタ場合ニハ其支店ノ所在地ト云フモノヲ以テ此法律上ノ履行ノ場所
トスルト云フノヲ主トシテ定ムル精神デ加ヘタ但書デアリマスカラシテ此新
シイ修正案ノ第二百七十八條ノ第三項ト大體異ナルコトハナイノデ却テ四十
四條ニ但書ヲ加ヘル方ガ穩當デアラウト云フ所カラ此ノ如ク修正ヲ加ヘタ譯
デアリマス、ソレカラ次ハ第五十八條、前修正案ニハ「定款ノ變更其他會社ノ
目的ノ範圍ニ屬セサル行爲ヲ爲スニハ總社員ノ同意アルコトヲ要ス」トアリ
マシタノヲ改メマシテ「範圍內ニ在ラサル行爲」トシタノデアリマス、是ハ
意味ニ於テハ少シモ變リハナイノデアリマシテ民法ニ矢張リ「範圍內ニ在ラ
サル」ト云フ文例ニナッテ居リマスカラソレニ合セマス考カラ修正ヲ加ヘタ
ノデアリマス、次ハ第六十條、前修正案ニハ第二項ニ「第三十二條第二項及
ヒ第三項ノ規定ハ社員カ前項ノ規定ニ違反シタル場合ニ之ヲ準用ス」トアリ
マシタノデ、此三十二條ノ二項三項トアルノハ支配人ガ主人ノ承諾ヲ得ズシ
テ自己ノタメニ商行爲ヲ爲シタル場合ニ主人ハ如何ナル權利ヲ持ツカト云フ
コトヲ定メテアル之ヲ會社ノ方ニ準用シテモ少シク不明ノ點ガアルカラ寧
ロ之ハ書碎ク方ガ宜カラウト云フ理由デ第六十條ニ新ニ第二項第三項ト云フ
長イ文章ヲ加ヘタノデアリマスガ、是モ亦趣意ニ於テハ前修正案ト少シモ變
リハナイ、唯明瞭ニスルタメニ修正ヲ加ヘタノデアリマス、次ハ第六十八條
中ニ「事業年度」ト云フ文字ガ前修正案ニ用井テアッタノヲ營業年度ト改メ
マシタ、是ハ商事會社ノコトデモアリ事業年度ト云フヨリ寧口營業年度ド云
フ方ガ穩當デアラウト云フダケノ理由デ改メマシタ、次ハ第八十六條、前修
正案ニ於テハ「後十四條ノ規定ニ從ヒテ〓算ヲ爲スコトヲ要ス」トアリマシ
タノヲ一後十三條」ト云フコトニ改メマシタノデ、此十三條ト改メマシタ理
由ハ下ニ在ル所ノ箇條中一箇條削除シタ結果デアリマシテ其削除シタ理由ハ
其所ニ至ッテ述べマス、ソレカラ次ハ第八十七條、前修正案ニハ第三項トシ
テ「社員カ死亡シタル場合ニ於テ相續人數人アルトキハ前二項ニ定メタル權
利ヲ行フヘキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス」トアッタノヲ之ヲ削除シタノデ其
理由ハ必シモ其〓算人ノ選任ニ就テノミ社員ノ死亡シタル場合ヲ豫想スベキ
モノデナイ、他ノ場合ニモ同樣ニ相續人數人アル場合ノ規定ヲ必要トスルノ
デアリマスデ、、此新修正案ノ第百二條ニ「社員カ死亡シタル場合ニ於テ
其相續人數人アルトキハ〓算ニ關シテ社員ノ權利ヲ行ヘキ者一人ヲ定ム
ルコトヲ要ス」ト云フ新ラシイ箇條ヲ加ヘマシタ、此第百二條ノ規定ハ唯
今申シタ前修正案ノ削ラレマシタ第三項ヨリハ其適用ハ廣クナリマスガ
併ナガラ精神ハ矢張リ變リハナイノデアリマス、次ハ第九十一條、此第三項
ニ「〓算人ノ代理權ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコト
ヲ得ス」ト云フコトガアリマス、是ハ前修正案ニハ第九十四條トシテ「〓算
人ノ代理權ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス」
トアッタノデ他ノ文例モアリマスカラ寧ロ九十一條ニ合併スル方ガ穩當デア
ルト云フ所カラ九十一條ノ第三項トシタノデアリマス、是ハ特ニ修正ヲ加ヘ
タト云フ程ノコトデハアリマセヌ、此九十四條ヲ一箇條削ッテ新修正案ノ九十
一條ノ第三項トイタシタノデアリマス、ソレデ先キニ申シタ第八十六條ニ舊
ト「後十四條」トアッタノヲ「後十三條」ト改メタ譯デアリマス、次ハ第百條ニ
「此場合ニ於テハ裁判所ハ利害關係人ノ請求ニ因リ〓算人ヲ選任ス」トアリマ
ス、是ハ前修正案ニハ「八十八條ノ規定ヲ準用ス」ト云フコトニナッテ居リマシ
タ、所ガドレダケヲ準用スルカト云ヘバ、唯今百條ニ就テ讀ミマシタ通リ「裁判
所ハ利害關係人ノ請求ニ因リ」云々ト云フ簡單ナ言葉デアリマスカラ「準用
ス」ト云フヨリ寧ロ此所ニ擧ゲタ方ガ穩當デアラウト云フノデ改メマシタ、次
ハ第百一條、舊修正案ノ第百二條、「會社ノ帳簿、其營業ニ關スル信書及ヒ〓
算ニ關スル一切ノ書類ハ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ爲シタル後十年間
之ヲ保存スルコトヲ要ス、其保存者ハ社員ノ過半數ヲ以テ之ヲ定ム」ト云フ
コトニナッテ居リマシタ、之ヲ今度ハ新修正案ノ第百一條ニ於テ少シ精ク規
定シタノデアリマス、是ハ修正ノ理由トシテ申ス程ノコトモアリマセヌガ、合
名會社ノ場合ニ於テハ株式會社ト違ヒ必シモ法律ニ定メテアル所ノ〓算ノ手
續ト云フモノヲ行フ必要ハナイノデアリマヌ、ソコデ此新修正案第八十五條
ニ於キマシテ「解散ノ場合ニ於ケル會社財產ノ處分方法ハ定款又ハ總社員ノ
同意ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得」ト云フ特別ノ規定ガアリマス、株式會社デ
ハ必ズ現在ノ財產ヲ賣拂ヒ金ニ換ヘテサウシテ株主ニ分配セナクテハナラヌ
ト云フコトニナッテ居ル、其法律ニ定メテアル〓算手續ト云フモノハ株式會
社ニ於テハ是非行ハナクテハナラヌ、合名會社ニ於テハ或ル場合ニ於テハ行
ハナイデモ宜イト云フコトニナッテ居ル、株式會社ハ是非〓算手續ニ依ルト
云フコトデ合名會社ニ於テモ〓算手續ヲ爲スト云フコトヲ一緒ニ併セル方ガ
宜イ、第八十五條ニ定メテアルヤウナコトハ特別ノ場合デアルカラ別段ニ書
分ケヌデモ宜シイト云フコトデ第百一條ニ於テ「第八十五條ノ場合ニ在リテ
ハ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ爲シタル後其他ニ在リテハ〓算結了ノ登
記ヲ爲シタル後十年間之ヲ保存スルコトヲ要ス」ト云フコトニ改メマシタ、
第百二條ヲ新ニ玆ニ加ヘタ理由ハ先刻申述タ通リデアリマス次ハ第百八條
デアリマス次ハ「以テ」ノ以下ニ「其」ト云フ字ガナカッタノデアル是ハ「其」ト
云フ字ヲ加ヘタ方ガ宜カラウト云フノデ加ヘマシタ、次ハ第百十一條中「事
業年度」ト云フコトヲ前ノ通リ「營業年度」ト云フコトニ改メマシタ、斯ノ
如ク改メタノハ先刻他ノ箇條ニ就テ申述ベタ通リデアリマス、其次ハ第百十
二條「有限責任社員ハ無限責任社員全員ノ承諾アルトキハ」トアル其「全員」
ト云フ文字ヲ新ニ加ヘタノデアリマス、是ハ決シテ意味ニ於テ變リハアル譯
ハナイ、他ノ箇條ニ或ハ「他ノ社員」或ハ「無限責任社員」ト云フコトガアル其
場合ニ之ヲハッキリ言表ハスガ爲メニ「全員」ト云フ文字ヲ加ヘタノデアリ
マス、ソレカラ次ハ第百一一十六條ノ二號中「第百二十條及第二十二條ニ揭ケタ
ル事項」トアリマス、是ハ前修正案ニ於キマシテハ「第百二十條及第百二十
二條第一號第三號乃至第五號ニ揭ケル事項」ト致シマシテ特ニ「第一一號」ト云
フ文字ガ除イテアッタノデアリマス、新修正案ニ於キマシテハ「第二號」ヲ加ヘ
タノデアリマスカラサウ致シマスルト第二十二條ニ揭ゲテアル事項ハ悉ク這
入ルコトニナリマスカラ唯第二號ヲ以前省イテアッタノヲ加ヘタト云フダケ
ニ過ギナイ、而シテ此第百二十二條ノ第三項ニ「額面以上ノ價額ヲ以テ株式ヲ
發行スル場合ニ於テハ株式ノ申込人ハ株式申込證ニ引受價額ヲ記載スルコト
ヲ要ス」ト云フ一項ヲ新ニ加ヘタノデアリマスガ前修正案ニ於キマシテハ丁
度此第百二十六條ニ當リマス所ニ第四號トシテ「株式發行ノ價額」ト云フモ
ノガ書イテアッタ此「株式發行ノ價額」ト云フモノハ發起人ガ書カナケレバ
ナラヌト云フコトニナッテ居ッタノデアリマスガ株式會社カラ株主ヲ募集スル
場合ニ申込人ヲシテ吾ハ額面以上例ヘバ五拾錢ダケ拂ッテ株式ヲ引受ケタイ
又或ル者ハ壹圓ダケ餘計拂ッテ株式ヲ引受ケタイト云フコトハ有リ得ルコト
デアリマスカラ初カラ發起人ヲシテ之ヲ書カシメルト云フヨリハ募集ニ應セ
ムトスルコトニ書カセル方ガ宜シイト云フノデ第三項ヲ加ヘタノデアリマ
ス此第三項ヲ加ヘマスルト云フト前刻ノ第百二十二條ノ第二號ニアリマス
ルモノヲ特ニ除イテ置ク必要ハナイノデアリマスカラ之ヲ悉ク併セタノデア
リマス、ソレカラ次ハ第百二十條ノ第二行中ニ「其權利ヲ失フヘキ旨」ト云フ
コトニナッテ居リマス前修正案ニ於キマシテハ「失フコトアルヘキ」トアッ
テ「コトアル」ノ四字ガアッタノデゴザイマスガ之ヲ削リマシタ、之ヲ削リマ
シタ理由ト申シマスルモノハ此修正案ノ第百五十二條ノ第二項ニ較〓類シタ
規定ガアリマシテ矢張「株主ノ權利ヲ失フヘキ旨」トアリマスルノデソレヲ一
〓ニ文章ヲ同ジニスル方ガ宜シイト云フノデ「コトアル」ト云フ四字ヲ削ク
テ「失フヘキ旨」ト云フコトニ致シタノデアリマス、ソレカラ次ハ同ジ條ノ第
百三十條ノ第二項ニ「發起人カ前項ノ通知ヲ爲シタルモ株式引受人カ拂込ヲ
爲ササルトキハ其權利ヲ失フ此場合ニ於テ發起人カ引受ケタル株式ニ付キ更
ニ株主ヲ募集スルコトヲ得」トアリマス、前ニハ「發起人カ前項ノ通知ヲ爲シ
タルモ株式引受人カ拂込ヲ爲ササルトキハ發起人ハ其者カ引受ケタル株式ニ
付更ニ株主ヲ募集スルコトヲ得」トアリマシタ、之ヲ今申上ゲタ文字ヲ加ヘタ
ノデアリマスガ是モ矢張唯今ノ第百五十三條ニ「會社カ前條ニ定メタル手續
ヲ踐ミタルモ株主カ拂込ヲ爲ササルトキハ其權利ヲ失フ」ト云フコトガアリ
マス、是ト文章ヲ一致サセル爲ニ文字ヲ入レタノデアリマス、ソレカラ次ハ第
百三十一條第三項中ノ一番終リニアリマスル「及ヒ第百六十三條第一項第二
項」トアリマスノハ第百六十四條デアリマシテ是ハ全部準用シテアリマスガ
準用スベキモノハ一項一一項ニ限ッテ居ルノデアリマスカラ民法ニ於テモ準用
スルノ必要アル項目ダケヲ上ゲル趣意ニ依ッテ更ニ第一項第二項ト云フ文字
ヲ書イタノデアリマス、次ハ第百三十二條、以前ハ「發起人ハ創立總會ニ會
社ノ創立ニ關スル事項ヲ報告スルコトヲ要ス」ト云フコトニナッテ居ッタノデ
寧ロ「發起人ハ會社ノ創立ニ關スル事項ヲ創立總會ニ報告スルコトヲ要ス」
ト云フ方ガ文章ガ穩デアラウト云フノデ文章ヲ書イタノデアリマス、次ハ前
修正案ノ第百四十六條ヲ削ッタノデアリマス、丁度此修正案ノ次ニ一條削ラレ
タ箇條ガアッタノデ其削ラレタ箇條ハ「株式ハ之ヲ分割スルコトヲ得ス」ト云
フ規定ヲ除イタノデ卽チ此修正案ニ於テハ株式ハ分割ノ出來ルモノデアルト
云フ主義ヲ執ッタノデアリマス、株式ト云フモノハ株式會社ニ於テハ株主ノ
權利義務ヲ定ムル標準デアル、單位デアル株式ノ數ガ多ケレバ株主ノ權利
ガ多クナル、株式ノ數ガ多ケレバ其義務モ亦多クナル、株式ヲ根本ニシテ權
利義務ヲ定メルノハ株式會社ノ當然ノ結果デアル、然ルニ此修正案ニ於テ
ハ既ニ株式ノ金額ハ五十圓ヲ下ルコトヲ得ズ、卽チ株式ノ金額ハ本則トシテ
ハ五十圓以下ノモノヲ許サヌト云フコトニナッテ居ルカラ金額ノ方ニ於テ制
限ヲ設ケテ置ケバ例ヘバ百圓ノ株劵ヲ發行シタ場合ニ將來之ヲ五十圓二株ニ
分ケル場合ニモ更ニ差支ナカラウ、又外國ナドニ於テモ法律ヲ以テ部分株ト
云フヤウナモノヲ許シテ居ル例ガアル例ヘバ一株五十圓ナラバ五十圓デア
ル、併ナガラ半端ノ株例ヘバ十圓ノ株モ二十圓ノ株モ宜イト云フヤウナ部分
ノ株ヲ許シテ居ル例ガアル、此修正案ハ五十圓ト云フコトガ本則デアッテ之
ヲ動スコトハ出來ヌト云フ以上ハ特ニ株式ノ分割ヲ禁ズル必要ハナカラウト
云フノデ之ヲ削リマシタ、次ハ第百四十七條第二項ニ「前項ノ規定ニ反シテ
發行シタル株劵ハ無效トス」、前修正案ニハ「之ヲ無效トス」「之」ト云フ文字
ガアッタノヲ削リマシタノハ他ノ文例ニ合セルダケノコトデアリマス、ソレカ
ラ次ハ第百五十三條、是モ趣意ニ於テハ殆ド變リハアリマセヌ、先ヅ此第百
五十三條ノ第二項中ニ「二週間ヲ下ラサル期間內ニ拂込ヲ爲スヘキ旨ノ催告
ヲ發スルコトヲ要ス」トナッテ居ル、以前ノハ「拂込ヲ爲スヘキ旨ヲ催告ス
ルコトヲ要ス」ト云フコトニナッテ居リマシタガ、此商法修正案ニハ全體ニ
於テ所謂ル發信主義ヲ採ッタノデ、會社ノ方カラ通知ヲ出セバソレデ法律ノ
云フ所ノ通知ト云フモノハ成立タセル方ガ宜カラウ必シモ是ガ一々通知ヲ受
クベキ者ノ手ニ渡ラナケレバナラヌト云フ必要ハナカラウ、殊ニ株式會社デ
總會ヲ召集スルト云フ場合ニ必ズ其召集狀ガ一々其株主ノ手ニ渡ルト云フコ
トガ法律上必要ダト云フコトニナルト萬一壹人ニ其通知ガ屆カナカッタト云
フ場合ニ其總會ガ無效ニナリ其決議ガ無效ニナルト云フコトニナッテハ大變
デアリマスカラ此修正ノ第百五十六條ニ於テモ「總會ヲ召集スルニハ會日ヨ
リ二週間前ニ各株主ニ對シテ其通知ヲ發スルコトヲ要ス」トアッテ、發シサ
ヘスレバ宜シイ必シモ到著ハ必要トセヌト云フ主義ヲ採リマシタカラ此百
五十三條ノ二項モ同樣デ、株式ノ讓渡人ノ大勢アル場合ニ一々催告ガ向フニ
著カネバナラヌト云フコトデアルト會社ニ於テ第三項ニ定メテアル手續ヲ
ナスコトガ出來ヌカラニ發スルト云フコトニシテ發信主義ヲ採ル方ガ宜カラ
ウト云フコトデ改メマシタ、次ハ同ジ條ノ第三項デアリマスガ、是ハ全ク文
章ノ修正デアリマス、舊トハ「讓渡人ガ拂込ヲ爲サヽルトキハ會社ハ株式ヲ競
賣スルコトヲ要ス若シ競賣ニ依リテ得タル金額ガ滯納金額ニ滿タサルトキハ
從前ノ株主ハ其不足額ヲ辨濟スル責ニ任ス但從前ノ株主」云々トアッタヲ是
ハ文章ガ穩デナイト云フノデ改メマシタノデ、趣意ハ少シモ變リハアリマセ
ヌ、ソレカラ次ハ第百六十一條第三項中「株主ハ代理人ヲ以テ其議決權ヲ行
フコトヲ得但其代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ會社ニ差出タスコトヲ要ス」、
前ノ修正案ニ於テハ「委任狀ヲ會社ニ差出タスコトヲ要ス」トアリマシタガ
此委任狀ト云フ文字ハ極メテ普通ノ字デアリマスガ併ナガラ必ズ委任狀ト云
フマデモナクトモ宜シイ、ノミナラズ或ハ法定代理人ノ如キ幼者ノ株主ガ議
決權ヲ行フ場合ニ其後見人ガ之ニ代ッテ議決權ヲ行フト云フトキノ如キハ委
任狀ハ要ラナイ、其幼者ノ後見人デアルト云フコトヲ證明スレバ宜イノデア
リマス、ソレデ「代理權ヲ證スル書面」ト云フコトニ改メマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=4
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005・名村泰藏
○名村泰藏君 チヨット伺ッテ置キタウゴザイマスガ、此代理人ハ株主デア
ラウガ何デアラウガ構ハヌト云フ趣意デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=5
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006・岡野敬次郎
○政府委員(岡野敬次郞君) 御答ヘイタシマスガ、此代理人ハ法律ハ誰デモ
搆ハヌ積リデアリマスガ、併ナガラ能ク例ノアルコトデアリマスガ、會社ガ
定款ヲ以テ代理人ハ是非株主カラ選バネバナラヌト云フコトニ定メテ居ルノ
ガ實際幾ラモアリマス、ソレハ固ヨリ定款ノ定ムル自由ニ任セマス法律ハ
制限ヲ設ケマセヌ、次ハ第百七十二條ノ第一號中、前修正案ニ於テハ「各株主
ノ氏名、住所」トアリマシタ此「各」ト云フ字ヲ削リマシタノデ、ソレカラ次
ハ第百七十三條、是ハ新ニ加ヘタ規定デアリマス、卽チ第百七十三條ニ「社債
原簿ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス」トシテ記載スベキ事項ハ斯ク々々
デアルト云フコトヲ定メタノデアリマス、株主名簿ト云フモノヲ設ケテサウ
シテ株主名簿ニ記載セネバナラヌ事項ヲ法律ガ定メルナラバ會社ガ廣ク幾
萬ニ達スル所ノ社債ヲ發行スル場合ニモ矢張リ社債原簿ト云フモノヲ備ヘテ
置カナケレバ實際運轉ガ出來ヌカラ社債原簿ニ記載スル事項ヲ定メマシタノ
デ其事項ニ就テハ一々說明ノ必要ハアリマスマイガ此案ノ第二百三條ニ「社
債ヲ募集セントスルトキハ取締役ハ左ノ事項ヲ公告スルコトヲ要ス」トアッ
テ其中ニ此新修正案ノ二百三條ハ誠ニ簡單ニナリマシタノデ以前ノハ九ツ程
公告スベキ事項ガ列舉シテアリマシタ其中ニ「社債ノ總數及ヒ其金額」「社債
ノ利率」「社債償還ノ方法及ヒ期限」ト云フモノヲ一々二百三條ニ上ゲタノデ
アリマスガ今度ハ唯今ノ第百七十三條ニ之ヲ引上ゲテ來マシテ「社債原簿ニ
記載スヘキ事項」トシテ第二百三條ノヲ第百三十七條ニ引張ッテ來ルト云フコ
トニ改メマシタ、且ツ此修正案ノ罰則ノ第二百六十一條ノ第九號ニ「定款、株
主名簿、社債原簿」云々ヲ「本店若クハ支店ニ備ヘ置カス之ニ記載スヘキ事項
ヲ記載セス又ハ之ニ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ」トアル是ハ前修正案ト少シ
モ變ッテ居リマセヌ寧ロ前修正案ノ缺〓ノアッタノデ「社債原簿ニ記載スヘキ
事項ヲ記載セス又ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ」ト云フノヲ罰則ノ中ニ規定
シテ本則ノ中ニ規定シテナカッタ、今囘ハ其缺〓ヲ補フ爲メニ之ヲ新ニ加ヘタ
ノデアリマス、ソレカラ次ハ第二百十四條ニ······チヨット前方ニ御斷リ申上
ゲタイノハ此中ニ御承知ノ通リ前修正案ニ於キマシテハ全體ノ條數ガ六百八
十五條デアリマシタノヲ今度ノ修正案ハ六百八十九條ト云フコトニナリマシ
テ此中色ミ準用ナドヲ致シマシタ箇條ハ其條ノ削除トカ或ハ追加トカ云フガ
爲メニ各條ニアリマス準用ノ規定ノ數ガ變ッテ居ルノデアリマスガ其變リマ
シタ箇條ハ一々申上ゲマセズ實質ニ變リヲ來シマシタモノダケヲ申上ゲタイ
ト思ヒマス、第二百十四條ノ第二項ニ「株主總會ハ前項ノ調査及ヒ報〓ヲ爲
サシムル爲メ特ニ檢査役ヲ選任スルコトヲ得」前ハ「前項ノ調査及ヒ報告ヲ
爲サシムル爲メ株主總會ハ特ニ檢査役ヲ選任スルコトヲ得」ト云フコトデア
リマシタガ唯文字ヲ上下ニ致シマシテ他ノ文章ニ合ハセルト云フ趣意ヲ取ッ
タノデアリマス、次ハ第二百三十二條ニ「此場合ニ於テハ裁判所ハ利害關係
人ノ請求ニ因リ〓算人ヲ選任ス」是モ合名會社ノ箇條デ申上ゲタ通リ茲ニ他
ノ箇條ガ準用シテアッタノデアリマスガ此ノ如キ簡單ナ文字デアリマスカラ
實質ヲ寧ロ示ス方ガ宜カラウト云フノデ修正ヲ加ヘタノデアリマス、次ハ第
二百三十三條ニ「會社ノ帳簿其營業ニ關スル信書及ヒ〓算ニ關スル一切ノ書
類ハ本店ノ所在地ニ於テ〓算結了ノ登記ヲ爲シタル後十年間之ヲ保存スルコ
トヲ要ス」トアリマス、以前ハ「解散ノ登記ヲ爲シタル後」ト云フコトデ
アッタ是ハ全體〓算ト云フモノガ了ッテカラ保存ノ期間ヲ計算スルト云フノ
ガ實質ニ副ッテ居リマシテ先刻ノ合名會社ノ第八十五條ノ規定ト牽連シテ居
リマシテ前修正案ニ於キマシテハ解散ヲセヌト納リガ附カヌト云フコトデア
リマシタケレドモ先刻述ベマシタ通リ第八十五條ニ特ニ規定ヲ設ケタノデア
リマスガ理論ニ立入ッテ〓算結了ノ登記ノ後ト云フコトニシタ方ガ宜カラウ
ト云フノデ改メタノデアリマス、次ハ第二百四十八條デ前修正案ニハ第三項
ト致シマシテ「第八十七條第三項ノ規定ハ無限責任社員ノ相續人ニ之ヲ準用
ス」ト云フ規定ガアッタ第八十七條第三項ノ規定ト申シマスルノハ合名會社
ノ規定デアリマシテ「社員カ死亡シタル場合ニ於テ相續人數人アルトキハ前
二項ニ定メタル權利ヲ行フヘキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス」ト云フ規定デア
リマス、先刻申上ゲタ通リ削リマシテ此新シイ修正案ノ第百二條ニ「社員カ
死亡シタル場合ニ於テ其相續人數人アルトキハ〓算ニ關シテ社員ノ權利ヲ行
フヘキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス」ト云フコトヲ新ニ加ヘマシタ、第百二條
ノ規定ト云フモノハ第二百四十九條ノ次ノ第二百五十條ニ「第百二條ノ規定
ハ株式合資會社ノ無限責任社員ニ之ヲ準用ス」トアリマスカラ第百二條ノ規
定ニ「社員カ死亡シタル場合ニ於テ其相續人數人アルトキハ〓算ニ關シテ社
員ノ權利ヲ行フヘキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス」ト云フモノデアリマシテ此
前修正案ニアリマシタ一項ヲ二百四十八條カラ除キマシテ廣ク之ヲ株式合
資會社ノ無限責任社員ニ準用スル方ガ宜カラウト云フノデ第二百五十條
ヲ設ケタ、ソレカラ次ハ第二百五十一條ニ「〓算人ハ第二百二十七條第一項
及ヒ第二百三十條第一項ニ定メタル計算ニ付キ株主總會ノ承認ノ外無限責任
社員全員ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス」以前ハ此「株主總會ノ承認ノ外」ト云フコ
トガナカッタ其理由ハ株式合資會社ノ株主總會ニ關スルコトハ株式會社ノ規
定ヲ準用スルノデ玆ニ規定スル必要ガナイカラ加ヘナカッタノデアリマスガ
少シ不明ノヤウデアリマスカラ寧ロ加ヘタ方ガ宜カラウト云フノデ「株主總
會ノ承認ノ外」ト云フ文字ヲ加ヘタ趣意ニ於テ少シモ變リハナイノデアリマ
スソレカラ次ハ第二百五十三條ノ第二項ト云フモノガ前ハ別條デアッタノ
デアリマスガ是ハ本條ノ第二項トスル方ガ穩當デアルト云フコトデ之ヲ二項
トシタダケノコトデアリマス、ソレカラ第二百六十一條ノ第二號中ニ「本
篇ニ定メタル公告若クハ通知ヲ怠リ」トアリマシタノヲ「通知ヲ爲スコトヲ
怠リ」ト改メマンタ是ハ例ヘバ一號ニハ「登記ヲ爲スコトヲ怠リ」トアリ
マスカラ、二號ノ方モ「爲スコト」ト云フ字ヲ加ヘテ揃ヘタ方ガ穩カデア
ラウト云フノデ改メマシタ、ソレカラ次ハ同ジ條ノ九號ニ「定款、株主名
簿、社債原簿、總會ノ決議錄、財產目錄、貸借對照表、營業報告書」トア
リマス是ハ前修正案ニハ一事業報告書」トアリマシテ、丁度事業年度ヲ營業
年度ト改メマシタノト同一ノ理由デ斯樣ニ改メマシタ、次ハ第二百六十二條
ノ九號ト十號ガ轉置セラレマシタ、以前ノニハ十號ガ九號デアリ九號ガ十號
デアリマシタガ、是ハ商法ノ規定ノ順序ヲ追フテ書イテ民法ノ規定ニ屬スル
方ノコトヲ後トニ迴シマシタノデ唯商法ハ商法ノ規定ヲ逐フガ順序ダト云フ
ノデ轉置イタシタノデアリマス、次ハ第二百六十四條第七號ニ「客ノ來集ヲ
目的トスル場屋ノ取引」、舊トハ「客ノ來集ヲ目的トスル場屋ニ於テスル取
引」トアリマシタノヲ之ヲ「場屋ノ取引」ト改メマシタ、「於テスル」ト云フ
字ヲ何故改メタカト云ヘバ例ヘバ芝居ヲヤルトカ或ハ或ル興業場ヲ設ケテ客
ヲ呼ブト云フコトヲスルノガ卽チ二百六十四條ニ云フ所ノ商行爲デアル、其
興業場ヲ設ケテ一々客ヲ引ツ張リ込ンデ見セマセウ見マセウト云フ其取引ガ
商行爲デハナイ其取引ガ商行爲デアルト云フノヨリハ元來サウ云フ取引ヲ
セムトスル目的デ營業的ニソレヲスル、其事ガ商行爲ダト言ヒタイノデ、
然ルニ「於テスル」ト言ヘバ既ニ場屋ガ出來テ見物人ガ來テ見ヤウ見セ
ヤウト云フソレガ商行爲ノ樣ニ見ヘル是ハ本案ノ主義デハナイノデア
リマスカラ斯ウ改メマシタ、次ハ第二百七十七條、是ハ較ヤ大キイ修
正デ殆ド一番大キナ修正ト申シテモ宜カラウト思ヒマス、民法ノ三百四
十九條ノ規定ハ「質權設定者ハ設定行爲又ハ債務ノ辨濟期前ノ契約ヲ
以テ質權者ニ辨濟トシテ質物ノ所有權ヲ取得セシメ其他法律ニ定メタル方法
ニ依ラズシテ質物ヲ處分セシムルコトヲ約スルコトヲ得ス」ト云フコトニナッ
テ居リマス、此規定ハ少クトモ商事ニ就テハ餘リ嚴格ニ過ギテ居ル、商事ニ
就テハ若シ當事者ガ任意ノ契約ヲ以テ流質ト云フコトニシテモ宜シイ、或ハ
競賣法ニ依ラザル簡易ノ手續ニ依ッテ其質權ヲ執行スルコトヲ定メタラワレ
デモ宜シイ寧ロ商事上ノコトニ就テハ民法ニ定メテアル制限ヲ寬メナケレ
バナラヌト云フ議論モアッテ實業家アタリカラモ大分其說ヲ主張スル人ガ
アッテ少クモ商事ニ就テハ制限ヲ寛メル方ガ宜カラウト云フ趣意ヲ採用シテ
新ニ二百七十七條ヲ此所ニ加ヘマシタ、是ハ以前ハナカッタノデ全ク新ラシ
イノデアリマス、次ハ第二百七十八條第三項ニ「支店ニ於テ爲シタル取引ニ
付テハ其支店ヲ以テ營業所ト看做ス」ト云フ一項ヲ加ヘマシタ、之ヲ加ヘタ
ノハ先刻ノ第四十四條ノ二項ニアッタ但書ヲ削ッタ結果デアリマス、ソレカラ
次ハ第二百八十一條ニ「金錢其他ノ物ノ給付ヲ目的トスル指圖證券又ハ無記
名證券ノ所持人カ」トアル、以前ハ「指圖證券ノ所持人」トノミアッタノヲ
無記名證券ノ所持人ヲ加ヘタノデアリマス、是ハ公示催告ノ申立ヲナシタト
キニ債務者ヲシテ其債務ノ目的物ヲ供託セシメ又ハ相當ノ擔保ヲ供シテ其證
券ノ趣旨ニ從ヒ履行ヲナサシメルト云フコトハ必シモ指圖證券ニ限ルモノデ
ハナイ、無記名證券ニモ擴メルガ宜イ、又擴メナケレバナラヌト云フノデ斯
ウ改メマシタ次ハ三百一條ノ二行目ニ「營業年度」トアリマスガ、是モ以
前ノ案ニ「事業年度」トアッタノヲ改メタノデアリマス、次ハ第三百二十條
ニ「本章ノ規定ハ」ト云フノハ以前ハ「前六條ノ規定ハ」トアッタノデス、
是ハ別段ニ「本章」トシテモ趣意ニ變リハナイ、此方ガ綺麗デ宜カラウト云
フノデ改メタ譯デアリマス、次ハ第三百三十四條ニ「貨物引換證ヲ作リタル
トキハ運送ニ關スル事項ハ運送人ト所持人トノ間ニ於テハ貨物引換證ノ定ム
ル所ニ依ル」是ハ以前ハ「貨物引換證ヲ作リタルトキハ運送人ト所持人トノ
間ニ於テハ運送ニ關スル事項ハ貨物引換證ノ定ムル所ニ依ル」トアッタノヲ
文章ヲ逆サマニシタノデ此方ガ文章ガ穩當デアラウト思ヒマシテ改メマシ
〃、次ノ第三百三十六條ノ二行目ノ「若シ運送人カ既ニ其運送賃ノ」ト云フ
所デ前ニハ(其)ト云フ字ガナカッタノヲ之ヲ加ヘテ其意味ヲ明瞭ニシタノ
デ、次ハ第三百五十一條ノ第二項ニ「手荷物カ到達地ニ達シタル日ヨリ一
週間內ニ旅客カ其引渡ヲ請求セサルトキハ」トアリマス、以前ハ「請求セサ
ル場合ニ於テハ」トアッタノヲ之ヲ「トキハ」ト云フ方ガ穩當デアル又文例モ
サウナッテ居リマスカラ改メマシタ、次ハ第三百六十二條ニ「預證劵及ヒ質
入證券ヲ作リタルトキハ寄託ニ關スル事項ハ倉庫營業者ト所持人トノ間ニ於
テハ其證劵ノ定ムル所ニ依ル」トアル以前ハ「倉庫營業者ト所持人トノ間
ニ於テハ寄託ニ關スル」云々トアリマシタ、是モ唯今述ベマシタ第三百三十
四條ト同シ例デアリマシテ文章上此方ガ宜カラウト云フノデ倒置シタノデア
リマス、次ハ第三百六十八條ニ「質入證券ノ所持人カ辨濟期ニ至リ支拂ヲ受
ケサルトキハ手形ニ關スル規定ニ從ヒ」云々トアリマス、以前ハ「爲替手形ニ
關スル規定」トナッテ居ッタ是ハ手形ノ總則中既ニ拒絕證書ニ關スル規定ガア
ルモノデアリマスカラ廣ク手形トシタ方ガ穩當デアルト云フノデ爲替ト云フ
二字ヲ削リマシタ、次ハ第三百七十二條「質入證券ハ所持人ハ先ヅ寄託物ニ付
キ辨濟ヲ受ケ尙不足アルトキハ債務者其他ノ裏書人ニ對シテ其不足額ヲ請求
スルコトヲ得」以前ハ「質入證劵ノ所持人ハ先ツ寄託物ニ付キ辨濟ヲ受ケ尙不
足アルニ非レハ債務者其他ノ裏書人ニ對シテ請求ヲ爲スコトヲ得ス」トアル
是ハ元來此質入證劵ハ其所持人ガ裏書ニ對スル不足ヲ請求スルコトガ出來
ルコトノ問題デソレガ出來ルト云フコトヲ言表ハスガ爲ニ以前ハ「不足アル
ニ非レハ債務者其他裏書人ニ對シテ請求ヲ爲スコトヲ得ス」ト云フ裏ノ方ニ
言フタノデアル、今度ハ其請求ノ出來ルト云フ權利ノアルコトヲ表カラ言ッ
タ方ガ明瞭デアルト云フノデ「尙不足アルトキハ債務者其他ノ裏書人ニ對シ
テ其不足額ヲ請求スルコトヲ得」ト云フコトニ改メタノデアリマス、次ハ第
百三十八條、此規定ハ前修正案ニ於キマシテハズット前ニ在リマシテ三百六
十七條ノ次ニアッタノデアリマス、ソレヲコチラニ移シマシク理由ハ卽チ此
箇條ノ中ニ或ハ誤解セラレテハイカヌト云フダケノ理由デ後ニ規定シタノデ
アリマス、ソレカラ次ハ第三百九十六條ニ「保險ノ目的ノ性質若クハ瑕疵、
其自然ノ消耗保險契約者若クハ被保險者ノ惡意若クハ重大ナル過失ニ因リテ
生シタル損害ハ保險者之ヲ塡補スル責ニ任セス」トアル以前ハ此「保險契約
者」ト「被保險者」トソレカラ其他ニ「保險金額ヲ受取ルヘキ者」トアッタノ
デスガ其「保險金額ヲ受取ルヘキ者」ト云フノヲ削ッタノデアリマス、是ハ
生命保險ニ於テ新ニ加ヘマシタ箇條ナドヽ極密接ノ關係ヲ持ッテ居ル修正デ
アリマスガ生命保險ニ於キマシテハ保險金額ヲ受取ルヘキ者ト云フノガ明ニ
アル、併ナカラ或ハ普通ノ火災保險トカ或ハ運送保險トカ其他損害ノ塡補ヲ
目的トスル所ノ保險ニアリマシテハ保險契約者被保險者外ニ保險金額ヲ受取
ル者ハアルヘキ筈ハナイ、サウ云フ名稱ヲ與フベキモノハナイ、受取ル權利
ヲ持ッテ居ル者ハ有リ得ルガソレハ詰リ被保險者ノ權利ヲ讓受ケタニ過ギナ
イ故ニ特ニ此保險金額ヲ受取ルヘキ者ト云フコトヲ書ク必要ガナイ又言フ
ヘカラサルモノデアルトシテ保險金額ヲ受取ルヘキ者ト云フ文字ヲ削除シ
マシタ、次ハ第三百九十八條茲ニ「保險契約ノ當時保險契約者ガ惡意又ハ重
大ナル過失ニ因リ重要ナル事實ヲ告ケス」云々トアリマス、以前ハ「保險契
約者カ保險契約ヲ爲スニ當タリ」トアッタノヲ改メタノデアリマス是ハ既ニ
前條ニ於キマシテ保險契約ノ當時ト云フ文字ヲ使クテ居リマスカラ文章ヲ合
ハセル爲メニ改メタノデアリマス、ソレカラ次ハ第四百五條ニ第二項ト云フ
モノガ新ニ加ヘタノデアリマスソレハ保險者ガ破產ノ宣告ヲ受ケテ居ル
······保險會社ガ破產ノ宣告ヲ受ケテ居ル場合ニ保險契約者ガ契約ノ解除ヲ爲
スコトガ出來ルト云フコトヲ第一項ニ言フテアル解除ヲ爲シタ場合ハドウナ
ルカト云フト民法ノ規定ニ依リマシテ保險者ガ被保險者ヲシテ元ノ地位ニ戾
サナケレバナラヌト云フ義務ヲ持ッテ居ル、若シ其義務ヲ履行スレバ先ヅ雙
方ガ契約以前ノ地位ニ立戾ルノデアリマス、然ルニ此場合ニ長ク保險契約ガ
續イテ居ッタ或ハ十年ナリ二十年ナリ保險金ヲ拂ッテ居ッタ、此場合ニハ直グ
ニ破產ノ宣告ヲ受ケタカラト言ウテ取ッタ保險料ヲ一切返サナケレバナラヌ
オマケニ利息マデ付ケテ返サナケレバナラヌト云フコトデハ大變ナコトデア
リマスカラ此解除ト云フノハ將來ニ向ッテノミ其效力ヲ生ズルコトニナツタ
ノデアリマス、次ハ第四百十條第四百十一條是ハ二條牽連シテ說明致ス方ガ
宜カラウト思ヒマス、以前ハ此「保險期間中危險ガ著シク變更又ハ增加シタ
ルトキハ保險者ハ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得但其解除ハ將來ニ向ッテノミ
其效力ヲ生ス」ト云フノデ此危險ガ著シク變更シタリ或ハ危險ガ增加シタト
云フ場合ニ其變更若クハ增加ガ被保險者ノ行爲ニ因ッテ出テタル場合トソレ
カラ被保險者ト云フモノガ與リ知ラザル原因ニ依テ危險ガ增加若クハ變更シ
タ場合ヲ區別セズ何時デモ變更危險ガ著シクアレバ被保險者ガ契約ノ解除ヲ
ナスコトガ出來ルト云フコトニナッテ居ッタノデアリマス、併ナガラ是ハ矢
張保險契約者又ハ被保險者ノ責ニ歸スベキ事由ニ依ッテ變更增加シタナラバ
保險契約ヲシテ當然其效力ヲ失ハシメル方ガ宜カラウ、又保險契約者又ハ被
保險者ノ責ニ歸スベカラサル事由ニ依テ變更又ハ增加シタモノハ保險者ニ解
除ヲ爲スノ權利ヲ與ヘルコトニシタ方ガ宜カラウ、何レモ其責ニ歸スベキ場
合ト責ニ歸スベカラザル場合トヲ區別シテ一ハ保險契約ガ當然效力ヲ失フテ
仕舞ヒ、一ハ保險者ニ解除ノ權利ヲ與ヘルト云フコトニ區別スル方ガ宜イト
云フノデ此ノ如クシタノデアル、其結果第四百十條ト云フモノガ新タニ加ハ
リ、ソレカラ第四百十一條ト云フモノハ「保險者又ハ被保險者ノ責ニ歸スヘ
カラサル事由ニ因リテ」ト云フ文字ヲ加ヘ而シテ第四百十一條ノ二項三項ト
云フモノガ以前獨立ノ箇條モアッタノヲ合併シタノデアリマス、ソレカラ次
ハ第四百二十二條ノ第一號ニ「保險ニ付シタル建物ノ所在構造及ヒ用方」ト
アルノハ以前ハ「保險ニ付シタル建物ノ構造、用方及ヒ其所在ノ場所」トアッ
タ、「所在ノ場所」ト云フ文字ハ餘リ面白クナイ文字デアルノミナラズ民法ニ
モ所在ト云フ文字ガアルカラサウ改メタノデアリマス第二號モ同樣ノ理由
デアリマス、第二號ニ「納ルル」ト云フノハ以前ハ「貯藏セル建物」云々ト
アッテ如何ニモ貯ヘテ仕舞ッテ置クト云フヤウナ文字デ穩デナイト云フノデ
斯ウシマシタ、次ハ第四百二十九條ノ規定ハ是ハ新ニ加ヘマシタ規定デアリ
マス、此修正案ノ第三百九十八條ニ「保險契約ノ當時保險契約者カ惡意又ハ重
大ナル過失ニ因リ重要ナル事實ヲ告ケス又ハ重要ナル事項ニ付キ不實ノ事ヲ
告ケタルトキハ其契約ハ無效トス但」云々トアリマス、此唯今說明ィタサムト
スル第四百二十九條ノ實質ハ殆ンド今讀ミマシタ第三百九十八條ト同シコト
デアル所ガ普通ノ損害保險ノ場合ニ在ッテハ、例ヘバ甲ト云フ者ガ自分ノ
コトヲ保險ニ付シテ自分自ラ契約スルトキハ其甲ハ保險契約者デアル又甲
ガ乙ノタメニ保險契約ヲスルトキハ甲ガ保險契約者デ乙ガ被保險者デアル、
所ガ生命保險デハ同樣ニ參リマセヌ、例ヘバ被保險者ト云フモノハドウ云フ
人間ヲ云フカト云フト生命ノ保險ヲセラルヽ所ノ人間デアルカラ例ヘバ甲ト
云フ者ガ乙ト云フ者ノ生命ヲ保險ニ附シテサウシテ甲自ラガ保險契約ヲスル
ト云フ場合ニ甲ナル者ハ保險契約者デアッテ乙ナル者ハ其生命ヲ保險セラル
ル人間デアル、此法案ノ所謂ル被保險者ト云フトキハ乙ノ身體檢査ヲスルト
キニ乙ガ病氣ニ罹ッタカト問ヘバ羅ッタコトハナイ、或ハ酒ヲ多量飮ムカト
問ヘバ實際飮ミナガラ一向飮ミマセヌト云フ、サウ云フ場合ニ保險契約ハ無
效トセネバナラヌモノデアル、然ルニ生命保險ニ付テ特別ノ規定ガナイト其
趣意ガ明瞭デナイ、卽チ以前ハ此案ノ第三百九十八條ヲ準用シテアッタカラ
保險契約者ガ惡意又ハ重大ナル過失ニ依リ云々トアルノデ、甲ガ乙ノ身體ヲ
保險ニ掛ケルトキノ如キハワレニハ嵌ラナイカラソレヲ明瞭ニスルタメニ此
條ヲ加ヘタノデアリマス、ソレカラ次ハ四百三十二條ニ「保險契約者又ハ保
險金額ヲ受取ルヘキ者カ被保險者ノ死亡シタルコトヲ知リタルトキハ遲滯ナ
ク保險者ニ對シテ其通知ヲ發スルコトヲ要ス」トアル、是ハ損害保險ノ第四
百十二條ト同ジ規定ヲ此所ニ設ケタノデ被保險者卽チ生命ヲ保險セラレテ
居ル者ガ死ンダ場合ニ保險契約ヲ結ンダ者ガ通知ヲスルト云フコトハ當然ノ
義務デアルト云フノデ此所ニ新ニ一條ヲ加ヘタノデアリマス、ソレカラ第四
百三十三條ノ一項二項中準用ノ規定ノ條ノ數字ガ變ッテ居ルト云フコトハ先
刻モ述ベマシタ通リ別段說明ハイタシマセヌソレカラ以前損害保險ノ規定
ヲ生命保險ニ準用シテアッタノデ此修正デハ特ニ生命保險ニ就テ新ニ箇條ヲ
設ケマシタ、趣意ヲ明カニスルタメニ新條ヲ加ヘマシタカラ其結果以前準用
シテアッタモノヲ準用セヌデモ宜イコトニナリマシタ故ニ四百三十三條ノ
第一項中カラ其準用セヌデモ宜イ箇條ヲ除イタノデアリマス、ソレカラ次ニ
本條ノ第二項中「保險者カ保險金額ヲ支拂フコトヲ要セサルトキハ被保險者
ノ爲メニ積立タル金額ヲ拂戾スコトヲ要ス」トアル是ハ以前ノ案ニハ「保險
者ハ被保險者ノ爲メニ積立タル」云々トアッタノヲ「保險者ハ」ト云フ字ヲ
削ッタノデ之ハ頭ノ方ニ「保險者カ」云々ト書起シテアルカラ再ビ保險者ト
云フコトヲ斷ル必要ハナイト云フ理由デ改メマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=6
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007・梅謙次郎
○政府委員(梅謙次郞君) 次ハ第四百四十二條第一一項中ノ三行目ニ於テ、以
前ノ案ニハ「其役場ニ於テ拒絶證書ヲ作ルコトヲ得」トアリマシタノヲ「其
役場又ハ官署若クハ公署ニ於テ」ト云フコトニ改メマシタ、之ヲ加ヘタ理由
ハ舊トノ「其役場」ト云フノハ無論公證人若クハ執達吏ノ役場デアッテ利害
關係人ノ營業所住所又ハ居所ノ知レザルトキニ官署又ハ公署ニ問合ヲシテワ
レデ知レナイ場合ニ此手續ヲスルノデアリマス然ルニ又再ビ自分ノ役場ヘ
歸ッテカラ拒絕證書ノ作ラネバナラヌト云フコトニシテ置クヨリモ其場所デ
直ニ拒絕證書ヲ作ルコトニ規定シテ置ク方ガ便利デアルト云フノデ「官署若
クハ公署」ト云フ文字ヲ加ヘタノデアリマス、ソレカラ其次ガ四百九十條ノ
四行目ニ「第四百八十七條第一項」トアリマスガ、是ガ舊トハ「第四百八十
四條」トノミアッタノデ「四」ガ「七」ニナッタノハ前二箇條ノ加ハッタ當
然ノ結果デアリマスソレカラ「第一項」ト云フ文字ノ加ハッタノハ第一項
ダケガ此所ニ適用セラルベキ規定デアルカラソレヲ明ニシタマデノコトデ別
ニ意味ハアリマセヌ、次ハ第五百六條「爲替手形ノ所持人其他被參加人ノ後
者」トアリマスガ、舊トハ「所持人及被參加人」トナッテ居ッタノデ、是ハ
所持人モ矢張リ被參加人ノ後者デアリマスカラ「其他」ト云フ方ガ穩カダト
云フダケノコトデアリマス、ソレカラ次ハ第五百三十七條、是ハ準用ノ箇條
ガ少シ違ッテ參リマスガ、箇條ノ殖ヘタリ削ラレタリシタヽメニ當然來ル所
ノモノハ說明ハ致シマセヌガ此中デ引受ニ關スル規程ガ準用シテアッタノヲ
除キマシタ始メノ修正案ニハ小切手ニモ矢張リ引受ト云フコトヲ認メルト
云フ主義デアリマシタガ今度再調査ヲシテドウモ小切手ト云フモノヽ性質
ハ爲替手形ノ如キモノトハ違イ長ク流通スベキモノデナイカラ仕拂人ノ引受
ヲ求メルト云フコトヲ法律上認メル必要ハナイト云フコトデ此引受トームフコ
トハ小切手ニハ適用セヌコトヽイタシマシタ、今日保證ト云フヤウナコトガ
實際ニ行ハレテ居ルサウデゴザイマスガソレハ固ヨリ有効デハアリマスルケ
レドモ手形上ノ關係ハ生ジナイ、唯保證ヲシタ人ト受ケタ人トノ間ニ一ノ法
律關係ヲ生ズルニ止マルト云フコトニシタ方ガ穩デアラウト云フノデ引受ニ
關スル規定ヲ準用シナイ、ソレカラ第五百三十八條ノ第一項ニ「本法ニ於テ船
舶トハ商行爲ヲナス目的ヲ以テ航海ノ用ニ供スルモノヲ謂フ」トアリマスガ
元ノ修正案ニハ「本法ニ於テ船舶トハ營利ノ目的ヲ以テ航海ノ用ニ供スルモ
ノヲ謂フ」トアリマシタ商行爲ヲナスト云フコトハ今度ノ商法ニ於テハ商法
ト云フモノハ則チ商行爲ニ關スル法律ト云フ意味デ總テ會社デモ何デモ商行
爲ヲ爲スヲ目的トスルト云フコトニナッテ居ル、海商編ハ隨分外國ノ例ニ於
テモ又舊商法ナドニ於テモ適用ヲ廣ク致シマシテ商行爲ヲ目的トシナイ船ニ
モ適用シテ居ル例ハ許多アリマスルケレドモ一日商法ト云フモノヲ別段ニ拵
ヘマシテ他ノ部分ハ總テ商行爲ニ關スルモノデアル以上ハ海商モ矢張リ商行
爲ノミニ關スルモノデナケレバ筋ガ通ラナイ、ソレ故ニ原文ニモ既ニ營利ノ
目的ト云フコトハ略〓其趣意ニ依ッテ居ッタノデアリマスガ營利ト申ストマ
ダ廣過ギル例ヘバ漁業ノ如キモノモ營利ノ目的デアル併シ漁業ハ商行爲ニ關
シテ居ラヌモノトナッテ居ル、サウシテ見ルト云フト前申上ゲタ所ノ主義ガ
是デハ十分貫カヌ必要アラバ外ノ法律デ以テ此商法ノ規定中或部分ヲ商行
爲ヲ爲スノ目的トセザル船舶ニモ準用シテ宜シイケレドモ商法ニ於テハ飽ク
マデ商行爲ヲ爲ス目的ト云フ範圍ニ止メル方ガ穩當デアラウト云フノデ商行
爲ヲ爲ス目的ト云フコトニ改メマシタ、第五百四十五、是ハ「船舶所有者カ
債權者ノ同意ヲ得スシテ更ニ航海ヲ爲サシメタルトキ」トアル原文ニハ「新
ニ」トアッタガ此所ハ一遍航海シタ後デナケレバ適用ガナイカラ「更ニ」ト
致シマシタ、次ハ第五百四十七條、是モ文字ノ修正デ「船舶共有者ハ其持分
ノ價格ニ應ジ船舶ノ利用ニ關スル費用ヲ負擔スルコトヲ要ス」トアル原文ニ
ハ「費用ヲ支拂フコトヲ要ス」トアッテ是ハ誰ガ誰ニ支拂フト云フコトヲ規定
スルノデナクシテ畢竟誰ガ負擔スルト云フコトヲ定メル規定デアリマスル
負擔ノ文字ガ穩デアラウト云フノデ改メマシタ、次ハ第五百五十七條デア
ル、是ハ先刻ノ箇條ト同ジコトデ「船舶ノ賃借人カ商行爲ヲ爲ス目的ヲ以テ」
云々トアリマスガ元ノ修正案ニハ「營利ノ目的」トアッタノデス、其次ハ第
五百六十三條、是ハ「船長ハ已ムコトヲ得サル場合ヲ除ク外自己ニ代ハリテ
船舶ヲ指揮スヘキ者ニ其職務ヲ委任シタル後ニ非サレハ」マデノ文字ガ今度
新ニ加ッタ文字デアリマス元ノ修正案ニ依リマスト船長ハ已ムコトヲ得ナ
イ場合デナケレバ一切上陸ハ出來ナイト云フコトニナッテ居ル、所ガ實際ニ於
テハ中々サウ云フ窮屈ナモノデナクシテ隨分船ノ港ニ著イタ時船長モ上陸ス
ル、ソレヲ全ク禁ズルノハ餘リ酷デアルト云フコトデソレデ此自分ニ代ッテ
船舶ヲ指揮スヘキ者サヘ殘シテ置ケバ誰ガ指揮ヲスルカ分ラヌヤウデハ困ル
ガ其者サヘ定メテ置ケバ船長ハ上陸シテモ搆ハヌト斯ウ云フコトニ改メマシ
タ其次ハ第六百十六條ノ第二項中ニ「第六百十三條第一項第一一號及ヒ第六
百十四條第一項ニ揭ケタル事由カ運送品ノ一部ニ付テ生シタルトキト雖モ」
トアリマスガ是ハ元ノ修正案ニハ「トキハ」トアッタ、是ハホンノ文字ノ修
正デ全部ニ付テ此ノ如キコトガ生ジマシタナラバ尙ホ更解除ガ出來ルノデゴ
ザイマスルデ「トキト雖モ」ト云フ方ガ穩當デアラウト云フマデノコトデア
リマス、其次ハ第六百二十八條、是ハ原文ニハ斯ウ云フ風ニアッタ上ノ所ハ
同ジテ「原所持人ガ最モ先ニ發送シ又ハ引渡シタル證劵ヲ所持スル者ハ他ノ
所持人ニ先チテ其權利ヲ行フコトヲ得」トアッタノヲソレヲ「證券ヲ所持ス
ル者」「其權利ヲ行フ」ト致シマシタノハ唯文字ノ變更デ此方ガ文章ガ穩デア
ル他ノ文例ニモ合ウテ居ルト云フコトダケデアリマス、其次ハ第六百五十
八條、是ハ「積荷ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益又ハ報酬ノ保險」トアリマスガ
原文ニハ單ニ「利益ノ保險」トアッタガ報酬ノ保險ト云フモノモ認メテ居ル
ノデアリマスカラ此箇條ノ規定ト云フモノヲ矢張リ報酬ノ保險ニモ適用スル
方ガ穩當デアルト云フコトデ報酬ト云フコトヲ加ヘマシタ、ソレカラ第六百
六十一條是ハ前議會ニ於キマシテモ卽チ此貴族院ニ於テ大分御論ノアッタ箇
條デアリマスガ前ニハ船舶ノ保險ノ場合デアッテモ積荷ノ保險ノ場合デアッ
テモ「船舶ノ名稱國籍種類及ヒ總噸數」ソレカラ「船長ノ氏名」、「發航港到達
港又ハ歸航港」サウ云フモノマデ保險條件ニ揭ゲルト云フ案デアッタ所ガ是
デハ隨分ウルサイ、船舶ノ保險ニ付テハドウモ噸數マデ書ケト云フコトハ實
際困難デアル殊ニ積荷ノ保險ニ付テ噸數マデ書クト云フコトハ煩ハシイノ
デ發航港、到達港、歸航港ト云フノハ是ハ船積港ト陸揚港ト書イテ置ケバヨ
カラウ、船長ノ氏名モヨカラウト云フコトハ實際ドウモ原文ノ通リデハ行ハ
レ難イト云フコトデアリマシタカラ再ビ調査ヲ致シマシタ末船舶ノ保險ニ付
テモ噸數ヲ書カヌデモ宜シイ、ソレカラ積荷ノ保險ニ付テモ船舶ノ噸數、船
長ノ氏名モ發航港モ到達港モ寄航港モ書カヌデモ宜イト云フコトニナリマシ
タ、ソレカラ第六百六十五條、是ハ「積荷ヲ保險ニ附シ又ハ」カラ「報酬ヲ
保險ニ附シ」マデノ文字ガ新ニ加ッタノデアリマス、是ハ報酬ニ付テハ先刻
申上ゲタト同ジヤウナ譯デ前ニハ此規定ハ積荷ノ保險ダケニ適用シテアリマ
シタガ利益ノ保險ノ場合デモ報酬ノ保險ノ場合デモドウモ同一ノ理由ガア
ルヤウデアリマスカラ之ヲ加ヘマシタ、ソレカラ第六百六十七條中ノ第一號
ニハ「保險契約者若クハ被保險者ノ惡意若クハ重大ナル過失」トアリマスガ原
交ニハ「保險契約者、被保險者若クハ保險金額ヲ受取ルヘキ者」トアッタノ
デ此改正ノ理由ハ先刻隣席カラ述ベマシタカラ申シマセヌ、ソレカラ第三號
ニ於テ「利益若クハ報酬」ト云フ文字ガアリマス、是モ先刻ノ修正ト同一ノ
理由デアリマスソレカラ第六百七十條ノ二行目ニ「代價ノ中ヨリ運送賃其
他ノ費用ヲ控除シタルモノ」トアリマスガ、是ガ原文ニハ「控除シ其殘額」ト
アリマシテ意味ハ變リマセヌガ他ノ箇條ハ「費用ヲ控除シタルモノ」トアリ
マスカラ此所モ文字ヲ詰メマシタ、ソレカラ第百八十三條ハ新ニ加ヘタ箇條
デアリマス、此箇條ヲ加ヘマシタ理由ハ第六百八十條以下ニ船舶ニ關スル特
別ノ先取特權ト云フモノヲ規定シテアリマスガ此規定アルニモ拘ラズ、他ノ
先取特權ハ矢張存シテ居ル、殊ニ民法ニ規定シテアル所ノ一般ノ先取特權ナ
ドハ無論船舶ニモ及ブモノデアル、然ルニ其先取特權ト此所ニ規定シタル先
取特權ト何レガ先キニ行ハルベキモノカト云フコトハ前ノ修正案ニハ規定ガ
洩レテ居リマシタ、前ノ修正案モ其趣意ハ矢張リ今度規定シタ通リノ積リデ
アッタガ明文ガナケレバソレガ分ラナイ、其場合ニ於テハ船舶債權者ノ先取
特權ト云フ特別ノ先取特權ノ方ガ他ノ先取特權ヨリ先ニ行ハレルト云フコト
ヲ規定シタノデアリマス是ダケデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=7
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008・黒田長成
○委員長(侯爵黑田長成君) 諸君ニ御相談致シマスガ、唯今政府委員ノ御說
明モ一ト通リ承リマシタガ、此上ハ今日ダケ一日置キマシテ明朝カラ質問ヲ
始メルコトニシタラ如何デゴザイマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=8
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009・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 此委員ノ中ニハ所得稅ノ委員ガ大分ゴザイマス、ソレデ
是ト成ルベク衝突セヌヤウニ大抵隔日ノ見込デアッチデハ豫メ約束ガシテア
リマス、今日此委員會ガアッタカラ其次ノ日ニ開イタラ宜カラウト云フヤウ
ニ申合セテアリマシテ明日ハ所得稅ノ方ニ略〓極メテアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=9
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010・三浦安
○三浦安君 御質問ノアル御方ハ直ニ質問ニ掛ッタラドウデアリマスカ、御
說明ヲ聽イタ所デ格別大層ナ修正ト云フデモナシ、半分ハ文字ノ修正デ意味
ノ修正モ缺ケタルヲ補フトカ或ハ足ラザルヲ補フトカ云フコトデ中ニ省イタ
箇條モアリマスガ格別ノコトハナイカラ御疑惑ノ方ハ直グ御質問ニナッテハ
如何デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=10
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011・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 併シモウ十二時デアルカラ今日引續イテ午後ニ遊バシタ
ラドウデアリマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=11
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012・黒田長成
○委員長(侯爵黑田長成君) 實ハ私ノ考デハ今一ト通リ說明ヲ承リマシタカ
ラ一兩日間ヲ置イテ其間ニ銘ミ篤ト勘考シテ質問ヲシテ直ニ決議ニ運ブヤウ
ニシテハドウカト存ジタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=12
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013・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 ソレデモ一向異議ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=13
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014・尾崎三良
○男爵尾崎三良君 今委員長ノ御說デアリマスガ此案ハ既ニ昨年モ貴族院ダ
ケハ可決シテ通過シタノデアリマスカラ今政府委員ノ說明ノアッタ所モ少シ
ハ修正ハアルガ大シタ修正デモナイカラ如何デゴザイマセウカ、是ハ著々朗
讀デモシテサウシテ其間ニ意見ノアル方ハ意見ヲ述ベテ著々進ンデ往ッタラ
ドウデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=14
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015・黒田長成
○委員長(侯爵黑田長成君) ソレデ實ハ明日一日置イテ明後日午前カラ引續
イテイタセバ明後日ニ結了イタスデアラウト想像シテ居リマス、サウナスッ
テハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=15
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016・名村泰藏
○名村泰藏君 宜シウゴザイマス、ソレデ一向差支ゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=16
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017・黒田長成
○委員長(候爵黑田長成君) ソレデハ明後日午前十時カラ開キマスカラ今日
御出ノ方ニハ別段御通知イタシマセヌカラドウゾ··
午前十一時五十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001301632X00118990118&spkNum=17
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