第14回帝国議会　貴族院　本会議　第15号　明治33年1月31日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　明治三十三年一月三十一日（水曜日）午前十時十三分開議
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  　　議事日程　第十五號　明治三十三年一月三十一日
  　　　　午前十時開議
  　　第一　侯爵伊達宗徳君請暇の件
  　　第二　飮食物其の他の物品取締に關する法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會
  　　第三　右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
  　　第四　府縣郡市町村其の他の公共團體の所有地免租に關する法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會
  　　第五　右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
  　　第六　明治二十九年法律第九十二號廢止法律案（政府提出）　第一讀會
  　　第七　右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
  　　第八　會計檢査院法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　　第九　右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
  　　第十　會計檢査官懲戒法案（政府提出）　第一讀會
  　　第十一　右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
  　　第十二　賣藥規則中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會
  　　第十三　右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
  　　第十四　産牛馬組合法案（政府提出衆議院送付）　第一讀會
  　　第十五　右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
  　　第十六　裁判所管轄區域變更に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（特別委員長報告）
  　　第十七　明治三十二年法律第九十八號改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（特別委員長報告）
  　　第十八　官吏恩給法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（特別委員長報告）
  　　第十九　官吏遺族扶助法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（特別委員長報告）
  　　第二十　官吏恩給法及官吏遺族扶助法補則中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（特別委員長報告）
  　　第二十一　汚物掃除法案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（特別委員長報告）
  　　第二十二　民法施行法中改正法律案（衆議院提出）　第一讀會
  　　第二十三　右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
  　　第二十四　國事犯罪者家祿賞典祿處分法案（衆議院提出）　第一讀會
  　　第二十五　右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
  　　第二十六　登録税法中改正法律案（衆議院提出）　第一讀會の續（特別委員長報告）
  　　第二十七　高等學校及大學校増設に關する建議案（子爵三島彌太郎君外三名發議）　會議
  　　第二十八　學制調査會設置に關する建議案（子爵長岡護美君外五名發議）　會議（前會の續特別委員長報告）
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• 001・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　報告ヲ致シマス
  〔小原書記官朗讀〕
  去二十五日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日內閣總理大臣ヲ經
  由シテ裁可ヲ奉請シ及可決ノ旨衆議院ニ通知シタリ
  明治三十二年度歲入歳出總豫算追加案(第三號)
  明治三十二年度各特別會計歲入歳出豫算追加案(特第一號)
  保管金規則中改正法律案
  同日本院ニ於テ可決シタル在〓日本專管居留地改良基金ヲ設クル建議書ハ
  卽日政府ニ呈出シタリ
  同日子爵三島彌太郞君、辻新次君、男爵赤松則良君、長谷川貞雄君ヨリ六
  十四名ノ贊成ヲ以テ高等學校及大學校增設ニ關スル建議案ヲ發議セラレタ
  リ
  去二十六日左ノ政府提出案ヲ受領セリ
  明治二十九年法律第九十二號廢止法律案
  會計檢査院法中改正法律案
  會計檢査官懲戒法案
  同日左ノ衆議院提出案ヲ受領セリ
  民法施行法中改正法律案
  國事犯罪者家祿賞典祿處分法案
  同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
  賣藥規則中改正法律案
  產牛馬組合法案
  同日政府ヨリ左ノ決算ヲ受領セリ
  明治三十年度歲入歳出總決算
  明治三十年度各特別會計歲入歲出決算
  明治三十年度歳入歳出決算檢査報告
  同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル政府提出民法第千七十九條及第千八十一
  條ノ規定ニ依ル遺言ノ確認ニ關スル法律案ヲ可決シ奏上シタル旨通牒ヲ受
  領セリ
  委員長副委員長左ノ通當選セラレタリ
  官吏恩給法中改正法律案外二件特別委員會
  委員長子爵岡部長職君副委員長子爵松平乘承君
  裁判所管轄區域變更ニ關スル法律案特別委員會
  委員長子爵鍋島直彬君副委員長關義臣君
  明治三十二年法律第九十八號改正法律案特別委員會
  委員長子爵鍋島直彬君副委員長兒玉淳一郞君
  商法中署名スヘキ場合ニ關スル法律案特別委員會
  委員長侯爵細川護成君副委員長子爵小笠原壽長君

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• 002・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　是ヨリ本日ノ日程ニ移リマス、侯爵伊達宗德君疾
  病ニ附キ二十五日間ノ請暇ノ願ガ出テ居リマス、御異議ガナクバ許可致シマ
  ス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　飮食物其ノ他ノ物品取締ニ關スル法律案、政府提
  出、衆議院送付、第一讀會、朗讀ハ省略致シマス
  〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲玆ニ載錄ス以下之ニ同シ〕
  飮食物其ノ他ノ物品取締ニ關スル法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  明治三十三年一月二十二日衆議院議長片岡健吉
  貴族院議長公爵近衛篤麿殿
  飮食物其ノ他ノ物品取締ニ關スル法律案
  第一條販賣ノ用ニ供スル飮食物又ハ販賣ノ用ニ供シ若ハ營業上ニ使用ス
  ル飮食器、割烹具及其ノ他ノ物品ニシテ衛生上危害ヲ生スルノ虞アルモ
  ノハ法令ノ定ムル所ニ依リ行政廳ニ於テ其ノ製造、採取、販賣、授與若
  ハ使用ヲ禁止シ又ハ其營業ヲ禁止シ若ハ停止スルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テ行政廳ハ物品ノ所有者若ハ所持者ヲシテ其ノ物品ヲ廢
  棄セシメ又ハ行政廳ニ於テ直接ニ之ヲ廢棄シ其ノ他必要ノ處分ヲ爲スコ
  トヲ得但シ所有者若ハ所持者ニ於テ衛生上危害ヲ生スルノ虞ナキ方法ニ
  依リ之ヲ處置セムコトヲ請フトキハ之ヲ許可スルコトヲ得
  第二條行政廳ハ吏員ヲシテ前條ノ物品ヲ檢査セシメ試驗ノ爲必要ナル分
  量ニ限リ無償ニテ收去セシムルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テ行政廳ハ吏員ヲシテ普通營業時間又ハ營業ノ爲開カル
  ル間ニ限リ物品ヲ製造シ採取シ陳列シ貯藏シ若ハ携帶スル場所ニ立入ラ
  シムルコトヲ得
  第三條本法ノ執行ニ關シ官吏又ハ公吏ノ命ヲ受ケテ指定ノ期間內ニ之ヲ
  履行セサル者ハ二十圓以下ノ罰金ニ處ス
  本法ノ執行ニ關シ官吏公吏又ハ行政廳ノ命ヲ受ケテ公務ヲ行フ者ニ抗拒
  シタル者ハ一月以下ノ重禁錮ニ處シ十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
  第四條官吏公吏又ハ行政廳ノ命ヲ受ケテ公務ヲ行フ者本法ノ執行ニ關シ
  不正ノ所爲ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ重禁錮ニ處シ四十圓以下ノ罰金ヲ
  附加ス
  行政廳ノ命ヲ受ケテ公務ヲ行フ者本法ノ執行ニ關シ人ノ囑託ヲ受ケ賄賂
  ヲ收受シ又ハ之ヲ聽許シタル者ハ刑法第二百八十四條ノ例ニ照シテ處斷
  ス
  附則
  本法ハ明治三十三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔政府委員小松原英太郞君演壇ニ登ル〕

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• 004・小松原英太郎

  ○政府委員(小松原英太郞君)　本案提出ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲテ置キタイト
  存ジマス、飮食物其他玩弄品ニ附キマシテハ往々衛生上有害ノ物ガアリマシ
  テ取締ヲ要スルト云フコトハ諸君ニ於テモ御承知ノ通リデアリマス、然ルニ
  從來法律ノ規定ガゴザイマセヌノデ、唯各地方ニ於キマシテ廳府縣令ヲ以チ
  マシテ取締ヲ致シテ居リマスルガ爲ニ兎角十分ノ取締ガ出來ナイノデアリマ
  ス、ソレ故ニ此法律ヲ制定致シマシテ十分ナル取締ヲ致シタイト申スノデア
  リマス、何卒速ニ御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス

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• 005・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　別段御質問ガナクバ委員ノ選定ニ移リマス、議長
  ノ選定デ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 006・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　府縣郡市町村其ノ他ノ公共〓體ノ所有地免租ニ關
  スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
  府縣郡市町村其ノ他ノ公共團體ノ所有地免租ニ關スル法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  明治三十三年一月二十二日衆議院議長片岡健吉
  貴族院議長公爵近衛篤麿殿
  府縣郡市町村其ノ他ノ公共團體ノ所有地免租ニ關スル法律案
  府縣郡市町村其ノ他之ニ準スヘキ公共團體ノ所有地ニシテ其ノ公用ニ供ス
  ルモノハ公用ニ供シタル年ノ翌年ヨリ公用廢止ノ年マテ地租及公課ヲ免ス
  附則
  本法ハ明治三十三年分地租及公課ヨリ適用ス
  〔政府委員若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

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• 007・若槻禮次郎

  ○政府委員(若槻禮次郞君)　今日ニ於キマシテハ此公共團體ノ所有地デゴザ
  イマシテ公用ニ供シテ居リマスモノハ一々種類ヲ定メマシテ其公課ヲ免ズル
  ト云フコトニナッテ居リマス、例ヘバ水道ノ用地ハ水道ノ用地トシテ免稅ス
  ルト云フコトニナッテ居リマスシ、傳染病院ノ敷地ハ傳染病院ノ敷地トシテ
  免稅ニナッテ居リマス、然ルニ此公用ニ供シテ居リマスモノニ租稅ヲ掛ケマ
  スト云フコトガドウモ實際ニ適シマセヌヤウナ工合デゴザイマス、故ニ何カ
  市町村其他府縣ノ如キ公共〓體ニ義務ヲ負ハセマシテ或ル設備ヲ命ジマスト
  云フト、其度每ニ免租又ハ其他ノ公課ヲ免ズルト云フ法律ヲ提出スルノガ是
  マデノ例ニナッテ居リマシタガ、既ニ公用ニ供シテ居リマスモノニハ租稅ヲ掛
  ケナイ方ガ宜イト云フコトニナル以上ハ、廣ク規定致シマシテ一般ニ公用ニ
  供シタモノニハ租稅ヲ掛ケナイト云フコトニシテ置キマスト、今後法律ナリ
  命令ナリデ町村ニ於テ公用ニ供スル設備ヲ命ジマシタ場合ニハ別段ニ法律ヲ
  提出シマセヌデモ其敷地ニナル所ハ租稅ノ賦課ヲ受ケヌト云フコトヲ定メル
  爲ニ玆ニ一般ノ法律案ヲ提出致シマシタノデ、現ニ今日提出ニナッテ居リマ
  スル下水法案ガ通過致シマスト下水ノ用地ニハ免租其他公課ヲ免ズ·ルト云フ
  コトニシナケレバナラヌノデゴザイマスガ、玆ニ提出ニナッテ居リマス法案
  ガ通過シテ居リマスレバ別段ニ其法律案ヲ提出致シマセヌデ公課ヲ免ズルト
  云フコトニナリマスカラ、ドウカ此案ヲ御協贊ニナラムコトヲ希望致シマス

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• 008・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　御質疑ガナケレバ委員ノ撰定ニ移リマス、議長ノ
  指名デ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 009・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　明治二十九年法律第九十二號廢止法律案、政府提
  出、第一讀會
  明治二十九年法律第九十二號廢止法律案
  右
  勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
  明治三十三年一月二十六日內閣總理大臣侯爵山縣有朋
  明治二十九年法律第九十二號廢止法律案
  明治二十九年法律第九十二號ハ之ヲ廢止ス
  附則
  本法ハ發布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  本法施行ノ際明治二十九年法律第九十二號ニ依リ會計檢査院ニ增置シタル
  一部ノ所屬職員ハ廢官トス
  〔政府委員平田東助君演壇ニ登ル〕

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• 010・平田東助

  ○政府委員(平田東助君)　明治二十九年法律第九十二號ノ廢止ニ附キマシテ
  一言提出ノ理由ヲ申述ベテ置キマス、初メ二十九年ニ此法律ノ出マシタ際ニ
  於キマシテハ臺灣ハ始メテ軍政ヲ廢シマシテ民政ヲ施シマシタ當時デゴザイ
  マス、内地トノ交通モ今日ノ如ク便利テモゴザイマセズ、又檢査事務モ錯雜シ
  テ居リマシタニ附イテ、書面ノ往復バカリデハ十分ニ檢査ノ效用ヲ全ウスル
  コトガ出來マセヌヤウナ次第テゴザイマシタ、依ッテ臺灣ニ一ノ支廳ヲ置キマ
  シテ彼地ニ就キマシテ檢査ヲ致スコトヲ必要ト致シマシテ、卽チ此九十二號
  ノ法律ヲ發布セラレタ次第デゴザイマス、然ルニ其後豫算ノ都合ガゴザイマ
  シテ臺灣ニ支廳ヲ設置スルト云フコトハ事實上困難ヲ感ジマシタ次第デアリ
  マシタニ依リマシテ、其翌年卽チ三十年度ニ於キマシテ又一ノ附則ヲ制定致
  シマシテ、卽チ其當時協賛ヲ經マシテ檢査院ノ本廳ニ於キマシテ一部ヲ增設
  致シマシテ、檢査事務ヲ執行スルコトト相成リマシテゴザイマスル、然ルニ今
  日ニ至リマスルト云フト、檢査事務モ稍〓〓ニ就キマシテ別ニ之ガ爲ニ一部
  ヲ設ケテ置キマシテ檢査ヲ致シマスル程ノ事務モナクナッタト云フヤウナ次
  第デゴザイマスル、卽チ彼地ト本地トノ間ニ於テ交通モ便利ニナリマシタシ、
  又稍〓事實モ事務モ〓ニ就キマシテ其結果別ニ之ガ爲ニ一部ヲ置クト云フヤ
  ウナ必要ガナクナリマシタノデゴザイマス、依リマシテ此特ニ增設ヲ致シマ
  シタ所ノ一部ヲ廢シマシテ、ソレヲ他ノ部ニ分チマシテ檢査事務ヲ執行スル
  コトノ却ッテ簡單ニシテ便利ナルコトヲ認メマシタニ附イテ、卽チ此一部ヲ
  廢セムトスル次第デゴザイマス、依ッテ一應其主意ヲ述ベテ置キマス

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• 011・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　別ニ御質問ガナクバ委員ノ撰定ニ移リマス、議長
  指名デ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=11

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• 012・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　會計檢査院法中改正法律案、政府提出、第一讀會
  會計檢査院法中改正法律案
  右
  勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
  明治三十三年一月二十六日內閣總理大臣侯爵山縣有朋
  會計檢査院法中改正法律案
  會計檢査院法第二條中檢査官補「三十二員」ヲ「二十員」ニ改ム
  〔政府委員平田東助君演壇ニ登ル〕

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• 013・平田東助

  ○政府委員(平田東助君)　會計檢査院ニハ從來三十二名ノ檢査官ヲ定員ト致
  シテアリマシタノデゴザイマスガ、此度ハ之ヲ二十名ニシタイト云フニ關シ
  テノ法案デゴザイマス、此結果ハ何ニ依ッテ生ジマシタカト云フト檢査院ノ
  事務章程ノ改正カラ此減少ヲ來スベキ必要ガ生ジマシタ譯デゴザイマス、元
  來檢査院ニ於キマシテハ御承知ノ如ク三部ヲ設ケマシテ、其三部ノ下ニハ課
  ガゴザイマシテ檢査官ガ其課長ト爲,テ居リマス、撿査官補ハ其下ニ附イテ居
  リマス、卽チ事實檢査ノ事務ハ檢査官補ガ致シマス、而シテ其檢査致シマシ
  タ所ノ結果ヲ課長タル檢査官ガ之ヲ査閲致シマシテ正當ナリト認メマシタト
  キニ於テ之ヲ始メテ會議ニ提出致シマスト云フ仕組デゴザイマシタ、然ルニ
  今囘此事務章程ヲ改メマシテ檢査官卽チ課長自ラ其事務ヲ見ルコトニ致シマ
  シタ、檢査官補ハ卽チ課長ヲ助ケマシテ次長ト云フガ如キ資格ニ依ッテ事務
  ヲ整理スルト云フヤウナコトニ今度改正致シマシタ、其方ガ卽チ檢査院ノ事
  務執行ノ上ニ於テ便利ナルガ爲ニ斯樣ニ致シマシタ次第デゴザイマス、斯ノ
  如クナリマスルト云フト三十二名ノ檢査官補ヲ置クノ必要ガナクシテ之ヲ二
  十名ニ減少シテ更ニ事務上差支ナイト云フコトニ至リマシタノデゴザイマ
  ス、是ガ卽チ減少ノ法案ヲ提出致シマシタ理由デゴザイマス

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• 014・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　御發議ガナクバ委員ノ撰定ニ移リマス、是ハ前ノ
  日程第六ノ同一委員ニ付託シテハ如何デゴザイマセウ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 015・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　會計檢査官懲戒法案、政府提出、第一讀會
  會計檢査官懲戒法案
  右
  勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
  明治三十三年一月二十六日內閣總理大臣侯爵山縣有明
  會計檢査官懲戒法
  第一章總則
  第一條會計檢査官ノ懲戒ヲ受クヘキ場合左ノ如シ
  一職務上ノ義務ニ違背シ又ハ職務ヲ怠リタルトキ
  二職務ノ內外ヲ問ハス官職上ノ威嚴又ハ信用ヲ失フヘキ所爲アリタル
  トキ
  第二條懲戒ハ懲戒裁判所ノ裁判ニ依リ之ヲ行フ
  第三條懲戒ハ左ノ如シ
  -譴責
  減俸
  三免官
  第四條減俸ハ一月以上一年以下年俸月割額ノ三分ノ一以內ヲ減ス
  第五條免官ノ處分ヲ受ケタル者ハ其ノ判決ノ日ヨリ二年間官職ニ就クコ
  トヲ得ス
  第六條刑事裁判手續中ハ同一事件ニ付被告ニ對シ懲戒裁判手續ヲ開始ス
  ルコトヲ得ス懲戒裁判ノ言渡前同一事件ニ付被告ニ對シ刑事訴追ノ始リ
  タルトキハ其ノ事件ノ判決確定ニ至ルマテ懲戒裁判手續ヲ停止スヘシ
  第二章懲戒裁判所
  第七條懲戒裁判所ニ長官一人裁判官六人豫備裁判官六人ヲ置ク
  長官ハ樞密顧問官ノ中ヨリ裁判官ノ中三人ハ大審院判事三人ハ會計檢査
  院長ヲ加ヘ會計檢査官ノ中ヨリ內閣總理大臣ノ奏請ニ依リ之ニ補ス
  豫備裁判官ハ前項ノ例ニ依リ之ニ補ス
  第八條長官裁判官及豫備裁判官ノ任期ハ三年トス但シ補闕ノ爲補職セラ
  レタル者ノ任期ハ前任者ノ殘任期間トス
  第九條懲戒裁判所ハ長官及裁判官ヲ併セ七人ノ列席合議ヲ以テ裁判ス
  第十條懲戒裁判所ニ於テハ長官ヲ以テ裁判長トシ長官事故アルトキハ上
  席裁判官ヲ以テ裁判長トス
  裁判官事故アルトキハ其ノ同一官廳ヨリ出テタル豫備裁判官ノ中ヨリ長
  官其ノ代理ヲ命ス
  第十一條懲戒裁判所ノ裁判ノ評議ニ關シテハ裁判所構成法ノ規定ヲ準用
  ス
  第十二條懲戒裁判所ニ檢察官一人ヲ置ク
  檢察官ハ大審院勅任檢事ノ中ヨリ內閣總理大臣ノ奏請ニ依リ之ニ補ス
  第十三條懲戒裁判所ニ書記三人ヲ置ク
  書記ハ判任官ノ中ヨリ長官之ヲ命ス
  第三章裁判手續
  第十四條會計檢査院長ハ會計檢査院部長及檢査官ニシテ懲戒ニ該ルヘキ
  所爲アリト認ムルトキハ懲戒裁判所檢察官ニ通告スヘシ
  檢察官ハ事件ノ通告ヲ受ケタルトキ又ハ職權ヲ以テ懲戒裁判開始ノ申立
  ヲ爲スヘシ
  第十五條懲戒裁判所ハ檢察官ノ申立ニ因リ又ハ其ノ職權ヲ以テ懲戒裁判
  ヲ開始スヘキヤ否ヲ決定ス但シ職權ヲ以テスル場合ニ於テハ檢察官ノ意
  見ヲ徵スヘシ
  第十六條懲戒裁判開始シタルトキハ被告ハ其ノ裁判終結ニ至ル迄職務ニ
  就クコトヲ得ス
  第十七條開始決定ニハ懲戒スヘキ所爲及證據ヲ開示スヘシ
  第十八條開始決定ハ檢察官及被告ニ送達スヘシ
  第十九條懲戒裁判所ハ直ニ口頭辯論ノ期日ヲ定メ又ハ、下調ニ付スルノ決
  定ヲ爲スヘシ
  下調ニ付スルノ決定ハ檢察官及被告ニ送達スヘシ
  第二十條懲戒裁判所下調ニ付スルノ決定ヲ爲シタルトキハ裁判長ハ裁判
  官ニ其ノ下調ヲ命スヘシ
  受命裁判官ハ必要ナル證據ヲ集取スヘシ
  受命裁判官ハ證人訊問其ノ他證據集取ヲ區裁判所ノ判事ニ囑託スルコト
  ヲ得
  受命裁判官又ハ受託判事ハ證據集取ニ付刑事訴訟ニ於ケル豫審判事ト同
  一ノ權ヲ有ス但シ受命裁判官ハ罰金ヲ言渡シ又ハ勾引狀ヲ發スルコトヲ
  得ス
  第二十一條被告下調ニ關シ呼出ヲ受ケタルトキハ代理人ヲシテ代理セシ
  3
  ムルコトヲ得但シ受命裁判官又ハ受託判事ニ於テ本人ノ出頭ヲ必要トス
  ルトキハ此ノ限ニ在ラス
  第二十二條受命裁判官下調ヲ終リタルトキハ調書其ノ他一切ノ證據ヲ懲
  戒裁判所ニ差出スヘシ
  受託判事ハ囑託ヲ受ケタル職務ヲ終リタルトキハ調書其ノ他一切ノ書類
  ヲ受命裁判官ニ送致スヘシ
  懲戒裁判所ハ下調ノ補充ヲ決定スルコトヲ得
  第二十三條懲戒裁判所下調ヲ充分ナリト認ムルトキハ檢察官ノ意見ヲ徵
  シ口頭辯論ノ期日ヲ定メ又ハ免訴ノ決定ヲ爲スヘシ
  免訴ノ決定ハ檢察官及被告ニ送達スヘシ
  懲戒裁判所口頭辯論ノ期日ヲ定メタルトキハ之ヲ檢察官ニ通知シ被告ヲ
  呼出スヘシ
  第二十四條辯論及判決ノ言渡ハ之ヲ公開セス
  第二十五條口頭辯論ノ開始ハ裁判長之ヲ宣告ス
  裁判長ハ先ツ被告ヲ審問シ次テ證據調ヲ爲シ檢察官及被告ヲシテ辯論ヲ
  爲サシメ被告ニ最終ノ發言ヲ許スヘシ
  第二十六條懲戒裁判所ハ被告ノ申立ニ因リ書面審理ヲ爲スコトヲ得
  懲戒裁判所ハ書面審理ヲ許シタル場合ト雖被告ヲシテ口頭辯論ヲ爲サシ
  ムルコトヲ得
  第二十七條懲戒裁判所ハ被告若ハ檢察官ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ更
  ニ證據ヲ提出セシムルコトヲ適當ナリトスルトキハ之カ爲證人ノ召喚其
  ノ他必要ナル命令ヲ發シ且口頭辯論ヲ延期スルコトヲ得但シ第二十條第
  四項但書ハ本條ニ亦之ヲ準用ス
  第二十八條懲戒裁判所ニ於テ書面審理ニ基キ判決ヲ爲ス場合ニ在リテハ
  其ノ判決前事件ニ關スル書類ヲ檢察官ニ送致シ其ノ意見ヲ徵スヘシ
  第二十九條懲戒裁判所ハ事件ノ辯論既ニ充分ナリトスルトキハ之ヲ終結
  シ直ニ判決シテ之ヲ言渡スヘシ
  被告辯論期日ニ出頭セスト雖直ニ判決ヲ爲シ之ヲ言渡スコトヲ得此ノ場
  合ニ於テハ判決ヲ被告ニ送達スヘシ
  前二項ニ依リ直ニ判決スルコト能ハサルトキハ七日以內ニ判決ヲ爲シ之
  ヲ檢察官及被告ニ送達スヘシ
  書面審理ニ基キ判決ヲ爲シタルトキハ之ヲ檢察官及被告ニ送達スヘシ
  第三十條裁判長裁判官ノ忌避、囘避、證據集取ノ手續、調書ノ調製及書
  類ノ送達ニ關シテハ刑事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
  書類ノ送達ハ書留郵便又ハ懲戒裁判所ノ使丁ヲ以テ之ヲ爲ス此ノ場合ニ
  於テ郵便配達人及使丁ハ送達吏ト看做ス
  第三十一條證人鑑定人及通事ハ旅費日當ヲ要ムルコトヲ得其ノ金額ニ關
  シテハ刑法附則ヲ準用ス
  第三十二條懲戒裁判所判決ヲ爲シタルトキハ長官ヨリ直ニ其ノ旨ヲ內
  總理大臣及會計檢査院長ニ報告スヘシ
  第四章罰則
  第三十三條懲戒裁判所又ハ受命裁判官ヨリ證人トシテ呼出サレタル者及
  鑑定又ハ通事ノ爲呼出サレタル者正當ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ
  其ノ義務ヲ盡ササルトキハ四圓以上四十圓以下ノ罰金ニ處ス
  第三十四條證人トシテ懲戒裁判所又ハ受命裁判官若ハ受託判事ヨリ呼出
  サレタル者僞證ヲ爲シタルトキ及鑑定又ハ通事ノ爲懲戒裁判所又ハ受命
  裁判官若ハ受託判事ヨリ呼出サレタル者詐僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ一
  月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス賄賂
  其ノ他ノ方法ヲ以テ人ニ囑託シテ僞證又ハ詐僞ノ鑑定通事ヲ爲サシメタ
  ル者亦同シ
  前項ノ罪ヲ犯シタル者其ノ事件ノ判決ニ至ラサル前ニ自首シタルトキハ
  本刑ヲ免ス
  附則
  懲戒スヘキ所爲ハ本法施行前ニ關スルモノト雖本法ニ從ヒ之ヲ訴追ス
  〔政府委員平田東助君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=15

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• 016・平田東助

  ○政府委員(平田東助君)　檢査院法ニ依リマシテ檢査官ノ懲戒ハ別ニ法規ヲ
  定メテ之ヲ規定スルコトニナッテ居リマスル所ガ、從來未ダ懲戒法ノ制定ガ
  ナカッタノデゴザイマス、若シ一朝懲戒等ノ事ノ生ジマスル場合ニ當ッテハ斯
  ノ如キ法規ナクテハ彼ノ檢査官ガ檢査法ニ依ッテ擔保サレテ居ル所ノ資格ヲ
  保ツト云フコトニ於テ甚ダ危險ヲ感ジマスル次第デアリマスニ依リマシテ、
  今囘此法案ヲ制定致シマシテ、本院ニ提出致シマシタ次第デゴザイマス、宜
  シク御協賛ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=16

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• 017・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　是亦前ト同一ノ委員デ御異議ガナケレバ其通リニ
  致シマス
  〔「異議ナシ」-呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=17

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• 018・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　賣藥規則中改正法律案、政府提出、衆議院送付、
  第一讀會
  賣藥規則中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  明治三十三年一月二十六日
  衆議院議長片岡健吉
  貴族院議長公爵近衛篤麿殿
  賣藥規則中改正法律案
  賣藥規則中左ノ通改正ス
  第一條本法ニ於テ賣藥營業者ト稱スルハ賣藥ヲ調製シ又ハ外國ヨリ輸入
  シテ販賣スル者ヲ云フ
  第二條但書中「調製」ノ下ニ「シ又ハ二箇所以上ニ於テ外國賣藥ヲ輸入」ヲ
  加フ
  第四條ニ左ノ一項ヲ加フ
  輸入販賣ノ免許ヲ受ケタル外國賣藥ノ藥味分量用法服量能書ヲ外國ニ於
  テ改正シタルトキ其賣藥ヲ輸入販賣セント欲スルモノ亦前項ニ同シ
  第十條中「粗惡ニ」ノ下ニ「シ又ハ粗惡ニシタル外國賣藥ヲ輸入販賣」ヲ加フ
  第二十二條中「免許」ノ上ニ「第四條ノ」ヲ「改更シ」ノ下ニ「又ハ外國賣藥
  ヲ輸入販賣シ」ヲ加フ
  第二十五條中「配伍スル者」ノ下ニ「又ハ有毒藥ヲ配伍シタル外國賣藥ヲ
  私ニ輸入販賣スル者」ヲ加フ
  附則
  本法ハ明治三十三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔政府委員小松原英太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=18

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• 019・小松原英太郎

  ○政府委員(小松原英太郞君)　外國ヨリ輸入ヲ致シマスル賣藥ニ附キマシテ
  ハ從來取締ノ規定ガナイノデゴザイマス、取締上甚ダ差支ヘテ居ルノデゴザ
  イマス、依ッテ本案ノ如ク規定ヲ設ケマシテ外國ヨリ輸入致シマスル賣藥ニ
  附キマシテモ相當ノ取締ヲ致シタイ主意デ本案ヲ提出致シタノデゴザイマ
  ス、宜シク御審議ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=19

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• 020・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　是ハ議事日程第二ト關係ノアル案ノヤウデアリマ
  スカラ同一ノ委員ニ付託シテハ如何デセウ
  〔(異議ナシ)ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=20

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• 021・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　御異議ナクバ其通リ致シマス、產牛馬組合法案、
  政府提出、衆議院送付、第一讀會
  產牛馬組合法案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
  候也
  明治三十三年一月二十六日衆議院議長片岡健吉
  貴族院議長公爵近衛篤麿殿
  產牛馬組合法
  第一條牛又ハ馬ノ生產ニ從事スル者ハ本法ニ依リ組合ヲ設置スルコトヲ
  得
  第二條組合ハ牛馬ノ〓良及組合員ノ共同ノ利益ヲ圖ルヲ以テ目的トス
  第三條組合ハ郡市以上ノ區域ニ依リ其ノ地區ヲ定ムヘシ但シ特別ノ事由
  アルトキハ此ノ限ニ在ラス
  第四條組合ヲ設置セムトスルトキハ其ノ地區內ニ於テ組合員タルヘキ者
  ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款ヲ議定シ地方長官ノ認
  可ヲ受クヘシ但シ牛ノ生產ニ從事スル者及馬ノ生產ニ從事スル者相合シ
  テ組合ヲ設置セムトスルトキハ各別ニ三分ノ二以上ノ同意ヲ要ス
  第三條但書ノ場合ニ於テハ地方長官ハ農商務大臣ノ認可ヲ得テ認可ヲ與
  フヘシ
  第五條農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ地方又ハ地區ヲ指定シテ組合ノ
  設置ヲ命スルコトヲ得
  第六條監督官廳ハ必要ト認ムルトキハ組合ヲシテ種牛馬ノ供給若ハ牛馬
  ノ系統登錄ヲ爲サシメ又ハ糶場ヲ設ケシムルコトヲ得
  第七條本法ニ規定ナキモノニ付テハ重要輸出品同業組合法第四條但書ヲ
  除クノ外之ヲ本法ニ準用ス但シ同法第六條乃至第八條、第十一條及第十
  六條農商務大臣ノ職務ハ地方長官之ヲ行ヒ第九條第十三條及第十五條農
  商務大臣ノ職務ハ地方長官ヲシテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
  附則
  第八條本法ハ明治三十三年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
  第九條重要輸出品同業組合法ノ規定ニ依リ設置シタル產牛馬組合ハ本法
  施行ノ日ヨリ本法ニ依リ設置シタルモノト看做ス
  第十條本法施行以前ニ地方長官ノ認可ヲ經テ設置シタル產牛馬組合ニシ
  テ本法ノ規定ニ牴觸セサルモノハ本法施行ノ日ヨリ本法ニ依リ設置シタ
  ルモノト看做ス
  本法施行以前ニ本法ニ牴觸スル條項ヲ改正シタルモノ前項ニ同シ
  〔政府委員和田彥次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=21

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• 022・和田彦次郎

  ○政府委員(和田彥次郞君)　此法案提出ノ理由ヲ申上ゲマスデゴザイマス、
  御承知ノ通リ我國ノ馬ノ方ニ於キマシテハ數年前ヨリ種馬所牧場等ヲ設ケマ
  シテ政府ニハ之ガ改良ニ著々從事致シテ居リマス、又牛ノ方ニ附キマシテハ
  本年既ニ協賛ヲ得マシタル如ク種牛場ヲ新設致シマシテ三十三年度ヨリ之ガ
  改良ヲ計ル積リデアリマス、然ルニ民間ニ於キマシテハ往々組合等ヲ設ケテ
  改良ノ途ニ就イテ居リマスガ、其組合タル十分鞏固ナル基礎ヲ以テ組織シテ
  居ルノハ甚ダ稀デゴザイマス、就テ之ニ關シマシテ法律等モゴザイマセヌ、
  此度本案ヲ以チマシテ從來設ケテアル所ノ組合ニ向ッテハ鞏固ナル基礎ヲ與
  ヘ將來起ル組合ニハ漸次此法律ニ依リマシテ鞏固ナル組合ヲ組織サセタイ考
  デ本案ヲ提出致シマシタノデゴザイマス、詳細ハ何レ委員會モゴザイマセウ
  デ其節ニ說明ヲ致シマス、大體

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=22

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• 023・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　御質疑ガナケレバ委員ノ選定ニ移リマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=23

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• 024・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　議長指名デ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=24

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• 025・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　裁判所管轄區域變更ニ關スル法律案、政府提出、
  第一讀會ノ續、特別委員長報告
  〔關義臣君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=25

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• 026・關義臣

  ○關義臣君　諸君、此法律案ノ委員長ハ鍋島子爵デゴザイマシタガ、本日ハ
  所勞デ出頭ガゴザイマセヌ、依ッテ本員ハ豫テ副委員長ニ推撰セラレテ居リ
  マスカラ不束ナガラ委員長ニ代リマシテ委員會ノ景況竝ニ結果ヲ御報道ニ及
  ビマス、此御報道前ニチヨット申上ゲテ置キマスルガ、別表中名古屋地方裁判
  所ノ管內西尾區裁判所ノ管轄ノ幡豆郡ノ内ニ「豐岡村」トゴザイマスガ是ハ
  「豐國村」ノ誤デアリマシテ活版ノ誤植ト云フコトデアリマスカラ左樣御承知
  ヲ願ヒマス、偖此法案第一條ノ千葉地方裁判所管內佐原區裁判ノ管轄卽チ常
  陸國裕敷郡金江津村外二箇村ヲ水戶地方裁判所管内龍ケ崎區裁判所ノ管轄ニ
  編入換ニナリマスル、是ハ已ムヲ得ナイノデアラウト存ジマスガ、昨年卽チ
  明治三十二年法律第四號ヲ以チマシテ千葉縣ノ管轄タル金江津村外二箇村ヲ
  茨城縣ニ管轄換ニナリマシタ結果デアリマス、抑〓縣縣ニ一ノ地方裁判所
  ヲ置カレマシテ、地方裁判所ノ管轄ハ其一縣內ノ管轄ト同一ニナルト云フコ
  トハ從前カラ定ッテアリマス、一ノ慣例トモ云フヤウナコトニナッテ居リマス、
  既ニ右ノ如ク昨年法律第四號ヲ以チマシテ千葉縣ノ支配地タル三箇村ヲ茨城
  縣ニ編入換ニナリマシタ以上ハ此法案ノ如ク區裁判所ノ區域モ更改ニナリマ
  スルノガ相當ノコトデアルト申スコトデゴザル、委員會ニ於キマシテハ一人
  ノ異議者モナク滿場一致ヲ以テ原案通リ可決致シタ譯デゴザイマス、又此第
  二條ノ裁判所ノ位置及管轄區域表中橫濱地方裁判所外七地方裁判所ノ管内ニ
  於ケル區裁判所ノ管轄中此別表ノ通リ改定ニナリマスモノハ各管轄區內ノ多
  クハ人民ノ情願ニ基カレマシテ登記ノ請求又ハ非訟事件取扱等ノ便宜上ニ於
  テ右橫濱外七地方裁判所管內ノ區裁判所管轄區域チ變更セラレルノ必要ガア
  ルノデアリマス、尙ホ此人民ノ便宜ト云フモノハ近來各地ノ道路大ニ開ケ、
  例ヘバ里道ガ甚ダ改修等ニナッテ本道ヨリハ近イト云フヤウナ便宜又ハ鐵道
  ノ開通等ニ伴ヒマシテ從前ノ管轄ヨリハ此表ノ如ク更改セラレマスレバ人民
  ノ好ム所、一層便利デアルト云フコトデアリマス、就イテハ委員會ニ於キマシ
  テハ是亦一人ノ異議モナク滿場一致ヲ以テ原案ハ相當ナリト可決致シタ譯デ
  アリマス、尙ホ一言申上グテ置キマスルガ、此裁判所ノ地方ニ關スル地理上
  等ノ儀ハ少シクハ委員會デモ調ベテモ見マシタケレドモ、格別必要ハナイト
  認メマシタノデ地理上ノコトハ本員抔ハ至ッテ不案內デアリマスカラ諸君ノ
  中ニ或ハ地理ニ關スル御質問デモゴザイマスレバ直チニ政府委員ニ就イテ御
  尋アルコトヲ希望致シマス、偖此法律案ハ至ッテ簡單ナモノデ御覽ノ如ク事
  理モ明瞭デアリマスルカラ或ハ格別御議論モナイコトカト思考致サレマス、
  就テハ讀會省略ヲ以テ速ニ可決ニナラムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=26

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• 027・西五辻文仲

  ○男爵西五辻文仲君　讀會省略ニ贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=27

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• 028・中川興長

  ○男爵中川興長君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=28

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• 029・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=29

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• 030・松永安彦

  ○松永安彥君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=30

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• 031・山口弘達

  ○子爵山口弘達君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=31

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• 032・南郷茂光

  ○南〓茂光君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=32

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• 033・本田親雄

  ○男爵本田親雄君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=33

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• 034・長松幹

  ○男爵長松幹君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=34

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• 035・金子有卿

  ○男爵金子有〓君　贊成
  〔此他「贊成」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=35

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• 036・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　讀會省略ノ動議ハ成立チマシタ、之ニ同意ノ諸君
  ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=36

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• 037・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　三分ノ二以上ト認メマス、讀會ハ省略ニナリマシ
  タ、次ニ本案御異議ガナクバ原案ニ決シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=37

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• 038・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　次ハ明治三十二年法律第九十八號改正法律案、政
  府提出、第一讀會ノ續、特別委員長報告
  〔兒玉淳一郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=38

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• 039・兒玉淳一郎

  ○兒玉淳一郞君　諸君、今日ハ鍋島子爵ガ病氣デゴザイマシテ本員ヨリ代,
  テ御報告甲スベキト云フコトデゴザイマスカラ本員ガ御報告申シマス、此法
  案ハ二十七日ノ午前十時ニ會議ヲ開カレマシタ、然ル處御存ノ通リニ此法案
  ハ至ッテ簡單デゴザイマシテ全會一致ヲ以テ可決ニナリマシテゴザイマス、
  ト申スハ昨年ノ十二月二十日ニ本院デ明治三十二年法律第九十八號ノ續キヲ
  以チマシテ此改正ノコトガ本院ノ議ニ上リマシテ本院デ修正ガ出來マシテ衆
  議院ノ方ヘ參ッデ居リマス、是ガモウ衆議院ノ方デモ直チニ運ンデ來ル積リ
  デゴザイマス、ソレニ附キマシテハ此法案モ亦此通リニ文章ヲ變ヘネバ前ニ
  改正シタモノト對ニナリマセヌカラ一樣ノ方ヲ取ル爲ニ斯ウ改正ニナッタノ
  デアリマス、ソレダケノコトデゴザイマスカラ至ッテ簡單デゴザイマス故ニ、
  委員會ニ於キマシテ一言ノ異論モナクッテ可決致シマシタ、此段御報告致シ
  マス、就キマシテハ此案ハ簡單デゴザイマスカラ讀會ヲ省略シテ早ク御決議
  ニナラムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=39

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• 040・松本鼎

  ○松本鼎君　讀會省略ニ贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=40

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• 041・小笠原壽長

  ○子爵小笠原壽長君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=41

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• 042・大原重朝

  ○伯爵大原重朝君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=42

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• 043・藤井行徳

  ○子爵藤井行德君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=43

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• 044・南郷茂光

  ○南〓茂光君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=44

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• 045・中川興長

  ○男爵中川興長君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=45

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• 046・鍋島直柔

  ○子爵鍋島直柔君　贊成
  〔此他「贊成」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=46

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• 047・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　讀會省略ノ動議ハ成立チマシタ、之ニ同意ノ諸君
  ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=47

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• 048・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　三分ノ二以上ト認メマス、讀會ハ省略ニナリマシ
  タ、本案御異議ガナクバ原案ニ決シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=48

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• 049・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　官吏思給法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、
  第一讀會ノ續、特別委員長報告
  〔子爵岡部長職君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=49

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• 050・岡部長職

  ○子爵岡部長職君　官吏恩給法中改正法律案、同案ノ委員會ニ於キマシテハ
  原案ノ如クニ可決致シテ然ルベキト決シマシタノデアリマス、此案ハ甚ダ簡
  單ナルモノデアッテ同法中ノ第九條三號中ニ「郡區書記」トアリマスルノヲ
  「郡區判任官」ト改メタ、此改正ノ主意ハ郡區書記ト致シテ置キマスルト卽チ
  郡區書記ニ限リマスノデアリマスルガ、郡ニハ郡視學ト云フ者ガアリ、又郡
  ノ技手ト云フ者ガアル、斯ノ如キハ皆矢張リ郡ノ判任官ノ中ニ居ル者デアリ
  マス、而シテ郡區書記トノミニ致シテ置キマスルト郡ノ視學、郡ノ技手抔ト
  云フ者ガ卽チ此恩給法ノ特典ニ浴スルコトガ出來マセヌノデアリマス、依ッテ
  是等ノ者モ之ヲ總括シテ卽チ郡區判任官ト云フ名稱ノ中ニ網羅セシメルト云
  フ改正ノ主意デアリマス、此第九條第三號ノ全文ヲ讀ンデ見マスルト現行法
  ニ於キマシテハ「郡區書記ヲ除クノ外政府ヨリ俸給ヲ受ケサル官職ニ在ル月
  數及商業ヲ營ムコトヲ得ヘキ官職ニ在ル月數」ト云フコトニナッテ居リマス、
  卽チ此月數ハ第九條ノ初ニ於ケ「左ニ揭クル月數及日數ハ在官年數中ヨリ除
  算スヘシ」ト云フ其中ノ三デアルノデ、唯今朗讀シマシタ所ノ郡區書記ト云
  フ所ヲ卽チ郡區判任官ト云フコトニ改メレバ先ニ述ベマシタル所ノ視學技手
  ノ如キモ皆此恩典ニ浴スルコトガ出來ルト云フコトニナリマス、第十三條、
  同條ノ二項ニ於テ現行法デハ「法律ヲ以テ設立シタル」トアリマス所ヲ「法
  令ヲ以テ」ト云フコトニ改正ニナリマスノデアリマス、法律ト申シマスルト
  卽チ法律ニ限ルコトデアルカラ法令トナレバ法律勅令總テ法令ヲ含ムコトニ
  ナルカラ法令ト云フコトニ改正致シタイト云フ主意デアリマス、ソレカラ同
  項中ニ現行法ニ於キマシテハ「法律ヲ以テ設立シタル議會ノ議員ト爲リタル
  ノ故ヲ以テ退官シタル者ハ恩給ヲ受クルノ資格ヲ失ハス」トアル、處ガ「議會
  ノ議員」ト云フ下ヘ「竝市長町村長助役收入役名譽職參事會員及東京市京都
  市大阪市北海道ノ區長」是ダケノ文字ヲ挾ムコトニナッテ居リマス、現行法
  ニ據ルト「法律ヲ以テ設立シタル議會ノ議員ト爲リタルノ故ヲ以テ退官シタ
  ル者ハ恩給ヲ受クルノ資格ヲ失ハス」トアルノヲ、ソレノミナラズ市長町村
  長其他ノ公職ニ就クノ故ヲ以テ退官シタル者モ矢張リ恩給ヲ受クルノ資格ヲ
  失ハズト致シタ方ガ宜カラウト云フコトノ主意デアリマス、第十四條第一項
  ヲ改正ニナリマシタルノハ是ハ現行法ニ於テ「政府ヨリ俸給ヲ受ケサル官吏
  及商業ヲ營ムコトヲ得ヘキ官吏竝高等官試補判任官見習ハ恩給ヲ受クルノ權
  ナキモノトス但郡區書記ハ此限ニ在ラス」ト爲ッテ居リマス「但郡區書記ハ
  此限ニ在ラス」ト云フ此文字ヲ削除シテ此項ノ初ニ「郡區判任官ヲ除クノ外」
  ト云フ文字ヲ入レルコトニナリマシタ、是ハ法文ノ上ニハ但書ヲ削ッテ「郡
  區判任官ヲ除クノ外」ト云フ字ヲ初ニ入レマスルコトデアルノデ、少々變ッテ
  ハ見エマスルケレドモ、併シ是ハ矢張リ最初ニ申上ゲタ所ノ改正ノ主意ト同
  ジコトデ「郡區書記」ト云フコトヲ「郡區判任官」ト云フコトニ〓メタト云フ主
  意ニ外ナリマセヌノデアリマス、〓正ノ點ハ唯今申上ゲマシタ通リノコトデ
  アリマシテ委員會ニ於キマシテハ至極相當ナル改正ト認メテ可決スベキモノ
  ト議決致シマシテゴザイマス、登壇ノ序ヲ以チマシテ議長ノ許ヲ得マシテ次
  ノ二案ノ委員會ノ報告ヲ致シテ置キマス、官吏遺族扶助法中改正法律案、是
  モ矢張リ前案ト牽聯ヲ致シマシタルコトデアリマシテ、第三條第二項中郡書
  記トアリマスル所ヲ郡判任官ト改メルノデアリマス、之ニ附イテ別ニ委シク
  申上ゲル必要モナイト思ヒマスカラ簡單ニ此事ヲ申上ゲマセウ、卽チ委員會
  ニ於キマシテハ全會一致ヲ以テ可決致シマシタト云フコトダケヲ御報告致シ
  テ置キマス、次ニ官吏恩給法及官吏遺族扶助法補則中改正法律案、是モ前案
  同樣「郡區書記」トアリマスノヲ郡判任官ト改メタニ過ギマセヌノデ、是モ
  同樣一致ヲ以テ可決致シマシテゴザイマス、此三案ハ唯今御報告致シマシタ
  如ク誠ニ明瞭ナル簡單ナル案デアリマスルカラシテ、ドウゾ讀會ヲ省略サレ
  マシテ卽決アラムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=50

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• 051・西五辻文仲

  ○男爵西五辻文仲君　讀會省略ニ贊成致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=51

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• 052・小笠原壽長

  ○子爵小笠原壽長君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=52

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• 053・大久保忠順

  ○子爵大久保忠順君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=53

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• 054・松永安彦

  ○松永安彥君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=54

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• 055・關義臣

  ○關義臣君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=55

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• 056・渡邊清

  ○男爵渡邊〓君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=56

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• 057・南郷茂光

  ○南〓茂光君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=57

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• 058・色部義太夫

  ○色部義太夫君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=58

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• 059・野宮定穀

  ○子爵野宮定穀君　贊成
  〔此他「贊成」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=59

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• 060・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　讀會省略ノ動議ハ成立チマシタ、是ハ岡部子爵ノ
  動議ハ三案共ニ讀會省略ト云フコトデアリマスガ、此動議ガ成立チマスト三
  案共ニ讀會省略ニナリマスカラ左樣御承知ヲ願ヒマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=60

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• 061・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　之ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=61

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• 062・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　三分ノ二以上ト認メマス、讀曾ハ省略ニナリマシ
  タ、議事日程第十八、御異議ナクバ原案ニ決シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=62

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• 063・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　第十九モ御異議ナクバ原案ニ決シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=63

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• 064・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　第二十モ御異議ナクバ原案ニ決シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=64

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• 065・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　汚物掃除法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
  ノ續、特別委員長報告
  〔子爵山內豐誠君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=65

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• 066・山内豐誠

  ○子爵山内豐誠君　汚物掃除法案委員會ノ經過及結果ヲ御報道致シマス、委
  員會ハ過ル二十七日ニ開キマシテ多少質問ハゴザイマシタガ、結局衆議院ヨ
  "
  リ修正送付ニナリマシタ此案全體ヲ一ノ異議ナク可決スベキモノト議定致シ
  マシタ、右委員會ノ議ニ御贊同アッテ速ニ可決アラムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=66

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• 067・小笠原壽長

  ○子爵小笠原壽長君　本案ハ諸君ニ於テモ御異議ナカラウト存ジマスカラ讀
  會省略ノ動議ヲ提出致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=67

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• 068・名村泰藏

  ○名村泰藏君　第二讀會ニ至ッテ少シ修正ヲ提出致シタイト思ヒマスカラ、
  ドウカ讀會省略ハナサラズニ御置キヲ願ヒマス··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=68

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• 069・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　本案ハ二讀會ニ移ルベシトスルコトニ御異議ゴザ
  イマセヌカ
  〔「異議ナシト」呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=69

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• 070・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　然ラバ二讀會ニ移ルベシト決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=70

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• 071・西五辻文仲

  ○男爵西五辻文仲君　直チニ二讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス
  〔「贊成」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=71

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• 072・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　第二讀會ニ移ッテ諸君御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=72

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• 073・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　然ラバ第二讀會ニ移リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=73

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• 074・名村泰藏

  ○名村泰藏君　第六條ニ於キマシテ·······

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=74

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• 075・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　第六條デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=75

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• 076・名村泰藏

  ○名村泰藏君　サウデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=76

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• 077・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　ソレデハ六條ニ移ッタトキ修正ノ提出ヲ願ヒマス、
  第一條ヨリ第五條マデヲ問題ニ供シマス、朗讀ハ省略シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=77

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• 078・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　御異議ガナクバ原案ニ決シマス、第六條
  第六條當該吏員ハ掃除ノ實況ヲ監視シ必要ナル事項ヲ施行スル爲其ノ事
  由ヲ告知シテ私人ノ占有スル土地ニ立入ルコトヲ得

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=78

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• 079・名村泰藏

  ○名村泰藏君　第六條ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=79

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• 080・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　演壇デ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=80

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• 081・名村泰藏

  ○名村泰藏君　チヨットデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=81

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• 082・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　併シ能ク聞エマセヌ、ソチラノ方デハ······
  〔名村泰藏君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=82

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• 083・名村泰藏

  ○名村泰藏君　第六條ノ中ニ「私人ノ占有スル土地」ト云フコトガゴザイマ
  ス、此「占有スル」ト云フコトニ附イテ私モ特別委員ノ一人デアリマシタガ、政
  府委員ニドウ云フ意味デ是ハ書カレタカト云フコトヲ尋ネマシタ所ガ占有ト
  云フコトハ極ク輕ク見タ文字デアル、唯所有スルトカ所持スルトカ云フヤウ
  ナ心持デアルト云フヤウナコトデアリマシタカラ、格別私モ重クソレヲ見ズ
  シテ委員會ハ通過致シマシタガ、第一條ニ於テ「土地ノ所有者使用者又ハ
  占有者」ト斯ウ竝ベテ書イテアリマス、此「占有者」ト第一條ニ書イテアル所
  ノ文字カラ見マスルト此一條ニ書イテアル「占有者」ハ民法ニ定メテアル所
  ノ法律ノ語デアル、此三ツヲ總括スル爲ニ單ニ此所ヘ持ッテ來テ占有スル土
  地ト書イタノハ甚ダ穩當デナイト云フ說モアリマシタガ、此汚物法案ノ委員
  會ニ於テハ格別ノ異議モナクシテ通過シテ仕舞ヒマシタ、然ルニ下水法案ト
  云フモノガアリマシテ、其中ニモ「占有スル」ト云フ文字ガアリマス、丁度
  是ハ同一ナ場所ニ附ケテアリマスルガ、下水法案ノ委員會ニ於テハドウモ占
  有スルト云フ文字ハ甚ダ法律語デアルカラ穩當デナイデ是ハ削ッタ方ガ宜ク
  ハナイカト云フ委員會ノ議デ悉ク削ルコトニ議決ヲ致シマシタ、シテ見ルト
  同ジヤウナ法律デ同ジヤウナ事柄ノ場合ニ此「占有」ト云フ字ヲ使フノハ甚
  ダ穩當デナイト云フコトヲ私ハ感ジマシタカラ、此掃除法案ノ第六條ニ於テ
  此「占有スル」ト云フ四字ヲ削ッテ下水法案同樣ナ文體ニ致シタイト云フ考デ
  ゴザイマス、ドウカ御贊成ヲ願ヒマシテ此四字ヲ削ルヤウニ致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=83

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• 084・西五辻文仲

  ○男爵西五辻文仲君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=84

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• 085・松平正直

  ○松平正直君　簡單ナ修正デハゴザイマスガ、此「占有スル」ト云フ四字ガ取
  レマスト能ク解釋ガ爲シ得ルヤウニ存ジマス、此字ガアル爲ニ却ッテ困リマ
  ス、此修正ハ誠ニ宜イト思ヒマスカラ贊成致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=85

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• 086・小澤武雄

  ○男爵小澤武雄君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=86

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• 087・水野遵

  ○水野遵君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=87

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• 088・渡邊洪基

  ○渡邊洪基君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=88

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• 089・金子有卿

  ○男爵金子有卿君　贊成
  〔發言ノ許可ヲ求ムル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=89

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• 090・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　今政府委員ヨリ辯明ガアリマス
  〔政府委員一木喜德郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=90

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• 091・一木喜徳郎

  ○政府委員(一木喜德郞君)　唯今ノ名村君ノ御修正說ニ對シマシテハ强ヒテ
  異存ヲ申ス程ノコトモゴザイマセヌケレドモ、政府案ニ「占有スル」ト書キマ
  シタノハ據リ所ノナイノデハゴザイマセヌ、民法等ニモ既ニ同ジヤウナ意味
  ニ「占有スル」ト云フ語ヲ使ッテ居ル箇條ガ多々アルヤウデゴザイマス、其例
  ヲ申上ゲマスレバ、例へバ「質權者ハ債務者又ハ第三者ヨリ受取リタルモノヲ
  占有スル」ト云フ規定モゴザイマス、ソレカラ「動產質權者ハ繼續シテ質物
  ヲ占有スルニアラサレハ」云々ト云フヤウナ規定モゴザイマス、其他一々ハ
  申上ゲマセヌケレドモ既ニ本權ヲ持ッテ居リマスル者ガ其物ヲ占有致シマス
  ルコトモ矢張リ民法デハ占有ト見テ居ル箇條ガ澤山アルヤウデゴザイマス、
  强チ所有ノ意思ヲ以テ占有スル場合ノミヲ占有ト稱スル譯デハナイト考ヘマ
  スカラ「占有スル土地」ト書キマシテモ別段民法ノ意味ニ牴觸スル所ハナイト
  思ヒマス、此事ハ今ノ御修正通リニナリマシテモ此案ダケハ强ヒテ差支ハナ
  イケレドモ、併シ他ノ法律等ニモ大分關係ガアルコトデゴザイマスカラ、强
  ヒテ御差支ノナイコトデアリマスレバ委員長ノ御報告通リ御議決ニナルコト
  ヲ望ミマス、尙ホ民法ノ條例等ニ附イテ御尋ガゴザイマスレバ箇條ヲ擧ゲテ
  御答致スコトニ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=91

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• 092・堀田正養

  ○子爵堀田正養君　本員ハ名村君ノ修正ノ「占有スル」ノ四字ヲ削ルト云フ說
  ニ贊成デス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=92

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• 093・谷干城

  ○子爵谷干城君　本員ハ卽チ下水法案ノ方ノ特別委員ノ一人デアリマスル
  ガ、此下水法案ノトキニ報告ヲ致ス積リデアリマスガ、何分是ハ委員會ニ於
  キマシテ政府委員ノ說明等ガ甚ダ不明瞭デアリマシタ、詰リ占有ト云フ字ヲ
  强解スレバ成ル程言葉ハ付キマセウガ、又場合ニ依ッテハ宜イカモ知レマセ
  ヌケレドモ、現ニ此初ニ「所有者使用者又ハ占有者」ト斯ウナッテ居ル、依ッ
  テ六條ヘ持ッテ來テ「占有スル」ト生カシテ、活用シテ持ッテ行クト云フ譯ニナ
  ル、サウスルトドウモ此字句ノ順序ニ於テモ甚ダ穩當デナイコトデアリマス
  カラ此所モ此「占有スル」ト云フ字ハ削ル方ガ極ク宜カラウ、從ッテ後トニ出
  マス、下水法案ノ方モ削ッテ戴キタイト思ヒマス、之ヲ削ッテドノ位害ガアル
  カト云フト「私人ノ土地ニ立入ルコトヲ得」ト云フノデアリマスカラ少シモ
  差支ハナイ、ソレデ私ハ削ル方ニ御贊成アラムコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=93

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• 094・岡部長職

  ○子爵岡部長職君　名村君ノ說ニ贊成シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=94

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• 095・西村亮吉

  ○西村亮吉君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=95

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• 096・山内豐誠

  ○子爵山內豐誠君　本員モ唯今ノ名村君ノ修正ニ贊成致シマス、此「占有ス
  ル」ト云フ字ノアル爲ニ却ッテ解釋ヲ誤ル憂ガアラウト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=96

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• 097・伊澤修二

  ○伊澤修二君　本員モ名村君ノ修正ニ贊成致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=97

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• 098・柴原和

  ○柴原和君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=98

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• 099・中島永元

  ○中島永元君　贊成
  〔「贊成」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=99

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• 100・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　修正ノ動議ハ成立チマシタ、別ニ御發議ガナクバ
  採決シマス、名村君ノ修正卽チ「私人ノ占有スル」トアル一占有スル」ト云フ四
  字ヲ削ルト云フ動議、之ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=100

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• 101・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　過半數ト認メマス、名村君ノ修正ニ決シマス、第
  七條ヨリ第十一條マデ問題ニ供シマス、御異議ガナクバ原案ニ決シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=101

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• 102・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　是ニテ二讀會ハ終リマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=102

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• 103・西五辻文仲

  ○男爵西五辻文仲君　直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ請求致シマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=103

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• 104・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　西五辻男爵ヨリ直チニ三讀會ヲ開クト云フ說ニ段
  々贊成ガゴザイマス、之ニ御異議ガナクバ····
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=104

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• 105・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　然ラバ三讀會ヲ開キマフ、御異議ナクバ原案ニ決
  シマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=105

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• 106・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤曆君)　民法施行法中改正法律案、衆議院提出、第一讀會
  民法施行法中改正法律案
  右本院提出案及送付候也
  明治三十三年一月二十六日衆議院議長片岡健吉
  貴族院議長公爵近衛篤麿殿
  民法施行法中左ノ通改正ス
  第四十七條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  民法施行前ニ永久存續スヘキモノトシテ設定シタル永小作權ハ民法施行
  ノ日ヨリ五十年ヲ經過シタル後一年內ニ所有者ニ於テ相當ノ償金ヲ拂ヒ
  テ其消滅ヲ請求スルコトヲ得若シ所有者カ此權利ヲ抛棄シ又ハ一年內ニ
  此權利ヲ行使セサルトキハ爾後一年內ニ永小作人ニ於テ相當ノ代價ヲ拂
  ヒテ所有權ヲ買取ルコトヲ要ス
  〔政府委員梅謙次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=106

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• 107・梅謙次郎

  ○政府委員(梅謙次郞君)　唯今議長ヨリ宣告ニナリマシタル所ノ法案ハ衆議
  院ヨリ提出ニ相成リマシタノデアリマスルガ、民法施行法中ニ改正ヲ加ヘマ
  シテ、從來ヨリ存シテ居ル所ノ永小作ノ中デ永代ト云フ特別ノ約定ノアルモ
  ノニ附イテ民法施行法ノ規定ヲ變更致シマシテ五十年ヲ過グレバ永小作權ハ
  消滅スベキヲ本則ト致シマスケレドモ、併シ唯今申上ゲマシタ特別ノ場合ニ
  限ッテハ何レカヨリ償金ヲ拂ヒマシテ相手ノ權利ヲ買取ルト云フ主意ニ成立ッ
  テ居リマスル案デアリマス、此事柄ニ附キマシテハ民法施行法制定ノ際、政
  府ニ於テモ時ノ許ス範圍內ニ於テ調査ヲ致シマシテ五十年是等ノ者ニ權利ヲ
  繼續セシメタナラバ其後ハ直チニ消滅スルモノトシテモ宜カラウト云フ考デ
  ハアリマシタケレドモ、段々利害關係者ノ請願等モアッテ衆議院ニ法案ヲ提
  出ニナッタコトデアリマスルカラ、權利ガ永久ニ存續スルト云フ主意デアレバ
  政府ハ同意スルコトハ出來マセヌケレドモ、權利ハ矢張リ五十年若クハ五十
  一二年ニシテ消滅スル、唯一方カラ他ノ一方ニ對シテ償金ヲ拂フト云フダケ
  ノコトデアレバ或ハ他人ノ權利ヲ害セズシテ永小作ト云フ權利ガ消滅ノ出來
  ルト云フコトニナリマシテ、却ッテ宜シイカモ知レナイト思フ位デアリマス
  カラ、政府ハ反對ヲ致シマセヌノデアリマス、尤モ衆議院ニ於キマシテモ初
  ノ提出者ノ案ニハ缺點ガアリマシタノデ、衆議院ニ於テ斯ノ如ク修正ヲ加ヘ
  マシテ、卽チ衆議院ヨリ本院ヘ提出ニ相成リマシタニ附イテハ政府ハ反對ヲ
  致シマセヌノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=107

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• 108・黒田和志

  ○子爵黑田和志君　政府委員ニ質問ヲ致シマス、此「所有權ヲ買取ルコトヲ
  要ス」ト末文ニゴザイマス、是ガ買取ルコトヲ爲サナカッタ場合ニ其期限ヲ
  過グレバ當然永小作權ハ消滅スルト云フコトニ見テ宜シウゴザイマスカ、其
  說明ヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=108

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• 109・梅謙次郎

  ○政府委員(梅謙次郞君)　是ハ民法上ノ權利義務デアリマスカラ詰リ「買取
  ルコトヲ要ス」ト云ヘバ取リモ直サズ買取ル義務アリト申ス其義務ノ相手方
  ハ誰デアルカト申シマスルト云フト、土地ノ所有者デアリマスルカラ土地ノ
  所有者ヨリ致シテ買取ラシメルコトヲ得ルト云フ主意デアリマス、唯時ヲ過
  グレバ當然消滅スルト云フコトデハナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=109

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• 110・谷干城

  ○子爵谷干城君　チヨット質問ヲ········此法律ハ私抔ガ希望シテ居ル所ニ適フ
  ヤウニ思ヒマスケレドモ、尙ホ能ク御尋ヲシテ置キタイト思ヒマスガ、私共
  ハ土佐デアリマスガ、土佐ノ國抔デハ上土、底土ト稱ヘル永小作ガアル、是
  ハモウ古イ習慣デ實ハ上土ト云フモノガ底土卽チ今日ノ地主ニナッテ居ル者
  ハ上土主ノ方ニ權利ガアル、其地ノ種類ニアリマスケレドモ、上土主ニズット
  權利ノアルモノガアル、ソレデ又底土主ハドウ云フモノデアルカト言ウテ見
  ルト、ズット上土主ヨリハ土地ヲ買入レ、價モズット安ウ買入レル、斯ウ云フ
  ヤウナコトデ、若シ之ヲ底土主卽チ地主ト云フ者ノ年限ノ切レタ曉ニハ皆取
  ラルヽト云フコトニナッタラ、ソレコソ大變ナ損害ニナルノデアリマスカラ、
  之ヲ防グコトニ附イテハ何レカ方法ガナケレバナラヌト考ヘテ居リマスガ、
  多分ソレ等ノ必要カラ此法律ガ出來タデアラウト思ヒマス、ソコデ一ツ伺フ
  テ置キタイノハ買取ル義務アリト云フカラシテ固ヨリ地主ガ小作權ヲ買取ラ
  ヌナラヌ、其直段ノ折合等ノコトニ至ッテハ今後必ズ喧マシイ議論ガ起ラウ
  ト思ヒマスガ、ソコ等ノ所ハドウ云フヤウナ御見込ガアリマスカ、民事ノ裁
  判所ニ訴ヘルコトニナリマスカ、ソコヲ伺ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=110

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• 111・梅謙次郎

  ○政府委員(梅謙次郞君)　御答致シマス、此法案デハ所有者ノ方ニ買取ル義
  務ヲ負ハスルト云フコトデナクシテ所有者ニ買取ル權利ガアル、所有者ガ買
  ハヌケレバ永小作ニ於テ買取ル義務ガアルト斯ウ云フコトニナッテ居リマス、
  ソコデ相當ノ期限若ハ相當ノ代價トアリマスルカラ、若シ當事者ノ間ニ協議
  ガ調ヒマセヌケレバ巳ムヲ得ズ是ハ裁判ニナリマス、其場合ニハ裁判官ハ固
  ヨリ法律ニ依ッテ覊束ヲ受ケマセヌコトデアリマスカラ鑑定人ヘデモ命ジテ
  サウシテ鑑定ヲサスルト云フ外ハナカラウト考ヘマス、此點モ實ハ衆議院ノ
  委員會ニ於テ提出者ヘ私カラ丁度谷サンノ御質問ノヤウナ質問ヲ致シマシ
  テ、提出者ノ見込ハドウカト言ッテ尋ネマシタガ、詰リ不十分ト思フケレド
  モ他ニ方法ハナイカラ餘儀ナク斯ウ云フコトニ定メタ、他ノ方法ト云ヘバ或
  ハ加持子米ノ額ニ依ッテ極メルト云フコトヲ法文ニ書ケバ書ケヌコトハナイ
  ケレドモ、同ジ土佐ノ一國ノ中デサヘモ隨分地方ニ依ッテ趣ヲ異ニシテ居リ
  マスカラ、法律デ杓子定木デ極メルコトハ頗ル困難デアルカラ、ソレデ餘儀
  ナク「相當ノ償金」ト云フコトニシテ畢竟裁判所ニ出レバ何トカ極マルト云
  フコトニナルカラ、多クノ場合ニ於テ協議ガ却ッテ纒マルデアラウト云フノ
  デ、政府ノ方デモ之ニ優ル所ノ方法モチヨット考付キマセヌカラ、ソレデ巳
  ムコトヲ得ナイデアラウト云フコトデ同意ヲ致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=111

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• 112・黒田和志

  ○子爵黑田和志君　モウ一ツ質問ヲシマス、此永小作權デ········買取ル資力ノ
  ナイ場合ニハドウナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=112

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• 113・梅謙次郎

  ○政府委員(梅謙次郞君)　資力ノナイ場合ニハ詰リソレハ最後ノ手段ハ强制
  執行ト云フコトニナルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=113

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• 114・黒田和志

  ○子爵黑田和志君　强制執行ヲ致シマシテ、サウシテ此代價ヲ徵收スルコト
  ノ出來ヌト云フ場合ニハドウ云フコトニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=114

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• 115・梅謙次郎

  ○政府委員(梅謙次郞君)　此法案ニ依リマスト云フト永小作人ニ於テ相當ノ
  代價ヲ拂ヒテ所有權ヲ買取ルト云フコトニナッテ居リマス、ソレ故ニ所有權
  ヲ買取リマスレバ、土地所有權ハ永小作人ノモノト爲ル、サウスレバ代價ヲ
  財產ヲ以テ拂フコトガ出來ナケレバ最後ノ手段トシテ其土地ヲ賣拂ッテ、サウ
  シテ所有者ハ代價ヲ取ルノ外ハナイト云フコトニナルダラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=115

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• 116・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　他ニ御質問ガナクバ委員ノ選定ニ移リマス、議長
  指名デ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=116

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• 117・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　國事犯罪者家祿賞典祿處分法案、衆議院提出、第
  一讀會
  國事犯罪者家祿賞典祿處分法案
  右本院提出案及送付候也
  明治三十三年一月二十六日衆議院議長片岡健吉
  貴族院議長公爵近衛篤麿殿
  國事犯罪者家祿賞典祿處分法
  第一條國事ニ關スル犯罪ノ爲家祿賞典祿ヲ沒收セラレ明治二十二年勅令
  第十二號ニ依リ大赦ヲ與ヘラレタル者及現ニ其ノ家名承繼人タル者ニ限
  リ其ノ沒收セラレタル當時ノ祿高ニ基ツキ明治九年太政官第百八號布告
  第一條ノ率ニ據リタル金祿公債證書額ニ相當スル金額ヲ一時國庫ヨリ支
  出シテ之ヲ給與ス
  第二條第一條ニ依リ給與ヲ受ケムトスル者ハ大赦ヲ受ケタル證明書ヲ以
  テ地方廳ニ出願スヘシ但シ本法施行ノ日ヨリ一箇年內ニ其ノ認定及證明
  ヲ求メス又ハ認定及證明ヲ受ケタル日ヨリ一箇月内ニ出願ヲナササル者
  ハ第一條ノ給與ヲ受クルコトヲ得ス
  〔政府委員松尾臣善君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=117

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• 118・松尾臣善

  ○政府委員(松尾臣善君)　唯今議題ニナリマシタ衆議院提出ノ國事犯罪者家
  祿賞典祿處分法案、是ハ政府ハ同意ヲ表スルコトガ出來マセヌノデ、其事情
  ハ委シク衆議院ニ於キマシテ委員會ニモ本會ニモ申述ベマシタケレドモ、ソ
  レニモ拘ラズ衆議院ハ議決セラレテ本院ニ囘リマシタ譯デゴザイマス、應
  政府ノ同意ヲ致シ兼ネマスル次第ヲ申上ゲテ置キマス、元來祿高ノ處分ハ御
  承知ノ通リニ庚午九月十日藩制仰出サレタトキニ祿ヲ持ッテ居リマシタ者、竝
  ニ其以後ニ祿ヲ持テ居ッタ者ヲ基ト致シマシテ、金祿ト爲リ、續イテ金祿公
  債證書ヲ交付セラレタコトニナッテ居リマシテ、ソレヨリ以前ノモノハ總テ
  問ハヌト云フコトニナッテ既ニ今日處分濟ナノデゴザイマス、然ルニ此案ニ
  依リマスルト庚午九月十日ノ藩制仰出サレタ區域ヲ破ッテ其以前ニ家祿ヲ持ッ
  テ居ッタ者ニ復祿シテヤラウト云フコトニナリマスノデス、サウシマスルト
  一般ノ祿高處分ト云フモノニ關係ヲ持チマシテ、非常ナル公平ナモノガ出來
  テ來マシテ其不公平ガ又續イテ起ッテ來ルト云フ結果ニナラウト存ジマスル、
  卽チ藩制ヲ仰出サレタトキノ區域ヲ破ルト云フコトニ附キマシテハ政府ハ絕
  對的反對ヲ致ス譯デゴザイマス、又其次ニ此文章ニ依リマスルト、其沒收セ
  ラレタル當時ノ祿高ニ基キ金祿公債證書ヲ渡スト云フコトニナッテ居リマス、
  サウ致シマスルト一般ノ家祿ハ大抵各藩ニ於キマシテ祿制ヲ立テテ減祿ヲシ
  テ、其減額ニ依ッテ公債證書ガ渡シテアルノデゴザイマス、然ルニ此案ニ於
  テ「沒收セラレタル當時ノ祿高ニ基ツキ」トゴザイマスカラ減祿シナイ舊ノ祿
  高ヲ以テ交付ヲセネバナラヌト云フヤウナコトニナラウト存ジマス、是亦卽
  チ第二ノ不公平ヲ來シマス、第三ニハ「大赦ヲ受ケタル證明書ヲ以テ地方廳
  ニ出願スベシト云フコトニナッテ居リマス、此大赦令ノ施行ニ附キマシテハ
  證明書ヲ必要トスル者ハ司法省ニ願出デ、證明書ヲ貰ッテ居リマスルケレド
  干、不必要ナ人ハ何モ證明書ヲ得ナイデモ卽チ大赦ハ與ヘラレタ譯デゴザイ
  マスルカラ、其證明書ヲ受ケナイ者ガ澤山ゴザイマスノデ、然ルニ此法案ニ
  ハ證明書ヲ交付セラレタ者バカリヤルト斯ウ云フヤウニナッテ居リマス、若
  シ之ニ金祿公債ヲ交付スルト云フコトニナリマスレバ同ジ大赦ヲ受ケタル者
  ノ中デ其證明書ヲ交付セラレタ者ニハ金祿公債證書ヲ渡ス、證明書ヲ受ケナ
  イ者ニハ渡サヌト云フコトニナリマスレバ、是モ不公平ノ一ニナリマス、サ
  ウシテ證明書ヲ受ケナイ人數ハドノ位アルカト云ウテ調ベヤウト存ジマシテ
  モ、是ハ殆ド數ヘ盡サレヌノデアリマス、分リマセヌノデアリマス、何ゼカ
  ト申シマスルト大赦令ノ二條ニ「舊法ニ依リ處斷セラレタル罪ト雖モ其性質
  前條ニ記載シタル罪ト同一ナル者ハ之ヲ赦免ス」ト云フコトニナッテ居リマ
  ス、此「舊法ニ依リ」ト云フコトハドコマデ遡リマスルノカ、司法省抔デモ
  段々調ヲシテ見マシタケレドモ到底司法省デモ分ラヌ、ドコデモ分ルト云フ
  先キハ今日ノ所デハナイノデゴザイマス、サウシマスレバ此願出ル者モ如何
  程アリマスルカ、若シ證明書ヲ受ケナイ者ニモヤラヌケレバナラヌト云フコ
  トニナリマスレパ是レ以テ其數ヲ豫メ數ヘ得ルコトモ出來ナイヤウナ次第デ
  ゴザイマス、デ大體ガ庚午九月ノ藩制ヲ仰出サレマシタトキノ現在ノ祿高、ソ
  レ以後ニ祿ヲ持ッテ居リマシタ者ニ對シテ金祿處分ニナッテ居リマス、此區域
  ヲ破リマスコトニ附キマシテハ政府ハ絕對的ニ反對致シマス、又ソレヲ取除
  ケマシテモ此案ガ通リマスルト如何程金祿ヲ渡サヌナラヌコトニナリマスル
  カ殆ド其想像モ出來ナイ位ノコトニナリマスルカラ、財政ノ上ニ於キマシテ
  モ到底斯樣ナ法案ニ應ズルコトハ出來ナイト考ヘマスルカラ同意ヲ致シ兼ネ
  ル譯デゴザイマス、ドウゾ此案ハ否決ニナラムコトヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=118

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• 119・谷干城

  ○子爵谷干城君　チヨット御尋ヲ致シマスガ、此國事犯罪者ト云フモノハ明
  治元年アタリマデ········ソレカラ又ズット前ノ者ニモヤルノデスカ、ソコヲチ
  ヨット伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=119

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• 120・松尾臣善

  ○政府委員(松尾臣善君)　御答致シマスルガ、此明治二十二年勅令第十二號
  ヲ以テ國事犯ノ者ヲ赦免セラレマシタ、其一條ニハ是ハ明治元年以來ノ法令
  ガ揭ゲテゴザイマス、ソレカラ第二條ニ前ニ申上ゲマシタ通リ「舊法ニ依リ
  處斷セラレタル罪ト雖モ其性質前條ニ記載シタル罪ト同一ナル者ハ之ヲ赦免
  ス」トゴザイマス、デゴザイマスカラ、此舊法ト云フモノハドコマデ掛リマ
  スカト云フコトハ是ハ一ツノ問題デゴザイマス、ドコマデ延ベルト云フコト
  ハ區域ガナイヤウニ私共ハ考ヘマス、サウシマスルト明治元年マデトモ判然
  ト指サレマスマイト考ヘマスル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=120

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• 121・谷干城

  ○子爵谷干城君　サウシマスト例ヘテ言ヘバ明治元年ニ一萬石ナラ一萬石、
  千石ナラ千石ト云フ祿高デアッタ人ガ此法律ガ行ハレテ實施ニナレバ卽チ一
  萬石ナリ千石ナリノ舊ノ祿ヘ戾ッテ卽チ公債證書ヲヤルト云フ斯ウ云フコト
  ニナルノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=121

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• 122・松尾臣善

  ○政府委員(松尾臣善君)　左樣ニナラウト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=122

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• 123・谷干城

  ○子爵谷干城君　大變ナコトデスナ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=123

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• 124・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　他ニ御發議ガナクバ委員ノ選定ニ移リマス、議長
  委託デ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=124

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• 125・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　登錄稅法中改正法律案、衆議院提出、第一讀會ノ
  續特別委員長報告
  〔石井忠恭君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=125

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• 126・石井忠恭

  ○石井忠恭君　登錄稅法中改正法律案ノ委員長副委員長ハ故障デゴザイマシ
  テ、私ヨリ此特別委員會ノ報告ヲ致シマス、本月二十七日ニ本會ノ特別委員
  會ヲ開キマシテ此法案ハ
  〔男爵尾崎三良君「モ少シ大キナ聲デヤッテ下サラヌト分ラヌ」ト述
  フ〕
  衆議院ノ提出ニ係ル法案デゴザイマシタ故ニ······
  〔男爵尾崎三良君「マダ分ラヌ」ト述フ〕
  政府委員ノ方ニ質問ヲ致シマシタ此法案ニ政府ハ同意デアルヤ否ヤ質
  問ヲ致シマシタ、政府委員ハ此案ニ
  〔子爵小笠原壽長君「モ少シ大キナ聲デナイト、チットモ此處マデ聞エ
  マセヌ」ト述フ〕
  〔男爵尾崎三良君「モツト大キナ聲デ御ヤンナサイ」ト述フ〕
  政府委員ハ此案ニ對シマシテハ反對デアルト云フコトデアリマシタカラ、其
  理由ヲ尋ネマシタルニ、三十一年度ノ調ニ依リマスレバ是ハ司法省ノ調査ニ
  依ヲテ計算上ガ均シテ一件四ツ宛ノ割合ト爲リマス、之ヲ準據トシテ計算ヲシ
  マスレバ十八萬餘ノ減少トナリマス、此減少ヲ來タシマス故ニ政府ニ於テハ
  不同意ヲ唱ヘマスル、其三十一年度ノ調ニ依リマスルト土地登記ノ件數ガ九
  十四萬三千五百四十八件トナリマスル、此現行法ニ依リマスト一件四箇四十
  錢ノ收入ニナリマス、此法案ニ依リマスト一件二十錢ノ割合デゴザイマス、
  故ニ現行法ニ取ヲテ言フト一件二箇ノ計算ト同一ナコトニナリマスル、其三十
  七萬餘圓ノ半額ノ收入ヲ得ルニ過ギナイコトニナリマスルカラ、卽チ十八萬
  圓ノ減額ト爲リマス、家屋ノ稅ニ於キマシテハ是ハ現行ト此改正ノ方ト比較
  的同數ニナリマスルカラ此家屋ノ上ニ附キマシテハ先ヅ增減ハ少シモナイコ
  トデゴザイマシテ、唯其土地ノ上ニ附キマシテ十八萬圓減ズルコトニ決著シ
  マスル、然ルニ衆議院ニ於テハ此日本ノ土地ハマア細ニ分ッタモノガ多クア
  リマスルカラ、其一箇一箇ニ附イテ書入質入等ヲ要ジマスルトキハ多額ノ稅
  ヲ出スコトニナリマスルカラ、ドウモ人民ノ不便トナッテ其人民ノ不便ヲ感ジ
  マスル故ニ一件トナシタイト云フノ衆議院ノ案デゴザイマス、又船舶ノコト
  ニ於キマシテハ是ハ却ッテ衆議院改正案ノ方ガ其稅ノ高ハ增シマスルケレド
  モハ此數ハ船舶ニ於キマシテハマア一箇トナルモ一件トナルモ同樣デアリマ
  スルカラ、政府ニ於テモ强チ其不同意ハ唱ヘマセヌケレドモ、人民ノ爲ニ
  ハ却ッテ餘計ノ稅ヲ出スコトニナリマス、且又第二條ノ所デ一箇トナシマシテ
  此第三條ノ船舶ノ所ニ於テ一件トナシマシテハ法文ノ體裁上ニモ不都合デア
  リマスルカラ、此二條ニ於テモ政府ハ反對ト申スコトデアリマス、此委員會
  全員ニ於キマシテモ政府ノ方ニ同意見デアリマシテ、詰リ全會一致デ此案ニ
  反對致シマシテ、否決スベキモノト決議ヲ致シタ次第デゴザイマス、ドウゾ
  御贊成アラムコトヲ希望致シマス
  〔天春文衛君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=126

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• 127・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　天春君ハ何デスカ

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• 128・天春文衞

  ○天春文衛君　質問ガアリマス、委員長ニ御尋申シタイデアリマスガ、本案
  ニ附イテ此十錢ト致シマスルノト又一件二十錢トスルニ附キマシテハ此登記
  ヲ取消ス場合ニ於テハ餘程人民ノ負擔ニ影響ヲ致シマスルコトデゴザイマ
  ス、最初此登記ヲスルニ附イテハ千圓ニ附イテ二十五圓ノ登記料ヲ出シテゴ
  ザイマスルモノデゴザイマスカラ、舊法ニ依ッテ見マスト取消ノ場合ニハ無
  論無稅デアッタノデアル、然ルニ此取消ノ場合ニモ一箇十錢ト云フコトニナ
  ルト、譬ヘテ見マスレバ地所ガ百筆アルトスレバ十圓取消料ヲ出サナケレバ
  ナラヌ、是ハ甚ダ現今ニ於テ此法律ガ施行ニナッテカラ困難ヲシテ居リマス
  ル地方ノ場合デアルノデゴザイマス、其邊ノ所ハ能ク御審議ニナリマシタコ
  トデゴザイマスカ、又是ガ一件二十錢トナッタニ附イテハ唯今御述ヘニナツ
  タヤウデゴザイマシタガ、少シク了解シ兼ネタコトデゴザイマスガ、ドレ位
  國庫ノ響ニ·······入入減減ズルモノデゴザイマセウカ、其邊モ併セテ承リタ
  イ

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• 129・石井忠恭

  ○石井忠恭君　其收入ノ減ジマスル所ハ十八萬圓國庫ノ收入ガ減ジマス

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• 130・天春文衞

  ○天春文衛君　前ノ御尋ノ是ガ變リマスニ附キマシテハ餘程人民ノ負擔ニ關
  係スルコトデゴザイマス、其邊ハ能ク御熟議ハゴザイマセナンダデゴザイマ
  セウカ

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• 131・石井忠恭

  ○石井忠恭君　前ニ申述べマシタ通リ一件四箇ノ割合トナリマスルカラ、
  成程其餘計ニ筆數ヲ持ッタモノハソレダケノ稅ヲ出スコトハ出シマスケレド
  モ、其大藏省ニ於テモ其一筆········一件十筆以上ノモノガ多イカ多クナイカノ
  所ハマダ調査モ出來テ居リマセズ、殊ニ此法律ハ昨年ノ四月以後カラ實施ニ
  ナリマシテ未ダ一年モ經ズシテ居リマスカラシテ又ヨクヨク人民ノ堪ヘナイ
  ト云フコトガアルヤナイカハ先ヅ一年モ經過シタ上デモ遲カラヌト本員等ハ
  見込ンデ居ル次第デゴザイマス
  〔中西光三郞君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=131

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• 132・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　中西君ノハ長ウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=132

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• 133・中西光三郎

  ○中西光三郞君　私ハ委員長ノ報告ニ反對ノ意見ヲ述べタイ

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• 134・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　ソレハ長ウゴザイマスカ、長ケレバ休憩後ニシヤ
  ウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=134

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• 135・中西光三郎

  ○中西光三郞君　長クハアリマセヌガ、然ラバ休憩ノ後ニ致シマセウ

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• 136・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　ソレデハ暫時休憩致シマス
  午前十一時五十一分休憩
  午後一時五分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=136

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• 137・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　是ヨリ午前ニ引續イテ會議ヲ開キマス、中西光三
  郞君
  〔中西光三郞君演壇ニ登ル〕

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• 138・中西光三郎

  ○中西光三郞君　私ハ登錄稅法中改正法律案特別委員長ノ報告ニ反對ヲ致シ
  マスル者デゴザイマス、卽チ委員長ノ報告ニ反對シテ本案ヲ以テ第二讀會ヲ
  開クベシト希望致ス者デゴザイマス、其譯ハ此登錄稅法ノ第二條ニ現行法ニ
  依リマスレバ不動產毎一箇金十錢ヲ徵收スルコトニナッテ居リマス、其事實ハ
  登記ノ變更、更正又ハ抹消ニ關スル事件デゴザイマシテ、卽チ登記ノ取消ヲ請
  ヒマスルコトガ其中ノ重ナル事實デゴザイマスル、凡ソ債權ノ登記ヲ受ケマ
  スルニハ最初登記ヲ受ケマスルトキニ當ッテ金額ノ千分ノ六ニ當ル登錄稅ヲ
  納メマスルノデゴザイマス、例ヘバ金百圓ヲ借リマスルニ十筆ノ耕地ヲ抵當
  ニ差入レテ借リマスル場合ニハ百圓ノ金高ニ對スル千分ノ六デ卽チ六十錢ノ
  登錄稅ヲ納メマシテ、最初質權ノ登錄ヲ受ケマスルコトガ出來ルノデゴザイ
  マス、然ルニ其金ヲ返濟致シマスルトキニ當リマシテ現行法ニ依リマスレバ
  十筆書入レテ居レバ一圓ノ登錄稅ヲ納メナケレバナラヌト云フコトニナッテ
  居リマシテ、最初金ヲ借リマスル時ヨリ返濟ノ時ニ餘計ナ稅ヲ納メナケレバ
  ナラヌト云フコトニナリマシテ、甚ダ中等以下ノ人民ニ取リマシテハ非常ノ
  苦痛ヲ感ジマスルコトデゴザイマス、殊ニ僻陬ノ土地ニ行キマシテハ所謂楷
  梯田ト云フモノガ澤山ゴザイマシテ一段步ニ附キマシテモ數十筆ニ分レマシ
  タモノモゴザイマスル譯デゴザイマス、是ハドウカ二讀會ヲ開キマシテ十分
  ノ御審議ヲ煩ハシタイト存ジマスルコトデゴザイマス、尤モ中等以下ノ人民
  ノ金ヲ借人レマスノハ農民ニ於キマシテハ或ハ肥料ヲ買入レル爲ニ借入レル
  コトモゴザイマスシ、又耕牛ヲ買入レル爲ニ僅ニ百圓未滿位ナ金ヲ借入レ
  ル者モゴザイマスルト云フ有樣デ、實ニ此稅法ハ性質ガ手數料ト申シテ然ル
  ベキモノニアラウト存ジマスルニモ拘ラズ實ニ過重ノ稅額ニナッテ居リマス、
  甚ダ不都合ト存ジマスカラ何卒二讀會ヲ開クコトニ御同意ヲ願ヒタウ存ジマ
  ス
  〔子爵谷干城君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=138

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• 139・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　谷子爵ハ何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=139

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• 140・谷干城

  ○子爵谷干城君　私ハ衆議院ノ案ニ贊成デス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=140

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• 141・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　ソンナラバマダ外ニ通告ガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=141

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• 142・谷干城

  ○子爵谷干城君　ソレヲ議論スルニハ及ビマセヌノデ贊成ト云フダケテ宜イ
  ノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=142

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• 143・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　天春君ハ反對ノ通告ハアリマセヌガ御ヤリニナリ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=143

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• 144・天春文衞

  ○天春文衛君　反對ガナケレバ述ベマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=144

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• 145・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　ソレデハ若槻君
  〔政府委員若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=145

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• 146・若槻禮次郎

  ○政府委員(若槻禮次郞君)　唯今議題ニナッテ居リマス登錄稅法中〓正案デ
  ゴザイマスガ、先程天春サンノ御話デハ是ハ前ニハ無稅デアッタモノガ改正
  後ニ毎一箇十錢ト爲ッタト云フヤウナ御說デアッタヤウニ思ヒマスケレドモ、
  是ハ改正前ニモ矢張リ登錄稅ハ取ッテ居ッタノデゴザイマス、改正前ニハ矢張
  リ件數デ取ルコトニナッテ居リマシタノデ、一件金十錢ト云フコトニナッテ居
  リマシタノヲバ此十三議會ノ時ニ於テ御審議ニナリマシタ結果、ソレハ矢張
  リ毎一箇金十錢トスル方ガ至當デアル、同ジ登錄スル手數ノ掛ルモノデアル
  以上ハ一件ノ中ニ一筆アルモノト三筆アルモノト同樣ニ登錄稅ヲ取ルハ宜ク
  ナイト云フノデ斯樣ニ改正ニナッタコトト考ヘテ居リマスノデ、今日ソレガ
  大變多イモノガ偶〓アルカラト云ウテ又改正案ガ出テ居リマスケレドモ、斯樣
  ナリマスルト二筆以上ノモノガ、ドレダケゴザイマシテ一筆宛ノモノガドレ
  ダケアルト云フコトハ此處デハ調ガ附イテ居リマセヌ故ニ申上ゲ惡ウゴザイ
  マスケレドモ、少クトモ一筆ノモノニ附イテ稅ガ倍ニナルト云フコトニナリ
  マス、ソレデ其中ニ或ハ唯今御述ニナッタヤウナ工合ニ十筆モ二十筆モアリマ
  スレバ大變ナ稅ニナリマセウケレドモ、併ナガラ一筆ノモノハ之ニ依レバ稅
  モ增スヤウナ結果ニナリマスノデアリマスカラ、改正案ガ必ズ公平デアルト
  云フコトハ申上ゲ惡イト考ヘマス、殊ニ斯樣ニナリマスルト兎ニ角、先程委
  員長カラ御報告ノアリマシタ通リ十八萬圓ノ收入ガ減ッテ參ルノデアリマス
  カラ、豫算ノ確定シマタシ後ニ收入ノ減リマスコトハ甚ダ好マシクナイコト
  ト存ジマスノデ、矢張リ是ハ〓正ナラヌ方ガ宜イト考ヘマスカラ御參考マデ
  ニ一應申上ゲテ置キマス

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• 147・谷干城

  ○子爵谷干城君　ドウモ此登錄稅法ハ大變煩雜デ、マダ〓正シタイト思フコ
  トガ澤山アル、コレ程今日田舍ノ細イ人民ヲ酷メル法案ハ殆ドナイカト思フ
  程ニ私抔ハ感ジテ居ルノデ、追〓ニ私ハ直サナケレバナラヌト思ヒマスガ、先
  ヅ此衆議院カラ出テ來テ居ルノハ何レ此人民ニ直接ノ關係ノアル衆議院ノ人
  ガ〓究シタ上デ更ガ宜イト云フノデ出シタモノト思フ、サウスルト我々ノ希
  望程ノコトハナイヤウニアルケレドモ、尙〓現今ノ所ニ比ブレバ増シダラウ
  ト思フノデアリマスカラ、是等ハドウゾ貴族院ノ諸君ニ於カレテモ衆議院ノ
  意ヲ容レテ速ニ可決アラムコトヲ希望致シマス、減ッタ所ガ十七八萬位ナラ
  バサウ大キナコトトモ思ハレナイ、ソレガ爲ニ被ル人民ノ恩惠ハ容易デハナ
  イト思ヒマスカラ、ドウゾ是ハ通過ニナルコトヲ希望致シマス

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• 148・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)ノ　他ニ御發議ガナクバ採決致マシス、本案二讀會ヲ
  開クベシトススル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者少數

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• 149・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　少數ト認メマス、本案ハ二讀會ニ移スベカラズト
  決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=149

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• 150・中西光三郎

  ○中西光三郞君　多數ノヤウニ見受ケマスカラ、ドウカ點呼ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=150

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• 151・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　異議ノ申立デスカ、餘程明デアリマスガ、ソレデ
  ハ委員會ノ報告ノ通リニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=151

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• 152・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　多數デアリマス、卽チ本案ハ否決ニナリマシタ、次
  ハ高等學校及大學校增設ニ關スル建議案、子爵三島彌太郞君外三名發議、朗
  讀ハ省略シマス
  高等學校及大學校增設ニ關スル建議案
  右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
  明治三十三年一月二十五日
  發議者子爵三島彌太郞辻新次
  男爵赤松則良長谷川 貞雄
  贊成者公爵二條基弘
  外三十名
  貴族院議長公爵近衛篤麿殿
  高等學校及大學校增設ニ關スル建議
  高等學校及大學校ヲ增設スルノ急須ナル所以ハ前期帝國議會ニ於テ既ニ本
  院ヨリ建議ニ及タル所然ニ政府ハ本年度ニ於テ實ニ其ノ增設ニ著手セス是
  豈ニ急ヲ救フヲ足ル者ト曰フヲ得ンヤ況ヤ彼ノ高等學校ヘ入學ヲ許サレサ
  ル者ノ數ハ年ト共ニ倍徒シ本年度ニ於テハ二千人ニ埀トシ大學ノ設備不完
  全ヲ訴ルコトモ亦愈〓急ナルニ至レルヲヤ是ヲ以テ政府ハ此ノ焦眉ノ急ヲ
  救ハムカ爲高等學校及大學校增設ノ計畫ヲ立テ速ニ其ノ豫算ヲ帝國議會ニ
  提出セラレムコトヲ希望ス依テ玆ニ之ヲ建議ス
  〔辻新次君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=152

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• 153・辻新次

  ○辻新次君　諸君、私ハ此高等學校及大學校增設ニ關シマスル建議案ノ提出
  者ノ一人デアリマスカラシテ、少シ此理由ヲ申述ベヤウト思ヒマス、此案ハ
  諸君ノ御承知ノ通リ前機會ニ於キマシテ本院ハ全院一致ヲ以テ可決ニナリマ
  シテ政府ヘ建議ニナッテ居リマス、然ルニ本年モ高等學校竝ニ大學校ノ增設ヲ
  見ルニ至リマセヌ、尤モ先達テ文部大臣ノ演說中ニモ高等學校大學校ノ增設
  ハ固ヨリ希望サレルガ、財政上ノ都合等ガアッテ萬巳ムヲ得ヌコトデアルト
  云フヤウナ趣旨ニ承リマシタ、一應尤ニモ考ヘマスケレドモ、實ニ此學校ノ
  設置ノ一年後レマスト云フコトハ其影響實ニ大ナルモノデアリマスカラシ
  テ、何分此儘ニ猶豫スルコトハ出來マセヌコトト存ジマスノデアリマス、既ニ
  中學校モ段々殖エマシテ今日ノ有樣デハ二百校以上ニ及ンデ居リ、其生徒ハ
  又三萬人ニモ近イコトデアリマシテ、又其中學校ノ卒業生ハ必ズ三千人位ハ
  アルコトト思ヒマス、デ是等ハ固ヨリ現在ニ斯ノ如ク多イ生徒デアリマシテ
  陸續、高等學校等へ這入ラムト欲シテ居リマス者デアリマス、尤モ政府ハ本年
  度ニ於キマシテモ他ノ一二ノ專門學校等ハ設立ニナリマス趣デアリマス、是
  等ニモ勿論何分カノ生徒ハ參リマセウガ、併ナガラ是トテモ實ニ此方ヘ參
  リマス生徒ガ澤山アッテ俟チニ俟ッタ今日デアリマスカラシテ、何分カ其專
  門學校ニ這入ル者ノ爲ニ少シハ口ハ開キマスデゴザイマセウガ、今申ス如
  キ生徒ニ悉ク滿足ヲ與ヘルコトハ出來マスマイト思ヒマス、尤モ其中デ第七
  ノ高等學校ガ多分當年ノ九月頃カラ生徒ヲ入レマスコトデアラウト思ヒマス
  ガ、是ハ入レマシタ所デ僅ナ生徒デアリマス、又山口ノ高等學校ノ生徒ヲ三
  百人ヲ五百人ニ殖ヤスト云フコトデアリマスケレドモ、是モ誠ニ僅ナコトデ、
  又學校ハサウ殖ヤシマシタカラト申シマシテモ其期カラシテ、其殖ヤシタダ
  ケノ生徒ヲ悉ク入レルト云フコトハ出來ヌコトデアリマスカラシテ、多少政
  府カ手ヲ著ケタト申シマシタ所デ右樣ナ次第デ、今申シマシタ所ノ多クノ生
  徒、先ヅ假ニ今入校ノ出來マセヌ所ノ生徒ガ二千人足ラズモゴザイマセウガ、
  是等ハ其途ヲ失ウテ實ニ非常ナ困難デアリマス、又其困難ハ延イテ我國ノ文
  化ニ大ナル障碍ヲ與ヘルコトト思ヒマス、ソレデ何分ニモ此高等學校ノ增設
  ヲ待ツコトガ出來マセヌシ、又大學ニ至リマシテモ右樣ナ次第デ、中學校ノ生
  徒ガ段々高等學校ヘ上ッテ參リマスレバ、ドウシテモ大學ヲソレガ爲ニ設置セ
  ヌケレバナラヌト云フコトデアリマスカラ、此高等學校ト大學校ノ設置ハ實
  ニ急務ノ急ナルモノト思ヒマスカラシテ、既ニ本年度モ今日マデ俟チマス
  ルノニ未ダ其豫算等モ出ヌコトデアリマスカラシテ、最早猶豫ガ出來マセ
  ヌカラ、玆ヲ以テ昨年ノ催促ヲセヌケレバナラヌト云フコトニ立至リマシ
  タノデアリマス、ソレデ唯今申述ベマシタ通リ政府ハ財政上ト云フ口實モ
  アリマスルガ、此高等學校及大學ノ增設ニ附キマシテハサウ多イ費用ノ要
  ル譯デモアリマスマイシ、二億二二三千萬モアル上カラシテ少シノ都合ヲシ
  マシタラバ決シテ難クナイコトト思ヒマスルシ、又實際ニ是コソ國家ノ必要
  ト云フコトデゴザイマスレバ、ドウナリ都合セネバナリマスマイシ、又實ハ
  財政モ·······當局者ノ言レマスニハ年々財政モ段々整理シテ都合好ク參ルト云
  フコトデアリマスレバ、此學校ノ如キモノハ當年拵ヘマシタカラト云ウテ直
  ニ當年大ナル巨額ヲ要スルト云フモノデハアリマセヌ、一方財政ノ整理ト同
  ジ進ミヲ以テ步イテ參リマスカラシテ、右ノ言ヲ信ズル以上ハ決シテ財政上
  ニ於テモ左程困難ヲ感ジルヤウナコトハナカラウト思ヒマス、ソレデ既ニ當
  局者ハ八年計畫トカ申シマシテ高等學校大學抔ヲ數校拵ヘルヤウナ計畫モア
  リマシタ趣デアリマスルシ、又前途追々增設ヲシマス所ノ數抔ニ於キマシテ
  ハ段々御見込モアリマセウガ、先ヅ目下ノ所、其中、高等學校數校及大學二
  三校ト云フモノヲ希望シマスル、假ニ多クノ人ノ唱ヘテ居ル所ヲ推察シテ見
  マスルノニ、大學ニ在テハ九州、東北、卽チ是ハ差向イタ所デス、差向イタ
  所デハ先ヅ大學ニ於キマシテハ九州、東北、又高等學校ニ在リマシテハ四
  國東海、信越、九州、奧羽ト云フヤウナ所デ、極ク差向イタ所デハ其邊
  ニ設立ヲ希望シマス、其邊コソ穩當デハナイカト思フノデアリマス、勿論是
  ハ既ニ衆議院ニ於キマシテモ、四國ノ高等學校ハ既ニ建議ニナッタカト覺エ
  テ居リマス、又其他東海信越ノ等高學校ノ設立、鹿兒島ノ造士館ノ復舊、又
  九州、東北ノ大學校ノ如キモノハ衆議院デモ或ハ既ニ通過シテ居ルモノモア
  リマスルシ、今委員等ノ調ベテ居ルモノモアリマシテ、殆ド是ハ一般ノ輿論
  トモ申シテ宜シイカニ覺エマスノデアリマス、尤モソウ此年度ニ於テ一時ニ
  右樣ナモノヲ設置シマスト云フコトハ或ハ難カラウカ知レマセヌガ、其中二
  三ノ高等學校、一ノ大學校位ハ是非トモ一ツ此年度ニ於テ速ニ計畫ヲサレテ
  其豫算等ヲドウゾ此本議會ニ出サレムコトヲ切ニ望ミマスノデアリマス、
  ソレカラチヨット玆ニ附加ヘテ申上ゲテ置キタイコトハ財政上ノ差支ガアル
  ヤウナコトモアリマスルガ、實ハ當局者ノヤリ工合ニ依リマシテハ決シテサ
  ウ二三年或ハ數年ノ間ニ非常ノ費用ノ要ルヤウナコトハ無カラウト思フノデ
  アリマス、何ゼナレバ地方ハ擧ッテ大學校ニ對スル創立費モ寄附セムト云ヒ
  又高等學校ノ設立モ希望ヲシテ、其創業費マデ出スト云フ有樣デアリマス、
  今申述ベマシタ通リ學校ノ如キハ今日手ヲ著ケマシテ中〓直グニ出來ル譯ニ
  參リマセヌ、一ツノ高等學校デモ著手シマシテカラ二年位ノ間ガゴザイマセ
  ヌケレバ其生徒ヲ入レルト云フコトハ出來マセヌ、サウ云フコトデアリマス
  レバ隨分其資金ヲ求メヤウト思ヒマシタラバ求メラレヌト云フコトモナカラ
  ウト思ヒマス、殊ニ鹿兒島ノ造士館ノ如キハ資金マデ出シテ其復舊ヲ圖ッテ居
  ルト云フコトヲ承リマスシ、又長野縣ノ如キハ既ニ縣會デ創業費ノ外ニ經常
  費マデ出スト云フコトニ議決シテ居ルコトスラ承ッテ居ル位ナコトデアリマ
  スカラシテ、是ヲ以テ考フルニ此高等學校ノ增設、大學校ノ增設ト云フコト
  ハ何分カノ計畫ヲサレマシタラバ決シテ難イコトデナカラウト信ジマスノデ
  アリマス、ソレデ此事ニ附キマシテハ尙ホ申述ベタイコトモ多々アリスル
  ガ、既ニ昨年ノ引續キデ諸君ノ能ク御了知ノコトデアリマスカラシテ最早別
  段ニ事〓シイコトハ陳述ヲ致シマセヌ積リデアリマス、チヨット玆ニ今日ノ
  有樣ヲ例ヘテ見マスレバ此處ニ一人ノ年齡モ丁度就學ヲスルニ適當ナ年齡ナ
  者ガアリマシテ、其身體モ健全デ能ク發達ヲシテ居リ、才能モ尋常ナ才能ヲ
  持ッテ居リ、又前途修業シテ果テルダケノ學力モアル者デアリ、又其家ニハ
  相當ノ資產ガアル者デ本人ハ熱心ニ是ヨリ學校ヘ這入ッテ修業スルト云フ者
  ガ今此所ニ假ニアルト定メマシタラバ、右樣ノ總テノモノガ·······總テノ資格
  ニ於テ整ウテ居ルノニ、若シ之ヲシテ其親タルベキ者ガ修業ヲサセル道ヲツ
  ケマセナンダラバ之ヲ何ト申シマセウカ、本人ノ不幸ハ申スマデモアリマセ
  ヌガ、其親ハ實ニ公德ニ背キ民法ニ違ヒ實ニ殘忍酷薄、不人情ト云ベキモノ
  デハゴザイマスマイカ、大凡今日ノ有樣ハ然ルベキ有樣デハナイカト思ヒマ
  ス、又段々世間ニモ論モアリマスル通リ書生ノ風儀ガ惡ルイトカ云フヤウナ
  コトガ段々アリマスケレドモ、是等ノ人ハ大凡自分ノ思フ所ニ適フヤウナ道
  ガアリマセヌケレバ、遂ニ欲セザル不平モ欲シナケレバナラヌト云フコトハ
  是ハ免レヌコトデアリマシテ、決シテ今日ノ書生ノ風儀ガ之ニ依ッテ云フコ
  トデハアリマセヌガ、風儀ヲ直スト云フヤウナ上カラ考ヘマシテモ、何分ニ
  モ相當ナ修業ヲシテ行クダケノ道ハ私ハ附ケテヤラズバナルマイカト思ヒマ
  ス、旁〓以テ速ニ高等學校ト大學ノ增設アラムコトヲ切ニ望ミマス、デ此建議
  案ハ諸君ノ御承知ノ通リ昨年、而モ一月、此本月、本院ニ於テ全會一致ヲ以
  テ可決ニナリ建議ニナリマシタ、其事ヲ更ニ今日催促ヲ申シマスト云フコト
  ニ止リマス次第デアリマスカラシテ、ドウゾ昨年ノ如ク全會一致ヲ以テ速ニ
  決議ニナリマシテ、直グニ建議ニナラムコトヲ切ニ希望致シマス

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• 154・菊池大麓

  ○菊池大麓君　チヨット質問ガアリマス、此建議案ニ贊否ヲ極メル前ニチヨッ
  ト確メテ置キタイコトデアリマスガ、提出者ノ辻君ガ提出者トシテ言レル所
  ノ高等學校ト云フモノハ、高等學校ノ専門部竝ニ今ノ大學ノ豫科ト云フモノ
  ヲ意味シテ居ルノデアリマスルカ、又玆ニ大學校トアリマスルノハ唯今ノ東
  京帝國大學及京都帝國大學ノ如キモノヲ意味スルノデアリマスカ、此二點ヲ
  質問致シマス

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• 155・辻新次

  ○辻新次君　御答シマス、高等學校ハ今日ノ高等學校ノ如キモノデアリマス、
  ソレカラ大學モ矢張リ今日ノ大學ノ如キモノヲ、此案ハ希望シマス、詰リ昨
  年ト同樣ノ意味デアリマス

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• 156・菊池大麓

  ○菊地大麓君　卽チ專門部竝ニ大學ノ豫科ヲ希望サレルノデスカ

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• 157・辻新次

  ○辻新次君　サウデゴザイマス、今日ノ通リノ高等學校、卽チ今日高等ノ學
  校ト云フモノハ大學ノ豫科ト申シテ宜シイノデアリマスガ、其通リ今日ノ如
  キ高等學校ヲ望ミマスノデゴザイマス

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• 158・外山正一

  ○外山正一君　發議者ニ質問ガアリマス、發議者ニ質問ヲシタイノハ、發議
  者ハ此建議ト同樣ナモノヲ昨年モ本院カラ全會一致デ出シタト云フコトヲ再
  三繰返シテ御述ニナリマシタガ、昨年此建議ヲシテ置イテ、而シテ此建議ヲ或
  ハ破ルヤウナ、妨ゲルヤウナ、政府當局者ヲシテ躊躇セシメテ此增設案ヲ出
  スコトヲ憚ラシメタト云フヤウナ擧動ヲヤッタ者ガアリハセヌカ、ソレハ何
  デアルカト云フト、〓育改革調査會ヲ設ケルトカ、或ハ學制ノ改革ヲセヌケレ
  バナラヌト云フヤウコトヲ言ッテ、頻ニ大言壯語シテ騒ギ立テル者ガ此社會
  ニ在ルノデアル、ソレ等ガ〓育ト云フモノハ根本的ニ變ヘナケレバナラヌ、
  〓育制度ヲ根本的ニ變ヘナケレバナラヌ、大學ト云フモノモ今日ノ儘デハイ
  カヌ、高等學校モ今日ノ如キハ一種變態ノモノデアル、一種ノ詭道デアル、
  斯ノ如キハ天下萬國ニ見ヌ所ノモノデアル、先ヅ第一ニ調査ヲヤラウト云フ
  ニハ調査會ヲ設ケルノガ必要デアルト、頻ニ騒ギ立ッタ者ガアルノデアル、
  ソレ等ハ自ラ出シテ置イタ所ノ建議ヲ却ッテ妨ゲ、政府當局者ヲシテ躊躇セ
  シムルト云フ事情ガアリハセヌカ、其邊ニ附イテ當局者ハ何ト返答サレルデ
  アラウカ知ラヌガ、私ハ發議者ノ意見ヲ聞キ、發議者ニ於テサウハ思ハヌカ
  ドウカ、又本年此決議ヲ昨年ト同樣ニシテ、又此建議ガ通ッタ後トデ色〓騷
  ギ立テテ先ヅ第一ニ調査ト云フコトヲヤラナケレバナラヌト云フヤウナコト
  ヲスレバ、又來年モ政府ハ躊躇シテ增設案ヲ出サヌカモ知レヌノデアル、サ
  ウ云フコトニ此貴族院ノ議員ガ弄バレテハナラヌノデアル、ソレデ愈〓此建
  議ヲ通シテ貰ヒタイト云フナラバ自ラ之ヲ破ルヤウナコトヲシテハイカヌト
  思フノデアルカラ、其邊ヲ一應發議者ノ御考ハ如何デアルカ、我輩ハ承リタ
  イノデアル

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• 159・辻新次

  ○辻新次君　唯今此案ヲ出シタトキニ、マダ申述ベタイコトハアルガ先ヅ是
  デ止メ置クト云フコトヲ申シマシタ、其時ニ私モ述ベヤウト思ヒマシタケ
  レドモ、丁度外山君カラ御問ガ出マシタカラ御答シマセウト思ヒマス、學制
  ノ改革ノコトコ附キマシテハ、是ハ中〓一言デハ盡キマセヌガ、私ハ矢張リ最
  早此改革ハドウシテモ十分ニヤラネバナラヌモノデアルト斯ウ思フノデアリ
  マス、併ナガラ此學制ノ改革スベキモノハ餘程其調査ヲスル機關モ備ヘ、大
  體シッカリ調査ヲスルト云フコトノ考ヲ持ッテ、サウシテヤラネバナラヌコト
  デアラウト思フ、唯文部省ガ一二ノ局長邊デ取調ベルト云フサウ云フ取調デ
  ハ最早今日ノ取調ハ相濟マヌコトト思ヒマスノデアリマスカラシテ、既ニ學
  制調査會ト云フヤウナモノヲ設置サレタナラバ宜カラウト斯ウ云フ意見ヲ
  持ッテ居ル者デアリマス、併ナガラ〓育ノ如キモノハ今日學ブベキ年齡···三字
  ブベキ者ハ如何シテ其素志ヲ達スルコトガ出來マセウカ、是ハ誠ニ當然ノコ
  トデアリマス、ソレデ矢張リ一方ニハ差支ノナイヤウニ當年ノ書生ハ當年ノ
  書生ニ對シ、來年ノ書生ハ來年ノ書生ニ對スル設備ト云フモノハ、是ハドウシ
  テモセヌケレバナラヌモノデアル、ソレデ決シテ改革スルコトガ一方ニ在ル
  カラト云ッデ學校ノ設立ヲ躊躇スルニハ毫頭及バヌコトデアラウト思ヒマス、
  ソレデ調査ハ調査デ能ク十分ナル調査ヲ一方デヤリ、サウシテハッキリ是コ
  ソ調査改正ヲセヌケレバナラヌト云フ、シッカリ極ッタ上ニ於テ〓正ト云フ
  モノハ改正デ參ラナケレバナラヌト思ヒマス、現在今デモ皆ガ御承知ノ通リ
  學校ノ如キ改正ハ一ツ學校ヲ改正シマスレバ其中ノ何年生ハ舊規則ニ依ッテ
  卒業サセルトカ何トカ云フコトハ現ニヤッテ居ルノデアリマス、一向ソレデ
  差支ナイコトデアッテ、改正ヲスルト云フコトガ此設立ヲ躊躇サセタコトハ
  萬萬ナイコトト思マヒスカラシテ、一應御斷ヲシテ置キマス

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• 160・外山正一

  ○外山正一君　文部當局者ニ私ハ質問ヲ致シマス、昨年ノ如キ長イ質問ハ致
  シマセヌ、ドウカ大臣閣下デモ、次官閣下デモ、要領ヲ得ルヤウナ御答ヲ願
  ヒタイノデアル、此建議案ニアリマスル所ノ增設ノ如クデゴザイマシテハ、
  大學ヲ增設スルト云フコトニ附イテハ我輩ハ素ヨリ雙手ヲ擧ゲテ贊成ヲスル
  ノデアリマス、殊ニ今發議者ノ言ハレル通リ其增設スル所ノ大學タル今日在
  ル所ノ大學ノ如キモノヲ增設スルト云フコトデアルニ依ッテ、ソレ故ニ我輩ハ
  雙手ヲ擧ゲテ贊成スルノデアル、併ナガラ高等學校ノ增設ニ至リマシテハ我
  輩ハ大ニ疑ガアル、高等學校ノコトト云フモノハ今日ハ最早之ヲ各府縣ノ事
  業ニ致シテハドウデアルカ、之ヲ官設トスルコトヲ止メテ縣立若クハ私立ノ
  事業ト、ソレヲ文部省ニ於テ奬勵ヲシテ縣立ノ高等學校ヲ起サシメ奬勵シテ
  市立ノ高等學校ヲ起サシムルト云フ方ガ宜クハアルマイカ、其邊ニ附イテ文
  部當局者ハ如何ナル考ヲ持ッテ居ラレルカヲ御尋シタイデアル、此建議案ニ依
  リマスルト矢張リ高等學校ハ文部省ニ於テ官設スベキモノデアル、官設シテ
  貰ヒタイト云フコトヲ主張シテ居ルノデアリマス、ケレドモ本員ノ如キハ文
  部省ニ之ヲ官設スルコトヲ廢シテ寧ロ縣立ノ高等學校ヲ起スヤウニ奬勵ヲシ
  テ誘導シテ早ク起サセテハドウデアルカ、唯今發議者モ言ハレタ通リ長野縣
  デモ莫大ノ寄附金ヲナシ且ツ經常費マデ出スト云フヤウナコトデアル、新潟
  縣デモ莫大ノ金ヲ出スト云フコトニナッテ居ル、愛知縣デモ其通リデアル、靜
  岡縣デモ其通リデアル、各府縣ノ大縣デアッテ而シテ中學生徒ノ數多アル所ニ
  於テハ追くニ高等學校ヲ望ンデ來ルノデアリマス、斯ノ如ク巨萬ノ金ヲ建議
  シテモ出サウト云フヤウナ時機ニナリマシタノデアリマスニ依ッテ、此中學ノ
  事業ノ高等ナルモノ········高等學校ノ〓育ハ詰リ是ハ各府縣ノ事業トシテ文部
  當局者ニ於テハ唯之ヲ奬勵スルト云フヤウナ方針デヤル考ハナイカト云フコ
  トヲ聞キタイ、而シテ本員抔ノ考デアリマスト或ハ文部當局者ニ於テ官設ニ
  スベキ場合モナイデハナイカト考ヘル、ソレハ却ッテ生徒ノ少イ所、貧縣デア
  ル靑森トカ秋田トカ津輕會津邊ソレ等ノ邊ニ至ッテハ卽チ高等學校ヲ官設ス
  ル必要ガアルト思フ、數縣ニ互ツテ斯ノ如キ場合ニ於テハ適當ナル位置ヲ撰
  ンデ高等學校、高等中學ヲ設立シテヤル必要ハアラウ、然レドモ新潟デアル
  トカ愛知デアルトカ靜岡デアルトカ長野デアルトカ、斯ノ如キ大縣デアリ斯
  ノ如キ富裕デアル所ノ縣ハ〓育ニ頗ル熱心デアルヤウナ縣ニ應ジテ官設ノ高
  等學校ヲ起シテヤル必要ハ決シテナイノデアル

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• 161・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　ドウカ議論ニ涉ラヌヤウニ··

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• 162・外山正一

  ○外山正一君　議論デハアリマセヌ、質問デアリマス、ソレデサウ云フ方針ヲ
  文部當局者ハ採ラレル考デアルカドウカト云フコトヲ我輩ハ質問スルノデア
  リマス、ソレカラシテ又高等學校ノ增設ヲ主張セラルヽ所ノ發議者ノ言ハレ
  タ通リ成ル程山口縣ノ高等學校ヲ擴張スルコトモアリ、ソレカラシテ鹿兒島
  ノ造士館モ再興ノ建議モ出テ居ル、文部當局者ニ於テモ早晩之ヲ再興セラル
  ル-デアラウト云フコトヲ認メテ居ル、然レドモ唯斯ノ如キ縣ニノミ斯ノ如キ
  藩閥ノ縣ニノミ、高等學校ヲ奬勵シ高等學校ヲ起スコトヲヤッテ、今日ノ如キ
  他ノ縣ノ新潟デアルトカ長野デアルトカ東海道ノ邊ニ高等學校ヲ起スコトヲ
  怠ッテ居ルト云フコトハ益今日行ハレル所ノ藩閥ノ勢力ヲ逞ウセシムルノデ
  アリマス、ソレヨリハ今日ノ如ク互ニ競爭シテ唯斯ノ如キ大縣デアリ富裕デ
  アル所ノ縣ガ政府ノ設立ヲ待テ競爭シテ居ルノデアル、實ニ不見識極マルコ
  トデアル、不見識極マルコトデテリマスケレドモ、政府ノ方針タル今日マデノ
  方針ハ官設ノ方針ヲ取ッテ居ル、故ニ官設ヲ待ッテ居ルノデアル、ソレヨリハ
  早ク高等學校ヲ設立サセル爲ニ斷然タル方針ヲ採ッテ高等學校ハ斯ノ如キ場
  合ニハ官設ニハセヌ、〓シテ高等學校ト云フモノハ縣立ニスベキモノデアル、
  又市立ヲ奬勵スルト云フ方針ヲ採ラレテ、而シテ文部省ニ於テハ官設ニセラ
  レルノハ却ッテ靑森秋田邊ノ如キ所ニ官設ニスルト云フ斷然タル處分ヲ一刻
  モ早ク採ラレル方ガ必要デハナイカト思ヒマスガ、其邊ニ附イテ文部當局者
  ノ御意見ハ如何デアルカ、我輩ハ要領ヲ得ルヤウナ御答ヲ得タイノデアル
  〔政府委員奥田義人君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=162

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• 163・奧田義人

  ○政府委員(奥田義人君)　唯今外山サンヨリノ質問ニ御答ヲ致シマス、餘程
  御質問ハ長イヤウデアリマシタガ、要領ハ詰リ現今ノ所デハ高等學校ハ總テ
  官設ニスルト云フコトノ規定ニナッテ居ル、然ルニ段々地方等カラシテ創立
  費ナリ竝ニ經常費等モ其地方デ負擔シテ設立ヲシタイヤウナ申シ出ガアルヤ
  ウニ聞ク、サウ云フ場所ニ向ッテ縣立ノ高等學校モ許スヤウニシタガ宜イカ、
  當局者ノ意見ハ如何デアルカ、斯ウ云フ御質問ノヤウニ承リマシタ、當局者
  ニ於テハ成ル程外山君ノ唯今述ベラレマシタ通リ從來ハ官立デ高等學校ハ創
  立スルト云フコトニナッテ居リマシタガ、將來ニ於テハ追〓府縣立デモ之ヲ
  創立スルコトガ出來得ルコトニシタイ見込デ居リマス、併ナガラ唯府縣カラ
  シテ申出ガアッタカラト云ウテ直チニ之ヲ許スヤ否ヤニ至ッテハ餘程考慮ヲ要
  スルコトデアル、御承知ノ通リ普通ノ〓育ノ負擔ハ今日皆各府縣竝ニ市町村
  デ以テ持ッテ居ルヤウナ次第デアリマス、ソコデ師範學校ノ如キ中學校ノ如
  キ尙ホ今日ハ不完備ノ有樣ノモノデアリマスカラシテ、是等ノモノニモ十分
  府縣ヲシテ力ヲ入レサセネバナラヌ譯デアリマス、高等女學校ノコトニ至ッテ
  ハ未ダホンノ端緒ヲ開イタト云フ有樣デアリマス、ソレ等ニ向ッテ府縣ガ十
  分力ヲ入レテ而シテ尙ホ餘裕ガアルト云フ見込ガ立チマシタナラバ、將來ニ
  於テ高等學校ヲ立テサセマシテ然ルベキコトト考ヘテ居ル、追くソレ等ノ規
  定ヲ設ケタイト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=163

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• 164・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　他ニ御發議ガナケレバ採決ヲ致シマス、本建議案
  ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=164

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• 165・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　過半數ト認メマス、建議案ハ可決ニナリマシタ、
  學制調査會設置ニ關スル建議案、子爵長岡護美君外五名發議、會議、前會ノ續、
  特別委員長報告
  〔子爵長岡護美君演壇ニ登ル〕

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• 166・長岡護美

  ○子爵長岡護美君　此案ハ諸君モ御承知ノ通リ前會ニ、本員ハ提出者デアリ
  マスガ何分愼重ニ調査ヲ要スル方ガ至當デアラウト云フ考デ付託調査委員ヲ
  置クコトヲ却ッテ發議致シマシタ、而シテ菊池大麓君ガ御贊成下サッテ調査會
  ヲ二囘開イタ次第デアリマス、此調査會ニ於テハ皆委員ハ同感デアリマシ
  テ今日調査ノ必要ト云フコトハ總テ認メラレテアルノデアリマス、固ヨリ委
  員中ニハ學識ニ富ミ又〓育ニ經驗アル御方モ多ク加ラレテ居リマシテ、此速
  記錄ヲ御覽下サルト分リマスガ、第一囘第二囘共ニ鄭重ニ討議ヲ致シ、又各自
  ノ意見モ述ベラレタル次第デアルノデアリマス、ソレデ此委員會ノ結果、修
  正ヲ加ヘルコトニナリマシテ、毫モ初提出ノ精神トハ變ッテハ居ラヌノデア
  リマスルガ、何分此本院ノ體裁トシテ行政ノ大權ヲ有スル當局大臣ニ向ッテ
  ハ此方法ヲ設クル如キ等ハ是ハ當局者ニ一任シタ方ガ穩當デアラウト云フ考
  デ此修正ヲ加ヘタ次第デアリマス、デ本員等ハ飽クマデ當局大臣ニ向ッテハ
  獨リ文部省ノ當局者ノミナラズ學識ニ富ミ又〓育ニ經驗ノアル人ニ成ルタケ
  汎ク諮詢サレテ相當ノ調査ヲ遂ゲ得ベキ方法ヲ設ケラレタイト云フ希望ハ述
  ベ置キマシタ次第デアリマス、唯此修正ノ主意ハ前ニ述ベタル如ク此方ガ穩
  當デアラウト云フコトデ斯樣ニ決シタ次第デアリマシテ、左樣御了承下サラ
  ムコトヲ願ヒタイノデアリマス、段々前ニモ私ガチヨット申上ゲタ通リ此同
  志會ト云フヤウナモノガ出來マシテ、私ガ唯今學制〓究會長ノ場ニ當ッテ居
  リマスシ、辻君ガ帝國〓育會長デアラレルノデ、ソレデ其調査ノ必要ト云フ
  コトハ皆同志デアリマスルケレドモ、併ナガラ何カ其有志ヲ集メル爲ニ要項
  ト云フモノヲ或ル人ガ認メタモノヲ唯參照ニ出シテ其要項ニ附イテハ一遍モ
  討議ヲ致サヌノデアリマス、ト申スハソレハ唯其同志ヲ誘導スル爲ニ調査
  ノ必要ダケノコトデ誘導スル爲ニ要項ト云フモノヲ出シタノデアリマシテ
  一遍モ討議ヲ致サヌノデアルノデ、ソレデ私共モ其要項中ニハ固ヨリ反對ナ
  箇所モ澤山アルノデアリマス、私ハ此大學ノ年限等ハ決シテ短縮スベキ議論
  デハナイノデアル、併ナガラ中學校以下ノ學校ノ配當ノ如キニ至ッテハ何分
  今日後進者ガ支ヘテ前進者ノ爲ニ皆上ノ學校ニ入ラウトシテモ其進路ヲ妨
  ゲラレルト云フ結果デアリマスデ、何トカ此系統上ノコトモ調査ヲ加ヘラレ、
  又此德育上體育上ノコトニ附イテモ調査ヲ加ヘラレタナラバ又今日ニ改正ヲ
  要スル點モアラウト云フ考カラシテ、ソレ故ニ私ハ調査ノ必要ト云フコトダ
  ケデ同意ヲシテ居ッタ次第デアルノデアリマス、ソレデ調査ノ必要ト云フコ
  トハ委員モ總テ同感デ居ルコトデアリマスカラ、此建議ヲ致シテ又當局者ノ
  方デ篤ト御〓究ニナッタナラバ、又然ルベキ方法モ立ッテ調査ノ結果ヲ得ル
  デアラウト云フ考ヲ以テ建議ヲスルノデアリマスカラ、今日〓育界デ本員等
  ハ必要ト思フノデアリマスカラ、直チニ可決ニナラムコトヲ希望スルノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=166

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• 167・菊池大麓

  ○菊池大麓君　質問致シマス、此修正ノ御主意ハ委員會ニ於テハ調査會ト云
  フモノヲ法典調査會ノ如キ組織ニスルト云フ必要ハナイト御認メニナッテ斯
  樣ニ修正ニナリマシタノデゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=167

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• 168・長岡護美

  ○子爵長岡護美君　調査會ト云フコトニナレバ、ドウモ方法ヲ當局者ニ向ケ
  ルト云フコトニスルヤウナコトハ、ドウモ穩當デナイコトニナリマセウ、何
  分行政ノ大權ヲ有シテ居ル當局大臣ノコトデアリマスカラ、此好望ナル調査
  サヘ出來レバ宜イモノデアリマスカラ、ソレデ當局大臣ニ一任シタガ穩當デ
  アラウト云フコトカラ調査會ト云フコトハ削リマシタ譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=168

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• 169・菊池大麓

  ○菊池大麓君　モウ一應確メタウゴザイマスガ、然ラバ委員會ニ於テハ當局
  大臣ニ於テ適當ト認メラルヽ方法デアレバ玆ニアリマス通リ調査會ト云フコ
  トニ附イテハ注文ハナイト云フコトデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=169

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• 170・長岡護美

  ○子爵長岡護美君　左樣デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=170

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• 171・菊池大麓

  ○菊池大麓君　モウ一ツ質問致シタウゴザイマス、調査事項ハドウ云フコト
  ヲ調査スルト云フコトハ委員會ノ方デ御極リニナッタノデアリマスカ、速記
  錄ハ第二號ハ今朝漸ク受取リマシテ、ツイ委シク見マセヌデゴザイマスガ、
  ドウゾ委員長ノ御答ヲ請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=171

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• 172・長岡護美

  ○子爵長岡護美君　御答致シマス、是ハ本員等ノ者ハドウカ此學制ニ關スル
  コトノ一般ノ調査ヲ願ヒタイト云フ考デ、ソレ故ニ當局者ニ總テノ方法ハ任
  セルコトニ致シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=172

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• 173・菊池大麓

  ○菊池大麓君　學制ニ關ル一般ノ事ト云ヒマスルト例ヘバ此高等學校大學校
  ノコトニマデモ涉リマセウト思ヒマスガ、卽チ左樣致シマスルト云フト唯今
  可決致シマシタ所ノ建議案ニ對シテ、アレ等ノ所モ幾ラカアヽ云フ學校ヲ設
  ケルコトノ可否ト云フコトニ附イテハ疑ガ存シテ居ルノデアリマスルカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=173

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• 174・渡邊洪基

  ○渡邊洪基君　本員ハ卽チ委員ノ一人トシテ、チヨット委員長ノ御答ヲ補ヒ
  タイト思ヒマス、今ノ何ハ文部大臣文部大臣ト云フコトヲ委員長ハ言ハレマ
  シタガ、委員會デハ文部大臣ト云フコトデハナイ、此建議ニ書イテアル通リ
  「政府ハ」ト云フコトヲ書イテアルノデアリマスカラ、文部大臣ガ適當ナル方
  法ヲ設ケラレテ文部大臣監督ノ下ニ斯ウ云フ會ヲ置イタラ宜カラウト云フノ
  デハナイ、是ハ卽チ政府ガ〓育ノ責任ニ當ッテ居ラルヽカラ其政府ガ適當ナ
  ル方法ヲ設ケイト云フコトデアリマス、ソレデ委員會ハ唯文部省內ニ一ノ相
  談會ミタヤウナモノヲ起シテ、サウシテヲヤンナサイト云フコトヲ申シタノ
  デハナイノデ、此事ハチヨット御斷ヲ申シテ置キマス、ソレカラ又唯今ノ前
  ノ建議ノコトニ附キマシテハ本員ハ起立致サナカッタノデアリマスガ、起立
  致サナカッタニモ拘ラズ少シモ其建議ニハ頓著スルコトハナイ、何モ調査ヲ
  スル間學事ヲ停止スルト云フコトハナイ、一瞬間モ學事ヲ止メルト云フコト
  ハナイ、新ニ出來マスルマデノ間ハ現行ノ法ニ依ッテ進ンデ行クヨリ外仕方
  ガナイ、高等學校ヲ增ストカ大學ヲ增ストカ云フコトナラバ何モ此調査ノ成
  立ツマデノ間、之ヲ跼躇シテ待ッテ居ルニハ及バヌノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=174

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• 175・菊池大麓

  ○菊池大麓君　此調査會ハドノ位ナ時日ヲ御費シニナル御考デアリマスカ、
  御提出者ノ意見ヲ伺ヒタウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=175

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• 176・渡邊洪基

  ○渡邊洪基君　別ニドレ位費スカ分リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=176

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• 177・菊池大麓

  ○菊池大麓君　然ラバ此調査ノ時限ト云フモノハ一向御考ハナイノデアリマ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=177

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• 178・渡邊洪基

  ○渡邊洪基君　ソレハ調査ノ委員トカ議員トカ云フモノノ組織ニ依リマスル
  カラ時間ハ今豫メ極メルコトハ出來マセヌ、時ヲ確定シテヤルト云フコトハ
  出來ナイノデアリマス

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• 179・菊池大麓

  ○菊池大麓君　豫メ御提出ニナルニハ········調査會ヲ設ケテ調査ヲスルト云フ
  コトヲ御提出ニナル前ニハ凡ソドノ位此調査ニハ掛ルベキモノデアルカト云
  フコトヲ考ヘラルベキコトデアル、ソレヲドウ云フ御考モナク漫然ト唯調査
  シタラ宜カラウト云フコトヲ御提出ニナッタノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=179

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• 180・渡邊洪基

  ○渡邊洪基君　ソレハ獨デヤルナラバ········發議者ダケデヤルナラバ分リマス
  ケレドモ、サウ云フ譯デアリマセヌカラ分リマセヌ

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• 181・久保田譲

  ○久保田讓君　私ハ此際意見ヲ述ベタウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=181

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• 182・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　宜シウゴザイマス、ドウカ演壇デ願ヒマス
  〔久保田讓君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=182

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• 183・久保田譲

  ○久保田讓君　私ハ過日來、不幸ニシテ所勞デゴザイマシテ此調査會ノ委員
  タルニ拘ラズ委員會ニ闕席勝デゴザイマシテ、委員會ニ於テ此意見ヲ述ベル
  コトガ出來マセヌノデアリマシタカラ餘儀ナク本會ニ於テ意見ヲ述ベタイト
  思ヒマス、今私ノ意見ヲ申述ベマスニ先チマシテ文部大臣竝ニ諸君ノ前ニ
  言申シテ置キタイコトガゴザイマス、元來此問題ハ世間デハ文部省ヲ攻擊ノ
  爲デアル、或ハ大學ノ攻擊ノ爲デアル、又何カ政略デモアッテヤルコトデア
  ルト云フヤウナコトヲ申觸ラス者モアル、サウシテ文部省ノ當局者ノ貴族院
  衆議院ニ於テ辯論ヲセラルヽ所ヲ見マシテモ幾分カ其邊ノコトガ速記錄抔ニ
  現レテ居ルノデアリマス、是ハ全ク誤解デアル、學政上ノ今日ノ弊害ト申スモ
  ノハ決シテ突然ニ出來タモノデハナイ、既往三十年來ノ學政ノ實行上ニ依リ
  マシテ次第ニ利害共ニ事實ニ現レテ參ッタノデアル、從ッテ此改革論ト云フヤ
  ウナコトモ決シテ一朝一タニ出來タコトデハアリマセヌ、何故ニ今日此改革
  論ガ俄ニ本年ニナッテ喧マシクナッタカト云フコトヲ申セバ、外デハナイ、本年
  帝國大學ノ法科大學ニ於テ三百人バカリノ學生ガ落第ヲシタ、ソレカラ工科
  大學ニ於テハ豫科ヲ經テ相當ニ進ンデ來タ所ノ入學志願者ガ這入レナカッタ、
  競爭試驗ヲ行ッタト云フヤウナ不都合千萬ナコトガ出來テ大イニ世ノ父兄ヲ
  シテ驚カシメタノガ原因デアル、ソレ故ニ此問題ガ盛ンニナッタノハ決シテ
  今日俄ニ始メテ出來タコトデハナイ、ソレデ從前カラシテ引續イテ居リマス、
  斯樣ナ問題ニ附キマシテハ決シテ唯今ノ當局者卽チ僅ニ一箇年バカリノ間、
  局ニ當ッテ居ラレル所ノ文部大臣ノ責任デアルト云フヤウナコトハナイ、ソ
  ンナコトハ決シテナイ、サウ云フ點カラ申スト此發議者ノ辻君デアルトカ渡
  邊君デアルトカ或ハ我輩ノ如キ長ク從前文部ニ居ッタ者ハ幾分カ其責ニ任ゼ
  ヌケレバナラヌト云フ位ナ事柄デアラウト私ハ考ヘルデゴザイマス、又大學
  ハ此改革ノ爲ニ殆ド破壞サレテシマフト云フガ如ク大層心配ヲセラレル、ソ
  レデ當局者ヲ始メ加藤君、外山君、濱尾君、菊池君抔ノ大學ニ關係アル諸君
  ガ必至ニ之ニ反對ヲサレル、外山君、加藤君ノ反對論ノ如キハ隨分讒謗ナル
  所ノ···讒謗誹譏ナル言語マデ用ヒテ、甚シイ反對論ヲ書イタリ言ッタリシ
  テ居ラレルヤウナコトデアル、是ハ私ハ兩博士ノ爲ニ甚ダ惜ム、決シテ左樣
  ナコトデハナイ、大學ヲ壞ザウ抔ト云フコトデハナイ、現在ノ大學ト云フモ
  ノハ私ノ意見ニ依レバ之ヲ益〓完全ニシ益〓高尙ニシ成ルベク宜シイ大學ニ
  シタイト云フ考デアル、元來〓育ノコトハ實ニ是ハ國家問題デゴサイマシテ
  決シテ黨派ノ異同抔ニ依ッテ是等ノ議論ヲ異ニスベキモノデハナイ、又政略
  ノ爲ニ利用スルト云フ筋ノモノデモナイ、既ニ本問題ノ建議案ヲ御覽ニナリ
  マシテモ衆議院デハ政府黨モ反對黨モ合同シテ建議ヲ出シテ居ル、貴族院モ
  同樣ナコトデアッテ、提出者ハドナタデアルト云フコトヲ御覽ニナリマシテ
  モ諸君ハ大〓分ッテ居ラルヽダラウト思フノデアリマス、ソレデドウゾ此本問
  題ニ就キマシテハ攻擊デアルトカ政略デアルトカ云フヤウナ感情推測ハサッ
  パリ奇麗ニ除キ去ッテ、サウシテ文部當局者ハ勿論、贊成者モ反對者モ胸襟
  ヲ披イテ公平ニ議論ヲ致スコトヲ望ムノデアリマス、誠ニ此問題ハ重大ナ問
  題デアッテ國家ノ將來ノ盛衰ニ關スル問題ト私ハ考ヘルノデアリマス、ソレ
  ダケヲ前以テ御斷ヲ申上ゲテ置キマス、私ハ此建議案ノ原案ニ贊成ヲ致ス者
  デアル、委員ノ修正案ニハ-不同意ヲ致ス者デアル、私ガ此建議案ニ贊成ヲ致
  シタノハ此學制全般ニ互ッテ大イナル〓革ヲ促シタイ、又一面ニ向ッテハ學
  制全般ニ向ッテ大イナル擴張ヲ致シタイト云フ考デアルノデアリマス、ソレ故
  ニ斯ノ如ク修正ニナリマシテハ到底私ノ考ヘル所ノ目的ヲ達シ得ルコトハ出
  來マセヌ、若シ此修正ノ如ク現在ノ制度ヲ基礎ニシテ少シバカリノ修正ヲ爲
  ス卽チ文部大臣ナドガ此委員會抔デ言ハレタル所ノ所謂學科課程ノ改正デア
  ルトカ〓授方法ノ改良デアルトカ云フヤウナコトデアルナラバ、文部省ハ既
  ニ此調査ニ著手シテ居ルト文部大臣ハ明言シテ居ラレル、サウ云フコトナラ
  バ決シテ斯樣ナ建議ヲ致スニハ及バヌ、文部大臣ニ一任シテ宜シイ、貴族院ヨ
  リ堂堂トシテ政府ニ建議スルト云フヤウナ必要ハ私ハ更ニナイト思フ、現今
  學制上ノ有樣ハ如何デアリマスカ、學問〓育ノ進步發達ヲ致シタコトハ實ニ
  非常ナモノデアリマシテ、之ガ爲ニ國運ノ進步ヲ助ケテ居ル所ノ功績ト云フ
  モノハ實ニ偉大ナルモノデアッテ、此事ニ附イテハ今更私ガ喋々申上ゲルヲ要
  サヌノデアル、併ナガラ三十年來ノ經驗ニ依リマシテ學問ノ進步ト共ニ弊害
  ノ現レテ來タコトモ又少カラヌ點ガアラウト思フノデアル、〓育ノ制度〓育
  ノ方法等ガ今日ノ時宜ニ適セザルモノガアルガ爲ニ學生ノ學問ヲ致ス年限ガ
  甚ダ長イ、長イ爲ニ我國ノ國情ニハ適セナイコトガアル、學生ノ負擔ト云フ
  モノガ甚ダ重クテ學生ノ精神ヲ勞スルコトガ頗ル過度デアル、之ガ爲ニ國民
  ノ身體精神ト云フモノガ或ハ〓弱ヲ致ス方ノ傾デハナイカト云フ憂ガアルノ
  デアル、サウシテ國家ノ元氣ト云フモノガ次第ニ振ハヌヤウニナリハセヌカ
  ト云フヤウナル國家前途ノ爲ニ憂フベキ徵候ガ見エルノデアリマス、若シ斯
  ノ如キ情況ガ事實デアルナラバ、學問ガ如何ニ高尙ニナッテモ知識ノミガ如
  何ニ上進ヲ致シテモ國家ノ國力ガ盛ニナルトハ申サレマイ、我國ハ御承知ノ
  通リ今日世界ノ强國ト競爭ヲ致シテ國權國利ヲ爭ハ子バナラヌ時ニナッテ、斯
  ノ如キ弊害ガ萬一アルト云フコトデアレバ私ハ一日モ之ヲ等閑ニ付スルコト
  ハ出來マイト考ヘルノデアリマス、私ノ希望スル改革ト云フノハ大學ノミデ
  ハナイ、中學モ小學モ全體ニ亘ッテ大ナル改革ヲシテ、サウシテ我國ノ國情
  ニ適當ヲスルト云フコトニシタイト云フノデアル、ドウ云フコトガ我國ノ國
  情ニ適シナイノデアルカト云フト、餘程是ハ込入ッタ面倒ナコトデアリマス
  ガ、先ヅ一口ニ申セバ總テノ〓育ノ制度ト云フモノガ貧キ者モ富ンデ居ル者
  モ健康ナ者モ虚弱ナ者モ、又俊才ナ者モ劣才ナ者モ混同ヲシテ居ル、混同ヲ
  シテ同一ナ型ニ於テ〓育ヲセラレルト云フ仕組ニナッテ居ルノガ今日ノ仕組
  ノ大體デアル、ソレ故ニ優等ナ者ハ劣等ナ者ノ爲ニ自分ノ進步ヲ妨ゲラレル
  ヤウニナル、又劣等ナ者ハ優等ナ者ノ爲ニ苦痛ヲ感ズルヤウナコトニナル、
  サウシテ其弊ト云フモノガ先刻申シタヤウナ悲ムベキ情況ニ立至ルノデア
  ル、元來小學ト云フモノハ國民ノ最モ多數ヲ占ムル所ノ中以下ノ子供ニ普通
  〓育ヲ授ケテ國民タル所ノ資格ヲ得セシムル所デアル、然ルニ拘ラズ現在ノ
  小學校ハ貧民ノ子弟モ富豪ノ子弟モ皆混同シテ小學校ニ居ル、寧口中以上ノ
  子弟ノ方ガ實際ハ多イコトデアル、從ッテ其〓科モ設備モ混同ヲシテ雙方ト
  モ不便不利ヲ感ジテ居ルノデアル、ソレデ小學校ニ於テハ之ヲ區別スル方法
  ヲ取ッテ〓革ヲシナケレバナラヌ、其方法ハ種々アリマスガ此處デハ略シテ
  申シマセヌ、御尋アレバ申シマス、ソレカラ中學校ハ健全ナル一國ノ紳士、一
  國ノ國士ヲ養成スル所デアルニ依ッテ、其生徒ハ高尙ナル常識氣品ヲ具ヘ又
  大學ノ豫備トシテ不足ノナイダケノ學問ノ素養ヲシナケレバナラヌ、現在ノ
  中學ハ斯ノ如キ要求ヲ充タスニハ甚ダ不十分デアル、ソレデ中學ニ於テハ就
  學年限ヲ縮メルドコロデハナイ、就學年限ヲ大ニ延バシテ之ヲ三年バカリモ
  增加シ又其設備モ頗ル完全ニシ、サウシテ現在ノ大學豫科ニアル所ノ多クノ
  部分ヲ此中學ニ移シテ、サウシテ學科抔ニ取捨ヲ加ヘテ今ノ中學ト云フモノ
  ハ全ク改造ヲシテシマヒタイデ高等學校大學豫科、先刻來御話ノアル所ノ
  大學豫科、實ニ是ハ一種無類ナ學校デアル、其組織ノ錯雜シテ居ルコトモ實ニ
  甚シイ、先ヅ此豫科ガ大キク分ッテ一部二部三部ト三ツニ分レテ居ル、其、
  部ハ法科大學文科大學ニ行ク豫科デアル、二部ハ理科工科農科ニ行ク所ノモ
  ノデアル、三部ハ醫科ニ行ク所ノモノデアル、又其中ガ幾ツニモ分レテ居ル
  ノデ、殆ド此所デ私共ノヤウナ不辯ナ者ガ明瞭ニ說明カスコトノ出來ヌ位錯
  雜ヲ致シテ居ル、斯ノ如キモノハ學問ノ進步ノ爲ニモ害アリ學生ノ方向ヲモ
  誤ルト云フコトニナル、速ニ斯ウ云フモノハ廢シテシマフガ宜カラウト思フ、
  サウシテ中學校ト云フモノヲ完全ニシテ之ヲ中學校ノ部分ニ移シタラ宜カラ
  ウト思フ、ソレカラ大學ハ大學令ニモアル如ク國家ノ須要ニ應ズル學術技藝
  ヲ〓授スル所デアルカラシテ、專ラ應用ノ才ヲ養ヒ、サウシテ國家ノ需要ニ
  應ズル人材ヲ大學カラ供給ヲスルト云フコトヲ以テ主眼トシ、ソレニ必要ナ
  ル所ノ設備ヲ致シタイ、デ今後新ニ設ケル所ノ大學ハ此制ニ依ラセタイト云
  フ考デアル、デ現在ノ大學卽チ東京ノ帝國大學、是亦一種無類ノ大學デアル、
  學制ノ發布以前ニ在ッテ半以上外國人ノ手ニ依ッテ成立ッタモノデアル、ソ
  レ故ニ醫學ヲ學ブ者ハ獨逸語ヲ學バナケレバ醫學ガ學ベナイ、ソレカラ法律
  ハ英吉利ノ法律、佛蘭西ノ法律、獨逸ノ注律ト云フヤウニ別ケテアッテ、ソ
  レ等ノ國々ノ言葉ニ依ラナケレバ學ベナイ、其他ノ工科理科農科ト云フヤウ
  ナモノハ又英語デ以テ學ブ、斯ウ云フヤウナ大學ハ實ニ一種無類デアル、斯
  ウ云フ特別ナル歷史ニ依ッテ出來マシタモノデアルカラシテ、之ヲ以テ大學
  ノ一般ノ標準トシテ、帝國大學ノ一般ノ標準トシテ一般ニ此雛形ニ依ッテ大
  學ヲ立テテ行クト云フコトハ甚ダ不利デアルト思フノデアル、ソレデ愚案ニ
  依レバ此大學ハ特殊ノ一種ノ大學トシテ我國ノ學問ノ最高等ノ機關トシテ其
  儘存置シテ置ク、サウシテ專ラ此大學ニ於テハ學術技藝ノ蘊奧ヲ〓究スル所
  トシテ他ノ學校ノ聯絡關係等ハ少シモ頓著セズ、必要ニ依ッテハ修業年限ヲ
  縮メルドコロデハナイ、今ヨリモット延スガ宜イ又必要ニ依ッテハ自ラ適當
  ナル豫科ヲ別段ニ設ケテモ宜シイ、サウシテ俊才デアッテ身體モ强健デアリ、
  資力モ富裕ナ者ハ此大學ニ集マッテ來ルガ宜シイ、サウシテ大學者モ大人物
  モ此門カラ多ク輩出シテ來ルヤウニシタイ、サウシテ學問ハ今ヨリ一層高尙
  ニシテ眞ニ世界ノ大學ト競爭ノ出來ルヤウニシタイト云フ考デアル、斯ノ如
  クニシマシテ小學ヨリ中學大學ニ至ルマデノ間、方々囘リ道ヲスル所ノ迂路
  ヲ避ケテ、サウシテ其直接ナ直徑ヲ㨗徑ヲ早道ヲ通ッテ、ソレカラ學科ニ取
  捨撰擇ヲ加ヘテ、複雜ヲシテ居ル、或ハ重キニ過グル所ノモノノ弊ヲ去リ除
  イテ、ソレカラ先刻申シタ優等ノ者ト劣等ノ者トガ各〓ソレ相當ノ適當ノ〓
  育學問ヲスルト云フコトガ出來マシタナラバ一般ノ多數ノ子弟ハ就學年限ガ
  短縮シテ短クナッテ來ルヤウニナル、ソレカラ學生ノ負擔モ輕クナル、從ッテ
  學生ノ身體精神ノ〓ヘルト云フヤウナ憂モ除キ去ッテ社會ニ活動スルコトガ
  出來ル、サウシテ國家經濟ノ上ニモ一身ノ生活ノ上ニモ大イナル便利ヲ得ル
  ト云フコトニナル、ソレカラ同時ニ又一部有數ノ俊秀ナ者ハ益〓自分ノ英才
  ヲ練磨シテ學業ヲ大成スルコトガ出來ルト云フコトニナルノデアル、斯ノ如
  クニナリマシテ始メテ國民ノ智德ト云フモノガ高尙ニナリ、國民ノ體力ト云
  フモノモ强大ニナリ、國民ノ志氣ト云フモノモ雄大ナモノガ出來テ來ルヤウ
  ニナル、サウシテ國家ノ元氣ト云フモノモ盛ニナルデアラウト思フノデア
  ル、サウナッテコソ始メテ世界ノ强國ト競爭ヲスルト云フコトガ出來ヤウト思
  フ、又始メテ我國ノ國情ニ適シタル所ノ〓育制度ト云フコトガ出來ルデアラ
  ウト思フノデアル、然ルニ之ニ反對スル人ハ斯樣ニ申ス、學生ノ身體ハ決シテ
  衰弱ハ致サヌ、學生ノ身體ハ次第ニ强クナッテ來ル、ソレカラ卒業生ハ
  學校ノ卒業生ハ決シテ弱ッテ居ラヌ、能ク社會ニ活動ヲシテ居ル、學生ノ身
  體精神ガ次第ニ衰ヘルト云フコトハ全ク事實デナイト云フ、斯ウ言ッテ反對
  ヲ致スノデアル、又大學ノ制度ヲ改メテ就學年限ヲ短縮スルトキニハ我國ノ
  學問ノ程度ヲ下ゲル、サウ云フコトハ國家ノ利害ニ關係スルコトデアル國
  家ニ不利デアル、又世界ノ大勢ヲ知ラヌ所ノ暴論デアルトマデ極言ヲシテ反
  對ヲシテ居ル、又文部大臣ハ此改革論ヲ目シテ是ハ皮相ノ見デアル、根本的
  ノコトデナイ、學科課程ノ調査抔ヲ致スコトコソ學政上ノ根本的ノコトデア
  ルト云フコトヲ辯ジテ居ラレル、併シ私ヨリ之ヲ見マスレバ失禮ナガラ文部
  大臣ノ御所見ハ徒ニ細目ニ拘泥ヲシテ、大體ニ著目セヌ所ノ御議論デハナイ
  カト思フ、例ヘバ今玆ニ家屋ヲ改築スルトキニ當ッテ通例其主人タル所ノ者ハ
  先ヅ新ニ要スル所ノ家屋ノ規模、之ニ要スル金額ノ〓算ト云フモノヲ主人ガ
  定メテ然ル後ニ技師、專門家ノ技師ガ其家屋ノ形狀、間取、裝飾、建築ノ方
  法等ヲ設計スルガ如ク、文部大臣タルモノハ先ヅ諸般ノ國情ヲ考ヘ、學制ノ
  大體ヲ決定ヲ致シタ後デナケラネバ現制度ニ基イテ專門ノ〓育家ガ如何ニ學
  科課程ヲ調査ヲ致シテモ是ハ現在ノ制度ヲ整理スル爲ニハ必要カモ知レナイ
  ガ、併ナガラ根柢ヨリ大イナル〓革ヲ爲ス所ノ手段トシテハ本末前後ヲ過ッタ
  モノト言ハナケレバナラヌ、ソレカラ又大學改制、修業年限短縮ト云フコト
  ヲ非トスル論者ノ如キニ至ッテハ前ニ述ベタル通リ一般ニハ年限ハ短縮ヲ致
  シマスルガ、或ル方面ニハ年限ヲ延バシテ、高キヲ要スル學問ハ益〓高カラ
  シメルト云フ所ノ考案デアルト云フコトヲ能ク了解ヲ致サレタナラバ、論者
  ノ疑〓ハ自ラ氷解シテシマフデアラウト思フ、殊ニ反對論者ハ只管大學大學
  ト云ッテ大學ノコトノミ言ッテ居ラレル、併ナガラ中學以下ノコトハ如何デア
  ル、小學ハ義務年限ハ四年デアリマシテ、通例西洋各國ニ行レテ居ル所ノ普通
  〓育義務年限ヨリモ四年程短イ、半分ホカ普通〓育ハ受ケテ居ラヌ、從ッテ國
  民一般ノ知識ト云フモノハソレダケ格段ニ西洋ヨリ低イノデアル、ソレカラ
  又中學モ其通リデ、彼ノ國ニ比ベテハ甚ダ不完全デアル、斯ウ云フコトハ論外
  ニ置イテ獨リ大學大學ト云ッテ大學ノミガ完全ニナレバ各國ト競爭シ得ルコ
  トガ出來ルヤウニ思ハレルノハ少シク御間違デハナイカト思フ、就中、學生ノ
  身體ノ强弱論ニ至リマシテハ是ハ實ニ本問題ノ骨髓デアル、深ク是ハ〓究ヲ
  致サヌケレバナラヌ、學生ノ健康ハ次第ニ進ンデ行クト云フ當局者ノ御說ハ
  何ニ基イテ居ルカト云フト、文部省ノ直轄學校生徒體格表ト云フモノガアリ
  マス、其表ヲ見マスルト成ル程既往三年程ノ間ニ少シ宛進ンデ居ルヤウデア
  ル、卽チ年齢十六歲ヨリ二十歳ニ至ル者ハ二箇年ノ間ニ百人ニ附イテ四人或
  ハ二人健康者ガ多イ、健康者ガ多クナッタト見エテ居ル、年齢二十一年カラ二
  十五年マデハ二箇年ノ間ニ一人八分乃至一人九分、百人ニ附イテ健康者ガ殖
  エテ居ルト云フコトニナッテ居ル、又年齡二十六年ヨリ三十年ニ至ルマデハ
  却ッテ健康者ハ減ジテ居ル、一年ニ十人モ減ッテ居ル、ソレカラ或ル點ニ於テハ
  一人減ッテ居ルト云フコトデアリマシテ、或ハ增シテ居ル所モアルガ或ハ減ッ
  テ居ル所モアル、併シ兎ニ角、增シテ居ルト致シマセウ、併シ增シタト云フ
  コトニハ大イニ理由ガアル、是ハ近年文部省ニ學校衛生ノ主務官ガ出來マシ
  テ、直轄學校ノ生徒ガ入學スルトキニ身體檢査ト云フコトヲ致ス、學校ノ規
  則ニモ諸君ガ御承知ノ通リ健康デナケレバ入學ハナラヌト云フコトニシテア
  ル、其規則ヲ厲行スルノデ、現ニ私抔ノ親シク知ッテ居ル者ニモサウ云フ身
  體檢査ノ爲ニ刎ネラレタ者ガアル、學問ノ方ハ十分及第ヲシタノデアルガ、健
  康ノ爲ニ刎ネラレタノデアル、ソレデ決シテ健康上ニ害ハナイト云フコトヲ
  段段學校長ニ話ヲシテ入校ヲサセタ所ガ果シテ無事ニ卒業ヲシテ、其卒業ノ
  後ニハ學校カラ優待サレテ居ル者ガアル、其位ニ身體檢査ヲ属行シテ學生ヲ
  淘汰スルガ故幾分カ健康者ガ多イノハ當然ノ譯デアル、併シ私ハ又全ク反對
  ノ事實ヲ證明スル二三ノ統計ヲ見テ居ル、卽チ是モ文部省ノ手ニ成リマシタ
  所ノ年報デアル、近頃諸君ノ御手許へ配付ニナッタ所ノ年報ト云フモノガア
  ル、其中ニ文部省直轄學校生徒身體檢査表ト云フモノガ十一枚表ガ附イテ居
  ル、其表ノ中ニ就イテ見マスルト幼稚園ノ子供ハ總人員ノ中、健康ナ者ガ七
  分デ、中等ナ者ガ三分デ、健康ナ者ガ甚ダ多イ、小學校ノ生徒ニナルト健康
  ナ者ト中等ノ者ト五分五分ニナッテ居ル、ソレカラ中學校高等學校ノ生徒ニ
  至ルト健康ナ者ガ六分·······健康ナ者ガ四分デ、中等ノ者ガ六分、卽チ健康ナ
  者ガ次第ニ減ッテ居ル、大學ノ生徒ノ健康如何ト云フニ至ルト實ニ驚クベキ
  モノデアルト云フノハ健康ナ者ハ僅ニ三分デ、中等ノ者ガ七分ト云フコトデ、
  丁度幼稚園ト反對ノ比例ニナッテ居リマス、斯ノ如ク學問ノ進ムニ反比例ヲ
  シテ學問ガ進メバ進ム程身體健康ノ者ガ次第ニ減ジテ居リマス、是ハ唯男子
  ノミニ就イテノコトデアリマシテ、女子ハ省キマシタガ、女子ニ至ルト一層
  甚シイノデアリマス、是デモ學生ハ次第ニ健康ニナルト云フコトヲ申サレマ
  セウカ、如何デアリマスカ、又是ハ徵兵ノ或ル聯隊區ニ於ケル檢査、徵兵ノ
  職業別ノ一覽表ト云フモノデアルガ、ソレニ依リマスルト職業ハ職員、學生、
  僧侶、商、農、藝人、斯樣ナ風ニ職業ガ種類ヲ以テ類別ヲシテアリマス、其又體
  格ト云フモノハ、甲乙丙丁ト別ケテアル、其一番上ノ甲種ニ屬スル人員ト云
  フモノハ百ニ附イテ僧侶ガ五十八人、農業者ガ五十一人、商業者ガ四十人、ソ
  レカラ官吏銀行員其他ノ職員ト云フ者ガ三十五人、ソレカラ藝人ハ二十三人、
  ソコデ學生ト云フ者ハ如何デアルカト云ッテ見ルト、タッタ二十人デアル、百
  人ニ附イテ甲種ニ屬スル者ガ二十人、卽チ學生ト云フ者ハ商業ヲ致ス者ニ比
  シテ半數デアル、健康ナ者ガ半數デアル、ソレカラ藝人卽チ芝居ノ役者デアル
  トカ、寄席ヘ出ル落語家デアルトカ云フ者ヨリモ一層其健康ノ點ニ於テハ劣
  等デアル、是デモ學生ハ健康デアル、立派ニ社會ニ立ッテ活動シテ居ルト云
  フコトガ言ハレルデアリマセウカ、如何デアリマスカ、ソレカラ又明治十六年
  ヨリ明治三十一年ニ至ル間ノ十五箇年間ノ各兵ノ體重表ト云フ兵隊ノ身體ノ
  目方ヲ量ッタ表ガアリマス、十五箇年間ノ表ガアリマス、ソレニ依ッテ見ル
  ト十六年ニハ兵ノ平均體量ト云フモノガ十五貫七百目アッタ、ソレガ明治三十
  一年ニナルト十四貫九百目デアル、卽チ十五年ノ間ニ年々次第次第ニ減ッテ
  來テ、丁度八百目バカリ目方ガ減ッテ居ル、斯ノ如ク恐ルベキ忌ムベキ兆候
  ガ現レテ居ルノデアル、尤モ此統計ハ大抵ハ信ヲ置クニ足ラウト思ヒマスル
  ガ、併シ我國ノ統計ノコトハ御承知ノ通リデアリマスカラ、必シモソレガ確
  實ナリト云フコトハ斷言致シマセヌ、併ナガラ〓育ノコトト云フモノハ必シ
  モ不完全ナル統計表ニ拘泥致サズトモ、全國ノ人ガ皆自分ノ子弟ノ〓育上ノ
  實驗上ニ就イテ感ジテ居ル所ガアル、自分ノ子供ガ弱クナルトカ、强クナル
  トカ、年限ハ長イガ宜イトカ短イガ宜イトカ云フコトハ銘々自分ノ子供ノ〓
  育上ニ附イテ感ジテ居ルコトガアルノデアリマス、近來頻ニ學生ノ身體精神
  ガ〓弱致スト云フコトヲ言ッテ居ル者ガアッテ、ソレラノコトヲ憂ヘル所ノ聲
  ハ今日デハ殆ド全國ニ響イテ居ルト思ヒマス、ソレハ恐ラクハ大イナル過、大
  ナル間違ハナイコトト考ヘテ居ルノデアリマス、然ルニ反對サレル所ノ人ハ
  我ミノ學生ノ負擔ヲ輕クスル學年ヲ短縮スルト云フコトヲ以テ國家ヲ〓亡ニ
  誘ク暴論デアルト言ハレマスルガ、私ハ其反對ニ國民ノ體力精神ノ〓弱ヲ顧
  ミズ徒ニ過度ノ學問ヲ强フル者コソ却ッテ國ヲ〓亡ニ導ク者ト言ハナケレバ
  ナリマセヌ、又國家ノ利害モ、世界ノ大勢モ知ラヌ所ノ論ト言ッテモ宜カラ
  ウト思フ、ソレカラ又文部大臣次官其他ノ反對者ノ論中ニモ多ク小學中學ノ
  〓育方法ニ對シテハ頻ニ非難ヲセラレ、小學中學ノ〓育ノ方法ガ甚ダ宜クナ
  イト云フ非難ヲセラレ、殊ニ〓員抔ハ甚ダ淺劣デアルカノ如ク論ゼラレ、或ハ
  小學校令ノ第一條ニアル小學ノ本旨ト云フモノモ〓員ニハ分ッテ居ラナイト
  カ、或ハ又今日デハ〓員ガ石盤ハ紙デ造ッタモノモアルノニ、石盤ト云フモノ
  ハ石デアルト云ウテ〓ヘテ居ル者ガアリ、又ハ修身ノ修ノ字ハ肉月デアルト
  思ッテ誤ッタ字ヲ書イタ者ガアルトカ、サウ云フ不都合ナ〓員デアルト云フヤ
  ウナ視學官カラ報告ヲシタ例ヲ擧ゲテ散々ニ小學校ノ〓員ヲ非難サレテ居リ
  マスガ、是ハ私ハ少シク酷デアラウト思フ、隨分文字ノ間違ヤ書損ヒ抔ト云フ
  コトハ澤山ニアルコトデ私抔モ澤山ニ誤ヲ書クコトガアル、ソレカラ又大臣
  デモ、次官デモ、文字ノ書損ヒ讀損ヒ抔ハ隨分澤山ニアル、併ナガラソレガ爲
  ニ決シテ大臣タリ次官タル所ノ價値ヲ損スル譯デハナイ、ソンナコトハ大臣
  次官ノ價値ニハ少シモ障ラヌコトデアル、ソレ等ハ抑〓末ノ話デアッテ文部大
  臣、次官、或ハ視學官ト云フモノハ尙ホ此外ニ於テ監督ヲセラレヌナラヌ大切
  ナ點ガ澤山ニアラウト思フ、是程マデニ小學中學ノコトニ附イテハ當局者ハ
  非難ヲセラルヽガ大學ノコトニ至ッテハ一言モ言ハレナイ、大學ハ實ニ完全無
  缺デアルト見エル、一言モ言ッテ居ラナイ、併シ世間テハ小學ノ〓育ハ小學〓
  員ガ十二三圓内外ノ俸給ヲ取ッテ居ル〓員ニシテハ比較的ニ能ク出來テ居ル
  ト言ッテ居ル、高イ〓育程不完全デアルト云フコトヲ世間ノ人ハ思ッテ居ル、ソ
  レデ大學カラ如何ナル大人物ガ出タカ、如何ナル大學者ガ出タカ、大學〓授ハ
  如何ナル〓究ヲ致シテ居ルカ、大學〓授ハ如何ナル發明ヲ致シタカ、如何ナル
  大著述ガ出來タカ、又大學總長ハ如何ナルコトヲ務メテ居ルカ、大學院ノ學生
  ハ如何ナル勉强ヲ致シテ居ルカ、大學ノ學生ノ風儀ハ如何デアルカト論ジテ
  見マシタナラバ、人物トカ學者トカ云フコトハ一ト先ヅ別ニシテ大學ノ〓授
  ノ大發明大著述ト云フヤウナコトガアルカハ知ラヌガ、私ハ或ル博士ガ中學
  校ノ〓科書抔ヲ書イテソレガ世間ニ況ク行ハレテ普通〓育抔ノ上ニ非常ナ利
  益ヲ得テ居ルト云フコトハ聞イテ居ル、ソレカラ又或ル博士ガ藩閥ノ將來ト
  云フヤウナモノヲ書カレテ出サレタト云フコトモ知レテ居ル、併シ不幸ニシ
  テ未ダ如何ナル大著述ガアルト云フコトハ聞キマセヌ、ソレカラ大學ニハ大
  學紀要ト云フモノガアッテ皆〓授諸君ガ〓究ヲ致シタコトヲ洋文ニ書イテ出
  版ヲセラレルモノガアル、ソレヲ今年ノ年報ニ依ッテ見マシタガ理科農科醫科
  ニハ大學紀要ト云フモノガアル、法科文科ニハナイ、其〓究ノ論文ハ法科文科
  ニ一人モ一册モナイ、却ッテ理科農科抔ノ内ニハ外國人抔ハ割合多ク外國〓授
  抔ハ割合多ク書イテ居ルト云フヤウナ譯デアル、ソレカラ大學總長ハ專ラ官
  衙的ノ事務デ役所的ナ事務ガ多イ、會計事務等ガ多イ、ソレカラ〓官ノ任免
  デアルトカ或ハ叙位、叙勳デアルトカ云フヤウナ事務ガナカナカ多イ、ソレ
  等ノ俗務ノ爲ニ朝カラ晩マデ餘程勉强ヲセラレナケレバナラヌト云フヤウナ
  コトデアッテ、迚モ〓授學生ヲ統率シテ導イテ、サウシテ高尙ナル大學ノ一
  ノ學風ヲ作リ一國ノ人心ヲ支配スルニ足ルベキヤウナル一ノ大學ノ大感化力
  ト云フヤウナモノヲ養成スルト云フコトヲ努メラレル閑暇ハナイヤウニ察セ
  ラレテ居ル、是ハ決シテ大學總長其人ニ向ッテ言フノデハナイ、卽チ大學ノ
  仕組ガ宜シクナイト云フコトデ、今日ノ官制ニ依ッテモ大學ノ職制ニ依ッテ
  モ其通リデアル、朝カラ晩マデ會計事務ノ如キ俗務ヲ汲々トシテヤッテ居ラ
  ナケレバナラヌノデアル、大學院ノ學生ハ二百五十名モアリマス、是ハ五箇
  年ノ間或ル事項ヲ〓究シテサウシテ一ノ〓究ニ附イテ論文ヲ書イテ博士ノ學
  位ヲ請求スルト云フノガ大學院ノ規則デアル、然ルニ此〓究ヲ遂ゲテ學位ヲ
  受ケタト云フ者ハ誠ニ少數デアル、ドノ位アリマスカ、十ノ一アルカナイ
  カ、今年モ十八人卒業シタト云フコトハ書イテアル、併シ其卒業ヲシタト云
  フノハ五箇年間ノ年限ガ濟ンデ出タダケデ何ノ〓究ガ出來タト云フ譯デハナ
  イ、ソレカラ學生ノ風儀學校ノ秩序等ニ關シテハ此席ニ於テ公言スルニ忍ビ
  ヌヤウナコトデアルカラ申シマセヌ、併ナガラ是ハ何モ學生ガ不勉强ト云フ
  ノデハナイ、今日ノ事情ニ於テ身體ノ餘リ健全デナイノト竝ニ種々ナ事情ノ
  爲ニ生活ノ爲ニ種々ノ仕事ヲセナケレバナラヌ、名ハ大學院ノ學生デアルガ
  私立學校ノ〓員モシナケレバナラヌ、又翻譯モシナケレバナラヌ、サウシテ自
  己ノ生計ヲ計ラナケレバナラヌト云フノデ、サウ云フ譯デ餘議ナク〓究ガ出
  來ナイ、又大學〓授諸君ノ〓究ノ出來ナイノモ同樣デアル、人ガ足リナイ、
  世ノ中ノ事ガ多イ、ソレデ各省ニ兼勤ヲシタリ、或ハ法典調査會ノ委員ヲシ
  テ、一人デ二ツモ三ツモ職務ヲ兼ネナケレバナラヌト云フコトデアル、決シ
  テ〓授諸君ノ其人ニ附イテ不勉强デアルトカ學力ガナイトカ言フノデハナ
  ィ、是亦大學ノ一體ノ仕組ニ附イテ申スノデアル、斯ノ如キ實況デアリマシ
  テ果シテソレガ眞ノ事實デアルナラバ、果シテ學術技藝ノ蘊奥ヲ〓究スル所
  ノ帝國唯一ノ最高等ノ學問ノ機關トシテ人物ノ輻湊所トシテ國民ノ敬慕ヲ受
  ケルコトハ甚ダムヅカシイコトデアルト思フ、是等ノ點ハ大學ヲ非難スルノ
  デナイ、大學ニ向ッテ〓革ヲ希望スル所ノ點ヲ申シタノデアル、文部當局者
  其他ノ御方ガ普通〓育ニ向ッテハ色〓非難ガアッタケレドモ大學ノコトニ附
  イテハ一言モゴザイマセヌ、故ニ私ハ大學ニ向ッテノ希望ヲ申述ベルノデア
  ル、是ガ私ガ〓育制度ヲ大ニ改革セネバナラヌト云フ所ノ大要デアリマス、
  是カラハ學政ノ大擴張、學制ヲ大イニ擴張シナケレバナラヌト云フコトニ附
  イテ申述ベタイト思ヒマス、現在ノ〓育機關ノ不足ヲ感ジテ居リマスルコト
  ハ實ニ非常デアル、先刻辻新次君ヨリ縷々申述ベラレマシタ通リノ次第デア
  ル、小學カラ大學ニ至ルマデ皆其通リデアル、殊ニ高等〓育ノ機關ニ至リマ
  シテハ一層甚シイノデアル、法科大學デ本年ハ三百人モ落第生ガアルトカ、
  工科大學デハ入學者ノ競爭試驗ヲ行フトカ云フヤウナ有樣デアル、全國ノ靑
  年子弟ト云フ者ハ皆途方ニ迷ウテ居ル、然ルニ當局者ハ之ヲ何ト辯ジラレマ
  スカ、第一國家ノ財政上ノ都合ニ依ッテ經費ノ供給ガ足ラナイ、經費ノ供給
  ノ道ガナイ、第二〓員ガ足リナイト斯ウ申サレル、併ナガラ〓育ヲ普及シテ
  學問ノ進步ヲ圖ルト云フコトハ我國ノ國是デアル、既ニ決定ヲ致シテ居ル國
  是デアルコトハ今更私ガ喋々申述ベルマデモナイ、國家ガ適當ナ經費ヲ供給
  スル所ノ責任ヲ持ッテ居ルノデアル、政府ハ宜シク〓育機關ノ完備ニ關ス
  ル所ノ一ノ大計畫ヲ立テテ此計畫ニ依ッテ著々進行シテ行ク所ノ道ヲ立テラ
  レルガ當然デアラウト思フノデアル、地方ノ要求ニ依ッテ或ハ運動ニ依ッテ
  廣島ニ師範學校ヲ立テルトカ或ハ岡山ニ高等學校ヲ置クトカ山口ノ高等學
  校ニ補助金ヲヤルトカ云フヤウナル今年其一ヲ設ケ來年又其一ヲ設ケルトカ
  云フヤウナ姑息ノ手段ニ至ッテハ到底國民ノ需要ニ應ズルコトハ出來マセ
  ヌ、現ニ又〓員ノ不足ト云フコトハ年々其不足ノ數ハ增シテ來ルノデ、學
  生ノ方向ニ迷フト云フコトモ又年々增シテ來ルノデアリマス、斯ウ云フコ
  トデアッテ荏苒時ヲ送リマシタナラバ遂ニハドウ云フコトニナリマセウカ、
  殆ド如何トモ仕方ノナイトキガ遠カラヌ內ニ私ハ出テ來ルデアラウト思フ
  ノデアル、ソレ故ニ一ノ大イナル計畫ヲ政府ハ立テラレテ大學ト云フモノ
  ハ將來如何ナル組織ヲ以テ幾ツノ大學ヲ設ケテ宜シイカ、又何レノ地方ニ
  大學ヲ設置シテ宜シイトカ、私立ノ大學ヲ許スカ否ヤ、許スニ附イテハ如
  何ナル制限ヲ以テ之ニ特權ヲ與ヘルヤ否ヤ、中學校ハ今後何校位全國ニ增
  設致シテ宜シイカ、小學校モ又ドノ位ノ增設ヲシテ宜シイカ、實業學校其
  他ノ專門學校ハ如何ニシテ宜シイカ、圖書館博物館等ハ如何ニスルカ、〓員
  ノ供給ノ道ハ如何ナル方法ヲ以テ供給ヲ致スカ、是等ノ費用ヲ負擔スル所ノ
  方法ハ如何ニシテ此費用ヲ負擔セシムルカト云フヤウナコトニ附イテ既往ノ
  經驗ニ鑑ミ將來ヲ考ヘテ詳細ニ之カ調査ヲ致シテ、而モ亦政府ノ財政、地方
  ノ經濟等ニ者ヘ、他ノ費用ノ節約スベキモノハ十分ニ節約ヲ致スガ宜シイ、
  〓育ノ費用デモ隨分節約スベキモノハアラウト思ヒマス、サウシテ之ヲ新ニ
  要スル所ノ費用ニ用ウルガ宜シイ、又財源ノ求ムベキモノガアラバ新ニ財源
  ヲ求ムルガ宜シイ、已ムヲ得ズンバ之ガ爲ニ增稅ヲ致シテモ宜シイ、是ハ國
  家ノ義務デアル、必要ナル〓育費ノ爲ニハ國民ハ必シモ增稅ハ辭サヌデアラ
  フト思フ、併ナガラ斯ノ如キコトヲ斷行致スニハ實ニ確然タル所ノ計畫ガ立
  タナケレバナリマセヌ、亞米利加ニ於キマシテハ······亞米利加ノ各州ノ憲法
  ニ於キマシテハ大抵此〓育ノ費用抔ノコトハ皆憲法デ以テ各州ニ規定シテ居
  ル、サウシテ學稅ト云フモノヲ特ニ課スルコトヲ許シテアル、經濟學者ガ甚
  ダ苛酷ナ惡稅ダト言ッテ居ル所ノ人頭稅ト云フモノモ亞米利加ノ各州デハ獨
  リ〓育ノ爲ノミニハ之ヲ課スルコトヲ得ルト云ウテ憲法ニ許シテ居ル位ノコ
  トデアル、我國ニ於テモ出來得ルコトナラバ從來ノ直接稅間接稅ノ增加ヲス
  ルナリ已ムヲ得ザレバ新ニ增稅ヲ課シ又萬己ムヲ得ザレバ彼ノ人頭稅ヲ課ス
  ルト云フヤウナコトヲシテモ〓育ノ爲ナラバ私ハ敢テ不都合ハナイト思フ、
  併シ是等ノコトハ固ヨリ財政家ノ深ク〓究スベキ點デアラウト思フ、私ノ考
  フル所ニ依レバ大學ノ增設、中學校師範學校等ノ〓員ノ俸給ノ補助、小學〓
  育費ノ補助、監督機關ヲ擴張スル所ノ費用、海外留學生ヲ增加スル所ノ費用、
  〓育行政ノ機關ヲ擴張スル所ノ費用、其他學政上ニ必要ナル所ノ文部省ノ經
  費ト云フモノハ現在ノ國情ニ照シテ見テモ一箇年ニ凡ソ千萬圓內外ノ費用ヲ
  要スルト思フ、此金額ハ甚ダ多イヤウデハアリマスガ、國庫ノ歳入歳出ノ凡
  ソ百分ノ五ニ當ッテ居リマシテ決シテ是ハ不相當ナ額デハナイト考ヘルノテ
  アル、彼ノ獨逸ナリ佛蘭西ナリノ如キ諸般ノ政務ノ總テ整頓致シテ居ル所ノ
  國ニ於テモ凡ソ歳入ノ百分ノ五、六、乃至七八位ナ金額ハ年々國庫ヨリ〓育
  費ニ支出致シテ居リマス、特ニ注意スベキコトハ彼ノ國ニ於テ政府ノ行政ノ
  費用中ニ於テ海陸軍ヲ除クノ外ハ文部省ノ經費ガ第一番ニ居ルノデアリマ
  ス、豫算表ヲ見ルト文部省ノ經費ガ第一番ニ居ルノデアル、内務省司法省大
  藏省等ノ費用ハ皆第二以下デアル、佛蘭西デモ獨逸デモ其通リデアル、我國
  ハ全ク正反對デアル、文部省ノ經費ハ各省中ノ殆ド末位デアル、他ノ政務ト權
  衡ヲ失ッテ學政ノ振ハナイト云フコトハ無理ナラヌコトト考ヘルノデアリマ
  ス、其他又學政ノ統一ト云フコトヲ計リタイト思フノデアル、從來ハ各省ニ
  散在ヲ致シテ居ッタ所ノ學校ハ漸次文部省ニ統一ニナリマシテ工部省ニ在ッ
  タ所ノ工部大學、農商務省ニ在ッタ所ノ駒場ノ農學校、商業學校、司法省ニ
  在ッタ所ノ法律學校、北海道ノ農學校、天文臺、氣象臺等ノ如キハ漸次文部
  省ノ所轄ニハナリマシタガ、マダ統一シナイデ居ルモノガアリハシナイカト
  考ヘル、例ヘバ宮內省ニ屬シテ居ル華族ノ〓育ノ如キハ全國ノ〓育學問ヲ統
  一スル所ノ文部大臣ニ在ッテハ之ニ關與スルコトガ當然デアラウカト考ヘル、
  又陸軍省ニ於ケル所ノ幼年學校、内務省ニ於ケル所ノ傳染病〓究所及病院、
  遞信省ニ於ケル所ノ商船學校ノ如キハ文部省ノ管轄ニ移スコトガ適當デアラ
  ウト思フ、其他宗〓ノ事務ノ如キ衛生ノ事務ノ如キモ文部省ニ移スコトガ適
  當デハナイカト思フ、斯ノ如クニナレバ學政ヲ統一スルト共ニ、多少ノ經費
  ヲ節減スルコトモ出來ルト思フ、以上陳述ヲ致シマシタ所ノ二ツノ大ナル事
  項卽チ學制全般ニ亘ル所ノ大改革、學制全般ニ亘ル大擴張、此二ツノ事項ハ
  國家今日ノ急務デアラウト信ジマスルカラシテ、速ニ之ヲ決行セラレムコト
  ヲ希望スルデアリマス、併ナガラ學制ノコトト云フモノハ其關係スル所ガ頗
  ル汎ク至大至廣デアル、故ニ私ハ私ノ所見ヲ持ッテ居リマスルガ、又他ノ人
  ハ各〓違ッタ意見ヲ持ッテ居ル、各人其說ヲ異ニシテ居ルト言ッテモ宜シイ、而
  シテ何人ト雖モ斯ノ如キムヅカシキ大切ナル問題ニ向ッテ自己ノ信ズル所ヲ
  以テ一點ノ誤ナシト斷言スルモノハ恐ラクハアルマイ、ソレ故ニ此際、現在
  ノ文部機關ノ外ニ於テ一ノ學制調査會ヲ起シテ諸般ノ國情ヲ綜合シテ一ノ大
  調査ヲナシテ學制ノ大綱ヲ擧ゲタル所ノ〓育法典ヲ拵ヘタイト思フノデア
  ル、サウシテ其〓育法典ノ成案ニ依ッテ政府ニ於テ深ク廟議ヲ盡サレテ然ル
  後ニ帝國議會ノ協贊ヲ經テ之ヲ法律ニ致シタイ、從來ハ文部省ノ〓育ノ法令
  ト云フモノハ大抵ハ勅令デアリマシテ、大學校令デモ、小學校令デモ、學校
  令ノ如キ〓育ノ根本法ト爲ッテ地方ニハ經費ノ負擔ヲ增シ個人ニ就學ノ義務
  ヲ負ハセルガ如キモノモ皆勅令デアル、併シ是等ノコトハ何レノ國ニ於テモ
  皆法律ヲ以テ規定シテ居ルヤウデアル、亞米利加諸州ノ如キハ憲法ニ其大綱
  ヲ規定シテ居ル、是ハ諸君モ御承知デアラウト思フ、我國ノ憲法ニハ〓育ノ
  コトハゴザイマセヌガ法律ヲ以テ〓育ノ根本法ヲ制定スルト云フコトハ私ハ
  甚ダ必要デアルト考ヘルノデアル、之ヲ法律トシテ廟議モ決シ兩議院ノ協贊
  ヲ經テ國論ト云フモノヲ一定シタイ、ソレニ依ッテ學制ノ振興擴張ヲ圖ッテ
  數年來〓育社會ニ鬱勃シテ居ル所ノ不快ノ空氣ヲ一洗シテ大イニ一大疏通ノ
  道ヲ開キタイト考ヘルノデアル、是ガ私ガ此建議ニ贊成シタ所ノ主意デアリ
  マス、然ルニ之ヲ修正シテ其調査ハ當局者ニ一任ヲスルト云フヤウナコトデ
  ハ私ハ此目的ヲ達スルコトハ出來マセヌ、ソレ故ニ此修正案ニ反對ヲ致シマ
  ス、斯ノ如キ大ナル改革ハ當局者自身ニ之ヲ決行スルト云フコトハ事實ニ於
  テ甚ダ難イ、外山君ノ如キハ先日一ノ著書ヲ我輩ニ贈ラレマシテゴザンスル
  ガ、其中ニドウ云フコトガ言ッテアルカ、現在ノ大學ノコトヲ非常ナ弊害ガ
  アルト云ッテ惡口ガ書イテアル、其弊害トシテ今ノ我國ノ大學ハ全ク十八世
  紀ノ流儀デアル、學生ヲ心太カ寒天ノヤウニ取扱ッテ居ルノデアル、心太主義
  ヤ寒天主義ハ廢シテシマッテ十九世紀ノ流儀ニ改良セヌケレバナラヌト外山
  君ハ極論シテ居ル、又外山君ガ言ッテ居ルノニ學生中ニ外國語ノ力ノ無イコ
  トハ非常ナモノダ、外國語ノ力ハ非常ニ未熟デアル、未熟ナ者ハ多人數ア
  ル、ソレ故ニ外國〓師ノ講義ノ分ラナイ者ガ澤山アル、分ラヌカラシテ講義
  ヲ聞キニ出ナイ、又學生ノ書イタ文章ヲ見ルト學生ハドウ云フ意味ヲ以テ此
  文章ヲ書イテ居ルノカト云フコトガ分ラナイモノガ多イ、斯ウ云フコトヲ外
  山君ガ唱ヘテ、サウシテ大學ノ大改革ヲ要スルコトヲ公然唱ヘテ居ラレル、
  併シ其外山君ハ如何ナル人デアルカ、大學ノ學長デアッタ、長イ間大學ノ學
  長ヲシテ居ラレタ、大學ノ總長モ致シ遂ニ文部大臣ト爲ラレタ所ノ人デア
  ル、併シ斯クマデニ大學ノ非常ナル弊害ヲ認メツツ大學ノ學長トシテ之ヲ改
  革スルコトハ出來ナカッタ、大學ノ總長トシテ之ヲ改革スルコトモ出來ナカッ
  タ、併シ是ハ外山君ニ止マル譯デハナイ、外山君デナクテモ誰デモ自分ノコ
  トハ大キナ〓革ハ出來ナイモノダ、其他大學ノ中ニモ大學ノ〓師中ニモ大學
  ノ改革ヲ唱ヘテ居ル人モ澤山アル、澤山アルガ決シテ出來ナイ、恐ラクハ代
  々ノ文部大臣モ大學ノ改革ノコトヲ考ヘヌ人ハアリマスマイ、アリマスマイ
  ガドウモ出來ナイ、私ノ聞ク所ニ依レバ井上文部大臣ト云フ人ハ中く熱心家
  デアッタ、大學及高等學校ニ對シテ一ノ改革ヲ試ミムトシテ既ニ其成案マデ
  出來タト云フコトヲ承ッタデアル、併ナガラ遂ニソレモ途中デ止メニナッテ
  シマッタト云フコトヲ承ッテ居ル、斯ウ云フ次第デアル、一ノ大學デスラ其通
  リデアル、學制全體ノ大〓革ヲ爲シ遂ゲルト云フコトハ頗ル困難ナコトデア
  ラウト思フ、〓育ノ事業ハ實ニ廣大デ大キナモノデアル、學校ノ數バカリデ
  モ二萬八千アリマス、〓員ハ全國デ九萬モ居リマス、生徒ハ四百二十三萬モ
  居ル、文部省所管ノ高等官バカリデ五百人アル、其中勅任官ガ五十一人モア
  リマス、大學ノ高等官バカリガ百三十人モアリマス、東京大學ノミデ百三十
  人モ居ル、大學ノ勅任官ガ四十四人モアル、サウシテ各相當ナ學識モアッテ
  獨立ノ地位ヲ持ッテ居ル人デアル、斯樣ナル大ナル機關ト云フモノハ凡ソ我
  ガ政府ノ部內ニ比類ガナイ、陸軍省ニ於テモ海軍省ニ於テモ迚モ此文部省ノ
  大イサニハ敵ハナイ、陸軍省ノ下士マデ入レテモ斯樣ナ人數ハナイ、內務省
  デモ是程大キナ機關ハナイ、例ヘバ町村役場ヲ殘ラズ入レテモ此學校ノ半分
  シカナイ位ナモノデアル、警察ハ勿論巡査マデ入レテモ此〓員ノ數ニハ及ブ
  モノデハナイ、デ斯ノ如キ廣大ナル所ノ各機關各人員ノ利害ニ關スル所ノ大
  ナル〓革ヲシヤウト云フコトデアルカラ、之ヲ容易ニ爲シ遂ゲル、譯モナク
  出來ルト申スノハ私ハ少シ間違デアラウト思フ、況ヤ學制ノ統一ヲ圖リ又此
  擴張ヲ圖ルコトニ至ッテ文部省以外ニ關スルコトガ多イニ依ッテ、旁〓以テ今
  一層困難デアラウト思フノデアル、併ナガラ現文部大臣ハ頗ル有力ナ人デア
  ル、又果斷ナ人デアルト聞イテ居ル、次官以下局長ニ至ルマデ皆其人ヲ得テ
  居ルト信ジテ居ル、ソレ故ニ或ハ此位ナコトハ遂行ヲ期スルコトガ出來ルカ
  モ知ラヌ、或ハ出來ルデアラウ、併ナガラ不幸ニシテ一旦政府ノ變動ニ依ツ
  テ文部大臣ノ位地ニ變更ヲ來タサナイトモ言ヘヌ、萬一文部大臣ノ地位ニ變
  更ヲ來タシタトキニハ如何デアル、忽チ水泡ニ屬シテシマフノデアル、是ガ
  私ガ此修正案ヲ非トシテ學制調査會ヲ設置スルト云フ原案ヲ贊成スル所ノ一
  ノ理由デアル、諸君ハ昨年貴族院ヨリ非常ナ熱心ヲ以テ學政振張ニ關スル所
  ノ建議ヲ政府ニ差出サレマシタ、其節文部大臣ハ如何ニ之ヲ歡迎セラレタカ
  御記憶デアラウト思フ、而シテ其結果ハ如何デアル、其結果ヲ顧ミマシタナ
  ラバ斯ノ如キ建議ガ將來如何ナル結果ヲ來タスカト云フコトハ大抵御推量ガ
  出來ルデアラウト思フ、ドウゾ諸君ニ於テモ十分御熟考アラムコトヲ希望シ
  マス、是ハ實ニ大切ナ問題デアラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=183

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• 184・渡邊洪基

  ○渡邊洪基君　私ハ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=184

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• 186・渡邊洪基

  ○渡邊洪基君　意見ト云フ程ノコトデモアリマセヌガ、少シ相談ヲ······唯今
  久保田君カラ縷々數萬言ヲ費シテ御話デゴザイマシタガ、其中ニ就イテ其事
  タル餘程本員等ノ意見トハ異ッテ居ル所ガアリマス、卽チ修正ニ反對サレル
  コトト合ジテ意見ト爲,タヤウデアリマシタガ、之ニ對シテ一々反駁ヲ試ルノ
  ハ卽チ此調査ニ關スル建議ガ實行サレタ上デ好イ機會ガアラウト思ヒマス、
  其細目ノ所ハ反對ニ立ッテハ實際ニ行レヌ點ガ澤山アラウト思ヒマスガ、唯
  今此所デ反駁ハ致シマセヌ、今久保田君ノ御述ニナッタコトハ大體大層壯ンナ
  コトデ、非常ニ壯ダガ實際ニハ甚ダ價ノナイコトト私ハ考ヘマス、依ッテ委
  員ノ修正ノ通リニ決シマシタナラバ或ハ實際ニ行レル範圍ニ於テ功ヲ奏セラ
  レルト思ヒマス、唯漫ニサウ申シタ所ガ一向益ニ立タヌト思ヒマス、ソレデ
  本員ハ修正案贊成ノ意見トシテ一言述ベテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=186

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• 187・辻新次

  ○辻新次君　此修正ニ附キマシテチョット意見ヲ述ベタウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=187

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• 188・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　宜シウゴザイマス
  〔辻新次君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=188

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• 189・辻新次

  ○辻新次君　私ハ最モ簡短ニ述ベマス、此學制調査會設置ニ關スル建議案ハ
  私モ其提出者ノ一人デゴザイマス、此案ヲ提出スルニ當リマシテハ多少修正
  ヲスルト云フ御論モ承リマシタ、勿論提出者デハアリマスルガ提出ノ趣旨ノ
  貫徹シマスル限リハ無論多少ノ修正ニハ私ハ應ジマスル考デアリマシタ、所
  ガ殘念ナガラ斯ノ如キ修正ニナリマシテハ誠ニ遺憾ナコトデアリマスカラシ
  テ、ドウゾ原案ニ復活ヲ致シタイト存ジマスノデアリマスカラシテ其理由ヲ
  チヨット一言述ベタイト思ヒマス、今日マデノ學制ノ改革ヲ見マスト云フト
  無論改革ヲシマスノニハ矢張リ其改革ヲスベキ理由ガアッタヤウニ見エマス、
  最初學制ガ四年ニ出マシテ、サウシテ十二年ニ改正ニナッテ居リマス、十二
  年ニハ〓育令ト爲リマシタ、是ハ丁度文部省カラシテ理事官ガ歐米へ行カレ
  テ、サウシテ歐米ノ學事ノ視察ヲシタノガ此〓正ノ原因ニナッタラウト思ヒ
  マス、ソレカラ又十九年ニ大ナル〓正ニナッテ居リマス、是ハ餘程地方經濟
  ノコトガ大原因ニナッタカト覺エマス、ソレハ段々此小學校其他ノ〓育ノ費
  用ガ地方稅ガ非常ニ上ッテ參リマシテ、授業料ヲ以テ重ナル學校ノ資金トスル
  ト云フヤウナコトニ至リマシタノガ大ナル原因デアッタラウト存ジマス、ソ
  レカラ二十三年ノ改革ハ卽チ議會ガ出來ルニ付テ色〓ノ法律ガ出來テ、最モ
  此學制ニ大ナル刺激ヲ與ヘタノハ市町村制デアッタラウト思ヒマス、サウ云
  フ樣ナコトデ段々ドウシテモ改正ヲセヌケレバナラヌト云フヤウナコトガ
  起ッテ改正ガ出來タコトト思ヒマス、卽チ今日ハ又輿論ガ此學制ヲ改革セシム
  ルト云フコトニナッテ、丁度昨年ハ本院ヨリ學政振張ニ關スル建議案ガ出テ、
  當年ハ兩院ヨリ學制調査會ヲ設ケナケレバナラヌト云フヤウナコトヲ申ス樣
  ニナッタノハ今日輿論デ改革ヲセヌケレバナラヌト云フ時ガ來マシタノデ、
  後デ考ヘタナラバ必ズサウ云フコトニ見エマセウト思ヒマス、ソレ故一言此
  處デ此學制調査會ト云フモノノ必要ハ今マデサウ云フコトデ改正ニナリマシ
  タケレドモ最初改正ヲスル時ノガ全ク十分デナカッタラウ、モウ一ツハマダ
  此時分マデハ一體ニ〓育ト云フコトガ世ノ中ニ互リマセヌコトデアリマシタ
  カラシテ、或ハ當局者ノミデヤルコトモ巳ムヲ得ヌコトデアッタカ知レマセ
  ヌガ、今日ハ時勢ガサウ云フコトデアリマセヌカラシテ、ドウシテモ其一度
  大基本ヲ立テル時ニハ〓育者ノミデナク色ミナ部分ノ人ガ寄ッテ、ドウゾシッ
  カリシタ今度ノ改正コソシッカリシタ改正ヲ希望致シマスノデアリマス、サウ
  云フコトデアリマスカラシテ文部當局者ノ間ニ於テ改正ヲスルト云フコトデ
  アリマスルト云フト又矢張り忽チ之ヲ改正セヌケレバナラヌコトニ至リマセ
  ウ、唯今久保田君モ述ベラレタ通リ今日マデノ學制ノ組立デアリマシタカラ
  シテ忽チ陸軍デハ地方幼年學校ト云フモノヲ拵ヘテシマヒ、一方デハ警官練
  習所ト云フモノヲ拵ヘテシマヒ、又一方デハ水產傳習所ト云フモノヲ拵ヘテ
  シマフト云フヤウナコトニナラウト思フ、ソレハ最初學制ヲ一般ニ統一シテ
  定メテ居ラヌ上カラシテ、サウ云フコトニナッテ來タノデアラウト思ヒマス
  カラ、サウ云フコトノ上カラ考ヘテモ一度大改革ヲスルニ當ッテハ各省ハ申
  スマデモナク一般ノ〓育上ニ考ノアル者ヲ集メテ、サウシテシッカリ議シタ
  イト思ヒマス、デ其中ノ一ツヲ擧ゲテ御話ヲ致セバ私モ矢張リ根本的ノ改革
  ヲ致サヌケレバナラヌト云フモノデ、小學校、中學校、大學校、其他ノ學校
  ヲ悉ク根本的ノ調査ヲ致シタイト云フモノデアリマス、其中ノ小學校デ一ツ
  申述ベマスレバ、段々小學校モ盛ニナリマシテ、今日デハ何レ數ハ二萬七千
  トカ二萬八千位ニナッテ居リマセウ、所ガ學齡ノ就學ハマダ三四分不就學ト云
  フ有樣デアリマス、之ヲ就學セシムルノガ最モ困難デアリマシテ、今日ノ有
  樣デ、今日ノ如キ小學校ノ有樣デ、之ニ就學ヲセシムルト云フコトハ恐ラク
  ハムヅカシイコトデアラウカト思ヒマス、ドウシテモ一ツ是ニハ特別ナ方法
  ガ立チマセヌケレバナリマセヌ、サテ其方法ヲ立テルト云フコトニ附イテハ
  啻ニ〓育當局者ノミデハ如何デアラウカト思ヒマス、尤モ之ニ附イテ十分ナ
  考ヲ入レヌケレバナリマセヌノハ經濟ノ點デアリマス、然ラバ官府デハ大藏
  省又農商工邊ノ經濟ノ工合カラシテサウ云フコトヲスッカリ極メテ之ニ掛リ
  マセヌケレバ或ハ此貧民者ニハ········今日出來マセヌ者ハ先ヅ貧民者ト申シテ
  宜シウゴザイマスカラ·······其貧民者ニハ或ハ學科ノ課程ヲ半日ニスルトカ、
  或ハ窮シタル者ニハ物ヲ與ヘテ、〓育ヲセシムルトカ、何レニ致シマシテモ
  十分ニ我國ノ經濟上ノ考ヲ入レテ、サウシテ改革デモ致シマセヌケレバ詰リ
  今就學ノ出來ヌ所ノ學齢者ヲ就學セシムルト云フコトハ到底出來ヌコトダラ
  ウト思ヒマスノデアリマス、サウ云フコトヲ擧ゲレバ〓育上ニハ多々アリマ
  スガ、別段ニ委シイコトヲ御話申スニ及バヌ、サウ云フコトハ文部一省ノ下
  ニ於テ〓究シタ所デ矢張リ是マデノ通リデ、更ニ進ンデ今日就學シテ居ル以
  外ノ者ヲ就學セシムルト云フコトハ到底出來マイト私ハ斷言シマス、サウ云
  フコトデアリマスカラシチドウゾ今度出來ル所ノ學制調査會ハ廣イ考ヲ以テ
  サウシテ十分ニ各省カラ委員ヲ出シ、ソレソレノ委員ヲ出シテ根本カラ十分
  ニ調ベルト云フコトニナリマセヌケレバ詰リ十分ナル改革ハ見エマスマイト
  思ヒマスカラ、ソレ故ニドウゾ原案ノ通リ學制調査會ヲ設置スルト云フコト
  ニ御贊成アラムコトヲ切ニ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=189

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• 190・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　定足數ニ缺ケマシテゴザイマスカラ今日ハ延會致
  シマス、今朝來御委託ニナリマシタ委員ノ氏名ヲ御報道致シマス
  〔河田書記官朗讀〕
  飮食物其ノ他ノ物品取締ニ關スル法律案外一件特別委員
  伯爵坊城俊章君子爵大田原一〓君津田眞道君
  中村元雄君男爵園田安賢君田中芳男君
  長與專齋君三宅秀君菅野傳右衛門君
  府縣郡市町村其ノ他ノ公共〓體ノ所有地免租ニ關スル法律案特別委員
  伯爵正親町實正君子爵大河內正質君子爵入江爲守君
  男爵渡邊〓君松岡康毅君男爵南光利君
  菊池武夫君中西光三郞君本間千代吉君
  明治二十九年法律第九十二號廢止法律案外二件特別委員
  伯爵立花寛治君子爵本莊壽巨君男爵神山郡廉君
  松岡康毅君男爵北垣國道君男爵岩村高俊君
  調所廣丈君渡正元君中島永元君
  產牛馬組合法案特別委員
  伯爵〓棲家〓君子爵立花種恭君子爵仙石政固君
  男爵伊丹重賢君村田保君男爵伊達宗敦君
  石井省一郞君山脇玄君伊藤儀兵衛君
  民法施行法中改正法律案特別委員
  子爵谷干城君子爵黒田和志君男爵尾崎三良君
  三好退藏君三浦安君男爵小澤武雄君
  村田保君小幡篤次郞君野口褧君
  國事犯罪者家祿賞典祿處分法案特別委員
  子爵長岡護美君子爵靑山幸宜君子爵久松定弘君
  岡內重俊君濱尾新君男爵安藤直行君
  男爵吉川重吉君石井省一郞君熱海孫十郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=190

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• 191・近衞篤麿

  ○議長(公爵近衛篤麿君)　次ノ日程ハ追ツテ御報道致シマス、今日ハ〓會
  午後三時三十九分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001403242X01519000131&spkNum=191

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