1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十三年一月二十二日(月曜日)午後一時十分開議
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議事日程 第十二號 明治三十三年一月二十二日
午後一時開議
第一 産牛馬組合法案(政府提出) 第二讀會の續
第二 飮食物其の他の物品取締に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 府縣郡市町村其の他の公共團體の所有地免租に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 刑法中改正法律案(安藤亀太郎外四名提出) 第一讀會
第五 酒造税法中改正法律案(大塚常次郎外五名提出) 第一讀會
第六 裁判所設立及管轄區域變更に關する法律案(西原清東外三名提出) 第一讀會
第七 田地價特別修正法律案(西村淳藏外四名提出) 第一讀會
第八 國事犯罪者家祿賞典祿處分法案(關信之介外十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 重要輸出品同業組合法中改正法律案(恒松隆慶外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 第一期鐵道速成の建議案(降旗元太郎外十四名提出)
第十一 官幣大社氷川神社に對する國庫支出建議案(加藤政之助外七名提出)
第十二 (特別報告第一號)永小作權に關する請願 (委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=0
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001・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 福岡縣第一區ノ補闕選舉ニ當選セラレマシタル所ノ靑
柳四郞君ガ御出席ニナリマシテ、二百五十六番ニ著席ヲセラレマシタカラ諸
君ニ御紹介ヲ致シマス
〔青柳四郞君起立ス〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=1
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002・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
決算委員補闕選舉ニ於テ大久保鐵作君當選セラレタリ
委員長及理事左ノ通當選セラレタリ
鐵道國有ニ關スル建議案
委員長野田卯太郞君理事藤澤幾之輔君
重要輸出品同業組合法中改正法律案
委員長永井嘉六郞君理事大矢四郞兵衞君
郵便爲替法案外一件
委員長宮崎榮治君理事宮原幸三郞君
山陰高等農林學校設置建議案
委員長齋藤卯八君理事佐藤伊助君
明治三十一年度豫備金支出ノ件外三件
委員長安川繁成君理事中辰之助君
賣藥規則中改正法律案
委員長小田爲綱君理事津野常君
福岡縣第七區補闕選舉ノ結果トシテ靑柳四郞君當選セラレタル旨小松原內
務次官ヨリ通牒アリタリ
花井卓藏君外一名提出刑事訴訟法改正ニ關スル質問ニ對スル〓浦司法大臣
ノ答辯書ヲ受領セリ
衆議院議員花井卓藏君外一名ヨリ刑事訴訟法改正ニ關スル質問ニ對シ司法
大臣ヨリ答辯書提出ニ付及御囘付候也
明治三十三年一月二十日內閣總理大臣侯爵山縣有朋
衆議院議長片岡健吉殿
衆議院議員花井卓藏君外一名提出刑事訴訟法改正ニ關スル質問ノ件ニ對シ
別紙答辯書差進候也
明治三十三年一月十八日司法大臣〓浦奎吾
衆議院議長片岡健吉殿
衆議院議員花井卓藏君外一名提出刑事訴訟法改正ニ關スル質問ニ對
スル答辯書
政府ハ刑事訴訟法ヲ改正スル必要ヲ認ムルノミナラス刑法亦之ヲ改正スル
必要ヲ認ムルニ因リ先ツ刑法改正案ノ調査ヲ完了スルヲ以テ順序ト爲シ主
トシテ之ニ從事シタレトモ刑事訴訟法改正案ノ調査亦之ヲ停止シタルニ非
ス其改正案ハ成ルヘク速カニ調査ヲ完了セムコトヲ期スレトモ之ヲ本期ノ
議會ニ提出スルト否トハ未定ナリ
右及答辯候也
明治三十三年一月十八日司法大臣〓蒲奎吾
貴族院ハ明治三十三年度歲入歲出總豫算案(本院ノ修正シタル)明治三十三
年度各特別會計歲入歲出豫算案豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲナスヲ
要スル件ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒アリタリ
大石正己君ヨリ外交ニ關シ工藤行幹君安藤龜太郎君根本正君ヨリ〓育基金
特別法ニ關シ安部井磐根君鈴木重遠君神鞭知常君工藤行幹君藤澤幾之輔君
安川繁成君ヨリ閣臣職責ニ關スル質問書ヲ提出セラレタリ
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
自家用醤油稅法案
提出者西谷金藏君
外交ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十三年一月二十二日
提出者大石正己贊成者尾崎行雄
外七十二名
左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス
外交ニ關スル質問主意書
一、英、露、獨、佛、伊、白ノ諸國ハ〓國ノ運輸交通ヲ利便ニシ文明ニ誘導シ
富源ヲ開發シ且均勢ヲ維持センカ爲メ數年前ヨリ爭フテ鐵道敷設權ヲ〓
國ニ得タリ政府ハ〓國ニ於ケル鐵道敷設權ヲ得ンカ爲メ如何ナル交渉協
議ヲ爲シタル乎將タ又其必要ヲ認メサル乎
一〓國鑛物ニ富ミ無盡藏ノ稱アルモ其民文明ノ智識ニ乏シク徒ラニ土中
ニ委棄サレテ文明ニ資セス歐米諸國ハ之ヲ遺憾トシテ夙ニ鑛山採掘ヲ權
得タルモノ尠ナカラス〓國ノ鑛山採掘ハ彼我ニ莫大ノ利益アルハ辯ヲ俟
タス政府ハ〓國ノ未採掘鑛山調査ニ如何ナル方法手續ヲ盡シタル乎又鑛
山採掘權ヲ得ンカ爲メ〓國政府ト協議ヲナシタル乎若シ爲シタリトセハ
其〓末如何
明治二十九年九月二十七日〓國杭州ニ於テ調印シ翌三十年五月二十五
日外務省告示第六號ヲ以テ公布シタル杭州日本居留地取極書第四條ニ
「居留地一切ノ橋梁、溝渠、埠頭、道路ハ〓國地方官ニ於テ完固ニ建設スヘ
シ」ト規定シタリシカ三十年五月十三日調印ノ杭州日本居留地追加取極
書ヲ以テ右ノ第四條ヲ削除シテ更ニ第二條ニ「居留地内總テノ道路橋梁
溝渠碼頭及警察ノ權ハ日本領事官ノ管理トナス其道路橋梁溝渠碼頭ハ日
本領事ヨリ法ヲ設ケ建築修理シ〓國地方官ハ之ニ關渉スルコトナシ但界
內設計道路ノ外若シ彼此人民水利交通ノ關係ニ因リ別ニ道路ヲ開設セン
トスルトキハ〓國地方官ト協議ノ上取扱フヘシ」ト取極メタリ蘇州漢口
福州厦門沙市等日本居留地取極書ニモ亦同一樣ノ規定アリ政府ハ右等專
管居留地中確定後既ニ殆ント三年ヲ經過シタルモノアルニ今日マテ未タ
何等ノ設備ヲ爲サヽル理由如何
明治二十九年十月十九日調印同年十月十日公布ノ日〓議定書第一條ニ「新
開通商市港場ニ日本專有ノ居留地ヲ置クコトヲ妥定シ道路管轄及地方警
察ノ權ハ日本領事ニ專屬スルモノトス」ト規定セリ其後蘇州杭州沙市ノ
新開場ニ日本專管居留地ヲ設定シナカラ獨リ重慶ノミニ未タ專管居港留
地ヲ取極メサルハ其必要ヲ認メサルニ由ルカ將タ又〓國政府ト協議中ニ
屬スルカ若シ協議中ナリトセハ何年何月何目ヨリ交渉ヲ開始シタル乎
明治二十七年八月二日朝鮮京城ニ於テ調印シタル暫定合同條款ニ「將來
朝鮮國ノ自由獨立ヲ鞏固ニシ且彼此ノ貿易ヲ奬勵シ以テ益ふ兩國ノ親密
ヲ圖ランカ爲メ玆ニ合同條款ヲ暫定ス」ト述ヘテ其第二項ニ「內政改革
ノ節目中京釜兩地及京仁兩地間ニ建設スヘキ鐵道一事ハ朝鮮政府ニ於テ
其財政未タ裕ナラサルヲ慮カリ日本政府若クハ日本ノ或會社ニ訂約シ時
機ヲ見計ヒ起工センコトヲ願フト雖モ目下委曲情節アリテ其運ヒニ及ヒ
難シ依テ良法ヲ按出シ可成丈速ニ訂約起工ノ運ヒニ至ルヲ要ス」ト規定
シ翌二十八年京釜鐵道會社ハ京釜間鐵道ヲ全成セントシテ外務省ニ出願
セリ其後駐韓公使ノ力ニ依リ三十一年九月八日京釜鐵道會社ハ契約ノ日
ヨリ三箇年以內ニ工事ニ著手セサル場合ニハ契約ヲ無效トストノ條件ヲ
付シテ朝鮮政府ニ右敷設權ヲ得タリシカ近頃該鐵道會社ハ利子ノ補給ヲ
出願セリト聞ク政府ハ利子ノ補給ヲ要セスト認ムル平將タ又契約ノ日ヨ
リ三箇年ノ時日空過シテ敷設權ヲ失フモ朝鮮ノ自由獨立彼此貿易ノ發達
兩國ノ親和ニ何等不利益ヲ來スコトナシト信スル平
米人コールブラン及ヒ露獨ノ兩國ハ京城元山間鐵道敷設權ヲ得ントシテ
競爭シタリシカ朝鮮政府ハ其敷設權ヲ國內鐵道用達會社ニ許可セリト聞
ク當時政府ハ如何ナル措置ヲ爲セシ乎又其權利ヲ我國ニ收ムルノ必要ヲ
認メサリシ乎將タ又其必要ヲ認メタルモ袖手傍觀シタリシ乎
一昨年六月佛人某カ京城義州間鐵道敷設權ヲ他ニ轉賣セントシテ果サス
遂ニ國內鐵道會社ノ權利ニ歸セリト聞ク當時政府ハ拱手シテ其成行ヲ傍
觀シタル乎若シ然ラストセハ如何ナル方法手段ヲ講シタル平
一三十二年度豫算案ニ「露國オデタサハ近來彼我通商上ノ關係益〓頻繁
ヲ加ヘ最早名譽領事ニ之カ保護ノ任ヲ委ネ置クヘキ時機ニアラサルヲ以
テ之ヲ正式領事ニ改メ」云々ト稱シテ其費用ヲ各相當科目ニ豫算シテ要
求シタリシカ第十三議會ハ右費用ヲ否決セリ然ルニ本邦トオデツサトノ
通商ハ爾後益〓增進シ加之同港ヲ起〓トスル露國東洋義勇艦隊ハ昨年ヨ
リ航海數ヲ倍シテ絕ヘス東洋ニ送兵セリ通商上政治上兩ツナカラ正式領
事館設置ノ必要少シモ滅退セサルニ關セス三十三年度豫算ニ右新設費用
ヲ要求セサル理由如何
右及質問候也
〓育基金特別法ニ關スル質問
右成規ニ據リ提出候也
明治三十三年一月二十二日
提出者工藤行幹安藤龜太郞根本正
贊成者山田喜之助
外三十一名
明治三十二年三月二十日法律第八十號ヲ以テ〓育基全特別法ヲ發布セリ面
シテ其第二條第三條ニ依レバ償金特別會計資金中一千万圓ノ利子金ハ普通
〓育費ニ使用ス其使用ニ關スル細則ハ命令ヲ以テ定ムルトアリ此法律文ニ
依レハ該金使用ノ細則ハ命令ヲ以テ之テ定ムルヲ得ルト雖モ第八十號法律
發布以後ニ生スル利子ハ普通〓育費外ニ一切使用スルヲ得サルヤ明カナリ
然ルニ同年勅令第四百二一十五號ヲ以テ〓育基金令ヲ發セリ而シテ其第十二
條ニ本令施行以前ニ生スル利子ニ相當スル金額ノ使用方法ハ文部大臣ノ定
ムル處ニ依ル云々ト規定セリ然レハ該勅令ノ第十二條ハ法律第八十號ノ精
神ニ矛盾シ越權ノ處置ナルカ如シ政府ハ如何ニ之ヲ解釋スルヤ若シ又狂ケ
テ文部大臣ニ於テ之ヲ定ムルモノトセハ明治三十二年四月ヨリ同三十三年
四月一日マテ殆ント一箇年間ニ生スル利子金ハ何等ノ費途ニ使用スル意見
ナリヤ
閣臣職責ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十三年一月二十二日
提出者安部井磐根鈴木重遠神鞭知常
工藤行幹藤澤幾之輔安川繁成
賛成者本間直
外百九名
閣臣職責ニ關スル質問主意書
昨年三月會計檢査院ニ關スル事項安川繁成ノ質問ニ對シ政府ノ答辯スル處
益〓疑アリ
一政府ノ答辯ハ天皇ニ直隸シ國務大臣ニ對シ特立ノ地位ヲ有スル會計
檢査院ノ決議ニ付テハ國務大臣ハ何等ノ處分ヲ爲ス能ハス隨テ是等
ノ決議ニ關シ國務大臣ハ是非ノ意見ヲ表示スルノ限リニ在ラスト云フ
ニアリ抑ミ會計檢査院ハ政府ノ會計ヲ監督スル爲ニ獨立ノ資格ヲ有セ
サルヘカラス故ニ其組織及職權ハ裁判官ト同ク法律ヲ以テ之ヲ定メ行
政命令ノ區域外ニ在ルニ過キサルノミ豈大政以外其門ヲ二ニスルモノ
ナランヤ然ルモ猶國務大臣ハ之ニ對スル責ナシト云フ歟
二政府ノ答辯ハ會計檢、査院部長安川繁成檢査官吉田市十郞外二名ノ退官
ハ會計檢査官會議ニ於テ明治二十九年法律第九十一號ニ依リ決定セシ
モノナレハ國務大臣ハ其當否ニ關シ是非ノ意見ヲ表示スヘキ限リニア
ラスト云フニアリ
凡立憲ノ目的ハ主權ノ使用ヲシテ正當ナル軌道ニ由ラシムルニ在ルハ
固ヨリ論ナシ然ルニ其退官會議ノ如キハ名ヲ法律ニ藉リシノミ形式上
ヨリ見ルモ事實上ヨリ見ルモ會議其會議ニアラス況ンヤ正理空シク不
義ノ勢力ニ壓シ去ラレテ大政ノ瑕瑾ト爲ルニ於テヲヤ然ルモ猶國務大
臣ハ其名ノ法律ニアルヲ以テ立憲ノ目的ニ反スルモノト認メサル歟
三憲法第五十五條ノ二項ニ凡テ法律勅令其他國務ニ關スル詔勅ハ國務大
臣ノ副署ヲ要ストアリ是則大臣擔當ノ權ト責任ノ義トヲ表明スル者故
ニ朝廷ノ失政ハ署名ノ大臣其責ヲ免レサルコト固ヨリ論ナク假令署名
セサルモ議ニ預レハ其責ヲ引クヲ以テ至當トスヘキニアラスヤ然リ而
シテ署名大臣本分ノ力ヲ法律組織ニ係ル會計檢査院ノ非行ニ致サス却
テ責ヲ大權ニ歸ス可ナラン歟
理由
明治三十年三月八日會計檢査院長渡邊昇カ臨時軍事費決算檢査ニ關シ該院
法第十條及第十五條ヲ無視シ同院總會議ヲ經スシテ其檢査廣績ノ上奏ヲ爲
シタルヤ同院部長安川繁成檢査官吉田市十郞外一一名ハ法律ノ擁護ヲ以テ自
ラ任シ其非行ニ抗議シタルモ却テ之ヲ不當トシ同年四月十日同院總會議ニ
於テ名ヲ法律ノ解釋ニ藉リ其實院長私擅上奏ノ非行ヲ庇護スル議決ヲ爲シ
其責ヲ遁避シタノミナラス而カモ同月十二日ノ官報ヲ以テ之ヲ公表シ當時
輿論ノ攻擊ヲ鎭壓セント試ミタリ抑該決議ノ不法不當ニシテ天皇ノ御大
權ヲ蔑如シ帝國議會ノ權能ヲ侵犯スルモノタルハ玆ニ呶々スルヲ要セス之
ニ關シ衆議院議員安川繁成ハ去年三月六日第一項ノ質問ヲ提出セルモ政府
ノ答辯頗ル瞹昧ニシテ要領ヲ知得スル能ハス單ニ天皇ニ直隸シ國務大臣
ニ對シ特立ノ地位ヲ有スル會計檢査院ノ決議ニ付テハ國務大臣ハ何等ノ處
分ヲ爲ス能ハス隨テ其決議ニ關シ是非ノ意見ヲ表示スヘキ限リニアラスト
云フニ過キサルヲ以テ若シ夫レ今後ニ於テモ該院カ如何ニ御大權ヲ蔑如シ
法律ヲ無視スル不法不當ノ決議ヲ爲スモ亦何等ノ處分ヲ加フル能ハスト云
フニ至ラン是レ明ニ憲法ニ規定セル
天皇補弼ノ責任ヲ無視セルモノニシテ立憲治下ニ於ケル國務大臣ノ言議ト
認ムヘキモノニ非ス政府ノ意見ニシテ果シテ如クンハ更ニ進ンテ內閣ノ責
任ヲ問ハサル可カラス是レ第一項ニ對シ再質問ヲ爲ス所以ナリ
明治三十年五月五日會計檢査院部長安川繁成以下三名ニ對シ明治二十九年
法律第九十一號ヲ適用シ退官ヲ決議セルハ當時該院長カ不法上奏ノ非行ヲ
庇護スルノ決議ニ對シ各職責ヲ恪遵シ法律ノ擁護ヲ以テ自ラ任シ抗議相下
ラサリシヲ以テ渡邊昇ハ院內朋黨ヲ比周シ安川等ヲ誣ユルニ狂人ヲ以テシ
身心健全職務ニ勤勉ナルニ拘ハラス密カニ形式缺飲ノ會議ヲ開キ自黨ノ手
ヲ藉リ遂ニ安川以下三名ヲ誣陷セルモノニシテ其議案ノ如キ極メテ之ヲ祕
密ニ付シ事後ニ至リ再三之カ明示ヲ迫ルト雖モ遂ニ應セス竊ニ聞ク該決議
タルヤ安川等ヲ以テ單ニ身心衰弱ニ依リ職務ヲ執ル能ハスト云フニ止マラ
ス他ニ懲戒的意旨二三ノ條項アリシト果シテ然ラハ其決定ノ不當タルヤ
益〓甚シト云ハサルヘカラス而シテ該決定ノ不當タルハ單ニ社會公衆ノ之
ヲ認メタルノミナラズ政府亦之ヲ認メタルハ關宗喜ヲ退官後幾何ナラスシ
テ之ヲ臺灣總督府事務官ニ任用セルヲ見テモ知ルヘキナリ曩ニハ身心衰弱
ニヨリ職務ヲ執ル能ハサルモノト認ムルノ決定ニ依リ之カ退官ヲ執奏シテ
渡邊昇等カ非行ヲ助成シ未タ幾何ナラスシテ職務ニ堪ユルモノトシ之ヲ任
用ス何ソ其矛盾ノ甚タシキヤ而シテ去年三月六日衆議院議員安川繁成ノ質
問ニ對シテハ單ニ法律ニ依ルノ決定ナルヲ以テ政府ハ其決定ノ當否ニ關シ
是非ノ意見ヲ表示スヘキモノニ非スト答辯セリ抑〓內閣總理大臣ナルモノ
ハ官吏ノ進退ニ關シ上奏ヲ受クニル當テ假令法律ニ依ルノ決定ナリト雖モ
宜シク精査考覈シ其決定ニシテ不法不當ノ事實存在スルコトヲ認メタルト
キハ御不裁可ヲ請フテ直ニ相當ノ處分ヲ爲スヘキモノタルハ固ヨリ言ヲ待
タサル處ナリ然ルニ當時ノ內閣總理大臣ハ退官決定ノ上奏ヲ受クルニ當リ
其決定ノ不當ナルヲ認メタルニ拘ハラス直ニ執奏ノ手續ヲ爲シタルモノニ
シテ其職責ヲ盡サヽリシモノタルハ明白ノ事實ナリ然ルニ質問ヲ受クルニ
及ンテハ單ニ前記ノ如キ答辯ヲ爲スニ過キス是レ明ニ責ヲ天皇ニ歸シ奉
ルモノニシテ憲法ニ規定セル天皇補弼ノ責ニ任セサルモノト言ハサル可
カラス是レ第二項ニ對シ再質問ヲ爲ス所以ナリ
會計檢査院ノ紊亂旣ニ前ニ云フカ如ク憲法ノ成交今此ニ引カ如シ鳴呼此時
ニ當リ署名ノ大臣强大ナル行政ノ權柄ヲ握リ躬ヲ以テ匡救矯正ノ任ニ當ル
アラハ假令該院長暴橫彼カ如シト雖モ亦奈何トモス可ラサリシナリ思ヘ大
臣ニシテ署名ノ責ニ任スルノ義ナカランニハ行政ノ權力容易ニ法律以外ニ
濫越シ其結果終ニ法律ハ徒ラニ空文ニ歸シ終ランノミ誠ニ今來ノ爲メ寒心
ノ至ニ堪ヘス是第三ノ質問ヲ爲ス所以ナリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=2
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003・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 諸君ニ御諮リヲ致スコトガアリマス、河北勘七君ハ病
氣ノタメニ議員瀆職ニ關スル法律案ノ特別委員ヲ辭任セラレマシタガ、許シ
マシテ御異議ハアリマセスカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=3
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004・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス、此委員ハ議長
ノ指名ニ成立ッテ居リマスカラ、議長ハ佐伯誠一郞君ヲ其補闕ニ指名致ジマ
ス、松尾又雄君ハ病氣ノタメ本日ヨリ向フ二週間ノ請暇ヲ申出ラレマシタ、許
シマシテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=4
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005・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス、江島久米雄君
ハ母死亡ノタメ本日ヨリ向フ二週間ノ請暇ヲ申出ラレマシタ、是モ許シマシ
テ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=5
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006・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス、江島久米雄君
ハ選舉法改正法律案外二件ノ特別委員ヲ辭任シタキ旨ヲ申出ラレマシタガ、
是モ許シマシテ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=6
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007・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス、此委員モ議長
ノ指名ニナッテ居リマスルカラ、議長ハ小栗貞雄君ヲ指名致シマス委員長
重野謙次郞君カラ鐵道敷設法中改正法律案ノ委員會ヲ此時間ニ開キタイト云
フ申出ガアリマスルガ是モ許シマシテ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=7
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008・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス-是ヨリ會議
ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=8
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009・大石正巳
○大石正己君(二百七十六番) 議長·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=9
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010・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 大石正己君
〔大石正己演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=10
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011・宮崎榮治
○宮崎榮治君(百三十一番) 私モ郵便爲替法案及電信法案ノ委員會ヲ開キタ
ウゴザイマスカラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=11
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012・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 宮崎榮治君モ郵便爲替法案ノ委員會ヲ開キタイト云フ
コトデゴザイマスガ、是モ許シテ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=12
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013・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=13
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014・脇坂行三
○脇坂行三君(二十九番) 是ヨリ請願委員會ヲ開キタウゴザイマスカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=14
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015・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 脇坂行三君カラ請願委員會ヲ開キタイト云フ申出ガア
リマス、許シテ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=15
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016・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=16
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017・大石正巳
○大石正己君(二百七十六番) エー外交ニ對スル質問ノ辯明ヲ致シマスル、
此質問ノ主眼トスル所ハ敢テ當局者ヲ攻擊シ駁難スルト云フ決シテ趣意デハ
アリマセヌ寧ロ今日ノ場合ニ於テ我外交ノ不振退縮ナルコトヲ遺憾ニ思
ヒマスルノデ、一層當局者ノ奮發勉勵若クハ此外交ノ政略上大ニ反省ヲ促シ
タイト云フノ主眼デアリマスル又凡ソ此外交問題ト云フモノハ成ルベク
黨派的感情ニ訴ヘテ是ハ爭ヒタクナイモノデアリマシテ成ルタケ此各黨各
派ノ區域ナク免ニ角我外交ノ刷新ヲ圖ルト云フコトニ十分協力シテ其當局者
ヲ助ケテヤラシタイモノデアル固ヨリ此政治家ガ、各經綸ヲ持チ抱負ヲ
持ッテ居ル政治家ガ、其局ニアラズンバ人ノ爲スコトハ氣ニ入ラヌノハ無
論デアルケレドモ此國家ノ事タルヤ我手ニ此責任ヲ持ッテ居ラヌカラ、ド
ウデモ宜イト云フ譯ニハ往カナイ十分デナイデモ成ルタケ之ヲ助ケテ我國
家ノ進運ヲ圖ルト云フコトニハ爲シタイモノデアリマスル、ソレデ縱令其局
ニアラザルモ多少主義ガ違ヒ政略ガ違ッテモ、成リタケ國家ノ進運上ニ
ハ一步モ進メテ往キタイト云フノ考デアルソレデ私ノ質問ノ主眼ハ固ヨリ
政略上違フ所ハ致方ガアリマセヌケレドモ、成ルタケ此局ニ當ラレテ居ル人
ヲ助ケテ、ドウカ今日ノ場合十分ニ手腕ヲ振ッテ貰ヒタイト云フ希望カラ質
問ヲ致ス、中ニハ固ヨリ吾〓國民ガ大ニ當局者ガ何ヲ爲シ居ルデアラウカト
云フノ實際疑ヲ懷イテ居ル點ノ如キハ又是レ質問ノ效力ニ依ッテ、大ニ世
間ノ迷ヲ疑團ヲ散ラスト云フ效能モアリマセウ、ソレデ此質問書ヲ出スト云
フモノモ成ルベクハ外交上ノコトヲ質問ヲ避ケタイノデアリマスルガ、然
ルニ此吾〓國民ノ代表者タル代議士トシテハ今日ノ場合已ムコトヲ得ヌ
質問セザルヲ得ヌ場合ニ立至ッテ居ル、是ハ此國會ノ代議士ト云フモノガ
隨分此開設以來我代議士諸君ノ御勉勵ニ依ッテ餘程進デ來マシタケレドモ
又一面ヨリ見レバ此代議士ノ職責上トシテハ甚ダ遺憾ナ〓ガアル、固ヨリ
此法律規則等ノ區々タル章句ノ間ニ拘泥シテ、固ヨリ是ハ法律規則ノ區々タ
ル間ニモ盡力センナラヌケレドモ、重ニ國民ガ代議士ニ待設クルモノガ、主
トシテ何デアル此高等ノ知識ヲ働カシテ、國家ノ大計上ニ十分著眼シテ貰
ヒタイト云フノガ、國民ノ代議士ニ待設クル最モ主〓デアル、然レバ今日ノ
場合我日本國ニ於テ如何ナル問題ガ一番大切デアルカト云フコトヲ少シク考
ヘテ見タナラバ、此今日ノ場合色〓內政上大切ナ問題モアリマスケレドモ、凡
ソ此外交ヨリ大切ナ問題ハ差迫ッテアリハシナイ此外交ノ〓ニ於テモ如何
ニモ私ガ唯コヽデ想像ヲシテ云フノデナイ、我國民ト云フモノガ、近來如何
ニモ意氣地ガナイ、如何ニモ不振退縮、是デハ往ケナイト云フコトハ幾ド
我國此今日ノ輿論デアルソレデ此外交上ノ問題ニ對シテ此國民ノ遺憾ニ
思ウテ居ル〓ト云フモノハドウシテモ是ハ十分當局者ニ反省シテ貫ハニヤ
ナラヌ點ガ種々アル、固ヨリ事實ヲ舉ゲテ御話ヲ段々致シマス、ソレデ此吾ミ
ガ此內閣ヲ組織スル初ニ當ッテハ餘程此內閣デハ十分ノ經綸モアリ十分
ナ手腕ヲ振ハルヽデアラウト思ウタト申スモノハ此內閣ノ起ルトキニ當ッ
テハ固ヨリ此今日ノ內閣諸公ハ自ラ政黨ノ勢力ヲ持ッテ居ル御方ミデハナ
イ自ラ恃ム力ハナクシテ、自由黨ノ重ニ勢力ト云フモノヲ借用シテ作ラレ
タルモノデアル、自由黨ナルモノハ固ヨリ種々名士ニ富ンデ居ラレル、種々
ナ經綸ヲ抱カレタ豪傑ガ澤山アッテ固ヨリ自ラ内閣ヲ組織シテヤルト云フ
抱負ノアルト云フ人ガ澤山充滿シテ居ル、澤山充滿シテ居ルニモ拘ラズ此勢
力ヲ貸シテ內閣ヲ作ラセテサウシテ國家ノタメニ働カセヤウト云フ此自由黨
ハ一面カラ見レバ誠ニ是ハ雅量ノアル大度量ノアル御方ミデアル、其又勢力
ヲ借用シテ内閣ヲ組織スルト云フ內閣諸公ハ、如何ニモ大經綸ヲ持ッテ大手腕
ヲ振ハルヽ御方ミデアラウト待設ケタノデアル何トナレバ己ノ勢力ガナク
テモ尙ホ人ノ勢力ヲ藉リデマデヤッテ見ルト云フコトニ於テ、此內閣ト云フモ
ノハ非常ニ國家ニ對スル經綸ヲ持ッテ居ラレ十分內政外政ニ成績ヲ舉グラ
ルヽト待設ケタノデアルガ、既ニ一年有餘ヲ經タ今日ニ至ッテモ、他ノ力ヲ借
用シテマデヤランナラヌト云フ內閣諸公ガ、一向ニ其成績ヲ御見セナサラヌ、
吾ミモ沈默シテ待設ケテ居ッタ其望ト云フモノハ全ク失望ノ結果ニ終ルヤ
ウニナッタ、果シテ此自由黨ノ御方ミモ遺憾ニ思ハルヽデアラウ折角力ヲ
貸シテマデヤラシテ見タガ一向成績ガ舉ラヌト云フコトハ如何ニモ殘念
ニ感ゼラルヽデアラウト御察シ申スノデアル殊ニ此外政ニ於テ然リ、ソレ
デ此國家ノ代表者トシテ、又國民トシテ、今日如何ニモ質問ノ矢ヲ放ッテ一應
其御意見モ伺ッテ見ンナラヌ、又吾〓ノ迷モ散ジンケレバナラヌト云フ場合ニ
立至ッタモノハ、何デアル、卽チ外政ノ怠慢、外交上ノ怠慢、モウ一ツ云ヘバ
卽チ外交上ノ所謂退縮、外交政略ノ退縮、之ヲ攫デ其事實ニ附イテ申シマス
レバ詰リ言換ヘテ見レバ此朝鮮ニ對シテ、支那ニ對スル我政治上ノ勢
力ト云フモノハ衰微シテ居ル、衰微シツヽアル尙ホ今日大ニ此我國家ニ
對シテハ、危險ヲ感ズルト言ハザルヲ得ヌ、又此貿易、我國ノ貿易ノ利益線
ト云フモノガ、今日旣ニ退縮シテ居ル、尙ホ且將來モ退縮スルノ甚シキ危險ガ
アルト云フコトヲ申スノデアル、是ハ唯攫デ申シタ所デアルガ、偖之ヲ事實
ニ就イテ我當局者ガ外交ノ怠慢不振不能無爲ト云フモノヨリ來ル所ノ我國ノ
受ケル所ノ損害ト云フモノヲ之ヲ一面ニハ此大勢上カラ私ハ申上ゲヤウト思
フ又一面ニハ事實上ノ細目ニ渉ッテ其事實ヲ舉ゲテ申上ゲル積デアル先
ヅ此凡ソ國家ノ勢力、政治上ノ權力トカ或ハ貿易ノ利益線トカ、斯ウ云フ
モノハチヨット申スト無形ナモノデ、甚ダ採リ所ガナイ是ガ衰ヘルトカ
盛ニナッタトカ云フ場合ト云フモノハ有形物、物ノ寸尺ヲ取ルヤウニ又
物ノ輕重ヲ計ルヤウナ譯ニハイカナイケレドモ詰リ大勢上カラ論ジ碎イテ、
形勢境遇ト云フモノヲ申上ゲンケレバ、衰ヘテ居ルカ盛ニナッテ居ルカチヨツ
ト試ニ攫ミ惡クイ話デアルケレドモ確ニ日本ガ唯今朝鮮支那ニ對スル勢力
ト云フモノハ衰ヘツヽアル、是ハ先ヅ大勢上ヨリ申シマスレバ、此日本ガ唯
無爲デアル間ニ、外國モ皆無爲デアレバ宜シイ、決シテ日本ガ無爲デ居ルカラ
外國モ遠慮シテ無爲デ居ルト云フ譯デナイ、著々外國ハ手ヲ伸バシ勢力ヲ張
リ權力ヲ增シテ來テ居ル間ニ日本ガ無爲デアルト云フコトハ日本ノ國ガ
愈〓比較的ニ退縮シテ、愈〓危險ヲ感ジナケレバナラヌ、ソレデ第一朝鮮ニ附
キ、又支那ニ附キ、區々別々ニ申上ゲマスルガ、一體此露西亞ガ今日ハ西伯利
亞ノ鐵道ガ貫通スル最早期モ接近シテ居ル、又滿洲鐵道ト云フモノモ落成ス
ルデアラウ、又此旅順口大連灣ニ於ケル兵備軍港ト云フモノハ、十分是ガ完成
ヲ告グル日遠キニアラズ、此日ニハドウデアル、此北〓ノ地、支那ノ北方ノ部
分ト朝鮮半島ト云フモノハ如何ナル運命ニ遭遇スルカト云フコトヲ考ヘレ
バ、大勢上分ル、無論此準備ガ完成シタ曉ニハ此朝鮮半島支那ノ北部ト云フ
モノハ此閉門主義ノ或ル强大國ノ管轄ニ歸スルト云フコトハ論ヲ俟タヌ、
是ハ詰リ今日ノ外交當局者ノ過デアルト云フコトハ私ハ言ハヌソラ外國
ガ兵力ヲ張リ、段々鐵道ヲ架ケ、駸々トシテ其勢力ヲ延シテ來ルト云フコトハ
是ハ外國ノ仕事デアル然ルニ其外國ガ勢力ヲ張リ、權力ヲ延スト云フトキ
ニ、ソレニ對等スルダケノ勢力ヲ延シ、此準備ヲスル必要ガアル、ソレヲ怠
レバ當局者ノ責ヲ免レヌ、又此政治家ト云フ者ガ、必ズ直接ニ過ヲシ、直接ニ
惡ルイコトサヘシナケレバ、政治家ノ責ガ塞ガレルカト云フト決シテサウ
デナイ、政治家ハ國家ノ水先案內デ、國家ノ大勢ヲ觀察シテ國ノ利害、將來
竝ニ現在ニ於ケル利害得失ヲ計較シテ、此大計ヲ誤ラセヌト云フ責任ガアル
故ニ此政治家ノ責任ハ必ズ進デ惡ルイコトヲシナクテモ此境遇ニ應ジ、新
規ナル出來事、必要ニ應ジタル施設ヲ怠ルトキニハ卽チ是ハ大責任ヲ失フ
コトデアル卽チ此前ニ申上ゲタ如クニ、我强大鄰國ガ段々ト準備ヲシテ
來レバ之ニ對抗スルノ準備ヲセンナラヌト云フコトハ是ハ明ナ道理デア
ル又我日本ガ兵ヲ出シテ、明治二十七八年ニ此朝鮮ノタメニ戰マデシタ
ノハ、如何ナルモノデアル、卽チ此朝鮮ト云フモノハ我貿易利益線ト云
フモノヲ保護シ、又我政治上ノ勢力ヲ保ツ上ニ於テ、且ツ我邦ノ危險ヲ避ケ
ルタメ我將來國家ノ危險ヲ防禦スル上ニ於テ、必ズ朝鮮ヲ獨立サセテ置カ
ナケレバナラヌカラ始ッタノデアル、然ラバ此對韓ノ政策ト云フモノハ
方針ハ暗々裏ニ極ッタノデアル事實ノ上ニ於テ、誰ガ極メタト云フコトハ
ナイガ、事實ノ上ニ於テ斯ウセニヤナラヌト云フコトハ極ッテ居ル然ラバ
此對韓ノ方針ト云フモノヲ此段々ニ内閣ガ變リ政府ガ變ジテモ其方針ト云
フモノハドウシテモ是ハ續ケテ遂行シテ往カナケレバナラヌ、此方針ヲ遂
行シテ往カネバ、別ニソレナラ經綸ガアルカ此日〓戰爭ヲシタト云フトキ
ノ精神ト、其方針ヲ遂行スルト云フ上ニ於テハ益〓此朝鮮半島ニ於ケル施
設ハ怠ラレナイ、卽チ彼ニ對抗スルノ準備ト云フモノハ著々シナケレバナ
ラヌデ斯ウ申スト露骨ニ申スト、或ハ「アグレーブル」外交上ニソレハ憚
リガアルトカ何トカ云フヤウナ、下ラナイ夢ヲ見テ、日本ノ人ガ動モスレバ外
交上ノ祕密デナイコトマデモ祕密ニシ、恐ルヽニ足ラヌコトヲ恐ルヽノデ、決
シテ祕密デナイ恐ルヽニ足ラヌ、何トナレバ此國ト云フモノガ國交上ニ於テ
ハ固ヨリ御前ノ國ヲ攻メニ行クト云フ人ハナイ、固ヨリ心持ノ宜イヤウナ
御交際ヲシテ居ルガ、各〓其國ニ於テ兵備ヲ擴張スルハ何デアル詰リ事ア
レバ戰フ、又我國ノ利益ヲ保護スルタメニ必要デアルト云フノ此名目ノ下ニ
各〓準備ヲシテ居ル、此對韓對〓ノ方針ヨリシテ、遂ニ此我利益線ヲ保護ス
ルタメニハ此朝鮮或ハ支那ニ於ケルドウシテモ鐵道或ハ此鑛山ノ採掘ト云
フヤウナモノハ是ハドウシテモ我國ノ進デ得ラルヽダケノ準備ハシテ置カ
ナケレバナラヌ、卽チ此明治三十一年ニ京釜鐵道ト云フモノヲ日本ノ政府ノ
力ニ依ッテ周旋ニ依ッテ之ヲ我國ノ手ニ收メタト云フモノハ如何ナル趣
意デアッタカ、其明交ニモアル通、朝鮮ノ自由獨立ヲ鞏固ニシドウカ貿易ヲ
奬勵スルタメニ是ハ必要デアルト云フノ趣意ニ依ッテ、此京釜鐵道ト云フ
モノハ我國ノ手ニ收メテ居ル此例ヘバ(「京釜鐵道ノ看板ヲ撤シテ質問ニ
掛ルベシ」ト呼フ者アリ)此京釜鐵道ト云フモノヲ我國ニ收メタトキノ趣意
ト云フモノハドウシテモ是ハ今日ニ於テ其趣意ヲ抛棄シテシマッタト云フ
コトヲ內閣ガ言ハレルカ、此趣意ト云フモノヲ何處マデモ之ヲ遂行センナラ
ヌト言ハルヽカ、是ハ內閣諸公ノ今日ノ御決心ヲ承リタイ、固ヨリ是ハ私設
會社ニ條約シテ渡シタモノデアルト言ハルヽモ詰リ此京釜鐵道ト云フモノ
ハ一種ノ不言ノ間ニ政略上ノ意味モ包蓄シテ居ル又一般ノ國家ノ貿易利
益線ヲ擴張スルト云フ大趣意カラ起キテ居ルモノデアレバ無論是ハ著々之
ヲ落成ニ至ラシムル所ノ處斷ヲシナケレバナラヌ、然ルニ此京釜鐵道ト云フ
モノヲ日本ノ手ニ收メタルハ明治三十一年ニシテ今日如何ナルモノガ竣
功ヲ見テ居ルカ、デ此對韓ノ我政策ト云フモノヲ變ジタト云フナラバ變ジ
タコトヲ承リタシ、又變ゼヌトスレバ、斯ノ如キ重要ナル問題ヲ等閑ニ附シ
去ルト云フノハ如何ナル譯デアルカ、デ是ハ既ニ既約ノ權デアル又我國
ノ隨分體面ニモ關スル、固ヨリ我國ノ利益ヲ保護スル上ニ於テハ最モ必要
デアル之ヲ若シ日本ガ此京釜鐵道ノ竣功ヲ十分ニ圖ラズシテ、或ハ是ハ期
限モアルモノデ、其期限ガ來リ、其條約ガ無效ニ歸スルト云フコトニナレバ
固ヨリ氣ヲ附ケテ行ッテ居ル國ガ幾ラモアル是ガ若シ我國以外ノ强國ノ手
ニ京釜鐵道ガ落チテ、釜山マデヅット京城カラ鐵道ヲ敷イテ、是ニ據ルト云
フモノガアッタトキニハ日本ノ是ニ對スル覺悟ハ如何デアルカ、容易ナラ
ヌ問題ヲ等閑ニ附シテ居ルト云フコトハ卽チ外交上最モ我國ノ怠慢ト言ハ
ザルヲ得ヌ、唯是ガ普通割合ノ一個人ノ資格ヲ以テ一個人ノ間ニ此鐵道ノ權
ヲ取ッタト云フ譯デハナイ又モウ一ツ進デ言ヘバ此京釜鐵道ニ關セズ
朝鮮ニ於ケル大切ナ鐵道線路ハ延バセルダケノ手ヲ延シテ置クハドウシ
テモ必要デ、隨分間接ニ承レバ、此京義鐵道京元鐵道ノ如キモ、昨年アタリ十
分ニ我國カラ手ヲ延セバ其好機會ハ向フカラ投ジテ來タト云フコトヲ承ツテ
居ル然ルニ何等ノ交涉ヲシタト云フヲ承ラナイ、最モアルナラバ其交涉ヲ
シタコトヲ答辯ニ預リタイ固ヨリ此鑛山ノ採掘權抔ト云フコトハ或ル一
種ノ俗論ガ世間ニ流行シテ居ル、サウ云フモノヲ取ッタ所ガ仕方ガナイ、ヤ
ラヌケレバ仕方ガナイヂヤナイカト云フヤウナ、直チニ此算盤上ノ議論ヲス
ル人ガ世ノ中ニアリマスケレドモ、是ハ大ナル間違デアル此凡ソ國家ノ權
力ヲ維持シ、其位地勢力ト云フモノヲ擴張スル上ニ於テハ直チニ利益ニナ
ラヌコトデモ直チニ著手シナイコトデモ、是ハドウシテモ權力ノ平均上釣
合上取ッテ置クト云フ必要ガアリ、又國ノ勢力ニモ威力ニモ關スル此鐵道トカ
或ハ鑛山採掘ノ權トカ云フヤウナモノハ、今日列國ガ取リ居ルモノヲ見テモ
直チニ著手スルモノモアレバ、著手ハセヌガ、取ッテ置クト云フモノモアル如
何ニモ其通リ、詰リ權力ノ平衡上、勢力維持ノ對抗上、此ノ如キモノハ一種
ノ眼ヲ以テ見ル必要ガアル直グニ玆デ權力ヲ取ッタカラ、ソレヲ利益線ニ
用ヒテ直グニ鐵道モ架ケル、直チニ鑛山モ採掘スルト云フコトハナクテモ取
ルベキモノハ取ッテ置カナケレバナラヌ、是ヲセヌケレバ平衡ヲ失ッテ來ル、
又權力ヲ取ルト云フコトガアッテ、段々實業上ノ人ガ後カラ進デ行クト云フコ
トガ起ッテ來ル權力ガナケレバ、ヤラウト云フ人ガアッテモヤレナイ譯デア
ル、所ガ朝鮮アタリニハ鑛山ニモ有望ナモノガ調ベテ見レバ澤山アル筈デ
アルケレドモ是ニ就イテ交涉モ盡力モシタト云フコトハ承ラヌ、斯ノ如ク
既ニ朝鮮ニ於ケル我國ノ勢力我國ノ利益線ト云フモノヲ抛棄シテシマッテア
ル、ソコデモウ一ツ是カラ支那ノ方ヘ目ヲ向ケテ見ルト、又其通リ、抑〓此支那
ニ於テ日本ガ福州不割讓ト云フコトハ其權ヲ請求シタ時代ト今日ノ時代ト
云フモノハ如何ナル相違ヲ爲シテ居ルカト云フコトヲ見ルノニ福州不割
讓ヲヤルト云フトキニハ列國爭フテ勢力ノ範圍ヲ擴張シタモノデアル勢
力ノ範圍ヲ爭フト云フ時代ハ卽チ此不割讓ト云フ時代デアッタ、時勢ハ段々轉
輾シテ段々進デ來テ無形ノ勢力ハ物ヲ爭フト云フトキカラ一步進デ實力實權
ヲ爭フト云フ今日ハ形勢ニ立至ッテ居ル、ソレデ詰リ鐵道ノ數設權鑛山ノ採掘
權ト云フモノハ、利益線ニ這入ッテ居ル列國ガ-然ラバ我國ガ不割讓ヲ列國
ト共ニ要求シタト云フ精神、其政略ト云フモノヲ遂行スルナラバ段々モウ
利益線ニ這入ッタケレドモ、共ニ列國ト同ジキ位置ヲ持ッテ居ラナケレバナ
ラヌモノデアル所ガ此列國ハ進ンデ利益實權ト云フモノヲ爭フ時代ニ、
我國ハ昔ノ不割讓ノ間ノ夢ヲ見テ居ルト云フコトハ是ハ既ニ外交ノ怠慢
デアル(ヒヤ〓〓)斯ノ如ク申セバ或ハ支那ヲ懷柔スルニハドウモア
ノ國ノ歡心ヲ買ハンナラヌト云フ愚論ガアルカ知ラヌ、然ルニ凡ソ未開國ト
云フモノニ接シテハ先進國ガ之ヲ誘導シ警戒スル上ニ於テ、一々其國ノ機
嫌ヲ窺フトカ、其國ノ極矇味ナル所ノ感情ヲ迎ヘルト云フヤウナコトヲシテ
居タ例ガナイ、成ル程一方ニハ隨分利益ヲ與ヘ保護ヲ與ヘ成ルベク可
愛ガルコトハシナケレバナラヌガ一面ニハ又我國ノ威嚴ヲ保チ、十分權
力ノ權衡ヲ得ルト云フ上ニ於テ我國ガ進ンデヤッテ置カヌケレバ遂ニ支
那ヲ十分ニ輔佐スルト云フ仕事モ技倆モ出來ナクナッテシマフノデアル
國ガ今日皆我國ノ如クニ不割讓ノ程度ニ安ジテ、那ヲ出サヌ時代ナラバ宣シ
イケレドモ彼ガ進デ要地要港ヲ占メ、而シテ支那ノ死命ヲ制シテ居ル時代
ニ、我權力ノ平衡ヲ取ッテ居ラヌトキニハ他日事アルトキニ助ケルニモ
助ケラレヌ、決シテ手足ガ出ナイコトユナル、必ズ權力ノ平衡ヲ保ツ上ニ於
テ斯ノ如キコトハ十分必要ナコトデアル又斯ク申セバ或ハ無暗ニ人ノ國
ニ手ヲ著ケルコトガ出來ヌト云フ考ガアル、固ヨリ左樣デアル、然ルニ我國
ニ於テモ厦門事件ノ如キ、隨分彼ノ暴動ヲ被リ、損害ヲ受ケタコトモアル
幾ラモ其方針ヲ極メテ其傾向ニ働カンナラヌト云フ考ガアル以上ハ幾ラモ
適當ナ名義ノ下ニ無理ナコトヲセズシテ、其間ニ働ケル手段方法ハ、幾ラモ
アッタノデアルデ固ヨリ此手心ハ當局者ノ其時ノ場合ニ依ルコトデ强チ
申スコトデナイケレドモ、然ルニ早ヤ一例ガ斯ウ云フ支那ノ如キ未開ノ有樣
デアッテ隨分政府ノ爲ス所、人民ノ向フ所ガ、チグハグシテ往クト云フ場
合ニハ支那ノ國ノタメニモ我十分ナ勢力ヲ占メ、地步ヲ占メ、取締上働キマ
スコトハ十分權力ヲ張出シテ置クコトヲシナケレバ口實ヲ得ルコトモ出來
ヌ先日ノ如キ暴動ガ再發シテ、之ヲ防グコトガ出來ヌ旣ニ今日ノ新聞ニ
モ厦門ニ無暗ニ亂暴狼籍ニ遭ウテ居ル者ガアル强チ決シテ機會ガナイテ
モ名義ガナイデモ宜イ、又我敢テ口實ヲ作ッテ云々スルノデハナイ隨分
今日列國ノ有樣ヲ見レバ、殊更ニ口實ヲ作リ、又隨分無理ニ强奪ヲスルガ如
キ擧動ナキニアラザレドモ我國ノ如キ決シテサウ云フコトヲシヤウト申ス
ノデハナイ、ソレ故ニ支那ニ於ケル勢力ヲ十分ナル權衡ヲ取ツテ往クト云フ
點ニ注意スレバ宣イ、今日ノ如キ有樣デハ到底往カナイ、所ガ此支那ニ於テ
ハ福州不割讓ヲ請求シテ以來、何ノ外交上ノ勢力ヲ得テ居ラヌノミナラズ、
却テ比較的我勢力ガ減ゼラレ、我利益線ガ段々減縮サレル感ガアル所ガ顧
ミテ支那ノ我國ニ對スル政治上兵事上ニ於テ大切ナモノハ先ヅ偖措イテ、
單ニ貿易ノ利益上カラ見テ、凡ソ支那程大切ナモノハナイ、是ハ隨分世間誰
デモ知ッテ居ル話デアリマスケレドモ事實統計ニ就イテ見テ、如何ニモ驚
クベク日〓貿易ト云フモノハ進步シテ居ルコトハ是ハ政府ガ助ケテ進步シ
タトハ云ヘヌ自然的ニ日〓貿易ガ非常ナ進步ヲシテ居ル若シ我當局者ニ
シテ當然ノ職責ヲ盡シタナラバ此幾倍モ進ダニ相違ナイト思フ感ガアル
卽チ明治十四年五年頃ニ當ッテ、日〓貿易ノ有樣ヲ見レバ一千三百万圓若
クハ一千四百万圓ノ間ニ居ッテ、三十一年ノ統計ハ卽チ六千万-殆ド六千
万ヲ示シテ居ル、今日ハマダ是ヨリ進ンデ居ルニ相違ナイ、之ヲ見テモ此支那
ト日本ノ貿易ノ如ク進歩ヲシテ增加スルモノハナイ先ヅ五割弱四割强ト云
フ有樣デアル、所ガ日本ガ此歐米各國ト日本トノ間ノ貿易ノ有樣ガ斯ノ如ク
進ダモノガ何處ニアル、決シテアリハシナイ是カラ此勢デ往クナラバ、若ク
ハ五六年或ハ七八年ノ後ノ支那ト日本トノ貿易ハ世界中ヲ相手ニスル貿易ト
殆ド匹敵スルマデニナルカ知ラヌ、此勢デ云ヘバ三億万四億万ト云フ金ニ、
必ズ近イ間ニ日〓貿易ハ進ンデ來ル然ラバ日本ノ將來ノ經濟上ノ消長、日
本ノ國運ノ盛衰ト云フモノハ卽チ支那ノ市場ト云フコトニナル然ラバ無
論對〓ノ方針ト云フモノハ、開明主義ヨリ外仕方ガナイ、ドウシテモ支那ノ市
場ト云フモノヲ日本ニ十分ニ開カシテ、サウシテ此支那市場ヲ日本ガドレダ
ケマデ之ヲ支那市場ニ我貿易線ヲ擴張シテ往クカト云フコトデアル、然ラバ
貿易ノ一〓カラ見テ、支那ノ方ハ凡ソ我國ニ大切ナ關係ヲ持ッテ居ルモノナ
ノデ、其支那ニ對スル施設上當局者ガ何ヲ爲シテ居ルドレ程盡力ヲシテ居
ルカト云フコトヲ伺ッテ見ルニ、決シテ此當局者ハ國民ニ滿足ヲ與ヘルダケノ
仕事ハシテ居ナイ、シテ居ナイ所デナイ、スルコトモ怠ッテ居ルト云フ形跡ガ
アル、卽チ此居留地-專管居留地ノ如キドウデアル、專管居留地ノ如キハ
此間モ外務大臣ハ本院ノニ演說ニモナリ、貴族院デモ答辯ヲ言ハレタト云フ
コトヲ仄ニ承ルガ、如何ニ政府ガ働イテモ、人民ガ意氣地ガナクシテ仕方ガ
ナイ草茫々仕方ガナイ取ッテヤッテモ仕方ガナイト云フ語氣ヲ往々發セ
ラレテ居ルヤウニ見受ケル然ルニ是ハ大ナル間違デアル專管居留地ト云
フモノガ十分ニ利用ノ出來ルベキモノヲ利用シナイト云フ過チハ何レニ
アルカト云ヘバ、當局者ニアル、ソレハ何デアル卽チ專管居留地ト云フモノヲ
我國ニ得ルモトキノ條約文ヲ見テモ明ニアル、ソレハ道路橋梁溝渠ト云フモ
ノハ、領事館ニ於テ之ヲ敷設スルト云フコトガアル、必ズ領事館ガシナクテモ
我輩ハ宜カラウト思フ、然ルニ此道路橋梁溝渠ト云フヤウナモノハ、公共ノコ
トデアッテ、人民ガ一己デスルコトハ出來ナイ、是ダケノコトハ政府ガスル
ノハ當然ノコトデ、其時ノ條約文ニ書イテアル通、政府ガシナイカラデア
ル金ガ要ル、固ヨリ金ハ要ル要ル金ナラバ使フガ宜シイ、ソレ程ノ大金ガ
要ルカト云ヘバサウデナイ五六十万圓カ其位ノモノダ、其金ヲ政府ガ
出スコトモ出來ヌト云フハ何タルコトデアル日耳曼ノ如キハ組合ヲ立テ
テ組合ニ金ヲ出サセテ、其居留地ノ成效シタ上、其居留地ニ附イテノ貸借賣買
等ノ權ヲ組合ニ許シテ遣ラシテ居ルソレデモ宜シイ、免ニ角專管居留地ヲ
取ッタ以上ハ是ヲ利用シナケレバナラヌ所ノ責任ハ當局者ニアル是ヲ
怠ッテ居ルノダ人民ガ往カヌノハ往カヌ、人民ガ意氣地ガナイカラ、草茫
茫トシテ居ル抔トハ何事デアル實ニ己ノ職務ヲ怠慢ニ附シテ居ルノデア
ル、斯ノ如キ一例ヲ見テモ日〓貿易日〓ノ間ノ貿易ヲ保護スルニ、政府
ノ冷淡ナルコトガ分ル、モウ一ツ進デ申シテ見レバ條約交ニモ重慶アタリ
モナカ〓〓寒イ處デ、蘇抗州抔ヨリモ盛デアルトカ、盛ニナラウトカ云フ見
込ガアル是等ニ於テモ專管居留地モ取ラヌ、領事館モ置カヌ、ドウシテモ
日本ニ於テハ先覺者政府誘導者タルベキモノガ手ヲ進メ地ヲ拓イテ
人民ヲ勸メルコトガ、今日ノ日本ノ進歩ノ度合デアル之ヲシナイデ歐羅
巴各國ノ如クニ人民ガ獨リデ進ミ、獨リデ往ケルモノト思ウテ居ルノハ間
違デアル、ソレダケノ手數ヲシナイデ、人民ガ往カヌナレバ往カヌ、人民ガ
惡ルイ抔ト思フノハ是レ實ニ大ナル當局者ノ怠慢デアル又領事館ノ云
云、專管居留地ノ云々ニ止ラナイ領事ナル者ガ一向働カナイ、或ル部分ニ
於テハ働イテ居ルカ知ラヌガ、領事ガ商業製造工業者等ノ實業ニ對スル深切
ガ足ラナイ、十分ノ職責ヲ盡シテ居ラナイ今日ノ場合一例ヲ舉ゲテ見テ
モ或ハ領事館ヲ各所ニ配ッテアル其領事ト云フモノハ任所地ニ於テ何ヲ
シテ居ルカ商業ヲ調ベ模樣ヲ調べ、其報告ヲ速ニシ又我國ノ國產若ク
ハ製造品ノ捌口ニ對シテ販路ヲ開クニ附イテ、又開カレルヤウナ針路ヲ執リ、
又其報道ヲ敏速ニヤッテ居ルカト云ヘバサウデナイ卽チ外務省デ拵ヘル所
ノ商業彙纂トカ何トカ云フ領事ノ報告抔ヲ御覽ナサイ、大〓三箇月四箇月ノ
後ニ現レテ居ル前ノコトヲ書イテアルノダ前ノコトヲ書イ居ルト云フノハ
卽チ實業上ノコトヲ心頭ニ懸ケズ、發育ヲ圖ルト云フコトニ冷淡ナルタメニ
此報〓ノ出來タ時分ニハ、其相場附デモ、注文デモ、疾クノ昔ノ事ガ書イテア
ル、何ノ役ニ立ツカ、三四箇月經テバ日本ノ物品デモ相場ガ違ッテ居ル、斯ノ如
キ無益ノコトヲシテ居ルノデアル不深切ノコトヲシテ居ルノデアルガ十
分之ヲ發育シ、之ヲ誘導スルコトハ勉テ居ラナイ、然ラバ外務省ハ金
ガ一向ニナイノデアルカト云ヘバサウデモナイ、海外貿易擴張費抔ハ
六万圓デアッタノヲ十万圓ヲ增シテ居ル又外務省デモ機密費ヲ增シテ
居ル外務省ノ此金ハ「ジプロマチツク」ノ方ニ使フコトモアリマセウケ
レドモ日本ノ製造貿易ト云フモノヲ奬勵スル方ノコトハ寧ロ十分ニ
使クテ宜シイ、又此貿易是ハ申上ゲナケレバナリマセヌガ、其仕事ニ於
テハ決シテ以前ト變ッテハ居ラナイ、ドウ云フコトヲシテ居ルカ見受ケ
ルコトガ出來ナイ斯ノ如ク一々事實ヲ舉ゲテ往ケバ實ニ爲スベキコ
トニシテ爲サレテ居ラヌコトハ枚舉ニ遑アラヌ、又一體外交上モウ
少シ高等ノ外交上ノコトニ移ッテ申セバ全體支那ノ事ヲ處分スルニ
日本ノ政府ハ單獨デ出來ルト思ッテ居ルカ否カト云フコトヲ問ウテ見タイ
最早支那ト云フモノニ對スル「ハイホリチック」ニ涉ッタコト高等ノ外交
上ニ涉ッタコトハ單獨ニ支那ノ處分ヲスルコトハ出來ナクナッテ居ル孰
モ我國ト利害ヲ均ウシ其利害ヲ同ジウスル强國ト組合ッテサウシテ暗々
裏ノ間ニ其心持ヲ以テシナケレバ支那ノ事ト云フモノハ出來ナクナッテ居
ル然ラバ支那ノ運命ハ誰ガ制スルカト云ヘバ歐羅巴列强ガ制スル就中
支那ノ死命ヲ掌ル所ノモノハ英露ノ如キモノデアル英露ノ今日ノ形勢ト云
フモノハ、實ニ機敏ノ外交上ノ運動ヲ爲シ、殊ニ今英吉利ノ「トランスバール」
ノ如キハ面倒ナ關係ヲ生ジテ居ル、其面倒ノ關係ヲ生ジテ居ルガタメニ歐羅
巴列國ノ全部ヲ動搖サセテイツ何時ドンナ事ガ起ルカ知ラヌ場合ニナッテ
居ル免ニ角支那ノ死命ヲ制スル强國ト云フノハ英吉利露西亞ト云フ此强
國ト云フモノガ今日ノ其働キノ原動力トナッテ居ルノデアル原動力ノ中心
ハ何處ニ在ルカト云フト、倫敦ト聖彼得堡ニ在ル此原動力ト爲ル所ニ注視
シテ肝要ノ事ヲ爲スノ決心ガナケレバナラヌ、或ハ此露西亞英吉利等ノ政
治家當局者ト交渉ヲシテ又機會ニ投ズベキノ仕事ヲシナケレバナラヌ又
各〓十分ニ顧ミテ準備シナケレバナラヌコトモ著々起ッテ居ル、所デ今ノ外務
省ノシザマハ如何デアル、其大切ノ英京倫敦及聖彼得堡ノ公使ヲ數箇月空ケ
テ.留守ニシテ居ルト云フハ何事デアル、外務省ト云フモノハ唯儀式的ノ
交際ヲ爲スト云フ役所デハナイ、ソレハ昔ノコトダ、儀式的交際ヲ今日爲サ
ヌノデハナイガソレラヲ以テ決シテ能トスル譯デハナイ今日ハ外務省ハ平
和ノ參謀部デアル、平和ノ參謀部トモ云フベキ外務省、何處ノ外務省デモ機敏
ノ働ヲ爲シ最モ迅速ニ確實ニ列國ノ報道ヲ得ルコトガ必要デアル、其形勢
ガ分ラズシテハ政策ノ施シヤウハナイノデアル最モ世界ノ動力トナル本源
ノ英吉利ノ倫敦露西亞ノ聖彼得堡ニ公使ヲ置キ代表者ヲ置イテ而モ其
全國ニ注意スルト云フコトデナケレバナラナイ然ルニ此處ナ公使ヲ明ッ放
シニシテ、少モ痛痒ヲ感ゼザルガ如ク、阿弗利加ノ戰爭ノ如キハ遠クノ火
事ノ如ク感ジテ居ルノハ實ニ何事デアルカ是ハ形ノ上デ現レタコトデア
ル然ルニ斯ク形ノ上ニ怠慢ガ現レルトキハ、其裏面ニハ餘程怠ッテ居ルモ
ノト見ナケレバナラヌ、僅ニ形ノ上デハアルガ、大ナル著シキ證據ガ舉ッテ居
ル、ソレハ成ル程當局者ハ辯明スルトキニハ、儀式的ニソレハ斯ウ云フ訓令ヲ
スル積ガアッタトカ、斯ウ云フ公用ガアッタトカ云フガ、皆口實デアルナ
カナカ實際ハサウ云フモノデナイ仄ニ聞ク所ニ依レバ兩國ノ公使ガ最早
任地ニ歸ラント云フコトハ公然ノ祕密ニナッテ居ッテ、サウシテ未ダ後任
者モ出來ズ、ソレナリ明放シニシテアルト云フハ卽チ外交上ニ於テ働キガ
ナイト云フ證據デアル公使館ニ公使ガ居ナケレバ代理公使ガ居ルナラ差
支ナイト云フコトヲ申スガ、是ハ儀式的ノ挨拶デ、人間ノ智識ノ程度交際ノ
度合ニ依ッテ聞ケナイコトヲ聞ケル又結ビ惡クイ條約モ結ブコトガ出
來交涉ノ付カヌコトモ附クト云フコトハ當り前デアル若シ代理公使
デ足リルナラ、全權公使ヲヤル必要ハナイ筈デアル斯ノ如キコトハ外務
省ノ怠慢外交上ノ不深切デ我利益線ヲ保護スル〓ニ活動セヌ證據デアル
而シテ其一〓カラ申セバ旣ニ暹羅ノ如キモ、今ハ公使ガ向フニ往ッテ居
ルガ、日本ニ歸ッテ來テ一年程ニナルモ、內實ノ種々ノ下ラナイ一身上ノ
事情ヲ以テ外務省ノ間ニ交涉シテ居ルコトデ、一體ガ政治上ノ事カラ起ッタ
コトデハナイ、是ハ只證據ノ一部分デアリマスガ、マア斯ノ如キ外交上ノ遣
方デ、甚ダ是ハ國家ニ對シテ不深切ノ仕方デ、我國ノ外國ニ對スル利益線デ
保護スルニ足ヌ處置デアル、外務ノコトハ一朝一夕ニ立派ナ效果ヲ見ルコト
ハ望マレナイ內閣ガ變ッテ二三箇月ノ間ニ外交上ノ成績ヲ見セナケレバナ
ラヌト云ヘバ誰モ出來ヌニ相違ナイ然ルニ凡ソ一箇年有餘ノ經驗ヲシタ
ナレバ大抵分リサウナモノデアル、然ルニ之ガ目ニ見エズ失策怠慢ノア
ルト云フハ卽チ當局者ノ不能ト云ハザルヲ得ヌ斯ノ如キ不能ハ啻ニ當局
者ヲ責ムルノミデハナイサウ云フ人間ニ依ッテ國家ノ責任ヲ負ハシテ居ル
國民ガ甚ダ迷惑デアル是ハ支那ニ對スル方ノコトデアリマスガ更ニ貿易
ニ對スル當局者ノ何ヲ見ルニ進取ト云フコトヲ內閣ノ作ラルヽトキノ宣言
ニアッタカドウカハ知リマセヌガ、進取ノ政策ヲ採ッテ進メテ往ク、貿易其
他ノ擴張ヲ計ル斯ウ云フコトハ何時デモ云フコトデアルガ、事實ハドウデ
アルカ事實ハマルデ反對デ、退縮デアル退縮トカ進取トカ云フコトハ隨
分漠トシタ話デアルガ、又事實ヲ押ヘテ是ヲ徵スルコトガ出來ル、例ヘバ露西
亞ノオデッサニ領事館ヲ置ク議ガ盛デアッタガ、今年ノ豫算ニハ引込マシテ
居ル、其時ノ理由ハ日露ノ貿易ノ特ニオデッサノ如キハ貿易ガ年々ニ增加シ
テ、非常ニ必要ヲ認ムル理由ヲ以テ議會ニ豫算ヲ請求シテ居タテ、今年ハソ
レヲ引込マシテ居ル昨年ハ大變必要デアルガ、今年ハ必要デナイト云フハ、
抑〓何ニ依ッテ斷ズルカ、吾ミトノ統計表ニ依ッテ見マストオデッサノ如キ所
ニ對シテハ日本トノ貿易ハ非常ノ勢力ヲ進テ以テ來ヨル、或ル時ハ石油抔
デ亞米利加カラ輪入スルト云フコトデ、額ガ減ッテ居ルガ、此頃ハ又非常ニ
增シテ居ル、ソレデオデッサヲ外カラ兼帶スルモムヅカシイ、又名譽領事ニ
任カシテ居リマスガ、手ヌルクテ往カヌ、何故ニ昨年ハ出シテ、本年ハ引込マ
シタカ、昨年否決シテモ、本年ハ又出サナケレバナラヌ、又議會ハ決シテ國
家ニ必要ノ機關ニ使フ上ニ金ヲ惜ムコトハナイ、斯ノ如キ例ヲ舉ゲテ申セバ
政府ノ外交上我國ノ勢力ヲ外ニ伸張シ、國家ノ利益線ヲ外ニ保護スル〓ニ於
テハ甚ダ冷淡甚ダ不深切ト云フ證據ハ歷々舉ゲルコトガ出來ル、而シテ政
府ガ一體外交上ニ斯ノ如キ不信無能無策退縮怠慢ト云フモノヲ著シテ來タノ
ハ、何處ニ原因ガアルカト云フコトヲ一言申ス、ソレハ何デアルカト云フニ
元來此內閣ト云フモノガ、斯ノ如キ國家ノ大計國家ノ利害得失ヲ見テ大ナル
施設ヲスル、言換ヘレバ國家ノ經綸ト云フコトガ、全ク此內閣ニハナイ、其經
綸ガナイト云フコトガ、不信ヲ來ス原因デ、主義目的ガアリ方針ガ定ッテ居
ルナラバ見ルベキ所ガアルノデアルガ更ニ其考ガナイ而シテ更ニ考ガ
ナイナラバ從來ノ方針政策ヲ追踏シテ之ヲ仕遂ゲル決心ガアレバマダ宜
イガ、事蹟ノ上ニ於テ其成績ガアルベキデアルガ、斯ル從來ノ方針ヲ斷行スル
決心勇氣ガナイノデアル、而シテ一ニハ是モ公然ノ祕密デアルガ或ル當局者
ハ-何分外交モ是デハ仕方ガナイ、不振ヲ來スモ仕方ガナイト云フタ所ガ、
ドウモ外務大臣ガ三人モ五人モアルカラ實ニ仕方ガナイト云フコトヲ申シ
タト云フコトデアルガ、成ル程是ハ御當人ノ辯解通外務大臣ガ幾人モアツテ
ハ御無理モナイコトデアルガ御當人ガ十分ニ此切囘シヲ附ケルコトガ出
來ナイカラ、幾ラモ黑幕ガ出來ノデハナイカト思フ是ハ卽チ外交ノ不振ノ
原因ヲ一言致シタイノデアルガ、此一年有餘ノ日月ヲ經テ何等ノ效績ノ舉ラ
ヌノミナラズ、却テ反對ニ輕々ノ失態ノ證跡ガ舉ル、斯ノ如ク日本ノ勢力ノ
退却シタル有樣デアッタナラバ、日本ノ國ガ或ハ危險ノトキニ際會シナイカト
云フ議論ガ立ツト云フコトデアルト、隨分當局者ハ其器ニアラズト云フコト
ガ推斷セラルヽノデ、當局者ガ其器ニアラズトスルト、其配下ニ人物ガ來ラヌ
ト云フハ、自然ノ結果デ、當局者ガ其器ニアラズ、配下ニ相當ノ人ガ來ラヌト
其事業ガ舉ラヌノハ必然ノ理デアル而シテモウ一ツノ原因ハ是ハ多少我
反對黨ニ於テモ御注意ニナラナケレバナラヌト云フハ最初申ス通隨分內閣
ノ人ハ勢力マデモ橫取リニシテ、內閣ヲ造ッテ居ルト云フコトハ非常ニ經
綸アルカノ如ク待受ケラレタニ拘ラズ、今日愚圖々々シテ居ッテ、國務ヲ怠ツ
テ居ルト云フ證據ガ擧ツテ來ルト云フヲ見レバ益〓政府ト云フモノガ、人ノ
船ヲ便船ニ借リ人ノ馬ヲ借馬ニシテ行クト云フヤウナコトデハ斷乎トシ
タ政策ヲ懷イテ、ソレヲ實行スルコトガ出來ヌト云フ證據デアル、然ラバ詰
リ政治家ガ國家ノタメニ盡力スル上ニ於テハ、我勢力ヲ有ッタ者ガ十分ニ御ヤ
リナサル方ガ宜イ、サウシテ人ノ勢力ヲ借リテヤルト云フコトハ御止シナ
サレタ方ガ宜イ、ソレデモ成ル程國家ノタメニ功績ガ舉ガレバ宜イ然レド
モ此一年有餘ノ期限ヲ經テ、一向目ニ見エヌトスレバ借馬內閣便船內閣ト
云フモノハ到底國家ノ利益ヲ圖ルコトガ出來ヌト云フ譯デアル、ソレデ是
ハ唯政府當局者ノミナラズ今日大度量ヲ以テ政府ニ全力ヲ御貸シニナッテ
居ル所ノ諸君モ能ク御注意ニナランコトヲ希望スル、而シテ此質問ノ要點ハ
右述ベタル如キ次第デアリマシテ、尙ホ書附モアリマスカラ、不日當局者カ
ラ答辯ガアリマセウガ、然ルニ此答辯タルヤ、從來唯儀式的ニ言葉ノ尻ッポ
ンヲ捉ヘテ、サウシテ一一百的ニ揚足ヲ取ルト云フヤウナヤリ方デハ、如何ニモ親
切ナ答辯ヲ得ルコトガ出來ナイ是ハ言フテ見レバ理窟ハ種々言ヘルモノデ
アル、又隱レントスレバ種々隱レ道モアリマセウ、殊ニ外交ハ祕密ト云フ一
言ヲ以テヤルト云フコトガ、今日マデ出來ルカラ、種々口實モアリマセウガ、
兔ニ角形ダケノ答辯ヨリハ精神的答辯ヲセラレンコトヲ希望スルノデアル、
而シテ將來吾〓國民タルモノガ安心シテ指ヲ啣ヘテ默シテ見テモ日本ノ
商權ト云フモノガ外ニ伸ビ、又日本ノ勢力ト云フモノモ伸張シ居ラルヽト云
フ御見込ガアルカ否ヤ是モ十分承リタイト考ヘル、殊ニ今日ハ斯ノ如キコ
トヲ言フト、唯大キナ論ヲスルヤウデアルケレドモ、決シテサウデナイ、此
頃亞米利加大統領ノ議會ニ下シタ〓書ヲ見テモ、亞米利加ノ如キ國ハ、實ハ
政府ガ世話ヲスル必要ガナイ程發達シテ居ル、商工業ト云ヒシ、智識ト云ヒ
シ富ト云ヒシ、資本ト云ヒシ申シヤウノナイ働キヲ爲ス國柄デアル然
ルニ其大統領ノ〓書ノ中二、特ニ支那ニ對スル亞米利加ノ利害ト云フコトニ
就イテ、最モ注意サレテ居ル獨リ亞米利加ノミデハアリマセヌガ亞米利
加ノ大統領ノ〓書ノ中ニ先ヅ第一ニ亞米利加ガ太平洋太西洋兩洋ヲ占領スル
ニ尼加拉瓦掘割ノ如キハ最モ亞米利加ニ無限ノ利益ヲ與ヘルト云フコトヲ
說キ、其次ニ亞米利加ノ航權ノ擴張-十分ニ航海事業ノ發達ヲ圖ラナケレ
バナラナイト云フコトヲ亞米利加ノ商權ノ伸張亞米利加ノ航海權ト云フモノ
ヲ增サナケレバナラヌト云フコトヲ申シテ、其上リニ殊ニ目指ス所ハ支那ノ
市場ト云フモノヽ今日ノ狀況及製造所ノ現況ヲ調査スル必要ガアル而シテ
亞米利加ノ國產製造品ト云フモノヽ市場ヲ支那ニ開墾スルト云フコトニ就イ
テノ手段方法ト云フモノト竝ニ其障碍物トナルモノヲ調査セネバナラヌニ
依ッテ玆ニ其調査委員會ヲ開クノ必要ガアルカラ、國會ハ十分之ニ協賛ヲシ
テ金ヲ出サレタイト云フコトヲ請求シテ居ル、亞米利加ニシテ斯ノ如クデア
ル、無論佛蘭西ト云ヒ、英吉利ト云ヒ、皆支那ニ商工業ヲ擴張スルト云フコ
トニ就イテ非常ナ速力非常ナ熱心ヲ以テヤリツヽアルニ拘ラズ、我當局者ハ
如何ナル施設ガアルカ、如何ナル方案ガアルカ、何モシテ居ハシナイ斯ノ
如キ有樣デ、是デ推移ッテ行ッタナラバ無論今日未ダ日本ノ勢力ヲ悉ク失ッ
タニモアラズ、又日本ノ利益ハ放ッテ置イテモ人民ノ個人的膨脹ハ致シツ
ツアリマスケレドモ、遂ニ此日本ノ内外諸國ト競爭ヲスル上ニ於テ非常ナ失
敗ヲ取リ、非常ナ後レヲ取ルト云フ結果ガ來ルニ違ナイ固ヨリ支那ニ於ケ
ル朝鮮ニ於ケル、日本ノ勢力ガ一度衰ヘルナラバ日本ノ將來ノ經濟上ノ
運命知ルベキノミ斯ノ如ク無形ノ間ニ日本ノ將來ガ誠ニ案ジラルヽ有樣デ
ゴザイマス固ヨリ是ハ事實ニ於テ朝鮮ノ半島支那ノ北部ト云フモノガ何
國ノ管轄ニ歸シタト云フトキデハナイガ、未ダ其極點ニ至ラザル前ニ之ニ對
スル準備ヲスルト云フノガ、卽チ國ヲ預リ人民ヲ預ッテ居ル所ノ當局者ノ責
任デアル、マダ申シタイコトモアリマスケレドモ、是ダケノコトヲ申シテ、答
辯ヲ請ハウト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=17
-
018・星亨
○星亨君(九十一番) 是ヨリ選舉法ノ委員會ヲ開キタウゴザイマスカラ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=18
-
019・片岡健吉
○議長(片間健吉君) 星亨君ヨリ衆議院議員選擧法改正法律案ノ委員會ヲ開
キタイト云フコトデアリマスガ、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=19
-
020・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 許スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=20
-
021・堀田連太郎
○堀田連太郞君(百九十九番) 是ヨリ鑛業條例中改正法律案ノ委員會ヲ開キ
タウゴザイマスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=21
-
022・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 堀田連太郞君ヨリ鑛業條例中改正法律案ノ委員會ヲ開
キタイト云フコトデアリマスガ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=22
-
023・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=23
-
024・關信之介
○關信之介君(二百二十四番) 是ヨリ民法第千七十九條及第千八十一條ノ規
定ニ依ル遺言ノ確認ニ關スル法律案ノ委員會ヲ開キタウゴザイマスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=24
-
025・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 何ノ法律案デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=25
-
026・關信之介
○關信之介君(二百二十四番) 民法第千七十九條及第千八十一條ノ規定ニ依
ル遺言ノ確認ニ關スル法律案ノ委員會デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=26
-
027・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 關信之介君ヨリ民法第千七十九條及第千八十一條ノ規
定ニ依ル遺言ノ確認ニ關スル法律案ノ委員會ヲ開キタイト云フコトデアリマ
スカイ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=27
-
028・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス
〔安部井磐根君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=28
-
029・安部井磐根
○安部井磐根君(百四十八番) 本員等ハ闇臣ノ責任ニ關スル質問書ヲ提出シ
マシタ、要ハ本文ニ揭ゲ、微ハ理由書ニ書イテゴザイマスルケレドモ口頭
尙聊辯明ヲシマス、此件ヤ實ニ重大ナル問題デゴザリマスル諸君ニモ一應
御聽置ヲ願ヒタウゴザイマスルデ先ヅ本交ダケヲ朗讀シマスル
閣臣職責ニ關スル質問主意書
昨年三月會計檢査院ニ關スル事項安川繁成ノ質問ニ對シ政府ノ答辯スル所
益〓疑アリ
一政府ノ答辯ハ天皇ニ直隸シ國務大臣ニ對シ特立ノ地位ヲ有スル會計
檢査院ノ決議ニ付テハ國務大臣ハ何等ノ處分ヲ爲ス能ハス隨テ是等ノ決
議ニ關シ國務大臣ハ是非ノ意見ヲ表示スルノ限リニ在ラスト云フニア
リ抑〓會計檢査院ハ政府ノ會計ヲ監督スル爲ニ獨立ノ資格ヲ有セサルヘ
カラス故ニ其組織及職權ハ裁判官ト同シク法律ヲ以テ之ヲ定メ行政命令
ノ區域外ニ在ルニ過キサルノミ豈大政以外其門ヲ二ニスルモノナランヤ
然ルモ猶國務大臣ハ之ニ對スル責ナシト云フ歟
二政府ノ答辯ハ會計檢査院部長安川繁成檢査官吉田市十郞外二名ノ退官
ハ會計檢査官會議ニ於テ明治二十九年法律第九十一號ニ依リ決定セシモ
ノナレハ國務大臣ハ其當否ニ關シ是非ノ意見ヲ表示スヘキ限リニアラス
ト云フニアリ
凡立憲ノ目的ハ主權ノ使用ヲシテ正當ナル軌道ニ由ラシムルニ在ルハ固
ヨリ論ナシ然ルニ其退官會議ノ如キ八名ヲ法律ニ藉リシノミ形式上ヨリ
見ルモ事實上ヨリ見ルモ會議其會議ニアラス況ンヤ正理空シタ不義ノ勢
力ニ壓シ去ラレテ大政ノ瑕瑾ト爲ルニ於テヲヤ然ルニ猶國務大臣ハ其名
ノ法律ニアルヲ以テ立憲ノ目的ニ反スルモノト認メサル歟
三憲法第五十五條ノ二項ニ凡テ法律勅令其他國務ニ關スル詔勅ハ國務大臣
ノ副署ヲ要ストアリ是則大臣擔當ノ權ト責任ノ義トヲ表明スル者故ニ
朝廷ノ失政ハ署名ノ大臣其責ヲ免レサルコト固ヨリ論ナク假令署名セサ
ルモ議ニ預レハ其責ヲ引クヲ以テ至當トスヘキニアラスヤ然リ而シテ
署名大臣本分ノ力ヲ法律組織ニ係ル會計檢査院ノ非行ニ致サス却テ責ヲ
大權ニ歸ス可ナラン歟
以上三項デゴザイマスル此中一二項ハ昨年三月ノ答辯ニ附イテ尙不審ヲ起
シマシタ、後トノ一項ハ別ニ添ヘテ質問スルノデゴザイマスマア文ニモ大
抵盡シテアル積デゴザイマスルカラ他ニ喋々スルヲ用ヒナイヤウデゴザイ
マスル併シ政府ノ答辯ハ如何ニモ瞹眛模糊トシテ眞ニ解スルコトハ出來ナ
イノデアリマス越天皇ニ直隷シ國務大臣ニ云々」ト云ヒマシタルハ
是ハ會計檢査院ヲ獨立セシメテ行政命令ノ外ニ置クガタメニ其檢査院法ノ
第一ニ揭ゲアル文字デゴザイマス會計檢査院ハ敢テ憲政ノ中ノモノデナイ
ト云フコトハゴザイマセヌ、卽チ憲政中ノモノデゴザイマス憲政ノ責ニ任
スル人ハ何人デアル、輔弼ノ大臣デゴザイマス、且ツ本員等ト雖モ此檢査院
ニ對シテ指揮命令ヲセヨトハ申シマセヌ併シ大權ノ作用ト云フモノハ如
何樣ニモ遊バセラレルモノデゴザイマシテ、例ヘバ裁判所ノ如シ、卽チ天皇
ノ大諱ヲ以テ刑名ヲ宣告シマシテーシマスルト云フハ畢竟大御心ヲ以テ
處刑スルノデアルト云フ意味ヲ含ンダモノデゴザイマセウサリナガラ大權
ハ其上ニアリマシテ、是ハ際限ノナイモノデアリマスルカラ、減刑セヨト云
フ勅諚ガ下レバ卽チ畏ッテ減刑ノ宣告ヲ更ニ仕直スノデゴザイマス偖其
勅諚ノ下ル本ハ、何處デ致ス言ッタラ內閣會議內閣會議ノ卽チ奏請ト
云フ手續デ玆ニ至ルモノデ、恐ナガラ御上ニハ一ニ大臣等ノ奏請ヲ待ッテ
御裁可遊バサルモノデゴザイマシテ、責任ハ悉ク大臣ニ在ルハ言フマデモ
ナイコトデゴザイマスソシテ又玆ニ「其決議ニ付テハ」トゴザイマスガ
此決議ト云フモノハ檢査院ニ不法決議ト指スモノガ二ツアリマシテ、最初
ハ四月ノ十日、後トハ五月ノ五日ト此二囘アルノデゴザイマス是ハ兩方
ヲ含メタ答辯カモ知レマセヌケレドモ其五月五日ノ會議ノコトハ爾後ニ致
シテ居リマスルカラ今ハ先ヅ四月十日ノ決議ヲ以テ申シマスルガ)アリヤ
決議トハ言フモノヽソコガ暴ノ暴ナル仕方ニ陷ッテアルノデアリマス今
更事新シク言ハズトモ、諸君モ御聞及ビノ通デアリマセウ、此本ト云フモノ
ハ法律ヲ無視シ苟モ檢査院長ノ上奏ヲスルト云フコトハ會計檢査院ニ於
テ總會議ヲ經テ總會議ノ決シタ所デナケレバ之ヲ上奏スルコトハ許サヌノ
ハ法律明文ニ明ナルコトデアリマスソレヲ竊ニ三月八日ニ上奏シタト云
フコトガ、此紛議ノ種ニナッタノデアリマス一體ハ二十九年ノ年末カニ一度
ヤッタサウデアリマスガ、四五名ノ腹心ノ者ハ知ツテモ、居ッタカ知ラヌガ
院中知ル者ハナイ三月八日ニ宮中ヨリ退出シ來ッテ某ノ院中ノ者ヲ集メ
テ話シタカラ、正義ノ者、ソレハ大變ダ、法律ヲ破ッタト云フ議論ニナリマシ
テ一時ハ此法律擁護ノ正義派モ多數ヲ占メテ、渡邊昇ハ之ニ對シテ往々買收
デモアリマスマイガ變節議員ガー變節者ガ出來マシテ、ヤウ〓〓頭數ノ方
ガ數ヲ制スルニ至ッタノデ、四月十日ニ議會ヲ開イテ、其上奏ヲシタト云フモ
ノハ會計檢査院ノ成績表ヲ呈シタモノヂヤナイ、功程圖ヲ差上ゲタモノデアル
ト云フ口實ヲ造リマシテ、檢査院法中十五條ヲ破ッテ、檢査院法一條四條ニ據ツ
テ是ニ恣ニ害ヲ附加シテ、、決議シタモノデアリマシテ決シテ相當至當ノモノ
ヂヤナイ併シ時ニ當ッテ世上ノ輿論モ囂々シマスルデ、裏面ニモ其與論ヲ鎭
壓ノ心得ヲ以テ、其決議ヲ四月十二日ニ官報ニ揭ゲテ今以テ依然下シテ取消
モナクアルノデゴザイマス、之ヲ一目シテモ曲當シタト云ウテ宜イカ破ッタ
ト云ウテ宜イカ、決シテ其決議ニアラズト云フコトハ明ナルモノデアリマ
ス、一體國務大臣ガ大政ノ責ニ任ジテ、輔弼ノ責ニ任ジテアルハ、コヽガ注意
ノシ所デゴザイマシテ立憲ノ目的ト云フモノハ法律以外ノ軌道ニ踰越スル
コトヲ許サヌノデゴザイマス、斯ル決議ヲ冷淡ニ緩漫ニ默過シタト云フモノ
ハ何等ノ失態、然ルヲ問ハルレバ卽チ決議ニ據ッテ云々ト云フヤウナコト
ヲ答ヘタノデアリマス、殊ニ此檢査院ヲ憲政以外ノモノヽヤウニ云ヒマシタ
コトハ是ハ奇怪ナル言デゴザイマスカラ、ソレヲ揭ゲテソレデモ國務大臣
ハ之ガ責ニ任ジナイト云フノガ、第一項ノ問デゴザイマス、次ニハ彼ノ無法
退官處分ノ方針ニ附イテ、又出タノデアリマス是將タ九十一號ニ據ヲテ決
定シタモノダモノダカラ、國務大臣ハ其當否ニ關シテ種々ノ意見ヲ表示セヌ
ト云フノデゴザイマスガ、是ハ決定ト云フモノカ-矢張決定ヂヤナイ、是
ハ五月ノ五日ニ至リマシテ、俄然ト此會議ヲ起シ、縱令下地ハ出來テ居ツタ
デアリマセウケレドモ、俄ニ何等カノ書附ヲ出シ、質問モナケレバ、答辯モ
ナイ中ニ、決シテシマッタ、安川繁成君等ノ正義派ハ相變ラズ例ノ通早朝
ヨリ出マシテ執務ヲシツヽアル會議ノ起ッタコトナドハ知ラナイサル折
ニ俄ニ決議シタソレカラ書記官公ノ某トカ申ス者ヲ以テ最早退官ノ處分
ヲ申立テルカラ云々ト云フヤウナコトヲ本人達ニ通ジタ、大ニ驚キマシテ其
九十一號ノ法律ト雖モ敢テ其當人ヲ退席サセテ議決セネバナラヌト云フ明文
ハナイ其理由ヲバ御示下サイト云フ所ガ、ソレハ祕密會ダカラ示サレズシ
テ、又一旦渡サレタ書面ヲモ祕密ノ故ヲ以テ殘ラズ取上ゲテシマッテ何ヲ
書イタカ分ラヌト云フヤウナ有樣、ソレナラ愈と祕密ニスルカト云フト是
ハ東京通信等ノ原稿ニ渡シテ遣ル且ツソレ身體健全如何ニモ職務ニ勤勉シ
ツヽアッテ此法律ヲ擁護シタイト云フ正義者ヲ、イヤ狂人ダ、精神衰弱デ
職務ヲ執ルニ足ラヌト云フヤウナ詐リヲ拵ヘテ、之ヲ上奏シタノデアリマス
ソンナモノヲ以テ九十一號ノ議決ダカラ口ガ這入ラヌト云フヤウナコトヲ云
フ無責任ナル大臣ノ心ハ分ラナイヂヤアリマセヌカ、リレデ是ハ立憲ノ目的
ニ反シタル次第デアリマスカラ二項ニ於テハ之ヲ質問シタノデアリマス
三項ハ卽チ大臣ノ責任ヲ愈、明ニスルタメニ憲法ノ成文ヲ引キ來ッテ一條
ヲ添ヘラレタノデゴザイマス唯己ガ責ヲ免ルヽノミナラズ、煩累ヲ大權ニ
及シ奉ッタ言分ト看做サルヽノデゴザイマス是ハ殊更ニ添ヘナケレバナラ
ヌ道理ト信ジテ、斯ノ如クニ致シマシタノデ先ヅ質問ハ以上ノ三項デゴ
ザイマス以上三項ノ質問ハ盡ク憲法及ビ法律ノ支柱タル大臣ノ責任論デゴ
ザイマシテ、最重最大ナルコトハ固ヨリ申スマデモナク、其決スル所其及
ス所ハ、實ニ我國家民人ニ幸不幸ヲ與フル一大岐路デゴザイマス、サレバ論議
中語言ガ或ハ過激ニ流レ、或ハ失禮ニ亙ルノ嫌ヒガアルカモ知レマセヌケレ
ドモ是ハ大臣ノタメニ論ズルノヂヤゴザイマセヌ、憲政ノタメニ論ズルノデ
ゴザイマスカラ、敢テ憚ラズトシマシテ、本員ヲシテ十分ニ思想ノ隱微ヘ埋伏
スル所ノ正直ナル一言ヲ發セシムレバ我國務大臣ニ一片ノ至誠アルヤナシ
ヤト云フ是レ疑問ニ屬シマスル惟ウテモ見ヨ國務大臣トシテ輔弼ノ臣
トシテ、斯樣ノ失態アルニ際シテ如何ナル進退ヲ爲シテアッタカ本員等ガ
見ル所デハ第一立憲ノ目的ト云フモノヲ頭腦ニ占メテアッタトハ思ハレナ
イデアリマス一體先ヅ會計檢査院ト云フモノハ何タルモノゾト云フコト
ヲ辨ヘテ居ラレタカ、如何ト云フ問題ガ出テ來マスル會計檢査院ハ卽チ國
家ノ會計國家ノ歲出入ヲ整理スル行政中ニ獨立シマシテ、卽チ其會計檢査院
ノ行政上ノ檢査ハ、我議會ノ立法上ノ檢査ヲ爲スノ準備ノ地デゴザイマシテ
實ハ臣民四千二百万ノ生計ニ關スル所ノ財政上ノ最モ緊要ナル一部デゴザイ
マセウ其最モ緊要ナル一部ガ法律ヲ無視シ、法律ヲ破リ、剩ヘ人ヲ傷ケ、己
ヲ欺キ、人ヲ欺キ、世ヲ欺キ、更ニ進ンデ畏キ邊ヲ欺キ奉ッテ、亂暴ヲ極ム
ルト云フニ當ッテ、彼等國務大臣ハ如何ナルコトヲ爲シツヽアッタカ、冷淡ニ
緩漫ニ看過シタノミデハアリマスマイ、其欺キ奉ル所ノ書面ヲ其儘受ケテ、ソ
レヲ奏請シテ御裁可ヲ仰イタデハアリマセヌカ、之ヲ緩漫ニ默過シタルノミ
ナラズ、卽チ暴橫院長渡邊昇ノ非行ヲ助成シタト云ハナケレバナラヌ、此時
ニ當ッテ國務大臣等ノ頭腦ハ如何ナル思想カト云フ推想ガ下リマス、卽チ立
憲ノ目的卽チ主權ノ使用ヲシテ、正當ナル軌道ニ由ラシメナケレバナラナイ
踰越サセテハナラナイ濫越ハ許サレヌト云フ思念ガアッタトハ思ハレマセ
ヌ、輔弼ノ重局ニ居テ、奬順贊襄ノ職ニ省ミ、匡救矯正ノ責ニ任ジテ職權ノ
存スル所心配セラレタトハ思ハレマセヌ、此思ハレナイモノ二ツヲ以テ、更ニ
推シテ一步ヲ進メテ言ハヾ國務大臣ハ憲法第五十五條ノ成文ヲ頭腦ニ占メ
ツヽアッタトハ思ハレマセヌ、又憲法發布ノ大詔ニ朕ガ在廷ノ大臣ハ朕ガ
タメ二し朕ガタメニト仰セラレテアリマス朕ガタメニ此憲法ヲ施行ス
ルノ責ニ任ズヘシト宣ハセラレタルコトモ、打忘レテアリハシナイカト察セ
ラレルノデゴザイマスソレサヘアルニ昨年三月安川繁成君ニ對スル質問書
ニ己ノ責ヲ抛棄シタノミナラズ、勿體ナクモ畏キアタリヲ檢査院ノ總長官ニ
マシマスヤウニ書立テヽアリマシテ、之ニ藉口シテ、己ノ責ヲ逃レ、煩累ヲ畏キ
アタリニ及シ奉ッタト云フニ於テハ、諸君之ヲ何トカ言ハン、本員ヲ以テ之ヲ
見マスレバ一片ノ至誠ハ姑ク措イテ、不忠不實ト斷言スルニ憚リマセヌサ
ハサリナガラ待テ暫シ、知ルヲ知ラズト僞リ、爲セルヲ爲サズト僞リ、我等ハ
心ニ疚シキコトハナイト僞ッテ、言行ニ途ニ馳セツヽ非ヲ遂ゲル如キハ常人
社會ノ上ニハ、トモスレバ免レザルコトデゴザイマスケレドモ、苟モ補弼ノ大
責任ヲ帶ビテ、其職重ク、其德高ク而モ四海ノ師範ト爲リ標準ト爲リ規矩ト
爲ル所ノ大臣其人ニシテ斯ノ如キ陋劣ナルコトハ萬アルベキノ理ハゴザイ
マセヌ畢竟スルニ本員等未熟ニシテ其答辯書ヲ解シ得ラレヌニ相違アルマ
イ、自ラ反シテ通讀對讀數百遍、深ク永ク久シク考フルコト玆ニ一年ニ垂ント
シマスルドウシテモ考ヘ得ラレマセヌ故ニ己ムコトヲ得ズ其信ズル所ヲ
信ジ、疑フ所ヲ疑ッテ、提出シタ此質問書デゴザイマスル、尙ホ終リニ念言ヲ附
シマシテ、局ヲ結ビマス、國務大臣ヨ、此論議ハ獨リ本員等ノミノ論議ヂヤナ
イ、實ニ天下有志ノ議論ナルゾヤ、此問題ハ第十四議會ノ問題ノミヂヤナイ、
天下後世ノ問題ナルゾヤ、能ク此質問書ノ要領ヲ捉ヘ、尙ホ且ツ此速記錄ノ
全交ニ照シテ明瞭判然答フル所アレ
〔「喝ツ」呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=29
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030・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ヨリ議事日程ノ第一ニ移ル譯デアリマスルガ、豫算
委員長栗原亮一君ヨリ委員會ノ報告ガアリマス
〔栗原亮一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=30
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031・栗原亮一
○栗原亮一君(十番) 明治三十二年度ノ追加豫算案ヲ報告致シマスルガ、是
ハ今日午前總會ニ於テ決定ヲ致シマシテ、通例ナラバ日程ニ上リマシテカラ
報告ヲ致シ尙ホ決議ヲ求ムル譯デアリマスルケレドモガ、ドウカ明日モ明
後日モ本會ガ体ニナリサウデアリマスカラ、今日之ヲ報告致シマシテ、又是バ
カリノタメニ明日特ニ會ヲ開カルヽノモ煩デアリマスルカラシテ、略式ヲ以
テ玆ニ報告ヲ致シマシテ、格別諸君ニ於テ御異議ガナケレバ、今日御決定ヲ願
ヒタイト思フノデアリマスル、大體ヲ茲ニ報〓致シマスルノデス、殊ニ此中ニ
ハ「ペスト」豫防ノ經費ガアリマシテ是サヘナケレバサウ急ニ決議ヲ求ム
ル譯デモナインデアリマスルガ、是ハ最モ急ヲ要スルモノデアリマシテ、又是
バカリヲ拔イテ議ニ付スル譯ニモ往カヌデアリマスルカラシテ、序ニ外ノモ
ノモ決議ヲ願ヒタイデアリマスル此第三號ノ方ハ三十二年度ノ追加豫算デ
アリマシテ、歲出歲入ノ總額ガ百二十一万二千三百五十一圓ト爲ッテ居リマ
ス此中デ主ナル經費ノ目ハ各地方ノ赤痢病流行ノタメニ府縣ノ傳染病豫防
費ニ不足ヲ〓ゲマシテ、此額ガ二十四万六千百七十圓デアリマスツレカラ
此府縣ノ警察費ノ連帶支辨デアリマスルガ段々各地方ニ於キマシテモ此
警察費用ガ增加致シマシテ從ッテ此連帶支辨ノ方モ金額ガ增加致シマシ
テ內十万四千七百三十三圓ト云フモノガ追加不足トシテ請求ニナッテ居ル
ノデアリマスソレカヲ遞信事業費ノ內デ切手類ノ製造費、竝ニ其賣下手數料
デアリマスルガ、是モ段々郵便事業ノ增加ニ伴ッテ不足ヲ〓ゲマシテ、其
金額ガ十五万九千五百二十六圓デアリマシテ遞信省ヨリノ請求ニナッテ居
リマスソレカラ明治三十二年ノ七月以後、此暴風雨竝ニ非常ノ雨ガゴザイ
マシテ、皇城外郭ノ地內各所石垣或ハ土手圦樋等ガ破損ヲ致シマシテ、其修
繕ノタメニ三万六千五百六十圓ノ經費トソレカラ此土手ノ修繕費ノ總額ガ
二万三千五百九十八圓デアリマシテ、是ハ三十三年度ニ亙ル繼續費ニナッテ
居リマス其三十二年度ニ要シマスル所ノ年割額是ガ一万四千六百二十四
圓ト爲ッテ居リマスソレカラ此皇城外廓ノ土手ノ修繕費ノ分ガ九千四百三
十九圓、是ガ內務省ノ所管トシテ要求ニナッテ居ルンデアリマス、ソレカラ三
十二年六月以後ニ暴風ガ屢〓アリマシテ、是ハ東京府外二府十七縣ニ跨ッテ居
ル水害デアリマシテ道路橋梁是等ノ修繕工事ノ施行監督上經費ガ要リマシ
テ是ガ二万二千四百六十五圓デアリマスソレカラ明治三十二年八月ノ强
雨同ク十月海嘯ノタメニ北海道ノ道路橋梁諸所ノ海岸等ノ破損ヲ致シテ其
復舊工事ニ要スル所ノ經費ガ五万四千六百一圓ト爲ッテ居リマス此「ペス
ト」豫防ニ就キマシテ、門司其外七港ニ臨時海港檢疫所ヲ設置スト云フコト
トソレカラ唐津其外四港ニ臨時海港檢疫所ヲ開設スル重ニ此「ペスト」ノ
血〓ヲ購入スル、其經費ガ併テ二十八万七千百九十八圓デアリマシテ、內務省
ノ要求ニナッテ居リマス、ソレカラ大藏省ノ要求ニ於キマシテ、稅關ノ構內デ
アリマスルガ貨物出入ノタメニ非常ノ雜踏ヲ極メテ、自然此汚物抔ガ生ジ易
イカラシテ、是モ矢張其「ペスト」豫防上ノ設備ヲ必要トスルカラ、其タメニ
三千百二十四圓ノ經費ガ大藏省ノ所管トシテ要求ニナッテ居リマス、ソレカ
ラ文部省ノ所管ニ於キマシテハ帝國大學ニ於キマシテ獨逸ノ「エンゲル」
ト云フ人ガ大變ニ統計ニ有名ナ人デアリマシテ、是ハ誠ニ世界稀有ノ材料等
モ多ク集メテ居ルカラ、此人ノ集メテ居ル統計ノ材料書類ト云フモノガ此
度賣物ニナリマシテ、誠ニ是ハ世界得難キ所ノ必要ナル統計ノ材料書類デア
リマスカラシテ、之ヲ買ヒタイト云フンデアリマス、其金額ガ六千八百八十四
圓デアリマス、ソレカラ肥料檢査員養成所ト云フモノヲ新ニ設ケナケレバナ
ラヌ、其經費ノ總額ガ六千四百圓デアリマス、是ハ三十三年度ニ亙ル繼續費ニ
ナッテ居リマス、其年割額ガ三十二年度ノ分ガ三千五百八十四圓デアリマス、
是ハ農商務省ヨリノ請求ニナッテ居リマス、總テ此財源ハ償金特別會計ヨリ
繰換ヘ支辨ヲスルト云フコトニナッテ居リマス、是ガ第三號ノ追加豫算ノ大
體ノ要領デアリマス、併テ特第一號ノ方モ報告ヲシテ置キマス、是ハ內務省ノ
臺灣總督府ノ分デアリマスルガ、此經常部ト臨時部ニ於キマシテ歲入ノ五十
七万三千百六圓五錢、是ハ臺灣ノ官業竝ニ官有財產ノ收入ガ五十五万九千百
四十一圓三十三錢六厘ト、ソレカラ前年度ノ繰入レ金ガ臨時部ニ於キマシテ
二万二千百六十四圓七十一錢四厘、之ヲ併セマシテ今申ス通五十七万三千百
六圓五錢ト爲ルノデアリマス、此歲入ヲ以テ歲出ニ應ズル計畫ニナツテ居リ
マシテ、其歲出ハ食鹽專賣所、ソレカラ製茶所樟腦專賣所其他臨時ノ事業費デ
アリマシテ、歲出ガ五十七万三千百六圓五錢、丁度歲入歳出金高ガ合ハサッ
テ居リマスルカラシテ、是ダケノ歲入ヲ以テ今申ス所ノ歲出ニ應ジタイト云
フ特別會計ノ分デアリマスルデス、ソレカラ文部省ノ所管ニ於キマシテ東京
帝國大學ノ歲出經常部ノ方ガ、是ハ醫科大學院ノ收入金ガ千九百九十五圓デ
アリマシテ、ソレカラ圖書機械費受入金ト云フモノガ六千八百八十四圓デ
アリマス合テ八千八百七十九圓ノ歲入デアリマシテ、歲出ノ方ハ此臨時部
ノ方ニ於テ圖書器械ノ買入竝ニ此東京醫科大學ニ於キマシテ、用水ト云フモ
ノガ甚ダ宣シクナイ、ソレデ此水道鐵管ヨリ給水ノ仕掛ケヲスルト云フコ
トデアリマシテ、是ガ千九百九十五圓デアリマシテ、併セテモ其歲出ノ分ガ
八千八百七十九圓、丁度歲入ト歲出ガ特別會計ニ於キマシテ、同一ノ金額ニ
ナッテ居リマスル先ヅ是等ガ主ナル事項デアリマシテ、豫算會ニ於キマシ
テハ、分科ニ於テ種々質問モ致シ愼重ニ審議ヲ遂ゲマシタ結果、格別是ト
申ス修正ヲ致スヤウナ箇所モナカッタンデアリマスルカラシテ、豫算委員會
ニ於キマシテハ全會一致ヲ以テ可決ヲ致シタンデアリマスルカラシテ、ド
ウカ格別ノコトガアリマセヌケレバ今日御決議ヲ願ヒタイデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=31
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032・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 唯今委員長カラ報告ニナリマシタ追加豫算ハ總
テ皆緊急ノ問題デゴザイマス又分科會モ總豫算會モ孰モ協賛ヲ與ヘタモノデ
ゴザイマスカラ、ドウカ此場合日程ヲ變更シテ直チニ可決アランコトヲ希望
致シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=32
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033・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 今豫算委員長ノ報告ニ依リマシテ議事日程ヲ變更シテ
明治三十二年度總豫算追加案及明治三十二年度特別會計追加豫算案ヲ議スル
ト云フ恆松隆慶君ノ動議ガアリマス、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=33
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034・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ議事日程ヲ變更スルコトニ決シマ
スサウスルト初ニ第三號明治三十二年度歲入歳出總豫算ノ追加案ヲ全部議
題ニ供シマス
(第三號)明治三十二年度總豫算追加
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=34
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035・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 全部御異議ガナケレバ原案ノ通決シマス、次ハ特第一
號明治三十二年度各特別會計歲入歲出豫算追加案全部ヲ議題ニ供シマス
(特第一號)明治三十二年度各特別會計歲入歳出豫算追加
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=35
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036・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 原案ノ通御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=36
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037・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ原案ノ通決シマス、是ヨリ議事日程
2第ニ移リマスルガ、是ハ政府ノ都合ニ依ッテ議事日程ヲ延シテ貰ヒタイ
ト云フコトデアリマス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=37
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038・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ第一ノ日程ハ延スコトニ致シマス、
議事日程第二、飮食物其他ノ物品取締ニ關スル法律案第一讀會ノ續委員長0
報告
第二飮〓物其ノ他ノ物品取締ニ關スル第一讀會ノ續(報告)ヘ委員長
法律案(政府提出)
〔岡田龍松君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=38
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039・岡田龍松
○岡田龍松君(百六十四番) 飮食物其他ノ物品取締ニ關スル法律案ノ委員會
ノ結果ヲ御報告致シマス、本案ハ本月ノ十八日ニ委員會ヲ開キマシテ、政府
委員ノ臨席ヲ待ッテ、種々質問審議ノ末、本案ハ衞生上必要ノ案デゴザイマス
ルガ故ニ、委員會ハ全會一致ヲ以テ本案ヲ可決致シマシタ、ドウゾ諸君ノ御
贊成ヲ得テ、速ニ原案ノ通可決アランコトヲ希望致シマス、此段御報告致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=39
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040・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) ドウカ直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ希望致シ
マス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=40
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041・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ハ直ニ二讀會ヲ開クコトニ付イテ、御異議ハアリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=41
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042・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ナケレバ、直ニ二讀會ヲ開クコトニ致シマス、
全部ヲ議題ト致シマス、朗讀ヲ省略致シマス
飮〓物其ノ他ノ物品取締ニ關スル法律案(政府提出)第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=42
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043・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) ドウカ直ニ第二讀會デ確定ニナランコトヲ希望
ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=43
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044・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 第三讀會ヲ省略ニ御異議アリマヒヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=44
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045・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ三讀會ヲ省略スルコトニ致シマス
飮食物其ノ他ノ物品取締ニ關スル法律案(政府提出)確定議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=45
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046・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 原案ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=46
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047・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ナケレバ本案ハ原案ノ通決シマス-議事日程
ノ第三、府縣郡市町村其他ノ公共團體ノ所有地免租ニ關スル法律案第一讀會
ノ續委員長報告、中村榮助君
府縣郡市町村其他ノ公共團體ノ所
第二有地免租ニ關スル法律案(政府提第一讀會ノ續委員長
報告
〓m
〔中村榮助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=47
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048・中村榮助
○中村榮助君(三番) 諸君ニ本案特別委員會ノ經過ヲ御報道致シマス、本案
卽チ此府縣郡市町村ト是ニ準據シマスル所ノ公共團體ノ所有地ヲ公用ニ供シ
テ居ル者ニ、卽チ地租及公課ヲ免ズルト云フノデゴザイマスルガ、是ハ既ニ
今日マデ單行法ヲ以テ免ゼラレテ居ルノデゴザイマシテ、其種類ヲ舉ゲマス
レバ、水道用地ノ如キ、或ハ傳染病豫防ニ關スル所ノ避病院用地、或ハ砂防
工ト云フヤウナ類デアルデゴザイマス、デ此案ノ趣旨ハ將來此法律ヲ以テ履
行スル、是ハ取リモ直サズ單行法ヲ拵ヘズシテ、之ニ依ッテ免稅シテ往キタ
イト云フ趣旨デアル、斯ル單簡ナル趣旨明瞭ナル法律案デゴザイマスル故、
全會一致ヲ以テ本院ニ於テ可決スベキモノト決議致シマシタノデゴザイマ
ス、御報道致シマスコトハ、是ダケデゴザイマス此段御報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=48
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049・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 此案ハ極簡單デゴザイマスカラ、ドウカ讀會省
略デ確定アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=49
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050・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 恆松隆慶君ヨリ讀會省略ノ動議ガ出マシタガ、御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=50
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051・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ讀會ヲ省略スルコトニ致シマス
府縣郡市町村其ノ他ノ公共團體ノ所有地免租ニ關スル確議
法律案(政府提出)
〔「異議ナシ」ト呼者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=51
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052・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ハ今委員長ノ報告ノ通原案ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=52
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053・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ原案ノ通決シマス、次ハ議事日程第
四刑法中改正法律案第一讀會、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
第四刑法中改正法律案(安藤龜太郎外四名提出)第一讀會
刑法中左ノ通改正ス
第三百十一條本夫又ハ本婦其配偶者ノ姦通ヲ覺知シ姦所ニ於テ直チニ姦
夫又ハ姦婦ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス但本夫又ハ本婦姦通ヲ縱容シ
タル者ハ此限ニ在ラス
第三百五十三條有婦ノ夫又ハ有夫ノ婦姦通シタル者ハ六月以上一一年以下
ノ重禁錮ニ處ス其相姦シタル者亦同シ
此條ノ罪ハ本夫又ハ本婦ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス但本夫又ハ本婦姦通ヲ
縱容シタル者ハ告訴ノ效ナシ
〔安藤龜太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=53
-
054・安藤亀太郎
○安藤龜太郞君(二百八十一番) 諸君、本員等ハ刑法中改正法律案ヲ提出致
シマシテゴザイマスカラ聊提出ノ理由ヲ述べテ、諸君ノ御贊成ヲ得ヤウト云
フ考デゴザイマス、暫ク御〓聽アランコトヲ、天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ、人
ノ下ニ人ヲ造ラヌト云フ格言ハ、實ニ吾人ヲ欺カヌコトデ、凡ソ人類ガ生ヲ
此世ニ受ケマスルヤ、貧富ノ別ナク、又貴賤ヲ問ハズ、均シク皆自由平等ノ
權利ヲ付與セラルヽト云フコトハ當然ナコトデアッテ、未ダ男女ノ故ヲ以
テ少モ輕重ガアル道理ハナイノデゴザリマス、併ナガラ古代野蠻ノ時代ニ於
テ、未ダ人智ガ開ケズ、又天賦人權ノ何タルヲモ辨ゼザル時代ニ於キマシテ
ハ固ヨリ婦女ノ權利ヲ認メヌコトモアリマス、此ノ如キ場合ニ於キマシテ
ハ、實ニ危怪變態ナ現象ヲ往々生ズルコトガアリマスケレドモ今ヤ文運ハ
大ニ發達シ人智ハ開發シテ參リマシテ、卽チ私權ト公權トノ區別ハ劃然判然
致シマシテ居リマシテ、今ヤ二十世紀ニ入ラントスル今日ニ於テハ縱令婦
女ノ權利ト雖モ、仁人ハ之ヲ尊重シ、又天賦ノ幸福ヲ全ウセント云フヤウナ
域ニ殆ド至リマシテゴザリマス、是レ誠ニ宇內ノ大勢ニ徵シテ、決シテ巳ム
ベカラザル潮向兆候デアリマスノデアリマデ我國維新以來制度文物ノ模
規ハ、大〓之ヲ泰西ニ取リマシテ、而シテ未ダ刑法ヲ改正スル場合ニ於テハ
十分舊套ヲ脫却スルコトガ出來ズシテ、矢張古來ノ習慣ニ依ッテ、此刑法ヲ制
定シタト云フコトニ於キマシテハ吾ニガ甚ダ遺憾ト致ス所デゴザイマス、
デ卽チ現行法ノ第三百十一條ヲ見マスルト此ノ如クナッテ居リマス「本夫
其妻ノ姦通ヲ覺知シ姦所ニ於テ直チニ姦夫又ハ姦婦ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ
宥恕ス但シ本夫曩ニ姦通ヲ縱容シタル者ハ此限ニ在ラス」トアリマス、如何ニ
男子ハ立法ノ權利ガアル强者デアル、故ニ男子ハ非常ナ勢ヒ權力ノアル者デ
アルカラシテ、婦女子ノ孱弱イ者ハ、縱令其權利ヲ全ク脫却シテモ差支ナイト
云フヤウナ、實ニ此三百十一條ノ如キハ殘酷ナ本員ハ法律ト思フノデアリ
マス、如何トナレバ「其本夫ガ妻ノ姦通ヲ覺知シテ姦所ニ於テ直ニ殺傷シタ
ルモノハ其罪ヲ宥恕ス」而シテ之ニ反對シテ、若シ妻ガ其本夫ノ姦通ヲ覺知シ
テ姦所ニ於テ殺シタナラバ、是ハ何ニ問ハレルデゴザンセウ、卽チ謀殺罪
謀故殺罪ニ問ハレル、甚シキハ死刑ニ處スト云フヤウナ結果ニナルデアラウ
ト本員ハ考ヘマス、サレバ男女ノ權利ハ固ヨリ天賦同等デアルニモ拘ラズ、
此ノ如キ偏頗不公平ナ法律ト云フモノハ、實ニ吾ミハ之ヲ改正セヌケレバナ
ラヌト云フ必要ヲ認メタノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)而シテ又第
三百五十三條ノ第一項ニ依リマスルト「有夫ノ婦姦通シタル者ハ六月以上二
年以下ノ重禁錮ニ處ス其相姦スル者又同シト」アリマス、デ此ノ如キ規定モ甚
ダ本員ハ不當ト思フ、如何トナレバ有夫ノ婦卽チ人ノ夫人タル者ガ他ノ男子
ト姦通ヲシタ時分ニハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス、最モ重刑ニ處シ
テアルニモ拘ラズ若モ其夫タル者ガ他ノ女子ニ姦通シテモ、一向其罪ヲ問
ハヌト云フコトニナッテ居リマス、此ノ如キ規定ハ甚ダ不當ト言ハナケレバ
ナラヌ、夫レ此ノ如ク有夫ノ婦ニシテ他ノ男子ト姦通シタル者ハ刑法ハ之ヲ
嚴刑ニ問フモ、若シモ有妻ノ男子ガ他ノ女子ニ姦通シタトキニハ、之ヲ不問ニ
置クト云フコトハ、實ニ解スベカラザル本員ハ規定ト思フ、デ蓋シ我國ハ如何
ナル-斯ウ云フ法律ガ是マデ出テ來タカト考ヘマスルト、古來家族制度ノ
主義ガ大ニ行レテ、ソレガタメニ男子ハ一家ノ長デアル、其妻タル者ハ唯其一
家族ニ止ルノデアル故ニ男女ノ權利ハ非常ニ逕庭差異ガアル、決シテ同等
ノモノデハナイト云フコトヲ古來カラ認メタ結果デ、此ノ如キ法律ガ出來タ
ラウト本員ハ考ヘテ居リマスデ、成ル程妻ノ姦通ハ其夫ニ負フ所ノ所謂貞節
ノ義務ヲ破リ、又其夫ニ對シテハ拭フベカラザル汚辱ヲ與フルノミナラズ、
甚シキハ他ノ血統ヲ混シ、又ハ一家ノ秩序ヲ破リ、恐ルベキ弊害ガアルト云
フコトハ明ナコトデアリマスデ然レドモ女子ハ果シテ姦通ヲスル場合ニ
ハ、此ノ如キ惡結果ヲ來ス、然ルニ男子ハ他ノ婦女ト猥ニ通ジタ時分ニハ、
此ノ如キ弊害ハナキトテモ、少クモ非常ニ社會ノ風紀ヲ紊亂シ、社會ノ大
ニ秩序ヲ亂スト云フコトハ是亦明ナ事實デゴザイマスサレバ一方ニノ
ミ重クシテ、一方ニ一向其刑ヲ加ヘヌト云フコトハ果シテ是ガ公平ナル規
定デアルヤ否ヤ、吾ミハ實ニ此ノ如キ規定ハ法律ノ公平ナラザルモノト斷言
シテ憚ラヌ所デゴザイマス故ニ本員等ハ刑法ニ於テ此ノ如キ改正ヲ加ヘル
ト云フ考デゴザイマス、卽チ第三百十一條ハ「本夫又ハ本婦其配偶者ノ姦通
ヲ覺知シ姦所ニ於テ直ニ姦夫又ハ姦婦ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス但シ本
夫又ハ本婦姦通ヲ縱容シタル者ハ此限ニ在ラス」デ、第三百五十三條ハ「有婦
ノ夫又ハ有夫ノ婦姦通シタルモノハ六箇月以上一一年以下ノ重禁錮ニ處ス其相
姦シタル者亦同シ」此條ノ罪ハ「本夫又ハ本婦ノ告訴ヲ待ッテ其罪ヲ論ス但シ
本夫又ハ本婦姦通ヲ縱容シタル者ハ告訴ノ效ナシ」斯ノ如ク修正ヲ致サウト
云フ考デゴザイマス、而シテ其姦通ト云フコトハ如何ナルコトヲ申スカト申
シマスト、有妻ノ男子ガ他ノ有夫ノ女子及無夫、卽チ夫ナキ女子ニ通ジ、又有
夫ノ女子ガ他ノ有妻ノ男子及無妻ノ男子ニ通ズルノヲ卽チ姦通ト申ス所以デ
ゴサイマス、斯ノ如ク法律ヲ改正致シマストキニハ、卽チ一夫一婦ノ通義ニモ
適ヒ、又男女同權ノ權利ヲ認メテ、大ニ法律ノ公平ヲ得タルモノト考ヘマス、
聊ソレニ附イテノ理由ヲ又玆ニ述ベヤウト云フ考デゴザイマス、熟〓我國人
民ノ現狀ヲ見マスルノニ、一夫一婦ノ人倫ハ大ニ壞敗シテ、從ッテ其人ヲ害
シ家ヲ害シ、併テ其國ヲ害スルト云フ弊害ハ實ニ尠少デハナイノデアリ
マス、成ル程法律上及戶籍面ニ於テハ、一男ハ唯一女ヲ娶ルモノトシテアリ
マスケレドモソレハ實ニ唯表面ノコトニシテ、實際有妻ノ男子ニシテ不道
ノ交際ヲ爲スモノハ實ニ尠少デハナイノデアリマス、誠ニ斯ノ如キハ其人
ノ妻タル者ヲ辱メ、而シテ人倫ノ大本ヲ滅絕スルモノト云ハナケレバナラヌ
ノデアリマス蓋シ斯ノ如キモノハ表面ニ於テハ唯一夫數妻ヲ有スルト云
フ名目ノナイバカリニナッテ居ヲテ、其實際ニ至ッテハ未ダ一夫ニシテ數妻ヲ
有スルモノト大差ハナイデアリマス、本員等曾テ之ヲ聞キマスルノニ、卽チ
冠婚喪祭ト云フモノハ實ニ禮ノ大ナルモノデアル或ハ曰ク、君子ノ道ハ
端ヲ夫婦ニ爲スト云フコトモ申シテ居リマス、又禮ハ夫婦ヲ愼ムニ始マルト
云フコトヲ古人ハ申シテ居リマス、斯ノ如ク一夫一婦ハ實ニ人倫ノ大本ニシ
テ、其關係スル所ハ最モ宏大デアリマス、然ルニ一人ノ男子ニシテ二人以上
ノ妻ヲ聘セントスルハ殆ド其所爲ヲ目シテ、之ヲ人類ノ爲スベキ卽チ人倫
ニ適合シタモノト云フベキヤ否ヤ、甚ダ斯ノ如キハ人倫ノ道ニ背反シテ居ル
モノト云ハナケレバナラヌ、今一夫多妻ノ此社會ニ影響スル最モ著シイモノ
ヲ舉グレバ、左ノ如クデアリマス、固ヨリ此男女兩性ハ必ズ同一ノモノトハ申
サレマセヌ、成ル程男子ハ强クシテ女子ハ體力ニ於テ大ニ弱イト云フヤウナ、
或ハ智識ニ於テモ差違ガアルノデゴザイマセウガ、併シ免ニ角其數ニ於テ
ハ均一ト云フコトニナラヌケレバナラヌ、尤モ其國ノ狀態或ハ其時ノ形狀
ニ於テハ或ハ同一ニナラヌコトガゴザイマスカ知リマセヌガ、大體ハ先ヅ
同一ト見テ敢テ差支ナイト本員ハ思フ、サレバ我日本ノ總數ヲ假ニ四千万人
トシマス、其場合ニ一人ノ男子ニシテ二人以上ノ妻ヲ有スル者トシマシタナ
ラバドウ云フ結果ガ生ズルデゴザイマセウ、卽チ是ハ本員ガ申サヌデモ明
ナ話デゴザイマセウ、二千万人ノ女子ノ所ヘ一一人以上ヲ取ッタナラバ果
シテ後ヘ殘ル者ハ幾ラアルノデゴザイマセウ、然ラバ是ニ對シテ卽チ無妻ノ
者ガ澤山生ゼンケレバナラヌト云フ結果ニナルノデゴザイマセウ(「然リ然
リ」ト呼フ者アリ)決シテ斯ノ如キコトハ人類ノ相愛スル所ノ點ニ於テ大ニ
本員抔ハ患フベキ結果ト思フデアリマスデ、又夫婦ハ共ニ室家ヲ同ジウシテ
長ク偕老同穴ノ樂ヲ同ジウスルモノデアルノデアル、然ルニ今其夫タル者
ガ猥リニ他ノ女子ニ通ズル、其結果ハ妻ノ嫉妬ト爲リ、猜疑トナリ、延テハ其
兒孫ノ上ニ惡癖ヲ養成スルト云フヤウナ結果ニナルノモ實ニ患フベキノ至
リト本員ハ考ヘマス、偖其他此弊害ニ伴フ所ヲ申シマスト云フト、凡ソ此婦
人ト云フ者ハ、實ニ其子ヲ養ヒ一家ヲ經理スル上ニ於テ、必要ナル者デアル
最モナケレバナラヌモノデアル然ルニ其夫タル者ガ、亂行醜行ガアレバ、
妻ハ必ズ嫉妬ヲ起スノミナラズ、其子ノ〓育ヲ十分ニ致スト云フヤウナコト
モ大ニ〓ケル所ガアッテ、甚ダ一夫多妻ノ結果ハ恐ルベキモノト本員ハ考ヘ
ル偖又モウ一ツ弊害ヲ申シマスト云フト上ノ好ム所下實ニ之ニ從フト云
フコトハ、本員ガ申サヌデモ明ナコトデゴザイマセウ、卽チ今日現在ノ藝
娼妓ノ數抔ガ、ドノ位アルト申シマスト云フト凡ソ五十万人モ全國デアル
サウデゴザイマス假ニ此五十万人ノ藝娼妓ニ漂客ガ一日ニ一圓宛投ズルト
見テモ、一日ニ五十万圓ノ金額ヲ無駄ニ費消スルト云フヤウナコトニナル、
之ヲ詰リ一箇年ニ見マスルト云フト、隨分巨額ナ金ニナル、斯ノ如キハ實ニ
延テ一國ノ大ニ經濟ニ影響スルト本員ハ考ヘマス男子ト女子ト一旦夫婦ニ
ナッタ以上ニ於キマシテハ其愛情ハドウシテモ同一デナケレバナラヌ道
理デアル、夫アル女子ガ妻タル所ノ貞節ヲ破リ、他ノ男子ニ情ヲ通ズルコト
ヲ以テ不都合トシタナラバ妻アル男子ガ他ノ女子ニ猥ニ通ズレバ矢張ソ
レモ不都合ト云フコトハ本員ノ申スマデモゴザイマセヌノデアリマス、然
ルニ世人ハ往々斯ノ如キコトヲ云フ、本員等ノ說ヲ非難シテ申シマスルノニ
男子ノ不都合ナ所爲ヲ爲スハ獨リ我日本ノミナラズ、大ニ歐米各國ニ於テ
モ我日本ニ劣ラザル所ノ男子ガ、醜行ヲ爲ス者ガ、其實例ガ尠カラント云フ
コトヲ申シマス、斯ノ如キコトハ既ニ外國デ斯ノ如キ醜業ガアルカラシテ、日
本ニ於テモ亦之ヲ以テ差支ナイト云フコトハ本員ハ妄言モ甚シキデアルト
思フ外國ハ外國デス、日本ハ日本デゴザイマセウ、然ルニ外國ノ例ヲ以テ
斯ノ如キコトヲ申シマスルケレドモ、卽チ是ハ唯自分ノ-外國ノ或例ヲ引
イテ自分ノ風ヲ掩ハントスル說ニ過ギナイト本員ハ思フ、如何トナレバ
本員ガ申サズトモ、諸君ハ御承知デゴザイマセウ卽チ一夫多妻抔ト云フコ
トハ非常ニ外國デハ刺戟ヲ加ヘ攻擊ヲ加ヘ、殆ド社會ニ容レラレント云
フ打擊ヲ與ヘルデゴザイマセウ、日本ニ於テハ果シテ社會ノ制裁ガ歐米各國
ダケノ力ガアリマスカ、實ニ吾ミハ此〓ニ於テ歐米各國ニ對シテ遜色ナキ能
ハズト本員抔ハ考ヘマス、斯ノ如ク論ジマスレバ實ニ此一夫多妻ノ如キ醜
行ハ明治ノ新天地ニ於テ一日モ存スベカラザルコトヽ深ク本員ハ信ジマシ
テ、此改正案ヲ提出致シタ所以デゴザイマス、何卒滿場ノ諸君、此案ヲ委員
ニ付託セラレテ、十分深思熟議、以テ大ニ斯ノ如キ弊害ヲ消除シテ、大ニ一
國ノ美風ヲ養成セラレンコトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=54
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055・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) ドウカ此案ハ委員付託ニナッテ、十分ニ調査スル
ヤウニ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=55
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056・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 恆松隆慶君ヨリ委員付託ノ動議ガ出マシタガ、是ニ御
異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=56
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057・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ、九名ノ特別委員ヲ議長ガ指名スル
コトニ致シテ、御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=57
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058・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 異議ガナケレバ其通致シマス、次ハ議事日程ノ第五、酒
造稅法中改正法律案第一讀會議案ノ朗讀ヲ省略致シマス、大塚常次郞君
第五酒造稅法中改正法律案(大塚常次郞外五名第一讀會
提出)
酒造稅法中改正法律案
酒造稅法中左ノ通改正ス
第四條第一項第二號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
第三種再製酒一石金十三圓
此ノ法律ニ於テ再製酒ト稱スルハ左ニ揭クルモノヲ謂フ
一酒精ト酒類ニ非サル物品トヲ混和シテ酒類トナシタルモノ
二酒精ト酒類トヲ混和シ又ハ酒精ト酒類及其ノ他ノ物品トヲ混和シテ
酒類トナシタルモノ
三一種ノ酒類ト酒類若ハ酒精ニ非サル物品トヲ混和シテ別種ノ酒類ト
ナシタルモノ
四二種以上ノ酒類ヲ混和シ又ハ二種以上ノ酒類ト酒精若ハ酒類ニ非サ
ル物品トヲ混和シテ酒類トナシタルモノ
同條第二項ヲ左ノ如ク改ム
攝氏驗溫器十五度ノトキニ於テ原容量百分中酒精ノ容量第一種ニ在テ二
十第二種ニ在テハ燒酎ハ六十五酒精ハ九十ヲ超過スルトキハ百分ノ一ヲ
增ス每ニ前項ノ金額ニ一圓ヲ加フ第三種ニ在テハ其ノ原料用酒ハ六十五
ヲ超過スルコトヲ得ス
第四十條酒類ヲ製造スル者ハ府縣若ハ稅務署管內ヲ一區域トシテ酒造組
合ヲ設クヘシ但シ土地ノ狀況ニ依リ本條ノ區域ニ據リ難キトキハ數稅務
署管內ヲ併セテ一區域トナスコトヲ得
組合ヲ設ケス又ハ組合ニ加入セスシテ酒類ヲ製造スルモノハ二圓以上二
十圓以下ノ科料ニ處ス
組合ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
此ノ法律ハ明治三十三年四月一日ヨリ施行シ同日以後製造ニ係ル酒類ニハ
其ノ製造著手ノ時期ニ拘ラス此ノ法律ヲ適用ス
明治三十一年法律第二十五號混成酒稅法ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ之ヲ廢止
ス
〔大塚常次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=58
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059・大塚常次郎
○大塚常次郞君(二百五十一番) 私ハ本案提出ノ理由ヲ簡短ニ申述ベヤウト
思ヒマス現行ノ酒造稅法ハ私ガ申スマデモナク、第十三議會ニ於キマシテ
增稅ノ結果ニ基イテ改正セラレタモノデゴザイマス、爾來此法律ヲ施行セラ
ルヽニ方ッテ、實際不適當ナ〓ガアリマス、又國庫ノ收入ニ於キマシテモ不
利益ト認メマシタガ故ニ諸君ノ御贊成ヲ得テ、其不備ノ〓ヲ改正シタイト
云フノデアリマス、今提出者タル所ノ吾〓同志ノ改正セントスル趣意ハ第
一ガ混成酒稅法ヲ廢シテ、酒造稅法中ニ組入レタイト云フコト、第二酒精度
數ノ改正ヲシタイ、第三ガ酒造組合ノ實行ノコト、以上三箇條デゴザイマス、
第一此混成酒ノ製造ト云フモノハ極テ單純デゴザイマシテ、僅カノ原料サ
ヘアレバ咄嗟ニ之ヲ製造シテ、咄嗟ニ賣捌ノ出來ルモノデアリマス、故ニ從ッ
テ脫稅ヲ圖ルコトモ容易ナノデアリマス、殊ニ混成酒ノ製造者ハ、酒造營
業者ト違ッテ保證物ヲ出サナイ、ソレ故ニ此營業者ハ其人ニ依リマシテハ
納期前ニ其品物ヲ賣拂ッテ殊更ニ怠納處分ヲ受ケル者ガアル其結果ハ單
リ國庫ノ損失ノミナラズ、誠實ナル所ノ營業者ニ向ヒマシテ、非常ナル妨
害ヲ與ヘルノデアリマス故ニ本員等ハ矢張此混成酒ノ製造者ト雖モ、酒
造稅法ノ保證物ヲ納メルヲ以テ正當ナリト認メル、第二酒精ノ度數ノ改正デ
アリマスガ、現行法ニ依リマスレバ、我國ニ於テ製造スル蒸溜酒ハ總テ原
容量百分中酒精ヲ五十ト定限シテ居ル、ソレ故ニ五十以上ハ一度ヲ增ス每ニ
一圓宛ノ稅金ヲ課セラルヽノデアリマス、然ルニ外國ヨリ輸入スル蒸溜酒
ハ原容量百分中酒精六十五ヲ以テ定量トシテアル、內外品ハ其度數ニ於テ十
五稅金ニ於テ十五圓ノ差ガアルノデアリマス、所謂內國品ヲ排斥シテ外國品
ヲ保護スルト云フ結果ニナルノデアリマス、ソレ故ニ本員等ハ內外品ノ權衡
ヲ得ルタメニ、內國製ノ酒精ノ度數モ矢張六十五ヲ以テ適當ナリトスルノデ
アリマス、既ニ此酒精ノ度數ヲ改正スル以上ニハ-此蒸溜酒ノ方ヲ改正ス
ル以上ニハ、日本ニ於テ製造スル所ノ酒精ノ度數モ矢張九十ト改正スルノガ、
前後相關聯シテ相當ナリト認メルノデアリマス、第三酒造組合實行ノコト、
酒造營業者ガ組合ヲ設ケルコトハ昨年卽チ第十三議會ノトキニ決議ニナツ
タ、然ルニ組合ノ區域甚ダ是ハ實地ニ出來ナイ場合ガアル、現行法ニ依レバ
「府縣若ハ稅務所管內ヲ一區域トシ云々」一府縣ニ於テ差支ノアル場合-一
稅務署管內ノ一區域ト致シマスレバ、從來慣行ノアル組合モ二稅務署以上ニ
ナリマシタトキハ此法律ニ依ルト勢分離シナケレバナラヌコトニナル
稅務署ノミノ營業者ヲ以テ組織セントスルガ、少數ニシテ差支ノアル地方モ
アラウ、要スルニ本案ノ四十條ニ但書ヲ加ヘテ、此不備ノ點ヲ補ヒタイ、卽
チ「但シ土地ノ狀況ニ依リ本條ノ區域ニ據リ難キトキハ數稅務署管內ヲ併セ
テ一區域トナスコトヲ得」斯ウ改正ヲシテ、此〓〓ヲ補ハウト云フ考デゴザ
イマス、而シテ最モ本條ノ缺〓ト云ヒマスルノハ「組合ヲ設クヘシ」ト規定シ
アリナガラ此違犯者ノ制裁ガナイノデアリマス、ソレ故ニ此營業者ノ中デ不
正ノアル者ハ加入スルコトヲ拒絕スルノデアリマス是ハ吾ミガ目擊シテ居
ル、此場合ニハ如何トモ仕方ガナイ、又制裁ガナイカラ、組合ニ加入シナイ
モノヲドウシテモ加入シロト無理ニ壓附ケルコトガ出來ナイ、ソレ故ニ之ニ
尙ホ加ヘルノデアリマス「組合ヲ設ケス又ハ組合ニ加入セスシテ酒類ヲ製造
スルモノハ二圓以上二十圓以下ノ科料ニ處ス」ト云フコトヲ加ヘタイノデ、此
箇條ハ此酒造稅法中ニアリマス、末條ニ對照致シマシテ、彼此參酌ヲ加ヘ
テ致シタノデゴザイマス、本案ハ種々複雜致シマシテ、到底本員ガ此場ニ於
テ十分ナ說明ハ難イノデアリマスルカラ、宜シク調査委員ヲ設ケラレテ、完
全ナル御調査ノアランコトヲ希望致シマス、聊本案提出ノ趣意ヲ·
〔政府委員大藏省主稅局長目賀田種太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=59
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060・目賀田種太郎
○政府委員(目賀田種太郞君) 現今ノ酒造稅法ハ御承知ノ通增稅ノ外一般
ニ稅法ノ整理ヲ圖ッテアリマス今提出ノ御案ニ依リマスルト、大分仕組ニ
於テ變ッテ參ル譯デ、無論此案ノ或ル〓ニ於テハ同意ヲ致シテ宜イコトモア
リマスルケレドモ、大體ノ主義ト仕組ニ於テハ甚ダ是ハ差友ヘル案デアル、
故ニ此〓ニ就イテハ斷ジテ政府ハ不同意ヲ述べテ置キマス、先ヅ混成酒稅法
ト云フモノハ、立案者ノ御趣意ニ依ルト云フト唯ダ〓酒ノ保護ノタメノ法律
ノ如クナッテ居リマスルガ、サウデハナイ、混成酒稅法ハ他ノ混成酒モ這
入ッテ居ル、〓酒ノミデハナイ、他ノモノモ這入ッテ居ル、葡萄酒ノヤウナ
モノモ這入ッテ居ル現今ニ於テモ、將來ニ於テモ、是ハ西洋風ノ酒ヲ包含
シテ居ルサウ云フ風ニ既ニ此混成酒稅法ノ支配スル種類ニ於テ違ッテ居リ
マスルカラ是ハ別法ニナッテ居ル譯デアリマス、但其中保證物ノ如キハ
是ハ又或ハ法律ノ御設定ノ模樣ニ依リマシテ、至極然ルベキコトデモアラウ
ト思ヒマスケレドモ其他ノコトハ之ヲ同一ノ法律ノ中ニ入レルト云フコト
ハ餘程困難ヲ來ス譯デ、ソレノミナラズ執行上ニ於テモ大ニ不取締ヲ來ス
譯デアリマス、故ニ贊成致シマセヌ,ソレカラ又今ノ時ニナリマシテハ凡
ソ內國ノ稅法ハ關稅法ト權衡ヲ保ッテ行カネバナラナイ、現行法ハ卽チ海關
稅法ト權衡ヲ保ッテ居ル、海關課稅ニ於ケル酒精ノ稅率モソレカラ内國稅
法ニ於ケル酒精ノ稅率モ、其負擔ニ於テハ殆ド相均シクナッテ居ル、唯今立
案者ハ均シカラズト、仰シヤイマスガ、ソレハ御誤デアル、全ク錯誤デアル、
(大塚常次郞君「ノウ」ト呼フ)錯誤デス、ト云フノハ提出者ハ酒類ヲ以テ直チ
ニ御比較ニナル、ソレハ海關稅法ノ十五類ニアルモノヲ以テ御比較ニナル、
其物ガ違ッテ居ル、酒精ナルモノハ海關稅法ニ於テ十五類デハナイノデアル、
サウ云フ間違ノ比較ハ困ルデス、サウ云フヤウナ譯デアリマシテ、斯ノ如ク
スルト云フト、酒精ノ濫造ヲ促シテ、却ッテ御目的ニ反スルニ至ルダラウト
思フ、又此組合抔ノコトニ就キマシテハ是ハ又這ミ御協議ヲ致シマシタナ
ラバ、御話ノ纏マルコトヽ思ヒマス、サリナガラ大體ニ於テハ唯今述ブルヤ
ウナ譯デアリマスルカラ、本案ニハ甚ダ同意ヲ致シ兼ネマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=60
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061・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 本案ハ政府デ反對ノ意見モゴザイマシタガ、併
ナガラ或部分ニハ同意シテモ宜イト云フヤウナコトデ、兔ニ角是ハ卽決スル
譯ニモ行キマスマイカラ、委員ニ付託シテ十分調査セシムルガ宜シカラウト
思ヒマスドウカ九名ノ委員ヲ議長ガ指名セラレテ··
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=61
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062・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 九名ノ委員ヲ議長ガ指名シテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=62
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063・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、議事日程ノ第六、裁
判所設立及管轄區域變更ニ關スル法律案第一讀會議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
第六裁判所設立及管轄區域變更ニ關スル法律案第一讀會
(西原〓東君外三名提出)
裁判所設立及管轄區域變更ニ關スル法律案
第一條札幌地方裁判所管內石狩國上川郡旭川村ニ旭川區裁判所ヲ置キ同
地方裁判所管內膽振國室蘭郡本町ニ室蘭區裁判所ヲ置ク
第二條根室地方裁判所管內北見國網走郡北見町ニ網走區裁判所ヲ置キ同
地方裁判所管內十勝國河西郡下帶廣村ニ帶廣區裁判所ヲ置ク
第三條新置區裁判所ノ開廳期日ハ司法大臣之ヲ定ム但シ新置區裁判所ノ
管轄ニ屬スヘキ事件ハ其ノ開廳迄舊管轄區裁判所ヲシテ之ヲ取扱ハシム
第四條裁判所位置及管轄區域表中札幌、根室兩地方裁判所管內ニ於ケル
區裁判所管轄中左表ノ通改定ス
控訴院地方裁區裁判管
判所所國郡區町
札幌區札幌郡濱益郡厚田郡石狩郡
夕張郡
樺戶郡ノ内
石狩月形村
札幌空知郡ノ内
市來知村幌內村沼貝村幌向村幾春別村
岩見澤村栗澤村
膽振千歳郡
上川郡兩龍郡
空知郡ノ内
札幌石狩瀧川村奈江村歌志內村富良野村
旭川樺戶郡ノ内
新十津川村
天鹽上川郡中川郡
函館增毛天鹽增毛郡留萠郡苦前郡天鹽郡
室蘭郡有珠郡幌別郡白老郡勇別郡
室蘭膽振虻田郡ノ内
虻田村辨邊村禮文村眞狩村
後志岩內郡古宇郡
岩內虻田郡ノ内
膽振倶知安村
根室根室郡花咲郡野付郡標津郡目梨郡
根室國後郡得撫郡新知郡占守郡色丹郡
千島紗那郡藥取郡振別郡擇提郡
根室綱走北見綱走郡斜里郡常呂郡紋別郡
釧路釧路釧路郡白糠郡川上郡阿寒郡足寄郡
廣尾郡當緣郡十勝郡中川郡河西郡
帶廣十勝河東郡上川郡
〔西原〓東君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=63
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064・西原清東
○西原〓東君(二百五十二番) 諸君、北海道ニ四箇ノ區裁判所ヲ增設シ、從ク
テ其裁判管轄區域ヲ變更シヤウト云フノ法律案デアリマス、誠ニ小サイ問題
デアリマス經常費ノ金額ニ致シマシテ、一万六千圓シカ要ラナイ問題デゴ
ザイマス、所ガ人民ノ私權ヲ保護スル機關ト致シマシテ、區裁判所程緊要ナ
モノガゴザイマセヌ、日本ニ於テ-イヤ、府縣ニ於テ三百餘ノ區裁判所ガ
アリマシテ、小縣ニテハ五六箇所、大縣ニテハ十二三箇所宛ノ區裁判所ヲ設
立シテアリマスガ、北海道ノ大ヲ以テシテ僅ニ十二箇所ノ裁判所シカ設立セ
ラレテナイノデゴザイマス、諸君、北海道ノ土地ノ廣サハ、四國ト九州トヲ
合セマシタ其二倍アリマシテ、七千方里ノ廣サヲ有ッテ居リマス、私ガ區裁
判所ヲ設ケタイト云フ場所ハ、膽振國ノ室蘭、石狩國ノ旭川、十勝國ノ帶廣、
北見國ノ網走、此四箇所デアリマス、室蘭ハ御承知ノ通北海道第一ノ港ノ
アル場所デゴザイマシテ、膽振國ノ一番盛大ナル都會デアル、而シテ七郡ア
リマスル中デ、千歳郡ト云フ札幌ニ近イ所ノ郡ヲ舊來ノ通札幌區裁判所ノ管
轄ニ殘シテ置イテ、南方ノ六郡ハ悉ク室蘭區裁判所ノ管轄ニ歸セシメヤウト
云フノ意見デアリマス、而シテ石狩國ノ旭川ト申シマスルハ、御承知ノ通七
師團ヲ設置シ、將來ハ離宮ヲモ設ケラレントシテ、豫定セラレテ居ル北海道
ノ四通八達ノ場所デゴザイマシテ、將來ハ道廳モ彼地ニ移サウト云フ意
見ヲ有シテ居ル人モ多々アルト承ル程ノ樞要ナ場所デアル、札幌ヲ距ルコ
ト三十里餘ノ遠方ニ在リマス、其大ナル旭川郡ト云フ一郡ノミヲ管轄シヤウ
ト云フノ意見デアリマス、而シテ十勝國ハ從來ハ釧路國ノ釧路ニ在ル區裁判
所ノ管轄ニ屬シテ居リマスルガ、其釧路ト十勝ノ帶廣ノ里程ハ三十三里カア
リマシテ、而シテ交通ハ極テ困難デアリマス、又此十勝ノ廣サハドレ程アル
カト云ヘバ、殆ド畿內五箇國ノ大サヨリモ、マダ大キクアリマス、故ニ此十
勝ノ帶廣ニ區裁判所ヲ設ケタト致シマシタ所ガ、其各郡ヨリ帶廣ニ參リマ
スニ二十里三十里ノ遠キ場所ヨリ來ネバナラヌト云フ譯ニナッテ居ル、遠キ場
所ヨリ來ネバナラヌト云フ譯ニナッテ、ソレハ十勝全國カラ釧路ヘマデ訴ニ、
僅カノ區裁判所事件デ參ラナケレバナラヌト云フコトハ、事實出來ナイコト
デアリマス、次ニ北見ノ網走ト申シマスルノハ從來ガ根室ノ區裁判所ノ管
轄ニ屬シテ居リマス、諸君、北見ノ網走ヨリ根室マデハ七十里ノ里程ガアリ
マス、而モ十一月ヨリ翌年ノ四月ノ中頃ニ至リマスルマデ、海陸共ニ交通遮
斷ヲセラレマス、斯樣ナル不便ナ處デアリマスルニ依ッテ、法律ノ文面上デハ
管轄ニ屬シテ居ルガ、然レドモ事實ニ於テハ百圓以內ノ金額デ訴ニ出テ往ク
ト云フ、其費用ハ却テ二百圓モ要ラウカト云フ事實デアリマス、此區裁判所
ガ、先ヅ有レドモ無キガ如シト云フ事實デアルト思フ、サウスルトドウ云フコ
トデアルカト云フト、私權ノ保護ガ出來ナイ、信用貸借ガ出來ナイカラ金錢ノ
融通モ利カナイト云フ事實デアル、今日ノ北海道ノ進步ノ程度ニ於テ、卽チ徵
兵令モ布イテ居ル、所得稅法モ布イテ居ル、殆ド內地ト大差ノナイ責務ヲ負ハ
シテ置イテ、保護ノ行屆カザルコト此ノ如シト云フコトハ誠ニ遺憾デハゴザ
イマセヌカ、恐ラクハ諸君ノ中ニハ、十勝ニモ、北見ニモ、上川ニモ、室蘭ニモ、
區裁判所ガナカッタト御聽キナスッタナラバ驚カルヽ程ノコトデアラウカト
思フ、其金額僅ニ-四ツノ區裁判所ヲ合セマシテ僅ニ一万六千圓デアリマ
ス、併ナガラ廳會ヲ建築スルト云フヤウナ費用、或ハ必要ナル物品ヲ備附ケ
ンナラヌト云フヤウナ費用ヲ合シマシテ、十万圓餘リノ臨時費ガ要リマス經
常費ハ一万六千圓、ドウカ諸君ノ御贊成ヲ願ヒマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=64
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065・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 此改正案ハ頗ル實地ニ適當ノ案デゴザイマスル
ガ、直ニ此處デ卽決ト云フ譯ニハ往キマスマイカラ、免ニ角委員ニ託シテ、
是ハ審査サセタイト思ヒマス、此委員ハ九名、議長ノ指名ヲ希望致シマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
(政府委員司法次官波多野敬直君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=65
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066・波多野敬直
○政府委員(波多野敬直君) 區裁判所增設ノ必要ナルコトハ、政府モ提出者
ト同感デゴザイマス、實ハ北海道ニ五箇所、內地ニ二箇所、最モ急施ヲ要スル
場所ヲ選ビマシテ本期ノ議會ニ提出スル積デゴザイマシタガ、財政ノ都合ニ
依リマシテ今日マデ此提出ヲ見合シテ居リマシタ、デ本案ハ北海道ノ四箇所
ニ區裁判所ヲ設置スルト云フ案デゴザイマシテ、其場所モ最モ適當ノ場所デ
ゴザイマスカラ、政府ハ喜ンデ贊成ヲ致シマス、併シ經費ノ都合ニ依リマシ
テ、三十三年度中ニハ四箇所トモ一時ニ開廳ヲスル運ビニハ至リ兼ネマスル
カモ分リマセヌカラ、此事ハ今ヨリ御斷ヲ申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=66
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067・星松三郎
○星松三郞君(二百八十三番) 政府ガ同意デアルト云フナラバ、卽決ノ方ガ
却テ穩當デアラウト思フ、卽決ヲ希望致シマス
〔「委員付託」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=67
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068・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 委員付託說ガ出テ居リマスカラ、何ニセヨ採決致シマ
ス、委員付託ニ同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=68
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069・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス、本案ハ特別委員九名ヲ議長ガ指名致
シマシテ、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=69
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070・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、次ハ議事日程ノ第七、
田地價特別修正法律案第一讀會、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
第七田地價特別修正法律案(西村淳藏君外四名第一讀會
提出)
田地價特別修正法律案
第一條兵庫縣有馬郡高平村田地價ヲ十一萬六千百三十圓八十九錢トシ福
岡縣八女郡星野村田地價ヲ三萬五千百二圓七十錢ト修正ス
第二條每筆ノ修正地價ハ明治三十三年三月一日ノ土地臺帳面地價ニ應シ
接分シテ之ヲ定ム
第三條本法ニ依リ地價ヲ修正シタル土地ノ地種ハ明治三十三年分ヨリ修
正地價ニ依リテ之ヲ徵收ス
〔西村淳藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=70
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071・西村淳藏
○西村淳藏君(二百七十八番) 諸君、皆樣御疲レデゴザイマスカラ、簡短中
ノ最モ簡短ニ一言致シマシテ、提出ノ理由ヲ述べ、而シテ諸君ノ御贊成ヲ仰
ギタイノデアル本案ハ兵庫縣有馬郡高平村ノ內田價ダケ-畑ハ含ンデ居
リマセヌ、田地價十二万五千四百六圓二十九錢ヲ十一万六千百三十圓八十九
錢トシ、福岡縣ノ內八女郡星野村ノ地價、是モ田デゴザイマス、十一万六千
百三十圓八十九錢トアリマスノヲ三万五千百二圓七十錢······是ハチヨット數
字ガ間違ヒマシテ何デアリマスガ、斯ウ修正致シタイト云フノデアリマス、
全體明治三十一年ノ法律第三十一號ヲ以チマシテ、地價修正ヲ致シタル所ノ
要素ハ收穫ノ見積石代竝ニ利率等ヲ斟酌致シマシテ、又各郡一定ノ率ニ
依ッテ之ヲ行ッタノデアル、而シテ此低減致シタルモノデゴザイマスルガ故
ニ、地租改正ノ當時ニ屬シテ居ツタ所ノ郡ノ率ニ依ラネバナラヌト云フコト
ハ無論デアルノデアル、然ルニ右述ベマシタ所ノ二箇村ハ、卽チ其他價修正
ノ當時ニ屬シテ居ル所ノ郡ノ率ニ依ッテ修正セラレタト云フ結果ニナッテ居
ルノデゴザイマス、此高平村ハ明治二十九年ノ四月、川邊郡ト云フ郡ヨリ有馬
郡ニ編入サレタ、又福岡縣ノ星野村ハ明治一一十九年七月ノ七日ニ浮羽郡ヨリ
八女郡ニ編入セラレタ、然ルニ右ノ法律ノ第三十一號ノ支配ニ依ッテ修正セ
ラレタル所ノ地價ト云フモノハ地價修正ノ當時ニ屬シテ居ッタル、現ニ屬
シテ居ッタル郡ニ依ッテ致シタルモノデアル甚シキ不公平ヲ來シテ居ルノ
デアル、ソレデ今一例ヲ舉ゲテ申シマスレバ、此高平村ノ如キハ非常ナル其
不公平ガ來テ居ルノデゴザイマス、デ川邊郡ハ地價ニ對シテ一割八分五厘ノ
減デアル、卽チ舊地價百圓ガ八十一圓五十錢ト爲ッテ居ルノデアル然ル
ニ有馬郡ノ方ハ一割二分デゴザイマシテ、舊地價百圓ニ對シテハ八十八圓ト
爲ッテ居ル、是ダケノ差ガ出來テ居ル、之ニ依ッテ算盤ヲ立テテ見マスルト、
高平村ハ年々歲々而モ永久ニ三百有餘圓ノ、所以ナキ稅金ヲ納メナケレバナ
ラヌト云フコトニナル、又福岡縣ノ星野村ニ於キマシテモ粗〓同樣ナルコトデ
アル、デ要スルニ地價修正ノ當時ニ餘リ注意ノ十分ナラザリシ所ノ結果デア
ル、デ本員ハ是等ノコトハ取締ノ上、實際ノ上ニ於テモ決シテ座視スベキモノ
デナイト考ヘルガ故ニ、此案ヲ提出シテ、卽チ特別ニ其田價ダケニ對スル所ノ
修正ヲシタイト云フノデゴザイマス、卽チ高平村ハ元ト屬シテ居ツタ所ノ
川邊郡、又星野村ノ方ハ浮羽郡ノ率ニ據ル、卽チ地租改正ノ當時ニ屬シテ
居ッタ所ノ郡ノ率ニ據ヲテ爲シタイト云フノデス、御分リニナッタラ宜シク御
協賛ヲ仰ギタイ
〔政府委員大藏省主稅局長目賀田種太郞君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=71
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072・目賀田種太郎
○政府委員(目賀田種太郞君) 三十一年ノ特別地價修正法ノ大體ニ於キマシ
テハ獨リ地租改正ノトキノ成績ニ依ッタ譯デナイノデ、其後ニ地價修正ヲ
斟酌シテ更ニ修正ニナッタ譯デアル、ソレ故ニ此案ノ場所ノ如キモ、或ル
所ニ於テハ既ニ二十二年ヨリ地價ノ修正ヲ受ケテ居ル、ソレデアルカラ過般
御協賛ヲ得テ法律ト爲ツテ居ルモノハ地租改正以來ノ成績ニ附イテ修正セ
ラレテ居ル、而モ右ノ如キハ郡ノ區域ニ依ッテ出來テ居ル、然ルニ此處ヘ持ノ
テ參ッテ、更ニ村マデ立入ルト云フコトニナルト云フト、大體ノ仕組ニ於テ
現今ノ地價修正法トハ反スル譯デアル、諸君、私ハ斯ノ如キコトハ出來ヌコ
トヽ云フノ考デアル、故ニ巳ムヲ得ズ政府ニ於テハ此案ニ附イテハ不同意ヲ
唱ヘマス
〔石田貫之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=72
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073・石田貫之助
○石田貫之助君(二百九十六番) 唯今西村君ガ辯ゼラレマシテゴザイマス
ガ、特別地價修正ノ案デゴザイマス、卽チ本員モ提出者ノ一人デアリマス、唯
今政府委員カラ是ハ反對デアルト云フコトデゴザイマシタカラ、巳ムヲ得ズ
玆ニ一言ヲ致スノデアル、實ニ是ハ漸ク高平村ノ地租ヲ滅ズルコト三百有餘
圓、又星野村ノ地租ヲ減ズルコト百有餘圓程ノ金額デ、國家ノ經濟上ニ關スル
マデノコトデモゴザイマセヌ、然レドモ之ヲ一村ニ永遠ニ取ッテ參リマスル
ト云フト、決シテ少々ノモノデハナイノデアル、而モ此事柄ハ畢竟一昨年ノ地
租改正ノ當時ニ於テ、當局者ノ不注意ヨリ生ジタル不幸ト謂ハザルヲ得ヌノ
デゴザイマスデ唯今モ目賀田君ガ何トカ云ウテ理由ヲ言ハレマシタケレド
モ私ハ其理由ノヂヤ、精神ガ分ラヌノデアル、ナゼナレバデス、此一昨年
ノ修正ト云ヒマスルモノハ、一郡一定ノ率ニ據ッテ修正ヲ致シタト云フコト
ハ、當局者モ皆ト云フコトハ出來ヌノデゴザイマセウ、不同意ト云フコトハ出
來ヌノデゴザイマセウ、例ヘテ云ヘバ河邊郡ハ、卽チ一割八分ナラバ一割八
分、一割五分ナラバ一割五分ト云フモノヲ、每筆按分シテ一定ニ減額シタト
云フコトハ卽チ言ハレヌノデ、之ニ不同意ト云フコトハ言ハレヌノデゴザイ
マセウ、サレバ此高平村ガ、卽チ二十九年ヨリ有馬郡ト云フ郡ニ編入組替ガ出
來テ居ラナカッタラドウスル、河邊郡ニ居ッタラドウスル卽チ一割八分若
クハ一割八分五厘ノ稅率ヲ以テ減額ヲシテ居ルデハゴザイマセヌカ、此郡ヲ
別ニスルコトガ出來マスカ、其一割八分五厘ナルモノハ明治二十九年九月編
入ノ結果トシテ、例ヘバ一割ト云フ制限ヲ以テ修正ヲ致スト云フコトニナツ
テ居ルソレデ此事ニ附キマシテハ今言ヒマスル通、誠ニ僅々タルコトデ
アリマスケレドモ斯樣ニ改正ノトキノ組漏ヨリ生ジテ、人民ニ不幸ヲ被ラ
セルト云フコトニナルノデ、私ハ昨年夏頃カラ大藏省ニ於テ一二取調ベタノ
デアリマス、實ハ其改正ニ於テモ全ク忘レテ居ッタノデハナイト、斯ウ云フ
ノデー忘レテ居ッタノデハナイ、固ヨリ其事アルガ故ニ此高平村ト云フモ
ノハ別記シテアルノデ、十有餘村ノ外ニ別記シテアルノデ、是ハ有馬郡ト平
均シタト云フノデ、其平均ノ致方ト云フモノハ一ツアル處ト十アルモノ
トヲ一々平均致シタノデアル、全ク忘レテ居ラナカッタト云フダケノコトハ
告ゲテ居ルガ、所謂マルデ儀式ノ法ニモ何モ適ハヌコトガ致シテアルノデコ
ザイマス、一ツノモノヲバ持ッテ來テ、十ニ割リマシテ此平均ヲ取リマスレ
バ此物ノ實際ノ平均ガ取レサウナコトハナイノデゴザイマス、是ハ當局
者モ否ト云フコトハ言ヘナイ、大藏省ガ言ハレタガ其通デアル、斯樣ノ事柄
ニナッテ居ルノニ政府ハ不同意デアル、左樣ナコトハ出來得べカラザルモノ
デアルト云フヤウナコトハ苟モ責任ヲ負フ當局者ガ言ハレナイコトデアル、
デ私ハ尙ホ一言云フ、此法律案ノ議事ニ附イテ近頃政府委員ガ、政府ハ不同
意ヲ唱ヘルノデアリマス-不同意デアリマスト云フヤウナコトヲ此演壇ニ
確言スルコトガアル是ハドウ云フ意味カ分ラヌノデアル、畢竟此演壇デ政
府委員カ若ハ政府ノ大臣ガ、同意不同意トカ云フヤウナ事柄ヲ明言スルコト
ハ憲法ノ正條ニ基イテ明言ヲ致サナケレバナラヌノデアル、憲法ノ正條ニ
據ッテ見レバ、法律ノ制定ト云フモノハ上下兩院ノ可決シタモノハ天皇
ガ御裁可ヲナサルノデアル、ソレマデニ政府若クハ政府委員ガ不同意ヲ表ス
ルノデアル、妙ナル私ハ習慣ニナッタト思フ、ソレハ內實政府部內ニ至ッテ、
手續ニ至リマシテハ不同意ヲ上奏スルコトハアルカモ知レマセヌ、ケレド
モ唯憲法ノ六十七條ニ據ッテ、既定ノ歲出若クハ國家ガ、卽チ義務ニ關ハリ
マスル所ノモノヲ此議場デ削減シ、若クハ全ク脫スルト云フヤウナコトガア
リマスレバ、是ハ卽チ政府ノ同意ヲスルセナイト云フ論ニナッテ來ルノデ、
其六十七條ニ關ハル所ノ費用ニ至リマシテハ、卽チ政府ガ同意セネバ成立シ
ナイト云フコトニナッテ來ル、法律案ノ制定ニ至ッテ、マダ下院ノ可決ニ至
ラズ、上院ノ可決ニ至ラザルトキニ於テ、政府委員ガ卽チ不同意ヲ表スル抔ト
云フヤウナコトハ甚ダ穩當デナイト考ヘル、唯政府委員ハ其事實ニ於テ意
見ヲ違ヘ其事實ニ依ッテ異ナルコトガアルナラバ之ヲ論辯スルノハ可ナ
リ何カ不同意權不認可權ヲ持ッテ居ルガ如キノ語氣ヲ以テ、之ニ反對セラ
ルヽト云フコトハ、此問題ニ拘ラズ私ハ常ニ不穩當ノ言論ヲ爲スト考ヘテ居
ル、而シテ今ノ問題ノ如キハ先刻ドウトカ斯ウトカ言ハレタケレドモ、其
趣意ガ分ラヌ、ドウ云フコトデアッタカ分ラヌ、後トデ速記錄デモ見タラ分ル
カ知レマセヌガ、私ノ言フ所ノ理論ニ向ッテ反對デナイノデアル、左樣ナコト
ハ所謂不都合ノ結果ニナッテ居ルノデ、其不都合ノ結果ニナッテ居ルト云フ
ノハ卽チ調査ガ精密デナイ結果デアル、調査疎漏ノ結果ヨリ人民ニ不幸ノ
稅ヲ課シテ、「政府ハ不同意デアリマス」何ゾ左樣ナコトヲ苟モ當局者タル
者ガ言フベキ事柄デナイト私ハ思フ、此他ニ於キマシテモ私ノ調ベマシタ所
ニ於キマシテハ今ノヤウナ種類ガ十有餘所モアルノデゴザイマス、然レド
モ是ハ極ク僅々タル金額デアッテ、縱シ之ヲ修正致シマシタ所ガ、地價臺帳
抔ヲ修正スル費用ニモ償フヤ如何ト云フ位ノ所デゴザイマスカラ、決シテ議
論ハサテ措キ、利害ノ關係ヲ及サヾル所ニ至ッテ、法律ノ修正ヲ爲シ法律ノ
改正ヲ致スト云フヤウナコトハ必要デナイ、先ツ全國中ニ於テ著シキ不公平
粗漏ヨリ以テ不幸ヲ被ラシテ居ルノハ、該二箇村ト私ハ認メマス、故ニ提出
致シタイノデゴザイマス、其他ニ就キマシテ同樣ナ町村ガアリマシタラバ、
是ハ修正スルノハ誠ニ至當ナコトヽ考ヘマス、玆ニ一言致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=73
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074・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 私ハ之ヲ委員ニ付託シテ十分ニ調査シタイト思
ヒマスカラ··
〔工藤行幹君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=74
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075・工藤行幹
○工藤行幹君(二百七十九番) 御退屈ノ所ニ甚ダ相濟マヌガ、實ハ私ハ此案
ノ如キハ一笑ニ付シテ、斯ウ云フコトハイクベキモノヂヤナイト思ウテ居ッ
タノデアリマス、然ルニ提出者ハ二人マデモ御登壇ニナッテ、至極尤ラシイ
御演說ヲ爲サルヽ或ハ又之ヲ委員ニ付託スル抔ト云フヤウナコトガゴザイ
マスルノハ、大ニ私ガ奇々怪々ニ堪エヌノデゴザイマス尤モ此案ノ如キハ
地租金ガ三百圓トカ、或ハ二百圓トカ云フ誠ニ少數ナモノデゴザイマスカラ
シン 、何レニナッテモ大體ニ關係ハナイカラ、ドウナッテモ宜イヤウナモノ
ダケレドモ、併シ立法部トシテ斯ウ云フコトヲ始終議スルヤウナコトニナツ
テ、之ヲ齒牙ニ懸クルコトハ私ハ性質上ニ於テ甚ダ不安心ヲ感ズル者デゴ
ザイマス、何ゼナレバ諸君、此地價ノ修正論ト云フモノハ、第一期ノ議會以
來容易ナラザル問題デアッタノデゴザイマス、何ゼサウカト云ヘバ實ニ此
明治ノ初年ニ於テ未ダ物ニ不慣ナトキニ於テ、而モ日本數百年來ノ慣習ヲ
破ッテ地租改正ヲシタモノデゴザイマスカラシテ、是ハ到底多少ノ不平均ガ
アルト云フコトハ卽チ掩フベカラザルコトデアルノデアル、故ニ之ヲ修正
セントスルコトハ實ニ容易ナ業デナイ、飽クマデ之ヲ修正セントスルナラバ
或ハ一郡一村若クハ一筆ニ遡ッテ、其當否ヲ調ベタ上之ヲ修正シナケレバナ
ラヌノデアルノニ、其後段々議事ノ進行ニ依ッテ、大藏省ハ其責任ヲ持ッテ
政府ハ責任ヲ持ッテ是々ノ金額ヲ以テ此度修正ヲスルナラバ、最早後ト
ニ不公平ガナイト云フコトヲ斷言セラレタノデアル、故ニ吾ミハ何レノ村ガ
何程減ズルトカ、何レノ郡ガ何程減ズルト云フコトデナクヤルト云フコトハ
其當時不贊成デアッタノデアルガ、併シ議場ノ多數ガサウナッタ以上ハ、
今更ソレヲ言フデハアリマセヌガ、既ニ總體ノ額ニ於テ幾百万圓ト云フ地租
ヲ減ズル、地價ニシテ見ルト幾千万圓ト云フモノヲ減ズル、ソレト云フモノ
ハ唯郡ノ大體ニ於テ、是ハ是ダケサヘ減ズレバ宜シイト云フコトニナッテ、
此議場ガ決議シタノデ、敢テ一村一筆、或ハ一郡ノ原簿ヲ誰モ見タモノヂヤ
ナイノデゴザイマス、然ラバ政府ハ飽クマデ其豫期ノ金額ヲ以テヤッタ以上
ハ最早公平ニナッタト云フコトヲ吾ミハ認メテ居ルノデアル、然ルニ今段
段提出者ノ御意見ヲ承ルト云フト、其執行ノ上ニ就イテ誤ガアッタヽメ斯ノ
如キ不公平ニブツカッタト云フコトデアル、然ラバ此事情カラ見ルトキニハ
矢張リ政府ノ豫期シタ所ノ金ヲ以テ當然シタモノデアルカラ、一方ニ酷ニ往ツ
タモノガアレバ一方ニ寬ニ往ッタモノガアルニ相違ナイト云フコトヲ認メ
ル、詰リサウスレバ當局者ノヤリ方ガ惡ルイタメニ傍ニ不公平ガアッタト
云フ苦情ニ外ナラヌノデアル、是ハ提出者ノ言ハレル通、或ハ多少サウ云フ
コトガアルカモ知ラナイケレドモ、抑〓諸君、地價ヲ修正シテ永年ノ間之ヲ
一定不變ニシテ置クト云フノハ我ガ國ノ地租ヲ取ル大體ノ基本デアルノデ
ゴザイマスソレヲ數年掛ッテ地價修正ト云フコトヲ漸ク昨年ニ於テヤッタ
カト思ヘバ又一方カラ僅ナ村ノモノヲ擔出シテ、此處ガ不公平ダ此處
ガ不平均デアルト言ッテ、其時々地價ヲ修正シタナラバドウ云フ結果ニナ
リマスルカ、何ヲ以テ此地租ヲ確實ナル稅源トシテヤルコトハ出來ナイト私
ハ思フ、斯ノ如キ少額ノ不公平ハ澤山アラダラウト思ッテ居リマス、村ト村
ト比較スレバ必ズ不公平ガアルダラウ、郡ト郡ト比較シテ見タナラバ必ズ不
公平ガアルダラウ、況ヤ私ニ言ハセタナラバ、例ヘバ東北ノ外レト九洲ノ外レ
ト、斯ウ起ッタトキ、クッ附キ合シテ必ズ不公平ガアルニ相違ナイト思フノデ
ゴザイマス、殊ニ地價ノ定メ方ト云フモノハ元〓一筆デヤラナケレバナラヌ
ノデアル、一村ノ大體ヲ以テ高イノ安イノ、或ハ一郡ノ大體ヲ以テ高イノ安
イノト云フコトハ、最モ其當ヲ得ナイノデアル、實際ヤルト云フ譯ナラバ何
處マデモ各一筆、各人ノ收穫ニ附イテ此收穫ノアル米價ナリヲ計ッテヤラナ
ケレバナラヌノガ當然ナノデアリマス、然レドモ大體ニ於テ既ニ一遍地價修
正ヲシタ以上ハ、斯ク區々タルコトヲ此議場デ取上ゲテヤルト云フコトハ、殆
ド底止スル所ガナイ、又地價ヲ定メタ前囘ノ精神ト云フモノニモ反スルコ
トヽ思ヒマス、故ニ私ハ誠ニ尠少タル金額デアルケレドモ或ル地方ノ區々
タル苦情ヲ以テ、此地價ノ大體ヲ動スコトデアッテハ、地租ニ變動ヲ來シテ
誠ニ不安心ヲ被ラシメナケレバナラヌ、若シ此例ヲ一度開イタ時ニハ、此金
ハ僅デゴザイマスガ、天下續々トシテ起ルダラウト思ヒマスルニ付イテ、先
ヅ既ニ一旦地價ヲ修正シタ以上ハ、是カラ五年ナリ十年ナリ經ッテ、又大ニ改
正ヲシナケレバナラヌ場合ガアルカハ率ザ知ラナイケレドモ、朝ニ變ヘ夕ニ
變ヘルト云フヤウナコトハ最モ地租ニ對スル租稅ノ取リ方ニ不安心ヲ來ス
コトデゴザイマスカラ、是等ノコトハ斷ジテ否決セラルヽコトヲ私ハ切ニ希
望スルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=75
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076・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 今委員付託ト云フ聲ハ聽エマシタケレドモ、贊成者ガ
ナイト認テ居リマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=76
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077・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 贊成ガアレバ採決ヲ致シマス、委員付託ニ同意ノ諸君
ハ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=77
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078・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス、九名ノ特別委員ヲ議長ガ指名致シマ
シテ、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=78
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079・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、次ハ議事日程ノ第八、
國事犯罪者家祿賞典祿處分法案、第一讀會ノ續特別委員長報告、關信之介君
第八國事犯罪者家祿賞典祿處分法第一讀會ノ續(季氏は
案(關信之介君外十三一名提出)相当)
國事犯罪者家祿賞典祿處分法
第一條國事ニ關スル犯罪ノ爲家祿賞典祿ヲ沒收セラレ明治二十二年勅令
第十二號ニ依リ大赦ヲ與ヘラレタル者及現ニ其ノ家名承繼人タル者ニ限
リ其ノ沒收セラレタル當時ノ祿高ニ基キ明治九年太政官第百八號布告第
一條ノ率ニ據リタル金祿公債證書額ニ相當スル金額ヲ一時國庫ヨリ支出
シテ之ヲ給與ス
第二條第一條ニ依リ給與ヲ受ケムトスル者ハ大赦ヲ受ケタル證明書ヲ以
テ地方廳ニ出願スヘシ
但シ本法施行ノ日ヨリ一箇年內ニ其ノ認定及證明ヲ求メス又ハ認定及證
明ヲ受ケタル日ヨリ一箇月內ニ出願ヲナササル者ハ第一條ノ給與ヲ受ク
ルコトヲ得ス
(關信之介君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=79
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080・關信之介
○關信之介君(二百二十四番) 諸君、私ハ是ヨリ國事犯罪者家祿賞典祿處分
法案ニ關シマスル委員會ノ經過及結果ヲ御報道致シマス、本委員會ハ本月十
六日ニ委員長理事ノ互選會ヲ開キマシテ委員長ニハ私、理事ニハ佐久間國
三郞君ガ當選致シマシタ、十八日ニ委員會ヲ開キマシテ、政府ヨリハ松尾臣
善君ガ出席致サレマシテ、質疑討論殆ド三時間ヲ費シマシテ、遂ニ委員會ニ
於テハ全會一致ヲ以テ可決相成リマシタ次第デゴザイマス、而シテ本案ハ御
承知ノ如ク、曩ニ第十議會ニ於テモ本院多數ノ贊成ヲ得テ可決致シマシタヽ
又第十三議會ニ於テモ同ジ多數ニ依ッテ可決シタモノデゴザイマス、然ルニ
貴族院ニ於キマシテハ會期切迫ノタメ遂ニ委員會ヲ終ヘテーー其審査ヲ終
ラズシテ兩度マデ握潰シノ運命ニ接シタ次第デゴザイマス、斯ノ如キ問題デ
ゴザイマスカラ、唯今ノ如キ御報告ヲ以テ終ルヤウナモノデゴザイマスケレ
ドモ委員會ニ於テハ政府委員ハ之ニ向ッテ全然反對ノ意ヲ表シマシタノデ
ゴザイマス、故ニ委員會ノ經過ヲ此場合ニ諸君ニ御話スルノハ、決シテ蛇足
ノ勞デナイト考ヘル此本案ハ御承知ノ如ク明治二十二年勅令十二號ノ大赦
令ニ依リマシテ、明治初年度ニ於ケル國事ニ關スル罪ヲ犯シタ者ガ、此大赦
ニ依ッテ復權ヲ爲シ元士族タル者ハ士族ノ身分ヲ有シタノデゴザイマス、
然ルニ單ニ族籍ノミ復權ヲ致シマシテ、其族ニ伴フ所ノ祿ト云フモノヲ復ス
ルコトガ出來ナイノデアリマス、此事ニ就キマシテハ明治二十七年ノ法律二
十號ヲ以テ、國事犯罪者家祿賞典祿處分法案ト云フモノガ出マシテ、明治三
年九月十日ノ卽チ藩政施行後ノ復權ニ向ッテハ祿ヲ與ヘラレタノデアリマ
ス然ルニ等シク大赦ノ恩典ニ浴シテ復權致シタ者ハ、明治三年九月十日ノ
藩制施行ヲ分界トシテ、其後ノ處分ニ係ルモノハ復祿ノ恩典ニ浴シ、其以前
ノ處分ニ係ル者ハ復祿ノ恩典ニ浴スルコトガ出來ナイト云フヤウナ、甚ダ不
公平極マル所ノ結果ニナッタンデアリマス、斯ノ如キハ決シテ大赦ノ恩典ヲ
完タカラシムル所ノ御趣意ニモ反スルモノデゴザリマス此故ニ右等ノ不公
平ナカラシメンガタメニ此法案ヲ提出致シマシタト云フコトヲ述べマシタ
所ガ、松尾政府委員ガ之ニ反對シテ曰ク、若シ提出者ノ意見ノ如ク明治三年
藩政施行ト云フモノヽ限界ヲ破ッテ、其先キマデ溯ラシムルコトニナッテハ
如何ナル程度マデ此事ガアルカ、如何ナル數、如何ナル此法律ニ浴スル人員
アルカ、如何ナル金員ヲ要スルカト云フコトハ、實ニ際限ガナイノデアル
故ニ祿制ニ關スルコトハ政府ハ明治三年ノ藩政施行ヲ以テ限界トシテ、其以
前ノモノハ決シテ責任ヲ負ハヌト云フヤウナコトヲ述ベラレマシタンデゴザ
イマス、然レドモ此事ニ就キマシテハ、假ニ此法律ガ成立致シマシテ發布シ
マシタ所ガ、僅カ其人員ト云フモノハ千四百名バカリデアッテ、其金員ハ三
十八万圓餘ニ過ギナイノデゴザイマス、其事ハ提出者等ガ數年來ノ經驗ニ
依ッテ取調ベマシタモノデゴザイマス、政府ハ之ニ反對致シマシテ、曩ニ法律
五十號ノ時分ニハ僅ニ百九十六人シカナカッタノデアル、然ルニ今ヤ二十六
万人ノ請願者ガ出來タノデアル、ソレヲ以テモ推シテ知ルベシト云フヤウナ、
誠ニ漠然タル所ノ議論ヲ以テ反對セラレ、之ヲ押シ切ルニ或ハ會津藩トカ、
或ハ仙臺藩トカ云フヤウナコトヲ以テセラレマシタケレドモ會津藩ヤ仙臺
藩ニ於キマシテハ此提出者ガ指摘致シマシタ所ノ四十名ノ外ハ斷ジテナイ
ト云フコトヲ證スルコトガ出來ルノデアリマス、而シテ會津藩ニ於キマシテ
ハ、ソレ〓〓會津藩ニ對シテハ處分ガ濟ンデ居ル、其他各部ニ於テ殘ラズ濟ン
デ居ル、僅ニ提出者ガ取調ベタモノヽ外ナイト云フコトヲ證スル所ノ立派ナ
證據ガアル、其證據ハ何デアルカト云フト、卽チ此問題ニ就キマシテハ第二
議會以來數多ノ復祿ニ關スル出願者ハ、此件ニ就イテノ出願ガゴザイマスル
ケレドモ、提出者ガ取調ベマシタヨリ外ニ出願者ノナカッタト云フコトハ
是マデノ貴衆兩院ノ請願委員會ノ歷史ニ於テ之ヲ證スルコトガ出來ルノデア
ル若シ政府ニシテ此外ニ斯ノ如キ類ガ澤山アルト云フナラバ、其類ヲ證據
立テヽ貰ヒタイト云フコトヲ申シタ所ガ、ソレハ證據立テルコトハ出來ヌガ
必ズアルト云フヤウナ、殆ド痴人ガ夢ヲ說クヤウナ言葉ヲ以テ反對セラレマ
シタ、今一ツ諸君ニ御訴ヘヲ申シテ置イテ、而シテ此案ニ御贊成ヲ願ハナケ
レバナラヌコトガアル、ワレハ何デアルカト云フト仙臺藩ノ和田織部外三
十九名ト云フ者ガアル、又末永縫之丞外一名ト云フ者ガアル而シテ此人ハ
ドンナ罪ヲ犯シタカト云ヘバ等シク明治初年度ニ於テ國事犯ヲ犯シタ然
ルニ末永縫之丞外一名ハ明治三年九月十日、卽チ藩政施行後同月二十六日
ニ處分ニナッタガ故ニ、明治二十七年ノ法律十號ニ依ッテ復祿ノ恩典エ浴シ
テ公債證書ヲ貫フタ、然ルニ和田織部外三十九名ハ何時ノ處分デアルカト云フ
ト同年八月、僅カ一箇月前、其人ハ一箇月前ノ處分ニ係ルモノデアリマス
ルガ故ニ等シク同一ノ罪ヲ犯シ一同ノ復權ヲ得マシテモ、復祿ノ恩典ニ
浴スルコトガ出來ナカッタノデアリマス、此事ハ政府委員モ確ニ認メル事實
デアリマス今一ハ山口縣ノ大樂源太郞外數名ノ人ガ、同一ノ矢張國事ニ關
スル罪ヲ犯シタ然ルニ大樂源太郞外七名ハ其當時山口ヲ脫シテ大分縣邊
リニ潛ンデ居テ、同犯秋山常太郞外十三名ト云フ者ハ其處ニ居ッタタメニ遂
ニ家名繼絕ノ處分ヲ受ケタノデアリマス、此人達ノ處分ハ何時デアルカト云
フト明治三年六月以前ニ係ッタ、大樂源太郞ハ其以前デアッタガ國ヲ脫シタガ
タメニ藩政施行後ノ處分ニ係ッタガ故ニ、其大樂源太郞外七名ノ人ト云フ
者ハ復錄ノ恩典ニ浴シテ其以前ニ逃ゲナイデ處分ヲ受ケタ者ハ復祿ノ恩
典ニ浴スルコトガ出來ナイト云フ實例モゴザイマス、此事實モ政府ニ於テ蓋
シ認テ居ルコトダラウト思ヒマス、斯ノ如ク一視同仁ノ聖意ヲシテ而モ大
敕令ト云フモノニ浴シマシタ者ニ對シテ甲ニハ族籍ノミ復シ、乙ニハ族祿
共ニ與フルト云フコトハ決シテ立法部トシテ斯ノ如キ不公平ヲ看過スベキ
コトデハナカラウト考ヘル斯ノ如ク論ジ來リマスレバ政府委員ガ此委員
會ニ於テ本件ニ對シテ反對ヲスル所ノ理由ハ少モ價値ノナイモノデゴザイマ
スカラ是ヨリ又政府委員ガ反對ノ意見ヲ述べラレマスニモ拘ラズ、ドウカ
滿場一致ヲ以テ本案ニハ御贊成アランコトヲ希望致シマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
〔政府委員大藏省理財局長松尾臣善君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=80
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081・松尾臣善
○政府委員(松尾臣善君) 唯今委員長カラ詳シイ御報告ガゴザイマシタガ、
政府ハ遺憾ナガラ本案ニ御同意ヲスルコトガ出來マセヌノデアリマス、其理
由ヲ一ト通申上ゲテ置キマス元來此祿ノ處分ノ極、基礎トナッテ居リマス
モノハ、明治三年九月十日藩政仰出サレタトキ、其以後ニ祿ヲ有ッテ居ル者
ヲ基礎トシテサウシテ一旦金祿ト爲リマシテ、續イテ金祿公債證書ヲ交付
セラレタノデゴザイマス、故ニ庚午三年九月十日藩政仰出サレタトキ、其以後
ニ祿ヲ有ッテ居ッタコトデゴザイマスレバ、是ハ一般ノ處分ト背馳致シマ
セヌカラ或ハ處分ヲシテ宜イコトデゴザイマセウガ本案ハ此庚午三年九
月十日以前ニ溯ッテ復祿ヲシヤウ、斯ウ云フコトデゴザイマスカラシテ、一般
ノ祿制ヲ立テマシタノト此期限ガ伴ヒマセヌカラシテ、ソレデ若シ之ヲ破リ
マスレバ、一般ノ祿制ニ據クテ祿ヲ貰ウテ居ル卽チ金祿公債證書ヲ貫ウタ
人ガ、又不公平ヲ言ッテ來ルト云フコトハ當リ前ノコトデアル、モウ一ツ此
案ニハ其沒收セラレタル當時ノ祿高ニ基キ金祿公債證書ヲヤルト云フコトハ
示シテアル所ガ明治二年二月以後各藩デハ祿制ヲ立テマシテ減祿致シテ居
ル之ヲ例ヘテ見マスレバ玆ニ二人ノ家老ガアル、千石宛貰ヲテ居タト假定
致シマス、一人ハ國事犯ニ罹ッテ沒收セラレタ、一人ハ殘ッテ居ッタ、其殘ツテ
居ッタ人ハ祿制ニ依ッテ千石ノ者ガ百石カ百五十石ニ滅ジラレテ、サウシテ
金祿公債證書ヲ貫ッテ居ル、所ガ本案ニ據リマシテ當時ノ祿高デヤルト云フ
コトニナルト、元ノ千石ガ祿高ニナル(「ソンナコトハナイ」ト呼フ者アリ)イ
エ此ハ文章デハサウナリマス、ソレガ卽チ不公平ノ第二デゴザイマス、第三ニ
ハ大赦ヲ受ケタル證明書ヲ以テ願出デロトアル、此大赦ト云フモノハ必ズ證
明書ヲ與ヘラレヌケレバ大赦ノ恩典ニ浴シナイト云フ譯デナイ證明書ヲ
貫フト云フコトハ必要ナ人ハ願出ル、默ッテ願出デナケレバ貰ヘハシナイ證
明書ヲ貫ッテ居ル人ハ復祿スルガ證明書ノナイモノニハヤラヌト云フナラ
バ同ジ大赦ヲ浴シテ居ル方デ卽チ不公平ガ起リマセウ、左樣ナ不公平ニ不
公平ヲ重ネルヤウナ法律ニハドウモ同意スルコトガ出來ナイノミナラズ、
若シ此證明書ヲ貫ハナイ人達ニモ、或ハ又ヤリタイト云フ斯ウ云フコトニナ
リマスレバドコマデ溯ッテ來ルカ分ラヌ、ノミナラズ此財政ノ上ニ於キマ
シテモ非常ナ今日ハ困難シテアル場合ノ所ヘ、幾万圓ヤッテ宜イカ分ラナイ
ヤウナ、見込モ立タナイヤウナ法律ニハ政府ハ贊成ヲ表スルコトハ出來マセ
又、故ニ是ニ附キマシテ反對ヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=81
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082・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤノ採決ヲ致サウト思ヒマ
ス本案ノ第二讀會ヲ開クベシト云フ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=82
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083・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス、第二讀會ヲ開クコトニナリマシタ、
議事日程第九、是ハ委員長ヨリ都合ガアルカラ一時議事ヲ延シテ呉レト云フ
申出ガアリマス延シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=83
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084・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ延スコトニ致シマス、議事日程第十、
第一期鐵道達成ノ建議案、朗讀ヲ省略〓會シマス、西谷金藏君
第十第一期鐵道速成ノ建議案(降旗元太郞外十四名提出)
第一期鐵道速成ノ建議案
政府ハ鐵道敷設法ニ規定セル第一期鐵道敷設工事ヲ速ニ完成スヘシ而シテ
之ニ伴フ工費豫算ハ別表ニ準據シ其ノ年度割ヲ更定シ其ノ不足額ニ付テハ
直ニ追加豫算ヲ發セラレムコトヲ望ム
右建議ス
總Vy二十六年度三十四三十六三十七三·六
摘要年度三十二年度三十三三十五
額割マテ年度年度年度年度年度年度
既定豫算
既定豫算額一二、六八六、一二九一〇、八四二、三八二一、八四三、七四七
奧羽線追加豫算額一九、五二九、八八六一、六五六、二五三三、〇〇〇、〇〇〇三、〇〇〇、〇〇〇四、五〇〇。〇〇〇四、〓〇〇、〇〇〇二、八七三、六三三
福島青森間合計三二、二一六、〇一五三、五〇〇、〇〇〇
既定豫算額九、四九八、一六八九、〇九五、一六八門〇三、〇〇〇
北陸線
鐵設官期一第敦賀富山間
中央線既定豫算額七、六七七、七五一四、四四七、四七〇二、二〇〇、〇〇〇一、〇三〇、二八一
間篠ノ井鹽尻
中央線既定豫算額二七、一二〇、七七一九、四〇〇、〇〇〇四、三〇〇、〇〇〇四、五〇〇、〇〇〇六、五〇〇、〇〇〇二、四二〇、七七一
carotis追加〓算額一七、七〇六、六一九四、〇七九、二五九六、五〇〇、〇〇〇七、一二七、三九〇
霸合計四四、八二七、三九〇六、五〇〇、〇〇〇
九州線既定像算額八、二二六、七九三一、六〇六、〇〇〇二、五〇〇、〇〇〇二、八五〇、〇〇〇一、二七六、七九二
表割度年算豫費工道八代鹿兒島追加概算額五、四七八、一〇四一、一七二、二〇八三、〇〇〇、〇〇〇一二三〇四、八九六
問合計一三、七〇四、八九六二、四五〇、〇〇〇
山陰及山既定豫算顏七、九四八、七一四六〇〇、〇〇〇三、〇〇〇、〇〇〇三、〇〇〇、〇〇〇一、三四八、七一四
陽連絡線追加橙算額五、六〇四、一八六一、六五一、二八六三、〇〇〇、〇〇〇九五二、九〇〇
姫路機動合計一三、五五二、九〇〇五、〇〇〇、〇〇〇
山陽線追加豫算額二、一五六、二四八三五〇、〇〇〇九五〇、〇〇〇八五六、二四八
呉海田市間
既定豫算額七三、一五八、三二五三五、三八五、〇二〇一一、八四六、七四七一一、三八〇、二人一一〇、七七六、七九二三、七六九、四八五
總計追加豫算額二一、六八六、一三四二、〇〇六、二五三三、九五〇、〇〇〇三、八五六、二四八四、五〇〇、〇〇〇四、五〇〇、〇〇〇二、八七三、大きなつ
追加〓算額二八、七八八、九〇九一、一七三、二〇八八、七三〇、五一五一〇、八〇四、八九六八、〇八〇、二九〇
合計一二三、六三一、三六八三五、三八五、〇二〇一三、八五三、〇〇〇一五、三三〇、二八一一五、八〇六、二四八一七、〇〇〇、〇〇〇一五、五〇四、八九六一〇、九五三、九二三
〔西谷金藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=84
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085・西谷金藏
○西谷金藏君(二百十四番) 諸君、エライ時刻モ後レマシタガラ、極簡短ニ
申上ゲマス此案ノ說明ヲ致シマスルニ先チテ、少シク此數字ノ誤植ガゴザ
イマスルノデ、其〓ヲ申上ゲテ置カウト考ヘマス本案ノ別表、九州線卽チ
八代鹿兒島線ノ內、年度割總額ノ規定豫算額ガ八、一二六七九三トアルノハ
二ノ誤デゴザイマスソレカラ丁度其下ニ一六零六トアルノハ六零零ニナ
ルノデゴザイマスソレカラ一ツ後トヘ返リマシ〓中央線ノ年度割三十六
年度ノ追加〓算額ノ內ニ四、零七九二五九トアルノハ二二九ノ誤デゴザイ
マス、ソレカラ總計ニ至リマシテ合計ノ欄、年度割總額ノ內一二三六三二ト
アルノハ六三三ト爲ルノデゴザイマス左樣ニ御修正ヲ願ヒマス此案ヲ提
出致シマシタ所ノ理由ハ今更事新シク申スマデモゴザイマセヌ、前議會卽
チ十三議會ニ於テハ殆ド滿場一致ヲ以テ本案ヲ通過シテ、政府ニ向ッテ大ニ
求ムル所ガアルノデゴザイマス然ルニ政府ノ方デハ今期議會モ三分ノ二過
ギタル今日ニ至ッテモ、追加豫算等ノ提出ハ見ナイノデゴザイマス、諸君ガ
御承知ニナッテ居リマス通、鐵道敷設法ニ據レバ明治一一十六年度ヨリ明治三
十三十七年度マデ、十二箇年間ニ此總テノ工事ヲ了ラナケレバナラヌ、然ル
ニ其十二箇年中既ニ七筒年經過シテ、殘ル所僅々五箇年デアル、サウシテ工
事ト云フモノガドレ位ノ程度ニ進ンデ居ルカト就イテ調ベテ見マスレハ工
事ハ僅ニ十分ノ三、卽チ三分ノ一ニ充タザル所ノ進行步合デアル、此ノ如ク
ニシテ經過致シマスレバ迚モ三十七年度ニ了リヲ見ルコトハ出來ナイノ
ミテラズ明治四十年度ニ至ッテモ未ダ此一期工事モ終ルコトハ期シ難イカト
考ヘマス、然ルニ一方カラ考ヘマスレバ彼ノ本院多數ノ御方ガ提出セラレ
マシタ案ニ據レバ、此一期線以外ニ於テ數種ノ線路ヲ急ニ敷設ノ急ヲ認メラ
レマシテ諸君ガ鐵道敷設改正案ヲ大ニ提出セラレタノデアル然ルニモ拘
ラズ政府ガ極テ緩慢ナル處置ヲ取ッテ居リマスルガ故ニ、之ヲ速ニ卽チ此鐵
道敷設法ヲ有效ニ決行ナサシムルガタメニ本案ヲ提出シテ、大ニ政府ニ要
求スル所ガナカラズシテ巳ムベキ次第デハナイト考ヘマス、此故ニ本案ヲ提
出致シマシタ次第デゴザイマスガ、本案ハ御承知ノ通豫算ノ金ノ上ニモ關係
致シマスコトニシテ、政府トモ大イニ協議スベキ事柄モアルト考ヘマスルガ
〓ニ、更ニ特別委員ヲ九名選出セラレテ相當ナル調査ヲセラレ、又相當ナル
政府ニ向ッテ協議セラレンコトヲ欲スルノデゴザイマス、簡短ニ提出ノ理由
ヲ.
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=85
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086・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 提出者モ委員ニ付託シテ貰ヒタイト云フ動議ガアリマ
シテ、贊成者モアリマスルガ、九名ノ特別委員ヲ議長ガ指名致シマシテ御異
議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=86
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087・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、議事日程ノ第十一、
官幣大社氷川神社ニ對スル國庫支出建議案、議案ノ朗讀ヲ省略致マス、加藤
政之助君
第十一官幣大社氷川神社ニ對スル國庫支出建議案(加藤政之助外
七名提出)
官幣大社氷川神社ニ對スル國庫支出建議案
官幣大社氷川神社ハ明治元年遷都ノ初當國ノ鎭守勅祭ノ神社ト定メラレ同
年十月二十八日
行幸御親祭御誓詔アラセラレ歲次勅使參向ノ神社ト定メラレタリ然ル
ニ現今社頭ノ實況ヲ觀ルニ頗ル神社崇敬ノ實ヲ失シ恐懼ノ至リニ堪サルモ
ノアリ故ニ政府ハ速ニ特別支出ヲ與ヘ以テ勅祭官幣大社相當ノ尊嚴ヲ保有
セシメ神社崇敬ノ道ヲ明ニセラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔加藤政之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=87
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088・加藤政之助
○加藤政之助君(二百一一十一番) 諸君、本案ハ事帝室ニ關係モアリマスルノ
デ謹デ說明致シマス此大宮ノ氷川神社ハ官幣大社デゴザイマシテ人皇五
代孝昭天皇ノ御宇ニ、素盞鳴尊、大巳貴尊、稻田姫ノ尊ト三體ヲ祭ラレタ
モノデアリマス爾來崇神天皇、サウシテ陽成天皇、景行天皇、朱雀、崇德
天皇、高倉天皇、此各皇帝方ノ御崇敬ニナラレマシタ社デアリマシテ、ソレデ
明治元年ニ今上皇帝ガ御遷都ニナリマスルト云フトソレト同時ニ勅書ヲ
下サレマシテ、其詔ハ參考書トシテ豫テ諸君ニ御囘シヲ致シテ置キマシタカ
ラ今別ニ爰デ捧讀ハ仕リマセヌソレデ明治三年ニ行幸ガアリマシテ御
親祭ヲ行ハセラレタ、明治元年ニ御親祭ガアッテ、後ニ明治三年ニ御親祭ガ
アツク、ソレカラ明治十一年ニ陛下ガ又御行幸ニナリマシテ御參拜ニナリ
マシタノデゴザイマス、次イデ明治七年ニハ皇太后皇后兩陛下ノ行幸御
參拜モアリマシタ譯デゴザイマスデ斯ノ如キノ次第デアッテ皇室ノ崇敬
淺カラザル御社デアリマスルノニ、昨年此勅使ガ八月一日ニ御參向ニナリマ
シタトキニ降雨デアッテ恰モ社殿ガ雨漏ヲシテ、勅使ガ御參拜ヲ遂ゲラレ
テ其恙ナキコトヲ皇室ニ報告ヲスルコトガ出來ナイソレ故ニ巳ムヲ得ズ屋
根ニ蕷ヲ張ッテサウシテ式ヲ行ハレタト云フコトデアリマス、デソレガタメニ
皇室デモ御心配アラセラレタト云フ噂モ承ツテ居ッテ、甚ダ恐入フタコトデ
アル而シテ皇室カラ年ミ東遊ビヲ御奉納ニナリマスガ、ソレモ手挾デアッ
テ御奉納ニ差支フルト云フ場合モ又祭器庫ガナクシテ祭器ヲ置クコトガ出
來ナイカラ巳ムヲ得ズ社務所ニ置クト云フヤウナ不都合モアリ、或ハ幕ヲ
置ク場ガナイタメニ盜マレタト云フコトガアリマス、ソレカラ勅使ガ御出ニ
ナッテモ勅使ノ間ニ充テル坐敷ガ不十分デアッテ、社務所ノ一部ヲ充テルト
云フコトデアル又庫ガナイ故ニ勅書ノ如キ大切ナ物天皇陛下ノ御捧ゲ
ニナッタ所ノ御幣ノ如キ、斯樣ナモノモ社殿ノ一隅ニ僅ニサウシテ置クト云フ
有樣デアッテ、誠ニ恐入ッタ次第ト吾ミハ考ヘルノデアリマス、ソレ故ニ是
非此修築ヲ加ヘテ奉幣等勅使ガ御下向ニナッテモ、御差支ノナイヤウニ致シ
タイト云フコトガ、吾ミノ希望デアル、尙詳シイコトハ爰デ述ベタイデアリ
マスケレドモ、此事ハ委員會ニ付シテ更ニ特別委員九名ヲ選ンデ、ソレニ調
査ヲ遂グテ貰ッテ、此議ニ上セタイト思ヒマスカラ、其時分ニ詳シイコトハ
申スコトニ致シテ、爰デハ是ダケニ略シマスルガ、是非御贊同ヲ請ヒマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=88
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089・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ハ提出者カラモ特別委員ヲ選ンデ審査ヲシテ貰ヒ
タイト云フ演說モゴザイマシテ、贊成者モアリマスルガ、是ハ議長ガ九名ノ
特別委員ヲ選ンデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=89
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090・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、次ニ日程第十二永小
作權ニ關スル請願ハ委員長ヨリ一時是ハ議事日程ヲ延シテ貰ヒタイト云フコ
トガアリマシタガ、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=90
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091・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ延スコトニ致シマス、是ヨリ報〓ガ
アリマス
特別委員ヲ左ノ通指名セリ
刑法中改正法律案
山田武君望月長夫君淺野順平君
平岡萬次郞君鈴木摠兵衞君安藤龜太郞君
持田直君堀豐彥君土居平左衞門君
酒造稅法中改正法律案
東良三郞君喜多川孝經君森本確也君
首藤陸三君野尻岩次郞君大塚常次郞君
草刈武八郞君三輪傳七君小山久之助君
裁判所設立及管轄區域變更ニ關スル法律案
木村格之輔君本間直君平岡萬次郞君
花井卓藏君西原〓東君高津雅雄君
望月圭介君山內吉郞兵衞君鮫島相政君
田地價特別修正法律案
高川定次郞君井上彥左衞門君佐々木正藏君
宮井茂九郞君石田貫之助君西村淳藏君
野田卯太郞君大久保鐵作君星野助左衞門君
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
罰金及追徵ニ係ル上告豫納金廢止法律案
提出者望月長夫君木村格之輔君山田武君
山內吉郞兵衞君石黒涵一郞君後藤文一郞君
磯田和藏君東良三郞君
重罪控訴豫納金規則廢止法律案
提出者望月長夫君木村格之輔君山田武君
山內吉郞兵衞君石黑涵一郞君後藤文一郞君
磯田和藏君東良三郞君
輕罪控訴規則廢止法律案
提出者望月長夫君木村格之輔君山田武君
山內吉郞兵衞君石黑涵一郞君後藤文一郞君
磯田和藏君東良三郞君
順德天皇御遺跡保存ニ關スル建議案
提出者市島謙吉君磯部八五郞君田順一君
三輪潤太郞君佐藤伊助君高山岡忠卿君
大瀧傳十郞君丸山嵯峨一郞君宗彌君
室孝次郞君岡田龍松君高佐橋藤
九郞君
齋藤和平太君
鐵道敷設法中改正法律案
提出者大村和吉郞君永井嘉六郞君
○特別委員長及理事左ノ通當選セラレタリ
間接國稅犯則者處分法改正法律案
委員長松本正友君理事望月長夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=91
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092・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 明日ハ議案ノ都合ニ依リマシテ休會ヲ致シマス、議事
日程ハ追テ公報ヲ以テ諸君ニ御通報致シマス、先達テモ特別委員ノ諸君ニ御
注意ヲ申シテ置キマシタガ、本會ハ休ニナリマシテモ、委員會ハ開カレマシ
テ、審査セラレンコトヲ希望致シテ置キマス、今日ハ是ニテ散會ヲ致シマ
ス
午後四時四十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X01319000122&spkNum=92
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