1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十三年二月八日（木曜日）午後一時十三分開議
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議事日程 第二十一號 明治三十三年二月八日
午後一時開議
第一 會計檢査官懲戒法案（政府提出貴族院送付） 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第三 會計檢査院法中改正法律案（政府提出貴族院送付） 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第五 明治二十九年法律第九十二號廢止法律案（政府提出貴族院送付） 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第七 船舶檢査法中改正法律案（政府提出貴族院送付） 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第九 裁判所及臺灣總督府法院共助法案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十 古物商取締法中改正法律案（望月長夫提出） 第一讀會
第十一 議員涜職に關する法律案（神鞭知常外五名提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十二 鐵道敷設法中改正法律案（鳩山和夫外三名提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十三 美術奬勵に關する建議案（根本正外一名提出）
第十四 教育基金より生する利子配付方に關する建議案（工藤行幹提出）
第十五 離島航海補助に關する建議案（藤金作外七名提出） （委員長報告）
第十六 名和昆蟲研究所國車補助に關する建議案（稻垣示提出） （委員長報告）
第十七 災害土木費に關する建議案（佐々木正藏外十三名提出） （委員長報告）
第十八 伊豆國神津島漁港修築費之國庫補助に關する建議案（高木正年外一名提出） （委員長報告）
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=0
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001・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
府縣農事試驗場國庫補助法中改正法律案
提出者稻垣示君
大津淳一郞君ヨリ內務省官吏ノ行爲ニ關スル質問書ヲ提出セラレタリ
堀家虎造君林喬君堀尾茂助君ヨリ提出セラレタル市町村行政監督權ニ關ス
ル法律案ヲ市制町村制中改正法律案ト訂正ノ旨提出者ヨリ申出テラレタリ
特別委員長及理事左ノ通當選セラレタリ
在外國帝國專管居留地特別會計法案
委員長安川繁成君理事三輪潤太郞君
曩キニ死去セラレタル蠶絲業調査所設置ニ關スル建議案委員名須川良平君
ハ議長ノ指名ナリシニヨリ其補闕トシテ松尾又雄君ヲ指名セリ
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
內務省官吏ノ行爲ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十三年二月八日
提出者大津淳一郞贊成者菅野善右衞門
外二十九名
質問主意書
內務省官吏ノ人民ノ面會ヲ一切謝絕スル理由如何
右及質問候也発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=1
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002・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ヨリ會議ヲ開キマス-大津淳一郞君
(大津淳一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=2
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003・大津淳一郎
○大津淳一郞君(百八十五番) 私ハ內務省官吏ノ行爲ニ關スル質問書ヲ提出
致シテ置キマシタ、是ハ誠ニ瑣細ナコトノヤウデハアリマスルケレドモ、人
民ト官吏トノ間ニ在ッテハ大事ナコトデアルト私ハ信ジマシタ、ソレハ內務
省ノ役人ガ一切人民ニ面會ヲ謝絕スルト云フ、一體日本ノ役人ハ免角其ノ官
尊民卑ノ弊風デ、奧ノ方ニ-役所ノ奧ノ方ニ引籠ッテ居ッテ人民ニ顏ヲ
見セナイ方ガ威權ガ行レルトカ尊イトカ云フヤウナ弊風ガアル併シ是ハ
其昔ノ藩閥ノ盛ナル時代ノ頃、若クハ其以前封建ノ時代頃ハ成ル程大名ガ
奥ニ引込ンデ居ルト云フ事柄ガ、如何ニモ重ミシク見エタノデアリマセウガ、
今日ノ立憲政治ノ此世ノ中ノ官吏ト云フモノハ成ルタケ表ニ出シテ人民ニ
直接シテ總テノ事柄ヲ知ッテ早ク處置スルト云フノデナクテハナラナイト私
ハ思フ、一體政務ヲ總テ文書ノ上デ行フト云フコトハ、敏活ヲ缺クノデス
片ノ書面ニ附イテデモ願人ガ往ッテ待ッテ居ッテ指令ヲ取ッテ來ルト云フ
ヤウニ段々運バズバナラヌ世ノ中デアルニ却テ人民ニ一切面會ヲ謝絕スル
ト云フガ如キハ、如何ナル國ニサウ云フコトガアル如何ナル國ノ官衙デモ
左樣ナコトハ決シテナイト私ハ思ッテ居リマス如何ニ人民デモ大面ヲシテ
居ル官吏ニ、役所ニ面會ニ往クノハ實ハイヤナノデス、併ナガラ用ガアレバ
仕方ガナイ、已ムヲ得ズシテ往ッテ、陳述シテ來ルト云フコトハ據ロナシニ參
ルソレヲ一切會ハヌト云フノハドウ云フ譯デゴザイマセウカ、其事柄ハ本
日ノ午前十時三十分ニ、茨城縣ノ人民ナル大津淳一郞ト云フ者ガ、內務省ニ
出頭致シマシタ此男ハ極テ官衙抔ヘ出掛ケルノハ嫌ナ男デ內務省ヘ何年
振カデ出掛ケテ往ッテ見タ所ガ、今日ノ內務省ハ如何ナル制規ニナッテ居マ
シマスカドンナコトニナッテ居ラレマスカ分リマセヌケレドモ、謹デ受付
ニ就イテ名刺ヲ出シテ、地理ノ事務ニ關スル御役人ナレバドナタデモ宜イ
カラ御面會ヲシタイト云フコトヲ申入レマシタ所ガ面會ハ出來ナイ誰
モ面會ハ出來ナイ事務ガ御多端ナラバ又重テ罷出マセウカト云フト、何時
デモ面會ハ出來ナイ偖斯ウ云フ事務ニ附イテハ面會ガ出來ナイト云フナラ
バ農商務省抔ニハ曾テ山林局カ何カデ聞イタコトガアル局長ヨリ外ニハ
面會ヲセヌコトニ極メテアルト云フコトデアッタカラ誰カ其中ノ責任ヲ脊
負ッテ面會ヲスル人ガアリマセウカラ、大臣次官ニ面會ヲスル程ノ用デハナ
イカラ其他ノ人ニ御會ヒシタイ一切何時御出ニナッテモ決シテ御面會
ハ出來マセヌト云フ、是ハ何タルコトデゴザイマセウカ一體地理トカ山林
トカ云フコトニ附イテハ成程世間ニ種々ナル此間ニ風說ハ起ッテ居ルノ
デ、過日上奏案ノ議事ノ際ニ橫濱埋立事件ト云フヤウナコトノ事件ノ如キ、
風說ガ世ノ中ニアルノデ、併ナガラ日本支那ヤ朝鮮ハ率ザ知ラズ、日本
ノ官衙ニ於テ天皇陛下ノ政務ヲ取扱フ日本ノ官衙ニ於テ、表門-正面ヨ
リ名札ヲ持ッテ往ッテ面會ヲ請フ人民ガ、官衙ニ於テ賄賂ノ取遣リヲシモ致
シマスマイシ、又賄賂ノ契約ヲ致シモシマスマイ、然ラバ表向ヲ謝絕シテ人
民ノ意見ヲ述ベル所ガナクナリマスレバ、却テ表向デハ困ルガ、裏門カラ來
タラバドウカシテヤラウト云フヤウナ弊風ヲ造出シハシナイカト云フ推測
モアラウカト思ヒマス、斯ノ如クニナリマスレバ却テ官紀ノ振肅ヲ保ツト
云ウテ却テ官紀ノ紊亂ヲ來スト云フモノデアラウト思フ故ニ斯樣ナ弊風ハ
爾今職務ニ差支ノナイ限ハ、表門カラ來シ者ハズン〓〓面會ヲシテ、懇切ニ
御話ニナッタ方ガ却テ早ク物ハ分ル心ニ疚シイコトサヘナケレバ如何ナル
政務ニ當リ、如何ナル事柄ニ附イテ取扱ヲスルトモ、決シテ耻ヅル所ハナイノ
デ、表向ニ拒絕シテ裏門カラ却テ用ヲ辨ズルト云フヤウナコトデハ却テ怪
ムベキコトニ陷ルデアラウト思ヒマス、內務省ハ過日モ內務次官ガ埋立事件
ニ附イテ述ベタル如ク、御自分ノ御證言ニ依レバ如何ニモ公平一點疚シキ
行ハナサラヌデアラウ、成ル程御自分デハサウデアリマセウケレドモソレ
ダケノ心持ガアルナラバ、何モ人民ガ表門カラ來タ者ニ面會セヌト云フ如キ
行ハ爲サレヌ方ガ宜イト思ヒマスガ、其理由ニ附イテ質問致スノデアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=3
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004・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 諸君ニ御諮リスルコトガアリマス、委員長新井章吾君
カラ、舊琉球藩吏役俸處分法案ノ委員會ヲ開キタイト云フコトデアリマスガ、
此際許シテ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=4
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005・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマスー-是ヨリ議事
日程ノ會議ニ移リマス議事日程第一會計檢査官懲戒法案第一讀會、議案ノ
朗讀ヲ省略致シマス、道家政府委員
第會計檢査官懲戒法案(政府提出貴族院送付)第一讀會
會計檢査官懲戒法案
會計檢査官懲戒法
第一章總則
第一條會計檢査官ノ懲戒ヲ受クヘキ場合左ノ如シ
一職務上ノ義務ニ違背シ又ハ職務ヲ怠リタルトキ
二職務ノ內外ヲ問ハス官職上ノ威嚴又ハ信用ヲ失フヘキ所爲アリタル
トキ
第二條懲。戒ハ懲戒裁判所ノ裁判ニ依リ之ヲ行フ
第三條懲戒ハ左ノ如シ
一譴責
二減俸
三免官
第四條減俸ハ一月以上一年以下年俸月割額ノ三分ノ一以內ヲ減ス
第五條免官ノ處分ヲ受ケタル者ハ其ノ判決ノ日ヨリ二年間官職ニ就クコ
トヲ得ス
第六條刑事裁判手續中ハ同一事件ニ付被告ニ對シ懲戒裁判手續ヲ開始ス
ルコトヲ得ス懲戒裁判ノ言渡前同一事件ニ付被告ニ對シ刑事訴追ノ始リ
タルトキハ其ノ事件ノ判決確定ニ至ルマテ懲戒裁判手續ヲ停止スヘシ
第二章懲戒裁判所
第七條懲戒裁判所ニ長官一人裁判官六人豫備裁判官六人ヲ置ク
長官ハ樞密顧問官ノ中ヨリ裁判官ノ中三人ハ大審院判事三人ハ會計檢査
院長ヲ加ヘ會計檢査官ノ中ヨリ內閣總理大臣ノ奏請ニ依リ之ニ補ス
豫備裁判官ハ前項ノ例ニ依リ之ニ補ス
第八條長官裁判官及豫備裁判官ノ任期ハ三年トス但シ補闕ノ爲補職セラ
レタル者ノ任期ハ前任者ノ殘任期間トス
第九條懲戒裁判所ハ長官及裁判官ヲ併セ七人ノ列席合議ヲ以テ裁判ス
第十條懲戒裁判所ニ於テハ長官ヲ以テ裁判長トシ長官事故アルトキハ上
席裁判官ヲ以テ裁判長トス
裁判官事故アルトキハ其ノ同一官廳ヨリ出テタル豫備裁判官ノ中ヨリ長
官其ノ代理ヲ命ス
第十一條懲戒裁判所ノ裁判ノ評議ニ關シテハ裁判所構成法ノ規定ヲ準用
ス
第十二條懲戒裁判所ニ檢察官一人ヲ置ク
檢察官ハ大審院勅任檢事ノ中ヨリ內閣總理大臣ノ奏請ニ依リ之ニ補ス
第十三條懲戒裁判所ニ書記三人ヲ置ク
書記ハ判任官ノ中ヨリ長官之ヲ命ス
第三章裁判手續
第十四條會計檢査院長ハ會計檢査院部長及檢査官ニシテ懲戒ニ該ルヘキ
所爲アリト認ムルトキハ懲戒裁判所檢察官ニ通告スヘシ
檢察官ハ事件ノ通告ヲ受ケタルトキ又ハ職權ヲ以テ懲戒裁判開始ノ申立
ヲ爲スヘシ
第十五條懲戒裁判所ハ檢察官ノ申立ニ因リ又ハ其ノ職權ヲ以テ懲戒裁判
ヲ開始スヘキヤ否ヲ決定ス但シ職權ヲ以テスル場合ニ於テハ檢察官ノ意
見ヲ徵スヘシ
第十六條懲戒裁判開始シタルトキハ被告ハ其ノ裁判終結ニ至ル迄職務ニ
就クコトヲ得ス
第十七條開始決定ニハ懲戒スヘキ所爲及證據ヲ開示スヘシ
第十八條開始決定ハ檢察官及被〓ニ送達スヘシ
第十九條懲戒裁判所ハ直ニ口頭辯論ノ期日ヲ定メ又ハ下調ニ付スルノ決
定ヲ爲スヘシ
下調ニ付スルノ決定ハ檢察官及被〓ニ送達スヘシ
第二十條懲戒裁判所下調ニ付スルノ決定ヲ爲シタルトキハ裁判長ハ裁判
官ニ其ノ下調ヲ命スヘシ
受命裁判官ハ必要ナル證據ヲ集取スヘシ
受命裁判官ハ證人訊問其ノ他證據集取ヲ區裁判所ノ判事ニ囑託スルコト
ヲ得
受命裁判官又ハ受託判事ハ證據集取ニ付刑事訴訟ニ於ケル豫審判事ト同
一ノ權ヲ有ス但シ受命裁判官ハ罰金ヲ言渡シ又ハ勾引狀ヲ發スルコトヲ
得ス
第二十一條被告下調ニ關シ呼出ヲ受ケタルトキハ代理人ヲシテ代理セシ
ムルコトヲ得但シ受命裁判官又ハ受託判事ニ於テ本人ノ出頭ヲ必要トス
ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十二條受命裁判官下調ヲ終リタルトキハ調書其ノ他一切ノ證據ヲ懲
戒裁判所ニ差出スヘシ
受託判事ハ囑託ヲ受ケタル職務ヲ終リタルトキハ調書其ノ他一切ノ書類
ヲ受命裁判官ニ送致スヘシ
懲戒裁判所ハ下調ノ補充ヲ決定スルコトヲ得
第二十三條懲戒裁判所下調ヲ充分ナリト認ムルトキハ檢察官ノ意見ヲ徵
シ口頭辯論ノ期日ヲ定メ又ハ免訴ノ決定ヲ爲スヘシ
免訴ノ決定ハ檢察官及被告ニ送達スヘシ
懲戒裁判所口頭辯論ノ期日ヲ定メタルトキハ之ヲ檢察官ニ通知シ被〓ヲ
呼出スヘシ
第二十四條辯論及判決ノ言渡ハ之ヲ公開セス
第二十五條口頭辯論ノ開始ハ裁判長之ヲ宣告ス
裁判長ハ先ツ被告ヲ審問シ次テ證據調ヲ爲シ檢察官及被告ヲシテ辯論ヲ
爲サシメ被〓ニ最終ノ發言ヲ許スヘシ
第二十六條懲戒裁判所ハ被告ノ申立ニ因リ書面審理ヲ爲スコトヲ得
懲戒裁判所ハ書面審理ヲ許シタル場合ト雖被告ヲシテ口頭辯論ヲ爲サシ
ムルコトヲ得
第二十七條懲戒裁判所ハ被告若ハ檢察官ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ
更ニ證據ヲ提出セシムルコトヲ適當ナリトスルトキハ之カ爲證人ノ召喚
其ノ他必要ナル命令ヲ發シ且口頭辯論ヲ延期スルコトヲ得但シ第二十條
第四項但書ハ本條ニ亦之ヲ準用ス
第二十八條懲戒裁判所ニ於テ書面審理ニ基キ判決ヲ爲ス場合ニ在リテハ
其ノ判決前事件ニ關スル書類ヲ檢察官ニ送致シ其ノ意見ヲ徵スヘシ
第二十九條懲戒裁判所ハ事件ノ辯論既ニ充分ナリトスルトキハ之ヲ終結
シ直ニ判決シテ之ヲ言渡スヘシ
被告辯論期日ニ出頭セスト雖直ニ判決ヲ爲シ之ヲ言渡スコトヲ得此ノ場
合ニ於テハ判決ヲ被〓ニ送達スヘシ
前二項ニ依リ直ニ判決スルコト能ハサルトキハ七日以內ニ判決ヲ爲シ之
ヲ檢察官及被告ニ送達スヘシ
書面審理ニ基キ判決ヲ爲シタルトキハ之ヲ檢察官及被告ニ送達スヘシ
第三十條裁判長裁判官ノ忌避、囘避、證據集取ノ手續、調書ノ調製及書
類ノ送達ニ關シテハ刑事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
書類ノ送達ハ書留郵便又ハ懲戒裁判所ノ使丁ヲ以テ之ヲ爲ス此ノ場合ニ
於テ郵便配達人及使丁ハ送達吏ト看做ス
第三十一條證人鑑定人及通事ハ旅費日當ヲ要ムルコトヲ得其ノ金額ニ關
シテハ刑法附則ヲ準用ス
第三十二條懲戒裁判所判決ヲ爲シタルトキハ長官ヨリ直ニ其ノ旨ヲ內閣
總理大臣及會計檢査院長ニ報告スヘシ
第四章罰則
第三十三條懲戒裁判所又ハ受命裁判官ヨリ證人トシテ呼出サレタル者及
鑑定又ハ通事ノ爲呼出サレタル者正當ノ理由ナタシテ呼出ニ應セス又ハ
其ノ義務ヲ盡ササルトキハ四圓以上四十圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十四條證人トシテ懲戒裁判所又ハ受命裁判官若ハ受託判事ヨリ呼出
サレタル者僞證ヲ爲シタルトキ及鑑定又ハ通事ノ爲懲戒裁判所又ハ受命
裁判官若ハ受託判事ヨリ呼出サレタル者詐僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ
月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス賄賂
其ノ他ノ方法ヲ以テ人ニ囑託シテ僞證又ハ詐僞ノ鑑定通事ヲ爲サシメタ
ル者亦同シ
前項ノ罪ヲ犯シタル者其ノ事件ノ判決ニ至ラサル前ニ自首シタルトキハ
本刑ヲ免ス
附則
懲戒スヘキ所爲ハ本法施行前ニ關スルモノト雖本法ニ從ヒ之ヲ訴追ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=5
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006・多田作兵衞
○多田作兵衞君(百二十九番) 特別委員會ノ許可ヲ受ケタウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=6
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007・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 何ノ特別委員會デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=7
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008・多田作兵衞
○多田作兵衞君(百二十九番) 私設鐵道法案デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=8
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009・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多田作兵衞君カラ私設鐵道法案ノ委員會ヲ開キタイト
云フコトデアリマスガ、許シテ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=9
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010・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=10
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011・多田作兵衞
○多田作兵衞君(百二十九番) 尙ホ委員諸君ニ一言申シテ置キマス、瀆職法
案ノ後ニ開クト云フコトヲ荒〓申シマシタガ、又瀆職法案ノトキハ出席スル
カラ其前ニ開カウト云フ御請求モゴザイマスカラ唯今ヨリ委員會ヲ開イ
テ、瀆職法案ノトキニハ又出席ヲ致シマスカラ、左樣御承知ヲ請ヒマス
(政府委員法制局參事官道家齊君演壇ニ登ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=11
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012・道家齊
○政府委員(道家齊君) 唯今議題ニナッテ居リマスル此會計檢査官ノ懲戒法
案ニ附キマシテ、大體ノ理由ヲ一言申上ゲタイト存ジマス、御承知デモゴザ
イマス通、會計檢査院法中ニ會計檢査官ノ懲戒ニ係ル條規ハ別ニ定ムル所ニ
據ルトゴザイマスノデアリマス卽チ特別ノ規定ニ據ルト云フコトニナッテ
居リマスルノデゴザイマスガ、今日マデ其制定ヲ見ルノ運ビニ至ッテ居リマ
セヌノデアリマス、然ルニ此懲戒ノコトハ固ヨリ何時其必要ヲ生ジマスルヤ、
豫メ測リ難イコトデモアリマスルシ、豫テ之ヲ制定致シテ置キマセネバ萬
一ノ必要ヲ生ジマシタ時分ニ、之ニ應ズルコトガ出來ナイヤウナ次第デゴザ
イマスカラ卽チ本案ノ制定ノ必要ヲ認メマシテ、本案提出ニナリマシタ次
第デゴザイマス、又檢査院法ニ據リマスルト、此懲戒法ハ別ノ規定ニ據ルトバ
カリゴザイマシテ、是ハ法律ヲ以テ制定致シマスルカ、將又勅令ヲ以テ制定致
シマスルカト云フコトハ別ニ明文ガゴザイマセヌノデアリマス併ナガラ
是レ亦御承知デモゴザイマス通、會計檢査官ノ分限ハ法律ヲ以テ保障セラレ
テ居リマスカラ、卽チ其進退陟黜ニ係ルコトデゴザイマスカラ矢張是ハ法
律ヲ以テ制定セラルヽガ當然ノコトデゴザイマス、故ニ此懲戒法ハ法律ヲ以
テ制定セラルヽタメニ此法律案ト爲ッテ提出ニナッタ譯デアリマス大體
ハ右樣ノ次第デゴザイマスカラ、何卒御協賛ヲ得マシテ、本案ノ成立致シマ
スルコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=12
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013・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 第三モ唯今一〓ニ說明ガアッタノデゴザイマス
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=13
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014・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) サウヂヤゴザイマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=14
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015・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) ドウカ序ニ說明ニナリマシテ、是ハ一括シテ委
員ニ付シタ方ガ宜カラウト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=15
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016・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 先ヅ此案カラ片附ケマセウ-格別御質問ガアリマセ
ネバ議事日程ノ第二特別委員ノ選舉ニ移リマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選擧発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=16
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017・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 九名ノ特別委員ヲ議長ガ指名致シテ御異議ガアリマセ
ヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=17
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018・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス-議事日程ノ第三會
計檢査院法中改正法律案、第一讀會、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
第三會計檢査院法中改正法律案(政府提出貴族院第一讀會
送付)
會計檢査院法中改正法律案
會計檢査院法第二條中檢査官補「三十二員」ヲ「二十員」ニ改ム発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=18
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019・井上角五郎
○井上角五郞君(百八十四番) 多度津開港ニ附イテノ建議案ノ特別委員會ヲ
是カラ開キタウゴザイマスカラ、許可ヲ得タウゴザイマス併テ委員ノ諸氏
ニハ第十三特別委員室ヘ御寄合ヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=19
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020・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 井上角五郞君カラ多度津港開港ニ關スル建議案ノ委員
會ヲ開キタイト云フコトデアリマスガ、許シテ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=20
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021・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=21
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022・石黒涵一郎
○石黑涵一郞君(五十番) 是ヨリ決算委員會ヲ開キタウゴザイマスカラ、許
可ヲ請ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=22
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023・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 石黑涵一郞君ヨリ決算委員會ヲ開キタイト云フコトデ
アリマスガ許シテ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=23
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024・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス-道家政府委
員
〔政府委員法制局參事官道家齊君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=24
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025・道家齊
○政府委員(道家齊君) 唯今議題ニナリテ居リマスル、會計檢査院法中ノ改
正法律案ニ附キマシテ、大體ノ理由ヲ一言申上ゲタイト存ジマス本案ハ檢
査官補ノ定員ノ改正デゴザイマシテ、現在ハ三十三名ト爲クテ居リマスノデ
ゴザイマスガ、之ヲ改メマシテ二十名ニ致スノデゴザイマスガ、其改正ヲ要シ
マスルノハ會計檢査院ノ事務章程ノ改正ノ結果ニ依リマシテ現在ノ定員ヲ
要サナイト云フコトニナリマシタガタメニ此改正ノ必要ヲ見タノデゴザイ
マス、ソレデ此檢査官補ノ是マデ執リマシタ其職制上ニ附キマシテハ檢査
官補ハ各課ニ分屬ヲ致シマシテ、ソレデ檢査事務ニ係ルコトヲ執ッテ居ッタ
ノデゴザイマス固ヨリ各課ニ分屬ヲ致シテ居リマスル故ニ、課長ノ責ニ
居ルノデハゴザイマスガ併シ實ハ課長ニ對シテ獨立ノ權能ヲ有スル姿ニ
ナッテ居ル從ッテ單獨ノ責任ヲ以テ檢査事務ヲ掌ッテ居ル、其結果ヲ總會
議又ハ部會議ニ提出シテ報告ヲシ併テ其報告ニ附キマシテハ辯明ノ責任ヲ
持ッテ居ッタンデゴザイマス、然ルニ今囘ハ檢査院ノ事務章程ヲ改正致シマ
シタニ附キマシテハ其檢査官補ガ是マデ責任ヲ持ッテ執ッテ居リマシタ事務
ノ如キ、卽チ課中一切ノ檢査ニ係ル事務ハ課長ガ卽チ檢査官ガ責任ヲ持ツコ
トニ改メラレマシタノデゴザイマス從ッテ其檢査致シマシタ事柄ニ附イテ
ハ課長ガ自ラ總會議又ハ部會議ニ報告ヲ致シテ併テツレニ附イテノ辯明
ノ責任ヲ持ツコトニナッタンデゴザイマス卽チ檢査官補ガ是マデ單獨ノ責
任ヲ持ッテ致シマシタノヲ廢シマシテ、檢査官補ガ恰モ檢査官卽チ課長ノ補
佐官ノ位地ニ立チマシテ、或ハ次長ノ位地ニ立ツト云フヤウナコトニ改メマ
シテ、卽チ檢査官ト檢査官補トノ間ニ於ケル、是マデノ職責ニ往々重複シテ
居ル所ヲ改メタノデゴザイマス、卽チ其結果ニ依ッテ檢査官補ノ定員ヲ要サ
ナイコトニナッテ、本案ヲ提出致シマシタ次第デゴザイマス、先ツ右樣ノ次
第デゴザイマスカラ、何卒御協贊ヲ得テ本案ノ成立スルコトヲ希望致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=25
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026・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 日程ノ第四ニ移リマス
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=26
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027・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 本案ハ前ノ案ノ委員ニ付託ニナランコトヲ希望
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=27
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028・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ハ恆松隆慶君ノ動議ノ如ク、前ノ案ノ委員ニ付託
シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=28
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029・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、議事日程第五明治
二十九年法律第九十二號廢止法律案、第一讀會、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
第五明治二十九年法律第九十二號廢止法律案(政第一讀會
府提出貴族院送付)
明治二十九年法律第九十二號廢止法律案
明治二十九年法律第九十二號ハ之ヲ廢止ス
附則
本法ハ發布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行ノ際明治二十九年法律第九十二號ニ依リ會計檢査院ニ增置シタル
一部ノ所屬職員ハ廢官トス
(政府委員法制局參事官道家齊君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=29
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030・道家齊
○政府委員(道家齊君) 此明治二十九年法律第九十二號制定當時ニ遡リマシ
テ考ヘマスニ此法律制定ノ當時ニ於キマシテハ今日ノ如ク臺灣トノ交通
ノ便モ未ダ十分ニ開ケテ居マセズ、又臺灣ノ事情モ未ダ十分ニ通達セザル所
ガゴザイマシタニ依ッテ、唯書面ノミノ往復デハ十分ニ檢査ノ實ヲ舉ゲルコト
ガ出來ナイト云フ理由ヲ以チマシテ、十分ニ檢査ヲ致シマスルニハ臺灣ノ
實地ニ就イテ檢査シナケレバナラヌト云フヤウナ必要カラ、此法律ガ制定ニ
ナリマシタノデゴザイマス然ルニ其後豫算上ノ都合ニ依ッテ此九十二號
ノ法律ヲ實施スルコトガ出來ナカッタンデアリマスソレデ巳ムヲ得ズ三十
年ニ至ッテ此九十二號中ニ附則ヲ追加シテ、卽チ檢査院ニ於テ一部ヲ增設シ
テ、檢査事務ヲ掌ルコトニナリマシタ而シテ此法律ニ依ッテ此二十九年度
三十年度ノ兩年度ニ亙ッテ檢査ヲ致シマシタ其實績ニ依ッテ見マスレバ
最早今日ノ特ニ臺灣ニ此支廳ヲ置カナケレバナラヌト云フ必要モ見エナイノ
デアリマス、然ル上ハ又特ニ檢査院ノ中ニ一部ヲ增設シテ、臺灣ノ經費ノ檢
査ヲシナケレバナラヌト云フ必要モ認メナイノデゴザイマス因ッテ此際此
九十二號ヲ廢シテ其部デ取扱ッタ事務ハ一般ノ部下ニ分配シテ處理スルコ
トニ致シマシタノデゴザイマス、是ガ本案提出ノ大體ノ理由デゴザイマスカ
ラ是レ亦御協賛ヲ得マシテ成立致シマスルコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=30
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031・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 議事日程第六ニ移リマス
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=31
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032・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 議事ノ進行上、前ノ委員ニ付託ニナッタ方ガ御便
利カト思ヒマスカラ、左樣願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=32
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033・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 恆松隆慶君ノ動議ノ如ク本案ヲ前ノ委員ニ付託スルコ
トハ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=33
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034・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=34
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035・出水彌太郎
○出水彌太郞君(百五番) 此際社寺上地林ノ委員會ヲ-発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=35
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036・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 出水彌太郞君ヨリ社寺上地林處分法案ノ委員會ヲ開キ
タイト云フコトデアリマスガ、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=36
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037・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ許スコトニ致シマス、次ハ議事日程
第七船舶檢査法中改正法律案第一讀會、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
三
第七船舶檢査法中改正法律案(政府提出貴族院送第一讀會
付
船舶檢査法中改正法律案
船舶檢査法中左ノ通改正ス
第一條日本船舶ハ左ニ記載スルモノヲ除クノ外此ノ法律ノ規程ニ依リ檢
査ヲ受クヘ
一總噸數二十噸未滿又ハ積石數二百石未滿ノ帆船
二端舟其ノ他櫓權ノミヲ以テ運轉シ又ハ主トシテ櫓櫂ヲ以テ運轉スル
舟
三倉庫船、繫留船
四平水航路ノミヲ航行スル帆船
第二條削除
第三條ニ左ノ一項ヲ加フ
日本ノ國籍ヲ取得スル目的ヲ以テ日本ニ於テ製造スル船舶ノ所有者ハ其
ノ製造中ト雖一部ノ檢査ヲ申請スルコトヲ得
第五條船舶ノ檢査ハ其ノ所在地ヲ管轄スル管海官廳之ヲ行フ
遞信大臣ハ必要ト認ムル場合ニ限リ前項ノ規定ニ依ラス特ニ檢査官吏ヲ
指定シテ船舶ノ檢査ヲ行ハシムルコトヲ得
第十條遞信大臣ノ特ニ定ムル場合ヲ除クノ外船舶檢査證書若ハ假證書ヲ
受有セスシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シ又ハ船舶檢査證書若ハ假證書ニ記載
スル船舶ノ航路定限、航行期間若ハ汽壓制限ヲ超エテ航行シ又ハ檢査官
吏ノ臨視ヲ拒ミ若ハ航行停止ノ命ニ違背シ又ハ屬具ノ整備ヲ爲サスシテ
船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルトキハ船長ヲ三十圓以上三百圓以下ノ罰金ニ
處ス
詐僞ノ所爲ヲ以テ船舶檢査證書若ハ假證書ヲ受ケタル者ノ罰亦前項ニ同
船舶檢査證書若ハ假證書ニ旅客定員ノ記載ナキ船舶ニ旅客ヲ搭載シ又ハ
該證書ニ記載シタル旅客定員ヲ超エテ旅客ヲ搭載シタルトキハ船長ヲ十
圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十一條第二項中「前條」ノ下ニ「第二項」ヲ加ヘ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前條第一項及第三項ノ罰則ハ船長ニ代リテ其ノ職務ヲ行フ者ニモ之ヲ適
用ス
第十六條中「百五十石以上」ヲ「二百石以上」ニ改ム
第十七條左ニ揭クル船舶ニ付テハ命令ヲ以テ別段ノ規程ヲ設ケ檢査ヲ執
行スルコトヲ得
一日本臣民ニ於テ借入レ日本各港ノ間又ハ日本ト外國トノ間ニ使用ス
ル外國船舶
二日本ノ沿岸又ハ湖川港內ノミヲ航行スル外國船舶
三日本各港ニ於テ旅客又ハ移住民ヲ搭載スル外國船舶
第十七條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第十八條地方長官ハ第一條各號ニ揭ケタル船舶ノ檢査ニ關シ遞信大臣ノ
認可ヲ受ケ必要ナル規程ヲ設クルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員遞信次官工學博士古市公威君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=37
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038・古市公威
○政府委員(古市公威君) 船舶檢査法改正案ハ四五箇條ノ改正ヲ致シマスノ
デアリマスガ、其中重ナルモノハ二ツアリマス一ツハ是マデ十五噸未滿ノ
蒸氣船ノ檢査ヲ致シマシタガ是ハ畢竟船舶檢査ノ機關ガ不足シテ居ッタノ
デ、地方ニ其檢査ヲ任シテゴザイマシタ併シ昨年來管海官廳ノ數モ殖ヱマ
シタ又來年度カラ二三箇所ヲ殖ス見込デアリマスカラ今日ニ在ッテハ蒸
氣船ハ總テ專門ノ官廳、卽チ海事局海務署ニ於テ檢査スルコトヲ得ルコト
ニナリマシタニ依ッテ、蒸氣船ハ總テ地方ノ手カラ取ッテ專門ノ官廳デ檢査
スルコトガ一ツ、ソレカラモウ一ツハ外國船ニシテ日本ノ領海ヲ航行スルモ
ノニ附イテ、何等ノ規定モ今日マデゴザイマセヌデシタ、併シ矢張日本ノ旅
客貨物ノ保安ノタメニハ適當ノ檢査ヲシナケレバナラヌ考デ、外國ニ於テ
モ之ヲ施行シテ居ルコトガアリマスカラ、ソレヲ是カラ施行スルコトニシタ
イト云フノガ一ツ右二點ガ重ナルモノデ其他ハ商法船舶法ノ規則ノ發布
ニ伴ヒマシテ少々ノ修正ヲ要スル廉ガアッテ、ソレヲ修正致シマシタノデア
リマス、速ニ御協賛アランコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=38
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039・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 格別御質問モナケレバ第八ニ移リマス
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ特別委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=39
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040・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 議長ガ特別委員九名ヲ指定シテ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=40
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041・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ナケレバ其通致シマス、次ハ議事日程第九裁判
所及臺灣總督府法院共助法案第一讀會ノ續委員長報告、鮫島相政君
第九裁判所及臺灣總督府法院共助法案第一讀會ノ續(書から
(政府提出)報〓
(鮫島相政君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=41
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042・鮫島相政
○鮫島相政君(百六十一番) 裁判所及臺灣總督府法院共助法案ノ委員會ノ結
果ヲ御報告致シマス、內地ノ各裁判所間ニ於キマシテハ、裁判所構成法ノ規定
ニ依リマシテ、互ニ共助ノ法モ極ッテ居リマスルガ、御承知ノ通臺灣ニハ未
ダ裁判所構成法ヲ實施致シテ居リマセヌノミナラズ、內地ノ裁判所ト臺灣總
督府法院トハ其組織モ異ニ致シテ居ル譯デアリマシテ、本案ノ如キ法律ハ最
モ必要デアル斯ウ云フ事情ヲ以チマシテ原案ヲ委員會デハ可決致シタノデ
アリマス至極簡單ナ法律案デゴザイマスカラ、直チニ二讀會ヲ開カレンコ
トヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=42
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043・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ニ附イテ第二讀會ヲ開クヤ否ヤノ採決ヲ致シマ
ス、第二讀會ヲ開カウト云フノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=43
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044・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ第一一讀會ヲ開クコトニ致シマスー
議事日程ノ第十古物商取締法中改正法律案、第一言會、議案ノ朗讀ヲ省略致シ
マス
第十古物商取締法中改正法律案(望月長夫君提出)第一讀會
古物商取締法中改正法律案
古物商取締法中左ノ通改正ス
第十七條「官沒スルコトヲ得」ヲ「被徵收者ニ還付スヘシ」ニ改ム
〔望月長夫君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=44
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045・望月長夫
○望月長夫君(二十二番) 簡單ニ本案ヲ提出致シタ理由ヲ述べマス、本案ハ
先キニ本院ヲ通過致シマシタ質屋取締法ノ改正案ト全ク同樣ナモノナンデ
ス、質屋取締法ト古物商取締法ト共ニ、明治三十三年ノ三月ニ同一ノ目的ヲ以
テ同時ニ制定セラレ同時ニ發布セラレタ法律ナンデス全ク兄弟トモ申スベ
キ法律ナンデス、其質屋取締法ノ第十六條卽チ先キニ本院ヲ通過致シタ箇條
ト、古物商取締法ノ第七條トハ文字ノ中ニ少ノ相違ハゴザイマスルケレドモ
全ク同樣ノ精神ヲ以テ出來テ居ル、本員ガ殊ニ唯今改正ヲ致サウト云フ場所
ハ全ク同一ノ文章ニ出來テ居ルノデアリマス然ルニ先キニ特ニ質屋取締
法ノ改正案ノミガ當議場ニ現レマシタガタメニ斯ノ如キ全ク同樣ノ法案ガ
一ツダケハ改正セラレズニ殘ッテ居ルノデゴザイマス、丸デ片足ハ改正致シ
タガ片足ハ其儘ニ措イテ跛ノ改正ニ相成クテ居ルト云フ次第ナンデス其
文章ハ既ニ理由書ノ中ニ書イテ置キマシタカラ今別ニ讀ミマセヌガ要ス
ルニ質屋取締法ト同樣デアル、一方質屋取締法ヲ改正致シマシタ以上ハド
ウシテモ此古物商取締法ヲ改正致シマセネバ衆議院ノ仕事ハ完成シナイ譯
ニ相成ルノデゴザイマスソレデ多辯ハ要シマセヌガドウカ速ニ御贊成ヲ
願ヒタイ殊ニ先キニ本院ヲ改正デ通過致シマシタ質屋取締法ハ今貴族院
デ委員ニ付託中デゴザイマシテ直チニ此法案ヲ可決致シテ貴族院二送ツ
テ同一ノ委員ニ付託スルコトニ相成リマスレバ至極都合ノ好イコト衆議院
ノ仕事モ亦完成スル次第デゴザイマスカラ、是ハ法律ノ改正デハゴザイマス
ケレドモ斯ノ如ク事理明白ナモノデゴザイマスルデ、願ハクハ速ニ可決セ
ラレンコトヲ私ハ希望致シマス、殊ニ是ハ無論政府ニモ反對ガナイコトヽ信
ジテ居リマスルデ、態一委員付託抔ノ手續ヲ經ズニドウカ讀會ヲ省略シテ速
ニ可決セラレンコトヲ併テ希望致シマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=45
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046・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 法律案ノコトデゴザイマスルデ、全體ハ委員付
託ヲ希望致シテ居ルデゴザイマスガ提出者モ卽決ヲ望ンデ居ルカラ是
ハ委員付託ニスルコトハ見合セマシテ、二讀會ヲ開クト云フコトダケニ今日
ナリマシテ明日ノ日程ニ載セラレテ十分此事ヲ勘考シタ上デ、決定致シタ
イト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=46
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047・前島丈之助
○前島丈之助君(十五番) 是ハ卽決ニナッタ方ガ宜シウゴザイマセウ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=47
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048・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 始ニ第二讀會ヲ開クヤ否ヤノ採決ヲ致シマシテ、若シ
是ガ可決スルナラバ直チニ二讀會ヲ開クヤ否ヤニ附イテ採決ヲ致シマ
ス恆松隆慶君ノ第二讀會ヲ開カウト云フニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=48
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049・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス直チニ開クコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=49
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050・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ直チニ第二讀會ヲ開キマシテ、全部
ヲ議題ニ供シマス
古物商取締法中改正法律案第二讀會
〔「讀會省略」ト呼ヒ「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=50
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051・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 讀會省略ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=51
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052・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ讀會ヲ省略スルコトニ致シマスっ本
案ニ御異議アリマセヌカ
古物商取締法中改正法律案確定議
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=52
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053・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ確定ト認メマス-議事日程第十一
議員瀆職ニ關スル法律案、第一讀會ノ續、委員長ノ報告
第十一議員瀆職ニ關スル法律案(神鞭第一讀會ノ續委員長-
知常君外五名提出)報告
〔伊藤德三君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=53
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054・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 此問題ニハ段々委員會ニ出テ居ル人ガ出席シタ
イト云フコトヲ申シテ居リマス、(ドウカ此場合御呼寄セニナッタラ宜カラウ
ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=54
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055・伊藤徳三
○伊藤德三君(四十五番) 諸君、議員瀆職ニ關スル法律案ノ委員會ノ經過ヲ
御報告ヲ致シマス、本案ハ委員會ニ於キマシテ、否決ト云フコトニ決定ヲ致シ
タノデゴザイマス(ノウ〓〓)「ノウ」ト仰シヤル御方ガゴザイマスルケレドモ、
本員ハ委員會ヲ代表シテ委員會ノ報告ヲスルノデアルカラ「ノウ」ト言ッタ所
ガ仕方ガナイ(ノウ〓〓)默ッテ御聽ナサイ、之ヲ否決致シマシタ理由ハ摘ン
デ見マスルト五ツニ別レマス、第一此法律案ガ不完全デアルト云フコトガ第
一デゴザイマス、其不完全デアルト云フコトハ、何故ニ不完全デアルカト申シ
マスレバ、發案者ガ適用シヤウト申シマスル所ノ刑法ハ、收賄罪ヲ罰スルコ
トハ規定シテゴザイマスルケレドモ贈賄者ヲ罰スル規定ガナイノデゴザイマ
ス、賄賂罪ノ如キモノハ申スマデモゴザイマセヌケレドモ、贈ル者與ヘル者雙
方罰シナケレバ刑罰ノ效ガナイノデアルソレデ單リ之ヲ受クル者ヲ罰スル
ト云フコトニナリマシテハ、不完全ト申サナケレバナラヌノデアル、ソレデ政
府ハドウデアルカト申シマスレバ政府ハ今日行レテ居ル所ノ刑法ハ社會ノ
進步ニ伴ハナイ所ノ刑法デアルカラシテ、業ニ旣ニ草案ヲ拵ヘマシテ、將ニ議
會ニモ提出セントシタ位ノコトデゴザイマス、斯樣ニ社會進步ニ伴ハナイ政
府ガ旣ニ改正シナケレバナラヌ社會モ亦改正シナケレバナラヌト云フ法律
ヲ、殊更ニ玆ニ是ヲ適用スルト云フコトハ誠ニ不完全ナ譯デアル、是ニ於小
發案者ハ何ト申シマスルカト申シマスレバ元來我邦ノ刑法ハ働掛ケト云コ
トニ附イテハ罰シナイ主義デアル、働キヲ受ケル方ヲ罰スル主義デアルカラ、
斯クナッテ居ルト云フコトヲ申シテ居リマスル、其働掛ケヲ罰シナイト云フ
コトノ主義ガ惡イカラ、政府ガ之ヲ改正シヤウト云フ今日計畫中デアル左
樣ナ不完全ナモノヲ適用スルト云フコトハ不當モ亦甚シイモノデアルト云
フコトニナリマシタ譯デゴザイマス、ソレカラモウ一ツ不都合ナ廉ガゴザイ
マスルガ、此議案ノ趣意ニ依リマスルト、貴族院議員、衆議院議員、府縣會
議員、及總代ト云フコトガ加ッテ居リマスルガ是レ亦不完全ト申サナケレバ
ナラヌ、ソレデ發案者ノ如ク、貴族院議員、衆議院議員モ、或ハ北海道ニゴ
ザイマス所ノ總代ノ如キモノモ、同ジモノデアルト云フコトニ自ラ下ッテ
考ヘテ見マシタナラバ率ザ知ラズ、私共ノ考ヘル所デハ、貴族院議員ナリ衆
議院議員ナリト申シマスル者ハ最高立法府ノ議員デアッテ、決シテ彼ノ村
會議員トカ總代トカ云フモノト同一視スベキモノデナイ、ソレ故ニ宜シク斯
ノ如キ法律ブ制定シヤウト思ヒマシタナラバ最高立法府ノ議員トソレカ
ラ其他ノ議員等ヲ區別シナケレバナラヌノデアル所ガ其區別モアリマセヌ
デ唯貴衆兩院議員、下ッテ總代ニ至ルマデモ一括シテ、之ヲ包括セシムルト
云フコトハ甚ダ不都合ナモノデゴザイマスル斯ル不完全ナル法律ヲ以
テ、吾ミ名譽アル又最高ノ立法府ニ立ツ所ノ議員ヲ檢束シナケレバナラヌト
云フ玆ニ必要ガアルカト申シマシタナラバ斯ノ如キ不完全不當ナル法律
ノ施行シテモヤラナケレバナラヌト云フ、今日ハ一ツモ必要ガナイノデアル
(ノウ〓〓)元來法律ト云フモノハ諸君モ御承知ノ如ク社會ニ必要ガ生ジ
テ來テ始テ設ケルト云フ譯ノモノデアル、然ルニ未ダ必要ノ生ジナイノニ
斯ノ如キ不完全ナモノヲ無理ニ適用スルト云フコトハ大變ナ間違デアラウ
ト私ハ考ヘマスル、斯ノ如キコトヲ强テ適用シヤウト致シマシタナラバ、或
ハ後年子孫ノ笑ヲ受クルコトガアリハシナイカト思レマス(「報告ナラ報告ラ
シク述フベシ議長ニ注意ヲ願フ」ト呼フ者アリ)是ガ卽チ報告デアル何
處ガ報告ノ如ク見エマセヌカ(「默レ、君ノ議論ヲ聽クニハ足ラヌ」ト呼フ者
アリ)本員ノ議論デハナイ(「サウ云フコトハ速記錄ニアル速記錄ヲ見タマ
ヘ」ト呼フ者アリ)ソレカラ次ニ此法律ヲ實行スル場合ニハ大變危險デア
ルト云フコトガゴザイマス、(「君等ハ危險カモ知レナイ」「オレ等ハ危險デハ
ナイゾ」ト呼フ者アリ)危險デアルト云フ理由ハ如何ナル理由カト申シマ
スルト、先ヅ此法律ヲ拵ヘタ以上ハ裁判權ノ屬スル所ヲ定メナケレバナラ
ヌノデアル所ガ之ヲ直チニ司法裁判所ニ委ネルト云フコトハ委員會ハ危
險デアルト、認メタノデゴザイマス(ノウ〓〓)何ガ是ガ司法裁判所ニ委ネ
ルノガ危險カト申シマスルト、今日ノ司法裁判所ハ餘程發達シテ居リマスル
ケレドモ隨分此賄賂罪抔ト云フモノヲ審理スルト云フコトハ裁判所ニ於
キマシテモ餘程困難ナモノデアル、困難ナモノデアリマスカラシテ、此嫌疑
事件ガ一件裁判所ニ現レマシタ場合ニ名譽アル貴族院議員或ハ名譽アル衆
議院議員ガ直チニ嫌疑ノタメニ拘留ヲ受ケ審問ヲ受クルト云フコトハ誠
ニ危險極マル次第デゴザイマセウ(ノウ〓〓)ソレデ詰リ危險ト云フコトハ
今ノ司法裁判所ニ委ネルガ危險デアルト云フ譯デ、詰リ本案ヲ否決スルノ理
由ニナリマシタ譯デゴザイマス、ソレカラ本案ノ如キ法律ガ成立チマシタナ
ラバ立法權ヲ傷ケルノデアラウ(ノウ〓〓)斯ウ云フコトガ第三ノ理由ニ
ナッテ居リマス其譯ハドウ云フ譯カト申シマシタナラバ既ニ我邦ノ兩院
議員ハ憲法第五十三條ノ特典ヲ受ケテ居ル所ノ議員デアリマスル憲法第五
十三條ノ特典、且ツ議院法ニ於テモ九十四條以下ニ懲罰ノ箇條モ設ケテア
ル斯樣ナ特典ノアルモノガ殊更ニ前申シマシタ如キ不完全ナル法律ノ下
ニ支配セラレ、又其法律ヲ以テ被告事件ノ起リマシタ場合ニ、之ヲ司法裁判
所ガ管轄スルト云フコトニナリマシテハ如何ニモ最高立法府ノ體面ヲ汚
シ獨立ヲ害スルト云フコトニナッテ參ルノデゴザイマスソレデ其場合ニ
不都合ガゴザイマシタカラト云ウテ、一旦此法律ヲ設ケタ曉ニハ之ヲ囘復
スルト云フコトハ餘程困難デアラウト思ヒマスル是等ノ點ハ委員會ニ於
キマシテモ大ニ憂慮致シタ譯デゴザイマシテ、詰リ要スルニ立法權ヲ傷ケル
ト云フ結果ヲ生ズルト云フコトニ相成ルノデゴザイマス、ソレカラモウ一ツ
先キニモ略〓申シマシタガ裁判管轄ノコトデアル裁判ノ管轄ト云フコト
ニ附イテハ、餘程諸君ニ於テモ御考ニナラナケレバナラヌノデアル、委員會ニ
於キマシテモ餘程此裁判管轄ノコトニ附イテ議論ヲ致シタ譯デゴザイマス
ルガ、今發案者ノ如ク之ヲ直チニ司法裁判所ニ委ネルト云フコトニナリマシ
テハ如何ニモ議院ノ獨立體面ト云フモノニ疵ガ附ク譯デゴザイマスルカラ
シテ、或ハ之ヲ是非此通ニ法律ヲ拵ヘテ此社會ノ害惡ヲ防ガウト致シマスタ
ナラバ、ドウシテモ矢張一ノ裁判所ヲ拵ヘナケレバナラヌ、其裁判所ハ或ハ行
政裁判所ト大審院ト或ハ兩院カラ組織シタ所ノ裁判所カ何カサウ云フヤウ
ナモノヲ拵ヘテ獨立ノ裁判所デ以テ之ヲ裁判スルト云フコトニ致サナケレ
バ大變危害ガ及ブト思ヒマスサウ云フ譯デゴザイマスカラ先ヅ此法律
ヲ定メヤウト致シマスニハ裁判管轄及裁判ノ手續ヲ調べナケレバナラ
ヌソレ故ニ咄嗟ノ間ニ此不完全ナ法律ヲ以テ、直チニ不完全ナ刑法ヲ用ヒ
テ以テ之ヲ罰スルト云フコトハ大變ナ間違デアラウト思フ、ソレ故ニ委員
會ハ裁判管轄ニ附イテ又定メナケレバナラヌト云フコトヨリシテ、此裁判管
轄ト云フコトハ第一ノ理由ニナッテ居リマス、ソコデ第五ノ理由ハ寧ロ斯ノ
如キ不完全不十分ナ法律ヲ拵ヘルヨリモ、寧ロ議院ニ與ヘラレタ所ノ特權ヲ
擴張シテ以テ、此害惡ヲスル者ヲ防グガ宜シイト云フノモ一ツノ理由デア
ル、ソコデ是非此瀆職法案ヲ官吏侮辱法案ヲ利用シテ、サウシテ之ヲ法律トシ
テ以テ吾〓及貴族院議員ノ支配ヲサセル、或ハ其他ノ名譽職或ハ總代トカ
府縣會議員トカ總代トカ云フモノヲ支配サセルト云フコトハ如何ニモ不都
合テアル、デ、府縣會議員ハ別トシテサウシテ貴族院議員ナリ衆議院議員ナ
リハ此特典ヲ擴張シテ、議院法ヲ改正シマシテ議院法ニ於テ斯ウ云フ行爲
ヲ支配スルト云フコトニ致シマシタナラバソレコソ完全ナ譯デアラウト思
ヒマス强チ委員會ノ多數者ハ此法律ノ精神ヲ排斥シタト云フ譯デハナイノ
デアル、精神ハ贊成スルノデアル贊成スルノデアルケレドモ今俄ニ流行病
或ハ鄰國デモ侵入シテ來タト云フ場合ノ如ク、遽テヽ以テ此不完全ナ不十分
ナ法律ヲ拵ヘマシテ、サウシテ一旦ソレニ服從シタ以上ハ、體面ヲ害スル譯ニ
ナッテ之ヲ囘復スルコトガ困難デアル故ニ是ハ寧ロ是ヨリ徐ロニ調査シ
テ、或ハ列國ナリ其他ヲ調ベテ、新シク我國ニ於テ拵ヘヤウト致シマスレバ
拵ヘルダケノ十分ナ調査ヲ致シテサウシテ續イテ裁判權ニ屬スル所ノ或ハ
其他ノ手續ニ附キマシテ、十分ナ調ヲシテ此法律ヲ拵ヘルト云フコトニ致シ
テ、決シテ遲クハナイ譯デアリマスカラ、是ハ免ニ角本案ノ如キ不都合ナモノ
ハ否決スルト云フコトニ、委員會ノ多數ハ決シマシタ、是ダケヲ委員會ノ經過
トシテ報道致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=55
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056・佐藤清
○佐藤〓君(三十九番) 委員ニ對シテ質問ヲ致シマスノデアリマス、第一ノ
質問ハ委員會ニ於テ此種ノ如キ法案ヲ必要ト認メタヤ否ヤ、今日實際ニ於テ
必要ト認メタヤ否ヤソレカラ最後ニ至ッテ議院法改正ト云フコトニ附イ
テ、其見込ハ如何ニ、此二〓ニ附イテ質問ヲ致シタイノデアリマス、本案ノ
如キハ今日實際ニ於テ歷然トシテ實際ニ現レテ居ル問題ガ多クアルノデアリ
マス、人民ハ張目シテ眼ヲ拭ウテ本案ノ成敗如何ニト云フコトニ附イテハ、耳
ヲ傾ケ目ヲ注イデ居ルト云フコトハ分リ切ッテ居ル、委員ノ審査ニ於ケル報告
ニ於テハ、五箇條ニ相成ッテ縷々報告ヲセラレマシタケレドモ日本ノ現行
ノ刑法ノ不完全ヲ說カレ或ハ議院法ノ權能ノ狭隘ナルヲ說カルヽガ是ガ
今日實際ニ於テ必要ト認メラルヽヤ否ヤト云フコトニ附イテハ更ニ說明
ガナカッタノデゴザイマスソレデ今日實際ニ於テ斯ノ如キ取締ヲ要スルヤ
否ヤト云フコトハ政府ニ於テモ巳ニ認メテ居ルト云フコトデ、刑法ノ改正
案ヲ今提出シヤウト云フ取調ニ掛ッテ居ラルヽト云フコトデアル又議員ハ
進デ此取締ヲ爲サナケレバナラヌト云フ、今日ノ法案ガ出來テ居ルノデアル
提出者モ申サレタルガ如ク、大ニシテハ一國ノ輿論ヲ代表スベキ代議ノ府デ
アル此衆議院貴族院ニ對シテ種々ナ惡評ガ續々ト起ルト云フヤウナ、悲ム
ベキ現狀ニナッテ居ルノデアル、ソレデ斯ノ如キ法律ヲ以テ取締ヲ要スルト
云フガ如キハ一面ニ於テ悲ムベキコトデアルケレドモ此社會ノ腐敗ヲ防
腐スルト云フ一點ニ於テ巳ムヲ得ザル所デアルカラ、寧ロ單行法的ニ刑法
ノ改正ヲ待ツヲ忍ビナイ、寧ロ事實ヲ待ツニ忍ビヌト云フ急務ニ屬シテ居ル
故ニ淚ヲ呑ンデ此單行法ヲ設ケタイト云フノガ、立案者ノ精神デアル(「無用
無用」ト呼フ者アリ)委員長ノ報告デハ政府デモ之ヲ旣ニ必要ト認メテ刑法
ノ改正ニ此條項ヲ加ヘヤウト云フコトニナッテ居ルト云フコトデアルカラ
是ハ今日ニ改正スルコトハ認メヌト云フコトノ報告ニハアリマシタケレド
モ政府デモ斯ノ如ク、議員デモ斯ノ如クデアッタナラバ目下焦眉ノ急務
ニ屬スルト云フコトハ、固ヨリ論ヲ俟タヌノデアル、然ラバ委員會ニ於テハ
今日ニ巳ムベカラザルノ必要ガアルト云フコトヲ認メタヤ否ヤト云フコトヲ
聞キタイノデアル、ソレカラ此議院法ノ權限ガ狹隘デアル是ニ附イテハ改
正ヲスルト云フコトノ御見込ニ付イテ、ソレニ付イテ意見ガアリマシタヤ否
ヤト云フコトヲ承リタイノデアル、必要ヲ認メタルガ如ク認メザルガ如クデ
ハ要領ヲ得ナイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=56
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057・伊藤徳三
○伊藤德三君(四十五番) 分リマシタ、御答致シマス、質問者ノ御考ニ致シ
マスト、既ニ目前ニ此法律ヲ設ケナケレバナラヌ必要ガ起ッテ居ルカラシテ
宜シク不完全ナガラ刑法ノ或ル箇條ヲ適用シテ、サウシテ此議案ヲ提出シタ
譯デアル所デ委員會ハ今必要ガナイカト云フ御尋ト思ヒマシタガ(「認メタ
ラ勝手ガ惡ルカラウ」ト呼フ者アリ)委員會ニ於テハ大ニ其邊ニ附イテハ注
意ヲ致シタノデゴザイマス、將來今日ハ率ザ知ラズ、將來ニ賄賂ヲ授受シテ以
テ議員ガ思想ヲ曲ゲルト云フヤウナコトガアッテハナリマセヌカラ、之ヲ設
クルノ必要ハアル、必要ハアルケレドモ今質問者ノ言ハルヽ如キ、ソンナ大キ
ナコトニハ委員會ハ考ヘテ居ラヌ、ソレデ將來ハ餘程此〓ニ附イテハ吾〓ノ
權利ヲ擴張シサウシテ議院ノ獨立ヲ傷ケナイヤウニ議員ノ體面ヲ傷ケナ
イヤウニ立派ナ法律ヲ設ケルカ若クハ議院法ヲ改正シテ立派ナコトニ致
シタイト云フ考デアル、ソコデ質問者ノ如ク或ハ今現ニ焦眉ノ急ガアルト云
フ如キ考ヲ以テ、斯ノ如キ不完全ナ法律ヲ一旦設ケタ場合ニハ之ヲ改正ス
ルコトガ出來ナイ一旦法權ノ下ニ立法部ノ議員ガ若シ犯罪アリトシテ屈從
シタル場合ニハ、之ヲ取違スト云フコトハナカ〓〓困難デアルカラシテ、其
輕重ヲ量ッテ見マスレバ、決シテ今日コンナ不完全ナル法律ヲ設クベキモノ
デナイト云フコトヨリシテ否決ヲ致シマシタノデゴザイマス、ソレカラ
議院法改正ノ目的ト云フコトニ附イテ御尋デゴザイマシタガ、此議院法改正
ト云フコトハ諸君ト力ヲ併セテ、サウシテ完全ナル改正ヲシタイト云フ希
望ヲ有ッテ居ルノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=57
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058・星松三郎
○星松三郞君(二百八十三番) 委員長ニチヨット質問致シタイ、私ハ極短カ
イ本案ハ精神ハ贊成スル、本案ニ附イテハ精神ノ上ハ贊成スル、本案ニ附イ
テ精神ハ贊成スル本案ノ精神ヲ贊成スルトシタナレバ、何故ニ否決ヲナサッ
テ之ヲ修正ナサレヌノデアルカト云フコトヲ、御問申シタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=58
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059・伊藤徳三
○伊藤德三君(四十五番) 御答ヘ致シマス本案ノ精神ハ豫テ申ス通、贊成
デゴザイマス所ガ之ヲ修正致サウト思ヒマスト先ヅ裁判管轄ヲ定メンケ
レバナラヌ、又裁判管轄ノ〓ニ就イテハ非常ニ反對デアル-諸君ト反對デ
アル諸君ハ司法裁判所デ宜イト言レルケレドモ決シテ是ハ司法裁判所ニ
委ヌベキモノデハアリマセヌ、特別ナル裁判所ヲ設ケマシテ、名譽アル權力
アル所ノ者ヲ裁判シナケレバナラヌコトニナルカラ、裁判所ノ手續及裁判所
ノ管轄ヲ定メテ完全ナルモノトシテ、此法律ヲ拵ヘタイモノデアルト云フ考
デアル精神ハ宜イケレドモ此斯ウ云フ杜撰ナモノヲ以テ、吾〓ドモヲ拘束
スルコトハ甚ダ不當デアルカラ贊成スルコトハ出來ナイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=59
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060・藤澤幾之輔
○藤澤幾之輔君(百二十番) 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=60
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061・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 藤澤幾之輔君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=61
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062・小松喜平治
○小松喜平治君(百三十五番) 議長-議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=62
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063・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 藤澤幾之輔君ニ發言ヲ許シマシタ
〔藤澤幾之輔君演壇ニ登ル〕
〔小松喜平治君「大ニヤリタマヘ、何ノタメニコンナ案ヲ出シタ」ト呼
フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=63
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064・藤澤幾之輔
○藤澤幾之助君(百二十番) 本案ニ於キマシテ委員會ノ少數意見ヲ御報道致
シマス先ヅ此本案ニ對シテ修正致シマシタ所ガアリマスカラソレヨリ申
シ上グルコトニ致シマセウ、本案ノ末段ニ「其他法律命令ヲ以テ定メタル議員
及委員ニ適用ス」ト斯ウアリマスル所ヲ「其他法律命令ヲ以テ定メタル議員委
員會員及總代ニ適用ス」ト斯樣ニ修正致シマシタ、如何ナル理由ヲ以テ斯ノ如
ク修正ヲ致シタカト申シマスレバ本件ニ附キマシテハ二囘委員會ヲ開キマ
シタ卽チ其前ノ委員會ニ於キマシテ私共ヨリ政府委員ニ對シマシテ政府ノ
意向ヲ確メマシタ所ガ、政府ハ大體ニ於テハ此案ニ贊成デアル、斯樣ニ挨拶
ヲ致シマシタ、大體ニ附イテ贊成デアルト云フコトナレバ、何カ其間ニ多少
滿足シナイヤウニ思ハレルガ何處カ此本案ニ附イテ缺〓デモアルノカト思ハ
ルヽノデアルカト云フコトヲ尋ネマシタ所ガ本來此法案提出ノ趣旨ヲ案ズ
ルニ官吏公吏以外ノ者ニシテ公務ニ從事シテ居ル卽チ公務ニ從事シテ居
ル者ガ其職ヲ利用シテ不正ノ所行ヲ爲シタトキ、卽チ收賄ノ所行アッタト
キ罰シヤウトスルノデアラウト思フガ、單ニ議員及委員トアツテハ未ダ
是等ノ者ヲ網羅シ盡シタイトハ思レナイ、斯樣ニ言レマシテ、ソレカラ段々
質問ヲ致シマシタル結果ニ於キマシテ、法律命令ヲ以テ定メタル所ノモノハ
啻ニ議員ニ止ラズ、委員ニ止ラズ、尙ホ會員ト云フモノガアル、一例ヲ舉ゲテ
見マスレバ博士會員ノ如キ又北海道總代ノ如キ、博士會員ノコトハ說明致シ
マセヌデモ御分リノコトデアリマスガ、此總代ト云フコトニ附キマシテハ
少シク申上ゲテ置ク必要ガアル總代ト申セバ何處ニデモ是マデ聞キ得タル
所ノ總代ノ如ク思ハルヽ方ガアリマセウガ是ハサウデハナイ、全ク北海道
ノ總代ニ限リ法律命令ヲ以テ定メタル所ノモノハ北海道以外ニ總代ト稱ス
ルモノハナイ北海道ノ總代ハ御承知デゴザイマセウ、內地ノ町村會議員ノ
如キモノデ、其權限ハ最モ狹キ所ノモノデアリマス、矢張是レ亦法律命令ノ
定ムル所ニ依リマシテ、公務ニ從事スル所ノモノデアル、斯ノ如ク修正致シマ
スレバ最早政府ニ於テモ遺憾トスル所ノモノガナラウカト思ハルヽ卽チ
私共ハ曩ノ提出ノ目的ヲ貫徹スル上ニ於テ、斯ノ如ク修正スルコトハ必要デ
アルト信ジマシタルガタメニ斯ノ如ク修正致シマシタソレカラ是ニ附キ
マシテ一言附加ヘテ置キタイコトハ此政府デ唯今起草ニ從事シテ居リマス
ル所ノ刑法ノ草案、此草案ト云フモノハ未ダ確定致シマシタルモノデハナイ
サウデゴザイマス、是ハ一種異ツタ名稱デアリマスガ、餘程矢張斯樣ナ種類
ノ法律ヲ作ルコトニハ困難ヲ極メラレマシタモノト見エマシテ公務委員
ト云フモノヲ、官吏公吏ノ外ニ公務委員ト云フモノヲ現シタサウシテソレ
ニ註釋ヲ加ヘテ居ルヤウデアリマス、卽チ「官吏公吏公務ニ從事スル職員委
員其他ノ會員ヲ云フ」卽チ公務委員トハ如何ナルモノヲ云フカト云フ問ヲ致
シマシタ如クニ致シテ、ソレニ對シテ解釋ヲ附シテ居ル、矢張其趣意ハ本
案ノ趣意ノ如クデアリマス、唯此刑法ノ草案ト異ナッテ居リマスル所ノモノ
ハ刑法ノ草案ニ於キマシテハ是マデノ刑法ノ主義ヲ改メマシテ、贈賄者モ
共ニ罰スルト云フコトニナッテ居リマス此〓ニ附キマシテハ後ニ述ベマセ
ウ、卽チ修正ノ趣旨ハ大要斯ノ如クデアリマス、是ヨリ斯ク修正ヲ致シマシテ
サウシテ是ハ可決セヌケレバナラヌモノデアルト云フ趣旨ヲ申述ベマス此
趣旨ヲ申述ベマスルニハ唯今委員長ガ委員會ノ報告トシテ、御述ニナリマシ
タル所ノ順序ニ附イテ說明シマスレバ自ラ明瞭ニナルコトデアリマスカ
ラ、委員長ノ演說ノ順序ニ從ッテ申述ベマス、第一ニ委員長ハ此法案ハ不完
全デアルト云フコトヲ申述ベラレマシタサウシテ其理由ヲ聽クニ其中ノ
一ハ贈賄者ヲ罰シナイノガ不都合デアル斯ウ云フコトデアリマスガ之ニ
對シテ辯解致シマスレバ我邦ノ現在ノ法律ニ於キマシテハ官吏モ公吏モ
收賄者ノミヲ罰シテ居リマシテ、贈賄者ヲ罰シテ居ラヌノデアリマスサウ
シテ此法律ハ新ニ一ノ法律ヲ作ラウトスルノデアリマセヌデ、官吏公吏以外
ノ者ニシテ公務ニ從事シテ居ル者ガ、公務ヲ利用シテ竊ニ不正ヲ働クトキニ
適用セントスルノデアリマスカラ、未ダ刑法ノ改正セラレマセヌ今日ニ於キ
マシテハ矢張是ハ受賄者ノミ罰スルト云フコトガ至當デアラウ、假ニ至當
ニアラズト致シマシテモ、此贈賄者マデヲ罰スルト云フコトハ、刑法ノ改正ト
共ニ實行致シマスルコトガ然ルベキコトデアラウト存ジマス尙ホ此事ニ附
イテ一言致シマセヌケレバナリマセヌガ、贈賄者ヲ罰シナイノガ不都合デア
ルカラ、是ハ不完全デアッテ反對セザルヲ得ナイト云フコトデアリマスガ、是
ハ先刻ドナタカモ席ニ於テ御述ニナッタヤウデアリマシタガ、果シテ委員長等
ノ意見ノ如クデアッタナラバ贈賄者ヲモ共ニ罰スルト云フコトニ修正致シマ
スルコトハ、誠ニ易々タルコトデアル、誠ニ造作ナキ所ノモノデアリマスカラ、
此案ニ對シテ修正ヲ試ラレテ然ルベキコトデアラウト存ジマス(「ヒヤ〓〓
ト呼フ者アリ)ソレカラ其次ハ不權衡デアルト云フコトヲ、此不完全デアル
ト云フ段ノ中デ御述ニナリマシタ其說ヲ聞クニ特權ヲ有シテ居ル所ノ貴族
院議員ダトカ衆議院議員ダトカ云フモノト、區會議員ダトカ、村會議員ダト
カ云フヤウナ者ヲモ、共ニ引括メテ同一ノ法律ノ下ニ立タセルト云フコトハ
甚ダ不權衡デアル、斯ウ云フコトデアリマスガ、此〓ニ附キマシテハ斯ウ云
フコトヲ述ベマシタラ御分リニナリマセウ、我邦ノ刑法ノ前ニハ國民ニ差等
ヲ附ケテ居ナイ大臣モ等外吏モ、雇吏モ苟モ官吏デアル苟モ公吏デア
ルト云フトキニ於キマシテハ矢張同一ノ法律ニ支配サレテ居ルノデアリマ
ス、唯罪ノ輕重ノ如キニ至リマシテハデスソレハ固ヨリヱライヤツガ惡ル
イコトヲ致シマシタ時分ニハ刑法ノ許ス限重刑ニ處シテ宜シイ、低イ所ノ
者ニシテ狀情ガ輕カッタナラバ固ヨリ刑法ニ於テハ最短期ト最長期ト云フ
モノガ設ケラレテ居リマスカラ、其範圍ニ於テ十分ナル運用ノ出來ルノデア
リマス果シテ然ラバ同ジ法律ノ下ニ、貴族院議員、衆議院議員、村會議員、
區會議員ガ同一ニ支配サレルト云フノハ甚ダ不權衡デアルト云フヤウナコト
ハ、決シテ是ハ取ルニ足ラヌ、斯樣ナ理由ニ依ッテ之ニ反對ニナルト云フコト
ハ、頗ル遺憾ヲ感ジマス、ソレカラ第二ニ理由トサレマシタル所ノ點ニ附イテ
申述べマスガ、貴族院議員ナリ、衆議院議員ナリト云フ者ハ、一ノ特權ヲ有ッテ
居ル者デアル誠ニ貴イ者デアル、然ルニ今日ノ裁判官デアルトカ、檢事デア
ルトカ、云フヤウナ所ノ者ハ、甚ダ未熟デアル、日本ノ裁判所ト云フモノハ未
ダ發達シテ居ナイ、斯ノ如キ裁判所ニ裁判ヲ委ヌルト云フコトハ、頗ル危險デ
アルト云フコトノ御意見ガアッタ、是ハ誠ニ譯ノ分ラナイ御說デアル、若シモ
此理窟ガ立ツトスレバ賄賂罪以外ノ犯罪ノトキニハドウナルカ、衆議院議
員ガ人殺シヲシタ、泥棒ヲシタ-餘リヒドイ例ノ取リヤウデアリマスケレ
ドモ(「御立派ダ」ト呼フ者アリ)斯ノ如キ場合ニ於テ何處ニ行ッテ裁判ヲ受
ケル、矢張是ハ司法裁判所デ裁判ヲ受ケンケレバナラヌコトデアラウト存ジ
マス、ワレカラ又此〓ニ附キマシテ御述ニナリマシタコトハ行政官ト立法
部ニ備ハル所ノ委員トハ違ヒマスルケレドモ一方ノ官吏デアルトカ公吏
デアルトカ云フ方ノ側ヲ御覽ニナッタナラバ、直チニ分ルデアラウ、若シモ
此議論ノ通ニ致シマシタナラバ樞密顧問官ハ斯ウ言ヒマセウ吾ミハ國家
ノ最高顧問府ニ居ル所ノ者デアル吾ミハ司法裁判所ノ未熟ナル裁判官ノ裁
判ヲ受ケルト云フコトハ甚ダ危險デアルト云フコトヲ言フデハアリマセヌ
カ、又總理大臣以下ノ大臣ハ申シマセウ吾ミハ國家ノ國務大臣デアル、今
日ノ司法裁判所ノ裁判ヲ受ケルコトハ甚ダ危險デアルト斯ウ言ヒマセウ、
若シモ斯樣ナコトヲ言フ者ガ不道理ナコトヲ言フコトニナレバ獨リ衆議院
議員或ハ貴族院議員ナリガ此事ヲ言フコトハ道理ニ適シテ居ルト云フコト
ニナルモノデハナカラウト思レル、又其次ニ此委員長ノ演說ヲ聽キマスルニ、
一度立法權ヲ司法官ニ委スルノ法律ヲ作ッタトキニ於テハ再ビ取還スコト
ガ出來ナイ斯ウ云フ御意見ガアリマシタガ是ハ本來委員會デハナイ議論デ
アル(「新發明デアル」ト呼フ者アリ)假ニアッタト致シマシテ、何デ一度與ヘ
テ之ヲ奪フコトガ出來ナイ與フルモ奪フモ、皆是レ一ノ立法權ノ自由範圍
ニ在ルコトデアル、何モ一度與ヘテ之ヲ奪フコトガ出來ナイト云フコトハナ
イ、又此體面論ヲ主張シマシタコトガアリマスガ、殊ニ此體面論ト云フコト
ニ附キマシテハ、委員會ニ於テ一番ヤカマシイ議論デアッタ然ルニ、此體面ニ
關スルト云フコトハ、本來立法部ト云フコトヽ卽チ立法權ト云フコトヽ立
法部ニ備ハル所ノ人トヲ混ジタモノデアル、ソレヨリ遂ニ體面論ガヤカマシ
クナル所ノモノデアラウト思ヒマス、本來本法ニ於テ罰セントスル所ノモノ
ハ或ル議員ガ不正ナ所行ヲ爲シタトキ其人ヲ其罪ヲ罰シヤウト云フノデ
アル何モ立法權ノ消長ニハ關係シナイ、卽チ其人ノ犯罪行爲ニ就イテ處斷
ヲ爲サントスル所ノモノデアリマス、立法權ノ權限ニ立入ッテ裁判ヲ求メヤ
ウトスルモノデハナイ(ロヤ〓〓)卽チ假ニ體面ニ關スルト云フコトデアリマ
スレバ其體面中間接ニ立法院ノ體面ニ及ブモノニ過ギナイ、卽チ日本ノ衆
議院議員中ニハ惡ルイコトヲシタ者ガアル斯ウ云フコトニナルカラ自ラ
間接ニ體面ニ關スル(「確ニアル」ト呼フ者アリ)ケレドモソレハ獨リ賄賂罪ノ
ミデハアリマセヌ外ノ犯罪デモ矢張體面ニ關スルト言ヘバ間接ニ體面ニ
關シマス(「確ニアリマスゾ」ト呼フ者アリ)ソレカラ假ニ太ク此體面ニ關スル
モノト致シマシテモ實際惡ルイコトヲシタ人ガアルノニ臭イ物ニ蓋ヲシ
タヤウニ掩蔽シテ居ッテハソレデ體面ガ保テルカ、決シテ是ハ體面ガ保テナ
イ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)益〓體面ヲ汚スコトヲ重ネルニ至ルデアラウト
思ヒマス、ソレカラ又體面ヲ汚スカラ惡ルイ事ヲシテモ、罰スルコトガ出來
ナイト云フコトデアリマスレバ、此貴族院ノ議員ナリ、衆議院ノ議員ナリト
云フモノハ、全ク此不法人ノ地位ニ置カナケレバナラヌ、卽チ議員ト云フモノ
ハ、立法ノ院ニ具ハル所ノ議員ト云フモノハ、刑法ノ制裁ヲ受ケルモノデハナ
イト云フコトニナラヌケレバ決シテ此體面ト云フモノハ保タレルモノデハ
ナイ(「理由大ニ誤レリ」ト呼フ者アリ)若シ體面ニ關スルト云フコトデアッタ
ナラハ、何程ノ犯罪ヲ犯シマシテモ自ラ間接ニハ參リマスガ、直接ニ來ルモノ
ガアリマセヌケレドモ、來ルト致シマスレバ實ニ是ハ體面ニ關スル、併ナガ
ラ曩ニモ申述ベマシタ通)、此法律ニ於テ處斷セントスル所ノモノハ、其人ノ非
行ヲ罰シヤウト致シマスルノデアリマシテ決シテ權限爭議ヲ爲サウトスル
所ノモノデハナイ、故ニ私ハ體面ニ關スルモノト致シマセヌガ、縱令關スルモ
ノト致シマシテモソレハ間接デアル、サウシテ此間接ニ體面ニ關スルコト
ハ致方ナキモノト諦メル外ニハナイ防グコトハ出來ナイソレカラモウ一
ツ御意見ガアリマシタ、此裁判管轄ト云フ御意見ガアッタ貴族院議員衆議院
議員ト云フモノハ特權ヲ有シテ居ル所ノ誠ニ立派ナル所ノモノデアル故
ニ之ヲ罰スルニハ普通裁判所ニ任セルト云フコトハ出來ナイカラ、何カ
一種ノ高等法院ノヤウナモノヲ玆ニ組立テヽサウシテ此裁判所ノ管轄ニ歸
セシメタイト云フヤウナ御望ガアリマシタガ、是ガ出來ルナラバ敢テ異論ハ
アリマセヌ、併ナガラ曩ニモ申述ベマシタ通、今日ノ我國ノ法律ハ四民平
等、決シテ此人ノ中ニ差等ヲ設ケテ居ナイ、故ニ行政部ノ方ニ於キマシテハ
樞密顧問デアラウト、大臣デアラウト、矢張普通ノ泥棒ガ裁判サレル所ノ裁判
所ニ行ッテ裁判ヲ受ケテ居ルノデアル、何モ殊更ニ衆議院議員ダトカ、貴族院
議員ダトカノタメニ一ノ裁判ヲ置カンケレバナラヌト云フコトハナイ假
ニアルモノト致シマシタ所ガ、ソレハ他日ノコトデアル今日ノコトデハナ
イ今日容易ク出來ルコトデハナイ、ソレカラモウ一ツ(「宜イ加減ニシテ置
ケト」呼フ者アリ)自ラ取締ル方ガ宜シイ、徐ロニ調査ヲ遂ゲテ議院法等ヲ改
正シテ、自ラ取締ヲ爲ス方ガ宜イ、斯ウ云フ御議論ガアリマス、是ハ私モ將來
ニ於テハ望ム所デアル、併ナガラ今日ノ急ニ應ズルコトハ出來ナイ、最モ或ル
無禮ナルコトヲ言フ者ガアル、無禮ナルコトヲ言フ者ガアル、何デアルト申シ
マスルト云フト今日ノ議員ト云フモノハ賄賂ヲ取ッタリ或ハ今日ノコトハ
明日ニ變ッタリ、色ミナコトヲスル、サウスレバ自ラ議院ヲ〓ウシ卽チ自ラ取
締ヲ爲シ議員ニ關スル所ノ議院以外ノ人〓マデ、其議院ニ引上ゲテ審判スル
ノ權利ガアルカナイカト云フヤウナ無禮ナコトヲ申ス者ガアリマス併ナ
ガラ斯ウ云フ無禮ナコトヲ言フ者ハ言フヤツニ任カシテ置キマシテ、兔ニ
角將來ニ於テハ望ミマス、併ナガラ曩ニモ申述ベマシタ通、本日此法案ヲ提
出スルニ至ッタト一云フモノハ實ニ此社會ノ有樣ニ餘儀ナクサレタモノデア
ル、若シ來年ナリ再來年ナリ刑法ガ改正ニナルデアラウ或ハ調査ノ上ニ議
院法ヲ改正シテ、自ラ之ヲ取締ルト云フヤウナコトニシテ、之ヲ打捨テヽ置キ
マスレバ道義ノ風ト云フモノハ益〓地ヲ拂ッテシマヒ廉耻ノ心ト云フモ
ノハ全ク消耗シ盡シテシマフヤウナコトニ立至ルデアラウト私ハ考ヘル拍
手スル者アリ)故ニ此法案ハ最モ急ニ可決シテ、最モ急ニ適用スル必要ガア
ルト私ハ存ジマス(拍手)ソレカラ其次ニ一言申上ゲテ置キタイコトハ是一
第二讀會ノ場合ニ御注意致シテ置キタイト思フノデアリマスガ、此市參事會
員ト云フ〓デス、外ニハ此市參事會員ト云フモノハ公吏ノ中ニ這入ッテ居ルト
解釋シテ居ル者ガアル、又然ラズト解釋シテ居ル者ガアル一定シテ居ナイ
小生ハ此市參事會員ト云フモノハ公吏ノ中ニ入ッテ居ナイト考ヘル、ソレカラ
又入レタクナイ、斯樣ニ考ヘル、名譽職市參事會員ハ矢張他ノ名譽職員ノ位地
ヲ保クセテ置キタイケレドモ、假ニ市參事會員ト云フモノモ公吏デアルト致
シマスレバ他ノ法律ノ支配ハ公吏ノ點ニ於テ受ケテ宜シイケレドモ此收
賄罪ト云フコトニ至リマシテハ固ヨリ郡參事會員縣參事會員或ハ衆議院議
員其他ノ者ト殆ド其性質ヲ同ウシテ居リマスカラ、此收賄罪ノ〓ニ於テハ
矢張此法律ノ支配ヲ受ケシメテ然ルベキモノト思ヒマス卽チ縱令公吏ト見
ルモ尙ホ此法案中ニ之ヲ挿入シテ決シテ差支ナイコトヽ思ヒマス終リニ
臨ンデ一言致シマス(「止メタマヘ」又ハ「ヤルベシ」ト呼フ者アリ)國ノ名
前モ古イコトデ忘レ、時代モ忘レテシマヒマシタガ或ル會議ニ於キマシテ
闕席議員ガ頗ル多イ、何トカシテ之ヲ取締リタイト言ッテ、一ノ取締法ヲ編
ンダ所ガ、闕席勝ノ議員曰ク、何ダ是ハ追テ自分等ヲ縛附ケル繩デアルガ、今
之ヲ綯ハウトスルカラ御前モ助力シテ共ニ此繩ヲ綱ヘ此處ニ刀ヲ鍛ヘテ居
ル此刀ヲ以テ、將來汝ノ首ヲ刎ネヤウトスル、汝來ッテ共ニ此刀ヲ鍛ヘヨ、斯ウ
云フコトヲ言ヘルノト同ジヤウナモノデアルカラ、此取締法案ニハ贊成スル
コトハ、出來ナイト云フタト云フコトヲ聞キマシタケレドモ、是ハ私デアル
私ヲ捨テヽ公ケニ從ハヌケレバナラヌト云フコトハ、固ヨリ論ノナイコトデ
アルソレカラモウ一ツ世ノ中ノ誤解ヲ防イデ置カンケレバナラヌ世ノ中
デハ此法案ガ提出ニナヲタヽメニ今マデ惡ルイコトシタ人とガ此法律ノ
支配ヲ受ケルカト思ウテ非常ニ恐怖シテ居ルト云フコトヲ聞イタケレドモ、
此所デハ是ハ言フ必要ハアリマセヌ、田舍ノ隅〓抔デ恐ヲ懷イテ居ル者ガア
ル、其者ニ向ッテ諸君ハ皆御承知ノ通法律ハ既往ニ及バヌ、安心シテ可ナリデ
ス、卽チ少數者ノ意見ノ要領ハ此ノ如クデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=64
-
065・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 利光鶴松君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=65
-
066・島田三郎
○島田三郞君(百九十四番) 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=66
-
067・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 利光君ノ後トニ······
〔利光鶴松君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=67
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068・利光鶴松
○利光鶴松君(二百六十三番) 諸君、本案ハ實ニ本期議會中ニ於ケル大問題
デアリマス若シ觀察ノシヤウニ依リマシタナラバ啻ニ本期議會ノ大問題
デアルノミナラズ既往將來ノ議會ヲ通ジマシテ大問題ノ一トシテ數フル
コトガ出來ルデアラウト思フ、故ニ本案ノ審議ニ附キマシテハ反對贊成ハ
姑ク措キマシテ、共ニ餘程鄭重ニ攻究ヲ要シタイト思フ、私ハ本案ノ精神ニ
對シテハ少クトモ同情ヲ表シテ居ル併ナガラ本案其モノニハ反對デアリ
マス諸君、議員ガ其公職ヲ利用シテ私曲ヲ營ムト云フコトハ、是ハ最モ憂
アベキコトデアリマス又最モ憎ムベキコトデアリマス、而シテ此事ハ唯德
義上ニ於テ良クナイ惡ルイコトデアルト云フノミニハ止リマセヌ、卽チ
國家刑罰權ノ原則ヨリ致シマシテモ議員ガ賄賂ヲ取ルト云フ行爲ハ道德ニ
背キ併テ社會ニ害毒ヲ流ス、道德ニ反キ而シテ社會ノ公益ヲ害スル行爲デ
アルト致シマスレバ社會刑罰權ノ原則ヨリシテ之ヲ處罰スルコトハ更に
一〓ノ批難ヲ加フベキノ餘地ガナイノデアリマス面シテ本案提出者ガ之ヲ
罰シタイ斯ウ云フノデアリマスカラ其精神其希望ニ對シマシテハ私ハ滿
腹ノ同情ヲ表スルノデアリマス、此議論ニ於キマシテ本案ニ贊成スル者ハ
惡ルイコトヲサセタクナイ自分モ亦廉耻ヲ重ズルノ人デアル之ニ反對ス
ル者ハ惡ルイコトヲシタイカラ反對スルノデアル惡ルイコトヲシテモ良イ
ト云フカ如キ御考ヲ有ツナラ、斯ウ云フ人ハ代議士タルノ資格ハナイ、卽チ
一國ノ立法ニ參與スル資格ハナイノデアル苟モ一國ノ立法權ニ參與スルナ
ラバ道德ト云フコトモ考ヘナケレバナラヌヲレト同時ニ少クモ此頭ノ中
ニ、少ハ法理ト云フモノガナケレバナラヌ、若シ何デモカンデモ唯考ヘタ儘
ニヤッテ行ク是ハ憎イ者デアル直グニ罰シヤウ斯ウ云フ單純ナコトデ往
キマスルナラバ、世ノ中ニ法律ト云フモノヲ一科ノ専門トシテ數年ノ間苦
デ〓究スル人ハアリマセヌ卽チ誰デモ常識ノアル人ハイケル、然ルニ之ヲ
以テ殊ニ高尙ナル一科ノ專門學トシテ、多年ノ間〓究ヲ要スルト云フモノハ
立法上ニハ又立法上ノ別段ナル道理ガアリマスカラ、唯是ハ惡ルイ惡ルイ
ナラバ何ゼ罰セヌト云フガ如キ、單純ナル子供ガ物ヲ論ズルヤウナ考デ、大
切ナル法律ヲ攻究スルコトハ出來ヌ故ニ是ニ贊成スルカラ其人ハ德義ヲ大
切ニスル之ニ反對スルカラ道義ヲ構ハヌノデアルト云フガ如キハ、失禮ナ
ガラ其腦膸ノ幼稚ナ人デアルト云フコトヲ斷言シナケレバナリマセヌ法律
問題ハ宜シク道德モ斟酌スベシ風俗人情モ斟酌スベシ、是ト同時ニ大ニ
法理ヲ斟酌シテ種々ノ材料ヲ斟酌シテ玆ニ決定ヲ與ヘナケレバナラヌ
唯何デモ是ハ惡ルイコトヲ罰スルト云フ法律デアルカラ、贊成シナイモノハ
惡ルイ人間デアル惡ルイコトヲ好ムノデアルト云フ如キ御考ハヨシテ戴キ
タイ卽チ立法者ラシク本案ヲ議シテ戴キタイト云フ希望デアリマス私ハ
先キニモ述ベマスル如ク本案ノ精神ニ對シテハ贊成デアルニモ拘ラズ、本
案其者ニ對シテ反對デアルト云フコトヲ申シテ置キマシタガ其反對ヲ致シ
マスル譯ハ、本案ニハ刑罰ノ問題トモウ一ヲ裁判權ノ問題ヲ合シテ居リマス、
而シテ私ガ本案ニ反對ヲ致シマスルノハ專ラ裁判權ノ〓ヨリシテ、ドウシ
テモ本案ニ反對ヲシナケレバナラヌ譯デアリマス先刻委員長ヨリモ略、其
意ガ漏サレタヤウデアリマスガ、私ガ議員ノ職務上ニ關スル犯罪ニ附イテ
ハ之ヲ司法權ノ下ニ委スルト云フコトガ不同意デアル卽チ議員自ラ之ヲ
〓メルト云フコトニ致サナケレバナリマセヌ卽チ議員ノ懲罰權ヲ以テ若
シ今日ノ懲罰權ガ不完全デアルナラバ卽チ之ヲ完全ニシテ而シテ議員ハ議
員自治權、卽チ議員ノ懲罰權ヲ以テ議員自ラ之ヲ〓メルト云フコトニ致サナ
ケレバナリマセヌ議員ノ職務上ノ犯罪ヲ通常裁判所ノ管轄ニ委スルト云フ
コトハ立法權ノ體面ニ關スル、又議院ノ神聖ヲ瀆スモノデアルト云フコトヲ、
固ク私ハ信ズルモノデアリマス、此事ニ附キマシテハ過日委員會及本日
藤澤君等ノ御意見モアリマシテ、何モ惡ルイコトヲシタ者ヲ何處デ調ベテ
モソレガ別段議院ノ神聖ヲ瀆スコトハアルマイ、又立法權ノ體面ニ關スル
ト云フコトモアルマイ斯樣ナル御議論ガアリマシタガ是ハ私共ノ屢〓耳
ニ致ス議論デゴザイマスガ是ハ所謂皮相ノ見解デアッテ深ク思ハザルノ
議論デアルト思フ、諸君、裁判ト云フモノハ何ヲスルノデアリマス若シ果
シテ是ガ賄賂ヲ取ッタ者デアル、斯ウ云フコトニ極ッタモノニ附イテハ成ル
程何處ニヒコズリ出シマセウトモ何處デ如何ナル尋問ヲ爲シマセウトモ
斯ノ如キ場合ニハ決シテ體面モナケレバ神聖モナイノデアル併ナガラ申ス
マデモナク裁判ト云フ事柄ハ、卽チ其モノヽ未ダ定ラザル前、果シテ賄賂
ヲ取ッタト云フ事實ガアルカナイカト云フノ問題ヲ調ベルノガ卽チ裁判デア
ル、シテ見マスレバ裁判中ニ於テハ此者ハ惡イコトヲシタノデアルカラ、自ラ
神聖ヲ瀆シタノデアル、自ラ體面ヲ傷ケタノデアル、故ニ斯樣ナモノニ附イ
テハドウ云フ取扱ヲシテモ宜イト云フ議論ハ適用サレヌノデアル卽チ此議
論ハ未定ノ事柄ヲ以テ、既定ノ事柄トシテ適用シヤウト云フノデアリマスカ
ラ、其根柢ヲ誤ッテ居ルト思ヒマス(島田三郞君「ノウ〓〓」ト呼フ)ノウデナ
イ島田君ノヤウナ人ガ論理ニ明ルイ人ガ、ソンナコトヲ言ッテハ困ル、ソレ
カラ次ニ私ハ議員ノ職務上ノ犯罪ヲ司法權ノ管轄ニ委スルト云フコトガ、立
法權ノタメニ甚ダ危險デアル、場合ニ依リマスルト云フト、此立憲政體ノ
基礎ヲ危クスルト云フノ結果ヲ見ハセヌカト云フコトヲ危ンデ居ルノデア
リマス今日ハ幸ニ政界ハ無事デアリマシテ行政權ト立法權トノ間ニ格
段ナル軋轢モナイノデアリマス、併ナガラ政界ノ有樣ハイツ如何ナル事變ヲ
生ゼナイト云フコトハ保證ハ出來ナイノデアリマス、若シ他日一朝政海ニ
風波ガ起リマシテ、立法權ト行政權トノ間ニ非常ナル軋轢ヲ生ジ、其軋轢ノ
結果愈:極端ニ推及スト云フ場合ニナリマシタナラバ、此法律ガドウ云フ效
果ヲ奏スルカト云フコトハ今日ニ於テ豫メ考ヘテ置カナケレバナラヌコト
デアリマス、卽チサウ云フ場合ニナリマシタナラバ此法律ハ行政權ノ利器
トナッテ、立法權ハ終ニ蹂〓セラレテシマヒマス而シテサウ云フコトハナ
イナイト云フナラバソレニ任シテ置キマスガ、決シテナイトハ云ヘマ
セヌ、現ニ島田君抔ハ御承知デゴザイマセウ英國抔ハ其例ガアッタノデア
ル、決シテ之ハ杞憂デナイノデアル、英國抔ニ於キマシテ既ニ議員ノ職務上
ノ犯罪、卽チ收賄罪ヲ司法權デ取調ベルト云フコトガアッタノデアル然ル
所ソレガ行政權ノ利器ト爲ッテ非常ニ立法權ヲ苦メタ、反對黨ノ議員ニ對
シテ續々告訴告發ヲ爲シ、檢事ノ公訴ヲ起シ、豫審判事ノ未決拘留ニ依ッテ、
逮捕ヲスルト云フコトガアリマシテ、此法律ガ利器ト爲リマシテ非常ニ立法
權ヲ苦メタ例ハ-立法權ノ基礎ヲ危クシタ歷史ハ、英國ニ遺ッテ居ルソ
レヨリ致シマシテ遂ニ英國ハ其弊ニ堪ヘズシテ、非常ナ苦心ヲシテ僅ニ此法
律ヲ撤囘シテ、今日ハ議員ノ職務上ノ犯罪ハ議員自カラ〓メルト云フ主義ヲ
取リマシテ漸ク今日ハ議院ニ於テ其裁判權ヲ收メタト云フ斯ウ云フコト
ニナッタノデゴザイマス、故ニ斯ノ如キ法律ガ行政權ノ利器ト爲ッテ、或ル場合
ハ非常ニ立法權ヲ危險ナラシムルト云フコトハ唯私ノ空想ニアラズシテ、
既ニ斯ノ如キ法律ヲ實施シテ、其結果ニ於テ十分ニ試驗セラレテ居ルコトデ
ゴザイマス、又何レノ國ノ憲法史ヲ調ベテ見マシテモ立法權ガ自己ノ權力
ヲ擴張スルトカ或ハ自己ノ體面ヲ維持スルトカ云フコトノタメニ行政權
ト鬪ッタト云フ、斯ウ云フ事蹟ハ澤山アリマス、併ナガラ立法權ガ自ラ其墻
壁ヲ壞ハシテ、サウシテ其基礎ヲ危クスルト云フヤウナ、斯樣ナル馬鹿氣タ
動作ヲシタ事蹟ハドコノ國ノ憲法史ニアル、決シテ左樣ナ馬鹿氣タコトヲシ
タモノハアリマセヌソレカラ歷史ニ附イテモサウデアル、又各國ノ法例ニ
附イテ之ヲ見マシテモ亦其通デアル今日議員ノ職務上ノ犯罪ヲ司法權ノ
下ニ置イテ裁判スル國ハ、唯北米合衆國デアリマス、其外ニハ何處ニモナイ、
歐羅巴ニハ一ツモアリマセヌ、而シテ北米合衆國ガ何ゼアルカト云フコト
ハ能ク考ヘナケレバナリマセヌ、唯何處ノ國ニナイ何處ノ國ニ在ルト云
フコトヲ以テ、其材料トスルニハ足ラヌ此問題ヲ決スルノ材料トスルニ
ハ足リマセヌ、北米合衆國ハ諸君モ御承知ノ通、有名ナル華盛頓ガ十三州ノ
人民ヲ率井マシテ英國ト戰ヒ之ヲ破ッテサウシテ彼ノ國ヲ建ッタノデア
リマス建國ノ基礎ガ既ニ斯ウ云フ風ニナッテ居リマス故ニ北米合衆國
ノ如キハ世界第一ノ民主主義ノ盛ナル國デアリマス故ニ斯ノ如キ國ニ於キ
マシテハ立法權ガ行政權ヲ壓スルト云フコトハ始終アルノデアリマス併
ナガラ行政權ガ立法權ヲ壓スルト云フコトハ決シテ北米合衆國抔デハアリマ
セヌアリ得ベカラザルコトナンデアリマス其建國ノ始メガサウ云フ風ニ
ナッテ居リマス、全ク株主ガ寄ッテ會社ヲ組ンダヤウナ國デアリマス、故
唯北米合衆國ニ此法律ガ現ニアルノデ、而モ格別ナ弊害ガナイト云フコトヲ
見マシテ矢張我國ニ之ヲ移シテモ是レ亦完全ナ法律デアルト御考ニナッタ
ラ大變ニ違ヒマセウ、申スマデモナク我國ノ憲法ハ特別デアリマス、欽定憲
法ヲ戴イテ居ルノデアリマス而シテ我國ガ此行政權ヲ維持シテ居ルノハ
實ニ根本ノ固イ一種偉大ナル勢力ヲ以テ行政權ガアルノデアリマス殆ド今
日憲法政治ヲ行ッテ居リマス國ニ例ノナイ程過大ナル行政權力ノ盛ナ國デア
リマス憲法ハ欽定憲法ニシテ、而シテ其行政權ハ一種特別ノ勢力ヲ持テ居
ル國柄デアリマス彼ノ亞米利加ノ如クニ、人民ガ皆寄ッテ或ル國ヲ打キ倒
シテ寄ッテタカッテ、會社ヲ組ムガ如クシテ國ヲ拵ヘテ彼ノ米國抔トハ政治上
ノ事情ヲ異ニシテ居ルノデアリマス故ニ北米合衆國ニ於テ斯ノ如ク法律ガ
弊害ガナイト云フコトヲ見マシテ、直ニ之ヲ日本ニ眞似ヤウトシタナラバ
是コソ大變デアル寧ロ彼ノ英國ノ如ク之ヲ實驗シテ其弊ニ堪ヘズシテ、今日
ハソレヲ改メタト云フガ如キコソ取ッテ以テ吾ミノ龜鑑ト爲スニ足ルデア
ラウト思フノデアリマス、故ニ英國ヨリモ何レノ國ヨリモ我國ハ立憲政體ヲ
最モ後ニ布カレ、ソレガタメ行政權ハ最モ盛ニシテ、而シテ遺憾ナガラ立
法權ハ未ダ吾ミノ希望ヲ滿足セシムルニ足ラナイナカ〓〓十分ナル發達ヲ
致サナイ今日デアリマスカラ、斯ノ如ク行政權ノ利器ト爲リ而シテ立法權ノ
タメニ非常ニ危險デアルト云フノ法律ヲ輕々ニ御作リニナル御方ミノ御量
簡ハ一體ドウ云フコトデ、斯ノ如キコトヲ御考ニナッタカ、實ニ私共ハ尾崎
君ノ如キ其他天下ノ大勢ニ明ルキ所ノ進步黨ノ諸氏ガ、連署セラレテ斯ノ如
キ法律ヲ唯當リ前ノ法律ヲ作ル如ク御出シニナッタト云フコトハ甚ダ其
心事ヲ疑フノデアリマス(「反對者ノ心事モ」ト呼フ者アリ)ソレカラ此議員ト
云フモノハ申スマデモナク孰モ敵ヲ持ッテ居ルノデアリマスソレハ議員
ニ出マスルニハ多クハ政黨ノ競爭其他種々樣ミノ競爭ニ依ッテ選出サレマ
ス、其結果トシテ議員ト云フモノハ官吏若クハ公吏抔ト違ヒ常ニ四邊ニ敵
ヲ持ッテ居ルノデアリマス故ニ輕々ニ斯ノ如キ法律ヲ作リマシテ、サウシ
テ其告訴告發ノ權利、或ハ公訴ヲ起ス權利ト云フヤウナモノガ全ク普通ノ
手續ニ依ッテ行クト云フコトデアリマスト云フト其結果ハ議員ノ事情ハ卽
チ敵ノ多イモノデアル而シテ〓訴告發ガ何時デモ起セルト云フコトニナッ
テ居リマシタナラバ隨分其結果ハ言フニ堪ヘナイ弊害ヲ見ルデアラウ、之
ヲ實施シマシタナラバ直チニ其弊害ガ起ッテ、飛ンデモナイコトヲシタト思ッ
テ悔ヲ遺スト云フコトハ今ヨリ明デアリマス、併ナガラ惡ルイコトヲ
實地シタナラバ告訴告發ガ幾ラ起ッテモ、ソレハモウ構ハナイガ、併ナガラ
此議員ト云フモノハ敵ガアッテ、種々ノ感情カラシテ、アレヲ告訴シテヤラウ、
告發シテヤラウト云ッテ、碌ニ證據モ捉マヘナイデ、アレガ儈イ、免モ角告
訴シテヤラウ、告發シテヤラウト云フコトデ、續々告訴告發ガ起リ、其事情
ニ迂イ檢事豫審判事ガドン〓〓拘引シテ、ソレヲ調ベテ見レバ孰モ免訴ト云
フコトデ影モ形モナイ、司法上ニ御經驗ノナイ御方ハソンナコトハナイト思ツ
テ、御承知ナイカ知レマセヌガ試ニ司法省ノ統計表ヲ御覽ナサイ選舉
違反デ罪ヲ得タ犯罪人ニシテ、罰セラルヽ者ガ實際何人アリマスカ、是ハ私
ガ議論ヲシマセヌデモ斯ノ如キ危險ガアル惡ルイコトヲシタ者ハ幾ラ
フン縛ッテモ構ヒマセヌ併ナガラ唯嫌疑ヲ以テ身ニ覺エナイ者ヲ無闇ニ告
訴告發ヲサレ、未決拘留ニ處セラレルト云フコトハ格別感心シタコトデハ
アリマセヌ、サウ云フコトガアルカナイカ、私ノ辯明ヲ用ヒマセヌデモ司法
省ノ統計ヲ御覽ニナレバ、隨分危險ナコトデアリマス、況ヤ是ハ先キニモ述
ベマシタ如クニ、議員ト云フモノハ競爭カラ出テ、而シテ澤山敵ヲ持ッテ居ル
隨分時ニ依リマスト色ミノコトヲスルノデアリマスカラ此〓カラ見マシテ
モ私ハ本案ノ如キモノニハ輕々ニ贊同ヲ表スルコトハ出來ヌノデアリマス
(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)(小松喜平治君「何ノタメニコンナモノガ出テ來
タノダ」ト呼フ)ソレカラ私ハ本案ニ對シマシテ(小松喜平治君「此案ノ出
タノハ御前等ノタメダ」ト呼フ)醉パラッテ居ルヤツハ外ヘ出テ居レ、本案ヲ
提出シマスル際ニ尾崎行雄君ハ如何ニモ議會ガ腐敗シテ居ル、今ニモドウモ
其賄賂ノ弊風ガ押シテ來テつ片ッ端カラ議會ガ腐敗シテ居ルト言レタ、併ナ
ガラ此點ニ於テモ私ハ提出者ト事實上ノ見解ヲ異ニシテ居ル決シテサウ云
フコトハナイ、若シアルナラバ議院ニハ懲罰權ガアル、不十分ナガラ今日デ
モ懲罰權ガアルソンナ者ニハ辭職勸告ノ決議ヲスルガ宜シイ、肯カナケレ
バ除名ヲスルガ宜シイ(「有ルタ々」ト呼フ者アリ)誰ガ有ルノデス、ソンナ
者ハ······唯有ル々々ト云ッテモ何ノ事モナイノデスケレドモ、議場ノ諸君ガ
チヨット尾崎君ノ演說ヲ聽イテ成ル程ソンナコトモアルカト云フ感ジヲ起
シタヤウニ私ハ見タ是ハ事實然ラシムルノデハナイ事實ガアッテ然ラシ
ムルノデハナイ全ク尾崎君ノ雄辯ノ力ガ諸君ノ頭ヲ、チヨット胡麻化シタ
ニ過ギナイノデアル(笑聲起ル)實ニ尾崎君ハ政治社會ノ先輩トシテ豫テ敬服
ヲ致シテ居リマスガ、本案提出ノ理由ヲ述べラレマスノニ今ニモ地ヲ捲キ
天ヲ侵シテ恰モ「ペスト」病ノ押シテ來ルガ如ク、虎列刺病ノ壓シテ來ルガ如
ク如何ニモ是ハ溜ラヌト云フヤウナ感ジヲ起サシメタ其演說ノ有力ニシ
テ其辯舌ノ巧ナル此〓ニ於テハ更ニ私ハ一層ノ敬服ヲ致シマスノデアリマ
ス併ナガラ斯ノ如ク人ヲシテ思ハシメタケレドモ,是ハ演說ノ力デアル
事實ノ力デハナイ何トナレバ誰ガアル一人モアリハシマイサウ云フ者
ガアレバ遠慮ハナイ議院ニ懲罰權ガアル、ドン〓〓辭職勸告ノ提議デモ出
スガ宜シイ、肯カナケレバ除名ヲスルガ宜シイ、除名ヲスルト云ッテモソレ
ハ辯護士流ノ口實ト思フカ知レヌガ、サウ云フ者ガアレバ少クモ除名ヲスル
ガ宜シイ決シテサウ云フ譯デハアリマセヌ又是ハ賢明ナル尾崎君抔ニ申
上ゲル辭デハアリマセヌガ(笑聲起ル)決シテ健全ナル國民ノ前ニハ腐敗シタ
議員、腐敗シタ議會ト云フモノハ立ッテ居ルコトハ許サヌノデアリマス
又健全ナル議會ノ前ニハ腐ッタ政府ハ立ッテ居ルコトハ許サヌノデアリマス、
是ハ歷史ノ上カラ見マシテモ、何レノ道理カラ見マシテモ、事實ノ上カラモ
許シマセヌ故ニ腐ッテ居ル政府ガ立ッテ居ルト云ヘバ議會ガ腐ッテ居ル
(「誰ガ腐ッテ居ル」ト呼フ者アリ)其筆法ヲ以テ言ヘバ議會ガ腐ッテ居ル
ト云ヘバ國民ガ腐ッテ居ルト云フコトデアル尾崎君ハ我國ノ國民ハ皆腐ッ
テ居ルト斷ジマスカ(小松喜平治君「腐ッテ居ル」ト呼フ)若シ私ガ議會モ
腐ラナイ國民モ腐ラナイ、國民モ健全デアルカラ議會モ健全デアル健全
ナル國民ノ前ニ腐ッタ議會ハナイト思ヒマスガ、强テアナタ方ガ腐ッタト云
フナラバ、アナタガ腐ッテ居ルノデアリマセウ(「馬鹿ナコトヲ云フナ」ト呼
フ者アリ)ソレカラ尾崎君ハ我親友中ニモ腐ッタ者ガ澤山アルト云レマシ
タ平生辭ヲ愼マルヽ所ノ尾崎君ガ、我友人中ニモ腐ッタ者ガアルト云フ
コトヲ再三再四推シテ言レタ所ヨリ見マスレバ私ハ眼ニハ見エナイガ或
ハ尾崎君ノ手近ナ所ニハサウ云フ人ガアルカモ知レナイ有ルナラバドウ
ゾサウ云フ者ヲ〓ヘテ戴キタイ、進步黨デモソンナ者ハ除名シテ貰ヒタイ
友人モ絕交シテ貫ヒタイサウシテ議院ノ問題ト爲ッタナラバ私共モ其後ヘ
ニ就イテ、何トカ制裁ヲ加ヘルコトニ致シタイト思フ、唯腐敗シテ居ル腐
敗シタ者ガアルカラ、此法律ハ一日モ猶豫ハ出來ナイト云フ苟モ代議士ニ
向ッテ議會ニ向ッテデス腐ッタ者ガアル腐ッタ者ガアルカラ一日モ半
日モ此法律ハ猶豫ガナラヌト言ヒナガラ曾テ其事實モ指摘セズ、唯漫然腐ツ
テ居ル腐ッテ居ルト云フノハ餘リ無責任モ甚シイト思ヒマス腐ッタ者
ハ御遠慮ニハ及バヌカラドン〓〓指摘ヲシテ戴キタイ要スルニ私ハ理論上ニ
於キマ、シテモ尾崎君ノ意見、卽チ本案ニ反對シナケレバナラヌ又事實上ノ
觀察ニ於キマシテモ、大變尾崎君ト見解ヲ異ニシテ居ルノデアリマス否ナ
本案ノ提出者ト見解ヲ異ニスルノデアリマス、併ナガラ唯一言附加シテ置
キマスガ昔カラ能ク一時不遇ノ人ガ、世ハ澆季ニナッタ、人情ガ輕薄ニナツ
タト云フコトハ、何時ノ歷史ヲ見テモ出テ居ル世ガ澆季ニナッタナラバ
今頃ハ最早人間ハ皆强盜カ掏模ニ化ケテ居ラナケレバナラヌケレドモ、向
ソンナコトハナイノデアル是ハ世ニ不平ナル人、世ニ不遇ナル人ガ物ニ感
ジテソンナコトヲ昔カラ能ク言ッタモノデアリマス然ルニソンナコトガ
アルニ拘ラズ、世ノ中ハ段々開明ニ赴イテ來ルノデアリマスカラシテ無闇
ヤタラニ少ノ證明モセズ事實モ舉ゲズシテ唯腐ッタ腐ッタト無責任ノコ
トヲ言ヒ而シテ其無責任ナ辭ヲ材料トシテ法律ヲ作ラウ抔トハ聊カ輕卒
ノ至デアラウト思ヒマス要スルニ私ガ本案ヲ致シマスル精神ハ、決シテ
惡ルイコトヲシテモ宜イト云フノデハナイ、固ヨリ惡ルイコトハ取締リタイ
又處罰モシタイ、併ナガラ兩院議員ノ如キハ最高ノ立法權ニ參與スルモノデ
アルカラ、此等ニ附イテハ議院ノ自治權ヲ以テ之ヲ罰シタイ、斯ウ云フノデ
アリマス而シテ今日ノ議院法ガ不完全ニシテ其目的ヲ達スルコトガ出來
ヌモノナラバ宜シク議院法ヲ改正スベシ、此事ニ向ッテ共ミニ御〓究ヲシ
テ見タイノデアリマス(「ソコハ一理アル」ト呼フ者アリ)ワレカラモウ一ツ
ハ國民ノ選舉ニ依ッテ出ル者デアリマスカラ議院ノ自治、輿論ノ制裁、此
二ツニ依ッテ之ヲ監督シテ參ルコトニシマシタナラバ是ガ一年ヤ半年延ビ
マシテモソレガタメニ提出者ガ言レルガ如キ恐ロシイコトハアルマイト
思フノデアリマスソレデ私ハ決シテ賄賂ヲ取ル者ガアルトハ思ヒマセヌ〓
思ヒマセヌガ法ハ百年ノタメニ作ルノデアリマスカラ、唯萬一ノタメニ斯ノ
如キ法律ヲ作ルノモ宜シイガ、併ナガラ本案ノヤウナ不完全ナモノニハ贊成
ハ出來マセヌ故ニ議院法ヲ改正シテ議院ノ自治權、議院ノ懲罰權ノ範圍ヲ
完全ニシテ置ク斯ウ云フコトニ向ッテ力ヲ盡シタイ、今日ハナイガ後日萬
一ノ場合ニ備ヘテ置クコトハ、私ハ結構ノコトデアラウト思フ(「モウ宜シイ」
ト呼ヒ「簡短々々」ノ聲起ル)ソレカラ又決鬪條例デモ廢シテ、互ニ言論ヲ
愼ムト云フコトニシマシテ其人ノ名譽ニ關スルコトハ新聞モ輕々ニ書カナ
イ若シ書レタナラバ其人ハ忽ニ死ンデシマフト斯ウ云フコトニシタイ
サウシテ議院ノ自治權社會ノ制裁ニ威力ヲ附ケテ、サウシテ此等ノコトヲ取
締ルコトニ致シマシタナラバ
望、本案ノ精神上海青浦青房物业管理有限公司ソレ等ノコトハ徹底スルニ相違ナイノデアリマスカラアリアナリゾートの張りションス此一覽
出者モドウゾ御熟考遊バサレテ、
タイノデアリマス、ソレカラ後ニ一言致シテ置キマスガ唯今私ノ述べマシ
タ反對ノ意見ハ專ニ貴衆兩院ニ附イテ言ヒマシタ、貴衆兩院議員ヲ罰スル
ノガ惡ルイノナラバ何ゼ後トヲ罰セヌノデアルカ、何ゼ全部ニ反對スルカ
斯ウ云フ御議論ガ出ルベキデアリマス故ニ私モ一言致シテ置カナケレバナ
リマセヌ、私ガ今マデ述べマシタノハ貴衆兩院ニ附イテ其不可ナルコトヲ
述ベタノデアリマス併ナガラ本案ノ骨子、本案ノ眼目ハ卽チ貴衆兩院ニ
在ルノデアル故ニ既ニ此骨子此眼目ニ附イテ不都合ナル理由ガアルナラバ
其他ノ枝葉ノモノ卽チ府縣會以下ニ附イテハ政府モ刑法改正ノ議ガアッ
テ、或ハ不日此議會ニ提出セラルヽカモ知レマセヌ又此議會ニ出ナケレバ
次ノ議會ニ出ルノデアッテ旣ニ案モ出來テ居ルノデアリマスカラ、旣ニ此
骨子ニシテ惡イ以上ハ否決スルガ當然ト思フ面シテ府縣會以下ノコトハ
刑法改正案ノ提出ヲ待ッテ)諸君ト共ニ討議シテ遲シトシナイト云フ考デア
リマスカラ私ハ唯今ノ演說ヲ以テ唯一部ノ反對トセズ、卽チ全部ヲ否決シ
タイト云フ理由ニ供シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=68
-
069・西村淳藏
○西村淳藏君(二百七十八番) 討論終結ノ動議ヲ提出致シマス
〔「贊成」又「反對」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=69
-
070・島田三郎
○島田三郞君(百九十四番) 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=70
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071・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 島田三郞君
(島田三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=71
-
072・島田三郎
○島田三郞君(百九十四番) 諸君、本員ハ斯ノ如キ議案ガ議題ト爲リマシテ、
今日一日議事ヲ是ニ費スト云フコトヲ甚ダ此議會ノタメニ惜ムノデゴザイマ
ス又本員ガ忍ブベカラザルヲ忍ンデ、斯ノ如キコトノ議事ニ與リマスノヲ
甚ダ悲ムノデゴザイマス併ナガラ今日ノ時勢ハ反對ノ御方ガ述ベラレマシ
タ如ク、此議案ガ必要デナイ-病ノナイノニ「ペスト」豫防規則ハ要ラヌ
ト言レマシタガ、本員ノ感ズル所ニ依リマスレバ斯ノ如キ議事ノ起リマシ
タノヲ悲ミ、斯ノ如キ議事ニ與ルヲ歎息スルニモ拘ラズ、一部ノ急要ガ本員ヲ
驅ッテ此壇ニ登セシメタノハ恰モ惡ムベキ「ペスト」ガ起ッテ、此豫防規
則ヲ議サナケレバナラヌヤウナ時勢ヲ感ジタノト同一デゴザイマス、誠ニ餘
儀ナイコトデアラウト思ウテ居ルノデ、諸君モ是ハ悲マルヽデアラウト思フ
本員ハ第一ニ御約束ヲ致シテ置キマスルハ事實ノナイト唯今利光君ガ言レ
タガ確タル事實ヲ茲ニ御披露致スコトヲ御約束致シテ置キマス唯今反對
ノ御方ガ述ベラレタコトニ附イテ、徐々ト辯解說明ヲ致シテ、終リニ此事實
ヲ諸君ノ前ニ御披露ヲシテ、果シテ必要デアルト云フコトノ確信ヲ諸君ノ腦
髓ニ與ヘタイト思ヒマス始メニ委員長ガ五箇條ノ反對理由ヲ擧ゲテ否決セ
ンコトヲ述ベラレマシタガ、之ニ對シテハ有力ナル藤澤君ノ說明ガアッテ、本
案竝ニ本案ヲ修正シタル少數意見ヲ維持セラレタノデ十分ニ碎キ盡シテア
ルト本員ハ考ヘマスガ併ナガラ其論理ヲ補ヒマスト竝ニ唯今壇ヲ退レマ
シタ利光君ノ演說ニ依ッテ本員ノ所感ヲ述ベテ、此議案ガ今日ノ法律ト爲ラ
ンコトヲ望ム所以ノ說明ニ充テマス五箇條ニ分ッテ論ゼラレタコトハ値打
ノナイコトデアリマシテ、現ニ藤澤君ガ縷々述べラレマシタ通、不完全ナリ
ト云フコトヲ一箇條トシテ言レタノハ殆ド論ヲ成サンコトデ、不完全ナ
ラバ全カラシムル理由ニハナルガ修正ヲ爲スベキ說明デアルナラバ格
別否決ノ理由ニハ頭ヨリナラヌ殆ド相手ニナラヌ議論ト一言ニシテ斥ケ
ルコトガ出來ル必要ト云フコト不必要ト云フコトハ終リニ本員ガ確タル
證據物ヲ舉ゲテ之ヲ述ベマスカラ、姑ク之ヲ除キマスル體面危險ト云フコ
トガ利光君ノ議論ノ骨子ニナッテ居リマシテ其終リニ今日ノ議會ハ腐敗シ
テ居ラヌカラ必要ガナイト申述ベラレタノデアルガ、始ニ委員長ノ報告セラ
レタ五箇條ノ如ク躰面、危險、此二ツヲ碎イタナラバ反對ノ議論ハ根柢
ヨリ倒レルコトヽ觀察スル之ニ向ッテ論鋒ヲ向クルコトニ致シマス第
ニ體面々々ト云フコトハ議會ト云フコトヽ議員各個ト云フコトヲ混同セ
ラレタ思想ノ間違デアル又モウ一ツハ、利光君ハ法律專業ノ御方デアルガ
實ニ我國ノ憲法竝ニ議院法、之ニ附帶シテ居ル法律ノ精神組織ヲ辨ヘラレヌ
モノト斷言スル斯ク斷言スル以上ハ說明ヲスル責任ガアルカラ申述ベマ
スルガ先ヅ第一ニ體面々々ト言レルガ、議會其モノヽ體面、議員各個ノ體
面ト云フコトハ全ク別物デ議員各個ノ非行ハ議會全體ヲ惡ルクスルカラ
之ヲ〓メルコトガ議會ノ體面ヲ保ツ一方法デアルト本員ハ斷定致ス、卽チ之
ヲ〓メマスル現在ノ方法如何ヲ考ヘマスルニ、我國ノ憲法ハ議院ニ裁判力ヲ
與ヘヌ組織ニナッテ居ル我憲法ノ本ニ立チマス總テノ法律ガサウナッテ居
ル英吉利ノ如ク議院ニ萬能力ヲ與ヘル憲法トハ全ク違ウテ居リマス、サ
レバ英吉利デハ裁判權ノ一部ヲ議院ノ力トシテ持ッテ居ルガ故ニ、上院ハ「ハ
イコートルオフパアリヤメント」ハ最終ノ裁判所デアル次ニ議院ノ中
デ事ヲヤル議員以外二人ヲ召喚スル權利ヲ持チ證據ヲ取ル手續ヲ爲スコ
トガ出來ルガ我國ノ議院法ニハ他ノ人ヲ召喚スルコトヲ禁ジテアル此
事カラ見テモ裁判力ハ全ク議院ノ外ニ置ク組織ニナッテ居ルノデアル
然ラバ此法案ハ如何デアルト云フニ、總テ此組織ニナッテ居ル唯今體面體
面ト言レマシタガ如何デアル、凡ソ議員ノ身分ニ關係致シマシタ訴訟ハ當
選訴訟ニ關係スルコト、侮辱ニ關係シマスコト選舉法違犯及議員ノ保護
ト是ダケノモノト本員ハ直接ニ考ヘマスガ、當選訴訟ハ如何デアルカ矢
張信任スルコトガ出來ナイ權限ガ狹イ法律ノ智識ガ低イト云フ、普通ノ
裁判デヤッテ、諸君ハ一身一己ノニ關シタ事ヲ此裁判デ滿足セラレタデハナ
イカ、議院侮辱ニ至ッテモ亦斯ノ如シ、然ルニ議員ハ議院法違犯ノコトニ付
イテハ利光君ニ一言〓グベキコトガアル、議員ハ他ノ法人ト違ヒ、行政官ト
違ヒ多クノ敵ヲ持ッテ居ルカラ、種々ノ言掛ケヲ受ケル卽チ當選訴訟ノ
如キガ是デアル議員ノ位置ヲ爭ッテ敵ト爭ツタ上ニ此人ノ身分ヲ十分ニ
詳論シ十分ニ告ゲル所ノ位置ニ立ッテ居ル者ガアルガ、此訴訟ハ何デアル
普通ノ裁判所デヤルデハナイカ英吉利ノ如キ組織デアルナラバ是コソ議
員ガ己ノ位置其モノヲ定メル所ノ重大ナル裁判權トシテ取ラナケレバナラヌ
ガ、日本ノ憲法及附屬法律デハ普通ノ裁判所ニ持ッテ往クデハアリマセヌ
カ身分ガ重大ノ關係デアル議員ノコトモ其通、要スルニ必要デナイト
云ヒ、體面ト云フノハ此問題ガ宜クナイ、議員ヲ恐怖セシメルカラ色ミノ
口實ト爲スニ過ギナイト斷定スル、昔僧侶ト云フモノハ全ク俗以外ノモノデ
アルカラ、普通ノ支配ハ受ケヌト云フノダ、坊主ガ罪ヲ犯シテモ餘リ俗人ト
同ジ罰ヲ被ラナカッタ、議員ヲ之ト同ジヤウニシヤウト云フハ自ラ餘リ他
ノ權衡ヲ忘レ今日ノ時勢ヲ忘レテ、穩ナラヌ所ノ自利心ヲ增長セシメルハ宜
シクナイコトヽ本員ハ思フ、尙ホ議員各個ノ外ニ議會其者ニ附イテハドウナツ
テ居ルカ、本員ハ先ヅ先例ヲ利光君ニ示シマセウト思ヒマスガ、此先例ヲ讀
上ゲヤウカ其事蹟ハ自ラ明瞭デ、議會其モノヲ辱シメタトキニ之ヲ辱シメ
タ者デアルカ辱シメラレタ者デアルカト云フ判決ヲ何レニ求メタコトデア
ルカ
明治二十六年十二月十六日黒田綱彥君ハ東京日々新聞ノ記事ハ衆議院ヲ侮
辱シタルモノトシ左ノ緊急動議ヲ提出シタリ
其本文ハ
明治二十五年十二月十六日發兌東京日々新聞第六千三百五十二號帝國議會
記要ト題スル欄頭ニ二號活字ヲ以テ記載シタル記事ハ我衆議院ヲ
此院ハ議員ノ員ニアラズシテ全體ノ院デアリマス
衆議院ヲ侮辱シタルモノトス依ッテ議長ヨリ告訴ノ手續ヲ爲スモノトス
〔「皆知ッテマス」ト呼フ者アリ〕
此時ニ誰ガ議長デアツタカ、誰ガ其手續ヲシタカ、卽チ星亨君
黒田綱彥君ノ動議ハ大多數ヲ以テ可決シタルニ依リ議長星亨君ハ其翌十七
日東京地方裁判所檢事局ヘ告訴シタリ
議院其モノヽコトデモ尙ホ裁判所ヘ持ッテ行クノガ、何故ニ議員一個ノコト
ヲ裁判所ヘ持ッテ行クノニ、其智識ガ低イ其體面如何ト云フコトノ論理ガ出マ
スカ(「違ッテル違ッテル」ト呼フ者アリ)玆ニ至ッテ唯今ノー-現在ノ法
律ト云フモノハ裁判所ヲ別ニ置イテ、之ニ十分ナル信用ヲ與ヘテ居ルト云フ
組織デ、之ニ依ッテ成立ッテ居ル(此時發言スル者多シ)默ツテ御聽ニナレ
バ分リマス斯樣ナル組織ニナッテ居リマスサウシマスレバ何モ議員ガ惡
ルイ事ヲシタト云フトキニ限ッテ、之ヲ裁判所ニ裁イテ貰フト云フコトガ
體面ニ關係スルト云フノハ何ノ論理カラ之ヲ割出サレタカ、本員ニハ更ニ
之ヲ解スルコトガ出來ヌ次ニ危險ト云フコトデアル、斯樣ニ致シマスレバ
萬一政海ノ波ノ荒カッタトキニ行政官ガ議員ヲ罰スルノ策トシテ、色ミノ
コトヲヤルカラ危險デアルト之ガタメニ英國ノ歷史ヲ引カレマシタガ誠
ニ英國ノ歷史ヲ御靜讀ニナッタラ斯樣ナルコトノ引例トハセラレヌデアラウ
ト思フ是ハ憲法未ダ確立セズ所謂大反亂以前ノコトデアル、大反亂ガ濟
ミマシテ憲法ヲ確定シタ後ニ、左樣ナコトハナイト明言致シマス恰モ日本
ノ明治二十三年以前ノ政體ヲ以テ今日ノ事例ニ引キマスノト同ク、全ク歷史
上ノ智識ノ乏シイコトヲ示サレタモノト本員ハ認メマス、ソレ故ニ英國ノ例
ハ役ニ立チマセヌ、英米二國云々ト言レタガ、ソレハ此場合ニ役ニ立タヌト
言レマシタガ、米國ハ卽チ三權鼎立主義デ、英吉利ハ之ニ反シテ專ラ重キ
ヲ議會ニ措ク主義デアル、ソレガタメニ斯樣ナ結果ヲ現シタノデアル然ラ
バ我國ノ今日ノ憲法竝ニ諸法律ノ組織ハ何カト言ヘバ裁判所ニ重キヲ措イ
テ議院自ラヲ決定スル際ニモ矢張裁判所ニ託スル議院ノ侮辱罪ヲモ之ヲ
普通ノ裁判所ニ託シテ意トセザル所ノ組織ニナッテ居ルノニ何故ニ此コ
トバカリヲ體面云々ト言ッテ却ケラルヽノデアルカ本員ハ更ニ解スルコト
ガ出來ヌノデアリマス、政海ノ風波荒イト言ハレマスガ、斯樣ナルコトガ萬
一起リマシタトキニハソレハ所謂變デアッテ殆ド憲法ノ危險ニ迫ルトキデ
アル憲法ノ危險ニ迫ルトキニハ其反動トシテ叛亂ガアルカモ知レマセヌ
世太平無事ノトキニ方ッテ裁判所ヲ信任セズト議員ガ公言ヲ致シマシタナレ
バ日本ノ裁判所ハ諸外國ノ人ミヲ悅服セシムルコトモ出來ヌ、甚ダ危險
ナル日本ノ裁判所デアル、甚ダ危險ナル日本帝國ノ憲法デアルト議會ニ明言
セラルヽト同ジコトデアル、實ニ怪シカラヌ言方デアルト、本員ハ又之ヲ道理
上カラ擯斥致サナケレバナリマセヌ、斯樣ニ論ジマシタナラバ殆ド是マデ論
ゼラレタ所ノモノハ根據ナキ所ノコトデ一ノ口實ニ過ギヌト思ヒマスガ
尙ホ憲法ガ危クナルト云フコトニ附イテ懸念ヲセラルヽナレバ腐敗ガアル
ト云フ事實ガアッテ、之ヲ〓ムルノ術ガナイト云フコトデアッタナラバ、憲
法是ヨリ危險ナルハナシト本員ハ斷言ヲ致サウト思ヒマス議院ハ國民ノ後
楯ニ依ッテ立ッテ居ルノデゴザイマスガ國民ガ議會ヲ信任セズ、疑フト云
フコトニナッテ、國民ヲ離レテ議會ガ行政官ト軛ヲ爭フコトガ出來マスカ
今日ノ國民ハ甚ダ議會ニ信任ヲ措カヌ寧ロ之ヲ〓メズンバ措カヌニ立至ル
ダラウト云フコトヲ憂フルノデアル、故ニ丁度藤澤君ノ言レマシタ通、臭イ
モノガアルト極ッタラ、之ヲ掩フノガ議會ラシテ重カラシムル所以デアル
之ヲ明ニシテソレヲ除イテ純潔ニスルノガ宜シイカト云フノガ問題デアッ
テ、憲法危險ナリト云フコトハ事實アリト云フコトノ思想ガ、社會ニ成立ク
テ之ヲ〓メル術ナシト云フヨリ危險ナルハナイ百年ノ後ニ起ルベキ所ノ行
政ト立法トノ衝突ヲ憂慮シテ、今日目前ニ迫ッテ居ル所ノ此危險ヲ除カナイ
ト云フノハ甚ダ思想ノ〓倒ト謂ハナケレバナラナイ是ヨリ事實アルカ
ナイカト云フ問題ニ、本員ハ這入ラナケレバナラヌト思ヒマスガ先ヅ地方
カラ論ジマセウ本員ノ親シク知ッテ居ル所ノ某地方ニ於テハ〓科書ニ
附イテ賄賂罪ヲ犯シタト云フコトデ、議員ガ拘留セラレタコトガアル併
ナガラ法律ニ議員ノ賄賂罪ナシト云フノデ、取ッタト云フ事實ハ成立タガ、
併ナガラ當テベキ所ノ法律ガナイト云フノデ、此人ヲ罰スルコトノ出來ナカツ
タノハ世ニ名高キ所ノ一事件デアル然ラバ地方議會ノ外ニハ帝國議會
ニハ左樣ノ嫌疑ハナイカ本員ノ歎息ヲシ且ツ悲歎スル所ノモノハ帝國議
會ノ氣風日ニ降ッテ、年ヲ經ルニ從ッテ議會ノ有樣ト云フモノハ低キニ就ク
ト歎息ヲシナガラ、斷言シナケレバナリマセヌ其事實ヲ本員ハ是カラ辯明
ヲ致シマスガ卽チ明治二十六年ト本員ハ記憶致シテ居リマスガ星亨君ガ
議長デアッタルトキニ議會ニ星亨君ヲ彈効スル所ノ說ノ起ッタノハ何デア
ル今日カラ見レバ今日ノ甚シキ程ノコトデハナカッタ待合ニ或ル大臣ト
會合ヲシテ取引所ノコトヲ相談シタト云フ風說ガ、卽チ星君ヲシテ不信任ノ
位地ニ立タシメテ議會ガ之ヲ決シタノデアル、今日斯ノ如キ風說ノタメニ
議會ニ斯ノ如キ提議ヲスル者ガゴザイマスカ、殆ド耳ニ馴レテ何トモセヌト
云フコトニ至ッタノハ卽チ風紀日ニ降ッノデハゴザイマスマイカ、卽チ二
十六年ハ尙ホ議會ノ大勢ハ勁烈ニシテ明治三十三年ハ議會ノ風紀地ニ落チ
タト云フトキニ當ッテ尙ホ「ペスト」ハ來ラズト言ッテ此不健全ノ空氣ノ中ニ
安然トシテ居ルト云フコトハ甚ダ怪ムベキコトデアルト思フ尙此等ハ
諸君ノ知ッテ居ラルヽ事實デアルガ、本員ガ議會ノ中ニ知ッテ居ル人ト知
ラヌ人ガアッテ而シテ本員ガ知リ得タ所4事實ヲ是カラ御披露ヲ致シマセ
ウ此手紙ハ東京市ノ本〓區眞砂町十五番地小山田信藏ト云フ人ヨリ此議
席ニ列シテ居ラルヽ所ノ小山久之助君ヘ宛テタ手紙デアル之ヲ朗讀致シ
マス前日ニ於テ尾崎君ガ讀マレタコトデ、既ニ議事錄ニ載ッテ居リマス
モノハ本員ハ之ヲ繰返ス必要ハナイガ、參照トシテ讀マナケレバナラヌコ
トモアルカモ知レマセヌ、先ヅ之ヲ讀ミマス
拜啓兼而御話シ置候地租問題ノ義明日議會ニ附議セラルヽ事ト存候間明日
ハ兼而御約束ノ通御出席通過致シ候樣御盡力被下度尙舊來ヨリ小子ノ幕下
ニシテ田村順之介ナルモノ出席可致候間同人ト御打合セ御手配被下度奉願
上候不儘
十二月十九日
小山田信藏
小山久之介樣
〔拍手起ル〕
是ハ如何デゴザイマス、小山田信藏ガ此議會ニ何ノ關係ガアル、地租問題ヲ
通過セシムルノニ小山田信藏ガ何ノ關係ガアル議員ヲ幕下ニシテ居ルト云
フ斯樣ナル相場師、世間ノ輿論ガ齒シナイ所ノモノガ幕下ニシテ居ル議員ガ
アッテ、此議員ガ御打合セト云フ何ノ御打合セヲシタノデアルカ是デモ議
會ハ〓潔デアルカ、此約束ノ文字ヲ解釋スルタメニ、是ヨリ曾テ尾崎君ノ讀
マレタ約束ノ一部分ヲ讀マナケレバナラヌ、卽チ「契約證」是ガ卽チ此手紙ニ
約束ト書イテアル約束デアル
第一項自分儀憲政本黨ヲ脫黨致シ今期議會ニ附議セラルヽ地租增徵案地價
修正案及是ニ關聯スル諸案ニ全然贊成シ且憲政黨ト共同シテ通過ニ盡力可
致又鐵道國有問題議會ニ呈出ノ際ニハ前同樣盡力致ベク且貴下ノ意見ニ同
意可仕其爲メ貴下ヨリ金四千圓可仕候事
卽チ是ガ約束デアル、此約束ガアッテソレニ附帶シタ手紙ガアッテ、幕下ニ
田村何某ト云フ人ガアル是ハ議會ノ外デアルカ內デアルカ本員ハ是ダケ
ノ事實ヲ舉ゲマスレバ是マデ反對ノ論者ガ千言萬語ヲ費シテ二囘ノ委員
會ヲ開キ一タビハ此議案ノ一讀會ヲ開キマシテ、今日ハ其續ヲ開イテ居ル
所ノ反對論者ノ千言萬語ハ一毛ノ値打ガナイモノト本員ハ斷定ヲ致シマス
カラ此案ハ恰モ今日襲來ル所ノ「ペスト」ヲ斥クルガ如ク、必要ノ案ナリト
シテ、本員ハ之ヲ贊成致シマス
〔持田直君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=72
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073・持田直
○持田直君(百五十六番) 諸君人間ハ「パン」ヲ喫スベキモノナリ、若クハ
人間ハ立ッテ步スベキモノデアル斯ウ云フ法律ガ出タナラバドウデアリ
マセウ、私ハ此議員瀆職ニ關スル法律ト云フモノハ丁度ソレト同ジコトデ
議員タル者ガ職ヲ瀆シテ宜シイト云フ理窟ガ何處ニゴザイマセウカ、當リ
前ノコトダ、所ガ殆ド此人間ガ「パン」ヲ喫スル若クハ人間ガ步クト同ジヤ
ウナコトデ、何ノ役ニモ立タナイ法デアル、此法律ハ-段々先キニ委員長カ
ラノ御說明モアリマシテ大變精神ガ必要デアルトカ、イヤ何トカ云フ御話
モゴザイマシタケレドモ、私ノ考ニ於テハサウ云フコトハナカラウト思フ
恐ヲクハ委員全體ハ全會一致ヲ以テ否決スルデアラウト豫期シテ居ッタニモ
拘ラズ、見ルト云フト僅一人ノ多數デ是ガ漸ク否決ニナッタト云フヤウナコ
トヲ承知致シテ居リマスシテ見ルト或ハ恐ル此議場デコンナ馬鹿氣タコ
トヲ通過スルヤウナコトガアリハセナイカト云フコトヲ私ハ恐レルノデア
ル、ソレハ何デアルカ、凡ソ私ハ諸君ニ對シテ講釋ヲスルデハゴザイマセヌケ
レドモ代議制卽チ輿論政治ト云フモノハ何ヲ以テ輿論政治デアルガ、此法
案ハ殆ド此輿論政治ト云フモノト相容レナイモノデゴザイマス、輿論政治ヲ
撲滅シテシマフモノデアル、ナゼナラバ(「簡短々々」ト呼フ者アリ)ナゼナラ
バ聽イテ見ナクチヤアイケナイ能ク聽クト分ルンダ代議政治ト云フ
モノハ今更事新シク云フニモ及バヌケレドモ國民ガ自由ノ意思ニ依ッテ選
擇致シタル所ノ議員ヲ以テ、卽チ此衆議院ナルモノヲ組織シテ居ルデハゴザ
イマセヌカ然ルニ此委託ヲ受ケタ受任者タル者ガ、若シ非行ヲ爲シタ場
合ニハ之ヲ監督スルノハ何デアル、國民ヨリ外ニハナカラウト思フ、卽チ
輿論デアラウト思フ然ルニ此輿論ノ制裁ヲ何トモ思ハズ、唯僅ニ法律ト云
フモノガアッテ、縛ラレル巡査ガ怖イ憲兵ガ怖イ、若クハ裁判所ガ怖イ
凡ソ此代議士タル人間ガ國民ノ輿論ハ怖クナイガ、巡査ガ怖イカラ始テ巡査
ヲ恐レルガタメニ此職責ヲ完ウスルコトガ出來ル憲兵ヲ恐ルヽガタメニ
此職責ヲ全ウスルコトガ出來ル國民ノ輿論卽チ國民ノ監督ト云フモノヲ眼
中ニ置カナイト云フコトニ至ッテハ實ニ歎ハシイデハゴザイマセヌカ、若シ
斯ウ云フトキニナリマシテヾス、若シ斯ウナッタ場合ニハ社會ハ闇ダ、卽チ
輿論ト云フモノハ何ノ値打モナイ、社會ハ闇ダ、國ハ亡ブルデアリマス、此
時ニ方フテ何ゾ獨リ代議政治ナルモノガ存スルコトガ出來マセウ、諸君試ニ
考ヘテ御覽ナサイ、若シ此議員ガ彼ノ言フガ如クニ瀆職者アリト云フナラバ
此事ニ附イテ此議場中ニ先キニ述ベタルガ如ク非行者ガアルデゴザイマシ
テ、此事實ガ明デアル時分ニハ此議會ハ宜シク彼ノ如キ不德義漢ハ宜シク
放逐スルガ宜シイ、私ハ雙手ヲ舉ゲテ贊成致シマス此事ニ附イテハ直ニ發
議スル人ガアレバ、私ハ直ニ贊成スルケレドモ、是ハ追テ述ベマスカラ、其
事ニ就イテ今議論ヲスル所デハナイ、若シ議員ナル者ガ國民ヲ恐レナイ憲
兵ヲ惡レル巡査ヲ恐レル其巡査憲兵ヲ恐レルガタメニ始テ職責ヲ完ウ
スルコトガ出來ル、實ニ歎ハシイデハゴザイマセヌカ、或ル黨派ノ代議士、或
ハ縣會議員トカ、何トカ名學職ノ人ミニサウ云フ人間ガアルカモ知レマセ
ヌケレドモ、我黨ノ名譽職間ニ於テ、若シソンナ不都合ノ輩ガアル時分ニハ
直チニ其職ヲ奪ッテシマフ其職ヲ奪フノミナラズ、時ニ依レバ或ハ强情ナ
ヤツハ生命ヲ奪ッテシマフ、決シテ棄テヽ置カナイ(笠聲起ル)或ハ或ル黨派ノ
人間ニハサウ云フコトハ出來ネエカ知ラネエガ、オレノ仲間ニモ隨分惡ルイ
ヤツガアルナンカ云ッテ、惡ルイヤツガアッテモ處分スルコトガ出來ナイ、吾
吾ノ側ノ人間ハソンナ界屈ナ、ソンナ無氣力ナ人間ハ決シテナイノデ、社會
ガ決シテ許サナイ、サウ云フ場合ニハ打殺シテシマヒマス巳ムヲ得ナイ場
合ニハ(笑聲起ル)ソレカラ詰リ此法案ト云フモノハ代議政治ト容レナイ
ト云フノハソレデアルガ、又モウ一ツ御話ヲ丁度シテ宜シイコトガアル
此議案ハ總テ此自ラ侮リ、自ラ辱シムルモノデアル、總テ人間ト云フモノハ
自ラ辱シメ、然ル後ニ人之ヲ辱シムル、自ラ侮ッテ然ル後人之ヲ侮ルノデアツ
テ、殆ドサウ云フノデアル、此案ヲ提出シタ人ガ丁度之ト同ジヤウナ事實ヲ、
今日マデニ經行シツヽアルノガ此議案ナンデス、何ゼト云フノニ是ハ或ハ
脇道ヘ這入ルヤウデアルケレドモ此問題ハ丁度匹敵シテ居ルカラ例ニ舉ゲ
テ置キマスガ、凡ソ此政黨政治ヲ行フコトヲ望ムニハ卽チ藩閥ヲ打破セネ
バナラヌ政黨内閣ヲ樹立セネバナラヌト云フコトハ自由黨モ云ヘバ進
步黨モイツデモ口ニシテ居ル、所ガ先頃ダ、マダ議會ノ開カレル前デアッタ
ト思フ何デモ此衆議院ノ席次ト云フモノハ黨派別ニシタラ宣カラウ斯ウ
云フコトハ何處カラ出テ來タ問題デゴザイマセウ諸君、此問題ハ本員ノ聞
ク所ニ依レバ却テ一方カラシテ目シテ藩閥者デアル、藩閥內閣デアルト云
フヤウナ藩閥者流ノ側カラ、寧ロサウ云フ問題ガ起ッテ來タ、其時ニ第一ニ
之ニ反對ヲシタノハ何デアルト云フト進步黨ノ諸氏デアル、而シテ之ニ續
イテハ帝國黨ガ反對シタト云フコトデアル、然レバ立チヤウガナイカラ
此議會ニ於テ議員席次ヲ以テ黨派別ニスルコトハ出來ナカッタ、其出來ナカツ
タ理由ガ面白イ丁度是ト似テ居ル、何ト云フカト思ヘバ政黨ハ未タ幼穉ナ
ワ卽チ我黨ハ幼穉デアル子供デアルカラ、之ニ同意ガ出來ナイト云フコ
トデアッタ卽チ是ハ自ラ侮ルモノデハゴザイマスマイカ自ラ辱シムルモ
ノデハゴザイマスマイカ、併ナガラ先キニ此政黨ノ席次ヲ政黨別ニスル
ト云フコトヲ拒ンダノハ强チ害ガナイ、ソレハ自分ガヲレハ子供ダト云フ
ニ過ギナイカラ構ハナイケレドモ此問題ニ至ッテハ啻ニ自ラ辱シメテー
議員自ラ貴重ノ地位ヲ辱シメテ己ヲ侮ルモノデゴザイマセウ帝國ノ人民
ヲ辱シメ侮ル所ノモノデアッテ、日本ノ輿論ヲ蔑ロニスルモノト私ハ信ズル
ノデアリマス先項尾崎君ガ言ウタ斯ノ如キ問題ガ若シモ政府ノ側カラデ
モ出ルト面白クナイカラ吾〓ハ提出スル、是ハドウモ尾崎君等ノ人達カラ
出テ仕合ナンダ、或ハ進步黨ノ內閣デハ斯ノ如キモノヲ出スカモソレハ分ラ
ナイ若シ今ノ内閣ガ斯ノ如キ無禮不當ナル所ノ法案ヲ議院ニ提出スルコト
ガゴザイマシタナラバ、吾ミハ之ヲ委員付託抔ニスルコトハ待チマセヌ(E)
ニ政府ノ信任ヲ問フコトハ一向躊躇シナイモノデアル斯ノ如キ問題デゴザイ
マ人ソレカラマダ〓〓話ヲシナケレバ分ラナイコトガアル(笑聲起ル)
外國ノ法律ニ云々トカ云ッテ先頃讀マレタ、デ、其法律ヲ讀ンダノハドコ
ノ法律ヲ讀ンダノカト云フト英吉利ノ法律亞米利加ノ法律ニアッタコトヲ
讀ンダ、是ハ成ル程博學多識ノ人達ガ調査シテ出シタモノデゴザイマセウケ
レドモ、私ガ丁度此衆議院ノ書記官局ニ調査シテアッタ法律案ヲ見ルト、ソレ
ト同ジモノヲ讀ンダ、同ジモノヲ御話ニナッタノデアル或ハ是ハ書記官局
デ調ベタモノヲ進步黨ノ人ガ借リテ讀ンダカ、其學識ノ博イ狹イト云フコト
ノ議論ハ致シマセヌケレドモ、其中ニ言フ此法律案ハ行ハネバナラナイ、各國
ニ行レテ居ルト言フケレドモ、ソレハ數百年數十年以前ニ或ハ行レタコトガ
アッタカモ知ラナイケレドモ、今日ハ政黨政治ニ於テ、或ハ時ノ政府ガ之ヲ
利用シテ、反對黨ヲ苦メル材料ニ使ッタリ、總テ宜シクナイ擧動ガアル故ニ
今日ハ一向使ハナイ、アノ法律ハ空文ニ屬シテ居ルノダ、若シモ是ガ空文デア
ルナラバ、何ゼ改メナイカト云フ御議論ハアルカ知リマセヌケレドモ英吉利
抔ト云フ國ハ諸君モ御承知ノ通習慣ヲ重ズルノ國デアルカラ、何モ用ヲ爲サ
ナイモノ、役ニ立タナイモノガアッテモ、ナイト同ジデ、之ヲ抛ッテ置クノダ、
決シテ今日適用スルト云フヤウナコトハナイノダ、ソレ故ニアンナ可笑シナ
法律ハ英吉利トカ、或ハ亞米利加トカ云フ國ニハ唯法文トシテ空文ニ存スル
ノミ、其他ノ列國ニ於テ何處ノ國ニ行レテ居ル所ガゴザイマセウ何處ニモ
ナイシテ見ルト尾崎君ガ外國ニアッタモノヲ引出シテ來タノハ丁度私ガ
見ルト書記官局ノ調ベタモノト同ジモノデアッテ昔曾テコンナモノガ行レ
タト云フニ過ギナイ、決シテ今日行レルモノデゴザイマセヌ、ソレ故ニ何レ
ノ點カラ論ジマシテモ私ハ斯ノ如キモノハ輿論-此輿論政治ニ於テハ輿
論ニ一任スルヨリ外仕方ガナイ、若シモ輿論ガ諸君ガ言フガ如ク十分ニ魔
敗シテシマッテ、到底代議士ヲ選出シテモ選出スルモノ每ニ皆斯ノ如キ非行
者デアル場合ニハ最早代議政治ヲ行フドコロデハゴザイマセヌ其國ハ滅
亡スルトキデアル其社會ハ闇ニナルトキト信ズルノデアルデゴザイマスカ
ラ是ハ豈啻ニ衆議院若クハ貴族院ト云フ所ノミデハナイ何レノ場所ニ於
テモ名譽職ト云フモノハ斯樣ナルモノヲ適用スベキモノデナイ、何ゼナラバ
名譽職ナル全ク機關ガアッテ、其機關ニ若シ不正ノ行爲ガアレバ、輿論ガ監督
シテ其者ヲ直チニ引戾スコトガ出來ルモノデアッテ、他ノ官吏公吏ト云フガ
如キモノトハ雲泥ノ相違ノアルモノデゴザイマス然ルニ此〓ニ於テ少モ見
究メルコトガナイ故ニ、何デモカンデモ是ハヤラナケレバナラヌ、或ハ斯ウシ
タラバ人間ガ正シサウニ見エルダラウ、何モコンナ法律ヲ出シテ惡ルイモノ
ガ其表向ヲ飾ッテモ決シテ社會ガ眞正ナ眼球ヲ持ッテ見ル時分ニハ、其者
ヲ容赦ハ致シマセヌ、唯コンナ法律ニ贊成ヲスルトシナイトヲ以テ、人ノ心
事ノ是非曲直ヲ分タウト云フノハ抱腹絕倒ノ至リデアル、斯樣ナコトハ毫
頭御ヤリニナラナイ方ガ宜カラウト思フデ先キニ私ハ一言申シテ置キマシ
タガ島田君ガ讀マレタ小山久之助ト云フ人ガ云々ト云フコトガゴザイマシ
タガ、最モ是ハ本院ヲ輕蔑スル所爲デアラウト私ハ信ズルノデ、此人達ニ至
リマシテハ飽マデ本員ハ何トカ處分スル方法ヲ取ラネバナルマイト思フ
ソレ故ニ今此壇デハ提出致シマセヌケレドモ、不日案ヲ本員ハ提出シヤウト
考ヘテ居ル
〔「討論終決」ト呼フ者アリ〕
〔工藤行幹君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=73
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074・工藤行幹
○工藤行幹君(二百七十九番) 私ハ此事ハ餘程熱心デゴザイマスカラ、長イ
カモ知レマセヌ(「謹聽々々」ト呼ヒ「アナタ一人デ御ヤリナサイ」ト呼ヒ退
席スル者アリ)諸君、私ハ此少數意見-委員ノ卽チ少數意見ニ極ク贊成ナ
モノデゴザイマス、故ニ此贊成ノ意ヲ私ガ述ブルガタメニ順序トシテ前ニ登
壇セラレタ所ノ持田君ノ事カラ之ヲ駁シナケレバナラヌケレドモ私ハ持
田君ノ唯今ノ御論ハ敢テ私ガ彼此駁スルダケノ必要ヲ認メナイデゴザイマス
カラシテ此事ハモウサラリト略シテシマフ積デゴザイマス唯段々諸君等
ノ此論ニ反對スルコトヲ承ルト云フト、或ハ議員ノ體面ヲ瀆スト云フコトハ
餘程耳ニ通ルヤウナモノニ思フ或ハ此行政官ト立法官トノ衝突ガ起ヲタ場
合ニ立法者ガ行政者ニ蹂躙セラレルト云フ憂ガアルト云フ此二箇條ノ論
〓ガ稍〓聽クニ足ルヤウナ如クデアルサリナガラ凡ソ此體面ヲ保ツト云フ
コトニ附イテ、甚ダ論者ノ言フ所ガ私ガ謂ハレナイコトヽ思フノデゴザイマ
ス、何ゼナラバ體面ヲ保ツト云フモノハ、凡ソ實アッテ其實ニ副フダケノコト
ノ形體ヲ爲スノハ卽チ體面ヲ保ツモノデアラウ若シ其實ガナクシテ徒ニ
外容ノ形式ヲ保ッタ所ガ、何ノ役ニ立タヌモノデアラウト思フノデゴザイマ
ス試ニ武器ノ一ツヲ以テ言フナラバ正宗ノ刀デアレバ此正宗ノ刀ニ副
フダケノ裝飾ノ體面ヲ保ツガ宜イケレドモ若シ竹箆ノ如キモノニ金銀ノ作
リヲ爲シタト云ウテ、何ノ役ニモ立タヌコトデアラウト私ハ信ズルモノデゴ
ザイマス、又行政官ト立法者トノ間ノ所ニ深ク御懸念ナサルケレドモ私ガ
最モ案ズル所ハ此立法者ノ信任ヲ保ツニハ唯今ノ如キデハ行政官ニ蹂〓セ
ラレルヨリ、或ハ此立法者自ラ腐敗シテ倒レテシマヤシナイカ、詰リ全國ノ人
民ノ輿論モ通ジナイ又外國ノ嘲ヲ受ケルヤウナコトニナリハシナイカ知ラ
ヌト云フコトヲ私ハ深ク憂フル者デゴザイマス、所デ唯之ヲ要スルニ或ハ
之ニ反對論者ハ當時此事ガナイト云フコトヲ認メテ、後來ノタメニ之ヲ設
ケルト云フヤウナコトデ、餘リ深ク痛痒ヲ感ジナイ、賄賂ト云フモノヽ痛痒
ヲ感ジナイデ獨リ今ハナイガ如クニ言ウテ居ルノデゴザイマス吾ミハ島
田君ト同樣ニ現ニアルモノト思フノデゴザイマス、固ク信ジテアルモノト認
ムル、之ヲドウシテモ絕ッテシマハナケレバ、此議會ノ神聖ハ保ツコトガ出來
ヌト云フコトヲ斷言シテ憚ラヌ者デゴザイマス又論者ハ此賄賂ト云フコト
ヲ憎ムコトハ口デハ憎ムト云フケレドモ私ノ推測スル所カラ見ルト、吾
吾程賄賂ノ憎ムベキコトヲ深ク憎マヌヤウニ思フノデゴザイマス、吾ミハ抑〓
此賄賂位惡ルイモノハナイ凡ソ腦ヲ腐ラシ人心ヲ腐敗セシムルノハ賄賂
ヨリ甚シキモノハナイ、賄賂ハ卽チ蛇蝎デアルト云フコトヲ私ハ唱フル者
デゴザイマス、ソコデ私ハ此賄賂ナルモノハ、國ノ治亂興亡ニ關スル容易ナ
ラヌ大ナルモノデアルト云フコトヲ深ク信ズル、故ニ私ガ是マデ經驗シタ所
ヲ見、又識者ノ云フ所ニ徵シテ、之ヲ諸君ノ御參考ニ供シタイト思フノデゴ
ザイマス、元ト此維新ノ初ニ於テ我先輩ノ賢明ナル諸士ハドウ云フ方針ヲ
採ッタデアルカト云フナラバ此賄賂ト云フモノハ深ク禁ジタモノデアル
其當時吾ミモ或ル長官ノコトヲ聞イテ深ク信ジテ居ルモノデゴザイマス、正
月一日ニハ其頃ノ例トシテ數ノ子トカ煑豆トカヲ以テ諸官省デ冷酒ヲ飮
ム其時ニ長官ガドウ云フ訓令ヲ下シタカト斯ウ云ヘバ、當時ノ長官曰ク凡
ソ舊幕ノ倒レタモノハ賄賂デアル、賄賂デ舊幕ノ政治ハ腐敗シタニ附イテ、斯
ノ如ク政府ガ亂レタ故ニ此幕府ニ任セテ置クコトガ出來ヌカラ、所謂王政
御維新ヲ爲シタモノデアル賄賂位國ヲ亂スモノハナイ、賄賂位國ノ害ニナ
ルモノハナイ、故ニ此王政維新ト共ニ、凡ツ此維新ノ官吏トシテ或ハ殊ニ公
共ノ事ニ與ル者トシテ、苟モ賄賂ト云フコトガアッテハ決シテ假借ハ出來ヌ
ゾ或ハ此王政ノ初ニ於テハ施政ノ順序或ハ手續等ニナリマシテハ舊幕
ノ人間ノヤウニ藩々ニ居ッタ人ハ政治ヲ取扱フ所ガ狭イ所デ、取扱方ニ附
イテイクラカ不行屆ノコトガアルカハ知レナイ、然レドモ是ハ巳ムヲ得ナイ
ニ附イテ、ソレ等ノコトナラバ之ヲ寬假シヤウトモ、塵一本ナリトモ賄賂ヲ
取ッテハ決シテ假借シナイト云フコトヲ宣言ヲシテ、然ル後チニ各〓禮酒ヲ
擧ゲテ祝ノ式ヲ整ヘタト云フコトデゴザイマス私モ自ラ目擊シタモノデ
アル此精神ガアッタカラシテ、維新ノ初ニ於テ最モ〓潔ナルモノハ官吏デ
アッタノデアル、賄賂ト云フモノハ確カニ行レナイ何處マデモ道義ト議論
ヲ以テ天下ヲ料理シヤウト云フコトニナッタノデゴザイマス、然ルニ悲シイ
カナ明治七八年若クハ西南ノ役ノ濟ンダ頃ニナツテ、早ヤ僅ニ十年ノ問ニツ
ロ〓〓此今ノ賄賂ト云フモノガ行レテ來テ、世ノ腐敗ノ風ガ徐々トシテ來タ
ト云フコトハ諸君モ大抵御存ジデアラウト思フノデゴザイマス、故ニ時ノ
輿論或ハ國會期成同盟ト爲リトテモ、此官吏ニ任セテ置イテハ斯ノ如ク世ガ
腐敗ヲシテ來ルニ付イテト云ウテ此國會期成同盟會ト爲リ或ハ二十三年
議會開設以來、此議會ガドウ云フ舉動ヲシタカト云ハヾ、二十六年ニ先刻島田
君ノ言レタ通、卽チ吾〓推薦シタ所ノ議長、卽チ星亨君ハ賄賂ノ風說ガアッタ
タメニ天皇陛下ニ恐入ッテ之ヲ解職スルト云フコトヲ上奏シ奉ッタデハゴ
ザイマセヌカ此事柄ハ先刻島田君ガ言レタニ附イテ、私ハ之ヲ繰返ス必要
ハゴザイマセヌケレドモ畢竟一旦推薦シタル所ノ議長ヲ罷メルト云フコト
ニナッタノハ何ノ精神デアルカト云ヘバ苟且ニモ此神聖ナル議場ニ於テ
賄賂ヲ取ッタト云フガ如キ、事實ラシイコトガアッテハ、此議會ノ神聖ヲ保ツ
コトガ出來ナイニ附イテ、巳ムヲ得ズ斯ノ如キ上奏ヲ爲シタモノデアラウト
思フデゴザイマス又其後彼ノ自由黨ノ齋藤珪次君カラドウ云フコトヲ出シ
タカト云ヘバ地租引當米過剩金下戾ト云フ問題ノ下ニ於テ、山縣有關君ガ
賄賂ヲ取ッテ軍機ヲ洩サレタト云フコトノ問題ヲ出シタデハゴザイマセヌ
カ此時ニモ吾〓ハ贊成デゴザイマシタ、或ハ其當時ニ反對シタ者モ澤山アッ
タケレドモ吾ミハ今ノ自由黨ノ諸君ト共ニ賄賂ヲ憎ムノ餘リ、私ハ之ニ贊
成ヲシタノデアル而シテ其事柄ヲ云ヘバ隨分言フニ忍ビナイコトガアッタ
ノデゴザイマス、彼ノ警視總監ガ大阪ノ藤田組ヲ家宅搜索シテ得タル所ノ
帳面ニ據ッテ此事ガ起ッテ來タノデアル、其時ノ帳面ヲ見ルト云フト、或ハ接
待簿抔ト云ッテ、金三十圓山印ノ玉代抔ト云フコトガアッタ位ノコトデア
ル、斯樣ニ賄賂ノ風ガ行レテハナラヌ故ニ、吾ミモ當時委員ノ一人デアッタ
ノデゴザイマス、而シテ其結果ハドウナッタカト言ヘバ委員會ノ多數ハ斯
ノ如ク議決シタノデアル明治十年山縣有朋君ガ軍機ヲ漏泄シタリトノ事實
ハ委員會ニ於テ調査シ得タル證據書類ニ據リ之ヲ認ムルヲ得ズ、全クナ
イトハ云ヘナイノデアル唯是マデニ委員會デ取調ベタ書類ニ據ッテハ之
ヲ認ムルヲ得ズト云フ位ノコトデゴザイマシテ事實ナイト云フコトデハナ
イ卽チ此本會ガ斯ノ如ク議決シタノデアル然ルニ少數ノ吾ミハ其當時又
少數者ノ意見ヲ出シテ、是モ此議場デ議決シタノデアル其少數者ノ意見ト
云フモノハドウ云フコトデアッタカト云ヘバソレト同ジ問題ノ下ニ井上
馨君ハ大藏大臣奉職中、當時ノ縣令ナル中野梧一ト謀リ米ノ賣買ニ關係シ
タルモノト認ムルト云フコトマデ議決シタノハドウ云フコトデアルカト云
ヘハ官吏ト爲リ議員ト爲リ、何處マデモ此賄賂ト云フモノガナク〓淨潔
白ニシテ共ニ國家ノ盛運ヲ圖ラウト云フ精神デアッタデハゴザイマセヌカ
然ルニ爾來ドウデゴザイマス近頃益〓此議員公共團體ノ者ノ賄賂ヲ取ッタ
ト云フ風聞ガ續々アルノハ諸君誠ニ之ヲ良心ニ問ウテ見タマヘ私ハ是ハ
唯一ツノ風聞トシテ捨置カレナイ、或ハ先刻島田君ノ言ハルヽ通、縣會議員
ニ於テハ〓科書ノ審査ノタメニ賄賂ヲ取ッタト云フコトハ澤山アル又近頃
モ起ッテ來テ居ル、或ハ昨年ハ新潟當年ハ千葉縣下トカ云フモノガ澤山ア
R、ソレデ或ハ此縣會議員抔ハ巡査ニ拘留セラレタ如クニシテ、何處カノ山ニ
閉籠ッテ此審査ヲシタト云フコトハ體面々々ト云フ上カラ云ヘバ法律ヲ以
テ之ヲ直スノガ體面ニ係ルカ、縣會議員抔ガ巡査ニ拘留セラルヽガ如キ姿ヲ
シテ、警衞サレテ其中デ議決ヲスルト云フノガ體面ニ係ルカ實ニ言語同斷
ノコトデアル(「山林拂下ハドウダ」ト呼フ者アリ)或ハ貸座敷ノ地所ノ問題ニ
附イテ群馬縣ノ如キ、或ハ千葉縣ノ如キ、是ニ附イテ或ハ縣知事ガ賄賂ヲ取ッ
タトカ、郡ノ議員ガ賄賂ヲ取ッタトカ云フ如キハ、是レ又著々トシテアルノハ
全ク針小棒大ノコトハ幾ラカアルカ知レナイケレドモ、其事實ガナイト云フ
コトハ諸君等モ認メナイデアラウト思ヒマス又此當議場ニ於テ甚ダ言フコ
トヲ好マヌケレドモ、殘念ナガラモ先達テ云フ所ノ小山久之助君ノ如キ或
星亨君ノ橫濱理立事件ノコト是等モ吾ミハ果シテ證據ガアルヤ否ヤト云フ
コトハ存ジマセヌケレドモ毫モ事實ガナイコトヲ、斯ノ如ク囂々シタトハ思
ヒマセヌデゴザイマス堂々タル聖人君子ニシテ斯ノ如キ評判ヲ得タモノト
ハ私ハ思ハヌノデゴザイマス縱令人ノ言フ通、新聞ニ書クヤウナコトガナ
クテモ或ハ之ニ類似シタコトガアリヤセヌカト疑ハルヽ位デアリマス、又
モウ一ツ事實ヲ云フナラバ、近頃沖繩縣ノ土地整理ニ就イテ、或ル代議士ニ
沖繩縣ノ者ハ斯樣ナ法案ヲ出シテ呉レト云ッタ所ガ、出サウト云フコトニナツ
テ其極一千圓ノ割ニ手數料ヲ寄コセト言ッタ所ガ沖繩人民ガ其金ハ持タ
ヌ故ニ、出スコトハ出來ヌト云フコトデ、其人ニ謝絕ヲサラレタカラド
ウカ他ノ誰カニ依賴シテ此事ヲ出シタイト云フコトヲ確ナル方ヨリ私ガ聞
イテ居リマス是モ私ガ裁判所ノ如キ證據ヲ持ッテ居ル譯デハナイケレドモ
ヨモヤ沖繩ノ人民請願者ガ事實毫モナイコトヲ、右等ノコトヲ言觸シテ步ク
譯ハナイト思フソレコレヲ考ヘテ見ルト、殘念ナガラモ此議場中ニ、吾ミガ
斯ノ如キ腐敗分子ガ交ッテ居ルト云フコトヲ、私ハ疑ハナイモノデゴザイマ
ス、若シ果シテ私ノ疑ノ如ク、此議場中ニ幾分ノ者デモ斯ノ如キ賄賂ノタメニ
論法ヲ左右スルト云フヤウナ者ガナッタナラバ議場ノ神聖ヲ瀆スノミナラ
ズ我國家ノ體面ヲ如何ニ致シマスル之ヲ外國ニ聞エ世界萬國ニ聞エタナ
ラバ何ト之ヲ評シマスカ、然ラバドウアッテ我國威ヲ保チ此議場ノ神聖ヲ
保タントスルナラバ種々ナ手數ノ盡シテモ此賄賂ノ弊ヲ矯メ、議員ノ腐敗
ヲ止メナクチヤナラヌノデアリマス又諸君大凡法律ナルモノハ先刻利光君
カラ稍〓御講釋ヲ聞キマシタケレドモ私ハ法律ノ學問ハ致シマセヌケレド
モ私ハ斯ノ如ク信ズル法律ナルモノハ世ノ豫メ防グコトガアル旣ニ發
シタモノヲ防イデ飽クマデモ之ガ弊ヲナクスタメニ法律ト云フモノヲ布ク
ノデアル、然ラバ各府縣會ト云ヒ、或ハ衆議院ト云ヒ斯ノ如キ腐敗ノ分子ガ多
少ニモ拘ラズアルト云フナラバ、早ク此法律ヲ布イテ神堊ヲ保タナクチヤナ
ラヌト云フコトハ、理ノ當ニ當然ナコトデハアリマセヌカソレヲ旣ニアリナ
ガラ此議會ノ體面ニ係ルトカ或ハ行政官ニ蹂〓セラルヽトカ云フコトヲ憂
ヘテ、巳ムト云フコトハ甚ダ其意ヲ得ナイノデアル、若シ惡弊ガ侵潤シテ來タ
ナラバ行政官ガ起サナクテモ幾ラ臭イ物ヘ蓋ヲシテ、體面ヲ保タウト云ッテ
モ決シテ爲ス能ハザルコトデアリマス、然ラバ區々タル手續上ノコト、或ハ裁
判所ノ取扱ノ如キモノニ拘泥セズシテ、其誠心此議會ヲ神聖ニシ我國ノ國威
ヲ保ツタメニハ是非此法律ヲ制定シテ以テ國運ノ增加ト萬民ノ心ヲ安ジタ
イト思ヒマスカラ、私ハ贊成スルノデゴザイマス、願ハクハ諸君ノ御同意ア
ランコトヲ希望致シマス
(「討論終結」ノ聲起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=74
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075・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 討論終結ニ附イテ採決致シマス、討論終結ニ同意ノ諸
君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=75
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076・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數デアリマス、本案ハ無名投票ヲ以テ採決ヲ致シマ
ス-閉鎖-尙ホモウ一應宣〓ヲシテ置キマスルガ本案ノ第二讀會ヲ開
クヤ否ヤニ就イテ採決ヲ致シマスル、其採決ノシヤウハ無名投票ヲ以テ採決
ヲ致シマス本案ノ第二讀會ヲ開カウト云フノ諸君ハ白イ球ヲ入レルコトニ
致シマスル之ニ反對デ本案ハ第二讀會ヲ開クベカラズト云フノ諸君ハ黑イ
球ヲ入レルコトニ致シマス、必ズ名刺ヲ御持參下サイ-是ヨリ氏名點呼ヲ
始メマス
〔書記氏名ヲ〓呼ス〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=76
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077・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 投票漏ノ方ハアリマセヌカ、投票漏ノ方ハナイト認メ
マス-開鎖--是ヨリ開匣致シマス
〔書記官投票及名刺ノ數ヲ計算ス〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=77
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078・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 名刺ト球ノ數ガ符合致シマスルカラ、投票ノ結果ヲ御
報告致シマス
〔林田書記官長朗讀〕
球數總計二百五十四
白球百二十一
黑球百三十三発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=78
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079・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ハ第二讀會ヲ開クペカラズト決シマシターチ
ヨット諸君ニ御諮リスルコトガアリマス、沖繩縣下土地整理法中改正法律案
ノ委員會ヲ開キタイト云フコトヲ永田佐太郞君カラ申出ラレマシタガ、御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=79
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080・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ナケレバ許スコトニ致シマス、議事日程ノ第十
二鐵道敷設法中改正法律案第一讀會ノ續、委員長報告-重野謙次郞君
第十二鐵道敷設法中改正法律案(鳩山第一讀會ノ續(報告)(委員長)
和夫君外三名提出)
〔重野謙次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=80
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081・重野謙次郎
○重野謙次郞君(二十三番) 此鐵道敷設法中改正法律案ノ委員會ノ結果ヲ御
報道致シマス其以前ニチヨット申上ゲテ置キマスノハ此報告書ヲ差上ゲ
テ置キマシタガ鐵道敷設法中ノ改正法律案鳩山和夫君外三名提出ト云フノ
ダケ、此報告書ニ書イテアリマシテ、ソレカラ其後トデ委員ニ附託サレマシタ
鐵道敷設法中改正法律案大村和吉郞君外一名ヨリ提出ニナリマシタノデ、併
テ本案ノ審議ヲ致シマシテ此報告書ノ中ニハ書キマシタガ、此上ニ書クノヲ
ツヒ書記ガ誤ッテ落シタノデゴザイマス是ハ一度ニ此所ニ御報告致シタイ
ト思ヒマスガ先刻議長ニモ其事ヲ申上ゲテ置イタノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=81
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082・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) チヨット此事ハ諸君ニ御諮リヲ致シテ置キマスガ、今
委員長ノ報告通、鐵道敷設法中改正法律案ハ大村和吉郞君カラ出サレタモ
ノモ併セテ報告スベキノヲ落サレテ今日ノ議事日程ニモ大村和吉郞君カラ出
シタ同ジ法案ガ載ッテ居ラヌノデアリマスガ是ハ委員長ノ報告通御異議ガ
ナケレバ併テ報告シ併テ議題ト致シマス
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=82
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083・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=83
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084・重野謙次郎
○重野謙次郞君(二十三番) 此本案ハ一月十五日ニ委員ニ付託ニナッタノデ
ゴザイマス、ソレカラ一月十八日ニ委員長及理事互選ガアリマシテ、不肖ノ私
ガ卽チ此委員長ニ選舉ニナリマシタ、野間五造君ガ理事ニ當選ニナッタデアリ
マス、ソレカラ一月二十日ニ第一囘ノ此委員會ヲ開イタノデゴザイマス、其委
員會ノ第一囘ノ委員會ニ於キマシテ政府ニ此豫定線此改正案ノ線路ヲソレ
ゾレ圖面ニ引クコトヲ托シマシテ、ソレカラ第二囘ハ二月一日ニ此會議ヲ開
キマシテ、今デ尙ホ此種々ノ修正案ガ出テ居リマスカラ、其委員中カラ又此五
名ノ委員ヲ部長理事ノ-委員長理事ノ外ニ五名ノ此委員ヲ選ミマシテ、サ
ウシテ議案ノ整理ト云フコトニ致シタノデゴザイマス五名ノ委員ハ委員中
カラ舉ゲマシタ內山松世君、橫山通英君、新開貢君、山內吉郞兵衞君ソ
レカラ石黑涵一郞君、ソレカラ理事ニ野間五造君ト不肖ノ拙者トデ此議案
ヲ整理スルト云フコトニナッタノデゴザイマスソレカラ第三囘ハ二月五日
ニ開キマシテ、ソレカラ第四囘ヲ二月六日、翌日開キマシテ議了致シマシタノ
デアリマス、卽チ其報告書ハ御手許ニ差上ゲタ通デアリマスソレデ最初提
出致シマシタ案ニ委員會デ修正ニ多少加ヘマシタカラ此修正ニ加ヘタ所ノ
經過ヲ-經過理由ヲ簡短ニ御報告ヲ申上ゲヤウト思フノデ、ソレデ委員會
デ修正ヲ致シマシタノハ此中央線中央線ノ第四項目ノ長野縣下辰野ヨ
リ飯田愛知縣下津具ヲ經テ新川ニ至ル鐵道、此新城ニ至ル鐵道ハ斯ウアッタノ
ヲ修正致シテ、卽チ此愛知縣下津具ヲ經テ新川ニ至ル鐵道、及愛知縣下津具
ヨリ分岐シテ新城ニ至ル鐵道斯ウ云フ風ニ此委員會デハ修正致シマシタノデ
ゴザイマス、其修正ヲ致シマシタ要領ヲ簡短ニ申上ゲマスト此畢竟此新城
ヲ新川ト修正致シマシタノハ國防上ニ必要デアルト云フヤウナ關係カラ致
シマシタノデ、而シテ尙ホ此末項ノ新城線ヲ加ヘタノハ、此彼我相俟ッテ其結
果ヲ全ウスルコトヲ期スルガタメニ此分岐シテ新城ニ至ルト云フコトヲ卽
チ書キマシタノデゴザイマス、ソレカラ此尾越線-尾越線ヲ修正ヲ委員會
デ加ヘマシタノハ愛知縣下名古屋ヨリ岐阜縣下高田ヲ經テ富山縣下富山ニ
至ル鐵道トアッタノヲ修正ヲ致シマシテ、唯東岩瀨ニ至ル鐵道ト云フコトニ修
正ヲ致シマシタノデアリマス、此東岩瀨ニ至ルト云フコトニ修正ヲ致シ
マシタノハ畢竟此日本海ノ連絡ヲ取ル必要ガアリマスカラ東岩瀨
ハ飛驒ノ國ヨリ越中ヲ橫斷シテ貨物輻輳ノ要地デアリマスカラ卽チ
東岩瀨ニ至ル鐵道ト云フコトニ委員會デハ修正ヲ致シタノデアリマスソレ
カラ北陸線ハ委員會デ修正ヲ致シマシタノハ福井縣下金津ヨリ分岐シテ蘆
原ヲ經テ三國ニ至ル鐵道ト云フコトニ修正致シマシテ、且ツソレニ加ヘテ福
井縣下福井ヨリ分岐シテ大野ニ至ル鐵道ト云フコトニ、北陸線ハ修正ヲ加ヘ
タノデアリマス新城ヲ金津ト致シマシタノハ一ハ急流川ノ水害ヲ避ケマ
シテ、一ハ東北方面ノ工事ニ併セテ便ナルガタメ、斯ノ如ク金津ト云フコト
ニ致シタノデアリマス、又此大野ト云フコトヲ加ヘマシタノハ此福井縣下
大野ト修正ヲ加ヘタノハ大野ハ誠ニ沃野千里、越前ノ富源デアッテ開發
上運輸交通上ノ便利上缺クベカラザルモノト見テ、委員會ハ卽チ此大野ニ至
ル鐵道ト云フ修正ヲ致シタ譯デアリマスソレカラ羽越線ハ前ニ出シタ通、
奧羽線モ格別修正ガアリマセヌ、唯此奧羽線ノ中デ最初ノ抑〓ノ敷設法ノ所
ニ斯ウ云フ風ニシタノデアリマス秋田縣下大館ヨリ巖手縣下好摩ニ至ル鐵
道、及巖手縣下赤岡ヨリ宮古ニ至ル鐵道トアッタノヲ「及巖手縣下盛岡ヨリ
宮古ニ至ル鐵道」ト云フコトヲ削除致シタノデゴザイマス此削除ヲ致シマ
シタノハ卽チ前ニ秋田縣下橫手ヨリ巖手縣下釜石ニ至ル鐵道ト云フ海岸線
ニ橫斷線ガアリマシカラ、僅ナ所ニ-非常ナ困難ナ所ニ往ッテ二ツノ橫斷
線ヲ置ク必要ハナイ、斯ウ云フコトデアリマシテ當局者モ此二本ヲ此處ニ
置カレナクテモ一本デ宜ササウダト云フコトデ、卽チ之ヲ削除シタ譯デアリ
マスソレカラ關東線デアリマスガ、最初出サレマシタ委員會ニ付託サレタ
所ノモノト、意味ニハ何モ違ガナイノデアッテ、東京府下東京ヨリ千葉縣木
更津ヲ經テ館山ニ至ル鐵道トアッタノデ千葉縣下行德寒川ト云フ二字ヲ入
レテ經過ノ道ヲ明ニシタノデアリマス、抑≧最初提出シタ法案ノ精神ニ變更
ガナイノデアッテ、唯經過スル所ノ線路ヲ二ツ加ヘタダケデアリマスソレ
カラ末項ニ-關東線ノ末項ニ靜岡縣下大仁ヨリ下田ニ至ル鐵道、是ガ先刻
申シタ大村和吉郞君外一名ヨリ提出ニナリマシタ、之ヲ後トデ付託サレタノ
デアリマシテ、是ハ必要ナ鐵道ト思ヒマシテ矢張リ提出ニナッテ委員ニ付
託サレタ此案ニ加ヘタダケデアリマスソレカラ近畿線ニハ奈良縣下高田
ヨリ五條和歌山縣下和歌山ヲ經テ鹽津ニ至ル鐵道トアリマシタノヲ和歌
山ヲ經テ鹽津ニ至ル鐵道ト云フコトニ貫キ拔ケルヤウニ修正ヲ致シタダケ
デアリマスソレカラ近畿線デ、同ジク此最初ノ園部ヲ經テ舞鶴ニ至ル鐵道、
及綾部ヨリ分岐シテ福知山ヲ經テ兵庫縣下豐岡ニ至ル鐵道ト云フ、此豐岡ト
云フコトヲ湯島ト云フコトニ變ヘマシタノデアリマス畢竟是ハ綾部ト湯島
ノ連絡ヲ明ニスルタメ、豐岡トアッタノヲ湯島ト變ヘタヾケデ他ニハ修
正ハアリマセヌ、ソレカラ近畿線ニ一項ヲ加ヘタ、大阪府下野田ヨリ九條ヲ
經テ天保ニ至ル鐵道ト云フ一項ヲ加ヘタノデアリマ人是ハ卽チ西成鐵道
トソレカラ海岸ト最モ連絡ヲ宜クスルタメニ、此鐵道ヲ加ヘルガ宜シイト
云フコトデ之ヲ加ヘタノデアリマス、ソレカラ新ニ中國線ニ至リマシテ
茲ニ修正ヲ加ヘタノデアリマス、兵庫縣下姫路ヨリ鳥取縣下鳥取ニ至ル鐵
道トアリマシタノデ、岡山縣下宇野ヨリ岡山津山勝山ヲ經テ鳥取縣下米子ニ
至ル鐵道及岡山縣下勝山ヨリ分岐シテ廣島縣下西城ニ至ル鐵道兵庫縣下姫
路ヨリ鳥取縣下鳥取倉吉米子ヲ經テ境ニ至ル鐵道及岡山縣下古町ヨリ分岐
ンテ津山ニ至ル鐵道、ソレカラ次ニ京都府下舞鶴ヨリ兵庫縣下湯島鳥取縣下
鳥取米子島根縣下松江濱田津和野山口縣下萩ヲ經テ小月ニ至ル鐵道及島根
縣下津和野ヨリ分岐シテ山口縣下山口ヲ經テ小郡ニ至ル鐵道斯ウ云フ風ニ
修正致シマシタノハ新ニ加ヘタノハ陸軍ニ於キマシテ軍事上必要デアルト
云フ說明ニ依リマシテ新ニ加ヘタノデアリマス、ソレカラ其他直シマシタ
ノハ最初山陰山陽ノ連絡線ハ元ノ通ニ修正致シマシタノハ是ハ現時第一
期工事トシテ既ニサウ云フ線デアッタカラ、最初ノ法案ノ通ニ直ス方ガ宜シ
イト云フコトデ、委員會ハ直シタノデアリマス、ソレカラ此廣島縣下廣島ヨリ
三次ヲ經テ島根縣下濱田ニ至ル鐵道及廣島縣下三次ヨリ分岐シテ鳥取縣下
根雨ニ至ル鐵道トシタノハ是モ陸軍デ軍事上大改正ヲシテ將來鐵道ノ大計
畫ヲヤルナラバ斯ウ云フ風ニヤラナケレバ軍事上必要ガアルト云フコトデ
アッタカラ、其意見ヲ委員會ハ採リマシテ而シテ今ノヤウニ修正ヲ致シマ
シタ廣島縣下廣島ヨリ島根縣下津和野ニ至ル鐵道ト云フコトモ是モサウ
云フ理由デ加ヘマシタ、ソレカラ四國線デハ最初ノ案デハ德島縣下德島ヨリ
高知縣下高知愛媛縣下松山ヲ經テ字和島ニ至ル鐵道及高知縣下伊野ヨリ分
岐シテ須崎ニ至ル鐵道トアリマシタノヲ、德島縣下小松島ヨリ德島縣下德島
小松島ダケヲ入レタヾケデ、最初提出シタ精神ト少モ變リハナイノデアリ
マス、ソレカラ九州線ハ最初ノ案デハ福岡縣下門司ヨリ大分縣下大分、宮崎縣
下宮崎ヲ經テ吉松ニ至ル鐵道、及宮崎縣下富高ヨリ分岐シテ細島ニ至ル鐵道、
斯ウアッタノヲ其後トニ宮崎縣下小林ヨリ分岐シテ都城ニ至ル鐵道、是ハ有名
ナ所デ是モ軍事上必要デアルト云フノデ、都城ト云フノヲ細島ヨリ後トニ附
加ヘタノデアリマスソレカラ福岡縣下久留米ヨリ豆田ヲ經テ大分縣下大分
ニ至ル鐵道ト云フ一項ヲ、サウ云フ必要カラ加ヘタノデアリマス、ソレカラ
連絡線ト云フ一項ニ於キマシテ、此法案ノ大改正ヲヤルノデアリマスカラ、
斯ウ云フ一箇條ヲ加ヘタノデアリマス山口縣下赤間關附近ヨリ福岡縣下門
司附近ニ至ル鐵道ト云フコトヲ加ヘタノデアッテ、是ハ卽チ此連絡線ヲ或ハ
海底デヤルカ鐵橋デヤルカ、免ニ角將來連絡線ハ何樣必要ナモノデアラウ、
國家大計ノ上カラ云ヘバ必要デアラウト云フコトカラ、此連絡線ト云フ
一項ヲ此所ニ加ヘタノデアリマス、線路ノ所ハ今申上ゲタヤウナコトデ、一々
理由ヲ申上ゲナクッテモ大〓前キノ精神ト敢テ變ル所ハナイノデアリマスカ
,線路ハ以上申上ゲク通、委員會ニ於キマシテ修正ヲ加ヘタ譯デアリマ
ス、ソレカラ此文面ニ於キマシテハ、第二條ノ二ニ「鐵道線路ノ豫測費ハ經常
部ヨリ支出スヘシ」ト云フ一箇條ヲ加ヘタノデアリマス、此法案ガ通過ヲ致
シマシタナラバ以上ノ線路ニ對シマシテ當局者ハツレ〓〓測量ヲシテ見ナ
ケレバナラヌノデアリマス、然ルニ其費用ハナイノデアリマスカラ、當局者モ
若シ此案ガ成立ッタナラバ測量費ト云フモノハ必要デアルト云フコトデゴ
ザイマシテ、委員會ニ於キマシテハ大藏省ニモ此事ヲ聽キマシタ所ガ、經常部
デモソレハ臨時部ト書イテモドチラデモ書キヤウデ宜シイ併ナガラ此年度
ニ費用ヲ出スト云フコトハ往カヌカラ、來年カラ出ス積リカト云フ質問デア
リマシタカラ、無論此案ハ貴衆兩院ヲ通過シテ御裁可ヲ經テ法律ト爲ルノデ
アリマスカラ、ドウセ今年度ノ間ニ合ハヌト云フコトデゴザイマスカラ、敢
テ大藏省ハ不同意ハナイノデ、此一箇條ヲ新ニ委員會ニ於テ加ヘタノデアリ
マス、ソレカラ第三條ノ「鐵道工事ハ明治二十六年度ヨリ向フ二十四箇年ヲ以
テ成功期限トス」ト云フコト、斯ウ云フコトガ最初ノ案ニ書イテアリマシタケ
レドモ此箇條ハ削除シタノデアリマス、削除ヲ委員會デ致シマシタノハ
此法案ハドレ位ナ金高デ出來ルモノカ未ダ明瞭ナコトハ分ラヌノデゴザイマ
シテ、サウスルト總額ハ何レ分ラヌノデアリマスカラ、明治二十六年度ヨリ
向フ二十四箇年ト云フコトヲ明ニ書キマシテモ、ソレハ果シテ此通ドウデア
ルカト云フコトハ分ラヌノデアリマスカラ、除イタ方ガ宜シイ、又大藏省ハ
絕對的ニ此期限ハ不同意デアル、斯ウ云フノデゴザイマスカラ、此期限ヲ除イ
タノデアリマス併ナガラ一方カラ申シマスト其次ノ第四條ニ「政府ハ一箇
年貳千萬圓ヨリ少ナカラサル鐵道公債ヲ募集スヘシ」ト最初書イテアツタ
ノデアリマスケレドモ是ハ大藏省ト種々押問答ヲシマシタガソレヲ修正
シテ一千万圓ト云フコトニ委員會ハ修正ヲシタノデアリマシテ、「壹千萬圓
ヨリ少ナカラサル公債ヲ募集スル」ト云フコトニ書キマシタラ、此年限ノ所ハ
書カナクテモ此金ノ出方ニ依ッテ年限ガ極ッテ來ルダラウト云フ意味ヲ以
チマシテ、此明治二十六年度ヨリ向フ二十四年間ヲ以テ成功期限トスルコト
ハ其中カラ削除ヲ致シマシタ、ソレカラ今申シマシタ通、最初二千万圓ヨ
リ少カラザル鐵道公債ヲ募集スベシト書イテアッタノデアリマス、是ハ二千
万圓ヨリ少カラザル鐵道公債ヲ募集スベシト書イテアリマシタガ、大藏省ハ
ナカ〓〓此二千万圓ト云フコトハムヅカシイ委員會ニ於キマシテモドウカ
大藏省ト圓滿ニ局ヲ結ンデ事ヲ纏メタイト思ヒマシテ、種々ニ交涉ヲ致シマ
シタガ、今現ニ此從來ノ一期線ニ費シテ居ル所ノ金ハ年々八百万圓ヨリ少
カラザル鐵道公債ト云フモノハ、現ニ募集シテ居ルノデス、今年ハ一千万圓位
ナ公債ハ募集ニナッテ居ルカラ一千万圓ヨリ少カラザル公債ヲ募集スルト
云フコトニ書イテ置イタナラバサウ大藏省ハ絕對的ニ不同意ヲ稱ヘナイデ
モ宜カラウト云フ考デアリマスカラ十分大藏省ハ同意ヲ致シマセヌケレド
モ現ニ此一千万圓ヨリ少カラザル位ニ書イテ置イテ、時機ガ宜シケレバ其年
ハ二千万圓募ルモ五千万圓募ルモ、是ハ一ノ時機トシテ此法案ガ貴族院ニ行ク
乙酸、ルコトヲ悲ミマシタガタメニ、先ヅ一千万圓ヨリ少カラザルト云フ
コトニ修正ヲ致シマシタノデアリマスソレカラ十四條ノ左ノ如ク改メタ
ノデアリマス、「最初此豫定鐵道線路中未タ敷設ニ著手セザルモノニシテ、若
シ私設鐵道會社ヨリ敷設ノ許可ヲ願出ル者アルトキハ政府ハ是ヲ許可スルコ
トヲ得」是ハ帝國議會ノ協贊ヲ經ルト云フコトニ最初ノ案ハ御承知ノ如クナク
テ居リマシタケレドモ、經濟上ノ變化ハ時々刻々アルノデアリマスカラ、
斯ノ如キ此線路ヲ悉ク網羅シテ書キマシタ以上ハ急ニ此私設鐵道デモ之
ヲ急ニヤリタイト云フコトガアリマシタ時分ニ、此帝國議會ノ協賛ヲ經テヽ
ナケレバナラヌト線路ノコトニ附イテハ從來ノ如クシテ置キマスト大變
ナ不便デアルト考ヘマシタカラ卽チ此帝國議會ノ協賛ヲ經ルト云フコトヲ
知リマシテ委員會ニ於キマシテハ最初鐵道會議ニ諮詢スルト云フコトガア
リマシタカラソレハ行政權ヲ信用スルモノデアルト云フ議論カラ、之ヲ書
カナクッテモ鐵道會議ニハ無論行政官ガ諮ルデアラウ政府ノ卽チ行政官ノ
部內ニ於テ此帝國議會ノ開會ヲ待タナタッテモ民設ニ許シテ宜シイト云フ
線路ガアッタナラバ許可シテ便利ヲ與ヘタ方ガ宜シイト云フノデ、帝國議
會ノ協贊云々ヲ削除シタノデアリマス、ソレカラサウナリマスト、第十五條ノ
第二號中第十條第三條ノ二ニ自然改ッテ來ルノデアリマス、以上申上ゲマシ
タ通詳シイコトヲ申シマスト時間ヲ費スノミナラズ、此案ハ諸君ノ御手許ニ
囘ッテ居リマスコトデアリマスカラ、速ニ之ヲ結了致シマシテ、貴族院ニ送
付シテ成立ツコトヲ深ク希望スル譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=84
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085・野間五造
○野間五造君(二百五十三番) チヨット委員長ニ伺ヒマス、中國線ノ第三項
デゴザイマス、ソレニ古町ヨリ津山ニ至ルト云フコトガアル、其中ヘ勝間田
ニ至ルト云フコトヲ入レテ決議シテ置イタヤウデスガ、ソレヲ述ベテ戴キタ
イ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=85
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086・重野謙次郎
○重野謙次郞君(二十三番) 別段ニ違ヒハシマスマイ、チヨット調ベテ見マ
セウ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=86
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087・野間五造
○野間五造君(二百五十三番) 勝間田ヲ經テ津山ニ至ル··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=87
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088・重野謙次郎
○重野謙次郞君(二十三番) 成ル程勝間田ト云フコトハアリマス、アッタノ
ヲ是ハ活版ノ誤植デアリマスカラ訂正ヲ致シマス、元ノハ兵庫縣下佐用ヨリ
分岐シテト云フノヲ、ソレヲ修正シテ古町トシテ勝間田ヲ經テト、斯ウ云フ
コトニナリマシタ是ハ訂正ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=88
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089・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=89
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090・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ第二讀會ヲ開クコトニ致シマス、議
事日程ノ第十三美術奬動ニ關スル建議案、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
第十三美術奬勵ニ關スル建議案(根本正君外一名提出)
美術奬勵ニ關スル建議案
國家ノ工藝ヲ進步セシメムト欲セハ先ツ之ヲ基礎タル美術ノ發達ヲ圖ラサ
ルヘカラス故ニ文明諸國皆夙ニ之カ保護奬勵ノ法ヲ設ケ殊ニ近年ニ至リ各
國益〓競フテ其ノ道ヲ講シ或ハ特ニ美術行政ニ意ヲ用ユルコト最愼重ナル
アリ苟モ今後此ノ劇甚ナル競爭場裏ニ立チ工藝ヲ進メ輸出ヲ增シ以テ國家
ノ富源ヲ增サムト欲セハ必ヤ相當ノ方法ナカルヘカラス況ヤ東洋ノ工藝國
美術國ヲ以テ自ラ任スル我カ國ニ於テオヤ而シテ之ヲ保護奬勵ノ方法ニ至
リテハ一ニシテ足ラサレトモ最急務ナルモノヲ左ニ列記ス
一美術調査會ヲ設ケ東西各其ノ道ニ付學識經驗アル者ヲ招集シ美術ニ關ス
ル一切ノコトヲ隨時調査セシメ又美術ニ關スル諸事ノ顧問ト爲スヘキ
こ
一國立美術館ヲ設ケ內外古今ノ美術ヲ蒐集陳列スヘキコト
一知名ノ技術家ヲ選拔シ海外ニ派遣シ彼國ノ名作ヲ〓究セシムルコト
政府ハ速ニ之カ施設ニ著手シ美術保護奬勵ノ實ヲ舉ケムコトヲ望ム
右建議ス
〔安藤龜太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=90
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091・安藤亀太郎
○安藤龜太郞君(二百八十一番) 吾〓ハ美術奬動ニ關スル建議案ヲ提出シテ
置キマシタ、此美術ノコトハ特ニ我邦ニ於テ必要ナコトハ今更申スマデモゴ
ザイマセヌ、且ツ又我邦ハ工藝國又ハ美術國ヲ以テ任ジテ居ルニ拘ラズ、甚
ダ奬勵保護ノ道ガ立ッテ居リマセヌガ故ニ大ニ此工業美術ノ奬勵ヲ致シマ
スレバソレガタメニ貿易ノ一端ニモナリマスルコトデ、此奬勵ハ最モ必要
ナコトヽ私抔ハ考ヘマスソレ故ニ何卒此奬勵ノ道ヲ十分政府ハ立テラレン
コトヲ偏ニ吾ミハ切望致シテ居リマスカラ、今ヤ時刻モ切迫致シテ居リマス
カラ、他ノ理由ハ餘リ申上ゲマセヌガ、此建議案ニ御贊成アッテ、委員付託ニ
ナルコトヲ偏ニ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=91
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092・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三一番) ドウカ委員ニ付託ニナランコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=92
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093・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 委員付託ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=93
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094・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 九名ノ特別委員ヲ議長ガ指名致シマシテ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=94
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095・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、議事日程ノ第十四〓
育基金ヨリ生スル利子配付方ニ關スル建議案、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
工藤行幹君
第十四〓育基金ヨリ生スル利子配付方ニ關スル建議案
(工藤行幹君提出)
〓育基金ヨリ生スル利子配付方ニ關スル建議案
明治三十二年法律第八十號〓育基金特別會計法發布以後同三十三年三月末
日迄基金ヨリ生スル利子金ハ同年勅令第四百三十五號第二條乃至第八條ニ
依リ各府縣ニ配付セラレムコトヲ望ム
右建議ス
(「工藤行幹君ハ居マセヌ」「委員付託」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=95
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096・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ハ議長指名デ九名ノ特別委員ヲ選舉シテ異議ハアリ
マセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=96
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097・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、議事日程ノ第十五離
島航海補助ニ關スル建議案、委員長報告、廣住久道君
第十五離島航海補助ニ關スル建議案(藤金作(委員長報告)
君外七名提出)
〔廣住久道君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=97
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098・廣住久道
○廣住久道君(百九十三番) 私ハ離島航海補助ニ關スル建議案ノ委員會ノ經
過及結果ヲ御報告致シマス、本案ニ附キマシテハ內務省及遞信省ニ關係ヲ
有ッテ居リマスルノデ、兩省ノ政府委員ニモ出席ヲ請ヒマシテ、ソレ〓〓質
問モ致シマシタシ、且ツ審査ヲ致シマシタ次第デアリマス此離島卽チ對馬
五島壹岐等ノ各離島ニ於キマシテ、其本國カラ致シマスル通路ト云フモノハ
非常ナ此海モ荒クテ困難ヲ致スト云フコトデアリマス、ソレ故ニ是マデハ縣
稅ヲ以テモ幾分カ補助ヲ致シテ此定期航海ヲ致シタコトモアリマスサウデ
アリマスガ、併ナガラ、今年度ヨリハ此是マデノ地方費ノ補助デハ割合ガ合
ハヌト云フノデ、之ヲモ辭スルト云フコトニナッタサウデアリマスカラ是
非國庫ノ補助ヲ請ウテ此島民ノ總テノ不便ヲ補ヒタイ斯ウ云フ希望ナノデ
アリマスカラ、委員會ニ於キマシテ出席委員ノ一致ヲ以チマシテ、本案ヲ可
決致シマスタ、此段御報道致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=98
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099・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百四十三番) 此案ハ唯今委員長報告ノ通可決アランコトヲ望
ミマス
(「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=99
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100・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 委員長報告ノ通デ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=100
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101・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通決シマス、尙出席ノ諸君ガ定足
數ヲ闕イテ居ルト思ヒマスカラ、今日ハ是デ議事ヲ止メヤウト思ヒマス、其
前ニ諸般ノ報告ガアリマス
〔書記朗讀〕
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
石狩川治水ニ關スル建議案
提出者加藤政之助君西原〓東君恆松隆慶君
山內吉郞兵衞君ヨリ國庫ノ出納ニ關スル質問書ヲ提出セラレタリ
花井卓藏君外一名提出行政裁判所評定官ノ定員竝兼任ニ關スル質問ニ對シ
山縣內閣總理大臣ヨリ花井卓藏君外二名提出大審院檢事ノ司法省參事官兼
任ニ關スル質問ニ對シ〓浦司法大臣ヨリ花井卓藏君提出刑法改正ニ關スル
質問ニ對シ〓浦司法大臣ヨリ左ノ答辯アリ
衆議院議員花井卓藏君外一名提出行政裁判所評定官ノ定員竝兼任ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候也
明治三十三年二月八日内閣總理大臣侯爵山縣有朋
衆議院議長片岡健吉殿
衆議院議員花井卓藏君外一名提出行政裁判所評定官ノ定員竝兼任
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一官制ニ於テ定員專任何人ト定メタル場合ニ於テハ兼任者ハ專任定員中ニ
包含セス故ニ政府ハ行政裁判所評定官ノ現員ヲ以テ法令ノ規定ニ違ハサ
ルモノト認ム
一行政裁判所ニ行政官ノ兼任評定官ヲ置クコトヲ得ルハ行政裁判法ノ認ム
ル所ナルヲ以テ之カ爲ニ裁判權ノ獨立ヲ害スルモノニ非スト認ム
一政府ハ行政裁判所事務ノ進捗ヲ計ルノ必要ヲ認メ行政官ヲシテ評定官ヲ
兼任セシメタリ
右及答辯候也
明治三十三年二月八日內閣總理大臣侯爵山縣有朋
衆議院議員花井卓藏君外二名ヨリ大審院檢事ノ司法省參事官兼任ニ關スル
質問ニ對シ司法大臣ヨリ答辯書提出ニ付及御囘付候也
明治三十三年二月八日内閣總理大臣侯爵山縣有朋
衆議院議長片岡健吉殿
衆議院議員花井卓藏君外二名提出大審院檢事ノ司法省參事官兼任ニ關スル
質問ノ件ニ關シ別紙答辯書差進候也
明治三十三年二月六日司法大臣〓浦奎吾
衆議院議長片岡健吉殿
衆議院議員花井卓藏君外二名提出大審院檢事ノ司法省參事官兼任
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
司法省ニ於テハ改正條約施行前ヨリ法案ノ調査竝ニ法典ノ施行ニ關スル事
務繁劇ナルヲ以テ此等ノ事務ヲ處辨セシムル爲メ檢事ヲシテ司法省參事官
ヲ兼シメタル者アリ此等ノ事務ハ引續キ同一ノ人ヲシテ之ヲ處辨セシムル
必要アルニ因リ曩ニ大審院以下各級裁判所ヲ通シテ檢事ノ數ヲ定メタル制
ヲ改メ大審院檢事ノ數ヲ定ムルニ當リテモ當時ノ現在員ヲ以テ其定員ト爲
シ兼官アルモノヲシテ司法省ノ事務ヲ執ラシメ居レリ本官兼官中何レノ事
務ヲ執ラシムヘキヤハ事務ノ緩急ニ從フモノニシテ若干ノ期間本官ノ事務
ヲ執ラサルコトアルモ之ヲ以テ違例ト認メス
右及答辯候也
明治三十三年二月六日司法大臣〓浦奎吾
衆議院議員花井卓藏君ヨリ刑法改正ニ關スル質問ニ對シ司法大臣ヨリ答辯
書提出ニ付及御囘付候也
明治三十三年二月八日內閣總理大臣侯爵山縣有朋
衆議院議長片岡健吉殿
衆議院議員花井卓藏君提出刑法改正ニ關スル質問ノ件ニ對シ別紙答辯書差
進候也
明治三十三年二月六日司法大臣浦〓奎吾
衆議院議長片岡健吉殿
衆議院議員花井卓藏君提出刑法改正ニ關スル質問ニ對スル答辯書
刑法改正案ヲ本期議會ニ提出スルト否トハ未定ナリ改正ノ程度及其理由ハ
改正案ヲ議會ニ提出スル時ニ至ラサレハ之ヲ言明スルコトヲ得ス刑法改正
案ハ現ニ法典調査會ノ審議中ニ係ル質問書ニ云フ如ク同會ヨリ改正案ヲ取
囘シタルコトナシ刑事訴訟法改正案ニ先チテ刑法改正案ヲ調査シタルハ二
法ノ性質上調査ノ順序アルニ由ル
特別委員長及理事左ノ通當選セラレタリ
臨時帝國議事堂建物中舊御便殿保存費國庫補助ニ關スル建議案
委員長松本正友君理事淺野順平君
特別委員左ノ通指名セリ
會計檢査官懲戒法案外一一案
內藤正義君和泉邦彥君鈴木摠兵衞君
安部井磐根君木村格之輔君望月長夫君
布施甚七君井手毛三君東良三郞君
船舶檢査法中改正法律案
鹽谷五十足君高川定治郞君伊藤直純君
山田順一君秋山源兵衞君望月圭介君
赤土亮君宮崎榮治君野間豐五郞君
美術奬勵ニ關スル建議案
江角千代次郞君小山久之助君雨森菊太郞君
武石敬治君廣住久道君大矢四郞兵衞君
根本正君飯島正治君松尾巳代治君
〓育基金ヨリ生スル利子配付方ニ關スル建議案
古谷新作君工藤行幹君星松三郎君
橋本久太郞君江島久米雄君恆松隆慶君
長瀨〓一郎君中埜廣太郞君靑柳四郞君
(左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
國庫ノ出納ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十三年二月八日
提出者山内吉郞兵衞贊成者早川龍介
外二十九名
質問主意書
一各官衙ト會計檢査院トノ間出納上ノ決算報告相衝突シタル其結果奈何
ノ始末ヲ爲スヤ
二各官衙ノ出納官吏ハ相當學術經驗ノモノヲ撰擇シテ任シタルヘキニ年
年各官衙ト會計檢査院トノ間ニ衝突スルハ抑何ニ原因スルヤ
三國務大臣ハ各官衙ニ於テ出納上ノ違法者ハ法律命令ニ違背シタルモノ
ト認ムルヤ果シテ然ラハ政府ハ奈何ノ處分ヲ爲スヤ
四國務大臣ハ國家財政ノ責ニ任スヘキニ年々歲々出納上ノ違法アルニ當
テハ奈何ノ責務ヲ盡スヘキモノト認ルヤ
理由
惟ルニ中央ト地方トヲ論セス我國官衙ニ於ケル出納上ノ不始末ハ會計法第
十四條第二十三條同第二十四條同第二十六條同第二十七條ノ法文ニ違背
シタルモノトシテ會計檢査院ノ調査上往ヶ衝突スルモノ多々ナリ之ヲ約言
スレハ法律命令ニ違背セルモノ每歲貴衆兩院ノ議ヲ經ルニ至ル畢竟出納上
ノ規定未タ全ク其ノ宜シキヲ得サル結果ナランカ而シテ政府ノ認ムル所此
ノ違法ノ出納ニ對スル處分ハ僅カニ懲戒若クハ刑法ノ制裁ヲ受ケシムル各
其法アリト雖國家ノ損失ヲ免ル能ハサルモノアリ況ンヤ貴衆兩院ノ議ヲ經
其歸著スル所ヲ看ルコトナシ
抑財經ハ國家民人ノ体戚ニ關スル所ニテ最モ重ク國務大臣其責ニ任ス可キ
ハ憲法ノ定ムル所及ヒ會計法ノ規定アルニモ拘ハラス各官衙ニ於テ法律命
令ニ違背シタル出納ヲ爲スニ至ツテハ何レカ怠慢ノ點ナキ能ハス然ルニ政
府ハ往々ニシテ之ヲ忽諸ニ付シ去リ法律ノ改正出納完全ノ道ヲ講セス國民
ニ損失ヲ負ハシムルハ默視スルニ忍ヒス依テ之ヲ政府ニ質問ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=101
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102・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 諸君ニ御諮リ致シマスガ、會期ハモウ僅カ十有餘日ニ
ナリマシタデアリマスカラ、前囘ノ例ニ依リマシテ議事日程ヲ定メマスルノ
ニ、定規ノ日數ヲ經ナイモノデモ極急要ナモノト議長ガ認メマスモノハ、日
程ニ載セルヤウニ致シマスガ、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=102
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103・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス明日ハ午後一時ヨリ
開會致シマスガ、議事日程ハ追ッテ公報ヲ以テ御通知致シマス、今日ハ是デ
〓會致シマス
午後五時一分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001413242X02219000208&spkNum=103
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