1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十四年二月十三日(水曜日)
午前十時十五分開議
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議事日程 第七號 明治三十四年二月十三日
午前十時開議
第一 明治三十四年度歳入歳出總豫算案竝明治三十四年度各特別會計歳入歳出豫算案審査期限を定むるの件
第二 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件審査期限を定むるの件
第三 馬匹去勢法案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
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001・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ報〓ヲ致シマス
〔小原書記官朗讀〕
去ル八日本院ニ於テ修正可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送
付セリ
移民保護法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
明治三十四年度歲入歲出總豫算案竝明治三十四年度各特別會計歲入歲出
豫算案
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
同日決算委員分科會ニ於テ當選シタル主査ノ氏名左ノ如シ
第一科主査子爵山口弘達君
第二科主査谷森眞男君
第三科主査子爵內田正學君
第四科主査子爵一柳末德君
田村耕平君
本月四日死去セラル依テ去ル九日左ノ弔辭ヲ贈レリ
貴族院ハ議員田村耕平君ノ長逝ヲ追悼シ恭シク弔辭ヲ呈ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=1
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002・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ日程ヨリ移リマス、第一第二ハ併セテ議題
ニシマス、明治三十四年度歲入歳出總豫算案竝明治三十四年度各特別會計歲
入歲出豫算案審查期限ヲ定ムルノ件、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲
スヲ要スル件審査期限ヲ定ムルノ件
〔小原書記官朗讀〕
明治三十四年度歲入歲出總豫算案竝明治三十四年度各特別會計歲入歲出
豫算案
右本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治三十四年二月八日
衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治三十四年二月八日
衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=2
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003・岡部長職
○子爵岡部長職君 豫算案審査期限ヲ定メラレル前ニ於キマシテ、本員ハ伊
藤總理大臣ニ質問ヲ致シタイ事ガゴザイマスカラ、議長ヨリ總理大臣ノ出席
ヲ求メラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=3
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004・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 總理大臣ハ出席ニナルト云フ通知ガアリマシテ、
程ナク出席ニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=4
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005・岡部長職
○子爵岡部長職君 然ラバソレマデ期限ヲ御定ニナルコトヲ御待ヲ願ヒタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=5
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006・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 如何デセウ、期限ヲ定メルダケハ先ニ定メテ置イ
テモ差支ナカラウト思ヒマスガ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=6
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007・黒田長成
○侯爵黑田長成君 其審査期限ヲ定メル前ニ岡部子爵カラ總理大臣ニ質問ニ
ナリタイト云フコトデアリマスレバ議事日程ヲ變更セラルヽコトニハ參リマ
セヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=7
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008・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレハ議決次第デドウニモナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=8
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009・黒田長成
○侯爵黑田長成君 然ラバ議事日程ヲ變更シテ馬匹去勢法案ノ議事ヲ先ニ開
カルヽヤウニ希望シマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=9
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010・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 議事日程ヲ變更スルト云フコトニハ御異議ハゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=10
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011・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 然ラバ後ヘ囘シマシテ、馬匹去勢法案、政府提出、
第一讀會
〔小原書記官朗讀〕
馬匹去勢法案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治三十四年二月五日
內閣總理大臣侯爵伊藤博文
陸軍大臣男爵兒玉源太郞
農商務大臣林有造
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
馬匹去勢法案
第一條牡馬ニハ去勢ヲ行フ但シ種牡馬ハ此ノ限ニ在ラス
第二條牡馬ニシテ種牡馬タルヘキ資質アリト認メタルモノニハ頭數ヲ限
リ去勢ノ施行ヲ猶豫ス
疾病又ハ發育不全ニ因リ去勢ヲ行フニ堪ヘスト認メタルモノニハ去勢ノ
施行ヲ猶豫スルコトヲ得
第三條牡馬ノ去勢年齡ハ明ケ三歲トス
去勢ハ春期又ハ夏期ニ於テ之ヲ行フ
第四條左ノ各號ノ一ニ該當スル牡馬ニハ去勢年齡ニ拘ハラス去勢ヲ施行
ス但シ明ケ十五歲以上ノモノハ此ノ限ニ在ラス
-去勢ノ施行ヲ猶豫シ其ノ他已ヲ得スシテ去勢ヲ施行スルコトヲ得サ
リシ牡馬ニシテ其ノ事由消滅シタルモノ
二去勢年齡ヲ經過シタル牡馬ニシテ本法施行後本法ヲ施行セサル島嶼
ヨリ牽キ入レ又ハ外國ヨリ輸入シタルモノ
三本法施行ノ際去勢年齡ヲ經過シタルモノヲ除クノ外種牡馬ニシテ檢
査合格ノ證明ノ效力ヲ失ヒタルモノ
第五條牡馬ニシテ去勢施行ノ爲斃死シ又ハ從來ノ用途ヲ變更若ハ廢止ス
ルノ已ムヲ得サルニ至リタルトキハ償金ヲ與フヘシ
第六條去勢施行ノ費用ニ關スル規定竝前條償金ノ査定ニ關スル規定ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條牡馬ノ去勢ノ施行ヲ拒ミタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條本法ハ種牡馬檢査法ヲ施行セサル島嶼ニハ之ヲ施行セス
〔政府委員和田彥次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=11
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012・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 此法案ヲ提出致シマシタ理由ヲ一言致シマス、
本案ノ理由書ニモ明記シテゴザイマス通ニ我國ノ馬匹ノ頑狂ナル資質ヲ矯メ
且ツ將來馬匹ヲ改良繁殖致シマスル點ニ於キマシテ種牡馬ヲ絕對的ニ精整致
シマスル目的ヲ以チマシテ本案ヲ出シマシタノデアリマス、現在ノ儘ニ致シ
マシテハ甚ダ農用、運搬用其他軍事用ニ就キマシテ不便不利ナ點ガゴザイマ
スルノデ、本法ヲ行ヒマシテ十分ナル實益ヲ擧ゲタイト云フ點ヨリ本案ヲ提
出致シマシタ、詳細ノ事ハ委員會ニ付セラレマスルコトヽ存ジマスルノデ、
其節ニ於キマシテ委曲御說明ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=12
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013・村田保
○村田保君 政府委員ニ大體ノ質問ヲ致シタイト思ヒマス、成ル程唯今政府
委員カラ馬匹改良ハ必要ダト云フコトヲ言ハレマシタガ、併シ本員ノ考ヘマ
スニハ軍用、運搬等ニハ或ハ宜イカモ知レマセヌガ、併ナガラ此牡馬ト云フ
モノハ日本全國ノ馬匹ノ種馬ヲ除キ外ノ牡馬ハ卽チ睪ヲ取ッテ仕舞フト云フ
法律デアル、斯ノ如キ强制的ニ馬ノ睾ヲ取ルヤウナ法律ガ餘所ノ國ニハゴ
ザイマセウカ、、隨分獨逸アタリデハ馬匹ノ改良ト云フコトハ餘程喧マシクナッ
テ居リマスガ、此改良上ニハ隨分澤山ナル奬勵金ヲ以テ改良ニナンスルト
云フコトガアリマスガ、法律ヲ以テ罰則マデモ設ケテ其一個人ノ所有物トモ
云フベキ所ノ馬ノ睾ヲ取ッテ仕舞フト云フ法律ハ本員ノ見ル所デハナイノデ
ゴザイマス、若シサウ云フ法律ガ外國ニゴザイマスナラバ、ソレヲ伺ヒタイト
思フ、ソレガ第一、ソレカラ年々牡馬ノ去勢ヲ行フト云フコトデゴザイマス
ガ、政府ニ於キマシテ全國ノ牡馬ノ去勢ヲ年々行ヒマス其馬ノ數ハドノ位ア
ルカ、是ハ御調ニナッテ居リマスカ、實際ニヤッテ見ナケレバ明細ナル御調ハ
出來マスマイケレドモ、〓略ドノ位ノ馬ノ數ト云フコトハ御調ニナッテ居リマ
セウカ、又之ヲ施行シマスニハ此獸醫ト云フモノガナクテハナルマイト思
フ、トコロガ獸醫モ今日ハ隨分澤山各地ニ居ルデゴザイマセウケレドモ、成
ル程獸醫タルモノハ去勢ヲシテ實益ヲ致スト云フコトハ出來マセウガ、併ナ
ガラ實際ハ去勢ヲ行フト云フコトハ頗ル經驗ガナイトドウモ危イト思フ、隨
分出血スルコトガアルシ、或ハ睾ヲ拔イタタメニ馬ヲ斃スト云フコトモ間、
アラウシ、或ハ斃レヌデモ後トノ用ヰニナラヌト云フコトガ往々アルト思
フ、サウ云フ所ニ是マデ經驗ノアル獸醫ト云フモノハドノ位アルカト云フ
御調ガ付イテ居ルカソレヲ伺ヒタイ、ソレカラ此全國ノ馬ノ去勢ヲ致シマス
ニハ是ハ餘程費用ガ掛ルト思ヒマスガ、此馬ノ去勢ヲシマスニ就イテハ手術
料ト云フモノハ是ハ國庫ガ負擔スルノデアリマスカ、又ハ銘々ガ之ヲ出スノ
デアリマスカ、其邊ガ此法案ニハ見エマセヌカラソレヲ伺ヒタイ、ソレカラ
去勢ノコトニ就キマシテハ明治十三年ニ農商務省カラ·······農商務大臣カラ布
告シタコトガアル、又其後十五年ニ去勢ノ手續ノヤウナモノヲ出シタコトガ
アルヤウニ覺エテ居リマスガ、ソレデ一般ノ意向ハドウデゴザイマスカ、政府
ハ十三年ト十五年トニ去勢ト云フモノハ必要ダト云フコトヲ一般ニ示シテア
ルノデアリマスガ、今日此產馬組合ト云フヤウナモノヽ一般ノ意向ト云フモ
ノハ去勢ヲスルガ必要カ必要ヂナイカト云フ其意向ハドウデアリマスカ、去
勢ヲシテ貰フト云フ意向ニナッテ居リマスカ、私ノ承ル所デハ是マデ隨分去勢
シタ所モアル、然ル所ガソレヲ市場ナドヘ出シマスト誠ニ是ハ良イ馬ダ骨格
モ良イ、ケレドモ段々後ロヲ見ルト睾ガナイト云フノデ是ハイケナイト言ッ
テ誰モ買ハウト言フ者ガナイ、買手ガナイ、無理ニ賣ラウトスルト三割モ四
割モ廉クシナケレバ買ハヌト云フヤウナコトデアルサウデ、ソレ故ニドウモ
或ハ橫濱ナドニ於キマシテ橫濱ハ段々競馬ナドガアリマス處デスガ外國人モ
睪ノナイ馬ハ好マヌ睾ノアル馬デナケレバイヤダト云フヤウナ譯デ、現在ソ
レヲ賣リニ出シタ所ガ買手ガナイト云フ有樣デアル、ソレ故ニアノ邊デモ種
牡馬ト云フモノハ脫睾スルコトヲ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=13
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014・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ドウカ質問ノ要點ヲ御述ベニナルヤウニ願ヒタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=14
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015・村田保
○村田保君 ソレデ段々アノ邊デハ止メタサウデアリマスガ、其邊ハドウ云
フ御調ニナッテ居リマスカ、政府ニ於テハ今日ハモウ一般世間デハサウ云フ
去勢ノ馬モ一般デ好ンデ居ル有樣デアルカ其邊ノ御調ハドウナッテ居ルカ伺
ヒタイ、ソレカラモウ一ツ能ク伺ッテ置キタイコトハ去勢ナドヲスルト馬ガ
弱クナルト云フコトデアル、活潑ノ氣ヲ失フト云フコトデアリマスガ、其邊
ノ御調ハドウデゴザイマスカ、本員モ馬ハ好キデ先年ハ六七頭モ居リマシ
タ、或ハ睾ノナイ馬モアリマスルシ、睾ノアル馬モ居リマシタ、隨分脫睾シテ
居ル馬ハ柔順デオトナシウゴザイマスガ、飛越シナドヲサセマスト睾ノナイ
馬ハ飛越セナイ、睾ノアル馬ハ三間モ飛ビマスケレドモ脫睾シタ馬ハソレガ
出來ナイ、ドウモ活潑デナイ、此邊ノ事實ハ如何デアリマセウカ、其邊ヲ伺
ヒタイ、マダ段々此事ニ就イテハ伺ヒタイコトモアリマスケレドモ大體ソレ
ダケ伺ッテ置キマス
〔政府委員和田彥次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=15
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016・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 第一ニ御尋ニナリマシタノハ外國ニ斯ノ如キ去
勢ノ法律ヲ出シテ居ル所ガアルカト云フ御尋デアリマシタガ、各國ノ例ヲ見
マシタ所デハ法律トシテ施行致シテ居ル國ハマダ見當リマセヌ、併シ各地ト
モ此去勢ノ必要ナルコトヲ認メマシテ、民間或ハ產馬組合ニ於キマシテハ皆
去勢ヲ致シマス慣例ニナッテ居リマス、ソレ故ニ去勢法ヲ布クノ必要ハナイ
故ニ法律ガナイト信ジテ居リマス、第二ノ御尋ノ數デゴザイマスガ、數ハ先
ヅ年々產出致シマス所ノ數ハ約ソ五萬頭デアルト存ジテ居リマス、併シ統計
モ確實ナリトハ申セマセヌ故ニ確ニ五萬頭ヲ超シマスルカ或ハ減ジマスル
カ、多少ノ差ハ生ジマスカ知レマセヌケレドモ、五萬頭ト云フノガ大差ナイ
所カト存ジマス、此五萬頭ニ對シマシテ其中優等ナル善良ナル牡馬ヲ撰ビマ
シテ之ヲ種牡馬ト致シ、殘ル所ノ不良ノモノニ對シテ去勢ヲ行ヒマス、サウ
シテ技術上ノ御尋ガゴザリマシタガ成ル程我國ノ現在ノ實況デハ此去勢ヲ盛
ニ行フテ居リマセヌ故ニ獸醫等ノ直接獸醫ガ此手術ニ掛リマシテ過ガアル
ヤ否ヤニ就キマシテハ十分ナル經驗練習ヲ要スルコトト政府ハ認メテ居リ
甲十、ソレ故ニ本案ヲ實行致シマスマデニハ相當ナル傳習所ニ於キマシテ之
ヲ練習セシメ民間ノ財產トモナル所ノ牡馬デゴザリマスルカラ、萬一ニモ過
ノナイヤウニ十分ナル練習ヲ爲シマシテサウシテ、此事ヲ實行致シマスル考
デゴザリマス、ソレカラ手術上ノコトニ附キマシテハ此法律ニモゴザリマス
通ニ國庫ノ負擔ト致シマシテ、サウシテ民間ニハ此手術ニ附キマシテノ費用
ハ掛ケマセヌ積デアリマス、一般ノ意向ハ如何カト云フ御尋デゴザイマスル
ガ是ハ奧羽ノ如キハ我邦ニ於キマシテモ產馬地トシテ名產ノ歷史ノアル土
地デゴザリマスガ、其奧羽地方ニ六縣ノ共進會等ガゴザリマス其六縣ノ共進
會ノゴザリマス節及農會ノ大會ノゴザリマシタトキニ奧州六縣ノ農會ノ大會
ノ希望トシテ去勢ヲ希望致シマシタ、再三建議モ出テ居ル話デアリマス、ソ
レカラ强弱ノ御話デゴザリマスガ、去勢ヲスルガタメニ或ハ馬ノ力ヲ弱メル
トカ或ハ勢ヲ去ルトカ云フコトモ聞ク所デゴザリマスガ、之ヲ去リマスルガ
タメニ馬匹ノ固有ノ能力ヲ減ズルコトハナイト信ジテ居リマス、一應御尋ノ
點ダケヲ申述べテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=16
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017・三宅秀
○三宅秀君 唯今本員ノ御尋致シタイコトハ大抵村田君カラ御尋デゴザリマ
シタガ、尙ホ一箇條伺ッテ置キタイコトハ、此去勢ヲ行ッタ跡ハ幾日間バカリ
使フコトガ出來マセヌカ、飼主ガ幾日間バカリ使用スベキ所ノ職業ヲ休マセ
ナケレバナラヌノデアリマスカ、大要ノ所ヲ伺ッテ置キタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=17
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018・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 我邦デ去勢致シマシタ實例ニ依リマスルト、御
承知ノ如ク陸軍省ノ育成所ニ於テ年々數千頭ノ去勢ヲ實行セラレテ居リマス
ノデ、其例ニ依ッテ見マスルト凡ソ一週間ヨリ十日間ノ中ニ全癒致シマス中
ニハ二週間掛ルノモゴザリマス、平均致シテ先ヅ八日九日ヲ以テ全癒致シマ
ス是ガ今日マデ我邦ニ實行致シテ居リマスル例デゴザリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=18
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019・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 チヨット御尋致シタウゴザリマスガ、此法案ニハ競馬ノ
コトニ附イテハ別ニ何モ規定ガナイ、競馬馬ハ悉ク種馬ト云フ譯デモナイカ
ト存ジマスガ、是ハドウ云フ御思召デアリマスカ、伺ヒタウゴザリマス、尙
ホ又種馬檢査法ニ依リマスルト色〓猶豫セラレテ居ルモノガゴザリマス、卽
チ種馬ト云フ資格ガナクテモ之ヲ猶豫スルト云フコトガアル、其他ニモ段々
アルヤウデゴザリマスガ、此法案ニ依リマスルト種馬デ猶豫スルモノモ皆去
勢ヲ猶豫セラルヽヤウデアリマスガ、尙ホ此法律ノ實施期限ハイツカラト云
フ御見込デアリマスカ、ソレモ一ツ伺イタウゴザリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=19
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020・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 御答致シマスガ、御尋ノ競馬用ニ充テマスル馬
匹ハ馬匹中デモ優等ナルモノト認メマス、斯ノ如キ優等ナル馬ノ多カランコ
トヲ希望スルノデゴザリマスカラ無論是等ニ至リマシテハ去勢ヲ施シマセ
ヌ、ソレカラモウ一ツハ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=20
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021・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 種馬檢査法ニ附イテ猶豫セラレタ馬····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=21
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022・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 無論種馬檢査法ニ附イテ猶豫セラレルモノガ二
ツゴザリマシテ、マア色〓ゴザリマスガ、其中ニ於キマシテ今度ノ去勢法ノ
方デ除キマスルノハ無論優等ナルノヲ撰ブノデゴザリマスル故ニ不良ナルモ
ノハ去勢致シマスル筈デゴザリマスケレドモ、或ハ病中デアルトカ或ハ發育
ノ宜シクナイ事故ノアル馬ニ附キマシテハ其場合去勢ヲ致シマシテ其馬ノ用
途ヲ失シテハイケマセスカラ、サウ云フ馬ハ猶豫ヲ致シマス、又檢査法ニ於
キマシテ猶豫致シテ置キマスモノモ此馬ハ相當ノ見込ノアル馬ト認メマスモ
ノヲ猶豫致シマス、サウ云フ馬ハ種牡馬トシテ去勢ヲ猶豫致シマスル積デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=22
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023・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 期限ヲ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=23
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024・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 期限デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=24
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025・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 實施期限······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=25
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026・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 實施期限ハ先刻質問ニ對シテ述ベマシタヤウニ
技術者ノ養成等モ必要デゴザリマスル、之ニ對シテ十分ナル設備ヲ要シマス
ル故ニ三十七年カラ實行致シタイト云フ考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=26
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027・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 尙ホ今ノ期限ノコトニ附イテ御尋致シマスルガ、サウ
致シマスルト、此法案ニ依リマスルト、唯今三十七年カラ御實施ニナリマス
ルト云フト、詰リ現存シテ居ル所ノ馬ハ去勢セラレナイコトニナッテ、今日
以後ニ生レル馬ガ去勢セラレルヤウニ見エマスガ、左樣デゴザリマスカ、チ
ヨット伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=27
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028・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 御尋ノ通ニ今日マデ現存致シテ居リマスルモノ
ニ對シテハ手術ヲ施シマセヌ、今日以後ニナリマシテ滿明ケ三歲ニナリマス
ルモノニ附イテ去勢致シマスノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=28
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029・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) モウ大抵質問モ盡キタヤウデアリマスルカラ委員
ノ選定ニ移リマス、是ハ議長指名デ御異議ハゴザリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=29
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030・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ日程ノ第一第二ニ戾リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=30
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031・岡部長職
○子爵岡部長職君 先刻本員ハ伊藤總理大臣ノ出席ヲ求メマスルコトヲ請求
ヲ致シマシタ所ガ、既ニ總理大臣ハ本日出席サレルト云フ御答デゴザイマシ
タ、卽チ出席セラレテ居リマスル譯デアリマス、今日ハ定メシ總理大臣カラシ
テ御演說ガアルコトヽ推察ヲ致シマスルノデゴザリマス、ソレニ先ッテ本員
ガ質問ヲ致サント欲スル所ヲ述べ置キマスレバ却ッテ御演說ノ御便利ニモナ
ラウト考ヘル、御演說中ニ本員ノ質問ニ對シテ御答ノ意味ヲ御含マセ下サレ
バソレヲ以テ本員ハ滿足ヲ致シマスルデアリス、質問ヲ致サント欲シマ
スル所ハ外デハアリマセヌ、本員ガ聞ク所ニ據リマスルト、政府ハ財政ノ整
理竝ニ行政ノ整理ヲ行ハンコトヲ必要ト認メラレテ調査會ノ組織ヲ致サルヽ
ト云フコトデアリマスルガ、果シテ此事ハ事實デアリマスルカ、如何ト云フ
所ヲ質問ヲ致シタイノデアリマス、ドウカ御演說ガアリマスルナラバ、御演
說中ニ此質問ニ應ズルダケノ御答ヲ御含マセ下サルコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=31
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032・谷干城
○子爵谷干城君 此豫算ノ審査期限ハ三週間ト致シタイト考ヘマス、皆サン
ノ御贊同ヲ得タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=32
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033・岡部長職
○子爵岡部長職君 先刻本員ハ質問ニ對シテノ御答辯ガアリマスルマデハ審
査期限ヲ定メマスルコトハ御猶豫ニナリマシタ方ガ宜シカラウト云フコトヲ
述ベマシテゴザイマスガ、是ハドチラニナリマシテモ宜シイト考ヘマスルカ
ラシテ、滿場諸君ノ御意向ニ任セテ、唯今直グニ御極メニナリマシテモ一向
本員ニ於キマシテハ異議ハゴザイマセヌ、卽チ三週間ノ期限ト云フコトニ本
員モ贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=33
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034・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 期限ノコトヲ先ヅ極メマス、三週間ニ御異議ハゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=34
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035・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 然ラバ三週間ト決シマス、總理大臣伊藤博文君
〔國務大臣侯爵伊藤博文君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=35
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036・伊藤博文
○國務大臣(侯爵伊藤博文君) 諸君、本日私ハ豫算ノ議ガ本院ノ日程ニ上ル
ト申スコトヲ承ッテ取敢ヘズ出席致シタノデアリマス實ハ今日政治上ノ所見
ヲ特ニ御話申スト云フ積モナカッタノデアリマス、御承知ノ如ク前日來風邪ノ
タメニ未ダ全ク平癒モ致サヌヤウナ譯デアリマスガ、唯今岡部子爵ノ御質問
ニ對シテ御答申ス意味合ヲ演說ノ中ニ含メト云フコトデアリマシタニ依ッテ、
一通リ右ニ對スルノ趣意ヲ陳述致ス積デアリマス、其他、豫算ノコト及既
ニ政府ヨリ提出シテ居ル所ノ增稅案又彼ノ三基金ヲ北〓事件ノタメニ使用シ
タ所ノ事後承諾ヲ求ムル件等モアリマシテ、本年ノ議會ニ於テハ是等ノ問題
ガ最モ緊要ナルコトニ相成ッテ居リマスルニ依ッテ、未ダ議案モ本院ノ議事ニ
上ッテ居リマセヌモノニモ自ラ論及致スカモ知レマセヌニ依ッテ、此段豫メ陳
述ニ及ンデ置キマス、本年度ノ豫算ハ旣ニ諸君ノ机上ニ備ッテ居リマスル譯デ
アリマスニ依ッテ、之ニ附イテハ追〓豫算委員會モ開カレテ種々ノ御質問モ
起リマスレバ當局ノ大臣ヲシテソレ〓〓說明ノ任ニ當ラシムル積デアリマス
カラ、大體ニ於テハ特ニ私ガ今日此處ニ於テ豫算全體ヲ通ジテノ所見ヲ述ブ
ルノ必要ハナカラウト考ヘル、唯豫算中ニ於テ政府モ重キヲ置イテ居ル所ノ
事柄ハ彼ノ海軍ニ於テ新規ニ起ス所ノ製鋼所ノ問題ノ如キニ於テハ成ルタケ
各位ニ於テモ十分ニ審査ヲ遂ゲラレテ其實行ヲ期スルコトニ贊成アランコト
ヲ希望致ス譯デアリマス、而シテ增稅ノ一般ヲ御話申スニ附イテハ自ラ支那
ノ事件ニ起因致シテ居ル譯デアリマスルガ、支那ノ事件ニ附キマシテハ旣ニ
諸君ノ御熟知ノ通リ昨年五月頃ヨリ彼ノ拳匪ノ亂ガ卒然トシテ北〓ノ野ニ
起ッテ爾來拳匪ノ動亂ハ一時鎭定ヲ致シテ居リマスルケレドモ、延テ以テ北〓
ノ事件ト云フモノハ尙ホ今日モ終局ヲ〓ゲザル有樣デアル、之ニ附イテノ詳
細ナル報道ハ過日モ衆議院ノ議場ニ於テ當局大臣モ一通リ陳述致シテアル趣
デアリマスニ依ッテ必ズ間接ニ諸君ノ〓聽ニモ入ッタコトヽ考ヘル、ガ此北〓
ノ事件ニ附イテ前內閣以來採ッテ來タ所ノ軍事上及外交上ノ處置ニ附イテハ
尙ホ今日モ繼續致シテ居ル譯デアリマスルガ、此事件ト云フモノハ前古未曾
有ノコトデアッテ愚論ヲ待タズシテ諸君ノ旣ニ御熟知ニ相成ッテ居ルコトデア
リマスルガ、各國ノ之ニ對スル意向モ大〓世上一般ニ知レ渡ッテ居ル譯デアリ
マスルガ、各國共ニ北〓ノ事件ガ突然ニ起リ而シテ之ヲ處スルノ方法ニ至リテ
ハ當初ヨリ十分ナル見込ガ立ッテ參ッタ譯ニアラズシテ事ノ進行スルニ從ッテ
各國共ニ協議ヲ調ヘテ而シテ成ルベク協同一致ノ方針ニ外レヌヤウニ致シテ
終局ヲ見ルト云フコトノ希望デ、卽チ我邦ニ於テモ此各國協同ノ範圍內ニ於
テ之ヲ處置スルト云フコトヲ最モ緊要ナルコトヽ認メ、又極東ノ前途ニ於テ
モ各國ノ一致ヲ缺カザルヤウニスルノヲ以テ利益ト認メテ今日モ進行シツヽ
アル譯デアリマスルニ依ッテ、前申スヤウニ叛亂ハ鎭定ヲ致シタケレドモ、尙
ホ前途ニ於テ事件ノ處分ヲ付ケテ參ルト云フコトハ各國協同デ以テ支那ト共
ニ圖ッテ參ラヌケレバナラヌコトデアリマスル故ニ、何レノ日ニ此局ヲ結ブカ
ト云フコトハ孰モ認メハ付キ難イコトデアッテ、從ッテ各國共ニ兵ヲ派シテ居
ル、其兵ヲ何レノ日ニ撤去スルト云フコトモ定メ難イ有樣デアリマスル、故
ニ已ムコトヲ得ズ之ニ要スル所ノ費用ノ供給ヲ增稅ニ待タザルコトヲ得ヌト
云フ次第デアリマスル、又此事件ハ突然起ッタ譯デアリマスル故ニ、前內閣
ニ於テモ之ニ應ズル手段ヲ彼ノ三基金ニ取ッテ以テ急ニ應ジタヤウナ次第デ
アル、其三基金ナルモノハ法律ノ命ズル所ニ依ッテ自ラ補塡ヲシナケレバナ
ラヌト云フ譯合ヨリシテ一面ニ於テハ支那ノ事件ニ對シテ其費用ヲ供給シ、
從ッテ法律ノ命ズル所ニ依ッテ支那事件ノ結了後ハ基金ノ補塡ニモ歲入ヲ充
テナケレバナラヌト云フ目的ヲ以テ重ナル增稅ノ主意ト致シテ增稅案ヲ旣ニ
衆議院ノ方ニ提出シテアリマスルカラ、必ズ不日本院ノ議ニ上ルコトデア
リマセウニ依ッテ豫メ諸君ノ審議ヲ盡サレテ、而シテ國家ノ急ニ應ズルノ重
要ナル議案ヲ贊成アランコトヲ希望致シテ置キマス、次ニ唯今岡部子爵ノ御
話デアタ行政及財政ノ整理ノ事件ヲ一通リ述ベマスルガ、多分行政財政ト
云フコトノ整理ニ附イテノ所見ガ世上ニ流布サレテ居ル所ヨリ右ノ御質問モ
出ル譯ト考ヘマスル、行政財政ノ整理ノコトニ就キマシテハ日〓戰爭ノ以前
ニ當ッテハ財政上ノコトモ先ヅ順ヲ以テ進ンデ參ッテ居リマシタ故ニ、格別整
理ヲシナケレバナラヌト云フ程ナ必要モ見ナカッタヤウニ考ヘマスルノデア
リマス、尤モ財政上ノ話ヲ諸君ニ委シク御話ヲ申セバ大分時間ヲ要スルコト
デアリマスルガ、今日ハ今日ニ顯レテ居ル形勢ノ上ヨリ私ガ如何ニ其整理ヲ
必要トスルト見ルカト云フノ上ヨリ所見ヲ起シテ參ッタ御話ヲスルニ過ギヌ
譯デアリマス、御承知ノ通ニ二十七八年ノ戰爭以前ニ當ッテハ政府ニ於テモ財
政上ニハ餘程餘裕ヲ持ッテ居ッタ、二十三年ノ議會開設以來ハ兎角經費ノ節減、
或ハ成ルタケ行政上ニ於テハ金ヲ使ハセヌヤウニスルト云フヤウナ意向ガ
一般ニ行レテ居ッタ所ヨリシテ二十七年戰爭ノ起ル前ニハ政府ノ剩餘金ト云
フモノモ三千五六百萬ニモ達シテ居ッタヤウナ譯デアリマシテ、財政上ニハ
頗ル餘裕ヲ持ッテ居ッタノデアリマスルガ、二十七八年ノ戰爭ト共ニ餘裕ドコ
ロデハナクシテ年々殆ド增稅ニ依ラナケレバナラヌト云フヤウナ譯ニナッ
テ居ル、ソレデ二十八年戰爭ノ終ニ於テ二十九年度ニ對スルノ豫算案ヲ經畫
シテ當時ノ帝國議會ニ提出シタルハ卽チ本官デアリマシタガ、戰後ノ經營ト
シテ陸海軍ノ增設擴張ト云フヤウナコトモ一方ニハアッテ之ニ伴フ所ノ經費
モ先ヅ二十九年度ニ向ッテ凡ソ明ニ出來ルダケハシテ置イタノデアリマスケ
レドモ、其以後ノ年々ニ向ッテノ經費ヲ詳細ニ當時之ヲ豫測スルコトモ出來難
カッタコトモ多イ、然ルニ多ク擴張ニ係ル所ノコトハ臨時ノ費用ニ依ルコトガ
多クッテ卽チ日〓戰爭ノ賠償金ニ依ッタ所ノモノガ多イ、又ソレヨリシテ海陸
軍ノ軍備ノ擴張ニ伴ッテ年々必要トスル所ハ卽チ年々ノ經常費デアリマスル
ガ、當時其經常費ヲ增稅ニ待ツノ外ハナクテ卽チ二十九年度ノタメニ增稅案
ヲ提出シテ參ッタ所ガ、獨リ政府ノ海陸軍備擴張ト云フノミニ止ラズシ
テ、各般ノ事業ノ一時ニ著手スルコトノ必要ト云フコトガ起ッテ獨リ政
府ノ事業ノミナラズ、民間ニ於テモ國費ニ待ツ所ノ事業ガ相伴フテ多
イ、卽チ種々ナ補助ヲ要スルヤウナコト或ハ民間ノタメニ或ハ政府ノ
タメニナリスル所ノ鐵道ノ事業ノ如キト云フヤウナ交通機關ニ關係スルヤ
ウナモノヽ勃興等ヨリシテ政府ノ豫算案ナルモノヲ繙イテ見ルト云フト、
種々ノ費用ノ增加ヲ見ルコトニナッタノデアリマス、而シテ二十九年度ノ豫
算ハ上下兩院ノノ協賛ヲ經テ成立ッテ其次ニ三十年度、三十一年度トナッテ參ツ
タ、海陸軍ノ擴張モ當時稱シテ第一期第二期ト稱ヘルモノガ續々實行サレテ
參ル、第二期ナルモノガ實行サルヽニ至ッテ政府ノ歲入ノ不足ヲ再ビ告ゲテ
參ッテ、而シテ其歲入ノ不足ナルモノヲ增稅ニ待ツト云フコトニナッテ此增
稅案ナルモノガ三十年度ニ向ッテハタシカ提出ヲサレナカッタト考ヘテ居
リマスルガ、サレント欲シテ其議案ハ中途ニシテ歇ッテ而シテ議會ノ解散ト
爲ッテ三十一年ノ春ニ至ッテ又本官ハ復職ヲ命ゼラレテ當時四箇月ノ間、總理
大臣ヲ奉職致シタ、トコロデ實際ニ前年ノ議會ハ解散ニ相成ッテ豫算案モ議
場ニ上ラズシテ前年度ノ豫算ニ依ルノ外ハナイト云フコトニナッテ居リマシ
タ、卽チソレガ三十一年ノ春ノコトデアリマスルガ、議會解散後ノ政府ヲ引
受ケテ政府ノ財政上ノ都合ヲ段々取調ヲ致シテ見タ、段々取調ヲシテ見ルト
云フト卽チ第二擴張ニ對スルノ歲入ハ不足デアッテ、之ヲ補フ方法ハ成立ッテ
居ナカッタノデアリマスル、ソレデ一方ニ於テ增稅ノ計畫ヲシ一方ニ於テハ
成ルタケ經費ノ節減ヲ圖ッテ見タ、又節減ヲ圖ルノト一方ニ於テハ成ルタケ
此事業ノ年限ヲ延長スル手段方法ヲ取ッテ見タ、ソレデ海陸軍ノ仕事ニシテ
モ目前ニ急ヲ要スルモノト年限ヲ延長シテモ事實ニ於テ差支ナカラウト認メ
ルモノヽ區別ヲ付ケテ餘程金額ニ於テモ卽チ歲出ノ上ニ於テモ相應スルコト
ノ出來ルヤウニ考ヘテ、サウ云フ經畫ヲ當時シテ見マシタ、尤モ三十一年ノ
五月ニ開ク所ノ議會ハ臨時議會デアリマシタカラ豫算案ヲ提出スルノ議會デ
ハナカッタ、其調査シタル所ノ結果ト云フモノハ三十二年度ニ向ッテ提出ス
ルノ準備ヲ爲シツヽ居ッタノデアリマスルガ、臨時議會ニ於テ增稅案ヲ提出
シテ而シテ三十二年度ニ對スル所ノ經費ノ豫算案ハ別ニ其年末ニ至ッテ議會
ニ提出スル積デ調査ニ掛ッタ、然ル所ガ臨時議會ニ於テ政府ト議會ノ衝突ニ
因ヲテ已ムコトヲ得ズ議會ヲ解散セ子バナラヌコトニナッテ、卽チ私ガ當時ノ
總理大臣デ議會ヲ解散シタ、其結果トシテ當時政策ノ相容レザル所ノモノガ
アッテ遂ニ自分モ辭職ヲシナケレバナラヌコトニナッタ、其次ニ憲政黨內閣ト
當時稱シテ居ル所ノ内閣ガ出來タノデアリマス、此內閣ノ存命モ甚ダ短ウシ
テ僅ニ七月カラ十一月マデ位ノコトデアリマシタ、恐ラク十分ノ財政上ノ整
理調査等ノコトノ著手ハシナクッテ終ッタト推察シマス、尤モ本官ハ當時支那
ニ旅行シテ留守中デアッテ當時ノ形勢ハ明ニ熟知致シテ居リマセヌ、而シテ
憲政黨内閣ト稱フル卽チ大隈伯爵ガ總理大臣ヲ勤メテヤッテ居ッタ内閣デアリ
マスルガ、是ガ三十一年度ノ終ニ又辭職スルヤウナコトニナッテ三十一年ノ
暮ヨリシテ昨年ノ十月ニ至ルマデ前内閣ガ引受ケテ此間ニ於テ增稅ノコトモ
行レタ、而シテ此財政ノ上ヲ見ルニ戰後ノ經營ニ著手シタ以來屢〓內閣モ交
迭ヲ致シテ居ル、而シテ内閣ノ交迭ト財政上ノ經畫ト云フモノハイツモ所謂
國家ノ歲入增稅ト云フガ如キコトニハ渉ラザルコトヲ得ヌ事情デアッテ、涉ツ
テ居リマスルガ、或ハ其增稅ノ目的ヲ達シタ時モアレバ達セヌ時モアッテ、而
シテ政治上ハドウデアルカト云フト實際政府ノ車ハ囘ッテ居ラナケレバナラ
ヌ譯デアルカラ增稅ニ依ラナクテハナラヌ時モ稅ハ增スコトガ出來ズシテ矢
張事務ノ進行ハ一方ニ於テセヌケレバナラヌト云フヤウナ譯デ參ヲテ居ッタ
且ツ唯今申ス通ニ數箇月ノ間ニ政府ガ幾囘モ代ルト云フヤウナコト、政府ノ
代ル事情ハ他ニ在ッテ存スル譯デアルカラ、是ハ巳ムコトヲ得ヌコトデアリ
マスルガ、又政務上ノコトニ至ッテ見ルト政府ガ永續シナケレバ最初ヨリ財政
ノ經畫モ成立ツ筋ハナイガ、殆ド財政上ヤ何カノ見込ヲ立テ、而シテソレヲ
實行スルマデニ往々至ラズシテ政府ガ交迭スル譯デアルカラ前ノ經畫ナド
云フモノハ如何ナル案ヲ前內閣ガ懷イテ居ッタカト云フコトハ十分ニ攻究ヲ
盡スノ遑ナクシテ又新規ノ手段ヲ考ヘルト云フヤウナコトニナリ、サウ云フ
ヤウナ誠ニ不幸短命ナル内閣ガ續イテ來タ結果トシテ財政上ノコトニ就イテ
ハ十分ニ調査ヲ要スルノ現況ヲ存シテ居ルト云フコトヲ私ハ認メテ居ル、現
ニ三十一年ニ於テモソレニ著手シテ事業ノ延長ヲ圖リ或ハ政費ノ節減ヲ企テ
テ見テ其實行ヲ遂ゲルコトガ出來ズニ終ッタコトデアリマスルガ故ニ、其時ヨ
リ財政上ノコトハ深ク思慮ヲ盡サヾルコトヲ得ヌト信ジテ居リマスルカラ、
此節又昨年突然拜命ヲシタニ就イテモ財政上ノ調査ハ最初ヨリセザルコトヲ
得ヌト考ヘテ居ッタヤウナ譯デアル、又行政上ノコトニ至ッテモ行政上ノ沿革
ハ私ガ述ベルマデモナク諸君ノ御熟知ニナッテ居ルコトデアリマスガ、重モナ
ル組織ト云フモノハ明治十八年カラ十九年ニ掛ケテ唯今ノ體ニ改正ヲシテ而
シテ爾來ハ時ニ臨ンデ多少ノ修正增補モ致シ或ハ官衙ノ廢合等モアリマスル
ガ、要スルニ全局ヲ通覽シテ以テ經畫シタ所ノモノニアラズシテ、唯時ニ取ッ
テ便利ヲ主トシタモノト考ヘラレル、ソレデ或ハ行政上ニ於テハ行政機關機
能ノ働ト云フモノガ十分ニ貫通ヲシテ居ル事柄モアレバ、又大イニ齟齬シテ
居ルヤウナコトモアル、又重複シテ居ルヤウナコトモアル、要スルニ行政ノ
機關組織構造ハ成ルタケ此行政事務ノ運用ニ相伴フテ沮滯スルコトノナイヤ
ウニスルコトガ必要デアルノト又機關ト名前ヲ附ケテモ活動スル所ノモノハ
人デアルカラ、其人ガ十分ニ責任ヲ執ッテ、サウシテ其責任ナルモノガ明ニナ
ルヤウニ出來テ居ラヌケレバナラヌノト、又國家ノ事ト云フモノハ或ル時ニ
於テハ頗ル繁劇ヲ加ヘルモ、又或ル時ハ隨分閑ナル時モアル、其繁閑ヲ別タ
ズシテ行政ノ機關機能ナルモノガ働カレルヤウニ出來テ居ラナケレバナラヌ
ト私ハ信ズルノデ、何レノ國ニ於テモサウ云フヤウナ仕掛ニ出來テ居ルト認
メル、サウシテソレニ附イテハ又所謂行政ノ組織ナルモノニ就イテ先ヅ永遠
ニ考ヲ盡シテ見ナケレバナラヌ、固ヨリ事務ノ繁劇ヲ加ヘテ參ルニ從ッテ、或
ハ人ヲ增サナケレバナラヌト云フガ如キ場合モアルケレドモ、多ク是ハ責任
ヲ論ズルベキ位置ニアラズシテ、多ク人手ヲ要スルト云フヤウナ如キコトガ
多イト考ヘマスルガ、ソレ等ノコトハ官衙ノ組織ヲ變更スルコトナクシテ出
來テ行カヌケレバナラヌ、ソレデ右樣ニ段々變遷ノ結果トシテ多少ノ改正ハ
出來テ居リマスルガ、全局ヲ通覽シテ十分ニ改正ヲサレタト云フコトハ爾來
餘リ見ヌト考ヘマスルデ、行政上ノ組織モ今日ニ於テ十分ノ〓究ヲ盡シテ、
將來ノタメニ於テ是デ十分ナルヤ否ヤト云フコトハ明ニ認メナケレバナラ
ヌ、又其手腕ヲシテ益〓敏活ニヤッテ行カレルヤウニシナケレバナラヌノト、
又新規ノ事物ガ段々開ケテ參リ民間ノ事業上ノコトニシテモ又官民相通ジタ
上カラ見テモ、是ハ次第々々ニ緻密ニナッテ參ルト云フコトハ論ヲ俟タヌ譯
デアリマスルカラ、官衙ナルモノモ之ヲ扱フ所ノ行政部デアルカラ、其扱フ
行政ノ機關機能ナルモノハ、ソレニ相應ジテ以テ一步先ンジテ、其利弊ノ在
ル所ヲ見ラレルヤウニナッテ居ルコトガ必要ト考ヘル、シテ見ルト俊秀ナ人ヲ
學校デ養成ヲシテ、サウシテ其新規ノ學識ヲ得テ居ル所ノ者ノ腦力ト云フモ
ノヲ行政ノ中ヘ一ツ叩キ込ンデ働カセルヤウニシナケレバナラヌ、且ツ固ヨ
リソレニハ熟練ト云フモノガ相伴ハナケレバナラヌカラ、獨リ學校出ノ書生
ヲ捉マヘテ直グニ責任ノ地位ニ置クト云フ考ヘデハアリマセヌガ、要スルニ
行政上ニ於テハ一層ノ進步ヲ見ルコトガ必要ト考ヘル、ソレカラ前ニモ申シ
タ通ニ財政上ノ整理モ行政ノ機能ノ働ト相待タナケレバナラヌコトハ、官衙
ノ組織ニ要スル所ノ經費、ソレカラ又國家ノ事業トシテスベキ所ノ經費ハ卽
チ財力ノ如何ニ依ッテ自ラ消長ヲ爲サヾルコトヲ得ヌ譯デアリマス、ソレモ
今日ノヤウニ三五年ヲ出デズシテ時境ノ然ラシムル所デ、巳ムヲ得ヌコトデ
アリナガラ增稅モ三囘セヌケレバナラヌト云フコトニナッテ來ル、固ヨリ北〓
ノ事變ノ如キコトハ豫メ測リ知ルコトノ出來ヌコトデアッテ、國家ガ之ニ相
對シテ遭遇スル形勢ニハ、如何ナル費用ガ掛ルモ已ムコトヲ得ヌ次第デアリ
マスガ、是等ノ豫期シ難キコトヲ除ク外ノコトニ至ッテハ、國家ノ財政上ニ
立ッテ凡ソ國力ノ相應ジラレル度合以外ノ事ヲ經畫シタ所ガ詰リ根ヲ枯シテ
枝葉ノ繁茂ヲ望ムガ如キコトハイカヌト斯ウ云フ私ノ考デアル、ソレデ近
來ニ至ルト云フト政府ノ行政ノ各部ニ於テモ又或ハ民間ノ有樣ヲ見テモ帝國
議會ノ議員ナドノ提供スル所ノ事ヲ見テモ何分其國力ノ基礎如何、或ハ其資
本ノ有無如何ト云フガ如キコトニハ問フコトナクシテ、唯何デモ彼デモ新規
ナ事ヲ企テサヘスレバ宜イ、此事業モ必要、彼ノ事業モ必要ト言ッテ同ジヤ
ウナコトヲ幾許トナク經畫シテ出ル、之ニ應ゼザルコトヲ得ヌト云フヤウニ
亦官吏モ心得テ居ルト云フヤウナ有樣デアルト私ハ察シテ居リマスルガ、斯
ノ如クノ形勢ヲシテ永續セシムルコトハ到底出來ナイ、然ラバ此有樣ヲ永續
セシムルコトガ出來ヌト言ヘバ國ノ財力ナルモノヽ根據ヲ一ツ明ニシテ見セ
テ、サウシテ右等ノ如キ大體ヲ十分ニ明ニセズニ經畫スル所ノモノヽ實行ヲ
成ルベクサレヌヤウニシナケレバナラヌ、唯國ノ財源ト共ニ力ノ許ス限ヲ圖ツ
テ行クト云フコトナクシテ、ドカ〓〓組立ッテ行キ居ルト經畫ト著手ガ實際
ニ於テ其端〓ヲ開イテ見タ所ガ、其成功ヲ望ムコトハ到底出來ナイト云フヤ
ウナコトニナッテ參ッテ、大キニ其結果ハ不經濟ノコトニ陷ルデアラウト云フ
虞レガアリマスル故ニ、先ヅ本年ニ於テハ成ルタヶ此行政上財政上ノ整理ト
云フコトヲ十分ノ調査ヲ遂ゲテ見タイト云フコトハ前年卽チ奉職以來其懸
念ヲ抱ヘテ居ヲテ、多少其著手ヲ仕掛ケテ其事ガ遂ニ成ラズシテ中途ニ廢シタ
譯合デアリマスガ、爾來大イニ其形勢ガ一變シタカト云フト、決シテサウデ
ナクシテ、益〓其當時憂慮シタ所ノ勢ハ增加シテ參ッテ居ルト考ヘマスルカラ、
尙ホ前日ニ倍シテ私ハ調査ノ必要ヲ感ジテ居ルヤウナ次第デゴザイマスニ
依ッテ十分ノ調査ヲ致スニ附イテハ固ヨリ此行政官衙ノ組織ヤ何ゾニ關係ス
ルヤウナコトニナッテハ多ク官吏ノミヲ以テ成ルタケ調査ヲセシメテ宜カラ
ウト考ヘルガ、財政上ノコトニナッテ來ルト、獨リ官吏ノミデハ不十分ト考
〓、上下兩院ノ議員ノ中カラモ選定ラシテ、ドウカ十分調査ニ盡力セラル
ルヤウニ致シタイ、サウシテ此議會ト云フモノガ平素ニ當ッテハ政治上ノ事
ハ唯傍觀、所謂客觀的ニ物ヲ見テ居ルカラト云フコトデアッテ僅カ三箇月ノ
會期中ニ卒然ト事ニ當ルト云フヤウナ次第デアルカラ、自ラ其責任上、固ヨ
リ法律上ノ責任トカ何トカ云フコトデハアリマセヌガ、見ル所ガ大イニ違
フ、政府ノ當局ニ居ル所ノ者ト又違フ、違フト云フガ其違フ所ノモノハ已ム
コトヲ得ヌトシテ見タ所ガ、憂ノアル所、物ノ眞相ヲ見ル所ガ同ジク違フ、
是レ卽チ伸縮ガアッテ面白イノデアルガ、其根據トスル所ガ土臺違ッテ居ルト
云フコトニナルト實ニ國力ノ厚薄ヲ論ズルニ至ッテモ大ニ異動ヲ生ズルコト
ニナル、ソレハ調査ヤ何ゾノ根據ガ十分明ニナッテ居ラヌ所カラ起ルコトヽ
考ヘマスルガ、是ハ國ノ安危得喪ノ上ニ於テ重大ナル政治上ノ必要ナルコト
ト考ヘマスル故、兎ニ角帝國議會モ政府モ力ヲ合一シテ、之ヲ十分ニ調查ヲ
遂ゲテ將來ノ國家ノ繁榮ノ上ニ於テ互ニ相助ケテ行クヤウニアリタイト考ヘ
やっ、右等ノ考ヲ以テ調査ノ目的ニ從事シヤウト云フコトハ、決シテ此政黨
ダトカ或ハ民間ノ議論ニ幾分カ誘掖サレタトカ云フヤウナ說ヲ唱ヘル者モア
ルヤニ承ルノデアリマスガ、私ノ考トシテ起ッタ所ハ決シテ其處デハナクシ
テ輿論ガドウアラウガ、輿論ハ大ニ私ノ所見トハ反對デアルト認メル、今ノ
輿論ナルモノハドウデアルカト云フト、頻ニ事業ナドヲ企テヽ一向財源國
力ナドハ問ハヌト云フ有樣ガ輿論ト認メマスガ、輿論ノ斯ノ如ク暴進暴行ス
ル所ニ反抗スル所ノ手段方法ヲ採ラヌケレバ、國ノ安危ノ上ニ於テ甚ダ安カ
ラヌト考ヘル譯デアリマス、右ノ次第ヨリ起ッタ私ノ所見デアリマス、一通リ
ノ大略ハ唯〓ノ岡部子爵ノ御質問ニ對シテ申シタ積デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=36
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037・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ次囘ノ日程ハ追テ御報道致シマス、今日
ハ散會······チヨット御待チ下サイ、委員ノ選定ヲシマシタノヲ御報道スルコト
ニ致シマス
〔太田書記官長朗讀〕
馬匹去勢法案特別委員
伯爵〓棲家〓君子爵長岡護美君子爵三島彌太郞君
男爵渡邊〓君男爵北垣國道君富田鐵之助君
安廣伴一郞君松木彥右衞門君海江田平治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=37
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038・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ散會致シマス
午前十一時二十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X00719010213&spkNum=38
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