1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十四年三月十八日(月曜日)
午前十時十三分開議
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議事日程 第十四號 明治三十四年三月十八日
午前十時開議
第一 畜牛結核病豫防法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第三 臺灣事業公債法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第五 明治三十二年法律第百一號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第七 明治二十九年法律第四號中改正法律案(政府提出衆議院囘付) 會議
第八 馬匹去勢法案(政府提出) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第九 水害地方田畑地租免除に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第十 鍬下年期、新開免租年期、地價据置年期の延長に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第十一 實業教育費國庫補助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第十二 明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選舉法別表中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十三 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十四 東京都制案(伯爵清棲家教君外三名提出) 第一讀會
第十五 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十六 千代田縣設置に關する法律案(伯爵清棲家教君外三名提出) 第一讀會
第十七 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十八 東京都千代田縣組合法案(伯爵清棲家教君外三名提出) 第一讀會
第十九 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=0
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001・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ報告ヲ致シマス
〔小原書記官朗讀〕
一昨十六日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日內閣總理大臣ヲ經
由シテ裁可ヲ奏請シ及可決ノ旨ヲ衆議院ニ通知シタリ
酒造稅法中改正法律案
酒精及酒精含有飮料稅法案
沖繩縣酒類出港稅則中改正法律案
酒精酒類其他酒精ヲ含有スル飮料輸出下戾金ニ關スル法律案
醫藥用、工業用酒精戾稅法案
麥酒稅法案
砂糖消費稅法案
關稅定率法及同法附屬輸入稅表中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領シタリ
漁業法案
印紙稅法中改正法律案
事業公債及鐵道公債特別會計法中改正法律案
北海道會法案
北海道地方費法案
屯田兵及屯田兵村ニ給與シタル土地ノ登錄稅免除ニ關スル法律案
明治三十三年勅令第二百七十七號承諾ヲ求ムルノ件
登錄稅法中改正法律案
同日左ノ衆議院提出案ヲ受領シタリ
府縣制中改正法律案
郡制中改正法律案
市制中改正法律案
町村制中改正法律案
同日衆議院ヨリ政府提出移民保護法中改正法律案ノ回付ヲ受ケタリ
同日同院ヨリ政府提出民事訴訟用印紙法中改正法律案ヲ否決シタル旨ノ通
知ヲ受領シタリ
稅關貨物取扱人法案特別委員會ニ於テ當選シタル委員長副委員長ノ氏名左
ノ如シ
委員長伯爵廣澤金次郞君副委員長村田保君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=1
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002・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ日程ニ移リマス、此日程ノ中十五、十七、
十九、此三ツハ是ハ當貴族院ノ提出ニナリマシタ議案デアリマシテ、ソレデ
此議案ノ審査ヲ付託スベキ特別委員ト云フモノハ別段ニ設ケナイデ卽決スル
性質ノモノデゴザイマス、併シ議員中ヨリ委員ニ付託スルト云フ御動議ガ出
レバソレハ格別デアリマスガ、サウデナケレバ選擧スルト云フコトハ當然日
程ニ書クベキモノデナカッタノデアリマスガ、是ハ誤植デアリマスカラ左樣
御承知ヲ願ヒマス、畜牛結核病豫防法案、政府提出、第一讀會
〔小原書記官朗讀〕
畜牛結核病豫防法案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治三十四年二月二十五日
内閣總理大臣侯爵伊藤博文
內務大臣文學博末松謙澄
士男爵
農商務大臣林有造
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
畜牛結核病豫防法
第一條乳用牛、外國種牛、雜種牛ハ結核病ノ有無又ハ輕重ヲ定ムル爲行
政官廳ニ於テ之ヲ檢査ス結核病ニ罹リ又ハ其ノ疑アル畜牛ニ付テモ亦同
シ
第二條乳用牛、種牡牛及結核病ニ罹リ又ハ其ノ疑アル畜牛ノ檢査ハ「ツ
ベルクリン」注射方法ニ依リ之ヲ行フ
第三條檢査ノ期日及場所ハ行政官廳之ヲ指定ス
第一條ニ揭ケタル畜牛ノ所有者又ハ管理者ハ前項ノ指定ニ從ヒ其ノ檢査
ヲ受クヘシ
第四條結核病ニ罹リ又ハ其ノ疑アル畜牛ヲ發見シタルトキハ所有者、管
理者又ハ獸醫ニ於テ直ニ之ヲ屆出ツヘシ
第五條結核病ニ罹リ又ハ其ノ疑アル畜牛ハ檢査員ノ指揮ニ從ヒ之ヲ隔離
スヘシ
第六條重症結核病ニ罹リタル畜牛ハ檢査員ノ指揮ニ從ヒ所有者又ハ管理
者ニ於テ之ヲ撲殺スヘシ
輕症結核病ニ罹リタル畜牛ハ檢査員ノ指揮ニ從ヒ所有者又ハ管理者ニ於
テ之テ鎖錮スヘシ
第七條外國ヨリ輸入スル畜牛ハ輸入申告後特ニ定メタル場所ニ於テ「ツ
ベルクリン」注射ノ方法ニ依リ之ヲ檢查ス
前項ノ檢査ニ關シテハ稅關長及檢査員ノ指揮ニ從フヘシ
第一項ノ畜牛ニシテ結核病ニ罹リ又ハ其ノ疑アルトキハ稅關長又ハ檢査
員ニ於テ其ノ輸入ノ禁止、繫留其ノ他必要ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第八條前條ニ依リ輸入ヲ禁止セラレタル者畜牛ヲ撲殺セムトスルトキハ
稅關長及檢査員ノ指揮ニ從フヘシ
第九條結核病ニ罹リタル畜牛ノ乳汁、屍體及其ノ部分、畜牛ヲ置キタル
場所竝病毒ニ汚染シ及其疑アル物品ハ檢査員ノ指揮ニ從ヒ所有者又ハ管
理者ニ於テ之ヲ消毒スヘシ
第十條重症結核病ニ罹リタル畜牛ノ乳汁竝屍體及其ノ部分ハ皮角蹄ヲ除
クノ外檢査員ノ指揮ニ從ヒ所有者又ハ管理者ニ於テ之ヲ燒棄又ハ埋却ス
ヘシ但シ認可ヲ得タル裝置ヲ以テ化製スルモノハ此ノ限ニ在ラス
輕症結核病ニ罹リタル畜牛ノ乳汁竝屍體及其ノ部分ノ處分方法ハ主務大
臣之ヲ定ム
第十一條結核病ニ罹リタル畜牛ヲ置キタル場所竝病毒ニ汚染シ及其ノ疑
アル物品ハ檢査員ニ於テ其ノ燒棄又ハ埋却ヲ命スルコトヲ得
第十二條結核病ニ罹リタル畜牛ノ乳汁、屍體若ハ其ノ部分又ハ病毒ニ汚
染シ若ハ其ノ疑アル物品ヲ埋却シタル場所ハ三箇年間之ヲ發掘スルコト
ヲ得ス但シ行政官廳ノ許可ヲ得タル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十三條第六條又ハ第十一條ニ依リ畜牛ヲ撲殺シ又ハ物品ヲ燒棄若ハ埋
却シタル場合ニ於テハ其ノ評價額ノ二分ノ一ニ當ル手當金ヲ下付ス
畜牛ノ手當金ハ一頭ニ付外國種牛ニ在リテハ七十五圓、雜種牛及內國種
牛ニ在リテハ五十圓、六箇月未滿ノ幼牛ニ在リテハ十五圓ヲ超ユルコト
ヲ得ス物品ノ手當金ハ總テ十圓ヲ超ユルコトヲ得ス
畜牛及物品ノ評價ハ三人以上ノ評價人ヲ選定シテ之ヲ爲サシム但シ其ノ
評價ヲ不當ト認メタルトキハ更ニ三人以上ノ評價人ヲ選定シテ之ヲ爲サ
シム
第十四條左ノ場合ニ於テハ畜牛ノ手當金ヲ下付セス
一、檢査ヲ受ケス、之ヲ拒ミ又ハ妨ケタルトキ
二、第四條、第五條又ハ第六條ニ違背シタルトキ
三、檢査ヲ受ケスシテ畜牛ヲ輸入シタルトキ
左ノ場合ニ於テハ物品ノ手當金ヲ下付セス
前項各號ノ一ニ該當スルトキ
二、第九條、第十條第一項又ハ同條第二項ニ基ツキテ發シタル命令ニ違
背シタルトキ
三、第七條第二項、第三項又ハ第八條若ハ第十一條ノ命令ニ從ハサルトキ
第十五條手當金ヲ受クヘキ者其ノ全部又ハ一部ヲ拒否スル處分ニ不服ナ
ルトキハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ處分ニ依リ違法ニ權利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ
提起スルコトヲ得
第十六條畜牛結核病豫防ニ關スル費用ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ國庫、府
縣及一個人ニ於テ之ヲ負擔ス
第十七條檢査ヲ受ケス、之ヲ拒ミ若ハ之ヲ妨ケタル者、檢査ヲ受ケスシ
テ畜牛ヲ輸入シタル者、第五條若ハ第六條ニ違背シタル者又ハ第七條第
三項ノ命令ニ從ハサル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條第四條、第九條、第十條第一項若ハ第十二條ニ違背シタル者又ハ
第七條第二項、第八條若ハ第十一條ノ命令ニ從ハサル者ハ二十圓以下ノ
罰金ニ處ス
第十九條明治三十三年法律第五十二號ハ本法及本法ニ基ツキテ發スル命
令ノ處罰ニ關シテ之ヲ準用ス
附則
本法ハ明治三十六年七月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ外國ヨリ輸入スル畜牛ニ
關シテハ明治三十四年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員和田彥次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=2
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003・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 本案ヲ提出致シマシタ理由ヲ簡單ニ申上ゲマ
ス、近年肉食及乳牛ノ需要ハ世ノ進步ニ伴ヒマシテ年ヲ逐ウテ增進致シテ居
リマス、故ニ之ガ改良增殖ヲ圖リマスノハ目下ノ急務ト信ジテ居リマス、然
ルニ結核牛ガ傳播致シマシテ漸次其蔓延ノ徵候ヲ認メマスル、因テ一ハ畜
牛ノ改良ノ上ヨリ致シマシテ、又一ハ衞生上ノ關係ヨリ致シマシテ、之ガ
豫防ノ必要ヲ認メマシテ、此豫防法案ヲ提出シマシタノデアリマス、十分ニ
御審査ヲ遂ゲラレマシテ御協贊ヲ祈リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=3
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004・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 委員ノ選定ニ移ッテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=4
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005・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 議長ニ於テ選定シテ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=5
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006・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 臺灣事業公債法中改正法律案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會
〔小原書記官朗讀〕
臺灣事業公債法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治三十四年二月二十六日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
臺灣事業公債法中左ノ通改正ス
第五條第一項「一箇年」ヲ「三箇年」ニ改ム
〔政府委員松尾臣善君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=6
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007・松尾臣善
○政府委員(松尾臣善君) 唯今議題ニナリマシタ臺灣事業公債法ノ改正デゴ
ザイマス、是ハ事業公債ノ募集ノ出來マセヌ場合ニハ、臺灣銀行カラ一時借入
金ヲ致シマシテ一箇年以內ニ公債ヲ募集シテ償却スル、返濟スルト云フコト
ニナッテ居リマスルガ、經濟市場ノ景況ニ依リマシテハ一箇年以內ニ公債ヲ募
集スルコトノ出來マセヌ塲合ガゴザイマス、卽チ現今ノ如キデゴザイマスカ
ラ、ソレデ一箇年限トゴザリマスルノヲ三箇年以內ノ期限ヲ以テト云フコト
ニ改正ヲ致シタイノデゴザイマスカラ、ドウカ御審議ノ上御協賛アランコト
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=7
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008・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御質問ガ無ケレバ委員ノ選定ニ移リマス、此委員
ノ選定モ議長ニ於テ致シテ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=8
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009・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 明治三十二年法律第百一號中改正法律案、政府提
田、衆議院送付、第一讀會
〔仙石書記官朗讀〕
明治三十二年法律第百一號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治三十四年二月二十六日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
明治三十二年法律第百一號中事業公債條例ノ下「及」ヲ削リ北海道鐵道敷設
法ノ下ニ「及明治三十二年法律第七十五號臺灣事業公債法」ヲ加フ
〔政府委員松尾臣善君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=9
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010・松尾臣善
○政府委員(松尾臣善君) 唯〓御議題トナッテ居リマスル三十二年法律第百
一號中ノ改正デゴザイマス、是ハ御承知ノ通ニ第百一號ノ法律ハ鐵道敷設法
ニ依レル公債ト事業公債ト北海道鐵道公債ト此三ツノモノヲ外國ニ於テ募集
スルトキニハ他ノ公債條例ノ除外例ガ此所ニ極メテゴザリマスルノデゴサリ
〒·〓·然ルニ臺灣事業公債ガ此中ニ這入ッテ居リマセヌ、所ガ經濟上ノ景況
ハ或ハ內地ニ於テ募集ノ出來マセヌトキニハ外國ニ於テ又之ヲ募集スルヤウ
ナ必要モアルカモ分リマセヌカラ、ソレデ此第百一號ノ中ヘ臺灣事業公債ヲ
外國ニ於テ募ル場合ニハ此第百一號ノ法律ノ如キ手續ヲ致シタイト云フ趣意
デゴザイマスカラ是レ亦御協賛アランコトヲ願ヒマスル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=10
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011・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御質問ガナクバ委員ノ選定ニ移リマス、此議案ハ
前ノト同一委員デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=11
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012・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 明治二十九年法律第四號中改正法律案、政府提出、
衆議院囘付、會議
〔小原書記官朗讀〕
明治二十九年法律第四號中改正法律案
右貴院ノ送付ニ係ル政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十
五條ニ依リ及囘付候也
明治三十四年二月二十六日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衛篤麿殿
明治二十九年法律第四號中「今後五箇年間」ヲ「明治三十七年三月三十一日
迄」ニ改ム
〔政府委員波多野敬直君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=12
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013・波多野敬直
○政府委員(波多野敬直君) 唯今朗讀ニナリマシタル案ハ此間當院ニ於テ御
議定ニナリマシタル案デゴザイマス、衆議院ニ於キマシテ三十九年トアリマ
スルノヲ三十七年マデニ改正ニナリマシタ、其事由ハ構成法ノ改正モ既ニ迫ッ
テ居ル以上ハ單行法ヲ以テ此ノ如ク五箇年ノ長キ期間ヲ定メ置ク必要ハナイ
ト云フ趣意デゴザイマス、成ル程政府モ構成法ノ改正ノ必要ハ認メテ居リマ
スルシ且ツ成ルタケ至急ニ著手シタイト云フ考デゴザイマスカラ、三年ノ期
間ガゴザイマスレバ格別差支ナイト考ヘマスルデ、ドウゾ衆議院ノ修正案通
ニ御議定アランコトヲ更ニ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=13
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014・小笠原壽長
○子爵小笠原壽長君 本員ハ質問ガゴザイマス、此法律ノ理由書ヲ見マスル
所ガ、此法律ハ本年ノ二月ニ至ッテ其效力ヲ失フトアリマシテ既ニ是ハ效力
ヲ失ッテ居ルノデゴザイマス、成ル程政府カラ此案ヲ出サレ衆議院デ修正ヲ
致シマシタ時分ハ無論二月中デアリマシタカラ效力ガアリマスルノデゴザイ
マセウケレドモ、旣ニ本月ニ至リマシテハ效力ガナイノデゴザイマス、政府
ハ是非衆議院ノ修正通ニ本院デ確定致シマスレバ本案ハドウナサル御積デゴ
ザイマスカ、チヨット其邊ヲ伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=14
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015・波多野敬直
○政府委員(波多野敬直君) 成程此五箇年ノ期間ハ濟ンデ仕舞ヒマシタデ
ス、併ナガラ此明治二十九年法律第四號其者ハ消滅ハセヌノデゴザイマス、
矢張此法律ハ有效ナモノデゴザイマス、唯五箇年ノ間ノ期間ガ經過シテ仕舞ツ
タヾケト政府ハ認メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=15
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016・清棲家教
○伯爵〓棲家〓君 唯今小笠原子爵ノ質問ニ對シテ政府委員ノ御答辯ガゴザ
イマシタガ、私共ハ其御答辯ニ滿足ヲシマセヌデゴザイマス、併ナガラ此事
柄ヲ彼是此所デ議論スル必要ハゴザイマセヌカラ、兎ニ角此法案ハ更ニ特別
委員ヲ選ンデ其特別委員ニ付託ヲシテ審査ノ後ニ報告ヲシテ貰ヒタイト云フ
考デゴザイマス、此委員ハ九名ト致シマシテ議長ノ御指名アランコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=16
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017・小笠原壽長
○子爵小笠原壽長君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=17
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018・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 〓棲伯爵ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=18
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019・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ其通決シマス、馬匹去勢法案、政府提出、
第一讀會ノ續、特別委員長報告
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
馬匹去勢法案
右別册ノ通リ修正セリ依テ及報〓候也
明治三十四年二月二十三日
右特別委員長
伯爵〓棲家〓
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
〔特別委員ノ修正ニ係ル條ノミヲ載錄ス〕
第二條牡馬ニシテ種牡馬タルヘキ資質アリト認メタルモノニハ頭數ヲ限
リ去勢ノ施行ヲ猶豫ス
疾病又ハ發育不全ニ因リ去勢ヲ行フニ堪ヘスト認メタルモノ若ハ學術〓
究ノ爲行政官廳ノ許可ヲ得タルモノニハ去勢ノ施行ヲ猶豫スルコトヲ得
〔伯爵〓棲家〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=19
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020・清棲家教
○伯爵〓棲家〓君 此馬匹去勢法案特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓致シ
や、〓、此委員會ハ八日ニ開キマシテ、初ニ方リマシテ私ガ卽チ委員長ニ、長
岡子爵ガ副委員長ニ當選ニナリマシテゴザイマス、續キマシテ其後再ビ又委
員會ヲ開キマシテ質問ヲシ次ニ討論ヲシタ譯デゴザイマスル、其結果諸君
ノ御手許ニゴザイマスル如クニ聊カノ修正ヲ加ヘタノデゴザイマス、卽チ
ソレハ種牡馬檢査法ニ據リマスルト第六條ニ卽チ此「學術〓究ノ爲牡馬ヲ種
付ケニ使用セントスル者アルトキハ地方長官ハ農商務大臣ノ認可ヲ經」云々
ト云フコトガゴザイマス、然ルニ此去勢法案ニ付イテハ地方廳ノコトガ現レ
テ居リマセヌタメニ或ハ其不都合ヲ生ジハセヌカト云フ所カラシテ終ニ「行
政官廳」云々ト云フ文字ヲ入レマシタ、然ルニ行政官廳ト云フト如何ニモ廣イ
ヤウデゴザイマスガ、是ハ此法律ニ依リマシテ卽チ細則ヲ定メラレマスルコ
トデアリマスルカラ、總テソレ等ノ體裁ハ細則ニ讓ッタ方ガ宜カラウ、故ニ廣
ク行政廳ト書イタ方ガ宜カラウト云フコトデ斯ノ如キ修正ニ極マリマシタノ
デゴザイマス、第一、此法案ヲ提出ナサレマシタ趣意ハ馬匹ノ改良竝ニ軍事
上、去勢ヲシナケレバナラヌト云フ必要ガアルタメニ此法案ヲ提出サレタ
趣デゴザイマシタ、就キマシテハソレ等ノ委シイ理由ハ私ガ申述ベルヨリ寧
ロ政府委員カラ十分御辯明ガゴザイマセウシ、其理由ニ就キマシテ御質問ガ
ゴザイマスレバ政府委員ニ御質問ヲ願フノデゴザイマス、何分我〓ガ審査致
シマシテカラ隨分日モ經ッテ居リマスシ或ハ間違ガ生ジマシテモナリマセヌ
カラ左樣御承知ヲ願ヒタイ、ソレカラ此法律ハ何時カラ施行スルカト云フ質
問モアリマシタガ、卽チ是ハ三十七年ヨリ施行スル考デアルト云フコトデゴ
ザイマシタ、ソレカラ罰金ガ附イテ居リマスガ、是ハ百圓ト云フノハ餘リ高
イヂヤナイカト云フ說ガゴザイマシタガ、併ナガラ成ルベク事實ハ低イ所ノ
罰金ヲ科スル積デアル併ナガラ隨分田舎ヘ行クト云フト世ニ所謂博勞ナ
ル者ガアッテ隨分惡イコトヲスル者ガアルタメニ斯ノ如ク罰金ヲ極メタノデ
アルト云フコトデゴザイマシタ、其他別段ニ是ト云フ理由モゴザイマセヌデ
ゴザイマス、又議論モゴザイマセヌデゴザイマシタ、就キマシテハ陸軍ニ於
キマシテ去勢ヲ施シタ馬ト施サヌ馬ト云フ詳細ナ調ガゴザイマシタ、卽チ表
デゴザイマス、之ヲ一々申上ゲマスレバ時間モ掛リマスルデゴザイマスルシ
煩雜ト考ヘマスカラ是ハ略シマスデゴザイマス、此法案ヲ提出サレマシタ理
由及其他ノ委シイ技術上ノ御質問ガゴザイマスレバ尙ホ政府委員ニ御質問ノ
アルヤウニ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=20
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021・田中芳男
○田中芳男君 チヨット政府委員ニ質問致シタイ、本員ハ第一讀會ノ時ニ闕
席致シマシテゴザイマスカラ御說明ノアリマシタ次第ハ能ク分リマセナンダ
ガ、私ノ理由書ヲ見マシタ所カラ疑ヲ起シマスルト、此ドウモ日本ノ馬ト云
フモノハ頑狂デアッテ兎角ドウモ使フニ使ヒ惡イ、ソレ故ニ一ツ睾ヲ拔イテ
仕舞ハナケレバ行カナイト云フヤウニ理由書ニ書イテゴザイマスケレドモ、
全體日本ノ馬ガ惡イヨリ馭者ガ惡イト考ヘル、往々馭者ノ惡イタメニ馬ヲ惡
クスル又十五年モ生キル馬ヲ七八年カ十箇年デ殺シテ仕舞フト云フノハ世
間ノコトニ少シ御注意ニナル御方ニハ能ク分ッテ居ルダラウト思フ、人間其他
ニ於キマシテ斯樣ナコトガアリマスレバ巡査ガ立入ッテ咎メルコトガアリマ
セウガ、馬ノ取扱ニ粗暴ナコトガアッテモ唯默ッテ見テ居ルダケデ、一向制スル
コトハ無イ、然ルトキハ馬ヲ見殺シニシテ仕舞フコトガ往々アル、其方ノ取扱
方ガ一向御手ガ著カナイデ唯睾サヘ拔ケバ馬ガ穩ニナル、サウスレバ穩ニシ
テ置イタモノヲ殺シテ仕舞フト云フコトニナル、コヽ等ノ邊ハドウ云フ風ナ
取扱ニナリマスヤラ、ドウモ此去勢法案ダケデハ一向法律ガ屆カヌヤウニ思
ヒマスガ、他ノ取扱ハ如何ニナリマス、一向御手ガ著カナイノデアリマスカ、
何ゾ外ニ法律ガ立チマスデゴザイマスカ、ソレヲ伺ヒタウゴザイマス
〔政府委員中村雄次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=21
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022・中村雄次郎
○政府委員(中村雄次郞君) 御答ヲ申上ゲマス、唯今馬ノ取扱法ガ甚ダ不十
分デアル斯ウ云フコトデ、其取扱法ハ如何ニスルカト云フ御質問デゴザイマ
シタ、如何ニモ馬ノ取扱法ト云フコトハ我邦ノ一般ノ人民ガ甚ダ不慣デゴザ
イマスルト申シテ宜シカラウト思ヒマス、卽チ民間ニ於テノ馬ノ扱ヒ法ニ附
イテモ誠ニ不十分デアルト云フコトヲ本官ハ感ジテ居ルノデアリマス、而シ
テ軍隊ニ於キマシテハ勿論ノコト、馬ハ是レ活キタル兵器ト云ッテ實ニ軍隊ニ
於テ大切ニシテ居ル所ノモノデゴザイマス、ソレ故ニ馬ノ取扱法ニ於キマシ
テハ非常ニ注意ヲ致シ〓究ヲ致シテ馬ノ取扱法ヲ〓ヘ且ツ取扱法ニハ改正ヲ
加ヘツヽアルノデゴザイマス、併ナガラ此改正致シテ居リマスルケレドモ取
扱法ト云フモノハ餘程馬ニ附イテハムヅカシイノデゴザイマス、故ニ馬其モ
ノガ餘程性質ノ宜シクナリマスト共ニコチラノ扱法モ宜シクシテ、ソレデ完
全ナル馬ガ得ラレルノデアリマス、今日ニ於キマシテハ取扱法ニハ十分ナ注
意ヲ致シテ居リマスケレドモ、マダ滿足ナル點ニ至ッテ居ナイノハ本官自ラ
認メテ居リマス、卽チ輜重輸卒ノ如キ、是ハ馬ニ附イテ十分〓育ガ完全ニ出
來テ居ルカト云フ御尋デアリマスト遺憾ナガラ未ダ出來テ居ラヌト云フ
感ジヲ持ッテ居リマス、併ナガラ是ハ是非トモ完全ナル〓育法ヲ施シ、馬ニ
附イテノ完全ナル〓育法ヲ特ニ進メテ參ル積デアリマス、併ナガラ一方ニ於
テ如何ニ取扱法ヲ宜ク致シ如何ニ之ヲ熟練致シテモ馬ノ性質宜シカラザルモ
ノハ取扱ニ於テ馬ノ性質マデモ全體ニ直スト云フコトハ出來マセヌデゴザイ
P9、チヨット例ヲ申シテ見マスレバ、此度ノ北〓ノ事件ニ於キマシテ徵發駄
馬ノ扱ヒニ附イテ非常ナ困難ヲ致シマシタ、其困難ト云フコトニ至ッテハ輸
卒ノ不慣レモアリマス、今御質問ノゴザイマスル如ク、現ニ取扱ノ不慣ノ
タメニ非常ニ困ル、又馬ヲバ幾分カ怒ラシムルト云フ例モゴザイマシタ、ソレ
ハ事實デゴザイマス、事實デゴザイマスケレドモ、其馬自ラガ非常ニ惡イ
爲ニ自然、馬ヲ愛スルト云フ心モ幾分カ減ジテ來ルト云フコトモ事實デゴザ
イマス、其證據ニハ北〓事件ニ於キマシテ支那ノ軍隊ノ持ッテ居リマスル馬
ヲ分捕リマシタ、其分捕ッタ馬ヲ同ジ輸卒ガ持チマスニ其馬ハ誠ニ扱ヒ宜ク
行キマス、又愛馬ノ心モ十分ニゴザイマスルタメニ非常ニ其分捕リマシタ馬
ハ能ク保チ、能ク勞役ニ堪ヘテ居リマシタ、是ガ卽チ同一ノ人ニシテ馬ニ依
テ斯ウ違フコトガ出來ルト云フ例デゴザイマス、ソレ故ニ人ノ扱ヒ法ニ附キ
マシテ不十分デアルガ、ドウスルカト云フ御尋ニ附キマシテハ將來此コト
ニ附キマシテ十分ナ〓育ヲ致シ完全ナル取扱法ニ致ス積デゴザイマスガ、馬
自ラモ改良致シマセズバ人バカリノ〓育デハ到底滿足ナル軍馬ヲ得ルト云フ
コトハ出來マセヌ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=22
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023・田中芳男
○田中芳男君 唯今御說明ノゴザイマシタノハ陸軍部內ノコトダケノ御說明
デアリマスガ、本員ノ御尋致シマシタノハ決シテ陸軍部內ダケデハアリマセ
ヌ、一般ノ馬ニ附イテ御尋致シタノデゴザイマスカラ、或ハ陸軍ノ方デハ唯
今ノ御說明デ十分デアリマセウケレドモ一般ノコトハマダ承リマセヌ、ド
ウカ一般ノコトヲ御承知ノ方カラ說明ノアルヤウニ致シタウゴザイマス
〔政府委員和田彥次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=23
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024・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 一般ノ馬匹ヲ取扱ヒマスルコトニ附キマシテハ
唯今御質問ノゴザイマシタヤウニ西洋各國ノ如キ十分熟練シタル取扱方ハ唯
今ノ所デ行渡ッテ居リマセヌ、如何ニモ御質問ノ通ニ取扱方ノ不行屆ノ點ハ認
メテ居リマス、認メテ居リマスガ、現時ノ日本ノ實況ヲ見マスルト、或ハ婦
女子小兒等ガ馬ヲ馭シマセウト致シマシテモ御承知ノ通强剛ノ性質ヲ持ッテ
居リマスルカラ甚ダ扱ヒ惡ウゴザイマス、故ニ是等ニ對シマシテハ强壯ノ人
ガ自然扱ヒマスルヤウナ實況ニ立至ッテ居リマスノデアリマス、去勢致シマシ
テ柔順ナル性ニ之ヲ變ジマシタナラバ自然扱ヒ上モ强壯ナ者ガ酷ニ致シマス
〃
ルコトハ自然ノ結果トシテ止ミマセウト考ヘマス、又婦女子ノ如キ幼少ナル
者デモ容易ニ扱ヒ得ルヤウナ場合ニ至ラウト考ヘマス、旁〓此法案ハ必要デ
アルト見テ居リマス、併シ今日ノ儘ニ捨置イテ宜イトハ見テ居リマセヌ、尙
ホ其點ニ附キマシテハ政府ニ於キマシテ調査致シマシテ、或ハ是等ノ取扱フ
所ノ方法モ宜クスル考ヲ持ッテ居リマス、一應御答申シテ置キマス
〔村田保君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=24
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025・村田保
○村田保君 本員ハ此案ニ反對ノ意見ヲ持ッテ居リマス者デゴザイマス、旣ニ
第一讀會ニ於キマシテ種々政府委員ニモ質問致シマシタシ其時分ニモ稍〓反
對ノ意見ヲ表ハシテ置キマシタ、併シ本員ハ此馬匹ノ去勢ト云フコト其者ハ
惡イノデハナイ、軍馬ナドニ於キマシタナラバ去勢ヲ致シマシタ方ガ餘程馬
モオトナシクナリマスルカラシテ扱ヒ宜クモナリマセウシ、或ハ牝牡共用ナ
ドト云フ時ニモ餘程便利ダラウトハ思ヒマスガ、併ナガラ馬匹去勢法ト云フ
テ法律デ出スコトハ如何デアラウカ、第一讀會ノトキニ政府委員ニモ尋子マ
シタガ、世界各國ニ於テ未ダ馬匹去勢法ト云フテ法律デ出シタ國ハ世界中ニ
ナイ、本邦ハ御存ジノ通今日ハ文明諸國ノ大國ト竝立ヲシテ居ル、地位ヲ保ッ
テ居ル國デアリマスカラ餘リ世界ニ嗤ハレルヤウナ法律ヲ出スト云フコトハ
本員ハ甚ダ好マシクナイノデアル、ソレニ其馬ノ睾ヲ収ルコトマデモ兩院ノ
協賛ヲ經天皇ノ御璽ヲ以テ發布スルト云フモノデハ私共ナカラウト思ヒマ
スソレデソレナラバ此法律ガナケレバ去勢スルコトガ出來ヌカト申シマス
レバソレハ法律ガナクテモ、何ノタメニ農商務省ト云フモノガアル、農商務大
臣ガ隨分諭〓ヲシマシテモ段々一般ニ必要ト見レバ去勢スルコトニ段々人ノ
意嚮ヲ向カセルコトガ出來ルノデス、譬ヘテ見レバ蹄鐵ノヤウナモノ、馬ノ鐵
沓ト云フモノハ未ダ其法律デ以テ馬ニハ是非鐵沓ヲ打タナケレバナラヌト云
フ法律ハナイケレドモ必要ト見レバ今日悉ク鐵沓ヲ打タヌ馬ハナイヤウナ譯
ニナッテ居リマス、ソレデ今日マデソレナラバ農商務省ニ於テモ其去勢ノコト
ニ附テ段々此諭告或ハ其他ノ事ヲ民間ニ向ッテ世話ヲシテ居ルカト申セバ、十
三年ニ農商務大臣カラ地方官ニ向ヒマシテ諭告シタキリデアル、隨分是モ地
方官ニ向ッテ農商務大臣タル者ガ諭告ヲシマシタナラバ隨分一般デ必要ト見
レバ法律ガナクテモ出來ヌコトハナカラウト思フノデス、既ニ一讀會ニ於キ
マシテ政府委員ノ申サレマスルノニ餘所ノ國デハ民間デスルカラ法律ヲ設ケ
ル必要ハナイ、卽チ其通ニコチラデモシタラ宜カラウト思フ、民間デ一般ニス
ルヤウニ政府ガ仕向ケルガ宜イト思フ、ソレハ出來ヌコトハナイト思ヒマス、
ソレガ第一ノ本員ノ考デゴザイマス、ソレカラ第二ニハ此法律ヲ出シマシタ
所ガ軍馬ニハ一向必要ガ無イト思ヒマス、ナゼト云フノニ今日軍馬ト云フモ
ノハ馬匹育成所ト云フモノデ漸次去勢ヲシテ居ルノダカラ此法律ヲ施行シヤ
ウトスルノハ一般民間ニ居ル所ノ馬ニシヤウト云フノデアル、ソレハ先程政
府委員ノ言ハレマシタ通昨年ノヤウニ馬ヲ徵發スルト云フヤウナ場合ニマア
困ルト云フノデスガ成ル程本員モ竊ニ承ルニ昨年アタリ、アチラニ行ッテ困
ル、日本ノ馬ト云フモノハ馬デハナイ猛獸デアル、依ッテアチラニ行ッタ者ガ非
常ニ困ッタト云フコトヲ聞イテ居リマスガ、併ナガラ馬ト云フモノハ昔カラ斯
ウ云フコトヲ云フ、馬ト人ト云フモノハ殆ト同シ性質ヲ持ッテ居ルモノダソ
レ故ニ薩摩馬ハ薩摩ノ性質ヲ持ッテ居ルカラ薩摩ノ人ガ乗レバ宜イケレドモ
他ノ人ガ乗レバ困ルト云フヤウナコトガ段々アル、ソレデスカラ成ル程支那
馬ナドヲ分捕リマシタナラバ極クオトナシカッタ、成ル程支那馬ハオトナシカ
ッタニ違ヒナイ、人間ノ性質ガ丁度サウ云フ風ダカラト······昨年ナドハ脆ク負
ケテ仕舞ッタ、是ハ自ラ人ノ性質ト相待ッテ居ルモノダト云フコトヲ聞イテ居
リマス、ソレデ又此馬匹ヲ徵發スルニモ或ハ馬匹徵發事務規則ト云フモノガ
アルノデスカラ、ソレニハ徵發委員ト云フ者ガ見テサウ云フ頑狂ナ暴レ馬ナ
ドト云フモノハ不合格デ一體徵發スベキモノデハナカラウト思フ、ソレガ爲
ニ規則モ設ケテアルノデアリマスカラ初カラサウ云フモノヲ徵發シタノハ徵
發ニシタノガ誤ト言ッテモ宜カラウト思フ、第三ニハ本邦ノ馬ハ理由書ニアリ
マスルヤウナ總テ頑狂ナ馬ト云フノデハナイ、ドノ馬デモ頑狂デ言フコトヲ
聽カヌ暴レ馬、總テサウ云フモノデハナイ、馬ノ性質ト云フモノハ自ラ血統ト
場所ニ依ルノデス、ソレデ血統モ場所モ良イナラバ馬ト云フモノハ順良ナモ
ノデ譬ヘテ言フト南部馬ハ大變ニ良イ、ケレドモ九州アタリニ行クト隨分惡
ルイ、三春ナドデモ根性ガ惡ルイト云フヤウナモノデ場所ニモ大變關係ヲシ
マスルシ血統ニモ大變關係ヲスルモノデアル、所ガ或一部ノ馬ガ惡ルイカラ
ト云ッテ良イ馬マデモ皆取ッテ仕舞フノハ隨分迷惑デアルト思ヒマス、人間デ
モ同ジコトデ皆ドレモ是モ善人バカリデナイ、隨分惡ルイ者モアル、其惡ルイ
者ノタメニ善イ者モ同ジク惡ルイト言ハレタナラバ實ニ迷惑ダラウト思ヒマ
ス、第四ニハ本員ナドハ假令此法律ヲ出シマシタ所ガ實際之ヲ行フコトガ出
來ナイダラウト云フ考ヘヲ持ッテ居ル、ナゼト云フニ外國ノ公使ナドガ段々馬
ヲ向フカラ持ッテ來ル、公使デナクテモ外國人ガ持ッテ來ル、是等ヲ罰則ヲ設ケ
テ是非睾ヲ取ルト云フコトハ、ナカ〓〓出來ヌダラウト思フ、又性質ニ於テモ
新冠、下總、外山、此三牧場ニ於テ年々數百頭ノ馬ガ出來ル、是レナドモ罰則ヲ
設ケテ睾ヲ取ルコトハ出來ヌ、サウシテ見レバ法律ヲ設ケテモ一般ニ行ハレ
ヌト云フト終ニ此法律ガ徒法ニ屬シハシナイカト云フ考ヲ持ッテ居リマス、ソ
レカラ第五ニハ去勢ト云フコトハ北海道デハ去勢ヲ隨分早クカラヤッタモノ
デアル、ケイレドモ馬ハ弱クナル、政府委員ハ一讀會ニ於テ馬ハ弱クナラヌト
言ハレマシタガ、併シ北海道デハ段々去勢馬ノ弱イト云フコトヲ認メテ居ル、
ナゼト云フノニ睾ノ有ル馬ナラバ一日ニ二十里モ二十五里モ荷車ヲ挽カセル
コトガ出來ルケレドモ、睾ノナイ馬ハドウシテモ堪ヘラレヌ、ソレ故ニ睾ノナ
イ馬ヲ嫌ッタノガ一ツノ原因デアル、ソレカラモウ一ツハ賣ラウト言ッテモ賣
レナイ、睾ノナイ馬ハイヤガッテ强テ賣ラウト言ヘバ非常ニ安ク賣レル、ソレ
デ今日北海道デハ去勢馬ヲ非常ニ嫌ッテ來タト云フノモソレガ原因デアルト
思ヒマス、ソレカラ第六ニハ經濟ノ點カラドウモ私共ハ必要ハナイカト思フ、
若シ此法案ヲ通過シマシタナラバ忽チ此處デ數十萬圓ノ金ガ要ルノデス、此
事ニ附キマシテハ先日伊藤總理大臣ガ本會ニ於キマシテ言ハレマシタ通段々
新事業、新事業ト云フコトガ輿論ノヤウニナッテ居ルケレドモ不生產的ノコト
ニ新事業ト云フモノハ自分モ甚ダ宜クナイト思フ、新事業ハ成ルタケセヌヤ
ウニト云フ御演說モアリマシタ、ソレ故既ニ承リマスレバ豫算分科會デモ製
鋼所費ト云フモノヲバ一昨日カ削除ニナリマシタ樣子デゴザイマス、ソレモ
大方種々ノ原因ノアルコトダラウト思ハレマスケレドモ、是モ全ク新事業デ
ス、新事業ト云フ所カラシテ或ハ之ヲ削除セラレタ原因デハナイカト本員ナ
ドモ思ッテ居リマス、此去勢法ナドニ至リマシテハ最モ不生產的ノ新事業ダラ
ウト思ヒマス、此去勢ヲシタナラバ一般人民ニドレ位ノ利益ガアルカ、ドウモ
一般ノ人民ノ利益ト云フコトハナイダラウト思フ、唯迷惑スルト云フ方ガ多
イニ違ヒナイ、併ナガラ此金ヲ以テ是デ種馬ヲ一頭デモ良イモノヲ買ッテ、サ
ウシテ其馬匹ノ改良ヲデス、卽チ馬匹改良費ニデモ入レマシタナラバソレコ
ソ隨分一般人民ノ利益ニナルカモ知レナイ、ソンナ金ガアルナラバ本員ナド
ハ馬匹改良費ヘ入レテ貰ッテ一頭モ良イ種子ヲ買ウテ貰ヒタイト云フノガ本
員ナドノ希望スル所デアル、ソレカラ第七ニハ此一己人ノ馬ト云フモノハ一
體是ハ何ノ爲ニ飼ッテ置ク、是ハ決シテ軍用ニ供スルタメニ飼養シテ居ルノデ
ハナイ、是ハ勞力ヲ省クガタメニ飼ッテ置クトカ、糊口ノタメニ飼ッテ置クト
カ、娛樂ノタメニ飼ッテ置キマスルトカ云フモノデゴザイマスルカラ、是等ニ
向ッテ强制的ニ罰金マデモ設ケテ、サウシテ其者ノ馬ノ去勢ヲスルト云フノ
ハドウモ宜シクナイト思ヒマス、穩當ノコトデナイト私ナドハ思ヒマス、ソ
レカラ此第八デスガ、是ハ其去勢ノコトデス、去勢ノコトハ新冠ノ御料地デ
早ク始メマシテ、新冠ノ御料地ニ於テハ二十七年カラ此去勢ヲシテ居ル、年々
大〓四五百頭ハ此御料牧場デ出來マスガ、其報告書ガ玆ニゴザイマスカラ御
參考ニ何シマス、二十七年ニ始メマシテ二十七年ニ去勢ヲシマシタモノガ百
七十三頭二十七年ニシタ、所ガ二十八年ハドウカト云フト滅リマシテ百五十
五頭、ソレカラ二十九年ニ百二十五頭、ソレカラ三十年ニ九十九頭ト、段々
斯ウ云フ風ニ減ッテ來タ、遂ニ三十一年カラ全ク廢メテ仕舞ッタ、是ハ其去勢
ト云フモノヲ廢メマシタノハ······廢メラレタノニハ大方種々ノ事情モゴザイ
マセウ、種々ナ事情モゴザイマセウケレドモ、其結果タルヤドウモ甚ダ面白
クナイ、始ハサウ澤山ニシマシタガ、段々ヤッテ見ルノニドウモ結果ガ面白
クナイノト又事情ノ甚ダ忍ビナイコトガアルノデアラウト本員ナドハ推測ヲ
スルノデアル、ソレ故ニ遂ニ御料牧場デサヘモ其通去勢ト云フモノハ繼續ガ
出來ナイト云フコトニナッテ、遂ニ三十一年ニハ全ク之ヲ廢メテ禁止シテ仕
舞ッタト云フコトデアル、ソレヲ以テドウモ民間ニ此事ヲバ强テサセルト云フ
コトハ本員ナドハ如何デアラウカト思ヒマス、ソレカラ第九デゴザイマス、
第九ニ於テハ其外國デハ、歐維巴、歐米各國ニ於キマシテハ此家畜ノ數ト云
フモノハ人口ノ蕃殖ニ伴フモノダト云フコトヲ云フテ居ル、然ル所本邦ニ於
キマシテハサウデナイ、馬ノ頭數ト云フモノハ人口ニ反シマシテ大變ニ馬ノ
數ガ減ッテ居ル、ドウモソレモ調ベテ見マシタガ是ハ明治十五年カラ三十二
年マデノ統計ヲ調べマシタ、是ハ政府ノ固ヨリ調べマシタ報告ニ依ッテ調べ
マシタガ、十五年ニハ人口ガドノ位アッタカト申シマスト云フト、十五年ニ
ハ三千六百七十万百十八人ノ人口ガアッタ、ソレガ三十二年ニハ四千八百七
十五万九千五百七十五人、其間ニドノ位ノ人口ガ殖エタカト申シマスルト云
フト七百五万九千四百五十七人ト云フ人口ガ殖エテ居ル、馬ノ頭數ハドウカ
ト申シマスルト馬ハ十五年ニハ百六十四万五百二十三頭、ソレガ三十二年ニ
ハ百五十四万六千七百五十九頭デス、云ヒマスルト云フト其方ハ九萬三千七
百六十四頭馬ノ方ハ減ッテ居ル、人口ハ殆ド七百万カラ殖エテ居リマスルノ
ニ馬ノ方ハ十五年ト一昨年マデノ間ヲ見マスルト九万カラ減ッテ居ル、其如ク
馬ノ數ト云フモノハ減ッテ居リマスカラシテ陸軍デモ馬ヲ此頃何シマスニ年
年減ッテ來マスルカラ脊モ元ハ七寸ヲ取ッタモノガ今日ハ五寸ニモ四寸ニモ段
段段々馬ガ小サクナルト云フ今日ハ景況ニナッテ居ル、ト云フモノハ畢竟此馬
ト云フモノガ餘程減ッテ居ルノデ、頭數ガモウ十五年アタリトハ非常ニ減ッテ
居ルノデスカラ、若シ人ノ割ニ伴ッテ來テ居ルナラバ今日ハドウシテモ二百
万以上ノ馬ガ無クチヤナラヌノガ、ソレガ却ッテ今日ハ減ッテ居ル有樣ニナッ
テ居ル、ソレ故ニ今日馬ノ蕃殖ト改良ヲ圖ルコトハ最モ大切ノ時機ダラウト
思フノデ、是非此馬ノ改良ト蕃殖ト云フモノハ是非トモ圖ラナクチヤナラ
ヌ、其改良ヲ計ルノニ單ニ此去勢術バカリヲバ主トシテヤラレルト云フコト
ハ、チットモ私ドモハ改良ノ道ニナラヌト思フ、改良ヲスルノニハドウシテモ
良イ種馬ヲ澤山ニ買入レテ、サウシテヤルヨリ外ニハ十分ニ改良ハ出來ナイ
ダラウ、成程去勢ヲ放ットキマシタラ隨分野合ト云フコトモゴザイマセウカ
ラ多少ハ害ヲシマセウケレドモ、併ナガラソレヨリハ馬ノ數ガ大變ニ減ルト
云フ方ガ是ガ非常ニ今日ハ困難ダラウト思ヒマス、其上今日其多ク、センババ
カリ·····センバト云フノハ馬偏ニ扇ト云フ字ヲ書ク卽チ去勢シタ馬ト云フコ
ト、其馬バカリヲ澤山ニ作リマシテ、サウシテ澤山置キマシタラ······睾ノナ
イ馬バカリ出來マシタラ馬ノ頭數ト云フモノハ此上非常ニ減ズルダラウト思
ヒマス、サウ云フコトニナリマシタラ實ニ後ニ悔ユルトモ及バヌコトガ出來
ルダラウト思ヒマス、ソレ故ニ本員ハ何レノ點カラ考ヘマシテモ、ドウモ今日
ハ馬ノ增殖トソレカラ改良ト云フコトヲ計リマスルノニハドウゾ此去勢ナ
ドト云フコトハ暫ク見合ハセテ戴キタイ、モウ少シ馬ガ澤山ニ出來マシタラ
バ兎モ角モ今日ハ餘程馬ノ缺乏シテ居ル所ヘ持ッテ行ッテ去勢術ヲ行ッテ益〓缺
乏ヲ來タスノハ好マヌ所デアル、ソレカラ法律ナドヲ以テ······馬ノ睾ヲ取ル
ノニ法律デナケレバナラヌナドト云フコトハ實ニ本員ハナサケナイコトト存
ジマスカラ、ソレトウノ理由ヲ以テ本員ハ之ニ反對ヲ致スノデアリマス
〔政府委員中村雄次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=25
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026・中村雄次郎
○政府委員(中村雄次郞君) 唯今村田サンカラ此案ニ反對ノ御意見ガ出マシ
タンデゴザイマス、私ハ此案ガ如何ニ軍事上關係ヲ有スルカト云フコトヲ一
應申述ベマシテ、サウシテ此案ニ御贊成ヲ仰ギタイト思ヒマス、軍隊ニ馬ノ
必要ナルコト及軍隊ニ在ル所ハ實ニ善良ノ馬デナケレバ軍隊ノ活動ガ出來ヌ
ト云フコトハ是ハ別ニモウ茲デ申上ゲマスルノ必要ハナイト考ヘマスルノデ
ゴザイマス、軍隊ノ編制ガ民間ノ馬匹ヲ相混ジテ始メテ全クナルノデアルト
云フコトハ能ク是ハ申上ゲテ置カナケレバナラヌト思ヒマス、唯今村田サン
カラ陸軍ニハ軍馬ノ育成所ガアル、軍馬育成所ガアッテソコデ皆陸軍デ使フ馬
ノ去勢ヲシテ居ルカラ、强テ民間ノ馬ヲ去勢ヲシナクッテモ宜クハナイカト云
フ御意見ノヤウニ聽取リマシタガ、是ハ軍隊ノ編制ト云フモノガ民間ノ馬ヲ
ドウ云フヤウニ使用スルカト云フコトヲ能ク御承知ニナラナイカラデアラウ
ト思ヒマス、育成所ニ於テ馬ヲ養ヒマスノハ陸軍ノ方デ平時使ヒマスル馬ハ
皆育成所デ養ヒ、育成所デ去勢ヲシテ軍隊ニ渡シマス、是ハ平時陸軍ガ用ヒ
マス所ノ馬デゴザイマス、然ルニ軍隊ノ編制ト云フモノハ人ハ豫備後備ノ人
員ヲ以テ始メテ戰時ノ編制ガ出來マスト同ジコトデ馬匹ハ民間ノ馬ヲ徵發シ
テ其馬ニ依ッテ始テ戰時ノ編制ガ完備致シマスルンデゴザイマス、故ニ平時陸
軍ガ養ッテ居ル馬ト云フモノハ總數ニ比較致シマスレバ甚ダ少イモノデアリ
やっ、平時養ッテ居ル馬ノ幾倍ハ民間カラ是非トモ徵集致シマシテ、サウシテ
軍隊ノ編制ヲ全カラシメナケレバナラヌノデゴザイマス、若シ此馬ヲ悉ク陸
軍デ平時ヨリ養ッテ置クト致シマスレバ恰モ豫備後備ノ兵ヲ皆入營サセテ旗
下ニ置クト同一ノ有樣ニナリマス、ドウシテモ是ハ出來得ザルコトデアリマ
スカラ、民間ノ馬ヲ軍馬ニ使用致シマスルノハ誠ニ已ムヲ得ナイノデアリマ
ス、サウ致シマスレバ民間ノ馬ハ軍事上適當ナル馬卽チ善良ノ馬ニシテ置キ
マセヌケレバ軍隊ノ活動上ニ甚シイ影響ヲ及ボスコトニナルノデゴザイマ
スソレガ爲ニ卽チ此去勢法案ナルモノガ軍事ニ關係ヲ致シマスル所以デゴ
ザイマス、デ此去勢法ヲ施サナケレバナラヌ卽チ軍事上去勢法ヲ民間ノ馬ニ
施サナケレバナラヌ理由ニ附イテ二ツアリマス、一ハ馬匹ノ數ガ足ラナイト
云フコトデアリマス、一ハ馬ノ性質ガ去勢ヲ施サザル馬ハ軍馬ニ不適當デア
ルト云フ此二ノ理由デゴザイマス、今員數ノ足ラナイト云フコトカラ申上ゲ
タイト存ジマス、此員數ノ足ラナイト云フコトハ我邦ノ民間ノ馬ノ數ガ敢テ
軍隊ノ隊數ニ比較シテ數ガ少イト申スノデハゴザイマセズ、去勢法ガ施シテ
ゴザイマセヌタメニ牝牡ヲ混用スルコトガ出來マセヌ故ニ徵發シ得ベキ馬ガ
足リマセヌ、ソレ故少イト申スノデアリマス、陸軍ノ馬匹調査規則ニ依ッテ三
十三年ニ取調ベマシタ所ノ徵發スルコトガ出來ル牡馬ノ全國ノ數ガ三十二年
ノ調デハ全國ニ於テ六十二萬九千百六十九頭、是ダケガ全國デ徵發スルコト
ガ出來マス牡馬デアリマス、其中年齡ト寸尺ニ依リマシテ陸軍ニ使用致シマ
ス馬ハ年齡ガ五歲以上、寸尺ガ四尺五寸以上ノモノヲ軍馬ニ採リマスノデゴ
ザイマス、其員數ヲ調ベマスト二十六萬二千八百四十頭、是ガ先ヅ寸尺ト年齡
ダケニ於テ陸軍ニ使用シ得ベキ馬ノ數デゴザイマス、然ルニ從來檢査致シマ
シタ所ノ實驗ニ依リマスレバ百頭ニ附イテ三十頭、卽チ百分ノ三十ダケガ陸
軍ニ全ク使用シ得ベキ馬デアリマス、ナゼナレバ二十六萬餘頭ノ中ニハ不具
癈疾等ノ馬モアリマス、非常ニ老馬モ這入ッテ居ルノデアリマス、故ニ從來ノ
實驗ニ依リマスレバ百分ノ三十ダケガ使用シ得ル馬ノ數デアリマス、其數ヲ
調ベマスト七萬八千八百五十二頭ト云フモノガ軍馬ニ使用シ得ベキ數デアリ
マス、然ルニ是マデ實際ノ實驗ニ依リマスルト徵發ノ場合ニ於テ徵發ニ應ジ
得ベキモノハ十分ノ九デアリ、卽チ其一割ト云フモノハ病氣其他ノ事故ニ依
リマシテ徵集ニ應ズルコトハ出來マセヌ、故ニ其ノ十分ノ一ヲ引去リマスト
七萬九百六十七頭ト云フモノガ是ガ全國デ軍隊ニ徵發シ得ベキ資格ヲ有スル
馬デアリマス、然ルニ是ダケノ馬デハ我軍隊ノ戰時ノ編制ヲ完備スルコトハ
出來マセヌ、馬ノ數ガ非常ニ足リマセスノデゴザイマス、此足リマセヌノハ
如何ニシタラ宜シイカト云フト、老癈ノ馬ヲ使用スル五歲以下ノモノ又ハ四
尺五寸ヨリ小サイモノヲ徵發セヌケレバ數ヲ充スコトガ出來マセヌノデアリ
や り、若シ是ニ去勢法ヲ施シタナラバ全國ノ牝馬ヲ用ヒルコトガ出來マス、
牝馬ノ數ハ牡馬ヨリ多イノデゴザイマスカラ、若シ牝馬ヲ混用スルコトガ出
來マスレバ我軍隊ニ優ニソレダケノ必要ヲ充タスコトハ出來ルノデゴザイマ
ス、是ガ卽チ去勢法ヲ施セバ我國ノ馬匹ノ數ニ於テ十分ナル軍馬ヲ得ラレル
コトガ出來マス譯デアリマス、軍隊ニ於テ牝牡混合ノ必要ト云フモノハ我邦
ニ於テ編制ノ上ニ附イテ數ノ上ニ必要ナルバカリデハゴザイマセヌ、ナゼカ
ト云フニ今度ノ日〓戰役ニ附キマシテハ非常ニ困難ヲ致シタ場合ガアルノデ
ゴザイマス、ソレハ一ノ例ヲ申シテ見マスレバ、天津カラ北倉ニ進ミマス場合
ノ如キ卽チ夜中ニ天津ヲ發シテ北倉ニ向ヒマス其夜半、潜ニ進ミマス場合ニ
於テ馬ガ非常ニ動搖ヲ始メタ、或ハ蹴リ或ハ嚙ミ、マルデ中ニハ殆ド氣違ヒ同
樣ナ馬ガ澤山出來マシタ、何ニ原因ガアッタカト云フテ見マスルト、支那馬ノ
卽チ天津ノ戰ニ於テ分捕リマシタ馬ノ中ニ牝馬ガ這入ッテ居ック、其牝馬ニ通
譯官ガ乘ッテ居ッタ、其馬ガ居ッタモノデアリマスカラ、牡馬ガマルデ氣ガ違ッテ
仕舞ッタノデアリマス、ソレデ潜ニ進ミマス場合ニ於テ蹴ル嚙ム或ハ非常ニ
鳴キマスト云フヤウナ譯デ、殆ド正シク進ムコトモ出來ナイヤウナ譯デ、遂
ニ中ニハ落馬ヲスル者ガ起リ遂ニ其牝馬ヘ乘ッテ居ル者ヲ下ロシテ其馬ヲ退
ケテ仕舞ヒ、漸ク進ンダノデアリマスガ、ソレデモ一旦牝馬ヲ見マシテ殆ド
氣ノ狂ヒマシタ馬ハ非常ナ困難ヲ致シテ、鳴ク聲ノ如キハ中〓止ミマセヌノ
デゴザイマス、ソレカラ段々戰ノアリマシタ後、英吉利ノ步兵隊ニ出逢ッタ場
合ガアル、步兵隊ニ出逢ッタ所ガ步兵隊ノ隊長ガ牝馬ニ乘ッテ居ッタ、ソレガ爲
ニ又此峯ヲ拔キマセヌ所ノ馬ハ非常ニ動搖ヲシテ、其步兵隊ノ中ニ這入ッテ
非常ニ彼我共ニ困難ヲ致シマシタヤウナ次第デアリマス、是ハ斯ウ云フコト
ハ屢〓アルノデゴザイマス、例ヘバ其後楊村カラ北京ノ方ニ向ッテ行ク場合ニ
モ、我騎兵隊長ハ聯合軍騎兵指揮官ニナッテ、サウシテ英國獨國ノ兵ト行進
シマシタ場合、其時ニ獸醫ガ去勢法ヲ施サヌ馬ニ乘ッテ居ッタ、其獸醫ガ能ク
外國語ヲ話スコトガ出來マスタメニ、我騎兵隊長ハ其獸醫ニ命ジテ露國ノ騎
兵ト英國ノ騎兵ニ命令ヲ傳ヘサセタ、露國ノ騎兵隊ニハ命令ヲ傳ヘテ直チニ
去ルコトガ出來タ、露國ノ馬ハ皆去勢ヲシテ、オトナシカッタ牡馬ノ去勢馬
デアリマシタ、英吉利ノ騎兵隊ニ行ッタトキ又隊長ガ牝馬ニ乘ッテ居ッタ爲ニ
遂ニ其牡馬ハ牝馬ノ中ニ這入ッテ、ドウシテモ歸ルコトガ出來ナイ、斯ウ云
フヤウナ困難ヲ致シマシタヤウナコトデアリマス、其他北〓地方ニ於キマシ
テハ皆去勢法ガ施シテゴザイマス爲ニ牝牡混用シテ普通ニ用ヒテ居ルノデゴ
ザイマス、故ニ其邊ニ牝馬ノ居ルコトガ澤山デアリマス、ソレガタメニ牝馬
ニ逢フ每ニ去勢ヲ施サヌ馬ハ殆ド氣ガ狂ウテ仕舞ヒ、軍隊ニ非常ナ困難ヲ與
ヘマスノデ、斯ノ如キ例ハ澤山ゴザイマスノデアリマス、卽チ此牝牡ヲ混用
致シマスルト云フコトハ軍隊ニ取リマシテハ非常ナ必要ナコトデゴザイマ
ス、牝牡ヲ混用スルニハ是非トモ去勢ヲ施サ子バナリマセヌ譯デゴザイマ
ス、ソレカラ數ハ唯今申シマシタヤウナ次第デゴザイマスルガ、其他性質ノ
上ニ附イテ軍隊ニハドウシテモ去勢ヲ施シタ馬デナケレバ實際使用スルコト
ガ甚ダ困難デゴザイマス、卽チ去勢ヲ施シマセヌ馬ハ柔順デナイノデゴザイ
や、 、ソコデ柔順デゴザイマセズ又多ク集メタ場合ニ於テハ甚ダ馬揃ガ惡ル
イ、嚙合ヒ蹴合フト云フコトハドウ致シマシテモ全馬卽チ去勢ヲ施サヌ馬ニ
ハ有勝ノコトデゴザイマスルタメ、軍隊ノ如キ多數集メテ用ヒマス場合ニ、
ドウシテモ去勢ヲ施シタ馬デナケレバナラヌノデゴザイマス、此度卽チ北〓
ノ事件ニ附キマシテ近キ例ヲ申シテ見マスレバ、廣島ニ於テ戰事ノ編制ヲ致
シマスルニ附イテ人民ノ馬ヲ徵發致シマシタ、其徵發致シマシタ馬ハ廣島ニ
集メマシタ時ニ當ッテ中〓困難デアッタノデス、之ヲ馴シマスルニ非常ナ馬ノ
怪我モ出來マス、人モ出來マス、機械モ損ジタノデアリマスガ、廣島ニ於テ
ハ十分注意ヲ致シ漸ク可ナリナコトニ致シテ之ヲ船ニ積ミ、サウシテ太沽ヘ
持ッテ參ッテ上陸ノ場合ニ非常ナ困難ヲ致シタノデゴザイマス、我邦ノ卽チ騙
馬ニ致シマシタ軍隊ノ馬ノ如キハ上陸ヲ致シマスルノニ左程骨モ折レマセヌ
ガ、徵發シタ去勢ヲ施サザル馬ハ非常ニ困難ヲ感ジタノデアリマス、太沽ニ
於テノ上陸ハ多ク「ライター」ト云フ大キナ船ガ來マシテ其船デ上陸致シマス
ルガ便利デゴザイマスルノデ、各國其船ヲ用ヒマシタ、其船ヘ露國ノ馬ハ百
頭ソコヘ一ツノ船ニ積込ミマシテ馬ト馬ト相接シテ一パイニ其船ニ積込ム、
サウシテ人ハソコニ監視ヲスルダケノ人ガアッタラ、ソレデ百頭ノ馬デ一ツ
ノ船デズット持ッテ行クコトガ出來タノデゴザイマス、我邦ノ去勢ヲ施サザル
馬ハ如何デアルカト申シマスト、其船ニ積ミマスルニモ船ノ中デモ間ヲ置イ
テ置カ子バナラヌ、其又馬ヲ牽イテ居ルモノハ一頭ニ一人ハ勿論ノコトデゴ
ザイマスカラ、中ニハ二人モ掛ッテ一頭ノ馬ヲ抑ヘテ居ラ子バナラヌヤウナ
次第、又其掛リマス人間ハ殆ド命賭ケデ上陸致スト云フ次第デアリマス、サ
ウシテ餘所ノ馬ハ大キナ馬ガ百頭積入レラルヽノニ我邦ノハ小サナ徵發馬ニ
シテ四十頭ヨリ積込ムコトガ出來ナイト云フ次第デアリマス、ソレガタメニ
上陸ニ非常ナ困難ナバカリデアリマセヌデ上陸ニ非常ナ時間ヲ取ッタ次第デ
ゴザイマス、漸クソレデ先ヅ困難ヲシテ上陸ヲ致シマシテ、今度ハ鐵道輸送
ト云フコトニナッタ、鐵道輸送ニナリマシテ太沽カラ天津ニ鐵道デ軍隊ヲ送
リマスルニ、我ガ陸隊ノ卽チ去勢ヲ施シテアリマスル馬ハ悉ク乗車ヲ致シテ
送ルノニ何等故障モゴザイマセヌガ、徵發駄馬ニ至リマシテハ又非常ナ困難
ヲ見タノデゴザイマス、卽チ車ニ積込ミマスノニ大勢掛ッテ無理ニ入レマス、
入レマシタ中デ嚙合ヒ〓合ヒ沓デ蹴ッテ遂ニ車ヲ壞スト云フヤウナ次第デア
リマスソレデ大キナ歐羅巴ノ馬ガ十八頭モ這入リマスノニ我邦ノ徵發馬ハ
小サナ馬デゴザイマスガ十二頭入レルノハ精々デアッテ、ソレノミナラズ常
ニ日本ノ馬ハ車ヲ皆壞シテ仕舞フ、ソレガ爲ニ各國軍ノ汽車旅行ニ差支ガ起
ルカラ、日本ノ徵發馬ハ汽車デ送ルノハ止メテ吳レイト云フテ遂ニ斷ラレマ
シタ、已ムコトヲ得マセヌデ徵發馬ハ太沽カラ天津マデ炎天ニ陸行ヲサシタ
ヤウナ不幸ヲ見タノデゴザイマス、其時ニ丁度其處ニ居リマシタ者カラ報〓
ヲ寄越シマシタ、報〓ノ中ノ一部分卽チ一文章ヲ此所デ讀ンデ見マスデゴザ
イマス、七月十三日仁田原中佐報〓、是ハ兵站官ノ參謀長ヲ致シテ居リマ
ス
徵發駄馬鐵道輸送ニ付是迄ワイズ氏ヨリ謝絕セラルヽコト度〓ナリシガ昨
日糧食縱列輸送ニ際シ左ノ理由ヲ以テ爾後駄馬輸送ヲ拒絕セラレタリ
限リアル列車ヲ毀損スルコト多ク爾後大軍輸送ニ差閊ヲ生スルノ恐レアリ
都合セラルヽヲ望ム
斯ウ云フ趣意デ拒絕セラレタノデアリマス、ソレデ是マデハ實ハ此鐵道ハ露
國ガ管理致シテ居リマスルノデゴザイマスルガ、日本軍ヲ送ルニ附イテ非常
ノ好意ヲ受ケテイツ軍隊ヲ送ルト申セバ必ズ汽車ヲ其時刻ニ停車場ヘ持ッテ
來テ、馬何頭、人何人ト云フノデ馬ハ何頭積ムト云フノデ、チヤント割合ヲ
シテ來ルノデアリマスガ、向フノ馬ノヤウニ行キマセヌカラ人ハ積込メマス
ケレドモ馬ハ積込メヌヤウナ次第デアリマシテ、漸ク車ヲ增シテ貰ッテ、積込
ムノニ時間ヲ取リマシテ、遂ニ發車ノ時刻ニ後レテ仕舞フノミナラズ、車ヲ
壞シテ次ノ列車ノ組立ニ差支ヲ生ズルト云フヤウナコトカラ、斯ウ云フコト
ニナリマシタヤウナ次第デゴザイマス、又八月九日附デ山縣大尉カラ寄越シ
タ書信ノ中ニゴザイマス、是一
我國ニ於テ各國ニ對シ少々肩幅狹キハ徵發駄馬ニ候、各國ニ於テモ馬ハ
ノ自慢物タルカノ如ク各自慢致居候、然ルニ我國ノ徵發駄馬ハ其喧騒狂奔
彼等ニハ一ノ見世物トナリ寫眞ニサヘ寫サレタリ又搭車ヲ終ルヤ見物ノ各
國人ニ拍手セラレタリ其無蓋貨車ヨリ飛出ス模樣抔ハ自ラ驚ク計リニ候、
各國ノ馬ハ羊ノ如ク甲板上ニモ馬欄ヲ設ケス頭ヲ竝ヘテ橫ニ張リシ繩ニ繫
キアルノミ、又一貨車ニハアラビヤ的ノ大馬モ十七頭ヲ押込ミ得、然ルニ
日本馬ハ小サキ癖ニ十二頭ガ山〓ナリ
斯ウ云フヤウナ次第デゴザイマス、實ニ困難ヲ極メタ次第デゴザイマス、ソ
レデ漸ク此駄馬ハ天津マデ陸送ヲ致シテ無事ニ天津マデ行キマシタ、併ナガ
ラ天津カラ尙ホ北京ニ進ミマスマデニハ非常ナ困難ヲ感ジタデアリマス、卽
チ各國ノ馬ハ一筋ノ繩デ引張ッテ、ソレデズット繋イデ置クコトガ出來マス、又
水ヲ飮マセニヤルノデモ、ズーット一人ガ牽イテ、サウシテ白河ヘ水ヲ飮マセ
ニ行キマスノニ一人監視人ガ居ッテ數頭水ヲ飮マセルコトガ出來マス、ソレ故
ニ十分ニ馬モ水ヲ得ルコトガ出來、又成ルベク炎天ヲ避ケテ日蔭ニ馬ヲ繫ギ
マシテ馬自ラモ休ムコトガ出來タ、然ルニ我徵發馬ハ繋ギマスノニモ間隔ヲ
取ッテ繫ガ子バ繫グコトガ出來マセヌ、ソレガ爲ニ中〓都合ノ宜イ場所ヲ擇ブ
譯ニ行キマセヌカラ、已ムコトヲ得ズ炎天ニ繫ガナケレバナラヌコトガゴザ
イマス、又水ヲ飮マセニ白河ヘ參ルニ一人シテ一頭ハ勿論ノコトデアリマス
ガ、又中ニハ一頭ニ數人手傳ヲシテ水ヲ飮マセニ行カナケレバナラヌト云フ
ヤウナ次第デゴザイマス、兵卒ハ炎熱ニ行軍ヲ致シ疲勞シ切ッテ居ル所デゴザ
イマス、ソコデソレダケノコトヲ致サナケレバナリマセヌ、ソレガ爲ニ或ハ馬
ヲ牽イテ行クヨリ水ヲ汲ンデ來テ飮マセルト云フヤウナ場合モ往々ゴザイマ
スノハ已ムコトヲ得ヌ次第デアッタラウト思ヒマス、然ルニ汲ンデ來テ飮マセ
マスノハ距離ノアル所ヲ汲ンデ參リマス爲ニ、或ハ十分ニ飮マセ切ラナカッ
タコトガアリハシナイカト思ハレルヤウデゴザイマス、ソレノミナリマセズ
徵發致シマシタ卽チ去勢ヲ施サザル馬ハ·······熬レルト云フコトハ是ハ去勢ヲ
施シマセヌ馬ニ多クアリマス、自ラ熬レ自ラ無益ノ力ヲ費スト云フヤウナ次
第デゴザイマス、ソレ故ニ徵發馬ノ斃レマシタモノガ非常ニ多イノデゴザイ
〒>、是ハ先刻モ御質問ノゴザイマシタ扱モ好クナカッタダラウト斯ウ云フ
コトモゴザイマシタガ、是ハ勢ヒ扱フ者モ不十分ナ點モアッタダラウト考ヘ
マスルノデゴザイマスルガ、併ナガラ抑〓馬其モノガ自ラ力ヲ無益ニ費シ馬
自ラガ非常ニ暴レマスタメニ手入レ其他ノコトモ衞生上モ十分行屆カナカッ
タ點モアリマスルト思ヒマスル、兎ニ角サウ云フ次第デゴザイマシテ馬ガ非
常ニ損ジタ譯デゴザイマス、是等ノ性質ハ去勢ヲ致シマシタナラバ必ズ直リ
得ルト云フコトハ我陸軍デ玆ニ去勢ヲ致シテ居リマスルコトガ明治十九年
以來、多數ノ馬ヲ去勢致シテ軍隊デ使用致シテ居リマスル、去勢ヲ致シマシタ
馬ト去勢ヲ致サヌ馬ト使ッテ見マシタ今日マデノ實驗ニ照シマシテ、去勢ヲ施
シタナラバ必ズ此惡癖ハ取レルト云フコトハ實驗上、陸軍ニ於テハ確信致シ
マスル次第デゴザイマス、又此去勢ヲ致シマシタ馬ガ力ガ弱クナルト云フ御
說モゴザイマシタヤウデアリマスガ、陸軍ノ實驗ニ依リマスト力ガ弱クナッタ
ト云フコトハゴザイマセヌ、育成所ニ於テ是マデ去勢ヲ施シタ馬ト施サナイ
馬ト數年使ヒ比ベタ結果ニ依リマスレバ、決シテ力ハ落チマセヌ、或ハ一時
ニ坂ヲ上ルトカ或ハ競馬ヲスルトカ云フ場合ニ一時ノ力ヲ出シマスルト申シ
マスルカ或ハ勢ニ乘ジテ一瞬間仕事ヲスル場合ニハ全馬ノ方ガ卽チ驅馬ヨリ
ハ其力ガ或ハ强クハナイカト思フ感ジハゴザイマス、併ナガラ數日ノ勞動ニ
能ク堪ヘルト云フ點ニ附キマシテハ確ニ騙馬ハ全馬ノ上ニ出ヅルト云フコト
ハ陸軍ノ實驗ニ於キマシテハ確デゴザイマスル、斯ノ如キ次第デゴザイマス
ルカラ、此去勢法ト云フモノヲ民間ニ施サレタナラバ、軍隊ニ附キマシテハ
斯ノ如キ便利ヲ得マスルシ、民間ニ附キマシテモ決シラ陸軍ノ信ジマスル所
ニ依リマスルト、力ガ劣ル、或ハソレガタメニ他ニ害ヲ及ボスト云フコトハ少
モナクシテ餘程利益ガアルト考ヘルノデゴザイマス、第一、民間ニ於テ一體
ニ日本ノ馬ノ取扱ト云フモノガ動モスルト馬ヲ叱ッテ使フト云フヤウナ有樣
デゴザイマス、是ハ一ツハ不慣ナセイモゴザイマスガ、馬ガ言フコトヲ聞カ
ヌト云フコトモアルト思ヒマス、ソレデ民間ニ於テ一般ニ去勢ヲ施シタナラ
バ、馬ヲ扱フニハ扱ヒヨクナッテ、婦女子ニモ取扱フコトガ出來テ、一般ニ取
扱ガ柔カニナルト云フ結果ニ自然ナルダラウト思ヒマス、兎ニ角軍隊ニ於テ
ハ以上申シマシタヤウナ必要ガアルノデゴザイマスカラ、何卒本案ハ御協賛
ヲ與ヘラルヽコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=26
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027・谷干城
○子爵谷干城君 私ハ村田君ノ說ニ贊成ノ論者デゴザイマセヌガ、一言申シ
テ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=27
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028・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 宜シウゴザイマス
〔子爵谷干城君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=28
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029・谷干城
○子爵谷干城君 諸君、今陸軍政府委員ノ御說モ御聞キニナリマシタ通、又
村田保君ノ御說モ御聞キニナリマシタ通デゴザイマスガ、私ハ此案ニ付イテ
深ク考ヘタ譯デハアリマセヌケレドモ、全體法律デ斯ウ云フコトヲスルハ惡
イト云フコトヲ思ッテ居リマス、今村田君ノ統計等ノ御說ニ依ッテ益〓我考ヘ
テ居ル所ヲ確メル、ソレデ先ヅ陸軍當局者ノ申ス所ニ附イテ承ッテ見マスル
ト、國家ノ經濟、殊ニ農業經濟上ノコトニハ少シモ重キヲ置カレズシテ、總
テ戰爭ト云フコトニノミ重キヲ置カレテ居ル、是ハ當局者トシテハ御尤モナ
コトデアル、然ルニ我〓ガ最モ不滿足ニ感ズルノハ農商務省デアル、農商務
省ト云フモノガ此馬匹ノ改良、卽チ馬ノ性質ノ改良、扱ヒ等ノコトニ附イテ
ハ最モ責任ノアル省ト私ハ思フ、ソレデ田中君カラモ御質問ガアッタヤウデ
アリマスガ、今日本ノ馬ノ扱ヒト云フモノハ實ニ酷薄ナ扱ヒデ、人間デモ惡
ク言フトキニハ畜生メト云フコトヲ云フ、ソレデモウ馬ハ打チ擲キスルモノ
ト云フヤウナ習慣ニナッテ居ル、所ガ私ナドモ歐維巴ヘ行ッテ最モ能ク見タガ、
「オングリー」ノ牧場、アソコラニ行ッテ見ルト馬ヲ打チ擲クドコロデハナイ
實ニ撫デ摩ル程大切ニシテ居ル、平生ヨリシテ子馬ノ內カラ鞭ハ長イ鞭デ威
ス、威スケレドモ決シテ打チハシナイ、子馬ノ內カラ馬ヲ大切ニ育テヽ居ル
カラ馬ノ性質ト云フモノガ、人間ト云フ者ハ人ヲ打チ擲クモノデハナイ我〓
ヲ愛スルモノデアルト云フ習慣ニナッテ居ルト私ハ認メテ來テ居ル、所ガ今日
ノ日本ノ有樣ハ畜生ト云ヘバ擲クベキモノ、擲カニヤア動カヌモノト云フコ
トニ皆ナッテ居ル、コヽラノ所ハ是ハ農商務省ガ最モ注意ヲシ又大分アチラ
ヘモ行ッタ人ガアリマスルカラ、其方ニ附イテ法律デモ出シテ取締ヲセラル
ベキデアル所ガ近來ノ農商務省ト云フモノハ農ニアラズ農ハ皆度外ニ置イ
テ仕舞ッテ、詰リ商工省ニナッテ居ル、商人ノ言フコト工人ノ言フコトハ非常ニ
コタヘルガ農民ノコトハ少モ頓著シナイ、サウ云フヤウナ有樣デ、是ハ畢竟農
商務省ガ責任ヲ盡サヌカラデアル、私ガ此考デ段々統計ガ好キデ統計ヲ考ヘ
テ見マスルガ、先ヅ惡イコトヲスル人間卽チ子供デ泥棒ヲシタリ或ハ暴レタ
リ仕樣ノナイ感化院ヘデモ入レヌナラヌ此人間ヲ調ベテ御覽ナサイ、ドウ云
フ性質ノモノカト云フテ見ルト、多クハ繼母ト云フヤウナ者ノ苛酷ナ目ニ
遭フ、親ガ苛酷ナコトヲスルヤウナモノハ其子ハ必ズ意地ガ出テ惡クナル、人
間ハ萬物ノ靈ト云フガ、其萬物ノ靈デサヘモ時〓打チ擲カレスルト必ズ惡ク
ナル、況ヤ牛馬ノ如キハ打チ擲クモノト日本デハチヤント極メテ居ルカラシ
テ、生レタ時カラシテ、モウハヤ意地ヲ惡クシテ居ル、是ハ畢竟牛馬ノ〓ガ
屆カヌカラノコトデアル、是等ハ卽チ農商務省ノ責任ヲ盡サヌカラト思フ、
ソレデ私ナドモ此軍馬ノ勢ヲ拔クト云フコトハ如何ニモ必要ト考ヘル、必要
トハ考ヘルガ、併ナガラ又ソレト共ニ考ヘテ見マスト、日本程馬バカリデハナ
イ總テノ動物ノ少イ所ハナイ、此位人間ノ多イノニ、世界ノ統計ヲ見テ御覽
ナサレ、實ニ日本ノ牛馬其他ノ少イコトハ驚クベキ程デアル、況シテ先刻村
田君カラ巨細ニ御示シニナッタ通、此馬ノ數ハ次第ニ減ルト云フコトデアル、
サウスレバ是ハドウシタラ宜イカト云フコトハ、農商務省ガ頭ヲ惱マセ子バ
ナラヌコトデアル、所ガソレハ一向措イテ頓著シナイ、ソレデ假令頑狂ナル
馬トシマシテモ、我內地ニ於テ農業ノ助ケヲ致シ、又荷物ヲ運搬スル上ニ於
テハソレ相應ノ國益ヲ爲シテ居ルモノデアルカラ、此數ノ殖エルコトハ最モ
喜ブベキコトデアル、其數ヲ殖ヤスト云フ方ニ附イテハドウカト云フト、去
勢シタナラバ必ズ是ハ去勢ノ馬ガ多クナッテカラニ數ハ減ル勢ヒニナル、ソ
レラノ方法モ講ゼズシテカラニ、俄ニ法律ヲ以テ、唯今度ノ戰爭ノ結果甚ダ
宜クナカッタト云フ其一方面、卽チ馬車馬主義デ、己ノ見タ所ヲ以テカラニ
此全國ノ大經濟ニ關係スルコトヲ直グニ行フト云フコトハ、誠ニ私ハ早計ノ
コトト思フ、自分ナドモ陸軍ニ元ト籍ヲ置イテ居ッタ者デゴザイマスカラ、軍
事ノ方ニハ如何ニモ同情ヲ寄スル譯デアル、併ナガラ其點ハ當局者ト同ジヤ
ウニ感ジテハ居ルケレドモ、又此國家經濟ノ上カラ考ヘテ見ルト云フト、勢ヒ
反對セザルヲ得ヌト云フコトニナル、ソレカラシテ陸軍ノ當局者ニ於テハ頻
ニ其軍事ノ必要上カラ、詰リ言ヘバ十五萬ノ兵ヲ動カシタ場合ニ全國ノ馬ガ
足ラヌト云フ懸念カラ言ハレタノデアラウト思ヒマスガ、今日ノ鹽梅デドウ
デアリマスルカ、先ヅ其馬ノ不足ヨリハ今日國家經濟ノ不足ト云フ大イナル
モノガアル、如何ニ馬ガ充實シタ所ガ金ガ無ケレバ戰爭ハ出來ナイ、是ハ私ガ
二十九年即チ第九議會ノ時ニ論ジテ置イタコトデアリマス、果シテ今日ハ我
〓ガ言フタ通リ、僅ニ一萬ノ兵ヲ出シテサヘ、ヤッサモッサト云フ際デアリマセ
ウ、是ヘ今一方面ノ駄馬ガ暴レタト云フコトデ以テ、全國ノ馬匹所有者ニ向ヒ
テカラニ此强硬ナル法律ヲ施行シヤウト云フハ誠ニ其無理ナ考、又農商務省
ガ是ヘ同意スルト云フコトハ畢竟自己ノ頭ニ農ト云フモノガ無イ、日本ハ兎
モ角モ農國デ是マデ養ッテ來テ居ル其農ト云フモノガ頭ニナイカラ、サウ
云フコトニウッカリ、軍事ト言ハレヽバ一言モナイ、閉口スルヤウニナッテ居
ル、ソレデ總テ今日ノ事ヲ御覽ナサイ、何ヲスルモ軍事ト云フ大キナ聲ノ下
ニ何モカモ嚇シ附ケテ仕舞ッテ居ルガ、靜ニ考ヘテ、サア戰サハドウシテ出
來ルカ、金ト來マス、何ヨリ先キニ金ガ要ル、ソレカラ考ヘテ見ルト、ナカ
ナカサウ容易ニ戰サノ出來ルモノデナイ、戰サハ有リマシテモ、始終アルモ
ノデナイ、今日ノ農業ニ使フ馬ト云フモノハ日々能ク働イテ居ルノデアル、
又假令是ガ極ク宜イコトニシマシテモ、ソレヲ養ッテ居ル所ノ農民ト云フモ
ノガ安心セヌモノヲ無理ニヤルト云フコトハ餘程是ハ人權ニモ關係スル譯デ
アル、唯戰サノタメニ斯クセイト云フコトハ實ニ無理ナコトヽ考ヘル、是ガ果
シテ農商務省ノ方デ能ク利害得失ヲ能ク言ウテ聞カセテ、サウシテ〓育上カ
ラシテ行クト云フノガ、誠ニ適當ナコトデ、少シ年月ハ掛ルケレドモ、例へ
テ言ヘバ我々ガ頭髪ヲ切ッタ、私共ハ明治四年ニ切ッタガ、其時分ニ實ハウル
サカッタガ、扨段々慣レテ見ルト、モウ今是ヘ髷ヲ附ケナケレバナラヌト云
フコトニナルト、甚ダ苦シクテ堪ラヌ、諸君ノ中ニモ長ク髷ヲ存シタ御方モ
アッタラウガ、扨利益ノ上カラ自然ト切ッテ仕舞フヤウニナル、ソレト均シク
之ヲアノ時、法律デヤッタラドウデアッタカ、ソレコソ大變ナ騷ギ、ソレト同
ジク自然的ニ、是モサウナッテ來ルヤウニ私ハシタイト思フカラ、世界ニモ
ナイ此法律ヲ布クト云フコトハ、最モ私ハ耻ヅベキ事柄デ、殊ニ農商務省ハ實
ニ其職ヲ盡サナイモノト私ハ思フ、又陸軍ノ委員ニ於テハ馬ガ暴レテトウシ
テモ睾ヲ拔カナケレバナラヌト云フコトヲ申シマスケレドモ、アノ時分ノコ
トハ馬バカリデナイ、人間ノ不都合ハドウデアリマシタカ、隨分人間ニモ睾
ヲ拔カナケレバナラヌヤウナ人間ガアノ時ハアッタラウト思フ、ドウモ其不
都合ヲ言ヘバ決シテ馬バカリデハナイ、是ハドウゾ村田君ノ說ヲ御贊成下サ
レテ、成ルタケ何ニシロ馬ノ殖エルヤウ、ソレカラ一方ハ田中君ノ言ハレル
ヤウニ農商務省ガ眞ノ農商務省ニナッテ骨ヲ折ッテ〓育ヲ施シ、サウシテ「オン
グリー」ノ育馬場ノ如ク馬ヲ可愛ガッテ段々育テルヤウナ方法ニナッタナラバ、
成ル程ソレハ此サカリノ付イタ場合ニ牝馬ヲ見タラ、ソレハヒドイニ相違ナ
イケレドモ、平常サウ頑狂ニアルト云フハ畢竟打叩キスルガ最モ其原因ニナッ
テ居ルト私ハ思フドウゾ此案ハ否決ニナランコトヲ私ハ國家經濟ノ上カラ
希望シマス、陸軍ノ一方面カラ見ルノラ尤モノヤウデアルケレドモ、ソレハ今
日取ルニ足ラヌコトヽ思ヒマス
〔政府委員和田彥次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=29
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030・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 唯今村田君谷子爵等ノ反對ノ御演說ガゴザイマ
シタノニ、本員ガ此席デ反駁致シマスル意デ述ベルノデハゴザイマセヌ、決
シテ反駁ノ意味デハゴザイマセヌガ、農商務省ガ農務上ニ關シテ意ヲ致シテ
居ラヌカノ如クニ前刻御話ガゴザイマシタデ、其點ヲ御參考マデニ申上ゲタ
イト考ヘマス、此去勢法ニ附キマシテハ實業上專ラ農業上ニ附キマシテ如何
ナル關係ヲ持ツカト申シマスルノニ、最モ利益アル方法ト農商務省ハ信ジテ
居リマス、其事ハ獨リ農商務省ガ信ズルノミナラズ前會ニモ述べマシテゴザ
イマスルガ我邦ニ於キマシテ馬ノ產地ト呼バレテ居リマスル靑森縣下ヲ初
トシマシテ福島巌手縣等ノ地方ハ我邦ノ馬ノ產地トシテハ重大ナル關係アル
土地デゴザイマス、其土地ノ農民ガ進ンデ是非此法律ヲ出シテ吳レタイ、十
分組合等ニ於テモ是ガ奬勵ヲ圖リ之ヲ習慣トシテ漸次ニ去勢スルヤウニ至ラ
シメタイト云フ考ヲ以テ、種々ノ協議ヲナシ屢〓集會協定ヲスルケレドモ、實
際ニ行ヒ難イ、故ニドウカ之ヲ法律ヲ制定シテ法律ノ力ニ依ッテ其實ヲ擧ゲ
ルヤウニ致シテ貰ヒタイ、此事ガ出來ナケレバ一方ニ於テ種馬ノ檢査若クハ
種馬ヲ政府ヨリシテカラニ配布シテ改良ヲ圖ラルヽトモ其實ヲ擧グルコト
ガ遲キノミナラズ、一方ニ於テハソレヲ害スルノ徵候ガアルノデゴザイマス
カラ、是非此法律ヲ速ニ發布シテ吳レタイト云フノガ當業者農家自身ガ建
議シテ居リマス
〔子爵谷干城君「少數々々」ト呼フ〕
ソレ故ニ是等ニ附キマシテ實際實業ノ經濟ヲ圖ラヌトカ農家ノ事ヲ思ハヌト
云フコトハナイト云フコトヲ御諒知ヲ願ヒタイ、而シテ此牡馬ノ馬匹ノ去勢
ヲ致シマスレバ或ハ馬匹ノ數ガ減ズルカノ如ク御述ベニナッタヤウニ聽取リ
マシテゴザイマス、御承知ノ如ク我邦ノ馬匹ノ增殖モ必要デゴザイマスル
デ、農商務省モ特ニ此事ニハ注意致シテ增殖ノ道ヲ圖ッテ居リマス、成ル程明
治十二三年ノ交ト今日ト比較シテ見レバ減ジテ居リマシテ、又人口ノ繁殖ト
對シマシタナラバ、或ハ人口ノ方ハ增殖シテ居ッテ一方ノ馬匹ノ方ハ減ジテ
居ルカモ知レマセヌ、併シ此五箇年間ノ平均ヲ申セバ明治二十八年ニ於キマ
シテノ馬ノ產出致シマシタル高ハ九萬零五百五十三頭デゴザイマス、二十九
年ニ於キマシテハ九萬七千七百八十八頭デゴザイマス、三十年ニ於キマシテ
ハ九萬七千二百五十二頭デゴザイマス、三十一年ニ於キマシテハ十萬一千七
百五十六頭デゴザイマス、三十二年ニ於キマシテハ十萬三千八百六十八頭デ
ゴザイマス、斯ノ如ク年々產出致シマスル上ニ於キマシテ順次順ヲ逐ウテ增
進シツヽアルノデゴザリマス、而シテ此去勢法ヲ施行致シマスガタメニ或ハ
數ヲ減ズル種牡馬ヲ減ズルガ爲ニ產出力ヲ害スルガ如キ御話ノヤウニ聽取リ
マシタガ、決シテ左樣ナコトハ此法律ニ依ッテ起リマセヌト云フモノハ委員會
デモ述ベマシテゴザリマスガ、我邦ノ產出致シマスル所ノ牝馬所謂繁殖ニ適
ヒマスル所ノ牝馬ノ總數ヲ算定致シマシテ、ソンニ對スルダケノ牡馬ハ無論
殘シマスルノデゴザイマス、ソレデ現在ノ實況カラ申シマスレバ我邦ノ牝馬
ノ產出ニ要スル所ノモノハ凡ソ三十萬頭デアリマス、此三十萬頭ニ對シマシ
テ幾ラノ牡馬ヲ要シマスルカト申シマスルト一萬頭ノ牝馬ニ一萬頭ノ牡馬
ヲ要シマスルニ當ッテ、此去勢法デハ如何ナル方法ヲ執ルカト云フト、明ケテ
三歲ノ時ニ於テ年々凡ソ三千頭ツヽ存ジマスル、一萬頭ノ必要ノモノニ候補
トシテ三千頭ヅヽ埋メテ參リマスルト十年經テバ三万頭アル譯デアリマス、
最初ノ年ノ一萬頭ハ如何スルカト云フト、此法律ヲ施行スル初年ニ於テハ全
國ノ牡馬タルモノハ皆存シテ居ルノデアリマス、二十七年ノ法律ヲ實施致シ
マスル期ニ至ッテ初メテ明ケ三歲ノモノニ限ッテ三千頭ニ限ッテ殘シテ置イテ
他ヲ去勢スルノデアリマスカラ、今日現在ノ儘ニナッテ居ルト同樣ナノデアリ
マス、故ニ其牡馬ト致シマシテノ不足ヲ感ジナイノミナラズ當リ前ヨリハ餘
分ヲ見テ存シテ置クノデゴザイマスカラ、決シテ蕃殖上ニ之ガ害ヲ來スヤウ
ナ憂ハ毫釐モゴザイマセヌ、又懷柔致シマスル上カラ申シマシテモ現在種牡
馬ノ檢査法ニ依ッテ實行シ來ッテ居リマスケレドモ、今民間ノ畜牛畜馬ノ有樣
ヲ申シマスレバ、實際牧草ヲ植ヱテ如何ニシテ居ルトカ、或ハ馬ニ對シテダケ
ノ牧場ヲ悉ク備ヘテ居ルノデアリマセヌ、ソレ故ニ僻地ニ至リマスレバ共同
ノ秣場モゴザイマスル、入會ノ牧場モゴザリマス、ソコニ於テ放牧致シマスル
ガ故ニ往々所謂野合致シマスル、ソレ故ニ十分ニ檢査ヲ付ケテ或ハ宮內省ノ
馬或ハ紳士方ノ御飼ニナッテ居ル馬ノ如キ厩ニ繫イデ十分ナル手ヲ盡スコト
ハ出來兼子マスル、自然放牧ハ入會ニナッテ居リマスル其中ニハ其牡馬ヤ牝馬
ガ入會ッテ放牧······野合致シマスル弊ハ自然免レマセヌ、此弊ノ生ジマスル結
果ハ如何デアルカト申シマスレバ、合格ノ種牡馬ノミト野合致シマスレバ宜
シウゴザイ。マスルガ、或ハ月盲病ノ如キ忌ムベキ馬ノ遺傳性ヲ受ケマシテ生
レナガラニシテ癈疾同樣ナ馬ヲ生ジマスルコトガ往々アルノデゴザリマス、
故ニ馬ノ改良ヲ致シマスル上カラ申シマシテモ此去勢ハ必要ナノデアリマ
ス、併シ殖シマスル上カラ申シマシテモ善良ナルモノヲ選ンデサウシテ產出
スルノデゴザリマスカラ、最モ此去勢ハ數ヲ殖ス上ニ於テ善良ナ强健ノ馬ヲ
產出スルノ結果ヲ見ルノデゴザイマスカラ、其點カラ申シマシテモ最モ必要
ダト考ヘマス、農用工用等ニ運搬若クハ農業ニ之ヲ使役致シマスルニ當ッテ
モ、去勢致シタモノハ柔順ニ致シテ能ク久シキニ堪ヘマスル、ソレ故ニ或ハ馬
耕ヲ致ストカ或ハ運搬ヲナシマスル際ニハ誠ニ扱ヒ好ク致シテ物ヲ毀損致ス
ノ憂ヒアリマセヌデ、容易ニ之ヲ馭シ得ラレマスカラ、實益上カラ申シマシ
テモ最モ改良ノ重モナル點ニ此結果ガナリマスルノデゴザイマス、此點ハ反
駁致シマスルノデハ決シテゴザイマセヌ、諸君ノ御參考マデニ農商務省ノ見
テ居リマスル所ヲチヨット一言致シテ置キマス
〔子爵谷干城君「懷柔ハ〓育上デヤルガ宜シイ」ト述フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=30
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031・村田保
○村田保君 今ノ奧羽聯合會アタリデハ希望スルト云フコトデゴザイマセウ
ガ、ソレナラバナゼ北海道デ以テヤッテ居ッタモノヲ今日止メテ居リマセウ
カ、北海道デハ皆嫌ッテ居リマスガ、ドウ云フモノデゴサイマセウカ、ソレカ
ラ馬ノ數ハ段々殖ヱルト云フコトデゴザイマスガ、三十一年三十二年度ノ統
計ヲ見マスルニ、三十一年ト三十二年ノ一年ノ間デモ長野縣アタリデハ千五
十頭アマリ減ッテ居ル、ソレカラ福島縣アタリデハ九萬頭ノ中デ八千七百九
十二頭ト云フモノガ減ジテ居リマス、ソンナニ著シク減ジテ居リマスガド
ウ云フ原因デ減ズルノデゴザイマスカ、ソレモ一ツ伺ヒタイ、ソレカラ去勢
法ガ出マシタナラバ先程四十万ト云フコトヲ申シマシタガ、ドノ位ノモノヲ
此法律ノ結果デ要求サレマスカ、是非トモ費用モ要求セラレマセウガ、少ク
モ五十万グラヰノ金ハ要求サレルト思ヒマスガ、其邊ハドノ位ニナリマス
カ、ソレモ併セテ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=31
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032・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 北海道ニ於テ去勢ヲ近年マデ行ッテ居ッタノニ
三十一年カラカ二年カラカ之ヲ中止シタ、ソレハ何故デアルカト云フ御質問
デアリマズカ、此北海道ノ牧場ノコトハ玆ニ諳ジテ居リマセヌカラ其主意ヲ
明ニ申スコトハ出來マセヌガ、察シマスルニ北海道ノ牧場デ精撰シタル種馬
ノ如キハ內地ノ一般ノ牡馬ニ比較致シマスレバ優等ナル馬ト私ハ察シマス、
其優等ナル馬デゴザイマスレバ、內地ノ劣等ナル、比較的劣等ナル所ニ向ッテ
牡馬トシテ賣ルニモ便利デアルガ故ニ存スルト云フ意味デハナイカト想像致
シマス、又第二ハ長野或ハ福島デゴザイマスガ縣ニ依ッテ減ズルト云フコト
ハ如何ニモソレハ事實デゴザイマセウ、唯今縣分ケノ統計ヲ持ッテ居リマセ
ヌケレドモ、私ノ見マスル所デ、全國ニ跨リマシテ、種馬ヲ產出致シマシタ
數ヲ前述ベマシタノデゴザイマス、ソレカラ費用ノ點ハコヽデ確實ナコトハ
申上兼子マスガ大凡ノ點ニ至リマシテハ唯今村田サンカラ御述ベニナリマ
シタ所ト餘計違ヒマセヌト思ヒマス
〔子爵谷干城君「ソレデハ五十万圓デスカ」ト述フ〕
四十万以上、五十万クラヰ要リマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=32
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033・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 大抵······
〔子爵三島彌太郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=33
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034・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 三島子爵ハ何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=34
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035・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 私ハ特別委員ノ一人デゴザイマシタカラ、一言贊成ノ
意ヲ述ベタイト思ヒマスガ、宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=35
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036・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=36
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037・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 ホンノ一言コヽデ述ベマス、此去勢法案ニ贊成致シマ
シタ主意ハ、私ハ是ハ法案トシテ出スコトハ矢張リ好マナイ一人デハゴザイ
マスケレドモ、今日之ガ法案トシテ出マセヌデゴザイマシタナラバ到底此目
的ヲバ近イ時期ニ達スルコトハ出來ナイト信ジタノデゴザイマス、外國ニ例
ノ無イト云フ御說モ出マシテゴザイマスガ、如何ニモ外國ニハ例ハナイノデ
ゴザイマスカ、外國デハ既ニ其必要ヲ認メテ人民皆進ンデ之ヲ致スモノデゴ
ザイマスカラ、從ッテ餘リ去勢シ過ギテ確カ英國ダッタト思ヒマスガ、去勢ヲ
禁ズル、或ハ制限ヲ附ケルト云フヤウナ法律ガ出タト思ヒマス、其位人民一
般ニ此去勢ノ利益ト云フモノヲ認メテ居ルコトデゴザイマスカラ、今之ヲ急
ニスル必要ハ軍事ノミデナク、先程政府委員モ述ベラレタ通、遺傳病ガ大變
流行シテ盛ニナッテ來ル、卽チ月盲病ノ如キモノハ九州ナドデハ餘程ヒドク
ナッテ來タヤウナ譯デアリマス、是ハ牝馬カラモ無論起リマスガ、牝馬カラ
ハ一年ニ一頭播ガル位デアルガ、牡馬カラハ一年ニ數十頭傳播シテ行クノデ
ゴザイマス、是ハ去勢ニ依ッテ大イニ防グコトガ出來ル、又去勢ノ利益ニ附
キマシテハ既ニ御述ベニナリマシタガ、尙ホ要點ダケヲ申シマスレバ、體重
ガ多ク增加スル、是ハ馬バカリデナク、牛豚等モ矢張リ同ジコトヽ承知シテ
居リマス、ソレカラ柔順ニナルコトハ先刻御述ベニナッタ通、又疲勞ニ堪ヘル
點ニ至リマスト、去勢シナイ馬ハ一時ニ其勢力ヲ使用シ盡シテ直グ疲レルト
云フ憂ガアリマスガ、去勢シタ方ハ長ク堪ヘル、統計ニ據リマスト確カ百日
ノ中ニ日本ノ統計ニ據リマシテ······是ハ或ル數デヤッタノデアリマスガ、百日
ノ中ニ去勢シナイ馬ハ六十日位シカ堪ヘナイノニ去勢シタモノハ七十日位堪
ヘルト云フ割合ニナッテ居ルト聞イテ居リマス、ソレカラ又勞役ニ服シタ後
ニ體量ヲ減ズル點ニ參リマシテ去勢シタ馬ト去勢シナイ馬トハ、シタ方ノ馬
ガ減ジ方ガ少イ、ソレカラ又病氣ノ點ニ參リマスト去勢シタ馬ト、シナイ馬
トハ非常ニ相違ガアルヤウニ存ジマス、統計ノ上デハ北〓事件ナドノ例ヲ以
テ見マスルト、數千頭ノ上デ統計ヲ取リマシタ所ガ丁度去勢シタ馬ト、去勢
シナイ馬トハ一ト十クラヰノ割合ニナッテ居ル、卽チ去勢シナイ方ノ馬ノ方
ガ十ホド病氣ガ多イノデゴザイマス、ソレカラ病氣ナドニ罹ッテ到底仕方ガ
ナイ、撲殺スルトカ又ハ怪我ヲシテ棄テルトカ云フコトニシテ數ヲ減ズル方
カラ云フト、割合ガモット多イ、去勢シナイ馬ハ四十匹クラヰノ所ニ去勢シ
タ馬ノ數ヲ減ズルコトハ漸ク一匹、卽チ四十ト一ト位ノ割合ニナッテ居ルト存
ジマス、左樣ナ利益ガゴザイマシテ農事上ニ於テモ此去勢法ヲ必要ト認メマ
シタ、一言贊成ノ意味ヲ申述ベマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=37
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038・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) モウ大抵議論モ盡キタヤウテゴザイマス、採決ヲ
シマス、本案ヲ二讀會ニ移スベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=38
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039・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 過半數ト認メマス、本案ハ二讀會ニ移シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=39
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040・大原重朝
○伯爵大原重朝君 直ニ第三讀會ヲ開カレンコトヲ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=40
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041・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 三讀會ハ今少シ間ガアリマス、二讀會ニ移ルノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=41
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042・村田保
○村田保君 是ハ制規ニ據ラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=42
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043・大原重朝
○伯爵大原重朝君 私ハ間違ヒマシタ、二讀會ヲ開カレンコトヲ······
〔「賛成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=43
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044・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 直ニ二讀會ヲ開クト云フニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=44
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045・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ二讀會ニ移スコトニシマシテ、暫時休憩
ヲシマス······ソレカラチヨット御待チ下サイ、先刻來御委託ニナリマシタ特
別委員ノ氏名ヲ御報道シマス
〔太田書記官長朗讀〕
畜牛結核病豫防法案特別委員
公爵二條基弘君子爵久世通章君子爵內藤政共君
子爵小笠原壽長君村田保君高木兼寬君
南郷茂光君千坂高雅君山田卓介君
臺灣事業公債法中改正法律案外一件特別委員
伯爵坊城俊章君子爵井伊直安君子爵新莊直陳君
男爵尾崎三良君男爵小早川四郞君富田鐵之助君
磯邊包義君下條正雄君五十嵐甚藏君
明治二十九年法律第四號中改正法律案特別委員
伯爵德川達孝君三好退藏君名村泰藏君
村田保君男爵金子有卿君富井政章君
下條正雄君穗積八束君最上廣胖君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=45
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046・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ暫時休憩ヲシマス
午前十一時五十九分休憩
午後一時九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=46
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047・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 議事ニ移リマスル前ニチヨット御協議シマスガ、會
期モ段々切迫シマシテ議案ガ輻輳シテ居リマスカラ制規ノ日數ヲ經ズシテ日
程ニ上ボスト云フコトニ致シタイト思ヒマスガ、御異議ガ無クバ····
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=47
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048・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ午前ニ引續イテ會議ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=48
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049・谷干城
○子爵谷干城君 チヨット一言···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=49
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050・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 谷子爵ハ何デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=50
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051・谷干城
○子爵谷干城君 私共ハ今日豫算委員會ヲ開キタイト思ヒマスガ、議場ノ御
都合デ許サレンコトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=51
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052・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 豫算委員總會デアリマスト迚モ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=52
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053・谷干城
○子爵谷干城君 總會デアリマス、主査ノ報告會ヲシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=53
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054・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 定足數ニ闕ケルヤウテアリマスカラ暫ク御控
ヲ······馬匹去勢法案、第二讀會、第一條、朗讀ハ省略致シマス······第一條ハ
御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=54
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055・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 次ハ第二條、第二條ハ委員會ノ修正ガアリマ
ス······委員會ノ修正ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=55
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056・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 然ラバ第三條ヨリ終リマデ······御異議ガナクバ原
案ニ決シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=56
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057・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 二讀會ハ是デ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=57
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058・堤功長
○子爵堤功長君 三讀會ヲ直チニ開カレンコトヲ···
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=58
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059・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御異議ガナクバ直チニ三讀會ヲ開キマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=59
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060・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 原案ニ決シテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=60
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061・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ確定ニナリマシタ、水害地方田畑地租免
除ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、特別委員長報告発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=61
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062・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 質問ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=62
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063・近衞篤麿
○議長(公爵近衛篤麿君) チヨット御待チ下サイ、今委員長ガ見エマセヌカ
ラ······委員長モ副委員長モ退席中デアリマスガ、次ノ議案ト繰替ハテ御異議
ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=63
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064・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ鍬下年期、新開免租年期、地價据置年期
ノ延長ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、特別委員長
報〓
〔左ノ報〓文及修正案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
鍬下年期、新開免租年期、地價据置年期ノ延長ニ關スル法律案
右別册ノ通リ修正セリ依テ及報告候也
明治三十四年三月十六日
右特別委員長
侯爵細川護成
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
地租條例ニ依リ鍬下年期、新開免租年期又ハ地價据置年期ノ許可ヲ得タル
土地ニシテ年期明ニ至リ事業成功又ハ地味成熟ニ至ラサルモノニ對シテハ
更ニ年期ノ延長ヲ許可スルニ·ヲ得但シ開墾鍬下年期及地價据置年期ノ土
地ニ付テハ通シテ五十年開拓鍬下年期ノ土地ニ付テハ通シテ三十年新開免
租年期ノ土地ニ付テハ通シテ七十年ヲ超ユルコトヲ得ス
附則
本法ハ本法施行前既ニ年期明トナリタル土地ニシテ未タ地價ノ設定又ハ修
正ナキモノニモ之ヲ適用ス
地租條例第十八條ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
〔武井守正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=64
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065・武井守正
○武井守正君 本日ハ委員長ガ缺席ニラレマシタカラ私ガ代リマシテ委員會
ノ經過、結果ヲ御報告申シマス、特別委員會ハ一昨十六日ニ開カレマシテ質
問モ盡シ、審議モ終リマシタノデゴザイマスルガ、衆議院ノ修正、卽チ原案
ヲ總テ相當ナリト認メマシタノデゴザイマス、唯其中ニ「又ハ地味成熟」ト
申スル六字ヲ挿ミマシテ修正ヲ加ヘマシタノデゴザイマスルガ、是ハ地租條
例ニ於キマシテハ「事業成功」ト云フ、此「成功」ノ文字ノ中ニ地味成熟ト云フ
意味ヲ挿ンデ、ソレマデ見マシテ居リマス、餘程ムヅカシイ譯デ、成功ト云
フ文字ハ單ニ唯形ニノミ就イテ云フ字ノ如クデアリマスルケレドモ、其實ハ
地味成熟ト云フ意味ヲ含マレテ見テ居ル、其含マレテ見テ居ルノガ多クノ場
合ニ於テ含マレテ見テ居ルノデゴザリマス、ソレデ內務省農商務省ニ於キマ
シテハ官有原野等ノ開墾ヲ願出マスル節ニ、之ニ許可ヲ與ヘマスルニハ成功
ノ後土地相當代價ヲ以テ拂下ゲルト云フ指令ヲ與ヘテ居リマス、其成功ト申
スル場合ハ總テ形ダケヲ申シテ居リマス、地租條例ニ於テ大藏省ノ成功ト云
フコトヲ見マスルコトハ地味成熟マデヲ多クノ場合ヲ含ンデ見ナケレバナラ
ヌト云フ譯デ、同ジ成功ノ文字デアリナガラ、內務農商務デハ形ノミニ就イ
テ見マスル、大藏省デハ地味成熟ノ意味ヲ含マレテ見ニヤナラヌト申スルコ
トハ、頗ル都合ノ惡イ話デアル、故ニ今條例ノ一部ヲ單行法ヲ以テ改正ヲシマ
スルニ當リマシテハ、之ヲ明ニシテ置クコトハ必要デアルト見マシテ「事業
成功又ハ地味成熟」ト申スル字ヲ此處へ成文デ入レマシテ人ノ違ヒノナイヤ
ウニ判明ニ致シマシタ譯デゴザイマス、其他ハ總テ原案ノ通少モ取捨ヲ致シ
マセナンダノデゴザイマス、ドウゾ滿場御賛成デ修正案ヲ可決セラレンコト
ヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=65
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066・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 本案ハ二讀會ニ移スベシトシテ御異議ハゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=66
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067・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 然ラバ二讀會ニ移スベキモノト決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=67
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068・堤功長
○子爵堤功長君 直ニ二讀會ヲ開カレンコトヲ··
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=68
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069・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御異議ナクバ直ニ二讀會ニ移リマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=69
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070・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 委員會ノ修正ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=70
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071・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ其通決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=71
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072・錦織教久
○子爵錦織〓久君 直ニ三讀會ヲ開カレンコトヲ·····
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=72
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073・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御異議ガナクバ三讀會ニ移リマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=73
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074・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 原案可決ト見テ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=74
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075・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 實業〓育費國庫補助法中改正法律案、政府提出、
第一讀會ノ續、特別委員長報〓
〔左ノ報〓文ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
實業〓育費國庫補助法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
明治三十四年三月十六日
右特別委員長
子爵長岡護美
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
〔子爵長岡護美君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=75
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076・長岡護美
○子爵長岡護美君 此法案ハ私共特別委員ノ選ニ當リマシテ十分ニ調査致シ
タノデアリマス、委員會ハ四度開キマシテ、實ハ此案ハ早ク決議ヲ致シテ議
場ニ提出スル筈デアリマシタガ、併シ豫算ノ調査モアリマスシ、又增稅案ノ
結果モアラウト存ジテ、暫ク議場ニ御報告ヲ見合セルガ宜カラウト云フノ
デ、特ニ暫ク延引ヲ致シタ次第デアリマス、此案ハ誠ニ簡單ナ案デゴザイマ
スカラ、政府ヨリ提出サレタ所ノ理由ハ喋々本員ガ辯ズルニ及プマイト考ヘ
ルノデアリマス、デ抑〓明治二十七年度ニ此實業〓育奬勵ト云フコトノ必要
ガアルト云フコトデ特ニ此法ヲ設ケラレテ、初十五万圓ノ支出デアリマシタ
ケレドモ、併シ段々ト結果ガ好クシテ全國ニ新設ノ學校モ增スヤウデアリマ
スノデ、又三十一年ニ至ッテ十五万圓增サレテ今日ハ二十五万圓ト云フコト
ニナッテ居ルノデアリマス、初ハ學校ノ數モ五十バカリ、初此補助ヲ與ヘラ
レタトキニハアッタノデアリマスガ、段々ト多クナリマシテ今日ニ至ッテハ丁
度二百九十二程ノ校數ニナッテ居ルノデアリマス、ソレハ農學校ナリ工業學
校ナリ商業學校ナリ又ハ實業補習學校ト云フヤウナ學校ヲ合セマシテ二百九
十二アルノデアッテ其中ニ補助シテアル所ノモノハ二百七十七モアルト云フ
コトニナッテ居リマス、段々ト各地方ニモ實業〓育ガ今日ハ必要ト云フコト
ヲ感ズル所カラシテ、又今日ニ至ッテハ幾分カ補助ヲシナケレバナラヌト云
フ必要モ起ッテ參ッタノデアリマス、此金額ヲ今日定メテアルト却ッテ實際ノ
情況ニ應ジテ補助ヲ與ヘルト云フコトモ不便デアリマスカラ、今度ハ此金額
ハ年々議會ノ協賛ヲ經テ、サウシテ適宜ニ補助ヲ與ヘヤウト云フ斯ウ云フコ
トデ此案ヲ提出サレタ譯デアルノデアリマス、本員等ハドウモ此今度ノ豫算
ノ追加ヲ承ッテ見ルト僅カ二万圓ノコトデアルカラ今日此實業學校ノ奬勵ト
云フコトハ非常ニ必要ナコトデアリマスカラ、成ルタケ多ク支出ニナリタイ
ト云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ文部大臣ノ前途ノ方針ハドウ
デアラウカ、斯ノ如キ僅ナコトデ今日止メテ置イテ別ニ經畫ハナイノデアル
カ、能ク一ツ文部大臣ノ意向モ確メヤウト云フノデ、文部大臣ノ臨席モ數囘請
ヒマシテ、段々大臣ノ意見ヲ聞イテ見マスト、是ハ今日ノ時勢ニ應ジテ相當ノ
補助ヲスルノデアル、併ナガラ經畫上ノコトハ十分ニ注意ヲ與ヘテ實業〓育
ノ奬勵ト云フコトハ實ニ今日國家經濟上必要デアルカラ、十分ニ調査ヲシテ
又前途ノ方針ハ屹度立テルノデアルト斯ウ云フコトデアリマシタ、其事モ一
ツ確メマシテ又此或ル地方デハ隨分此奬勵ノ弊モアリマシテ、此小學校ノ補
助ト云フコトハ別ニ此國庫ニ仰グト云フ譯ニハ參ラヌノデアリマスカラ、此
實業〓育ノ名ヲ藉ッテサウシテ此補助費ヲ請求スルト云フヤウナ弊モアルヤ
ウナコトモ聞エテ居リマシテ、是等ノ弊ハ如何ニ御注意ニナルカト云フコト
モ本員等ハ十分ニ質問ヲ致シタノデアリマス、然ル所ガ當局者ノ答ハ其事ニ
附イテハ總テ視學官ニ十分注意ヲ與ヘテ此先不都合ノナイヤウニ處置ヲスル
積デアルト斯ウ云フ話デアリマシタ、サウスレバ少シ不都合ナ所モアルカモ
知レマセヌガ、併ナガラ全體カラ申シテ見ルト此ノ實業〓育ノ發達ト云フコ
トハ誠ニ本員等ノ希望スル所デアリマスガ、其僅カ一二ノ弊ノアルタメニ此
全國ノ〓育ノ發達スベキモノヲ補助セヌト云フコトハ是ハ誠ニ遺憾ナ次第デ
アルノデアリマスカラシテ、先ヅ今日ノ所ハ此案ヲ贊成シテ可決シタイト云
フコトデ、委員會ハ結了イタシマシタ次第デアリマスル、デサウ云フヤウナ都
合デアリマスカラ、先ヅ今日ハ今日相當ノ所デ此補助ヲ與ヘテ是マデノ流レ
掛リ又今日新設ニナル必要ナ所ニ就イテ補助ヲ與ヘルト斯ウ云フコトデ宜カ
ラウト考ヘルノデアリマス、又委員中ニハドウモ此金額ト云フモノハ法律デ
定メテ置カネバナラヌカラ、之ヲ今少シ確メテ、サウシテ斯ウ云フ、バット定ラ
ヌヤウナコトニシテ年々議會ノ協贊ヲ經ルモ······併ナガラ此法律デ額ヲ定メ
テ置カヌト云フコトハ不都合デアラウト云フ說モアリマシテ、ソレカラ又討
議ヲ致シテ見タノデアリマスケレドモ、後日大方針ガ定ッテ屹度此十分ニ實業
〓育ノコトヲ奬勵スルト云フ目途ノ立ッタ以上ハ別段、先ヅ今日ノ所デハ强テ
此上增額スル必要ガ無イト思ヒマスカラ、ソレ故ニ委員會ノ多數ハ先ヅ此案
ハ此儘デ今日ノ所ハ通過シタ方ガ宜カラウト斯ウ云フ考デ今日議場ニ提出ヲ
致シタノデアリマス、玆ニ一ツ諸君ニ申上ゲテ置カネバナラヌノハ、不思議ニ
モ此案ガマダ此委員會ノ討議中デアリマシテ可否決モ定マラヌ間ニ衆議院ノ
方ニ此豫算案ノ追加ガ出マシテ、其中ニ此二万圓ト云フコトガ揭ゲテ提出ニ
ナッタノデアリマス、是ハ甚ダ不都合ナコトヽ考ヘマシタカラ文部大臣ニ質問
ヲ致シテ見マシタ所ガ、ソレハ全ク他ノ豫算ノ條項ト共ニ一括シテアッタ所
カラシテ偶然衆議院ノ方ニ出タ譯デアルノデ其事ハ謝スルト云フコトデアリ
マシタカラ、不都合トハ考ヘマシタガ、サウ云フ御答辯ニナリマシタカラ、
先ヅ本員等ハ其儘ニ致シテ置イタ譯デアリマス、如何ニモ本院ノ決議ノ前ニ
衆議院ニサウ云フ追加豫算ヲ出サレタト云フコトハ本員等ハ少シ本院ノ議
權ヲ蔑如シタヤウニ考ヘマス、併シ文部大臣カラ穩當ナル答辯ガアリマシタ
カラ、委員會ノ方テハ先ヅ其儘ニ致シタ次第デゴザイマシテ、其事モ併テチ
ヨット申上ゲタイト思ヒマス、尙ホ又詳細ナ御質問ガアリマスレバ當局ノ御方
モアリマスカラ本員ハ先ヅ是ダケノ御報告ヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=76
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077・村田保
○村田保君 本員ハ文部大臣ニ質問ヲ致シタイコトガアリマスガ、文部大臣
ハ御出席ニナッテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=77
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078・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 文部大臣ハ出席ニナッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=78
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079・村田保
○村田保君 議院內ニ居ラレルコトデアリマスナラバ、ドウゾ出席ヲ請ヒタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=79
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080・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 要求致シマス
〔國務大臣松田正久君出席ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=80
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081・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 文部大臣ガ出席ニナリマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=81
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082・村田保
○村田保君 本員ハ文部大臣ニ質問ヲ致シタイ、此實業〓育費國庫補助ト申
シマスモノハ是マデハ唯今委員長ノ述べラレタ通十五万圓ガ現今デハ二十五
万圓ト云フ補助ニナッテ居リマス、然ル所此度ノ政府提出案デ見マスルト、之
ヲ豫算デ年々出シタイト斯ウ云フコトデ、所ガ此實業學校或ハ補習學校ト申
シマスモノガ今日殖エマスコトハ唯今委員長モ述ベラレマシタガ、現今デハ
二百七十七モアル、併シ二十七年ノ頃ハ僅ニ十グラヰシカナカタッノガ今日ハ
二百七十七モアル樣ニ續々殖エテ參リマス、ソレ故ニ大方政府デハ一一十五万
圓デハ足リヌカラ殖エルニ從ッテ年々豫算ガ出サレルヤウナ御考デアリマス、
サウ致シマスト此補習學校ナドヽ申スモノハ地方長官ノ認可パカリデ出來ル
モノデ、今日殆ドモウ實業補習學校ト云フモノハ流行物ノヤウニナッテ、
縣デ拵ヘレバ他ノ縣デモ拵ヘル、一郡デ拵ヘレバ他ノ郡デモ拵ヘナケレバナ
ラヌト云フヤウナ、殆ド流行物ニナッテ居リマスカラ、斯ノ如ク續々殖エテ來
ルノデアリマスガ是ハ二十五万圓ノ制限ガゴザイマスルカラ、今日ハ先ヅ此
制限內デ防グコトガ出來マセウカ、幾ラモ是カラ拵ヘル、拵ヘルニ從ッテ豫算
ヲ組ンデ年々增加サレルト云フコトニナリマスレバ限モナイコトニナラウト
存ジマスガ、文部大臣ニハ其制限ハドノ位マデヤルト云フ豫メ制限デモゴザ
イマスカ、ソレヲ望ミマスレバ全國デ幾ラ望ンデ來テモ殖ヤシテヤル御考デ
ゴザイマセウカ、豫メドノ位マデ制限ヲ附ケテ、金額ヲドノ位マデニシヤウ
ト云フコトガ豫メ定ッテ居リマスカ、ソレヲ一ツ伺ヒタイ、ソレカラ二十七年
ヨリ今日マデハ殆ド七箇年モ經チマスカラ卒業生モ大分出來テ居リマセウ、
此補習學校ナドハ三年以內二箇年デアルカラ何レ卒業生ト申シマスモノハ十
分三四千ノ人ガ出來テ居ルニ違ヒナイ、其卒業シタ者ハ今日ドウ云フ風ニ
ナッテ居リマスカ、大〓卒業シタ者ハ或ハ實業上ノコトニドノ位就イテ居ル
カ或ハ何モシナイ者ガアルカ、或ハソレガ中學校、高等ノ學校、實業學校ヘ
デモ這入ッテ居ル者ガアルカ、其成績ガ御分リニナッテ居リマセウカラ、ソレ
モ一ツ伺ヒタイ、餘程是ハ此議案ニ關係ヲ持チマスルコトデアリマスカラ、明
瞭ニドウゾ御答ヲ願ヒタイ
〔國務大臣松田正久君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=82
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083・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 今村田君ノ御尋ニ御答ヲ致シマスルガ、第一ニ實
業補習學校ハ府縣知事デ認可ガ出來ル、ソレ故ニ每年續々起ルノデアルガ、
其續々起ル補習學校ニ對シテ補助ヲ與ヘルト云フコトニナッタナラバ限アル
マイ、斯ウ云フマア御主意ト承リマスガ當局者ノ考デハ成ル程實業補習學校
ハ續々增加シマスル、併ナガラ此學校ト云フモノハ其成績ヲ見、其性質ヲ明ニ
シサウシテ是ハ將來ニ於テ十分成績ヲ顯スモノデアルト云フ見込ガ立タヌ
ケレバ與ヘルノ積デハアリマセヌ、又今日補助ヲ致シテ居ル所ノ實業補習學
校ト雖モ若シ其成績ガ惡ケレバ是マデ與ヘテ居ルノハ總テソレヲ止メル積ニ
シテ居リマス、成ルベクモチット高等ノ實業學校ニシラ國家ノタメニ最モ有
益ナリト認メルモノデナクテハ之ヲ補助セヌト云フ積ニ致シテ居リマスル、
又將來ノ見込ハドレ位マデ與ヘルカト云フノ御質問ニ附イテハコ·デ豫メ金
額ヲ限ッテ、ドレマデナラバ遺ル、ドレヨリ以上遣ラヌト云フコトハゴザリマ
セヌケレドモ、勿論濫用スルノ積ハ一ツモナイ、先ヅ有益ナリト見テ其成績
ノ如何ニ鑑ミテ、是ナラバ最モ必要ト思フモノニ向ッテハ財政ノ許ス所ガア
レバ成ルベクハ之ヲ奬勵致ス方ガ國家ノタメニ最モ有益ナリト認メテ居リマ
ス其金額ニ至ッテハ勿論此制限ヲ解キマスル以上ハ、年々豫算ヲ以テ議院ニ
要求致ス譯デゴザイマスルカラ、其時〓ニ於テ其實際ノ情況ヲ御覽下サル方
ガ一番宜カラウト考ヘマス、ソレカラ今マデノ實業學校、多クハ補習學校ノコ
トデゴザイマセウガ、是ハマダ日ヲ經ルコトガ淺クゴザイマシテ隨分實地ノ
調査ヲ致シテ居リマスルケレドモ、マダドレ程ノ益ヲ爲シテ居ルト云フ明細
ナコトハ分ッテ居リマセヌ、目下地方ノ視學官ナドニ命ジ且ツ又本省ヨリ派出
ヲ致シテ取調中デゴザイマスガ、併ナガラ其中ニ就イテ卒業ヲ致シタ者ガ決
シテ無用ト云フコトデハナイヤウニ承ッテ居リマス、必ズ多少ノ利益ハ隨分ア
ルコトニ承ッテ居リマスガ、尙ホ是ヨリモ取調ヲ致ス積ニシテ居リマスカラ、
左樣御承知ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=83
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084・村田保
○村田保君 尙ホ一ツ續テ伺ヒタイ、唯今ノ御答デゴザイマスルト云フト、先
ヅ先キノ制限ハ一向分ラヌ、詰リ豫算ヲ組ンデ議會ノ協賛ヲ求メルト云フコ
トダケデ、文部大臣ニハ凡ソドノ位ノ制限テヤルト云フ御考ハ無イト見エマ
ス、所ガ成績ノ所ヲ伺ヒマストマダ一向分ラヌ、日ガ淺イカラ分ラヌト云フ
コトデゴザイマスルガ、併シナガラ本員ナドノ考ヘマスルノニ、ソレハ御調
ニナッテ居ナイノデハナイカト思ヒマス、御調ニナレバ分ラヌコトハナイト
思フ、本員ナドモ水產傳習所ト云フモノヲ世話ヲシマシテ四百七十人カラ卒
業生ヲ出シテ居リマスガ、ソレ等ヲ段々調ベテ見ルト卒業後ドウ云フコトヲ
スルカト調ベテ見マスルニ大〓分リマス、多クハ官途ニデモ就クト云フ者ガ
多イ、折角實業上ノ事ヲ〓ヘマシテモ、ドウモ實業上ノ事ニ就キマセズ、卒
業後ハ却テ官ニデモ就クトカ或ハ他ノ事ヘ移ルトカ云フヤウニ段々ナッテ居
リマス、其邊ハ少モ御調ガナイノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=84
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085・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 今調ベテ御答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=85
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086・村田保
○村田保君 ソレカラ段々補習學校ガ澤山立テラルヽノハ宜シウゴザイマス
ガ、卒業後、上ノ高等ノ者ガゴザイマセヌト其行キ所ガナク困ルト思ヒマス
ガ、下ノ方バカリ澤山造ラレテ上ノ方ガナイノデ困ッテ居ル、既ニ今日ノ水產
補習學校ナドヲ卒業シタ者ヲ水產講習所デ採ルコトガ出來ヌ、マダソレ程ノ
學力ガナイ、ソレ故ニサウ云フ者ノ卒業シタ者ヲ採ルノニ困ッテ居リマスガ、
ソレニハ何ゾ高等ノ實業學校デモ御拵ニナル御見込デゴザイマセウカ、今日
ハナカ〓〓非常ナ人デ實業學校ノ生徒モ今日デハ大方三万五六千ニハ上ッテ
居ルダラウト思ヒマス、又中學校ノ生徒ハ三十年ニハ五万カラデゴザイマシ
タガ、三十二年ニハ六万八九千以上モアリマス、是モ八万人以上ニ上ボッテ居
リマス、小學校ノ生徒モ卒業後何處ヘモ行クコトガ出來ヌデ困ッテ居ル者ガ十
万人以上アラウト思ヒマス、斯ウ云フ下ノ方ノモノヲ段々御奬勵ニナルナラ
バ上ノ方モ機關ガ揃ヒマセヌト折角出來マシタモノ皆ガ途中デ困ッテ仕舞フ
ト何モナラヌト云フ考ヲ持ッラ居リマス、ソレニハ文部大臣ニハ段々實業學校
ヲ立テマシタ上ニ又高等ノモノヲ設ケルト云フ御考ハアリマセヌカ、ソレモ
一ツ伺テ置キタイ
〔政府委員梅謙次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=86
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087・梅謙次郎
○政府委員(梅謙次郞君) 實業學校ヲ卒業致シマシタル者ノ成績ヲ御話申サ
ウト思ヒマスガ、タシカ村田君ノ御問ハ補習學校ダケノ御問デアッタト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=87
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088・村田保
○村田保君 一般ノヲ伺ヘバ尙ホ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=88
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089・梅謙次郎
○政府委員(梅謙次郞君) ソレデハ數ノコトデアリマスカラ讀上ゲマス、工
業學校ヲ卒業シマシタル者ガ明治三十二年十月ノ調ニ於キマシテ總計五百三
十五人、此內實業ニ就キマシタル者ガ二百九十一人、官廳ニ奉職シタル者ガ
四十人、學校〓員ト爲リタル者ガ五十二人、他ノ高等ノ學校ニ這入リマシタ
ル者ガ三十八人、卒業後〓究ノタメ尙ホ在學スル者ガ十七人、其他ノ者ガ九
十七人、ソレカラ農業學校ヲ卒業致シマシタ者ガ合計七百九十九人、內實業
ニ就キマシタル者ガ五百三十三人、官廳ニ奉職シタル者ガ五十人、學校〓員
ト爲タル者ガ四十人、他ノ高等ナル學校ニ這入リマシタル者ガ六十八人、其
他ノ者ガ百七人、死亡シタル者ガ一人、商業學校ニ這入リマシタル者ガ合計
六百五十八人、其內實業ニ就キマシタル者ガ二百九十五人、官廳ニ奉職シ
タル者ガ八人、學校ノ〓員ト爲ッタ者ガ十八人、他ノ高等ナル學校ニ入ッタル
者ガ二百二十七人、其他ノ者ガ百八人、死亡致シタル者ガ二人、商船學校ノ
卒業生ノ總數四十三人、其內實業ニ就キタル者十人、他ノ高等ノ學校ニ入リ
タル者十九人、卒業後尙ホ〓究ノタメ在學スル者十四人、補習學校ガ合計五
百六十一人ノ卒業生ヲ出シマシタル內、實業ニ就キマシタル者ガ三百九十七
人他ノ高等ナル學校ニ入リタル者ガ百十七人、其他ノ者ガ四十二人、死亡
シタル者ガ五人、斯樣ナ調ニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=89
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090・都筑馨六
○都筑馨六君 私ハ矢張質問シタイノデアリマス、大臣デモドナタデモ宜シ
ウゴザイマスガ、元來此實業〓育國庫補助ニ附イテハ此補助ノ性質ニ附イテ
方針ガ從來一定シテ居ラヌト思ヒマス、或ハ負擔補助ノ如キ性質ヲ持ッテ居ル、
即チ負擔ニ堪ヘナイカラ各府縣ナリ或ハ府縣以下ノ各公共團體ニ於テ其費用
ノ負擔ニ堪ヘナイカラ之ヲ補助スル、即チ負擔力ヲ補助スルト云フ性質ヲ
持ッテ居ルヤウニ思ヒマス、併ナガラソレバカリカト言ヘバサウデモナイ、若
シ純粹ノ負擔補助デアルナラバ貧乏ナ公共團體ヘハ有力ナ公共〓體ニ比シテ
多ク下付シテ宜イ、然ルニ此補助タルヤ或ハ大阪トカ或ハ東京トカ有力ナ所
デモ餘計補助スルコトニナッテ居ル、純然タル負擔補助ト云フ譯ニモ行カヌ、
然ラバ純然タル奬勵補助デアルカ、即チ負擔力ノ如何ニ拘ラズ學校ノ設立ヲ
奬勵スルタメニ補助スル、斯ウ云フ方針ニ基イテ居ル補助カト言ヘバ、サウ
モ行カヌヤウニ思ヒマス、ト云フモノハ若シ奬勵補助デアルナラバ一定ノ年
限ヲ切ツテ最初ノ數年間ハ補助シテヤルガ宜シイガ、モウ設立後數年間經ツ
テ殆ド持續ノ見込ガ附イタナラバ別ニ之ヲ補助スルノ必要モナカラウ、負擔
ノ力如何ニ拘ラズ之ヲ補助スルノ必要ハナイ、奬勵スル方ノ側カラ奬勵的ノ
タメニ下付スル補助デアルナラバ、自ラ進ンデ行ケル見込ガ立ッタナラバ此
補助ハ取上ゲテモ宜ササウナモノデアルト云フ論ガ出テ來ル、然ルニ是マデ
ハドウカト言ヘバ初メハ獎勵的ノ補助ヲヤッテ置キナガラ一定ノ年限、即チ
五年ナリ七年ナリノ約束デ下付シタナラバ七年ノ期限ガ來レバソコニ至ッ
テ負擔ニ堪ヘヌト云フ論ガ出ル、負擔補助デアルカノ如ク、奬勵補助デアル
カノ如ク、事實連帶支辨ノ如キ性質ヲ帶ビテ居ルヤウナモノヽ如クニ見エ
ル、又各府縣ノ學校ノ貰フ金額ト云フモノハ其時々ノ行政官ノ手心ニ餘程依
ルノデス、此手心ノ參考ニナルト云フノハドウ云フモノガ參考ニナルカト言
ヘバ其時ニ餘ッテ居ル金額ガ第一、第二ニハ地方長官ノ上申ノ上手下手モアリ
マセウ、兎ニ角其時々ノ當局者ノ手心ニ依テ一學校ノ貫フ金額ト他ノ學校ノ
貰フ金額ノ間ニ大ナル差異ガ生ジテ來ル、而シテ是等ノ事ハ行政整理デモ爲
サレル以上ハ眞ヲ先ニ此方針ヲ定メラルヽノガ必要デアルト思ヒマスガ、其
行政整理ニ先ッテ此法律ヲ改正セラルヽト云フコトニ附キマシテハ何ゾ餘程
迫ッタ所ノ必要デモ當局者ノ方ニアルノデアリマスカ、目前ニ切迫シタル理由
デモアラレルモノデアリマスカ、其邊ヲチヨットドナタデモ宜シウゴザイマス
カラ御答辯ヲ願ヒマス
〔政府委員梅謙次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=90
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091・梅謙次郎
○政府委員(梅謙次郞君) 都筑君ノ御問ニ御答ヲ致シマスガ、二十七年以來
國庫補助法ト云フモノハ行レテ居リマスルケレドモ、創業ノ際經驗ノナイコ
トデアリマスルカラ、初ノ間ハ補助スベキ學校モ極テ少數デアッタト云フ次第
デ、當局者ニ於テモ頗ル無經驗ノ結果、十分悉ク有益ナル方法ヲ以テ補助
ヲスルト云フコトガ出來ナカッタコトヽ考ヘマス、ソレ故ニ從來ノ補助ノ方
法ニ附キマシテハ今日ヨリ之ヲ見マシテ或ハ或ル學校ニ補助セヌデモ宜イ、
補助ヲシタイ、又或ル學校ニハモット餘計補助ヲシテヤラヌケレバ補助ノ效
ガ薄イト云フ場合ニ其金額ガ少イタメニ十分ニ其功績ヲ見ルコトガ出來ナ
カッタコトモアリマセウ、今日マデ經驗シ來リマシタ所デ當局者ニ於テ手心
モ分リマシタカラ將來有益ナル方ニ向ッテハ出來得ルダケ多額ノ補助ヲ與へ、
又補助ヲ與ヘテソレダケノ效ガナカラウト云フ方ハ事情氣ノ毒ナコトガアッ
テモ補助ヲシナイ方針ヲ以テ進マウト思ヒマスルデ、將來ニ於テハ十分此國
庫補助法ノ精神ヲ貫クコトガ出來ルダラウト思ヒマス、而シテ此國庫補助
法ノ精神ハ明文ノ通奬勵ト云フノガ目的デアリマスルカラ、其奬勵ノ目的ニ
適ヒマスルヤウニ金ヲ使ッテ參ル見込デアリマスル、而シテ此度特ニ此改正法
案ヲ出シ、其結果ト致シマシテ金額ノ增加ヲ請求スルコトニナリマシタガ、
其必要ハ何クニ在ルカト申シマスルト、現在補助シテ居リマスル學校ニ對シ
テ補助額ハ我〓ノ見ル所ヲ以テ致シマスルト、〓シテ少キニ失シテ十分ノ效
用ヲ見ルコトガ出來ヌヤウナ有樣デアル、成ル程中ニハ補助ヲシテ見タケレ
ドモ十分ノ成績ヲ得ルコトガ出來ヌカラ、寧ロ廢シタ方ガ宜カラウト思フ樣
ナ學校モアリマスルガ、是ハ第一、年限ノ切レマシタモノニ向ッテハ將來補助
ヲセヌト云フコトガ出來マスガ、今、年限中デアルモノハ先ヅ五年ノ年限ヲ
滿タシテ見マセヌト其結果ガ確ニ分ラヌシ、又補助ヲ受ケル御蔭デ現在立ッ
テ居ルモノヲ猥ニ其補助ヲ取上ゲテ忽ニ閉校ヲ見ルト云フノハ實業〓育奬勵
ノ點カラ申シマスルト頗ル遺憾ナルコトデアリマスルカラ、半途デ補助ヲ取
上ゲルト云フヤウナコトハ最モ鄭重ニシナケレバナリマセヌ、左樣致シマス
ルト云フト現在補助ヲ與ヘテ居リマスル學校ニ對スル補助ハ是ハ今日ニ於テ
大ニ之ヲ減ズルト云フコトハ到底出來マセヌコトデゴザイマス、然ルニ新シ
イ學校ハ續々ト勃興シマシテ、現在文部省ニ補助ヲ請求シテ參ッテ居リマスモ
ノガ已ニ殆ド五十校ゴザイマス、此五十校ヲ悉ク補助シナケレバナラヌト云
フ譯デハアリマセヌケレドモ、中ニハ十分補助ヲ與ヘテ宜イ價ノアルモノモ
少カラスノデアリマス、而シテ是等ニ對シテ與ヘマスル補助金ト云フモノハ
前ニ與ヘタ補助ノ年限ノ切レタモノト又中ニ補助ヲ與ヘテモ到底見込ガナイ
ト云フ所カラ半途デ補助ヲ取上ゲマシテ、其金額ヲ合セタモノダケヲ以テ新
シイ學校ノ補助ヲシテ行クト云フコトハ出來マセヌ、何ゼ出來マセヌカト申
シマスルト此不成績ナル學校ハ〓シテ其程度ト云フモノハ實業補習ノモノガ
多イ、其實業補習學校ノ補助額ハ極テ僅少デアリマスルデ、斯ノ如キ學校ノ十
ヤ二十ヤメテ見マシタ所デ實業學校ノ一ツヲ補助スルコトガ出來ルカ出來ヌ
カト云フモノモ隨分アルノデゴザイマス、斯樣ナ次第デアリマスルカラ此新
シク立チマスル學校、新シク補助ヲ請ウテ來タ學校ノ中デ十分ニ見込ノアル
モノダケ補助ヲ與ヘテ行カウト云フニハ到底現在ノ金額デハ間ニ合ヒマセヌ
ノデ、ソレ故ニ已ムヲ得ズ此法案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス
〔議長公爵近衞篤麿君其席ヲ退キ副議長侯爵黑田長成君議長席ニ著
ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=91
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092・清棲家教
○伯爵〓棲家〓君 唯今此法案ノ特別委員長ガ御報告ノ中ニ本院ニ於テ未ダ
議了セザル以前ニ衆議院ニ於テ此追加豫算ヲ出シタト云フコトガアル、ソレ
ニ附イテ委員會デソレヲ確メタラ文部大臣ガ謝辭ヲ述ベラレタトカ云フコト
デアリマスガ、之ニ附キマシテハ如何ナ手續デアリマセウカ、幸ニ文部大臣
ガ御出席デアリマスルカラ詳細ニ御辯明ニナランコトヲ望ミマス、ソレヲ伺ッ
タ上デ尙ホ決議シタイコトガゴザイマス
〔國務大臣松田正久君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=92
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093・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 今ノ御質問ハ貴族院ニ法案ヲ出シテ未ダ其法案ガ
決定シナイ時ニ衆議院ニ豫算案ヲ出シタ、是ハ如何ナル故デアルカト云フ御
尋ノヤウニ承知致シマシタガ、御尤ナ譯ト考ヘマス、併シ衆議院ニ豫算案ヲ
提出致シマシタノハ是ハ一體他ノ追加豫算、尤モ各省ニ於テ緊急ナリト認ム
ル所ノ豫算ガゴザイマシテ、ソレト同時ニ文部省ノ豫算モ閣議ヲ以テ決定ヲ
致シタモノデアリマス、ソレ故ニ其一括トシテ追加豫算案ヲ衆議院ニ出シタ
譯トナッテ居リマス、別ニ何モ其仔細ハナイ譯デアリマシテ、一括トシテ決
シタモノガ一括トシテ衆議院ニ囘ッタト云フダケデアリマシテ、ソレモ數度
停會ニモナリマシテモウ議會ガ早、終期ニ垂トスル場合ニナリマシタカラ、
最モ急グ所ヨリシテ斯樣ナ譯ニナッタ次第デアリマスルカラ、ドウカ此次第
ヲ御承知置ヲ願ヒマスル、尙ホソレ故ニ重テ申上ゲマスルノハ未ダ衆議院ニ
於テハ其豫算ノ決定ヲ致サヌ譯デアリマスルカラ、本日願ハクハ當院ニ於テ
速ニ御決定ヲ下サレテ衆議院ニ御囘シヲ願フ譯デゴザイマス、序ニ先刻村田
君ノ御質問ノ中、下級ノ實業學校ニ於テ斯ノ如ク年々生徒ガ增加スルノデア
ル、而シテ高等ノ實業學校ガナイノデアルノヂヤカラ其接續ガ出來ナイ、ソレ
ハドウ云フ經畫ヲシテ居ルカト云フ御質問ト心得マスルガ、勿論下級ノ實業
學校デ卒業ヲ致シタ者ガ進デ高等ニ這入リタイト云フ者ハ今丁度總務長官ヨ
リ御報〓ヲ致シタ所ノ表ニ據ッテモ明確デゴザイマスルガ、斯ノ如キノ情況ヨ
リシテ文部省ニ於テハ年來經畫ヲ致シテ居リマシテ丁度昨年ヨリシテ農林
學校ヲ巖手ニ設ケ、ソレカラ高等工業學校ヲ京都ニ置キ、又高等商業學校ヲ
神戶ニ置キマスル積デ目下著手中デゴザイマス、是等ガ即チ下級ノ實業學校
卒業者デ高等ノ實業學校ニ入ラウト云フ者ヲ收容スルタメノ經畫デゴザイマ
ス、然レドモ尙ホ當局者ニ於テハソレヲ以テ早十分ナリトハ認メマセヌ、尙
ホ經畫ハゴザイマスルケレドモ是ハ大ニ財政ニ關スル所デゴザイマスルカ
ラ、財源ノ許ス所ハ尙ホ又經畫ヲ致ス積ニシテ居リマスル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=93
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094・高木兼寛
○高木兼寬君 先キニ政府委員ヨリ實業學校卒業生ノ數ハ明瞭ニ御示ニナッ
テ分リマシタノデゴザイマスガ、本員ノ伺ヒタイノハ實業學校ノ種類竝ニ其
數及現在ノ生徒ハ幾千名アリマシテ年々凡ソ各種幾百人宛ヲ卒業セシメ得ル
ト云フ御見込ガ立ッテ居リマセウカ、ソレヲ伺ヒタイ
〔政府委員上田萬年君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=94
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095・上田萬年
○政府委員(上田萬年君) 唯今ノ御問ニ御答ヲ致シマスルガ、明治三十四年
一月現在ノ公私立實業學校數ハ農業學校ガ六十三、工業學校ガ四十二、商業
學校ガ三十五、商船學校ガ四、實業補習學校ガ百四十七ゴザイマス、卽チ總
計カラ見マスト二百九十一ゴザイマス、ソレカラ實業學校ノ生徒數デゴザイ
マスルガ、官立私立實業學校ノ中デ官立ノ札幌農學校ノ現在ノ生徒數ハ二百
七十六人、東京工業學校現在ノ生徒數ガ三百六十五人、大阪工業學校ノ生徒數
ハ百七十二人、高等商業學校ノ生徒數ガ六百七十四人、總計是等ノ四ツノ學校
ヲ合セマスト千四百八十七人程ゴザイマスル、ソレ等ノ學校ノ創立以來ノ卒
業生徒數ヲ申述ベマスレハ、札幌農學校ニ於テハ五百六十九人、東京工業學
校ニ於テハ八百十二人、大阪工業學校ニ於テハ三十四人、高等商業學校ニ於テ
ハ千二十人、即チ總計二千四百三十五人程ゴザイマス、ソレカラ各府縣ノ實
業學校ノ生徒數ハ二千三百九十六人ゴザイマシテ、此方ノ側ニ於キマシテ創
立以來ノ卒業生ノ數ハ三千三百四十九人ゴザイマス、官立學校ノ方ニ於キマ
シテハ現在ノ生徒ガ總數チヨット千五百名程ゴザイマス、年限ニ依ッテ三年ノ
所四年ノ所モゴザイマスガ、先ヅ平均三年ト見マスト年々五百人位ノ卒業
生ハ出ルコトデゴザイマス、官立デゴザイマセヌ各種類ノ實業學校ノ方カラ
年々ドノ位出ルト云フ調ハチヨット唯〓此處ニゴザイマセヌガ、併ナガラ是
モ大抵三年ト云フ平均ヲ取ッテ計算ヲ致シテ見マスルト年々平均七百人位宛
ハ卒業生ガ出テ行ク割ニナルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=95
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096・堀田正養
○子爵堀田正養君 唯今文部大臣ガ言ハレタ實業〓育國庫補助法案ガ貴族院
ヲ通過シナイ先キニ豫算ガ既ニ衆議院ヘ出シテアルト云フコトヲ委員長モ言
ハイク大臣モ言ハレタヤウデスガ、ソレハ既ニ衆議院ガ決議シテ居ルノデス
カ、尙ホソレヲ文部大臣ニ伺ヒタイ
〔國務大臣松田正久君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=96
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097・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 今ノ御質問ハ能ク聞エマセヌデシタガ、ドウ云フ
コトデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=97
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098・堀田正養
○子爵堀田正養君 實業〓育國庫補助法案ハ貴族院デ本日議スルコトニナツ
テ居ル、マダ二議會ニハ移ッテ居ラナイ、ソレニモ拘ラズ此豫算ハ現ニ衆議院
ニ提出シテアルヤウニ伺ヒマシタガ、果シテ左樣デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=98
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099・松田正久
○國務大巴(松田正久君) サウデアリマス、ソレハ提出シテアルニハ違ヒア
リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=99
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100・堀田正養
○子爵堀田正養君 マダ是ガ本院ヲ通過シナイ、衆議院デモ通過シナイ先キ
ニ豫算ヲ提出サレタノハドウ云フ理由デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=100
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101・松田正久
○國務大臣(松田正久君) ソレハ先刻モチヨット申シタヤウデアリマスガ、最
初追加豫算······最モ急ナル追加豫算ヲ一括トシテ出シテアッタ、其一括トシ
テアリマシタカラ矢張衆議院ニ於テハソレヲ共ニ議シテ居ルト云フコトニ
ナッテ居リマス、但シ其是マデノ行掛リヲ申セバ、本案ト云フモノハ一體開
院後直ニ本院ヘ提出ヲサレテアリマシタ、然ル處本院ノ委員會ニ於テモ段々
手間取リマシテ暫ク委員會ヲ開カレナカッタ譯デアリマスル、其後ニ於テ停
會ト爲リマシタカラ愈〓以テ切迫ヲ致シテ來タト云フコトニナッテ居リマス
ル、勿論豫算ハ假令通過シテモ法律案ガ通過ヲセヌケレバ其豫算ハ無效ニナ
ル譯デアリマスカラ、假令衆議院ニ於テ此法律案ガ本院ニ於テ通過シナイニ
拘ラズ衆議院ニ於テ豫算ガ通過シタ所ガ、ソレハ無效ニナル譯デアリマスカ
ラ一向差支ナイコトヽ考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=101
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102・清棲家教
○伯爵〓棲家〓君 尙ホ伺ヒタウゴザイマスガ、唯今文部大臣ハ追加豫算ハ
衆議院ニ出テ居ル、此法案ガ本院ヲ通過セヌ以上ハ衆議院デ議シテモ無駄デ
アルト仰ッシヤリマシタガ、政府ハ何故ニ本院ヲ通過セザル以前ニ追加豫算ヲ
御出シニナッタカ、ソレヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=102
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103・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 何故ニト云フコトハ最急ヲ要スル所ヨリシテ豫算
ハ衆議院ニ出シタト斯ウ云フ譯ニナッテ居ルノデス、ソレニ又是マデノ例ニ
依ッテモ豫算案ト法律案ヲ同時ニ出サレタコトハ澤山アルノデアリマス、
向是ガ始テト云フ譯デハ決シテナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=103
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104・堀田正養
○子爵堀田正養君 甚ダ文部大臣ノ御說明ハ分ラナイト思ヒマス、何故ト云
フニマダ此事ガ兩院ヲ通過スルヤ否ヤ知レナイノニ、豫算ハ既ニ出シタ、ソ
レハ一體不都合ナ話デ、此案ガ通過シタトキ始テ豫算ハ追加トシテ出サレタ
ラ宜イノダト思ヒマス、ソレヲ極端ニ言フト或ハ來年ノ豫算ヲ出シテ置イテ
モ宜イト云フコトニナル、ソレハ文部大臣ガ言ハレルノハ果シテ憲法カ或ハ
他ノ議院法カ豫算議定法カ何カニアルナラバ、ソレヲ示サレンコトヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=104
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105・松田正久
○國務大臣(松田正久君) サウ云フコトデハアリマセヌ、先刻カラ屢〓言フ
通追加豫算ガ澤山アリマシテ文部省ノ本案ニ關スル追加豫算モ一括ト爲ツテ
居リマシテ、他ノ追加豫算ト同時ニ一括トシテ衆議院ニ出シタト云フダケノ
コトデアリマシテ一向別ニ仔細ノナイコトデアリマス、何故ニ本院ニ於ケ
ル所ノ法律案ガ通過セザルニ衆議院ニソレヲ出シタト云フコトニ附イテハ法
律上ノ差支ハアリマスマイ、如何トナレバ是マデ豫算ト法律案ハ同時ニ提出
シタコトガ屢〓アリマス、ソレ故ニ其結果ヲ申シテ見レバ、例ヘバ法律案ハ
通過シナイ、豫算案ハ通過シテ仕舞ッタト云フ時分ニドウナルカト云フト、ソ
レハ法律案ガ通過シナイ時分ニハ豫算案ハ通過シテモ無效トナッテ仕舞フト
云フコトデアリマスカラ、一向害ハナイコトダラウト云フダケニ止リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=105
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106・堀田正養
○子爵堀田正養君 ソレハ使フベキモノデナイモノヲ豫算ニ提出スルト云フ
コトハ甚ダ其當ヲ得ナイダラウト本員ハ考ヘル、且ツ又是ガ成程法律ガナケ
レバ其金ヲ、豫算ガ通ッテモ差支ナイト云フコトハ文部大臣ノ說明ヲ待タズシ
テ我〓ハ其位ノコトハ承知シテ居ルケレドモ、ソレナラバデス、旣ニモウ豫算
ハ一括シテアッタモノダカラ出シタト云フコトナレバ、此實業〓育國庫補助法
ト云フモノガ通過シナイトキニハ其一括シタ部分カラ是ダケノ費用ヲ差拔イ
テ貴族院ナリ衆議院ナリヘ提出ニナルノガ順當ト思ヒマス、併シソレハツイ
誤ッテサウ云フコトヲシタノデアルト云フナラバ聞エテ居ルケレドモ、ソレ
ヲ承知シテ置イテ、マダ法律ノ通過シナイノニ出シタト云フコトハ、少シク
穩當デナイト思フカラ質問スル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=106
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107・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 今御答致ス通デアリマシテ、豫算ハ追加豫算ニ一
括ニナッラ居ルカラ衆議院ニソレガ囘ッテ仕舞ッタ、斯ウ云フコトニナッテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=107
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108・村田保
○村田保君 私ハ其邊ハ少シ考ヘテ居リマシタガ、先程委員長カラ致シテ委
員會ニ於キマシテ文部大臣ガ此コトヲ謝サレタト云フコトヲ承ッタ、ソレ故ニ
文部大臣ガ委員會ニ於テ謝シタモノデアレバ議場デ咎メルノハドウカト思ヒ
マス、ケレドモ唯今文部大臣ノ此議場デ述ベラルヽ所ハ一向謝サレルト云フ
ノデゴザイマセヌ、却テ押通サウト云フヤウナ傾向ガ見エマス、ケレドモド
ウゾ委員會デ謝サレタモノナラバ本院デモ謝サレルガ宜シイ、サウ云フコト
ヲ强テ押通サウトスルナラバ我〓據ロナク此案ニ反對ヲシナクチヤナラヌト
云フ考ヲ持ッテ居ル、如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=108
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109・長岡護美
○子爵長岡護美君 本員ガ謝サレタト申シタコトニ附イテ今村田君カラ御尋
モアリマスガ、私ガサウ申シタノハ此間文部大臣ガ述ベラレマシタノニ是ハ
ツイ此他ノ豫算ノ追加ト一括シテアッタカラソレデ出タ次第デアル、斯ウ云フ
御演說デアリマシタカラ、アレハ謝スルト云フ意見ヲ以テ穩當ナコトデアッ
タト考ヘタノデアリマス、他ノ豫算ノ追加ト一〓ニ衆議院ノ方へ大藏省カラ
出シタノデ自然出タノデアラウト認メテアリマスカラ、强テ委員デハ終點マ
デ議論ハ致サザッタノデアリマス、チヨット申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=109
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110・村田保
○村田保君 本員ハドウゾ文部大臣ニ確メタイ、文部大臣ハ本院デマダ議事
ニ上ボラス中ニ此追加豫算ヲ向フヘ出サルヽコトヲバ決シテ不都合デナイト
御認メデゴザイマスカ、ソレヲ伺ヒタウゴザイマス、若シ不都合ト云フコト
デアレバ不都合ナル所ヲ以テ甚ダ不都合デアッタト云フコトヲ言ハレレバ我
我モ强テハ御咎メ申サヌ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=110
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111・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 私ハ先刻ヨリ御答致シマス通何故ニ衆議院ニ早ク
豫算ガ囘ッタカト申シテ見レバ、是ハ最初ヨリ一括トシテ出シテアッタノダカ
ラ同時ニ出テ仕舞ッタ、併ナガラ本院ニ於テマダ法律案ガ通過ヲシナイ前ニ
何故ヤッタカト云フノ御質問デアリマスルガ、ソレハ差支ハアリマスマイケ
レドモ、何レガ正式デアルカト云フコトニナッタナラバ先ヅ法律案ノ通過シ
タ後ニ於テ豫算案ガ出ルガ正式デアリマセウ、ソレハ正式タルコトニ違ヒナ
イト私一己デハ考ヘマスケレドモ、ソレハ矢張一括トシテアッタモノダカ
ラ一括トシテ囘ッテ仕舞ッタト云フダケノコトデアッテ、別ニ私ガ故意ヲ以テ
出シタト云フモノデナイ、ソレ故ニソレガ不都合デアルト諸君ニ於テ御認メ
デゴザイマスレバソレハ致方ガナイノデ、私ハソレヲ氣附カズシテ大藏大臣
ニ是ダケヲ拔イテ吳レト云フコトヲ言ハナカッタノハ、ソレハ私ノ不都合ト
諸君ガ御認メニナレバ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=111
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112・村田保
○村田保君 是ハ差支ナイコトハナイ、矢張法律案ガ通過シナイノニ追加豫
算ヲ出スト云フコトハ曾テナイ、議院ヲ輕蔑シタ所爲デアル、此案ハ通ルカ
ラト云フテ見限ッタ所爲デハナイカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=112
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113・松田正久
○國務大臣(松田正久君) サウ云フ意味ハチットモアリマセヌ、此議案ハドウ
デモ斯ウデモ貴族院ハ通過スルモノデアルト云フコトハ私ガ一人シテ最初ヨ
リ認メル譯ニハ參リマセヌ、ソレハ決シテ左樣ナ考ヘヲ持ッテ居ルノデハアリ
マセヌカラ是ハ御斷ヲ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=113
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114・松本鼎
○松本鼎君 本員モ一言シマスルガ、成ル程文部大臣ノ追加豫算ヲ一括シテ
囘サレタコトハ差支ナイカモ知ラヌ、併ナガラ文部大臣ノ先刻ノ御辭デハ假
令衆議院デハ追加豫算ガ決議シテモ此案ガ決議シナケレド無效ニナルカラ差
支ナイ、是ガ一體分ラヌ、御囘シニナッタノハ一括シテ囘シテモ差支アルマイ
ガ、衆議院デソレヲ議スベキモノデナイ、本案ヲ議決セヌ中ニ豫算ヲ議スベ
キモノデナイ、ソレヲ文部大臣ハ無效ニナルノデアルカラ格別差支ナイト云
フ理由ハ一向分ラヌ、ソコヲ御說明ヲ聽カウト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=114
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115・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 如何デス、最早文部大臣ノ說明モ先刻ゴザイマ
シタガ、ソレデ宜シクハゴザイマスマイカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=115
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116・松本鼎
○松本鼎君 ソレハ宜ウゴザイマスケレドモ、私ノハ前ノトハ少シ違ヒマス、
前ノハ差支ナイガ、此案ヲ出シタノハ差支ナイガ、決議ヲスレバ此案ガ無效
ニナルカラ差支ナイト云フ御說明ヲ聽カウト云フノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=116
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117・堀田正養
○子爵堀田正養君 此案ハ唯〓ノ豫算ト斯ノ如ク牽連シテ居ッテ將來餘程、
體議事ノ決議カ何カニ附イテ餘程關係ヲ及シマスカラ、我〓モ篤ト考案ヲ致
シタウゴザイマスカラ、本日ハ延期サレルコトヲ提出致シマス
〔「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=117
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118・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 堀田子爵ノ延期說ニ贊成ガアリマスカラ決ヲ採
リマス、御同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=118
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119・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 多數ト認メマス、然ラバ本案ハ本日ハ延期ニナ
リマシタ、ソレデハ水害地方田畑地租免除ニ關スル法律案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會ノ續、特別委員長報告
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
水害地方田畑地租免除ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
明治三十四年二月二十六日
右特別委員長
公爵二條基弘
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
〔伯爵正親町實正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=119
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120・正親町實正
○伯爵正親町實正君 本案ハ過日一回特別委員會ヲ開キマシテ委員長ニハ二
條公爵ガ當選サレマシタ、副委員長ニハ私ガ當選シマシタ、本日委員長ヨリ
報告ヲ致サレマス筈デアリマスガ、午後ヨリ俄ニ病氣ニ依ッテ差支ヘマスニ
依ッテ本員ガ代ッテ御報告ヲ申シマス、此案ノ提出ノ理由ハ既ニ本會ニ於テ
政府委員ヨリ述ベラレマシタカラ諸君モ御承知ノ通デアリマス、就テハ委
員會ニ於テ愼重ニ審議ヲ遂ゲマシテゴザイマスルガ、大體此案ハ二十九年ノ
水害ニ對シマシテ三十年ニ於テ水害地方田畑地租免除ニ關スル法律案ト云フ
モノガ出マシテ、兩院ノ議決ヲ經テ三十年法律第三十號ヲ以テ免租ノ處分ニ
ナリマシタ、然ルニ其後年々歲々同一樣ナ法案ガ出マスヤウナコトニナリマ
シタノデアリマス、ソレデ大體此案ハ斯ノ如キ案ト云フモノハ本院ニ於テハ
度々反對サレテ居ッタノデアリマス、大體斯ウ云フコトニナル以上ハ地租條
例ノ精神ニモ背クコトデアルカラシテ、一體斯ウ云フコトヲ爲スナラバ地租
條例ノ根本カラ改正ヲ加ヘナクテハナラヌト云フ譯デアッテ、當初ハ始終是
ハ反對ノコトニナッテ居マシタ、併ナガラ此三十年法律第三十號ノトキニ一
旦通過シマシタ以來ハ年々一旦通過免除スルコトニ極ッタ以上ハ巳ムヲ得ヌ
ト云フコトニナッテ、ソレヨリ本院ニ於テモ通過致シ來ッタノデアリマス、
併ナガラ是ハ其當時度毎ノ單行法律デアリマスルカラ之ヲ以テ將來ニ及ス
ト云フ譯ニハ行カヌモノデアリマス、故ニ年々歲々斯ノ如キ特別方法ヲ設ケ
ナクテハ此免除ト云フモノハ斷行サレヌコトニナッテ居ル、然ルニ斯ウ云フコ
トニナリマスト云フト水害ノアッタ翌年ノ議會ニ於テ此法案ヲ決議スルコト
ニナッテ、殆ド水害ガアッテカラ一年有餘ノ歲月ヲ經過シテカラ後ノコトデ
アッテ、當局者ニ於テ其現場ヲ調査スルト云ウテモ旣ニ一年有餘モ經過シタ
曉デアルカラ、其區域モ判明セズ調査ヲスルニ苦シム、ソレ故ニ最初ノ見込
額ヨリ免租ノ區域ガ餘程大キクナル、金額モ殆ド豫算ヨリ常ニ倍スルト云フ
有樣デアル、ソレデ斯ノ如ク將來モ年々單行法ヲ以テ免除シナケレバナラヌ
ト云フコトニナッタ以上ハ寧ロ一定ノ法律ヲ設ケテ置イテ、水害ガアッタナラ
バ其都度直ニ出張シテ調査スルコトニナッタラバ調査モ確實ニナリ又豫算モ
格別違ヒヲ生セズ兩全ノコトデアルカラ是ハ事實必要ニ應ジテ斯ウ云フ法律
ヲ設ケタ方ガ便利デアラウト云フ精神ダサウデアリマス、ソレデ委員會ニ於
キマシテモ最早今トナッテハ已ムヲ得ヌ法律デアラウ、ノミナラズ寧ロ設ケテ
置イタ方ガ便利デアラウト云フ精神ヲ以テ可決ニナリマシタノデアリマス、
然ルニ衆議院ニ於テ之ヲ修正シテ蟲害風害旱害ト云フモノガ這入ッテ來マシ
タ、此事ニ附イテハ多少議論ガアリマシタ、ソレデ一說ニハ成ル程風害早害ト
云フモノハ是モ稀ナコトデアルカラシテ······此水害ハドウモ殆ド年々ト申シ
テモ宜イ位デアルカラ是ハ斯ノ如キ法律ヲ設ケルモ宜カラウカナレドモ、他
ノ三害ト云フモノハ稀ニアルコトデアルカラ特ニ斯ノ如キ法律ヲ設ケテ置ク
必要モアルマイ、其都度調査シテモ宜イヂヤナイカ、併ナガラ此風害早害ニ
至ッテハマダ天災デアッテ所謂不可抗的ノ性質ノモノデアルカラ已ムヲ得ヌ
トシタ所デ、蟲害ト云フモノニ至ッテハ是ハ人力ヲ以テ將來豫防ノ出來ヌ限デ
モアルマイ、段々學術ノ進步ニ從ッタナラバ又人力ノ勉勵ニ依ッタナラバ必ズ
之ヲ驅リ盡セヌト云フ限デモアルマイ、殊ニ農商務省アタリニ於テモ段々
是等ノ調査モ今ヤッテ居ルコトデアルカラシテ、斯ノ如キモノマデモコヽヘ入
レル必要ハアルマイ、又一ツニハ斯ノ如キモノマデモ法律デ免除スルト云フ
コトニナルト、自然ニ豫防ヲ怠ルト云フヤウナ嫌モ又一方ニハアルカモ知レ
ヌ、依ッテ此中カラ此蟲害ト云フモノダケハ削除シタ方ガ宜カラウト云フ說
モアリマシタ、併ナガラ委員ノ多數ハ最早斯ウナッタ以上ハ斯ノ如キ種類ノ
モノハ矢張コヽヘ入レテ共ニ免除スルガ宜カラウト云フコトカラシテ、ソレ
ハ少數デ成立チマセヌ、ソレカラ今一說ニハ風害ダケヲ拔イタラ宜カラウト
云フ說モアッタ、是ハ矢張風害ト云フモノハサウ年々歲々アルモノデモナシ又
今マデ眞ニ風害ニ依ッテ收穫皆無トナッタヤウナ例ガアッタカ否ヤ、殆ドナイ
程デアル、依ッテ斯ノ如キ極稀ナルモノニ附イテモ斯ノ如キ法律ヲ設ケテ置
ク必要ハナイカラ此中カラ風害ト云フダケヲ削除シタラ宜カラウト云フ說
モアッタ、併ナガラ是モ前申スヤウナ理由カラシテ少數デ成立チマセヌ、ソレ
カラ此本文ノ中ニ「一府縣又ハ數府縣ノ全部若ハ一部ニ亙レル」云々ト云フコ
トガアリマシタ、此全部若クハ一部ト云フ全部ハ宜イガ一部ト云フノハ甚ダ
曖昧デアッテ其區域ガ判明シナイ、或ハ一村ヲ指スカ或ハ一郡ヲ指スカ將タ
一字ヲ指スカ曖昧デアル、若シモ斯ウ云フ漠然トシタコトデアルト、詰リ政
府ノ認定ト云フコトニナル、認定ナラバ寧ロ全然認定ニシテ免除モ認定ニ依ッ
テ免除スルト云フコトニナッテ免除スルコトヲ得ト云フヤウナ風ニ致シテ御
置キニナレバ是ハドウモ認定ニ依ルコトダカラ致シ方アルマイガ、一方ニハ
「免除ス」ト云フ譯ニシテ詰リ此免除ノ權利ヲ法律ヲ以テ與ヘタ以上、サウス
レバ若シモ區域ヲ定メルノハ政府ノ認定ニ任シテ置クト云フコトニスレバ、
或ハソレガタメニ其認定ヲ政府ト人民トノ間ニ違ヘルタメニ屢〓騒擾等ノ起
ル憂ガアリハシナイカ、サウスレバ隨分煩雜ナコトデアルカラ、寧ロ一部ト
云フコトニアラズシテソレハ何トカ制限ヲ極メタ方ガ宜クハナイカト云フ質
問モ出マシタ、之ニ對スル政府ノ答辯ハ成ル程ソレハ一理由アルト、サウ云フ
譯デ區域ヲ政府ニ於テ認定スルト云フコトニナレバソレガタメニ隨分騷擾等
ノ煩雜ヲ來ス恐ハナイデハナイ、隨分アルカモ知レナイ、併ナガラ此區域ヲ
定メルト云フコトハ甚ダ困難ナ話デアッテ、例ヘバ一村ト云フコトニ最低限
ヲ極メテ置クト假定シタ所デ、若シモ一村ヨリ以下ノ區域ニ於テ斯ノ如キ必
要ガ生ジタ時分ニハ、ミス〓〓是ハ免除ノ區域ニ入レヌナラヌト思フモノデ
モ、ドウモ法律ニ依ッテ一村ト限ッタ以上ハ其以下ニ及スコトハ出來ヌト云フ
不便ヲ生ジテ來ル、故ニ是ハドウモ已ムヲ得ヌコトデアルカラシテ、寧ロ一部
ト云フコトニ致シテ置イテ、其區域ハ一村トモ限ラズ一字トモ限ラヌト云フ
譯デ、故ニ唯其水溜リノタメニト云フヤウナコトハ、是ハドウモ免除ノ限デナ
イケレドモ、或ル地方ニドレダケノ水害ガアッタト政府デ認メ得ラレル場合
ノ水害ニ當ッテハ其區域ノ大小ハ其時ノ事實ニ依ッテ判斷スルヨリ外仕方ガナ
イ、依ッテドウモサウ云フ區域ヲ限ルコトハ出來ヌト云フヤウナ答辯デアリ
マシタ、別ニ之ニ向ッテモ異議ハゴザイマセヌ、遂ニ衆議院ノ囘付通ニ決ス
ルガ宜シイト云フコトニ極リマシタ、大略御報道致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=120
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121・村田保
○村田保君 政府委員ニ少々承リタイデスガ、此早害、蟲害、風害ニ依ッテ收穫
ガ皆無ニナルト云フコトガゴザイマセウカ、之ヲ一ツ伺ヒタイ
〔政府委員目賀田種太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=121
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122・目賀田種太郎
○政府委員(目賀田種太郞君) 御答シマスル、昨年ノ旱害デゴザイマスガ、段
別ニ致シマシテ三萬町步程ゴザイマス、ソレカラ尙ホ蟲害デゴザイマスガ四
萬町步程ゴザイマス、ソレカラ風害ニシテ二萬町步程ゴサイマスガ、其中一
應ノ取調ヲ致シテ見マシデゴザイマスガ、收穫モ皆無ノモノモ大分ゴザイマ
ス、其他一般ノ場合ニ於キマシテモ旱害、蟲害、風害ニ依ッテ皆無ト爲ル場合
ハ少カラヌコトヽ存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=122
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123・村田保
○村田保君 政府ハ此修正ニ同意デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=123
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124・目賀田種太郎
○政府委員(目賀田種太郞君) 左樣デゴザイマス、元來政府ハ先般來水害ニ
關スル特別法ガ度〓出マスカラ、之ニ對シマシテ水害ノミノ法案ヲ提出致シ
マシタ、併ナガラ又他ノ害ノ如キモ誠ニ已ムヲ得ヌコトデアルカラト存ジマ
シテ同意ヲ表シタ譯デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=124
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125・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 政府委員ニ質問致シタウゴザイマスガ、此衆議院ノ方
デ修正致シマシタ蟲害、風害、旱害、是等ノコトニ附イテ地租ガ免除ニナリ
マシタ度數ハドノ位アッテ金高ハ凡ソドノ位今日マデニゴザイマシタカ、ソレ
ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=125
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126・目賀田種太郎
○政府委員(目賀田種太郞君) 三島子爵ニ御答致シマス、是マデハ水害ノミ
デゴザイマシテ、蟲害ニハ昨年法律二十四號ヲ以テ始テ出マシタ、德島縣ノ
三箇村バカリノ蟲害地ニ對スル其收穫ナルモノニ對シテ法律ガ出マシタ、ソ
レノミデアリマス、ソレハ地租ニ於キマシテ四千八百三圓ヲ減ジマシタ譯デ
アリマス、其他ニハ水害ノミデゴザイマス、風害、早害ニ依ッテ地租ヲ免ジ
タ場合ハ今マデゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=126
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127・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) ソレデハ二讀會ニ移ルヤ否ヤノ決ヲ採リマス、
本案第二讀會ニ移シテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=127
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128・小笠原壽長
○子爵小笠原壽長君 直ニ第二讀會ニ移ラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=128
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129・錦織教久
○子爵錦織〓久君 贊成
〔「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=129
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130・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 直ニ第二讀會ヲ開イテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=130
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131・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 直ニ第二讀會ヲ開キマス、全部ヲ問題ニ致シマ
ス、表題モ併テ問題ニ供シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=131
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132・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 私ハ此法案ヲ修正致シタイ意見ヲ持ッテ居リマス、ソレ
ハ此衆議院ノ方デ入レマシタ修正シテ居リマス蟲害、風害、早害此三ツノコ
トニ附キマシテデゴザイマスガ、第一蟲害ト云フモノハ是ハ天災ト見ル譯ニ
ハ行カナイモノデアラウカト考ヘルノデアリマス、或ル場合ニハ非常ニ酷イ
コトモゴザイマスガ、是ハ注意ニ依ッテハ防ギ得ルモノトナルノデアリマス
之ヲ斯ウ云フ法律ニシマスト、農民ニ幾ラカ依賴心ヲ起サセルト云フヤウナ
結果ニナリハシマイカト思ヒマスルノデアリマス、例ヘバ或時ナドハ殆ド七
分通カ八分通蟲害デ損セラレタ折ニハ最早手ヲ著ケズニ置イテ、寧ロ地租小
作料等ハ許サレルト云フヤウニンタ方ガ宜イト云フヤウナ考ガ出ナイデモナ
イ、ソレカラ又防グ上ニ於キマシテモ、眞ニ之ヲ防グノト、マアドウカシタ
時ハ許サレルト思フヤウナ心ヲ以テ防グノトハ大變ナ相違ガアラウト思フノ
デアリマス、ソレカラ斯ウ云フコトニナリマスルト、例ヘバ兩三年前ニ······
三四年前ニ浮塵子デ非常ナ損害ヲ被ッタヤウナ折ガゴザイマシタ場合ニハ、實
ニ非常ナコトデアリハシナイカ、アノ時ハタシカ七千萬內外ノ損害ヲ與ヘテ
居ルト記憶シテ居リマス、サウ致シマスルト、其一部分ガ猶豫サレルヤウニ
ナッテモ中〓是ハ容易ナラヌコトト思フノデアリマス、且ツ此蟲害ト云フ
モノヲ玆ニ入レマスル以上ハマダ這入ラナケレバナラヌモノガアル、是ハ黴
菌ノ害ト云フモノハ當然這入ルベキモノデアラウト思ヒマス、ソレカラ鳥獸
ノ害ト云フヤウナモノモ這入ラウト思フ、ソレデゴザイマスカラ、ソレハ此
蟲害ト云フコトハ削除シタイ考デゴザイマス、ソレカラ風害、早害ニ附キマシ
テハ、先程政府委員カラモ御說明ニナリマシタ通、是ハ稀ニアルモノデゴザイ
マスカラ、矢張蟲害ナドノ非常ナ場合、誰モ認メテ是ハドウモ免除シナケレバ
ナラヌト云フヤウナ場合ト同ク矢張單行法デ其折〓ニ爲サレルコトヲ希望致
シマス、又風害、早害ト云フモノガ這入リマス以上ハ當然霜ノ害、或ハ雹ノ
害ト云フヤウナコトモ這入ラウト思フ、鑛毒ナドモ這入ッテ來ハシナイカ、又
考ヘマシタラ他ニモ段々入レナケレバナラナイモノガアラウト思ヒマス、凡
テ是等ノ稀ニアルモノハ矢張其折ニ單行法ヲ出サレタラ宜カラウト思ヒマス
ルカラ、此三ツハ削除サレテ、卽チ水害ト云フ政府ノ原案通ニ致シタイ考デア
リマスカラ修正ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=132
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133・吉井幸藏
○伯爵吉井幸藏君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=133
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134・伏原宣足
○子爵伏原宣足君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=134
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135・青木信光
○子爵靑木信光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=135
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136・森山茂
○森山茂君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=136
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137・富田鐵之助
○富田鐵之助君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=137
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138・小原重哉
○小原重哉君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=138
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139・久保田譲
○久保田讓君 贊成
〔其他「賛成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=139
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140・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 定規ノ賛成ハ得ラレマシテゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=140
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141・西村亮吉
○西村亮吉君 此修正ハ成立ッタヤウニ見エマスガ、之ヲ衆議院ノ囘付通議
決シタイト云フコトハ實際風害、早害、蟲害、實際ニ付テ大イニ其害ヲ受ケテ
收穫ノ皆無ニナルコトハ間〓アルノデゴザイマス、卽チ先年兵庫縣ナドノ早
害ト云フモノハ數十町步皆無ニナリマシタ、又風害ト雖モ潮風ニ當ッテ皆無ニ
ナルコトハ間〓アルノデゴザイマス、又蟲害トテモ同樣デゴザイマス、故
此衆議院ノ囘付通此風害水害ハ原案通旱害、蟲害、風害ト云フモノハ必ズ特
別ノ免租ニナルコトニナラナケレバナリマセヌカラ、ドコマデモ衆議院ノ修
正通可決スルコトヲ切望致スノデゴザリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=141
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142・都筑馨六
○都筑馨六君 私ハ三島子爵ノ修正案ニ贊成致シマス、其理由ハ政府カラ出
テ居ル原案ノ水害ニ止ッテ其他ノ風害蟲害等ノモノヲ入レルナラバ廣ク天災
ト書カナケレバナラヌト思ヒマス、廣ク天災ト書ク以上ハ甘エルコトヲ知ラ
ナイ子供ヘ甘エルコトヲ〓ヘルヤウナコトデアルト思ヒマス、長イコトハ申
サズトモ單純ニ贊成ノ意ヲ表シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=142
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143・天春文衞
○天春文衞君 續々此蟲害、旱害、風害ノ文字ヲ削除スルコトノ御說ガ御贊
成ガアルヤウデゴザイマスガ、實際ヲ考ヘマスト獨リ水害ノミナバズ此蟲害
ナドニ至リマシテモ、實ニ民力ニ及バナイコトガアルノデアリマス、既ニ昨
年ノ德島縣デゴザイマシタカ此免租セラレタ模樣ヲ聞クニ一夜ノ中ニズウト
田面ガ皆蟲害ニ罹ッタト云フコトデゴザイマスガ、幾ラ之ヲ防ガウト思ウテ
モ防ギ切レナカッタノデゴザイマス、謂ハユル風害ト雖モサウデアル、デ之
ヲ若シ蟲害風害等ヲ其時々之ヲ免除スルト云フコトニナリマスト所謂害ノ
アッタ後ニ之ヲ調査スルト云フコトデアリマシテ、段々却テ利益ニ不適當ナ
ルコトデアリマスカラ、前キニ此法律ヲ設ケテ置キマスレバ罹災後三十日間
內ニ之ヲ屆出ナケレバ無效デゴザイマスカラ、蟲害ガアルヤ否ヤ直グ屆出ヅ
ルノデゴザリマスカラ、事實モ能ク分カルノデゴザリマス、先刻三島君ノ御
話ニ租稅ヲ免除スルコトニナルカラシテ、却テ之ヲ豫防スルノニ或ハ怠ルデ
アラウカト云フヤウナ御說モアッタノデゴザイマスガ、地租ノ幾分ト云フモ
ノハ僅ナモノデアリマス、其地租ヲ人民ノ餘德カラシテ幾分ヲ納ムルノデア
リマス、人民ノ納ムルモノハ獨リ地租ノミデアリマセヌ、其他ノ餘德ガアル
カラシテ此地租ヲ納メルノデアリマスカラ、此地租ヲ免除セラレルカラト云
フテ全部ヲ抛棄スルト云フヤウナコトハゴザイマセヌ、實際水害ヲ免除ス
ル以上ハ此風害、蟲害、旱害モ免粗シナケレバナラヌト思ヒマス、或ハ其他
ノ天災ト云フ、是ハモウ一向稀ニアル所デ、先ヅ此蟲害、風害、旱害ノヤウ
ニハ先ヅナイモノト假定シテモ宜カラウト思ヒマス、或ハ小部分ノモノハア
ルカモ知レマセヌガ、是ハ小部分ノモノデアリマス或ハ水害ナドヨリ場合ニ
依ッテハ風害ナドハ大キナ損害ヲナスコトガアルノデアリマス、之ヲ省グト
云フコトハ甚ダ其當ヲ得ナイコトヽ考ヘマスカラ、ドウゾ實際ノ事情ヲ御考
慮アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=143
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144・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 採決ヲ致シマス、三島子爵ノ修正說ニ附イテ決
ヲ採リマス、三島子爵ノ修正說ニ同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=144
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145・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 多數ト認メマス、第二讀會ハ是ニテ終リマシタ
〔中西光三郞君「唯今ノ採決ニ異議ガアリマス」ト述フ、又「點呼ヲ願
ヒマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=145
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146・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 然ラバ··
〔伯爵大原重朝君「モウ御宣告ニナッタト考ヘマス、第三讀會ヲ開クト
云フコトヲ······」ト述フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=146
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147・都筑馨六
○都筑馨六君 唯今ノハ三島子爵ノ修正案ニ附イテノ御採決ノヤウニ思ヒマ
スガ、他ノ修正案ヲ出ス餘地ハナイノデゴザイマスカ、マダ出ス餘地ガアルノ
デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=147
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148・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 最早其餘地ハ無イノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=148
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149・森山茂
○森山茂君 大原君ノ三讀會ヲ開クコトニ贊成ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=149
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150・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 最早二讀會ハ是ニテ決了シタモノト認メテ宜シ
ウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」又ハ「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=150
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151・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 若シ御異議ガアルナレバ三島子爵ノ說ニ反對ノ
諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=151
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152・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 少數デゴザイマス、卽チ第二讀會ハ三島子爵ノ
修正說ガ可決セラレテ其通ニ決セラレタモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=152
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153・大原重朝
○伯爵大原重朝君 直ニ第三讀會ヲ開カレンコトヲ希望致シマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=153
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154・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 大原伯爵ノ直ニ三讀會ヲ開クト云フコトニ御異
議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=154
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155・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 然ラバ直ニ開キマス······原案ニ御異議ハゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=155
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156・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 然ラバ決シマス、明治三十三年法律第七十三號
衆議院議員選擧法別表中改正法律案、衆議院提出、第一讀會
〔仙石書記官朗讀〕
明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選舉法別表中改正法律案
右本院提出案及送付候也
明治三十四年三月十四日衆議院議長片岡健吉
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選擧法別表中左ノ通改正ス
群馬縣鳥取縣
前橋市鳥取市-人
一-人人
高崎市郡部三人
郡部六人廣島縣
三重縣廣島市
一一
津市人尾道市人人人
四日市市人郡部十
郡部七人香川縣
福島縣高松市
若松市人丸龜市一人人人
郡部八人郡部五
靑森縣福岡縣
弘前市一人福岡市一
靑森市人久留米市一
郡部四人小倉市人人 人人人
秋田縣門司市
秋田市人郡部十
郡部六人発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=156
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157・小笠原壽長
○子爵小笠原壽長君 此案ハ衆議院ノ提出案デアリマスケレドモ、本員ハ一
ツ政府委員ニ質問ヲ致シタイコトガアリマス、宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=157
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158・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=158
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159・小笠原壽長
○子爵小笠原壽長君 別表ノ中ニ廣島縣ノ尾道デアリマスガ、是ハ人口ガ三
萬ニ達シマセヌト、法律ニ極メテアリマスカラ一人ノ衆議院議員ヲ出スコト
ガ出來マセヌ、所ガ尾道ニ於テハ衆議院ガ出シマシタ理由書ヲ見マシテモ、
唯今デハ三萬ニナッテ居ラヌガ將來三萬ニナル見込ガアルカラト云フテ、尾
道ト云フモノガ這入ッテ居ル、現ニ此尾道ハ三萬無イ、ソレヲ通過シテ貴族
院ニ囘ッテ居リマスガ、政府ハ矢張三萬ニ足ラヌ尾道市ニモ衆議院議員ヲ御
出シナサルト云フコトニ衆議院案ニ御同意ニナッタ譯デアリマスカ、其邊ヲ
伺ヒマス
〔政府委員大森鍾一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=159
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160・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) 唯今ノ御尋ニ御答ヲ致シマスガ、成ル程御問ノ通
尾道ハ三萬ニ達シマセヌノデアリマスガ、今度ノ衆議院ノ改正案ハ三萬ニ足
ラズトモ、特ニ尾道ニハ選擧權ヲ與ヘルト云フコトデゴザイマス、別ニ差支
ゴザイマセヌカラ是ニハ異議ヲ唱ヘマセヌノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=160
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161・小笠原壽長
○子爵小笠原壽長君 現ニ三萬ニ達シナケレバ一人ノ衆議院ノ議員ヲ出サヌ
ト云フノニ、三萬ニ足ラナクテモ出シテ宜シイ譯デアリマスカ、甚ダ本員ハ
唯今ノ御答辯ハ其意ヲ得ヌト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=161
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162・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) 別ニ三萬以下デハ衆議院ノ議員ヲ選擧セヌト云フ
コトハナイノデアリマス、成ル程前ノ法律ハ三萬以上ノ市ヲ以テ一人ノ選擧
權ヲ與ヘルト云フコトニ列記ハ致シテアリマス、併ナガラ三萬以下デハ一人
ノ議員ヲ選擧スルコトヲ得ヌト云フ法律デハナイ、卽チ此點ガ衆議院ノ選擧
法ノ改正案ノ取モ直サズ前日ノ精神トハ變リマス形ニナリマス、併ナガラ變
リマシタ所ガ特ニ尾道ダケ一ツ加ヘマシテ何等ノ差支ヲ認メマセヌノデゴザ
イマス、殊ニ全國各市ノ中デ尾道ダケ獨リ拔ケマス形ニナリマス、若シ萬一
之ヲ省クコトニナリマスト、ソレヨリハ衆議院ノ意見ハ假令尾道ノ三萬人ニ
滿タズトモ之ヲ加ヘタ方ガ適當デアルト云フヤウナ意見デアリマシテ別ニ差
支ハ認メマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=162
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163・船越衞
○男爵船越衞君 唯〓內務次官カラ說明デゴザイマシタガ、能ク分リマセヌ、
是ハ三萬以下デモ出スト云フ主意ニナッタノデゴザイマスカ、モウ一度確メ
テ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=163
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164・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) 唯〓ノ御尋ハツイ伺ヒ落シマシタガ甚ダ失禮デ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=164
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165・船越衞
○男爵船越衞君 三萬以下デモ矢張一人ノ議員ヲ出スト云フコトニ改ッタノ
デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=165
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166・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) サウ改マル形ニヤッタノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=166
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167・船越衞
○男爵船越衞君 サウナッタノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=167
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168・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) 左樣デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=168
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169・船越衞
○男爵船越衞君 サウスルト昨年此議院デ論ノアッタコトハ御承知デゴザイ
マセウ子、是ハ政府ト貴族院ト(聽取シ難シ)ソレガ分ラヌ、獨リダケノ利益
デ變ヘナケレバナラヌト云フコトガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=169
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170・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) 變ヘナケレバナラヌト云フコトハ政府ニ於テハ認
メマセヌガ、特ニ尾道市ガ三萬ニ滿クザルガタメニ是一ツヲ除カ子バナラヌ、
之ニ選擧權ヲ與ヘルコトガ出來ナイト云フ理由ハ認メマセヌ、卽チ衆議院議
員ハ多數ノ市ノ中デ此一ツヲ省カンヨリハ假令三萬ニ滿タザルモ尾道ヲ加ヘ
タ方ガ適當デアルト云フ意見デアリマス、是ニハ別ニ差支ヲ見マセヌ以上ハ
已ムヲ得マセヌコトデアルト認メマシテ同意ヲシマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=170
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171・船越衞
○男爵船越衞君 ソレデハ政府ハ同意ナノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=171
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172・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) 左樣デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=172
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173・松本鼎
○松本鼎君 政府委員ガ三萬以下デモ差支ナイト云フコトデスガ此改正案ニ
ハ見エマセヌ、人數ハ書イテアルケレドモ、本法ハ三萬以上ノ市ヲ以テ一選
擧區トストナッテ居ル、三萬以下デモ宜イト云フコトニ改メルト云フノハ此
案デハドウシテモ分リマセヌ、政府委員ニモウ一應伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=173
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174・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) 成ル程唯今ノ御尋ノ通三萬以下デモ以上デモ强テ
人口ニ據ッテ此選擧權ヲ與ヘル與ヘヌト云フヤウナ分界ヲ附ケタノデハナイ、
卽チ場所ヲ列記シテ是〓ノ市ニ於テ一ノ議員ヲ選擧スル、斯ウ云フ法律ニ
ナッテ居リマス、是マデモ卽チ此主義ヲ執ッテ居リマス、畢竟前年ノハ三萬以
上ノ市ヲ拔出シテ選ンデ列記シタト云フコトニ過ギザルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=174
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175・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 委員ノ選定ニ移ッテ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=175
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176・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 是ハ議長指名デ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=176
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177・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 次ニ東京都制案、伯爵〓棲家〓君外四名提出、
第一讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=177
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178・高野宗順
○子爵高野宗順君 此発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=178
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179・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 今朗讀ヲ致シマス
〔小原書記官朗讀〕
東京都制案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
明治三十四年三月九日
發議者伯爵〓棲家〓子爵岡部長職
男爵松平正直馬屋原彰
木喜德郞
贊成者侯爵黑田長成
外九十一名
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
東京都制
第一章總則
第一款都及其ノ區域
第二款都住民及其ノ權利義務
第三款都條例及都規則
第二章都會
第一款組織及選擧
第二款職務權限及處務規程
第三章都參事會
第一款組織及選擧
第二款職務權限及處務規程
第四章都行政
第一款都吏員ノ組織及任免
第二款都官吏都吏員ノ職務權限及處務規程
第三款給料及給與
第五章都ノ財務
第一款財產及收入
第二款歳入出豫算及決算
第六章都內一部ノ行政
第七章都行政ノ監督
第八章附則
東京都制
第一章總則
第一款都及其ノ區域
第一條從來ノ東京市ノ區域ヲ以テ府縣郡市町村ノ區域外トシ之ヲ都ノ區
域ト爲ス
第二條都ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ法律命令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事
務竝從來法律命令又ハ慣例ニ依リ市又ハ府ニ屬スル事務及將來法律勅令
ニ依リ都ニ屬スル事務ヲ處理ス
第三條都ノ區域ノ變更ヲ要スルトキハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
前項ノ處分ニ付財產處分ヲ要スルトキハ內務大臣ハ關係アル都府縣郡市
參事會及町村會ノ意見ヲ徵シテ之ヲ定ム
第四條都ノ境界ニ關スル爭論ハ關係〓體ノ申請ニ由リ內務大臣之ヲ裁決
ス其ノ裁決ヲ違法ナリトスル關係團體ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得」
前項ノ裁決ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ關係團體ニ交付スヘシ
第五條從來ノ東京市ノ區ハ都ノ區トス
區ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ其ノ財產ニ關スル事務其ノ他法律勅令ニ依
リ區ニ屬スル事務ヲ處理ス
區ノ廢置分合又ハ境界ノ變更ヲ要スルトキハ內務大臣ハ都參事會及關係
區會ノ意見ヲ徵シテ之ヲ定ム此ノ場合ニ於テ財產處分ヲ要スルトキハ併
セテ之ヲ定ムヘシ
區ノ境界ニ關スル爭論ハ關係區ノ申請ニ由リ都參事會之ヲ裁決ス其ノ裁
決ヲ違法ナリトスル區ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ都ノ境界ニ涉ルトキハ第三條及第四條ノ規定ニ依
區ノ名稱ヲ變更スルコトヲ要スルトキハ都會及關係區會ノ議決ヲ經都長
官ノ申請ニ依リ內務大臣之ヲ定ム
本條第四項ノ裁決ニモ前條第二項ノ規定ヲ適用ス
第二款都住民及其ノ權利義務
第六條都內ニ住所ヲ有スル者ハ都住民トス
都住民ハ此ノ法律ニ從ヒ都有財產竝都ノ營造物ヲ共用スル權利ヲ有シ及
都ノ負擔ヲ分任スル義務ヲ負フ
第七條帝國臣民ニシテ公權ヲ有スル滿二十五年以上ノ男子二年以來(一)
都ノ住民ト爲リ(二)都ノ負擔ヲ分任シ及(三)都內ニ於テ直接國稅年額五
圓以上ヲ納ムル者ハ都公民トス但シ公費ヲ以テ貧民救助ヲ受ケタル後二
年ヲ經サル者及禁治產者準禁治產者ハ此ノ限ニ在ラス
前項二年ノ制限ハ場合ニ依リ都會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ之ヲ
特免スルコトヲ得
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲シタル
納稅ヲ以テ其ノ者ノ納稅シタルモノト見做ス
境界變更ニ由リ都ニ編入セラレタル區域ニ於テ其ノ編入前住所ヲ有シ市
町村ノ負擔ヲ分任シ及直接國稅ヲ納メタル年限ハ之ヲ第一項ノ年限ニ通
算ス
第八條都公民ハ都ノ選擧ニ參與シ都ノ名譽職ニ選擧セラルル權利ヲ有シ
及都ノ名譽職ヲ擔任スル義務ヲ負フ
左ニ揭クル者ニ非サレハ名譽職ノ當選ヲ辭シ又ハ退職スルコトヲ得ス
一疾病ニ罹リ公務ニ堪ヘサル者
二業務ノ爲常ニ都內ニ居ルコトヲ得サル者
三滿六十年以上ノ者
四官職ノ爲ニ都ノ公務ヲ執ルコトヲ得サル者
五四年以上都ノ名譽職ニ任シ爾後四年ヲ經過セサル者
六其ノ他都會ノ議決ニ依リ正當ノ理由アリト認メラルル者
前項一乃至六ニ該當セサル者ニシテ名譽職ノ當選ヲ辭シ又ハ退職シ又ハ
其ノ職務ヲ實際ニ執行セサル者ハ都會ノ議決ヲ經テ一年以上六年以下都
公民權ヲ停止シ且場合ニ依リ其ノ停止年期以內他ノ住民ノ負擔スヘキ都
稅ノ率ニ比シ十分ノ一以上四分ノ一以下ヲ增課スルコトヲ得
前項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ヲ違法ナリトスルトキハ行政裁判所ニ
出訴スルコトヲ得
本條第三項ノ處分ハ其ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
本條ノ事件ニ付テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九條都公民ニシテ第七條ニ揭載スル要件ノ一ヲ失フトキハ公民權ヲ失
フ
都公民ハ公權停止中又ハ租稅滯納處分中ハ公民權ヲ停止ス家資分散若ハ
破產ノ宣〓ヲ受ケタルトキヨリ復權ノ決定アルマテ及公權剝奪若ハ停止
ヲ附加スヘキ重罪輕罪ノ爲公判ニ付セラレタルトキヨリ其ノ裁判ノ確定
ニ至ルマテ亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ都ノ公務ニ參與セサルモノトス現役以外ノ兵
役ニ在ル者ニシテ戰時若ハ事變ニ際シ召集セラレタルトキモ亦同シ
都公民ニ限リテ任スヘキ職務ニ在ル者ニシテ本條第一項乃至第三項ノ場
合ニ當ルトキ又ハ第八條第三項ノ處分ヲ受ケ其ノ處分確定シタルトキハ
其ノ職ヲ失フ
前項ノ職務ニ在ル都吏員ニシテ公權剝奪若ハ停止ヲ附加スヘキ重罪輕罪
ノ爲豫審ニ付セラレタルトキハ監督官廳ハ其ノ職ヲ停止スルコトヲ得
第三款都條例及都規則
第十條都ハ此ノ法律ニ規定スルモノノ外都住民ノ權利義務及都ノ事務ニ
關スル事項ニ付キ條例ヲ設クルコトヲ得
都ハ此ノ法律ニ規定スルモノノ外都ノ營造物ニ關スル事項ニ付規則ヲ設
クルコトヲ得
都條例及都規則ハ法律命合ニ牴觸スルコトヲ得ス
都條例及都規則ヲ發行スルニハ一定ノ公〓式ニ依ル其ノ公〓式ハ都條例
ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第二章都會
第一款組織及選擧
第十一條都會議員ハ都ノ選擧人其ノ被選擧權アル者ヨリ之ヲ選擧ス
議員ノ定員ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ムヘシ但シ六十人ヲ超
ユルコトヲ得ス
第十二條都公民ハ總テ選擧權ヲ有ス但シ公民權停止中ノ者及第九條第三
項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラス
帝國臣民ニシテ公權ヲ有シ直接都稅ヲ納ムル者其ノ額公民ノ最多ク直接
都稅ヲ納ムル者三名中ノ一名ヨリモ多キトキハ第七條ノ要件ニ當ラスト
雖選擧權ヲ有ス但シ禁治產者準禁治產者及第九條第二項ノ公民權停止ノ
條件又ハ同條第三項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラス
法人ニシテ前項ノ場合ニ當ルトキ亦同シ
第十三條都ノ區ヲ以テ都會議員ノ選擧區トス各選擧區ヨリ選擧スヘキ議
員ノ員數ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
各選擧區ヨリ選擧スヘキ議員ノ員數ハ三名ヲ下ルコトヲ得ス
第十四條選擧人ハ各選擧區ニ於テ之ヲ三級ニ分ツヘシ
選擧人ハ住所ニ依テ所屬ノ選擧區ヲ定ム其ノ都内ニ住所ヲ有セサル者ハ
直接都稅ノ賦課ヲ受ケタル物件又ハ營業所ノ所在ニ依リ若數選擧區ニ亙
リテ賦課ヲ受ケタル物件又ハ營業所アルトキハ稅額ノ最多キ物件又ハ營
業所ノ所在ニ依リ又都稅ノ賦課ヲ受ケタル物件又ハ營業所ナキトキハ滯
在ノ地ニ依テ之ヲ定ム但シ本文ノ規定ニ依リ所屬ノ選擧區ヲ定ムルコト
ヲ得サルトキハ本人ノ申出ニ依テ之ヲ定ムヘシ
選擧人中直接都稅ノ納額最多キ者ヲ合セテ選擧人總員ノ納ムル總額ノ三
分ノ一ニ當ルヘキ者ヲ一級トス
一級選擧人ヲ除ク外直接都稅ノ納額多キ者ヲ合セテ選擧人總員ノ納ムル
總額ノ三分ノ一ニ當ルヘキ者ヲ二級トシ兩餘ノ選擧人ヲ三級トス
各級ノ間納稅額兩級ニ跨ル者アルトキハ上級ニ入ルヘシ又兩級ノ間ニ同
額ノ納稅者二名以上アルトキハ都內ニ住所ヲ有シタル年數ノ多キ者ヲ以
テ上級ニ入ル若住所ヲ有シタル年數ニ依リ難キトキハ年長者ヲ以テシ年
齡ニモ依リ難キトキハ區長抽籤ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
各選擧區ヨリ選擧スヘキ議員ハ每級各別ニ其ノ三分ノ一ヲ選擧スルモノ
トス若等分シ難キトキハ端數二名ノ場合ハ之ヲ一級及二級ニ配當シ一名
ノ場合ハ之ヲ二級ヨリ選出スヘキ員數ニ加フヘシ
被選擧人ハ同級內ノ者ニ限ラス又其ノ選擧區内ノ者ニ限ラサルモノトス」
本條ノ直接都稅額ハ選擧名簿調製期日ノ屬スル會計年度ノ前年度ノ賦課
額ニ依ルヘシ
第十五條選擧權ヲ有スル都公民ニシテ直接國稅年額十圓以上ヲ納ムル者
ハ總テ被選擧權ヲ有ス
左ニ揭クル者ハ被選擧權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ經過セサ
ル者亦同シ
-都ノ官吏及有給吏員
二檢事警察官吏及收稅官吏
三神官神職僧侶其ノ他諸宗〓師
四小學校〓員
前項外ノ官吏ニシテ當選シ之ニ應セムトスルトキハ所屬長官ノ許可ヲ
受クヘシ
都ノ爲請負ヲ爲ス者又ハ都ノ爲請負ヲ爲ス法人ノ役員ハ被選擧權ヲ有セ
ス
第十六條都會議員ハ名譽職トス
都會議員ノ任期ハ四年トシ每二年各級ニ於テ其ノ半數ヲ改選ス若各級ノ
議員二分シ難キトキハ先ツ多數ノ一半ヲ解任ス初囘ノ半數改選ニ於テ解
任スヘキ者ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
各級議員ノ定數若ハ其ノ配當ヲ變更シタル爲任期滿限前解任ヲ要スル者
ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第十七條都會議員中闕員アルトキ及各級議員ノ定數若ハ其ノ配當ヲ變更
シタル爲議員ノ選擧ヲ要スルトキハ三箇月以內ニ之ヲ行フヘシ
補闘議員ハ前任者ノ殘任期間在任ス
補闕議員ヲ除ク外本條第一項ニ依リ選擧セラレタル議員ハ前條第二項ノ
結果ニ依リ次ノ改選期又ハ其ノ次ノ改選期迄在任ス但シ新ニ選擧セラレ
タル議員二人以上ニシテ改選期ヲ異ニスヘキトキハ次ノ改選期ニ於テ解
任スヘキ者ハ抽籖ヲ以テ之ヲ定ム
定期改選及補闕選擧ハ前任者ノ選擧セラレタル選擧區及選擧等級ニ從テ
之ヲ行フヘシ
第十八條區長ハ每年九月十五日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ十月十五日
迄ニ其ノ選擧區ノ選擧人名簿ヲ調製スヘシ
選擧人名簿ハ十月二十日ヨリ十五日間區役所ニ於テ關係者ノ縱覽ニ供ス
ヘシ若關係者ニ於テ異議アルトキハ縱覽期限內ニ之ヲ都長官ニ申立ツル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ都長官ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ十日以內
ニ之ヲ決定シ其ノ決定ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ區長直ニ之ヲ修
正スヘシ
前項都長官ノ決定ヲ違法ナリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
選擧人名簿ハ十二月十五日ヲ以テ確定期限トシ確定名簿ハ次年ノ十二月
十四日迄之ヲ据置クヘシ
訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ區長ハ確定期限ノ前後ニ拘
ラス直ニ之ヲ修正スヘシ
本條ニ依リ區長ニ於テ名簿ヲ修正シタルトキハ其ノ要領ヲ告示スヘシ
確定名簿ニ登錄セラレサル者ハ選擧ニ參與スルコトヲ得ス但シ選擧人名
簿ニ記載セラルヘキ判決書ヲ所持シ選擧ノ當日投票所ニ至ルモノハ此ノ
限ニ在ラス
確定名簿ニ登錄セラレタル者選擧權ヲ有セサルトキハ選擧ニ參與スルコ
トヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
異議ノ決定確定シ若ハ訴訟ノ判決アリタルニ依リ名簿無效トナリタルト
キハ九月十五日ノ現在ニ依リ更ニ名簿ヲ調製スヘシ但シ名簿調製ノ期日
迄ニ選擧權ヲ失ヒタル者ハ名簿ニ登錄スル限ニ在ラス
前項名簿調製ノ期日縱覽修正及確定ニ關スル期限等ハ都長官ノ定ムル所
一枚数
第十九條選擧ハ都長官ノ告示ニ依リ之ヲ行フ其ノ告示ニハ選擧ヲ行フヘ
キ選擧區及等級選擧ノ場所日時及每區每級ヨリ選擧スヘキ議員ノ員數ヲ
記載シ選擧ノ日ヨリ少クトモ二十日前ニ之ヲ發スヘシ
各級ニ於テ選擧ヲ行フ順序ハ先ツ三級ノ選擧ヲ行ヒ次テ二級ノ選擧ヲ行
ヒ次ニ一級ノ選擧ヲ行フヘシ
第二十條區長ハ選擧長ト爲リ選擧會ヲ開閉シ會場ノ取締ニ任ス
區長ハ臨時ニ其ノ選擧區內ニ於ル選舉人中ヨリ二名乃至六名ノ立會人ヲ
選任スヘシ
選擧立會人ハ名譽職トス
第二十一條選擧人ノ外選擧會場ニ入ルコトヲ得ス但シ選擧會場ノ事務ニ
從事スル者選擧會場ヲ監視スル職權ヲ有スル者又ハ警察官吏ハ此ノ限ニ
在ラス
選擧人ハ選擧會場ニ於テ協議又ハ勸誘ヲ爲スコトヲ得ス
第二十二條選擧ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選擧人ハ選擧ノ當日自ラ選擧會場ニ到リ選舉人名簿ノ對照ヲ經投票簿ニ
捺印シ投票スヘシ
選擧人ハ選擧會場ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選擧人一名ノ氏名ヲ記載シテ
投凾スヘシ但シ一級選擧ニ於テハ定數ノ被選擧人ノ氏名ヲ連記スヘシ
投票用紙ニハ選擧人ノ氏名ヲ記載スルコトヲ得ス
自ラ被選擧人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ爲スコトヲ得ス
投票用紙ハ都長官ノ定ムル所ニ依リ一定ノ式ヲ用ウヘシ
選擧人名簿ノ縱覽期限後選擧人ノ所屬選擧區ヲ定ム要件ニ異動ヲ生スル
コトアルモ其ノ選擧人ハ前所屬ノ選擧區ニ於テ選擧ヲ行フヘシ
第二十三條第十二條第二項及第三項ニ依リ選擧權ヲ有スル者ハ代人ヲ出
シテ選擧ヲ行フコトヲ得但シ滿二十五年以上ノ男子ニ非サル者及法人ハ
必ス代人ヲ以テスヘシ
代人ハ帝國臣民ニシテ公權ヲ有シ且公權停止中ニ非サル滿二十五年以上
ノ男子ニ限ル但シ一人ニシテ數人ノ代理ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ代人ハ委任狀ヲ選擧長ニ示スヘシ但シ法律上ノ代人ハ此ノ限ニ在
ラス
第二十四條左ノ投票ハ之ヲ無效トス但シ連記投票ニ在テハ第一號及第五
號ニ該當スルモノ及記載ノ人員其ノ選擧スヘキ定數ニ過キタルモノハ之
ヲ無效トシ第三號及第四號ニ該當スルモノハ其ノ部分ノミヲ無效トス
ー成規ノ用紙ヲ用ヰサルモノ
二一票中二人以上ノ被選擧人ヲ記載シタルモノ
三被選擧人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
四被選擧權ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
五被選擧人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ爵位職業身分住所
又ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二十五條投票ノ拒否竝效力ハ選擧立會人之ヲ議決ス可否同數ナルトキ
ハ選擧長之ヲ決スヘシ
第二十六條都會議員ノ選擧ハ有效投票ノ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選ト
ス投票ノ數相同キトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選擧長抽籤シテ
其ノ當選者ヲ定ム
同時ニ補闕員數名ヲ選擧スルトキハ投票ノ數多キ者投票ノ數相同キトキ
ハ年長者ヲ以テ殘任期ノ長キ前任者ノ補闘ト爲シ同年月ナルトキハ選擧
長抽籤シテ之ヲ定ム
第二十七條選擧長ハ選擧錄ヲ製シテ選擧ノ〓末ヲ記載シ選擧ヲ終リタル
後之ヲ朗讀シ選擧立會人二名以上ト共ニ之ニ署名シ投票選擧人名簿其ノ
他關係書類ト共ニ選擧及當選ノ效力確定スルニ至ル迄之ヲ保存スヘシ但
シ選擧及當選ノ效力ニシテ選擧人名簿確定ノ日ヨリ一年以內ニ確定シタ
ル場合ニ於テハ選擧人名簿ハ仍名簿確定ノ日ヨリ一年間之ヲ保存スヘ
シ
第二十八條當選者定マリタルトキハ選擧長ハ直ニ當選者ニ當選ノ旨ヲ〓
知シ且同時ニ選擧錄ノ寫ヲ添へ當選者ノ住所氏名ヲ都長官ニ報告スヘシ」
當選者ニシテ當選ヲ辭セムトスルトキハ當選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ十
日以内ニ之ヲ都長官ニ申立ツヘシ
一人ニシテ數級若ハ數選擧區ノ選擧ニ當リタルトキハ最終ニ當選ノ告知
ヲ受ケタル日ヨリ十日以內ニ何レノ選擧ニ應スヘキカヲ都長官ニ申立ツ
ヘシ其ノ期間內ニ之ヲ申立テサル者ハ總テ其ノ當選ヲ辭シタルモノト看
做ス
定期改選增員選擧補關選擧等ヲ同時ニ行ヒタル場合ニ於テ一人ニシテ其
ノ數選舉ニ當リタルトキハ前項ノ例ニ依ル
第十五條第三項ノ官吏ニシテ當選シタル者ニ關シラハ本條ニ定ムル期間
ヲ二十日以內トス
第二十九條都會議員ノ當選ヲ辭シタル者アルトキハ更ニ選舉ヲ行フヘシ
二人以上投票同數ニシテ年長ニ由テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルト
キハ年少ニ由テ當選セサリシ者ヲ以テ當選トス但シ年少ニ由テ當選セサ
リシ者二人以上アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選擧長抽籤シ
テ當選者ヲ定ム
二人以上投票同數ニシテ抽籤ニ依テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルト
キハ抽籤ノ爲常選セサリシ者ヲ以テ當選トス但シ抽籤ノ爲當選セサリシ
者二人以上アルトキハ選擧長抽籤シテ其ノ當選者ヲ定ム
第三十條當選者其ノ當選ヲ辭セサルトキハ都長官ハ直ニ其ノ住所氏名
ヲ告示スヘシ
第三十一條選擧人選擧若ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選擧ニ關シ
テハ選擧ノ日ヨリ當選ニ關シテハ前條告示ノ日ヨリ十四日以內ニ之ヲ都
長官ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ都參事會ノ決定ニ付スヘシ
都長官ニ於テ選擧若ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ第一項申立ノ有
無ニ拘ラス第二十八條第一項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ都參
事會ノ決定ニ付スルコトヲ得
本條都參事會ノ決定ヲ違法ナリトスル選擧人ハ行政裁判所ニ出訴スルコ
トヲ得
本條ノ事件ニ付テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十二條選擧ノ規定ニ違背スルコトアルトキハ其ノ選擧ヲ無效トス但
シ選擧ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞ナキモノハ此ノ限ニ在ラス
當選者ニシテ被選擧權ヲ有セサルトキハ其ノ當選ヲ無效トス
第三十三條選擧若ハ當選ニシテ無效ト確定シタルトキハ更ニ選擧ヲ行フ
ヘシ但シ得票數ノ査定ニ錯誤アリタル爲又ハ被選擧權ヲ有セサル爲當選
無效ト確定シタルトキハ第二十六條及第二十八條ノ例ニ依ル
第三十四條都會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被
選擧權ノ有無ハ第九條第四項ノ場合ヲ除ク外都會之ヲ決定ス但シ議員ハ
自己ノ資格ニ關スル會議ニ於テ辯明スルコトヲ得ルモ其ノ議決ニ加ハル
コトヲ得ス
都長官ニ於テ都會議員中被選擧權ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ
都會ノ決定ニ付スヘシ
失職者トセラレタル者本條都會ノ決定ヲ違法ナリトスルトキハ行政裁判
所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
都會議員ハ其ノ被選擧權ヲ有セストスル決定確定シ又ハ判決アル迄ハ會
議ニ列席シ議事ニ參與スルノ權ヲ失ハス
第三十五條前條第一項ノ決定其ノ他本款ニ規定スル異議ノ決定ハ直ニ之
ヲ〓示スヘシ
第三十六條都會議員ノ選擧ニ付テハ衆議院議員選擧ニ關スル罰則ヲ準用
ス
第二款職務權限及處務規程
第三十七條都會ノ議決ヲ經ヘキ事件左ノ如シ
歲入出豫算ヲ定ムル事
二決算報告ニ關スル事
三法律命令ニ定ムルモノヲ除ク外使用料手數料加入金都稅及夫役現
品ノ賦課徵收ニ關スル事
四不動產ノ處分竝買受讓受ニ關スル事
五基本財產及積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
六歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除ク外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權
利ノ扼棄ヲ爲ス事
七財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法律命令中別段ノ規定ア
ルモノハ此ノ限ニ在ラス
八其ノ他法律命令ニ依リ都會ノ權限ニ屬スル事項
第三十八條都會ハ其ノ權限ニ屬スル事項ヲ都參事會ニ委任スルコトヲ得
第三十九條都會ハ法律命令ニ依リ其ノ權限ニ屬スル選擧ヲ行フヘシ
第四十條都會ハ都ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ都長官若ハ內務大
臣ニ呈出スルコトヲ得
第四十一條都會ハ官廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
都會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ於テ都會招集ニ應セス若ハ成
立セス又ハ意見ヲ呈出セサルトキハ當該官廳ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直
ニ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十二條都會議員ハ選擧人ノ指示若ハ委囑ヲ受クヘカラス
第四十三條都會ハ議員中ヨリ議長副議長各一名ヲ選擧スヘシ
議長副議長ハ議員ノ定期改選毎ニ之ヲ改選スヘシ
第四十四條議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長副議長共ニ故障アル
トキハ臨時ニ議員中ヨリ假議長ヲ選擧スヘシ
第四十五條都長官及其ノ委任若ハ囑託ヲ受ケタル官吏吏員ハ會議ニ列席
シテ議事ニ參與スルコトヲ得但シ議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項ノ列席者ニ於テ發言ヲ求ムルトキハ議長ハ之ヲ許スヘシ但シ之カ爲
議員ノ演說ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第四十六條都會ハ通常會及臨時會トス
通常會ハ每年一囘之ヲ開ク其ノ會期ハ三十日以內トス臨時會ハ必要アル
場合ニ於テ其ノ事件ニ限リ之ヲ開ク其ノ會期ハ七日以內トス
臨時會ニ付スヘキ事件ハ豫メ之ヲ告示スヘシ但シ其ノ開會中急施ヲ要ス
ル事件アルトキハ都長官ハ直ニ之ヲ其ノ會議ニ付スルコトヲ得
第四十七條都會ハ都長官之ヲ招集ス若議員定員四分ノ一以上ノ請求アル
場合ニ於テ相當ノ理由アリト認ムルトキハ都長官ハ都會ヲ招集スヘシ
招集ハ開會ノ日ヨリ少クトモ十四日前ニ告示スヘシ但シ急施ヲ要スル場
合ハ此ノ限ニ在ラス
都會ハ都長官之ヲ開閉ス
第四十八條都會ハ議員定員ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコ
トヲ得ス
第四十九條都會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ可
否スル所ニ依ル
第五十條議長及議員ハ自己若ハ其ノ父母祖父母妻子孫兄弟姉妹ノ一身
上ニ關スル事件ニ付テハ都會ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ議事ニ參與ス
ルコトヲ得ス
第五十一條都會ニ於テ名譽職參事會員ノ改選ヲ行フトキハ一人一票ニ限
リ匿名トシ且投票ニ被選擧人一名ノ氏名ヲ記載スヘシ其ノ有效投票ノ最
多數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス其ノ他ハ第二十二條第二十四條及第二十
六條ノ規定ヲ準用ス
前項ノ規定ハ名譽職參事會員ノ補充員ノ選擧其ノ他同時ニ二名以上同一
ノ職務ヲ有スル職員ヲ選擧スヘキ場合ニ之ヲ準用ス
前二項ノ場合ヲ除ク外法律命令ノ規定ニ依リ都會ニ於テ選擧ヲ行フトキ
ハ一名每ニ匿名投票ヲ爲シ有效投票ノ過半數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス
若過半數ヲ得タルモノナキトキハ最多數ヲ得タル者二名ヲ取リ之ニ就キ
決選投票ヲ爲サシム其ノ二名ヲ取ルニ當リ同數者アルトキハ年長者ヲ取
リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム此ノ決選投票ニ於テ投票同數
ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ヲ以テ當選者ヲ定ム其ノ
他ハ第二十二條第二十四條及第二十六條ノ規定ヲ準用ス
前項ノ選擧ニ付テハ都會ハ其ノ議決ヲ以テ指名推選ノ法ヲ用ウルコトヲ
得
都會ニ於テ行ヒタル選擧ノ效力若ハ當選ノ效力ニ付都會議員又ハ都長官
ニ於テ異議アル場合ニ關シテハ第三十一條乃至第三十三條及第三十五條
ノ規定ヲ準用ス
第五十二條都會ノ會議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
都長官ヨリ傍聽禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二議長若ハ議員三名以上ノ發議ニ依リ傍聽禁止ヲ可決シタルトキ
前項議長若ハ議員ノ發議ハ討論ヲ須ヒス其ノ可否ヲ決スヘシ
第五十三條議長ハ會議ノ事ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開
閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第五十四條議員ハ會議中無禮ノ語ヲ用ヰ又ハ他人ノ身上ニ涉リ言論スル
コトヲ得ス
第五十五條會議中此ノ法律若ハ會議規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ル
議員アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ若ハ發言ヲ取消サシメ命ニ從ハサルト
キハ議長ハ當日ノ會議ヲ終ル迄發言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシメ
必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
議場騷擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉
ツルコトヲ得
第五十六條傍聽人公然可否ヲ表シ又ハ喧騒ニ涉リ其ノ他會議ノ妨害ヲ爲
ストキハ議長ハ之ヲ制止シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ退場セシメ必要ナル
場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
傍聽席騒擾ナルトキハ議長ハ總テノ傍聽人ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ
於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
第五十七條議場ノ秩序ヲ紊リ又ハ會議ノ妨害ヲ爲スモノアルトキハ議員
若ハ第四十五條ノ列席者ハ議長ノ注意ヲ喚起スルコトヲ得
第五十八條都會ニ書記ヲ置キ議長ニ隷屬シテ庶務ヲ處理セシム
書記ハ議長之ヲ任免ス
第五十九條議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ製シ會議ノ〓末竝出席議員ノ氏名
ヲ記錄セシムヘシ會議錄ハ議長及議員二名以上之ニ署名スルヲ要ス其ノ
議員ハ都會ニ於テ之ヲ定ムヘシ
議長ハ會議錄ヲ添へ會議ノ結果ヲ都長官ニ報〓スヘシ
第六十條都會ハ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設ケ内務大臣ノ許可ヲ受
クヘシ
會議規則ニハ此ノ法律竝會議規則ニ違背シタル議員ニ對シ都會ノ議決ニ
依リ五日以内出席ヲ停止スル規定ヲ設クルコトヲ得
第三章都參事會
第一款組織及選擧
第六十一條都ニ都參事會ヲ置キ都長官都高等官三名及名譽職參事會員八
名ヲ以テ之ヲ組織ス都高等官ニシテ都參事會員タルヘキ者ハ內務大臣之
マヨ
第六十二條名譽職參事會員ハ都會ニ於テ議員中ヨリ之ヲ選擧スヘシ
都會ハ名譽職參事會員ト同數ノ補充員ヲ選擧スヘシ
名譽職參事會員中闕員アルトキハ都長官ハ補充員ノ中ニ就キ之ヲ補闕ス
其ノ順序ハ選擧同時ナルトキハ投票數ニ依リ投票同數ナルトキハ年長者
ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ニ依リ選擧ノ時ヲ異ニスルトキハ選擧ノ前
後ニ依ル仍關員ヲ生シタル場合ニ於テハ臨時補闕選擧ヲ行フヘシ
補闕員ハ前任者ノ殘任期間在職スルモノトス
名譽職參事會員及其ノ補充員ハ都會議員ノ定期改選每ニ之ヲ改選スヘシ
但シ名譽職參事會員ハ後任者就職ノ日迄在職スルモノトス
退任者ハ再選セラルルコトヲ得
第六十三條都參事會ハ都長官ヲ以テ議長トス都長官故障アルトキハ高等
官參事會員議長ノ職務ヲ代理ス
第二款職務權限及處務規程
第六十四條都參事會ノ職務權限左ノ如シ
一都會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決ス
ル事
二都會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ都長官ニ於テ之ヲ
招集スルノ暇ナシト認ムルトキ都會ニ代テ議決スル事
三都長官ヨリ都會ニ提出スル議案ニ付都長官ニ對シ意見ヲ述フル
事
四都會ノ議決シタル範圍內ニ於テ財產及營造物ノ管理ニ關シ重要ナ
ル事項ヲ議決スル事
五都費ヲ以テ支辨スヘキ工事ノ執行ニ關スル規定ヲ議決スル事但シ
法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
六都ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事項ヲ議決スル事
七其ノ他法律命令ニ依リ都參事會ノ權限ニ屬スル事項
第六十五條都參事會ハ名譽職參事會員中ヨリ委員ヲ選擧シ之ヲシテ都ニ
係ル出納ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ檢査ニハ都長官又ハ其ノ指命シタル官吏若ハ吏員之ニ立會フコト
ヲ要ス
第六十六條第四十條第四十一條第四十五條及第五十八條ノ規定ハ都參事
會ニ之ヲ準用ス
第六十七條都參事會ハ都長官之ヲ招集ス若名譽職參事會員半數以上ノ請
求アル場合ニ於テ相當ノ理由アリト認ムルトキハ都長官ハ都參事會ヲ招
集スヘシ
都參事會ノ會期ハ都長官之ヲ定ム
第六十八條都參事會ノ會議ハ傍聽ヲ許サス
第六十九條都參事會ハ議長又ハ其ノ代理者及名譽職參事會員ノ半數以上
出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第六十四條第二項ノ議決ヲ爲ストキハ都長官及都高等官參事會員ハ其ノ
議決ニ加ハルコトヲ得ス
都參事會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ可否スル
所ニ依ル
會議ノ〓末ハ之ヲ會議錄ニ記載シ議長及參事會員二名以上之ニ署名スヘ
シ
第七十條第五十條ノ規定ハ都參事會ニ之ヲ準用ス但シ同條ノ規定ニ依
リ參事會員ノ數減少シテ前條第一項ノ數ヲ得サルトキハ都長官ハ補充員
ニシテ其ノ事件ニ關係ナキ者ヲ以テ第六十二條第三項ノ順序ニ依リ臨時
之ニ充テ仍其ノ數ヲ得サルトキハ都會議員ニシテ其ノ事件ニ關係ナキ者
ヲ臨時ニ指名シ其ノ闕員ヲ補充スヘシ
議長及其ノ代理者共ニ除席セラレタルトキハ年長ノ會員ヲ以テ假議長ト
爲スヘシ
第四章都行政
第一款都吏員ノ組織及任免
第七十一條每區ニ區長一名及書記ヲ置ク區長及書記ハ有給吏員トス
區長ハ區會ノ推薦ニ依リ都長官之ヲ選任シ其ノ任期ヲ六年トス
都長官ハ區會ノ推薦適當ナラスト認ムルトキハ再推薦ヲ爲サシメ再推薦
モ亦適當ナラスト認ムルトキ及區會ニ於テ推薦若ハ再推薦ヲ爲ササルト
キハ一年以內ノ期間ヲ定メ臨時代理者ヲ選任シ又ハ都ノ官吏若ハ吏員ヲ
シテ區長ノ職務ヲ管掌セシムルコトヲ得
區長闕員ナルカ又ハ故障アル場合ニ於テ必要ト認ムルトキハ都長官ハ相
當ノ期間ヲ定メテ前項ノ規定ヲ準用スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ故障ア
ル區長ハ其ノ職ヲ停止セラレタルモノトス
臨時代理者ノ給料其ノ他ノ給與ハ區ノ負擔トシ其ノ額ハ都長官之ヲ定
ム
區書記ハ區長ノ上申ニ依リ都長官之ヲ任免ス
區書記ノ定員ハ都長官都會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
第七十二條前條ノ吏員ノ外都ハ有給ノ吏員ヲ置クコトヲ得其ノ定員ハ都
會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
前項ノ都更員ハ都長官之ヲ任免ス
第七十三條都ニ都收入役ヲ置キ官吏吏員ノ中ニ就キ都長官之ヲ命ス
每區ニ區收入役ヲ置キ區書記ノ中ニ就キ都長官之ヲ命ス
第七十四條都ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ臨時若ハ常設ノ委員ヲ置ク
コトヲ得
委員ハ名譽職トス
委員ハ都會議員ノ選擧權ヲ有スル都公民中ヨリ都會之ヲ選擧シ都長官又
ハ其ノ命ヲ受ケタル高等官參事會員ヲ以テ委員長トス
委員ノ定員任期其ノ他必要ナル事項ハ第一項ノ郡條例中ニ之ヲ定ムヘシ
第七十五條都吏員ハ都長官ニ申請シ其ノ許可ヲ得ルニ非サレハ退職スル
コトヲ得ス但シ退職申請後三箇月ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
名譽職吏員ニ於テ退職ヲ申請シタル場合ニハ都長官ハ都會ノ議決ニ付ス
ヘシ
第七十六條都收入役區收入役其ノ他都吏員元身保證及賠償責任ニ關シ
必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二款都官吏都吏員ノ職務權限及處務規程
第七十七條都長官ハ都ヲ統轄シ之ヲ代表ス
都長官ノ擔任スル事務ノ〓目左ノ如シ
一都條例及都規則ヲ發布スル事
二都費ヲ以テ支辨スヘキ事件ヲ執行スル事
三都會及都參事會ノ議決ヲ經ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發スル事
四財產及營造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事
務ヲ監督スル事
五收入支出ヲ命令シ及會計ヲ監督スル事
六證書及公文書類ヲ保管スル事
七法律命令又ハ都會若ハ都參事會ノ議決ニ依リ使用料手數料加入金
都稅及夫役現品ヲ賦課徵收スル事
八其ノ他法律命令ニ依リ都長官ノ職權ニ屬スル事項
第七十八條都長官ハ議案ヲ都會ニ提出スル前之ヲ都參事會ノ審査ニ付シ
若都參事會ト其ノ意見ヲ異ニスルトキハ都參事會ノ意見ヲ議案ニ添ヘ都
會ニ提出スヘシ
第七十九條都長官ハ都ノ行政ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ區長
ニ委任スルコトヲ得
都長官ハ都ノ行政ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ都吏員ニ臨時代
理セシムルコトヲ得
第八十條都長官ハ都吏員ヲ監督シ區長及委員ヲ除ク外都吏員ニ對シ懲
戒處分ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責二十五圓以下ノ過怠金及解職
トス
都長官ハ都吏員ノ懲戒處分ヲ行ハムトスル前其ノ停職ヲ命シ竝給料ヲ支
給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間都ノ公職ニ選擧セラレ若ハ任命セ
ラルルコトヲ得ス
第八十一條都會若ハ都參事會ノ議決若ハ選擧其ノ權限ヲ越エ又ハ法律命
令ニ背クト認ムルトキハ都長官ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮
ニ依リ理由ヲ示シテ直ニ其ノ議決若ハ選擧ヲ取消シ又ハ議決ニ付テハ再
議ニ付シタル上仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ之ヲ取消スヘシ
前項取消處分ヲ違法ナリトスル都會若ハ都參事會ハ行政裁判所ニ出訴ス
ルコトヲ得
都會若ハ都參事會ノ議決公益ニ害アリト認ムルトキハ都長官ハ自己ノ意
見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ
議決ヲ改メサルトキハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請フヘシ
第八十二條都會若ハ都參事會ニ於テ都ノ收支ニ關シ不適當ノ議決ヲ爲シ
タルトキハ都長官ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ
示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ內務大臣ニ具狀シテ
指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ内務大臣ノ指揮ヲ
請フコトヲ得
第八十三條都長官ハ必要アル場合ニ於テハ期日ヲ定メテ都會ノ停會ヲ命
スルコトヲ得
第八十四條都會若ハ都參事會招集ニ應セス又ハ成立セサルトキハ都長官
ハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ處分スルコトヲ
得第五十條第七十條ノ場合ニ於テ會議ヲ開クコト能ハサルトキ亦同シ
都會若ハ都參事會ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス又ハ都會ニ於テ
其ノ招集前〓示セラレタル事件ニ關シ議案ヲ議了セサルトキハ前項ノ例
二飲ん
都參事會ノ決定若ハ裁決スヘキ事項ニ關シテハ本條第一項第二項ノ例ニ
依ル此ノ場合ニ依テ都長官ノ處分ニ不服アル者ハ各本條ノ規定ニ準シ訴
訟ヲ提起スルコトヲ得
本條ノ處分ハ次ノ會期ニ於テ之ヲ都會若ハ都參事會ニ報告スヘシ
第八十五條都參事會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ都長官ニ
於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ都長官ハ專決處分シ次ノ會期
ニ於テ其ノ處分ヲ都參事會ニ報告スヘシ
第八十六條都參事會ノ權限ニ屬スル事項ハ其ノ議決ニ依リ都長官ニ於テ
專決處分スルコトヲ得
第八十七條官吏ノ都行政ニ關スル職務關係ハ此ノ法律中規定アルモノヲ
除ク外其ノ國ノ行政ニ關スル職務關係ノ例ニ依ル
第八十八條都收入役ハ都ノ出納其ノ他會計事務及法律命令ノ定ムル所ニ
依リ國ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌ル
都收入役故障アルトキハ都長官ノ命ヲ受ケタル官吏若ハ吏員其ノ職務ヲ
代理ス
第八十九條區長ハ都長官ノ指揮監督ヲ承ケ區ノ公共事務ヲ管掌シ區ヲ代
表ス
第七十八條第二項第二號乃至第七號ノ規定ハ區ノ公共事務ニ關シテハ之
ヲ區長ニ準用ス但シ都費トアルハ區費都會又ハ都參事會トアルハ區會ヲ
以テ之ニ該當スルモノトス
區長ハ都長官ノ指揮監督ヲ承ケ都長官ノ委任ニ依リ又ハ法律命令ノ定ム
ル所ニ依リ區內ニ關スル國及都ノ行政事務ヲ管掌シ又ハ都長官ノ命令ヲ
承ケ區內ニ關スル國及都ノ行政事務ヲ補助執行ス
本條ニ揭載スル事務ヲ執行スルカ爲ニ要スル費用ハ都ノ負擔トス
區長故障アルトキハ上席區書記其ノ職務ヲ代理ス
第九十條區收入役ハ區ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌ル
區收入役ハ都收入役ノ指揮監督ヲ承ケ都收入役ノ委任ニ依リ又ハ法律命
令ノ定ムル所ニ依リ區內ニ關スル國及都ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌リ又
ハ都收入役ノ命令ヲ承ケ區內ニ關スル都收入役ノ事務ヲ補助執行ス
本條ニ揭載スル事務ヲ執行スル爲ニ要スル費用ハ都ノ負擔トス
區收入役故障アルトキハ區長ノ命ヲ受ケタル區書記其ノ職務ヲ代理ス
第九十一條區書記ハ區長ノ命令ヲ承ケ事務ニ從事ス
第九十二條前二條ニ規定スル外都ノ有給吏員ハ都長官ノ命令ヲ承ケ事務
ニ從事ス
第九十三條委員ハ都長官ノ指揮監督ヲ承ケ都有財產若ハ都ノ營造物ヲ管
理シ其ノ他都行政事務ノ一部ヲ分掌シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ處辨
ス
第九十四條都ノ事務ニ關スル處務規程ハ都長官之ヲ定ム
第三款給料及給與
第九十五條有給都吏員ノ給料額竝旅費額及其ノ支給方法ハ都長官之ヲ定
ム
第九十六條都會議員名譽職參事會員其ノ他名譽職員ハ職務取扱ノ爲要ス
ル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
費用辨償額及其ノ支給方法ハ都會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ都長
官之ヲ定ム若之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ内務大臣之ヲ定ム
第九十七條有給都吏員ノ退隱料退職給與金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ
都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ム
第九十八條退隱料退職給與金遺族扶助料及費用辨償ノ給與ニ關シ異議ア
ルトキハ之ヲ都長官ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ都參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ヲ違法ナリトスル
者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
本條ノ事件ニ付テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九十九條給料旅費退隱料退職給與金遺族扶助料費用辨償其ノ他諸給與
ハ都ノ負擔トス但シ區會議員ノ費用辨償ハ區ノ負擔トス
第五章都ノ財務
第一款財產及收入
第百條都ハ不動產其ノ他消費ノ豫定ナキ金穀等ヲ以テ基本財產ト爲シ
之ヲ維持スル義務アリ都ハ特定ノ目的ノ爲特別ノ基本財產ヲ設ケ若ハ金
穀ヲ積立ツルコトヲ得比ノ場合ニ於テハ前項ノ基本財產ニ加入スヘキ收
入ノ全部若ハ一部ヲ特別ノ基本財產若ハ積立金穀等ニ加入スルコトヲ
得
第百一條舊來ノ慣行ニ依リ都住民中特ニ財產ヲ使用スル權利ヲ有スル者
アルトキハ其ノ舊慣ニ依ル
都住民ニシテ前項ノ財產ヲ新ニ使用スル權利ヲ得ントスル者アルトキハ
都會ノ議決ヲ經テ之ヲ許可スルコトヲ得
本條財產ノ使用方法ニ關シテハ都規則ヲ設クルコトヲ得
第百二條前條第二項ノ使用ニ關シテハ使用料若ハ一時ノ加入金ヲ徵收シ
又ハ使用料加入金ヲ共ニ徵收スルコトヲ得
第百三條都ハ必要ナル場合ニ於テハ第百一條ノ使用者ニ對シ其ノ使用ヲ
止メ若ハ制限シ又ハ第百一條第一項ノ使用者ヨリ使用料ヲ徵收スルコト
ヲ得
第百四條都ハ營造物ノ使用ニ付使用料ヲ徵收シ又ハ特ニ一個人ノ爲ニス
ル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第百五條財產又ハ營造物ノ使用方法ニ關スル都規則ニハ過料二圓以下ヲ
科スルノ規定ヲ設クルコトヲ得其ノ處分及徵收ニ關シテハ第百十條第二
項ノ規定ヲ準用ス
第百六條財產ノ賣却貸與工事ノ請負及物件ノ調達ハ公ノ入札ニ付スヘシ
但シ臨時急施ヲ要スルトキ又ハ入札ノ價額其ノ費用ニ比シテ得失相償ハ
サルトキ又ハ都會ノ同意ヲ得ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百七條都ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附若ハ補助ヲ爲スコト
ヲ得
第百八條都ハ其ノ必要ナル費用及從來法律命令若ハ慣例ニ依リ府及市ノ
負擔ニ屬シ又ハ將來法律勅令ニ依リ都ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義
務ヲ負フ
第百九條都稅トシテ賦課スルコトヲ得ヘキモノ左ノ如シ
-國稅ノ附加稅
二特別稅
附加稅ハ直接ノ國稅ニ附加シ均一ノ稅率ヲ以テ都ノ全部ヨリ徵收スルヲ
常例トス
特別稅ハ別ニ稅目ヲ起シテ課稅スルコトヲ要スルトキ賦課徵收スルモノ
トス
第百十條此ノ法律中別ニ規定アルモノヲ除ク外使用料手數料及特別稅ニ
關スル細則ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ム其ノ條例ニハ過料二
圓以下ノ罰則ヲ設クルコトヲ得
過料ニ處シ及之ヲ徵收スルハ都長官之ヲ掌ル其ノ處分ヲ違法ナリトスル
者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第百十一條三箇月以上都内ニ滯在スル者ハ其ノ滯在ノ初ニ遡リ都稅ヲ納
ムル義務ヲ負フ
第百十二條都內ニ住所ヲ有セス又ハ三箇月以上滯在スルコトナシト雖都
內ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ若ハ使用シ又ハ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲
シ又ハ都內ニ於テ特定ノ行爲ヲ爲ス者ハ其ノ土地家屋物件營業若ハ其ノ
收入ニ對シ又ハ行爲ニ對シテ賦課スル都稅ヲ納ムル義務ヲ負フ其ノ法人
タルトキ亦同シ但シ國ノ事業若ハ行爲ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
第百十三條納稅者ノ都外ニ於テ所有シ若ハ使用スル土地家屋物件又ハ都
外ニ於テ營業所ヲ定メタル營業ヨリ生スル收入ニ對シテハ都稅ヲ賦課ス
ルコトヲ得ス
住所滯在都及府縣ニ渉ル者ノ收入ニ對シ都稅ヲ賦課スルトキハ其ノ收入
ヲ都府縣ニ平分シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ但シ土地家屋物件又ハ營業
所ヲ定メタル營業ヨリ生スル收入ハ此ノ限ニ在ラス
第百十四條都及府縣ニ渉リ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ且其ノ本稅ヲ分別
シテ納メサル者ニ對シ營業稅ノ附加稅ヲ賦課スルトキハ關係都長官府縣
知事協議ノ上其ノ步合ヲ定メ内務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クヘシ若協
議調ハサルトキハ內務大臣及大藏大臣之ヲ定ム
第百十五條所得稅法第五條ニ揭クル所得ニ對シテハ都稅ヲ賦課スルコト
3回線
社寺又ハ〓社ノ禮拜ノ用ニ供シ又ハ國府縣郡市町村其ノ他ノ公共團體ノ
直接ノ公用ニ供スル土地家屋物件竝營造物ニ對シテハ社寺〓社又ハ國府
縣郡市町村其ノ他公共團體ニ都稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
國有ノ土地家屋物件ニ對シテハ國ニ都稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
前各項ノ外都稅ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ法律勅令ノ定ムル所ニ依
ル
皇族ニ係ル都稅ノ賦課ハ追テ法律勅令ヲ以テ定ムル迄現今ノ例ニ依ル
第百十六條數個人ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ其ノ
利益ノ程度ニ準シ關係者ニ負擔セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ會計ヲ分別スヘシ
區ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ都會ノ議決ヲ經其ノ
區ヲシテ之ヲ負擔セシムルコトヲ得
數個人若ハ區ヲ利スル財產ニ付テモ亦本條ノ例ニ依ル
第百十七條數個人若ハ都内ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ不
均一ノ賦課ヲ爲スコトヲ得
第百十八條都稅ニ關シテハ此ノ法律中規定アルモノヲ除ク外勅令ノ定ム
ル所ニ依ル
第百十九條都ハ急迫ノ必要ニ依リ夫役及現品ヲ納稅義務者ノ全部若ハ一
部ニ賦課スルコトヲ得但シ學藝美術及手工ニ關スル勞役ヲ課スルコトヲ
得ス
夫役ヲ課セラレタル者ハ其ノ便宜ニ從ヒ本人自ラ之ニ當リ又ハ適當ノ代
人ヲ出スコトヲ得
第百二十條都稅ノ賦課ニ關シ必要ナル場合ニ於テハ當該吏員ハ日出ヨリ
日沒マテノ間營業者ニ關シテハ仍其ノ營業時間家宅營業所ニ臨檢シ又ハ
帳簿物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第百二十一條都長官ハ納稅者中特別ノ事情アル者ニ對シ會計年度內ニ限
リ納稅延期ヲ許スコトヲ得其ノ年度ヲ越ユル場合又ハ都稅ノ減免ヲ要ス
ルトキハ都參事會ノ議決ヲ經ヘシ
第百二十二條都稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法若ハ錯誤アリト
認ムルトキハ徵稅令書ノ交付後三箇月以内ニ都長官ニ異議ノ申立ヲ爲ス
コトヲ得
財產又ハ營造物ヲ使用スル權利ニ關シ異議アル者ハ之ヲ都長官ニ申立ツ
ルコトヲ得
本條ノ異議ハ之ヲ都參事會ノ決定ニ付スヘシ都參事會ノ決定ヲ受ケタル
者其ノ決定ヲ違法ナリトスルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
使用料手數料及加入金ノ徵收ニ關シテモ亦第一項及第三項ノ例ニ依ル
本條ノ事件ニ付テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百二十三條都稅使用料手數料加入金過科過怠金其ノ他都ノ收入ヲ定期
內ニ納メサル者アルトキハ都長官ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分ス
ヘシ
本條ニ記載スル徵收金ハ國ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵還付
ニ付テハ國稅ノ例ニ依リ時效ニ付テハ國稅ノ附加稅ニ在テハ各本稅ノ例
ニ依リ其ノ他ノ徵收金ニ在テハ政府ノ一般徵收金ノ例ニ依ル
本條都長官ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ヲ違法ナリトスルトキハ行政裁
判所ニ出訴スルコトヲ得
本條第一項ノ處分中差押物件ノ公賣ハ處分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第百二十四條都ハ其ノ負債ヲ償還スル爲又ハ永久ノ利益ト爲ルヘキ支出
ヲ要スル爲又ハ天災事變等ノ爲必要アル場合ニ限リ都會ノ議決ヲ經テ都
債ヲ起スコトヲ得
都債ヲ起スニ付都會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及
償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
都ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲本條ノ例ニ依ラス都參事會ノ議決ヲ經テ一時
ノ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ借入金ハ其ノ會計年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘシ
第二款歲入出豫算及決算
第百二十五條都長官ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ年度開始前ニ都會
ノ議決ヲ經ヘシ
都ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
豫算ヲ都會ニ提出スルトキハ都長官ハ併セテ財產表ヲ提出スヘシ
第百二十六條都長官ハ都會ノ議決ヲ經テ既定豫算ノ追加若ハ更正ヲ爲ス
コトヲ得
第百二十七條都費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ施行スヘキモ
ノ又ハ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ都會ノ議決ヲ經テ其ノ
年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
第百二十八條豫算外ノ支出若ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ設ク
ヘシ但シ都會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第百二十九條豫算調製ノ式竝費目流用ニ關スル規程ハ內務大臣之ヲ定
ム
第百三十條豫算ハ議決ヲ經タル後直ニ之ヲ內務大臣ニ報告シ竝其ノ要
領ヲ〓示スヘシ
第百三十一條都ハ都會ノ議決ヲ經テ特別會計ヲ設クルコトヲ得
第百三十二條都會ニ於テ豫算ヲ議決シタルトキハ都長官ヨリ其ノ謄本ヲ
收入役ニ交付スヘシ其ノ豫算中監督官廳ノ許可ヲ受クヘキ事項アルトキ
ハ先ツ其ノ許可ヲ受クヘシ
收入役ハ都長官又ハ監督官廳ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得
ス其ノ命令ヲ受クルモ支出ノ豫算ナキトキ又ハ豫備費支出及費目流用其
ノ他財務ニ關スル規定ニ依ラサルトキ亦同シ
第百三十三條都ノ支拂ニ關スル時效ニ付テハ政府ノ一般支拂金ノ例ニ依
ル但シ民法上ノ支拂ニ關スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第百三十四條都ノ出納ハ每月例日ヲ定メテ檢査シ且毎會計年度少クトモ
二囘臨時檢査ヲ爲スヘシ
檢査ハ都長官又ハ其ノ命ヲ受ケタル官吏吏員之ヲ爲シ臨時檢査ニハ都會
ニ於テ選擧シタル議員三名以下ノ立會ヲ要ス
第百三十五條都ノ出納閉鎻ハ會計年度經過後三箇月ヲ超ユルコトヲ得
ス
決算ハ出納閉鎻後一箇月以內ニ證書類ヲ併セテ收入役ヨリ之ヲ都長官ニ
提出スヘシ
決算ハ次ノ通常會ニ於テ之ヲ都會ニ報告スヘシ
都長官ハ決算ヲ都會ニ報告スル前都參事會ノ審査ニ付スヘシ若都長官ト
都參事會ト意見ヲ異ニスルトキハ都長官ハ都參事會ノ意見ヲ決算ニ添へ
都會ニ提出スヘシ
決算ハ之ヲ內務大臣ニ報告シ竝其ノ要領ヲ告示スヘシ
第百三十六條都ノ財務ニ付テハ法律ニ規定アルモノヲ除ク外勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第六章都內一部ノ行政
第百三十七條毎區ニ區會ヲ置ク
區會議員ハ都ノ名譽職トス
區會議員ノ定員任期及選擧ニ關シテハ第十一條第二項第十二條第十四條
第一項第三項乃至第八項第十五條第十六條第二項第三項第十七條第二十
二條第二十四條及第二十六條ノ規定ヲ準用ス
第百三十八條區會ハ區有財產其ノ他ノ公共事務ニ關シ第三十七條第一號
乃至第七號ニ記載スル事項竝區ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事項其ノ
他法律命令ニ依リ區會ノ權限ニ屬スル事項ヲ議決ス
第三十九條乃至第四十一條ノ規定ハ之ヲ區會ニ準用ス
第百三十九條區會ニ關スル費用及區有財產其ノ他區ノ事務ニ關シ必要ナ
ル費用ハ區ノ負擔トス
前項ノ外區ハ法律勅令ニ依リ區ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負
フ
第百四十條此ノ法律ニ規定スルモノヲ除ク外都會ニ關スル規定ヲ區會
ニ準用シ又ハ區會ニ關シテ特別ノ規定ヲ要スヘキ事項其ノ他區ニ關シ必
要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七章都行政ノ監督
第百四十一條都ノ行政ハ內務大臣之ヲ監督ス
第百四十二條此ノ法律ニ規定スル異議ハ處分ヲ爲シタル翌日ヨリ起算シ
十四日以內ニ之ヲ申立ツヘシ但シ此ノ法律中別ニ期限ヲ定メタルモノハ
此ノ限ニ在ラス
此ノ法律ニ規定スル行政訴訟ハ處分ヲ爲シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付
ヲ受ケタル翌日ヨリ其ノ交付ヲ受ケサル者ハ〓示ノ翌日ヨリ起算シ二十
一日以内ニ之ヲ提起スヘシ
此ノ法律ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ付スヘ
前項異議ノ決定書ハ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
此ノ法律ニ規定スル異議ノ申立ニ關スル期間ノ計算竝天災事變ノ場合ニ
於ケル特例ニ付テハ民事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
異議ヲ申立又ハ訴訟ヲ提起スル者アルモ此ノ法律中別段ノ規定アルモノ
ヲ除ク外處分ノ執行ヲ停止セス但シ行政廳及行政裁判所ハ其ノ職權ニ依
リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ處分ノ執行ヲ停止スルコ
トヲ得
第百四十三條内務大臣ハ都行政ノ法律命令ニ背戾セサルヤ又ハ公益ヲ害
セサルヤ否ヲ監視スヘシ內務大臣ハ之カ爲行政事務ニ關シテ報〓ヲ爲サ
シメ書類帳簿ヲ徵シ竝實地ニ就キ事務ヲ視察シ出納ヲ檢閱スルノ權ヲ有
ス內務大臣ハ都行政ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ處分ヲ爲スノ權ヲ有ス
第百四十四條内務大臣ハ都ノ豫算中不適當ト認ムルモノアルトキハ之ヲ
削減スルコトヲ得
第百四十五條内務大臣ハ勅裁ヲ經テ都會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
都會解散ノ場合ニ於テ三箇月以內ニ議員ヲ選擧スヘシ
解散後始メラ都會ヲ招集スルトキハ都長官ハ第四十六條第二項ノ規定ニ
拘ラス內務大臣ノ許可ヲ得テ別ニ會期ヲ定ムルコトヲ得
第百四十六條都吏員ノ服務規律ハ內務大臣之ヲ定ム
第百四十七條都條例ノ設定ハ內務大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス內務大
臣ハ勅裁ヲ經テ之ヲ許否スヘキモノトス
第百四十八條左ニ揭クル事件ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クルコト
ヲ要ス
一都債ヲ起シ竝起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ若ハ變更
スル事但シ第百二十四條第三項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
二特別稅ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
三直接國稅二分ノ一ヲ超過スル附加稅ヲ賦課スル事但シ法律勅令中
別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
四間接國稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
五法律勅令ノ規定ニ依リ官廳ヨリ下渡ス步台金ニ對シ支出金額ヲ定
ムル事
第百四十九條左ニ揭クル事件ハ内務大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一都規則ヲ設定スル事
二學藝美術又ハ歷史上貴重ナル物件ヲ處分シ若ハ大ナル變更ヲ爲ス
事
三使用料手數料加入金ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
四基本財產ノ處分ニ關スル事
五特別基本財產及積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
六第百一條及第百三條ノ處分ヲ爲ス事
七寄附若ハ補助ヲ爲ス事
八不動產ノ處分ニ關スル事
九均一ノ稅率ニ據ラスシテ國稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
十第百十六條ニ依リ數個人若ハ區ニ費用ヲ負擔セシムル事
十一繼續費ヲ定メ若ハ變更スル事
十二特別會計ヲ設クル事
第百五十條都ノ行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項ニ付テハ主
務大臣ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ許可ヲ
與フルコトヲ得
第百五十一條都ノ行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項中其ノ輕易
ナルモノハ勅令ノ規定ニ依リ許可ヲ經スシテ處分スルコトヲ得
第百五十二條內務大臣ハ區長及委員ニ對シ懲戒處分ヲ行フコトヲ得其ノ
懲戒處分ハ譴責二十五圓以下ノ過怠金及解職トス
內務大臣ハ懲戒處分ヲ行ハムトスル前吏員ノ停職ヲ命シ竝給料ヲ支給セ
サルコトヲ得
第八十條第三項ノ規定ハ本條ニ依リ解職セラレタル者ニモ之ヲ適用ス
第八章附則
第百五十三條此ノ法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百五十四條此ノ法律施行ノ際都會都參事會及區會ノ職務ニ屬スル事項
ニシテ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間都長官之ヲ行フ
第百五十五條此ノ法律施行ノ際初メテ要スル選擧人名簿ノ調製ニ限リ第
十八條ノ期日及期間ハ勅令ヲ以テ別ニ之ヲ定ムルコトヲ得但シ其ノ選擧
人名簿ハ翌年調製スル選擧人名簿確定ノ日迄其ノ效力ヲ有ス
第百五十六條此ノ法律ニ於テ直接稅若ハ間接稅トスヘキ類別ハ內務大臣
及大藏大臣之ヲ告示ス
第百五十七條從來ノ東京市ノ營造物及市有財產ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ
都ノ管理若ハ所有ニ移ルモノトス
此ノ法律施行ノ際從來ノ東京府ノ營造物及府有財產ノ處分ハ内務大臣之
己巳、
第百五十八條此ノ法律施行前後ヲ通算シ二年以上引續キ市及都ニ住所ヲ
有シ市及都ノ負擔ヲ分任シ且市及都內ニ於テ直接國稅年額五圓以上ヲ納
ムル者ハ第七條二年以來都ノ住民ト爲リ都ノ負擔ヲ分任シ及都內ニ於テ
直接國稅年額五圓以上ヲ納ムル者ト看做ス
第百五十九條現行ノ法律命令中府若ハ市トアルハ都、府會若ハ市會トア
ルハ都會、府會議員若ハ市會議員トアルハ都會議員、府知事若ハ市長ト
アルハ都長官、府參事會若ハ市參事會トアルハ都參事會、府參事會員若
ハ市參事會員トアルハ都參事會員ト看做シ其ノ他此ノ例ニ依ル但シ本條
ノ例ニ依ラサルモノハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第百六十條水利組合條例ニ依リ設置シタル水利組合ハ此ノ法律施行ノ
爲消滅セサルモノトス
第百六十一條現任衆議院議員ハ此ノ法律施行ノ爲其ノ職ヲ失フコトナ
シ
舊法ニ依ル衆議院議員選擧區中東京府第一區乃至第九區ハ東京都第一區
乃至第九區トシ新法ニ依ル衆議院議員選擧區中東京府東京市ハ東京都ト
シ其ノ區域及議員ノ數ハ此ノ法律施行ノ爲變更セラルルコトナシ
第百六十二條此ノ附則ニ規定スルモノヲ除ク外此ノ法律ヲ施行スル爲必
要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=179
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180・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 提出ノ理由ヲ述ベテ宜シウゴザイ。マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=180
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181・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 宜シウゴザイマス
〔一木喜德郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=181
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182・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 議長ニ伺ヒマスガ、是ハ次ノ法案、又モウ一ツ次ノ法案ト
關聯シテ居リマスガ、一括シテ說明シテ差支ヘゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=182
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183・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 宜シウゴザイマス、束子テ問題ニ供シマス
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
千代田縣設置ニ關スル法律案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
明治三十四年三月九日
發議者伯爵〓棲家〓子爵岡部長職
男爵松平正直馬屋原彰
一木喜德郞
贊成者候爵黑田長成
外九十一名
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
第一條東京府ヲ廢シ千代田縣ヲ置ク
從來ノ東京府ノ區城中東京都ノ區域ト爲スヘキモノヲ除キ其ノ他ヲ以テ
千代田縣ノ區域ト爲ス
第二條此ノ法律施行ノ際縣會及縣參事會ノ職務ニ屬スル事項ニシテ急施
ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間千代田縣知事之ヲ行フ
第三條此ノ法律施行ノ際議員ヲ選擧スルニ必要ナル選擧人名簿ノ調製ニ
限リ府縣制第九條乃至第十二條ノ期日及期間ハ勅令ヲ以テ別ニ之ヲ定ム
ルコトヲ得但シ其ノ選擧人名簿ハ翌年調製スル選擧人名簿確定ノ日迄其
ノ效力ヲ有ス
第四條現任衆議院議員ハ此ノ法律施行ノ爲其ノ職ヲ失フコトナシ
舊法ニ依ル衆議院議員選擧區中東京府第十區乃至第十三區ハ千代田縣第
一區乃至第四區トシ新法ニ依ル衆議院議員選擧區中東京府郡部伊豆七ハ
島トモ
千代田縣トシ其ノ區域及議員ノ數ハ此ノ法律施行ノ爲變更セラルルコト
ナシ
第五條衆議院議員及縣會議員ノ選擧及被選擧資格中其ノ年限ニ關スルモ
ノハ此ノ法律施行ノ爲中斷セラルルコトナシ
第六條此ノ法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條此ノ法律ヲ施行スル爲必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
東京都千代田縣組合法案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
明治三十四年三月九日
發議者伯爵〓棲家〓子爵岡部長職
男爵松平正直馬屋原彰
一木喜德郞
賛成者侯爵黑田長成
外九十一名
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
東京都千代田縣組合法
第一條東京都及千代田縣ノ共同事務ヲ處理スル爲東京都千代田縣組合ヲ
置ク
組合ニ於テ處理スヘキ共同事務ノ範圍ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
組合ハ法人トス
第二條東京都千代田縣組合ニ組合會ヲ置ク
組合會議員ハ名譽職トス
組合會議員ノ定員ハ東京都會及千代田縣會ノ議員定員ヲ合シタル員數ノ
三分ノ一トス但シ端數ハ之ヲ除算ス
第三條組合會議員ハ東京都會及千代田縣會ニ於テ議員中ヨリ選擧ス
各會ニ於テ選擧スヘキ組合會議員ノ數ハ內務大臣之ヲ定ム
第四條組合會議員ノ選擧ニ付テハ都會ニ於テ行フ選擧ニ關スル規定ハ之
ヲ千代田縣會ニ準用ス
第五條組合會議員ノ選擧ハ東京都會及千代田縣會ニ於テ各其ノ定期改選
每ニ之ヲ行フヘシ
組合會議員ノ定數又ハ配當ヲ變更シタル爲解任又ハ選擧ヲ要スル場合竝
補關選擧ニ關シテハ府縣制第七條第三項及第八條ノ規定ヲ準用ス
第六條組合會ノ議長及副議長ハ東京都會又ハ千代田縣會ニ於テ行フ組合
會議員ノ定期改選每ニ之ヲ改選スヘシ
第七條組合會ハ東京都會及千代田縣會ニ於テ選擧スヘキ組合會議員各半
數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第八條組合會ノ職務權限及處務規程ニ關シテハ此ノ法律中別ニ規定スル
モノヲ除ク外都制第二章第二款ノ規定ヲ準用ス
第九條東京都千代田縣組合ニ組合參事會ヲ置キ都長官高等官三名及名譽
職參事會員八名ヲ以テ之ヲ組織ス
第十條名譽職參事會員ノ選擧ニ關シテハ第三條第四條及第五條第一項ノ
規定ヲ準用ス
東京都會及千代田縣會ハ各其ノ選擧スヘキ名譽職參事會員ノ關員ヲ補充
スル爲之ト同數ノ補充員ヲ選擧スヘシ
第四條及第五條第一項ノ規定ハ名譽職參事會員ノ補充員ノ選擧ニモ之ヲ
準用ス
名譽職參事會員ノ配當ヲ變更シタル爲名譽職參事會員及其ノ補充員ノ解
任又ハ選擧ヲ要スル場合ニ關シテハ府縣制第七條第三項及第八條第一項
第三項ノ規定ヲ準用ス
第十一條組合參事會ノ組織及選擧竝職務權限及處務規定ニ關シテハ此ノ
法律中別ニ規定スルモノヲ除ク外都制第三章ノ規定ヲ準用ス
第十二條組合會議員及名譽職參事會員ノ費用辨償ニ關シテハ都制第四章
第三款ノ規定ヲ準用ス
第十三條東京都長官ハ東京都千代田縣組合ヲ統轄シ之ヲ代表ス
都長官其ノ他官吏ノ組合行政ニ關スル職務關係竝處務規程ニ付テハ府縣
制第四章第二款ノ規定ヲ準用ス
第十四條組合ノ費用ハ財產ヨリ生スル收入及其ノ他ノ收入ヲ以テ充ツル
モノノ外之ヲ東京都及千代田縣ニ分賦スヘシ
組合費用分賦ノ割合ハ組合會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
組合費用ノ分賦方法ニ關スル必要ノ事項ハ內務大臣之ヲ定ム
第十五條府縣稅ニ關スル事項ヲ除ク外府縣制第五章ノ規定ハ之ヲ組合ノ
財務ニ準用ス
第十六條組合ノ監督ニ關シテハ府縣制第六章ノ規定ヲ準用ス
第十七條此ノ法律ニ規定スルモノノ外東京都千代田縣組合ニ關スル必要
ノ事項ハ勅合ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條此ノ法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條此ノ法律施行ノ際組合會及組合參事會ノ職務ニ屬スル事項ニシ
テ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ルマテノ間東京都長官之ヲ行フ
第二十條此ノ法律ヲ施行スル爲必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=183
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184・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 最早時刻モ進デ居リマスコトデゴザイマスカラ、成ルベク
簡單ニ東京都制法案其他ノ法案ノ旨趣ノアル所ヲ一言申述ベタイト思ヒマ
ス、今日東京市ノ狀態ガ誠ニ心配スベキ有樣デアルト云フコトハ諸君モ旣ニ
御考ニナッテ居ルコトデアラウト思ヒマスカラ、此點ニ於テハ多ク辭ヲ費ス
ノ必要ハナイト考ヘマス、私ハ決シテ旣往ノ失政ヲ玆ニ數ヘ上ゲテ獨リ快シ
トスル者デハナイノデゴザイマス、私ハ何卒シテ東京市ノ行政ノ將來成績ガ
擧ルヤウ、將來重大ノ事業ヲ負擔シテ安心ノ出來ルヤウニト云フコトヲ切ニ
祈ル者デゴザイマス、此目的ハ政論ノ異同ニ依テ希望ヲ異ニスベキ問題デハ
ナイト確信スルノデゴザイマス、私ハ是ハ所謂政治上ノ問題デハナクシテ純
然タル行政ノ問題デアルト信ズルノデゴザイマス、此目的ヲ達スルニハ私ノ
考ヘマスル所ヲ以テスレバ姑息ノ手段ニ據ルコトハ出來ナイ、制度ニ大ナル
改良ヲ加ヘナケレバナラヌト確信スルノデゴザイマス、勿論現行ノ制度ガ必
シモ今日ノ如キ東京市ノ有樣ニ陷ッタ罪ヲ獨デ負擔スベキモノデハナイト云
フコトハ明デゴザイマス、如何ナル善良ノ制度ト雖モ之ヲ行フニ其人ヲ得ナ
クテハ制度ノ美果ヲ收ムルコトノ出來ナイノハ申スマデモナイ次第デゴザイ
マス、併シ現行ノ制度ハ普通ノ市ト同一ノ法ヲ以テ全國ノ大都會タル帝國ノ
首府タル大都會ノ行政ヲ支配シヤウトシマスルノハ本來無理ナル所ガアルノ
デゴザイマス、何故ニ普通ノ市ヲ支配スルノ制度ヲ以テ首府ノ行政ヲ支配ス
ルノハ無理ダト云ヘバ、其理由ハ多々アルデゴザイマセウガ、暫ク其重ナル
モノニ付テ諸君ノ御考ヲ願ヒタイト思ヒマスルノデゴザイマス、現行ノ市
町村制ニ據リマスレバ御承知ノ如クニ市會ナルモノガ市ノ行政一切ニ附イテ
議決ヲスルト云フコトニナッテ居リマス、此制度ガ一般ノ市ヲ支配スル制度
トシテ强チ不適當デアルト申スノデハゴザイマセヌガ、東京市ノ如キ大都會
ニシテ其事務ハ極テ錯雜ニシテ其事務ハ極テ變化ノ多イモノデアルノニ此尨
然タル大機關ヲシテ一々之ヲ議決セシムルト云フコトハ抑〓無理ナルコトデ
アラウト思ヒマス、尙ホ東京市ノ行政ハ其他ノ一般ノ市ノ行政ト同ジク市參
事會ナル合議體、然モ名譽職ヲ以テ主トシテ組織シテ居リマスル所ノ合議體
ヲシテ之ヲ擔任セシメテアルト思ヒマス、此制度ハ一般ノ市ヲ支配スル制度
トシテハ其成蹟ニ於テ見ルベキ所ガ無イト思ヒマス、併シ東京市ノ如キ大都
會ニ於キマシテ其事務ノ數量ト言ヒ事ノ輕重大小ト言ヒ一般ノ市ト大ニ其趣
ヲ異ニスル所ガアルノデゴザイマス、斯ノ如キ大都會ニ於キマシテ主トシテ
名譽職ヲ以テ組織シテ居ル機關ヲシテ行政ヲ擔任セシメヤウトスル結果ト致
シマシテハ資產ニ富ミ名望ノ高イ人ハ却ッテ斯ノ如キ煩雜ナル事務ニ任ズル
コトヲ嫌ッテ、ソレガタメニ或ハ動モスレバ職業的ノ小政治家ガ是等ノ地位ヲ
占ムルヤウナル傾ニナルト云フコトハ免レナイ所デアラウト思ヒマス、加之
合議體ナルモノハ申スマデモナク至ッテ其活動ノ遲緩ナルモノデゴザイマス
カラ、錯雜ナル行政事務ヲ此活動ノ遲緩ナル機關ヲシテ擔任セシムルト言フ
コトハ餘程無理ナルコトデアラウト思ヒマス、デアリマスルカラシテ現行制
度ノ合議體、而モ名譽職ヲ以テ主トシテ組織シテ居ル所ノ機關ヲシテ行政ヲ
擔任セシメテ居リマスルノハ、卽チ東京市ノ如キ大都會ニ現行制度ハ適切デ
ナイト云フコトガ一ノ重モナル理由デアラウト考ヘマス、又現行制度ニ於キ
マシテハ東京市ニ於キマシテモ一般ノ市ト同ク行政ヲ總テ民選ノ機關ニ一任
シテ居ルノデアリマス、併ナガラ凡ソ國家ノ自治體ニ對スルノニハ其事務ノ
輕重大小ハ其事ガ國家ノ利害休戚ニ影響ヲ及ス所ノ程度ニ據ッテ國家ノ權力
ニモ亦强弱ノ差ガナケレバナラナイト云フコトハ申スマデモナイコトデゴザ
イマス、然ルニ東京市ノ如キ府縣郡等ニ比シテ遙ニ其事務ハ國家ノ利害休戚
ニ影響ヲ及ス所ノ大ナルモノデアルニモ拘ラズ尙ホ一般ノ市ト同ク民選ノ機
關ニ之ヲ一任シテ居ルト云フコトハ府縣郡トノ權衡ヲ得タモノトハ申サレナ
イモノト考ヘマス、デ是ハ勿論決シテ政府ガ自治行政ニ干渉ヲセヨト云フコ
トヲ申スノデハナイノデゴザイマス、國家ガ國家内ノ〓體ノ組織ニ對シテ相
當ナル權力ヲ有タナケレバナラナイト云フコトヲ意味スルノデゴザイマス、
ソレデ現行制度ノ權衡カラ申シマシテモ府縣郡等カラ比較シテ考ヘテ見マス
レバ、東京市ノ如キ全國ノ首府タル大都會ニ於テハ行政ヲ擔任スル所ノ人ハ、
例ヘバ親任官ト申ス極メテ重要ナル地位ニアッテ名望技倆共ニ備ッテ居ル所
ノ適當ナル人物ヲシテ之ヲ擔任セシムルノガ最モ他ノ制度トノ權衡ヲ得タモ
ノデアラウト信ズルノデゴザイマス、デ此點ガ又現行制度ハ東京市ノ如キ大
都會ニハ適切デナイト云フ一ノ理由デアリマス、尙ホ其他監督ノ段階ニ附イ
テ申シマスト普通ノ市ト同ク東京市デモ矢張知事ノ監督ノ下ニ立タシメテ居
ルノデアリマスケレドモ人口二百萬ノ府ヲ支配シテ居ル所ノ府知事ガ其中デ
殆ド四分ノ三ヲ占メテ居ル所ノ市ヲ監督スルノデアルカラ、其監督ハ動モス
レバ微弱デアルト云フコトハ又免レナイコトデアッテ、獨リ罪ヲ當局者ノミ
ニ歸スルコトハ出來ナイト考ヘマス、勿論内務大臣ガ監督ノ責ヲ有ッテ居ル
コトハ明デアリマスケレドモ、是トテモ第二次ノ監督者デアリマスルカラシ
テ先ヅ以テ第一次ノ監督者タル府知事ニ任カシテ置カナケレバナラヌ、從ツ
テ其監督ガ間接トナリ其效力ガ〓弱ト爲ルノモ亦勢ヒ免ルベカラザル所デ
アラウト考ヘマス、其他現行ノ市制ニ於キマシテハ區ハ純然タル市ノ行政ノ
區劃ト爲ヲテ居リマスノデ、東京市京都市大阪市ニ於テハ幾分カ制ヲ異ニシテ
居ルトハ言ヒナガラ、區ヲ以テ明ニ公法人ト認メテ居ラナイノデアリマス、
併シ斯ノ如キ大都會ニ於キマシテハ幾分カ分權ノ主義ヲ交ヘルノガ最モ必要
デアリマス、事務ノ種類ニ依ッテ或ハ之ヲ統一スル必要ガアリマセウケレド
モ、一切ノ事務ヲ悉ク市ノ中央ノ機關ガ一手ニ之ヲ掌握スルト云フコトハ啻
ニ其必要ガナイノミナラズ又行政ノ周到ナラヌ一ノ原因ニナラウト思フ、市
ノ全體ノ利害ニ關係ヲ持ッテ居ル事業ハ或ハ擧ガルデアラウケレドモ全部
ノ利害ノ關係ニ稍〓遠イ事柄ニナリマスルト云フト行政ガ擧ガラナイト云フ
弊ガ生ジマスルノハ已ムヲ得ナイコトデアラウト思ヒマス、デアリマスルカ
ラ東京市ノ如キ十五區ヲモ包有シテ居ル所ノ大都會ニ於テ區ハ比較的ニ獨
立ノ地位ヲ與ヘテ或ル範圍內ノ行政事務ヲ擔任セシムルノ必要ガアルデアラ
ウト信ズルノデゴザイマス、デ是等ガ現行制度ノ東京ノ如キ首府ノ行政ニ適
切デナイ重モナル點デアリマス、是等ノ要點ニ向ッテ改正ヲ加ヘテ首府ノ行
政ノ爲ニ特ニ鞏固ナル制度ヲ設ケテ全國ノ自治體ニ行政ノ模範ヲ示シタイト
云フコトガ本員等ノ切ニ希望スル所デゴザイマス、尙ホ東京都ヲ獨立セシメ
マシテ其區域ヨリ除キマスニ附キマシテハ從來東京ノ郡部ハ別ニ之ヲ行政區
劃ト爲スノ必要ガアルコトハ申スマデモゴザイマセヌ、ソレデアリマスルケ
レドモ從來市部郡部ノ關係ハ極テ密接ナルモノデアリ、殊ニ三多摩郡ノ如キ
ハ甞テ神奈川縣ノ管轄ニ屬シテ居リマシタモノヲ態〓東京府ノ管轄ニ屬セ
シメタ位ノコトデアリマシテ、其間ニ餘程密接ナル關係ガアルモノデゴザイ
マスルカラ、都制施行後ニ於キマシテ直チニ其行政ヲ都ノ行政ト全ク分離ス
ルト云フコトハ或ハ實際ニ適切デナイデアラウト思フノデアリマス、ソレダ
カラ本員等ノ考ヲ以テシマスレバ成ルベク行政ノ機關ハ東京都ト千代田縣ト
之ヲ共同ニスルトカ或ハ東京都長官ヲシテ千代田縣知事ヲ兼子シムルトカ或
ハ其他ノ官吏ヲシテ千代田縣ノ官吏ヲ兼子シムルト云フガ如キ制度ヲ執ッテ
其聯絡ヲ保ツコトガ最モ必要デアラウト考ヘマス、併シ是等ノ事柄ハ他ノ法
律ノ中ニ定ムベキ事柄デアリマスカラ本案ニハ之ヲ載セテ置カヌノデアリマ
ス、尙ホ終リニ東京都ト千代田縣ト云フモノヲ分離イタシマスニ附キマシテ
是マデノ市郡連帶ノ事業ニ屬シテ居ッタヤウナ事柄ハ將來共同シテ之ヲ
行ッテ行ク必要ガアルデアラウト考ヘルノデアリマス、デ之ガタメニハ東京都
ト千代田縣トノ組合ヲ設ケ、設ケマシテ其組合機關卽チ組合議會ヲ設ケマシ
テ共同事件ヲ議決シ、サウシテ其共同ノ機關タル都長官ガ之ヲ施行シテ行キ
マスト云フコトハ必要ナ制度デアラウト思フノデアリマス、デ斯ノ如キハ東
京都其他ノ制度ヲ立テマシタナラバ始テ全國ノ首府タル大都會ガ其地位ニ適
當ナル制度ヲヲテ、始メテ全國自治體ノ模範タル實ヲ擧ゲルコトガ出來ルデ
アラウト信ズルノデゴザイマス、ソレデ此法案ハ極メテ重要ナル法案デゴザ
イマスルカラ勿論會期切迫ノ今日ニ於テ成ルベク早ク議了ヲ望ミマスコトハ
申スマデモゴザイマセヌケレドモ、愼重ナル審議ヲ盡サシムルタメニ何卒特
別委員ニ付セラレマシテ、其特別委員モ三案同一ノ特別委員ニ付託シテ、シ
カモ十五名ノ特別委員ニ付託セラレマシテ、愼重ナル審議ヲ遂ゲテ、幸ニ此
法案ガ本囘ノ議會ヲ通過シマスレバ此上モナシ、不幸ニシテ通過致サヌマデ
モ此重要ナル制度ノ〓究ニ向ッテ一歩ナリトモ進メテ置キタイト云フノガ本
員等ノ希望デゴザイマス、何卒御賛成下サイマスルコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=184
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185・武井守正
○武井守正君 特別委員說ニ賛成
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=185
-
186・毛利五郎
○男爵毛利五郞君 質問シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=186
-
187・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 宜シウゴザリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=187
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188・毛利五郎
○男爵毛利五郞君 千代田縣ヲ別ニ設置スルト云フコトニ附キマシテハ、態
〓一縣ヲ設ケヌデモ他ノ縣ニ合併スルコトハ出來マセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=188
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189・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 是マデ東京市ノ郡部ハ互ニ親密ノ關係ヲ持ッテ居ルモノデ
アッテ、自ラ一團結ヲ爲シテ居ッタト思フノデゴザイマス、東京府中ニ於キマシ
テハ御承知ノ如クニ市部ト郡部ノ區別ガアッテ、郡部ハ郡部會ナル機關ガアッ
テ共同ノ事件ヲ議決シテ居ル、旣ニ團結ノ形ハ縣ト云フ程ノ形ハナクトモ一
ツノ團結ヲ成シテ居ルト云フコトハ認メテ宜カラウト思フノデゴザイマス、
加之其〓結ト東京市トノ關係ノ親密デアルト云フコトハ先刻モ申述ベマシタ
如クデアリマシテ、現ニ僅カ一兩年前、兩三年前デアリマシタカ、三多摩郡
ノ如キハ態〓之ヲ東京府ノ管轄ニ屬セシメタト云フ位デアリマスカラ、其團
結ヲ復タ割キマシテ又他ノ縣ニ屬セシメルト云フヤウナコトハ困難デアラウ
ト考ヘルノデ、却テ此方ガ適當デアラウト認メルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=189
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190・伊澤修二
○伊澤修二君 本員モチヨット質問シタイノデアリマスガ、本案ノ主意ハ都
長竝ニ參事會員等ニ餘程重キヲ置カレマシタト云フコトガ頗ル重要ナル一ノ
要素ト爲ッテ居ルヤウニ考ヘマスガ、其都長ノ選任ノコトハ此案ノ中ニハ見
エテ居リマセヌヤウデゴザイヤス、唯〓ノ御演說デ承リマスレバ、何カ親任
官ト云フヤウナコトガチヨット聞エタヤウデゴザイマスガ、純然タル親任官
デアルカ、或ハ何分カ民選ノ性質ヲ帶ブルモノデアルカト云フコトヲ第一ニ
承リタウゴザーマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=190
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191・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 此法案ノ精神デハ都長官ハ官吏ノ積デアリマス、卽チ都ノ
官吏云々ト云フ章ニ之ヲ規定シテ居リマス、ソレデ官吏デアリマスルカラシ
テ其任命ノ方法、例ヘバ之ヲ親任官トスルカ勅任官トスルカト云フヤウナコ
トハ是ハ官制ノ方デ定ムベキ事柄トシテ、此法案ノ中ニハ定メマセヌノデゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=191
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192・伊澤修二
○伊澤修二君 無論法案ノ中ニ無イノハ左樣デゴザンセウガ、提出者ノ御考
ハドウデアルカト云フコトヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=192
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193・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 提出者ノ考ハ詰リ官吏デアルト云フコトハ先ヅ此法案デ認
メテ居ルノデゴザイマス、其官吏デドレ位ノ位地ノモノト云フコトハ、是一
提出者ガコヽデ定メタ所ガ何ノ效モナイノデゴザイマス、成ルベク適當ナル
名望モアリ技倆モアルト云フヤウナ人ヲ得ラレル程ノ樞要ナ地位ニシタイト
云フ考ハアッテ居ルノデゴザイマス、併シ是等ハ官制ヲ以テ定ムベキモノデア
リマスカラ、唯提出者ハ斯ノ如キ希望ヲ持ッテ居ルト云フダケノコトヲ申ス
ニ過ギマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=193
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194・伊澤修二
○伊澤修二君 モウ一ツ伺ヒタイハ、提出者ノ御考ノ中ニハ、此都ノ豫算
ノ如キ內務大臣ガ或ル場合ニハ削減スルコトヲ得ルト云フヤウナ御辭デアッ
タヤウニ聞キマシタガ、左樣ナ例ハ隨分中〓餘程非常ナ例ノヤウニ思ヒマ
ス、ケレドモ之ニ附イテハ大方提出者ハ汎ク海外ノ制度等モ御調ベナスッタ
コトデアラウト思ヒマスガ、或ハ他ニサウ云フヤウナ例ガアルノデゴザイマ
スカ、ソレヲ一應伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=194
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195・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 此規定ハ外國ノ例ヲ酌ンデ設ケタ譯デハナイノデゴザイマ
ス、卽チ現行ノ府縣制及郡制ニ斯ノ如キ規定ガアルノデアッテ、都ハ今後ニ
於キマシテハ丁度府縣ト同ジ地位ニ立ツモノデアルカラ、府縣制ノ規定ニ準
ジテ、コヽニモ此規定ヲ設ケタノニ過ギマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=195
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196・堤功長
○子爵堤功長君 唯今ノ委員說ニハ賛成ヲ致シマスガ、卽チ其十五名ノ委員
ノ選定ハ議長ニ御任セ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=196
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197・小笠原壽長
○子爵小笠原壽長君 賛成
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=197
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198・西村亮吉
○西村亮吉君 私ハ提出者ニ質問致スノデハナイ、政府委員ニ質問ヲ致シタ
ウゴザイマス
〔松本鼎君發言ノ許可ヲ求ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=198
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199・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 今西村君ニ發言ヲ許シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=199
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200・西村亮吉
○西村亮吉君 此特別市制ヲ廢スルニ方ッテ本員ナドハ都制法案ヲ提出致シ
タコトガアリマス、其後又政府カラモ都制法案ヲ提出ニナリマシタガ、ソレハ
イツモ成立チマセナンダ、今囘〓棲伯爵外四君ヨリ提出ニナリマシタ都制案
ト云フモノハ曩ニ政府ノ提出セラレタ都制法案トモ大差ハナイヤウニ思ヒマ
ス、政府ハ本案ニ對シテハ喜デ同意セラルヽコトト考ヘマスガ、如何デゴザ
イマセウ、チヨット政府委員ノ意見ヲ伺ヒマス
〔政府委員大森鍾一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=200
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201・大森鍾一
○政府委員(大森鍾一君) 唯〓ノ御尋デアリマスルガ、今日ノ東京市ノ狀態
ニ照シテ見マシテ、今日ノ制度ガ甚ダ完全デアリ適當デアルト申スコトハ信
ジマセヌノデ、ソレハ既ニ本案ノ提出者カラモ說明ノアリマシタル通、甚ダ
今日ノ狀態ニ於テハ適切ナリトハ信ジマセヌノデアリマス、サリナガラ此大
都會ノ制度ヲ一定スルト云フコトニ附キマシテハ御承知ノ通今日マデ幾多ノ
變遷ヲ經テ餘程沿革ノアルコトデアリマス、併ナガラ今以テ十分完全ナリト
信ズル所ノ良法ヲ得ヌノデアリマス、デ此都制ナルモノモ成ル程一旦政府ニ
於テハ一時此議モアッタコトデアリマスルノデ、サリナガラ未ダ今日ノ情勢ニ
照シテ見マシテ之ヲ以テ十分完全ト云フコトハ政府ハ信ジマセヌノデアリマ
ス、隨分此事ハ箇條モ多數ニ涉リ、今度提出ニナリマシタ所ノ案ニ附キマシ
テモ、餘程愼重ナル審査ヲ要スルコトデアルト信ジマスルノデ、甚ダ遺憾ナガ
ラ、マダ本案ニ附キマシテ十分贊同ノ意ヲ表スルコトハ出來兼ルノデゴザイ
マス委細ハ又委員會ノ席上ニ於キマシテ陳述致スコトモアラウト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=201
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202・宮本小一
○宮本小一君 今ノ提出者ニ一言伺ッテ置キタウゴザイマスガ、是ハ成ル程今
ノ東京府ノ知事ノ權力ト云フモノハ、先年小生ナドモ論ジタ通、マルデ海月
ノヤウナモノデ、一向東京府知事ノ能力ガナイカラ、是非斯ウ云フ風ニナリ
タイト豫テ望デ居リマシタ、大體ハ至極贊成ヲ致シマスシ、分ッテモ居リマス、
唯比前內務大臣ノ方カラ演說モアリマシタヤウニ覺エテ居リマスガ、此蛇ノ
目ノ傘ノヤウダト笑ッタコトガアリマスガ、今度モ矢張東京府ヲ取卷イテ千代
田縣ト云フモノヲ設置スルヤウニナリマシタナラバ今此處デモ御尋ガゴザ
イマシタガ、私ノ尋子マスルノハコチラノトハ反對デ、千代田縣ト云フモノ
ヲ置ク必要ガ一モ私ニハ分ラナイ、アレヲ矢張今日ノ如ク、ソレハ東京ノ郡
部ト致シマスカ何トカ致シマシテ、矢張東京ノ都長官ノ支配ニ致シテ置クコ
トハ出來ナイノデゴザイマスカ、サウ致サヌケレバ其千代田縣ト云フモノノ
人口カラ地租カラ合セマシテ誠ニ微々タルモノトハ申サレマイガ、甚ダ小サ
イ縣ト爲ッテ、ソレガタメニ又一縣ヲ立テル費用其他ノコトガ大層掛リマシテ
今日ノ郡部ノモノハ一同迷惑ヲ感ジハ致シマスマイカト云フ考ガゴザイマ
ス、ソレデモ是非コレカラ千代田縣ト云フモノヲ立テナケレバナラナイト云
フ必要ガアルノデゴザイマスカ、大體ノ所ニ於テ其必要ダケノコトヲ御辯明
下サルト大キニ都合デゴザイマス、一體ハ贊成致シテ居リマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=202
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203・一木喜徳郎
○一木喜德郎君 此席カラ御答致シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=203
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204・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) ソレデ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=204
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205・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 唯〓ノ御問ニ御答致シマスガ、蛇ノ目云々ト云フコトハ詰
リ或ル區劃ノ眞中ニ其區內ニ屬シナイモノガアルト云フ意味デアラウト思ヒ
マス、併シ是ハ決シテ不思議ナコトハナイノデ、現ニ今日ハ行政區劃ノ如キハ
幾ラモ斯ノ如キモノガアルノデ、卽チ前ニ郡ヲ爲シテ居ッタ所ノ區劃ノ中カラ
シテ市制施行ノ際ニ市ヲ特別ニ置イタモノモアリマス、アトハドウナッタカト
云フト澤山ノ蛇ノ目ヲ生ジタノモゴザイマス、ソレハ郡ニ於キマシテハ斯ノ
如キ實例ガアリマス、卽チ郡ニ宜イモノナラバ縣ニモ宜イデアラウト思フ、ソ
レカラ又蛇ノ目ニセズニ之ヲ特立ノ縣ニセズニ唯東京都ノ管轄ニ屬スルト云
フヤウナコトハ、出來ナイカト云フヤウナ御尋デアリマスガ、是ハ私ハ出來ナ
イト思ヒマス、卽チ若シ郡部マデ合シタモノヲ之ヲ東京都ト致シマスルナラ
バ、今日ノ市ト云フモノハ如何ニスルカト云フ問題ガ生ジヤウト思ヒマス、今
日ノ市ヲ別ノ區劃ト認メズニ、郡モ市モマルデ合シテ仕舞フト云フコトナラ
バ格別デゴザイマスガ、今日ノ東京市ハ一ノ團結ヲ爲シテ居ルモノデアルカ
ラ、其團結ヲ存シテ居ル以上ハ唯〓ノ御話ノ如クニハナラヌト思ヒマス、若シ
東京府ヲ東京都ト致セバ其中ノ東京市ニ相當スルモノダケハ更ニ何トカ名ヲ
附ケナケレバナラヌト思ヒマス、サウ致シマスルト丁度是マデ通ニナリマス
ル、ソレデ唯今御話ノコトガ實行ガ出來マスレバ誠ニ簡單デゴザイマスル
ガ、如何ニシテモ良法ガナイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=205
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206・松本鼎
○松本鼎君 唯今提出者ノ何ニハ贊成シタウゴザイマスガ、併シ十六十七ハ
議題ニナッテ居ラヌヤウニモ思ヒマスガ三案共ニ議題ニナッテカラ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=206
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207・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 先刻申シタ通三案トモ議題ト爲ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=207
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208・松本鼎
○松本鼎君 左樣デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=208
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209・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 此委員ノ選定ハ議長ニ一任スルト云フ三案共ニ
十五名ノ同一ノ委員ト云フコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=209
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210・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 然ラパ其通ニ決シマス、御委託ニナリマシタル
特別委員ノ氏名ヲ御報〓致シマス
〔太田書記官長朗讀〕
明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選擧法別表中改正法律案特別委員
伯爵吉井幸藏君子爵三島彌太郞君男爵本田親雄君
三浦安君平山成信君男爵島津珍彥君
男爵毛利五郞君久保田讓君天春文衞君
東京都制案外二件特別委員
公爵德川家達君伯爵〓棲家〓君子爵岡部長職君
松岡康毅君男爵松平正直君男爵北垣國道君
男爵中川興長君谷森眞男君馬屋原彰君
都筑馨六君大浦兼武君安廣伴一郞君
一木喜德郞君菊池長四郞君橋本吉兵衛君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=210
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211・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 明日ハ議事ヲ開キマスガ、日程ハ後トカラ報〓
致シマス、本日ハ散會
午後三時二十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001503242X01319010318&spkNum=211
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