1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十四年三月十九日(火曜日)午後一時五分開議
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議事日程 第十五號 明治三十四年三月十九日
午後一時開議
一 鍬下年期、新開免租年期、地價据置年期の延長に關する法律案(政府提出、貴族院囘付)
二 水害地方田畑地租免除に關する法律案(政府提出、貴族院囘付)
三 生絲檢査所法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
五 馬匹去勢法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
六 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
七 巡査看守退隱料及遺族扶助料法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
八 明治三十三年勅令第二百九十四號(承諾を求むる件) (委員長報告)
九 内務省所管歳出臨時部土木事業費中信濃川河口修築費繰越に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
十 決議案(鳩山和夫外九名提出)
十一 關税定率法附屬輸入税表中改正法律案(栗原亮一外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
十二 明治二十四年法律第二號中改正法律案(大矢四郎兵衞提出) 第一讀會の續(委員長報告)
十三 葉煙草專賣法中改正法律案(西原清東外十五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
十四 不動産登記法中改正法律案(松島廉作外一名提出) 第一讀會
十五 町村制中改正法律案(松島廉作外一名提出) 第一讀會
十六 畑地價特別修正法律案(平岡萬次郎提出) 第一讀會
十七 刑法中改正法律案(安藤亀太郎外四名提出) 第一讀會
十八 刑法中改正法律案(安藤亀太郎外二名提出) 第一讀會
十九 刑法中改正法律案(安藤亀太郎外四名提出) 第一讀會
二十 民法中改正法律案(安藤亀太郎提出) 第一讀會
二十一 外國語學校擴張に關する建議案(神藤才一提出)
二十二 農會補助金追加豫算の提出に關する建議案(稻垣示外二名提出)
二十三 農事試驗場水産試驗場國庫補助金追加豫算の提出に關する建議案(稻垣示外二名提出)
二十四 花窟神社に關する建議案(栗原亮一外二名提出)
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001・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 報〓ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
永代借地權ニ關スル法律案
貴族院ハ本院ノ囘付ニ係ル移民保護法中改正法律案ヲ可決シタル旨同院ヨ
リ通牒アリ
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
鍬下年期新開免租年期地價据置年期延長ニ關スル法律案
提出者早川龍介君加藤六藏君門脇重雄君
堀尾茂助君
開墾地開拓地新開地年期繼續ニ關スル法律案
提出者早川龍介君加藤六藏君門脇重雄君
堀尾茂助君
千島開發ニ關スル建議案
提出者松岡長康君小田貫一君佐藤琢治君
補助貨幣ノ改鑄ニ關スル建議案
提出者栗原亮一君大三輪長兵衞君藤金作君
永井嘉六郞君藤卯八君本正君
安藤龜太郎君野謙次郞君
林彥一君代表選坂橋九郞君
稻垣小恆武淺飯濱齋順正重孝君
野尻岩次雄郎示君君君田松弘野島名宜富堀西石長高重根
門脇重隆淳
串本康三君貫著書房屋路口虎240 高麗榮 日本郵便局
新開貢君有村隼太君
橫山証拠点佐藤昌
公債抽籤償還ヲ實施スル建議案
提出者栗原亮一君大三輪長兵衞君藤金作君
永井嘉六郞君齋藤卯八君根本正君
安藤龜太郎君濱名信平君重野謙次郞君
彥一君淺飯野島正治君高橋九郞君
垣示君順平君長坂
串門野稻林起床後端坐シテ武弘宜路君海豹重
脇特別ニュー恆松隆慶君資源廣進有限公司公 公 費 書 書 書
本康三君小田貫連一君虎
横新開君君有村君隼
山通英貢佐藤昌藏君
請願法制定ノ建議案
提出者平岡萬次郞君山田喜之助君藤澤幾之輔君
關直彥君望月長夫君
福田久松君ヨリ煙草ニ關シ田中正造君ヨリ無責任ノ答辯ニ對スル件、粗
漏無責任ノ答辯ニ對スル件、第十四議會ノ質問答辯ニ對スル件、鑛毒ニ付
無責任ノ答辯ニ對スル件、一方ニハ河身ヲ浚渫シ一方ニハ其同水源山林ノ
濫伐ヲ許可セシ件、第十四議會ニ於テ議員田中正造質問書ヲ提出セシニ政
府ノ答辯ナキヲ以テ再質問ノ件、安部井磐根君ヨリ勅語ニ關シ質問主意書
ヲ提出セラレタリ
委員長及理事左ノ通當選セラレタリ
巡査看守退隱料及遺族扶助料法案
委員長井上源衞君理事武市庫太君
葉煙章專賣法中改正法律案
委員長西原〓東君理事橋元勗君
鐵道敷設法中改正法律案外四件
委員長濱名信平君理事野間五造君
瀆職法案
委員長後藤文一郞君理事竹內正志君
酒類造石稅納期改正ニ關スル建議案
委員長長坂重孝君理事內藤守三君
商船學校生徒遺族扶助ニ關スル法律案
委員長加藤政之助君理事吉田源八君
野蒜築港ニ關スル建議案
委員長田村順之助君理事須藤善一郞君
山形縣下郡界變更法律案
委員長戶狩權之助君理事西村淳藏君
名和昆蟲〓究所ニ交付スヘキ國庫補助金追加豫算ノ提出ニ關スル建議案
委員長大村和吉郎君理事石井鼎君
下總國舊牧開墾地ニ關スル建議案
委員長高津雅雄君理事望月圭介君
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ掲載ス〕
煙草ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出倶也
明治三十四年三月十九日
提出者福田久松贊成者天野若圓
外三十二名
煙草ニ關スル質問主意書
一現行ノ葉煙草專賣法ハ徒ニ繁多クシテ利少ク寧ロ舊印紙稅法ニ如カサ
ルカ如シ然ルニ政府カ△〓ニ於テ此ヲ改正スルノ計畫ナキハ如何
二葉煙草專賣法實施以來密賣買其他弊害非常ニ多シ政府ハ如何ニシテ之
ヲ矯正セント欲スル乎
三煙草ハ將來我唯一ナル一大財源ナルニモ拘ラス其現行制度ハ總テ其發
達ヲ抑止スルノミナラス又總テ當業者ノ大ナル者ヲ助ケテ小ナル者ヲ
壓スルノ方針ナラサルハナク今ヤ其實況ハ愈〓甚タシク遂ニ我カ煙草
業ハ將ニ外人ノ爲メニ獨占セラレントスルノ傾キヲ生シ來レリ政府ハ
之ニ對スル施策アリヤ
無責任ノ答辯ニ對スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十四年三月十九日
提出者田中正造贊成者原田赳城
外四十名
質問主意書
第十四議會ニ於テ議員田中正造ヨリ鑛毒ノ爲メ天產ヲ亡滅スヘキ有形上ノ
價格ニヨル質問答辯書ニ因ルニ「渡良瀨川沿岸被害耕作地ノ害ハ主トシテ
洪水ノ氾濫ニ基因スルモノニシテ不時天災ニ屬シ今日ヨリ將來ノ損害ヲ豫
想計算スル能ハス」トアリ是レ不當ノ甚シキモノ田中正造ノ質問ノ主意ハ
鑛毒水災ニヨッテ天產亡滅ナルニ不時ノ天災ニヨリトテ鑛毒ノ文字ヲ避ケ
事更ラニ故ノ陸奧宗光氏ノ轍ニ習ヒシ答辯ヲ爲シタルハ如何
右及質問候也
粗漏無責任ノ答辯ニ對スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十四年三月十九日
提出者田中正造贊成者原田赳城
外四十名
質問主意書
第十四議會ニ於テ議員門馬尙經氏ノ質問答辯書ニヨルニ「千葉縣銚子港附
近及東京江戶川落口ニ於テハ水族ニ影響アルヲ聞カス且ツ其事實認ムヘキ
モノナシ」トアル然ルニ江戶川落口品川砲臺東方ニ於テ洪水ニ際シ鑛毒ノ
流下スルヲ以テ牡蠣蜆ノ繁殖ヲ妨ケ銚子港ニ於テハ鑛毒事件以來全然牡蠣
ノ繁殖ナキハ是レ事實ノ顯著ナルモノ然ルニ是ノ答辯ニヨリ鑛主ヲ偏愛シ
故陸奧宗光ノ轍ニ習フハ如何
一第十四議會ニ於テ議員門馬尙經氏提出質問答辯書ニヨルニ「目下ノ調査
ニ於テ茨城千葉兩縣ニ於テハ將來鑛毒被害ノ爲メ免租トナルヘキ見込ノ土
地ナシ」然ルニ兩縣下ニ於テ被害日ニ甚シク其顯著ナル事實ハ藁稈ヲ燃燒
セハ固結銅塊トナル是レ政府者ノ怠慢竝ニ鑛毒隱蔽鑛主庇護ノ甚タシキモ
ノ是如何
右及質問侯也
第十四議會ノ質問答辯ニ對スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十四年三月十九日
提出者田中正造贊成者原田赳城
外四十名
質問主意書
第十四議會ニ於テ議員田中正造提出左ノ質問
院議ヲ無視シ被害民ヲ毒殺シ其請願者ヲ撲殺スル義ニ付質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十三年二月十四日
提出者田中正造贊成者本間直
外百十六名
質問主意書
第十三議會ニ於テ緊急ナル兩院ノ議決ヲ無視シテ多クノ被害民ヲ毒殺シ
亦多クノ臣民ヲ打殺スル等ノ一大事實アリ如何
右及質問候也
警吏大勢兇徒ヲ以テ無罪ノ被害民ヲ打撲シタル義ニ付質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十三年二月十四日
提出者田中正造贊成者本間直
外百十六名
質問主意書
一昨十三日午前十一時頃ト覺ユ上野國邑樂郡佐貫村ト申ス所ニ於テ地方
警察官大勢「サーベル」ヲ以テ鑛毒被害民數十人ヲ歐打セリ內負傷者山
崎銈次郎同日午後十二時着京直ニ芝口警察署ニ訴出目下疵口治療中ニ
候而シテ負傷ノ人數死生ノ程モ未タ詳カナラス
一加害者古河市兵衞ノ徒數十人警吏ノ服ヲ裝ヒ巡査ヲ煽動シテ被害民ヲ
威嚇シ且此暴舉ニ出被害民ヲ暗殺センコトヲ謀リタルモノナリト云フ
一被害民ハ常ニ身ニ寸鐵ヲ持セス、然ルニ警官却テ兇器ヲ以テ貧弱ニシ
テ病軀ナル窮民ヲ殺傷シ此殘逆ヲ恣ニスルハ如何
右質問ニ及候直ニ答辯ヲ求ムルモノ也
ニ對シ左ノ答辯アリ
衆議院議員田中正造君提出大勢兇器ヲ以テ無罪ノ被害民ヲ打撲シ
タル義ニ關スル質問主意ニ對スル答辯書
第一項群馬縣邑樂郡佐貫村ニ於テハ質問ノ如キ事實ナシ山崎銈次郞ハ
警察官ノタメニ負傷シタルニ非スト認ム
第二項及第三項ハ質問ノ如キ事實ナシ
衆議院議員田中正造君提出院議ヲ無視シ被害民ヲ毒殺シ其請願者
ヲ撲殺スル義ニ關スル質問ニ對スル答辯書
質問ノ如キ事實ヲ認メス
ト然リト雖モ答辯書ノ明文ニ反シ加害被害ノ事實顯著ナルハ如何
右及質問候也
鑛毒ニ付無責任ノ答辯ニ對スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十四年三月十九日
提出者田中正造贊成者原田赳城
外四十名
質問主意書
第十四議會田中正造提出「足尾銅山鑛毒問題ノ請顧ニ付行政府カ帝國議會
ノ議決ヲ重ンセス且ツ多年議院ノ質問ヲ輕ンシ及鑛毒被害民ヨリ公然奉呈
セル諸般ノ請願ヲ度外視シ却テ不正鑛業者ニ通謀シテ鑛毒ナシト云ヒ或ハ
鑛毒ヲ豫防セリト云ヒ終ニ兩院ノ議決ヲモ無視シ及ロ致害民ヲ毒ニ殺サシ
メタル質問書」ニ種々ノ證憑ヲ揭ケアルニ「政府ハ帝國議會ノ議決ヲ蔑視
シタルコトナク其週付ニ係ル請願ニ付テモ調査及處分ノ進行ヲ怠リタルコ
トナク其他質問ノ如キ事實ヲ認メス」ノ答辯アルニ質問ノ事實顯然ニシテ
議會議決ノ方ヲ行ハス從テ調査ヲ怠リ爲メニ本議會ニ於テモ議員ノ督促ヲ
受ケタルハ如何ナルコトソ是ニ由テ考フルモ前答辯ノ無謀ナルコトハ明瞭
ナリ是レ如何
右及質問候也
一方ニハ河身ヲ浚渫シ一方ニハ其同水源山林ノ濫伐ヲ許可セシ義ニ付
質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十四年三月十九日
提出者田中正造贊成者原田赳城
外三十二名
質問主意書
一渡良瀨川ハ利根川ニ入リ利根川モ亦近年河底高ク埋マリ目下河身ノ浚
渫ニ著手中ナルニ此水源數萬町ノ拂下ヲナシ古河市兵衞ニ對シテ山林
伐木ヲ許可シタリ左レハ利根川ノ河底ハ之ヨリ增々埋沒シテ同川ノ破
壞ヲ來タスヤ明ラカナルノミナラス渡良瀨川及其他ニ逆流シ兩川沿岸
ノ町村ヲ漂流セシムルモ亦明ラカナリ其ノ自家撞著ノ事業ヲ許可シテ
倍後害ヲ大ナラシムル如何
二明治三十三年二月十二日議員田中正造提出「山林拂下ノ件」ノ質問書ノ
答辯ニ由ルニ「下野國上都賀郡庚申山ノ西北ヨリ群馬縣ニ涉ル凡七里
四方ノ國有林ニ於テハ明治二十九年及三十年中足尾銅山鑛業主古河市
兵衞ニ立木ヲ拂下タル事實ナシ」ト然ルニ現在古河ニ拂下ケタル事業
ノ顯著ニシテ伐木運搬道路ニ付テ松木村騷擾ヲ來タシ居ルニ非スヤ明
ラカニ答辯セラレヨ
三群馬縣利根郡東村字澤入官林ハ四里四方ニ渡ル渡良瀨川水源ニシテ從
來官林ニアリシヲ去ル三十年農商務大臣大隈重信氏ヨリ足尾銅山ニ豫
防命令ヲ發シ竝ニ水源涵養保安林實行ノ發令アルヤ俄ニ之カ不正ノ證
書ヲ造リ私有山トナシテ農民某ニ伐木ノ權利ヲ得セシメ濫伐ヲ爲シタ
ルコト
右及質問候也
第十四議會ニ於テ議員田中正造質問書ヲ提出セシニ政府ノ答辯ナキヲ以
テ再質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十四年三月十八日
提出者田中正造贊成者花井卓藏
外四十二名
質問主意書
一第十四議會ニ於テ議員田中正造左記ノ質問主意書ヲ提出之處政府ノ答辯
ナキヲ以テ及再質問候
政府ハ常ニ責任ヲ有セサル義ニ付質問主意書(明治三十三年二月
二十三日)
政府ハ鑛主古河市兵衞ノ人ヲ毒殺スルヲ顧ミス今又警官憲兵ヲシテ多ク
ノ人民ヲ負傷セシメ曾テ鑛毒被害ノ爲メ其ノ身體生命ヲ安全ナラシムル
ノ道ヲ講セス只管鑛毒被害民ヲ困ムルノ方針ヲ執リ其極法律ヲ濫用シ司
法權ヲ妄用シ以テ良民ニ附スルニ兒徒ノ汚名ヲ以テシ斯クテ國家ヲ欺キ
土地人民ヲ廢滅セシメ而モ猶ホ靦然其責ニ任スルノ意ナキ理由如何
鑛業ヲ停止セス地方制度ノ破レタルヲ囘復セサル義ニ付質問主意
書(明治三十三年二月一一十三日)
被害地ニアラスト雖モ町村費ノ不足ヲ告クルノ今日ニ當リ鑛毒激甚地ノ
町村ハ悉ク地價ヨリ收入スヘキ町村稅ノ財源ヲ消滅セリ況ンヤ免租ヨリ
來ル公民ノ權消滅シテ自治ノ制度ハ破壞セラレタリ且ツ縣會以下ハ爲メ
ニ議員ヲ失ヒ村政爲メニ破レタルハ夙ニ政府ノ知ル處ナリ然ルヲ明治三
十一年ヨリ此破壞ノ町村ニ對シ何等ノ保教ヲ爲サス今日ニ之ヲ傍觀シ且
ツ此ノ町村ニ對シ地方官ハ舊ノ如ク公務ノ依托ヲ迫ルカ如キ如何
數十万人民ノ生業ヲ停止シテ之ニ害ヲ加フル鑛業主ヲ停止セサル
義ニ付質問主意書(明治三十三年二月二十三日)
一視同仁ノ御勅ニ背反スル事之レヨリ甚シキハナシ又國家經營ノ上ニ於
テ在來ノ享有タル無量ノ天產及所有權ヲ始メトシ被害民ノ生命ヲモ刻ミ
且ツ之ヲ殺傷シ尙且ツ鑛業ヲ停止セサルハ如何
各地森林拂下ケノ代金カ其伐木セル跡ニ苗樹ヲ植ユル經費ノ半額
ニモ足ラサル怪ムヘキ義ニ付質問主意書(明治三十三年二月二十
三日)
甚シイ哉數百万圓ニ價スヘキ山林ノ樹木ヲ僅カニ壹万圓未滿ヲ以テ古河
市兵衞ニ拂下ケタルハ政府ノ答辯ニ依リ明カナリ尙ホ國有山林ハ悉ク此
ノ例ニ依ラサル者少ナシト云フ去ル明治十五年以來三十三年迄ノ拂ヒ下
ケ人ノ性名及段別百町以上ノ分其段別及ヒ收入代金等ヲ明ラカニ答辯ア
レ
流毒ノ根源ヲ止メス伐木ヲ禁セス河川ヲ破壞セシ儘ニシテ改築セ
サル義ニ付質問主意書(明治三十三年二月二十三日)
一河底高ク埋マリ兩岸毒化シテ崩落日ニ甚シキヲ見ル之ニ對スル處置如
何
多大ノ水產ヲ頽廢セシメテ之ヲ囘復セサル義ニ付質問主意書(明
治三十三年二月二十三日)
一群馬栃木埼玉茨城千葉東京府ニ涉リ渡良瀨利根江戶川及ヒ銚子港ト東
京灣ニ達スル本枝流又大小池沼ニ生活スル數万ノ漁業者ヲ去ル明治十
二年ヨリ起算シ年々其生業ノ減滅セル其程度ヲ示セ
鑛業ヲ停止セス且ツ免租ノ繼年期ヲ許可セサル義ニ付質問主意書
(明治三十三年二月二十三日)
一免租ニ至ラサル田畑ヨリ今ハ銅化セル菓灰ヲ出スニ至レリ政府ハ何等
ノ證跡ニ依リテ有毒地ノ免租地ニ繼年期ノ許可ヲナサヽルカ如何銅山
附近渡良瀨川上流ノ水色依然舊ノ如ク〓マラス常ニ毒色ヲ呈ス之レ凡
眼ノ一目見テ以テ多毒ナルヲ知ル而モ尙ホ雛形的豫防工事ノ一角ヲ以
テ銅山全體ノ功ヲ奏スルモノトシテ鑛毒ヲ停止セサルカ冱寒ノ氣候ト
地勢狹溢トハ防クヘカラス如何
足尾銅山附近群馬縣澤入官林不正下ケ戾シノ義ニ付質問主意書
(明治三十三年二月二十三日)
一群馬縣澤入官林數萬町歩ヲ詐欺シ地元平民某ニ下ケ戾シタルハ事實ナ
リ而シテ其官林段別及ヒ下ケ戾スヘキ證據ノ不正ナルヲ下ケ戾シタル
事
一小部分ヲ下ケ戾スヘキ事實アリトスルモ其地籍ヲ詐リテ數萬町步ノ官
林ヲ私シ之ヲ一個人ニ下ケ戾シタルハ當局大臣等カ下ケ戾シ願人ト結
托シテ惡事ヲ爲シタルニハアラサル乎若シ然ラストセハ確證ヲ示サレ
ンコトヲ望ム
國家歲出ノ分捕ヲ主義トシ人權ヲ無視セントスル義ニ付質問主意
書(明治三十三年二月二十三日)
一明治二十三年以來國費增加シテ三倍强トナリ國威振ハス民カ疲弊シ殊
ニ鑛毒被害地ノ如キハ其ノ毒益〓激甚ヲ逞フシ人畜死亡多キヲ加ヘ尙
ホ且ツ之ニ腕力暴威ヲ以テ望ムハ如何
財源ヲ紊シ公私有ノ財產ヲ減シ而シテ歲入財源ノ不足ヲ唱フル義
ニ付質問主意書(明治三十三年二月二十三日)
一國家ノ財源タル廣大ノ山林ヲ捨ツルカ如ク與フルカ如ク拂ヒ下ケ且ツ
之ヲ濫伐セシメ依テ洪水ヲ激甚ニシ依テ國家ノ大小河川ヲ破壞シ殊ニ
甚シキハ足尾銅山ノ煙毒ハ廣大ナル諸山林ヲ枯凋シ山嶽ヲ瓦解崩落セ
シメテ河川ヲ埋メ破リ其ノ事實ハ無比無類ノ大害ナリ而シテ其銅山ヨ
リ流出セル鑛毒ハ上野下野武藏下總常陸ノ五洲ヲ橫斷シテ現形ノ六萬
町歩ノ有租地ヲ砂漠ニ化シ去ラントシテ尙ホ侵害ノ將來ニ停止スル處
ヲ知ラス如此無量ノ天產固有ノ田園ト人畜トヲ減シ年々國土ノ資本ヲ
減損シテ未タ加害ノ根源ヲ絕ツヘキナク尙ホ且ツ其山ヲ荒シ其毒ヲ流
シ其水ヲ〓メス其人ヲ毒ニ殺シテ厭フナク之ニ對スルノ請願者ヲ殺傷
シテ除害ノ事業ヲ顧ミス且ツ曰ク歳入財源ノ乏シキヲ如何セントノ理
由如何
政府ハ多年鑛毒ノ人命加害ノ質問ニ對シ詐欺ノ答辯ヲナシタルノ
義ニ付質問主意書(明治三十三年二月二十三日)
政府ハ從來衞生被害ヲ認メスト答ヒタレトモ鑛毒地ノ小部分ナル町村十
二字三十四個ニ付人口一万八千中ニ於テ一千餘人ノ夥シキ毒死者ヲ出シ
テ而モ尙ホ之ニ驚カス內務省醫學士宮入某被害地ニ來リ此慘狀ヲ見テ
頗ル同情ヲ表シタルニ當局諸大臣ハ足尾銅山鑛業主古河市兵衞ヨリ利益
ノ分配ヲ受ケタル爲メ歟非命ノ毒死アルモ尙ホ且ツ人命ニ害ナシト誣ヒ
且ツ殘虐日ニ至ラサルナク屢〓職權外ノ暴行ヲ爲シ終ニ被害民ヲ惱マシ
傷メタリ旣ニ今囘ノ如キ白晝持兇器ノ大惡行ヲ爲シタルモノト何ソ異ラ
ンヤ之ヲ如何
故ラニ加害者古河市兵衞ニ緣故アル者ヲ地方官吏ニ任シテ被害民
ヲ殺シ盡サントスル義ニ付質問主意書(明治三十三年二月二十三
旦
一現ニ栃木縣書記官樺山某縣屬靑木某ノ二人ハ被害民ヨリ不正ノ證書ニ
調印ヲ取リタル者ナリ其他群馬縣知事ノ古河市兵衞ノ爲メニ奔走スル
コトヲ始メ諸府縣警察郡吏等ヨリ町村駐在巡査ニ至ルマテ十中ノ七八
人ハ加害者ノ雇人ニシテ表裏二重ノ月給ヲ取リツヽアリト聞ケリ此ノ
如キ事情アルヲ以テ多年下情ノ上達セサル今囘ノ橫暴モ又此古河市兵
衞ノ奴隸タルモノヽ惡意ニ出デタル可シ中央當局者果シテ克ク之ヲ探
知シ得ルカ抑モ又知テ此惡事ヲ爲シタルカ
鑛毒被害民ノ病軀中ニアルコトヲ知リツヽ之ヲ虐待セシ義ニ付質
問主意書(明治三十三年二月二十三日)
一警察憲兵等ニ殺傷セラレタル被害民ハ悉ク病體ニアラサルハナシ警官
憲兵ノ夙ニ知ルトコロナリ己ニ人ノ毒ニ死スル多シトセハ生存者又病
體ナラサルナシ此ノ病體ニ用ユル防寒具ヲ奪ヒ〓料ヲ奪ヒ打撲殺傷シ
テ水中ニ投シ衣服ノ濡レタルヲ改メズ寒氣ニ苦シマシメ亦之ヲ搏シタ
ルノ後慘酷ニモ之ニ幾囘トナク毆打ヲ加ヘタリ夫レ憲兵警官ニ命シテ
惡事ヲ爲サシムル斯ノ如シ抑モ古河市兵衞ヨリ何百何十萬圓ニテ此大
惡事ヲ受負タル乎其事實如何
政府ハ特ニ關八州ノ人民ガ從順ナルヲ侮リ各所ニ於テ無慮數十萬
町步ノ山林ヲ押領シ之ヲ愛スル所ノ緣故ニ與ヒ一方ニハ己ガ利欲
ノ爲メニ六萬町步餘ノ有租地ヲ舉ケテ砂漠トナスヲ憚ラス終ニ其
被害民ヲ毒殺シ及殺傷セシ義ニ付質問主意書(明治三十三年二月
二十三日)
一薩長藩閥ノ專橫此ニ至テ極マレリ此ク本國東方ノ土地人民ニ對スル殘
忍我欲譬フルニモノナシ今尙之ヲ改ムル能ハザルカ將タ倍〓其惡事ヲ
增長セントスルカ
海外移住ノ勸誘ヲナシツヽ却テ帝國本土ノ廢滅ヲ助成スル義ニ付
質問主意書(明治三十三年二月二十三日)
一故ラニ本島ノ中央ニ於テハ多大ノ良土熟地ヲ不毛トシ砂漠トシ人畜ノ
住居スベカラサル魔境ヲ造リ之ニ住スルモノノ生命ヲ刻ミ太古ヨリノ
住民ヲシテ住居ニ堪ヘザラシム如何
官吏我欲ノ爲メニ學理上ノ思想ヲ失ヒタル義ニ付質問主意書(明
治三十三年二月二十三日)
一當局大小官吏十中ノ七八ハ皆此我欲ノ爲メニ自家ノ本領ヲ忘レ又自ラ
本領ヲ破リ剩ヘ毒ヲ以テ多種ノ天產ヲ亡滅シ又人爲ヲ以テ人畜ヲ毒殺
シ尙且ツ之ニ對スル請願者ヲ創傷シテ之ニ被ラシムルニ兒徒嘯聚ノ汚
名ヲ以テスル如キ實ニ惑ヘルノ甚タシキモノニアラズヤ
輦載ノ下ニ直接鑛毒ノ侵害アルヲ知ラサルカノ義ニ付質問主意書
(明治三十三年二月一一十三日)
一東京府ハ皇室ノ在ル所中央各官省ノ存スル所殊ニ內務省衞生局竝ニ
大學醫學部ノ在ル所且ツ警視廳ノ在ル所ナリ其他國政發動ノ萬機皆聚
ツテ此府下ニアラザルナシ而シテ古河市兵衞ノ流出セシムル足尾銅山
ノ害毒ハ今ヤ現ニ東京府下マテ侵入セリ而カモ猶直接人民ノ生命ヲ害
スルヲ知ラサルカ
政府カ
皇室ノ尊榮ヲ冒瀆シ憲法ヲ無視スルノ甚シキ義ニ付質問主意書
(明治三十三年二月二十三日)
一陛下ノ赤子タル被害地ノ人民カ奸商古河市兵衞ノ爲メニ祖父傳來ノ家
產ヲ蕩盡シ其骨肉ヲ殺傷セラルヽニ忍ヒス之レガ救濟ノ道ヲ求ムルモ
陛下ノ輔弼タル百僚官吏ハ憲法々律ノ恩惠保護ヲ殊シ被害民ニ限リテ
與ヘサルノミナラス却テ時々暴威暴力ヲ以テ之ニ臨ミ自己ヲ利センカ
タメニハ憲法ノ全部ヲ破壞シ法律ヲ亂用シ法律以外ニ突出シ良民ヲ殺
傷スル等之レ一視同仁ト勅セラレ給ヘタル
陛下ノ良民タル一部ノ良民ヲ虐待スルモノニシテ之レ
陛下ノ聖旨ニ大ニ違ロタルモノト云ハサルヘカラス之レ
皇室ノ尊榮ヲ冒瀆スルノ甚シキモノト恐察ス如何
其源ヲ〓メス其末ヲ修メントスルノ義ニ付質問主意書(明治三十
三年二月二十三日)
一水源鑛毒各種ノ汚毒甚タ多クシテ本流渡良瀨川ノ水ハ常ニ毒色ヲ呈シ
何人ト雖モ一目其多毒ナルヲ認メ得ヘシ之ヲ以テ下流多種ノ天產ヲ亡
滅シ又人畜ヲ殺ス等皆此本流ノ毒水氾濫ニ基ヒセサルモノナシ若シ夫
レ一朝風雨アレバ忽チ山嶽崩レ全山ノ毒物悉ク渡良瀨川ノ本流ニ投ス
然ルヲ區々豫防工事ノ效能ヲ說キ以テ足レリトスルハ之レ全山ノ地形
ト氣候ノ劇變及下流ノ地勢トヲ辨ヘス亦沿岸無量ノ天產ヲ顧ミサルモ
ノナリ之ヲ如何
我等被害民ヲ救ヘヨ然ラサレハ是レニ死ヲ與ヘヨトノ請願ニ對シ
暴行ヲ加ヘ殺傷セシメシハ何等ノ理由ニ出テタルカノ義ニ付質問
主意書(明治三十三年二月二十三日)
一本期議會兩院ニ捧呈セル鑛毒被害民救助請願理由書ノ結文ニ曰ク「噫
政府タルモノ宜シク今ヨリ後唯如何セハ足尾銅山ノ罪蹟ヲ隱敵シ得ル
カ又奈何セハ其鑛業ヲ曲庇シ得ルカ奈何ニセハ其責任ヲ免ルルヲ得ル
カ奈何セハ我等被害民ヲ撲殺シ得ルカノ偏頗ナル心ヲ捨テテ此被害地
人民ノ多年間毒ニ殺サレツヽアリシヲモ知ラサルヲ憐ミ奈何ニセハ之
ヲ救助シ得ヘキカノ正理公道ニ基キ飜然其精神ヲ改メ能ク條例ヲ厲行
シ以テ能ク法ヲ守リ以テ能ク水源ヲ涵養シ以テ能ク國家ノ田園ヲ保護
スヘシ而シテ又山嶽ノ崩落ヲ防キ河川ノ流水ヲ〓メ毒化セル河川兩岸
ノ墜落ヲ止メ河身ノ破壞ヲモ改造スヘシ若シ其樹木ノ濫伐ヲモ防ク能
ハス水源諸山ニ苗木ヲ植ユルノ密ナル能ハスシテ完全ナル造林ノ目的
ヲ達スル能ハス砂防工事ノ勵行ヲナス能ハス岩石土砂ノ放流ヲ禁抑ス
ル能ハス下流ノ土質毒化シテ兩岸ノ墜落河底ノ埋沒セシヲモ復スル能
ハズ尙ホ河身破壞ノ改築ヲ急ク能ハス民屋ノ毒河ニ漂フ劇變ヲ救フ能
ハズ制度ノ破レタルヲ修ムル能ハス毒ノタメ停止セラレタル生業
ヲ復活シテ公益ヲ保護スル能ハス悲慘ナル戶口ノ死滅ヲ救フ能ハス死
地ニアル我等窮民ノ急ナル請願ニ對シ之ヲ處分スル能ハス水ヲ〓ムル
能ハス天產復活ノ基ヲ開ク能ハス憲法ヲ守ル能ハス非命ニ殪レタル者
ノ處置ヲナス能ハス權利ヲ全ウセシムル能ハス生命ヲ救フコト能ハス
ンハ寧ロ我ミヲ殺セヨ、言、軌ヲ脫シ語、律ヲ逸スル如キアルハ慘苦筆
舌ノ及ハサルモノアレハナリ又誠ニ寸斷刻苦ノ慘ニ堪ヘサレハナリ致
死ノ請願本書遂一採用セラレスンハ我等鑛毒被害民ハ秩序順次ニ則ト
リ自家ヲ救護スルノ道万々杜絕セラレタルモノナリ敢テ閣下ノ處決ヲ
仰キ度候恐惶謹言」トアリ又タ足尾銅山鑛毒被害民生命保護ノ請願書
ハ明治三十二年二月八日山口縣熊毛郡田布施村四百三十七番屋敷平田
勝馬栃木縣安蘇郡赤見村田村儀重ノ二名ヨリ帝國議會ニ捧呈セシモノ
ニシテ兩院ハ旣ニ之ヲ政府ニ迴送セリ然ルニ政府ハ此請願書ヲ埋沒シ
テ其處分ヲナサス而シテ多ク死者ヲ出シタル被害民ハ專ラ秩序ヲ履行
シテ行政當局諸大臣及內閣法制局等ニ捧呈セル今囘ノ請願書ニモ被害
地各縣ノ町村長數十名連署セシヲ地方官ヲシテ先ツ其論願ヲ拒マシメ
加之本月十三日群馬縣警官及憲兵ヲ利用シテ加害者古河市兵衞ノ爲メ
其被害民ヲ創傷セシ理由如何
故ラニ良民ヲ殺傷スルヲ謀リタル義ニ付質問主意書(明治三十三
年二月二十三日)
一埼玉縣北埼玉郡利島川邊兩村茨城縣猿島郡新〓村群馬縣邑樂郡海老瀨
村ノ四ケ村鑛毒被害民ハ本年二月十三日合計凡六百人生命保護ノ請願
書ヲ相携ヘ同日午前五時〓里ヲ出立同午前八時西佐貫村字川俣ヲ距ル
二里ノ處ニシテ無事利根川ヲ南ニ渡リ更ニ行クコト二里ニシテ埼玉縣
忍町警察署長警部佐藤浩吉巡査二十餘名ヲ率イ來リテ被害民ニ說諭ス
ル處アリ卽チ被害民ハ十名ノ委員ヲ撰ミ出京セシメ殘ル五百九十人ハ
歸途ニ就キ利根川ヲ北ニ渡リテ群馬縣警察官ト堤上ニ遭遇スルヤ警察
署ハ理不盡ニ被害民ヲ打撲シ輕傷ヲ負ハサルモノナシ此ノ溫良ヲ證明
スルニ足ルヘキ被害民ノ歸途ニ就クヲ見テ此ノ如キ暴虐ヲ加フ之ヲ以
テ考フレハ數千ノ被害民ニ對シ暴行ヲ行ヘメルハ豫メ之レカ暴虐ノ準
備アリシコト明カナリ之レ如何
鑛毒被害地無政府ノ義ニ付質問主意書(明治三十三年二月二十三
旦
一足尾銅山鑛毒被害地ハ多年無政府ナリ近クハ今囘警吏ノ橫暴殺傷ノ如
キハ無政府ヨリモ更ニ甚シク誠ニ之レ暗黒社界ナリ無政府ヨリ甚シキ
トセハ爾來被害民ハ直チニ加害者撲滅ノ方法ヲ講セサルヘカラス因テ
此ノ被害民カ自家ノ爲メ國家ノ爲メ亦父母子弟ノ殺サレタルカ爲メ其
仇ヲ酬ヘンカ爲メ亦損害賠償ヲ請求スルカ爲メニ無政府人民ノ權利ト
シテ大勢號呼加害者ニ對スルノ運動劇烈ヲ呈スルニ至ラハ曩日ノ無政
府ハ直ニ有政府トナリテ其政府ハ直ニ加害者ヲ曲庇シテ被害民ヲ苦シ
ムルカ如キ之レ政府ハ恰モ無キカ如ク亦有ルカ如シ若シ政府有リトセ
ハ何故ニ被害者ノ死命ヲ〓ハスシテ却テ之ヲ殺傷セシカ之レ政府無キ
ニ如カサルナリ亦政府ナシトセハ何故ニ被害民ニ對シ法律ヲ濫用シ亦
法律以外ニ突出シテ無罪ノ被害民ヲ撲殺セルカ或ハ亦父母毒ニ死シテ
悲ムヘキニ巡査ハ日夜弱者婦女子ヲ威シテ恐怖セシメ亦請願人ノ集合
ヲモ許サス而シテ農商家業ニ就ク能ハサラシムル程ニ加害者ノ間諜メ
ル俗吏ヲ被害地ニ放チテ陰顯講詐無心ノ良民ヲ惱マシテ止マサルカ如
キコトヲナスカ被害地一少部分ノ諷査ニテモ一千有餘人ノ非命死者ヲ
出セル程ノ悲慘ニ陷レラレ居ルト雖モ怪ムヘキ哉警察吏ノ一人トシテ
之ニ注意ヲ與ヘシモノナシ嗚呼亦甚シカラスヤ又被害地ノ警吏巡査ハ
古河市兵衞ノ間諜ニアラサルモノ殆ント稱ナリト云フ依テ被害民ハ誣
ユルニ兇徒ノ惡名ヲ以テセラレタリ政府ハ何故ニ他府縣ノ警吏巡查ト
速ニ交迭セスシテ此原被ノ官民ヲ雜居混同セシメ日夜ニ通シテ此ノ病
軀ノ窮民ヲ虐待セシムルカ
右ハ第十四議會ニ於テ質問セシモ政府ノ答辯ナキヲ以テ及再質問候也
勅語ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十四年三月十九日
提出者安部井磐根贊成者早川龍介
外二十九名
質問主意書
明治二十三年十月三十日下賜ル勅語ニ對シ近來數種ノ新聞雜誌ニ顯レシ
所ノ撤囘說ナルモノアリ實ニ恐懼ニ堪エサル次第ニシテ不聞ニ置ク能ハス
依テ之カ事實ノ有無ヲ糺シ明答アランコトヲ望ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=1
-
002・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 是ヨリ會議ヲ開キマス--千田軍之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=2
-
003・田中正造
○田中正造君(二百三十九番) 議長チヨット-先刻提出致シマシタガ、其
質問書ガ一通落チテ居ルヤウデスカラチヨット後マデヾ宣シウゴザイマス
カラ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=3
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004・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 尙ホ注意致シマセウ
〔千田軍之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=4
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005・千田軍之助
○千田軍之助君(二百五十四番) 諸君、私ハ高等學校及大學增設ニ關スル質
問書ヲ提出致シタ一人デゴザイマス提出者一同ニ代リマシテ、簡短ニ其理
由ヲ述べヤウト存ジマス、諸君モ御承知ノ通リ此日〓戰役後、國家百般ノ
コト膨脹擴充シ若ハ改良進步シツヽアルコトデアリマス斯ノ如キ形勢デ
アリマス故ニ、町村ノ負擔ニ屬スル小學校〓育ノ如キモ明治二十五六年
ニアリマシテハ其經費僅ニ七百万圓バカリデアッタノガ、今日ハ二千万圓
以上ニ達シテ居ルデアリマス又中學ノ如キモ、明治二十五六年ニ在リマシ
テハ其校數僅ニ五十校バカリデアリマシタノガ、今日ハ二百校以上ノ多キ
ニ達シテ居ルノデアリマス斯ノ如ク普通〓育ガ、卽チ地方ノ自治ニ屬スル
所ノ普通〓育ガ普及發達シテ居ルデアリマスワレニモ拘ラズ政府ノ責
任ニ屬スル卽チ中央政府ノ直轄ニ屬スル所ノ高等〓育ノ設備ガ、非常ニ後
レテ居ルデアリマス、ソレガタメニ此日本ノ卽チ我國ノ〓育上ニ、如何ナル
影響ヲ及シテ居ルカト云フコトヲ、調査致シテ見ルノニ實ニ〓嘆ニ堪ヘヌ
實況デアリマス、諸君モ御承知ノ通、昨三十三年ハ中學校ノ卒業生ハ一万四
千人以上デアッタデアル、其中進デ髙等學校ニ這入リ、大學ニ這入ラントス
ル者ハ四千人アッタデアル、所ガ其四千人ノ中デ千五百人ト云フ者ハ、入學
ラ許サレタデアリマスケレドモ、後トノ二千五百人ト云フモノハ、學力ガ
入學スル學力ガアルニ拘ラズ、之ヲ收容スベキ學校ノナイタメニ落第ト云
フ汚名ヲ〓ラシテ排斥シテシマッタデアリマス然ラバ其他ニ何カ高等學
校ニ這入ル學校ガアルカト言ヘバ、是レ亦學校ガナイノデアル、今年ハ又中
學ノ卒業生ハ昨年ヨリ一層多イ方デアリマス、卽チ今年ハドウシテ見テモ
一万五六千乃至七八千ノ卒業生ハアルサウシテ見ルト是レ亦其中デ進デ
高等學校ニ這入リ大學ニ這入ッテ專門學ヲ修メヤウト云フヤツガ、少ク
モ五六千人ハアル割合デアリマス然ルニ是レ亦收容スベキ學校ガナイタメ
ニ僅ニ千五六百人位ハ入學ヲ許サレルデアリマスケレドモ後トハ學力
ガアルニモ拘ラズ是亦落第ト云フ汚名ヲ被ラシテ學校ガナイタメニ
排斥ヲセンケレバナラヌデアリマス、諸君、此中學校ノ卒業生ノ中、進デ高
等學校ニ這入リ大學ニ這入ッテ、專門學ヲ修メヤウト云フ者ハ國民中ノ
粹中ノ粹ナル者デアッテ、他日國家ノ精神骨髓ト爲ルベキ人材デハアリマセ
ヌカ其人材ヲ學校ガナイタメニ年々數千人宛排斥シテ往クト云フコト
ハ吾〓諸君ト共ニ國家ノ文明富强ヲ期スル上ニ於テ、一大遺憾ナコトデハ
アリマセヌカ(「簡短」ト呼フ者アリ)是ハ大事ナコトダー最モ縱令一方デ排
斥シツヽアッテモ是マデ大學ヲ卒業シタ學生、及今後大學ヲ卒業セントス
ル學士ヲ以テ、我國社會各種ノ方面ノ需要ニ應ズルコトガ出來ルナラバワ
レデモ辛抱ガ出來ルケレドモ是マデ明治初年大學ヲ設立シテ今日マデ出
タ學士ノ數及今後出デントスル學士ノ數、寳ニ僅々タルモノデアッテ、我國各
種ノ方面ノ需要ニ應ズルコトガ出來ナイノデアリマス、試ニ需要ノ一二ノ例
ヲ舉ゲテ見ルナラバ我國ノ高等文官デハ一万人以上ハアルデアル其他民
間ノ實業界ニ要スル理學士トカ工學士トカ云フモノハ是レ亦數千人ノ多キ
ヲ要スルノデアル、其他辯議士ノ如キモ、千五百乃至二千人ノ多キヲ要スルノ
デアル新聞記者ニモ千五百乃至二千人ノ多キヲ要スルノデアル、是レ亦
殆ド通計スルト一万人居ルノデアル其他醫者ノ如キモ吾等ハ統計ヲ調ベ
テ見ルノニ、我國ニ四万以上ノ醫者ガアルノデアル其他ニ又種々ノ專門ノ
智識ヲ有スル者ヲ要スルモノヲ總計致スト云フト、殆ド六七万ノ專門ノ智
識ヲ有スル者ガ入用デアル、然レドモソレダケノモノヲ悉ク專門ノ學士ヲ要
スルコトハ出來ナイケレドモセメテ此處五七年乃至十年ノ間ニハ一万五
六千万至二万位ノ専門ノ學者ヲ、此社會ニ出スコトニセンケレバナラヌ然
ルニ·大學アッテ今日マデ以來卒業セラレ居ル者ハ僅ニ四千人デアル、其中
ニ今現存シテ居ル者ガ、三千人ホカナイノデアル、今後卒業スル-東京大
學ナリ京都大學カラ卒業スル者ハ、幾ラアルカト云フト、是レ亦年々數百人
ホカナイ今日ノ高等〓育ノ組織デアッテハ、幾年經ッテモ日本ニ專門學士ト
云フモノガ、五六千ヨリ多クハ出ナイノデアリマス之ヲ軍隊ニ譬ヘテ見ル
ナラバ日本ノ十二師團、近衞、此十三師團ノ兵隊ヲ適當ニ動スニハ五千人
ト云フ將校ガナクテハ動カナイノデアル然ルニ僅カ五六百人ノ將校ヲ備ヘ
テ、我國ノ軍隊ガ奮ハナイト云フコトヽ同ジコトデアル、日本ノ今日ノ四千万
ノ中、中學以下ヲ假ニ下士ノ兵卒トスルナラバ專門學ヲ修メタ者ハ是ハ
將校デアルノデスサウスルト少クモ一二万ノ專門ノ學士ガナクテハ此四
千万ノ國家ヲ運用シ發達ヲサセルコトハ出來ナイ然ルニ僅ニ三四千ノ學士
ヲ以テ、國ノ發達ヲ圖ラント云フコトハマルデ日本ノ十三師團ノ兵隊ヲ動
カスニ、五千人ノ將校ガ入用デアルノヲ、僅カ五六百人ノ將校ヲ以テ我軍
隊ガ奮ハナイト云フノト同ジ有機デアル、試ニ我國ト文明ヲ同ウスル所ノ英
優獨澳等ノ高等〓育ノ組織ノ有樣ヲ、私ガ調査致シテ見ルノニ、少イ所デ
モ大學校准大學ヲ合セテ二十校位アル多イ所ハ三十校以上アル、サウシテ
大學生ハ平生ドノ位アルカト云フト少イ所デモ二万乃至ニ一万ノ大學生ガ、
始終學校ニ居ルノデアル、多イ所ハ五六万ノ大學生ガアル、サウシテ卒業生
ハドノ位アルカト云フト、少ナイ所デモ四五万-一國內ニ人口ガ四千万ア
レバ四五万ノ卒業生、多キ所ハ八九万、獨逸アタリノ如キハ殆ド十万モア
ルノデアルサウシテ社會各種ノ方面ノ要用ニ應ジテ居ルノデアルワコデ
始テ國家ハ隆盛ニナル是ハ我國ニ於テモ此所一年ニ一二万ノ智識ヲ備ヘ
タ學士ガナケレバナラナイガ、何年經ッテモ四五千シカ出來ナイト云フ今日
ノ組織デアル、吾ミハ諸君ト共ニ東洋ノ世界ニ就イテハ、絕大ノ希望ト責任ヲ
持ッテ居ルノデアル、然ルニモ拘ラズ、國家ノ精神骨髓ト爲ルベキ高等〓育
ハ今日ノヤウナ有樣デアッテハ國ノ隆盛ニ赴クコトヲ望ムノハ、百年河〓
ヲ待ット一般、決シテ其目的ヲ達スル日ガナイト考ヘルノデアル政府部內デ
ハ斯ウ云フ說ガアル、モウ日本ノ〓育ハ進デ居ル位ダト云フ考ヲ持ッテ居ル人
ガアルソレハ一體明治初年ニ比スレバ專門學ヲ修メタ者ノナイ時代ニ較
ベテハサウ云フ考、進デ居ルカハ知ラナイガ、吾〓ハ諸君ト共ニ期スル所
ノ國家ヲ作リ出スニハ確ニ不十分デアルソレカラ第二ニ高等〓育ヲ大ニ
擴張センケレバナラヌト云フ必要ハ認メルデアルガ、金ガナイト云フコトヲ
言フ者ガアルヤウデスケレドモ決シテ此高等〓育ハソンナニ金ヲ要スルモ
ノデナイノデアル、假ニ高等學校ヲ三校設ケルトスレバ其經常費ハ十五万
圓-一校五万圓デアルカラ十五万、此十五万圓ノ中デ、殆ド四万圓程ハ授業
料ガアリマスカラ、十一万何千圓アッタナラバ高等學校ヲ三校設ケルゴトふ
ガ出來ルノデアル、ソレカラ大學二校ヲ設ケルニ附イテハ經常費ガ七十万
園イル譯デアリマスケレドモ是トテモ國家ノ上カラ言ウタラ何デモナイ
卽チ高等學校三校ト大學二校ヲ假リニ此年度ニ設ケルトシタ所ガ、八十万圓
程ノ金ガアッタラ宜イノデアル、其他建築費ハ兩方デ三百万圓カ四百万圓程、
高等學校大學デ掛ルケレドモ、是ハ又十年ヲ期シテヤレバ宜シイ、十年間ノ支
出シテ宜イノデ、年々三四十万圓デアル、是レ亦獨リ國庫負擔シナクトモ
其設立スル地方ニ對シテ、奬〓其宜シキヲ得メナラバ高等學校ノ所ハ全部
デモ寄附スルコトニナリマス、サウスルト經常費ハ僅ニ九十万圓デアル是
位ハ日本ノ今日ノ財政ノ上カラ云ッタラ何デモナイコトヽ考ヘル諸君、現
ニ此罪人ヲ容ルヽ所ノ獄舍ノ建築デアル、此獄含ノ建築ニモ既ニ三十四年度
ニ於テハ五箇年ノ繼續費トシテ、百五十万乃至二百万圓ノ大金ヲ支出シテ
居ルデハアリマセヌカ此調子デアレバ來年度卽チ三十五年度ニ於テモ每
獄舍建築ニ百五十万乃至二百万ノ金ヲ出スノデアル、罪人ノタメニコヽ七八
年乃至十年ノ間ニ、殆ド一千万圓ノ金ヲ出スノデアル然ルニ國家ノ精神骨
髓ト爲ルベキ所ノ、高等〓育ニ年々八十万乃至百万ノ金ヲ出セナイト云フ
コトハ私ハ決シテ承知ノ出來ナイコトヽ考ヘルノデアル第三ニハ高等學
校ノ擴張スルコトノ必要ハ認メテ居ルガ、〓員ガナイト、斯ウ云フケレドモ
是レ亦採ルニ足ラヌ議論デアル、初メ東京ノ大學ヲ設クルトキ、又兩三年前
京都大學ヲ設クルトキ又岡山ニ高等學校ヲ設クルトキ之ニ對シテ東京ノ
〓員、京都ノ〓員、岡山ノ〓員デアルト云フモノハ決シテアッタ譯デハナ
イ色〓都合シタノデアル今日ト雖モ斯ウ云フ國家全體カラ打算シテ高
等學校ヲ擴張スル必要ガアリトシタナラバ〓員ハ是マデノ大學ノ卒業生ナ
リ海外ノ留學生ナリ、其他種々ノ方面カラ都合スレバ、足リルコトヽ思ヒ
マス、サウシテ足ラヌケレバ、當分海外カラ外國人ヲ雇ッテモ宜シイノデアル
〓員ガナイカラト云ウテ、決シテ國家必要ノ擴張ヲ躊躇スルコトハ出來ナ
イト考ヘルノデアル、聞ク所ニ據ルト此高等〓育ノ擴張スルコトニ附イテ
ハ代々ノ文部大臣ハ甚ダ熱心デアルケレドモ今マデノ內閣ノ中ニ、種
妙ナ說ヲ持ッテ居ッテ、免角之ヲ抑制シテ居ルト云フコトヲ聞イテ居ル、現在
現今ノ文部大臣モ、此高等〓育ノ擴張ニ附イテハ熱心デアラウト思フ又
現內閣ノ中ニハ決シテ從前ノ內閣ノヤウナ、考ヲ持ッテ居ル御方ハナイデ
アラウケレドモ前刻カラ述ベタ通非常ニ此高等〓育ノ設備ガ不十分デアル
タメニ國家ノ精神骨髓ト爲ルベキ靑年ヲ年々數千人排斥シテ居ルニモ拘ラ
ズ此明治三十四年ノ豫算ノ中ニ、高等學校增設及大學ノ增設ガアリマセヌ
カラ玆ニ質問書ヲ提出シタ次第デアリマスガ、速ニ此三十四年度ノ追加豫
算トシテ、高等學校三校バカリ、大學一二校、增設ノ豫算ヲ出ス政府ガ決心
ヲ持ッテ居ルヤ否ヤ若シ又其決心ヲ持ッツテ居ラヌケレバ前來モ述べタ如
〃非常ニ日本ノ高等〓育ノ設備ガ不十分デアル故ニ、私ハ如何ナル方法ヲ
以テ政府ハ其責任ヲ全フスルノデアルカ、其邊ヲ承リタイノデアル尤モ
質問書ハ三箇條ニ分レテ居リマスケレドモ、其事柄ガ相關聯シテ居リマスカ
ラ先刻カラ述べマシタノハ三箇條ニ對スル理由デアリマスソレデ速ニ
政府ハ三十四年度ニ於テ追加豫算トシテ、高等學校二三校、大學一二校、增
設ノ案ヲ出サルヽ決心ガアルヤ否ヤ、若シナイナラバ先刻來述ベタ通、甚シク
地方自治ノ普通〓育ハ非常ニ發逹シテ居リマスルケレドモ政府ノ責任ニ屬
スル高等〓育ガ非常ニ後レテ居ルガ故ニ、國家全體ノ發逹ヲ害スル譯ニナツ
テ居リマスカラシテ、如何ナル方法ヲ以テ將來政府ハ此責任ヲ完ウスルモ
ノデアルカ、此邊ヲ承知シタイノデアル、先ヅ此邊デ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=5
-
006・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 福田久松君
(福田久松君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=6
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007・福田久松
○福田久松君(百九十九番) 體體,昨日モ御邪魔ヲ致シマシテ、今日ハ重大
ナ議案モゴザイマスルデ成ルベク簡單ニヤリマス殊ニ私ノ御聽ヲ願フノ
ハ孰モ算盤ノ御話デ、御聽惡ウゴザイマスルガ、併ナガラ私モ年來是ハ持
論デゴザイマス昨年ニモ出シタイト思ッテ居ルノヲ今日マデ控ヘテ居ッテ、
巳ムヲ得ズ出シマシタノデ玆ニ調ハ是ダケ持ッテ居リマスガ、ナカ〓〓之
ヲ申上ゲルト御邪魔ヲ致シマスカラ、極搔摘マンデ簡短ニ致シマス、ソレデ
諸君、私ノ質問書ハ此煙草ニ關係致シマスル質問書デ、卽チ我邦デハ戰後ノ
經營ト稱ヘ明治二十九年度ニ此煙草專賣法ト云フモノヲ拵ヘテ以來實施
致シマシタ、其結果ガドウデアルト申シマスト云フト、甚ダ惡ルイ結果デゴ
ザイマス、殊ニ此煙草ト申シマスルト云フト、誠ニ昔ハ爺サン婆サンノ使料
デゴザイマシタガ併ナガラ近頃ハナカ〓〓需要ガ多ウゴザイマス、今年等
デモ殆ド七千万圓、八千万圓ノ需用ガ、年々アルノデゴザイマセウト思ヒマ
ス今四五年ヲ出デズシテ十万ノ上ヲ越スモノト、確ニ私ハ信ジテ居リマス
ル、ソレガ故ニ今日政府ハ財政ノ整理ヲスルトカ、行政ノ整理ヲスルトカ云
フ際ニ至ッテハ、私ノ考ヘマスル所ニ依リマスト云フト、此煙草ト云フモノ
ハ今日既ニ結搆ナ財源ニナッテ居ルニモ拘ラズ、四五年ヲ出デザル中ニ、大
ナル我財源ニナラウト私ハ信ジテ居ル卽チ重ナル租稅ノ中ノ五カ六ノ中ノ
一ニナラウト私ハ思フノデゴザイマス、斯ク結搆ナ財源デアルニモ拘ラズ、
今日ノ煙草專賣法ト云フモノヲ實施シテ置イテ、煙草ノタメニ甚ダ不結果ナ
現象ヲ見ルト云フコトハ甚ダ遺憾ニ堪ヘタコトデアラウト、私ハ思フノデ
ゴザイマス、ソレ故ニ先ツ煙草專賣法實施以來經過ノコトヲ少シク御聽キヲ
願ヒマシテ私ノ(「簡短々々」「質問ノ要領ヲ略シテ願ヒタイ」ト呼フ者アリ)
略シマスル、併ナカラ其樣ニ略シマスルト云フト要領ハ少モ得ナイ壽日
セヌ方ガ宜イ若シ諸君ガ簡短ニシロト仰ッシヤルナラバ尙ホ長クヤル
若シ短クヤレト云ハナケレバ、短クヤリマス、ソレデ諸君、此煙草專賣法ハ實
施ノトキノ見込ト其實施以來ノ見込トハ段別其他ニ於テ澤山ノ相違モゴ
ザイマス、併ナガラソレハ餘程事實ノ問題デ、〓究モ餘程要サナケレバナリ
マセヌガ、免ニ角其我邦ノ煙草ノ耕作ノ段別ト申シマスルモノハ現今免ニ
角三万町內外デアルト云フコトハ確ニ認メ得ルコトガ出來マセウト私ハ
思フノデゴザイマスソレデ此煙草專賣法實施以來ノ段別ヲ檢査シテ、段別ヲ
見マスルト云フト三十年ガ二万六千餘町歩、三十一年ガ二万六千餘町歩、
三十二年ガ四万二千餘町歩、其次ガ三万七千餘町、卽チ昨年ハ二万六千町
步デゴザイマシタ此統計カラ據リマシテモ三万町步內外煙草ノ耕作ガ出
來ルト云フコトハ確ニ目的ハ立ット思ヒマス而シテ其煙草ノ三万餘町步
ノ上カラ、ドレダケ收穫ガアルカト申シマスト一段步四十貫目取ッテモ三
四-千二百万貫目ハ穫ラレルノデゴザリマス、ソレデハ極大略ノコトダ
ケヲ申述ベマスデゴザイマスガ昨年ト一昨年ノ專賣局ノアル所ノ實收ノ結
果ガドウデアルカト申シマスルト利益ヲ差引キマシテ、六百万圓内外ノ利
益シカゴザイマセヌデゴザイマス所ガ煙草專賣法實施ノ當時ハ千三百
有餘万圓ノ實收額ヲ望ンダモノガ僅ニ六百万圓シカ利益ガゴザイマセヌデ
アリマス誠ニ是ハ此專賣法ヲ實施シタル甲斐モナイノデアルト思ヒマスル
シ六、葉煙草專賣法以前ノ印紙稅ハドレダケ上ッテ居ルカ、直グ前年度ハ
四百有餘万圓上ッテ居ル今日ノ需要ハ三分一ハ殖エテ居リマスカラ此三
分一ヲ加ヘマスルト旣ニ此葉煙草專賣法實施以前ノ六百万圓ノ收入ハ確
ニアルト云フコトハ言ヘルノデゴザイマスルワレノミナラズ此葉煙草專賣
法ト云フモノハ計算ノコトハ簡短ニヤレト云フ仰デゴザリマスカラ申シ
マセヌガ、此小サイモノヲ虐メテ大キイモノヲ助ケルト云フ總テノ方針
ニナッテ居ルノデゴザリマス御承知ノ通葉煙草專賣法ヲ實施シタトキニハ
製造稅ト云フモノハ十五圓掛ケタガ十五圓デハマダ小サイ製造家ガ倒レマ
セヌカラ是ハ五十圓ニスルガ宜カラウト、五十圓ニ製造稅ヲ殖シテ小サ
イ製造業者ヲ倒シテシマッテ、殘ルモノハ大キナ製造業者バカリ、殘ッテシマツ
タノデゴザリマスル、而シテ此大キイ所ノ製造業者ハドウシテアルカト申
シマスルト十三議會ニハ五十圓ノ製造稅ヲ掛ケタカラ、小サイ者ハ皆倒レ
テ吾〓ハ萬歲ト云ッテ、祝杯ヲ舉ゲタ結果ハ、直グニ外國カラ大キナ煙草會社
ガ入ッテ來マシテ、之ヲ買收スル、御承知ノ通、村井兄弟商會ト云フモノガ、ヽ
外國ノ製造會社ニ買收ヲセラレ、水村商會ト云フ人モ買收ヲセラレテ今日
ハツレ〓〓會社ニ交涉シツヽアルト云フコトヲ確ニ聞イテ居ル、將來誠ニ
望アル此業ヲ、ムザ〓〓外國ノ某會社ニ占領セラレ、併呑セラレルト云フノ
ハ今日ノ現狀ニナッテ居ルノデゴザリマス而シテ最前モ申上ゲマシタ通)、
ナカ〓〓此煙草ノ需要ト云フモノハ少イモノデゴザリマセヌ蓋シ本年カ
ラハ七八千万圓ノ需要ハ確ニアルト思ヒマスルガ其中今申上ゲマシタ某
會社ノ如キハ三分一製造スルト致シマシテモ二千万圓若クハ三千万圓ノ
製造高デゴザリマス二千万圓三千万圓ノ製造高ノ中、一割儲ケラレテモ三
百万圓、而シテ煙草ノ製造ト云フモノハ一圓ノ資本デ掛ルト二圓ニナル
卽チ折返シノ利益ガアルモノデゴザイマスカラ若シ三千万圓ノ煙草ヲ製造
シマスルト三千万圓ノ利益ヲ得ラレルノデゴザイマス諸君、此三千万圓ノ
利益ノ金ハ、何處ニ持ッテ往カルヽノデゴザイマセウ、輸入超過、輸入超過、正
貨流出、正貨流出ト云ウテ、世ノ中ノ人ハ大變驚イテ居リマスガヽ煙草ノ中諸
君ノ御銘々ノ中デ、煙ニシテシマッテ、其間ニ二千万圓、三千万圓ノ金ヲ持去ラ
ルヽコトハ近キ將來ニ在ルト云フコトハ今日ヨリ大ニ氣ヲ附ケナケレバ
ナラヌコトデアラウト私ハ思フノデゴザイマスル、誠ニ今日緊急ナ議事モ
ゴザイマスル際ニ、此案ヲ提出致シマシテモウ少シ詳細ニ述ブルコトガ出
來ナイト云フノハ誠ニ殘念デゴザイマスケレドモ免モ角是レハ今日ノ財
政ノ整理、行政ノ整理ナドヲスルト云フトキニハ、政府モ宜シク玆ニ注目シ
テ煙草ト云フモノハ、將來ハドレダケノ稅源ニ發達スベキモノデアル、今日
ドレダケノ現狀ニ陷ッテ居ル、外國人ノタメニ煙草ノ業ト云フモノヲ、占領
セラレテハナラヌト云フコトニ、御注目アランコトヲ、私ハ玆ニ希望致シマ
スルノデゴザリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=7
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008・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 議事日程ノ議ニ移リマス、第一鍬下年期新開免租年期
地價据置年期ノ延長ニ關スル法律案、貴族院囘付
一鍬下年期、新開免租年期、地價据置年期ノ延長ニ關
スル法律案(政府提出、貴族院囘付)
〔早川龍介君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=8
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009・早川龍介
○早川龍介君(二百一番) チヨット此囘付案ニ附キマシテ一言申シマス此
鍬下年期ノ囘付案ニ貴族院デ「又ハ地味ノ熟否」ト云フ六字ヲ本文ニ挿入セ
ラシマシタ是ハ旣ニ委員會ニ於テ種々議論モアリ又委員會ノ報告ノトキ
ニ諸君ニ其事ヲ申上ゲテ置キマシタガ「事業成效」ダケデハドウモ甚ダ
不完全デアルカラ地味ノ熟否モ之ニ挿入シタイト申シマシタガ政府委員
ガ申サレルニハ、此四字ヲ以テ總テヲ含蓄シテ居ルカラ、是マデ政府ノ取扱上
ニ於テ、妨ナイト云フコトデゴザイマシタカラ本文ニハ一向委員會デハ手
ヲ著ケズニ置キマシタ、卽チ衆議院デ修正ヲ致シマシタ所ニハ、貴族院デハ少
シモ手ヲ著ケヌコトニナッテ居リマス、而シテ此方デ大ニ注意ヲ致シマシタ事
業成效ノ下ニ「又ハ地味ノ熟否」ノ六字ヲ加ヘマシタノデゴザイマスカラ、卽
チ最初此方デ懸念ヲ致シテ、希望ヲ致シタ文字ガ、貴族院ニ參リマシテ入ッテ
參ッタモノト同樣ニ相成リマシテゴザイマスカラ、ドウゾ此案ハ此囘付案ヲ
直ニ御認メアランコトヲ、偏ニ希望致シマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=9
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010・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百三十六番) 是ハ異議ハアリマセヌ、貴族院囘付ノ通リ、滿
場一致ヲ以テ議決ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=10
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011・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 貴族院ノ修正ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=11
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012・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通リ決シマス、議事日程ノ第二水
害地方田畑地租免除ニ關スル法律案、貴族院囘付
二水害地方田畑地租免除ニ關スル法律集(政府提出、貴族院囘付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=12
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013・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百三十ハ番) 是ハ貴族院ノ修正ハドウモ同意ガムツカシイデ
ゴザイマス何ゼナレバ此水害地方田畑地租免除ニ關スル法律案ト云フモノ
ニ、本院ハ蟲害、風害、早害ト云フモノヲ挿入シテ既ニ可決シタノデゴザイマ
ス是ハ議員カラ段々法律案ガ出マシテ其法律案ヲ取ッテ政府案ヲ原ニシ
テ、修正ヲ加ヘテ可決シタノデゴザイマス之ヲ今貴族院ノ修正通ニナリマ
スルト現ニ昨年被害ヲ受ケタ土地同一ノ被害デナイコトニナル是ハ貴族
院ノ修正ニ成ルベク同意致シタイノデゴザイマスガ、己ムヲ得ズ此場合ニ
是ハ否決ト致シマシテ、兩院協議會デ、ドウカ相當ナコトニ致シタイコトヲ
望ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=13
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014・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 貴族院ノ囘付案ニ同意スルヤ否ヤノ採決ヲ致シマス、
貴族院ノ修正ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者無発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=14
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015・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 同意シナイコト」決シマシタ、就イテハ協議會ヲ求メ
ルコトニナラウト思ヒマスガ、此協議會ノ委員ハ十名ヲ、議長ガ指名シテ御
異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=15
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016・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通リ致シマス、議事日程ノ第三生
絲檢査所法中改正法律案ノ第一讀會-議案ノ朗讀ヲ省略致シマス、藤田政
府委員
三生絲檢査所法中改正法律案(政府提出)第一讀會
生絲檢査所法中左ノ通改正ス
第一條削除
附則
本法ハ明治三十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員農商務總務長官藤田四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=16
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017・藤田四郎
○政府委員(藤田四郞君) 此法律ハ詰リ第一條ヲ削除ヲ致シマスノデ、別
段此一條ガアリマシテモナクテモ生絲檢査所ヲ設立シテ、將來引續キニ何
等ノ支ヘガゴザイマセヌカラ、此際之ヲ削除致シタイト云フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=17
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018・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 格別御質問ガゴザイマセネバ、議事日程第四審査委員
ノ選舉デアリマスガ
四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=18
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019・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百三十六番) 九名ノ審査委員ヲ議長指名ニ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=19
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020・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 九名ノ審査委員ヲ議長ガ指名シテ、御異議ハゴザイマ
セヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=20
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021・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通決シマス-議事日程第五馬匹
去勢法案、貴族院送付、第一讀會議案ノ朗讀ヲ省略シマス、和田政府委員
五馬匹去勢法案(政府提出、貴族院送付)第一議會
馬匹去勢法
第一條牡馬ニハ去勢ヲ行フ但シ種牡馬ハ此ノ限ニ在ラス
第二條牡馬ニシテ種壯馬タルヘキ資質アリト認メタルモノニハ頭數ヲ限
リ去勢ノ施行ヲ猶豫ス
疾病又ハ發育不全ニ因リ去勢ヲ行フニ堪ヘスト認メタルモノニハ去勢ノ
施行ヲ猶豫スルコトヲ得
第三條牡馬ノ去勢年齡ハ明ケ三歲トス
去勢ハ春期又ハ夏期ニ於テ之ヲ行フ
第四條左ノ各號ノ一ニ該當スル牡馬ニハ去勢年齡ニ拘ハラス去勢ヲ施行
ス但シ明ケ十五歲以上ノモノハ此ノ限ニ在ラス
-去勢ノ施行ヲ猶豫シ其ノ他己ヲ得スシテ去勢ヲ施行スルコトヲ得サ
リシ牡馬ニシテ其ノ事由消滅シタルモノ
二去勢年齡ヲ經過シタル牡馬ニシテ本法施行後本法ヲ施行セサル島嶼
ヨリ牽キ入レ又ハ外國ヨリ輸入シタルモノ
三本法施行ノ際去勢年齡ヲ經過シタルモノヲ除クノ外種牡馬ニシテ檢
査合格ノ證明ノ效力ヲ失ヒタルモノ
第五條牡馬ニシテ去勢施行ノ爲斃死シ又ハ從來ノ用途ヲ變更若ハ廢止ス
ルノ巳ムヲ得サルニ至リタルトキハ償金ヲ與フヘシ
第六條去勢施行ノ費用ニ關スル規定竝前條償金ノ査定ニ關スル規定ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條牡馬ノ去勢ノ施行ヲ拒ミタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
第八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條本法ハ種牡馬檢査法ヲ施行セサル島嶼ニハ之ヲ施行セス
〔政府委員農商務省農商務局長和田彥次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=21
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022・和田彦次郎
○政府委員(和田彥次郞君) 本案提出ノ理由ヲ簡短ニ一言致シマス、是ハ二
箇ノ理由ヨリ致シマシテ、提出致シマシタ一ハ御承知ノ如ク我國ノ頑强
ナル馬匹ノ性質ヲ矯メマス又一ハ種牡馬ヲ絕對的ニ精選致シマシテ現行
ノ種牡馬檢査法ト相待ッテ、改良ヲ完カラシメンコトヲ期スルノデ而シテ本
案ヲ實施致シマスル上ハ農業及運搬用ニ供用致シマスル所ノ馬匹ハ最モ
柔順ニナリマシテ、其當業者ニ向ヲテ至便ナル利益ヲ得マスルノデゴザイマ
ス尙ホ國家多事ノトキデゴザイマシテ或ハ徵發馬ヲ要スルヤウナ場合ノ
ゴザイマシタ際ハ最モ陸軍等ニ於キマシテ非常ナル便益ヲ得マスルコト
ニナリマス、ソレ故ニ本案ヲ提出致シマシタノデゴザイマス尙ホ細目ニ至
リマシテハ、委員會ニ付セラレルコトデゴザイマセウデ、其席ニ於テ說明致
シマスル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=22
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023・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 格別御質問ガゴザイマセネバ、議事日程第六審査委員
ノ選舉ニ移リマス
六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
〔「議長指名」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=23
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024・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 九名ノ特別委員ヲ議長ガ指名シテ、御異議ハアリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=24
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025・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス-議事日程ノ七巡査
看守退隱料及遺族扶助料法案、第一讀會ノ續、委員長報告、井上源衞君
七巡查看守退隱料及遺族扶助料法案第一讀會ノ續(株)
(政府提出)/報告
〔井上源衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=25
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026・井上源衞
○井上源衞君(百九十番) 諸君、本案ハ昨日委員會ヲ開キマシテ、委員長理
事ノ選舉ヲシマシテ、引續キマシテ本議ニ掛リマシテゴザイマス、政府委員
等モ出席ニナリマシテ、本案提出ノ理由ヲ詳細ニ辯明モゴザイマシタ譯デゴ
ザンス委員諸君モ十分質問モアリマシテ逐條審議ヲ致シマシタ所ガ諸
君ノ御手許ニ囘シテゴザリマスル通ニ二十六條及二十八條ニ修正ヲシマシ
テ其他ハ原案通ニ可決ヲシマシタ譯デゴザイマス此段御報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=26
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027・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百三十六番) 是ハ昨日直チニ委員ニ條件ヲ附ケテ、託シタ位
デゴザイマスカラ、ドウカ此際讀會省略ヲ以テ、二讀會デ確定ニナランコト
ヲ希望致シマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=27
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028・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 讀會省略ノ動議ガ、恆松隆慶君カラ出マシタガ、御異
議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=28
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029・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ全部ヲ議題ニ供シマス、委員長報告
通御異議アリマセヌカ
巡查看守退隱料及遺族扶助料法案確定議
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=29
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030・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ確定致シマス-議事日程ノ八明治
三十三年勅令第二百九十四號-委員長ノ報告、高須賀穰君
八明治三十三年勅令第二百九十四號(承諾ヲ(委員長報告)
求ムル件)
〔高須賀穰君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=30
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031・高須賀穰
○高須賀穰君(八十四番) 此案ハ馬匹ノ輸出ヲ禁ズルコトヲ得ルト云フ、大
藏大臣ガ特ニ命令ヲ發シマシタトキニハ外國ヘ向ケテ馬匹ヲ輸出スルコト
ヲ禁ズルコトヲ得ルト云フ法案デアリマス昨日委員會ヲ開キマシテ其委
員長ニハ島田三郞君、理事ニハ私デアリマシタガ今日島田君ガ御差支ガア
ルト云フノデ私ニ說明ヲセヨト云フコトデ說明致シマスガ此日〓卽チ此
支那北〓事件ニ附キマシテ馬匹ヲ輸出スルト云フコトハ今日ノ場合甚ダ
困難デアリマスルカラ致シマシテ禁ジタイト云フコトデアリマシテ委員
會ニ於キマシテ十分ニ審議ヲ致シマシク結果、終ニ委員會ニ於キマシテハ)
今日ノ場合適當ナルモノト認メマシテ、承認ヲ與ヘマシタノデアリマス、ド
ウカ本院ニ於キマシテモ御承諾ニナリタイコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=31
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032・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 委員長ノ報告通、承諾ヲ與ヘルコトニ御異議ハアリマ
セヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=32
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033・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ承諾ヲ與ヘルコトニ致シマス、議事
日程ノ九內務省所管歲出臨時部土木事業費中信濃川河口修築費繰越ニ關スル
法律案、第一讀會ノ續、委員長ノ報告、山本幸彥君
內務省所管歲出臨時部土木事業費中
九信濃川河口修築費繰越ニ關スル法律第一讀會ノ繪(〓〓)(電話本)
案(政府提出)
〔山本幸彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=33
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034・山本幸彦
○山本幸彥君(百十六番) 委員會ノ顛末ヲ御報告致シマス、此案ハ信濃川流
末工事、是ハ二十九年ヨリ卽チ三十五年マデノ繼續工事デアッタノデゴザイ
マス此理由書ニモアリマスル通、種々ノ事情ニ依ッテ未ダ工事ヲ竣ヘテ居
ナイノデアリマスル、故ニ今ヨリ尙ホ三年ノ工事ヲ延バス、卽チ明治三十六年
マデ繰越使用ヲスルコトヲ得ト云フノ法律ヲ制定シタイト云フノ請求デアッ
タノデアリマスルデ此工事ノ樣子ヲ承ッテ見マスレバ、凡ソ三分ノ二程
ハ工事モ進行致シテ居ル趣デアリマスルガ、然ルニ二十八九年頃ノ年々ノ洪
水ノタメニ防害ヲサレテソレガタメニ著手モ餘程遲クナッテ、又御承知ノ通
寒國デアルタメニ意外ナル風雪ノタメ工事ガ遲延シタ、此ノ如キコトガ工
事遲延ノ原因ニ相成ッテ居ルノデアリマスルガ、然ルニ免モ角工事ハ未ダ半バ
過ギヌ位ノ中途ニ在ル譯デアリマス故ニ免ニ角工事ノ延期ト云フコトヲ許
スヨリ他ニ途ハアルマイト云フコトハ委員長ニ於テ認メタノデアリマ
ス、然ルニ之ニ附イテハ多少議論モアリマシテ或ハ之ヲ否決スルト云フノ
議論モアッタデアリマスル、又否決ヲスルト云フノ理由ニハ相當ノ理由ハ具
ヘテ居ッタノデアリマスルガ、然ルニ元ト五年ノ工事ニシテ、ソレヲ尙三年延
スト云フコトハ少シドウモ過ギルデアラウト云フ議論カラ起ッテ、遂ニ一年
短縮ヲ致シテ三十五年マデ繰越使用ヲスルト云フコトニ修正ヲ致シタノ
デアリマス、卽チ三十六年ヲ三十五年ト云フコトニ修正ヲ致シマシテ、是デ
以テ全會一致デ、委員會ハ可決致シタノデアリマスル
〔政府委員内務省土木局長田邊輝實君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=34
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035・田邊輝實
○政府委員(田邊輝實君) 唯今委員長カラ報告ニナリマシタ、內務信濃川
河口修築費デゴザイマスルガ是ハ三十六年マデトアリマシタノヲ、一箇年
減ジテ三十五年マデト云フコトニナリマシタ固ヨリ委員ト同樣政府ニ於キ
マシテモ成ルベク早ク竣功スルト云フコトハ、同意ノコトデアリマスカラ
別段政府モ此三十五年ト云フコトニハ同意ヲ致シテ置キマスルガ、併シ是
ハ元ト三十五年デハ到底爲シ得ラレマイト云フコトカラ、三十六年マデ延シ
テ置イタノデアリマスカラ、他日三十五年ニ同意シテ置キマシテモ、事實出來
マセヌトキニハ三十六年ニ延スト云フ法律ヲ出シマスコトガアリマスカモ
知レマセヌ豫メ此段御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=35
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036・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百三十一ハ番) 本案ハ二讀會ヲ開イテ、讀會省略ヲ以テ可決セ
ラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=36
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037・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 讀會省略ノ動議ガ出マシタ、讀會ヲ省略シテ直チニ確
定議ヲ開クコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=37
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038・片岡健吉
○議長(片岡障吉君) 御異議ガナケレバ其通致シマス、全部ヲ議題ニ供シマ
ス委員長報告通御異議アリマセヌカ
内務省所管歲出臨時部土木事業費中信濃川河口修築確定議
費繰越ニ關スル法律案
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=38
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039・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ナケレバ委員長報告通決シマス、議事日程十決
議案鳩山和夫君
十決議案(鳩山和夫君外九名提出)
本年二月二十七日增稅諸法案ハ貴族院ノ議ニ上リ將ニ否決セラレムトスル
ニ當リ現內閣ハ前後二囘ノ停會ヲ奏請シ其ノ極遂ニ聖勅ヲ煩シ奉ルニ至
レリ誠ニ恐懼ノ至リニ堪ヘス然ルニ現内閣ハ之ニ對シ徒ニ一片ノ進退伺ヲ
奉呈シテ恬然タリ是明ニ國務大臣タルノ職責ニ背キ輔弼ノ重任ニ堪ヘサル
モノト信ス仍テ玆ニ決議ス
〔鳩山和夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=39
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040・鳩山和夫
○鳩山和夫君(二番) 諸君、決議案提出ノ理由ヲ述べタイト考ヘル、今日ノ
場合ニ於キマシテ、此決議案ヲ提出シ之ヲ可決スルノ必要ヲ述ベタイト云
フノデアリマスガ、其理由ヲ述ベル前ニ極テ簡短ニ決議案ヲ出サナケレバ
ナラナイ場合ニナリマシタ事實ヲ、一應陳述シタイト考ヘル諸君、旣ニ御
承知ノ通ニ本年ノ二月二十七日ニ增稅ニ關スル諸法律案ガ貴族院ノ議
ニ上ボリマシテ貴族院ニ於キマシテハ其前委員會ニ於キマシテ之ヲ否
決スルト云フコトニナッテ居リマシタ本會議ニ於キマシテハ貴族院ハ未
ダ其意思ヲ發表シテ居ラナイ、貴族院ノ本會議ガ委員會ノ說ヲ容ルヽヤ、或
ハ委員會ノ說ヲ翩翻シテ本案ニ贊成スルヤ何レトモ貴族院ノ本議ニ於キマ
シテハ未ダ其意志ノ發表ハナカッタノデアル、此際ニ於キマシテ、併ナガラ
形勢ハ如何デアルカト云フト貴族院ノ本會ニ於キマシテハ委員會ノ說ノ通
之ヲ否決セントスル勢ハ確デアリマシテ此〓ハ疑ガナカッタヤウデアル、此
場合ニ政府ハ十日間ノ停會ヲ奏請シテ、又十日ノ期限ガ盡キマスルニ方ッテ
更ニ五日間ノ停會ヲ爲シタノデアル抑〓停會ト云フモノハ何ノタメニスル
ノデアルカ是ハ後ニ其理由ヲ申上ゲヤウト思フ、此二度目ノ停會ノ期日
ノ盡キルニ方ッテ、畏レ多クモ聖勅ヲ煩スニ至リマシタ、吾〓臣民ハ實ニ恐
懼ノ至ニ堪ヘナイ次第デアルト思フ、其後ニ總理大臣伊藤侯爵始、其他ノ
閣臣ハ一種ノ書面ヲ、闕下ニ差出シタト云フコトデアル、俗ニ之ヲ進退伺ト稱
シテアリマスルガ、私ガ何ノコトヲ云フノダカ、諸君ハ御承知デアラウト思
フ其書附ノシマヒノ方ニハ「臣任調鼎ニ在リテ鹽梅道ヲ愆ル誠ニ恐懼ノ至
ニ堪ヘス斯ニ謹ミテ進止ヲ乞フ臣博文誠恐誠懼頓首頓首」此書面、是ダケノ
事實ハ、斯ウ云フ判斷ヲ爲シテ宜カラウト思フノデアル、卽チ國務大臣ハ補弼
ノ任ニ在リナガラ、其任ニ堪ヘザル者ト斷定シテ差支ナイノミナラズ、斷定
スベキモノデアルト考ヘル(ヒヤ〓〓)此停會中ニ政府ノ爲シタル所ノモノハ
ドンナモノデアル、政府ノ爲シタル所ノモノハドンナモノデアルカ、抑〓停
會ナルモノハ何ガタメニ憲法ニ規定セラレテ、如何ナル場合ニ之ヲ行フベキ
モノデアルカト云フノニ帝國議會ガ何カ或ル一種ノ感情ニ打タレテ、其感
情ノメニ決議ノ方針ヲ誤ルガ如キ事情ノアル場合ニハ停會シテ而シテ靜ニ
考ヘルト云フ餘地ヲ與ヘルト云フ趣意デアラウト思フノデアル停會中ニ政
府ト云フモノハ嚴然トシテ何事ヲモ爲サズ、唯停會シテ置クノガ憲法ノ精
神デアラウト思フノデアル、停會シテ置イテ其他ニー-其間ニ憲法ノ許サヾ
ル一種ノ運動方法ヲ用ヒルトカ云フヤウナコトヲ以テ、世上續々時々使
ヒマスル所謂議員ヲ軟化セシムルト云フヤウナ方針ヲ執ッテ、而シテ更ニ其
議事ヲ開クト云フ如キハ、憲法ノ精神ニ背クコトデアラウト思フノデアル
伊藤內閣ハ此停會中ニ何ヲ爲シタ、停會中世間ニ顯レタ所ノ事實ハ所謂元
老ナル者ガ、、東京ニ居ラザル所ノ元老ハ、地方カラ參リ、東京ニ既ニ居ッタ所ノ
者ト協議ヲシテ是等ノ人ガ貴族院ノ議員、是ガ議員ノ資格デアルトカ一個
人ノ資格デアルトカ云フ論モアリマセウガ、サウ云フ三百論ハ打捨テヽシマ
セマシテ、免ニ角是等ノ元老諸氏ガ貴族院議員ノ或ル人ト交涉シテ居ッタ或
ハ貴族院ノ側ノ方カラシテ、一種ノ修正案ヲ出シタ、之ニ元老ガ應ズルトカ
或ハソレヲ以テ伊藤侯爵ニ元老ヨリ交涉スルトカ、斯ウ云フノミガ此停會中
ニアッタノデアル、元老ナル者ハ何者デアル此元老ト呼バルヽ人ノ中ニ、
貴族院ニ議席ヲ持ッテ居ラルヽ方モアリマセウ、サウデナイ人モアルカト思
フ何レニ致シマシテモ是等ノ人ハ立法行政何レノ機關ニモ先ヅ關係ノナイ
人ト言ッテ宜カラウト思フ此無關係ノ人ガ停會中ニ大ニ奔走シタト云フノ
ハ、世間ノ認メテ居ル事實デアル、或ハ是ハ伊藤侯ノシタ仕事デハナイ伊藤
侯爵卽チ現政府ガ是等ノ人ヲ呼ビ寄セテ、サウシテ自分ノ力ノ足ラナイ所ヲ
是等ノ人ニ補ッテ貰ッタト云フノデハナイ、元老諸氏ハ國ヲ憂フルノ心、ソレガ
溢レテ國家ノ大事ト云フコトデ駈附ケラレタト云フ辯解モアリマセウサリ
ナガラ是ダケノ事實ハ確デアル所謂元老諸氏ガ貴族院議員諸氏トノ交渉中
ニ伊藤侯ガ屢、元老諸氏ト會合セラレテ居ルト云フコトハ事實デアルソレ
デアルカラ此元老諸氏ガ如何ナル目的ヲ以テ、東京ニ參ヲテ、如何ナル手段
ヲ執クテ貴族院議員諸氏ト談合セラレタト云フコトヲ侯爵ガ知ラナイト云フ
コトハ決シテナイト思フ、己レ自ラ之ヲ求メタト云フコトハセヌニシテモ、
其事實ガアルノニ、ソレヲ知リナガラ左樣ナ憲法政治ノ條規以外ノ行動ト云
フモノヲ排斥セナイト云フコトハ間違ッテ居ルト考ヘルノデアル、ソレカラ
此例ノ進退伺ト云フモノデアル是ハ一體如何ナル趣意デアルカ先刻モ朗
讀致シマシタ通ニ任調鼎ニ在リ、鹽梅道ヲ愆ル、普通ノ言論ニハ用ヒナイ熟
字ガ使ッテアル、併ナガラ吾ミガ用ヒル所ノ辭ニ之ヲ引直シテ見マスルト任
重職ニ在リ、其職責ヲ盡サズト書イタノト之ハ同ジコトデ(「ヒヤ〓〓」ト
呼フ者アリ)用ヒ附ケナイ古イ漢語ノ熟字ヲ持出シマシタ所ガ、今日ノ憲法
學ノ辭ヲ以テ之ヲ言ヒマスルトキニハ重職ニ在テ其責任ヲ盡サナイト是
ハ翻譯シナケレバナラナイ辭デアル自ラ其職責ヲ盡サヌト云フコトヲ知ッ
タトキニ進止ヲ乞フト云フ結論ハ如何ナルモノデゴザイマスカ、又自ラ職
責ヲ盡シテ居ルト考ヘルナラバ、斯樣ナ書面ヲ出ス必要ハナイノデアル此
書面ニ據ッテ見レバ、侯爵伊藤總理大臣始メ其他ノ閣臣ハ、己其職責ヲ盡サヾ
ルト云フコトハ自分自ラガ認メテ居ラルヽコトヽ考ヘル之ヲ認メテ居リ
ナガラ尙ホ恬然トシテ今日其儘ニ居ルト云フノハ、憲法國ノ宰相、憲法國ノ閣
臣ノ爲スベカラザルコトヽ私ハ信ジマス(「ヒヤ〓〓」又ハ「三百論ダ」又ハ「最
モ然リ」ト呼フ者アリ)今日此決議案ヲ玆ニ出シマスル提出者共ノ提出者等ノ
意思ト云フモノハ所謂憲法擁護ニ在ルノデアル旣ニ憲法ヲ此國ニ施カレ
テ憲法ニ據ッテ天下ノ政治ヲ爲スト云フコトニ極ッタ以上ハ、憲法ノ明定セル
軌道以外ニ於キマシテ、政治ヲ爲スト云フコトハ明ニ非立憲ト私ハ考ヘルノ
デアル(「誤解ダ」ト呼フ者アリ)卽チ伊藤侯爵ノヤリ方ト云フモノハ非立憲
ナル動作ト私ハ認メルノデアル(「ヒヤ〓〓」又ハ「大誤解」ト呼フ者アリ)今日
此決議案ヲ提出シテ、永ク憲法ノ運用上愆ナカランコトヲ期シテ、此案ヲ提出
シタノデアル(「通リハセヌ」ト呼フ者アリ)能ク考ヘテ御覽ナサイ自由黨
ノ諸君自由ナルモノハ、自由黨ト云フ名義ガナクナルト共ニ精精マデナク
ナッタノデアリマスカ(「進步黨ノ眞似ヲセズ」又ハ「ヒヤ〓〓」又ハ「ノウ〓〓」
ト呼フ者アリ)精神ハ何處ヘ往ッタノデアル政友會ト云フノニ名ガ變ッタタ
メニ自由黨ノ舊來唱ヘタ人權ノ擴張、人權ノ伸張、所謂政黨內閣ノ所謂
憲法政治ト自由黨ガ曾テ唱ヘク所ノ精神、其議論ハ名ト共ニ消滅シタノデア
リマスルカ(「何ヲ言フ二一百」又ハ「馬鹿ヲ言ヘ」ト呼フ者アリ)諸君、一時ノ行
懸リニ附キマシテ從來ノ初志ヲ捨テルト云フコトハ諸君ノタメニ歎クノミ
ナラズ國家ノタメニ憲法政治ノタメニ歎カナケレバナラヌト私ハ考ヘル
ノデアル私ハ此案ニハ所謂政友會諸君ノ中デモ同情者ガアルト考ヘルノデ
アル(ノウ〓〓ト呼フ者アリ)詰リ其同情者諸君ト共ニ之ヲ可決セント考ヘル
ノデアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=40
-
041・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 星亨君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=41
-
042・丸山嵯峨一郎
○丸山嵯峨一郞君(五十五番) 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=42
-
043・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 質問デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=43
-
044・丸山嵯峨一郎
○丸山嵯峨一郞君(五十五番) 質問デス、此案ハ重大ナル案デアリマスルカ
ラシテ能ク質問ヲ致シテ提出者ノ精神ヲ伺ウタ上デ吾〓ハ賛否ヲ決スル
積デ、提出者ニ質問致シタイノハ、事實ノ上カラシテ見レバ此案ハ貴族院
ニ於テ增稅案ニ反對ヲシタ其結果トシテ停曾ト云フコトニナッタ、其結果
ハ遂ニ此聖勅ヲ煩シ奉ルニ至ッタト云フコトデアルカラ、或ハ提出者ノ眞精
神ハ貴族院ヲ彈効スルノ精神ニ出タモノデハナイカ之ヲ隱サズニ心底カ
ラシテ其意志ヲ發表セラレンコトヲ望ム又其次ニハ聖勅ヲ煩シ奉ッタル
コトガ停會ヲ奏請シタト云フコトガ原因ニナッテ居ルノデアルカト云フ其
結果、此案ニ付イテノ問題ニナッテ居リマスガ提出者ハ果シテ此詔勅ヲ煩
ハシ奉ッタル事實ガ我此內閣ガ停會ヲ奏請シタコトヲ以テ、此原因ニ歸シ
タルノデアルガ其事ノ意思ヲ確ムルノガ一ツ、其次ニハ(「答辯ノ必要ナシ」
ト呼フ者アリ)詔勅ニ對シ奉ッテ此案ヲ以テ不服ノ意ヲ現シ、己ノ意ヲ發表ス
ルト云フ所ノ精神ニ出タノデアルカ其次ハ內閣ガ貴族院ノ妄動ヲ制止スル
コトガ出來ナイト云フ卽チ或ル手段トシテ買收スルコトガ出來ナイト云フ
コトヲ以テ無能トシタノデアルカ此案ノ精神ヲ以テ見ルト其原因ノ精
神ト云フモノガ確マッテ居ラヌ(「分ラヌ分ラヌ」ト呼フ者アリ)又何故ニ此職
責ヲ盡サズシテ重任ニ堪ヘヌト云フ責ヲ此內閣ニ歸スルノデアルカト云フ
〓ガ不明デアル詰リ敵ナキ所ニ矢ヲ放ツガ如キ案デアリマスカラ、其精神ノ
アル所ヲ十分ニ發表シテ三百的ノ說明ヲ要セズ、十分ニ其眞意ノアル所ヲ
發表シテ、院議ニ付スル方ガ必要デアルト思ヒマス、明瞭ナル精神ノ答辯ヲ
望ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=44
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045・鳩山和夫
○鳩山和夫君(二番) 質問者ノ趣意ハ能ク分リマセヌケレドモ、先ヅ是ダケ
ヲ御答シタラ分ルダラウト思フ第一ノ御質問ハ貴族院ヲ彈効スル精神デア
ルカト云フ彈劾スル精神デナイサウ云フヤウナコトハ嘗テ演壇ニ於テ
言ッタコトモナシ議案ノ中ニモ書イテナイ、何ヲ見テ斯樣ナ質問ヲ發セラ
ルヽノデアルカ、其以下ノ二ツノ質問モ同ジ答辯デ宜シイ書イテアルコト
ト言ッタコトガ眼ニ這入リ、耳ニ這入レバ分ッテ居ル(ヒヤ〓〓ト呼フ者アリ)
若シー若シ、若シ自分ノ演說中他ノコトデモ考ヘテ居ッタト云フナラバソ
レハ御當人ノ責デアッテ、其一人ノタメニ他ノ諸君ノ妨害ヲ此處デ爲スベキモ
ノデハナイト考ヘル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=45
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046・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 星亨君
〔星亨君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=46
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047・星亨
○星亨君(二百四十一番) 諸君今日唯今議事日程ニ載ッテ居マスノハ決議案
ソレニ附キ鳩山君ガ意見ヲ述ベラレタ卽チ說明トシテ意見ヲ述ベラレタ、
私ハ此案ニ反對ヲ致スノデアルソレ故ニ一應意見ヲ述ベヤウト考ヘル謹
聽ト呼フ者アリ)然レドモ不幸ニシテ「インフルエンザ」ニ取附カレテ居ルノ
デアルカラ或ハ諸君ノ參考ニナルマデ議論ガ出來ナイカモ知レナイサリ
ナガラ國家ノ問題デアルカラシテ、十分ニヤルダケヤル積デアラウト考ヘ
ル、ツレデ元來此案ノ實ハ法文カラ見マシテモ、ドウ見マシテモドウ見マシテ
モ意味ガチットモ分ラナイノデアル(「病氣ノセイ」ダト呼フ者アリ)卽チ丸山
君ガ質問シタノモ其意味デアラウト思フ、分ラナイト云フコトハ之ヲ見
テ此案ヲ見テ分ツタトシタ人ハ是ハ日本人デハナイト考ヘル(拍手起
ル)ナゼト云フモノハ斯クミミ既ニ聖勅ヲ傾シ奉ルニ至リ誠ニ恐懼ニ堪
ヘズトヽ云フコトガアルサウスルト聖詔ガ出タ恐入ッタ譯デアル、斯ウ云フ
コトニナッテ居ルノデアル、恐入ッタガ內閣ハ何ゼ引カナイノデアルカ內
闇ハ何ゼ責任ヲ持タナイノデアルカ、斯ウ云フヤウナ議論ニナルノデアル
(「三百論ダ」ト呼フ者アリ)三百論デモ六百論デモサウ讀ムヨリ外ナイノデ
アル或ハ之ガタメニ貴族院ガ斯ウ云フコトヲ云フノナラ、誠ニ分ッテ居ル
ノデアル自分ノシタコトニ附イテ遂ニ陛下ヲ煩セナケレバナラヌノデア
ルカラシテ、斯ウ云フコトノ詔ガ下ッタノハ卽チ貴族院自ラガ宜シクナイノ
デアルカラシテ恐懼ニ堪ヘナイ恐入ッタト云フノナラバ分ルケレドモ乗
議院ガ卽チ恐入ッタト一云フコトハ、一向分ラナイ話ト言ハナケレバナラヌノ
デアル(拍手起ル)故ニ或人ハ此議案ハ衆議院デ出來タノニアラズシテ、他
ノ院カラ舞込ンデ、賴マレテ玆ニ案ガ提出サレタノデアルト云フ(拍手起ル)
或ル人ノ言ハ虛言デナイト言フノ外ハナイト私ハ考ヘルノデアル諸君誠ニ
恐入ッタ譯デゴザイマスガ、此案ヲ議スルニ附イテハ、卽チ議論ハ二ツシカナ
イカト思フノデアル、此勅令ト云フモノハ所謂勅諚ナルモノガ適當デアル
カ否ヤト云フコトデアラウト考ヘルノデアル卽チ諸君、若シ此案ヲ此詔勅
ガ適當ナリトスルナラバ貴族院ハ-貴族院ノ行動ハ非ナリト論ジナケレ
バナラヌノデアル、而シテ卽チ政府ノシタコトハ皆責任ヲ盡シタモノト認
メル外ハナイノデアル(ノウ〓〓ト呼フ者アリ)卽チ然ラズシテ、政府ガ責任
ヲ盡サナイト云フカ若クハ貴族院ノシタコトガ是ナリトスルナラバ是コ
ソ勅令ハ(笑聲起ル)適當デナイト云フ所ノ議論カラ私ハ出テ來ナケレバナラ
ント考ヘルノデアル(ノウ〓〓ト呼フ者アリ)卽チノウ〓〓デアッテモサウ
云フヤウナ結論ニナラナケレバナラヌ譯デアルト言ハナケレバナラヌノデア
ル故ニ此案ヲシテ眞正ニ議論セシムルノナラバ此案ヲシテ卽チ相互
ニ-互ニ立ッテ往クトスルナラバ所謂譯ヲ分ラセルト云フナラバ、勅令ハ
不當ナリ(笑聲起ル)勅令ハ不當ナリト云フ議論ニナラナケレバナラヌト思フ
ノデアル諸君ソレデナケレバ議論ガ立タナイノデアルト私ハ考ヘルノデ
アル故ニ玆ニ卽チ本案ニ附イテハ勅令ガ不適當カ卽チ勅諚ガ不適當デ
アルカト云フ論ニナラナケレバナラヌト思フノデアル(「ドウシテモ三百論
ダ」ト呼フ者アリ)諸君、默ッテ聽給ヘ、卽チ若シ勅令ガ適當デアルト云フコ
トニナルナラバ-適當ト云フコトニナルナラバ是ハ卽チ諸君ガ言フガ如
ク我衆議院ニ決セラレタル一ノ增稅案デアルノデアルソレデ諸君ハ此中
デ贊成スル人ハ-シナカッタ人ト云フモノハ僅デ多クハ贊成セラレタ人
デアルノデアル然ラバ卽チ其贊成ノ結果、衆議院ノ確定致シタル所ノ增稅
案ガ、貴族院ニ囘フタトキニ當ッテ彼ノ貴族院ニ於テハ如何ナル方法ヲ執
ルカト云ヘバ詰リ之ニ反對シタト云フコトニナルノデアル然ラバ卽チ我
衆議院ハ之ニ對シテハ我衆議院ノ決シタルコトデアレバ如何ナル方法ヲ
以テモ貴族院ヲ同意セシムルト云フノガ當リ前ト言ハナケレバナラヌノデア
ル(ノウ〓〓)卽チ同意セシムルト云ハナケレバナラヌノデアル而シテ諸
君-既ニ卽チ諸君ニ於テモ(「默レ」又「謹聽」ト呼フ者アリ)諸君ニ於キマシ
テハ、此衆議院ノ-衆議院ノ議決ト云フモノガ、貴族院ニ於テ拒マレテモ宜
シイト云フ議論ナラバ卽チ此衆議院ノ體面ヲ汚ス論ト言ハナケレバナラヌ
ト考ヘルノデアル(拍手起ル)然ラバ卽チ諸君ノ決心ハ此案ガ通過致シテ法
律ト爲ラナケレバナラヌノデアルノデアル(「論理ガ合ハヌ」ト呼フ者アリ)諸
君サウ云フ意志ヲ持ッテ居ルノデアレバ、此勅諭恐入ッタ譯デアルガ、卽
チ詔勅ガ降ッテ、衆議院ノ意志ガ玆ニ貫徹ヲ致シタト云ハナケレバナラヌノデ
アル、然ルニ諸君ノ中ニハノウデアルトカ議論ガ違ッテ居ルトカ言フガ、諸君
ガ自分デ極メタコトヲ破ラレテ宜シイト云フコトナラバ宜イ(ノウ〓〓)破
ラレテ宜イト云フコトナラバ、卽チ此決議案ヲ出ベキモノデナイト言ハナケ
レバナラヌト思フノデアル(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)諸君、既ニ
彼ノ增稅案ハ諸君ノ希望スルガ如クニナッテシマッタナラバ諸君ハ太白ヲ泛
ベテ卽チ大喜ヲセナケレバナラヌト考ヘルノデアル、諸君、然ラバ其行爲
ガ政府ニ在ラウトシ、若クハ衆議院ニ在ラウト致シタ所ガ詰リ誠ニ衆議院
ノ議論ヲ助ケルモノデアルカラシテ、政府ハ十分責任ヲ盡シタモノト言ハナ
ケレバナラヌ、卽チ吾〓モ政府ノ責任ヲ盡シタ結果デ、吾ミノ增稅案ガ異議ナ
ク通ッテ參ッテ、今ヤ法律ト爲リツヽアルト云フノハ、誠ニ以テ喜バナケレバナ
ラヌト考ヘルノデアル、諸君、然ルニ-然ルノニ此決議案ヲ見ルト一向譯
ガ分ラナイノデアルノデアル、卽チ此「徒ニ一片ノ進退伺ヲ奉呈シテ恬然タリ
是明ニ國務大臣タルノ職責ニ背キ輔弼ノ重任ニ堪ヘサルモノ」ト云フコトガ
アルノデアル(「其通ダ」ト呼フ者アリ)然ラバ何ガ輔弼ノ重任ヲ盡サヌモノデ
アルカト云フコトニスルト、斯ウ言フヨリホカナイデアラウト思フ、陛下ニ
卽チ勅諭ヲ御出シナサシメルヤウニ至ッタノハ、政府ハ善クナイト云フ意味
デアラウト私ハ考ヘルノデアル(「其通」ト呼フ者アリ)諸君、然ラバ卽チ陛
下ガ貴族院ニ向ッテ勅諭ヲ發セラレテ、其衆議院ノ議論ノ通立フタト云フコ
トニ付テハ諸君ガ異論ナイト思フデアルノデアル、サウスルト詰リ勅諭ガ
出ルヤウニナッタノハ誠ニ輔弼ノ任ヲ盡サナイト云フコトハ言ハレナイト
考ヘルノデアル、諸君、何故デアル何故ニ此勅諭ヲ御出シニナッテソ
レニ對スル責任ヲ盡サナイト云フコトハドウ云フ譯ニナルノデアル
カ(憲法ハドウスル」ト呼フ者アリ)卽チ諸君、憲法ト云フモノハ
諸君、憲法ト云フモノハ卽チ大權ノ一部分ガ分ッタモノデアルト言ハ
ナケレバナラヌト考ヘルノデアル大權ノ中ニ於テ憲法ハ成立ッテ居ラナケ
レバナラヌト考ヘルノデアル然ラバ憲法ヲ以テ陛下ノ口ヲ噤ミ陛下ガ
爲サルヽコトヲ妨ゲタモノデハナイト考ヘルノデアル(ヒヤ〓〓)然ルナラバ
陛下ガ貴族院ノ非ヲ悛メサセルタメ貴族院ノ惡ルイ方ヘ進ムノヲ挽囘ス
ルガ爲メニ陛下ガ獨特ノ大權ヲ以テ勅諭ヲ出サレタコトハ何ノ惡ルイコ
トデアルカ(拍手起ル)既ニ此事ガ宜イトナッタ以上ハ、卽チ政府ハ果シテ職
責ヲ盡シタカ否ヤト云フコトハ最モ善ク盡サレタト言ハナケレバナラヌト
考ヘルノデアル唯諸君ノ頭ノ中ニハ-諸君ノ頭ノ中ニハ二十世紀ノ曙光
ガ這ッテ居ラヌ人ガ隨分アルト思フノデアル、諸君、今ヤ既ニ陛下ノ口ヲ噤
ムト云フコトハ出來ヌノデアル、又其行爲ニ附テハ非違ヲ容レルコトデナ
イト云フコトニナッタナラバ陛下ハ洵ニ吾〓臣民ノタメ、否ナ、此衆議ノタ
メニ渥キ思召ヲ以テ、貴族院ニ其非ヲ悛メシメタト云ウテ宜イノデアルカラ
シテ吾〓ハ玆ニ喜デ增稅案ノ通過ヲ祝スルノ外ハナイト考ヘルノデアル
故ニ此案モ進步黨カラ出ナカッタカラ宜シイノデアル、然ルニ進步黨カラ出タ
トスルト、卽チ進步黨ガ增稅案ニ贊成ヲシテ居ルノデアル而シテ斯ウ云フ
モノヲ以テ出シテ來タト云フト世ノ中ハドウ言フカト云ヘバ衆議院ニ於
テ進步黨ガ增稅案ニ反對ヲシナイノハ卽チ國民ノ輿論ガ增稅ニ在ルカラ
之ヲ已ムナク贊成シタノデアルガ、其內心ニ於テハ贊成デナカッタト云ハナ
ケレバナラヌト私ハ考ヘルノデアル(拍手起ル)サウシナケレバ此案ハ出ナイ
ト考ヘルノデアリマスカラ私ハ十分是ニ附イテハ論ジタイノデアルガ、前
置キノ如ク病氣デアリマスカラ、大體ノコトヲ論ジタノデアリマスカラ、諸
君ハ是ニ附イテ十分ニ御議論ニナッテ、滿場一致ヲ以テ否決ニナルコトヲ希望
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=47
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048・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 島田三郞君
〔島田三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=48
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049・島田三郎
○島田三郞君(八十五番) 諸君、本員ハ本問題ノ議ニ與リマスルトキニ方ッ
テ、甚ダ遺憾ニ堪ヘヌコトヲ第一ニ感ジマスル斯ノ如キコトガ今日衆議院
ノ議場ニ現レマシテ勅語ノ可否ニ就イテ論及スル如キ語調ヲ唯今聽クニ
至ッタノハ實ニ本院ノタメ茲ニ議政ノタメ感慨ニ堪ヘヌコトデゴザイマス
(拍手起ル)且ツ又此問題ヲ議スルニ當ッテ、唯今星君ノ演說ノ中ニハ屢く
進步黨ナドト云フ辭ヲ聽クノハ甚ダ本院ノ忌ムベキコトデアラウト思ヒマ
ス、此事ニ至ッタナラバ同樣ニ鳩山君ノ口カラ(「アー」ト呼フ者アリ又「默レ」
ト呼フ者アリ)御默リナサイ議長、議場ノ秩序ヲ保ッテ下サイ(「默レ
默レ」又「謹聽々々」ト呼フ者アリ)諸君ノ靜マルマデハ、此壇上ニ立ッテ居リ
マスカラ御騷ギニナレバイツマデモ御騷ニナルガ宜イ本員ハ是ト同
時ニ鳩山君ノ口カラ政友會云々ト云フコトヲ此議事ノ間ニ承ハルノヲ甚ダ遺
憾ニ思フノデアル、此問題ハ鳩山君ノ-政友會ノ問題ニモアラス、又勿論政
友會ノ問題ニモアラス、又勿論憲政本黨ノ問題デモナイノデゴザイマシテ
又一時ノ問題ニアラズシテ、後來ニ良キ例ヲ貽スカ惡シキ例ヲ貽スカ實ニ
大切ナル問題デアル、斯ノ如キコトヲ議スルニ當ッテ、議場ニ囂々タル聲ヲ
發スルハ國事ヲ如何ニ御考ニナルノカ甚ダ遺憾ニ堪ヘナイノデアル(「同感
同感」ト呼フ者アリ)全體上下ノ心ガ能ク協和致シテ、國家ノ得失ヲ公平
ニ議スルダケノ議場ガ成立ッテ居リマスレバ恐ラクハ此問題ガ今日此議
場ニ上ボルノ時勢ニマデ至ラヌト思ヒマス、又貴族院ト內閣ト斯ノ如キ
衝突ヲ惹起シテ、恐多クモ勅語ノ出ルニ至ルト云フコトハ吾ミハ期サヌ
コトデアル然ルニ斯ノ如キ時勢ヲ惹出シテ之ヲ議スルニ至ッタノハ
大ニ本員ガ遺憾ニ思フ所デアリマス、併ナガラ事既ニアル以上ハ其利害得
失ノアル所ヲ明確ニシテ、後人ヲシヲ惑ハシメザルダケノ責任ヲ盡スコトハ
此席ニ列ナル以上ハ諸君ハ此責ヲ分タナケレバナラヌト思ヒマス(「駄目ダ
ヨ」「アーメン」ト呼フ者アリ)然シテ其〓末ニ至レバ提出者ノ一人タル鳩
山君カラ簡明ニ御話ニナリマシタカラ最早其經歷ヲ論ズル必要ハナイト
思ヒマスガ免ニ角ニ議會開ケテヨリ以來、十餘年ノ久シキヲ經マシタケレ
ドモ衆議院ト內閣トノ間ニ物議ガ起ッテ、停會ニ至ッタ例ハ本員記憶
シテ居リマスガ、今囘ノコトハ珍クモ貴族院ト內閣トノ間ニ衝突ガ起ッテ、
一囘ノ停會ノミナラズ二囘ノ停會ニ至リ然レドモ二囘ノ停會ノミナラ
ズ類ヒ稀ナル、後來斯ノ如キ例ハナカランコトヲ期スル所ノ、未曾有ノ
勅語ヲ下サルヽニ至ッテハ實ニ恐懼ニ堪ヘヌ譯デ、之ヲ恐懼セズシテ何事
カ恐懼スベキト思フ、然ルニ星君ハ之ニ向ッテ言ハ、レニハ貴族院ガ恐
懼スベキコトデアッテ、衆議院ハ與ル所ニアラズト言ハレテ居ルニ至ッテハ
星君ハ日本ノ衆議院ニ列ナル一人ト見ルコトハ出來ナイノデアル況ヤ日本
臣民トシテ、恐懼セザルト云フ所ノ本人ノ姓名ハ永ク速記錄ノ中ニ留メテ
置キタイト思ヒマス、斯ノ如ク二囘ノ停會ガゴザイマシタガ、此事タル實
ニ聖慮ヲ煩ハシ、恐懼ニ堪ヘヌデゴザイマスガ、併ナガラ憲法ノ條章ニ明記
スル所デゴザイマスレバ致方ガナイケレドモ、是ヨリ以後ノ世ノ中ニ現レ
タ事蹟ハ、本員ノ見解ニ據レバ憲法範圍內ノモノト解釋スルコトハ出來ナ
イ何故トナレバ憲法ハ國務ヲ何人ニ命ジテ、補弼ノ任ヲ負ハシメルカト
云ヘバ新ニ引用スルノ必要ノナイ程ノコトデアルカ憲法第五十五條ニ
「國務大臣ハ天皇ヲ補弼シ其ノ責ニ任ス」ト明記シテゴザイマス、併ナガラ
內閣ト貴族院トノ衝突ニ依ッテ、立法部ガ暫ク停止セラレタ後ニ憲法ニ
明記セナイ人ノ働キヲ現出シタノハ未曾有ノコトト本員ハ理解スルノデア
リマス勿論憲法未ダ立タズ、議會未ダ開ケザルノ明治十四年頃ノ日本ノ政
治ヲ繙キ官制ヲ繙ケバ元老ト云フ二文字ハ公ケノ文字トシテ見ラレタコ
トガアリマスガ一度憲法行レテ立法ノ權ガ、帝國議會ニ移リシ時節ニ至リ
マスレバ元老ト云フ文字ハ世間普通ノ記錄ニ留マルベキモノニシテ、官
制ノ上ニハ元老モナケレバ元老ガ何ヲ爲スベキモノト云フコトヲモ承ラヌ
ノデアル、然ルニ此停會ノ間ニ、元老ト云フ者ガ出入致シマシテ、樞密院
顧問官ニモアラズ勿論又大臣ニモアラズシテ、貴族院トノ間ニ其交渉ガ成
立ッテ居リマス此交涉ノ成立ツマデノ間ハ、內閣ニ人アリヤ否ヤ內閣ハ日
本帝國ニ成立ッテ居ッタヤ否ヤヲ疑フノデアリマス、若シ成立ッテ居リマス
ナレバ何故ニ責任ナキ人ニ政府ニ啄ヲ容レシメタノデアルヤ、內閣ハ坐シ
テ傍觀シテ居ッタ外ニ、何ヲシテ居ッタカト云フコトヲ、問ハナケレバナラヌ
凡ソ仕事ニハ責任ガナケレバナラヌ、元老ハ如何ナル辭ヲ陛下ニ奉ッテ、
內閣ニ如何ナル影響ヲ與フルカ其結果如何ヲ見ズシテ、斯ノ如キ責任ノ
ナキ人ニ啄ヲ容レシメタノハ、憲法ノ範圍内ノ働キデナイト思ヒマス、憲法ノ
ミナラズ他ノ法令ヲ開イテ見テモ元老ト云フ文字ガ何レノ所ニ在リマス
カ、元老ノ職制如何、內閣ト貴族院トノ衝突ヲ來シタルトキニ元老ガ調停ノ
任ニ當ルト云フ文字ヲ見クコトガナイノデアリマス、然ラバ今ノ內閣ハ其職
責ヲ曠シウシタルノ、最モ明ナルモノデアリマス此事ハ他人ノ辯駁ヲ俟タ
ズ、唯今ノ總理大臣ガ世ノ中ニ公ケニセラレタ文書ヲ、公ケニスルノガ適當ト
思マス、幸ニ今日國務大臣席ニ別坐セラレテ居リマスカラ、若シ世ノ中ニ公ケ
ニセラレタ文書ハ、未ダ吾〓ノ知ラザル所デアルト云フナラバ之ヲ證言セ
ラルヽ機會モアリマスガ、本員ハ總理大臣ガ曾テ樞密院議長デアッタトキニ、
憲法ノ取調ニ與ッテ、其後意見ヲ公ケニセラレタ文書ガ、唯今嚴トシテ存シ
テ居ッテ唯今ノ總理大臣ガ手ヲ著ケラレタニ相違ナイト信ジテ居リマスガ
之ヲ讀ミマシテ、本員ガ唯今論ジマシタコトハ、決シテ無根據ノ言ニアラズ
ト云フコトヲ、證據立テヤウト思ヒマス「國務各大臣ハ入テ內閣ニ參與シ出テ
各部ノ事務ニ當リ大政ノ責ニ任スルモノナリ凡ソ大政ノ施行ハ必內閣及各部
ニ由リ其門ヲ二ニセズ蓋立憲ノ目的ハ立權ノ使用ヲシテ正當ナル軌道ニ由ラ
シメムトスルニ在リ」此文字ハ第五十五條ノ國務大臣ノ職責ヲ規定シタ註解
トシテ總理大臣ガ樞密院議長トシテ、此憲法ノ取調ニ與ッタ後ニ其意見
ヲ世ノ中ニ參考トシテ公ケニサレタ所ノ憲法義解ノ中ニ明記サレテ居ル所
ノモノデゴザイマス卽チ其骨子ヲ申シマスレバ、卽チ各部ニ由リ其門ヲ二
ツニセズト云フノデアル然ルニ元老ト云フ者ガ大政ニ與ッテ此間ハ內閣
ガ停止セラレテ居ッタコトハ恰モ帝國議會ガ停止セラレタ如キモノデゴザ
イマスカラ、此時ニ方ッテ事務ノ施行ハ門ヲ二ツニセザルヤ否ヤト云フコ
トヲ疑フノデアル是レ違憲ニアラスシテ何ゾヤ、本員ノ見解ニ據レバ憲
法ノ條章ニ明ナル據リ所ハナイト云フノデアリマス星君ハ云々セラレマシ
タガ、本員ハ此事ニ附イテハ、如何ナル見解ヲ取ラルヽカ承リタイノデアリ
マス併ナガラ是ハ先ヅ此論ハ玆ニ止メマシテ、尙ホ其後ノコトヲ申シマシ
タナラバ如何デアル、本員ハ遡ッテ內閣ト貴族院トノ衝突ノコトノ可否ヲ
論ズルハ此處ハ適當ナル場所デナイト思ヒマス併ナガラ一言シテ、其原
因ヲ論ズルモ無用デナイ其詳密ナルコトニ至ッテハ本員ガ既ニ議長ノ手
許ニ出シテゴザイマス、全國ノ政治ノ紊レテ居ル亡狀ヲ質問致シマシタトキ
ニ本員ガ知リ得タ事實ヲ舉ゲテ政府ニ問ハウト思タテ居リマスカラ、此
處ニハ其綱目ダケヲ二ツ三ツ舉ゲテ、、本論ノ助ト致シマスルノデアリマスガ
詰リ內閣ト貴族院トノ衝突シタ、其後トノ始末ニ附イテ此案ノ成立ツ如ク、
疑問ニナッタノデアリマス、溯ッテ其衝突ノ起リマシタ原因ハ又內閣其責ナ
シト云フコトハ出來ナイノデアル此增稅案ガ問題ニナッテ、之ヲ星君ガ楯
トシテ論ゼラレマシタ、其趣旨社撰杜漏、前後矛盾、而シテ其責ニ當ル大臣
ガ例ヘバ之ヲ實行スル期限ニ付イテ辭ヲ變ヘ殆ド遵據スルコトノ出來ナ
イ議案ヲ出シテ軍事ノタメニ必要ナリト云フ、簡單ナル文字ニ依ッテ說明
ヲ企テタノハ、抑〓內闇ノ不信任、內閣ガ辭ヲ竭シ誠ヲ披カナイ所ノ過チデ
此衝突ヲ惹起シタノデアル若シモ速記錄ヲ開イテ調ベタナラバ唯今本員
ノ述ベタ通、衆議院ニ於テ說明シタ所、衆議院ノ委員會ニ於テ說明シタル所、
貴族院ノ委員會竝ニ本會ニ於テ說明シタル所、增稅案其モノニ附イテ巨多ノ
矛盾ガアルコトヲ見マシタナラバ人民ノ休戚ニ關セル案ヲ、如何ナル根
據ニ依シテ議シ得ルカヲ疑ハナケレバナラヌ、卽チ內閣ガ信ジラレザル結果、
此衝突ヲ起シタト斷言スルコトガ出來ルノデアル若シモ內閣ガ誠意ヲ開イ
テ過ヲ改メ、手落ガアッタナラバ、ソレヲ改メルノ云フコトニシタナラバ
斯ノ如ク衝突ガ激烈ニ至ラザル前ニ疏通ヲ開クノ途ガアッタト、誠ニ惜ム
ノデアリマス、元來今ノ內閣ハ、實ニ全國ノ多數ニ信ヲ失ッテ、居ルノデアッ
テ、東京市ノ如キ日々ノ出來事ニ附イテ內閣ガ其監督ヲ如何ニ怠ッタカ
本員ガ數日內ニ質問ヲ致サウト思フコトニ現シテ居ルガ內閣竝ニ當局大臣
ガ之ニ向ッテ注意ヲ怠ヲテ居ルト云フコトハ明ニ分ルノデアル此不信用
ニナリ至ッタト云フコトガ、卽チ反射シテ、此衝突ヲ超ス一部ノ原因ト爲ッタト
思フノデアル案其物ニ對スル不信用、內閣其モノニ對スル不信用、内閣ノヤ
リ方ニ對スル不信用ガ、卽チ一部ノ原因デアルト云フコトハ決シテ誣罔ノ
言ニアラズト信ズルノデアル內閣ガ上ニ信ヲ取リ、下ニ信ヲ取ルニ足ルナ
ラバ未來約束ヲセラレタ行政ノ刷新、財政ノ整理ト云フコトガ幾分カ此
案ノ通過ヲ助ケタニ相違ナイガ、公ニ宣告セラレタ其宣言ガ、殆ド其根柢ヨ
リ破レテ居ル過去ノ宣言ガ信ゼラレナケレバ未來ノ宣言ガ亦覺束ナイト
云フコトハ人情己ムヲ得ザルコトデアルカラ、整理ヲシテ後ニ協賛ヲシヤ
ウト云フ辭ガ出テ居ルノデハ當然デアラウト思フ、星君一派ハ過去ニ信用
ヲ置カレテ居ルガ、日本全國多數ノ人民ハ、過去ニ附イテ決シテ信用ヲ置イ
テ居ラヌ、然ラバ未來ニ行政ヲ刷新シ、財政ヲ整理スルト云フコトハ幾許ノ
用ヲ置クコトガ出來ルカ貴族院ガ整理シタ後ニ協賛ヲシヤウト云フノハ
誠ニ本員ノ心ヲ獲テ居ルト思フ本院ガ先日此案ヲ貴族院ニ囘ス前ニ、衆議
院ニ議シタルトキ多數ノ方ハ贊成デアッタガ、本員ハ整理刷新ニ重キヲ置
イテ未來ノコトニシタイト云ウタノハ卽チ此事デゴザイマス、而シテ貴
族院ノ議場ニ於テ左樣ナルコトカラ此衝突ヲ惹起シタトスレバ其責ハ內
闇ニ過去ノ事實ニ照シテ其責ヲ分タナケレバナラヌト考ヘル是等ハ連枝
ニ渉ル論デアルガ案其物ニ附イテモ遺憾ニ思フノハ(此時「モウ宜イ加減
ニヨシタマイ」ト呼フ者アリ)本員ハ飽クマデ論ゼナケレバナラヌ若シ聽
クニ倦ンダル御方ハ席ヲ御離レニナッテモ聽キ得ル人ヲ相手ニシテヤリマ
ス此今日恐懼ニ堪ヘヌ所ノ勅語ハ、如何ナル門戶ヲ經テ出デタカ、其手續ハ
ドウデアッタカ、其手續ガ卽チ問題デアル星君ハ增稅案其物ニ附イテ論ゼラ
レテ勅語ノ可否ヲ議セシメント云フ危險極マル議論ノ法ヲ以テ、衆議院
ニ威嚇的ノ舉動ヲ示サレマシタガ、本員ハ平然トシテ論ズルモノハコヽデナ
イ勅語ノ出ヅル門戶ハ如何ニ出タカヾ問題デアル勅語ハ內閣大臣ノ手ニ據ツ
テ、出デシニモアラズ、內閣大臣ノ副署ニ據ッテ出デシニモアラズ、内閣大臣ノ
奏請ニ據ヲテ出デシニモアラズ、詰リ宮内大臣ノ參列シテ貴族院議長ニ直ニ
賜ッタル憲法立ッテ以來誠ニ珍シイ勅語ヲ賜ッタノデゴザイマス、此門戶ガ議
論ノ要點デアッテ、前ニ引用シタ首相ガ自ラ書カレタ憲法ノ註解ニ其門ヲ
二ニセズト云フ、アレガ緊要ノ文字ナリト理解スレバ、此勅語ノ出タル
道行、卽チ其門戶ノ如何ナルコトデアルト云フコトガ、問題デハナイカト思
フ貴族院議長ニ賜ッタルトキニ列席シタル者ハ內閣大臣ニアラズシテ宮
內大臣デアッタト承ッテ居ル、玆ニ至ッテ責任ノ不分明ナルコトヲ感ジナケレ
バナラヌ、立憲政治ニ尊ブ所ハ、大閣大臣ノ責任ト云フコトデアル、此事ハ
本員ガ唱フルニアラズ、先輩ガ旣ニ唱ヘ來ッタ居ルノデ、憲法ノ取調ニ與ツ
タ首相ガ、丁寧懇切ニ示サレタル事柄デゴザイマス責任ノ不分明ヲ感ズル、
或人ガ副署ノナイ勅語ヲ貴族院議長ニ對シテ如何ニシテ賜ッタルカヲ首相
ニ問合シテ首相ガ之ニ答ヘテ內閣大臣ノ奏請シタルモノデモナケレバ、
大臣ノ手ヲ經由シタルモノデモナイ併ナガラ責任ハ受ケルト云フコ
トヲ明言シタト云フコトデ、ソレデ責任論ハ片附イタヤウデアルソコデ本
員ハ責任不分明ナリト論ズルコトガ片附イタ問題ヲ更ニ不分明ノ渦中ニ入ル
ルヲ疑フナラバ本員ハソレニ向ッテ答辯スル責ガアルト思フノデ、抑大臣
ノ責任ノ如キ、誠ニ大切ナルハ問ヲ俟タズ、答フルヲ俟タズ、明瞭ナルモノ
デナケレバナラヌモノト思フ、憲法ニ書イテ云々トアッテ-副署ガアッテ門
ヲ二ツニセズ、大臣ノ奏請ガアッテ責任ト云フヤウナコトノ常ニ規定ガ定ッ
テ居レバ、唯今ニ至ツテ貴族院議長ハ最モ議長トシテ典例ニ明ナル人デ
ナケレバナラヌ、又首相ハ從來ノ經歷ニ據リ唯今ノ位置ニ據リ憲法ニ明瞭
ナル見解ノアル人ト本員ハ信ジデ居ル然ルニ貴族院議長ガ責任如何ト云
フ問ヲ發シタノハ不分明デアルカラ、必要ヲ生ジタノデハアルマイカト思ヒ
マX、首相ハ是等ノ責任ハ吾ミガ負フト云ッタラ此責任問題ガ定ッテ-定
ルトシテ曖昧模稜ノ中ニ、此憲法ノ責任問題ヲ沒スルハ誠ニ國民トシテ遺
憾極マル次第デハナイカト思フ是ヨリ以上ニ至ッテハ本員ハ論ズルニ忍
ビナイガ、一端ヲ諸君ノ御參考ノタメニ論ジマスレバ、貴族院ノ後ノ決議ハ
自ラ信ジタル說ニアラズシテ聖慮ヲ推シ量リテ、其御心ヲ安ジ奉ル一片忠
良ノ精神ニ出デタルモノト、本員ハ認メマス前ニハ政治上ノ問題トシテ利
害得失ヲ論ジ、後ニハ臣子ノ分トシテ非常ニ遇ッテ、之ヲ速ニ決シタト解釋
シタナラバ前後ノ決議ノ岐ルヽ所ガ分明ニナルト思フ天下又斯ノ如ク解
釋スル人ガ多イト信ジテ居ル、後ノコトヲ繰返シテ申シマスレバ臣子ノ情
ニ出デタルモノデ、利害得失ヲ打算シテ、政治ノ觀念ニアラザルヲ認メルノ
デ、仰ヲ畏ミ、御憂ヲ安ジ奉ル忠義ノ情カラ出タモノデアル情ハ分析
シ得ナイ問題デ、論理ハ分析シ得ベキモノデアル情ハ分析スベカラズー
論法ハ分析シ得ルガ詩歌ハ分析スルコトノ出來ナイモノデアルト同ジデ、
一片忠義ニ厚キ所ノ情カラ出タモノデアルカラ之ヲ分析セントシテ分析ス
ル能ハザル論理以外ノモノデアル卽チ情ノ問題デアル貴族院ヲシテ政治
上デ爭フノデナク、臣子ノ分トシテ情ヲ以テ思召ヲ畏ムニ至ラシメタ門戶
ハ何デアルカ、前ニ申シタ通大臣ノ手ヲ經ズシテ出タモノデアルガ、誠ニ之
ヲ拜讀シテ恐懼ニ堪ヘナイ畏クモ陛下ニハ「朕ガ日夕ノ憂ヲ分チ云々」ト
詔ラレタルニ附イテハ貴族院議員諸氏ト雖モ亦大ニ恐懼戰慄ニ堪ヘズシテ
油然タル感覺ガ直チニ起ッテ是マデ火ノ如ク燃ヘテ居ッタモノヲ、恰モ水
ニ打タレタル如ク、臣子ノ分トシテ然ルベキ結果ト本員ハ解釋シテ、貴族院
デ前ノ侃々タル議論ヲ咎メズ、後ノ溫々タル決議ヲ咎ムルコトガ出來ナイノ
デアルヽ然ルニ星亨君ハ此二ツノ物ヲ混同シテ論ゼラルヽニ至ッテハ、殆
ド臣子ノ情ヲ解セザル所ノ言論デハアルマイカト本員ハ頗ル其出所ヲ疑フ
ノデアリマス斯ウ云フ具合ニナッテ、其間ニ内閣ハ如何ナルコトデゴザイ
マスカ本員ノ唯今理解シタ所ニ據リマスレバ、解釋ヲ俟タズ明ナラザル所
ノ憲法ノ明條ハ、貴族院議長ノ問ト首相ノ答ニ據ッテ漸ク吾ミノ理解シ得ル
ダケノ光明ヲ恢復シタト云フ譯デゴザイマスレバ一旦甚ダ紛晦デアッタト
云フ風雨晦瞑ノ現象ヲ生ジタト云フコトハ誠ニ恐懼ニ堪ヘヌコトデア
ル然ルニ貴族院恐懼スベクシテ衆議院恐懼スルニ足ラズト、星君ガ政友
會ヲ代表シテ言ハレタト云フコトハ政友會諸君ノタメニ甚ダ私ハ惜ム所
デゴザイマス、尙ホ本員ガ論ジナケレバナラヌコトガゴザイマス、ソレハ斯ウ
云フコトデアル古今ノ變化ヲ顧ミマシテ、甚ダ感慨ニ堪ヘヌコトデゴザ
イマスカラ其事ヲ申シマスレバ斯ウ云フコトガアル矢張前ニ引用致シマ
シタル所ノ、憲法義解ノ中デゴザイマスガ、昔シ太政官ヲ立テヽ總テノ職責ガ
いから 、言ヲ薦メル所ノ臣モアレバ、詔勅ヲ奉行スル臣モアツタガ其後世ガ
變化シテ斯樣ナルコトガ現出シタト書イテアル「其ノ後重臣專ラ大政ヲ關
白シ宮禁ノ中藏人ノ小臣亦王命ヲ出納シ院宣內旨或ハ女官ノ文書ヲ以テ大事
ヲ下シ行フニ至ル而シテ朝綱全ク廢レタリ」憲法未ダ立タザル以前ト雖モ
官職ノ明ナルトキニハ王政天下ニ明デアッタガ其後亂レタカラ朝綱全ク
廢レタリト云フコトヲ書カレタ此書カレタ首相モ感〓ニ堪ヘナカッタデ
アラウ、本員ハ之ヲ引用シテ諸君ノ前デ讀ムニ當ッテモ甚ダ感慨ニ堪ヘヌ
ノデアル卽チ同ジク聖旨デアッテモ之ヲ奉行シ之ヲ世ノ中ニ出シマ
スル所ノ、軌道門戶ト云フモノガ、確トシテ居ラナケレバ決シテ明ナル所
ノ聖慮ヲ、世ノ中ニ明ナラシメテ盛德ヲ天下ニ被ラシムルコトガ出來ナ
イ.昔王道ノ廢レタノハ宮禁ノ中藏人ト云フ小役人ガ王命ヲ出納シ院宣
內旨等種々ナル名稱ノ下ニ或ハ女官ガ文書ヲ以テ大事ヲ行フニ至ッテ、朝
綱全ク廢レタリトアル此事タルヤ憲法未ダ立タザルトキニデモ、濫ニ奉
行スル所ノ門戶ノ多イコトハ戒メテゴザイマス、況ヤ今日ノ如ク憲法既
ニ立ッテ其責閣臣ニ在リト明定セラレタル以上ハ閣臣ヲ措イテ元老
ノ奔走致シタノハ甚ダ立憲史上本員ハ遺憾ト思ヒマス、何故ニ內
閣大臣ハ之ヲ制止セザリシカ、又副署ナキ詔勅ガ出ル貴族院議長
ガ問ウタノニ首相ガ答ヘタト云フ、往復ノ註解ヲ以テ、始テ憲法ノ明條ガ
漸ク暗キヨリ明ルキニ恢復シタト云フコトモ立憲史上甚ダ惜ムベキ事
蹟デアラウト思ヒマス、此ノ如ク岌々タル一縷萬釣ヲ繫グ如キ憲法ノタメ
ニ危險ヲ與ヘタト云フコトハ實ニ恐懼ニ堪ヘヌコトデアル且又星君ハ
斯樣ナルコトヲ言ハレタ憲法ハ大權ノ發動ノ一分デアルガ故ニ憲法
ヲ以テ聖慮ヲ制限シ奉ルナドヽ云フコトハ本員ハ說ニ於テ此主義ヲ不可
ト言ハヌガ併ナガラ陛下ハ憲法ヲ決シテ輕ゼラレザル所ノ聖慮ハ實
ニ明デゴザイマス二十二年ノ憲法ヲ發セラレタトキニ如何ナル御辭ヲ
賜リマシタガ御自身ノ御發案ニ相違ゴザイマセヌガ天ニ誓ヒ祖宗ニ誓ヒ
タマヒテ、此事ヲ永ク我子孫ヲシテ遵守セシメルト云フコトヲ仰セラレタ以
上ハ御子孫ニ遵守セシメルタメ、祖宗ノ遺烈ニ依ッテ發セラレタル此憲法
ハ決シテ聖明ノ陛下ガ輕ク之ヲ御覽ゼラレテ、此條章ニ違フコトヲ善シ
ト爲サルコトハ、山動キ川翻ルモ決シテ信ズルコトハ出來ナイノデアル然
ルニ斯ノ如キ說ガ此衆議院ノ議場ニ發セラルヽニ至ッテハ亦同ジ論ヲ執ル
所ノ諸君ガ、之ヲ非難セラレザルニ至ッテハ星君ノタメ、政友會ノタメ竝
ニ是ト主義ヲ同ジクセラルヽ內閣ノタメニ、深ク遺憾ニ思フノデアル陛
下ハ尙ホ「朕ガ在廷ノ大臣ハ朕カ爲ニ此憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ
現在及將來ノ臣民ハ此憲法ニ對シ永遠ニ從順ノ義務ヲ負フヘシ」ト、二十二年
ノ勅語ニ爛トシテ日ノ如ク揭グテゴザイマス、之ヲ輕カラシムル所ノモノハ
日本ノ臣民ニアラズ、之ヲ輕カラシムルモノハ實ニ帝國ノ憲法ニ背キ、併セ
テ陛下ノ聖旨ニ戾ル所ノ罪人ナリト本員ハ明言シヤウト思ヒマス、然ラバ
此問題タルヤ決シテ政友會一部ノ問題ニアラズ、何時變ルカモ知レヌ所ノ
內閣ノ脊負ッテ立ツベキ問題ニアラズ又選舉ニ據シテ變ル所ノ衆議院ノ
其人ニ就イテノ問題ニアラズ、況ヤ政友會若クハ進步黨ナドヽ云フヤウナ、
此一部ノ人ノ感情ノ爭ニ此問題ヲ沒了スルト云フコトハ甚ダ忌ハシキコト
テアッテ、我臣民トシテモ、代議士トシテモ亦內閣トシテモ、總テノ事ヲ
忘レテ憲法ノ正條ヲ明確ニスルコトヲ力メ、苟モ此憲法ノ明條ニ違ウタル行
動ガアッタナラバ皷ヲ唱シテ均シク之ヲ攻ムベキ責任ガアルト本員ハ思ヒ
マス、本員ガ卽チ此案ノ發議者ト爲リ、此案ノ說明者ト爲リ、併テ反對ノ人〓
ニ向ッテ本案ヲ說明致シマスルト唯今申上ゲタ通デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=49
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050・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 大岡育造君
〔大岡育造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=50
-
051・大岡育造
○大岡育造君(二百六十番) 本員モ鳩山君其他ノ御提出ニナリマシタ所ノ、
政府不信任ノ決議案ニ反對致ス者デゴザイマス、是マデ當議會ニ現レマシタ
所ノ不信任ノ問題ハ常ニ政府ガ國民ノ意向ヲ重ゼズ若クハ之ニ反スル所
ノ行動ヲ爲シタル場合ニ於テ出タモノデアル、然ルニ今囘ノ決議案タルヤ
政府ガ上ハ聖意ヲ奉戴シ下ハ國民ノ一致ヲ以テ可決シタル所ノ增稅案ガ、
偶〓貴族院ノ障礙ヲ蒙ッタル所ノ結果カラ此決議案ヲ招クニ至ッタノデア
ル則チ此政府ハ國民ノ一致ト聖意トニ適フタル結果、偶ゝ以テ貴族院ノ容
レザル趣ノアッタタメニ、衆議院カラ不信任ノ決議ヲ受ケルト云フコトニナッ
タノデアル何タル現象デゴザイマスカ(「其所作ガ惡ルイカラ言フノデア
ル」ト呼フ者アリ)而シテ此問題ハ其論辯スル所ヲ聽ケバ所謂政治上ノ問
題ニアラズシテ、則チ行政上ノ問題ニアラズシテ、憲法上ノ爭議ト爲ッタ
ノデアル(「其通」ト呼フ者アリ)其憲法ノ爭議トシテ如何ナル點ヲ爭フ
カト云ヘバ憲法ノ運用ノ巧拙ヲ謂フニ過ギナイト思フノデアル尤モ說明
者ノ中ニハ殆ト之ヲ以テ憲法違反トモ言ハレヌヤウニ思フ是ハ私ガ諸君
ノ〓聽ヲ煩シテ、是非極メタイ問題デアルノデアル(「謹聽」ト呼フ者アリ)
此問題ハ憲法上ノ問題デハゴザイマスルケレドモ、玆ニ來ル所ノ事實ノ經過
ハ是ト伴ハザルコトヲ得ヌノデアル卽チ鳩山君ノ說明ト島田君ノ辯論
トハ併テ私ハ之ヲ聽クガ宜カラウト思フノデアル、之ヲ聽キマスルニ當ッテ
ハ此內閣成立ノ以前ノ有樣カラ、〓略ニ考ヘテ見ルコトガ、宜カラウト思
フノデアル十四議會ノ閉會後、間モナク北〓ニ意外ナル大事件ガ生ジテ、
之ガタメニ多クノ軍隊ヲ彼地ニ送ラナケレバナラヌ、各國ノ聯合動作モシナ
ケレバナラヌト云フガ如キ、大事變ガ起ッテ、幸ニ我陛下ノ軍隊ハ名譽ア
ル行動ヲ致シテ所謂戰時的ノ動作ハ一旦結了致シマシタケレドモ外交ノ
コトハ今尙ホ樽廻ノ折衝ノ間ニ在ッテ頗ル面倒ヲ極メテ居ルノデアル此中
間ニ在ッテ、前ノ內閣卽チ山縣侯ハ其職ヲ辭シテ、今ノ伊藤侯ガ玆ニ起タレタ
ノデアル此時既ニ財政ハ頗ル困難ヲ極メテ居ル獨リ現內閣ガ見テ財政ノ
困難ヲ知ッタノミデナクシテ、前內閣モ既ニ其困難ニ堪ヘズシテ增稅ノ求
ヲ爲サントシツヽアッタコトハ掩フベカラザル所ノ事實デアル、デ加フルニ
列國ノ樽爼折衝ニ加フルニ又或ル國ノ如キハ別ニ支那ト密約等ヲスルガ如
キノコトモアッテ今日頗ル危險ナル趣ニ聞エル現ニ亞米利加ノ如キハ之
ニ對シテ異議ヲ挾ンデ居ル程ナ事情ニ迫ッテ居ッテ、所謂東洋危急ノ秋デアル
(「ソンナ事ハ此問題ニ關係ハナイ」ト呼フ者アリ)此危急ノ場合ニ於テ、十
五議會ノ開會ニナリマシテ、卽チ劈頭第一軍資ノ必要ト、財政ノ整理ノ必
要ヲ我天皇陛下ハ勅語ヲ以テ御示シニナッタノデアル、斯ル危急ナル場
合デアルカラ吾〓國民ヲ代表スル者ハ、謹デ聖意ヲ體シテ此增稅案ニ贊成
シタノデアル獨リ吾ミ卽チ政友會員伊藤侯ガ率井ル所ノ政友會員ガ
率、先之ニ贊成シタルノミナラズ、大隈伯ガ率ユル所ノ進步黨モ亦大ニ之ニ贊
成ヲシ實ニ其進步黨ガ分裂ヲスルコトニマデモ賭ケテ、分裂ヲ賭シテ目
下ノ軍事ノ有樣、目下ノ外交ノ有樣、目下ノ財政ノ有樣ニ於テ、之ヲ贊成シ
ナケレバナラヌト云フコトヲ公ケニシテ、而シテ贊成シタ位ノコトデアルノ
デアル(拍手スル者アリ)此ノ如ク衆議院內ニハ政府黨モ在野黨ノ大ナル者
モ併テ贊成シタル程ナ議案ガ、偶〓以テ貴族院ノ迎フル所ト爲ラナカッタノ
ハ、吾ミノ甚ダ遺憾トスル所デゴザイマスルガ、此際ニ於テ政府ハ貴族院ノ反
省ヲ促スガタメニ上奏シテ二囘ノ停會ヲ爲シ、其停會ノ後ニ勅語ノ下ッタト
云フコトガ卽チ本問題ニナルノデアル(「ヒヤ〓〓」「其問題ノ說明ヲスベ
シ」ト呼フ者アリ)ソコデ諸君モ停會ト云フコトガ惡イト云フ意味ハナ
カラウト思フノデアルガ、玆ニ說明セラルル所ヲ聽クト停會ニ次グニ停會
ヲ以テシ、遂ニ聖勅ヲ賜ルニ至ッタノハ恐懼ノ至リニ堪ヘナイト謂フ是
ハ私ハ當然ナル政府ノ仕方デ、少モ批難ヲスルニ足ラヌコトデアルト思フ
ノデアル(「ノウノ」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)ソレハ何故デアルカト申シ
マシタナラバ是ハ諸君モ少シ靜ニ御聽キヲ願ヒタイト思ヒマスルガ、大體
ル人民も 年強か自分散天皇ハ自ラ政治ヲ爲サルモノデアルカ將タ閣臣ヲ以テ政治ヲ爲サ
云フコトノ問題ガ、極マレバ分ルノデアル島田三郞
君ハ憲法發布ノ當時ノ詔勅ヲ引カレテ、之ヲ子孫ニ傳ヘテ永ク守ラシムルト
ノ御趣意ガアル程デアッテ、如何ニモ大切ナモノデアルト云ハレタ、勿論
大切ナモノデアル實ニ所謂萬世不磨ノ大典デアル、併ナガラ陛下ハ如何
ナルコトヲ子孫ニ御傳ヘニナルカト申セバ「國家統治ノ大權ハ朕カ之ヲ祖宗
ニ承ケテ之ヲ子孫ニ傳フル所ナリ」國家統治ノ大權ヲ子孫ニ傳ヘラルヽノデ
アル子孫ニ傳ヘラルヽノデアル天皇ハ國家ヲ統治ナサル所ノ御方デアル
ノデアル、而シテ立法ノ權ヲ行フニハ天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ經テ、立法ノ
權ヲ行フト書イテアル天皇ハ自ラ政治ヲスルト同時ニ、帝國議會ノ協贊ヲ
經タル法律ヲ發布スル、帝國議會ノ協贊ヲ經ルト云フコトノ要件ハ附イテ居
ルカ、ソレハ天皇自ラ政治ヲ爲サルヽト云フコトニ附イテ、何等ノ障碍ハ
ナイノデアル、若シ立憲政治ヲ間違ヘテ天皇ハ唯尊クノミ在シマシテ、實
事ニハ御輿リナキモノト解釋スルナラバ、大ナル誤解デアル闇臣ト云フモ
ノハ島田君ガ五十五條ヲ讀マレタルガ如ク實ニ補弼ノ責ニ當ッテ其責ヲ負
フ者デアル補弼ト云ヘバムヅカシイコトノヤウデアルケレドモ補佐人デ
アル補助人デアル其天皇自ラ政治ヲ爲サル其御手傳ヲ申ス所ノ人ニ過
ギナイノデアル天皇ヲ唯高クノミ見テ居ッテ、閣臣自ラ政治ヲ爲スト云フ
憲法ハ、我日本ニハナイノデアル果シテ然ラバ天皇ハ適當ナル時期ニ於
テ停會ヲ許サルヽ條項ハ無論諸君ハ異論ガナイノデアル、停會ヲ命ズルニ
異論ガナイト同時ニ天皇ガ憲法ニ據リテ、立法上ノ協賛ヲ求ムル、其求ムル
ノ意思ハ開院ノ當日ニ於テ勅語ヲ示サルルコトモ一ツデアル其意味ガ尙ホ
徹底セザル場合ニ於テ、貴族院ヲシテ再ゼ此意思ヲ思起サシムルガタメニ開
院當日ニ示サレタルノ趣意ヲ以テ、更ニ明瞭ニ御示シニナッタト云フテモ同ジ
ク、協賛ヲ求メラルル所ノ立法手續デアッテ、毫モ差支ノアルベキモノデハ
ナイノデアル之ヲ要スルニ天皇盧權ノ說ヲ信ズル人ガアッタナラバ或
ハ此ノ如クノ決議ヲ爲サルカモ知リマセヌケレドモ今日ノ時代ニ於テマ
サカニ斯ノ如キコトハアルマイト思ヒマシタガ、何ゾ■ラン此決議案ガ茲ニ
出ルト云フモノハ相モ變ラズ天皇盧權說ニ似タル所ノ說ヲ持ツ人ガアル
デハゴザイマセヌカ如何ニモ歎ハシイ次第デアル天皇ガ勅語ヲ發シタル
モ何ノ不可ガゴザイマセウ、若シ之ガ憲法ノ條章ヲ反スコトガアッタナラバ
臣民ハ御諫メ申スニ於テ異議ヲ申ストモ決シテ不忠デハナイノデアル、國
運ガ今ヤ非常ノ危機ニ迫ッテ居ル時代ニ於テ、開院ノ始ニ於テ、親シク御示
シニナッタル詔勅ノ趣意ガ徹底セズシテ國民ガ忍デ之ヲ仰通リト云フコト
ニ致シタニ拘ラズ、尙ホ中途ニ於テ阻碍セラレタルトキ天皇自ラ此感ヲ解
カセラレ、我國ヲ助クルノ方法ニ於テ之ヲ爲サルヽニ何カアラン(「ノウ〓〓」
ト呼ヒ「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)今此決議案ヲ提出シタル所ノ諸君ノ中ニ
ハ所謂英吉利憲法主義ヲ信ゼラルヽ所ノ人ガアルガ蓋シサウ云フコトノ
間違デハアルマイカ私ガ聞ク所ニ據レバ隨分斯ウ云フコトハムヅカシイ
問題デアッテ、英吉利ト云フ其本國デサヘ、隨分間違ノアルコトデアルト云
ヒマス、私ハ玆ニ島田三郞君ガ古文ヲ引證セラレタ例ヲ藉リテ、極新シイ
例ヲ一ツ諸君ノ前ニ提供シテ、本論ノ確メニ致サウト思ヒマス、千八百九十
七年ニ、英吉利ノ國會デサリスバリー侯ガ上院デ爲シタル所ノ演說ガアル
「予ガ少年ノトキニ於テハ、世界ヲ擧ゲテ我皇ノ大權、我皇ノ君權ヲ以テ、有
名無】買ト爲セリ、子ハ今日ニ及ンデハ此言ヲ聞クコト漸ク少シ予ハ諸君ガ、
此說ノ甚ダ誤レルコトヲ認ムルニ一致スルコトヲ信ズ此說ハ實ニ全ク制度
ノ運用ヲ知ラザル者ノ言ノミ」、斯ウ云フコトガアル、ソレカラ之ニ對シテ、
自由黨ノ首領デアル所ノキンバレンノ演說ガ、「吾ミ皇室ヲ憶測シテ有名無
實ト爲スノ誤謬ハ、誠ニ侯爵ノ言ノ如ク蓋シ誤ハ此誤ヨリ大ナルハナシ
我皇ハ常ニ其祖宗ト其强大ナル勢力トヲ一切ノ國勢ニ用ヒ賜フナリ」英吉利
デサヘモ斯ノ如キモノデアルカラ吾欽定憲法ノ主義ニ於テ陛下ガ國家危
急ノ場合ニ於テ、惑ヘル所ノ人〓ヲ正道ニ御導キニナルト云フコトハ實ニ
當然ノコトデアル之ニ向ッテ陛下ニー-詔勅ヲ御出シニナルヤウナコト
ガアッテハ、恐懼ノ至ニ堪ヘヌト云フノハ、以テノ外ノ次第ト私ハ〓歎セザル
ヲ得ヌノデアル、唯併ナガラ私ハ此處ニ言フコトヲ得ル、此案ノタメニ恐入
ルコトハ丁度諸君ガ恐懼ニ堪ヘズト書クト云フ意味ト同ジヤウニ、日本ハ
日本ノ例ノアルコトモ考ヘナケレバナラヌ、而シテ又今ノ內閣ノ人ガ大層
能ク出來タカト云フナラバ決シテ大層能クハ出來ヌノデアル勿論有ラニ
ル仕事ガ如何ニモ陛下ノ御意ヲ享ケタル儘ニシテ、直チニ行ハルヽヤウニ
取計フナラバソレ程良イ內閣ハナイト私ハ申スコトガ出來ル、併ナガラ大
ナル事件ノ生ジタル場合、國步艱難ナル場合ニ於テ元首ガ其局ニ立テ之ヲ
導キタマフガタメニ閣臣ハ無能ナリト云フコトハ出來ナイ話デアル獨逸
ノ議會ニ於テ、一昨年海軍擴張ノ場合ニ於テ、皇帝ハ自ラ議會ニ出テ演說ヲ
シテ居ル其時分ニ總理大臣ハ辭職シタカト云フニ、決シテ辭職ハシナイ
諸君ハ總理大臣ヲ餘リ重ク見ル內閣ヲ餘リ重ク見テ何事デモ內閣大臣ハ
爲シ得ルモノト心得テ、憲法ノ條章ノ甚ダ明ナルモノアルニモ拘ラズ、閣員
ガ何デモシテシマハナカッタトキニハ、政治ハ成立タヌガ如ク心得ルノハ間
員ヲ買被リ過ギタノト、諸君ガ憲法ヲ誤解シタニ過ギヌノデアラウト思フノ
デアル、島田君ガ言フヤウニ、我此內閣ニ稅政ガアルナラバ其稅政ヲ舉
グテ之ヲ質問スルモ宜カラウ、決議モスルガ宜カラウ、將タ上奏スルモ宜カ
ラウト思フノデアル議會開ケテ以來玆ニ十餘年ノ間、屢〓起ル所ノ爭議ハ
常ニ衆議院ト政府トノ問ニアッテ、衆議院ナルモノハ國民ヲ代表スルノ府デ
アッテ、我國民ハ世界無二ノ忠君ナルモノナルニ拘ラズ、常ニ聖慮ヲ惱マシ
奉ルノ趣ヲ備ヘテ居ッタノハ久シク私ガ慨歎ニ堪ヘナカッタノデアル然ル
ニ今度始テ貴族院ニ賜ル所ノ詔勅ニハ此時勢ノ艱難ナル場合ニ於テ衆
議院ハ先ヅ之ヲ可決シタリト仰出シニナッタ程ニ吾〓ノ意思ガ天聽ニ達シ
タルコトハ誠ニ嬉シキコトノ限デハアルマイカ進步黨ガ己ノ黨派ノ分
裂ヲ期シテヤッタル其案ガ、御蔭ニ據ヲテ通ッテ國務ヲ助ケルコトガ出來
タト云フナラバ喜ビコソスレ、胡爲ゾ其黨ノ政務委員ガ出テ、此ノ如キ矛
盾ナコトヲ致スデゴザイマセウカ果シテ然ラバ國務ヲ憂フルコトガマダ
足ラナイト申上ゲナケレバナルマイト思フ(拍手起ル)斯ノ如キノ私ハ見解ヲ
持ッテ居ルカラ此政府ハ完全無缺トハ思ヒマセヌ、併ナガラ此決議ハ全ク
憲法ノ誤解カラ出タルモノト思ヒマスカラ行政上ノ問題ヲ以テ、再ビ御論
ジニナッタラ或ハ御賛成スル時期ガアルカモ知レヌノデアル
(「討論終結」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=51
-
052・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 原田赴城君
(「討論終結」ト呼ヒ「贊成々々」ト呼フ者アリ〕
〔原田赴城君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=52
-
053・原田赳城
○原田赳城君(八十三番) 諸君、本員ハ提出者ノ一人トシテ、意見ヲ述ブル
積デアリマスガ、既ニ本員ノ言ハント欲スル所ハ、殆ド申盡シテ居リマスカ
ラ極テ簡短ニ申述ブル積デアリマス(「謹聽」ト呼フ者アリ)其意見ヲ述ブル
ニ方ッテ一言致シテ置キマスガ御承知ノ通本員ハ是マデ個人トシテハ勿
論、又議會ニ於テモ現內閣員等ト何等ノ感情ノ衝突等ハナイモノデアル、元
來本案ヲ提出スルニ至リマシタノハ是マデ塲山君ナリ島田君ニ於テ、縷々
運ベラレマシタルコトノ如ク、眞ニ已ムヲ得ズ出シマシタモノデアリマス
ル反對ノ演說トシテ、星君大岡君カラ縷々述べラレマシテゴザイマスガ、土
臺增稅案ト此度ノ宸襟ヲ惱マシ奉リタルコトヽ二ツヲ混淆シテ論ジテ居リ
マスカラ、吾〓ノ提出シタ所ノ理由トハ、大ニ合シテ居リマセヌノデアリマ
ス、是ハ增稅案ハ增稅案ナリ此度ノ事件ト此度ノ事件トシテ論ヲシナケレ
バナラヌノデアル、本員等ハ固ヨリ此增稅案ノコトニ附イテノミデハナイノ
デス然ルニ星君ガ緩々述べラレマシタル中ニ、默過スベカラザルコトハ
貴族院ニ詔軸ガ下ッタト言ウテ何故ニ此衆議院ガ恐價スルカソレハ獨リ
貴族院ノコトデアル、是ハ蓋シ星君ノ失言デアラウト思フ苟モ宸慮ヲ惱マ
シ奉ルコトガ此立法部ノ一部ニ在ルソレヲ以テ衆議院ハ何ノ恐懼スル
所ガアルカト云フ思想ヲ持ツ者ハアルマイ全ク是ハ星君ノ失言デアラウ。
フレカラ又今一フハ此決議案ナルモノハ超勅ノ當否ヲ論スベキモノヽ性質デ
アル、斯ノ如キ言ヲ吐カレテ居ル本日等ハ大權ノ御發動ニ寸臺ノ言議ヲ試
ミントスル者デハナイ又試ルノ要ノナイ者デアル然ルニ斯ノ如キ言ヲ
吐カルヽ是レ亦失ロデアラウト思ハレル唯一ツ足君ノ述ベラレタ中デ、
政府ハ十分ニ責任ヲ儘シテ居ル、斯ウ云フ議論デアル政府ガ十分ニ責任ヲ
儘シテ居ルナラバ何故ニ關員ハ進退伺ヲ捧星サレタノデアルカ大岡君ノ
論ジラレマシタノニモ此詔勅ヲ賜リ何ノ憂フル所ガアルカ、幾度アルモ差
支ナイヂヤナイカ、果シテ斯ノ如クデアルナラバ閣員ハ何故ニ進退何ヲ捧
星セラレタノデアルカ、全ク星君ノ意見ト、大岡君ノ意ト、內閣員ノ意見ト
云フモノハ丸ルデ正反對ヲ致シテ居ルノデアル、實ニ是ハ奇觀ト言ハナケ
レバナラヌ(「モウヨシタマヘ」ト呼フ者アリ「モットヤレ」ト呼フ者ア
リ)極簡短ニ致シマスガ、暫ク御待チヲ願ヒマス、此新聞ニ傳ヘラレテ居ル
所ノ伊藤首相ノ進退伺ナルモノヲ事實トスレバ星君ト大岡君ノ論ズルコト
ハ全ク正反對ニナクテ居ル、其證據トシテ此進退伺ヲ朗讀致シテ見マスト
旨ヲ奉シテ國家必要ノ軍費ヲ支辨シ竝ニ財政ノ基礎ヲ鞏固ナラシメムカタ
メ增稅ニ關スル諸法律案ヲ編シ允裁ヲ蒙リ帝國議會ニ提出ス而シテ衆議
院ハ之ヲ可決シタルモ貴族院ニ移サルヽニ及ロ頗ル其通過ヲ難スルノ狀勢
アリ爲メニ宸慮ヲ勞シ竟ニ勅語ヲ貴族院ニ下サルヽニ至ル臣任調鼎ニ
在リ鹽梅道ヲ愆ル誠ニ惡懼ノ至ニ堪ヘス玆ニ謹ミテ進止ヲ請フ臣博文誠惡
誠懼頓首頓首
是デ星君ノ演說ト大岡君ノ演說トハ、全ク此內閣員ノ意見ト、正反對デアル
ト云フコトハ明デアル內閣員ハ既ニ此度ノコトニ附イテ、輔弼ノ責ヲ缺イ
テ居ルト自信シテ居ルノデアル吾ミモ亦斯ノ如ク見テ居ル者デアル、大體
ニ於テハ同一ノ意見デアル、唯之ヲ進退伺ニ止メテ置クカ、進デ何故ニ辭表
ヲ捧呈シナイカ程度ニ附イテ意見ノ異ナルマデノコトデアルノデアルワ
レデ鳩山君モ述ベラレマシタ如ク、臣調鼎ニ在リ鹽梅道ヲ愆ル、是ハ漢語デ
書イテアルガ今日ノ普通語ヲ以テ之ヲ解釋致シタナラバ如何ナル意味ニナ
ルカ如何ナル意味ニ是ハナルモノデアルカ、或ハ臣職ニ在ッテ、其職責ヲ
盡サヌトモ解サルヽノデアル又國務大臣デアッテ、憲政ノ運用ヲ愆リ
誠ニ恐懼ノ至ニ堪ヘズトモ、解釋スルコトガ出來ルデアラウト思ハレル旣
ニ斯ノ如ク輔弼ノ大臣トシテ、輔弼ノ任務ヲ自ラ盡サレナイト云フコトヲ認
メナガラ其憲法發布前ニ在ル進退伺ナドヽ云フモノヲ提出シテ、恬トシテ
居ラルベキ筈ノモノデナイ抑〓進退伺ナルモノハ如何ナル性質ヲ持ッテ
居ルモノデアルカ、是ハ下僚ガ上長ニ對シチ進退伺ヲ提出スルノ例ガアル
ソレ等ニハ各〓其進退伺ニ對シテ、處分スルノ法モアル、唯自ラ職責ニ副ハ
ヌト云フコトヲ覺悟リナガラ、其進退ヲ聖斷ユ仰グ、卽チ其責任ヲ陛下ニ負
ハシ奉ルモノデアル斯ノ如ク國務大臣ガ職責ヲ重ゼサルノ結果トシテハ
種々忌ムベキ現象ガ、此政治界ニ現レルデアラウト思ハレル、其一二ノ例ヲ
舉ゲテ見マスルト此議院ニ現レタコトデアル、卽チ先般佐々君ガ內閻ノ責
任ニ對シテ質問書ヲ提出サレタ時分ニ、內務大臣ハ大臣ナルモノハ國家ノ
大局ニ注目シテ、斯ノ如キ一省一部ノモノニ頓著シナイ果シテ其結果ハ如
何デアルカ、若シモ內閣員ガ自ラ信ジテ提出シタ所ノ其議案ニ附イテ其公
會ノ席ニ於テ其意志ヲ發表シ其通過ヲ務メタランニハ今日ノ如ク司法官
ノ增体ナドヽ云フ忌ハシキコトハ世ノ中ニ現レヌデアラウト思フ是レ何
故ニ斯ノ如キ現象ヲ惹起スカ、總テ其責任ノ重シせザルノ致ス所デアル、吾と
ハ協賛ノ任務ヲ持ッテ、斯ノ如キ場合ニ遭遇シ、默々ニ付シ去ルト云フコト
ハ矢張本分ニ背ク譯テアル要スルニ吾ミノ此國務大臣ノ職責ナルモノハ
頗ル重ズベキモノデアル又國務大臣ハ此自ラ大臣ノ職責ヲ缺キ誠ニ恐懼
ニ堪ヘズト自覺シナガラ、一片ノ形式的ノ進退伺ニ於テ安ズルモノデアル
要スルニ此責任ヲ吾〓ハ重ク見ル、關員ハ責任ヲ輕ク見ルソレダケノ程
度デアル本員等ハ此開員ガ責任ヲ重ゼザル結果、種々是ヨリ此政治上官
紀ノ紊亂ヲ來レ現ニ目擊スルコトガ續發スルニ至ッテハ益〓宸慮ヲ煩ハシ
奉ルニ至ル實ニ臣民ノ分トシテ、默々ニ付スルコトガ出來ヌモノト確信
スル、故ニ本案ヲ提出シ其理由ヲ、諸君ノ御希望ニ依リ極テ簡短ニ申上ダマシ
タ
〔內閣總理大臣侯爵伊藤博文君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=53
-
054・伊藤博文
○內閣總理大臣(候爵伊藤博文君) 議員諸君、唯今本院ニ提出サレテアル
所ノ決議案ニ對シテ、一言所見ヲ述ベマスル鳩山君ノ演說以來、段々提出
ノ理由ナルモノハ承ッタノデアリマスガ、事貴族院ト政府トノ關係ニナッテ
居ルコトガ多イ衆議院ハ政府ト貴族院トノ關係ヲ定ムル場所トハ認メヌノ
デアル、是ハ政府ト貴族院トノコトデアル諸君ガ如何ニ之ヲ解釋シテ決セ
ント欲スルトモ是ハ關係ガ違フノデアル又モウ一ツニハ此場所ガ憲法解
釋ノ講義ノ場所デナイワンナコトニ時日ヲ費シテ居ル必要ガナイ苟モ自
分ハ帝國ノ總理大臣トシテ此場ニ臨ムモノデアル故ニ衆議院ノ議員諸君
ガ如何ナル黨派デアラウガ、我政友デアラウガナカラウガ我眼中ニ於キテ
ハ一樣デアルノデアル、政府トシテ此議場ニ臨ムノデアル(「憲法破壞伯」ト
呼フ者アリ)憲法破壞ト仰シヤルガ、憲法ハ今日ニ存在シテ居ル故ニ兩議
院モ成立シテ居ルノデアル、他ノ黨派デモ、政府ニ立ッデ政治ヲ行ウタトキ
モアルデアラウ、殊ニ憲法ヲ立派ニ運用サレタカモ知レヌガ時ノ艱險ニ依ク
テハ種々ナ困難ガ出來ルモノデアル將來ニ於テモサウ云フコトガ澤山
アルデアラウ기決シテ之ヲ以テ憲法ヲ破壞シタナドト云フ自分ハ其觀念ヲ
持タヌノデアル又自分ガ陛下ニ對シ奉ッテ進退ヲ伺ウタコトニ附イテ
唯今原田君ノ下僚ガ上官ニ對シテ進退ヲ伺フナドト云フ議論ガアッタガ、苟
モ輔弼ノ大任ニ當ル所ノ國務大臣ガ陛下ニ對シテ進止ヲ伺ヒ奉ルノハ斯
ノ如キノ輕ミシイコトデハナイ左樣ナ自分ハ考ヲ、持ッテ進止ヲ伺ッタノデ
ハナイ、又其進止ヲ伺ウタ以來陛下ヨリ決シテ其議ニ及バヌ、職ニ居レト
云フ御沙汰ヲ蒙ッテ居ルノデアル、敢テ多辯ヲ費ス必要ハナイ、併ナガラ政
府ヲ相手トシテ、不信任ト云フ決議案ヲ提出サレタニ附イテ、段々論辯サレ
ル所ヲ聽イテ見レバ諸君ノ決議ガ多數ニ決セラレルトキハソレヲ以テ辭
職シロト云フ譯カモ知レヌガ、併シ自分ハ陛下ヨリ信任ヲ蒙ッテ、今日輔
弼ノ責ニ居ル以上ハ諸君ノ議決ニ依ッテ進退スルコトハ出來ヌノデアル、寧
ロ予ハ反對ニ、此案ニ贊成ノ諸君ニ對シテ勸告セント欲ス、ソレダケノ御考
ナレバ此議案ヲ變シテ寧ロ陛下ニ上奏シテ、內閣ノ不信任ヲ訴ヘラレテ
ハドウカ、其權能ガアリサウナモノヂヤナイカ(「ドチラデモ宜シイ」ト呼フ
者アリ)ドチラデモ宜シイナラ、御變更ヲ爲スッタラ宜カラウト云フコト
ヲ御勸告スル、苟モ今日ノ時勢ニ當ッテ、政府ニ立ッテ此大任ニ當ル者ガ、
サウ云フ薄弱ナ考デ當レルモノデハナイ、又島田君ノ論ニ元老云々ト云フコ
トガアッタ、恐ラク元老云々ノコトハ貴族院ニ於テモ是ト交涉サレタニ違
ヒナイガ、是ハ表面立タヌコトデアラウト考ヘル(笑聲起ル)貴族院ニ於テ
是ト交涉サレルニハ貴族院モ決シテ是ハ憲法ニ妨ナイ內所ノコトヽ考ヘ
テヤラレタコトヽ我輩ハ信ズルノデアル、諸君ガ言フガ如キモノデハナカ
ラウト思フ、又我輩ハ萬機獻替ノ任ニ居ル以上ハ朝夕陛下ニ拜謁ヲシテ
天顏ニ咫尺シテ奏聞スルコトハ百端アルノデアル(「ソレダカラ袞龍ノ袖
ニ隱レルノダ」ト呼フ者アリ「謹聽セイ」ト呼フ者アリ)然レバ何ゾ必シモ此
節ノ貴族院ニ關係シタコトノミデハナイ、又當然ノ職務デアル、是ハ已ムヲ得
ヌ卽チ其責任ヲ盡サント欲スレバ自然ニ然ラザルコトヲ得ヌノデアル又
陛下ハ天職ヲ盡サセラレテ居ルノデアル決シテ輔弼ノ臣ノ悉ク言フガ
儘ニ遊バスト云フ筋ノモノデハナイ諸君ハ常ニ咫尺セヌカラ、或ハ御承知
ナイカモ知レヌガ(笑聲起ル)併シ極リ切ッタコトヽ仰シヤッテモサウハ參ラ
ヌコトデアル(「宜イ加減ニヨシタマヘ」ト呼フ者アリ)我輩ノ演說ヲ、此場ニ
於テ禁ズル者ガアルナラバ、膕マヘテ(參考ニ云フノダ禁ジハセヌ、君ノ身ノ
上ノタメニ言フノデアル」ト呼フ者アリ「默レ」ト呼フ者アリ)唯議決位ノ
コトデハ提出者ノ意思ガ甚ダ明瞭ナラヌ、憲法政治ニ於テ人ヲ斥ケント欲
スレバ十分ノ力ヲ盡シテ斥ケルガ宜シイ唯クスグル位デハ何モナラヌ、
敢テ多言ヲ須井テ、貴族院ト政府トノ關係ヲ玆ニ論究スル必要ハナイ、又
憲法ノ講義ヲ爲スノ必要ハナイソレハ他日閑暇ノトキニ於テ、何時デモ御
相手ニナッテ〓究ヲ致シマス
〔「討論終結」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=54
-
055・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 討論終結ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=55
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056・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 多數ト認メマス本案ノ採決ハ、記名投票ヲ以テセラ
レタイト云フ請求モアリマスカラ、記名投票ヲ以テ採決ヲ致シマス
(「然リ々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=56
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057・片岡健吉
○議樣(片岡健吉君) 閉鎖〓呼ヲ致シマスガ、其前ニ御注意ノタメニ申
シテ置キマス決議案ニ贊成スル諸君ハ白札デゴザイマス、決議案ニ反對ノ
諸君ハ黑イ札デゴザイマス、是ヨリ〓呼ヲ始メマス
〔書記氏名ヲ〓呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=57
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058・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 投票漏ノ方ハアリマセヌカ-投票漏ノ方ハナイト認
メマス開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=58
-
059・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 投票ノ結果ヲ御報告致シマス
〔林田書記官長朗讀〕
出席總員二百八十三
可トスル者百二十八
否トスル者百五十五
〔拍手起ル〕
〔參照〕
贊成者氏名
鳩山和夫君西村眞太郞君小栗貞新作官
宮原幸三郞君佐藤伊助君奈須川光寶雄君君君阿江
(鬼六)
直純君岡本松太郞君大塚成吉岡松君
田收三君藤澤幾之輔君首藤陸君君森藤香谷田部藤克〓龍孝愼
田順一君犬飼眞平君臼井哲夫三君君
和吉郞君大矢四郞兵衞君田口卯吉君金工淺鞍行幹君
岡村忠〓君關彥君
直石原半右衞門君吉大郞君
村千代太君安川繁成君鹽田忠左衞門君〓水靜十郞君
竹大內初秋水堀大今高大山西伊內腰山見保持越諸村岡村田西部鈴木重遠君佐々木正藏君降旗元太郞君
寬介君20元/小麥 200田中正造君前川槇造君河野廣中君
兼助君君佐治幸平君永田佐次郞君廣瀨貞文君
親坂本金彌君箕浦勝人君井上彥左衞門君
見八郞君鹽路彥右衞門君山田武君星松三郞君
税別市島謙吉君星野助左衞門君高梨哲四郞君
隈山磯部八五郞君田邊爲三郞君武富敏君
於 8月時
正志君德差藤兵衞君犬養毅君江島久米雄君
加藤政之郞助君天野若圓君原田赳城君島田三郞君
鈴木文萬三次君木戸 和田良三郞君須藤善一郞君森川六右衞門君
鈴木郞君誓太郞君神鞭知常君秋山源兵衞君
小崎義明君多武市庫太君橋元勗君平岡浩太郞君
畠山雄三君田通君中津誠一郞君佐藤宗彌君
四宮有信君內藤正義君深尾龍三君藤六藏君
中野武營君秋山元藏君安部井磐根君柴加四朗君
杉下太郞右衞門君室孝次郞君三輪潤太郞君佐久間國三郞君
野間五造君山田喜之助君望月長夫君大大正己君
寺田彥太郞君高木正年君內田雄藏君東石義徹君
佐藤里治君中山平太郞君堀田連太郞君島地九郞君
星野甚右衞門君江角千代次郞君花井卓藏君中菊祐八君
門馬尙經君三田村甚三郞君藤野辰次郞君井上源衞君
平岡萬次郞君高川定次郞君吉田源八君小松喜平治君
小山久之助君福田久松君兒島惟謙君廣住久道君
富田仙助君並河理二郞君佐々友房君金岡又左衞門君
本案反對者氏名
新開貢君有馬要介君申本康三君吉岡直一君
鈴木忠兵衞君金尾稜嚴君堀尾茂助君佐藤〓君
家永隼太君石田貫之助君阿部孫左衞門君國重政亮君
山瀧堀富虎造河口善之助君兒玉仲兒君鈴木儀左衞門君
口歸一君君君三輪傳七君西原〓東君
口熊野高元田肇君神藤才一君
中村彌六君橋九郞君岩瀨武司君菅原
野間豐五郞君田大三輪長兵衞君第五水壓地片 200丸山嵯峨一郞貳亮機 周久君 若君 君 君 君 樣
石井鼎君上海青浦青房物业管理有限公司卯八助君君喬君栗原一
林亮
武石敬治君野常君佐藤昌藏君
下飯坂權三郞君柏谷義三君脇坂行三君松島廉作君
高須賀穰君板東勘五郞君五十野讓君橋本久太郞君
井手毛三君重野謙次郞君戶狩權之助君塚常次郞君
致第 8 君中野廣太郞君多田作兵衞君本確也君
聖山田莊左衞門君長瀨〓一郞君尾磯山森大
月圭介君山口定省君山内吉郞兵衞君崎田本行和幸建築建造建築
吉亦好玩空可按照片長彰康一君中村榮助君村野常右衞門君
君恆松隆慶君持田直君
土亮君齋藤安雄君新井章吾君森お前に1つ東
榮治君田中喜太郞君佐久間元三郞君
土居平左衞門君有村連君石谷董九郞君間直
河北勘七君濱名信平君杉田定一君齋本藤壽
營養學生醫學生理學生理學
貫一君上條謹一郞君佐藤琢和泉邦助彥雄
門藤金作君內橫山通君カ之
君脇重雄君藤守雄郞作三英治君君君君君君君松堀平本田豐
青大洗評価格高分 20元正規通報警察局龍介君君君君君君君松尾巳代治君古谷新正
通代君宮井茂九郞君松永嘉六雨森菊太郞君
北田豐三一郎君田井秀大瀧傳十郞君
長坂重孝君重岡薫五郞君中
本正君稻垣示君小林乾一郞君村淳
順平君高津雅雄野尻岩次郞君亨
木摠兵衞君征矢君君君伊藤德三君井西星西
川香純粋 泡泡谷金八藏
飯林靑渡熊鈴淺根二重五十中田千田軍之助君上信
島 柳邊代木野松田岡育造君浦野
麻大錠貢平
正彥四猶四治一郎人君君君君出水五彌十大八八君君君生太吉君金井
彥君鹽谷安藤龜太郞君後藤文一郞
武弘宜路君伊達文三君秋岡義一
永江純君關信之介君林元俊君長谷
鮫島相政君布施甚七君石黑酒一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=59
-
060・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 決議案ハ否決ニナリマシ中
〔此時「進步黨ノ諸君少シク將來ヲ戒メタマヘ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=60
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061・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 議事日程ノ第十一關稅定率法附屬輸入稅表中改正法律
樂第一讀會ノ續、委員長報告、栗原亮一君
十一關稅定率法附屬輸入稅表中改正法第一讀會ノ續委員長
律案(栗原亮一君外四名提出)/報〓
(栗原亮一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=61
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062・栗原亮一
○栗原亮一君(百十二番) 國稅定率法ノ委員會ノ結果ヲ御報告致シマスル、
本案ハ前議會ニ於キマシテモ多數ヲ以テ本院ヲ通過致シマシタガ、會期切
迫ノタメニ貴族院ニ於テハ、通過セズニ終ッタノデアリマスル、之ハ極ク簡
單ナモノデアリマスルガ卽チ現行ノ關稅定率ニ於キマシテ、其方針トスル
所ハ原料ニ屬スルモノハ〓シテ無稅ニスルト云フコトニナッテ居ルノデ
アリマス關稅法制定ノトキニ於キマシテ、此物品ノ如キハ無論無稅ノ性質
ノモノデアリマスルケレドモ、其項ニ於キヤシテハ至ッテ輸入モ小サキモノ
デアリマスカラシテ玆ニモ載ラナカッタノデアリマス、併シナガラ今日
ニ於キマシテハ「コブラ」卽チ椰子ノ實デアリマスガ、卽チソレヲ輸入シ來リ
マシテ椰子ヲ造ル、ソレヲ以テ原料ト致シテ「シヤボン」ヲ製造致スノデアリ
ゞく、此「シヤボン」製造ハ近來內地ニモ盛ニ起リマシテ、外品ノ輸入ヲ防グ
一端トモナッテ居リマス其稅額ハ僅カ三四千圓デアリマシテ、格別歲入ノ
方デハ關係モナイノデアリマス、是ハ委員會ニ於キマシテモ政府ニモ意見
ヲ聽キマシテ、政府ニ於キマシテモ格別不同意ハナイト云フコトデアリマス
モウ宿題ノコトデアリマスカラ、一同ノ委員會ヲ開キ、、滿場一致デ可決ニナッ
タノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=62
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063・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百三十六番) 直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス、サウ
シテ二讀會ニハ少シ意見ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=63
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064・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 恆松隆慶君ヨリ、直チニ二讀會ヲ開カウト云フ動議ガ
出マシタガ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=64
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065・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ直チニ二讀會ヲ開クコトニ致シマ
ス全部ヲ議題ニ供シマス
關稅定率附屬輸入稅表中改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=65
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066・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百三十ハ番) 修正意見ガゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=66
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067・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 恆松隆慶君
(恆松隆慶君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=67
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068・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百三十ハ番) 此海關稅定率法附屬輸入稅法中ノ改正案デゴザ
イマスガ、是ハ唯今栗原君ノ述べラレタ所ノ「コブラ」ヲ二種ノ方ニ移シテ、
免稅ニスルト云フコトハ固ヨリ贊成、私モ提出者ノ一人デゴザイマスガ、是
ニ至ッテ聊カ修正ヲ加ヘタイト申スモノハ色ミ調査致シマシタ結果デ、此第
二種五一四ノ一鐵鑛ト云フコトヲ加ヘタイ、サウシマスルト此輸人稅表中五
一四ノ一ヲ、五一四ノ二ト改ムルコトニナルノデアリマス、此五一四ノ一ヲ
五一四ノ二ト改メル所ノモノハ現在ノ所デハ人造肥料、其他別項ニ揭ゲタ
ル肥料ト云フモノデゴザイマス、其鐵鑛ヲ新ニ加ヘマスト云フノハ多クハ
此福岡ノ製鐵所ヘ支那朝鮮カラ輸入スルモノデゴザイマス、是ガ矢張第一
種ノ方ノ他ニ於テ、從價稅ニ仕拂ハナケレバナラヌコトニナル前年度ニ於
キマシテモ二万噸位輸入シテ居ル、此稅金ハ一万八千圓位デアリマスガ本
年ハ製鐵所ノ擴張ニ依ッテ、凡ソ見込ム所ハ十万噸位ノ見込デアリマス、此
金ガ九十万圓位デアリマシテ、此原價運賃其他ノ代價等ノ總額デアリマスル
ガ是ガ輸入稅デ八万圓位ノ〓算ニナリマス門司デ仕拂ヒマスル、ソコデ
是ハ発ニ角免稅ノ方ニ加ヘマシテ、製鐵所ノ方ニモ大ニ便利ヲ得ルコトニ
ナルノデアリマス、而シテ之ヲ免稅ニスルカラト云ウテ、内地ノ鐵山鑛業等ニ
決シテ差支ノナイ當局者ニ於テモ内地ノ鐵山等ハ追〓此途ヲ開キ進メテ往
クト云フ方針デアリマスカラ決シテ之ヲ免稅ニ致シテモ內地ノ鐵山其他
ニハ一向差友ハナイト云フコトデゴザイマスカラシテ、此場合此「コブラ」ヲ
免稅ノ部分ニ入レマス案ニ、唯今述べマシタ所ニ鐵鑛ト云フコトヲ加ヘテ、
之ヲ一種カラ二種ニ移スト云フコトデゴザイマス、ドウカ諸君御贊成アラン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=68
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069・早川龍介
○早川龍介君(二百一番) 贊成致シマシテ、二讀會ヲ以テ確定議ニセラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=69
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070・野尻岩次郎
○野尻岩次郞君(二百四十番) チヨット質問シマス、唯今恆松君カラ提出ニ
ナリマシタ、關稅定率輸入稅法中ニ一項ヲ加ヘル鐵鑛トカハ私ハ始テ聽イ
タコトデアリマスカラ分ラヌ、之ニ附イテ政府委員ノ意見ヲ聽キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=70
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071・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御質問ヲスルナラ發言ナサッテ宜シイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=71
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072・野尻岩次郎
○野尻岩次郞君(二百四十番) 唯今恆松君ヨリ提出ニナリマシタ、關稅定率
附屬輸入表中ニ一項ヲ加ベル、鐵鑛トカ云フコトデス、是ハ始テ銘々共ハ聽キ
マスルコトデ、十分審査ガ出來テ居リマセヌカラ、之ニ對スル政府ノ意見ヲ
聽キタイ
(政府委員農商務總務長官藤田四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=72
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073・藤田四郎
○政府委員(藤田四郞君) 唯今恆松君カラ修正案ガ出マシテゴザンスルガ、
是ハ政府ニ於テモ、同意ヲ致シマスルデゴザイマス、殊ニ農商務省ノ方ノ側
デハ最モ必要ヲ感ジマスルノデゴザイマシテ、旣ニ大藏省ニ伺ヒマシテモ
照會致シタ次第デゴザンスルガ、丁度今恆松君カラ提出セラレマシタ以上ハ、
贊成ヲシテ通過セラレンコトヲ希望致シマ人発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=73
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074・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) ソレデハ唯今ノ恆松君ノ修正說ニ付イテ採決ヲ致シマ
ス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=74
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075・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ恆松隆慶君ノ修正通リ決シマス、然
ラバ讀會ヲ省略シ之ヲ以テ確定トシテ御異、議アリマセヌカ
關稅定率法附屬輸入稅表中改正法律案確定議
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=75
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076・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 御異議ガナケレバ其通決シマス-議事日程十二明治
二十四年法律第二號中改正法律案、第一讀會ノ續、委員長報告、天野若圖君
十二明治二十四年法律第二號中改正法第一讀會ノ續(事實上
律案(大矢四郞兵衞君提出)報告
〔天野若圓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=76
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077・天野若圓
○天野若圖君(八十一番) 明治二十四年法律第二號中改正法律案ノ委員會ノ
結果ヲ報告致シマス委員會ニ於キマシテハ全會一致ヲ以テ此案ヲ可決致
シマシタ其譯ハ理由書ニモ段々書イテアリマスルガ、重ナル〓ハ元來地租
ノ第三納期ニ限ッヲ、年末ト年始ニ跨ッテ居リマス、外ノ第四、第五、第六納
期ノ如キハ孰モ其月ノ一日ヨリ三十日、若クハ二十八日マデ、一箇月ヲ以
テ納期トシテアルニ第三納期ニ限ッテ、斯ノ如キ年末年始ニ跨ヲテ居ルノハ
最モ不都合デアル又其他此十二月中ノ如キハ收穫ノ米ト云フモノガ、未
ダ籾俵デアルヨシ之ヲ米ニシテ卽チ賣拂フノハ甚ダ困難ヲ感ズルトキ
デアル、元來農家ニ於テハ收穫ノ米穀ヲ賣却シテ、納稅スルト云フノガ是
マデノ慣例デアル、卽チ事實デアリマスル因テドウシテモ此案ノ如ク、今
十五日間ヲ延シテ、一月一日ヨリ三十一日マデトシタ方ガ、一般農民ノ便利
デアル又其他銀行會社等ノ利益ノ配當ヲ受ケルノモ孰モ一月二十日以後
三郎シシテ見レバ修正ノ如ク一月十五日ノ納期ニナッテ居ッテハ非常ニ不便
デアルカラ、ドウカ本案ノ如ク致サナケレバナラヌ、又諸般ノ縣稅ナリ、市町
村稅ナドノ納斯ハ孰モ月末ニナッテ居ルシテ見レバ併テ之ヲ町村役場ヘ
納メルト云フニモ非常ニ便宜デアル是〓ノ理由アッテ、大ニ本案ノ如ク地
租ノ納期ガ改正ニナレバ一般農民ノ便益ヲ得ルコトデアルカラト云フ譯
合デ委員曾ハ一致ヲ以テ決議ニナリマシタカラ、滿場ノ諸君、宜シク御贊
成アランコトヲ希望致シス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=77
-
078・永井嘉六郎
○永井嘉六郎君(二百八番) 是ハ政府委員ノ意見ヲ聽キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=78
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079・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 若槻政府委員
〔政府委員大藏書記官若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=79
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080・若槻禮次郎
○政府委員(若槻禮次郞君) 唯今ノ法律デゴザイマスガ、僅カ十五日バカリ
ノ延期ニナル譯デアリマスケレドモ、丁度此十二月ニハ圖庫ノ方デハ仕拂
ノ多イ月デゴザイマスノデ、其後トヲ受ケテ國庫ノ收入ノ-國庫ノ現在金
ノ少ナイトキユ於テ、此地租ガ丁度這入ッテ來ルト云フコトニナッテ居リマス
カラ、唯今ノヤウニ改正致シマスト云フト國庫ニ於テハ凡ソ八百一万圓バ
カリノ金ヲバ十五日間借リテ置カナケレバナラヌ場合ニナル、卽チ其金利
エ當ルモノダケハ國庫ガ損ヲスルト云フコトニナリマスノデ、僅ノコトデ
ハアリマスケレドモ、此改正ハ國庫ノ方デハ希望セヌノデ、尙ホ是ハ國庫ノ
都合ヲ申シ上グマシタデアリマスガ、民間ノ關係カラ申シマスルト云フト、
唯今委員長ノ述ベラレマシタ如ク、一方ニ利益ハアリマセウケレドモ、又一
方カラ申シマスト云フト、今日ノ農家ノ取引ハ舊ノ節季ヲ用ヒテ居ル者ガ、
餘程ゴザイマスカラ、ソレ等ニ取ッテハ或ハ斯ウ改正ニナルト、丁度金融ノ
逼ッテ居ルトキニ、地租ヲ拂ハナケレバナラヌト云フコトニカルカト思ヒマ
スノデ、此〓ニ於テモ必シモ改正案ノ方ガ、便宜ト言ハレヌデハナイカト考
ヘテ居リマス、旁〓今日ノ所デハ現行ノ儘デアル方ガ、宜シカラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=80
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081・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 本案ニ附イテハ、第二讀會ヲ開クヤ否ヤニ附イテ採決
致シマス、第二次會ヲ開クト云フ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=81
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082・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 少數ト認メマス、第二讀曾ハ開カザルコトニ決シマス
議事日程ノ十三葉煙草專賣法中改正法律案、第一讀會ノ續、委員長報告-
西原〓東君
十三葉煙草專賣法中改正法律案(西原第一讀會ノ續(委員長)
〓東君外十五名提出)/報告
(西原〓東君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=82
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083・西原清東
○西原〓東君(三十九番) 諸君、本案ハ昨日ノ御決議ニ依リマシテ、昨日直
チニ委員會ヲ開キマシテ成規ノ通役員ヲ選舉致シマシテ詳細ナル質問說
明等ヲ經マシテ、遂ニ本案ノ儘ニ、卽チ第五條政府ハ豫メ葉煙草耕作ノ區域
ヲ定ムルコトヲ得トアル中ノ區域ノ下ニ「耕作段別及葉煙草種類」ト云フ十字
ヲ挿入スルト云フ橋元議員ノ追加修正ガアリマシタル外、全體ヲ可決スベ
キモノト決定ヲシタノデゴザイマス此段御報告致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=83
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084・望月長夫
○望月長夫君(百五十四番) チヨット質問ヲ致シタイ、委員長且ツ提出者ト
シテ質問ヲ致シマスガ、此非常ナ澤山ナ箇條ヲ、僅々ノ時間ニ御決議ニナツ
タト云フコトハ、非常ニ感服ヲ致スノデ、併ナガラ私共ガ讀デ見マスルト
非常ニ疑ハシイ所ガアル單ニ此六條ノ次ニ四條ヲ加ヘルコトダケニ附イテ
デモ質問致シタイコトガ多數デアル其第一ハ第六條ノ二ト云フ所ニ、政
府ノ定ムル方法及手續ト云フコトガ書イテアルガ、方法ト云フコトヽ手續
ト云フコトヽハ如何ナル區別ヲ指スノデアルカ、是ガ第一ソレカラ其次
ノ項ニ若シ立會ハザルトキハ其査定ニ對シ異議ヲ申立ルコトヲ得ズト
云フコトガ書イテアッテ、サウシテ其査定ヲ爲ス時日ハ、何日前ニ通知セネ
バナラナイト云フヤウナコトガ書イテナイソレヲ書カズニ立會ハナカッタ
トキニハ異議ヲ言フコトハ出來ナイ、確定ノモノデアル是ハナカ〓〓後
ニ至ルト百貫ヨリナイモノヲ百五十貫目ト云フヤウナ査定ヲサレタ場合ニ
ハ、五十貫目ト云フノハ、金デ納メナケレバナラヌト云フ、重大ノ結果ノ出テ
來ルモノデアルノニ、斯ウ云フ規定デ宜イト云フハ委員會ノ意志ハドウ云
フモノデアルカ、ソレカラ其次ノ六條ノ四ニ至ルト、卽時異議ヲ申立ヲ爲スコ
トヲ得トアルガ、成ル程民事訴訟法ナンカニ、卽時抗告ト云フコトノ意義ハ
卽時抗告ト書イテアルガ、期間ハ七日ト云フコトガ書イテアルケレドモ、卽時
異議ノ申立ト云フコトハ、此所ニ始テ出ルモノデアルガ、此卽時ト云フノハ如
何ナル字義ヲ指スノデアルカ、ソレカラ其次ニ異議ノ申立アルトキハ合令
ノ定ムル所ニ依リ、二人以上ノ鑑定人ヲ選定シトアルノハ此鑑定人ト云フ
モノハ隨分重イ役デ、所ガ今日ノ鑑定人ト云フモノヽ甚ダ怪シイト云フ
コトハ先刻御承知デアラウト思フ然ルニ裁判所ノ鑑定人ノ如キハ立派
ニ不實ノ申立ヲ爲シタルトキニハ刑法上ノ責任ガアルケレドモ、此鑑定ガ
不實ノ申立ヲ致ス場合、多クノ場合ニ於テハ煙草ノ製造人ト曖昧ノ關係ノ
生ズルコトハ、無論デアル、今日ノ如キ下僚ノ收稅吏ノ信用ノ置ケナイ場合ニ
ハドチラノ鑑定ヲスルモ分ラナイガ、此鑑定人ハ如何ナル製裁ニ付スルコ
トガ出來ル考デアルカソレカラ是次ニ異議ノ申立八ガ、異議ノ申立ヲ致シ
タ場合ノ費用ヲ非常ニ制限ヲ附ケテ多ノ場合ニ於テハ異議ノ申立人ガ、此
費用ヲ負擔セネバナラヌト云フコトニナッテ居ルガ、異議ノ申立人、煙草製造
人ガ、例ヘバ百貫目アラウト思フ所ガ、ソレヲ政府ニ於テハ百五十貫目ト査
定ヲシタ、此場合ニ鑑査ノ結果百三十貫目アルト鑑定サレタ此場合ニ若シ
先キニ此異議ノ申立人ガ、異議ヲ申立テズニ服從致シテ居ッタナラバ、少ク
モ二十貫目代金ハ、是ハ取レナイノニ納メナケレバナラヌノデアル、ソレハ
第六條ノ末ニ至ルト、サウ書イテアル、相當ノ理由ノ中ニハ、大風ガ吹イタ
トカ何トカ特別ノ事由ガアッタ場合デナケレバ許サナイ、相當ノ事由ト云
フノデアラウガサウスルト煙草ノ製作人自身、二十貫目ノ多クノ物ノ取レ
ナイノヲ、代價デ納メヌナラヌヤウナ重イ責任ノアル場合ニ、異議ノ申立
ヲ致シタノニ此場合ニハ申立ノ費用ノ全部ヲ、矢張申立人ガ負擔セネバナ
ラナイト云フコトニ書イテアル、是ハ何故ニ異議ノ申立人ニ、此ノ如キ責罰
ヲ科セラルヽノデアルカ是等ノ諸君ニ於テ委員會ニ於テ、如何ナル御論ガ
アッタカ、若シナシトスレバ、提出者ハ如何ナル說明ヲ與ヘルカ、ソレヲ承リタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=84
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085・西原清東
○西原〓東君(三十九番) 望月君ニ答ヘラレル限ハ御答ヲ申シテ置キマス
第六條ノ政府ノ定ムル方法及手續ニ依リトアル〓ハ植付ノ期節、橙ノ移植
ノ期節、肥料ヲ施ス期節方法等ヲ意味スルモノデアリマシテ立案ノ趣意ハ
取締ヲ嚴重ニスルト共ニ、此耕作人ト云フモノハ詰リ專賣事業ノ機關ノ如
キモノデアルカラ親切ニ保護シテヤランケレバナラヌト云フコトヽ査定ヲ
スルニ付キマシテ區々マチ〓〓ノ耕作デアッテハ、査定ニ非常ナ手數ヲ要ス
ルノデアリマスカラ、土地ニ應ジ成ルベク畫一ニ耕作ヲ致スト云フノ主意ヨ
リ方法手續ニマデ政府ガ干涉致シマシテ、ソレニ依ッテ耕作ヲサセルト云フ
ノ主意デゴザイマスソレカラ異議申立ノ期限、鑑定人ノ責任、鑑定ニ關ス
ル費用ノ如キモノハ望月君ハ此法律文ニナイ所ノモノニ附イテ、御疑ガ
アルデゴザイマセウケレドモ、是ニハ無論施行手續ガ添ウテゴザイマスカラ、
ソレニ依ッテ出來ルノデアリマス、ソレカラ鑑定ノ費用ニ關シマシテハ、現行
法ハ總テ鑑定ヲ請求スル、卽チ異議申立人ノ負擔トスルト云フ規定ヲ本案ノ
改正ハ申立人ノ主張ガ鑑定ノ結果ニ遠カッタトキニノミ、其責任ヲ負擔セシ
ムルト云フコトデアリマシテ、決シテ過重ナル責任デハナイ現行法ヨリハ
寛大ニナッテ居ル方ナノデゴザイマス、之ニ附キマシテハ委員會ニ於キマシテ
ハ段々質問ガアリマシテ政府ガ之ニ對シテ施行上ノ答辯モ詳細アリマ
シタノデゴザリマスカラ、尙ホ私ノ說明ノ不十分ナル所ハ、筆記ニ據シテ御承
知アランコトヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=85
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086・工藤行幹
○工藤行幹君(六十六番) 定足數ガナイヤウニ思ヒマスガ、ドウデゴザイマ
スカ
〔書記官長出席議員ノ數ヲ點檢ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=86
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087・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 定足數ヲ缺イテ居リマスカラ、此議事ハ先ヅ是デ止メ
マス
(「議長召集ヲ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=87
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088・恒松隆慶
○恆松隆慶君(百三十六番) 定數ニ滿チテ居ルヤウニ思ヒマスガ、ドウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=88
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089・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 定足數ヲ缺イタヤウニ見エマスカラ、モウ是デ議事ヲ
止メマシテ、報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
舊神官配當祿處分法案
提出者永井鼻六郞君松島康作君
輸入原料砂糖戾稅法案
提出者栗原亮一君恆松隆慶君早川龍介君
後藤文一郞君磯田和藏君伊藤德三君鮫島相政君安藤龜太郞君山下千代雄君
高須賀穰君靑柳四郞君西原〓東君丸山嵯峨一郞君林元俊君ヨリ司法官ノ增
俸運動ニ關シ田中正造君ヨリ政府自ラ侮リテ國ヲ危クセシ義ニ關シ、島
田三郞君關直彥君永田佐次郞君大村和吉郞君ヨリ地方行政ノ紊亂ニ關シ質
問主意書ヲ提出セラレタリ
委員ヲ指名スル左ノ如シ
水害地方田畑地租免租ニ關スル法律案兩院協議委員
高岡忠〓君橋本久太郞君永井嘉六郞君
山口熊野君藤金作君田村順之助君
深尾龍三君關直彥君廣住久道君
臼井哲夫君
生絲檢査所法中改正法律案
五十野讓君林喬君山田莊左衞門君
下飯坂權三郞君片岡久一郞君畠山雄三君
西村眞太郎君內山松世君中村彌六君
馬匹去勢法案
佐藤通代君新井啓一郞君致一君
大須賀庸之助君佐藏昌藏君松西植尾田木收三君
星松三郞君奈須川光寶君又〓番
委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
帝國古蹟取調會國庫補助ニ關スル建議案
委員長早川龍介君理事堀豐彥君
史談會國庫補助ニ關スル建議案
委員長田口卯吉君理事根本正君
私設鐵道新線路敷設ニ對シ補給利子ヲ附與スル件ニ關スル建議案
委員長山本幸彥君理事鈴木忠兵衞君
田畑地價特別修正法律案
委員長後藤文一郞君理事平岡萬次郞君
狩獵法改正法律案外一件
委員長佐藤昌藏君理事堀越寬介君
〔左ノ質問書ハ朗續ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ掲載ス〕
司法官ノ增俸運動ニ對スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十四年三月十九日
提出者後藤文一郞磯田和藏伊藤德三
鮫島相政安藤龜太郞山下千代雄
高須賀穰靑柳四郞西原〓東
丸山嵯峨一郞林元俊
賛成者上條謹一郞
外三十一名
司法官ノ增俸運動ニ對スル質問主意書
裁判所ニ關スル增俸豫算問題ニ付司法官ニ於テ意見書ヲ發表シ其他運動ケ
間敷行爲アルハ官職上ノ威嚴又ハ信用ヲ失フヘキ所業ニシテ是レ明ニ法律
ニ違背シタルモノナリ政府ハ此違法ノ所爲ニ對シテ如何ナル意見ヲ持シ如
何ナル處分ヲ爲サントスルカ
右及質問候也
政府自ラ侮リテ國ヲ危クセシ義ニ付質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十四年三月十九日
提出者田中正造贊成者江藤新作
外四十三名
質問主意書
政府ノ敵ハ固ヨリ人民ニ非ス將タ亦必スシモ外國ニ非ス政府自ラ自國ヲ信
セス自國ヲ侮リ終ニハ憲法ヲ破壞シテ秩序ヲ紊亂セルニアリ而テ時局ノ之
ヲ如何トモスヘカラサルニ當リテハ屢〓勅語ヲ煩ハシタリ之レ犯スヘカラ
サルノ
神聖ヲ犯シ謹ムヘキノ德ヲ守ラス大臣互ニ重要ノ責任ヲ避ケテ國民ノ怨ミ
ヲ皇室ニ歸シ人心ヲ離隔シ內治ヲ紊亂シ國家忠良ノ臣民ヲシテ恐懼措ク能
ハサラシム年既ニ久シ之レ誠ニ自ラ其國ヲ危クスルモノナラスヤ如何
右及質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=89
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090・片岡健吉
○議長(片岡健吉君) 明日モ例刻ヨリ會議ヲ開キマス、議事日程ハ公報ヲ以
テ御通知致シマス、今日ハ是ニテ〓會致シマス
午後四時二十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001513242X01519010319&spkNum=90
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