1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十五年二月十四日(金曜日)
午前十時九分開議
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議事日程 第十二號 明治三十五年二月十四日
午前十時開議
第一 侯爵伊達宗徳君、侯爵徳川義禮君、子爵相良頼紹君請暇の件
第二 明治三十五年度歳入歳出總豫算案兩院協議會成案 會議(兩院協議會議長報告)
第三 第五囘内國勸業博覽會參考館へ陳列の爲輸入する貨物關税免除に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第四 警察署内の留置場に拘禁又は留置せらるる者の費用に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第五 東京都制案(伯爵清棲家教君外三名提出) 第一讀會
第六 千代田縣設置に關する法律案(伯爵清棲家教君外三名提出) 第一讀會
第七 東京都千代田縣組合法案(伯爵清棲家教君外三名提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=0
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001・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 報告ヲ致シマス
〔仙石書記官朗讀〕
去ル十二日本院ニ於テ可決シタル〓國內地調査ニ關スル請願外四件ハ卽日
政府ニ轉送セリ
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日內閣總理大臣ヲ經由シテ
裁可ヲ奏請シ及可決ノ旨ヲ衆議院ニ通知シタリ
害蟲驅除豫防法中改正法律案
登錄稅法中改正法律案
同日左ノ政府提出案ヲ受領セリ
權限裁判法案
行政裁決及行政裁判權限法案
行政裁判所構成及行政裁判手續法案
行政裁決手續法案
同日衆議院ヨリ政府提出臺灣官設鐵道用品資金會計法案ヲ受領セリ
又明治三十五年度歲入歲出總豫算案兩院協議會成案ヲ受領セリ
又左ノ衆議院提出案ヲ受領セリ
國稅徵收法中改正法律案
課稅標準額及稅額計算ニ關スル法律案
雹害地地租特別處分法案
營業稅法中改正法律案
監視廢止ニ關スル法律案
昨十三日左ノ政府提出案ヲ受領セリ
鑛業法案
同日政府ヨリ左ノ通牒ヲ受領セリ
大藏書記官金子直
大藏省所管事務政府委員被仰付
各特別委員會ニ於テ當選シタル委員長副委員長ノ氏名左ノ如シ
京都府下國界竝郡界變更法律案特別委員會
委員長伯爵萬里小路通房君副委員長子爵山 井兼文君
國債證券買入銷却法廢止法律案特別委員會
委員長伯爵吉井幸藏君副委員長子爵三島彌太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=1
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002・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ日程ニ移リマス、侯爵伊達宗德君病氣ニ附
キ三十日間、侯爵德川義禮君病氣ニ附キ會期中、子爵相良賴紹君病氣ニ附キ
三週間ノ請暇ノ願ガアリマス、御異議ガナクバ許可致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=2
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003・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 明治三十五年度歲入歳出總豫算案兩院協議會成
案、會議、兩院協議會議長報告
〔左ノ報告書及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
明治三十五年度歲入歲出總豫算案
右別册ノ通兩院協議會成案成立セリ依テ及報告候也
明治三十五年二月十二日
明治三十五年度歲入歳出總豫算案兩院協議會議長
男爵小澤武雄
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
(別册)
明治三十五年度歲入歲出總豫算案兩院協議會成案
豫算
第一條明治三十五年度歲入總額ヲ貳億七千參百六拾參萬八百七拾六圓歲
出總額ヲ貳億七千四拾貳萬四千四百九拾五圓貳拾壹錢五厘ト定ム其款項
ノ金額ハ別册甲號歲入豫算歲出豫算ニ據ルヘシ
甲號
歲出經常部
司法省所管
第二款裁判所金五百八萬六千七百七拾七圓七拾四錢壹厘
第一項俸給及諸給金貳百九拾六萬七百九拾四圓八拾六錢四厘
司法省所管合計金千八拾參萬七千六百四拾五圓八拾六錢
歲出經常部合計金壹億七千七百貳拾壹萬六千四百九拾四圓參拾七錢
歲出總計金貳億七千四拾貳萬四千四百九拾五圓貳拾壹錢五厘
(男爵小澤武雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=3
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004・小澤武雄
○男爵小澤武雄君 兩院協議會ノ經過及結果ノ御報道ヲ致シマス、兩院協議
會ハ一昨日開會致シマシタ、先ヅ開會ノ初ニ於テ衆議院側ノ委員ヨリ希望ヲ
申述ベラレマシタ、其演說ハ司法官ノ俸給ニ於テハ此三十五年度ノ豫算ニ六
萬何千圓ト云フモノヲ增シテアルカラ、此年度ダケハ衆議院ノ修正案ノ通ニ
相成リタイ、尤モ司法官ノ增給ニ何處マデモ反對スルト云フコトデハナイケ
レドモ三十五年度ダケハ是デ宜カラウ、政府モ亦行政整理抔ヲ致サレルト云
フコトデアルカラシテ其結果ニ依ッテハ政府ノ要求ニ應ズルコトハ決シテ差
支ナイコトヽ思フ、是等ノ主意ニ依ッテ衆議院ニ於テ審議討論ヲ盡シタ末ニ、
本年ノ所ハ衆議院ノ議決ノ通ヨリ外ハ致方アルマイト云フコトニ決シテ居リ
マスカラ、貴族院ニ於テモ此事ダケハドウカ御讓下サッテ此豫算ノ成立スルヤ
ウニ致シタイト云フヤウナ主意ノ演說デゴザイマシタ、之ニ對シテ貴族院側
ノ委員ハ判檢事ノ俸給ノ問題ト云フモノハ實ニ已ムヲ得ザルモノト貴族院ニ
於テハ考ヘテ居ル、其次第ハ今日ノ處デ缺員モ多々アル、人ヲ得ルノモ難イ、
又或ル裁判所ニ於テハ成立モシテ居ラナイ、色ミノコトガアルニ依ッテ是非是
ハ貴族院ノ修正ノ通ニ致シタイ、尤モ貴族院モマルデ政府提出案ノ通ニ金額
ヲ十萬何千圓ト云フモノニ致サナイノモ大ニ熟慮ヲ費シタコトデアル、其次
第ハ此貴族院ガ希望スル所ノ八萬何千圓ト云フモノハ司法省所管ニ於テ行政
整理ノ結果トシテ廳費旅費等ヲ節儉ヲ致シタル所カラ出來タ金額ニ依ッテ之
ヲ判檢事ノ俸給ニ利用スルダケノコトデアルカラ別ニ金額ヲ他カラ持ッテ來
ルト云フ譯デナイノデアルカラ是非之ニ同意ヲ得タイト云フ主義デゴザイマ
シタ、就キマシテ雙方ヨリ此主意ニ附イテ質問答辯モゴザイマシタガ、衆議
院側ニ於テハ飽クマデモ衆議院ノ希望ノ通ニ此度ハ貴族院ニ於テモ讓ッテ貫
ヒタイト云フコトデ十分ナル協議モ運ビ兼ネマスルタメニ、貴族院側ヨリ然
ラバ此際先例モアルコトデアルカラ商議委員ヲ雙方ヨリ三名宛出シテ篤ト商
議ヲ致シタイト云フ動議ガ提出ニナリマシタ、衆議院側ニ於テハ是ハ不必要
ナコトデアラウ、此案ニ附イテハ何處マデ言ウタ所ガ別ニ何スル道モナイ、
併ナガラ貴族院側ノ折角ノ御請求ノコトデアルカラ、ソレニ從フコトニ致サ
ウト云フコトニナリマシテ、雙方ヨリ三名ヅヽ商議委員ヲ舉ゲテ、暫時休憩
ヲ致シテ午後ノ三時マデニ其委員ヨリ報〓ニナルコトニ致シマシタノデ、商
議委員交涉ノ結果ハ此協議會ノ議場ニ於テ報告ニナリマシタ所ハ、種々ニ協
議モ致シテ見タケレドモ、到底此協議ハ不調ニ相成ッタト云フダケノ報告デ
ゴザイマシタ、勿論此商議委員ノ會合ニ於テハ雙方共ニ種々ニ協議ヲ盡サレ
タ次第デゴザイマスガ、是ハ本席デ御報告ハ略シテ置キマス、右ノ次第デ商
議委員ノ協議モ效ヲ奏セヌ場合デゴザイマスカラ、最早可否決ヲ採ルヨリ外
ハ仕方ガナイト云フ場合ニナリマシタガ、其際ニ貴族院側カラ尙ホ意見ガ提
出ニナリマシテ、衆議院側ニ於テハ司法官ノ增俸ガ必要デアルト云フコトハ
御認ニナッテ居ルヤ否ヤト云フ尋ガアリマシタ所ガ、之ニ答ヘテ衆議院側ニ於
テハ判檢事ノ增俸ハ決シテ今日デ十分ナリトハ考ヘテ居ラナイ、是ハ行政整
理又ハ裁判所構成法ノ改正モアルト云フコトデアルカラ、其上デハ十分ニ增
俸モセネバナルマイト云フ意思ヲ持ッテ居ルガ、三十五年度ノ所ハ曲ゲテ此衆
議院ノ議決通ニ讓ッテ貫ヒタイ、最初ヨリ衆議院側ニ於テハ餘リ議論ハゴザイ
マセヌ、今申述ベマシタヤウナ次第ヲ以テ只管ニ貴族院ニ讓歩ヲ求メラレタ
次第デゴザイマス、是ニ於キマシテ雙方討論モ盡キタト認メマシタカラ採決
ヲ致シマシタ、成規ノ通無記名投票、其結果ハ卽チ衆議院ノ決議案ヲ問題ト
シテ採決ヲ致シマシタガ、之ニ贊成者卽チ白票ヲ投ズル者十一、黒票ガ八、
斯ウ云フ數ヲ以テ衆議院ノ議案ノ通ニ可決サレマシテゴザイマス、此問題ニ
於テハ國家目下ノ重大問題デアラウト考ヘマスルガ、右樣ノ協議會ノ結果デ
ゴザイマスカラ、此案ハ賢明ナル諸君ノ御判斷ニ委セルヨリ仕方ナイト思ヒ
マス、尙ホ御報告ヲ申シテ置キタイ一事ガゴザイマスガ、此採決ニ當ッテノ議
題ノ事デゴザイマス、昨日ノハ衆議院ノ決定シタル所ノ案ヲ協議會ノ議場ノ
修正案トシテ提出ニナッタモノト看做シテ採決ヲ致シマシタ、ソレハ採決ノ際
ニ於テ衆議院ノ委員ニモ諮リマシタ處ガ、前例モ紛々ニナッテ居ル、隨分關係
ノ大ナルコトデ、此場合ニ之ヲ取極メルト云フコトハ困難デアルニ依ッテ今
日ダケハ議長ノ意見ノ通ニ從フト云フコトデゴザイマシタカラ今申述べタ通
ニ衆議院ノ案ヲ修正案トシテ採決致シタ譯デゴザイマス、尙ホ此事ニ附イテ
前例ヲ申述ベテ置カナイト御不分リカモ知レマセヌガ、二十八年二月九日第
八囘議會新聞紙法案ノ兩院協議會ヲ開カレマシタ節ハ衆議院ハ衆議院ノ案ヲ
修正說トシテ提出ニナッテ、ソレガ議題トシテ採決ニナッテ居ルノデゴザイマ
ス、然ルニ三十二年三月九日十三囘議會ニ於テ衆議院議員選舉法改正法律案
ノ節ハ協議會ニ於テハ貴族院ノ修正案ヲ否決シテ仕舞ッテ、跡ニ修正案ト云フ
モノハ出テ居ラナカッタノデアル、其主意ハ貴族院ノ修正案ガ兩院協議會ノ議
案デアルカラ、ソレガ否決シタ以上ハ當然衆議院案ガ復活シタルモノデアル
ト云フコトニナッテ貴族院ニ送付ニナッタノデゴザイマス、此報告ガ議場ニ現
レマシタトキニ本院ノ議長ハ之ヲ不當ト認メテ否認スルモノデアラウト云フ
コトヲ議場ニ問ハレマシタ處ガ、悉ク贊成ヲ表サレタ、尙ホ續イテ議員ノ一人
ヨリ一院ガ一院ニ對スル不當ノ事デアル、今申シタ主意ハデスネ、サウ云フヤ
ウニ貴族院ノ案ヲ否決シテ衆議院ハ當然衆議院ノ先キノ議決ガ復活シテ兩院
協議會ノ成案トスルヤウニスルノハ一院ガ一院ニ對スル所ノ處置トシテ甚
ダ不當デアルト云フ動議ガ提出ニナッテ可決サレテ居リマス、ソレデ二十八年
ノトキニハ昨日ノト凡ソ同ジ形ヲ以テ採決ニナッテ居ル、三十二年ニハ全ク違
テ貴族院ニ於テハソレハ不當デアルト決議ニナッテ居リマスルガ、今日衆議院
ニ於テハ矢張此三十二年ノ例ヲソレガ適當ナノデアルト認メテ居ラレルヤウ
ナ模樣デゴザイマス、ソレデ玆ニ於テハ全ク貴族院ノ見ル所ト衆議院ノ見ル
所ガ相反シテ居リマスルガ、此度ノ事ニ於テハドウ致シマシテモ貴族院ノ案
ガ可決サレテ見レバ衆議院ノ決議案ガ直キニ復活スルト云フコトハ認メラレ
マセヌカラシテ、前キニ申上ゲタ通ニ協議會ノ委員ニ相談ノ上、此度ニ限ッ
テ衆議院案ヲ修正案トシテ提出ニナッタモノト見テ採決ヲスルコトニ同意サ
レマシタガ尤モ以後之ヲ以テ先例トスルト云フコトハ御斷ヲスルト云フ條件
附デサウナッタ譯デアリマス、此事柄ハ今度ノ兩院協議會ノ有樣デゴザイマス
ルガ、是ハ斯樣ノ採決ノ場合ニ於テ此方法ヲ極メルト云フコトハ甚ダ困難ナ
次第デゴザイマスカラ、或ル機會ニ於テ兩院ノ間ニ然ルベキ方法ヲ協定ニ
ナッテ置イタ方ガ宜カラウト本員ハ希望スルノデアリマス
〔男爵岡內重俊君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=4
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005・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 岡內男爵ハ何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=5
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006・岡内重俊
○男爵岡內重俊君 チヨット簡短ニ意見ヲ陳述致シマス、極ク簡短デゴザイマ
スカラ此席カラ申シマス、本問題卽チ協議會ノ成案ニ就イテハ本員ハ贊成ヲ
致ス一人デアリマス、抑法官增俸問題ハ本員ニ於キマシテハ初ヨリ必要ト認
メテ居ル、法官增俸問題ハ無論其時機ニ依ッテ增体ノ順序ヲ履マヌナラヌト
云フコトハ固ヨリ其意見ヲ豫テ懷イテ居ル者デアルガ、唯之ヲ行フノ時機如
何ニ在ル、政府ノ行政ノ改革、財政ノ整理ヲ企デヽ旣ニ唯今著手シツヽアル
ト云フコトデアル、故ニ其行政ノ改革、財政ノ整理ノ結果ニ依ッテ其時ニ至ッ
テ法官ノ增体ヲ或ハ豫算ニ編製シテ出スベキヲ相當ノ時ト本員ハ認メル、故
ニ本院ノ豫算委員ガ此修正案ヲ提出シテ本議ニ掛ケテ本會ニ於テマア是ハ多
數ニナリマシタガ頗ル姑息ノ修正ト認メマスル、故ニ本會議ノ際ニハ此修正
案ニハ反對ヲ致シマシタ、起立ヲ表シマセヌ、初ヨリ本院ノ豫算ニハ反對デ
アリマスル、然ルニ本院議員ノ多數ガ此修正案ヲ贊成シタ故ニ協議會ヲ開ク
ト云フコトニナッテ此結果ニ果シテ至ッタノデアル、併ナガラ本員ハ初ヨリ豫
算委員ノ修正ニ反對、卽チ原案ニ贊成デアリマスルカラ喜ンデ此成案ヲ贊成
スル者デアル
〔子爵谷干城君「モウ宜カラウ」ト述フ〕
然ルニ今日東洋ノ大勢ニ鑑ミ、前日總理大臣ヨリ報〓ニナリマシタ〓韓二國
ノ領土保全、其外必要ナル要件ニ依リ我帝國ノ權利、利益、是等ノタメニ攻守
同盟ヲ結バレテ其報告ヲ承リマシタ以上ハ、然ルトキハ我帝國ノ責任ハ益〓重
イノデアル、斯ノ如キ場合デアリマスル故ニ、當期議會卽チ三十五年度ノ豫
算ノ若シ不成立ニナルコトハ我國家ノ大局ニ鑑ミテ甚ダ遺憾ト考ヘマス、本
員ハ不成立ヲ避クル者デアル、依ッテ最初ノ本院ノ豫算會議ノトキハ原案ニ贊
成ト云フコトヲ表シテ居ルノデアル
〔子爵谷干城君「簡短々々」ト呼フ〕
故ニ修正案ニ贊成ヲサレタ諸君ハドウカ此大局ニ鑑ミテ反省セラレテ此協議
案ニ贊成ヲ表セラレンコトヲ諸君ニ對シテ希望スル者デアリマスル、又此成
案ガ果シテ豫算ノ修正案ノ通ルモノト······協議會ノ成案ガ卽チ修正案ト見ル
ト云フコトハ唯今委員長ヨリ······協議委員長ヨリ報告ニナリマシタガ、其順
序ハソレデ宜カラウト思ヒマス、直ニ此成案ヲ以テ一ノ修正案ト見テ宜カラ
ウト思ヒマス
(「長ケレバ演壇デ願ヒマス」ト呼フ者アリ)
是ハ委員長ノ報告ノ通ニ本員ハ異見ハアリマセヌ、依ッテ速ニ議決セラレンコ
トヲ希望致シマス
〔村田保君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=6
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007・村田保
○村田保君 本員ハ豫算會議ノ時分ニ於キマシテ豫算委員ノ報告ニハ不同意
ヲ表シ置キマシタ者デゴザイマス、併ナガラ今日ト爲リマスルト云フト本員
ハ誠ニ遺憾ナガラ此協議會ノ議決ニ反對ヲ表シナクチヤナラヌノデゴザイマ
ス
〔「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ又「男ダ」ト呼フ者アリ〕
何故ニ本員ガ之ニ反對ヲ表シマスルカト云フト本員ハ本院ノ議決ヲ重ジマ
ス、且協議委員ノ議決ヲ快シトシナイノデアリマス、本員ハソレ故ニ前會ニ
於キマシテ斯ノ如キコトニナルダラウト云フコトヲ豫想ヲ致シテ置キマシ
タ故ニ本員ハ此事タルヤ頭ヲ搔イテ引込ンデ來ルニ相違ナイト云フコトヲ
前言ヲシテ置イタノデゴザイマス、果シテサウ云フコトニ今日ハ立至リマシ
タノデアリマス、此事タルヤ本院カラシテ衝突ヲバ仕掛ケテ置キナガラ向フ
デ不同意ナラコチラハツレニ從ッテ歸ルト云フノハ如何デゴザンセウ、實ニ本
院ノ議決ト云フモノハマルデ値打ノナイモノデアル、實ニ天下ノ笑ハレモノ
ニナルデアラウト本員ハ思ヒマス、其位ナラバ初カラ仕掛ナケレバ宜シイ、
所謂藪蛇ダラウト思フ、併シ今日ノ議場ノ形勢ハ本員ノ察シマスル處デハ先
日大多數ニ依ッテ豫算委員ノ決議ニ贊成ヲセラレタニ拘ラズ今日ハ却ッテ衆議
院ノ議決ニ服從ナサルコトニナリハセヌカト云フコトヲ本員ハ是レ亦豫想ヲ
スルノデアリマス、ソレデ先日ハ如何デゴザンシタ、豫算委員ノ一人タル三島
子爵ハ判檢事ノ增俸ト云フモノハ天下ノ輿論デアル、國家ノ······國民ノ安堵
ノタメ帝國ノ體面ヲ保ツガタメニ復活ヲスルト再應此演臺ヲ敲イテ聲高ラカ
ニ御主張ニナリマシタ、又豫算委員ノ一人タル久保田君ハ何ト言ハレタ、此
事タルヤ衆議院ニ於テ判任官又ハ郡長抔ハ增俸ヲシタケレドモ判檢事ノ增俸
ヲセヌ甚ダ不公平ナルコトヲシタト云フコトヲ言ハレテ居ル、本員ハ衆議院
ノ豫算委員ノ分科會ノ速記錄ヲ見マスルニ決シテ左樣ナ不公平ナコトハシテ
居ラヌト信ジテ居リマシタガ、併ナガラ其時分ニ餘程言ヒタカッタケレドモ、
二度ハ發言ガ出來マセヌカラ已ムヲ得ズ默シテ居リマシタガ、其時分ニ頻ニ
不公平ヲ唱ヘラレテ大ニ衆議院ノ議決ノ非難ヲセラレマシタ、其當時兩君ノ
勢實ニ當ルベカラザルモノデアッタト信ジマス、併シ協議會ニ於キマシテハ如
何デアッタカト云フコトヲ本員ハ疑フノデアル、或ハ本院ニ於テハ虎ノ面ヲ
被ッテ協議會ニ行ッテ猫ノ面ヲ被ラレハセヌカト云フコトヲ疑ヒマス、況ヤ言
行一致セズ廉耻ヲ顧ミズ裏切ヲシテ投票ヲ爲シタト云フヤウナコトヲ聞イテ
居リマス、斯ノ如キ人ガ貴族院中ニ在ルカト云フコトハ本員ハ如何ニモ慨嘆
ニ堪ヘヌ、此衆議院ノ議事速記錄ヲ御覽ニナリマシタナラバ諸君ハ如何ナル
感覺ヲ御起シニナリマセウカ、協議會議長ノ報告ニ曰ク、豫算又財政上ニ於テ
貴衆兩院屢、衝突ヲスル、今囘モ衝突ヲ起シテサウシテ貴族院側ニ於テハ
一步モ讓ラヌ、併ナガラ採決ノ際ニ至ッテ八名ニ對スル十一名ノ多數ヲ以テ決
議ニナッタ實ニ不幸中ノ幸デハナイカト云フコトガアリマス、ソレデ滿場拍
手ヲシテ議長ノ報告ヲ迎ヘテ居リマス、實ニ快シト云ハヌバカリノ景勢デア
リマスル、本院ニ於テハ如何デアリマセウ、議長ノ報告ヲ我〓ハ快ク迎ヘル
コトガ出來ルヤ否ヤ、是マデ兩院協議會ト申シマスルモノモ屢〓ゴザイマシ
タ殊ニ財政上抔ニ至リマシテハ今囘ノ如キ協議會ニ於キマシテ本院ノ議決
ガ丸潰レト爲ッテ、サウシテ又本會議デ其通ニナッタラバ實ニ貴族院ノ議決ト
云フモノハ價値ガマルデナクナッテ仕舞フ、ソレガ實ニ遺憾ト存ジマスル、又
之ヲ例ト致シマシタナラバ將來本院ノ議決ト云フモノハ實ニ天下ニ重キヲ置
カレヌコトニナッテ仕舞フダラウト思フ、併ナガラ今日ノ議場ノ大勢ヲ察シマ
スルノニ遺憾ナガラドウモ衆議院ノ議決ニ服從シナクテハナラヌ場合ニ立至
リハセヌカト存ジマスル、是レ畢竟本院ノ議決ヲ重ンゼラレヌ故ニ斯ノ如キ
コトヲ生ジハシナイカト存ジマス、併シ本員ハ本院ノ議決ヲ何處マデモ飽ク
マデモ重ンジタイト存ジマスカラ、今日ト爲ッテハ已ムヲ得ズシテ此協議會ノ
議決ニ反對ヲ致シマスル所以デゴザイマス
〔「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ〕
ソレデ本員ハ玆ニ於テ諸君ニ望ミマス、ドウゾ此採決ハ記名投票ヲ以テ決セ
ラレンコトヲ希望致シマス
〔「記名投票ニ贊成」ト呼フ者アリ〕
〔男爵加藤弘之君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=7
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008・加藤弘之
○男爵加藤弘之君 諸君、私ハ前會ニ於テ村田君ト同ジ說デアッタ、卽チ衆議
院ノ削減說ヲ宜シイトハ考ヘマセヌケレドモ、此處デ衝突ヲ起シテ豫算ノ不
成立ニナルト云フコトヲ恐レテ、サウシテ卽チ衆議院通ニ本院ノ決議ニナル
ト云フコトヲ希望シタノデアッタ、ソコデ今日ハ村田君ハ今日ト爲ッテハ貴族
院ハ衆議院ニ從フ、服從スルト云フヤウナ意氣地ノナイコトハイカヌ、ソレデ
今日ト爲ッテハ村田君ハ協議會ノ成案ニハ反對デアルト云フ譯デアリマスガ、
私ハサウデナイ、村田君ノ考ヘラルヽヤウナコトモ一應尤ト云フヤウナ道理
モアリマスガ、併シ私ノ考ヘタ所デハ是ハ行掛上、兩院ノ感情デサウ云フ鹽梅
ニナルト云フコトハ已ムヲ得ヌヤウナ道理ハナイデハアリマセヌケレドモ、
サウ云フヤウニドウシテモ貴族院ノ體面ヲ十分ニ主張セネバナラヌトカ、理
ガ有ッテモ無クテモ貴族院ガ衆議院ニ服從シテ仕舞フト云フヤウナコトヲシ
テハナラヌ、ドウシテモ貴族院ノ體面ハドンナコトニ換ヘテモ保ッテ行カナケ
レバナラヌト云フヤウナコトヲヤッテ行キマスルト、或ハ列國ノ間ノ爭議抔
ニ附イテハサウ云フコトハ必要デアリマスガ、同ジ帝國議會議院ノ間デドウ
モサウ云フヤウナ情ヲ以テ始終通シテ行クト云フヤウナコトデハサウ云フヤ
ウナ感情ノタメニ國家ノ利害ヲ犠牲ニスルト云フヤウナコトニ私ハナルノハ
當然ノコトデアラウト思フ、ソレデ帝國議會ノ每年開カレマスルトキノ詔勅
ニモ和衷協同ト云フコトガ何時デモ御述ニナッテアル、此和衷協同ハ固ヨリ政
府ト議會ト云フヤウナコトガ重デアリマセウケレドモ
(村田保君「和衷協同ト云フコトガ帝國議會ノ勅語ニ在リマスカ、和
衷審議ト云フコトハアルガ、和衷協同ト云フコトハ一ツモナイ筈
デアル」ト述フ〕
或ハ私ガ間違ヒマシタカモ知レヌ、協同デナカッタカモ知レヌ、先ヅ仲ヲ好ク
シテ一致スルト云フヤウナ主意デアル、ツレハ重ニ政府ト議會デアルデアリ
マセウガ、議會ノ議院ト云フモノハ私ハ尙更ノコトデアルト思フ、帝國議會
ト云フモノハ卽チ一ツモノテアル、ツレガ二ツニ岐レテ居ルモノデアルカラ、
成ルタケ國家ノ利害ト云フモノヲ眼目トシテ其間ニ感情ヲ以テ爭フト云フヤ
ウナコトハ私ハ成ルタケナイヤウニナケレバナラヌト思フ、ソレデ今日ノ所
デ村田君ノ言ハレル······今日ノ所デハ先日ノ議論トハ反對ニ出ルト云フヤウ
ナコトハ私ハ唯貴族院ノ體面ヲ保ツト云フダケノコトデ、國家利害ト云フ方
ハ第二ニ置カレテアル卽チ犧牲ニシテ仕舞ッタルコトデ、然ラバ村田君ハ卽
チ豫算ノ成立ト云フコトヲ希望サレタノデアル、豫算ノ成立ヲ希望サレヌ方
デアッタラ、ソレハマア當然ト言ッテ宜イカモ知レマセヌガ、村田君ハ豫算ノ成
立ヲ餘程氣遣ハレタノデアッテ、ソレデ今日ニ至ッテハ豫算ハ成立シナクテモ
貴族院ガ勝ッタ方ガ宜イ、マア勝ツカ體面ヲ保ツト云フヤウナ譯デアル、衆議
院ト勝チ負ケガナクナルノデアル、サウ云フコトハ私ハドウシテモ一國內一
帝國議會ノ間ニ於テアルベキコトデナイト思フ、ソレデ私ハ全ク反對ヲシテ
貴族院ガ先日ノ協議會ニ於テ先ヅ衆議院ニ負カサレタ譯デアルノハ殘念ナコ
トデアル、內情ヲ言ヘバ素ヨリ殘念ナコトデアルケレドモ、併シ卽チソレハ
素ヨリ協議會ノ協議會タル所以デ已ムヲ得ヌ譯デアル、尤モ此度ノ協議會ノ
ヤウナ結果ハ今マデハナカッタノデアルガ、併シ十一ト八ト云フ數デアレ
バ貴族院ノ人ガ一人衆議院ト意見ヲ同ジクシタニ違ヒナイ、ケレドモ素ヨリ
ソレハ禁ジテアルコトデナイカラ仕樣ガナイ、サウ云フ結果ニナッタノモ已
ムヲ得ヌ譯デアル、ソレニ附イテハ此豫算ノ成立ト云フコトモ大切ナコトデ
實ニ私ハ餘程諸君ノ御考ヲ願ハナケレバナラヌヤウニ思フ、私ハ他ノ諸省ノ
事務ニ附イテハ誠ニ知識ハナイノデアリマスガ、此〓育ノコトデ、〓育ニ附
イテハマア少シク知ッテ居リマスガ、〓育ト云フモノガ妨ゲラレルコトハ私
ハ酷イト思フ、又他ノ諸省ノ事業ニシテモ二年間同ジ豫算デ此日進月步ノ時
勢ニ二年同ジ豫算デ行カウト云フコトハ無理デアラウト思フ、ソレデ〓育ノ
コトニ附イテハ大分豫算ニ新タノ事業モ出テ居リマス、是ガ其マルデ妨ゲラ
レテ仕舞フ、私ハ一體自分ノ考ヲ十分ニ申セバ今度支部省ガ出シタ所ノ豫算
案ト云フモノモ餘程控目デアルト思フ、決シテ滿足ハシテ居ラヌノデアルガ、
ソレハマア已ムヲ得ヌ譯デアッタト見エル、其上ニ又此豫算ガ成立タズシテモ
ウ一年前年ノ儘デ行カウト云フコトハ實ニ〓育ノ上ニ不利ナコトハ明ナコト
デアル、卽チ文部省ガ下ノ學校ヲ奬勵シテ立テヽツレカラ其學校ヲ卒業シ
テ上ニ這入ッテ行クトキニハ學校ハナイ、デ生徒ハズット昇ッテ來ル、生徒ト
云フモノハ溜ッテ仕舞ッテ何處ニモ這入ルコトガ出來ナイ、ト云ウヤウナ有樣
デアル、其大學ニ行カウト云フノニ文部省ガ餘程骨ヲ折ッテ色ミノ工夫ヲシタ
ガ、醫科大學ニ行ク、入レル學校ハナイ、醫科ハ十分ニ溜ッテ仕舞ッテ京都モ
東京モ醫科ニ這入ッテ來ル所ノ生徒ハ入レル所ハナイ、ソコデ巳ムヲ得ズ是ハ
九州ニ醫科大學ヲ立テル、ソレカラ工科モ同ジヤウデアル、工科モ色ミナ工夫
ヲシテ、ドウカ京都、東京ニ今年ハ工夫ヲシテ入レルヤウニナッタト云フコ
トデアル、其外此豫算ニ出テ居ル實業學校ト云フモノモアリ、實業學校ノ奬
勵費ト云フモノモアル、ソレカラ臨時〓員養成所ト云フモノヽ費用モ出テ居
ル、ソレカラ國語調査會ノ費用モ出テ居ル、此費用ハ澤山ナモノデハナイノデ
アル、私抔ガ思ヘバ誠ニ不足ニ思フノデアル、ケレドモ是モ不成立ニナッテ
ハイケナイ、デ此〓育ノ大切ダト云プコトハ諸君ニ今申上ゲヌデモ素ヨリ御
承知ノコトデアリマスガ、ドウシテモ今日列國ト鼎立······對等シテ行カウト
云フニハ陸軍ガ十分ニ定ッテ、海軍ガ船ガ十分ニ出來タト云フバカリデ行ク
ノデハナイ、ドウシテモ其本ハ〓育ニ在ルト云フコトハ、マア言ハズシテ明
ナ程ノコトデアル、ソレヲ其マダ一年其儘行カウ、一年經ッタ所デドウデア
ルカ、殆ド危ブナイコトデアル、デ今度英吉利トノ同盟ト言フモノモ出來
マシタガ、此前モ此議會デ申述べタコトデアルガ、英吉利ト云フ國ハ元來〓
育ノコトハ餘程放任シテ政府ハ餘リ手ヲ著ケナカッタ國デアッタ、ソレガ此殆
ド十年ニハナリマセヌガ、政府カラ手ヲ著ケル、卽チ政府モ干渉スル、卽チ金
ヲ出ス、國庫カラ金ヲ出スト云フコトハ今デハ歐羅巴第一ニナッタ英吉利ノ
每年ノ歲出ノ殆ド百分ノ九ト云フモノハ國庫ノ金ヲ英吉利ハ〓育ニ用井ル
ノデアル、一番世話ヲシナカッタ英吉利ガ、ソレガ歐羅巴第一ニ多ク金ヲ〓育
ニ費ス、獨逸抔ハ元ト一番金ヲ出シタ所デアル、獨逸各國ハ······ソレデモ今
日英吉利ニ及バヌ、漸ク百分ノ五六位ノモノデアル、日本ハ百分ノ三ニハナ
ラヌ、百分ノ二分五厘位ノモノデアル、サウ云フ所カラ見ルト、ドウシテモ此
〓育ニ金ヲ入レルト云フコトハ是ハ異論ノアルベキ譯デナイノニ此今年ノ〓
育ニ附イテノ金ト云フモノハ誠ニ僅ナモノデアル、ソレヲ此不成立ニナッタト
キニハ一年間又出スコトハ出來ヌ、此天下ノ醫者、醫者ト云フ者ハ實ニ不足デ
アルサウデアリマスガ、其醫者ト云フモノ、醫學生ヲ拵フル學校ト云フモノ
ガナイデ、一年其儘抛ッテ置カナケレバナラヌト云フコトハ實ニ殘念ナコト
デアルト思フ、サウ云フ所カラ利害ヲ考ヘテ見ルト、貴族院ノ體面ヲ衆議院
ニ對シテ保ツト云フ位ノコトノ理由ヲ以テ此豫算ノ不成立ヲ犠牲ニシテ體面
ヲ立テルト云フヤウナコトハ實ニ私ハ間違ッタ殘念ナコトデアルト思フ、是
ハ決シテ貴族院ト衆議院ガ國ト國トノ間デ爭フヤウナコトヂヤナイ、國ト國
トノ爭ナラバ尤ナコトデアル、一歩モ退クコトハ出來ナイケレドモ、是ハ一
ツノモノデアッテ、唯國ノ利害ヲ目安ニシテ働クベキモノデアルカラ、決シ
テ豫算不成立ハ貴族院ガ負ケルカラ、口惜シイト云フコトハ比べモノニナル
ベキコトデナイ、デ私ハ十分ニドウカ諸君ハ此成立ニ附イテ御考ニナッテ此
協議會ノ成案ニ御贊成ニナルコトヲ希望致シマス、今日ノ樣子デハ多分心配
ハナカラウト考ヘマスガ、ドウカ村田君ノ瘦我慢ト云フヤウナコトニハ御贊
成ナク豫算ノ成立スルヤウニ御盡力下サルコトヲモ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=8
-
009・伊澤修二
○伊澤修二君 本員ハ意見ガゴザイマスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=9
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010・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 伊澤君
〔伊澤修二君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=10
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011・伊澤修二
○伊澤修二君 諸君、私ハ衆議院ノ決議ヲ重ンズルコトニ於キマシテハ諸君
ト同ジク最モ重ンズル所ノ一人デゴザイマスル、故ニ決シテ此衆議院ノ議決
ニ對シテ本員ガ或ル一種ノ感情ヲ以テ之ニ反對スルヤウナコトノナイト申ス
コトハ像メ茲ニ申上ゲテ置キタイト思ヒマス、私ハ元來此貴族院ガ僅ニ八萬
圓グラ井ナ金ヲ以テ、サウシテ此二億有餘萬圓ノ內ノ此僅ナ部分ニ附イテ衆
議院ノ議決ニ反對スルト云フヤウナコトハ甚ダ得策デナイト云フコトヲ明言
致シテ居リマス、故ニ私ハ初ヨリシテ斯ノ如キ爭ヲ起スコトハ最モ不同意デ
アリマシタ次第デゴザイマスル、故ニ私ハ決シテ此爭ハシタクナイト云フコ
トヲ申シタニモ拘ラズ、本院ニ於テハ大多數ヲ以テ前會ニ於テ院議ヲ固メラ
レタ次第デアリマス、院議ヲ固メラレマシタ以上ハ、戰ヲスルナラバ飽クマ
デモ戰ヲセナケレバナラヌカラシテ、若シ此戰ヲ開ク以上ハ豫算不成立ニナツ
テモ構ハヌ、豫算不成立ヲ賭シテモヤルカト云フコトヲ私ハ同志者ノ間ニ念
ヲ押シマシタ、飽クマデ豫算ヲ賭シテヤラウト云フコトデアリマシタカラ、然
ラバ若シ此豫算ガ不成立ニナッタトキニハ國家ノ事業ノ上ニ何程ノ損害ヲ來
スカト云フコトヲ最モ能ク調ベテ置カナケレバナラヌト云フ考デアリマシ
タ其豫算不成立ノ結果トシテ先ヅ大ナル損害ヲ及ス所ノ事業ハ何デアルカ
ト申シマスレバ、申スマデモナク、卽チ吳ノ製鋼所ノ事件デアル、其次ニハ臺
灣ノ兵營ノ事件デアル、其次ニハ唯今加藤君ヨリモ言ハレタ所ノ〓育ノ事件
デアル其他通信機關等ニ附イテモ何分ノ影響ハ及シマセウガ、重ナル所ノモ
ノハ此三ツノモノニ在ルト申サナケレバナリマスマイ、ソコデ此吳製鋼所ノ
如キモ果シテ豫算不成立ノタメニ一年ヲ延期セラレマシタナラバドレ程ノ
影響ガアルカト云フコトハ私ドモ不敏ナガラ今日マデ聞イテ居リマスル所デ
ハ左程ノ影響トハ考ヘマセヌ、抑〓製鋼所如キモノヲ立テラルヽト云フコトニ
附イテハ實ニ是ハ國民一體大同意ヲ以テ贊成シナケレバナラヌコトデハゴザ
イマセウガ、大事業デアルダケニ最モ能ク調査〓究シナケレバナルマイト思
ヒマス、本年モ既ニ呉ニ於テ試驗ヲセラレテ私ハ出マセヌデシタガ、此議員ノ
中ニハ出ラレタ諸君モアル、而モ立派ナル試驗ヲ見ラレタ方モアル、ケレドモ
其試驗タルヤ我國殊ニ此考ノアル人達ニ滿足ヲ與ヘタルヤ否ヤト云フコトニ
附イテハ最モ私ハ疑問ノアルコトデアル、何トナレバ此裝甲板ヲ鍛タレ其裝
甲板ヲ鍛ッタ結果ト云フモノハ歐羅巴ノ最モ經驗アル所ノ會社デ拵ヘタ物ヨ
リモ寧ロ好イ成績ヲ得ラレタト云フコトハ實ハ是ハ意外千萬ノコトデアル、
若シ此裝甲板ヲ鍛タレタノモ如何ニシテ鍛タレタカ誰ガ鍛タレタカ、如何ニ
鍛タレタカ誰ガ鍛タレタカ、ト云フコトハ遺憾ナガラ今日マダ問題デゴザイ
9×、疑問デゴザイマス、決シテ私ハ考アル人ハ全然之ニ同意シテ居ルトハ不
肖ナガラ考ヘマセヌデス、斯ノ如ク疑問ノゴザイマスルコトデゴザイマスレ
バ、ドウゾモウ一年間御猶豫ヲ下サレマシテ、コヽデスッカリ御〓究ニナッタ所
デ御ヤリ下サイマシテモ、マダ晩シトハ申サレマスマイト存ジマスル、又此臺
灣ノ兵營ノ如キニ致シマシテモ其通、私ハ曾テ臺灣ニ參ッタコトガアリマス
ガ、其當時トハ違ヒマシテ今日ハ隨分此諸般ノ事モソレ〓〓〓ニ就キ實ニ立
派ナル成績ガ舉ッテ居リマスル、殊ニ兵營ノ如キニ至リテハ占領ノ當時ヨリシ
テ最モ良イ所ノ建物ヲ以テ充テラレタト云フコトハ是レ亦事實デアル、最モ
良イト申シタ所デハ臺灣デゴザイマスカラ左程良クハゴザイマスマイガ、免
モ角モ良イ所ノ建物ヲ以テ兵營ニ用ヒテアル、加之其後ノ實驗ニ徵シテ見マ
シテモ臺灣兵營ノ健康ト云フモノハ決シテ內地ノ兵營ノ健康ニ劣ッテ居ラナ
イ、或ル〓カラ申シマスルト寧ロ內地ノ兵營ノ健康ヨリ良イト云フコトヲモ
聞イテ居リマスル、斯ノ如クデゴザイマスレバ、是トテモ決シテ今、目下差當ッ
テ玆ニ非常ノ流行病ガアリ、非常ナル慘澹タル有樣ヲ極メテ居ルトハ違ヒマ
シテ一年ノ御猶豫ガ出來ヌト云フコトハナカラウカト考ヘル、シテ見マスレ
バ是等ノコトノ如キハ實ニ大切ナルコトニハ相違ゴザイマセヌガ、豫算ノ不
成立ノタメニ一年ノ猶豫ガ出來ヌト云フコトハ本員抔ハ考ヘテ居リマセヌ、
而シテ又〓育ノ如キニ至リマシテモ唯今加藤君ヨリ色〓御話モゴザイマシ
テ、成ル程大學ノ學生ノ溢レテ居ルコトハ事實デゴザイマス、私共モ最モ憂ヘ
テ居ル所ノ一人デアリマス、併ナガラ此事ニ附キマシテハ先項此議場ニ於テ
文部大臣ヨリ演說モゴザイマシタル趣デゴザイマシテ、卽チ現内閣ニ於テ〓
育ニ關スル大方針ヲ近日ニ定メラレルト云フコトデゴザイマスレバ、ソレニ
從ッテ是カラシテ立派ナル經畫モ出來ルコトデアラウト存ジマスル、殊ニ本年
ハ私ハ此一年ヲ延ベマシタ方ガ宜カラウト存ジマスルコトハ加藤君ハ不幸ニ
シテ漏サレマシタガ、彼ノ九州ノ大學ノコトデゴザイマス、九州ノ醫科大學ノ
コトデアル、此九州ノ醫科大學卽チ九州大學ト云フモノヽ位置ヲ福岡ニ變ヘ
ラレタト思フ此福岡ニ變ヘラレタト云フコトハ何デアルカ、實ハ我ミノ解ス
ルコトノ出來ナイ次第デアル、今日マデ其理由トスル所モ隨分聞キマスガ、
一トシテ感服スルニ足ル理由ト云フモノハ聞イテ居リマセヌ、御承知ノ通、諸
君モ能ク御承知ノ通九州大學ノ位置ト云フモノハ井上ヨリ前、森文部大臣
ノ時ニ方ッテ既ニ定ッタト言ッテ宜イノデアル、熊本ト云フモノハ、卽チ九州
ノ〓育ノ地トシテ指定セラレ、暗々ノ中ニ獨リ此位置ガ定メラレテアッタノミ
ナラズ實ハ或ル大臣、井上大臣ノ如キハ明言サレテ居ラレル位ノ次第デアル、
然ルニ突然ニモ其位置ヲ福岡ニ變ヘラレタト云フ如キニ至リマシテハ最モ本
員等ノ了解ニ苦シム所デゴザイマス、ソレデ斯ノ如キ事モ此度ノ內閣ニ於カ
レマシテ〓育ノ大方針ヲ定メラレマシタナラバ立派ニ解決ノ出來ル問題デゴ
ザイマセウト思ヒマスカラ、〓育ノ事ニ附キマシテハ尙更、殊更ニ私ハ一年
ノ御延期ヲ請ヒタイト思フノデゴザイマス、要スルニ私ノ諸君ニ申上ゲタイ
ト存ジマスル所ハ、本院ニ於テ豫算不成立ヲ賭シテモ此問題ヲ爭フト云フコ
トハ決シテ衆議院ニ對スル感情デハナイ、隨分此豫算不成立ニ依ッテ起ル所
ノ國家ノ影響如何ト云フコトモ考ヘタ末、決シテ一年此處デ豫算不成立ノタ
メニ猶豫ノナラナイト云フガ如キ問題ハナイノデゴザイマスカラシテ、ドウ
ゾ是ハ諸君ニモ能ク御熟考下サリマシテ、卽チ此協議員ノ成案ヲ否決セラレ
ンコトヲ希望致シマス
〔子爵曾我祐準君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=11
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012・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 曾我子爵ハ何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=12
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013・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 段々御名論モ承リマシタガ、最早事柄ガ極ッテ居ルヤウ
デゴザイマスカラ御採決アランコトヲ希望致シマス
〔三好退藏君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=13
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014・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 三好君ハ何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=14
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015・三好退藏
○三好退藏君 少シ意見ヲ述ベタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=15
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016・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 宜シウゴザイマス
〔三好退藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=16
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017・三好退藏
○三好退藏君 滿場ノ諸君、此度兩院ノ協議會ニ於キマシテ我貴族院ノ成案
ヲ否決致サレマシテ、今日其敗北ノ報告ヲ聽キマシタルノハ實ニ殘念ナル次
第デゴザイマス、併ナガラ此敗北ハ曩ニ村田君ノ言ハレタルガ如ク貴族院ヲ
代表シタル所ノ委員ガ頭ヲ搔イテオメ〓〓歸ッテ來タト云フ次第デハ決シテ
ナイト信ジマス、飽クマデ我ミガ委託シタル所ノ意見ヲ主張シテ一步モ抂ゲ
ズ讓ラズシテ鬪フタノデアル、其鬪ヒマシタ末、遂ニ十一名ニ對スル八名ノ少
數ヲ以テ倒レタノデアリマス、卽チ刀折レ矢盡キテ倒レタノデアリマス、討死
ヲシテ歸ッタノデアル、討死ヲシタ所ノ屍ヲ議長ガ裏ンテ歸ッテ來テ報告ヲセ
ラレタト云フ次第デゴザイマス、ソレデ我ミハ協議員諸君ニ向ッテ其御苦勞、
誠ニ我ミガ委託シタ所ノ任ニ背カズシテ十分ニ貴族院ノ意見ヲ貫徹セラレタ
ル所ノ勞ヲ我ミハ感謝セネバナラヌト思ヒマス、抑〓貴族院ガ曩ニ議決致シ
マシタルコトハ國家司法權ノタメニ多年必要ナル豫算デアルト信ジテ復活ヲ
シタノデアリマス、衆議院ハ貴族院ノ決議ヲ重ジテ宜シク之ニ同意ヲ表スベ
キ筈デアルト思フ、然ルニ彼等委員ハ頑冥ニモ多數ヲ賴ンデ貴族院ノ成案ニ
不同意ヲシテ遂ニ多數ヲ賴ンデ之ヲ否決シタト云フ次第デゴザイマス、我〓
ハ感情ノ上ヨリ、又貴族院ノ體面ノ上ヨリ言ヘバ飽クマデ此決議ニモ反對ヲ
致シテ一步モ讓ラズニ、尙ホ決戰ヲ致シタイ感ジヲ致シマス、又我〓ガ一致ノ
全力ヲ注イデ最後ノ決戰ヲヤルナラバ衆議院議員ニ一泡吹カシテヤルト云フ
コトハ決シテ出來ナイ事デハナイ、併ナガラ我〓貴族院議員ハ、我ミノ眼中唯
國家アルノミ、彼ノ政黨者流ノ如キ自己ノ利害ノタメニ國家ノ利害ヲ顧ミズ
徒ラニ豫算議權ヲ濫用シテ政府ヲ苦メ、政府ニ迫ッテ自己ノ意見ヲ貫徹セント
スルガ如キコトヲ爲ス者デハアリマセヌ、又我ミハ如何ニ此國家司法權ノタ
メニ必要ナル豫算トハ言ヘ之ヲ復活センガタメニ國家全體ノ命脈ニ關スル所
ノ總豫算ヲ不成立ニ終ラシムルガ如キ、角ヲ嬌メントシテ牛ヲ殺スノ愚ヲ學
ブ所ノ者デハアリマセヌ、故ニ事茲ニ至リマシタル以上ハ貴族院ハ飽クマデ
寛大ナル度量ヲ以テ國家的觀念ヲ以テ此衆議院ノ成案ニ步ヲ讓リマシテ協議
會ノ成案ノ通此案ニ贊成ヲシテ此議案ヲ成立タスルコトニ同意ヲ表センコト
ヲ希望致シマス、滿場ノ諸君、ドウゾ此成案ニ御同意アランコトヲ切望致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=17
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018・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 最早討論ハ終結シタリト認メテ御異議ハゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=18
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019・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ採決致シマス
〔西村亮吉君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=19
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020・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 西村君ハ何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=20
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021・西村亮吉
○西村亮吉君 村田君ノ記名投票ト云フコトニ贊成ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=21
-
022・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=22
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023・松平直平
○子爵松平直平君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=23
-
024・谷干城
○子爵谷干城君 記名投票ニ贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=24
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025・伊澤修二
○伊澤修二君 記名投票ニ贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=25
-
026・飯尾麒太郎
○飯尾麒太郞君 贊成
(「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=26
-
027・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 村田君ノ記名投票ハ先刻モ贊成ノ聲ガ大分聞エマ
シタシ、今又贊成ガアリマスカラ成立シタモノト認メマス、又之ニ對シテ無
記名投票ノ要求モ出テ居リマスカラ記名投票ニ致スヤ無記名投票ニ致スヤト
云フコトヲ採決致シマス、御著席ヲ·······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=27
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028・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 少シ餘計ナコトヲ言フヤウデスガ無記名投票ハ何人カラ
請求ニナッテ居リマスカ、チヨット御尋致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=28
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029・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 松平正直君、船越衞君·······讀讀ミマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=29
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030・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 イヤ、ソレダケデ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=30
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031・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 今一應宣告シマス、記名投票ニ依ルカ、或ハ無記
名投票ニ依ルカト云フコトヲ採決スルノデアリマス、記名投票ニ同意ノ諸君
ノ起立ヲ請ヒマス
起立者発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=31
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032・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ無記名投票ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマ
ス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=32
-
033・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 無記名ノ方ガ多數ト認メマス、ソレデハ無記名投
票ニ致シマス、ソレデハ是ヨリ氏名〓呼ヲ行ヒマス、ドウカ名刺ヲ御忘ナイヤ
ウニ、ソレカラ成案ニ贊成ノ諸君ハ白球ヲ御入ニナルヤウニ、之ニ反對ノ諸
君ハ黑イ球ヲ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=33
-
034・宮本小一
○宮本小一君 今ノ協議委員ノ方ヘ贊成ハ白球デスナ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=34
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035・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 唯今宣告ノ通デス
〔氏名〓呼ヲ行フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=35
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036・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 是ヨリ開函致シマス
〔書記官投票ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=36
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037・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 無記名投票ノ結果ヲ御報道致シマス、投票總數百
九十五、白球ヲ投ジタル者百四十七、黑球ヲ投ジタル者四十八、卽チ協議會
成案ノ通ニ決シマシテゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=37
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038・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 第五囘內國勸業博覽會參考館ヘ陳列ノ爲輸入スル
貨物關稅免除ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、特別委員
長報告
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
第五囘內國勸業博覽會參考館ヘ陳列ノ爲輸入スル貨物關稅免除ニ關スル
法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
明治三十五年二月十二日
右特別委員長
伯爵坊城俊章
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
(伯爵坊城俊章君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=38
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039・坊城俊章
○伯爵坊城俊章君 諸君、唯今問題ニ上リマシタ所ノ第五囘內國勸業博覽會
參考館ヘ陳列ノ爲輸入スル貨物關稅免除ニ關スル法律案、是ハ過日特別委員
ノ手ニ囑託サレマシテ、ソレヨリ段々兩日ニ審査ヲ致シマシタコトデゴザイ
やく、御承知ノ通此案ハ極ク簡單ナ案デゴザイマシテ、別段ニ理由ハ······御
手許ニゴザイマス通ノ理由デゴザイマス、二三質問モゴザイマシタガ政府委
員ヨリノ明瞭ナ答辯ヲ得マシテ、別段ニ不都合ナ點モゴザイマセヌト、委員
會ニ於キマシテハ認メマシテゴザイマス、ソレデ是ハ委員會ニ於キマシテハ
全會一致ヲ以テ可決致シマシタコトデゴザイマス、ドウカ何卒諸君御審査ノ
末、速ニ可決アランコトヲ希望致シマス、尙ホ附ケテ申シマスガ斯樣ナル簡
單ナ案デゴザイマスカラ、何トカ讀會ヲ省略セラレテ直ニ可決アランコトヲ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=39
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040・南郷茂光
○南〓茂光君 讀會省略ニ贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=40
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041・田中芳男
○田中芳男君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=41
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042・周布公平
○周布公平君 贊成
〔「讀會省略ニ贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=42
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043・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 讀會省略ニ續々贊成ガアリマシテ成立シタモノト
認メマス、之ニ同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=43
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044・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 三分ノ二以上ト認メマス、讀會ハ省略サレマシタ、
本案異議ガゴザイマセヌケレバ原案ニ決シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=44
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045・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 次ハ日程第四、警察署內ノ留置場ニ拘禁又ハ留置
セラルル者ノ費用ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、特別委員長報告
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
警察署內ノ留置場ニ拘禁又ハ留置セラルル者ノ費用ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
明治三十五年二月十日
右特別委員長
伯爵廣澤金次郞
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
〔伯爵廣澤金次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=45
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046・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 唯今議題ニ上リマシタ警察署內ノ留置場ニ拘禁又ハ留
置セラルヽ者ノ費用ニ關スル法律案、右法律案ノ委員會ノ經過及結果ヲ御報
道申シマス、本案委員會ハ去ル八日ニ開キマシテ委員長副委員長互選ヲ終リ、
續イテ十日ニ委員會ヲ開キマシテ政府委員ニモ十分質問ヲシ審議シマシタ結
果、政府ノ原案通可決スベキモノト委員會ニ於テハ決シマシタ、是ヨリ其審
査致シマシタ所ノ要〓ノミヲ聊カ御報道致サウト考ヘマス、此法案ニ在リマ
ス留置場ニ拘禁或ハ留置セラルヽ者ニ關スル費用ハ從來或一部分ハ監獄費デ
卽チ國庫ノ支辨トナッテ居リマスル、又他ノ一部分ハ警察費、卽チ地方稅ヨリ
支出シテアル次第デゴザイマス、而シテ其監獄費、警察費ノ兩方ノ費途カラ
出マシタ結果、費用ニ區分ガアリマシテ、食料或ハ療治料等ハ監獄費カラ支
辨シテ居リマス、又他ノ部分ニ於キマシテハ留置場ノ修繕費或ハ新築費等ハ
地方稅卽チ警察費カラ支辨致シマシテ則チ全額僅ニ七萬バカリノモノデアリ
マスガ此七萬圓ノ中一方ハ警察費カラ支出ヲ致シ、或ル費目ハ監獄費カラ支
辨スル譯デアッテ隨分從來ノ此費用支出ノ方法ハ煩雜ヲ極メタモノデアリマ
ス、ツレカラ又此衣服其他ノ物品等ハ總テ現品ヲ以テ給與スルノガ從來ノ法律
デアリマスルガ故ニ、今日マデノ警察署ノ數ト······全國ノ警察署及分署ノ數
ガ千四百以上ニ至ッテ居リ、又物品ノ〓數ハ三萬以上ト云フコトデ、中ミ現品
給與ト云フコトハ會計上非常ニ煩雜ヲ來ス所以デアリマス、故ニ政府委員ノ
說明ニ據レバ此法律改正ノ必要ト云フモノハ、詰リ監獄費ハ國庫ノ支辨トナ
リ、監獄會計ノ整理上必要ヲ認メタ故ニ此法案ヲ提出サレタト云フコトデア
リマス、ソレデ此法律ガ改正ニナリマスルト此法律中ニアリマスル通政府ハ
命令ヲ發セラレテ、此法律ノ改正後ニ於テハ從來ノ費用ノ區分ヲ全廢シマシ
テ、監獄費ヨリハ以來此留置場ヘ留置セラルヽ者、一人一日二十錢ノ割ヲ以
テ國庫カラ支辨シテ、其他ハ地方稅警察費デ支辨スルト云フ結果ニナルサウ
デアリマス、ソレデ委員會ニ於テ又一種ノ修正デハアリマセヌガ意見ガアリ
マシタ、其意見ト云フモノハ同ジ會計上煩雜ヲ省略スルナラバ全部警察費デ
負擔サセル方ガ簡略デハナイカト云フコトデアリマシタ、之ニ附イテハ政府
委員ノ說明ニハ第一司法省ノ政府委員ノ言ハルヽニハ、ソレハ甚ダ會計上ニ
ハ簡便ナル法デアルケレドモ、一昨年兩院ヲ通過シタル所ノ監獄費國庫支辨
ノ主意ニ背クモノデアル故ニ、多年ノ宿題ト爲ッテ僅ニ監獄費ヲ國庫支辨ト
シタモノデアルニ、今日ニ至ッテ又其一部ヲ地方稅ニ戾スト云フコトハ如何
ト云フ說モアリ、又內務省ノ政府委員ハ地方警察費ハ年々歲々非常ニ增加シ
テ、二十六年ト三十四年トノ統計ヲ見ルト二十六年ニ於テハ四百八十六萬九
千圓デアッタモノガ、三十四年卽チ六年ヲ經タル所デ其倍ニナッテ九百二十
三萬二千圓ト云フ增加デアリマスルシ、又三十三年ト三十四年ト比較シテ見
ルト僅ニ一年ノ間ニ七十四萬圓ノ增加デアリマスカラ、此際僅ニ七萬圓位ノ
金デモ地方警察費ヲ殖スト云フコトハ內務省ニ於テハ思ハシクナイト云フ說
デアリマシタカラ、旁〓以テ先ヅ此費用全部警察費ニ移スコトヲ見合セテ、
卽チ政府ノ提出案ノ通原案デ宜カラウト云フコトニ委員會ハ決シマシタ、次
ニ此附則ノ所ニ附イテチヨット說明シマスルガ、此附則ハ第一項ハ固ヨリ施
行期日ノコトデ、二項ニアリマスノハ此法律改正ノ結果トシテ以來物品ノ給
與ヲ廢セラルヽニ依テ、從來今日マデ監獄費デアリマシタノヲ監獄費カラ地
方費ニ附屬スル、今デハ監獄費ハ總テ國庫支辨デアリマスカラ監獄費ニ屬シ
マスガ、此後ハ從來アリマシタ物品ノミハ便宜上地方ニ附屬サセルト云フノ
ミノコトデアリマス、ソレデ要スルニ本案ハ監獄費ノ會計上種々煩雜ナル規
則ヲ廢シテ、會計上ノ整理ヲスルト云フ案デアリマスカラ、委員會ハ全會一
致ヲ以テ可決致シタノデアリマスカラ、ドウゾ本會ニ於キマシテモ委員會ノ
報告ニ御同意アッテ可決アランコトヲ希望致シマス、尙ホ終リニ申シマスガ是
モ至ッテ簡略ナ案デアリマスカラ、同ク讀會省略ヲ以テ決議アランコトヲ希
望致シマス
〔「讀會省略ニ贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=46
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047・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 讀會省略ノ動議ニ定規ノ贊成ガアッタモノト認メ
マス、之ニ同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=47
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048・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 三分二以上ト認メマス、本案御異議ガナクバ原案
ニ決シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=48
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049・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御異議ガナケレバ原案ニ決シマス、次ハ第五ヨリ
第七マデヲ併セテ問題ニ供シマス、東京都制案、千代田縣設置ニ關スル法律
案、東京都千代田縣組合法案、伯爵〓棲家〓君外三名提出、第一讀會、朗讀ハ
省略致シマス
〔左ノ提出文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
東京都制案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
明治三十五年二月八日
發議者伯爵〓棲家〓男爵松平正直
西村亮吉一木喜德郞
贊成者伯爵大原重朝
外七十七名
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
東京都制
第一章總則
第一款都及其ノ區域
第二款都住民及其ノ權利義務
第三款都條例及都規則
第二章都曾
第一款組織及選舉
第二款職務權限及處務規程
第三章都參事會
第一款組織及選舉
第二款職務權限及處務規程
第四章都行政
第一款都吏員ノ組織及任免
第二款都官吏都吏員ノ職務權限及處務規程
第三款給料及給與
第五章都ノ財務
第一款財產及收入
第二款歲入出豫算及決算
第六章都內一部ノ行政
第七章都行政ノ監督
第八章附則
東京都制
第一章總則
第一款都及其ノ區域
第一條從來ノ東京市ノ區域ヲ以テ府縣郡市町村ノ區域外トシ之ヲ都ノ區
域ト爲ス
第二條都ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ法律命令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事
務竝從來法律命令又ハ慣例ニ依リ市又ハ府ニ屬スル事務及將來法律勅令
ニ依リ都ニ屬スル事務ヲ處理ス
第三條都ノ區域ノ變更ヲ要スルトキハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
前項ノ處分ニ付財產處分ヲ要スルトキハ內務大臣ハ關係アル都府縣郡市
參事會及町村會ノ意見ヲ徵シテ之ヲ定ム
第四條都ノ境界ニ關スル爭論ハ關係團體ノ申請ニ由リ內務大臣之ヲ裁決
ス其ノ裁決ヲ違法ナリトスル關係團體ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ
得
前項ノ裁決ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ關係團體ニ交付スヘシ
第五條從來ノ東京市ノ區ハ都ノ區トス
區ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ其ノ財產ニ關スル事務其ノ他法律勅令ニ依
リ區ニ屬スル事務ヲ處理ス
區ノ廢置分合又ハ境界ノ變更ヲ要スルトキハ內務大臣ハ都參事會又關係
區會ノ意見ヲ徵シテ之ヲ定ム此ノ場合ニ於テ財產處分ヲ要スルトキハ併
セテ之ヲ定ムヘシ
區ノ境界ニ關スル爭論ハ關係區ノ申請ニ由リ都參事會之ヲ裁決ス其ノ裁
決ヲ違法ナリトスル區ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ都ノ境界ニ渉ルトキハ第三條及第四條ノ規定ニ依
ル
區ノ名稱ヲ變更スルコトヲ要スルトキハ都會及關係區會ノ議決ヲ經都長
官ノ申請ニ依リ內務大臣之ヲ定ム
本條第四項ノ裁決ニモ前條第二項ノ規定ヲ適用ス
第二款都住民及其ノ權利義務
第六條都內ニ住所ヲ有スル者ハ都住民トス
都住民ハ此ノ法律ニ從ヒ都有財產竝都ノ營造物ヲ共用スル權利ヲ有シ及
都ノ負擔ヲ分任スル義務ヲ負フ
第七條帝國臣民ニシテ公權ヲ有スル滿二十五年以上ノ男子二年以來(一)
都ノ住民ト爲リ(二)都ノ負擔ヲ分任シ及(三)都內ニ於テ直接國稅年額五
圓以上ヲ納ムル者ハ都公民トス但シ公費ヲ以テ貧民救助ヲ受ケタル後二
年ヲ經サル者及禁治產者準禁治產者ハ此ノ限ニ在ラス
前項二年ノ制限ハ場合ニ依リ都會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ之ヲ
特免スルコトヲ得
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲シタル
納稅ヲ以テ其ノ者ノ納稅シタルモノト見做ス
境界變更ニ由リ都ニ編入セラレタル區域ニ於テ其ノ編入前住所ヲ有シ市
町村ノ負擔ヲ分任シ及直接國稅ヲ納メタル年限ハ之ヲ第一項ノ年限ニ通
算ス
第八條都公民ハ都ノ選舉ニ參與シ都ノ名譽職ニ選舉セラルル權利ヲ有シ
及都ノ名譽職ヲ擔任スル義務ヲ負フ
左ニ揭クル者ニ非サレハ名譽職ノ當選ヲ辭シ又ハ退職スルコトヲ得ス
一疾病ニ罹リ公務ニ堪ヘサル者
二業務ノ爲常ニ都內ニ居ルコトヲ得サル者
三滿六十年以上ノ者
四官職ノ爲ニ都ノ公務ヲ執ルコトヲ得サル者
五四年以上都ノ名譽職ニ任シ爾後四年ヲ經過セサル者
六其ノ他都會ノ議決ニ依リ正當ノ理由アリト認メラルル者
前項一乃至六ニ該當セサル者ニシテ名譽職ノ當選ヲ辭シ又ハ退職シ又ハ
其ノ職務ヲ實際ニ執行セサル者ハ都會ノ議決ヲ經テ一年以上六年以下都
公民權ヲ停止シ且場合ニ依リ其ノ停止年期以內他ノ住民ノ負擔スヘキ都
稅ノ率ニ比シ十分ノ一以上四分ノ一以下ヲ增課スルコトヲ得
前項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ヲ違法ナリトスルトキハ行政裁判所ニ
出訴スルコトヲ得
本條第三項ノ處分ハ其ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
本條ノ事件ニ付テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九條都公民ニシテ第七條ニ揭載スル要件ノ一ヲ失フトキハ公民權ヲ失
フ
都公民ハ公權停止中又ハ租稅滯納處分中ハ公民權ヲ停止ス家資分散若ハ
破產ノ宣告ヲ受ケタルトキヨリ復權ノ決定アルマテ及公權剝奪若ハ停止
ヲ附加スヘキ重罪輕罪ノ爲公判ニ付セラレタルトキヨリ其ノ裁判ノ確定
ニ至ルマテ亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ都ノ公務ニ參與セサルモノトス現役以外ノ兵
役ニ在ル者ニシテ戰時若ハ事變ニ際シ召集セラレタルトキモ亦同シ
都公民ニ限リテ任スヘキ職務ニ在ル者ニシテ本條第一項乃至第三項ノ場
合ニ當ルトキ又ハ第八條第三項ノ處分ヲ受ケ其ノ處分確定シタルトキハ
其ノ職ヲ失フ
前項ノ職務ニ在ル都吏員ニシテ公權剝奪若ハ停止ヲ附加スヘキ重罪輕罪
ノ爲豫審ニ付セラレタルトキハ監督官廳ハ其ノ職ヲ停止スルコトヲ得
第三款都條例及都規則
第十條都ハ此ノ法律ニ規定スルモノノ外都住民ノ權利義務及都ノ事務ニ
關スル事項ニ付條例ヲ設クルコトヲ得
都ハ此ノ法律ニ規定スルモノノ外都ノ營造物ニ關スル事項ニ付規則ヲ設
クルコトヲ得
都條例及都規則ハ法律命令ニ牴觸スルコトヲ得ス
都條例及都規則ヲ發行スルニハ一定ノ公告式ニ依ル其ノ公〓式ハ都條例
ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第三章都會
第一款組織及選舉
第十一條都會議員ハ都ノ選舉人其ノ被選舉權アル者ヨリ之ヲ選舉ス
議員ノ定員ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ムヘシ但シ六十人ヲ超
ユルコトヲ得ス
第十二條都公民ハ總テ選舉權ヲ有ス但シ公民權停止中ノ者及第九條第三
項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラス
帝國臣民ニシテ公權ヲ有シ直接都稅ヲ納ムル者其ノ額公民ノ最多ク直接
都稅ヲ納ムル者三名中ノ一名ヨリモ多キトキハ第七條ノ要件ニ當ラスト
雖選擧權ヲ有ス但シ禁治產者準禁治產者及第九條第二項ノ公民權停止ノ
條件又ハ同條第三項ノ場合ニ當ル者ハ此ノ限ニ在ラス
法人ニシテ前項ノ場合ニ當ルトキ亦同シ
第十三條都ノ區ヲ以テ都會議員ノ選舉區トス各選舉區ヨリ選舉スヘキ議
員ノ員數ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
各選舉區ヨリ選舉スヘキ議員ノ員數ハ三名ヲ下ルコトヲ得ス
第十四條選舉人ハ各選舉區ニ於テ之ヲ三級ニ分ツヘシ
選舉人ハ住所ニ依テ所屬ノ選擧區ヲ定ム其ノ都內ニ住所ヲ有セサル者ハ
直接都稅ノ賦課ヲ受ケタル物件又ハ營業所ノ所在ニ依リ若數選舉區ニ亙
リテ賊課ヲ受ケタル物件又ハ營業所アルトキハ稅額ノ最多キ物件又ハ營
業所ノ所在ニ依リ又都稅ノ賦課ヲ受ケタル物件又ハ營業所ナキトキハ滯
在ノ地ニ依テ之ヲ定ム但シ本文ノ規定ニ依リ所屬ノ選舉區ヲ定ムルコト
ヲ得サルトキハ本人ノ申出ニ依テ之ヲ定ムヘシ
選舉人中直接都稅ノ納額最多キ者ヲ合セテ選舉人總員ノ納ムル總額ノ三
分ノ一ニ當ルヘキ者ヲ一級トス
一級選舉人ヲ除ク外直接都稅ノ納額多キ者ヲ合セテ選舉人總員ノ納ムル
總額ノ三分ノ一ニ當ルヘキ者ヲ二級トシ爾餘ノ選舉人ヲ三級トス
各級ノ間納稅額兩級ニ跨ル者アルトキハ上級ニ入ルヘシ又兩級ノ間ニ同
額ノ納稅者二名以上アルトキハ都內ニ住所ヲ有シタル年數ノ多キ者ヲ以
テ上級ニ入ル若住所ヲ有シタル年數ニ依リ難キトキハ年長者ヲ以テシ年
齡ニモ依リ難キトキハ區長抽籤ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
各選舉區ヨリ選舉スヘキ議員ハ每級各別ニ其ノ三分ノ一ヲ選舉スルモノ
トス若等分シ難キトキハ端數二名ノ場合ハ之ヲ一級及二級ニ配當シ一名
ノ場合ハ之ヲ二級ヨリ選出スヘキ員數ニ加フヘシ
被選舉人ハ同級內ノ者ニ限ラス又其ノ選舉區內ノ者ニ限ラサルモノトス」
本條ノ直接都稅額ハ選舉名簿調製期日ノ屬スル會計年度ノ前年度ノ賦課
額ニ依ルヘシ
第十五條選舉權ヲ有スル都公民ニシテ直接國稅年額十圓以上ヲ納ムル者
ハ總テ被選舉權ヲ有ス左ニ揭クル者ハ被選舉權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタ
ル後一箇月ヲ經過セサル者亦同シ
一都ノ官吏及有給吏員
二檢事警察官吏及收稅官吏
三神官神職僧侶其ノ他諸宗〓師
四小學校〓員
前項ノ外ノ官吏ニシテ當選シ之ニ應セムトスルトキハ所屬長官ノ許可ヲ
受クヘシ
都ノ爲請負ヲ爲ス者又ハ都ノ爲請負ヲ爲ス法人ノ役員ハ被選舉權ヲ有セ
ス
第十六條都會議員ハ名譽職トス
都會議員ノ任期ハ四年トシ每二年各級ニ於テ其ノ半數ヲ改選ス若各級ノ
議員二分シ難キトキハ先ツ多數ノ一半ヲ解任ス初囘ノ半數改選ニ於テ解
任スヘキ者ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
各級議員ノ定數若ハ其ノ配當ヲ變史シタル爲任期滿限前解任ヲ要スル者
ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第十七條都會議員中闕員アルトキ及各級議員ノ定數若ハ其ノ配當ヲ變更
シタル爲議員ノ選舉ヲ要スルトキハ三箇月以內ニ之ヲ行フヘシ
補闕議員ハ前任者ノ殘任期間在任ス
補闕議員ヲ除ク外本條第一項ニ依リ選舉セラレタル議員ハ前條第二項ノ
結果ニ依リ次ノ改選期又ハ其ノ次ノ改選期迄在任ス但シ新ニ選舉セラレ
タル議員二人以上ニシテ改選期ヲ異ニスヘキトキハ次ノ改選期ニ於テ解
任スヘキ者ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
定期改選及補闕選舉ハ前任者ノ選舉セラレタル選舉區及選舉等級ニ從テ
之ヲ行フヘシ
第十八條區長ハ每年九月十五日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ十月十五日
迄ニ其ノ選舉區ノ選舉人名簿ヲ調製スヘシ
選舉人名簿ハ十月二十日ヨリ十五日間區役所ニ於テ關係者ノ縱覽ニ供ス
ヘシ若關係者ニ於テ異議アルトキハ縱覽期限內ニ之ヲ都長官ニ申立ツル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ都長官ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ十日以內
ニ之ヲ決定シ其ノ決定ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ區長直ニ之ヲ修
正スヘシ
前項都長官ノ決定ヲ違法ナリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得」
選舉人名簿ハ十二月十五日ヲ以テ確定期限トシ確定名簿ハ次年ノ十二月
十四日迄之ヲ据置クヘシ
訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ區長ハ確定期限ノ前後ニ拘
ラス直ニ之ヲ修正スヘシ
本條ニ依リ區長ニ於テ名簿ヲ修正シタルトキハ其ノ要領ヲ告示スヘシ
確定名簿ニ登錄セラレサル者ハ選舉ニ參與スルコトヲ得ス但シ選舉人名
簿ニ記載セラルヘキ判決書ヲ所持シ選舉ノ當日投票所ニ至ルモノハ此ノ
限ニ在ラス
確定名簿ニ登錄セラレタル者選舉權ヲ有セサルトキハ選舉ニ參與スルコ
トヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
異議ノ決定確定シ若ハ訴訟ノ判決アリタルニ依リ名簿無效トナリタルト
キハ九月十五日ノ現在ニ依リ更ニ名簿ヲ調製スヘシ但シ名簿調製ノ期日
迄ニ選舉權ヲ失ヒタル者ハ名簿ニ登錄スル限ニ在ラス
前項名簿調製ノ期日縱覽修正及確定ニ關スル期限等ハ都長官ノ定ムル所
二條、
第十九條選舉ハ都長官ノ告示ニ依リ之ヲ行フ其ノ告示ニハ選舉ヲ行フヘ
キ選舉區及等級選舉ノ場所日時及每區每級ヨリ選舉スヘキ議員ノ員數ヲ
記載シ選舉ノ日ヨリ少クトモ二十日前ニ之ヲ發スヘシ
各級ニ於テ選舉ヲ行フ順序ハ先ツ三級ノ選舉ヲ行ヒ次テ二級ノ選舉ヲ行
ヒ次ニ一級ノ選舉ヲ行フヘシ
第二十條區長ハ選舉長ト爲リ選舉會ヲ開閉シ會場ノ取締ニ任ス
區長ハ臨時ニ其ノ選舉區內ニ於ル選舉人中ヨリ一一名乃至六名ノ立會人ヲ
選任スヘシ
選舉立會人ハ名譽職トス
第二十一條選舉人ノ外選舉會場ニ入ルコトヲ得ス但シ選舉會場ノ事務ニ
從來スル者選舉會場ヲ監視スル職權ヲ有スル者又ハ警察官吏ハ此ノ限ニ
在ラス
選舉人ハ選舉會場ニ於テ協議又ハ勸誘ヲ爲スコトヲ得ス
第二十二條選舉ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選舉人ハ選舉ノ當日自ラ選舉會場ニ到リ選舉人名簿ノ對照ヲ經投票簿ニ
捺印シ投票スヘシ
選舉人ハ選舉會場ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選舉人一名ノ氏名ヲ記載シテ
投函スヘシ但シ一級選舉ニ於テハ定數ノ被選舉人ノ氏名ヲ連記スヘシ
投票用紙ニハ選舉人ノ氏名ヲ記載スルコトヲ得ス
自ラ被選舉人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ爲スコトヲ得ス
投票用紙ハ都長官ノ定ムル所ニ依リ一定ノ式ヲ用ウヘシ
選舉人名簿ノ縱覽期限後選舉人ノ所屬選舉區ヲ定ムル要件ニ異動ヲ生ス
ルコトアルモ其ノ選舉人ハ前所屬ノ選舉區ニ於テ選舉ヲ行フヘシ
第二十三條第十二條第二項及第三項ニ依リ選舉權ヲ有スル者ハ代人ヲ出
シテ選舉ヲ行フコトヲ得但シ滿二十五年以上ノ男子ニ非サル者及法人ハ
必ス代人ヲ以テスヘシ
代人ハ帝國臣民ニシテ公權ヲ有シ且公權停止中ニ非サル滿二十五年以上
ノ男子ニ限ル但シ一人ニシテ數人ノ代理ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ代人ハ委任狀ヲ選舉長ニ示スヘシ但シ法律上ノ代人ハ此ノ限ニ在
ラス
第二十四條左ノ投票ハ之ヲ無效トス但シ連記投票ニ在テハ第一號及第五
號ニ該當スルモノ及記載ノ人員其ノ選舉スヘキ定數ニ過キタルモノハ之
ヲ無效トシ第三號及第四號ニ該當スルモノハ其ノ部分ノミヲ無效トス
一成規ノ用紙ヲ用井サルモノ
二一票中二人以上ノ被選舉人ヲ記載シタルモノ
三被選舉人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
四被選擧權ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
五被選舉人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ爵位職業身分住所
又ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二十五條投票ノ拒否竝效力ハ選舉立會人之ヲ議決ス可否同數ナルトキ
ハ選舉長之ヲ決スヘシ
第二十六條都會議員ノ選舉ハ有效投票ノ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選ト
ス投票ノ數相同キトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選舉長抽籤レテ
其ノ當選者ヲ定ム
同時ニ補闕員數名ヲ選舉スルトキハ投票ノ數多キ者投票ノ數相同キトキ
ハ年長者ヲ以テ殘任期ノ長キ前任者ノ補闕ト爲シ同年月ナルトキハ選舉
長抽籤シテ之ヲ定ム
第二十七條選舉長ハ選舉錄ヲ製シテ選舉ノ〓末ヲ記載シ選舉ヲ終リタル
後之ヲ朗讀シ選舉立會人二名以上ト共ニ之ニ署名シ投票選舉人名簿其ノ
他關係書類ト共ニ選舉及當選ノ效力確定スルニ至ル迄之ヲ保存スヘシ但
シ選擧及當選ノ效力ニシテ選舉人名簿確定ノ日ヨリ一年以內ニ確定シタ
ル場合ニ於テハ選舉人名簿ハ仍名簿確定ノ日ヨリ一年間之ヲ保存スヘシ
第二十八條當選者定マリタルトキハ選擧長ハ直ニ當選者ニ當選ノ旨ヲ告
知シ且同時ニ選舉錄ノ寫ヲ添ヘ當選者ノ住所氏名ヲ都長官ニ報告スヘ
シ
當選者ニシテ當選ヲ辭セムトスルトキハ當選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ十
日以内ニ之ヲ都長官ニ申立ツヘシ
一人ニシテ數級若ハ數選舉區ノ選舉ニ當リタルトキハ最終ニ當選ノ告知
ヲ受ケタル日ヨリ十日以內ニ何レノ選舉ニ應スヘキカヲ都長官ニ申立ツ
ヘシ其ノ期限內ニ之ヲ申立テサル者ハ總テ其ノ當選ヲ辭シタルモノト看
做ス
定期改選增員選舉補闕選舉等ヲ同時ニ行ヒタル場合ニ於テ一人ニシテ其
ノ數選舉ニ當リタルトキハ前項ノ例ニ依ル
第十五條第三項ノ官吏ニシテ當選シタル者ニ關シテハ本條ニ定ムル期間
ヲ二十日以內トス
第二十九條都會議員ノ當選ヲ辭シタル者アルトキハ更ニ選舉ヲ行フヘシ」
二人以上投票同數ニシテ年長ニ由テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルト
キハ年少ニ由テ當選セサリシ者ヲ以テ當選トス但シ年少ニ由テ當選セサ
リシ者二人以上アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選擧長抽籤シ
テ當選者ヲ定ム
二人以上投票同數ニシテ抽籤ニ依テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルト
キハ抽籤ノ爲當選セサリシ者ヲ以テ當選トス但シ抽籤ノ爲當選セサリシ
者二人以上アルトキハ選舉長抽籤シテ其ノ當選者ヲ定ム
第三十條當選者其ノ當選ヲ辭セサルトキハ都長官ハ直ニ其ノ住所氏名
ヲ告示スヘシ
第三十一條選舉人選舉若ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選舉ニ關シ
テハ選舉ノ日ヨリ當選ニ關シテハ前條告示ノ日ヨリ十四日以內ニ之ヲ都
長官ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ都參事會ノ決定ニ付スヘシ
都長官ニ於テ選舉若ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ第一項申立ノ有
無ニ拘ラス第二十八條第一項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ都參
事會ノ決定ニ付スルコトヲ得
本條都參事會ノ決定ヲ違法ナリトスル選舉人ハ行政裁判所ニ出訴スルコ
トヲ得
本條ノ事件ニ付テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十二條選舉ノ規定ニ違背スルコトアルトキハ其ノ選舉ヲ無效トス但
シ選舉ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞ナキモノハ此ノ限ニ在ラス
當選者ニシテ被選舉權ヲ有セサルトキハ其ノ當選ヲ無效トス
第三十三條選舉若ハ當選ニシテ無效ト確定シタルトキハ更ニ選舉ヲ行フ
ヘシ但シ得票數ノ査定ニ錯誤アリタル爲又ハ被選舉權ヲ有セサル爲當選
無效ト確定シタルトキハ第二十六條及第二十八條ノ例ニ依ル
第三十四條都會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被
選擧權ノ有無ハ第九條第四項ノ場合ヲ除ク外都會之ヲ決定ス但シ議員ハ
自己ノ資格ニ關スル會議ニ於テ辯明スルコトヲ得ルモ其ノ議決ニ加ハル
コトヲ得ス
都長官ニ於テ都會議員中被選舉權ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ
都會ノ決定ニ付スヘシ
失職者トセラレタル者本條都會ノ決定ヲ違法ナリトスルトキハ行政裁判
所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
都會議員ハ其ノ被選舉權ヲ有セストスル決定確定シ又ハ判決アル迄ハ會
議ニ列席シ議事ニ參與スルノ權ヲ失ハス
第三十五條前條第一項ノ決定其ノ他本款ニ規定スル異議ノ決定ハ直ニ之
ヲ告示スヘシ
第三十六條都會議員ノ選舉ニ付テハ衆議院議員選舉ニ關スル罰則ヲ準用
ス
第二款職務權限及處務規程
第三十七條都會ノ議決ヲ經ヘキ事件左ノ如シ
一歲入出豫算ヲ定ムル事
二決算報告ニ關スル事
三法律命令ニ定ムルモノヲ除ク外使用料手數料加入金都稅及夫役現
品ノ賦課徵收ニ關スル事
四不動產ノ處分竝買受讓受ニ關スル事
五基本財產及積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
六歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除ク外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權
利ノ抛棄ヲ爲ス事
七財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法律命令中別段ノ規定ア
ルモノハ此ノ限ニ在ラス
八其ノ他法律命令ニ依リ都會ノ權限ニ屬スル事項
第三十八條都會ハ其ノ權限ニ屬スル事項ヲ都參事會ニ委任スルコトヲ得
第三十九條都會ハ法律命令ニ依リ其ノ權限ニ屬スル選舉ヲ行フヘシ
第四十條都會ハ都ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ都長官若ハ內務大
臣ニ呈出スルコトヲ得
第四十一條都會ハ官廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
都會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ於テ都會招集ニ應セス若ハ成
立セス又ハ意見ヲ呈出セサルトキハ當該官廳ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直
ニ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十二條都會議員ハ選舉人ノ指示若ハ委囑ヲ受クヘカラス
第四十三條都會ハ議員中ヨリ議長副議長各一名ヲ選舉スヘシ
議長副議長ハ議員ノ定期改選每ニ之ヲ改選スヘシ
第四十四條議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長副議長共ニ故障アル
トキハ臨時ニ議員中ヨリ假議長ヲ選舉スヘシ
第四十五條都長官及其ノ委任若ハ囑託ヲ受ケタル官吏吏員ハ會議ニ列席
シテ議事ニ參與スルコトヲ得但シ議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項ノ列席者ニ於テ發言ヲ求ムルトキハ議長ハ之ヲ許スヘシ但シ之カ爲
議員ノ演說ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第四十六條都會ハ通常會及臨時會トス
通常會ハ每年一囘之ヲ開ク其ノ會期ハ三十日以內トス臨時會ハ必要アル
場合ニ於テ其ノ事件ニ限リ之ヲ開ク其ノ會期ハ七日以內トス
臨時會ニ付スヘキ事件ハ豫メ之ヲ告示スヘシ但シ其ノ開會中急施ヲ要ス
ル事件アルトキハ都長官ハ直ニ之ヲ其ノ會議ニ付スルコトヲ得
第四十七條都會ハ都長官之ヲ招集ス若議員定員四分ノ一以上ノ請求アル
場合ニ於テ相當ノ理由アリト認ムルトキハ都長官ハ都會ヲ招集スヘシ
招集ハ開會ノ日ヨリ少クトモ十四日前ニ告示スヘシ但シ急施ヲ要スル場
合ハ此ノ限ニ在ラス
都會ハ都長官之ヲ開閉ス
第四十八條都會ハ議員定員ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコ
トヲ得ス
第四十九條都會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ可
否スル所ニ依ル
第五十條議長及議員ハ自己若ハ其ノ父母祖父母妻子孫兄弟姊妹ノ一身
上ニ關スル事件ニ付テハ都會ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ議事ニ參與
スルコトヲ得ス
第五十一條都會ニ於テ名譽職參事會員ノ改選ヲ行フトキハ一人一票ニ
限リ匿名トシ且投票ニ被選舉人一名ノ氏名ヲ記載スヘシ其ノ有效投票ノ
最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス其ノ他ハ第二十二條第二十四條及第二
十六條ノ規定ヲ準用ス
前項ノ規定ハ名譽職參事會員ノ補充員ノ選舉其ノ他同時ニ二名以上同一
ノ職務ヲ有スル職員ヲ選舉スヘキ場合ニ之ヲ準用ス
前二項ノ場合ヲ除ク外法律命令ノ規定ニ依リ都會ニ於テ選舉ヲ行フトキ
ハ一名每ニ匿名投票ヲ爲シ有效投票ノ過半數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス
若過半數ヲ得タルモノナキトキハ最多數ヲ得タル者二名ヲ取リ之ニ就キ
決選投票ヲ爲サシム其ノ二名ヲ取ルニ當リ同數者アルトキハ年長者ヲ取
リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム此ノ決選投票ニ於テ投票同數
ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ヲ以テ當選者ヲ定ム其ノ
他ハ第二十二條第二十四條及第二十六條ノ規定ヲ準用ス
前項ノ選舉ニ付テハ都會ハ其ノ議決ヲ以テ指名推選ノ法ヲ用ウルコトヲ
得
都會ニ於テ行ヒタル選舉ノ效力若ハ當選ノ效力ニ付都會議員又ハ都長官
ニ於テ異議アル場合ニ關シテハ第三十一條乃至第三十三條及第三十五條
ノ規定ヲ準用ス
第五十二條都會ノ會議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
一都長官ヨリ傍聽禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二議長若ハ議員三名以上ノ發議ニ依リ傍聽禁止ヲ可決シタルトキ
前項議長若ハ議員ノ發議ハ討論ヲ須ヒス其ノ可否ヲ決スヘシ
第五十三條議長ハ會議ノ事ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開
閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第五十四條議員ハ會議中無禮ノ語ヲ用井又ハ他人ノ身上ニ涉リ言論スル
コトヲ得ス
第五十五條會議中此ノ法律若ハ會議規則ニ違ロ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ル
議員アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ若ハ發言ヲ取消サシメ命ニ從ハサルト
キハ議長ハ當日ノ會議ヲ終ル迄發言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシメ
必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
議場騒擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉
ツルコトヲ得
第五十六條傍聽人公然可否ヲ表シ又ハ喧騒ニ涉リ其ノ他會議ノ妨害ヲ爲
ストキハ議長ハ之ヲ制止シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ退場セシメ必要ナル
場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
傍聽席騒擾ナルトキハ議長ハ總テノ傍聽人ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ
於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
第五十七條議場ノ秩序ヲ紊リ又ハ會議ノ妨害ヲ爲スモノアルトキハ議員
若ハ第四十五條ノ列席者ハ議長ノ注意ヲ喚起スルコトヲ得
第五十八條都曾ニ書記ヲ置キ議長ニ隸屬シテ庶務ヲ處理セシム
書記ハ議長之ヲ任免ス
第五十九條議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ製シ會議ノ〓末竝出席議員ノ氏名
ヲ記錄セシムヘシ會議錄ハ議長及議員二名以上之ニ署名スルヲ要ス其ノ
議員ハ都會ニ於テ之ヲ定ムヘシ
議長ハ曾議錄ヲ添ヘ會議ノ結果ヲ都長官ニ報告スヘシ
第六十條都會ハ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設ケ內務大臣ノ許可ヲ受
クヘシ
會議規則ニハ此ノ法律竝會議規則ニ違背シタル議員ニ對シ都會ノ議決ニ
依リ五日以內出席ヲ停止スル規定ヲ設クルコトヲ得
第三章都參事會
第一款組織及選舉
第六十一條都ニ都參事曾ヲ置キ都長官都高等官三名及名譽職參事會員八
名ヲ以テ之ヲ組織ス都高等官ニシテ都參事會員タルヘキ者ハ內務大臣之
ヲ命ス
第六十二條名譽職參事會員ハ都會ニ於テ議員中ヨリ之ヲ選舉スヘシ
都會ハ名譽職參事會員ト同數ノ補充員ヲ選舉スヘシ
名譽職參事會員中闕員アルトキハ都長官ハ補充員ノ中ニ就キ之ヲ補闕ス
其ノ順序ハ選舉同時ナルトキハ投票數ニ依リ投票同數ナルトキハ年長者
ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ニ依リ選舉ノ時ヲ異ニスルトキハ選舉ノ前
後ニ依ル仍闕員ヲ生シタル場合ニ於テハ臨時補闕選舉ヲ行フヘシ
補闕員ハ前任者ノ殘任期間在職スルモノトス
名譽職參事會員及其ノ補充員ハ都會議員ノ定期改選每ニ之ヲ改選スヘシ
但シ名譽職參事會員ハ後任者就職ノ日迄在職スルモノトス
退任者ハ再選セラルルコトヲ得
第六十三條都參事會ハ都長官ヲ以テ議長トス都長官故障アルトキハ高等
官參事會員議長ノ職務ヲ代理ス
第二款職務權限及處務規程
第六十四條都參事會ノ職務權限左ノ如シ
一都會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決ス
ル事
二都會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ都長官ニ於テ之ヲ
招集スルノ暇ナシト認ムルトキ都會ニ代テ議決スル事
三都長官ヨリ都會ニ提出スル議案ニ付都長官ニ對シ意見ヲ述フル事
四都會ノ議決シタル範圍內ニ於テ財產及營造物ノ管理ニ關シ重要ナ
ル事項ヲ議決スル事
五都費ヲ以テ支辨スヘキ工事ノ執行ニ關スル規定ヲ議決スル事但シ
法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
六都ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事項ヲ議決スル事
七其ノ他法律命令ニ依リ都參事會ノ權限ニ屬スル事項
第六十五條都參事會ハ名譽職參事會員中ヨリ委員ヲ選舉シ之ヲシテ都ニ
係ル出納ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ檢査ニハ都長官又ハ其ノ指命シタル官吏若ハ吏員之ニ立會フコト
ヲ要ス
第六十六條第四十條第四十一條第四十五條及第五十八條ノ規定ハ都參事
會ニ之ヲ準用ス
第六十七條都參事會ハ都長官之ヲ招集ス若名譽職參事會員半數以上ノ請
求アル場合ニ於テ相當ノ理由アリト認ムルトキハ都長官ハ都參事會ヲ招
集スヘシ
都參事會ノ會期ハ都長官之ヲ定ム
第六十八條都參事會ノ會議ハ傍聽ヲ許サス
第六十九條都參事會ハ議長又ハ其ノ代理者及名譽職參事會員ノ半數以上
出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第六十四條第二項ノ議決ヲ爲ストキハ都長官及都高等官參事會員ハ其ノ
議決ニ加ハルコトヲ得ス
都參事會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ可否スル
所ニ依ル
會議ノ〓末ハ之ヲ會議錄ニ記載シ議長及參事會員二名以上之ニ署名スヘ
第七十條第五十條ノ規定ハ都參事會ニ之ヲ準用ス但シ同條ノ規定ニ依
リ參事會員ノ數減少シテ前條第一項ノ數ヲ得サルトキハ都長官ハ補充員
ニシテ其ノ事件ニ關係ナキ者ヲ以テ第六十二條第三項ノ順序ニ依リ臨時
之ニ充テ仍其ノ數ヲ得サルトキハ都會議員ニシテ其ノ事件ニ關係ナキ者
ヲ臨時ニ指名シ其ノ闕員ヲ補充スヘシ
議長及其ノ代理者共ニ除席セラレタルトキハ年長ノ會員ヲ以テ假議長ト
爲スヘシ
第四章都行政
第一款都吏員ノ組織及任免
第七十一條都ハ有給ノ吏員ヲ置クコトヲ得其ノ定員ハ都會ノ議決ヲ經テ
之ヲ定ム
前項ノ都吏員ハ都長官之ヲ任免ス
第七十二條都ニ都收入役ヲ置キ每區ニ區收入役ヲ置ク
都收入役及區收入役ハ官吏吏員ノ中ニ就キ都長官之ヲ命ス
第七十三條都ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ臨時若ハ常設ノ委員ヲ置ク
コトヲ得
委員ハ名譽職トス
委員ハ都會議員ノ選舉權ヲ有スル都公民中ヨリ都會之ヲ選舉シ都長官又
ハ其ノ命ヲ受ケタル高等官參事會員ヲ以テ委員長トス
委員ノ定員任期其ノ他必要ナル事項ハ第一項ノ都條例中ニ之ヲ定ムヘシ
第七十四條都吏員ハ都長官ニ申請シ其ノ許可ヲ得ルニ非サレハ退職スル
コトヲ得ス但シ退職申請後三箇月ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
名譽職吏員ニ於テ退職ヲ申請シタル場合ニハ都長官ハ都會ノ議決ニ付ス
ヽ >
第七十五條都收入役區收入役其ノ他都吏員ノ身元保證及賠償責任ニ關シ
必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二款都官吏都吏員ノ職務權限及處務規程
第七十六條都長官ハ都ヲ統轄シ之ヲ代表ス
都長官ノ擔任スル事務ノ〓目左ノ如シ
一都條例及都規則ヲ發布スル事
二都費ヲ以テ支辨スヘキ事件ヲ執行スル事
三都會及都參事會ノ議決ヲ經ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發スル事
四財產及營造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事
務ヲ監督スル事
五收入支出ヲ命令シ及會計ヲ監督スル事
六證書及公文書類ヲ保管スル事
七法律命合又ハ都會若ハ都參事會ノ議決ニ依リ使用料手數料加入金
都稅及夫役現品ヲ賦課徵收スル事
八其ノ他法律命令ニ依リ都長官ノ職權ニ屬スル事項
第七十七條都長官ハ議案ヲ都會ニ提出スル前之ヲ都參事會ノ審査ニ付シ
若都參事會ト其ノ意見ヲ異ニスルトキハ都參事會ノ意見ヲ議案ニ添ヘ都
會ニ提出スヘシ
第七十八條都長官ハ都ノ行政ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ區長
ニ委任スルコトヲ得
都長官ハ都ノ行政ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ都吏員ニ臨時代
理セシムルコトヲ得
第七十九條都長官ハ都吏員ヲ監督シ委員ヲ除ク外都吏員ニ對シ懲戒處分
ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責二十五圓以下ノ過怠金及解職トス
都長官ハ都吏員ノ懲戒處分ヲ行ハムトスル前其ノ停職ヲ命シ竝給料ヲ支
給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間都ノ公職ニ選舉セラレ若ハ任命セ
ラルルコトヲ得ス
第八十條都會若ハ都參事會ノ議決若ハ選舉其ノ權限ヲ越エ又ハ法律命
令ニ背クト認ムルトキハ都長官ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮
ニ依リ理由ヲ示シテ直ニ其ノ議決若ハ選舉ヲ取消シ又ハ議決ニ付テハ再
議ニ付シタル上仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ之ヲ取消スヘシ
前項取消處分ヲ違法ナリトスル都會若ハ都參事會ハ行政裁判所ニ出訴ス
ルコトヲ得
都會若ハ都參事會ノ議決公益ニ害アリト認ムルトキハ都長官ハ自己ノ意
見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ
議決ヲ改メサルトキハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請フヘシ
第八十一條都會若ハ都參事會ニ於テ都ノ收支ニ關シ不適當ノ議決ヲ爲シ
タルトキハ都長官ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ
示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ內務大臣ニ具狀シテ
指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ内務大臣ノ指揮ヲ
請フコトヲ得
第八十二條都長官ハ必要アル場合ニ於テハ期日ヲ定メテ都會ノ停會ヲ命
スルコトヲ得
第八十三條都會若ハ都參事會招集ニ應セス又ハ成立セサルトキハ都長官
ハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ處分スルコトヲ
得第五十條第七十條ノ場合ニ於テ會議ヲ開クコト能ハサルトキ亦同シ
都會若ハ都參事會ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス又ハ都會ニ於テ
其ノ招集前告示セラレタル事件ニ關シ議案ヲ議了セサルトキハ前項ノ例
一匹配,
都參事會ノ決定若ハ裁決スヘキ事項ニ關シテハ本條第一項第二項ノ例ニ
依ル此ノ場合ニ於テ都長官ノ處分ニ不服アル者ハ各本條ノ規定ニ準シ訴
訟ヲ提起スルコトヲ得
本條ノ處分ハ次ノ會期ニ於テ之ヲ都會若ハ都參事會ニ報告スヘシ
第八十四條都參事會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ都長官ニ
於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ都長官ハ專決處分シ次ノ會期
ニ於テ其ノ處分ヲ都參事會ニ報告スヘシ
第八十五條都參事會ノ權限ニ屬スル事項ハ其ノ議決ニ依リ都長官ニ於テ
專決處分スルコトヲ得
第八十六條官吏ノ都行政ニ關スル職務關係ハ此ノ法律中規定アルモノヲ
除ク外其ノ國ノ行政ニ關スル職務關係ノ例ニ依ル
第八十七條都收入役ハ都ノ出納其ノ他會計事務及法律命令ノ定ムル所ニ
依リ國ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌ル
都收入役故障アルトキハ都長官ノ命ヲ受ケタル官吏若ハ吏員其ノ職務ヲ
代理ス
第八十八條區長ハ都長官ノ指揮監督ヲ承ケ區ノ公共事務ヲ管掌シ區ヲ代
表ス
第七十六條第二項第二號乃至第七號ノ規定ハ區ノ公共事務ニ關シテハ之
ヲ區長ニ準用ス但シ都費トアルハ區費都會又ハ都參事會トアルハ區曾ヲ
以テ之ニ該當スルモノトス
本條ニ揭載スル事務ヲ執行スルカ爲ニ要スル費用ハ都ノ負擔トス
第八十九條區收入役ハ區ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌ル
區收入役ハ都收入役ノ指揮監督ヲ承ケ都收入役ノ委任ニ依リ又ハ法律命
令ノ定ムル所ニ依リ區內ニ關スル國及都ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌リ又
ハ都收入役ノ命令ヲ承ケ區內ニ關スル都收入役ノ事務ヲ補助執行ス
本條ニ揭載スル事務ヲ執行スル爲ニ要スル費用ハ都ノ負擔トス
區收入役故障アルトキハ區長ノ命ヲ受ケタル區書記其ノ職務ヲ代理ス
第九十條都ノ有給吏員ハ都長官ノ命令ヲ承ケ事務ニ從事ス
第九十一條委員ハ都長官ノ指揮監督ヲ承ケ都有財產若ハ都ノ營造物ヲ管
理シ其ノ他都行政事務ノ一部ヲ分掌シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ處辨
ス
第九十二條都ノ事務ニ關スル處務規程ハ都長官之ヲ定ム
第三款給料及給與
第九十三條有給都吏員ノ給料額竝旅費額及其ノ支給方法ハ都長官之ヲ定
第九十四條都會議員名譽職參事會員其ノ他名譽職員ハ職務取扱ノ爲要ス
ル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
費用辨償額及其ノ支給方法ハ都會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ都長
官之ヲ定ム若之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ內務大臣之ヲ定ム
第九十五條有給都吏員ノ退隱料退職給與金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ
都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ム
第九十六條退隱料退職給與金遺族扶助料及費用辨償ノ給與ニ關シ異議ア
ルトキハ之ヲ都長官ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ都參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ヲ違法ナリトスル
者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
本條ノ事件ニ付テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九十七條給料旅費退隱料退職給與金遺族扶助料費用辨償其ノ他諸給與
ハ都ノ負擔トス但シ區會議員ノ費用辨償ハ區ノ負擔トス
第五章都ノ財務
第一款財產及收入
第九十八條都ハ不動產其ノ他消費ノ豫定ナキ金穀等ヲ以テ基本財產ト爲
シ之ヲ維持スル義務アリ
都ハ特定ノ目的ノ爲特別ノ基本財產ヲ設ケ若ハ金穀ヲ積立ツルコトヲ得
此ノ場合ニ於テハ前項基本財產ニ加入スヘキ收入ノ全部若ハ一部ヲ特別
ノ基本財產若ハ積立金穀等ニ加入スルコトヲ得
第九十九條舊來ノ慣行ニ依リ都住民中特ニ財產ヲ使用スル權利ヲ有スル
者アルトキハ其ノ舊慣ニ依ル
都住民ニシテ前項ノ財產ヲ新ニ使用スル權利ヲ得ントスル者アルトキハ
都會ノ議決ヲ經テ之ヲ許可スルコトヲ得
本條財產ノ使用方法ニ關シテハ都規則ヲ設クルコトヲ得
第百條前條第二項ノ使用ニ關シテハ使用料若ハ一時ノ加入金ヲ徵收シ
又ハ使用料加入金ヲ共ニ徵收スルコトヲ得
第百一條都ハ必要ナル場合ニ於テハ第九十九條ノ使用者ニ對シ其ノ使用
ヲ止メ若ハ制限シ又ハ第九十九條第一項ノ使用者ヨリ使用料ヲ徵收スル
コトヲ得
第百二條都ハ營造物ノ使用ニ付使用料ヲ徵收シ又ハ特ニ一個人ノ爲ニス
ル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第百三條財產又ハ營造物ノ使用方法ニ關スル都規則ニハ過料二圓以下ヲ
科スルノ規定ヲ設クルコトヲ得其ノ處分及徵收ニ關シテハ第百八條第二
項ノ規定ヲ準用ス
第百四條財產ノ賣却貸與工事ノ請負及物件ノ調達ハ公ノ入札ニ付スヘシ
但シ臨時急施ヲ要スルトキ又ハ入札ノ價額其ノ費用ニ比シテ得失相償ハ
サルトキ又ハ都會ノ同意ヲ得ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百五條都ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附若ハ補助ヲ爲スコト
ヲ得
第百六條都ハ其ノ必要ナル費用及從來法律命令若ハ慣例ニ依リ府及市ノ
負擔ニ屬シ又ハ將來法律勅令ニ依リ都ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義
務ヲ負フ
第百七條都稅トシテ賦課スルコトヲ得ヘキモノ左ノ如シ
一國稅ノ附加稅
二特別稅
附加稅ハ直接ノ國稅ニ附加シ均一ノ稅率ヲ以テ都ノ全部ヨリ徵收スルヲ
常例トス
特別稅ハ別ニ稅目ヲ起シテ課稅スルコトヲ要スルトキ賦課徵收スルモノ
トス
第百八條此ノ法律中別ニ規定アルモノヲ除ク外使用料手數料及特別稅ニ
關スル細則ハ都會ノ議決ヲ經都條例ヲ以テ之ヲ定ム其ノ條例ニハ過料二
圓以下ノ罰則ヲ設クルコトヲ得
過料ニ處シ及之ヲ徵收スルハ都長官之ヲ掌ル其ノ處分ヲ違法ナリトスル
者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第百九條三箇月以上都內ニ滯在スル者ハ其ノ滯在ノ初ニ遡リ都稅ヲ納ム
ル義務ヲ負フ
第百十條都內ニ住所ヲ有セス又ハ三箇月以上滯在スルコトナシト雖都内
ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ若ハ使用シ又ハ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ
又ハ都內ニ於テ特定ノ行爲ヲ爲ス者ハ其ノ土地家屋物件營業若ハ其ノ收
入ニ對シ又ハ行爲ニ對シテ賦課スル都稅ヲ納ムル義務ヲ負フ其ノ法人タ
ルトキ亦同シ但シ國ノ事業若ハ行爲ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
第百十一條納稅者ノ都外ニ於テ所有シ若ハ使用スル土地家屋物件又ハ都
外ニ於テ營業所ヲ定メタル營業ヨリ生スル收入ニ對シテハ都稅ヲ賦課ス
ルコトヲ得ス
住所滯在都及府縣ニ渉ル者ノ收入ニ對シ都稅ヲ賦課スルトキハ其ノ收入
ヲ都府縣ニ平分シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ但シ土地家屋物件又ハ營業
所ヲ定メタル營業ヨリ生スル收入ハ此ノ限ニ在ラス
第百十二條都及府縣ニ渉リ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ且其ノ本稅ヲ分別
シテ納メサル者ニ對シ營業稅ノ附加稅ヲ賦課スルトキハ關係都長官府縣
知事協議ノ上其ノ歩合ヲ定メ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クヘシ若協
議調ハサルトキハ內務大臣及大藏大臣之ヲ定ム
第百十三條所得稅法第五條ニ揭クル所得ニ對シテハ都稅ヲ賦課スルコト
ヲ得ス
社寺又ハ〓社ノ禮拜ノ用ニ供シ又ハ國府縣郡市町村其ノ他ノ公共團體ノ
直接ノ公用ニ供スル土地家屋物件竝營造物ニ對シテハ社寺〓社又ハ國府
縣郡市町村其ノ他公共團體ニ都稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
國有ノ土地家屋物件ニ對シテハ國ニ都稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
前各項ノ外都稅ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ法律勅令ノ定ムル所ニ依
ル
皇族ニ係ル都稅ノ賦課ハ追テ法律勅令ヲ以テ定ムル迄現今ノ例ニ依ル
第百十四條數個人ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ其ノ
利益ノ程度ニ準シ關係者ニ負擔セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ會計ヲ分別スヘシ
區ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ都會ノ議決ヲ經其ノ
區ヲシテ之ヲ負擔セシムルコトヲ得
數個人若ハ區ヲ利スル財產ニ付テモ亦本條ノ例ニ依ル
第百十五條數個人若ハ都內ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ不
均一ノ賦課ヲ爲スコトヲ得
第百十六條都稅ニ關シテハ此ノ法律中規定アルモノヲ除ク外勅令ノ定ム
ル所ニ依ル
第百十七條都ハ急迫ノ必要ニ依リ夫役及現品ヲ納稅義務者ノ全部若ハ一
部ニ賦課スルコトヲ得但シ學藝美術及手工ニ關スル勞役ヲ課スルコトヲ
得ス
夫役ヲ課セラレタル者ハ其ノ便宜ニ從ヒ本人自ラ之ニ當リ又ハ適當ノ代
人ヲ出スコトヲ得
第百十八條都稅ノ賦課ニ關シ必要ナル場合ニ於テハ當該吏員ハ日出ヨリ
日沒マテノ間營業者ニ關シテハ仍其ノ營業時間家宅營業所ニ臨檢シ又ハ
帳簿物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第百十九條都長官ハ納稅者中特別ノ事情アル者ニ對シ會計年度內ニ限リ
納稅延期ヲ許スコトヲ得其ノ年度ヲ越ユル場合又ハ都稅ノ減免ヲ要スル
トキハ都參事會ノ議決ヲ經ヘシ
第百二十條都稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法若ハ錯誤アリト認
ムルトキハ徵稅令書ノ交付後三箇月以内ニ都長官ニ異議ノ申立ヲ爲スコ
トヲ得
財產又ハ營造物ヲ使用スル權利ニ關シ異議アル者ハ之ヲ都長官ニ申立ツ
ルコトヲ得
本條ノ異議ハ之ヲ都參事會ノ決定ニ付スヘシ都參事會ノ決定ヲ受ケタル
者其ノ決定ヲ違法ナリトスルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
使用料手數料及加入金ノ徵收ニ關シテモ亦第一項及第三項ノ例ニ依ル
本條ノ事件ニ付テハ都長官ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百二十一條都稅使用料手數料加入金過料過怠金其ノ他都ノ收入ヲ定期
內ニ納メサル者アルトキハ都長官ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分ス
ヘシ
本條ニ記載スル徵收金ハ國ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵還付
ニ付テハ國稅ノ例ニ依リ時效ニ付テハ國稅ノ附加稅ニ在テハ各本稅ノ例
ニ依リ其ノ他ノ徵收金ニ在テハ政府ノ一般徵收金ノ例ニ依ル
本條都長官ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ヲ違法ナリトスルトキハ行政裁
判所ニ出訴スルコトヲ得
本條第一項ノ處分中差押物件ノ公賣ハ處分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第百二十二條都ハ其ノ負債ヲ償還スル爲又ハ永久ノ利益ト爲ルヘキ支出
ヲ要スル爲又ハ天災事變等ノ爲必要アル場合ニ限リ都會ノ議決ヲ經テ都
債ヲ起スコトヲ得
都債ヲ起スニ付都會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及
償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
都ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲本條ノ例ニ依ラス都參事會ノ議決ヲ經テ一時
ノ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ借入金ハ其ノ會計年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘシ
第二款歲入出豫算及決算
第百二十三條都長官ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ年度開始前ニ都會
ノ議決ヲ經ヘシ
都ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
豫算ヲ都會ニ提出スルトキハ都長官ハ併セテ財產表ヲ提出スヘシ
第百二十四條都長官ハ都會ノ議決ヲ經テ既定豫算ノ追加若ハ更正ヲ爲ス
コトヲ得
第百二十五條都費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ施行スヘキモ
ノ又ハ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ都會ノ議決ヲ經テ其ノ
年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
第百二十六條豫算外ノ支出若ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ設ク
ヘシ但シ都會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第百二十七條豫算調製ノ式竝費目流用ニ關スル規程ハ內務大臣之ヲ定ム
第百二十八條豫算ハ議決ヲ經タル後直ニ之ヲ內務大臣ニ報告シ竝其ノ要
領ヲ告示スヘシ
第百二十九條都ハ都會ノ議決ヲ經テ特別會計ヲ設クルコトヲ得
第百三十條都會ニ於テ豫算ヲ議決シタルトキハ都長官ヨリ其ノ謄本ヲ
收入役ニ交付スヘシ其ノ豫算中監督官廳ノ許可ヲ受クヘキ事項アルトキ
ハ先ツ其ノ許可ヲ受クヘシ
收入役ハ都長官又ハ監督官廳ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得
ス其ノ命令ヲ受クルモ支出ノ豫算ナキトキ又ハ豫備費支出及費目流用其
ノ他財務ニ關スル規定ニ依ラサルトキ亦同シ
第百三十一條都ノ支拂ニ關スル時效ニ付テハ政府ノ一般支拂金ノ例ニ依
ル但シ民法上ノ支拂ニ關スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第百三十二條都ノ出納ハ每月例日ヲ定メテ檢査シ且每會計年度少クトモ
二囘臨時檢査ヲ爲スヘシ
檢査ハ都長官又ハ其ノ命ヲ受ケタル官吏吏員之ヲ爲シ臨時檢査ニハ都會
ニ於テ選舉シタル議員三名以下ノ立會ヲ要ス
第百三十三條都ノ出納閉鎖ハ會計年度經過後三箇月ヲ超ユルコトヲ得ス」
決算ハ出納閉鎖後一箇月以內ニ證書類ヲ併セテ收入役ヨリ之ヲ都長官ニ
提出スヘシ
決算ハ次ノ通常會ニ於テ之ヲ都會ニ報告スヘシ
都長官ハ決算ヲ都會ニ報告スル前都參事會ノ審査ニ付スヘシ若都長官ト
都參事會ト意見ヲ異ニスルトキハ都長官ハ都參事會ノ意見ヲ決算ニ添ヘ
都會ニ提出スヘシ
決算ハ之ヲ內務大臣ニ報告シ竝其ノ要領ヲ告示スヘシ
第百三十四條都ノ財務ニ付テハ法律ニ規定アルモノヲ除ク外勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第六章都内一部ノ行政
第百三十五條每區ニ區會ヲ置ク
區會議員ハ都ノ名譽職トス
區會議員ノ定員任期及選舉ニ關シテハ第十一條第二項第十二條第十四條
第一項第三項乃至第八項第十五條第十六條第二項第三項第十七條第二十
二條第二十四條及第二十六條ノ規定ヲ準用ス但シ區內ニ住所ヲ有セサル
者ハ區曾議員ノ選舉權及被選舉權ヲ有セス
第百三十六條區會ハ區有財產其ノ他ノ公共事務ニ關シ第三十七條第一號
乃至第七號ニ記載スル事項竝區ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事項其ノ
他法律命令ニ依リ區會ノ權限ニ屬スル事項ヲ議決ス
第三十九條乃至第四十一條ノ規定ハ之ヲ區會ニ準用ス
第百三十七條區會ニ關スル費用及區有財產其ノ他區ノ事務ニ關シ必要ナ
ル費用ハ區ノ負擔トス
前項ノ外區ハ法律勅令ニ依リ區ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負
フ
第百三十八條此ノ法律ニ規定スルモノヲ除ク外都會ニ關スル規定ヲ區會
ニ準用シ又ハ區會ニ關シテ特別ノ規定ヲ要スヘキ事項其ノ他區ニ關シ必
要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七章都行政ノ監督
第百三十九條都ノ行政ハ內務大臣之ヲ監督ス
第百四十條此ノ法律ニ規定スル異議ハ處分ヲ爲シタル翌日ヨリ起算シ
十四日以內ニ之ヲ申立ツヘシ但シ此ノ法律中別ニ期限ヲ定メタルモノハ
此ノ限ニ在ラス
此ノ法律ニ規定スル行政訴訟ハ處分ヲ爲シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付
ヲ受ケタル翌日ヨリ其ノ交付ヲ受ケサル者ハ告示ノ翌日ヨリ起算シ二十
一日以內ニ之ヲ提起スヘシ
此ノ法律ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ付スヘ
前項異議ノ決定書ハ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
此ノ法律ニ規定スル異議ノ申立ニ關スル期間ノ計算竝天災事變ノ場合ニ
於ケル特例ニ付テハ民事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
異議ヲ申立又ハ訴訟ヲ提起スル者アルモ此ノ法律中別段ノ規定アルモノ
ヲ除ク外處分ノ執行ヲ停止セス但シ行政廳及行政裁判所ハ其ノ職權ニ依
リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ處分ノ執行ヲ停止スルコ
トヲ得
第百四十一條內務大臣ハ都行政ノ法律命令ニ背戾セサルヤ又ハ公益ヲ害
セサルヤ否ヲ監視スヘシ內務大臣ハ之カ爲行政事務ニ關シテ報告ヲ爲サ
シメ書類帳簿ヲ徵シ竝實地ニ就キ事務ヲ視察シ出納ヲ檢閱スルノ權ヲ有
ス
內務大臣ハ都行政ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ處分ヲ爲スノ權ヲ有ス
第百四十二條內務大臣ハ都ノ豫算中不適當ト認ムルモノアルトキハ之ヲ
削減スルコトヲ得
第百四十三條內務大臣ハ勅裁ヲ經テ都會ノ解〓ヲ命スルコトヲ得
都會解散ノ場合ニ於テハ三箇月以內ニ議員ヲ選舉スヘシ
解散後始メテ都會ヲ招集スルトキハ都長官ハ第四十六條第二項ノ規定ニ
拘ラス內務大臣ノ許可ヲ得テ別ニ會期ヲ定ムルコトヲ得
第百四十四條都吏員ノ服務規律ハ內務大臣之ヲ定ム
第百四十五條都條例ノ設定ハ內務大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス內務大
臣ハ勅裁ヲ經テ之ヲ許否スヘキモノトス
第百四十六條左ニ揭クル事件ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クルコト
ヲ要ス
一都債ヲ起シ竝起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ若ハ變更
スル事但シ第百二十四條第三項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
二特別稅ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
三直接國稅二分ノ一ヲ超過スル附加稅ヲ賦課スル事但シ法律勅令中
別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
四間接國稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
五法律勅令ノ規定ニ依リ官廳ヨリ下渡ス步合金ニ對シ支出金額ヲ定
ムル事
第百四十七條左ニ揭クル事件ハ內務大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一都規則ヲ設定スル事
二學藝美術又ハ歷史上貴重ナル物件ヲ處分シ若ハ大ナル變更ヲ爲ス
事
三使用料手數料加入金ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
四基本財產ノ處分ニ關スル事
五特別基本財產及積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
六第九十九條及第百一條ノ處分ヲ爲ス事
七寄附若ハ補助ヲ爲ス事
八不動產ノ處分ニ關スル事
九均一ノ稅率ニ據ラスシテ國稅ノ附加稅ヲ賦課スル事
十第百十四條ニ依リ數個人若ハ區ニ費用ヲ負擔セシムル事
十一繼續費ヲ定メ若ハ變更スル事
十二特別會計ヲ設クル事
第百四十八條都ノ行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項ニ付テハ主
務大臣ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ許可ヲ
與フルコトヲ得
第百四十九條都ノ行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項中其ノ輕易
ナルモノハ勅令ノ規定ニ依リ許可ヲ經スシテ處分スルコトヲ得
第百五十條內務大臣ハ委員ニ對シ懲戒處分ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處
分ハ譴責二十五圓以下ノ過怠金及解職トス
內務大臣ハ懲戒處分ヲ行ハムトスル前吏員ノ停職ヲ命スルコトヲ得
第八十條第三項ノ規定ハ本條ニ依リ解職セラレタル者ニモ之ヲ適用ス
第八章附則
第百五十一條此ノ法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百五十二條此ノ法律施行ノ際都會都參事會及區會ノ職務ニ屬スル事項
ニシテ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間都會及都參事會ニ關シ
テハ都長官區會ニ關シテハ區長之ヲ行フ
第百五十三條此ノ法律施行ノ際初メテ要スル選舉人名簿ノ調製ニ限リ第
十八條ノ期日及期間ハ勅令ヲ以テ別ニ之ヲ定ムルコトヲ得但シ其ノ選舉
人名簿ハ翌年調製スル選舉人名簿確定ノ日迄其ノ效力ヲ有ス
第百五十四條此ノ法律ニ於テ直接稅若ハ間接稅トスヘキ類別ハ內務大臣
及大藏大臣之ヲ告示ス
第百五十五條從來ノ東京市ノ營造物及市有財產ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ
都ノ管理若ハ所有ニ移ルモノトス
此ノ法律施行ノ際從來ノ東京府ノ營造物及府有財產ノ處分ハ內務大臣之
ヲ定ム
第百五十六條此ノ法律施行前後ヲ通算シ二年以上引續キ市及都ニ住所ヲ
有シ市及都ノ負擔ヲ分任シ且市及都內ニ於テ直接國稅年額五圓以上ヲ納
ムル者ハ第七條二年以來都ノ住民ト爲リ都ノ負擔ヲ分任シ及都內ニ於テ
直接國稅年額五圓以上ヲ納ムル者ト看做ス
第百五十七條現行ノ法律命令中府若ハ市トアルハ都、府會若ハ市會トア
ルハ都會、府會議員若ハ市會議員トアルハ都會議員、府知事若ハ市長ト
アルハ都長官、府參事會若ハ市參事會トアルハ都參事會、府參事會員若
ハ市參事會員トアルハ都參事會員ト看做シ其ノ他此ノ例ニ依ル但シ本條
ノ例ニ依ラサルモノハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第百五十八條水利組合條例ニ依リ設置シタル水利組合ハ此ノ法律施行ノ
爲消滅セサルモノトス
第百五十九條現任衆議院議員ハ此ノ法律施行ノ爲其ノ職ヲ失フコトナシ」
舊法ニ依ル衆議院議員選舉區中東京府第一區乃至第九區ハ東京都第一區
乃至第九區トシ新法ニ依ル衆議院議員選舉區中東京府東京市ハ東京都ト
シ其ノ區域及議員ノ數ハ此ノ法律施行ノ爲變更セラルルコトナシ
第百六十條此ノ附則ニ規定スルモノヲ除ク外此ノ法律ヲ施行スル爲必
要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
千代田縣設置ニ關スル法律案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
明治三十五年二月八日
發議者伯爵〓棲家〓男爵松平正直
西村亮吉一木喜德郞
贊成者伯爵大原重朝
外七十七名
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
第一條東京府ヲ廢シ千代田縣ヲ置ク
從來ノ東京府ノ區域中東京都ノ區域ト爲スヘキモノヲ除キ其ノ他ヲ以テ
千代田縣ノ區域ト爲ス
第二條此ノ法律施行ノ際縣會及縣參事會ノ職務ニ屬スル事項ニシテ急施
ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間千代田縣知事之ヲ行フ
第三條此ノ法律施行ノ際議員ヲ選舉スルニ必要ナル選舉人名簿ノ調製ニ
限リ府縣制第九條乃至第十二條ノ期日及期間ハ勅令ヲ以テ別ニ之ヲ定ム
ルコトヲ得但シ其ノ選舉人名簿ハ翌年調製スル選舉人名簿確定ノ日迄其
ノ效力ヲ有ス
第四條現任衆議院議員ハ此ノ法律施行ノ爲其ノ職ヲ失フコトナシ
舊法ニ依ル衆議院議員選舉區中東京府第十區乃至第十三區ハ千代田縣第
一區乃至第四區トシ新法ニ依ル衆議院議員選舉區中東京府郡部即島トモハ
千代田縣トシ其ノ區域及議員ノ數ハ此ノ法律施行ノ爲變更セラルルコト
ナシ
第五條衆議院議員及縣會議員ノ選舉及被選擧資格中其ノ年限ニ關スルモ
ノハ此ノ法律施行ノ爲中斷セラルルコトナシ
第六條此ノ法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條此ノ法律ヲ施行スル爲必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
東京都千代田縣組合法案
右貴族院規則第六十四條ニ依リ提出候也
明治三十五年二月八日
發議者伯爵〓棲家〓男爵松平正直
西村亮吉一木喜德郞
贊成者伯爵大原重朝
外七十七名
貴族院議長公爵近衞篤麿殿
東京都千代田縣組合法
第一條東京都及千代田縣ノ共同事務ヲ處理スル爲東京都千代田縣組合ヲ
置ク
組合ニ於テ處理スヘキ共同事務ノ範圍ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
組合ハ法人トス
第二條東京都千代田縣組合ニ組合會ヲ置ク
組合會議員ハ名譽職トス
組合會議員ノ定員ハ東京都會及千代田縣會ノ議員定員ヲ合シタル員數ノ
三分ノ一トス但シ端數ハ之ヲ除算ス
第三條組合會議員ハ東京都會及千代田縣會ニ於テ議員中ヨリ選舉ス
各會ニ於テ選舉スヘキ組合會議員ノ數ハ內務大臣之ヲ定ム
第四條組合會議員ノ選舉ニ付テハ都會ニ於テ行フ選舉ニ關スル規定ハ之
ヲ千代田縣會ニ準用ス
第五條組合會議員ノ選舉ハ東京都會及千代田縣會ニ於テ各其ノ定期改選
每ニ之ヲ行フヘシ
組合會議員ノ定數又ハ配當ヲ變更シタル爲解任又ハ選舉ヲ要スル場合竝
補闕選舉ニ關シテハ府縣制第七條第三項及第八條ノ規定ヲ準用ス
第六條組合會ノ議長及副議長ハ東京都會又ハ千代田縣會ニ於テ行フ組合
會議員ノ定期改選每ニ之ヲ改選スヘシ
第七條組合會ハ東京都會及千代田縣會ニ於テ選舉スヘキ組合會議員各半
數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第八條組合會ノ職務權限及處務規程ニ關シテハ此ノ法律中別ニ規定スル
モノヲ除ク外都制第二章第二款ノ規定ヲ準用ス
第九條東京都千代田縣組合ニ組合參事會ヲ置キ都長官高等官三名及名
譽職參事會員八名ヲ以テ之ヲ組織ス
第十條名譽職參事會員ノ選舉ニ關シテハ第三條第四條及第五條第一項ノ
規定ヲ準用ス
東京都會及千代田縣會ハ各其ノ選舉スヘキ名譽職參事會員ノ闕員ヲ補充
スル爲之ト同數ノ補充員ヲ選舉スヘシ
第四條及第五條第一項ノ規定ハ名譽職參事會員ノ補充員ノ選舉ニモ之ヲ
準用ス
名譽職參事會員ノ配當ヲ變更シタル爲名譽職參事會員及其ノ補充員ノ解
任又ハ選舉ヲ要スル場合ニ關シテハ府縣制第七條第三項及第八條第一項
第三項ノ規定ヲ準用ス
第十一條組合參事會ノ組織及選舉竝職務權限及處務規程ニ關シテハ此ノ
法律中別ニ規定スルモノヲ除ク外都制第三章ノ規定ヲ準用ス
第十二條組合會議員及名譽職參事會員ノ費用辨償ニ關シテハ都制第四章
第三款ノ規定ヲ準用ス
第十三條東京都長官ハ東京都千代田縣組合ヲ統轄シ之ヲ代表ス
都長官其ノ他官吏ノ組合行政ニ關スル職務關係竝處務規程ニ付テハ府縣
制第四章第二款ノ規定ヲ準用ス
第十四條組合ノ費用ハ財產ヨリ生スル收入及其ノ他ノ收入ヲ以テ充ツル
モノノ外之ヲ東京都及千代田縣ニ分賦スヘシ
組合費用分賦ノ割合ハ組合會ノ議決ヲ經テ之ヲ定ム
組合費用ノ分賦方法ニ關スル必要ノ事項ハ內務大臣之ヲ定ム
第十五條府縣稅ニ關スル事項ヲ除ク外府縣制第五章ノ規定ハ之ヲ組合ノ
財務ニ準用ス
第十六條組合ノ監督ニ關シテハ府縣制第六章ノ規定ヲ準用ス
第十七條此ノ法律ニ規定スルモノノ外東京都千代田縣組合ニ關スル必要
ノ事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條此ノ法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條此ノ法律施行ノ際組合會及組合參事會ノ職務ニ屬スル事項ニシ
テ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ルマテノ間東京都長官之ヲ行フ
第二十條此ノ法律ヲ施行スル爲必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
〔一木喜德郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=49
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050・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 此法案ハ昨年本院ニ於テ既ニ可決致サレマシタル法案デゴ
ザイマスカラ詳細ニ理由ヲ說明スル必要ハナカラウト考ヘマス、至ッテ簡短
ニ提出ノ理由ヲ述べマス、東京ノ市ノ制度ヲ改良スルノ必要ガアルト云フコ
トハ既ニ多數ノ人ノ認メテ居ルコトデアルト思フノデアリマス、既ニ先年衆
議院ヨリ市ノ監督ノ段階ヲ改メテ內務大臣ノ直接ノ監督ノ下ニ立タシムルト
云フ法案ハ數年前提出セラレテ本院ニ送付セラレタコトモアッタ次第デアリ
VX、唯此法案ガ極テ不完全デアリマシタガタメニ本院デハ否決致サレマシ
タガ、之ニ依リマシテモ東京市ノ制度ヲ改メルガ必要デアルト云フコトハ既
ニ衆議院ニ於テモ認メテ居ルト察セラレルノデアリマス、既往ノコトハ姑ク
措キマシテ將來、東京府ノ事業ハ益〓擴張セラレ市區改正モ速成シナケレバナ
ラヌ、或ハ築港モシナケレバナラヌト云フ重大ナ事業ヲ控ヘテ居ルノデアリ
マスカラ、此際市ノ制度ヲ改善シテ其面目ヲ一新スルト云フコトハ極テ必要
ナルコトヽ思フノデアリマス、ソレデ此法案ハ詰リ其目的ヲ以テ提出セラレ
マシタノデアッテ、其重ナル〓ハ法案ニ就イテ御覽ニナルコトヲ望ミマスケレ
ドモ、詰リ普通ノ市制ノ如クニ、小サナ市ニ於テ適用セラルヽ如クニ、議會ヲ
以テ一切ノ事件ヲ議決スルノ機關ト致シ、尙ホ市參事會ナル合議體ヲ以テ行
政執行ノ機關トスル如キコトハ此全國ノ首府タル大都會ニハ適當デナイ制度
ト思ヒマス、且ツ監督ニ附イテモ內務大臣ガ直接ニ監督スルガ最モ適當スル
ト思フノデアッテ、此〓ハ特別市制ノ重ナル非難トシテ舉ゲラレタル所ノモ
ノデアリマス、今申述べマシタ所ノ一兩年前衆議院ヨリ本院ニ送付セラレタ
ル所ノ法案ノ要點モ此處ニ在ッタノデアリマス、併シ監督ヲ簡單ニシテ直接ニ
內務大臣ノ監督ノ下ニ立タシムルト云フコトニ致シマスレバ、ドウシテモ府
ノ區域ノ內ニ置クト云フコトハ出來ナイ、全ク別ノ區域ニシナケレバナラヌ、
旣ニ別ノ區域ト致シマス以上ハ、其組織モ今日ノ如クニセズ寧ロ府縣制ノ如
クノ組織ニスルト云フコトガ府縣制トノ權衡上必要ト思フノデアリマス、是
等ガ都制法案ノ重ナル〓デアリマシテ、卽チ此案ハ衆議院ノ積年ノ希望ニモ
協ッテ居ルト思ヒマスシ、尙ホツレヲ大キク申シマスレバ一般ノ輿論ニモ協ツ
テ居ルモノデアルト思フノデアリマス、尙ホ都制ヲ定メマスルニ附キマシテ
ハ郡部ノ處置ヲ定メナケレバナラナイ、乃チ本案ニ於キマシテハ郡部ダケヲ
纒メテ一ノ縣ト致シマシテ、從來既ニ郡部ノ經濟トシテ特別ニ經濟ヲ立テヽ
居リマシタモノヲ一ノ獨立ノ縣ト認メル案ト致シタノデアリマス、併シ郡部
ヲ獨立ノ縣ト致シマシテモ從來ノ東京市卽チ東京都トハ頗ル密接ノ關係ガア
ルモノデアリマシテ、其經濟モ多少共通ニ致サナケレバナラヌ、殊ニ警察費其
他ノ費用ハ共通ニシナケレバナラヌ必要ガアリマスカラ、其聯絡ヲ付ケルタ
メニ東京都千代田縣ノ組合法案ヲ提出シタ譯デアリマス、要スルニ此三案ヲ
提出致シマシタ理由ハ大體唯今申述ベマシタヤウデアリマスカラ、何卒此案
ニ御贊成下サルコトヲ希望シマス、此案ハ極テ重大ナル案デアリマスカラ、旣
ニ昨年可決ニナリマシタケレドモ、尙ホ本年モ昨年ノ例ニ依リマシテ議長指
名ノ十五名ノ委員ニ於テ此三案ヲ審査スルコトヲ御議決ニナランコトヲ希望
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=50
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051・村田保
○村田保君 本員ハ唯今ノ提出者ノ說ニ贊成ヲ致シマス、ドウゾ重大ノ案デ
モアリ浩瀚ナ案デモアリマスカラ、十五名ノ委員ヲ設ケテ調査セシメラレン
コトヲ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=51
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052・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=52
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053・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) ソレデハ其通致シマス、議事ハ是ニテ終リマシタ、
唯今御委託ニナリマシタ委員ノ氏名ヲ御報道致シマス
〔太田書記官長朗讀〕
東京都制案外二件特別委員
公爵二條基弘君伯爵〓棲家〓君子爵堤功長君
子爵千種有梁君男爵松平正直君三浦安君
男爵船越衞君男爵中川興長君西村亮吉君
渡正元君馬屋原彰君室田義文君
澤簡德君一木喜德郞君菊池長四郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=53
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054・近衞篤麿
○議長(公爵近衞篤麿君) 次會ノ日程ハ追ッテ報告致シマス、今日ハ散會
午前十一時五十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001603242X01219020214&spkNum=54
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