1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十六年五月二十六日（火曜日）午後一時五分開議
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議事日程 第四號 明治三十六年五月二十六日
午後一時開議
第一 鐵道敷設法中改正法律案（政府提出緊急事件） 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第三 事業公債條例中改正法律案（政府提出緊急事件） 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第五 鐵道に關する建議案（松田正久外一名提出）
第六 度量衡法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第七 明治三十四年度豫備金支出の件（承諾を求むる件）（政府提出）
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第九 明治三十四年度特別會計豫備金支出の件（承諾を求むる件）（政府提出）
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十一 明治三十四年度清國事件第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）（政府提出）
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第十三 災害地地租免除に關する法律案（矢島中外十名提出） 第一讀會
第十四 地租條例中改正法律案（平岡萬次郎提出） 第一讀會
第十五 家祿賞典祿處分法中改正法律案（高橋庄之助外五名提出） 第一讀會
第十六 町村制中改正法律案（古屋善造提出） 第一讀會
第十七 府縣制中改正法律案（小河源一提出） 第一讀會
第十八 國有土地森林原野下戻申請期間に關する法律案（宮古啓三郎外十九名提出） 第一讀會
第十九 寄留法案（磯部四郎外一名提出） 第一讀會
第二十 刑事訴訟法中改正法律案（磯部四郎外二十三名提出） 第一讀會
第二十一 無線電信の利用に關する建議案（佐藤虎次郎外一名提出）
第二十二 電信取扱時間復舊及郵便集配囘數増加に關する建議案（藤金作外二名提出）
第二十三 大日本帝國水難救濟會國庫補助に關する建議案（松島廉作外五名提出）
第二十四 大日本帝國水難救濟會會員徽章佩用に關する建議案（松島廉作外五名提出）
第二十五 請願規程制定に關する建議案（山根正次提出）
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/0
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001・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 議長ガ病氣デゴザイマシテ、相變ラズ引續イテ代理ヲ勤メマ
ス、本日召集ニ應ジマシタ議員ノ紹介ヲ、書記官長ヨリ致シマス
〔林田書記官長朗讀〕
高知縣郡部選出議員大石正己君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/1
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002・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
委員ヲ指定スルコト左ノ如シ
明治三十六年勅令第八號(承諾ヲ求ムル件)
奧野小四郞君內山吉太君山壽介君
伊藤淳君田村惟昌君植物油 香油味龜即會
中川久知君大澤庄之助君雄造君
災害地地租免除ニ關スル法律案
根本正君三浦盛德君榊原經武君
遠山正和君上埜安太郞君平島松尾君
菊池九郞君木村半兵衞君速水熊太郞君
豫算委員鈴置倉次郞君辭任ニ付其補闕トシテ田村順之助君當選セラレタリ
委員長理事左ノ通リ當選セラレタリ
地租條例中改正法律案外一件
委員長大岡育造君理事恆松隆慶君
理事大久保弁太郞君
軍艦水雷艇補充基金組入ニ關スル法律案
委員長奧田義人君理事望月小太郞君
鐵道敷設法中改正法律案外一件
委員長望月右內君理事佐竹作太郞君
理事井手毛三君
臺灣事業公債法中改正法律案
委員長佐藤里治君理事串本康三君
災害地地租免除ニ關スル法律案
委員長根本正君理事上埜安太郞君
日本興業銀行法中改正法律案
委員長加藤高明君理事秋岡義一君
度量衡法中改正法律案
委員長酒井岩造君理事齋藤和平太君
明治三十六年勅令第八號(承諾ヲ求ムル件)
委員長內山吉太君理事大澤庄之助君
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
町村制中改正法律案
提出者古屋善造君
國有土地森林原野下戾申請期間ニ關スル法律案
提出者宮古啓三郞君松島廉作君彥治六
木內信君龜岡德太郞君川江角覺
印下高平野島上大一小堀兩平吉君君君君君君
成齋田藤貫
其營業者會臼井哲彥夫矩道ノ田寺倉忠實七一
丸山邦君君
濱名信大和建築街一郞君
刑事訴訟法中改正法律案
提出者磯部本 大阪市小川平吉君角田眞平君
兩角彥宮古啓三郞君井上八重吉君
田島暢高遠橋山正和君小河源一君
虎弘一彥夫六花枝丸食草鹿甲子太郞君
森向福橫富岡精君君君君榊原經澤田寧君
武勇
坂北村左吉君靑宮崎四 備
懋君牧野逸馬君田柳第4節
神崎東藏君平岡萬次郞君森卓
家祿賞典祿處分法中改正法律案
提出者高橋庄之助君橋本久太郞君恆松隆慶君
國井藤之丞君室原重福君坂本義夫君
地租條例中改正法律案
提出者平岡萬次郞君
府縣制中改正法律案
提出者小河源一君
寄留法案
提出者磯部四郞君江原素六君
大日本帝國水難救濟會國庫補助ニ關スル建議案
提出者松島廉作君根本正君恆松隆慶君
早川龍介君箕浦勝人大津淳一郞君
大日本帝國水難救濟會會員徽章佩用ニ關スル建議案
提出者松島廉作君根本正君恆松隆慶君
早川龍介君箕浦勝人君大津淳一郞君
鐵道ニ關スル建議案
提出者松田正久君原敬君
明治三十四年法律第二十七號中改正法律案
提出者內山吉太君
請願規程制定ニ關スル建議案
提出者山根正次君
電信取扱時間復舊及郵便集配囘數增加ニ關スル建議案
提出者藤金作君恆松隆慶君太田善四郞君
私設鐵道法中改正法律案
提出者奧野市次郞君
商務院設置建議案
提出者岩谷松平君
日本勸業銀行法中改正法律案
提出者櫻井靜君鈴木久次郞君
上奏案
提出者犬養毅君河野廣中君箕浦勝人君
武富時敏君萩野左門君
政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
明治三十四年度豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
明治三十四年度特別會計豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
明治三十四年度〓國事件第二豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
鐵道敷設法中改正法律案
事業公債條例中改正法律案
(第二號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
政府ハ左ノ議案ヲ撤囘セリ
地租條例中改正法律案
府縣制市制及町村制中改正法律案
軍艦水雷艇補充基金組入ニ關スル法律案
(特第三號)明治三十六年度特別會計歲入歲出豫算追加案
日本興業銀行法中改正法律案
政府ハ左ノ議案ニ對シ修正セラレタリ
(第二號)明治三十六年度歲入歲出總豫算追加案
政府ハ左ノ議案ニ對シ緊急事件トシテ議決ヲ請求セラレタリ
鐵道敷設法中改正法律案
事業公債條例中改正法律案
政府ヨリ明治三十四年四月一日ヨリ同三十五年三月三十一日ニ至ル各省所管
官有財產增減異動報告アリタリ
島田三郞君ヨリ足尾銅山鑛毒ニ關シ、井上甚太郞君ヨリ農事改良ノ方針ニ關シ、
小川平吉君、村松愛藏君ヨリ露兵撤退竝ニ滿州開放ニ關シ、角田眞平君ヨリ公
債賣却ニ關シ、鳩山和夫君、加藤政之助君ヨリ公金濫出ニ關シ守屋此助君ヨ
リ〓國旅順口ニ在留セル帝國臣民ノ裁判管轄ニ關シ、大竹貫一君吉村英徵君
ヨリ海軍第三期擴張費ノ財源ニ關シ、大石正巳君ヨリ外政ニ關スル質問主意書ヲ
提出セラレタリ
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス)
足尾銅山鑛毒ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十六年五月十八日
提出者島田三郞贊成者中島祐八
外三十一名
足尾銅山鑛毒ニ關スル質問書
一政府ハ第十六議會ニ於テ調査費ヲ要求シ足尾銅山其他ノ鑛毒ニ關スル一切ノ
事項ヲ調査セリ其成績如何
一明治三十年ニ施設セシ足尾鑛毒豫防工事ハ其後ノ經過ニ於テ效驗ナク山林河
川田野ノ荒廢年ヲ逐テ劇甚ナリ政府ハ國土ノ荒廢ヲ坐視セントスル乎
一足尾ノ地勢ハ人工ヲ以テ毒害防止ノ效功ヲ奏ス可カラサル明確ノ事實ナリ政府
ハ現ニ國土人民ヲ害シツヽアル稼行ヲ停止セス其善後ノ策ヲ建テサルハ何故ナル
平
右及質問候他
農事改良ノ方針ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十六年五月十八日
提出者井上甚太郞贊成者井手毛三
外三十七名
農事改良ノ方針ニ關スル質問主意書
一現在ノ農事試驗場ハ其組織規模共ニ小ニシテ農事改良ノ模範タル實ヲ舉クルニ
足ラス政府ハ之ヲ以テ其模範タラシムルニ充分ナリト認ムル乎
一政府カ農事試驗場ノ數ヲ減シタルハ其目的之ヲ集中シテ規模ノ擴張ヲ行フノ方
針ナルヤ將タ其規模ヲ縮小スルノ方針ナル乎
一若シ前項ノ目的ヲ規模ノ擴張ニアリトセハ政府カ地方ニ設ケタル農事試驗支場ニ
シテ其組織規模却テ府縣農事試驗場ニ凌駕セラルヽ者アリ政府ハ如何ニシテ其
組織規模ヲ完全ナラシムル方針ナル乎
一米麥其他ノ試作試驗中往々見ルヘキモノナキニアラスト雖モ政府ハ如何ニシテ之カ
成績ヲ普及セシムルノ實ヲ舉クル方針ナル乎
一政府ハ綿、藍、煙草等重要農產物ノ改良普及ニ力ヲ致シ主トシテ之ヲ內地ニ產
出セシムルノ方針ナルヤ將タ外國輸入ニ放任シテ顧ミサルノ方針ナル乎
右質問ス至急ニ詳細答辯アランコトヲ望ム
露兵撤退竝ニ滿州開放ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十六年五月十九日
提出者小川平吉村松愛藏
贊成者濱名信平
外三十名
露兵撤退竝ニ滿州開放ニ關スル質問主意書
一政府ハ露國カ東〓鐵道守備ノ爲メニ其兵士ヲ鐵道附近ニ駐屯セシムルノ權利ヲ
有スルコトヲ認ムルヤ
一政府ハ目下商讀中ニ屬スル日〓通商條約ニ於テ滿州ヲ列國通商ノ爲メニ開放
セシムルノ一條ヲ挿入スルノ必要ヲ認メサルカ
一何等ノ名義ヲ用ユルニ拘ハラス外國ノ軍隊ヲ滿州ノ地ニ駐屯セシムルハ東洋ノ平
和ニ向テ少ナカラサル危害ヲ釀スモノナリ今ヤ露國ハ滿州ニ於ケル第二次撤兵ノ
期限既ニ過キテ第三次撤兵ノ期限將ニ至ラントスルニ方リ一般撤兵ノ後モ尙ホ
東〓鐵道守備ノ名ヲ以テ其軍隊ノ幾分ヲ滿州ニ駐屯セシメント欲スルモノヽ如ク
諸外國モ亦鐵道守備ノ爲ニスル駐兵ニ限リテ之ヲ容認セント欲スルモノヽ如シ然
レトモ公ニ認メラレタル露〓兩國間ノ條約其他ニ於テ露國カ鐵道ノ守備兵ヲ駐
屯セシムルノ權利ヲ獲得シタルコトアルヲ聞カス之レ本質問ヲ提出スル所以ナリ
一滿州ノ開閉ハ我國ノ通商上ニ重大ナル影響ヲ及ホスノミナラス東洋ノ平和ニ緊切
ナル關係ヲ有スル我國ハ宜シク利害共通ノ列國ト提携シテ其土地ヲ世界ニ開
放セシメ以テ彼我通商ノ便ヲ圖リ併セテ外國ノ野心ヲ抑制セサル可カラス然ルニ
目下商議中ナル日〓通商條約ニハ滿州開放ニ關スル條項アルヲ聞カス又他ニ滿
州開放ノ手段ヲ執リツヽアルコトヲ聞カス之レ本質問ヲ提出スル所以ナリ
公債賣却ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十六年五月二十日
提出者角田眞平贊成者神鞭知常
外二十九名
公債賣却ニ關スル質問主意書
第壹明治三十五年中政府カ五千万圓ノ公債ヲ賣出セシハ日本興業銀行ニ賣
却セシヤ將タ日本興業銀行ノ手ヲ經テ政府自ラ外國ヘ賣出セシヤ
第貳若シ日本興業銀行ノ賣却セシモノトスレハ何等ノ理由ニ據リ一千分ノ五ノ
手數料ヲ日本興業銀行ヘ渡セシヤ
第參又日本興業銀行ヘ賣却セシモノトセハ同銀行ハ創立日淺ク其拂込金二百
五十万圓ノミ也然ルニ嚴格ナル法律ト政府ノ監督トノ下ニ營業スル同銀行ヘ對
シ監督者タル政府自ラ法律ノ精神ヲ無視セシ行爲ニ出テタル理由如何
第四若シ日本興業銀行ヘ賣却セシニハアラスシテ同銀行カ信託ノ業務トシテ取扱
ハシメタリトセハ政府ハ日本興業銀行法第何條ニ據リ之ヲ爲サシメシヤ
第五若シ政府ニ於テハ日本興業銀行ヘ賣却セシニモアラス又信託業務トシテ取
扱ハセシニモアラス只命令ヲ以テ之カ斡旋ヲ爲サシメタリトセハ同銀行ニ於ケル其
行爲ハ日本興業銀行法第何條ニ準據セルモノニヤ
右質問ニ對シ政府ハ明確ニ答辯アランコトヲ望ム
公金濫出ニ關スル質問書
右成規ニ依り提出候也
明治三十六年五月二十日
提出者鳩山和夫加藤政之助
贊成者尾形兵太郞
外四十一名
質問主意書
一明治三十三年度歲入歳出決算報告ニ依レハ豫算及法律勅令ニ違背セル事項
歲入ニ於テ六十有三件歲出ニ於テ二百十有五件ノ多キニ及フ然ルニ公金濫出
ノ故ヲ以テ譴責ヲ受ケタル者ハ休職香川縣知事外十一人ニ過キス惟フニ是レ前
記違法行爲ニ依リ公金ヲ濫出セル者ノ一部分ナルヘシ政府ハ其他ノ公金濫出ニ
關係セル官吏ニ對シテハ何等ノ處分ヲナセル乎
二公金濫出ノ行爲ハ啻ニ文官懲戒令ニ依リ譴責減俸若クハ免職處分ニ止ラス
必スヤ刑法上ノ處分ニ該當スヘキモノ尠ナカラサルヲ信ス果シテ然ラハ政府ハ懲
戒令ニ依リテ彼等ヲ處分スルト同時ニ彼等ヲ訴追シテ司法裁判ニ移スヲ以テ
相當トス政府ハ彼等ヲ訴追セサルノ理由如何
〓國旅順口ニ在留セル帝國臣民ノ裁判管轄ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十六年五月二十日
提出者守屋此助贊成者西村丹治郞
外三十一名
〓國旅順口ニ在留セル帝國臣民ノ裁判管轄ニ關スル質問主意書
〓國旅順口ハ露國ノ租借地ニシテ〓國ノ領土ナリ〓國ニ向ッテ治外法權ヲ有スル
帝國ハ旅順口ニ在留セル帝國臣民ニ對シテハ當然裁判權ヲ有スルモノナリ然ルニ昨
年八月三十日旅順口在留ノ帝國人相良友三外八名カ帝國人臼井利八ヲ毆打
死ニ致シタルヲ以テ被害者ノ遺族及舊友ハ帝國領事ニ之ヲ訴ヘタルニ領事治罪ノ
手續ヲ爲サス其末旅順口ニ在ル露國裁判所ハ加害者九名ヲ逮捕監禁ノ上本年一
月五日露國ノ裁判所ニ於テ帝國臣民ニ對シ有罪判決ヲ言渡シ現時刑ノ執行中
ナルニ帝國政府カ之ヲ默過セル理由如何
海軍第三期擴張費ノ財源ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十六年五月二十五日
提出者大竹貫一吉村英徵
贊成者坂口仁一郞
外二十九名
海軍第三期擴張費ノ財源ニ關スル質問主意書
一政府ハ第十七議會ニ於テ海軍第三期擴張費ヲ十一箇年ノ繼續トシテ金九千九
百八十六万餘圓ヲ要求シ之レガ財源ハ偏ニ增租繼續ニ依ルノ外途ナシトシ議會
ノ之ヲ否決セントスルヤ衆議院ヲ解散シタリ而テ當第十八議會ニ於テ再ヒ海軍第
三期擴張費トシテ同額ノ要求ヲ爲スニ當リ其唯一ノ財源ト主張セル繼續增租率
三厘ヲ減シ百分ノ三トナシ之レカ爲メニ一箇年四百餘万圓ノ不足ヲ生セリ此不
足額ハ何等ノ收入ニヨリテ之ヲ支辨セントスル歟ノ質問ニ對シテ
行政整理ニ於テ一百万圓
鐵道繰延ニ於テ二百五十万圓
電話繰延ニ於テ五十万圓
ヲ以テ支辨スヘシト答ヘタリ而テ政府ハ一面民力ノ發展ニ必要ナル計畫トシ交通
機關ノ整備ヲ唱ヘ卽電話、鐵道等ニ對シ己ニ擴張ノ計畫ヲ立テ巨額ノ要求ヲ爲
シナカラ却テ前記ノ如キ繰延ヲ爲スハ矛盾ノ行爲ナラスヤ政府ノ方針ハ擴張ニアル
歟將タ又繰延ニアル歟
一前項電話、鐵道繰延ニ對スル各年度ノ更定年割金額及事業ノ豫定ハ如何
一大藏大臣男爵曾禰荒助君ハ一昨十八日ノ豫算委員會ニ於テ某委員ノ質問ニ
對シ公債政略ニ依ラヌト斷言シタリ而テ昨十九日地租條例中改正法律案ハ該
委員會ニ於テ大多數ヲ以テ否決セルヲ以テ見レハ衆議院ノ該法案ニ對スル意向
モ判明セリ此場合ニ於テ政府ハ海軍第三期擴張費ノ財源ハ何ニ依ラントスル歟
理由
明治三十六年度歲入出追加案協賛ノ必要上本質問ヲ提出ス
外政ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十六年五月二十六日
提出者大石正巳贊成者神鞭知常
外四十二名
質問主意書
一韓國近來ノ外患ハ延テ危險ヲ帝國ニ及ホシ帝國ノ利益ヲ侵害スルコト尠ナカラス
帝國政府ハ之レカ豫防救濟ノ道ニ於テ今日ニ到ルマテ實行シタル〓末奈何
一第一撒兵期以來滿州ノ狀態ハ〓國ノ主權ヲ蹂躙シ帝國ノ利益ヲ侵害シ終ニ極
東ノ平和ヲ攪亂セントス帝國政府カ之ニ對スル外交上ノ行動ハ現今如何ナル程
度境遇ニ在ル乎
一〓韓ノ保全ヲ主義トスル日英同盟ハ東洋刻下ノ境遇其效果ヲ見ル可キハ固ヨリ
疑ヲ容レス然ルニ外交上協同ノ態度ヲ取ラサルハ帝國政府ノ撰ム所ナルカ將タ他
ニ理由アル乎
一極東ノ平和ヲ維持シ帝國ノ勢力及利益ヲ增進センカ爲ニハ國防ノ充實最モ必要
ナリト雖モ今日ノ如キ東亞ノ變態ヲ默過センカ國防充實ノ必要何クニ在ル乎
一近來列强カ極東ヲ以テ世界競爭ノ中心〓トシ盛ニ其經營ヲ爲スニ當リ境ヲ接ス
ル帝國政府ハ何等観ルヘキノ經營ヲ爲サス且又列國ハ軍備擴張ヲ圖ルト同時ニ
農商工業ヲ奬勵シテ稅源ノ涵養ヲ怠ラス然ルニ帝國政府ノ農商工業ニ對スル舉
措ハ稅源ヲ沽渴スルノ事實アリ當局者ノ所謂開國進取國力發展ノ政策ハ事實
ニ於テ矛盾スルニ非ラサル乎発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/2
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003・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、諸君ニ御諮リ致シタイコトガアリマ
スル、征矢野半彌君ヨリ母病氣看護ノタメ、本月十九日ヨリ向フ二週間請暇ノ申
出ガアリマスルガ、許可ヲ致シテ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/3
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004・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガアリマセヌケレバ、許可スルコトニ致シマス、又山
口熊野君ヨリ病氣ノ故ヲ以テ、豫算委員ノ辭任ヲ申出ラレテ居リマスルガ、是ハ許可ヲ
致シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/4
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005・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ許可スルコトニ致シマス、就イテハ第一部ニ
於キマシテ、本日〓會後、其補闕ヲ選舉セラレンコトヲ希望致シマス、宮崎鋪三郞ヨリ、
病氣ノ故ヲ以テ、決算委員及鐵道敷設法中改正法律案外一件ノ委員ノ、辭任ヲ中
出ラレテ居リマスガ、許可致シテ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/5
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006・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ許可スルコトニ致シマス、就イテハ決算委
員ノ補闕ハ第八部ニ於テ、本日散會後、選舉アランコトヲ希望致シマス、鐵道敷設法
中改正法律案外一件ノ委員ハ議長ノ指名デゴザイマスルデ、小生カラ其補闕トシテ岡
村新三郞君ヲ指名致シマス、尙諸君ニ御諮リヲ致シタイコトガアリマスルガ、會期モ切迫
ヲ致シテ居リマスルデ、議案ヲ提出ヲ致シマシテカラ、定期ノ日數ヲ經ナクテモ、議事日程
ニ登載スルコトニ致シテ、御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/6
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007・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバサウ致シマス、是迄本會議及委員會ハ隔
日ニスルコトニナッテ居リマスルガ、議案ノ都合ニ依リマシテ、此隔日ニスルコトヲ、本會ヲ
其委員會ノ日ニ於テ開クト云フコトニ致シテ、御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/7
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008・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバサウ致シマス、尙又此委員會ハ委員會ノ
日、本會ハ本會ノ日ト極ッテ居リマスルガ、緊急ノ委員會ハ、本會ノ日ニ於キマシテモ、開
クコトヽ致シマシテモ、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/8
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009・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガゴザイマセネバ、サウ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/9
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010・望月小太郎
○望月小太郞君(二百七十六番) 議長······二百七十六番発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/10
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011・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 望月君
〔望月小太郞君登壇〕
〔「簡單ニシタマヘ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/11
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012・望月小太郎
○望月小太郞君(二百七十六番) 諸君、本員ハ今日東洋ノ時局ニ鑑ミマシテ、政
府ノ答辯ヲ促ガサンガタメニ、此處ニ外交質問書ノ理由ヲ陳述シマスル然ルニ現內
闇ハ口ヲ開ケバ、卽チ曰ク是ヲ世界ノ大勢ニ鑑ミ、是ヲ宇內ノ進運ニ徵スルト云フ、
其大勢、其進運ニ關係アル此外交問題ノ質問アル當日ニ於テ、內閣員一人モ列席
シテ居ナイト云フ程不親切デアル(「ソレハ君カラ出シタカラダ」ト呼フ者アリ)ト云フコ
トハ一言此處ニ本題ニ入ルニ先ツテ、本員ノ痛憤ヲ漏ラシテ置キマス、サテ諸君、私
ガ質問ノ要旨ハ(「簡單々々」ト呼フ者アリ)極東現時ノ形勢ニ關シ帝國政府ハ露西
亞政府ニ對シ更ニ將來親密ナル關係ヲ確定スルノ目的ヲ以テ一、日英協約ニ明記シ
タル朝鮮ニ於ケル帝國ノ政治的地位ニ關シ平和的手段ヲ以テ露西亞政府ヲシテ之ト
同一ナル有效ノ認識ヲナサシムルノ必要ナキカ二、滿洲ニ於ケル露西亞帝國ノ撤兵ニ
關シ帝國政府目下ノ行動ハ果シテ能ク其目的ヲ達シ兩帝國將來ノ關係ヲ圓滿ナラ
シムルニ足ル乎ト云フデアリマス、今此趣意ヲ陳述スルニ先ダチマシテ、特ニ一言致シ
タイコトハ本來現內閣ガ、昨年來ヨリ、其自家ノ杜撰ナル腦髓ヨリシテ、國家財政
ノ經營上必要ナリトシテ、地租案ヲ提出致シタ原因モ、將タ亦脅迫的ニモ、無責任ナ
ル解散ヲ十七議會ニ斷行シ、而モ同一ナル議案ヲ恬然ト十八議會ニ提出シ、更ニ今
日ハ是ヲ撤囘スルト云フガ如キ、更ニ其撤囘後ニ於テ新ラシキ財源ニ依テ以テ、海軍
擴張ヲ擴張セントスル其目的モ、歸スル所ハ唯露西亞ノ關係ヲ如何ニセント云フニ外ナ
ラズト信ズルノデアリマス、故ニ本員ノ質問ハ是ヲ三段ニ分ケ、第一政府ガ表面號シテ
親密ノ關係アルト云フ露西亞帝國ニ對シ、現時ヨリハ尙一層具體的ニ外交ノ方針
ヲ確立シタイト云フ希望ヨリシテ、第二ニ朝鮮問題、第三ニ滿洲問題ニ對シ、本員ノ
所見ヲ述ベテ以テ、政府ノ答辯ヲ求メントスルノデアリマス、諸君、露西亞ト云ヘル綴リ
ガ、如何ニ我ガ國民ノ腦中ニ記臆セラレテ居ルカハ、本員モ諸君ト其感ヲ同ジウスル所
デアリマス從ッテ本員質問ノ趣意書ハ、餘リ簡單ニ失シ、爲メニ不得要領ノ政府ヲシ
テ、例ニ依テ例ノ如ク、唯グ表面一片ノ答辯ヲ爲サシムルニ過ギマスマイ、政府ハ言ハ
ム、東洋ニ於ケル日露ノ關係ハ、今ニシテ親密デアル、而シテ將來益:親密ナルベシト、
又朝鮮ニ於ケル帝國ノ政治的地位ニ關シテハ日英協約ノ當時之ヲ露國ニ通牒シ、露
國モ明カニ認識シタ以上ハ、此上有效ナル認識ヲ爲サシムル必要ナシト答ヘマセウ、若
シ夫レ滿洲問題ニ至テハ、其撤兵ハ素ト是レ露國善意ノ宣言デアル、帝國政府ハ此
露國善意ノ宣言ニ信賴スル結果、友誼的行動ヲ以テ、此撤兵ニ關スル刻下ノ
交涉ハ必ズヤ其目的ヲ達シ、而カモ兩帝國前途ノ親密ヲ害スルモノデナイト云フ
位ノ、御答辯ヲナサイマセウ、成程諸君、昨年來政府ガ上聖明ヲ强ヒ奉リ、下國民
ヲ欺ク所ノ其政府ガ、顧ミテ自己ノ良心ヲ欺キ、尙表面太平ヲ謳フガ如キ裝ヒヲ
爲ス答辯ヲ爲スコトハ、本員決シテ之ヲ怪ミマセヌ、去リナガラ事實ハ之ニ反シテアルノデ
アル、日露ノ東洋ニ於ケル現狀ハ、恰モ怒レル力士ガ噴火山頭ニ對座スルガ如ク、其山
脈ノ下層ニハ脈々タル火焔ガ、刻一刻ト其危機ノ爆發ヲ早メテ居ル今日、諸君、本員ガ
殊ニ小村外務大臣ニ向ッテ望ム所ハ大臣ハ此時局ノ趨勢ニ鑑ミ、例ノ活版的死文ノ
答辯ヲ以テ、本員ノ質問ヲ埋沒セズ、外相自ラ此國民的訟庭ニ立タレテ、而シテ此露
西亞ニ對スル根本的問題、而シテ朝鮮、而シテ滿洲ニ對スル政府ノ所見ヲ、十分說明
アランコトヲ希望致シマス、本論全體ノ眼目ト致シマシテ、本員ノ所見ヲ述ベマスレバ、
抑〓今日宇內列强民ヲ支配スル、所謂時代ノ精神トモ云フベキ民族ノ發展、國力ノ擴
張ト云フコトハ其實天ガ平等均一ニ、各國民ニ分與シタル天權デアル、左リナガラ一國
發達ノ天權が、若シモ他國發達ノ天權ヲ防害シタル場合ニ於テ、其防害セラレタル國民
ハ、天權自衞ノ必要上、已ムナク玆ニ自衞ト自衞トノ衝突ノ來ルハ、蓋シ國家生存上、
免カルベカラザル必要デアル、此自衞ノ必要上ヨリシテ考フルニ、外交ノ目的ハ其時局
問題ヲ解決スルニ於テハ、必ズヤ國家永遠ノ方針ト伴フコトノ必要ガアル所謂當代
ノ國民ハ、啻ニ其時代ノ主人公ノミニ非ズシテ、後世子孫ノ監督人ナリト云ヘル言葉
ハ外交ノ國策ヲ定ムルニ於テ、寸刻モ忘ル可カラザル原則ト信ズルノデアリマス諸
君、此原則ヨリシテ、熟〓東洋ノ局面ニ於ケル日露兩國ハ、今日政府ノ目シテ以テ親密
ノ關係ト云フ表面ノ成行ニ依賴シテ、吾ミハ我ガ友邦露國ニ向ッテ、永古不變ニ其親
密ノ關係ガ保チ得ラレマセウカ、抑〓神ノ禁ズル衝突ハ、遂ニ兩帝國ノ前途ニ免ルベカ
ラザルモノデアルカハ是員ニ本員ガ訴ヘントスル所ノ眼目デアリマス、諸君、東洋ノ局面
ニ於テ、日露兩帝國ノ兩立如何ヲ論斷スルニ先チマシテ、世界ニ於ケル露西亞ノ地
形ヨリ立論スルノ必要ガアル諸君、吾等ノ友邦タル露西亞、世界陸地ノ六分ノ一ヲ
有スル所ノ露西亞ガ世界ニ於ケル地形ハ、恰モ十字形ナル楔姿ニ歐羅巴亞細亞ノ兩方
面ニ打込マレテアルノデアリマス、而シテ此十字形ナル露國ノ楔ヲ受クル歐羅巴亞細亞
ハ、凹字形ナル皿ナリニ之ヲ受ケテ居ル、卽チ西ハ芬蘭バルチック黒海、裏海、而シ
テアフガニスタン、ヒマラヤ山頭ニ至ッテ、丁字ノ尖頭ガ盡キ、是ヨリ北ヘ上ッテ、支那ノ國
境蒙古、滿洲、朝鮮ニ至ッテ、丁字ノ右角ガ盡キル、是則チ御案內ノ如ク、世界ニ
於ケル露國ノ地形デアル、玆ニ於テ本員ノ問ハント欲スル所ハ(「簡單」ト呼フ者アリ)
抑〓此丁字形ナル露國ノ楔ハ打テバ打ツ程、何レノ方面ニ其步武ヲ開拓シテ往クカト
云フコト、言ヒ換ヘレバ露國民族ノ發展、其擴張ノ方面ハ歐羅巴デアルカ、亞細亞デア
ルカト云フコトハ卽チ時局ノ-現時ノ東洋問題ヲ解決スル鎖鑰デアルト信ズルノデ
アリマス、而シテ事物自然ノ原則ヨリ膨脹性アルモノハ抗抵力少ナキ方面ニ發達ス
ルトシテ、先ヅ第一ウラルヲ中心トシタル西歐羅巴領ニ於テ、露國ハ今後發逹ノ方面
ガアリマスルカ、第一ニ農業ノ點ヨリ見ルモ、歐羅巴露西亞領ニ於ケル四十九縣ノ中二
十一縣ハ〓物不足、饑饉連發、而カモ其土地ハ黑壤地トシテ歐亞全土ノ五分ノ一
其他ハ森林沼澤沮除ノ地デアル、第二ノ商工業ノ點カラ見ルモ、露國ニハ一ノ製產品
ガナイ、僅カニ保護政策ニ依テ、其自國ノ幼稈ナル製產品ヲ、東亞ノ方面ニ販路ヲ求
メツヽアル今日ニ於テ、露國ガ經濟的ニ歐羅巴方面ニ、擴張ノ餘地ガナイト斷案スルノ
デアリマス、加之國際的ヨリ之ヲ考フレバ、第一バルチックヲ越エテハ、獨逸アリ英吉利
アリ、彼ガ一步モ此方面ニ向フコトハ出來マセヌ、下ッテ黑海ハ御案內ノ如ク、國際的
鎖港デアル、去ッテ地中海ニ至ル、此東方方面、卽チ「レバント」方面ニ彼ガ根據ヲ築キ、
是ヨリシリヤ、メソポタミヤ、小亞細亞ニ向ッテ其步武ヲ進メンコトハ、彼ノ希望デハアル
ガ、吾〓ノ同盟國タル英國ガ(「簡單」ト呼フ者アリ)其世界ノ統一ノ中心トシテ、地中
海ニハ、ジブラルターマルタ、アゼン、サイプラス等ノ要地ヲ扼シテアル間ハ、是亦露國ガ
一歩モ地中海ニ下ルコトハ出來ヌノデアル(「簡單」ト呼フ者アリ)諸君、朝鮮、滿洲問
題ガ、サウ簡單ニハ參リマセヌ(「ヤルベシト」ト呼フ者アリ)然ラバ卽チ露國ハ歐羅巴方
面ニ向テハ、)其民族ノ發展、其國力ノ擴張ハ最早今後絕望デアル故ニ今日ノ巴
爾汗問題アルニ於テモ彼ハ一一百年間其バイザンチン帝國ノ相續者タル野心ヲ抛ッテ、極
東ノ方面ニ力ヲ注グ、其眞原因ハ全ク玆ニアリト信ズルノデアリマス、サテ斯ク論斷シ
來ッテ見レバ、今後露西亞國ハ唯亞細亞方面以外ニハ開墾スベキ新天地ガナイトシ
テ、其亞細亞、方面ニ於テ、第一ニ波斯ヲ征シテ、波斯灣頭ニ出デンカ、是モ亦吾〓ノ
同盟國タル英國ガ、過日モ英國ノ議會ニ於テ宣言シタル如ク、死生存亡ヲ以テ露西
亞ノ南下ヲ抗拒シテ居ル、次ニ印度方面、是モ亦英吉利ガ其東洋ニ對シ、濠洲ニ對
シ、亞非利加ニ對シ、英國人最後ノ一人ニナル迄ハ露國ノ南下ヲ許サヌト云フ、斯クノ如
ク東亞ノ方面ニ於テモ、運命極ッタル露國、諸君、言換ヘレバ丁字形ナル露國ノ楔ハ、天
地ノ間、僅ニ支那、僅ニ朝鮮、此二方面ヨリ外ニハ打込ムベキ餘地ガナイト斷案スルノデ
アル、詳シク申シマスレバ、北緯三十五度ヨリ四十五度、就中四十度ニ於テ卽チ朝鮮ノ
减鏡道ヲ中心トシ、鴨綠江ヲ橫ギリ、進ンデ滿洲ノ沃野ニ入ル、是ガ卽チ露國發展ノ新
方面デ、是ガ卽チ今後吾〓民族ノ發展擴張ガ露國ト共ニ兩立スルコトガ、出來得ルヤ
否ヤト云フコトヲ、論斷スル鎖鑰デアルト信ズルノデアル、斯ノ如クニシテ、露國ハ其東亞ニ
對スル野心ハ、瀑布ノ如ク、四十年間一刻モ囘顧シナカッタノデアル、卽チ四十二年前
彼ガ浦鹽斯德ヲ取リ、五年前族順ヲ取リ、彼ハ斯ノ如クシテ東洋ノ中原ニ喰入ッタ、
其中原ニ喰入ッタ彼ノ根據ノ破ルベカラザルハ、天地ノ宿命ニナッタノデアリマス、玆ニ
於テ本員ハ問フ、抑〓此露國ノ東亞ニ於ケル中堅、卽チ彼ガ長所ハ、又軍略上、又
地理上、彼ノ短所デアル故ニ若シモ吾等國民ガ其天權自衞ノ必要上、露國ニ對
スル方面ガアルトシタナラバ、吾等ハ此露國ノ長所、卽チ短所タル東亞方面ニ於テ、之
ヲ喰止ムル必要ガアルト信ズルノデアリマス、諸君、本員ヲ以テ、漫ニ不祥ノ言ヲ弄ブ
モノト爲スコトナカランコトヲ、顧ミレバ柴比利亞征服以來三百年間、露國ガ亞細
亞ヲ蠶〓シタ其里數ハ年々二万六千方哩ニナッテ來テ居ル、之ヲ吾等國民ガ四千五百
万ノ入費ニ於テ、二千六百年間存在ノ入費ニ於テ而カモ千載一遇ノ日〓戰爭ニ
於テ、僅カニ江山一万三千哩ト云フ臺灣ヲ獲タ、其比較ト露國ハ三百年間平均一
年臺灣ノ二倍丈ケノ天地ヲ開墾シタノデアル、吾ミハ劍ヲ以テシ、彼ハ舌ヲ以テス
ル、此亞細亞ノ前途ヲ見マスレバ、今日既ニ亞細亞三分ノ一ハ露領トナリ、殘ル土耳其
ノ亡ビザル、彼斯ノ亡ビザルハ、英アリ、獨アリ、、而シテ支那、而シテ朝鮮ノ保全セラレル所
以ハ、諸君、、日英同盟ノ力ト言ハンヨリ、寧ロ吾〓國民ノ雙肩ニ懸ッテ居ル責任デハアリ
マスマイカ、故ニ此露國ガ過去ニ於ケル歷史ヲ以テ、將來ヲ照スノ鏡ト致シタナラバ、北
京ノ運命、朝鮮ノ前途、又々知ルベキノミデアリマス、玆ニ於テカ本員ハ言フ、自利自衞
ハ國策ノ眼目ナリト喝破スルニ於テ、何ンノ躊躇スル所ガアリマセウ、故ニ吾〓國民ハ、
露國ノ發展ガ、吾等國民ノ發展擴張ヲ妨害セザル限リノ範圍ニ於テ、之ヲ歡迎スルモ、
苟モ妨害スレバ、吾〓ハ天權自衞ト云フ最後ノ決心アルノミデアル、故ニ地中海以西ノ
問題ハ、吾等ハ吾等ノ子孫ニ讓ルモ、此極東ノ朝鮮滿洲ノ問題ニ對シテハ吾等ト吾等
子孫ノ監督人ト致シ、吾等ハ現在否、今日唯今之ヲ解決スルノ責任ガアルト、本員ハ
信ズルノデアリマス、然ルニ日〓戰爭後ノ形勢、殊ニ朝鮮ノ現況、滿洲ノ有樣、諸君、
此儘ニ日露ノ關係ガ進デ居ッテ、東洋ノ平和ヲ維持スルコトハ、夫レ幾干デアリマセウ、
然ルニ現内閣ハ、イツモ此日露ノ關係ヲ以テ表裏共ニ親密ト思フテ居ラレルノハ、責任
アルモノ地位ト致シテ、至極尤モノコトデハアルガ如クナレドモ、去リナガラ内閣諸君が、果
シテ日露ノ現況ガ、今日表裏共ニ親密ノ關係ヲ有シテ居ルモノト信ズルナラバ是實ニ
脚下萬丈ノ「ナイル」ノ濕布ノアルコトヲ知ラズシテ、徒ニ目前大平ノ痴夢ニ醉フモノト云
ハナケレバナラヌ、又果シテ當局者ガ日露ノ關係親密ナリト云ハヾ、戰後ノ經營、海陸
軍ノ增加、民カ負擔ノ苛重、增稅又增稅、)終ニ無意味ニ歸セナケレバナラヌノデアル、是
ヲ以テ本員ガ露國ノ今日ニ於ケル、東亞ノ形勢ヲ見マスレバ日露ノ關係ハ恰カモ、鐵
拳ヲ包ムニ天鵝絨ヲ以テシタ所ノ外交デアル、表裏ノ親密ハ決シテ增進シテ居ラヌト思
フノデアル、少クモ日露兩國民ガ、今日感情ノ衝突結ンデ解ケザランカ、彼ノクリミヤ戰
爭ノ如ク終ニ東洋ノ局面ニ於テ、第二ノクリミヤ戰爭ヲ起スモノハ、斯クノ如ク表裏共
ニ親密ト滿足シテ居ル姑息ノ外交ヨリ生ズル結果ト、本員ハ前途ヲ憂フルモノデアリマス、
故ニ諸君、帝國ガ露國ニ對スル其外交ハ根本的ニ第一ニ露國ヲ以テ友トスルカ、友ト
スヘカラザルカ、言換レバ東洋ノ局面ニ於テ、日露兩國ハ兩立スベキカ、スベカラザルカト云
フコト、友トシ得ベクンバ、軍備ノ競爭モ成程度ニ折合ガ付キマス、衝突ノ要點モ速カニ
解決ガ出來マス、併シ若シ友トスベカラズ兩立スベカラザルモノトシタナラバ、諸君、、鐵ハ熱
スルトキニ之ヲ打ツニアラザレバ屈伸不自由デアル、今ヤ東亞ノ鐵ハ熱シテ、之ヲ打タン
トスル四千五百万ノ鎚ハ、、舉ゲテ以テ國民ノ頭上ニ用意セラレテ居ル今日、政府ハ何ヲ
躊躇シテ、日露ノ關係ヲ、斯ノ如ク表裏共ニ瞹眛ノ間ニ葬ッテ居ルノデアリマスカ、斯ノ
如キ形勢ヨリシテ、本員ハ先ヅ第一ノ露國ニ對スル根本的外交ノ方針ヲ定メ、而シテ
朝鮮、而シテ滿洲ニ論及シヤウト云フ、是ガ卽チ第一ノ斷案デアリマス、是ヨリ朝鮮問
題ニ論及致シマス、諸君朝鮮ニ於ケル帝國ノ地位ニ關シマシテハ、日英協約ノ第一條
ニ於テハ唯ニ經濟的地位ノミナラズ、政治的勢力ヲ認識シテ居ルノデアリマス、然ル
ニ日露議定書ノ第三條ニ於テハ、僅カニ經濟的地位ヲ認識セラレテ居ルニ過ギナイノデ
アル、斯ノ如ク英國ニ向テハ二箇ノ條件ヲ認メシメ、露國ニ向ッテハ一箇ノ條件ヲ認メ
シメテ居ルニ過ギナイ、其結果ハドウデアルカ、日露兩國ハ朝鮮ニ向ッテ、各〓其勢力
範圍ノ擴張ニ競爭シ、今日ノ日露兩國ガ朝鮮ニ於ケル有樣ハ恰モ龍虎珠ヲ樹間ニ
爭フト云フ形勢デアリマス、因ッテ本員ハ、此日露ガ朝鮮ニ於ケル感情ノ衝突ヲ一掃セン
ガタメニ、帝國政府ヲシテ、一日モ早ク英吉利政府ニ對シ結ンダ如ク、其日英協約ノ第
一條ニ於ケル政治的ノ地位ヲシテ、露國ヲシテ之ヲ認識セシメルト云フ必要ヲ認メルノデ
アリマス、第一ニ歷史的カラ之ヲ考ヘマスルモ、朝鮮ハ我國ノ歷史的靈場地ト致シ、
日本國民ノ血一滴アラン限リハ、是ハ日本ノ獨立勢力中ニ、其朝鮮ノ獨立ヲ扶植シナ
ケレバナラヌ「靈地」ト信ズル、又第二ノ國防ノ上カラ論ズルモ、朝鮮ニシテ他國ノ有ト
ナランカ、吾ハ恰モ「ピストル」ヲ擬セラレタ地位ニ立ツノデアル、若シ夫レ第三ノ經濟上
ノ地位ニ至ッタナラバ、御案內ノ如ク吾等ノ國民ハ年々五十万ノ增殖ヲナス、百年ヲ
出ヌ中、五十年ニハ吾等ノ人口ハ二倍スル、此二倍シ來ル人口ガ、今日ニ於テ加奈
陀北米濠洲ニ移住スルモノアルモ、外務省ハ成ルベク此移住民ヲ內々ニ於テ、制限シ
ヤウト云フ運動ヲナサレテ居ル、加フルニ其海外ニ於テハ「ナタルロー」ノ精神タル、排日
本人ノ形勢ニ依ッテモ、吾等民族ノ出口ハ世界ノ各方面ニ段々縮ッテ居ルノデアリマス、
然ルニ朝鮮ハ一葦帶水ノ近距離ニシテ、第一ニ全羅、忠〓、慶尙ノ三道ハ、富沃
ニシテ農業ニ適シ、桑業ニ適シ、加フルニ日本民族ガ、前途亞細亞方面ニ發展膨脹ス
ル、其商工業ノ基本地トシテ、ドウシテモ之ヲ日本ノ手ニ持タナケレバナラヌ、現ニ之ラ
人日貿易ノ上カラ見マスルモ、三十年ニ一万三千ノ在韓人ガ、昨年ニ至ッテハ二万二
千ニ上リ、貿易モ三十年ニ四百万ノモノガ、昨年ハ二千万圓ノ多キニ進ンダト云フガ如
〃人口ニ於テ、貿易ニ於テ、五箇年ニ二倍以上五倍ニ至ルト云フ、此形勢ヲ鑑ミマ
シテ、諸君、翻ッテ內地近年ノ境遇ヲ顧ミレバ人口ハ過多デアル、國費ハ多端デアル、
生計ハ困難デアル、而モ民族ノ發展地ヲ他ニ求メルト云フ、其朝鮮ノ現況斯ノ如クン
ハ、抑〓吾等ガ日〓戰爭ハ、支那ノ握ツテ以テ其「ポッケット」中ニ入レントシタ朝鮮ノ珠
ヲ、奪フテ以テ之ニ獨立ノ光ヲ放タシメタノデアリマス、然ルニ此朝鮮ノ獨立ノ珠ガ、日
〓戰後、政府ノ外交方針ノ確定セザル結果トシテ、今ヤ將ニ其朝鮮獨立ノ珠ハ、北方
巨人ノ掌中ニ朦朧タラントシテ居ル有樣デアリマス、事ノ玆ニ至ック原因、換言スレバ、
北方ノ巨人ヲ朝鮮ニ招イタモノ、必ズシモ現內閣一人ノ責任デハアリマセヌケレドモ、之
ヲ招イタ過去ノ張本人ハ誰カト云ヘバ、本員ハ斷言スル、現內閣員又ハ現内閣ニ關
係アル諸君デアルト、之ヲ證據立テテ見マスレバ諸君二十九年ノ春マデ、露西亞ハ縱
ヘ朝鮮ニ於テ德義的勢力アルトハ云ヘ、條約的ニ之ヲ認メナカッタノデアル、然ルニ二十
九年ノ五月十四日、朝鮮問題ニ關シテ日露ノ間ニ、駐兵問題ノ覺書ヲ交換シテ、此
交換ニ依ッテ露國政府モ、亦日本ト同一ナル兵數ヲ置クコトヲ得ルト云フ、明文ヲ置イ
タノデアリマス、換言スレバ、此時マデ、露國ハ經濟的勢力ダモ朝鮮ニナカッタノデアル、
我國ハ歷史的、國防的、經濟的ノ勢力ガアル其我國ガ經濟的勢力ナキ露國ヲ招イ
テ、駐兵ノ共同權ヲ與ヘタノデアル、是ガ卽チ今日ノ朝鮮ニ於ケル、帝國ノ勢力ガ屈辱ヲ
受ケテ居ル第一ノ「ページ」デアリマス、此第一ノ員ニ筆頭、第一ニ筆ヲ下シタモノハ誰レ
デアルカ、卽チ賢明ト稱スル今ノ小村外務大臣、時ノ駐韓公使ガ、此日露ノ覺書ニ調
印シタノデアリマス、諸君、斯ノ如ク日露ノ覺書ハ、卽チ朝鮮ニ露國ヲ招イテ、之ニ共同ノ
權力ヲ與ヘタ此條約ヲ、彼ノ天津條約ニ依ッテ、日本ハ〓國ヨリ條約上ノ權力ヲ、朝鮮
ヲ得タルモノト比較シ來ラバ、其榮辱得失、辯論スルマデノ必要ハナカラウト信ズルノデア
リマス、此覺書ヲ根本ト致シマシテ、超エテ六月九日、現內閣ノ指南役トモ云フ山縣侯
爵ガ、モスコー府ニ於テ日露ノ間ニ調印ヲシテ、鷄林半島ニ於ケル朝鮮ノ勢力ヲ認メタノ
デアリマス、此小村、ウエバーノ覺書、此山縣、「ロバノッフ」ノ議定書ニ基キ-諸君憐レ
ナル、日露ノ議定書、忘レモセヌ、明治三十一年四月ニ於テ、日本ハ公私共ニ露國ノ朝
鮮ニ於ケル勢力ヲ認識シタノデアリマス、卽チ其第一條ニ於テ日露共ニ、朝鮮ノ內政ニ
干涉セザルト云フコト、第二ニ於テハ練兵〓官、財務顧問官ノ任命ハ、相互ノ相談ニ依
ルト云フコト、第三ハ卽チ屈辱ノ紀念デアル、其第三條ニ於テ露國ハ朝鮮ニ於ケル、日
本ノ經濟的發逹ヲ認メ、之ヲ防害セザルベシト云フ條件ノミデアル、諸君、露國ノ經濟
的地位サヘモナイノニ、吾ハ條約的ニ之ニ或意味ニ於ケル政治上ノ勢力ヲ與ヘタノデア
ル吾等ハ經濟的勢力アリ、加フルニ國防的、加フルニ歷史的、其關係ノアルニ拘ハラ
ズ、露國ト共同均一、僅ニ經濟上ノ勢力ヲ認メラレテ、尙且ツ甘ジテ居ル所ノ外交ヲナ
シタノデアル之ヲ彼ノ英佛二國ガ、埃及ニ於テ共同ノ利害ヲ持ッテ居ル、併ナガラ英國
ガ埃及ニ於ケル、其經濟的勢力ハ遂ニ佛國ヲシテ、政治的地位マデモ認識セシメタモ
ノト比較シ來ッタナラバ本員ガ言フ東洋今日屈辱ノ第一頁ノ筆頭ニ此文字ヲ綴ッ
タモノハ、卽チ小村外務大臣デアルト云フノハ、此證據デアリマス、故ニ本員ハ斷言スル、
日〓戰爭ニ依タテ吾等四千五百万人ガ、血ト鐵トノ入費ニ於テ洗ヒ淨メントシタ朝鮮
獨立ノ珠ハ、現內閣ニ關係アル諸君ガ、更ニヨリ大ナルヨリ强キ、第二ノ〓國ニ委ネ
タルモノト論斷スルニ至ッテモ、、別ニ言葉ノ返事ハアリマスマイト信ズルノデアリマス、爾來
朝鮮ニ於ケル形勢ハドウデアリマス、外交ノ方針百事事變ノ成行ニ一任シテ居ル、人心
胸々ノ折柄、遂ニ三十三年三月、朝鮮政府ハ露國政府ニ向ッテ、日本ノ對岸卽チ釜山
ノ近所ニ在ル所ノ巨濟島ヲ、他國ニ割讓又ハ貸與シナイト云フ約束マデモシタノデアル、
此折柄遂ニ進ンデ今日ノ日英條約トナッタ、其日英條約ニ於テハ、日本ノ朝鮮ニ於ケル
政治的地位ハ認識セラレタモノヽ諸君、冷靜ニ此條約ノ精神ヲ翫味スレバ歸スル所
東亞ノ局面ニ於テ、不幸日露干戈ニ見エントスルコトガアッタナラバ結局一騎打ト云フ
實力問題デアル、現內閣諸公ハ日英協約ヲ以テ、開闢以來未曾有ノ一大成效ト信ゼ
ラレテ居ルヤウデアル本員モ亦其一成效タルコトヲ疑ハヌ、サリナガラ日英協約ニ於ケ
ル日本ノ東洋ニ關スル地位ハ、イザ事ノ起ッタ、干戈ノ曉ニハ日露ノ間ニハ孤立的對
戰デアル其孤立的對戰ハ日英協約ノ前後ヲ問ハズ、同一ノ地位ニ居ルノデアルカラ、
此日英協約ニ於ケル政治的地位ヲ、日英協約ノ締結ト共ニ、露國ヲシテ認識セシメタ
する所、其效能モアリマシタラウ、又今日ニ於テモ之ヲ認識セシメタナラバ、效能ガアリマセ
ウガ、唯日英間ニ協約ヲ結ビ露國ニ對シテ之ヲ認識セシメナイト云フニ至ッテハ、想
フニ日英協約ヲ喜ブモノハ霞ヶ關ヨリハ寧ロ聖彼得堡ノ宮中ニ於テ、三鞭酒ヲ傾ケタ
數ガ多イト信ズルノデアリマス、故ニ本員ハ此日英協約ノ第一條、卽チ我帝國ガ朝鮮
ニ於ケル政治的地位ニ關シテハ露國ヲシテ明ニ之ヲ認識セシメ、露國ノ朝鮮ニ於ケル
政治的勢力ヲ撤退セシメルト云フ交涉ヲナサセタイノデアル、所ガ現内閣ノ諸公ハ、日
英協約成立ノ當時、之ヲ露國ニ通告シタ上ハ、此以上明白ナル認識ヲナサシメルノ
必要ハナイト答ヘマセウ、併ナガラ露國タル第三者ハ、日英兩者ノ間ニ於ケル協約ニ付
テ、何ノ義務ガアリマセウ、恰モ巨濟島ハ朝鮮ガ露國ニ約シタル如ク、第三者タル我邦
ニ關係ガナイガ如ク、露國ニハ何ノ效能モナイノデアリマス、又我政府ハ露國ヲ友邦トシ
テ、其朝鮮ニ屬シ日英間ノ中ニ政治的勢力ノ條約ヲ爲シタ上ハ、此友邦タル露國ニ通
報スルニ於テ、何ノ躊躇スル所ガアリマセウ、然ルニ同一ナル朝鮮問題ヲ、英國ニ向ク
テハ二圓デ賣ル、露國ニ向ッテハ一圓デ賣ルト云フ如ク、外交ノ天秤ニ懸直ガアルト云
ハナケレバナラヌノデアル、諸君、現內閣ハ如何ニモ懸直ガ好キトハ云ヘ、昨年ハ三分三
厘、本年ハ三分デ宜シイ、昨年ハ地租ニアラズンバ海軍擴張費ハナイト云ウテ、今年ハ
寄附金デモ、乞食ニナッテ貫ッテモ往カウト云フガ如キ、其內輪ニ於ケル懸引手段ヲ以
テ、此露國ト云フ外交上ノ老練家ニ對スル懸引ヲシテ、其値段ヲ定メル時分ニハ、
日暮レ途遠シト云フ最期ニ陷リハシナイカト憂フルノデアル、故ニ第一露國ニ對スル外交
ノ方針ヲ定メ、朝鮮問題ニ關シテハ、日露議定書ノ訂正ナリ、變換ナリ、追加ナリ
ヲ申込ミ、而シテ朝鮮ニ於ケル露國ノ勢力ヲ、撤退セシメタイト云フコトデアリマス、諸
君、今日此方針ガ定マラヌ結果、朝鮮ノ形勢ハドウデアリマスカ、丁度セルビヤガ、朝
ハ露西亞ニ賴リ、夕ニハ墺太利ニ賴ルト云フ如ク、朝鮮人ノ腦髓ニハ二ツノ抽斗ガア
ルタメ、或ハ日本黨、或ハ露西亞黨ト、風ノマニ〓〓其外交方針ガ變ハッテ往ク、故
朝鮮ハ日本ノ勢力範圍中ニ、之ガ獨立ヲ經營スベシト云フノガ眼目デアリマス、所ガ此
交涉ニ露國ガ應ゼヌカモ知レヌ、應ゼザレバ之ヲ如何ニスル、宜シイ第一露國ノ應ゼザル
理由トシテ、露國ハ一方ニ於テ浦潮斯德ヲ取リ、他一方ニ於テハ旅順ヲ取リ、彼ガ
此浦潮斯德及旅順ヲ以テ、海力連絡線ヲ朝鮮ノ南端ニ求メントスル是ガ露國ノ東
洋ニ於ケル大根本ノ經營、而シテ露國ハ此浦潮斯德ヲ以テ、東洋ノシブラルタルトナシ、
旅順ヲ以テ東洋ノコロンスタットトナサントスル露國ノ希望ハ、此海力連絡線ヲ朝鮮ノ
南端ニ得、サウシテ北太平洋、黃海、日本海ヲ以テ露國庭前ノ池トナサントスルノデア
ル、然ルニ我レ朝鮮ノ南端ヲ得ンカ、露國ノ浦潮斯德ハ卽チ第二ノ黑海トナリ、我臺
灣ハ東洋ノジブラルタルトナル、而シテ黃海日本海ハ我地中海トナルト云フ次第デアル、
故ニ朝鮮ノ南端ヲ露國ニ於テ之ヲ得ンカ、我邦ハ國運杜絕、國防兩斷セラレル結果、
安危存亡ノ岐ルヽ所而シテ、露國之ヲ得ズシテ吾之ヲ得ンカ、露國ハ唯其海力連絡
線ヲ失フト云フニ過ギナイノデアリマス、恰モ羅馬アルテーデガ地中海上ノ勢力ヲ爭ヒ、
シヽリー島ガ其衝突點タル如ク、シヽリーヲ得ルモノハ羅匡ットナリ失フモノハカルテージトナ
リシガ如ク朝鮮ハ日露兩國間ニ於ケル東洋ノシヽリ-島ナリ此ノ如ク本員ハ日露興亡
ノ危機ハ朝鮮ニアルト云フコトヲ信ズルガタメニ、現內閣ニ向ッテ、此外交方針ノ必要ヲ
論及スル所以ハ、現ニ諸君ノ御案內ノ如ク、此國策ノ根本ガ定マラヌ結果、此頃モド
ウデアルカ、當春以來第一ニ於テ一覽拂手形拒絕ノ禁令ノ如キ、二度マデ朝鮮ニ行ハ
レ、二度マデ我抗議ニ遇ッテ撤囘サレ、而シテ今日義州ニ於テハ露國ノ「ルーブル」ト云フ
紙幣ガ盛ンニ流行シテ居ル、又第二ニ濟州島ノ問題ノ如キ、日本國民ノ漁業、通商ノ
權利ヲ阻害セラレ、之モ抗議ニ依ッテ正サレテシマッタ、又第三洛東江ニ於テ、日本ニ運
送スル貨物ニ、釐金稅ヲ課セラレルト云フ損害ノ如キ、、第四ニ於キマシテハ、目下ノ白
馬山ノ伐木事件ヨリ、進ンデ第五ニハ義州ニハ旣ニ出兵シタト云フ如キ、千變万化ス
ルモノヽ其結果ハ同一ノ走馬燈ヲ繰返スガ如ク、同ジコトガ、每年吾ノノ眼前ニ橫
ハッテ居ルノデアリマス、畢竟朝鮮ニ對スル根本的國策ノ定マラヌ結果、所謂豺狼路ニ
橫ハル焉ンゾ狐狸ヲ問ハント云フヤウナ、今日ノ形勢デアルト信ズルノデアリマス、此 ル
キ有樣ヨリシテ、朝鮮ニ於ケル吾國防的經營サヘモ、未ダ〓ニ附カヌ、第一ニ京釜鐵
道、是ハ政府ガ本會ニ追加豫算ヲ出スト云フコトデアリマスガ、今日迄ノ形勢デハ如
何ナル議案ヲ諸君ガ通過シテモ、ナカ〓〓京釜鐵道ノ實行ハ容易ナラヌト信ジマス、
是ハ道路ノ傳ヘル所デハナイ、本員ガ信任ヲ以テ聞イテ居リマスガ、京釜鐵道內
部ニ向ッテ政府ノ監督ガ不十分デアル以上ハ、到底實行ハ出來マセヌ、現ニ京釜
鐵道ノ重役ノ如キハ、朝鮮ニ旅行スルタメニ、夫妻一族ノ旅費ヲ貰ッタト云フコトデア
ル、此頃或重役ガ朝鮮ニ妻ト共ニ釜山ニ往ッテ、本人ハ內地ニ往キ、其留守中ニ妻ガ
斃レタ、領事在韓日本人ガ集マッテ、其葬式ヲシタ後、其妻ハ眞ノ妻ニアラズシテ、身
元不正ノ一婦人デアッタト云フ次第デアル諸君、畢竟政府ガ朝鮮問題ニ冷淡ナル結
果、其內部ノ監督サヘ不行屆デアルト云フ證據デアル、又第二ニ義州線ノ如キハ、元
ト是レ佛蘭西人ガ、其滿期ノ時ニ日本政府ヘ、四十万圓デ賣ラウトシタノデアリマス、
之ヲモ買ハナカッタ、今日ハドウデアル、露國ハ朝鮮ニ約束ヲシ、此京義線ハ他國ヘ讓ラ
ヌヤウト云フ條件ヲ取ッタノデアル、併ナガラ時未ダ晩カラズ、我國ガ朝鮮ニ資本ヲ貸ス
ナリ、又京義線ニ對スル實行方法ヲ求メナケレバナラヌ、而シテ進ンデ義州ヨリ營口、是
ハ朝鮮問題デハナイガ、露國ヲ友トスルト友トセザルトニ拘ラズ、何レニシテモ義營線ノ
敷設權ヲ得テ、此ノ如クシテ京釜、京義京仁、義營、而シテ雞林八道ノ風雲ガ我
手ニ收メ得ラルヽト云フ大方計スラ、現內閣ハ定メテ御承知ガアラウガ、空々寂々
ノヤウニ見ユルノデアリマス、此他平壤郡山等ニ於ケル我國ノ領事分館ヲ本館ニ變換
スルト云フコトノ必要ハ、國民ノ外國ニ於ケル其發展擴張上、誠ニ必要デアル次ニ政
府ノ機關銀行ノナイコト、又各地商工業ノ權力ガ英獨露米人ニ多ク移ルト云フ如キ、
甚シキハ退韓令ノ如キ、人權束縛ノ法律今尙ホ現存シテ居ル進ンデ日〓戰爭後、人
命財產ニ關スル其損害ノ要求ハ、聞ク所ニ依レバ七百通モ政府ノ手ニアリマスガ、今
尙ホ其解決ガ付カヌト云フ次第デアル要スルニ朝鮮ニ對シ我根本的政策ノ必要ハ、
獨リ我國民ノミナラズ、朝鮮ハ其政治的組織ノ不完全ナル結果ハ、第一彼等ハ生レテ
一ノ政治的權力ナク、死シテ一ノ墳墓ノ地ナシト云フ如ク、人道問題ヨリ之レヲ考フル
モ、世界ニ朝鮮ヲ紹介シ、其獨立ヲ保障シタ日本ガ、何ヲ苦ンデ根本的政策ニ向ッテ
躊躇送巡スルノデアリマスカ、故ニ諸君、朝鮮問題ハ露國ヲ友トスルカ友トセザルカ、何
レニシテモ一擧萬修ノ斷案ヲ下シ、諸君、鐵砲一發ドント放シテ、而カモ二十四時間最
後ノ通告時間マデハ、尙餘地ガアルト云フ決心ヲ以テ、朝鮮ニ對シマスレバ、此問題ノ
解決ハ容易デアルト、本員ハ信ズルノデアル是ガ卽チ朝鮮ニ對スル本員ノ所見ヲ述べ
テ、政府ノ答辯ヲ促サントスル、第二ノ要點デアリマス、是ヨリ滿洲ノ問題ニ移リマス
(笑聲起ル「簡單々々」ト呼フ者アリ)諸君、サウ簡單デハ分ラヌ政府デアル(「謹聽」ト
呼フ者アリ笑聲起ル)諸君、北〓事變後、滿洲三省ニ於ケル撤兵ニ關シテ、露國ハ明
白ニ昨年四月之ヲ宣言シタノデアル、卽チ第一期ハ去ル十月八日ニ於テハ遼河以西
ノ盛京省、第二去ル四月八日ニ盛京省ノ殘部ト吉林省、第三ガ來ル十月八日ニ
於テ黑龍省、此三省ノ撤兵ハ、露國ハ明ニ承諾致シマシタケレドモ、熟過去ノ歷史
ヲ以テ將來ノ境遇ヲ觀ジマスレバ、此撤兵ノ實行スベカラザルコトハ、當初ヨリ明白デア
リマス、何ヲ以テ明白ト云フカ、諸君、露國ノ世界ニ於ケル地形ハ丁字形ノ楔ト云ヒマ
シタガ、不思議ニモ天ハ偶然ニモ滿洲ニ於テ、此丁字形ナル楔ヲ露國ニ與ヘタノデアル、
卽チ露國ガ滿洲ニ於ケル鐵道政略トシテ、西ノ方滿洲里卽チチタ線トノ連絡線ハ橫
タマニ走ッテ、浦鹽斯德ニ續イテ居ル、而シテ此ノ中心ハ吟留賓ヨリ旅順ニ至ル六百
十五哩、是ガ滿洲ニ於ケル丁字ノ楔デアリマス、此楔ノ尖頭ガ、旅順口ニ打立テラレテ
アルノデアリマス、誰ガ之ヲ旅順ニ立テシメタカハ、本員ハ之ヲ云フモ過去ノ話デアル、併
ナガラ、此丁字形ナル楔ノ沿道左右ニ於ケル大小ノ都府、例ヘバ哈留賓吉林、開
原奉天遼陽、海城、牛莊、旅順等ノ旣露國ノ勢力ノ下ニ入ッテ、此三省ニ
於テハ露西亞兵營アリ、露西亞町アリ、或地方ノ如キハ、九千以上一万ニ垂ントスル
洋館、公園、電氣、電鐵等殆ド滿洲ニ於ケル全野ハ、今ヤ露國ノ新故〓トナッテ居ルト
云フ有樣、斯ルガ故ニ、外國人中殊ニ日本國人ノ如キハ、露國ノ軍隊ノ承諾ヲ得ルニ
アラザレバ、一步モ外出スルコトガ出來ナイヤウニナッテ居リマス、今日滿洲ノ形勢ハ蕩
蕩タル千七百万ノ滿洲人ハ、今ヤ露兵ノ劒㦸縱橫中ニ生活シ、滿洲三省ハ草一本
モ、動カスコトノ出來ヌ時運ト、進ンデ居ルヤウニ見エマス、加之ナラヌ此千五百哩ノ鐵
道、沿道三哩每ニ兵營ヲ置キ、七十五哩ニハ大本營ヲ置キ、之ヲ擁スル所ノ兵ハ旣ニ
三万ニ達シ、而カモ哈留賓ヨリ一呼スレバ、二十万ノ精兵ハ二十四時間中ニ製
テ旅順マデ來ルト云フガ如キ經營ノ成ッタ露國斯ルガ故ニ、昨年十月ノ撤兵ニ於キマシ
テモ、遼河以西ヲ奉天省ニ移スト云フ、唯僅ニ地位ヲ換ヘタバカリデアル、而シテ奉
天省ノ撤兵ハ如何ト一ムヘバ奉天省ノ後ニ天津ヨリ大キイ土地ヲ、新借リテ茲
ニ兵營ヲ築キ、前ノ地ヨリ尙一哩近距離ノ便宜ヲ得タト云フ如キ、露國ノ形勢ヲ鑑ミテ
見マシタナラバ、撤兵ト云フコトハ畢竟各地ノ散兵ヲ、大本營又ハ鐵道沿道ニ集中シ
タニ過ギナイノデアル、今日ノ形勢ニシテ進マンカ、愛親覺羅氏ノ滿洲ハ、事實露領ト
ナラントシ、而シテ、哀々タル支那國民ハ、將ニ露西亞ノ歸化人ニナラントスル形勢ニ移ツ
タノデアリマス、然ルニ帝國政府ガ之ニ對スル目下ノ行動如何ト見マスレバ、單ニ露國ノ
口頭ノ宣言ニ依賴シテ、英米ノ友朋國ト共ニ、之ト友誼的ノ交涉ヲ爲スト云フ位ノ、手
溫キ外交ニ於テ、諸君、果シテ能ク其撤兵ノ目的ヲ達シ、而カモ兩帝國ノ關係ヲ圓滿
ナラシムルコトガ出來マスカ、現ニ撤兵後ノ滿洲ノ形勢ハ第一各省ニ於ケル支那ノ總
督將官ハ露國將官ノ監督ノ下ニ居ルノデアル、吉林省ノ總督ノ如キ、昨年ヨリ向フ
四箇年間露國ノ保險ノ下ニ任官シテ居ルト云フ有樣、又第二ニ三省ニ於ケル支那ノ
武器ハ、大小悉ク露國ニ沒收セラレテ居リマス、軍事上ノ經營此ノ如クシテ、露國ノ半
官報タル「ノベヲブレミヤ」ノ如キハ、滿洲問題ハ內地ノ報道トシテ書列ネテ居ル、軍事上
ノ經營此ノ如キニ搗テ加ヘテ、經濟上ノ經營ヲ見マスレバ、有力ナル大藏大臣ウイッテ
氏ハ、滿洲唯一ノ貿易港營口其營口ノ此政廳ヲ今モ抑ヘテ、別ニ此營口ノ貿易
ダルニ
港ヲ下ッテ、靑泥窪ニ移サントシテ、此靑泥窪ニ對スル滊車滊船賃ノ低落ヲ施シ、
而シテ此靑泥窪カラ通過スル露國、三省ノ滿洲方面ニ於テハ稅關ヲ設置セントスル經
營ヲシテ居ルノデアリマス、次ニ進デ此滿洲ノ支那人ハ其農作物ガ滿洲ノ露西亞占領
以來、三倍ノ値段ニナッテ來タコト、更ニ其支那人ハ露西亞語ヲ〓究シ、露西亞語ヲ知ラ
ズンバ國辱トマデ信ジテ居ルノデアルモリソンノ所謂滿洲ハ、旣ニ露領トナッタノデアル、露
領トナッタ滿洲ハ、ヨシ是レ支那皇帝ニ不利益ナルモ、其支那國民ヲ利益シタルニ於テハ
爭フベカラズト迄斷言シタルハ卽チ滿洲ニ於ケル露國經濟上、軍事上ノ經營ノ內容
デアル、カルガ故ニ、諸君、我同盟國ノ英國ハ、僅カニ滿洲ニ於テ總領事館設立ノ希望ヲ
以テ、唯友誼的撤兵ノ交涉ヲナスニ外ナラヌノデアリマス現ニ英國ノ總理大臣バルホアー
氏ハドウデアルカ、數年前露國ガ滿洲方面ニ來リ、旅順、大連方面ニ出ルヲ求ムルハ自
然ノ必要デアルト云ウテ露國ヲ招イダ人ガ今ノ英國ノ總理大臣デアル、現ニ去ル十二
日ノ電報ヲ見レバ、英國外務卿ハ議會ニ宣告シテ居ル、卽チ英國ハ日米ト共ニ露國
ニ向ヲテ撤兵ノ交涉ヲ致シタルニ、露國ハ之ヲ承諾シタ、併シ一時遷延ヲスルガ、當初
ノ約束ハ違變ハシナイ、其代リ第二ニ於テ露ハ外國ノ通商ニ妨害ヲ加ヘ、又ハ港灣獲
有ノ意思ハナイ、之ヲ以テ英國ハ日本竝ニ米國ト共ニ、協同的行動ノ必要ナシト斷
言致シテ居リマス、諸君、露國ノ云フ此一時、此一時トハ、露國ガ軍事上、經濟上
ノ經營、蜘蛛ノ巢ノ如ク滿洲ニ普クナッテ、蟲一疋モ這出デザル其間ヲ一時ト云フ、又
港灣獲有ノ意思ナシト云フ彼ハ、旣ニ旅順ヲ得、靑泥窪ヲ得、營口ヲ扼シ此以上滿洲
何レノ處ニ港灣ガアリマスルカ、滿洲何レノ山ニ向ッテ次ノ港灣ガ求メラレルカト云フコ
ト、故ニ英國ハ滿洲問題ニ向ッテハ、事實絕望シテ居ルノデアル、又米國ノ國務卿へー
氏ハ、此世界ニ向ッテ滿洲開放ヲ主張シタ論者、此國務卿ノ宣言、是モ去ル十二日ニ
於テ、米國ハ日英トノ聯合的行動ノ必要ハナイ、米國ハ露國ノ行動ヲ監視スレバ印平
足レリト宣言致シタノデアリマス、然ルニ我國民中、殊ニ政府ガ飽マデ此露國ガ撤兵
ノ宣言ニ依賴シ、今日マデ是ガ實行ニ關シテ適切ナル方法ヲ講ゼザルニ至ッテハ、畢竟
露國ニ對スル根本的國策定マラズ、所謂奧齒ニ物ノ挾マッテ居ル外交ヲシテ居ルト言
ハナケレバナラヌノデアル、抑モ既ニ十億ノ費用ヲ費シテ鐵道ヲ敷設シ、露西亞町アリ、
露西亞兵營アル其滿洲三省ガ、如何ニシテ無力ナル〓國ニ尋常一樣ノ手段ヲ以テ囘
復シ得ラレマセウカ、想ヒ起ス、遼東半島還附ノ當時ニ於テ、唯之ヲ還附シテ、無力ナル
〓國ガ如何ニ之ヲ保存シ得ラルヽカ、還附ト共ニ〓國ヲシテ、他國ニ讓與割讓ノ約束ヲ
ナサセナイト云フコト、又明カニ忠言シタ三國ヲシテ、此遼東半島ヲバ自分等モ租借貸與
ヲシナイト云フ條件ヲ附ケテ居ッタナラバ、今日ノ禍ハ殘シマスマイ、此遼東半島還附ノ
過去ヲ思ウテ、現在露國ガ〓國ニ撤兵ノ宣言ヲシタ、其宣言ヲ依賴シテ今ノ滿洲ガ
〓國ノ手中ニ、其主權其保存ヲ全フシ得ラレマセウカ、「タイムス」ノ所謂强硬ノ言葉ハ
如何ニ有力ナルモ、實行ガ伴ハザレバ無用デアルトームッタノハ、帝國ノ外交ヲ冷評シタ言
葉ト本員ハ信ズルノデアル、抑モ露國ノ滿洲ニ於ケル希望ハ、四十餘年前ヨリ最近二十
年間ニ渉ッテ測量隊、軍人、技師、旅行者等雨ノ如ク滿洲ニ其人材ヲ下シテ、而シテ滿
洲三省ノ首尾、全體ヲ、精細ニ調查ヲ加ヘタ後ニ、二十九年ノ「カシニー」條約トナッタ、
此條約ハ今日現存セザルト云フコトヲ云ヒマスガ、要スルニ此條約ニ依ッテ、鐵道敷設權
ヲ得タノデアリマス、當時此鐵道敷權ヲ與ヘタノハ、卽チ滿洲ガ今日露領トナッタ端緒デ
アリマス、諸君、露國ガ曾テ鐵道政策ヲ中央亞細亞ニ施シ、キユバボクハラサマルカンド
等ヲ征服シタ其歷史ヲ、東洋ノ局面ニ繰返シタニ過ギナイノデアル、此時ニ於テ無力ナ
ル〓國ヲ助ケテ、露國ノ鐵道敷設權ノ抗ヲスルノハ、今ノ列國中一ツモナカッタノデア
ル、玆ニ於テカ〓國ハ止ムナク、三十二年來、將ニ滿洲ヲ以テ、露國ノ地圖ニ泣クノモ變
色セラレントシツヽ推移ツタ今日ニ於テ、我帝國政府ハ此滿洲撤兵ノ實行ニ關シ、唯口
頭ノ宣言ニ依賴シ、唯友誼的交涉ヲ試ミル位ニテ、何ノ其目的ガ達セラレマセウ、宜シク常
山ノ蛇勢的外交トモ云フベク首ヲ擊テバ尾之ヲ援ケ、尾ヲ擊テバ首之ヲ助ケ、中腹ヲ
突ケバ首尾共ニ之ニ應ズト云フ、同物同價ノ交換方法ヲ以テ、ドウシテモ是ハ實行サセ
シメルト云フ、其方策ヲ求メルト云フコトヲシナカッタト云フニ至ッテハ本員ハ小村外相
ニ滿腹ノ尊敬ヲ拂ヒナガラ、其外交ヲ以テ、淺薄ナル外交ト論斷セザルヲ得ナイノデアル、
然ラバ卽チ如何ナル適切ノ方法ニ依リマシテ、此滿洲ノ撤兵ヲ實行サセ得ルカト云フ、
其常山的蛇勢ノ外交法案トモ云フベキモノニ就イテ、、本員ノ所見ヲ述ベマセウ、斯ク論ズ
レバトテ諸君ハ本員ヲ以テ、滿韓交換論ノ鼓吹者ト云フ人ガアルカハ知ラヌ、併ナガラ滿
韓交換ハ、旣ニ時機ヲ失ッタ今日ハ、マゴ〓〓シシ居居ルト、滿韓進上トナッテ來テ居ルノ
デアル故ニ本員ノ具體的法案ヲ述ブルニ先チ一言露國ノ外交ハ如何ナルモノカヲ、
簡略ニ申ス必要ガアル、諸君、由來露國ノ口約又ハ宣一言ハ、歷史的如何ナル價値ガアッ
タカハ、諸君ノ御案內ノ如クバツームノ如ク、浦鹽斯德ノ如ク、旅順ノ如ク、彼ハ是ヲ
得ルマデハ世界ノ公開場トシヤウトシテ、之ヲ得レバ直チニ之ヲ鎖港シ、稅關ヲ設ケ、
甚シキハ軍港トナスト云フ、此過去ノ、歷史ヲ考ヘテ見マスレバ、〓シテ露國ノ口約又ハ
宣言ニハ法理學者ノ所謂約因、卽チ交換的約因ト云フモノガアルニアラザレバ效能
ノナイト云フコトヲ、本員ハ斷言スルノデアル、卽チ單ニ撤兵ノ宣言ニ依賴スルノハ約
因ナキ合意ニシテ露國ニ對スル國際的契約ニハ不十分ト云フノデアル是ヲ以テ露
國ヲシテ、眞實滿洲撤兵ノ實行ヲサセシメントスルニハ、本員ノ云フ約因的條件ヲ提出
シタイト云フコトデアル、其約因的條件ハ二ツアル、第一共同出兵ノ件ト云フコト、卽チ
日本ハ支那ニ相談シ、露國ガ撤兵ノ宣言ヲ致シ、而カモ露國ハ云ハン滿洲ノ爭亂起ッ
タ曉ニハ露國ハ駐兵ノ必要ガアル、或ハ鐵道守備兵ヲ置クノ必要ガアルト斯ウ云フカ
ラ、是ニ對シテ日本ハ〓國ト相談シ、露國ノ兵ノミナラズ日、英、米、露、顧クハ四箇國
ノ兵ヲ、丁度北〓事件ニ共同駐兵ヲ爲シタルガ如キ交渉ヲ持込ムカ、少クトモ日本丈
ケハ、〓國ト相談シテ、日露共同ノ出兵ヲ、滿洲ニ爲サシムルト云フ條件ヲ持出シ、是
ハ恰モ朝鮮ニ於ケル日露駐兵條件ノ如キ、難問題ヲ茲ニ提出スルト云フ、是ガ第一ノ
約因、又第二ニハ目下日〓ノ間ニ於テ既ニ通商條約訂正ノ交渉中デアルカラ、日本
ハ宜シク〓國ヲシテ、滿洲三省ヲ解放シ而カモ露國ハ先刻申シタ、英吉利、亞米利加
ニ向ッテ答辯シタル趣意ニ基キ滿洲三省ノ重要ノ都市ヲ解放シ、是ニ向ッテ內地雜居ヲ
許スト云フコトデアル諸君、露國ハ滿洲ヲ以テ獨占領地トシヤウトスル、吾ハ之ヲ以テ
世界ノ公開市場ト致サウト云フニ於テ、吾等ガ遼東半島還附以來ノ形勢ニ照シテ見
テモ、世界ニ向ッテ其要求ガ何ノ耻カシイ所ガアリマスカ、本員ハ此條件ヲ提出スルノハ、
必竟露國ノ軍法タル、强ク擊タズンバ平和ハ永續セズ、「强ク擊シテ而シテ後慈非ヲ加ヘ
ヨ、我法凡ソ此ノ如シ」ト云ッタスコベロッフノ軍法ヲ外交ニ應用シタ、其露國ノ外交ニ
付イテ、英國ノ一總理大臣ハ、現ニ斯ウ言ウテ居ル、「露國ノ外交竝ニ其手段ハ他國
政府ニ强硬ナル意見ナキ間ハ、出來得ベキ丈、長足ノ蠶食ヲナスモ、若シ斷然タル反
對アレバ、直チニ中止退議、以テ更ニ其機會ノ乘ズベキトキ、其餌ヲ一攫セントス、而
カモ此政策ヲ助クルガタメニ、露國政府ノ外交ニハ、二條ノ弦ガアル、曰ク穩和ノ言葉
ト、無頓著ノ宣言ト云々····而シテ出先ニテ成功セン乎遂事如何トモスベカラズ、露國
ノ名譽トシテ撤囘シガタシト答ヘ、翻ッテ成功セザラン乎直ニ官吏ヲ喚戾シ、我政府ハ當
初ヨリ此ノ如ク無頓著ニテ候ト、先キニ用井シ溫言ヲ證明シ、單ニ之ヲ其出先外交官ノ
越權ニ歸ス云々ト、是ハ英國一總理大臣ノ文章ヲ翻譯シタノデアルガ、要スルニ此露國
ハ朝鮮ニ對シ、滿洲ニ對シテ、同一ノ筆法ヲ以テ、今日ノ外交ヲ施シテ居ルニ當ッテ、
我國ガ交換的約因ヲ提出セズシテ、如何ニシテ此撤兵ノ實行ガ出來得ラレマセウ、故ニ本
員ハ前申シタ二箇條ノ交換的約因ヲ以テ、先ヅ朝鮮ニ對シテ政治的地位ヲ認識セ
シメ、滿洲ニ對シテハ內地雜居ヲサセシムルト云フノガ、是ガ本員ノ希望デアル、
此ノ如ク論ズレバトテ、諸君ハ本員ヲ以テ露國ニ對シテ惡魔ト會食ノ用意ヲナセ
ト云フノデナイ、唯天ノ使ガ持來レル千歳一遇ノ機會ハ卽チ今日ニ於テ、此朝鮮
問題、此滿洲問題ヲ解決スルニアラサレバ、我國ノ危難ハ目前ニ迫ッテ居ルト信
ズルノデアル、終リニ臨ンデ上來陳述スルドコロハ畢竟日露兩國ハ東洋ニ於テ兩
立スルヤ如何ト云フコトデアル、苟モ兩立スレバ卽チ可ナリ、兩立セザランカ、國土人
口富大小ノ比較ヨリシテ、此儘ヂリ〓〓經過センカ、我國ハ遂ニ睨ミ潰サレル地位ニ
陷ル有樣デアル現ニ此對露問題ニ關シテ、吾〓國民ガ苦心經營ノ逐一、卽チ戰後
陸海軍ノ擴張ニ向シテハ、償金ト共ニ五億万ノ金ヲ費シ、歲入足ラズ公債增稅、今
又內閣諸君ハ、第三期ノ海軍擴張案ヲ提出スルト云フ、三期尙可ナリ、四期、五
期、漸ク進デ民彌〓生色ナカラントスル前途ヲ思ヘバ、抑〓諸君ハ武裝的平和ノ永續
ハ前途幾許ノ間デアリマセウカ、海軍大臣ハ此擴張ヲ以テ、軍機ノ祕密ト言ヒマス
ガ、日本ノ海軍擴張ガ露西亞ニ對スルノデナイト云フノハ、思フニ世界十四億ノ人口
中、現內閣十人ト云フ人〓デアル、其內デモ山本權兵衞大臣一人カモ知レナイ、決シ
テ祕密デナイ、今ノ時ハ如何ナル時デアル、陸ニ五十万ノ兵アリ、海ニ二十五万噸ノ海
軍アリ、此海軍、此陸軍ヲ永久無邊ニ吾〓國民ガ維持シテ往クト云フニ付イテ、想起
ス伊太利ノ過去、彼ハ軍備擴張ノタメ、今日ノ財政多難ヲ來シタト云フガ如キ、日本
ガ今日ノ此機ヲ逸シタナラバ、遂ニ五十万ノ陸兵アルモ、陸軍ハ到頭亞細亞大陸ニ木
乃伊トナリ、二十五万噸ノ海軍アルモ、其海軍ハ太平洋ノ天麩羅トナルト云フ前途
ヲ思ハナイノデアル乎、故ニ本員ハ斷言スル露國ヲ以テ友トナシ、滿洲問題、朝鮮問
題ハ、上來ノ如ク解決ヲナサイト云フノデアル而シテ露國若シ聽カズンバ、吾等ハ天權
自衞ト云フ最後ノ決心アルバカリデアル、然ルニ政府ノ決心茲ニ出デズ、今ニ至ルマデモ
悠々決斷スルコトナキニ至ッテハ、本員ハ實ニ政府所信ノアル所ヲ怪ムノデアル、苟モ政
府ニシテ此決心アランカ、日本國民中、女ハ其衣ヲ賣リ、男ハ其〓ヲ減ズルモ、恰モ羅
馬府民ガ五度海軍擴張ヲナシタル如クモンテネグロノ住民ガ子々孫々、五百年間其獨
立ヲ維持シタ如ク忠愛熱誠ナル陛下ノ臣氏タル吾等四千五百万ハ、最後ノ血ヲ濺
イデ迄モ、軍備擴張ニハ必ズ貢獻致シマス、然ルニ政府ノ決心茲ニ出デズ、今年又
此兒戲的海軍擴張ヲナシ以テ一時ノ苟安ヲ貪ラントスルニ至ッテハ、抑〓闇臣諸氏ハ、
眞實ニ國家永遠ノ命運ヲ憂慮スルモノデアリマスカ、將タ諸君ハ所謂朝露名利ヲ貪リ
夕陽子孫ヲ愛スルト云フノデアルカ諸君此內閣ノ椅子ガ終天ノ目的ニシテ、諸君ガ伯
爵タリ、子爵タリ、男爵タル、其錦繪ノ武者振眩ユキ其間諸君ノ代表スル五千万國
民ノ其民族ノ發展、其國力ノ膨張ガ、歩一步刻一刻ト削ラレルト云フコトヲ思ヘバ、諸
君ガ、良心ニ省ミテ怩忸タル所ガナイノデアリマスカ、苟モ活キテ政治ニ從フモノ、誰カ
總理大臣タルヲ好マザラン、誰カ外務大臣タルヲ望マザラン(笑聲起ル)サリナガラ、
人ハ遂ニ最後ノ運命ヲ免カレナイ、諸君ガ他年一日北邙一片ノ煙トナッタ曉、
前總理大臣、前外務大臣ト云フ五文字ハ、諸君ガ之ヲ苔蒸ス中ノ石碑カラ見出
シヽ以テ諸君生前ノ名譽ト致シマセウガ、併ナガラ諸君ノ內閣ノ下ニ、東洋ノ形勢此ノ
如クニ推移ッタ曉ニハ諸君ノ子孫、天若シ諸君ニ禍セズシテ、諸君ニ子孫アランカ、此
子孫ハ諸君ノ見テ生前ノ名譽紀念トシタル其五字ハ却テ諸君ノ子孫ハ之ヲ萬古、屈
辱ノ紀念トナスコトハナカラウカ、殊ニ桂伯ニ向ッテ注意ヲ望ムコトハ、此國家大事ノ間
ニ於テ、此現內閣ノ中心タル桂伯、其伯ハ初期以來民黨聯合ヲ打破シ、三十一年
ニ於テ地租增徵問題ヲ無理ニモ通過サセタ所ノ、其策略伯ニシテ、苟モ良心アランカ、中
宵胸ニ手ヲ當テ其心中祕密ノ歷史ヲ繙イタナラバ,滿卷ノ光景夫レ如何デアルカ而カ
モ其最後ノ「ページ」ニ於テ春秋ノ筆法デハナイガ、維時王ノ明治三十六年桂內閣ノ時、
滿韓二洲舉ゲテ以テ之ヲ露國ニ委ヌト、斯ウ絕筆セラルルニ至ッタナラバ、伯タル者ノ名譽
光榮、遂ニ何ンカアラン、然ラズンバ當時日〓戰爭ノ際、旅順金州ノ邊リ伯ガ身死シ魂
孤ニシテ、骨收マラザルコツ、却テ伯ノ名譽トハ思ハナカッタカ、ノデアルカ、諸君、要スルニ日
露ノ問題ハ、時デアル、軍法ニ所謂、己レ殺サレザランコトヲ欲セバ先ヅ己レヲ殺スモノヲ
殺スニアリト云フガ如ク今日ノ時局ニ當ッテ、日本國民ハ伊達ニ刀ヲ帶ヒヌノデアル、
抑〓諸君、劒戰ハ時ニ音樂ヨリモ、尙一層美妙ナル、高尙ナル、雄大ナル福音ヲ國民
ニ傳フルモノデアル吾等ハ戰亂ノ音樂ニ依ッテ平和ノ福音ヲ望ムモノデハアリマセヌガ、
サリナガラ長キ平和ハ、高キ入費ヲ拂フノ決心ヲ要スルノデアリマス、此決心ヲ以テ、卽
チ名譽アル平和ハ、吾等國民ノ願フ所デアル、然ラズンバ速ニ此朝鮮問題、此滿洲問
題ニ向ッテ、最期ノ決心ヲ以テ、是ヲ解決スル天職ヲ現內閣ニ天ガ與ヘタノデアル、此
天職ヲ解決スルニ非ズンバ、滿韓二洲ノ地ハ舉ゲテ以テ之ヲ他人ニ附スルト云フ、前途ノ
形勢歷々トシテ眼前ニ橫ハルヲ見ルニ付キ、本員ハ熱誠ノ餘リ、言往々率直ニ失シ延
イテ闇外諸老ニ及ンダコトモアルガ、是ハ所謂シーザーヲ愛セザルニアラズ、羅馬ノ獨立ハ
余是ヲ更ニ深ク愛スレバナリト云フニ外ナラヌト云フノデアリマス、要スルニ諸君、桂內閣
ガ昨年以來、其內政ニ關シ上陛下ヲ煩ハシ奉リ、大權濫用ノ奏請迄モ爲シ、下國
民ニ對シテ、遂ニ十七議會解散ノ責任迄モ沒却セントスルガ如キ、其無責任、其無定
見、古今東西ノ歷史ニ於テ、本員未ダ曾テ聞カザル所、讀マザル所デアル、思フニ今
日ハ現内閣ノ不信任ニ關スル上奏案ノ彈効ガ、出來ルト云フコトデアリマスルガ、縱シ
此上奏案ノ如何ニ關ハラズ、內閣ハ國民ノ眼中ニ於テ、否ヤ國民的法廷ノ此神聖ナ
ル場所ニ於テハ、既ニ斬罪ノ宣告ヲ受ケタ諸君デアル、此諸君ニ向ッテ本員ガ此ノ如
〃外交ノ質問ヲ爲スハ甚ダ兩立シナイヤウデアルガ、是ハサウデハナイ、所謂一日存
スレバ一日ノ責アリ、是レ其一ナリ、次ニ外交問題ハ、一內閣ノ運命ニアラズシテ、實ニ
國民生死存亡ノ岐ルヽ所デアル、是レ其二ナリ、此二ナル問題カラ想ヒ起セバ、諸君
ハ此內治外交ノ兩方面ヨリ、全軍一致、所謂一齊射擊ニ、此內閣ヲ斃スト云フコト
ノ必要ヲ感ジハ致シマスマイカ、然ルニ內閣ハ自ラ決スルコト能ハズ、他人ノ介錯ヲ俟ツ
ニアラザレバ處決ガ出來ナイト云フ、想起ス平ノ宗盛ト桂總理大臣トハ、其人相骨格
ガ能ク似テ居ルト云フコトガアルガ、要スルニ此ノ如キ內閣ニ向ヒ、此ノ如キ臨終ノ間際
ニ、臆病ナル政府ニ對シ、國家內外ノ形勢ニ照シテ、本員ノ所見ヲ述ベタ所以ノモ
ノ獨リ內閣ノミデナイ、此四千五百万ヲ代表シタ賢明ナル諸君ニ、本員ノ感ズル所ヲ
訴ヘ以テ、政府ノ答辯ヲ促シ、國民ノ熱誠ニ訴ヘント一云フノ餘リ、斯クハ長々シク諸君
ノ〓聽ヲ瀆シマシタガ、內閣ノ答辯如何ニ依ッテハ、本員ハ更ニ諸君ト共ニ緊急動議ヲ
提出シテ、此內閣ノ最後ノ始末ヲ、吾〓同志ノ手ニ終メヤウト思フノデアル-謹ンデ
之ヲ諸君ニ訴ヘタ次第デゴザイマス(「御苦勞樣」ト呼フモノアリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/12
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013・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 大石正己君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/13
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014・内山敬三郎
○內山敬三郞君(五十一番) チヨット注意致シマス、唯今ノ演說中ニ「ポッケット」ト云
フコトガアリマシタガ、日本語デアリマスカ、此議場デハ日本語ノ外ニ使用シナイト云フコ
トニナッテ居リマス、チヨット伺ッテ置キマス
〔大石正己君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/14
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015・大石正巳
○大石正己君(七十六番) 諸君、唯今外交質問演說ガアリマシテ、私モ外交ダケデ
ハアリマセヌ、外交內治ニ關スルノ質問書ヲ出シテ置キマシタ、最早同ジ問題ノヤウナモ
ノガ出テ居ルカラ、今日ハ廢サウカト考ヘマシタガ、併シ今日ノ緊急動議ナドヽ云フモノ
モ、出マセヌヤウニゴザリマスルデ、チヨット暫ク諸君ノ御聞ヲ願ハウト考ヘル、又幸ニ內閣
諸公モ出ラレテ居ル所デアリマシテ私ノ質問ハ紙ニ書イテアル方ヨリハ直接ニ辭ニ盡ス
方ニ意味ノアルコトデアリマスルカラ、內閣諸公ニ直ニ御耳ニ入レルト云フコトハ甚ダ好
イ場合デアラウト考ヘマス、外交內政ニ關スル質問デアリマスルガ、實ハ是迄質問書ヲ出
シテモ、直接ニ當局者ニ御聞ヲ願フト云フ機會ガ誠ニナイ、又從ッテ其紙ニ書イテアル問題
ニ對シテ、極ク要領ヲ得ナイ答辯ガアルト云フノガ、普通ノコトデアリマスカラ、誠ニ今日
ハ內閣諸公出ラレテ居リマシテ、甚ダ私ハ幸ヒ、固ヨリ私ノ外交ニ關スル方法ノ質問演
說、内閣諸公ニ對シテ、反對ヲ彼是申スト云フヨリハ寧ロ眞ニ事實ヲ御話シニナル機會
ヲ、此處ニ開キタイト思ヒ、ソレデ今日隨分大問題モ幾ツモアリマシテ、或ハ地租案、妥
協案、若クハ外交ノコト、若クハ國防充實ノコト、皆是重大ナ問題デ、此重大ナ問題
ノ中ニモ、殊ニ地租案ノ如キ、最早運命モ大抵分ッテ居ルヤウナ話デアリマスルガ、尙國
民トシテ、代議士トシテ、大ニ聽カンコトヲ欲スル問題ハ、現時ノ外交ノ處分如何ト云フ
コトヽ竝ニ此日英同盟ノ今日ノ場合ニ當ッテ、活動ヲ見ナイノハ如何ナル譯デアルカト
云フノ疑ガアル、モウ一ツハ國防充實ト云フコトニ付キマシテモ、誠ニモウ今日ノ如キ、內
患外憂、內患ト云フノヨリハ寧ロ外患外患ノコトニ付イテ、今日ノ如キ場合ハ、實
ニ國力充實ノ其實ヲ示シテ而シテ當局者ハ國民ノ大ニ同情ヲ得ルベキ場合デアラウト
考ヘル進ンデ私ハ現内閣ガ、所謂國力ノ發展、進取開國ナドヽ稱ヘラレル所ノ、其實ヲ
舉ゲラレタナラバ、餘程國民ノ贊成ヲ得ル今日デハナイカト考ヘル、然ルニ不幸ニシテ、吾
吾ノ見聞スル所ニ依リマシテハ、此內閣ガ却テ消極不進步的ノ位置ニ立タレテ居ルト云
フコトヲ、大ニ慨嘆ヲスルノデアリマス是等ノ諸點ニ付イテ、、極ク其要領ヲ申上ゲテ、幸
ニ內閣諸公ノ御贊同ヲ得ルコトナラバ幸デ、、又多少之ニ依ッテ內閣諸公ガ、國民ニ內閣
ノ眞ノ內治外交等ニ對スル、政略ノアル所ヲ示サルヽト云フコトガアレバ、大變仕合セナ
ル譯デアラウト考ヘル、中ニモ、外務大臣ハ幸ニ御出席ニナッテ居リマスルカラ、希クバ其
朝鮮滿洲ニ對シテ、餘程御働キニナッタ〓モアラウト考ヘラレルカラ、其功績ヲ自ラ示ス
ヤウナ機會モ、私ノ質問ニ依ッテアラウカト考ヘラレマス、幸ニ諸公ノ前ニ愚見ヲ述ベヤウ
ト考ヘル此朝鮮滿洲ノ問題ニ對シマシテハ最早材料ハ分ッテ居ル、格別此處ニ述立
テナクテモ、材料ハ分ッテ居ル唯此材料ニ對シテ、我帝國ガ如何ナル政策ヲ取ルベキカ、
如何ナル政策ヲ過チシカ、又日〓經營-ー日〓ニ對スル日本帝國ノ經營ト云フ筋モ、
是モ大〓題目ハ分ッテ居ル、其〓ニ付イテ、内閣ガ是迄ドレダケノ勞ヲ執ラレ、盡力ヲセ
ラレテ居ルカト云フコトヲ示シ、將來日本帝國ガ外ニ對スル所ノ經營ハ、如何ナル〓ニ御
計畫ニナッテ、進マシツヽアルカト云フコトヲ承リタイノデアル、差當リ朝鮮ニ於テハ、白頭
山伐木ノ問題ガ起ッテ居リマス、龍巖浦ト云フ所ハ、誠ニ新シク聞ク所デアリマスガ、
是ハ大分良港要地デアルト申スコトデアル、此白頭山伐木ヲ保護スルト云ッテ、或國
ハ旣ニ朝鮮ノ境界ニ兵ヲ出シテ居ル、其多少ハ論ゼヌ、而シテ又此龍巖浦ト云フ處
三、五、或ハ兵隊モ往ッテ居レバ、其他ノ他國人ガ其所ヲ占領シテ居ルト云フコトモ事實
デアル、是ハ何デゴザイマセウカ、當局者諸君ハ、唯朝鮮ノ域中ニ、或强國ガ兵ヲ出シタト
云フコトハ朝鮮ノ主權ヲ侵害スルモノトノミ、御考ニナッテ居ルカ、將タ延イテ其危險ヲ
帝國ニ及ボシ、殆ド帝國ノ域ニ外國ノ兵隊ガ、臨ンデ居ルト云フノ感ヲナサルヽノデアル
カ、如何デアルカ、若シ我帝國ニ既ニ或强國ノ兵ガ、足ヲ入レタト云フコトガアルト云フ
御感覺ガアルナラバ、今日マデニ既ニ之ニ對スル防禦政策ト云フモノハ、事實ニ於テ、モ
ウ旣ニ現ハレテ居ラナケレバナラヌト私ハ考ヘル、然ルニ未ダ日本ノ責任アル官吏カ、其
地ヘ往ッテ取調ベテ、サウシテ是ニ對スル所ノ日本帝國政府ガ、方策ヲ取ッテ居ルト云フ
報道ヲ承ラヌト云フコトハ、如何ニモ私ハ遺憾ニ思フウテ居ル、又私ノ考ヨリ見レバ、日
本帝國ノ外交ガ畢竟消極的ニアル、從來消極的ニ立ッテ居ル、サウシテ或ハ此濟州島
ニ於テ、日本臣民ノ權利ヲ害シタトカ、若クハ日本銀行者ノ手形ノ通用ヲ禁ジタトカ、
或ハ借款問題、種々此或ハ朝鮮ニ依リ、又間接ニ朝鮮ヲ經テ此勢力ノ運動ニ依ッテ、
日本ノ權利ヲ害サレ、利益ヲ害サレ、又日本帝國ノ體面ヲ損ハレタト云フ事實ハ當
局者ニ於キマシテモ、是マデ幾ラモアッタト一云フコトハ、御記憶デアラウト考ヘル是等ノ
事ハ畢竟何カラ來タカ、日本帝國ノ外交政策ト云フモノハ畢竟消極的、是ヲ他ノ名
ヲ以テ云ヘバ、卽チ無主義、無爲、モウ一ツヒドク云ヘバ無能ト云フ所ニ私ハ及ビタイ
ト思フ、是ハ少シク過言ノヤウニアリマスルガ、畢竟彼ノ働キヲ受ケテ初メテ狼狽シテ、之
ニ處スルト云フコトヲ考ヘルノデアルカラ、著々其事件ノ起ル每ニ、日本帝國ノ勢力ト云
フモノハ縮小サレツヽアルノデアル、何ゾ日本帝國ガ、此朝鮮ノ事件ヨリ支那ト戰爭ヲシ
テマデモ取ッタ勢力ハ、其道ト云フモノヲ以テスレバ、未ダ其危害ノ來ラザル前ニ是等ノ
小問題ト云フモノヽ起ラナイ方策ヲ、何故御採リニナラヌカ、又朝鮮ト我國トノ關係ヲ
見マシテモ我國ノタメデナイ、、朝鮮ノタメニ見テモ、此朝鮮國ガ强國ノタメニ其主權ヲ侵
サレ、利益ヲ侵サルヽト云フコトハ詰リ是ハ我國ト關聯シテ害ヲ受ケナケレバナラヌ、又
斯ク申セバ、朝鮮國小ナリト雖モ獨立國、併ナガラ是ハ唯議論ノ話デアル事實斯ノ如
キ小弱國ト云フモノヲ隣リニ持テバ、必ズ之ヲ保護スルト云フノ位置ニ立タナケレバナラヌ
ト云フコトハ日英同盟ノ主文ニサヘ謳ウテアルガ、著々朝鮮ニ於ケル政策ト云フモノハ、
彼ノ尻尾ニ着キ、後レヲ取リ、其時機ヲ失シ、悉ク受太刀ノ位置ニ立ッテ何カ事ガ一ツ
起ルト直グニ驅付ケテ往ク、マダ驅付ケテ往クト云フ間ハ宜シイガ、ソレヲ唯看過シテシマ
フト云フコトハ事ノ小ナル事件ト雖モ、重ナリ重ナリスレバ、卽チ日本帝國ノ勢力ト云フ
モノガ減殺サレテ居ルデ、私ハ思フ白頭山ノ如キ、龍巖浦ノ如キ、事件ト云フモノハ、此後
幾度トナク是ハ起ルモノト看做サナケレバナラヌ、第一ニ是等ノ出來事ニ對シテ、當局者
ハ今マデ如何ナル適當ナ之ヲ救治スルダケノ方法ヲ取ラレタカ、其〓末ハ是ハ能ク明カニ
承リタイト思フ而シテ尙今度斯ノ如キ事件ノ起ラナイダケノ防禦策ト云フモノハ、如何
ナル內閣ニ於テ胸算ガアルカ、又サウ申セバ外交ハ秘密デアル、公ニ言フコトハ出來ヌト云
フ、是ハ餘程後レタ論デ、昔ノコトダ、此外交政策ノ大局ニ於テノ主義ト云フモノヲ、決
シテ明カニセヌ國ハナイノデアル、御覽ナサイ英吉利デモ、亞米利加デモ、門戶開放主義
門戶開放主義ト云ヘバ、此開放主義ノ其意味ニ於テ、何處マデモ其外交ハ働イテ
居ル、日本帝國ハ對韓ノ上ニ於テ、如何ナル今後方針ニ依ッテ進ミ、而シテ時々ノ此小
問題、或ハ大問題ノ出來事ノタメニ、國民ヲ大ニ憂ヘシムルト云フコトノナイダケノ、玆
內閣諸公ノ經綸ヲ承リタイト考ヘル、ソレカラ滿洲ノコトニ付イテハ差當リ路國ノ撤囘
問題デアル、是モ事實ハ既ニ諸君ノ知ラレテ居ルコトデアルガ、此事實ニ對シテ如何ナル
今日マデ手段ヲ採ラレタカ、實ハ私ノ眼ヨリ見レバ、滿洲ノ撤兵問題ト云フモノハ、既ニ
第一期撤兵ノトキニ於テ過テリト云ハザルヲ得ヌ、第一期撤兵ノトキニ當ッテ、露西亞
ガ事實撤兵ヲセズシテ、サウシテ此占領ノ軍隊ヲ、各〓將來便利ニ働カサセヤウト云フノ地
〓ヲ占メタト云フコトハ事實デアル、此第一期撤兵ノトキニ當ッテ、利害ノ關係ノ厚イ國ガ、
ナゼ是ニ向ッテ相當ナル行動ヲ採ラナカッタノデアルカ、面シテ第一期ノ撮兵期ニ、旣ニ政
策ヲ過ッテ居ルノミナラズ、引續イテ露西亞ノ行動ト云フモノヲ見レバ或ハ滿洲ノ各
要部ノ地ニ、砲壘ヲ築キ、城塞ヲ建築シ、兵營ヲ建テ、悉ク露西亞ノ行動ト云フモノ
ハ滿洲ニ於テ戰鬪的永久的ノ經營ヲシタト云フコトハ是ハ事實デアリマス、此事實ノ
アルニモ拘ラズ、利害ノ關係ヲ持ッタ國ガ、之ヲ傍觀無爲ニ經過シタト云フコトハ、是ハ大
ナル失策デアルト私ハ思フデ、而シテ終ニ第二ノ撒兵期ニ至ッテハ、公然ト條約ニ違反シ、
公然ト列國ニ對スル宣言、宣盟ニ背反シテ、斷ジテ兵ヲ引カナイノデアル、兵ヲ引カザル
ノミナラズ、〓國ノ主權ヲ掣肘シタノデアル、此撤兵ト云フモノト、交換條約トシテ持
出シタモノハ何レデアルカ、悉ク滿洲ノ主權ヲ收メヤウト云フ、是ハ方案デアル、玆ニ至ツ
テ日本帝國ハ如何ナル手段ヲ執ラレタノデアルカ、今日此問題ニ對シテ、既ニ方針ガ極
マラレテ居ルヤ如何ト云フコトガ、私ハ甚ダ疑ハシイ、又日英同盟ト云フモノハ、如何ナ
ルモノデアルカ、凡ツ斯ノ如キ場合ガアランコトヲ慮ッテ、日英同盟ト云フモノハ結バレタ
モノデアル、而シテ既ニ英吉利ハ露國ニ對シテ抗議ヲ申込ンデ居ル、或ハ種々ナル問題
ヲ質問シテ居ル、英國ノミナラズ英國ノ同盟國ニアラザル米國マデガ、露西亞ニ對シテ
重要ナル問題ヲ揭ゲテ、質問ヲ致シテ居ル、日本帝國ハ更ニ是ニ加ハッテ居ラヌガ、如
何ナモノデアルカ〓固ヨリ裏面ノコトニ付イテハ吾〓當局者ニアラザル者ハ分リマセヌケ
レドモ、凡ソ物ハ時期ヲ經テ、必ズ世間ニ公ニナルモノデアル、然ルニ此數週間ヲ經ッテ
モ日本ガ如何ナルコトヲシテ居ルト云フコトハ、更ニナイ、又タ英吉利ノ當局者ハ、議
會ニモ種ドナ質問ニ對シテ、滿洲ノ形勢、露國ニ對シテ云々ト云フコトハ報告セラレテ居
ル、終ニ此同盟國ノ列ニ居ル日本ガ、相當ナル時期ニ、相當ナル手段ヲ執ラヌト云フ
コトハ、同盟國ヲシテ大ニ信用ヲ失ハシムルノ所以デアラウト私ハ考ヘル、現ニ英吉利ノ
諸新聞ナドヲ見マシテモ、日本ノコトハ更ニ一言無シ、却テ同盟國ニアラザル米國ノ此
行動ヲ賴ミトシ、大ニ之ヲ歡迎シテ居ルト云フコトハアルガ、更ニ日本ニ就イテハ一ノ我國
ヲ賴モシウ思フ、我國ト行動ヲ一ニシヤウト云フ傾向ヲ見ナイノデアル、デ先ヅ滿洲ニ對
スル外交、是迄著々其機ヲ過ッテ來ヌノデアル、而シテ今尙ホ私ハ如何ナル程度ニアル
カ、如何ナル境遇ニ於テ働キツヽアルカト云フコトヲ、甚ダ疑フノデアリマス、デ或ハ斯ノ
如キコトヲ申譯ニ云ヘバ、外交ノ祕密、又外交ハ、其働キ中ハ世間ニ祕シテ言ハヌト云
フ方ノ、其圍ノ中ニ幾フデモ遁ルヽコトハアルノデアル併ナガラ終ニ此〓ハ、當局者モ御
承知ニナッテ居ルコトデアラウト思フガ、支那帝國ヲシテノミ、此談判ノ衝ニ當ラシテ、、サウシ
テ、露西亞ノ行動ニ對スル、外交上ノ難問ヲ解決サセルト云フコトハ、是ハ餘程間違ッタ話
デアラウト思フ、是迄左樣ナルコトヲ致シテ成功シタコトハナイ、既ニ支那ノ當局者、大
政治家ガ、私ノ國ハ微弱ニシテ、トテモ私ノ國カラ言ウタ所ガ、露西亞ハ聞イテロ央レマセ
ヌドウカ日本、英吉利、亞米利加等ノ御盡力ニ與リタイト云フコトヲ、公然言ウテ
居ル模樣デアル、斯ノ如キモノヲ使ヲテ、サウシテ其成功ヲ收メントスルト云フコトハ、是
ハ餘リ巧ミニ似テ、却テ其失策ト云ハザルヲ得ヌ、誠ニ支那ノ如キ、朝鮮ノ如キ、弱國
ハ往々窮シテ來レバ、强國ト密約ヲ爲スノデアル、其自國ニ不利益ナルノミナラズ、終
ニ隣國ニ不利益アル密約ヲナスト云フコトニナッテ居ルノデアル、斯ノ如キ怪シイモノヲ相
手トシテ、唯後ニ引込ンデ居ッテ、旨イ働キヲシヤウナドト云フコトヲ考ヘタナラバ、私ハ是
ハ大ナル間違デアラウト田心フ、斯ク申シタナラバ、日英同盟ト雖モ、日本ノミガ働ク譯
ニハイカヌ、彼ト相應ジタトキデナケレバ、勸ケヌト云フ御說ガアルカ知レマセヌケレドモ、併
ナガラ東洋ニ於ケル此政治上ノ變體ヲ調査シ、而シテ我帝國ガ發案者トナッテ、何時デ
モ英吉利ヲ率ヒテ往ク、此英吉利ノ如キハ遠國ニアッテ、極東ノ事情ニハ比較的疎イ國
ト言ハナケレバナラヌ、既ニ今日デモ英吉利政府ノ爲ス所ハ、英吉利國氏ノ喜バザル所デ
アル、斯ノ如ク我隣國ノ問題デアッテ、最モ我國カラハ便利ニ事實ヲ調査シ、其方案ヲ
提出スルニ適當ナル地位ニ居ルノミナラズ、寧ロ我國ノ職責ト言ハザルヲ得ヌ、日本何ゾ
英吉利ニ先ッテ、協商ヲ開キ、事實ヲ報告シ而シテ日英同盟ノ主眼トスル所ノ、〓
韓保全ノ實ヲ舉グルト云フコトニ、旣ニ今日マデ著々其實蹟ヲ現ハシテ居ルノガ、當然デ
アルト思フ、未ダ日英同盟ヲ結ンデ以來、此日英同盟ノ意味ヲ「ソアライズ」實行スルト
云フコトヲ、何ガサウ云フ手段ヲ採ラレタノデアルカ、如何デアルカ、實ハ今日ノ場合、外
交上ノ事ナドデハ、列國其主權者若クハ其宰相互ニ往來シ互ニ意見ヲ鬪ハシテ、而シテ
對外政策上ノ問題ヲ極メルト云フ今日ハ場合デアル、又露西亞ノ近來ノ舉動ヲ見マシ
テモ其大藏大臣或ハ陸軍大臣等ハ遠ク東洋ニ足ヲ步ンデ、サウシテ其難問題ノ伏在
シテ居ル事實ヲ、自ラ視察シテ調査シ、而シテ之ニ處シヤウト云フ位、實ニ國家ニ對シテ
親切ノ態度ヲ取ッテ居ル、若シ內閣諸公ガ別莊ニ通ハレ、或ハ觀光ノタメニ處々方々、內
地ヲ旅行スル遑ヲ以テ、此〓韓ノ形勢ヲ事實ニ調査シテ、而シテ自ラ之ヲ解決スルト云
フノ勞ヲ執ラレタナラバ、如何デアラウカト思フ(「謹聽」ト呼フ者アリ)デ是ハ此中ニモ旣
ニ此日英同盟結了ノ後ハ、日本ノ位地モ餘程鞏固ナル位地ニ立ッテ居ル、又十分ニ其
勢力モ〓韓ニ及ブノミナラズ、他ノ列國ニモ及ブ位地ニ立ッテ居ル、所謂亞米利加ナドノ
言フ所ノ滿洲開放トカ、門戶開放トカ云フヤウナコトモ、實ハ之ヲ遣レバ遣ル機會ハ幾
ラモアッタデアル何等此日英同盟結了後ニナスベキコトガナイト云フノハ、私ハ甚ダ驚
入ッタコトヽ考ヘル、併ナガラ當局者ニ於テハ、頻リニ御盡力ヲナサレタ所ノ結果ハ、外
交上ノ是マデ祕密ニ保タレテ居ルコトモアリマセウガ、實ハ過去ッタルコトハ何レノ國ニモ
是ハ公ケニシテ差支ナイモノデアル、十中八九ハ差支ナイ、宜シク其盡力ノ結果ヲ報告セ
ラレンコトヲ求ム、而シテ將來滿洲ニ對スル方針-大方針ト云フモノハ如何ナル點
ニアルカ、是等モ序ニ御話ヲ願ヒタイ、ソレカラ此日英同盟ニ就キマシテハ、私ハ斯ノ如
キ東洋ノ變態ヲ現ハシタ場合ガ、日英同盟ハ大ニ適用サレベキ秋デハナイカト云フ、感
覺ヲ有ッテ居ル然ルニ更ニ日英同盟ノ勢力ヲ、間接ニモ直接ニモ用井ラレタト云フコト
ヲ、未ダ認メナイ、固ヨリ外交ノコトハ、不言ノ間ニ多少サウ云フコトモアリマセウガ、一
モ此〓ニ付イテハ、未ダ見出サヌ、或ハ此際露西亞ナドガ撤兵セヌトハ言ハヌ、撤兵ハス
ルノデアル滿洲ハ還スノデアルト云フ報道ハ、著々電報モ見エテ居リマスガ、斯ウ云フ事
ヲ賴リトシテ、待ッテ居ルト仰シヤルナラバ、是ハ外交家デナイト考ヘル、既ニ其言行相反
スルコトハ、露西亞ノ都ニ於ケル大政府ト、〓國ニ駐マッテ居ル〓國公使トノ言行相
反シテ居ル所ヲ見テモ、明カデアル、又此滿洲其他ノ方面ニ於ケル露西亞ノ總督其
他ノ人ノ運動ニ照シマシテモ、露西亞ノ必ズ撤兵ヲスルト唱ヘ、或ハ滿洲ヲ還附スルト
唱ヘルコトハ信用ノ出來ヌト云フコトハ事實相違シテ居ルト云フコトハ、明カデア
ル、當局者ニ於テハ、之ヲ信用サレテ居ルノカ、信用サレズニソレ丈ノ準備ガ整ッテ居ル
カト云フコトハ誠ニ吾〓ノ憂慮ニ堪ヘヌ次第デアル、ソレカラ國防充實ト云フ點ニ付
イテ、一言私ハ申述ベテ置キタイ、國防充實ト云フコトハ、誠ニ東洋ノ當局者ノ、、所謂
大勢ニ鑑ミテ、是ハ必要ナル、又〓韓ノ保全、帝國ノ利益勢力ヲ維持スル上ニ於テ、
甚ダ是ハ必要急要ナル問題ト言ハザルヲ得ヌ、然ルニ今日ノ如ク日本ノ國力ト云フ
モノハ、所謂武裝的ノ力ト云フモノハ、今ノ場合、外交上ノ働キヲ爲シ、其他ノ活動
ヲスル上ニ於テ缺工ヲシテ居ルト云フ論デハナイ、今日事ノ有ルト云フ場合ニ-東洋
ニ事ノ有ルト云フ場合ニ、日本ノ力ガ動ケナイト云フ境遇ニハ居ラナイノデアル、卽チ海軍
擴張ノ計畫ヲ見マシテモ、十年ト云フ緩々ノ擴張案デアル、又事實各國ト力ヲ較ベテ見
タ所ガ、今ノ場合、日本ガ活動スル上ニ於テ、國力ノ缺乏ヲ感ジタト云フノデナイ、是カ
ラ先キ〓〓進ンデ往ク間ニハ、平均ヲ失フカラ、今カラ用意シテ置カナケレバナラヌト云フ
コトデアル、是ハ尤モノ次第ト考ヘマス、然ルニ日本帝國ノ陸海軍ノ力ガ、今日ノ如ク優
勢ノ位地ニ居ッテ他ト比較シテ、東洋ニ於テハ優勢ナル位地ニ立ッテ居ル、而シテ其上ニ
日英同盟ト云フ强力ナル後楯ヲ持ッテ、而シテ東洋ノ變態、今日ノ如キ場合ニ於テ、
此日本ノ國力ヲ外交上ニ若クバ平和的ニ活動サセテ、此難局ヲ解決スルコトガ出來ヌ
、、若シ致シマスナラバ、果シテ何レノ時ニ、國力充實ノ必要ガアリマセウ、是丈ヶ睹易
キ、是ダケ切迫シタル東洋ノ形勢ニ處シテ、日本ノ國力ガ働カナイトシタナラバ、將來如
何ナル場合ニ日本ノ國力ガ働クノデアルカ、私ガ殊ニ心配ヲ致スト一云フコトハ今後
此比較デ以テ、武力ノ競爭、軍事ノ擴張ト云フコトヲ、互ニ競爭スル日ニハ列國ハ各、≧
版圖廣シ、人口多シ、其富アッテ競爭スルノデアルガ、日本ノ如キ未開貧國デアル、此
貧帝國ガ無限ノ競爭ヲ始メテ、何時マデ經ッタラ目的ヲ達スルカ、何時マデ經ッタラ此
難問ヲ解決スルカト云フコトノ、分ラヌモノニ向ッテ、何時マデモ競爭スルト云フコトニナ
レバ日本帝國ノ滅亡ハ智者ヲ俟ッテ後ニ知ラザルナリ、固ヨリ是等ノ〓ニ就イテハ當
局者ニ十分ナ御成案ガアルコトヽ信シマスガ、唯私ノ是ハ心配ヲ致ス點デアル、而シテ
最後ニ此帝國政府ハ進取的-開國進取、或ハ國力發展ニ伴フ云ケト云フコトガ、
昨年以來餘程澤山ニ用井ラルヽ言葉ニナッテ居ル、是ハ甚ダ結構ナ事デ、誠ニサウ云フ
御趣意ヲ以テ働カルヽナラバ、吾〓ハ變手ヲ舉ゲテ贊成ヲ致シタイト考ヘル然ルニ私ハ
此現內閣ノ採ラルヽ所ノ經濟的政策ト云フモノニ至ッテハ寧ロ消極的、不進步的ノ行
動ニ箝ッテ居リハセヌカト云フコトヲ疑フノデアル、ソレハ私ハ空論ハ致サヌ事實ヲ以テ證
據立テル、第一此〓韓經營ト云フコトニ就イテ、此內閣ガ如何ナル進取的ノ經營ヲナサ
レタカト云フコトヲ承ッア見タイ、ドウ云フ事柄ガアル、何ヲ爲サレタ、又政府ノ直チニセラ
レヌコトデモ、政府ガ大ニ誘勸奬動シテ、此ニ至ラシメタモノガ何カアリマスカ、ソレヲ承リ
タイ、、或ハ日〓銀行ノ如キ案ガ、昨年ハ出テ居ッタガ、本年ハ引込マシテ居ル、斯樣ニ其
方針ガ時々御變リニナッテ、迚モ外國ニ重大ナル永遠ナル經營杯ト云フコトハ、到底望メヌ
コトデアル又〓韓ニ於テ、日本帝國ノ經營スベキ事ガナイカト云ヘバ澤山アルノデアル、
鐵道敷設權ハ如何、礦山採掘權ハ如何、航路ノ事ハ如何、或ハ其他商工業、或ハ朝
鮮アタリニ對シテハ隨分日本ノ移民ヲ奬勵スルト云フコトモアリマセウ、滿洲アタリニ對
シテモ、種々ナ事業ヲ計畫ヲサセ、又之ヲ奬勵シ、又此先ニ出デ居ル人ヲ保護スルト云フ
手段ハ、卽チ是ガ積極的進取的ノコトデアリマスガ、現ニダルニー灣ニ於テ、日本人ノ
土地ノ賣買ヲ禁ズルト云フ事實ガアルノニ、之ニ對シテ如何ナル處置ヲ執ラレタ、ソレハ
外國ノ支配ノ下ニ在ルモノデアル、然レドモ均霑ノ法ガアル又均霑ノ法ガナイニシテモ、
既ニ他ノ外國人ニ賣買ヲ許シテ居ルモノナラバ、之ニ向ッテ日本ノ外交デ、其權利利
益ヲ收ムルト云フ丈ケノ働ノ付カヌコトナラバ、外交ハ無用ト言ハナケレバナラヌ、此第一
ノダルニー灣ノ土地賣買ト云フコトニ對シテ、世間ニ著シキ問題ニナッア居ルガ、一向其
功績ヲ見ナイノデアルソレノミナラズ滿洲ノ各地ニ日本人ガ最早澤出入込ンデ居ル
入込ンデ居ル人ハ實ハ日本帝國ノ我同胞中、有爲有力ナル、將來ノ所謂此進取的ノ
事業計畫ヲ起ス所ノ、最モ是ハ選拔キノ人デアル、吾〓內ニ居ッテ出來ルダケノ助ヲ與
ヘ出來ルダケ之ヲ奬勵保護スルト云フコトノ手段ハ一個人ト雖モ是ハ執ラナケレバナラ
ヌコトデアリマスルガ、滿洲各地ニ於ケル日本人ハ、露西亞人ノタメニ無法ニ排斥ヲセラ
V、呆々ノ體デ迯週ッテ居ルト云フコトハ事實デアル是等ニ對シテ何ノ保護ヲ與ヘナイ、
何ノ損害ノ途ヲ講ゼヌ、更ニ此外交上ニ於テ、日本帝國ノ臣民ノ、是モ企業心ニ富ミ、
最モ冒險的ニ外國ニ出デヽ日本ノ經濟力ヲ發展シヤウト云フ所ノ人ニ、力ガ及ンデ居ラ
ヌ、保護ガ及ンデ居ラヌト云フコトハ、如何ナルモノデアリマス、是ハ外ノ事デアリマス、而
シテ內ニ於テハ、此內閣ガ進取的ノ政略ヲ採ラレテ、日本ノ農商工業ト云フモノヲ新タ
ニ改良シ、發逹ヲ圖ル所ノ、日本政府ノ經綸ト云フモノハドコヘ現ハシテ居ルカ、最早
日本ノ農商工業ト云フモノヽ發達ノ餘地ガナイト申スモノデアルカ、如何デアルカ、恐
クバサウハ申セヌデアラウ、歐羅巴、亞米利加、其他吾ヨリ數百等進ンダ國ノアル以上
ハ、此商工業上ニ於テ又進ンテ居ルト言ハナケレバナラヌ、然ルニ日本政府ガ、此農商
工業ノ發達ヲ圖リ、進步ヲ圖ルト云フ大方針ニ就イテ、此議會ヘ何カ議案ヲ出サレタコ
トガアルカ、又私ハ屢々種々ノ書籍ニ於テモ見受ケルガ、却テ此政府ノ部下屬僚中ニ
ハ、外國ヘ視察ニモ出、調査ニモ出、種々有益ナル報〓ヲ爲シ、其經綸ヲ持ッテ居ル人
ガアルヤウニ見受ケル、然ルニ其當局ノ人ニ至ッテハ其有益ナ材料ヲ之ヲ益用シテ、
サウシテ實地ニ當箝メテ、工業ノ改良ハ是レ、商業ノ改良ハ是レ、又日本ノ個人ノ力
ノ足ラヌモノハ確ト云フ、日本商工業ニ對スル、所謂政府ノ奬勵、勸誘ト云フ方ノ事
ニ至ッテ、私ハ新タナ是ガ日本帝國ノ、進取的國カ發展ノ政策デアルト云フ政策ヲ
認メヌノデアル是ハ甚ダ遺憾デアル、要スルニ日本帝國日本帝國ノ政府ガ、內治對
外上、此經濟的ノ政策ト云フモノハ、民間總テノ此經濟事業ヲ助ケル方ノ、進取的
ノ行動ヲ執ラレヌト云フコトハ遺憾デアル、例ヘバ英吉利杯ト云フハ、實ニ金滿家デア
ル此金滿家ト組合ウテ、同盟ヲ結ンダ、サウシテ以來最早幾十數日ヲ經過致シマ
スガ、ドンナモノデアリマセウ、是程富ンダ國ヲ片相手ニ取ッテ居ル日本帝國デアルナラ
バ其當局者ノ働如何ニ依ァテハ、有利ナル、有益ナル事業ニ隨分彼ノ資本ヲ輸入セ
シムルト云フノ方法モ、或ハ間接直接ニイクラモアルコトデハナイカト考ヘラレル、然ルニ
今囘モ五千五百万圓ノ公債ヲ募ルトカ云フ噂デアリマスガ、皆是バ內國ノ誠ニ缺乏シ
タル資本ヲ、吸收セントスル計畫デアル、是等ハ果シテ進取的ノ事デアルト云ヒ、農商
工業ヲ改良進歩サセル手段ニナリマスヤ否ヤ、私ハ經濟家デナイカラ、甚ダ疑ッテ居リマ
ス、マダ其他ニモ申上ゲタイ事ガアリマスガ、今日ハ是丈ノ事ヲ質問致シテ、退席ヲ致シ
マス
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/15
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016・武石敬治
○武石敬治君(百十三番) 請願委員會ノ經過ニ就キマシテ、一應議長ヘ要求ガゴ
ザイマス、其事ハ請願委員分科會ニ於キマシテ、請願書ニ就イテ審査中ニ、農商務省
及大藏省ノ政府委員ニ、說明ヲ求メルノ必要ヲ感ジタノデアリマス、是ニ於テ議院
法第四十四條ニ依ッテ、政府委員ノ出席ヲ二囘マデ請求シマシタガ、何等ノ理由モナ
〃何等ノ通知モナクシテ、出席シナイノデアリマス、甚ダ審査ノ進行上、澁滯ヲ來シテ居
ルノデゴザイマスカラ、後來缺席ナク御出席ニナルヤウニ、御注意ハ勿論デアリマスガ、此
二囘出席セラレナカッタト云フ理由ヲ、議長ヨリ御尋アッテ議會ノ權能ヲ傷ケヌヤウニ、
御所置アランコトヲ要求致シマス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/16
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017・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 議事日程ノ第一ニ移リマス、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第鐵道敷設法中改正法律案(政府提出緊急事件)第一讀會
鐵道敷設法中左ノ通改正ス
第九條中「金九千五百萬圓」ヲ「壹億貳百萬圓」ニ改ム発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/17
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018・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十五番) チヨット第一ヨリ第四迄ハ一括トシテ議題ニナッタラドウ
デスカ、同一鐵道ノ政府委員ガ說明セラレテ、御便利ダラウト思ヒマス
〔大藏大臣男爵曾禰荒助君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/18
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019・曾禰荒助
○大藏大臣(男爵曾禰荒助君) 諸君、政府ハ地租案ヲ撤囘致シマシテ、同時ニ鐵
道敷設法竝ニ事業公債法ノ改正案ヲ、提出致シマシタ(「モウ少シ大キナ聲デ願マス」
ト呼フ者アリ)ソコデ此撤囘ノコトヽ竝ニ提出ノ理由ヲ、誠ニ簡單ニ申上ゲヤウト思ヒマ
ス(「詳細ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)政府ハ議院多數ノ意見ノアル所ヲ見マスルニ、第十
七議會ニ於ケルガ如ク、海軍ノ擴張ニ付イテハ、全然御贊成ノヤウニ見受ケマシタ、ソレ
ニモ拘ラズ、其財源ニ付イテハ意見ヲ異ニ致シマシテ、遂ニ地租案ヲ否決スルコトニ、委
員會ニ於テナリマシタ、然ルニ海軍ノ擴張ニ付イテハ、一日モ差措クコトハ出來マセヌ、ヂ
ヤニ依リマシテ、政府ハ是非共之ヲ遂行シテ往クト云フ目的ヲ以チマシテ、一面ニ於キ
マシテハ、出來能フダケ行政ノ費用竝ニ事務費ノ節約ヲ-竝ニ繰延ヲ致シマシテ、
面ニ於キマシテハ鐵道ノ擴張竝ニ改良ノ費用ニ充テマシタ所ノ財源ヲ、海軍ノ擴張ノ
方ニ轉用致シマシテ、而シテ其鐵道竝ニ鐵道ノ改良ニ伴ヒマス所ノ必要ノ費用ハ、公
債ヲ以テ支辨スルノ已ムヲ得ザルニ至リマシタ、ドウゾ諸君ハ、速ニ御決議アランコトヲ希
望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/19
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020・工藤行幹
○工藤行幹君(二百五十九番) チヨット大藏大臣ニ質問シタウゴザイマスガ、此海軍
擴張ノ費用ニ付イテ、昨年迄ハ政府ハ地租ニ依ラズンバ、ヤルコトガ出來ナイ、又行政
財政ノ整理モ、餘地ガナイト云フコトヲ云ハレタノガ、今日全ク地租ノ案ヲ撤囘シテ、更
ニ行政財政ノ整理ヲ、更ニ今一歩ヲ進メテ、又他ニ財政ノ道ヲ拵ヘタト云フコトデゴザ
イマスガ、然ラバ政府ハ曩ノ議會ニ於テ、財政ノ計畫ハ誤ッタリト云フコトヲ、自ラ自認
シタノデゴザリマスカ、議會ノ旣ニ委員會デ否決シタル地租案ノコトハ、當然ト心得マ
ス、昨年ノ如キハ、全ク誤リト云フノデゴザイマスカ、明カニ大藏大臣ノ說明ヲ得タイノデ
ゴザイマス
〔大藏大臣男爵曾禰荒助君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/20
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021・曾禰荒助
○大藏大臣(男爵曾禰荒助君) 唯今工藤君ノ御問ニ答ヘマス、唯今申上ゲマシタ
通リニ實ニ已ムヲ得ズ茲ニ出デタノデゴザイマス、ドウゾ今日ノ際ニ於キマシテハ、全ク
已ムヲ得ヌノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/21
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022・坂口仁一郎
○坂口仁一郞君(二十九番) 私ハ質問ガゴザイマス、唯今大藏大臣ノ說明ニ依リマ
スト-演說ニ依リマスト、昨年ハ地租案ヲ海軍擴張ノ財源ニ供スル所ノ地租案ヲ、
否決シタ勢ヒデアッタカラ、解散ヲ致シタト云フノガ、今日此場合ニ至リマシテ、地租案
ヲ撤囘致シマシテ、他ノ方法ニ依ルト云フコトノ融通が、出來得ルコトニナリマシタナラバ
ナゼ昨·年ニ於テ其融通ヲセラレヌノデアルカ、私ハ此〓ニ對シテハ、當局大臣ガ明白ニ
述ベラレル丈ノ責任ガアルト考ヘル、謂ハレナク此議會ヲ解散スルト云フ道理ハナイ、詰
リ地租案ニ對シテ、到底減ズルコトハ出來ナイ、斯ウシナケレバ、海軍擴張ノ財源ニ供ス
ルコトガ出來ヌト信ジラレテコソ、始メテ此解散ト云フコトヲ斷行セラレタコトヽ思フ、是
ガ今日ノ如ク融通ガ付ク、卽チ地租案ト云フモノヲ撤囘サレルト云フコトナレバ、ナゼ昨
年ニ於テ、此融通ヲ御付ケナサラナカッタノカ、此融通ヲ付ケルコトハ、今日ハ出來ルガ、
昨年ハ出來ナカッタト云フコトハ何所ニアル、萬一誤ッタト云フコトナラバ、何所ニ向ッテ
其罪ヲ謝スルカ陛下ニ伺ッテ謝サレマスカ、國民ニ向ッテ謝スルカ、誤ッタラ誤ック丈ノ
責任ヲ、何レカニ向ッテ謝サナケレバナラヌト思ヒマス、唯昨年ハ間違ッタカラ、今年ハ是
デ、ドウカ此外ニ仕方ガナイカラ、何分賴ミマスト云フヤウナコトデハ決シテ政府ノ責任ハ
遁レルモノデハナイト私ハ信ジテ居ル、免ニ角昨年ト今年如何ナル所ノ事情ニ違ヒガアル
カ、ソレト將來是ニ對シテハ、政府ハドウ云フ所置ヲ採ルカ、卽チ其罪ヲ何所ニ謝サレル
カト云フコトヲ、明白ニ答辯ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/22
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023・森田勇次郎
○森田勇次郞君(百三十四番) 議長、質問ガアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/23
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024・原敬
○原敬君(九十四番) 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/24
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025・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 百三十四番発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/25
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026・森田勇次郎
○森田勇次郞君(百三十四番) 私モ大藏大臣ニ······発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/26
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027・原敬
○原敬君(九十四番) 唯今政府ノ說明ニ付イテ·発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/27
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028・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 百三十四番ニ許シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/28
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029・森田勇次郎
○森田勇次郞君(百三十四番) 私モ唯今ノ大藏大臣ノ演說中ニ、甚ダ不審ノ存ス
ルコトガアリマスカラ、大藏大臣ニ向ッテ、簡單ナル質問ヲ致サウト思ヒマス、事情已ムヲ
得ズシテ地租案ハ撤囘シテ、公債ニ代ヘタモノデアル、ト斯樣ナル御演說デアリマスルガ、
抑ニ當局者ハ明治三十五年度ノ歲計ヲ立テラレマス時分ニ、公債政略ハ我經濟社會
ヲ攪亂スルモノデアル、經濟上ニ甚ダ有害ナルモノデアルカラト云フノデ、務メテ公債政
略ハ避ケルト云フ方針ヲ、立テラレテ居ッタノミナラズ、此地方ノ地方債デスラモ、成ルベ
ク少ナクシナケレバナラヌ、成ルベク見合セナケレバナラヌト云フ迄ノ訓令ヲ下サレ、國民
皆是ハ今ノ政府ノ美事デアルト云ッテ、贊成シテ居ッタノデアル、今日ノ日本經濟社會ヲ
救フニハ誠ニ斯クアルベキコトデアルト、皆國民モ是ハ喜ンデ居ッタノデゴザイマス、然ル
ニ第十七議會ニ當ッテハ、地租三分三厘ヲ增徵セザレバ、國防ノ充實ヲ圖ルコトハ出
來ヌ、國運ノ進捗ヲ進メテ往クコトハ出來ヌト云フコトデ、地租案ヲ出サレタ而シテ又當
年ノ議會ニハ其昨年出サレタ地租案トハ率ガ違ヒ、三分案ヲ出シ、三分案ヲ提出セ
ラレタ時ニ、大藏大臣ハ議員ノ質問ニ向ッテ、何ト言ハレタカナラバ、ドウシテモ此地租
三分ヲ取ラナケレバナラヌト云フコトヲ、此議場ニ答ヘラレテ居ル、又豫算委員會ニ於
テモ、左樣ナル御答辯ガアッタト聞イテ居ル、然ルニ今日ハ玆ニ於テ巳ムヲ得ヌカラ地
租案ヲ撤囘スル、公債政略ヲ復活スルノデアルト言ハレルノハ政府ニ果シテ自信アリヤ
否ヤ、政府ニ一定ノ方針アリヤ否ヤ、方針ナクシテ、國勢ヲ進メ、或ハ又十年計畫ヲ立ッ
テルナゾト云フ事柄ハ、餘程危險ノ仕事デハナカラウカト思ヒマスノミナラズ、政府ハ今
日ニ於テ、此鐵道公債ナリ事業公債ナリヲ募ッテ、果シテ其成算アリト信ジテ居ラレルデ
アラウカドウカ、公債ヲ募ルコトガ立派ニ出來ルト御信用アルカ、、ドウカ、或政黨ノ重立ッ
タ人ハ、其黨員ニ向ッテ演說ヲシテ居ルノニ、今斯ク極メテ置イテモ、此公債ガ果シテ
募レルヤラ募レヌヤラ分ラヌ、此先キドウナルカ分ラヌト云フコトヲ、明言セラレタト聞ク、
政府又左樣ニ信ゼラルヽノデハアルマイカ、一時道レニ此地租案ニ代ヘルニ、公債案ト
云フモノヲ出シタノデハアルマイカ、今迄ノ仕方ニ依ッテ見レバ、左樣ニ疑ハレテモ仕方ノ
ナイ話デアル若シ左樣ナ無方針ノ遣リ方デ致シマシタナラバ、誠ニ此將來ノ經濟上、
案ジラレル次第デアリマスカラ、政府ハ今日ノ經濟界二取ッテ、公債ヲ募集シテモ決シテ
害ガナイト認メラレルカ、又公債ヲ募集シ得ラレルト、確ク信ゼラルヽカ、此二點ニ付イテ、
私共今玆デ以テ明カニ、御答ヲ得テ置キタイモノト存ジマヌ
〔大藏大臣男爵曾禰荒助君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/29
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030・曾禰荒助
○大藏大臣(男爵曾禰荒助君) 唯今ノ御問ニ御答申シマス、昨年申上ダコトヽ今
年ハ違フカドウカ、斯ウ云フ御問ガ一ツデアリマス、卽チ政府ニ於キマシテハ、昨年モ出
シマシタ通リニ、一番ソレガ宜イノデアッタ、併ナガラ此形勢已ムヲ得ズ終ニ轉用シタノ
デアリマス、ソレカラモウ一ツノ方ハ、是位ナ公債ガ募リマシタッテ、非常ニコタヘハスマイ
ト信ジテ居リマス、併ナガラ物ハ必ズ片方ノ手ニ取リマスレバ、片方ノ手ガ少シ空ニナル
ノハ、極ッテ居リマスカラ、一ツモコタヘヌトハ申シマセヌ、多少ハコタヘマスガ、サウ御困リ
ナサルヤウナコトハアリマスマイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/30
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031・原敬
○原敬君(九十四番) 唯今大藏大臣ノ御演說ニ付イテ、一言承ッテ置キタイ、唯今
ノ御說明ニ依ルト、此地租案ヲ撤囘サレテ、此度ノ鐵道敷設法ノ改正案竝ニ事業公
債條例ノ改正案ヲ提出セラレタ理由ニ付イテ、行政ノ整理又ハ事業ノ繰延等ニ依ッテ、
財源ヲ充タシテ居ルガ如ク承ハル果シテ然リトスレバ其所謂行政整理ヨリ、幾許ノ
金ヲ節減サレタノデアルカ、又公債額ニ致シマシテモ、實際幾許ノ公債ヲ募集セラルル
御見込デアルカ、而シテ其整理セラルル所ノ行政整理ノ結果ハ、果シテ今日整理セラレ
タル所ヲ以テ、政府ハ滿足セラルルデアルカ、吾〓ノ希望ヲ以テスレバ、此行政財政ノ整
理ハ、最モ十分デナケレバナラヌト考ヘルケレドモ、政府ノ御都合ニ依ッテ、相當ナル程度
ヨリ、今日ハ出來ヌト云ヘバ是モ致方ナイガ、尙進ンデ整理ヲ致サルル積リデアルカ、又
公債ノ額モ今日豫定サレテアルニ拘ラズ、尙其意味ヲ以テ事業費ニ支辨セラルル所ノ御
希望ガアルヤ否ヤ、此議場ニ於テ明カニ政府ノ御趣意ヲ承ッテ置キタイ
〔內閣總理大臣伯爵桂太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/31
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032・桂太郎
○內閣總理大臣(伯爵桂太郞君) 唯今原君ヨリ御質問ガゴザイマシテ、御答辯ヲ
致ス、要領ハ斯ウ云フ御問デアッタト考ヘル、政府ハ財政ノ整理、行政ノ整理ヲ致シテ、
此必要ナル費ニ充テタト云フガ、尙今後整理ノ餘地アルヤ否ヤト云フコトガ、第一ノ御
問デアッタト考ヘル第二ニ公債ヲ募集スルガ、公債募集額ハ成ルベク少ナク募集ヲスル
見込デアルヤ否ヤト云フ、御問デアルト考ヘマス、是ニ就イテ第一ノ御問ヨリ御答辯ヲ
致ス、政府ハ固ヨリ一日トシテ、行政財政ノ整理ヲ務メナイコトハナイ、尙是ヨリ進ンデ
務メテ整理ヲ致ス見込デアル、(「注文通リ」又「狂言」ト呼フ者アリ)又公債ノ募集ハ
固ヨリ少ナキヲ、政府ニ於テモ欲スルノデアル、故ニ爲シ得ラレル限リハ、少ナク募集ヲ致
ス積デアル
(「信用ガ出來ズ」ト呼フ者アリ〕
〔守屋此助君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/32
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033・守屋此助
○守屋此助君(二百六十一番) 滿場ノ諸君、私ハ議員ノ職責ト致シマシテ、餘程
愼重ニ政府ニ向ッテ、此大政策ノコトニ付イテハ問フテ置クノガ、吾ミ議員ガ內閣ヲ監
督シテ、政治ヲ爲サシメルト云フ職責ノ上ニ、缺クベカラザルコトデアルト思フ、是ハ上
陛下ニ對シ奉リ、下國民ニ對シテ盡スベキ分デアルト考ヘル、私ハ敢テ辯ヲ好ムノデモナ
イ、又唯內閣ヲ追窮シテ快事トスルノデモナイ、ソレデ私ガ第一ニ諸君ニ向ッテ、サウシテ
內閣諸公ニ問ヒタイ、私ハ前云フ通リ、唯內閣ヲ痛罵シテ快事トスルノデハナイカラ、其
積リデ內閣諸公モ聽カレンコトヲ希望スル、十七議會ハ何ノタメニ解散セラレシゾ、御上
ニ向ッテハ何ノタメニ解散スルト云フコトヲ奏請ナセシゾ、サウシテ四千五百万ノ同胞ヲ
シテ、アノ騒ギヲ起サシメタゾ、斯ウ云フコトヲ問ウテ見レバ、諸君分リマス、地租案-
海軍擴張ヲスル財源ハ、地租ニ據ル外ハナイ、而シテ此地租ハ三分三厘案ト云フモノヲ
出シタノデアル、解散以前ニ於テ上陛下ニ對シ奉リ、內閣諸公ハ憲法五十七條ニ
依ッテ、輔弼ノ責任ヲ以テ、其責ニ任ズト云フコトハ、夙夜忘レザル勤王ノ士デアルカラ、
御記憶アッテ、御奏請ニナッテアラウ、ソレデ此議會ガ-十七議會ガ開ケタ所ガ、國論
ガ此政府ノ財政策ヲ容レザリシタメ、議會ノ解散ト相成ッタ、國論ニ御訴ニナッテノデ、
國民ノ裁判所ニ御訴ヘナサッタノデアル、サウシテ此裁判所ガ如何ニ裁判シタカ、ドウ裁
判ガアッタカ、明カニ內閣諸公ハ負ケタノデアル、負ケルト云フ事柄ヲ知ッテ居シテ、內閣
諸公ガ此解散ト云フコトヲ奏請サレタト云ヘバ、畏多クモ大權ヲ弄バレタノデアル、知ラ
ナイデ爲サレタナラバ、內閣諸公ハ不能デアル、不明デアル、不能不明ノ其一ニ居レルカ、
大權ヲ弄バレタ罪ノ一ニ服サレルカ、ドチラカ一ツヲ御持チニナルト云フ事柄ガ、私ノ考デハ
一國大臣宰相ノ舉動デアラウト、斯樣ニ思ッテ居ルノデアル、然ル所デ議會ガ解散ニ相
成ッテ、三月一日ニ選舉ニ相成ッテ、選舉ノ結果デ、議員ガマダ議會ニ集ラナイデ、自分
ノ負ケ公事ト云フコトハ明カニ御認メニ相成ッタ、玆ニ於テカイロ〓〓議會ノ-公
ケナル議事堂以外ニ於テ、イロノ手段ヲ御盡シニ相成ッタノハ、自ラ負ケ公事ト云
フコトヲ御承知デアッタカラデアラウ、サウシテ十八議會ヲ開イテ、何ト云フ議案ヲ出サレ
タラウ、何ント云フ議案ヲ出サレタト云フト、財政策ガガラリ變ッテ居ル、ドウガラリ變ッテ
居ルカト云フト、地租ハ三分三厘ガ三分ト相成ッタ、其缺損額ノ四百万圓ト云フモ
ノハ、政府ハ產出スト云フコトヲシタ、ソレハ何デ產出スカト云フト、鐵道事業ノ繰延二
百五十万圓、電話事業ノ繰延五十万圓、一般ノ行政整理デ百万圓、是デ四百万圓
ト云フ、斯ウ云フ財政策ヲ立テテ來テ、サウシテ財政ノ事ニ就イテ、最モ重キ責任ヲ持
タルヽ所ノ大藏大臣曾禰男爵ハ、此議場ニ臨ンデ何ト言ハレタ、本大臣ハ三十六年度
ノ追加豫算ヲ、諸君ニ紹介スルハ光榮ト心得ル-何ノ光榮ガアル(笑聲起ル)男子ノ
意氣地-男子ノ意氣地、匹夫尙日本魂ヲ持ヲテ居ル、自己ノ抱負、自己ノ立テシモ
ノハ如何ニモ遂行スルト云フコトハ、匹夫尙能ク辨ズル、帝國臣民ハ臣民ノ面目トシ
テ、又自己ノ立テシ財政策、自己ノ描キシ方策ヲ、飽マデ通スト云フ事柄デ、臣子尙能ク
之ヲ持シテコソ、臣子ノ面目デアラウ、一國ノ大臣宰相ト相成ッテトハ陛下ニ申上ゲ立テ
シ財政策ハ、何處マデモ自分ガ通ス通ラヌト云フコトデ、議會ヲ解散シテ之ヲ通サウト、國
論ニ問フテ通ラザリシトキニハ、臣不明ナリト云ッテ罪ニ服セヌト云フモノガ、何處ノ國ニ
アル、ソレデ憲法政治ト云フモノガ、是ガ出來ナクテ、何ノ憲法政治ガ有難イノダト云フ
ノガ、私ノ疑ヒダ、此通リノコトノ仕事ヲバ第一男子ノ意氣地ト云フコトヲ全ク沒却シテ
シマッテ、第二ニ臣子ノ面目ト云フコトヲ少シモ思ハナイ、第三番目ニ上下ニ對スルト
云フコトノ責任ハ、サラリト御忘レニ相成ッテ居ル、斯ウ云フ內閣諸公ガ、心デアラセラレ
テ、私ガ疑デアルノハ、上ノ好ム所下是ヨリ甚シ、全國數万ノ役人ハ、今日唯今以後政
治ノ事ニ付イテハ、責任免除ノ役人ガ日本ニズット出來テ(「ヒヤ/」ト呼フ者アリ)
責任ハ皆持チマスマイ、內閣諸公ガ自身ニ-此公ケノ場デ、私ハ諸公ヲ唯痛罵シテ快
事トハ致サヌ、諸公心靜ニ此事ニ付イテ御考ヘナサイ陛下ニ對シテ御考ヘナサイ、ソ
レデアナタ方ガ數万ノ役人ヲ率ヒテ御出ニナッテ、是デ統御ガ出來マスカ、千万條ノ法
律ヲ御拵ヘニ相成ッテモ、〓科書ノ賄賂事件ハ今後止ムマイト思フ(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者
アリ)是デ止ムト仰シヤレバ、諸公ハ又天下ヲ欺ク人デアル、ソレカラ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/33
-
034・杉田定一
○副議長(杉田定一君) チヨット御注意シマス、質問ノ要點ヲ御述ベナサイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/34
-
035・守屋此助
○守屋此助君(二百六十一番) 宜シウゴザイマス、ソレハ私ガ言フノハ、此趣旨ト云
フノハ、行政整理デ出スト言ハレルカラ、斯ウ云フ遣リ方デ行政整理ガ出來ルカ出來ヌカ
ト云フコトヲ問フ、行政整理デ百万兩ノ金ガ出來ルト云フカラ-議長ガ趣旨ヲ早ク
言ヘト云フカラ詰リ其趣旨ハ其處ニアル、前ニハ五十万圓ヨリ行政整理ハドウシテモ
出來マセヌ、アノ算ノ立方ハ、諸君ノ立方ハ四十万圓、內閣ノ立方ハ五十七万圓、十
七議會ノ行政整理ト云フモノハ、ドチラニシテモ五十万圓內外ヨリ外ニ、行政整理ハ出
來ナイト云フ事柄ヲ、上下ニ向ッテ斷言サレシ內閣ガ、此ナサレ方デヤッタ、詰リ百万兩ノ
金ガ出ルト云フノハ其出方ハ土臺ドウシテ御出シニナルカ、サウシナイト今日ダモ、曾禰
大藏大臣ガ行政整理カラ金ヲ出スト言ハレルカラ、其出ル出ヌト云フ事柄ガ、サウ云フ
ヤリ方デ出ルカ出ヌカト云フコトガ極マラヌト、諸般ノモノ二贊否ヲ決スルニ守屋此助ガ
苦ムカラ其事ヲ問フ、、ソレカラ行政ノ整理ト云フ事柄ニハ、繁支縟禮ノ弊ヲ去ルト云フコ
トガ、最モ必要デアル-最モ必要デアル、是ハ內閣諸公ガ度〓言ハレルコトデアルカラ、
私モ贊成シテ居ル、此事ニ付イテ私ハ豫算委員會ニ於テモ言フタノデアルガ、此前本會
ニ於テ-天下ノ大廣場ニ於テ物ヲ問フ、簡明ナ簡單ナコト、三尺ノ童子ニモ尙能ク
答ガ出來ルコトヲ、、明カニ分ルコトヲ問フノニ、此問フコトハ議員ノ權能デ、書面デ問ハウ
トモ、口頭デ問ハウトモ權能デ、ドッチデ問ウテモ宜シイノデアル、極ク簡單ナコトヲ、其質問
ハ書面デ御出シナサイ、天下是ヨリ無用ナル繁文縟禮ナ政治ハアリマスマイ是ヨリ無
用ナル繁文縟禮ナ政治ハアリマスマイ、此遣リ方ノ繁文縟禮ナ仕方ヲ、大藏大臣ガ
射政行政ノ整理ニモ、最モ力ヲ御盡シナサル曾禰男爵閣下ガ、之ヲシテ御見セニナル、
矢張上ノ好ム所下是ヨリ甚シ、サウ云フ政治ヲシテ居ル、詰リ行政整理ガ出來ルカ出來
ヌカト云フコトハ私ノ考デハ人存シテ其政舉ル、デ人ナノデアル法律ヲ拵ヘタ所ガ、〓
科書事件ノ如キモノモ-一千万條ノ法律ヲ御拵ヘニナッテモ、今ノ政治ノ遣リ方デハ、
是ガ止マヌノト同一ノ筆法デアル、其人存シテ其政〓ル、斯ウ云フ遣リ方デハ私ハ何モ舉
ルマイト思フ、內閣ガ行政整理、財政整理ヲヤラレルト云フノモ、其財政ノ事柄ノ中ニハ、
經濟ト云フコトヲ含ンデ居ル、國家經濟ノ整理、所ガ政府ノナサレ方ニ於テハ、整理ト
云フ事柄ヲシテ居ル傍ニ、破壞ト云フコトヲシテゴザル破壞ト云フコトヲシテゴザル、
ソレハ何デアル農商務大臣ト云フ、ドウモ殆ド遠慮ナク言ヘバ、支那ノ義和團ガ、國民
ノ財產ヲ破壞セシ如キ擧動ヲスル內閣大臣ガ、內ニ居ルデハナイカ、取引所ノ事卽チ
是ナリ、一夜ノ中ニ一本ノベシ先ヲ以テ-一本ノペン先ヲ以テ、先ヅ取引所ノ株
或取引所ノ株劵ノ二百圓シタモノガ、百圓ニ落チルト云フコトヲシタデハナイカ、是ハ
直接ニ株式取引所ノ株主ダケノ害デアルケレドモ、株式取引所ガ圓滿ニ往カヌタメニ、
有價證劵一切·····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/35
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036・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 守屋君、問題外ニ涉ラヌヤウニ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/36
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037・守屋此助
○守屋此助君(二百六十一番) 私ハ整理が、出來ルカ出來ヌカト云フコトヲ、問フノデ
アル(「ヤルベシヤルベシ」ト呼フ者アリ)整理ガ出來ルカ出來ヌカ、出來ヌト思フカラー
ナカノゝ行政整理デ金ガ餘ッテ出ルコトガ、迂ッカリ信用ガ出來ヌカラ、守屋此助ガ問フ
ノデアル、サウシテ天下ノ有價證劵カラ、自己ノ御出シニナッタ公債證書ノ、値打マデ落チ
ルコトヲ、ナサレタデナイカ、サウシテマダ其處マデハ一般ノ國民ノ經濟ヤ、自己ノ御出シ
ニナッタ、公債證書ノ信用ヲ落シタニ止ッテ居ッタガ、其末自己ガ其非ヲ覺ッテ、此勅令
ヲ改メルト云フコトノ、又サウシテ勇氣ガナク、省令デ姑息ナ事柄ヲシテ、定期取引ニ往
ケバ國稅ガ取レル、稅金ガ取レル、然ル所ガ此定期取引ト云フコトハ、實際ニ於テ少シモ
スル人ガナイヤウニナッタ、實地ハ延取引ト云フ三箇月限リノ取引ヲスル是ハ無稅ノ仕
事、稅ガ取レヌヤウニナル、是ハ確カニ財政ヲ破壞スル政治デハナイカ-取引所ノ定期
ヲ三箇月ニシテ下サイト云ウテ、アチコチ運動シタ位ダカラ、喜ンデ納メル稅デアル。泣イ
テ納メル稅デナイ、笑ッテ納メル稅デアル此笑ッテ納メル稅ヲ取ラヌコトニスルノデアル、
是ハ私ニハ確ニ政府ノ財政ト云フモノヲ破壞スル政治デハナイカ否ヤ、政治デアルト思
ノデアリマス、斯ウ云フ遣リ方ヲヤッテ來タノガ、今日マデ十八議會ヲ開カレタ時分マデ
ノコトデアル、所ガ其十八議會ニヤッタノモ、亦能ク固ク保テバ宣イガ、其地租三分三厘
ヲ放抛シテシマッテ、三分ニ變リ、今日ハ-サウシテ〓ク所ニ依レバ、鐵道ヨリ出ル金
ハ二百五十万兩-四百五十万兩ノ此生產事業ノ方ハ、、繰延ベニナルト云フコトデ
アル、電話事業ノ方モ繰延ベニナルト云フコトデアルガ、國務大臣タル曾禰閣下ハ、電
話ノ事業ハ言ハレヌヤウニ私ハ思フ、私ハ二ツノ耳デアルカラ、モウ少シ耳ヲ澤山持ッテ
居ッタラ、聞イタカモ知レヌガ、聽エマセヌ、サウシテ見レバ、電話事業ノ方ハ今度繰
延ベヲスルノカセヌノカト云フコトガ不明瞭デアル、ソレデ今度ハ公債政略ニ依ル、是デ
ス-此事デス、公債政略ニ依ル此事デス、公債政略ハ私ハ日本國ヲ未來永刧、公
債ヲ募ルコトハ相成ラヌト云フヤウナ、馬鹿ナコトハ言ハナイ、國ノ景氣ガ立直ッテ、公債
證書ノ相場ガ、日〓戰爭ノ時ノ如ク百十圓モシテ居ルト云フ時ナレバ、ソレハ樂ナ仕事
デアル然ルニ此日〓戰爭ノ時ニハ、日本銀行ノ金利ガ一錢六厘ト云フ時ニ、例ノ公
債證書ガ百十圓致シタ、ソレハ國會ノ議員ノ諸君ガ、二十三年以來政府ヲ嚴重ニ監
督ニナッテ國庫ノ剰餘金ガ一一千三万兩アッタ時分ダカラ、チヤント日本ノ財政ガ整理シテ
アッテ、支那ト戰爭ヲ開イテ、日英同盟マデ出來タト云フ日本ガ、其日本銀行ノ金利ガ
一錢六厘ニナッテ居ッテ、其公債證書ノ相場ハ、內閣諸公ノ信任ヲ表スル「メートル」デア
〓、其公債證書ガ九十三四圓シカシナイ、內閣諸公ノ信用ガ其處マデシカナイノデアル、
守屋此助ガ惡口ヲ云フノデハナイ、公債證書ガ諸君證據立テ居ルカラ、心靜ニ御考ヘ遊
バシタ方ガ宜カラウ、ソレカラ内閣ガ屢〓更迭スルト云フ事柄ヲ憂ヘル人ガアリマスルガ、
ソレハ内內ガ度〓更レバ政事ノ方針ガ更ルカラ、國家ニ害ガアルサウデアル所ガ、內閣
ガ更ッテモ內閣ニ意氣地ノアル人、面目ヲ重ンズル人、責任ヲ知ッタ人、ソレガ居リマス
レバ、チヤント整理ガ出來ルガ、猫ノ眼球ガ變ル如ク、七面鳥ノ鷄冠ノ色ガ變ル如ク、
財政策ガグラ〓〓變ッテモ、ドウカ斯ウカ公債證書ノ相場ガ保テル、內閣諸公ガ公債
證書ヲ募ルト云フガ、今ノナサレ方デハ、益〓募レヌ譯ニナリマス、斯ウ云フ財政策デ公
債ヲ募ルヤウデハ、百圓ノ公債證書ガ現ニ今九十二三圓シテ居ルヤウダガ、此整理公債
時價八十五圓ニナッテモ、八十圓ニナッテモ、七十圓ニナッテモ、是ハ最後ノ間デアル、
十箇年ニ五千五百万圓、一箇年ニ五百七八十万圓ヲ、此公債證書ノ値段ノ上下ゲ
ニ拘ハラズ、御募リニナルカト云フノガ、最後ノ問デアル是デ私ノ質問ハ了リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/37
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038・坂口仁一郎
○坂口仁一郞君(二十九番) 私ハ先刻大藏大臣ニ質問ヲ致シマシタケレドモ、大藏
大臣ノ答辯ハ一向私ノ問フ所ニ答ヘタモノデハナイ、私ハ昨年ト本年トハ、ドウ云フ相
違ガアルカト云フコトヲ尋ネタ、然ルニ唯成ルベク地租案デヤリタイケレドモ、事情已ムヲ
得ズシテ撤回ヲスルト、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、己ムヲ得ズト云フコトデアリマスルナラ
バ-今年已ムヲ得ズト云フコトハ昨年モ已ムヲ得ザルコトニナルノデアル然ルニ昨
年ハ一步モ讓ルコトガ出來ヌト云ウテ、議會ヲ解散シテ置キナガラ、今日ニ至ッテ事情
已ムヲ得ズシテ撤囘ヲシタト云フノハ、何カ其間ニ昨年ト今年ト形勢ノ違ヒ、事情ノ違
ヒガナケレバナラヌト思ヒマスカラ、何ノタメニ昨年議會ヲ解散セラレタ、議會ノ解散ハ輕ル
イモノデハ決シテナイ、內閣大臣ガ進退ヲ賭シテヤルモノデアル、是ガ万々一英國ノ國會
デゴザイマシタナラバ、一度議會ヲ解散シテ、今日此議院ノ反對ヲ受ケタ所ノ其在
野ノ政黨ガ大多數ヲ以テ出ルト云フコトデゴザイマシタナラバ、此議會ヲ開カヌ前ニ疾
クニ辭職ヲシテ御出ナサラナケレバナラヌ筈デアルケレドモ、日本ニ於キマシテハ、憲法ノ
運用ガ英國程ニ至ッテ居リマセヌ、居リマセヌトシタ所ガ、免ニ角議會ヲ解散致シマシタ
以上ハ相當ノ責任ヲ有タナケレバナラヌコトヽ思フ、然ルニ重イ責任ノアルニモ拘ハラズ、
議會ヲ解散シテ今日ニナッテ、謂ハレナクシテ此地租案ヲ撤囘サレルト云フコトハ、今日
ガ誤ッタノデアルカ、昨年ガ誤ッタノデアルカ、何レカ一ツニ誤リガナケレバナラヌ、誤リデナイ
ト云フナラバ、其理由ヲ明白ニ議場ニ說明ヲセラレタイ、斯ウ云フ私ノ質問ノ要旨デア
ル、唯已ムヲ得ヌト云フ一言デハ分リマセヌ、昨年ハ斯ウ、今年ハ斯ウ云フ事情デアッテ、
已ムヲ得ズト云フノハ斯ウ云フ譯デアルト、其理由ヲ明白ニ說明ヲ請ヒタイ
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/38
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039・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 政府ノ答辯モナイヤウデスガ、是ハ第一カラ第四マデ委員
ニ託サレテ、十分ニ委員會デ御述ベニナッタ方ガ宜カラウト思フ、ドウカ十八名ノ委員ニ、
直ニ附託セラレンコトヲ希望致シマス
(「贊成々々々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/39
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040・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君ノ唯今ノ動議ノ通リ、第一カラ第四マデ關聯シテ居
ル問題デスカラ、一括シテ議題ニ供シテ宜シウゴザイマスカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/40
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041・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ、其通リ致シマス、第三ノ日程ノ朗讀ヲ
省略致シマス
第三事業公債條例中改正法律案(政府提出緊急事第一讀會
件
事業公債條例中左ノ通改正ス
第一條中「證書額面壹億五千萬圓」ヲ「壹億八千萬圓」ニ改ム
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/41
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042・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 直チニ十八名ノ委員ヲ、議長カラ指名ヲ願ヒマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/42
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043・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 大臣ヨリ答辯モナイヤウデスカラ、是デ質問ハ盡キタモノトト
見マシテ、委員ノ選舉ハ恆松君ノ動議ノ通リ、十八名ノ委員ヲ議長ガ指名シテ、右二
案ヲ同一委員ニ付託スルコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/43
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044・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ其通リニ致シマス-議事日程ノ第五ニ
移リマス、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第五鐵道ニ關スル建議案(松田正久君外一名提出)
鐵道ノ建設及改良資金ハ從來屢く增減シテ常ニ一貫ノ方針ヲ以テ其ノ計畫
ヲ遂行スルコト能ハス爲ニ國家ノ進運ヲ阻害スルコト實ニ鮮少ナラス是レ
首トシテ其ノ資金ヲ供給スルノ方法宜ヲ得サルニ由ラスムハアラス因リテ
政府ハ鐵道、益金ヲ以テ建設及改良資金ニ供給スルノ方法ニ改メ其ノ法案ヲ
第十九囘議會ニ提出セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/44
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045・原敬
○原敬君(九十四番) 提出ノ理由ヲ說明致シタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/45
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046・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 登壇シテ御述ベナサイ
〔原敬君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/46
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047・原敬
○原敬君(九十四番) 諸君、此建議案ノ趣意ヲ、簡單ニ陳述致シマス、此趣意ハ誠
ニ建議案其モノニ依リテ、諸君ハ明瞭ニ御了解下サルデアラウト考ヘル程、簡單ナ問題
デアリマス大要ハ御承知ノ通リ、鐵道改良鐵道建設ト云フコトハ、數年以前ヨリ其
計畫ニ相成ッテ居リマスルガ、此財源ニ關シテハ度々動搖ヲ來シテ居ル或時ハ公債募
集ノ難キガタメニ事業繰延トナリ、或時ハ普通財源ヨリ支出致シマシテモ其財源ノ
不足ノタメニ、又他ニ遣繰ヲスル積リデアリマス、斯ノ如キ有樣ヲ以テ、鐵道ノ改良竝ニ
建設ヲ致シテ、國家ノ發達ノ上、最モ必要ナル事業ヲ遂行致スト云フコトハ甚ダ難キコ
トヽ本員ハ信ジマス、故ニ將來ニ於テハ、此鐵道改良竝ニ建設ト申スコトニ就イテ、其資金
ハ鐵道自ラ得ル所ノ益金ヲ以テ、支辨シタイト考ヘルノデアリマス、鐵道ノ益金ハ御承知
ノ通リ、年々增加致シマスガ、其益金ニ屬スル分ハ大藏省ノ收入トナリ、更ニ之ニ要ス
ル所ノ費用ヲ支出スル手續ニナルガタメニ度々財源ノ動搖ヲ免レヌ有樣デアル、故ニ此
方針ヲ改メテ、鐵道ハ鐵道自ラ得ル所ノ利益ヲ以テ、之ニ充テタイト云フ趣意ニ過ギナ
イノデアリマス、斯樣ナ趣意デ、誠ニ簡單ナ次第デアリマスカラ、願クバ諸君ニ於テ、速
御贊成下サイマシテ、此案ノ通過致スコトヲ希望致シマス、竝ニ此事ニ就イテ一言政
府ニ向ッテ伺ヒタイノハ、政府モ此事ニ就イテハ多分御同感デアラウ、御同意ニアラウト信,
ジマスガ、果シテ然ルニ於テハ、當議場ニ於テ此事ヲ明カニ承ランコトヲ、希望致スノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/47
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048・鈴木そう兵衞
○鈴木摠兵衞君(五十九番) 私ハ原君ニ質問致シタイ、此案デハ鐵道益金ハ一箇
年八百餘万圓アル、此益金ヲ以テ建設及改良費ニ使用スルト云フコトデアルガ、此金タ
ルヤ一般會計ノ內ニアルモノデアル、ソレヲ特別會計ニ拔去ルト、一般會計ノ跡埋メノ勘
定ハ、ドウ云フヤウニナリマスカ、疑ヲ生ジマスカラ····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/48
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049・原敬
○原敬君(九十四番) ソレハ御答ヲ致シマスガ、無論今日ハ一般ノ會計ニナッテ居リ
マン、是ヨリ支出スル手續ニ相成リマスカラ、、其財政上ノ計畫ニ見テモ、其時ノ豫算ノ
關係ヲ見ル外ハアリマセヌガ、私ノ見ル所デハ、何レニシテモ國庫ヨリ是丈ノ費用ヲ支辨
シテ居ル、或時ハ公債、或時ハ普通財源カラ出シテ居リマスカラ、之ヲ出スト云フコトハ
財政上同樣デアル、又財源ノ動搖ヲ來サヌガタメニ、斯ノ如クスルガ必要デアルト信ズル
ノデアリマス
〔大藏大臣男爵曾禰荒助君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/49
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050・曾禰荒助
○大藏大臣(男爵曾禰荒助君) 今原君カラ、今ノ建議案ニ就イテ、政府ハドフ考ヘ
テ居ルカ、言云ヘト云フコトデアルカラ、申シマス(「茶番デスカ」「狂言デスカ」ト呼フモノ
アリ)大體ニ於キマシテハ、其積リデヤッテ往ク積リデアリマス、併シ方案ノ如キハ、十分
ニ調査ヲシテ、第十九議會ニ出スト云フ考ヲ持ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/50
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051・工藤行幹
○工藤行幹君(二百五十九番) 此際チヨット登壇シテ、意見ヲ述ベタウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/51
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052・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 宜シウゴザイマス
〔工藤行幹君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/52
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053・工藤行幹
○工藤行幹君(二百五十九番) 唯今原君カラ御演說ニナリマシタ、此鐵道ノ資金ノ
事ニ於キマシテハ、本員モ絕對的之ニ反對ヲ致スモノデハゴザイマセヌ、大體良イカトモ
思ヒマスケレドモ、併シ此事ハ餘程重大ノ關係ヲ持ッテ居ルモノト思ヒマス、今其一二ヲ
簡單ニ云ウテ見ルト、此特別會計ナルモノハ、全體此財政ノ整理上ニ於テ、餘リ宜イモ
ノデハナイ、現ニ文部省所轄ノ中ノ、各學校ノ特別會計ニナッテ居ルト云フコトハ、如何
ニモ手數ノ掛ルノミナラズ、隨分財政ノ錯亂スル基ニモナル憂モアルノデゴザイマス、伊ノ
原君ノ言ハルヽ通リ、鐵道ノ資金ノ事ニ就イテ、內閣ハ度々此方針ヲ變ヘテ來ルト云フコ
トハ誠ニ宜クナイコトデゴザイマスカラ、之ヲ一定ノ費用ヲ拵ヘヤウト云フコトモ、尤モト考
ヘマスケレドモ、若シ此特別會計デ鐵道ヲヤッテ往クト云フコトニナッタラ、電信電話モヤハ
リサウシナケレバナラヌト云フ、傾キニナッテ來ナイトモ限ラナイ、殊ニ此案ハ大體デゴザイ
マセウケレドモ、本員等ノ最モ惑フ所ノコトハ鐵道ノ益金ヲ以テ、鐵道ノ建設ノ費用或
ハ之ヲ修繕ノ費用ニ充テヤウ、蓋シ此益金ト原君ノ稱スル所、又此案ニ書イテアル處ノ
モノハ、固ト建設シタ費用ノ元金、若クハ元金ハ暫ク措イテモ、此利息ト云フモノハドウ
スル積リデアルカ、本員等ノ聞ク所ニ依レバ、官設鐵道ノ凡ソ益金ト云フモノハ、今日
八百万圓モアル、然ルニ是カラ若シ利息ヲ引ク、初メカラ掛ッタ處ノ利子ヲ引クト云フ
コトニナッタナラバ、誠ニ僅々タルモノニナリハセヌカト思フノデアリマス、ソレデハ却テ鐵道ノ
發達ヲ妨ゲルヤウニナリハセヌカト考ヘマヌ、又サウデナク元ノ經營シタ事業ノ費用ノ利
息モ見ナイ、元金モ見ナイデ、唯役人ノ給料ヤ、、鐵道ノ掛リノ費用ヲ引イテ、跡ヲ悉ク鐵
道ノ建設ニ突込ムト云ヘバ、餘リ國家ノ總體ノ釣合カラ見ルト、鐵道ニ餘リ多クノ金ヲ
入レ過ギハセヌカト云フヤウナ考ヘニナルノデアリマス、故ニ此案ハ餘程愼重ニ調查ヲシナク
テハナリマスマイ、故ニ私ハ之ヲ絕對的ニハ反對シマセヌガ、ドウカ特別委員ニ付託シテ、
篤ト調査ヲシタ上ニヤリタイト思フ、又政府ハ之ニ大體ト云フコトヲ唱ヘルノハ、豫テ御
申合セノ上カ何カハ知リマセヌガ、如何ニモ大藏大臣ナドハ、財政上ノ事ニ就イテハ鄭重
ニナサルヽガ、此事ニ就テハ大體御贊成ト云フコトハ、此邊ヲ如何ニ處理スル積リデア
ルカ、本員等ハ最モ此財政ノ困難ナ場合ニ於テ、斯ウ云ウコトヲスルニハ能ク〓重ニ
考ヘナケレバナラヌコトト思フノデアリマス、故ニ是非是ハ特別委員ニ掛ケテ、篤ト審議シ
タイ、然ルニ私ノ聞ク所デハ、政友會ノ諸君ハ、之ヲ卽決ト云フコトニサレテ居ルト云フ
コトデアリマスガ、ドウカ政友會ハ多數ヲ占メテ居ル政黨デモゴザイマスケレドモ、斯ウ云
フ財政ニ關スルコトハ、他ノ黨派ニモ篤ト取調ベヲシテ、相談ヲシタ方ガ穩當デアリ、又政
治上ノ德義ト考ヘマスカラ、願クハ政友會諸君モ、此德義ヲ守ッテ、必ズ今ヤラナケレバナ
ラヌト云フ急ナモノデハナイ、第十九議會ニ出スタメノ建議案デアリマスカラ、ドウカ特別
委員ニ附シテ、篤ト調査アルヤウニ御同意アランコトヲ、偏ニ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/53
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054・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 本案ハ吾ミハ鐵道速成ノ基礎ヲ鞏固ニスルノデアリマス
カラ、無論卽決ヲ好ミマスガ、今工藤君カラ成程委員ト云フノデ、所謂政友會ハ大政
黨デゴザイマス、大雅量ヲ以テ速ニ是ハ委員附託ニナッタ方ガ宜カラウト思ヒマス、是ハ
十八名ノ委員ヲ、議長カラ指名ニナランコトヲ願ヒマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/54
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055・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君ノ御動議十八名ノ委員ヲ議長ガ指定スルコトニ御
異議ゴザリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/55
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056・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 然ラバ其通リ決シマス、議事日程第六ニ移リマス
第六度量衡法中改正法律案(政府提出)第一讀會ノ續(委員長
報告発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/56
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057・酒井岩造
○酒井岩造君(百八十番) 議長、百八十番-簡單デゴザイマスカラ、ヤハリ是カ
ラ.発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/57
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058・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 演壇ニ御登リナサイ
〔酒井岩造君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/58
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059・酒井岩造
○酒井岩造君(百八十番) 度量衡法中改正案ハ、委員長トシテ委員會ノ經過ヲ
報告致シマスデゴザイマス、本案ノ要旨ハ五箇年目ノ檢定ヲ、爾來平年檢定スルト云
フノガ趣意デゴザイマシテ、改正ノ各條項ニ就キマシテ審議ヲ致シマシタ處ガ、何レモ異
議ハゴザイマセヌシ、又此改正法ハ大ニ機宜ニ適ッタ事ト、深ク委員ハ認メテ、委員會
ニ於キマシテハ、各條異議ナク決シマシテゴザイマス、此事ヲ報告致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/59
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060・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 此問題ハ直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/60
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061・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 直チニ二讀會ヲ開クト云フコトニ、御異議ゴザリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/61
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062・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ直チニ一讀會ヲ開ク事ニ致シマス
度量衡法中改正法律案第二讀會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/62
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063・恒松隆慶
○恆板隆慶君(八十二番) 二讀會ニ於テ三讀會ヲ略シ、讀會省略デ確定アランコ
トヲ
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/63
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064・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君ノ動議ノ通讀會省略御異議ゴザリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/64
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065・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ讀會ヲ省略致シマス、本案ニ付イテハ御
異議ゴザイマセヌカ
度量衡法中改正法律案確定議
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/65
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066・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ本案ハ確定シタモノト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/66
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067・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 次ノ日程第七ヨリ、暗クテ分リマセヌガ、第十八デゴザイ
マスガ、是マデヲ一括シテ議題トセラレンコトヲ望ミマヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/67
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068・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君ニチヨット御尋申シマスルガ、日程第七ヨリ第十二マ
デヽハゴザリマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/68
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069・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) マア其通リデゴザイマセウ、何分暗クテ分ラヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/69
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070・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 第七ヨリ第十二マデヲ一括シテ議題ニ供シタイト云フ、恆
松君ノ動議ニ御異議ハゴザリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/70
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071・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ其通リ決シマス、議案ノ朗讀ヲ省略致シ
マス
第七明治三十四年度豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル
件)(政府提出)
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第九明治三十四年度特別會計豫備金支出ノ件(承
諾ヲ求ムル件)(政府提出)
第十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉
第十一明治三十四年度〓國事件第二豫備金支出ノ
件(承諾ヲ求ムル件)(政府提出)
第十二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/71
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072・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 說明ハゴザイマセヌカ、ゴザイマセネバ委員付託ニシマスゼ
〔政府委員荒井賢太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/72
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073・荒井賢太郎
○政府委員(荒井賢太郞君) 唯今議題ニ上ッテ居リマスル豫備金支出ノ事後承諾
ハ、前議會ニ提出ヲ致スベキモノデゴザイマシタガ、其運ヒニ至リマセヌ中ニ、解散ナリマ
シタモノデ、此臨時議會ニ提出ヲシテ承諾ヲ求ムルコトニ致シマシタト、何ウゾ其御積リ
デ御承諾ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/73
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074・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 是ハ九名ノ委員ヲ、議長ヨリ指名ニナランコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/74
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075・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君ノ御發議通り九名ノ委員ヲ議長ガ指名スルコトニ
御異議ハゴガイマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/75
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076・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレハ其通決シマス、次ニ議事日程第十三ニ移
リマス、議案ノ朗讀ヲ省略致シマス
第十三災害地々租免除ニ關スル法律案(矢島中君外第一讀會
十名提出)
災害又ハ天候不順ニ因リ府縣ノ全部若ハ一部ニ亙リ收穫皆無ニ歸シタル田
畑ノ地租ハ其ノ年分ニ限リ之ヲ免除ス
前項ニ依リ免租ノ處分ヲ受ケムトスル者ハ罹災後六十日以內ニ其ノ事實ヲ
證明シ主務官廳ニ出願スヘシ
本法ニ依リ免除シタル地租ハ法律上總テノ納稅資格中ヨリ控除セス
附則
本法ノ規定ハ之ヲ本法施行前一年間ニ災害ヲ被リタル田畑ニ準用ス但シ出
願期間ハ本法施行ノ日ヨリ三十日以內トス
明治三十四年法律第二十七號ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
〔室原重福君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/76
-
077・室原重福
○室原重福君(三十番) 本案ハ諸君ガ旣ニ御承知ノ案デゴザイマスカラ、簡單ニ申
セバ宜シイト思ヒマス、全體此案ハ昨年ノ議會ニ提出致シタノデアリマシタガ、解散ノタ
メニ議スル事ヲ得ナカッタノデ、甚ダ殘念ニ存ズルノデゴザイマス、而シテ今囘之ヲ提出致
シマシタ所以ハ、現行法ニ依リマスルト云フト、一方ニ及ンデ一方ニ及バナイト云フ、不
備不公平ナル〓ガアリマスカラ、其〓ヲ救フガタメト云フノガ、一ノ目的デアルノデアリマ
ス、卽チ現行法ニ依リマスルト、水害又ハ雹害ノ如キ場合ニハ、之ヲ其收穫皆無ト
ナツタ場合ニハ、其地租ヲ免租スルト云フコトニナッテ居リマスルナレドモ、天候不順ノタ
メニ-氣候不順ノタメニ收穫皆無トナック場合ニハ、及ボスコトガ出來ナイコトニナッ
テ居ルノデアリマスル而シテ是等ノ其氣候不順ノタメニ被害ヲ被ムルト云フ場合ハ、關
東以北ニ於キマシテハ、古ヨリ珍シクナイコトニナッテ居リマシテ、其害ノ及ブ所モ非常ニ
大ニナッテ居リマス、然ルニ今日ノ法律デハ、斯ウ云フ場合ニ當〓メルコトガ、出來ナイ
ト云フコトニナッテ居ルノデアリマスルカラ、是ヲ國家ノ上ヨリ見マスルト云フト、決シテ其
公平ノ法規ト云フコトハ、出來ナイト思フノデアリマスル、之ヲ要スルニ、一面ニハ今日ノ
此不備不公平ナル〓ヲ救ハンガタメニ(「簡單分シテ居マス」ト呼フモノアリ)一面二ハ此
昨年ノ非常ナル被害ノクメニ、將ニ死地ニ陷ラントシテ居ル、此各縣數万ノ人民ヲ救ハ
レンガタメニ、此案ヲ提出シタ次第デアリマス、ドウゾ御贊成ヲ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/77
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078・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 此問題ハ過日議員ヨリ提出ニナッテ居リマス、所ノ、地
租免租法律案ト云フヤウナ委員ガゴザイマスカラ、其委員ニ付託ニナランコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/78
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079・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君ノ動議ノ通リ前ノ災害地地租免除ニ關スル法律
案ノ委員ニ付託スルコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「贊成々ケ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/79
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080・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ其通リ決シマス
〔岩谷松平君「ドウデス今日ハモウ御止メニナッテハドウデス、吾々ハ老眼デ迚モ駄
目デス」ト呼ビ又「ヤルベシヤルベシ明リヲ點ケタラドウデス」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/80
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081・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 諸君ニチヨット御諮リ申シマスガ、此電燈ハモウ十分經タト來マ
スサウデスガ、暗クナリマシタカラ今日ハ是デ御止メニナリマスルカ
〔「ヤルベシヤルベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/81
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082・杉田定一
○副議長(杉田定一君) ソレデハ引續キ議スル方ガ、多數ト認メマスカラ、是カラ引續
イテ議シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/82
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083・恒松隆慶
○恆松慶隆君(八十二番) 私ハ緊急動議ヲ提出致シマス-議長、八十二番緊
急動議デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/83
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084・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/84
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085・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 此日程ハ總テ委員ニ付託スルノガ當然デゴザイマス、各〓
提出者ハ提出ノ理由ヲ略シテ、是ハ委員付託トセラレンコトヲ望ミマス、ドノ案ニハドウト
云フコトハ、私ハ書イテ議長ノ手許ヘ差出シマスカラ、ドウカ其都合デ、諸君ガ皆御同
意アラレンコトヲ望ミマス
(「贊成ケ々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/85
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086・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君ノ動議ニ贊成ガアリマスカ
〔「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/86
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087・杉田定一
○副議長(杉田定一君) ソレデハ恆松君ノ動議ノ通リ、日程第十四以下ヲ一括シ
テ議題ニ供シマス、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第十四家祿賞典祿處分法中改正法律案(高橋庄之第一讀會
助君外五名提出)
家祿賞典祿處分法中左ノ通改正ス
第四條ヲ第四條ノ一トシ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第四條ノ二給與ノ願出ニ對シ不許可ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不
服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十五地租條例中改正法律案(平岡萬次郞君提出)第一讀會
地租條例中左ノ通改正ス
第十條ヲ第十條ノ一トシ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第十條ノ二前條第一項ノ屆出アリタルトキハ其年ヨリ變換地目ニ依リ
其地租ヲ徵收ス但其年ニ係ル地租ノ全部又ハ一部納付後屆出アリタル
トキハ翌年ヨリ變換地目ニ依リ其地租ヲ徵收ス
第十六條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第十七條前條ニ依リ開墾ノ屆出ヲ爲シタル土地又ハ開墾鍬下年期若ク
ハ地價据置年期ノ許可ヲ受ケタル土地ニシテ開墾成功シ又ハ地目變換
シタルトキハ其旨政府ニ屆出ヘシ此場合ニ於テハ第十條ノ二ノ規定ヲ
準用ス
第十六町村制中改正法律案(古屋善造君提出)第一讀會
町村制中左ノ通改正ス
第百二十六條第三號ヲ左ノ如ク改ム
三地租五分ノ一其他直接國稅百分ノ五十ヲ超過スル附加稅ヲ賦課スル
事但地租ニ對スル超過額ハ地租二分ノ一以內トス
第十七府縣制中改正法律案(小河源一君提出)第一讀會
府縣制中左ノ通改正ス
第四條府縣會議員ハ各選舉區ニ於テ之ヲ選舉ス
選舉區ハ郡市町ノ區域ニ依ル但シ東京市京都市大阪市其ノ他勅令ヲ以テ
指定シタル市ニ於テハ區ノ區域ニ依リ町ハ獨立シテ府縣會議員ヲ選舉シ
得ル町ノミ町ノ區域ニ依ル
第五條府縣會議員ハ府縣ノ人口七十萬未滿ハ議員三十五人ヲ以テ定員ト
シ七十萬以上百萬未滿ハ四萬ヲ加フル每ニ一人ヲ增シ百萬以上ハ七萬ヲ
加フル每ニ一人ヲ增ス
町ハ人口一萬以上ノモノニ限リ獨立シテ一人ノ府縣會議員ヲ選舉スル權
ヲ有ス
各選舉區ニ於テ選舉スヘキ府縣會議員ノ數ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣
ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
前項議員ノ配當方法ニ關スル必要ナル事項ハ內務大臣之ヲ定ム
第九條獨立選舉權ヲ有セサル町長及村長ハ每年九月十五日ヲ期トシ其ノ
日ノ現在ニ依リ其ノ町村內ノ選舉人名簿二本ヲ調製シ其ノ一本ヲ十月一
日マテニ郡長ニ送付スヘシ
郡長ハ町村長ヨリ送付シタル名簿ヲ合シ每年十月十五日マテニ其ノ選舉
區ノ選舉人名簿ヲ調製スヘシ
第十條市長及獨立選舉權ヲ有スル町長ハ每年九月十五日ヲ期トシ其ノ日
ノ現在ニ依リ十月十五日マテニ其ノ選舉區ノ選舉人名簿ヲ調製スヘシ
第十二條郡市長及獨立選舉權ヲ有スル町長ハ十月二十日ヨリ十五日間其
ノ郡市役所及町役場ニ於テ選舉人名簿ヲ關係者ノ縱覽ニ供スヘシ若關係
者ニ於テ異議アルトキ又ハ正當ノ事故ニ依リ前條ノ手續ヲ爲スコト能ハ
スシテ名簿ニ登錄セラレサルトキハ縱覽期限內ニ之ヲ郡市町長ニ申立ル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ郡市町長ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ十日以
內ニ之ヲ決定スヘシ
前項郡市町長ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服
アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ關シテハ府縣知事郡市町長ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ
得
選舉人名簿ハ十二月十五日ヲ以テ確定期限トシ確定名簿ハ次年ノ十二月
十四日マテ之ヲ据置クヘシ
府縣參事會ノ裁決確定シ又ハ訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキ
ハ郡市町長ニ於テ直ニ之ヲ修正スヘシ
本條ニ依リ郡市町長ニ於テ名簿ヲ修正シタルトキハ其ノ要領ヲ告示シ郡
長ハ本人住所地ノ町村長ニ通知シ町村長ハ之ヲ告示スヘシ
確定名簿ニ登錄セラレサル者ハ選舉ニ參與スルコトヲ得ス但シ選舉人名
簿ニ記載セラルヘキ確定裁決書若ハ判決書ヲ所持シ選舉ノ當日投票所ニ
到ル者ハ此ノ限ニ在ラス
確定名簿ニ登錄セラレタル者選舉權ヲ有セサルトキハ選舉ニ參與スルコ
トヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
異議ノ決定若ハ訴願ノ裁決確定シ又ハ訴訟ノ判決アリタルニ依リ名簿無
效トナリタルトキハ九月十五日ノ現在ニ依リ更ニ名簿ヲ調製スヘシ但シ
名簿調製ノ期日マテニ選舉權ヲ失ヒタル者ハ名簿ニ登錄スル限ニ在ラ
ス
前項名簿調製ノ期日縱覽修正及確定ニ關スル期限等ハ府縣知事ノ定ムル
所ニ依ル
第十四條府縣會議員ノ選舉ハ郡市長及獨立選舉權ヲ有スル町長之ヲ管理
ス
第二十一條投票ヲ終リタルトキハ獨立選舉權ヲ有セサル町長及村長ハ其
ノ指定シタル投票立會人ト共ニ直ニ投票函及投票錄ヲ選舉會場ニ送致ス
へシ
第二十三條選舉會ハ郡市役所及獨立選舉權ヲ有スル町役場又ハ郡市町長
ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ開クヘシ
前項選舉會ノ場所ハ郡市町長豫メ之ヲ〓示スヘシ
第二十四條郡長ハ各投票所ヨリ參會シタル投票立會人ノ中ヨリ抽籤ヲ以
テ選舉立會人二名乃至ハ名ヲ定ムヘシ
市町長ハ選舉人中ヨリ選舉立會人二名乃至六名ヲ選任スヘシ
選舉立會人ハ名譽職トス
第二十五條郡市長及獨立選舉權ヲ有スル町長ハ選擧長トナリ郡ニ於テハ
投票函ノ總テ到達シタル翌日市町ニ於テハ投票ノ翌日選舉立會人立會ノ
上投票函ヲ開キ投票ノ總數ト投票人ノ總數トヲ計算スヘシ若投票ト投票
人トノ總數ニ差異ヲ生シタルトキハ其ノ由ヲ選舉錄ニ記載スヘシ但シ
場合ニ依リ選舉會ハ郡ニ於テハ投票函到達ノ日市町ニ於テハ投票ノ日之
ヲ開クコトヲ得
前項ノ計算終リタルトキハ選擧長ハ選舉立會人ト共ニ投票ヲ〓檢スヘシ
第十八國有土地森林原野下戾申請期間ニ關スル法第一讀會
律案(宮古啓三郞君外十九名提出)
國有土地森林原野下戻法第一條ニ該當スルモノニシテ期間內ニ下戾ノ申請
ヲ爲ササリシ者ハ明治三十七年三月三十一日迄ニ主務大臣ニ申請スルコト
ヲ得
第十九寄留法案(磯部四郞君外一名提出)第一讀會
寄留法
第一章寄留簿及取扱手續
第一條寄留ニ關スル事務ハ戶籍吏之ヲ管掌シ戶籍役場ニ於テ之ヲ取扱フ
第二條寄留簿ハ左ノ二種トシ本籍地外ニ寄留シタル者ニ就テ之ヲ編製ス
一寄留簿
二出寄留簿
寄留簿ハ地番號ノ順序ニ從ヒ之ヲ編綴ス
第三條戶籍吏ハ左ニ揭ケタル屆出ヲ受ケタルトキハ遲滯ナク寄留簿ニ登
錄スルコトヲ要ス
一寄留ノ屆出ヲ受ケタルトキ
二寄留地退去ノ屆出ヲ受ケタルトキ
三寄留地ヲ轉スルノ屆出ヲ受ケタルトキ
前項寄留者ノ本籍カ戶籍吏ノ管轄ニ屬セサルトキハ屆書ニ登錄濟ノ年月
日ヲ記載シ職印ヲ押捺シテ遲滯ナク寄留者ノ本籍地戶籍吏ニ之ヲ送付ス
ルコトヲ要ス
寄留地ヲ轉スルノ屆出ヲ受ケタル戶籍吏ハ前項ノ規定ニ依ル外同時ニ前
寄留地戶籍吏ニ本籍地、舊寄留地及其ノ氏名ヲ記シ之ヲ通知スルコトヲ
要ス
第四條寄留簿ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一寄留者ノ氏名、本籍地、族稱及出生年月日
二寄留地、寄留及屆出ノ年月日
三戶主又ハ世帶主ノ別
四寄留者ノ戶主、父母ノ氏名及其ノ續柄
五寄留地ヲ轉シタル者ニ在リテハ前寄留地
六後見人アルトキハ其ノ住所及氏名
第五條出寄留簿ニハ本籍地戶籍吏カ第三條第一項第一號及第三號屆書ノ
送付又ハ第七條ノ通知ヲ受ケタルトキハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一出寄留者ノ氏名、本籍地及戶主トノ續柄
二寄留地、寄留及屆出ノ年月日
三寄留地ヲ轉シタル者ニ在リテハ原記載ノ欄外ヘ其ノ事由
第六條戶籍吏ノ管轄內ニ於テ寄留地ヲ轉スルノ屆出ヲ受ケタルトキハ年
月日及事由ヲ寄留簿ニ記載シ舊寄留地ニ關スル記載ヲ抹消シ新寄留地ヲ
記載スルコトヲ要ス
第七條戶籍吏カ寄留者ノ身分ニ關スル屆出ヲ受ケタル場合ニ於テ其ノ屆
出人ヨリ追寄留ヲ爲シ若ハ之ヲ爲サシムヘキ旨ノ申立アリタルトキハ第
四條ノ手續ヲ爲シタル後遲滯ナク其ノ旨ヲ本籍地戶籍吏ニ通知スルコト
3 以込
第八條戶籍吏カ寄留者カ身分ニ關スル屆出申請及報告ヲ受ケタル場合ニ
於テ第四條第一號及第三號乃至第六號ノ事項ニ變更ヲ生スヘキトキハ寄
留簿ニ年月日及其ノ事由ヲ記載シテ之ヲ變更又ハ抹消スルコトヲ要ス
第九條戶籍吏ノ管轄內ニ本籍ヲ有スル寄留者ノ戶籍ニ關スル屆出又ハ屆
書ノ送付ヲ受ケタルトキハ寄留薄ニ年月日及事由ヲ記載シテ之ヲ變更又
ハ抹消スルコトヲ要ス
第十條本籍地戶籍吏カ出寄留者ノ身分又ハ戶籍ニ關スル屆出及其ノ他ノ
書類ヲ受ケタルトキハ出寄留薄ニ年月日及事由ヲ記載シテ之ヲ變更又ハ
抹消シ遲滯ナク寄留地戶籍吏ニ通知スルコトヲ要ス但シ第七條規定ノ場
合ヲ除ク外他ノ戶籍吏ヨリ送付ヲ受ケタルトキ亦同シ
第十一條寄留地戶籍吏カ前條ノ通知ヲ受ケタルトキハ寄留簿ニ年月日及
事由ヲ記載シテ之ヲ變更又ハ抹消スルコトヲ要ス
寄留者ノ本籍カ寄留地ニ轉屬シタルトキハ寄留簿ニ年月日及事由ヲ記載
シテ之ヲ抹消スルコトヲ要ス
第十二條戶籍吏カ寄留地退去ノ屆出又ハ管轄外ニ寄留地ヲ轉シタル通知
ヲ受ケタルトキハ入寄留簿、出寄留簿ニ年月日及事由ヲ記載シテ之ヲ抹
消スルコトヲ要ス
本籍地戶籍吏ガ退去屆ノ送付ヲ受ケタルトキハ出寄留簿ニ年月日及事由
ヲ記載シテ之ヲ抹消スルコトヲ要ス
寄留者ノ全部ヲ抹消シタルトキハ寄留簿ヨリ之ヲ除キ別ニ編綴スルコト
ヲ要ス
寄留簿及寄留ニ關スル書類ハ戶籍役場ニ之ヲ保存スルコトヲ要ス但シ書
類ノ保存期間ハ司法大臣之ヲ定ム
第十三條本籍地戶籍吏カ寄留者復歸ノ屆出ヲ受ケタルトキハ出寄留簿ニ
年月日及事由ヲ記載シ之ヲ抹消シタル後遲滯ナク寄留地戶籍吏ニ屆書ヲ
送付スルコトヲ要ス但シ前條第二項ノ送付ヲ受ケ其ノ手續ヲ爲シタル後
復歸ノ屆出アリタルトキハ欄外ニ其ノ事由ヲ記載スルヲ以テ足ル
寄留地戶籍吏カ前條第一項ノ手續ヲ爲シタル後屆書ノ送付ヲ受ケタルト
キハ入寄留簿ノ欄外ニ其ノ事由ヲ記載スルヲ以テ足ル
出寄留者ノ本籍地カ戶籍吏ノ管轄ヨリ他ノ戶籍吏ノ管轄ニ轉屬シタル場
合ニ在リテハ戶籍吏ハ遲滯ナク其ノ本籍地、寄留地、氏名、寄留及屆出年
月日ヲ轉籍地戶籍吏ニ通知スルコトヲ要ス但シ第十一條第二項ノ場合ハ
此ノ限ニ在ラス
第十四條何人ト雖手數料ヲ納付シテ寄留簿ノ閲覽又ハ寄留ノ證明ヲ求ム
ルコトヲ得
第十五條戶籍吏カ其ノ管轄內ニ本法ノ規定ニ違反シテ屆出ヲ爲ササルモ
ノアルコトヲ知リタルトキハ屆出義務者ニ對シ相當ノ期間ヲ定メ其ノ期
間內ニ屆出ヲ爲スコトヲ催告スルコトヲ要ス
前項ノ期間ハ十日ヲ下ルコトヲ得ス
第十六條戶籍吏カ其ノ管轄內ニ本法ノ規定ニ違反シテ屆出ヲ爲ササルモ
ノアルコトヲ知リタルトキ又ハ期限ヲ經過シタル屆出ヲ受理シタルトキ
ハ遲滯ナク之ヲ其ノ事件ノ管轄區裁判所ニ通知スルコトヲ要ス
第二章寄留屆出手續
第十七號寄留ノ屆出ハ書面ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス但シ正當ノ事由ア
ルトキハ口頭ニテ屆出ヲ爲スコトヲ得
前項但書ノ場合ニ在リテハ戶籍吏之ヲ筆記シ屆出人ニ讀聞カセ署名捺印
セシムルコトヲ要ス
第十八條寄留ノ屆出ハ寄留者ヨリ寄留地ノ地主、家主又ハ其ノ地所家屋
ヲ管理スル者ノ承認書ヲ添ヘ若ハ屆書ニ承認ノ旨ヲ附記シ之ニ署名捺印
セシメ寄留ヲ爲シタル日ヨリ十五日內ニ寄留地ノ戶籍吏ニ之ヲ爲スコト
ヲ要ス但シ第七條ニ依ル申立ハ承認ヲ要セス
寄留ノ屆出ニハ戶籍ノ謄本又ハ抄本ヲ提出スルコトヲ要ス但シ第七條ニ
依ル申立又ハ戶籍吏ノ管轄内ニ於テ寄留ヲ爲シ若ハ寄留地ヲ轉シタル場
合ハ此ノ限ニ在ラス
屆書ニハ左ノ諸件ヲ具シ屆出人署名捺印スルコトヲ要ス
-寄留者ノ氏名、族稱、出生ノ年月日、職業、本籍地、父母ノ氏名及其
ノ續柄
二寄留ノ年月日及場所
三寄留地ヲ轉シタル場合ニ於テハ前寄留地
四屆出ノ年月日
五寄留者カ家族ナルトキハ戶主ノ氏名、族稱、職業及寄留者ト戶主ト
ノ續柄
口頭ヲ以テ屆出ヲ爲スニハ屆出人ハ戶籍吏ノ面前ニ出頭シ前項ノ諸件ヲ
陳述シテ承認書及戶籍ノ謄本又ハ抄本ヲ差出スコトヲ要ス
第十九條寄留者カ無能力者ナルトキハ左ノ順位ニ從ヒ屆出ヲ爲スコトヲ
要ス
一法定代理人
二寄留者ヲ置キタル者
三家主又ハ家屋ヲ管理スル者
四地主又ハ土地管理人
第二十條前條ノ場合ニ於テハ屆出人ハ屆書ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ
要ス
一無能力ノ原因
二屆出人ノ住所、氏名、族稱、出生ノ年月日
三屆出人カ親權ヲ行フ者、後見人、寄留者ヲ置キタル者又ハ地主、家
主若ハ土地家屋ノ管理人ノ別
第二十一條戶主カ家族ト共ニ寄留シタルトキハ戶主、家族カ戶主ノ家ニ
追寄留ヲ爲シタルトキハ戶主ト共ニ屆出ツルコトヲ要ス
家族カ數人寄留シタルトキハ世帶主、家族カ世帶主ノ家ニ追寄留ヲ爲シ
タルトキハ世帶主ト共ニ屆出ツルコトヲ要ス
第二十二條官廳、學校、病院其ノ他ノ公設所內ニ寄留シタルトキハ寄留者
及官廳、學校、病院其ノ他ノ公設所ノ長若ハ管理人ヨリ連名ニテ屆出ヲ爲
スコトヲ要ス
第二十三條寄留地ヲ退去シタルトキハ寄留者ヨリ左ノ諸件ヲ具シ十日內
ニ其ノ地戶籍吏ニ屆出ツルコトヲ要ス但シ寄留者カ屆出ヲ爲スコト能ハ
サルトキハ第十九條ノ規定ニ從ヒ屆出ヲ爲スコトヲ要ス
一退去者ノ氏名、族稱、出生ノ年月日及本籍地
二退去ノ年月日及寄留地
三寄留地ヲ轉シタル場合ニ於テハ新寄留地
四屆出ノ年月日
前項ノ屆出ニハ第十八條第三項第二十條及第二十一條ノ規定ヲ準用ス
第二十四條寄留者カ復歸シタルトキハ戶主又ハ本人ヨリ十日內ニ本籍地
戶籍吏ニ屆出ツルコトヲ要ス但シ同一戶籍吏ノ管轄內ニ本籍ヲ有スル者
ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ屆出ニハ第十八條第三項及第十九條ノ規定ヲ準用ス
第三章罰則
第二十五條正當ノ理由ナクシテ本法ノ規定ニ依リ期間內ニ爲スヘキ屆出
ヲ怠リタル者ハ五圓以下ノ過料ニ處セラル
屆出ノ催告ヲ受ケ尙其ノ屆出ヲ怠リタル者ハ十圓以下ノ過料ニ處セラル
附則
第二十六條本法ノ規定ニ依リテ納付スル手數料ハ之ヲ市町村ノ收入トス
但シ國庫ヨリ戶籍役場ノ經費ヲ支辨スル地ニ在リテハ之ヲ國庫ノ收入ト
ス
手數料ノ金額ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七條屆出人ノ署名捺印ヲ要スル場合ニ於テ印ヲ有セス又ハ署名ス
ルコト能、ハサルトキハ代署セシメ其ノ理由ヲ附記シ拇印スルヲ以テ足ル
第二十八條本法施行前已ニ寄留ノ屆出テアル者ハ實施ノ日ヨリ三箇月內
ニ戶籍ノ謄本又ハ抄本ヲ寄留地ノ戶籍吏ニ提出スルコトヲ要ス
第二十九條明治四年四月四日布告戶籍法明治十九年內務省令第十九號及
同年內務省令第二十二號其ノ他寄留ニ關スル規定ハ本法施行ノ日ヨリ之
ヲ廢止ス
第三十條本法ハ明治三十六年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十刑事訴訟法中改正法律案(磯部四郞君外二第一讀會
十三名提出)
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第二百八十一條第一項中「受命判事ノ報告書ヲ差出スマテハ」ヲ「公判ノ辯
論終結マテハ一改改同條第二項ヲ削ル
第二十一無線電信ノ利用ニ關スル建議案(佐藤虎次郞君外一名
提出)
太平洋及日本海方面ニ無線電信ノ利用ヲ計畫スヘシ
右建議ス
第二十二電信取扱時間復舊及郵便集配囘數增加ニ關スル建議
案(藤金作君外二名提出)
通信運輸ニ關スル機關ノ設備カ人文ノ發達農工商業ノ進捗ニ資スルコト多
大ナルハ更ニ爭フヘカラサル所ナリ此ヲ以テ政府ハ戰後ノ經營トシテ國防
ノ充實ト共ニ大ニ交通機關ヲ擴張シ幾多ノ電信局ヲ增置シタリ然ルニ近時
ニ至リ全國八百有餘ノ電信局ハ電信取扱ノ時間ヲ短縮シ夜間ヲ廢止セリ之
カ爲地方ニ於テハ一般公衆ノ不便不利ヲ感スルコト少ナカラス是レ實ニ電
信局增置ノ主義ト相背馳スルモノト謂ハサルヘカラス
現今郵便物集配ノ囘數ヲ見ルニ市街地ニ在リテハ一日三四囘多キハ七八囘
以上ニ及ヒ頗ル便益ヲ與ヘ居レリト雖村落ニ在リテハ一日僅ニ一囘ニ止マ
ル地方甚タ多シ此ノ點ニ於テハ都鄙ノ間ニ通信機關ノ設備上著シク權衡ヲ
失スルモノアリ
故ニ政府ハ速ニ電信取扱時間ヲ復舊シテ公衆ニ便利ヲ與ヘ又村落ニ對シ總
テ一日二囘以上ノ郵便物ノ集配ヲ爲シ通信上ノ不權衡ナカラシメムコトヲ
望ム
右建議ス
第二十三大日本帝國水難救濟會國庫補助ニ關スル建議案(松
島廉作君外五名提出)
大日本帝國水難救濟會ハ明治二十二年民間慈善ノ士ノ創立ニ係リ嚮ニ政府
ハ其ノ事業ヲ嘉シ明治三十年度ヨリ每年二万圓ノ補助金ヲ下付セラル然ル
ニ補助ノ期ハ明治三十六年度ヲ以テ盡キ而シテ會務ノ擴張ヲ要スルモノ年
一年ヨリ急ナリ按スルニ歐米二洲海國ニ在リテハ或ハ其ノ事業ヲ以テ國家
ノ事業トシテ政府自ラ經營スルアリ或ハ半官半民ノ事業トシテ法人ヲシテ
經營セシメ政府之ヲ補助スルアリ其ノ支出若ハ補助ノ額住々數十百萬圓ニ
達ス其ノ事業ノ重要視セラルル以テ見ルヘキナリ本邦ノ如キ未タ遽ニ斯ノ
如キノ盛大ヲ望ムヘカラスト雖宜ク漸ヲ以テ完成ヲ期セサルヘカラス故ニ
政府ハ明治三十七年度ヨリ更ニ補助額ヲ增加シ向フ六箇年間年々金五万圓
ヲ補助シ以テ其ノ事業ヲ翼成セムコトヲ望ム
右建議ス
第二十四大日本帝國水難救濟會會員徽章佩用ニ關スル建議案
(松島廉作君外五名提出)
大日本帝國水難救濟會ハ民間慈善者ノ創立維持スル所ニ係ル然レトモ其ノ
事業ハ全ク國家的事業ニシテ其ノ目的ハ自カラ萬國共通ノ性質ヲ有ス斯ノ
如キ事業ニ對シテハ國家ハ宜ク待ツニ特典ヲ以テスヘシ嚮ニ政府カ日本赤
十字社社員ニ許スニ徽章佩用ノ事ヲ以テセル蓋亦此ノ意ニ外ナラサルナリ
抑〓海ニ於ケル水難救濟ノ事業ハ陸ニ於ケル赤十字社ノ事業ト異ナラス而
シテ其ノ事業ヲシテ完備ノ域ニ至ラシメムコトハ前途猶遼遠ニ屬ス故ニ政
府ハ宜ク今ニ於テ奬勵ノ道ヲ講シ水難救濟會會員ニ許スニ徽章佩用ノ事ヲ
以テセムコトヲ望ム
右建議ス
第二十五請願規程制定ニ關スル建議案(山根正次君提出)
日本臣民ハ相當ノ敬禮ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ從ヒ請願ヲ爲スコトヲ
得ルハ憲法第三十條ノ明示スル所ナリ飜テ我カ國現行規程ヲ見ルニ憲法第
五十條ニ基ツキ議院法第十三章第十箇條ヲ以テ議院ノ請願受納權ニ對スル
手續ヲ規定スルノ外他ニ請願ニ關スル規程ナシ故ニ吾々臣民ハ國民ノ利害
國家ノ休戚ニ重大ナル關係ヲ有スル大問題ニ關シテ畏レ多クモ上御一人
ノ裁斷ヲ仰キ奉ラムト欲スルモ之カ手續規程ノ闕缺セルノ故ヲ以テ意思ヲ
上達セシムルコト能ハス加之不敬罪ナル刑辟ニ觸ルルノ虞アルヲ奈如セム
嗟呼萬世不磨ノ大典タル憲法ノ條項ハ明ニ之ヲ許容スルアルニ拘ラス斯ノ
手續規程ノ闕缺セルヲ以テ一面ニハ憲法一部條項ノ活動ヲ停止シ又一面ニ
ハ國民ノ不平ノ欝積ヲ除却スル能ハサルモノアルハ憲法政治ノ一大瑕瑾ニ
アラスシテ何ソヤ是レ本建議ヲ呈出スル所以ナリ故ニ政府ハ憲法第三十條
ノ趣旨ニ從ヒ請願ニ關スル一般手續規程ノ制定アラムコトヲ望ム発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/87
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088・杉田定一
○副議長(杉田定一君) ソレデハ恆松隆慶君ノ動議ヲ、書記官長ニ朗讀サセマス
〔林田書記官長朗讀〕
第十四家祿賞典祿處分法中改正法律案
議長指名委員九名
第十五地租條例中改正法律案
第十六町村制中改正法律案
兩案ハ同一委員ニ附託議長指名委員九名
第十七府縣制中改正法律案
議長指名委員九名
第十八國有土地森林原野下戾申請期間ニ關スル法律案
議長指名委員九名
第十九寄留法案
議長指名委員九名
第二十刑事訴訟法中改正法律案
議長指名委員九名
第二十一無線電信ノ利用ニ關スル建議案
第二十二電信取扱時間復舊及郵便集配囘數增加ニ關スル建議案
兩案ハ同一委員ニ附託議長指名委員九名
第二十三大日本帝國水難救濟會國庫補助ニ關スル建議案
第二十四大日本帝國水難救濟會々員徽章佩用ニ關スル建議案
兩案ハ同一委員ニ附託議長指名委員九名
第二十五請願規程制定ニ關スル建議案
議長指名委員九名発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/88
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089・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 只今朗讀ノ通リソレ〓〓委員ヲ議長ガ指名スルコトニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/89
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090・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ其通リ決シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/90
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091・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 北海道云々ト云フ方デゴザイマスガ、ソレモ地租免租ノ委
員ニ附託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/91
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092・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君ノ唯今御述ベニナッタ議題ハ、明日ノ日程ニ出ス積
リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/92
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093・恒松隆慶
○恆松隆慶君(八十二番) 明日他ノ委員ハ決スルト申シマス、ソレヘ附託シマス、前
ノ委員ニ附託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/93
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094・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 恆松君ノ動議ノ通リニ、明治三十四年法律第二十七號
中改正法律案ヲ議題トシ、災害地々租免除ニ關スル法律案ノ委員ニ、併セテ座託スル
コトニ、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者多シ〕
明治三十四年法律第二十七號中改正法律案第一讀會
明治三十四年法律第二十七號中左ノ通改正ス
第一項中「一府縣又ハ數府縣」ノ下ニ「及北海道」ヲ加フ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/94
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095・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 御異議ナケレバ其通リ決シマス、報告ガアリマス
〔書記朗讀〕
丸山名政君ヨリ帝國海軍組織ノ過大ナル件ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタ
リ
(左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
帝國海軍組織ノ過大ナル件ニ關スル質問書
右成規ニ據リ提出候也
明治三十六年五月二十六日
提出者丸山名政贊成者田口卯吉
外三十八名
帝國海軍組織ノ過大ナル件ニ關スル質問主意書
一帝國ノ軍港ニハ將官以上ノ職員ヲ要スルコト英米諸國ノ軍港ニ過クルモノノ如シ
斯ク複雜ナル官制ヲ設クルニ非サレハ軍政ノ整備ヲ見ル能ハサル理由如何
二帝國ノ軍艦ニハ佐官及佐官相當官以上ノ職員ヲ要スルコト十人若クハ十人以
上ニ達ス之レ英米諸國ノ軍艦ニ於テ未タ見サル所ナリ帝國ノ軍艦カ斯ク多數ノ
上長官ヲ有スルニ非サレハ完全ノ働ヲ爲ス能ハサル理由如何
三海軍少佐ヲ以テ分隊長ト爲シタル例ハ英米諸國ノ海軍ニ於テ未タ聞カサル所ナリ
帝國ノ軍艦ガ特ニ少佐ヲ以テ之ニ任スルノ必要如何発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/95
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096・杉田定一
○副議長(杉田定一君) 今日指名ノ委員ト、明日ノ日程ハ、追テ公報ヲ以テ御報
致シマス、今日ハ是デ散會致シマス
午後四時二十三分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/001813242X00419030526/96
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