1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十九年二月七日(水曜日)
午前十時六分開議
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議事日程 第五號 明治三十九年二月七日
午前十時開議
第一 伯爵松平直亮君請暇の件
第二 明治三十一年法律第三號廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第三 臨時事件費支辨に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(特別委員長報告)
第四 民法施行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(特別委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 報告ハ本日モ此議場デハ省略イタシマシテ御異存
ハゴザイマセヌカ
「「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ガ無ケレバ左樣イタシマス
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經ザルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
一昨五日懲罰委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長公爵二條基弘君副委員長男爵石黑忠悳君
同日決算委員分科會ニ於テ當選シタル主査ノ氏名左ノ如シ
第二分科主査子爵入江爲守君第三分科主査男爵相浦紀道君
同日臨時事件費支辨ニ關スル法律案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員
長ノ氏名左ノ如シ
委員長子爵谷干城君副委員長子爵岡部長職君
昨六日明治三十一年法律第三號廢止法律案特別委員會ニ於テ當選シタル正
副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長子爵靑山幸宜君副委員長宮本小一君
同日民法施行法中改正法律案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏
名左ノ如シ
委員長子爵鍋鳥直彬君副委員長馬屋原二郞君
同日議員子爵谷干城君ヨリ三十名ノ賛成ヲ以テ東京帝國大學ニ關スル質問
主意書ヲ提出セリ仍テ卽日之ヲ政府ニ轉送セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=2
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003・谷干城
○子爵谷干城君 私ハ政府ヘ質問書ヲ提出シテゴザイマスガ、此際ニ說明ヲ
致シタイト存ジマス、發言ヲ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 質問ノ理由ヲ御述ベニナルノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=4
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005・谷干城
○子爵谷干城君 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 演壇ニ御出ヲ願ヒマス
〔左ノ質問主意書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
東京帝國大學ニ關スル質問主意書
明治三十八年八月東京帝國法科大學〓授法學博士戶水寛人ニ休職ヲ命セラ
レシヨリ延テ東京帝國大學總長理學博士山川健次郞ノ免官トナリ大學〓授
中若干名辭表ヲ提出シ次テ〓授等百九十名連署ノ文書ヲ以テ文部大臣ニ抗
議シ同時ニ之ヲ世ニ公ニシ頗ル不穩ノ擧動ヲ顯シタリ夫レ大學ハ文部省〓
屬ノ機關ノミ決シテ獨立ノ團體ニ非ス〓授ハ帝國憲法第十條ニ依リ任セラ
レタルモノニシテ齊ク官吏ナリ而テ此ノ不穩ノ擧動ヲ敢テス官紀紊亂ニ非
スシテ何ソヤ政府ハ之ヲ如何ニ處分セントスルカ
右議院法第四十八條ニ依リ及質問候也
明治三十九年二月六日
提出者子爵谷干城贊成者公爵二條基弘
外二十九名
〔子爵谷干城君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=6
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007・谷干城
○子爵谷干城君 扨私ガ此度政府ヘ質問書ヲ差出スコトニ付テハ反覆考ヘ或
ハ決シ或ハ疑ウテ止メ、頭ヲ惱マスコト實ニ其一己トシテ考ヘルト非常ナモ
ノダアッタ、ケレドモドウシテモ是ハ默々ニ付セラレヌト云フ考ヘデアルカ
ラシテ眞ニ涙ヲ揮ッテ之ヲ提出シタ譯デアル、第一ニ私ノ最モ感ズル所ハ、
此事件ヲ默過スルト云フコトニナリマスルト大事ノ憲法ヲ侵害スルノ端ヲ
開クヂヤ、ソレカラシテ又一方ニハ行政官衙ノ中ヘ一種行政權ノ及バザル治
外法權ノ如キ官衙ヲ作ルノデアル、ソレカラシテ之ヲ默過スルトキニハ最高
ノ〓鞭ヲ執ルベキ所ノ大學〓授ガ卽チ各生徒ニ抗官反抗ヲ〓フルト云フコト
ニナル、ソレカラ又其次ニハ之ヲ默過シタナラバドウナルカト云フト、明治
三十八年ニ發生シタル所ノ二大事件、卽チ公園ニ於テ大騒動ヲ起シタ、ソレ
カラシテ此戶水事件ヨリシテ遂ニ大學〓授百九十人ト云フモノガ徒黨連判シ
タ、サウシテ大騒動ヲ起シタコトハ皆サン御承知ノコトデアル、ソレニモ拘ラ
ズ之ヲ決シテ抗議デハナイ陳情書デアル、ソンナヒドイ事デハ無イト云ウテ
此ノ大事ナ大キナ事件ヲ抹殺シヤウト云フ種類ノ人ガアル、是ガ抹殺ガ出來
ルナレバ我ガ明治ノ歷史ト云フモノハ噓歷史ニナッテ仕舞フ、況ヤ此大學〓
授ナドト云フモノハドウシテモ後ニ史筆ヲ執ラヌナラス人デアル、ソレガ斯
ウ云フコトヲ抹殺シテ安ンズルト云フコトハ干城ハ道義ニ於テ許サナイ、西
洋流ヂヤナイカ知ラヌケレドモ人間ノ道義トシテ許サナイ、古イコトヲ言ウ
テ御笑ヒニナルカ知ラヌガ卽チ文天祥ノ正氣ノ歌ニハ何トアル、齊ニ在テハ
太史ガ簡、晋ニ在テハ董狐ガ筆、史筆ホド大切ナモノハナイ、歷史ニ公然ト噓
ヲ書クト云フコトハ出來ルモノヂヤナイ、ソレ故ニ西洋ノ歷史ヲ、私ハ橫文
字デ得讀マヌケレドモ翻譯ニナッタモノハ大分眼ヲ通シタガ、決シテ私ガ言
フヤウナ如キコトハ無イ、無イガ直筆デ書イテアルヤウニ思フ、ソレデ書物
へ噓ヲ書クト云フホド不德義ナコトハ無イ、ドウシテモ大學デ出來タ所ノ歷
史ガ噓ト見レバ、野ニ在ッテ筆ヲ執ッテ書カ子バナラヌ、所ガ我〓マダ聞カ
ヌガ、衆議院デ政府委員ノ說明ニハ何カ陳情書デ、決シテ抗議ナドデハナ
イ、陳情書デアルソンナ大シタコトデハナイト云フヤウニ辯解ニナッテア
ルヤウニアルガ、是ハ間違ッテアルカ知ラヌガ、書イタモノニ其樣ニ見エル、
陳情書ト云フモノハドウ云フモノデアルカ、陳情書ト云フモノハ先ヅ我〓ノ
知ツタ所ヲ言ヘバデス、支那ノ三國ノ李密ガ、オッカサンガ去ッテ他ヘ嫁シ、
年トッツタオバアサンニ孝養ヲ盡シテ、サウシテ呼バルルモノヲ斷ッテ行カ
ザッタ、實ニ淚ノ流レル書ガ卽チ陳情書、陳情書ヲ讀ンデ淚ヲ垂レス者ハ孝
子ニアラズト云フコトガ言ウテアル、是ハ西洋流ヂヤドウカハ知ラヌガ、西
洋流ニモ或ハアラウト思フカラ證據ヲ擧ゲテ御話モ出來ル、ソレデ陳情書ト
云フモノハ眞ニ已ムヲ得ス所ノ事情ヲ淚ヲ揮ッテ陳ベルガ陳情書、トコロガ
此謂ハユル大學諸博士ノ抗議ト云フモノハ自ラ抗議ト言ウテ居ル、抗議ト言
ウテ居ルモノヲ當局者ハ若シ之ヲ抹殺シヤウト云フナラバ不屆千萬ナコトデ
アルソレデ此抗議書ニ付テハ順序ヲ逐ウテ今御話ヲ致シマス、決シテ情モ
ナサケモアッタモノデハナイ、唯當局ノ大臣ヲ駁擊窮追最モ甚シイ、殆ド脅
迫的ノ文デアル、ナサケト云フコトハ一言モ無イ、ソレデ諸君、此大學〓授
百九十人ト云フ人ガ差出シタ所ノ抗議書ナルモノヲ御讀ミニナッテ、ドコニ
一點ノナサケガアルカト云フコトヲ御見出シニナルコトガ出來ルナラバ承リ
タイガ、是ハ私ハ恐ラクハアルマイト思フ、ソレヲ政府ハ曲解··曲ゲテ解
釋ヲシテ居リハセヌカト云フコトヲ私ハ考ヘル、ソレカラ此憲法ノ大權ヲ侵
害スルト云フ、實ニ驚イタコトヲ言フ奴ヂヤ、斯ウ御考ヘニナルカ知ラヌガ
是ハ此議場ニ於テ言ハネバ外ニ於テ言フ所ハ無イ、併ナガラ此解釋ハ谷ノ解
釋デアル、ソレデ憲法ノ解釋ハ隨分ムヅカシイモノデアル、或ハ解釋ニ違ヒ
ガアルカハ知リマセス、ソレカラシテ此六博士ノ上奏文ト云フモノ、是モ牽
連シテ居ルト思フカラ一個ニ言ハ子バナラヌ、ソレデ其前ニ段々老人、我こ
ヨリハズット年ノ上ナ老人方ガ上書ヲサレタコトガアル、其他マア隨分方々
カラ數出タコトデアリマスルガ、識者ノ老人ガ捧呈セラレタ、是ハ兎モ角モ老
人ニアッテハ憲法政治ノ何タルヲ知ラナイ、昔ノ君主獨裁ノ時分ノ上書建白
時代ノ人デアルカラシテ是ハ御無理モナイ、御無理モナイガ憲法政治ニナッ
テカラ斯ウ云フコトノ出來ルモノデナイト云フコトハドウシテモ是ハ銘々
考ヘテ居ラネバナラヌ、憲法ガ必要ナル故ニ貴族院ニ於テ御覽ナサレ、每年
之ヲ頒ツ、憲法ヲ忘レテハナラス、之ニ依ッテ議事モシ何モ彼モ遵ッテ行カネ
バナラヌ、先ヅ少シ前後スルヤウニアリマスケレドモ、此六博士ノ上奏文ニ就
テ言ッテ置カネバナラヌ、此上奏文ハ定メテ憲法ノ三十六條ノ「日本臣民ハ相
當ノ敬禮ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ從ヒ請願ヲ爲スコトヲ得」トアル、之
ニ依ッテ出サレタモノデアリマセウトマア考ヘル、若シサウナクバ議院法ノ
第十三章請願ト云フ所ノ第六十二條ニ「各議院ニ呈出スル人民ノ請願書ハ議
員ノ紹介ニ依リ議院之ヲ受取ルヘシ」ト斯ウアル議員ノ紹介ニ依ッテ出ス者
ハ、是ハ政治上ノコトモ其他一己ノ苦情モ何モ彼モ是ハ出シテ宜シイ、卽チ
9請願委員ト云フ者ヲ設ケラレテ今日我〓議員ノ調査シ居ル所ノモノガ卽チソ
レデアル、ソレデ普通ノ政治上ノ意見、其他ノ種々ノ請願ニ付テハドウシ
テモ此議院法ノ十三章ノ示ス所ニ據ルヨリ外ニ、天子樣へ卒爾ニ上書建白ハ
出來ナイ、此所デ一言私自ラ過ッテ罪ヲ犯シタルコトヲ懺悔シテ置カネバ貴樣
ハドウダト言ハレタ場合ニ困ルカラ一言シナクレバナラヌ、其一言スベキ事
柄ハ何カト云フト、曩ニ小澤陸軍中將ノ諭旨免官ニナッタトキデス、是ハ政府
ガ條例ノ許サヌコトヲ無理ニ强ヒテ諭旨ヲ下シ武官ハ免職ハアルケレドモ刑
法ニ觸レヌ以上免官ヲ諭スト云フコトハナイ、免官セラルルコトハナイ、是
ガ正法デアル、トコロガ此事ガ出來タ、其時ニハ谷ハ殆ド頭ガ破裂セムホド
氣違ニナッタ、ソレデ當局大臣ニ論ズルハ固ヨリノコト遂ニ恐レナガラ御上
ヘモ煩ハサニヤナラヌト云フ程ニナッタ、然ルニ幸ニ遂ゲザッタノハ誠ニ御上
ノ御仁慈デアル、退イテ考ヘテ見ルト實ニ一生ノ過リデアルト云フコトヲ自
分ハ知タ、其後ハ谷ガ意見ガアルコトナレバ、モウサウ云フコトハ出來ヌモ
ノト諦メタカラシテ、或ル信用アル人ニ政府ヘ進達ヲシテ貰フト云フ方法ヲ
執ッタ、日露戰爭ノ時分カラ往々自分ノ意見ハ出シタコトガアル、通ツタカ
通ラヌカ知ラヌケレドモサウ云フコトガアル、若シ果シテ六博士ノヤウナ文
書ガドン〓〓御上ヘ上達セラルルト云フコトナラバ、何ゾ我〓ノヤウナ迂濶
ナコトハ其必要モナシ、又是ガ正當視セラルルトキニハ議院法第十三章ノ請
願ノ條ハ必要デナイ、天子樣ヘ之ヲ差出シテモ宜イ、斯ウ云フコトニナルノ
ダ、ドコロガ憲法ノ第三條ニ何トアル、「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」ト
アル、是ガ立憲政體ノ大法デアル、天子樣ハ此政府ノ上ニ御井デナサル、政
府以下ノ政ハスッカリ國務大臣ガ引受ケテスルノデアル、メレデ憲法五十五
條ニ「國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス」トアル、ソレデ一切萬事政治
上ノコトハ國務大臣ガ責任ヲ負ハネバナラス、ソレニ付テ或ハ連帶デ責任ヲ
負フコトガアルシ各個ニ責任ヲ負フコトガアルカラ、卽チ此詔勅等ノ末ニ關
係ノ近イ大臣ハ御名ノ下ニ副署スル斯ウ云ウコトニナッテ居ル、ソレデド
ウシテモ大臣ノシタコトヲ天子樣ニ直接ニ申上ゲルト云フハ御無禮千萬ナコ
トデアル、我〓ハ今申ス通リ誠ニ申譯ナイコトヲシタ、是ハ言ウテ置カ子
バ貴樣ハドウカト言ハレタ場合ニ一言モ無イ、ソレデ此憲法ノ「神聖ニシ
テ侵スヘカラス」ト云フ事柄ガアルニ拘ラズ、此憲法ニ何ガ許シテアルカ、
今言フ相當ノ敬禮ヲ守リ政府ガ別ニ定ムル所ニ依ッテ請願スルコトヲ得トア
ル、此解釋ヲセスト分ルマイ、是ハドウ云フコトデアル、是ハ決シテ政治上
ノコトニ非ズ、政治上ノコトニスベキモノデナイ、例ヘテ申セバ此所ニ戰死
者ノ父母ガアル、トコロガ西洋流ニ依テ女房、子ニハ恩給ヲ呉レルト云フコ
トニナッテ居ル、トコロガ父母祖父母ニハ恩給ガ無イ、トコロガ法律ガチヤ
ント極メテ居ルモノダカラシテ、ドコヘ持ッテ行ッテモソレガ行ハレヌ、終ニ宮
内省ヘ出テ卽チ憲法實施ニハナッテ居ラザッタケレドモ、憲法ガ發布サレテ居
ルカラ、宮內省へ行ッテ今申ス條ニ依ッテカラニ、敬禮ヲ盡シテ哀訴歎願ヲシ
タノデ、トコロガ宮內卿ガ實ニ可哀サウデアルト云ウテ、一旦御評議ニナッタ
ガ、併シ愈〓詮議シテ、終ニ此出タノガ二十四年ト思フ、三年デハナイ、四
年ニ政府ヨリ卽チ陸軍省ヨリ其案ガ出テ、ソレヲ私ガ贊成ヲシテ、通過シテ
サウシテ、丁度今ノ通リノ法律ニナッテ、妻ニモ、子ニモヤル、若シ妻子ガ無
ケレバ、親ニモ、祖父母ニモヤル、斯ウ改マッタ、斯ノ如キモノガ卽ヲ此憲法
三十條ニ設ケラレタ必要ナル例デアル、斯ウ云フモノガ法律ニ掛ラウト云ウ
テモ、法律ノ許サヌ所ノモノデ、實ニ可哀サウナト云フモノガ卽チ之ニ依ル
ノデ、ソレカラ是ハ外國ノ例デアルカラシテ、外國ニハソンナコトハ無イカ
ト云フケレドモ、矢張サウ云フコトガアル、此憲法ノ中ニ天皇ノ御特權卽チ
特赦、輕減等ノ御特權ト云フモノガ備ッテ居ルソコデ私ガチヨット外國ノ例
ヲ引テ御話ヲ申サヌトイカヌコトガアル、海外ニモアルト云フコトノ證據ニ
明治十九年ニ西班牙ニ於テマドリットデ謀叛ヲ起シタ者ガアル、トコロ
ガ其張本ガ誰カト云フト陸軍ノ司令官、大騷動ヲ起シタ者ヲ捉ヘテ見ルトサ
ウダ、ソコデ終ニ死刑ト云フコトニ極ッタ、トコロガ其娘サント云フモノガ
眞ニ孝行ナ人デ、西洋ニハ孝行ト云フコトハナイト云ウテモ官イ位デアルガ
矢張リ孝行ハドコデモ貴ブモノデアル、ソレユヱ此娘サンガ非常ニ孝行ノ人
デアッテ、親ニ盡シテ居ルト云フコトハ、誰モ認メテ居ル、ソコヘ持ッテ行ツ
テ、父ガ死刑ヲ宣〓サレル斯ウ云フコトニナッタ、ソコデ殆ド寢食ヲ忘レ
各大臣ハ固ヨリノコト各貴人ノ許ヘ··日本ノヤウナ國體デナイカラ、易
イコトデアルガ、憚リモ顧ミズ其時ノ攝政皇后、是ヘ拜謁ヲ願ウテ、親ノ死
刑ヲドウゾ一等免ゼラレタイト云フコトヲ請願ヲシタ、トコロガモウ其孝行
ノ娘サンニ會ウタラ誰モ淚ヲ翻サヌモノハ殆ド無イ、各大臣ナドハ殆ド皆際
限ガ無イカラ、後ニハ會フコトヲ避ケタ、ケレドモ是ハ罪人デアルカラドウシ
テモ首ヲ斬ラニヤナラヌト云フコトデ、斷然ト政府ハ刎切ッタケレドモ、皇
后樣モドウカ罪人ハ罪人トシテ、此子供ヲ見テハドウモ首ヲ斬ルニ忍ビヌ、其
女ノ首ヲ斬ルモ同ジデアルト云フコトデ、特赦ニナッテ死一等ヲ減ゼラレテ、
玖瑪デアッタカ、亞米利加ノ屬地へ流罪ニナッタ、サウスルト其御孃サンハ父
ノ所ヘ行ッタ、今ノ突飛ノ女ナラバ直グニ自分ハ良イ所ヘ御嫁ニ行クヂヤラ
ウ、大變方々良イ所カラ嫁ニ貰ヒニ來ラレタニモ拘ラズ年頃ノ身ニモ拘ラズ
ソレヲ振リ棄テテ親ノ後ヘ附イテ行ッタ、斯ウ云フコトガ卽チ憲法第三十條
ノ敬禮ヲ守ッテ哀訴歎願スベキ事柄デアル、ソレヲ此立憲政體ノ施カレテ後
二、彼ノ宋ノ胡澹庵ノ封事ト云フ程ニハナイケレドモ、政治上ノ意見ヲ、斯
ク〓〓斯ク〓〓、サウナサレテハイカヌ、斯ウナサレト云フコトヲ建白スル
ト云フコトハ、抑〓此憲法ガ分ラナイト思フ、頻リト羅馬法ガ必要デアル、
ソレガ爲ダト云フガ、我ミカラ見レバ甚ダ其意ヲ得ヌ人ヲ、羅馬法ノ爲ユ之
ヲ引戾シテ使ハニヤナラス、··羅馬法ガドレホド有難イカ、憲法以上ノ價
値ガアルカ、我〓羅馬法ノ「ロ」ノ字モ知ラヌケレドモ、日本ノ貴族院議員タ
ルニ耻ヂヌ積リデアル、實ニ首尾〓倒シタコトト我〓ハ思フ、ソレカラシテ
政府ノ官衙內ニ治外法權ノヤウナモノヲ作ルト云フコトモ、是ハ皆サンモ
知ッテ居ルカラ深ク辯ズル必要モアルマイト思フケレドモ、此儘デ····後悔
ヲシテ居ル人モ段々アリマセウガ、此儘デ知ラヌ顏デ通シタラ、結果ハドウ
ナルカト思フト、戶水博士ハ固ヨリノコト、其他六博士、ソレカラシテ昨年
末ニ連署シテ出タ百九十何人ト云フ人ハ顯然ト抗議書ノ趣意ヲ政府ガ是認シ
タモノト認メラレル、又此抗議ヲシタ人ナドモ己ラガ議論ガ宜カッタカラ通ッ
タト斯ウ認メラレル、斯ウ云フ道理ニナル、此儘ニシテ置イタラ·サ
ウスルト自然ニ文部省内ニ要ラヌ山ヲ造ルト云フコトニナル、今殆ド極端ニ
言ヘバ、天皇陛下ノ大權ノ及バザル權力ノアルモノガ出來ルト云フコトニナ
ル、總テ此抗議書ヲ讀ンデ御覽ナサイ、大學ノ獨立ヲ害ス、自由ヲ害ス
歐羅巴ノコトハ知ッテ居ルカ知ラヌケレドモ、アノ人達ハ日本ノ憲法ニ
氣ノ付カヌモノト思フ、憲法ノ十條ニ依ッテ定メラレタル所ニ「天皇ハ行政
各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス」トアル、ソレデ詰リ非
職ニ言付ケルトモ、又ソレヲ文官分限令ニ依ッテ處分スルトモ、其コトニ付
テ兎ヤ角他カラ喧マシウ言フ道理ハ無イ、唯此條例ニソレ〓〓備ッテ居ルモ
ノヲ犯シタ、卽チ小澤君ノ免官ノ如キ是ハ抗議スベキ必要ガアル、ケレドモ
何ゾ官廳事務ノ都合ニ依ッテカラニ其人ヲ非職ニスルト云フコトハ何モ不都
合ハ無イ、條例ヲ紊ッタコトデハ無イケレドモ、之ニ對シテ又ドウ云フカト
云フト、ソレハ官衙デモ廢セラレタトカ、或ハ萬已ミヲ得ヌ都合ガアッテノ
コトナラ兎モ角モ萬廢スルコトハ出來ナイ、羅馬法ノ爲ニ之ヲ除ケルコトガ
出來ナイト云フ理窟デアル、サウシテ到頭ソレガ公事ニ言ヒ勝ッテ政府ハ負ケ
〃前政府ハ負ケタ、今政府亦其通リト云フコトニナッタラ、國家ノ大權ニ
屬スルコトヲ如何ニスルカト云フ問題ニナル、ソレデ谷ガ默レス所以デアル、
若シ此谷ガ是デ何モ言ハズ仕舞ッタナラバ、モウ谷ハ二十年、官ヲ退イタ以上、
議院デ囂々スルト云フコトハ、恐レナガラ陛下モ御承知アラセラレルコト
デアル、ソレヲサウ云フコトヲ申上ゲルト云フコトハ出來ナイ、ソレデ此「天
皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」ト云フ條、ソレカラ國務大臣ハ天皇ヲ輔弼シテ
其責ニ任ズルト云フコトト云フモノガ相合ウテ、天子樣ニハ濫リナコトヲ決
シテ申上ゲラレス、其代リ國務大臣ハ其責任ヲ負ウテ一切ヤルト云フモノデ
アルカラ、國務大臣ヲ我ミガ責メルコトハ當然ノコトデアル、又臣民モ之ヲ責
メルノハ當然ノコトデアル、唯此解釋ニ色〓其責ニ任ズルト云フコトニ就テ
妙ナ解釋ヲシテ居ル人ガアル···人ヂヤナイ卽チ政府ガ明言シタコトガア
ル、我ミガ解釋スルニハ此「其責ニ任ス」ト云フハ總テ上陛下ニハ固ヨリノ
コト、下臣民ニ對シテモ責任ヲ負フト云フコトハ是ハ國務大臣ノ本分デアル
ビスマルクガ暴言ヲ吐イテカラニ議會ヲ解散シタヤウナコトハソレハアル、
ソレヲ始終傚ハレテ堪マルモノヂヤナイ、猫ガ虎ノ眞似ヲスルト云フコトハ
抑〓間違ヒキッタ話、ケレドモ我ミモ直グニ人民ニ責ヲ負ウテ引カニヤナラ
ヌト云フ英吉利流ノ考デハ無イ、上下ニ責任ヲ負ハニヤナラヌガ、併シソレ
カラ以上ハ唯上ノ思召ニアルコトダカラ我ミガ喙ヲ容レル所ヂヤア無イソ
レカラ此憲法十三條ニハ何トアル「天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ
締結ス」トアル、此戰ヲ宣シ和ヲ講ズルト云フコトハ實ニ大切至極ノコトデ
アル、大切ノモノデアルカラシテ、外間カラ喙ヲ容ルベキ權ハ無イ、私ノ解釋
ニ依レハ···ソレヲ若シ此外間カラ喙ヲ容レル餘地ガアルトスルナラバ戰
ヲ起サザル前ニ今戰ヲサレテハ人民ガ苦シウゴザイマス、困リマス、サウ云
フ請願ヲ出セルモノデ無イ、サウナッタラ仕方ガ無イ、又ドウシテモ國家ノ
爲ニ茲デ和セ子バ不利益デアルト云フトキニ外間カラドンナ議論ヲシテモ受
取ルベキモノデハ無イ、國務大臣ト卽チ帝トノ御評議ニ依ッテ極メルモノ
デアル、是等モ憲法ノ解釋ヲ平生大學ノ〓授ナドハ知ッテ居ルカラ、或ハサ
ウ云フ誤リハ起リハセヌカト思フ、誰モ知ル通リ何所ノ國デモ、共和政治ヲ
見テモ、王國ハ固ヨリ、戰爭ノ時ハ主權者ガ和スルモ戰ヲ開クモ主權者ニ
皆アルモノデアル、諸君モ御承知ノ通リ彼ノ佛蘭西ト伊太利トガ墺地利ト戰
ウタ、其時ハ重モニ主權ハナポレオンガ握ッテ居ッタ、ソレデナポレオンハ此
戰ハモウ是デ止メヤウト思ッテ墺國ト手ヲ握ッタ、トコロガ伊太利ノ宰相カブ
ールノ如キハマダ戰ヲシテモウ一ツヤリ付ケヤウト思ッテ餘ホド不平デアッタ
ケルドモ顧ミズ、ナポレオンハ其主權ニ依ッテ····主權者ト主權者トデヤッテ
仕舞ッタ、カプールハ腹ヲ立ッテ歸ッタト云フコトガ見エテ居ル、サウ云フ風ニ
腹ヲ立テタ所ガ仕方ガ無イ、ソレガ本分ダ、又千八百六十六年、彼ノ普漏西ト
墺地利ノ戰爭ノ時モ甚シキニ至ルト武官、皇太子ナドト云フ人ハマダ今戰ヲ
止メテハイカヌ、是非ヤラナケレバナラヌト云フニ拘ラズ、ビスマルクトナ
ポレオンノ仲裁ガ來テ、玆デ戰ウテハ大變損デアル、マダ外ニモ大變兵ガ來
ルソコデウヰルヘルム帝ニ自分ノ意見ヲ申上ゲテ帝ガ御承諾ガアッタモノ
ヂヤカラシテ、直グニ牛和會議フニコルスアルグデシク、是ハ少シ戰也ノ知ツ
テ居ル者ハ誰モ知ッテ居ル其際ニハドウカト云フトモウサドワノ一戰デ散
々墺地利ノ兵ハ破レタ、サウシテ普漏西ノ先鋒ハヴキヤナノ寺ノ堂ガ見エル
所マデ進ンデ居ル、イヤドッコイサウハイカヌトビスマルクガ出テウキ
ルヘルム帝ノ力デ引返ス、サウ云フモノデ戰ヲスル詔、或ハ和ヲ講ズルコト
ナリハ是ハ武官ト雖モ一步モ喙ヲ容レサスベキモノデ無イ、其時ハドウデ
アッタカト云フト、有名ノモルトケ將軍ハ直グニナポレオンガ干渉シタト云フ
コトデ、ドッコイ、直グニ其軍隊ノ分配ヲシタ、第一、六十萬ノ動員ヲシテ居
ル所ヘモッテ行ッテ、此二十万ヲ向フヘ····第二ノ方ヘ向ケテ、後ノ四十万ヲ
以テ直グニ墺地利ヲ突込ムト云フ經晝ヲシタ、ケレドモ如何セム是ハ主權者
ノ權ニアルモノダカラ一言モ言フコトハ出來ナイ、斯ウ云フモノデ宣戰講和
ノ大權ト云フモノハ決シテ外間デ喧カマシク言フベキモノデナイ、ソレヲ條
約ヲ破棄シテ吳レイノ何ノト云フコトハ最モ其意ヲ得ヌ事抦デアル、其不都
合ナ事柄ヲ此憲法三十條ノ請願ノ所ヘ持ッテ行クト云フモノハ丁度一種ノ
胡澹庵ノ封事ヲ再ビ致シタト云フヤウナ言葉ニ緩急ガアルケレドモ同ジ樣
ナコトニナル、決シテ是ハ立憲政體ニ於テ宥スベカラザルモノデ是ガ出來
ルヤウニナルト陛下ノ神聖ヲ侵シ奉ルト云フコトニナル、ナゼナラバ之ヲ
利用シテ行クトサン〓〓ニ色ミナ者ガ澤山出テ來テ、今戰爭ヲシテハナリマ
セヌトカ或ハ戰爭ヲセ子バナラヌトカ云フヤウニ、ワイ〓〓ワイ〓〓丁度此
日比谷ノ公園デ暴バレタヤウナコトモ構ハヌト言ハニヤナラヌ、唯請願ト上
奏ト謂ハユルチャンポンニ、ゴッチヤニナッテ仕舞フ、定メテ是ハ宮內省ニモ向
後ハ御考ヘニナルコトデアラウト思フケレドモ、此憲法ノ主意ヲ明ニシテ置
カヌ以上ハ矢張リ前ノヤウニ受ケルカモ知レス、受ケテ見ルト又許スト云フ
コトニナル、我ミハ斷ジテ區別ヲシテ宮内省デ御受ケナサラヌヤウナ方法ヲ
執ラネバナラヌ、サウナルト恐レナガラ餘リ天子樣ヲオイトコニスルヤウニ
ナルカラ是ハ卽チ神聖ヲ汚スノデアル、ソレデ此大學博士戶水氏ノ非職ニ
ナッタト云フコトカラシテ遂ニ大騷動ニナッタ、此人ニシテデスネ、我〓ノヤ
ウナ一種ノ主義ヲ持ッテ居レバ斯ウ云フヤウニナッタナラバ奇麗ニ職ヲ抛ッテ
其言論ノ自由ヲ得タケレバ勝手ニ出來ル、唯是ガ役人デアッテ官吏デ居ッテ斯
ウ云フコトヲヤルノデカラシテ政府デハ困ル、デ或ハ之ヲ事實有ッタカ無イ
カ知レヌケレドモ、何シロオ前ハドウモ困ルカラ願ヒ免官ヲ言ヒ立テロト言ッ.
テ旨ヲ諭スト云フモ、私ハソレハ出來マセヌ、イヤデアリマス、若シ不都
合ナレバ懲罰ニデモ御附シナサイ、斯ウ言フ、ソコデサア懲罰ヲヤラウトス
ル、懲罰ヲヤラウトシテ見ルト矢張リ大學ニモドッカ此懲罰委員ノヤウナ所ニ
モ同ジ穴ノ務ガ居ッタト云フコトニナルト懲罰ヲ附スルコトモ出來ナイ、ソ
コデサウナルトドウモ仕方ガナイ、ソレナラバ先ヅ其分限令ノ官廳ノ都合
云々ニ依ッテヤッタラ宜カラウ、是ハモウ其利用正解カラ言ヘバ成ルホド
官廳ノ潰レタ時トカ人ノ餘ッタト云フ時デアルケレドモ、是マデ利用シタ例
ハ澤山アル、コレ〓〓コレ〓〓云々ト云フ利用ガアル、卽チ此講義ヲシテ居
ル先生モ或ハサウ云フ理窟デ之ヲ利用シテ休職ニシテ貰フト云フコトガアリ
ハセスカ、是ハ卽チ活用ト云フモノデアル、ケレドモドウシテモ諭旨シテモ
退カウト言ハズ、懲罰ニ附スルコトモ出來ナイト言フコトニナルト、實ニ政
府ハ困ッタモノヂヤト思フ、ココガ卽チ此治ト亂ト云フ差ガアッタナラバ、蠻勇
內閣ト言ウテ人ガ輕蔑スル、我ミモ卽チ其蠻勇ノ少シ側杖ヲ食ウタ方デアル
ケレドモ、マダソレガマシデアル、斯ウ政府ノ行政權ガ狹少ニナッテハドウス
ルコトモ出來ナイ、仕樣ガナイ寧ロ是ハ蠻勇ヲ奮ッテナリトモ大決斷ヲセヌ
ケレバナラヌコトト自分ナドハ思フ、ソレデ憲法ノ二十九條ニ於テハ「日本
臣民ハ法律ノ範圍內ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス」トアリマ
ス、大學〓授ハ大學ト云フ一ツノ城壁ノ中ニ這入ッテ法律モ及バナイ、ドウス
ルコトモ出來ナイト云フ鞏固ナ私ノ〓體ヲ拵ヘテ居ルヤウニ見エル、サウス
レバ卽チ是ハ恐レナガラ天皇陛下ノ權力ノ及バヌコトニナッテ來ル輔弼ノ
大臣ハ斯ウシヤウ、斯ウシヤウト云フコトヲ言フケレドモ、ソレサヘ行フコト
ガ出來ナイト云フコトニナル、ソレデナカ〓〓考ヘテ見ルト容易ナラヌ事柄
デアル、其大學〓授諸氏ノ希望ハ西洋ノ大學ノ如ク獨立シテ決シテ行政官ノ
干渉ヲ受ケナイ先ヅ言ヘバ羅馬法王ノ團體ミタヤウナモノデアル、サウシテ
其通リナラバ我ミハ何モ言ハナイ、ソレデモ政府ノ爲ニナラヌト見レバ矢張
リ力ノ有ルビスマークノ時ナドハ坊主ナドヲ國境へ逐出シタコトモアル、ソ
レ位ニ行政權ハ丈夫デナケレバナラヌ、ソレモ時トシテ出來ナイト云フコト
デハ國ノ政ハ出來ナイ、ソレデ今言フ通リ人民トシテ絕對ニ言論ノ自由ヲ得
ルコトガ出來ナイ、ソレガ得タケレバ外國ヘデモ行クヨリ仕方ガナイ、ソレ
デ此大學〓授ト云フ者ガ自分ノ考デハ西洋ノ大學〓授ノヤウニ考ヘテ居ラル
ルカハ知ラヌケレドモ日本デハ如何セム今申ス通リ尋常ノ普通ノ文武官ノ取
扱ニナッテ居ル、ソレ故ニ勅任、奏任、服モ皆勅任奏任ノ服ヲ著テ居ラナケ
レバナラヌ、或ハ一等二等ト皆同ジヤウナ待遇ヲ受ケテ居ッテ、特リ言論著作
ノ自由ハ大學ト云フモノノ中ニ籠ッテ一步モ冐スコトガ出來ナイ、是ハ實ニ
驚入ッタ話デハアリマセヌカ、ソレデ若シ新聞記者ドモデアッタナラバ、新聞
ハ止メラレルシ又禁錮セラレルヤウナコトガアッテモ大學〓授ハ決シテ構ハ
ナイ、ソレカラ又此〓授、學問ノ自由ヲ妨ゲル、學問ト政論ト云フモノハ我
ミ學者デハナイケレドモ、是ハ大キニ違フデアラウ、若シ學問ノ自由ヲ妨ゲ
ルト云ヘバ封建時分ニ大ニアッタ、ソレデ元祿時分ニハ天動說マデ皆漢學主
義デ、天ハ動キ地ハ靜カナモノデアル、天ハ圓イ物デアル、地ハ平カナ物デ
アル、是ハ漢學時代デアル、トコロガ其時分ニ地動說、西洋ノ說ガ這入ッテ
來テ、支那ヨリ這入ッテ來テ遂ニ天球ナリ地球ナリ今ノ西洋ノ通リノ物ガ出
來タ、其時分ニ藩々デハ私ドモノ藩デハソレヲ主張シタ者ハ大變ニ憎マレ
タ、オマケニ學派ガ惡イカラ斯ク云フコトモ信用スルト云ッテ十三年モ牢へ
蟄居ヲ言付ケラレテ其配所デ死ンダ人モアル、是ハ卽チ其學問ノ獨立ヲ害ス
ル、人ノ思想マデ束縛スルハ無理ナコトデアル、學問ト政論ト云フモノハ決
シテ同一ナモノデナイ、トコロガソレヲ無理ニ學問ノ自由ヲ妨ゲル、是ハ學
理上サウ云フモノデハナイ、是ハ卽チ政論、政論ニアッテハ國家重要ノ時、而
モ外國ト談判ヲ開イテ敵對國ハ申スニ及バズ列國モ皆環視シテ居ルトキニ日
本ノ官吏トシテサウ云フ事ヲ憚ラズヤルト云フコトハ之ヲ許シテハ決シテ整
理ガ出來ナイ、是ハ此百九十名ノ博士方ハ是認シタモノト見ナケレバナラ
ヌ、其處置ガ惡カッタト云ウテ殆ド罷工同盟的ノ事ヲ爲シタノハ卽チ此戶水
博士ノセラレタ言論ト云フモノヲ是認シタモノト見ナケレバナラヌ、道理上
サウ見ナケレバナラヌ所デアル、我〓決シテ許サヌ所デアル、今後モ決シテ
斯ウ云フ事ハスベキモノデハナイ、トコロガ今ノ政府ハ之ヲ知ラヌ風デ陳情
書トカ何トカ云フ方デ見逃ガスト云フ方デハ無カラウカト思ハレル、甚シキ
ニナルト帝國大學ノ威嚴ニ關スル、日本國家ノ主務大臣ノ威嚴ニ關スルコト
ハ忘レテ、自己ノ同情ヲスル、卽チ此大學ヲ侵スト言ウテカラニソレヲ威嚴
ニ關スルト云フ、大學ノ威嚴ニ關スルハ構ハヌガ、國ノ威嚴ハドウシテモ宜
イト云フ論理ニ、ドウシテモナッテ來ル、デソレカラ此之ヲ此儘ニスレバ各
中學ノ生徒ガ反抗シ出シタトキニハドウスル力、是ハ大學〓授デアル、是日々
位置ノアル者デアルカラ構ハヌガ、汝等職々ノ書生等ガサウ云フコトヲスル
ハ不都合デアル、之ヲ倒サマニヤリ込メラレタラ不都合デアル、ソレデ先ヅ
大體斯ウ云フ私ハ見解ヲ持ッテ居ルカラ、之ヲ怺ヘヤウト思ウタガドウシテ
モ首ガ切レテモ怺ヘラレナイト云フコトニナッタカラ、是ハ玆ニ諸君ノ御聽
キニ入レル譯デアリマス、ソレデ玆ニ私ガ一ツノ希望ヲ述ベテ置キタイト思
フノハ、谷ハ酷薄ナ奴デアル、此治ッテ居ルモノヲ打毀ハシテドウスルカ、斯
ウ云フ論ガ起ルカ知ラヌガ、若シ私ガ文部大臣ニ任ゼラレタナラバ何モ處置
ハ無イ、又私ノ說ヲ用井ルナラバ少シモ世話ハナイ、ソンナニ騷グニハ及バ
ナイ、第一此百九十何人ト云フモノハドウ云フコトカラ斯ウナッテ來タカト
云フト、丁度谷ガ氣違ニナッテ憚リナガラ憲法ヲ犯シ憲法三條ニ觸レルコト
ヲシタト同ジヤウニシテ、皆一時ノ行懸リデ、ワーットナッタ、ソレガ此大勢
ガ連署シタト云ッテアヽ云フ物ヲ出シタト云フコトニナッタラウ、諸君ガ卽チ
大學諸君ハ卽チ氣ガ違ッタノデアル、ソレデ此文ヲ見テモ支離滅裂、道理ヲ
貫カズ卽チ是ガ博士先生ノ公文書カト思フr驚クノ外ハ無イ、自分ノ勝手ノ
事バカリ書イテアル、之ヲ今靜ニ御讀ミニナッタラ、ケシカラヌコトヲシタ
ト云フ思召ニナラウカラ、大臣ハ個人ニ就テ說得スルガ宜シイ、卽チ谷ガ其
一人ニナッタラバ一番ニ恐入ッテ出ル、サウシテ相當ノ手續ヲシテ此抗議書ナ
ル物ヲ取下ゲルソレカラ上デ過ッテ改ムルニ憚ル勿レデアルカラ、過ッタナ
ラバ改メル、是ガ過タナイト言フナラバ、其時ニハ謂ハユル國務大臣ハ斷ヲ
以テ行フガ宜シイ、ヨモヤサウ言フコトハアルマイト思フカラ我〓ハ政府卽
チ西園寺殿、此內閣ニ於テ能ク說諭ヲスルガ宜イ、此事ハ文部大臣ガ過ッタ
デハナイ、國務大臣ノ國政ヲ施行スルニ付テ障碍ガアルカラシテ戶水博士ヲ
休職ニシタト云フ事柄デアル、トコロガ此博士連中ガ總代トシテ總理大臣ニ
行ッテ言ッテ居ル所ハ、一向アナタ樣ニハ關係ガゴザイマセヌガ、唯文部大臣
ガ斯ウ云フ不都合ヲシタト云フコトガ見エテ居ル、卽チ其時ノ總理大臣ガ
番責任ガアル、詰リ國務大臣ト主務大臣トノ區別ガ分ラヌ、國務大臣ト云フ
者ハ一ツ身體デ二ツノ事ヲスル、入ッテハ國務大臣、出テハ諸省ノ長官、斯
ウ云フ者デアル、ソレデ其時ニ總理大臣ハ何ト答ヘラレタカ知ラレヌケレド
モ私ガ總理大臣デアレバソレハケシカラスコトデアル、卽チ是ハワシ共ガ
職責ニ於テ行ッテ居ルノデ何モ文部大臣一己デシタコトデハ無イト云フソ
レデ今言フ通リ私ガ言スコトガ非ナレバイザ知ラズ若シ之ヲ尤モト見ルナラ
バ干城ガ前キニ濟マヌコトヲシタト悔悟シテ居ルト同ク、ドウゾ君子豹變ト
サッパリト改メテ、ドウゾ此抗議書ヲスッカリ引イテ仕舞ウテ貰ヒタイト思フ、
ケレドモ此六博士ノ出サレタ抗議書ト云フモノハ詰リ斯ウ云フモノヲ出シタ
ノモ惡イガ、受取ッタモノモ受取ルベキモノデ無イ、私ドモハ斯ウ云フコト
ハ詰リ何モナラヌ、罪ニナルベキモノデナイ、是カラドウゾ大學ノ眞ニ威信
モ關スルコトデアルカラ過ッタガ惡イトハ言ハヌ、過ッタラソレヲ改ムルニ
憚ラスヤウニシテ貰ヒタイ、斯ウ云フ理窟デ是ハ提出シタノデアリマス、實
ニ已ムヲ得ナイト思フ、是ダケノコトヲ御聽キニ入レテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=7
-
008・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ本日ノ議事日程ニ移リマス、議事日程第一
伯爵松平忠亮君病氣ニ付會期中請暇、許可シテ御異存ゴザイマセヌカ
〔異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=8
-
009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ガ無イト認メマスカラ許可ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=9
-
010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第二ニ移リマス、明治三十一年法律第三
號廢止法律案、第一讀會ノ續、特別委員長報告
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經ザルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ]
明治三十一年法律第三號廢止法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報〓候也
明治三十九年二月六日
右特別委員長
子爵靑山幸宜
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵靑山幸宜君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=10
-
011・青山幸宜
○子爵靑山幸宜君 明治三十一年法律第三號廢止法律案特別委員會ノ經過及
結果ヲ御報道イタシマス、昨六日ニ正副委員長ノ選擧ヲ行ヒマシテ直ニ委員
會ヲ開キマシテゴザイマス、委員會ニ於キマシテハ別段ニ此案ニ就キマシテ
ハ異議モ無ク、二三、政府委員ニ質問モゴザイマシタガ、總テ異議ナク可決
ヲイタシマシタ、就キマシテハドウカ速ニ可決ニナラムコトヲ希望イタシマ
ス、且此案ニ付キマシテ御質問等ガゴザイマスナラ、ドウカ政府委員ニ質問
ヲ願ヒタウゴザイマス、尙此案ハ極メテ簡單ノ案デモゴザイマスシ讀會省略
ヲセラレマシテ速ニ可決ニナラムコトヲ希望イタシマス、此段御報告ヲ致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=11
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012・吉井幸藏
○伯爵吉井幸藏君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=12
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013・山口弘達
○子爵山口弘達君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=13
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014・井上勝
○子爵井上勝君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=14
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015・柳原義光
○伯爵柳原義光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=15
-
016・南郷茂光
○南〓茂光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=16
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017・三島彌太郎
○子爵三島彌太郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=17
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018・稻垣太祥
○子爵稻垣太祥君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=18
-
019・大久保忠順
○子爵大久保忠順君 贊成
〔其他「贊成」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=19
-
020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今靑山子爵ノ讀會省略ノ動議ニハ定規ノ贊成者
ガアッタト認メマス、讀會省略ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=20
-
021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス、特別委員長ノ報告ニ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=21
-
022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 然ラバ可決セラレタモノト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=22
-
023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第三ニ移リマス、臨時事件費支辨ニ關ス
ル法律案、第一讀會ノ續、特別委員長報告
臨時事件費支辨ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
明治三十九年二月六日
右特別委員長
子爵谷干城
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵谷干城君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=23
-
024・谷干城
○子爵谷干城君 諸君、此臨時事件費支辨ニ關スル法律案ニ於キマシテハ昨
日委員會ヲ開キマシテ、委員會ノ多數僅カ一人缺ケマシタガ、其位デ十五名
ノ隨分大勢ノ委員デゴザイマスルガ、揃ヒマシテカラニ議事ヲ開キマシタ、
ソレデ隨分此第二條等ニ於キマシテハ或ハ復舊-復舊ト云フコトニ付テ種
々ノ質問モ出マシタ、出マシタガ、要スルニドウシテモ是ハ拒ムコトガ出來
ヌモノト皆委員ハ認メマシテゴザイマス、ト云フモノハ此跡始末等ノコトニ
付キマシテハ實ニ擧ゲテ言フベカラザル大事業、又擧ゲテ言フベカラザル諸
般ノ事務ト連續シテ居ルモノデ、今ヨ之ヲ明瞭ニ政府ガ答ヘルコトモ出來マ
イシ、又我ミガ明瞭ニ質問スルコトモ出來ナイ、詰リ要スルニ大凡コレホド
金ガ要ルデアルカラハ、ソリヤ·金ガ盡キタ、金ガ盡キタト云ウテ請求ハ出來
ナイカラ是ダケノコトヲ豫メ裕餘ヲ付ケテ貰ハ子バナラヌト云フコトヲ請求
シタノデ、ドウモ何處カラ考ヘテモ、已ミヲ得ヌト考ヘラレル、ソレ故ニ異
議ナク委員會ニ於キマシテハ決議ニナリマシテゴザイマスカラ、ドウゾ本會
ニ於キマシテモ委員會ノ認メタ所ヲ以テ可決ニナラムコトヲ希望イタシマ
ス
〔子爵谷干城君演壇ヲ降ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=24
-
025・谷干城
○子爵谷干城君 少シ申落シマシタカラ此處カラチヨット發言ヲ御許シヲ願
ヒマス、ドウゾ讀會省略デ速ニ通過ニナラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=25
-
026・池田詮政
○侯爵池田詮政君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=26
-
027・有地品之允
○男爵有地品之尤君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=27
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028・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=28
-
029・野村素介
○男爵野村素介君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=29
-
030・松平正直
○男爵松平正直君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=30
-
031・南郷茂光
○南〓茂光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=31
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032・野田豁通
○男爵野田豁通君 贊成
〔其他「贊成」ト呼プ者多シ]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 谷子爵ノ讀會省略ノ動議ニハ定規ノ贊成者ガア
タト認メマス、讀會省略ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス、原案御異存ガゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイモノト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第四ニ移リマス、民法施行法中改正法律
案、第一讀會ノ續、特別委員長報告、特別委員長鍋島子爵
民法施行法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
明治三十九年二月六日
右特別委員長
子爵鍋島直彬
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵鍋島直彬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=36
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037・鍋島直彬
○子爵鍋島直彬君 本案委員會ノ經過竝結果ヲ報告イタシマス、本案ノ委員
會ハ昨六日午前十時ニ正副委員長ノ互選ヲ終リマシテ、引續イテ開會ヲ致シ
マシタ、其開會ノ初メニ政府委員ヨリ詳細ナル說明ガゴザイマシタ、此改正
案ハ理由書ニ依リマシテモ明カデゴザイマスシ、又第一讀會ノ初メニ司法大
臣ノ說明ニ依ッテ尙明瞭デゴザイマスル、併シ一通リ此改正案ノ大要ヲ述べ
マスルコトニ致シマス、此改正案ハ民法施行法中ノ第十條ノ「民法中不動產
上ノ權利ニ關スル規定ハ當分ノ內之ヲ沖繩縣ニ施行セス」ト云フ此除外例
ノ削除ノ改正案デゴザイマス、此土地ニ關スル權利ニ付テノコトノ外ノ法令
ハ沖繩縣ノ進步發達ニ從ッテ大凡内地同樣ニ施行サレテ居ルノデゴザイマス、
併シ此土地ニ關スルコトノミハ全ク舊慣ノ儘デアッテ或部分ヲ除クノ外ハ各
自ノ土地所有權ト言フモノハ沖繩縣ニ於テハ定ッテ居ラヌノデゴザイマス、寧
ロ定ッテ居ラヌト申スヨリハ土地所有權ハナイト申ス方ガ適當カモ知レマセ
ヌ、勿論地劵ナドノ發行ト云フコトハゴザイマセヌ、斯樣ナ譯デアッテ沖繩縣
ハ土地ノ整理ヲ爲シマセヌケレバ詰リ此不動產上ノ權利ニ關スル規定ヲ施行
スルコトハ出來ナイノデゴザイマス、ソレデ御承知ノ通リ明治三十二年ニ沖
繩縣土地整理法ト云フ法律ヲ制定セラレテ、沖繩縣ニ於テ土地整理ノ實施ニ
著手ニナリマシテ其後三十六年ニ至ッテ整理事務ノ全部ヲ全ク了リマシタノ
デゴザイマス、始メテソレデ沖繩縣ニ土地所有權ガ定マルコトニナリマシタ、
之ニ伴ウテ卽チ不動產上ノ權利ニ關スル規定ヲ施行セ子バナラヌト云フ必要
ガ生ジタノデゴザイマス、又之ト同時ニ不動產登記ノ事務モ取扱ハレテ其權
利ヲ保護スルコトニナルト云フ趣デゴザイマス、卽チ此第十條ノ除外例ヲ削
除スルノ必要アルニ至ッタ次第デゴザイマス、委員會ニ於テハ僅ニ二三ノ質問
ガゴザイマシタノミデ、全會一致ヲ以テ可決スベキモノナリト議決イタシマ
シタ、唯今述べマシタル通リノ理由デゴザイマシテ、至ッテ簡單且ソ明白ナ
ル改正案デゴザイマスル故ニ、何卒讀會ヲ省略サレ速ニ議決アラムコトヲ希
望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=37
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038・吉井幸藏
○伯爵吉井幸藏君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=38
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039・大田原一清
○子爵大田原一〓君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=39
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040・中島永元
○中島永元君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=40
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041・伊澤修二
○伊澤修二君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=41
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042・馬屋原二郎
○馬屋原二郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=42
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043・柳原義光
○伯爵柳原義光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=43
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044・大久保忠順
○子爵大久保忠順君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=44
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045・山口弘達
○子爵山口弘達君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=45
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046・池田詮政
○侯爵池田詮政君 贊成
〔其他「贊成」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 鍋島子爵ノ讀會省略ノ動議ニハ定規ノ贊成者ガア
ッタト認メマス、讀會省略ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス、原案御異存ゴザイマセ
ヌカ
[「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ガ無イモノト認メマス、是デ本日ノ議事ハ
終リマシタ、次ノ議事日程ハアトヨリ御報〓ニ及ビマス、本日ハ散會
午前十一時二十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002203242X00519060207&spkNum=49
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