1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治三十九年三月一日（木曜日）午後一時五分開議
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議事日程 第九號 明治三十九年三月一日
午後一時開議
第一 産業組合法中改正法律案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選舉
第三 明治三十八年勅令第百九十四號（承諾を求むる件）（政府提出） （委員長報告）
第四 屯田兵土地給與規則中改正法律案（中西六三郎外六名提出） 第一讀會
第五 醫師法案（山根正次提出） 第一讀會
第六 醫師法案（青柳信五郎外三名提出） 第一讀會
第七 國本培養に關する建議案（多田作兵衞外十九名提出） （委員長報告）
第八 東北三縣凶作地窮民救恤に關する建議案（青地雄太郎外四名提出） （委員長報告）
第九 治水に關する建議案（佐々木正藏外十三名提出）
第十 利根川高水工事急施に關する建議案（吉植庄一郎外六名提出）
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=0
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001・杉田定一
○議長(杉田定一君) 諸般ノ報告ヲ致シマス
〔書記朗讀〕
政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第一號)明治三十九年度歲入歳出總豫算追加案
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
萬國博覽會開設ニ關スル建議案
提出者竹內正志君森本駿君臼井哲夫君
新聞紙條例中改正法律案
提出者荒川五郞君辻寬君
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
一指定セラレタル委員左ノ如シ
裁判所構成法中改正法律案委員
中西六三郞君森肇君石井信君
石田仁太郞君大熊三之助君大淵龍太郞君
松家德二君富島暢夫君米田武八郞君
精神病學科設置ニ關スル建議案委員
築山和一君天野藤三君籾木卿太郞君
麥田宰三郞君愛澤寧堅君佐藤伊助君
山根正次君大戶復三郞君花井卓藏君
一委員長及理事左ノ通當選セラレタリ
裁判所構成法中改正法律案委員會
委員長米田武八郞君理事大熊三之助君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=1
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002・杉田定一
○議長(杉田定一君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、日程第一產業組合法中改正法律
案第一讀會ヲ開キマス、議案ヲ朗讀サセマス
第一產業組合法中改正法律案(政府提出、貴族院第一讀會
送付)
〔書記朗讀〕
產業組合法中改正法律案
產業組合法中左ノ通改正ス
第一條第二項ヲ削ル
第九條第一項第七號ヲ左ノ如ク改ム
七剩餘金處分及損失分擔ニ關スル規定
第十五條第三項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ前項第三號ノ事項ニ付テハ定款ヲ以テ期日ヲ定メ一事業年度內一囘
又ハ數囘ニ取纏メテ期日後二週間內ニ記載ヲ爲スコトヲ得
第三十八條ノ二組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ定款ヲ以テ總會ニ代ハルヘ
キ總代會ヲ設クルコトヲ得
總會ニ關スル規定ハ前項ノ總代會ニ之ヲ準用ス但シ總代會ニ於テハ解散
及合併ノ決議ヲ爲スコトヲ得ス
第四十四條第一項中「分配」ヲ「處分」ニ改メ同第二項中「組合員ノ持分ニ對
スル」ヲ削リ「分配」ヲ「配當」ニ改ム
第五十四條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ定款ノ定ムル所ニ依リ脫退當時ノ財產ニ依リテ之ヲ定ムルコトヲ得
第五十五條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ前條但書ノ場合ニ於テハ脫退ノ時ヨリ三箇月內ニ之ヲ爲スヘシ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=2
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003・杉田定一
○議長(杉田定一君) 松岡農商務大臣
〔農商務大臣松岡康毅君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=3
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004・松岡康毅
○農商務大臣松岡康毅君 唯今朗讀ニナリマシタ產業組合法中ノ改正案デゴザイマ
スルガ、御覽ノ通至ッテ簡單ナモノデゴザイマスル、其中改正ヲ要スル重ナルモノハ御承
知ノ組合ニ於キマシテ、信用組合、購買組合、生產組合ト申ス如ク、都合四ツニ別レ
テ居リマスルノガ、信用組合ノ分ダケハ他ノ組合ト同一ノ組合ニ於テ扱フコトノ出來マ
セヌヤウニ現行法ハナッテ居リマスル、ソレハ頗ル實際ニ差支ガアリマスルトコロカラ、之ヲ
他ノ組合ト同一ノ組合ニ於テ取扱フコトヲ得ルヤウニナスト申スノガ、改正ノ趣意デゴザ
イマス、其後ノトコロハ御覽ノ通多數ノ人ノ資本金ノ拂込、又多數ノ人ノ集會決議ヲ
致シマスル手續等ニ於テ、如何ニモ差支ノ生ジマスルトコロヲ實施上カラ見出シマシテ、
是ヲ簡便ニスルト申スニ過ギナイ譯テゴザイマス、其他ハソレニ準ジテ自然ニ生ジマスル結
果デゴザイマス、速ニ御贊成アランコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=4
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005・杉田定一
○議長(影田定一君) 日程第二、本議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ニ移リマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=5
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006・元田肇
○元田肇君 九名ノ委員ト致シマシテ、議長ニ於テ指名アランコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=6
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007・杉田定一
○議長(杉田定一君) 元田君ノ發議通、九名ノ委員議長指名ニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=7
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008・杉田定一
○議長(杉田定一君) 御異議ハナイト認メマス-日程第三、明治三十八年勅令
第百九十四號承諾ヲ求ムル件委員長ノ報告-元田肇君
第三明治三十八年勅令第百九十四號(承諾ヲ(委員長報告)
求ムル件)政府提出
〔元田肇君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=8
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009・元田肇
○元田肇君 諸君、私ハ明治三十八年勅令第百九十四號ノ承諾ヲ求ムル件ニ付キ
マシテ、委員會ノ經過及結果ヲ御報告致シマス、此報告ヲ致シマスルニ付キマシテ、事
重大デゴザイマスカラシテ、委員會ニ於キマシテ政府ニ質問ヲ致シ、ソレニ對スル政府ノ
答辯、其答辯ヲ受ケマシテ、吾々委員ガ討論ノ上ニ決議シタト云フ總テノ經過ヲ簡單
ニ申上ゲヤウト考ヘマス、先ヅ委員會ニ於キマシテ質間ノ起リマシタノハ、政府ガ三億圓
ノ外債ヲ募集セントスル二當ッテ、臨時議會ヲ召集シナイト云フコトハ、ドウ云フ譯デ斯
樣ナ處置ヲ執ッタノデアルカト云フノガ、第一ノ疑問デゴザイマス、其他種々アリマスケレド
モ、要スルトコロ此一點ニ歸著スルト存ジマス、之ニ對シマスル政府ノ答辯ハ、奉天戰爭
ノ後ニ至リマシテ、御承知ノ通ニ米國大統領ヨリ平和談判ヲ開クコトノ勸告ガゴザイマ
シテ、如何ニ是カラ先キノ戰略ガ極ルカト云フコトガ、當時廟議ノ上ニ於テ種々講究サレ
マシタコトデアッタ、デ此奉天以後ノ戰線ヲ如何ニスルカ、ドウスルカト云フコトニ付イテ
ハ、發ッテ要スルトコロノ經費モ非常ニ餘計ニナケレバナラヌ、又仕方ニ依ッテハサウ急ニ
外資ヲ募集シナクトモ宜シイ、斯ウ云フ結果ニモナルノデ、其戰線ノ定マルコトヲ待ッテ居
リマシタノデ詰リ明治三十八年六月十四日頃ニ至ッテ此事ガ一定致シマシテ、此一定シ
タルトコロノ廟議ノ結果トシテドウンテモ此處デ正貨準備ト云フモノヲ十分ニシナケレバナ
ラヌト云フコトヲ認メラレ、是ニ於テ是カラ先キハ月日ニ亙リマスルガ、明治三十八年六
月十四日ニ第一囘ノ電報ヲ在米國ノ財務委員ニ宛テヽ、外債募集ノコトヲナスヤウニ
ト云フコトノ申込ヲ開キマシタサウデアリマス、時恰モ財務委員ハ英吉利ヨリ亞米利加
ニ渡リマシテ、七月三日ノ便船ヲ以テ晩香坡ヨリ日本ヘ一應歸朝シテ報告スルト云フ
時機ニアッタノデアリマスルガ、此電報ヲ受ケテ、更ニ米國アタリノ外債募集ニ應ズベキ方
面ニ向ッテ交涉談判ヲ開キマシタ末ニ、六月二十一日ニ至ッテ返電ガ到著致シタサウデ
アリマス、其返電ニハ時機宜シキヲ得ズ、成效ノ見込ナシト云フ返電ガ參ッタサウデアリ
マ、然ルニ廟議ハ一決シテカラニ、奉天以後鐵嶺カラズット先キノ方ヘ向ッテ段々戰線
ヲ擴ゲテ往ク、正貨準備ト云フモノガ十分ナケレバナラヌト云フコトガ一決シテ居ルノデア
リマスカラシテ、押シテ尙十分此交涉ヲ續ケテ、成效スルヤウニト云フコトヲ申送リマシ
タ、其末-數囘往復ノ末、七月四日附デゴザイマシテ、成效ノ見込アリト云フ電報
ガ、倫敦ニ渡ヲテ居ル所ノ財務委員ヨリ電報ガ參ッタサウデアリマス、ソレカラ外債ガ出
來ル、出來ヌト云フコトニ付キマシテ、應募者トノ間ニ條件ハ如何ニシタラ宜カラウト云フ
談判ガ略〓成立ヲ致シマシタ電報ガ參リマシタノハ、明治三十八年七月五日デアルト
云フ、ソレカラ越ヘテ七月八日ニ覺書ヤウノモノガ出來タト云フコトノ電報ガアッテ、ソレ
ガ十日ニ著シタサウデアリマス、以上ノ次第デゴザイマシテ、是ハ政府ノ述ベルトコロヲ諸
君ニ御傳ヘ申スノデアリマス、戰略上廟議ノアル所ハ、決定シマシタノガ、三十八年六
月二十四日デアッテ、ソレカラ外債ガ出來ルカ、出來ヌカト云フコトヲ申シテヤッテムヅカシ
イト云フ返電ヲ受ケテ、尙押シテ交涉シテ見ヨト云フヤウナコトヲシテ漸ク七月五日ノ日ト
云フモノニ、條件ガ略〓成立ノ電報ガ來タ、然ルニ此條件ガ來タトシテ、安閑トシテ居ル
ト云フコトハ、是等ノ金持主連中ハ避暑ニ出掛ケル時期テアッタカラ、避暑ニ出掛ケテ往ック
後トデハ、此相談ハ行ハレナクナルト云フ時機デアリマシテ、誠ニ切迫極マッタトキデアル
カラシテ、遂ニ臨時議會ヲ開クノ餘地ガナク、、勅令ヲ發行シタモノデアル、斯ウ云フノガ政府
ノ答辯デアリマス、ソレデ委員會ハ種々討議ヲシタ上ニ於キマシテ、大體ノ意向ハ反對ト
ソレカラ今日ハ餘議ナイカラ贊成シヤウト云フ二組ニ分レタノデアリマスルガ、其寧口承
諾ヲ與ヘルト云フ方ノ側ニ於キマシテハ、大藏大臣ニ對シマシテ、斯樣ナル場合ニ當ッテ帝
國議會ト云フモノガアルノニ、是ヲ開カレヌト云フ非立憲ノコトデハ困ルガ、現內閣ハ如
何デアルカト云フコトヲ類ニ質問ヲ致シマシタ、其結果ガ質問ハ長ウゴザイマスルガ、
結局ハ大藏大臣ハ、前政府ガ明治三十八年七月八日ニ緊急勅令ヲ發シタコトノ當
否ト云フコトニ付イテハ、玆ニ必シモ言明ヲスルノデハナイガ、當內閣ハ苟モ時期ノ許ス
限リノアル場合ニ於テハ、所謂憲法的ト、立憲的ト云フノデアリマセウ、嚴重ニ之ヲ
ぶつう、臨時議會ヲ召集スル場合ニ召集スル、ト斯フ云フコトデアリマシタ、ソコデ委員
會ノ多數ハ、是ニ承諾ヲ與ヘベシト云フコトニ決議致シタ譯デアリマスガ、其結果ハ承
諾ヲ與フベシト云フコトデアリマスガ、之ヲ極ク要ヲ嫡ンデ其起ッタ理由ヲ申上ゲマスルナ
レバ、政府ガ三億圓ノ外債ヲ募集セントスルニ當ッテ、帝國議會ヲ召集スルノ餘地ガ
アッタト吾ミハ認メル、認メルガ、認メルカラシテ、是ヲ召集セズシテ募ッタト云フコトハ甚
ダ失當ノ措置デアルトアルガ是ヲ決シタルトコロノ當局者ハ卽チ前內閣デアッテ、今日ハ更
迭シテ居ル場合デアル、事柄ハ何デアルカト云ヘバ、外國人ト公債-外債ヲ募集スル契
約ニ關係スルコトデアリマシテ、此事ハ既ニ處分濟ミニナッテ居ルコトデアルカラシテ、今
日ノ場合ニアッテハ、議會ガ是ニ承諾ヲ與ヘル、將來ニ於テハ斯樣ナコトハ決シテセ
ヌト云フ、卽チ內閣ノ答辯モアルコトデアルカラ、斯樣ナ事ト云フノハ以前ノデハアリマ
セヌガ、立憲的ノ許ス限リノ處置ナレバ、必ズ議會ヲ召集シテ協賛ヲ受ケルト云フコトノ
答辯モアルコトデアリマスカラシテ、今日ニ在ッテハ、此勅令ニ承諾ヲ與フルヲ機宜ノ穩當
ノコトデアラウト斯ウ認メマシタ結果トシテ、承諾ヲ與フベシト云フコトニ決議致シタ次
第デアリマス、報告書ニ於キマシテ、將來ヲ戒メト云フコトガ書イテアリマスガ、是ハ唯
漫然承諾ヲ與フベシトナッタンデアリマセヌカラ、以上ノ意味ヲ以テ委員長ハツイ是ニ記
載スルコトニナッタンデアリマス、左樣ニドウゾ御了承ヲ請ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=9
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010・杉田定一
○議長(杉田定一君) 關直彥君
〔關直彥君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=10
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011・關直彦
○關直彥君 諸君、私ハ本問題ニ付キマシテハ反對ノ意見ヲ申述べタイト考ヘマス、卽
チ明治三十八年勅令第百四十九號、百九十四號、三億外債募集ノ件ニ付キマシテハ
承諾ヲ與フベカラズ、帝國議會ハ承諾ヲ與フベカラズト云フコトノ趣旨ヲ申述ベタイト存ジ
マス、木問題ノ如キハ頗ル議會ニ取リマシテ重大ナ問題デゴザイマス、一方ニハ國民ヲシ
テ三億圓ノ負擔ヲ爲サシメ一方デ吾〓ガ根本トシテ貴重セナケレバナラヌトコロノ憲法ヲ
蹂〓シタト云フ結果デゴザイマスルカラシテ、實ニ吾ミハ是ヲ輕視スルコトノ出來ナイ問題デ
アル、併ナガラ此當ムベキハ此違憲ノ處置ヲサレマシタトコロノ內閣ハ、既ニ今日ハゴザイマセ
ヌノデ、若シ前內閣ガ存續シテアリマシタナラバ、此問題ノ如キモノハ實ニ當議會中ノ一
大問題トシテ、或ハ當議院ノ運命ヲ賭シタカモ知レヌ位ノ問題ダト思ヒマス、併ナガラ
今日ハ既ニ其當局者ガ更迭サレマシタカラ、如何トモ致方ハゴザイマセヌガ、吾ミハ憲法
ニ依ッテ與ヘラレタルトコロノ權能ニ依ッテ、卽チ帝國議會ノ權能ヲ發揮スルガタメニハド
ウシテモ此問題ニ對シテハ承諾ヲ與フベカラズト云フコトノ決議ヲ致サンケレバナラヌト
信ジマス、右申シマスル如ク、重大問題デハゴザイマスルガ理由ハ極ク簡單デ、實ニ明々
白々タル理由デゴザイマシテ、滿堂諸君ハ悉ク御贊成デアラウト考ヘマス、憲法ニ本
勅令ハ、其勅令ニモゴザイマスル通-說明ニモゴザイマス通、憲法ノ第七十條ニ依ッテ
發布サレタモノデアルト云フコトヲ記載サレテアリマスルガ、憲法ノ第七十條ハ諸君モ御承
知ノ通實ニ明カナル條文デアリマシテ、少シモ疑義モ容レルコトガナイノデアル、卽チ其條
交ニハ何ト書イテアルカト言ヒマスレバ「内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集スルコ
ト能ハサルノトキ」トアリマス、卽チ政府ハ帝國議會ヲ召集スルニ不能ナルトキデアル、或
ハ內亂ガアリマシテ、議會ヲ召集スルコトガ出來ヌト云フ場合デアルトカ、或ハ敵國ノ封
銷或ハ其他ノ關係ヨリシマシテ、到底議會ガ召集ガ出來ナイト云フ場合デアルカ、或
ハ又議院解散ノ後ニ未ダ選舉ガ行ハレズシテ、議員ガ出來テ居ナイト云フ場合デアルカ、
斯ル內外ノ情勢ニ於テ、到底帝國議會ヲ開クコトノ出來ナイト云フ場合ニ於キマシテ、
緊急必要ノ場合ニ迫ッタトキニハ、已ムヲ得ズ勅令ヲ以テ財政上ノ處分ヲスルト云フコ
トヲ明文ニ明カニ書イテアリマス、デ本勅令ヲ政府ガ發セラレタ當時ノ狀況ハドウデアッタ
カト云フトコロヲ見テ見マスレバ、既ニ五月ノ日本海ノ海戰モ終リマシタ後デアリマシテ、
國内ハ至ッテ平穩無事デアル、又吾ミニハ如何ニシテ居ッタカト云ヒマスルト、諸君ト共
ニ殆ド無事ニ苦ンデ居ッタノデアル、加之此三億圓ノ公債ヲ募集スル議ノアルト云フコト
ヲ聞キマシテカラ、我敬愛スルトコロノ政友會ノ領袖竝ニ吾〓ノ先輩ガ各〓其黨ヲ代表
シテ前內閣總理大臣ニ向ッテ度〓催促ヲ致シタノデアリマス、斯樣ナル重大ノ問題ヲ決ス
ルニハ、Fウシテモ帝國議會ノ協贊ヲ經ネバナラヌデハナイカ、早ク議會ヲ開クベシト云フコ
トハ再三催促ヲ致シマシタニモ拘ラズ、前內閣ハ議會ヲ召集セズシテ、面シテ三億圓ノ外
債ヲ緊急勅令デ以テ募集シテシマッタト云フ事實ノ有樣デアリマシタ、サウシテ見マスルト
云フト、其時ノ狀況ハ徹頭徹尾議會ヲ召集スルニ不能デアッタト云フ事實ハナイノデアリ
マト、議會ヲ召集スルニ不能デアッタト云フ事實ガナイニモ拘ラズ、三億圓ノ負擔ヲ國民
ニ被ラセルベキ重大ナル事柄ハ諸君ニ諮ラズシテ-帝國議會ニ諮ラズシテ、緊急勅令
ヲ以テ臨時ノ處分ヲ爲シタト云フコトハ、憲法蹂〓ノ最モ重大ナル責ヲ負ハナケレバナラ
ヌト信ジマス、而シテ政府ノ答辯ハ如何デアルカ、過日ノ委員會ノ速記錄ヲ讀ミマ
スト、大藏大臣ハ之ニ向ッテ唯今元田君ノ報告サレタ如ク、公債ヲ募集スルニハ夏
季ニ迫ッテ資本家ガ避暑旅行ニ往ク時節ニ迫ッテ居ルカラシテ早ク相談ヲ極メナクッチヤ
ナラヌ、ソレニハ議會ヲ召集スル間合ガナカック、ト斯ウ云フコトヲ云ハレル、是ハ諸君ノ御
承諾ノ出來ルコトデアリマセウカ、資本家ガ避暑旅行ニ往カナケレバナラヌト云フ時節ニ
迫ッタカラト云フ如キ理由ヲ以テ、斯ル重大ナル處分ヲシテ宜イモノデアラウカドウカ、固
ヨリ金ノ要ルト云フコトハ知レ切ッタ話シデアル、何故ニ政府ハモット早ク此計畫ヲ立テナ
カッタノデアルカ、モチット早ク此計畫ヲ立ッテ置イテ、三億圓ノ公債ヲ募ランケレバナラヌト
云フコトヲ決定サレタナラバ、十分帝國議會ヲ召集スルノ餘裕ガアッタノデアリマス、決シ
テ七月ニ迫クテ、資本家ガ避暑旅行ノ間際ニ相談シナケレバナラヌト云フコトガナカッタノ
デアル、全體前政府ノ前內閣ノヤリ方ト云フモノハデス、誠ニ申シニクイ譯デハアリ
マスルガ、無計畫無算當ノヤリ方デアルト信ジテ居ル、凡ソ國運ヲ賭シテ、國ノ存亡ヲ賭
シテ、世界ノ一大强國ト爭フニ方リマシテハ、豫メドレ位ノ目的ヲ達スルニハ、ドレ位ノ
設計ヲシナケレバナラヌ、ドレ位ノ金ガ要ルデアラウ、ドコマデ往カナケレバ終局ガ出來ナイ
デアラウト云フコトハ、豫メ計畫ガ立ッテ居ナケレバナラヌノデアリマス、又之ニ要スルトコロノ
費用ニ關シマシテモ、凡ツ是ダケノモノハ要ル、是ダケノモノハ要ルカラシテ、是ハドコデ借
リル、ドコデ租稅ヲ取ルト云フコトノ計畫ハ十年計畫ニアラズトモ、少クトモ一年二年前
マデノ計畫ヲ立ッテ置カナケレバナラヌノデアル、然ルニ前內閣ノヤリ方ハドウデアッタカ、諸
君モ御承知ノ通リ遼陽ガ陷落スレバ、最早此軍サガ片付クデアラウト云フヤウナ、淺薄ナ
考ヲ持ッテ居ッタ、遼陽ガ落チマシテモ軍ハ濟ミマセヌ、急ニ兒玉大將ガ歸ッテ計畫ヲ
立テ直シテ、金ノ算段ヲ仕直シテ、サウシテ又前線ニ進ムト云フヤウナコトヲヤッタデハアリ
マセヌカ、ソレナラバ此次ハドウスル、奉天ガ落チタナラバ、モウ宜カラウ、奉天マデノ計畫
シカシナカッタノデアル、奉天ガ落チマシテモ未ダ軍ガ熄マナイ、是カラ前キハドウスルト云
フ計畫ハ立タナカッタノデアリマス、奉天ガ落チマシテ、俄ニ狼狽ヲシマシテ、狼狽ヲシテ、是
カラ哈爾賓ニ往カナケレバナラヌ、哈爾賓ニ往クニハ、ドレ位ノ兵隊ヲ增サナケレバナラヌ、
ドレ位ノ金ヲ掛ケナケレバナラヌ、遼陽ガ落チテ計畫ガ一變シ、金ノ算段ヲシテ、奉天ガ落
チテ計畫ガ一變シ、又金ノ算段ヲシ直シ(「無用々々」ト呼フ者アリ)無用デハアリマセヌ、
斯フ云フヤウナ無計畫無算當デアリマスカラシテ、急ニ金ガ要ッテ來テ仕方ガナイ、相談
ニ往ク資本家ガ旅行ヲスル、已ムヲ得ヌカラシテ、憲法ヲ蹂〓シテモ帝國議會ニ諮ラズ
シテ、三億圓ノ公債ヲ募ラナケレバナラヌ、斯ウ云フヤウナコトニナリ至ッテアリマス(「仕
方ガナイ」ト呼フ者アリ)決シテ仕方ガナイノデハナイ、初メカラ計畫シテアレバ仕方ハ澤山
アルノデアル、繹々トシテ餘裕ガアッタノデアル(「ソレダカラ仕方ガナイ」ト呼フ者アリ)局外
者タル吾〓モドウデアラウカ、計畫ハ不十分デハアルマイカ、金ガ足リナイデハアルマイカト、
局ニ當ラナイ吾〓デモ心配シテ居ッタ、諸君モ御心配ナスッタノデアル、ソレデ前ヨリシテ
計畫ヲ立ッテ置キマスレバ、決シテ狼狽ヲシテ、斯ル勅令ヲ發シテ憲法ヲ蹂躙シナクッテモ
宜カッタンデアラウト吾ミハ信ジマス、又議會ヲ開クノニ日子ガ掛ルト云フコトデアリマス
ガ、臨時議會ヲ召集シマシテ四十日デナクシテ、二十何日デ召集シタ先例モアリマスカ
ラ若シ緊急必要デアルナラバ、緊急議會ヲ召集スル期間ヲ短クシテ、決議ヲスルコトモ
出來タデアラウト信ジテ居リマス、ソレカラ又一ツニハ三億圓ノ募債ハ重大ナルコトデアル
ガ畢竟己ムヲ得ナイ軍事費デアルカラ、仕方ガナイデハナイカト云フ御說モアリマス、無
論デアリマス、私共モ若シ當時議會ガ開カレタナラバ、三億圓ノ募債ニ對シテハ滿場一
致デ決議ヲシタカモ知レヌ、必ズシタデアラウト信ジマス、併ナガラ一度斯樣ナ惡例ヲ開
キマシテ、後ニ至ッテ仕方ガナイト云ッテ、承諾ヲ唯々トシテ與ヘルヤウナ例ヲ開キマシタナ
ラバ、他日若シ如何ナル內閣ガ如何ナル不當ノ處分ヲ致シマシテモ、濟ンダコトハ仕方
ガナイト云ッテ之ヲ恕セナケレバナラヌ、故ニ本案ノ憲法第七十條ノ適用ダケハ已ムヲ得
ズ嚴重ニ之ヲ守ラナケレバナラヌト信ジマス、ソレカラ大藏大臣ノ答辯ヲ聞イテ見マスト
云フト、將來ハドウナルカト云ヘバ、大藏大臣ハ明言サレマシテ、將來ハ洪シテ斯樣ナコ
トハシナイト言ハレタ、又元田委員長ノ問ニ對シマシテ、此際議會ヲ召集スル餘地ガナ
カッタカト云フコトヲ玆デ斷言スルコトガ出來ルカト云フ問ニ對シテ、ソレハドウモ困リマス
ト云フコトヲ大藏大臣ハ言ッテ居ル、ソレカラ御答ガ出來ルカ、御答ガ出來レバ宜シイ
ト、又再ビ問ヲ發シマスルト、ソレハ出來マセヌト云フ御答ニナッテ居リマス、サウシテ見マ
スルト云フト、現大藏大臣モ前內閣ノ三十八年七月八日ニヤッタ仕事ハ卽チ憲法ニ違
反シタモノデアルト云フコトヲ大藏大臣ハ明言シテ居ル、ソレカラ其時ニ議會ヲ召集スル
暇ガアッタカナカッタト云フコトニ對シテ、ソレハドウカ分ラヌ、シッカリ御答ガ聽キタイト云
ハ、困リマスト云フ、サウシテ見ルト現大藏大臣ハ前大藏大臣ノヤック事柄ハ違憲デア
ル、又議會ヲ召集スル暇ガアッタト云フコトハ、自白サレテ居ル、シテ見マスレバ現大藏
大臣モ吾ミガ本問題ニ對シテ承諾ヲ與フベカラズト云フコトノ意見ニ全然御贊成デアル
ト私ハ信ジテ疑ハヌノデアリマス、固ヨリ斯ル明々白々タル問題ハ申スマデモナク憲法
論ノ一番最初ノ頁ニ書イテアリマスコトデ、現大藏大臣モ二十年ノ昔ハ吾ミト同ジ本ヲ
讀ンデ、同ジ〓師ニ就イテ習ハレタコトデアル、若シ是ガイケナイド云フコトデアルナラバ、
失禮ナガラ落第デアッタカモ知レナイノデアル、ソレカラ反對論者ガ斯ウ言ハレマスガ、大藏
大臣ハ將來斯ルコトヲセヌト云フカラ、マア宜イヂヤアナイカ、ダカラシテ承諾ヲ與ヘテ置イ
テモ宜イデハナイカト云フコトヲ言ハレマスガ、大藏大臣ガ明言サレマシタカラト云ッテ、ソ
レデ以テ憲法ヲ左右スルコトハ出來ナイノデアル、加之大藏大臣ノ明言ト云フモノハ
甚ダ失禮デハアルガ、ドウモ當テニナラナイノデアル、彼モ一時之モ一時ト云フコトガ、大
藏大臣代々ノ是ガ十八番テアリマスルカラシテ、決シテ大藏大臣ノ明言ト云フモノハ當
テニナラヌノデアリマス、加之唯今申シマシタ通リ大藏大臣ノ證言ニ依ヲテ、憲法ノ明
條ヲ左右スルコトハ出來マセヌカラシテ、吾ミハ憲法ノ明條ニ從ッテ、議會ノ權能ヲ
發揮シテ、明カニ惡ルイコトハ惡ルイ、過ギタコトハ過ギタコトデモ、惡ルイコトハ惡ルイ、
承諾ヲ與フベカラザル原則ノモノナラバ、承諾ヲ與フベカラズト決議スルノガ、本來ノ正
則デアラウト信ジマス、惜ムラクハ、惜ムラクハ先程モ申シマシタ如ク此違憲ノ仕事ヲシタ
トコロノ內閣ハ今日ハ無イノデアリマスガ、若シ前內閣デアリマシタナラバ、吾ミノ畏敬スル
トコロノ反對黨-デハアリマセヌ、友黨ノ領袖タル原君、若クハ松田君ヨリ致シマシ
テ、吾〓ト同一ノ趣旨ノ御演說ヲ拜聽スルコトガ出來ダラウト思フ、如何セン今日ハ其
時機ヲ失シテヲリマスカラシテ、共ニ提携ヲシテ大々活動ヲスルコトガ出來ナイノハ、甚ダ
遺憾デアリマスガ、併シ御論旨ニ於キマシテハ昨年ノ六月七月頃ニ伺ヒマシタトコロノ御
論旨ト、今日トハ少シモ御變リガナイト考ヘマスカラシテ、私ガ斯ウ申シマスル趣旨ニ對シ
マシテハ、全黨舉ヲテ御贊成デアラウト信ジマス、此內閣ガ諸君ノ掩護セラルヽトコロノ內
閣ガ提出シマシタル此案デアルカラト云フガタメニ、其御附合デ承諾ヲシテモ宜イヂヤナイ
カト云フニハ及バヌノデ、決シテ今日ノ內閣ニハ累ヲ及ボサヌ問題デアリマスカラシテ、議
會ハ議會ノ權能ヲ以テ惡ルイコトハ惡ルイ、承諾ヲ與フベカラザルモノハ承諾ヲ與フベカラ
ズト、御決議ニナルコトガ、最モ正當デアラウト信ジマス、右ノ理由ヲ以チマシテ本問題
ハ本勅令ハ承諾ヲ與フベカラズト云フコトニ御贊成ヲ願ヒタイ(拍手起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=11
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012・杉田定一
○議長(杉田定一君) 長晴登君
〔長晴登君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=12
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013・長晴登
○長晴登君 私ハ明治三十八年勅令第百九十四號ニ對シテハ承諾ヲ與フベシト主
張スル論旨デゴザイマス、一體此問題ハ論者モ言ハルヽガ如ク公債募集ニ關スルコトデ
ゴザイマシテ、其當時前內閣ガ臨時議會ヲ召集シテ遺レバ宜カッタト云フコトニ付イテ
ハ、反對論者ト共ニ其事實ニ於テハ贊同ヲ表スル次第デゴザイマス、ケレドモ今日ニ
至ッテ此勅令其モノニ對シテ、吾ミガ承諾ヲスルカセヌカト云フコトニナッテ來レバ、ーメン
事實ト法律的ノ考ト、此二ツカラ割出シテ見レバ、ドウシテモ承諾ヲ與ヘンケレバナラヌ
ト云フコトニ信ズルノデゴザイマス、固ヨリ前內閣ガ臨時議會ヲ召集セズシテ、サウシテ斯
ウ云フコトヲ遣ッタト云フコトハ、卽チ委員長ヨリノ報告ニモアルガ如ク、募債ノ話ガ進ンデ
急場ニ迫ッテ議會召集ノ猶豫ガナクナッタト云フコトハ、不注意ニ相違ナイケレドモ、是
ハ一ツノ政治問題ニシテ、卽チ其時ノ事情ノ問題デアッテ、是等ノ事情ノ問題、政治
問題ハ其當局者ノ居ルト居ラザルニ依ッテハ、是ハ違ッタ問題デアルノデアル、反對論者
ノ御頭ノ大石君ノ如キモ度〓言ハレルガ如ク(笑聲起ル)卽チ內閣ガ辭職スレバ責任ノ
解除デアルト云フコトヲ言ハレテ居ルノデアルカラ、私ハ此議論ダケニハ最モ贊成ヲ表ス
ル、而シテ此事情論ト政治問題ニ付イテハ今日ハ論セヌ積リデアルノデアリマス、而シテ
此事實ニ對シテドウナッテ居ルカト云ヘバ三億万ノ外債募集ヲ其當時臨時議會ヲ開
イタラ贊成スルモノデアッタト云フコトハ、關君モ言ハレル通リ、此モノニ對シテ何ンノ嫌モ
ナク、又何ノ反對論者モナイノデアル、唯之ヲ遣ッタ手續ガイカヌト云フコトデゴザイマス
ケレドモ、手續ハ內閣ノ辭職ト共ニ其人ノ責ガナクナッタノデアルカラシテ、今日アルトコ
ロノモノハ唯公債募集ト云フ事實ダケデアル、此事實ニ對シテ承諾ヲ與ヘヌト云フヤウナ
コトハ、甚タ違ッタル御意見ト言ハナケレバナラヌノデアル、併ナガラ反對論者ハ殊ニ關直
彥君ノ如キモノハ、是ハ憲法第七十條ニ依ル處分デアルカラ、別ニ不承諾ニシテ關係ハ
ナイト云フコトヲ言ハルヽケレドモ、關君ハ遺憾ナガラ憲法ノ第八條ニ對シテ論及セズシ
テ居ラレタト云フコトハ、私ハ其意ヲ得ヌノデアル、政府ノ書イタ如ク第八條第七十條
ニ依ッテ提案シタルモノデ、今日ト雖モ此關係ハアルノデアル、第七十條ノ財政ノ處分ト
云フコトハ、此處分ハ其條文ニ依ッテ結了セヌケレバナラヌモノデアル、將來ニ於テ豫算
以外ニ於テノ契約若クハ法律ニ依ッテ責任ヲ負ハンケレバ、將來ニ於テ必ズ關係ノ無イ
ト云フコトハ明カデアッテ、將來政府ガ義務ヲ負ウテ、ソレヲ其對者ニ對シテ盡スト云フコ
トハ、必ズ法律ニ依ルトコロノモノカ若クハ豫算外ノ契約ニ依ッテソレ等ノ方法ヲセンケレ
バナラヌト云フコトハ、從來ノ遣り來リニ依ッテ明カナコトデアル、總テノ公債ハ必ズ法律
ト云フ根據、茲ニ籍ヲ置イテ、其籍カラ割出シテ來ルモノデアッテ、必ズ一時ノ處分ヲ以
テ公債募集ノ關係及其還債ノ方法ガ極マルモノデハナカラウト私ハ信ズルノデゴザイマ
ス、而シテ是ガ法律ニ依ッテ遺ラネバナラヌト云フコトハ、卽チ此勅令ノ第百九十四號ヨリ
シテ湧出デタルトコロノモノガ、ドウ云フモノガ湧キ出テテ居ルカト云ヘバ、同ジク勅令第百
九十五號ニ於テ、卽チ明治三十八年勅令第百九十四號ニ依リ、英國倫敦、北米合
衆國紐育及獨逸ニ於テ募集スル公債ニ關スルノガ、此勅令ニ依ッテ利率及還債ノ方法
〓ニ抵當、ソレ等ノモノガ極メラレテ居ル、百九十四號ニ依ッテハ卽チ法律第十二號ニ
依ッテソレ等ノ募集ノ手續等ヲ極メテ居ル、斯ノ如ク遣リ來ッタモノデアルカラシテ、若シ
此勅令ニ承諾ヲ與ヘヌト云フコトニナレバ、將來ニ向ッテ卽チ第八條ニ依ッテ、此法律ノ効
力ヲ失ハセンケレバナラヌノデアル、若シ之ヲ失ハシムルト云フコトニナッタ日ニハ、此等ノ
保障ニ對シテ、卽チ憲法第六十七條ニ據ッテ將來議會ガ隨意ノ決議ヲナストカ、或ハ削
除等ノコトヲスルコトガ出來ルト云フコトニナッテ、既定ノ保障ガ取レテシマフノデアル、此保
障ヲ存續スルニハ此法律ト云フコトノ根抵ヲ以テ、ソレカラ湧出テ居ル所ノモノデナケレ
バナラヌ、若シ之ニ對シテ承諾ヲ與ヘズ、將來ニ效力ヲ失ハセタナラバ、此三億万圓ノ外
債ハ無籍者ニナッテシマフノデアル(「ノウノ」ト呼フ者アリ)知ラヌノダ、君等ハ知ラヌノ
ダ、或ハ諸君ハ此公債ノ募集ハ募集ト共ニ義務ヲ負ウタルモノデアルカラシテ、ソレダケ
ノ義務ガアルト云ウコトヲ以テ言言ルルヽカモ知レヌガ、是ハ當リ前ノ話デアル、義務ヲ負ウ
テ居ルカラト云ウテモ、ソレ等ノコトヲ形式ニ現ハシテ完全ノモノトシナケレバナラヌコトハ、
國ノ體面トシテ必要デアル、ソレダケノ必要ガアル以上ハ、之ヲ廢スレバソレダケノ不都合
ヲ生ズルノデアル、承諾ヲ與ヘヌケレバ-承諾ヲ與フレバ首尾完全シテ居ルカラシテ、
今日ニ於テハ唯諸君ハ感情ニ走リ、前內閣ト云フ幽靈ヲ摑ンデ、サウシテ今小言ヲ言フ
ヨリモ、寧口冷カニ明カナル頭ヲ以テ、此案其物ニ對シテ、サウシテ承諾ヲ與ヘルト云フ
コトハ、將來保障上必要ノコトデアルト云フコトヲ御覺リニナッテ、速ニ御贊同ニナックラ
甚ダ都合ガ好カラウト云フコトヲ御勸告申シマス
〔花井卓藏君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=13
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014・花井卓藏
○花井卓藏君 諸君、私ハ此問題ニ對シマシテ關君ト同樣ノ意見ヲ述ブルモノデゴザイ
マス、問題ニ入ルニ先ダテ一事ノ最モ注意ヲ請ハナケレバナラヌ大ナル問題ガアルノデゴ
ザイマス、卽チ委員長元田肇君ノ名ニ於テ報告セラレテゴザイマスル報告書ヲ御一覽ヲ願
ヒタイト思フノデアル「明治三十八年勅令第百九十四號右ハ本院ニ於テ將來ヲ警告シ
承諾フ與フヘキモノト議決致候此段及報告候也委員長元田肇」ト斯ウ書イテアル元
田肇君「ソレハ御斷リラ致シマシタ」ト呼フ)御斷リガアタカ、ナカッタカ存ジマセヌガ、免ニ角
式ニ適ヒタル報告書ニ將來ヲ警告シテ承諾ヲ與フベキモノデアルト云フ報告ガ、吾〓ニ通
達セラレタト云フノハ事實デアル、敢テ元田君ヲ咎メルノデハゴザイマセヌ私ハ-又委
員會ニ於キマシテモ確カニ長君ノ御發議ニ依リマシテ、將來ヲ警告ヲシテ、而シテ承諾ヲ
與フベキモノデアルト云フコトニナリマシテ、多數デハゴザイマシタガ、僅カニ一名ノ多數ヲ
以テ表決セラレタト云フ事柄ハ事實デアルノデアル、ソコデ私ハ此報告ニ關シテ疑ヲ懷ク
ノデアル、、將來ヲ警告シテ承諾ヲ與フルト云フコトハ、如何ナル意味ノモノデアラウカ、事後
承諾ヲ求メル勅令案ト云フモノハ警告スベキ將來ナルモノハ常ニナイノデアル(「ヒヤ〓〓」
ト呼フ者アリ)事後承諾ヲ求メル勅令案ニ最モ必要ナルモノハ警告スベキ既往ニ係ルノ
デアル、警告スベキ既往アッテ、而シテ警告スベキ將來ナシト云フコトハ、憲法ニ於ケル緊
急勅令事後承諾ノ本義デゴザイマスル、有名ナル憲法學者長晴登君ハ(笑聲起ル)諸
君ハ憲法ヲ知ラナイト云フコトヲ申サレマシタノデゴザイマスルガ、長君ガ憲法ヲ解セラル
ルガ如キ憲法ハ私ハ知ラナイノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フモノアリ)又憲法ノ條章ヲ如何
ニ繰返シテ讀ミマシテモ、警告スベキ將來ノアルト云フコトハ如何ニシテモ發見スルコトハ
出來ナイ、何レノ國ニカ有ルカト存ジマシテ、各國ノ憲法ヲ調査致シマシタガ一ツモナイ
ノデアル、併ナガラ憲法ノ條規ヲ無視シタ先例ハ議院ニ隨分ゴザイマスル、ガラシテ、先
例ニ斯ノ如キモノモアルヤ否ヤヲ調査シマシタガ、幸ニ先例ガ一ツモナイノデアル、果シテ然ラ
バ是ハ長式ノ憲法解釋デアヲテ、帝國憲法ノ本義デハナイト信ジマスル、宜ナル哉堂タタル
政友會法律家ヲ以テ充滿シタル中ニ於テ、一種異樣ノ論デアリマスルカラシテ、已ム
ヲ得ズ承諾スルノデアル、餘義ナク承諾ヲスルノデアリマスカラ、變體ノ長式憲法論ノ此
案ニ出ヅルノヲ怪マヌノデゴザイマス、是ハ先ヅ其報告書ニ就イテ私ハ申上ゲテ置クノ
テゴザイマスガ、大體此問題ニ對シマシテハ深ク御審究ヲ願ヒタイト思ヒマス、元田君其
他ノ諸君ノ御意見モ私ノ意見ト異ナル所ハ、確カニナイノデアリマスル、異ナル所ハナイ
ノデゴザイマスルカラシテ、仝〓一應ノ御審究ヲ私ハ煩ハシタイト思フノデゴザイマス、將來ヲ
警告スト云フノハ言葉ノ上デゴザイマス、固ヨリ今日以後ト雖モ斯ノ如キ事柄ガアッテハ
相成ラヌト云フ用意ハ含マレテ居ルニ相違ゴザイマセヌ、斯ノ如キ緊急勅令ト云フモノハ
憲法ノ條規ニ戾ルガ故ニ、將來ヲ愼マナケレバナラヌト云フ主意ノ含蓄セラレテ居ルト云
フコトハ、爭ヒハナイノデアリマスル、承諾ヲ與フベシ承諾ヲ與フベカラズトスレバ足リルノ
デアルノニ、殊更ニ將來ヲ警告スト云フ文字ヲ加ヘラレマシタル點ニ依ッテモ、元田君抔ハ
此勅令案ノ不都合デアルト云フ事柄ヲ看取セラレテアルト云フコトノ能キ證據ト相成ル
ノデアラウト私ハ思ヒマス、而シテ全體此將來ノ警告ヲ受クル者ハ誰デゴザイマセウカ、將
來ノ警告ヲ受クルモノハ現内閣デゴザイマセウカ、長君ノ申サレタ如ク現內闇ニハ責任
ハナイノデアリマス、更ニ責任ハナイノデアル、將來ヲ警告スルト云ヘバ其警告ヲ受クル
モノハ現內閣ナラザルヲ得ヌデハゴザイマセヌカ、既往ヲ警告スルト云ヘハ其責任ハ前內
閣ノ責任ト云フコトニ相成ルノデハゴザイマセヌカ、然ラバ何ガ故ニ既往ヲ警戒シテ承諾
ヲ與フベキモノトスト云フコトノ御表決ニナラナカッタノデゴザイマスカ、飛ンデモナイ責任ヲ
現內閣ガ此報告ニ依ッテ嫁セラレタモノト言ハナケレバナラヌト思フ、殊ニ況ヤ斯ノ如キ理
由ヲ附スルノ報告ト云フモノガ、憲法議院法ノ要求セルトコロデアルデアラウカ、承諾不承
諾ト云フダケガ問題テ、表決ノ最後ノ主眼デゴザイマシテ、ソレニ理由ヲ付シテ將來ヲ警告
スルトカ、或ハ既往ヲ警告スルトカ云フ如キ條件ヲ附シテ、此表決ヲセラレタトコロデ、内
閣ハ謹ンデ此報告通リニ受取ルデゴザイマセウカ、受取ラヌデゴザイマセウカ、是憲法
竝ニ先例ノ上ニ於テ深ク攻究ヲ要スベキ問題デアラウト私ハ考ヘマスル、憲法第六十
二條第三項ニ依リマスレバ「國債ヲ起シ及豫算ニ定メタルモノヲ除クノ外國庫ノ負擔
トナルヘキ契約ヲナスハ帝國議會ノ協賛ヲ經ヘシ」斯ウ書イテアル、何等ノ除外例ヲモ
認メラレテ居リマセヌ、財政協贊ノ權利ハ立法協贊ノ權利ト共ニ帝國議會ノ有スル二
大權利デアル、或ハ行政監督ノ權利モゴザイマスガ、財政立法ノ協賛ノ權利程大ナル
モノハナイノデアリマス、法律ヲ編立テル必ズ議會ノ協賛ヲ經ナケレバナラヌ財政ノ處分
ヲスル、必ズ議會ノ協賛ヲ經ナケレバナラヌト云フヨトハ、憲法ノ條章ニ歷然ト揭ゲテア
ル、財政ト法律ト共ニ倶ニ相俟ッテ憲政ノ目的ヲ達セシムルノデゴザイマシテ、而シテ此財
政ノ權ナク立法ノ權微リセバ憲法上議會ノ有スル權能ト云フモノハ、全ク絕無ニ相成
ルノデゴザイマス、ツレ故ニ如何ナル場合ニ於テモ議會ニ諮ウテ決行スベキモノト理解ヲセ
ナケレバナラヌト云フコトハ憲法ノ常ニ要求スルトコロデゴザイマス、併ナガラ帝國議會ハ
常ニ開ケテ居リマセヌ、議會ノ開ケテ居リマセヌ場合ニハ、如何樣ナル處分ヲ取ルベキカ
ト申シマスレバ、帝國憲法ハ第四十三條ヲ以テ臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テハ臨時
會ヲ召集スルコトヲ得ト云フコトヲ規定セラレテアル、叉憲法第四十二條ニ於テ帝國議會
ノ常會ハ三箇月ト定メラレテアル、併ナガラ此九十日ノ會期終ッテ臨時緊急ノ必要アッ
テ、立法財政ノ事柄ニ關シテ議會召集ノ必要ヲ感ジタル場合ニ於テハ、何時ニテモ臨
時議會ヲ開キ得ベキコトハ出來ルコトニ規定セラレテ居ルノデアル、本案ニ於キマシテ何
ガ故ニ六月十四日ヨリ七月八日マデノ間ニ於テ臨時議會ノ奏請ヲ前內閣ハシナカツタ
ノデゴザイマセウカ、當然ニ憲法ノ要求スル通リニ臨時議會開會ノ奏請ヲシナケレバナラ
ヌ責任ヲ持ッテ居ルノデアル、然ルニ其責任ヲ盡サズシテ、恣ニ緊急勅令ニ依テテ大大
ナル財政ノ處分ヲナスト云フコトハ、明カニ憲法ノ條規ニ背キ、議會ノ有スル二大協贊權
ヲ侵害シタルモノト言ハザルヲ得ヌト考ヘマス、然ルニ前政府ハ-前內閣ハ此臨時議
會ヲ開クト云フ條規ヲマルデ眼中ニ見ルコトナクシテ、此條文ノアルコトヲ殊更ニ忘レ
テ殊更ニ忘レテ而シテ憲法第七十條ヲ適用シタト云フコトハ大ナル間違ヒデアル、憲法
第七十條ノ問題ニ付イテハ關君ノ論盡セリ重ネテ多クヲ申シマセヌ、併ナガラ七十條ニ
揭ゲラレテゴザイマスル文字ハ「公共ノ安全ヲ保持スルタメ緊急ノ需用アル場合ニ於テハ
內外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必
要ノ處分ヲ爲スコトヲ得」ト揭ゲラレテアル、卽チ內外ノ情形ガ如何ニシテモ帝國議會
ヲ召集スルコトヲ許サヌガ如キ場合ノミニ限ッテ居ル、關君ガ引例セラルヽ如ク、或ハ東
京市中ガ內亂デ議會ヲ開クコト能ハズ、議會解散セラレテ召集スベキ議員ナシト云フ場
合デアル、而シテ召集セントシテ召集スルコトノ不能ノ場合ニノミ第七十條ノ規定ノ適
用ガ出來ルノデアル、憲法義解ノ著者タル伊藤侯ハ第七十條ノ適用ハ常ニ國家不
群ノコトアル時デアルト言明シテ居ルノデアル、國家ニ不祥不吉ノコトガ無ケレバ第七十
條ノ適用ハ生ズルモノデナイト云フコトヲ明言シテ居ルノデアリマス、本案ニ於キマシテ明
治三十八年六月十四日ヨリ七月八日ノ間ニ於テ、斯ノ如キ狀態ニ帝國ハアリシモノデ
ゴザイマセウカ、議院ヲ召集スルコトハ到底不能ノ有樣ニアリシモノデゴザイマセウカ、當
時財政ノ問題ニ關シテモ、外交ノ問題ニ關シテモ、臨時議會ノ要求ハ頻々トシテ起リ、
前政府ハ又其要求ニ應ズバキ旨ヲモ言明シテ居ルノデアル、臨時議會ノ召集ハ不能
デナク、却テ召集ヲ强請シテ居ッタト云フ情勢デアッタノデアル、然ルニ殊更ニ第七十條
ヲ適用スルト云フコトハ何ノ理由何ノ條規ニ基イタノデゴザイマセウカ、憲法ノ條規議院
ノ權能ト云フモノヲ全ク無視スルニアラズンバ、斯ノ如キ行動ハ取レヌ筈デアラウト思フノ
デアリマス、此〓ニ於キマシテ第七十條ノ適用ハ甚ダ不都合千萬デアルト云フコトヲ諒
セラレンコトヲ望ムノデアリマス、然ルニ委員會ニ於キマシテ政府ガ此案ニ對スル辯明ト
云フモノガ二ツゴザイマシテ、此二ツノ論ト云フモノハ稍〓論論ヲ買フニ足ルノデアル、長君
ノ憲法論ハ此俗論ヨリ湧出タモノデゴザイマス、政府者ノ辯明ニ依レバ、元來外債募集
ノコトハ祕密アアルコトハ祕密ヲ尙ブノデアル、故ニ之ヲ議會ニ公表スルコトヲ憚ツタノデ
アル、斯樣ナ意味ニ說明ガアッタノデアル、固ヨリ斯ノ如キ事柄ハ祕密ニ依ッテ或場合ニ
成效スルト云フコトハ、本員モ認メマス、併ナガラ財政協賛ノ權利ハ議會ガ持ッテ居ルノ
デアルカラ、元來議會ニ祕密ニスベキ筈ノモノデナイ、元來財政ニセヨ、立法ニセヨ、政府
ノスベキ仕事ト心得テ居ルノガ間違デアル、立法財政ノ協贊ノ權利ハ、議院特有ノ權利
デアッテ、政府ハ之ヲ發案シ、之ヲ執行スルニ外ナラヌノデアル可決セラレタル吾ミノ法
案ヲ法律ニシテ、サウシテ世ノ中ニ行フ一種ノ執達吏ガ政府デアル(笑聲起ル)政府ハ
憲法政治ノ上ニ於テハ重キヲ爲スモノデハアリマセヌ、議會ガ決議ヲ爲シテ之ヲ取次イデ
實行ノ任ニ當ルノガ政府デアル、議院ニ祕スベキ祕密ト云フモノハナイ、政府ガ議會ニ
向ッテ祕密デアルト云フコトハ、憲法政治ノ上ニ何處ニアルノデアル、然レドモ議會自ラガ
秘密ニセナケレバナラヌト云フコトヲ。感ジマシタ場合ニハ、矢張憲法第四十八條ノ規定
ニ基イテ、其院ノ決議ニ依ッテ祕密會ト爲スコトガ出來ルノデアル、臨時議會ヲ開イテ、此
勅令ヲ討議ニ付シテ是ガ祕密ヲ要スベキモノナレバ、議院自カラノ權能ニ基イテ第四十
八條ノ規定ニ基イテ之ヲ祕密ニスルコトハ毫モ差支ナイデハアリマセヌカ、議院ニ議密ニ
シテ財政協賛ノ權利ヲ侵蝕スル如キコトアリトスレバ、是コソ憲法ノ危機ト言ハナケレバ
ナラヌノデアル、故ニ祕密ト云フコトハ理由ニハ相成ラヌト思フノデアリマス、第二ニバ
政府ハ今之ニ承諾ヲ與ヘラレヌト云フ場合ニ相成シテハ、國ノ信用ニ關スルト云フコトヲ
言ハレルノデアルガ、國ノ信用ニハ毫モ關セヌノデアリマス、何レノ國ニ於テモ斯ノ如キ
場合ハイクラモアル、憲法第七十條ニ依ヲテ外債ヲ起シ、帝國議會ガ承諾ヲ與ヘズトモ、
契約上ノ責任ハ政府ガ帶ヒナケレバナラヌ、無論外債ノ義務ト云フモノハ政府ニアルノ
デアリマスカラ、日本帝國ニアルノデアリマスカラ、承諾ヲ與ヘナカッタ場合ニハ、外債ノ
義務ガ無責任ニナルト云フヤウナ長君ノ論ハ誠ニ無責任者ノ論ト言ハナケレバナラヌ、憲
法上無籍者ノ論ト言ハナケレバナラヌ、憲法ノ條規ヲ繰返シテ讀ンデ見マシタトコロ
デ、第七十條ニ依ッテ政府ガ責任ヲ帶ビタル以上ハ帝國議會ガ承諾ヲ與ヘナイ、ツレガタ
メニ其債務ト云フモノガ消滅スルト云フコトガ何處ニ一體書イテアルノデゴザイマスカ、或人
ハ憲法第八條ト云フモノヲモ對照シテ讀マナケレバナラヌト云フコトヲ言ハレタ、勿論憲法
第八條ト云フモノヲ對照シテ讀ンデ居ルノデアル、憲法第七十條及第八條ニ依ッテ、此
緊急勅令ガ發セラレタカラト云ッテ之ヲ以テ第八條ニ所謂法律ニ代ルベキ命令ノミノ案
デアルモノト御考ニナルト云フノハ、大ナル憲法ノ解釋ヲ誤ラレテ居ルモノト言ハナケレバ
ナラヌノデアル、憲法第七十條ハ財政ノ緊急處分ハ帝國議會ノ協贊ヲ經ルニアラザ
レバ決行スルコトハ出來ナイケレドモ、議會召集不能ノ場合ニ於テハ、之ヲ許スト規定
シテ居ル、偖テ許サレタ曉ニ於テ、如何ニ之ヲ運用スルカト云ッタナラバ、矢張國債ヲ募
ルコトデアルカラ、法律ノ形式ニ俟タナケレバナラヌ、是ニ於テカ憲法第八條ヲ應用スルノ
必要ガ超ツテ來ル、卽チ第七十條ト同時ニ之ヲ執行スル方法トシテ、必然的來ルベキ第八
條デアッテ、兩立シテ列ベテ文字ガ書イテアルカラト云ッテ、第八條ノ條規ニ基イテ是ハ
提出セラレタモノデアルト解スルハ、憲法ヲ知ルノデアル、サウ致シマシテタメニ將來ニ效ヲ
失フモノトシ、從ッテ憲法上ノ責任ガナクナルト云フニ至ッテハ言語道斷ノ沙汰デアル、併
ナガラ是ハ長君ノミノ論デナイ、當日委員會ニ於テハ大藏大臣モ此事ヲ言ハレタノデア
ル、私ハ犬藏大臣ニ向ッテ、斯ノ如キ解釋ヲ御執リニナッタナラバ、君トハ共ニ憲法ヲ語
ルニ足ラヌト言ック、今日モ語ルニ足ラヌニ相違ナイケレドモ、誰ニ聽イタッテ、ソンナ愚ナ意
見ヲ吐クモノハアリハシナイ、大藏大臣モ役所ニ歸ッテ參事官アタリニ御聽キニナッタ
ナラバ、ソレハアナタガ間違デゴザイマシタト言ハレタニ相違ナイト思フ、若シ斯ノ如キ
解釋ガ憲法ノ條規ニ於テ許スベキモノトシタナラバ、第七十條ハ全ク空文ニ歸シテシマフ
ノデアル、全ク無用ニ歸シテシマフノデアル、憲法第八條サヘ存シテ置ケバ、第七十條ハ
全然削シテ差支ナイデハゴザイマセヌカ、然ルニ斯ノ如キ違法ヲ敢テスル前內閣ノ處分ヲ
警告セズシテ、卽チ既往ヲ警告セズシテ、何ノ關係モナキ現内閣ニ對シ將來ヲ警告スルト
ハ、抑何事デゴザイマスカ、將來警告云々ト云フコトハ至員會ノ大問題トナッテ、大層
御得意ノヤウデゴザイマシタガ、其當時カラ私ハ流石ハ元田君デアル、將來ヲ警告スルー
案ハ面白クナイ、承諾ヲ與フベキモノデナイ、併ナガラ承諾ヲ與ヘヌト書クノモ、警告シテー承
諾ヲ與ハヘ書トノモ、表裏ノ差デアッテ、歸スルトコロハ承諾ヲ與ヘルト云フ趣意ニ認メ
ラレタモノト考ヘ、流石ニ巧妙ニヤラレタモノデアルト、私ハ今日ニ於テハ敬服シテ居ルノ
デス、サウ云フ次第デアリマスカラ、此案ニ付キマシテハ篤ト御審究ヲ願ヒタイト私ハ思フ
ノデアリマス、又國ノ信用云々ノ問題ニ關シマシテハ、二ツノ事實ニ於テ私ハ攻擊スルコト
ガ出來ルト思フ、元來此外債ノ信用ト云フモノハ、事後ノ處分ヲ善クスレバ博シ得ラル
ルノデアル、金ヲ借リタノデアルカラ、利息ヲ嚴重ニ拂ッテ、元金ヲ嚴重ニ拂フ方針サヘ
立テテ居レバ、信用ガ得ラレルノデアル、帝國議會ガ承諾ヲ與ヘナイカラ信用ガガラリトナ
クナル筋ノモノデハナイト況ヤ募債後ノ今日デアル信用ハ募債當時ニアルベキモノデ、募ッ
タ後ニハ別ノ信用ガ要ルノデアル、元利取揃ヘテ速ニ返スト云フノガ信用ヲ保持スル所
以デハアリマセヌカ、殊ニ況ヤ減債基金法ト云フモノガ出來マシテ、是ノミニ依ッテ信用
ヲ保テルト言明セラルヽ舌根未ダ乾カザルニ、之ニ承諾ヲ與ヘナケレバ信用ガ得ラ
レナイト云フコトニナリマスト、此減債基金ノ御趣意上矛盾シテ居リハシナイカト云フ
虞ヲ私ハ抱イテ居ルノデアル、決シテ信用ハ墜サヌノデアル、憲法ノ常道ニ戾ッテ承諾ヲ
與ヘナイ、流石ニ立憲國デアル、併ナガラ今日ノ始末ヲ見ロ、立派ニ拂ヲテ居ル、是ニ於
テ信用ヲ保チ得ラルヽノデアリマスカラ、大藏太臣ノ信用論ハ更ニ何等ノ價ヲ持タヌト
思フノデアリマス、終リニ大藏大臣ハ委員會ニ於テノ演說ニ、原則トシテハ臨時議會ヲ
開カナケレバナラヌモノデアルト云フ事柄ヲ斷言致シマシタ、又議會ニ諮ラネバナラヌト云
フコトハ、當然ノコトデアッテ、サウシナケレバナラヌ筈ノモノト、政府ハ固ク信ジテ居リマス
ト言明シマシタ、是ハ明カニ此處置ガ違憲デアルト云フコトヲ自白シタモノデアル、違憲
デナイナラバ、當然臨時議會ヲ開カナケレバナラヌ、是非サウシナケレバナラヌモノト心得ル
抔ト言ヘル譯ガナイ、言葉ヲ換ヘテ云ヘバ、現內閣ハ此處置ハ違憲デゴザイマスト明言
シテ、大藏大臣ハ進ンデ不承諾ヲ要求シテ居ルノデアル、元田君ハ將來ヲ警告シテ承諾
ヲ與ヘル-宜クナイカラ是カラハ相成ラヌゾト云フ、一大痛捧ヲ喰ハシテ、承諾ヲ與ヘ
ル、是ハ或意味ニ於テ承諾セヌト云フ事柄ガ含マレテ居ル、唯言葉ノ違ヒデアル我ミ
ノハ露骨ニ承講ヲ與フベカラズト云フノデアル、大藏大臣、元田君ハ巧妙ニ承諾ヲ與
ヘヌト云フ趣意ヲ文字ニ婉曲ニ現サレタノデアリマスカラ、論ハ一ニ相成ルコトデアラウト
私ハ信ジマス、殊ニ斯ノ如キ事柄ハ將來ニ於テモ長ク先例ニ相成ルノデゴザイマスカラシ
テ。私ハ將來ヲ警告スル趣意ハ、卽チ此所ニ於テ不承諾ノ先例ヲ作ルニ在リト云フ趣
意ナリト固ク解釋スルノデゴザイマス、實ニ帝國議會ト云フモノガ重大ナル二ツノ權利ヲ
持ッテ居リナガラ、立法ノコトニ關シテハ、憲法第八條ニ基イテ、緊急勅令ヲ利用シ、議
院ニ付スレバ、ソレデ宜イト承諾スル財政ノ問題ニ付イテハ、憲法第七十條ニ依ッテ政
府隨意ニ之ヲ害用シ、議院ニ付スレバ承諾ヲ與ヘル-當分ノ間委任狀ヲ政府ニ渡
シテ憲法八條七十條ト云フ權限ヲ附加ヘテ、サウシテ議會ト云フモノハ當分休會ヲシテ
宜シイト云フヤウナ事柄ヲ我ミガ政府ニ向ッテ示スト云フ事柄ハ、帝國議會ノ權称ヲ重
ズル所以ノ趣意デハナイト、私ハ確信致シマス決シテ憲法政治ノ美側デハナイト信ズ
ル、斯ノ如キコトヲ屢〓スルカラ、政府ガ卽チ議會ト云フモノヲ侮ルノデアラウト思フノデ
アル、自ラ侮シテ人之ヲ侮ルノデアル況ヤ本業ノ如キハ更ニ何等ノ餘地ヲモ在セヌ明白
ナル問題デアル故ニ大藏大臣ガ自ラ進ンデ其非違ヲ自白致シマシタ、乃チ臨時議會
ニ諮ラナケレバナラヌモノデアル、ソレガ當然ノコトデアルト云ッタノデアル、又元田君ノ言
ハルヽガ如ク、全體斯樣ナ事柄デアッテハ、相濟ムベキモノデハナイノデアル、又長君ノ演誌
セラルヽ如ク憲法上ノ論ハ略~反對論者ト同一デアルト致シマスレバ、此三ツヲ綜合シテ
何レヨリ見テモ本員ノ演說ニ反對ノアルベキ筈ガナイ、現內閣ハ何等ノ責住ノ無イ聞
題デアル、現內閣ハ何等ノ迷惑ヲモ被ラヌ問題デアル、而シテ憲法ハ歡ンデ迎ヘル問題
デアル、此處分ヲ認メルト認メザルトハ前內閣ヲ重シト見ルカ、帝國憲法ヲ重シト見ルカ
ト云フ問題デアリマス、或政治家ト或政治家トノ鬪デハナイ、前內閣ト現內閣ノ鬪テハ
ナイ、憲法ト前內閣トノ鬪デアル、面シテ憲法ヲ負カシクト云ッテ、一體全體憲法議會ニ列ス
ル人々ノ顏ガ立ツモノデアリマスカ、私ハ今日ハ議員ノ一人トシテ登壇致シマシタケレドモ誠
憲法ノタメニ期ノ如キ不幸ノ境遇ニ陷リタルヲ悲ムモノデアル、故ニ憲法ノ辯護人トナッテ
憲法ノ擁護ヲ爲サンガタメニ此壇ニ立ッタノデアリマスカラ、根本君ノ所謂有名ナル議員
デハゴザイマセヌガ、憲法ノ代表者花井卓藏ト御覽ニナレバ、隨分貴イ身體デアリマスカ
ラ、其趣意ニ於テ御贊成アランコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=14
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015・杉田定一
○議長(杉田定一君) 森秀次君
〔森秀次君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=15
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016・森秀次
○森秀次君 私ハ簡單ニ一言ヲ致シマス、別ニ演說等ヲ致スノデハアリマセヌカラ、暫
ク御〓聽ヲ煩シマス、私ハ承諾ヲ與フベシト云フ意見デアリマス、此事柄ガ宜イカ惡ルイ
カト云フコトヲ先ヅ定メンケレバナラヌ、ソレカラ議會ヲ開ク餘地ガアッタカナカッタカト云フ
コトヲ先ヅ調ベンケレバナラヌ、若シ議會ヲ開ク餘裕ガナカッタトスレバ花井君ト雖モ、
關君ト雖モ、異議ハナイダラウト考ヘル、其議會ノ開ケナイト云フコトヲ舉ゲラレテ、列
國ニ封鎖セラレタル場合、ソレナラ何トカ言ッテ一二ニ舉ゲラレマシタガ、私ハ必シモサウ
云フ場合ノミニ限ラナイト考ヘルノデアリマス(「贔屓ノ引倒シニナリマス」「モウヨシタラ宜
カラウ」ト呼フ者アリ)ドウカ暫ク御聽キ下サイ、奉天戰ヲ終リマシデ、ソレカラ哈爾賓
ナリ浦鹽ニ大兵ヲ進メルト云フトキ、又一方ニ於キマシテハ講和條約ガ開始セラルルト
云フ場合デアリマス、國家ニ對シテハ非常ナル場合デアリマス、斯ノ如キ場合ハ年々歲
歲アルベキモノデハアリマセヌ(笑聲起ル「モウヨシタラ宜カラウ」ト呼フ者アリ)故ニ私ハ是ハ已
ムヲ得ナカッタモノデアルト思フノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)ソレカラ反對論者ハ斯ウ
云フ大問題デアル、憲法ノ擁護者デアル、今是ニ承諾ヲ與フレバ遂ニハ此權利ヲ失フガ
如クニ論ゼラルヽガ、衆議院ニ於キマシテハ此最上ノ權利ヲ與ヘラレテ居ル、之ヲ與ヘラ
レテ居ル以上ハ、是ノ適用モ又最モ愼重ニ致サンケレバナラヌノデアル、漫リニ之ヲ濫用ス
ルコトハ出來ナイノデアリマス、一度之ヲ與フレバ遂ニ此權利ヲ失フモノデハアリマセヌ、
花井君ハサウ云フ例ハナイト云フ御話デアリマシタガ、外債募集ノ例ハ存ジマセヌガ、斯
ノ如キコトハ幾多モアル(「無イミミ」ト呼フ者アリ)殊ニ昨年彼ノ百三十銀行問題ノ如
キ志士紛然ト囂々ト云ッタ問題デアリマスケレドモ、其時ニモ本會ハ戰時中ニ於テ是ハ己
ムヲ得ナイモノトシテ承諾ヲ與ヘタ例ガアルデハアリマセヌカ、(此時發言スル者多シ)マア
聽給ヘ、マア御聽下サイ、私ハサウ云フ法律家デアリマセヌカラ、法律論ノコトハ彼此
論ジテ諸君ノ御聽キニ達スル程ノ能力ヲ有シマセヌ(「違憲問題ダ」ト呼フ者アリ)然リナ
ガラ大體ニ於テ此事ヲ非認スレバ如何ナル效力ヲ生ズルカ、既ニ借リタ金ハ仕方ガナイ
デハアリマセヌカ(笑聲起ル)サウシテ是ハ害ガアリマス、之ヲ不承諾ヲ與フレバ害ガアリマ
ス、花井君ノ如キハ少シモ害ガナイト仰セラレマスガ、外國ノ不安、外國ノ資本家ニ對
シテ不安ヲ與フルノ虞ガアリマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)イエ、ノウ〓〓ヂヤナイ、チヨツ
トマア一例ヲ舉ゲマスレバ、玆ニ息子ガ金ヲ借リタ、親父ニ話シタトコロガ、親父ガ不承
諾ヲ唱ヘタ(笑聲起ル)ネ、サウスレバ免ニ角賃シタ金ハ問違ハナイ、貸借ノ契約ハ成立
ハシテ居ルニ相違ナイガ、貸方トシテハイクラカ不安ノ念ヲ懷クト云フコトハ、當然ノ譯デ
アル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)右ノ次第デアリマスカラ是ニ不承諾ヲ與ヘテ、何等效果
ガナイノミナラズ、イクラカ國ノ信用ニ關シ、外國人ヲシテ不安ノ念ヲ懷カシムルト云フ虞ガ
アルノデアリマスカラ、私ハ之ヲ承諾ヲ與フルコトニ致シタイト考ヘルノデアリマス
〔「討論終結」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=16
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017・杉田定一
○議長(杉田定一君) 討論終結ニ定規ノ贊成ガアルト認メマス、討論終結ニ御異議
ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=17
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018・杉田定一
○議長(杉田定一君) 御異議ハナイト認メマス、元田君ニチヨット御照會ヲ致シマス
ガ、元田君ノ前キノ御報告ニ依リマスト云フト、將來ヲ警告シト云フコトハ理由デア発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=18
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019・元田肇
○元田肇君 左樣デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=19
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020・杉田定一
○議長(杉田定一君) サスレバ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=20
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021・元田肇
○元田肇君 承諾ヲ與フベシト云フコトノ決ヲ御採リヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=21
-
022・杉田定一
○議長(杉田定一君) 承諾スルヤ否ヤト云フコトニ付イテ採決ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=22
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023・元田肇
○元田肇君 ソレデ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=23
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024・望月長夫
○望月長夫君 チヨット今ノ採決方法ニ付イテ御尋ヲ致シマスガ、サウナリマスト將來ヲ
警告シト云フコトハ議會ニ於テハ全ク存在シナイ事柄デアッテ、縱シ承諾ヲ與フト云ヘバ、
單純ニ承諾ヲ與ヘ、與ヘヌト云ヘバ、單純ニ承諾ヲ與ヘヌ、警告ト云フコトハ卽チ當議會
ニハ全ク存在シナイ事柄ニナルノデゴザイマスカ、卽チ其意味ニ於テ贊否ヲ決スルノデゴザ
イマスカ、明白ニ御答ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=24
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025・元田肇
○元田肇君 御答致シマスガ、委員會ニ於テ長君ノ發議ノ決ヲ採ッタ場合ニ、長君ニ
條件トスルノカト言ッタトキニ條件トスルノデハナイガ、大藏大臣ニ聞イタトコロガ、將來ハ
必ズ時期ノ許ス限リハ憲法ヲ遵守シテヤルト云フコトデ、是デ宜シイ、承諾ヲ與ヘルト云
フコトデ、其承諾ヲ與ヘルト云フコトニ付イテ決ヲ採ッテ可決致シタ、ソレヲ報告致シタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=25
-
026・望月長夫
○望月長夫君 ソレナラバ本議場ニ於テハ、將來ヲ警告スルト云フコトハ全然存在セ
ヌ、唯單純ニ承諾ヲ與ヘル、斯ウ云フ意味ニナル
〔「其通リ」「無論」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=26
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027・望月長夫
○望月長夫君 ツレナラバ斷然反對デアル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=27
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028・花井卓藏
○花井卓藏君 私ハ委員ノ一人トシテ御答ヲ致シマスルガ、委員會ニ於キマシテハ委
員長元田肇君將來ノ警告ヲ與ヘテ承諾ヲ與ヘルト云フ方ニ贊成ノ御方ハ手ヲ舉ゲ下
サイ、擧手者多數、三人多數デスカラ、與ヘルコトニナリマシタ、斯フナッタノデゴザイマス、
矢張報告書ニ書イテアル通リデス、報告書ニ揭ゲラレテアルコトガ、委員權限外デアル、委
員ニ付託シタルヨリ越權ノ處分ト云フコトナラバ、本員ハ是ニ於テ委員ニ再ビ還シテ、權
限內ニ於テ再審セラレンコトヲ望ミマス
〔「無用々々」「委員會ノ條件ヲ磨滅スルト云フコトガアリマスカ」「採決々々」ト呼フ
者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=28
-
029・望月長夫
○望月長夫君 採決前ニ質問ガアリマス、今一度委員長ニ質問致シタイ、今一度質
問ヲシテ確メテ置キタイト思フ(「無用々々」「採決々々」ト呼フ者アリ)無用デハナイ、斯樣
ナコトハ明カニシナイト······(此時發言スル者多ク、聽取スル能ハズ)委員會ノ決議ガ、唯
今委員ノ一人タル花井君ノ言ハレタ通リノ條件付ノ決議デアッタト致シマスレバ、委員
長元田君一人ノ了簡デ委員會ノ報告ヲ變更スル譯ニハ參ルマイト思フ、委員會ノ決
議ハ如何デアッタカト云フコトヲ明白ニ元田君ニ御確メヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=29
-
030・元田肇
○元田肇君 御答致シマス、議事錄ヲ讀ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=30
-
031・長晴登
○長晴登君 私ハ決議ニ對シテハ條件付ノ承諾ト云フコトハオカシイモノダラウト思
ヒマスカラ、決議ニ對シテハ條件ヲ付ケヌ、唯將來斯ウ云フコトハナカランコトヲ希望
スル、故ニ警〓ヲシテ其警告ニ當局者ガ應ジテ居ルカラ、ソレデ差支ナイト思フ
トアル
〔「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=31
-
032・花井卓藏
○花井卓藏君 最後ノ決議ヲ御覽ナサイ、最後ノ決議ヲ御覽ナサイ
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=32
-
033・元田肇
○元田肇君 御答致シマス、此發議ヲ採ッテデス、警告ト云フコトハ理由ノ長イコトヲ
言ッテ私ガ決ヲ採ヲテ承諾ヲ與ヘルコトニナッタノガ語呂ガ短クナッテ居ルカラ······(「朗讀
スベシ、朗讀スベシ」ト呼フ者アリ)ソレヨリ以上ノコトハ諸君ノ判斷ニ任セマス
〔「朗讀スベシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=33
-
034・杉田定一
○議長(杉田定一君) 靜ニ願ヒマス、採決ヲ致シマス
〔森田卓爾君「唯今ノハドウナッタノデアリマスカ」ト呼フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=34
-
035・杉田定一
○議長(杉田定一君) 靜ニ願ヒマス、ソレデ今其事ヲ申スノデアリマス、委員長元田
君ノ報告ニハ將來ヲ警告スト云フコトハ理由デアル、ソレデ採決ハ承諾ヲスルヤウヤ否ヤ
ト云フコトニ付イテ採決ヲシテ貰ヒタイ、斯ウ云フ委員長ノ報告デアリマスル、ソレデ委員
長ノ報告ニ依ッテ承諾スルヤ否ヤト云フコトニ付イテ採決ヲ致シマス、偖テ其採決ノ方法
ニ付イテ、玆ニ要求ガアリマス、記名投票ヲ以テ採決シテ貫ヒタイト云フ要求ガゴザイマス
ルデ、記名投票ヲ以テ採決ヲ致シマス、ソコデ承諾ヲスベシト云フ御方ハ白イ札ヲ御持參
ニナルヤウニ、承諾ヲシナイト云フ御方ハ靑イ札ヲ御持參ニナルヤウニ願ヒマス-閉鎖
〔書記氏名ヲ〓呼ス〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=35
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036・杉田定一
○議長(杉田定一君) 投票漏ハアリマセヌカ-投票漏ハアリマセヌ-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=36
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037・杉田定一
○議長(杉田定一君) 投票ノ結果ヲ書記官長ヨリ報告致シマス
〔林田書記官長朗讀〕
出席總員二百九十九
可トスル者百七十七
否トスル者百二十二
〔參照〕
〔本案贊成者氏名〕
嶺山時善君改野耕三君奧野工藤善
長谷場純孝君福島勝太郞君橫井南大本店管原
信平傳助傳
野田卯太郞君江原素六君磯部四郞君植場君君君君
多田作兵衞君松本孫右衞門君恆松中林友
松浦五兵衞君山崎良純君谷本章義繁隆三造慶靑柳信五郞君
毛里保太郞君內山吉太君粕山大岡育造君
安藤信太郞君佐藤虎次郞君君君君君君君宮
古啓三郞君
栗塚省吾君島津民俗称立池新池川田井平貞吾森本駿君
大井ト新君雲惟
築山和一君矢島中
南條吉左衞門君瀧口吉良君松田吉三郞君向坂
籾木卿太郞君長谷部倉藏君鳥海哲四郞君瀨下秀夫弘君君君君
長谷川豐吉君鳥海哲四郞君瀨下秀夫君長谷川豐吉
村松愛藏君宮本嘉樂君永島龜代司君北村左吉君
〓 〓直植木元太郞君由布惟義君石川〓君
漆前島元彰化助理 學習君君君林小君小澤愛次郞君澤田寧君
昌根本正參君奧繁三郞君武內美代吉君
西山中西光三郞君阿部德三郞君中西六三郞君
古井由之君橫井甚四郞君濱名信平君景山甚右衞門君
武滿義雄君柚木慶二君宮井茂九郞君藤井牧太君
石谷傳四郞君大畑純次君大淵龍太郞君淺羽靖君
栗原宣太郞君武藤金吉君城重雄君三井忠藏君
渡邊修君久保伊一郞君須藤嘉吉君河上英君
鈴木摠兵衞君片山正中君矢島浦太郞君
五郞君野豌豆腐大戶石塚年年君佐藤里治君
經大典型電力寺井總統一覽零售茂
川原東建店美森生君
佐助君荻森秀次君藤金作君禰龍彥君
竹田千代足君野芳藏君佐々友房君持田若佐君
藻寄鐵五郞君丹尾賴馬君本出保太郞君山根正
岡井藤之丞君雄倉茂次郞君安達謙君君君君
-永見寛二君橫山田中彥吉藏次
虎一君定
正和君中澤楠彌太君淺野順平君山本幸
藤珪君中村〓一郞君楠目玄君兼松凞君
井一一信次關信之介君牧野逸馬君谷澤藏君
口小君君君湯山壽介君奧村善右衞門君駒林廣龍運君
七小山石齋
河源橫田虎彥君關根柳介君坂元英俊君
〓介君岡田治衞武君東左右君三輪猶作君
渡邊敬昌君武市庫太君鳥山敬神戶松之輔君
二部君
村野常右衞門君柳田藤吉君山森天野藤三君
江藤哲藏君中村雄藏君牧野元君古賀庸藏君
大野久次君伊藤傳右衞門君三輪條件計山本悌二郞君
長晴登君林小一郞君遠藤良吉君蘆田 鹿之助君
木暮武太夫君宮崎榮治君海野謙次郞君久保彥太郞君
竹越與三郞君征矢野半彌君三浦盛德君河原林義雄君
遊田〓吉君中倉万次郞君栗原亮一君吉植庄一郞君
元田肇君上埜彌一郞君福岡精一君西村專太郞君
〔本案反對者氏名〕
久雄君辻寛君靑地雄太郞君濱田國松君
樹樹大 大人大學 大火退藏君福井三郞君萩野左門君佐治幸平君
左チ即日三輪信次郞君荒谷桂吉君田村惟昌君
小林仲次君首藤陸三君鳩山和夫君脇榮太郞君
柴四朗君森田卓爾君高木龍藏君山田平太郞君
平岡浩太郞君米田武八郞君堀田連太郞君木下謙次郞君
金子元三郞君神崎東藏君犬養毅君川眞田德三郞君
竹村良貞君入江武一郞君松本大吉君內藤利八君
江藤新作君小田貫一君大石正己君金岡又左衞門君
植本久太郞君齋藤宇一郞君西村丹治郞君佐藤庫喜君
箕浦勝人君石田貫之助君武富時敏君關口安太郞君
大竹貫一君板倉中君松井源內君神藤オ一君
高橋勝七君早速整爾君宮島暢夫君河野廣中君
國谷亨君淺野陽吉君加瀨禧逸君花井卓藏君
佐々木正藏君澤來太郞君愛澤寧堅君鈴木久次郞君
中西新作君石田仁太郞君山口達太郞君藤澤幾之輔君
河井重藏君尾形兵太郞君齋藤勘七君井上要君
久保田與四郞君市田兵七君小田文行君合田福太郞君
澤田耕治郞君川島瀧藏君井手武右衞門君木村格之輔君
村松龜一郞君望月長夫君竹內正志君藤崎朋之君
安島重三郞君米田實君根津嘉一郞君〓水隆德君
菊池武德君管澤重雄君安念次左衞門君須見千次郞君
天野董平君佐藤伊助君肥塚龍君菊池九郞君
淺見竹太郞君大津淳一郞君星松三郞君關野善次郞君
加藤政之助君安田勳君關春茂君平島松尾君
大石熊吉君朝倉鐵藏君波多野傳三郞君野木善三郞君
井上精一郞君濱口擔君田寺敬信君星野仙藏君
由口熊野君東尾平太郞君高橋全治君近江谷榮次君
鹿島秀麿君角田眞平君關直彥君大熊三之助君
梅野初實君飯島省三郞君國井庫君鞍谷〓愼君
木村半兵衞君野上嘉平君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=37
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038・杉田定一
○議長(杉田定一君) 本案ハ是ニテ承諾ヲ與ヘルト云フコトニ決シマシテゴザイマス、
日程第四屯田兵土地給與規則中改正法律案第一讀會ニ移リマス、議案ノ朗讀ハ省
略致シマス、中西六三郞君
第四屯田兵土地給與規則中改正法律案(中西六三第一讀會
郞君外六名提出)
屯田兵土地給與規則中改正法律案
屯田兵土地給與規則中左ノ通改正ス
第二條第二項ヲ左ノ如ク改ム
屯田兵村ノ公有財產ハ屯田兵條例廢止ノ日ニ於ケル其ノ兵村各戶主ノ共
有財產ニ歸屬ス
第四條削除
第五條中「沒收ス」ノ下ニ所有者ノ移轉シタルトキ亦同シ」ヲ加フ
第六條削除
第七條削除
〔中西六三郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=38
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039・中西六三郎
○中西六三郞君 本員ハ屯田兵土地給與規則中改正法律案提出者ノ一人トシ
テ、提案ノ理由ヲ說明致シマス、屯田兵土地給與規則ト申シマスルハ、明治廿三年ノ
制定ニ係ル法律デゴザリマシテ、爾來歲月ノ經過ト共ニ多クノ改廢ヲ致ス必要ガ到來
致シタンデゴザリマスル、第一ニ同規則中ニアリマスル公有財產ニ關スル規定ノ不完全
ナルヲ見出シタノデゴザリマスル、第二ニハ屯田兵給與地ノ賣買禁止ガ實際ニ不都合デ
アルト云フコトヲ發見致スヤウニナリマシタ、其他二三ノ箇條ニ於テ、之ニ伴ッテ改廢ヲ
スルコトノ必要ニ到來致シタタメニ、本案ヲ提出シタノデゴザイマスル、其屯田兵村ノ公有
財產ト申シマスルハ、給與地規則中ニ於テ屯田兵二百五十戶ヲ以テ兵村トスル、其二
百五十戶ノ兵村ニ對シテ、未開地ヲ給與シテ、公有財產トスルト云フコトニナッテ居リ
マスル、サウシテ是マデ各兵村ニ於テ既ニ其公有財產ノ交付ヲ受ケテ居リマスルケレド
モ、其規則ニ屯田兵村ト云フモノガ無クナッタ場合ニ於テハ、此公有財產ガ何者ニ歸
屬スルカト云フコトノ規定ヲ缺イテ居リマスル、然ルニ此規則ノ後ニ於キマシテ、屯田兵
ガ豫備後備ノ年限ヲ終ッタ者ガ出來テ參リマシタシ、又一昨年-明治三十七年ニ
於テ、屯田兵條例ガ廢止ニナリマシタガタメニ從ッテ總テノ兵村ノ組織ノ分子ト云フモノ
ガ、今日ニハ無クナリマシタカラシテ、所謂屯田兵村ト云フ一ノ兵村ハ、今日ニ於テ存
在ヲ認メルコトガ出來ナクナッタノデアリマスル、サスレバ此兵村ト云フモノヽ是マデ所有シ
テ居ッタ公有財產ハ、將來何者ノ所有ニナルカト云フコトガ、新ナル法友ヲ待タナケレバ
ナラヌト云フコトニナッテ參リマシタ、而シテ此公有財產ヲ當初設定致シマシタトキノ目的
及其爾來屯田兵ガ自己ノ勞力及資產ニ於テ、開墾ヲシタト云フ由來、竝ニ最近ノ戰
役ニ從事シタト云フ事柄ノ結果ニ於テ、此公有財產ヲ其生計ノタメニ要スルト云フ極
メテ必要ナル時機ニ到來シタト云フコトノタメニ、此度兵村ノ廢止ト共ニ是等ノ公有財
產ハ其兵村ノ各共有ノ間ニ公有財產ニスルト云フ事柄ガ、誠ニ必要ヲ感ズル次第ト
ナッタンデゴザイマスル、卽チ本法ノ第二條ノ改正ヲ求メマスルノハ、此理由ニ基クノデア
リマス、次ニ屯田兵各戶ニ給與シタトコロノ給與地ト云フモノガアリマシテ、其給與地ト
云フモノハ、恰モ華族ノ世襲財產ノ如ク、賣買讓與質入書入ガ禁止サレテ居ルノデゴ
ザイマス、然ルニ御案內ノ通リ屯田兵ハ別ニ財產ヲ有スルコトナク、此給與サレタル土
地ヲ自己ノ財產トスルガタメニ北海道ニ移住シタモノデゴザリマスカラシテ、其唯一ノ財
產ガ賣買讓與卽チ融通ガ禁ゼラレテ居ルト云フト、何事ヲ企テルニ於テモ一切資金ガ
無イト云フ困難ノ狀態デアル、故ニ法律ニ於テハ賣買讓與ガ禁止サレテ居ル、其半面
ニ於テハ永小作權ノ登記ヲ爲シ、或ハ賣買ノ假登記等ヲ爲シテ、實際ハ此給與地ト
云フモノ大半ガ、既ニ他人ノ權利ニ移ッテ居ルノデゴザイマス、是ハ其給與地ヲ持ッテ居
ル兵員ガ、扶助料ガナイカラ斯樣ナルコトヲ致スノカト云フト決シテサウデハナイ、其生活
ヲ維持スル上ニ於テ、斯ノ如キ窮屈ナル方法ニ依ッテナリトモ資金ヲ得ナケレバ、自ラヲ
支ヘルコトガ出來ヌノデゴザリマス、然ルニ既ニ斯樣ナ法律ガ半面ニ於テ工夫ヲシテ資金
ヲ作ルノデゴザリマスカラシテ、眞實ノ價ノ殆ド半バノモノヨリ代償ヲ得ルコトガ出來ナイ、
一万圓ノモノニ對シテ五千圓ノ金シカ得ラレヌト云フヤウナ狀態デゴザリマシテ、此屯田
兵ヲ保護スル目的ニ於テ出來タ、禁止法ハ偶〓屯田兵ヲ驅ッテ不經濟貧困ニ陷レルト
云フ結果ヲ現ハシタノデゴザリマスカラシテ、今日旣ニ屯田兵條例ガ廢止トナッテ、其兵
員ニ對スル別段ノ拘束ヲ加フル必要ノナイ時代ニ到來シタト云フコトハ、最早給與地ニ
對シテノ賣買ハ、自由ニ許シテ相當ナル經濟的利用ノ途ヲ開クト云フコトハ、誠ニ彼等
ノタメニ必要デゴザリマス、獨リ是ガ兵員各個ノタメニ必要ト申スバカリデナイ公有財
產ト給與地トヲ通ジテ見マスルト、北海道ニ於テ二億五千万坪ノ多大ナ地積デゴザイ
マシテ、是等ノ地積ガ經濟的ニ應用サレルト否トハ北海道ノ開拓ニ付イテ重大ナル問
題デゴザイマスカラ、卽チ本員ハ此土地ヲ自由ニサスルト云フコトニ於テ、北海道ノ繁榮
ガ一段ヲ加フルノデアラウト信ジテ、第四條卽チ賣買禁止ノ法案ヲ削除スルト云フコト
ノ提案ヲ致シタノデゴザイマスル、其他第五條ノ改正及第六條、第七條ノ削除ハ唯今
申シタル改廢ノ結果トシテ當然爲スベキコトデゴザイマスカラ、別段ニ說明ヲスル必要モ
ゴザリマセヌ、右樣ノ次第デアリマスカラシテ、十分ニ御審索ノ上ニ此改廢ノ目的ノ達ス
ル如ク、御贊同ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=39
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040・元田肇
○元田肇君 是ハ委員ニ附託シテ、十分ニ審査ヲサセタイト考ヘマス、就キマシテハ此
委員ノ數ハ九名ニシテ、議長ニ於テ指名アランコトヲ·····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=40
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041・杉田定一
○議長(杉田定一君) 元田君發議ノ如ク九名ノ委員ヲ議長指名ニシテ、御異議ハ
アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=41
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042・杉田定一
○議長(杉田定一君) 御異議ハナイト認メマス-日程第五醫師法案第一讀會ニ
移リマス、議案ノ朗讀ハ省略致シマス、山根正次君
第五醫師法案(山根正次君提出)第一讀會
醫師法案
醫師法
第一條醫師クラムトスル者ハ左ノ資格ヲ有シ內務大臣ノ免許ヲ受クルコ
トヲ要ス
帝國大學醫科大學及醫學專門學校醫學科ヲ卒業シタル者
二外國醫學校ノ卒業證書ヲ有シ文部大臣ノ選任シタル委員ニ於テ前號
ノ卒業者ト同等以上ノ學力アリト檢定シタル者
第二條左ニ揭クル者ハ免許ヲ受クルコトヲ得ス
ー重罪ヲ犯シタル者但シ國事犯ニシテ復權レタルトキハ此ノ限ニ在ラ
ス
二公權停止中ノ者
三未成年者、禁治產者、心神耗弱者、聾者、啞者及盲者
第三條重禁錮ニ該ルヘキ僞造罪、僞證罪、賄賂罪、堕胎罪、竊盜罪、詐欺取
財罪、費消罪又ハ贓物ニ關スル罪ヲ犯シタル者ニハ免許ヲ與ヘサルコト
アル八〇
第四條內務省ニ醫籍ヲ備ヘ醫師ノ氏名、住所ヲ登錄ス
第五條醫師ハ自ラ診察セスシテ診斷證、處方箋等ヲ與ヘ又ハ治療ヲ爲ス
コトヲ得ス
第六條醫師ハ特ニ帳簿ヲ備ヘ患者ノ氏名、年齡、住所竝病名、療法等ヲ記
載スヘシ
前項ノ帳簿ハ五年間之ヲ保存スヘシ
第七條醫師ハ其ノ技能ヲ誇稱シテ盧僞ノ公〓ヲ爲シ又ハ祕密療法ヲ有ス
ル旨ヲ公〓スルコトヲ得ス
第八條道府縣ニ住所ヲ有スル醫師ハ醫師會ヲ設立スヘシ
醫師會ニ關スル規程ハ內務大臣之ヲ定ム
第九條醫師會ハ醫事衞生ニ關シ主務大臣若ハ地方長官ノ諮問ニ應シ又ハ
建議ヲ爲スコトヲ得
第十條醫師タルノ免許ヲ受ケタル者第二條各號ノ一ニ該當スルトキハ內
務大臣ハ其ノ免許ヲ取消スヘシ
第三條ニ該當スルトキハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メ醫業ヲ停止ス
ルコトアルヘシ
前項ノ取消處分ヲ受ケタル者ト雖再免許ヲ與フルコトヲ得
醫師刑法第二百十五條、第二百十六條、第二百四十一條、第二百四十三條、
第二百四十四條、第三百七條、第三百四十六條、第三百四十七條、第三百六
十條又ハ傳染病豫防法第三十條ヲ犯シタルトキハ期間ヲ定メ醫業ヲ停止
スルコトアルヘシ
第十一條前條第二項以下ニ規定シタル免許ノ取消、再免許又ハ醫業ノ停
止ヲ爲サムトスルトキハ內務大臣ハ之ヲ其ノ醫師ノ住所ヲ有スル地ノ醫
師會ニ諮問スヘシ
第十二條第五條又ハ第六條ニ違背シタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十三條第七條ニ違背シタル者、停止中醫業ヲ爲シタル者又ハ免許ヲ受
ケスシテ醫業ヲ爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條本法ノ行政處分ニ對シテハ訴願又ハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ
得
附則
第十五條本法ハ明治三十九年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十六條第一條第二號ノ檢定ニ關スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十七條本法施行前ノ醫術開業免狀ハ本法施行ノ後ト雖其ノ效力ヲ有ス
第十八條齒科醫ニハ本法ノ規定ヲ適用セス
第十九條本法施行後十年間醫術開業試驗規則ニ依リ施行スル醫術開業試
驗ニ及第シタル者ハ醫師タルノ免許ヲ受クルコトヲ得
第二十條醫師免許規則ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
〔山根正次君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=42
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043・山根正次
○山根正次君 諸君、私ハ醫師法案ヲ提出シテ置キマシタガ、此明治十六年十月二
十二日太政官布告三十二一號ヲ以テ發令セラレマシタル現行醫師免許規則ナルモノハ、
今日ノ時勢ニ伴ハヌカラ、私ハ此醫師法案ヲ提出シタノデアリマスル、此事ニ付キマシテ
ハ此次ニ出ルトコロノ議案モ醫師法案デゴザイマスルガ、同ジ委員ニ付託サレマシテ、之
ニ依ッテ御討究ニナリマシテ宜シキニ依ッテ、御決議ニナッテ、ドウカ此醫師法案ノ成立ツ
ヤウニ御盡力ヲ願ヒタイノデゴザリマス、簡單ニ申上ゲマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=43
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044・加瀬禧逸
○加瀨禧逸君 山根君ニ質問シタイ
(「無用々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=44
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045・杉田定一
○議長(杉田定一君) 質問デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=45
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046・加瀬禧逸
○加瀨禧逸君 質問デアリマス、此法案ニ依リマスルト云フト、此醫術開業試驗ト云フ
コトハ全然廢スルト云フコトニナリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=46
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047・山根正次
○山根正次君 從來ニ於テハ此ノ如キ方法ニ依ッテ拵ヘルトコロノ醫者ハナイヤウニナ
ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=47
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048・加瀬禧逸
○加瀨禧逸君 サウ致シマスト唯今ノ御述ベニナリマシタ御趣意及此法案提出ノ理
由書ヲ見マスト云フト、醫師業務ハ人ノ生命ヲ支配スルトコロノ大事ナ職ヲ持ッテ居ル
ノデアルカラ、成ルベク良イ醫者ヲ求メタイト云フ御趣意ノヤウニ伺ッタガ、此試驗ヲ廢ス
ルト云フコトハ、恐ラク矛盾シハシナイカト考ヘル、現今デモ藪醫者ガ澤山出ルノニ、無
闇矢鱈ニ學校ヲ出タ者ニ許スト云フモ宜シクアルマイト思フ、之ニ付キマシテ却テ試驗ヲ
受サセル方ガイケナイト云フ、モウ少シ判明ニ御說明ヲ願ヒタイ
〔「委員會デ質問セヨ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=48
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049・加瀬禧逸
○加瀨禧逸君 私ハ委員デゴザイマセヌ故ニ
〔「委員ニナルンダ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=49
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050・山根正次
○山根正次君 必要ガアリマスルナラ述ベマスガ、如何デゴザイマス
(「無用々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=50
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051・元田肇
○元田肇君 是ハ唯今モ發議者ガ申サレマスルヤウニ、人ノ生命ニ關スル大事ナ法案
デアルト云フコトデアリマス、ドウカ十八名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望ミ、而シテ之ハ議
長ニ於テ指名ニナルコトデアリマスカラ、唯今ノヤウニ重要ナル質問ヲスル御方等ノ如キ
ハ、委員中ニ加ヘラレンコトヲ····
〔笑聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=51
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052・杉田定一
○議長(杉田定一君) 元田君ノ發議ノ通リ十八名ノ委員議長指名ニ御異議ハゴザ
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=52
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053・杉田定一
○議長(杉田定一君) 御異議ハナイト認メマスー-日程第六、醫師法案ノ第一讀
會ニ移リマス、議案ノ朗讀ハ省略致シマス
第六醫師法案(靑柳信五郞君外三名提出)第一讀會
醫師法案
醫師法
第一條醫師ハ帝國大學醫科大學及官立、公立若ハ私立醫學專門學校ヲ卒
業シタル者ナルコトヲ要ス
第二條外國醫學校ノ卒業證書ヲ有スル者ニ付テハ特ニ委員ヲシテ前條ノ
卒業者ト同等以上ノ學力ヲ有スルヤ否ヲ檢定セシム其ノ委員ハ文部大臣
之ヲ選任ス
前項ノ檢定ニ關スル細則ハ委員之ヲ定ム
第三條醫師クラムトスル者ハ內務大臣ノ免許ヲ受クヘシ
第四條左ニ揭ケタル者ハ免許ヲ受クルコトヲ得ス
一重罪ヲ犯シタル者但シ國事犯ニシテ復權シタルトキハ此ノ限ニ在ラ
ス
二公權停止中ノ者
三未成年者、禁治產者、心神耗弱者、聾者、啞者及盲者
第五條重禁錮ニ該ルヘキ僞造罪、僞證罪、賄賂罪、墮胎罪、竊盜罪、詐欺
取財罪、費消罪又ハ贓物ニ關スル罪ヲ犯シタル者ニハ免許ヲ與ヘサルコ
トアルヘシ
第六條內務省ニ醫籍ヲ備ヘ之ニ醫師ノ氏名、住所ヲ登錄ス
第七條醫師ハ其ノ技能ヲ誇稱スル虛僞ノ公〓ヲ爲シ又ハ祕密療法ヲ有ス
ル旨ヲ公告スヘカラス
第八條醫師ハ自ラ診察セスシテ診察證、處方箋ヲ與ヘ又ハ治療ヲ爲スコ
トヲ得ス
第九條醫師ハ特ニ帳簿ヲ備ヘ之ニ患者ノ氏名、住所竝年齢其ノ他病名及
療法ヲ記載スヘシ
前項ノ帳簿ハ十年間之ヲ保存スヘシ
第十條道府縣ニ住所ヲ有スル醫師ハ醫師會ヲ設立スルコトヲ得
醫師會ニ關スル規程ハ內務大臣之ヲ定ム
第十一條醫師會ハ醫事衞生ニ關シ主務大臣若ハ地方長官ノ諮問ニ應シ又
ハ建議ヲ爲スコトヲ得
第十二條醫師タルノ免許ヲ受ケタル者第四條各號ノ一ニ該當スルトキハ
免許ヲ取消シ第五條ニ該當スルトキハ免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ醫
業ヲ停止スヘシ
醫師刑法第二百十五條、第二百十六條、第二百四十一條、第二百四十三條、
第二百四十四條、第三百七條、第三百四十六條第三百四十七條、第三百六
十條又ハ傳染病豫防法第三十條ヲ犯シタルトキハ期間ヲ定メテ醫業ヲ停
止スヘ
第十三條第七條、第八條又ハ第九條ニ違背シタルトキハ五百圓以下ノ罰
金ニ處ス免許ヲ受ケスシテ醫業ヲ爲シタル者亦同シ
附則
第十四條本法ハ明治三十九年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十五條本法施行前ノ醫術開業免許狀ハ本法施行ノ後ト雖其ノ效力ヲ有ス
第十六條內務省醫術開業試驗規則ハ本法施行ノ日ヨリ五年ノ後之ヲ廢止
ス
第十七條前條ノ期限內ニ醫術開業試驗ニ及第シタル者ハ第一條ノ資格ヲ
有ス
第十八條醫術免許規則ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=53
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054・元田肇
○元田肇君 是ハ別ニ理由モ御述ベニナラヌヤウデゴザイマスガ、前同一ノ委員ニ附托
サレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=54
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055・杉田定一
○議長(杉田定一君) 元田君ノ發議ノ通前同一ノ委員ニ附托スルコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=55
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056・杉田定一
○議長(杉田定一君) 御異議ハナイト認メマス-日程第七、國本培養ニ關スル建
議案、委員長報告多田作兵衞君
第七國本培養ニ關スル建議案(多田作兵衞君外(委員長報告)
十九名提出)
〔多田作兵衞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=56
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057・多田作兵衞
○多田作兵衞君 本案ニ對シマス委員會ノ結果ヲ御報道申上ゲマス、委員會ハ度〓
開會致シマシテ、第一ニ提出者ノ意見ヲ聞キ、且當局者ノ出席ヲ請ヒマシテ、愼重ニ
愼重ヲ加ヘテ審査ノ結果、本案ハ滿場一致ヲ以テ大體可決致シマシテ、末文ニ少シク
文字ヲ修正ヲ加ヘマシタノデアリマス「速ニ之カ計畫ヲ提示セラレンコトヲ望ム」ト云フノ
ヲ「速ニ農工商ニ直接關係アル產業ノ保護奬動ニ關スル計畫ヲ提示セラレンコトヲ望
ム」ト云フコトニ致シマシタノデ、間接デゴザイマセズシテ、直接農工商ニ關係アルトコロノ
產業ノ保護奬動ヲナシタイト云フ趣意デゴザイマシテ、一言申シテ置キマスガ、水產ト云
フコトハ此農工商ノ中ニ加ハリマシテ、關係アル產業ト云フ中ニゴザイマスカラ、一言申
シテ置キマス(贊成ト呼フ者アリ)本案ハ前議會ニ於キマシテ、國本培養ノ建議ヲ致シマ
シタモノニ基イタモノデゴザイマス、昨年滿塲一致ヲ以テ政府ニ建議ヲ致シマシタトコロノ
事柄ハ、末文ノトコロヲ御參考ニ讀ンデ置キマスガ
政府ハ國本培養策トシテ速ニ產業ノ保護奬勵ニ關スル方法ヲ撰擇シ事帝國議會ノ
協賛ヲ經ルヲ要スルモノハ案ヲ具シ必ス之ヲ次期議會ニ提出セシムルコトヲ望ム其事
項〓目左ノ如シ
一農商務省ニ農務監督官ヲ置キ地方農事行政ノ監督ヲ行ハシムルコト
二道府縣ニ地方農務監督官ヲ置クコト
三全國各郡(北海道ニ於テハ支廳)ニ郡技術員ヲ置キ其經費ノ一部ヲ補助スルコト
四地方廳ニ技術員ヲ置キ耕地整理及排水事業ノ調査設計ヲ行ハシメ其費用ヲ
補助スルコト
五地方農事試驗場ヲシテ原種子用米麥栽培ヲ行ヒ收穀ヲ農會ニ交付セシムル
爲其費用ヲ補助スルコト
六農會ヲシテ原種子ヲ精農家ニ委託栽培セシメ其收穀ヲ營業者ニ配付スル爲栽
培費及栽培監督費ヲ補助スルコト
七農事改良ニ必要ナル勞力ヲ供給スル爲牛馬耕普及ヲ目的トナスノ施設ノ補助
ヲナスコト
八蠶兒飼育上ノ改良普及ノ模範稚蠶共同飼育所ヲ設置セシメ其費用ヲ補助ス
ルコト
九生繭ノ完全ナル殺蛹乾燥ヲ行ハシムル爲共同殺蛹乾繭所ヲ設置セシメ繭生產
業者ニ其費用ヲ補助スルコト
十各府縣ニ於テ優良ナル桑苗ヲ養成配布セシムル爲苗圃ヲ設置セシメ其費用ヲ
補助スルコト
十一優良ナル種牛ノ維持金ヲ補助シ及種牡牛ノ補充ヲ奬勵スルコト
十二各府縣ニ於テ優良ナル樹苗ヲ養成配布セシムル爲苗圃ヲ設置セシメ其費用
ヲ補助スルコト
十三蠶絲業調査所ヲ置クコト
十四本邦商品共同販賣所ヲ設置スルコト
十五工業奬勵ノ方法ヲ設クルコト
十六工業試驗所ヲ設置スルコト
昨年建議ノ項目ハ〓略今ノ通デゴザイマス、故ニ調査會ニ於テハ本期ノ議會ニ於テ財
政ノ許ス限リ右產業發達ノ目的ノ達スルタメニ、至急ニ豫算案ヲ提出セラレンコトヲ望
ムト云フ趣意デゴザイマス、又一ツハ右ノ如ク產業保護獎勵法ヲ設ケマシテモ、資金ヲ
出シテゴザイマシテハ、其效ヲ奏スルコトガ出來ヌノデゴザイマス、故ニ政府ニ於キマシテ、
中央銀行ヲシテ地方農工銀行ニ金ヲ貸出シ、而シテ地方銀行ハ耕地整理ノ如キ、肥
料買入費ノ如キ、其他必要ナル產業發達ノモノニ廉イ利ヲ以テ貸付ケルコトヲ行ハシメ
タイト云フ趣旨ヲ一條件決議致シマシタノデゴザイマス、此等ノコトハ實ニ必要ナルコト
デゴザイマス、故ニ政府ニ於テモドウカ力ヲ盡サレンコトヲ希望致シテ置クノデゴザイマス、
諸君、戰後ノ經營ト致シマシテハ民力ニ堪ヘザル程ノ租稅ヲ負擔サセテ居ルノデゴザイマ
ス、故ニ今日ノ場合ハ稅源ノ涵養ト云フコトハ、少シモ怠ッテハナラヌコトヽ信ジマス、諸
君モ亦御同感デアラッシヤルノデアル、故ニ本案ヲ滿場一致ヲ以テ今日決議致シマシテ、
政府ニ此趣旨ヲ貫徹セシメ、速ニ豫算案ノ提出ヲ促ガシ、本案提出ノ目的ヲ是非共
達シタウゴザイマス、色ミ申上ゲタイコトモゴザイマスケレドモ、委員會ノ〓略ヲ御報道致
シテ御贊成ヲ求メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=57
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058・杉田定一
○議長(杉田定一君) 東尾平太郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=58
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059・元田肇
○元田肇君 何カアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=59
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060・杉田定一
○議長(杉田定一君) 通告ガアリマス
(東尾平太郞君登壇)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=60
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061・東尾平太郎
○東尾平太郞君 國本培養ニ關スル建議案ハ唯今委員長ヨリ詳細ニ報告ガゴザイマ
シタガ、幸ニ反對ノ通告モゴザイマセヌカラ演說スルノ必要ハゴザイマスマイガ、併シ自分
ハ提出者ノ一人トシテ、簡單ニ此提出ノ理由ヲ述ベヤウト思ヒマス(「モウ宜シイ」ト呼フ
者アリ)宣ケレバ止メテモ宜イ(「簡單」ト呼フ者アリ)極ク簡單ニヤリマス、戰後我國運
ノ發達スルト同時ニ國費ノ增加スルコトハ、是ハ勢ノ已ムヲ得ナイ次第デゴザイマス、國
費ノ增加スルニ從ヒマシテハ、租稅ノ要求ガ益煩煩ニナルコトハ免カレマセヌガ、玆ニ至
リマシテ國家ノ發展ガ國力ニ伴ハナイ發展デアリマスレバ、此發展ハ長ク繼續スルコトハ
出來マセヌ、故ニ國力ノ涵養所謂國本ノ培養ト云フコトハ今日ノ急務中ノ急務ダラウ
ト信ジマス(「其通リ」ト呼フ者アリ)此近來輸出入ノ不平均ヨリシテ、年々歲々正貨ノ
流出スルコトハ容易ナラヌ形勢デアリマス、況ヤ今後國債ノ利子ニ於キマシテモ、八千万
圓ノ正貨ト云フモノヲ外國ニ仕拂ハナケレバナリマセヌ、今日ノ有樣デ經過シマスレバ我
日本銀行ノ兌換制度モ危クスルト云フコトハ明々瞭々タルコトデアリマス、故ニ此際ハ成
ルベタ輸入ヲ防遏シ、輸出ヲ奬勵スルコトガ必要ト信ジマス、ソレデ或一二ノ例ヲ中シマ
スレバ、穀物ノ輸入デゴザイマス、凶作ニハ七百万石ノ輸入ヲシマス、之ニ對スル代價ハ
七八千万圓ト云フモノヲ外國ニ拂ハナケレバナリマセヌ、平年ト雖モ三百万石四千万
石內外ハ、米ノミデモ外國ニ仕拂ハナケレバナリマセヌガ、此等ハ土地ヲ改良シ、米作ヲ
改良シマスレバ、此穀物ノタメニ外國ノ輸入ヲ非常ニ防グコトガ出來ヤウト思ヒマヌ、又
我邦ノ輸出品ノ第一位ヲ占メテ居ルノハ生絲デゴザイマス、生絲ハ殆ド一億圓ニ達シテ居
リマスガ、海外ノ正金ヲ我邦ニ輸入スルノハ生絲ニ若クモノハゴザイマセヌカラ、生絲ハ
益〓之ニ改良發達ヲ加ヘマスレバ、今日ノ輸入ノ倍額ニスルコトモ出來ヤウト信ジマス、
此等ヲ以テ海外ノ正金ヲ囘收スルコトガ出來ヤウト信ジマス、次ニ又此日露戰爭ノタメ
ニ馬ノ戰死シタルモノガ、殆ド二十万頭、牛ガ軍人ノ食料ノタメニ屠リマシタコトガ三十
万頭ハ滅ジテ居リマス、之ガタメニ農民ノ耕作力ハ大ニ滅ジテ居リマスカラ、此等ノ牛
馬ヲ蕃殖セシメテ、耕作ノ勞力ヲ增スト云フコトハ、今日ノ必要ト信ジマスカラシテ、成
ルベク政府ハ此案ニ對シテ速ニ計畫ヲ立テ、豫算ヲ發布セラレンコトヲ希望シマスルガ、
豫算委員會ニ於キマシテハ、此案ニ付イテハ當局大臣モ贊成ノ意ヲ表セラレテ居リマス、
又太藏大臣モ財政ノ許ス限、此等ノ產業發達ノ事業ニ金ハ惜マヌト云フコトデゴザイ
マスカラ、願クハ諸君、速ニ贊成シテ讀會ヲ省略シテ決議アランコトヲ希望致シマス
(「贊成ケ々」ト呼ヲ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=61
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062・元田肇
○元田肇君 本案ハ殆ド本院全體ノ意見デアラウト思フノデアリマスカラシテ、最早
決ヲ御採リニナッテ然ルベキカト思ヒマス、敢テ演說ヲ止メル譯デハアリマセヌガ··
(「贊成々イ」ト呼フ者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=62
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063・杉田定一
○議長(杉田定一君) 採決ヲ致シマス、本案ハ委員會ニ於テ修正ノ通ニ御異議ハゴ
ザイマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=63
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064・杉田定一
○議長(杉田定一君) 御異議ガナイト認メマス、是ニテ確定致シマシタ、議事日程第
八東北三縣凶作地窮民救恤ニ關スル建議案、委員長報告-福井三郎君
第八東北三縣因作地窮民救恤ニ關スル建議案(委員長報告)
(靑地雄太郞君外四名提出)
〔福井三郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=64
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065・福井三郎
○福井三郞君 東北三縣窮民救恤ニ關スル建議案ノ委員會ノ經過及結果ヲ御報
〓致シマス、此問題ハ東北ニ一百万ノ中百万ノ人ガ、餓死ニ瀕シテ居ルト云フ問題デゴザイ
マシテ、之ヲ救ハウト云フ問題デアッテ、實ニ重大事件デゴザイマスルカラシテ、委員會
ハ最モ鄭寧周到ノ審査ヲ致シマシタ、會ヲ重ヌルコト四囘、ソレカラ委員外デ意見ヲ
有スル議員ノ意見ヲ聞キマシタトコロガ、都合十四人、從ヲテ委員會ニハ內務大臣、大藏
大臣其他ノ政府委員等續々出席セラレマシテ、最モ此建議ニ同感ノ旨ヲ表セラレテ、親
切ナ御辯明モゴザイマシタシ、非常ニ親切ニ審査ヲ致シマシタノデゴザイマス、ソレデ委員
外ノ十四人ノ議員諸君ト云フモノハ、大體今日東北ニ於ケル轍鮒ノ急ヲ訴ヘラレタノデゴ
ザイマス、故ニソレヲ悉ク御報告申上ゲタイガ、大抵新聞デ分ッテ居ルヤウナコトデゴザイマ
スカラシテ、玆ニハ詳シク御話ヲ致シマセヌ(「贊成々ケ」ト呼フ者アリ)從ッテ澤山述ベラ
レタコトハ委ク皆委員會ノ速記錄ニ載ッテ居リマスカラ、速記錄デ御承知下サルコトユ顧
ヒタイ、唯其中デ一二新ニ諸君ノ記憶ヲ喚起スルタメニ御話ヲシテ置カナケレバナラヌコト
ハ(「分ッテ居ル」ト呼フ者アリ)當局者ハ東北ノ農民ガ死ニ瀕シテ居ル、或ハ餓死スル
ト云フヤウナコトハ斷ジテナイ、今日マデ一人モ餓死シタ抔ト云フコトハナイ、ト斯ウ云
フコトデゴザイマシタガ、他ノ參加セラレタ議員諸君ノ言ハレルトコロヲ聞クト、悉ク
皆餓死ナラザルハナイノデアル、死ンダモノハ皆饑死デアルケレドモ、之ヲ診斷ヲスル時分ニ
ハ心臟麻痺トカ、乃至身體衰弱トカ云フ醫者ノ言フ理窟ヲ附ケテ診斷スル以上ハ、餓
死病ト云フモノガナイ限リハ、殆ド餓死ト云フコトハナイカ知ラヌ、サウ云云理由ニ依ッテ
表ニ餓死ト云フコトガ現ハレヌノデアッテ、實ハ是ハ食盡キテ心臟モ麻痺スレバ、身體モ衰
弱ニナッタノデアリマスカラ、歸スルトコロハ悉ク餓死デアル、斯ウ云フヤウナコトナドハ政
府委員ノ認メラルヽトコロト、委員會〓ニ參加議員ノ認メラルヽトコロト、事實ガ少々相
違アル〓デゴザイマス、ソレカラ其他人身賣買ガ盛ニ行ハレル、人身ノ賣買ガ澤山各所
ニ行ハレテ居ルガ、其內最モ甚シキ一二例ヲ舉ゲマスルト、宮城縣下ノアソコハ何郡デゴ
ザイマシタカ、志田郡古川ト云フ所ト承知シテ居ル、其處ハ僅カニ千戶バカリアルニモ拘
ラズ、私ガ曾テ昨年視察ニ往ッタ時分ニ、既ニ百人以上モ北海道ノ工女ニ誘拐セラルヽ
ガ如クニシテ、カドワカサレタト云フコトヲ聞イテ居ル、又ソレデモ足ラナクテ藝娼妓ニ·
藝ハドウカ知ラヌガ、娼妓ニ賣ラレタモノガ、今日マデ三十人アルト云フコトデアリマス
ガ、ソレヨリモ今日ハ增シテ澤山ニ數ヲ殖シツヽアル、ソレガ單ニ其地方ノミニ止マラ
ズ、各處ノ到ルトコロ東北三縣デ少シク戶數ノ纏マック宿場ガアッタ所ハ悉クサウ云フ傾
ガアル、皆是ガ〓盡キタル結果デアッテ、實ニ危殆ノ狀況ニ迫ッテ居ルト云フコトハ、是モ
著シイ事實デゴザイマス、ソレカラ其次ニハ衞生上ノ變化、此衞生上ノ變化ト云フコト
ニ付イテハ、此一言テ如何ニ變化シテ來タカト云ツコトハドウカ御類推ヲ願ヒタイ、詳シク
ハ御說明ヲ申上ゲマセヌ、ツレカラ内務大臣、大藏大臣ノ出席ガゴザイマシテ、殊ニ内
務大臣ナドハ此案ニ最モ同情ヲ表セラレテ建議ノ趣意ニ於テハ同感同情デアルト云フ、
斯ウ云フコトデアリマス、唯同感同情デアルケレドモ、、建議者ノ云フガ如ク東北今日ノ狀
態ガ危急ニ迫ッテ居ルヤ否ヤト云フコトニ付イテハ、俄ニ同意ガシ難イ、若シ一步進ンデ
同意スルトシタトコロガ、今日歲入ニ剩餘ナキ現況ニ照シ、或ハ國家ノ現況ニ鑑ミ、縱
シヤ此建議ガ通過シタトコロガ、ソレニ依ッテ直チニ建議者ノ望マルヽガ如ク直グニ豫
算案ヲ提出スルコトガ請合ガ出來ナイカモ知ラヌ、ソレハ相違ナイ事實ダガ、國力ガ足ラ
ナイニ依ッテ出來ヌノダケレドモ、若シ此建議ガ議會ヲ通過シタナラバ、親切ニ直グニ廟
議ヲ凝シ、成ルベク此建議者ノ望マルヽガ如キ希望ヲ透徹シタイモノデアルト云フ滿腔ノ
同情ヲ以テ答ヘマシタト云フ始末デゴザイマス、大藏大臣ニ於テモ別ニ御反對モナイト云
フ始末デゴザイマスカラ、ソレデ委員會ニ於テハソレ等ノ國務大臣ノ意見ヲ聽キ、尙參加
議員ノ意見等ヲ聽キマシテ、最モ愼重ニ審査シマシタガ、歸スルトコロハ議論ガ二ツニ岐
レタ、二ツニ岐レタガ、歸著スルトコロハ一ツデアル、一ツハ徹鮒ノ急ヲ濟ハネバナラヌ、
モ一一モナタ、何事ニモ顧慮スルトコロデナイカラ、直チニ此建議ヲ通過サセテ、豫算ヲ提
出シテ東北ノ窮民ヲ濟ハサケレバナラヌト云フコトニ歸著スル、一ハ政治上ノ原則トシテ
國家ガ窮民ヲ濟ハナケレバナラヌト云フ道理ハ斷ジテナイ、故ニ其〓ニ〓テハ此建議ヲ
認メルト云フコトハ出來ヌケレドモ、國家ニ非常ナ事ガアッタナラバ政府モ亦國家モ亦
非常ノコトヲ行ハナケレバナラヌノデアル、顧ルニ昨年ノ東北ノ凶作ト云フコトハ天明
以來絕ヘテナキトコロノ大凶作デアリマス其結果ヨリ生ジタ東北ノ今日ノ狀況ハ悲
慘ノ状況デ、實ニ現世紀ニ於テ多ク見ザルトコロノ非常ナル一大出來事デアッテ、其狀
態ニ於テハ幾ド濃尾ノ震災ヲ選ブトコロナキ慘事デアル、故ニ之ヲ非常ノ出來事ト謂ハ
ズンバ天下幾ド非常ノ出來事ト云フコトハ多タ謂ヒ得ルコトガ出來ナイ故ニ斯ル非常
ナ出來事ニ遭遇シタ今日ノ國家ハ、之ニ對シテ相當ノ決心否ナ、破格ノ決心ヲ以テ非
常ナ處分ヲシナケレバナラヌ、故ニ政治上ノ原則ニ於テハ、窮民ヲ濟フノ原則ガ國家ニ
アラウガナカラウガ、是ヲ論ズル場合デナイカラ、速ニ政府ハ此建議者ノ趣意ニ從ヒ東
北窮民ヲ濟フニ定ルダケノ備ヲ設ケテ、サウシテツレニ要スル緊急豫算ヲ本議會ニ向ッテ
提出シナケレバナラヌ、斯ウ云フコトニ歸著シタノデアリマス、故ニ理由ハ右カラト左カラ
ト違ヒマスガ、歸スルトコロハ同ジデ、此建議ハ全會一致デ以テ可決致シマシタ次第デ
アリマス、故ニ長ク御報告申シテ居ル間ニハ東北ノ窮民ハ既ニ一人ヅツ渴ヘテ往クト
云フ給末デゴザイマスカラ、時間ヲ節約セラレ早ク可決セラレ、一日モ早ク實行セラレン
コトヲ望ミマス
(「委員長ノ報告通リ賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=65
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066・杉田定一
○議長(杉田定一君) 委員長ノ報告通り御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ヲ者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=66
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067・杉田定一
○議長(杉田定一君) 御異議ガナイト認メマス、本案ハ確定致シマス、日程第九治
水ニ關スル建議案、議案ノ朗讀ハ省略致シマス、佐々本正藏君
第九治水ニ關スル建議案(佐々木正藏君外十三名提出)
治水ニ關スル建議案
今ヤ戰後經營ノ事業多端ナリト雖物產ノ增殖ヲ圖リ以テ國力ノ充實ニ努ム
ルヨリ急ナルハナシ而シテ治水ノ事業タル國家經營上一日モ忽諸ニ付スヘ
カラス水害ノ爲ニ年々國庫及民產ニ損害ヲ蒙ルモノ實ニ多大ナリ故ニ衆議
院ハ屢河川改修ノ急務ナルコトヲ建議シ政府モ亦改修費國庫支出金每年參
百萬圓ヲ定額トセラレタリ戰時中之ヲ繰延又ハ中止スルニ至リタルハ止ム
ヲ得サリシトスルモ平和克復ノ今日ニ至リテ之カ定額ヲ復舊スヘキハ當然
ノ事ナリトス然ルニ本年ノ豫算案ニ於テ河川修築費ヲ僅ニ其ノ半額ニスラ
充タサル少額ニ止メタルハ本院ノ最遺憾トスル所ナリ既ニ調査設計ノ整頓
シ著手實行ヲ請求スルモノ數河川アリ政府ハ宜シク速ニ既定ノ方針ニ依リ
案ヲ具シ議會ニ提出アラムコトヲ望ム
右建議ス
〔佐々本正藏君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=67
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068・佐々木正藏
○佐々木正藏君 治水ニ關スル建議案提出ノ趣旨ヲ簡單ニ陳述致シマス、諸君モ御
承知ノ通リ各河川ニ於ケル洪水汎濫ノタメニ、年々歲々此國庫竝ニ民產ノ害ヲ被ッテ
居ルコトハ、誠ニ多大ナモノデアリマス、統計ノ示ストコロニ依リマスルト、一箇年平均
卽チ此金額ニ積算致シマシテ、四千二百七十万圓ト云フ巨額ニナルノヂゴザイマス、又
人ノ死亡スルコトガ六百五十八人、負傷ノ數ガ六百六十九人ト云フノガ、是ハ卽チ平
均額デアリマスカラシテ、每年是ダケノ危害ヲ被ッテ居ルト云フ有樣デアリマス、故ニ我
衆議院ハ屢〓河川改修ノ必要ト云フコトヲ建議致シマシテ、第二囘議會竝ニ第四、第
六第九、第十三、第十四議會ニ於テ、之ガ建議ヲナシテアルノデゴザイマス、而シテ第
十三議會ト第十四議會ノ建議ノ趣旨ハ、一定ノ國庫支出金ニ定額ヲ置ク必要ガアル
ト云フコトヲ主トシテ建議シテアルノデゴザイマス、ソレハ如何ナル理由デアルカト申シマス
レハ、御承知ノ通リ河川改修ノ事業ト云フモノハ、誠ニ拱水ノ激シイ激流怒濤ヲ相手
ニシテ事業ヲナスモノデアリマスカラシテ、一定ノ方針ヲ立テヽ其計畫通ニ實行シナケレバ
ナラヌ、或ハ財政ノ都合ヲ以テ之ヲ中止シ繰延ベルト云フヤウナコトガアレバ、大イニ手
戾リヲスル、ソレ故ニ一定ノ金額ヲ定メテ置イテ、サウシテ計畫通リ之ヲ實行スル必要ガ
アルト云フ事柄ハ、卽チ定額ヲ置カレタイト云フ建議ニナッタノデゴザイマス、サウシマシテ
政府モ玆ニ建議ノ趣意ヲ容レラレテ、財政ガ今日ノ如ク大キナモノデナイ、少サナトコロ
ノ歲入歳出ノ中ニモ拘ラズ、三百万圓ト云フモノヲ國庫ノ負擔金トシテ定額ヲ置クト
云フコトニ決定サレタノデアリマス、然ルニ其決定後議會ノ解〓ニ依ッテ、豫算ハ不成
立、引續キ日露戰爭ト云フ大事件ガ起ッタノデアリマス、其戰爭中ニハ如何ナルコトモ
犧牲ニ供スルト云フ譯デアリマスカラシテ、中止又ハ繰延ト云フコトヲサレタノハ已ムヲ得
ナイ次第デアリマス然ルニ今日平和克復トナリマシタ以上ハ、無論此急務タル河川改
修ノ事業ハ定額ヲ復舊シテ、大イニ此實行ヲ期スルコトノ必要ガアルト云フ趣意デアリ
マシテ、然ルニ本年ノ豫算案ヲ見マスルト、僅カニ百五十二万圓ノ此事業費ガ出テ居ル
ノデス然ルニ、其中ノ十九万何千圓ト云フモノハ地方ノ納付金デアリマスカラシテ、國
庫ノ負擔ト云フモノハ百三十餘万圓ト云フコトニナッテ居ルノデゴザイマスガ故ニ、之ヲ速ニ
元ノ三百万圓ニ復舊サセテ、サウシテ一方ニハ如何デアルカト申シマスレバ、既ニ彼ノ調
査設計モ出來上リ、サウシテ此事業ハ河川法ノ二十六條ニ據ッテ、約ソ三分ノ一ト云フ
モノハ其府縣ニ於テ金額ヲ負擔スルコトニナッテ居ルノデゴザイマス、之ヲ各府縣ニ於テ
或時ニハ百万圓、或時ニハ二百万圓ト云フ多額ノ金ヲ負擔シテ、尙進ンデ國庫ヨリ早
ク著手ヲサレタイト云フコトヲ請求シツヽアルガ大分今日現在アルノデゴザイマス、他ノ悉
皆國庫デ負擔スルヤウナ事業デアレバ格別デアリマスケレドモ、三分ノ一ト云フ費用ヲ府
縣稅デ負擔シテ、尙進ンデ國庫ノ支出ヲ却テ促シツヽアルト云フ次第デアリマシテ、誠ニ
此事柄ハ急務中ノ急務ト考ヘルノデアリマス、故ニ政府ハ速ニ定額ヲ復舊シテ、豫算ヲ
編成シテ、當議會ニ若クハ次ノ議會ニ、成ルベク常議會ニ提出アランコトヲ希望スル趣
意カラ此建議案ヲ提出スル譯デアリマス、諸君、御贊成アッテ速ニ決定アランコトヲ希
望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=68
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069・元田肇
○元田肇君 是ハ十八名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス、而シテ其委員ハ議長ニ
於テ指名アランコトヲ希望致シマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=69
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070・杉田定一
○議長(杉田定一君) 元田君ノ發議ノ通、本案ヲ十八名ノ委員ニ付託シ、而シテ
其委員ハ議長ノ指名ト云フコトニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=70
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071・杉田定一
○議長(杉田定一君) 御異議ガナケレバ其通リ決定致シマス-日程第十、利根
川高水工事急施ニ關スル建議案議案ノ期讀ハ省略〓シマス吉植庄一郎君
第十利根川高水工事急施ニ關スル建議案(吉植庄一郎君外六名提出)
利根川流域ノ水害ハ累年頻ニ臻リ其ノ慘狀見ルニ忍ヒサルモノアリ曩ニ政
府カ利根川第一期高水工事施行中時局ニ際シ明治四十年度迄事業繰延トナ
シタルハ已ヲ得サルニ出ツト雖今ヤ平和克復シテ局面更新セリ一意民產ノ
發達ヲ圖リ國本ノ培養勗ムルハ洵ニ國運ノ發展ニ伴フ刻下ノ急務ニ屬ス
殊ニ利根川高水工事ハ除害ノ一〓ニ於テ亦項刻モ閑却スヘカラサルヲ信ス
政府ハ宜シク其ノ實情ヲ酌量シ時勢ニ鑑ミ當初豫定ノ計畫ニ基キ利根川第
二期高水工事費ヲ次期議會ニ提出セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔吉植庄一郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=71
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072・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 是ハ極ク急ヲ要スル仕事デ、餘リ暇取ッテ御話シテ居ルト流レル仕事
デアリマスカラ、極ク簡短ニ申シマス、此治水ノ大體ニ付イテハ、先刻佐々木君カラ御
話ニナリマシタカラ申上ゲルマデモナイト思ヒマス、又私ノ提出シタトコロノ案ニ付キマシテ
ハ、詳細ナル理由書ヲ諸君ニ御囘シシテアリマスカラ、之ヲ此處デ繰返ス必要ハナイ、唯
本案ヲ提出シマシタ大體ノ理由ヲ極ク簡單ニ言ヒタイト思フコトガ一ツアリマス、ソレハ
元來此日本ノ如キ國柄ハ世界ニ類ノナイ河川ノ多イ國デアル、又雨量ノ多イコトニ於テ
世界ニ殆ド類ノナイトコロノ國デアル、此二ツノコトハ治水ト云フモノヲ或地方ノ問題ノ如
ク考ヘテ居ル誤ッタル思想ヲ破ッテ置カナケレバナヌノデアル、此一言ダケハ是非私ハ言ハナ
ケレバナラヌ、世界ノ何レノ國ガ日本ノ如キ狹長ナル島國デアッテ、火山系カラ成立ッタ高
低ノ最モ激シイ、傾斜ノ最モ多イ國ガアリマスカ、又是ノ如キ河川ノ多イ國ガアリマスカ、細カ
イ河川ノ國ガアリマスカ、又是ノ如キ雨量ノ多イト云フ國ガ世界中ニアリマスカ、是ハ實ニ日
本ニ於テ河川ヲ治ムルコトニ於テ、非常ナ考慮ヲ要スル事柄デアルノデゴザイマス、幕府
ノ時代ニ於キマシテ河川ノ取締及修治ト云フコトニ付キマシテハ、明治三十九年ニナッタ、
今日ヨリモ或程度ニ於テ寧ロ非常ニ進步シテ居ッタノデゴザイマス、明治維新以來治水
ト云フコトニ付キマシテハ、民政ニ意ヲ注ガザルトコロノ政府ガ、之ヲ數年間等閑ニ附シ
テ居ッタガタメニ日本ノ治水事業ガ非常ニ後戾リヲシタノデアリマス、之ガタメニ年々歲々
非常ナ災害ヲ釀シテ、遂ニ今ヨリ十四五年前カラ此議會ノ問題トナリ、政府モ之ニ對
シテ漸ク注意ヲスルト云フヤウニナッタノデアリマシテ、日本ノ今日ノ治水ノ現狀ト云フモ
ノハ、日本ノ國情ニ對シテハ、誠ニ其均衡ヲ得ザルトコロノモノデアルノデアリマス、政治
ノ要ハ諸般ノ設備ガ均衡ヲ得ルニアル治水ノコトニ對シテ、政府ガ爲ストコロノコトハ、
頗ル均衡ヲ失シテ居ルノデアリマス、今ヨリ十年前若ハ十五年前ニ極メタ豫算ハ當時
八千万圓ノ歲入ニ於テ、百五十万圓トカ、斯ウ云フ金額デアッタノデアリマス、然ルニ今
ハ十億ノ總計ヲ以テスル日本ノ國計ニ於テ、之ヲ僅ニ三百万圓内外ト云フ、ソレスラ
尙之ヲ縮少スルト云フ狀態デアリマス、卽チ國ノ歲出入ニ於キマシテハ、殆ド十二倍强
ノ膨脹ヲ爲シテ居ル、此治水ト云フ問題ニ對シテハ十年前モ今日モ殆ド其差ガナイ、而
シテ一面ニ於テ此川カラ生ズルトコロノ損害ヲ計上致シマスルト、十年前カラシテハ今日
ハ二倍半ノ損害ノ高ヲ增シテ居ルノデアリマス、河川ハ終古渝ルコトナク、日本ノ雨量
ノ多イト云フコトモ亦末代マデ渝ルコトガナイ、斯ウ云フ狀態ノ下ニアリマシタ、其損害
ハ年々歲々增スニモ拘ハラズ、一面ニ日本歲計ハ年々膨脹シ先刻ノ國本培養ノ建議ノ
如キ滿場一致ヲ以テ國民ガ望ンテ居ル時代ニ於テ、獨リ此害ヲ除キ、併セテ利ヲ興ス
治水ノ問題ガ閑却サレテ居ルト云フコトハ頗ル本末輕重ノ誤リ偏重偏輕ノ譏ヲ免レ
ヌノデアリマス、此一點ガ最モ上下ノ注意ヲ惹イテ置カナケレバナラヌコトデアリマス、之
ヲ大體論トシテ申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=72
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073・元田肇
○元田肇君 是ハ前ノ日程ノ第九ノ同一委員ニ付託サレンコトヲ希望シマス
(「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=73
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074・杉田定一
○議長(杉田定一君) 元田君ノ御發議ノ通リ、本案ヲ前ノ同一委員ニ付託スルト
云フコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=74
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075・杉田定一
○議長(杉田定一君) 御異議ガナイト認メマスカラ其通決シマス、報告ガアリマス
〔書記朗讀〕
政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
工業用酒精酒類其他酒精含有飮料戾稅法案
廢兵院法案
軍人恩給法中改正法律案
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
二年兵役制ニ關スル建議案
提出者角田眞平君肥塚龍君
取引所賠償責任準備積立金ニ關スル建議案
提出者森茂生君濱田國松君兼松凞君
大熊三之助君
一濱田國松君ヨリ伊勢神宮經費竝大麻頒布ニ關スル質問主意書ヲ提出セラレタリ
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
伊勢神宮經費竝大麻頒布ニ關スル質問
右成規ニ據リ提出候也
明治三十九年三月一日
提出者濱田國松贊成者三輪信次郞
外三十名
質問主意書
一伊勢神宮ニ關スル國庫ノ支出ハ年額五万圓ナリ政府ハ是ノ經費ヲ增加スルノ
必要ヲ認メサル乎
二明治三十三年勅令三百七十四號ニ依リ設置セラレタル神部署カ伊勢神宮ノ大
麻ニ一定ノ價格ヲ付シ暦本ト共ニ私設財團ナル神宮奉齋會ヲシテ全國ニ頒布セ
シメツヽアルハ大廟尊嚴ヲ害シ延キテ國體ヲ續スモノニ似タリ政府ノ見ル所如何
右大藏内務兩大臣ニ質問ニ及候也発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=75
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076・杉田定一
○議長(杉田定一君) 明後日ハ本會ヲ開ク積リデアリマスルガ、日程ハ追テ公報ヲ以
テ御通知ヲ致シマス、本日ハ是デ散會ヲ致シマス
午後三時三十八分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002213242X01019060301&spkNum=76
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