1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十年三月十一日（月曜日）
午前十時五分開議
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議事日程 第十一號 明治四十年三月十一日
午前十時開議
第一 男爵藤村紫朗君請暇の件
第二 海港檢疫法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第三 癩豫防に關する法律案（政府提出衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第四 韓國森林特別會計法案（政府提出衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第五 印紙税法中改正法律案（衆議院提出） 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第七 關税定率法輸入税表中改正法律案（衆議院提出） 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第九 戸籍法中改正法律案（衆議院提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十 樺太島開發に關する請願 會議
第十一 利根川治水速成に關する請願 會議
第十二 森林法中改正の請願 會議
第十三 登録税法中改正の請願 會議
第十四 利根川河身改修速成の請願 會議
第十五 根室鐵道速成の請願 會議
第十六 平戸區裁判所御厨出張所設立の請願 會議
第十七 電線架設の請願 會議
第十八 渡良瀬川河身改修に關する請願 會議
第十九 渡良瀬川沿岸特別地價修正漏再修正の請願 會議
第二十 鑛毒被害地地價修正漏地價再修正の請願 會議
第二十一 鑛毒被害地地價修正に對し再修正の請願 會議
第二十二 渡良瀬川沿岸地方特別地價再修正院議實行の請願 會議
第二十三 酒田新莊間鐵道速成の請願 會議
第二十四 越羽沿岸鐵道速成の請願 會議
第二十五 船形酒田間鐵道速成の請願 會議
第二十六 宮津福知山間鐵道急設の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致シマス
〔東久世書記官朗讀〕
去ル六日政府ヨリ明治三十八年四月一日ヨリ同三十九年三月三十一日ニ至
ル各省所管官有財產增減異動報告書ヲ受領セリ
同日本院ニ於テ修正議決シタル明治四十年度歲入歲出總豫算案ハ翌七日之
ヲ衆議院ニ囘付セリ
同日本院ニ於テ議決シタル明治四十年度各特別會計歲入歲出豫算案及豫算
外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件ハ翌七日裁可ヲ奏請シ及可
決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
同日本院ニ於テ議決シタル左ノ政府提出案ハ翌七日裁可ヲ奏請シ及可決ノ
旨ヲ衆議院ニ通知セリ
鐵道敷設法中改正法律案
東京府北多摩郡埼玉縣北足立郡境界變更法律案
煙草專賣法中改正法律案
帝國大學特別會計法案
同日本院ニ於テ修正議決シタル政府提出學校及圖書館特別會計法案ハ翌七
日之ヲ衆議院ニ囘付セリ
同日本院ニ於テ議決シタル衆議院提出裁判所管轄區域變更ニ關スル法律案
ハ翌七日裁可ヲ奏請シ及可決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
同日本院ニ於テ採擇ヲ議決シタル左ノ各請願書ハ意見書ヲ付シ翌七日之ヲ
政府ニ送付セリ
裁判所管轄變史ノ請願
商法中預證劵及質入證劵ニ關スル規定改正ノ請願
鐵道速成ノ請願
越羽沿岸鐵道速成ニ關スル請願
奧羽橫斷鐵道速成ニ關スル請願
登記所新設ノ請願
非常特別稅法改正ノ請願
渡良瀨川河身改良ノ請願
出獄人保護事業ノ請願
北海道鐵道天鹽北見線工事速成ノ請願
渡良瀨川地方特別地價修正遺漏地地價修正ノ請願
鑛毒被害地特別地價修正遺漏地地價修正ノ請願
羽越線速成ノ請願
同日戶籍法中改正法律案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左
ノ如シ
委員長侯爵細川護成君副委員長富井政章君
去ル七日各特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
輸入原料砂糖戾稅法中改正法律案特別委員會
委員長子爵谷干城君副委員長子爵鍋島直彬君
郡制廢止法律案特別委員會
委員長子爵曾我祐準君副委員長子爵加納久宜君
一昨九日韓國森林特別會計法案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
委員長伯爵正親町實正君副委員長中島永元君
同日政府ヨリ日本勸業銀行法中改正法律案ヲ受領セリ
同日衆議院ヨリ本院ノ囘付ニ係ル明治四十年度歲入歲出總豫算案ハ本院ノ
修正ニ同意シ奏上シタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
同日衆議院ヨリ本院ノ囘付ニ係ル政府提出學校及圖書館特別會計法案ハ本
院ノ修正ニ同意シ奏上シタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
明治三十九年度歲入歳出總豫算追加案(第三號)
種牡牛檢査法案
市制改正法律案
町村制改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ同院提出案ヲ受領セリ
東京市制案
衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員選擧法中改正法律案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=2
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003・伊澤修二
○伊澤修二君 本員ハ此場合ニ豫ネテ提出シテアリマスル質問ノ趣旨ヲ演說
イタシタウゴザイマス、文部大臣ハ出席シテ居ラレマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御登壇ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=4
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005・伊澤修二
○伊澤修二君 チヨット伺ヒマスガ、文部大臣ハ出席ニナッテ居リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本日ハ病氣デ出席ガ出來ナイサウデアリマス
〔左ノ質問主意書ハ朗讀ヲ經ザルモ參照ノ爲メ玆ニ載錄ス〕
國語及字音假名遣ニ關スル質問主意書
一文部省ハ明治三十三年八月文部省令第十四號小學校令施行規則第二號表
ヲ以テ詔勅、帝國憲法、議院法其ノ他法律命令等ヲ始メトシ帝國議會議
事速記錄等ニ用井來レル假名遣ト相違セルノミナラス現今一般ノ國語學
者間竝文學社會ニモ認メラレサル所謂棒引假名遣ヲ新定シ且漫ニ假名中
ノ「井」「ヱ」「ヲ」ノ三字ヲ删去シ「ヂ」ト「ジ」「ヅ」ト「ズ」ノ別ヲ廢シ之ヲ小
學校ノ〓科ニ加ヘテ全國ノ就學兒童ニ强課シタリ文部大臣ハ其ノ職權ヲ
以テ國語字音ヲ輕々ニ改廢シ得ルモノト思惟スルカ
一文部大臣ハ明治三十九年十二月第十同高等〓育會議ニ諮問シ曩ニ制定シ
タル棒引假名ヲ廢シ之ニ代フルニ「ア」「イ」「ウ」ノ三字ヲ以テシ尙「カ」ト
「クワ」ノ別ヲ廢シ「ハ」「ヒ」「フ」「へ」「ホ」ヲ「ワ」「イ」「ウ_「エ」「オ」ニ改メ
タル一種ノ改定案ヲ提出シ既ニ其ノ議決ヲ經テ明治四十一年四月ヨリ之
ヲ小學校ニ實施シ尙進テ中等〓育ノ學校ニモ之ヲ課セムトスト聞ク果シ
テ然ラハ曩ニ棒引假名ヲ一千餘萬ノ生徒ニ强課セシハ徒ニ誤謬ヲ傳ヘタ
ルニ止マリ國家〓育ノ本旨ヲ過チタルモノニ非サルカ
一前項高等〓育會議ノ諮問ヲ經タル假名遣モ亦往年ノ棒引假名遣ト同シク
從來慣用セラルル假名遣ト一致セサルハ勿論一般ノ國語學者間及文學社
會ニモ容認セラレサルモノナレトモ文部大臣ハ獨斷ヲ以テ之カ實行ノ責
ニ任セムトスルカ
右議院法第四十八條ニ依リ及質問候也
明治四十年三月二日
提出者伊澤修二
贊成者侯爵久我通久
外四十六名
〔伊澤修二君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=6
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007・伊澤修二
○伊澤修二君 諸君、本員ハ是ヨリ豫ネテ提出シテ置キマシタ國語及字音
假名遣ニ關スル質問ノ趣旨ヲ演述イタシマスデゴザイマス、本員ハ元來〓育
社會ノ出身タルニ拘ラズ玆ニ此質問ヲ提出スルノ已ムヲ得ザルニ至リマシタ
コトハ深ク自ラ遺憾ト考ヘマスルコトデゴザイマス、併ナガラ身苟モ本院ノ
一席ヲ占メテ居リマスル以上ニハ知ッテ而シテ言ハザルハ卽チ不忠ノ罪ニ陷
ル次第デゴザイマスルカラシテ、聊カ忌憚スル所ナク事實ヲ事實トシテ茲ニ
陳辯イタシマシテ諸君ノ御判斷ヲ請ヒ、又政府ニ對シマシテハ大ニ反省セラ
レマシテ翻然其過ヲ改ムルコトニ吝ナラヌコトヲ希望スルノ外ハゴザイマセ
ヌ、此假名遣ノ問題ハ頗ル複雜シター問題デゴザイマシテ、實ニ數年ニ涉ッテ居
リマスル大問題デゴザイマス、故ニ成ルベク簡明ニ陳辯イタス積リデハゴザ
イマスガ、勢ヒ少シク時間ヲ要スルコトデゴザイマセウト存ジマスカラ、此段
ハ諸君ノ御諒察ヲ豫ネテ請ヒ置キマスル次第デゴザイマス、抑〓此問題ハ如何
ナル事カラ起ッテ來タカト申シマスト、〓育者ノ間ニ於テ我ガ國語ノ書キ方ガ
誠ニ困難デアルカラ、ドウカ之ヲ簡單ニシタイト云フコトヲ唱ヘタノハ、是ハ
數年來ノコトデゴザイマス、固ヨリ國語ト云フ樣ナモノハ性質トシテ〓ヘル
ニムヅカシイ筈デアルノデアリマス、然レドモ〓育者トシテハ成ルベク容易
ニ之ヲ〓ヘルヤウニシタイト云フコトハ是ハ人情ノ欲スル所デゴザイマスル
カラシテ、之ヲ〓育者カラ唱ヘタノモ無理ナラヌコトト申サヌケレバナラヌ
ト思ヒマス併ナガラ此問題ハ決シテ單ニ〓育上ノ問題デハゴザイマセヌ、
政治上ニモ社會上ニモ且又文學上ニモ大關係ノアル問題デゴザイマスルノ
ニ、當局者ハ深ク是等ノ點ニ思ヒ及バズシテ遂ニ此問題ノ起ル原因ヲナシタ
コトト思ハレマス、文部省ハ明治三十三年八月ニ小學校令ヲ改正頒布シマシ
タル後ニ、卽チ此〓育者等ノ聲ニ引カレマシテ餘リ深ク種々ノ關係ニ思ヒ及
ボサズシテ、小學校令施行規則ト云フモノヲ設ケマシタ、其中ニハ謂ハユル
棒引假名ト云フモノモゴザイマス、又「ワ井ウヱヲ」ノ「井ヱヲ」ノ三字ヲ削リ、
ソレカラ「クワ」ヲ「カ」ニ「グワ」ヲ「ガ」ニ「ヂ」ヲ「ジ」ニ「ヅ」ヲ「ズ」ニ改メルト
云フ樣ナコトヲシタノデアリマス、併シ此時ニハマダ「クワ」「グワ」「ヂ」「ヅ」
ト云フ樣ナモノハ從來ノ慣例ニ從ッテモ妨ゲナイト云フコトニナッテ居リマシ
タガ、其後ニ國定〓科書ニハ總テ之ヲ改メテ仕舞ッタノデアリマス、其コト
ハ後ニ委シク申述ベマセウト思ヒマス、之ヲチヨット觀テ見マスルト誠ニ簡
單ナルコトノ樣ニアリマスルケレドモ、其事ハナカ〓〓重大ナル問題デゴザ
イマス、少クトモ此以下ニ申述べマスルダケノコトハ〓究シタ上デナクテハ
決定ノ出來得ベキモノデハ無カラウト思ヒマス、第一ニハ此〓育者ガ我ガ國
語ノ書キ方ハムヅカシイト云フコトヲ頻ニ申シマスガ、果シテ我ガ國語ト云
フモノハ他ノ文明諸國ノ、或ハ英吉利ナリ佛蘭西ナリノ國語ニ比較シテムヅ
カシイカ、ヤサシイカ、ト云フコトハ能ク考ヘテ見ナクテハナルマイト思ヒ
さっ、何レノ國語デゴザイマシテモ、苟モ文明ノ進ンダ所ノ國語ニハ皆書キ
方ト話シ方トハ別ノ學科ニナッテ居ル、卽チ一ハ「オルソグラフ井ー」ト申シテ
文字ヲ正シク綴ルコトノ學科ト、「オルソエピー」ト申シマシテ、是ハ卽チ書
イタモノヲ正シイ發音ヲ以テ話シ又ハ讀ムコトデアリマス、此二ツノ學科ト
云フモノハ兩々對立シテ居ルモノデアリマス、若シ是ガ書イタ通リニ讀メル
コトナラバ決シテ「オルソグラフ井ー」ト云フ學科ハ要ラナイノデアル、併シ
此文明諸國ノ苟モ歷史竝ニ文學ノアル國ニ於テハ此二ツノ學科ハ兩々對立シ
テ居ルコトハ諸君ノ御承知ノ通リノ次第デアリマス、併ナガラ唯除外トモ云
フベキコトハ歐羅巴人ガ野蠻ノ國ニ行ッテ、サウシテ其國ノ言葉ヲ書クトキニ
ハ固ヨリ野蠻國ニハ文學モ歷史モ有ル道理ガ無イカラシテ發音スル通リニ書
クノデアル、又或ハ半開化ノ國ニ行キマシテモ、矢張リ其國ノ歷史或ハ其國ノ
文學ト云フ樣ナモノハ眼中ニ置カズニ歐羅巴人ノ用井ル所ノ羅馬字ヲ以テ
書クノデアリマス、是ハ最モ近イ例ハ我ガ鄰國トモ申シテ宜シイ所ノ布哇デ
アリマス、布哇ニハ百年前後クラ井カラ大ニ歐羅巴人ガ這入リ込ミマシテ、
先ヅ第一ニ布哇ノ言葉ヲ羅馬字デ書イタモノデアリマス羅馬字デ書イテソ
レカラ然ル後ニ今度ハ其學科ニ英語ヲ加へ皆其英語ニスルト云フコトニシテ
仕舞ッタノデアリマス、勿論布哇ノ國語ニ顧ミルコトモ何ニモナクシテヤッタ、
ソレカラ其結果ハ如何デアッタカト云フト、卽チ千八百八十年ニカラクワ女
帝ガ其國ノ亡ビルニ當ッテ大統領ノ白屋ニ行ッテ淚ヲ流シテ歎イタガ、ドウモ
最早布哇ノ人民ニハ一滴ノ同情ノ涙ヲ流ス者モ無カッタ、ソレハナゼデアル
カト云フニ、我國ノ歷史ヲ忘レ我國ノ國語ヲ忘レタ國民ガ、如何ニシテ同感
ノ淚ヲ流シマセウ、是ハ決シテ布哇ノミニハ限ラヌ、併シ布哇ノ例ノ如キハ
實ニ我〓ガ眼ノ先ニ見タ例デアル、最モ近イ例デアルト思ヒマスカラ、チヨッ
ト御參考ノ爲ニ申シタニ過ギマセヌ、是ハ御參考ノ爲ニ申シタノデ、餘事ニ
渉ッテ甚ダ恐縮デゴザイマスガ、併シ我ガ國語ノ書キ方ヲ簡單ニシテ〓ヘタ
ナラバ、ソレハ〓ヘルニハ容易デゴザイマセウガ、併ナガラ〓ヘタ後ニソレ
ガ世ノ中ニ通ジナカッタナラバ、其不便ハ如何デゴザイマセウカ、學校ニ於
テ學科ヲ〓ヘルノハ現在ノ世ノ中ニ通ジテ我〓國民ト同ジ國民ヲ拵ヘル爲ニ
〓ヘルノデハアリマスマイカ、然ルニ〓育者ガ〓ヘルニ易イカラト云ッテ成
ルタケ簡單ナモノヲ〓ヘテ、ソレガ世ノ中ニ通ゼヌト云フコトニナッタナラ
バ是ハ如何デゴザイマセウ、先ヅ此點ハ後ニ委シク論辯スルコトニ致シマシ
テ、進ンデ此改正ノ爲ニ如何ナル關係ヲ官ノ文書及一般ノ文學ニ及ボシタカ
ト云フコトヲ一言申述ベマスデゴザイマス、御承知ノ通リ我國ノ詔勅法律ヲ
始トシテ官ノ文書ニハ皆一定ノ書キ方ガゴザイマス、ソレハ今私ガ申スマデ
モ無イコトデアリマス其書キ方ハ如何ニスルカト申セバ、苟モ公式令ヲ以
テ出ル所ノ官文書ト云フモノハ皆其假名遣ガ一定シテ居リマス、ソレハ如何
ニ一定シテ居ルカト云ヘバ、我ガ帝國憲法トソレカラ議院法ト云フモノノ假
名遣ニ據ルコトニナッテ、今日マデハソレデ來テ居ルヤウデゴザイマス、昨年
又兩院ノ事務局ト法制局トノ間ニ協議ガ成立チマシテ、用文例用字例ト云フ
モノガ出テ居リマス、其用字例モ要スルニ先ニ準據シテ居ッタモノト同ジデ
アッテ、少シノ違ヒデアリマス、唯法典ハチヨット假名遣ガ違ヒマスガ、ソレ
モ「其ノ」ノ「ノ」ヲ送ルカ送ラヌカ位ノ違ヒデ、大體ハ一致シテ居ルノデアリ
マスデ我ガ國民トシテ、立憲國ノ國民トシテ第一此詔勅、法令ヲ重ンジ、
則チ之ニ遵由シテ參ラヌケレバナラヌクハ申スマデモナイコトデゴザイマセ
ウ、然ルニ此文部省デ初メニ定ノマシタ所ノ此假名ニ於テハ「ワ井ウヱヲ」ノ
「井」ヲ除イテアル、「ワ井ウヱヲ」ノ「井」ノ字ハ諸君モ御承知ノ通リ帝國憲法
ヲ始メ其他ノ法律ニモ「用井」ト云フ場合ニハ「井」ノ字ガ用井テアルノデア
ル、ソレカラ又此「ソ井ウヱヲ」ノ「ヲ」ヲ除イテアル、此「ヲ」ノ字ハ御承知ノ
通リ天爾波ノ「ヲ」デアッテ最モ大切ナ「ヲ」ノ字デアル、今日一時間一刻タリ
トモ此「ヲ」ノ字無シニハ我〓ニハ行カレナイト云フホド大切ナ「ヲ」ノ字デア
ル、然ルニ之ヲ除イテアル、試ニ此帝國憲法ノ第一章ノ「天皇」ト云フ所ニ就
イテドレダク違ッタコトガアルカト云フト、僅ニアノ一章ノ間ニ三十五箇所モ
違ッテ居リマス、デ併ナガラ此「ヲ」ノ字ノコトハ色ミナ歷史ガゴザイマシテ
初メニハ一日之ヲ取リマシタケレドモ、世論ガ喧マシイカラ、トウ〓〓さと
ノ字ヲ止メテ「ヲ」ノ字ニ直シテ仕舞ッタソレカラシテ又囂々ト世論ガ起ッテ
面倒ニナッテ來テ、今日デハタシカ其「ワ井ウヱヲ」ノ「ヲヘノ字ヲ使ッテアル、ソ
レデ「ヲ」ノ字ハ天爾波ノ場合ニハ使フト云フコトニナッテ居リマスヤウデゴ
ザイマス、斯ノ如ク始終動搖シテ居ッテモ兎モ角モ正シイ方ニスレバ宜イデ
スガ、其正シクナラナイモノガ澤山ニアリマスカラ、ソレハ後ニ私ガ委シク
申述べマス、ソレカラ又「ヱ」ノ字モソレモ削ッテ仕舞ッタ、此「ヱ」ノ字ノ如キ
ハ畫ト云フトキニハ「ヱ」ノ字ヲ書キマス、例ヘバ物ノ柄ト云フヤウナ時分ニ
ハ「エ」ノ字ヲ書クト云フコトハ古來決ッテ居ルコトデアル、ソレデ例ヘバ斧
ノ「エ」ト云フコトガアッタト見テ、其斧ノ「エ」ト云フトキニ若シ「ヱ」ノ字ガ書
イテアレバ、斧ノ畫ト云フコトハ明デアリ、又斧ノ「エ」ト云フトキニ「エト
云フ字ガ書イテアレバ、ソレハ斧ノ把手デアルト云フコトガ明ニナルト云フ
如ク、是ハ極近イ比喩ヲ以テ申シテモ、斯ノ如ク字ガ別ッテ居ルノデ、其意味
ガ判然スルノデアル、加之此古來ノ字音假名遣ト云フモノハ、全ク此取調ノ
トキニハ眼中ニ置カナカッタノデアル、何トナレバ此「威光」ト云フ「威」ハ是
ハ「井」ノ字デアル、ソレカラ「伊澤」ノ「伊」ハ「イ」デアル、是ガドチラモ之ヲ
皆「イ」ノ字ニシテ仕舞ッタノデアル、古來ノ字音假名遣ト云フモノハ決シ
テ是ハ國學者ヤ漢學者ガ物好キニシテ居ルモノデハナイ、而モ此應神ノ朝ニ
百濟カラ王仁ガ論語、千字文ヲ獻ジテ以來、二千六百有餘年間、種々ノ學者
ガ腦漿ヲ權ッテ〓究ヲシタモノデアル、是又今日ノ支那語ニ當嵌メテ見ル
ト皆是ハ密接ナル關係ガアルノデアル、例ヘバ「袁世凱」ノ「袁」ト云フ音ハソ
レハ「ユェン」デアル、ソレカラ煙リノ「煙」ノ字ハ是ハ「イェン」デアル、斯ノ如
ク餘ホド支那語トモ密接ナル關係ガ有ルノデアル、從來我〓ガ今日マデ用井
テ居ル字音假名遣ト云フモノヲ知ッテ居ッタナラバ支那語ヲ學ブ上ニドレホド
便利ガアルカ、斯ウ云フコトハ私ガ申スマデモナイ次第デアリマス、デ此支
那語ト云フモノハ諸君モ御承知ノ通リ今日デハ商業學校ニ大〓此科ヲ設ケ
ラレテ居ルノデアル、又將來東亞ノ經營ト云フヤウナコトニ就イテ如何ニ肝
要ナル位置ヲ占メテ居ルカト云フコトモ私ガ此所デ喋々ト申述ベルマデモナ
イコトデアリマスソレノミナラズ、苟モ此文明諸國ニ於テ鄰接國ノ言葉ヲ中
學以上ノ學科ニ加ヘヌト云フ所ハ我輩ハ之ヲ知ラナイ、例ヘバ佛蘭西ナラバ
獨逸語モ近來ハ中學以上ノ必修語ニ加ヘテアル、獨逸ナラバ佛蘭西語ハ無論
ノコト英語マデモ加ヘテ居ルト云フガ如ク鄰接國ノ國語ヲ中學以上ノ學科ニ
加ヘヌト云フコトハ殆ド文明諸國ニハ無イト言ッテ宜イノデアル、故ニ將來我
ガ〓育ガ進ムニ當ッテハ中學校以上ニハ必ズ此支那語ヲ加ヘナクテハナラヌ
時機ガ來ルト云フコトハ智者ヲ竢タズシテ測リ知ルベキコトデアラウト思ヒ
マス、ソレニモ拘ラズ此字音假名遣ト云フモノハ唯皆ナ取去ッテ仕舞ッタノデ
アル、一ツモ眼中ニ置イテ居ラナイ、當時ノ文部當局者ガ之ニ思ヒ及パナカッ
タト云フノハ、マダ〓〓無理ハナイト言ウテ宜イカ知リマセヌガ、今日ニ於
テ國語調査會ノ委員ナドガ之ニ重キヲ置イテ居ラナイ、決シテ此事ヲ〓究シ
テ居ラナイ、其證據ハ自分ガ加藤國語調査委員長ニ面會シテ支那朝鮮ノ今日
ノ現在ノ音ト字音假名遣ニ用井ル所ノ音韻ノ密接ナル關係ノアル所ヲ話シタ
所ガ、自分ハ初メテサウ云フコトヲ承知シタ、ソレデハ國語調査會ヘ出テ話
シテハドウダト云フヤウナ話ガアッタコトガアリマス、ソレヲ加藤委員長ガ
國語調査會ニ報告シタ所ガ、國語調査會ト云フモノハ其性、我國ノ國語ノミ
ニ關係シタ調査ヲスル所デアルカラ、左樣ナモノハ調査スベキモノデハナイ
ト云云コトヲ答ヘタ、實ニ如何デゴザイマセウ、年々一萬圓ノ國費ヲ以テ國
家ガサセテ居ル仕事ニ對シテ如何ニモ不忠實ト云フ誹ヲ免レヌノデハナイカ
ト思ハレル次第デアリマス、デ本員ガ說明スルマデモナク、謂ハユル棒引假
名ト云フモノハドウ云フモノデアルカト云フコトハ、御承知デアリマセウガ
從來ノ假名遣ニ依レバ「アウ」トカ「アフ」トカ「オヴ」トカ「ワウ」トカ書イテ皆
「オー」ト讀ンデ居ル、ソレヲ皆「オ」ノ下ヘ棒ヲ引張ッテ仕舞ハウト云フノデ
アリマス、「カウ」モ「カフ」モ「コウ」モ「クワウ」モ皆「コ」ノ下ニ棒ヲ引カウ
ト云フノデアリマス、此「カウ」ト云フノハ支那ノ字音デ「カグ」ニナル、ソレ
カラ「カフ」ト云フノガ「カプ」ニナリマス、「コウ」ト云フノハ「コグ」ニ「クリ
ウ」ト云フノハ「クォアグ」ニナル、皆今日ノ現在ノ音ニ關係シテ居ルノデア
リマス、今日マデノ通リノ字音假名遣ヲシサヘスレバ自然支那語ナドヲ學ブ
トキニハ大變、役ニ立ツノデアリマス、朝鮮ニ於テハ最モ朝鮮ノ國語ト日本
ノ國語ト、卽チ字音ナドノ點ニ於テハ最モ密接ナル關係ガアリマス、ソレハ
一々ココニ申述ベマセヌ、次ニハ此改正ヲ爲シマスルノニ文部省ハ如何ナル
手續ヲ爲シタカト云フコトヲ一ト通リ述ベマスデアリマス、明治三十三年ニ
小學校令ノ改正ガ出來、卽チ發布ニナッタ後ニ此字音假名遣竝ニ國語假名遣
ニ關スル所ノ問題ハ實ニ咄嗟ノ間ニ決定ニナッタノデアリマス、或ハ是ハ當時
ノ一二ノ局長ト次官ノ間カ何カデヤッテ仕舞ッタコトデハナイカト思ヒマス、
餘リ文部省ニ於テモ深イ詮議ノアッタコトトハ思ハレマセヌデアリマス、其當
時本員ハ高等師範學校長ノ職ヲ奉ジテ居リマシテ、此事ハ官報ニ出テ初メテ
知ッタノデアリマス、所ガ此謂ハユル二號表ト云フモノニハ字音假名遣國語
假名遣ニ反シマシテ重大ナルモノガ見エマシタ、是ハドウモ捨テ置ク譯ニイ
カナイ、兎モ角モ斯ノ如キ新シイコトヲスルナラバ先ヅ〓究シテ見ナケレバ
ナラヌ、適否ヲ研究シナケレバナラヌ、〓究スルノハ何所デスルカト言ヘバ
無論、高等師範學校デ、高等師範學校ニハ附屬小學校ガ設ケラレテアルカラ、
其附屬小學校デ、斯ノ如キ新シキ考案ニ付イテハ〓究セネバナラヌ場所デア
リマスカラ、卽チ〓授等ヲ以テ委員會ヲ組織シテ、サウシテ此調査ニカカッ
タノデアリマス、所ガ其當時ニ於テ〓授等ニモ非常ナ反對ガアリマシタ、殊
ニ反對ノアリマシタノハ棒引假名ニ付イテ非常ナ反對ガアッタノデアリマス、
併ナガラ文部省ガ之ヲ出シタ以上ハ自分ニ於テハドウシテモ是ハ一ツ適否ヲ
〓究シナケレバナラヌ職掌デアリマスカラ、反對ノアルニ拘ラズ、是非之ヲ
行フコトニシヤウト云フコトヲ、孜々トシテ調査ヲシテ居ッタノデアリマス、
然ルニ文部省ハ其調査ガ出來ルノモ何モ待タズニ三十三年ノ十一月ニハ〓
科書肆ニ命ジテ皆此假名遣ヲ改メサシタノデアリマス、サウシテ三十四年カ
ラシテ之ヲ强行シタノデアリマス、斯ノ如キ次第デアリマスカラシテ決シテ
文部省ニ於テ深ク考ヘテ能ク〓究ヲ積ンダモノデナイト云フコトハ明デアラ
ウト思ヒマス、ソレデ若シ斯ウ云フヤウナコトヲ將來爲シ得ルモノトシマシ
タナラバ實ニ危險至極ナモノデハナカラウカト思ヒマス、例ヘバ彼ノ羅馬字
問題ノ如キモ本院ニ於テハ更ニ建議案等モ見エマセヌガ、衆議院ニ於テハ此
羅馬字採用ノ建議ヲシタサウデゴザイマス、或ハ此筆法ヲ以テシテ行キマシ
タナラバ、此建議ノアッタヲ幸ヒ我〓ノ寢テ居ル間ニ我ガ〓育界ヲシテ羅馬字
國ニスルト云フコトモ出來得ヌデハナカラウト思ヒマス、實ニ私ハ捨置クベ
カラザル重大ナル問題デアルト考ヘマス、斯ノ如クニシテ此强行シタル謂ハ
ユル棒引假名其他ノ假名遣ト云フモノハ凡ソ六箇年ヲ經タ所ノ今日ニ至ッテ
如何ナル有樣デゴザイマセウカ、其事ハ私ハ後ニ申上ゲマスデアリマスソ
レデ斯ノ如キ手續デ兎モ角モ咄嗟ノ間ニヤッタトヨリ外ハ見ルコトハ出來マ
セヌ、此後ニ文部次官ニナリマシテ實行ノ局ニ當ッタ人ハ誰デアルカト云フ
ト梅法學博士デアリマス、梅法學博士ガ先月刊行ノ太陽、卽チ第十三卷ノ第
二號ニ載セタ一ツノ意見書ガアリマス、ソレヲ見マスト云フト梅博士ガ如何
ニ此實行ニ躊躇セラレタカ、如何ニ困難ヲ感ゼラレタカト云フコトハ誠ニ明
ニ見ラレルノデアリマス、故ニ其ノ中ノ極要用ナ所ダケヲ諸君ノ御許可ヲ請
ウテチヨット摘讀イタシマシテ御參考ニ供シタイト思ヒマス
この假名遣の問題は、明治三十三年に文部省が小學校令施行規則の中で、
字音假名遣の改正をいたし、其後引續いて、國語の假名遣にも改正を加へ
る必要がありとして、遂にその改訂案を拵へた、この問題は餘程重大な問
題で世間でも餘程喧ましいのである、私は國文學者でも無し、又從來この
問題を特に調べたことは少しも無い、併ながら、一體この國文學者が假名
遺の如き問題を自分等のみに定めることが出來ると心得て居るのが大間違
又世の〓育家が之を純然たる〓育の問題として、.考へて居るのも
である、
亦大間違である、夫故に我々の如き世間では、門外漢と思うて居る者も、
之れに喙を容れる權利があり尙義務があると思ふ
其アトヲ略シマシテ
尙私は特に此問題に付て意見を公けにする義務がある、その譯は明治三十
三年に小學校令施行規則を制定して頒布したのであるが、當時私は文部省
に這入つて恰も其省令を豫定の如く施行するや否と云ふ問題に逢著したの
である、當時省の内外に於て大分爭があつた爲め、或は此省令の施行を延
期した方が宜くは無いかと云ふ說も出たのである、然るに私は遂に之を施
行することゝしたのである、その理由は決して文部省の定めたるところの
字音假名遣を、全然贊成して居るのでは無い、贊成せざる點が頗る多いの
であるけれ共、此の如き問題は到底人々に依つて意見を異にすることを免
かれぬのであるから
アトヲ略シマシテ
甚しき害の無い限りは、之を施行した方が宜からうと思うたのである、然る
に當時は單に字音假名遣、卽ち漢字の音を假名にして書く場合に如何なる
假名を用ゐるかと云ふのが問題であつて、而もそれは小學校に於ける學問
上のみの問題であつた
ソレカラアトヲ略シマシテ
若し當時定めたる假名遣に不穩當なる點があるならば、後日之を改むるこ
とも出來るのであるから、兎に角その省令は施行して差支ないであらうと
いふ所から、遂に之を施行する事としたのである
斯ノ如キ態度デ梅君ナドハ實行サレタノデアリマス、抑〓文部省ノ官制ニ依
リマスレバ文部大臣ハ〓育學藝ニ關スル事務ヲ管理スルト云フコトニナッテ
居リマス、此國語字音ノ問題ノ如キモノハ之ヲ〓育事務ノ問題ト申セルモノ
デゴザイマセウカ、決シテ是ハ〓育事務ノ問題デハナイ、明ニ是ハ學說上ノ問
題デアル然ルニ文部大臣ハ如何ナル權能ニ依ッテ其改廢ヲ爲シ得ルモノト
考ヘラレルノデアリマセウ、斯ノ如キ事ヲ爲シ得ルモノトシタナラバ卽チ
文部大臣ハ學說ニ立入ッテ學問ノ神聖ヲ侵スト云フコトニナリハセヌカト思
ヒマス、或ハ文部省ニ於テハ是ハ舊來モ斯ノ如キ事ガアッタ、其慣例ニ依ッタ
ナドト云フコトヲ以テ强辯セラルルカモ知レマセヌガ、併ナガラ我〓ノ三十
餘年來、〓育界ニ於テ聞知スル所ニ據ッテ見テモ斯ノ如キ問題ヲ斯ノ如キ輕
卒ナル處斷ヲ以テ實行シタト云フ大臣ハ一人モ無イト思ヒマス、ドウゾ文部
大臣ニハ篤ト一ツ御辯解ニナラムコトヲ望ムノデアリマス、是ヨリ第二段ニ
移リマシテ聊カ陳辯イタシマス、文部省ハ其後、明治三十五年ニ至リマシテ
國語調査會ト云フモノヲ設ケマシタ、此國語調·査會ト云フモノハ先日モ澤
柳次官ノ言ハレタ如ク兩院ノ建議ニ依ッテ出來タ所ノモノデアリマス、ソ
レハ事實デアリマス、然ルニ此國語調査會ト云フモノガ如何ナルコトヲシ
テ居ルカト云フコトハ或ハ餘リ委シクハ諸君ニ於テ御承知ガ無カラウト存
ジマスカラ、私ノ此所デ申シ得ル限リ申シマス、國語調査會ハ四月ニ開カ
レマシテ五月ニ至ルマデノ間ニ僅ニ七囘ノ會議ヲ開キマシテ國語調査ノ方針
ト云フモノヲ議決シテ居リマス、其ノ第一ニハ如何ナル事ガアルカト云フト
「文字ハ音韻文字」其下ニホノグラフ」ト云フコトヲ括弧ニシテ「ヲ採用スル
コトトシ假名羅馬字ノ得失ヲ調査スルコト」ト云フコトヲ議決シタノデアリ
せき、此議決ハ或ハ輕ミシク見マスト何デモ無イヤウデアリマスガ、非常ナ
重大ナ議決デアリマス、如何トナレバ此議決ニ依ッテ漢字全廢ヲ議決シタ譯
デアリマス、漢字全廢ヲ議決シタト云フコトハ何デアルカト云ヘバ此所ニ「ホ
ノグラフ」ト云フ字ヲ入レテ···漢字ハ英語デ言ヘハ「イデイオグラフ」意義
ノ字デ、意義ノ字ト音ノ字ト二ツニ分ケテアル、其ノ「イデイオグラフ」漢字
ト云フモノヲ全廢スルト云フコトヲ此處デ議決シタノデアリマス、サウシテ
今日ニ至ッタノデアリマスカラ、先ヅ此議決ヲシテ、ソレカラ跡ハ道行キデ
アリマス、道行キノ爲ニ國語ヲ殆ド傷ツケ國語ノ語源ヲ紊スコトニ非常ニ力
ヲ盡シテ居ルト云フ事實ハ後ニ申述ベマス、而シテ又一部ノ〓育者等ノ言ヲ
聞イテ、從來ノ慣例ニ依ルモ差支ナイト前キニ決定シテ居ッタ所ノ「チ」ニ濁
リヲ打ッタ「ヂ」、「シ」ニ濁リヲ打ッタ「ジ」、「ツ」ニ濁リヲ打ッタ「ヅ」、「ス」ニ濁
リヲ打ッタ「ズ」、ソレカラ「カ」ト「クワ」是等ノ別ヲ廢シテ皆混同シテ仕舞ッタ
ノデアリマス、所デ如何ナル方針ニ依ッテ之ヲヤッタカト言ヒマスト、發音ノ
通リニスル、成ルタケ發音ノ通リニスルト云フ趣意デ是ハ一〓ニシタノデア
リマス、所ガ「チ」ニ濁リヲ打ッタ「ヂ」、「シ」ニ濁リヲ打ッタ「ジ」ト云フヤウナ
モノハ是ハ全ク反對ノコトヲシテ居ル、ナゼナラバ「ジ」ト云フ音ハ薩摩、
日薩隅、竝ニ九州ノ一部ニアルケレドモ他ニハ餘リハッキリトハ聽エナイ言
葉デアル、ソレニ拘ラズ皆此「シ」ニ濁ヲ打ッタ「ジ」ニ直シタ、我〓ガ使フハ
大〓「ヂ」ト云フ音ヲ使ッテ居ル、ソレニ拘ラズ「ジ」ト云フコトニシタ、ソレカ
ラ「ズ」ニシテモ水ノ「ミヅ」ト物ヲ見ナイトキノ「ミズ」トハハッキリ分ッテ居
ル、九州竝ニ四國アタリハハッキリ分ッテ居ル、ソレモ皆一ツニシテ仕舞ッタ、
「カ」ト「クワ」ノ如キハ全國殆ド東京ヲ中心トシテ或ル一部ノ東國ヲ除クノ外
ハ皆分ッテ居ル、奧羽ニ於テモ、九州ニ於テモ分ッテ居ル、四國中國皆分ッテ
居ルニ拘ラズ之ヲ一緒ニシテ皆「カ」ニ改メタ、斯ノ如キコトヲシテ此當初ノ
目的、卽チ〓授ヲ容易ニスルコトガ出來ルヤ否ヤ、若シ之ヲ以テ〓授ヲ容易
ニスルコトガ出來ルト云フナラバ、マダシモデアルケレドモ、決シテ出來ハ
シマスマイ、例ヘバ九州、或ハ日薩隅ノ方ノ人ハ「フジノヤマ」ト「フヂノハ
ナ」トチヤント分ケル、所ガ此子供ニ向ッテ「ジ」ト「ヂ」ト分ケテ居ルノヲ無
理ニ皆「シ」ノ字ニ濁リヲ打ッタモノニスル、是ニ於テ一ツノ困難ガアル、「ズ」
ト「ヅ」モ同ジコト、困難ガアルノミナラズ、今ノ所デ尋常小學ダケハ之ヲ使ツ
テ高等小學ニ至ルト云フト復タ其正シイ假名ニ直スト云フコトヲ言ッテ居ル、
ソレダカラ一.度、噓ノコトヲ强ヒテ〓ヘテ、ソレカラ今度復タ正シイモノニ
直ス、事ノ非常ニ容易ナラザルノミナラズ之ガ爲ニ生徒ノ信用ヲ失ッテ仕舞
フト云フコトニナリ、誰モ〓育ノ事ハ貴バヌヤウニナッテ仕舞フノデアル、
是ハ決シテ其〓育者等ノ望ンデ居ル所ノ〓授ヲ容易ニスルト云フコトニハナ
リマセス、ノミナラズ決シテ之ヲ統一シテ行クト云フコトニハ尙更ナラナイ
結果ニナリマセウト思ヒマス、ソコデ又一歩進ンデ來テ前ニハ漢字音ナドハ
皆棒引假名ニシタケレドモ棒引假名ニシテ置イテハ何分漢字音ノ言葉ト日本
語ノ區別ガ子供ニハ付カナイ、付カヌカラ子供ハ間違フ、是ハ無理モナイ話
デ、子供ニ是ハ漢字音ノ語源デアルトカ、是ハ日本言葉デアルトカ、サウ云フ
コトガ分ル筈ノモノデハ無イカラシテ、ドウモ段々困ッテ來タ、トウ〓〓此
棒引假名ヲ廢スルト云フコトヲヤッタノデアル、棒引假名ヲ廢シテ如何ニス
ルカト云フト、漢字音ニモ日本ノ言葉ニモ、ドッチニモ行ケルヤウナ統一シ
タモノヲ拵ヘタラ宜カラウト云フ考ヘ誠ニ御考トシテハ結構デアルケレド
千、ソレハ決シテ行カナイコトデアル、ドウ云フ風ニシタカト云フト、卽チ
棒引ノ棒ノ代リニ「アイウ」ノ三字ヲ使ッテ「エイ」「オウ」ト云フヤウニシテ棒
ヲ止メテ仕舞ッテ、ソレデ統一ガ出來ル、斯ウ云フ御考デアル、ソレカラ又例
ヘバ「ハヒフヘホ」ノ音ガ第二音以下ニ來タトキハ「ワイウエオ」ニ改メタ、例
ヘバ「オモヒ」ト書イテ「思ヒ」「思フ」ト我〓ハ思ッテ居ッタガ、ソレガ「オモイ」
トナッテ、物ガ重イノト人ノ思ヒト云フコトトノ區別ガ付カヌヤウニシテ仕
新作、斯ウ云フ趣向デアルト兎モ角モ統一ガ出來ル、統一ガ出來テ、ソレカ
ラ書クコトハ同ジデ澤山ナモノニ通用スルカラ、是ハ容易デアル、斯ウ云フ
風ニ考ヘタノデアル、其例ヲ申シテ見ルト例へバ「オウ」ト書イテ其一ト綴リ
デ「アウ」「アフ」「アヲ」「オウ」「オフ」ト云フヤウニ段々ヤッテ見ルト、今マデ十
五ダケ書分ケタモノヲ「オウ」ノ一ツデ書イテ仕舞フ、斯ウ云フコトニナルノ
デアリマス、國語音デ十五、字音デ五ツアリマス皆デ二十ダケノ場合ヲ唯
「オウ」ノ字ニ含マシテ仕舞フ、又「コウ」ト云フ一ト綴リデ以テ國語ノ八ツ、字
音ノ四ツダケヲ含ム、成ルホド簡單ニナッタヤウデス、一ツデ以テ十二ニモ
十五ニモ二十ニモ當ルカラ大變ニ書イタ上デ簡單デアルヤウデアルケレド
モ、併ナガラ是ハ同ジ言葉ノ中デ違ッタ意味ノモノヲ餘計含マスレバ、同音
異義ノ言葉ガ益〓殖ヱルト云フコトハ我ミガチヨット考ヘテモ誰ニモ分ルコト
デアラウト思ヒマス、卽チ其通リニ殖ヱテ來タ、ソレダカラ同音異義ノ言葉
ガ殖ヱレバ殖ヱルホド之ヲ理解スルコトガムヅカシクナル、故ニ書キ方ガ愈1
單一ニナレバ意味ハ益〓複雜シテ來ルノデ、語ノ理會ハ益〓困難ニナルト云
フノハ當然ノ問題デアル、併シ議論バカリデ申上ゲマスルヨリハ實地ノ例ヲ
御聽キニ入レタ方ガ御參考ニナラウト思ヒマスカラ、玆ニ此本ヲ持ッテ參リ
マシタ、卽チ此本ハ國語調査會ノ委員長カラシテ昨年文部省ニ向ッテ答申書
ヲ出シマシテ、其答申書ヲ出スト共ニ國語調査會デ調ベタ方針ニ依ッテ是マ
デノ言葉ヲ改訂シタ語彙ヲ作レト云フコトデ、其注文ニ依ッテ文部省ノ圖書
課デ拵ヘタ本デアリマス、ソレニ依ッテ見マスルト云フト實ニ同音異義ノモ
ノノ非常ニ多イト云フコトガ忽チ分リマスデアリマス、私ハ時ヲ費ヤシマス
カラ極僅カ申上ゲマスガ、斯ウ云フヤウナ譯デス、例ヘバ「イコウ」ト云フノ
ハ著物ヲ掛ケル衣桁モ這入ッテ居ル、休ム所ノ憩フト云フ字モ這入ッテ居ル、
人ノ死ンダ後ニ遺シタ遣稿、草稿デス、ソレモ這入ッテ居ル、ソレカラ御威
光ト云フ威光モ這入ッテ居ル、ソレカラ「エライイサヲ」ト云フ偉功モ這入ッテ
居ル、是ダケ皆這入ッテ居ル、是ガ若シ從來ノ假名遣ニシタナラバ衣ヲ掛
ケルノハ「イカウ」、休ムノハ「イコフ」、ソレカラ遺シタ草稿ハ「井カウ」、ソレ
カラ御威光ハ「井クワウ」デアル、エライ事ノ偉功ハ「井コウ」デアルト云フヤ
ウニ、チヤント書キ分ケノ出來ルモノデアル、ソレガ其通リ皆一〓ニナッテ
仕舞ッテ居ル例ヘバ「オウシ」ト云フ言葉ニシテモ「オウシ」ト書イテ物ヲ言
ハナイ啞者モ、ソレカラ物ノ多イト云フ「多シ」モ、ソレカラ天皇ノ軍ノ王師
モ、ソレカラ或ハモウ一步進ンデ男ノ牛ノ牡牛モ皆一〓ニナッテ仕舞ッテ
居ルソレカラ「カイチョウ」ト書イテ、佛樣ノ開帳モ、何カノ會ノ會長モ是
モ一〓ニナッテ居ル、ソレカラ例ヘバ「カビ」ト云フノハ誠ニ穢ナイ黴菌ノコ
トデアル、ソレカラ「クヮビ」ト云フノハ、ハデヤカナ立派ナコトデアル、ソ
レモ兩方トモ一〓ニナッテ仕舞ッラ居ル、斯ノ如キ例ヲ擧ゲレバマダ澤山アリ
マスガ略シマシテ、玆ニ最モドウモ奇怪ナ例ガアル、例ヘバ「トウ」ト書イテ
問答ノ答、卽チ今マデ「タフ」ト書イタ答デス、ソレカラ「トフ」ト云フノハ問
答ノ問ノ字ノ方デ聞ク方デアル、所ガ答ヘル方モ問フ方モ共ニ「トウ」ト云フ
コトニナッテ問ト答トハ一〓ニナッテ仕舞フト云フコトニナル、是ハ中〓澤山
ナモノデス、之ヲマア御參考ニ取ッテ御覽ニナッタラ私ガ玆デ千萬言費ヤスヨ
リハ遙ニ御一覽ガ宜カラウト思フ、ソコデ此頃或人ガ雜誌ニ書イタ文章ガア
ル私ノ拵ヘタ文章デハアリマセヌガ、斯ウ云フノデアリマス
コウリノコウリヤガ「コウリコウリ」トヨンデ、コウリノ
コウリヲシテテノタ
斯ウ云フノデアリマス、ドウデス諸君、御理解ガ出來マスカ、卽チ是ガ今度
ノ書キ方ダト斯ウ云フ風ニナル、ソレヲ私ガ從來ノヤウニ讀メバ
コウリノコホリヤガ「コホリコホリ」トヨンデ、コホリノ
コウリヲシテアルク
是ナンデス、從來ノ通リニ書ケバ何デモナイコトデアル、是ハ決シテ私ガ拵
ヘタノデハナイ或ル雜誌ニアッタノヲ見出シテ斯ノ如ク御目ニ掛ケタノデア
リマスソレデ是ハシカモ棒引論者ガ棒引ヲ主張スル爲ニ此文章ヲ出シタ
ノデアル、一度文部省ガ棒引假名ト云フモノヲ拵ヘタ爲ニ又紛雜ノ種ガ餘計
ニナッタノデ、今度矢張リ棒引ノ方ガ宜イト云フコトデ、棒引假名デ今度ノ
新定假名ヲ擊ツ爲ニ斯樣ナ例ヲ出シテ來タノテアル、益〓紛雜ヲ極メテ來タ
ト言ハナケレバナラヌ、ソコデ先刻中上ゲマシタ如ク此國語調査會ト云フモ
ノハ兩院ノ建議ニ依ッテ成立ッタモノデアリマスルカラシテ、其監視ノコトニ
付イテハ決シテ怠ルコトハ出來マスマイト思ヒマス、先日私ガ澤柳文部次官
ニ質問シマシタ時ニ斯樣ナコトヲ答ヘテ居ラルヽ
日本ノ國字、或ハ國語ト云フモノハ、ドウ云フヤウニ致サナケレバナラヌ
カト云フ問題ニ付キマシテモ··大體ニ於テハ其方針ヲ〓究シ得タノデア
リマス
卽チ前ニ私ノ申上ゲマシタ所ノ國語調査會ノ僅ニ七八囘ノ會デ漢字全廢ト云
フコトヲ決メタノガ卽チ此事デアラウト思ヒマス、我〓ハマダ今日マデハ果
シテ此國語調査委員會ノ說ヲ文部大臣ガ採用シタカセヌカト云フコトハ知ラ
ナカッタノデアルガ、此答デ見マスルト云フト文部省ハ卽チソレヲ採用セラレ
タト云フコトヲ玆ニ明ニシタノデアリマス、如何デゴサイマセウ、此漢字ヲ
全廢スル···漢字ヲ全廢シテカラニ唯今私ガ讀ンダヤウナ斯ウ云フ假名遣ヲ
以テシタナラバ是コソ實ニ國語ヲ破壞スルモノデハゴザイマセヌカ、私ハ外
ニ見樣ハアリマセヌ、若シ此漢字ヲ廢シテ仕舞ッテ斯ノ如キモノヲ以テ之ニ
代ヘルトシタナラバ、是ガ國語ヲ破壞スルモノデ無クテ外ニ何ガゴザイマセ
ウ、先日ハ言、聊カ奇矯ニ涉ッタト云フ御嫌モアッタカ知レマセヌガ、私ハ衷心
ヨリ質問シタノデアリマス、ソレデ若シ之ヲ文部大臣ガ採用シタモノナラバ
其當時ノ文部大臣ハ決シテ自分一個デ採用ハ出來ナカッタラウト思ヒマス、
斯ノ如キ大問題デアリマスレバ、之ヲ閣議ニ持出スハ無論ノコトナリ、尙ホ
進ンデ上奏モシ、又樞密院ニ御諮問ニモナリマシテ然ル後ニコソ是ハ決マル
ベキモノデアラウト思フノデアル、文部大臣ハサウ云フ手段ヲ取ラレタヤ否
ヤ、是ハキッパリト此次ニ御明答アラムコトヲ望ムノデアリマス、ソコデ文部
省ハ又斯ウ云フコトヲ言ウテ居ル今度拵ヘタ所ノ此假名遣ト云フモノハ唯
口語ニノミ用井ルノデアル、口デ話ス言葉ニノミ用井ルノデアル、シカモ之ヲ
小學校ノ四年級クラ井ニマデ用井テ、ソレカラ先キハ又文語ヲ〓ヘル、斯ウ云
フコトヲ言ウテ居ルノデアル、ソコデ若シ之ヲ口語ニ用井ルトスルナラバ、如
何ナル標準ニ依ッテ此口語ヲ定メタカト云フコトガ是ガ大問題デアル、我ガ國
民トシテハ先刻モ申ス如ク、第一ニハ憲法、議院法ヲ初トシテ諸般ノ法典法律、
竝ニ此立憲國ノ國民トシテハ貴衆兩院ノ帝國議會ノ議事ニ最モ重キヲ置カナ
クテハナラヌト云フコトハ申スマデモナイコトデアリマス、ソコデ其帝國議
會デ演說シタ所ノモノハ卽チ速記錄ニナッテ出マス、其速記錄ノ書キ方ト云フ
モノハ矢張リ根據ガ有ルノデアリマス、決シテ漫然トヤッテハ居リマセヌ、
明治二十二年ノ頃ニ高橋健三君ガタシカ官報局長ノ時デアリマシタ、其時ニ
此假名遣ノ法ヲ定メマシテ一般ニ出シタコトガアリマス、其法ニ依シテ今日モ
此速記錄ト云フモノハ出來テ居ルノデアリマス、其速記錄ハ取モ直サズ、國
民ノ最モ遵奉セニヤナラヌ大切ナルモノデアル、ソレト此度文部省デ拵ヘタ
所ノ口語ノ書キ方トガ一致スルヤ否ヤト云フコトヲ私ハ茲デ一言申上ゲナケ
レバナラヌ、誠ニ近イ例ヲ一ツ茲デ申上ゲマス、ソレハ當年ノ三月六日ニ牧
野文部大臣ガ此所デ····此演壇デ言ハレタ其言葉デ、速記デアリマス
馬屋原君ノ御尋ネニ御答イタシマス、郡制ヲ廢シマスニ付キマシテ、如何
ナル影響ヲ學校ノ事業上ニ受ケルカ、差支ナイカト云フ御話デアリマシテ、
此點ニ付キマシテハ當局ニ於キマシテ段々地方ノ情況ニ照シマシテ調査ヲ
遂ゲタノデアリマス、今正確ノ數ヲ申上ゲルコトハ出來兼ネマスルガ、凡
ソ郡立ノ學校ガ全國ニ九十有餘モアラウト考ヘマス、郡制ヲ廢シマシタ曉
ニハ之ヲ如何ニ處置スルカト云フコトニ付キマシテハ、實地調査シ且ツ內
務當局者ト打合セヲ致シテ居リマス次第デ、今日ノ所、現存イタシテ居ル
學校ハ大方存續シ得ル見込デアリマス、或ハ町村組合、或ハ縣ノ經濟ニ移
シ悉ク存續シ得ルヤ否ヤノ斷言ハ致シ兼ネマスケレドモ、〓育上ニ差支
ナイト認ムル點マデニハ存續ノ取扱ガ出來ル見込デゴザイマス、大體ニ於
キマシテハ、郡制ヲ廢シマシテモ差支ナイ見込デゴザイマス
僅カ是ハ十行ノ文デアリマス、デ其十行ノ中デ、シカモ十七箇所違ヒマス、
今度文部省ノ假名遣ニナレバ此中デ十七箇所直サナケレバナラヌ所ガ出來テ
來ルト云フ話ニナリマス、デ斯樣ナモノヲ我國民〓育ニ强フルノデアル、習
ッタ所デ何モナラヌ、憲法モ議院法モ分ラヌ、此議會ノ速記錄サヘモ當リ前ニ
イカヌト云フヤウナモノヲ國民〓育ニ强フルノハ、如何ニモ殘酷ナ話デハナ
イカト思ヒマス、ンコデ斯ノ如ク致シマシテ若シ此統一ノ目的ヲ達シ得ラレ
ルナラバデアリマスガ、其ノ統一ノ目的ハ逹セラレヌト云フノハ先刻申ス通
リナリ、卽チ高等小學ニ於テハ又文語ヲ習ッテ正シイ假名遣ヲ習ハナケレバ
ナラヌ、加之中學ニ至ッテハ無論デゴザイマス、舊來ノ假名遣ヲ學バヌケレ
バナラヌト云フコトハマルデ是ハ無駄コトデ····無駄コトヲサセラレルト
申サナケレバナラヌ、ソコデ今日小學校ヲ卒業シテ、サウシテ中學校ニ至ッテ
此假名遣ガ違フガ爲ニ泣イテ居ル生徒ハ全國何萬アルカ知レマセヌ、如何ニ
モドウモ殘酷至極デハゴザイマセヌカ、然ルニ文部省ハソレハ今ハサウデア
ル、今ハサウデアルガ今ニ是ハ其中學校ニマデ之ヲ用井ルノデアルゾト斯ウ
言ハレル、此中學校デ用井ルト云フコトニナリマシタナラバ、ソレコソ大變
ナ話デゴザイマセウ、デ試ニ此文部省デ出來マシタ語彙ニ照シテ見マスト
此語彙ハ大槻文彥ガ拵ヘマシタ卽チ言海ノ中カラ一萬四百有餘語ト云フモノ
ヲ採ッテ、其中デ七千ホド是ハ集メタモノデアリマス、ソレデ卽チ此大槻ノ語
彙ハ皆デ三萬五千語ホドアリマス、ソレデ三萬五千語ノ中デ一萬四百ナニガ
シト云フモノハ之ガ爲ニ變ヘラレルノデアリマス、卽チ是ガ國語破壞デナク
テ何デゴザイマセウカ、ソレデ併ナガラ、此問題ハ實ハマダ未定ニ···實行
シツツアルケレドモマダ實行ハシテ居ラヌノデアリマス、濟フベキ時ハ今日
デアリマス、今日ヲ措イテハ最早無イノデアリマス、曩ニ此棒引假名ヲ〓ヘラ
レタ所ノ生徒ノ數ハ何程アルカト云フト、先ヅドウシテモ一千萬餘デゴザイ
やっ、私ノ推測スル所ニ依レバ、卽チ此明治三十七年マデハ報〓ガアリマス
ルカラ實數ヲ述ベラレマスルガ、八九ノ二年ハ報〓ガゴザリマセヌカラ推測
ヨリ外アリマセヌガ、是ハ內輪ニ推測シテ見テ一千二百八十萬ホドノ人數ニ
ナリマス、一千二百萬餘ノ生徒ニ〓ヘタ其棒引假名ハ今日廢メルト云フ·
是ハ廢メテ仕舞フ、サウシテ跡ヲ如何ニスルカ、併シ私ハ此遲シト雖モ今日
廢ムルト云フコトニ氣ノ付カレタノハ誠ニ結構ダト思ヒマス、實ニ結構ダト
思フカラシテ決シテ改ムルニ吝ナラズ廢メラレルコトハ誠ニ宜シイカラシテ
是ハ大ニ賀スルノデアリマス、ガ併ナガラソレニ次グニ此改訂假名遣ヲ以テ
スルト云フコトニ至ッテハ是ハ恕スルコトハ出來ヌト存ジマス、此假名遣ト
云フモノハ唯今私ガ申シタダケデモ諸君ノ御判斷ハ思ヒ半バニ過ギルダラウ
ト存ジマス、ケレドモ是ハ決シテ永ク續クモノデハ無イ、若シ行ッタ所ガ永
ク續クモノデハ無イ、又サウスルト數千萬ノ生徒ヲ誤ルト云フコトニナル、
デ如何ニモドウモ殘酷至極ト私ハ申サヌケレバナラヌ、折角此棒引假名ヲ
改メラレルノハ結構デアルケレドモ、又ソレニ代フルニ之ヲ以テスルト云フ
ニ至ッテハ如何ニモ是ハ堪ヘ忍ブコトデナイト思ヒマス、デドウカ斷然此方針
ヲ改メマシテ、サウシテ其今日ノ國民ニ適當ナル所ノ假名遣ニスルト云フコ
トニ出デラレムコトヲ切ニ希望スルノデアリマス、デ斯クシテコソ初メテ國
家〓育ノ本旨ニ適ッテ來ルコトト申シテ宜カラウト存ゼラレマス、デ第三段ニ
移リマス、成ルホド先刻來申シタ通リ此國語假名遣ト云フモノハ高等〓育會
議ノ可決ハ多數ニハ違ヒナイ、高等〓育會議ノ決ヲ經タカラシテ今度ハ最早
行フヨリ外ナイト申サヌケレバナラヌ、デ之ヲ行フノハドウシテ行フカト云
フト、御承知ノ通リ文部省ハ國定〓科書ヲ出版スルコトノ職權ヲ持ッテ居リマ
ス、ダカラシテ國定〓科書ヘ持ッテ行ッテカラニ此通リ書イテヤレバ來年ノ四
月カラシテ是ハ行ハレルノデアリマス、此先キ何所デモ之ヲ廢ムルコトハ出
來ナイ、ト云フ有樣ニナッテ來ル、布告モ要ラナイ、···今日デハ布告モ要ラナ
イ、省令モ要ラナイ、勅令モ要ラナイ、何モ要ラナイ、唯其自分ノ方デ出ス國定
〓科書ニ此通リ書イテ、サウシテ是デ强行シテ行キサヘスレバ出來得ルノデ
アル、實ニ危險至極ト申サナケレバナラヌ、ガ併シ此所デ一ツ諸君ノ御聽キニ
入レテ置カナケレバナラヌコトハ高等〓育會議ノ決ヲ經タト云フガ、其決ハ
如何ナル有樣デアッタカト云フコトコソ、是ハ諸君ノ御參考ニナラウト思ヒマ
ス、デ本員ノ承リマスル所ニ依リマスルト、高等〓育會議ニ於テハ多數ヲ以テ
ハ決セラレタケレドモ併ナガラ有力ナル人ノ反對ガアッタト云フコトヲ聞イ
テ居リマス、其有力ナル人ト云フノハ如何ナル人デアルカト云フト、曩ニ文部
次官ノ職ヲ奉ゼラレタ二人ノ方デアリマス、卽チ本院ニ議席ヲ占メラレテ居
ラルル二人ノ方ハ、大ニ反對セラレタト云フコトニ承ッテ居リマス、而シテ實
行ノ局ニ當ッタ梅君ハ私ノ先キニ讀ンダ如キ意見ヲ公表シテ居リマス、ソレ
デ、ソレノミナラズ或ハ自分ノ聞誤リカハ存ジマセヌガ、確カダト思ヒマス、
現普通學務局長モ反對ノ意見ヲ述べタト云フコトモ聞イテ居リマス、ソレ
デ此可決トハ申スモノノ斯ノ如キ有力ノ反對ノアッタト云フコトハ、卽チ此案
ニ於テ大ニ不穩當ナルコトガアルト云フコトヲ證明シテ餘リアルト思ハレマ
スル、デ斯ノ如キ有樣ニ拘ラズ文部大臣ハ之ヲ斷行サレル考デアルヤウデア
ル、斯ノ如キ議決デアッテモ議決ハ議決ダカラ實行サレルト云ヘバソレ迄デア
ル併シ是ハ文部大臣ハ大ニ反省セヌナラスコトト存ジマス、大ニ反省セラレ
テ斷然其非ヲ改メラルルノガ誠ニ國家ノ爲ニ慶スベキコトデアリマス、玆
諸君ノ御許ヲ得マシテ先進國ノ例ヲチヨット御聽キニ入レタイト存ジマス、固
ヨリ是ハ御參考マデノコトデ引證スルト云フ次第デハゴザイマセヌガ、御承
知ノ通リ彼ノ先進國ニ於テモ此假名遣ノ問題、「スペルリング」ノ問題ハ屢問
題ニナッテ居ル、先年ハ獨逸ニ於テ問題ニナリ、其後ニ佛蘭西ニ於テモ問題ニ
ナリマシタ、佛蘭西ノハコンナ大蟾ナモノデハナイ、僅ノ改正ヲシヤウト思ツ
テ調査案ガ出來マシタ、ソレヲ「アカデミーフランシェー」、卽チ佛蘭西ノ學
士院ニ持出シタ、學士院デ非常ナル反對ヲ受ケテ是ガ消滅シマシタノデアリ
やっく、最モ近イ例ハ亞米利加ニアリマス、卽チ是ハ昨年ノ十二月十三日ノコ
トデアリマス、ソレハドウ云フコトデアルカト云フト、英國ニ有名ナル言語
學者ノヘンリースウヰートト云フ人ガアリマシテ、ヘンリースウヰート
ト云フ人ガ千八百八十一年ニ英語ノ綴リ方ヲ改メラルルコトニ就イテ一ツノ
意見ヲ發表シマシテ、今ヨリ二十五六年前ヨリ歐米ノ學者ガ餘ホド能ク〓究
セラレタノデアリマス、ソレヲ亞米利加ニ於テ採用スルガ宜カラウト云フコ
トニナリマシタノハ、數年前カラ「シンプリファイドスペリングボード」簡
易綴字局トデモ言ッタラ宜シイカ、サウ云フモノヲ拵ヘマシテカーネギーナド
ト云フ豪富ヲ始トシテ大ニ寄附金ヲ致シテ段々調査シタノデゴザイマス、調
査シタ結果、大統領ノルースヴエルトモ之ヲ贊成シマシテルースヴエルトガ
大統領ノ力ヲ以テ實行シヤウト云フコトヲ企ッタノデアリマス、ソレデ其第
一ニ昨年ノ夏頃ニ亞米利加ノ官報局長ニ命令ヲシマシラ、總テ此官報局ヨリ
出ル所ノ文書ト云フモノハ皆此綴リニ據レト云フコトヲ決メタノデアリマ
ス、ソレデ官報局長ハ其通リ實行イタシマシタ所ガ、第一ニ反對ノ出タノハ
司法部カラ出マシタ、卽チ「シユープリムコート」、高等法院ニ於テ決シテ
是ハ用井ルコトハナラヌト云フコトヲ決定シタノデアリマス、昨年ノ十二月
ニナリマシテ國會ヲ召集シマシタ所ガ、國會議員ヨリ非常ノ反對ガ出マシタ、
ソレデトウ〓〓昨年ノ十二月十三日ニ至ッテ大統領モ已ムヲ得ズシテ其命令
ヲ撤囘シタノデアリマス、命令ヲ撤囘シテサウシテ總テ此官報局ヨリ出ル所
ノ官文書ハ皆從來ノ綴リニスルト云フコトニ決定シタノデアリマス、此案ノ
如キハ而モ有名ナル言語學者ノヘンリースウ井ートノ立案デアル、又其外
ニ有名ナル學者タチガ澤山贊成ヲシテ、數年ノ間〓究ニ〓究ヲ重ネ、サウシテ
出シタノデアル、其言葉ノ數モ幾ラデアルカト言フト僅ニ三百語、三百語デ
アルケレドモ三百語ノ中ノ半分ダケト云フモノハ最早世ノ中デ大〓モウ用井
來リツツアル所ノ言葉デアリマス、ソレニモ拘ラズ唯今申シタ如キ結果ニナッ
テ、トウ〓〓是ハ行ハレヌト云フコトニナッタノデアリマス、是マデ世界先進
國ニ於テモ澤山斯ノ如キ例ハアルニモ拘ラズ成立タナイ、斯ウ云フコトニモ
拘ラズ文部大臣ハ之ヲ實行セラレル考デアルヤ否ヤ、若シ之ヲ實行セラルル
トシタナラバ恐ラク是ハ文明國ニ於テハ世界無比デアラウト思フ、强ヒテ其
例ヲ求メタナラバ支那ノ秦ノ始皇帝ガ書ヲ焚キ儒ヲ坑ニシタヨリ外ニハ無カ
ラウカト思ヒマス、斯ノ如キモノデアルニモ拘ラズ、文部大臣ハ之ヲ實行セ
ラルル考デアルヤ否ヤ、ドウゾ明確ニ御答辯アラムコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=7
-
008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ議事日程ニ移リマス、議事日程第一、
男爵藤村紫朗君請暇ノ件、是ハ病氣ニ付イテ本日ヨリ十日間ノ請暇デゴザイ
マス、許可イタシテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=9
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010・正親町實正
○伯爵正親町實正君 此際議事日程ヲ追加サレマシテ、明治三十九年度歳入
歲出追加豫算案ノ審査期限ヲ定ムル件ノ會議ヲ開カレムコトヲ希望シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=10
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011・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=11
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012・谷干城
○子爵谷干城君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 正親町伯爵ノ議事日程追加ノ動議ニ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、故ニ議事日程ハ追加サレ
マシタ
〔左ノ通牒文ハ朗讀ヲ經ザルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
(第三號)明治三十九年度歲入歲出總豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十年三月九日
衆議院議長杉田定
貴族院議長公爵德川家達殿発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=14
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015・正親町實正
○伯爵正親町實正君 此追加豫算ノ審査期限ハ本日ヨリ三日間ト致シタイト
考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=15
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016・中川興長
○男爵中川興長君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 正親町伯爵ノ審査期限ヲ三日間トスルト云フ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼プ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=18
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019・正親町實正
○伯爵正親町實正君 是ヨリ豫算會議ヲ開キタイト思ヒマスカラ、退席ヲ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 正親町伯爵ノ豫算會議ヲ開キタイト云フ要求ニ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第二、海港檢疫法中改正法律案、政府提
出、第一讀會ノ續、特別委員長報告
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經ザルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
海港檢疫法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
明治四十年三月七日
右特別委員長
伯爵〓棲家〓
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵〓棲家〓君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=22
-
023・清棲家教
○伯爵〓棲家〓君 此海港檢疫法中改正法律案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ申
上ゲマス、此委員會ハ兩度開キマシテ政府委員ノ辯明ヲ求メマシタシ、且又
法制局長官ノ出席ヲ求メマシテ、是又種々質問ヲシタ次第デゴザイマス、此
改正案ヲ政府ガ提出サレマシタノハ理由書ニゴザイマスカラ、皆サンガ御承
知ノコトト存ジマスルガ、近來恐ルベキ「ペスト」病ガ各地ニ流行イタスニ付
キマシテ此海港檢疫法中ニ於キマシテ缺クル所ガアリマスルガ爲ニ、此度此
改正法律案ヲ提出サレタノデゴザイマス、付キマシテハ委員會ニ於キマシテ
種々調査ヲ致シマシタガ、今日ノ此流行病ノ際ニ於キマシテハ此改正案ハ相
當ナルモノト認メマシテ、可決スベキモノト議了イタシタ次第デゴザイマス、
委員會ニ於キマシテハ何等ノ異議モ無ク全會一致ヲ以チマシテ可決スベキモ
ノト決シマシテゴザイマス、ドウカ皆サンニ於キマシテモ御贊成アラムコト
ヲ希望イタシマス、尙ホ斯ノ如キ簡單ナル法律案デゴザイマスカラ、ドウカ
讀會ヲ省略セラレマシテ議了アラムコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=23
-
024・黒岡帶刀
○黑岡帶刀君 讀會省略贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=24
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025・板倉勝達
○子爵板倉勝達君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=25
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026・大原重朝
○伯爵大原重朝君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=26
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027・高野宗順
○子爵高野宗順君 賛成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=27
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028・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=28
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029・柳原義光
○伯爵柳原義光君 贊成ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=29
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030・野宮定穀
○子爵野宮定穀君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=30
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031・野村素介
○男爵野村素介君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=31
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032・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=32
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033・前島密
○男爵前島密君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 〓棲伯爵ノ讀會省略ノ動議ニハ定規ノ贊成者ガ
アッタト認メマス、讀會省略ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス、原案御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第三、癩豫防ニ關スル法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、特別委員長報告
癩豫防ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
明治四十年三月五日
右特別委員長
伯爵廣澤金次郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵廣澤金次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=37
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038・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 唯今議題ニ上リマシタ癩病豫防ニ關スル法律案ノ特別
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告ニ及ビマス、本案ノ委員會ハ去ヌル五日ニ開
キマシテ、委員長及副委員長ノ互選ヲ結了シマシテ引續キ委員會ヲ開キマシ
テ.諸君ノ御手許ニ囘シテアリマスル報告通リ原案可決トナッタ次第デアリ
マス、委員會ニ於キマシテハ政府委員ノ委シキ說明モアリマシタシ、又委員
諸君ヨリ質問モ出マシテ、之ニ對スル政府ノ說明モアリマスルガ、是等ノ詳
細ノ點ニ至リマシテハ速記錄ガゴザイマスカラ、速記錄ニ讓リマシテ本員ハ
唯此大體ダケ申上ゲヤウカト考ヘマス、本案ノ提出サレタ理由ハ抑〓癩病ト
云フモノハ遺傳病ト云フコトニナッテ居リマシタガ、今日デハ歐羅巴ニ於テ
モ醫者ノ仲間ノ說モ一致シマシテ、傳染病ト云フコトニナリマシタ、併ナガ
ラ其傳染ガ他ノ虎列剌トカ若クハ「ペスト」ノ如ク傳播スルノガ猛烈デアリマ
セヌニ依ッテ今日マデ是ノ豫防ノ案モ無カッタガ、併ナガラ癩病ナルモノハ最
モ恐ルベク忌ムベキ病氣デ、傳染病ニハ違ヒナイト云フコトニナリマシテ、
是ガ豫防ヲスルハ必要ト云フコトデ本案ヲ提出サレタ次第デアリマス、デ此
癩病患者ニハ固ヨリ貧者モアリ又相當ノ資產ヲ持ッテ居ル者モアリマスガ、本
案ノ目的トスル所ハ政府ノ說明ニ依ルト、神社佛閣ニ浮浪徘徊スル者ヲ收容
シテ傳染ヲ防グト云フノガ目的デアルヤウニ政府ノ說明デアリマシタ、デ政
府ノ方ノ三十九年度ノ調査ニ依リマスルト全國ノ癩患者ガ三萬人クラ井ダサ
ウデ、其中一定ノ居所ガ無イ患者ガ、チヨット千一一百人ホドニナリマシテ、其他
ニ居所ヲ有シマシテモ是ノ療養ノ資力ノ無キ者ガアリマス、是等ヲ合セマス
ルト、チヨット、二千人ホド全國ヲ通ジテ、此法律案ガ通リマスルト公費ヲ以
テ相當ノ救助ヲシナケレバナラヌ者ガアルノデアリマス、ソレデ本案ガ通過
シマスルト此經費ノ點ニ於テ政府ノ說明ヲ求メマシタカラ、其點ダケヲ申上
ゲテ置キマス、前申ス如ク本案ノ第一ノ目的トスル所ハ貧者卽チ公費ヲ以テ
救助スベキ癩病者ト云フモノハ全國ヲ通ジテ先ヅ二千人ナラバ十分ノ見込デ
アル、此二千人ヲ沖繩縣ヲ除キマシテ、全國七箇所ニ收容所ヲ設ケマシテ此七
箇所ニ收容スルト云フ政府ノ計畫デアリマス其一箇所ノ新營費ガ三萬三千
圓ト見積ッテアリマスカラ、全國ヲ通ジマスルト新營ニ要シマスル費用ガ丁
度二十三萬圓バカリニナリマス、此二十三萬圓ノ新營費ハ國庫ニ於キマシテ
二分ノ一ヲ負擔シ、アトノ二分ノ一ハ各地方ノ負擔トスルノデアリマス、デ沖
繩縣ニハ別ニ一箇所ヲ設ケルノデアリマス、此一箇所ハ三千圓バカリデ、先
ヅ三十人クラ井收容スルコトノ出來ル收容所ヲ設ケマス、此沖繩縣ノハ全部
國庫ノ負擔トナルノデアリマス、ソレカラ此新營費デアリマセヌデ維持費、
卽チ經常費ハ府縣ヲ通ジマシテ全國收容所ノ經費ガ二十一萬圓ホドニナルノ
デアリマス、サウシテ其中六分ノ一、卽チ三萬五千圓ホドヲ國庫ノ負擔ニシ
マシテ、アトハ府縣ノ負擔ニナルノデアリマス、ソレカラ沖繩縣ノ分ガ四千
圓デ、是ハタシカ本員ノ記憶スル所デハ全部國庫ノ負擔トナルヤウデアリマ
ス、ソレデチヨット申上ゲテ置キマスガ、熊本縣ノ如キハ他所カラノ風來者ト
申シマセウカ、原籍ヲ有セザル者ガ澤山居ル爲ニ熊本縣ノ如キハ癩病患者ガ
多イト云フコトデアリマスガ、此本案ガ通過シマシテモ戶籍不明ナル患者ノ
費用ハ假令熊本縣ニ收容所ガアリマシテモ其收容所ニ收容シマスル患者ノ中
ノ戶籍不明ノ者ハ是ハ國庫ニ於テ經費ノ二分ノ一ヲ負擔スルト云フコトニナ
ルノデアリマス、斯ノ如キ案デアリマシテ質問ハ隨分アリマシタガ、修正ノ意
見ハ別ニ委員諸君カラ一モ出マセヌ、唯申上ゲテ置キマスノハ委員中ニ二三
人ノ諸君ヨリ希望ガアリマシタ、其希望ハ第一ハ此癩病者ト云フ者ハ殊ニ貧
者ニ於キマシテハ神社佛閣ニ出掛ケルノハ一ツハ神ニ信心シテ少シデモ自分
ノ病氣ヲ癒サウト云フ目的ガアル、故ニ一方ニ於テハ患者ノ安心ヲ圖リ、一方
ニ於テハ信仰ノ自由ト云フコトヲ重ンズルガ爲ニ、成ルベク收容所ニ於キマ
シテモ相當ノ信仰上ノ設備ヲスルカ、若クハ相當ノ地所ヲ限ッテ神社佛閣ニモ
參詣スルコトノ出來ルヤウニスレバ、之ニ越シタコトハ無イト云フ希望ガア
リマシタ、又モウ一ツハ收容所ノ設備ニ就キマシテ殆ド不治ノ病氣デゴザイ
マスカラ、此不治ノ患者ヲ收容スル以上ハ、成ルベク患者ノ滿足スルヤウナ設
備ニシテヤッタラ宜カラウト云フコトノ、マアー一三ノ希望ガアリマシタガ、別
ニ修正ノ意見モ出マセヌデ政府原案ノ通リ可決シタノデアリマス、ドウゾ諸
君ニ於カレマシテモ、委員會ノ決議通リ御賛成アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御議論モゴザイマセヌヤウデゴザイマスカ
ラ、採決ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=39
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040・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 別ニ御修正ノ意見モアリマセヌヤウデアリマスカラ、
讀會ヲ省略シテ直ニ確定議ニ移ラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=40
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041・金子有卿
○男爵金子有卿君 讀會省略ニ贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=41
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042・梅小路定行
○子爵梅小路定行君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=42
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043・本多副元
○男爵本多副元君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=43
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044・萬里小路通房
○伯爵萬里小路通房君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=44
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045・池田詮政
○侯爵池田詮政君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=45
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046・赤松則良
○男爵赤松則良君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=46
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047・柳原義光
○伯爵柳原義光君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=47
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048・石黒忠悳
○男爵石黑忠悳君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=48
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049・松平容大
○子爵松平容大君 贊成
〔其他「贊成」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 廣澤伯爵ノ讀會省略ノ動議ニハ定規ノ贊成者ガゴ
ザイマシタト認メマス、讀會省略ヲ可トスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス、原案御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第四、韓國森林特別會計法案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、特別委員長報告
韓國森林特別會計法案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報〓候也
明治四十年三月九日
右特別委員長
伯爵正親町實正
貴族院議長公爵德川家達殿
〔中島永元君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=53
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054・中島永元
○中島永元君 此法律案ノ委員長ハ正親町伯爵デアリマスガ、今豫算委員會
ニ出席ニナリマシテ御差支デゴザイマス、私ヨリ代ッテ本案ノ委員會ノ經過
竝ニ結果ヲ御報〓イタシマス、此委員會ハ一昨九日ニ一囘開キマシテ、段々
政府委員ニ就キマシテ質問モ出マシタシ、種々審査ヲ致シマシタ結果、遂ニ
原案ノ通リニ可決スベキモノデアルト云フコトデゴザイマス、此案ノ提出ニ
ナリマシタ趣意ハ、御承知ノ通リ昨年十月ニ日韓兩國ノ間ニ森林經營ニ關ス
ル共同約款ト云フモノガ締結ニナリマシタ、ソレニ基イテ此兩國政府間デ事
業ニ著手スルコトニナリマシテ斯ウ云フ法律案ガ提出ニナッタ譯デアリマス、
段々取調ベテ見マスルニ、隨分此韓國ノ鴨綠江豆滿江ノ森林ト云フモノハ中
〓廣大ナモノデアリマシテ、樹木モ多シ又種類モ多イシ、數百年殆ドウッチ
ヤッテアッタト云フ譯デ、中〓森林ニハ樹木ガ富ンデ居リマス、ソレデ此森林
ヨリ伐木ヲスル方法、又ハ收支ノ豫算等モ段々調ベテ見マシタ所ガ、隨分有
望ナ事業デアリマシテ、決シテ損失等ハ無イヤウニ認メマシテゴザイマス、
併ナガラ最初一二年ノ間ハ設備其外ノ爲ニ或ハ收入ハ無イカモ知レヌト云フ
コトデアリマスケレドモ、三年頃グラ井カラハ必ズ相當ノ收益ガ有ルト云フ
コトデアリマス、委員會ニ於テハ、是ハ損失等モ無イ事業ト認メマシテ一ノ
異見モ無ク本案ハ可決スベキモノト決定イタシマシテゴザイマス、此段御報
告ヲ致シマス、此法律案ハ四箇條ヨリ成立イタシテ居リマスケレドモ、事柄
ハ單純ナモノデ、且ツ明瞭デアリマス、又此法案ガ通過イタシマスレバ政府
ヨリ追加豫算ヲ提出ニナルサウデアリマス、隨分急イデ居リマスカラ、願ハ
クバ讀會ヲ省略シテ直ニ議決アラムコトヲ希望イタシマス、序デナガラ此動
議ヲ提出イタシマス、御贊成ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=54
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055・松本鼎
○松本鼎君 讀會省略ニ贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=55
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056・湯地定基
○湯地定基君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=56
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057・伊澤修二
○伊澤修二君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 伊澤君ハ何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=58
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059・伊澤修二
○伊澤修二君 讀會省略ニ贊成イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=59
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060・本多政以
○男爵本多政以君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=60
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061・淺野守夫
○男爵淺野守夫君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=61
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062・田中芳男
○田中芳男君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=62
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063・鍋島直柔
○子爵鍋島直柔君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=63
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064・富井政章
○富井政章君 贊成
〔其他「贊成」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 中島君ノ讀會省略ノ動議ニハ定規ノ贊成者ガアッ
タト認メマス、讀會省略ヲ可トスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス、原案御異存ナイト見テ
宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異存ナイト認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第五、印紙稅法中改正法案、衆議院提出、
第一讀會、通牒文ノ朗讀ハ省略シテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔左ノ通牒文及議案ハ朗讀ヲ經ザルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之
ニ傚フ〕
印紙稅法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
明治四十年三月二日
衆議院議長杉田定
貴族院議長公爵德川家達殿
印紙稅法中左ノ通改正ス
第三條約束手形ニ關シテハ一通毎ニ其ノ記載金高ニ應シ左ノ印紙稅ヲ納
ムヘシ
金高千圓以下ノモノ印紙稅五錢
金高五千圓以下ノモノ印紙稅十錢
金高一萬圓以下ノモノ印紙稅二十錢
金高二萬圓以下ノモノ印紙稅五十錢
金高三萬圓以下ノモノ印紙稅-圓
金高五萬圓以下ノモノ印紙稅二圓
金高十萬圓以下ノモノ印紙稅
七四圓圓
金高十萬圓ヲ超ルモノ印紙稅
第四條中「約束手形印紙稅二錢」ヲ削ル
附則
本法ハ明治四十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
非常特別稅法中約束手形及小切手ノ印紙稅ニ關スル規定ハ本法施行ノ日ヨ
リ之ヲ廢止ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=69
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070・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質問モゴザイマセヌカラ、次ノ議事日程ニ
移リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=70
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071・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第六、右議案ノ審査ヲ付託スベキ特別委
員ノ選擧、特別委員ノ選定ハ議長ガ致シテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=71
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072・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、直ニ其委員ヲ指名イタシ
やす、書記官長ヲシテ朗讀イタサセマス
〔太田書記官長朗讀〕
印紙稅法中改正法律案特別委員
伯爵柳原義光君子爵前田利定君男爵小澤武雄君
男爵德川厚君武井守正君柴田家門君
室田義文君小栗富治郞君下〓傳平君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第七ニ移リマス、關稅定率法輸入稅表中
改正法律案、衆議院提出、第一讀會
關稅定率法輸入稅表中改正法律案
右本院提出案及送付候也
明治四十年三月二日
衆議院議長杉田定
貴族院議長公爵德川家達殿
關稅定率法輸入稅表中左ノ通改正ス
二三棉子同〇、
附則
本法ハ明治四十年十月一日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=73
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074・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質問モ無イヤウデゴザイマスカラ、次ノ議
事日程ニ移リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第八、右議案ノ審査ヲ付託スベキ特別委
員ノ選擧、此特別委員ノ選定モ議長ガ致シテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、直ニ其氏名ヲ御報告ニ及
ビマス
〔太田書記官長朗讀〕
關稅定率法輸入稅表中改正法律案特別委員
伯爵柳澤保惠君子爵山口弘達君田邊輝實君
男爵本多副元君男爵長松篤業君馬屋原彰君
關〓英君橋本雄造君鳥越貞敏君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=76
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077・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第九ニ移リマス、戶籍法中改正法律案、
衆議院提出、第一讀會ノ續、特別委員長報告
戶籍法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決ス依テ及報告候也
明治四十年三月六日
右特別委員長
侯爵細川護成
貴族院議長公爵德川家達殿
〔富井政章君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=77
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078・富井政章
○富井政章君 今日ハ委員長ガ御差支デアリマスカラ、私ヨリ簡單ニ委員會
ノ經過竝ニ結果ヲ御報告イタシマス、委員會ハ去ル六日デアッタト思ヒマス、
一度開カレマシテ二三意見ノ陳述ガアッタ後ニ可決スルコトニナリマシタ
此案ハ衆議院ノ提出案デアリマシテ、初メハ數箇條ヨリ成立ッテ居リマシタ、
然ルニ衆議院ノ委員會ニ於テハ政府委員ノ意見モアッテ大抵皆削除セラレマ
シテ此一箇條ダケ殘ッテ本院ニ囘ッテ來タノデアリマス、此改正ハドウ云フコ
トデアルカト申スニ、或ル間違ヨリシテ本籍ヲ持ッテ居ナイ者ガアル、何所ニ
モ本籍ヲ持ッテ居ナイ者ガアル、或ハ之ニ反シテ複本籍ト申シテ本籍ヲ二箇
所ニ持ッテ居ル者ガアル、斯ウ云フ場合ニハ戶籍ヲ直サヌナラヌノデアリマ
ス、ドウシテ直スカト云フニ就籍···何所ニモ本籍ヲ持ッテ居ナイ者ハ就籍
ノ屆出ヲ爲スコトガ必要デアル、又籍ヲ二ツ持ッテ居ル者ハ除籍ノ屆出ヲ爲
サネバナラヌ、是等ノ屆出ハ誰ガスルカト申スニ、戶籍法第二百條ニ依レバ
戶主ガ裁判所ノ許可ヲ得テ爲スコトニナッテ居ル、然ルニ戶主ハ徒ニ怠ッテ或
ハ利害ノ關係等ヨリシテ其屆出ヲ爲サナイコトガアル、斯ル場合ニハ其一ツ
モ籍ヲ持ッテ居ナイ者、又ハ二重ニ籍ヲ持ッテ居ル者ハ戶籍ノ訂正ナキ爲ニ甚
ダ迷惑ヲ被ムル譯デアリマス、此場合ニハ戶主ヲ相手取ッテ訴ヲ起スヨリ仕方
ガ無カラウト思ヒマス、然ルニソレハ甚ダ手數デアル、至ッテ簡單ナ事柄ノ
爲ニ裁判所ニ起訴シテ裁判ヲ仰グト云フコトハ如何ニモ煩ニ過ギタコトデア
ル、ソレ故ニ此案ハ斯ル場合ニハ其當事者、卽チ籍ヲ一ツモ持ッテ居ナイ者、
又ハ二重ニ籍ヲ持ッテ居ル者ヨリ戶主ニ依ラズシテ自分ガ直ニ裁判所ノ許可
ヲ得テ戶籍吏ニ屆出ヲ爲スコトヲ得ルコトニシタイト云フ修正デアリマス、
誠ニ便宜ナ改正デアルト思ヒマシテ、委員會ニ於テハ一人ノ反對モ無ク可決
スルコトニナッタノデアリマス、唯斯ク決スルニ付イテハ一ノ希望ヲ述ベル
人ガアッテ、遂ニ其意見ハ委員會ニ於テ暗默ニ承認セラルルコトニナッタノ
デアリマス、ソレハドウ云フコトデアルカト申スニ、此修正ノ如キハ實質上
ヨリ言ヘバ誠ニ穩當ナ修正デアリマス、併ナガラ斯ノ如キ小サナ缺點ニ氣ガ
付ク每ニ一々單行法ヲ設ケテ現行法ニ改正ヲ加ヘルト云フコトハ甚ダ煩ハシ
イコトデアッテ、國民一般ニ是等ノ小サナ單行法ヲ皆知ッテ居ラナケレバナラ
ヌト云フコトニナッテ甚ダ不便デアルソレ故ニドウカ斯ノ如キ小サナ改正
ハ一ト纒メニシテ一ツノ單行法デ實行スルト云フコトニナリタイト思フノデ
アリマス、戶籍法ニハ澤山缺點ガアルノデアリマス、官報ヲ御覽ニナッテモ
各地ノ戶籍吏ヨリ始終司法當局者ニ伺ガ出テ居ル、多クノ事柄ニ付イテ司法
省ハ指令ヲナシテ戶籍法ノ解釋ヲ明ニスルコトニナッテ居リマス、ソレ故ニ戶
籍法ニハ澤山ナ不備缺點ガアッテ早晩改正ヲ要スルコトデアルト信ジマス幸
ニ目下司法省ニ於テハ民事ニ關スル法律取調委員ナドモ置カレテ居ッテ、競
賣法ナドニ就イテハ折角調査ヲ爲シツツアルト云フコトデアリマス、戶籍法
ニ就イテモ同一ノ調査ヲ爲ス考デアルヤ否ヤソレハ分リマセヌケレドモ、願
ハクハ戶籍法ニ就イテモ同ジ調査ヲ爲シ、數年ノ後ニハ戶籍法ニ於ケル改正
ノ點ヲ一括シテ一ツノ單行法ニシテ提出セラレムコトヲ希望スルノデアリマ
スサウシテ是カラハ斯ノ如キ小サナ點ニ一度一度氣ガ付ク每ニ特別法ヲ提
出スルト云フコトハ止メテ貰ヒタイト云フ、斯ウ云フ希望デアリマシテ、政府
委員ニ於テモ別段異議ハ無カッタヤウデアリマス、私ナドハ何卒サウ云フコト
ニナリタイト思フノデアリマス、ソレ故ニ條件付決議ト云フ譯デハアリマセ
ヌケレドモ、サウ云フ希望ヲ以テ委員會ニ於テハ此案ヲ可決シタ譯デアリマ
ス、極メテ簡單ナ案デアリマスニ依ッテ何卒讀會ヲ省略シテ直ニ委員會ノ決
議通リニ御決定アラムコトヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=78
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079・南岩倉具威
○男爵南岩倉具威君 讀會省略贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=79
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080・桑田熊藏
○桑田熊藏君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=80
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081・田中芳男
○田中芳男君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=81
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082・武井守正
○武井守正君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=82
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083・山口弘達
○子爵山口弘達君 贊成
〔其他「贊成」ト呼ブ者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=83
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084・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 富井君ノ讀會省略ノ動議ハ成規ノ賛成者ガアッタ
ト認メマス、讀會省略ヲ可トスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=84
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085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三分ノ二以上ト認メマス、原案御異存ゴザイマセ
ヌカ
[「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=85
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086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議無イモノト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=86
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087・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際諸君ニ御諮リ致シマスガ、議事日程第十ヨリ
第二十六マデハ皆請願會議デアリマスガ、一括シテ問題ト致シマシテ御異存
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經ザルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
意見書案
樺太島開發ニ關スル件
北海道小樽區花園町平民商辻〓太郞外百八十五名呈出
右ノ請願ハ樺太島開發ニ關スル施策一ニシテ足ラスト雖就中請願人等ノ實
驗ト本島内外ノ輿論ニ徵シテ考フルトキハ現下ノ最緊急事業ハ先ツ漁村ヲ
設置スルニアリ蓋シ樺太ニ於テハ農ヲ主トスヘキカ將漁業ヲ主トスヘキカ
ニ就テハ從來議論ノ存スルトコロナルモ本島ハ平原尠ナク氣候沍寒ニシテ
農期短ク到底農ニ適セス之ニ反シ漁業ニ至テハ其ノ有利ナル本島四百餘里
ノ長沿岸ハ到ルトコロ漁族ニ富ミ殊ニ大洋ニ面スルヲ以テ容易ニ收獲ノ減
スルコトナク世界中四大漁場ノ一ニ算セラルル程ニシテ良ク之ニ處スルノ
途ヲ得ハ數年ナラスシテ樺太沿岸ハ殷賑ナル漁村トナルヤ必セリ然リ而シ
テ其ノ組織者タル小民カ小資本ニ依リ生活ノ基礎ヲ立ツルニ足ル鰊刺網業
ヲ公許スルヲ肝要ナリトス此ノ鰊刺網ハ魚族ノ繁殖及他ノ漁業ニ對シテ妨
害ヲ與フルコトナクシテ其ノ收利莫大ナルヲ以テナリ尙且本島ノ如キ魚族
森林炭坑等ニ富メル寳庫ヲ開キテ之ヲ利用セムトセハ先ツ交通ヲ便ニスル
必要アルヲ以テ速ニ「ウラジミロフカ」「マウカ」間ノ鐵道敷設ヲ計劃セラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
利根川治水速成ニ關スル件
埼玉縣大里郡男沼村村長田中初外五百五名呈出
右ノ請願ハ利根川改修工事ノ中第三期計劃ニ屬スル當埼玉縣沿岸工事ハ尙
十箇年ノ後ナルヲ以テ其ノ間洪水ノ氾濫沿岸ノ埋沒堤塘ノ破壞等ノ爲生命
財產ノ安固ヲ保ツ能ハス且被害ノ復舊ニ要スル縣費モ亦莫大ニシテ到底堪
ヘサルトコロナルニ依リ第二期及第三期ニ屬スル工事ヲ第一期ノ計劃ニ繰
上ケ十箇年ノ繼續事業トシテ之ヲ速成セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
森林法中改正ノ件
群馬縣前橋市新町平民商江原桂三郞外六十六名呈出
右ノ請願ハ近來工業ノ勃興產業ノ發展ニ伴ヒ森林濫伐ノ弊行ハレ爲ニ灌漑
用水ノ缺乏及洪水氾濫ノ被害漸次甚シキヲ加ヘタルニ依リ之ヲ救濟スル爲
ニハ其ノ水源地ニ造林ヲ盛ニシ保安林輪伐ノ方法ヲ奬勵スルノ要アルヲ以
テ該事業ヲ保護シ且其ノ遂行ヲ容易ナラシムル爲明治三十年法律第四十六
號森林法第五十六條中二十五箇年以內トアルヲ「喬林ハ五十箇年以內中林
ハ三十箇年以内矮林ハ二十箇年以內」ト改メラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
登錄稅法中改正ノ件
群馬縣前橋市新町平民商江原桂三郞外六十六名呈出
右ノ請願ハ曩ニ政府ハ時宜ニ鑑ミ戰後經營トシテ郡市町村基本財產ヲ作成
スル爲ニ造林ヲ奬勵セラレタルモ森林經營ハ當初ノ勞費多大ニシテ其ノ利
益ヲ收ムルハ數十年ノ後ナルヲ以テ十分之ニ保護ヲ與ヘ其ノ經費ヲ輕減セ
シムルコトニ努ムルハ至當ノ事ナリ且郡市町村カ基本財產トシテ造林ヲ爲
スハ間接ニハ水源涵養洪水防止ノ效アルモノニ付キ之ヲ公用ニ準シテ登錄
稅ヲ免除セラレ尙其ノ他原野及荒蕪地ヲ開墾シテ桑園ヲ造リ蠶業ノ經營ニ
資シ牧場ヲ設ケテ畜產ノ發達ヲ計ルハ孰レモ國本培養上必要ナルモノナレ
ハ同樣ニ登錄稅ヲ免除セラルル爲明治二十九年法律第二十七號登錄稅法第
十九條第二號公用ニ供シノ下ニ「又ハ市町村若クハ公立小學校ニ於テ殖產
ノ爲基本財產ニ供」ノ二十六字ヲ挿入セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
利根川河身改修速成ノ件
群馬縣前橋市新町平民商江原桂三郞外六十六名呈出
右ノ請願ハ利根川河身改修工事第三期計劃ニ屬スル取手町ヨリ沼ノ上ニ至
ル工事ハ尙十箇年ノ後ナルモ從來利根川ハ其ノ水源地ニ於ケル設備不完全
ナルカ故ニ每年出水ノ爲ニ被ル沿岸人民ノ慘害ハ漸次甚シキヲ加フルノミ
ナラス之カ流域ニ沿ヒタル各府縣ノ治水及堤防修築ニ要スル費用ノ增加ハ
實ニ甚シク地方產業ノ衰微ヲ來スヘキヲ以テ如斯緩慢ナル計劃ニ放任シ置
クコト能ハサルハ明カナルニ依リ其ノ速成ヲ期セムカ爲第二期第三期ノ計
劃ヲ一括シテ千葉縣佐原町ヨリ群馬縣佐波郡芝根村大字沼ノ上ニ至ルマテ
ヲ一區域トシ渡良瀨川ヲモ編入シテ第一期間ノ計劃ト改メ起工セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家逹
內閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
根室鐵道速成ノ件
北海道根室郡根室町士族加藤秀男外十九名呈出
右ノ請願ハ本道ノ西南部ハ移民日ニ增加シ產業月ニ旺盛ナルニ東北部ノ之
ニ反スルハ實ニ交通機關ノ不備ナルニ因ル蓋シ東北部ハ海陸ノ天產物ニ富
ミ殊ニ廣漠タル原野ハ幾多ノ移民ヲ招徠シテ耕耘牧畜ヲ爲サシムルニ餘リ
アリテ將來有望ノ地タルノミナラス千島列島ノ開發東察加、樺太ニ對スル
經營ノ上ヨリ觀ルモ其ノ開拓發展ハ刻下ノ急務ナルヲ以テ根室釧路間ノ鐵
道ハ明治四十年度ヨリ之カ敷設ニ著手セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
平戶區裁判所御厨出張所設立ノ件
長崎縣北松浦郡御厨村農長島寛員外百十三名呈出
右ノ請願ハ當御厨村ハ元御厨、大崎、田代ノ三箇村ヨリ成ル本郡北部ノ大
村ニシテ之ニ星鹿村ヲ加フルトキハ地域廣大トナリ且土地肥沃ニシテ人口
夥多產物豐富其ノ他諸般取引ノ頻繁ナルニ拘ラス區裁判所出張所ノ設ナキ
カ爲登記事件ハ非常ニ澁滯シ其ノ結果商工業ノ不振ヲ來スコト甚シキヲ以
テ速ニ御厨村ニ平戶區裁判所出張所ヲ設置セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家逹
內閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
電線架設ノ件
長崎縣北松浦郡御厨村農長島寬員外百十三名呈出
右ノ請願ハ請願人等ノ地方ハ地域廣大人口多數ニシテ殊ニ海產物ノ如キハ
本郡第一ト稱セラレ近來水陸ノ交通運輸頻繁ニシテ電信ニ依リ諸般ノ用務
ヲ辨スルモノ益〓多キヲ以テ速ニ御厨村ニ電線ヲ架設セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家逹
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
渡良瀨川河身改修ニ關スル件
栃木縣足利郡足利町士族公吏長祐之外千四百七十五名呈出
同縣安蘇郡植野村平民農木塚泰藏外百十七名呈出
群馬縣邑樂郡伊奈良村平民農山岸淳三郞外百三十三名呈出
右ノ請願ハ其ノ陳述スルトコロ多少ノ差異アリト雖要スルニ渡良瀨川ハ足
尾銅山ノ鑛業盛ナルニ伴ヒ河底埋塞シテ水流通セス其ノ結果洪水氾濫シテ
浸水區域擴張シ年年湛水ノ患ニ困ミツツアル當郡等ノ如キハ遂ニ到ルトコ
ロ廢田トナリ了ルヘキヲ以テ利根川河身改修工事第二期ノ設計中ニ其ノ支
流タル渡良瀨川ヲ編入シ之ヲ速成セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
渡良瀨川沿岸特別地價修正漏再修正ノ件
群馬縣邑樂郡富永村平民農新井平次郞外百九十五名呈出
右ノ請願ハ請願人等ノ地方ハ渡良瀨川沿岸中激甚ナル鑛毒被害地ナルニ拘
ラス其ノ上流下流ノ灌漑地殊ニ比較的被害ノ程度尠ナキ隣村ノ如キモ明治
三十七年法律第十六號ニ依リ皆地價修正ヲ得タルニ獨リ本村ハ其ノ修正ニ
漏レタルヲ以テ齊シク特別地價修正ヲ受ケタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
鑛毒被害地地價修正漏地價再修正ノ件
群馬縣新田郡鳥之郷村平民農石倉淺太郞外十三名呈出
右ノ請願ハ請願人等ノ地方ハ鑛毒被害地ナルヲ以テ曩ニ明治三十七年法律
第十六號ニ依リ特別地價修正ヲ施サレタルモ只其ノ一小部分ニ止リ他ニ尙
未修正ノ田地段別多キヲ以テ再調査ノ上齊シク之カ恩典ニ浴セシメラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
鑛毒被害地地價修正ニ對シ再修正ノ件
群馬縣新田郡鳥之郷村平民農石橋類一郞外三十七名呈出
同縣同郡强戶村平民農大谷八五郞外四十六名呈出
右ノ請願ハ其ノ陳述スルトコロ多少ノ差異アリト雖要スルニ請願人等ノ地
方ハ鑛毒被害地ナルヲ以テ明治三十七年法律第十六號ニ依リ地價修正セラ
レタルモ之ヲ下流ニ在テ被害ノ程度比較的輕少ナル地方ニ比スルトキハ大
ニ權衡ヲ失スルヲ以テ再調査ノ上公平ナル地價修正ノ恩典ニ浴セシメラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家逹
內閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
渡良瀨川沿岸地方特別地價再修正院議實行ノ件
群馬縣山田郡韮川村平民農高橋千代造外八十六名呈出
右ノ請願ハ當渡良瀨川ノ沿岸ナル群馬縣山田郡韮川村毛里田村矢場村休泊
村ハ明治三十七年法律第十六號ニ依リ〓ネ下級ノ等級ヲ以テ地價修正セラ
レタリト雖之ヲ下流ノ隣村ニ比スルトキハ尙權衡ヲ失スルノミナラス畑地
ニ屬スル分ハ未タ全ク修正セラレサルヲ以テ明治三十八、九兩年ニ帝國議
會ニ請願シ幸ニ可決セラレタルモ未タ其ノ實行ヲ見サルニ依リ速ニ調査ノ
上再修正ノ恩典ニ浴セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
酒田新莊間鐵道速成ノ件
酒田商業會議所會頭白崎善吉呈出
山形縣飽海郡鵜渡川原村平民農水越權之助外二百十四名呈出
右ノ請願ハ新莊酒田間ノ鐵道敷設ハ文化ノ增進地方產業ノ發達ヲ促スノミ
ナラス早晩敷設ノ計劃ヲ見ルヘキ越羽沿岸鐵道ト奧羽南北線トノ連絡ヲ保
ツヘキ樞要ノ線路ニシテ且國防上忽諸ニ付スヘカラサルモノナルヲ以テ該
線路ヲ鐵道敷設法中ノ第一期線ニ繰上ヶ速ニ起工セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家逹
內閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
越羽沿岸鐵道速成ノ件
酒田商業會議所會頭白崎善吉呈出
山形縣飽海郡鵜渡渡川原村平民農水越權之助外二百十四名呈出
右ノ請願ハ新潟縣新發田ヨリ山形縣鶴岡酒田ヲ經テ秋田縣秋田ニ至ル越羽
沿岸鐵道ノ敷設ハ曩ニ豫定線ニ編入セラレタルモ其ノ敷設ノ時期未タ確定
セス而シテ該線路ノ敷設ハ實益上及戰後經營上現下ノ最大急務ナルニ依リ
之カ速成ヲ計ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモ
ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十年月B
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
船形酒田間鐵道速成ノ件
山形縣酒田町町長池田藤八郞呈出
右ノ請願ハ奧羽本線ヨリ分岐シテ山形縣船形ヨリ同縣酒田ニ至ル鐵道ハ旣
ニ豫定線ニ編入セラレタルモ酒田ハ東北有數ノ港ニシテ新潟秋田ノ中央ニ
位シ啻ニ地方產物ノ集散地タルノミナラス北海道以北及新潟、秋田兩縣ト
商業上密接ノ關係ヲ有スルヲ以テ一度該鐵道ニシテ開通セラレムカ忽チ各
地方ノ發展ヲ促スハ勿論早晩敷設セラルヘキ越羽沿岸鐵道ノ工事ニ至大ノ
利便ヲ與フルモノナルニ依リ他ノ豫定線ニ先チ起工セラレタシトノ旨趣ニ
シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依リ別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣侯爵西園寺公望殿
意見書案
宮津福知山間鐵道急設ノ件
京都府與謝郡宮津町平民醫師中川雄齋外二百九十八名呈出
右ノ請願ハ宮津港ハ十餘年前既ニ特別輸出港トセラレタルモ鐵道ノ敷設ナ
キ爲水陸ノ連絡ヲ闕キ實際上商港タル利益ヲ世人ニ與フルコト能ハス然レ
トモ一度其ノ敷設ヲ見ルニ至レハ南北海岸ヲ貫通シテ京阪諸地方トノ運輸
交通ヲ盛ムニシ延テ日本海ノ諸港ハ勿論沿海州及滿韓ノ諸港トノ通商貿易
ニ利便ヲ與フルヲ以テ宮津港ヲ純然タル貿易港トセラレ而シテ宮津福知山
間凡二十哩或ハ宮津下川口間凡十六哩ノ鐵道ヲ速ニ敷設セラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
明治四十年月日
貴族院議長公爵德川家逹
内閣總理大臣侯爵西園寺公望殿発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=88
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089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第十ヨリ第二十六マデ請願ハ皆請願委員
長報告ヲ採擇シテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=89
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090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイモノト認メマス、是デ本日ノ議事ハ終
リマシタ、次ノ議事日程ハ決定次第御通知ニ及ビマス、本日ハ是デ散會ヲ致
シマス
午後零時三分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002303242X01119070311&spkNum=90
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