1. 会議録本文
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000・会議録情報
明治四十一年二月八日(土曜日)
午前十時七分開議
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議事日程 第四號 明治四十一年二月八日
午前十時開議
第一 子爵山内豐誠君請暇の件
第二 酒造税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第三 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第四 酒精及酒精含有飮料税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第五 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第六 麥酒税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第七 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第八 砂糖消費税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第九 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十 石油消費税法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十一 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十二 關税定率法輸入税表中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十三 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十四 監獄法案(政府提出) 第一讀會
第十五 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十六 刑法施行法案(政府提出) 第一讀會
第十七 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第十八 印紙犯罪處罰法案(政府提出) 第一讀會
第十九 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第二十 裁判所構成法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二十一 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第二十二 裁判所構成法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二十三 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第二十四 裁判所構成法施行條例中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二十五 右議案の審査を付託すへき特別委員の選舉
第二十六 間接國税犯則者處分法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致シマス
〔河井書記官朗讀〕
去ル一月三十一日本院ニ於テ議決シタル政府提出國有林野法中改正法律案
ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
同日間接國稅犯則者處分法中改正法律案特別委員會ニ於テ當選シタル正副
委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長伯爵柳原義光君副委員長男爵野田豁通君
同日各常任委員分科會ニ於テ當選シタル主査ノ氏名左ノ如シ
豫算委員
第三分科主査男爵石黑忠悳君第四分科主査子爵曾我祐準君
決算委員
第一分科主査男爵佐野延勝君第二分科主査子爵鍋島直彬君
第三分科主査男爵野田豁通君第四分科主査辻新次君
去ル一日政府ヨリ左ノ決算及檢査報告書ヲ受領セリ
明治三十八年度歲入歲出總決算
明治三十八年度各特別會計歲入歲出決算
明治三十八年度歲入歲出決算檢査報告
去ル四日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
酒造稅法中改正法律案
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
麥酒稅法中改正法律案
砂糖消費稅法中改正法律案
石油消費稅法案
關稅定率法輸入稅表中改正法律案
去ル五日委員長ヨリ間接國稅犯則者處分法中改正法律案可決報告書ヲ提出
セリ
同日東京都制案、千代田縣設置ニ關スル法律案、東京都千代田縣組合法案
特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長侯爵德川賴倫君副委員長小松原英太郞君
大寳陣君
同日貴族院令第一條五項ニ依リ貴族院議員ニ任セラル
同日左ノ政府提出案ヲ受領セリ
監獄法案
刑法施行法案
印紙犯罪處罰法案
裁判所構成法中改正法律案
裁判所構成法中改正法律案
裁判所構成法施行條例中改正法律案
一昨六日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
明治四十年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)
日本大博覽會出品外國貨物免稅ニ關スル法律案
府縣制中改正法律案
沖繩縣ノ負擔及國庫補助ニ關スル法律案
學校及圖書館資金所屬土地賣却代金ヲ一般會計ニ繰入ルル件ニ關スル法
律案
韓國ニ於ケル鐵道用品資金會計ニ關スル法律案
造幣局据置運轉資本增加及設備擴張費ニ關スル法律案
同日衆議院ヨリ左ノ同院提出案ヲ受領セリ
衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員選擧法中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此度愛知縣ニ於テ當選セラレマシタ大寶陣君ノ部
屬ヲ第三部ニ編入イタシマシタ、同君ノ席次ハ森廣三郞君ノ次席ト確定イタ
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、議事日程第一、子
爵山內豐誠君請暇ノ件、是ハ病氣ニ付キ五週間ノ請暇デアリマス、許可ヲ致
シマシテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマスカラ許可ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=4
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005・岡部長職
○子爵岡部長職君 衆議院カラ送付ニナリマシタル明治四十年度歲入歲出總
豫算追加案第一號、此案ハ至急審査ヲ要スベキ案ト考ヘマスルカラ、議事日
程ヲ變更サレテ此際ニ於キマシテ審査期限ヲ定ムルコトニ致シタイト考ヘマ
ス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 岡部子爵ノ議事日程變更ノ動議ニ賛成ガアッタヤ
ウデアリマスカラ採決イタシマス、岡部子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、議事日程ハ變更サレマシ
タ
〔左ノ通牒文ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
(第一號)明治四十年度歲入歲出總豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十一年二月六日
衆議院議長杉田定一
貴族院議長公爵德川家達殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=7
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008・岡部長職
○子爵岡部長職君 本豫算追加案ハ速ニ審査ヲ濟マセタイト存ジマスルノ
デ、審査結了次第速ニ報告ヲ致スト云フコトデ議決ヲ願ヒタイト存ジマス、
而シテ議決ニナリマシタ以上ハ本日直ニ委員會ヲ開キタイ考デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=8
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009・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 審査期限ヲ今日ニ致スト云フコトニ贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 岡部子爵ニ伺ヒマスガ、一審査期限ハ調査出來次第
ト云フコトデ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=10
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011・岡部長職
○子爵岡部長職君 唯〓申上ゲマシタ通リ調査出來次第ト云フコトニ致シマ
シテ、議決ニナリマシタ上ハ直グサマ委員會ヲ開キマス考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) サウ致シマスルト若シ岡部子爵ノ動議ガ可決サレ
マシタナラバ、直ニ豫算委員會ヲ開キタイト云フ御請求ガアル譯デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=12
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013・岡部長職
○子爵岡部長職君 左樣デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 岡部子爵ノ動議ノ通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイ認メマス、續イテ岡部子爵ノ希望通リ
豫算委員會ヲ開ク爲ニ豫算委員ノ退席ヲ許シテ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、御退席ニナッテ宜シウゴ
ザイマス、諸君ニ御諮リヲ致シマスガ、議事日程ノ第二、第四、第六、第八、第
十、第十二、是ハ政府ノ說明ハ一括シテ宜カラウト考ヘマスガ如何デゴザイマ
ス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第二、酒造稅法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會、議事日程ノ第十二マデ列ネテ問題ニ供シマス、朗讀
ハ省略イタシテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
〔左ノ通牒文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下之
ニ傚フ〕
酒造稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
明治四十一年二月四日
衆議院議長杉田定一
貴族院議長公爵德川家達殿
-ハ削
除ノ符號
酒造稅法中改正法律案
酒造稅法中左ノ通改正ス
第四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
酒類ヲ製造スル者ニハ其ノ造石數ニ應シ左ノ割合ヲ以テ造石稅ヲ課ス
第一種酒精分二十度以下ノ〓酒、濁酒、白酒及酒精分三十度以下ノ味
淋、燒酎一石ニ付金二十圓
第二種酒精分三十五度以下ノ燒酎一石ニ付金二十五圓
第三種酒精分四十度以下ノ燒酎一石ニ付金三十圓
第四種酒精分四十五度以下ノ燒酎一石ニ付金三十五圓
第五種酒精分二十度ヲ超ユル〓酒、濁酒、白酒、酒精分三十度ヲ超ユル
味淋及酒精分四十五度ヲ超ユル燒酎
一石ニ付酒精分一度每ニ
金一圓
第五條中「〓酒ハ百石濁酒ハ五十石燒酎ハ五石」ヲ「〓酒ハ二百石、濁酒ハ百
石、白酒ハ二十石、味淋ハ三十石、燒酎ハ十石」ニ改ム
第七條第三十三條ニ依リ酒類製造ノ免許ヲ取消シタルトキ又ハ酒類ヲ製
造スル者納稅保證物ノ免除ヲ得スシテ保證物ノ提供ヲ爲ササルトキハ前
條ノ納期ニ拘ハラス造石稅ノ全部又ハ一部ヲ徵收スルコトヲ得
前項ノ場合及國稅徵收法第四條ノ一ニ依リ造石稅ヲ徵收スル場合ニ於テ
ハ納稅ノ擔保トシテ酒類ヲ差押フルコトヲ得
第二十二條免許ヲ受ケスシテ酒類ヲ製造シタル者ハ三十圓以上五千圓以
下ノ罰金ニ處シ仍其ノ製造ニ係ル酒類及其ノ容器、器具、器械ヲ沒收ス」
前項ノ酒類ニ付テハ第六條ノ納期ニ拘ハラス其ノ造石稅ヲ徵收ス
第三十三條第二十四條乃至第二十八條ニ依リ處罰又ハ處分セラレタル者
ニ對シテハ政府ハ酒類製造ノ免許ヲ取消スコトヲ得
前項ニ依リ免許ヲ取消シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ命令ノ
定ムル所ニ依リ一定ノ期間内製成其ノ他必要ノ行爲ヲ繼續セシムルコト
ヲ得此ノ場合ニ於テハ本法ノ規定ヲ適用ス
第三十四條中「製造ヲ廢止スルモ」ヲ「製造ノ免許ヲ取消サレタル場合ニ於
テモ」二五六
第三十五條ノ二此ノ稅法ヲ施行セサル地ニ於テ製造シタル酒類ハ此ノ稅
法ト同一ノ稅率ヲ有スル法規ヲ其ノ地ニ於テ施行スル迄ハ此ノ稅法施行
地ニ移入スルコトヲ得ス犯ス者ハ其ノ酒類ノ石數ニ應シ第四條ノ稅率ニ
從テ算出シタル稅額五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ五十圓ヲ下ルコトヲ
得ス
前項ノ酒類及其ノ容器ハ何人ノ所有ニ屬スルヲ問ハス之ヲ沒收ス
第三十八條乃至第四十條ヲ削ル
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第三十八條削除ニ關スル規定ハ明治四
十一年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前酒類製造ノ免許ヲ受ケタル者ニ對シ第五條第二項ヲ適用スル場
合ニ於テハ第五條第一項ノ制限石數ハ仍舊法ノ規定ニ依ル但シ明治四十四
年十月一日以降ハ此ノ限ニ在ラス
非常特別稅法中酒造稅法ニ依ル酒類及沖繩縣酒類出港稅ニ關スル規定ハ之
ヲ廢止ス
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十一年二月四日
衆議院議長杉田定一
貴族院議長公爵德川家達殿
酒精及酒精含有飲料稅法中改正法律案
酒精及酒精含有飮料稅法中左ノ通改正ス
第二條中「金七十五錢」ヲ「金一圓」ニ、「金十六圓」ヲ「金二十一圓」ニ改ム
第五條ノ二政府ハ其ノ年三月ヨリ翌年二月迄ノ一年度間ノ製造石數酒精
ニ在リテハ五十石酒精ヲ含有スル飮料ニ在リテハ十石以上ニ非サレハ製
造ノ免許ヲ與ヘス
酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料製造ノ免許ヲ受ケタル者前項ノ制限石數以
上ノ製造ヲ爲ササリシトキハ變災其ノ他已ムヲ得サル事故ニ因ルコトヲ
證明スルニ非サレハ制限石數ニ相當スル造石稅ヲ課ス但シ其ノ製造セサ
リシ石數ニ對スル造石稅ハ一石金二十一圓ノ割合ニ依ル
第六條中「製造ヲ廢止」ヲ「免許ヲ取消」ニ改メ左ノ一項ヲ加フ
前條第二項ニ依ル造石稅ハ翌年三月末日迄ニ之ヲ納ムヘシ但シ免許取消
ノ場合ニ於テハ取消後三十日以內トス
第七條第二十三條ノ二ニ依リ酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料製造ノ免許ヲ
取消シタル場合及國稅徵收法第四條ノ一ニ依リ造石稅ヲ徵收スル場合ニ
於テハ納稅ノ擔保トシテ酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料ヲ差押フルコトヲ
得
第十五條中「罰金ニ處ス但シ五十圓ヲ下ルコトヲ得ス」ヲ「罰金ニ處シ仍其
ノ製造ニ係ル酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料及其ノ容器、器具、器械ヲ沒收ス
但シ罰金ハ三十圓ヲ下ルコトヲ得ス」ニット
第二十三條ノ二第十六條乃至第十八條ニ依リ處罰又ハ處分セラレタル者
ニ對シテハ政府ハ酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料製造ノ免許ヲ取消スコト
ヲ得
前項ニ依リ免許ヲ取消シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ命令ノ
定ムル所ニ依リ一定ノ期間内製成其ノ他必要ノ行爲ヲ繼續セシムルコト
ヲ得此ノ場合ニ於テハ本法ノ規定ヲ適用ス
第二十四條中「飮料ノ製造ヲ廢止シ」ヲ「飮料製造ノ免許ヲ取消サレ」ニ改ム
第二十四條ノ三本法ヲ施行セサル地ニ於テ製造シタル酒精又ハ酒精ヲ含
有スル飮料ハ本法ト同一ノ稅率ヲ有スル法規ヲ其ノ地ニ於テ施行スル迄
ハ本法施行地ニ移入スルコトヲ得ス犯ス者ハ其ノ石數ニ應シ第二條ノ稅
率ニ從テ算出シタル稅額五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ五十圓ヲ下ルコ
トヲ得ス
前項ノ酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料及其ノ容器ハ何人ノ所有ニ屬スルヲ
問ハス之ヲ沒收ス
第二十七條ヲ削ル
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前酒精又ハ酒精ヲ含有スル飮料製造ノ免許ヲ受ケタル者ニハ明治
四十五年二月末日迄ハ第五條ノ二第二項ノ規定ヲ適用セス
非常特別稅法中酒精又ハ酒精含有飮料ニ關スル規定ハ之ヲ廢止ス
麥酒稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十一年二月四日
衆議院議長杉田定一
貴族院議長公爵德川家達殿
麥酒稅法中改正法律案
麥酒稅法中左ノ通改正ス
第一條中「麥芽ノ重量十分ノ三以內ノ米」ヲ「總重量麥芽ノ十分ノ五ヲ超エ
サル米、玉蜀黍又ハ砂糖」ニ改ム
第三條中「金七圓」ヲ「金十圓」ニ改ム
第三條ノ二政府ハ其ノ年三月ヨリ翌年二月迄ノ一年度間ノ製造石數千石
以上ニ非サレハ麥酒製造ノ免許ヲ與ヘス
麥酒製造ノ免許ヲ受ケタル者前項ノ制限石數以上ノ製造ヲ爲ササリシト
キハ變災其ノ他已ムヲ得サル事故ニ因ルコトヲ證明スルニ非サレハ制限
石數ニ相當スル麥酒稅ヲ課ス
第四條中「製造ヲ廢止」ヲ「免許ヲ取消」ニ改メ左ノ一項ヲ加フ
前條第二項ニ依ル麥酒稅ハ翌年三月末日迄ニ之ヲ納ムヘシ但シ免許取消
ノ場合ニ於ラハ取消後三十日以內トス
第五條第十九條ノ二ニ依リ麥酒製造ノ免許ヲ取消シタル場合及國稅徵收
法第四條ノ一ニ依リ麥酒稅ヲ徵收スル場合ニ於テハ納稅ノ擔保トシテ麥
酒ヲ差押フルコトヲ得
第十一條中「罰金ニ處ス但シ五十圓ヲ下ルコトヲ得ス」ヲ「罰金ニ處シ仍其
ノ麥酒及其ノ容器、器具、器械ヲ沒收ス但シ罰金ハ三十圓ヲ下ルコトヲ
得ス」二段1,
第十九條ノ二第十二條乃至第十四條ニ依リ處罰又ハ處分セラレタル者ニ
對シテハ政府ハ麥酒製造ノ免許ヲ取消スコトヲ得
前項ニ依リ免許ヲ取消シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ命令ノ
定ムル所ニ依リ一定ノ期間内製成其ノ他必要ノ行爲ヲ繼續セシムルコト
ヲ得此ノ場合ニ於テハ本法ノ規定ヲ適用ス
第二十條中「麥酒製造ヲ廢止シ」ヲ「麥酒製造ノ免許ヲ取消サレ」ヒ改ム
第二十條ノ二本法ヲ施行セサル地ニ於テ製造シタル麥酒ハ本法ト同一ノ
稅率ヲ有スル法規ヲ其ノ地ニ於テ施行スル迄ハ本法施行地ニ移入スルコ
トヲ得ス犯ス者ハ其ノ石數ニ應シ第三條ノ稅率ニ從テ算出シタル稅額五
倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ五十圓ヲ下ルコトヲ得ス
前項ノ麥酒及其ノ容器ハ何人ノ所有ニ屬スルヲ問ハス之ヲ沒收ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前麥酒製造ノ免許ヲ受ケタル者ニハ明治四十五年二月末日迄ハ第
三條ノ二第二項ノ規定ヲ適用セス
非常特別稅法中麥酒ニ關スル規定ハ之ヲ廢止ス
砂糖消費稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十一年二月四日
衆議院議長杉田定一
貴族院議長公爵德川家達殿
砂糖消費稅法中改正法律案
砂糖消費稅法中左ノ通改正ス
第三條中「一圓」ヲ「三圓」ニ、「一圓六十錢」ヲ「五圓五十錢」ニ、「二圓二十錢」
ヲ「八圓五十錢」ニ、「二圓八十錢」ヲ「十圓」三六人
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
非常特別稅法中砂糖消費稅ニ關スル規定ハ之ヲ廢止ス
石油消費稅法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十一年二月四日
衆議院議長杉田定一
貴族院議長公爵德川家達殿
石油消費稅法
第一條石油ニハ本法ニ依リ消費稅ヲ課ス
第二條消費稅ハ石油一石ニ付金一圓ノ割合トス
第三條外國ニ輸出スル石油ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ消費稅ヲ免除ス」
消費稅ヲ納付シタル石油ヲ外國ニ輸出シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依
リ消費稅ニ相當スル金額ヲ交付ス
第四條費稅消ハ製造場、稅關又ハ保稅倉庫ヨリ石油ヲ引取ルトキ引取人
之ヲ納付スヘシ
第五條消費稅額ニ相當スル擔保物ヲ提供シタルトキハ政府ハ三月以內ノ
期間ヲ以テ消費稅ノ徵收ヲ猶豫ス
第六條石油ハ命令ノ定ムル所ニ依リ消費稅ヲ納付セスシテ之ヲ貯藏場ニ
移出スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ移出先ヲ以テ製造場ト看做シ移出先ノ營業人ヲ以テ
製造者ト看做ス
第七條消費稅ヲ納付シ製造場ヨリ引取リタル石油ヲ再ヒ其ノ製造場ニ戾
入シタル場合ニ於テ其ノ數量ニ付政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ其ノ數量
ニ相當スル石油ニ付テハ更ニ消費稅ノ徵收ヲ爲サス
第八條製造場、稅關又ハ保稅倉庫ヨリ石油ヲ引取ル者ハ引取ノ際其ノ數
量ヲ政府ニ申告スヘシ
第九條第五條又ハ第六條第一項ニ該當スル場合ヲ除クノ外消費稅納付前
ニ於テハ製造場稅關又ハ保稅倉庫ヨリ石油ヲ引取ルコトヲ得ス
第十條石油製造者ハ第五條又ハ第六條第一項ニ該當スル場合ヲ除クノ外
消費稅納付前ニ於テ石油ヲ他ニ引渡スコトヲ得ス
第十一條石油ヲ製造セムトスル者ハ政府ニ申告スヘシ
第十二條石油製造者ハ同一ノ場所ニ於テ石油ノ販賣業ヲ兼營スルコトヲ
得ス但シ政府ノ認許ヲ得石油ノ製造場ト販賣場トヲ區劃シタル場合ハ此
ノ限ニ在ラス
第十三條石油ノ製造者及販賣者ハ帳簿ヲ備ヘ石油ノ製造出入ヲ詳細明瞭
ニ記載スヘシ
第十四條收稅官吏ハ石油ノ製造場又ハ販賣場ニ立入リ石油、原料、器具、
器械、建築物又ハ帳簿書類ヲ檢査スルコトヲ得
收稅官吏ハ監督上必要ト認ムルトキハ前項ノ物件ニ封印ヲ施スコトヲ得
第十五條收稅官吏ハ運搬中ニ在ル石油ヲ檢査シ其ノ出所及到著先ヲ質問
スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ監督上必要ト認メタルトキハ收稅官吏ハ其ノ運搬ヲ停
止シ又ハ荷物若ハ船車ニ封印ヲ施スコトヲ得
第十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ消費稅五倍ニ相當スル罰金ニ處シ
直ニ消費稅ヲ徵收ス但シ罰金額ハ十圓ヲ下ルコトヲ得ス
一政府ニ申告セスシテ石油ヲ製造シタルトキ
二外國ニ輸出スル爲消費稅ヲ免除セラレタル石油ヲ內地ニ於テ消費シ
又ハ內地ニ於テ消費スル目的ヲ以テ之ヲ讓渡シタルトキ
三第六條第一項ニ依リ移出シタル石油ヲ其ノ定メラレタル場所ニ移入
セス又ハ之ヲ消費シタルトキ
四第九條又ハ第十條ノ規定ニ違反シタルトキ
第十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
一第十二條ノ規定ニ違反シタルトキ
二石油ノ製造者又ハ販賣者石油ノ製造出入ニ關スル帳簿ヲ調製セス又
ハ其ノ記載ヲ詐リ若ハ怠リタルトキ
三收稅官吏ノ尋問ニ對シ虛僞ノ答辯ヲ爲シ又ハ其ノ職務執行ヲ拒ミ、
之ヲ忌避シ若ハ之ニ支障ヲ加ヘタルトキ但シ刑法ニ正條アルモノハ
刑法ニ依ル
第十八條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者ニハ刑法ノ減
輕再犯加重及數罪倶發ノ例ヲ用井ス
第十九條石油ノ製造者又ハ販賣者カ未成年者若ハ禁治產者ナルトキハ本
法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ本人ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定
代理人ニ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十條石油ノ製造者又ハ販賣者ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ
他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違
反シタルトキハ製造者又ハ販賣者ヲ處罰ス
附則
第二十一條本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二十二條本法施行前ヨリ石油ヲ製造シ本法施行後引續キ之ヲ製造セム
トスル者ハ本法施行後一月以內ニ其ノ旨政府ニ申告スヘシ
第二十三條本法ヲ施行セサル地ニ於テ製造又ハ輸入シタル石油ハ本法ト
同一ノ稅率ヲ有スル法規ヲ其ノ地ニ施行スル迄ハ本法施行地ニ移入スル
コトヲ得ス犯ス者ハ消費稅五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ十圓ヲ下ルコ
トヲ得ス
前項ノ石油及其ノ容器ハ何人ノ所有ニ屬スルヲ問ハス之ヲ沒收ス
關稅定率法輸入稅表中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
明治四十一年二月四日
衆議院議長杉田定一
貴族院議長公爵德川家達殿
關稅定率法輸入稅表中改正法律案
關稅定率法輸入稅表中左ノ通改正ス
五〇果汁(砂糖ヲ加ヘタルモノ)及糖水價六割
每從
五一葡萄糖、麥芽糖及飴百斤九、二五
五三蜂蜜價六割
五五菓子同同容每從器百共斤二六、〇〇
五六ジヤム、フルートゼリー類一七、〇〇
五七砂糖、糖蜜、糖水又ハ蜂蜜ヲ以テ貯藏シ
同同一〇、五〇
タル蔬菜及果實
五八〓酒每リートル〇、一七
五九支那酒(釀造シタルモノ)同〇、一七
六〇麥酒同〇、一二、
六葡萄酒(各種)
一罎入ノモノ同〇、九五
二樽入ノモノ〇、三五
同同
六二シヤムパン二、四〇
六三其ノ他ノ酒類
-罎入ノモノ同一、一〇
二其ノ他同〇、六〇
但シ攝氏十五度ニ於テ〇、七九四
七ノ比重ヲ有スルモノヲ純酒精ト
シ原容量百分中純酒精ノ容量五十
以上一ヲ增ス每ニ一リートルニ付
一錢ヲ加フ
六四酒精同〇、七三
一三七變性酒精毎リートル〇、七三
一五三酒精劑(阿片丁幾ヲ除ク)毎リートル〇、七三
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣松田正久君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=19
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020・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 唯〓酒造稅法中改正法律案以下各種ノ增稅案ニ就
イテ第一讀會ヲ開カレマシタルニ付キ是ガ大體ノ說明ヲ致シマスル爲ニ暫時
〓聽ヲ煩ハシタク存ジマス、明治四十一年度ノ豫算ヲ編製スルニ當リマシテ
ハ、政府ハ深ク考慮ヲ費ヤシマシタル結果、遂ニ已ムヲ得ズシテ斷乎タル處
置ヲ執ルコトニ致シマシタ、先ヅ現下歲計ノ狀況ヲ申シマスレバ、旣定ノ歲
出豫算ニ依テ見マスルニ、今後數年間ハ多額ノ不足ヲ見ルノ計算デゴザリマ
スル、尤モ明治四十一年度ダケニ致シマスレバ歲入出ノ計數ニ於キマシテ
ソレホド多クノ缺陷ヲ來タスコトハゴザリマセヌ、サレドモ財政ノ計畫ハ唯
一時苟且ノ施設ヲ以テ滿足スルコトハ出來マセヌ、少クトモ將來數年ニ亘リ
マシテ國家經綸ノ根據ヲ確立イタシマスルコトハ申スマデモナク必要ノ事デ
ゴザイマスル加之公債募集ノ如キニ至リマシテハ、素ヨリ內外市場ノ狀勢ニ
鑑ミマシテ其便不便ヲ察セナケレバナリマセヌ、然ルニ今日ノ所、決シテ市
場ノ狀勢ガ募債ニ便ナリトハ申サレマセヌ次第デゴザイマス、ソコデ政府ニ
於キマシテハ深思熟慮ノ末、今後數年ノ間ニ亘リマシテ繼續費ノ年割額ヲ變
更イタシテ、通計一億數千萬ノ繰延ヲ斷行イタスコトニナリマシタ、卽チ繼
續事業ノ各科目ニ付キマシテ其緩急ヲ考へ、當初ノ計畫ヲ變更セザル範圍內
ニ於キマシテ、苟モ繰延ベルコトノ出來得ル限リハ之ヲ繰延ベマシタデアリ
やば、且又新規ノ計畫ニ屬スル事業ニ至リマシテハ最モ緊急已ムヲ得ザル
モノノ外ハ一切之ヲ見合セマシテ、歲出ヲ緊縮スルノ方針ヲ執リ、以テ補充
ヲ要スル所ノ不足額ヲ成ルベク減少スルコトニ致シマシタ、結局差繰ノ付カ
ヌ不足額ダケヲ增稅等ニ依ッテ補塡スルノ計畫ヲ執リ、以テ歲出入ノ均衡ヲ
將來ニ確實ニ立テムト企圖イタシタル次第デゴザイマス、其增稅計畫ノ內容
ニ於キマシテハ、細目ニ涉リマシテ冗長トナリマスルカラ、是ハ一々法文ニ
明カデゴザリマスシ、又委員會ニ於テ說明ヲ致スコトニ致シマスルガ、唯右ノ
增稅收入ノ總額ヲ申シマスレバ、合計五百十四萬圓デアリマス、是ハ卽チ明
治四十一年度ニ於テ收入スルノ計算デゴザイマスル、而シテ之ニ要スル所ノ
徵稅費二十三萬圓餘ヲ引去リマスレバ、殘額四百九十一萬餘圓ガ四十一年度
ニ於テ收入スル所ノ實數トナリマスル、又關稅定率法輸入稅表中ノ改正ヲ要
シマスルノハ酒稅及砂糖消費稅ノ增加ニ伴ヒマシテ、稅率ノ權衡ヲ保タシム
ルノ必要ニ出デタルモノデゴザリマス、今囘增稅ヲ單ニ間接稅ニ求メマシタ
ノハ、間接稅ハ人民負擔ノ苦痛、比較的輕微ナルニモ拘ハリマセズ、其負擔ハ
一般的デゴザリマシテ屈仲力ニ富ミマスルシ、國力ノ發展ニ伴ヒマシテハ、
次第ニ收入ノ增加ヲ來タシマスル、仍ッテ年々已ムヲ得ズ增加スル所ノ國費ヲ
支ヘマスルニハ最モ好個ノ財源ト見ナケレバナリマセヌ、加之從來我國ノ直
接稅及間接稅ノ負擔ノ權衡ニ考ヘ又歐洲各國稅制ノ趨勢ニ鑑ミマシテ、此間
接稅ヲ增加スルノ方策ヲ執ッタ次第デアリマス、明治四十一年度ヨリ增稅ヲ
施行セムト圖リマシタノハ、今日ニ於テ財政ノ鞏固ヲ圖ルハ最モ必要ト認メ
マスルシ、又一ハ施行ノ初年ニ於キマシテハ納期ノ關係竝ニ消費減少ノ爲ニ
豫期ノ收入ヲ得ルコトガ出來ナイノニ依ルノデゴザリマスル、而シテ又四十
一年度ノ開始ヲ待チマセズシテ施行イタシタイト申スノハ、法律公布ノ日ヨ
リ直ニ實行スルト致シテ見マスレバ、見越輸入若クハ見越製造等ニ依リマス
ル所ノ經濟界ノ動搖ヲ防ギマシテ、當業者ノ迷惑ヨ成ルベク減ゼムガ爲デゴ
ザイマス、要スルニ此增稅案ハ將來ノ爲ニ財政ノ基礎ヲ確立セムト期スルガ
卽チ其目的ノ存スル所デゴザイマスルガ、戰後國民ノ負擔既ニ輕シトハ申サ
レマセヌノデゴザイマスル、此上更ニ幾分ノ負擔ヲ加ヘマスルニ至ッテハ政
府ノ敢テ好マザル所デハゴザリマスルケレドモ、目下我國ノ地位ニ鑑ミ、殊ニ
將來國運ノ發展ヲ圖ル上ニ於キマシテ、先ヅ我ガ財政ノ基礎ノ鞏固ヲ圖リマ
スルハ最モ急務ト信ズル所ヨリシテ、此增稅ノ計畫ヲ已ムヲ得ズ致シタル次
第デゴザイマスル、ソレ故ニ何卒當院ニ於カレマシテモ政府ノ誠意ノ在ル所
ヲ諒察クダサリマシテ速ニ御協賛アラムコトヲ希望イタス次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=20
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021・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 唯今、大藏大臣ノ御說明ガアリマシタガ、私ハ之ニ付イ
テ大體ニ於テ分ラヌ所ガアリマスカラ御尋ネシタイト思ヒマス、ドウカ成ル
タケ御懇篤ニ、分ルヤウニ御說キ明カシアラムコトヲ望ミマス、且ツ是ハ甚
ダ申シニクイコトデアリマスルガ、大藏大臣ハ御聲ガ低イデ、トウモ能ク聽
取レヌノデゴザイマスカラ、少シ無理ナコトヲ申スヤウデアリマスルガ、出來
ルダケ御高聲ニ願ヒマス、ソレデ私ノ御尋ネヲ致シタイト申スノハ他デハア
リマセヌガ、唯〓大藏大臣カラ御述ベニナッタ如ク卽チ此增稅ノコトハ抑〓非
常特別稅ト云フモノハ申スマデモナク國家危急存亡、戰時ノ際ニ起サレタモ
ノデアルト云フコトハ言フマデモナイコトデアル、ソレデ現ニ私ハ三十八年
ノ非常特別稅ノ際ナドモ調査シタ一人デアリマスガ、殆ド此非常特別稅中ニ
揭ゲテアル增稅、實ニ苛酷極マル所ノ增稅、此增稅ノ如キハ案ノ中ヲ一々此
種類ニ於テ斯ノ如ク增稅ヲスルトカ、斯ノ如キモノヲ課稅スルト云フコトヲ
見ナイデ、實ニ國家危急存亡ノ際デアルニ依ッテ國民ハ三度ノ食事ハ二度ニ
シ、二度ノ〓事ハ三度ニ····減ジ、一方ハ又壯丁ハ自ラ進ンデ外ニ出デ、內
ニアル者ハ兵ノ宿舍トナレバ力ヲ極メテ之ニ當ルト云フヤウナ謂ハユル擧國
一致ヲ以テ國家ノ危急存亡ノ際ニ努メタコトデアルト思フノデアリマス、然
ルニ固ヨリ言フマデモナイ非常特別稅、言換ヘレバ戰時稅ト云フベキモノデ
アル、此一億五千萬圓ト云フモノハ此戰役ガ終レバ翌年度末ニ於テ廢止スル
ト云フコトハ其當時、政府ガ帝國議會ニ向ッテ堅ク約サレタコトデアル、併
ナガラ、其後ニ至ッテ速ニ之ヲ廢止スルト云フコトモ出來能ハナイニ依ッテ
稅法ヲ審査シ整理シテ出スト云フコトニナッテ居ッタノデアリマス、故ニ私
ノ如キ者ハ唯今申上ゲタ國家危急ノ際ノ戰時稅トシテ起シタモノデアル、實
ニ國民ハ重キガ上ニモ尙ホ重キデアッテ、例ヘテ申スナラバ纔ニ六七歲ノ子供
ガ十貫目十五貫目ノ物ヲ脊負フト同ジ位ナモノデアルト私ナドハ考ヘテ居ツ
タノデアリマス、故ニ之ヲ整理セラレタナラバ必ズヤ此非常特別稅ト云フモ
ノニ於テ立テラレタ稅ト云フモノハ大ニ減ジテ、成ルホドソレハ二十七年、
或ハ遡ッテ五年六年アタリノ如キ負擔ト云フマデニハ及バナクッテモ、何レ
ニシテモ戰爭中卽チ敵國ト彈丸ヲ相交ヘテ居ル時ノ戰時ノ稅ヲ減ズルト云フ
コトハ必ズ有ル事デアラウ、斯ウ確ク信ジテ喜ンデ待ッテ居ッタコトデアリマ
ス、然ルニ此度ノ卽チ政府ガ非常特別稅ヲ整理セラレタモノヲ以テ見ルト委
シクハマダ見マセヌケレドモ、〓シテ申セバ詰リ一方ニ於テ百圓デアッタモ
ノガ此方ニ持ッテ行ッテ百五十圓ニ直スト云フヤウナ多少ノ遺繰ハアルナレド
モ、總額ニ於テハ差ハ無イト思ヒマス、ソレデ是ガ私ノ政府ニ御尋ネシタイ
ノデ、戰時ノ際、唯今申シマシタ如ク實ニ國家ノ存亡此秋ニアリト云フノデ
アルカラ、軍人モ又軍人ナラザル者モ是ハ重イケレドモ負擔ヲスル、國ノ爲
ニハ換ヘラレナイ、飮マズ食ハズデモ奉公シヤウト云フ精神ヲ以テ脊負ヒキ
レヌ物ヲ脊負ッテ居ッタノデアリマスガ、ソレガ今日平和ニ歸シテ最早二年、
今日デハ太平ノ世ニナッテ此太平ノ世ニ當ッテモ恰モ戰爭中ト同ジ稅ヲ課サ
ナケレバナラヌト云フ必要ガ何處ニアルカト云フコトヲ御尋ネシタイ、就イ
テハ唯必要ガ有ルト云フコトデハ私ニ分ラナイ、固ヨリ細カナ事ニ當ッテハ
計畫上コレコレト云フコトモアリマセウガ、併シ大體ニ於テ私ハ戰時同樣ニ
缺クベカラザル必要ガアルト云フコトヲ、シッカリ承ラナイト之ニ對シテ贊
否ヲ決スルト云フコトハ難イノデアリマス、ソレカラ唯〓申上ゲタル非常特
別稅ヲ整理シテ來タモノ、卽チ之ヲ簡單ニ申セバ非常特別稅ガ著物ヲ著替ヘ
テ此所ニ現ハレタト云フモノト云ウテ宜イト思ヒマス、ソレ等モ唯〓申上ゲ
ル通リ太平ノ今日ニ戰時同樣ノ稅ヲ課シテ居ル上ニ又候ヤ之ニ加フルニ增稅
ヲシナケレバイケナイト云フコトハドウ云フ譯デアリマスカ、私ナドハ財政
ト云フモノニ就イテハ甚ダ暗イ人間デアリマスカラ理解シ難イノデアリマス
ケレドモ、戰爭ヲシテ居ル時ト太平ノ時ト同ジニ金ヲ使ハナケレバナラヌ、金
ガ要ルト云フコトハ理解シ兼ネルノデアリマス、又一方ニ國民ハ今日太平ノ
時デモ斯樣ナ負擔ヲシナケレバナラヌ、是ハ戰サデアルカラ已ムヲ得ズ血ヲ
飮ムデヤルノデアルガ太平ニナッテモ斯ウデアルト云フコトニナレバ、ソレ
ハ如何ナル事ガアッテモ、國民ノ信用ヲ得ルコトガ出來ナクナリハセヌカト
思ヒマス、而シテ今モ大臣ノ述べラレル如ク、一方ニハ繰延ヲスル、緊急デ
アル實ニ緊急ナモノデアルト云フコトハ昨年マデモ述ベテ居ラレタモノガ、
唯〓ニナルト成ルタケ繰延ベル、ドウモ私ドモガ聞イテハ誠ニ矛盾ヲシテ居
ル故ニ是ハ非常特別稅ノ整理シタルモノガ衆議院ヨリ本院ヘ〓ッタ際ニ尙ホ
委シク御尋ネモ致シマセウガ、一番骨子トシテ大體ニ於テ御尋ネヲシテ置キ
タイト思フコトハ、モウ一言申シマスガ、唯今述ベタ如ク戰時ノ際ニ課ケタ
ルモノガ今日ノ平時ニ於テ尙ホ戰時同樣ノ必要ガアルト云フコトハ如何ナル
譯デアルカ、之ヲドウカ御答ヲ願ヒタイ
〔國務大臣松田正久君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=21
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022・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 唯今ノ御質問ニ御答ヲ致ス譯デアリマスルガ、戰
時同樣ト申ス譯デハアリマセヌケレドモ、唯今曩ニ大體ノ說明ヲ致ストキニ
申シマシタ如クニ將來財政ノ基礎ヲ鞏固ニ致サヌケレバナラヌ所ヨリシテ、
一方ニハ年度割ヲ繰延ベ、一方ニハ新規ノ事業ハ成ルベクヤメテ仕舞ヒマス
ルシ、而シテ尙ホ不足ヲ感ズル所ガアリマスルカラ、其爲ニ增稅ノ計畫ヲ致
シタト云フコトデアリマシテ、別ニ戰時同樣デアル戰時同樣デナイト云フコ
トニハ、關係ヲ持チマセヌノデアリマス、尤モ是モ斯ノ如ク財政ノ困難ヲ來タ
シマシタルノハ卽チ戰時ヨリ繼續イタシテ居ル財政ノ狀況ニハ違ヒアリマセ
ヌケレドモ、今日ハ戰時トハ違ヒマスルカラ戰時同樣ト申ス譯ニハ參リマセ
ヌ、ソレト彼ノ稅法整理ノ事ニ付イテ御意見カ御質問ノヤウナコトモアリマ
シタガ、是ハ三十九年度ヨリ四十年度へ亘リマシテ大藏當局ニ於テ色ミ愼重
ナル審査ヲ遂ゲマシテ、其稅法整理案ト云フモノガ出來マシタ、是ハ目下衆
議院ニ提出イタシテアリマスルカラ、不日當院ニ送付ニナルコトト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=22
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023・谷干城
○子爵谷干城君 大藏大臣ニチヨット質問ヲ致シタイノハ誠ニ私ハ簡單ナ
御尋ネデアル、私ガ御尋ネシタイノハ財政ノ基礎ヲ固クスルト云フ事柄デア
リマス、此增稅案ノ出マストキニハ必ズ財政ノ基礎ヲ固クスル、·此度ノ
開會ノ御詔勅ニモ仰セラレテアル事柄デ、是ハ卽チ當局大藏大臣ヨリ上奏ノ
コトト存ジマス、私ガ承リタイト思フノハ財政ノ基礎ヲ固クスル····此基礎
ト云フノハドウ云フコトデアルカ、ドウモ基礎ト云フコトハ定マッタ文字ノ
上カラ言ヘバ疑ヒハ無イノデアル、トコロガ何時デモ增稅ヲシテ人民ノ膏ヲ
絞ルトキニハ財政ノ基礎ヲ固クスル···未ダ曾テ私ガ見解スル如ク財政ノ
基礎ノ固クナッタ例シハ無イ、ソコデ大藏大臣ニ今謂フ財政ノ基礎トハドウ
云フノデアルカ、ソレヲ固クスルニハ是ダケノ稅ヲ取レバドウ云フ譯デ固ク
ナルト云フコトヲ、ドウゾ御說明ヲ願ヒタイ
〔國務大臣松田正久君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=23
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024・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 何デアリマスカ、基礎ト云フ文字ノ解釋デアリマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=24
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025・谷干城
○子爵谷干城君 イヽエ、事實デアリマス、文字ハ其通リデアリマス、事實
ヲ····斯ウナッタラ斯ウナルト云フコトヲ具體的ニ御說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=25
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026・松田正久
○國務大臣(松田正久君) ソレハ此增稅案ニ付キマシテモ無論說明ハ出來ル
譯デアリマスルガ、是ハ四十一年度ノ豫算ヲ御覽ニナリマスレバ自ラ分ッテ
參ラウト思ヒマス、今日ニ於テ大略ヲ申シマスレバ、先ニ述ベマシタ如クニ、
四十一年度ダケノ計算ニ於テハ過分ノ缺陷ヲ生ズルノデハアリマセヌケレ
ドモ、此既定ノ豫算ニ依ッテ今後數年ヲ經過イタシマスレバ遂ニハ大イニ不
足ヲ生ズルコトニナッテ參リマスカラ、今日ヨリシテ其不足ヲ生ジナイヤウ
ナ遣リ方ヲシヤウト、斯ウ云フコトニ止マリマス、ソレデ始メテ財政ノ本ガ
立ツト云フノ趣意デアリマスカラ、左樣ニ御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=26
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027・谷干城
○子爵谷干城君 モウ一ツ伺ヒマス、ソレデハ增稅ヲシ、增稅ヲシ、シテ詰
リ流レ渡リニヤルノデ基礎ノ固クナッタト云フモノデハナイ、少シモ目的ガ
立ッテ居ラヌト思フ、此次ニ又地租增徵ヲヤルヤウニナッタラ又財政ノ基礎、
何時マデ行ッテモ財政ノ基礎ハ固イトハ思ハヌ、ソレヲ第一ニ····基礎ヲ固
クスルト云フノガ是ガ今日ノ增稅御請求ノ必要ノ事柄デアリマスカ、ソレヲ
明カニ御示シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=27
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028・松田正久
○國務大臣(松田正久君) ソレハ國家ノ經費ト申スモノハ、自ラ國運ノ發展
ニ伴ヒマシテ自然增加イタスコトハ是ハ免レヌコトデアラウト考ヘマス、併
ナガラソレト同時ニ諸般ノ租稅ノ收入モ自ラ增加イタスノデアリマセウ、唯
其收入ト支出トノ權衡ヲ維持シテ行カレルヤウニスルノガ財政ノ基礎ヲ固ク
スル譯デアラウト考ヘマスル、今日政府ニ於テ編製イタシタル所ノ豫算ノ方
針ハ卽チ右ノ趣意ヲ以テ編製シタルモノデアリマスカラ、當分ノ間ハ必ズ財
政ノ輩固ヲ保ツコトガ出來ヤウト云フコトヲ信ジテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=28
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029・谷干城
○子爵谷干城君 モウ一ツ伺ヒマス、全體此國運ノ發達····經濟ノ裕カニナ
ッテ來マシタナラバ自然的收入ノ增加ハ申スマデモナイ、何レノ國デモサウ
デアル、併ナガラ足ラヌト云ウテハ增稅ヲシ、足ラヌト云ウテハ增稅ヲスル
トキニハ財政ノ基礎ノ固クナッタト云フコトハ私ハ信ゼス、增稅ヲセズ自然
ニ商工業ノ發達ニ伴ウテ收入ガ殖エルノガ卽チ本當ニ財政ノ基礎ガ固クナツ
タノデ、詰リ大藏大臣ノ財政ノ基礎ノ固クナルト云フコトハ丁度私ドモノ考
ヘデハ足ラヌヤウニナレバ其度ニ民間カラ取上ゲル····一時ハ間ニ合フカ
知ラヌガ、決シテ基礎ノ固クナッタトハ思ハレヌ、ソコラハ大藏大臣ノ御見
解ト私ノ方ノ見解ト違フ、基礎ヲ固ウスルト云フコトハ今ノヤウナ御答へハ
漠然デ、少シモ私ハ要領ヲ得ナイ、併シソレカラ上、御答ヘガ出來ナケレバ
ソレデ宜イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=29
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030・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 別段ノ御意見トシテハ御意見ノ場合ニ御述ベニナ
リマセウシ、私モ其御答ヲ致スカモ知レマセヌガ、今政府デ計晝ヲ立テタル
所ニ據リマスレバ、年々增稅ヲ致ス考ヘハ一ツモ有セヌノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=30
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031・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 唯今、私ガ御尋ネヲ致シテ、ソレニ對シテ御答へガアリ
マシタガ、私ノ尋ネタ趣意ヲ聽キ違ヘテ居ラレルカト思ヒマスガ、餘リクド
クドシクナリマスカラ同一ノコトヲ繰返シテ御尋ネハ致シマセヌ、其中ニ於
テ本員ノ尋ネタ所ノ戰時同樣ト云フ言葉ガアッタ、大藏大臣ハ直ニソレヲ使
ッテ戰時同樣ト云フ譯デハナイト申サレマシタガ、ソレハ私モ不肖ナガラ分
ッテ居ル、戰時同樣デナイカラ戰時同樣ノ課稅ヲスルノハ如何デアルカト御尋
ネヲシタノデ、ソレデ斯ウ簡單ニ御尋ネヲシタラ私ノ胸ニ落チルヤウナ御答
ヘヲ得ルコトガ出來ルト思ヒマスカラ更ニ御尋ネヲ致シマスガ、卽チ非常特
別稅、戰時稅ヲ國民ニ課シテ其負擔ヲ今日ソレヲ整理シテ提出ニナッテ居ル整
理案、之ニ增稅ヲ加ヘル、五百幾ラノモノヲ加ヘタ、此二ツノモノ卽チ簡單ニ
申セバ明治三十八年ゴロ戰爭ノ當時ノ國民ノ負擔ト、之ヲ整理サレテ出テ居
ル今度ノ負擔、政府ノ計畫ノ案ニ依ル所ノ國民ノ負擔トノ高ニ於テ增減ガア
リマスルカ極ク單ニ言ヘバ戰時ノ當時ヨリ今日カラ先キノ國民ノ負擔ガ輕
クナリマスカト云フコトヲ御尋ネシマス
〔國務大臣松田正久君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=31
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032・松田正久
○國務大臣(松田正久君) ドウモチヨット分リ兼ネマスルガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=32
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033・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 實ハ斯ウ云フコトデス、簡單ニ言ウテ却ッテ分ラヌト云
フコトデハ詰リ戰時ニ當ッテ非常特別稅ヲ課ケラレタ、ソレハ戰時以
前、卽チ非常特別稅ノ發セラルル以前ヨリ增シタ、一億五六千萬圓ト云フモノ
ヲ增シタ、ソレヲ今度整理セラレタニ付イテハ私ドモノ考デハ多少減ズルモ
ノデアッタラウト思ウタガ··分リマシタカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=33
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034・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 非常特別稅ノ整理ニ付イテハ減ジタカ、增シタカ
ト云フ御尋ネデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=34
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035・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 左樣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=35
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036・松田正久
○國務大臣(松田正久君) ソレハ簡單ナモノデ能ク分ッテ居リマス、大藏ノ
當局デ取調ベテ今衆議院ニ提出シテアル所ノ整理案ニ依ッテ見マスレバ減ジ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=36
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037・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 ドノ位····總額デ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=37
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038・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 二百萬圓餘、減ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=38
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039・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 ソレニ今度ノ增稅ヲ加ヘテドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=39
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040・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 今度ノ增稅ハ是ハ全ク整理案トハ別物デアリマス
カラ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=40
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041・伊達宗敦
○男爵伊達宗敦君 ソレハ分ッテ居ルガ國民ノ負擔額ニ充テテ見マスト、ド
ウナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=41
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042・松田正久
○國務大臣(松田正久君) ソレハ增スダケハ國民ノ負擔ガ重クナル譯デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=42
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043・西村亮吉
○西村亮吉君 增稅ニ付キマシテ總理大臣ニチヨット伺ヒタイコトガゴザイ
やべ、去ル一月十七日ニ總理大臣官舍ニ貴族院各派ノ交渉委員ヲ御招キニナ
リマシテ、豫算ノ事ニ付イテ御說明ニナリマシタ趣デゴザイマス、其中ニ就
イテ斯ウ云フコトヲ御申述ベニナッタト云フコトヲ伺ヒマス、此臨時部歲入
ニ於テ本年度繰入金トシテ七千二百萬圓ヲ計上シテ居ル云々、其七千二百萬
圓ノ剰餘金ノ繰入ノ外ニ三千三百萬圓ノ剰餘金ガアル、是ハ四十二年度ノ財
源ニ供スルト、斯ウ云フヤウニ御話ニナッタト伺ヒマスガ、此事ハ此增稅ト
云フコトニ付イテ大關係ヲ持ッテ居ルノデアリマスルカラ、總理大臣ハ右ノ
通リ御示シニ相成リマシタカ、尙ホ伺ヒタイト思ヒマス、ドウゾ總理大臣ヨ
リ御答へヲ伺ヒタイ
〔國務大臣侯爵西園寺公望君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=43
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044・西園寺公望
○國務大臣(侯爵西園寺公望君) 唯今ノ御質問ニ御答へ致シマスルガ、全ク
唯〓ノ御質問通リデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ議事日程ニ移リマス、右議案ノ審査ヲ付託ス
ベキ特別委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=45
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046・三宅秀
○三宅秀君 チヨット質問イタシタイノデスガ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 議長ハモウ宣告ヲ致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=47
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048・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 唯今、委員ノ選擧ノ問題ニナッテ居リマスト心得テ居リ
マスガ、其事ニ付イテ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=49
-
050・曾我祐準
○子爵曾我祐準君 本案ノ委員ハ十五名ニナサレタイコトヲ希望イタシマ
ス、而シテ其選定ハ議長ニ御任セ致シタウゴザイマス、而シテ此第二、第四、
第六、第八、第十、第十二、合セテ此六案ヲ同一委員ニ付託セラレムコトヲ希望
イタシマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=50
-
051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 曾我子爵ノ動議ヲ可トスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=51
-
052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス、次ニ御諮リヲ致シマスガ、議
事日程ノ第十四、十六、十八、二十、二十二、二十四、一括シテ問題ニ供シテ御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=52
-
053・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=53
-
054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 監獄法案外五件、政府提出、第一讀會、總テ議案ノ
朗讀ハ省略イタシテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=54
-
055・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
監獄法案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治四十一年二月五日
內閣總理大臣侯爵西園寺公望
司法大臣松田正久
監獄法
第一章總則
第一條監獄ハ之ヲ左ノ四種トス
-懲役監懲役ニ處セラレタル者ヲ拘禁スル所トス
二禁錮監禁錮ニ處セラレタル者ヲ拘禁スル所トス
三拘留場拘留ニ處セラレタル者ヲ拘禁スル所トス
四拘置監刑事被〓人及ヒ死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ヲ拘禁スル所ト
ス
拘置監ニハ懲役、禁錮又ハ拘留ニ處セラレタル者ヲ一時拘禁スルコトヲ
得
警察官署ニ附屬スル留置場ハ之ヲ監獄ニ代用スルコトヲ得但懲役又ハ禁
鋼ニ處セラレタル者ヲ一月以上繼續シテ拘禁スルコトヲ得ス
第二條二月以上ノ懲役ニ處セラレタル十八歲未滿ノ者ハ特ニ設ケタル監
獄又ハ監獄內ニ於テ特ニ分界ヲ設ケタル場所ニ之ヲ拘禁ス
前項ノ規定ニ依ル者ハ滿二十歲ニ至ルマテ又滿二十歲ニ至リタル後三月
內ニ刑期終了ス可キ者ハ其殘刑期間仍ホ繼續シテ之ヲ拘禁スルコトヲ得」
心身發育ノ狀況ニ因リ必要ト認ムル者ハ前二項ノ適用ニ付キ年齡ニ拘ハ
ラサルコトヲ得
第三條監獄ニ男監及ヒ女監ヲ設ケ之ヲ分隔ス
懲役監、禁錮監、拘留場及ヒ拘置監ノ同一區劃內ニ在ルモノハ之ヲ分界ス
第四條主務大臣ハ少クトモ二年毎ニ一囘官吏ヲシテ監獄ヲ巡閱セシム可
判事及ヒ檢事ハ監獄ヲ巡視スルコトヲ得
第五條監獄ノ參觀ヲ請フ者アルトキハ學術ノ〓究其他正當ノ理由アリト
認ムル場合ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ許スコトヲ得
第六條本法ニ依リ沒入シ又ハ國庫ニ歸屬シタル物ハ之ヲ監獄慈惠ノ用ニ
充ツ
第七條在監者監獄ノ處置ニ對シ不服アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主
務大臣又ハ巡閲官吏ニ情願ヲ爲スコトヲ得
第八條勞役場ハ之ヲ監獄ニ附設ス
前五條ノ規定ハ之ヲ勞役場ニ準用ス
第九條本法中別段ノ規定アルモノヲ除ク外刑事被〓人ニ適用ス可キ規定
ハ死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用シ懲役囚ニ適用ス可キ規定ハ勞役
場留置ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
第十條本法ハ陸海軍ニ屬スル監獄ニ之ヲ適用セス
第二章收監
第十一條新ニ入監スル者アルトキハ令狀又ハ判決書及ヒ執行指揮書其他
適法ノ文書ヲ査閱シタル後入監セシム可シ
第十二條新ニ入監スル婦女其子ヲ携帶センコトヲ請フトキハ必要ト認ム
ル場合ニ限リ滿一歲ニ至ルマテ之ヲ許スコトヲ得
監獄ニ於テ分娩シタル子ニ付テモ亦前項ノ例ニ依ル
第十三條新ニ入監スル者傳染病豫防法ニ依リ豫防方法ノ施行ヲ必要トス
ル傳染病ニ罹リタルモノナルトキハ之ヲ入監セシメサルコトヲ得
第十四條新ニ入監スル者アルトキハ其身體及ヒ衣類ノ檢査ヲ爲ス可シ在
監中ノ者ニ付キ必要ト認ムルトキ亦同シ
第三章拘禁
第十五條在監者バ心身ノ狀況ニ因リ不適當ト認ムルモノヲ除ク外之ヲ獨
居拘禁ニ付スルコトヲ得
第十六條雜居拘禁ニ在テハ在監者ノ罪質、性格、犯數、年齡等ヲ斟酌シテ
其監房ヲ別異ス
第一條第二項及ヒ第三項ノ場合ニ於テハ在監者ノ種類ニ依リ其監房ヲ別
異ス
十八歲未滿ノ者ハ第二條第二項ノ場合ヲ除ク外十八歲以上ノ者ト其監房
ヲ別異ス但心身發育ノ狀況ニ因リ其必要ナシト認ムルトキハ此限ニ在ラ
ス
前三項ノ規定ハ工場ニ於ケル就業ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十七條刑事被告人ニシテ被告事件ノ相關連スルモノハ互ニ其監房ヲ別
異シ監房外ニ於テモ其交通ヲ遮斷ス
第十八條懲役監、禁錮監、拘留場、拘置監及ヒ勞役場ノ同一區劃內ニ在ル
場合ニ於テハ同性者ニ付キ同一ノ病監又ハ〓誨堂ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ在監者ノ種類ニ因リ監房若クハ座席又ハ診察若クハ
〓誨ノ時間ヲ異ニス
病監ニ在テハ第二條及ヒ第十六條ヲ適用セサルコトヲ得
第四章戒護
第十九條在監者逃走、暴行若クハ自殺ノ虞アルトキ又ハ監外ニ在ルトキ
ハ戒具ヲ使用スルコトヲ得
戒具ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十條法令ニ依リ監獄官吏ノ携帶スル劒又ハ銃ハ左ノ各號ノ一ニ該ル
場合ニ限リ在監者ニ對シ之ヲ使用スルコトヲ得
-人ノ身體ニ對シテ危險ナル暴行ヲ爲シ又ハ爲ス可キ脅迫ヲ加フル
トキ
二危險ナル暴行ノ用ニ供シ得可キ物ヲ所持シ其放棄ヲ肯セサルトキ
三逃走ノ目的ヲ以テ多衆騷擾スルトキ
四逃走ヲ企テタル者暴行ヲ爲シテ捕拿ヲ免カレントシ又ハ制止ニ從
ハスシテ逃走セントスルトキ
第二十一條天災事變ニ際シ必要ト認ムルトキハ在監者ヲシテ應急ノ用務
ニ就カシムルコトヲ得
前項ノ用務ニ就キタル者ニハ第二十八條ノ規定ヲ準用ス
第二十二條天災事變ニ際シ監獄內ニ於テ避難ノ手段ナシト認ムルトキハ
在監者ヲ他所ニ護送ス可シ若シ護送スルノ遑ナキトキハ一時之ヲ解放ス
ルコトヲ得
解放セラレタル者ハ監獄又ハ警察官署ニ出頭ス可シ解放後二十四時間內
ニ出頭セサルトキハ刑法第九十七條ニ依リ處斷ス
第二十三條在監者逃走シタルトキハ監獄官吏ハ逃走後四十八時間內ニ限
リ之ヲ逮捕スルコトヲ得
前項ノ規定ハ刑事訴訟法第六十條ノ適用ヲ妨ケス
第五章作業
第二十四條作業ハ衞生、經濟及ヒ在監者ノ刑期、健康、技能、職業、將來ノ
生計等ヲ斟酌シテ之ヲ課ス
十八歲未滿ノ者ニ課ス可キ作業ニ付テハ前項ノ外特ニ〓養ニ關スル事項
ヲ斟酌ス
第二十五條大祭祝日、一月一日二日及ヒ十二月三十一日ニハ就業ヲ免ス」
父母ノ計ニ接シタル者ハ三日間其就業ヲ免ス
主務大臣ハ必要ト認ムルトキハ臨時就業ヲ免スルコトヲ得
炊事、酒掃、看護其他監獄ノ經理ニ關シ必要ナル作業ニ就ク者ニ付テハ就
業ヲ免セサルコトヲ得
第二十六條刑事被〓人、拘留囚又ハ禁錮囚作業ニ就カンコトヲ請フトキ
ハ其選擇スルモノニ就キ之ヲ許スコトヲ得
第二十七條作業ノ收入ハ總テ國庫ノ所得トス
在監者ニシテ作業ニ就クモノニハ命令ノ定ムル所ニ依リ作業賞與金ヲ給
スルコトヲ得
作業賞與金ハ行狀、作業ノ成績等ヲ斟酌シテ其額ヲ定ム
第二十八條在監者就業ニ因リ創傷ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ之カ爲メニ死亡
シ又ハ業務ヲ營ミ難キニ至リタルトキハ情狀ニ因リ手當金ヲ給スルコト
ヲ得
前項ノ手當金ハ釋放ノ際本人ニ之ヲ給シ死亡ノ場合ニ於テハ死亡者ノ
父、母、配偶者又ハ子ニ之ヲ給ス
第六章〓誨及ヒ〓育
第二十九條受刑者ニハ〓誨ヲ施ス可シ其他ノ在監者〓誨ヲ請フトキハ之
ヲ許スコトヲ得
第三十條十八歲未滿ノ受刑者ニハ〓育ヲ施ス可シ其他ノ受刑者ニシテ
特ニ必要アリト認ムルモノニハ年齡ニ拘ハラス〓育ヲ施スコトヲ得
第三十一條在監者文書、圖畫ノ閱讀ヲ請フトキハ之ヲ許ス
文書、圖畫ノ閱讀ニ關スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七章給養
第三十二條受刑者ニハ一定ノ衣類臥具ヲ著用セシム但拘留因ニハ自衣ノ
著用ヲ許シ其他ノ者ニハ襯衣ノ自辨ヲ許スコトヲ得
第三十三條刑事被告人及ヒ勞役場留置ノ言渡ヲ受ケタル者ノ衣類臥具ハ
自辨トシ其自辨スルコト能ハサル者ニハ之ヲ貸與ス
自辨ノ衣類臥具ニ關スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條在監者ニハ其體質、健康、年齡、作業等ヲ斟酌シテ必要ナル糧
食及ヒ飮料ヲ給ス
第三十五條刑事被〓人ニハ糧食ノ自辨ヲ許スコトヲ得
第八章衞生及ヒ醫療
第三十六條在監者ノ頭髪鬚髯ハ之ヲ翦剃セシムルコトヲ得但刑事被〓人
ノ頭髪鬚髯ハ衞生上特ニ必要アリト認ムル場合ヲ除ク外其意思ニ反シテ
之ヲ翦剃セシムルコトヲ得ス
第三十七條在監者ハ其拘禁セラルル監房ノ〓潔ヲ保ツニ必要ナル用務ニ
服ス可シ
第三十八條在監者ニハ其健康ヲ保ツニ必要ナル運動ヲ爲サシム
第三十九條在監者ニハ種痘其他傳染病豫防ニ必要ト認ムル醫術ヲ行フコ
トヲ得
第四十條在監者疾病ニ罹リタルトキハ醫師ヲシテ治療セシメ必要アル
トキハ之ヲ病監ニ收容ス
第四十一條傳染病者ハ嚴ニ之ヲ離隔シ健康者及ヒ他ノ病者ニ接近セシム
ルコトヲ得ス但懲役囚ヲシテ看護セシムルハ此限ニ在ラス
第四十二條病者醫師ヲ指定シ自費ヲ以テ治療ヲ補助セシメンコトヲ請フ
トキハ情狀ニ因リ之ヲ許スコトヲ得
第四十三條精神病、傳染病其他ノ疾病ニ罹リ監獄ニ在テ適當ノ治療ヲ施
スコト能ハスト認ムル病者ハ情狀ニ因リ假ニ之ヲ病院ニ移送スルコトヲ
得
前項ニ依リ病院ニ移送シタル者ハ之ヲ在監者ト看做ス
第四十四條姙婦、產婦、老衰者及ヒ不具者ハ之ヲ病者ニ準スルコトヲ得
第九章接見及ヒ信書
第四十五條在監者ニ接見センコトヲ請フ者アルトキハ之ヲ許ス
受刑者ニハ其親族ニ非サル者ト接見ヲ爲サシムルコトヲ得ス但特ニ必要
アリト認ムル場合ハ此限ニ在ラス
第四十六條在監者ニハ信書ヲ發シ又ハ之ヲ受クルコトヲ許ス
受刑者ニハ其親族ニ非サル者ト信書ノ發受ヲ爲サシムルコトヲ得ス但特
ニ必要アリト認ムル場合ハ此限ニ在ラス
第四十七條受刑者ニ係ル信書ニシテ不適當ト認ムルモノハ其發受ヲ許サ
ス
前項ニ依リ發受ヲ許ササル信書ハ二年ヲ經過シタル後之ヲ廢棄スルコト
ヲ得
第四十八條裁判所其他ノ公務所ヨリ在監者ニ宛テタル文書ハ披閱シテ之
ヲ本人ニ交付ス
第四十九條在監者ニ交付シタル信書及ヒ前條ノ文書ハ本人閱讀ノ後之ヲ
領置ス
第五十條接見ノ立會、信書ノ檢閱其他接見及ヒ信書ニ關スル制限ハ命
令ヲ以テ之ヲ定ム
第十章領置
第五十一條在監者ノ携有スル物ハ點檢シテ之ヲ領置ス
保存ノ價値ナク又ハ保存ニ不適當ト認ムル物ハ其領置ヲ爲サス又ハ之ヲ
解クコトヲ得
領置ヲ爲サス又ハ之ヲ解キタル物ニ付キ在監者相當ノ處分ヲ爲ササルト
キハ之ヲ廢棄スルコトヲ得
第五十二條在監者領置物ヲ以テ其父、母、配偶者又ハ子ノ扶助其他正當ノ
用途ニ充テンコトヲ請フトキハ情狀ニ因リ之ヲ許スコトヲ得
第五十三條在監者ニ差入ヲ爲サンコトヲ請フ者アルトキハ命令ノ定ムル
所ニ依リ之ヲ許スコトヲ得
在監者ニ宛テ送致シ來リタル物ニシテ其差出人ノ氏名若クハ居所不明ナ
ルトキ、其差入ヲ許ス可カラスト認ムルトキ又ハ在監者ニ於テ其受領ヲ
拒ミタルトキハ之ヲ沒入又ハ廢棄スルコトヲ得
第五十四條在監者ノ私ニ所持スル物ハ之ヲ沒入又ハ廢棄スルコトヲ得
第五十五條領置物ハ釋放ノ際之ヲ交付ス
第五十六條死亡者ノ遺留物ハ請求ニ因リ相續人、家族又ハ親族ニ之ヲ交
付ス
第五十七條死亡者ノ遺留物ハ死亡ノ日ヨリ一年內ニ前條ニ揭ケタル者ノ
請求ナキトキハ國庫ニ歸屬ス
逃走者ノ遺留物ニシテ逃走ノ日ヨリ一年内ニ居所分明セサルトキ亦同シ
第十一章賞罰
第五十八條受刑者改悛ノ狀アルトキハ賞遇ヲ爲スコトヲ得
賞遇ノ種類及ヒ方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九條在監者紀律ニ違ヒタルトキハ懲罰ニ處ス
第六十條懲罰ハ左ノ如シ
一叱責
二賞遇ノ三月以內ノ停止
三賞遇ノ廢止
四文書、圖畫閱讀ノ三月以丙ノ禁止
五請願作業ノ十日以内ノ停止
六自辨ニ係ル衣類臥具著用ノ十五日以內ノ停止
七糧食自辨ノ十五日以內ノ停止
八運動ノ五日以內ノ停止
九作業賞與金計算高ノ一部又ハ全部減削
十七目以內ノ減食
十一二月以內ノ輕屏禁
十二七日以內ノ重屏禁
屏禁ハ受罰者ヲ罰室內ニ晝夜屏居セシメ情狀ニ因リ就業セシメサルコト
ヲ得重屏禁ニ在テハ仍ホ罰室ヲ暗クシ臥具ヲ禁ス
第一項各號ノ懲罰ハ之ヲ併科スルコトヲ得
第六十一條前條第一項第十號ノ懲罰ハ刑事被告人及ヒ十八歲未滿ノ在監
者ニ之ヲ科セス
第六十二條懲罰ニ處セラレタル者疾病其他特別ノ事由アルトキハ其懲罰
ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
懲罰ニ處セラレタル者改悛ノ狀著シキトキハ其懲罰ヲ免除スルコトヲ得
第十二章釋放
第六十三條在監者ノ釋放ハ恩赦、職權アル者ノ命令又ハ刑期ノ終了ニ因
リ關係文書ヲ査閱シテ其手續ヲ爲ス可シ
第六十四條恩赦ヲ受ケ又ハ假出獄若クハ假出場ヲ許サレタル者ハ其裁可
狀又ハ許可書ノ監獄ニ達シタル後二十四時間內ニ之ヲ釋放ス
第六十五條前條ノ場合ヲ除ク外命令ニ因リ釋放ヲ爲ス可キ者ハ命令書ノ
監獄ニ達シタル後十時間內ニ之ヲ釋放ス
第六十六條假出獄又ハ假出場ヲ許サレタル者ヲ釋放スルトキハ之ニ證票
ヲ交付ス
第六十七條假出獄ヲ許サレタル者ハ其期間左ノ規定ヲ遵守ス可シ
一正業ニ就キ善行ヲ保ツコト
二警察官署ノ監督ヲ受クルコト但警察官署ハ監獄ノ意見ヲ聽キ他ニ
其監督ヲ委任スルコトヲ得
三住居ヲ轉移シ又ハ十日以上旅行ヲ爲サントスルトキハ監督者ノ許
可ヲ請フコト
主務大臣ハ假出獄ヲ許サレタル者ノ帝國外ニ旅行ヲ爲スヲ許スコトヲ得
第六十八條滿期ノ者ハ其刑期終了ノ翌日午後六時マテニ之ヲ釋放ス
第六十九條釋放セラル可キ者重キ疾病ニ罹リ監獄ニ於テ醫療中ナルトキ
ハ其請求ニ因リ仍ホ在監セシムルコトヲ得
第七十條釋放セラル可キ者歸住旅費若クハ相當ノ衣類ヲ有セサルトキ
又ハ監獄行政ノ便宜ニ因リ移監セシメタルカ爲メ歸住旅費ノ增加ヲ要ス
ルニ至リタルトキハ衣類又ハ旅費ヲ給與スルコトヲ得
第十三章死亡
第七十一條死刑ノ執行ハ監獄內ノ刑場ニ於テ之ヲ爲ス
大祭祝日、一月一日二日及ヒ十二月三十一日ニハ死刑ヲ執行セス
第七十二條死刑ヲ執行スルトキハ絞首ノ後死相ヲ檢シ仍ホ五分時ヲ經ル
ニ非サレハ絞繩ヲ解クコトヲ得ス
第七十三條在監者死亡シタルトキハ之ヲ假葬ス
死體ハ必要ト認ムルトキハ之ヲ火葬スルコトヲ得
死體又ハ遺骨ハ假葬後二年ヲ經テ之ヲ合葬スルコトヲ得
第七十四條死亡者ノ親族故舊ニシテ死體又ハ遺骨ヲ請フ者アルトキハ何
時ニテモ之ヲ交付スルコトヲ得但合葬後ハ此限ニ在ラス
第七十五條受刑者ノ死體ハ命令ノ定ムル所ニ依リ解剖ノ爲メ病院、學校
又ハ其他ノ公務所ニ之ヲ送付スルコトヲ得
附則
本法ハ刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
監獄則ハ之ヲ廢止ス但懲治人ニ關スル規定ハ當分ノ內仍ホ其效力ヲ有ス
刑法施行法案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治四十一年二月五日
內閣總理大臣侯爵西園寺公望
司法大臣松田正久
刑法施行法
第一條本法ニ於テ奮刑法ト稱スルハ明治十三年第三十六號布告刑法ヲ謂
ヒ他ノ法律ト稱スルハ刑法施行前ニ公布シタル法律及ヒ勅令、布告ニシ
テ法律ト同一ノ效力ヲ有スルモノヲ謂フ
第二條刑法施行前ニ奮刑法ノ罪又ハ他ノ法律ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ
左ノ例ニ從ヒ刑法ノ主刑ト舊刑法又ハ他ノ法律ノ主刑トヲ對照シ刑法第
十條ノ規定ニ依リ其輕重ヲ定ム
刑法ノ刑舊刑法又ハ他ノ法律ノ刑
死刑死刑
無期懲役無期徒刑
無期禁錮無期流刑
有期懲役有期徒刑、重懲役、輕懲役、重禁錮
有期禁錮有期流刑、重禁獄、輕禁獄、輕禁錮
罰金罰金
拘留拘留
科料科料
第三條法律ニ依リ刑ヲ加重減輕ス可キトキ又ハ酌量減輕ヲ爲ス可キトキ
ハ加重又ハ減輕ヲ爲シタル後刑ノ對照ヲ爲ス可シ
數罪ヲ犯シタル者ニ付テハ併合罪又ハ數罪倶發ニ關スル規定ヲ適用シタ
ル後刑ノ對照ヲ爲ス可シ
一罪ニ付キ二個以上ノ主刑ヲ併科ス可キトキ又ハ二個以上ノ主刑中其一
個ヲ科ス可キトキハ其中ニテ重キ刑ノミニ付キ對照ヲ爲ス可シ併合罪又
ハ數罪倶發ニ關スル規定ニ依リ數罪ノ主刑ヲ併科ス可キトキ亦同シ
第四條刑法施行前奮刑法又ハ他ノ法律ノ規定ニ依リ告訴ヲ待テ論ス可キ
罪ヲ犯シタル者ハ刑法ノ規定ニ依リ告訴ヲ要セサルモノト雖モ告訴アル
ニ非サレハ其罪ヲ論セス
第五條刑法第六條ニ依リ舊刑法又ハ他ノ法律ヲ適用スル場合ニ於テハ剝
奪公權、停止公權、監視又ハ罰金ヲ附加ス可キトキト雖モ之ヲ附加セス
第六條刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付キ刑法施行ノ前又ハ後ニ確定裁判ア
リタル後刑法施行前ニ犯シタル餘罪ニ付キ裁判ヲ爲ストキハ左ノ例ニ依ル
-確定裁判アリタル罪ニ舊刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖
モ刑法又ハ本法ニ依リ刑名ヲ變更セラレタル他ノ法律ニ於テハ其
罪ト餘罪トニ付キ併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
二確定裁判アリタル罪ニ刑法又ハ本法ニ依リ刑名ヲ變更セラレタル
他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖モ舊刑法又ハ他ノ法律ニ於テハ其
罪ト餘罪トニ付キ數罪倶發ニ關スル規定ニ依ル
第七條左ニ記載シタル者刑法施行前更ニ刑法ノ有期懲役ニ相當スル刑ニ
該ル罪ヲ犯シ刑法施行後其罪ニ付キ裁判ヲ爲ストキハ刑法又ハ本法ニ依
リ刑名ヲ變更セラレタル他ノ法律ニ於テハ累犯ニ關スル規定ヲ準用ス
-舊刑法又ハ他ノ法律ニ依リ刑法ノ懲役ニ相當スル刑ニ處セラレタ
ル者
二舊刑法又ハ他ノ法律ニ依リ刑法ノ懲役ニ相當スル刑ニ該ル罪ト同
質ノ罪ニ因リ死刑ニ處セラレ其執行ノ免除ヲ得又ハ減輕ニ因リ懲
役ニ相當スル刑ニ減輕セラレタル者
刑法第五十六條第三項ノ規定ハ數罪倶發ニ關スル規定ニ依リ處斷セラレ
タル者ニ之ヲ準用ス
第八條刑法施行前ニ犯シタル一罪ト刑法施行後ニ犯シタル一罪又ハ數罪
トニ付キ同時ニ裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ刑法施行前ノ罪ニ舊刑法又ハ他
ノ法律ヲ適用ス可キトキト雖モ其罪ト刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付
キ併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第九條刑法施行前ニ犯シタル數罪ト刑法施行後ニ犯シタル一罪又ハ數罪
トニ付キ同時ニ裁判ヲ爲ス場合ニ於テ刑法施行前ノ罪ニ舊刑法又ハ他ノ
法律ヲ適用ス可キトキハ數罪倶發ニ關スル規定ニ依リテ定マリタル一
ノ重キ罪ト刑法施行後ノ一罪又ハ數罪トニ付キ併合罪ニ關スル規定ヲ準
用ス
前項ノ場合ニ於テ刑法施行前ノ罪ニ刑法又ハ本法ニ依リ刑名ヲ變更セラ
レタル他ノ法律ヲ適用ス可キトキハ其數罪ト刑法施行後ノ一罪又ハ數罪
トニ付キ併合罪ニ關スル規定ヲ適用ス
第十條刑法施行後ニ犯シタル罪ニ付キ確定裁判アリタル後刑法施行前ニ
犯シタル餘罪ニ付キ裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ其罪ニ舊刑法又ハ他ノ法律
ヲ適用シタルトキト雖モ確定裁判アリタル罪ト其罪トニ付キ併合罪ニ關
スル規定ヲ準用ス
第十一條刑法施行前ニ犯シタル罪ニ付キ刑法施行後確定裁判アリタル後
刑法施行後ニ犯シタル餘罪ニ付キ裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ確定裁判アリ
タル罪ニ舊刑法又ハ他ノ法律ヲ適用シタルトキト雖モ其罪ト餘罪トニ付
キ併合罪ニ關スル規定ヲ準用ス
第十二條第七條第一項各號ニ記載シタル者刑法施行後有期懲役ニ該ル罪
ヲ犯シタルトキハ累犯ニ關スル規定ヲ準用ス
第七條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十三條刑法施行後ハ舊刑法、他ノ法律又ハ舊刑法施行前ノ法令ノ刑ニ
處セラレタル者ト雖モ刑ノ執行、假出獄及ヒ時效ニ付テハ刑法ノ規定ヲ
準用ス但罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサル者ヲ勞役場ニ留置スル場
合ニ於テハ檢事ノ請求ニ依リ裁判所決定ヲ以テ其言渡ヲ爲ス可シ
前項ノ場合ニ於テハ第二條及ヒ明治十四年第八十一號布告第一條ノ例ニ
依リ主刑ノ對照ヲ爲ス可シ
舊刑法又ハ他ノ法律ノ刑ニ處セラレタル者ノ刑法施行前ニ於ケル時效期
間ノ起算及ヒ時效ノ中斷ニ付テハ期滿免除ニ關スル規定ニ從フ
第十四條刑法施行後ハ舊刑法又ハ他ノ法律ノ刑ニ處ス可キ者ト雖モ刑ノ
執行猶豫ニ付テハ刑法ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ第二條ノ例ニ依リ主刑ノ對照ヲ爲ス可シ
第十五條刑法施行前假出獄ヲ許サレタル者及ヒ幽閉ヲ免セラレタル者ニ
付テハ刑法施行ノ日ヨリ刑法ノ假出獄ニ關スル規定ヲ準用ス
刑法施行前罰金又ハ科料ヲ納完セサル爲メ輕禁錮又ハ拘留ニ換ヘラレタ
ル者ニ付テハ刑法施行ノ日ヨリ刑法第十八條及ヒ第三十條ノ規定ヲ準用
ス但留置ノ日數ハ其執行ノ日ヨリ起算シ刑法第十八條ノ期間ヲ超ユルコ
トヲ得ス
第十六條懲治場留置ノ執行ハ刑法施行後ト雖モ從前ノ例ニ從フ但司法大
臣ハ何時ニテモ其留置ヲ解キ又ハ感化院ニ入院セシムルコトヲ得
第十七條關席判決ヲ以テ言渡シタル刑ノ時效期間ハ其言渡ノ日ヨリ之ヲ
起算ス
第十八條剝奪公權、停止公權、監視及附加ノ罰金ノ言渡ハ刑法施行ノ日ヨ
リ其效力ヲ失フ但旣ニ徵收シタル附加ノ罰金ハ之ヲ還付セス
附加ノ罰金ヲ納完セサル爲メ換ヘラレタル禁錮ニ付キ亦前項ニ同シ
第十九條他ノ法律ニ定メタル主刑ハ第二條ノ例ニ準シ刑法ノ刑ニ對照シ
テ之ヲ刑法ノ刑名ニ變更ス但單ニ禁錮トアルハ之ヲ有期ノ懲役又ハ禁錮
ニ變更ス
他ノ法律ノ規定中剝奪公權、停止公權、監視及ヒ附加ノ罰金ニ處ス可キ旨
ヲ定メタルモノハ之ヲ廢止ス
第二十條他ノ法律ニ定メタル刑ニ付テハ其期間又ハ金額ヲ變更セス但他
ノ法律中特ニ期間又ハ金額ヲ定メサル刑ニ付テハ仍ホ舊刑法總則中期間
又ハ金額ニ關スル規定ニ從フ
第二十一條他ノ法律ニ定メタル刑ヲ加重又ハ減輕ス可キ場合ニ於テハ第
二十三條ノ場合ヲ除ク外舊刑法ノ加減例ニ關スル規定ニ依ル
第二十二條他ノ法律中舊刑法ノ規定ヲ揭ケ又ハ舊刑法ノ規定ニ依リ若ク
ハ之ニ依ラサルコトヲ定メタル場合ニ付キ刑法中其規定ニ相當スル規定
アルモノハ刑法ノ規定ニ變更ス
爆發物取締罰則第十條ハ之ヲ廢止ス
第二十三條前條ノ規定ニ依リ刑法ノ刑ヲ適用ス可キ場合ニ於テハ他ノ法
律中刑ノ加重ニ關スル特別ノ規定ハ之ヲ適用セス刑ノ減輕ノ方法ニ付テ
ハ刑法ノ加減例ニ關スル規定ニ依フ
第二十四條明治二十二年法律第二十八號及ヒ明治二十三年法律第九十九
號ハ之ヲ廢止ス
第二十五條左ニ記載シタル舊刑法ノ規定ハ當分ノ內刑法施行前ト同一ノ
效力ヲ有ス
-第二編第三章第五節
二第百九十八條乃至第二百條
三第二編第四章第七節及ヒ第九節
四第二編第五章第三節
五第三編第二章第四節
刑法第八條ノ規定及ヒ本法中他ノ法律ニ關スル規定ハ之ヲ前項ノ規定ニ
準用ス
第二十六條左ニ記載シタル罪ハ刑法第二條ノ例ニ從フ
-軍機保護法ニ揭ケタル罪
二徵兵令ニ揭ケタル罪
三明治三十八年法律第六十六號ニ揭ケタル罪
四通貨及證劵模造取締法ニ揭ケタル罪
五船舶法ニ揭ケタル罪
六船員法ニ揭ケタル罪
七船舶職員法ニ揭ケタル罪
八船舶檢査法ニ揭ケタル罪
九戶籍法ニ揭ケタル罪
十郵便法ニ揭ケタル罪
十一舊刑法中印紙ノ僞造、變造及ヒ其知情使用ニ關スル罪
第二十七條左ニ記載シタル罪ハ刑法第三條ノ例ニ從フ
一特許法ニ揭ケタル罪
一商標法ニ揭ケタル罪
三意匠法ニ揭ケタル罪
四著作權法ニ揭ケタル罪
五重要物產同業組合法ニ揭ケタル罪
六移民保護法ニ揭ケタル罪
第二十八條人ノ資格其他ノ事項ニ關シ舊刑法又ハ他ノ法律ノ刑名又ハ罪
別ヲ揭ケタル他ノ法律ノ規定ハ刑法施行ノ爲メ變更セラルルコトナシ
第二十九條死刑、無期又ハ短期一年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ該ル罪ハ他
ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ重罪ト看做ス
第三十條前條ニ該當セサル懲役若クハ禁錮又ハ罰金ニ該ル罪ハ他ノ法
律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ輕罪ト看做ス
前條ニ該當セサル懲役又ハ禁錮ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑
法ノ禁錮ニ該ル罪ト看做ス
前條ニ該當セサル懲役ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ重禁
錮ニ該ル罪ト看做ス
前條ニ該當セサル禁錮ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ輕禁
錮ニ該ル罪ト看做ス
第三十一條拘留又ハ科料ニ該ル罪ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ違
警罪ト看做ス
第三十二條他ノ法律ニ定メタル罪ニシテ死刑、無期又ハ短期六年以上ノ
懲役若クハ禁錮ニ該ルモノノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第三十三條死刑、無期又ハ六年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ處セラレタル者
ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタルモノト看做
ス
第三十四條前條ニ記載シタル者及ヒ舊刑法又ハ他ノ法律ノ重罪ノ刑ニ處
セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ公權ヲ剝奪セラレタルモノト看
做ス
前項ノ規定ハ復權ヲ得タル者ニハ之ヲ適用セス
第三十五條六年未滿ノ懲役若クハ禁鋼又ハ罰金ニ處セラレタル者ハ他ノ
法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ輕罪ノ刑ニ處セラレタルモノト看做ス
六年未滿ノ懲役ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ重
禁錮ニ處セラレタルモノト看做ス
六年未滿ノ禁錮ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ輕
禁錮ニ處セラレタルモノト看做ス
第三十六條六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者及ヒ舊刑法又ハ他
ノ法律ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用ニ付テハ刑ノ執行
ヲ終リ又ハ其執行ヲ受クルコトナキニ至ルマテ公權ヲ停止セラレタルモ
ノト看做ス
第三十七條他ノ法律中舊刑法第三十一條又ハ第三十三條ノ規定アル爲メ
人ノ資格ニ關シ別段ノ規定ヲ設ケサリシ場合ニ付テハ舊刑法第三十一條
及ヒ第三十三條ノ規定ハ人ノ資格ニ關シ刑法施行前ト同一ノ效力ヲ有ス
第三十八條刑事訴訟法第八條ヲ左ノ如ク改ム
第八條公訴ノ時效ハ左ノ期間ヲ經過スルニ因テ完成ス
-死刑ニ該ル罪ニ付テハ十五年
二無期又ハ長期十年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ該ル罪ニ付テハ十年
三長期十年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ該ル罪ニ付テハ七年
四長期五年未滿ノ懲役若クハ禁錮又ハ罰金ニ該ル罪ニ付テハ三年
五刑法第百八十五條ノ罪ニ付テハ一年
六拘留又ハ科料ニ該ル罪ニ付テハ六月
第九十三條刑事訴訟法第六十二條第三號ヲ左ノ如ク改ム
第三區裁判所ノ管轄ニ屬スル罪ト思料シタル事件ニ付テハ證據書類ニ
意見書ヲ添へ之ヲ區裁判所檢事ニ送致ス可シ
第四十條刑事訴訟法第百二十五條第二號ヲ左ノ如ク改ム
第二醫師、藥劑師、藥種商、產婆、辯護士、辯護人、公證人又ハ此等
ノ職ニ在リシ者及ヒ宗〓若クハ禱祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リ
シ者其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル事實ニシテ默祕ス可キモ
ノニ關スルトキ
第四十一條刑事訴訟法第百二十六條第一項中「刑法第百八十條ニ從ヒ罰
金」ヲ「四十圓以下ノ罰金又ハ科料」ニ改メ同條第二項中「罰金」ヲ「罰金又
ハ科料」三段六ノ
同法第百三十八條中「刑法第百七十九條ニ從ヒ罰金」ヲ「四十圓以下ノ罰
金又ハ科料」ニバル
同法第百四十四條第一項中「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
第四十二條刑事訴訟法第百六十七條第一項ヲ左ノ如ク改メ第三項ヲ削ル」
被告事件其裁判所ノ管轄ニ屬スルモノト思料シタルトキハ公判ニ付ス
ル言渡ヲ爲ス可シ
第四十三條刑事訴訟法第百七十二條ヲ左ノ如ク改ム
第百七十二條檢事ハ免訴又ハ管轄違ノ決定ニ對シ抗告ヲ爲スコトヲ
得
第四十四條刑事訴訟法第二百三十六條中「輕罪、重罪ノ」ヲ削ル
第四十五條刑事訴訟法第二百四十一條ヲ左ノ如ク改ム
第二百四十一條裁判所ニ於テ輕罪トシテ受理シタル事件ヲ重罪ナリト
スルトキハ其事件ヲ豫審判事ニ送付スル決定ヲ爲ス可シ檢事ノ請求ア
ルトキ亦同シ
被〓事件豫審ヲ經タルトキハ公判ヲ止メ受命判事ヲシテ其事件ノ取調
ヲ爲シ報告ヲ爲サシムヘシ
受命判事ハ豫審判事ニ屬スル處分ヲ爲スコトヲ得
第四十六條刑事訴訟法第二百六十四條中「更ニ重罪事件トシテ裁判ス可
キ旨ノ決定ヲ爲シ」ヲ削ル
第四十七條刑事訴訟法第三百十七條ニ左ノ一項ヲ加フ
監獄ニ於テ執行ス可キ二個以上ノ主刑ノ執行ハ其重キモノヲ先ニス但特
別ノ事由アルトキハ檢事ハ重キ刑ノ執行ヲ停止シ他ノ刑ノ執行ヲ爲サシ
ムルコトヲ得
第四十八條刑事訴訟法第三百十八條ノ次ニ左ノ二條ヲ加フ
第三百十八條ノ二死刑ノ執行ハ檢事及ヒ裁判所書記ノ立會ニテ之ヲ爲
ス可シ
死刑ノ執行ニ關スル者ノ外刑場ニ入ルコトヲ得ス但檢事又ハ監獄ノ長
ノ許可ヲ得タル者ハ此限ニ在ラス
第三百十八條ノ三死刑ノ言渡ヲ受ケタル者心神喪失シタルトキハ司法
大臣ノ命令ニ因リ其痊癒ニ至ルマテ執行ヲ停止ス
死刑ノ言渡ヲ受ケタル婦女懷胎ナルトキハ分娩後司法大臣ノ命令アル
ニ非サレハ執行ヲ爲スコトヲ得ス
第四十九條刑事訴訟法第三百十九條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
懲役、禁錮又ハ拘留ノ言渡ヲ受ケタル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ
其事故ノ止ムマテ刑ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
-心神喪失ノ狀態ニ在ルトキ
二刑ノ執行ニ因リ生命ヲ保ツコト能ハサル虞アルトキ
三受胎後七月以上ナルトキ
四分娩後一月ヲ經過セサルトキ
第五十條刑事訴訟法第三百二十條中「之ヲ爲ス可シ」ノ下ニ「刑ノ執
行ノ停止ニ付キ亦同シ」ヲ加ヘ第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ徵收ニ付テハ非訟事件手續法第二百八條ノ規定ヲ準用ス
第五十一條刑事訴訟法第二十四條、第六十三條、第百六十八條、第百七十
三條及ヒ第百七十四條但書ハ之ヲ削ル
第五十二條刑事訴訟法中復權及ヒ特赦ニ關スル規定ハ之ヲ削ル
第五十三條刑法第五十二條又ハ第五十八條ノ規定ニ依リ刑ヲ定ム可キ場
合ニ於テハ其犯罪事實ニ付キ最終ノ判決ヲ爲シタル裁判所ノ檢事其裁判
所ニ請求ヲ爲ス可シ
前項ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ被告人又ハ其代理人ノ意見ヲ聽キ決
定ヲ爲ス可シ此決定ニ對シテハ抗〓ヲ爲スコトヲ得
第五十四條刑ノ執行猶豫ハ裁判所ニ於テ檢事ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以
テ刑ノ言渡ト同時ニ判決ヲ以テ之ヲ言渡ス可シ
第五十五條刑ノ執行猶豫ノ言渡ハ上訴ニ因リ其效力ヲ失フコトナシ但原
判決ヲ取消シ又ハ破毀シタル場合ハ此限ニ在ラス
上訴裁判所ハ新ニ執行猶豫ノ言渡ヲ爲スコトヲ得
第五十六條刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消ス可キ場合ニ於テハ刑ノ言渡ヲ受
ケタル者ノ所在地又ハ最後ノ住所地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事其裁判
所ニ請求ヲ爲ス可シ
前項ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ被告人又ハ其代理人ノ意見ヲ聽キ決
定ヲ爲ス可シ此決定ニ對シテハ抗〓ヲ爲スコトヲ得
第五十七條第五十三條及ヒ前條ノ裁判及ヒ抗〓ニ付テハ刑事訴訟法ノ規
定ヲ準用ス
第五十八條明治三十八年法律第七十號ニ依リ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケ
仍ホ猶豫ノ期間ヲ經過セサル者ハ刑法ニ依リ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケ
タルモノト看做ス
第五十九條明治三十九年法律第五十四號ハ之ヲ廢止ス
第六十條私訴ハ公訴ニ附帶スルトキハ民事訴訟ノ方式ニ依ラス書面又
ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第六十一條贓物犯人ノ手ニ在ルトキハ被害者ノ請求ナシト雖モ之ヲ還付
スル言渡ヲ爲ス可シ
第六十二條左ニ記載シタルモノヲ以テ公訴ニ關スル訴訟費用トス
-豫審、公判ニ付キ呼出シタル證人、鑑定人及ヒ通事ニ給與ス可キ
日當、旅費及ヒ止宿料
二第六十六條ニ記載シタル費用
第六十三條證人、鑑定人及ヒ通事ノ日當ハ左ノ範圍內ニ於テ豫審判事、
受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム
-證人ノ日當ハ出頭一度ニ付金二十錢乃至金五十錢但止宿料ヲ給與
スル場合ニ於テハ日當ヲ給與セス
二鑑定人及ヒ通事ノ日當ハ出頭一度ニ付キ金三十錢乃至金五圓
第六十四條證人、鑑定人及ヒ通事ノ旅費ハ海陸路一里ニ付キ金五錢乃至
金二十錢ノ範圍內ニ於テ豫審判事、受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム但通路
兩線以上アルトキハ最近ノ通路ヲ以テ旅費ヲ算定ス
前項ニ揭ケタル者ノ止宿料ハ一日ニ付キ金二十錢乃至金一圓ノ範圍內ニ
於テ豫審判事、受託判事又ハ裁判所之ヲ定ム但八里以上ノ地ヨリ來リ滯
在スルトキニ非サレハ之ヲ給與セス
第六十五條證人、鑑定人及ヒ通事ノ日當、旅費及ヒ止宿料ハ豫審ニ於テハ
其終結前、公判ニ於テハ其判決前ニ本人ヨリ請求スルニ非サレハ之ヲ給
與セス
第六十六條鑑定、通譯ニ付キ數多ノ時間又ハ特別ノ技能若クハ費用ヲ要
スルトキハ日當ノ外別ニ相當ノ金額ヲ給與スルコトヲ得
第六十七條共犯ノ訴訟費用ハ共犯人ノ連帶負擔トス
附則
本法ハ刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
刑法附則其他舊刑法施行ノ爲メ公布シタル法令ハ之ヲ廢止ス
印紙犯罪處罰法案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治四十一年二月五日
内閣總理大臣侯爵西園寺公望
司法大臣兼松田正久
大藏大臣
印紙犯罪處罰法
第一條行使ノ目的ヲ以テ帝國政府ノ發行スル印紙又ハ印紙金額ヲ表彰ス
ヘキ印章ヲ僞造又ハ變造シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス行使ノ目的ヲ
以テ印紙ノ消印ヲ除去シタル者亦同シ
第二條僞造、變造ノ印紙、印紙金額ヲ表彰スヘキ印章若ハ消印ヲ除去シ
タル印紙ヲ使用シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ、輸入シ若ハ移
入シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス印紙金額ヲ表彰スヘキ印章ヲ不正ニ
使用シタル者亦同シ
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第三條帝國政府ノ發行スル印紙其ノ他印紙金額ヲ表彰スヘキ證票ヲ再ヒ
使用シタル者ハ五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第四條本法ハ何人ヲ問ハス帝國外ニ於テ第一條又ハ第二條ノ罪ヲ犯シタ
ル者ニ之ヲ適用ス
第五條、僞造、變造ノ印紙、印紙金額ヲ表彰スヘキ印章又ハ消印ヲ除去シ
タル印紙ハ裁判ニ依リ沒收スル場合ノ外何人ノ所有ヲ問ハス行政ノ處分
ヲ以ヲ之ヲ官沒ス
官沒ニ關スル手續ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
裁判所構成法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治四十一年二月五日
内閣總理大臣侯爵西園寺公望
司法大臣松田正久
裁判所構成法中改正法律案
裁判所構成法中左ノ通改正ス
第十六條ノ一區裁判所ハ刑事ニ於テ左ノ事項ニ付裁判權ヲ有ス但シ第二
以下ニ記載シタル罪ハ豫審ヲ經サルモノニ限ル
第拘留又ハ科料ニ該ル罪
第二竊盜ノ罪
第三竊盜及刑法第二百五十四條ノ罪ノ贓物ニ關スル罪
第四刑法第百三十條、第百七十五條、第百八十五條乃至第百八十七
條及第二百九條ノ罪竝ニ第百三十條ノ未遂罪
第五一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ三百圓ヲ超過セサル罰金ニ該ル罪」
二個以上ノ主刑中其ノ一個ヲ科スヘキ罪ニシテ其ノ刑前項第一又ハ第五
ノ規定ニ適セサルモノアルトキハ區裁判所ハ其ノ裁判權ヲ有セス
第十六條ノ一ノ次ニ左ノ一條ヲ加へ「第十六條ノ二」ヲ「第十六條ノ三」ニ改ム
第十六條ノ二前條第一項第五ニ記載シタル罪ニ付テハ累犯又ハ併合罪ト
シテ處分スヘキ場合ト雖モ區裁判所其ノ裁判權ヲ有ス
第五十條第二號ヲ左ノ如ク改ム
第二第一審ニシテ終審トシテ
刑法第七十三條、第七十五條及第七十七條乃至第七十九條ノ罪竝ニ
皇族ノ犯シタル罪ニシテ禁錮以上ノ刑ニ處スヘキモノノ豫審及裁判
附則
本法ハ刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ニ提起シタル訴訟ハ本法ニ依リ他ノ裁判所ノ權限ニ屬スヘキモ
ノト雖モ受訴裁判所之ヲ裁判スヘシ
本法施行後重禁錮又ハ輕禁錮ニ處スヘキ罪ノ裁判權ニ付テハ重禁錮ヲ懲役
ト看做シ輕禁錮ヲ禁錮ト看做ス
裁判所構成法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治四十一年二月五日
內閣總理大臣侯爵西園寺公望
司法大臣松田正久
裁判所構成法中改正法律案
裁判所構成法中左ノ通改正ス
第五十八條中「三年間」ヲ「一年六月以上」ニ改ム
附則
本法ハ明治四十一年三月十九日ヨリ之ヲ施行ス
裁判所構成法施行條例中改正法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
明治四十一年二月五日
內閣總理大臣侯爵西園寺公望
司法大臣松田正久
裁判所構成法施行條例中改正法律案
裁判所構成法施行條例中左ノ通改正ス
第十四條削除
附則
本法ハ刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣松田正久君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=55
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056・松田正久
○國務大臣(松田正久君) 監獄法案外諸種ノ改正法案ヲ一括シテ議題ニ供セ
ラレマシタニ依ッテ、次第ニ大體ノ說明ヲ致シマス、唯今ノ監獄法案ヲ第一
ニ說明ヲ致シマスルガ、現行ノ監獄則ハ明治二十二年七月ノ制定ニ係ッタルモ
ノデゴザイマシテ、爾來明治三十二年七月及明治三十三年四月ノ兩度ニ於キ
マシテ、一部分ノ改正ヲ加フル所ガアリマシタ、併シ其事項ノ多分ハ、官制
ノ改正若クハ監獄費ノ地方支辨ヨリ國庫支辨ニ移サレタル等ノ事ニ基ヅイタ
ル必然ノ結果ニ依ッタルモノノミデアリマシテ、此行刑遇囚ノ實質ニ關スル
モノニ付キマシテハ、僅ニ唯二三ノ細目ニ止マッテ居リマスル、ソレ故ニ大
體ノ上ヨリ見マスレバ、前後兩度ノ改正ハゴザイマシタケレドモ、年所ノ經
過スルニ隨ヒマシテ、實驗上不備缺典ノ廉ガ少クゴザイマセヌ、而シテ又一
方ニハ刑法ヲ改正セラレマシテ、之ガ運用ノ機關タル監獄ノ制度ハ一日モ其
改善ヲ忽ニスルコトハ出來ナイ事情ニ迫ッテ參リマシタ、故ニ益〓現行監獄則
ノ改正ノ必要ヲ認ムル次第デアリマスル、ソレユヱ茲ニ監獄法案ヲ制定イタ
シマシテ、現行ノ監獄則ニ代ヘムト致ス譯デアリマスルガ、一面ニハ行刑遇囚
ノ上ニ改正刑法ノ運用ヲ全カラシムルト同時ニ、一面ニハ時運ノ進歩ニ伴ヒ
マシテ獄制改良ノ基礎ヲ確立セシメムコトヲ期スルノデアリマスル、併シ本
案ハ刑法施行法案ト共ニ法律取調委員會ニ於テ愼重ノ審議ヲ遂ゲタルモノデ
ゴザイマス、ソレ故ニ當院ニ於カレマシテモ委員會ニ御付託ノ上、十分ニ審議
ヲ遂ゲラレテ速ニ御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス、次ニハ刑法施行
法案提出ノ理由ヲ述ベマス、改正刑法ハ旣ニ前會議ニ於キマシテ議會ノ協賛
ヲ經マスルシ、昨年法律第四十五號ヲ以テ公布セラレマシタノデアリマス、
抑〓刑法改正ノ事ハ多年社會ノ要望スル所デゴザイマシテ、新刑法ノ實施ハ
日モ之ヲ措キ難キ事トナリマシタ、ソレ故ニ新刑法ノ公布セラルルヤ否ヤ政
府ハ之ガ施行ノ準備ヲナスガ爲ニ、法律取調委員會ヲ組織イタシマシテ、其施
行ニ必要ナル法律ノ調査ヲ託シタノデゴザイマス、本案ハ卽チ同調査委員會
ノ査定イタシマシタモノデ、殊ニ最モ愼重ノ審議ヲ盡シタノデゴザイマス、其
大體ノ主旨ニ至リマシテハ、新舊二法過渡ノ際ニ於ケル法律事項ノ引繼順序
ヲ規定シタルニ外ナリマセヌ、一體新售二法過渡ノ際ニ於キマシテハ事務取
扱上、多少ノ衝突ヲ來タスコトヲ免レマセヌ、ソレヨリシテ特ニ經過法規ヲ設
ケマシテ以テ新舊二法ノ關係ヲ調和イタシマシテ不當ナル結果ノ發生ヲ豫防
スルノ必要ガゴザリマス、本案ハ卽チ其必要ニ應ゼムトスルモノデゴザリマ
ス、唯本案ハ他ノ普通ノ施行法トハ大ニ異ナル所ガゴザリマスルハ、其規定事
項ガ極メテ複雜ヲ致シテ居リマシテ或ハ實體法ニ屬スルモノガアリ、或ハ手
續法ニ屬スルモノガアリ、或ハ現行法規ヲ改廢シタルモノガアリ、又或ハ現行
法規ノ效力ヲ一時限リ存續シタルモノガアルノデアリマス、ソレ故ニ一見イ
タシタル所デハ秩序モ無ク、系統ヲ繹ネムトシテモ繹ネ難キ所ガゴザイマス
ルガ、併シ全編ヲ貫通スル根本主義ニ至リマシテハ專ラ新刑法ヲ實施スルニ
付キマシテ必要ノ法規ヲ網羅スルニアルノデアリマス、右大體ノ趣意デゴザ
イマスルガ、本案各條ノ內容ニ付キマシテハ、委員會ニ於キマシテ政府委員ヨ
リ詳細說明ヲ致スコトニ致シマス、何卒十分御審議ノ末、御協賛ヲ願フ譯デ
ゴザリマス、又印紙犯罪處罰法案ニ就イテ一言ヲ述ベマス、是ハ刑法施行ニ
必要ナリト云フ譯デハゴザリマセヌ、刑法施行後ニ於テ調和整理ヲナス爲ノ
モノデゴザリマス、刑法施行ノ後ニナリマスレバ其特別法タル諸罰則ノ規定
ヲ刑法ノ軌轍ニ從ハシメマシテ彼是刑罰ノ均衡ヲ保タシムル必要ガゴザリマ
ス、ソレ故ニ諸罰則ノ規定ハ早晩之ヲ改正イタシマシテ刑罰法規ノ整理ヲ謀
ラヌケレバナリマセヌ、本案ハ卽チ此目的ヲ以テスルモノデゴザリマスルカ
ラ、ドウカ委員會ニ於テ愼重ノ御調査ヲ願ヒマス、次ニ裁判所構成法中改正
法律案ニ就イテ簡單ニ說明ヲ致シマス、本案ハ刑法施行法ト相伴フモノデゴ
ザリマシテ、改正刑法ヲ施行スルニ付イテハ必然ノ結果ト見ナケレバナリマ
セヌ、改正刑法ハ各種ノ犯罪ニ付キマシテ其刑罰金額ノ範圍ヲ擴張シテアリ
マスルガ故ニ、區裁判所ニ於ケル刑事裁判ノ權限ニ關スル規定ヲ改正イタシ
マセヌケレバ、區裁判所ノ權限ハ之ガ爲ニ縮小セラレマシテ、數多ノ管轄事
件ハ區裁判所ヨリ地方裁判所ニ移リ行クコトトナリマス、而シテ斯クナリマ
スレバ事務ノ分配ノ平均ヲ失フコトニナリマス、ソレ故ニ本案ハ區裁判所ノ
權限ヲシテ長期一年以下、三百圓以下ニ當ルノ罪ヲ管轄セシメ、又更ニ或ル
種類ノ犯罪ニ付キマシテハ刑期金額ニ拘ハリマセズ列記ノ方法ヲ用井マシテ
之ヲ區裁判所ノ權限ニ屬セシムルコトニ致スノデアリマスル、斯クシマシテ
現在區裁判所ノ管轄事件ハ一ツモ移動スルコトガ無イヤウニ出來ルノデゴザ
リマスル、要スルニ本案モ亦改正刑法實施ニ缺クベカラザルモノデゴザリマ
スルカラ、速ニ御協賛アラムコトヲ希望イタスノデアリマス、尙ホモウ一ツ
裁判所構成法中改正法律案ヲ提出イタシタノデゴザイマスルガ、本案ハ司法
官試補ノ實習期間ヲ短縮スル爲ニ裁所判構成法ノ規定ヲ改正スルノ必要ヨリ
シテ提出イタシタノデゴザイマス、裁判所構成法ニ於キマシテハ司法官試補
ノ實習期間ヲ三年間ト規定シテアリマスルガ、又或ハ施行條例ノ規定ニ依リ
マシテ或ハ前後三囘ノ單行法律ヲ以チマシテ、此期間ヲ一年六箇月ニ短縮イ
タシタルコトハ諸君ノ御承知ノコトト思ヒマスル、是等ノ諸法律ハ元ハ他ノ
理由ニ依リマシテ特ニ規定セラレタルモノデアリマスルガ、爾來〓ネ二十年
間之ヲ實施シタルノ結果ニ徵シマスレバ、試補ノ實習期間ヲ一年六箇月以上
トナシマシテモ、判事檢事タルノ資格ニ於テ不足ナキノ事實ヲ確ニ證明イタ
シテ居ルノデゴザイマス、而シテ最後ニ御協賛ヲ求メタル所ノ期間短縮ノ單
行法ハ恰モ本年三月十八日ヲ以テ其施行ヲ止メヌケレバナリマセズ、從ッテ
效力ヲ失フニ至ルノデアリマス、ソレ故ニ此際構成法ノ規定ヲ改正イタシマ
シテ試補ノ實習期間ヲ短縮スルヲ適當ト信ジマスルガ故ニ本案ヲ提出イタシ
タル譯デゴザイマス、何卒御協賛ヲ願ヒマス、裁判所構成法施行條例中改正
法律案ニ就イテ一言ヲ致シマスルガ、本案モ亦刑法施行法ニ伴ヒマシテ改正
刑法施行ノ爲ニ必要ノモノデゴザイマス、是ハ司獄官ノ裁判制度ニ關スルモ
ノデゴザイマスルガ、此司獄官ノ裁判制度ハ旣ニ現時ノ裁判事務ノ狀態ニ於
キマシテ、之ヲ存置スルノ必要ハゴザイマセヌ、改正刑法ガ刑法施行法ト共
ニ施行セシムルニ至リマスレバ、司獄官ニ於キマシテ輕罪事件トシテハ長期
十年ヨリ短期一月ノ範圍内ニ於テ刑罰ヲ量定イタシマシテ裁判ノ言渡ヲ爲ス
コトガ出來ルヤウニナリマスル、又一方ニ於キマシテハ其裁判手續ハ便宜ニ
依ルコトヲ得ルモノデゴザイマスカラ、改正刑法施行後、尙ホ此制度ヲ存置
イタシマスレバ却ッテ被告人ノ便利ヲ省ミナイコトニ成行クノデゴザイマス
ル、ソレ故ニ裁判所構成法中改正法律案ト共ニ提出ヲ致シタル譯デゴザイマ
スカラ、ドウカ御協賛ヲ願ヒマス、尙ホ是等ノ法案ニ就キマシテハ委員會ニ
於テ政府委員ヨリ委シク御說明ヲ致スコトニ致サセマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=56
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057・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質問モ無イヤウデアリマスカラ特別委員ノ
選擧ニ移リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=57
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058・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 此五案ハ直接間接ニ相關聯シテ居リマスカラ同一委員ニ付
託セラレマシテ、且重要ノ法案デゴザイマスカラ其數ヲ十五名トシテ議長ニ
於テ御指名ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=58
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059・村田保
○村田保君 贊成ヲ致シマス
〔「賛成々々」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=59
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060・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 一木君ニ伺ヒマスガ、議事日程第十八ノ法案ノ委
員ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=60
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061・一木喜徳郎
○一木喜德郞君 チヨット間違ヒマシタ、十四、十六、···唯今御說明ニナリ
マシタ總テノ案ヲ同一委員ニ付託シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 村田君ハソレニ御贊成ナンデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=62
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063・村田保
○村田保君 ハイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 一木君ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第二十六、間接國稅犯則者處分法中改正
法律案、政府提出、第一讀會ノ續、特別委員長報告
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
間接國稅犯則者處分法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
明治四十一年二月五日
右特別委員長
伯爵柳原義光
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵柳原義光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=66
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067・柳原義光
○伯爵柳原義光君 唯今議題トナッテ居リマスル間接國稅犯則者處分法中改
正法律案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ簡單ニ御報道申上ゲマス、此委員會ハ一
月ノ三十一日ニ開キマシテ、其時ハ單ニ正副委員長ノ選擧ニ止メテ置イタノ
デアリマス、次ハ二月ノ五日ニ開キマシテ、其時ハ政府委員モ出席イタサレ
マシテ委員カラモ種々質問ノ末、全會一致ヲ以テ可決スベキモノト決シタノ
デアリマス、此改正ノ要旨ハ間接國稅ノ犯則事件ニ就キマシテ取調ヲシタリ
又ハ其犯則ノ結果、法律ノ規定ニ依ッテ沒收スベキ物品ノ取扱方ノ箇條ヲ改
正シタニ過ギヌノデアリマス、ソレデ此間接國稅犯則者處分法ハ二十一箇條
ヨリ成リマスル法律デアリマスル、其二十一箇條ノ中デ第七條、第八條、第
十四條、第十六條、第十七條、第十八條ノ規定ニ多少ノ變更ヲ加ヘタノニ過ギ
ヌノデアリマス、極ク簡單ニ說明ヲ致シマスルガ、多少條文ヲ讀ミマセヌケ
レバ明瞭イタシマセヌカラ讀ムデ見マスガ、第七條ノ中ノ一項ノ末ニ「但シ
所有者ハ其ノ差押目錄ノ謄本ヲ請求スルコトヲ得」ト云フ文句ガアリマスル
ノト、又同條ノ二項ノ中ニ「所有者又ハ市町村ヲシテ保管セシムルコトヲ得」
云々ト云フノデアリマスルガ、何レモ此所有者ト云フ文字ノ後ニ「所持者」ト
云フ文字ヲ加ヘルノデアリマス、ソレデ是ハ詰リ單ニ「所有者」トシマスルト
所持者或ハ占有者ヲ含マヌト云フ意味ニナリマスカラ、實際犯則者處分ノ調
査ヲ致シマスルニ大層不便デアリマスカラシテ、明カニ「所有者又ハ所持者」
ト云フコトヲ加ヘテ附ケテアリマスル、卽チ「所有者」ノ外ニ「所持者」ト云フ
文字ヲ新シク入レタニ過ギヌノデアリマス、ソレカラ第八條ニハ現行法ノ規
定ニ依ルト「收稅官吏ハ日沒ヨリ日出マテノ間臨檢、搜索又ハ差押ヲ爲スコ
トヲ得ス但シ現行犯ノ場合ハ此限ニ在ラス」是ダケノコトガ書イテアルノデ
アリマスルガ、改正法ニ依リマスルト之ニ一項ヲ加ヘマシテ「日沒前ヨリ開
始シタル臨檢、搜索又ハ差押ニシテ必要アル場合ハ日沒後迄之ヲ繼續スルコ
トヲ得」斯ウ云フ規定ニ改メタノデアリマス、是ハ矢張リ實際犯則者ヲ調査
スルトキニ際シマシテ晝間カラシテ夜ニ渉ルコトガ往々アルノダサウデアリ
マスルケレドモ、現行法ノ規定ニ依ルト日沒ニナレバ其儘中止ヲセネバナラ
ヌノデアリマス、トコロガ此中止ヲスルト云フコトハ事件ノ搜索ノ上ニ非常
ニ不便ヲ感ズルノミナラズ、往々證據物ヲ湮滅セシムル憂ガアリマスルニ依
ッテ、晝間カラ掛ケテ繼續スルモノハ夜分デモ、ドシドシヤルコトニスルノガ
此改正ノ趣意ナノデアリマス、併シ唯夜間ニ突然ニ臨檢ヲシタリ或ハ搜索ヲ
シタリスル趣意デハ元〓無イノデアルト云フコトヲ政府委員ノ人モ委員會ニ
於テ言ハレタコトデアリマス、ソレカラ次ニハ第十四條デアリマスルガ、是
モ此十四條ノズット末ノ方ニ「但シ犯則者通告ノ旨ヲ履行スルノ資力ナシト
認ムルトキハ直ニ〓發スヘシ」ト云フノガアリマスルガ、之ヲ併セマシテ「但
シ沒收品ニ該當スル物品ニ付テハ納付ノ申出ノミヲ爲スヘキ旨ヲ通〓スルコ
トヲ得」ト改メマシテ、更ニ其外ニ一項ヲ加ヘマシテ「犯則者通告ノ旨ヲ履
行スルノ資力ナシト認ムルトキハ前項ノ通〓ヲ要セス直ニ告發スヘシ」斯ウ
云フ一項ヲ附加ヘタノデアリマス、是モ簡單ニ說明イタシマスルガ、現行法
ニ依ルト稅務署長ガ犯則事件ノ調査ヲ致シマシテ、是ハ犯則ガアルト云フ心
證ヲ得ルトキハ通〓ノ處分ヲスルトシ、其處分ニシテ罰金、科料ニ相當スル金
額又ハ沒收品ニ該當スル金額、其他規定ニ從ッテ通告處分ヲ致シマスケンド
〓、沒收品ニ付イテハ其沒收ニ該當スル物品ヲ指定ノ場所ニ納付スベキ旨ヲ
通告スルノデアリマス、此場合ニ當ッテ犯則ノ場所、例ヘバ非常ニ交通ノ不便
デアル所ノ山間僻地デアリマスルトキハ非常ニ不便ヲ感ジマスルニ依ッテ、
改正案ニ依リマスレバ唯「納付ノ申出ノミヲ爲スヘキ旨ヲ通〓スルコトヲ得」
ト斯ウ改メタノデアリマス、卽チ直グニ納メルト云フコトヲ言ハズシテ之
ヲ以テ通知ノ處分ヲ爲スコトヲ得ト云フコトニ改メタノデアリマス、詰リ此
一項ヲ附加ヘマシテモ現行法ト意味ハ餘リ變ラナイノデ、唯條文ノ整理ヲシ
タノニ過ギヌノデアリマス、ソレカラ第十六條デアリマスルガ、第十六條ニ
更ニ一項ヲ附加ヘマシテ「第十四條第一項但書ニ依ル通告ニ對シ犯則者通告
ノ旨ヲ履行シタル場合ニ於テ沒收品ニ該當スル物品ヲ所持スルトキハ公賣其
ノ他必要ノ處分ヲ爲ス迄之ヲ保管スルノ義務アルモノトス但シ保管ニ要スル
費用ハ之ヲ請求スルコトヲ得ス」斯ウ云フ一項ヲ附加ヘタノデアリマス、是
ハ十四條改正ノ結果デアリマシテ、卽チ犯則者ガ通告ノ旨ヲ履行スル場合ニ
沒收ニ該當スル物品ヲ稅務官吏ガ公賣或ハ其他ノ處分ヲ爲スマデ犯則者ガ保
管ノ義務ガアルト云フコトヲ明カニ揭ゲタノデアリマス、サウシテ又其保管
ニ要スル所ノ費用ハ餘リ多分ノ費用デモナイノデアリマスルカラシテ、詰リ
元ミ自分ノ持ッテ居ッタ品物デアリマスルカラシテ、其費用ヲ請求スルコト
ハ出來ナイト斯ウシタノニ過ギヌノデアリマス、ソレカラ第十七條ニ現行ノ
規定ノ外ニ更ニ一項ヲ加ヘテ「犯則者ノ居所分明ナラサル爲又ハ犯則者書類
ノ受領ヲ拒ミタル爲通告スルコト能ハサルトキ亦前項ニ同シ」斯ウ新シク入
レルノデアリマス、是ハ詰リ犯則者ノ居所ガ不分明ノトキ、又ハ犯則者ガ犯
則書類ノ送達ヲ拒ミマシタルトキニ、其場合ノ取扱ヲ明カニシタノニ過ギヌ
ノデアリマシテ、唯ソレダケノコトナノデアリマス、ソレカラ又十八條ノ第
二項ノ中ニ「所有者又ハ町村ノ保管ニ係ル」云々トアルノヲ此「所有者」ノ
下ニ「所持者」ト云フ字ヲ新シク入レタノデアリマス、是モ其理由ハ前ノ第
七條ノトキニ申シタ通リ「所有者又ハ所持者」ト云フコトニ改メタノト同一ノ
理由デアリマスルカラ再ビ說明ヲスル必要ハナイト存ジマス、デ是ハ大略是
ダケノコトデアリマスルガ、尙ホ御質問等モゴザイマスレバ政府委員ニ御質
問アラムコトヲ希望イタシマス、ソレデ此案ハ極ク簡單ニシテ明瞭デアル所
ノ案ト信ジマスルニ依リマシテ、願ハクハ讀會ヲ省略セラレテ直ニ御可決ア
ラムコトヲ本委員長ハ切望シテ已マヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=67
-
068・辻新次
○辻新次君 チヨット質問ヲ致シタイ、ソレハ委員長カラデモ政府委員カラ
デモ宜シウゴザイマスガ、所有者又ハ所持者ト云フコトデアリマス、其所有
者又ハ所持者ニ改メルト云フコトハ將來ニ於テ區別ハ付キマセウガ、今日マ
デ所有者トスベキ者ト所持者トスベキ者ト云フコトガアッタラウト私ハ想像
イタシマスルノデアリマスガ、ソレハドウ云フコトニナルノデアリマセウカ、
今日マデ旣ニ所持者ト云フベキ人ハドウ云フ處分ヲシタノデアリマスカ、
ソレハ處分ラセナイデ仕舞ッタノデアリマスカ、或ハ所有者ト云フ者ノ中ニ
入レテ處分ヲシタノデアリマスカ、今日以後ハ、ハッキリ區別ガ出來ルノデ
アリマスカ、今日マデアッタモノハ實際ドウナッテ居ッタノデアリマスカ、
念ノ爲ニチヨット御聞キ申シテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=68
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069・柳原義光
○伯爵柳原義光君 此邊ノコトハ政府委員カラ御答辯アラムコトヲ希望イタ
シマス
〔政府委員櫻井鐵太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=69
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070・櫻井鐵太郎
○政府委員、櫻井鐵太郞君) 唯今「所有者又ハ所持者」ト改正ヲ致シマスコト
ニ付イテ是マデハドウシテ居ッタカ、斯ウ云フ御尋ネデアリマス、今日マデ
實際ノ取扱ヲ致シマシテ居リマシタ所ハ所持者ト云フ者モ矢張リ所有者トア
ル中ニ含マレルノデアル、斯ウ云フ解釋ヲ取ッタノデアリマス、併シ所有者
ト所持者トハ明カニ區分スルノガ相當ナルモノデアリマスカラ、今囘改正ヲ
スル方ガ宜シイ、斯ウ云フコトデ改正ヲ致スコトニ致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=70
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071・田健治郎
○男爵田健治郞君 チヨット委員長へ御尋ネシタウゴザイマス、此第十七條
ノ御說明ノ次ニ第十八條ノ御說明ガアッタヤウニ聽取リマシタ、或ハ私ノ聽
誤リカモ知レマセヌガ、十八條ト云フコトハ此原案ニハ無イヤウデアリマス
カ:発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=71
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072・柳原義光
○伯爵柳原義光君 御答イタシマス、一番初メノ所ニ『第七條第一項中「所有
者」ヲ「所有者又ハ所持者」ニ、、同條第二項及第十八條中「所有者」ヲ「所有者、所
持者」ニ改ム』ト云フコトガ書イテアリマス、能ク御覽ニナリマスレバ御分リ
ニナリマスコトト存ジマス、ドウゾモウ少シ能ク御覽ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=72
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073・田健治郎
○男爵田健治郞君 十八條ノ御說明デゴザイマシタカラチヨット御尋ネシタ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=73
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074・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ヲ第二讀會ニ移スベシトスル諸君ノ起立ヲ請
ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=75
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076・柳原義光
○伯爵柳原義光君 直ニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=76
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077・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 贊成
〔其他「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=77
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078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ヲ直ニ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=78
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079・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=79
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080・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ第二讀會ヲ開キマス、全部ヲ問題ニ供シマス、
全部ヲ可トスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 過半數ト認メマス、是デ第二讀會ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=81
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082・柳原義光
○伯爵柳原義光君 直ニ第二讀會ヲ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=82
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083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 三讀會デゴザイマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=83
-
084・柳原義光
○伯爵柳原義光君 間違ヒマシタ、第三讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=84
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085・廣澤金次郎
○伯爵廣澤金次郞君 贊成
〔其他「贊成」ト呼フ者多シ]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=85
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086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=86
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087・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ第三讀會ヲ開キマス、·原案御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=88
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089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、是デ確定イタシマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=89
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090・岡部長職
○子爵岡部長職君 先刻豫算委員ニ付託サレマシタ豫算案ハ速ニ委員會ニ於
キマシテ審査決了イタシマシタニ付キマシテハ此際、議事日程ヲ追加サレテ
報〓ヲ致シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=90
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091・二條基弘
○公爵二條基弘君 贊成
〔其他「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 岡部子爵ノ議事日程追加ノ動議、御異存ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=92
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093・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異存ナイト認メマスカラ議事日程ハ追加サレマ
シタ、岡部子爵
一明治四十年度歲入歳出豫算追加案(第一號)
右衆議院ヨリ送付シタル案ヲ審査シ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報告候也
明治四十一年二月八日
豫算委員長
子爵岡部長職
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵岡部長職君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=93
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094・岡部長職
○子爵岡部長職君 今朝豫算委員ニ付託サレマシタル所ノ明治四十年度歲入
歲出豫算追加第一號案デアリマス、委員ニ於キマシテハ付託サレマシテ速ニ
委員會ヲ開キマシテ政府委員ノ說明ヲ求メマシタ、出席委員一ノ異議モ無ク
卽決ヲ致シマシタ次第デアリマス、此案ノ内容ハ此頃天然痘ガ大ニ流行ノコ
トニ相成リマシテ、ソレニ對スル豫防法トシテ種痘ヲ大ニ行ハネバナラナイ
ト云フコトデ、其痘苗ニ對スル所ノ製造ノ費用ニ缺乏ヲ感ズルコトニ相成リ
マシタ、尙ホ其他「ヂフテリヤ」、腸窒扶私等ニ對スル所ノ血〓ノ製造ニモ費用
ノ缺乏ヲ感ズルト云フコトニ相成リマシタニ付キマシテ此際、追加豫算トシ
テ七萬七千百六十八圓ヲ內務省所管經常部第五款傳染病〓究所ノ款ニ計上ヲ
致シタ譯デアリマス、ソレニ對スル歲入ハ前年度繰入金ノ內カラシテ右金額
ヲ充ツルト云フ豫算案デアリマス、唯今申上ゲタ通リ此事ハ甚ダ必要ナルコ
トデ急施ヲ要スルコトデアリマス、委員會ニ於キマシテハ何ノ異議モ無ク決
了イタシマシタ次第デアリマスカラ諸君ニ於カレマシテモ速ニ可決セラレム
コトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=94
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095・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御發言ガ無イト認メマスカラ採決ヲ致シマ
ス、全部ヲ問題ニ供シマシテ、全部御異議ナイ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=95
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096・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス、是デ確定イタシマシタ、特別
委員ノ氏名ヲ御報告ニ及ビマス、書記官長ヲシテ朗讀イタサセマス
〔太田書記官長朗讀〕
酒造稅法中改正法律案外五件特別委員
伯爵正親町實正君伯爵德川達孝君子爵谷干城君
子爵曾我祐準君子爵岡部長職君子爵三島彌太郞君
男爵松平正直君男爵伊達宗敦君男爵沖守固君
男爵目賀田種太郞君男爵紀俊秀君男爵本多政以君
藤田四郞君下條正雄君日高榮三郞君
監獄法案外五件特別委員
侯爵黑田長成君子爵酒井忠亮君三好退藏君
村田保君小松原英太郞君男爵關義臣君
奧山政敬君富井政章君木喜德郞君
石渡敏一君菊池武夫君木場貞長君
穗積八束君兒玉淳一郞君鎌田榮吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=96
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097・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ議事日程ハアトヨリ御通知ニ及ビマス、本日
ハ是デ散會イタシマス
午前十一時三十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=002403242X00419080208&spkNum=97
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